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特表2024-519450抗ガレクチン-9抗体及びその治療的使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】抗ガレクチン-9抗体及びその治療的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240507BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240507BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 T
C07K16/18 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563935
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2022027127
(87)【国際公開番号】W WO2022232641
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/182,521
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/193,357
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/313,879
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478599
【氏名又は名称】ピュアテック・エル・ワイ・ティ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PURETECH LYT, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリポヴィッチ,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】エレンコ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ペイドン,ヘザー
(72)【発明者】
【氏名】コース,クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
例えば、単独療法として、または免疫チェックポイント阻害薬との併用療法として、抗ガレクチン-9抗体を使用して、固形腫瘍(例えば、膵管腺癌(PDAC)、結腸直腸癌(CRC)、肝細胞癌(HCC)、胆管癌(CAA)、腎細胞癌(RCC)、尿路上皮癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、または他の消化管固形腫瘍)を処置するための方法が、本明細書で開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍を処置するための方法であって、前記方法が、それを必要とする対象に有効量のヒトガレクチン-9に結合する抗体(抗ガレクチン-9抗体)を投与することを含み、前記抗ガレクチン-9抗体が、配列番号1に記載の軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2に記載の軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号3に記載の軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、ならびに/または、配列番号4に記載の重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5に記載の重鎖相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号6に記載の重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、前記抗ガレクチン-9抗体が、約0.2mg/kg~約32mg/kgの用量で前記対象に投与され、
前記対象が、以下の特徴:
(i)切除可能ながんがない、
(ii)SARS-CoV-2に感染していない、
(iii)活動性の脳転移または軟髄膜転移がない、
(iv)切除不能な転移性癌を有し、これは、腺癌、任意に、扁平上皮癌である、
のうちの1つ以上を有する、前記方法。
【請求項2】
前記抗ガレクチン-9抗体が、2週に1回~6週に1回、任意に、2週に1回、約3mg/kg~約15mg/kgまたは約0.2mg/kg~約16mg/kgの用量で、前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗ガレクチン-9抗体が、約0.2mg/kg、約0.6mg/kg、約0.63mg/kg、約2mg/kg、約4mg/kg、約6mg/kg、約6.3mg/kg、約8mg/kg、約10mg/kg、約12mg/kg、または約16mg/kgの用量で、2週に1回~6週に1回、任意に、2週に1回、対象に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗ガレクチン-9抗体が、約650mg~約1120mgの用量で、2週に1回~6週に1回、任意に、2週に1回、投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗ガレクチン-9抗体が、約650mg~約700mgの用量で、2週に1回~6週に1回、任意に、2週に1回、または約1040mg~約1120mgの用量で、2週に1回~6週に1回、任意に、2週に1回、前記対象に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固形腫瘍を処置するための方法であって、それを必要とする対象に有効量のヒトガレクチン-9に結合する抗体(抗ガレクチン-9抗体)を投与することを含み、前記抗ガレクチン-9抗体が、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2のアミノ酸配列を含むLC相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むLC相補性決定領域3(CDR3)を含む軽鎖可変領域(VL)を含む軽鎖、ならびに
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHC相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変領域(VH)を含む重鎖を含み、
前記抗ガレクチン-9抗体が、週1回、約0.2mg/kg~約32mg/kgの用量で、対象に投与される、前記方法。
【請求項7】
前記抗ガレクチン-9抗体が、週1回、約10mg/kg~約16mg/kgの用量で、前記対象に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗ガレクチン-9抗体が、週1回、10mg/kgまたは16mg/kgの用量で、前記対象に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗ガレクチン-9抗体が、週1回、約650mg~約1120mgの用量で、前記対象に投与される、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗ガレクチン-9抗体が、週1回、約650mg~約700mg、または週1回、約1040~約1120mgの用量で、前記対象に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記固形腫瘍が、転移性固形腫瘍である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記固形腫瘍が、膵管腺癌(PDAC)、結腸直腸癌(CRC)、肝細胞癌(HCC)、胆管癌(CAA)、腎細胞癌(RCC)、尿路上皮癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、または胃腸(GI)固形腫瘍である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗ガレクチン-9抗体が、静脈内注入で前記対象に投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗ガレクチン-9抗体のVが、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗ガレクチン-9抗体のVが、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗ガレクチン-9抗体が、全長抗体である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗ガレクチン-9抗体が、IgG1分子またはIgG4分子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗ガレクチン-9抗体が、野生型ヒトIgG4対応物と比較して改変されたFc領域を有するヒトIgG4分子である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記改変Fc領域が、配列番号14のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗ガレクチン-9抗体が、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、前記抗ガレクチン-9抗体を含む処置と同時に他の抗がん療法を受けていない、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、さらに、免疫チェックポイント阻害薬を前記対象に投与することを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫チェックポイント阻害薬が、PD-1に結合する抗体である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
PD-1に結合する前記抗体が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、チスレリズマブ、ドスタルリマブ、またはセミプリマブである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、任意の事前の一連の治療においていかなる抗PD-1剤または抗PD-L1薬にも曝露されておらず、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)及び/もしくは欠損性ミスマッチ修復(dMMR)、またはそれらの組み合わせがない、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
PD-1に結合する前記抗体が、ニボルマブであり、これが、240mgの用量で、2週に1回、前記対象に投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記チェックポイント阻害薬が、前記対象が前記抗ガレクチン-9抗体を投与される日に、前記対象に投与される、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記チェックポイント阻害薬及び前記抗ガレクチン-9抗体が、連続2日間前記対象に投与される、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記チェックポイント阻害薬の投与が、前記抗ガレクチン-9抗体の投与前に実施される、請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、1つ以上の事前の抗がん療法を受けている、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ以上の事前の抗がん療法が、化学療法、免疫療法、放射線療法、生物学的薬剤を含む療法、またはそれらの組み合わせを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、前記1つ以上の事前の抗がん療法により疾患が進行しているか、または前記1つ以上の事前の療法に耐性がある、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、対照値と比較してガレクチン-9のレベルが上昇しているヒト患者である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト患者が、前記対照値と比較して、ガレクチン-9の血清または血漿レベルが上昇している、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒト患者が、ガレクチン-9を発現するがん細胞を有する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒト患者が、ガレクチン-9を発現する免疫細胞を有する、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
さらに、前記対象における副作用の発生を監視することを含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
副作用が観察される場合、さらに、前記抗ガレクチン-9抗体の用量、前記チェックポイント阻害薬の用量、またはその両方を低減することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象に、前記抗ガレクチン-9抗体を複数回投与し、後の用量が、前の用量よりも高い、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月30日に出願された米国仮出願第63/182,521号、2021年5月26日に出願された米国仮出願第63/193,357号、及び2022年2月25日に出願された米国仮出願第63/313,879号の米国特許法に基づく利益を主張し、これらのそれぞれは、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されている配列表を含み、全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年4月26日に作成された該ASCIIコピーは、112174-0211-NP009WO1_SEQ.txtという名称で、サイズは89,119バイトである。
【背景技術】
【0003】
免疫系は、がん細胞を認識して破壊する顕著な可能性を保持するが、腫瘍の免疫回避を制御する複雑なネットワークが広範な効果的な免疫調節の障害である(Martinez-Bosch N,et al.,Immune Evasion in Pancreatic Cancer:From Mechanisms to Therapy.Cancers(Basel).2018;10(1))。承認された免疫腫瘍学(IO)薬は、多くの腫瘍タイプ(例えば、メラノーマ、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、いくつかの結腸癌など)の生存期間を段階的に改善し、手術、化学療法、及び放射線療法に加えて、及びこれと併用して、標準治療として急速に組み込まれる。しかし、依然として、他の複数の進行性悪性腫瘍の処置及び生存率に大きなギャップがある。例えば、転移性膵管腺癌(PDACまたはPDA)、胆管癌(CCA)、及び結腸直腸癌(CRC)は、依然として、5年生存率が、それぞれ9%未満、5%未満、及び15%未満である。これらの消化管腫瘍は、非常に悪性度が高く、多くの患者は、発症時に進行期の疾患に罹患しており、承認された免疫療法の有効性は、最適ではない(Rizvi,et al.,Cholangiocarcinoma-evolving concepts and therapeutic strategies;Nat Rev Clin Oncol.2018;15(2):95-111;Kalyan,et al.,Updates on immunotherapy for colorectal cancer;J Gastrointest Oncol.2018;9(1):160-169)。
【0004】
第1世代チェックポイント阻害薬(抗PD-1、抗PD-L1、及び抗CTLA4)の成功は、新しいIO臨床試験の有効性及び差別化が爆発的に増加している(Holl et al.,Examining Peripheral and Tumor Cellular Immunome in Patients with Cancer;Front Immunol.2019;10:1767)。しかし、成功の一方で、残念ながら、開発の失敗も数多くあり、従って、依然として、より新規で効果的な処置が必要とされている。
【0005】
ガレクチン-9は、2つの炭水化物認識ドメイン(CRD)からなるタンデムリピートレクチンであり、1997年にホジキンリンパ腫(HL)に罹患している患者において初めて発見され、記載されている(Tureci et al.,J.Biol.Chem.1997,272,6416-6422)。3つのアイソフォームが存在し、細胞内または細胞外に位置することができる。ガレクチン-9レベルの上昇は、メラノーマ、ホジキンリンパ腫、肝細胞癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、及び腎明細胞癌を含むの幅広いがんで観察されている(Wdowiak et al.Int.J.Mol.Sci.2018,19,210)。腎臓癌では、ガレクチン-9発現が高い患者は、腫瘍サイズが大きくなり、より進行した疾患の進行を示した(Kawashima et al.;BJU Int.2014;113:320-332)。メラノーマでは、ガレクチン-9は、腫瘍の57%で発現され、健康な対照と比較して進行性メラノーマ患者の血漿中で有意に増加した(Enninga et al.,Melanoma Res.2016 Oct;26(5):429-441)。多くの研究は、予後マーカーとして、さらに最近では、潜在的な新薬標的としてのガレクチン-9の有用性が示されている(Enninga et al.,2016;Kawashima et al.BJU Int 2014;113:320-332;Kageshita et al.,Int J Cancer.2002 Jun 20;99(6):809-16、及びその中の参考文献)。
【0006】
ガレクチン-9は、接着、がん細胞の凝集、アポトーシス、及び走化性などの多くの細胞プロセスにおいて重要な役割を果たすことが記載されている。最近の研究は、例えば、Th1型応答、Th2分極化、及びマクロファージのM2表現型への分極化の負の調節を介して、腫瘍を支援する免疫調節におけるガレクチン-9の役割を示している。この研究は、ガレクチン-9が、T細胞免疫グロブリン及びムチンタンパク質3(TIM-3)受容体との相互作用を通じてT細胞の直接的な不活化に関与していることを示した研究も含まれる(Dardalhon et al.,J Immunol.,2010,185,1383-1392;Sanchez-Fueyo et al.,Nat Immunol.,2003,4,1093-1101)。
【0007】
ガレクチン-9は、T細胞の分化を腫瘍抑制表現型に分極化させること、ならびに寛容原性マクロファージプログラミング及び適応免疫抑制を促進すること、にも役割を果たしている(Daley et al.,Nat Med.,2017,23,556-567)。膵管腺癌(PDAC)のマウスモデルでは、ガレクチン-9及び腫瘍微小環境(TME)の自然免疫細胞に見られる受容体デクチン-1の間のチェックポイント相互作用を遮断すると、TMEの膵臓における抗腫瘍免疫応答を増加させ、腫瘍の進行を遅らせることが示されている(Daley et al.,Nat Med.,2017,23,556-567)。ガレクチン-9は、M2型マクロファージの表面マーカーであるCD206に結合することもわかっており、その結果、肺癌における生存期間の延長及び再発リスクの低下に関連しているマクロファージ由来ケモカインであるCVL22(MDC)の分泌が低減する(Enninga et al,J Pathol.2018 Aug;245(4):468-477)。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、少なくとも部分的に、固形腫瘍(例えば、転移固形腫瘍)、例えば、膵管腺癌(PDAC)、結腸直腸癌(CRC)、肝細胞癌(HCC)、胆管癌(CAA)、腎細胞癌(RCC)、尿路上皮腫瘍、頭頸部癌、乳癌、肺癌、または他のGI固形腫瘍の処置レジメンの開発(単独か、または、抗PD-1抗体などのチェックポイント阻害薬のいずれかと組み合わせて、ヒトガレクチン-9に結合することが可能な抗体を含む)に基づいている。代替的または追加的に、本開示は、少なくとも部分的に、抗ガレクチン-9抗体G9.2-17(IgG4)が他の抗体治療薬と比較してヒト対象においてより速いクリアランス速度を有するという予期せぬ発見に基づいている。従って、治療効果を達成するための抗ガレクチン-9抗体の好適な血漿濃度、例えば、治療的全身曝露レベル、を確保する、週1回の投与予定を含む処置レジメンを開発した。
【0009】
従って、固形腫瘍を処置するための方法が本明細書に提供され、方法は、それを必要とする対象(例えば、標的固形腫瘍があるヒト患者)に、有効量のヒトガレクチン-9に結合する抗体(抗ガレクチン-9抗体)を投与することを含む。抗ガレクチン-9抗体は、週1回~6週に1回、約0.2mg/kg~約32mg/kg、例えば、週1回~6週に1回、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、6.3mg/kg、10mg/kg、または16mg/kgの用量で、対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体のいずれも、静脈内注入で対象に投与され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17(IgG4))は、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、6.3mg/kg、10mg/kg、または16mg/kgの用量で、2週に回~4週に1回、対象に投与され得る。いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体は、2週に1回対象に投与され得る。特定の実施形態では、抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17(IgG4))は、10mg/kgまたは16mg/kgの用量で、2週に1回~4週に1回(例えば、2週に1回)、対象に投与される。
【0011】
あるいは、G9.2-17(IgG4)などの抗Gal-9抗体は、約650mg~約1120mgの用量で、2~6週に1回、例えば、2週に1回、3週に1回、または4週に1回、対象に投与され得る。いくつかの例では、抗Gal-9抗体は、約650mg~約700mgの用量で、2~6週に1回、例えば、2週に1回、3週に1回、または4週に1回、対象に投与される。他の例では、抗Gal-9抗体は、約1040mg~約1120mgの用量で、2~6週に1回、例えば、2週に1回、3週に1回、または4週に1回、対象に投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17(IgG4))は、週1回、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、6.3mg/kg、10mg/kg、または16mg/kgの用量で、対象に投与される。具体的な実施形態では、抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17(IgG4))は、週1回、10mg/kgまたは16mg/kgの用量で、対象に投与される。あるいは、本明細書に開示の抗Gal-9抗体、例えば、G9.2-17(IgG4)は、週1回、約650mg~約1120mgの用量で、対象に投与され得る。例えば、抗Gal-9抗体は、週1回、10mg/kgの用量で、または週1回、約650~700mgの一定用量で、対象に投与することができる。あるいは、抗ガレクチン-9抗体は、週1回、16mg/kgの用量で、または週1回、約1040~1120mgの一定用量で、対象に投与することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、以下を含んでもよい:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2のアミノ酸配列を含むLC相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むLC相補性決定領域3(CDR3)を含む軽鎖可変領域(V)を含む軽鎖、ならびに
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5のアミノ酸配列を含むHC相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むHC相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変領域(V)を含む重鎖。
【0014】
いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体のVは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。代替的または追加的に、抗ガレクチン-9抗体のVは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの場合では、抗ガレクチン-9抗体は、全長抗体、例えば、IgG1またはIgG4分子である。いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体は、ヒトIgG4分子である。そのようなIgG4分子は、野生型ヒトIgG4対応物と比較して改変Fc領域を有し得る。いくつかの例では、改変Fc領域は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。具体例では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。そのような抗ガレクチン-9抗体は、本明細書に開示のG9.2-17(IgG4)であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法のいずれかにより処置されるべき固形腫瘍は、膵管腺癌(PDAC)、結腸直腸癌(CRC)、肝細胞癌(HCC)、胆管癌(CAA)、腎細胞癌(RCC)、尿路上皮、頭頸部癌、乳癌、肺癌、または他のGI固形腫瘍であってよい。いくつかの場合では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。いくつかの実施形態では、方法は、固形腫瘍、例えば、PDAC、CRC、HCC、またはCCAに罹患している対象に、ヒトガレクチン-9に結合する抗体(本明細書では、抗Gal9抗体または抗ガレクチン-9抗体と称する)の有効量を投与することを含む。いくつかの場合では、対象は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する:(i)切除可能ながんがない;(ii)SARS-CoV-2に感染していない;(iii)活動性の脳転または軟髄膜転移がない;(iv)切除不能な転移性癌があり、これは、腺癌であり、任意に、扁平上皮癌である。
【0017】
いくつかの実施形態では、対象は、抗ガレクチン-9抗体と同時に他の抗がん療法を受けていない。あるいは、方法は、さらに、対象に免疫チェックポイント阻害薬を投与することを含んでもよい。いくつかの例では、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1に結合する抗体である。例としては、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、チスレリズマブ、ドスタルリマブ、またはセミプリマブが挙げられる。いくつかの場合では、対象は、事前の任意の一連の治療において抗PD-1剤または抗PD-L1剤に曝露されておらず、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)及び/もしくはミスマッチ修復不全(dMMR)がなく、またはそれらの組み合わせである。
【0018】
一例では、PD-1に結合する抗体は、ニボルマブである。いくつかの場合では、ニボルマブは、240mgの用量で、2週に1回、対象に投与される。別の例では、PD-1に結合する抗体は、チスレリズマブである。いくつかの場合では、チスレリズマブは、約200mgの用量で、3週に1回、または約400mgの用量で、6週毎に、静脈内投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、約0.2mg/kg~約32mg/kg(例えば、約3mg/kg~約15mg/kgもしくは約2mg/kg~約16mg/kgもしくはそれを超える用量レベル、または、約0.2mg/kg~約15mg/kgもしくは約0.2~約16mg/kgもしくはそれを超える用量レベル)で、2~3週に1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、6.3mg/kg、8mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、もしくは16mg/kg、またはそれを超える用量レベルから選択される用量で、対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、もしくは16mg/kg、またはそれを超える用量レベルから選択される用量で、対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、6.3mg/kg、10mg/kg、もしくは16mg/kg、またはそれを超える用量レベルから選択される用量で、対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、2週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、もしくは16mg/kg、またはそれを超える用量レベルから選択される用量で、2週に1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、6.3mg/kg、10mg/kg、もしくは16mg/kg、またはそれを超える用量レベルから選択される用量で、2週に1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、1サイクルでは2週に1回、2サイクルでは2週に1回、3サイクルでは2週に1回、4サイクルでは2週に1回、または4サイクル超では2週に1回投与される。いくつかの実施形態では、処置期間は、0~3ヶ月、3~6ヶ月、12~24ヶ月、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、処置期間は、12~24ヶ月以上である。いくつかの実施形態では、サイクルは、3ヶ月~6ヶ月、または6ヶ月~12ヶ月、または12ヶ月~24ヶ月、またはそれ以上の期間にわたる。いくつかの実施形態では、サイクルの長さは、例えば、一時的または永続的に、より長い期間、例えば、3週間または4週間、に変更される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、静脈内注入で対象に投与される。いくつかの実施形態では、がんは、上述のがんのいずれかの転移性癌を含む転移性癌である。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体を投与することを含む処置方法は、他の任意の同時抗がん療法を含まない。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体を用いる処置方法は、別の同時抗がん療法を含む。従って、いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体を用いる処置方法は、さらに、免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-1に結合する抗体、例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、チスレリズマブ、ドスタルリマブ、またはセミプリマブである。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ニボルマブであり、これは、240mgの用量で、2週に1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ニボルマブであり、これは、2週間毎に約240mg、または、4週間毎に約480mgの用量で、対象に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、プレムブロリズマブであり、これは、3週に1回、200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、セミプリマブであり、これは、3週に1回、約350mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、チスレリズマブであり、これは、3週に1回、約200mgまたは6週毎に約400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ドスタルリマブであり、これは、3週に1回、約500mgの用量で、または6週に1回、約1000mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、静脈内注入で投与される。
【0021】
いくつかの場合では、対象は、(v)事前の任意の一連の治療において抗PD-1剤または抗PD-L1剤に曝露されておらず、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)及び/もしくはミスマッチ修復不全(dMMR)がなく、またはそれらの組み合わせである。いくつかの場合では、対象は、マイクロサテライト不安定性(MSI-H)及び/もしくはミスマッチ修復欠損(dMMR)、またはそれらの組み合わせを有する。
【0022】
いくつかの例では、チェックポイント阻害薬は、対象が抗ガレクチン-9抗体を投与される日に対象に投与される。あるいは、チェックポイント阻害薬及び抗ガレクチン-9抗体は、2日連続に対象に投与される。例えば、チェックポイント阻害薬の投与は、抗ガレクチン-9抗体の投与前に実施され、またはその逆も同様である。
【0023】
いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の事前の抗がん療法を受けている。いくつかの例では、1つ以上の事前の抗がん療法は、化学療法、免疫療法、放射線療法、生物学的薬剤を含む療法、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの場合では、対象は、事前の1つ以上の抗がん療法により疾患が進行しているか、または事前の1つ以上の療法に耐性がある。
【0024】
いくつかの場合では、対象は、対照値と比較して、ガレクチン-9のレベルが上昇したヒト患者である。例えば、ヒト患者は、対照値と比較してガレクチン-9の血清または血漿レベルが上昇している。いくつかの例では、ヒト患者は、ガレクチン-9を発現するがん細胞を有する。代替的または追加的に、ヒト患者は、ガレクチン-9を発現する免疫細胞を有する。いくつかの例では、がん細胞は、ヒト患者に由来する腫瘍オルガノイド内にある。いくつかの実施形態では、対照値は、健康なヒト対象から得られた値に基づく。
【0025】
本明細書に開示の方法のいずれかは、さらに、対象における悪影響の発生を監視することを含んでもよい。いくつかの例では、方法は、さらに、副作用が観察された場合に、抗ガレクチン-9抗体の用量、チェックポイント阻害薬の用量、またはその両方を低減することを含んでもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、対象に、抗ガレクチン-9抗体を複数回投与し、後の用量は、初期の用量よりも高い。
【0027】
また、固形腫瘍(例えば、本明細書に記載され、転移性固形腫瘍を含む)の処置に使用される医薬組成物、及び固形腫瘍を処置するための薬剤を製造するための抗ガレクチン-9抗体のいずれかの使用も本開示の範囲内であり、これは、単独で、または本明細書に開示の抗PD-1抗体のいずれかのようなチェックポイント阻害薬と組み合わせて投与される。
【0028】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明で記載されている。本発明の他の特徴または利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明から、添付の特許請求の範囲からも明らかになるであろう。
【0029】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに実証するために含まれており、これは、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて図面を参照することにより、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】例示的な研究スキームを示す概略図である。CRM:再評価方法;RP2D:推奨される第2の用量;PK:薬物動態学;PD:薬力学;PDAC:膵管腺癌;CRC:結腸直腸癌;CCA:胆管癌;TBD:決定されていない。
図2】抗ガレクチン-9抗体の代表的なサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイルを示すグラフである。高分子量のピークは、標識されている。
図3A】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及び「蛍光マイナス1」(FMO)9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、CD3細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図3B】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及び「蛍光マイナス1」(FMO)9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、CD11b細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図3C】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及び「蛍光マイナス1」(FMO)9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、Epcam細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図3D】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及び「蛍光マイナス1」(FMO)9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、CD3細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図3E】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及び「蛍光マイナス1」(FMO)9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、CD11b細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図3F】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及び「蛍光マイナス1」(FMO)9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、Epcam細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図4A】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、結腸直腸癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、CD3細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図4B】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、結腸直腸癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、CD11b細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図4C】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、結腸直腸癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、Epcam細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図4D】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、結腸直腸癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、CD3細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図4E】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、結腸直腸癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、CD11b細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図4F】抗ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販の抗ガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、結腸直腸癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)において測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17 Fabの対応するアイソタイプ(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9 FMO」)を、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、Epcam細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図5A】ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販のガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、抗膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)で測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17Fab(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、CD3細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図5B】ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販のガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、抗膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)で測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17Fab(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、CD11b細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図5C】ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販のガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、抗膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)で測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17Fab(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S3画分で測定された、Epcam細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図5D】ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販のガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、抗膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)で測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17Fab(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、CD3細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図5E】ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販のガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、抗膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)で測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17Fab(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、CD11b細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図5F】ガレクチン-9 G9.2-17 Fabフラグメント及び市販のガレクチン-9抗体(9M1-3)を使用して、抗膵臓腺癌生検に由来するS2及びS3オルガノイド画分中のT細胞(CD3)、マクロファージ(CD11b+)、及び腫瘍細胞(Epcam+)で測定されたガレクチン-9発現レベルを示す棒グラフを含む。S2画分:オルガノイド。S3画分:単一細胞。G9.2-17Fab(「Fabアイソタイプ」)及びFMO 9M1-3(「Gal9FMO」)に対応するアイソタイプを、特異性、バックグラウンド染色、及び他のチャネルからの蛍光ブリードスルーの対照として使用した。S2画分で測定された、Epcam細胞におけるガレクチン-9のレベルを示す。
図6A】抗ガレクチン-9抗体1G3を使用した様々な腫瘍の免疫組織化学的分析の写真を含む。倍率は全て、200Xである。不均一な強度スコア2及び3(中程度及び高)のガレクチン-9発現を伴う、化学療法で処置された結腸直腸癌を示す。ガレクチン-9の染色は、特に細胞膜で観察された;さらに、腺内マクロファージは中程度の陽性であり、腫瘍内の間質反応は、中程度に強いガレクチン-9発現を伴う多核マクロファージ巨細胞を示す。
図6B】抗ガレクチン-9抗体1G3を使用した様々な腫瘍の免疫組織化学的分析の写真を含む。倍率は全て、200Xである。高い(強度スコア3)ガレクチン-9発現を伴う結腸直腸癌の肝転移を示す。染色は、膜上及び細胞質内にある。
図6C】抗ガレクチン-9抗体1G3を使用した様々な腫瘍の免疫組織化学的分析の写真を含む。倍率は全て、200Xである。ガレクチン-9陽性(強度スコア2)の捕捉胆管及びガレクチン-9陰性がんを示す。
図7】使用された抗体濃度の関数としてプロットされたアネキシンV及びヨウ化プロピジウム(PI)陽性細胞の割合を示すグラフを含む。MOLM-13細胞を、様々な濃度のG9.2-17またはヒトIgG4アイソタイプ抗体及び組み換えヒトガレクチン-9と共に16時間共インキュベートした。フローサイトメトリーによる分析前に、細胞をアネキシンV及びヨウ化プロピジウムで染色した。各条件を3回繰り返して実施した。分析をFlowJoソフトウェアで実施した。
図8A】マウスをG9.2-17 mIgG2a単独またはαPD-1mAbと組み合わせて処置した研究結果を示すグラフを示す。同所性にKPC腫瘍を移植したマウス(n=10/群)を、市販のαPD-1(200μg)mAbもしくはG9.2-17 mIg2a(200μg)、またはG9.2-17及びαPD-1もしくは一致するアイソタイプの組み合わせで週1回、3週間処置した。腫瘍を取り出して重量を測定し(図8A)、続いて、フローサイトメトリー用に処理及び染色した(図7B)。各点は、1匹のマウスを表す。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001;対応のないStudentのt検定による。
図8B】マウスをG9.2-17 mIgG2a単独またはαPD-1mAbと組み合わせて処置した研究結果を示すグラフを示す。同所性にKPC腫瘍を移植したマウス(n=10/群)を、市販のαPD-1(200μg)mAbもしくはG9.2-17 mIg2a(200μg)、またはG9.2-17及びαPD-1もしくは一致するアイソタイプの組み合わせで週1回、3週間処置した。腫瘍を取り出して重量を測定し(図8A)、続いて、フローサイトメトリー用に処理及び染色した(図7B)。各点は、1匹のマウスを表す。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001;対応のないStudentのt検定による。実験終了時(18日目)に対照及び処置動物から腫瘍を切除し、腫瘍内免疫細胞及び関連活性化マーカー及び免疫抑制マーカーのフローサイトメトリーのために処理したことを示す棒グラフを示す。マウス腫瘍を流す前に消化した。フローサイトメトリーは、Attune NxTフローサイトメーター(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)で実施した。FlowJov.10.1(Treestar,Ashland,OR)を使用して、データを分析した。
図9A】G9.2-17のIgG1形態(図9A)及びG9.2-17のIgG4形態(図9B)で実施されたADCCアッセイの結果を示すグラフを示す。ヒトIgG4 mAbについて予想されるように、G9.2-17は、ADCCを媒介しない(図9B)。これを、予想通り、ADCC及びADCPを媒介する陽性対照としてのG9.2-17のヒト対応物IgG1に対して試験した(図9A)。
図9B】G9.2-17のIgG1形態(図9A)及びG9.2-17のIgG4形態(図9B)で実施されたADCCアッセイの結果を示すグラフを示す。ヒトIgG4 mAbについて予想されるように、G9.2-17は、ADCCを媒介しない(図9B)。これを、予想通り、ADCC及びADCPを媒介する陽性対照としてのG9.2-17のヒト対応物IgG1に対して試験した(図9A)。
図10A】B16F10皮下同系モデルにおける9.2~17の効果を示すグラフを示す。腫瘍を皮下に移植し、G9.2-17 IgG1マウスmAb、抗PD-1抗体、またはG9.2-17 IgG1マウスmAb及び抗PD-1抗体の組み合わせで処理した。腫瘍体積に対する影響を示すグラフを示す。
図10B】B16F10皮下同系モデルにおける9.2~17の効果を示すグラフを示す。腫瘍を皮下に移植し、G9.2-17 IgG1マウスmAb、抗PD-1抗体、またはG9.2-17 IgG1マウスmAb及び抗PD-1抗体の組み合わせで処理した。腫瘍内CD8T細胞浸潤を示すグラフを示す。結果は、腫瘍内存在エフェクターT細胞を、併用治療群で増強したことを示す。
図11A】G9.2-17で処理された胆管癌患者由来のex vivo腫瘍培養物(オルガノイド)を示すチャートを含む。患者由来のex vivo腫瘍培養物(オルガノイド)を、G9.2-17またはアイソタイプ対照で3日間処理した。PDOTS由来のCD3+T細胞におけるCD44(図11A)及びTNFα(図11B)の発現を評価した。
図11B】G9.2-17で処理された胆管癌患者由来のex vivo腫瘍培養物(オルガノイド)を示すチャートを含む。患者由来のex vivo腫瘍培養物(オルガノイド)を、G9.2-17またはアイソタイプ対照で3日間処理した。PDOTS由来のCD3+T細胞におけるCD44(図11A)及びTNFα(図11B)の発現を評価した。
図12】例示的な健康なヒトドナーの全血におけるTGF-β1分泌測定に対するG2.9-17の効果を示すグラフを含む。M2分極カクテルの存在下でインキュベートされたドナーの凍結保存マクロファージからのTGF-β1放出。IgG4アイソタイプは、陰性対照抗体である。データは、三重測定の平均+SEMを表す。ダネットの多重比較検定を用いる二元配置分散分析で、有意性を決定した。*p<0.05
図13】例示的な健常ヒトドナーの全血におけるIL-10分泌に対するG2.9-17の効果を示すグラフを含む。M2分極カクテル(IL-4/IL-13またはGal-9)の存在下でインキュベートされたドナーの凍結保存されたマクロファージからのIL-10の放出。IgG4アイソタイプは、陰性対照抗体である。データは、3回の平均(±SEM)を表す。有意性は、Tukeyの多重比較検定を用いる二元配置分散分析で決定した(*P<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
固形腫瘍、例えば、膵管腺癌(PDAC)、結腸直腸癌(CRC)、肝細胞癌(HCC)、胆管癌(CAA)、腎細胞癌(RCC)、尿路上皮癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、または他のGI固形腫瘍を処置するための抗ガレクチン-9抗体、例えば、G9.2-17(IgG4)、を使用する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、がんは、転移性である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法は、特定の用量及び/または投与予定、例えば、抗体0.2mg/kg~16mg/kgを週1回(例えば、10mg/kgまたは16mg/kgを週1回)を提供する。G9.2-17(IgG4)は、従来の抗体治療薬と比較して、ヒト対象において予想外に速いクリアランス速度を示すことが発見された。従って、治療効果を達成する抗ガレクチン-9抗体の全身曝露レベルを確保するために、週1回の投与予定を含む治療レジメンが開発された。いくつかの場合では、本明細書に開示の方法は、特定の患者集団、例えば、事前の処置を受けており、事前の処置を通じて疾患の進行を示す患者、または事前の処置に対して(de novoまたは後天性)耐性がある患者を標的とする。
【0032】
タンデムリピートレクチンであるガレクチン-9は、β-ガラクトシド結合タンパク質であり、これは、細胞間及び細胞-マトリックスの相互作用を調節する役割があることが示されている。それは、ホジキン病組織及び他の病理学的状態において強く過剰発現されることが判明している。いくつかの場合では、腫瘍微小環境(TME)内で循環していることも発見されている。
【0033】
ガレクチン-9は、PDACのマクロファージ及びがん細胞で高度に発現される自然免疫受容体であるデクチン-1と相互作用することが判明している(Daley,et al.Nat Med.2017;23(5):556-6)。ガレクチン-9の供給源に関係なく、デクチン-1との相互作用が破壊されると、CD4及びCD8細胞が抗腫瘍免疫の不可欠なメディエーターに再プログラミングされることが示されている。従って、ガレクチン-9は、デクチン-1により媒介されるシグナル伝達をブロックするための貴重な治療標的として機能する。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9及びデクチン-1間の相互作用を破壊する。
【0034】
ガレクチン-9は、あらゆる種類の急性骨髄性白血病(M3(急性前骨髄性白血病)を除く)の白血病幹細胞の表面に発現するI型細胞表面糖タンパク質であるTIM-3と相互作用することも判明しているが、正常なヒト造血幹細胞(HSC)では発現しない。ガレクチン-9のライゲーションから生じるTIM-3シグナル伝達は、免疫細胞に対して多面的な影響を及ぼし、Th1細胞のアポトーシスを誘導し(Zhu et al.,Nat Immunol.,2005,6:1245-1252)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の分泌を刺激する(これは、自然免疫による炎症を引き起こす、単球の樹状細胞への成熟をもたらす)ことが判明している(Kuchroo et al.,Nat Rev Immunol.,2008,8:577-580)。さらに、ガレクチン-9/TIM-3シグナル伝達は、LSCの自己複製を促進する2つの経路であるNF-κB及びβ-カテニンシグナル伝達を共活性化することが判明している(Kikushige et al.,Cell Stem Cell,2015,17(3):341-352)。ガレクチン-9/TIM-3結合を妨げる抗ガレクチン-9抗体は、特に、白血病及び他の血液悪性腫瘍に関して、治療効果を有し得る。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9及びTIM-3間の相互作用を破壊する。
【0035】
さらに、ガレクチン-9は、M2極性マクロファージ上で高度に発現されるマンノース受容体であるCD206と相互作用し、それにより、腫瘍の生存を促進することが判明している(Enningaetal.,JPathol.2018Aug;245(4):468-477)。CD206を発現する腫瘍関連マクロファージは、腫瘍免疫抑制、血管新生、転移、及び再発のメディエーターである(例えば、以下を参照:Scodeller et al.,Sci Rep.2017 Nov 7;7(1):14655、及びその中の参考文献)。具体的には、M1(古典的に活性化されたマクロファージとも呼ばれる)は、Th1関連サイトカイン及び細菌産物により誘発され、高レベルのIL-12を発現し、殺腫瘍性がある。対照的に、M2(いわゆる選択的に活性化されたマクロファージ)は、Th2関連因子で活性化され、IL-10などの抗炎症性サイトカインを高レベルで発現し、腫瘍の進行を促進する(Biswas and Mantovani;Nat Immunol.2010 Oct;11(10):889-96)。M2の腫瘍促進効果には、血管新生の促進、浸潤及び転移の進行、ならびに化学療法誘発性アポトーシスからの腫瘍細胞の保護が含まれる(Hu et al.,Tumor Biol.2015 Dec;36(12):9119-9126及びその中の参考文献)。腫瘍関連マクロファージは、M2様の表現型であり、前腫瘍の役割を有すると考えられる。ガレクチン-9は、M2表現型への骨髄細胞の分化を媒介することが示されている(Enninga et al.,Melanoma Res.2016 Oct;26(5):429-41)。ガレクチン-9がCD206に結合すると、デクチン-1について以前に示されているものと同様に、TAMがM2表現型に再プログラムされ得る可能性がある。理論に拘束されることを望むものではないが、ガレクチン-9のCD206との相互作用を遮断すると、抗ガレクチン-9抗体、例えば、G9.2-17抗体、が治療上有益であり得る1つの機序を提供し得る。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9及びCD206間の相互作用を破壊する。
【0036】
ガレクチン-9は、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及び4-1BBと相互作用することも示されている(Bi S,et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2011;108(26):10650-5;Madireddi et al.J Exp Med.2014;211(7):1433-48)。
【0037】
抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9に関連する疾患(例えば、ガレクチン-9シグナル伝達が関与するもの)を処置するための治療薬として機能し得る。理論に束縛されるものではないが、抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9により媒介されるシグナル伝達経路を遮断し得る。例えば、抗体は,ガレクチン-9及びその結合パートナー(例えば、デクチン-1、TIM-3、またはCD206)間の相互作用を妨害し、それにより、ガレクチン-9/リガンド相互作用により引き起こされるシグナル伝達を遮断し得る。代替的または追加的に、抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9を発現する病理学的細胞に対する遮断及び/または細胞傷害性、例えば、ADCC、CDC、またはADCPを誘導することにより、その治療効果も発揮し得る。病的細胞は、直接的または間接的に疾患の開始及び/または発症に寄与する細胞を指す。例えば、以下を参照、WO2019/084553、WO2020/198390、WO2020/0223702、及びWO2021022256、それぞれの関連開示は、本明細書で参照される主題及び目的に関して参照により組み込まれる。
【0038】
本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9により媒介されるシグナル伝達(例えば、ガレクチン-9/デクチン-1またはガレクチン-9/Tim-3により媒介されるシグナル伝達経路)を抑制するか、または、例えば、ADCCにより、ガレクチン-9を発現する病理学的細胞を除去することができる。従って、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9シグナル伝達のいずれかを阻害し、及び/またはガレクチン-9陽性病理学的細胞を除去するために使用することができ、それにより、ガレクチン-9に関連する疾患の処置に利益がもたらされる。
【0039】
抗ガレクチン-9抗体、例えば、G9.2-17(例えば、G9.2-17(IgG4))は、ガレクチン-9を発現する細胞に対するアポトーシスの誘導に有効であることが見出された。さらに、抗ガレクチン-9抗体、例えば、G9.2-17、の抗腫瘍効果は、単独で、またはチェックポイント阻害薬(例えば、抗PD-1抗体)と組み合わせて、マウスモデルで実証された。本明細書で報告されるように、G9.2-17の有効性を、PDAC及びメラノーマのマウスモデル、ならびに患者由来の臓器腫瘍モデル(PDOT)で試験した。使用された同所性PDAC KPCマウスモデル(LSL-KrasG12D/+;LSL-Trp53R172H/+;Pdx-1-Cre)は、承認されたチェックポイント阻害薬に対する無反応を含むヒト疾患の多くの特徴を再現する(Bisht and Feldmann G;Animal models for modeling pancreatic cancer and novel drug discovery;Expert Opin Drug Discov.2019;14(2):127-142;Weidenhofer et al.,Animal models of pancreatic cancer and their application in clinical research;Gastrointestinal Cancer:Targets and Therapy 2016;6)。B16F10メラノーママウスモデルは、免疫療法を試験するための長期にわたる標準を有している(Curran et al.,PD-1 and CTLA-4 combination blockade expands infiltrating T cells and reduces regulatory T and myeloid cells within B16 melanoma tumors;Proc Natl Acad Sci USA.2010;107(9):4275-4280)。
【0040】
新しいヒト腫瘍試料から単離されたPDOTは、自己リンパ球及び骨髄細胞集団(抗原を経験した腫瘍浸潤CD4及びCD8Tリンパ球を含む)を保持し、短期間のex vivo培養で免疫療法に応答する(Jenkins et al.Ex Vivo Profiling of PD-1 Blockade Using Organotypic Tumor Spheroids.Cancer Discov.2018;8(2):196-215;Aref et al.,3D microfluidic ex vivo culture of organotypic tumor spheroids to model immune checkpoint blockade;Lab Chip.2018;18(20):3129-3143)。本明細書で報告されているように、がん細胞上のガレクチン-9の発現が、患者由来のオルガノイドアッセイで観察された。
【0041】
G9.2-17マウスIgG1(G9.2-17 mIgG1は、G9.2-17ヒトIgG4とまったく同じ結合エピトープを含み、同じエフェクター機能を有する)を用いて、in vivo研究を実施し、これは、同所性KPCモデルの単剤として既に腫瘍成長の大幅な低減を達成し、承認されたチェックポイント阻害薬が機能しない。B16F10モデルでは、G9.2-17は、抗PD-1の有効性を大幅に上回っている。両方のモデルでは、G9.2-17 mIgG1を使用したエフェクターT細胞活性の上方制御及び免疫抑制シグナルの阻害による腫瘍内免疫微小環境の調節、ならびに腫瘍内CD8T細胞浸潤の増強が実証された。
【0042】
任意に、チェックポイント阻害薬と組み合わせた抗ガレクチン-9抗体を含む本明細書に開示の抗腫瘍方法が、標的固形腫瘍に対して優れた治療効果を達成するであろうことを、これらの結果は実証する。
【0043】
従って、本明細書に開示の特定のがんを処置するための抗ガレクチン-9抗体の治療的使用が本明細書に記載されている。
【0044】
ガレクチン-9に結合する抗体
本開示は、本明細書に開示の処置方法で使用される抗ガレクチン-9抗体G9.2-17及びその機能的バリアントを提供する。
【0045】
抗体(複数形で互換的に使用)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、標的、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど、に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語、例えば、抗ガレクチン-9抗体は、完全な(例えば、全長)ポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖(scFv)、その変異体、抗体部分、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、ナノボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、及び共有結合的に改変された抗体を含む、必要な特異性の抗原認識部位を含む他の任意の改変立体配置の免疫グロブリン分子を含む融合タンパク質も包含する。抗体、例えば、抗ガレクチン-9抗体には、IgD、IgE、IgG、IgA、もしくはIgM(またはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体が含まれ、抗体は、任意の特定のクラスである必要はない。重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、様々なクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかは、さらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分類され得る。免疫グロブリンの様々なクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構成は、周知である。
【0046】
典型的な抗体分子は、重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)を含み、これらは、通常、抗原結合に関与する。V及びV領域は、さらに、「フレームワーク領域」(「FR」)として既知の、より保存されている領域が点在する「相補性決定領域」(「CDR」)としても既知の超可変性の領域に細分することができる。各V及びVは、通常、3つのCDR及び4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、当該技術分野で既知の方法論を使用して、例えば、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、EU定義、「Contact」番号付けスキーム、「IMGT」番号付け、「AHo」番号付けスキーム、及び/またはcontact定義により、正確に同定することができ、これらの全ては、当該技術分野で周知である。例えば、以下を参照:E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,Chothia et al.,(1989)Nature 342:877;Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917,Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948;Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1969 May;63(1):78-85;及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996),Lefranc M P et al.,Dev Comp Immunol,2003 January;27(1):55-77;及びHonegger A and Pluckthun A,J Mol Biol,2001 Jun.8;309(3):657-70。以下も参照:hgmp.mrc.ac.uk and bioinf.org.uk/abs)。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗ガレクチン-9抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含有する全長抗体であり、それぞれは、可変ドメイン及び定常ドメインを含む。あるいは、抗ガレクチン-9抗体は、全長抗体の抗原結合フラグメントであり得る。全長抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれる結合フラグメントの例としては、以下が含まれる:(i)Fabフラグメント(V、V、C、及びC1ドメインからなる一価フラグメント);(ii)F(ab’)フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント);(iii)V及びC1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのV及びVドメインからなるFvフラグメント;(v)VドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);ならびに、(iv)機能を保持する単離相補性決定領域(CDR)。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、V及びVは、別個の遺伝子にコードされるが、それらは、単一タンパク質鎖として作ることができる合成リンカーで、組み換え法を使用して結合することができ、V領域とV領域は、単鎖Fv(scFv)として既知の一価の分子を形成するように対合する。例えば、以下を参照:Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883。
【0048】
本明細書に記載の抗体のいずれか、例えば、抗ガレクチン-9抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれかであり得る。「モノクローナル抗体」は、均一な抗体集団を指し、「ポリクローナル抗体」は、不均一な抗体集団を指す。これら2つの用語は、抗体の供給源または抗体の作製方法を限定するものではない。
【0049】
参照抗体G9.2-17は、ヒトガレクチン-9に結合することができる抗体を指し、配列番号7の重鎖可変領域及び配列番号8の軽鎖可変ドメインを含み、その両方が以下に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法で使用される抗ガレクチン-9抗体は、G9.2-17抗体である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法で使用される抗ガレクチン-9抗体は、参照抗体G9.2-17と同じ重鎖相補性決定領域(CDR)及び/または参照抗体G9.2-17と同じ軽鎖相補性決定領域を有する抗体である。同じV及び/またはVCDRを有する2つの抗体は、同じアプローチで決定された場合、それらのCDRが同一であることを意味する(例えば、本明細書で既知のKabatアプローチ、Chothiaアプローチ、AbMアプローチ、Contactアプローチ、またはIMGTアプローチ、例えば、以下を参照のこと:bioinf.org.uk/abs/)。
【0050】
参照抗体G9.2-17の重鎖及び軽鎖CDRは、以下の表1に提示される(Kabat方法を使用して決定)。
【表1】
【0051】
いくつかの例では、本明細書に開示の方法で使用される抗ガレクチン-9抗体は、(Kabatスキームに従って)配列番号4に記載の重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5に記載の重鎖相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号6に記載の重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含んでもよく、ならびに/または、配列番号1に記載の軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2に記載の軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号3に記載の軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含んでもよい。参照抗体G9.2-17を含む抗ガレクチン-9抗体は、本明細書に開示の任意の形式、例えば、全長抗体またはFabであり得る。本明細書で使用される「G9.2-17(IgG4)」という用語は、IgG4分子であるG9.2-17抗体を指す。同様に、「G9.2-17(Fab)」という用語は、Fab分子であるG9.2-17抗体を指す。
【0052】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体またはその結合部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、2、及び3に記載の軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体またはその結合部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列は、それぞれ配列番号4、5、及び6に記載の重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する。
【0053】
追加のガレクチン-9抗体(例えば、ガレクチン-9のCRD1及び/またはCRD2領域に結合するもの)は、共有の同時係属中の米国特許出願第16/173,970号及び共有の同時係属の国際特許出願PCT/US18/58028及びPCT/US2020/024767(これらのそれぞれの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体は、参照抗体G9.2-17の対応するVCDRと比較して、個別または集合的に、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する軽鎖CDRを含む。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、参照抗体G9.2-17の対応するVCDRと比較して、個別または集合的に、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖CDRを含む。
【0055】
2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993のように改変されたKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを使用して決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実行することができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、ギャップBLASTは、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載されるように利用することができる。BLAST及びギャップBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。
【0056】
他の実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、HC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3を含むVを含み、これらは、参照抗体G9.2-17のHC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3と比較した、付加、欠失、及び/または置換を含む、集合的に最大8個のアミノ酸残基多様性(8、7、6、5、4、3、2、または1つの多様性(複数可))を含む。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3を含むVを含み、これは、集合的に、参照抗体G9.2-17のLC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3と比較した(付加、欠失、及び/または置換を含む8、7、6、5、4、3、2、または1つの多様性(複数可))最大8個のアミノ酸残基多様性を含有する。
【0057】
一例では、アミノ酸残基多様性は、保存的アミノ酸残基置換である。本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対的な電荷またはサイズ特性を変化させないアミノ酸置換を指す。多様性は、そのような方法をまとめた参考文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに見られるような当業者に既知のポリペプチド配列を変更するための方法に従って調整することができる。アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸間で行われる置換が含まれる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;及び(g)E、D。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の重鎖CDRを有する、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体は、生殖系列Vフラグメントのサブクラスに由来するフレームワーク領域を含む。そのような生殖系列V領域は、当該技術分野で周知である。例えば、以下を参照:IMGTデータベース(www.imgt.org)またはwww.vbase2.org/vbstat.php。例としては、IGHV1サブファミリー(例えば、IGHV1-2、IGHV1-3、IGHV1-8、IGHV1-18、IGHV1-24、IGHV1-45、IGHV1-46、IGHV1-58、及びIGHV1-69)、IGHV2サブファミリー(例えば、IGHV2-5、IGHV2-26、及びIGHV2-70)、IGHV3サブファミリー(例えば、IGHV3-7、IGHV3-9、IGHV3-11、IGHV3-13、IGHV3-15、IGHV3-20、IGHV3-21、IGHV3-23、IGHV3-30、IGHV3-33、IGHV3-43、IGHV3-48、IGHV3-49、IGHV3-53、IGHV3-64、IGHV3-66、IGHV3-72、及びIGHV3-73、IGHV3-74)、IGHV4サブファミリー(例えば、IGHV4-4、IGHV4-28、IGHV4-31、IGHV4-34、IGHV4-39、IGHV4-59、IGHV4-61、及びIGHV4-B)、IGHVサブファミリー(例えば、IGHV5-51、またはIGHV6-1)、ならびにIGHV7サブファミリー(例えば、IGHV7-4-1)が挙げられる。
【0059】
代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、本明細書に開示の軽鎖CDRを有する抗ガレクチン-9抗体は、生殖系列Vκフラグメント由来のフレームワーク領域を含有する。例としては、IGKV1フレームワーク(例えば、IGKV1-05、IGKV1-12、IGKV1-27、IGKV1-33、またはIGKV1-39)、IGKV2フレームワーク(例えば、IGKV2-28)、IGKV3フレームワーク(例えば、IGKV3-11、IGKV3-15、またはIGKV3-20)、及びIGKV4フレームワーク(例えば、IGKV4-1)が挙げられる。他の場合では、抗ガレクチン-9抗体は、生殖系列Vフラグメントに由来するフレームワークを含有する軽鎖可変領域を含む。例としては、IGλ1フレームワーク(例えば、IGλV1-36、IGλV1-40、IGλV1-44、IGλV1-47、IGλV1-51)、IGλ2フレームワーク(例えば、IGλV2-8、IGλV2-11、IGλV2-14、IGλV2-18、IGλV2-23)、IGλ3フレームワーク(例えば、IGλV3-1、IGλV3-9、IGλV3-10、IGλV3-12、IGλV3-16、IGλV3-19、IGλV3-21、IGλV3-25、IGλV3-27)、IGλ4フレームワーク(例えば、IGλV4-3、IGλV4-60、IGλV4-69)、IGλ5フレームワーク(例えば、IGλV5-39、IGλV5-45)、IGλ6フレームワーク(例えば、IGλV6-57)、IGλ7フレームワーク(例えば、IGλV7-43、IGλV7-46)、IGλ8フレームワーク(例えば、IGλV8-61)、IGλ9フレームワーク(例えば、IGλV9-49)、またはIGλ10フレームワーク(例えば、IGλV10-54)が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法で使用される抗ガレクチン-9抗体は、参照抗体G9.2-17と同じ重鎖可変領域(V)及び/または同じ軽鎖可変領域(V)を有する抗体であり得、V及びV領域のアミノ酸配列が以下に提示される:

【化1】


【化2】
【0061】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号7の重鎖可変領域と、少なくとも80%の配列同一性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有する。代替的または追加的に、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号8の軽鎖可変領域と、少なくとも80%の配列同一性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性)を有する。
【0062】
いくつかの場合では、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体は、参照抗体G9.2-17の機能的バリアントである。機能的バリアントは、(例えば、同じ順序でKD値を有する)ヒトガレクチン-9と実質的に同様の結合親和性を有する(例えば、本明細書に開示のG9.2-17としての重鎖及び/もしくは軽鎖CDRのうちの1つ以上に、限られた数のアミノ酸残基多様性、あるいは、本明細書に開示のG9.2-17の重鎖及び/もしくは軽鎖CDR、またはG9.2-17の重鎖及び/もしくは軽鎖CDRとの配列同一性、を含む)参照抗体と構造的に類似し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9に結合し、その活性を、少なくとも20%(例えば、31%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)抑制し得る。阻害薬の効力の尺度を提供する見かけの阻害定数(KiappまたはKi,app)は、酵素活性を低減させるのに必要な阻害薬の濃度に関連しており、酵素濃度には依存しない。本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体の阻害活性は、当該技術分野で既知の所定の方法で測定することができる。
【0064】
抗体のKi, app値は、反応の程度(例えば、酵素活性)に対する異なる濃度の抗体の阻害効果を測定することにより決定され得;阻害薬濃度の関数として擬1次速度定数(v)の変化を修正モリソン方程式(方程式1)にフィッティングさせることは、見かけのKi値の推定値が得られる。競合阻害薬の場合、Kiappは、基質濃度に対するKi, appのプロットの線形回帰分析から抽出されたy切片から取得することができる。
【数1】
【0065】
Aは、v/E(総酵素濃度(E)で除した阻害薬(I)の非存在下での酵素反応の初速度(v))に相当する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗ガレクチン-9抗体は、標的抗原または抗原エピトープに対し、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5pM以下のKiapp値を有する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、第2の標的(例えば、ガレクチン-9のCRD1)と比較して、第1の標的(例えば、ガレクチン-9のCRD2)に対してより低いKiappを有する。Kiappの差(例えば、特異性または他の比較の場合)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000、または10倍であり得る。いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体は、第2の抗原(例えば、第2の立体構造の第1のタンパク質もしくはその模倣物;または第2のタンパク質)と比較して大きく、第1の抗原(例えば、第1の構造の第1のタンパク質またはその模造物)を抑制する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体のいずれかは、さらに、標的抗原またはその抗原性エピトープに対する抗体のKiappを低減させるように親和性成熟している。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、例えば、マクロファージなどの腫瘍浸潤免疫細胞におけるデクチン-1シグナル伝達を抑制する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9で誘発されるデクチン-1シグナル伝達を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)抑制する。そのような阻害活性は、所定のアッセイなどの従来の方法で測定することができる。代替的または追加的に、抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9で開始されるT細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)シグナル伝達を抑制する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、例えば、腫瘍浸潤免疫細胞における、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)シグナル伝達を、例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)抑制する。そのような阻害活性は、所定のアッセイなどの従来の方法で測定することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、例えば、腫瘍浸潤免疫細胞における、CD206シグナル伝達を抑制する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9で誘発されるCD206シグナル伝達を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)抑制する。そのような阻害活性は、所定のアッセイなどの従来の方法で測定することができる。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9のCD206への結合を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)遮断または抑制する。そのような阻害活性は、所定のアッセイなどの従来の方法で測定することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、ガレクチン-9を発現する標的細胞に、ADCCなどの細胞傷害性を誘導し、例えば、標的細胞は、がん細胞または免疫抑制免疫細胞である。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、T細胞などの免疫細胞またはがん細胞のアポトーシスを、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)誘導する。そのような阻害活性は、所定のアッセイなどの従来の方法で測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体のいずれかは、ガレクチン-9を発現する標的細胞に対する補体依存性細胞傷害(CDC)などの細胞傷害性を誘導する。
【0069】
抗体依存性細胞媒介食作用(ADCP)は、食作用を通じてその作用の一部または全てを媒介する、抗体の重要な作用機序である。その場合、抗体は、抗原提示細胞による特定の抗原の取り込みを仲介する。ADCPは、FcγRIIa、FcγRI、及びFcγRIIIaを介して単球、マクロファージ、好中球、及び樹状細胞により媒介され得、マクロファージ上のFcγRIIa(CD32a)が、主要な経路を表す。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、標的細胞、例えば、ガレクチン-9(ADCP)を発現するがん細胞または免疫抑制免疫細胞、の細胞食作用を誘導する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、標的細胞、例えば、がん細胞または免疫抑制免疫細胞の食作用を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)増加させる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、標的細胞、例えば、がん細胞または免疫抑制免疫細胞、に対する補体依存性細胞傷害(CDC)などの細胞傷害を誘導する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、標的細胞に対するCDCを、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)増加させる。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、例えば、腫瘍浸潤T細胞において、T細胞活性化を誘導する、すなわち、T細胞活性化のガレクチン-9媒介性阻害を直接的または間接的に抑制する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、T細胞活性化を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)促進する。T細胞活性化は、サイトカイン及びチェックポイント阻害薬を測定するための周知のアッセイ(例えば、CD44、TNF-アルファ、IFN-ガンマ、及び/またはPD-1の測定)の使用などの従来の方法で決定することができる。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、CD4+細胞活性化を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)促進する。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD4+細胞におけるCD44発現を誘導する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、CD4+細胞におけるCD44発現を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)増加させる。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD4+細胞におけるIFN-ガンマ発現を誘導する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、CD4+細胞におけるIFN-ガンマ発現を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)増加させる。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD4+細胞におけるTNFα発現を誘導する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、CD4+細胞におけるIFN-アルファ発現を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)増加させる。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、CD8+細胞活性化を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)促進する。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD8+細胞におけるCD44発現を誘導する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、CD8+細胞におけるCD44発現を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)増加させる。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD8+細胞におけるIFN-ガンマ発現を誘導する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、CD8+細胞におけるIFN-ガンマ発現を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)増加させる。非限定例では、抗ガレクチン抗体は、CD8+細胞におけるTNFα発現を誘導する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、CD8+細胞におけるIFN-アルファ発現を、少なくとも30%(例えば、31%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%以上、その中の任意の増分を含む)増加させる。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、標的抗原(例えば、ガレクチン-9)またはその抗原性エピトープに対して好適な結合親和性を有する。本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、見かけの結合定数またはKを指す。Kは、解離定数(K)の逆数である。本明細書に記載される抗ガレクチン-9抗体は、標的抗原または抗原エピトープに対し、少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M以下の結合親和性(K)を有し得る。結合親和性の増加は、Kの減少に相当する。結合親和性(または結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法(例えば、蛍光アッセイを使用)を含む様々な方法で決定することができる。結合親和性を評価するための例示的な条件は、HBS-P緩衝液(10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、0.005%(v/v)の界面活性剤P20)中である。
【0075】
これらの手法は、標的タンパク質の濃度の関数として結合した結合タンパク質の濃度を測定するために、使用することができる。特定の条件下では、結合した結合タンパク質の分画濃度([結合]/[合計])は、一般に、以下の式により総標的タンパク質の濃度([標的])に関係する。
[結合]/[合計]=[標的]/(Kd+[標的])
【0076】
必ずしも、Kを正確に決定する必要はないが、それは、場合により、親和性の定量的測定値(例えば、ELISAまたはFACS分析などの方法を使用して決定される)を取得するのに十分であるので、Kに比例し、それにより、親和性の定性的測定を取得するために、または、例えば、機能アッセイ、例えば、in vitroもしくはin vivoアッセイで活性により、親和性の推定を取得するために、比較、例えば、親和性が高いかどうか、例えば、2倍高いかどうか、を決定する比較、に使用することができる。いくつかの場合では、in vitro結合アッセイは、in vivo活性を示す。他の場合には、in vitro結合アッセイは、必ずしもin vivo活性を示さない。いくつかの場合では、強固な結合が有益であるが、他の場合には、強固な結合は、in vivoでは望ましくなく、より低い結合親和性を有する抗体がより望ましい。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体のいずれかの重鎖は、さらに、重鎖定常領域(CH)またはその一部(例えば、CH1、CH2、CH3、もしくはそれらの組み合わせ)を含む。重鎖定常領域は、任意の好適な起源、例えば、ヒト、マウス、ラット、またはウサギのものであり得る。1つの特定の例では、重鎖定常領域は、本明細書に記載の任意のIgGサブファミリーのヒトIgG(ガンマ重鎖)に由来する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体の重鎖定常領域は、定常領域(例えば、配列番号4、5、6)の、単一ドメイン(例えば、CH1、CH2、もしくはCH3)、または単一ドメインのいずれかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体の軽鎖定常領域は、定常領域の単一ドメイン(例えば、CL)を含む。例示的な軽鎖及び重鎖配列が以下に記載されている。例示的な軽鎖及び重鎖配列が以下に記載されている。hIgG1 LALA配列は、FcgR結合を抑制する2つの変異L234A及びL235A(EU番号付け)と、補体C1q結合を無効にするP329G変異(EU番号付け)を含み、それにより、全ての免疫エフェクター機能が無効になる。hIgG4 Fabアーム置換変異配列は、Fabアーム置換を抑制する変異(S228P;EU番号付け)を含む。IL2シグナル配列(MYRMQLLSCIALSLALVTNS;配列番号9)は、可変領域のN末端に位置し得る。これは発現ベクターで使用され、これは、分泌中に切断され、それにより、成熟抗体分子では切断されない。成熟タンパク質(分泌後)は、重鎖の場合「EVQ」、軽鎖の場合「DIM」で始まる。例示的な重鎖定常領域のアミノ酸配列が以下に提供される:
hIgG1重鎖定常領域(配列番号10)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK*
hIgG1 LALA重鎖定常領域(配列番号12)
【化3】

hIgG4重鎖定常領域(配列番号13)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK*
hIgG4重鎖定常領域(配列番号20)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK*
hIgG4変異重鎖定常領域(配列番号14)
【化4】

hIgG4変異重鎖定常領域(配列番号21)
【化5】
【0079】
いくつかの場合では、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体の重鎖定常領域(例えば、G9.2-17)は、例えば、製造目的のために、C末端リジン(K)残基が除去されていることがある。末端K残基を有さないものの対応するアミノ酸配列が以下に提示される:
C末端リジンを有さないhIgG1重鎖定常領域(配列番号24)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG*
C末端リジンを有さないhIgG1 LALA重鎖定常領域(配列番号25)
【化6】

C末端リジンを有さないhIgG4重鎖定常領域(配列番号26)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG*
C末端リジンを有さないhIgG4重鎖定常領域(配列番号27)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG*
C末端リジンを有さないhIgG4変異重鎖定常領域(配列番号28)
【化7】

C末端リジンを有さないhIgG4変異重鎖定常領域(配列番号29)
【化8】
【0080】
いくつかの実施形態では、上記軽鎖定常領域のいずれかを有する抗ガレクチン-9抗体は、以下の軽鎖定常領域を有する軽鎖と対合している:
軽鎖定常領域(配列番号11)
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0081】
例示的な全長抗ガレクチン-9抗体が以下に提示される:
G9.2-17 hIgG1重鎖(配列番号16)
【化9】

C末端リジン残基を有さないG9.2-17 hIgG1重鎖(配列番号30)
【化10】

G9.2-17 hIgG1 LALA重鎖(配列番号17)
【化11】

C末端リジン残基を有さないG9.2-17 hIgG1 LALA重鎖(配列番号31)
【化12】

G9.2-17 hIgG4重鎖(配列番号18)
【化13】

C末端リジン残基を有さないG9.2-17 hIgG4重鎖(配列番号32)
【化14】

G9.2-17 hIgG4重鎖(配列番号22)
【化15】

C末端リジン残基を有さないG9.2-17 hIgG4重鎖(配列番号33)
【化16】

G9.2-17 hIgG4 Fabアーム置換変異重鎖(配列番号19)
【化17】

C末端リジン残基を有さないG9.2-17 hIgG4 Fabアーム置換変異重鎖(配列番号34)
【化18】

G9.2-17 hIgG4 Fabアーム置換変異重鎖(配列番号23)
【化19】

C末端リジン残基を有さないG9.2-17 hIgG4 Fabアーム置換変異重鎖(配列番号35)
【化20】
【0082】
上記の重鎖のいずれも、以下に示されるもの(配列番号:15)の軽鎖と組み合わせる対合させ得る。
【化21】
【0083】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号10と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG1定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体の定常領域は、配列番号10を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体の定常領域は、配列番号10からなる重鎖IgG1定常領域を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号20と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体の定常領域は、配列番号20を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体の定常領域は、配列番号20からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4に由来する。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号13と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号13を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号13からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4に由来する。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号20と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号20を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号20からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0087】
これらの実施形態のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号11と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号11を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号11からなる軽鎖定常領域を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、IgGは、最小のFc受容体エンゲージメントを有する変異体である。一例では、定常領域は、ヒトIgG1 LALAに由来する。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号12と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG1定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号12を含む重鎖IgG1定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号12からなる重鎖IgG1定常領域を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、改変定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、免疫学的に不活性であり、例えば、補体媒介溶解を誘発しないか、または抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を刺激しない、改変定常領域を含む。ADCC活性は、米国特許第5,500,362号に開示された方法を使用して評価することができる。他の実施形態では、定常領域は、Eur.J.Immunol.(1999)29:2613-2624;PCT出願第PCT/GB99/01441号;及び/または英国特許出願第9809951.8号に記載されているように改変される。いくつかの実施形態では、IgG4定常領域は、重鎖置換が減少した変異体である。いくつかの実施形態では、定常領域は、ヒトIgG4 Fabアーム置換変異体S228Pに由来する。
【0090】
一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体の定常領域は、配列番号14と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体の定常領域は、配列番号14を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体の定常領域は、配列番号14からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0091】
一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号21と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号21を含む重鎖IgG4定常領域を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号21からなる重鎖IgG4定常領域を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、軽鎖では配列番号15に対応する鎖を有し;例示的な重鎖のアミノ酸配列は、配列番号10(hIgG1);12(hIgG1 LALA);13(hIgG4);20(hIgG4);14(hIgG4変異);及び21(hIgG4変異)に対応する。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる軽鎖を有する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号16~19、22、及び23からなる群より選択される配列のいずれか1つを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる重鎖を有する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる軽鎖と、配列番号16~19からなる群より選択される配列のいずれか1つを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる重鎖を有する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15を含む軽鎖と、配列番号16~19、22、及び23からなる群より選択される配列のいずれか1つを含む重鎖を有する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15から本質的になる軽鎖と、配列番号16~19、22、及び23からなる群より選択される配列のいずれか1つから本質的になる重鎖を有する。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15からなる軽鎖と、配列番号16~19、22、及び23からなる群より選択される配列のいずれか1つからなる重鎖を有する。具体的な一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15から本質的になる軽鎖と、配列番号19から本質的になる重鎖を有する。別の具体的な実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15から本質的になる軽鎖と、本質的に配列番号20から本質的になる重鎖を有する。
【0094】
一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号16と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号16を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号16からなる重鎖配列を含む。
【0095】
一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号17と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号17を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号17からなる重鎖配列を含む。
【0096】
一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号18と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号18を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号18からなる重鎖配列を含む。
【0097】
一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号22と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号22を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号22からなる重鎖配列を含む。
【0098】
一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号19と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号19を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号19からなる重鎖配列を含む。
【0099】
一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号23と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号23を含む重鎖配列を含む。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号23からなる重鎖配列を含む。
【0100】
これらの実施形態のいずれかにおいて、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15と、少なくとも80%(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%及びその中の任意の増分)の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15を含む軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、配列番号15からなる軽鎖配列を含む。
【0101】
具体例では、本明細書に開示の処置方法で使用される抗ガレクチン-9抗体は、配列番号19の重鎖及び配列番号15の軽鎖を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の処置方法で使用される抗ガレクチン-9抗体は、G9.2-17 IgG4である。いくつかの例では、そのような抗ガレクチン-9抗体は、重鎖にC末端リジン残基を有さない。
【0102】
抗ガレクチン-9抗体の調製
本明細書に記載のガレクチン-9に結合することが可能な抗体は、限定されないが、組み換え技術を含む、当該技術分野で既知の任意の方法で作製することができる。一例が以下で提示される。
【0103】
本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸は、1つの発現ベクターにクローン化することができ、各ヌクレオチド配列は、好適なプロモーターに作動可能に結合している。一例では、重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列のそれぞれは、別個のプロモーターに作動可能に結合している。あるいは、重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、重鎖及び軽鎖の両方が同じプロモーターから発現されるように、単一プロモーターと作動可能に連結することができる。必要時に、内部リボソーム侵入部位(IRES)は、重鎖コード配列及び軽鎖コード配列間に挿入することができる。
【0104】
いくつかの例では、抗体の2つの鎖をコードするヌクレオチド配列が2つのベクターにクローン化され、これは、同じまたは異なる細胞に導入することができる。2つの鎖は、異なる細胞で発現される場合、それらのそれぞれが、そのような鎖を発現する宿主細胞から単離することができ、単離重鎖及び軽鎖を、混合し、抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートすることができる。
【0105】
一般に、抗体の1つまたは全ての鎖をコードする核酸配列は、当該技術分野で既知の方法を使用して、好適なプロモーターと作動可能に連結して好適な発現ベクターにクローニングすることができる。例えば、ヌクレオチド配列及びベクターは、好適な条件下で、互いに対合してリガーゼで結合することができる各分子上に相補性末端を生じるように、制限酵素と接触させることができる。あるいは、合成核酸リンカーを、遺伝子の末端に連結することをできる。これらの合成リンカーは、ベクター内の特定の制限部位に対応する核酸配列を含有する。発現ベクター/プロモーターの選択は、抗体の産生に使用される宿主細胞の種類に依存するであろう。
【0106】
様々なプロモーターは、本明細書に記載の抗体の発現に使用することができ、これには、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター、ウイルス性LTR、例えば、ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTR、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、E.coli lac UV5プロモーター、及び単純ヘルペスtkウイルスプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
調節可能なプロモーターも使用することができる。そのような調節可能なプロモーターとしては、lacオペレーターを有する哺乳動物細胞プロモーターから転写を調節するために、E.coli由来のlacリプレッサーを転写モジュレーターとして使用するもの[Brown,M.et al.,Cell,49:603-612(1987)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を使用するもの(tetR)[Gossen,M.,and Bujard,H.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-5551(1992);Yao,F.et al.,Human Gene Therapy,9:1939-1950(1998);Shockelt,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6522-6526(1995)]が挙げられる。他のシステムには、アストラジオール、RU486、ジフェノールムリスレロン、またはラパマイシンを使用するFK506二量体、VP16、またはp65が含まれる。誘導システムは、Invitrogen、Clontech、及びAriadから入手可能である。
【0108】
オペロンを伴うリプレッサーを含む調節可能なプロモーターを使用することができる。一実施形態では、E.coli由来のlacリプレッサーは、lacオペレーターを有する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節する転写調節因子として機能し得(M.Brown et al.,Cell,49:603-612(1987);Gossen and Bujard(1992);M.Gossen et al.,Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992))テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を、転写アクチベーター(VP16)と組み合わせて、tetR哺乳動物細胞転写アクチベーター融合タンパク質であるtTa(tetR-VP 16)を作成し、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)主要前初期プロモーターに由来するtetOを有する最小プロモーターと組み合わせて、哺乳動物細胞における遺伝子発現を制御するtetR-tetオペレーターシステムを作成する。一実施形態では、テトラサイクリン誘導性スイッチが使用される。tetR哺乳動物細胞転写因子融合誘導体の代わりにテトラサイクリンリプレッサー(tetR)は、テトラサイクリンオペレーターが、CMVIEプロモーターのTATAエレメントの下流に適切に配置されている場合、哺乳動物細胞における遺伝子発現を調節するために、強力なトランスモジュレーターとして機能し得る(Yao et al.,Human Gene Therapy,10(16):1392-1399(2003))。このテトラサイクリン誘導性スイッチの特別な利点の1つは、テトラサイクリンリプレッサー-哺乳動物細胞トランスアクチベーターまたはリプレッサー融合タンパク質の使用を必要としないことであり、いくつかの場合では、これは、その調節可能な効果を達成するように、細胞に毒性を示し得る(Gossen et al.,Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992);Shockett et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6522-6526(1995))。
【0109】
さらに、ベクターは、例えば、以下のいくつかまたは全てを含有し得る:哺乳動物細胞における安定または一過性トランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの選択マーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの最初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNAの安定性のためのSV40からの転写終結及びRNAプロセシングシグナル;SV40ポリオーマ複製起点及び適切なエピソーム複製のためのColE1;内部リボソーム結合部位(IRES)、多用途のマルチクローニングサイト;ならびにセンスRNA及びアンチセンスRNAのin vitro転写用のT7及びSP6 RNAプロモーター。導入遺伝子を含有するベクターを作製するための好適なベクター及び方法は、周知であり、当該技術分野で利用可能である。
【0110】
本明細書に記載の方法を実施するのに有用なポリアデニル化シグナルの例としては、ヒトコラーゲンIポリアデニル化シグナル、ヒトコラーゲンIIポリアデニル化シグナル、及びSV40ポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
抗体のいずれかをコードする核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)は、抗体を産生するために好適な宿主細胞に導入され得る。宿主細胞は、抗体またはその任意のポリペプチド鎖の発現に適した条件下で培養することができる。そのような抗体またはそのポリペプチド鎖は、従来の方法、例えば、アフィニティー精製、で培養細胞から(例えば、細胞または培養上清から)回収することができる。必要に応じて、抗体のポリペプチド鎖を好適な条件下で好適な期間インキュベートして、抗体の産生を可能にすることができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体を調製する方法は、本明細書にも記載されるように、抗ガレクチン-9抗体の重鎖及び軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターを含む。組み換え発現ベクターは、従来の方法、例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションにより、好適な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)に導入することができる。陽性の形質転換宿主細胞を選択し、抗体を形成する2つのポリペプチド鎖の発現を可能にする好適な条件下で培養することができ、これは、抗体は細胞または培地から回収することができる。必要に応じて、宿主細胞から回収した2本の鎖を、抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートすることができる。
【0113】
一例では、2つの組み換え発現ベクターが提供され、一方は、抗ガレクチン-9抗体の重鎖をコードし、他方は、抗ガレクチン-9抗体の軽鎖をコードする。2つの組み換え発現ベクターは両方とも、従来の方法、例えば、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションにより、好適な宿主細胞(例えば、dhfr-CHO細胞)に導入することができる。あるいは、発現ベクターのそれぞれを、好適な宿主細胞に導入することもできる。陽性の形質転換体を選択し、抗体のポリペプチド鎖の発現を可能にする好適な条件下で培養することができる。2つの発現ベクターが同じ宿主細胞に導入される時、そこで産生される抗体を宿主細胞または培地から回収することができる。必要に応じて、ポリペプチド鎖は、宿主細胞または培地から回収し、次に、抗体の形成を可能にする好適な条件下でインキュベートすることができる。2つの発現ベクターが異なる宿主細胞に導入される時、それらのそれぞれは、対応する宿主細胞または対応する培地から回収することができる。次に、2つのポリペプチド鎖を、抗体の形成に適した条件下でインキュベートすることができる。
【0114】
標準的な分子生物学手法は、組み換え発現ベクターの調製、宿主細胞のトランスフェクション、形質転換体の選択、宿主細胞の培養、及び培地からの抗体の回収を行うために使用される。例えば、いくつかの抗体は、プロテインAまたはプロテインG結合マトリックスを用いるアフィニティークロマトグラフィーで単離することができる。
【0115】
本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体の重鎖、軽鎖、またはその両方をコードする核酸、それを含有するベクター(例えば、発現ベクター)、及びベクターを含む宿主細胞のいずれかが、本開示の範囲内である。
【0116】
このように調製された抗ガレクチン-9抗体は、当該技術分野で既知の方法を使用して特徴とすることができ、それにより、ガレクチン-9の生物学的活性の低下、改善、または中和が、検出及び/または測定される。例えば、いくつかの実施形態では、ELISA型アッセイは、デクチン-1またはTIM-3シグナル伝達のガレクチン-9阻害の定性的または定量的測定に適している。
【0117】
抗ガレクチン-9抗体の生物活性は、候補抗体を、デクチン-1及びガレクチン-9と共にインキュベートし、以下の特性のいずれか1つ以上を監視することにより検証することができる:(a)デクチン-1及びガレクチン-9間で結合し、結合により媒介されるシグナル伝達の阻害すること;(b)固形腫瘍のあらゆる側面を予防、改善、または処置すること;(c)デクチン-1活性化を遮断または減少させること;(d)ガレクチン-9の合成、産生、または放出を阻害(減少)させること。あるいは、TIM-3は、上記のプロトコールを使用して抗ガレクチン-9抗体の生物活性を検証するために使用することができる。あるいは、CD206は、上記のプロトコールを使用して抗ガレクチン-9抗体の生物活性を検証するために使用することができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、生物活性または有効性は、例えば、末梢及び腫瘍内T細胞比、T細胞活性化を測定することにより、またはマクロファージ表現型解析により、対象において評価される。
【0119】
抗ガレクチン-9抗体の生物活性を決定するための追加のアッセイには、CD8+及びCD4+(従来の)T細胞活性化の測定(例えば、炎症性サイトカインレベル、例えば、IFNガンマ、TNFアルファ、CD44、ICOSグランザイムB、パーフォリン、IL2(上方制御)、CD26L及びIL-10(下方制御));マクロファージの再プログラミング(in vitroまたはin vivo)測定、例えば、M2表現型からM1表現型(例えば、MHCIIの増加、CD206の減少、TNF-α及びiNOSの増加)の測定、あるいは、例えば、本明細書に記載のin vitroアッセイにおいて、ADCCのレベルを評価することができる。
【0120】
処置方法
本開示は、抗ガレクチン抗体、例えば、G9.2-17、例えば、G9.2-17 IgG4を単独で、または抗PD-1抗体などのチェックポイント阻害薬と組み合わせて使用して、限定されないが、PDAC、CRC、HCC、及び胆管癌、腎細胞癌、尿路上皮癌、頭頸部癌、乳癌、または他のGI固形腫瘍を含む固形腫瘍を処置するための方法を提供する。本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体のいずれかは、本明細書に記載の方法のいずれかで使用することができる。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、G9.2-17(例えば、G9.2-17(IgG4))である。そのような抗体は、ガレクチン-9と関連する疾患の処置に使用することができる。いくつかの態様では、本開示は、がんを処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、がんと関連する1つ以上の症状(複数可)を低減、改善、または除去するための方法である。
【0121】
(A)標的固形腫瘍の例
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における固形腫瘍を処置するための方法を提供し、方法は、限定されないが、G9.2-17 IgG4を含む有効量の本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの例では、本明細書に開示の方法は、膵癌、例えば、乳管腺癌(PDAC)、に罹患するヒト患者に適用される。いくつかの場合では、PDAC患者は、転移性癌に罹患し得る。いくつかの例では、本明細書に開示の方法は、結腸直腸癌(CRC)に罹患にするヒト患者に適用される。いくつかの実施形態では、結腸直腸癌は、転移性である。いくつかの例では、本明細書に開示の方法は、肝細胞癌に罹患にするヒト患者に適用される。いくつかの実施形態では、肝細胞癌は、転移性である。他の例では、本明細書に開示の方法は、胆管癌に罹患にするヒト患者に適用される。いくつかの実施形態では、胆管癌は、転移性である。
【0122】
膵管腺癌(PDAC)は、長期生存者がほとんどいない壊滅的な疾患である(Yadav et al.,Gastroenterology,2013,144,1252-1261)。炎症は、付随する炎症が存在しない場合、発癌性変異単独では、腫瘍形成には不十分であるために、PDACの進行において最も重要である(Guerra et al.,Cancer Cell,2007,11,291-302)。自然免疫及び適応免疫は、協同してPDACにおける腫瘍の進行を促進する。特に、腫瘍微小環境(TME)内の特定の自然免疫サブセットは、適応免疫エフェクター細胞を腫瘍許容表現型に向けて教育するのに適する。M2極性腫瘍関連マクロファージ(TAM)及び骨髄樹状細胞(DC)を含む抗原提示細胞(APC)集団は、腫瘍防御性Th1細胞を優先して免疫抑制性Th2細胞の生成を誘導する(Ochi et al.,J of Exp Med.,2012,209,1671-1687;Zhu et al.,Cancer Res.,2014,74,5057-5069)。同様に、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)は、PDACにおける抗腫瘍CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を打ち消し、転移の進行を促進することが示されている(Connolly et al.,J Leuk Biol.,2010,87,713-725;Pylayeva-Gupta et al.,Cancer Cell,2012,21,836-847;Bayne et al.,Cancer Cell,2012,21,822-835)。
【0123】
膵臓癌は、通常に発症が遅く、化学療法に対する抵抗性が比較的高く、効果的な免疫療法及び標的療法が存在しないので、依然として治療が難しい疾患である。2018年には、世界的に約45万5,000人の新たな膵臓癌症例が報告されており、2040年までに毎年35万5,000人の新たな膵臓癌症例が発生すると推定されており、毎年新規症例とほぼ同数の死亡が報告されている。2030年までに米国におけるがん関連死の2番目の主な原因になると予測される。介入にもかかわらず、転移性膵臓癌患者の平均余命は、現在の処置では1年未満であるが、ほとんどの患者(80%も)は、疾患が治癒切除が不可避である場合、進行/転移段階にある。膵臓癌の検出及び管理の進歩にもかかわらず、転移性疾患の5年生存率は、依然として10%である。転移性膵臓癌の現在の標準治療は主に化学療法であるが、BRCA1/2変異及びミスマッチ修復欠損腫瘍を有する明らかに少数の患者(10%未満)は、PARP阻害薬、主に、抗PD-1療法の恩恵を受け得る。しかし、この疾患の大多数の患者にとって、現在承認されている免疫療法は、免疫抑制性環境が高いので、一般に効果がない。
【0124】
結腸直腸癌(CRC)は、腸癌、結腸癌、または直腸癌としても既知であり、結腸及び直腸に影響を及ぼす任意のがんである。CRCは、腫瘍細胞の遺伝子変化により引き起こされることが知られており、腫瘍-宿主相互作用にも影響される。最近の報告は、特定のTリンパ球亜集団の密度及びCRCにおける良好な臨床転帰間に直接的な相関関係があることが証明されており、CRCの腫瘍進行の抑制におけるT細胞媒介免疫の主要な役割が裏付けられている。
【0125】
CRCは、世界で最も大きながん負担のうちの1つを提示する。現在、世界で4番目に致死率の高いがんで、世界中で年間約90万人が死亡している。米国では、2020年に147,950人の症例が発生し、53,200人が死亡すると予測される(結腸直腸癌統計)。標準治療の大幅な進歩にもかかわらず、転移性大腸癌の5年生存率は、依然として約20%未満である。CRCによる死亡は、今後20年以内に、ほぼ倍増すると予想される。CRCの現在の標準治療は、選択された患者における抗血管新生療法及び抗上皮増殖因子受容体療法と組み合わせ及び/または順序付けする化学療法レジメンである。さらに、現在の免疫療法は、腫瘍がミスマッチ修復欠損でマイクロサテライト不安定性が高い(dMMR/MSI-H)患者の小サブセットのみ有効である(深遠で持続的な応答を生み出すにもかかわらず)(Dekker et al.,2019)。CRC患者の大多数であるマイクロサテライト安定CRCにおける免疫療法のアウトカムは、最適とは言えず、これは、積極的な免疫療法に対する満たされていない重要な医療ニーズを表す。dMMR/MSI-Hである小さなサブセットであるCRCは、免疫療法から恩恵を受ける(Huygheetal.,2019)が、熟練したミスマッチ修復またはマイクロサテライト安定CRCを有する患者の大多数は恩恵を受けない。
【0126】
肝細胞癌(HCC)は、最も一般的なタイプの原発性肝臓癌である。肝細胞癌は、B型肝炎またはC型肝炎感染により引き起こされる肝硬変などの慢性肝疾患に罹患している者に最も多く発生する。HCCは、通常、慢性ウイルス感染による広範なリンパ球浸潤を伴う肝硬変を伴う。多くの研究は、腫瘍浸潤エフェクターCD8+T細胞及びヘルパー17(Th17)細胞が腫瘍の外科的切除後の生存期間の改善と相関することが実証されている。しかし、腫瘍浸潤エフェクターT細胞は、腫瘍の成長及び転移を制御できない(Pang et al.,Cancer Immunol Immunother 2009;58:877-886)。
【0127】
胆管癌(CCA)は、胆管で発生するがんの群である。胆管癌は、通常、肝臓との関連でその位置で分類される。例えば、肝内胆管癌は、全胆管癌症例の10%未満を占め、肝臓内の小さな胆管で発生する。別の例では、胆管癌症例の半数以上を占める肺門周囲胆管癌(クラットスキン腫瘍としても知られる)は、門部で始まり、2つの主要な胆管は、肝臓に合流して肝臓から離れる。他は、肝臓の外側の胆管で始まる遠位胆管癌として分類される。
【0128】
CCAは、進行性の腫瘍であり、ほとんどの患者は、発症時に進行期の疾患を罹患している。CCAの発生率は、増加しており、効果的な治療法は、緊急に必要とされている。ゲムシタビン及びシスプラチンは、依然として、進行性CCAの標準的な第1選択の全身療法であるが、生存期間中央値が1年未満であるので、望まれることはまだ多い。第1選択の療法の失敗以外に、治療上の決定を導くための利用可能な証拠は、不足している。食品医薬品局(FDA)は、ごく最近に、腫瘍内に線維芽細胞増殖因子受容体2遺伝子融合及び他の再構成を有する患者に対するこの適応症における第1の標的療法を承認した。ヒトの臨床試験における免疫療法に対する次善の奏効率は、CCAの大半が、非T細胞浸潤微小環境を伴う免疫「コールド」腫瘍であることを意味する。実に、現在までの免疫療法は、17%を超えない奏効率を生じており、この趣意書の日付現在で、免疫腫瘍薬は承認されていない(Zayac and Almhanna,2020)。
【0129】
その非常に攻撃的な性質及び化学療法に対する耐性と組み合わされたこれらの腫瘍が静かに存在することは、憂慮すべき死亡率(遠隔疾患患者の5年生存率が惨憺たる2%である)の原因となる(Banales et al.,2020;Bile Duct Cancer Survival,2020)。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗腫瘍活性を、治療前または対照対象のレベルと比較して、少なくとも約10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上増加させる(例えば、細胞増殖、腫瘍成長、腫瘍体積、及び/または腫瘍量もしくは重量を低減させるか、あるいは、経時的に転移性病変の数を低減させる)方法が提供される。いくつかの実施形態では、低減は、医薬組成物の投与前後の対象の細胞増殖、腫瘍成長、及び/または腫瘍体積を比較することにより測定される。いくつかの実施形態では、がんの1つ以上の症状を、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上改善する方法が提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与前、投与中、及び投与後に、対象の癌性細胞及び/またはバイオマーカーが、組織または臓器由来の、血液、血清、血漿、尿、腹水、及び/または生検などの生体試料において測定される。いくつかの実施形態では、対象の腫瘍の体積、サイズ、重量、もしくは量を、検出不可能なサイズまで、または、処置前の対象の腫瘍のサイズ、重量、もしくは量の約1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、もしくは90%未満まで、低減する方法には、本発明の組成物を投与することが含まれる。他の実施形態では、対象の細胞増殖速度または腫瘍成長速度を、検出不可能な速度まで、または、処置前の速度の約1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、もしくは90%未満まで、低減させるための方法が提供される。他の実施形態では、対象の転移性病変の発生または転移性病変の数もしくはサイズを、検出不可能な速度まで、または、処置前の速度の約1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、もしくは90%未満まで、低減させる方法には、本発明の組成物を投与することが含まれる。
【0131】
「約」または「およそ」という用語は、当業者で決定される特定値の許容誤差範囲内を意味し、これは、部分的に、値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの限界、に依存する。例えば、「約」は、当該技術分野の慣例に従って、許容可能な標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の、最大±20%、好ましくは、最大±10%、より好ましくは、最大±5%、さらにより好ましくは、最大±1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、用語は、値の桁内、好ましくは、2倍以内、を意味し得る。特定値が、出願及び特許請求の範囲に記載されている場合、別途記載のない限り、「約」という用語は、暗黙で、この文脈では、特定値の許容誤差範囲内を意味する。
【0132】
本明細書で使用される場合、「処置すること」という用語は、標的疾患もしくは障害、疾患/障害の症状、または疾患/障害に対する素因を有する対象に、1つ以上の活性薬を含む組成物の適用または投与を指し、障害、疾患もしくは障害の症状、または疾患もしくは障害に対する素因を治療、治癒、緩和、軽減、変更、治療、改善、改善する、または影響を与えることを目的とする。
【0133】
標的疾患/障害の緩和には、疾患の発症もしくは進行を遅らせること、または疾患の重症度を低減すること、または生存期間を延長することが含まれる。疾患の緩和または生存期間の延長には、必ずしも治療効果が必要なわけではない。本明細書で使用される場合、標的疾患または障害の発症を「遅延させる」は、疾患の進行を延期、妨害、減速、抑制、安定化、及び/または延期することを意味する。この遅延は、処置される疾患及び/または個体の病歴に応じて、時間を変動させることができる。疾患の発症を「遅延」もしくは軽減する方法、または疾患の発症を遅延させる方法とは、所定の時間枠内で疾患の1つ以上の症状を発症する確率を低減させ、及び/または方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠で症状の程度を低減する方法である。そのような比較は、通常、統計的に有意な結果を得るのに十分な数の対象を使用した臨床研究に基づいている。
【0134】
疾患の「発症」または「進行」は、疾患の初期症状及び/またはその後の進行を意味する。疾患の発症は、当該技術分野で周知の標準的な臨床技術を使用して検出可能で、評価することができる。しかし、開発は、検出不可能であり得る進行も指す。本開示の目的上、発症または進行は、症状の生物学的経過を指す。「発症」には、発生、再発、及び発症が含まれる。本明細書で使用される場合、標的疾患または障害の「発症」または「発生」には、最初の発症及び/または再発が含まれる。
【0135】
(B)処置のための例示的な患者集団
上記のがんのいずれかを有する対象は、日常的な健康診断、例えば、臨床検査、器官機能検査、遺伝子検査、介入処置(生検、外科)、ありとあらゆる関連イメージング診断法で同定することができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で処置されるべき対象は、概説された治療法の任意の組み合わせまたは順序において、全身的及び/または局所的に送達される抗がん療法レジメン、例えば、化学療法、放射線療法、腫瘍治療電場(TTField)、免疫療法、生物学的療法、小分子阻害薬、抗ホルモン療法、細胞ベースの療法、及び/または手術、を受けていたか、または受けているヒトがん患者である。いくつかの実施形態では、対象は、上記の免疫調節薬または他の任意の抗腫瘍剤または治療モダリティを事前に受けている。そのような免疫調節薬の非限定例には、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA-4、抗TIGIT、抗PVRIG、抗LAG-3、抗CD47、抗CD40、抗CSFR1、抗CD73、抗SIRP、抗A2AR、抗OX40、抗CD137、白金系薬剤などが挙げられるが、これらに限定されない。白金系薬剤の非限定例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、及びロバプラチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、処置を通して疾患増悪を示す。他の実施形態では、対象は、処置(de novoまたは後天性のいずれか)に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、そのような対象は、進行性悪性腫瘍(例えば、手術不能または転移性)に罹患していることが実証される。代替的または追加的に、いくつかの実施形態では、対象は、標準処置選択肢に利用可能または不適格な標準治療選択肢がなく、これは、対応する固形腫瘍を処置するために臨床環境で一般に使用される療法を指す。
【0137】
腫瘍治療電場(TTField)は、中間周波数(約100~500kHz)及び低強度(1~3V/cm)の交流電場を使用して細胞分裂を破壊するがん治療モダリティである。本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、抗ガレクチン-9抗体は、単独で、または抗PD-1抗体などのチェックポイント阻害薬と組み合わせて、腫瘍治療電場(TTFields)レジメンの前、それと同時、またはその後に投与され得る。
【0138】
いくつかの場合では、対象は、難治性疾患、例えば、難治性PDAC、難治性CRC、難治性HCC、または難治性胆管癌に罹患しているヒト患者であってよい。本明細書で使用される場合、「不応性」は、処置に応答しないか、またはそれに対して耐性を示すようになる腫瘍を指す。いくつかの場合では、対象は、再発性疾患、例えば、再発性PDAC、再発性CRC、再発性HCC、または再発性胆管癌に罹患しているヒト患者であってよい。本明細書で使用される場合、「再発した」または「再発する」は、処置による一定期間の改善(例えば、部分的または完全な応答)後に再発または進行する腫瘍を指す。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法で処置されるべきヒト患者は、以下の実施例1に開示の包含基準及び除外基準の1つ以上を満たす。例えば、ヒト患者は、18歳以上であり得る;(例えば、標準的な治療選択肢がない)組織学的に切除不能な転移性癌または手術不能癌に罹患している、余命が3ヶ月を超えている、バイオマーカー分析に利用可能な最近のアーカイブ腫瘍試料を有する(例えば、IHCで評価されたガレクチン-9腫瘍組織発現レベルのアーカイブ種);RECISTv 1.1によると、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータスが0~1、またはKarnofskyスコアが70を超える測定可能な疾患に罹患している;利用可能な標準治療の選択肢がない、MSI-H(マイクロサテライト不安定性が高く、MSS(マイクロサテライト安定)を有する);進行性/転移性設定で少なくとも1系統の全身療法を受けている;十分な血液学的機能及び末端臓器機能を有する(以下の実施例1で定義;例えば、パート1のHCCの場合≧50×10/L、好中球数≧1×10/L、血小板数≧100×10/L;前週に輸血なしでヘモグロビン≧9.0g/dL、クレアチニン≦1.5×ULN、AST(SGOT)≦3×ULN(HCCまたは肝転移がある場合、≦5×ULN)、ALT(SGPT)≦3xULN(HCCまたは肝転移がある場合、≦5×ULN)、ビリルビン≦1.5×ULN(既知のギルバート病患者は、ビリルビン≦3.0×ULNを有し得る)、アルブミン≧3.0g/dL、INR及びPTT≦1.5×ULN;ならびに/またはアミラーゼ及びリパーゼ≦1.5×ULN));脳転移がある場合、処置を完了している(以下の実施例1を参照);過去1ヶ月以内に活動性の感染の証拠がなく、重篤な感染もない;抗がん治療の最終投与から、第1の抗Gal-9抗体投与前に、少なくとも4(4)週間または5半減期(いずれか短い方)を有する;該当する場合、骨転移に対して続きのビスホスフォネート処置(ゾレンドロン酸)またはデノスマブを有する。即時処置の対象となるCCRまたはCCA患者は、転移環境において必要とされる事前の少なくとも1つの事前の一連の治療を有し得る。いくつかの実施形態では、本処置の対象となるCCRまたはCCA患者は、転移環境において事前の少なくとも事前の一連の治療を有している。
【0140】
代替的または追加的に、本明細書に開示の処置に適した対象は、以下のうちの1つ以上を有さないことがある:原発不明の転移性癌と診断される;活動性の管理不能な出血、及び出血性素因(例えば、活動性の消化性潰瘍疾患)を有する任意の患者;抗ガレクチン-9抗体の投与から4週間以内または5半減期以内に他の任意の治験薬を投与される;例えば、骨痛または局所的に痛みを伴う腫瘍塊の処置のための、限定領域に対する症状緩和的放射線療法を除く、抗ガレクチン-9抗体の初回投与の4週間以内に放射線療法を受ける;真菌性腫瘍塊を有する;PDAC患者の場合、処置開始から6ヶ月未満にゲムシタビン含有レジメンを予め受けている局所進行性PDACに罹患している患者;NCI-CTCAEバージョン5.0のグレード2超の活動性の臨床的に重篤な感染症がある;症候性または活動性の脳転移がある;CTCAEグレード3以上の細胞傷害性がある(実施例1の詳細及び例外を参照);2次悪性腫瘍の病歴がある(実施例1の例外を参照);重症または管理不能な全身疾患、うっ血性心不全の証拠がある;未治癒の重篤な創傷、進行中の潰瘍、または未処置の骨折がある;再発するドレナージ処置を必要とする管理不能な胸水、心嚢水、または腹水がある;手術及び/または放射線療法で最終的に処置されていない脊髄圧迫がある。軟髄膜疾患、進行中または事前に処置済み;重大な血管疾患に罹患している;活動性の自己免疫障害に罹患している(実施例1の例外を参照);全身的な免疫抑制処置が必要である;広範な鎮痛介入(経口及び/もしくはパッチ)に反応しない腫瘍関連疼痛(グレード3超)がある;ビスホスフォネートの使用にもかかわらず、制御されていない高カルシウム血症に罹患している;事前のチェックポイント阻害薬療法(CIT)に起因する免疫関連グレード4の有害事象の任意の病歴がある;臓器移植(複数可)を受けた;ならびに/または透析を受けている時;HCC患者及び/もしくはCCA患者の場合、処置前に切除療法を受けた;肝性脳症または重症の肝腺腫;及び/またはChild-Pughスコア≧7である。いくつかの場合では、ヒト患者は、少なくとも1つの事前の一連の全身療法を受けながら、進行した転移性肝細胞癌に罹患していないか;ソラフェニブを拒絶するか、もしくは許容しなかったか、もしくは、効果がないか、忍容しないか、もしくは不適切であると考えられる標準治療を受けたことがあるか、または有効な標準治療が利用できないことがある。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法で処置されるべきヒト患者は、以下の実施例1に開示の包含基準及び除外基準の1つ以上を満たす。例えば、ヒト患者は、18歳を超えてもよく、組織学的に切除不能な転移性癌(例えば、腺癌及び扁平上皮癌)を有し得る。RECISTv.1.1に従って、患者は、測定可能な疾患に罹患していることがある。いくつかの場合では、ヒト患者は、バイオマーカー分析(例えば、IHCにより評価され得るガレクチン-9腫瘍組織発現)に利用可能な最近のアーカイブ腫瘍試料(例えば、5年以内に得られた)を有し得る。いくつかの場合では、ヒト患者は、転移性癌の設定において少なくとも1つの一連の全身療法を受けたことがあるPDAC患者である。いくつかの場合では、ヒト患者は、抗ガレクチン-9含有レジメンを受ける前に、全身療法を受けているか、または受けていないPDAC患者である。そのような患者は、ゲムシタビン含有レジメンナイーブか、または事前の疾患ステージ設定で、ゲムシタビン含有レジメンを使用して処置されてから少なくとも6ヶ月であってよい。患者は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータスが、0~1、及び/またはKarnofskyスコアが70超であり得る。患者は、十分な血液機能及び末端臓器機能、例えば、好中球数≧1×10/L、血小板数≧100×10/L、パート1のHCC≧50×10/Lの場合;前週に輸血なしで、ヘモグロビン≧9.0g/dL、クレアチニン≦1.5×ULN、AST(SGOT)≦3×ULN(HCCまたは肝転移がある場合、≦5×ULN)、ALT(SGPT)≦3×ULN(HCCまたは肝転移がある場合、≦5×ULN)、ビリルビン≦1.5×ULN(既知のギルバート病患者は、ビリルビン≦3.0×ULNを有し得る)、アルブミン≧3.0g/dL、INR及びPTT≦1.5×ULN;ならびに/またはアミラーゼ及びリパーゼ≦1.5×ULN。いくつかの場合では、ヒト患者は、活動性感染症または非経口抗生物質を必要とする感染症の証拠を示さず、処置開始前の4週間以内に重篤な感染症も示さない。膵臓、胆道、または腸瘻は、適切な非感染性でパテントドレーンで管理されている場合に許可される。
【0142】
代替的または追加的に、本明細書に開示の任意の処置を受けるヒト患者は、以下がないことがある:(i)原発不明の転移性癌;(ii)臨床的に重大な活動性の管理不能な出血、あらゆる出血素因(例えば、活動性の消化性潰瘍疾患);(iii)処置の初回投与から4週間以内の放射線療法;(iv)真菌性腫瘍塊がある場合;(v)予めのがん治療によるCTCAEグレード3以上の毒性(脱毛症及び白斑を除く);(v)第2の悪性腫瘍の病歴;(vi)重症もしくは管理不能な全身疾患の証拠、ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラス2超のうっ血性心不全、または6ヶ月以内の心筋梗塞(MI);(vii)重篤な非治癒創傷、活動性潰瘍、または未処置の骨折;(viii)管理不能の胸水、心嚢水、または頻発するドレナージ処置を必要とする腹水;(ix)キメラ抗体またはヒト化抗体または融合タンパク質に対する重症のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、または他の過敏反応の病歴;(x)処置から6ヶ月以内の重大な血管疾患(例えば、外科的修復を必要とする大動脈瘤もしくは最近の動脈血栓症)、処置前3ヶ月以内の肺塞栓症、脳卒中、もしくは一過性虚血発作の病歴、及び/または処置前6ヶ月以内の腹瘻もしくは胃腸穿孔の病歴;(xi)活動性自己免疫疾患(I型糖尿病、ホルモン補充のみを必要とする甲状腺機能低下症、白斑、乾癬、または脱毛症を除く);(xii)全身的な免疫抑制処置が必要である;(xii)広範な鎮痛介入(経口及び/またはパッチ)に応答しない腫瘍関連疼痛(グレード3超);(xiii)ビスホスフォネートの使用にもかかわらず、管理不能の高カルシウム血症;(xiv)臓器移植(複数可)を受けた。
【0143】
いくつかの場合では、対象は、対照レベルと比較してガレクチン-9のレベルが上昇したヒト患者である。ガレクチン-9のレベルは、ヒト患者におけるガレクチン-9の血漿または血清レベルであり得る。他の例では、ガレクチン-9のレベルは、腫瘍内のがん細胞のガレクチン-9のレベルである。他の例では、ガレクチン-9のレベルは、腫瘍内の免疫細胞のガレクチン-9のレベルである。他の例では、ガレクチン-9のレベルは、細胞表面ガレクチン-9のレベル、例えば、がん細胞上のガレクチン-9のレベル、であり得る。一例において、ガレクチン-9のレベルは、患者由来の器官型腫瘍スフェロイド(PDOT)で測定される、例えば、がん細胞の表面上の、ガレクチン-9発現がん細胞のレベル、または免疫細胞で発現されるガレクチン-9のレベルであり得(PDOT)、これは、例えば、以下の実施例で開示される方法、で調製することができる。対照レベルは、固形腫瘍を持たない同種の対象(例えば、ヒト)の対応する試料におけるガレクチン-9のレベルを指し得る。いくつかの例では、対照レベルは、健康な対象におけるガレクチン-9のレベルを表す。いくつかの実施形態では、対照レベルは、処置前のベースラインレベルであってよい。
【0144】
そのような対象を同定するために、好適な生体試料は、固形腫瘍に罹患している疑いのある対象から取得することができ、生体試料は、従来の方法、例えば、ELISAまたはFACS、を使用して、その中に含有される(例えば、遊離の、細胞表面発現の、または合計の)ガレクチン-9のレベルを決定するために分析することができる。いくつかの実施形態では、オルガノイド培養物は、例えば、本明細書に記載されるように、調製され、対象のガレクチン-9レベルを評価するために使用される。オルガノイド調製プロセスの一部として得られる特定の画分に由来する単一細胞も、対象のガレクチン-9レベルの評価に適している。いくつかの場合では、遊離形態の、または細胞表面に発現したガレクチン-9のレベルを測定するためのアッセイは、ガレクチン-9に特異的に結合する(例えば、ヒトガレクチン-9に特異的に結合する)抗体の使用を含む。当該技術分野で既知の抗ガレクチン-9抗体のいずれも、上記のアッセイのいずれかにおいて適合性について試験し、その後、所定の方法で、そのようなアッセイで使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体(例えば、G9.2-17抗体)は、そのようなアッセイで使用することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、米国特許第10,344,091号及び国際公開第2019/084553号に記載されており、これらのそれぞれの関連開示は、本明細書で参照される目的及び主題のために参照により組み込まれる。いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体は、Fab分子である。本明細書に開示のガレクチン-9レベルを決定するためのアッセイ方法も、本開示の範囲内である。
【0145】
(C)例示的な処置条件
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体、例えば、G9.2-17は、in vivoで腫瘍の免疫抑制免疫細胞におけるガレクチン-9(及び/またはデクチン-1またはTIM-3またはCD206)の活性を、少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)抑制するのに十分な量で、処置を必要とする対象に投与される。他の実施形態では、本明細書に記載の抗体、例えば、G9.2-17は、免疫抑制免疫細胞のガレクチン-9(及び/またはデクチン-1またはTIM-3、またはCD206)の活性レベルを、(処置前または対照対象のレベルと比較して)少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)低減させるのに有効な量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体、例えば、G9.2-17は、TAMにおけるM1様プログラミングを、in vivoで(治療前または対照対象のレベルと比較して)少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)、促進するのに十分な量で、処置を必要とする対象に投与される。
【0146】
当業者らに既知の従来の方法は、処置されるべき疾患のタイプまたは疾患の部位に応じて、医薬組成物を対象に投与するために使用することができる。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、静脈内注入で対象に投与することが得る。
【0147】
注射用組成物は、様々な担体、例えば、植物油、ジメチルアクトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)を含有し得る。静脈内注入の場合、水溶性抗体は、抗体及び生理学的に許容される賦形剤を含有する医薬製剤が注入される点滴法で投与することができる。生理学的に許容される賦形剤には、例えば、5%のブドウ糖、0.9%の生理食塩水、リンガー液、または他の好適な賦形剤が含まれ得る。筋肉内調製物、例えば、抗体の好適な可溶性塩形態の滅菌製剤は、医薬賦形剤、例えば、注射用水、0.9%の生理食塩水、または5%のグルコース溶液を溶解して投与することができる。
【0148】
本明細書に記載の医薬組成物の有効量は、全身的または局所的に好適な経路を介して処置を必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することができる。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、静脈内投与、例えば、ボーラスとして、または一定期間にわたる連続注入により、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、動脈内、関節内、滑膜内、髄腔内、腫瘍内、尿路上皮下、経口、吸入、または局所経路により投与される。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、静脈内注入で対象に投与される。一実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、対象に腹腔内投与される。
【0149】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、単独で、または1つ以上の他の活性薬と組み合わせて、対象に治療効果を与えるのに必要な各活性薬の量を指す。いくつかの実施形態では、治療効果は、腫瘍微小環境における、ガレクチン-9活性及び/または量/発現の減少、デクチン-1シグナル伝達の減少、TIM-3シグナル伝達の減少、CD206シグナル伝達の減少、または抗腫瘍免疫応答の増加である。抗腫瘍応答の増加の非限定例としては、エフェクターT細胞の活性化レベルの増加、またはTAMのM2表現型からM1表現型への切り替えが挙げられる。いくつかの場合では、抗腫瘍応答には、ADCC反応の増加が含まれる。抗体の量が治療効果を達成したかどうかの決定は、当業者には明らかであろう。当業者らにより認識されるように、有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別、及び体重を含む個々の患者パラメーター、処置期間、併用療法(ある場合)の性質、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識及び専門知識の範囲内の同様の要素に応じて変動する。これらの要因は、当業者らに周知であり、日常的な実験のみで対処することができる。一般に、個々の成分またはそれらの組み合わせの最大用量、すなわち、健全な医学的判断に従った最高安全用量、が使用されることが好ましい。
【0150】
一般に、半減期などの経験的考慮事項が、投薬量の決定に寄与する。例えば、ヒト化抗体または完全ヒト抗体などのヒト免疫系と適合する抗体は、いくつかの場合では、抗体の半減期を延長させ、抗体が宿主の免疫系により攻撃されるのを防ぐために使用される。投与頻度は、治療の過程にわたって決定及び調整され得、必ずしもではないが、一般に、標的疾患/障害の処置及び/または抑制及び/または改善及び/または遅延に基づいて行われる。あるいは、抗体の徐放性持続放出製剤が適切であり得る。持続放出を達成するための様々な製剤及びデバイスが、当該技術分野で既知である。
【0151】
一例では、本明細書に記載の抗体の投薬量は、抗体の1回以上の投与(複数可)が投与されている個体において経験的に決定される。個体は、アンタゴニストの増量投与が与えられる。アンタゴニストの有効性を評価するには、疾患/障害の指標を追跡することができる。
【0152】
(D)抗ガレクチン-9抗体処置
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体は、本明細書に開示の標的癌を治療するために使用され、すなわち、抗ガレクチン-9抗体を使用する療法と同時に他の抗がん療法を行わない。いくつかの場合では、本明細書に開示のG9.2-17(IgG4)などの抗ガレクチン-9抗体は、単独療法(すなわち、抗ガレクチン-9抗体を唯一の活性薬剤として)で使用され得る。他の場合では、本明細書に開示のG9.2-17(IgG4)などの抗ガレクチン-9抗体は、併用療法において、例えば、本明細書に開示のようなPD-1阻害薬と組み合わせて、使用され得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における固形腫瘍を処置するための方法を提供し、方法は、有効量の抗ガレクチン-9抗体、または本明細書に記載のガレクチン-9抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含む、有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体のいずれか、例えば、抗体G9.2-17(IgG4)は、本明細書に開示の方法において使用することができる(例えば、配列番号19の重鎖及び配列番号15の軽鎖を有する)。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、静脈内注入により、2~6週間に1回投与される。いくつかの例では、抗体は、2~4週間に1回、例えば、2週間に1回投与され得る。他の例では、抗体は、週に1回投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17 IgG4)は、30分から6時間の注入期間を介して静脈内に投与される。いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体の静脈内注入は、30分から2時間実施され得る。他の例では、抗ガレクチン-9抗体は、長い注入期間、例えば、約2~6時間、例えば、約2~4時間または約4~6時間を介して投与され得る。具体例では、抗ガレクチン-9抗体は、約3時間、約4時間、約5時間、または約6時間の期間で静脈内注入され得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍(例えば、本明細書に開示のもの)の処置に使用される本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17(IgG4))は、0.2mg/kg~約32mg/kgの用量で対象に投与することができ、例えば、用量は、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、6.3mg/kg、8mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、及び16mg/kg、またはそれ以上の用量レベルから選択され得る。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、約1mg/kg~約32mg/kgの用量で対象に投与され得、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、及び16mg/kg、またはそれ以上の用量レベルで選択され得る。いくつかの実施例では、抗ガレクチン-9抗体は、約0.2mg/kg~約32mg/kgの用量で対象に投与され得、例えば、用量は、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、6.3mg/kg、10mg/kg、もしくは16mg/kg、またはそれ以上の用量レベルから選択され得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、2週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、1サイクルでは2週に1回、2サイクルでは2週に1回、3サイクルでは2週に1回、4サイクルでは2週に1回、または4サイクル超では2週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、2週に1回、4サイクル投与される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、4週間または6週間毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、処置期間は、12~24ヶ月以上である。いくつかの実施形態では、サイクルは、3ヶ月~6ヶ月、または6ヶ月~12ヶ月、または12ヶ月~24ヶ月、またはそれ以上の期間にわたる。いくつかの実施形態では、サイクルの長さは、例えば、一時的または永続的に、より長い期間、例えば、3週間または4週間、に変更される。いくつかの実施形態では、使用は、さらに、例えば、本明細書に記載のレジメンに従って投与される、本明細書に記載されるように、免疫チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体、を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、間隔またはサイクルは、1週間である。いくつかの実施形態では、間隔またはサイクルは、2週間である。特定の実施形態では、間隔またはサイクルは、2週間である。特定の実施形態では、間隔またはサイクルは、3週間である。特定の実施形態では、間隔またはサイクルは、4週間である。
【0157】
固形腫瘍は、膵管腺癌(PDAC)、結腸直腸癌(CRC)、肝細胞癌(HCC)、胆管癌(CAA)、腎細胞癌(RCC)、尿路上皮癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、及び他のGI固形腫瘍から選択され、いくつかの実施形態では、レジメンまたは投与予定は、1サイクルでは2週間に1回、2サイクルでは2週間に1回、3サイクルでは2週間に1回、4サイクルでは2週間に1回、または4サイクルでは2週間に1回である。いくつかの実施形態では、処置は、1~3ヶ月間で2週に1回、3~6ヶ月間で2週に1回、6~12ヶ月間で2週に1回、または12~24ヶ月間で2週に1回、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、抗体は、静脈内注入により投与される。
【0158】
いくつかの実施形態では、レジメンまたは投与予定は、1サイクルでは3週もしく4週に1回、2サイクルでは3週もしくは4週に1回、3サイクルでは3週もしくは4週に1回、4サイクルでは3週もしくは4週に1回、または、4サイクル超では3週または4週に1回である。いくつかの実施形態では、処置は、1~3ヶ月間で3週もしくは4週に1回、3~6ヶ月間で3週もしくは4週に1回、6~12ヶ月間で3週もしくは4週に1回、または12~24ヶ月間で3週もしくは4週に1回、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、処置は、1~3ヶ月間で3週もしくは4週に1回、3~6ヶ月間で6週に1回、6~12ヶ月間で3週もしくは4週に1回、または12~24ヶ月間で3週もしくは4週に1回、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、処置は、臨床的に示される場合、24ヶ月より長い。いくつかの実施形態では、抗体は、静脈内注入により投与される。
【0159】
他の実施形態では、G9.2-17(IgG4)などの抗ガレクチン-9抗体は、好適な用量(例えば、本明細書に開示の用量)で週1回ヒト患者に投与され得る。例えば、2.0mg/kgのG9.2-17(IgG4)は、週1回、ヒト患者に投与され得る。例えば、6.3mg/kgのG9.2-17(IgG4)は、週1回、ヒト患者に投与され得る。別の例では、10mg/kgのG9.2-17(IgG4)は、週1回、ヒト患者に投与され得る。あるいは、12mg/kgのG9.2-17(IgG4)が、週1回、ヒト患者に投与され得る。さらに別の例では、16mg/kgのG9.2-17(IgG4)は、週1回、ヒト患者に投与され得る。
【0160】
いくつかの場合では、抗ガレクチン-9抗体は、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、少なくとも6サイクル、またはそれ以上、ヒト患者に与えられ得る。いくつかの場合では、処置期間は、6ヶ月~12ヶ月であってよい。他の場合では、処置期間は、12ヶ月~24ヶ月であってよい。他の場合では、治療期間は、24ヶ月超であってよい。
【0161】
いくつかの場合では、本明細書に開示のG9.2-17(IgG4)などの抗Gal-9抗体は、一定用量、例えば、約650mg~約1120mgで、週1回~4週に1回、対象に投与され得る。いくつかの例では、抗Gal-9抗体は、約650mg~約700mgで、週1回、対象に投与される。いくつかの例では、抗Gal-9抗体は、約650mg~約700mgで、2週に1回、対象に投与される。いくつかの例では、抗Gal-9抗体は、約1040mg~約1120mgで、週1回、対象に投与される。いくつかの例では、抗Gal-9抗体は、約1040mg~約1120mgで、2週に1回、対象に投与される。
【0162】
いくつかの実施形態では、投薬量(複数可)は、処置に対する患者の応答に従って調整される。いくつかの実施形態では、投薬量は、処置間隔の間で変更される。いくつかの実施形態では、処置は、一時的に停止され得る。いくつかの実施形態では、処置は、一時的に停止され得る。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9療法は、一時的に停止される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体と組み合わせて使用されるチェックポイント阻害薬療法は、一時的に停止される。いくつかの実施形態では、両方が、一時的に停止される。
【0163】
あるいは、ヒト患者は、本明細書に開示のG9.2-17(IgG4)などの抗ガレクチン-9抗体の低用量、例えば、0.2mg/kg、0.63mg/kg、または2mg/kgで開始し得る。副作用が観察されない場合、抗体の用量は、例えば、6.3mg/kg、10mg/kg、または16mg/kgに増加され得る。
【0164】
ガレクチン-9の腫瘍促進作用は、免疫細胞との相互作用(例えば、TIM-3、CD44、及び41BBを介したリンパ系細胞との相互作用、ならびに、デクチン-1及びCD206を介したマクロファージとの相互作用)を介して媒介されることを考慮すると、ならびに、ガレクチン-9が多数の腫瘍に発現することを考慮すると、その受容体との相互作用を阻害するために、例えば、ガレクチン-9結合抗体を使用して、標的化ガレクチン-9は、様々な異なる腫瘍タイプに適用することができる治療アプローチを提供する。
【0165】
(E)併用療法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体のいずれか(例えば、本明細書に開示のG9.2-17(IgG4)などのG9.2-17抗体)を、本明細書に記載の方法のいずれかで使用することができ、第2の治療薬、例えば、チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される。チェックポイント阻害薬及び投与レジメンの非限定例が、他の箇所で提供される。
【0166】
従って、本明細書に開示の処置方法は、さらに、チェックポイント分子、例えば、PD-1、の阻害薬を対象に投与することを含んでもよい。PD-1阻害薬の例としては、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、チスレリズマブ、ドスタルリマブ、及びセミプリマブが挙げられる。そのようなチェックポイント阻害薬は、本開示による抗ガレクチン-9抗体と同時にまたは連続して(任意の順序で)投与することができる。いくつかの実施形態では、チェックポイント分子は、PD-L1である。PD-L1阻害薬の例としては、デュルバルマブ、アベルマブ、及びアテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体が挙げられる。いくつかの実施形態では、チェックポイント分子は、CTLA-4である。CTLA-4阻害薬の例は、抗CTLA-4抗体イピリムマブである。いくつかの実施形態では、阻害薬は、CD40、GITR、LAG-3、OX40、TIGIT、及びTIM-3から選択されるチェックポイント分子を標的とする。
【0167】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、チェックポイント分子の阻害薬(例えば、抗PD-1、例えば、ニボルマブ)単独を含むレジメンと比較して、例えば、3ヶ月で、全体的な応答を改善する。
【0168】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、PD-1ニボルマブであり、本明細書に記載の方法は、2週に1回、240mgの用量で、対象にニボルマブを静脈内投与することを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17(IgG4))と併用される。いくつかの場合では、抗PD-1抗体は、一定用量を使用して投与することができる。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ニボルマブであり、これを、2週間毎に約240mg、または、4週間毎に約480mgの用量で、対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、プレムブロリズマブであり、これは、3週に1回、200mgの用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、セミプリマブであり、これは、3週に1回、約350mgの用量で静脈内投与することができる。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、チスレリズマブであり、3週に1回、約200mgの用量で、または6週に1回、約400mgの用量で静脈内投与することができる。いくつかの実施形態では、PD-1に結合する抗体は、ドスタルリマブであり、これは、3週毎に約500mgまたは6週間毎に約1000mgの用量で投与することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する抗体(抗PD-L1抗体)は、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17(IgG4))と併用される。いくつかの場合では、PD-L1に結合する抗体は、一定用量を使用して投与される。いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブであり、これは、3週に1回、1200mgの用量で静脈内投与され得る。いくつかの例では、抗PD-L1抗体は、アベルマブであり、これは、2週間毎に10mg/kgの用量で静脈内投与され得る。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブであり、これは、4週間毎に1500mgの用量で静脈内投与され得る。
【0171】
具体例では、本明細書に開示の方法のいずれかは、(i)本明細書に開示の標的固形腫瘍(例えば、膵管腺癌(PDACまたはPDAC)、CRC、HCC、CCA、RCC、尿路上皮癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、または他のGI固形腫瘍)を有するヒト患者に、2週に1回、約0.2~約32mg/kg(例えば、約3mg/kgまたは約15mg/kg)の用量で、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体(例えば、配列番号19の重鎖及び配列番号5の軽鎖を有する抗体などのG9.2-17)のいずれかを投与すること;ならびに、(ii)有効量の抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ、プレムブロリズマブ、チスレリズマブ、またはセミプリマブ、ドスタルリマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、及びアテゾリズマブ)をヒト患者に投与すること、を含む。
【0172】
他の具体例では、本明細書に開示の方法のいずれかは、(i)本明細書に開示の標的固形腫瘍(例えば、膵管腺癌(PDACまたはPDAC)、CRC、HCC、CCA、RCC、尿路上皮癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、または他のGI固形腫瘍)を有するヒト患者に、週に1回、約0.2~約32mg/kg(例えば、約10mg/kgまたは約16mg/kg)の用量で、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体(例えば、配列番号19の重鎖及び配列番号5の軽鎖を有する抗体などのG9.2-17)のいずれかを投与すること;ならびに、(ii)有効量の抗PD-1または抗PD-L1抗体(例えば、ニボルマブ、プレムブロリズマブ、チスレリズマブ、またはセミプリマブ、ドスタルリマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、及びアテゾリズマブ)をヒト患者に投与すること、を含む。
【0173】
理論に束縛されるものではないが、抗ガレクチン-9抗体は、腫瘍微小環境に浸潤したγδT細胞の活性を阻害し、及び/または、例えば、CD4+及び/またはCD8+T細胞を活性化することにより、腫瘍細胞に対する免疫監視を強化することにより、デクチン-1の阻害を通じて、例えば、デクチン-1の活性を阻害することにより、腫瘍細胞に対する免疫応答を再プログラムすることができると考えられている。従って、抗ガレクチン-9抗体及び本明細書に記載されるような免疫調節剤との併用は、抗腫瘍有効性を著しく高めることが予想される。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体がチェックポイント阻害薬と同時に投与される方法が提供される。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、チェックポイント阻害薬の前または後に投与される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害薬は、全身投与される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害薬は、局所投与される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害薬は、静脈内投与、例えば、ボーラスとして、または一定期間にわたる連続注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、動脈内、関節内、膀胱内、滑液嚢内、髄腔内、腫瘍内、または尿路上皮下経路により投与される。一実施形態では、チェックポイント阻害薬は、静脈内注入で対象に投与される。
【0175】
いくつかの場合では、本明細書に開示の抗PD-1抗体のいずれか、及びG9.2-17(例えば、G9.2-17(IgG4))などの本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体のいずれかなどのチェックポイント阻害薬が、同日投与を有し得る。いくつかの例では、チェックポイント阻害薬は、抗ガレクチン-9抗体の投与前に対象に投与され得る。他の例では、チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体の投与及び抗ガレクチン-9抗体の投与は、2日連続で実施される。チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体は、投与初日に対象に投与され得、抗ガレクチン-9抗体は、翌日に対象に投与することができる。
【0176】
他の例では、本明細書に開示の抗PD-1抗体のいずれかのようなチェックポイント阻害薬は、G9.2-17などの本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体の投与前の約1~7日間(例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または7日間)投与され得る。
【0177】
いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体は、チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体、の投与前に対象に投与することができる。他の場合では、抗ガレクチン-9抗体の投与及びチェックポイント阻害薬、例えば抗PD-1抗体、の投与は、2日連続で実施される。抗ガレクチン-9抗体は、投与初日に対象に投与され得、チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体は、翌日に対象に投与することができる。
【0178】
他の場合では、G9.2-17などの本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体は、本明細書に開示の抗PD-1抗体のいずれかなどのチェックポイント阻害薬の投与前の約1~7日間(例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または7日間)投与され得る。
【0179】
本明細書に記載の方法の実施形態のいずれかにおいて、抗ガレクチン-9抗体は、1サイクルでは2週に1回、2サイクルでは2週に1回、3サイクルでは2週に1回、4サイクルでは2週に1回、4サイクル超では2週に1回(単独でまたは抗PD-1抗体と組み合わせて)投与することができる。いくつかの実施形態では、処置は、1~3ヶ月、3~6ヶ月、6~12ヶ月、12~24ヶ月、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、処置は、1~3ヶ月間で2週に1回、3~6ヶ月間で2週に1回、6~12ヶ月間で2週に1回、または12~24ヶ月間で2週に1回、またはそれ以上である。
【0180】
代替的または追加的に、抗ガレクチン-9抗体は、UGN-102、UGN-201、またはUGN-302を含むレジメンと組み合わせて使用され得る。一実施形態では、UGN-102、UGN-201、またはUGN-302は、ヒドロゲル、例えば、リバースサーマルヒドロゲル技術に基づくヒドロゲル中に配合される。いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体は、UGN-102、UGN-201、またはUGN-302の前に投与することができる。いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体は、UGN-102、UGN-201、またはUGN-302と同時に投与することができる。いくつかの例では、抗ガレクチン-9抗体は、UGN-102、UGN-201、またはUGN-302の後に投与され得る。
【0181】
(F)処置応答の監視
処置、例えば、本明細書に記載の固形腫瘍の処置に対する応答は、以下に記載のRECISTもしくはRECIST 1.1基準及び/またはirRC、irRECIST、iRECIST、imRECISTPDACに従って評価することができる:以下の実施例1及びEisenhower et al.,New response evaluation criteria in solid tumours:Revised RECIST guideline(version 1.1);European Journal Of Cancer 45(2009)228-247;またはBorcoman et al.,Annals of Oncology 30:385-396,2019;Nishino et al.,Clin Cancer Res 2013;19(14):3936-3943(これらのそれぞれの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0182】
いくつかの実施形態では、方法が、例えば、G9.2-17 IgG4治療レジメンの開始前に得られたベースラインレベルと比較して、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体を投与することを含む、全奏効/腫瘍量/腫瘍サイズ(例えば、約2、3、6、もしくは12ヶ月、またはそれ以降の時点)を改善及び/または管理するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、約2ヶ月で全奏効/腫瘍量/腫瘍サイズを改善及び/または管理するためのものである。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体が、チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体、との併用レジメンで投与される場合、処置は、例えば、処置開始前に得られたベースラインレベルと比較して、全奏効/腫瘍量/腫瘍サイズ(例えば、約2、3、6、もしくは12ヶ月、または以降の時点)を改善または管理し得る。いくつかの実施形態では、完全奏効、部分奏効、または安定した疾患(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)をもたらす方法が提供され、方法は、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体を投与することを含む。そのような応答は、一定期間にわたって一時的であるか、または永続的であり得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、方法は、例えば、G9.2-17 IgG4処置レジメンの開始前に得られたベースラインレベルと比較して、完全奏効、部分奏効、または安定した疾患の可能性を改善する(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。そのような応答は、一定期間にわたって一時的であるか、または永続的であり得る。いくつかの実施形態では、処置は、例えば、G9.2-17 IgG4処置レジメンの開始前に得られたベースラインレベルと比較して、進行性疾患の減少または軽減がもたらされ得る(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。そのような減衰は、一時的または永続的であり得る。これらの実施形態のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体と組み合わせて投与され得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、本開示は、疾患の進行を軽減するための、または進行性の疾患を低減するための方法を提供する(例えば、約3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。方法は、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体の治療有効量を対象に投与することを含む。これらの実施形態のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体と組み合わせて投与され得る。
【0185】
本明細書に記載の方法のいずれかでは、部分奏効、安定した疾患、完全奏効、部分奏効、安定した疾患、進行性の疾患、進行中の疾患(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)は、irC基準、RECIST基準、RECIST1.1、irRECISTもしくはiRECIST、またはimRECIST基準、または当該技術分野で既知の他の基準に従って評価することができる(例えば、以下を参照:Borcoman et al.,Annals of Oncology 30:385-396,2019’iRC:Hoos et al.,J.Immunother.30(1):1-15)。
【0186】
部分奏効は、処置開始前のベースラインレベルと比較して、処置に応答した腫瘍のサイズ、または体内の癌の程度、すなわち、腫瘍量、の減少である。例えば、RECIST奏効基準によれば、部分奏効は、ベースラインの合計直径を基準として、標的病変の直径の合計が少なくとも30%減少することとして定義される。進行性疾患は、進行、拡大、または悪化している疾患である。例えば、RECIST奏効基準によれば、進行性疾患には、標的病変の直径の合計の少なくとも20%の増加が観察される疾患が含まれ、合計は、少なくとも5mmの絶対的な増加も示さなければならない。さらに、1つ以上の新たな病変の出現も進行とみなされる。処置の開始前のベースラインレベルと比較して、範囲または重症度が減少も増加もしていない腫瘍は、安定した疾患とみなされる。例えば、RECIST応答基準によれば、部分応答と認定するのに十分な縮小も、進行性疾患と認定するのに十分な増加もない場合、研究中の最小合計直径を基準として、安定した疾患が生じる。
【0187】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における処置の開始前のベースライン腫瘍サイズと比較して、永続的または最小限の期間にわたって、ヒト対象を含む対象における腫瘍サイズを低減または維持するための方法を提供し(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)、方法は、単独でまたはチェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体と組み合わせて、対象に治療有効量の抗ガレクチン-9抗体を投与することを含む。腫瘍サイズ、例えば、腫瘍の直径は、上記で引用された、例えば、Eisenhower et al.に記載されているような、特定の測定プロトコールに従って、様々なソフトウェアツールと組み合わせたCT及びMRI画像からの測定を含む、当該技術分野で既知の方法に従って測定することができる。従って、いくつかの実施形態では、腫瘍サイズは、定期的に計画された再病期スキャン(例えば、造影剤あり/なしのCT、造影剤あり/なしのMRI、PET-CT(診断用CT)及び/またはX線、超音波及び/または他の関連イメージングモダリティ)で測定される。いくつかの実施形態では、腫瘍サイズの減少、腫瘍サイズの維持は、標的病変のサイズを指す。いくつかの実施形態では、腫瘍サイズの縮小、腫瘍サイズの維持は、非標的病変のサイズを指す。RECIST1.1によれば、ベースラインで複数の測定可能な病変が存在する場合、関係する全ての臓器を代表する合計最大5つの全病変(及び臓器毎に最大2つの病変)標的病変として同定されるべきである。病理学的リンパ節を含む他の全ての病変(または疾患部位)は、非標的病変として同定されなければならない。
【0188】
いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍量(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)を低減または維持する可能性を高めるための方法を提供し、方法は、治療有効量の本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体を単独で、またはチェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体、と組み合わせて対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、処置は、腫瘍量の低減、または腫瘍量の維持の可能性がより高くなり得る(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。本明細書で使用される場合、腫瘍量は、全ての疾患部位を占める、対象の体内のがんの量、腫瘍のサイズまたは腫瘍の体積を指す。腫瘍量は、限定されないが、FDG陽電子放出断層撮影法(FDG-PET)、磁気共鳴イメージング法(MRI)、及び生物発光イメージング法(BLI)及び蛍光イメージング法(FLI)を含む光学イメージング法を含む、当該技術分野で既知の方法を使用して測定することができる。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、疾患進行までの時間または無増悪生存期間(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは処置開始後の他の臨床的に示される任意の時点で測定)を延長する。無増悪生存期間は、永続的または一定期間にわたる無増悪生存期間のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、本方法は、無増悪生存期間(永久的無増悪生存期間、または一定期間、例えば、3、6、もしくは12ヶ月、または、例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、その後で、または処置開始後の他の臨床的に示される任意の時点で測定)の可能性をより高める。無増悪生存期間(PFS)は、臨床試験における無作為割り当てから、例えば、処置の開始から、何らかの原因による疾患の進行または死亡までの時間として定義される。いくつかの実施形態では、方法は、特定期間で、例えば、6ヶ月または12ヶ月で、より長い生存またはより高い生存の可能性を達成する。
【0190】
処置、例えば、本明細書に記載の固形腫瘍の処置、に対する応答は、Seymour et al.,iRECIST:guidelines for response criteria for use in trials;The Lancet,Vol18,March 2017(これらの内容は、本明細書に全体が参照により組み込まれる)に記載されるように、iRECIST基準に従って評価することができる。一貫した設計及びデータ収集を保証するために、特に、がん免疫療法試験において、修正RECIST1.1基準を使用するために、iRECISTを開発し、免疫療法が使用される試験に使用される腫瘍サイズ中の客観的な変化に対する固形腫瘍の測定及び定義への標準的アプローチにガイドラインとして使用することができる。iRECISTは、RECIST1.1に基づいている。iRECISTを使用して割り当てられた応答は、RECIST1.1を使用して割り当てられた応答と区別するための、接頭辞「i」(すなわち、免疫)-例えば、「免疫」完全奏効(iCR)または部分奏効(iPR)及び未確認進行性疾患(iUPD)または確認済み進行性疾患(iCPD)または安定した疾患(iSD)を有し、これらの全ては、Seymour et al.RECIST 1.1で定義される。いくつかの実施形態では、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。これらの実施形態のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、単独で、またはチェックポイント阻害薬、例えば、本明細書に開示の抗PD-1抗体と組み合わせて投与され得る。
【0191】
従って、いくつかの実施形態では、本開示は、処置の開始前の疾患のベースラインレベルと比較して、全奏効(iOR)を改善するための、または「免疫」完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、もしくは安定した疾患(iSD)を達成する(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後の、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)ための方法を提供する。例えば、iCR、iPR、またはiSDの「免疫」応答の低減は、一定期間にわたって一時的であるか、または永続的であり得る。いくつかの実施形態では、処置は、完全奏効(iCR)、部分奏効(iPR)、または安定した疾患(iSD)の可能性を改善し得る(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月で、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)、例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、疾患の進行を軽減するか、または進行性疾患を低減する、例えば、未確認の進行性疾患(iUPD)を軽減するか、または確認された進行性疾患(iCPD)を低減するための方法を提供し(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)、方法は、治療有効量の本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体を対象に投与することを含む。これらの上記のiRECIST基準はいずれも、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。これらの方法のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、単独で、またはチェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体と組み合わせて投与され得る。
【0192】
iUPDまたはiCPDの低減は、定期間にわたって一時的であるか、または永続的であり得る。いくつかの実施形態では、処置は、未確認進行性疾患(iUPD)または確認された進行性疾患(iCPD)の全体的な減少の可能性がより高くなる可能性があり(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)、いくつかの実施形態では、iRECIST基準(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)に従って、ヒト対象を含む対象の新しい病変の数を低減させるための方法を提供し、方法は、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体の治療有効量を対象に投与することを含む。病変数の低減は、処置の開始前のベースラインレベルと比較したものであり、減少は一定期間にわたる一時的であるか、または永続的であり得る。これらの実施形態のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与され得る。
【0193】
追加の基準は、処置応答を測定するために使用することができる。例えば、腫瘍量は、irRC基準に従って測定することができる(Hoos et al.,2007)。irRCでは、腫瘍量は、「指標」病変を、新しい病変を組み合わせることにより測定される。すなわち、新しい病変は、腫瘍量の変化とみなされる。irRCでは、免疫関連完全奏効(irCR)は、測定または未測定の全病変の消失し、新たな病変がない;免疫関連部分奏効(irPR)は、irRCで定義されるベースラインからの腫瘍量の50%の低下であり;免疫関連進行性疾患(irPD)は、記録された最低レベルから腫瘍量が25%増加する。他の全ては、免疫関連安定疾患(irSD)とみなされる。
【0194】
免疫関連RECIST(irRECIST)は、RECISTの1次元測定に基づいており、特定の免疫関連基準は、さらに、irRECISTで再定義された。最近、新しい基準を、NSCLCにおけるアテゾリズマブに基づいて評価し、免疫改変RECIST(imRECIST)は、最初の評価の少なくとも4週間後の疾患進行の確認を要求する(Hodi et al,JCO 2018;36(9):850-858)。RECIST1.1.、irRC、irRECIST、iRECIST、及びimRECISTの比較については、例えば、以下を参照:Borcoman et al.,Annals of Oncology 30:385-396,2019;Nishino et al.,Clin Cancer Res 2013;19(14):3936-3943の図4(これらの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらの基準のいずれも、本明細書に記載のいずれかの方法における奏効率を決定するのに適している。
【0195】
本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体(例えば、G9.2-17)のいずれかにより、単独で、または本明細書に開示のチェックポイント阻害薬(例えば、抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体)と組み合わせて処置されている対象は、悪影響(例えば、重篤な副作用)の発生について監視され得る。監視すべき例示的な悪影響を、以下の実施例1に示す。悪影響の発生が観察された場合、処置条件は、その対象が変更され得る。例えば、抗ガレクチン-9抗体の用量が、低減され得、及び/または投与間隔が、延長され得る。低減の適合性及び程度は、資格のある臨床医により評価され得る。一実施形態では、以前の用量レベルの30または50%の低減レベルが実施される。一具体例では、臨床医の評価による低減レベル、または少なくとも30%が実施される(用量レベル1、最初の用量低減時のレベルまで)。必要に応じて、用量レベル-1の30%による、もう1回の用量低減が実行される(用量レベル-2、2回目の用量低減のレベル)。別の例では、用量レベル-1の50%による、もう1回の用量低減が実行される(用量レベル-2)。いくつかの実施形態では、前の用量レベルの約10%~約80%の1回以上の用量低減が実施される。いくつかの実施形態では、前の用量レベルの約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、または、約70%~約80%の1回以上の用量低減が実施される。いくつかの実施形態では、前の用量の10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、または70%~80%の1回以上の用量低減が実施される。いくつかの実施形態では、前の用量の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、または約80%の1つ以上の用量低減が実施される。いくつかの実施形態では、前の用量レベルの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%の1つ以上の用量低減が実施される。代替的または追加的に、チェックポイント阻害薬の用量を低減させることができ、及び/または、チェックポイント阻害薬の投与間隔を延長させてもよい。いくつかの場合(例えば、生命を脅かす悪影響の発生)では、処置が中止され得る。
【0196】
(G)免疫応答の調節
処置に対する反応は、血液及び腫瘍の免疫表現型、サイトカインプロファイル(血清)、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン-9レベル、免疫組織化学(腫瘍、間質、免疫細胞)、腫瘍変異負荷(TMB)、PD-L1発現(例えば、免疫組織化学による)、ミスマッチ修復状態、または疾患に関連する腫瘍マーカーによるガレクチン-9腫瘍組織の発現レベル、及び発現パターンの1つ以上も特徴とし得る(例えば、約3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。そのような腫瘍マーカーの例としては、CA15-3、CA-125、CEA、CA19-9、αフェトプロテインが挙げられるが、これらに限定されない。これらのパラメーターは、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。これらの実施形態のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、単独で、またはチェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与され得る。
【0197】
本明細書に開示の方法のいずれかにおいて、対象は、処置前、処置中、及び/または処置後に、以下の特徴のうちの1つ以上について検査され得る:(a)対象由来の血液試料中の1つ以上の腫瘍マーカー、任意に、1つ以上の腫瘍マーカーが、CA15-3、CA-125、CEA、CA19-9、及び/またはアルファフェトプロテイン、ならびに任意の他の腫瘍型特異的腫瘍マーカーを含む;(b)サイトカインプロファイル;ならびに、(c)ガレクチン-9血清/血漿レベル;(d)末梢血単核細胞免疫表現型検査、(e)腫瘍組織生検/切除標本の多重免疫表現型検査、(f)腫瘍組織生検/切除標本のガレクチン-9発現レベル及びパターン、(g)他の任意の免疫スコア検査、例えば、PD-L1免疫組織化学、腫瘍変異量(TMB)、腫瘍マイクロサテライト不安定性ステータス、ならびにパネル、例えば、Immunoscore(登録商標)-HalioDx、ImmunoSeq-Adaptive Biotechnologies、NanoString nCounter(登録商標)遺伝子発現系に基づいて開発されたTIS、18遺伝子シグネチャー、PanCancer IO 360(商標)アッセイ(NanoString Technologies)など。PDACなどの標的腫瘍に特異的な他の好適なバイオマーカーも使用され得る。一非限定例では、PD-L1(SP263)(Roche、Ventana)は、免疫組織化学を使用したがん組織におけるPD-L1の検出に使用することができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、血中または腫瘍中の免疫細胞及び免疫細胞マーカーのレベルを変化させるための方法が本明細書に記載されており、方法は、抗Gal-9抗体が、単独で、またはチェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体、と組み合わせて投与されることを含む。そのような変化は、マルチプレックスフローサイトメトリー及びマルチプレックス免疫組織化学などの当該技術分野で既知の方法を使用して、患者の血液及び組織試料において測定することができる。例えば、表現型及び機能的PBMC免疫マーカーのパネルは、処置の開始前のベースライン及び処置中の様々な時点で評価することができる。表2は、これらの評価方法に有用なマーカーの非限定例を列挙する。フローサイトメトリー(FC)は、細胞の表現型及び機能を分析するための高速且つ有益な情報を提供する最適な技術であり、免疫表現型監視で注目を集めている。それは、血液などの複雑な混合物中に、まれなサブセットを含む細胞の多くのサブセットの特性評価を可能にし、大量のデータを迅速に取得する方法を表す。FCの利点は、高速性、感度、及び特異性である。標準化された抗体パネル及び手順は、免疫細胞のサブタイプを分析及び分類するために使用することができる。マルチプレックスIHCは、強力な調査ツールであり、これは、免疫サブセットの数及び位置の両方で腫瘍の免疫状況を説明する客観的な定量的データを提供し、単一の組織切片で複数のマーカーを評価することができる。コンピュータアルゴリズムは、発色IHC法及び染色をデジタル病理学的アプローチと組み合わせて、患者の生検のスライド画像全体からIHCベースのバイオマーカー内容を定量するために使用することができる。
【0199】
従って、いくつかの実施形態では、免疫応答を調節するための方法、例えば、表2のものなどの免疫活性化マーカーの調節のための方法が本明細書に記載されており、方法は、抗gal9抗体を単独で、またはチェックポイント阻害薬療法と組み合わせて投与することを含む。いくつかの実施形態では、調節は、以下のうちの1つ以上を含む:(1)血漿または腫瘍組織におけるより多くのCD8細胞の増加、(2)血漿または腫瘍組織における制御性T細胞(Treg)の減少、(3)血漿または腫瘍組織におけるM1マクロファージの増加、及び、(4)血漿または腫瘍組織におけるMDSCの減少、及び、(5)血漿または腫瘍組織におけるM2マクロファージの減少(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月後、またはその後に、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。いくつかの実施形態では、上記の技術または当該技術分野で既知の手法を使用して評価されるマーカーは、CD4、CD8、CD14、CD11b/c、及びCD25から選択される。これらのパラメーターは、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。

【表2】
【0200】
いくつかの実施形態では、炎症誘発性サイトカイン及び抗炎症性サイトカインを調節するために、抗gal9を単独で、またはチェックポイント阻害薬療法と組み合わせて投与することを含む方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、方法は、以下のうちの1つ以上に提供される:(1)血漿または腫瘍組織におけるIFNガンマのレベルの増加;(2)血漿または腫瘍組織内のTNFαレベルの増加;(3)血漿または腫瘍組織におけるIL-10のレベルの減少(例えば、約3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。これらのパラメーターは、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。
【0201】
いくつかの実施形態では、サイトカインレベルまたは免疫細胞レベルは、投与1前の腫瘍生検及び実行可能な時期に実施される再生検間で評価され得る。いくつかの実施形態では、サイトカインレベルまたは免疫細胞レベルは、2回の反復生検間で評価され得る。いくつかの実施形態では、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン-9レベル、または免疫組織化学(腫瘍、間質、免疫細胞)によるガレクチン-9腫瘍組織発現レベル及び発現パターンのうちの1つ以上を調節するための方法が提供される(例えば、約3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。いくつかの実施形態では、本方法は、血液(血清もしくは血漿)中の可溶性ガレクチン-9レベル、または免疫組織化学(腫瘍、間質、免疫細胞)によるガレクチン-9腫瘍組織発現レベルもしくは発現パターンを減少させる(例えば、約3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。ガレクチン-9レベルは、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。いくつかの実施形態では、ガレクチン-9レベルが、処置を受けていない対照群または健康な対象と比較され得る。これらの実施形態のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、単独で、またはチェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体、と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体を単独で、またはチェックポイント阻害薬、例えば、抗ガレクチン-9抗体、と組み合わせて投与することを含む、例えば、免疫組織化学で評価される、PD-L1発現を調節するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、疾患に関連する1つ以上の腫瘍マーカーを調節(増加または減少)する(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。そのような腫瘍マーカーの例としては、CA15-3、CA-125、CEA、CA19-9、αフェトプロテインが挙げられるが、これらに限定されない。これらのパラメーターは、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。これらの実施形態のいずれにおいても、抗ガレクチン-9抗体は、単独で、またはチェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体、と組み合わせて投与され得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における免疫応答を調節する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語には、免疫細胞活性の調節、例えば、T細胞活性化、で影響を受ける、T細胞媒介性及び/またはB細胞媒介性の免疫応答が含まれる。本開示の一実施形態では、免疫応答は、T細胞媒介である。本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、変化または変更することを意味し、上方調節及び下方調節の両方を包含する。例えば、「免疫応答を調節すること」は、1つ以上の免疫応答パラメーター(複数可)の状態を変化または変更することを意味する。T細胞媒介免疫応答の例示的なパラメーターには、T細胞のレベル(例えば、エフェクターT細胞の増加または減少)及びT細胞活性化のレベル(例えば、特定のサイトカインの産生の増加または減少)を含む。B細胞媒介免疫応答の例示的なパラメーターには、B細胞レベルの増加、B細胞活性化、及びB細胞媒介抗体産生を含む。
【0203】
免疫応答が調節されると、いくつかの免疫応答パラメーターが減少し得、他のものは、増加し得る。例えば、いくつかの場合では、免疫応答を調節すると、1つ以上の免疫応答パラメーターが増加(または上方制御)し、1つ以上の他の免疫応答パラメーターが減少(または下方制御)し、その結果、免疫応答の全体的な増加、例えば、炎症性免疫応答の全体的な増加、が生じる。別の例では、免疫応答の調節は、1つ以上の免疫応答パラメーターの増加(または上方制御)及び1つ以上の他の免疫応答パラメーターの減少(または下方制御)を引き起こし、その結果、免疫応答が全体的に減少し、例えば、炎症反応の全体的な減少などである。いくつかの実施形態では、全体的な免疫応答の増加、すなわち、全体的な炎症性免疫応答の増加は、腫瘍重量、腫瘍サイズ、もしくは腫瘍量の減少、または本明細書に記載の任意のRECISTもしくはiRECIST基準で決定される。いくつかの実施形態では、全体的な免疫応答の増加は、例えば、2つ以上、3つ以上などを含む1つ以上の炎症誘発性サイトカイン、または大部分の炎症誘発性サイトカイン(1つ以上、2つ以上など、または大部分の抗炎症性サイトカイン及び/もしくは免疫抑制性サイトカイン、ならびに/または、最も強力な抗炎症性サイトカインまたは免疫抑制性サイトカインのうちの1つ以上が、減少するか、または一定のままである)。いくつかの実施形態では、全体的な免疫応答の増加は、最も強力な炎症誘発性サイトカインの1つ以上のレベルの増加で決定される(最も強力なサイトカインのうちの1つ以上を含む1つ以上の抗炎症性サイトカイン及び/または免疫抑制性サイトカインが、減少するか、または一定のままである)。いくつかの実施形態では、全体的な免疫応答の増加は、免疫抑制性サイトカイン及び/または抗炎症性サイトカインの大部分を含む1つ以上のレベルの減少で決定される(例えば、最も強力な炎症誘発性サイトカインを含む炎症促進性サイトカインの1つ以上、または大部分のレベルが、増加するか、または一定のままである)。いくつかの実施形態では、全体的な免疫応答の増加は、最も強力な抗炎症性サイトカイン及び/または免疫抑制性サイトカインのうちの1つ以上で増加する(例えば、最も強力な炎症誘発性サイトカインを含む、炎症誘発性サイトカインの1つ以上、または大部分が、増加するか、または一定のままである)。いくつかの実施形態では、全体的な免疫応答の増加は、上記のいずれかの組み合わせで決定される。また、あるタイプの免疫応答パラメーターの増加(または上方制御)は、別のタイプの免疫応答パラメーターの対応する減少(または下方制御)を引き起こし得る。例えば、特定の炎症誘発性サイトカインの産生の増加は、特定の抗炎症性サイトカイン及び/または免疫抑制性サイトカインの下方制御につながり得、その逆も同様である。
【0204】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象における免疫応答(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)を調節するための方法を提供し、方法は、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体の治療有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、免疫細胞及び免疫細胞マーカーのレベルを調節するための方法を提供し、これは、限定されないが、ヒト対象を含む対象の血液または腫瘍中の、例えば、処置の開始前のベースラインレベルと比較した、抗Gal9抗体治療レジメンの開始前に得られるベースラインレベルと比較した、本明細書の表2に記載されるものを含み、方法は、本明細書で開示の抗ガレクチン-9抗体の治療有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、調節の全体的な結果は、炎症誘発性免疫細胞の上方制御及び/または免疫抑制性免疫細胞の下方制御である。いくつかの実施形態では、本開示は、免疫細胞のレベルを調節する方法を提供し、調節することは、(1)血漿または腫瘍組織中のCD8細胞を増加させること、(2)血漿または腫瘍組織中のTregを減少させること、(3)血漿または腫瘍組織におけるM1マクロファージを増加させること、及び、(4)血漿または腫瘍組織におけるMDSCを減少させること、及び(5)血漿または腫瘍組織におけるM2マクロファージを減少させること、のうちの1つ以上を包含し、本方法は、本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体の治療有効量を対照に投与することを含む。いくつかの実施形態では、そのような免疫細胞のレベルを評価するマーカーには、CD4、CD8、CD14、CD11b/c、及びCD25が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象の血液または腫瘍における、例えば、処置の開始前のベースラインレベルと比較して、炎症促進性サイトカイン及び免疫抑制サイトカインのレベルを調節するための方法を提供し(例えば、約2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)、方法は、本明細書に開示の治療有効量の抗ガレクチン-9抗体を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、調節の全体的な結果は、炎症誘発性サイトカインの上方制御及び/または免疫抑制性サイトカインの下方制御である。いくつかの実施形態では、本開示は、サイトカイン細胞のレベルを調節するための方法を提供し、調節することは、以下のうちの1以上を包含する:(1)血漿または腫瘍組織におけるIFNガンマのレベルを増加させること;(2)血漿または腫瘍組織内のTNFαレベルを増加させること;(3)血漿または腫瘍組織におけるIL-10のレベルを減少させること。
【0205】
いくつかの実施形態では、本開示は、血液(血清もしくは血漿)中の可溶性ガレクチン-9レベル、または免疫組織化学(腫瘍、間質、免疫細胞)によるガレクチン-9腫瘍組織発現レベル及び発現パターンのうちの1つ以上を変化させるための方法を提供し(例えば、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、あるいはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)、方法は、治療的有効量の本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体対象に投与することを含む。方法のいくつかの実施形態では、血液(血清または血漿)中の可溶性ガレクチン-9レベル、または免疫組織化学(腫瘍、間質、免疫細胞)によるガレクチン-9腫瘍組織発現レベル及び発現パターンのうちの1つ以上は、変化しないままである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、血液(血清もしくは血漿)中の可溶性ガレクチン-9レベル、または免疫組織化学(腫瘍、間質、免疫細胞)によるガレクチン-9腫瘍組織発現レベル及び発現パターンのうちの1つ以上を減少させる(例えば、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)。ガレクチン-9レベルは、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。いくつかの実施形態では、ガレクチン-9レベルは、健康な対象と比較され得る。いくつかの実施形態では、処置することは、例えば、免疫組織化学により、PD-L1発現の変化をもたらす。16mg/kg以上の用量レベル、16mg/kg以上の用量レベル、16mg/kg以上の用量レベル。
【0206】
いくつかの実施形態では、本開示は、例えば、免疫組織化学で評価される(例えば、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)PD-L1発現を変化させるための方法を提供し、方法は、本明細書に開示の治療有効量の抗ガレクチン-9抗体を対象に投与することを含む。方法のいくつかの実施形態では、例えば、免疫組織化学により評価されるPD-L1発現は、変化しないままである。PD-L1レベルは、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、例えば、免疫組織化学により評価される、PD-L1発現を減少させる。PD-L1レベルは、当該技術分野で既知の日常的な方法を使用して測定され得る。一非限定例では、PD-L1(SP263)(Roche、Ventana)は、免疫組織化学を使用したがん組織におけるPD-L1の検出に使用することができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、本開示は、疾患に関連する1つ以上の腫瘍マーカーを変化(増加または減少)させるための方法を提供し(例えば、2週間、4週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)、方法は、本明細書に開示の治療有効量の抗ガレクチン-9抗体を対象に投与することを含む。この方法のいくつかの実施形態では、疾患に関連する1つ以上の腫瘍マーカー(増加または減少)は、変化しないままである。そのような腫瘍マーカーの例としては、CA15-3、CA-125、CEA、CA19-9、αフェトプロテインが挙げられるが、これらに限定されない。腫瘍マーカーのレベルは、処置の開始前のベースラインレベルと比較することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、疾患に関連する1つ以上の腫瘍マーカーの発生を減少させる。
【0208】
いくつかの実施形態では、本開示は、疾患に関連する1つ以上のバイオマーカーを変化(増加または減少)させるための方法を提供し(例えば、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)、方法は、本明細書に開示の治療有効量の抗ガレクチン-9抗体を対象に投与することを含む。患者由来の臨床組織におけるバイオマーカーのレベルは、本明細書の実施例に記載されるように、多重免疫蛍光(mIF)技術などの所定の方法を使用して測定することができる。バイオマーカーの例示的なパネルには、CD3、CD4、CD8、CD45RO、FoxP3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD33、CD68、CD163、HLA-DR、アルギナーゼ1、グランザイムB、Ki67、PD-1、PD-L1、F4/80、Ly6G/C、及びPanCKが挙げられ得る。
【0209】
免疫応答、サイトカイン、バイオマーカー、例えば、ガレクチン-9もしくはPD-L1レベル、または腫瘍マーカーを調節するための本明細書に記載のこれらの方法のいずれかにおいて、本明細書に記載の抗ガレクチン-9抗体のいずれかを使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1に記載の軽鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2に記載の軽鎖相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号3に記載の軽鎖相補性決定領域3(CDR3)を含み、ならびに/または、配列番号4に記載の重鎖相補性決定領域1(CDR1)、配列番号5に記載の重鎖相補性決定領域2(CDR2)、及び配列番号6に記載の重鎖相補性決定領域3(CDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号19を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号15を含む軽鎖を含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、抗体は、G9.2-17 IgG4である。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、約0.2mg/kg~約32mg/kgの用量で対象に投与され、例えば、用量は、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、6.3mg/kg、8mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、及び16mg/kg、またはそれ以上の用量レベルから選択され得る。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、約1mg/kg~約32mg/kgの用量で対象に投与され、例えば、用量は、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kg、12mg/kg、及び16mg/kg、またはそれ以上の用量レベルで選択され得る。いくつかの実施形態では、抗ガレクチン-9抗体は、約0.2mg/kg~約32mg/kgの用量で対象に投与され、例えば、用量は、0.2mg/kg、0.63mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、6.3mg/kg、10mg/kg、もしくは16mg/kg、またはそれ以上の用量レベルから選択され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、静脈内注入により、2週に1回投与される。
【0211】
いくつかの実施形態では、方法は、さらに、免疫チェックポイント阻害薬、例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体、を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、膵管腺癌(PDAC)、結腸直腸癌(CRC)、肝細胞癌(HCC)、胆管癌(CAA)、腎細胞癌(RCC)、尿路上皮癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、及び他のGI固形腫瘍、いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、転移性腫瘍である。
【0212】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト対象を含む対象において、生活の質を改善するための方法、及び/または症状制御を改善するための方法(例えば、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、もしくは12ヶ月、またはその後で、もしくは他の臨床的に示される任意の時点で測定)を提供し、方法は、本明細書に開示の治療有効量の抗ガレクチン-9抗体を対象に投与することを含む。改善された生活の質及び症状制御は、処置の開始前のベースラインと比較され得る。いくつかの実施形態では、改善は、ECOGスケールで測定することができる。
【0213】
ガレクチン-9に関連する疾患の処置に使用するためのキット
本開示は、ガレクチン-9に関連する疾患、例えば、細胞表面糖タンパク質(例えば、デクチン-1、TIM3、CD206など)へのガレクチン-9の結合に関連する疾患、または、ガレクチン-9を発現する病理学的細胞(例えば、がん細胞)を処置または緩和に使用されるキットも提供する。例には、PDAC、CRC、HCC、胆管癌及び他のGI固形腫瘍などの固形腫瘍、ならびに本明細書に記載される他のものが挙げられる。そのようなキットには、抗ガレクチン-9抗体、例えば、本明細書に記載される抗体のいずれか、任意に、抗ガレクチン-9抗体と併用されるべき第2の治療薬(例えば、本明細書に開示の抗PD-1抗体などのチェックポイント阻害薬)(本明細書にも記載)を含む1つ以上の容器が含まれ得る。
【0214】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従って使用される使用説明書を含み得る。含まれる使用説明書は、本明細書に記載の標的疾患を処置、その発症の遅延、または緩和するための、抗ガレクチン-9抗体、任意に、第2の治療薬の投与の説明を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、さらに、例えば、本明細書に記載の診断方法を適用して、個体が標的疾患に罹患しているかどうかの同定に基づいて処置に適した個体を選択することの説明を含む。さらに他の実施形態では、使用説明書は、標的疾患のリスクがある個体への抗体の投与の説明を含む。
【0215】
抗ガレクチン-9抗体の使用に関する使用説明書には、通常、目的の処置のための投薬量、投与予定、及び投与経路に関する情報が含まれる。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)、またはサブユニット用量であり得る。本発明のキットで提供される使用説明書は、通常は、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)に書かれた使用説明書であるが、機械読み取り可能な使用説明書(例えば、磁気または光学記憶ディスクに記録された使用説明書)も、許容可能である。
【0216】
ラベルまたは添付文書は、組成物がガレクチン-9(例えば、デクチン-1、TIM-3、またはCD206シグナル伝達)に関連する疾患の治療、その発症の遅延、及び/または緩和に使用されることを示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するための使用説明書が提供される。
【0217】
本発明のキットは、好適なパッケージング中に存在する。好適なパッケージングには、バイアル、ボトル、瓶、柔軟なパッケージング(例えば、密封されたマイラーまたはプラスチックバッグ)などが含まれるが、これらに限定されない。特定のデバイス、例えば、吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)、または注入デバイス、例えば、ミニポンプ、と組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。いくつかの実施形態では、キットは、滅菌アクセスポートを有する(例えば、容器は、皮下注射針により穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。いくつかの実施形態では、容器は、滅菌アクセスポートも有する(例えば、容器は、皮下注射針により穿刺可能な栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルである)。組成物中の少なくとも1つの活性薬は、本明細書に記載されるような抗ガレクチン-9抗体である。
【0218】
キットは、任意に、緩衝液及び解釈情報などの追加コンポーネントを提供し得る。通常、キットは、容器と、容器上の、または容器に付随するラベルまたは添付文書(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、上記のキットの内容物を含む製品を提供する。
【0219】
一般的な手法
本発明の実施は、別途指示のない限り、当該技術分野の範囲内である分子生物学(組み換え手法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の手法を用いる。そのような手法は、以下の文献に完全に説明されている:例えば、分子クローニング:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998) Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8) J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.,eds.,1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies: a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies: a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies: a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)。
【0220】
さらに詳しく説明することなく、当業者であれば、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用し得ると考えられる。従って、以下の特定の実施形態は、単に例示として解釈されるべきであり、いかなる形であっても本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で参照される目的または主題のために参照により組み込まれる。
【実施例
【0221】
実施例1:単独で、及び転移性固形腫瘍患者の抗PD-1抗体と組み合わせて、以下の患者を対象とした、抗ガレクチン-9モノクローナル抗体の安全性、薬物動態、及び抗腫瘍活性の第1/2相非盲検の多施設研究
ガレクチン-9は、膵臓癌、結腸直腸癌、及び肝細胞癌の固形腫瘍を含む多くの固形腫瘍で過剰発現される分子である。さらに、ガレクチン-9は、腫瘍関連マクロファージ及び腫瘍内免疫抑制性ガンマデルタT細胞にも発現され、それにより、癌関連免疫抑制の強力なメディエーターとして作用する。本明細書に記載されるように、ガレクチン-9(例えば、G9.2-17、IgG4)を標的とするモノクローナル抗体が開発されている。データは、G9.2-17が同所性KPCモデルにおいて膵臓腫瘍の増殖を50%阻止し、KPC動物の生存を2倍以上延長することを実証している。理論に拘束されることを望むものではないが、抗ガレクチン-9抗体は、M2表現型をM1表現型に逆転させ、腫瘍内CD8T細胞活性化を促進すると考えられる。さらに、抗体G9.2-17(IgG4)(配列番号19の重鎖及び配列番号15の軽鎖を有する)は、抗PD-1と相乗作用することが見出されている。
【0222】
G9.2-17(IgG4)は、ガレクチン-9(-gal-9)タンパク質を標的とする完全ヒトIgG4モノクローナル抗体(mAb)である。Gal-9は、免疫抑制因子として機能し、マクロファージ、T細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、及び細胞傷害性T細胞誘導性細胞死に対するがん細胞の感受性を制御することにより、腫瘍細胞に免疫特権を与え、免疫介在性がんの攻撃を無効にする。入手可能なデータに基づくと、G9.2-17(IgG4)によるgal-9の遮断は、gal-9の免疫抑制機能を妨害し、それにより、複数の前臨床モデルにわたって効果的な免疫活性化及び腫瘍成長阻害がもたらされる。
【0223】
Gal-9は、膵臓腺癌、胆管癌(CCA)、結腸直腸癌(CRC)、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌、上咽頭癌、悪性黒色腫、卵巣癌などを含む多くの固形腫瘍タイプに過剰発現及び/または分泌することができ、高レベルの組織及び/または循環gal-9は、進行性の腫瘍の特徴及び不利な生存転帰と相関する。
【0224】
従って、G9.2-17(IgG4)の標的適応症は、再発性または難治性の転移性固形腫瘍であり、G9.2-17(IgG4)は、単剤として、及び/またはチェックポイント阻害薬(例えば、プログラム細胞死1[PD1]抗体、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、ドスタルリマブ、またはチスレリズマブ)と組み合わせて調査される。
【0225】
用量漸増(パート1)は、G9.2-17(IgG4)の安全性及び忍容性プロファイルを確立し、その免疫原性の可能性を評価し、薬物動態(PK)及び薬力学(PD)プロファイルを確立し、推奨されるフェーズ2用量(RP2D)に達するために、全ての種類の固形腫瘍で実施される。これは、最大耐量(MTD)であり得る。拡大コホート(パート2)は、単剤として、及び抗PD1抗体と組み合わせて、第1選択の転移性膵管腺癌(PDAC)、ならびに、CRC及びCCAで計画される。
【0226】
任意の適応症について、現在承認されていることが知られているか、または臨床試験中であるgal-9を標的とする他の治療法はない。
【0227】
これまでに実施された非臨床研究では、ヒトへの投与を意図されるものを約500倍を超える用量で、重大な毒性は観察されていない。さらに、G9.2-17(IgG4)は、gal-9に対して高度に特異的であることが示されており、複数の癌動物モデルで有効であることが実証されている。登録の対象となる患者集団は、疾患の末期段階にあり、この研究に登録する前に標準処置が受けられなかった。G9.2-17(IgG4)は、単独で、または抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、チスレリズマブ、ドスタルリマブ、またはセミプリマブ)などのチェックポイント阻害薬と組み合わせて摂取すると、悪性固形腫瘍などの悪性腫瘍の処置に利益をもたらすことが予想されるであろう。
【0228】
目的及びエンドポイント

【表3】

【表4】
【0229】
研究設計
これは、再発/難治性転移性固形腫瘍患者における、非盲検、非対照、多施設共同第1/2相試験(用量漸増相(パート1)及びコホート拡大相(パート2))である。この研究は、米国内の最大20ヶ所の施設で実施される。研究期間は、12~24ヶ月と推定される。生存の追跡調査は、最長2年間継続する。研究スキームが図1に提示される。
【0230】
この研究には、G9.2-17(IgG4)の単独療法と、G9.2-17及び抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブとの併用療法の両方が含まれる。G9.2-17の用量は、2週に1回、約3mg/kg~15mg/kgの範囲であってよい。別の実施形態では、G9.2-17の用量は、2週に1回、約0.2mg/kg~16mg/kg、またはそれ以上の用量レベルの範囲であってよい。抗体は、静脈内注入で投与される。
【0231】
処置期間及び処置期間
処置期間
治験薬の投与は、疾患の進行、許容できない毒性、または治験からの離脱まで継続する。疾患進行前に治験薬を中止し、他の全身抗がん療法(複数可)で処置されていない患者は、疾患進行時まで研究が追跡される。
【0232】
処置期間
研究は、パート1及びパート2の両方で以下の期間からなる。
スクリーニング期間:初回投与の最大4週間前(-28日目~-1日目)
処置期間:評価予定に提示されている28日間の処置サイクル(SoA;以下の表5~6)
処置後期間:最後の処置の30日後(処置訪問の終了/早期中止訪問)
IMAR追跡調査:最後の処置の90日後(G9.2-17(IgG4)+抗PD-1抗体処置群)
追跡調査:疾患の進行以外の理由により処置を中止し、追加の全身抗がん剤処置を受けていない患者を対象に、最長2年間の長期追跡調査(3ヶ月毎に訪問)。
【0233】
パート1:用量漸増相
DLT及びRP2Dを確立するために、連続再評価法(CRM)(O’Quigley et al.,1990)を使用して、用量決定研究を行う。0.2mg/kgの用量から開始して、各28日サイクルの1日目及び15日目に、2週間毎(Q2W)、逐次的に高濃度のG9.2-17(IGG4)のIV注射を受けるために、処置コホート1~6当たり2~6人の患者を割り当てる。特定の用量漸増コホートに割り当てられた患者には、そのコホートに対応する研究用量が投与される。彼らは、疾患の進行、許容できない毒性、または他の理由で治験から離脱するまで、8つの用量レベルの1つで治験薬を投与される。最初の処置サイクル中に毒性または忍容性の問題以外の理由で離脱する患者のみが交換される。
【0234】
コホート1~6では、CRM設計に基づいて、一度に2人の患者に投与される。用量漸増は、以前の用量レベルでのDLTの発生と、以前のコホートからの他の関連する安全性及び用量データに焦点を当てた患者の安全性データの分析に基づいている。用量漸増は、少なくとも28日(1サイクル)後に行ってもよい。線量レベルのスキップは、許可されない。
【0235】
CRM設計下でのコホート6の完了後、CRM設計内で、RP2Dに到達していないことを条件として、週1回(QW)G9.2-17(IGG4)投与スキーマを評価する。コホート7及び8は、CRM設計では評価されない。患者は、DLTが同定されなかった場合に、コホート7に入ることのみが許可される。
【0236】
コホート7及び8では、コホート毎に一度に4人の患者に投与される。コホート7及び8の用量レベル毎に4人の患者が、毎週(QW)の各28日サイクルの1、8、15、及び22日目に、G9.2-17(IGG4)の逐次的に高濃度のIV注射を受けるように割り当てられる。コホート7の最初の4人の患者から始めて、次のコホートへの用量漸増は、DLTが同定されなかった場合、のみ行われる。コホート7で単一のDLTが記録された場合、さらなる患者は、そのコホート内で投与されず、コホート8は、活性化されない。
【0237】
パート1のコホート1~8には、約36人の患者が登録される。CRM設計内で、合計6つの投薬量レベルが評価される:
●用量漸増コホート1=0.2mg/kg Q2W
●用量漸増コホート2=0.63mg/kg Q2W
●用量漸増コホート3=2mg/kg Q2W
●用量漸増コホート4=6.3mg/kg Q2W
●用量漸増コホート5=10mg/kg Q2W
●用量漸増コホート6=16mg/kg Q2W
RP2Dを考慮するために、追加の2つの投薬量レベルが含まれる。
●用量漸増コホート7=10mg/kg QW
●用量漸増コホート8=16mg/kg QW
【0238】
RP2Dが同定される前に初期コホートで処置された患者は、クリアされた最高用量レベルまで、用量漸増することが可能になる。完全なサイクルの後、少なくとも28日(1サイクル)後に、用量漸増が発生し得る。用量漸増は、サイクルの途中では行われないことがある。患者は、毒性もしくは疾患の進行、または他の理由(例えば、患者が研究の中止を選択する)で中止されるまで、承認された最高用量レベルまで用量を増加し続け得る。
【0239】
用量漸増は、事前の用量レベルで処置された患者におけるDLTの発症に基づいている。各用量コホートでは、事前のDLT確率は、GLP準拠の毒性研究及び前臨床モデルから特定される。指定された標的DLT率及び用量レベルの総数について、パワーモデルd^exp(a)のスケルトンは、PK/PDデータで調整された事前のMTDを使用して、Lee及びCheungのアプローチに従って生成され、用量レベルの中央値及び間隔の測定値は、デルタ=0.05で位置である(Lee and Cheung、2011)。パラメーター「a」の事前分布は、事前分散の情報が最も少ない平均ゼロ正規分布を有する。最低研究用量レベルに対するアグレスティ及びクールの二項信頼区間(CI)の下限が目標DLT率を超える場合、安全のために試験が停止される(Agresti and Coull、1998)。RP2Dは、パート1から導出されたMTD用量である。
【0240】
DLTが処置の最初の28日間にいずれかの患者に発生した場合、その患者は、治験薬の投与を永久に中止される。
【0241】
DLTウィンドウ外で毒性(IMARを含む)を経験した患者では、臨床上の利益が予想される場合にのみ、用量低減が許可され、G9.2-17(IgG4)の低用量で継続して得られ得る。G9.2-17(IgG4)の用量は、表3に提示される用量変更ガイダンスの定義に従って、最初は50%低減し、さらに50%低減する。さらなる用量低減が許可されない。
【表5-1】

【表5-2】
【0242】
パート1完了
パート1は、最大6人の患者が、RP2Dと同定されている用量を投与された場合に完了する。RP2Dは、部分的に、継続的再評価法(CRM)研究設計、PK及びPDデータパラメーター、追加の安全性及び有効性データ、ならびに他の任意の考慮すべき要素に基づいている。
【0243】
バックフィルコホート
バックフィルコホートの目的は、腫瘍がgal-9陽性である患者におけるG9.2-17(IGG4)の安全性、忍容性、及び生物学的効果を評価することである。RP2Dコホートのgal-9ステータスは、遡及的に決定される。RP2Dで処置されるgal-9陽性腫瘍患者が6人未満の場合、バックフィルコホートに指定された患者は、IHCによるgal-9腫瘍状態の前向き評価を必要とする。腫瘍がgal-9陽性である追加患者を最大6人登録して、RP2D用量レベルでコホートを登録し得る。
【0244】
パート2:コホート拡大相
プロトコールの第2の部分は、Simonの2段階の最適設計が採用されており、これには、約223人の患者が含まれる。拡大コホート及び臨床試験エンドポイントに対する腫瘍固有の考慮事項の実施に基づいて、PDAC、CRC、及びCCAならびに/または潜在的に他の固形腫瘍タイプのコホートを拡大することが計画されている。このアプローチの背後にある理論的根拠は、採用の実現可能性を確保することと、特定の適応症に対する臨床上のニーズを捉えることである。
【0245】
CRC及びCCA患者は、次の2つの処置のうちの1つを投与される(合計4つの処置群)。
●単剤としてのLYT200
●併用療法としてのG9.2-17(IGG4)+抗PD-1抗体。
【0246】
抗PD-1抗体は、G9.2-17(IgG4)より前に投与されるべき。何らかの理由で同日投与が不可能な場合は、初日に、抗PD-1抗体が投与され、翌日に、G9.2-17(IgG4)が投与されなければならない。
【0247】
いくつかの場合では、この研究は、抗ガレクチン-9抗体G9.2-17(IgG4)の単独使用(研究の単剤アーム)またはニボルマブとの併用(例えば、2週に1回、240mgの一定用量で投与)を調査し得る。
【0248】
CRC及びCCA患者
CRC及びCCA患者に対する単剤コホートまたは併用剤コホートの処置は、並行して実行され得る。
【0249】
G9.2-17(IgG4)の単剤処置
単剤処置におけるG9.2-17(IgG4)の開始用量は、パート1で特定されたRP2Dである。CRC及びCCAの単剤処置群では、最適な2段階設計(ステージI及びII)は、ORR3が5%以下であるという帰無仮説 対 ORR3が単剤治療群内で15%以上であるという対立仮説を検定するために使用される。
【0250】
ステージIの23人の患者に対して治験薬を試験した後、この治験群は、応答する患者が1人以下である場合、中止する。治験が、Simonの最適設計のステージIIに進む場合、単剤治療群のそれぞれで約33人の患者が追加処置される。応答患者の総数が5人以下である場合、その治療群内の治験薬は、拒否される。ORR3が確認された患者が6人以上である場合、その治療群のパート3拡大コホートが、活性化され、プロトコールの修正版に記載されている。
【0251】
用量低減は、臨床上の利益が予想され、引き続き、より低用量のG9.2-17(IgG4)で誘導されることが予想され得る。G9.2-17(IgG4)の用量は、プロトコールに提示されている用量変更ガイダンスの定義に従って、最初に50%低減し、さらに、50%低減する可能性がある。さらなる用量低減が許可されない。
【0252】
G9.2-17(IgG4)+抗PD-1抗体併用処置
抗PD-1抗体(例えば、ニボルマブまたはペムブロリズマブ)との併用処置におけるG9.2-17(IGG4)の用量は、RP2D-1であり、これは、パート1で同定されたRP2D用量の直前の用量である。最適な2段階設計は、ORR3が10%以下であるという帰無仮説と、ORR3が25%以上であるという対立仮説を検定するためにも使用される。
【0253】
患者の安全性を確保するために、最初の8人の患者に投与する安全性ランインが実施される。この治療群は、25%の目標毒性レベル(TTL)を下回るDLTを発症した患者が2人以下の場合にのみ登録を継続する。3人以上の患者がDLTを発症した場合、この併用治療群は、処置されるがんタイプのために中止される。この併用処置ランインコホートでは、毒性または忍容性の問題以外の理由で離脱する患者は、最初の処置サイクル中にのみ入れ替わる。処置の最初の28日間に、患者に対する8回の安全運転のいずれかで、DLTが発生した場合、その患者は、治験薬の投与を永久に中止される。
【0254】
DLTウィンドウ外で毒性を経験した患者では、臨床上の利益が予想される場合にのみ、用量低減が許可され、G9.2-17(IgG4)の低用量で継続して得られ得る。G9.2-17(IgG4)の用量は、プロトコールに提示されている用量変更ガイダンスの定義に従って、最初に50%低減し、さらに、50%低減する可能性がある。さらなる用量低減が許可されない。抗PD-1抗体の用量変更は、許可されている。
【0255】
いずれかの薬剤の用量低減により管理できないIMARが発生/再発した場合、両方の治験薬を中止しなければならない。
【0256】
第1段階で18人の患者に対してこの組み合わせを試験した後、それぞれの治験群は、応答する患者が2人以下の場合、中止される。治験が、Simonの最適設計のステージIIに進む場合、併用治療群のそれぞれ内で、約25人の患者が、追加で処置される。応答した患者の総数が7名以下の場合、その治療群内の組み合わせが拒否される。8人以上の患者でORR3が確認される場合、その治療群の拡大コホートが有効化され、プロトコールの修正版に記載されている。
【0257】
PDAC患者
転移性PDAC患者のパート2コホートは、第1選択転移例でG9.2-17(IgG4)の併用処置が必要となる。
【0258】
G9.2-17(IGG4)の用量は、RP2D-1用量であり、これは、パート1で同定されたRP2D用量の直前のコホートにおける用量レベルである。患者の安全性を確保するために、最初の8人の患者に投与され、25%の標的毒性レベル(TTL)を下回るDLTを発症した患者が2人以下の場合、その治療群が継続するランインが実施される。3人以上の患者がDLTを発症した場合、この併用処置群は中止される。この併用処置ランインコホートでは、毒性または忍容性の問題以外の理由で離脱する患者は、最初の処置サイクル中にのみ入れ替わる。処置の最初の28日間に、患者に対する8回の安全運転のいずれかで、DLTが発生した場合、その患者は、治験薬の投与を永久に中止される。
【0259】
DLTウィンドウ外で毒性を経験した患者では、臨床上の利益が予想される場合にのみ、用量低減が許可され、G9.2-17(IgG4)の低用量で継続して得られ得る。G9.2-17(IgG4)の用量は、最初に50%減少し、さらに50%減少する可能性がある。さらなる用量低減が許可されない。
【0260】
いずれかの薬剤の用量低減により管理できないIMARが発生/再発した場合、両方の治験薬を中止しなければならない。
【0261】
プライマリー有効性エンドポイントは、患者のPFS6である。
【0262】
パート2完了
パート2の完了は、CRC及びCCA患者の場合は、患者のORR3、PDACの場合はPFS6に依存する。
【0263】
パート3:拡張
有望な有効性シグナルが、治験群のうちの1つ以上内で同定される場合、上記のように所見を確認するために、拡張コホートが開始される。各拡張アームの試料サイズは、ORR/OS及びPFSの周囲の95%CIの所定レベルの精度と組み合わせて、パート2で決定された点推定値に基づいて決定される。プロトコール修正版は、パート3を開始する前に、拡大集団、処置レジメン、及び統計解析計画についての詳細と共に提出される。
【0264】
用量制限毒性基準
この治験で評価された用量制限毒性は、臨床的に重大な血液学的AE及び/または非血液学的AE、または転移性腫瘍疾患の進行、併発疾患、または併用投薬と無関係であると評価された異常な検査値として定義され、治験薬に関連している可能性があるか、または関連しており、試験の最初のサイクル(28日間)中に行われている。処置の最初の28日間にパート1またはパート2でDLTを経験した患者は、治験薬の投与を永久に中止される。
【0265】
DLTは、以下の基準のいずれかを満たす毒性である:
●基礎疾患または外部原因が明らかでない任意の死亡
●以下のように、潜在的な薬物誘発性肝障害の徴候(ハイの法則の場合):
○ALTまたはASTが、正常上限(ULN)の3倍を超え、24時間後の再検査で確認され、及び
○血清総ビリルビン(TBL)>2×ULN(24時間後の再検査により確認)
○TBL及び/またはAT、例えば、ウイルス性肝炎(A、B、またはC)、アルコール性肝炎もしくは自己免疫性肝炎、既存もしくは急性肝疾患、胆嚢閉塞または胆管疾患、ギルバート氏症候群、疾患の進行、または観察された影響を引き起こす可能性のある別の薬剤、の上昇については、他に説明が見出すことができない。
●任意の持続期間を問わず、全てのグレード4の非血液学的毒性及び血液学的毒性
●全てのグレード3の非血液毒性及び血液毒性。例外は、次の通りである:
○入院または完全非経口栄養サポートを必要とせず、支持療法で48時間以内にグレード2以下まで管理することができるグレード3の悪心、嘔吐、及び下痢。
○グレード3の電解質異常が、24時間以内にグレード2以下に修正される。
○持続時間が24~72時間未満で、臨床的に複雑ではなく、自然に回復するか、従来の医療介入に応答するグレード3の電解質異常。
○膵炎の症状または臨床症状を伴わないグレード3以上のアミラーゼまたはリパーゼ。
【0266】
研究終了の定義
研究のパート1の研究終了は、RP2Dが特定され、疾患の進行が確認されるまで、全ての患者がG9.2-17(IGG4)で処置されている時点と定義される。
【0267】
研究のパート2の研究終了は、Simonの2段階の最適設計の完了後に3つの腫瘍タイプのそれぞれに定義され、登録された全ての患者は、疾患の進行が確認されるまで、G9.2-17(IGG4)(単独または併用)で処置されている。
【0268】
パート1及びパート2の両方で、患者は、疾患の進行以外の理由で処置を中止し、追加の全身抗がん治療を受けていない場合、G9.2-17(IgG4)の最後の投与後の最長2年間、OSについて追跡される。
【0269】
治験の終了日は、最後の患者の最後の訪問日として定義される。
【0270】
治験停止規則
パート1
最低研究用量レベルに対するアグレスティ及びクールのCIの下限が目標DLT率を超える場合、安全のために試験が停止される(Agresti and Coull、1998)。
【0271】
パート2
CRC及びCCAの単剤処置群に対するSimonの最適設計のステージIで23人の患者に治験薬を試験した後、応答する患者が1人以下の場合、それぞれの試験群は停止される。治験がSimonの最適設計のステージIIに進む場合、治験群は、その治療群内の応答する患者の総数が5人以下の場合、停止される。
【0272】
同様に、CRC及びCCAにおけるG9.2-17(IgG4)+抗PD-1抗体の組み合わせについても、Simonの最適設計は、治験停止も誘導する。ステージIの18人の患者でこの組み合わせを試験した後、それぞれの治験群は、応答する患者が2人以下の場合、停止される。治験がステージIIに進む場合、治験群は、その治療群内の応答する患者の総数が7人以下の場合、停止される。
【0273】
両方の併用処置群で患者の安全性を確保するために、最初の8人の患者に投与する安全性ランインが実行される。各がんタイプ(例えば、CCA、CRC、及び/またはPDAC)について、登録は、2人以下の患者がDLTを発症する場合に限り継続し、これは、25%の目標毒性レベル(TTL)を下回る。所定のがんタイプを有する3人以上の患者が、併用処置群でDLTを発症した場合、その治療群内のそのがんタイプに対する登録が中止される。
【0274】
研究集団
包含基準
研究に含まれる参加者は、以下の基準が全て当てはまる場合にのみ、適格である
パート1及びパート2
1.書面によるインフォームドコンセント(精神的に正常な患者、インフォームドコンセント書を理解することができ、署名する意思がある)
2.年齢18歳以上、男性または妊娠していない女性
3.組織学的に確認された切除不能な転移癌(腺癌及び扁平上皮癌は、許容される)。切除可能な疾患に罹患している患者は、除外される。
4.研究プロトコールを遵守できる
5.3ヶ月超の平均余命
6.東部協力腫瘍学グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス0~1
7.コロナウイルスSARS-CoV-2(COVID-19)陰性患者
8.処置前及び処置中/処置後の生検を受けることができ、受けたい患者。計画された生検は、患者を合併症の大幅なリスク増加に曝露すべきでない。生検を繰り返す際に、同じ病変を生検するように、あらゆる取り組みがなされる。
9.固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)v1.1に従った測定可能な疾患。生検を目的とした病変が、標的病変であるべきでないことに留意すべきである。
10.治験薬による処置の初回投与前に得られた以下の臨床検査結果で定義される、十分な血液機能及び末端臓器機能:
a.好中球数≧1×10/L
b.血小板数≧100×10/L;パート1の肝細胞癌(HCC)≧50×10/Lの場合
c.前週の輸血なしでヘモグロビン≧9.0g/dL
d.クレアチニン≦1.5×正常値の上限(ULN)
e.アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼAST(SGOT)≦3×ULN(HCCまたは肝転移がある場合、≦5×ULN)
f.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT[SGPT])≦3×ULN(HCCまたは肝転移がある場合、≦5×ULN)
g.ビリルビン≦1.5×ULN(既知のギルバート病患者は、ビリルビン≦3.0×ULNを有し得る)
h.アルブミン≧3.0g/dL
i.国際標準比(INR)及び部分トロンボプラスチン時間(PTT)≦1.5xULN
j.アミラーゼ及びリパーゼ≦1.5xULN
11.活動性感染症または非経口抗生物質を必要とする感染症の証拠がなく、研究開始前4週間以内に重篤な感染症がない。
12.妊娠の可能性のある女性は、処置開始前72時間以内に妊娠検査結果が陰性でなければならない。妊娠の可能性のある女性の場合:治療期間中及び最後の治験治療後少なくとも180日間、禁欲を続ける(異性間性交を控える)か、または失敗率が年間1%未満となる避妊方法を使用することに同意する。
○女性は、初経後であり、閉経後の状態に達しておらず(閉経以外の原因が同定されず、連続12ヶ月以上の無月経)、且つ、外科的不妊手術(卵巣及び/または子宮の摘出)を受けていない場合、妊娠の可能性がある。
○失敗率が年間1%未満の避妊方法の例としては、両側卵管結紮、男性不妊手術、排卵を阻害するホルモン避妊薬、ホルモン放出子宮内避妊具、及び銅製子宮内避妊具が挙げられる。性的禁欲の信頼性は、臨床試験の期間及び患者の好みの通常のライフスタイルに関連して評価されるべきである。定期的な禁欲(例えば、カレンダー、排卵、症状体温法、または排卵後の方法)及び離脱は、許容される避妊方法ではない。不妊症の証拠が存在しない限り、生殖能力のある男性は、研究中に効果的な避妊方法を実践しなければならない。
13.最初のG9.2-17(IgG4)の投与前の最後の抗がん療法投与から4(4)週間または5半減期(どちらか短い方)
14.C1D1前の少なくとも6ヶ月間安定していた骨転移に対するビスホスフォネート処置(例えば、ゾレドロン酸)またはデノスマブの継続が許可される。
15.胆道または胃の出口閉塞は許可される。但し、それは、内視鏡、手術、または介入手段により効果的に排出される。
16.膵臓、胆道、または腸瘻は許容される。但し、感染していない適切な開通性のパテントドレーンで管理される(ドレーンまたはステントがin situにある場合、研究開始前に開通性を確認する必要がある)。
さらに、パート1のみ:
17.患者:
a.転移性疾患に対して少なくとも1つの事前の一連の全身療法を既に受けている者、または
b.利用可能な標準治療の選択肢がない腫瘍タイプの者。
さらに、パート2のみ:
18.PDAC拡大コホート:ゲムシタビン含有レジメンの投薬を受けていないか、または以前にネオアジュバントもしくはアジュバント/局所先進医療環境でゲムシタビン含有レジメンによる治療を受けてから少なくとも3ヶ月が経過している第1選択の転移患者
19.CRC及びCCA拡大コホート-転移環境で少なくとも1つの事前の一連の治療を受けている患者。
【0275】
除外基準
以下の基準のいずれかに該当する場合、参加者は、治験から除外される。
1.患者がプロトコールの要件に従うことを望まない、または従うことができない
2.原発不明の転移性癌と診断された患者
3.事前または現在の違法薬物中毒(医療用及び娯楽用大麻/カンナビジオール(CBD)/テトラヒドロカンナビノール(THC)は、「違法」とみなされないであろう)
4.臨床的に重大な活動性の制御不能な出血、及び出血性素因(例えば、活動性の消化性潰瘍疾患)を有する任意の患者。抗凝固剤の予防的または治療的使用は許可される。
5.妊娠中及び/または授乳中の女性
6.他の任意の治験薬を投与されること、あるいはサイクル1、治験の1日目より前の4週間以内もしくは投与薬剤の5半減期以内(いずれか短い方)に固形腫瘍の処置のために別の治験薬を含む他の任意の臨床試験、または、同意日から4週間以内に他の治験療法もしくは大手術もしくは想定される治験開始から4週間以内に予定されている手術(これには歯科手術が含まれる)に参加すること。
7.骨痛または局所的に痛みを伴う腫瘍塊の処置などの限定された領域に対する緩和的放射線療法を除く、治験薬の初回投与から4週間以内の放射線療法。これは、応答評価に必要な測定可能な病変を危険にさらさない(RECIST v1.1)。
8.真菌性腫瘍塊がある患者
9.遠隔臓器転移性沈着物のない局所進行性PDAC患者
10.事前のチェックポイント阻害薬によるグレード4の免疫介在性毒性。免疫療法処置の中止につながったグレード2またはグレード3の肺炎、または他のグレード3のチェックポイント阻害薬関連の毒性。低悪性度(グレード3未満)の毒性、例えば、事前の処置による神経障害、管理可能な電解質異常及びリンパ球減少症、脱毛症、ならびに白斑は許容される。
11.2次悪性腫瘍の病歴(再発がないか、または再発の可能性が低い、事前に5年以上の治癒目的で処置されるもの(例えば、非黒色性皮膚癌、上皮内子宮頸癌、初期(もしくは限局性)前立腺癌、または表在性膀胱がん)を除く)
12.活動性脳転移または軟髄膜転移。脳転移のある患者は、根治的治療後少なくとも4週間に臨床的及びX線像で安定した疾患(SD)を示しており、治験薬の初回投与前の少なくとも4週間、ステロイド(10mg/日以上のプレドニゾンまたは同等物)を使用していないならば、適格である。
13.重症もしくは制御不能な全身性疾患、うっ血性心不全>ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラス2、6ヶ月以内の心筋梗塞(MI)、または患者が治験に参加することが望ましくない検査所見の証拠
14.患者の安全性を損なう重大な病状、またはG9.2-17(IgG4)毒性評価の解釈を損なう任意の病状
15.治癒していない重篤な創傷、進行中の潰瘍、または未処置の骨折
16.制御不能な胸水、心嚢水、または繰り返し排液手続きを必要とする腹水。この治験の目的では、「再発」は、過去30日間に3回以上のドレーンと定義される。
17.キメラ抗体またはヒト化抗体または融合タンパク質に対する重度のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、または他の過敏反応の病歴
18.サイクル1、1日目から6ヶ月以内の重大な血管疾患(例えば、外科的修復を必要とする大動脈瘤、または最近の動脈血栓症)
19.サイクル1、1日目前の3ヶ月以内の肺塞栓症、脳卒中、または一過性虚血発作の病歴
20.サイクル1、1日目前の6ヶ月以内に腹部瘻または胃腸穿孔の病歴
21.活動性自己免疫疾患(I型/II型糖尿病、ホルモン補充のみを必要とする甲状腺機能低下症、白斑、乾癬、または円形脱毛症を除く)
22.限定されないが、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド、及び抗TNF剤を含む、全身免疫抑制治療を必要とする。急性の低用量の全身性免疫抑制剤(例えば、10mg/day以下のプレドニゾンまたは同等物)を投与されたか、または投与されている患者が登録され得る。補充療法(例えば、副腎または下垂体機能不全に対するチロキシン、インスリン、生理的コルチコステロイド補充療法[例えば、プレドニゾン換算値10mg/日以下])は、全身処置の一形態とはみなされない。吸入コルチコステロイド及びミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)、局所ステロイド、鼻腔内ステロイド、関節内ステロイド、及び眼科用ステロイドの使用が許可される。
23.広範な鎮痛介入(経口及び/またはパッチ)に反応しない、重症の腫瘍関連疼痛(有害事象の共通用語基準(CTCAE)v.5.0によるグレード3以上)
24.ビスホスフォネートの使用にもかかわらず、高カルシウム血症(CTCAEv5.0によるグレード3)
25.治験薬の使用を禁忌とするか、または結果の解釈に影響を与えるか、もしくは患者の処置の合併症のリスクを高くし得る疾患または状態の合理的な疑いを与える他の任意の疾患、代謝機能障害、身体検査所見、または臨床検査所見
26.臓器移植(複数可)を投与した
27.透析を受けている患者
28.抗PD-1抗体併用コホートに登録された患者では、事前の任意の一連の治療法において、任意の抗PD-1薬または抗PD-L1薬への事前曝露はない。さらに、dMMR/MSI-Hと診断された患者は除外される。
29.パート1では、ホルモンアンドロゲン遮断療法が、転移性去勢抵抗性前立腺癌患者に対する継続が許可される。
30.治験参加前の6週間未満のHCCに対する、任意の切除療法(高周波切除または経皮的エタノール注射)
31.肝性脳症または重症の肝腺腫
32.チャイルドピュースコア≧7
さらに、パート2のみ:
33.抗PD-1抗体の成分に記載の活性物質または賦形剤のいずれかに対する過敏症
さらに、パート2の組み合わせ(G9.2-17(IGG4)+抗PD-1抗体)アームのみ:
34.処置開始から28日以内に生ワクチンを投与された。不活化ワクチン(すなわち、インフルエンザ及びCovid-19)が許可される。
【0276】
治験薬及び他の介入
治験介入(複数可)は、治験プロトコールに従って、治験参加者に投与/使用されることを意図された治験薬(複数可)、市販製品(複数可)、プラセボ、または医療デバイス(複数可)として定義される。
【0277】
G9.2-17 IgG4と組み合わせて投与される薬剤
ニボルマブ
ニボルマブ(OPDIVO(登録商標)は、複数の腫瘍タイプの処置に適応されるプログラムされたデス受容体1(PD-1)ブロック抗体である。ニボルマブは、G9.2-17 IgG4などの本明細書に開示の抗ガレクチン-9抗体と組み合わせて、例示的な抗PD-1抗体として使用することができる。
【0278】
ニボルマブは、28日サイクルで2週間毎に240mgを(別途指示がない限り)30分間かけて静脈内注入として投与することができる。FDAのラベルにより、ニボルマブの投与には禁忌はない。
【0279】
ニボルマブAEは、その発生頻度に従って以下の表に提示される。

【表6】

【表7】
【0280】
治験介入管理
全ての患者は、G9.2-17(IgG4)を投与される。G9.2-17(IgG4)は、疾患の進行、許容できない毒性、または同意の撤回まで、毎週または2週間毎にIV注入で投与される。
【0281】
パート1では、患者は、G9.2-17(IgG4)を単独で、0.2mg/kgから開始して用量を逐次的に増加させて投与される。
【0282】
パート2では、患者は、以下の通り、G9.2-17(IgG4)のRP2D(パート1で決定)を単剤として投与されるか、またはG9.2-17(IgG4)RP2D-1を抗PD-1抗体と併用して投与される。
●CRCまたはCCAの患者
○CRCにおけるG9.2-17(IgG4)
○CCAにおけるG9.2-17(IgG4)
○CRCにおけるG9.2-17(IgG4)+抗PD-1抗体
○CCAにおけるG9.2-17(IgG4)+抗PD-1抗体
●他の固形腫瘍タイプ(パート1のデータに基づく)
○単剤とした、及び/または各腫瘍タイプに基づいて決定されるチェックポイント阻害薬または化学療法と組み合わせたG9.2-17(IgG4)
【0283】
各治験介入の概要の説明については、表4を参照のこと。
【0284】
パート1でDLTを経験した患者は、処置を再開しない。パート2でDLTを経験した患者は、処置が中断される。臨床的利点が得られている場合、G9.2-17(IgG4)の用量を同じまたは低減した処置を再開し得る。

【表8】
【0285】
G9.2-17(IgG4)の調製
治験薬(IMP)G9.2-17(IgG4)の製造及びパッケージングは、適用可能な現行の適正製造基準(cGMP)に従っており、製品は、ヒトでの使用に適用可能な基準を満たす。
【0286】
G9.2-17(IgG4)製剤は、投与前に目標用量に希釈される。全ての希釈は、管理された無菌環境で実行されるべきである(患者用量は、約60分間のIV注入により準備され、投与される)。
【0287】
G9.2-17(IgG4)は、滅菌液体であり、遮光して2℃~8℃で保存され、光から保護される。
【0288】
用量の段階的増加
患者がG9.2-17(IgG4)及びプロトコール有効性評価基準による臨床的利益を経験しており、患者は、G9.2-17(IgG4)に起因しない有害反応を経験しており、次に、G9.2-17(IgG4)単独の処置が継続し得る。
以下の場合、G9.2-17(IgG4)が継続され得る:
●患者の臨床状態が、急速に悪化していない;及び
●併用剤は、併用剤のみに起因するAEのために中止される。
【0289】
いずれかの薬剤の用量低減により管理できないIMARが発生/再発した場合、両方の治験薬を中止しなければならない。
【0290】
Nab-パクリタキセルは、総ビリルビン>5×ULN、または、AST>10×ULNを有する患者には推奨されない。さらに、Nab-パクリタキセルは、中等度から重症の肝障害(総ビリルビン>1.5×ULN及びAST≦10×ULN)のある膵臓の転移性腺癌に罹患している患者には推奨されない。中等度または重症の肝障害に罹患している患者の場合、開始用量を低減しなければならない。
【0291】
ニボルマブの投与に関連する特定のAEに対する用量変更
特定のAEに基づくニボルマブ修飾の推奨事項を以下に提供される。甲状腺機能低下症または甲状腺機能亢進症に対するニボルマブの推奨用量変更はない。
【0292】
IMAR以外のAEに対するニボルマブの推奨用量変更を以下に提示される:

【表9】
【0293】
IMARの用量変更
IMARが発生する場合は、G9.2-17 IgG4及び/またはニボルマブの用量管理に関して本明細書に提供されるガイダンスを参照のこと。
【0294】
治験介入の中止
まれな場合では、患者が治験介入を永久に中止する必要があり得る。疾患進行以外の理由で治験介入が永久に中止され、患者が他の抗がん療法(複数可)で処置されていない場合、患者は、最長2年間、疾患進行について評価され続ける。治験介入及び追跡調査の中止時に収集されるべきデータ、及び完了する必要があるさらなる任意の評価については、SoAを参照のこと。
【0295】
治験担当者は、治験処置中止の理由の1つ(疾患の進行、治験薬に関連する毒性、同意の撤回)が満たされるまで、患者を治験処置に継続させるためにあらゆる取り組みをなさなければならない。患者がX線検査上進行を有する場合、明確な臨床的進行がなく、代替処置が開始されない場合、患者は、治験処置を継続し得る。しかし、患者が、X線検査による進行がなく臨床的進行が明らかな場合、治験処置を停止すべきであり、利用可能な処置選択肢について患者にアドバイスした。
【0296】
以下のいずれかの理由により、患者が、疾患進行前に中止され得る。
●セクション3.4.4の定義毎のDLT。
●AEは、研究処置(複数可)の中止が必要なDLTウィンドウ外で発生/再発する
●研究処置(複数可)の中止が必要なIMARが発生/再発する
●PureTech Health,LLCによる研究の終了
●処置のさらなる投与を予防するか、または治験処置に継続する場合、患者の安全性を危険にさらし得る併発疾患または病状
●妊娠
●非プロトコール抗がん療法の使用
【0297】
以下のいずれかの理由により、患者が、疾患進行前にも中止され得る:
●患者側のプロトコールからの重大な逸脱(コンプライアンスの欠如を含む)
【0298】
患者が治験処置を中止する理由の説明は、症例報告書(CRF)に文書化すべきである。患者が毒性のために治験処置を中止する場合、「用量制限毒性」または「有害事象」が離脱の主な理由として記録される。AEまたはSAEにより任意の時に、患者が治験から早期に中止される場合、患者は、基礎疾患のための改善の可能性が低い限り、グレード2以下に回復するまで、追跡されなければならない。
【0299】
併用療法
参加者が、登録時に投与されているか、または研究中に投与される任意の薬剤またはワクチン(市販薬または製剤化薬、レクリエーション用薬物、ビタミン、及び/またはハーブサプリメントを含む)は、以下の情報と共に記録する必要がある。
●使用理由
●開始日及び終了日を含む投与日
●投与量及び頻度を含む投薬量情報
【0300】
許可されている医薬品
以下の併用投薬が許可されている:
●併用処置レジメンの患者に対する標準治療の前投薬。
●骨転移に対するビスホスフォネート処置(例えば、ゾレドロン酸)またはデノスマブの継続が、処置前の少なくとも6ヶ月間安定している(C1D1)。
●吸入コルチコステロイド及びミネラルコルチコイド(例えば、フルドロコルチゾン)、局所ステロイド、鼻腔内ステロイド、関節内ステロイド、及び眼科用ステロイドの使用。
●抗凝固剤の予防的または治療的使用
●COVID-19、一般的なインフルエンザ、及び/または他の一般的な臨床的に必要な適応症(例えば、破傷風、肺炎球菌、HBVなど)に対するワクチン接種が、研究期間前または研究期間中に許可される。ワクチンの時期及び種類を記録しなければならない。
【0301】
禁止されている薬物
この研究中は、以下の薬剤の服用が許可されない。
●任意の適応症の場合、G9.2-17(IGG4)以外の他の治験薬の併用投与。
●限定されないが、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、サリドマイド、及び抗TNF剤が含まれる全身免疫抑制処置。しかし、患者は、急性の低用量の全身性免疫抑制剤の服用が許可される(例えば、プレドニゾンまたは同等品を10mg/日以下)。
●補充療法(例えば、副腎または下垂体機能不全に対するチロキシン、インスリン、生理的コルチコステロイド補充療法[例えば、プレドニゾン相当量の10mg/日以下])は全身処置の一形態とはみなされない。
【0302】
支持療法
患者は、研究中、血液及び血液製剤の輸血;抗生物質、制吐薬、止瀉薬、及び鎮痛薬による処置;ならびに適切と思われるように且つ施設のガイドラインに従って他の治療を含む完全な支持療法を投与されるべきである。
【0303】
評価の予定

【表10-1】

【表10-2】

【表10-3】

【表10-4】

【表10-5】

【表10-6】

【表11-1】

【表11-2】

【表11-3】

【表11-4】

【表11-5】

【表11-6】
【0304】
研究の評価及び手順
治験審査委員会(IRB)により承認された署名済みの書面によるICFは、潜在的な患者が研究固有のスクリーニング手順を含む研究固有の手順に参加する前に、取得しなければならない。
【0305】
患者は、全てのスクリーニング手順が完了しており、全ての適格基準を満たしていると判断される場合、研究に登録される。
●パート1、コホート1~6の研究手順及びそれぞれのタイミングは、SoAにまとめられる(表8)。パート1、コホート7及び8の研究手順ならびにそれぞれのタイミングは、SoAにまとめられ(表9)。プロトコールの放棄または免除は許可されない。
●SoAで指定されているものを含む全ての研究要件を遵守することは、研究の実施に不可欠であり、必須である。
●差し迫った安全性の懸念は、介入または研究中止の必要性を判断するために、発生または認識したらすぐに話し合わなければならない。
●全てのスクリーニング評価が完了されなければならず、潜在的な参加者が全ての適格基準を満たしていることを確認するように概説される。スクリーニングログは、スクリーニングされた全ての参加者の詳細を記録し、適用可能な場合、適格性を確認するか、またはスクリーニング不合格の理由を記録するように維持される。
●参加者の日常的な臨床管理(例えば、血球数)の一部として実施され、ICFに署名する前に取得された手順は、プロトコールで指定された基準を満たし、手順がSoAで定義された時間枠内で実施された場合に限り、スクリーニングまたはベースラインの目的に利用できる。
【0306】
訪問毎の評価
SoA(表5~6)は、スクリーニング期間(最長28日)、処置期間(28日サイクルとして表示)、処置終了/早期中止期間、IMAR追跡調査、及び長期追跡調査期間中に実施されるべき評価のリストを提示する。医学的に示される場合、各処置サイクル中に、任意の訪問が認められ、その間に、研究評価が実施され得る。
【0307】
COVID-19のパンデミック中、多くの政府は、国民に社会的距離を置くことを義務付けており、より弱い立場にある人々は、自己隔離するよう勧告されている。このようなタイプの制約は、当初の目的通りに、この臨床研究を実施する能力に影響し得る。パンデミック中に、研究が安全に継続し得るように、計画された施設訪問を調整することができる。可能な変更には、以下が含まれ得る:
●訪問及び/または治験の手順の延期
●電話/ビデオ通話(複数可)による代替
●家庭訪問への代替
●代替の診療所で実施される訪問
●研究チーム以外の医療提供者による訪問
●訪問及び/または治験手続きが完全にキャンセルされた。
【0308】
スクリーニング期間(28日目及び1日目の間)
以下の手順は、処置の開始後4週間以内に実施されなければならない:
学習手順及び試験
●書面によるインフォームドコンセント
●患者の適格性の包含基準及び除外基準を確認する
●患者の人口統計
●病歴
●事前及び併用投薬
●ECHO/マルチゲート収集スキャン(MUGA)
●12誘導ECG(フリデリシアの式[QTcF]を使用して補正されたQT間隔)
●身体検査-安定した治療済みの脳転移のある患者には、神経学的検査を実施する。
●ECOGパフォーマンスステータス
●バイタルサイン
●腫瘍イメージング評価(造影剤の有無にかかわらずコンピュータ断層撮影法[CT]または磁気共鳴イメージング法(MRI)、または陽電子放出断層撮影法(PET)-CT、造影剤付きのCTが好ましい)
臨床検査室
●出産可能な女性のための妊娠検査(WOCBP)
●血液学
●血清の化学
●甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離T4またはチロキシン(fT4)、血清リパーゼ、アミラーゼ、副甲状腺ホルモン(PTH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、遊離コルチゾール
●血液凝固
●尿検査
薬力学及び薬物動態学
●腫瘍生検
○生検が患者にとって危険であるとみなされる場合、生検を省略することができる。
○生検が利用できない場合、施設は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックとして利用可能なアーカイブ腫瘍組織試料を入手するためにあらゆる取り組みを行うだろう。許容されるアーカイブ試料には、過去5年以内にコア針生検または切除手術により得られた試料が含まれる。
●dMMR-MSI-Hステータス(患者のMMR及びMSIステータスが事前に決定されていない場合、検査は、地元の検査機関で実行する必要がある)
●パート2 G9.2-17(IGG4)+抗PD1抗体コンボ治療群のみの組織内のTMB
●腫瘍の種類に関連するバイオマーカー
【0309】
処置期間
各処置サイクルは、28日間の期間である。訪問のタイミングについては、パート1のコホート1~6については表5、パート1のコホート7及び8については表6を参照のこと。
【0310】
各サイクルの1日目の処置手順(CXD1;サイクル2の開始から±2日)
以下の手順は、各処置サイクルの1日目に実行される。
研究の手順及び試験
●併用投薬
●AE
●12誘導ECG(QTcF)
●身体検査
●ECOGパフォーマンスステータス
●バイタルサイン
臨床検査室
●WOCBPの妊娠検査
●血液学
●血清の化学
●TSH、fT4、リパーゼ、アミラーゼ、PTH、FSH、LH、遊離コルチゾール
●血液凝固
●尿検査
PK/PD評価
●PD採血
●PK採血
●ADA採血
●腫瘍の種類に関連するバイオマーカー
治験薬の投与
●全ての投与前評価及び手順が完了した後にのみ投与する。
さらに、サイクル3の1日目から開始して、以下の評価が8週間毎に実施される。
●腫瘍イメージング評価(CTもしくはMRI、造影剤ありもしくは造影剤なし;またはPET-CT、造影剤ありのCTが好ましい)
さらに、サイクル4の1日目から開始して、以下の評価が3ヶ月毎に実行される:
●ECHO/MUGA
コホート1~6:サイクル1及びサイクル3の2日目及び8日目の処置手順(CXD2±1日及びCXD8±1日)
研究の手順及び試験
●併用投薬
●AE
PK/PD評価
●PD採血
●PK採血
コホート1~6:各サイクルの15日目の処置手順(サイクル1ではCXD15±1日及びサイクル2の開始では±2日)
【0311】
以下の手順は、各処置サイクルの15日目に実行される。
研究の手順及び試験
●併用投薬
●AE
●身体検査
●ECOGパフォーマンスステータス
●バイタルサイン
臨床検査室
●血液学
●血清の化学
●血液凝固
●尿検査
PK/PD評価
●C1D15及びC3D15のみのPD採血
●C1D15及びC3D15のみのPK採血
●腫瘍の種類に関連するバイオマーカー
●C3D15±7日目の腫瘍生検(サイクル3のみ;患者にとってリスクが高すぎると判断される場合は除外することができる)
治験薬の投与
●全ての投与前評価及び手順が完了した後にのみ投与する。
コホート7及び8:サイクル1及びサイクル3の3日目の処置手順(C1D3±1日及びC3D3±1日)
研究の手順及び試験
●併用投薬
●AE
PK/PD評価
●PD採血
●PK採血
コホート7及び8:各サイクルの8日目の処置手順(CXD8±1日)
研究の手順及び試験
●併用投薬
●AE
●身体検査
●ECOGパフォーマンスステータス
●バイタルサイン
臨床検査室
●血液学
●血清の化学
●血液凝固
●尿検査
PK/PD評価
●PD採血
●奇数番目のサイクルのみのPK採血
治験薬の投与
●全ての投与前評価及び手順が完了した後にのみ投与する。
コホート7及び8:各サイクルの15日目及び22日目の処置手順(サイクル1ではCXD15±1日及びサイクル2の開始では±2日)
【0312】
以下の手順は、各処置サイクルの15日目及び22日目に実施される。
研究の手順及び試験
●併用投薬
●AE
●身体検査
●ECOGパフォーマンスステータス
●バイタルサイン
臨床検査室
●血液学
●血清の化学
●血液凝固
●尿検査
PK/PD評価
●C1D15及びC3D15のみのPD採血
●奇数番目のサイクルのみのPK採血
●腫瘍の種類に関連するバイオマーカー
●C3D15±7日目の腫瘍生検(サイクル3のみ;患者にとってリスクが高すぎると判断される場合は除外することができる)
●C1D15及びC2D15のみのADA採血
治験薬の投与
●全ての投与前評価及び手順が完了した後にのみ投与する。
【0313】
サイクル4以降の追加処置
サイクル4以降の処置サイクルは、SoA(表5~6)に示されているように繰り返すことができる。患者が臨床上の利益を実感している場合、放射線学的に進行した場合であっても、患者は、処置を続け得る。
【0314】
処置の終了または早期中止の手順
以下の手順は、処置を早期に中止している患者を含む、最後の投与から30日(±3日)後に行われる。
研究の手順及び試験
●併用投薬
●AE
●身体検査
●ECOG
●バイタルサイン
●腫瘍イメージング評価:研究終了が、前回のスキャンから8週間を超えている場合、確認スキャン。
臨床検査室
●WOCBPの妊娠検査
●血液学
●血清の化学
●TSH、fT4、リパーゼ、アミラーゼ、PTH、FSH、LH、遊離コルチゾール
●血液凝固
●尿検査
PD評価
●PD採血
●ADA採血
●腫瘍の種類に関連するバイオマーカー
【0315】
IMAR 90日間の追跡調査
パート2の抗PD1抗体との併用治療を受けている全ての患者は、遅延IMARの任意の可能性を評価するために、安全性の追跡調査のために90±7日目に来院しなければならない。訪問には、以下が含まれる:
研究の手順及び試験
●AE
●身体検査
●バイタルサイン
臨床検査室
●血液学
●血清の化学
●TSH、fT4、リパーゼ、アミラーゼ、PTH、FSH、LH、遊離コルチゾール
●血液凝固
●尿検査
【0316】
長期追跡調査
OSは、患者が処置終了/早期中止した後、最大2年間、3ヶ月毎に評価される。患者が疾患の進行以外の理由で処置を中止し、追加の全身抗がん処置を投与されないことが可能であれば、腫瘍イメージング評価が継続する。
【0317】
生存データと、疾患進行後に開始された新しい抗がん療法に関する情報は、少なくとも3ヶ月毎に収集される。データのクリーニングまたは規制当局への提出作業を支援するために、より頻繁に収集することができる。追跡調査は、電話面接、電子メッセージ送信、またはカルテ審査で実施され得、CRFで報告される。追跡調査期間中に、因果関係に関係なく、死因が収集され、事象の発見または通知から24時間以内に報告される。
【0318】
腫瘍評価のRECIST v1.1基準
スクリーニング腫瘍評価では、腫瘍病変/リンパ節は、測定可能または測定不可能に分類され、測定可能な腫瘍病変は、測定面の最長直径に従って記録される(病理学的リンパ節は除き、これを最短軸で測定する)。スクリーニングで複数の測定可能な病変が存在する場合、関係する全ての臓器を代表する合計最大5つの全病変(及び臓器毎に最大2つの病変)標的病変として同定されるべきである。標的病変は、そのサイズ(直径が最も長い病変)に基づいて選択すべきである。全ての標的病変の直径の合計が計算され、ベースライン合計直径として報告される。
【0319】
病理学的リンパ節を含む他の全ての病変(または疾患部位)は、非標的病変として特定され、スクリーニング時にも記録されるべきである。測定は必要なく、これらの病変は、「存在」、「不在」、または「明確な進行」として追跡されるべきである。
【0320】
腫瘍標的病変を、以下の疾患応答手段を使用して、RECIST v1.1ガイドライン(Eisenhauer et al.,2009)に従って評価される。
【0321】
標的病変の評価:
●完全奏効(CR):全ての標的病変の消失。(標的か非標的かにかかわらず)病理学的リンパ節のいずれかは、短軸が10mm未満の低減を有さなければならない。
●部分奏効(PR):ベースラインの合計直径を基準として、標的病変の直径の合計が少なくとも30%減少する。
●進行性疾患:研究上の最小合計を参考として、標的病変の直径の合計が少なくとも20%増加する(研究上の最小の場合、これには、ベースライン合計が含まれる)。20%の相対的な増加に加えて、合計は、少なくとも5mmの絶対的な増加も示さなければならない。(注記:1つ以上の新たな病変の出現も進行とみなされる)。
●安定した疾患(SD):試験中の最小合計直径を参考として、PRに適格となるのに十分な縮小も、PDに適格となるのに十分な増加もない。
【0322】
非標的病変の評価:
●CR:全ての非標的病変が消失し、腫瘍マーカーレベルが正常化する。全てのリンパ節は、非病理学的大きさ(短軸10mm未満)でなければならない。
●非CR/非進行性疾患(非PD):1つ以上の非標的病変(複数可)の持続及び/または正常限界を超える腫瘍マーカーレベルの維持。
●進行性疾患:既存の非標的病変の明らかな進行。(注記:1つ以上の新たな病変の出現も進行とみなされる)。
【0323】
要約が以下の表7に提供される。
【表12】
【0324】
様々な時点での疾患応答の測定は、以下の計算が可能になる:
●疾患制御率(DCR)、CR、PR、及びSDを達成している患者の割合として定義される。
●客観的奏効率(ORR)、所定量の腫瘍サイズが低減した患者の割合として定義される(30%以上の腫瘍縮小率)。
●無増悪生存期間(PFS)は、治験薬処置の開始から疾患進行(腫瘍増殖≧30%)までの時間として定義される。
●奏効期間(DoR)、がんが成長または広がることなく、腫瘍が処置に応答し続ける時間の長さとして定義される。
●全生存期間(OS)は、治験薬処置の開始から何らかの原因による死亡までの時間として定義される。
【0325】
安全性評価
身体検査
医学的及び身体的検査は、資格のある医師、看護師、または医師助手により実施されなければならず、全ての身体システムの徹底的な検査が含まれなければならない。さらに、身長(スクリーニング時のみ)及び体重が測定される。
【0326】
バイタルサイン
バイタルサインは、仰臥位で5分間安静にした後に測定され、体温、血圧(収縮期及び拡張期)、心拍数、ならびに呼吸数が含まれる。
【0327】
心電図
12誘導ECGは、心拍数を自動的に計算し、心拍数、PR間隔、QRS継続時間、QRS複合体の開始からT波(QT)間隔の終わりまで追跡するECGにおける時間距離、及びQTcF間隔を測定するECGマシンを使用して、SoA(表5~6を参照)に概説されるように得られる。
【0328】
臨床安全性実験的評価
患者は、SoAに従って所定の臨床検査用に血液試料を採取する(各時点で約5mL)(表5~6);必要と判断された場合、研究中いつでも追加の検査が実施され得る。
【0329】
臨床検査パラメーターは、施設の地元の検査機関で分析される。完了した実験的評価には、血液学及び血清化学が含まれ、以下のように定義される:
●血清化学:グルコース、総タンパク質、アルブミン、電解質[ナトリウム、カリウム、塩化物、マグネシウム、リン]、カルシウム、ビリルビン(総、直接)、SGPT(ALT)またはSGOT(AST)、アルカリホスファターゼ、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(ガンマGT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニン、ヘモグロビンA1c(HgbA1c)(1型または2型糖尿病の病歴がある場合のみ)、血中尿素窒素、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)が含まれる
○TSH、fT4、リパーゼ、アミラーゼ、PTH、FSH、LH、指定された訪問時に追加で遊離コルチゾール
○空腹時血糖値は,臨床的に必要な場合にのみ評価される
●血液学:全血球数、分画、血小板、ヘモグロビンが含まれる。
●凝固:プロトロンビン時間(PT)及びPTT、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)及びINR(許容される抗凝固剤の場合)、C反応性タンパク質(CRP)、ならびにトロポニンが含まれる。
●尿検査:患者は、所定の尿検査のために尿試料を収集する。尿検査には、色、外観、及び比重のゲージ、タンパク質、白血球エステラーゼ、グルコース、ケトン、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩、白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、ならびにpH、ならびに尿培養(患者が臨床的に症状がある場合)が含まれる。
●臨床的に有意な値が、妥当と判断される期間内に正常/ベースラインまたはグレード1に戻らない場合、病因が同定されなければならない。
●全てのプロトコールに必要な臨床検査は、検査マニュアル及びSoA(表5~6)に従って実施しなければならない。
●施設の地元の検査機関で実施された、プロトコールに指定されていない臨床検査の検査値が、参加者の管理の変更を必要とする場合、または臨床的に重要である(例えば、SAEもしくはAEまたは用量変更)とみなされる場合、結果が記録されなければならない。
【0330】
妊娠検査
月経期間が確認され、高感度の尿または血清妊娠検査が陰性となった後のWOCBPのみが含まれるべきである。
【0331】
追加の妊娠検査は、SoA(表5~6)に従って、処置期間中及び処置終了/早期中止訪問時に、地域の必要に応じて実施すべきである。
【0332】
妊娠検査は、月経サイクルが遅れた時はいつでも、または別途妊娠が疑われる時に実施される。
【0333】
患者が両側卵管卵巣摘出術及び/または子宮摘出術の病歴がある場合、これらの外科的処置を記録し;これらの患者には妊娠検査は必要ない。
【0334】
薬物動態評価
可能であれば、以下の血清PKパラメーターが、G9.2-17(IGG4)に対して計算される。
●AUC0-336h
●Cmax
●Tmax
●t1/2
●血清濃度 対 時間プロファイル
【0335】
約5mLの血液試料が収集され、SoAで指定される各時点で血清に処理される(表5~6)。
【0336】
コホート1~6のPK予定:
サイクル1及びサイクル3の1日目
●投与前
●注入終了時(EOI)
●EOIから2時間(±30分)
●EOIから4時間(±30分)
サイクル1及びサイクル3の15日目
●投与前
●EOI時
サイクル1及びサイクル3の2日目及び8日目(非投与日)
●訪問中の任意の時点
サイクル2及びサイクル4の1日目
●投与前
●EOI時
サイクル4以降の2サイクル毎の1日目(すなわち、C6D1、C8D1など)
●投与前
●EOI時
【0337】
コホート7及び8のPK予定:
奇数のサイクル毎の1日目(すなわち、C1D1、C3D1など)
●投与前
●注入終了時(EOI)
●EOI後1時間(±15分)
奇数のサイクル毎の3日目(すなわち、C1D3、C3D3など)
●訪問中の任意の時点
奇数のサイクル毎の8、15、及び22日目(すなわち、C1D8、C3D8など)
●投与前
●EOI時
偶数のサイクル毎の1日目(すなわち、C2D1、C4D1など)
●投与前
●EOI時
【0338】
治験薬の投与が中断されたと判断された場合、投与再開時に追加のPK及び安全性評価が収集され;中断中に追加のPK評価が実行され得る。治験薬の用量を低減した場合、減量した用量の投与前(投与前2時間以内)且つ低減した治験薬の投与開始の2~4時間後に、追加のPK評価が収集される。臨床的に必要な場合には、追加のPK及び他の血液評価が行われ得る。COVID-19の制限により、投与の2時間以上後に、患者を収容することができない施設は、EOI時及び投与の2時間後の試料を与える。
【0339】
生体試料の収集及び取り扱いについての使用説明書が提供される。各試料の実際の日付及び時刻(24時間の時計時間)が記録される。
【0340】
試料は、所定の検査機関により総G9.2-17(IGG4)及び遊離/部分遊離G9.2-17(IGG4)の血清濃度レベルを評価するために使用される。濃度は、検証済みアッセイを使用して測定される。G9.2-17(IGG4)の総濃度を測定するには、血清のアリコート50μLが少なくとも2つ必要である。遊離及び部分遊離G9.2-17(IGG4)濃度ならびに3番目のアリコートの残留血清を測定するのに、血清のアリコート100μLが少なくとも2つ必要である。G9.2-17(IGG4)血漿濃度の分析のために収集された試料は、治験中または治験後に生じる懸念に関連する安全性または有効性の態様を評価するためにも使用され得る。
【0341】
これらの血液試料では、遺伝子分析が実施されない。参加者の秘密は保持される。PD、ADA、G9.2-17(IGG4)の安全検査室の判定のための血液試料が採取される訪問では、十分な量の1つの試料を使用することができる。
【0342】
遺伝的性質
この研究では、遺伝学は評価されていない。
【0343】
薬力学的バイオマーカー
バイオマーカー評価の計画された時点は、SoAで提供される(表5~6);サンプリングは、処置の6ヶ月後の3番目のサイクル毎まで減少し得る。
【0344】
他のバイオマーカー研究のための生体試料の収集も、この治験の一部である。バイオマーカー研究には以下の試料が要求され、SoAで指定されるように、この治験の全ての参加者から収集される。
●治験薬の投与前に収集されるべき血液試料(投与前約15mL)
●腫瘍生検(組織試料)
【0345】
試料は、検証済みアッセイを使用して、G9.2-17(IGG4)に対する観察された臨床反応との関連性を評価するための(フローサイトメトリー、ELISA、IHC、または多重表現型検査による)PDバイオマーカーについて検査される。
【0346】
この治験では、以下のバイオマーカーが評価される。
●腫瘍マーカー(血液):腫瘍タイプ毎に必要に応じて、サイクル投与前投与毎に評価されるべきCA15-3、CA-125、癌胎児性抗原(CEA)、CA19-9、アルファフェトプロテイン、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、サイトケラチンフラグメント21(CYFRA-21)。必要に応じて、腫瘍イメージング評価と同じ予定に従って、6ヶ月の処置後の3サイクル毎に、これが減少し得る。
●PBMC表現型(血液):例えば、CD3、CD4、CD8、CD45RO、フォークヘッドボックスプロテインP3(FOXP3)、CD11B、CD14、CD15、CD16、CD33、CD68、ヒト白血球抗原(HLA)DR、CD163、アルギナーゼ1、グランザイムB、KI67、PD-1、PDL1、パンサイトケラチン(PAN CK)
●サイトカイン(血液):例えば、インターフェロンガンマ(IFNγ)、IL10、IL12p70、IL13、IL1β、IL2、IL4、IL6、IL8、TNFα、MIP-1b、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、MIP-1a、IL17a、IL5、TGFβ
●血液及び腫瘍組織中のGal-9
●PD-L1(組織)
●修復ステータスの不一致(組織)
●腫瘍変異量(TMB)
【0347】
探索的なバイオマーカーの変化は、もしあれば、安全性及び応答の結果と相関する。
【0348】
薬力学的バイオマーカーに対するG9.2-17(IGG4)の効果のさらなる分析が可能になるように選択された施設で治験のための最後の患者の最後の訪問後に最大2年間(または現地の規制に従って)試料が保存され得る。
【0349】
免疫原性評価
血液試料(約3mL)は、SoA(表5~6)に従って全ての参加者から収集され、血清に処理される。さらに、治験介入を中止した患者または治験から離脱した患者から、処置の終了/早期中止訪問時に血清試料も収集されるべきである。
コホート1~6:サイクル1~サイクル4の1日目
●投与前
コホート1~6:サイクル4以降の2サイクル毎の1日目(すなわち、C6D1、C8D1など):
●投与前
コホート7及び8:サイクル毎の1日目
●投与前
コホート7及び8:サイクル1の15日目及びサイクル2の15日目のみ
●投与前
【0350】
それぞれ血清のアリコート500μLが少なくとも2つ得られ、残りの血清は、3番目のチューブで得られる。試料は、検証済みのアッセイを使用した分析のために指定された研究室に発送される。これらの試料は、試験される。
【0351】
血清試料は、G9.2-17(IgG4)(ADA)に結合する抗体についてスクリーニングされ、確認された陽性試料の力価が報告される。G9.2-17(IgG4)に対する抗体の安定性を検証するため、及び/またはG9.2-17(IgG4)の免疫原性をさらに特徴付けるために、他の分析が実施され得る。
【0352】
G9.2-17(IgG4)に対する抗体の検出及び特性評価は、検証済みアッセイ法を使用して実施される。介入研究に抗体の検出のために収集された全ての試料は、抗体データの解釈を可能にするためにG9.2-17(IgG4)血清濃度について評価される。抗体は、さらに特徴付けられ、及び/または治験介入の活性を中和する能力について評価され得る。G9.2-17(IgG4)に対する免疫応答のさらなる分析を可能にするために、好適な施設で研究のための最後の患者の最後の訪問後に最大2年間(または現地の規制に従って)試料が保存され得る。
【0353】
他の評価
患者背景
スクリーニング時に、患者の患者背景が収集される。これらには、年齢、性別、人種、及び民族が含まれる。
【0354】
病歴
病歴には、腫瘍学の病歴、手術/移植の病歴、放射線療法の病歴、ならびにCOVID19の病歴及び検査が含まれる。
●事前の処置/手術を含む個人の病歴(in situの任意のインプラントまたは過去のインプラントの記録、医療デバイスの事前及び/または現在の使用、併用投薬(名前、適応症、用量、経路、必要に応じて開始日及び終了日の用量の修正、ならびに理由)、既存の症状、ならびにAE)、患者の最高の知識に対する家族歴及び完全家族歴に基づくリスクの遺伝性疾患を含む)
●過去12ヶ月間に実施された歯科治療の記録
●以前に切除された膵臓腺癌患者の場合、原発腫瘍が、膵頭部、膵体、または膵尾部に局在していたかを記録する。
●用便習慣/典型的な頻度及び一貫性
●任意の食事の要件または選好を記録する(例えば、特定の食事療法の実践:断続的な断食、ケトダイエットなど)。
●過去及び現在のアレルギーの記録(アレルゲン、重症度)
【0355】
事前及び併用投薬
ワクチン及び補完的処置/サプリメントを含む、事前及び併用投薬は、予定の訪問毎に各患者について文書化される(表5~6)。
【0356】
腫瘍イメージング評価
腫瘍の評価は、造影剤の有無にかかわらず、CTまたはMRIを使用して実施され;PET-CT検査が実施される。
【0357】
造影剤を用いたCTが好ましいモダリティである(疾患の所与の部位で、CTが実行不可能または適切でない場合、CTスキャンの代わりに、またはそれに加えて、MRI、PET-CT、または他のイメージングモダリティ)。評価には、患者の腫瘍タイプ及び/または病歴に基づいて、最低でも胸部/腹部/骨盤が含まれるべきであり、示される他の解剖学的領域が含まれるべきである。イメージングスキャンは、匿名化され、患者の治験ファイルの一部として天然フォーマットでアーカイブされなければならない。スキャンのタイプは、疾患に応じて取得されるが、治験期間中に同じ方法が使用されるべきである。
【0358】
治験では、評価は、過去4~6週間以内に評価されなかった場合、SoA(すなわち、C3D1、C5D1、C7D1、C9D1など)に従って8週間±7日毎に、及び、処置の終了時に行われる。評価は、臨床的に示される場合、より頻繁に実施され得る。パート2の場合のみ、スキャンで客観的奏効が見られる場合、4週間(+7日)後に確認スキャンが行われる。確認スキャンの後、予定のスキャンは、確認スキャンの日から8週間(±7日)毎の頻度で再開されるべきである。
【0359】
腫瘍生検
処置前及び処置中の生検が収集される。処置前の生検は、スクリーニング中に収集される。包含基準に概説されている理由により処置前の生検が入手できず、患者が研究に登録されている場合、その患者からのアーカイブ腫瘍組織標本が、原発腫瘍及び/または転移性沈着物から収集される。原発腫瘍病変または転移性沈着物から現在または研究開始前5年以内に得られた切除生検またはコア生検(FFPE組織ブロック(複数可)またはホルマリン中の新鮮組織)。原発組織及び転移組織の両方が利用可能な場合は、転移性沈着物組織の使用が優先される。組織採取の前後に受けた処置(複数可)の情報が入手可能な場合、これも、収集される。
【0360】
処置中の生検は、C3D15±7日間に予定されており、サイクル3の腫瘍イメージングスキャン後にのみ行うべきである。プロトコールで指定された時間枠内に手順を実施できない場合、代替手段が、許可され得るが、研究責任者/メディカル監視と共に考察されるべきである。様々な臨床的要因が、十分な標本を入手することが困難になり得ることが認識されている。処置中に生検を完了しない決定は、医療監視と共に考察されるべきである。
【0361】
ECHO/MUGA
ECHO及び/またはMUGAは、SoA(表5~6)に示されている時点で取得される。臨床的に示される場合、評価は、3ヶ月に1回繰り返すことである。
【0362】
ECOG
ECOGパフォーマンスステータスは、SoA(表5~6)に示されている時点で、以下の等級付けを使用して評価される(Oken et al.、1982)。
●グレード0:完全に活動的で、疾患前の全てのパフォーマンスを制限なく継続することができる
●グレード1:身体的に激しい活動は制限されているが、歩行可能であり、軽作業または座り仕事、例えば、軽い家事、事務作業を行うことができる。
●グレード2:歩行可能であり、全てのセルフケアは可能であるが、いかなる作業活動も行うことができない。覚醒時間の約50%以上が元気に動ける
●グレード3:限られたセルフケアしかできず、起きている時間の50%以上をベッドまたは椅子に限定されている。
●グレード4:完全に身体障害。いずれのセルフケアも続けることができない。完全にベッドまたは椅子に拘束されている
●グレード5:死亡
【0363】
有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)、及び他の安全性報告
AEは、GCPのICHガイドラインで「医薬品を投与された患者または臨床研究患者における望ましくない医学上の出来事であり、必ずしもこの処置との因果関係を持たないもの」と定義されている。
【0364】
この研究で、AEの定義は、治験薬の開始の時間までに、患者がインフォームドコンセントに署名した時から、任意のそのような出現(例えば、徴候、症状、もしくは診断)または既存の病状の悪化を含むように拡張される。悪化は、既存の病状(例えば、糖尿病、片頭痛、痛風、高血圧など)の重症度、頻度、もしくは症状の期間または著しく悪化した転帰との関連が増加していることを示す。
【0365】
重篤な有害事象
SAEは、以下のAEとして定義される:
●死亡がもたらされる
●生命を脅かす(患者を即死の危険にさらす)。
●入院または既存の入院の延長が必要。
【0366】
「重篤」の定義を満たす入院は、医療施設での少なくとも一晩の滞在を含む入院である。入院患者の入院には、リハビリテーション施設、ホスピス施設、熟練した看護施設、老人ホーム、所定の緊急治療室の入院、同日手術(外来/同日/外来処置として)、または社会的入院(例えば、患者に寝る場所がない)は含まれない。
●持続的または重大な障害/無能力がもたらされる、または
●先天異常/先天性欠損症であるか
死に至らない、生命を脅かす、または入院を必要とし得る重要な医療事象は、適切な医学的判断に基づいて、患者を危険にさらし得、この定義で記載のアウトカムのうちの1つを予防するために、医学的または外科的介入を必要とし得る場合、SAEとみなされ得る。そのような医療事故の例としては、救急治療室または自宅での集中的な処置を必要とするアナフィラキシー及びアレルギー性気管支けいれん、入院を必要としない血液疾患またはけいれんが挙げられる。
【0367】
関連性
全てのAEについて、AEの因果関係(例えば、治験薬または他の病気)を判断するために十分な情報を取得しなければならない。AEと治験処置との関係は、以下の定義に従って評価される。
●無関係:治験薬の投与から合理的な時間的順序に従わず、患者の臨床状態または患者に施された他の治療法により生じた可能性が高い任意の事象。
●関連性が低い:治験薬の投与から合理的な時間的順序に従わない事象、または患者の臨床状態または患者に投与された他の治療法により生じた可能性が高い任意の事象。
●関連する可能性がある:治験薬の投与から合理的な時間的順序に従う任意の反応、または疑わしい薬物に対する既知の応答パターンに従う反応、及び患者の臨床状態の既知の特徴または患者に投与された他の治療法により合理的に説明できない任意の反応。
●関連:治験薬の投与から合理的な時間的順序に従う反応、及び疑わしい薬物に対する既知の応答パターンに従い、再投与により再発し、及び/または薬物の停止または用量低減により改善される任意の反応。
【0368】
有害事象の管理
AEは、治験薬の初回投与前には記録されない。治験薬の投与後に開始するAEか、または病歴に関連して悪化する症状が記録される。AEは、回復するか、ベースラインに戻るか、または安定した状態もしくは慢性状態であると判断されるまで、追跡されるべきである。全てのSAEは、治験薬の最後の投与後30日まで収集される。全ての研究手順関連SAEは、患者の書面による同意の日から収集されなければならない。
【0369】
免疫介在性有害反応
免疫介在性有害反応(IMAR)は、抗PD1抗体に対して同定される。
【0370】
注目される具体的なIMARは、次の通りである:
●免疫介在性肝炎
●免疫介在性腎炎
●免疫介在性肺炎
●免疫介在性肺炎
●免疫介在性大腸炎及び下痢免疫介在性内分泌障害
●免疫介在性皮膚反応
●他の免疫介在性有害反応:関節炎、脳炎、横紋筋融解症、筋炎、心筋炎、膵炎、及びブドウ膜炎。
【0371】
監視計画は、合剤開発中に発生するIMARの重症度及び期間を制限することを目的としており、身体検査の予定の訪問、バイタルサイン、血液学を含む安全性実験的評価、生化学、新しい投与サイクルの(投与前)1日目毎の内分泌腺機能の評価、凝固状態の評価、及び尿分析を包含する。評価予定(表5~6)は、3ヶ月に1回の駆出率の評価と定期的なECGの実施も包含する。
【0372】
単独または他の治療薬と組み合わせた、G9.2-17(IgG4)により引き起こされるIMARの管理の概要が以下の表8~9に提供される。

【表13-1】

【表13-2】

【表13-3】

【表13-4】

【表13-5】
【0373】

【表14-1】

【表14-2】

【表14-3】

【表14-4】

【表14-5】

【表14-6】

【表14-7】
【0374】
有害事象管理のための用量低減手順
用量低減が治験のパート2でAE管理に使用される事象では、それぞれ50%の2回の用量低減が許容される。臨床上の利益が予想され場合、用量低減が追跡され、誘導され続け得る。
【0375】
AE及びSAEとしての臨床検査の異常及び他の異常の評価
臨床的に重要であると判断される異常な検査所見(例えば、臨床化学、血液学、及び尿検査)または他の異常な評価(例えば、ECGまたはバイタルサイン)は、AEまたはSAEの定義を満たす場合、AE及びSAEとして記録される。治験中に検出されるか、またはスクリーニング時に存在する臨床的に重要な異常な検査所見または他の異常な評価は、治験の開始がAEまたはSAEとして報告された後に、著しく悪化した。しかし、患者の状態が予想よりも重症であると判断されない限り、研究される疾患に関連するか、または、研究の開始時に存在または検出され、悪化しない、臨床的に重要な異常な検査所見または他の異常な評価は、AEまたはSAEとして報告されないであろう。
【0376】
事前の測定値から臨床的に著しく逸脱した臨床検査値が繰り返され得る。保証されている場合、AEの十分な文書及びAEの回復を提供するために、プロトコールに指定されているものよりも追加のまたはより頻繁な試験がなされるべきである。
【0377】
AE及びSAE情報を収集する期間及び頻度
全てのAE及びSAEは、介入の開始からフォローアップ訪問まで、SoAで指定された時点で収集される(表5~6)。
【0378】
治験介入の開始前で、インフォームドコンセントを得た後、始まった医学的出来事は、AEとしてではなく、病歴/現在の病状として記録される。
【0379】
全てのSAEは、直ちに記録及び報告され、いかなる状況においても、24時間を超えてはならない。
【0380】
AE及びSAEの追跡調査
最初のAE/SAE報告後、その後の訪問/連絡時に各参加者を積極的に追跡する必要がある。全てのSAEは、回復、安定化、事象が別途説明されるまで、または参加者が追跡できなくなるまで、追跡される。
【0381】
統計的考察
研究は、最後の患者が、最後の訪問を終えた時点で完了する。データベースは、最後の患者が1次エンドポイント事象が発生した後、1次分析のためにロックされる。最終的な治験分析は、治験完了後に実施される。
【0382】
統計的仮説
現在の研究は、DLTを評価することによりG9.2-17(IgG4)のMTD(パート1)を特定し、続いて、Simonの2段階最適設計を使用して3つの疾患タイプにおける薬物活性(単独または組み合わせ)を評価する。パート2の治験仮説は、以下で詳述される。
【0383】
CRC及びCCA G9.2-17(IgG4)の単剤処置群
●帰無仮説:ORR3は≦5%である
●対立仮説:ORR3は≧15%である
【0384】
CRC及びCCA G9.2-17(IgG4)+抗PD1抗体併用処置群
●帰無仮説:ORR3は≦10%である
●対立仮説:ORR3は≧25%である
【0385】
分析セット
別途明記のない限り、包括解析(ITT)集団は、治験薬を少なくとも1回投与された患者として定義される。1次有効性分析は、ITTに対して実施される。ITTでは、患者の処理が実施される。
【0386】
有効性母集団は、ITT内で少なくとも1つの測定可能なORR3またはPFS6評価を有する全ての患者として定義される。この母集団は、感度分析に使用される。
【0387】
プロトコール別(PP)集団は、G9.2-17(IGG4)を少なくとも1サイクル受け、プロトコールから大きな逸脱がなかった患者として定義される。
【0388】
安全性集団(SAF)は、治験薬を少なくとも1回投与される全ての患者として定義される。安全性分析は、SAFに対して実施される。
【0389】
PK/PD集団は、G9.2-17(IGG4)を少なくとも1サイクル受けている患者として定義される。
【0390】
主要エンドポイント(複数可)
安全性分析-パート1及びパート2
別途明記のない限り、全ての安全性分析は、SAF上で行われる。
【0391】
有害事象
治験薬投与下で発現した有害事象(TEAE)は、治験薬の初回投与時または初回投与時後に発生する事象として定義される。MedDRAコーディング辞書は、AEのコーディングに使用される。処置に関連するTEAE、重症またはCTCAEのグレード3またはグレード4のTEAE、及びTEAEは、処置群毎に、全体的に、器官別大分類及び基本語でまとめられる。これらは、事象の数と、所与の事象のある患者の数及び割合をまとめる。加えて、TEAE患者の数及び割合は、最大重症度別に提供される。いずれかの処置群の5%以上の患者に発生する器官別大分類による全てのTEAE及び基本語の概要が提供される。
【0392】
DLT、MTD、及びRP2Dが、まとめられる。
【0393】
実験的評価
全ての臨床検査ベースのデータは、全ての値と、臨床的に重要であると判断された異常な結果(AEとして報告)のリストとして提示される。化学、血液学、及び尿検査の結果を含む、観察された全ての所見及びベースラインスクリーニング検査室評価からの変化の数値概要が、訪問及び処置群毎に提供される。推論的な比較が予定されていない。
【0394】
バイタルサイン
血圧、心拍数、呼吸数、及び体温を含む、観察された全ての所見と、ベースラインスクリーニングバイタルサインからの変化の数値概要が、時点及び処置群毎に提供される。バイタルサインについて、推論分析は計画されていない。
【0395】
ECG、ECHO/MUGA、及び身体検査
身体検査データ及び変化がリストとして提示される。ECG結果は、リストとして提示され、臨床的に重要な異常の発生率に基づいて処置群及び訪問毎にまとめられる。処置群間の推論比較は計画されない。
【0396】
主要有効性分析-パート2
疾患応答は、RECIST v1.1に従って評価され、ITT、PP、及び有効性集団について説明的にまとめられる。
【0397】
主要な有効性エンドポイントは、以下である:
●CRC及びCCAの場合のORR3
●PDAC用のPFS6
【0398】
副次的エンドポイント(複数可)
薬物動態、薬力学、及び免疫原性
PK、PD、及び免疫原性は、パート1及びパート2の両方でPK/PD集団について説明的にまとめられている。
【0399】
副次的有効性分析-パート2
疾患応答(ORR、PFS、DCR、DoR、及びOS)は、RECIST v1.1に従って評価され、ITT、PP、及び有効性集団について説明的にまとめられる。
【0400】
探索的エンドポイント
探索的エンドポイントの分析は、SAPで詳述される。
【0401】
他の分析
特に言及されていない他の収集データは、患者リストに提示される。
【0402】
性質、患者背景、ベースライン特性、及び病歴
登録患者数、スクリーニング不合格数、処置された患者数、理由により離脱した患者数を含む処理情報がまとめられる。
【0403】
患者背景、ベースライン特性、及び病歴は、ITT及びPPの記述統計を使用して、処置群毎及び全体的にまとめられる。
【0404】
事前及び併用投薬
事前及び併用投薬を服用している患者の数及び割合が、ITT及びPPに対し処置群毎及び全体でまとめられる。
【0405】
実施例2:抗ガレクチン-9抗体の安定性治験
候補IgG4抗体は、いくつかの異なる条件下及び異なる濃度で保存した後、安定性分析を受けた。TOSOH TSKgel Super SW mAbカラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で、安定性分析を実施した。保存前後のSECプロファイルを比較して、タンパク質安定性に関する任意の問題(例えば、凝集または分解)を同定した。
【0406】
材料及び方法
試料の調製
抗ガレクチン-9抗体を、使用まで-80℃で保存した。分析前に、試料を室温の水浴中で解凍し、分析まで氷上で保存した。取り扱う前に、Nanodropを使用して、280nmでの吸光度を測定した。TBS(20mMのTris(pH8.0)、150mMのNaCl)を使用して、装置をブランクした。次に、試料をポリプロピレン微量遠心管(USA Scientific、1615-5500)に移し、4℃、16.1k×gで30分間遠心分離した。試料を0.22μmフィルター(Millipore;SLGV004SL)に通して濾過した。濾過後の吸光度を測定した。
【0407】
HPLC分析
試験された試料条件には以下が含まれる:周囲安定性(室温で0時間、室温で8時間)、冷蔵安定性(4℃で0時間、4℃で8時間、4℃で24時間)、及び凍結/解凍安定性(1×凍結)/解凍、3×凍結/解凍、5×凍結/解凍)。各条件を、3つの異なる濃度:ストック、10×希釈、及び100×希釈で2回ずつ実行した。各条件について100μLの試料を調製し、ポリプロピレン微量遠心管に保存した。必要に応じて、TBSで希釈液を調製した。分析前に、280nmでの吸光度を読み取った。室温試料を、指定された期間、ベンチトップ上で保存した。4℃の試料を、氷上でまたは4℃の冷蔵庫内で、表10に示されている期間保存した。凍結融解試料を液体窒素中で瞬間凍結し、次に、室温の水浴中で解凍した。凍結及び解凍のプロセスを1回、3回、または5回実施し、分析まで試料を4℃で保存した。
【0408】
280nmのUV検出器を備えたShimadzu HPLC上のTOSOH TSKgel SuperSW mAbHRカラムを使用して、SEC分析を実施した。カラムに25μLの試料をロードし、0.5mL/分で40分間実行した。KBI緩衝液配合物を、移動相として使用した。
【0409】
結果
表10に示されるように、濾過の前後のUV吸光度測定を使用して、抗体の濃度を決定した。KBIが提供した2つの試料2mLを解凍し、1つのバイアルを室温及び凍結/解凍条件で使用し、もう1つのバイアルを4℃条件で使用した。吸光度の読み値は、濾過後に、ほぼ完全な回収を示した。
【表15】
【0410】
主要ピークよりも早く溶出する2つまたは3つの高分子量のピークが観察された(図2)。これらのピークは、アッセイされた各条件下で試料全体の約5%を構成した(表11)。全てのアッセイ条件下で、タンパク質濃度の有意差は、観察されなかった。

【表16】
【0411】
要約すると、抗ガレクチン-9抗体は、SECプロファイルに有意な変化がないことが示すように、分析された全条件下での保存後に一貫した安定性を示した。濾過後のタンパク質の顕著な損失はなく、2~3つの高分子量のピークが同定され、これは、全試料の約5%を占める。結果は、抗体が試験された全ての条件下で安定であり、凝集体の形成または分解が観察されないことを示唆する。
【0412】
実施例3.腫瘍生検由来のオルガノイド画分におけるガレクチン-9発現の評価
元の腫瘍と同様の特徴を有する腫瘍モデルを使用すると、患者の薬物反応をより正確に予測され得るので、腫瘍オルガノイドは、患者のアウトカムの予測に適用することができる(例えば、以下の参照:Trends in Biotechnology;36(4):358-371,April 01,2018)。
【0413】
腫瘍内のガレクチン-9レベルは、薬物応答を予測する指標として機能し得る。生検由来のオルガノイドは、元の腫瘍内のガレクチン-9レベルを評価するための代用として使用することができる。従って、単一細胞またはオルガノイド画分中のガレクチン-9レベルを評価する能力を試験した。
【0414】
代表的な膵臓腺癌及び結腸直腸癌から生検材料を採取し、以下の通り処理した。外科的に切除されたヒトの腫瘍標本を、氷上のDMEM培地中で新鮮な状態で受け取り、10cmの皿に切り刻んだ。100U/mLのコラゲナーゼIV型を含むDMEM+10%のFBSに、切り刻んだ腫瘍を再懸濁させて、スフェロイドを得た。部分的に消化された試料をペレット化し、新鮮なDMEM+10%のFBSに再懸濁させ、100mm及び40mmの両方のフィルターで濾過して、S1(>100mm)、S2(40~100mm)、及びS3(<40mm)スフェロイド画分を生成し、これを、ultra-low付着性組織培養プレートに維持された。
【0415】
S2画分をトリプシンで15分間消化して、単一細胞を生成した。フローサイトメトリーの調製では、S2及びS3画分からの細胞ペレットを再懸濁し、Fc受容体ブロック(#422301;BioLegend,San Diego,CA)後に、細胞をヒトCD45(HI30)、CD3(UCHT1)、CD11b(M1/70)、Epcam(9C4)及びGal9(9M1~3;全てBiolegend)、またはG9.2~17のGal9FabまたはFabアイソタイプに対する蛍光結合mAbsとインキュベートすることにより細胞標識を実行した。ゾンビイエロー(BioLegend)を使用して、死細胞を分析から除外した。フローサイトメトリーを、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Scientific)で実行した。FlowJov.10.1(Treestar,Ashland,OR)を使用して、データを分析した。
【0416】
結果は、図3A~3F、4A~4F、及び5A~5Fに示され、S2単細胞及びS3オルガノイド画分においてGal9 G9.2-17 Fabで検出されたガレクチン-9のレベルが相関していることを示す。従って、S2単細胞及びS3オルガノイドの両方を、腫瘍生検由来のオルガノイドにおけるガレクチン-9レベルの評価に使用することができる。
【0417】
実施例4.細胞分析のための患者由来の器官型腫瘍スフェロイド(PDOT)の調製
生検由来のオルガノイドは、免疫応答を刺激する治療薬の能力を評価するための有用な尺度となり得る。従って、ex vivo培養に使用された上記の以前の実施例3に記載されたS2画分を、抗ガレクチン-9抗体G9.2-17で処置し、免疫プロファイリング用に調製した。
【0418】
S2画分のアリコートをペレット化し、NaOHを使用してpHを調整したフェノールレッドを含む10×PBSを添加した後、2.5mg/mLの濃度でI型ラット尾コラーゲン(Corning)に再懸濁した。PANPEHA Whatman紙(Sigma-Aldrich)を使用して、pH7.0~7.5を確認した。次に、スフェロイド-コラーゲン混合物を、以下に記載される3-Dマイクロ流体培養デバイスの中央のゲル領域に注入した:Jenkins et al.,Cancer Discov.2018 Feb;8(2):196-215;Ex Vivo Profiling of PD-1 Blockade Using Organotypic Tumor Spheroids(この内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。患者由来の器官型腫瘍スフェロイド(PDOTS)を含有するコラーゲンヒドロゲルを、37℃で30分後、抗ガレクチン-9モノクローナル抗体G9.2-17を含むまたは含まない培地で水和させた。次に、PDOTSを、37℃で3日間インキュベートした。
【0419】
細胞ペレットを、FACS緩衝液に再懸濁し、まず、1×10個の細胞をゾンビイエロー(BioLegend)で染色して死細胞を除外した。生存率染色後、FcγRIII/IIをブロックするために細胞を抗CD16/CD32 mAb(eBiosciences,San Diego,CA)と共にインキュベートし、次に、1μgの蛍光コンジュゲート細胞外mAbで抗体染色した。Fixation/Permeabilization Solution Kit(eBiosciences)を使用して、サイトカイン及び転写因子の細胞内染色を実施した。有用なヒトフローサイトメトリー抗体には、CD45(HI30)、CD3(UCHT1)、CD4(A161A1)、CD8(HIT8a)、CD44(BJ18)、TNFα(MAb11)、IFNγ(4S.B3)、及びEpcam(9C4)が含まれる(全てBiolegend)。フローサイトメトリーを、LSR-IIフローサイトメーター(BD Biosciences)で実施した。FlowJov.10.1(Treestar,Ashland,OR)を使用して、データを分析した。
【0420】
実施例5.がん患者の血漿及び血清中のガレクチン-9レベルの評価
患者試料の血漿及び血清ガレクチン-9レベルを評価し、健常なボランティアと比較した。血液(10ml)を、10人の健常な対照と10人の手術不能ながん患者の末梢静脈アクセスから採取した。血清及び血漿を、各血液試料から抽出した。血液を、標準的なEDTAチューブに採取しPicoKine(商標)ELISA;カタログ番号:EK1113を本質的に製造者の使用説明書に従って、使用した。個々の値の結果を、表12及び表13に表にする。
【表17】

【表18】
【0421】
実施例6.免疫組織化学分析を使用したガレクチン-9の発現及び局在の評価
パラフィン包埋生検由来の腫瘍試料を使用して、免疫組織化学分析を使用して、腫瘍におけるガレクチン-9発現レベルを決定する能力を評価した。
【0422】
簡単に言うと、スライドを脱パラフィンし(キシレン:2×3分、無水アルコール:2×3分、メタノール:1×3分)、冷水道水ですすいだ。抗原賦活化のために、クエン酸緩衝液(pH6)を水浴中で100℃に予熱し、スライドをクエン酸緩衝液中で5分間インキュベートした。スライドを室温で約10分間放冷し、流水に入れた。スライドをPBSで洗浄し、切片の周囲にパップペンで円を描き、切片をブロッキング緩衝液(DAKO-ペルオキシダーゼブロッキング溶液-S2023)中で5分間インキュベートした。無血清ブロッカー(Novocastra無血清プロテインブロッカー)を添加し、その後、PBSですすいだ。1次抗体(Sigma、抗ガレクチン-9クローン1G3)を、DAKO-S2022希釈液で1:2000に希釈して使用し、切片を、4℃で一晩インキュベートした。スライドをPBSで洗浄し、次に、2次抗体(抗マウス)と共に室温で45分間インキュベートした。スライドを洗浄し、ABC VECTOR STAINで(45分間)染色し、PBSで洗浄し、DAB(1mlの安定なDAB緩衝液+1滴のDAB)で5分間染色し、流水で洗浄した。ヘマトキシリンを1分間添加し、過剰な染色を避けるために、70%のETOH+1%のHCLを適用した。スライドを流水中に2~3分間放置し、次に、水、次に、無水アルコール、次に、キシレンに30秒ずつ2回浸漬した。カバースリップ及び画像をキャプチャした。化学療法で処置された結腸直腸癌及び結腸直腸癌の肝臓転移におけるガレクチン-9染色は、図6A~6Bで示される。ガレクチン-9陰性胆管癌の結果は、図6Cで示される。
【0423】
実施例7.抗ガレクチン-9抗体G9.2-17を他のガレクチンとの交差反応性
抗体の特異性及び他のガレクチンとの交差反応性を評価するために、抗ガレクチン-9抗体G9.2-17を、ガレクチンファミリーの全てのメンバーで構成されるヒトプロテオミクスアレイに対する結合について、2つの使用濃度で試験した。CDIのHuProtヒトプロテオームマイクロアレイ(ヒトプロテオームの約75%)を使用して、抗体の特異性を評価した。マイクロアレイを1次抗体と共にインキュベートし、リンスし、蛍光標識した2次抗体と共にインキュベートし、続いて、各標的タンパク質について検出された蛍光の量を分析した。結果は、マイクロアレイ画像としてまとめられた。結果は、抗ガレクチン-9抗体G9.2-17が、ガレクチン-9に対して高度に特異的であり、他の任意のガレクチンファミリーメンバーとは交差反応しないことを示した。
【0424】
実施例8.抗ガレクチン-9抗体は、T細胞をガレクチン-9媒介アポトーシスから保護する
抗ガレクチン-9抗体G9.2-17の作用を調査するために、アポトーシスアッセイを実施して、T細胞がアポトーシスのプロセスまたは他の機序により死滅しているかどうかを確認した。
【0425】
簡単に言うと、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、10mMのHEPES、1mMのピルビン酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、及び1.5g/Lの重炭酸ナトリウムが補充されたRPMI培地で、MOLM-13(ヒト白血病)細胞を5%CO中、37℃で培養した。次に、細胞を、無血清RPMI培地に移し、無血清培地中に2.5e6細胞/mLの濃度で懸濁させた。細胞を組織培養グレードの96ウェルプレートのウェルに、2e5細胞/ウェルの密度で播種した(ウェル当たり80μLの細胞懸濁液)。モノクローナル抗ガレクチン-9抗体または対応するアイソタイプを、各ウェルに添加し、5%CO中、37℃で30分間インキュベートした。このインキュベーション後に、組み換え全長ヒトガレクチン-9(R&D Systems 2045-GA、PBSで希釈)を、最終濃度200nMまで添加した。細胞を、5%CO中、37℃で16時間インキュベートした。次に、フローサイトメトリーによる分析の前に、細胞をアネキシンV-488及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色した。各条件を3回繰り返して実施した。PIは生細胞及びアポトーシス細胞には浸透しないが、死細胞を赤色蛍光で染色し、細胞内の核酸に強固に結合する。緩衝液中のAlexa Fluor(登録商標)488アネキシンV及びPIで細胞集団を染色した後、アポトーシス細胞は、緑色蛍光を示し、死細胞は、赤色及び緑色蛍光を示し、生細胞は、蛍光をほとんどまたはまったく示さなかった。アルゴンイオンレーザーの488nmラインを励起としたフローサイトメーターを使用して、細胞を識別した。次に、FlowJoソフトウェアで分析を実施した。アネキシンV及びヨウ化プロピジウム(PI)陽性細胞の割合を、図7に使用される抗体濃度の関数としてプロットした。図7に示されるように、抗Gal9抗体で処理されたアポトーシスT細胞のレベルは、ヒトIgG4アイソタイプ対照抗体で処置されたT細胞よりもはるかに低く、これは、抗ガレクチン-9抗体G9.2-17が、ガレクチン-9媒介細胞アポトーシスからT細胞を保護することを示す。
【0426】
実施例9:膵癌及び腫瘍塊のマウスモデルにおける単独またはチェックポイント阻害と組み合わせた抗Gal-9抗体の評価、及び、G9.2-17 mIgG1で処置されたマウスの免疫プロファイル
腫瘍重量及び免疫プロファイルに対するG9.2-17 mIgG1の効果を、膵癌のマウスモデルで評価した。8週齢のC57BL/6雄(Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)マウスに、Pdx1Cre;KrasG12D;Trp53R172H(KPC)マウス由来のFC1242 PDAC細胞を膵臓内注射した(Zambirinis CP,et al.,TLR9 ligation in pancreatic stellate cells promotes tumorigenesis.J Exp Med.2015;212:2077-94)。腫瘍細胞を50%のマトリゲルを含むPBS(BD Biosciences,Franklin Lakes,NJ)に懸濁させ、1×10個の腫瘍細胞を、開腹術により膵臓本体に注入した。マウス(n=10/群)は、処置前に1回i.p.投与を受け、続いて、市販のαガレクチン-9 mAb(RG9-1、200μg、BioXcell,Lebanon,NH)またはG9.2-17 mIgG1(200μg)3回(q.w.)投与を受けるか、または対になったアイソタイプ、G9.2-IsoもしくはラットIgG2a(LTF-2、BioXcell,Lebanon,NH)(200μg)(3週間で週1回投与)を受けた。3週間後にマウスを死亡させ、フローサイトメトリーによる分析のために腫瘍を採取した。組織を処理及び準備し、日常的な実施に従って、フローサイトメトリー分析を実施した。例えば、以下を参照:米国特許第10,450,374号。
【0427】
G9.2-17 mIgG2aを単独で、またはαPD-1 mAbと組み合わせて処置されたマウスの腫瘍量及び免疫プロファイル
腫瘍重量及び免疫プロファイルに対するG9.2-17 mIgG2aの効果を、単独または免疫療法と組み合わせて、膵臓癌のマウスモデルで評価した。8週齢のC57BL/6雄マウス(Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)に、Pdx1Cre;KrasG12D;Trp53R172H(KPC)マウス由来のFC1242 PDAC細胞を膵臓内注射した。腫瘍細胞を50%のマトリゲルを含むPBS(BD Biosciences,Franklin Lakes,NJ)に懸濁させ、1×105個の腫瘍細胞を、開腹術により膵臓本体に注入した。マウスは、示されるように、処置前に1回i.p.投与を受け、続いて、G9.2-17 mIgG2a(200μg)または中和αPD-1 mAb(29F.1A12、200μg、BioXcell,Lebanon,NH)を3回(q.w.)投与を個別にもしくはまとめて受けるか、または対になったアイソタイプ(LTF-2及びC1.18.4、BioXcell,Lebanon,NH)を受けた。26日目にマウスを死亡させ、分析のために腫瘍を採取した。組織を処理及び準備し、日常的な実施に従って、フローサイトメトリー分析を実施した。例えば、以下を参照:US10,450,374。各点は、1匹のマウスを表す。*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001;対応のないStudentのt検定による。これらの結果は、G9.2-17 mIgG2aによる単剤処置が両方の用量レベルで腫瘍成長を減少させるが、抗PD-1単独は、腫瘍サイズに影響を与えなかったことを示す(図8A~8B)。
【0428】
実施例10:免疫正常マウスにおける結腸直腸癌及びメラノーマ癌の2つの同系モデルにおける抗Gal-9抗体の評価
Gal-9抗体G9.2-17及びG9.1-8m13を、免疫担当マウスの結腸直腸癌及びメラノーマ癌の同系モデルで評価される。これらの2つの抗体の構造は、本明細書に提供されるか、または、PCT/US2020/024767に開示され、これの関連開示は、本明細書で参照される主題及び目的に関して参照により組み込まれる。被験物質は、治験期間中毎週、製剤化及び調製される。
【0429】
実験設計
治験前の動物(雌C57BL/6、6~8週齢(Charles River Labs))を、3日間順応させ、次に、100μlのPBSに再懸濁させた5e5 B16.F10(メラノーマ細胞株)またはMC38細胞(結腸直腸癌細胞株)を左脇腹に片側皮下移植する。治験前の腫瘍体積を、移植の最初の2~3日後に各実験に対し記録する。腫瘍が平均腫瘍体積50~100mm(好ましくは、50~75mm)に達すると、動物は腫瘍体積に応じて投与に使用されるべき処置群または対照群にマッチングされ、投与が0日目に開始した。抗Gal9 IgG1及び抗Gal9 IgG2の試験のための治験設計を、表14及び表15にまとめる。
【表19】

【表20】
【0430】
腫瘍体積は、週3回測定される。最終的な腫瘍体積は、治験がエンドポイントに達した日に測定される。動物が瀕死の状態で発見された場合、最終的な腫瘍体積が測定される。動物は、週3回体重測定される。治験が終了点に達した日に、または動物が瀕死の状態で発見された場合、最終体重が測定される。0日目と比較した場合、10%以上の体重減少を示した動物は、DietGel(登録商標)が自由に提供される。7日間続く期間に20%を超える正味体重減少を示す任意の動物は、または0日目と比較した時に、マウスが30%を超える正味体重減少を示す場合、瀕死と考え、安楽死させる。治験のエンドポイントは、対照群(無修正)の平均腫瘍体積が1500mm3に達した時に設定される。これが28日目より前に発生した場合、処置群及び個々のマウスは、28日目まで投与及び測定される。対照群(無修正)の平均腫瘍体積が28日目までに1500mm3に達しなかった場合、全ての動物のエンドポイントは、対照群(無修正)の平均腫瘍体積が最大60日目までに1500mm3に達した日である。各群の全ての動物から血液を採取する。採血について、イソフルラン吸入による深い麻酔下で、心臓穿刺により可能な限り多くの血液をKEDTAチューブ(400μl)及び血清分離チューブ(残り)に収集する。免疫パネルフローの実施に使用されるまで、KEDTAチューブに収集された血液を、濡れた氷上に置く。
【0431】
血清分離チューブに採取した血液を、室温で少なくとも15分間凝固させる。試料を室温で3500で10分間遠心分離する。得られた血清を分離し、独自にラベルを付けた透明なポリプロピレンチューブに移し、ブリッジングADAアッセイ用に出荷するまで(1週間以内に出荷)、ドライアイス上で、または-80℃に維持するように設定された冷凍庫内で直ちに凍結する。
【0432】
全ての動物由来の腫瘍は、次の通り収集される。サイズが400mm未満の腫瘍を急速凍結し、ドライアイス上に置き、RT-qPCR分析に使用するまで、-80℃で保存する。サイズが400~500mmの腫瘍の場合、腫瘍全体を、フローパネルで使用されるMACS培地に収集する。サイズが500mmを超える腫瘍の場合、小片(約50mm)をドライアイス上で急速凍結し、RT-qPCRのために-80℃で保存し、残りの腫瘍をフローサイトメトリーのためにMACS培地に収集する。フローサイトメトリーの場合、腫瘍をMACS培地に入れ、処理するまで湿った氷上で保存する。
【0433】
全ての動物の脾臓、肝臓、結腸、肺、心臓、及び腎臓を、10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)に18~24時間保持し、70%のエタノールに移し、室温で保存する。ホルマリン固定試料を、パラフィン包埋する。
【0434】
実施例11:胆管癌モデルにおけるGal-9抗体の評価
抗Gal-9抗体の有効性を、S.Rizvi,et al.に記載されているように、胆管癌のマウスモデルで評価し(YAP-associated chromosomal instability and cholangiocarcinoma in mice,Oncotarget,9(2018)5892-5905)、これの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。癌遺伝子(AKT/YAP)が胆管系に直接注入されるこの形質導入モデルでは、種が一致した腫瘍微小環境を有する免疫応答性宿主において、腫瘍が胆管から生ずる。投与量は、表16に記載されている。
【表21】
【0435】
簡単に言うと、マウスCCA細胞(S.Rizvi,et alに記載)を採取し、DMEMで洗浄する。1.5~3%のイソフルランを使用して、Jackson Labsの雄C57BL/6マウスを麻酔する。深い麻酔下で、剣状突起の下、1cm切開して、腹腔を開放する。滅菌綿付きアプリケーターを使用して、肝臓の中葉の上外側側面を露出させる。27ゲージの針を使用して、1×10^6個の細胞を含有する標準培地40μLを、中葉の外側面に注入する。滅菌綿付きアプリケーターを注射部位に保持して、細胞の漏出及び失血を予防する。続いて、腹壁及び皮膚を、吸収性クロム3-0腸縫合糸材料で別々の層で閉じる。
【0436】
移植後2週間で、動物は腫瘍体積に応じて投与に使用されるべき処置群または対照群にマッチングされ、投与が0日目に開始した。腫瘍体積を測定し、動物の体重を週3回測定する。治験がエンドポイントに達した日(4週間、または対照の腫瘍量が1500mm3になった時)に、最終的な腫瘍体積及び重量を測定する。各群の全ての動物から血液を採取する。
【0437】
実施例12:抗Gal9抗体G9.2-17のin vitro及びin vivo特性評価
以下に開示されるように、in vivo及びin vitroの薬力学及び薬理学研究、ならびに安全性薬理学を実施する。この抗体は、まったく同じV鎖及びV鎖、従って、G9.2-17として、まったく同じ結合エピトープ及び同じ交差反応性プロファイル、ならびに、G9.2-17のような種類及び同じ機能プロファイルを超えた結合親和性、を有するように開発されたという事実に基づいて、マウスの治験用の抗ガレクチン-9 mAb G9.2-17のIgG1バージョンで、in vivo治験を実施した。
【0438】
in vitro治験
G9.2-17は、複数種の交差反応性(ヒト、マウス、ラット、カニクイザル)を有し、in vitroで評価した場合、同等の1nmol未満の結合親和性を有する。例えば、以下を参照:PCT/US2020/024767(この関連開示は、本明細書で参照される主題及び目的に関して参照により組み込まれる)。G9.2-17は、ガレクチン-9タンパク質のCRD1ドメインと交差反応しない。それは、優れた安定性及び精製特性を有しており、霊長類に存在する他のガレクチンタンパク質のいずれかに対して交差反応性がない。
【0439】
以下の表17は、in vitro薬理学研究の結果をまとめたものである。

【表22-1】

【表22-2】

【表22-3】

【表22-4】

【表22-5】
【0440】
作用機序を理解するための研究には、ADCC/ADCP(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性/抗体依存性細胞貪食)及びブロック機能評価が含まれる。ヒトIgG4 mAbについて予想されるように、G9.2-17は、ADCCまたはADCPを媒介しない(図9A)。これを、予想通り、ADCC及びADCPを媒介する陽性対照としてのG9.2-17のヒト対応物IgG1に対して試験した(図9B)。
【0441】
さらに、G9.2-17のブロック機能を、競合結合ELISAアッセイで評価した。G9.2-17は、ガレクチン-9 CRD2ドメインの、その結合パートナーCD206ヒト組み換えタンパク質との結合を強力に遮断し、ガレクチン-9活性を遮断するというG9.2-17の目的の作用様式が確認される。さらに、本発明者らは、MOLM-13 T細胞アポトーシスアッセイを最適化し、G9.2-17が、ガレクチン-9タンパク質処理により引き起こされるアポトーシスから細胞をうまく救い出す(ガレクチン-9処置では約50%のアポトーシス、ガレクチン-9+G9.2-17処置では約10%のアポトーシス)。
【0442】
G9.2-17とマウスIgG1 G9.2-17 mAbの結合及び機能特性を比較するために、さらに広範なin vitro特性評価が、行われており、これは、G9.2-17として、まさに同じCDRドメインを含有し、それ故、同じ結合エピトープ、すなわち、CRD2ガレクチン-9ドメイン、を有する。G9.2-17自体との免疫原性の任意の潜在的な進行を回避するために、マウス同系薬理学有効性研究で使用されるmIgG1 G9.2-17が開発された。mIgG1 G9.2-17は、種に渡って1nmol未満の等しい親和性及びヒトがん細胞株CRL-2134と同じ細胞ベースの結合親和性を有する。mIgG1 G9.2-17は、G9.2-17自体として、MOLM-13 T細胞アポトーシスアッセイにおいて同等のデータを生成する。
【0443】
in vivo薬理学
in vivoアッセイには、IgG1マウス骨格にクローン化されたマウスmAb-G9.2-17結合エピトープ(動物有効性研究用のG9.2-17代替mAb)を使用して実施される同系マウスモデルが含まれ、これは、G9.2-17の交差反応性及び結合親和性特性を共有する。
【0444】
試験された同系マウスモデルは、以下である:
●同所性膵臓腺癌(KPC)マウスモデル(単剤及び抗PD-1との併用):生存率、腫瘍体積評価、及びフローサイトメトリー。
●皮下メラノーマB16F10モデル(単剤及び抗PD-1との併用):腫瘍体積評価及びフローサイトメトリー。
●皮下MC38モデル(単剤及び抗PD-1との併用):腫瘍体積の評価
【0445】
さらに、G9.2-17で処理された患者由来のex vivo腫瘍培養物(オルガノイド)は、G9.2-17の作用機序を探索するために使用される。
【0446】
機序的には、G9.2-17は、ブロック活性があるが、ADCC/ADCP活性はないことが判明した。ガレクチン-9の結合受容体との相互作用の遮断、例えば、免疫抑制性マクロファージ上でCD206、が観察される。機能的には、in vivo研究は、G9.2-17 mIgG1代替抗体で処置された複数の同系モデル(同所性膵臓KPC腫瘍増殖及びs.c.メラノーマB16F10モデル)における腫瘍成長の低減を実証した。単剤抗ガレクチン-9mAb及び抗PD-1と組み合わせて治療したマウス腫瘍では、G9.2-17がエフェクターT細胞を再活性化し、免疫抑制性サイトカインのレベルを低下させる。抗PD-1 mAbとの併用治験は、腫瘍内にエフェクターT細胞がより多く存在することを示唆しており、併用アプローチの臨床試験を裏付けている。重要なことに、G9.2-17の機序的効果は、患者由来の腫瘍培養物(Jenkins et al.,2018)(PDAC、CRC、CCA、HCCの原発部位及び転移部位からの腫瘍切除)において調査及び実証されており、G9.2-17は、再現性のある強力なT細胞再活性化を誘導し、ex vivoで、ガレクチン-9に課された腫瘍内免疫抑制の逆転を示す。
【0447】
抗PD-1及び抗ガレクチン-9 mAbの組み合わせの関連性を評価するために、s.c.メラノーマB16モデルを、抗PD-1及び抗ガレクチン-9の単剤及び組み合わせで処置した。エフェクターT細胞の腫瘍内での存在は、併用治療群で増強された。
【0448】
抗ガレクチン-9 mIgG1(200μg)と比較して、抗ガレクチン-9 mIgG1(200μg)+抗PD-1による処置において(p<0.001)、及び、抗PD-1単独と比較した抗ガレクチン-9 IgG1(200μg)+抗PD-1間において(p<0.01)、細胞傷害性T細胞(CD8)のレベルの有意な増加が観察される。そのような結果は、抗Gal9抗体及び抗PD-1抗体を併用して、優れた治療効果が予想されることを示唆する。
【0449】
以下の表18は、in vivo薬理学研究の結果をまとめたものである。

【表23-1】

【表23-2】
【0450】
さらに、G9.2-17 IgG1マウスmAb(別称G9.2-17 mIgG)、抗PD-1抗体、またはG9.2-17 IgG1マウスmAb及び抗PD-1抗体の組み合わせによる処置に対する腫瘍免疫応答は、本明細書に記載のB16F10皮下同系モデルで調査された。図10A~10Bに示されるように、G9.2-17及び抗PD-1の組み合わせは、マウスモデルにおいて腫瘍体積の減少及びCD8+細胞の増加において相乗効果を示した。図11A~11Bは、G9.2-17抗体が腫瘍内T細胞におけるCD44及びTNFαの発現を増加させたことを示す。
【0451】
実施例13.投与後1週間及び3週間の観察期間を伴う雄Sprague Dawleyラットにおける非GLP単回投与範囲測定静脈内毒性研究
この治験は、Sprague Dawleyラットに単回静脈内ボーラス投与し、その後、8日目及び22日目に1週間(終末)及び3週間(回復)の剖検を行った後のG9.2-17 IgG4の解剖学的エンドポイントを評価した。全動物は、予定の剖検まで生存した。被験物質関連肉眼的所見、臓器重量の変化、または顕微鏡的所見は、本治験で、終末期または回復期剖検動物のいずれにおいても存在しなかった。
【0452】
この非GLP探索的単回投与範囲測定静脈内毒性研究の目的は、Sprague Dawleyラットに2分間かけて静脈内ボーラス投与し、続いて、1週間(終末)及び3週間(回復)の投与後の観察期間後に、G9.2-17 IgG4の急性毒性を同定し、特性決定することであった。
【0453】
この非GLP単回投与毒性研究は、G9.2-17 IgG4の毒性動態及び潜在的な毒性を決定するために、24匹のSprague Dawley雄ラットで実施された。動物に、ビヒクルまたは10mg/kg、30mg/kg、もしくは70mg/kgのG9.2-17 IgG4のいずれかを、1日目に少なくとも2分間のゆっくりとしたボーラス静脈内注入により投与し、続いて、投与後1週間(終末、8日目)または3週間(回復、22日目)の期間のいずれかを投与した。研究のエンドポイントには、以下が含まれる:死亡率、臨床観察、体重、及び食物摂取量、臨床病理学(血液学、凝固、臨床化学、及び尿検査)、毒物動態パラメーター、ADA評価、ならびに解剖病理学(肉眼的剖検、臓器重量、及び病理組織学)。実験設計の概要が、以下の表19に提示される。
【表24】
【0454】
生き残った動物は全て、8日目または22日目に剖検に提出された。完全な死後検査が実施され、臓器重量が収集された。終末期及び回復期の全ての動物から臓器の重量を測定した。顕微鏡評価に必要な組織を切り取り、規定通りに処理し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0455】
この治験の過程で、予定外の死亡はなかった。全ての動物は、終末期または回復期の剖検まで生存した。認められた組織学的変化は、偶発的所見であるか、または被験物質の投与以外の実験操作の何らかの態様に関連していると考えられた。それらの偶発的な組織変化の有病率、重症度、または組織学的特徴における被験物質関連の変化はなかった。臨床観察、体重、食物摂取量、臨床病理学、または解剖学的病理学において、G9.2-17 IgG4関連の所見は認められなかった。結論として、Sprague Dawleyラットへの10、30、及び70mg/kgのG9.2-17 IgG4の単回静脈内投与は許容され、有害な所見がなかった。従って、この治験の条件下では、NOELは、70mg/kgであった。
【0456】
実施例14.3週間の投与後観察期間を有するカニクイザルにおけるG9.2-17 IgG4の非GLP単回投与、範囲測定静脈内注入毒性研究
G9.2-17 IgG4の急性毒性を同定し特性決定するために、この非GLP単回投与毒性研究を、8匹のカニクイザルで実施した。動物(雄1匹[M]/雌1匹[F]/群)に、ビヒクルまたは30mg/kg、100mg/kg、もしくは200mg/kgのG9.2-17 IgG4を30分間の静脈内(IV)で投与し、続いて、投与後3週間の観察期間を置く。治験のエンドポイントには、以下が含まれていた:死亡率、臨床観察、体重及び定性的食物摂取量;臨床病理学(血液学、凝固、臨床化学、白血球サブセットにおける免疫表現型検査及びガレクチン-9発現、ならびにサイトカイン分析);毒物動態パラメーター;抗薬物抗体評価(ADA)の可能性のための血清採取;ならびに、可溶性ガレクチン-9分析;ならびに解剖学的病理学(肉眼的剖検、臓器重量、及び組織病理学)。
【0457】
G9.2-17IgG4関連の所見は、臨床観察、体重、食物摂取量、臨床病理学(血液学、臨床化学、凝固、またはサイトカイン分析)、免疫表現型検査、白血球サブセット上のガレクチン-9発現、可溶性ガレクチン-9、または解剖学的病理学では認められなかった。
【0458】
結論として、カニクイザルへの30、100、及び200mg/kgのG9.2-17 IgG4の単回静脈内注入投与は、有害な所見もなく許容された。従って、この研究の条件下では、無毒性量(NOAEL)は、評価された最高用量レベルである200mg/kgであった。研究設計は、表20に示される。
【表25】

【表26】
【0459】
ビヒクル及び被験物質は、伏在静脈に経皮的に配置されたカテーテルを介して研究中に30分間のIV注入により1回投与された。用量レベルを、30、100、及び200mg/kgであり、20mL/kgの用量で投与した。対照群は、処置群と同じ方法でビヒクルを投与された。
【0460】
投与中、動物をスリング拘束具に入れた。ビヒクルまたは被験物質は、最新の体重に基づいており、注入ポンプ及び滅菌使い捨て注射器を使用して投与された。投与シリンジに、適切な量のビヒクルまたは被験物質を充填した(20mL/kg、追加の2mL)。投与の完了時に、動物を注入システムから取り出した。用量結果を決定するために、各注入の開始及び終了前に、各投与シリンジの重量を記録した。
【0461】
詳細な臨床観察
動物をケージから取り出し、各動物の詳細な臨床検査を、1日目の注入の開始(SOI)後の1時間及び4.5時間、その後、治験中に1日1回で実施した。動物をケージから取り出し、各動物の詳細な臨床検査を、1日目の注入の開始(SOI)後の1時間及び4.5時間、その後、治験中に1日1回で実施した。全動物の体重を、移動時、無作為化前、-1日目、及び研究中毎週、測定及び記録した。
【0462】
臨床病理評価(血液学、凝固、及び臨床化学)を、全動物の事前試験で、1日目(投与前)、3日目、8日目、及び21日目に実施した。血液学パラメーターの決定のための追加試料及び末梢血リンパ球及びサイトカイン分析試料を、SOI後30分(注入終了直後)及び4.5、8.5、24.5、及び72.5時間(1日目と比較)に収集した。骨髄塗抹標本を収集し、保存した。
【0463】
被験物質の血清濃度を測定するために、大腿静脈を介して血液試料(約0.5mL)を全ての動物から採取した(表21を参照)。臨床病理収集のための絶食と一致する間隔を除いて、動物を採血前に絶食させなかった。
【表27】
【0464】
処理のために、血液試料を無添加のバリアフリーマイクロチューブに収集し、収集後1時間以内に制御された室温で遠心分離した。得られる血清を、予め標識済みの凍結バイアル中で2つのほぼ等しいアリコートに分けた。全てのアリコートを、収集後2時間以内に-60℃~-90℃で冷凍保存した。
【0465】
予定された剖検時に安楽死させた全ての動物に対して、死後治験の評価を実施した。
【0466】
獣医病理学者に承認された手順に従って、剖検検査を実施した。触知できる腫瘤を含む外部異常がないか注意深く、動物を検査した。皮膚を腹側正中線から切開されており、皮下の腫瘤を特定し、生前の所見と相関していた。腹腔、胸腔、及び頭蓋腔を異常について検査した。臓器を取り出し、検査し、必要に応じて、固定液に入れた。目(視神経を含む)及び精巣を、除き、指定された全ての組織を、中性緩衝ホルマリン(NBF)で固定した。目(視神経を含む)及び精巣を、改良型デビッドソン固定液に入れ、次に、NBF中に最終配置する前に、最大3日間70%のエタノールに移した。気管を介して、ホルマリンを肺に注入した。完全な組織及び器官を、全動物から収集した。
【0467】
予定の剖検時に全動物の体重及びプロトコールで指定された臓器の重量を記録し、適切な臓器の重量比を(体重及び脳の重量と比較して)計算した。対になった臓器を、合わせて重量を測定した。甲状腺及び副甲状腺の合計重量を収集した。
【0468】
結果
全動物は、22日目に予定の剖検まで生存した。被験物質関連臨床的または獣医学的観察は、処置された動物では認められなかった。処置期間中または回復期間中に、処置された動物の体重への被験物質関連影響は観察されなかった。血液学エンドポイントへのG9.2-17 IgG4関連の影響は、いずれかの性別、任意の用量レベル、任意の間隔でもなかった。
【0469】
凝固時間(すなわち、活性化部分トロンボプラスチン時間[APTT]及びプロトロンビン時間)またはフィブリノーゲン濃度へのG9.2-17 IgG4関連の影響は、いずれの性別、任意の用量レベル、任意の間隔でもなかった。個々の凝固値間の全変動は、散発的で、生物学的及び手順関連変動と一致し、及び/または大きさが無視できるものであり、G9.2-17 IgG4投与とは関連していないと考えられる。
【0470】
臨床化学エンドポイントへのG9.2-17 IgG4関連の影響は、いずれかの性別、任意の用量レベル、任意の間隔でもなかった。個々の臨床化学値間の全ての変動は散発的であり、生物学的及び手順関連の変動と一致し、及び/または大きさが無視できるものであり、G9.2-17 IgG4投与とは関連していないと考えられた。
【0471】
サイトカインエンドポイントへのG9.2-17 IgG4関連の影響は、いずれかの性別、任意の用量レベル、任意の間隔でもなかった。個々のサイトカイン値間の全変動は、散発的で、生物学的及び手順関連変動と一致し、及び/または大きさが無視できるものであり、G9.2-17 IgG4投与とは関連していないと考えられる。
【0472】
肉眼的剖検観察の概説は、被験物質関連すると考えられる所見がないことを明らかにした。被験物質に関連すると考えられる臓器重量の変化はなかった。被験物質関連の変更はなかった。
【0473】
結論として、カニクイザルへの30、100、及び200mg/kgのG9.2-17 IgG4の単回静脈内注入投与は、有害な所見もなく許容された。従って、この研究の条件下では、無毒性量(NOAEL)は、評価された最高用量レベルである200mg/kgであった。
【0474】
動物をケージから取り出し、各動物の詳細な臨床検査を、1日目の注入の開始(SOI)後の1時間及び4.5時間、その後、治験中に1日1回で実施した。
【0475】
実施例15:カニクイザルにおけるG9.2-17の静脈内注入研究
この研究の目的は、カニクイザルにおいて5週間に渡って週1回30分の静脈内(IV)注入後に、被験物質G9.2-17(ガレクチン-9に結合するhIgG4モノクローナル抗体)の毒性及び毒性動態をさらに特徴付けること及び、3週間の回復期間後に観察された任意の変化の可逆性、進行、または出現の遅延を評価することである。
【0476】
実験設計
表22は、研究設計をまとめたものである。
【表28】
【0477】
治験に使用された動物(カニクイザル)は、同様の群平均体重を達成するように設計された標準的な体重による無作為化手順により治験群に割り当てられた。雄及び雌は、別々に無作為化された。治験に割り当てられた動物は、以下の範囲内であった雄雌とも平均体重の±20%内の体重を有する。
【0478】
G9.2-17を欠く製剤(「ビヒクル」)またはG9.2-17を含む製剤(「被験物質」)を、30分のIV注入により、治験中で週1回、5週間(1日目、8日目、15日目、22日目、及び29日目)動物に投与した。用量レベルは、0、100、及び300mg/kg/用量であり、10mL/kgの用量体積で投与された。対照動物群は、処置群と同じ方法でビヒクルを投与された。用量は、経皮的に配置されたカテーテルを介して伏在静脈を介して投与され、各投与に新しい滅菌使い捨て注射器が使用された。±10%の目標用量が投与されたことを保証するために、毒物動態試料収集日(1日目、15日目、及び29日目)の投与前及び投与終了時に用量結果を測定及び記録した。個々の用量は、最新の体重に基づいていた。最後の投与部位に、終末期での収集及び回復期の剖検のためにマークを付けた。全ての用量は、被験物質調製から8時間以内に投与された。
【0479】
以下に例示されるように、生前手順、観察、及び測定を動物に対して実施した。
【0480】
心電図検査を、全ての動物に対して実施した。その範囲で可能な限り、これらの測定における極端な変動または人為的結果を最小限に抑えるために、心電図(ECG)の記録前に動物が過度に興奮しないように注意を払った。標準ECG(10リード)を50mm/秒で記録した。適切なリードを使用して、RR、PR、及びQT間隔とQRS持続時間を測定し、心拍数を測定した。Bazett(1920)により記載された方法に基づく手順を使用して、補正されたQT(QTc)間隔を計算した。全ての追跡を、顧問の獣医心臓専門医が評価し、報告した。
【0481】
継続性及び信頼性を高めるために、機能的観察バッテリー(FOB)評価を、全ての場合において2人の独立した評価者が実施し、詳細なホームケージ及びオープンエリアの神経行動評価で構成した(Gauvin and Baird、2008)。各技術者は、ホームケージ及びケージ外の観察スコア毎に独立して(結果を互いに共有することなく)サルを採点し、その後、試験の完了後に、個々のスコアをパートナーのスコアとの一致について評価した。FOB評価を、各動物の投与前(-9日目または8日目)に実施して、ベースラインの差を確立し、1日目及び15日目の注入開始から2~4時間後、終末期及び回復期の剖検前に実施した。観察には、以下が含まれ、これらに限定されない:活動レベル、姿勢、流涙、流涎、震え、けいれん、線維束性収縮、常同行動、顔の筋肉の動き、眼瞼閉鎖、瞳孔反応、刺激(視覚、聴覚、及び食物)に対する応答、体温、チャドック及びバビンスキー反射、固有受容感覚、不全麻痺、運動失調、測定障害、ならびに傾斜の評価、運動、及び歩行。
【0482】
各動物の血圧を測定及び記録し、収縮期血圧、拡張期血圧、及び平均動脈圧から構成された。20mmHg以内の平均動脈圧(MAP)を有する3つの測定値を使用して、血圧測定を報告する。
【0483】
試験施設SOPに従って目視評価により、各動物の呼吸数を、動物/収集間隔毎に3回測定及び記録した。3つの収集の平均は、報告値である。
【0484】
臨床病理評価(例えば、免疫表現型検査及びサイトカイン評価)を、所定の間隔で全ての動物に対して実施した。骨髄塗抹標本を収集し、保存した。被験物質の血清濃度を測定するために、大腿静脈を介して血液試料(約0.5mL)を全ての動物から採取した。臨床病理収集のための絶食と一致する間隔を除いて、動物を採血前に絶食させなかった。治験の終了時(36日目または50日目)に、動物を安楽死させ、組織学処理及び顕微鏡評価のために組織を収集した。
【0485】
可溶性ガレクチン-9を、以下のように評価した。投与前、ならびに、1、8、15、及び29日目に注入の開始から24時間、ならびに、終末期及び/または回復期剖検の前に、可溶性ガレクチン-9について血清を測定するために、全ての動物から血液試料(約1mL)を大腿静脈を介して採取した。臨床病理収集のための絶食と一致する間隔を除いて、動物を採血前に絶食させなかった。
【0486】
可溶性ガレクチン-9試料を、以下の通り処理した。血液試料を無添加のバリアフリーチューブに収集し、周囲温度で凝固させ、周囲温度で遠心分離した。得られた血清を、標識済みクライオバイアル中で2つのアリコート(アリコート1に100μL、アリコート2に残り)に分けた。採取後2時間以内に、全てのアリコートをドライアイス上で急速冷凍し、-60℃~90℃で冷凍保存した。
【0487】
生データの四捨五入手順に従って四捨五入されていない値を使用して、レポートの表に提示される全ての結果を計算し、提示された個々のデータから正確に再現されていないことがある。
【0488】
結果
●死亡率
全ての動物は、予定の36日目の終末期剖検及び50日目の回復期剖検まで生存した。
【0489】
●詳細な臨床観察及び獣医学的観察
処置期間または回復期間中に、処置された動物の被験物質関連臨床的観察または獣医学的観察は認められなかった。
【0490】
●機能的な観測バッテリー
処置期間または回復期間中に、処置された動物の被験物質関連FOB観察は認められなかった。
【0491】
●体重及び体重増加
処置期間または回復期間中に、処置された動物の体重及び体重増加における被験物質関連影響は認められなかった。
【0492】
●眼科検査
処置期間または回復期間中に、処置された動物の眼科検査における被験物質関連影響は認められなかった。
【0493】
●血圧値
治療期間または回復期間中に、処置された動物の血圧値における被験物質関連影響は認められなかった。
【0494】
●呼吸数値
治療期間または回復期間中に、処置された動物の呼吸数数における被験物質関連影響は認められなかった。
【0495】
●心電学
処置期間または回復期間中に、処置された動物の心電図評価における被験物質関連影響は認められなかった。
【0496】
●血液学
血液学パラメーター間にG9.2-17関連の影響は、いずれかの性別、任意の用量レベル、任意の間隔、どの時点でもなかった。
【0497】
●凝固
凝固パラメーター間にG9.2-17関連の影響は、いずれかの性別、任意の用量レベル、任意の間隔、どの時点でもなかった。
【0498】
●臨床化学
臨床化学パラメーター間にG9.2-17関連の影響は、いずれかの性別、任意の用量レベル、任意の間隔、どの時点でもなかった。
【0499】
●尿検査
尿検査パラメーターにおけるG9.2-17関連の変化は、いずれかの性別、任意の用量レベル、13週間の中間時点でも観察されなかった。
【0500】
●サイトカイン
サイトカインへの決定的なG9.2-17関連の影響は、任意の用量レベルまたは時点でも見られなかった。
【0501】
●末梢血白血球分析(PBLA)
PBLAパラメーターへのG9.2-17関連の影響は、いずれかの性別、任意の用量レベル、任意の間隔、どの時点でもなかった。
【0502】
●生物分析、ガレクチン-9、及び毒素動態評価
G9.2-17は、用量投与後の全てのG9.2-17投与動物からの全てのカニクイザル試料において定量可能であった。対照カニクイザル試料では、測定可能な量のG9.2-17を検出しなかった。可溶性ガレクチン-9は、全ての動物の全てのカニクイザル試料で定量可能であった。G9.2-17血清濃度は、1日目にほとんどのG9.2-17処置動物から、1日目と29日目に対照動物から、投与前に得られた全ての血清試料において、生物分析の定量限界(LLOQ<0.04ug/mL)を下回っていた。
【0503】
●肉眼病理学及び臓器重量
主な治験動物または回復動物では、決定的な被験物質関連の巨視的観察はなかった。また、主な治験動物または回復動物では、被験物質関連の臓器重量の変化はなかった。
【0504】
●病理組織学
決定的な被験物質関連の巨視的観察はなかった。
【0505】
結論として、カニクイザルに対するG9.2-17の100及び300mg/kgの5週間にわたる週1回の静脈内注入投与は許容され、有害な所見はない。
【0506】
実施例16:Sprague DawleyラットにおけるG9.2-17の静脈内注入治験
この研究の目的は、Sprague Dawleyラットに週1回連続4週間静脈内注入し、次に、投与後3週間の回復期間をおくことにより投与される場合、ガレクチン-9に対するIgG4ヒトモノクローナル抗体であるG9.2-17の潜在的な毒性を評価することである。加えて、G9.2-17の毒性動態特性を決定した。
【0507】
実験設計
表23は、研究設計をまとめたものである。
【表29】
【0508】
186匹の動物(Sprague Dawleyラット)を体重に応じて無作為に処置群に割り当てた。対照物質/ビヒクル、被験物質用の製剤緩衝液、及び被験物質G9.2-17を、1、8、15、22、及び29日目に、0、100、及び300mg/kgの用量レベルで、1回尾静脈に単回IV注射により投与した。被験物質を、SSDサブグループに割り当てられた動物に、1日目に、100及び300mg/kgの用量レベルで1回投与した。
【0509】
順応2日目から始めて、朝の部屋掃除の前に、臨床観察を1日1回実施した。動物の一般的な健康及びウェルネスを評価するために、死亡率チェックを1日2回実施した。週1回、容器に供給された食物量及び残りの食物量を秤量することにより、食物摂取量を推定した。毎週の食物摂取量から平均グラム(g)/動物/日を計算した。体重を、無作為化の前、-1日目に、次に、治験を通して週1回及び各剖検日に測定した。機能観察バッテリー(FOB)観察を、1日目、35日目、及び49日目の投与後約24時間でSSB動物について記録した。代謝ケージを使用して、尿を一晩収集した。試料を36日目及び50日目に取得した。
【0510】
血清化学のための標本を含んだ一連の収集のそれぞれの前に、動物を一晩絶食させた。これらの場合では、関連臨床病理評価は、絶食動物のものである。拘束された意識のある動物の頸静脈から、または終了時に麻酔をかけた動物の大静脈から、血液を収集した。
【0511】
治験の生前検査中に評価されたパラメーターには、臨床観察、食物摂取量、体重、機能観察総合評価法が含まれる。血液試料を、臨床病理学(血液学、凝固、及び血清化学)分析のために選択された時点で収集した。尿検査のために、尿試料を収集した。トキシコキネティクス(TK)、免疫原性(例えば、抗薬物抗体またはADA)、及びサイトカイン分析のために、選択された時点で血液試料も収集した。36日目及び50日目に、動物を剖検した。各剖検では、肉眼観察及び臓器重量を記録し、顕微鏡検査のために組織を収集した。
【0512】
結果
生存中の実験
死亡率:治験中に、この動物に認められた異常な臨床観察または体重変化はなかった。
【0513】
臨床観察:治験中に認められたG9.2-17関連の臨床観察はなかった。
【0514】
食物摂取量/体重:G9.2-17関連の変化は、治験中に、食物摂取量、体重、または体重増加において認められなかった。
【0515】
臨床病理学:臨床病理学パラメーターに認められたG9.2-17関連の変化はなかった。
【0516】
サイトカイン分析:IL-2、IL-4、IFN-γ、IL-5、IL-6、IL-10、及び/またはTNF-α、MCP-1及びMIP-1bの血清濃度にG9.2-17関連の変化はなかった。
【0517】
肉眼病理学:G9.2-17関連の肉眼的観察はなかった。さらに、絶対的または相対的な臓器重量におけるG9.2-17関連の変化はなかった。
【0518】
組織病理学:G9.2-17関連の組織学的所見はなかった。
【0519】
結論として、Sprague Dawleyラットへの週1回、合計5回のG9.2-17の静脈内投与は、一般に忍容性が良好であった。G9.2-17関連の変化は、臨床観察、食物摂取量、体重、FOBパラメーター、臨床病理、サイトカイン、肉眼観察、または臓器重量においてなかった。
【0520】
実施例17:M2マクロファージの分極化及び再分極化の阻害
マクロファージは、自然免疫及び獲得免疫の両方において決定的な機能を備え、免疫系において不可欠な役割を果たす。一般に、M1マクロファージは、腫瘍細胞を殺傷し得る強力なエフェクター細胞と考えられているが、M2極性マクロファージは、一連のサイトカイン、ケモカイン、及びプロテアーゼを発現して、血管新生、リンパ管新生、腫瘍成長、転移、及び免疫抑制を促進する(Sica et al.,2008;Semin.Cancer Biol.2008;18:349-355)。M2マクロファージでは、TGF-β及びIL-10などの抗炎症性サイトカインの産生が増強される(Martinez et al.,Front Biosci.2008 Jan 1;13:453-61.,Mantovani et al.,Trends Immunol 2002 Nov;23(11):549-55.;Zhang et al.,J Hematol Oncol 10,58(2017))。マクロファージが宿主免疫応答の重要な要素を構成していることを考えると、M2マクロファージの分極化または再分極化の阻害は、腫瘍免疫療法における重要な治療上の考慮事項である(Poh and Ernst,Front Oncol.2018 Mar 12;8:49)。
【0521】
3人の健康なヒトのドナーからの全血を使用して、CD14+単球を分離した。10cmの組織培養皿内のX-VIVO-15培地(Lonza)中で7日間、単球をマクロファージに分化させた。分化したマクロファージは、分極化の阻害を評価するために直接使用されるか、または、凍結保存され、その後で、もしくは再分極化アッセイのために他の臨床的に示される任意の時点で使用された。アッセイで使用する前に、M0マクロファージを表現型解析した。
【0522】
2つの異なる極性カクテルを使用して、マクロファージの分極化を評価した:1つは、IL-4及びIL-13の混合物を用い、もう1つは、gal-9のみを含有する。M2分極化に対するG9.2-17の効果を、これらのカクテルの1つに直接添加し、マクロファージと48時間インキュベートすることにより試験した。M2マクロファージの再分極に対するG9.2-17の効果を、M2分極マクロファージへの添加により試験した。
【0523】
IL-10(再分極化)またはTGF-β1(分極化及び再分極化の阻害)の分泌を測定することにより、分極状態を同定した。製造者のプロトコールに従って、CytoMetric Bead Arraysを使用して、細胞培養上清中で因子を定量した。
【0524】
新しい単球由来マクロファージの極性化に対するG9.2-17の効果を示す1人のドナー由来の代表的なデータは図12にある。全てのドナーマクロファージは、同様の結果を示し、アイソタイプが一致した対照または未処理の細胞と比較して、G9.2-17とのインキュベーション後のTGF-β1分泌が減少した。図12は、G9.2-17またはアイソタイプが一致した対照とのインキュベーション後の、事前に凍結されたマクロファージによるTGF-β1分泌への影響を示す。20ng/mLの分極カクテルによる処置は、TGF-β1分泌を有意に誘導したが、G9.2-17処置は、IL-4/IL-13依存性のTGF-β1分泌増加を消失させた。図13は、凍結保存されたマクロファージの再分極化におけるIL-10分泌への影響を示す。G9.2-17による処置は、両タイプの分極カクテルの存在下で、未処理及びIgG4アイソタイプ対照抗体対照と比較して、全てのドナーにおいて分泌IL-10及びTGF-b1レベルの低減をもたらした。
【0525】
このアッセイは、G9.2-17が20μg/mlの濃度でTGF-β1及びIL-10を強力に阻害し得ることを確認した。
【0526】
実施例18:バイオマーカーの測定
患者の臨床組織に対して、マルチプレックス免疫蛍光(mIF)技術を実施した。mIFアッセイは、2つのバイオマーカーを用いる10ラウンドの染色からなり、これは、合計10ラウンドで、ラウンド毎に染色し、イメージングする。ラウンド毎に、1つの抗体が、2つの蛍光色素の1つにコンジュゲートされ、バイオマーカーのイメージングが可能になり、その結果、2つのバイオマーカーがラウンド毎にイメージングされる。バイオマーカーを染色し、イメージングし、次に、シグナルを消光して、さらなる染色及びイメージングラウンドが競合シグナルのブリードスルーなしで生じることが可能になる。19マーカーパネル全体の染色及びイメージングが完了する時、細胞上の各バイオマーカーの陽性性が、陽性シグナルを検出するように訓練された深層学習アルゴリズムで分類される。分析が完了する時、各バイオマーカー及び目的の共発現の陽性細胞の密度及び生の数を含む様々なデータが生成される。バイオマーカーには、CD3、CD4、CD8、CD45RO、FoxP3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD33、CD68、CD163、HLA-DR、アルギナーゼ1、グランザイムB、Ki67、PD-1、PD-L1、F4/80、Ly6G/C、及びPanCKが挙げられ得る。
【0527】
実施例9.ELISAによる血漿中のマウスガレクチン-9の評価
この研究は、雌C57BL/6マウスの同所性膵癌異種移植モデルmPA6115の血漿中のガレクチン-9を評価した。マウスを複数群に割り当て、以下の表24に示される研究設計に従って処置した。プロトコールにより、血漿試料は、(投与前)腫瘍が移植された群1~6由来の全マウス及び群7の10匹の非腫瘍担持マウス(腫瘍移植は0日目であった)の第1の投与前に、及び(投与後)ひん死の状態にあって安楽死させたマウスについて終了時の心臓穿刺により、3日目にレトロ眼窩洞から収集された。
【表30】
【0528】
血漿試料中のガレクチン-9のレベルを、以下の手順に従ってELISAで分析した。
1.使用前に全ての試薬及び試料を室温(18~25℃)に戻した。全ての標準及び試料を、少なくとも2回ずつ実行することが推奨された。
2.実験に応じて、取り外し可能な8ウェルストリップにラベル付けした
3.100μlの各標準試料及び調製済み試料を適切なウェルに加えた。ウェルを覆い、穏やかに振盪しながら室温で2.5時間インキュベートする。
4.溶液を捨て、1X洗浄溶液で4回洗浄する。マルチチャネルピペットまたは自動洗浄機を使用して、各ウェルを洗浄バッファー(300μl)で満たすことにより洗浄する。良好なパフォーマンスを得るには、各ステップで液体を完全に除去することが、不可欠であった。最後の洗浄後、残った洗浄バッファーを吸引またはデカントして除去した。プレートを逆さにし、清潔なペーパータオルで拭き取った。
5.1Xで調製したビオチン化抗体(試薬調製ステップ3)100μlを各ウェルに加えた。穏やかに振盪しながら、室温で1時間インキュベートした。
6.溶液を廃棄した。ステップ4と同様に、洗浄を繰り返した。
7.調製済みのストレプトアビジン溶液100μlを各ウェルに加えた。穏やかに振盪しながら、室温で45分間インキュベートした。
8.溶液を廃棄した。ステップ4と同様に、洗浄を繰り返した。
9.100μlのTMBワンステップ基質試薬を各ウェルに加えた。穏やかに振盪しながら、室温、暗所で30分間インキュベートした。
10.50μlの停止液を、各ウェルに加えた。450nmで、すぐに読み取った。
【0529】
結果は、腫瘍が同所的に移植されると、mPA6115マウスモデルにおいてガレクチン-9の血清レベルが増加することを実証し、これは、膵臓腺癌患者における観察と一致していた。この治験は、膵管腺癌が同所的に成長している動物では、ガレクチン-9血清レベルが大幅に増加することを実証した。これは、そのようなガレクチン-9の供給源が、実に、腫瘍組織であることを意味し、これは、さらに、この疾患状況においてガレクチン-9をブロックする治療アプローチをサポートする。
【0530】
同等物
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認し得、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な変更及び修正を、様々な使用法及び条件に適合させ得る。従って、他の実施形態も、特許請求の範囲内にある。
【0531】
いくつかの発明の実施形態が、本明細書で記載及び実証されているが、当業者らは、容易に、機能を実施し、及び/または本明細書に記載の結果及び/もしくは利点のうちの1つ以上を取得するための、様々な他の手段ならびに/または構造を想定している。より一般には、当業者らは、容易に、本明細書に記載の全てのパラメーター、寸法、材料、及び構成が、例示的なものであり、実際のパラメーター、寸法、材料、及び/または構成が、本発明の教示が使用される特定の用途(複数可)に依存することを理解するであろう。当業者らは、従来の実験のみを使用して、本明細書に記載の特定の本発明の実施形態の多くの均等物を理解するか、または、それを確認することができる。それ故、上述の実施形態が、例としてのみ、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で提示されており、具体的に記載及び請求の範囲に記載されている以外の本発明の実施形態が実施され得ることが理解される。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法を対象とする。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法の2つ以上の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0532】
本明細書で定義及び使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書内の定義、及び/または定義された用語の通常の意味を制御すると理解されるべきである。
【0533】
本明細書に開示の全ての参考文献、特許、及び特許出願は、それぞれが引用されている主題に関して参照により組み込まれ、いくつかの場合では、これは、文書全体を包含し得る。
【0534】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」及び「an」は、明確に反対の指示のない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0535】
本明細書及び特許請求の範囲において、本明細書で使用される「及び/または」という表現は、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合では、結合的に存在し、他の場合には、分離的に存在する要素、を意味すると理解されるべきである。「及び/または」でリストされた複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」と解釈されるべきである。具体的に特定された要素に関連しているか、または無関係であるかにかかわらず、「及び/または」節により具体的に特定される要素以外の他の要素が、任意に存在する。従って、非限定例として、「A及び/またはB」への言及は、「含むこと」などの制限のない言語と組み合わせて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(任意に、B以外の要素を含む);別の実施形態では、Bのみ(任意に、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、A及びBの両方(任意に、他の要素を含む)等を指し得る。
【0536】
本明細書及び特許請求の範囲において、本明細書で使用される場合、「または」は、上で定義された通り、「及び/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「及び/または」は、要素の数またはリスト及び、任意に、追加のリストに掲載されていない項目を、包含する、すなわち、それらのうちの少なくとも1つを包含するが、それらのうちの複数も含む、と解釈されるべきである。明らかにそれとは反対に示された用語、例えば、「のうちの1つだけ」もしくは「のまさに1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」は、まさに要素の数またはリストの1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、独占的条件が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「どちらか一方であるが両方ではない」)、例えば、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちのちょうど1つ」を示すものとしてのみ解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用される場合、「から本質的になる」は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0537】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関して「少なくとも1つの」という語句は、要素のリスト内の要素のいずれか1つ以上から選択されるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に記載されるありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つ以上を含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しない、少なくとも1つを意味することが理解されるべきである。この定義は、具体的に同定されたそれらの要素に関連するか、または無関係であるかにかかわらず、任意に、「少なくとも1つ」という表現が指す要素のリスト内で具体的に同定された要素以外の要素が存在することがあることも許容する。従って、非限定例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(または同様な意味合いで「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同様な意味合いで「A及び/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、任意に、Bが存在しない複数のAを含む(及び、任意に、B以外の要素を含む)少なくとも1つ;別の実施形態では、任意に、Aが存在しない複数のBを含む(及び、任意に、A以外の要素を含む)少なくとも1つ;さらに別の実施形態では、任意に、複数のAを含む少なくとも1つ;ならびに、任意に、複数のBを含む(及び、任意に、他の要素を含む)少なくとも1つ等を指し得る。
【0538】
さらに、明確に反対の指示のない限り、複数のステップまたは行為を含む本明細書で特許請求される任意の方法では、方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも、方法のステップまたは行為が列挙される順序に限定されないことも理解されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
【配列表】
2024519450000001.app
【国際調査報告】