(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】反応したネットワークを有する膜
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20240507BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240507BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240507BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/406 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240507BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
C08L23/00
C08L63/00 A
H01M50/417
H01M50/457
H01M50/451
H01M50/406
H01M50/403 B
H01M50/403 A
H01M50/434
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564629
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 US2022026614
(87)【国際公開番号】W WO2022232329
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】イン,ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】ライナルツ,ステファン
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
5H021
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA24
4F074AA64
4F074AA98
4F074AD09
4F074AD13
4F074AG20
4F074BB12
4F074BB28
4F074CA01
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC04Z
4F074DA49
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB121
4J002BB141
4J002CD012
4J002CD052
4J002GQ00
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB04
5H021BB05
5H021BB12
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE09
5H021EE15
5H021EE17
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE34
(57)【要約】
(1)ポリオレフィン、及び(2)2種類の成分を反応させることによって形成された生成物を含む1つ又は複数の乾式多孔質層を有する膜が開示され、この成分は、1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物及び1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物であってよい。生成物は、反応ネットワーク、三次元反応ネットワーク、又は架橋ネットワークであってよい。生じた膜は、改善された強度、低減された裂けやすさ、又は改善された強度及び低減された裂けやすさの両方を有する。膜は、電池、コンデンサ、HVAC、フィルタ装置、又は織物に使用してよい。膜の製造方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、
1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物及び1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物を反応させることによって形成された生成物であって、前記生成物は、反応ネットワーク、三次元反応ネットワーク、又は架橋ネットワークである、生成物と、
を含む少なくとも一つの乾式多孔質層を含む膜。
【請求項2】
前記膜は、単層、二層、三層、又は多層膜である、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物は、1~10個のエポキシ基を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物は、1~5個のエポキシ基を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
前記1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物は、2個以上のエポキシ基を有するポリエチレンオキシド(PEO)/ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
前記1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物は、1~10個のカルボキシ基を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項7】
前記1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物は、1~5個のカルボキシ基を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項8】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンポリマー、ポリエチレン共重合体、ポリエチレンターポリマー、又はポリエチレンポリマー、共重合体、若しくはターポリマー及び別のポリマーのブレンドである、請求項1に記載の膜。
【請求項9】
前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンポリマー、ポリプロピレン共重合体、ポリプロピレンターポリマー、又はポリプロピレンポリマー、共重合体、若しくはターポリマー及び別のポリマーとのブレンドである、請求項1に記載の膜。
【請求項10】
請求項1に記載の膜及び任意のコーティングを含む電池セパレータであって、前記コーティングは、セラミックコーティング、ポリマーコーティング、接着性コーティング、シャットダウンコーディング、又はこれらの組合せである、電池セパレータ。
【請求項11】
ポリオレフィン、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物、及び1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物を押し出し又は鋳造して非多孔質前駆体を形成すること、
前記非多孔質前駆体を延伸して細孔を形成すること、
前記1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物を前記1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物と反応させるのに少なくとも充分な熱を適用して生成物を形成すること、
を含む乾式多孔質層を形成する方法あって、
熱が、延伸前、延伸後、延伸中、又はこれらの任意の組合せで適用され、前記生成物は、反応ネットワーク、三次元反応ネットワーク、又は架橋ネットワークである生成物である、乾式多孔質層を形成する方法。
【請求項12】
熱を延伸前に適用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
熱を延伸中に適用する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
熱を延伸後に適用する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記熱を、延伸前及び延伸中、延伸前及び延伸後、延伸中及び延伸後、又は延伸前、延伸中及び延伸後に適用する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物、及び溶媒を含む溶液を乾式多孔質ポリオレフィンフィルムに適用して含浸乾式多孔質ポリオレフィンフィルムを形成すること、次いで
前記1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物を前記1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物と反応させるのに少なくとも充分な熱を前記含浸乾式多孔質ポリオレフィンフィルムに適用して生成物を形成すること、
を含む方法であって、前記生成物は、反応ネットワーク、三次元反応ネットワーク、又は架橋ネットワークである、方法。
【請求項17】
前記溶媒は、水、有機溶媒、又は水及び有機溶媒の組合せである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液に界面活性剤を添加する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記乾式多孔質ポリオレフィンフィルムは、ポリエチレンポリマー、ポリエチレン共重合体、ポリエチレンターポリマー、又はポリエチレンポリマー、共重合体、若しくはターポリマー及び別のポリマーのブレンドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記乾式多孔質ポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレンポリマー、ポリプロピレン共重合体、ポリプロピレンターポリマー、又はポリプロピレンポリマー、共重合体、若しくはターポリマー及び別のポリマーとのブレンドを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、少なくとも改善された強度、低減した裂けやすさ、又はこれらの特性の組合せを有する膜の分野に関する。膜は、電池セパレータ、特にリチウムイオン電池を含む二次電池用の電池セパレータとして使用してよい。膜は、コンデンサに使用してもよく、織物として、フィルタとして、及び同種のものとして使用してよい。本願はまた、これらの改善された膜の形成方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
乾式フィルムには多くの利点があるが、1つの欠点は、いくつかの乾式フィルムは、「裂けやすい(splitty)」又は「裂けやすさ(splittiness)」の問題があることである。当業者によって理解されるように、「裂けやすさ」とは、フィルムが、数インチ又は数インチ以上の長さがある裂け目又は破れ目を形成する傾向を指す。これは、例えばフィルムを電池又は織物用途で使用する場合に望ましくない。電池用途においては、裂け目又は破れ目は安全性の問題を引き起こす場合があり、デンドライトが成長できる長い開口部を許容する。織物用途においては、裂け目又は破れ目は、織物のバリア機能を損ない、湿気、空気及び同種のものが透過するのを許容する。濾過用途においては、裂け目又は破れ目は、フィルムが遮断するはずの粒子を通過させてしまう場合がある。
【0003】
上述のことを考慮して、裂け目又は破れ目の長さを低減する、又は裂け目又は破れ目を完全になくすことが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、改善された強度、低減した裂けやすさ、又はこの2個の組合せを有する少なくとも1つの膜を提供し、また同じものの製造方法も提供する。
【0005】
1つの態様において、少なくとも1つの乾式多孔質層を含む膜が開示される。乾式多孔質層は、以下の、ポリオレフィン及び1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物及び1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物を反応させることによって形成された生成物を含んでよい。膜は、単層、二層、三層、又は多層膜であってよく、乾式多孔質層は、複数の層の少なくとも1つである。
【0006】
1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物は、1~10個、又は1~5個のエポキシ基を有してよい。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物は、2個以上のエポキシ基を有するポリエチレンオキシド(PEO)又はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0007】
1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物は、1~10個又は1~5個のカルボキシ基を有してよい。
【0008】
ポリオレフィンは、いくつかの好ましい実施形態において、ポリエチレンポリマー、ポリエチレン共重合体、ポリエチレンターポリマー、又はポリエチレンポリマー、共重合体、若しくはターポリマー及び別のポリマーのブレンドである。他の好ましい実施形態において、ポリオレフィンは、ポリプロピレンポリマー、ポリプロピレン共重合体、ポリプロピレンターポリマー、又はポリプロピレンポリマー、共重合体、若しくはターポリマー及び別のポリマーとのブレンドである。
【0009】
別の態様において、本明細書に上述した膜及び任意のコーティングを含む電池セパレータ、コンデンサ、織物、フィルタ又は同種のものが記載される。コーティングは、セラミックコーティング、ポリマーコーティング、接着性コーティング、シャットダウンコーディング、又はこれらの組合せであってよい。
【0010】
別の態様において、2個の個別の乾式多孔質層形成方法を開示する。
【0011】
第1の方法においては、少なくとも3個のステップがある。第1のステップは、ポリオレフィン、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物、及び1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物を押し出し又は鋳造して非多孔質前駆体を形成するステップである。別のステップにおいては、非多孔質前駆体を延伸して細孔を形成する。更に別のステップは、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物を1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物と反応させるのに少なくとも充分な熱を適用するステップを含む。熱は、延伸前、延伸後、延伸中、又は前述のものの任意の組合せであってよい。例えば、熱を延伸前及び延伸中、延伸前及び延伸後、延伸中及び延伸後、又は延伸前、延伸中及び延伸後に適用してよい。
【0012】
第2の方法において、1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物、及び溶媒を含む溶液を乾式多孔質ポリオレフィンフィルムに適用して含浸乾式多孔質ポリオレフィンフィルムを形成する。次いで、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物を1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物と反応させるのに少なくとも充分な熱を適用する。
【0013】
第2の方法において、溶媒は、水、有機溶媒、又は水及び有機溶媒の組合せであってよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、界面活性剤を溶液に加えてよい。
【0015】
この第2の方法のいくつかの好ましい実施形態において、乾式多孔質ポリオレフィンフィルムは、ポリエチレンポリマー、ポリエチレン共重合体、ポリエチレンターポリマー、又はポリエチレンポリマー、共重合体、若しくはターポリマー及び別のポリマーのブレンドを含む。他の好ましい実施形態において、乾式多孔質ポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレンポリマー、ポリプロピレン共重合体、ポリプロピレンターポリマー、又はポリプロピレンポリマー、共重合体、若しくはターポリマー及び別のポリマーとのブレンドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本明細書に記載のいくつかの実施形態によるエポキシ基及びカルボキシ基の反応を示す。
【
図2】
図2は、本明細書に記載の反応基を有する界面活性剤の例を含む。
【
図3】
図3は、本明細書に記載のいくつかの実施形態による反応を示す。
【
図4】
図4は、本明細書に記載のいくつかの実施形態による反応を示す。
【
図5】
図5は、本明細書に記載される反応したネットワークを有する膜の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
膜
1つの態様において、乾式多孔質層を含む、から成る、又はから本質的に成る膜を記載する。膜は、単層膜、二層膜、三層膜、又は多層膜(四層以上)であってよく、乾式多孔質層は、この膜の少なくとも1つの層である。二層、三層、及び多層膜では、少なくとも1つの乾式多孔質層を少なくとも1つの他の層と積層することにより、又は少なくとも1つの請求した乾式多孔質層を別の層と共押し出しすることによりこれらを形成してよい。いくつかの実施形態においては、三層及び多層膜を、共押出及び積層の組合せにより形成してよい。例えば、請求した乾式多孔質層を、共押し出しされた2個以上の他の層に積層してよい。あるいは、請求した乾式多孔質層を、1つ又は複数の他の層と共押し出ししてよく、次いで共押し出しした層を別の層に積層してもよい。
【0018】
膜は、1~100μm、1~50μm、1~40μm、1~30μm、1~20μm、1~15μm、1~10μm、又は1~5μmの厚さを有してよい。
【0019】
当業者によって理解されるように、「乾式」は、特に鋳造又は押出ステップ中に、溶媒又は油の使用を含まず、多孔質フィルム、層又は膜を形成しないものである。典型的な乾式は少なくとも、組成物を押し出し又は鋳造して非多孔質前駆体フィルム又は層を形成するステップ、及び非多孔質前駆体フィルム又は層を延伸して細孔を形成するステップを含んでよい。乾式は、細孔を形成する又は細孔の形成を促進するために粒子を使用しても使用しなくてもよい。更に、乾式膜は、鋳造又は押出ステップで溶媒及び/又は油を使用する「湿式」膜と比較して異なる構造を有することが当業者に知られている。例えば、P. Arora and Z. Zhang, Battery Separators, Chem. Rev. 104, 4419-4462を参照のこと。
【0020】
本明細書に記載の乾式多孔質層は、ナノ多孔質、微多孔質、メソ多孔質、又はマクロ多孔質であってよい。いくつかの好ましい実施形態において、乾式多孔質層は、微多孔質であってよいか又は0.01~1.0μmの平均細孔径を有してよい。
【0021】
層は、1~100μm、1~50μm、1~40μm、1~30μm、1~20μm、1~15μm、1~10μm、又は1~5μmの厚さを有してよい。
【0022】
本明細書に記載の乾式多孔質層は、少なくとも以下の成分、(1)熱可塑性ポリマー、例えば、ポリオレフィン及び(2)反応によって形成される生成物、例えば1つ又は複数のエポキシ基を有する少なくとも1つの化合物及び少なくとも1つのカルボキシ基を有する化合物を反応させることにより形成される反応生成物を含んでよい、から成ってよい、又はから本質的に成ってよい。いくつかの実施形態において、生成物は、反応ネットワーク、三次元反応ネットワーク、又は三次元架橋ネットワークであってよく、この反応は、架橋反応である。
【0023】
(1)熱可塑性ポリマー
任意の熱可塑性ポリマーを使用してよいが、好ましい実施形態においては、熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィンであってよい。例えば、熱可塑性ポリマーは、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレン共重合体、ポリエチレンターポリマー、又はポリエチレンホモポリマー、ポリエチレン共重合体、又はポリエチレンターポリマー及び少なくとも1つの追加の熱可塑性ポリマーのブレンドであってよい。ブレンドは、例えば、ポリエチレンホモポリマー及びポリエチレン共重合体を含んでよい。熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレン共重合体、ポリプロピレンターポリマー、又はポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレン共重合体、又はポリプロピレンターポリマー及び少なくとも1つの追加の熱可塑性ポリマーのブレンドであってよい。ブレンドは、例えば、ポリプロピレンホモポリマー及びポリプロピレン共重合体を含んでよい。
【0024】
(2)反応によって形成される生成物
反応によって形成される生成物は、1つ又は複数、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、又は10個以上の反応基を有する化合物を、1つ又は複数の反応基を含む少なくとも1つの他の化合物と反応させることによって形成される。反応させる化合物の反応基は限定されない。互いに反応する任意の組の反応基を許容できる。
【0025】
例えば、いくつかの好ましい実施形態において、1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物及び1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物を選択してもよい。このエポキシ基及びカルボキシ基は、
図1に示すように互いに反応する。
【0026】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個、のエポキシ基を有してよい。いくつかの好ましい実施形態において、エポキシ基の数は、10個超、10個未満、又は1~5個であってよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物は、1つ又は複数のエポキシ基を有するポリエチレンオキシド(PEO)又はポリエチレングリコール(PEG)化合物である。PEO又はPEG化合物は、ビ-、トリ-、テトラ、又はポリ-グリシジルエーテルであってよい。これらは、以下の式1~6に示す構造を有してよい。
【0028】
式1:
【0029】
【化1】
nは、1~100,000又はそれ以上の整数である。
【0030】
式2:
【0031】
【0032】
式3
【0033】
【化3】
x、y、及びzは各々独立して、1~100,000又はそれ以上であってよい。
【0034】
式4:
【0035】
【0036】
式5:
【0037】
【化5】
xは、1~100,000又はそれ以上であってよく、又は
【0038】
式6
【0039】
【0040】
1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物もさほど限定されず、化合物は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のカルボキシ基を有してよい。いくつかの好ましい実施形態において、カルボキシ基の数は、10個超、10個未満、又は1~5個であってよい。化合物の例は、ケト酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸、ヘキサカルボン酸、及び同種のものを含んでよい。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態において、1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物及び1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物の少なくとも1つは、2個以上、又は3個以上の反応基(それぞれカルボキシ又はエポキシ)を有する。反応基の数が多くなるにつれ、単一の分子で多くの反応が起こり、大きなネットワークを形成することができる。例えば、テトラカルボン酸を使用する場合、1つ又は複数のエポキシ基を含有する化合物のエポキシ基と反応するための反応部位は4個ある。反応する部位の数は、加えられる熱の量に依存してよい。
【0042】
これらの化合物の形成物は、カルボキシ及びエポキシ基を有する反応した成分の大きな又は小さなネットワークであり(反応ネットワーク)、フィルムに強度を加え、裂けにくくし、又は形成された裂け目の大きさ(長さ)を抑える。好ましい実施形態において、反応ネットワークは、三次元反応ネットワークである。
【0043】
デバイス
デバイスは、本明細書に記載の膜を含んでよい。例えば、膜を、コンデンサの多孔質、典型的にはセルロースフィルムを置き換え又は改良するための、電池セパレータとして、織物として、フィルタとして、又は同種のものとして使用してよい。強力で裂けにくい(less splitty)フィルムがあれば、これらの用途の各々に有益である。例えば、織物において、裂けたり割れたりしない(split or tear)フィルムが望ましい。電池においては、裂けにくいセパレータでは、安全性が改善される。デンドライトは、裂けやすいセパレータに裂け目を生じさせてもよく、短絡の原因となる。裂け目をなくすことができたり低減することができたりすれば(例えば裂け目の大きさ/長さを小さくする)、安全性は改善される。
【0044】
いくつかの実施形態において、膜は、リチウムイオン電池などの二次電池のセパレータとして使用してよい。NMC又はLFPを電極材料として使用するものを含む、任意の種類のリチウムイオン電池が適してよい。この膜はまた、大型のリチウムイオン電池に使用してもよい。膜に、コーティングを任意選択的に適用してよい。コーティングは、単層又は多層(2個以上の層)コーティングであってよい。コーティングは、セラミックコーティング、粘着性若しくは接着性コーティング、シャットダウンコーティング、架橋コーティング、又は上述のものの組合せであってよい。
【0045】
方法
(1)第1の方法
第1の方法は、本明細書に記載の乾式多孔質フィルム又は層を形成するための少なくとも3個のステップを含んでよい。
【0046】
第1に、熱可塑性ポリマー、及び互いに反応してよい2種類の化合物を含む、から成る、又はから本質的に成る組成物を押し出し又は鋳造して非多孔質前駆体フィルムを形成する。好ましい実施形態において、組成物は、ポリオレフィン、少なくとも1つのエポキシ基を含む化合物、及び少なくとも1つのカルボキシ基を含む化合物を含んでよく、から成ってよく、又はから本質的に成ってよく、押し出し又は鋳造して非多孔質前駆体フィルム又は層を形成する。好ましい実施形態において押し出し又は鋳造した組成物は、溶媒又は油を含まず、このプロセスは乾式である。いくつかの実施形態において、本明細書に上述の組成物は、少なくとも1つの他の同一の又は異なる組成物と共に共押し出しして共押出しされた非多孔質前駆体フィルム又は層を形成する。
【0047】
いくつかの実施形態においてはこの組成物に添加剤も添加してよい。例えば、開始剤を添加してもよく、これは、カルボキシ基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物の間の反応の開始を促進してもよい。
【0048】
第1の方法の2個の追加のステップは、非多孔質を延伸して細孔を形成するステップ、及び熱を加えてカルボキシ基及びエポキシ基の間の反応を開始するステップを含む。
【0049】
延伸に関して、非多孔質前駆体フィルム又は層を、一軸に、二軸に、又は3本以上の軸に沿って延伸して細孔を形成し、成形してよい。好ましい実施形態において、非多孔質前駆体フィルムを機械方向(MD)に沿って延伸して細孔を形成してよい。いくつかの他の好ましい実施形態において、非多孔質前駆体フィルム又は層を、MDに沿って延伸して、次いで横方向(TD)に延伸して細孔を丸くして成形してよい。
【0050】
加熱装置はさほど限定されない。加える熱の量は、1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物及び1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物の間の反応を開始し及び/又は持続させるのに充分とする必要がある。しかしながら、温度はそれほど熱くできないので、熱の量は、フィルムの構造的完全性に影響を及ぼす。
【0051】
熱を、延伸前、延伸中、延伸後、又はそれらの任意の組合せでフィルムに加えてよい。いくつかの実施形態において、熱は、延伸前及び延伸中に加えてよい。いくつかの実施形態において、熱は、延伸前及び延伸後に加えてよい。いくつかの実施形態において、熱は、延伸中及び延伸後に加えてよい。いくつかの実施形態において、熱は、延伸前、延伸中、及び延伸後に加えてよい。
【0052】
形成された乾式多孔質フィルム又は層は、単独で使用してもよく、同じ又は異なる方法により作成された別のフィルム又は層と積層してもよく、コーティングしてもよく、それらの組合せでもよい。
【0053】
(2)第2の方法
第2の方法においては、方法は、本明細書に記載の乾式多孔質膜を形成するための少なくとも2個のステップを含んでよい。
【0054】
第1のステップにおいて、互いに反応してもよい2種類の化合物及び溶媒を含む、から成る、又はから本質的に成る溶液を、熱可塑性ポリマーを含む、から成る、又はから本質的に成る乾式多孔質膜(細孔はすでに形成されている)に適用する。熱可塑性ポリマーを含む、から成る、又はから本質的に成る乾式多孔質膜はまた、互いに反応してもよい2種類の化合物も含んでよいが、好ましい実施形態においては、乾式多孔質膜には含まれない。
【0055】
好ましい実施形態において、溶液は、本明細書に記載の1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物、本明細書に記載の1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物、及び溶媒を含んでよい、から成ってよい、又はから本質的に成ってよい。この好ましい実施形態において、溶液を適用する乾式多孔質膜は、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物又は1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物を含まないが、必要であれば含んでよい。この好ましい実施形態において、熱可塑性ポリマーを含む、から成る、又はから本質的に成る乾式多孔質膜には、溶液が適用され、本明細書に記載の任意のポリオレフィンを含む、ポリオレフィンを含んでよい、から成ってよい、又はから本質的に成ってよい。
【0056】
溶液に使用される溶媒は、さほど限定されず、水、水及び水に溶解できる溶媒を含む水性溶媒、有機溶媒、又はそれらの混合物であってよい。
【0057】
添加剤を溶液に添加してもよい。例えば、開始剤化合物を添加してもよく、これは、1つ又は複数のエポキシ基及び1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物間の反応の開始を促進する。
【0058】
溶液を、ポリオレフィンであってよい熱可塑性物を含む、から成る、又はから本質的に成る乾式多孔質フィルムに適用する場合、反応成分をフィルムの細孔へ浸透させ、フィルムに含浸させる。いくつかの実施形態において、この目的で促進するために、界面活性剤を溶液に添加してよい。第1のステップの結果は、熱可塑性物を含む、から成る、又はから本質的に成る乾式多孔質フィルムの細孔内部に反応成分を含む含浸フィルムである。
【0059】
界面活性剤を添加する場合、いくつかの実施形態において、この界面活性剤は、1つ又は複数の反応基を含んでよい。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物、1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物、又は1つ又は複数のエポキシ基又は1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物の両方を含んでよい。反応基を有する界面活性剤の例を、
図2に示す。
【0060】
別のステップにおいて、熱可塑性物を含む、から成る、又はから本質的に成る含浸乾式多孔質フィルムに熱を加える。
【0061】
加熱装置はさほど限定されない。加える熱の量は、反応化合物、例えば1つ又は複数のカルボキシ基を有する化合物及び1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物の間の反応を開始し及び/又は持続させるのに充分とする必要がある。しかしながら、熱可塑性物を含む、から成る、又はから本質的に成る含浸乾式多孔質フィルムの構造的完全性に影響を及ぼすほど温度を熱くすることはできない。
【実施例】
【0062】
実施例1:実施例1において、ポリエチレン、グリシジルエステル機能性樹脂、及びポリカルボン酸機能性樹脂の組成物を押し出して非多孔質前駆体を形成し、非多孔質前駆体を延伸して細孔を形成し、グリシジルエステル機能性樹脂及びポリカルボン酸機能性樹脂を
図3に示すように反応させて右側の反応した生成物を形成する。
【0063】
実施例2:実施例2は、ポリエチレンの代わりにポリプロピレンを使用したことを除いて実施例1と同様である。
【0064】
実施例3:実施例3において、ポリエチレン、クエン酸、1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物(以下の
図3を参照する)、及びカフェインの組成物を押し出して非多孔質前駆体を形成し、非多孔質前駆体を延伸して細孔を形成し、クエン酸及び1つ又は複数のエポキシ基を有する化合物を
図4に示すように反応させて右側のPEG-PPO-CAゲル生成物を形成する。
【0065】
実施例4:実施例4は、ポリエチレンの代わりにポリプロピレンを使用したことを除いて実施例3と同様である。
【0066】
実施例5:実施例5において、ポリプロピレンを含む乾式多孔質膜を形成した。次に、
図3に示される反応物質を含む溶液を膜に適用した。次に反応物質を反応させた。
【0067】
実施例6:実施例6は、乾式多孔質膜がポリエチレンを含むことを除いて実施例5と同様である。
【0068】
実施例7:実施例7において、ポリプロピレンを含む乾式多孔質膜を形成した。次に
図4に示される反応物質を含む溶液を膜に適用した。次に反応物質を反応させた。
【0069】
実施例8:実施例8は、乾式多孔質膜がポリエチレンを含むことを除いて実施例7と同様である。
【0070】
本明細書に開示の反応したネットワークを有する膜の概略図を
図5に見ることができる。
【国際調査報告】