IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピエール ファーブル メディカモンの特許一覧

<>
  • 特表-新しい安定な抗VISTA抗体 図1
  • 特表-新しい安定な抗VISTA抗体 図2
  • 特表-新しい安定な抗VISTA抗体 図3
  • 特表-新しい安定な抗VISTA抗体 図4
  • 特表-新しい安定な抗VISTA抗体 図5
  • 特表-新しい安定な抗VISTA抗体 図6
  • 特表-新しい安定な抗VISTA抗体 図7
  • 特表-新しい安定な抗VISTA抗体 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-13
(54)【発明の名称】新しい安定な抗VISTA抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/42 20060101AFI20240502BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240502BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240502BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C07K16/42 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 U
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/26
A61P35/00
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566485
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061718
(87)【国際公開番号】W WO2022229469
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/182,316
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】506331240
【氏名又は名称】ピエール ファーブル メディカモン
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE MEDICAMENT
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ベック,アラン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE11
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC50
4C076DD09F
4C076DD23D
4C076DD26D
4C076DD26Z
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE23F
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF61
4C076FF65
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、抗VISTA抗体を含む医薬組成物としての医薬開発に好適な抗VISTA抗体、およびVISTA媒介性疾患を処置する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号21によって表される配列の重鎖、および配列番号22によって表される配列の軽鎖を含むモノクローナル抗VISTA抗体。
【請求項2】
細胞傷害性物質にコンジュゲートされた請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項3】
a)請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体の前記重鎖をコードするポリヌクレオチド、
b)請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体の前記軽鎖をコードするポリヌクレオチド、ならびに
c)請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体の前記重鎖および前記軽鎖をコードするポリヌクレオチド
からなる群において選択されるポリヌクレオチド。
【請求項4】
a)請求項3に記載のa)のポリヌクレオチドおよびb)のポリヌクレオチド、または
b)請求項3に記載のc)のポリヌクレオチド
を含む発現ベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体を生産する方法であって、
a)請求項5に記載の宿主細胞を好適な条件下で培養することと、
b)培養培地からまたは培養された前記細胞から前記抗VISTA抗体を回収することと
を含む方法。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体または請求項2に記載の抗体-薬物コンジュゲート、ならびに薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
緩衝剤、好ましくはクエン酸バッファー、リン酸バッファー、またはヒスチジンバッファー、より好ましくはヒスチジンバッファーを含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
張度調整剤を含み、前記張度調整剤が、好ましくは、多価糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどの三価以上の糖アルコール、塩、ならびにアミノ酸からなる群において選択され、より好ましくは、塩化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および塩化カルシウム、さらにより好ましくはNaCl、MgCl、および/またはCaClからなる群において選択される塩である、請求項7または請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
非イオン性界面活性物質、好ましくはポリソルベート、例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80を含む、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
25mMヒスチジン、150mM NaCl、0.3%ポリソルベート80(w/w)を含み、pH6.5である、請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
患者における癌の処置における使用のための、請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体、または請求項2に記載のイムノコンジュゲート、または請求項7から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記使用が、前記患者における免疫応答を誘導することを含む、請求項12に記載の使用のための、請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体、または請求項2に記載のイムノコンジュゲート、または請求項7から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記免疫応答が、CD4T細胞増殖の誘導、CD8T細胞増殖の誘導、CD4T細胞サイトカイン生産の誘導、およびCD8T細胞サイトカイン生産の誘導を含む、請求項13に記載の使用のための、請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体、または請求項2に記載のイムノコンジュゲート、または請求項7から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記癌が、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、卵管癌、胆嚢癌、消化管癌、頭頸部癌、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、または骨髄腫)、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣癌、原発性腹膜癌、唾液腺癌、肉腫、胃癌、甲状腺癌、膵臓癌、腎細胞癌腫、神経膠芽腫、および前立腺癌から選択される、請求項12から14のいずれか一項に記載の使用のための、請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体、または請求項2に記載のイムノコンジュゲート、または請求項7から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記使用が、前記抗体のエフェクター機能の活性化を含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の使用のための、請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体、または請求項2に記載のイムノコンジュゲート、または請求項7から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
第2の治療剤の投与をさらに含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の使用のための、請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体、または請求項2に記載のイムノコンジュゲート、または請求項7から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記第2の治療剤が抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である、請求項17に記載の使用のための、請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体、または請求項2に記載のイムノコンジュゲート、または請求項7から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
対象におけるVISTA媒介性癌を検出するためのインビトロの方法であって、
a)前記対象の生物学的サンプルを、請求項1に記載のモノクローナル抗VISTA抗体と接触させる工程と、
b)前記生物学的サンプルとの前記抗体の結合を検出する工程と
を含み、前記抗VISTA抗体の結合が、VISTA媒介性癌の存在を示す、方法。
【請求項20】
前記モノクローナル抗VISTA抗体が、検出可能な標識で標識されている、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緒言
治療用抗体の開発は複雑なプロセスである。種々の生理化学的および機能的な不都合点によって、抗体の生産または治療有効性が損なわれ得る。本開示は、抗VISTA抗体を含む医薬組成物としての医薬開発に好適な抗VISTA抗体、およびVISTA媒介性疾患を処置する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体は、バイオ医薬の主要なクラスであり、その適応症は今や、癌から喘息、中枢神経系障害、感染性疾患、および循環器疾患を含め、多種多様な疾患を含む。化学的安定性は、有効性および安全性の両方に影響するため、タンパク質治療薬の開発における主要な懸念事項であり、製剤、環境、操作、およびタンパク質自体の構造などの数多くの要因に関係している。抗体薬物は、グリカン構造差、アスパラギン(Asn)脱アミド、アスパラギン酸(Asp)異性化、メチオニン/トリプトファン(Met/Trp)酸化、および非酵素的リジン(Lys)糖化を含む広範囲のわずかな化学的変化を示し、これらのうちのいくつかは、薬物の安全性または有効性に影響し得る。特に、AsnおよびAsp残基の分解は、インビトロ(in vitro)の安定性およびインビボ(in vivo)の生物学的機能に影響し得ることが知られている。これらの反応は、最終的な抗体薬製品の適切な貯蔵および製剤条件によってコントロール下に置くことができるが、発酵、下流処理、およびインビボでの分解は十分にコントロールできず、効力の潜在的喪失および/またはクリアランスの増加につながる可能性がある。
【0003】
Asnの脱アミドは、組換え型モノクローナル抗体に影響する非常に一般的な非酵素的修飾である。Asnの側鎖カルボニル基は、n+1ペプチド結合の窒素による求核攻撃に対して脆弱であり、準安定性の環状スクシンイミド中間体の形成をもたらす。スクシンイミド中間体は次に加水分解されて、Asp(αペプチド結合)またはイソAsp(βペプチド結合)のいずれかの最終産物になる。モノクローナル抗体では、Fc領域および相補性決定領域(CDR)において脱アミドが報告されている。CDR領域における脱アミドは、薬物の有効性に影響し得る。例えば、種々の研究により、CDRの脱アミドが標的結合に対して直接的効果を及ぼし得ることが報告されている。例えば、Harris et al. J Chromatogr B Biomed Sci Appl. 752(2): 233-245 (2001)、Vlasak et al. Anal Biochem. 392(2): 145-154 (2009)、Yan et al. J Pharm Sci. 98(10): 3509-3521 (2009)、Yang et al. mAbs. 5(5): 787-794 (2013)を参照されたい。顕著なことに、ヒト抗CD52 IgG1のAsn33をAsp残基で置き換えることによって脱アミド産物を模倣すると、抗原結合親和性が400分の1に減少した[Qiu et al. mAbs. 11(7): 1266-1275 (2019)]。
【0004】
免疫療法は、癌療法の分野に大変革をもたらしている。腫瘍抗原がひとたび応答を刺激すれば免疫炎症応答が常に活性化されるわけではないことを確実にするために、複数のコントロールまたは「チェックポイント」が適所に置かれているか、または活性化される。VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー、V-Domain Ig Suppressor of T Cell Activation)は、T細胞の活性化および免疫応答を制御するネガティブチェックポイントコントロールタンパク質である。VISATは、PD-L1などの幾つかの免疫チェックポイントタンパク質を含むB7ファミリーのメンバーである。しかしながら、このファミリーのメンバーとは異なり、VISTAは、単一の異常に大きなIg様V型ドメインを含む。加えて、VISTAの細胞質尾部ドメインは、エフェクタータンパク質のための幾つかのドケッティング部位(docketing sites)を含有しており、VISTAが受容体およびリガンドの両方として機能し得る可能性があることを示唆している。
【0005】
ヒトVISTAには、PSGL-1およびVSIG3という免疫抑制機能を有する2つの確認されている結合パートナーがある。VISTAは、生理的pHではVSIG3と相互作用するが、酸性pHでは、VISTA発現細胞は、T細胞上のPSGL-1に結合することができる[Wang et al. Immunology. 156(1): 74-85 (2019)、Johnston et al. Nature. 574(7779): 565-570 (2019)]。両方の相互作用がT細胞機能の阻害をもたらす。VSIG8(WO2016/090347A1)およびLRIG1(WO2015/187359)を含む他の受容体も報告されている。
【0006】
生理的に、VISTAは、幾つかのレベルにおいて、特にT細胞の活性化を調節することにより、免疫系に対する制御機能を働かせる。つい最近、VISTAは、特にナイーブT細胞の休止状態の維持における、末梢T細胞寛容の最初期チェックポイント制御因子として特定された。癌との関連において、VISTAは、阻害性制御性T細胞(Treg)および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)などの免疫抑制性腫瘍浸潤白血球において上方制御される。腫瘍微小環境内のVISTAの存在は、有効なT細胞応答を妨げ、前立腺癌、結腸癌、皮膚癌、膵臓癌、および肺癌を含め、ヒトにおける複数の癌に関係付けられている。
【0007】
癌の処置のために使用され得る幾つかのアンタゴニスト抗VISTA抗体が報告されている[ElTanbouly et al. Clin Exp Immunol. 200(2):120-130 (2020)、Mehta et al. Sci Rep. 10(1):1 5171 (2020)、Yuan et al. Trends Immunol. 42(3): 209-227 (2021)、Tagliamento et al. Immunotargets Ther. 10: 185-200 (2021)、Thakkar et al. J Immunother Cancer. 10(2): e003382 (2022)、WO2015/097536、WO2016/094837、WO2017/181139、WO2019/183040]。特に、WO2016/094837は、抗腫瘍免疫応答のVISTA抑制を阻害することによって防御的抗腫瘍免疫をもたらすことのできる抗体を開示している。しかしながら、この抗体は、脱アミドを起こしやすい可能性がある幾つかの潜在的なAsn残基を含み、そのため、薬物の有効性ならびに臨床開発および製造開発に影響が及び得る。したがって、均質、安全、かつ効果的な抗VISTA抗体が必要とされている。
【0008】
本発明の実施または試験においては、本明細書に記載されるものと同様または均等なあらゆる方法および材料を使用することができ、好適な方法および材料は、本明細書に記載されている。別段の記載がない限り、本発明の実施には、当業者が備えている技能の範囲内にある従来の技法、またはタンパク質化学、分子ウイルス学、微生物学、組換えDNA技術、および薬理学が用いられる。そのような技法は文献で十分に説明されている(例えば、Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, Current Protocols、5th Ed., 2002、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985、およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press、3rd Ed., 2001を参照されたい)。本明細書に記載される分子生物学および細胞生物学、タンパク質生化学、酵素学、ならびに医薬品化学および製薬化学に関連して使用される名称、ならびにそれらの実験手順および技法は、当技術分野でよく知られており、一般的に使用されているものである。本明細書で言及されるすべての公表文献、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。さらに、別段の規定がない限り、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、限定を意図したものではない。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、以下の態様が提供される。
【0011】
第1の態様において、本開示は、VISTAに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。この抗体は、本明細書で提供される重鎖および軽鎖を有する。特に、本件の抗VISTA抗体は、55位にアスパラギン酸を有する。本明細書で開示される抗VISTA抗体は、好ましくは、脱アミドを起こしにくい。
【0012】
好ましくは、本抗体は、モノクローナル抗体、より好ましくはヒト化抗体である。
【0013】
別の態様において、本抗体は、抗体-薬物コンジュゲートをもたらすように、細胞傷害剤にコンジュゲートされている。
【0014】
別の態様において、本開示は、本明細書で提供されるモノクローナル抗VISTA抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本開示は、本明細書で提供されるモノクローナル抗VISTA抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも提供する。本開示は、本明細書で提供されるモノクローナル抗VISTA抗体の重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも提供する。
【0015】
別の態様において、本開示は、本明細書で提供されるポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つを含む発現ベクターを提供する。
【0016】
別の態様において、本開示は、前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0017】
別の態様において、本開示は、本明細書で提供されるモノクローナル抗VISTA抗体を生産する方法であって、本明細書で提供される宿主細胞を好適な条件下で培養する工程と、培養培地からまたは培養された細胞から抗VISTA抗体を回収する工程とを含む方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本開示は、抗VISTA抗体またはそのコンジュゲート、および薬学的に許容可能な希釈剤、担体または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、緩衝剤、好ましくはクエン酸バッファー(buffer)、リン酸バッファー、またはヒスチジンバッファー、より好ましくはヒスチジンバッファーを含み得る。医薬組成物は、張度調整剤(tonicity modifier)を含んでもよい。好ましくは、張度調整剤は、多価糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどの三価以上の糖アルコール、塩、ならびにアミノ酸からなる群において選択され、より好ましくは、塩化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および塩化カルシウム、さらにより好ましくはNaCl、MgCl、および/またはCaClからなる群において選択される塩である。医薬組成物は、非イオン性界面活性物質、好ましくはポリソルベート、例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80を含み得る。好ましくは、医薬組成物は、本明細書で開示されるモノクローナル抗VISTA抗体に加えて、25mMヒスチジン、150mM NaCl、0.3%ポリソルベート80(w/w)を含み、pH6.5である。
【0019】
別の態様において、本明細書で開示されるモノクローナル抗VISTA抗体またはイムノコンジュゲートまたは医薬組成物は、患者におけるVISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置における使用のためのものである。好ましくは、この使用は、患者における免疫応答を誘導することを含む。好ましくは、免疫応答は、CD4+T細胞増殖の誘導、CD8+T細胞増殖の誘導、CD4+T細胞サイトカイン生産の誘導、およびCD8+T細胞サイトカイン生産の誘導を含む。好ましくは、本明細書で開示される使用は、抗体のエフェクター機能の活性化を含む。
【0020】
好ましい態様において、本明細書で開示される治療的使用は、第2の治療剤の投与を含む。この第2の治療剤は、有利には、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体である。
【0021】
好ましくは、癌は、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、卵管癌、胆嚢癌、消化管癌、頭頸部癌、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、または骨髄腫)、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣癌、原発性腹膜癌、唾液腺癌、肉腫、胃癌、甲状腺癌、膵臓癌、腎細胞癌腫、神経膠芽腫、および前立腺癌から選択される。
【0022】
さらに別の態様において、本開示は、対象におけるVISTA媒介性癌を検出するためのインビトロの方法であって、対象の生物学的サンプルを、本明細書で提供されるモノクローナル抗VISTA抗体と接触させる工程と、生物学的サンプルとの抗体の結合を検出する工程とを含み、抗VISTA抗体の結合は、VISTA媒介性癌の存在を示す、方法を提供する。好ましくは、モノクローナル抗VISTA抗体は、検出可能な標識で標識されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1:カチオン交換クロマトグラフィー、pHグラジエントによって特定された電荷変異体。左パネル:Ab3を含む産物1について幾つかのピークが視認でき、これが、分解、特にアミノ酸残基55における脱アミドの対象となることを示している。右パネル:Ab1を含む産物2について単一のピークが視認でき、これが、もはやアミノ酸残基55における脱アミドを起こしやすいものではなく、安定であることを示している。
図2図2:直接rhVISTA ELISAにおける3つの実験(N=3)のうちの第3の系列の抗体によって取得されたデータの平均のグラフ表現。黒四角(Filed square):Ab1、菱形:Ab3バッチ1、逆三角:Ab3バッチ2、三角:IgG1抗VISTA(ポジティブコントロール)、白丸:c9G4(ネガティブコントロール)、白丸および点線:抗hVISTAポリクローナル抗体(ポジティブコントロール)。
図3図3:間接rhVISTA ELISAにおける3つの実験(N=3)のうちの第3の系列の抗体によって取得されたデータの平均のグラフ表現。黒四角:Ab1、菱形:Ab3バッチ1、逆三角:Ab3バッチ2、三角:IgG1抗VISTA(ポジティブコントロール)、白丸:c9G4(ネガティブコントロール)、白丸および点線:抗hVISTAポリクローナル抗体(ポジティブコントロール)。
図4図4:PBMCとのCHO-VISTA共培養におけるT細胞の活性化およびサイトカインの放出の評価:実験の概略表現。
図5図5:PBMCとのCHO-VISTA共培養におけるT細胞の活性化およびサイトカインの放出の評価:PBMC(ドナー119)とのCHO-VISTA共培養における抗VISTA Ab1コンピテント誘導T細胞の活性化およびサイトカインの放出。Ab1サイレント:N298A突然変異を有するAb1変異体。
図6図6:rhVSIG3-Fc=f([抗VISTA Ab1])に対するrhVISTA-FcおよびrhVISTA-TagHisの結合。
図7図7:MC38異種移植モデルにおけるコンピテント抗VISTA Ab1のインビボ活性。
図8図8:MC38異種移植モデルにおけるサイレント抗VISTA Ab1(N298A変異体)のインビボ活性。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、単なる例として提示され、意図される本発明の範囲を制限しない、本明細書で提示される詳細な説明および添付図面からさらに十分に理解される。
【0025】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、化学、生化学、細胞生物学、分子生物学、および医療科学における当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0026】
「約」または「およそ」という用語は、当業者に知られている所定の値または範囲の正常誤差範囲を指す。これは通常、所定の値または範囲の20%以内、例えば10%以内、または5%(または1%以下)以内を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」、「抗体依存性細胞傷害性」、または「ADCC」という表現は、ある特定の細胞傷害性エフェクター細胞上に存在するFc受容体(FcR)に結合した免疫グロブリンによって、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞に特異的に結合した後に細胞毒によって標的細胞を殺傷することが可能になる、細胞傷害性の形態を指す。標的細胞の溶解は細胞外で起こり、直接的な細胞間接触を必要とし、補体は関与しない。細胞の破壊は、例えば、溶解または食作用によって起こり得る。目的の分子のADCC活性を評価するには、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが行われ得る。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルで評価され得る。
【0028】
本明細書で使用される「抗体依存性食作用」または「ADCP」または「オプソニン作用」とは、FcyRを発現する非特異的な細胞傷害性細胞が、標的細胞上の結合した抗体を認識し、その後に標的細胞の食作用を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「投与する」または「投与」とは、体外に存在する物質(例えば、本明細書で提供される抗VISTA抗体)を患者の体内に注射または別法により物理的にデリバーする行為、例えば、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内デリバリー、および/または本明細書に記載されるかもしくは当技術分野で知られている他のいずれかの物理的デリバリー方法などによるものを指す。疾患またはその症状が処置される場合、物質の投与は、典型的に、疾患またはその症状の発生後に行われる。疾患またはその症状が防止される場合、物質の投与は、典型的に、疾患またはその症状の発生前に行われる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト」または「阻害剤」とは、VISTAなどの標的タンパク質の生物学的活性のうちの1つまたは複数を阻害するかまたは別様に減少させることが可能な分子を指す。いくつかの実施形態では、VISTAのアンタゴニスト(例えば、本明細書で提供されるアンタゴニスト抗体)は、例えば、VISTAを発現する細胞(例えば、VISTA保有腫瘍細胞、制御性T細胞、骨髄系由来サプレッサー細胞、または抑制性樹状細胞)の活性化および/または細胞シグナル伝達経路を阻害するかまたは別様に減少させることによって作用し、それにより、アンタゴニストの非存在下の生物学的活性と比べて細胞の生物学的活性を阻害することができる。例えば、VISTAのアンタゴニストは、T細胞免疫(CD4+および/またはCD8+T細胞免疫)および/または炎症誘発性サイトカインの発現に対するVISTAの抑制効果を阻害し得る。より具体的には、VISTAのアンタゴニストは、VISTAと、VSIG3、PSG-L1、VSIG8、およびLRIG1を含むそのリガンドのうちの少なくとも1つとの相互作用を遮断するか、または減少させ得る。さらにより具体的には、VISTAのアンタゴニストは、VISTAとVSIG3またはPSG-L1のいずれかとの相互作用を遮断するか、または減少させ得る。好ましくは、VISTAのアンタゴニストは、酸性pH(すなわち、5.9~6.5のpH)においてVISTAとPSG-L1との相互作用を遮断するか、または減少させ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、アンタゴニスト抗VISTA-1抗体である。ある特定のアンタゴニスト抗体は、前記抗原の生物学的活性のうちの1つまたは複数を実質的にまたは完全に阻害する。例えば、アンタゴニスト抗VISTA抗体は、T細胞免疫(CD4+および/またはCD8+T細胞免疫)および/または炎症誘発性サイトカインの発現に対するVISTAの抑制効果を阻害し得る。より具体的には、アンタゴニスト抗VISTA抗体は、VISTAと、VSIG3、PSG-L1、VSIG8、およびLRIG1を含むそのリガンドのうちの少なくとも1つとの相互作用を遮断するか、または減少させ得る。さらにより具体的には、アンタゴニスト抗VISTA抗体は、VISTAとVSIG3またはPSG-L1のいずれかとの相互作用を遮断するか、または減少させ得る。好ましくは、アンタゴニスト抗VISTA抗体は、酸性pH(すなわち、5.9~6.5のpH)においてVISTAとPSG-L1との相互作用を遮断するか、または減少させ得る。
【0031】
「抗体」および「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEなどのあらゆるアイソタイプのモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ならびに抗体フラグメントを具体的に含むが、ただし、前記フラグメントが所望の生物学的機能を保持することを条件とする。これらの用語は、特異的分子抗原に結合することが可能であり、ジスルフィド結合によって相互接続されたポリペプチド鎖の2つの同一のペアから構成されており、各ペアが1つの重鎖(約50~70kDa)および1つの軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分が約100~約130以上のアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分が定常領域を含む、ポリペプチドの免疫グロブリンクラス内のB細胞のポリペプチド産物を含むことを意図している[Borrebaeck (ed.) (1995) Antibody Engineering, Second Ed., Oxford University Press.、Kuby (1997) Immunology, Third Ed., W.H. Freeman and Company, New Yorkを参照されたい]。重鎖および軽鎖の各々の各可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へとFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配列された、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)と、可変ドメインのうちより高度に保存された部分である4つのフレームワーク(FR)とから構成されている。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、種々の免疫系細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体が結合し得る特異的分子抗原は、標的VISTAポリペプチド、フラグメントまたはエピトープを含む。特定の抗原と反応する抗体は、ファージもしくは同様のベクターにおける組換え型抗体のライブラリの選択などの組換え方法によって、または抗原もしくは抗原をコードする核酸を用いて動物を免疫することによって生成され得る。
【0032】
抗体は、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え生産された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のもののいずれかの機能的フラグメントも含むが、これらに限定されず、機能的フラグメントとは、フラグメントの由来となった抗体の生物学的機能の一部または全部を保持する、抗体の重鎖または軽鎖ポリペプチドの一部分を指す。本明細書で提供される抗体は、免疫グロブリン分子のいずれかのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、いずれかのクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4IgA1およびIgA2)、またはいずれかのサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)のものであり得る。
【0033】
「抗VISTA抗体」、「VISTAに結合する抗体」、「VISTAエピトープに結合する抗体」という用語、および類義語は、本明細書では互換的に使用され、VISTA抗原またはエピトープなどのVISTAポリペプチドに結合する抗体を指す。そのような抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体を含め、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。VISTA抗原に結合する抗体は、関連する抗原と交差反応し得る。いくつかの実施形態では、VISTAに結合する抗体は、例えば、B7スーパーファミリーに属する他のペプチドまたはポリペプチドのような、他の抗原と交差反応しない。VISTAに結合する抗体は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、または当業者に知られている他の技法によって特定され得る。抗体は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験技法を使用して決定した場合に、あらゆる交差反応性抗原よりも高い親和性でVISTAに結合するとき、例えば、VISTAに特異的に結合する抗体であるとき、VISTAに結合する。典型的に、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍を超えることもある。抗体特異性に関する詳解については、例えば、Paul, ed., 1989, Fundamental Immunology Second Edition, Raven Press, New Yorkの332~336頁を参照されたい。いくつかの実施形態では、目的の抗原に「結合する」抗体とは、抗体が、抗原を発現する細胞または組織を標的とする際に診断剤および/または治療剤として有用であり、他のタンパク質と著しく交差反応しないように、十分な親和性で抗原に結合するものである。そのような実施形態では、「非標的」タンパク質に対する抗体の結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析または放射性免疫沈降法(RIPA)によって決定した場合に、その特定の標的タンパク質に対する抗体の結合の約10%未満となる。標的分子に対する抗体の結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープについての「特異的結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、ある分子の結合をコントロール分子の結合と比較して決定することによって測定することができ、コントロール分子は通常、結合活性を有しない類似構造を持つ分子である。例えば、特異的結合は、標的に類似するコントロール分子、例えば、過剰量の標識されていない標的との競合によって決定され得る。この場合、プローブに対する標識された標的の結合が、過剰量の標識されていない標的によって競合的に阻害されれば、特異的結合が示される。本明細書で使用される特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープについての「特異的結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的」という用語は、例えば、標的に対して、少なくとも約10-4M、あるいは少なくとも約10-5M、あるいは少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、あるいは少なくとも約10-11M、あるいは少なくとも約10-12M、またはそれ以上のKを有する分子によって呈され得る。いくつかの実施形態では、「特異的結合」という用語は、分子が特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合し、他のいずれのポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合しない場合の結合を指す。いくつかの実施形態では、VISTAに結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(K)を有する。
【0034】
「抗原」は、抗体が選択的に結合し得る既定の抗原である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然に存在するもしくは合成の化合物であり得る。いくつかの実施形態では、標的抗原は、例えば、VISTAポリペプチドを含むポリペプチドである。
【0035】
「抗原結合フラグメント」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」という用語、および類似する用語は、抗体のうち、抗原と相互作用し、抗原に対する特異性および親和性を結合剤に付与するアミノ酸残基を含む部分[例えば、相補性決定領域(CDR)]を指す。
【0036】
「抗原結合フラグメント」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」という用語、および類似する用語は、抗体のうち、抗原と相互作用し、抗原に対する特異性および親和性を結合剤に付与するアミノ酸残基を含む部分[例えば、相補性決定領域(CDR)]を指す。抗体の「抗原結合フラグメント」という表現は、前記抗体の標的(広く抗原ともいう)、通常は同じエピトープに結合する能力を保持し、抗体のアミノ酸配列のうち、少なくとも5個の連続するアミノ酸残基、少なくとも10個の連続するアミノ酸残基、少なくとも15個の連続するアミノ酸残基、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基、少なくとも25個の連続するアミノ酸残基、少なくとも40個の連続するアミノ酸残基、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基、少なくとも60個の連続するアミノ残基、少なくとも70個の連続するアミノ酸残基、少なくとも80個の連続するアミノ酸残基、少なくとも90個の連続するアミノ酸残基、少なくとも100個の連続するアミノ酸残基、少なくとも125個の連続するアミノ酸残基、少なくとも150個の連続するアミノ酸残基、少なくとも175個の連続するアミノ酸残基、または少なくとも200個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、あらゆるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を示すことを意図する。具体的な実施形態において、前記抗原結合フラグメントは、その由来となる抗体の少なくとも1つのCDRを含む。さらに、好ましい実施形態では、前記抗原結合フラグメントは、その由来となる抗体の2、3、4、または5つのCDR、より好ましくは6つのCDRを含む。
【0037】
「抗原結合フラグメント」は、限定されるものではないが、Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、scFv(scは一本鎖を表す)、Bis-scFv、scFv-Fcフラグメント、Fab2、Fab3、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびナノボディ、ならびにXTEN(延長組換えポリペプチド)またはPASモチーフなどの無秩序なペプチドとの融合タンパク質、ならびにポリ(エチレン)グリコールなどのポリ(アルキレン)グリコールの付加(「PEG化」)などの化学修飾によって半減期が増加するあらゆるフラグメント[Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab’)-PEG、またはFab’-PEGと呼ばれるPEG化フラグメント][「PEG」はポリ(エチレン)グリコールを表す]、またはリポソームへの組み込みによって半減期が増加するあらゆるフラグメントからなる群において選択され得、前記フラグメントは、本発明に係る抗体の特徴的なCDRのうちの少なくとも1つを有する。抗体フラグメントの中で、Fabは、軽鎖および重鎖の可変領域、軽鎖の定常領域、ならびに重鎖の第1の定常領域(CH1)を含む構造を有し、1つの抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1つまたは複数のシステイン残基を含むヒンジ領域を有するという点でFabとは異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を形成すると生成される。Fvは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のみを有する最小限の抗体フラグメントであり、Fvフラグメントを生産するための組換え技法は、国際公開WO88/10649などに記載されている。二本鎖Fv(dsFv)では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域がジスルフィド結合を介して互いに連結しており、一本鎖Fv(scFv)では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域が通常はペプチドリンカーを介して互いに共有結合している。これらの抗体フラグメントは、プロテイナーゼを使用することによって取得でき[例えば、Fabは、パパインによる全抗体の制限消化によって取得でき、F(ab’)2フラグメントは、ペプシンによる制限消化によって取得できる]、好ましくは遺伝子エンジニアリング技法によって生産できる。好ましくは、前記「抗原結合フラグメント」は、それらの由来となる抗体の重鎖または軽鎖の可変鎖の部分配列として構成されるか、またはそれを含み、前記部分配列は、標的に対して、その由来である抗体と同じ結合特異性と、十分な親和性、好ましくは、その由来である抗体の親和性の少なくとも1/100に等しい親和性、より好ましい様式では少なくとも1/10に等しい親和性とを保持するのに十分である。そのような抗体フラグメントに関する説明は、例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989)、Myers (ed.), Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, New York: VCH Publisher, Inc.、Huston et al., Cell Biophysics, 22:189-224 (1993)、Plueckthun and Skerra, Meth. Enzymol., 178:497-515 (1989)、およびDay, E.D., Advanced Immunochemistry, Second Ed., Wiley-Liss, Inc., New York, NY (1990)に見出すことができる。
【0038】
「抗原提示細胞」または「APC」という用語は、T細胞など、ある特定のリンパ球による認識のために抗原をプロセシングし提示することによって細胞性免疫応答を媒介する、異種の免疫細胞の群を指す。APCは、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、およびB細胞を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される「結合する」または「結合」という用語は、生理的条件下で比較的安定な複合体を形成する分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、および/またはファンデルワールス相互作用を含む、非共有結合性相互作用であり得る。複合体は、共有結合性または非共有結合性の結合、相互作用、または力によって結び付けられた2つ以上の分子の結合を含むこともある。抗体上の単一の抗原結合部位と、VISTAなどの標的分子の単一のエピトープとの間の非共有結合性相互作用の合計の強度が、そのエピトープに対する抗体または機能的フラグメントの親和性である。一価抗原に対する抗体の会合(k)対解離(k-1)の比(k/k-1)は、親和性の測度である会合定数Kである。Kの値は、抗体および抗原の異なる複合体ごとに異なり、kおよびk-1の両方に依存する。本明細書で提供される抗体の会合定数Kは、本明細書で提供されるいずれかの方法または当業者によく知られている他のいずれかの方法を使用して決定され得る。1つの結合部位における親和性は、抗体と抗原との間の相互作用の真の強度を常に反映するとは限らない。複数の繰り返す抗原性決定基を含有する複合抗原、例えば多価VISTAが、複数の結合部位を含有する抗体と接触すると、1つの部位における抗原との抗体の相互作用が、第2の部位における反応の確率を増加させる。多価抗体と抗原との間のそのような複数の相互作用の強度は、アビディティと呼ばれる。抗体のアビディティは、その個々の結合部位の親和性よりも良好な、その結合能力の測度であり得る。例えば、高いアビディティは、IgGよりも低い親和性を有し得る五量体IgM抗体について場合により見出されるような低い親和性を補うことができるが、その多価性から生じるIgMの高いアビディティは、それが抗原に効果的に結合することを可能にする。2つの分子が結合するかどうかを決定するための方法は、当技術分野ではよく知られており、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。具体的な実施形態において、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントは、BSAまたはカゼインなどの非特異的分子に対する結合の親和性よりも少なくとも2倍高い親和性でVISTAに結合する。より具体的な実施形態において、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントは、VISTAにのみ結合する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「生物学的サンプル」または「サンプル」という用語は、患者または対象などの生物学的供給源から取得されたサンプルを指す。本明細書で使用される「生物学的サンプル」は、とりわけ、生物全体、またはその組織、細胞もしくは構成部分のサブセット[例えば、血管(動脈、静脈および毛細血管を含む)、体液(血液、血清、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜帯血、尿、膣液および精液を含むがこれらに限定されない)]を指す。「生物学的サンプル」はさらに、生物全体またはその組織、細胞もしくは構成部分のサブセットから調製されたホモジネート、ライセート、もしくは抽出物、またはそれらの画分もしくは一部分を指す。最後に、「生物学的サンプル」は、タンパク質または核酸分子などの細胞成分を含有する、生物を繁殖させた栄養ブロスまたはゲルなどの培地を指す。
【0041】
例えば、「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖と関連する障害を指す。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍または癌である。本明細書で使用される「腫瘍」は、悪性か良性かを問わない、あらゆる新生細胞の成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」および「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。「癌」および「癌性」という用語は、典型的には制御されない細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理的状態を指すか、または記述する。本明細書で使用される「癌」は、生物における異常細胞の望まれない成長、浸潤、およびある特定の条件下では転移から生じる、あらゆる悪性新生物である。癌を生じさせる細胞は、遺伝子異常を有し、通常、細胞分裂、細胞遊走挙動、分化ステータスおよび/または細胞死機構をコントロールする能力を失っている。ほとんどの癌が腫瘍を形成するが、白血病などのいくつかの血液癌は腫瘍を形成しない。したがって、本明細書で使用される「癌」は、良性および悪性の両方の癌を含み得る。本明細書で使用される「癌」という用語は、何の制限もなく、特に、本開示のヒト抗体によって処置され得るあらゆる癌を指す。癌の例は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性腫瘍を含むが、これらに限定されない。そのような癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌(例えば扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌腫を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌(gastric)または胃癌(stomach cancer)、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、口腔癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、子宮内膜または子宮の癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、黒色腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫、脳癌、ならびに頭頸部癌、ならびに関連する転移が挙げられる。いくつかの実施形態では、癌は血液癌であり、これは、骨髄などの血液形成組織または免疫系の細胞において始まる癌を指す。血液癌の例は、白血病[例えば、急性骨髄球性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、または急性単球性白血病(AMoL)]、リンパ腫(ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)、および骨髄腫(多発性骨髄腫、形質細胞腫、限局性骨髄腫または髄外性骨髄腫)である。
【0042】
「化学療法剤」は、作用機序にかかわらず、癌の処置において有用な、化学的または生物学的な薬剤(例えば、低分子薬または抗体もしくは細胞などの生物製剤を含む薬剤)である。化学療法剤は、標的化療法および従来の化学療法において使用される化合物を含む。化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗血管新生剤、抗エストロゲン薬、抗アンドロゲン薬、または免疫調節剤を含むが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される場合、「CDR」は、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VHβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域のうちの1つ(H1、H2またはH3)、または抗体VLβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域のうちの1つ(L1、L2またはL3)を指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は、当業者にはよく知られており、例えば、Kabatによって、抗体可変(V)ドメイン内で超可変性が最も高い領域として定義されている[Kabat et al. (1977) J. Biol. Chem. 252:6609-6616、Kabat (1978) Adv. Prot. Chem. 32:1-75]。Kabat CDRは配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている[Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD]。Chothiaは代わりに、構造ループの位置を参照する[Chothia and Lesk (1987) J Mol. Biol. 196:901-917]。CDR領域配列はまた、Chothiaによって、保存されているβシートフレームワークの一部ではない故に異なる立体構造を採ることができる残基として構造的に定義されている[Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917]。Kabat番号付け規則を使用して番号付けされたChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じて、H32とH34との間で変動する(これは、Kabat番号付けスキームがH35AおよびH35Bに挿入を配置するためである;35Aも35Bも存在しなければ、ループは32で終わり、35Aのみが存在すれば、ループは33で終わり、35Aおよび35Bが両方存在すれば、ループは34で終わる)。当技術分野では、両方の用語法がよく認識されている。CDR領域配列は、AbM、コンタクトおよびIMGTによっても定義されている。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の折衷案を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「コンタクト」超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。最近、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)という汎用番号付けシステムが開発され、広く採用されている[Lefranc et al. (2003) Dev. Comp. Immunol. 27(1):55-77]。IMGT汎用番号付けは、抗原受容体、鎖のタイプ、または種を問わず、可変ドメインを比較するために定義されている[Lefranc M.-P. (1997) Immunol. Today 18: 509、Lefranc M.-P. (1999) The Immunologist 7: 132-136]。IMGT汎用番号付けでは、保存されているアミノ酸は、例えばシステイン23(1st-CYS)、トリプトファン41(CONSERVED-TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd-CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J-PHEまたはJ-TRP)など、常に同じ位置を有する。IMGT汎用番号付けは、フレームワーク領域(FR1-IMGT:1~26位、FR2-IMGT:39~55位、FR3-IMGT:66~104位、およびFR4-IMGT:118~128位)、ならびに相補性決定領域:CDR1-IMGT:27~38位、CDR2-IMGT:56~65位、およびCDR3-IMGT:105~117位の、標準化された境界決定を提供する。ギャップは占有されていない位置を表すため、CDR-IMGTの長さ([8.8.13]のように、括弧に挟まれ、ドットで区切られて示される)は、非常に重要な情報となる。IMGT汎用番号付けは、IMGT Colliers de Perlesと称される2Dグラフィック表現[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53: 857-883 (2002)、Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2: 21-30 (2007)]において、および、IMGT/3Dstructure-DBにおける3D構造[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32: D208-D210 (2004)]において使用されている。標準的な抗体可変ドメイン内のCDRの位置は、数多くの構造の比較によって決定されている[Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997)、Morea et al., Methods 20:267-279 (2000)]。超可変領域内の残基の数は様々な抗体において異なるため、標準的位置に対する追加の残基は、慣例的に、標準的な可変ドメイン番号付けスキームにおける残基番号の隣にa、b、cなどを伴って番号付けられる[Al-Lazikani et al., supra (1997)]。そのような命名法も、当業者には同様によく知られている。
【0044】
超可変領域は、VLにおける24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、および89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおける26~35または26~35A(H1)、50~65または49~65(H2)、および93~102、94~102、または95~102(H3)のような、「拡張超可変領域」を含み得る。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々で、上掲のKabat et al.に従って番号付けられる25である。本明細書で使用される場合、「HVR」および「CDR」という用語は、互換的に使用される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「チェックポイント阻害剤」とは、免疫チェックポイントを標的とし、前記免疫チェックポイントの機能を遮断する分子、例えば、低分子、可溶性受容体、または抗体などを指す。より具体的には、本明細書で使用される「チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイントの生物学的活性のうちの1つまたは複数を阻害するかまたは別様に減少させることが可能な分子、例えば、低分子、可溶性受容体、または抗体などである。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤(例えば、本明細書で提供されるアンタゴニスト抗VISTA抗体)は、例えば、前記免疫チェックポイントタンパク質を発現する細胞(例えば、T細胞)の活性化および/または細胞シグナル伝達経路を阻害するかまたは別様に減少させることによって作用し、それにより、アンタゴニストの非存在下の生物学的活性と比べて細胞の生物学的活性を阻害することができる。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、低分子薬、可溶性受容体、および抗体が挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」という用語は、細胞上に位置する抗原に抗体が結合すると、上記で概説された機序によってその細胞の溶解が生じる、抗体媒介性補体活性化のプロセスを指す。補体活性化経路は、補体系の第1成分(C1q)が、同族抗原と複合体を形成した分子(例えば、抗体)と結合することによって開始される。補体活性化を評価するには、例えば、Gazzano-Santaro et al., J. Immunol. Methods, 202:163 (1996)に記載されているようなCDCアッセイを行うことができる。当技術分野では、正常ヒト血清が補体源として使用される。
【0047】
「定常領域」または「定常ドメイン」という用語は、抗原に対する抗体の結合に直接は関与しないが、Fc受容体との相互作用などの種々のエフェクター機能を呈する、軽鎖および重鎖のカルボキシ末端部分を指す。これらの用語は、免疫グロブリンの他の部分、すなわち、抗原結合部位を含有する可変ドメインと比べて、より保存されたアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン分子の一部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメイン、ならびに軽鎖のCLドメインを含有する。
【0048】
本明細書に記載される場合、「細胞傷害剤」とは、対象に投与されると、細胞機能を阻害もしくは防止することおよび/または細胞死を引き起こすことによって、細胞増殖の発生、好ましくは対象の体内における癌の発生を処置または防止する薬剤を指す。本件の抗体-薬物コンジュゲートにおいて使用され得る細胞傷害剤は、細胞傷害性効果または細胞増殖に対する阻害効果を有する、あらゆる薬剤、その一部、または残基を含む。そのような薬剤の例としては、(i)ミクロチューブリン阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはDNAインターキレーター(interchelator)として機能することが可能な化学療法剤、(ii)酵素的に機能することが可能なタンパク質毒素、および(iii)ラジオアイソトープ(放射性核種)が挙げられる。細胞傷害剤は、イムノコンジュゲートを形成するように、例えば抗VISTA抗体などの抗体とコンジュゲートされ得る。好ましくは、細胞傷害剤は、特定の条件下で、例えば、酸性条件下で抗体から放出されることにより、例えば、標的細胞の増殖を防止すること、または細胞傷害性効果を示すことによって、標的細胞に治療上の影響を及ぼす。
【0049】
本明細書で使用される「減少した」という用語は、参照値より少なくとも1倍(例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍、10,000倍、またはそれ以上)低い、VISTAなどのタンパク質の活性を指す。対象のVISTAなどのタンパク質の活性に関する「減少した」は、参照サンプル中のタンパク質の活性と比べて、または前記タンパク質の参照値を基準として、少なくとも5%低いことも意味する(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%)、95%)、99%)、または100%)。本明細書で使用される「減少した」という用語は、参照値より少なくとも1倍(例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍、10,000倍、またはそれ以上)低い、対象のVISTAなどのバイオマーカーのレベルも指す。対象のVISTAなどのバイオマーカーのレベルに関する「減少した」は、参照サンプル中のレベルと比べて、または前記マーカーの参照値を基準として、少なくとも5%低いことも意味する(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%)、95%)、99%)、または100%)。
【0050】
本明細書で使用される「検出すること」という用語は、量的または質的な検出を包含する。
【0051】
本明細書で使用される「検出可能なプローブ」という用語は、検出可能なシグナルをもたらす組成物を指す。この用語は、限定されるものではないが、その活性を介して検出可能なシグナルをもたらす、あらゆるフルオロフォア、発色団、放射標識、酵素、抗体または抗体フラグメントなどを含む。
【0052】
ポリペプチドとの関連において、本明細書で使用される「誘導体」という用語は、アミノ酸残基の置換、欠失、または付加の導入によって改変されたVISTAポリペプチド、VISTAポリペプチドのフラグメント、またはVISTAポリペプチドに結合する抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。本明細書で使用される「誘導体」という用語は、例えばポリペプチドに対するいずれかのタイプの分子の共有結合によって化学的に修飾されているVISTAポリペプチド、VISTAポリペプチドのフラグメント、またはVISTAポリペプチドに結合する抗体も指す。限定ではないが、例えば、VISTAポリペプチド、VISTAポリペプチドのフラグメント、またはVISTA抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合などによって化学的に修飾され得る。誘導体は、結合する分子のタイプまたは位置において、天然に存在するペプチドもしくはポリペプチドまたは出発ペプチドもしくは出発ポリペプチドとは異なる様式で修飾される。誘導体は、ペプチドまたはポリペプチド上に本来存在する1つまたは複数の化学基の欠失をさらに含む。VISTAポリペプチド、VISTAポリペプチドのフラグメント、またはVISTA抗体の誘導体は、特異的化学切断、アセチル化、製剤、ツニカマイシンの代謝合成などを含むがこれらに限定されない、当業者に知られている技法を使用した化学修飾によって化学的に修飾され得る。さらに、VISTAポリペプチド、VISTAポリペプチドのフラグメント、またはVISTA抗体の誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有し得る。ポリペプチド誘導体は、本明細書に記載されるVISTAポリペプチド、VISTAポリペプチドのフラグメント、またはVISTA抗体と同様または同一の機能を保有する。
【0053】
「診断剤」という用語は、対象に投与され、疾患の診断に役立つ物質を指す。そのような物質は、疾患を引き起こすプロセスの位置を明らかにする、正確に示す、および/または定義するために使用され得る。いくつかの実施形態では、診断剤には、対象に投与すると、または対象由来のサンプルと接触させると、癌、腫瘍形成、または他のいずれかのVISTA媒介性疾患、障害もしくは状態の診断に役立つ、本明細書で提供される抗体にコンジュゲートされた物質が含まれる。
【0054】
「検出可能な薬剤」という用語は、サンプルまたは対象における、本明細書で提供される抗体などの所望の分子の実存または存在を確認するために使用され得る物質を指す。検出可能な薬剤は、可視化することが可能な物質、または別様に決定および/もしくは測定できる(例えば、定量化によって)物質であり得る。
【0055】
本明細書で使用される「検出すること」という用語は、量的または質的な検出を包含する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「診断」または「を有する対象を特定すること」とは、疾患、状態、または傷害を、その兆候および症状から特定するプロセスを指す。診断は、とりわけ、個体が疾患または疾病(例えば、癌)に罹っているかどうかを決定するプロセスである。癌は、例えば、癌に関連するマーカー、例えばVISTAなどの存在を検出することによって診断される。
【0057】
医薬製剤などの薬剤の「有効量」または「治療有効量」は、必要な投薬量および期間において、対象における所望の生物学的応答を誘発するために有効な量を指す。そのような応答は、処置される疾患もしくは障害の症状の軽減、疾患の症状もしくは疾患自体の再発の防止、阻害、もしくは遅延、処置しない場合と比較した対象の寿命の延長、または疾患の症状もしくは疾患自体の進行の防止、阻害、もしくは遅延を含む。「有効量」とは、特に、所望される治療的または予防的な結果を達成するのに有効な薬剤の量である。より具体的には、本明細書で使用される「有効量」は、治療利益をもたらす薬剤の量である。治療有効量は、薬剤の治療上有益な効果があらゆる毒性効果または有害効果を凌ぐものでもある。
【0058】
有効量は、1つまたは複数の投与、適用、または投薬量において投与され得る。そのようなデリバリーは、個々の投薬量単位が使用される期間、薬剤のバイオアベイラビリティ、投与経路などを含む複数の可変要素に依存する。いくつかの実施形態では、有効量は、特定の結果(例えば、T細胞活性化の調節などの免疫チェックポイント生物学的活性の阻害)を達成する、本明細書で提供される抗体(例えば、抗VISTA抗体)の量も指す。いくつかの実施形態では、この用語は、所定の疾患、障害、もしくは状態、および/またはそれに関連する症状の重篤度および/または期間を低減および/または改善するのに十分である療法(例えば、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗VISTA抗体など)の量を指す。この用語は、所定の疾患、障害、もしくは状態の進展もしくは進行の低減もしくは改善、所定の疾患、障害、もしくは状態の再発、発展、もしくは発生の低減もしくは改善に必要な、かつ/または別の療法(例えば、前記免疫チェックポイント阻害剤以外の療法)の予防効果もしくは治療効果を向上もしくは増進させる量も包含する。癌療法との関連において、治療利益は、例えば、癌の(例えば、癌のある病期から次の病期への)進行を抑止もしくは緩徐化すること、癌の症状もしくは兆候の増悪もしくは悪化を抑止もしくは遅延すること、癌の重篤度を低減すること、癌の寛解を誘導すること、腫瘍細胞の増殖、腫瘍サイズ、もしくは腫瘍数を抑制すること、または癌を示すバイオマーカーのレベルを低減させることのうちのいずれか1つ、またはそれらの組み合わせを含む、癌のあらゆる改善を意味する。いくつかの実施形態では、抗体の有効量は、約0.1mg/kg(対象の体重1kg当たりの抗体のmg)から約100mg/kgである。いくつかの実施形態では、その中で提供される抗体の有効量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、または約100mg/kg(またはその中の範囲)である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「エフェクター機能」という用語は、免疫グロブリン(例えば、本明細書に記載される抗VISTA抗体)のFcドメインが有する生物学的機能を指す。これらのFcドメイン媒介性活性は、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、および活性化マクロファージなどの免疫学的エフェクター細胞、または種々の補体成分によって媒介される。これらのエフェクター機能は、前記エフェクター細胞の表面上の受容体または補体成分に抗体のFcドメインが結合することによる、前記受容体の活性化を含む。本明細書で使用される「エフェクター機能」は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害性(CDC)などの活性を包含する。
【0060】
本明細書で使用される「エフェクター細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、エフェクター機能を果たす白血球を指す。これらの細胞は、少なくともFcγRI、FCγRII、FcγRIIIおよび/またはFcγRIVを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。造血細胞におけるFcR発現については、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464頁の表3にまとめられている。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、および好中球が挙げられる。
【0061】
核酸分子に関して使用される「コードする」という用語またはその文法的均等物は、転写されてmRNAをもたらすことができ、次いでポリペプチドおよび/またはそのフラグメントへと翻訳される、天然の状態の、または当業者によく知られている方法によって操作されたときの核酸分子を指す。アンチセンス鎖はそのような核酸分子の相補体であり、そこからコード配列が推測され得る。
【0062】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、VISTAポリペプチドまたはVISTAポリペプチドフラグメントなどの抗原のうち、抗体が結合する領域を指す。好ましくは、本明細書で使用されるエピトープは、VISTAポリペプチドまたはVISTAポリペプチドフラグメントなどの抗原の表面上にあり、抗体の1つまたは複数の抗原結合領域に結合することができ、免疫応答を誘発することが可能な哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物における抗原活性または免疫原活性を有する、局所的な領域である。免疫原活性を有するエピトープは、動物における抗体応答を誘発するポリペプチドの一部分である。抗原活性を有するエピトープは、当技術分野でよく知られているいずれかの方法によって、例えばイムノアッセイによって決定されるように、抗体が結合するポリペプチドの一部分である。抗原性エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的活性表面基からなり、特定の三次元構造特徴および特定の電荷特徴を有する。エピトープは、連続する残基、または抗原性タンパク質のフォールディングによって近接した状態にされた連続しない残基によって形成され得る。連続するアミノ酸によって形成されたエピトープは、典型的に、変性溶媒への曝露時に保持されるが、連続しないアミノ酸によって形成されたエピトープは、典型的に、前記曝露下で失われる。いくつかの実施形態では、VISTAエピトープは、VISTAポリペプチドの三次元表面特徴である。他の実施形態では、VISTAエピトープは、VISTAポリペプチドの線状特徴である。概して、抗原は、幾つかまたは多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応する。
【0063】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、増加したタンパク質安定性、増加したタンパク質溶解度、および減少した粘度などの有益な物理的特性を製剤に付与する、薬物のための希釈剤、媒体、防腐剤、結合剤、または安定化剤として一般的に使用される不活性物質を指す。賦形剤の例は、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、グリシン、ヒスチジンなど)、脂肪酸およびリン脂質(例えば、アルキルスルホネート、カプリレートなど)、界面活性物質(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン性界面活性物質など)、糖類(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)、ならびにポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)を含むが、これらに限定されない。全体が参照により本明細書に組み込まれている、Remington's Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, PAも参照されたい。
【0064】
「フレームワーク」または「FR」残基という用語は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。FR残基は、CDRを挟む可変ドメイン残基である。FR残基は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ドメイン抗体、ダイアボディ、線状抗体、および二重特異性抗体に存在する。
【0065】
抗体に関して使用される「重鎖」という用語は、アミノ末端部分が約120から130以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。その定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)という5つの異なるタイプのうちの1つであり得る。別個の重鎖は、サイズにおいて異なり、α、δおよびγはおよそ450アミノ酸を含有し、μおよびεはおよそ550アミノ酸を含有する。これらの異なるタイプの重鎖は、軽鎖と組み合わさると、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという、5つのよく知られているクラスの抗体を生じさせ、これには、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が含まれる。重鎖はヒト重鎖であり得る。
【0066】
「ヒンジ領域」という用語は、本明細書では、IgGおよびIgA免疫グロブリンクラスの重鎖の中心部にあり、これら2つの鎖をジスルフィド結合によって連結させる、柔軟なアミノ酸の区間を指す。ヒンジ領域は通常、ヒトIgG1のGlu216からPro230まで伸びるものとして定義される(Burton, Mol Immunol, 22: 161-206, 1985)。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配置することによって、IgG1配列とアラインされ得る。ヒトIgGのFc部分の「CH2ドメイン」(「Cγ2」ドメインともいう)は、通常、アミノ酸231あたりからアミノ酸340あたりまで広がる。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合しないという点でユニークである。そうではなく、2つのN結合分岐炭水化物鎖が、インタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に介在している。この炭水化物が、ドメイン間対合の代わりとなり、CH2ドメインの安定化に役立ち得ると推測されている(Burton, MoI Immunol, 22: 161-206, 1985)。「CH3ドメイン」は、Fc部分におけるCH2ドメインのC末端側の残基の区間(すなわち、IgGのアミノ酸残基341あたりからアミノ酸残基447あたりまで)を含む。
【0067】
本明細書で使用される「宿主」という用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物を指す。
【0068】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、核酸分子がトランスフェクトされる特定の対象細胞、およびそのような細胞の子孫または潜在的な子孫を指す。そのような細胞の子孫は、後続世代において生じ得る突然変異もしくは環境的影響、または宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組み込みに起因して、核酸分子がトランスフェクトされた親細胞と同一ではない場合がある。
【0069】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有するキメラ抗体を指す。一実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエントのCDRの残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長動物などの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、骨格セグメント残基(フレームワークの略でFRと呼ばれる)の一部が、当業者に知られている技法によって、結合親和性を保存するように修飾され得る(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986)。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDRのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべてまたは実質的にすべては、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである、抗体定常領域(Fc)の少なくとも一部分を適宜含んでもよい。非ヒト抗体などの抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を経た抗体を指す。ヒト化の目標は、ヒトに導入するために、マウス抗体などの異種抗体の免疫原性を低減させると共に、抗体の完全な抗原結合親和性および特異性を維持することである。さらなる詳細については、例えば、Jones et al, Nature 321: 522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988)、およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1 :105-115 (1998)、Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995)、Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994)、ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照されたい。
【0070】
本明細書で使用される場合、状態を有する対象に言及する際の「特定すること」は、対象を評価し、対象が状態を有すること、例えば、癌に罹患していることを決定するプロセスを指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント」または「免疫チェックポイントタンパク質」という用語は、いくつかのタイプの免疫系細胞、例えばT細胞、およびいくつかの癌細胞によって作られる、ある特定のタンパク質を指す。そのようなタンパク質は、免疫系におけるT細胞の機能を制御する。それらは、とりわけ、免疫応答を抑制するのに役立ち、T細胞が癌細胞を殺傷することを阻む場合もある。前記免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞内にシグナルを送る特定のリガンドと相互作用することによってこの結果を達成し、T細胞機能を本質的にオフにするか、または阻害する。これらのタンパク質の阻害は、T細胞機能の回復および癌細胞に対する免疫応答をもたらす。チェックポイントタンパク質の例は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIGIT、TIM3、GAL9、LAG3、VSIG4、KIR、2B4[分子のCD2ファミリーに属し、すべてのNK、γδ、およびメモリーCD8+(αβ)T細胞において発現される]、CD160(BY55ともいう)、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、IDO1、A2aR、ならびに種々のB7ファミリーリガンドを含むが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用される「増加した」という用語は、参照値より少なくとも1倍(例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍、10,000倍、またはそれ以上)高い、VISTAなどのタンパク質の活性を指す。対象のVISTAなどのタンパク質の活性に関する「増加した」は、参照サンプル中のタンパク質の活性と比べて、または前記タンパク質の参照値を基準として、少なくとも5%高いことも意味する(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%)。本明細書で使用される「増加した」という用語は、参照値より少なくとも1倍(例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、1000倍、10,000倍、またはそれ以上)高い、対象のVISTAなどのバイオマーカーのレベルも指す。対象のVISTAなどのバイオマーカーのレベルに関する「増加した」は、参照サンプル中のレベルと比べて、または前記マーカーの参照値を基準として、少なくとも5%高いことも意味する(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%)。
【0073】
「阻害する」もしくは「遮断する」という用語、またはそれらの文法的均等物は、抗体との関連で使用される場合、抗体が結合する抗原の生物学的活性を抑制するか、制限するか、または減少させる抗体を指す。抗体の阻害効果は、抗原の生物学的活性における測定可能な変化をもたらすものであり得る。特定の事例において、「阻害する」または「遮断する」は、抗体が結合する抗原の生物学的活性を防止または停止する抗体を指す。遮断抗体には、反応を誘発することなく抗原と組み合わさるが、後にその抗原と別のタンパク質が結合または複合することを遮断する抗体が含まれる。抗体の遮断効果は、抗原の生物学的活性における測定可能な変化をもたらすものであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗VISTA抗体は、VSIG3に結合するVISTAの能力を遮断し、これは、VISTAの抑制シグナルの阻害または遮断をもたらし得る。本明細書に記載されるある特定の抗VISTA抗体は、VISTA発現細胞上のVISTAの抑制シグナルを、例えば、適切なコントロール(例えば、試験されている抗体によって処置されていない細胞であるコントロール)と比較して約98%~約100%、阻害または遮断する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗VISTA抗体は、VSIG3に対する細胞外ドメインVISTAの結合を遮断し、かつ/または、VSIG3発現細胞に対するVISTA発現細胞の結合を遮断する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗VISTA抗体は、好ましくは酸性pH(pH5.9~6.5)において、PSGL-1に結合するVISTAの能力を遮断し、これは、VISTAの抑制シグナルの阻害または遮断をもたらし得る。本明細書に記載されるある特定の抗VISTA抗体は、VISTA発現細胞上のVISTAの抑制シグナルを、例えば、適切なコントロール(例えば、試験されている抗体によって処置されていない細胞であるコントロール)と比較して約98%~約100%、阻害または遮断する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗VISTA抗体は、好ましくは酸性pH(pH5.9~6.5)において、PSGL-1に対する細胞外ドメインVISTAの結合を遮断し、かつ/または、好ましくは酸性pH(pH5.9~6.5)において、PSGL-1発現細胞に対するVISTA発現細胞の結合を遮断する。
【0074】
「免疫浸潤物」または「腫瘍免疫細胞」という用語は、リンパ球[例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞]、樹状細胞、マスト細胞、およびマクロファージを含むがこれらに限定されない、腫瘍の微小環境に浸潤する細胞を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、他の療法の投与との関連における「組み合わせで」という用語は、2つ以上の療法(例えば、抗VISTA抗体および抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤)の使用を指す。「組み合わせで」という用語の使用は、療法が対象に投与される順序または時間を制限しない(例えば、ある療法が別の療法の前、それと同時、またはその後)。第1の療法は、VISTA媒介性疾患、障害、または状態を有していたか、有するか、またはそれらに罹りやすい対象に、第2の療法を投与する前(例えば、1分、45分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、もしくは12週)、それと同時、またはその後(例えば、1分、45分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、もしくは12週)に投与され得る。いかなる追加療法も、あらゆる順序または時間において、他の追加療法(例えば、抗VISTA抗体および抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤)と共に投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1つまたは複数の療法(例えば、VISTA媒介性疾患、障害、または状態を防止、処置、管理、および/または改善するために現在投与されている抗体ではない療法)との組み合わせで投与され得る。抗体との組み合わせで投与され得る療法の非限定的な例としては、共阻害性分子に対するアンタゴニスト、共刺激性分子に対するアゴニスト、化学療法剤、放射線、鎮痛剤、麻酔剤、抗生物質、もしくは免疫調節剤、または米国薬局方および/もしくはPhysician's Desk Referenceに収載されている他のいずれかの薬剤が挙げられる。
【0076】
「単離」抗体とは、その自然な環境の成分から分離されているものである。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動[例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動]またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって決定した場合に、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説については、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照されたい。
【0077】
「単離」核酸とは、その自然な環境の成分から分離されている核酸分子を指す。単離核酸には、核酸分子を通常含有する細胞に含有されている核酸分子が含まれるが、この核酸分子は、染色体外に、またはその自然な染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在する。
【0078】
本明細書で使用される「K」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を意味し、抗原に対する抗体の親和性を測定するための指標として使用される。Kが低いほど、抗原に対する抗体の親和性が高くなることを意味する。
【0079】
本明細書における意図によれば、VISTAなどのバイオマーカーの「レベル」は、癌罹患患者から収集されたサンプルなどのサンプル中のバイオマーカーの定量値からなる。いくつかの実施形態では、定量値は、実際に測定された絶対値からなるものではなく、使用されるアッセイフォーマットによって生じるシグナル対ノイズ比を考慮に入れ、かつ/またはアッセイごとの癌マーカーのレベルの測度の再現性を増加させるために使用される較正参照値を考慮に入れることから得られる最終値からなる。いくつかの実施形態では、VISTAなどのバイオマーカーの「レベル」は、任意単位として表されるが、なぜなら、重要であるのは、同じ種類の任意単位が、(i)アッセイごとに、または(ii)1名の癌罹患患者と他者とで、または(iii)同じ患者について異なる期間に行われたアッセイから、または(iv)患者のサンプル中で測定されたバイオマーカーレベルと既定の参照値(本明細書では「カットオフ」値という場合もある)との間で比較されることであるためである。
【0080】
抗体に関して使用される「軽鎖」という用語は、アミノ末端部分が約100から約110以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を指す。軽鎖のおよその長さは211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)またはラムダ(λ)という2つの異なるタイプがある。軽鎖アミノ酸配列は、当技術分野においてよく知られている。軽鎖はヒト軽鎖であり得る。
【0081】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、ほぼ均質な抗体集団から生じる抗体を意味し、この集団は、ごくわずかな割合で見出され得る、可能性のあるいくつかの天然に存在する突然変異を除いては同一の抗体を含む。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマなどの単一細胞クローンの成長から生じ、1つのクラスおよびサブクラスの重鎖、ならびに1つのタイプの軽鎖によって特徴付けられる。本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体は、抗体が単一の抗原性部位(すなわち、単一のエピトープ)に提示されたとき、それに対する特異的結合を示す。モノクローナル抗体は、対応する技術分野においてよく知られている種々の方法によって生産され得る。
【0082】
核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などといった生物学的材料との関連で使用される場合の「天然」という用語は、自然界に見出され、ヒトによって操作されていないものを指す。
【0083】
本明細書に記載される場合、「PEG化」という用語は、ポリエチレングリコールを前述のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに導入することによって、血液中の抗体の保持時間を増加させるための処理方法を意味する。具体的には、ポリエチレングリコールを用いたポリマーナノ粒子のPEG化によれば、ナノ粒子表面上の親水性が増進され、したがって、外部から導入された病原体、老廃物、および異物の食作用および消化を引き起こすヒトの体内のマクロファージを含む免疫活性による認識を防止する、いわゆるステルス効果のために、生体における急速な分解が防止され得る。そのため、血液中の抗体の保持時間がPEG化によって増加し得る。本開示において用いられるPEG化は、ヒアルロン酸のカルボキシル基とポリエチレングリコールのアミン基との間の結合に基づいてアミド基が形成される方法によって実行され得るが、それに限定されず、PEG化は、種々の方法によって実行され得る。そのとき、使用されるポリエチレングリコールについては、100~1,000の分子量および線状または分岐状の構造を有するポリエチレングリコールが使用されるのが好ましいが、それに特に限定されるものではない。
【0084】
本明細書で使用される場合、核酸またはアミノ酸の2つの配列の間の「同一性パーセンテージ」または「%の同一性」は、最適なアラインメントの後に得られる、比較される2つの配列の間で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを指し、このパーセンテージは純粋に統計的なものであり、2つの配列の間の差異は、それらの長さに沿ってランダムに分布している。2つの核酸またはアミノ酸配列の比較は、従来、配列を最適にアラインした後に配列を比較することによって実行され、前記比較は、セグメントによって、または「アラインメントウィンドウ」を使用することによって実行可能である。比較のための配列の最適なアラインメントは、手作業による比較に加えて、当業者に知られている方法によって実行され得る。
【0085】
参照アミノ酸配列との少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を呈するアミノ酸配列について、好ましい例は、参照配列、ある特定の修飾、とりわけ、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加、もしくは置換、切断、または伸長を含有するものを含む。1つまたは複数の連続的または非連続的なアミノ酸の置換の場合、置換されるアミノ酸が「等価の」アミノ酸によって置き換えられる置換が好ましい。ここで、「等価のアミノ酸」という表現は、構造的アミノ酸のうちの1つの代わりになりながらも対応する抗体の生物学的活性を修飾しないと考えられ、かつ以下に定義される具体例のいずれかのアミノ酸を示すことを意味する。等価のアミノ酸は、それらを置換するアミノ酸との構造的相同性、または生成されると考えられる種々の抗体の間の生物学的活性の比較試験の結果のいずれかについて決定され得る。
【0086】
非限定的な例として、以下の表1に、対応する修飾された抗原結合タンパク質の生物学的活性の著しい修飾をもたらすことなく実行されると考えられる可能性のある置換をまとめる。同じ条件下では逆置換が必然的に可能である。
【0087】
【表1】
【0088】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能」という用語は、動物における、より具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって認可されているか、または米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。より具体的には、担体に言及する場合、「薬学的に許容可能」という表現は、担体が組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントにとって有害ではないことを意味する。したがって、本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」という表現は、生きている生物を刺激することなく、投与される化合物の生物学的活性および特徴を阻害しない担体または希釈剤を指す。担体のタイプは、意図される投与経路に基づいて選択され得る。使用される各担体の量は、当技術分野において従来的な範囲内で異なり得る。溶液として調製される組成物中の薬学的に許容可能な担体として、生理食塩水、滅菌水、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、およびそれらの1つまたは複数の混合物が、生きている生物に好適な滅菌担体として使用され得る。必要であれば、抗酸化剤、緩衝液、および静菌薬のような一般的な添加剤が添加され得る。さらに、希釈剤、分散剤、界面活性物質、結合剤、または滑沢剤をさらに添加することによって、水溶液、懸濁液、およびエマルションのような注射用製剤、丸剤、カプセル、顆粒、または錠剤として組成物を調製することができる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「ポリクローナル抗体」という用語は、1つまたは複数の他の同一でない抗体の中で、またはその存在下で生産された抗体を指す。概して、ポリクローナル抗体は、同一でない抗体を生産する幾つかの他のBリンパ球の存在下で、Bリンパ球から生産される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫動物から直接取得される。
【0090】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」という用語、および他の類似する用語は互換的に使用され、DNA、RNA、mRNAなどを含む。
【0091】
「放射線」という用語は、治療との関連において使用される場合、標的細胞(例えば、癌細胞)を殺傷するために強力なエネルギーのビームを使用する処置のタイプを指す。放射線療法は、X線、プロトン、または外部ビームによって投与される他の形態のエネルギーの使用を含む。放射線療法には、放射性物質の小さな容器が腫瘍中に直接、または腫瘍の近くに埋め込まれる、患者の体内に留置される放射線処置(例えば、近接照射療法)も含まれる。
【0092】
本明細書で使用される「参照値」という用語は、参照サンプルにおける考慮中のバイオマーカー(例えば、VISTA)の発現レベルを指す。本明細書で使用される「参照サンプル」は、疾患を有しないことが知られている対象、好ましくは2以上の対象から、あるいは一般集団から取得されたサンプルを意味する。バイオマーカーの好適な参照発現レベルは、幾つかの好適な対象における前記バイオマーカーの発現レベルを測定することによって決定することができ、そのような参照レベルは、特定の対象集団に合わせて調整することができる。参照値または参照レベルは、絶対値、相対値、上限もしくは下限を有する値、値の範囲、平均値(average value)、中央値、平均値(mean value)、または特定のコントロールもしくはベースライン値と比較された値であり得る。参照値は、例えば、試験される対象のサンプルから取得された値だが、より早い時点で取得された値など、個々のサンプル値に基づき得る。参照値は、暦年齢が一致する群の対象集団などの多数のサンプルに基づく場合もあれば、試験されるサンプルを包含または除外したサンプルのプールに基づく場合もある。
【0093】
本明細書で使用される場合、「副作用」という用語は、療法(例えば、予防剤または治療剤)による不要な作用および有害な作用を包含する。不要な作用は、必ずしも有害とは限らない。療法(例えば、予防剤または治療剤)からの有害作用は、悪影響を及ぼすもの、または不快なもの、またはリスクのあるものであり得る。副作用の例としては、下痢、咳、胃腸炎、喘鳴、悪心、嘔吐、食欲不振、腹部疝痛、発熱、疼痛、体重減少、脱水、脱毛、呼吸困難、不眠、眩暈、粘膜炎、神経および筋肉への影響、疲労、口渇、および食欲喪失、投与部位の発疹または腫脹、発熱、悪寒、および疲労などのインフルエンザ様症状、消化管の問題、ならびにアレルギー反応が挙げられる。患者が経験するさらなる望ましくない作用は数多くあり、当技術分野において知られている。多くはPhysician's Desk Reference (67th ed., 2013)に記載されている。
【0094】
目的の抗原(例えば、VISTA)に特異的に結合する抗体(その抗体フラグメントを含む)を含む液体製剤との関連において本明細書で使用される「安定性」および「安定」という用語は、所定の製造、調製、輸送、および貯蔵条件下での凝集、分解、またはフラグメント化に対する、製剤中の抗体(その抗体フラグメントを含む)の耐性を指す。本開示の「安定」な製剤は、所定の製造、調製、輸送、および貯蔵条件下で生物学的活性を保持する。前記抗体(その抗体フラグメントを含む)の安定性は、参照製剤と比較して、HPSEC、逆相クロマトグラフィー、静的光散乱(SLS)、動的光散乱(DLS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、円偏光二色性(CD)、尿素アンフォールディング技法、内因性トリプトファン蛍光、示差走査熱量測定、および/またはANS結合技法によって測定された、凝集、分解、またはフラグメント化の程度によって評価され得る。例えば、参照製剤は、150mM NaClおよび0.3%ポリソルベート80を含有する25mMヒスチジン(pH6.5)中の、20mg/mlの抗体(その抗体フラグメントを含む)(例えば、配列番号21の重鎖配列、配列番号22の軽鎖配列を含む抗体、ただしこれに限定されない)からなる、-70℃で凍結された参照標準であり得、この参照製剤は、HPSECにより、単一の単量体ピーク(例えば、≧97%面積)を規則的に示す。抗体(その抗体フラグメントを含む)を含む製剤の全体的な安定性は、単離された抗原分子を使用して、例えば、ELISAおよびラジオイムノアッセイを含む種々の免疫学的アッセイによって評価することができる。
【0095】
本明細書に記載される方法に供され得る「対象」は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ、イノシシ属動物(swine)、ヒツジ、およびサルを含む哺乳動物のいずれでもよい。ヒト対象は、患者として知られる場合がある。一実施形態において、「対象」または「を必要とする対象」は、癌に罹患しているか、または癌に罹患している疑いがあるか、または癌と診断されている哺乳動物を指す。本明細書で使用される場合、「癌罹患対象」とは、癌に罹患しているか、または癌と診断されている哺乳動物を指す。「コントロール対象」とは、癌に罹患しておらず、癌に罹患している疑いがない哺乳動物を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「実質的にすべて」は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%を指す。
【0097】
本明細書で使用される場合、「治療剤」という用語は、VISTA媒介性疾患、障害、もしくは状態の1つもしくは複数の症状、および/またはそれらに関連する症状の処置、防止、または軽減を含め、疾患、障害、または状態を処置すること、防止すること、または軽減することにおいて使用され得る、あらゆる薬剤を指す。いくつかの実施形態では、治療剤は、本明細書で提供される抗VISTA抗体を指す。いくつかの実施形態では、治療剤は、本明細書で提供される抗VISTA抗体以外の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、治療剤は、VISTA媒介性疾患、障害、状態の1つもしくは複数の症状、および/またはそれらに関連する症状の処置、防止、または軽減のために有用であることが知られているか、または使用されたことがあるか、または現在使用されている薬剤である。
【0098】
療法(例えば、治療剤の使用)の組み合わせは、いずれか2つ以上の単一療法の相加効果よりも有効であり得る。例えば、治療剤の組み合わせの相乗効果は、薬剤のうちの1つまたは複数をより低い投薬量で使用すること、ならびに/あるいは、VISTA媒介性疾患、障害、もしくは状態、および/またはそれらに関連する症状を有する対象に薬剤をより低い頻度で投与することを可能にする。より低い投薬量の治療法を利用でき、かつ/または療法をより低い頻度で投与できることによって、VISTA媒介性疾患、障害、もしくは状態の1つもしくは複数の症状、および/またはそれらに関連する症状の防止、処置、または軽減における療法の有効性が低減することなく、対象への療法の投与に関連する毒性が低減する。加えて、相乗効果は、VISTA媒介性疾患、障害、もしくは状態の1つもしくは複数の症状、および/またはそれらに関連する症状の防止、処置、または軽減における療法の有効性の向上をもたらし得る。最後に、療法(例えば、治療剤)の組み合わせの相乗効果は、いずれかの単一療法の使用に関連する有害または不要な副作用を回避または低減し得る。
【0099】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、所定の疾患、障害、もしくは状態および/またはそれらに関連する症状の重篤度および/または期間を低減および/または改善するのに十分である、治療剤(例えば、抗VISTA抗体、または、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体などを含む、本明細書に記載されるものなどの他のいずれかの治療剤)の量を指す。治療剤の治療有効量は、所定の疾患、障害、もしくは状態の進展もしくは進行の低減もしくは改善、所定の疾患、障害、もしくは状態の再発、発展、もしくは発生の低減もしくは改善に必要な、かつ/または別の療法(例えば、本明細書に記載されるものなどの抗VISTA抗体の投与以外の療法)の予防効果もしくは治療効果を向上もしくは増進させる量であり得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、「療法」という用語は、VISTA媒介性疾患、障害、または状態の防止、管理、処置および/または改善において使用され得る、あらゆるプロトコール、方法、および/または薬剤を指す。いくつかの実施形態では、「療法(therapies)」および「療法(therapy)」という用語は、医療従事者などの当業者に知られている、VISTA媒介性疾患、障害、または状態の処置、防止および/または改善において有用な生物学的療法、支持療法、および/または他の療法を指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、対象の疾患を「処置すること」または疾患を有する対象を「処置すること」は、疾患の程度が減少するか、または防止されるように、対象に薬物の投与などの薬学的処置を行うことを指す。例えば、処置することは、疾患または状態の少なくとも1つの兆候または症状の低減をもたらす。処置は、医薬組成物などの組成物の投与を含み(ただしこれに限定されない)、予防的に、または病的事象の開始の後に行われ得る。処置は、薬剤および/または処置の2回以上の投与を必要とし得る。いくつかの実施形態では、このような用語は、T細胞活性化の増加から生じる調節である免疫調節に応答した、疾患の進行、重篤度、および/または期間の低減または改善を指す。
【0102】
「腫瘍微小環境」という用語は、腫瘍が存在する細胞環境を指す。腫瘍微小環境は、周囲の血管、免疫細胞、線維芽細胞、骨髄由来炎症性細胞、リンパ球、シグナル伝達分子、および細胞外マトリックスを含み得る。
【0103】
「可変ドメイン」または「可変領域」という用語は、抗体の軽鎖または重鎖の一部分であって、概して軽鎖または重鎖のアミノ末端に位置し、重鎖では約120~130アミノ酸、軽鎖では約100~110アミノ酸の長さを有し、特定の抗原に対する特定の各抗体の結合および特異性において使用される部分を指す。可変ドメインは、異なる抗体の間で配列が大きく異なる。配列の可変性はCDRに集中しており、可変ドメインにおける可変性の低い部分はフレームワーク領域(FR)といわれる。各可変領域は、4つのFRに接続した3つのCDRを含む。軽鎖および重鎖のCDRは、抗体と抗原との相互作用に主に関与している。FRは、抗原結合には直接関与しないが、分子のフォールディング、ひいては抗原との相互作用のために可変領域の表面上に提示されるCDRの量を決定する。いくつかの実施形態では、可変領域は、ヒト可変領域である。
【0104】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは「V」といわれる場合がある。軽鎖の可変ドメインは「V」といわれる場合がある。これらのドメインは、概して、抗体の可変性が最も高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0105】
VISTAまたは抗VISTA抗体に関連して使用される場合の「変異体」という用語は、天然または未修飾の配列と比較して、1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5など)のアミノ酸配列置換、欠失、および/または付加を含むペプチドまたはポリペプチドを指す。例えば、VISTA変異体は、天然VISTAのアミノ酸配列に対する、1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5など)の変化から生じ得る。また、例として、抗抗VISTA抗体の変異体は、天然の、または以前に修飾されていない抗抗VISTA抗体のアミノ酸配列に対する、1つまたは複数(例えば、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、または約1~約5など)の変化から生じ得る。好ましくは、抗VISTA抗体の変異体は、天然の、または以前に修飾されていない抗抗VISTA抗体のアミノ酸配列に対する、1つの変化から生じ得る。いくつかの実施形態では、VISTA変異体または抗VISTA抗体変異体は、それぞれ、VISTAまたは抗VISTA抗体の機能的活性を少なくとも保持する。いくつかの実施形態では、抗VISTA抗体変異体は、CDR内の脱アミドを起こさない。いくつかの実施形態では、抗VISTA抗体変異体は、VISTAに結合し、かつ/またはVISTA活性に対するアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、抗VISTA抗体変異体は、CDR内の脱アミドを起こさず、VISTAに結合し、かつ/またはVISTA活性に対するアンタゴニストである。変異体は、天然に存在するもの、例えば対立遺伝子変異体もしくはスプライス変異体でもよく、または人工的に構築されてもよい。いくつかの実施形態では、変異体は、VISTAまたは抗VISTA抗体のVHもしくはVL領域もしくはサブ領域をコードする核酸分子の一塩基多型(SNP)変異体によってコードされる。ポリペプチド変異体は、変異体をコードする対応する核酸分子から調製され得る。
【0106】
「ベクター」という用語は、宿主細胞に核酸分子を導入するために使用される物質を指す。特に、本明細書で使用される「ベクター」は、連結された別の核酸分子を増殖することが可能な核酸分子である。ベクターの一例は「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二重鎖DNAループを指す。ベクターの別の例は、追加のDNAセグメントがウイルスゲノム内にライゲートされ得るウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自律複製が可能である(例えば、細菌複製起源を有する細菌ベクター、およびエピソーム性の哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性の哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることができ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。したがって、「ベクター」という用語は、自己複製する核酸構造としてのベクターだけでなく、それが導入された宿主細胞のゲノム内に組み込まれるベクターも含む。使用に適したベクターとしては、例えば、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム、および、宿主細胞の染色体への安定な組み込みのために作動可能な選択配列またはマーカーを含み得る人工染色体が挙げられる。
【0107】
ある特定のベクターは、それらが動作可能に連結された遺伝子の発現を指示することが可能である。そのようなベクターを、本明細書では「組換え型発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)という。概して、組換えDNA技法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態にある。プラスミドは最も一般的に使用されている形態のベクターであるため、本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は互換的に使用され得る。しかしながら、本発明は、例えば細菌プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来エピソームなどの形態の発現ベクター、ならびに、目的の抗体(例えば、抗VISTA抗体)の重鎖および/または軽鎖の発現を確実にするために簡便であることが当業者には分かるであろう他のベクターのすべてを含むように意図されている。当業者には、重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドが、異なるベクターまたは同じベクターにクローニングされ得ることが理解されよう。
【0108】
ベクターは、1つまたは複数の選択可能マーカー遺伝子および適切な発現コントロール配列を含み得る。含まれ得る選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質もしくは毒素に対する耐性をもたらすか、栄養要求欠陥を補完するか、または培養培地中にない重要な栄養素を供給する。発現コントロール配列は、当技術分野においてよく知られている構成的プロモーターおよび誘導性プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含み得る。2つ以上の核酸分子が共発現される場合(例えば、抗体の重鎖および軽鎖の両方)、両方の核酸分子が、例えば、単一の発現ベクターに、または別個の発現ベクターに挿入され得る。単一のベクターでの発現の場合、コード核酸は、1つの共通の発現コントロール配列に操作可能に連結されるか、または1つの誘導性プロモーターおよび1つの構成的プロモーターなどの異なる発現コントロール配列に連結されてもよい。宿主細胞への核酸分子の導入は、当技術分野でよく知られている方法を使用して確認することができる。そのような方法としては、例えば、mRNAのノーザンブロットもしくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などの核酸分析、または遺伝子産物の発現についてのイムノブロッティング、または導入された核酸配列もしくはその対応する遺伝子産物の発現を試験するための他の好適な分析方法が挙げられる。当業者には、所望の産物(例えば、本明細書で提供される抗VISTA抗体)を生産するのに十分な量で核酸分子が発現されることが理解され、さらに、当技術分野でよく知られている方法を使用して、十分な発現が得られるように発現レベルを最適化できることが理解される。
【0109】
「VISTA」または「VISTAポリペプチド」という用語、および類似する用語は、ヒト第10染色体オープンリーディングフレーム54(VISTA)遺伝子によってコードされるポリペプチドを指し(「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書では互換的に使用される)、VISTA遺伝子は、当技術分野ではB7-H5、血小板受容体Gi24、GI24、ストレス誘導性分泌型タンパク質1、SISP1、およびPP2135としても知られ、例えば、
1 mgvptaleag swrwgsllfa lflaaslgpv aafkvatpys lyvcpegqnv tltcrllgpv
61 dkghdvtfyk twyrssrgev qtcserrpir nltfqdlhlh hgghqaants hdlaqrhgle
121 sasdhhgnfs itmrnltlld sglycclvve irhhhsehrv hgamelqvqt gkdapsncvv
181 ypsssqdsen itaaalatga civgilclpl illlvykqrq aasnrraqel vrmdsniqgi
241 enpgfeaspp aqgipeakvr hplsyvaqrq psesgrhlls epstplsppg pgdvffpsld
301 pvpdspnfev i(配列番号1)
のアミノ酸配列、および、そのSNP変異体を含め、関連するポリペプチドを含む。VISTAポリペプチドは、アミノ酸配列内に、シグナル配列[残基1~32;Zhang et al., Protein Sci. 13:2819-2824 (2004)を参照されたい]、免疫グロブリンドメインIgV様(残基33~162)、および膜貫通領域(残基195~215)を含む、幾つかの異なる領域を含むことが示されているか、または予測されている。成熟VISTAタンパク質は、配列番号1のアミノ酸残基33~311を含む。VISTAタンパク質の細胞外ドメインは、配列番号1のアミノ酸残基33~194を含む。関連するポリペプチドには、対立遺伝子変異体(例えば、SNP変異体)、スプライス変異体、フラグメント、誘導体、置換変異体、欠失変異体、および挿入変異体、融合ポリペプチド、ならびに、好ましくは、VISTA活性を保持し、かつ/または抗VISTA免疫応答を生成するのに十分である、種間ホモログが含まれる。VISTAは、天然形態でも変性形態でも存在し得る。本明細書に記載されるVISTAポリペプチドは、様々な供給源から、例えばヒト組織型もしくは別の供給源から単離されてもよく、または組換え方法もしくは合成方法によって調製されてもよい。「天然配列VISTAポリペプチド」は、自然界に由来する対応するVISTAポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。そのような天然配列VISTAポリペプチドは、自然界から単離されてもよく、または組換え手段もしくは合成手段によって生産されてもよい。「天然配列VISTAポリペプチド」という用語は、特定のVISTAポリペプチドの天然に存在する切断形態または分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、当該ポリペプチドの天然に存在する変異体形態(例えば、選択的スプライス形態)、および天然に存在する対立遺伝子変異体を具体的に包含する。
【0110】
VISTAポリペプチドをコードするcDNA核酸配列は、例えば、
1 atgggcgtcc ccacggccct ggaggccggc agctggcgct ggggatccct gctcttcgct
61 ctcttcctgg ctgcgtccct aggtccggtg gcagccttca aggtcgccac gccgtattcc
121 ctgtatgtct gtcccgaggg gcagaacgtc accctcacct gcaggctctt gggccctgtg
181 gacaaagggc acgatgtgac cttctacaag acgtggtacc gcagctcgag gggcgaggtg
241 cagacctgct cagagcgccg gcccatccgc aacctcacgt tccaggacct tcacctgcac
301 catggaggcc accaggctgc caacaccagc cacgacctgg ctcagcgcca cgggctggag
361 tcggcctccg accaccatgg caacttctcc atcaccatgc gcaacctgac cctgctggat
421 agcggcctct actgctgcct ggtggtggag atcaggcacc accactcgga gcacagggtc
481 catggtgcca tggagctgca ggtgcagaca ggcaaagatg caccatccaa ctgtgtggtg
541 tacccatcct cctcccagga tagtgaaaac atcacggctg cagccctggc tacgggtgcc
601 tgcatcgtag gaatcctctg cctccccctc atcctgctcc tggtctacaa gcaaaggcag
661 gcagcctcca accgccgtgc ccaggagctg gtgcggatgg acagcaacat tcaagggatt
721 gaaaaccccg gctttgaagc ctcaccacct gcccagggga tacccgaggc caaagtcagg
781 caccccctgt cctatgtggc ccagcggcag ccttctgagt ctgggcggca tctgctttcg
841 gagcccagca cccccctgtc tcctccaggc cccggagacg tcttcttccc atccctggac
901 cctgtccctg actctccaaa ctttgaggtc atctag(配列番号2)
を含む。
【0111】
VISTAは主に、骨髄系細胞集団、特に骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、好中球、単球、マクロファージ、および樹状細胞において発現される。VISTAは、制御性T細胞およびCD4ナイーブTリンパ球においても発現され得る。本明細書に記載されるように、VISTAは、免疫応答のネガティブチェックポイント制御因子である(例えば、免疫応答を阻害または抑制する)免疫調節剤である。VISTAは、T細胞機能のネガティブチェックポイント制御因子として特定されており、自己免疫の様々なヒトおよびマウスモデルにおいて自己免疫応答を抑制することが知られている。VISTAは、特に、腫瘍発生を促進し、T細胞機能を遮断し、マクロファージおよび免疫抑制性骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の活性を調節することが示されている。VISTAは、阻害性制御性T細胞(Treg)およびMDSCなどの免疫抑制性腫瘍浸潤白血球において上方制御される。腫瘍微小環境内のVISTAの存在は、有効なT細胞応答を妨げ、前立腺癌、結腸癌、皮膚癌、膵臓癌、および肺癌を含め、ヒトにおける複数の癌に関係付けられている[ElTanbouly et al. Clin Exp Immunol. 200(2):120-130 (2020)、Mehta et al. Sci Rep. 10(1):1 5171 (2020)、Yuan et al. Trends Immunol. 42(3): 209-227 (2021)、Tagliamento et al. Immunotargets Ther. 10: 185-200 (2021)、Thakkar et al. J Immunother Cancer. 10(2): e003382 (2022)、WO2015/097536、WO2016/094837、WO2017/181139、WO2019/183040]。
【0112】
VISTAポリペプチドに対するオルソログについても、当技術分野ではよく知られている。例えば、VISTAポリペプチドに対するマウスオルソログは、ヒトポリペプチドとおよそ70%の配列同一性を共有する、T細胞活性化のV領域免疫グロブリン含有サプレッサー(VISTA:V-region Immunoglobulin-containing Suppressor of T cell Activation)である(PD-L3、PD-1H、PD-XL、Pro1412およびUNQ730としても知られている)。VISTAのオルソログは、チンパンジー、ウシ、ラット、およびゼブラフィッシュを含む、さらなる生物においても見出され得る。
【0113】
「VISTA発現細胞」、「VISTAの発現を有する細胞」、またはそれらの文法的均等物は、内因性のまたはトランスフェクトされたVISTAを細胞表面に発現する細胞を指す。VISTA発現細胞としては、VISTA保有腫瘍細胞、制御性T細胞(例えば、CD4Foxp3制御性T細胞)、骨髄系由来サプレッサー細胞(例えば、CD11bもしくはCD11bhigh骨髄系由来サプレッサー細胞)、および/または抑制性樹状細胞(例えば、CD11bもしくはCD11bhigh樹状細胞)が挙げられる。VISTAを発現する細胞は、抗VISTA抗体がそれに結合でき、かつ/またはPSGL-1もしくはPSGL-1を発現する細胞がそれに結合できるように、その表面上で十分なレベルのVISTAを生産する。いくつかの態様では、そのような結合の阻害または遮断が治療効果を有し得る。VISTAを「過剰発現する」細胞は、その細胞表面において、VISTAを発現することが知られている同じ組織型の細胞と比較して有意に高いレベルのVISTAを有するものである。そのような過剰発現は、遺伝子増幅または転写もしくは翻訳の増加によって引き起こされ得る。VISTAの過剰発現は、診断アッセイまたは予後予測アッセイにおいて、細胞の表面上に存在するVISTAタンパク質のレベル上昇を(例えば、免疫組織化学アッセイ、FACS分析を介して)評価することによって決定され得る。あるいは、またはさらに、細胞内のVISTAをコードする核酸またはmRNAのレベルを、例えば蛍光インサイツ(in situ)ハイブリダイゼーション(FISH;1998年10月に公開されたW098/45479を参照のこと)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法[リアルタイム定量PCR(RT-PCR)など]を介して測定してもよい。当業者には、上記アッセイの他に、種々のインビボアッセイが利用可能である。例えば、検出可能な薬剤で標識されていてもよい抗体に、患者の体内の細胞を曝露してもよく、患者の細胞に対する抗体の結合を、例えば、放射活性についての外部走査によって、または抗体に以前に曝露された患者から採取された生検を分析することによって、評価することができる。VISTA発現腫瘍細胞は、急性骨髄球性白血病(AML)腫瘍細胞を含むが、これに限定されない。
【0114】
「VISTA媒介性疾患」、「VISTA媒介性障害」、および「VISTA媒介性状態」は、互換的に使用され、VISTAによって完全にもしくは部分的に引き起こされるか、またはVISTAの結果である、あらゆる疾患、障害、または状態を指す。そのような疾患、障害、または状態としては、VISTA発現細胞[例えば、腫瘍細胞、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、抑制性樹状細胞(抑制性DC)、および/または制御性T細胞(T-reg)]によるもの、またはそれらに関連するものを含め、VISTAによって引き起こされるもの、または別様にVISTAに関連するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、VISTAは、細胞の表面上で異常に(例えば、高度に)発現される。いくつかの実施形態では、VISTAは、特定の細胞型において異常に上方制御され得る。他の実施形態では、正常、異常、または過剰な細胞シグナル伝達が、VISTAと結合するかまたは別様に相互作用することのできるVISTA受容体(例えば、PSGL-1、VSIG3、VSIG8、またはLRIG1)に対するVISTAの結合によって引き起こされる。好ましくは、本明細書で使用される「VISTA媒介性疾患」は、増殖がVISTAの活性に関連する腫瘍(すなわち、「VISTA媒介性腫瘍」)を指す。例えば、腫瘍微小環境中に存在する細胞、例えばMDSCにおけるVISTAの発現は、腫瘍に対する免疫応答の抑制をもたらし得る。特定の事例において、腫瘍微小環境中に存在する細胞、例えばMDSCにおけるVISTAの発現は、T細胞免疫(CD4およびCD8T細胞免疫)の抑制ならびに/または炎症誘発性サイトカインの発現の防止をもたらし得る。とりわけ、CD4および/またはCD8T細胞の増殖が阻害され得る。IFNγ、IL-2、またはTNFαなどのサイトカインの発現が防止され得る。特定の態様において、これらの効果は、腫瘍微小環境中に存在する細胞、例えばMDSCにおいて発現されたVISTAが、T細胞などの免疫細胞または腫瘍細胞において発現されるPSG-L1、VSIG3、VSIG8、またはLRIG1などの受容体と相互作用することによって媒介される。
【0115】
抗VISTA抗体
免疫チェックポイントは、生理的条件下で自己寛容を維持し、免疫媒介性組織損傷を制限するうえで、非常に重要な役割を果たす。VISTAは、造血コンパートメントにおいて高度に発現されるB7関連免疫グロブリンスーパーファミリーに属するI型膜貫通タンパク質である。VISTAは、リガンドおよび受容体の両方として作用し、CD4およびCD8T細胞の増殖ならびに炎症誘発性サイトカイン(例えば、IFNγ、TNFα、またはIL-2)の生産を阻害することによって、T細胞活性化を負に制御する。
【0116】
VISTA免疫抑制を阻害し、それによって抗腫瘍免疫応答を増進することが可能なモノクローナル抗体Ab3が、WO2016/094837に記載されている。この抗体のCDRSは配列番号3~8によって表され、VおよびVはそれぞれ配列番号9および配列番号10によって表される。Ab3の完全な重鎖は、配列番号11によって表される配列を有し、Ab3の完全な軽鎖は、配列番号12によって表される配列を有する。
【0117】
抗体Ab3の完全な配列は、それが11の潜在的な脱アミド部位を含有することを示す。これらの部位はすべて妥当な脱アミド部位であると予測されるが、本発明者らは、それらのうちただ1つ、すなわち、重鎖のCDR2内の55位におけるAsn残基が、実際に脱アミドの対象であることを見出した。驚くべきことに、このAsnをAsp残基によって置き換えても、Ab3のその標的に対する結合に影響はなく、これは、CDRにおける同様の突然変異が、対応するCD52抗原に対する親和性を400分の1に減少させたという先行技術の教示(Liu et al., 2022)とは著しく異なる。さらに、この突然変異型抗体は、VISTAと、PSG-L1およびVSIG3というその2つの結合パートナーの各々との間の相互作用(前記相互作用は、T細胞機能の阻害をもたらす)を遮断することが可能であるため、VISTA免疫阻害活性を阻害する能力を保持する。したがって、この突然変異型抗体は、インビボの腫瘍増殖を阻害する。
【0118】
第1の態様において、本開示は、新規の抗VISTA抗体を提供し、この抗体は、重鎖のCDR2におけるAsnのAspによる置換を含む。
【0119】
本明細書で使用される抗VISTAモノクローナル抗体は、合成抗体、組換え生産された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のもののいずれかの機能的フラグメントを含むが、これらに限定されない。抗VISTAモノクローナル抗体は、ヒト由来でも非ヒト由来でもよい。非ヒト由来の抗VISTA抗体の例は、哺乳動物由来(例えば、サル、齧歯動物、ヤギ、およびウサギ)のものを含むが、これに限定されない。ヒト抗体のあらゆる構造がヒトを起源とするため、従来のヒト化抗体またはマウス抗体と比較して免疫応答が生じる確率は非常に低く、したがって、ヒトに投与された際に望ましくない免疫応答を引き起こさないという利点がある。したがって、処置用の抗体として非常に有利に使用され得る。したがって、ヒトにおける治療的使用のための抗VISTAモノクローナル抗体は、好ましくはヒト化されているか、または完全にヒトのものである。より好ましくは、それらはヒト化されている。
【0120】
本明細書で開示される抗体は、抗原に対して抗体Ab3と実質的に同じ親和性を持つ抗体である。「親和性」という用語は、特定の抗原部位を特異的に認識してそれに結合する特性を意味し、高い親和性は、抗原に対する抗体の特異性と併せて、免疫反応における重要な因子である。本件において、本開示の抗体の親和性は、競合ELISAによって決定され得る。この方法以外に、抗原に対する親和性を測定するための種々の方法を用いることができ、表面プラズモン共鳴技術は、そうした方法の一例である。
【0121】
VISTAが特異的に認識され得る範囲内で、本明細書で開示されるモノクローナル抗体は、本明細書に記載される本発明の抗VISTA抗体の配列だけでなく、その生物学的均等物も含み得、この生物学的均等物は、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特徴の向上を示す。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特徴をさらに向上させるために、抗体のアミノ酸配列に対してさらなる変更を行うことができる。これらの修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列の欠失、挿入、および/または置換が含まれる。こうしたアミノ酸の修飾は、アミノ酸の側鎖置換基における相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいて行われる。アミノ酸の側鎖置換基のサイズ、形状、およびタイプの分析に基づいて、アルギニン、リジン、およびヒスチジンはすべて正の電荷を有する残基であり、アラニン、グリシン、およびセリンは同様のサイズを有し、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは同様の形状を有することが見出される。したがって、これらの検討事項に基づけば、生物学的に、アルギニン、リジン、およびヒスチジン;アラニン、グリシン、およびセリン;ならびにフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、機能的均等物であると言うことができる。
【0122】
ある実施形態において、本明細書に記載される抗VISTAモノクローナル抗体は、完全長抗体、多重鎖抗体または一本鎖抗体、VISTAに選択的に結合するかかる抗体のフラグメント[Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、およびscFvを含むがこれらに限定されない]、サロボディ(surrobodies)(サロゲート軽鎖コンストラクトを含む)、シングルドメイン抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体などの形態であり得る。これらは、例えば、IgA(例えば、Ig1lもしくはIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4)、またはIgMを含む、いずれかのアイソタイプのものであるか、またはそれに由来してもよい。いくつかの実施形態では、抗VISTA抗体は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)である。ある実施形態において、抗体は、ヒト定常領域をさらに含む。さらなる実施形態において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群から選択される。なおもさらなる特定の実施形態において、ヒト定常領域はIgG1である。さらに、重鎖定常領域には、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、およびイプシロン(ε)のタイプがあり、サブクラスとしては、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)、およびアルファ2(α2)がある。軽鎖定常領域には、カッパ(κ)およびラムダ(λ)のタイプがある。
【0123】
本開示との関連では、ヒトIgG1定常領域を含む抗体が特に好ましい。これらは、抗体Ab3と同じ親和性でVISTAに結合するだけでなく、VISTA免疫抑制効果を阻害することも可能である。驚くべきことに、この活性には抗体のエフェクター機能が必要であり、これは、抗VISTA抗体Ab3に関してはこれまでに実証されていない。
【0124】
好ましくは、本明細書で開示される抗VISTA抗体は、配列番号21の配列の重鎖および配列番号22の配列の軽鎖を含む。
【0125】
この抗体は、55位にAspを含む故に脱アミドの対象とならないため、抗体Ab3と比べて、より安定かつより均質である。加えて、この抗体は、抗体Ab3と同じ親和性を有し、VISTA免疫抑制活性を阻害する。この阻害は、特に、VISTAと、その結合パートナーであるPSG-L1およびVSIG-3の各々との間の相互作用の妨害の結果である。これに対し、抗体Ab3がこれらの相互作用に干渉することを示すものはない。さらに、VISTA免疫抑制の阻害は、驚くべきことに、本明細書で開示される抗体のエフェクター機能を必要とする。
【0126】
抗VISTA抗体は、診断用途において有用な標識抗体を含む。この抗体は、例えば、特定の細胞、組織、もしくは血清中の目的の標的の発現を検出するために、または、例えば所定の処置レジメンの有効性を決定するための臨床試験手順の一環として免疫学的応答の発生もしくは進行をモニタリングするために、診断において使用され得る。検出は、検出可能な物質または「標識」に抗体をカップリングすることによって容易になり得る。標識は、本開示の抗VISTA抗体に直接的または間接的にコンジュゲートされ得る。標識は、それ自体が検出可能でもよく(例えば、ラジオアイソトープ標識、アイソトープ標識、もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合には、検出可能である基質化合物もしくは組成物の化学的改変を触媒してもよい。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、種々のポジトロン放出断層撮影を使用するポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は、当技術分野で知られている技法を使用して、抗体(またはそのフラグメント)に直接的に、または中間体(例えば、当技術分野で知られているリンカーなど)を介して間接的に、カップリングまたはコンジュゲートされ得る。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、またはフィコエリトリンなどが挙げられ、発光材料の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、好適なアイソトープ材料の例としては、13C、15N、および重水素が挙げられ、好適な放射性材料の例としては、125I、131I、111In、または99Tcが挙げられる。
【0127】
二重特異性抗体
加えて、本開示は、本明細書で開示されるモノクローナル抗VISTA抗体またはその抗原結合フラグメントを含む多重特異性抗体を提供する。
【0128】
本発明における上記の多重特異性抗体は、好ましくは二重特異性抗体であり得るが、それに限定されない。
【0129】
本発明に係る多重特異性抗体は、好ましくは、本明細書に記載される抗VISTA抗体が、免疫エフェクター細胞特異的標的分子に対する結合特性を有する抗体、またはそのフラグメントに結合している形態を有する。免疫エフェクター細胞特異的標的分子は、好ましくは免疫チェックポイントであるが、それに限定されない。免疫エフェクター細胞特異的標的分子の例としては、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、TIGIT、BTLA、KIR、A2aR、VSIG4、B7-H3、TCR/CD3、CD16(FcγRIIIa)CD44、Cd56、CD69、CD64(FcγRI)、CD89、およびCD11b/CD18(CR3)が挙げられる。
【0130】
多重特異性抗体は、同じ抗原の異なる複数の(2つ以上の)エピトープまたは2つ以上の別個の抗原を同時に認識することができる抗体であり、多重特異性抗体に属する抗体は、scFvベースの抗体、Fabベースの抗体、IgGベースの抗体などと分類され得る。多重特異性、例えば二重特異性抗体の場合、2つのシグナルが同時に抑制または増幅され得るため、1つのシグナルが抑制/増幅される場合よりも有効であり得る。各シグナルが各々に対するシグナル阻害剤によって処置される場合と比較して、低用量投与を達成することができ、2つのシグナルを同じ空間で同時に抑制/増幅することができる。
【0131】
二重特異性抗体を生産するための方法は広く知られている。従来、二重特異性抗体の組換え生産は、2つの重鎖が異なる特異性を有する条件下での、2つの免疫グロブリンの重鎖/軽鎖のペアの共発現に基づく。
【0132】
scFvベースの二重特異性抗体の場合、異なるscFvのVLおよびVHを組み合わせることにより、scFvベースのハイブリッドがヘテロ二量体形態で調製されてダイアボディとなり(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,90:6444, 1993)、異なるscFvを互いに接続することにより、タンデムScFvが生産され得る。各scFvの末端でFabのCH1およびCLを発現することにより、ヘテロ二量体のミニ抗体が生産され得る(Muller et al., FEBS lett., 432:45, 1998)。加えて、Fcのホモ二量体ドメインとしてCH3ドメインの部分的なアミノ酸を置換することにより、ヘテロ二量体構造が作られるように「ノブ・イントゥ・ホール(knob into hole)」形態への構造変化が生じ、これらの修飾されたCH3ドメインが、異なる各scFvの末端で発現され、したがってヘテロ二量体scFv形態のミニボディが生産され得る(Merchant et al., Nat. Biotechnol., 16:677, 1998)。
【0133】
Fabベースの二重特異性抗体の場合、ジスルフィド結合またはメディエーターを利用することによる特定の抗原に対する別個のFab’の組み合わせに従って、ヘテロ二量体Fab形態の抗体を生産することができ、特異的Fabの重鎖または軽鎖の末端において、異なる抗原に対するscFvを発現させることにより、2の抗原結合価を得ることができる。加えて、FabとscFvとの間にヒンジ領域を有することにより、ホモ二量体形態において4の抗原結合価を得ることができる。加えて、関連技術分野では、Fabの軽鎖末端および重鎖末端における異なる抗原に対するscFvの融合によって3の抗原結合価が得られる二重標的バイボディ(bibody)、Fabの軽鎖末端および重鎖末端に対する異なるscFvの融合によって3の抗原結合価が得られる三重標的バイボディ、ならびに3つの異なるFabの化学的融合によって得られる単純な形態の三重標的抗体F(ab’)を生産する方法が知られている。
【0134】
IgGベースの二重特異性抗体の場合、マウスおよびラットハイブリドーマの再ハイブリダイゼーションに基づく、ハイブリッドハイブリドーマ、いわゆるクアドローマを調製することによって、二重特異性抗体を生産する方法が、Trion Pharmaによって公知である。加えて、異なる重鎖におけるFcのCH3ホモ二量体ドメインの部分的なアミノ酸が修飾されているが軽鎖部分は共通する、いわゆる「ホール・アンド・ノブ(Holes and Knob)」形態の二重特異性抗体を生産する方法が知られており(Merchant et al., Nat. Biotechnol., 16:677, 1998)、ヘテロ二量体形態の二重特異性抗体以外には、可変ドメインではなくIgGの軽鎖および重鎖の定常ドメインに2つの異なるscFvを融合させた後に発現させることによる、ホモ二量体形態の(scFv)-IgGを生産する方法が知られている。さらに、ヒトVEGFR-2に対するキメラモノクローナル抗体としてのIMC-1C11に基づいて、マウス血小板由来成長因子受容体αに対する単一の可変ドメインのみが抗体の軽鎖のアミノ末端に融合することで、二重特異性抗体が生産されることが、ImClone Systemsによって報告されている。さらに、タンパク質キナーゼA(PKA)Rサブユニットの二量化・ドッキングドメイン(DDD:dimerisation and docking domain)およびPKAのアンカードメインを使用する、いわゆる「ドック・アンド・ロック(DNL:dock and lock)」法に基づく、CD20に対する高い抗原結合価を有する抗体がRossiらによって報告されている(Rossi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 103:6841, 2006)。
【0135】
抗体誘導体
本発明の抗VISTA抗体は、当技術分野において知られており、容易に利用可能である、追加の非タンパク質性部位を含有するようにさらに修飾され得る。特に、本明細書には、診断および治療の用途で使用するための、誘導体化された、共有結合性に修飾された、または他の分子にコンジュゲートされた、抗VISTAモノクローナル抗体が含まれる。限定ではないが、例えば、誘導体化された抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合などによって修飾されている抗体を含む。数多くある化学修飾のいずれもが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含むがこれらに限定されない、公知技法によって実行され得る。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0136】
特に、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体が投与される生体における滞留時間を延長するために、とりわけグリコシル化および/またはPEG化などによる、上述のような誘導体化に供され得る。
【0137】
グリコシル化および/またはPEG化に関しては、本発明の抗体の機能が維持される限り、グリコシル化および/またはPEG化の種々のパターンが、当技術分野でよく知られている方法によって修飾されてよく、本発明の抗体には、グリコシル化および/もしくはPEG化の種々のパターンが修飾された変異体モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントが含まれる。
【0138】
好ましくは、抗体の誘導体化に好適な部位は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-l,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、分岐状でも非分岐状でもよい。抗体に結合しているポリマーの数は様々であり得、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じ分子でも異なる分子でもよい。概して、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、向上させようとする抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定条件下の療法において使用されるかどうかなどを含むがこれらに限定されない検討事項に基づいて決定され得る。
【0139】
特定の例において、本開示の抗VISTA抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部位に結合していてもよい。特定の実施形態において、本抗体は抗体フラグメントであり、PEG部位が、抗体フラグメント中に位置するいずれかの利用可能なアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基、例えばいずれかの自由なアミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル、またはカルボキシル基を介して結合している。そのようなアミノ酸は、抗体フラグメント中で自然に発生してもよいし、または組換えDNA法を使用してフラグメント中にエンジニアリングされてもよい。例えば、米国特許第5,219,996号を参照されたい。2つ以上のPEG分子を結合させるには、複数の部位を使用することができる。PEG部位は、抗体フラグメント中に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合していてもよい。チオール基が結合点として使用される場合、適切に活性化されたエフェクター部位、例えばマレイミドおよびシステイン誘導体などのチオール選択性誘導体を使用することができる。
【0140】
特定の例において、抗VISTA抗体コンジュゲートは、PEG化されている、すなわち、PEG[ポリ(エチレングリコール)]が、例えばEP0948544において開示されている方法によって共有結合している、修飾型Fab’フラグメントである。Poly(ethyleneglycol) Chemistry, Biotechnical and Biomedical Applications, (J. Milton Harris (ed.), Plenum Press, New York, 1992)、Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications, (J. Milton Harris and S. Zalipsky, eds., American Chemical Society, Washington D.C., 1997)、およびBioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences, (M. Aslam and A. Dent, eds., Grove Publishers, New York, 1998)、およびChapman, 2002, Advanced Drug Delivery Reviews 54:531-545も参照されたい。PEGは、ヒンジ領域内のシステインに結合していてもよい。一例において、PEG修飾型Fab’フラグメントは、修飾されたヒンジ領域における単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。マレイミド基には、リジン残基が共有結合していてもよく、リジン残基のアミン基の各々には、およそ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーが結合していてもよい。したがって、Fab’フラグメントに結合したPEGの総分子量は、およそ40,000Daであり得る。
【0141】
別の実施形態では、抗体と、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク質性部位とのコンジュゲートが提供される。一実施形態において、非タンパク質性部位はカーボンナノチューブである[Kam et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005)]。放射線は、いかなる波長のものでもよく、通常の細胞を害することはないが、抗体-非タンパク質性部位の近位にある細胞が殺傷される温度まで非タンパク質性部位を加熱する波長を含むが、これに限定されない。
【0142】
イムノコンジュゲート
別の態様において、本開示は、本明細書に記載される抗VISTA抗体を含み、前記抗体が、細胞傷害剤にコンジュゲートされている、イムノコンジュゲート(互換的に「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」ともいう)を提供する。
【0143】
多くの細胞傷害剤が単離および合成されており、これらは、細胞増殖を阻害すること、または、決定的にではないにせよ少なくとも有意に、腫瘍細胞を破壊もしくは低減することを可能にする。しかしながら、これらの薬剤の毒性活性は、腫瘍細胞に限定されず、非腫瘍細胞も影響を受け、破壊される場合がある。より具体的には、造血細胞、または上皮細胞、特に粘膜細胞など、急速に再生する細胞において副作用が観察される。腫瘍細胞に対する高い細胞傷害性を保持しながら正常細胞に対する副作用を制限するために、イムノコンジュゲートは、癌の処置における細胞傷害剤の局所的デリバリーのために使用されている[Lambert, J. (2005) Curr. Opinion in Pharmacology 5:543-549、Wu et al (2005) Nature Biotechnology 23(9): 1137-1146、Payne, G. (2003) i 3:207-212、Syrigos and Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614、Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drug Deliv. Rev. 26:151-172、米国特許第4,975,278号]。イムノコンジュゲートは、腫瘍への薬物部位(すなわち、細胞傷害剤)の標的を定めたデリバリー、およびその中での細胞内蓄積を可能にするが、コンジュゲートされていない薬物の全身投与は、排除されることが求められる腫瘍細胞だけでなく、正常細胞に対しても許容不可能なレベルの毒性をもたらし得る[Baldwin et al, Lancet (Mar. 15, 1986) pp. 603-05、Thorpe (1985) "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review," in Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications (A. Pinchera et al., eds) pp. 475-506]。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方が、これらの戦略において有用なものとして報告されている[Rowland et al., (1986) Cancer Immunol. Immunother. 21 :183-87]。
【0144】
本明細書で開示されるイムノコンジュゲートにおいて使用される細胞傷害剤は、限定されるものではないが、薬物(すなわち、「抗体-薬物コンジュゲート」)、毒素(すなわち、「免疫毒素」または「抗体-毒素コンジュゲート」)、ラジオアイソトープ(すなわち、「ラジオイムノコンジュゲート」または「抗体-ラジオアイソトープコンジュゲート」)などであり得る。
【0145】
好ましくは、イムノコンジュゲートは、少なくとも薬物または医薬品に連結された結合タンパク質である。そのようなイムノコンジュゲートは、結合タンパク質が抗体またはその抗原結合フラグメントである場合、通常、抗体-薬物コンジュゲート(または「ADC」)といわれる。
【0146】
第1の実施形態において、そのような薬物は、それらの作用様式に関して記述され得る。非限定的な例として、アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、オキサゾフォリン、アジリジンまたはイミン-エチレン、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗血管新生剤、抗エストロゲン薬、抗アンドロゲン薬、キレート剤、鉄吸収刺激薬、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、DNA阻害剤、DNA合成阻害剤、アポトーシス刺激薬、チミジル酸阻害剤、T細胞阻害剤、インターフェロンアゴニスト、リボヌクレオシド三リン酸レダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、エストロゲン受容体アンタゴニスト、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、タキサン、チューブリン阻害剤、血管新生阻害剤、マクロファージ刺激薬、ニューロキニン受容体アンタゴニスト、カンナビノイド受容体アゴニスト、ドーパミン受容体アゴニスト、顆粒球刺激因子アゴニスト、エリスロポエチン受容体アゴニスト、ソマトスタチン受容体アゴニスト、LHRHアゴニスト、カルシウム増感剤、VEGF受容体アンタゴニスト、インターロイキン受容体アンタゴニスト、破骨細胞阻害剤、ラジカル形成刺激薬、エンドセリン受容体アンタゴニスト、ビンカアルカロイド、抗ホルモン薬もしくは免疫調節剤、または細胞傷害性物質もしくは毒素の活性基準を満たす他のいずれかの新薬を挙げることができる。
【0147】
そのような薬物は、例えば、VIDAL 2010において、癌腫学および血液学のコラム「Cytotoxics」に付随する化合物に充てられたページに挙げられており、この文書を参照することで引用されるこれらの細胞傷害性化合物は、好ましい細胞傷害剤としてここに挙げられる。
【0148】
限定されるものではないが、より具体的には、本発明によれば次の薬物が好ましい:メクロレタミン、クロラムブコール(chlorambucol)、メルファラン、クロリドレート(chlorhydrate)、ピポブロメン(pipobromen)、プレドニムスチン、リン酸二ナトリウム(disodic-phosphate)、エストラムスチン、シクロホスファミド、アルトレタミン、トロホスファミド、スルホホスファミド、イホスファミド、チオテパ、トリエチレンアミン、アルテトラミン(altetramine)、カルムスチン、ストレプトゾシン、ホテムスチン、ロムスチン、ブスルファン、トレオスルファン、インプロスルファン、ダカルバジン、シスプラチナム、オキサリプラチン、ロバプラチン、ヘプタプラチン、ミリプラチン水和物、カルボプラチン、メトトレキセート、ペメトレキセド、5-フルオルウラシル、フロクスウリジン、5-フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン(6-MP)、ネララビン、6-チオグアニン(6-TG)、クロロデスオキシアデノシン(chlorodesoxyadenosine)、5-アザシチジン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシン、テガフール、ペントスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミスラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、バルルビシン、アムルビシン塩酸塩、ピラルビシン、酢酸エリプチニウム、ゾルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびテニポシド、ラゾキシン、マリマスタット、バチマスタット、プリノマスタット、タノマスタット、イロマスタット、CGS-27023A、ハロフジノン、COL-3、ネオバスタット、サリドマイド、CDC501、DMXAA、L-651582、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インターフェロン-アルファ、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンジオスタチン、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、フルタミド、ニルタミド、スプリロノラクトン(sprironolactone)、酢酸シプロテロン、フィナステリド、シミチジン、ボルテゾミド、ベルケイド、ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、フルベストラン、エキセメスタン、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レチノイド、レキシノイド、メトキシサレン、アミノレブリン酸メチル、アルデスロイキン、OCT-43、デニロイキンジフリトクス(denileukin diflitox)、インターロイキン-2、タソネルミン、レンチナン、シゾフィラン、ロキニメックス、ピドチモド、ペガデマーゼ、チモペンチン、ポリI:C、プロコダゾール、チックBCG(Tic BCG)、コリネバクテリウム・パルバム(corynebacterium parvum)、NOV-002、ウクレイン(ukrain)、レバミソール、1311-chTNT、H-101、セルモロイキン、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、インターフェロンガンマ1a、インターロイキン-2、モベナキン、レキシンG、テセロイキン、アクラルビシン、アクチノマイシン、アルグラビン、アスパラギナーゼ、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダウノマイシン、ロイコボリン、マソプロコール、ネオカルジノスタチン、ペプロマイシン、サルコマイシン、ソラマルギン、トラベクテジン、ストレプトゾシン、テストステロン、クネカテキン、シネカテキン、アリトレチノイン、ベロテカン塩酸塩、カルステロン、ドロモスタノロン、酢酸エリプチニウム、エチニルエストラジオール、エトポシド、フルオキシメステロン、ホルメスタン、ホスフェトロール、酢酸ゴセレリン、アミノレブリン酸ヘキシル、ヒストレリン、ヒドロキシプロゲステロン、イクサベピロン、ロイプロリド、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲステロール(megesterol acetate)、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、ミルテホシン、ミトブロニトール、フェニルプロピオン酸ナドロロン、酢酸ノルエチンドロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、テムシルロリムス(temsirrolimus)、テストラクトン、トリアムコノロン(triamconolone)、トリプトレリン、酢酸バプレオチド、ジノスタチンスチマラマー、アムサクリン、三酸化ヒ素、ビサントレン塩酸塩、クロラムブシル、クロルトリアニセン(chlortrianisene)、cis-ジアミンジクロロ白金、シクロホスファミド、ジエチルスチルベストロール、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシ尿素、レナリドミド、ロニダミン、メクロレタナミン(mechlorethanamine)、ミトタン、ネダプラチン、ニムスチン塩酸塩、パミドロン酸、ピポブロマン、ポルフィマーナトリウム、ラニムスチン、ラゾキサン、セムスチン、ソブゾキサン、メシル酸塩、トリエチレンメラミン、ゾレドロン酸、メシル酸カモスタット、ファドロゾールHCl、ナフォキシジン、アミノグルテチミド、カルモフール、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、ドキシフルリジン、エノシタビン、リン酸フルダラビン(fludarabne phosphate)、フルオロウラシル、フトラフール、ウラシルマスタード、アバレリックス、ベキサロテン、ラルチテルキシド(raltiterxed)、タミバロテン、テモゾロミド、ボリノスタット、メガストロール、クロドロン酸二ナトリウム、レバミソール、フェルモキシトール、イソマルトシド鉄、セレコキシブ、イブジラスト、ベンダムスチン、アルトレタミン、ミトラクトール、テムシロリムス、プララトレキセート、TS-1、デシタビン、ビカルタミド、フルタミド、レトロゾール、クロドロン酸二ナトリウム、デガレリクス、クエン酸トレミフェン、ヒスタミン二塩酸塩、DW-166HC、ニトラクリン、デシタビン、イリノテカン(irinoteacn)塩酸塩、アムサクリン、ロミデプシン、トレチノイン、カバジタキセル、バンデタニブ、レナリドミド、イバンドロン酸、ミルテホシン、ビテスペン、ミファムルチド、ナドロパリン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、アリザプリド、ラモセトロン、ドラセトロンメシレート(dolasetron mesilate)、ホスアプレピタントメグルミン、ナビロン、アプレピタント、ドロナビノール、TY-10721、リスリド水素マレイン酸塩、エピセラム、デフィブロチド、ダビガトランエテキシラート、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、レディタクス、エポエチン、モルグラモスチム、オプレルベキン、シプロイセル-T、M-Vax、アセチルL-カルニチン、ドネペジル塩酸塩、5-アミノレブリン酸、アミノレブリン酸メチル、酢酸セトロレリクス、イコデキストリン、リュープロレリン、メチルフェニデート(metbylphenidate)、オクトレオチド、アンレキサノクス、プレリキサホル、メナテトレノン、アネトールジチオールチオン、ドキセルカルシフェロール、シナカルセト塩酸塩、アレファセプト、ロミプロスチム、サイモグロブリン、サイマルファシン、ウベニメクス、イミキモド、エベロリムス、シロリムス、H-101、ラソフォキシフェン、トリロスタン、インカドロネート、ガングリオシド、ペガプタニブ八ナトリウム、ベルトポルフィン(vertoporfin)、ミノドロン酸、ゾレドロン酸、硝酸ガリウム、アレンドロン酸ナトリウム、エチドロネート二ナトリウム、パミドロン酸二ナトリウム、デュタステリド、スチボグルコン酸ナトリウム、アルモダフィニル、デクスラゾキサン、アミホスチン、WF-10、テモポルフィン、ダルベポエチンアルファ、アンセスチム、サルグラモスチム、パリフェルミン、R-744、ネピデルミン、オプレルベキン、デニロイキンジフチトクス、クリサンタスパーゼ、ブセレリン、デスロレリン、ランレオチド、オクトレオチド、ピロカルピン、ボセンタン、カリケアマイシン、マイタンシノイド、ならびにシクロニカート。
【0149】
さらなる詳細について、当業者は、「Association Francaise des Enseignants de Chimie Therapeutique」によって編集され、「Traite de chimie therapeutique, vol. 6, Medicaments antitumouraux et perspectives dans le traitement des cancers, edition TEC & DOC, 2003」と題するマニュアルを参照することができる。
【0150】
あるいは、イムノコンジュゲートは、少なくともラジオアイソトープに連結された結合タンパク質を含み得る。そのようなイムノコンジュゲートは、結合タンパク質が抗体またはその抗原結合フラグメントである場合、通常、抗体-ラジオアイソトープコンジュゲート(または「ARC」)といわれる。
【0151】
腫瘍の選択的破壊のために、抗体は、高放射性原子を含み得る。ARCの生産のためには、限定されるものではないが、At211、C13、N15、O17、Fl19、I123、I131、I125、In111、Y90、Re186、Re188、Sm153、tc99m、Bi212、P32、Pb212、Lu、ガドリニウム、マンガンまたは鉄の放射性アイソトープなど、様々な放射性アイソトープが利用可能である。
【0152】
そのようなラジオアイソトープをARCに組み込むためには、当業者に知られているあらゆる方法またはプロセスを使用することができる(例えば、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」, Chatal, CRC Press 1989を参照されたい)。非限定的な例として、Tc99mまたはI123、Re186、Re188およびIn111をシステイン残基によって結合させることができる。Y90は、リジン残基によって結合させることができる。I123は、IODOGEN法[Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57]を使用して結合させることができる。
【0153】
ARCの分野における当業者の知識を例示するために、チオ尿素リンカーキレーターにより結合された抗CD20モノクローナル抗体およびIn111またはY90ラジオアイソトープから構成されたARCであるZevalin(登録商標)[Wiseman et at (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77、Wiseman et al (2002) Blood 99(12):4336-42、Witzig et at (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63、Witzig et al (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69]、またはカリケアマイシンに連結された抗CD33抗体から構成されたMylotarg(登録商標)(米国特許第4,970,198号、同第5,079,233号、同第5,585,089号、同第5,606,040号、同第5,693,762号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,773,001号)などの幾つかの例を挙げることができる。つい最近では、ホジキンリンパ腫の処置においてFDAによって最近承認されたアドセトリス(ブレンツキシマブベドチンに対応する)というADCも挙げることができる(Nature, 476: 380-381, 25 August 2011)。
【0154】
本開示のさらに別の実施形態では、イムノコンジュゲートは、毒素に連結された結合タンパク質を含み得る。そのようなイムノコンジュゲートは、結合タンパク質が抗体またはその抗原結合フラグメントである場合、通常、抗体-毒素コンジュゲート(または「ATC」)といわれる。
【0155】
毒素は、生きている生物によって生産される有効かつ特異的な毒である。これらは通常、分子量が数百ダルトン(ペプチド)から100,000ダルトン(タンパク質)の間で異なり得るアミノ酸鎖からなる。これらは、低分子有機化合物である場合もある。毒素は、数多くの生物、例えば、細菌、真菌、藻類、および植物によって生産される。これらの多くは、神経剤より数桁分高い毒性を有し、極めて有毒である。
【0156】
ATCにおいて使用される毒素は、限定されるものではないが、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害を含む機序によって細胞傷害性効果を及ぼし得る、あらゆる種類の毒素を含み得る。
【0157】
使用することのできる酵素活性毒素およびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖[緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来]、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトジェリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンが挙げられる。
【0158】
ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセン、およびCC1065などの低分子毒素、ならびに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体も、本明細書において企図される。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解、ならびに核分裂および細胞分裂に干渉し、抗癌活性および抗真菌活性を有することが示されている。
【0159】
本明細書に記載されるイムノコンジュゲートは、リンカーをさらに含み得る。
【0160】
「リンカー」、「リンカーユニット」、または「連結」は、共有結合、または少なくとも1つの細胞傷害剤に結合タンパク質を共有結合させる原子の鎖を含む化学的部位を意味する。
【0161】
リンカーは、N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシニミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物[例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン]、ビス-ジアゾニウム誘導体[例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン]、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)など、様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。炭素14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、アドレシングシステムへの細胞傷害剤のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。他のクロスリンカー試薬は、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,Ill.,U.S.Aから)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB[スクシニミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート]であり得る。
【0162】
リンカーは、「切断不可能」または「切断可能」なリンカーであり得る。
【0163】
好ましくは、リンカーは、細胞内の細胞傷害剤の放出を容易にする「切断可能リンカー」である。例えば、酸解離性リンカー、ペプチダーゼ感応性リンカー、光解離性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカーが使用され得る。リンカーは、好ましくは、リンカーの切断によって細胞内環境における結合タンパク質から細胞傷害剤が放出されるように、細胞内条件下で切断される。
【0164】
例えば、いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたは半小胞内)に存在する切断剤によって切断され得る。リンカーは、例えば、細胞内ペプチダーゼ、またはリソソーム性もしくはエンドソーム性のプロテアーゼを含むがこれらに限定されないプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであり得る。典型的に、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。切断剤は、カテプシンBおよびDならびにプラスミンを含み得、これらはすべて、ジペプチド薬誘導体を加水分解して標的細胞内での活性薬物の放出をもたらすことが知られている。例えば、癌性組織において高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼのカテプシン-Bによって切断可能なペプチジルリンカーが使用され得る(例えば、Phe-LeuまたはGly-Phe-Leu-Glyリンカー)。特定の実施形態において、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチジルリンカーは、Val-CitリンカーまたはPhe-Lysリンカーである。細胞傷害剤の細胞内タンパク分解放出を使用することの利点の1つは、当該薬剤はコンジュゲートされると弱毒化されるのが一般的であり、コンジュゲートの血清安定性は高いことが一般的であるということである。
【0165】
他の実施形態では、切断可能リンカーはpH感応性であり、すなわち、ある特定のpH値において加水分解に対する感応性を持つ。典型的に、pH感応性リンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。例えば、リソソーム中で加水分解可能な酸解離性リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニット酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)が使用され得る。そのようなリンカーは、血中などの中性pH条件下で比較的安定であるが、リソソームのおよそのpHであるpH5.5または5.0未満では不安定である。ある特定の実施形態において、加水分解可能リンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に結合したチオエーテルなど)である。
【0166】
さらに他の実施形態において、リンカーは、還元条件下で切断され得る(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N-スクシニミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP[N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート]、SPDB[N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート]、およびSMPT[N-スクシニミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン]を使用して形成され得るものを含め、様々なジスルフィドリンカーが当技術分野では知られている。
【0167】
切断不可能リンカーは、対照的に、明らかな薬物放出機序を有しない。そのような切断不可能リンカーを含むイムノコンジュゲートは、内部移行後に細胞傷害剤を放出する抗体の完全なリソソームタンパク分解に依存する。
【0168】
切断不可能リンカーを含むイムノコンジュゲートの一例として、トラスツズマブと結合された化学療法剤メイタンシンを組み合わせたイムノコンジュゲートであるトラスツズマブ-エムタンシン(TDM1)を挙げることができる[Cancer Research 2008; 68: (22). November 15, 2008]。
【0169】
好ましい実施形態において、本明細書で開示されるイムノコンジュゲートは、当業者に知られているいずれかの方法、例えば、限定されるものではないが、i)抗原結合タンパク質の求核基を二価リンカー試薬と反応させた後に、細胞傷害剤と反応させること、またはii)細胞傷害剤の求核基を二価リンカー試薬と反応させた後に、抗原結合タンパク質の求核基と反応させることによって、調製され得る。
【0170】
抗原結合タンパク質上の求核基は、限定されるものではないが、N末端アミン基、側鎖アミン基、例えばリジン、側鎖チオール基、および抗原結合タンパク質がグリコシル化されたときの糖ヒドロキシルまたはアミノ基を含む。アミン、チオール、およびヒドロキシル基は求核性であり、活性エステル(NHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメート、および酸ハロゲン化物など)、アルキルハロゲン化物およびベンジルハロゲン化物(ハロアセトアミドなど)、アルデヒド、ケトン、カルボキシル、およびマレイミド基を含むがこれらに限定されないリンカー部位およびリンカー試薬の求電子基と反応して共有結合を形成することが可能である。抗原結合タンパク質は、還元性鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン橋を有し得る。抗原結合タンパク質は、DTT(ジチオスレイトール)などの還元剤を用いた処置によって、リンカー試薬とのコンジュゲーションに対する反応性を持つようになり得る。したがって、各システイン橋は、理論上、2つの反応性チオール求核剤を形成する。当業者に知られているいずれかの反応によって、追加の求核基を抗原結合タンパク質に導入することができる。非限定的な例として、1つまたは複数のシステイン残基を導入することにより、反応性チオール基を抗原結合タンパク質に導入してもよい。
【0171】
イムノコンジュゲートは、リンカー試薬または細胞傷害剤における求核性置換基と反応し得る求電子性部位を導入するような、抗原結合タンパク質の修飾によって生産されてもよい。グリコシル化された抗原結合タンパク質の糖を酸化すると、リンカー試薬または細胞傷害剤のアミン基と反応し得るアルデヒドまたはケトン基を形成し得る。得られるイミンのシッフ塩基は、安定な結合を形成し得るか、または還元されて安定なアミン結合を形成し得る。一実施形態において、グリコシル化された抗原結合タンパク質の炭水化物部分を、ガラクトースオキシダーゼまたはメタ過ヨウ素酸ナトリウムのいずれかと反応させると、薬物における適切な基と反応し得るカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基がタンパク質中に生じ得る。別の実施形態では、N末端セリンまたはスレオニン残基を含有するタンパク質がメタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応して、第1のアミノ酸の代わりにアルデヒドの生産をもたらし得る。
【0172】
キメラ抗原受容体
本開示はさらに、i)本発明の抗体、ii)膜貫通ドメイン、およびiii)抗原に対する上記i)の抗体の結合に応じてT細胞活性化を引き起こすことによって特徴付けられる細胞内シグナル伝達ドメインを含む、CAR(キメラ抗原受容体)タンパク質を提供する。
【0173】
本開示において、CARタンパク質は、本発明のモノクローナル抗体、公知の膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインによって構成されることを特徴とする。
【0174】
本明細書に記載される場合、「CAR(キメラ抗原受容体)」という用語は、特定の抗原に対する特異性を免疫エフェクター細胞に提供することが可能な非自然的受容体を指す。概して、CARは、モノクローナル抗体の特異性をT細胞に提供するために使用される受容体を意味する。CARは、概して、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインによって構成される。細胞外ドメインは抗原認識領域を含み、本明細書において、抗原認識部位はVISTA特異的抗体である。VISTA特異的抗体は上述のとおりであり、CARにおいて使用される抗体は、好ましくは抗体フラグメントの形態である。より好ましくはFabまたはscFvの形態であるが、それらに限定されない。
【0175】
さらに、CARの膜貫通ドメインは、細胞外ドメインに接続された形態を有し、自然または合成のいずれの形態を起源としてもよい。自然形態を起源とする場合、膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質を起源としてもよく、T細胞受容体のアルファ、ベータもしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154またはCD8のような種々のタンパク質の膜貫通ドメインを起源とする部分でもよい。これらの膜貫通ドメインの配列は、膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインについて十分に記述している、当技術分野でよく知られている文書から取得することができるが、それに限定されない。
【0176】
本明細書に記載されるCARは、細胞内CARドメインの一部であり、膜貫通ドメインに接続されている。本発明の細胞内ドメインは、CARの抗原認識部位に抗原が結合すると、T細胞活性化、好ましくはT細胞増殖を引き起こす特性を有することによって特徴付けられる、細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞の外側に存在するCARの抗原認識部位に抗原が結合するとT細胞活性化を引き起こすことができる限り、そのタイプに関して特に限定されず、様々な種類の細胞内シグナル伝達ドメインが使用され得る。その例としては免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)が挙げられ、ITAMは、CD3ゼータ(ξ,)、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CDS、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、またはFcεRIγを起源とするものを含み得るが、それらに限定されない。
【0177】
さらに、本開示のCARの細胞内ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む共刺激性ドメインをさらに含むことが好ましいが、それに限定されない。共刺激性ドメインは、本明細書に記載されるCARに含まれ、細胞内シグナル伝達ドメインからのシグナルに加えて、シグナルをT細胞に伝える役割を果たす部分であり、共刺激性分子の細胞内ドメインを含むCARの細胞内部分を示す。
【0178】
共刺激性分子とは、細胞表面分子として、抗原に対するリンパ球の十分な反応を生じさせるのに必要な分子を意味し、その例は、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1(リンパ球機能関連抗原1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、およびB7-H3を含むが、それらに限定されない。共刺激性ドメインは、それらの共刺激性分子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される分子の細胞内部分であり得る。
【0179】
さらに、選択的に、短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーが、CARの細胞内ドメインおよび膜貫通ドメインを連結し得る。このリンカーは、本発明のCARに含まれていてもよいが、細胞外抗体に対する抗原の細胞内ドメインの結合を介してT細胞活性化を誘導することができる限り、リンカーの長さに関して特に限定されない。
【0180】
核酸および発現系
本開示は、抗体、とりわけ抗VISTA抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子をコードするポリヌクレオチド、そのような核酸を含むベクター、ならびに本開示の抗体を生産することが可能な宿主細胞を包含する。また本明細書では、例えば、上記に定義したような、高ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、または低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、本明細書で提供される抗体または修飾型抗体をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドも提供される。
【0181】
第1の態様において、本開示は、上述のような、抗体、とりわけVISTAに特異的に結合することが可能な抗体、またはそのフラグメントをコードする、1つまたは複数のポリヌクレオチドに関する。本開示は、とりわけ、本明細書で開示される抗VISTA抗体の重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを提供する。より具体的には、ある特定の実施形態において、本明細書で提供される核酸分子は、本明細書で開示される重鎖可変領域および軽鎖可変領域、またはそれらのいずれかの組み合わせをコードする核酸配列を含むかまたはからなる(例えば、本明細書で提供される完全長抗体、抗体の重鎖および/もしくは軽鎖、または一本鎖抗体などの、本明細書で提供される抗体をコードするヌクレオチド配列などとして)。
【0182】
例えば、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の3つの重鎖CDRをコードする。例えば、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の3つの軽鎖CDRをコードする。例えば、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRをコードする。別の例は、第1のポリヌクレオチドが、本明細書に記載される抗VISTA抗体の3つの重鎖CDRをコードし、第2のポリヌクレオチドが、同じ本明細書に記載される抗VISTA抗体の3つの軽鎖CDRをコードする、一対のポリヌクレオチドを提供する。
【0183】
別の事例では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の重鎖可変領域をコードする。例えば、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の軽鎖可変領域をコードする。例えば、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする。別の事例は、第1のポリヌクレオチドが、本明細書に記載される抗VISTA抗体の重鎖可変領域をコードし、第2のポリヌクレオチドが、同じ本明細書に記載される抗VISTA抗体の軽鎖可変領域をコードする、一対のポリヌクレオチドを提供する。
【0184】
ある実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の重鎖をコードする。ある実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の軽鎖をコードする。ある実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される抗VISTA抗体の重鎖および軽鎖をコードする。別の実施形態は、第1のポリヌクレオチドが、本明細書に記載される抗VISTA抗体の重鎖をコードし、第2のポリヌクレオチドが、同じ本明細書に記載される抗VISTA抗体の軽鎖をコードする、一対のポリヌクレオチドを提供する。
【0185】
ある実施形態において、上述の抗VISTA抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、重鎖は、配列番号13~15の配列の3つの重鎖CDRを含む。より好ましくは、重鎖は、配列番号19の配列の可変領域を含む重鎖を含む。さらにより好ましくは、重鎖は、配列番号21によって表される配列を有する。
【0186】
別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、上述の抗VISTA抗体の軽鎖をコードする。好ましくは、前記軽鎖は、配列番号16~18の配列の3つの軽鎖CDRを含む。より好ましくは、前記軽鎖は、配列番号20の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。さらにより好ましくは、軽鎖は、配列番号222によって表される配列を有する。
【0187】
コドン縮重のために、またはヒト抗体もしくはそのフラグメントの軽鎖および重鎖を発現させようとする生物において好ましいコドンを考慮して、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖および重鎖をコードするポリヌクレオチドは、コード領域から発現される抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が変化しない範囲内で、コード領域における種々のバリエーションを有することができ、コード領域以外の領域においてでさえ、種々の変化または修飾が、遺伝子発現がそれらの影響を受けない範囲内で行われ得る。当業者は、それらの変異体遺伝子も本発明の範囲に含まれることを容易に理解するであろう。すなわち、等価の活性を有するタンパク質が本発明のポリヌクレオチドによってコードされる限り、1つまたは複数の核酸塩基を、置換、欠失、挿入、またはそれらの組み合わせによって変更することができ、それらも本発明の範囲内に含まれる。ポリヌクレオチドの配列は一本鎖または二本鎖のどちらでもよく、DNA分子またはRNA(mRNA)分子のどちらでもよい。
【0188】
本発明によれば、本発明の抗体を発現させるために、様々な発現系が使用され得る。一態様において、そのような発現系は、目的のコード配列を生産した後に精製することのできる媒体を表すが、適切なヌクレオチドコード配列が一過性にトランスフェクトされるとIgG抗体をインサイツで発現することのできる細胞も表す。
【0189】
本開示は、上述のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは、目的の抗VISTA抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含有する。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、目的の抗VISTA抗体の軽鎖をコードする。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、目的の抗VISTA抗体の重鎖および軽鎖をコードする。さらに別の実施形態では、第1のポリヌクレオチドが、目的の抗VISTA抗体の重鎖をコードし、第2のポリヌクレオチドが、同じ目的の抗VISTA抗体の軽鎖をコードする、一対のポリヌクレオチドが提供される。
【0190】
本開示は、融合タンパク質、修飾型抗体、抗体フラグメント、およびそれらのプローブをコードするポリヌクレオチド分子を含むベクターも提供する。
【0191】
目的の抗VISTA抗体の重鎖および/または軽鎖を発現するためには、遺伝子が転写配列および翻訳配列に動作可能に連結されるように、前記重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドが発現ベクターに挿入される。好ましい実施形態において、これらのポリヌクレオチドは、2つのベクターにクローニングされる。
【0192】
「作動可能に連結された」配列は、目的の遺伝子に連続する発現コントロール配列と、目的の遺伝子をコントロールするために、トランスで、または距離をおいて作用する発現コントロール配列との両方を含む。本明細書で使用される「発現コントロール配列」という用語は、ライゲートされるコード配列の発現およびプロセシングをもたらすために必要であるポリヌクレオチド配列を指す。発現コントロール配列は、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、およびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を高める配列;ならびに、所望の場合、タンパク質分泌を増進する配列を含む。そのようなコントロール配列の性質は、宿主生物に応じて異なる。原核生物では、そのようなコントロール配列は概して、プロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含み、真核生物では、概して、そのようなコントロール配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。「コントロール配列」という用語は、少なくとも、発現およびプロセシングのために存在が不可欠であるすべての成分を含むことを意図しており、例えばリーダー配列および融合パートナー配列など、その存在が有利である追加の成分を含むこともある。
【0193】
本発明のポリヌクレオチドおよびこれらの分子を含むベクターは、好適な宿主細胞の形質転換のために使用され得る。本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、目的の抗VISTA抗体を発現させるために組換え型発現ベクターが導入されている細胞を指すことを意図する。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことを意図していることを理解されたい。突然変異または環境的影響により、ある特定の修飾が後続世代において起こり得るため、そのような子孫は実際には親細胞と同一でない場合があるが、依然として、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0194】
形質転換は、ポリヌクレオチドを細胞宿主に導入するためのいずれかの公知の方法によって行われ得る。そのような方法は、当業者にはよく知られており、デキストラン媒介性形質転換、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、原形質融合、電気穿孔、リポソームへのポリヌクレオチドの封入、バイオリステック注射(biolistic injection)、および核へのDNAの直接微量注射を含む。
【0195】
宿主細胞には、1つまたは複数の発現ベクターがコトランスフェクトされてもよい。例えば、宿主細胞には、上述のような、目的の抗VISTA抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターがトランスフェクトされてもよい。あるいは、宿主細胞は、目的の抗VISTA抗体の重鎖をコードする第1のベクターと、前記抗体の軽鎖をコードする第2のベクターとによって形質転換されてもよい。組換え型治療用免疫グロブリンの発現、特に組換え型全抗体の発現のためには、哺乳動物細胞が一般的に使用される。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中初期遺伝子プロモーターエレメントを搭載したものなど、発現シグナルを含有するベクターと併せた、HEK293またはCHO細胞などの哺乳動物細胞は、本発明のヒト化抗VISTA抗体を発現するための有効な系である(Foecking et al., 1986, Gene 45:101、Cockett et al., 1990, Bio/Technology 8: 2)。
【0196】
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、または所望される特定の様式で遺伝子産物を修飾しプロセシングする宿主細胞が選択され得る。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシングは、タンパク質の機能に重要であり得る。様々な宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾のための特徴および特定の機序を有する。適切な細胞株または宿主系は、発現される目的の抗体の適正な修飾およびプロセシングを確実にするように選択される。したがって、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化のための細胞機構を保有する真核生物宿主細胞が使用され得る。そのような哺乳動物宿主細胞は、CHO、COS、HEK293、NS/0、BHK、Y2/0、3T3、または骨髄腫細胞を含むが、これらに限定されない(これらの細胞株はすべて、Collection Nationale des Cultures de Microorganismes、Paris、France、またはAmerican Type Culture Collection、Manassas、VA、U.S.A.などの公的な受託者から入手可能である)。
【0197】
組換え型タンパク質の長期的で高収量の生産のためには、安定発現が好ましい。本発明の一実施形態では、抗体を安定に発現する細胞株がエンジニアリングされ得る。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、および当業者に知られている他の適切な配列を含む適切な発現制御エレメントのコントロール下にあるDNA、ならびに選択可能マーカーにより、宿主細胞を形質転換する。外来DNAの導入後、エンジニアリングされた細胞を、1日から2日にわたって富化培地中で成長させてよく、その後、選択的培地に移す。組換え型プラスミド上の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドを染色体に安定に組み込み、細胞株へと増大させることを可能にする。安定な細胞株を構築するための他の方法が当技術分野では知られている。特に、部位特異的組み込みのための方法が開発されている。これらの方法によれば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、および他の適切な配列を含む適切な発現制御エレメントのコントロール下にある形質転換されたDNAが、以前に切断されている特定の標的部位において宿主細胞ゲノムに組み込まれる[Moele et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 104(9): 3055-3060、米国特許第5,792,632号、米国特許第5,830,729号、米国特許第6,238,924号、WO2009/054985、WO03/025183、WO2004/067753]。
【0198】
本発明によれば、それぞれtk、hgprt、またはaprt細胞における、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223, 1977)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al., Proc Natl Acad Sci USA 48: 202, 1992)、メチオニンスルホキシミドの存在下でのグルタミン酸シンターゼ選択(Adv Drug Del Rev, 58: 671, 2006、およびLonza Group Ltd.のウェブサイトまたは文献)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22: 817, 1980)遺伝子を含むがこれらに限定されない、複数の選択系が使用され得る。また、代謝拮抗薬耐性を次の遺伝子のための選択の基準として使用することができる:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler et al., Proc Natl Acad Sci USA 77: 357, 1980);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan et al., Proc Natl Acad Sci USA 78: 2072, 1981);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Wu et al., Biotherapy 3: 87, 1991);およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre et al., Gene 30: 147, 1984)。所望の組換え型クローンを選択するには、組換えDNA技術の分野で知られている方法を慣例的に適用することができ、そのような方法は、例えば、Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1993)に記載されている。抗体の発現レベルは、ベクター増幅によって増加し得る。抗体を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能であるとき、培養物中に存在する阻害剤のレベルの上昇は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅される領域は、本発明のIgG抗体をコードする遺伝子に関連するため、前記抗体の生産も増加する(Crouse et al., Mol Cell Biol 3: 257, 1983)。本発明の遺伝子を発現させる代替的な方法が存在し、当業者に知られている。例えば、本発明の遺伝子の上流の発現制御エレメントに結合することが可能な修飾型ジンクフィンガータンパク質をエンジニアリングすることができ、エンジニアリングされた前記ジンクフィンガータンパク質(ZFN)を本発明の宿主細胞において発現させると、タンパク質の生産が増加する[例えば、Reik et al., Biotechnol. Bioeng., 97(5): 1180-1189, 2006を参照されたい]。さらに、ZFNは、既定のゲノム位置へのDNAの組み込みを刺激して、高効率の部位特異的遺伝子付加をもたらすことができる(Moehle et al, Proc Natl Acad Sci USA, 104: 3055, 2007)。
【0199】
目的の抗VISTA抗体は、所望の抗体を発現させるのに必要な培養条件下で、形質転換された宿主細胞の培養物を成長させることによって調製され得る。得られた発現抗体は、その後、培養培地または細胞抽出物から精製され得る。可溶型の目的の抗VISTA抗体が培養上清から回収され得る。これは次に、当技術分野で知られている、免疫グロブリン分子の精製のためのいずれかの方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にFcに対するプロテインAの親和性など)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質の精製のための他のいずれかの標準的技法によって精製され得る。好適な精製方法は、当業者には明らかであろう。
【0200】
したがって、本発明の別の態様は、本明細書に記載される抗体(例えば、抗VISTA抗体)の生産のための方法であって、
a)上述の宿主細胞を、好適な培養条件下の培養培地中で成長させる工程と、
b)培養培地または培養された前記細胞から抗体(例えば、抗VISTA抗体)を回収する工程と
を含む方法に関する。
【0201】
形質転換体を培養することによって取得される抗体は、精製されていない状態で使用され得る。遠心分離または限外濾過のようなさらなる種々の一般的な方法によって不純物を除去することができ、その結果得られたものを透析、塩析沈殿、クロマトグラフィーなどに供してもよく、この方法は、単独で、またはそれらの組み合わせで使用されてもよい。これらの中では、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどを含め、親和性クロマトグラフィーが最も広く使用されている。
【0202】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、例えば、本明細書に記載される抗VISTA抗体のいずれかのような、抗VISTA抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート、すなわち、本明細書に記載される抗VISTA抗体のうちの1つを含むイムノコンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0203】
これらの組成物は、例えば、対象における免疫応答を刺激するために特に有用である。VISTAに特異的に結合する本発明の抗体は、T細胞活性化を阻害するVISTAタンパク質に結合することによってT細胞活性化を誘導し、したがって、この抗体は免疫応答を刺激することができる。
【0204】
本明細書に記載される組成物は、癌を処置するためにも有用である。本明細書で開示される抗VISTA抗体、その抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートを含む、かかる組成物の投与によって、防御的抗腫瘍免疫が確立され得る。
【0205】
この組成物は、後述する免疫チェックポイント阻害剤などの1つまたは複数の追加の治療剤を適宜含んでもよい。通常、この組成物は、薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を通常含む無菌の医薬組成物の一部として供給されることになる。したがって、別の態様において、本発明は、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート、ならびに薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0206】
この組成物は、いずれかの好適な形態でよい(それを患者に投与する所望の方法に応じる)。本明細書に記載される方法において利用される組成物は、例えば、硝子体内に(例えば、硝子体内注射によって)、点眼によって、筋肉内に、静脈内に、皮内に、皮膚に、動脈内に、腹腔内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、くも膜下腔内に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍内に、眼内に、眼窩内に、経口的に、局所的に、経皮的に、吸入によって、注射によって、移植によって、注入によって、連続注入によって、標的細胞を直接浸す局所的灌流によって、カテーテルによって、洗浄によって、クリーム中で、または脂質組成物中で投与され得る。本明細書に記載される方法において利用される組成物は、全身投与されても局所投与されてもよい。投与の方法は、種々の要因(例えば、投与される化合物または組成物、および処置される状態、疾患、または障害の重篤度)に応じて異なり得る。いずれの所定の場合においても、最も好適な投与経路は、特定の抗体、対象、ならびに疾患の性質および重篤度、ならびに対象の身体状態に依存する。例えば、抗VISTA抗体、その抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、水溶液として製剤され、皮下注射によって投与され得る。好ましくは、抗VISTAは、水溶液として製剤され、注入によって投与される。
【0207】
医薬組成物は、用量ごとに既定量の抗VISTA、その抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートを含有する単位用量形態で簡便に提供され得る。そのような単位は、限定されるものではないが、例えば5mg~5g、例えば10mg~1g、または20~50mgを含有し得る。本開示における使用のための薬学的に許容可能な担体は、例えば、処置される状態または投与経路に応じて、多種多様な形態をとることができる。
【0208】
本開示の医薬組成物は、所望の純度を有する抗体を、当技術分野で典型的に用いられるオプションの薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤(これらのすべてを本明細書では「担体」という)、例えば、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、等張化剤(isotonifier)、非イオン性界面活性剤、抗酸化剤、およびその他諸々の添加剤と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液として貯蔵するために調製され得る。Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition (Osol, ed. 1980)を参照されたい。そのような添加剤は、用いられる投薬量および濃度においてレシピエントに対して無毒でなければならない。好ましくは、本明細書で開示される組成物は、液状組成物である。より好ましくは、本開示の液状組成物は、水性組成物である。さらにより好ましくは、本開示の液状組成物は、水性担体が蒸留水である水性組成物である。
【0209】
有利には、本開示の組成物は、無菌である。
【0210】
有利には、本開示の組成物は、均質である。
【0211】
有利には、本開示の組成物は、等張である。
【0212】
本開示は、単一の目的の抗体、例えば、本明細書に記載されるようなVISTAに特異的に結合する抗体を含む、安定な液状組成物を包含する。本開示は、2つ以上の目的の抗体(その抗体フラグメントを含む)、例えば、ICOSポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む、安定な液状組成物も包含する。一実施形態において、本開示の組成物は、本明細書で開示される抗VISTA抗体を、少なくとも約1mg/ml、少なくとも約5mg/ml、少なくとも約10mg/ml、少なくとも約20mg/ml、少なくとも約30mg/ml、少なくとも約40mg/ml、少なくとも約50mg/ml、少なくとも約60mg/ml、少なくとも約70mg/ml、少なくとも約80mg/ml、少なくとも約90mg/ml、少なくとも約100mg/ml、少なくとも約110mg/ml、少なくとも約120mg/ml、少なくとも約130mg/ml、少なくとも約140mg/ml、少なくとも約150mg/ml、少なくとも約160mg/ml、少なくとも約170mg/ml、少なくとも約180mg/ml、少なくとも約190mg/ml、少なくとも約200mg/ml、少なくとも約250mg/ml、または少なくとも約300mg/ml含む。
【0213】
本件の組成物は、向上したpHコントロールをもたらすことによってpHを所望の範囲内に維持するための緩衝剤またはpH調整剤を含む。例えば、本明細書で開示される組成物は、約3.0から約9.0の間、約4.0から約8.0の間、約5.0から約8.0の間、約5.0から約7.0の間、約5.0から約6.5の間、約5.5から約8.0の間、約5.5から約7.0の間、または約5.5から約6.5の間のpHを有する。さらなる実施形態において、本開示の組成物は、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、または約9.0のpHを有する。特定の実施形態において、本開示の組成物は、約6.5のpHを有する。
【0214】
緩衝剤は、約2mMから約50mMの範囲の濃度で存在し得る。好ましくは、緩衝剤は、少なくとも2、5、10、15、20、25、30、35、40、または45mMの濃度で存在する。好ましくは、緩衝剤は、45mM未満、40mM未満、35mM未満、30mM未満、25mM未満、20mM未満、15mM未満、10mM未満、5mM未満、または2mM未満の濃度で存在する。より好ましくは、緩衝剤の濃度は、5~45mM、10~40mM、15~35mM、20~30mMに含まれる。最も好ましくは、緩衝剤の濃度は約25mMである。
【0215】
本開示での使用に好適な緩衝剤は、有機酸および無機酸の両方ならびにそれらの塩、例えばクエン酸塩バッファー(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩バッファー(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩バッファー(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩バッファー(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩バッファー(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩バッファー(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩バッファー(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、および酢酸塩バッファー(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)を含む。さらに、リン酸塩バッファー、ヒスチジンバッファー、およびTrisなどのトリメチルアミン塩が使用され得る。好ましくは、緩衝剤は、クエン酸塩バッファー、リン酸塩バッファー、およびヒスチジンバッファーからなる群において選択される。より好ましくは、緩衝剤は、ヒスチジンバッファーである。より好ましくは、ヒスチジンバッファーは、25mMの濃度で存在する。
【0216】
本明細書で開示される組成物がヒトの血液と等張であり得る、すなわち、本組成物がヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有することは、当業者には理解されよう。好ましくは、本件の組成物の浸透圧は、約100mOSmから約1200mOSm、または約200mOSmから約1000mOSm、または約200mOSmから約800mOSm、または約200mOSmから約600mOSm、または約250mOSmから約500mOSm、または約250mOSmから約400mOSm、または約250mOSmから約350mOSmの範囲である。本件の組成物は、より好ましくは、約250mOSmから約350mOSmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧または氷凍結型の浸透圧計を使用することによって測定され得る。組成物の張度は、張度調整剤の使用によって調整される。「張度調整剤」は、本開示の液状組成物の等張性を確実にするために組成物に添加され得る薬学的に許容可能な不活性物質であり、多価糖アルコール、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどの三価以上の糖アルコール、塩、ならびにアミノ酸を含む。
【0217】
ある特定の実施形態において、本開示の組成物は、約100mOSmから約1200mOSm、または約200mOSmから約1000mOSm、または約200mOSmから約800mOSm、または約200mOSmから約600mOSm、または約250mOSmから約500mOSm、または約250mOSmから約400mOSm、または約250mOSmから約350mOSmの浸透圧を有する。
【0218】
ある特定の実施形態において、本開示の組成物は、100mOSmから1200mOSm、または200mOSmから1000mOSm、または200mOSmから800mOSm、または200mOSmから600mOSm、または250mOSmから500mOSm、または250mOSmから400mOSm、または250mOSmから350mOSmの浸透圧を有する。
【0219】
本明細書に記載される組成物の種々の成分のうちのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせの濃度は、最終組成物の所望の張度を達成するように調整される。薬学的に許容可能であり、本開示において張度調整剤として好適なアミノ酸は、プロリン、アラニン、L-アルギニン、アスパラギン、L-アスパラギン酸、グリシン、セリン、リジン、およびヒスチジンを含むが、これらに限定されない。最終組成物の所望の等張性は、とりわけ、組成物の塩濃度を調整することによって達成され得る。薬学的に許容可能であり、本開示において張度調整剤として好適な塩は、塩化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および塩化カルシウムを含むが、これらに限定されない。有利には、本件の組成物は、NaCl、MgCl、および/またはCaClを含む。別の実施形態では、MgClの濃度は、約1mMから約100mMの間である。一実施形態において、NaClの濃度は、約75mMから約150mMの間である。
【0220】
防腐剤は、微生物の成長を遅くするために添加されてもよく、0.2%~1%(w/v)の範囲の量で添加され得る。本開示での使用に好適な防腐剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、およびアルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、および3-ペンタノールが挙げられる。安定化剤は、賦形剤の広いカテゴリーを指し、増量剤から、治療剤(すなわち、抗VISTA抗体、その抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート)を可溶化するか、または変性もしくは容器壁への接着の防止に役立つ添加剤まで、その機能は様々であり得る。典型的な安定化剤は、多価糖アルコール(上記に列挙されている);アミノ酸、例えばアルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなど、有機糖または糖アルコール、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロールなど(イノシトールなどのシクリトールを含む);ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;硫黄含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウム;低分子量ポリペプチド(例えば、10残基以下のペプチド);タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン単糖類、例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖類、例えばラクトース、マルトース、スクロース、および三糖類、例えばラフィノース;ならびに多糖類、例えばデキストランであり得る。安定化剤は、活性タンパク質(例えば、抗VISTA抗体、またはそのような抗体を含むコンジュゲート)の重量部当たり0.1~10,000重量の範囲で存在し得る。好ましくは、本明細書に記載される医薬組成物は、アルギニンおよびスクロースから選択される少なくとも1つの安定化剤を含む。アルギニンは、例えば、0~50mMに含まれる濃度で存在し得る。別の事例において、スクロースの濃度は0~6%の範囲であり得る。
【0221】
非イオン性界面活性物質または界面活性剤(「湿潤剤」としても知られる)が、抗VISTA抗体(またはそのコンジュゲート)の安定化を助けるために、また、攪拌により誘導される凝集から治療用タンパク質を保護するために添加されてもよく、これにより、タンパク質の変性を引き起こすことなくストレスを受けた剪断面に製剤が曝露されることも可能になる。好適な非イオン性界面活性物質としては、ポリソルベート(20、80など)、ポリオキサマー(polyoxamer)(184、188など)、プルロニックポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)が挙げられる。非イオン性界面活性物質は、約0.05mg/mlから約1.0mg/ml、例えば約0.07mg/mlから約0.2mg/mlの範囲内で存在し得る。好ましくは、本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80などのポリソルベートである非イオン性界面活性物質を含む。ポリソルベートは、医薬組成物中に0~1%、好ましくは0~0.5%含まれて存在してもよい。したがって、ポリソルベートは、好ましくは、本明細書に記載される医薬組成物中に0、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、または0.5%の濃度で存在する。
【0222】
さらなる諸々の賦形剤は、増量剤(例えば、デンプン)、キレート剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、および共溶媒を含む。
【0223】
好ましくは、本明細書で開示される医薬組成物は、25mMヒスチジン、150mM NaCl、0.3%ポリソルベート80(w/w)を含み、pH6.5である。より好ましくは、この医薬組成物は、本明細書で開示される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートを20mg/mL含む。
【0224】
本開示はさらに、同時使用、別個使用、または逐次使用のための併用物として、
i)本明細書で開示される抗VISTA抗体、その抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート、および
ii)第2の治療剤、例えば後述のような免疫チェックポイント阻害剤
を少なくとも含む医薬組成物を対象とする。
【0225】
本明細書で使用される「同時使用」とは、本発明に係る組成物の2つの化合物を、単一かつ同一の薬学的形態において投与することを指す。
【0226】
本明細書で使用される「別個使用」とは、本発明に係る組成物の2つの化合物を、異なる薬学的形態において、同時に投与することを指す。
【0227】
本明細書で使用される「逐次使用」とは、本発明に係る組成物の2つの化合物を、各々異なる薬学的形態において、連続して投与することを指す。
【0228】
抗VISTA抗体(またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート)と、例えば免疫チェックポイント阻害剤などの第2の治療剤との組成物は、単独で、1つもしくは複数の抗VISTA抗体(またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート)および/または1つもしくは複数の第2の治療剤(例えば後述のような免疫チェックポイント阻害剤)の混合物として、癌を処置するために有用な他の薬剤との混合物もしくは組み合わせにおいて、または他の癌療法の補助として投与され得る。好適な組み合わせおよび補助療法の例を以下に提供する。
【0229】
本開示には、抗VISTA抗体(またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート)を含む薬学的キットが包含され、本明細書に記載されている。薬学的キットは、抗VISTA抗体(例えば、凍結乾燥形態において、または水溶液として)、ならびに
・ 第2の治療剤、例えば後述のような免疫チェックポイント阻害剤、
・ 抗VISTA抗体を投与するためのデバイス、例えばペン、針、および/またはシリンジ、および
・ 阻害剤が抗体形態である場合に抗体を再懸濁するための薬学的グレードの水またはバッファー
のうちの1つまたは複数を含む、パッケージである。
【0230】
抗VISTA抗体(またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート)の各単位用量は別々にパッケージングされていてよく、キットは、1つまたは複数の単位用量(例えば、2単位用量、3単位用量、4単位用量、5単位用量、8単位用量、10単位用量、またはそれ以上)を含むことができる。特定の実施形態において、1つまたは複数の単位用量は、各々、シリンジまたはペンに収容される。
【0231】
有効量
免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせでもよい抗VISTA抗体およびそのコンジュゲートは、概して、意図される結果を達成するのに有効な量で、例えばそれを必要とする対象における癌の処置に有効な量で使用される。抗VISTA抗体(またはそのコンジュゲート)および/または免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物は、治療上有効な投薬量で患者(例えば、ヒト対象)に投与され得る。
【0232】
有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示を踏まえれば、十分に当業者の能力の範囲内にある。化合物またはコンジュゲートの毒性および治療有効性は、細胞培養物および実験動物において標準的な薬学的手順によって決定され得る。対象に投与される本件の組み合わせまたは他の治療剤の有効量は、疾患(例えば、癌)の病期、カテゴリー、およびステータス、ならびに対象の特徴、例えば全体的健康状態、年齢、性別、体重、および薬物耐性に依存する。投与される本件の治療剤または組み合わせの有効量は、投与経路および剤形にも依存する。投薬の量および間隔は、所望の治療効果を維持するのに十分な活性化合物の血漿中レベルをもたらすように個々に調整され得る。
【0233】
投与される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートの量は、処置される疾患(例えば、癌)の性質および病期、投与の形態、経路、および部位、治療レジメン(例えば、治療剤が免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせで使用されるかどうか)、処置される特定の対象の年齢および状態、抗体またはコンジュゲートによって処置される患者の感受性を含む、様々な要因に依存する。適切な投薬量は、当業者によって容易に決定され得る。最終的には、医師が使用に適切な投薬量を決定する。この投薬量は適切なだけ繰り返すことができる。副作用が生じた場合、通常の臨床業務に従って投薬の量および/または頻度を変更または低減してよい。適切な投薬量および処置レジメンは、当業者に知られている従来技法を使用して療法の進捗をモニタリングすることによって確立され得る。
【0234】
有効な投薬量は、まずインビトロアッセイから推定され得る。例えば、動物において使用される初期用量が、インビトロで測定した場合にVISTAに対する抗体の結合親和性であるかまたはそれを超える抗VISTA抗体の循環血液または血清中の濃度が達成されるように策定され得る。特定の抗体のバイオアベイラビリティを考慮して、そのような循環血液または血清中の濃度を達成する投薬量を計算することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。指針として、読者には、Fingl & Woodbury, "General Principles" in Goodman and Gilman's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, Chapter 1, latest edition, Pagamonon Press、およびその中で引用されている参考文献を紹介する。初期投薬量は、動物モデルなどのインビボデータから推定され得る。癌などの特定の疾患を処置するための化合物の有効性を試験するために有用な動物モデルは、当技術分野では一般的によく知られている。当業者であれば、ヒトへの投与に好適な投薬量を決定するために、そのような情報を慣例的に適合させることができる。
【0235】
本明細書に記載される抗VISTA抗体の有効用量は、単回(例えば、ボーラス)投与、複数回投与、もしくは連続投与ごとに約0.001~約75mg/kgの範囲であるか、または単回(例えば、ボーラス)投与、複数回投与、もしくは連続投与ごとに血清濃度0.01~5000μg/mlの血清濃度を達成するものか、または処置される状態、投与経路、ならびに対象の年齢、体重、および状態に応じる有効な範囲もしくはその中のいずれかの値であり得る。ある特定の実施形態では、各用量が、体重1キログラム当たり約0.5μgから約50μg、例えば体重1キログラム当たり約3μgから約30μgの範囲であり得る。
【0236】
投与の量、頻度、および期間は、患者の年齢、体重、および疾患状態などの様々な要因に依存する。投与の治療レジメンは、2週間から無期限、2週間から6か月間、3か月間から5年間、6か月間から1年間または2年間、8か月間から18か月間などにわたって継続し得る。治療レジメンは、例えば、日1回、日2回、2日ごと、3日ごと、5日ごと、1週ごと、2週ごと、または1か月ごとの繰り返し投与を提供してもよい。繰り返し投与は、同じ用量におけるものでも異なる用量におけるものでもよい。投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上繰り返され得る。抗VISTA抗体またはそのコンジュゲートの(免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせでもよい)治療有効量は、単回用量として、または治療レジメンの過程にわたって、例えば、1週間、2週間、3週間、1か月間、3か月間、6か月間、1年間、またはそれ以上にわたって投与され得る。
【0237】
処置の方法
本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、とりわけ抗体のエフェクター機能の活性化を通じて、T細胞増殖およびサイトカイン生産を含む、T細胞活性化を促進することが可能である。したがって、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、免疫応答を誘導する方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。特に、本件の抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、免疫応答を誘導することにおける使用のためのものである。本開示は、免疫応答を誘導するための医薬品を作製するための、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートの使用にも関する。本明細書に記載される方法の具体的な実施形態において、免疫応答の誘導は、抗体のエフェクター機能の活性化を必要とする。
【0238】
本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、免疫応答を誘導する方法であって、免疫応答の誘導がVISTA媒介性免疫抑制を阻害することを含む方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。したがって、好ましくは、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、免疫応答を誘導する方法であって、免疫応答の誘導が、T細胞活性化を促進することを含む方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。T細胞活性化は、特に、T細胞増殖、例えば、CD4T細胞増殖および/もしくはCD8T細胞増殖、ならびに/またはサイトカイン生産、とりわけ炎症誘発性サイトカイン、例えば、INF-γ、IL-2、および/もしくはTNF-αの刺激を含み得る。
【0239】
本件の抗VISTA抗体は、とりわけ、CD4T細胞増殖、CD8T細胞増殖、CD4T細胞サイトカイン生産、および/またはCD8T細胞サイトカイン生産の誘導を通じて、T細胞活性化を促進することなどにより、VISTA媒介性免疫抑制を阻害することによって、免疫応答を誘導できるため、癌を含む、VISTAによって媒介される様々な状態を処置するために有用である。したがって、VISTA阻害経路に対する治療介入は、多種多様なVISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置のために、炎症およびT細胞媒介性免疫を調節するための有望なアプローチとなる。実際、本明細書で開示される抗体は、腫瘍成長をインビボで阻害する。
【0240】
したがって、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置する方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。したがって、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置する方法であって、処置がVISTA媒介性免疫抑制を阻害することを含む方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。したがって、好ましくは、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置する方法であって、処置がT細胞活性化を促進することを含む方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0241】
したがって、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置し、CD4T細胞増殖を誘導し、CD8T細胞増殖を誘導し、CD4T細胞サイトカイン生産を誘導し、かつ/またはCD8T細胞サイトカイン生産を誘導する方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。したがって、好ましくは、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置する方法であって、処置が、CD4T細胞増殖を誘導すること、CD8T細胞増殖を誘導すること、CD4T細胞サイトカイン生産を誘導すること、および/またはCD8T細胞サイトカイン生産を誘導することを含む方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0242】
驚くべきことに、本件の抗体によるT細胞の活性化には、エフェクター機能が必要とされる。これに対し、N298A突然変異[Herbs et al. Nature 515(7528): 563-567]によってヒトFcγ受容体への結合を回避するようにエンジニアリングされた故にエフェクター機能を全く有しない、ヒト化型のIgG1抗VISTA mAbは、CD4増殖、CD8増殖、CD4T細胞サイトカインの生産、およびCD8T細胞サイトカインの生産のいずれも誘導することができない。したがって、本明細書に記載される抗VISTA抗体のこの変異体は、腫瘍増殖をインビボで阻害することができない。
【0243】
より好ましくは、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置する方法であって、処置が抗体のエフェクター機能の活性化によってT細胞活性化を促進することを含む方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。したがって、さらにより好ましくは、本明細書に記載される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置する方法であって、処置が、抗体のエフェクター機能の活性化によって、CD4T細胞増殖を誘導すること、CD8T細胞増殖を誘導すること、CD4T細胞サイトカイン生産を誘導すること、および/またはCD8T細胞サイトカイン生産を誘導することを含む方法において使用することができ、前記方法は、有効量の抗VISTA抗体またはコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含む。本明細書に記載される治療方法は、本明細書に記載される、VISTAに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメント、または本明細書で開示されるこれらの抗体を含むコンジュゲートを、それを必要とする患者に投与することを含み得る。したがって、本明細書で開示されるVISTA抗体およびそのコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置のために、免疫、特にT細胞免疫を制御するのに有用である。
【0244】
したがって、本開示の一態様は、患者におけるVISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置における使用のための、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートに関する。また本明細書では、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置を、それを必要とする患者において行う方法も提供され、前記方法は、本明細書で開示される抗VISTA抗体、その抗原結合フラグメント、またはコンジュゲートを患者に投与することを含む。本開示は、癌を処置するための医薬品を作製するための、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートの使用にも関する。
【0245】
ある実施形態において、本開示は、患者におけるVISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置における使用のための、本明細書で開示される抗VISTA抗体またはそのコンジュゲートを含む組成物に関する。また本明細書では、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置を、それを必要とする患者において行う方法も提供され、前記方法は、本明細書で開示される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲートを含む組成物を患者に投与することを含む。本開示は、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置するための医薬品を作製するための、本明細書で開示される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲートを含む組成物の使用にも関する。
【0246】
本明細書で開示される抗体によって処置され得る癌は、あらゆる臓器または体組織の、あらゆる悪性または良性の腫瘍を含み得る。例は、乳房、消化器/胃腸管、内分泌、神経内分泌、眼、泌尿生殖器、生殖細胞、婦人科、頭頸部、血液学的/血液、筋骨格、神経、呼吸器/胸部、膀胱、結腸、直腸、肺、子宮内膜、腎臓、膵臓、唾液腺、肝臓、胃、腹膜、精巣、食道、前立腺、脳、子宮頸部、卵巣、および甲状腺の癌を含むが、これらに限定されない。他の癌は、黒色腫、中皮腫、肉腫、神経膠芽腫、血液癌、例えば白血病、骨髄腫、およびリンパ腫、ならびに本明細書に記載されるあらゆる癌を含み得る。いくつかの実施形態では、固形腫瘍に骨髄系細胞および/またはT細胞が浸潤する。いくつかの実施形態では、癌は、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、中皮腫、および/または骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄球性(骨髄性)白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病、T細胞性前リンパ球性白血病、大型顆粒リンパ球性白血病、または成人T細胞白血病などのリンパ球性白血病または骨髄性白血病を含む、あらゆる種類またはタイプの白血病であり得る。いくつかの実施形態では、リンパ腫は、組織球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、またはホジキンリンパ腫であり、いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、固形腫瘍、例えば、黒色腫または膀胱癌である。具体的な実施形態において、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌である。本発明は、白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞またはFAB ALL、急性骨髄球性白血病(AML)、慢性骨髄球性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ヘアリーセル白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、大腸癌腫、膵癌腫、上咽頭癌腫、悪性組織球増殖症、腫瘍随伴症候群/悪性高カルシウム血症、固形腫瘍、腺癌、肉腫、悪性黒色腫、血管腫、転移性疾患、骨吸収に関連する癌、癌関連骨痛などのうちの少なくとも1つを含むがこれに限定されない、細胞、組織、臓器、動物、または患者における少なくとも1つの悪性疾患を調節または処置する方法も提供する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍に骨髄系細胞および/またはT細胞が浸潤する。具体的な実施形態において、固形腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺癌である。別の実施形態では、固形腫瘍は中皮腫である。
【0247】
好ましくは、癌は、癌膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、卵管癌、胆嚢癌、消化管癌、頭頸部癌、血液癌(例えば、白血病、リンパ腫、または骨髄腫)、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣癌、原発性腹膜癌、唾液腺癌、肉腫、胃癌、甲状腺癌、膵臓癌、腎細胞癌腫、神経膠芽腫、および前立腺癌からなる群において選択される。
【0248】
本件の抗体は、上記に詳述したように、VISTA媒介性疾患を有する患者、例えば癌患者において、免疫応答を誘導することができるため、特に有用である。したがって、ある実施形態において、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、患者におけるVISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置における使用のためのものであり、この使用は、患者における免疫応答を誘導することを含む。また本明細書では、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、本明細書で開示される抗VISTA抗体またはそのコンジュゲートを患者に投与し、この患者における免疫応答を誘導することを含む方法も提供される。本開示は、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置するための医薬品を作製するための、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートの使用にも関し、この処置は、患者における免疫応答を誘導することを含む。
【0249】
ある実施形態において、本開示は、患者におけるVISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置における使用のための、本明細書で開示される組成物であって、本件の抗VISTA抗体またはそのコンジュゲートを含む組成物に関し、この使用は、患者における免疫応答を誘導することを含む。また本明細書では、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌の処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、本明細書で開示される抗VISTA抗体またはコンジュゲートを患者に投与し、この患者における免疫応答を誘導することを含む方法も提供される。本開示は、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置するための医薬品を作製するための、本明細書で開示される組成物の使用にも関し、この組成物は、本件の抗VISTA抗体またはそのコンジュゲートを含み、この処置は、患者における免疫応答を誘導することを含む。
【0250】
ある実施形態は、VISTA媒介性疾患を有する患者、例えば、癌患者において免疫応答を誘導することにおける使用のための、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートを提供する。また本明細書では、免疫応答の誘導を、それを必要とするVISTA媒介性疾患を有する患者、例えば、癌患者において行う方法も提供され、前記方法は、本明細書で開示される抗VISTA抗体またはコンジュゲートを患者に投与することを含む。本開示は、VISTA媒介性疾患を有する患者、例えば、癌患者における免疫応答を誘導するための医薬品を作製するための、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートの使用にも関する。
【0251】
ある実施形態において、本開示は、VISTA媒介性疾患を有する患者、例えば、癌患者において免疫応答を誘導することにおける使用のための、本明細書で開示される抗VISTA抗体またはそのコンジュゲートを含む組成物に関する。また本明細書では、免疫応答を、それを必要とするVISTA媒介性疾患を有する患者、例えば、癌患者において行う方法も提供され、前記方法は、本明細書で開示される抗VISTA抗体またはそのコンジュゲートを含む組成物を患者に投与することを含む。本開示は、VISTA媒介性疾患を有する患者、例えば、癌患者における免疫応答を誘導するための医薬品を作製するための、本明細書で開示される抗VISTA抗体またはそのコンジュゲートを含む組成物の使用にも関する。
【0252】
このように本明細書で開示される抗体によって生成される免疫応答は、限定されるものではないが、CD4T細胞増殖の誘導、CD8T細胞増殖の誘導、CD4T細胞サイトカイン生産の誘導、およびCD8T細胞サイトカイン生産の誘導を含む。好ましくは、本明細書で開示される抗体が、CD4T細胞増殖の誘導、CD8T細胞増殖の誘導、CD4T細胞サイトカイン生産の誘導、およびCD8T細胞サイトカイン生産の誘導を含むがこれらに限定されない免疫応答を生成するには、エフェクター機能が必要とされる。
【0253】
抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、第2の治療剤と混和され得る。
【0254】
「治療剤」は、抗体、ペプチド、タンパク質、酵素、および化学療法剤などの生物学的薬剤を包含する。治療剤は、細胞結合剤(CBA)および化合物のイムノコンジュゲート、例えば抗体-薬物コンジュゲート(ADC)も包含する。コンジュゲート中の薬物は、本明細書に記載されるものなどの細胞傷害剤であり得る。
【0255】
本明細書で使用される場合、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート、および他の治療剤は、それらが同じ日に、例えば同じ患者来診中に患者に投与される場合、逐次投与されると言われる。逐次投与は、1、2、3、4、5、6、7、または8時間おいて行われ得る。これに対し、本開示の抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲート、および他の治療剤は、それらが異なる日に患者に投与される場合、別々に投与されると言われ、例えば、本開示の抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲート、および他の治療剤は、1日、2日もしくは3日、1週、2週、または毎月の間隔で投与され得る。本開示の方法において、本開示の抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲートの投与は、他の治療剤の投与に先行または追随し得る。
【0256】
非限定的な例として、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲート、および他の治療剤が、一定期間にわたって同時に投与されてもよく、その後、第2の期間にわたり、本開示の抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲート、および他の治療剤の投与が交互に行われる。
【0257】
本開示の組み合わせ療法は、相加効果または相乗効果よりも高い効果をもたらし、治療利益を提供することができ、ここで、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲート、あるいは他の治療剤のいずれも、単独で治療上有効である量において投与されない。したがって、そのような薬剤は、より低い量で投与され、有害作用の可能性および/または重篤度が低減し得る。
【0258】
好ましい実施形態において、他の治療剤は、化学療法剤である。前記化学療法剤は、好ましくは、アルキル化剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗血管新生剤、抗エストロゲン薬、抗アンドロゲン薬、または免疫調節剤である。
【0259】
本明細書で使用される「アルキル化剤」という用語は、細胞内のあらゆる分子、好ましくは核酸(例えば、DNA)を、架橋またはアルキル化することのできる、あらゆる物質を指す。アルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード、例えばメクロレタミン、クロラムブコール、メルファラン、クロリドレート(chlorydrate)、ピポブロメン、プレドニムスチン、リン酸二ナトリウムもしくはエストラムスチン;オキサゾフォリン、例えばシクロホスファミド、アルトレタミン、トロホスファミド、スルホホスファミドもしくはイホスファミド;アジリジンもしくはイミン-エチレン、例えばチオテパ、トリエチレンアミンもしくはアルテトラミン;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、ストレプトゾシン、ホテムスチンもしくはロムスチン;スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、トレオスルファンもしくはインプロスルファン;トリアゼン、例えばダカルバジン;または白金錯体、例えばシスプラチナム、オキサリプラチンおよびカルボプラチンが挙げられる。
【0260】
本明細書で使用される「代謝拮抗薬」という表現は、ある特定の活性、通常はDNA合成に干渉することによって、細胞の成長および/または代謝を遮断する物質を指す。代謝拮抗薬の例としては、メトトレキセート、5-フルオルウラシル、フロクスウリジン、5-フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、クロロデスオキシアデノシン、5-アザシチジン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシン、およびペントスタチンが挙げられる。
【0261】
本明細書で使用される場合、「抗腫瘍抗生物質」は、DNA、RNAおよび/またはタンパク質の合成を防止または阻害し得る化合物である。抗腫瘍抗生物質の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミスラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、およびプロカルバジンが挙げられる。
【0262】
本明細書で使用される「有糸分裂阻害剤」は、細胞周期および有糸分裂の正常な進行を防止する。概して、パクリタキセルおよびドセタキセルなどの微小管阻害剤またはタキソイドは、有糸分裂を阻害することが可能である。ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンなどのビンカアルカロイドも、有糸分裂を阻害することが可能である。
【0263】
本明細書で使用される場合、「クロマチン機能阻害剤」または「トポイソメラーゼ阻害剤」という用語は、トポイソメラーゼIまたはトポイソメラーゼIIなどのクロマチンモデリングタンパク質の正常な機能を阻害する物質を指す。クロマチン機能阻害剤の例は、トポイソメラーゼIについては、カンプトテシンおよびトポテカンまたはイリノテカンなどのその誘導体を含み、トポイソメラーゼIIについては、エトポシド、リン酸エトポシド、およびテニポシドを含む。
【0264】
本明細書で使用される場合、「抗血管新生剤」という用語は、血管の成長を阻害するあらゆる薬物、化合物、物質または薬剤を指す。例示的な抗血管新生剤は、ラゾキシン、マリマスタット、バチマスタット、プリノマスタット、タノマスタット、イロマスタット、CGS-27023A、ハロフジノン、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、サリドマイド、CDC501、DMXAA、L-651582、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インターフェロン-アルファ、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンジオスタチン、およびビタキシンを含むが、決してこれらに限定されない。
【0265】
本明細書で使用される場合、「抗エストロゲン薬」または「抗エストロゲン剤」という用語は、エストロゲンの作用を低減するか、アンタゴナイズするか、または阻害する、あらゆる物質を指す。抗エストロゲン剤の例は、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、およびエキセメスタンである。
【0266】
本明細書で使用される場合、「抗アンドロゲン薬」または「抗アンドロゲン剤」という用語は、アンドロゲンの作用を低減するか、アンタゴナイズするか、または阻害する、あらゆる物質を指す。抗アンドロゲン薬の例は、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、スプリロノラクトン、酢酸シプロテロン、フィナステリド、およびシミチジンである。
【0267】
本明細書で使用される「免疫調節剤」は、免疫系を刺激する物質である。
【0268】
免疫調節剤の例としては、インターフェロン、インターロイキン、例えばアルデスロイキン、OCT-43、デニロイキンジフリトクスおよびインターロイキン-2、腫瘍壊死因子、例えばタソネルミンまたは他の免疫調節剤、例えばレンチナン、シゾフィラン、ロキニメックス、ピドチモド、ペガデマーゼ、チモペンチン、ポリI:Cまたはレバミソールと5-フルオロウラシルの併用が挙げられる。
【0269】
さらなる詳細については、当業者は、「Association Francaise des Enseignants de Chimie Therapeutique」によって編集され、「Traite de chimie therapeutique」, vol. 6, Medicaments antitumouraux et perspectives dans le traitement des cancers, edition TEC & DOC, 2003と題するマニュアルを参照することができる。
【0270】
化学剤または細胞傷害剤としては、例えば、ゲフィチニブまたはエルロチニブなど、あらゆるキナーゼ阻害剤も挙げることができる。
【0271】
より一般的には、好適な化学療法剤の例は、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシルデカルバジン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アントラマイシン(AMC)、抗有糸分裂剤、cis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗薬、アスパラギナーゼ、生BCG(膀胱内)、リン酸ベタメタゾンナトリウムおよび酢酸ベタメタゾン、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ロイコウオリンカルシウム(calcium leucouorin)、カリケアマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、コンジュゲートエストロゲン、シクロホスファミド、シクロトスファミド(Cyclothosphamide)、シタラビン、シタラビン、サイトカラシンB、シトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ダウニルビシン(daunirubicin)HCL、クエン酸ダウノルクビシン(daunorucbicin citrate)、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドセタキセル、メシル酸ドラセトロン、ドキソルビシンHCL、ドロナビノール、大腸菌(E.coli)L-アスパラギナーゼ、エメチン、エポエチン-α、エルウィニア(Erwinia)L-アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、リン酸エストラムスチンナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシドシトロロラム(citrororum)因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾール、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ゲムシタビンHCL、グルココルチコイド、酢酸ゴセレリン、グラミシジンD、グラニセトロンHCL、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHCL、イホスファミド、インターフェロンα-2b、イリノテカンHCL、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミソールHCL、リドカイン、ロムスチン、マイタンシノイド、メクロレタミンHCL、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファランHCL、メルカプチプリン(mercaptipurine)、メスナ、メトトレキセート、メチルテストステロン、ミスラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、酢酸オクトレオチド、オンダンセトロンHCL、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペントスタチン、ピロカルピンHCL、プリマイシン(plimycin)、カルムスチンインプラントを含むポリフェプロサン20、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、プロカルバジンHCL、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール、テガフール、テニポシド、テノポシド、テストラクトン、テトラカイン、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、チオグアニン、チオテパ、トポテカンHCL、クエン酸トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ならびに酒石酸ビノレルビンを含むが、これらに限定されない。
【0272】
本明細書で開示される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲートは、化学療法剤の組み合わせを受ける癌の処置を必要とする患者に投与され得る。化学療法剤の例示的な組み合わせとしては、ロイコボリン(フォリン酸またはLV)との組み合わせでの5-フルオロウラシル(5FU);ウラシル(UFT)およびロイコボリンとの組み合わせでのカペシタビン;ウラシル(UFT)およびロイコボリンとの組み合わせでのテガフール;5FUとの組み合わせでの、またはカペシタビンとの組み合わせでのオキサリプラチン;カペシタビンとの組み合わせでのイリノテカン、5FU、イリノテカンまたはカペシタビンとの組み合わせでのマイトマイシンCが挙げられる。本明細書で開示される化学療法剤の他の組み合わせの使用も可能である。
【0273】
抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲートは、他の治療用抗体と組み合わせることもできる。したがって、本明細書で開示される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲートに基づく療法は、例えば、限定ではないが、抗EGFR(EGF受容体)モノクローナル抗体または抗VEGFモノクローナル抗体などの異なるモノクローナル抗体と組み合わせるか、またはその補助として投与することができる。抗EGFR抗体の具体例としては、セツキシマブおよびパニツムマブが挙げられる。抗VEGF抗体の具体例はベバシズマブである。
【0274】
とりわけ、本明細書に記載される治療方法は、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲートと併せて、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含み得る。免疫チェックポイント阻害剤と、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントもしくはコンジュゲートとは、同時に、別々に、または逐次投与されてもよい。
【0275】
本明細書で使用される場合、「チェックポイント阻害剤」とは、免疫チェックポイントを標的とし、前記免疫チェックポイントの機能を遮断する分子、例えば、低分子、可溶性受容体、または抗体などを指す。より具体的には、本明細書で使用される「チェックポイント阻害剤」は、いくつかのタイプの免疫系細胞、例えばT細胞、およびいくつかの癌細胞によって作られる、ある特定のタンパク質を遮断する分子、例えば低分子、可溶性受容体、または抗体などである。
【0276】
第1の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIGIT、TIM3、GAL9、LAG3、PSG-L1、VSIG4、KIR、2B4[分子のCD2ファミリーに属し、すべてのNK、γδ、およびメモリーCD8+(αβ)T細胞において発現される]、CD160(BY55ともいう)、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、IDO1、A2aR、ならびに種々のB-7ファミリーリガンドのいずれかのうちのいずれか1つの阻害剤である。
【0277】
例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗LAG-3抗体(例えば、BMS-986016)、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗Tim3抗体(例えば、TSR-022、MBG453)、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗A2aR抗体、抗CD200抗体、抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ)、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS 936559)、抗TIGIT抗体(例えば、チラゴルマブ、ビボストリマブ)、抗VSIG4抗体、抗CD28抗体、抗CD80抗体または抗CD86抗体、抗B7RP1抗体、抗B7-H3抗体、抗HVEM抗体、抗CD137抗体(例えば、ウレルマブ)、抗CD137L抗体、抗OX40(例えば、9B12、PF-04518600、MEDI6469)、抗OX40L抗体、抗CD40抗体または抗CD40L抗体、抗GAL9抗体、抗IL-10抗体、PD-1リガンド(例えばPDL-1またはPD-L2)の細胞外ドメインとIgG1との融合タンパク質(例えば、AMP-224)、OX40リガンド(例えばOX40L)の細胞外ドメインとIgG1との融合タンパク質(例えば、MEDI6383)、IDO1薬(例えば、エパカドスタット)、およびA2aR薬が挙げられる。複数の免疫チェックポイント阻害剤が認可されているか、または現在臨床試験中である。そのような阻害剤には、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、チラゴルマブ、ビボストリマブ、BMS936559、ウレルマブ、9B12、PF-04518600、BMS-986016、TSR-022、MBG453、MEDI6469、MEDI6383、およびエパカドスタットが含まれる。
【0278】
免疫チェックポイント阻害剤の例は、例えば、Marin-Acevedo et al., Journal of Haematology & Oncology 11: 8, 2018、Kavecansky and Pavlick, AJHO 13(2): 9-20, 2017、Wei et al., Cancer Discov 8(9): 1069-86, 2018に収載されている。
【0279】
好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、LAG-3、Tim3、PD-1、PD-L1、PSG-L1、VSIG4、CD137、OX40、またはIDO1の阻害剤である。より好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1またはPD-L1の阻害剤である。さらにより好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1を阻害する抗体またはPD-L1を阻害する抗体である。
【0280】
したがって、本開示は、好ましくは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置するための、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートと、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体との組み合わせ療法に関する。第1の態様において、本件の抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートは、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置することにおける使用のためのものであり、この処置は、抗PD-1または抗PD-L1抗体をさらに投与することを含む。本開示は、有効量の本件の抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートと、有効量の抗PD-1または抗PD-L1抗体とを、それを必要とする対象に投与することを含む、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置する方法にも関する。別の態様において、本開示は、VISTA媒介性疾患、とりわけ癌を処置するための医薬品を作製するための、本明細書で開示される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートの使用にも関し、この処置は、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を投与することを含む。
【0281】
抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメント、またはそのコンジュゲートと、抗PD-1または抗PD-L1抗体とは、同時に、別々に、または逐次投与されてもよい。
【0282】
診断の方法
VISTAは様々な癌において過剰発現され、このことは、VISTAが癌を診断するための信頼できるバイオマーカーであることを示している。したがって、VISTAタンパク質に結合する、本明細書で提供される標識抗体などの試薬は、例えば癌などの細胞増殖性の疾患、障害、または状態を検出、診断、またはモニタリングするために、診断目的で使用され得る。別の態様において、本開示は、免疫寛容によって媒介される疾患を診断するための、VISTAの発現のレベルを測定することを含む診断方法に関する。例えば、患者サンプルにおける高レベルのVISTA発現(例えば、VISTAタンパク質またはmRNA)の検出は、癌の存在を示し得る。さらに、これらの診断試験は、例えば、患者のサンプルにおける高レベルのVISTA発現の検出に基づいてVISTAアンタゴニストを投与することにより、患者に処置を割り当てるために使用され得る。
【0283】
本明細書で提供される抗VISTA抗体は、本明細書に記載されているかまたは当業者に知られている従来の免疫組織学的方法(例えば、Jalkanen et al., 1985, J. Cell. Biol. 101:976-985、およびJalkanen et al., 1987, J. Cell. Biol. 105:3087-3096を参照されたい)を使用して、生物学的サンプル中のVISTAを検出するために、またはVISTAレベルをアッセイするために使用され得る。タンパク質遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが挙げられる。好適な抗体アッセイ標識は、当技術分野において知られており、グルコースオキシダーゼなどの酵素標識;ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99Tc)などのラジオアイソトープ;ルミノールなどの発光標識;ならびにフルオレセインおよびローダミン、およびビオチンなどの蛍光標識を含む。
【0284】
したがって、第1の態様において、本発明は、対象におけるVISTA媒介性癌を検出するためのインビトロの方法であって、
a)前記対象の生物学的サンプルを、本明細書で開示される抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントと接触させる工程と、
b)前記抗体、またはその抗原結合フラグメントの、前記生物学的サンプルとの結合を検出する工程と
を含む方法に関する。
【0285】
本件の方法によれば、抗VISTA抗体の結合は、VISTA媒介性癌の存在を示す。好ましくは、腫瘍微小環境の免疫浸潤物中の抗VISTA抗体の結合は、VISTA媒介性癌の存在を示す。
【0286】
本発明は、対象におけるVISTA媒介性癌を検出するためのインビトロの方法であって、
a)前記対象の生物学的サンプルを、抗VISTA抗体、またはその抗原結合フラグメントと接触させる工程と、
b)前記抗体、またはその抗原結合フラグメントの、前記生物学的サンプルとの結合を数量化する工程と
を含む方法にも関する。
【0287】
本件の方法によれば、抗VISTA抗体の結合は、VISTA媒介性癌の存在を示す。好ましくは、腫瘍微小環境の免疫浸潤物中の抗VISTA抗体の結合は、VISTA媒介性癌の存在を示す。
【0288】
当業者には明らかになるように、VISTAに結合する抗体のレベルは、以下に詳述するように、当業者に知られているいずれかの手段によって数量化され得る。好ましい方法は、ELISAもしくはELISPOTなどの免疫酵素アッセイ、免疫蛍光、免疫組織化学(IHC)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはFACSの使用を含む。
【0289】
本件の方法の工程b)の数量化は、サンプル中の、とりわけ腫瘍微小環境の免疫浸潤物中の、VISTA発現のレベルの直接的な反映である。したがって、本件の方法は、上述のように、VISTAの発現のレベルを決定することにより、VISTA媒介性癌を特定することを可能にする。好ましい実施形態において、前記サンプル中の、とりわけ腫瘍微小環境の免疫浸潤物中のVISTAの発現のレベルは、参照レベルと比較される。
【0290】
さらなる好ましい実施形態によれば、本発明は、対象におけるVISTA媒介性癌を検出するためのインビトロの方法であって、
a)前記対象の生物学的サンプル中のVISTAの発現のレベルを決定する工程と、
b)工程a)の発現のレベルを参照レベルと比較する工程と
を含み、工程a)においてアッセイされたVISTAのレベルにおける参照レベルと比較した上昇がVISTA媒介性癌を示す、
方法に関する。
【0291】
本発明は、対象におけるVISTA媒介性癌を診断するためのインビトロの方法であって、
a)前記対象の生物学的サンプル中のVISTAの発現のレベルを決定する工程と、
b)工程a)の発現のレベルを参照レベルと比較する工程と
を含み、工程(b)においてアッセイされたVISTAのレベルにおける参照レベルと比較した上昇がVISTA媒介性癌を示す、
方法にも関する。
【0292】
VISTAの発現レベルは、有利には、「参照レベル」または「参照発現レベル」ともいう、コントロール細胞またはサンプルにおけるレベルとの関連で比較または測定される。「参照レベル」、「参照発現レベル」、「コントロールレベル」、および「コントロール」は、本明細書では互換的に使用される。「コントロールレベル」は、概して疾患または癌を有しない、比較可能なコントロール細胞において測定された、別個のベースラインレベルを意味する。癌性患者においても、腫瘍の部位である組織は、依然として腫瘍のない健康な組織を含むため、前記コントロール細胞は、同じ個体からのものであり得る。これは、正常であるか、または疾患サンプルもしくは試験サンプルの取得源であるものと同じ疾患を呈さない、別の個体を起源としてもよい。本発明との関連において、「参照レベル」という用語は、患者の癌細胞含有サンプルにおけるVISTAの発現の試験レベルを評価するために使用されるVISTAの発現の「コントロールレベル」を指す。例えば、患者の生物学的サンプルにおけるVISTAのレベルが、VISTAの参照レベルよりも高いとき、その細胞は、VISTAの高レベルの発現または過剰発現を有すると考えられる。参照レベルは、複数の方法によって決定することができる。したがって、発現レベルは、VISTA保有細胞、あるいはVISTAを発現する細胞の数と無関係であるVISTAの発現のレベルを定義し得る。したがって、各患者についての参照レベルは、VISTAの参照比によって策定することができ、この参照比は、本明細書に記載される参照レベルを決定するための方法のいずれによって決定してもよい。
【0293】
例えば、コントロールは、様々な形態をとり得る既定の値であり得る。これは、中央値または平均などの単一のカットオフ値でもよい。「参照レベル」は、あらゆる患者に個々に等しく適用可能な単一の数でもよく、または参照レベルは、患者の特定の部分集団によって異なってもよい。したがって、例えば、年上の男性は同じ癌に対して年下の男性とは異なる参照レベルを有する場合があり、女性は同じ癌に対して男性とは異なる参照レベルを有する場合がある。あるいは、「参照レベル」は、試験される新生細胞の組織と同じ組織からの非発癌性癌細胞におけるVISTAの発現のレベルを測定することによって決定されてもよい。同様に、「参照レベル」は、患者の新生細胞中のVISTAの、同じ患者における非腫瘍細胞中のVISTAレベルに対する特定の比であり得る。「参照レベル」は、腫瘍細胞を刺激するように操作されてもよく、または参照レベルを正確に決定する発現レベルをもたらす他のいずれかの様式で操作されてもよい、インビトロ培養細胞のVISTAのレベルでもよい。一方で、「参照レベル」は、上昇したVISTAレベルを有しない群および上昇したVISTAレベルを有する群などの比較群に基づいて確立されてもよい。比較群の別の例は、特定の疾患、状態、または症状を有する群、および疾患を有しない群である。既定の値は、例えば、試験集団が低リスク群、中リスク群、および高リスク群などの群に均等に(または不均等に)分割されるように構成されてもよい。
【0294】
参照レベルは、同じ癌を有する患者の集団におけるVISTAのレベルの比較によって決定されてもよい。これは例えば、患者のコホート全体がグラフで表現され、第1の軸が、VISTAのレベルを表し、第2の軸が、VISTAを所定のレベルで発現する腫瘍細胞を持つコホート内の患者の数を表す、ヒストグラム分析によって達成され得る。2つ以上の別個の患者群が、VISTAのレベルが同じまたは同様であるコホートのサブセット集団の特定によって決定され得る。次いで、これらの別個の群を最も良好に区別するレベルに基づいて、参照レベルの決定が行われ得る。参照レベルは、2つ以上のマーカー(その1つはVISTAである)のレベルを表してもよい。2つ以上のマーカーは、例えば、各マーカーのレベルについての値の比によって表され得る。
【0295】
同様に、一見して健康な集団は、VISTAの発現に関連する状態を有することが知られている集団が有するものとは異なる「正常」範囲を有することになる。したがって、選択される既定値は、個体が属するカテゴリーを考慮に入れたものであり得る。適切な範囲およびカテゴリーは、慣例的な実験を用いるだけで、当業者によって選択され得る。「上昇した」「増加した」とは、選択されたコントロールに対して相対的に高いことを意味する。典型的に、コントロールは、適切な年齢層にある一見して健康な正常の個体に基づく。
【0296】
本発明に係るコントロールは、既定値に加え、実験材料と並行して試験される材料のサンプルであり得ることも理解されよう。例としては、同じ対象から同時に取得される組織または細胞、例えば、対象からの単一生検の一部または単一細胞サンプルの一部が挙げられる。
【0297】
好ましくは、VISTAの参照レベルは、正常組織サンプル(例えば、VISTA媒介性癌を有しない患者からのもの、または疾患発生前の同じ患者からのもの)におけるVISTAの発現のレベルである。
【0298】
VISTA媒介性癌のより決定的な診断により、医療関係者が防止措置または積極的処置をより早期に用いることが可能になり、それにより、VISTA媒介性癌の発達またはさらなる進行が防止され得る。
【0299】
これより、実施例をもって本発明を詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、本発明の例証のために示されるものに過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されないことは明らかである。
【実施例
【0300】
[実施例1]
Ab3における脱アミド部位の特定
モノクローナル抗体Ab3は、WO2016/94837において初めて開示された。Ab3は、配列番号11の配列の重鎖および配列番号12の配列の軽鎖を含む。バイオインフォマティクス分析は、Ab3の軽鎖に2つ、および重鎖に9つの潜在的な脱アミド部位があると予測する。
【0301】
これらの部位のいずれかが実際に脱アミドを起こすかどうかを調査するために、Ab3を、Goyon et al.[J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 1065-1066:119-128 (2017)]に記載されているようなカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)に供した。
【0302】
方法:CEX(pHグラジエント)
材料:
・ カラムMabPac SCX-10 4×250mm、10μm(Thermo、参照:74625)
・ 溶離剤:
・ バッファーA:CX-1 pHグラジエントバッファーA pH5.6(Thermo、参照:85349)
・ バッファーB:CX-1 pHグラジエントバッファーB pH10.2(Thermo、参照:85349)
・ バッファーをMilliQ水によって1/10に希釈し、濾過する/0.22μm(即時使用のため)
・ サンプル調製および方法:
・ サンプルをMilliQ水によって1mg/mLに希釈する
・ 20μLの希釈サンプルの注射
・ グラジエント:表2参照。
【0303】
【表2】
【0304】
結果
図1に示すように、Ab3は、40%の重鎖N55/N55、33%のN55およびD55脱アミド変異体、ならびに8%の完全D55脱アミド変異体を含む、3つの主な電荷変異体の非常に不均質な混合物である。この結果は、構造評価(LC-MS)によって確認された。強制分解研究(pH9、40℃、3日;対ペムブロリズマブ)は同じ結論に至った。すなわち、Ab3のVLおよびVH鎖のAsn残基をこれらの条件下で調べた際、分解は重鎖のN55についてしか観察されず、他のAsn残基は影響を受けないように見受けられる。したがって、これらの異なる実験条件のすべてにおいて、重鎖のN55位は、Ab3における脱アミドの唯一の部位ではないにせよ、主要な部位と特定された。
[実施例2]
【0305】
Ab1の生成および特性解析
実施例1の結果に基づき、重鎖の55位のAsnをAspに突然変異させることによって、Ab3の変異体を作出した。この変異体をAb1と名付けた。
【0306】
Ab1は、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1k;G1m3(R215)アロタイプ)フレームワークに基づく抗VISTAヒト化モノクローナル抗体である。この組換え型抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において生産され、各々448アミノ酸残基の重鎖(HC)2本と、各々213アミノ酸残基のカッパ軽鎖(LC)2本とからなり、典型的なIgG1鎖間および鎖内ジスルフィド結合を有する。
【0307】
包括的な一式の方法を使用し、抗VISTA抗体Ab1の構造、物理化学的特徴、免疫学的特性および生物学的特性を明らかにした:
- 分子量:147213Da(G0F/G0F、pE/pE、16のジスルフィド橋)
- 分子式:C641099041686200950
- N-グリコシル化部位:298、298”
- ジスルフィド橋は以下の位置にある:
・ 鎖内(軽鎖):Cys(23)からCys(87);Cys(133)からCys(193)
・ 鎖内(重鎖):Cys(22)からCys(96);Cys(145)からCys(201);Cys(262)からCys(322);Cys(368)からCys(426)
・ 鎖間(軽鎖および重鎖):Cys(213)LCからCys(221)HC;Cys(227)HCからCys(227)HC;Cys(230)HCからCys(230)HC
【0308】
完全長IgG、脱グリコシル化IgG、IdeS消化型および還元型IgGの予想平均モル質量を確認した。重鎖のN末端残基は、グルタミンとしてコードされるが、主にピログルタミン酸形態で存在する。重鎖には1つのN-グリコシル化部位(Asn298)があり、これは主に、CHOで生産される組換え型IgGについて予想されるように、0、1、または2個の末端ガラクトース残基を有する典型的なコアフコシル化二分岐グリカンによって占有されている。重鎖内のC末端リジンのほとんどは切断される。
【0309】
分子量を以下の表3に示す。
【0310】
【表3】
[実施例3]
【0311】
VISTAに対するAb1の結合の決定
CDRにおける突然変異は、抗体の結合有効性に影響することが知られている。例えば、抗CD52aモノクローナル抗体のCRDL1におけるAsn33がAspで置き換えられたとき、抗原結合親和性の400分の1への減少が観察された[Qiu et al. mAbs. 11(7): 1266-1275 (2019)]。
【0312】
組換え型ヒト(rh)VISTA-Hisタンパク質VISTAに対するAb1の結合を直接ELISAおよび間接ELISAによって調査した。直接ELISAでは、rhVISTA-Hisタンパク質をプレート上に直接固定化し、間接ELISAでは、固定化された抗His抗体を使用してrhVISTA-Hisタンパク質を捕捉した。
【0313】
試験された抗体を表4に示す。
【0314】
【表4】
【0315】
55位にAspを有する抗VISTA抗体Ab1を、2つの異なるバッチのAb3抗体(55位にAsnを有する)、ならびにIgG1抗VISTAおよび抗hVISTAウサギポリクローナル抗体(ポジティブコントロール)、ならびに無関係のc9G4抗体(ネガティブコントロール)と比較した。
【0316】
直接ELISA
方法
1×D-PBS中で0.3μg/mlにおける100μlのrhVISTAにより、ウェルを4℃で一晩コーティングした。
【0317】
インキュベーション後、コーティング溶液を除去し、250μlのブロッキングバッファー(1×PBS中0.5%のゼラチン)を加えることにより、プレートを少なくとも1時間37℃でブロッキングした。
【0318】
ブロッキング後、希釈バッファー(1×PBS+0.1%ゼラチン+0.05%Tween 20)中の一次抗体(表2に列挙したもの)を、各ウェルが100μLの最終容量を有するように、初期濃度5μg/mLから1:3に連続的に希釈し、1時間37℃でインキュベートした。
【0319】
ウェルを300μlの1×PBSによって3回洗浄した。
【0320】
希釈バッファーにおいて1:5000に希釈した、100μlの二次抗体[AffiniPureヤギ抗ウサギ特異的IgG(H+L)HRP(Immuno Research Jackson、参照111-035-003)またはAffiniPureヤギ抗ヒト特異的IgG(Fcフラグメント)HRP(Immuno Research Jackson #109-035-098)]をウェルに加え、1時間37℃でインキュベートした。
【0321】
ウェルを300μlの1×PBSによって3回洗浄した。
【0322】
100μLのTMBを各ウェルに加え、プレートを5分間室温でインキュベートした。ウェルごとに100μlの1M HSOを加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmの吸光度を読み取った。
【0323】
結果
幾つかのIgG1モノクローナル抗体は脱アミドの結果として活性を失うことが報告されているが、Ab1抗VISTA抗体の結合親和性は、予想外に維持された。実際、Ab1は、非突然変異型抗体Ab3と比較して非常によく似たプロファイルを有していた(図2参照)。EC50値は、以前に観察されたものとは異なり、およそ8.83×10-10Mであった(CV21%)(表5)。予想されたとおり、c9G4ネガティブコントロール抗体は結合を示さなかった。
【0324】
【表5】
【0325】
間接ELISA
方法
1×D-PBS中で2μg/mlにおける100μlの抗6xヒスチジンマウスモノクローナルIgG1、クローンAD1.1.10(RD systems型番MAB050)によって、ウェルを4℃で一晩コーティングした(間接ELISA)。
【0326】
インキュベーション後、コーティング溶液を除去し、250μlのブロッキングバッファー(1×PBS中0.5%のゼラチン)を加えることにより、プレートを少なくとも1時間37℃でブロッキングした。
【0327】
ブロッキング後、希釈バッファー(1×PBS+0.1%ゼラチン+0.05%Tween 20)中で0.3μg/mlにおける100μLのrhVISTAを各ウェルに加え、1時間37℃でインキュベートした。
【0328】
ウェルを300μlの1×PBSによって3回洗浄した。
【0329】
希釈バッファー中の一次抗体(表2に列挙したもの)を、各ウェルが100μLの最終容量を有するように、初期濃度5μg/mLから連続的に希釈し、1時間37℃でインキュベートした。
【0330】
ウェルを300μlの1×PBSによって3回洗浄した。
【0331】
希釈バッファーにおいて1:5000に希釈した、100μlの二次抗体[AffiniPureヤギ抗ウサギ特異的IgG(H+L)HRP(Immuno Research Jackson、参照111-035-003)またはAffiniPureヤギ抗ヒト特異的IgG(Fcフラグメント)HRP(Immuno Research Jackson #109-035-098)]をウェルに加え、1時間37℃でインキュベートした。
【0332】
ウェルを300μlの1×PBSによって3回洗浄した。
【0333】
100μLのTMBを各ウェルに加え、プレートを5分間室温でインキュベートした。ウェルごとに100μlの1M HSOを加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmの吸光度を読み取った。
【0334】
結果
幾つかのIgG1モノクローナル抗体は脱アミドの結果として低減した親和性を有することが報告されているが、Ab1抗VISTA抗体の親和性は、ここでは予想外に維持された。実際、Ab1は、非突然変異型抗体Ab3と比較して非常によく似たプロファイルを有していた(図3参照)。EC50値は、およそ4.20×10-11Mであった(CV10%)(表6)。予想されたとおり、c9G4ネガティブコントロール抗体は結合を示さなかった。
【0335】
【表6】
[実施例4]
【0336】
PBMCとのCHO-VISTA共培養におけるT細胞の活性化およびサイトカインの放出の評価
VISTAは、免疫応答を決定的に制御する免疫チェックポイントタンパク質であることが知られている。Ab1は、元の抗体Ab3と同じ親和性でVISTAに結合するため、Ab1がAb3のようにその免疫抑制を逆転させることが可能かどうかを調査した。
【0337】
実験の概略表現を図4に示す。
【0338】
野生型(WT)か、またはヒトVISTAタンパク質を発現するようにトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に、Faxitron X線機90Gyによる照射を行い、それらの増殖および代謝を低減させた。
【0339】
次いで、20,000個のCHO細胞を200,000個のPBMC細胞と共に96ウェルプレートで培養した(CHO:PBMCの比=1:10)。
【0340】
次いでこの混合物を、合計200μl/96ウェルにおいて、Ab1またはhIgG1ネガティブコントロール10μg/mLの存在下で、抗CD3/CD28ビーズ(比:細胞32個につきビーズ1個)と共に、37℃および5%COでインキュベートした。
【0341】
3日目に上清を回収し、サイトカイン放出をMSD(Meso Scale Discovery)によって分析し、CD4およびCD8 T細胞におけるCD25 T細胞活性化マーカー発現をフローサイトメトリー(FACS)によって分析した。
【0342】
予想されたとおり、CHO-VISTAの存在下では、CD4およびCD8T細胞の増殖が抑制された。この抑制は、抗体Ab1の添加によって逆転した。Ab1の存在下では、CD4T細胞およびCD8T細胞の両方の強力な増殖が観察できた。しかしながら、ネガティブコントロールhIgG1抗体を用いた場合には、そのような刺激は検出されなかった。同様に、PBMCおよびCHO-VISTAの混合物へのAb1の添加は、IFNγ、IL-2、およびTNFαの強力な生産を引き起こし、CD4およびCD8T細胞の活性化を裏付けた(図5)。やはり、hIgG1ネガティブコントロールは効果を示さなかった。したがって、これらの結果は、Ab1がVISTA媒介性免疫抑制を阻害する活性を保持していることを実証する。
【0343】
この阻害の機序を理解する試みにおいて、Ab1のFcドメインの298位に突然変異を導入した(N298A)。この突然変異は、ヒトFcγ受容体に結合する抗体の能力を消失させるため、この突然変異を有する抗体は、エフェクター機能、例えば、ADCC、CDC、およびADCPを活性化できないことが知られている[例えば、Liu et al. Antibodies (Basel). 9(4): 64.( 2020)、Herbst et al. Nature. 515(7528):563-567 (2014)を参照されたい]。
【0344】
驚くべきことに、この突然変異は、CD4およびCD8T細胞の増殖を誘導するAb1の能力を完全に無効にした。同様に、Asn298がアラニンで置き換えられた場合、サイトカイン放出は検出できなかった。したがって、これらの結果は、Ab1とFcγ受容体との相互作用、ひいてはAb1のエフェクター機能が、VISTA免疫抑制のAb1による逆転のために非常に重要であることを示す(図5)。
【0345】
ネガティブコントロールは、そのFcにおける同じ突然変異の導入による影響を受けなかった。
【0346】
したがって、Ab1によるVISTAの遮断は、免疫抑制を逆転させる。この活性は、抗体のエフェクター機能(ADCCおよび/またはCDCおよび/またはADCP)を必要とする。
[実施例5]
【0347】
Ab1は、PSG-L1およびVSIG3に対するVISTAの結合を阻害する。
幾つかのVISTAリガンドが報告されている。特に、VSIG3は、特異的結合、およびT細胞活性化の機能的なインビトロ阻害を示す、VISTAの主要なリガンドとして特定されている[Wang et al. Immunology. 156(1):74-85 (2019)]。加えて、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1(PSGL-1)に対するVISTAのpH依存性結合が報告されており、酸性環境におけるこの相互作用の遮断は、VISTA媒介性免疫抑制をインビボで逆転させるのに十分である[Johnston et al. Nature. 574(7779): 565-570. (2019)]。
【0348】
したがって、Ab1がVISTAとVSIG3との間の相互作用および/またはVISTAとPSG-L1との相互作用を酸性pH環境(pH=6)において遮断し得るかどうかを調査した。
【0349】
CM5センサーチップにグラフトされたrhVSIG3-Fcに対するrhVISTA-His(単量体)またはrhVISTA-Fc(二量体)の結合の評価(2200RU)。
Biacoreにより、pH=7.4で相互作用を測定した。
【0350】
様々な濃度(0~1200nM)の抗VISTA Ab1の存在下で700nMにおいて、rhVISTA-His(単量体)およびrhVISTA-Fc(二量体)を試験した。
【0351】
図6は、Ab1の非存在下のVISTA-VSIG3結合(100%結合)と比較した、Ab1の存在下のVISTA-VSIG3結合の用量応答曲線を示す。Ab1は、用量依存性様式でVISTA-VSIG3相互作用を妨害する。
【0352】
VISTA-Fc-d2とPSGL1-Hisとの間の相互作用に対する抗VISTA抗体の評価。
アッセイ原理:
HTRF(均一時間分解蛍光:Homogeneous Time-Resolved Fluorescence)技術は、生体分子間の相互作用を研究するために開発されたアッセイである。この検出系は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく。d2で標識されたhVISTA-Fc(VISTA-Fc-d2)と、テルビウム標識抗His mAb(抗His-Tb/Cisbio)を保有するHisタグ付きhPSGL-1(PSGL1-His)との間の相互作用は、HTRFシグナルの発生を可能にする。
【0353】
この実験において試験された抗体は次のとおりであった:
- 抗VISTA Ab1
- 抗VISTA R&D Systems #71261
- ヒトIgG1コントロールアイソタイプ。
【0354】
抗体を異なる濃度(0~20μg/mL)にて、室温かつpH=6で4時間にわたり、VISTA-Fc-d2、および抗His-Tbによって間接的に標識されたPSGL1-Hisと共にインキュベートした。
【0355】
シグナルの減損は、ネガティブコントロールについては観察されない。一方、ポジティブコントロール、すなわち、VISTA/PSGL-1相互作用を防止する市販の抗体(R&D System #71261)の添加は、予想されたとおり、測定されたHTRFシグナルの減少をもたらす。この抗体について測定されたIC50は333nMであった(表7)。重要なことに、Ab1もシグナルの減少を引き起こし、これは、この抗体がVISTAとPSG-L1との間の相互作用を酸性pHで遮断することを示している(表8参照)。VISTA/PSGL-1 HTRF相互作用アッセイにおけるAb1のIC50は、2.3nMであった(表7)。
【0356】
【表7】
【0357】
【表8】
[実施例6]
【0358】
MC38マウス結腸腫瘍モデルにおける抗VISTA mAb1抗体のインビボ評価
材料および方法
各実験で、MC38細胞の凍結バイアルを解凍し、10%血清を含むDMEM/F12中で成長させた。2日間培養した後、トリプシンを使用して細胞を採取し、5×10細胞/mlの濃度でDMEM/F12に再懸濁し、マウスごとに100μlを注射した。
【0359】
8~10週齢の雌C57Bl/6 hVISTAマウスをGenoway(Lyon、France)から購入した。到着次第、これらを7日間順化させた後、右側腹部を剪毛した。マウスの剪毛された側腹部の皮下(s.c.)に、100μlのMC38細胞懸濁液(細胞50,000個)を注射した。
【0360】
腫瘍が直径約6mm(約80mm容量)に達したら、腫瘍が確立されたとみなした。確立し次第、処置を開始した。マウスFcを含むAb1のCDRに対応するマウス化抗VISTA抗体(mAb1)、または対応するアイソタイプコントロール抗体mIgG2aを、30mg/kg(ヒスチジン25mM、NaCl 150mM、0.5%ポリソルベート80、pH6.5にて製剤)において、3~4日ごとに計4回の注射により腹腔内投与した。腫瘍の成長を、処置の過程にわたって、実験が終了するまで週3回、長さ(L)、最初の測定に対して角度90°における幅(W)、そして最後に高さ(H)の3つの寸法について電子ノギスを使用して評価した。
【0361】
腫瘍容量(tumor volume)は、容量=0.52×(L×W×H)として導出した。
【0362】
Ab1によるT細胞活性化がインビトロにおいてエフェクター機能に依存することが示されたため、抗体のいずれかの抗腫瘍活性におけるこれらの活性の役割を調査した。FcγRと相互作用するAsn(Ab1におけるN298Aの等価の残基)がAla残基で置き換えられ、それによってあらゆるエフェクター機序が消失した、mAb1の変異体を作出した。mIgG1抗体をネガティブコントロールとして使用した[Chen et al. Front Immunol. 10:292 (2019)]。
【0363】
結果
試験された移植条件および投与スケジュールでは、コンピテントフォーマットのmAb1は、21日目に47%の腫瘍成長阻害を誘導する(図7)。サイレントフォーマットのmAb1は、腫瘍成長阻害を誘導しない(図8)。
[実施例7]
【0364】
Ab1の製剤設計
製品開発の重要な態様である製剤開発は、多くの場合、研究新薬(IND)申請に不可欠である臨床製造および安定性研究の成功のための非常に重要な経路である。抗体は通常、とりわけそのサイズが大きいために、注入によって投与されてきた。抗体は、その複雑な三次元構造のために、溶液中で凝集し、したがって貯蔵期限ひいては有用性が減少しやすい。
【0365】
したがって、Ab1バルク溶液の物理化学的安定性について最良の組成物を選択するために、製剤のスクリーニングを実施した。
【0366】
実験設計に基づく2工程アプローチを使用して、製剤前研究を行って、4つの抗体製剤を選択した。第1の工程は、重要な因子の特定に特化したものであり、第2の工程は、4つの製剤の定義に特化したものであった。
【0367】
工程1:以下のパラメータを評価した:
- バッファー:25mMクエン酸、または25mMヒスチジン、または25mMリン酸
- pH:5.5、または6、または6.5
- スクロース濃度:0~6%(w/v)
- アルギニン濃度:0~500mM
- NaCl濃度:0~150mM
- ポリソルベート80濃度:ポリソルベートなし、ポリソルベート80 0.5%、またはポリソルベート20 0.5%(w/w)
- モノクローナル抗体の濃度は20mg/mLで一定にした。
【0368】
22種の異なる製剤を試験した。実験設計は、生成されたモデルの妥当性および適切性を調べるためにデータの統計分析を行うMODDEソフトウェア(Umetrics)を使用して設定した。
【0369】
工程2:さらに調査するための選択された因子は以下のとおりであった:
- ヒスチジンバッファーpH:5.5~6.5
- NaCl:0~150mM
- スクロース:0~6%(w/v)
- ポリソルベート80:0~0.5%(w/w)
【0370】
モノクローナル抗体をSEC-HPLCおよび非対称流れ流動場分離(A4FUV)によって特性解析して凝集体の存在を評価し、CEXによって電荷変異体を決定し、示差走査熱量測定(DSC)によって融解温度(Tm)を決定した。
【0371】
40℃および5℃において2週間および4週間のインキュベーション後、3回の凍結/解凍サイクル後に取得された結果に基づいて、以下の製剤を選択した:
- A:25mMヒスチジン、1%スクロース、0.3%ポリソルベート80(w/w)、pH6
- B:25mMヒスチジン、150mM NaCl、0.3%ポリソルベート80(w/w)、pH6.5
- C:25mMヒスチジン、150mM NaCl、3%スクロース、0.3%ポリソルベート80(w/w)、pH6.5
- D:25mMヒスチジン、15mM NaCl、5%スクロース、0.5%ポリソルベート80(w/w)、pH6.5
0.3%ポリソルベート80(w/w)は0.006%v/vに等しい。
【0372】
次いで、これら4つの製剤を-66℃、+5℃、および+40℃で1.5か月および2か月と3週間貯蔵して、安定性研究を行った。外観、タンパク光、pH、UVによるタンパク質含有量、SEC-HPLC、CE-SDS(非還元)による抗体純度、CEXによる電荷プロファイル、DSC、MFI、およびELISAによる標的結合の試験を行った。
【0373】
2か月3週間の安定性研究後、抗体の質の分析基準は差別的でなく、バッファーのオスモル濃度が考慮された。製剤Aは低張性であり、これに対して製剤Dは高張性であった。これら2つの製剤は廃棄した。
【0374】
製剤BとCとの間で、製剤B、すなわち25mMヒスチジン、150mM NaCl、0.3%ポリソルベート80(w/w)、pH6.5を選択して、組成物中の原材料の数を制限した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024519415000001.app
【国際調査報告】