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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】燃料電池スタック用の単セル構成体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20240507BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20240507BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20240507BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20240507BHJP
   H01M 8/0226 20160101ALI20240507BHJP
   H01M 8/0221 20160101ALI20240507BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20240507BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/0273
H01M8/0258
H01M8/0271
H01M8/0226
H01M8/0221
H01M8/0213
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562670
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2022060480
(87)【国際公開番号】W WO2022223657
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021203983.9
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・ダン
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・アダム
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA12
5H126AA13
5H126AA15
5H126EE11
5H126GG05
5H126GG18
(57)【要約】
本発明は、燃料電池スタック用の単セル構成体(13)に関し、フレーム付き膜電極接合体(14)を備え、フレーム付き膜電極接合体(14)は電気化学活性領域(23)を含み、電気化学活性領域(23)はフレーム(18)と接着されている2つのガス拡散層(17)および触媒被覆膜(16)からなるものであり、およびバイポーラ板(1)を備え、バイポーラ板(1)は電気化学活性領域(23)に対応する流れ領域(25)内に流れ分散および誘導要素(6、7)を有するものであり、バイポーラ板(1)の少なくとも一方の表面において、フレーム(18)とバイポーラ板(1)との間のシール(21)を収容するためのシール溝(22)が、流れ領域(25)を取り囲むバイポーラ板(1)の縁領域内で流れ領域(25)の周りを一周する。本発明による単セル構成体は、バイポーラ板(1)の少なくとも一方の表面で、シール溝(22)と流れ領域(25)との間に、フレーム(18)と膜電極接合体(15)との間の結合領域(20)のための収容溝(26)が配置されていることを特徴とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック用の単セル構成体(13)であって、フレーム付き膜電極接合体(14)を備え、前記フレーム付き膜電極接合体(14)は電気化学活性領域(23)を含み、前記電気化学活性領域(23)はフレーム(18)と接着されている2つのガス拡散層(17)および触媒被覆膜(16)からなるものであり、およびバイポーラ板(1)を備え、前記バイポーラ板(1)は前記電気化学活性領域(23)に対応する流れ領域(25)内に流れ分散および誘導要素(6、7)を有するものであり、前記バイポーラ板(1)の少なくとも一方の表面において、前記フレーム(18)と前記バイポーラ板(1)との間のシール(21)を収容するためのシール溝(22)が、前記流れ領域(25)を取り囲む前記バイポーラ板(1)の縁領域内で前記流れ領域(25)の周りを一周する、前記単セル構成体(13)において、
前記バイポーラ板(1)の少なくとも一方の表面で、前記シール溝(22)と前記流れ領域(25)との間に、前記フレーム(18)と前記膜電極接合体(15)との間の結合領域(20)のための収容溝(26)が配置されていることを特徴とする、前記単セル構成体(13)。
【請求項2】
前記収容溝(26)が、前記バイポーラ板(1)の両方の表面に対応して配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の単セル構成体(13)。
【請求項3】
前記収容溝(26)の深さが、または前記バイポーラ板(1)を積み重ねるときに2つの対応する収容溝(26)が互いに向かい合う場合にはそれらの共同での深さが、前記フレーム(18)と前記膜電極接合体(15)との間の前記結合領域(20)の平均厚さ以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の単セル構成体(13)。
【請求項4】
前記バイポーラ板(1)の少なくとも一方の前記表面での前記収容溝(26)内において、前記流れ領域(25)の周囲を囲む前記収容溝(26)の少なくとも一区間で、前記収容溝(26)のうち前記流れ領域(25)に面した側で、押込み突出部(27)が設けられており、前記押込み突出部(27)の高さが、それぞれの前記収容溝(26)の深さより小さいことを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の単セル構成体(13)。
【請求項5】
前記押込み突出部(27)が、前記収容溝(26)の溝底に段として形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の単セル構成体(13)。
【請求項6】
前記押込み突出部(27)が、前記収容溝(26)の一方にのみ配置されていることを特徴とする、請求項2および請求項4または5に記載の単セル構成体(13)。
【請求項7】
前記押込み突出部(27)が、前記収容溝(26)内で、前記流れ領域(25)の流れ場(7)のみに隣接して配置されていることを特徴とする、請求項4、5、または6に記載の単セル構成体(13)。
【請求項8】
前記押込み突出部(27)が、不連続の個々の突出部の連続からなることを特徴とする、請求項4から7のいずれか一項に記載の単セル構成体(13)。
【請求項9】
前記収容溝(26)と前記流れ領域(25)との間に、一周して閉じている平らな領域(28)が、前記バイポーラ板(1)の両方の表面に設けられており、前記平らな領域(28)が、前記流れ分散および誘導要素(6、7)と面一であるか、または前記流れ分散および誘導要素(6、7)より突出していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の単セル構成体(13)。
【請求項10】
前記バイポーラ板(1)が、プラスチックマトリックス内での炭素含有材料から形成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の単セル構成体(13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルでより詳しく定義されている方式に基づく燃料電池スタック用の単セル構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックは、原理的には先行技術から公知である。その際燃料電池スタックでは、多数の単セルが積み重なっており、かつバイポーラ板を介して流体的に結合しており、かつスタック全体を電気的に直列接続するために相互に電気接触している。この構造は、とりわけPEM燃料電池の場合、一般的に公知であり、かつ通常である。その際単セル構成体の各々が、いわゆる膜電極接合体(MEA)と、バイポーラ板の一方とを有する。完全なスタックを形成するために、これらの単セルが積み重ねられると、膜電極接合体が、それぞれ2つの隣接する単セル構成体の隣接するバイポーラ板の間にある。
【0003】
特許文献1は、注入されるシール材によって相互に結合されるバイポーラ板および膜電極接合体よりなるこのような構造の製造方法を示している。またこのシール材により、積み重ねたときに単セル構成体の互いに対する密封が達成される。この構造の問題点は、シール材の領域内で、その他の領域内より大きな厚みがあることにより、複数の単セル構成体を積み重ねると、この領域内では隣接する領域内より高い押圧力がバイポーラ板に作用するということであり、隣接する領域内では、膜電極接合体の媒体供給のための、例えば流路のような流れ誘導および分散構造が配置されている。この不均一な負荷は、構造の機械的不具合を引き起こし得る。
【特許文献1】DE102017219507A1
【0004】
これは、とりわけ膜電極接合体がいわゆるフレーム付き膜電極接合体として形成されている場合に当てはまり、フレーム付き膜電極接合体では、本来の膜電極接合体に加えてフレームが存在しており、このフレームと、膜電極接合体の個々の層が接着されている。この場合、フレームと膜電極接合体の個々の層とが相互に接着されている領域内では、接着剤により、可撓性がまたさらに損なわれ、したがってここでは特に高い押圧力が予想され得る。同時にこれは、活性面およびバイポーラ板の流れ分散または流れ案内要素の領域内での押圧力を減少させ、したがってここでは、媒体が、シールと流れ領域との間のバイパス内を流れることにより、膜電極接合体の電気化学活性面の領域内では流れないという危険性が存在する。膜電極接合体のガス拡散層(GDL)へのバイポーラ板の面的な当接がさらに悪化する。これにより電気抵抗が上昇する。これがより多くの廃熱およびより悪い効率に至る。
【0005】
また、さらなる先行技術については特許文献2を参照されたい。ここでも、相応に形成された流れ案内要素によって流れの分散が改善されるバイポーラ板が記載されている。
【特許文献2】EP2054965B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって本発明の課題は、冒頭に挙げた問題が回避または最小化される、フレーム付き膜電極接合体を備えた改善された単セル構成体を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明により、請求項1における、ここではとりわけ請求項1の特徴部分における特徴を有する単セル構成体によって解決される。有利な形態および変形形態は、これに従属する従属請求項から明らかである。
【0008】
本発明による単セル構成体の場合はその中で、バイポーラ板と、一方では中央の電気化学活性領域および他方ではこの電気化学活性領域を取り囲むフレームを有するフレーム付き膜電極接合体とが組み立てられる。その後、単セル構成体が同方向で積み重ねられ、これにより、単セル構成体の膜電極接合体の表面がそれぞれ、隣接する単セル構成体のバイポーラ板の裏側に当接する。これに関しては通常、バイポーラ板の縁領域内で、少なくとも一方のそれらの表面に、シールを収容するためのシール溝が設けられている。フレーム付き膜電極接合体の場合、このシールはフレームとバイポーラ板との間にある。これに関しては、例えばシールをシール溝に挿入することができるか、または相応のシール材がバイポーラ板および/またはフレームに塗られていることにより、組み立てたときにこの材料がシール溝の領域内に入り込み、かつ積み重ねられた構造を確実に密封する。
【0009】
本発明によれば、バイポーラ板の少なくとも一方の側で、シール溝と、流れ分散および流れ誘導要素を含む流れ領域との間にさらなる溝が設けられている。この溝は、フレームと膜電極接合体との間の結合領域のための収容溝として用いられる。つまりこの収容溝は、媒体を分散および集合させるための流れ場および分散領域を含む本来の流れ領域の外にある。よってこの収容溝は、フレームと膜電極接合体の層との間の結合領域に対応して配置されている。この結合領域内では、フレームが、典型的には膜電極接合体の触媒被覆膜および2つのガス拡散層と接着されている。この接着の領域内では、すべての4つの材料または層が少なくとも一部の区間で重なり合っている。また結合領域内では、それによって接着される層より低い可撓性および圧縮性を有するのが典型的である接着剤が用いられる。つまり実際には、膜電極接合体の電気化学活性面の周りを一周するように、フレームと膜電極接合体との結合領域で、一種の膨らみが生じる。これが、冒頭に説明した問題を引き起こす。つまり、これらすべての問題が、追加的な収容溝によって回避され得る。これにより、結合領域の上述の膨らみのための場所がバイポーラ板の領域内に作られることで、膨らみに関わりなく、バイポーラ板の領域内での、ここではとりわけバイポーラ板の流れ領域内での、比較的均質な押圧力分布が達成され得る。
【0010】
この結合領域のための収容溝は、既に言及したように、バイポーラ板の少なくとも一方の側で形成されていてもよい。この場合、一方のバイポーラ板は収容溝を有し、もう一方のバイポーラ板は平らに形成されているので、これは実際には結合領域を相応に変形させる。しかしフレーム付き膜電極接合体の材料は実際には、このことがさらなる問題を引き起こさない程度にたいてい可撓性である。とはいえ本発明による単セル構成体の非常に好適な一変形形態によれば、収容溝が、バイポーラ板の両方の表面で対応するように配置されていることが企図されていてもよい。そのような、両方の表面で対応するように配置された収容溝は、この場合、単セル構成体を積み重ねたときには、結合領域を、部分的には一方のおよび部分的にはもう一方の隣接するバイポーラ板に収容することを可能にする。
【0011】
この収容溝の深さは、有利な一形態によれば、フレームと膜電極接合体との間の結合領域の平均厚さより大きく形成されていてもよい。これに関し、収容溝の場合、収容溝の深さは、この収容溝の深さであろう。バイポーラ板を積み重ねると互いに向き合う2つの対応している収容溝の場合にはもちろん、それらの共同での深さであり、この深さは、バイポーラ板の各表面では、それぞれ、そうでなければ必要とされた深さの半分のみでよいであろう。両方の場合に、結合領域の区間では、バイポーラ板への押圧力はほぼまったく生じないか、または少なくとも周りの領域より高い押圧力は生じない。これにより、流れ領域内での膜電極接合体の非常に均質な当接が可能になる。これは、膜電極接合体とバイポーラ板との間の、反応物の均一な分布および面的に非常に均質かつ低い電気的接触抵抗をもたらす。
【0012】
しかし、このような構造でのさらなる問題はまた、燃料電池または単セル構成体の寿命にわたって、膜電極接合体の個々の層、つまり触媒被覆膜および両方のガス拡散層が、結合領域を出発点として時々、層間剥離することである。このような層間剥離に対処するため、本発明による単セル構成体の非常に好適な一変形形態によれば、バイポーラ板の少なくとも一方の表面での収容溝内で、流れ領域の周りの収容溝の周長の少なくとも一区間で、収容溝のうち流れ領域に面した側で、押込み突出部が設けられることがまた企図されてもよい。ここでこのような押込み突出部は、フレーム付き膜電極接合体の材料を一部の領域で、詳しくはとりわけ膜電極接合体の3つの層が分岐しており、かつフレームと接着されている移行領域内で、押し込んで機械的に結束させる役割をもつ。これに関し、押込み突出部の高さは、この押込み突出部が配置されているそれぞれの収容溝の深さより小さい。つまりこの押込みは、原理的には、収容溝の所定の部分区間内で達成され、収容溝が完全になくされた場合と同等に高い力が発生することはない。流れ領域の側に配置されることにより、その際第一義的には膜電極接合体の3つの層を結束させ、追加的にフレームを有する領域には、さほどの押圧力は掛からない。
【0013】
この押込み突出部は、本発明による単セル構成体の非常に好適な一変形形態によれば、収容溝の溝底に段として形成されていてもよい。これに関してはとりわけ、それぞれのバイポーラ板内での2つの対応している収容溝の場合は、溝底の一方が相応の押込み突出部を有していれば事足りる。押込み突出部が、流れ領域の流れ場のみに隣接して配置されていることがさらに企図されてもよく、なぜならここでは結合領域がこの構造の全長で、層間剥離に対して特に脆弱だからである。その際押込み突出部は、押込み突出部が配置されている領域内で、連続的に形成されていてもよく、個々の直線状に相次ぐ区間、点、またはその類似物から成っていても、それが層間剥離の阻止にとって既に十分なのでかまわない。
【0014】
ここで、媒体の、流れ場に隣接している膜電極接合体の電気化学活性面の周りへのバイパス効果に対処するために、収容溝と流れ領域との間に、一周して閉じている平らな領域が、バイポーラ板の両方の表面に設けられており、この平らな領域が、流れ分散および誘導要素と面一であるか、または流れ分散および誘導要素より突出していることがさらに企図されてもよい。つまりこの平らな一周して閉じている領域は、まるで一種の塀のように流れ領域を取り囲む。これにより、単セル構成体の電気化学活性領域の周囲での、流れ領域とシール溝との間のバイパス内での、供給される反応物の流れが阻止される。これに関し、流れ領域内での押圧力の分布に悪影響を及ぼさないためには、平らな領域の、流れ分散および誘導要素に相当する高さで十分である。しかしながら、僅かな突出部としての形態も同様に考えられるであろう。
【0015】
これは、それぞれアノード側またはカソード側のための流れ領域を有し、かつそれらの互いに向き合う表面には冷却剤流れ場を有する2つの層よりなるバイポーラ板の、一般的に公知の構造の場合に、特に有利である。この場合、カソード側および/またはアノード側の、とりわけ両側の流れ領域は、バイポーラ板のそれぞれの層内の貫通孔、いわゆる「バックフィード・スロット」を介し、その層のもう一方の表面とつながっており、このもう一方の表面の領域ではこの場合媒体接続口とつながっているであろう。これにより、媒体の本来の供給および排出は、これらの層の間に、したがっていわばバイポーラ板の内部に移される。「バックフィード・スロット」については例としてWO2008/061094A1を参照されたい。「バックフィード・スロット」を有するこのような構造により、流れ領域全体の周りを中断なく一周する平らな領域または僅かな突出部が、バイパス流を阻止するために特に効率的に実現され得る。
【0016】
その際この説明を一見すると、フレーム付き膜電極接合体を備えた本発明による単セル構成体のバイポーラ板に生じている幾何形状は、比較的複雑な感じがする。しかしながら、プラスチックマトリックス内での炭素含有材料よりなるバイポーラ板の形態では、このようなバイポーラ板またはそれらの半体は典型的には型枠または押し型内で製造され、したがって収容溝、押込み突出部、および/またはバイパス流を阻止するための突出部を追加的に取り入れるための手間は比較的簡単に実行され得るので、その形成は比較的簡単に実現され得る。このような炭素含有材料をベースとするバイポーラ板も、本発明による単セル構成体のバイポーラ板の第一義的な形態であるので、達成され得る利点は、作製コストの上昇にはるかに勝る。これに関し収容溝は、必要とされる材料量を減らすという利点を有し、なぜなら板内の体積がより少ない材料で「満たされ」ているからである。これにより、比較的大きな個数では、板の特性が改善されると同時に経済的に特筆すべき節減が可能である。
【0017】
燃料電池スタック用の本発明による単セル構成体のさらなる有利な形態は、以下に図を参照しながらより詳しく説明する例示的実施形態からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】先行技術に基づく可能なバイポーラ板の平面図である。
図2】先行技術に基づくバリエーションでの切断線A-Aに基づいて、単セル構成体および追加的なバイポーラ板の構造の加圧されていない状態を示す図である。
図3】追加的なバイポーラ板を備えた本発明による単セル構成体の第1の可能な実施形態の加圧された状態を切断線A-Aに倣って示す図である。
図4】追加的なバイポーラ板を備えた本発明による単セル構成体の第2の可能な実施形態の加圧された状態を切断線A-Aに倣って示す図である。
図5】追加的なバイポーラ板を備えた本発明による単セル構成体の第3の可能な実施形態の加圧された状態を切断線A-Aに倣って示す図である。
図6】第3の実施形態のバイポーラ板の切断線A-Aに倣った一部分の三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1の表現では、そのカソード側から見たバイポーラ板1が例示的に示されている。この構造は、例えば先行技術または概略図に相当し、ここでは単に、個々の領域の解説に役立つ。その際現実の構造は、相互に結合されて互いの間に後の図でまた認識できる冷媒流れ場24を挟み込んでいる2つの板半体または板層から、すなわちカソード側の層およびその後ろに配置されたアノード側の層からなる。
【0020】
ここで例示的に図示したカソード側の図では、空気つまり酸素が、ここでは媒体入口として用いられる媒体接続口2を介して導かれる。この媒体接続口2は、ここでは図示されていない燃料電池スタック全体を貫通しており、したがって、この媒体接続口2を介し、燃料電池スタック内のすべての単セル構成体13(図2以降を参照)が、相応に酸素を供給され得る。向かい側には、カソード排ガスを再び流出させる媒体接続口3が認識できる。多くの場合、媒体接続口2、3は、ここに示した図では裏側に、つまりバイポーラ板1の層の間にある流路4を介して貫通孔5とつながっている。この場合この貫通孔5の方はまた、流れ分散要素8を備えた分散領域6とつながっている。この場合、媒体は、バイポーラ板1の下で矢印によって表された媒体の流れの方向Sに、酸素が流れ込む媒体接続口2を出発点とし流路4を通って、「バックフィード・スロット」とも呼ばれる貫通孔5を経て分散領域6内へと流れる。開放的な、つまり流れをブロックしないで誘導し、ここでは瘤として形成されている流れ分散要素8により、流れはバイポーラ板1の断面全体へと分散され、その後、単セル構成体13の活性面に隣接する流れ場7を通って流れる。流れ場7では、平行に走っているリブの形態での流れ誘導要素29によって流れが案内される。この流れはその後、さらなる分散領域6内に達することで、その後ここでも同様に5で表された貫通孔と、バイポーラ板1の板半体の間にある流路4とを経て媒体接続口3内に達し、そこで再び流出する。これに関し、両方の分散領域6および流れ場7は、バイポーラ板1のそれぞれの表面で流れ領域25を形成している。
【0021】
この貫流に関しては、バイポーラ板1の反対側で水素の供給および排出に用いられる媒体接続口9、10に対し、同等のことが当てはまる。その間には、媒体接続口11、12を介して相応に供給される冷媒流れ場24がある。
【0022】
ここで以下の図2図5はそれぞれ、単セル構成体13を積み重ねたときの効果を解説できるように、バイポーラ板1およびフレーム付き膜電極接合体14(MEFA-membrane electrode frame assembly)からなる単セル構成体13ならびに追加的なバイポーラ板1の、概略的に示唆された一部分を示している。この断面図では、フレーム付き膜電極接合体14が、一方では、膜電極接合体15(MEA)からなることが認識できる。この膜電極接合体15は、CCM(catalyst coated membrane)とも呼ばれる触媒被覆膜16および2つのガス拡散層17(GDL)から構成されている。フレーム付き膜電極接合体14の縁領域では、触媒被覆膜16がその際一部の区間でフレーム18に重なっており、フレーム18は、典型的にはPEN(ポリエチレンナフタラート)から形成されている。図2の表現では、膜電極接合体15の個々の層16、17およびフレーム18を相互に結合する接着剤19が、クロスハッチングによって示唆されている。ここで、フレーム付き膜電極接合体14のうち図2では20で印されたこの結合領域は、フレーム付き膜電極接合体14のそれ以外の部分より大きな厚さを実際には有する。同時に、この構造は接着剤19の領域内では、まったく圧縮可能でないか、またはフレーム付き膜電極接合体14の、接着剤19を取り囲んでいる領域内、とりわけ電気化学活性領域よりも少ない強さで圧縮可能である。
【0023】
図2での先行技術の表現ではその際、加圧されていない構造が示されている。この構造がここで加圧されると、シール材21が、一方のバイポーラ板1のシール溝22と、もう一方のバイポーラ板1の面または任意選択でまたさらなるシール溝との間で加圧されて、この構造を外側に向かって密封する。同時に、図2の表現では結合領域20の右側で、ここでは23で表されている電気化学活性面が、それぞれのバイポーラ板1のそれぞれの流れ場7と加圧され、これに関してはこの流れ場7のうち、それぞれ幾つかの流路および流れ誘導要素29のみが認識できる。また、バイポーラ板1の両方の流れ場7の間には、バイポーラ板1の内部に、符号24を有する幾つかのその流路の表示によって表されている冷媒流れ場が認識できる。分離線30は、実際には通常の、積み重なって相互に結合された2つの層よりなるバイポーラ板1の構造を示している。
【0024】
ここでつまり、図2に基づく表現での両方のバイポーラ板1を加圧すると、一方ではシール材21により、この構造がシール溝22の領域内で密封され、同時に、フレーム付き膜電極接合体14の結合領域20への非常に強い押圧力が生じる。これは、両方のバイポーラ板1の高い機械的負荷を引き起こす。最悪の場合、これは機械的ダメージに、亀裂またはそれに類することに至る可能性があり、亀裂は、アノード側およびカソード側を流体工学的に相互につなぎ得るかもしれず、それだけでなく構造全体の気密性も疑問視させ得るので、最も望ましくない。さらなる欠点は、流れ場7の領域内での、隣接する結合領域20内よりかなり小さな押圧力であり、これにより電気化学活性領域23内では、流れ場20の領域内での比較的小さな押圧力に基づいて、媒体が横にそれて、例えば結合領域内をまたは本来の流れ場7と結合領域との間を流れるという危険性がある。これにより電気化学活性面は、流れる媒体によって少なくとも部分的に迂回され、これは、このような単セル構成体13から形成された燃料電池の性能およびなかでも出力密度に関する重大な欠点である。押圧力が下がるにつれ、バイポーラ板1とガス拡散層17との間の電気的接触抵抗もさらに望ましくなく上昇する。
【0025】
これらの問題に対する解決策が図3に示した構造により提供される。シール溝22と、電気化学活性領域23に対応している流れ領域25との間で、バイポーラ板1の表面の少なくとも一方に、ここでは好ましくはバイポーラ板1の各々の両方の表面に、フレーム付き膜電極接合体14の結合領域20のための収容溝26が配置されている。この収容溝26はその際、いわばフレーム付き膜電極接合体14を一周する膨らみを形成している結合領域が、この収容溝26内に収容され得るという非常に決定的な利点を有する。理想的な場合には、収容溝26の深さは、結合領域20に押圧力がまったくまたはほとんど掛からない程度であり、これにより、一方では流れ領域25内の流れ場7と、他方では膜電極接合体15の電気化学活性領域23との間で、可能な限り均質な押圧力が達成され得る。これは、媒体のために設けられた領域内での媒体の可能な限り均一な分布と、均質かつ低い電気的接触抵抗とを同様に保証する。
【0026】
実際には、膜電極接合体15の構造の層間剥離が時々起こる。これは結合領域20内で、詳しくは接着剤19によりフレーム18と結合するために膜電極接合体15の3つの層16、17が分岐している領域内でたいてい始まる。原理上の制約により、両方のガス拡散層17と、触媒被覆膜16との間に間隔が存在しているこの領域内で、層間剥離の問題がスタートすることが多い。それに対処するために、図4に基づく単セル構成体13の実施バリエーションでは、押込み突出部27が、収容溝26の少なくとも一方の溝底に設けられている。この押込み突出部27は、収容溝26の深さより明らかに小さな高さを有するように形成されており、よって押込み突出部27は、確かに膜電極接合体24の3つの層を機械的に結束させるが、冒頭で挙げた先行技術において説明されているような、この領域内での、隣接する流れ場7の領域内より高い押圧力の問題は引き起こさない。
【0027】
この構造でのさらなるバリエーションとして、図4は両側のシール溝22を示している。
【0028】
既に言及したように、流れ場7の領域内でのより均質な押圧力により、流れ場7の周りへの万一のバイパス流の危険性は既に明らかに減っている。それにもかかわらず、単セル構成体13のバイポーラ板1の、補充的な、図5に示したバリエーションは、流れ領域25の周りを隙間なく一周する平らな領域28が設けられていることを企図し得る。流れ場7または流れ領域25の周囲のバイパス流へと媒体がそれるのを阻止するため、この平らな領域28により、外側に向かっての流れ領域全体の密封が達成され得る。この平らな領域28はその際、両側で設けられている。平らな領域28は、これらの側の一方では、図5で示唆しているように、バイポーラ板1の縁の全体的に平らな面としても形成されていてもよい。しかしながら、図3図5に示したおよび/または図3図5に基づいて説明したすべての個々の態様の、任意の相互の組合せも同様に考えられる。
【0029】
最後に図6の表現では、三次元のバイポーラ板1からの一部分が、カソード側に向いた視線方向で示されている。この場合、図1での表現に相応する媒体接続口の2つ、ここでは媒体接続口11および2が認識できる。これらの媒体接続口はそれぞれ、各々のシール溝31に取り囲まれている。媒体接続口2は、バイポーラ板1の内部を走っているのでここでは認識できない流路4を介して貫通孔5とつながっており、貫通孔5は、ここでは3つの開口部の形態で形成されている。貫通孔5には、媒体の流れの方向においてその後ろに、点状のその構造8を備えて6で表された分散領域が、その後ろに流れ場7が続いている。その際流れ領域25全体が、バイポーラ板1の縁領域内でシール溝22に取り囲まれている。そしてシール溝22には、内側に向かって収容溝26と、28で表されたバイパスバリケードとしての平らな領域とが続いている。押込み突出部27が、ここで図示された例示的実施形態では、本来の流れ場7に隣接して連続的に認識できる。押込み突出部27は、ここでは破線32によって示唆されているように、分散領域6の周りへと任意選択で続行され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック用の単セル構成体(13)であって、フレーム付き膜電極接合体(14)を備え、前記フレーム付き膜電極接合体(14)は電気化学活性領域(23)を含み、前記電気化学活性領域(23)はフレーム(18)と接着されている2つのガス拡散層(17)および触媒被覆膜(16)からなるものであり、およびバイポーラ板(1)を備え、前記バイポーラ板(1)は前記電気化学活性領域(23)に対応する流れ領域(25)内に流れ分散および誘導要素(29)を有するものであり、前記バイポーラ板(1)の少なくとも一方の表面において、前記フレーム(18)と前記バイポーラ板(1)との間のシール(21)を収容するためのシール溝(22)が、前記流れ領域(25)を取り囲む前記バイポーラ板(1)の縁領域内で前記流れ領域(25)の周りを一周する、前記単セル構成体(13)において、
前記バイポーラ板(1)の少なくとも一方の表面で、前記シール溝(22)と前記流れ領域(25)との間に、前記フレーム(18)と前記膜電極接合体(15)との間の結合領域(20)のための収容溝(26)が配置され
前記収容溝(26)が、前記バイポーラ板(1)の両方の表面に対応して配置されている、前記単セル構成体(13)。
【請求項2】
前記収容溝(26)の深さが、または前記バイポーラ板(1)を積み重ねるときに2つの対応する収容溝(26)が互いに向かい合う場合にはそれらの共同での深さが、前記フレーム(18)と前記膜電極接合体(15)との間の前記結合領域(20)の平均厚さ以上であることを特徴とする、請求項に記載の単セル構成体(13)。
【請求項3】
前記バイポーラ板(1)の少なくとも一方の前記表面での前記収容溝(26)内において、前記流れ領域(25)の周囲を囲む前記収容溝(26)の少なくとも一区間で、前記収容溝(26)のうち前記流れ領域(25)に面した側で、押込み突出部(27)が設けられており、前記押込み突出部(27)の高さが、それぞれの前記収容溝(26)の深さより小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載の単セル構成体(13)。
【請求項4】
前記押込み突出部(27)が、前記収容溝(26)の溝底に段として形成されていることを特徴とする、請求項に記載の単セル構成体(13)。
【請求項5】
前記押込み突出部(27)が、前記収容溝(26)の一方にのみ配置されていることを特徴とする、請求項に記載の単セル構成体(13)。
【請求項6】
前記押込み突出部(27)が、前記収容溝(26)内で、前記流れ領域(25)の流れ場(7)のみに隣接して配置されていることを特徴とする、請求項に記載の単セル構成体(13)。
【請求項7】
前記押込み突出部(27)が、不連続の個々の突出部の連続からなることを特徴とする、請求項に記載の単セル構成体(13)。
【請求項8】
前記収容溝(26)と前記流れ領域(25)との間に、一周して閉じている平らな領域(28)が、前記バイポーラ板(1)の両方の表面に設けられており、前記平らな領域(28)が、前記流れ分散および誘導要素(29)と面一であるか、または前記流れ分散および誘導要素(29)より突出していることを特徴とする、請求項1または2に記載の単セル構成体(13)。
【請求項9】
前記バイポーラ板(1)が、プラスチックマトリックス内での炭素含有材料から形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の単セル構成体(13)。
【国際調査報告】