(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】改善された静的混合チップ
(51)【国際特許分類】
B01F 25/432 20220101AFI20240507BHJP
B01F 23/47 20220101ALI20240507BHJP
B01F 23/45 20220101ALI20240507BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240507BHJP
B01F 33/501 20220101ALI20240507BHJP
B01F 35/60 20220101ALI20240507BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240507BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240507BHJP
B01F 101/19 20220101ALN20240507BHJP
B01F 101/22 20220101ALN20240507BHJP
B01F 101/36 20220101ALN20240507BHJP
【FI】
B01F25/432
B01F23/47
B01F23/45
B01F35/71
B01F33/501
B01F35/60
B05C5/00 101
B05C11/10
B01F101:19
B01F101:22
B01F101:36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528031
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2021081041
(87)【国際公開番号】W WO2022101167
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508105773
【氏名又は名称】メドミックス スウィツァランド アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ギーガー, ジム
(72)【発明者】
【氏名】ノアック, ミカエラ
(72)【発明者】
【氏名】シェック, ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】シュタウファッハー, ベッティーナ
(72)【発明者】
【氏名】レイ, ニコル
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
4G035
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA43
4F041CB54
4F042CB03
4F042CB27
4G035AB37
4G035AB41
4G035AC05
4G035AE09
4G035AE13
4G036AC31
4G037AA02
4G037DA27
4G037EA01
(57)【要約】
静的ミキサー(100)と、ハウジング(110)と、ヘッドスペース(140)と、静的ミキサー(100)のベース(30)に、ベース(30)とハウジング(110)との間にシールをもたらすシールリップ(20)と、シールリップ(20)および/またはハウジング(110)に、シールリップの2つの側の間にガス流連通をもたらす、好ましくは、通常の動作および使用時に、ヘッドスペース(140)内に捕捉されたガスが外部周囲雰囲気へ逃げ得るように、ヘッドスペース(140)と静的混合チップ(10)の外側の外部周囲雰囲気との間にガス接続をもたらす通気手段(150)(例えば、ベント(155))とを備える、静的混合チップ(10)が開示される。本発明はまた、静的混合チップ(10)に適した静的ミキサー(100)、前記静的混合チップ(10)の使用、および前記静的混合チップ(10)を含む部品キットに関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的混合チップ(10)であって、
ベース(30)を有する静的ミキサー(100)と、
ベース(60)および本体(70)を有するハウジング(110)と
を備え、
ヘッドスペース(140)が、ハウジング(110)と静的ミキサー(100)との間に位置し、
静的ミキサー(100)のベース(30)上に、静的ミキサー(100)のベース(30)とハウジング(110)との間にシールをもたらすシールリップ(20)が存在する、静的混合チップ(10)において、
1つまたは複数の通気手段(150)が、静的ミキサー(100)のシールリップ(20)および/またはハウジング(110)上に存在し、
通気手段(150)は、シールリップ(20)の2つの側の間にガス流連通を提供するように、
好ましくは、静的混合チップ(10)の通常の動作および使用時に、ハウジング(110)と静的ミキサー(100)との間に存在するヘッドスペース(140)内に捕捉されたガスの一部分が外部周囲雰囲気へ逃げるための経路を有するように、ヘッドスペース(140)と静的混合チップ(10)の外側の外部周囲雰囲気との間に好ましくはガス接続を提供するように具現化されることを特徴とする、静的混合チップ(10)。
【請求項2】
通気手段(150)が、シールリップ(20)および/またはハウジング(110)の周りに半径方向に配向されるベント(155)を含み、ベースの内面(60’)が、任意選択的に、混合チップ(10)を通る流れの軸方向においてシールリップ(20)の前に、クレスト(171)およびくぼみ(172)を含む、請求項1に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項3】
前記通気手段(150)が、0.005mm~0.1mm、好ましくは0.01mm~0.06mmの深さ(D)および/または幅(W)を有するベント(155)を含む、請求項1または2に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項4】
通気手段(150)が、サイズが等しいかまたは好ましくは等しくないベント(155)を含み、等しくない場合、入口(50)により近いベント(155a)が、好ましくは、入口(50)からより遠いベント(155b)よりも小さい、請求項1から3のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項5】
通気手段(150)が、サイズが等しくないベント(155)を含み、混合されるべき2つの材料が物理的に合流および相互作用する領域のより近くにあるように具現化されたベント(155b)は、入口(50)により近いベント(155a)よりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項6】
通気手段(150)が、通気手段(150)の一部分が軸方向に沿ってシールリップ(20)とハウジング(110)との間の接触面(160)の一部分と重なるように、ベースの内面に位置付けられるベント(155)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項7】
通気手段(150)が、静的ミキサー(100)のシールリップ(20)および/またはハウジング(110)の周りに略均等に配されるベント(155)を含み、好ましくは、シールリップ(20)および/またはハウジング(110)は、4つ以上のベント(155)を含み、ベースの内面(60’)は、任意選択的に、2つ以上の均等に分配された交互のクレスト(171)およびくぼみ(172)、好ましくは5つ以上、より好ましくは7つ以上の交互のクレスト(171)およびくぼみ(172)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項8】
通気手段(150)が、静的混合チップ(10)に入る材料がベント(155)を通じて空気を押し出すとともにベント(155)をシールするように具現化されるベント(155)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項9】
ハウジング(110)が、ベース(60)を本体(70)に接続する略円錐台形の内面(170)を含み、好ましくは、シールリップ(20)の上方の、静的ミキサーのベース(30)に存在する側面(180)は、形状が略円錐台形である、請求項1から8のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項10】
ハウジング(110)が、ベース(60)を本体(70)に接続する外面を含み、外面は、1つまたは複数のリブ(90)、好ましくは2つ以上の等間隔にあるリブ(90)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項11】
通気手段(150)が、2bar未満の圧力での通常の混合および吐出動作時に、粘性塊ではなく空気がベント(155)を通過することができるように具現化されるベント(155)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項12】
静的ミキサー(100)が、混合されるべき材料を複数のストリームに分離する、混合要素のアセンブリ(40)を含み、各混合要素(40)は、共通の横断縁を有する第1および第2の案内壁と、共通の横断縁と反対側の端に分離縁とを含み、案内壁は、分離縁と共通の横断縁との間に湾曲したひと続きの移行部を形成し、横断縁は、混合されるべき材料を分割し、第1および第2の案内壁ならびに混合要素の共通の横断縁は、材料を6つの流路に分割し、好ましくは、静的ミキサー(100)は、共通のバー要素を介して互いに接続される5つ以上の混合要素(40’)を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)に適した静的ミキサー(100)であって、静的ミキサー(100)のベース(30)の周囲に突出リッジまたはリムまたはストリップの形態のシールリップ(20)を備え、シールリップ(20)は、ガスがシールリップ(20)を通過することを許可するように具現化された、シールリップ(20)中に半径方向の向きに1つまたは複数の開口を含む、静的ミキサー(100)。
【請求項14】
2つ以上の成分を混合するとともに、静的混合チップ(10)の内部に捕捉された空気を実質的に放出して、実質的に空気を含まない均一な混合物をもたらす、請求項1から12のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)の使用。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の静的混合チップ(10)と、歯科、医療または建設材料を収容するカートリッジとを備える部品キットであって、カートリッジが、静的混合チップ(10)の入口(50)に接続するのに適した出口を有する、部品キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、通気手段を備える改善された静的混合チップと、静的混合チップにおける使用に適した静的ミキサーと、成分を混合しつつ空気を周囲雰囲気へ放出するための、静的混合チップの使用と、静的混合チップを含む部品キットとに関する。
【0002】
アプリケータシステムの分野において、接着剤または他の反応性材料成分を含有する液体または粘性塊などの2つ以上の材料を混合するのに適した静的混合チップが、工業用途、建設用途および歯科用途に関して知られている。例えば、EP0584428B1が、螺旋の静的混合器を開示しており、EP1426099B1、EP0749776B1およびEP0815929B1が、二次ベースの混合要素を有する様々な静的ミキサーを開示している。
【0003】
混合される成分および結果として得られる混合物は、貴重であり、空気に敏感であり、および/または刺激性である可能性があり、したがって、アプリケータシステムからの漏れによるその損失または流出は望ましくない。この理由から、市場で多様な製造業者から一般的に入手可能であるような静的混合チップは、多くの場合、カートリッジの出口とぴったりとフィットしたシールを有し、静的混合チップの出口以外、それ自体が密閉された構成を有する。
【0004】
そのように密閉されたチップは漏れを防止するが、その密閉はリスクの可能性をもたらしかねない。例えば、混合されるべき材料が静的混合チップに入る前、チップの内側に空気が存在している。この空気は、混合される材料の前に混合チップの出口を出ない場合、入ってくる材料内に捕捉され、気泡を材料内に形成させることがある。空気またはガスの別の原因は、カートリッジ自体内の材料である可能性があり得る。カートリッジ容器自体内の気泡は、カートリッジ充填時の不十分な通気に起因し得るか、または、例えば、加熱、凍結、殺菌または照射によって、材料充填されたカートリッジのその後の処理に起因して発生し得る。そのような空気またはガス気泡は、気泡の存在が材料の効率的な混合を妨げることがあるため、望ましくなく、結果として得られる混合物は、不十分な強度もしくは接着または充填欠陥などの不均一または粗悪な混合製品材料性質を局所化しかねなかった。
【0005】
EP1896192A1は、弁アセンブリと、偏向チャネルまたは出口と、材料を保持するが空気が通過することを許可するための特別な濾過システムを有する収集容器とに基づいた、静的混合チップの内部に捕捉された空気を通気する装置および方法を開示している。収集容器がさらなる吸引または真空装置に接続さえされ得ることが開示されている。この開示された通気装置は複雑であり、かなりのスペースを必要とし、制限されたアクセスおよび限定された作業スペースを有する小さい面積に材料を適用する場合に利用可能ではないことがある。さらに、接続および接続終了、弁の開閉、または吸引装置を制御することなどの必要な取り扱い動作は、手袋、または、他の保護、衛生的もしくは安全機器をユーザが装着している場合、労力がいる場合がある。さらに、混合されるべき入ってくる材料間の反応は、それら材料が混合チップの内部で互いに接触するとすぐに開始し、そのため、多くの場合、さらなる通気装置(複数可)を混合チップにまたは混合チップの前に接続するための、また、混合物が硬化し始める前または塗布されなければならない前にさらなる事前適用である通気工程を実行するための時間がない。EP1896192A1に開示されている解決策を用いると、効率的な通気は複雑となり、特別な注意を必要とし、反応の速い接着剤の場合に労力がいる。
【0006】
部品のいずれも移動することができない静的混合チップの内部に捕捉された空気を押し出すことは困難である。この問題の考えられ得る解決策は、米国特許第5498078号に開示されており、この米国特許では、おそらくは存在する空気またはガスの蓄積を阻止し、したがって、主張によれば、空気の排出を保証し、気泡の形成を阻止する、傾斜した案内面を設けている。しかしながら、この傾斜した面は、さらなる面が静的ミキサーに設けられる必要があるため、静的ミキサーの長さを増加させ、静的ミキサーとハウジングとの間のヘッドスペース内に捕捉された空気を通気するのに役立たない。
【0007】
この先行技術を背景として、本発明は、さらなる通気装置および補助機器を設ける必要なく、気泡のない均一な混合物を生成する静的混合チップを提供する。
【発明の概要】
【0008】
この現行の技術水準から始まり、本発明は、すべてのタイプの静的混合チップに適用することができるとともにミキサーの長さを増加させない解決策を提供する。本発明者らは驚くべきことに、静的混合チップのシールリップおよび/またはハウジングにベントを設けることによって静的混合チップから捕捉空気を通気するための単純かつ費用対効果の高い解決策を見出した。この解決策は、任意の幾何学形状を有する静的混合チップに適用することができる。
【0009】
本発明によれば、これらの目的は、静的ミキサーのシールリップおよび/またはハウジングに存在する1つまたは複数の通気手段を有する静的混合チップであって、通気手段が、シールリップの2つの側、すなわち、ヘッドスペース(内部)へ向かう側と、外部へ向かって向きづけられた別の側との間に、典型的には混合チップの軸方向に沿って(例えば、出口から入口(複数可)に向かって)ガス流連通をもたらす、静的混合チップによって達成される。通気手段は好ましくは、ヘッドスペースと静的混合チップの外側の外部周囲雰囲気との間にガス接続をもたらすように具現化され、そのため、ハウジングと静的ミキサーとの間に存在するヘッドスペース内に捕捉されたガスの一部分が経路を有し、通常の動作時に外部周囲雰囲気へ逃げ得る。当業者は、ガスの容易な通過には、比較的狭くて長く曲がりくねっているとしても任意のひと続きの経路であれば十分であることを理解するであろう。入ってくる材料は、静的ミキサーに設けられた入口を介して、静的ミキサーとハウジングとの間にあるヘッドスペースに流れ込む。ヘッドスペースに存在する空気は、シールリップおよび/またはハウジングに存在するベントを介して押し出される。したがって、ベントは、捕捉された空気が逃げた後、材料によってシールされる。本発明はまた、これらの利益を達成するためにそのような静的混合チップの使用を提供する。
【0010】
いかなる特定の機構によっても縛られることを望むことなく、本発明者らは、静的ミキサーベースの長さに沿って、また、通気手段における狭い通路を通る、軸方向にヘッドスペースから外部雰囲気へ長く曲がりくねった経路が、ヘッドスペースから外部雰囲気への低粘性空気の容易な通過を依然として許可しつつ混合チップからの外方への流れおよび高価値で刺激性の塊の損失を阻止すると考える。したがって、特許請求された本発明におけるこの通気機構は、空気が容易に逃げることを許可しつつ混合チップ内に粘性塊を保持するための濾過システムとして働く。
【0011】
本発明の一実施形態では、通気手段は、シールリップおよび/またはハウジングの周りに半径方向に配向されるベントである。そのような半径方向の向きづけは好都合には、ベントが均等に配されることを可能にする。
【0012】
これらのベントは内方へ延びており、深さ(D)と、シールリップおよび/またはハウジングの表面におけるベントの開口の長さである幅(W)とを有する。本発明のいくつかの実施形態では、ベントは、0.005mm~0.1mm、好ましくは0.01mm~0.06mmの深さ(D)および/または幅(W)を有する。これらの寸法は有益には、通常の動作圧力で材料が静的混合チップから漏れることを防止しつつ空気が放出されることを可能にする。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、ベントはサイズが等しくてもよく、製造が容易である。本発明の好ましい実施形態では、ベントはサイズが等しくなくてもよい。様々なサイズのベントは、静的混合チップの種々の領域において生じる圧力差を補償することを可能にする。材料は、入口を介して静的混合チップに入ると、チップの内部に存在する空気に圧力をかける。入ってくる材料によって空気が押され、圧力がチップの内部に均等に配され得ない。例えば、入口から最も遠い空気は入口により近い空気に比してより多くの圧力を受ける。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、この圧力差を補償するために、入口により近いベントは、入口からより遠いベントよりも小さい。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、ベントはサイズが等しくなくてもよく、混合されるべき2つの材料が物理的に相互作用する領域により近いベントは、入口により近いベントよりも大きい。入口の近くにあるベントは、他のベントに比して最も小さく、ベントのサイズは、混合されるべき2つの材料が物理的に合流および相互作用する領域において最も大きくなるように次第に増加する。2つの材料がまず物理的に合流および相互作用する領域は、材料比、したがって、静的混合チップが接続するように構成されるカートリッジのタイプによって決定される。種々の比を有するカートリッジおよび静的混合チップは、適正な静的混合チップだけが適正なカートリッジと適合性であるようにそのそれぞれの入口および出口の種々の位置および相対的なサイズを有する。例えば、計算モデル化または実験によって決定されたように、混合されるべき材料が1:1の比にある場合、2つの材料が物理的に相互作用する領域は、2つの入口から略等距離の中心領域にある。他方で、混合されるべき材料が、割合が等しくない場合、混合されるべき2つの材料が物理的に相互作用する領域は、中心から離れ、割合が小さいほうの材料の入口により近い。例えば、混合されるべき材料が4:1の比にある場合、2つの材料が物理的に相互作用する領域は、大きいほうの入口よりも小さいほうの入口に近く、例えば、(小さいほうの入口および大きいほうの入口の最も近い縁間の距離の1/3、好ましくは1/4)内である。当業者は、2つの材料の比に基づいて、2つの材料が物理的に相互作用する領域を容易に定めることができ、例えば、混合されるべき材料が2:1の比にある場合、2つの材料が物理的に相互作用する領域は、中心と、4:1の比の材料が相互作用する領域との間にある。いくつかの実施形態では、ベントは、入口に最も近いベントから、混合されるべき2つの材料がまず物理的に合流および相互作用するところに最も近いベントにかけてサイズが次第に増加する。
【0015】
本発明の一実施形態では、ベントは、ハウジングの内面に存在し得る。これらのベントは、ハウジングのベースの内面に存在し、ベントの一部分が静的混合チップの軸方向に沿ってシールリップとハウジングとの間の接触面の一部分と重なるように、ベースの内面に位置付けられてもよい。この重なりは、捕捉空気が、シールリップによって妨げられるのではなく逃げるためにベントを通る経路を見出すことを確実にする。
【0016】
本発明の一実施形態では、ベントは、シールリップおよび/またはハウジングの周りに略均等に、好ましくは均等に配される。このように均等に配されることは、空気が均等に混合チップのすべての領域から逃げ出すことができることを確実にする。
【0017】
本発明の別の実施形態では、ベントは、静的混合チップに入る材料がベントを介して空気を押し出すとともにベントをシールするように具現化される。ヘッドスペースの体積は、ベント、および、空気が逃げる全般的に狭く曲がりくねった経路の体積に比して、比較的大きい。したがって、ヘッドスペース内の空気は、使用時に入ってくる塊によって変位および圧縮されるため、ベントを介して容易に逃げる。当業者は、塊が空気を変位させ、次いで、静的混合チップとともに使用されることを意図された塊の粘性に応じてベントおよびそれらの通路を部分的に塞ぐとともにブロックし得るように、直径、長さおよび曲がりくねり度合いなどの、ベントおよびそれらの経路の相対的な幾何学的パラメータをどのようにサイズ決めするかを容易に理解するであろう。例えば、空気通路開口を通って入る材料を捕捉するために一連の狭い迷路状のチャネルからフィルタ路が形成され得る。
【0018】
本発明の一実施形態では、ハウジングは、ベースおよび本体を有し、ハウジングのうち、ベースを本体に接続する内面は、略円錐台形である。円錐幾何学形状は、入ってくる材料を滑らかに先へガイドし、材料が混合するハウジング本体へ入れる。本発明者らは驚くべきことに、円錐台幾何学形状が、流れに対して少ない抵抗をもたらす中心においてより多くの自由体積をつくり出すことを見出した。この特有の特徴により、本例では中心にある、最も少ない抵抗をもたらす体積を、入ってくる材料が先に占めることが可能となる。入ってくる材料が直面する抵抗は、最も少ない抵抗をもたらす中心から離れて、最大の抵抗をもたらす、ハウジングとシールリップとの間のスペースへ向かって、増加する。中心からハウジングの周囲にかけての抵抗のこの増分勾配は、入ってくる材料が、ヘッドスペース内に存在する空気を捕捉しないように伝播することを確実にする。中心に存在する空気は、入ってくる材料によって、周囲へ向かって、最終的にはシールリップへ向かって、半径方向に押し出される。したがって、円錐台幾何学形状がもたらす材料伝播は好都合には、静的混合チップ内に既に存在する空気が材料中に捕捉されることを未然に防ぐ。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、静的ミキサーのベースに存在するシールリップの上方の側面は、形状が略円錐台形であり得る。換言すると、静的ミキサーのベースの上部とシールリップとの間のこの側面は、略円錐台形であり得、そのため、この実施形態における静的ミキサーの直径は、ベースの上部からシールリップにかけて増加する。本発明者らは驚くべきことに、円錐台幾何学形状が、流れに対して少ない抵抗をもたらす、静的ミキサーのベースの上部との間により多くの自由体積をつくり出すことを見出した。それにより、この円錐台形面は、略逆三角形断面を有するベースの周囲に延びる環状間隙をつくり出す。この逆三角形断面は、環状間隙がシールリングへ向かって次第に狭くなるにつれ、ヘッドスペースの方向からシールリングへ、流れに対して増加する抵抗を生じさせる。したがって、円錐台形側面により、自由体積の増分減少、したがって、抵抗の増分増加が可能となる。静的ミキサーのベースの上部からシールリップにかけての抵抗のこの増分勾配は好都合には、入ってくる材料が、ヘッドスペース、または、ハウジングのベースと静的ミキサーのベースとの間の環状間隙に存在する空気を捕捉しないように伝播することを確実にする。したがって、ハウジングのベースと静的ミキサーのベースとの間の環状間隙に存在する、粘性が低いほうの空気が、粘性が高いほうの入ってくる材料によって、シールリップへ向かって下方へ押される。したがって、円錐台幾何学形状がもたらす相対的な材料およびガス伝播比は好都合には、静的混合チップ内に既に存在し得る空気が材料中に捕捉されることを未然に防ぐ。
【0020】
本発明の一実施形態では、ハウジングはベースおよび本体を有し、ベースを本体に接続する外面が1つよりも多くのリブを有する。リブは控え壁の形状であり得る。控え壁は、ハウジングの本体に傾斜する、ハウジングのベースから延びる構造である。リブは、より良好な安定性をハウジングに与え、保持リングがハウジングに「着座する」ことを可能にする。好ましい実施形態では、ハウジングのベースを本体に接続する外面に存在するリブは、等間隔にある。リブの等間隔により、均一な安定性が保持リングに与えられる。
【0021】
本発明の一実施形態では、シールリップおよび/またはハウジングは、4つ以上のベントを含む。4つ以上のベントがシールリップおよび/またはハウジングの周りに均等に配される場合、捕捉空気は、各象限から滑らかに、すべての方向からより速く流出することができる。空気のこの均一な流出は、すべての側に均一な圧力勾配を確立することに役立ち、気泡の捕捉または形成を回避する。
【0022】
本発明の一実施形態では、ハウジングはベースおよび本体を有し、シールリップの下にあるとともに、シールリップの前のカートリッジから流れの軸方向においてシールリップの前にある、ハウジングのベースの内面が、交互のクレストおよびくぼみを含む。一実施形態では、クレストおよびくぼみは、シールリップの前に軸方向に延びるがシールリップと重ならない。好ましい実施形態では、交互のクレストおよびくぼみは、ハウジングのベースの内面の周囲に等間隔にある。いくつかの実施形態では、クレストは、0.05mm~0.35mm、好ましくは0.1mm~0.3mm、より好ましくは0.15mm~0.25mmの間の高さを有する。いくつかの実施形態では、くぼみは、0.05mm~0.35mm、好ましくは0.1mm~0.3mm、より好ましくは0.15mm~0.25mmの間の深さを有する。いくつかの実施形態では、クレストおよびくぼみは、ハウジングのうち、シールリップと接触する部分の下で始まり、軸方向において1.5mm~3.5mm、好ましくは2mm~3mmの間の長さを有し得る。いかなる特定の機構によっても縛られることを望むことなく、シールリップの下の、ハウジングのベースの内面におけるクレストは、シールリップにおけるベントが混合チップの組み立て(ハウジングへのミキサーの挿入)時に損傷を受けることを防ぎ、空気がベントを通過した後でより容易に放出されることも可能にし得る。ハウジングのベースの内面は、2つ以上、好ましくは5つ以上、より好ましくは7つ以上の均等に配された交互のクレストおよびくぼみを有し得る。当業者は、シールリップにおける前述したベントがクレストおよびくぼみから同様に構成され得ることを理解するであろう。
【0023】
本発明の一実施形態では、ベントは、2bar未満の圧力での通常の吐出動作下で、粘性塊ではなく空気がベントを通過することができるように具現化される。粘性塊は、特に混合および吐出動作時に、接着剤、シーラント、印象材ならびにそれらの2成分前駆体および混合物を含む。これらの粘性塊は、標準的な室温および圧力で0.1Pa・s~100,000Pa・sの粘性、または代替的に、少なくとも0.5、1、2または10Pa・sの粘性を有し得る。入ってくる材料は、静的混合チップの内部に存在する空気を、ベントを通じて押し出し、ベントをシールする。ベントの特定の位置および幾何学形状(直径および長さ)を用いて、通常の圧力で材料ではなく空気のみが逃げることができることを確実にすることができる。当業者は、長くて狭い曲がりくねった経路を空気が容易に進むことができるが高粘性塊は進むことができないことを理解するであろう。したがって、ベントおよび逃げ経路の幾何学的パラメータを調整することにより、塊ではなく空気のみが通過することができるようになる。当業者は、これらの幾何学的パラメータが、例えば、計算モデル化によって、保持されるべき塊の粘性および動作圧力に応じて容易に選択され得ることを理解するであろう。約2bar以上の極度に高い圧力では、材料がベントから漏れかねないことが起こり得るかもしれない。しかしながら、これらの高い圧力は、故意に適用されない限り達することが難しく、したがって、一般的には重大性がない。手動式またはバッテリ作動式のディスペンサを使用して吐出することなど、通常の状況下で、本発明のベントは十分に機能し、入ってくる材料によってシールされる。
【0024】
本発明の一実施形態では、ベントは形状が略円錐であり得、シールリップおよび/またはハウジングに設けられ得る。ベントがシールリップに存在する場合、円錐の底面は、シールリップの面にあるのに対し、円錐の先端は、シールリップの内部にある。ベントがハウジングに存在する場合、円錐の底面は、ハウジングのベースの内面にあるのに対し、先端はハウジング内に延びる。内方に延びる円錐幾何学形状により、空気のみがベントを通過することができることが確実となる。本発明の別の実施形態では、ベントは、略凹状半球形状または立方体形状を有し得る。いくつかの実施形態では、ベントは、上述した形状の組み合わせであってもよい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、ベントは、シールリップおよびハウジングの両方に存在し得る。シールリップのベントは、ハウジングのベースにおけるベントと一致してもまたは一致しなくても(必ずしも一致しなくても)よい。
【0026】
本発明の一実施形態では、静的混合チップの静的ミキサーは、混合されるべき材料を複数のストリームに分離する複数の混合要素と、横断縁と前記横断縁に対してある角度で延びる案内壁とを有する、混合要素の層状接合のための手段と、長手方向軸に対してある角度で配置されているとともに開口が設けられた案内要素と、を含み、前記静的ミキサーは、横断縁と、続く横案内壁と、前記案内壁間に配置された、横端区画および少なくとも1つの下部区画を有する、それぞれ分離縁で終端する少なくとも2つの案内壁と、を含み、それにより、前記横断縁の一方の側に少なくとも1つの開口と、前記横断縁の他方の側に少なくとも2つの開口と、を画定する。静的ミキサーのこの特別な幾何学形状の結果、死体積が低減および圧力降下が低減した高い混合効率が得られる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、静的混合チップの静的ミキサーは、混合されるべき材料を複数のストリームに分離する複数の混合要素を含み、各混合要素は、共通の横断縁と、共通の横断縁と反対の端に分離縁とを有する、第1および第2の案内壁を含み、案内壁は、分離縁と共通の横断縁との間に湾曲したひと続きの移行部を形成し、横断縁は、混合されるべき材料を分割し、混合要素の第1および第2の案内壁ならびに共通の横断縁は、材料を6つの経路に分割する。共通の横断縁は、圧力降下および死体積を低減しつつミキサーを塞ぐことを防止する。
【0028】
本発明のある特定の実施形態では、静的混合チップの静的ミキサーは、5つ以上の混合要素を含み、これら混合要素は好ましくは、共通のバー要素を介して互いに接続され得る。共通のバーは、混合要素をより剛性にすることによって混合要素に強度を与え、したがって、共通バーの存在によって混合要素の耐破損性が増す。
【0029】
本発明の静的混合チップは、1つより多くの入口を有し得る。入口により、混合されるべき材料が本体に入ることが可能となり、これは、ベントを通じて空気を押し出すことに役立つ。本発明は、入口の数または混合されるべき材料の数にかかわらず、所望の解決策を提供する。例えば、静的混合チップは、2つまたは3つの成分を混合するために2つの入口または3つの入口を有してもよく、このことは、ベントがシールリップおよび/またはハウジングに位置付けられ、入口の数によって影響を受けないため、ベントが機能を果たすことに影響しない。
【0030】
本発明の一実施形態では、実質的に空気を含まない混合物を吐出するために、静的混合チップが、そのシールリップおよび/またはハウジングに存在する特有のベントを通じて、静的混合チップの内部に捕捉された空気を放出するのに用いられる。
【0031】
本発明の静的ミキサー、ハウジングおよび保持リングは、射出、スラッシュ、圧縮、もしくはブロー成形などの標準的な製造方法を用いて、または代替的に、熱成形、真空成形もしくは鋳造によって作製することができる。
【0032】
本発明の静的ミキサー、ハウジングおよび保持リングは、プラスチック、金属またはガラス、好ましくはプラスチックから作製され得る。好ましい実施形態では、本発明の静的ミキサー、ハウジングおよび保持リングは、熱可塑性樹脂、好ましくはポリプロピレン(PP)から作製され得る。これらの様々なプラスチックは、固形の場合は剛性であり、所望の形状に容易に成形され得る。また、これらプラスチックは、比較的安価であり、したがって、好ましい材料である。
【0033】
当業者は、本発明の様々な請求項および実施形態の主題の組み合わせが、そのような組み合わせが技術的に実行可能であるような程度まで本発明において限定なしに可能であることを理解するであろう。この組み合わせにおいて、任意の1つの請求項の主題は、他の請求項の1つまたは複数の主題と組み合わせられ得る。主題のこの組み合わせにおいて、任意の1つの静的混合チップ、静的ミキサー、部品キットおよび使用の請求項の主題は、1つまたは複数の他の静的混合チップ、静的ミキサー、部品キットおよび使用の請求項の主題と組み合わせられ得る。例として、任意の1つの請求項の主題は、そのような組み合わせが技術的に実行可能であるような程度まで限定なしに他の請求項の任意の数の主題と組み合わせられ得る。
【0034】
当業者は、本発明の様々な実施形態の主題の組み合わせが同様に本発明において限定なしに可能であることを理解するであろう。例えば、上述した静的混合チップ、静的ミキサー、部品キットおよび使用の実施形態のうちの1つの主題は、技術的に実行可能である限り限定なしに、他の上述した静的混合チップ、静的ミキサー、部品キットおよび使用の実施形態のうちの1つまたは複数の主題と組み合わせられ得る。
【0035】
本発明を、本発明の様々な実施形態および図面を参照しながら以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】静的ミキサー、保持リングおよびハウジングを通る、静的混合チップの断面の概略図である。
【
図2B】静的ミキサーのベースの拡大概略図である。
【
図4】静的混合チップを通って流れる材料(点線矢印)および空気(実線矢印)の概略図である。
【
図5A】形状が凹状半球形であるベントがシールリップに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図5B】形状が円錐であるベントがシールリップに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図5C】形状が立方体であるベントがシールリップに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図5D】形状が凹状半球形であるベントがハウジングに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図5E】形状が円錐であるベントがハウジングに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図5F】形状が立方体であるベントがハウジングに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図5G】形状が凹状半球形であるベントがシールリップおよびハウジングに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図5H】形状が円錐であるベントがシールリップおよびハウジングに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図5I】形状が立方体であるベントがシールリップおよびハウジングに存在している、シールリップを通る横断面の概略上面図である。
【
図6A】形状が凹状半球形であるとともにサイズが等しいベントを有する、シールリップを通る横断面の拡大概略上面図である。
【
図6B】静的ミキサーが、(1:1)の比にある2つの材料を混合するのに適しており、ベントが種々のサイズを有する、シールリップを通る横断面の拡大概略上面図である。
【
図6C】静的ミキサーが、等しくない比、例えば4:1の2つの材料を混合するのに適しており、ベントが種々のサイズを有する、静的ミキサーのベースにおけるシールリップを通る横断面の拡大概略上面図である。
【
図7A】種々のタイプの混合要素のうちの1つを有する適切な静的ミキサーの概略図である。
【
図7B】種々のタイプの混合要素のうちの1つを有する適切な静的ミキサーの概略図である。
【
図7C】種々のタイプの混合要素のうちの1つを有する適切な静的ミキサーの概略図である。
【
図9A】通気手段もハウジングの内面に円錐幾何学形状も有しないモデル静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのX線検査画像である。
【
図9B】通気手段を有するがハウジングの内面に円錐幾何学形状を有しないモデル静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのX線検査画像である。
【
図9C】通気手段とハウジングの内面に円錐幾何学形状とを有するモデル静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのX線検査画像である。
【
図10A】通気手段もハウジングの内面に円錐幾何学形状も有しないモデル静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのCTスキャン画像である。
【
図10B】通気手段を有するがハウジングの内面に円錐幾何学形状を有しないモデル静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのCTスキャン画像である。
【
図10C】通気手段とハウジングの内面に円錐幾何学形状とを有するモデル静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのCTスキャン画像である
【
図11】ハウジングのベースと、静的ミキサーのベースに存在するシールリップの上方の略円錐台形の側面との間に存在する環状間隙の拡大概略図である。
【
図12A】クレスト(171)およびくぼみ(172)を含む、ハウジングのベースの内面(60’)の拡大概略図である。
【
図12B】均等に配されたクレスト(171)およびくぼみ(172)を含む、ハウジングのベースの内面(60’)の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義
本明細書および本出願の特許請求の範囲において使用される場合、以下の定義が当てはまるものとする。
【0038】
典型的には(例えば、出口80から入口(複数可)50へ向かって)混合チップの軸方向に沿って、シールリップ20の2つの側、すなわち、ヘッドスペース(内部)140へ向けて向きづけられた側と、外部へ向けて向きづけられた別の側との間、例えば、好ましくは、ハウジング110のベース60の上側間隙またはヘッドスペース140と、外側の外部周囲雰囲気との間に(例えば、シールリップ20を通る)ガス接続またはガス流連通をもたらすための本例において、通気手段150が、スペース内に捕捉されたガスのためのひと続きの逃げまたは放出経路を支援する機能を有する。通気手段150は典型的に、シールリップ20の中および/または周りに位置付けられ得、他の場合(通気手段150がない場合)では、ハウジング110のベース60の上側間隙(ヘッドスペース140)をシールし、空気の通過を許可しない。通気手段(または具体的的にはベント155)は、シールリップ20および/またはハウジング110に位置付けられ、例えば、シールリップ20および/またはハウジング110を完全にまたは部分的に通過し得る。したがって、通気手段(または具体的にはベント155)は特に、シールリップ(20)の2つの側間にガス流連通をもたらす。
【0039】
外気圧は、通常の気圧であり、例えば、海面位では1atmであり、海抜の上昇に伴い、約0.3atmまで減少し得る。圧力はまた、温度に基づいて様々であり得る。通常条件下で、気圧は例えば、特許請求される本発明が用いられ得る歯科医院または建設現場などの建物の内部の圧力であり得る。
【0040】
静的混合チップの通常の動作は、手動式、バッテリ式または空気圧式ディスペンサを使用して、接着剤、シーラント、コーティング、および印象材または他の反応性材料成分を含む、工業、建設、医療、化粧、および歯科用途のための流体など、流体の混合および吐出におけるものである。通常の動作圧力は、吐出されるべき材料の粘性にも左右され得る、ディスペンサによってかけられる圧力である。静的混合チップの典型的な内部圧力は、2atm~25atmの範囲にわたり得る。吐出されるべき材料の典型的な粘性は、標準的な室温および圧力で0.1Pa・s~100,000Pa・sの範囲にわたる。
【0041】
半径方向の、とは、材料の流れ方向に対して垂直または長手方向軸に対して垂直な方向を意味する。
【0042】
軸方向の、とは、材料の流れ方向に対して平行または長手方向軸に対して平行な方向を意味する。
【0043】
CTスキャンとは、コンピュータ断層撮影スキャンを意味する。
【0044】
「空気」および「ガス」という語は、置き換え可能に使用される。
【0045】
クレスト(複数可)とは、突出部または突起などの、表面から突出する隆起面を意味する。
【0046】
くぼみ(複数可)とは、溝またはチャネルなどの、表面における窪みまたは表面に切り込まれた中空スペースを意味する。
【0047】
前に置かれるものとしての「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、文脈が別段に示していない限り、単数または複数のどちらかを指し得る。
【0048】
本出願における数値は、平均値に関係している。さらに、そうではないことが示されていない限り、数値は、同じ桁数の有効数字まで低減された場合と同じである数値、および、値を決定するために本出願において説明されるタイプの従来の測定技法の実験的な誤差よりも小さい分だけ、述べられる値とは異なる数値を含むと理解されるべきである。
【0049】
図1は、静的混合チップ10の入口を通る断面の図である。静的ミキサー100がミキサーハウジング110内に配置されている。ハウジング110は、カートリッジ、例えば、混合および吐出されるべき材料を収容するカートリッジへの接続をもたらすように働く保持リング120内に受け入れられている。保持リング120は、意図されたカートリッジとの適切な制御された連結を確実に行うようにバヨネット連結および/または他のコード化機構を有し得る。
【0050】
図2Aは、静的ミキサー100の概略図を示し、静的ミキサー100は、シールリップ20と、ベース30と、混合要素の混合本体またはアセンブリ40と、フランジ130とを有する。混合本体40は、入ってくる材料を混合するのに適した幾何学形状を有する。混合本体40の幾何学形状は、特に限定されず、例えば、螺旋であってもよく、または、混合されるべき材料を複数のストリームに分離する複数の成分を含んでもよく、各混合要素は、横断縁を有する横案内壁であって、横案内壁が、混合されるべき材料の長手方向流れ方向に対して平行に延び、横断縁が、混合されるべき材料を分割する横案内壁の縁である、横案内壁と、材料を6つの流路にさらに分割するための第1および第2の壁区画であって、第1および第2の壁区画のそれぞれが、横案内壁に対して垂直な案内壁を含む、第1および第2の壁区画と、案内壁に対して垂直な端区画壁であって、横案内壁に対して垂直である端区画壁と、を含み、第1および第2の壁区画は、互いに反対に配置される。
【0051】
図2Bは、静的ミキサー100のベース30を示す。ベース30は、入ってくる材料を静的ミキサーに受け入れるための1つまたは複数の入口50を有し得る。混合されるべき材料が入口50を通過し、静的ミキサー100のベース30の上部において放出され、ハウジング110に入る。
【0052】
ベース30は、その周囲にシールリップ20を有する。このシールリップ20は、静的ミキサー100のベース30の上部から特定の深さのところに位置付けられている。シールリップ20は好ましくは、静的ミキサー100の一体部分であってもよく、または、別個に製造され、その後で静的ミキサー100に取り付けられてもよい。シールリップ20は、リムもしくはストリップであってもよく、または、その通常の動作および使用時に混合チップから(所望の材料流の方向とは反対の、例えば、取り付けられたカートリッジまたはシリンジへ向かって)逆方向に材料が漏れることを防止するために効果的なシールをもたらす任意の適切な幾何学形状を有してもよい。シールリップ20には、ベント155などの1つまたは複数の通気手段150があり得る。ベント155は好ましくは円錐形であり、円錐の先端がシールリップ20の内側に延びている。ベント155は代替的に、凹状半球形とすることができる。ベント155の機能は、シールリップ20の2つの側の間への(例えば、シールリップ20を通る)ガスまたは空気の通過(ガス流連通)を許可するが、粘性材料の通過を阻止することである。当業者は、この機能を達成するために様々な幾何学的形状、特に狭いまたは漸狭の幾何学形状を用い得ることを理解するであろう。シールリップ20に1つよりも多くのベント155が存在する場合、それらベントは好ましくは均等に配され得る。静的ミキサー100のベース30の底には、ハウジング110を支持するフランジ130が存在する。ハウジング110はこのフランジ130に着座している。
【0053】
図3Aおよび
図3Bは、ハウジング110の概略図を示し、ハウジング110がベース60および本体70を有している。ハウジング110の本体70の外面は、略円筒形または矩形であり得る。ハウジング110のベース60の外面は、略円筒形であり得る。ベースのうち、ベース60を本体70に接続する外面は、ハウジング110の本体70に対して略垂直であり得る。
【0054】
図3Bは、ハウジング110の断面の概略図を示す。ハウジング110のうち、ベース60を本体70に接続する内面170は、略円錐形であり得る。ハウジング110は、混合された材料が静的混合チップを出る出口80を有する。ハウジング110のうち、出口80を本体70に接続する面は、略円錐形または円筒形であり得る。
【0055】
図3Cは、ハウジング110の等角図を示し、ハウジング110のうち、ベース60を本体70に接続する外面が、1つまたは複数のリブ90を有し得る。リブ90は、ハウジング110のベース60を本体70に接続する傾斜面であり、または控え壁としてとして形状決めされ得る。リブ90は、等間隔にあり得る。
【0056】
図4は、静的混合チップ10を通って流れる材料(点線矢印)および空気(実線矢印)の概略図を示す。入ってくる材料(点線矢印)は、静的ミキサー100に設けられた入口50を通って、ハウジング110のベース60と本体70との間のヘッドスペース140に流れ込む。ヘッドスペース140内に存在する空気(実線矢印)は、入ってくる材料によって、シールリップ20および/またはハウジング110に存在するベント155を通じて下方へ押し出される。そのため、比較的狭いベント155は、粘性材料によってシールされる。したがって、シールリップ20の2つの側の間に(すなわち、シールリップ20を通る)ガス流連通があるが、材料流連通の妨害またはブロックがある。それゆえ、ヘッドスペース140内に存在する空気は、シールリップ20の2つの側の間のガス流連通により、静的混合チップ10の外側の外部周囲雰囲気へ逃げることができる。したがって、シールリップ20の2つの側の間のガス流連通は、ヘッドスペース140と保持リング120の底部開口との間のより長いガス流連通の一部である。したがって、ヘッドスペース140内に捕捉されるいかなる空気も、通気手段150(ベント155)を介してシールリップ20へ向かうとともにシールリップ20を通って、静的ミキサーのベース30の端およびフランジ130を通過し、ハウジングのベース60および保持リング120の下端に流れ得、この下端は通常、ねじ手段または他の機械的接続手段によってカートリッジ出口(複数可)に接続される。カートリッジ(混合および吐出されるべき材料(複数可)を収容する)と静的混合チップ10との間のこのねじ手段または他の機械的接続手段は、材料を通さないが完全に気密ではない。したがって、この空気はその後、カートリッジから静的混合チップ10へ、部分的に材料(複数可)の中心流の圧力によって、機械的接続手段を通じて外部雰囲気へ押し出される。したがって、シールリップ20の2つの側の間のガス流連通は実際には、ヘッドスペース140と外部雰囲気との間のはるかにより長いガス流連通の一部であり、したがって、これにより、ヘッドスペース140内の捕捉空気が、出口80から出てくる吐出される材料の内部に気泡として捕捉されるのではなく外部雰囲気へ逃げることが可能となる。
【0057】
図5A、
図5Bおよび
図5Cは、ベント155がそれぞれ凹状半球形、円錐および立方体である、本発明の代表的な種々の考えられ得る実施形態を示す静的ミキサー100のベース60に存在するシールリップ20を通る横断面の概略上面図である。これらの図から見てとることができるように、シールリップおよびそのベント155の幾何学形状は、ガスまたは空気が(一方の側から他方の側へ)通過することを許可するが粘性塊または材料の通過をブロックするという機能を果たせば特に限定されず、シールリップ20および/またはハウジング110に存在する1つまたは複数のベント155があってもよい。ベント155は好ましくは、シールリップ20および/またはハウジング110の周りに均等に配され得る。ベント155は、空気が通るのに十分に大きいが粘性材料がベントを通過するのを妨げるのに十分に小さいという「濾過」機能を果たせば様々な寸法を有してもよい。図は、ベント155が、ガスが通過することを許可するが材料をブロックする任意の形状を有し得ることを示す。したがって、横断面積または長さは、この濾過機能を果たせば様々であってもよい。
【0058】
図5D、
図5E、
図5F、
図5G、
図5Hおよび
図5Iに見てとることができるように、これらの図は、ベント155の一部分が静的混合チップ10の軸方向に沿ってシールリップ20とハウジング110との間で接触面160の一部分と重なるようにベント155がハウジングのベース60の内面に存在し得ることを示す。シールリップ20のベント155は、ハウジングのベース60におけるベント155と一致してもまたは一致しなくても(必ずしも一致しなくても)よい。当業者は、通気手段150、特にベント155について有用かつ最適な幾何学形状および寸法が計算モデル化および実験によって容易に決定され得、塊の粘性および静的混合チップ10における動作圧力に応じて幾分様々であることを理解するであろう。
【0059】
図6Aは、静的ミキサー100のベース60に存在するシールリップ20を通る横断面の拡大概略上面図を示す。これらの図における通気手段150は、特にベント155である。ベント155の深さ(D)は、シールリップ20の表面とベントの最も内部の地点との間の距離である。幅(W)は、シールリップ20の表面におけるベント155の開口の長さである。非対称ベント155の場合、深さ(D)および幅(W)は、平均的な深さおよび幅を指す。この図では、入口50は等しいサイズを有し、対称に配置されている。同様に、ここに示すようにベント155のすべてが等しいサイズを有し得る。仮想時計に対するベント155の位置を想定することができる。入口に最も近いベント155aは、12時および6時に近い領域に位置付けられ得るのに対し、入口から最も遠いベント155bは、3時および9時に近い領域に位置付けられ得る。
【0060】
図6Bは、ベント155が種々のサイズを有する、静的ミキサー100のベース60に存在するシールリップ20を通る横断面の拡大概略上面図を示し、静的ミキサー100は比が等しい(1:1)2つの材料を混合するのに適している。したがって、入口50は等しいサイズを有し、対称に配置されている。図から見てとることができるように、入口に最も近いベント155aは、入口から最も遠いベント155bよりも小さい。ベントのサイズは、最も小さい、入口に最も近いベント155aから、最も大きい、入口から最も遠いベント155bにかけて、次第に増大し得る。ベントのサイズ、および、空気を通すとともに塊をブロックすることができるベントの能力は、深さ(D)および/または幅(W)を増減することによって容易に変えられ得る。ベント155は、約0.005mm~0.1mm、好ましくは0.01mm~0.06mmの間の深さ(D)および/または幅(W)を有し得る。ベント155は、サイズが等しくてもよく、または、好ましくは等しくなくてもよく、入口50に近いベント155aは、入口50からより遠いベント155bよりも小さい。計算モデル化または実験によって決定されたように、この図において網掛けした、中央における面積は、入口のサイズが等しく、混合されるべき2つの材料の比が等しい場合の、2つの材料が物理的に相互作用する面積を示す。
【0061】
図6Cは、ベント155が種々のサイズを有する、静的ミキサー100のベース60に存在するシールリップ20を通る横断面の拡大概略上面図を示し、静的ミキサー100は、比が等しくない(例えば、4:1の)2つの材料を混合するのに適している。等しくない比の2つの材料を混合するために、入口50は異なるサイズを有し得る。例えば、仮想時計に関して、大きい方の入口50が12時に近い領域に位置付けられる場合、小さいほうの入口50は、6時に近い領域に位置付けられ得る。11時から1時の領域および6時に近い領域に位置付けられたベント155aは、ベント155の残りよりも比較的小さいものであり得る。4時から5時および7時から8時の領域に位置付けられたベント155bは、ベント155の残りよりも大きいものであり得る。ベント155のサイズは、最も小さい、12時におけるベント155aから始まって、次第に増加し得、これに関して、4時から5時の間の領域まで、時計回り方向に、サイズが増加し、この領域において、ベントは最大となる155b。これに続き、ベント155aが最も小さい、6時近くの領域まで、ベント155のサイズが次第に減少する。さらに時計回り方向に、ベントのサイズは、ベント155bが最も大きい、7時から8時近くの領域まで、次第に増加する。その後、ベント155は、12時まで、次第にサイズが減少し得る。計算モデル化または実験によって決定されたように、この図において網掛けされた、最も小さい入口により近い面積は、2つの材料が物理的に相互作用する領域を示す。
【0062】
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、様々な実施形態による静的ミキサー100の混合要素のアセンブリ40の幾何学形状の代表的な概略図である。これらの幾何学形状は、EP1426099およびEP0815929に開示されている。本発明の目的のため、混合要素のアセンブリ40の特定の実施形態は、本出願に開示されるような本発明の実施に著しい影響を及ぼさないかまたはその実施を左右しないため、特に限定されない。
【0063】
図8は、ヘッドスペース140の拡大概略図を示す。図から見てとることができるように、ベース60を本体70に接続するハウジング110の内面170は、略円錐台形である。R
A、R
BおよびR
Cは、ヘッドスペース140内の種々の位置における、入ってくる材料(塊)が直面する抵抗である。R
Aは、ヘッドスペース140の中心の周り(例えば、ベース30の中心の近くおよび/または混合要素のアセンブリ40の近く)の領域における抵抗であり、R
Bは、ヘッドスペース140の中心から離れた抵抗である。R
Cは、シールリップ20の上方にある、ハウジングのベース60と静的ミキサーのベース30との間の領域における抵抗である。ハウジングの斬新な形状により、ヘッドスペースの中心において、より多くの自由な体積が存在し、ひいては、入ってくる材料が中心において最も少ない抵抗を受ける。したがって、R
Aが最も少なく、これにより、入ってくる材料が先に主としてヘッドスペースの中心の周りの領域を占め、それによって、捕捉空気をシールリップ20へ向けて外方に押す。抵抗は、中心からハウジングの周辺へ向かって次第に増加し、そのため、R
BはR
Aよりも大きい。自由体積がさらに減少するにつれ、抵抗は増加し、そのため、シールリップ20の上方にある、ハウジングのベース60と静的ミキサーのベース30との間の領域における抵抗R
Cは、R
Bよりも大きい。抵抗のこの増分勾配(R
A<R
B<R
C)は、入ってくる材料が、ヘッドスペース140内に存在する空気を捕捉しないように伝播すること、および、入ってくる材料が、シールリップ20によって最終的に妨げられ、ベント155を通って逆方向に流出することを防止されることを確実にし、これにより、空気のためにシールリップ20の2つの側の間に(すなわち、シールリップ20を通る)ガス流連通がもたらされる。この図から見てとれるように、流れに対して増加する抵抗の勾配は、ヘッドスペースの中心領域から、シールリップ20が位置付けられている、低いほうの外周へ移ることで、より小さい断面を有する(次第により狭くなる)ヘッドスペース幾何学形状を用いることによって容易に生成される。適切な幾何学的形状は、略円錐、略三角錐、略四角錐、略三角柱、および、略円錐台形状などの円錐台を含むそれらの変形形態を含む。
【0064】
図11は、ハウジングのベース60と静的ミキサーのベース30との間の環状間隙190の拡大概略図を示す。図から見てとることができるように、静的ミキサーのベースの上部とシールリップ20との間の側面180は、略円錐台形である。R
DおよびR
Eは、環状間隙190内の種々の位置における、入ってくる材料(塊)が直面する抵抗である。R
Dは、環状間隙190の上部分の周り(例えば、ベース30の上部の近く)の領域における抵抗であり、R
Eは、シールリップ20により近い、環状間隙190の下部にある領域における抵抗である。静的ミキサーのベース30の上部とシールリップ20との間の側面180の斬新な形状により、環状間隙190の上部において、より多くの自由な体積が存在し、ひいては、入ってくる材料が環状間隙190の下部R
Eに比して上部においてより少ない抵抗R
Dを受け、それによって、捕捉空気をシールリップ20へ向けて下方に押す。抵抗は、環状間隙190の上部から環状間隙190の下部へ、シールリップ20へ向かって次第に増加する。抵抗のこの増分勾配(R
D<R
E)は、入ってくる材料が、環状間隙190内に存在する空気を捕捉しないように伝播すること、および、入ってくる材料が、シールリップ20によって最終的に妨げられ、ベント155を通じて逆方向に流出することを防止されることを確実にし、これにより、空気のためにシールリップ20の2つの側の間に(すなわち、シールリップ20を通る)ガス流連通がもたらされる。この図から見てとれるように、流れに対して増加する抵抗の勾配は、環状間隙190の上部から、シールリップ20が位置付けられている、低いほうの外周へ移ることで、より小さい断面を有する(次第により狭くなる)環状間隙幾何学形状を用いることによって容易に生成される。適切な幾何学的形状は、略円錐、略三角錐、略四角錐、略三角柱、および、略円錐台形状などの円錐台を含むそれらの変形形態を含む。
【0065】
図12Aは、クレスト171およびくぼみ172を含む、ハウジングのベースの内面60’の拡大概略図を示す。クレスト171およびくぼみ172は、シールリップ20がハウジングのベースの内面60’と接触する地点よりも下(カートリッジからの流れ方向においてシールリップ20の前)に存在する。くぼみ172の存在により、シールリップ20のある部分はハウジングのベースの内面60’と接触せず、これにより、特に組み立て時にシールリップ20におけるベント155が摩擦により擦られることが防止される。摩擦はベント155に損傷を与える可能性があり、したがって、ベントは空気を通すことを許可することができるその能力を失いかねない。くぼみ172は、例えばEP3826704に開示されているもののような破断可能な混合チップの場合など、特に剛性または硬質材料について、ベントが損なわれないままであることを可能にする。したがって、一実施形態では、ベントならびにクレストおよびくぼみを有する、混合チップは、混合チップの出口が、直径が増加されることを可能にするように、ユーザによって破断可能な混合チップである。
【0066】
図12Bは、捕捉空気がすべての方向から滑らかに流出することができるように、また、全周の損傷を回避するために、均等に配されたクレスト171およびくぼみ172を含む、ハウジングのベースの内面60’の底面図を示す。
【実施例】
【0067】
比較および実施例
比較分析を行って、通気手段150、特にベント155と、特にヘッドスペース140の上方の、ハウジング110の内面170の略円錐台幾何学形状との様々なモデル静的混合チップ10への組み込みの効果を評価した。
【0068】
X線画像およびCTスキャンを行って、様々な異なるモデル静的混合チップからの押出ビード中の気泡のサイズおよび密度を測定した。これらの例では、1:1の比を有する標準的なカートリッジおよび一般的に入手可能なハンドディスペンサにおいて、自己接着性の自己硬化樹脂セメント(Ivoclar Vivadent AG社からのSpeedCEM Plus(商標))の標準的な材料組成物を用いた。試験されたモデル静的混合チップはすべて、
図7Aにおけるような同一の混合要素のアセンブリを有した。
【0069】
比較例1:通気手段を有しないとともに、円錐内面を有するハウジングを有しない静的混合チップを、混合された材料の押出ビードを製造する際のその性能について試験した。
図9Aおよび
図10Aは、通気手段もハウジングの内面に円錐幾何学形状も有しない静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのX線画像およびCTスキャン画像である。ビードの長さ全体にわたって大きな気泡(0.04mm
3以上の体積)が捕捉された。
【0070】
比較例2:この例では、通気手段を有しないが、円錐内面を含むハウジングを有する静的混合チップを試験した。通気手段を有しないが、ハウジングの内面に略円錐台幾何学形状を有する静的混合チップを使用して、ビードを2つの材料から作製した。X線画像およびCTスキャン画像が得られるとビードの長さ全体にわたって大きな気泡が観察されている。したがって、円錐内面をハウジングに設けることだけでは、気泡の捕捉を防ぐことに有効ではない。
【0071】
実施例1:この例では、通気手段を有するとともに、円錐内面を含むハウジングを有しない静的混合チップを試験した。
図9Bおよび
図10Bは、本発明による通気手段、特に、
図2Aおよび
図2Bに示されたもののようなベントを有するが、ハウジングの内面に円錐幾何学形状がない静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのX線画像およびCTスキャン画像である。図から見てとることができるように、ビードのセグメントに(0.01mm
3と0.04mm
3の間の体積の)小さな気泡のみが捕捉された。したがって、本発明による通気手段(ベント)は、シールリップの2つの側、すなわち、ヘッドスペース(内部)および出口へ向いた側と、外部および入口(複数可)へ向けて向きづけられた別の側との間に(例えば、シールリップを通る)ガス流連通をもたらすため、混合された材料内に捕捉される気泡のサイズおよび体積を著しく低減させることが観察されている。
【0072】
実施例2:この例では、通気手段、特にベントを有するとともに、略円錐台形の内面を含むハウジングを有する静的混合チップを試験した。
図9Cおよび
図10Cは、実施例1におけるようなベントである通気手段と、ハウジングの内面に円錐幾何学形状とを有する静的混合チップを使用して混合された2つの材料のビードのX線画像およびCTスキャン画像である。ビード中に気泡は観察されなかった。したがって、通気手段と、ハウジングの内面における略円錐台形の内面との組み合わせが、気泡を最小にするかまたは排除しさえする最良の結果をもたらすことが観察されている。
【符号の説明】
【0073】
10 静的混合チップ
20 シールリップ
30 静的ミキサーのベース
40 混合要素のアセンブリ
50 入口(複数可)
60 ハウジングのベース
60’ ハウジングのベースの内面
70 ハウジングの本体
80 出口
90 リブ(複数可)
100 静的ミキサー
110 ハウジング
120 保持リング
130 フランジ
140 ヘッドスペース
150 通気手段
155 ベント(複数可)
155a 入口(複数可)に最も近いベント(複数可)
155b 入口(複数可)から最も遠いベント(複数可)
160 シールリップとハウジングとの間の接触面
170 円錐台形内面
171 ハウジングのベースの内面におけるクレスト
172 ハウジングのベースの内面におけるくぼみ
180 静的ミキサーのベースにおける円錐台形側面
190 ハウジングのベースと静的ミキサーのベースとの間の環状間隙
【図】
【図】
【図】
【図】
【図】
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【国際調査報告】