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特表2024-519407混合プロトコルを作成するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-13
(54)【発明の名称】混合プロトコルを作成するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/10 20190101AFI20240502BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20240502BHJP
【FI】
G16C20/10
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558587
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 US2022071363
(87)【国際公開番号】W WO2022204728
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/298,880
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/166,504
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ケニヨン、ロス
(72)【発明者】
【氏名】バード、ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】オレムランド、マシュー
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA16
4C084NA20
4C084ZC021
(57)【要約】
予測モデルを作成する方法は、予測モデルについての混合プロトコルパラメータを特定する工程と、予測モデルについての評価基準を特定する工程と、混合プロトコルパラメータについての試験値を選択する工程と、評価基準を生成するために実行する必要がある数値流体力学(CFD)シミュレーションを特定する工程と、試験値の各組み合わせについてCFDシミュレーションを行うことで、試験値の各組み合わせに対する評価基準を生成する工程と、混合プロトコルパラメータを評価基準に関連付ける潜在的な予測モデルのドメインを生成する工程と、潜在的な予測モデルのドメインから予測モデル候補のプールを特定する工程と、予測モデル候補のプールをランク付けする工程とを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測モデルを作成する方法であって、
前記予測モデルについての混合プロトコルパラメータを特定する工程a)と、
前記混合プロトコルパラメータについての試験値を選択する工程b)と、
試験値の各組み合わせについてCFD(数値流体力学)シミュレーションを行うCFDシミュレーション工程c)と、
前記混合プロトコルパラメータに関連する潜在的な予測モデルのドメインを生成するドメイン作成工程d)と、
前記混合プロトコルパラメータに関連する前記潜在的な予測モデルのドメインをランク付けする工程e)と、を備える方法。
【請求項2】
工程(a)の後に、前記予測モデルについての評価基準を特定する工程と、
工程(b)の後に、前記評価基準を生成するために実行する必要があるCFDシミュレーションを特定する工程と、
工程(d)の後に、前記潜在的な予測モデルのドメインから予測モデル候補のプールを特定するプール特定工程と、
前記予測モデル候補のプールをランク付けするプールランク工程と、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合プロトコルパラメータは、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、溶液密度、混合容器サイズ、および混合容器形状のうちの2つ以上を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記評価基準は、流動パターン、流体速度分布、流体流動のベクトル場、流体流動の流線、定常状態混合時間、過渡混合時間、滞留時間分布、剪断ひずみ速度分布、平均剪断ひずみ速度、露出分析、および電力消費のうちの2つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
特定された前記CFDシミュレーションは、定常流解析、過渡流解析、混合時間解析、および/または露出分析を含む、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドメイン作成工程後であって、前記プール特定工程の前に、
前記潜在的な予測モデルのドメインにおける各潜在的な予測モデルについて分散膨張係数を計算する工程と、
前記潜在的な予測モデルのドメインから共線性閾値以上の分散膨張係数を有する潜在的な予測モデルを除去することによって、潜在的な予測モデルのサブセットを生成する工程と、をさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記予測モデル候補のプールは、前記サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有する前記サブセットからの一変量モデルと、前記サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有する前記サブセットからの二変量モデルとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プールランク工程は、項の数に基づいて前記予測モデル候補のプールをランク付けすること、R値に基づいて前記予測モデル候補のプールをランク付けすること、またはその両方を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記試験値は第1試験値であり、前記方法は、
前記予測モデル候補のプールから予測モデル候補を使用することで、第2試験値の組み合わせに対する前記評価基準の推定値を生成する工程をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2試験値の組み合わせについて前記CFDシミュレーション工程を行うことで、前記第2試験値の組み合わせに対する評価基準を生成する工程と、
前記第2試験値の組み合わせに対する前記評価基準と、前記第2試験値の組み合わせに対する前記評価基準の前記推定値とを比較する工程と、をさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
予測モデルを作成する方法であって、
前記予測モデルについての第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを特定する工程と、
前記予測モデルについての第1評価基準および第2評価基準を特定する工程と、
前記第1混合プロトコルパラメータについての第1試験値を選択する工程と、
前記第2混合プロトコルパラメータについての第2試験値を選択する工程と、
前記第3混合プロトコルパラメータについての第3試験値を選択する工程と、
前記第1評価基準を生成するために実行する必要がある第1CFD(数値流体力学)シミュレーションを特定する工程と、
前記第2評価基準を生成するために実行する必要がある第2CFDシミュレーションを特定する工程と、
前記第1CFDシミュレーションを第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせについて実行することにより、第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせに対する第1評価基準を生成する工程と、
前記第2CFDシミュレーションを第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせについて実行することにより、第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせに対する第2評価基準を生成する工程と、
前記第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを前記第1評価基準に関連付ける複数の第1予測モデルの第1ドメインを生成する工程と、
前記第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを前記第2評価基準に関連付ける複数の第2予測モデルの第2ドメインを生成する工程と、を備える方法。
【請求項12】
各第1予測モデルおよび各第2予測モデルについて分散膨張係数を計算する工程と、
前記第1予測モデルの第1ドメインから、3以上の分散膨張係数を有する第1予測モデルを除去することによって、第1予測モデルの第1サブセットを生成する工程と、
前記第2予測モデルの第2ドメインから、3以上の分散膨張係数を有する第2予測モデルを除去することによって、第1予測モデルの第2サブセットを生成する工程と、
前記第1サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有する前記第1サブセットからの一変量モデル、前記第1サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有する前記第1サブセットからの二変量モデル、および前記第1サブセット内の他のすべての三変量モデルよりも高いR値を有する前記第1サブセットからの三変量モデルを含む第1予測モデル候補の第1プールを特定する工程と、
前記第2サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有する前記第2サブセットからの一変量モデル、前記第2サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有する前記第2サブセットからの二変量モデル、および前記第2サブセット内の他のすべての三変量モデルよりも高いR値を有する前記第2サブセットからの三変量モデルを含む第2予測モデル候補の第2プールを特定する工程と、をさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1混合プロトコルパラメータについての第4試験値を選択する工程と、
前記第2混合プロトコルパラメータについての第5試験値を選択する工程と、
前記第3混合プロトコルパラメータについての第6試験値を選択する工程と、
前記第1予測モデル候補の第1プールの各第1予測モデル候補を使用することで、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する推定第1評価基準を生成する工程と、
前記第1CFDシミュレーションを第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせについて実行することにより、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第1評価基準を生成する工程と、
前記第1予測モデル候補の第1プールの各第1予測モデル候補によって生成された前記推定第1評価基準を、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する前記第1評価基準と比較する推定第1評価基準比較工程と、をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2予測モデル候補の第2プールの各第2予測モデル候補を使用することで、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する推定第2評価基準を生成する工程と、
前記第2CFDシミュレーションを第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせについて実行することにより、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第2評価基準を生成する工程と、
前記第2予測モデル候補の第2プールの各第2予測モデル候補によって生成された前記推定第2評価基準を、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する前記第2評価基準と比較する工程と、をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記推定第1評価基準比較工程に基づいて、前記第1予測モデル候補の第1プールから第1予測モデルを選択する工程と、
前記推定第1評価基準比較工程に基づいて、前記第2予測モデル候補の第2プールから第2予測モデルを選択する工程と、
前記第1予測モデルを使用することで、混合プロトコルに対する第1評価基準を決定する工程と、
前記第2予測モデルを使用することで、前記混合プロトコルに対する第2評価基準を決定する工程と、をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1評価基準および第2評価基準は、流動パターン、流体速度分布、流体流動のベクトル場、流体流動の流線、定常状態混合時間、過渡混合時間、滞留時間分布、剪断ひずみ速度分布、平均剪断ひずみ速度、露出分析、および電力消費を含むリストから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
混合プロトコルに関連する剪断ひずみをモデル化する方法であって、
予測モデルについての混合プロトコルパラメータを特定する工程と、
前記混合プロトコルパラメータについての試験値を選択する工程と、
試験値の各組み合わせについて数値流体力学露出分析を行うことによって、試験値の各組み合わせに対する剪断ひずみを生成する工程と、
予測モデル候補のプールを特定する工程と、
前記予測モデル候補のプールをランク付けするプールランク工程と、
前記予測モデル候補のプールから予測モデルを選択する予測モデル選択工程と、
前記予測モデルを使用して、複数の時間間隔で前記混合プロトコルの累積剪断ひずみを評価することで、剪断ひずみヒストグラムデータを生成する工程と、を備える方法。
【請求項18】
前記混合プロトコルパラメータは、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、溶液密度、混合容器サイズ、および混合容器形状のうちの2つ以上を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記混合プロトコルは、バイオリアクター内のバイオ医薬品に関連する混合プロトコルである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記剪断ひずみヒストグラムデータを使用することで、可視またはサブビジブル粒子形成のリスクを評価する工程をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記プールランク工程は、項の数に基づいて前記予測モデル候補のプールをランク付けすること、R値に基づいて前記予測モデル候補のプールをランク付けすること、またはその両方を含み、
前記予測モデル選択工程は、最も高いR値を有する前記モデルを選択することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合プロトコルを作成および実装するためのシステムおよび方法に関する。本開示のいくつかの態様は、治療薬の生物学的生成に関連する混合プロトコルのハイスループット評価のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品(例えば、抗体、融合タンパク質、AAV(アデノ随伴ウイルス)、タンパク質、組織、細胞、ポリペプチド、または生体由来の他の治療用製品)は、感染症、遺伝病、自己免疫疾患、および他の病気の治療および予防においてますます使用されている。バイオ医薬品の製造には、正確かつ均一の状態を要する。バイオ医薬品を含む溶液が均一であることを確実にするために、製造プロセス全体を通して混合プロトコルを用いることがある。混合プロトコルは、バイオ医薬品の製造に関与する様々な溶液内の溶液成分(例えば、バイオ医薬品、細胞廃棄物、宿主タンパク質、細胞外栄養素、他の分子)の適切な分布を維持することを補助し得る。
【0003】
混合プロトコルは、混合容器の形状およびサイズ、溶液内の流体流動の方向および速度、ならびに溶液の生理化学的特性についてのパラメータを含んでよい。混合プロトコルは、バイオ医薬品、混合容器形状、培地組成、および宿主細胞の各種類に対して作成されてよい。バイオ医薬品、混合容器形状、培地組成、または宿主細胞を変更するには、混合プロトコルを再び作成することが必要となり得る。混合プロトコルを作成する従来の方法は、時間および労働集約的であり、劣った混合プロトコルに繋がりかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
混合プロトコルを作成するための方法およびシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、予測モデルを作成する方法を対象とし得る。方法は、予測モデルについての混合プロトコルパラメータを特定する工程、予測モデルについての評価基準を特定する工程、および/または混合プロトコルパラメータについての試験値を選択する工程を含み得る。本方法は、評価基準を生成するために実行する必要があるCFD(数値流体力学)シミュレーションを特定する工程をさらに含み得る。本方法はまた、試験値の各組み合わせについてCFDシミュレーションを行うことで、試験値の各組み合わせに対する評価基準を生成する工程を含み得る。本方法は、混合プロトコルパラメータを評価基準に関連付ける潜在的な予測モデルのドメインを生成する工程、潜在的な予測モデルのドメインから予測モデル候補のプールを特定する工程、および/または予測モデル候補のプールをランク付けする工程をさらに含み得る。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態では、混合プロトコルパラメータは、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、溶液密度、混合容器サイズ、および混合容器形状のうちの2つ以上を含み得る。評価基準は、流動パターン、流体速度分布、流体流動のベクトル場、流体流動の流線、定常状態混合時間、過渡混合時間、滞留時間分布、剪断ひずみ速度分布、平均剪断ひずみ速度、露出分析、および電力消費のうちの2つ以上を含み得る。特定されたCFDシミュレーションは、定常流解析、過渡流解析、混合時間解析、および/または露出分析を含み得る。いくつかの実施形態では、混合予測モデルを作成する方法は、潜在的な予測モデルのドメインを作成する工程の後であって、予測モデル候補のプールを特定する工程の前に、潜在的な予測モデルのドメインにおける各潜在的な予測モデルについて分散膨張係数を計算する工程と、潜在的な予測モデルのドメインから共線性閾値以上の分散膨張係数を有する潜在的な予測モデルを除去することによって、潜在的な予測モデルのサブセットを生成する工程とをさらに含み得る。予測モデル候補のプールは、サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有するサブセットからの一変量モデルと、サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有するサブセットからの二変量モデルとを含み得る。予測モデル候補のプールをランク付けする工程は、項の数に基づいて予測モデル候補のプールをランク付けすること、R値に基づいて予測モデル候補のプールをランク付けすること、またはその両方を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、試験値は第1試験値であり、予測モデルを作成する方法は、予測モデル候補のプールから予測モデル候補を使用することで、第2試験値の組み合わせに対する評価基準の推定値を生成する工程をさらに備える。また、方法は、第2試験値の組み合わせについてCFDシミュレーションを行うことで、第2試験値の組み合わせに対する評価基準を生成する工程と、第2試験値の組み合わせに対する評価基準と、第2試験値の組み合わせに対する評価基準の推定値とを比較する工程とをさらに含み得る。
【0007】
本開示のさらなる実施形態は、予測モデルを作成する方法を含み得る。方法は、予測モデルについての第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを特定する工程、予測モデルについての第1および第2評価基準を特定する工程、第1混合プロトコルパラメータについての第1試験値を選択する工程、第2混合プロトコルパラメータについての第2試験値を選択する工程、および/または第3混合プロトコルパラメータについての第3試験値を選択する工程を含み得る。方法はさらに、第1評価基準を生成するために実行する必要がある第1CFD(数値流体力学)シミュレーションを特定する工程、第2評価基準を生成するために実行する必要がある第2CFDシミュレーションを特定する工程、第1CFDシミュレーションを第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせについて実行することにより、第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせに対する第1評価基準を生成する工程、および/または第2CFDシミュレーションを第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせについて実行することにより、第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせに対する第2評価基準を生成する工程を含み得る。方法はさらに、第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを第1評価基準に関連付ける複数の第1予測モデルの第1ドメインを生成する工程、および/または第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを第2評価基準に関連付ける複数の第2予測モデルの第2ドメインを生成する工程を含み得る。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態では、予測モデルを作成する方法はさらに、各第1予測モデルおよび各第2予測モデルについて分散膨張係数を計算する工程と、第1予測モデルの第1ドメインから、3以上の分散膨張係数を有する第1予測モデルを除去することによって、第1予測モデルの第1サブセットを生成する工程と、第2予測モデルの第2ドメインから、3以上の分散膨張係数を有する第2予測モデルを除去することによって、第1予測モデルの第2サブセットを生成する工程と、第1サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有する第1サブセットからの一変量モデル、第1サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有する第1サブセットからの二変量モデル、および第1サブセット内の他のすべての三変量モデルよりも高いR値を有する第1サブセットからの三変量モデルを含む第1予測モデル候補の第1プールを特定する工程と、第2サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有する第2サブセットからの一変量モデル、第2サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有する第2サブセットからの二変量モデル、および第2サブセット内の他のすべての三変量モデルよりも高いR値を有する第2サブセットからの三変量モデルを含む第2予測モデル候補の第2プールを特定する工程と、第1混合プロトコルパラメータについての第4試験値を選択する工程と、第2混合プロトコルパラメータについての第5試験値を選択する工程と、第3混合プロトコルパラメータについての第6試験値を選択する工程と、第1予測モデル候補の第1プールの各第1予測モデル候補を使用することで、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する推定第1評価基準を生成する工程と、第1CFDシミュレーションを第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせについて実行することにより、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第1評価基準を生成する工程と、第1予測モデル候補の第1プールの各第1予測モデル候補によって生成された推定第1評価基準を、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第1評価基準と比較する工程と、第2予測モデル候補の第2プールの各第2予測モデル候補を使用することで、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する推定第2評価基準を生成する工程と、第2CFDシミュレーションを第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせについて実行することにより、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第2評価基準を生成する工程と、第2予測モデル候補の第2プールの各第2予測モデル候補によって生成された推定第2評価基準を、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第2評価基準と比較する工程と、推定第1評価基準を、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第1評価基準と比較する工程に基づいて、第1予測モデル候補の第1プールから第1予測モデルを選択する工程と、推定第1評価基準を、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第1評価基準と比較する工程に基づいて、第2予測モデル候補の第2プールから第2予測モデルを選択する工程と、第1予測モデルを使用することで、混合プロトコルに対する第1評価基準を決定する工程と、第2予測モデルを使用することで、混合プロトコルに対する第2評価基準を決定する工程と、を含み得る。
【0009】
本開示のさらなる実施形態は、混合プロトコルに関連する剪断ひずみをモデル化する方法を含み得る。方法は、予測モデルについての混合プロトコルパラメータを特定する工程と、混合プロトコルパラメータについての試験値を選択する工程と、試験値の各組み合わせについて数値流体力学露出分析を行い、それによって試験値の各組み合わせに対する剪断ひずみを生成する工程と、予測モデル候補のプールを特定する工程と、予測モデル候補のプールをランク付けするプールランク工程と、予測モデル候補のプールから予測モデルを選択する工程と、予測モデルを使用して、複数の時間間隔で混合プロトコルの累積剪断ひずみを評価することで、剪断ひずみヒストグラムデータを生成する工程と、を含み得る。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態では、混合プロトコルに関連する剪断ひずみをモデル化する方法にいて、混合プロトコルパラメータは、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、溶液密度、混合容器サイズ、および混合容器形状のうちの2つ以上を含む。予測モデル候補のプールをランク付けする工程は、項の数に基づいて予測モデル候補のプールをランク付けすること、R値に基づいて予測モデル候補のプールをランク付けすること、またはその両方を含み、予測モデル候補のプールから予測モデルを選択する工程は、最も高いR値を有するモデルを選択することを含む。混合プロトコルは、バイオリアクター内のバイオ医薬品に関連する混合プロトコルであり得る。方法はさらに、剪断ひずみヒストグラムデータを使用することで、可視またはサブビジブル粒子形成のリスクを評価する工程を含み得る。
【0011】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、様々な例示的な実施形態を示すとともに、説明と合わせて、開示される実施形態の原理を説明する。本明細書に記載される実施形態または実施例の任意の特徴(例えば、組成、式、方法等)は、任意の他の実施形態または実施例と組み合わされてもよく、全てのそのような組み合わせは、本開示に包含される。さらに、説明されるシステムおよび方法は、その任意の単一の態様にも実施形態にも、そのような態様および実施形態の任意の組み合わせまたは順番にも限定されない。便宜上、特定の順番および組み合わせは、本明細書において別々には説明および/または図示されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の態様による、ひずみヒストグラムを示す図。
図2】本開示の態様による、混合プロトコルを評価するための予測モデルを作成するための例示的な方法をフローチャート形式で示す図。
図3A】本開示の態様による混合容器の図。
図3B】本開示の態様による混合容器の図。
図4A】本開示の態様による、流体流動のベクトル場の視覚的描写の図。
図4B】本開示の態様による、流体流動の流線の視覚的描写の図。
図4C】本開示の態様による剪断ひずみ速度分布の視覚的描写の図。
図5】本開示の態様による、潜在的な予測モデルを構築するための例示的な方法をフローチャート形式で示す図。
図6】本開示の態様による、CFD解析によって決定された混合時間、およびそれに対して予測モデルによって決定された混合時間のプロットを示す図。
図7】本開示の態様による、CFD解析によって決定されたひずみ速度、およびそれに対して予測モデルによって決定されたひずみ速度のプロットを示す図。
図8】本開示の態様による、予測モデルをプロットすることによって生成されたひずみ速度ヒストグラムを示す図。
図9A】本開示の態様による、凝集体形成の理論化された機構の視覚的描写を示す図。
図9B】本開示の態様による、凝集体形成の理論化された機構の視覚的描写を示す図。
図9C】本開示の態様による、凝集体形成の理論化された機構の視覚的描写を示す図。
図10A】本開示の態様による、垂直速度分布の視覚的描写を示す図。
図10B】本開示の態様による、体積平均速度の視覚的描写を示す図。
図11】本開示の態様による、タンク半径の関数としての垂直速度のプロットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。任意の好適な方法および材料(例えば、本明細書に記載されるものと類似または同等)が、本開示の実施または試験において使用され得るが、特定の例示的な方法が、以下に説明される。本明細書で言及される全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
本明細書で使用されるように、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、またはそれらの任意の他の変形は、要素のリストを含む処理、プロセス、物、または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていない、またはそのような処理、プロセス、物、または装置に固有の他の要素を含み得るように、非排他的な包含を網羅することが意図される。「例示的」という用語は、「理想的」ではなく「例」の意味で使用される。用語「例えば(for example)」および「など(such as)」ならびにそれらの文法的等価物に関して、「および限定なしに(and without limitation)」という句は、別段に明示的に述べられない限り、その後にも続くと理解される。
【0015】
本明細書で使用されるように、「約」という用語は、実験誤差による変動を補償することを意図する。数値に適用される場合、「約」という用語は、異なる変動が指定されない限り、開示された数値から+/-5%の変動を示し得る。本明細書で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。さらに、全ての範囲は端点を含むと理解され、例えば、1cm(センチメートル)~5cmは、1cm、5cm、および1cm~5cmの間の全ての距離の長さを含む。
【0016】
本明細書で開示または特許請求される全ての数値(全ての開示された値、限界、および範囲を含む)は、異なる変動が指定されない限り、開示された数値から+/-5%の変動を有し得ることに留意されたい。
【0017】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、アミド結合を介して共有結合した約20個を超えるアミノ酸を有する任意のアミノ酸ポリマーを指す。タンパク質は、1つまたは複数のアミノ酸ポリマー鎖(例えば、ポリペプチド)を含有する。したがって、ポリペプチドはタンパク質であってもよく、タンパク質は、複数のポリペプチドを含有して単一の機能性生体分子を形成してもよい。
【0018】
翻訳後修飾は、ポリペプチドの構造を修飾または変更し得る。例えば、ジスルフィド架橋(例えば、システイン残基間のS-S結合)は、いくつかのタンパク質において翻訳後に形成され得る。いくつかのジスルフィド架橋は、ポリペプチド、免疫グロブリン、タンパク質、補因子、基質などの適切な構造、機能、および相互作用に必須である。ジスルフィド結合形成に加えて、タンパク質は、他の翻訳後修飾、例えば、脂質化(例えば、ミリストイル化、パルミトイル化、ファルネシル化(farnesoylation)、ゲラニルゲラニル化、およびグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成)、アルキレーション(例えば、メチレーション)、アシレート化、アミデート化、グリコシレーション(例えば、アルギニン、アスパラギン、システイン、ヒドロキシリジン、セリン、スレオニン、チロシン、および/またはトリプトファンにおけるグリコシル基の付加)、およびリン酸化(すなわち、セリン、スレオニン、チロシン、および/またはヒスチジンへのリン酸基の付加)に供され得る。翻訳後修飾は、疎水性、静電表面特性、またはポリペプチドが関与する表面-表面相互作用を決定する他の特性に影響を及ぼし得る。
【0019】
本明細書中で使用されるように、用語「タンパク質」は、生物学的治療タンパク質、研究または治療において使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質および他のFc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、抗体様分子、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含む。POI(目的のタンパク質)は、単離、精製、または他の方法で調製されることが望まれる任意のポリペプチドまたはタンパク質を含み得る。POIは、細胞によって産生されるポリペプチド(抗体を含む)を含み得る。
【0020】
本明細書で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、具体的にはジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖から構成される免疫グロブリンを含む。典型的には、抗体は、100kDaを超える、例えば130kDa~200kDa、例えば約140kDa、145kDa、150kDa、155kDa、または160kDaの分子量を有する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLを含む。VHおよびVL領域は、FR(フレームワーク領域)と呼ばれるより保存された領域が散在する、CDR(相補性決定領域)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3と略され得る、軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3と略され得る)。
【0021】
例えば、免疫グロブリンG(IgG)と呼ばれる免疫グロブリンのクラスは、ヒト血清において一般的であり、4つのポリペプチド鎖、つまり2つの軽鎖および2つの重鎖を含む。各軽鎖は、シスチンジスルフィド結合を介して1つの重鎖に連結され、2つの重鎖は、2つのシスチンジスルフィド結合を介して互いに結合される。ヒト免疫グロブリンの他のクラスには、IgA、IgM、IgD、およびIgEが含まれる。IgGの場合、4つのサブクラス、具体的にはIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が存在する。各サブクラスは、それらの定常領域において異なるので、結果として、異なるエフェクター機能を有し得る。本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、POIは、IgGを含む標的ポリペプチドを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、標的ポリペプチドはIgG4を含む。
【0022】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、完全な抗体分子の抗原結合フラグメントも含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、タンパク質分解消化、または抗体可変ドメインおよび任意選択で定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を伴う組換え遺伝子操作技法などの任意の適切な標準的技法を使用して、完全抗体分子から誘導することができる。このようなDNAは周知であり、および/または例えば、商業的供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ-抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAを配列決定し、化学的に、または分子生物学技術を使用することによって操作して、例えば、1つまたは複数の可変ドメインおよび/または定常ドメインを適切な立体構造に配置するか、またはコドンを導入するか、システイン残基を作製するか、アミノ酸を修飾するか、付加するか、もしくは欠失させることなどができる。
【0023】
標的分子(標的ポリペプチド/抗体など)は、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、ピキア属(Pichia sp.))、または哺乳動物系(例えば、CHO細胞およびCHO-K1細胞などのCHO誘導体)などの組換え細胞ベースの産生系を使用して産生され得る。「細胞」という用語は、組換え核酸配列を発現するのに適した任意の細胞を含む。細胞としては、原核生物および真核生物(単細胞または多細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、Bacillus spp.、Streptomyces spp.などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolicaなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusianiなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマのような細胞融合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウスの細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は真核細胞であってもよく、以下の細胞から選択されてもよい。CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細細胞、腫瘍細胞、およびこれらに由来する細胞株。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたは複数のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)を含み得る。
【0024】
「標的分子」という用語は、本明細書において、標的ポリペプチド(例えば、抗体、抗体断片、または他のタンパク質もしくはタンパク質断片)、または産生、単離、精製、および/もしくは薬物製品に含まれることが意図される他の分子(例えば、AAV(アデノ随伴ウイルス)または治療用途のための他の分子)を指すために使用され得る。本開示による方法は、標的ポリペプチドに言及し得るが、他の標的分子にも適用可能であり得る。AAVは、例えば、適切な方法(例えば、深層濾過、アフィニティークロマトグラフィーなど)に従って調製されてもよく、AAVを含む混合物は、本開示による方法に供されてもよい。本開示の1つまたは複数の方法の前または後に、AAVを含む混合物は、さらなる手順(例えば、「空のカセット」または標的配列を含有しないAAVの除去)に供され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、標的分子は、抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディもしくはテトラボディ、Fab断片もしくはF(ab’)2断片、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体である。一実施形態では、抗体はIgG1抗体である。一実施形態では、抗体はIgG2抗体である。一実施形態では、抗体はIgG4抗体である。一実施形態では、抗体はキメラIgG2/IgG4抗体である。一実施形態では、抗体はキメラIgG2/IgG1抗体である。一実施形態では、抗体はキメラIgG2/IgG1/IgG4抗体である。
【0026】
いくつかの実施形態では、標的分子(例えば、抗体)は、以下に記載の群から選択されてよい。抗プログラム細胞死1抗体(例えば、米国特許出願公開第2015/0203579A1号に記載の抗PD1抗体)、抗プログラム細胞死リガンド-1(例えば、米国特許出願公開第2015/0203580A1号に記載の抗PD-L1抗体)、抗Dll4抗体、抗アンジオポエチン-2抗体(例えば、米国特許第9402898号に記載の抗ANG2抗体)、抗アンジオポエチン様3抗体(例えば、米国特許第9018356号に記載の抗Angptl3抗体)、血小板由来成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9265827号に記載の抗PDGFR抗体)、抗プロラクチン受容体抗体(例えば、米国特許第9302015号に記載の抗PRLR抗体)、抗補体5抗体(例えば、米国特許出願公開第2015/0313194A1号に記載の抗C5抗体)、抗TNF抗体、抗上皮成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9132192号に記載の抗EGFR抗体、または米国特許出願第2015/0259423A1号に記載の抗EGFRvIII抗体)、抗プロタンパク質転換酵素サブチリシンKexin-9抗体(例えば、米国特許第8062640号または米国特許出願公開第2014/0044730A1号に記載の抗PCSK9抗体)、抗増殖分化因子-8抗体(例えば、米国特許第8871209または9260515号に記載の、抗ミオスタチン抗体としても知られる抗GDF8抗体)、抗グルカゴン受容体(例えば、米国特許出願第US2015/0337045A1またはUS2016/0075778A1号に記載の抗GCGR抗体)、抗VEGF抗体、抗IL1R抗体、インターロイキン4受容体抗体(例えば、米国特許出願公開第2014/0271681A1号、または米国特許第8735095もしくは8945559号に記載の抗IL4R抗体)、抗インターロイキン6受容体抗体(例えば、米国特許第7582298、8043617、または9173880号に記載の抗IL6R抗体)、抗インターロイキン33(例えば、米国特許出願公開第US2014/0271658A1またはUS2014/0271642A1号に記載の抗IL33抗体)、抗呼吸器合胞体ウイルス抗体(例えば、米国特許出願公開第2014/0271653A1号に記載の抗RSV抗体)、抗分化抗原群3(例えば、米国特許出願公開第2014/0088295A1および20150266966A1号、ならびに米国特許出願第62/222605号に記載される抗CD3抗体)、抗分化抗原群20(例えば、米国特許出願公開第US2014/0088295A1およびUS20150266966A1号、ならびに米国特許第7879984号に記載される抗CD20抗体)、抗分化抗原群-48(例えば、米国特許第9228014号に記載される抗CD48抗体)、抗Feld1抗体(例えば、米国特許第9079948号に記載)、抗中東呼吸器症候群ウイルス(例えば、抗MERSウイルス)、抗エボラウイルス抗体(例えば、Regeneron社のREGN-EB3)、抗CD19抗体、抗CD28抗体、抗IL1抗体、抗IL2抗体、抗IL3抗体、抗IL4抗体、抗IL5抗体、抗IL6抗体、抗IL7抗体、抗Erb3抗体、抗ジカウイルス抗体、抗リンパ球活性化遺伝子3(例えば、抗LAG3抗体または抗CD223抗体)、および抗アクチビンA抗体。この段落で言及した各米国特許および米国特許公開は、その全体が参照により組み込まれる。
【0027】
いくつかの実施形態では、標的分子(例えば、二重特異性抗体)は、抗CD3×抗CD20二重特異性抗体、抗CD3×抗ムチン16二重特異性抗体、および抗CD3×抗前立腺特異的膜抗原二重特異性抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、標的成分は、アリロクマブ、サリルマブ、ファシンマブ、ネスバクマブ、デュピルマブ、テドログルマブ、エビナクマブ、およびリヌクマブからなる群から選択される。
【0028】
いくつかの態様において、標的分子は、Fc部分および別のドメインを含有する組換えタンパク質(例えば、Fc融合タンパク質)である。いくつかの態様において、Fc融合タンパク質は、Fc部分に結合した受容体の1つまたは複数の細胞外ドメインを含有する受容体Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、Fc部分は、ヒンジ領域と、それに続くIgGのCH2およびCH3ドメインとを含む。いくつかの態様において、受容体Fc融合タンパク質は、単一のリガンドまたは複数のリガンドのいずれかに結合する2つ以上の異なる受容体鎖を含有する。例えば、Fc融合タンパク質は、例えば、IL-1トラップなどのTRAPタンパク質である(例えば、hIgG1のFcに融合したIl-1R1細胞外領域に融合したIL-1RAcPリガンド結合領域を含有するリロナセプトについて、その全体が参照により組み込まれる米国特許第6927004号を参照)。または、Fc融合タンパク質は、VEGFトラップである(例えば、hIgG1のFcに融合したVEGF受容体Flk1のIgドメイン3に融合したVEGF受容体Flt1のIgドメイン2を含有するアフリベルセプトまたはziv-afliberceptについて、その全体が参照により組み込まれる米国特許第7087411および7279159号を参照)。他の実施形態において、Fc融合タンパク質は、scFv-Fc融合タンパク質であり、これは、Fc部分に結合した抗体の抗原結合ドメイン(例えば、可変重鎖フラグメントおよび可変軽鎖フラグメント)のうちの1つまたは複数を含む。
【0029】
「培養培地」または「培地」という用語は、典型的には、炭水化物エネルギー源、必須アミノ酸、微量元素、ビタミンなどの細胞の増殖を促進するために必要な栄養素を提供する、細胞を増殖させるために使用される栄養溶液を指す。培養培地は、細胞成長を支持する原材料を供給する抽出物、例えば、血清またはペプトン(加水分解物)を含有し得る。いくつかの実施形態では、動物由来抽出物の代わりに、培地は酵母由来抽出物または大豆抽出物を含有してもよい。既知組成培地とは、化学成分の全てが既知である培養培地を指す。既知組成培地は、血清または動物由来ペプトンなどの動物由来成分を全く含まなくてもよい。培地はタンパク質を含まなくてもよい。「新鮮な培地」は、細胞培養にまだ導入されていない、および/または細胞培養の細胞によってまだ利用されていない培地を指し得る。新鮮な培地は、一般的に高い栄養レベルでありかつ廃棄物をほとんどまたは全く含まなくてよい。「使用済み培地」は、細胞培養において細胞によって使用された培地を指す場合があり、新鮮な培地と比較して、一般的に低い栄養レベルでありかつ高い水分レベルであってよい。
【0030】
一般的に、混合プロトコルは、バイオ医薬品の製造の複数の段階に組み込まれ得る。例えば、宿主細胞の培養またはバイオ医薬品の採取の間、混合プロトコルを利用して、生成されたバイオ医薬品、細胞、栄養素、廃棄物、および培養培地の他の成分の適切な分布を確実にしてよい。混合プロトコルは、混合容器とも称される、混合プロトコルを実行するように構成される容器とともに用いられてもよい。いくつかの実施形態は、バイオリアクターを混合容器として使用し得る。他の実施形態では、培養流体は、混合プロトコルの実行前に、バイオリアクターから異なる種類の混合容器に移送されてもよい。
【0031】
バイオ医薬品(例えば、目的のタンパク質)の採取後、採取された生成物は溶液中に保持され得る。バイオ医薬品を含む溶液は、バイオ医薬品の純度および有効性を増加させるために、クロマトグラフィー、濾過(例えば、限外濾過、透析濾過、またはそれらの組み合わせ)、精製(例えば、ウイルス不活性化)工程の1つまたは複数に供されてよい。全ての段階において、混合プロトコルを用いて、溶液の均質化を行い、および/または溶液成分の適切な分布を確実にしてよい。上述した用途に加えて、混合プロトコルを用いて、個々のバイオテイナ(biotainers)、バッチ、またはロットを混合および/または希釈してもよい。
【0032】
さらに、混合プロトコルは、目的のタンパク質を含まない溶液に適用されてよい。例えば、バイオ医薬品製造の前述の工程は、緩衝液、培地、および他の溶液の使用を必要とする。緩衝液、培地、および他の溶液の調製は、1つまたは複数の混合プロトコルの使用を含み得る。
【0033】
混合プロトコルに依存するバイオ医薬品またはその製造プロセスの特定の特性を監視することで、得られるバイオ医薬品に対する混合プロトコルのパラメータの影響を評価してよい。例えば、混合プロトコルに関連する流動パターン、流体速度分布、流体流動のベクトル場、流体流動の流線、混合時間(例えば、定常状態混合時間または過渡混合時間)、滞留時間分布、剪断ひずみ速度分布、平均剪断ひずみ速度、露出分析および/または電力消費を利用することで、混合プロトコルの有用性および/または有効性を評価してよい。
【0034】
混合プロトコルは、例えば、混合容器のサイズ、インペラ速度、全容量に対してパーセンテージで表す充填サイズ、溶液の粘度、および/または混合プロトコルの要件に関連する他の動作パラメータ等の、混合容器のための動作パラメータを含んでもよい。いくつかの実施形態において、混合プロトコルは、溶液(例えば、培地、細胞、目的のタンパク質、および/または他の分子を含む)が十分に均質化されたときに完了する。混合プロトコルの継続時間、すなわち、溶液が十分な均質性に達するのにかかる時間は、混合時間と呼ばれる。溶液が混合された程度は、混合指数によって定量化され得る。混合指数は、最終濃度に対する(例えば、目的のタンパク質または他の分子の)濃度の標準偏差の率として定義され得る。混合時間は、所与の混合プロトコル下で約5%の混合指数に達するのに必要な長さの時間として定量化され得る。
【0035】
混合プロトコルの従来の作成では、目的のタンパク質および目的のタンパク質を含有する培地の生理化学的特性は、潜在的な混合プロトコルが生成される際に考慮される。潜在的な混合プロトコルは、動作範囲をマッピングするとともに、混合時間データを収集するために、代理混合研究によって試験される。動作範囲の様々な点から収集された混合時間データに基づいて、1つまたは複数の混合プロトコル候補が決定されてよい。混合プロトコル候補は、剪断応力および過混合の研究を用いてさらに試験されてよい。剪断応力および過混合の研究は、混合プロトコル候補を評価するために使用され得る生成物品質データを生成してよい。
【0036】
剪断応力および過混合の研究は、剪断応力および過混合が混合時間に依存するので、混合時間データが生成された後に行われなければならない。剪断応力および過混合の研究によって提供される生成物品質データが、混合プロトコルが不適切であることを示す場合、混合プロトコルの作成は、潜在的な混合プロトコルを生成するために再開されなければならない。さらに、さらなる剪断応力および過混合の研究のために使用され得る混合時間データを生成するために、新しい潜在的な混合プロトコルについて代理混合研究が行われなければならない。
【0037】
混合プロトコルのこの従来の作成フローは、好ましくない生成物品質データを最終的にもたらし得る混合プロトコルを評価するために代理混合研究が行われなければならないため、制限があった。潜在的な混合プロトコルが調査されるべきかどうかを決定するために複数の実験を行うための従来の作成フローの要件は、時間および労働集約的な混合プロトコルの作成につながる。さらに、得られるバイオ医薬品の品質に影響を及ぼす、実施される混合プロトコルに関連する事象、例えば、気液界面応力、空気連行、および可視またはサブビジブル粒子形成のリスクは、従来の作成フローでは対応できない。
【0038】
従来の混合プロトコル作成フローが、得られるバイオ医薬品に対して有害な結果をもたらし得る混合プロトコルの全ての要因に対応することができないことに加えて、小規模の研究は、過度に高い剪断応力をもたらす。図1は、従来の混合プロトコル作成に関連する小規模の剪断応力研究が、剪断応力をどのように過大に見積もるかを表すひずみヒストグラムを示す。曲線610は、検証された混合プロトコルの製造状況の領域605と比較した、1つの小規模の剪断応力研究のひずみヒストグラムを示す。別の言い方をすれば、領域605は、医薬品の検証された混合プロトコルにおける実際の剪断応力を表し、曲線610は、小規模の研究の予測された剪断応力を表す。図1のプロットは、小規模の研究が、混合プロトコルの典型的な動作範囲よりも高い剪断応力を有することを示す。
【0039】
従来の混合プロトコル作成に関連する代理混合研究、剪断応力、および過混合の調査では、気液界面応力、空気連行、および可視またはサブビジブル粒子形成のリスクを定量化できない。したがって、これらのメトリックスは、従来は、実際のバイオ医薬品を使用した大規模な調査で評価される。製品を使用する大規模な調査は、費用が高いうえに時間もかかる。大規模な調査のコストおよび時間の制約は、再現性を低下させ、サンプリング変動性を低下させるのに十分なサンプルを収集することの困難性を増大させる。さらに、大規模な調査に関連する探求は、混合プロトコルに関連するフローに影響を与え、不正確なデータを提供する可能性がある。大規模な調査の性質は所与の混合プロトコルのパラメータに特異的なので、大規模な調査は頻繁な再検証を必要とする。
【0040】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、混合プロトコルのための改良された作成フローを提供し得る。例えば、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、混合プロトコルのハイスループット評価を可能にする予測モデルの作成を可能にし得る。気液界面応力、空気連行、および混合プロトコルに関連する可視またはサブビジブル粒子形成のリスクを定量化することができる予測モデルが生成され得る。
【0041】
図2を参照すると、混合プロトコルを評価するための予測モデルを作成する方法200は、設計空間をマッピングする工程201、DOE(実験計画法)設計を構築する工程202、CFD(数値流体力学)分析を行う工程203、予測モデル候補を構築する工程204、および/または予測を評価する工程205を含み得る。
【0042】
設計空間をマッピングする工程201は、検討される混合プロトコルパラメータを特定することを含み得る。混合プロトコルパラメータは、混合プロトコルの結果に影響を及ぼすように調整、変更、制御、および/または監視され得る混合プロトコルの「入力変数」または態様を含み得る。混合プロトコルパラメータの例としては、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、溶液密度、混合容器サイズ、混合容器形状、および混合時間が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
インペラ速度は、RPM(毎分回転数)に関して、または最大インペラ速度のパーセンテージとして定量化されてもよい。バッチサイズは、混合容器の容量に対してパーセンテージで表す、混合容器を充填する体積を指し得る。溶液粘度および溶液密度は、目的のタンパク質に特異的なパラメータである。製造中、溶液粘度および密度は、混合プロトコルの実行前に、所望の粘度および密度パラメータを達成するように調整され得る。
【0044】
上述の潜在的な混合プロトコルパラメータに加えて、設計空間をマッピングする工程は、潜在的な混合容器サイズおよび潜在的な混合容器形状を特定することを含んでもよい。混合容器は、様々な形状およびサイズで提供されてよい。例えば、混合容器は、円筒形、円錐形、楕円形、正方形、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。混合容器形状の例を図3Aおよび3Bに示す。図3Aに示される混合容器100は、高さおよび幅を含み、高さは幅よりも大きい。図3Bに示される混合容器100は、高さおよび幅を含み、幅は高さよりも大きい。混合容器100の幅に対する高さの割合は、混合容器形状の構成要素であるとともに、混合容器100内の流体流動のパターンに影響を及ぼし得る。
【0045】
混合容器100は、撹拌を与えることが可能な1つまたは複数の機構を含んでもよい。例えば、混合容器100は、混合容器内に流動を与えることが可能な1つまたは複数のインペラ110を含んでもよい。図3Aに示される混合容器100は、混合容器100の片側に配置された1つのインペラ110を含む。図3Bに示される混合容器100は、混合容器100の両側に対称的に配置された2つのインペラ110を含む。加えて、または代替的に、混合容器100内の撹拌は、同心円状に取り付けられたインペラ、ウェーブバッグ、ロッキングアクチュエータ、または混合容器100内で溶液を撹拌する他の手段によって与えられてもよい。
【0046】
例示的な混合容器形状が図3Aおよび図3Bに示されているが、これらは2つの例にすぎない。いくつかの実施形態では、混合容器100は、混合容器100内の流体流動を変更するように設計されたバッフルまたは他の構造を含んでもよい。撹拌を与えるための他の比率、構成、形状、および機構を含む混合容器形状が、本明細書に説明されるシステムおよび方法とともに使用されてもよい。
【0047】
混合プロトコルパラメータを特定することに加えて、設計空間をマッピングする工程201はまた、評価基準を特定することを含んでよい。評価基準は、混合プロトコルパラメータのために選択された値に依存する混合プロトコルの「出力変数」または態様を含んでもよい。評価基準の例としては、流動パターン、流体速度分布、流体流動のベクトル場、流体流動の流線、混合時間(例えば、定常状態混合時間または過渡混合時間)、滞留時間分布、剪断ひずみ速度分布、平均剪断ひずみ速度、露出分析、電力消費、圧力、乱流散逸速度、およびコルモゴロフ長が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
再び図2を参照すると、混合プロトコルを評価するための予測モデルを作成する方法200は、DOE設計を構築する工程202を含み得る。例えば、DOE設計は、混合プロトコルパラメータおよび評価基準が特定された後に構築されてもよい。DOE(実験計画法)は、多変量相互作用の特定を可能にする実験、シミュレーション、および/または測定を構築する方法論を指す。DOEは当業者に理解されているので、これ以上詳細には説明しない。
【0049】
混合プロトコルを評価するための予測モデルを作成する文脈において、DOE設計を構築する工程202は、特定された各混合プロトコルパラメータについての試験値を選択することと、混合プロトコルパラメータ試験値の各セットに対する評価基準を決定するために実行されなければならない実験、シミュレーション、および測定を特定することとを含む。
【0050】
例えば、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、および混合容器サイズが4つの混合プロトコルパラメータとして特定される場合、DOE設計を構築する工程202は、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、および混合容器サイズのための試験値を選択することを含む。いくつかの実施形態では、例えば、約30~約100個の試験値などの、約10~約500個の試験値が、各混合プロトコルパラメータに対して選択されてもよい。例えば、約10未満、または約100~約1000などの他の数の試験値が、各混合プロトコルパラメータに対して選択されてもよい。後続のCFD解析の精度は、各混合プロトコルパラメータに対して選択された試験値の量に相関付けられるので、いくつかの混合プロトコルパラメータに対してより多くの試験値を選択することは、より正確なCFD解析を提供し得る。
【0051】
再び図2を参照すると、混合プロトコルを評価するための予測モデルを作成する方法200は、CFD(数値流体力学)分析を行う工程を含み得る。例えば、CFD解析は、各混合プロトコルパラメータについての試験値の特定後に行われてもよく、混合プロトコルパラメータ試験値の各セットに対する評価基準を決定するために実行されなければならない実験、シミュレーション、および測定が特定される。
【0052】
CFD解析は、混合容器100内の流体流動を示す1つまたは複数のシミュレーションを含んでもよい。例えば、CFD解析は、定常流解析、過渡流解析、混合時間解析、および/または露出分析を含むことができる。特に、過渡流分析は、静止から定常状態速度までの加速時間を評価することと、泡立て、発泡、またはスロッシングの可能性を評価することと、(例えば、凝集体形成リスク評価の一部として)表面変形を定量化することとを補助し得る。
【0053】
CFD解析は、保存法則、ナビエ-ストークス方程式、オイラー方程式、ベルヌーイ方程式、圧縮波方程式、境界層方程式、理想流動、ポテンシャル流動、ダクト流動、渦(vortex)形成、渦(eddy)形成、および乱流形成を含むがこれらに限定されない流体流動モデルに対する数学的解に基づいてよい。CFD解析は、例えば、Star CCM、OpenFoam、Simulia、およびAnsys Workbenchシステムを含むプログラムなどのCFD解析ソフトウェアを実行するコンピュータシステムによって実行されてもよい。
【0054】
本開示の文脈では、混合容器形状が評価基準にどのように影響するかを決定するために、分析ソフトウェアを動作させるコンピュータシステムに対して、1つまたは複数の混合容器形状がプログラムされてよい。例えば、撹拌を引き起こすための機構(例えば、インペラ110)のサイズ、形状、および配置に加えて、混合容器100の寸法および形状は、上記の種々の流動シミュレーションを構成するようモデル化されてもよい。
【0055】
CFD解析の結果は、ベクトルマップ、流線マップ、ひずみ速度分布図、ひずみヒストグラム、流動パターン、流体速度分布、流体流動のベクトル場、流体流動の流線、定常状態混合時間、過渡混合時間、滞留時間分布、剪断ひずみ速度分布、平均剪断ひずみ速度、露出分析、電力消費、圧力、乱流散逸速度、および/またはコルモゴロフ長を含み得る。
【0056】
図4Aは、CFD解析の結果として生成された例示的なベクトルマップを示す。ベクトルマップは、複数のベクトル310を含む。各ベクトル310の方向は、ベクトルの位置における流体流動の方向を示し、ベクトルの大きさは、ベクトルの位置における流体流動の速度を示す。図4Bは、CFD解析の結果として生成された流線マップを示す。流線マップは、複数の流線320を含む。各流線は、流動の速度ベクトルに正接する曲線を表すとともに、流体要素が定常状態でどこに移動するかを示す。
【0057】
ベクトルマップおよび流線マップは、混合プロトコルの有効性に影響を及ぼし得る停滞領域、渦、または他の流動構造を判定するために検討されてもよい。ベクトルマップ、流線マップ、またはその両方が、異なる混合プロトコルパラメータ(例えば、異なる混合容器形状)を定性的に比較するために使用されてもよい。
【0058】
図4Cは、白黒で描かれたひずみ速度分布図を示す。実際には、ひずみ速度分布図の異なる領域は、異なる色で表されてよい。表1は、領域331~336に関連付けられた近似的なひずみ速度と、図4Cおよび表1に示されたひずみ速度の分類を表すために使用され得る例示的な色とを示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すひずみ速度の分類は一例である。ひずみ速度のグループ分けおよび分布は、CFD解析中に観察されるひずみ速度の範囲に応じて変更されてもよい。ひずみヒストグラム、平均ひずみ速度、およびピークひずみなどの評価基準は、ひずみ速度分布図から決定されてよい。ひずみ速度分布図を分析することで、高レベルのひずみを受ける混合容器の領域を決定してよい。
【0061】
前述のように、混合プロトコルの定量的および定性的評価のための基準(例えば、評価基準)は、CFD解析によって決定されてもよい。CFD解析によって決定される評価基準は、混合プロトコルパラメータについての試験値のセットに対応する。評価基準と対応する混合プロトコルパラメータとの関係を使用することで、混合プロトコルの全体的な有用性および/または有効性に対する混合プロトコルパラメータの変動の影響を評価してよい。
【0062】
再び図2を参照すると、混合プロトコルを評価するための予測モデルを作成する方法200は、予測モデル候補を構築する工程204を含み得る。例えば、予測モデル候補は、評価基準が混合プロトコルパラメータの対応する試験値について決定された後に構築されてもよい。特定された評価基準ごとに、1つまたは複数の予測モデル候補が選択され得る。
【0063】
図5は、評価基準に対する潜在的な予測モデルを作成およびランク付けする例示的な方法を示す。潜在的な予測モデルを作成およびランク付けする方法は、適用可能なモデルのドメインを作成する工程401と、重複モデルおよび共線性閾値以上の分散膨張係数を有するモデルを除去する工程402と、候補モデルのプールを特定する工程403と、複雑性および相関に基づいて候補モデルをランク付けする工程404を含み得る。潜在的な予測モデルを作成およびランク付けする方法を、DOE設計において特定された評価基準の各々に適用することで、各評価基準に対するランク付けされた予測モデル候補のプールを生成してよい。
【0064】
潜在的な予測モデルを作成しランク付けすることは、特定された混合プロトコルパラメータに基づいて、所与の評価基準について適用可能なモデルのドメインを作成することを含む。この文脈では、モデルとは、評価基準を混合プロトコルパラメータに関連付ける代数式を指す。混合プロトコルパラメータ間の一変量、二変量、三変量、および他の多変量相互作用は、適用可能なモデルのドメインを作成するときに考慮される。例えば、混合プロトコルパラメータの積、商、指数、および他の多変量関係が考慮されてもよい。適用可能なモデルのドメインはまた、周知の機構的または経験的関係を含んでもよい。いくつかの実施形態では、適用可能なモデルのドメインは、例えば、50000を超える潜在的な予測モデルなど、何万ものモデルを含む。
【0065】
モデルのドメインが作成された後、重複パラメータを有するモデルは除去されてよい。例えば、評価基準を混合プロトコルパラメータに関連付ける代数式を作成する際に、等価な式を作成してよい。これらの等価な式は、機能的に、ドメインから除去することができる複製であってもよい。残りの各モデルのVIF(分散膨張係数)が計算されてもよく、共線性閾値以上のVIFを有するモデルをドメインから除去されてもよい。いくつかの実施形態では、共線性閾値は、例えば、2、3、または4等、4以下である。重複パラメータを有するモデルおよび共線性閾値以上のVIFを有するモデルが除去された後、モデルの残りのサブセットは、数百のモデルを含み得る。例えば、モデルの残りのサブセットは、500個以下のモデルを含み得る。
【0066】
予測モデル候補のプールは、モデルの残りのサブセットから特定されてよい。例えば、予測モデル候補のプールは、一変量モデル、二変量モデル、および三変量モデルを含み得る。予測モデル候補のプールからの各予測モデル候補は、約0.70以上のR値を有してよい。いくつかの実施形態では、予測モデル候補のプールからの各予測モデル候補は、およそ以下の値:0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.9、または0.95以上であり得るR値を有してよい。いくつかの実施形態では、予測モデル候補のプールは、最大R値を有する一変量モデル、最大R値を有する二変量モデル、および最大R値を有する三変量モデルを含む。予測モデル候補のプールが特定された後、予測モデル候補は、複雑性および相関に従ってランク付けされ得る。例えば、CFD解析から得られたデータに対して高い相関(例えば、高いR値)を有する予測モデルは、相関に従って高くランク付けされてもよく、一方、低い複雑性(例えば、少ない項)を有する予測モデルは、良い複雑性ランク付けを有してもよい。CFD解析の結果に対する潜在的な予測モデルの相関を評価するさらなる例は、以下の実施例に記載される。これらの2つの順位付けは、最小の複雑性(例えば、少ない項)を伴うCFD解析から得られたデータに対して高い相関(例えば、高いR値)を有する予測モデルが、低いR値および/または高い複雑性を有する予測モデルよりも高く順位付けされ得るように組み合わせられてよい。
【0067】
予測モデルが複雑性および相関に従ってランク付けされた後、予測モデルは、所望の複雑性および相関属性に従って選択されてよい。選択された予測モデルは、他の混合プロトコルパラメータ試験値または混合プロトコルのタイプについてさらに検討されてもよい。
【0068】
再び図2を参照すると、混合プロトコルを評価するための予測モデルを作成する方法200は、予測を評価する工程を含み得る。予測モデル候補は、予測評価基準を生成するために、混合プロトコルパラメータ試験値の広範囲にわたって試験されてもよい。
【0069】
予測評価基準は、選択された予測モデルを検証するために、大規模な調査またはCFD解析と比較されてよい。予測モデルが評価基準および混合プロトコルパラメータのセットについて検証されると、モデルを使用して、ハイスループット方式で数千の混合プロトコルを評価することができる。予測モデルを用いて混合プロトコルを評価可能な速度は、最適混合プロトコルパラメータ条件を解くことを可能にし得る。
【0070】
さらに、またはあるいは、文献から周知の機構的または経験的関係が、予測モデル候補と比較されてもよい。予測モデル候補の相関が、周知または経験的な関係からの項の追加によって改善される場合、その項は予測モデル候補に組み込まれてもよい。
【0071】
より多くの予測モデルが生成され、CFD解析データのライブラリが増大するにつれて、特定された各評価基準について、より正確な予測モデルが生成される。すべての混合プロトコルパラメータについてのすべての評価基準は、どの混合プロトコルパラメータが十分な評価基準をもたらすかを決定するために、前述のハイスループット方式で評価されてよい。
【0072】
有利には、混合プロトコルを評価するハイスループット方式は、バイオ医薬品の生成における使用に適した混合プロトコルを特定する際に著しい時間の節約をもたらし得る。
【0073】
実施例
実施例1
評価基準として混合時間を用いてCFD混合時間分析を行い、バッチサイズ、インペラ速度、および溶液粘度を混合プロトコルパラメータとして特定した。予測モデル候補が特定され、式1によって記述される。
【0074】
【数1】
【0075】
ここで、Tblendは混合時間であり、Xはバッチサイズであり、Xはインペラ速度であり、Xは溶液粘度であり、c、c、c、およびcは定数である。混合プロトコルパラメータの試験値についてCFDによって決定されたTblendは、式1によって決定されたTblendに対してプロットされ、図6に示されている。CFD解析の結果に対する予測モデルの相関を示すために、1:1相関の線および1:1相関の線の周りの領域も図6に示されている。予測モデルは、Flickinger and Nienow, Scale-Up, Stirred Tank Reactors, Encyclopedia of Industrial Biotechnology (2010)から周知の関係よりも、CFD解析に対して良好な相関を有することが見出された。
【0076】
実施例2
評価基準として平均ひずみ速度を用いてCFDひずみ分布分析を行い、バッチサイズ、インペラ速度、および溶液粘度を混合プロトコルパラメータとして特定した。予測モデル候補が特定され、式2によって記述される。
【0077】
【数2】
【0078】
ここで、γmeanは平均ひずみ速度であり、Xはバッチサイズであり、Xはインペラ速度であり、c、c、およびcは定数である。混合プロトコルパラメータの試験値についてCFDによって決定されたγmeanは、式2によって決定されたγmeanに対してプロットされ、図7に示されている。CFD解析の結果に対する予測モデルの相関を示すために、1:1相関の線および1:1相関の線の周りの領域も図7に示されている。予測モデルの相関は、2018年9月25日のLadner et al.,CFD Supported Investigation of Shear Induced by Bottom-Mounted Magnetic Stirrer in Monoclonal Antibody Formulation,Pharm. Res.35(11):215に記載された関係に基づき、以下の項を追加することにより改善された。
【0079】
【数3】
【0080】
実施例3
ひずみ速度ヒストグラムは、CFD解析によって生成され得る。しかしながら、試験値の1つの組み合わせに対するひずみ速度ヒストグラムの生成は、時間集約的である。より効率的な方法は、累積ひずみを記述する予測モデルを生成することと、予測モデルに基づいてひずみ速度ヒストグラムをプロットすることとを含み得る。予測モデルを使用して生成されたひずみ速度ヒストグラムの例を図8に示す。
【0081】
図8を参照すると、ひずみ速度ヒストグラムの点(例えば、t=20、t=40、t=60、t=75、t=80、およびt=90の点)は、ひずみ速度の予測モデル(式2)に従って生成された。これらの点を図8に示すヒストグラムにプロットした。ヒストグラムによって記述される累積ひずみは、従来のCFDベースの露出分析よりも速く、かつ関連する労力が少なく生成することができる。
【0082】
実施例4
可視およびサブビジブル粒子形成の可能な機構を図9A~9Cに示すが、これは理論によって限定されるものではない。個々のタンパク質702(例えば、宿主細胞タンパク質、目的のタンパク質など)は、混合容器100内の溶液700中に存在し得る。図9Aに示されるように、溶液700の表面710は、最初はタンパク質凝集体712がないことがあり得る。
【0083】
タンパク質702は、気液界面(例えば、表面710)での吸着時の表面張力に応答して変形し得る。変形すると、タンパク質702の帯電領域が露出され得る。露出された帯電領域は、熱力学的環境に起因して凝集し得る。凝集したタンパク質は、図9Bに示すように、表面710においてネットワーク712を形成し得る。溶液700の表面710が(例えば、混合プロトコルに起因して)乱されると、ネットワーク712が破壊され得るとともに、破壊されたネットワーク712の断片が溶液700のバルク内に導入され得る。
【0084】
破壊されたネットワークの断片は、他のタンパク質702と凝集することで、より大きなネットワーク712を形成し得る。大きなネットワーク712は再び破壊されるとともに、溶液700のバルク内に導入されることになる。タンパク質ネットワークの断片が十分なサイズに達すると、図9Cに示すように、溶液700内の大きな凝集体720として検出される。大きな凝集体720は、可視粒子として現れ得るとともに、溶液700を曇らせ得る。
【0085】
粒子形成のリスクに対処する従来の手段は、流体力学的剪断の研究に依存する。しかしながら、流体力学的剪断では、タンパク質凝集体形成を説明できず、剪断に基づく小規模の試験は、全ての生産規模の評価基準を予測するわけではない。粒子形成のリスクは、粒子形成の影響を定量化することが困難であること、フィルタ性能の変動、および溶液中の可視およびサブビジブル粒子の長期的な挙動に対する理解不足のために、混合プロトコル作成の障害となり続けている。
【0086】
気液界面における応力は、凝集体形成における支配的な要因である可能性が最も高い。空気連行も凝集体形成に寄与する。凝集体形成における空気連行の関与は、表面張力および自由エネルギー推定値、ならびに原子間力顕微鏡観察によって確認される。固液界面の応力、キャビテーション、核形成、および熱応力は、凝集体の形成に二次的に寄与し得る。
【0087】
粒子形成のリスクをより良好に定量化するために、混合プロトコルパラメータの関数として粒子形成のリスクを記述する予測モデルが、本明細書に記載された実施形態に従って作成されてよい。可能な混合プロトコルパラメータとしては、凝集タンパク質の特性、溶液の賦形剤プロファイル、および環境因子(例えば、温度、圧力など)が挙げられる。
【0088】
CFD解析は、垂直速度分布および体積平均速度を決定することができる。図10Aは、CFDによって決定された垂直速度分布の例を示す。図10Bは、CFDによって決定された体積平均速度の例を示す。この文脈では、体積平均速度は、液体の表面付近の体積における空間的に平均化された流体速度を指す。
【0089】
前述のひずみ速度分布図(図4C)と同様に、実際には、垂直速度分布図および体積平均速度の異なる領域は、領域の速度に従って割り当てられた異なる色で表されてもよい。表2は、図10Aに示される異なる垂直速度の領域および図10Bに示される異なる体積平均垂直速度の領域を表すために使用され得る例示的な色を示す。
【0090】
【表2】
【0091】
CFDによって決定された垂直速度分布は、位置の関数としての垂直速度における相対差の間の関係を示すために、混合容器内のそれらの位置に対してプロットされてよい。例えば、CFD解析は、混合容器の各計算セルの垂直速度値を決定することができる。その垂直速度は、図11に示すように、混合容器の中心から半径に沿った直線変位に対してプロットされてよい。各測定値801は、垂直速度および混合容器の半径に沿った位置を有する計算セルに対応する。加重平均820は、個々の測定値801から決定されてもよく、各測定値801に割り当てられた重みは、その測定値801に対応する計算セルの体積に相関する。
【0092】
凝集体形成のリスクを評価するための予測モデルは、前述の技術を使用して作成されてよい。例えば、凝集タンパク質の特性、溶液の賦形剤プロファイル、環境因子、および凝集体形成の間の関係は、CFDによって決定される垂直速度分布または体積平均速度を使用して決定されてよい。
【0093】
本開示は、以下の非限定的な項目によってさらに説明される。
項目1
予測モデルを作成する方法であって、
予測モデルについての混合プロトコルパラメータを特定する工程a)と、
混合プロトコルパラメータについての試験値を選択する工程b)と、
試験値の各組み合わせについてCFD(数値流体力学)シミュレーションを行うCFDシミュレーション工程c)と、
混合プロトコルパラメータに関連する潜在的な予測モデルのドメインを生成するドメイン作成工程d)と、
混合プロトコルパラメータに関連する潜在的な予測モデルのドメインをランク付けする工程e)と、を備える方法。
【0094】
項目2
工程(a)の後に、予測モデルについての評価基準を特定する工程と、
工程(b)の後に、評価基準を生成するために実行する必要があるCFDシミュレーションを特定する工程と、
工程(d)の後に、潜在的な予測モデルのドメインから予測モデル候補のプールを特定するプール特定工程と、
予測モデル候補のプールをランク付けするプールランク工程と、をさらに備える、項目1に記載の方法。
【0095】
項目3
混合プロトコルパラメータは、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、溶液密度、混合容器サイズ、および混合容器形状のうちの2つ以上を含む、項目1または2に記載の方法。
【0096】
項目4
評価基準は、流動パターン、流体速度分布、流体流動のベクトル場、流体流動の流線、定常状態混合時間、過渡混合時間、滞留時間分布、剪断ひずみ速度分布、平均剪断ひずみ速度、露出分析、および電力消費のうちの2つ以上を含む、項目2に記載の方法。
【0097】
項目5
特定されたCFDシミュレーションは、定常流解析、過渡流解析、混合時間解析、および/または露出分析を含む、項目2または4に記載の方法。
【0098】
項目6
ドメイン作成工程後であって、プール特定工程の前に、
潜在的な予測モデルのドメインにおける各潜在的な予測モデルについて分散膨張係数を計算する工程と、
潜在的な予測モデルのドメインから共線性閾値以上の分散膨張係数を有する潜在的な予測モデルを除去することによって、潜在的な予測モデルのサブセットを生成する工程と、をさらに備える、項目2に記載の方法。
【0099】
項目7
予測モデル候補のプールは、サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有するサブセットからの一変量モデルと、サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有するサブセットからの二変量モデルとを含む、項目6に記載の方法。
【0100】
項目8
プールランク工程は、項の数に基づいて予測モデル候補のプールをランク付けすること、R値に基づいて予測モデル候補のプールをランク付けすること、またはその両方を含む、項目2に記載の方法。
【0101】
項目9
試験値は第1試験値であり、方法は、
予測モデル候補のプールから予測モデル候補を使用することで、第2試験値の組み合わせに対する評価基準の推定値を生成する工程をさらに備える、項目1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
項目10
第2試験値の組み合わせについてCFDシミュレーション工程を行うことで、第2試験値の組み合わせに対する評価基準を生成する工程と、
第2試験値の組み合わせに対する評価基準と、第2試験値の組み合わせに対する評価基準の推定値とを比較する工程と、をさらに備える、項目9に記載の方法。
【0103】
項目11
予測モデルを作成する方法であって、
予測モデルについての第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを特定する工程と、
予測モデルについての第1評価基準および第2評価基準を特定する工程と、
第1混合プロトコルパラメータについての第1試験値を選択する工程と、
第2混合プロトコルパラメータについての第2試験値を選択する工程と、
第3混合プロトコルパラメータについての第3試験値を選択する工程と、
第1評価基準を生成するために実行する必要がある第1CFD(数値流体力学)シミュレーションを特定する工程と、
第2評価基準を生成するために実行する必要がある第2CFDシミュレーションを特定する工程と、
第1CFDシミュレーションを第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせについて実行することにより、第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせに対する第1評価基準を生成する工程と、
第2CFDシミュレーションを第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせについて実行することにより、第1試験値、第2試験値、および第3試験値の各組み合わせに対する第2評価基準を生成する工程と、
第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを第1評価基準に関連付ける複数の第1予測モデルの第1ドメインを生成する工程と、
第1、第2、および第3混合プロトコルパラメータを第2評価基準に関連付ける複数の第2予測モデルの第2ドメインを生成する工程と、を備える方法。
【0104】
項目12
各第1予測モデルおよび各第2予測モデルについて分散膨張係数を計算する工程と、
第1予測モデルの第1ドメインから、3以上の分散膨張係数を有する第1予測モデルを除去することによって、第1予測モデルの第1サブセットを生成する工程と、
第2予測モデルの第2ドメインから、3以上の分散膨張係数を有する第2予測モデルを除去することによって、第1予測モデルの第2サブセットを生成する工程と、
第1サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有する第1サブセットからの一変量モデル、第1サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有する第1サブセットからの二変量モデル、および第1サブセット内の他のすべての三変量モデルよりも高いR値を有する第1サブセットからの三変量モデルを含む第1予測モデル候補の第1プールを特定する工程と、
第2サブセット内の他のすべての一変量モデルよりも高いR値を有する第2サブセットからの一変量モデル、第2サブセット内の他のすべての二変量モデルよりも高いR値を有する第2サブセットからの二変量モデル、および第2サブセット内の他のすべての三変量モデルよりも高いR値を有する第2サブセットからの三変量モデルを含む第2予測モデル候補の第2プールを特定する工程と、をさらに備える、項目11に記載の方法。
【0105】
項目13
第1混合プロトコルパラメータについての第4試験値を選択する工程と、
第2混合プロトコルパラメータについての第5試験値を選択する工程と、
第3混合プロトコルパラメータについての第6試験値を選択する工程と、
第1予測モデル候補の第1プールの各第1予測モデル候補を使用することで、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する推定第1評価基準を生成する工程と、
第1CFDシミュレーションを第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせについて実行することにより、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第1評価基準を生成する工程と、
第1予測モデル候補の第1プールの各第1予測モデル候補によって生成された推定第1評価基準を、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第1評価基準と比較する推定第1評価基準比較工程と、をさらに備える、項目12に記載の方法。
【0106】
項目14
第2予測モデル候補の第2プールの各第2予測モデル候補を使用することで、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する推定第2評価基準を生成する工程と、
第2CFDシミュレーションを第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせについて実行することにより、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第2評価基準を生成する工程と、
第2予測モデル候補の第2プールの各第2予測モデル候補によって生成された推定第2評価基準を、第4試験値、第5試験値、および第6試験値の各組み合わせに対する第2評価基準と比較する工程と、をさらに備える、項目13に記載の方法。
【0107】
項目15
推定第1評価基準比較工程に基づいて、第1予測モデル候補の第1プールから第1予測モデルを選択する工程と、
推定第1評価基準比較工程に基づいて、第2予測モデル候補の第2プールから第2予測モデルを選択する工程と、
第1予測モデルを使用することで、混合プロトコルに対する第1評価基準を決定する工程と、
第2予測モデルを使用することで、混合プロトコルに対する第2評価基準を決定する工程と、をさらに備える、項目14に記載の方法。
【0108】
項目16
第1評価基準および第2評価基準は、流動パターン、流体速度分布、流体流動のベクトル場、流体流動の流線、定常状態混合時間、過渡混合時間、滞留時間分布、剪断ひずみ速度分布、平均剪断ひずみ速度、露出分析、および電力消費を含むリストから選択される、項目9に記載の方法。
【0109】
項目17
混合プロトコルに関連する剪断ひずみをモデル化する方法であって、
予測モデルについての混合プロトコルパラメータを特定する工程と、
混合プロトコルパラメータについての試験値を選択する工程と、
試験値の各組み合わせについて数値流体力学露出分析を行い、それによって試験値の各組み合わせに対する剪断ひずみを生成する工程と、
予測モデル候補のプールを特定する工程と、
予測モデル候補のプールをランク付けするプールランク工程と、
予測モデル候補のプールから予測モデルを選択する予測モデル選択工程と、
予測モデルを使用して、複数の時間間隔で混合プロトコルの累積剪断ひずみを評価することで、剪断ひずみヒストグラムデータを生成する工程と、を備える方法。
【0110】
項目18
混合プロトコルパラメータは、インペラ速度、バッチサイズ、溶液粘度、溶液密度、混合容器サイズ、および混合容器形状のうちの2つ以上を含む、項目17に記載の方法。
【0111】
項目19
混合プロトコルは、バイオリアクター内のバイオ医薬品に関連する混合プロトコルである、項目17に記載の方法。
【0112】
項目20
剪断ひずみヒストグラムデータを使用することで、可視またはサブビジブル粒子形成のリスクを評価する工程をさらに備える、項目17に記載の方法。
【0113】
項目21
プールランク工程は、項の数に基づいて予測モデル候補のプールをランク付けすること、R値に基づいて予測モデル候補のプールをランク付けすること、またはその両方を含み、
予測モデル選択工程は、最も高いR値を有するモデルを選択することを含む、項目17に記載の方法。
【0114】
当業者は、本開示が基づく概念が、本開示の複数の目的を実施するための他の方法およびシステムを設計するための原理として容易に使用され得ることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲は、前述の説明によって限定されるものと見なされるべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
【国際調査報告】