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特表2024-519438可撓性凹部によって接続されたインサート受けスロットを有する溝加工工具本体及び当該溝加工工具本体を有する回転溝加工切削工具
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  • 特表-可撓性凹部によって接続されたインサート受けスロットを有する溝加工工具本体及び当該溝加工工具本体を有する回転溝加工切削工具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】可撓性凹部によって接続されたインサート受けスロットを有する溝加工工具本体及び当該溝加工工具本体を有する回転溝加工切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/22 20060101AFI20240507BHJP
   B23C 5/08 20060101ALI20240507BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B23C5/22
B23C5/08 A
B23B27/16 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559137
(86)(22)【出願日】2022-04-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 IL2022050368
(87)【国際公開番号】W WO2022234555
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】17/306,062
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】アサド,シモン
【テーマコード(参考)】
3C022
3C046
【Fターム(参考)】
3C022EE00
3C022JJ04
3C046EE14
(57)【要約】
溝加工工具本体は、反対の前方カッター部分側面及び後方カッター部分側面と、前方カッター部分側面及び後方カッター部分側面の間に延在するカッター部分周辺面と、を含む円盤状のカッター部分と、後方カッター部分側面から後方に突出するシャンク部分と、を含む。カッター部分は、N個の角度的に離間したクランプ部分を含み、各クランプ部分は、周辺に配置されたインサート受けスロットを有している。カッター部分は、前方カッター部分側面内に凹み、かつ、インサート受けスロットの各々まで延在する可撓性凹部をさらに含む。切削インサートは、各インサート受けスロットに取り外し可能かつ弾性的にクランプされて回転溝加工切削工具を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝加工工具本体(22)であって、前記溝加工工具本体(22)は、反対の前方方向(D)及び後方方向(D)を規定する本体中心軸線(B)を規定し、前記本体中心軸線(B)回りに前記溝加工工具本体(22)が回転方向(R)に回転可能であり、前記溝加工工具本体(22)は、
円盤状のカッター部分(26)であって、
反対の前方カッター部分側面(28a)及び後方カッター部分側面(28b)と、前記前方カッター部分側面(28a)及び前記後方カッター部分側面(28b)の間に延在するカッター部分周辺面(30)と、
角度的に離間したN個のクランプ部分(32)であって、Nは1より大きい整数であり、各クランプ部分(32)は、前記前方カッター部分側面(28a)及び前記後方カッター部分側面(28b)並びに前記カッター部分周辺面(30)に開口する、周辺に配置されたインサート受けスロット(38)を有する、クランプ部分(32)と、
互いに対向し、かつ、前記インサート受けスロット(38)によって離間された弾性クランプ部材(34)及び下部ジョー部材(36)であって、前記弾性クランプ部材(34)は、前記インサート受けスロット(38)内に切削インサート(38)を弾性的に保持するように構成されている、弾性クランプ部材(34)及び下部ジョー部材(36)と、を備える円盤状のカッター部分(26)と、
前記後方カッター部分側面(28b)から後方に突出するシャンク部分(56)であって、前記シャンク部分(56)は、前記本体中心軸線(B)周りに周方向に延在するシャンク周辺面(58)を備える、シャンク部分(56)と、を備え、
前記カッター部分(26)は、前記前方カッター部分側面(28a)内に凹んで前記インサート受けスロット(38)の各々まで延在する可撓性凹部(64)をさらに備える、溝加工工具本体(22)。
【請求項2】
前記カッター部分(26)はN個のカッターサブ部分(70)に分割され、
前記可撓性凹部(64)及び前記カッター部分周辺面(30)の両方を通るカッター径方向正中面(P)において、前記カッターサブ部分(70)は互いに離間している、請求項1に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項3】
前記可撓性凹部(64)は、前記本体中心軸線(B)を中心にN回回転対称を示す、請求項1又は2に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項4】
前記可撓性凹部(64)は、前記後方方向(D)に、前記後方カッター部分側面(28b)を越えて前記シャンク部分(56)内まで延在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項5】
前記可撓性凹部(64)は前記本体中心軸線(B)に交差している、請求項1~4のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項6】
前記可撓性凹部(64)は、それぞれの狭いネック部分(72)で各インサート受けスロット(38)内に移行する、請求項1~5のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項7】
前記可撓性凹部(64)は、めくら孔であり、かつ、前記前方カッター部分側面(28a)にのみ開口している、請求項1~6のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項8】
各インサート受けスロット(38)が、前記カッター部分周辺面(30)まで延在する端部を有する細長いスロット周辺面(40)によって規定され、
前記可撓性凹部(64)は、
前記インサート受けスロット(38)を接続する凹部ベース面(66)と、
N個の凹部周壁面(68)であって、前記凹部周壁面(68)の各々は、周方向に隣接する2つのインサート受けスロット(38)の前記スロット周辺面(40)の間で前記凹部ベース面(66)から前記前方カッター部分側面(28a)まで延在する、N個の凹部周壁面(68)と、を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項9】
前記凹部ベース面(66)は前記本体中心軸線(B)に対して垂直に配向され、
前記凹部周壁面(68)は前記本体中心軸線(B)に平行に配向されている、請求項8に記載の溝加工工具本体(22)
【請求項10】
前記凹部ベース面(66)は、フィレット(69)を形成する交線で前記凹部周壁面(68)の各々に交差している、請求項9に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項11】
前記後方カッター部分側面(28b)と前記シャンク周辺面(58)との交線に形成された環状溝(59)をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項12】
前記溝加工工具本体(22)が一体のワンピース構造を有するように、前記カッター部分(26)と前記シャンク部分(56)とが一体的に形成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項13】
任意の所定のクランプ部分(32)について、前記弾性クランプ部材(34)が前記回転方向(R)において前記下部ジョー部材(36)の前方に配列されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項14】
前記シャンク部分(56)は、前記カッター部分(26)に隣接する前記シャンク周辺面(58)内に凹み、かつ、前記シャンク周辺面(58)に開口する、角度的に離間したN個の前方シャンク凹部(60)を備え、
各インサート受けスロット(38)の径方向内側部分はその片側でそれぞれの前方シャンク凹部(60)に合流する、請求項1~13のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項15】
各クランプ部分(32)の前記弾性クランプ部材(34)は、それぞれの前方シャンク凹部(60)に軸線方向に隣接する、請求項14に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項16】
前記シャンク部分(56)は、前記前方シャンク凹部(60)と周方向に交互に配置され、かつ、前記カッター部分(26)に軸線方向に隣接している、周方向に配置されて角度的に離間したN個の非凹状前方シャンク部分(62)をさらに備える、請求項14又は15に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項17】
前記本体中心軸線(B)に沿った方向において、
前記本体中心軸線(B)と前記シャンク周辺面(58)との間に延在する仮想半径線は、前記本体中心軸線(B)を中心とし、かつ、シャンク部分直径(DS)を有する仮想シャンク部分円(CS)のシャンク部分半径(RS)を規定し、
前記カッター部分(26)は、前記本体中心軸線(B)を中心とし、かつ、カッター部分直径(DC)を有する仮想外接カッター部分円(CC)を規定する、請求項1~16のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項18】
前記本体中心軸線(B)に沿った方向において、前記仮想シャンク部分円(CS)がすべての前記インサート受けスロット(38)に交差する、請求項17に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項19】
各インサート受けスロット(38)が、前記下部ジョー部材(36)上に配置されたスロット下部ジョー当接面(44)を備える細長いスロット周辺面(40)によって規定され、
前記本体中心軸線(B)に沿った方向において、前記仮想シャンク部分円(CS)は前記スロット下部ジョー当接面(44)に交差する、請求項17又は18に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項20】
前記スロット周辺面(40)は、前記弾性クランプ部材(34)上に配置されたスロットクランプ部材当接面(42)をさらに備え、
前記本体中心軸線(B)に沿った方向において、前記スロットクランプ部材当接面(42)は前記仮想シャンク部分円(CS)の径方向外側に配置される、請求項19に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項21】
前記本体中心軸線(B)に沿った前記溝加工工具本体(22)の端面視において、前記スロット下部ジョー当接面(44)及び前記スロットクランプ部材当接面(42)は、前記可撓性凹部(64)に向かう方向に互いに収束し、鋭角なスロット当接角(β)を規定する、請求項19又は20に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項22】
前記カッター部分(26)はN個のカッターサブ部分(70)に分割され、
各クランプ部分(32)は、前記弾性クランプ部材(34)と前記下部ジョー部材(36)との間に周方向に配置されたストップ部材(39)を備え、
前記ストップ部材(39)及び前記弾性クランプ部材(34)は同じ前記カッターサブ部分(70)上に配置される、請求項1~21のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項23】
Nは、2≦N≦9の条件を満たし、
前記カッター部分(26)は、前記本体中心軸線(B)を中心とし、かつ、カッター部分直径(DC)を有する仮想外接カッター部分円(CC)を規定し、
前記カッター部分直径(DC)は35mm以下である、請求項1~22のいずれか1項に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項24】
Nは、N=3の条件を満たし、
前記カッター部分直径(DC)は約20mmである、請求項23に記載の溝加工工具本体(22)。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載のスロット工具本体(22)と、
前記弾性クランプ部材(34)のうちの1つによって前記インサート受けスロット(38)の各々に取り外し可能かつ弾性的にクランプされる切削インサート(24)と、を備える回転溝加工切削工具(20)。
【請求項26】
前記切削インサート(24)は、インサート長手方向軸線(A)を規定する方向に長手方向に長尺であり、前記切削インサート(24)は、
反対のインサート上面(84)及びインサート下面(86)並びに前記インサート上面(84)及び前記インサート下面(86)の間に延在するインサート外周面(88)であって、前記インサート周辺面(88)は、前記インサート上面(84)及び前記インサート下面(86)を接続する2つの反対のインサート端面(90)と、前記インサート上面(84)及び前記インサート下面(86)を接続する2つの反対のインサート側面(92)と、を備える、インサート上面(84)及びインサート下面(86)並びにインサート外周面(88)と、
前記インサート長手方向軸線(A)を包含し、前記インサート側面(92)の間を通り、前記インサート上面(84)及び前記インサート下面(86)に交差し、かつ、反対の前記インサート端面(90)にも交差するインサート長手方向平面(P1)と、
前記切削インサート(24)の一端に配置された切削部分(94a)であって、前記切削部分(94a)は、前記インサート上面(84)と2つの前記インサート端面(90)のうちの1つとの交線に形成された切れ刃(96a)を備える、切削部分(94a)と、を備え、
前記インサート上面(84)及び前記インサート下面(86)は、それぞれ、インサート上部当接面(84a)及びインサート下部当接面(86a)を備え、
前記インサート受けスロット(38)は、前記下部ジョー部材(36)上に配置されたスロット下部ジョー当接面(44)を備える細長いスロット周辺面(40)によって規定され、
前記スロット周辺面(40)は、前記弾性クランプ部材(34)上に配置されたスロットクランプ部材当接面(42)をさらに備え、
前記スロットクランプ部材当接面(42)は前記インサート上部当接面(84a)に当接し、
前記スロット下部ジョー当接面(44)は前記インサート下部当接面(86a)に当接する、請求項25に記載の回転溝加工切削工具(20)。
【請求項27】
前記切削部分(94a)の反対の前記インサート端面(90)は、インサート下面(86)よりも前記インサート上面(84)に近いインサートストップ面(104a)をさらに備え、前記インサートストップ面(104a)は平面であり、
各クランプ部分(32)は、前記弾性クランプ部材(34)と前記下部ジョー部材(36)との間に周方向に配置されたストップ部材(39)を備え、
前記カッター部分(26)はN個のカッターサブ部分(70)に分割され、
前記ストップ部材(39)及び前記弾性クランプ部材(34)は同じ前記カッターサブ部分(70)上に配置され、
前記スロット周辺面(40)は、前記ストップ部材(39)上に配置されたスロット径方向ストップ面(46)をさらに備え、
前記スロット径方向ストップ面(46)は前記インサートストップ面(104a)に当接する、請求項26に記載の回転溝加工切削工具(20)。
【請求項28】
前記切削インサート(24)は、前記切削インサート(24)が有効切削部分(94a)及び非有効切削部分(94b)の2つの切削部分を含むように追加の切削部分(94b)を備え、2つの前記切削部分(94a、94b)は前記切削インサート(24)の両端に形成され、
前記インサート上面(84)は、前記インサート上面(84)が有効インサート上部当接面(84a)及び非有効インサート上部当接面(84b)の2つのインサート上部当接面を含むように追加のインサート上部当接面(84b)を備え、前記有効インサート上部当接面(84a)は前記非有効インサート上部当接面(84b)よりも遠くに配置され、前記スロットクランプ部材当接面(42)は前記有効インサート上部当接面(84a)に当接し、
前記有効切削部分(94a)の前記インサート端面(90)は、前記切削インサート(24)が前記有効インサートストップ面(104a)及び前記非有効インサートストップ面(104b)の2つのインサートストップ面を含むように追加のインサートストップ面(104b)を含み、前記有効インサートストップ面(104a)は前記非有効切削部分(94b)に配置され、前記スロット径方向ストップ面(46)は前記有効インサートストップ面(104a)に当接する、請求項26又は27に記載の回転溝加工切削工具(20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は、概して、その中に切削インサートを取り外し可能に保持するための、周方向に配置された複数のインサート受けポケットを有する円盤状のカッター部分を有する溝加工工具本体を有する回転溝加工切削工具に関し、特に、インサート受けポケットがその中に切削インサートを弾性的にクランプするそうした溝加工工具本体に関する。
【背景技術】
【0002】
回転溝加工切削工具は、円盤状カッター部分と、円盤状カッター部分から後方に延在するシャンク部分と、を有する溝加工工具本体を有し得る。円盤状カッター部分には、その中に切削インサートを保持するための、周方向に配置された複数のインサート受けポケットが設けられ得る。切削インサートは、弾性クランプ部材によってインサート受けポケット内に保持され得る。このような回転切削工具の一例が、例えば、米国特許出願公開第2019/0160555号明細書に開示されており、この明細書は、円盤状カッター部分と、円盤状カッター部分から後方に突出するシャンク部分と、を含む溝加工工具本体を開示している。カッター部分は、周辺に配置されたインサート受けスロットを有する複数の弾性クランプ部分を含む。円盤状カッター部分は、それぞれのインサート受けスロット内に切削インサートを順次挿入するたびに減少する所定の可撓性を有している。特に、小さな直径を有する切削工具では、最後の切削インサートを挿入するのに十分に弾性部材を変位させることができない程度にまで前記可撓性が低下する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本願の主題の第1態様によれば、反対の前方方向及び後方方向を規定する本体中心軸線を有し、かつ、本体中心軸線回りに溝加工工具本体が回転方向に回転可能である、溝加工工具本体が提供され、前記溝加工工具本体は、
円盤状のカッター部分であって、
反対の前方カッター部分側面及び後方カッター部分側面と、前方カッター部分側面及び後方カッター部分側面の間に延在するカッター部分周辺面と、
角度的に離間したN個のクランプ部分であって、Nは1より大きい整数であり、各クランプ部分は、前記前方カッター部分側面及び前記後方カッター部分側面並びに前記カッター部分周辺面に開口する周辺に配置されたインサート受けスロットを有する、クランプ部分と、
互いに対向し、かつ、前記インサート受けスロットによって離間された弾性クランプ部材及び下部ジョー部材であって、前記弾性クランプ部材は、前記インサート受けスロット内に切削インサートを弾性的に保持するように構成されている、弾性クランプ部材及び下部ジョー部材と、備える円盤状のカッター部分と、
前記後方カッター部分側面から後方に突出するシャンク部分であって、前記シャンク部分は、前記本体中心軸線周りに周方向に延在するシャンク周辺面を備える、シャンク部分と、を備え、
前記カッター部分は、前記前方カッター部分側面内に凹み、かつ、前記インサート受けスロットの各々まで延在する可撓性凹部をさらに備える。
【0004】
本願の主題の第2態様によれば、回転溝加工切削工具が提供され、前記回転溝加工切削工具は、
上述したタイプの溝加工工具本体と、
前記弾性クランプ部材のうちの1つによって前記インサート受けスロットの各々に取り外し可能かつ弾性的にクランプされる切削インサートと、を備える。
【0005】
上記は概要であること、及び、以下に説明する特徴は、本願の主題に任意の組み合わせで適用可能であってもよいことが理解され、例えば、以下の特徴のいずれも、溝加工工具本体及び回転溝加工切削工具に適用可能であってもよい:
【0006】
前記カッター部分はN個のカッターサブ部分に分割されてもよい。前記可撓性凹部と前記カッター部分周辺面との両方を通るカッター径方向正中面において、前記カッターサブ部分は互いに離間されてもよい。
【0007】
前記可撓性凹部は、前記本体中心軸線を中心にN回回転対称を示してもよい。
【0008】
前記可撓性凹部は、前記後方カッター部分側面を越えて前記シャンク部分内まで、前記後方方向に延在してもよい。
【0009】
前記可撓性凹部は前記本体中心軸線に交差してもよい。
【0010】
前記可撓性凹部は、それぞれの狭いネック部分で各インサート受けスロット内に移行してもよい。
【0011】
前記可撓性凹部は、めくら孔であってもよく、かつ、前記前方カッター部分側面にのみ開口していてもよい。
【0012】
各インサート受けスロットは、前記カッター部分周辺面まで延在する端部を有する細長いスロット周辺面によって規定されてもよい。前記可撓性凹部は、前記インサート受けスロットを接続する凹部ベース面と、その各々が、前記凹部ベース表面から、周方向に隣接する2つのインサート受けスロットの前記スロット周辺面の間の前記前方カッター部分側面まで延在するN個の凹部周壁面と、を備えてもよい。
【0013】
前記凹部ベース面は、前記本体中心軸線に対して垂直に配向されてもよい。前記凹部周壁面は、前記本体中心軸線に平行に配向されてもよい。
【0014】
前記凹部ベース面は、フィレットを形成する交線で前記凹部周壁面の各々に交差してもよい。
【0015】
前記溝加工工具本体は、前記後方カッター部分側面と前記シャンク周辺面との交線に形成された環状溝をさらに備えてもよい。
【0016】
前記カッター部分及び前記シャンク部分は、前記溝加工工具本体が単一のワンピース構造を有するように一体的に形成されてもよい。
【0017】
任意の所定のクランプ部分について、前記弾性クランプ部材は、前記回転方向において前記下部ジョー部材の前方に配置されてもよい。
【0018】
前記シャンク部分は、前記カッター部分に隣接する前記シャンク周辺面内に凹み、かつ、前記シャンク周辺面に開口する、角度的に離間したN個の前方シャンク凹部を備えてもよい。各インサート受けスロットの径方向内側部分は、その片側でそれぞれの前方シャンク凹部に合流してもよい。
【0019】
各クランプ部分の前記弾性クランプ部材はそれぞれの前方シャンク凹部に軸線方向に隣接してもよい。
【0020】
前記シャンク部分は、前記前方シャンク凹部と周方向に交互に配置され、かつ、前記カッター部分に軸線方向に隣接してもよい、周方向に角度的に離間したN個の非凹状前方シャンク部分をさらに備えてもよい。
【0021】
前記本体中心軸線に沿った方向において、前記本体中心軸線と前記シャンク周辺面との間に延在する仮想半径線は、前記本体中心軸線を中心とし、かつ、シャンク部分直径を有する仮想シャンク部分円のシャンク部分半径を規定してもよい。前記カッター部分は、前記本体中心軸線を中心とし、かつ、カッター部分直径を有する仮想外接カッター部分円を規定してもよい。
【0022】
前記本体中心軸線に沿った方向において、前記仮想シャンク部分円はすべての前記インサート受けスロットに交差してもよい。
【0023】
各インサート受けスロットは、前記下部ジョー部材上に配置されたスロット下部ジョー当接面を備える細長いスロット周辺面によって規定されてもよい。前記本体中心軸線に沿った方向において、前記仮想シャンク部分円は前記スロット下部ジョー当接面に交差してもよい。
【0024】
前記スロット周辺面は、前記弾性クランプ部材上に配置されたスロットクランプ部材当接面をさらに備えてもよい。前記本体中心軸線(B)に沿った方向において、前記スロットクランプ部材当接面は前記仮想シャンク部分円の径方向外側に配置されてもよい。
【0025】
前記本体中心軸線に沿った前記溝加工工具本体の端面視において、前記スロット下部ジョー当接面及び前記スロットクランプ部材当接面は、前記可撓性凹部に向かう方向に互いに向かって収束し、鋭角なスロット当接角を規定してもよい。
【0026】
前記カッター部分はN個のカッターサブ部分に分割されてもよい。各クランプ部分は、前記弾性クランプ部材と前記下部ジョー部材との間に周方向に配置されたストップ部材を備えてもよい。前記ストップ部材及び前記弾性クランプ部材は、同じ前記カッターサブ部分上に配置されてもよい。
【0027】
Nは、2≦N≦9の条件を満たしてもよい。前記カッター部分は、前記本体中心軸線を中心とし、かつ、カッター部分直径を有する仮想外接カッター部分円を規定してもよい。前記カッター部分直径は35mm以下であってもよい。
【0028】
Nは、N=3の条件を満たしてもよい。前記カッター部分直径は約20mmであってもよい。
【0029】
前記切削インサートは、インサート長手方向軸線を規定する方向に長手方向に長尺であってもよく、前記切削インサートは、反対のインサート上面及びインサート下面と、前記インサート上面及び前記インサート下面の間に延在するインサート周辺面と、を備え、前記インサート周辺面は、前記インサート上面及び前記インサート下面を接続する2つの反対のインサート端面と、前記インサート上面及び前記インサート下面を接続する2つの反対のインサート側面と、を備える。前記切削インサートは、前記インサート長手方向軸線を包含するインサート長手方向平面であって、前記インサート側面の間を通過し、かつ、前記インサート上面及び前記インサート下面並びに反対の前記インサート端面に交差するインサート長手方向平面を備えてもよい。前記切削インサートは、前記切削インサートの一端に配置された切削部分を備えてもよく、前記切削部分は、前記インサート上面と2つの前記インサート端面のうちの1つとの交線に形成された切れ刃を備える。前記インサート上面及び前記インサート下面は、それぞれ、インサート上部当接面及びインサート下部当接面を備えてもよい。前記インサート受けスロットは、前記下部ジョー部材上に配置されたスロット下部ジョー当接面を備える細長いスロット周辺面によって規定されてもよい。スロット周辺面は、前記弾性クランプ部材上に配置されたスロットクランプ部材当接面をさらに備えてもよい。前記スロットクランプ部材当接面は前記インサート上部当接面に当接してもよい。前記スロット下部ジョー当接面は前記インサート下部当接面に当接してもよい。
【0030】
前記切削部分の反対の前記インサート端面は、前記インサート下面よりも前記インサート上面に近いインサートストップ面をさらに備えてもよく、前記インサートストップ面は平面である。各クランプ部分は、前記弾性クランプ部材と前記下部ジョー部材との間に周方向に配置されたストップ部材を備えてもよい。前記カッター部分は、N個のカッターサブ部分に分割されてもよい。前記ストップ部材及び前記弾性クランプ部材は、同じ前記カッターサブ部分上に配置されてもよい。前記スロット周辺面は、前記ストップ部材上に配置されたスロット径方向ストップ面をさらに備えてもよい。スロット径方向ストップ面はインサートストップ面に当接してもよい。
【0031】
前記切削インサートは、有効切削部分及び非有効切削部分の2つの切削部分を含むように追加の切削部分を備えてもよく、2つの前記切削部分が前記切削インサートの両端に形成される。前記インサート上面は、前記インサート上面が、有効インサート上部当接面及び非有効インサート上部当接面の2つのインサート上部当接面を含むように追加のインサート上部当接面を含んでもよく、前記有効インサート上部当接面は前記非有効インサートの上部当接面よりも前記有効切削部から離れて配置され、前記スロットクランプ部材当接面は前記有効インサート上部当接面に当接する。前記有効切削部分の前記インサート端面は、前記切削インサートが有効インサートストップ面及び非有効インサートストップ面の2つのインサートストップ面を含むように追加のインサートストップ面を含んでもよく、前記有効インサートストップ面は前記非有効切削部分に配置され、前記スロット径方向ストップ面は前記有効インサートのストップ面に当接する。
【0032】
本願をよりよく理解するため、かつ、本願が実際にどのように実施され得るかを示すため、ここで添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本願に係る、切削インサートがインサート受けスロット内に弾性的にクランプされる、回転溝加工切削工具の前方斜視図である。
図2図1に示す回転溝加工切削工具の分解斜視図である。
図3図1の溝加工工具本体の正面図である。
図4図3の溝加工工具本体の側面図である。
図5図3の詳細図である。
図6図4のVI-VI線に沿った溝加工工具本体の断面図である。
図7】本願に係る切削インサートの斜視図である。
図8図7に示す切削インサートの側面図である。
図9図7に示す切削インサートの平面図である。
図10図7に示す切削インサートの端面図である。
図11】挿入キーの斜視図である。
図12図11の詳細図である。
図13】インサート受けスロットのうちの1つに切削インサートのうちの1つを完全に挿入する前の、カッター部分がカッター部分レセプタクル内に配置された、図12に示す類似した図である。
【0034】
説明を簡単かつ明確にするため、図面に示される要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが理解される。例えば、要素の一部の寸法は、明確にするために他の要素と比較して誇張されている場合があり、又は、いくつかの物理的コンポーネントが1つの機能ブロック又は要素に含まれている場合がある。さらに、適切と考えられる場合、対応の要素又は類似の要素を示すために図面間で参照番号が繰り返される場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明では、本願の主題のさまざまな態様が説明される。説明の目的で、特定の構成及び詳細は、本願の主題の完全な理解を提供するために十分に詳細に記載される。ただし、本明細書で提示される特定の構成及び詳細がなくても本願の主題を実施可能であることも当業者には明らかである。
【0036】
まず図1及び図2に着目すると、本発明の一態様を示す、溝加工切削作業に適した、工具中心軸線Aを有する回転溝加工切削工具20が示されている。回転溝加工切削工具20は、工具中心軸線Aを中心に回転対称を示してもよい。回転溝加工切削工具20は、典型的には鋼から作製され得る溝加工工具本体22を有している。回転溝加工切削工具20は、典型的には超硬合金から形成され得る切削インサート24を有している。切削インサート24は、溝加工工具本体22に取り外し可能に取り付けられている。
【0037】
本明細書で使用される場合の「回転溝加工切削工具」という用語は、金属切削分野でそのような切削工具に適用可能な他の用語、例えば「溝加工カッター」、「溝加工フライスカッター」、「スリッティングカッター」、「溝削りカッター」、「スロットミルカッター」、「溝フライスカッター」、「側面フライスカッター」、「円盤フライスカッター」などで言い換えられてもよい。
【0038】
ここで、溝加工工具本体22に関する本願の主題の別の態様を示す図3及び図4を参照する。溝加工工具本体22は、工具中心軸線Aに一致する本体中心軸線Bを有している。本体中心軸線Bは、反対の前方方向D及び後方方向Dを規定する。本体中心軸線Bは、そこを中心に溝加工工具本体22が回転方向Rに回転可能な回転軸線を形成する。
【0039】
本説明及び特許請求の範囲全体を通じて「前方」及び「後方」という用語の使用は、それぞれ、図4の下方及び上方の本体中心軸線Bの方向における相対位置を指すことを理解されたい。さらに、「軸線方向」及び「径方向」という用語は、特に別段特定されない限り、工具中心軸線Bに関するものである。
【0040】
図3に示すように、溝加工工具本体22は円盤状のカッター部分26を含む。カッター部分26は、反対の前方カッター部分側面28a及び後方カッター部分側面28bと、前方カッター部分側面28a及び後方カッター部分側面28bの間に延在するカッター部分周辺面30と、を含む。図4の側面視に見られるように、後方カッター部分側面28bは後方カッター径方向平面P’を規定し、前方カッター部分側面28aは前方カッター径方向平面P’’を規定する。カッター部分周辺面30は、本体中心軸線B周りに周方向に延在している。本体中心軸線Bは、前方カッター部分側面28a及び後方カッター部分側面28bにその中央部分で交差している。溝加工工具本体22の正面視において、本体中心軸線Bに沿った方向(すなわち、図3)において、カッター部分26は、本体中心軸線Bを中心とし、かつ、カッター部分直径DCを有する仮想外接カッター部分円CCを規定する。
【0041】
図4に示すように、前方カッター部分側面28a及び後方カッター部分側面28bの間、又は、より具体的には、対応の径方向平面P’、P’’の間で測定された軸線方向において、カッター部分26はカッター部分幅WCを有している。本願の主題のある実施形態によれば、前方カッター部分側面28a及び後方カッター部分側面28bは、平面であってもよく、かつ、本体中心軸線Bに対して垂直であってもよい。
【0042】
カッター部分26は、本体中心軸線B周りに角度的に離間したN個のクランプ部分32を含み、Nは、1より大きい整数である。N個のクランプ部分32は、前方方向及び後方方向において本体中心軸線Bに沿った同一の軸線方向位置に配列されてもよい。図3に見られるように、各クランプ部分32は、カッター部分周辺面30に切り屑ガレット33を有してもよく、その結果、カッター部分26は正面視において完全な円形でなくてもよい。
【0043】
図5を参照すると、各クランプ部分32は、互いに反対で、かつ、インサート受けスロット38によって互いに離間した弾性クランプ部材34及び下部ジョー部材36を含む。すなわち、インサート受けスロット38は、弾性クランプ部材34と下部ジョー部材36との間に形成される。溝加工工具本体22の正面視において、弾性クランプ部材34及び下部ジョー部材36がインサート受けスロット軸線Cの両側に配置されるように、インサート受けスロット38はインサート受けスロット軸線Cに沿って延在する。弾性クランプ部材34は、下部ジョー部材36及びインサート受けスロット38よりも回転方向Rにおいて前方に配列されている。弾性クランプ部材34は、インサート受けスロット38内に切削インサート24を弾性的に保持するように構成されている。弾性クランプ部材34は、下部ジョー部材36に対して弾性的に変位可能である。言い換えると、各クランプ部分32は弾性を有している。米国特許第6,116,823号及び米国特許第8,388,270号に開示されているように、各クランプ部分32には、弾性クランプ部材34の回転方向前方に弾性スロットがないことに留意されたい。各インサート受けスロット38には、(ねじ山付きクランプねじを使用してカッター部分に切削インサートを取り外し可能に取り付けるための)ねじ孔がないことにさらに留意されたい。
【0044】
本願の主題のある実施形態によれば、各クランプ部分32は、弾性クランプ部材34と下部ジョー部材36との間に周方向に配置されてもよいストップ部材39を含んでもよい。一般的に言えば、ストップ部材39は、弾性クランプ部材34及び下部ジョー部材36の径方向内側にある。ストップ部材39の目的については本明細書において後述する。
【0045】
さらに図5を参照すると、クランプ部分32の側面視(すなわち、インサート受けスロット軸線Cに垂直)が示されており、インサート受けスロット38は、カッター部分周辺面30に開口している。したがって、インサート受けスロット38は周辺に配置されている。図4に戻ると、インサート受けスロット38は、前方カッター部分側面28a及び後方カッター部分側面28bの両側で横方向に開口している。インサート受けスロット38に関する「横方向」の文脈は、インサート受けスロット軸線Cに対して垂直であること、及びしたがって、本体中心軸線Bに対して全体的に平行な方向を意味することを理解されたい。
【0046】
各インサート受けスロット38は、カッター部分周辺面30まで延在する端部を有する細長いスロット周辺面40によって規定される。本明細書で後述するように、可撓性凹部が(スロット周辺面40を遮断するように)インサート受けスロット38まで延在しているので、スロット周辺面40は連続していないことに留意されたい。スロット周辺面40は、前方カッター部分側面28aと後方カッター部分側面28bとの間に延在している。スロット周辺面40は、切削インサート24上の対応の表面に当接するため、弾性クランプ部材34上に配置されたスロットクランプ部材当接面42を含む。スロット周辺面40は、切削インサート24上の対応の表面に当接するため、下部ジョー部材36上に配置されたスロット下部ジョー当接面44を含む。スロット周辺面40は、切削インサート24を正確な既定の径方向位置に位置決めするためのスロット径方向ストップ面46を含む。スロット径方向ストップ面46は径方向外側に面している。スロット径方向ストップ面46はストップ部材39上に配置されている。本願の主題のある実施形態によれば、スロット径方向ストップ面46は、スロットクランプ部材当接面42とスロット下部ジョー当接面44との間で周方向に配置されてもよい。
【0047】
図5を参照すると、インサート受けスロット38は、インサート受けスロット38の径方向最内部分に形成されたスロットキー部分50を含む。スロットキー部分50の目的の1つは、(当技術分野で知られているように)応力除去溝として機能することである。ただし、スロットキー部分50は、インサート受けスロット38(図示せず)から切削インサート24を取り出すときにキーの変位突起を受け入れる役割も果たせるように、通常の応力除去溝よりも大きな寸法を有している。さらに、スロットキー部分50は、その目的が応力除去溝としてのみである場合に通常必要とされるものよりもさらに回転方向前方に位置決めされている。例えば、インサートキー部分50の大部分は、スロット下部ジョー当接面44の延長線上に配置される。これにより、変位突起51aは、スロットキー部分50内に配置されていながら、切削インサート24の端部に当接することを可能にする。インサート受けスロット38は、弾性クランプ部材34に所望の弾性を付与するためのスロット弾性部分54を含む。スロット弾性部分54は、スロットキー部分50よりも回転方向前方に配置されている。
【0048】
図2及び図4に示すように、溝加工工具本体22は、後方カッター部分側面28bから突出するシャンク部分56を含む。すなわち、シャンク部分56はカッター部分26から後方に突出している。シャンク部分56は、本体中心軸線B周りに周方向に延在するシャンク周辺面58を含む。本願の主題のある実施形態によれば、溝加工工具本体22が単一のワンピース構造を有するように、すなわち、シャンク部分56及びカッター部分26が単一の材料の連続片から形成(例えば、機械加工)されるように、シャンク部分56がカッター部分26に一体的に形成されてもよい。シャンク部分56は、ほぼ円筒形の基本形状を有してもよい。シャンク部分56は、工具ホルダ(図示せず)の雌ねじに係合するための雄ねじ61を有してもよい。図4に最もよく示すように、溝加工工具本体22は、後方カッター部分側面28bとシャンク周辺面58との交線に形成された環状溝59を含んでもよい。
【0049】
図4及び図6に戻ると、本願の主題のある実施形態によれば、シャンク部分56は、シャンク周辺面58内に凹んでシャンク周辺面58に開口する、N個の前方シャンク凹部60を含んでもよい。すなわち、前方シャンク凹部60は、周辺に配置されてもよく、かつ、シャンク周辺面58の前端付近で径方向に凹状である。各前方シャンク凹部60は、カッター部分26に軸線方向に隣接してもよい。図面に示すこの非限定的な例では、前方シャンク凹部60は部分的に環状の溝59に配置される。前方シャンク凹部60は、本体中心軸線B周りで互いに角度的に離間されてもよい。
【0050】
本願の主題のある実施形態によれば、シャンク部分56は、(環状溝59内に配置されてもよいという事実にも拘わらず)凹状ではないシャンク周辺面58の一部によって形成されたN個の非凹状前方シャンク部分62を含んでもよい。前方シャンク凹部60と同様に、非凹状前方シャンク部分62が周辺に配置されてもよい。非凹状前方シャンク部分62は、周方向に隣接する2つの前方シャンク凹部60の間に、かつ、カッター部分26に軸線方向に隣接して配置されてもよい。非凹状前方シャンク部分62の数は、前方シャンク凹部60の数と一致してもよい。各非凹状前方シャンク部分62は、周方向に隣接する2つの前方シャンク凹部60の間に配置されてもよい。すなわち、前方シャンク凹部60及び非凹状前方シャンク部分62は周方向に交互に配置されてもよい。非凹状前方シャンク部分62は、本体中心軸線B周りで互いに角度的に離間されてもよい。
【0051】
図3に見られるように、本体中心軸線Bに沿った方向において、本体中心軸線Bとシャンク周辺面58との間に延在する仮想半径線は、本体中心軸線Bを中心とし、かつ、シャンク部分直径DSを有する仮想シャンク部分円CSのシャンク部半径RSを規定する。仮想シャンク部分円CSは、角度的に離間した複数の非凹状前方シャンク部62によって規定された外接円である。
【0052】
本願の主題のある実施形態によれば、各クランプ部分32の弾性クランプ部材34は、それぞれの前方シャンク凹部60に軸線方向に隣接してもよい。すなわち、弾性クランプ部材34の自由端はシャンク部分56のどの部分にも接続されていない。図4に見られるように、クランプ部材34の後向き表面34aは前方シャンク凹部60に面している。前方シャンク凹部60では、弾性クランプ部材34は、回転方向前方の非凹状前方シャンク部分62に対して、回転方向Rと反対の方向に周方向に片持ち支持されている。有利なことに、これにより、切削インサート24に対する強固なクランプ力を維持するために、切削インサート24が(下部ジョー部材36及び切削インサート24とともに)ワークピースに接触するときに、弾性クランプ部材34がわずかに曲がることを可能にする。下部ジョー部材36の径方向内側部分は、非凹状前方シャンク部分62のうちの1つに接続されてもよい。
【0053】
本願の主題のある実施形態によれば、各インサート受けスロット38の径方向内側部分は、その一方の側(すなわち、後方カッター部分側面28bに開口するインサート受けスロット38の側)でそれぞれの前方シャンク凹部60に合流する。
【0054】
本願の主題のある実施形態によれば、本体中心軸線Bに沿った方向において、仮想シャンク部分円CSは、すべてのインサート受けスロット38に交差してもよい。特に、任意の所定のクランプ部分(32)について、仮想シャンク部分円CSは、スロット下部ジョー当接面44に交差してもよい。スロットクランプ部材当接面42は、仮想シャンク部分円CSの径方向外側に配置されてもよい。スロット径方向ストップ面46は仮想シャンク部分円CSの径方向内側に配置されてもよい。スロットキー部分50及び弾性部分54はシャンク部分円CSの径方向内側に配置されてもよい。
【0055】
カッター部分26は、前方カッター部分側面28a内に凹んだ可撓性凹部64をさらに含む。言い換えると、可撓性凹部64は、前方カッター径方向平面P’’に対して凹状であるので、前方カッター部分側面28aに開口している。有利なことに、可撓性凹部64は、クランプ部材34によって切削インサート24に加えられるクランプ力を増大させる。
【0056】
図4に見られるように、本願の主題のある実施形態によれば、可撓性凹部64は、シャンク部分56内へ後方方向Dに延在してもよい。したがって、可撓性凹部64は、後方方向Dに後方カッター径方向平面P’を越えて(すなわち、過ぎて)延在してもよい。可撓性凹部64は、カッター部分幅WCよりも大きい、後方方向Dに測定された凹部深さDを有している。可撓性凹部64はめくら孔であってもよい。すなわち、可撓性凹部64は、前方カッター部分側面28aのみに開口している。可撓性凹部64は、本体中心軸線Bを中心とするN回回転対称性を示してもよい。
【0057】
図5を参照すると、本願の主題のある実施形態によれば、可撓性凹部64は凹部ベース面66を含んでもよい。凹部ベース面66はインサート受けスロット38を接続してもよい。すなわち、凹部ベース面66は、すべてのインサート受けスロット38まで延在してもよい。凹部ベース面66は、本体中心軸線Bに対して垂直に配向されてもよい。可撓性凹部64は、N個の凹部周壁面68を含んでもよい。各凹部周壁面68は、周方向に隣接する2つのインサート受けスロット38のスロット周辺面40の間で凹部ベース面66から前方カッター部分側面28aまで延在してもよい。周壁面68は、スロット周辺面40の径方向内側の範囲を制限する。凹部周壁面68は本体中心軸線Bに平行に配向されてもよい。凹部ベース面66は、フィレット69を形成する交線で凹部周壁面68の各々に交差してもよい。
【0058】
本願の主題のある実施形態によれば、可撓性凹部64は、前方カッター部分側面28aの中央に配置されてもよい。可撓性凹部64は本体中心軸線Bに交差してもよい。具体的には、本体中心軸線Bは凹部ベース面66に交差してもよい。凹部周壁面68は本体中心軸線B周りに延在してもよい。
【0059】
図5に見られるように、本願の主題のある実施形態によれば、本体中心軸線Bに沿った溝加工工具本体22の端面視において、スロット下部ジョー当接面44及びスロットクランプ部材当接面42は、可撓性凹部64に向かう方向に互いに収束し、鋭角なスロット当接角βを規定してもよい。
【0060】
可撓性凹部64は、インサート受けスロット38の各々まで延在する(すなわち、交差する)。言い換えると、可撓性凹部64は、インサート受けスロット38を互いに接続する。これにより、カッター部分26はN個のカッターサブ部分70に分割される。可撓性凹部64とカッター部分周辺面30との両方を通過するカッター径方向正中面Pに沿った断面視において、カッターサブ部分70は互いに離間している。本願の主題のある実施形態によれば、2つの隣接するカッターサブ部分70は、それぞれのインサート受けスロット38及び可撓性凹部64の一部によって互いに離間してもよい。各カッターサブ部分70は、カッター部分周辺面30の一部、第1インサート受けスロット38からのスロット周辺面40の一部、凹部周壁面68のうちの1つ、及び、第2インサート受けスロット38からのスロット周辺面40の一部、互いに隣接している第1インサート受けスロット38及び第2インサート受けスロット38によって、周方向に順番に規定されてもよい。
【0061】
図5を参照すると、本願の主題のある実施形態によれば、可撓性凹部64は、それぞれの狭いネック部分72において各インサート受けスロット38内に移行してもよい。本体中心軸線Bに沿った溝加工工具本体22の端面視において、直線Lは、ネック部分72において2つの隣接するカッターサブ部分70の間に延在し、かつ、最小寸法を有し、可撓性凹部64と受けスロット38との境界を互いに定める。スロットキー部分50は直線Lに隣接してもよい。図3で最もよく見えるように、可撓性凹部64及びスロットキー部分50は、N個の角頂点を有する星型多角形の全体形状を有している。
【0062】
各カッターサブ部分70は、後述するように、カッター部分26に切削インサート24を取り付けるときに、挿入キー52の変位突起51aを受け入れるための突起孔31を含んでもよい。
【0063】
各クランプ部分32は、2つの隣接する(すなわち、異なる)カッターサブ部分70にまたがっていることに留意されたい。具体的には、任意の所定のクランプ部分32について、クランプ部材34及び下部ジョー部材36は、2つの隣接するカッターサブ部分70上に配置され、かつ、互いに周方向に面する。本願の主題のある実施形態によれば、ストップ部材39及び弾性クランプ部材34は同じカッターサブ部分70上に配置されてもよい。
【0064】
ここで、切削インサート24を示す図7図10を参照する。切削インサート24は、インサート長手方向軸線Aを規定する方向に長手方向に長尺に延びている。切削インサート24は、反対のインサート上面84及びインサート下面86と、インサート上面84及びインサート下面86の間に延在するインサート周辺面88と、を含む。インサート上面84及びインサート下面86は、インサート受けスロット38上の対応の表面に当接するためのインサート上部当接面84a及びインサート下部当接面86aをそれぞれ含む。図8に見られるように、本願の主題のある実施形態によれば、インサート横方向軸線Eに沿った切削インサート24の側面視において、インサート上部当接面84a及びインサート下部当接面86aは、鋭角なインサート当接角度αを形成する切れ刃96aから遠ざかる方向に相互に向かって収束している。インサート下面86は、インサート長手方向軸線Aに平行な直線のインサート仮想線L1を包含してもよい。図9を参照すると、インサート上部当接面84a及び/又はインサート下部当接面86aは、切削インサート24の横方向における切削インサート24の変位を防止するために、スロットクランプ部材当接面42及び/又はスロット下部ジョー当接面44の形状に一致する角柱形状を有してもよい。
【0065】
インサート周辺面88は、インサート上面84とインサート下面86とを接続する2つの反対のインサート端面90を含む。インサート周辺面88は、インサート上面84とインサート下面86とを接続する反対の2つのインサート側面92を含む。インサート長手方向軸線Aは、インサート端面90に交差し、かつ、インサート側面92(図9)間に延在し、かつ、インサート上面84とインサート下面86(図8)との間にも延在する。インサート横方向軸線Eは、インサート端面90の間の中間でインサート長手方向軸線Aに対して垂直に延在し、かつ、2つのインサート側面92に交差し、切削インサート24のインサート横方向を規定する。インサート中心軸線Fは、インサート端面90の間の中間でインサート長手方向軸線Aに対して垂直に延在し、かつ、インサート上面84及びインサート下面86に交差する。インサート正中面Mには、インサート長手方向軸線Aとインサート横方向軸線Eとが包含される。
【0066】
図9に見られるように、インサート長手方向軸線Aは、インサート中心軸線Fを包含するインサート長手方向平面P1上に位置し、インサート側面92の間の中間を通過し、かつ、両端面90に交差する。インサート長手方向平面P1及びインサート長手方向軸線Aに対して垂直なインサート中心平面P2は、インサート中心軸線F及びインサート横方向軸線Eを包含する。本願の主題のある実施形態によれば、切削インサート24は、インサート中心軸線Fを中心に180°回転対称を有してもよい。切削インサート24は、インサート中心平面P2又はインサート長手方向平面P1に対して鏡面対称でなくてもよい。
【0067】
切削インサート24は、切削インサート24の一端に配置された切削部分94aを含む。本願の主題のある実施形態によれば、切削インサート24は、切削インサート24が、有効切削部分94a(切削部分94aを構成する)及び非有効切削部分94bの2つの切削部分94a、94bを含むように1つの追加の切削部分94bをさらに含んでもよい。2つの切削部分94a、94bは切削インサート24の両端に配置される。言い換えると、切削インサート24は、その両端が同じ形状を有しており、かつ、インサート中心軸線Fを中心に180°回転することによって割出し可能である(すなわち、有効切削部分94aが非有効切削部分94bになり、またその逆も同様である)。2つの切削部分94a、94bは同一であってもよい。以下の説明では、単一の切削部分94aに関連する任意の特徴が、存在する場合に他の切削部分94bにも関連し得ることが理解される。
【0068】
切削部分94aは、切削部分94aに配置された切れ刃96aを含む。具体的には、切れ刃96aは、インサート上面84と2つのインサート端面90のうちの一方との交線に形成されている。切れ刃96aに隣接するインサート端面90の一部は逃げ面として機能する。同様に、切れ刃96aに隣接するインサート上面84の一部はすくい面として機能する。切削インサート24がインサート受けスロット38内に取り外し可能かつ弾性的にクランプされるとき、有効切削部分94aの切れ刃96aは、カッター部分26の径方向投影を越えて(すなわち、仮想外接カッター部分円CCを越えて)配置される。好ましくは、このような径方向投影は1mm以下である。図9に見られるように、インサート長手方向平面P1は切れ刃96aと交差する、すなわち、切れ刃96aはインサート長手方向平面P1の両側に延在する。
【0069】
各インサート側面92は、切削部分94aにおいて外側に膨出している。すなわち、切削部分94aは、切削インサート24の両側から、インサート長手方向平面P1から遠ざかる方向(すなわち、インサート長手方向平面P1に垂直)に横方向に突出する2つのインサート横方向延長部98を含む。切れ刃96aは、2つのインサート横方向延長部98上に延在している。両面が同じ形状を有している切削インサート24がインサート受けスロット38内に保持されるとき、インサート受けスロット38の径方向内側部分に配置された非有効切削部分94bに属する幅広の横方向延長部98が前方シャンク凹部60内に突出する。したがって、前方シャンク凹部60の1つの機能は、非有効な横方向延長部98を収容し、及びしたがって、非有効な横方向延長部98にクリアランスを提供することである。
【0070】
切削部分94aの反対側のインサート端面90は、インサート受けスロット38から切削インサート24を取り出すために使用されるキー(図示せず)の変位突起に当接するように構成されたインサートキー面102を有するインサート凹状部分100を含む。インサートキー面102は、インサート上面84よりもインサート下面86に近い。本願の主題のある実施形態によれば、インサートキー面102は、インサート正中面Mの完全に下方に配置されてもよい。インサート長手方向軸線Aに垂直な切削インサート24の側面視(すなわち、図8)において、インサートキー表面102は凹状に湾曲してもよい。
【0071】
本願の主題のある実施形態によれば、切削部分94aの反対のインサート端面90は、スロット径方向ストップ面46に接触するためのインサートストップ面104aを含んでもよい。インサートストップ面104aは、インサート下面86よりもインサート上面84に近くてもよい。インサートストップ面104aは平面であってもよい。図に見られるような両面が同じ形状を有している切削インサートでは、両方の反対の端面90に、キー表面102を有する凹状部分100が設けられることが理解される。同様に、非有効切削部分94bの反対のインサート端面90はインサートストップ面104bを含み、その結果、切削インサート24は、2つのインサートストップ面104a、104b、すなわち、非有効切削部分94bに配置された有効インサートストップ面104a(インサートストップ面104aを構成する)、及び、有効切削部分94bに配置された非有効インサートストップ面104aを含む。
【0072】
さらに、切削インサート24の両面が同一の形状である構成では、切削インサート24は、追加の切れ刃96bを含み、その結果、切削インサート24は、2つの切れ刃、すなわち、有効切削部分96aに配置された有効切れ刃96a(切れ刃96aを構成する)と、非有効切削部分94bに配置された非有効切れ刃96bと、を有している。インサート上面84は追加のインサート上部当接面84bを含んでもよく、その結果、インサート上面84は、2つのインサート上部当接面、すなわち、有効インサート上部当接面84a(インサート上部当接面84aを構成する)及び非有効インサート上部当接面84bを含む。2つのインサート上部当接面84a、84bは、インサート長手方向軸線Aに沿って、互いに軸線方向にオフセットされてもよい。有効インサート上部当接面84aは、非有効インサート上部当接面84bよりも有効切削部分94aから遠くに配置されてもよい。各インサート上部当接面84a、84bは、インサート長手方向軸線Aに向かってその最も近い切れ刃96a、96bに向かう方向に傾斜しており、すなわち、インサート正中面Mに向かって傾斜している。したがって、2つのインサート上部当接面84a、84bは互いに対して傾斜している(すなわち、非平行である)。
【0073】
図1に戻ると、回転溝加工切削工具20が組み立てられた状態では、切削インサート24は、弾性クランプ部材34のうちの1つによってインサート受けスロット38の各々に取り外し可能かつ弾性的にクランプされる。スロット径方向ストップ面46はインサートストップ面104aに当接する。スロットクランプ部材当接面42はインサート上部当接面84aに当接する。スロット下部ジョー当接面44はインサート下部当接面86aに当接する。知られているように、スロットクランプ部材当接面42及び/又はスロット下部ジョー当接面44は、2以上の離間した当接サブ面を含んでもよく、及びしたがって、各々が文字通り単一の当接面でなくてもよい。図面(例えば、図3)に示すこの非限定的な例では、スロット下部ジョー当接面44は、長手方向に離間した2つの当接サブ面を含む。切削インサート24の両面が同じ形状を有する構成において。スロットクランプ部材当接面42は、有効切れ刃96aから最も遠いインサート上部当接面84aに当接する。
【0074】
図11及び図12を参照すると、インサート受けスロット38内に切削インサート24を挿入することは、挿入キー52を用いて達成されてもよい。挿入キー52はキーハンドル74を有している。挿入キー52は、キーハンドル74に接続され、かつ、挿入キー52の反対側の端部に配置されたキーヘッド部分76を有している。キーハンドル74は、キー回転軸線K回りにキーヘッド部分76に対して回転可能である。キーヘッド部分76はキーベース面78を含む。挿入キー52は、キーベース面78から突出する2つの反対の固定された固定アーム80を有している。挿入キー52はまた、キーベース面78から突出し、かつ、互いに対向する、変位可能な変位突起51aと固定挿入アーム51bとを有している。2つの対向するキー固定アーム80と変位突起51aと挿入アーム51bとはすべて、互いに離間してカッター部分レセプタクル82を形成する。
【0075】
図13を参照すると、切削インサート24はインサート受けスロット38内に緩く配置される。間もなく有効になる切削部分94aにあるインサート端面90の隣に挿入アーム51bが配置され、かつ、切削インサート24が挿入されているインサート受けスロット38の遠位側のカッターサブ部分70上に配置された突起孔31内に変位突起51aが挿入された状態で、カッター部分26がカッター部分レセプタクル82に挿入される。前方切削部分側面28aとキーベース面78とは互いに面している。2つの固定アーム80はその周辺でカッター部分26に係合する。キー回転軸線K回りのキーハンドル74の回転により、変位突起51aが挿入アーム51bに向かって変位し、その結果、変位突起51aと挿入アーム51bとの間の突起距離PDが減少する。挿入アーム51bは、最初に切削インサート24と接触し、その後、切削インサート24が完全に挿入され(すなわち、スロット径方向ストップ面46がインサートストップ面104aに当接し)、かつ、クランプ部材34によってしっかりクランプされるまで、インサート受けスロット38内に切削インサート24を押し込む。
【0076】
可撓性凹部64は、クランプ部材34に十分な可撓性を有利に提供し、その結果、クランプ部材34がしっかりと切削インサート24をクランプするのに十分な剛性を有しながら、すべての切削インサート24をそれぞれのインサート受けスロット38内に挿入することを可能にするように、クランプ部材34が十分に変位させられ得ることに留意されたい。この利点は、特に小径工具(例えば、カッター部分直径DCが35mm以下の場合)に関連する。そのような小径の切削工具では、インサート受けスロットの数が制限されており、かつ、Nが2以上かつ9以下(すなわち、Nは、2≦N≦9の条件を満たす)。特に、Nは3に等しくてもよく(すなわち、N=3)、かつ、カッター部分直径DCは約20mmであってもよい。ただし、本発明はそのような範囲及び/又は値に限定されない。
【0077】
本願の主題をある程度詳細に説明してきたが、以下に特許請求する本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、さまざまな変更及び修正がなされてもよいことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】