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特表2024-519428CAR操作T細胞及びパルボウイルスH-1を含む癌療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】CAR操作T細胞及びパルボウイルスH-1を含む癌療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/768 20150101AFI20240507BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240507BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K35/768
A61K35/17
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023553471
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022055394
(87)【国際公開番号】W WO2022184824
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21160732.0
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512151403
【氏名又は名称】ドイッチェス・クレープスフォルシュングスツェントルム
【氏名又は名称原語表記】DEUTSCHES KREBSFORSCHUNGSZENTRUM
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハラマ、ニールス
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、パトリック
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、癌を有する対象を処置するための、適応細胞療法などの免疫療法、例えばT細胞療法、及び腫瘍溶解性ウイルス(特にパルボウイルスH-1)を含む併用療法のための組成物、方法、使用及びキットに関する。T細胞療法には、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍又は血液悪性腫瘍である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)腫瘍溶解性ウイルスと、(b)癌細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された免疫細胞、特にT細胞とを含む医薬組み合わせ。
【請求項2】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、パルボウイルスH-1、又はLuIII、マウス微小ウイルス(MMV)、マウスパルボウイルス(MPV)、ラット微小ウイルス(RMV)、ラットパルボウイルス(RPV)若しくはラットウイルス(RV)から選択される関連する齧歯類パルボウイルスである、請求項1に記載の医薬組み合わせ。
【請求項3】
前記癌細胞抗原が、メソテリン、EGFRvIII、GD2、Tn抗原、PSMA、PSA、CD70、CD97、TAG72、CD44v6、CEA、CA125、EPCAM、KIT、IL-13Ra2、レグマン、GD3、CD171、IL-llRa、PSCA、MAD-CT-1、MAD-CT-2、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、葉酸受容体アルファ、ERBB(例えば、ERBB2)、Her2/neu、MUC1、EGFR、NCAM、Ephrin B2、CAIX、LMP2、sLe、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、FAP、レグマイン、HPV E6又はE7、p16INK4a、ML-IAP、CLDN6、TSHR、GPRC5D、ALK、ポリシアル酸、Fos関連抗原、好中球エラスターゼ、TRP-2、CYP1B1、精子タンパク質17、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン、AFP、サイログロブリン、PLAC1、globoH、RAGE1、MN-CA IX、MSIフレームシフト突然変異体、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、腸管カルボキシルエステラーゼ、mut hsp 70-2、NA-17、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、NY-ESO-1、GPR20、Ly6k、OR51E2、TARP、又はGFRa4から選択される、請求項1に記載の医薬組み合わせ。
【請求項4】
前記癌細胞抗原がCEA又はCA125である、請求項3に記載の医薬組み合わせ。
【請求項5】
化学療法剤、生物療法剤、免疫原性剤、免疫刺激性サイトカイン、及び免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞から選択される1つ又は複数の追加の治療剤をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組み合わせ。
【請求項6】
癌を処置する方法において使用するための、請求項1~5のいずれかに記載の医薬組み合わせ。
【請求項7】
前記腫瘍溶解性ウイルスと、癌細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された前記免疫細胞とが、連続的に投与される、請求項6に記載の使用のための医薬組み合わせ。
【請求項8】
前記免疫細胞がT細胞である、請求項6又は7に記載の使用のための医薬組み合わせ。
【請求項9】
前記使用が、固形腫瘍、血液がん及び/又は癌始原幹細胞を処置するためのものである、請求項6~8のいずれかに記載の使用のための医薬組み合わせ。
【請求項10】
前記癌が、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、腎臓癌、頭頸部扁平上皮癌、肺癌、悪性黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、脳癌、子宮頸癌、腎細胞癌又は胃癌である、請求項6~9のいずれかに記載の使用のための医薬組み合わせ。
【請求項11】
前記腫瘍溶解性ウイルス及び/又は前記CAR免疫細胞が腫瘍内投与又は静脈内投与によって投与される、請求項6~10のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
第1の容器、第2の容器及び添付文書を含むキットであって、前記第1の容器が、腫瘍溶解性ウイルスを含有する医薬組成物の少なくとも1つの用量を含み、前記第2の容器が、癌細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された免疫細胞、好ましくはT細胞の少なくとも1つの用量を含み、前記添付文書が、癌を有する個体を処置するための説明書を含む、キット。
【請求項13】
前記癌が、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、腎臓癌、頭頸部扁平上皮癌、肺癌、悪性黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、脳癌、子宮頸癌、腎細胞癌又は胃癌である、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
個体における腫瘍抗原陽性細胞の増殖及び/又は活性を阻害する方法であって、前記個体に治療有効量の請求項1~5のいずれかに記載の医薬組み合わせを提供する工程を含む方法。
【請求項15】
前記医薬組み合わせの前記構成要素(a)及び(b)が、腫瘍内投与又は静脈内投与によって個別に提供される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
腫瘍の微小環境においてTH1型サイトカインを増加させ、遊走促進性ケモカインを上方制御し、トニックT細胞刺激性インターロイキンを上方制御する方法において使用するための腫瘍溶解性ウイルス。
【請求項17】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、パルボウイルスH-1、又はLuIII、マウス微小ウイルス(MMV)、マウスパルボウイルス(MPV)、ラット微小ウイルス(RMV)、ラットパルボウイルス(RPV)若しくはラットウイルス(RV)から選択される関連する齧歯類パルボウイルスである、請求項16に記載の使用のための腫瘍溶解性ウイルス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を有する対象を処置するための、適応細胞療法などの免疫療法、例えばT細胞療法、及び腫瘍溶解性ウイルス(特にパルボウイルスH-1)を含む併用療法のための組成物、方法、使用及びキットに関する。T細胞療法には、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍又は血液悪性腫瘍である。
【背景技術】
【0002】
長年、癌の処置は、手術、化学療法、及び放射線、より最近では標的療法に基づいていた。これらのアプローチは転帰の改善に寄与しているが、ほとんどの悪性腫瘍は依然として予後不良である。標的化された抗癌アプローチは、ほとんどの悪性腫瘍の複雑さに対抗し、成功の確率を高めるための個別化療法を提供する。現在、疾患と戦うために患者の免疫系の力を使用する免疫療法への関心が高まっている。癌免疫療法に対する1つのアプローチは、腫瘍細胞を認識して攻撃するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように患者のT細胞を遺伝子操作することを伴う。CARは、ヒンジ、膜貫通ドメイン、及び細胞内T細胞シグナル伝達ドメインと融合した、抗体又はリガンド由来の標的化外部ドメインからなる。T細胞によって発現される場合、CARは、標的化ドメインによって決定される抗原特異性を付与する。主要組織適合遺伝子複合体(MHC)依存的様式で抗原を認識する従来のT細胞受容体(TCR)とは対照的に、CARは、潜在的に、T細胞のエフェクター機能を、細胞表面上に発現される任意のタンパク質又は非タンパク質標的に向け直すことができる。それにより、この戦略は、標的細胞による抗原プロセシング及び提示の必要性を回避し、非古典的T細胞標的に適用可能である。ヒトMHC拘束を回避することは、CAR-T細胞アプローチを普遍的な処置としてもたらし、養子T細胞療法の潜在的な適用性を広げる。
【0003】
4世代のCARが、前臨床研究及び進行中の臨床研究において研究されている(Mirzaei et al.,Frontiers in Immunology 2017,Vol.8,Art.1850)。CAR「世代」は、典型的には、受容体分子に組み込まれた細胞内シグナル伝達ドメインを指す。第1世代CARは、細胞内シグナル伝達ドメインとしてCD3ζのみを含み;第2世代CARは、CD3ζに加えて、単一の共刺激ドメイン、例えば、CD28、4-1BB(CD137)、CD27又はOX40を含み;第3世代CARは、CD3ζ及び2つの共刺激ドメイン、例えばCD28、4-1BB又は他の共刺激分子(図3参照)を含む。CARは、強力な抗腫瘍サイトカイン(例えば、IL-12及びIl-15)又は共刺激リガンド(例えば、4-1BBL)をコードするものを含む追加の遺伝子の導入によってさらに操作され得、したがって、「装甲(armored)」第4世代CAR T細胞を産生することができる(Maus et al.,Blood 2014,123(1),2625-2635;Pegram et al.,Cancer J.2014,20(2):127)。
【0004】
B細胞白血病及びリンパ腫の処置のために開発された、B細胞受容体関連タンパク質CD19を標的とするキメラ抗原受容体は、これまで最も臨床的に試験されてきた。異なる治療設計を採用する複数の施設にわたるCD19-CAR T細胞療法での多くの進歩により、この養子免疫療法の商業化が成功している。2つのCD19標的CAR-T細胞産物、Novartis(East Hanover,NJ,USA)のKymriah(登録商標)(Tisagenlecleucel)及びKite Pharma(Santa Monica,CA,USA)のYescarta(登録商標)(Axicabtagene ciloleucel)は、それぞれ、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の処置について米国FDAによって2017年に承認されている。CAR-T細胞療法は、再発性及びしばしば難治性の疾患を有する小児及び若年成人において顕著な転帰を達成しており、完全奏効(CR)率は70~90%である(Cummins et al.,Leuk.Lymphoma 2017,1-15)。リンパ腫及び他のB細胞悪性腫瘍では、CAR T細胞療法は有効であるが、より低いCR率(ほぼ55%)を示している(Cummins et al.,Leuk.Lymphoma 2017,1-15)。両方のFDA承認CARはCD19に特異的に結合し、これは、悪性細胞上にほぼ均一に発現され、健康及び悪性の両方のすべてのB細胞上に現れるので、血液悪性腫瘍の標的としてうまく機能する抗原である。したがって、CD19-CAR-T細胞処置はB細胞形成不全を引き起こし得るが、症状は、静脈内免疫グロブリン及び密接な感染モニタリングによって管理することができる。
【0005】
CAR-T細胞による血液がんの処置の進歩にもかかわらず、固形腫瘍の処置はより困難であることが判明している。固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の限られた成功は、(i)ほとんどの癌における独特の腫瘍関連抗原(TAA)の欠如;(ii)養子移入後にエクスビボ増殖CAR-T細胞が持続及び増殖することができないこと;(iii)CAR-T細胞の腫瘍部位への非効率的な輸送;(iv)抗原陰性腫瘍変異体の増殖をもたらす標的抗原(複数可)の不均一な発現;(v)生存及び成長因子(例えば、IL-2)の欠如;(vi)免疫抑制分子及び細胞の存在;並びに(vii)代謝的に敵対的な腫瘍微小環境を含む多くの因子に起因し得る(Zhang et al.,Int.J.Biol.Sci.2016,12:718-729)。CAR-T細胞をPD-1発現又はサイトカイン/ケモカインの分泌のノックアウトでアーミングすること、及びCAR-T細胞をチェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することを含む、多くの戦略及びアプローチが、これらの障害を克服するために試みられてきた(Heczey et al.,Mol.Ther.2017,25:2214-2224;Rupp et al.,Sci.rep 2017,7:737;Hedge et al.,Cancer Immunol.Immunother.2017,66:1113-1121)。これらの取り組みにもかかわらず、いくつかの臨床研究が進行中ではあるが、これまでのところ固形腫瘍処置のために臨床的に承認されたCAR-T細胞はまだ存在しない。
【発明の概要】
【0006】
したがって、固形腫瘍を処置するためのCAR-T細胞の有効性を改善するために、改善された戦略が必要とされる。これらの改善された戦略は、対象への投与時の細胞の持続性、活性及び/又は増殖の改善を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明によれば、これは特許請求の範囲に定義される主題によって達成される。
【0008】
本発明者らは、(a)キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された免疫細胞(特にT細胞)[以下において「CAR細胞」]及び(b)腫瘍溶解性ウイルス(特にパルボウイルスH-1)の併用が、特に固形腫瘍を処置するための腫瘍処置の有効性を改善することを示すことに成功した。したがって、本発明は、(a)キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞と、(b)パルボウイルスH-1とを含む医薬組み合わせ又は医薬製剤に関する。
【0009】
固形腫瘍を処置するためのCAR-T技術を含む免疫療法の依然として不良な転帰は、固形腫瘍の周囲のバリアによって引き起こされ、T細胞の浸潤を困難にするか、又は不可能にさえする。このバリアは、「腫瘍微小環境」(TME)と呼ばれ、周囲の血管、免疫細胞、線維芽細胞、骨髄由来炎症細胞、リンパ球、シグナル伝達分子及び細胞外マトリックスを含む、腫瘍が存在する細胞環境である。腫瘍及び周囲の微小環境は密接に関連しており、絶えず相互作用する。腫瘍は、細胞外シグナルを放出し、腫瘍血管新生を促進し、末梢免疫寛容を誘導することによって微小環境に影響を及ぼし得るが、微小環境中の免疫細胞は、癌性細胞の成長及び進化に影響を及ぼし得る。臨床研究及び前臨床研究は、多くの癌で誘発される免疫阻害経路を逆転させることが、例えば共刺激シグナル伝達又は追加の活性剤を含めることによるCAR T細胞の改変を必要とし得ることを示している。CAR-T細胞療法に良好に応答した特定の血液がんとは対照的に、固形腫瘍は、血液悪性腫瘍の悪性及び正常Bリンパ球標的上に発現される従来の共刺激分子を欠くだけでなく、免疫系を積極的に抑制する機構も進化している。いくつかの免疫抑制経路は、養子CAR T細胞療法の完全な可能性を制限し得る。阻害性免疫受容体は、持続的な腫瘍抗原遭遇後にT細胞上に発現されることが多く、これらには、T細胞膜タンパク質-3(TIM-3)、リンパ球活性化タンパク質-3(LAG-3)、T細胞Ig及びITIMドメイン(TIGIT)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、及びプログラム死-1(PD-1)が含まれる。これらの受容体の上方制御は、CAR T細胞の抗腫瘍応答の持続性及び活性を制限する。したがって、腫瘍は、腫瘍特異的免疫応答を回避するか又は誤った方向に向けるために複数の方策を用いる。
【0010】
したがって、本発明者らは、CAR-T細胞技術を腫瘍溶解性ウイルスパルボウイルスH-1と組み合わせて、いわゆる「コールド腫瘍(cold tumor)」(すなわち、免疫細胞浸潤の程度が低い腫瘍)を、「ホット腫瘍(hot tumor)」(免疫原性腫瘍、すなわち中程度又は高度の免疫細胞浸潤を伴う腫瘍)に変換した。「コールド」及び「ホット」腫瘍の概念は、当業者に周知である。コールド腫瘍は、通常、免疫抑制性サイトカインが豊富であり、多数のTreg細胞及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を有する。コールド腫瘍は通常、少数のTH1細胞、NK細胞及びCD8+T細胞並びに少数の機能的抗原提示細胞(APC)(例えば樹状細胞(DC))を有する。対照的に、ホット腫瘍はTH1型ケモカインが豊富であり、多数のエフェクター免疫細胞(TH1細胞、NK細胞及びCD8+T細胞)及び多数のDCを有する。ケモカインCXCL9、CXCL10及びCX3CL1は、多くの癌タイプにおいてT細胞の誘引に重要な役割を果たす。
【0011】
免疫細胞浸潤の程度は、例えば、癌を有する患者の臨床転帰を予測するために使用されるいわゆる「免疫スコア」によって測定することができる。コンセンサス免疫スコアは、腫瘍内のCD3+及びCD8+T細胞の密度及びその浸潤縁を要約するためのスコアリングシステムである。例えば、免疫スコアは、CD3+/CD8+T細胞密度に応じて、低、中及び高として分類することができ、一方、0~25%の密度は、好ましくは低としてスコア化され、25~70%の密度は、好ましくは中としてスコア化され、70~100%の密度は、好ましくは高としてスコア化される(Pages F.et al.(2018)Lancet 391(10135):2128-2139)。コールド腫瘍は、免疫細胞浸潤の程度が低い、すなわち、好ましくは免疫スコアが低いと定義される。ホット腫瘍は、免疫細胞浸潤の程度が中程度又は高い、すなわち、好ましくは免疫スコアが中程度又は高いと定義される。
【0012】
いくつかの腫瘍タイプは、処置前でさえもホット腫瘍のタイプに属する(例えば黒色腫)。それにもかかわらず、本発明は、T細胞の活性化及び腫瘍への免疫細胞の浸潤のさらなる増強を可能にする。
【0013】
コールド腫瘍は、通常、免疫療法及び細胞ベースの療法にあまり応答しない。本発明は、腫瘍溶解性ウイルスが、免疫細胞の腫瘍への浸潤を増加させ、それによってTMEに積極的に影響を及ぼすことによってそのような応答性を改善することができるという発見に基づいている。したがって、コールド腫瘍(例えば、結腸直腸癌腫、卵巣癌、肺癌)を有する患者は、処置から特に利益を得る。結果として、腫瘍は、細胞ベースの治療に対するより良好な応答性を示し得る。それにより、「ドアオープナー」として機能し、腫瘍をT細胞療法に対して感受性にするパルボウイルスH-1の適用によって、コールド腫瘍をホット腫瘍に変換することができる。
【0014】
したがって、本明細書では、癌、特に固形腫瘍を有する対象を処置するための、パルボウイルスH-1と組み合わせた適応細胞療法、例えばT細胞療法などの免疫療法が提供される。T細胞療法には、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する細胞が含まれる。
【0015】
キメラ抗原受容体及びCAR細胞
「キメラ抗原受容体」(CAR)は、抗原結合機能と免疫細胞活性化機能の両方を提供する組換え受容体である。CARの構造及び操作は、例えば、Dotti et al.,Immunol Rev(2014)257(1)に概説されている。
【0016】
したがって、キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、以下に定義される刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)とを少なくとも含む組換えポリペプチド構築物を指す。いくつかの実施形態では、CARポリペプチド構築物中のドメインは、同じポリペプチド鎖中にあり、例えば、キメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARポリペプチド構築物中のドメインは、互いに隣接しておらず、例えば、異なるポリペプチド鎖にある。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞質シグナル伝達ドメインは一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-ゼータの一次シグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、細胞質シグナル伝達ドメインは、以下に定義される少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つ又は複数の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、41BB(すなわち、CD137)、CD27、ICOS、及び/又はCD28から選択される。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、1つ又は複数の共刺激分子に由来する2つの機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、1つ又は複数の共刺激分子に由来する少なくとも2つの機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARは、CAR融合タンパク質のアミノ末端(N-ter)にオプショナルのリーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原認識ドメインのN末端にリーダー配列をさらに含み、リーダー配列は、細胞プロセシング及び細胞膜へのCARの局在化中に抗原認識ドメイン(例えば、scFv)から場合により切断される。これに関して、図3を参照する。
【0018】
特定の癌細胞抗原又は腫瘍マーカーXを標的とする抗原結合ドメイン(例えば、scFv、単一ドメイン抗体、又はTCR(例えば、TCRアルファ結合ドメイン又はTCRベータ結合ドメイン))を含むCARであって、Xが本明細書に記載の癌細胞抗原であり得るCAR。例えば、CEAを標的とする抗原結合ドメインを含むCARは、CEA-CARと呼ばれる。CARは、任意の細胞、例えば以下に記載される免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)で発現され得る。
【0019】
本開示はまた、本開示によるCARを含むか又は発現する細胞を提供する。本開示によるCARをコードする核酸を含むか又は発現する細胞も提供される。
【0020】
細胞は免疫細胞であり得る。細胞は、造血起源の細胞、例えば好中球、好酸球、好塩基球、樹状細胞、リンパ球又は単球であり得る。リンパ球は、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞若しくは先天性リンパ系細胞(ILC)、又はそれらの前駆体であり得る。細胞は、例えば、CD3ポリペプチド(例えば、CD3y CD3又はCD35)、TCRポリペプチド(TCRa又はTCR)、CD27、CD28、CD4又はCD8を発現し得る。
【0021】
好ましい実施形態では、細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はCD3+T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はCD3+、CD8+T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は細胞傷害性T細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL))である。
【0022】
CAR T細胞の使用は、全身投与することができ、原発腫瘍及び転移腫瘍の両方に適用されるという利点に関連する。
【0023】
いくつかの実施形態では、細胞は抗原特異的T細胞である。本明細書の実施形態では、「抗原特異的」T細胞は、T細胞が特異的である抗原に応答してT細胞の特定の機能的特性を示す細胞、又は前記抗原を発現する細胞である。いくつかの実施形態では、特性は、エフェクターT細胞、例えば細胞傷害性T細胞に関連する機能的特性である。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗原特異的T細胞は、以下の特性:細胞傷害性、例えばT細胞が特異的である抗原を含む/発現する細胞に対する細胞傷害性;例えば、T細胞が特異的である抗原又はT細胞が特異的である抗原を含む/発現する細胞に応答した、増殖、IFNy発現、CD107a発現、IL-2発現、TNFα発現、パーフォリン発現、グランザイム発現、グラニュライシン発現、及び/又はFASリガンド(FASL)発現の1つ又は複数を示し得る。抗原特異的T細胞は、適切なMHC分子によって提示された場合にT細胞が特異的である抗原のペプチドを認識することができるTCRを含む。抗原特異的T細胞は、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞であり得る。
【0025】
T細胞へのCARの操作は、養子T細胞療法のためのT細胞の増殖中に起こるなど、形質導入及び増殖のための培養中、インビトロで行われ得る。CARを発現するように免疫細胞を収集及び操作するための方法は当業者に公知であり、例えば、Wang and Riviere Mol Ther.Oncolytics.(2016)3:16015に記載されている。「少なくとも1つの細胞」は、複数の細胞、例えばそのような細胞の集団を包含することが理解されよう。
【0026】
本開示によるCARを含む又は発現する細胞は、上で定義した真核生物免疫細胞、例えば哺乳動物免疫細胞であり得る。哺乳動物は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他の齧歯動物(齧歯目の任意の動物を含む)、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ(牛、例えば乳牛、又はウシ目の任意の動物を含む)、ウマ(ウマ目の任意の動物を含む)、ロバ、及び非ヒト霊長類)であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト対象からのものであり得るか、又はヒト対象から得られたものであり得る。CAR発現細胞が対象の処置において使用されることになる場合、細胞は、CAR発現細胞により処置されることになる対象からのものであり得る(すなわち、細胞は自己由来であり得る)か、又は、細胞は、異なる対象からのものであり得る(すなわち、細胞は同種異系であり得る)。
【0027】
現在、CAR-T臨床試験のほとんどは自己CAR-Tを使用しているが、患者自身のT細胞は通常、質及び量の欠陥を有しており;自己CAR-Tの製造コストはより高価である。したがって、同種異系CAR-Tも有用であり得る。しかしながら、同種異系T細胞上の抗原受容体TCRは、レシピエントにおいて同種異系抗原を認識し、それによって移植片対宿主病(GVHD)を引き起こし得る。さらに、同種異系T細胞上のHLAの発現は、宿主免疫細胞拒絶反応を迅速に引き起こし得る。したがって、同種異系CAR-Tの宿主拒絶を防止するために、同種異系T細胞上のTCR、MHC及び関連シグナル伝達経路遺伝子をノックアウトするためにZFN、TALEN及びCRISPR/Cas9などの遺伝子編集ツールを使用することは、普遍的なCAR-Tの実現のための重要な工程である。
【0028】
場合により、CAR-T細胞で処置される対象はリンパ球枯渇を受けている。骨髄破壊的リンパ球枯渇は、胸腺摘出及び/又は照射によって達成され得る。骨髄非破壊的リンパ球枯渇は、シクロホスファミド及びフルダラビンによる処置によって達成され得る。オプショナルのリンパ球枯渇の理由は、CAR T細胞の養子移入前の対象のリンパ球プールの減少である。これは、制御性T細胞及び対象の免疫系の競合要素を排除することによって処置有効性を高めることができる(「サイトカインシンク」)。
【0029】
CAR-T療法の原理を図2に示す。患者のT細胞を収集し(例えば、白血球アフェレーシスによって)、増殖させ、遺伝子操作によって単一の腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変する。多数のCAR-T細胞をインビトロで増殖させた後、細胞免疫療法のために患者に戻す。CARは、遺伝子によって発現されるキメラタンパク質として、T細胞シグナル伝達ドメインに結合した抗体(一本鎖抗体scFvなど)の抗原結合ドメインを含む。CAR-T細胞養子免疫の重要な利点は、細胞免疫療法がより正確であることにある。CAR-T細胞養子免疫療法システムは、T細胞の遺伝子改変を使用し、抗原-抗体結合の原理を使用してMHC拘束性抗原提示を回避し、それによって正確な標的化を達成する。
【0030】
現在、CAR-T療法の研究及び開発は、CAR-T細胞の標的化、免疫殺傷、耐久性及び安全性を高めるための様々な改変を通して、CARの構築に主に焦点を当てている。
【0031】
いくつかの実施形態では、癌細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を含む少なくとも1つの細胞の産生のための方法工程は、対象から血液又は癌生検試料を採取すること;試料が特定の癌細胞抗原を発現するかどうかを試験すること、試料から少なくとも1つの細胞を単離及び/又は増殖させること;少なくとも1つの細胞をインビトロ又はエクスビボ細胞培養中で培養すること;少なくとも1つの細胞に、本明細書中に記載のCAR、又は本明細書中に記載のCARをコードする核酸を導入し、それにより、少なくとも1つの細胞を改変すること;少なくとも1つの改変された細胞を増殖させることと;少なくとも1つの改変された細胞を収集すること;改変された細胞をアジュバント、希釈剤又は担体と混合すること;改変された細胞を対象に投与することの、1つ又は複数を含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法は、CAR又はCARをコードする核酸の発現を誘導/増強するために細胞を処理することをさらに含み得る。例えば、核酸は、特定の薬剤による処理に応答して、核酸からのCARの発現の誘導可能な上方制御のための制御エレメントを含み得る。いくつかの実施形態では、処置は、本開示による改変された細胞が投与されたことがある対象への薬剤の投与によるインビボであり得る。いくつかの実施形態では、処置は、エクスビボ又はインビトロでの培養中の細胞への薬剤の投与によるエクスビボ又はインビトロであり得る。
【0033】
当業者は、例えば、Dai et al.,2016 J Nat Cancer Inst 108(7):439を参照することにより、本開示による細胞の養子移入のための適切な試薬及び手順を決定することができる。
【0034】
T細胞の表面上でのCARタンパク質発現の過程において、ウイルスベクターは、DNA合成技術によって細胞内でCARタンパク質を発現することができるDNA配列を合成するために必要である。したがって、CAR DNA配列は、分子クローニング技術によってプラスミドベクターにロードされる。好ましくは、プラスミドベクターは、複数のクローニング部位で遺伝子又はDNA配列を細胞内のタンパク質に発現させる。これらのCARタンパク質が発現された後、それらはT細胞表面に固定される。あるいは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)などのウイルス媒介遺伝子発現技術を使用してもよい。
【0035】
CAR-T技術による癌処置に適した癌細胞抗原(「腫瘍抗原」とも呼ばれる)は、Zarour HM,DeLeo A,Finn OJ,et al.Categories of Tumor Antigens.In:Kufe DW,Pollock RE,Weichselbaum RR,et al.,editors.Holland-Frei Cancer Medicine.6th edition.Hamilton(ON):BC Decker;2003に概説されており、本発明については、これらの抗原が参照され、これらは参照により本明細書に組み込まれる。癌細胞抗原の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:CD19;CD123;CD22;CD30;CD70、CD97、CD171;CS-1;C型レクチン様分子-1、CD33;上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII);ガングリオシドG2(GD2);ガングリオシドGD3;TNF受容体ファミリーメンバー;B細胞成熟抗原;Tn抗原((TnAg)又は(GalNAca-Ser/Thr));前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);Fms-ファイクチロシンキナーゼ3(FFT3);腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;癌胎児性抗原(CEA);癌抗原125(CA125)、上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2;メソテリン;インターロイキン11受容体アルファ(IL-llRa);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21;血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2);ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ);段階特異的胚性抗原-4(SSEA-4);CD20;葉酸受容体アルファ;受容体チロシン-プロテインキナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン1、細胞表面関連(MUC1);上皮増殖因子受容体(EGFR);神経細胞接着分子(NCAM);前立腺酸性ホスファターゼ(PAP);伸長因子2変異(EFF2M);エフリンB2;線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);インスリン様成長因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX);プロテアソーム(Prosome,Macropain)サブユニット、ベータタイプ、9(LMP2);糖タンパク質100(gplOO);切断点クラスター領域(BCR)及びAbelsonマウス白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ1(Abl)(bcr-abl)からなる癌遺伝子ポリペプチド;チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3;トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量-メラノーマ関連抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体ベータ;腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R);クローディン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質共役受容体クラスC群5、メンバーD(GPRC5D);染色体Xオープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);グロボHグリコセラミドの六糖部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3);パンネキシン3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRガンマ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);癌/精巣抗原1(NY-ESO-1);癌/精巣抗原2(LAGE-la);メラノーマ関連抗原1(MAGE-A1);染色体12p上に位置するETS転座変異体遺伝子6(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1);アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(Tie2);メラノーマ癌精巣抗原-1(MAD-CT-1);メラノーマ癌精巣抗原-2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53突然変異体;サバイビン;テロメラーゼ;前立腺癌腫瘍抗原-1、RASファミリー抗原又は突然変異体(k-RAS、N-RAS)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座切断点;アポトーシスのメラノーマ阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17);ペアードボックスタンパク質Pax-3(PAX3);前立腺特異的抗原(PSA)、アンドロゲン受容体;サイクリンBl;v-mycトリ骨髄症トマトsisウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);シトクロムP450 1B1(CYP1B1);T細胞3(SART3)によって認識されるCCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様扁平上皮癌抗原;ペアードボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(FCK);キナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫、X切断点2(SSX2);終末糖化産物(RAGE-1)の受容体;腎臓ユビキタス1(RU1);腎臓ユビキタス2(RU2);レグマイン;ヒトパピローマウイルスE6(HPV E6);ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7);サイクリン依存性キナーゼインヒビターp16INK4a;腸管カルボキシルエステラーゼ;熱ショックタンパク質70-2変異(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体(FCAR又はCD89)のFc断片;白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);MSIフレームシフト突然変異体(例えば、国際公開第2014/090265号で言及されているもの)、Fc受容体様5(FCRL5);又は免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLL1)。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗原は、メソテリン、EGFRvIII、GD2、Tn抗原、PSMA、PSA、CD70、CD97、TAG72、CD44v6、CEA、CA125、EPCAM、KIT、IL-13Ra2、レグマン、GD3、CD171、IL-1Ra、PSCA、MAD-CT-1、MAD-CT-2、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、葉酸受容体アルファ、ERBB(例えば、ERBB2)、Her2/neu、MUC1、EGFR、NCAM、Ephrin B2、CAIX、LMP2、sLe、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、FAP、レグマイン、HPV E6又はE7、p16INK4a、ML-IAP、CLDN6、TSHR、GPRC5D、ALK、ポリシアル酸、Fos関連抗原、好中球エラスターゼ、TRP-2、CYP1B1、精子タンパク質17、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン、AFP、サイログロブリン、PRAC1、globoH、RAGE1、MN-CA IX、MSIフレームシフト突然変異体、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、腸管カルボキシルエステラーゼ、mut hsp 70-2、NA-17、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、NY-ESO-1、GPR20、Ly6k、OR51E2、TARP、又はGFRa4から選択される。
【0037】
CAR-T療法の例並びにCAR及びT細胞を産生及び調製する方法は、Katz et al.,Cancer Gene Therapy(2020),27:341-355,Hege et al.,Journal for ImmunoTherapy of Cancer(2017),5:22及びKoneru et al.,Journal of Translational Medicine(2015),13:102に記載されている。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
腫瘍溶解性ウイルス
「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、パルボウイルス科由来のウイルスを意味し、特に「パルボウイルス」、より具体的にはパルボウイルスH-1、又はLuIII、マウス微小ウイルス(MMV)、マウスパルボウイルス(MPV)、ラット微小ウイルス(RMV)、ラットパルボウイルス(RPV)若しくはラットウイルス(RV)から選択される関連する齧歯類パルボウイルスを意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、腫瘍溶解性ウイルスは、野生型又はその改変された複製可能な誘導体、並びにそのようなウイルス又は誘導体に基づく関連ウイルス又はベクターを含む。適切な腫瘍溶解性ウイルス、誘導体など、並びに前記ウイルスを能動的に産生するために使用することができ、治療に有用な細胞は、過度の経験的努力なしに、本明細書の開示に基づいて当技術分野の技術範囲内で容易に決定可能である。
【0040】
パルボウイルスH-1(H-1PV)は、パルボウイルス科に属し、5.1kb長の一本鎖DNAゲノムを含有する小さい(直径約25nm)、エンベロープのない正二十面体粒子である。H-1PVのゲノム構成は、2つのプロモーター(P4初期プロモーター及びP38後期プロモーター)の制御下にある2つの転写単位からなる。P4は、非構造(NS)タンパク質(NS1及びNS2)をコードする遺伝子及びカプシド(VP)タンパク質(VP1、VP2、VP3)をコードするP38の発現を調節する。ウイルスは、急速に分裂する癌細胞において優先的に増殖する。この腫瘍選択性は、癌性細胞によるウイルスのより良好な取り込みに基づくものではなく、むしろ癌細胞がウイルスDNA複製に必要なサイクリンA、E2F又はCREB/ATFなどの因子を過剰発現するという事実に起因する。さらに、癌細胞は、ウイルス増殖に有利な効率的な抗ウイルス免疫応答を開始する能力が欠損していることが多い。ウイルスは、複数の細胞死経路を活性化することが知られている。細胞型及び増殖条件に応じて、H-1PVは、アポトーシス、壊死又はカテプシンB依存性細胞死を誘導し得る。主要な非構造タンパク質NS1は、ウイルスDNA複製、ウイルス遺伝子発現及び細胞傷害性のマスターレギュレーターである。NS1の唯一の発現は、ウイルス全体と同様に、活性酸素種の蓄積及びDNA損傷を介して細胞周期停止、アポトーシス及び細胞溶解を誘導するのに十分である。
【0041】
処置の詳細
好ましくは、本発明の医薬製剤において、腫瘍溶解性ウイルス、すなわちパルボウイルスH-1、及びキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された免疫細胞(例えば、T細胞)は、有効量で存在し、薬学的に許容され得る担体と組み合わされる。
【0042】
本発明によれば、「医薬組み合わせ」、「医薬組成物」又は「医薬製剤」という用語は互換的に使用される。
【0043】
「個体」及び「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。それらは、疾患又は障害(例えば、癌)に罹患し得る、又は罹患しやすいが、疾患又は障害を有し得る、又は有し得ないヒト又は別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ又は霊長類)を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記しない限り、「個体」及び「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって成人、高齢者、小児、及び新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」又は「対象」は「患者」である。「患者」という用語は、処置のための個体又は対象、特に疾患個体又は対象を意味する。
【0044】
本開示の一実施形態では、目的は、腫瘍抗原を発現する癌細胞などの抗原を発現する疾患細胞に対する免疫応答を提供すること、及び腫瘍抗原などの抗原を発現する細胞が関与する癌疾患などの疾患を処置することである。治療的又は部分的若しくは完全に保護的であり得る抗原に対する免疫応答が誘発され得る。本明細書に記載の医薬組成物は、免疫応答を誘導又は増強するために適用可能である。したがって、本明細書中に記載される医薬組成物は、抗原が関与する疾患の予防的処置及び/又は治療的処置において有用である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、抗原又は抗原を発現する細胞に対する統合された身体応答を指し、細胞性免疫応答及び/又は体液性免疫応答を指す。細胞性免疫応答には、限定されないが、抗原を発現する細胞に対する細胞性応答が含まれる。そのような細胞は、その細胞表面上の抗原の発現によって、又はクラスI若しくはクラスIIのMHC分子による抗原の提示によって特徴付けられ得る。細胞応答は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たすヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも呼ばれる)又は感染細胞若しくは癌細胞においてアポトーシスを誘導するキラー細胞(細胞傷害性T細胞、CD8+T細胞、又はCTLとも呼ばれる)として分類され得るTリンパ球に関する。一実施形態では、本開示の医薬組成物の投与は、1つ又は複数の腫瘍抗原を発現する癌細胞に対する抗腫瘍CD8+T細胞応答の刺激を含む。
【0046】
本開示は、保護的、防止的、予防的及び/又は治療的であり得る免疫応答を企図する。本明細書で使用される場合、「免疫応答を誘導する(induces[又はinducing])」は、誘導前に特定の抗原に対する免疫応答が存在しなかったことを示し得るか、又は誘導前に特定の抗原に対する基礎レベルの免疫応答があり、誘導後に増強されたことを示し得る。したがって、「免疫応答を誘導する(induces[又はinducing])」は、「免疫応答を増強する(enhances[又はenhancing])」を含む。
【0047】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導又は増強することによる疾患又は症状の処置に関する。
【0048】
「ワクチン接種」又は「免疫化」という用語は、例えば治療上又は予防上の理由で、免疫応答を誘導する目的で抗原を個体に投与するプロセスを表す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト、又は他の対象において所望の効果を生じる物質を意味すると理解される。
【0050】
本明細書で使用される「処置する」という用語及びその派生語は、治療的療法を意味する。特定の症状に関連して、処置することは、(1)症状又は症状の生物学的徴候の1つ若しくは複数を改善すること、(2)(a)症状をもたらす若しくは症状の原因となる生物学的カスケードの1つ若しくは複数の点、又は(b)症状の生物学的徴候の1つ若しくは複数を干渉すること、(3)症状に関連する症候、効果若しくは副作用の1つ若しくは複数を緩和すること、又は(4)症状又は症状の生物学的徴候の1つ若しくは複数の進行を遅らせることを意味する。
【0051】
「薬学的有効量」又は「治療有効量」という用語は、単独で又はさらなる用量と共に所望の反応又は所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の処置の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅らせること、特に疾患の進行を中断又は逆転させることを含む。疾患の処置における所望の反応はまた、前記疾患又は前記症状の発症の遅延又は発症の予防であり得る。本明細書に記載される組成物の有効量は、処置される症状、疾患の重症度、年齢、生理学的症状、サイズ及び体重を含む患者の個々のパラメータ、処置期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路及び同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載される組成物の投与される用量は、様々なそのようなパラメータに依存し得る。患者における反応が初期用量で不十分である場合、より高い用量(又は異なる、より局所的な投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用することができる。本明細書で使用される場合、「有効量」は、例えば研究者又は臨床医によって求められている組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する医薬製剤の成分又は構成要素のいずれかの量を意味する。さらに、「治療有効量」という用語は、そのような量を受けていない対応する対象と比較して、疾患、障害又は副作用の改善された処置、治癒、予防又は改善をもたらす任意の量を意味する。この用語はまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増強するのに有効な量を含む。これらの疾患又は障害を処置及び/又は予防するのに有用な「有効用量」は、当業者に公知の方法を使用して決定することができる。
【0052】
治療有効量の本発明の組み合わせの投与は、治療有効量の成分化合物の個々の投与と比較した場合、組み合わせが以下の改善された特性の1つ又は複数を提供するという点で、個々の成分化合物よりも有利である:i)最も活性な単剤よりも高い抗癌効果、ii)相乗的又は非常に相乗的な抗癌活性、iii)副作用プロファイルを低減した抗癌活性の増強を提供する投与プロトコル、iv)毒性効果、プロファイルの低減、v)治療ウィンドウの増大、又はvi)構成要素化合物の一方又は両方のバイオアベイラビリティの増大。
【0053】
「薬学的に許容され得る」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、投与される患者に対して毒性でない任意の担体を包含することを意味する。適切な医薬担体の例は当技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。そのような担体は、従来の方法によって製剤化することができ、有効用量で対象に投与することができる。追加の薬学的に適合性の担体は、ゲル、生体吸着性マトリックス材料、治療剤を含有する埋め込み要素、又は任意の他の適切なビヒクル、送達若しくは分注手段若しくは材料(複数可)を含むことができる。
【0054】
本発明の医薬組成物は、塩、緩衝剤、保存剤、及び場合により他の治療剤を含有し得る。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容され得る担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む。
【0055】
本開示の医薬組成物に使用するのに適した保存剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベン及びチメロサールが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の医薬組成物中に存在し得るが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例としては、限定されないが、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤又は着色剤が挙げられる。
【0057】
「希釈剤」という用語は、希釈する薬剤及び/又は薄める薬剤に関する。さらに、「希釈剤」という用語は、流体、液体又は固体の懸濁液及び/又は混合媒体のいずれか1つ又は複数を含む。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。
【0058】
「担体」という用語は、医薬組成物の投与を容易にする、増強する、又は可能にするために活性の構成要素が組み合わされた、天然、合成、有機、無機であり得る構成要素を指す。本明細書で使用される担体は、対象への投与に適した1つ又は複数の適合性の固体又は液体充填剤、希釈剤又は封入物質であり得る。適切な担体としては、限定されないが、滅菌水、リンゲル、乳酸リンゲル、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、及び特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが挙げられる。一実施形態では、本開示の医薬組成物は等張食塩水を含む。
【0059】
治療的使用のための薬学的に許容され得る担体、賦形剤又は希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。
【0060】
医薬担体、賦形剤又は希釈剤は、意図された投与経路及び標準的な製薬慣行に関して選択することができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、細胞又は組織の異常な成長を指し、悪性新生物成長を含むと理解される。「新生物性」という用語は、新生物を意味するか、新生物に関連する。いくつかの実施形態では、癌は、固形腫瘍、特に肝臓癌(例えば、肝細胞癌腫)、胃癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、結腸直腸癌(例えば、盲腸、虫垂、上行結腸、下行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸癌腫又は肛門癌腫の(アデノ)癌腫)、肺癌(例えば、肺扁平上皮癌、非小細胞肺癌(NSCLS)、小細胞肺癌(SCLC))、軟部組織肉腫、骨肉腫、線維肉腫、皮膚癌(例えば悪性黒色腫)、精巣癌、乳癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、脳癌(例えば、神経膠腫:上衣腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、脳幹神経膠腫、乏突起星状細胞腫(例えば、多形性膠芽腫、髄芽腫))、膀胱癌、腸癌、前立腺癌、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫)、膵臓癌(例えば、膵管腺癌)、胸膜中皮腫、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、鼻咽頭癌腫(NPC)又は中咽頭癌腫(OPC)である。「癌」という用語はまた、様々な器官における言及された腫瘍の転移も包含する。さらに好ましい実施形態では、処置される腫瘍は再発性腫瘍である。本発明の医薬製剤の特定の利点は、癌始原幹細胞でさえ首尾よく処置することができることである。これは、腫瘍の再発及び転移形成の回避に関してプラスの効果を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、癌は血液がん、特に急性又は慢性白血病又はリンパ腫である。いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、又は慢性リンパ性白血病(CLL)から選択される。いくつかの実施形態では、リンパ腫は非ホジキンリンパ腫である。いくつかの実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫又はバーキットリンパ腫である。
【0063】
化合物の投与は、異なる全身的又は局所的方法を通して、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、腫瘍内、経鼻又は皮内投与によって達成され得る。投与経路は、当然ながら、治療の種類及び医薬組成物に含まれる化合物の種類に依存する。ウイルス及びCAR-Tの投薬レジメンは、患者のデータ、所見及び他の臨床的要因(例えば、患者のサイズ、体表面積、年齢、性別、特定のウイルス、投与される特定の阻害剤など、投与の時間及び経路、腫瘍の種類及び特徴、患者の全般的な健康状態、並びに患者が受けている他の薬物療法を含む)に基づいて主治医によって当技術分野において容易に決定可能である。本発明の併用療法のための投薬レジメン(本明細書では投与レジメンとも呼ばれる)の選択は、実体の血清又は組織代謝回転率、症候のレベル、実体の免疫原性、及び処置されている個体における標的細胞、組織又は器官の利用可能性を含むいくつかの因子に依存する。好ましくは、投薬レジメンは、許容レベルの副作用と一致して、患者に送達される各治療剤の量を最大化する。したがって、組み合わせにおける各治療剤の投与量及び投与頻度は、部分的には、特定の治療剤、処置される癌の重症度、及び患者の特徴に依存する。抗体、サイトカイン及び小分子の適切な用量を選択する指針が利用可能である。例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd.Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1193)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcek Dekker,New York,NY;Beart et al,(2003)New Engl.J.Med.348:601-608;Milgrom et al.(1999)New Engl.J.Med 341:1966-1973;Slamon et al.(2001)New Engl.J.Med.344:783-792;Beniaminovitz et al.(2000)New Engl.J.Med.342:613-619;Ghosh et al.(2003)New Engl.J.Med.348:24-32;Lipsky et al.(2000)New Engl.J.Med.343;1594-1602;Physicians`Desk Reference 2003(Physicians`Desk Reference,57th ed);Medical Economics Company;ISBN;1563634457;57th edition(November 2002)を参照のこと。適切な投与レジメンの決定は、例えば、処置に影響を及ぼすか又は処置に影響を及ぼすと予測される当技術分野で公知の又は疑われるパラメータ又は因子を使用して臨床医によって行われ得、例えば、患者の病歴(例えば、以前の治療)、処置される癌の種類及び病期、並びに併用療法における1つ又は複数の治療剤に対する応答のバイオマーカーに依存する。
【0064】
本発明によるCAR細胞と組み合わせたウイルスは、血液系を透過する能力を有する感染性ウイルス粒子を含むので、処置は、ウイルスの静脈内注射によって実施又は少なくとも開始することができる。長期間の静脈内処置は、ウイルスに対する中和抗体の形成の結果として非効率的になりやすい可能性があるので、初期レジメン静脈内ウイルス投与後に異なる投与様式を採用することができるか、又はそのような異なる投与技術、例えば腫瘍内ウイルス投与を、ウイルス処置の全過程にわたって代替的に使用することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、投与は、静脈内投与によって処置の全過程を通して行われる。
【0065】
別の具体的な投与技術として、ウイルス(ウイルス、ベクター及び/又は細胞剤)を、患者に埋め込まれた供給源から患者に投与することができる。例えば、腫瘍除去中又は別の手順によって患者に設置された小さな皮下リザーバ(リッカムリザーバ)に、例えばシリコーン又は他の生体適合性材料のカテーテルを接続して、パルボウイルス組成物をさらなる外科的介入なしに様々な時点で局所的に注射することを可能にすることができる。ウイルス又は由来ベクターは、定位手術技術又はナビゲーション標的化技術によって腫瘍に注射することもできる。
【0066】
ウイルスの投与はまた、適切なポンプシステム、例えば蠕動注入ポンプ又は対流強化送達(CED)ポンプを使用して、移植されたカテーテルを通して低流速でウイルス粒子又はウイルス粒子を含有する流体を連続注入することによって行うことができる。
【0067】
ウイルス併用部分のさらに別の投与方法は、パルボウイルスを所望の癌組織に分注するように構築及び設計された移植物品からのものである。例えば、ウイルス、特にパルボウイルスH-1が含浸されたウェハを使用することができ、ウェハは、外科的腫瘍除去の終了時に切除腔の縁部に取り付けられる。このような治療介入では、複数のウェハを使用することができる。ウイルス又はウイルスベースのベクターを能動的に産生する細胞は、腫瘍除去後に腫瘍又は腫瘍腔に注射することができる。
【0068】
CAR-T細胞及びCAR-T細胞組成物は、適切な投与スケジュールに従って投与することができる。特定の実施形態では、CAR T細胞は1回投与され、その後の用量は臨床基準に依存する。個体が応答しないか又は部分的にしか応答しない場合、前記患者は、所望の臨床応答が観察されるまで、2回目、3回目又は4回目に投与されるCAR-T細胞組成物を有することができる。CAR-T細胞の投薬量は、一般に、少なくとも1x10個の細胞を含むが、5x10個を超えない細胞を含む。細胞は、CAR構築物で形質導入された個体の生存PBMCの総量に基づいて投与することができる。特定の実施形態では、単一投与量は、100万個の形質導入PBMC~1億個の形質導入PBMCを含む。
【0069】
パルボウイルスは、適切な投与スケジュールに従って投与することができる。特定の実施形態では、ウイルスは1回投与され、その後の用量は臨床基準に依存する。個体が応答しないか又は部分的にしか応答しない場合、前記患者は、所望の臨床応答が観察されるまで、2回目、3回目又は4回目の投与を行うことができる。パルボウイルスの投薬量は、一般に、少なくとも1x10 pfuを含むが、5x1011 pfuを超えない細胞を含む。好ましくは、1x10 pfu~5x1010 pfuの投与量が投与される。
【0070】
それはまた、安全性を高め、副作用を低減及び/又は回避しながら抗癌効果を維持又はさらには増強する、より低い治療用量でのウイルス及び/又はCAR細胞の臨床使用を可能にし得る。ウイルスとCAR細胞との間の強い相乗効果を考慮して、治療用量の減少を予測することが可能であり、例えば、以前に使用された単一構成要素用量の半分又は3分の1が所望の治療効果を維持している。用量が少ないことを考慮すると、(重度の)副作用は低減又はさらには回避され得る。
【0071】
パルボウイルスの場合、感染効果は腫瘍細胞を死滅させるが、正常細胞に害を及ぼさず、そのような感染は、例えば、有害な神経学的又は他の副作用なしに腫瘍特異的治療を行うために、適切なパルボウイルス、例えばパルボウイルスH-1、又はそのようなウイルスに基づく関連ウイルス若しくはベクターの静脈内又は腫瘍内使用によって行うことができる。
【0072】
本発明の併用療法は、典型的には、触診によって、又はMRI、超音波、若しくはCATスキャンなどの当技術分野で周知のイメージング技術によって見出されるのに十分大きい腫瘍を処置するために使用される。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の併用療法を使用して、少なくとも約200mm、300mm、400mm、500mm、750mm、又は最大1000mmの寸法を有する進行期腫瘍を処置する。
【0073】
本発明の併用療法は、腫瘍を除去するために手術の前又は後に使用され得、化学療法又は放射線療法の前、間又は後に使用され得る。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態では、処置は、他の治療的又は予防的介入、例えば化学療法、免疫療法、放射線療法、外科手術、ワクチン接種及び/又はホルモン療法をさらに含み得る。そのような他の治療的又は予防的介入は、本開示に包含される治療の前、間及び/又は後に行われてもよく、他の治療的又は予防的介入の送達は、本開示の治療とは異なる投与経路を介して行われてもよい。化学療法及び放射線療法はそれぞれ、治療剤又は電離放射線(例えば、X線又はg線を使用する放射線療法)による癌の処置を指す。
【0075】
いくつかの実施形態では、併用療法における治療剤の少なくとも1つは、薬剤が同じ癌を処置するための単剤療法として使用されるときに典型的に用いられるのと同じ投薬レジメン(処置の用量、頻度及び期間)を用いて投与される。他の実施形態では、患者は、併用療法において、薬剤が単剤療法として使用される場合よりも少ない総量の少なくとも1つの治療剤、例えば、より少ない用量、より少ない頻度の用量、及び/又はより短い処置期間を受ける。
【0076】
追加の治療剤は、例えば、化学療法剤、生物療法剤(制限されないが、例えばVEGF、EGFR、Her2/neuに対する抗体;増殖因子受容体、CD20、CD40、CD40L、CTLA-4、OX-40 4-1BB及びICOS;抗体断片を含む)、核酸(DNA又はRNA)、免疫原性剤(例えば、弱毒化癌性細胞、腫瘍抗原、腫瘍由来抗原又は核酸でパルスされた樹状細胞などの抗原提示細胞)、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IFN-α、IFN-γ、GM-CSF)、及び免疫刺激性サイトカイン(制限されないがGM-CSFなど)をコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞又はチェックポイント阻害剤(制限されないが、抗PD1抗体又は抗PD-L1抗体、例えばニボリズマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、アベルマブなど)であり得る。
【0077】
化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、ブスルファン、カンプトテシン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、抗生物質、ブレオマイシン、カミノマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、5-フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート、シタラビン、白金類似体(シスプラチン及びカルボプラチンなど);ビンブラスチン、白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド、ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン、キセロダ;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン又はアロマターゼ阻害剤が挙げられる。
【0078】
本発明はまた、癌を処置するための(a)治療用製剤(複数可)又は医薬組成物(複数可)又は組み合わせを調製するための、(a)腫瘍溶解性ウイルス(特にパルボウイルスH-1)及び(b)キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された免疫細胞(特にT細胞)の使用に関する。
【0079】
(a)及び(b)の投与様式は、同時又は連続的であり得、(a)及び(b)を連続的又は別々に投与することが好ましい。これは、(a)及び(b)が、同時に又は一定の時間差で投与されるように、一緒に摂取されるための単一の単位剤形で、又は別個の実体として(例えば別々の容器内で)提供され得ることを意味する。この時間差は、1時間~1週間、好ましくは12時間~3日間、最も好ましくは24~60時間であり得る。また、CAR細胞とは別の投与方法でウイルスを投与することも可能である。これに関して、ウイルス又はCAR細胞のいずれかを腫瘍内及び他方を全身に投与することが有利であり得る。特定の好ましい実施形態では、ウイルスは静脈内投与され、CAR細胞は腫瘍内投与される。好ましくは、ウイルス及びCAR細胞は別々の化合物として投与される。2つの薬剤を用いた併用処置も可能である。
【0080】
本発明の併用療法における各治療剤は、単独で、又は治療剤及び1つ又は複数の薬学的に許容され得る担体、賦形剤及び希釈剤を含む医薬(本明細書では「医薬組成物」又は「医薬製剤」とも呼ばれる)中で、上述の標準的な製薬実務に従った量で投与され得る。本発明の併用療法における各治療剤は、任意の順序で同時、同時的又は連続的に投与され得る。
【0081】
同時投与とは、一緒に、例えば薬剤(すなわち、複合調製物)を含有する医薬組成物として、又は互いに直後に、場合により同じ投与経路を介して、例えば同じ動脈、静脈又は他の血管に薬剤を投与することを指す。
【0082】
連続的な投与とは、1つ又は複数の薬剤を投与した後、所与の時間間隔の後に別の薬剤を別々に投与することを指す。連続的な投与は、併用療法における治療剤が異なる剤形(固体/液体)であり、及び/又は異なる投与スケジュールで投与される場合、例えば、1つが少なくとも毎日投与され、生物学的治療薬がより少ない頻度で、例えば、週に1回、2週間に1回、又は3週間に1回投与される場合に特に有用である。時間間隔は、時間、日、週又は月を含む任意の時間間隔であってもよい。いくつかの実施形態では、連続的な投与とは、少なくとも10分、30分、1時間、6時間、8時間、12時間、24時間、36時間、48時間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、6週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月又は6ヶ月のうちの1つの時間間隔によって隔てられる投与のことを指す。好ましい実施形態では、パルボウイルスが最初に、すなわちCAR-T細胞の投与前に一定の時間差で与えられる。この時間差は、少なくとも10時間であってもよいが、4日間であってもよく、好ましくは18~72時間、最も好ましくは24~60時間である。2つの薬剤が同じ経路によって投与される必要はないが、いくつかの実施形態ではそうである。
【0083】
本明細書に記載のCAR細胞及び腫瘍溶解性ウイルスは、第1の容器及び第2の容器並びに添付文書を含むキットとして提供され得る。第1の容器は、少なくとも1つの用量のCAR細胞を含有し、第2の容器は、少なくとも1つの用量の腫瘍溶解性ウイルスを含有し、添付文書又はラベルは、治療用調製物を用いて癌について患者を処置するための説明書を含む。第1及び第2の容器は、同じ又は異なる形状(例えば、バイアル、シリンジ及びブール(booles))及び/又は材料(例えば、プラスチック又はガラス)から構成されてもよい。キットは、希釈剤、フィルター、IVバッグ及びライン、針及びシリンジなど、調製物の投与に有用であり得る他の材料をさらに含み得る。
【0084】
本発明では、腫瘍溶解性ウイルスH-1PV及びCAR細胞の併用が固形腫瘍に対する有効なアプローチであり得ることが初めて示された。
【0085】
理論に縛られる意図はないが、前述のように、腫瘍は免疫系による攻撃から隠れる。多くの固形腫瘍は、活性化された免疫細胞が腫瘍に侵入することを不可能にする微小環境を有するので、これは腫瘍に対する身体の免疫寛容をもたらす。腫瘍へのこの浸潤は、腫瘍を攻撃し、その微小環境を変化させる腫瘍溶解性ウイルス、特にパルボウイルス、より具体的にはパルボウイルスH-1を使用することによって現在可能になっている。換言すれば、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解を通して腫瘍を「裸」にすることができ、CAR-T細胞は、腫瘍への浸潤を開始することができる。腫瘍溶解性ウイルスは、炎症促進性及び遊走促進性のサイトカイン及びケモカインを刺激するその能力のために、成功した免疫応答のためのドアオープナーとして見られ得る(図23)。この概念では、腫瘍溶解性ウイルス治療が非免疫原性腫瘍を免疫原性腫瘍に変えるので、CART-T処置が過去に失敗した固形腫瘍も処置することが可能であるはずである。一般原理を考慮すると、これは、腫瘍微小環境を変化させる限り任意の腫瘍溶解性ウイルスで、及び任意の細胞ベースの治療で機能する。これは、疾患再発の予防における長期効果をもたらし得、潜在的には最初の腫瘍溶解に加わる。効果の組み合わせは、特にウイルスによる以前の治療後に、腫瘍を免疫系に対してより感受性にする。
【0086】
腫瘍の浸潤縁は、免疫抑制細胞及びT細胞を含む多くの異なる免疫細胞サブタイプを伴うT細胞誘引ケモカイン及び骨髄細胞関連因子によって支配される高度に特異的な領域として発見されている(Halama et al.,Cancer Cell 29:587-601(2016);国際公開第2016/066634号)。そのような別個の微小環境は動物モデルで再現することが困難であるので(Ellis and Fidler,Nat.Med.16:974-975(2010))、本発明者らは、T細胞浸潤及び腫瘍患者の元の環境における位置決めを研究するためのエクスビボ細胞遊走分析モデルを確立した。モデルの実験設計を図1に示す。結腸直腸癌肝転移(CRC-LM)の使用は、例示として理解されなければならない。原理は、いずれの腫瘍組織についても同じである。
【0087】
したがって、本出願では、T細胞浸潤を研究するためのエクスビボ細胞遊走分析を実施することができるように、腫瘍患者から採取された試料の元の環境における別個の微小環境を再現することができる外植片モデル(図1)において組み合わせ効果の概念実証が行われている。本出願では、係合するCARは、腫瘍環境を活性化及び調節することが示されており、このことは、TH1サイトカインの増加及びより多くの遊走促進性ケモカインから見ることができる。さらに、トニックT細胞刺激インターロイキンの上方制御(長期の活性化及び分化開始)が見られている。試験された腫瘍試料に関連する癌細胞抗原を保有するCAR(例えばCEA<->結腸直腸癌;CA-125<->卵巣癌腫)は、試験された腫瘍試料に関連しない癌細胞抗原を保有する「mock-CAR」と比較して、劇的に異なるサイトカイン環境を産生する(図9図10図11図12図16図17図20図21図22を参照)。したがって、CEA-CAR対mock-CARの明確な特徴が認識されており、これは、特異的CAR及びそれらの活性化が明確な抗腫瘍環境をもたらすことを意味する。本出願では、卵巣癌モデルにおけるmock-CARとしてCEA-CARを使用し、CRC-LM癌モデルにおけるmock-CARとしてCA-125CARを使用した。パルボウイルスH-1を添加したCARと添加しなかったCARとの間のサイトカイン調節を比較すると、パルボウイルスを添加すると、T細胞活性化及び遊走の増強だけでなく、GM-CSF、IL-10、CXCL9、CXCL10(IP-10)、IL-5及びIL-6を含む抗原提示ももたらされることが明確に示されている(図13)。これは、TH1型サイトカインの大量の増加、遊走促進性ケモカインの大量の上方制御及びトニックT細胞刺激性インターロイキンの上方制御(長期の活性化及び分化開始)が起こることを意味する。
【0088】
さらに、パルボウイルスH-1が存在すると、腫瘍組織の深部浸潤に大きな差が生じることが示されている(図6図7図8図14図15図18図19)。したがって、要約すると、パルボウイルスH-1の添加は、T細胞の浸潤を有意に改善する。特定のCAR改変T細胞の浸潤が増強され、単純なT細胞浸潤に取って代わる。浸潤している特異的CAR-T細胞が活性化され、さらなる浸潤のためのTH1サイトカイン及びケモカインを産生し、これは、CARが腫瘍に係合することに起因する可能性が最も高い。この効果は、腫瘍と係合しないmock-CARが使用される場合には示されない。
【0089】
「約(about)」という用語は、「およそ(approximately)」又は「ほぼ(nearly)」を意味し、本明細書に記載の数値又は範囲の文脈では、一実施形態では、列挙又は特許請求される数値又は範囲の±20%、±10%、±5%、又は±3%を意味する。
【0090】
本開示を説明する文脈で(特に特許請求の範囲の文脈で)使用される用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の言及は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る各別個の値を個別に参照する簡略方法として役立つことを意図している。本明細書に別段の指示がない限り、各個々の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例又は例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図しており、特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる言語も、本開示の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0091】
特に明記しない限り、用語「含む(comprising)」は、本明細書の文脈において、「含む」によって導入されるリストのメンバーに加えて、さらなるメンバーが場合により存在し得ることを示すために使用される。しかしながら、本開示の特定の実施形態として、「含む(comprising)」という用語は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含することが企図され、すなわち、この実施形態の目的については、「含む(comprising)」は、「からなる(consisting of)」の意味を有すると理解されるべきである。
【0092】
さらに、図面、材料、方法、及び例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。例えば、(a)、(b)、(i)などの見出し、小見出し、又は番号若しくは文字が付された要素は、単に読みやすくするために提示されている。本明細書における見出し又は番号若しくは文字が付された要素の使用は、工程若しくは要素がアルファベット順に実行されることを必要とせず、又は工程若しくは要素が必ずしも互いに別個であることを必要としない。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0093】
図及び以下の例において、「Parvoryx」は、野生型パルボウイルスH-1を含有する投与可能な製剤を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】ヒトCRC肝転移エクスビボ細胞遊走分析モデル
図2】CAR-T療法の原理
図3】CAR細胞の作製
図4】CEA標的構造陽性を確認する免疫組織化学
図5】CMFDA標識CAR形質導入患者T細胞を外植片の培地に置き、外植片を24時間後に採取した。その後の蛍光イメージングは、外植片の表面(結腸直腸癌肝転移)が200μmの深さまで浸潤していることを示す(白線)。
図6】ParvOryx(培地中)の投与後のCMFDA標識CEA-CAR形質導入患者T細胞は、200μmの深さを超える増強された大規模浸潤を示す(=白線)。拡大は、結腸直腸癌肝転移組織の内部におけるCMFDA陽性リンパ球を示す。
図7】ParvOryxウイルスの以前の適用の有無と比較した、特異的CEA-CAR形質導入患者T細胞の密度(マンホイットニーのノンパラメトリック試験)。
図8】ParvOryx投与による浸潤の明確な増強能力を示す、特異的CEA-CAR対mock CARの形質導入T細胞浸潤の比較。
図9】特異的CEA-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤についてのわずかな差(マンホイットニーのノンパラメトリック検定)。ParvOryx投与は、CAR特異性とは無関係にT細胞浸潤を増強する。
図10】特異的CAR形質導入T細胞についてのみ特異的TH1様活性化パターンを強調する、特異的CEA-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤組織の間のサイトカインレベル差。
図11】特異的CAR形質導入T細胞についてのみ特異的TH1様活性化パターンを強調する、特異的CEA-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤組織の間のサイトカインレベル差。
図12】特異的CAR形質導入T細胞についてのみ特異的TH1様活性化パターンを強調する、特異的CEA-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤組織の間のサイトカインレベル差。
図13】浸潤した特異的CEA-CAR形質導入T細胞と、併用ParvOryx投与による浸潤した特異的CEA-CAR形質導入T細胞とを比較した組織サイトカインの違いの割合。アスタリスクは、特異的な浸潤依存性サイトカイン調節を示し、特異的なT細胞活性化を示す。
図14】ParvOryx(培地)の投与後のCMFDA標識CA125-CAR形質導入患者T細胞は、卵巣癌において200μmの深さを超える増強された大規模浸潤を示す。上部:パルボウイルスなし;下部:+パルボウイルス。拡大は、卵巣癌組織の内部におけるCMFDA陽性リンパ球を示す(下部の白色矢印)。
図15】ParvOryxウイルスの以前の適用の有無と比較した、特異的CA125-CAR形質導入患者T細胞の密度(マンホイットニーのノンパラメトリック試験)。
図16】特異的CAR形質導入T細胞についてのみ特異的TH1様活性化パターンを強調する、特異的CA125-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤組織の間のサイトカインレベル差。
図17】特異的CAR形質導入T細胞についてのみ、またIL-7のようなシグナルの維持及び分化について、特異的TH1様活性化パターンを強調する、特異的CA125-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤組織の間のサイトカインレベル差。
図18】ParvOryx(培地)の投与後のCMFDA標識CA125-CAR形質導入患者T細胞は、卵巣癌において200μmの深さを超える増強された大規模浸潤を示す。
図19】ParvOryxウイルスの以前の適用の有無と比較した、特異的CA125-CAR形質導入患者T細胞の密度(マンホイットニーのノンパラメトリック試験)。
図20】特異的CAR形質導入T細胞についてのみ特異的TH1様活性化パターンを強調する、特異的CA125-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤組織の間のサイトカインレベル差。
図21】特異的CAR形質導入T細胞についてのみ特異的TH1様活性化パターンを強調する、特異的CA125-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤組織の間のサイトカインレベル差。
図22】特異的CAR形質導入T細胞についてのみ、またIL-5及びIL-7のようなシグナルの維持及び分化について、特異的TH1様活性化パターンを強調する、特異的CA125-CAR対mock-CARの形質導入T細胞浸潤組織の間のサイトカインレベル差。
図23】ParvOryxによって誘導されるサイトカインレベルの変化(未処理対照に対する比として、24時間の処理での3つの卵巣癌外植片について示された平均値)及びCD8 T細胞密度の変化(最後の列)。上記のサイトカインは、他の癌実体(結腸直腸癌の肝転移及び膵臓癌)において見られるものと同一である。
【0095】

患者:
(1)肝転移を伴う大腸癌
・複数の化学療法ラインを有する患者
・CRC肝転移(CRCLM)の切除
・CEA陽性腫瘍細胞
・末梢血サンプリング及びT細胞抽出の成功
・CARトランスフェクション(mock及びCEA特異的CAR)の成功
(2)卵巣癌(進行期)OvCa183
・第1選択化学療法を受けている患者
・腹部腫瘍徴候(OVCA)の切除
・病理報告によるCA125陽性腫瘍細胞
・末梢血サンプリング及びT細胞抽出の成功
・CARトランスフェクション(mock及びCA125特異的CAR)の成功
(3)卵巣癌(進行期)OvCa184
・第1選択化学療法後の患者
・腹部腫瘍徴候(OVCA)の切除
・病理学によって確認されたCA125陽性腫瘍細胞
・末梢血サンプリング及びT細胞抽出の成功
・CARトランスフェクション(mock及びCA125特異的CAR)の成功
【0096】
例1:工場外モデル
組織培養
新鮮な切除腫瘍組織(CRCLM又は卵巣癌)を、手術室から氷上の0.9%食塩水溶液(Sigma-Aldrich)中で実験室に直接移した。鉗子及びメスを使用することによって、各組織をペトリ皿に入れ、等しい割合の浸潤縁を含む小片に分割した。1つの組織片を直接凍結し、対照として保存した。自己T細胞単離のために、隣接組織(例えば、肝臓)の追加片を離した。組織片を96ウェルプレートに入れ、2.9%の7.5%重炭酸ナトリウム溶液及び1%の200mM L-グルタミン溶液(Sigma-Aldrich)を含有するMEM中、37℃及び5%二酸化炭素で滅菌条件下で培養した。必要に応じて、水酸化ナトリウムを用いて培地のpHを7.4に調整した。24~72時間後、組織を採取し、組織包埋化合物(VWR)を含有する小型プラスチックボウル(Sakura Finetek Germany GmbH)に入れ、液体窒素中で直接凍結した。凍結組織をさらに使用するまで-80℃で保存した。
【0097】
T細胞の単離及び標識
自己T細胞の単離のために、およそ0.5cmの新鮮な切除ヒトCRC-LM組織片(利用可能であれば隣接する肝臓)をペトリ皿に入れ、メスで切り刻んだ。剪断した組織をセルストレーナー(40μmメッシュ)上に鉗子で穏やかに加え、RPMI(Sigma-Aldrich)を使用して50mlファルコンチューブに流した。フロースルーを新しい細胞ストレーナーを通して2回目に流し、単離した細胞を細胞培養フラスコ中で1時間、5μM CellTracker(商標)Green CMFDA(Thermo Fisher Scientific)で染色した。Dynabeads Untouched Human T Cells Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して、ネガティブビーズに基づく単離によって非接着性T細胞を単離した。自己CMFDA T細胞を、エクスビボ細胞遊走分析のために組織培養培地に直接再懸濁した。
【0098】
ドナーT細胞を、Ficoll Paque Plus(Sigma-Aldrich)を使用する密度勾配遠心分離によって、健常ドナーの末梢血から得て、その後、細胞培養フラスコにおける非接着細胞の1.5時間の分離及びネガティブビーズに基づくT細胞単離を行った。増殖を刺激するために、単離されたドナーT細胞を、抗ヒトCD3抗体(1:10.000、クローンOKT3、BioLegend)及び毎日の300単位IL-2(PeproTech)の添加を伴うX-vivo 15培地(Biozym)において48時間培養した。T細胞を5μM CMFDAで1時間染色し、10% DMSOを含むFBS(Biochrom)中で凍結保存した。凍結CMFDAドナー細胞を、エクスビボ細胞遊走分析に使用するまで-80℃で保存した。
【0099】
例2:CAR-T細胞の作製
初代T細胞を得るために、3人の健常ドナーからEDTA収集管に50mlの血液を採取した。新鮮な血液を10ml Ficoll(Ficoll Paque(商標)、密度:1.077;GE Healthcare)の層上に十分にピペットで移し、ブレーキをかけずに750xgで30分間遠心分離した。リンパ球を取り出し、PBSで2回洗浄した。細胞数を決定し、CD3T細胞の単離を、ヒトPan T細胞単離キットII(Miltenyi Biotec)を製造者の説明書に従って使用して行った。T細胞の数を選別後に決定し、1x10/ml/cmの細胞を活性化培地(100ng/ml抗CD3抗体(クローン:OKT3;Janssen-Cilag)及び300U/mlインターロイキン-2(ProLeukin(登録商標);Novartis)を含むXVIVO20(Lonza))に37℃で24時間播種した。活性化後、T細胞をPBS中で3回洗浄し、培養培地(XVIVO20;300U/ml IL-2)中でさらにインキュベートした。T細胞の単離から48時間後、スピノキュレーション法を用いてレンチウイルスCAR形質導入を行った。したがって、細胞をRetronectin(登録商標)コーティング24ウェルプレート(16μg/ml Retronectin(登録商標);1x10 CD3細胞/ml/cm)に播種し、CAR遺伝子発現カセットをコードするレンチウイルス粒子(4H11scFv-IgG-28BBz又はSCA431scFV-IgG-28BBz)を10のMOIで添加した。プレートを2000g及び32℃で1.5時間遠心分離し、続いて37℃で24時間インキュベートした。その後、レンチウイルス粒子を含む培地を除去し、培養培地と交換した。最初の細胞選別の72時間後、CAR発現CD3細胞の割合をフローサイトメトリーによって決定した。異なるドナーに対する詳細な情報を以下の表に示す。
【表1】
【0100】
例3:工場外モデルにおける処理
ParvOryx、すなわちH-1PVのGMPグレード調製物を使用した。H-1 PVを組織培養物中に1x10 pfu/mlの濃度で与え、60分後、上記の数のCAR細胞を添加し、さらに60分間インキュベートした。
【0101】
次いで、パルボウイルスH-1及び/又はCAR-T細胞又はmock-CAR-T細胞で処理した外植片を組織学的分析(図4、5、6、8)及び多重タンパク質分析(図10、11、12、16、17)に供した。
図1
図2
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図9
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図23
【手続補正書】
【提出日】2023-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)腫瘍溶解性ウイルスと、(b)癌細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された免疫細胞、特にT細胞とを含む医薬組み合わせであって、前記腫瘍溶解性ウイルスが、パルボウイルスH-1である、医薬組み合わせ。
【請求項2】
前記癌細胞抗原が、メソテリン、EGFRvIII、GD2、Tn抗原、PSMA、PSA、CD70、CD97、TAG72、CD44v6、CEA、CA125、EPCAM、KIT、IL-13Ra2、レグマン、GD3、CD171、IL-llRa、PSCA、MAD-CT-1、MAD-CT-2、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、葉酸受容体アルファ、ERBB(例えば、ERBB2)、Her2/neu、MUC1、EGFR、NCAM、Ephrin B2、CAIX、LMP2、sLe、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、FAP、レグマイン、HPV E6又はE7、p16INK4a、ML-IAP、CLDN6、TSHR、GPRC5D、ALK、ポリシアル酸、Fos関連抗原、好中球エラスターゼ、TRP-2、CYP1B1、精子タンパク質17、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン、AFP、サイログロブリン、PLAC1、globoH、RAGE1、MN-CA IX、MSIフレームシフト突然変異体、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、腸管カルボキシルエステラーゼ、mut hsp 70-2、NA-17、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、NY-ESO-1、GPR20、Ly6k、OR51E2、TARP、又はGFRa4から選択される、請求項1に記載の医薬組み合わせ。
【請求項3】
前記癌細胞抗原がCEA又はCA125である、請求項2に記載の医薬組み合わせ。
【請求項4】
化学療法剤、生物療法剤、免疫原性剤、免疫刺激性サイトカイン、及び免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞から選択される1つ又は複数の追加の治療剤をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組み合わせ。
【請求項5】
癌を処置する方法において使用するための、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組み合わせ。
【請求項6】
前記腫瘍溶解性ウイルスと、癌細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された前記免疫細胞とが、連続的に投与される、請求項5に記載の使用のための医薬組み合わせ。
【請求項7】
前記免疫細胞がT細胞である、請求項5又は6に記載の使用のための医薬組み合わせ。
【請求項8】
前記使用が、固形腫瘍、血液がん及び/又は癌始原幹細胞を処置するためのものである、請求項5~7のいずれかに記載の使用のための医薬組み合わせ。
【請求項9】
前記癌が、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、腎臓癌、頭頸部扁平上皮癌、肺癌、悪性黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、脳癌、子宮頸癌、腎細胞癌又は胃癌である、請求項5~8のいずれかに記載の使用のための医薬組み合わせ。
【請求項10】
前記腫瘍溶解性ウイルス及び/又は前記CAR免疫細胞が腫瘍内投与又は静脈内投与によって投与される、請求項5~9のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
第1の容器、第2の容器及び添付文書を含むキットであって、前記第1の容器が、腫瘍溶解性ウイルスを含有する医薬組成物の少なくとも1つの用量を含み、前記第2の容器が、癌細胞抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変された免疫細胞、好ましくはT細胞の少なくとも1つの用量を含み、前記添付文書が、癌を有する個体を処置するための説明書を含む、キット。
【請求項12】
前記癌が、結腸癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、腎臓癌、頭頸部扁平上皮癌、肺癌、悪性黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、脳癌、子宮頸癌、腎細胞癌又は胃癌である、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
個体における腫瘍抗原陽性細胞の増殖及び/又は活性を阻害する方法であって、前記個体に治療有効量の請求項1~4のいずれかに記載の医薬組み合わせを提供する工程を含む方法。
【請求項14】
前記医薬組み合わせの前記構成要素(a)及び(b)が、腫瘍内投与又は静脈内投与によって個別に提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
腫瘍の微小環境においてTH1型サイトカインを増加させ、遊走促進性ケモカインを上方制御し、トニックT細胞刺激性インターロイキンを上方制御する方法において使用するための腫瘍溶解性ウイルスであって、前記腫瘍溶解性ウイルスが、パルボウイルスH-1である、腫瘍溶解性ウイルス。
【国際調査報告】