(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-13
(54)【発明の名称】臭気中和組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240502BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240502BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20240502BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/34
C08L3/00
C08K5/5415
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573470
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022064387
(87)【国際公開番号】W WO2022248656
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515170654
【氏名又は名称】クヴァルツヴェルケ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェノル、エルデム
(72)【発明者】
【氏名】ヒルガース、トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ミューリンク、オラフ
(72)【発明者】
【氏名】クルーバー、ディルク
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB04X
4J002BB01W
4J002BB03W
4J002BB12W
4J002BB15W
4J002BB16W
4J002BB17W
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4J002BC03W
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4J002CB00W
4J002CF06W
4J002CF07W
4J002CG00W
4J002CH09W
4J002CK00W
4J002CL00W
4J002CN02W
4J002CN03W
4J002DJ006
4J002EX037
4J002FD206
4J002FD347
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、a)プラスチック材料及び他の物質と、b)ケイ酸カルシウム水和物を含む臭気中和剤と、c)多糖類と、d)接着促進剤と、を含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)プラスチック及び他の成分から構成された材料と、
b)ケイ酸カルシウム水和物を含む臭気中和剤と、
c)多糖類と、
d)接着促進剤と、
を含む組成物。
【請求項2】
前記臭気中和剤が、臭気を、VDA270で、0.5単位以上、好ましくは1.0単位以上、特に1.5単位以上低減するのに適した量で含まれている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
下記a)とb)とを含み、
a)の重量百分率とb)の重量百分率との合計、i)の重量百分率とii)の重量百分率との合計、及びiii)~v)の各々の重量百分率の合計が、それぞれ100重量%である、
請求項1又は請求項2に記載の組成物。
i)20.0~99.9重量%のプラスチックと、
ii)0.1~80.0重量%の他の成分と、
を含む
a)10.0~99.9重量%の材料。
iii)50.0~99.8重量%のケイ酸カルシウム水和物と、
iv)0.1~50.0重量%の多糖類と、
v)0.1~10.0重量%の接着促進剤と、
を含む
b)0.1~90.0重量%の臭気中和剤。
【請求項4】
前記プラスチックが、
a)ポリオレフィン、特に、ポリエチレン及びその共重合体及び変性体、ポリプロピレン及びその共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、並びにシクロオレフィン共重合体、
b)ポリ(塩化ビニル)及びポリ(塩化ビニル)変性体、
c)スチレン単独重合体及びスチレン共重合体、
d)ポリアクリレート、特に、ポリアクリロニトリル及びその共重合体、並びにポリ(メチルメタクリレート)及びその共重合体及びブレンド、
e)ポリアセタール、
f)フッ素プラスチック、
g)ポリアミド、
h)熱可塑性ポリエステル、特に、ポリカーボネート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリアリールスルホン及びポリアリールスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、並びにコポリイミド、
i)熱硬化性重縮合物、特に、フェノール樹脂、尿素/ホルムアルデヒドプラスチック、メラミン/ホルムアルデヒドプラスチック、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、及びシリコーン、
j)熱硬化性ポリアダクト、特にエポキシ樹脂、
k)ポリウレタン、特に、架橋ポリウレタン、及び熱可塑性ポリウレタンエラストマー、
l)エラストマーポリマー、特に、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ブチルゴム、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンゴム、アクリレートゴム、エチレンアクリレートゴム、フッ素ゴム、及びパーフルオロゴム、
m)生体高分子、特に、ポリ乳酸、セルロース及びセルロース誘導体、リグニン系サーモプラスト、再生可能原料を主体とする熱硬化性材料、並びに天然繊維複合材料、
並びにそれらの混合物
からなる群から選択される、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記プラスチック又は材料が、部分的に又は全体的に再利用プラスチックで構成されている、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記材料の前記他の成分が、
a)フィラー、特に鉱物系フィラー、
b)無機繊維及び有機繊維、
c)プラスチック添加剤、例えば、潤滑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、酸化防止剤、光保護剤、熱安定剤、泡安定剤、帯電防止剤、防曇添加剤、スリップ添加剤、難燃剤、着色剤、エフェクト顔料、蛍光染料、レーザーマーキング用添加剤、耐衝撃性改良剤、軟化剤、接着促進剤、推進剤、核生成剤、清澄剤、酸捕捉剤、抗菌添加剤、抗ウイルス添加剤、及び防かび剤、
d)前記材料の製造、調製、さらなる加工及び利用から生じる汚染物質、
並びにそれらの混合物
からなる群から選択される、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ケイ酸カルシウム水和物のBET比表面積が、20m
2/g以上、好ましくは30m
2/g以上であり、及び/又は、前記ケイ酸カルシウム水和物のBET比表面積が、800m
2/g以下、好ましくは50m
2/g未満である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ケイ酸カルシウム水和物が、結晶性ケイ酸カルシウム水和物、特にゾノトライト及びトバモライト、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
a)前記多糖類が、少なくとも部分的にらせん構造を有し、
b)前記多糖類の平均分子量が、10,000g/mol超、特に100,000g/mol超であり、及び/又は、
c)前記多糖類が、デンプン、デンプン誘導体、若しくはそれらの混合物である、
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記接着促進剤が、各ケイ素原子上に少なくとも1個のアルコキシ基を有する官能性シランであり、特に、前記官能性シランが、アミノ基、アルキル基、エポキシ基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、フルオロアルキル基、カルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アクリル基、及び/又は、メタクリル基を有し、特に、前記官能性シランが、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)若しくはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、又はそれらの混合物である、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記接着促進剤が、前記ケイ酸カルシウム水和物に結合している、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
a)プラスチック及び他の成分から構成された材料と、
b)ケイ酸カルシウム水和物を含む臭気中和剤と、
を含む組成物であって、
前記プラスチック又は材料が、部分的に又は全体的に再利用プラスチックから構成されている、
組成物。
【請求項13】
前記臭気中和剤が、
多糖類、及び/又は
接着促進剤
をさらに含む、
請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記臭気中和剤が、臭気を、VDA270で、0.5単位以上、好ましくは1.0単位以上、特に1.5単位以上低減するのに適した量で含まれている、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
下記a)とb)とを含み、
a)の重量百分率とb)の重量百分率との合計、i)の重量百分率とii)の重量百分率との合計、及びiii)~v)の各々の重量百分率の合計が、それぞれ100重量%である、
請求項12~請求項14のいずれか一項に記載の組成物。
i)20.0~99.9重量%のプラスチックと、
ii)0.1~80.0重量%の他の成分と、
を含む
a)10.0~99.9重量%の材料。
iii)50.0~100重量%のケイ酸カルシウム水和物と、
iv)0~50.0重量%の多糖類と、
v)0~10.0重量%の接着促進剤と、
を含む
b)0.1~90.0重量%の臭気中和剤。
【請求項16】
前記プラスチックが、
a)ポリオレフィン、特に、ポリエチレン及びその共重合体及び変性体、ポリプロピレン及びその共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、並びにシクロオレフィン共重合体、
b)ポリ(塩化ビニル)及びポリ(塩化ビニル)変性体、
c)スチレン単独重合体及びスチレン共重合体、
d)ポリアクリレート、特に、ポリアクリロニトリル及びその共重合体、並びにポリ(メチルメタクリレート)及びその共重合体及びブレンド、
e)ポリアセタール、
f)フッ素プラスチック、
g)ポリアミド、
h)熱可塑性ポリエステル、特にポリカーボネート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリアリールスルホン及びポリアリールスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、並びにコポリイミド、
i)熱硬化性重縮合物、特に、フェノール樹脂、尿素/ホルムアルデヒドプラスチック、メラミン/ホルムアルデヒドプラスチック、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、及びシリコーン、
j)熱硬化性ポリアダクト、特にエポキシ樹脂、
k)ポリウレタン、特に、架橋ポリウレタン、及び熱可塑性ポリウレタンエラストマー、
l)エラストマーポリマー、特に、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ブチルゴム、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンゴム、アクリレートゴム、エチレンアクリレートゴム、フッ素ゴム、及びパーフルオロゴム、
m)生体高分子、特に、ポリ乳酸、セルロース及びセルロース誘導体、リグニン系サーモプラスト、再生可能原料を主体とする熱硬化性材料、並びに天然繊維複合材料、
並びにそれらの混合物
からなる群から選択される、
請求項12~請求項15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記材料の前記他の成分が、
a)フィラー、特に鉱物系フィラー、
b)無機繊維及び有機繊維、
c)プラスチック添加剤、例えば、潤滑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、酸化防止剤、光保護剤、熱安定剤、泡安定剤、帯電防止剤、防曇添加剤、スリップ添加剤、難燃剤、着色剤、エフェクト顔料、蛍光染料、レーザーマーキング用添加剤、耐衝撃性改良剤、軟化剤、接着促進剤、推進剤、核生成剤、清澄剤、酸捕捉剤、抗菌添加剤、抗ウイルス添加剤、及び防かび剤、
d)前記材料の製造、調製、さらなる加工及び利用から生じる汚染物質、
並びにそれらの混合物
からなる群から選択される、
請求項12~請求項16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ケイ酸カルシウム水和物のBET比表面積が、20m
2/g以上、好ましくは30m
2/g以上であり、及び/又は、前記ケイ酸カルシウム水和物のBET比表面積が、800m
2/g以下、好ましくは50m
2/g未満である、請求項12~請求項17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ケイ酸カルシウム水和物が、結晶性ケイ酸カルシウム水和物、特にゾノトライト及びトバモライト、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12~請求項18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
a)前記多糖類が、少なくとも部分的にらせん構造を有し、
b)前記多糖類の平均分子量が、10,000g/mol超、特に100,000g/mol超であり、及び/又は
c)前記多糖類が、デンプン、デンプン誘導体、若しくはそれらの混合物である、
請求項13~請求項19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記接着促進剤が、各ケイ素原子上に少なくとも1個のアルコキシ基を有する官能性シランであり、特に、前記官能性シランが、アミノ基、アルキル基、エポキシ基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、フルオロアルキル基、カルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アクリル基、及び/又は、メタクリル基を有し、特に、前記官能性シランが、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)若しくはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、又はそれらの混合物である、請求項13~請求項20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記接着促進剤が、前記ケイ酸カルシウム水和物に結合している、請求項13~請求項21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1又は請求項2に記載の組成物を製造する方法であって、
押出機内又は混練機内で、プラスチックと他の成分とから構成された材料の成形コンパウンドに前記臭気中和剤を溶融混合する工程を含む、
方法。
【請求項24】
前記臭気中和剤の成分が、前記材料と直接混合されるか、又は前記材料と均一に予備混合され、特に、前記接着促進剤が最初に前記ケイ酸カルシウム水和物に適用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
プラスチック、再利用プラスチック又はそれらの混合物を含む材料の臭気中和のための、ケイ酸カルシウム水和物を含む臭気中和剤の使用であって、
前記臭気中和剤は、
多糖類と、
接着促進剤と、
をさらに含む、
使用。
【請求項26】
再利用プラスチックを含む材料の臭気中和のための、ケイ酸カルシウム水和物を含む臭気中和剤の使用であって、
特に、前記臭気中和剤は、
多糖類、及び/又は
接着促進剤、
をさらに含む、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気中和剤を含む組成物、前記組成物を調製するための方法、及び前記臭気中和剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハプティクスはさておき、臭気は消費者製品の成功を左右する必須の要素である。例えば自動車内装のプラスチック製材料又はコンポーネントに主観的に不快臭がある場合、購入意思決定に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、数多くのプラスチック製品は、化学物質の排出に関して厳格な要求を満たす必要がある。したがって、プラスチックの臭気の排出量を可能な限り低減することが、プラスチック加工業者及び配合業者にとっての関心事である。
【0003】
臭気の発生原因はたくさんある。多くの場合、臭気の原因は、プラスチック自体にではなく、プラスチックの調製以降存続する残存量の低分子物質にある。材料を製造する際にプラスチックに混入される添加剤、例えば、加工助剤、安定剤、繊維又はフィラー等もまた、不快臭の原因となり得る。さらに、プラスチック含有材料の製造及びさらなる加工もまた、例えば熱分解の結果として、不快臭を発生させ得る物質を生成する。
【0004】
出発材料として、すべて新生プラスチック材料を使用するのではなく、再利用プラスチック、又は新生材料と再生材料との混合物を使用する場合、臭気排出のリスクはさらに高まる。使用済み廃棄物からリサイクルされたプラスチック材料は臭気物質を含んでおり、この臭気物質は処理に際して完全には除去できないことが多い。包装廃棄物は多くの場合、チーズ臭及び排泄物臭を発生する微生物の典型的な代謝産物を含む。
【0005】
プラスチック部品の臭気を低減するための多くの試みがされてきた。こうして、例えば、国際公開第2017/060171号は、無機添加剤、特にケイ酸塩材料の使用を記載している。珪藻土及びケイ酸カルシウムが明示的に言及されている。
【0006】
プラスチックの臭気を低減するための選択肢であって、一部の態様において公知の選択肢よりも優れている可能性がある選択肢がさらに必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
対応する方法及び製品を提供することを本発明の目的とした。
【0008】
この目的は、プラスチック及びさらなる成分から構成された材料と、ケイ酸カルシウム水和物を含む臭気中和剤と、を含む組成物によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
原則的に、全種類のプラスチックを前記プラスチックとして使用することができる。とりわけ適しているプラスチックは、ポリオレフィン、特に、ポリエチレン及びその共重合体及び変性体、ポリプロピレン及びその共重合体、ポリブチン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、及びシクロオレフィン共重合体、ポリ(塩化ビニル)及びポリ(塩化ビニル)変性体、スチレン単独重合体及びスチレン共重合体、ポリアクリレート、特に、ポリアクリロニトリル及びその共重合体、及びポリ(メチルメタクリレート)及びその共重合体及びブレンド、ポリアセタール、フッ素プラスチック、ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、特に、ポリカーボネート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリアリールスルホン及びポリアリールスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリイミド、及びコポリイミド、熱硬化性重縮合物、特に、フェノール樹脂、尿素/ホルムアルデヒドプラスチック、メラミン/ホルムアルデヒドプラスチック、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、及びシリコーン、熱硬化性ポリアダクト、特に、エポキシ樹脂、ポリウレタン、特に、架橋ポリウレタン、及び熱可塑性ポリウレタンエラストマー、エラストマーポリマー、特に、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ブチルゴム、エチレンオキシド-エピクロロヒドリンゴム、アクリレートゴム、エチレンアクリレートゴム、フッ素ゴム、及びパーフルオロゴム、生体高分子、特に、ポリ乳酸、セルロース及びセルロース誘導体、リグニン系サーモプラスト、再生可能原料を主体とする熱硬化性材料、及び天然繊維複合材、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0010】
本発明による組成物は常に、さらなる成分を含有するプラスチックに関する。プラスチックとさらなる成分との組合せは、「材料」と称される。
【0011】
さらなる成分の典型として、特に、フィラー、特に鉱物系フィラー、無機繊維及び有機繊維、プラスチック添加剤(潤滑剤、ブロッキング防止剤、離型剤、酸化防止剤、光保護剤、熱安定剤、泡安定剤、帯電防止剤、防曇添加剤、スリップ添加剤、難燃剤、着色剤、エフェクト顔料、蛍光染料、レーザーマーキング用添加剤、耐衝撃性改良剤、軟化剤、接着促進剤、推進剤、核生成剤、清澄剤、酸捕捉剤、抗菌添加剤、抗ウイルス添加剤、防かび剤など)、材料の製造、調製、さらなる加工及び利用から生じる汚染物質、並びにそれらの混合物からなる群からの成分が挙示される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、前記プラスチック又は、好ましくは、前記材料は、全体的又は部分的に再利用プラスチックから構成される。
【0013】
再利用プラスチックは、純粋タイプ、純粋グレード、類似グレード、混合品又は汚染品であり得る。
【0014】
「純粋タイプ」とは、同一原料製造業者からの同一のタイプ名称を有する1種類のプラスチックのみが加工されていることを意味する。
【0015】
「純粋グレード」とは、DIN EN ISO 11469又はVDA260に準拠した同一の名称を有するプラスチックが加工されているが、異なる製造業者に由来し得ることを意味する。
【0016】
「類似グレード」のプラスチックとは、それらの基本重合体の加工において同一であるが、異なる特性(例えば、難燃性添加剤)を有するプラスチックを指す。
【0017】
「混合品」とは、化学的混和性を有する様々なプラスチックが加工されていることを意味する。これらのプラスチックが混和性であると言われるのは、溶融プロセスにおいて均一に混合することができ、かつ満足できる機械的特性及び許容可能な表面仕上げを有する成形構造体に加工できる場合のみである。
【0018】
「汚染品」とは、処理対象のプラスチックが、それから製造される成形部品の特性に悪影響を及ぼす他の材料を含むことを意味する。このような汚染プラスチックは主に、家庭廃棄物及び商業廃棄物に由来する。
【0019】
臭気の中和は、ケイ酸カルシウム水和物を含む臭気中和剤によって達成される。
【0020】
ケイ酸カルシウム水和物(CSH)としては、天然鉱物及び合成鉱物の両方、例えば、ゾノトライトがある。正式な観点から見ると、ケイ酸カルシウム水和物は、ケイ酸カルシウムの水和生成物である。ケイ酸カルシウム水和物は通常、SiO2に対するCaOのモル比(C/S比)によって特徴付けられる。この計算にあたり、特徴付けに対して含水量は考慮せずにおく。
【0021】
好ましくは、前記ケイ酸カルシウム水和物は結晶性ケイ酸カルシウム水和物である。
【0022】
典型的な公知のケイ酸カルシウム水和物は、
【0023】
a)ネソサブケイ酸塩(さらなるアニオンを有するオルトケイ酸塩)、例えば、アフウィライト、バルトフォンティナイト、α-C2SH、及びラインハルトブラウンサイト、
【0024】
b)ソロケイ酸塩、例えば、デラアイト、キララアイト、ジャファイト、キルコアナイト、及びC8S5、
【0025】
c)イノケイ酸塩(鎖状ケイ酸塩)、例えば、トバモライト、クリノトベルモライト、ジェンナイト、ゾノトライト、フォシャジャイト、及びヒレブランダイト、
【0026】
d)層状ケイ酸塩と鎖状ケイ酸塩との混合物、例えば、オーケナイト、
【0027】
e)フィロケイ酸塩(層状ケイ酸塩)、例えば、ネコアイト、トラスコッタイト、K相及びZ相、並びに(CO3)基を有する層状ケイ酸塩、例えば、スコータイト、フカライト、チライト、及びスパーライト
【0028】
である。
【0029】
20m2/g以上、好ましくは30m2/g以上のBET比表面積を有するケイ酸カルシウム水和物が好ましいことが見出された。好ましくは、BET比表面積は、800m2/g以下であることとし、好ましくは50m2/g未満である。
【0030】
特に好ましいケイ酸カルシウム水和物としては、ゾノトライト及びトバモライト、並びにそれらの混合物がある。
【0031】
好ましくは、C/S比は、0.6~1.4の範囲内、より好ましくは0.8~1.2の範囲内にある。
【0032】
好ましい実施形態では、臭気中和剤は、多糖類及び/又は接着促進剤をさらに含む。
【0033】
好ましくは、前記多糖類は、以下の特性のうちの1つを有する。
【0034】
a)前記多糖類は、少なくとも部分的にらせん構造を有し、
【0035】
b)前記多糖類は、10,000g/mol超、特に100,000g/mol超の平均分子量を有し、及び/又は、
【0036】
c)前記多糖類は、デンプン、デンプン誘導体、若しくはそれらの混合物である。
【0037】
適切な多糖類としては、例えば、天然タピオカデンプン、ワキシートウモロコシデンプン(共に、FH ディードリッヒ&ルートヴィッヒ・ポスト社製)、ナスターエンドウマメデンプン(ゲオルグ・ブロイヤー社製)、アミロジェル03003天然デンプン(カーギル社製)、Emwaxy 100及びEmfloc KC750(共に、エムスランド・シュテェルケ社製)、又はそれらの混合物が挙示される。
【0038】
適切な接着促進剤としては、特に、官能性シランである化合物が挙示される。好ましくは、前記官能性シランの各ケイ素原子に少なくとも1個のアルコキシ基が結合している。さらに、前記官能性シランは、アミノ基、アルキル基、エポキシ基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、フルオロアルキル基、カルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アクリル基、及び/又はメタクリル基を有し得る。好ましい接着促進剤としては、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)若しくはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、又はそれらの混合物がある。
【0039】
好ましくは、前記臭気中和剤は、臭気を、VDA270で、0.5単位以上、好ましくは1.0単位以上、特に1.5単位以上低減するのに適した量で含まれる。
【0040】
本発明による典型的な組成物は、
【0041】
a)10.0~99.9重量%を占める材料であって、
【0042】
i)プラスチックを20.0~99.9重量%、
【0043】
ii)さらなる成分を0.1~80.0重量%、
【0044】
含有する材料と、
【0045】
b)0.1~90.0重量%を占める臭気中和剤であって、
【0046】
iii)ケイ酸カルシウム水和物を50.0~100重量%、
【0047】
iv)多糖類を0~50.0重量%、
【0048】
v)接着促進剤を0~10.0重量%、
【0049】
含有する臭気中和剤と、
【0050】
を含む組成物であり、a)の重量百分率とb)の重量百分率との合計、i)の重量百分率とii)の重量百分率との合計、そしてiii)~v)の各々の重量百分率の合計が、それぞれ100重量%である。前記プラスチック又は、好ましくは、前記材料は、全体的又は部分的に再利用プラスチックから構成されるのが好ましい。
【0051】
本発明による別の典型的な組成物は、
【0052】
a)10.0~99.9重量%を占める材料であって、
【0053】
i)プラスチックを20.0~99.9重量%、
【0054】
ii)さらなる成分を0.1~80.0重量%、
【0055】
含有する材料と、
【0056】
b)0.1~90.0重量%を占める臭気中和剤であって、
【0057】
iii)ケイ酸カルシウム水和物を50.0~99.8重量%、
【0058】
iv)多糖類を0.1~50.0重量%、
【0059】
v)接着促進剤を0.1~10.0重量%、
【0060】
含有する臭気中和剤と
【0061】
を含む組成物であり、a)の重量百分率とb)の重量百分率との合計、i)の重量百分率とii)の重量百分率との合計、そしてiii)~v)の各々の重量百分率の合計が、それぞれ100重量%である。
【0062】
臭気中和剤を非常に多量に含む場合、組成物は、マスターバッチとして機能し、利用に際してプラスチックと混合することができる。
【0063】
他の実施形態では、組成物は、適切な最終生成物を規定する。
【0064】
典型的なマスターバッチにあっては、材料の含有量は10~50重量%であり、それに応じて臭気中和剤の含有量は50~90重量%である。
【0065】
最終生成物にあっては、組成物は通例、材料を50~99.9重量%含有し、そして臭気中和剤を0.1~50重量%含有する。
【0066】
好ましい実施形態では、最終生成物は、臭気中和剤を、3重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上含有する。
【0067】
好ましい実施形態では、接着促進剤はケイ酸カルシウム水和物に結合している。
【0068】
本発明はまた、本発明による組成物を製造する方法であって、プラスチックと他の成分とから構成された材料の成形コンパウンドに臭気中和剤を押出機内又は混練機内で溶融混合する工程を含む、方法に関する。
【0069】
前記方法の好ましい実施形態では、臭気中和剤の成分は、材料と直接混合されるか、又は材料と均一に予備混合される。好ましくは、接着促進剤は、最初にケイ酸カルシウム水和物に適用される。
【0070】
本発明はまた、ケイ酸カルシウム水和物を含む臭気中和剤の使用であって、プラスチック、再利用プラスチック又はそれらの混合物を含む材料の臭気中和のための使用に関し、特に、所望により、前記臭気中和剤は多糖類及び/又は接着促進剤をさらに含む。
【0071】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。
【0072】
材料から調製された試験片の機械的及び熱的試験方法
【0073】
・DIN EN ISO 527-1及び同527-2による引張弾性率Et
【0074】
・DIN EN ISO 179-1及び同179-2による(ノッチなし)シャルピー衝撃強度acU
【0075】
・DIN EN ISO 75-1及び同75-2、方法B(曲げ応力 0.45MPa)による荷重たわみ温度Tff0.45
【0076】
材料から調製した試験片を用いた臭気試験
【0077】
臭気特性の試験は、VDA270variantB4に従って、訓練を受けた被験者3~6名により実施された。各被験者は、以下の尺度に従って臭気を評価する。
【0078】
1=臭気は感知できない
【0079】
2=臭気は感知できるが、不快ではない
【0080】
3=臭気ははっきりと感知できるが、不快ではない
【0081】
4=臭気は不快である
【0082】
5=臭気は非常に不快である
【0083】
6=臭気は堪えがたい
【0084】
使用材料
【0085】
以下の特性を有するケイ酸カルシウム水和物:
【0086】
・ゾノトライト
【0087】
・C/S比=1:1
【0088】
・嵩密度(DIN EN ISO 787-10):0.14g/cm3
【0089】
・比表面積(DIN ISO 9277):38m2/g
【0090】
・密度(DIN EN ISO 787-10):2.62g/ml
【0091】
・1000℃での強熱減量(DIN EN ISO 3262-1):6%
【0092】
多糖類
【0093】
アミロースとアミロペクチンの重量比が以下のように異なる4種類のデンプン:
【0094】
a)アミロース20%、アミロペクチン80%
【0095】
b)アミロース55%、アミロペクチン45%
【0096】
c)アミロース70%、アミロペクチン30%
【0097】
d)アミロース1%、アミロペクチン99%
【0098】
接着促進剤
【0099】
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)
【0100】
プラスチック
【0101】
SYSTALEN 13404 gr 002-PP(グリューネ・プンクトからの再生ポリプロピレン)
【0102】
メルトフローインデックス(DIN EN ISO 1133):230℃/2.16kgにおいて12g/10分
【0103】
実験手順
【0104】
ケイ酸カルシウム水和物並びに多糖類及び/又は接着促進剤からの臭気中和剤の調製:
【0105】
ケイ酸カルシウム水和物2kgを実験室用ヘンシェルミキサー(容量10L)に入れ、接着促進剤及び/又は多糖類のそれぞれの量と混合する。重量割合は、表1の実施例2~8に見ることができる。二成分混合物又は三成分混合物を、コンパウンドの温度が80℃に達するまで、2000rpm及びシェル温度90℃において処理した。
【0106】
臭気中和剤及びプラスチックからのコンパウンドの調製
【0107】
プラスチックと臭気中和剤とを、二軸押出機(コペリオン社製ZSK18)内で下記条件に従って溶融混合した。
【0108】
・温度ゾーン1~7=200℃~220℃
【0109】
・ノズル温度=230℃
【0110】
・スクリュー回転数=600rpm
【0111】
・質量流量=10kg/h
【0112】
得られたコンパウンドのストランドを水浴に通して冷却し、ペレットに切り出した。臭気中和剤を、サイドフィーダーを通して重量測定法で計量し、プラスチック溶融物中に投入した。プラスチックと臭気中和剤の重量割合は、表1の実施例1~8に見ることができる。
【0113】
試験片の調製
【0114】
コンパウンドを射出成形機(Engel Victory 200/50)内(4つの加熱ゾーンすべてにおいて温度は220℃)で試験片に成形した。
【0115】
引張弾性率を測定するために、タイプ1A試験片(DIN EN ISO 527-2)を成形した。シャルピー衝撃強度及び荷重たわみ温度測定用のタイプ1試験片(DIN EN ISO 179-1)をタイプ1A試験片から切り出した。
【0116】
VDA270による臭気試験用に、DIN EN ISO 294-3に従ってタイプD2の小形プレートを成形した。
【0117】
【0118】
*多糖類タイプ:a=アミロース20%+アミロペクチン80%;b=アミロース55%+アミロペクチン45%;c=アミロース70%+アミロペクチン30%;d=アミロース1%+アミロペクチン99%
【国際調査報告】