(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】真空掃除機において使用する吸引ヘッドにおける塵埃搬送
(51)【国際特許分類】
A47L 9/04 20060101AFI20240507BHJP
A47L 7/00 20060101ALI20240507BHJP
A47L 5/24 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A47L9/04 A
A47L7/00 A
A47L5/24 A
A47L9/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557024
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022056039
(87)【国際公開番号】W WO2022194638
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523393508
【氏名又は名称】ヴェルスニ ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】エスピン フランコ フェルミン
(72)【発明者】
【氏名】ブラダ イペ ベルナルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィト バスティアン ヨハネス
【テーマコード(参考)】
3B061
【Fターム(参考)】
3B061AD03
(57)【要約】
筐体30と、清掃される床面と相互作用する少なくとも1つの回転可能なブラシとを備える吸引ヘッド101において、筐体30の表面32には、ブラシに沿った任意の位置から表面32における出口開口31への塵埃の搬送を容易にする複数の溝35が設けられている。複数の溝35は、出口開口31の対向する両側に位置する、溝35の2つのセット36、37を含む。ブラシの回転軸21を基準とみなすと、溝35のセット36、37のそれぞれは、周方向成分及び軸方向成分を有する溝35を含み、同じ周方向に見て、溝35の軸方向成分の方向は、溝35の2つのセット26、37に関して逆である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空掃除機に適用されるとともに床面上で清掃動作を行う吸引ヘッドであって、前記吸引ヘッドは、
筐体と、
回転軸の周りに回転可能であるように前記筐体内に配置され、清掃される前記床面と相互作用する少なくとも1つのブラシと、
を備え、
前記筐体は、清掃される前記床面に前記ブラシの一部分を露出させるとともに前記ブラシの別の部分を覆い、
前記ブラシに面する前記筐体の表面には、出口開口を通じて前記ブラシが位置する前記筐体のエリアから離れた方向に空気の流れを引き起こす空気吸引源と連通する、当該出口開口が設けられ、
前記ブラシに面する前記筐体の前記表面には複数の溝がさらに設けられ、
前記複数の溝は、前記溝の2つのセットであって、前記ブラシの前記回転軸が延びる方向である長手方向に対向する両側である、前記出口開口の両側に位置する、前記溝の2つのセットを含み、
前記溝の2つのセットのそれぞれは、前記回転軸の周りに周方向成分及び前記長手方向に軸方向成分を有して配向された溝を含み、
前記回転軸の周りの同じ周方向に見て、前記溝の一方のセットの前記溝の前記軸方向成分の方向は、前記溝の他方のセットの前記溝の前記軸方向成分の方向とは逆である、吸引ヘッド。
【請求項2】
前記長手方向において、前記出口開口は、前記ブラシの寸法の一部分のみを覆うように寸法決めされている、請求項1に記載の吸引ヘッド。
【請求項3】
前記長手方向において、前記複数の溝は、前記ブラシのほとんど又はすべてを覆う、請求項1又は2に記載の吸引ヘッド。
【請求項4】
前記ブラシに面する前記筐体の前記表面は、前記周方向に少なくとも180°の角距離に沿って前記ブラシを覆い、前記複数の溝は、前記周方向に前記ブラシに面する前記筐体の前記表面のほとんどを覆う、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項5】
前記溝の前記2つのセットは、前記ブラシの前記回転軸に対して垂直であるとともに前記出口開口と交わる仮想鏡面に対して、鏡面対称である、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項6】
前記溝の前記2つのセットのちの少なくとも一方は、前記回転軸の周りの前記ブラシの回転方向に見て、前記出口開口へ至る、前記ブラシの前記回転軸の周りの螺旋巻線と、前記回転軸の周りの前記ブラシの回転方向に見て、前記出口開口へ至る、前記ブラシの前記回転軸の周りの楕円巻線とのうちの一方のセグメントのように配置されている溝を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項7】
個々の前記溝は、前記長手方向における個々の溝の寸法と前記長手方向における個々の前記溝間の間隔との和よりも大きい距離を長手方向に覆う、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項8】
個々の前記溝は、急峻な鋸歯側面及び浅い鋸歯側面を有する鋸歯幾何学形状を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項9】
個々の前記溝の断面において、前記急峻な鋸歯側面は、前記長手方向に対して垂直な仮想基準面に対して0°~45°の範囲にある角度にあり、及び/又は、前記浅い鋸歯側面は、前記長手方向に対して垂直な仮想基準面に対して45°~85°の範囲にある角度にある、請求項8に記載の吸引ヘッド。
【請求項10】
前記溝の深さは、0.5mm~4mmの範囲にある、請求項1から9のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項11】
前記ブラシに面する前記筐体の前記表面と前記ブラシの作用輪郭との間の距離は、前記ブラシに面する前記筐体の前記表面の、前記溝の外側のエリアにおいて、0mm~2mmの範囲の距離である、請求項1から10のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項12】
前記長手方向における個々の前記溝間の間隔は、ゼロから、前記長手方向における個々の溝の寸法を差し引いた前記周方向における前記溝によって覆われた距離までの間の範囲にある、請求項1から11のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項13】
前記ブラシの作用形状は概して、円周を有する筒の形状である、請求項1から12のいずれか一項に記載の吸引ヘッド。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に吸引ヘッドを備える、湿式真空掃除機であって、前記吸引ヘッドは、清掃される前記床面の少なくとも1つのエリアへの、及び/又は、前記吸引ヘッド内の少なくとも1つのエリアへの液体の供給を可能にする湿潤構成部を有する、湿式真空掃除機。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の吸引ヘッドを備える、コードレス真空掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空掃除機に適用されるとともに床面上で清掃動作を行うように構成された吸引ヘッドであって、吸引ヘッドは、筐体と、回転軸の周りに回転可能であるように筐体内に配置され、清掃される床面と相互作用するように構成されている少なくとも1つのブラシとを備え、筐体は、清掃される床面にブラシの一部分を露出させるとともにブラシの別の部分を覆うように構成されており、ブラシに面する筐体の表面には、出口開口を通じてブラシが位置する筐体のエリアから離れた方向に空気の流れを引き起こすように構成された空気吸引源と連通するように構成されている出口開口が設けられている、吸引ヘッドに関する。
【0002】
さらに、本発明は、上述の吸引ヘッドを備えるコードレス真空掃除機に関する。一実施形態では、上述の吸引ヘッドには、清掃される床面の少なくとも1つのエリアへの、及び/又は、吸引ヘッド内の少なくとも1つのエリアへの液体の供給を可能にするように構成されている湿潤構成部が備わっており、本発明はまた、そのような実施形態による吸引ヘッドを備える湿式真空掃除機に関する。
【背景技術】
【0003】
清掃される床面から塵埃を取り除く真空掃除機が知られている。本文書において使用される「塵埃」という用語は、床面上に存在し得る、ことによるとモップがけなどの別の清掃動作と組み合わせた真空清掃動作の作用を受けて取り除くことができるいかなる汚れも網羅するように理解されたい。これに関する実用的な例は、任意の種類のダスト及び小粒子、また、こぼした飲み物などの濡れたタイプの汚れも含む。清掃される床面の実用的な例は床であり、床は、フローリング床、カーペット床、タイル床などのような、任意の種類のものであってもよい。
【0004】
一般に、真空掃除機は、真空掃除機ヘッド又は吸引ヘッドを有し、真空掃除機ヘッド又は吸引ヘッドは、真空掃除機のうち、清掃される床面から塵埃をピックアップする実際の過程が行われる部分であり、したがって、床面上又は床面の少なくとも近くに置かれる。さらに、真空掃除機は通常、塵埃蓄積エリアを含む本体部分と、真空掃除機の動作中に吸引力が吸引ヘッド内に広く行き渡るように吸引ヘッドに作用するように構成された構成部とを備える。吸引力は、真空掃除機の動作中に床面からピックアップされる塵埃の塵埃蓄積エリアへの搬送を容易にする役目を果たし、塵埃は、吸引ヘッドの筐体における出口開口に通される。吸引力はまた、床面から塵埃をピックアップする実際の過程における機能を有する。他方で、吸引ヘッドには、塵埃をピックアップするために、塵埃を撹拌器として働き得るとともに特に塵埃を床面から移動させ出口開口へ方向付けるのに役立つように構成され得る少なくとも1つの回転可能なブラシなどの、床面と相互作用する少なくとも1つの移動可能な構成要素が備わっている。
【0005】
国際公開第2011/083373(A1)号は、床面から粒子を取り除く掃除装置であって、動作流体の小滴を噴霧する噴霧手段と、柔軟なブラシ要素を有する回転可能なブラシと、粒子を含む空気のような汚れた空気を受容する取り入れ口と、洗浄ユニットとを備える掃除装置を開示している。洗浄ユニットは、空気から動作流体の小滴の少なくとも一部を分離するのに適している。動作時、回転可能なブラシは動作流体によって濡らされる。ブラシは、動作流体の小滴が柔軟なブラシ要素から装置の融合空間へ小滴の噴霧として放出されるような大きさのものであるとともに、そのように放出されるような回転速度で回転される。取り入れ口により受容される汚れた空気は、融合空間により受容され、ブラシ要素から放出された小滴と汚れた空気中の粒子との融合粒子を形成することが可能であり、融合粒子は、融合スペースから洗浄ユニットへ運ばれることが可能である。
【0006】
国際公開第2012/107876(A1)号は、掃除されるべき床面に面する開口側を持つヘッドと、ヘッドにおいて回転可能に配置された、掃除されるべき床面に接触する少なくとも1つのブラシとを備える掃除装置を開示している。少なくとも1つのブラシに複数のブラシ毛が設けられており、これらブラシ毛は極端に軟らかく柔軟性があることが可能である。そのような場合、床面の掃除動作は、床面を擦ることにより実行されるのではなく、ブラシの回転の間に、床面に対するブラシ毛の接触と非接触とを交互に行うことにより実行される。特に、ブラシの1回転の間、ブラシ毛は、汚れた床面から粒子及び/又は液滴を取り除き、ブラシ面が床面に接触せずに完全に広がることができる位置に到達したときに粒子及び/又は液滴を振り捨てる。ブラシが配置されている、掃除装置のヘッドにおいて、粒子及び/又は液滴を受容し、ことによると粒子及び/又は液滴をそれらが集められる空間へ搬送する手段が存在する。掃除装置には、粒子及び/又は液滴がブラシ毛から離されるとそれらを所望の方向に向けるためにヘッドにおいて吸引力を実現するための手段が備わっていてもよい。さらに、ブラシ毛に対する粒子の接着を促進するために、及び/又は、掃除されるべき床面に付加的な洗浄効果を実現するために、掃除装置が回転ブラシに洗浄液を供給するように構成されることが可能である。
【0007】
国際公開第2017/071727(A1)号は、真空抽出領域を持つ筐体と、清掃されるべき面に当てられるように構成された第1のローラ及び第2のローラであって、第1のローラ及び第2のローラのそれぞれは、動作時に回転し面の上を動かされたときに面から屑を持ち上げ、屑を電気掃除機ヘッドの筐体における真空抽出領域に運ぶように構成されている、第1のローラ及び第2のローラとを備える、電気掃除機ヘッドを開示している。真空抽出領域は、出口開口と第1のローラ及び第2のローラとの間に画定される。電気掃除機ヘッドが電気掃除機において使用され、電気掃除機が動作する際、真空抽出領域を通り出口開口へ向かう空気流が形成される。
【0008】
清掃される床面に対して吸引ヘッドが通常の動作位置にある場合に、その床面に対して多少とも平行に延びる回転軸の周りに回転可能である少なくとも1つのブラシを備える吸引ヘッドのコンテキストにおいて、ブラシの回転軸が延在する方向である長手方向における塵埃の位置と関係なく、清掃される床面から塵埃をピックアップすることが望まれることを理解されたい。一般に、以下でブラシの長さと呼ばれる、長手方向におけるブラシの寸法は、吸引ヘッドの吸引口の直径よりもかなり大きい。塵埃が吸引ヘッドに入る位置から出口開口及びもっと先へ搬送されることを確実にすることを意図した一般的な解決策は、吸引チャネルの断面がブラシの(略)全長に沿って延在する細長い外観を持つ吸引ヘッドのデザインを有することを伴う。一般的な解決策は、出口開口の比較的大きな寸法にもかかわらず、吸引ヘッド内に比較的強力な空気流を有することを意図した措置をとることをさらに伴う。この理由のため、一般的な解決策は、電池式真空掃除機、すなわち、電気エネルギーの高効率利用が重要である真空掃除機において使用されるべき吸引ヘッドのコンテキストにおいて好ましくない。そのような真空掃除機の実用的な例は、ますます人気が高まりつつある、いわゆるスティック真空掃除機である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
筐体と、筐体内に配置された少なくとも1つの回転可能なブラシとを備える吸引ヘッドのコンテキストにおいて、本発明の一目的は、制限されたサイズ、すなわち、長手方向に見られるような制限された寸法の吸引チャネルを有すると同時に、ブラシに面する筐体の表面における塵埃蓄積を妥協することなく、当該分野において比較的中程度又は低いものとさえ分類することができる吸引力を加えることの両方の可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に鑑み、本発明は、真空掃除機に適用されるとともに床面上で清掃動作を行うように構成された吸引ヘッドであって、吸引ヘッドは、筐体と、回転軸の周りに回転可能であるように筐体内に配置されており、清掃される床面と相互作用するように構成されている少なくとも1つのブラシとを備え、筐体は、清掃される床面にブラシの一部分を露出させるとともにブラシの別の部分を覆うように構成されており、ブラシに面する筐体の表面には、出口開口を通じてブラシが位置する筐体のエリアから離れた方向に空気の流れを引き起こすように構成された空気吸引源と連通するように構成されている出口開口が設けられており、ブラシに面する筐体の表面には複数の溝がさらに設けられており、複数の溝は、溝の2つのセットであって、ブラシの回転軸が延在する方向である長手方向に対向する両側である、出口開口の両側に位置する、2つのセットを含み、溝の2つのセットのそれぞれは、回転軸の周りに周方向成分及び長手方向に軸方向成分を有して配向された溝を含み、回転軸の周りの同じ周方向に見て、溝の一方のセットの溝の軸方向成分の方向は、他方のセットの溝の軸方向成分の方向とは逆である、吸引ヘッドを提供する。
【0011】
本発明による吸引ヘッドの上記の定義から判断すると、ブラシに面する筐体の表面には、出口開口及び複数の溝が両方とも設けられているということになり、また、複数の溝が、長手方向に見て、出口開口の対向する両側に位置する、溝の2つのセットを含むということになる。特に、溝の2つのセットのそれぞれは、回転軸の周りに周方向成分及び長手方向に軸方向成分を有して配向された溝を含む。回転軸の周りの同じ周方向に見て、溝の一方のセットの溝の軸方向成分の方向は、他方のセットの溝の軸方向成分の方向とは逆である。したがって、溝の2つのセットは、その軸方向構成に関する限り、互いと対向しているものとして分類される。明確にするため、溝の配向の軸方向成分は、示されるように、長手方向における成分であることに留意されたい。このことは、ゼロの軸方向成分を有して配向された溝が、長手方向に対して垂直である仮想面内に延在する溝、すなわち、回転軸の周りに傾きなしに延在する溝であることを意味する。さらに、明確にするために、吸引ヘッドが1つよりも多くのブラシを備え、複数の溝がブラシのそれぞれを覆うようにデザインされている場合、複数の溝は、ブラシごとに溝の2つのセットを含むことに留意されたい。
【0012】
述べたように溝の2つのセットを設けることによって、ブラシから振り払われ、ブラシに面する筐体の表面における位置に収まることになる塵埃の、画定された搬送路が得られ、これは、ブラシの回転運動を用いて、出口開口へ向けての塵埃の前進を促進させるのに適している。溝の2つのセットは、吸引ヘッドの動作中に回転ブラシから塵埃を受け取るとともに回転ブラシの作用を受けて出口開口へ向けて塵埃の前進を可能にするように構成されている。その過程で、溝の2つのセットの対向する軸方向構成により、ブラシの回転方向が溝の両方のセットの位置において同じであるという事実にもかかわらず、対向する軸方向において、すなわち、出口開口の、溝のセットが出口開口に向かって存在する対向する両側から、上述のような塵埃の前進をできるようにすることが可能となる。
【0013】
特に、少なくともブラシの複数の要素が、特定のサイズの塵埃粒子、すなわち、ブラシの回転運動の作用を受けて溝内に存在する粗い塵埃粒子が溝を通る動きをもたらすのに十分な動作長を有する。例えば、ブラシに面する筐体の表面とブラシの作用輪郭との間の距離は、ブラシに面する筐体の表面の、溝の外側のエリアにおいて0mm~2mmの範囲の距離である。粗い塵埃粒子は、周方向において溝が終わるところに到達すると、回転ブラシによって導かれる流れに基づいて溝から押し流され、清掃される床面を介して隣の溝に動かされる。したがって、ブラシの回転運動の作用下で、粗い塵埃粒子は、最後に出口開口に到達するまで、ブラシに面する筐体の表面における溝を通って、また、筐体によって覆われていないスペースを通って、交互に動かされ、塵埃粒子は、塵埃粒子の動きが溝によって方向付けられている時間の間、出口開口の近くにくる。本発明のコンテキストにおいて、ブラシに面する筐体の表面とブラシの作用輪郭との間の距離の範囲に関して上記の示唆から判断するように、ブラシの要素が溝に到達しない、吸引ヘッドの実施形態を有することが可能であることに留意されたい。
【0014】
上記から判断すると、本発明によれば、動作時に、清掃される表面からブラシによってピックアップされた塵埃を出口開口に搬送することの容易性は、機械的な措置、すなわち、ブラシに面する筐体の表面に溝を有することを伴う措置に基づいて達成されるということになる。有利な結果として、塵埃が吸引ヘッドに入る位置から出口開口及びもっと先へ搬送されることを確実にすることに関して、ブラシの(略)全長に沿って延びる出口開口を有するとともに比較的高い吸引力を有することに依拠する上述した従来の解決策を適用する必要性はない。このことは本発明を電池式真空掃除機の分野における用途に適したものにする。これに関して、本発明による吸引ヘッドの好ましい実施形態では、出口開口は、長手方向におけるブラシの寸法の一部分しか覆わないように寸法決めされていることに留意されたい。例えば、ブラシのうち出口開口に晒される部分の長さがブラシの直径の0.8~1.3倍の間であることが基準である。出口開口が制限された長さしか有さないことに基づき、空気速度の降下が許容可能な範囲に保たれること、及び、出口開口と出口開口がアクセスを提供する吸引チャネルとを通る塵埃粒子及び液滴の搬送が、空気、液体及びデブリのより低い速度によって阻まれないことが達成される。さらに、これにより、さらに、これにより、吸引チャネルの壁における塵埃の堆積の防止に関する限りにおいて有利である、吸引チャネルの形状を有することが可能となる。
【0015】
長手方向において、出口開口はブラシに対して略中心の位置付けを有し、そのため、出口開口からブラシの一端にかけての距離が出口開口の両側で略同じであり、塵埃粒子がどちらの端においても同様の力の作用を受けてピックアップされ得る場合が、実用的である。
【0016】
ブラシに面する筐体の表面に溝を有するという概念の最適な効果を有するために、長手方向において、複数の溝がブラシのほとんど又はすべてを覆う場合が、好ましい。さらに、ブラシに面する筐体の表面が少なくとも180°の角距離に沿ってブラシを周方向に覆う場合、及び、複数の溝がブラシに面する筐体の表面のほとんどを周方向に覆う場合が、実用的であろう。好ましくは、角距離は、塵埃に対するブラシの各回転の効果の向上に基づいて、角距離が長いほど出口開口へ向けての塵埃のより速い変位を伴うため、さらにより長い。
【0017】
上記に述べたように、溝の2つのセットは、その軸方向構成に関する限り、互いと対向していると分類される。これに関して、ブラシの回転軸に対して垂直であるとともに出口開口と交わる仮想鏡面に対して、溝の2つのセットが鏡面対称であることが、特に留意されたい。
【0018】
溝のセットは、ブラシの回転運動の作用を受けて出口開口へ向けての塵埃の前進を促進する機能性に関しては適切な、いかなる外観も有することができる。一実用的な例によれば、溝のセットのうちの少なくとも一方は、回転軸の周りのブラシの回転方向に見て、出口開口へ至る、ブラシの回転軸の周りの螺旋巻線のセグメントのように配置されている溝を含む。螺旋巻線は、いわば前進式に円筒に巻回された線に従って配向されるループを含む連続巻線、すなわち、スクリューのような外観を有する巻線として知られる。別の実用的な例によれば、溝のセットのうちの少なくとも一方は、回転軸の周りのブラシの回転方向に見て、出口開口へ至る、ブラシの回転軸の周りの楕円巻線のセグメントのように配置されている溝を含む。楕円巻線は、ループが互いとは別個であるように、円筒の長手方向軸に対して或る角度でとられた、いわば円筒の平行スライスに従ってループが配向されている巻線として知られる。
【0019】
本発明は、溝の寸法決め及び形状の多くの可能性をカバーする。一般に、比較的低い吸引力での塵埃粒子に対する大きな搬送効果に関して吸引力の最適な機能に寄与する因子のうちのいくつかを挙げると、塵埃粒子が溝から逃げることを防ぐように、塵埃粒子を出口開口へ向けて搬送するのに必要とされるエネルギーが最小にされるように、塵埃粒子が溝のセットを通って移動する時間が最適化されるように、及び/又は、吸引ヘッドが細塵によって汚される可能性がある程度が最小にされるように溝が構成される場合が、有利である。これに関して、本発明によれば、有利な効果は、以下の場合、すなわち、
塵埃粒子が実際に1つの溝から別の溝に搬送されることができるように、個々の溝が、長手方向における個々の溝の寸法と長手方向における個々の溝間の間隔との和よりも大きい距離を長手方向に覆うように構成される場合であって、個々の溝が、長手方向における個々の溝の寸法と長手方向における個々の溝間の間隔との和の2~10倍の間にある距離を長手方向に覆うように構成される場合、
急峻な鋸歯側面が溝の粒子搬送機能をサポートし、その一方、浅い鋸歯側面が塵埃粒子を収容するのに十分に大きいポケットの形成を可能にすると同時に、粒子が溝内にくっつくことを防ぐとともに溝の良好なクリーニングを可能にするように、個々の溝が、急峻な鋸歯側面及び浅い鋸歯側面を有する鋸歯幾何学形状を有する場合であって、長手方向に見られるように、溝が出口開口に向かって開いている場合、すなわち、浅い鋸歯側面が出口開口の側面に対してより多く、急峻な鋸歯側面が出口開口に面する位置にある場合が、実用的である場合、
実際、個々の溝が、急峻な鋸歯側面及び浅い鋸歯側面を有する鋸歯幾何学形状を有する場合、個々の溝の断面において、急峻な鋸歯側面が、長手方向に対して垂直な仮想基準面に対して0°~45°の範囲にある角度であり、及び/又は、浅い鋸歯側面が、長手方向に対して垂直な仮想基準面に対して45°~85°の範囲にある角度である場合、
溝が、塵埃粒子をガイドするには十分な深さであるが、溝内の空気速度が過度に降下する又は塵埃が蓄積するほど深くないものとすることができるように、溝の深さが、0.5mm~4mmの範囲にある場合、及び/又は
塵埃粒子が1つの溝から出口開口により近い溝に動く可能性が増し、塵埃粒子が溝から逃げる可能性が最小にされ、また、移動中の塵埃粒子にかかる摩擦力が許容可能な範囲に保たれることができるように、長手方向における個々の溝間の間隔が、ゼロから、長手方向における個々の溝の寸法を差し引いた周方向に溝によって覆われる距離までの間の範囲にある場合に、得られることに留意されたい。
【0020】
本発明のコンテキストにおいて、少なくとも1つのブラシは、清掃される床面から塵埃をピックアップするために使用するのに適した任意のタイプのものであってもよい。ブラシは、例えば、床面上に存在し得る塵埃粒子を撹拌する撹拌器としての役目を果たすように特にデザインされてもよい。本発明による吸引ヘッドの実用的な実施形態では、ブラシは、コア要素と、コア要素に配置された柔軟なマイクロファイバ要素とを含む。そのようなブラシにおいて、マイクロファイバ要素が実際に高柔軟性であることができるように、10kmあたり150gより低い線形質量密度がマイクロファイバ要素又はその先端部分に適用可能である。述べた線形質量密度は、10kmあたり10g、10kmあたり5g又は10kmあたり1gよりも低くさえあってもよい。そのようなマイクロファイバ要素は、吸引ヘッドの動作中、清掃される床面と非常に効果的に相互作用するように、密な配置でコア要素に配置することができる。さらに、そのようなマイクロファイバ要素がコア要素にタフトで配置される場合が、実用的であろう。実際、ブラシに柔軟なマイクロファイバ要素が備わっている場合、ブラシの作用輪郭は、完全に広げられた状態での、マイクロファイバ要素を有するブラシの輪郭であるように理解されるべきである。
【0021】
ブラシの作用形状が概して、円周を有する円筒の形状である場合、換言すると、ブラシの作用形状が概して、細長いローラであってもよいローラの形状である場合が、実用的である。少なくともブラシの複数の要素は、ブラシに面する筐体の表面に清掃作用を有するようにするために、ブラシに面する筐体の表面のうち、溝の外側、ことによると溝の内側のエリアにおいて、ブラシに面する筐体の表面に触れることが可能であるように寸法決めされる。
【0022】
上記に基づき、溝が塵埃を搬送するように働く仕方の以下の概観を提示する。
少なくとも1つのブラシがコア要素に配置された柔軟なマイクロファイバ要素を含む場合、液体は、それらのマイクロファイバ要素によって搬送することができる。液滴が、回転ブラシから、ブラシに面する筐体の表面に放出され、次いで、溝幾何学形状によってガイドされる。ブラシと筐体との間のスペース内にブラシの回転によってつく出される空気流が、溝内での液体の移動を実現するのに寄与する。
粗粒子は、少なくとも1つのブラシの回転によって引き起こされる力の作用を受けて搬送され、溝幾何学形状によってガイドされる。
小粒子は、マイクロファイバ要素によって搬送される。小粒子はまた、他の粒子との相互作用によって、ブラシと筐体との間のスペース内にブラシの回転によってつくり出される空気流によって、また、液体との相互作用によって、搬送することができる。
【0023】
上記シナリオは、互いとは無関係に又は互いと相互作用して行われてもよい。少なくとも1つのブラシに面する表面は、溝幾何学形状による出口開口へ向けての塵埃の放出の結果、何もないままである。表面が、ほんの最小距離でブラシを覆うように配置される場合、吸引力が吸引ヘッド内に効果的に引き起こされ、その結果、表面に沿った空気速度は比較的高いものとすることができ、これもまた、塵埃が蓄積する余地が実際にないという事実に加え、表面を何もなく保つことに寄与する。
【0024】
本発明は、清掃される床面の少なくとも1つのエリアへの、及び/又は吸引ヘッド内の少なくとも1つのエリアへの液体の供給を可能にするように構成されている湿潤構成部が吸引ヘッドに備わっている、吸引ヘッドの一実施形態をカバーする。これに関して、本発明は、そのような吸引ヘッドを備える湿式真空掃除機に関することに留意されたい。
【0025】
本発明はさらに、ブラシに面する筐体の表面に複数の溝が設けられている、上記に定義及び説明した吸引ヘッドを備える、真空掃除機、特にコードレス真空掃除機に関する。
【0026】
本発明の上記及び他の態様は、ブラシに面する筐体の表面に複数の溝が設けられている、筐体と、筐体内に配置された2つのブラシとを備える、吸引ヘッドの実用的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるとともにその詳細な説明を参照しながら説明する。
【0027】
ここで、等しい又は同様の部品が同じ参照符号によって示されている図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態による湿式真空掃除機の構成要素と、清掃される表面を有する床の一部分とを概略的に示す。
【
図2】内部に含まれる2つのブラシが取り外されている、本発明の一実施形態による吸引ヘッドの底面図を概略的に示す。
【
図3】内部に含まれる2つのブラシが取り外されている、本発明の一実施形態による吸引ヘッドの斜視図を概略的に示す。
【
図4】複数の溝が設けられている筐体の表面の一部分の平面投影図を概略的に示す。
【
図6】溝が楕円巻線のセグメントのように配置されている場合の、塵埃粒子が1つの溝から別の及び内側の溝へ移動する様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の一実施形態による湿式真空掃除機100の設計を示す。
図1に示すとともに以下に説明する特定の真空掃除機は、本発明のフレームワークにおいて実現可能である多くのタイプの真空掃除機のほんの一例にすぎない。これに関して、本発明は、湿式真空掃除機に関するだけでなく、乾式清掃機能だけを有する乾式真空掃除機、及び、湿式清掃機能に加えて乾式清掃機能を有する湿式/乾式真空掃除機などの、他のタイプの真空掃除機にも関することに留意されたい。本発明による真空掃除機は、キャニスタ真空掃除機と一般に呼ばれる真空掃除機、直立型真空掃除機と一般に呼ばれる真空掃除機、ロボット掃除機と一般に呼ばれる真空掃除機、及びスイーパと一般に呼ばれる真空掃除機のうちの1つであってもよい。
【0030】
湿式真空掃除機100は、床面などの面10を湿式清掃動作に供するために使用されるように構成されている。
図1は、清掃される床面10に対して通常の動作の向きにある真空掃除機100を示す。向きの態様を有する用語の本文における使用は、清掃される床面10に対する真空掃除機100のこの通常の動作の向きに対して理解されるべきであり、床面10は底位置にあり、真空掃除機100は床面10の上に配置されるものとする。
【0031】
真空掃除機100の動作時に床面10に面すると想定される側に、真空掃除機100は、真空掃除機100の動作時に床面10と相互作用するように構成された2つのブラシ20を収容する吸引ヘッド101を備える。以下において、ブラシ20のそれぞれがローラの形態で設けられ、ローラがローラの長手方向中心軸によって画定される回転軸21の周りに回転可能であるものとし、また、ブラシ20のそれぞれがコア要素22とコア要素22に配置された柔軟なマイクロファイバ要素23とを含むものとするが、このことは、ブラシ20の他の実施形態も可能であるという事実を変えるものではない。ブラシ20は同一とすることができるが、これは本発明のコンテキストにおいて必須ではない。ブラシ20の位置に描かれたカーブ矢印によって
図1に示すように、ブラシ20は、そのそれぞれの回転軸21の周りに互いに関して逆方向に回転可能であるように配置されている。本発明のフレームワークにおいて、吸引ヘッド101は、別の数のブラシ20を収容してもよく、特に、ブラシ20を1つだけ有することは、実現可能な代替的な選択肢であることに留意されたい。吸引ヘッド101は、ブラシ20を部分的に覆うように構成されている筐体30を備える。
【0032】
吸引ヘッド101に加え、真空掃除機100は、真空掃除機100の使用者によって把持されるように構成されている本体部分102を有する。好ましくは、吸引ヘッド101及び本体部分102は、互いに取り外し可能に連結可能である。本体部分102は、任意の適したやり方で形状決めすることができる。
図1に示す本体部分102の輪郭は、単に概略的な性質のものである。使用者が本体部分102を容易に把持することができるとともに所望に応じて真空掃除機100を清掃される床面10にわたって動かすことができるように、本体部分102がハンドルを含む場合が、実用的である。図には示していないが、吸引ヘッド101が清掃される床面10に支持されることを可能にするとともに床面10上で前後に動かされることを可能にするように構成されている支持機構を吸引ヘッド101が備える場合が、実用的である。そのような支持機構は、例えば一対のホイールを含んでもよい。
【0033】
真空掃除機100の動作時にブラシ20を駆動するために、真空掃除機100には、実際の状況では電気駆動機構である適切な駆動機構(図示せず)が備わっている。駆動機構、及び、おそらくは真空掃除機100の他の構成要素をも給電するために、真空掃除機100は、主電源に接続可能であってもよく、及び/又は、適切な電池構成部が備わっていてもよい。好ましくは、真空掃除機100は、充電式電池構成部を含むコードレス機器であり、その場合、真空掃除機100が、真空掃除機100に加えて充電ドックを含むセットの一部分である場合が、さらに実用的であろう。そのようなセットはまた、ブラシ20をクリーニングするために使用することができるフラッシングトレイを含む。真空掃除機100に電池が備わっていない場合、真空掃除機100が動作中でない間に真空掃除機100を受容及び保持する、充電能力を有しない単純なドックが提供されてもよい。
【0034】
真空掃除機100の本体部分102は、水などの液体又は水と洗浄剤との混合物を収容する役目を果たす液体リザーバ40と、真空掃除機100の動作時に液体を吸引ヘッド101の湿潤構成部42に供給する役目を果たす液体供給機構41とを含む。液体供給機構41は、例えば任意の適切なタイプのポンプ構成を含んでもよく、又は、重力の影響下で所望に応じて液体の変位を可能にするように構成されてもよい。一般に、吸引ヘッド101の湿潤構成部42は、清掃される床面10の少なくとも1つのエリア、及び/又は、吸引ヘッド101内のうちブラシ20が位置するエリアなどの少なくとも1つのエリアへの液体の供給を可能にするように構成される。
図1は、清掃される床面10の少なくとも1つのエリアへの液体の供給を可能にするように構成されている、吸引ヘッド101の湿潤構成部42のオプションを示す。図示の例では、吸引ヘッド101は、ブラシ20間のエリアに位置する細長い中間構成要素25を含み、細長い中間構成要素25は、ブラシ20のいくつかの部分を覆うように構成された2つの凹状湾曲部分を有し、湿潤構成部42は、細長い中間構成要素25内に部分的に配置される導管システム43を含み、液体を運ぶとともに床面10の少なくとも1つのエリアに液体を出させるように構成されている。
図1では、液体リザーバ40、液体供給機構41、及び吸引ヘッド101の湿潤構成部42は、点線によって示されている。液体リザーバ40が液体を充填される場所に液体リザーバ40を持って行くことが望まれる際に使用者が液体リザーバ40を本体部分102から分離することをできるようにされるように、液体リザーバ40が本体部分102に取り外し可能に連結されている場合が、実用的である。
【0035】
細長い中間構成要素25が、その上面の位置において、吸引ヘッド101の筐体30の一部分から垂下される場合が、実用的である。吸引ヘッド101において吸引力を効果的に引き起こすことに関して、好ましくは至近距離で、ブラシ20を可能な限り多く覆うことが有益である。細長い中間構成要素25は、筐体30の一体部分であってもよく、又は、例えば修理若しくはクリーニングを可能にするように、筐体30の別の構成要素に取り外し可能に連結し得る別個の構成要素として提供されてもよい。
【0036】
真空掃除機100の本体部分102は、真空掃除機100の動作中にブラシ20によって床面10からピックアップされた湿った塵埃11を受容及び蓄積する役目を果たす塵埃リザーバ50をさらに含む。塵埃リザーバ50は、例えばサイクロン構成又はチューブインカップ(tube-in-cup)構成などの、床面10からピックアップされた入ってくる塵埃11から湿った塵埃を蓄積するのに従来的に利用可能な多くの様式で、構成することができる。本体部分102は、ブラシ20が位置するエリアから、ブラシ20に面する筐体30の表面32における出口開口31と、出口開口31から塵埃リザーバ50にかけて延在する吸引チャネル51とを通って、本体部分102内の塵埃リザーバ50へ塵埃11を運ぶことを可能にする機能を果たす負圧をつくり出すように構成された真空機構60を含む。
【0037】
湿式真空掃除機100が動作する仕方の基本的な態様は、以下の通りである。動作時、筐体20が、回転するように駆動され、液体供給機構41が、清掃される床面10に液体が出されるように液体を吸引ヘッド101の湿潤構成部42に供給するように作動する。ブラシ20が届くところにある床面10のエリアに存在し得るいかなる汚れも、液体の作用及びブラシ20による撹拌を受けて分離し、床面10のエリアに存在し得る塵埃粒子及びダストが液体とともに取り除かれ、その過程で出口開口31及び吸引チャネル51を通って塵埃リザーバ50に運ばれる。塵埃11は、ブラシ20のマイクロファイバ要素23の先端部分によって床面10からピックアップされ、ブラシ20が回転するにつれ、先端部分が床面10との接触から外れる位置で先端部分から振り払われる。
【0038】
図1に示すように、真空掃除機100にはユーザインタフェース70が備わっていてもよく、このユーザインタフェース70は、例えばオン/オフボタン71を有する。真空掃除機100は、そのためにユーザインタフェース79を通じてユーザから受け取った入力を受けて、ブラシ20を動かし始めるとともに液体供給機構41及び真空機構60を両方とも作動させるようにプログラムされているマイクロプロセッサ含む制御システム80をさらに備えてもよい。
【0039】
図2から
図5は、明確にするため、ブラシ20を示さずに、本発明の一実施形態による吸引ヘッド101の態様、特に、吸引ヘッド101の筐体30の態様を示すのに役立つ。上記で既に述べたように、ブラシ20に面する筐体30の表面32には出口開口31が設けられている。さらに、
図2及び
図3を参照すると、筐体30は、真空掃除機100の本体部分102における、吸引チャネル51、塵埃リザーバ50及び真空機構60の組立体との筐体30の連結を可能にするように構成されている連結エリア33を有することに留意されたい。出口開口31は、この連結エリア33と流体連通する。
【0040】
ブラシ20に面する筐体30の表面32のさらなる特徴は、表面32に複数の溝35が設けられていることである。筐体30は、例えばプラスチック材料から作製することができ、その場合、溝35は、上記表面32の位置で筐体30内に簡単に成形することができる。ブラシ20ごとに見られるように、複数の溝35は、溝35の2つのセット36、37を含み、これらセット36、37は、ブラシ20の回転軸21が延在する方向である長手方向lに対向する両側である、出口開口31の両側に位置する。溝35のセット36、37のそれぞれは、回転軸21の周りに周方向成分及び長手方向lに軸方向成分を有して配向された溝35を含む。長手方向lは
図2に最もよく見てとることができる。回転軸21の周りの同じ周方向cに見て、溝35の一方のセット36、37の溝35の軸方向成分の方向は、同様に
図2に最もよく見てとることができるように、他方のセット36、37の溝35の軸方向成分の方向とは逆である。図示の例では、溝35は、回転軸21の周りでのブラシ20の回転方向に見て、出口開口31へ至る、ブラシ20の回転軸21の周りの螺旋巻線のセグメントのように配置されている。さらに、図示の例では、溝35の2つのセット36、37は、
図2に示すように、ブラシ20の回転軸21に対して垂直であるとともに出口開口31と交わる仮想鏡面Mに対して、鏡面対称である。
【0041】
ブラシ20に面する筐体30の表面32における溝35の存在に基づいて、本発明は、吸引チャネル51へのアクセスを提供するように配置されている出口開口31へブラシ20によって捕捉された塵埃粒子を駆動する力を生成するやり方を提供する。その過程で、上記表面32における溝の幾何学形状と組み合わせて、回転ブラシ20が引き起こす流れが使用される。比較的大きな塵埃粒子又はふわふわした物質の場合、回転ブラシ20が塵埃との接触の結果としてそのようなタイプの塵埃に対するワイピング作用を有するであろう。どの場合においても、機械的につくり出された力は高性能であるという事実に鑑み、そのように行うための所要電力は最小にすぎない。
【0042】
以下で、ブラシ20に面する筐体30の表面32における溝35の注目すべき側面及び溝35のパターンについて取り上げる。注目すべき側面は、溝35の断面形状の特徴及び溝35がパターンで重なり合う仕方を含む。
【0043】
図4を参照すると、溝35のパターンの重なり長さoは、溝35の一方の端から他方の端までの長手方向lにおける溝35の寸法として画定されていることに留意されたい。重なり長さoは、パターンのピッチpと周方向cにおけるパターンの適用角度ψとに基づいて、以下の通り、すなわちo=(ψ/2π)・pで算出される。重なり長さo及び適用角度ψは、溝パターンにおいて、以下の通り、すなわちφ
1=tan
-1(o/ψr)である、角度φ
1を決定し、ここで、rは、ブラシ20に面する筐体30の湾曲表面32の半径である。角度φ
1は、捕捉された塵埃粒子の駆動機構の効率を定める重要な摩擦角度を決定する。これに関して、摩擦角φ
1は平均角度であること、及び、溝35は必ずしも螺旋巻線のセグメントのように形状決めされるものではないことに留意されたい。溝35がブラシ20の回転軸21の周りに螺旋巻線のセグメントのように配置されている図示の例では、重なり長さoは、長手方向lに塵埃を搬送する目的に関して重要な側面であり、塵埃粒子が1つの溝35の終わりにおいて離脱することができるようにされ、また、再びピックアップされるとともに、隣の溝35、すなわち、出口開口31により近い溝に導入されることができるようにされることは、重なりに基づく。
【0044】
図5を参照すると、溝35の断面形状が図示のように鋸歯状である場合が有利であることに留意されたい。一般に、その場合、断面幾何学形状は、i)溝幅w
g、ii)塵埃粒子を出口開口31に駆動することにおける因子をなす、急峻な鋸歯側面35aの角度φ
2、iii)浅い鋸歯側面35bの角度φ
3、iv)溝深さd、及びv)平面幅w
f、すなわち、ブラシ20に面する筐体30の湾曲表面32の公称直径において個々の溝35を隔てる、表面の幅を特徴とする。溝幅w
gと、溝深さdと、急峻な鋸歯側面35aの角度φ
2と、浅い鋸歯側面35bの角度φ
3との間に、冗長性があることに留意されたい。
【0045】
ブラシ20に面する筐体30の表面32に振り出された粗い塵埃粒子はその後、一方で、表面32における溝パターンとの相互作用から生じる力を受け、他方で、それぞれの回転ブラシ20によって引き起こされるブラシ力の作用を受ける。溝35の急峻な鋸歯側面35aは、塵埃粒子にかかる反力(法線力)、及び、塵埃粒子にかかるブラシ力の結果としての摩擦力、並びに、塵埃粒子を半径方向に加速及び移動するのに必要な力を含む。溝35の浅い鋸歯側面35bは、塵埃粒子にかかる同様の反力(法線力)、及び、塵埃粒子にかかるブラシ力の結果としての摩擦力、並びに、塵埃粒子を半径方向に加速及び移動するのに必要な力を含む。
【0046】
溝35のパターンを決定する様々なパラメータは、塵埃粒子が溝35から逃げることを防ぐように、塵埃粒子を出口開口へ搬送するのに必要とされるエネルギーを最小にするように、塵埃粒子が溝35のセット36、37を通って移動する時間を最適化するように、及び/又は、吸引ヘッド101が細塵によって汚される可能性がある程度を最小にするように選択される。これに関して、以下のパラメータについて取り上げる。
溝幅wg。このパラメータは、急峻な鋸歯側面35aの角度φ2、浅い鋸歯側面35bの角度φ3、及び溝深さdの結果である。
急峻な鋸歯側面35aの角度φ2。この角度は好ましくは可能な限り小さく、塵埃粒子が溝35から逃げることを防ぐ。したがって、この角度は好ましくは0°であるが、製造要件などの実際的な理由のため、この角度はより大きいものとすることができ、最大の45°が実用的である。この角度の様々な値が、溝35のパターンでの種々の位置に適用可能である。
浅い鋸歯側面35bの角度φ3。この角度は好ましくは45°~85°の間である。より小さな値の結果、塵埃粒子を容易に溜める溝35が生じ、その場合、塵埃粒子は、回転ブラシ20によって引き起こされる空気速度及び液滴の影響の作用下で、すなわち、ブラシ回転によってもたらされる液滴による空気のせん断力の作用下で、移動することが困難である。水滴による、空気のせん断力は、ブラシ回転によりもたらされたものである。より大きな値の結果、ブラシ20に面する筐体30の表面32に、汚れに対する感度も増す、より大きなデッドボリュームが生じ、また、より大きな溝幅wgが生じる。より大きな溝幅wgの結果、自動的により大きな重なり長さoが生じる。
溝深さd。これは、搬送される粒径の最適化の選択によって決定される。より大きな溝深さdは、より大きな塵埃粒子に適しており、塵埃粒子が急峻な鋸歯側面35aに接触点を有することを可能にする。4mmの最大の溝深さdが実用的である。より大きな溝深さdを有することの効果は、より小さな塵埃粒子を溝35内に溜めることであるが、この効果は、非常に小さな塵埃粒子は液体及び空気の流れによって搬送されるという事実に基づき、或る程度減殺される。より小さな溝深さdを有することの効果は、より大きな塵埃粒子の搬送効率が低いことである。0.5mmの最小の溝深さdが実用的である。
平面幅wf。この幅は、より小さな塵埃粒子による筐体30の汚れを防ぐように最適に最大にされる。しかしながら、この幅は、摩擦角φ1の最大値によって制限される。以下、すなわち0<wf<2ψr-wgが適用可能であり、その結果、最大平均摩擦角φ1≒63°となる。
重なり長さo。この長さは、平面幅wf及び溝幅wgの和よりも決して小さくならないように選択される。塵埃粒子によっては、溝35は100%の効率となり得ないため、重なり長さoは、平面幅wf及び溝幅wgの和の10倍まで選択することができる。
適用角度ψ。この角度を、ブラシ20に面する筐体30の表面32の半径全体にわたって、可能な限り大きくなるように選択することが最も効率的である。吸引ヘッド101における製造要件又は特徴などの実際的な理由のため、この角度は、30°~270°の範囲から選択することができる。
【0047】
図6は、回転軸21の周りでのブラシ20の回転方向に見て、出口開口31へ至る、ブラシ20の回転軸21の周りの楕円巻線のセグメントのように配置されている、溝35のオプションに関する。図では、楕円巻線の長さに沿って片側がカットされているとともに開いたロール状の(rolled open)、周方向cに全長2πrを有する完全な楕円巻線の図が、概略的に示されている。周方向cにおける溝35の長さは、全長の半分、すなわちπrであるように選択され、長手方向lにおける溝幅w
gと個々の溝35間の間隔w
fとは、塵埃粒子が、長手方向lに対する溝35の配向の所与の角度αで、長手方向lに対して垂直な周方向cに、1つの溝35から別の溝に移動することができるように選択される。これに関して、示すように、周方向cにおける溝35の長さがπrであるものとすると、塵埃粒子は常に、半径rと接線α/2との積が長手方向lにおける溝幅w
gと個々の溝35間の間隔w
fとの和よりも大きくなる場合に隣の溝35内に捕捉することができることに留意されたい。
【0048】
既に説明したように、塵埃粒子は、1つの溝35の終わりにおいて離脱し、回転ブラシ20によって再びピックアップされるとともに隣の溝35に導入される。清掃される床面10に沿う、溝35の外側へのブラシ20の回転運動の作用を受けて塵埃粒子が辿る経路は通常、
図6における縦矢印が示すように、長手方向lに対して垂直に配向される。塵埃粒子は、溝35に導入されるとすぐに、
図6におけるそれぞれの溝35内に延びる矢印が示すように、溝35が定める経路を辿り始める。したがって、塵埃粒子が溝35の外側にある時間の間、塵埃粒子は、長手方向lに変位することなく、1つの溝35から別の溝に動かされるのに対し、塵埃粒子が溝35の内側にある時間の間、塵埃粒子の動きは、長手方向lへの変位を伴い、そのため、最終的に、塵埃粒子は出口開口31に達することができる。
【0049】
螺旋巻線と楕円巻線との相違は、
図7及び
図8の比較を行うと容易に見てとることができる。既に説明したように、また
図7に示すように、螺旋巻線は、いわば前進式に円筒に巻回された線に従って配向されるループを含む連続巻線、すなわち、スクリューのような外観を有する巻線とみなすことができる。既に説明したように、また
図8に示すように、楕円巻線は、ループが互いとは別個であるように、円筒の長手方向軸に対して或る角度でとられた、いわば円筒の平行スライスに従ってループが配向されている巻線とみなすことができる。
【0050】
本発明の範囲は上記で論じた例に限定されるのではなく、そのいくつかの修正及び変更が添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱しない限り可能であることが、当業者には明らかであろう。そのような修正及び変更すべてが特許請求の範囲の範囲内又はその均等物内にある限り、本発明はそのような修正及び変更すべてを含むと解釈されることが意図される。本発明は図面及び説明において詳細に例示され説明されてきたが、そのような例示及び説明は、単に説明的又は例示的であって限定的であるとみなされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。図は概略的であり、本発明を理解するのに必要とされない詳細は省略されていることがあり、必ずしも縮尺通りではない。
【0051】
開示された実施形態の変形例は、図面、説明及び添付の特許請求の範囲の精査から、請求項に記載された本発明を実施する当業者によって理解及び実施することができる。請求項において、「有する、含む、備える」という語は、他のステップ又は要素を除外せず、単数形の要素は複数を除外しない。請求項における参照符号はいずれも、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0052】
特定の実施形態に関して又は特定の実施形態に関連して論じた要素及び態様は、別段に明確に述べられていない限り、他の実施形態の要素及び態様と適切に組み合わせられてもよい。したがって、或る特定の手段が相互に異なる従属請求項において挙げられているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。
【0053】
本文において使用される「有する」及び「含む」という用語は、「からなる」という用語をカバーするものとして当業者によって理解されるであろう。したがって、「有する」及び「含む」という用語は、一実施形態に関して、「からなる」を意味することがあるが、別の実施形態では、「少なくとも定義された種及び任意選択で1つ又は複数の他の種を含む/有する/備える」ことを意味する。
【0054】
本発明の注目すべき態様を以下の通り手短に述べる。筐体30と、清掃される表面10と相互作用するように構成されている少なくとも1つの回転可能なブラシ20とを備える吸引ヘッド101においてブラシ20に面する、筐体30の表面32には、動作中に実現される、ブラシ20の回転運動の作用下で、ブラシ20に沿った任意の位置から表面32における出口開口31へ向けての塵埃の搬送を容易にする複数の溝35が設けられている。複数の溝35は、出口開口31の対向する両側に位置する、溝35の2つのセット36、37を含む。ブラシ20の回転軸21を基準とみなすと、溝35のセット36、37のそれぞれは、周方向成分及び軸方向成分を有する溝35を含み、同じ周方向cに見て、溝35の軸方向成分の方向は、溝35の2つのセット36、37に関して逆である。
【国際調査報告】