IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司の特許一覧

特表2024-519417バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置
<>
  • 特表-バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置 図1
  • 特表-バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置 図2
  • 特表-バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置 図3
  • 特表-バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置 図4
  • 特表-バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置 図5
  • 特表-バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置 図6
  • 特表-バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-13
(54)【発明の名称】バインダ及び関連するセパレータ、極板、電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/24 20060101AFI20240502BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240502BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240502BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240502BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240502BHJP
   C09J 133/18 20060101ALI20240502BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240502BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C09J133/24
H01M4/62 Z
H01M50/443 B
H01M4/13
H01M50/443 E
H01M50/42
C09J133/18
C09J133/06
C08F220/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567203
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2022083171
(87)【国際公開番号】W WO2023178690
(87)【国際公開日】2023-09-28
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】康海楊
(72)【発明者】
【氏名】鄭義
(72)【発明者】
【氏名】孫成棟
(72)【発明者】
【氏名】於洋
(72)【発明者】
【氏名】欧陽楚英
【テーマコード(参考)】
4J040
4J100
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
4J040DF001
4J040DF071
4J040DF101
4J040HA196
4J040HA216
4J040HA306
4J040HB22
4J040JA03
4J040JB02
4J040KA23
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB02
4J040MB03
4J040NA19
4J100AG04P
4J100AL03P
4J100AL04P
4J100AL05P
4J100AL08P
4J100AL09P
4J100AL10P
4J100AL63P
4J100AM01Q
4J100AM02Q
4J100AM15R
4J100AM21R
4J100BA03R
4J100BA04R
4J100BB18P
4J100BC04P
4J100BC08P
4J100DA25
4J100FA20
4J100FA21
4J100JA03
4J100JA43
5H021CC01
5H021CC02
5H021EE04
5H021EE10
5H021EE28
5H021EE32
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA11
5H050EA01
5H050EA23
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
本願は、バインダ及びそれを含むセパレータ、電極板、関連する二次電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置を提供する。前記バインダは、有機ポリマーと無機物を含み、前記有機ポリマーは、エステル結合を有する第1の重合性モノマーと、ニトリル結合を有する第2の重合性モノマーと、アミド結合を有する第3の重合性モノマーと、により重合して得られ、第1の重合性モノマー:第2の重合性モノマー:第3の重合性モノマーの重量比は、1:0~0.8:0~0.15であり、選択的に1:0.05~0.2:0.05~0.1である。前記バインダがセパレータに適用される場合、セパレータの抵抗を低下させ、セパレータのイオン伝導率を向上させることに役立ち、電池性能が改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーと無機物を含むバインダであって、
前記有機ポリマーは、少なくとも、
少なくとも1つのエステル結合を有し、選択的にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、酢酸ビニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸グリシジル又はトリメチロールプロパントリアクリレートのうちの1つ又は複数であり、より選択的にメタクリル酸メチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル又はトリメチロールプロパントリアクリレートのうちの1つ又は複数である第1の重合性モノマーと、
少なくとも1つのニトリル結合を有し、選択的にアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルのうちの1つ又は複数であり、より選択的にアクリロニトリル、メタクリロニトリルのうちの1つ又は複数である第2の重合性モノマーと、
少なくとも1つのアミド結合を有し、選択的にアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドのうちの1つ又は複数であり、より選択的にアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドのうちの1つ又は複数である第3の重合性モノマーと、により重合してなり、
前記第1の重合性モノマー:前記第2の重合性モノマー:前記第3の重合性モノマーの重量比は、1:0~0.8:0~0.15であり、選択的に1:0.05~0.2:0.05~0.1であるバインダ。
【請求項2】
前記有機ポリマーの総重量に基づき、
前記第1の重合性モノマーの含有量は、60~100重量%であり、選択的に60~90重量%であり、
前記第2の重合性モノマーの含有量は、0~30重量%であり、選択的に5~15重量%であり、
前記第3の重合性モノマーの含有量は、0~40重量%であり、選択的に0~25重量%である請求項1に記載のバインダ。
【請求項3】
前記バインダの体積平均粒径D10、D50及びD90は、(D90-D10)/D50<2.5を満たし、選択的に<2であり、より選択的に<1.8である請求項1又は2に記載のバインダ。
【請求項4】
前記バインダの総乾燥重量に基づき、前記有機ポリマーの粒子の含有量は、50~99.9%であり、選択的に60~99%であり、より選択的に70~99%であり、
前記バインダの総乾燥重量に基づき、前記無機物の含有量は、0.1~50%であり、選択的に1~40%であり、より選択的に1~30%である請求項1~3の何れか一項に記載のバインダ。
【請求項5】
前記有機ポリマーと前記無機物の重量比は、99:1~1:1であり、選択的に70:30~1:1である請求項1~4の何れか一項に記載のバインダ。
【請求項6】
前記無機物は、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウムの酸化物、並びに硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム及びその変性材料のうちの1つ又は複数から選択され、選択的にシリカ、シリカゾル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、安息香酸ナトリウムのうちの1つ又は複数であり、より選択的にヒュームドシリカ、ケイ素微細粉末、酸化アルミニウム、安息香酸ナトリウムのうちの1つ又は複数である請求項1~5の何れか一項に記載のバインダ。
【請求項7】
前記バインダ粒子の表面は凸凹であり、粒径が10~200nmの無機酸化物クラスタが均一に分布している請求項1~6の何れか一項に記載のバインダ。
【請求項8】
前記バインダのガラス転移温度は、-20℃~30℃である請求項1~7の何れか一項に記載のバインダ。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載のバインダを含むセパレータ。
【請求項10】
請求項1~8の何れか一項に記載のバインダを含む極板。
【請求項11】
請求項1~8の何れか一項に記載のバインダ、請求項9に記載のセパレータ又は請求項10に記載の極板のうちの少なくとも1つを含む二次電池。
【請求項12】
請求項11に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項13】
請求項12に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項14】
請求項11に記載の二次電池、請求項12に記載の電池モジュール又は請求項13に記載の電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウム電池の技術分野に関し、特にバインダ及びそれを含むセパレータ、電極板、関連する二次電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の適用範囲が益々広くなるにつれて、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力及び太陽熱発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、並びに電動工具、電気自転車、電動バイク、電気自動車、軍用機器、航空宇宙などの多くの分野に広く適用されている。しかしながら、従来技術で使用された電池用バインダには、融点が高く、接着性能が低いなどの欠点があり、更に電池部材を効果的に接着できず、電池の動力学的特性を悪化させ、安全性の問題を誘発することになる。従って、如何に電池系に適するバインダを開発することは、依然として研究者が早急に解決すべき課題の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電池の加工に適する条件で良好な接着性能を提供し、電池の動力学的特性と安全性能の向上に役立つことができるバインダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本願は、バインダ及びそれを含むセパレータ、電極板、関連する二次電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置を提供する。
【0005】
本願の第1の態様は、有機ポリマーと無機物を含むバインダを提供し、前記有機ポリマーは、少なくとも、
少なくとも1つのエステル結合を有し、選択的にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、酢酸ビニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸グリシジル又はトリメチロールプロパントリアクリレートのうちの1つ又は複数であり、より選択的にメタクリル酸メチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル又はトリメチロールプロパントリアクリレートのうちの1つ又は複数である第1の重合性モノマーと、
少なくとも1つのニトリル結合を有し、選択的にアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルのうちの1つ又は複数であり、より選択的にアクリロニトリル、メタクリロニトリルのうちの1つ又は複数である第2の重合性モノマーと、
少なくとも1つのアミド結合を有し、選択的にアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドのうちの1つ又は複数であり、より選択的にアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドのうちの1つ又は複数である第3の重合性モノマーと、により重合してなり、
第1の重合性モノマー:第2の重合性モノマー:第3の重合性モノマーの重量比は、1:0~0.8:0~0.15であり、選択的に1:0.05~0.2:0.05~0.1である。
【0006】
有機ポリマーが上記重合性モノマーにより重合してなる場合、製造されたバインダは、良好な接着性能を有すると同時に、低いガラス転移温度をも有し、電池の加工条件でその接着性能を十分に発揮することに適し、更に電池の動力学的特性と安全性能の改善に役立つ。
【0007】
任意の実施形態において、選択的に、有機ポリマーの総重量に基づき、前記第1の重合性モノマーの含有量は、60~100重量%であり、選択的に60~90重量%であり、
前記第2の重合性モノマーの含有量は、0~30重量%であり、選択的に5~15重量%であり、
前記第3の重合性モノマーの含有量は、0~40重量%であり、選択的に0~25重量%である。
【0008】
任意の実施形態において、選択的に、前記バインダの体積平均粒径D10、D50及びD90は、(D90-D10)/D50<2.5を満たし、選択的に<2であり、より選択的に<1.8である。
【0009】
任意の実施形態において、選択的に、前記バインダの総乾燥重量に基づき、前記有機ポリマー粒子の含有量は、50~99.9%であり、選択的に60~99%であり、より選択的に70~99%であり、
前記バインダの総乾燥重量に基づき、前記無機物の含有量は、0.1~50%であり、選択的に1~40%であり、より選択的に1~30%である。
【0010】
任意の実施形態において、選択的に、前記有機ポリマーと無機物の重量比は、99:1~1:1であり、選択的に70:30~1:1である。
【0011】
任意の実施形態において、選択的に、前記無機物は、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウムの酸化物、並びに硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム及びその変性材料のうちの1つ又は複数から選択され、選択的にシリカ、シリカゾル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、安息香酸ナトリウムのうちの1つ又は複数であり、より選択的にヒュームドシリカ、ケイ素微細粉末、酸化アルミニウム、安息香酸ナトリウムのうちの1つ又は複数である。
【0012】
任意の実施形態において、選択的に、前記バインダ粒子の表面は凸凹であり、粒径が10~200nmの無機酸化物クラスタが均一に分布している。
【0013】
任意の実施形態において、選択的に、前記バインダのガラス転移温度は、-20℃~30℃である。
【0014】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に記載のバインダを含むセパレータを提供する。
【0015】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様に記載のバインダを含む電極板を提供する。
【0016】
本願の第4の態様は、本願の第1の態様によるバインダ、本願の第2の態様によるセパレータ又は本願の第3の態様による電極板のうちの少なくとも1つを含む二次電池を提供する。
【0017】
本願の第5の態様は、本願の第3の態様による二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0018】
本願の第6の態様は、本願の第5の態様による電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0019】
本願の第7の態様は、本願の第4の態様による二次電池、本願の第5の態様による電池モジュール又は本願の第6の態様による電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本願のバインダでは、有機ポリマーは、異なる官能基を有する第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー及び第3の重合性モノマーにより一定の割合で重合して得られ、得られた有機ポリマーは、各重合性モノマーのメリットを十分に発揮し、それを含むバインダポリマーが良好の接着性能を有すると同時に、低いガラス転移温度を有し、電池の加工条件でその接着性能を十分に発揮することに適し、更に二次電池の動力学的特性と安全性能の向上に役立つ。また、前記バインダがセパレータに適用される場合、セパレータの抵抗を低下させ、セパレータのイオン伝導率を向上させることに役立ち、電池性能が改善される。
【0021】
本願の電池モジュール、電池パック及び電力消費装置は、本願により提供される二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同じメリットを有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本願の実施例1で製造されたバインダの異なる倍率での走査型電子顕微鏡による画像である。
図2】本願の一実施形態による二次電池の模式図である。
図3図2に示される本願の一実施形態による二次電池の分解図である。
図4】本願の一実施形態による電池モジュールの模式図である。
図5】本願の一実施形態による電池パックの模式図である。
図6図5に示される本願の一実施形態による電池パックの分解図である。
図7】本願の一実施形態による二次電池を電源として用いる電力消費装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を適宜に参照しながら、本願のバインダ及びそれに関連するセパレータ、極板、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置を具体的に開示する実施形態を詳細に説明する。しかし、不必要な詳細説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実質的に同じ構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを回避し、当業者が容易に理解できるようにするためである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供され、特許請求の範囲に記載の主旨を限定することを意図しない。
【0024】
本願に開示された「範囲」は、下限と上限の形態で限定され、所定の範囲は、1つの下限と1つの上限を選択することで限定され、選択された下限と上限によって所定の範囲の境界を限定する。このように限定された範囲は、両端値を含んでもよく、又は両端値を含まなくてもよく、且つ任意に組み合わせることができ、即ち、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて1つの範囲を形成することができる。例えば、所定のパラメータに対して60~120及び80~110の範囲が列挙された場合、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲の値として1と2が列挙され、最大範囲の値として3、4と5が列挙された場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲は、全て予想可能である。本願において、別途説明されていない限り、数値範囲「a~b」は、aとbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現であり、aとbは何れも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書に「0~5」の間の全ての実数が列挙されていることを意味し、「0~5」は、単にこれらの数値の組み合わせの省略表現である。なお、あるパラメータが≧2の整数であると記述した場合、当該パラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示したことに相当する。
【0025】
特に説明されていない限り、本願の全ての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0026】
特に説明されていない限り、本願の全ての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0027】
特に説明されていない限り、本願の全てのステップは、順に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは順に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むことは、前記方法が順に行われるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、順に行われるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを意味する。例えば、前記方法がステップ(c)を更に含んでもよいことに言及した場合、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加できることを意味し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよい。
【0028】
特に説明されていない限り、本願で言及された「含む」及び「包含」は、オープンエンド形式を表し、クローズドエンド形式であってもよい。例えば、前記「含む」及び「包含」は、列挙されていない他の成分を更に含むか又は包含してもよく、列挙された成分のみを含むか又は包含してもよいことを表すことができる。
【0029】
特に説明されていない限り、本願において、「又は」という用語は、包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両者」を意味する。より具体的には、Aが真(又は存在)でBが偽(又は存在しない)であるという条件、Aが偽(又は存在しない)でBが真(又は存在)であるという条件、又はAとBが何れも真(又は存在)であるという条件は、いずれも条件「A又はB」を満たす。
【0030】
発明者が実際に仕事する間に、従来技術で使用される電池用バインダには、接着性能が悪いものもあるし、融点が高いものもあり、電池の作業条件でその接着作用を十分に発揮することが困難であり、電池部材を効果的に接着できず、部材が使用中に分離したり脱落したりし、電池の動力学的特性を悪化させ、安全上のリスクがもたらされることを見出した。
【0031】
意外なことに、発明者は、大量の実験を重ねた結果、特定の官能基を含む重合性モノマーを一定の重量比で重合させて得られた有機ポリマーが、良好な接着性能を有し、且つ電池の作業条件でその接着性能を十分に発揮することに適し、二次電池の動力学的特性と安全性能の向上に役立つことを見出した。また、前記バインダがセパレータに適用される場合、セパレータの抵抗を低下させ、セパレータのイオン伝導率を向上させることに役立ち、電池性能が改善される。
【0032】
[バインダ]
本願の第1の態様は、有機ポリマーと無機物を含むバインダを提供し、前記有機ポリマーは、少なくとも、
少なくとも1つのエステル結合を有し、選択的にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、酢酸ビニル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸グリシジル又はトリメチロールプロパントリアクリレートのうちの1つ又は複数であり、より選択的にメタクリル酸メチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル又はトリメチロールプロパントリアクリレートのうちの1つ又は複数である第1の重合性モノマーと、
少なくとも1つのニトリル結合を有し、選択的にアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルのうちの1つ又は複数であり、より選択的にアクリロニトリル、メタクリロニトリルのうちの1つ又は複数である第2の重合性モノマーと、
少なくとも1つのアミド結合を有し、選択的にアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドのうちの1つ又は複数であり、より選択的にアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドのうちの1つ又は複数である第3の重合性モノマーと、により重合してなり、
第1の重合性モノマー:第2の重合性モノマー:第3の重合性モノマーの重量比は、1:0~0.8:0~0.15であり、選択的に1:0.05~0.2:0.05~0.1である。
【0033】
本願のバインダは、有機ポリマーを含み、前記有機ポリマーは、エステル結合を有する第1の重合性モノマーと、ニトリル結合を有する第2の重合性モノマーと、アミド結合を有する第3の重合性モノマーと、により一定の重量比で重合して得られ、これは、各モノマーによる相乗効果を十分に発揮することに寄与し、製造された有機ポリマーが良好な接着性能を有すると同時に、適切なガラス転移温度を有し、電池の作業条件でその接着性能を十分に発揮することに適し、二次電池の動力学的特性と安全性能を向上させる。本願のバインダは、無機物を更に含み、これは、バインダの難燃性能の向上に役立ち、二次電池の安全性能が向上する。また、前記バインダがセパレータに適用される場合、セパレータの抵抗を低下させ、セパレータのイオン伝導率を向上させることに役立ち、電池性能が改善される。
【0034】
幾つかの実施形態において、選択的に、有機ポリマーの総重量に基づき、前記第1の重合性モノマーの含有量は、60~100重量%であり、選択的に60~90重量%であり、前記第2の重合性モノマーの含有量は、0~30重量%であり、選択的に5~15重量%であり、前記第3の重合性モノマーの含有量は、0~40重量%であり、選択的に0~25重量%である。
【0035】
各重合性モノマーの含有量が上記範囲内にある場合、バインダの接着性能の改善に寄与し、同時に上記範囲内の重合性モノマーにより製造された有機ポリマーは、適切なガラス転移温度を有し、電池の加工条件で十分な接着力を提供することに役立つ。
【0036】
幾つかの実施形態において、選択的に、前記バインダの体積平均粒径D50は、3<D50≦10μmを満たし、選択的に5~8μmである。
【0037】
バインダの粒径が小さ過ぎると、セパレータに適用される場合、セパレータの細孔を防ぎ、電池の内部抵抗を増やし、動力学的特性を悪化させる可能性がある。バインダの粒径が大き過ぎると、バインダがセルの製造に適用できなくなる可能性がある。
【0038】
幾つかの実施形態において、選択的に、前記バインダの体積平均粒径D10、D50及びD90は、(D90-D10)/D50<2.5を満たし、選択的に<2であり、より選択的に<1.8である。
【0039】
バインダの粒径分布が狭いほど、製造されたバインダの大きさが均一であることを示し、これは、バインダの接着作用を十分に発揮することに役立つ。
【0040】
幾つかの実施形態において、選択的に、前記バインダの総乾燥重量に基づき、前記有機ポリマー粒子の含有量は、50~99.9%であり、選択的に60~99%であり、より選択的に70~99%であり、
前記バインダの総乾燥重量に基づき、前記無機物の含有量は、0.1~50%であり、選択的に1~40%であり、より選択的に1~30%である。
【0041】
有機ポリマーの含有量が少な過ぎるか又は無機物の含有量が多過ぎると、バインダ全体の接着性能が足りず、ひいては有機ポリマーと無機物が全体であるように維持できなくなる可能性がある。無機物の含有量が少な過ぎると、バインダの難燃性能が劣る可能性がある。
【0042】
幾つかの実施形態において、選択的に、前記有機ポリマーと無機物の重量比は、99:1~1:1であり、選択的に70:30~1:1である。
【0043】
有機ポリマーと無機物の重量比が上記範囲内にある場合、有機ポリマーと無機物の相乗作用を十分に発揮することに寄与し、バインダが良好な接着性能と難燃性能を有するようになる。
【0044】
幾つかの実施形態において、選択的に、前記無機物は、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウムの酸化物、並びに硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム及びその変性材料のうちの1つ又は複数から選択され、選択的にシリカ、シリカゾル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、安息香酸ナトリウムのうちの1つ又は複数であり、より選択的にヒュームドシリカ、ケイ素微細粉末、酸化アルミニウム、安息香酸ナトリウムのうちの1つ又は複数である。
【0045】
幾つかの実施形態において、選択的に、前記バインダ粒子の表面は凸凹であり、粒径が10~200nmの無機酸化物クラスタが均一に分布している。
【0046】
発明者が研究中に、バインダ粒子の表面が上記状況を満たす場合、有機ポリマーが均一に分散することに役立ち、更にバインダの接着性能が改善されることを見出した。
【0047】
幾つかの実施形態において、選択的に、前記有機ポリマーの重量平均分子量は、50~120万であり、選択的に80~100万である。有機ポリマーの分子量は、当分野で通常使用されている方法を採用して測定することができ、例えば、GB/T 21863-2008を参照してゲル浸透クロマトグラフィにより測定することができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、選択的に、前記バインダのガラス転移温度は、-20℃~30℃である。ガラス転移温度は、当分野で通常使用されている方法により測定することができ、例えば、GB/T 19466.2を参照して示差走査熱量測定法により試験することができる。
【0049】
バインダのガラス転移温度が上記範囲内にある場合、電池の作動条件で、バインダは、その接着性能を十分に発揮し、電池部材に十分な接着力を提供することができ、部材の分離又は脱落によって電池の動力学的特性を悪化させて安全問題をもたらすことが回避される。
【0050】
本願は、更に、少なくとも以下のステップ1~ステップ4を含む本願の第1の態様に記載のバインダの製造方法を提供する。
ステップ1:第1の重合性モノマー、第2の重合性モノマー及び第3の重合性モノマーを提供し、第1の重合性モノマー:第2の重合性モノマー:第3の重合性モノマーの重量比は、1:0~0.8:0~0.15であり、選択的に1:0.05~0.2:0.05~0.1である。
ステップ2:重合性モノマーを重合させ、有機ポリマーを得る。
ステップ3:ステップ2の有機ポリマーに有機溶媒と無機物を加え、撹拌した後に混合スラリーを得る。
ステップ4:ステップ3の混合スラリーを乾燥し、研磨し、粉碎した後に本願に記載のバインダを得る。
【0051】
重合性モノマーの重合は、当分野で通常使用されている重合方法により行うことができ、例えば乳化重合又は懸濁重合により重合することができることを説明しておく。
【0052】
幾つかの実施形態において、選択的に、重合性モノマーの重合系に、ラウリル硫酸ナトリウムなどの乳化剤や、過硫酸アンモニウムなどの重合開始剤などの添加剤を加えることもできる。
【0053】
[セパレータ]
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に記載のバインダを含むセパレータを提供する。本願の第1の態様によるバインダがセパレータに適用される場合、セパレータの抵抗を低下させ、セパレータのイオン伝導率を向上させることに役立ち、電池性能が改善される。
【0054】
本願では、セパレータ基材の種類について特に制限しておらず、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造のセパレータ基材を選択することができる。
【0055】
幾つかの実施形態において、セパレータ基材は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つから選択することができる。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同じであってもよく、又は異なってもよく、特に制限されない。
【0056】
本願に記載のセパレータは、当分野における通常のセパレータの製造方法を採用して製造することができる。例えば、本願の第1の態様に記載のバインダを有機溶媒に溶解し、スラリーを得て、続いてスラリーをセパレータの素材に塗布し、その後、乾燥して有機溶媒を除去することにより、本願に記載のセパレータを得ることができる。
【0057】
幾つかの実施形態において、選択的に、バインダのセパレータ基材における塗布密度は、0.3~1.0g/mであり、選択的に0.3~0.8g/mである。
【0058】
[極板]
本願の第3の態様は、本願の第1の態様に記載のバインダを含む電極板を提供する。電極板は、当分野で通常使用されている方法により製造することができる。
【0059】
本願に記載の電極板は、正極板又は負極板であり得ることを説明しておく。
【0060】
正極板は、正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる正極膜層を含み、前記正極膜層は、本願の第1の態様によるバインダを含む。
【0061】
一例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する2つの表面の何れか一方又は両方に設けられる。
【0062】
幾つかの実施形態において、前記正極集電体としては、金属箔又は複合集電体を採用することができる。例えば、金属箔としては、アルミニウム箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層及び高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含むことができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することで形成することができる。
【0063】
幾つかの実施形態において、正極活物質としては、当分野で公知の電池用の正極活物質を採用することができる。例えば、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びその各々の変性化合物といった材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。しかし、本願は、これらの材料に限定されず、電池の正極活物質として用いられる他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で使用してもよく、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略称されてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその変性化合物などのうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料のうちの少なくとも1つを含むことができるが、これらに限定されない。
【0064】
幾つかの実施形態において、正極膜層は、更に導電剤を選択的に含む。一例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1つ以上を含むことができる。
【0065】
幾つかの実施形態において、以下の方法によって正極板を製造することができる。上記した正極板を製造するための成分、例えば、正極活物質、導電剤、本願の第1の態様に記載のバインダと任意の他の成分を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体に塗布し、ベーク、冷間プレスなどの工程を経た後、正極板を得ることができる。
【0066】
幾つかの実施形態において、選択的に、正極膜層の総重量に基づき、本願の第1の態様に記載のバインダの正極板における使用量は、1~3%である。
【0067】
これに類似し、本願に記載の電極板は、負極板であってもよい。負極板は、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる負極膜層を含み、前記負極膜層は、本願の第1の態様に記載のバインダを含む。
【0068】
一例として、負極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する2つの表面のうちの何れか一方又は両方に設けられる。
【0069】
幾つかの実施形態において、前記負極集電体としては、金属箔又は複合集電体を採用することができる。例えば、金属箔としては、銅箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層及び高分子材料基材の少なくとも1つの表面に形成される金属層を含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することで形成することができる。
【0070】
幾つかの実施形態において、負極活物質の種類は、当分野で公知の電池用の負極活物質を採用することができる。一例として、負極活物質は、人工グラファイト、天然グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムなどの材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。前記シリコン系材料は、ケイ素単体、シリコン酸素化合物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの少なくとも1つから選択することができる。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸素化合物及びスズ合金のうちの少なくとも1つから選択することができる。しかし、本願は、これらの材料に限定されず、電池の負極活物質として用いられる他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で使用してもよく、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
幾つかの実施形態において、負極膜層は、更に導電剤を選択的に含む。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1つ以上から選択することができる。
【0072】
幾つかの実施形態において、負極膜層は、更に例えば増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤を選択的に含む。
【0073】
幾つかの実施形態において、以下の方法によって負極板を製造することができる。上記した負極板を製造するための成分、例えば、負極活物質、導電剤、本願の第1の態様に記載のバインダ及び任意の他の成分を溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体に塗布し、ベーク、冷間プレスなどの工程を経た後、負極板を得ることができる。
【0074】
幾つかの実施形態において、選択的に、負極膜層の総重量に基づき、本願の第1の態様に記載のバインダの負極板における使用量は、1~3%である。
【0075】
[二次電池]
本願の第4の態様は、本願の第1の態様に記載のバインダ、本願の第2の態様に記載のセパレータ又は本願の第3の態様に記載の極板のうちの少なくとも1つを含む二次電池を提供する。
【0076】
通常の場合、二次電池は、正極板、負極板、電解質及びセパレータを含む。電池の充放電過程で、活性イオンは、正極板と負極板の間で挿入・脱離を繰り返す。電解質は、正極板と負極板の間においてイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極板と負極板の間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する役割を果たし、同時にイオンを通過させることができる。
【0077】
二次電池は、当分野で通常使用されている方法により製造することができ、例えば、正極板、負極板及びセパレータを巻取プロセス又は積層プロセスにより電極組立体として製造し、続いて電極組立体に電解液を注入して封止し、二次電池を製造することができる。
【0078】
[電解質]
電解質は、正極板と負極板の間においてイオンを伝導する役割を果たす。本願において、電解質の種類は具体的に制限されておらず、ニーズに応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状態又は全固体であってもよい。
【0079】
幾つかの実施形態において、前記電解質としては、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。
【0080】
幾つかの実施形態において、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロジオキサラトホスフェート及びリチウムテトラフルオロオキサラトホスフェートのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0081】
幾つかの実施形態において、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0082】
幾つかの実施形態において、前記電解液は、更に添加剤を選択的に含む。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤、正極成膜添加剤を含むことができ、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能又は低温性能を改善する添加剤などの電池の所定の性能を改善可能な添加剤を含むこともできる。
【0083】
[電池モジュール、電池パック及び電力消費装置]
本願の第5の態様は、本願の第4の態様による二次電池を含む電池モジュールを提供する。電池モジュールは、当分野で通常使用されている方法を採用して製造することができる。
【0084】
本願の第6の態様は、本願の第5の態様による電池モジュールを含む電池パックを提供する。電池パックは、当分野で通常使用されている方法を採用して製造することができる。
【0085】
本願の第7の態様は、本願の第4の態様による二次電池、本願の第5の態様による電池モジュール又は本願の第6の態様による電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。
【0086】
また、以下、図面を適宜に参照して本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を説明する。
【0087】
幾つかの実施形態において、二次電池は、外装体を含むことができる。当該外装体は、上記電極組立体及び電解質を封入するために使用することができる。
【0088】
幾つかの実施形態において、二次電池の外装体は、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウム製ケース、鋼製ケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装体は、例えば、袋式のソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0089】
本願において、二次電池の形状は、特に制限されず、円柱形、方形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図2は、一例としての方形構造を有する二次電池5である。
【0090】
幾つかの実施形態において、図3に示すように、外装体は、ケース51及び蓋板53を含むことができる。ケース51は、底板及び底板に接続される側板を含むことができ、底板及び側板は収容室を形成するように囲んでいる。ケース51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を密閉するように、前記開口を覆うことができる。正極板、負極板及びセパレータは、巻取プロセス又は積層プロセスによって電極組立体52を形成することができる。電極組立体52は、前記収容室内に封入される。電解液は、電極組立体52に浸潤する。リチウムイオン電池5に含まれる電極組立体52の数は、1つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的な実際の要求に応じて選択することができる。
【0091】
幾つかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールとして組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、1つ又は複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの適用及び容量に応じて当業者によって選択することができる。
【0092】
図4は、一例としての電池モジュール3である。図4に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に配列されて設けられてよい。勿論、他の任意の形態で配列されてもよい。更に、締結部材によって当該複数の二次電池5を固定してもよい。
【0093】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングを更に含むことができ、複数の二次電池5は、当該収容空間に収容される。
【0094】
幾つかの実施形態において、上記電池モジュールは、更に電池パックとして組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、1つ又は複数であってもよく、具体的な数は、電池パックの適用及び容量に応じて当業者によって選択することができる。
【0095】
図5及び図6は、一例としての電池パック1である。図5及び図6に示すように、電池パック1には、電池ボックス及び電池ボックスに設けられる複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ボックスは、上部ボックス2及び下部ボックス3を含み、上部ボックス2は、下部ボックス3を覆い、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方法に応じて電池ボックスに配列することができる。
【0096】
また、本願は、本願により提供される二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を更に提供する。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。前記電力消費装置は、移動機器(例えば、携帯電話、ノートブックコンピュータなど)、電動車両(例えば、二次電池式電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0097】
前記電力消費装置として、その使用上のニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0098】
図7は、一例としての電力消費装置である。当該電力消費装置は、二次電池式電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電力消費装置の二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0099】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。当該装置は、通常、軽量化・薄型化を要求しており、二次電池を電源として採用することができる。
【0100】
実施例
以下、本願の実施例を説明する。以下に説明される実施例は、例示的なものであり、単に本願を解釈するためのものであり、本願を制限するものとして理解してはいけない。実施例に具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当分野の文献に記載の技術又は条件に応じて、又は製品仕様書に応じて行われる。使用される試薬又は機器についてメーカーが明記されていない場合、いずれも商業的に入手可能な従来の製品である。
【0101】
一、セパレータ
比較例1
有機ポリマー1-1の製造
室温で、重量百分率で、アクリル酸2-ヒドロキシエチル50重量%、アクリル酸n-ブチル40重量%、メタクリル酸メチル5重量%、トリメチロールプロパントリアクリレート5重量%の割合で必要とされる単体を撹拌して均一に混合した。機械撹拌装置、温度計及び凝縮管が取り付けられた500mLの4つ口フラスコに、100gの混合された単体、3gの乳化剤のラウリル硫酸ナトリウム、1gの開始剤の過硫酸アンモニウム、120gの脱イオン水を加えた。1600rpmの回転数で30分撹拌して乳化させた。続いて、窒素ガスの保護で75℃まで昇温し、4時間反応させた後、pH=6~8となるように調節し、直ちに40℃以下に降温して排出し、乳液状態の有機ポリマー1-1を得て、その固形分が約45%であった。
【0102】
バインダ1-1の製造
1kgの有機ポリマー1を、(乾燥重量で)450gのシリカ、1kgの脱イオン水に加えた後、1時間撹拌して十分に混合した後、噴霧乾燥して溶媒を除去し、バインダ粉末を製造した。続いて研磨して粉碎し、D50粒径が6μmで、粒径分布が1.78であるバインダ1-1を得た。
【0103】
セパレータ1-1の製造
市販の厚さが20μmで、平均孔径が80nmであるPP-PEコポリマー微多孔フィルム(卓高電子科学技術会社製から利用可能なモデル20)をセパレータ基材として使用した。製造されたバインダ1をN-メチルピロリドン(即ち、NMP)に溶解し、撹拌して均一に混合し、スラリーを得た。続いて前記スラリーをPP-PEコポリマー微多孔隔離膜に塗布した。その後、バインダ1のセパレータにおける塗布密度が0.5g/mとなるように、乾燥して有機溶媒を除去し、セパレータ1-1を得た。
【0104】
比較例2及び実施例1~8
使用された重合性モノマーと無機物のタイプ及び使用量が異なる以外に、比較例2及び実施例1~8の他のステップは、比較例1と同じであり、具体的には表1を参照されたい。
【0105】
二、二次電池
正極板の製造
正極活物質のリン酸鉄リチウム(LiFePOで)、導電剤のアセチレンブラック、バインダのPVDFを、96.5:2:1.5の質量比で混合し、溶媒のN-メチルピロリドン(即ち、NMP)に溶解し、十分に撹拌して均一に混合し、正極スラリーを得た。続いて正極スラリーをアルミニウム箔に均一に塗布し、ベーク、冷間プレス、分断を経て、正極板を得た。得られた正極活物質層は、面密度が19.5mg/cmであり、圧縮密度が2.4g/cmであった。
【0106】
負極板の製造
グラファイト、導電剤のブラック、バインダのPVDF、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を、96.5重量部:0.7重量部:1.8重量部:1重量部の質量比で溶媒の脱イオン水に溶解し、十分に撹拌して均一に混合し、負極スラリーを得た。負極スラリーを負極集電体の銅箔に均一に塗布し、ベーク、冷間プレス、分断を経て、負極板を得た。得られた負極活物質層は、面密度が9.8mg/cmであり、圧縮密度が1.65g/cmであった。
【0107】
電解液の製造
有機溶媒のエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)を50/50の重量比で均一に混合し、LiPFを上記有機溶媒に加えて溶解し、LiPFの濃度が1.1mol/Lとなるように均一に撹拌し、電解液を得た。
【0108】
セパレータ
本願の実施例1で製造されたセパレータ2-1を二次電池のセパレータとして使用した。
【0109】
二次電池
正極板、セパレータ2-1、負極板を順に積層し、隔離の役割を果たすようにセパレータを正負極の間に介在させ、巻き取ってベアセルを得た。ベアセルを外装体に入れ、上記電解液を注入して実装し、二次電池を得た。
【0110】
関連パラメータの試験方法
1.走査型電子顕微鏡による試験
適量の被験リン酸鉄リチウム粒子のサンプルを準備し、ZEISS sigma 300走査型電子顕微鏡を使用して規格JY/T010-1996を参照しながら、サンプルの形態を観察する。
【0111】
2.体積平均粒径の試験
規格GB/T 19077-2016/ISO 13320:2009粒度分布レーザ回折法を参照する。レーザ粒度分析計(Malvern 3000、MasterSizer 3000)を使用して試験し、主光源としてはヘリウムネオン赤色光源を使用する。清潔な小型ビーカーに被験サンプル1gを加え、界面活性剤を一滴加え、20mlの脱イオン水(サンプルの濃度について、遮光度が8~12%であるように保証する)を加え、53KHz/120Wで5分間超音波処理し、サンプルが完全に分散したことを確保する。レーザ粒度分析計をオンにし、光路システムを清掃した後、バックグラウンドを自動的に試験する。超音波処理された被験溶液を撹拌し、均一に分散させ、必要に応じてサンプルセルに入れ、粒径の測定を開始する。計器から測定結果を読み取ることができる。
【0112】
3.イオン伝導率の試験
セパレータを40mm×20mm×9μmの試験片に切断し、切断されたセパレータを4層ずつ積層し、市販の電解液でセパレータを完全に湿らせた後、グローブボックス内で試験用の対称電池として組み立てる。電気化学ワークステーションでそのセパレータのインピーダンスRを試験し、測定範囲が1Hz~100000Hzの間であり、印加される交流信号は5mV分極する。交流インピーダンスの試験結果から、イオン伝導率を計算することができ、式は以下の通りである。
δ=1000L/RA
式中、δは、イオン伝導率を表し、単位がmS/cmであり、Aは、被験セパレータの面積を表し、単位がcmであり、Lは、被験セパレータの厚さを表し、単位がμmであり、Rは、被験セパレータの抵抗を表す。
【0113】
4.ガラス転移温度の試験
規格GB/T 19466.2を参照し、示差走査熱量測定法(DSC)によりガラス転移温度を測定する。
【0114】
5.固形分の試験
固形分は、GB/T 1725~2007「塗料、ワニス及びプラスチック 不揮発物含有量の測定」を参照して試験することができる。
【0115】
【表1】
【0116】
上記結果から分かるように、比較例1及び比較例2のバインダで製造されたセパレータに比べ、実施例1~8のバインダで製造されたセパレータは、より高いイオン伝導率を有する。特に、各重合性モノマーの割合、及び有機ポリマーの乾燥重量と無機物の乾燥重量の比を調節することにより、セパレータのイオン伝導率を更に改善することができる。
【0117】
本願は、上記実施形態に限定されないことを説明しておく。上記実施形態は単なる例に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用と効果を発揮する実施形態は、全て本願の技術範囲内に包含される。なお、本願の主旨から逸脱していない範囲内で、実施形態に当業者が想到できる様々な変形を加え、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構成された他の形態も本願の範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0118】
1 電池パック
2 上部ボックス
3 下部ボックス
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極組立体
53 トップカバー組立体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】