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特表2024-519469遺伝性障害の治療のためのインビボヌクレアーゼ媒介性遺伝子標的化のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】遺伝性障害の治療のためのインビボヌクレアーゼ媒介性遺伝子標的化のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20240507BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240507BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240507BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240507BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240507BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20240507BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240507BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K48/00
C12N15/55 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/09 110
C12N15/11 Z
C12N15/35
C12N15/864 100Z
A61K38/43
A61P1/16
A61K35/76
A61K31/7105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566465
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022026483
(87)【国際公開番号】W WO2022232232
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/180,603
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/242,474
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/301,933
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/244,205
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/331,385
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.LABRASOL
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リリー
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】トレティアコバ,アンナ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZA75
4C086AA01
4C086AA02
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA75
(57)【要約】
遺伝性障害を治療するためのデュアルベクターシステムが提供される。本システムは、(a)ヌクレアーゼをコードする核酸配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、発現カセットを含む、遺伝子編集ベクターと、(b)ドナーベクターであって、PCSK9遺伝子座からの発現のための外因性産物をコードする核酸配列を含み、挿入された核酸配列が、PCSK9をコードしない、ドナーベクターと、を含み、システムが、ヌクレアーゼに、天然PCSK9遺伝子座を特異的に標的化するように指示する配列を更に含み、標的細胞における天然PCSK9が、任意選択的に、デュアルベクターシステムの投与後に、アブレーション又は低減される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝性障害を治療するためのシステムであって、前記システムが、
(a)PCSK9遺伝子を標的化するヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む、遺伝子編集ベクターと、
(b)ドナーベクターであって、導入遺伝子をコードする核酸配列及び前記標的細胞における前記導入遺伝子の発現を指示する調節配列を含む、導入遺伝子カセットを含み、前記ドナーベクターが、前記導入遺伝子カセットの5’及び3’側に相同組換え(HDR)アームを更に含み、前記導入遺伝子が、PCSK9ではない、ドナーベクターと、を含む、システム。
【請求項2】
PCSK9遺伝子を含む標的細胞における前記ヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を更に含む、請求項1に記載のシステム
【請求項3】
前記ヌクレアーゼが、PCSK9エクソン7を標的化する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ヌクレアーゼが、PCSK9に特異的なメガヌクレアーゼである、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記メガヌクレアーゼが、ARCUSメガヌクレアーゼである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記遺伝子編集ベクターが、核局在化シグナルに隣接するCas9をコードする配列を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記遺伝子編集ベクターが、前記PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する、少なくとも20個のヌクレオチドを含むsgRNAを更に含み、前記標的部位が、前記Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ドナーベクターが、少なくとも20ヌクレオチドのシード領域を含むsgRNAを更に含み、前記sgRNAが、前記PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合し、前記標的部位が、前記Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
RNAポリメラーゼプロモーターを更に含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記RNAポリメラーゼプロモーターが、U6プロモーターである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記U6プロモーターが、前記sgRNAの5’側に位置する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記シード領域が、前記標的部位配列と100%相補的である、請求項7~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記シード領域が、前記標的部位配列と100%未満相補的である、請求項7~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記導入遺伝子が、OTC、PKU、CTLN1、又はLDLRである、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ドナーベクター及び遺伝子編集ベクターのうちの少なくとも1つが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、前記AAVベクターが、AAV 5’ITR及びAAV 3’ITRを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
(a)の遺伝子編集AAVベクターと(b)のドナーAAVベクターとの比が、(b)のドナーAAVベクターが(a)の遺伝子編集ベクターを超えるような比である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
遺伝性障害を治療するためのシステムであって、前記システムが、
(a)遺伝子編集AAVであって、AAVカプシドと、5’ITR、PCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるメガヌクレアーゼの発現を指示する調節配列の制御下でPCSK9を標的化する前記メガヌクレアーゼをコードする配列、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAV、並びに
(b)ドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び前記標的細胞における前記導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む、システム。
【請求項18】
遺伝性障害を治療するためのシステムであって、前記システムが、
(a)遺伝子編集AAVであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’核局在化シグナル(NLS)、Cas9をコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるsaCas9の発現を指示する調節配列、3’NLS、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAV、並びに
(b)ドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び前記標的細胞における前記導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、U6プロモーター、sgRNAであって、前記PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する、少なくとも20個のヌクレオチドを含み、前記標的部位が、前記Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNA、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む、システム。
【請求項19】
遺伝性障害を治療するためのシステムであって、前記システムが、
(a)遺伝子編集AAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、U6プロモーター、sgRNAであって、PCSK9遺伝子の標的部位に特異的に結合する、少なくとも20個のヌクレオチドを含み、前記標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNA、5’核局在化シグナル(NLS)、Cas9をコードする配列及び前記PCSK9遺伝子を含む標的細胞における前記Cas9の発現を指示する調節配列、3’NLS、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAVベクター、並びに
(b)ドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び前記標的細胞における前記導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む、システム。
【請求項20】
遺伝性障害を治療するためのシステムであって、前記システムが、
(a)遺伝子編集ベクターであって、
(i)脂質ナノ粒子、
(ii)sgRNAであって、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する、少なくとも20個のヌクレオチドを含み、前記標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNA、
(iii)mRNAであって、5’核局在化シグナル(NLS)、前記Cas9をコードする配列、3’NLSを含む、mRNA、を含む、遺伝子編集ベクター、並びに
(b)ドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び前記標的細胞における前記導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む、システム。
【請求項21】
(a)の前記遺伝子編集AAVベクター及び(b)の前記ドナーAAVベクターが、同じAAVカプシドを有する、請求項17~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記AAVカプシドが、AAV8、AAV9、rh10、AAV6.2、AAV3B、hu37、rh79、及びrh64から選択される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
Cas9が、Staphylococcus aureus Cas9又はStreptococcus pyogenes Cas9から選択される、請求項6~18又は18~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記ヌクレアーゼが、組織特異的プロモーターの制御下にある、請求項2~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記ヌクレアーゼが、構成的プロモーターの制御下にある、請求項2~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記ヌクレアーゼが、肝臓特異的プロモーター、任意選択的に、ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、又はハイブリッド肝臓プロモーター(HLP)の制御下にある、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載のシステムを同時投与することによって、ヒトにおける障害を治療する方法。
【請求項28】
新生児対象における肝臓代謝障害を治療する方法であって、前記方法が、肝臓代謝障害を有する前記対象に、
(a)ヌクレアーゼをコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞における前記ヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、遺伝子編集AAVベクター、並びに
(b)ドナーAAVベクターであって、導入遺伝子及び前記標的細胞における前記導入遺伝子の発現を指示する調節配列を含み、前記ドナーベクターが、導入遺伝子カセットの5’及び3’側に相同組換え(HDR)アームを更に含む、ドナーAAVベクター、を同時投与することを含む、方法。
【請求項29】
(a)の前記遺伝子編集AAVベクター及び(b)の前記ドナーベクターが、同じ経路を介して本質的に同時に送達される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a)の前記遺伝子編集AAVベクターが、約2×1011GC/mL~約2×1012GC/mLの濃度で注射用のビヒクル中に懸濁される、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
(a)の前記AAV標的化ベクターが、約2×1012GC/mL~約1×1013GC/mLの濃度で注射用のビヒクルに懸濁される、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項32】
前記肝臓代謝障害が、オルニチントランスカルバミラーゼである、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記肝臓代謝障害が、OTC、FH、シトルリン血症I型(CTLN1)、又はフェニルケトン尿症である、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
遺伝性障害を治療するためのシステムであって、前記システムが、
(a)ヌクレアーゼをコードするmRNA配列を含む、脂質ナノ粒子(LNP)と、
(b)ドナーAAVベクターであって、導入遺伝子及び前記標的細胞におけるその発現を指示する調節配列を含み、前記ドナーベクターが、前記導入遺伝子の5’及び3’側に相同組換え(HDR)アームを更に含む、ドナーAAVベクターと、を含む、システム。
【請求項35】
前記ヌクレアーゼが、PCSK9遺伝子を標的化する、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記ヌクレアーゼが、PCSK9エクソン7を標的化する、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記ヌクレアーゼが、PCSK9に特異的なメガヌクレアーゼである、請求項34に記載のシステム。
【請求項38】
前記メガヌクレアーゼが、ARCUSメガヌクレアーゼである、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼであり、前記LNPが、sgRNAを含む、請求項34に記載のシステム。
【請求項40】
前記Cas9ヌクレアーゼが、核局在化シグナルに隣接する、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記sgRNAが、前記PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する、少なくとも20個のヌクレオチドを含み、前記標的部位が、前記Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、請求項39又は40に記載のシステム。
【請求項42】
RNAポリメラーゼプロモーターを更に含む、請求項34~41のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記RNAポリメラーゼプロモーターが、U6プロモーターである、請求項43に記載のシステム。
【請求項44】
前記U6プロモーターが、前記sgRNAの5’側に位置する、請求項46に記載のシステム。
【請求項45】
前記sgRNAが、前記標的部位配列と100%相補的である、請求項34~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記sgRNAが、前記標的部位配列と100%未満相補的である、請求項34~44
のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記導入遺伝子が、肝臓で発現される遺伝子である、請求項34~46のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記導入遺伝子が、OTC、PKU、CTLN1、及びFHから選択される、請求項34~47のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項49】
遺伝性障害を治療するためのシステムであって、前記システムが、
(a)ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む、遺伝子編集ベクターと、
(b)ドナーベクターであって、PCSK9遺伝子座からの発現のための外因性産物をコードする核酸配列を含み、挿入された核酸配列が、PCSK9をコードしない、ドナーベクターと、を含み、
前記システムが、前記ヌクレアーゼに、天然PCSK9遺伝子座を特異的に標的化するように指示する配列を更に含み、
任意選択的に、標的細胞における天然PCSK9が、デュアルベクターシステムの投与後にアブレーション又は低減される、システム。
【請求項50】
請求項49に記載のシステムを使用して患者を治療する方法であって、前記患者の天然PCSK9の発現レベルが低下し、前記患者が、前記外因性産物を発現する、方法。
【請求項51】
配列番号17の操作されたコード配列又はそれと少なくとも90%の同一性を共有する配列を含む、発現カセット。
【請求項52】
AAV 5’及び3’ITRを更に含む、請求項51に記載の発現カセット。
【請求項53】
請求項51又は52に記載の発現カセットを含む、AAVベクター。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
部位特異的ヌクレアーゼ(CRISPR-Cas9又はメガヌクレアーゼなど)は、染色体において二本鎖切断(DSB)を生成し、DNA修復をもたらす。ドナーDNAの存在下では、相同組換え修復(HDR)が起こり、染色体の遺伝情報が、ドナー遺伝子からの新しい情報で置き換えられる。
【0002】
相同組換え修復(HDR)は、DNA二本鎖切断(DSB)が、DNA鋳型を使用する相同組換えによって修復されるプロセスである。この鋳型は、姉妹クロマチドが有糸分裂の完了前に利用可能である、細胞周期の後期S期又はG2期中に細胞内から生じ得る。更に、外因性修復鋳型を、最も頻繁に合成一本鎖DNAドナーオリゴ又はドナープラスミドの形態で細胞内に送達して、ゲノムの正確な変化を生成することができる。
【0003】
セーフハーバー部位(SHS)は、遺伝子又は他の遺伝エレメントを安全に挿入及び発現させることができるゲノム遺伝子座である。これらのSHSは、効果的なヒト疾患遺伝子療法、遺伝子構造、機能及び調節を調査するため、並びに細胞を標識及び追跡するために重要である。
【0004】
必要とされるのは、遺伝子編集のための改善された組成物及び方法である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、天然PCSK9遺伝子のノックダウン又はアブレーション、並びにPCSK9遺伝子座における外因性導入遺伝子の挿入及び/又は発現を可能にする、遺伝子編集のための組成物、方法、システム、及びキットが提供される。
【0006】
第1の態様では、遺伝性障害を治療するためのシステムが本明細書に提供される。本システムは、PCSK9遺伝子を標的化するヌクレアーゼをコードする核酸配列と、PCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列と、を含む、発現カセットを含む、遺伝子編集成分を含む。本システムは、ドナーベクターであって、導入遺伝子をコードする核酸配列及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列を含む、導入遺伝子カセットを含み、ドナーベクターが、導入遺伝子カセットの5’及び3’側に相同組換え(homology-directed recombination)(HDR)アームを更に含み、導入遺伝子が、PCSK9ではない、ドナーベクターを更に含む。ヌクレアーゼは、PCSK9遺伝子を標的化する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、PCSK9エクソン7を標的化する。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼは、ARCUSメガヌクレアーゼである。
【0007】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集成分は、Cas9をコードする配列を含む。特定の実施形態では、遺伝子編集ベクターは、少なくとも20ヌクレオチドのシード領域を含むsgRNAをコードする配列を更に含み、sgRNAが、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合し、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある。
【0008】
他の実施形態では、ドナーベクターは、少なくとも20ヌクレオチドのシード領域を含むsgRNAをコードする配列を更に含み、sgRNAが、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合し、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある。
【0009】
別の態様では、遺伝性障害を治療するためのシステムが本明細書に提供される。本システムは、PCSK9遺伝子を標的化するヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む遺伝子編集成分を含む。本システムは、導入遺伝子をコードする核酸配列及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列を含む導入遺伝子カセットを含むドナーベクターを更に含み、ドナーベクターが、導入遺伝子カセットの5’及び3’側に相同組換え(homology-directed recombination)(HDR)アームを更に含み、導入遺伝子が、PCSK9ではない。ヌクレアーゼは、PCSK9遺伝子を標的化する。特定の実施形態では、遺伝子編集成分は、脂質ナノ粒子に提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集成分は、Cas9をコードする配列を含む。特定の実施形態では、遺伝子編集ベクターは、少なくとも20ヌクレオチドのシード領域を含むsgRNAをコードする配列を更に含み、sgRNAが、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合し、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある。
【0011】
他の実施形態では、ドナーベクターの更なる成分は、少なくとも20ヌクレオチドのシード領域をコンポーネント含むsgRNAをコードする配列を含み、sgRNAが、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合し、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある。
【0012】
特定の実施形態では、導入遺伝子は、肝臓代謝障害に関連する。特定の実施形態では、導入遺伝子は、OTC、PKU、CTLN1、又はLDLRである。
【0013】
特定の実施形態では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、ベクターが、AAV 5’ITR及びAAV 3’ITRを含む。
【0014】
別の実施形態では、遺伝性障害を治療するためのデュアルベクターシステムは、遺伝子編集AAVであって、AAVカプシドと、5’ITR、メガヌクレアーゼをコードする配列であって、PCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるメガヌクレアーゼの発現を指示する調節配列の制御下でPCSK9を標的化する、配列、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAV、並びにドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含み、導入遺伝子が、PCSK9をコードしない、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む。
【0015】
別の実施形態では、遺伝性障害を治療するためのデュアルベクターシステムは、遺伝子編集AAVであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’核局在化シグナル(NLS)、Cas9をコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるsaCas9の発現を指示する調節配列、3’NLS、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAV、並びにドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、U6プロモーター、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する少なくとも20個のヌクレオチドを含むsgRNAであって、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNA、及び3’ITRを含み、導入遺伝子が、PCSK9をコードしない、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む。
【0016】
更に別の実施形態では、遺伝性障害を治療するためのデュアルベクターシステムは、遺伝子編集AAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、U6プロモーター、sgRNAであって、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する少なくとも20個のヌクレオチドを含み、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNA、5’核局在化シグナル(NLS)、Cas9をコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるCas9の発現を指示する調節配列、3’NLS、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAVベクター、並びにドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集AAVベクター及びドナーAAVベクターは、同じAAVカプシドを有する。他の実施形態では、遺伝子編集AAVベクター及びドナーAAVベクターは、異なるAAVカプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVカプシドは、AAV8、AAV9、rh10、AAV6.2、AAV3B、hu37、rh79、及びrh64から選択される。
【0018】
別の態様では、本明細書に記載されるデュアルベクターシステムを同時投与することによって、ヒトにおける障害を治療する方法が提供される。
【0019】
別の態様では、対象における肝臓代謝障害を治療する方法が提供され、本方法は、肝臓代謝障害を有する対象に、遺伝子編集AAVベクターであって、ヌクレアーゼをコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、遺伝子編集AAVベクターと、ドナーAAVベクターであって、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列を含み、ドナーベクターが、導入遺伝子カセットの5’及び3’側に相同組換え(HDR)アームを更に含み、導入遺伝子が、PCSK9ではない、ドナーAAVベクターと、を同時投与することを含む。特定の実施形態では、肝臓代謝障害は、オルニチントランスカルバミラーゼである。他の実施形態では、家族性高コレステロール血症又はフェニルケトン尿症。一実施形態では、対象は、新生児である。
【0020】
別の態様では、遺伝性障害を治療するためのシステムが提供される。本システムは、PCSK9遺伝子を標的化するヌクレアーゼをコードするmRNA配列を含む脂質ナノ粒子(LNP)と、ドナーAAVベクターであって、導入遺伝子及び標的細胞におけるその発現を指示する調節配列を含み、ドナーベクターが、導入遺伝子の5’及び3’側に相同組換え(HDR)アームを更に含み、導入遺伝子が、PCSK9ではない、ドナーAAVベクターと、を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、PCSK9エクソン7を標的化する。いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼは、ARCUSメガヌクレアーゼである。
【0021】
他の実施形態では、遺伝子編集ベクターは、Cas9をコードする。特定の実施形態では、遺伝子編集ベクターは、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する少なくとも20個のヌクレオチドを含むsgRNAを更にコードし、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある。いくつかの実施形態では、システムが、LNPを含み、LNPが、Cas9コード配列及びgRNAの両方を含む。
【0022】
他の実施形態では、ドナーベクターは、少なくとも20ヌクレオチドのシード領域を含むsgRNAを更にコードし、sgRNAが、PCSK9遺伝子における標的部位に特異
的に結合し、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある。
【0023】
更に別の態様では、遺伝性障害を治療するためのデュアルベクターシステムが提供される。本システムは、ヌクレアーゼをコードする核酸配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、発現カセットを含む、遺伝子編集ベクターと、ドナーベクターであって、PCSK9遺伝子座からの発現のための外因性産物をコードする核酸配列を含み、挿入された核酸配列が、PCSK9をコードしない、ドナーベクターと、を含み、システムは、ヌクレアーゼに、天然PCSK9遺伝子座を特異的に標的化するように指示する配列を更に含み、標的細胞における天然PCSK9は、任意選択的に、デュアルベクターシステムの投与後に、アブレーション又は低減される。
【0024】
更に別の態様では、本明細書に記載されるシステムを使用して、患者の天然PCSK9発現レベルが低下し、患者が外因性産物を発現する、患者を治療する方法が提供される。
【0025】
更に別の態様では、オルニチントランスカルバミラーゼの操作されたコード配列が提供される。また、ベクター、発現カセット、及びそれらを含む組換えウイルスも含まれる。
【0026】
本発明の他の態様及び利点は、以下の本発明の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】エクソン7内のドナースプライス部位、及び目的のドナー鋳型(例えば、hFIX、hOTC)を含むHDRドナーベクターを示す、rhPCSK9遺伝子座の概略図を示す。
図2】新生児NHPにおけるARCUS2又はSaCas9によるPCSK9遺伝子座におけるhFIXミニ遺伝子ノックインを含むパイロット研究のタイムラインを示す。
図3A-3C】SaCas9又はARCUS媒介性遺伝子修正のためのデュアルAAVベクターシステムの概略図を示す。図3Aは、ARCUS2媒介性遺伝子修正のためのデュアルAAVhu37ベクターシステムの概略図を示し、AAVhu37ドナーベクターは、hOTCドナー鋳型配列を含む。図3Bは、SaCas9媒介性遺伝子修正(トランス;AAVhu37-SaCas9)のためのデュアルAAVhu37ベクターシステムの概略図を示し、SaCas9及びsgRNAの発現カセットが、2つの別個のベクターにあり、AAVhu37.sgRNAドナーベクターが、hOTCドナー鋳型配列及びU6.sgRNAカセットを含む。図3Cは、SaCas9媒介性遺伝子修正のためのデュアルAAVhu37ベクターシステム(シス;AAVhu37.PCSK9-sgRNA.SaCaS9)の概略図を示し、SaCas9及びsgRNAの発現カセットが、同じベクターにあり、hOTCドナーベクターが、別個のベクターにある。
図4A-4H】新生児NHPにおけるヌクレアーゼ媒介性遺伝子標的化のインビボ試験を示す。動物に、図4A、4B、及び5Gに示されるように、1×1013GC/kgのAAVhu37.ARCUS2.WPRE及び3×1013GC/kgのAAVhu37.hFIXco-HDR、又は1×1013GC/kgのAAVhu37.SaCas9.WPRE及び3×1013GC/kgのAAVhu37.hFIXco-HDR.U6.sgR、又は1×1013GC/kgのAAVhu37.GFP.WPRE及び3×1013GC/kgのAAVhu37.hFIXco-HDR.U6.sgRを投与した。図4Cは、新生児NHPにおける、示された時点でのhFIXレベル(ng/mLとしてプロットされている)を示す。図4Dは、新生児NHPにおける、示された時点でのPCSK9レベル(0日目のベースラインのパーセンテージとしてプロットされている)を示す。図4Eは、新生児NHPにおける、示された時点(U/Lとしてプロットされている)でのALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)レベルを示す。図4Fは、新生児NHPにおける、示された時点での抗FIX IgGレベル(希釈係数、1/希釈としてプロットされている)を示す。図4Gは、新生児NHPにおける、示された時点でのPCSK9レベル(ng/mLとしてプロットされている)を示す。図4Hは、新生児NHPにおいて測定された体重(gとしてプロットされている)を示す。
図5A-5H】3ヵ月齢の乳幼児NHPに投与した、図4に記載のインビボ試験の結果を示す。図5Aは、乳幼児NHPにおける、示された時点でのhFIXレベル(ng/mLとしてプロットされている)を示す。図5Bは、乳幼児NHPにおける、示された時点でのPCSK9レベル(0日目のベースラインのパーセンテージとしてプロットされている)を示す。図5Cは、乳幼児NHPにおける、示された時点(U/Lとしてプロットされている)でのALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)レベルを示す。図5Dは、乳幼児のNHPにおける、示された時点での抗FIX IgGレベル(希釈係数、1/希釈としてプロットされている)を示す。図5Eは、乳幼児NHPにおける、示された時点でのPCSK9レベル(ng/mLとしてプロットされている)を示す。図5Fは、乳幼児NHPにおける、示された時点(gとしてプロットされている)で測定された体重を示す。図5Gは、図4A~5Gに記載の実験からのデータを示す要約表である。図5Hは、試験した新生児と乳幼児のNHPとの間の様々なデータの比較を示す。
図6A-6G】図4A~4Hに記載のように処置されたNHPにおける処置後の様々な日に採取された肝臓生検試料におけるベクターの形質導入(GC)及び導入遺伝子の発現を示す。図6Aは、二倍体細胞当たりのAAVゲノムコピー(GC)としてプロットされた、肝臓生検試料におけるベクターの形質導入のレベルを示す。図6Bは、肝臓生検試料における導入遺伝子RNAの相対発現を示す。図6Cは、肝臓生検においてFIX及びARCUSを検出するための特異的プローブを使用したデュアルインサイツハイブリダイゼーション(ISH)を示す。図6Dは、形質導入のパーセンテージの定量に使用されるデジタル化ISH画像を示す。図6Eは、ISHによって定量化され、パーセント形質導入としてプロットされたFIX導入遺伝子の形質導入効率を示す。
図7A-7L】NHPにおける処置の84日後に採取された肝臓生検におけるFIX及びARCUSを検出するための特異的プローブを使用した、様々な倍率の視野で示されたデュアルインサイツハイブリダイゼーション(ISH)を示す(AAVhu37.ARCUS2及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIXで処置されたNHP)。図7Aは、4倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたARCUSを示す。図7Bは、4倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図7Cは、4倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図7Dは、4倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図7Eは、10倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたARCUSを示す。図7Fは、10倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図7Gは、10倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図7Hは、10倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図7Iは、20倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたARCUS発現を示す。図7Jは、20倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図7Kは、20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図7Lは、20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。
図8A-8M】NHPにおける処置の84日後に採取された肝臓生検におけるFIX及びARCUSを検出するための特異的プローブを使用した、様々な倍率の視野で示されたデュアルインサイツハイブリダイゼーション(ISH)を示す(AAVhu37.EGFP及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIX.U6.sgRで処置されたNHP)。図8Aは、4倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたGFP-WRPEを示す。図8Bは、4倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図8Cは、4倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図8Dは、4倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図8Eは、10倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたGFP-WRPEを示す。図8Fは、10倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図8Gは、10倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図8Hは、10倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図8Iは、20倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたGFP-WRPEの発現を示す。図8Jは、20倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図8Kは、20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図8Lは、20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図8Mは、未処理の対照において20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。
図9】AAVhu37.ARCUS2及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIXで処置されたNHPにおけるARCUS媒介性オンターゲット編集を示す。処置の84日後に、肝臓生検試料を採取し、そこに存在する標的領域における総インデルのパーセンテージを、アンプリコン-seqに基づいて計算した。
図10A-10B】PCSK9-hE7-KIマウスモデルの概略図を示す。図10Aは、ヒトpcsk9エクソン7に置き換えられたマウスpcsk9エクソン7の概略図を示す(hE7は、ARCUS標的化配列を含む)。ヒトPCSK9エクソン7の配列は、配列番号44に示される。図10Bは、PCSK9-hE7-KIマウスモデルを、OTC spfash、KI-spfashモデルなどの他の疾患マウスモデルと交配する概略図を示す。PCSK9-hE7-KIノックインマウスモデルは、マウスPcsk9遺伝子のエクソン7を含む領域を、エクソン7を含有するヒトPCSK9遺伝子の領域に置き換えることによって最初に生成された。次いで、PCSK9-hE7-KIマウスを、Otc遺伝子のエクソン4の末端のスプライスドナー部位でのGからAへの点変異に起因するOTC発現の20倍の減少を示すsparse fur ash(spfash)マウスと交配した。この交配からのマウスを、PCSK9-hE7-KI.spfashマウスと名付け、本明細書に記載のように利用した。略語:bp:塩基対、E6:エクソン6、E7:エクソン7、E8:エクソン8、HDR:相同組換え(homology-dependent recombination)、PCSK9:プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(遺伝子、ヒト)、Pcsk9:プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(遺伝子、マウス)。
図11A-11I】図11Iに示されるベクターについての、新生児NHPにおけるヌクレアーゼ媒介性遺伝子標的化のインビボ試験を示す。図11Aは、実施例3に記載されるベクターについての、新生児NHPにおけるヌクレアーゼ媒介性遺伝子標的化のインビボ試験の実験設計を示す図表である。動物21-111、21-122、及び21-113は、投与前にAAV結合抗体(BAb)が陽性であった。Babアッセイを妨げるベクター投与後、21-178の0日目の試料を採取した。:独立したITRseqアッセイで同定されたOT部位の数が列挙されている。図11Bは、図11Aに示される群について、ng/mL(上の行)又は0日目の%(下の行)として示されるPCSK9レベルを示す。図11Cは、図11Aに示される群について、U/L(上の行)として示されるALTレベル又はU/L(下の行)として示されるASTを示す。図11Dは、ISH又はIFによって定量化され、形質導入された肝細胞の割合としてプロットされた、OTC導入遺伝子の形質導入効率を示す。図11Eは、マウスの体重を示す。図11Fは、84日目の定量的PCR分析による肝臓におけるベクターのGCを示す。図11Gは、肝臓生検試料から単離された総RNAに対する定量的PCR、その後の逆転写によって測定され、GAPDHレベルによって正規化された相対発現レベルとして表された、84日目のマカクザルの肝臓におけるhOTC及びヌクレアーゼの発現を示す。図11Hは、アンプリコン-seqによって行われたrhPCSK9標的遺伝子座のインデル分析を示す。図11Iは、実施例3に記載の実験のために試験されたベクターを含む、新生児NHPにおけるヌクレアーゼ媒介性遺伝子標的化のインビボ試験のタイムラインの概略図である。
図12】pcsk9-hE7ノックインアレルのヒトPCSK9配列、マウスPCSK9(mPCSK9)及びアカゲザルPCSK9(rhPCSK9)を表す、265bp配列の配列アラインメントを示す。略称:GAPDH:グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、GC:ゲノムコピー、hOTC:ヒトオルニチントランスカルバミラーゼ、OT:オフターゲット、PCR:ポリメラーゼ連鎖反応、rhPCSK9:プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(アカゲザル遺伝子)、RNA:リボ核酸。
図13】ARCUS2媒介性遺伝子修正のためのデュアルAAVベクターシステムのためのドナー構築物の概略図を示す。AAVドナーベクターは、hOTCドナー鋳型配列を含む。ノックインマウスモデル(図10A~10B)、NHP、及びヒトの標的領域との、構築物におけるHDRアームの相同性を示す。
図14A】実施例5に記載されるように、PCSK9-hE7-KI.spf-ash仔(部分的OTC欠損モデル)において行われた、ARCUS2によるPCSK9遺伝子座におけるhOTCミニ遺伝子のノックインを含む研究のタイムラインを示す。
図14B図14Aの研究のための各群が投与されるベクター及び投薬量を示す。
図14C-14I】高タンパク質(HP)ダイエットを10日間与えられた、図7に示されるベクターで処置されたマウス又は処置(KI WT)されていないマウスの研究の結果を示す。図14Cは、生存確率を示す。図14Dは、HPダイエットの導入前の体重のパーセンテージとしての体重を示す。図14Eは、HPダイエットの10日目の血漿中NHレベルを示す。図14Fは、48日目のmPCSK9タンパク質レベルを示す。図14Gは、59日目のアンプリコン-seqによって測定されたインデル(%)を示す。図14Hは、59日目に測定された二倍体細胞当たりのAAVゲノムコピー(GC)としてプロットされた、肝臓生検試料におけるベクターの形質導入のレベルを示す。図14Iは、8週目のOTCのIFを示す。
図15】PCSK9-hE7-KI.ldlr-/ldlr-.apobec-/apobec-仔(hoFHモデル)におけるSaCas9によってPCSK9遺伝子座にhLDLRミニ遺伝子のノックインを生成するための、実施例10に記載の実験設計の概略図である。
図16】実施例10で使用したベクターを示す概略図である。
図17】実施例10の実験設計を示す。
図18A-18D】実施例10の実験の結果を示す。図18Aは、shHDR+saCas9、mhHDR+saCas9、shHDRのみ、及び未処置マウスの血清LDLレベルを示す。図18Bは、shHDR+saCas9、mhHDR+saCas9、shHDRのみで処置されたマウスのインデルのパーセンテージを示す。図18Cは、63日目の肝臓で測定した、二倍体ゲノム当たりのhLDLRゲノムコピーを示す。図18Dは、63日目のshHDR+saCas9、mhHDR+saCas9、shHDRのみ、及び未処置マウスの血清LDLレベルを示す。
図19】実施例10のマウスについて63日目に採取した肝臓試料の免疫組織化学データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書では、肝臓代謝障害を含む特定の遺伝性障害を有する患者に安定した長期的な治療効果を提供する、組成物、キット、及び方法が提供される。組成物、キット、及び方法は、標的細胞のPCSK9遺伝子座を標的化するヌクレアーゼを利用し、ドナーベクタ
ーは、PCSK9遺伝子座への組み込み及びそれからの発現のための外因性産物を含む鋳型を提供し、挿入された核酸配列は、PCSK9をコードせず、内因性PCSK9の発現が破壊され、発現レベルが低下する。
【0029】
PCSK9
プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)は、肝臓及び肝外の両方の低密度リポタンパク質(LDL)受容体(LDLR;606945)レベルを低下させ、血漿LDLコレステロールを増加させるセリンプロテアーゼである。PCSK9は、血漿コレステロールホメオスタシスの調節に重要である。PCSK9は、低密度脂質受容体ファミリーメンバーの低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)、アポリポタンパク質E受容体(LRP1/APOER)、及びアポリポタンパク質受容体2(LRP8/APOER2)に結合し、細胞内酸性区画におけるそれらの分解を促進する。ヒトPCSK9は、配列番号23に示されるように、NP_777596.2のタンパク質配列を有し、配列番号22に示されるコード配列を有する。
【0030】
PCSK9遺伝子は、コレステロール関連疾患の治療のために標的化されているが、本明細書では、PSCK9遺伝子座が、他の非PCSK9導入遺伝子の挿入のための遺伝子標的化のためのセーフハーバーであることが実証される。したがって、本明細書に提供される組成物、キット、及び方法は、PCSK9遺伝子座を標的化するヌクレアーゼを利用し、ドナー鋳型を使用して、治療用導入遺伝子を標的PCSK9遺伝子座に挿入する。
【0031】
本明細書に提供される組成物、キット、及び方法は、遺伝子編集成分(いくつかの実施形態では、ベクター)と、ドナーベクター(宿主細胞で発現させるための治療用導入遺伝子を提供する)と、を含む。
【0032】
遺伝子編集成分
本明細書に提供される組成物、キット、及び方法は、遺伝子編集構成要素を含み、これは、ヌクレアーゼ(又はしたがって、コード配列)と、ヌクレアーゼに、染色体1上の天然PCSK9遺伝子座を特異的に標的化するように指示する配列と、を含む。本明細書で使用される場合、「標的PCSK9遺伝子座」又は「PCSK9遺伝子座」は、異種導入遺伝子の挿入が所望されるPCSK9コード領域における任意の部位である。特定の実施形態では、標的PCSK9遺伝子座は、PCSK9コード配列のエクソン7にある。図12は、SaCas9及びPCSK9を標的化するメガヌクレアーゼ(ARCUSと称される)を使用して本明細書に例示される、ヒト(h)、アカゲザル(rh)、及びマウス(m)のPCSK9エクソン7スプライス部位の整列を提供する。
【0033】
本明細書では、組成物、特に、ヌクレアーゼが記載され、これは、導入遺伝子(例えば、PCSK9に特異的なヌクレアーゼ)の挿入のための遺伝子を標的化するのに有用である。特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、天然に存在する。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、天然に存在しない。すなわち、DNA結合ドメイン及び/又は切断ドメインにおいて操作されている。例えば、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように改変され得る(例えば、同種の結合部位とは異なる部位に結合するように操作されたメガヌクレアーゼ)。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、異種DNA結合ドメイン及び切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALエフェクタヌクレアーゼ、異種切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含む。
【0034】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、PCSK9を標的化するメガヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼは、大きな認識部位(12~40塩基対の二本鎖DNA配列)、例
えば、I-SceIを特徴とするエンドデオキシリボヌクレアーゼである。ヌクレアーゼと組み合わせると、DNAを特定の位置で切断することができる。制限酵素は、遺伝子編集における使用のために、又はインサイツのゲノム編集のために、細胞内に導入され得る。特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼのLAGLIDADG(配列番号31)ファミリーのメンバーである。特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、22塩基対の認識配列(配列番号32-CAAAACGTCGTGAGACAGTTTG)を認識し、切断する、ホーミングエンドヌクレアーゼのI-CreIファミリーのメンバーである。例えば、WO2009/059195を参照されたい。I-CreI及び他のホーミングエンドヌクレアーゼを包括的に再設計して、哺乳動物、酵母、植物、細菌、及びウイルスのゲノムにおける部位を含む、広く分岐したDNA部位を標的化することができる、モノ-LAGLIDADG(配列番号32)ホーミングエンドヌクレアーゼを合理的に設計するための方法が記載された(WO2007/047859)。一実施形態では、ヌクレアーゼは、配列番号19(nt330~1424)に示される配列、又はそれと少なくとも95%、98%、若しくは99%の同一性を共有する配列によってコードされる。一実施形態では、ヌクレアーゼのタンパク質配列は、配列番号20で示される配列、又はそれと少なくとも95%、98%、若しくは99%の同一性を共有する配列である。かかるヌクレアーゼは、本明細書ではARCUSヌクレアーゼと称されることがある。「ホーミングエンドヌクレアーゼ」という用語は、「メガヌクレアーゼ」という用語と同義である。その全体が本明細書に援用される、特定のPCSK9メガヌクレアーゼを記載する、WO2018/195449を参照されたい。
【0035】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA開裂ドメインに融合することによって生成される人工制限酵素である。ジンクフィンガードメインは、特定の所望のDNA配列を標的化するように操作することができ、これにより、ジンクフィンガーヌクレアーゼが複雑なゲノム内の独自の配列を標的にすることが可能になる。内因性DNA修復機構を利用することにより、これらの試薬を使用して、高等生物のゲノムを正確に変更し、ゲノム編集の分野における卓越したツールとして機能することができる。転写活性化因子様エフェクタヌクレアーゼ(TALEN)は、DNAの特定の配列を切断するように操作することができる制限酵素である。これらは、TALエフェクタDNA結合ドメインをDNA切断ドメイン(DNA鎖を切断するヌクレアーゼ)に融合することによって作製される。別の実施形態では、コード配列は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ又は転写活性化因子様(TAL)エフェクタヌクレアーゼ(TALEN)をコードする。
【0036】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)、任意選択的に、Cas9である。「Cas9」(CRISPR関連タンパク質9)は、2つのシグネチャーヌクレアーゼドメインRuvC(非コード鎖を切断する)及びHNH(コード鎖)を特徴とするRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼのファミリーを指す。Cas9の好適な細菌源としては、Staphylococcus aureus(SaCas9)、Streptococcus pyogenes(SpCas9)、及びNeisseria meningitides[KM Estelt et al,Nat Meth,10:1116-1121(2013)]が挙げられる。野生型コード配列は、本明細書に記載の構築物に利用され得る。あるいは、細菌コドンは、例えば、様々な既知のヒトコドン最適化アルゴリズムのいずれかを使用して、ヒトにおける発現のために最適化される。あるいは、これらの配列は、完全に又は部分的に、合成的に産生され得る。同様の特性を有する他のエンドヌクレアーゼは、任意選択的に置換されてもよい。例えば、http://crispr.u-psud.fr/crisprでアクセス可能な公開CRISPRデータベース(db)を参照されたい。
【0037】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼコード配列の組成物、キット、及び方法は、遺伝子
編集ベクターに含まれる。遺伝子編集ベクターは、ヌクレアーゼをコードする核酸配列と、PCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列と、を含む、発現カセットを含む。
【0038】
本明細書で使用される「ベクター」は、核酸配列を含む生物学的又は化学的部分であり、当該核酸配列の複製又は発現のために適切な宿主細胞に導入され得る。一般的なベクターとしては、非ウイルスベクター及びウイルスベクターが挙げられる。本明細書で使用される場合、非ウイルス系は、ナノ粒子、エレクトロポレーションシステム、及び新規の生体材料、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、プラスミド、コスミド(Phillip McClean、www.ndsu.edu/pubweb/~mcclean/-plsc731/cloning/cloning4.htm)、並びに人工染色体(Gong,Shiaoching,et al.“A gene expression atlas of the central nervous system based on bacterial artificial chromosomes.”Nature 425.6961(2003):917-925)から選択され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」とは、生物学的に有用な核酸配列と、核酸配列(例えば、タンパク質、酵素、又は他の有用な遺伝子産物、mRNAなどをコードする遺伝子cDNA)及びその遺伝子産物の転写、翻訳、並びに/若しくは発現を指示又は調節する、それと作動可能に連結された制御性配列と、を含む、核酸分子を指す。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」配列には、核酸配列に隣接する調節配列と、配列を制御するためにトランスで又は離れて作用する調節配列との両方が含まれる。かかる調節配列は、典型的には、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、コザック配列、ポリアデニル化配列、及びTATAシグナルのうちの1つ以上を含む。発現カセットは、他の要素の中で、遺伝子配列の上流(5’~)の制御性配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロンなどのうちの1つ以上、及びエンハンサー、又は遺伝子配列の下流(3’~)の制御性配列、例えば、ポリアデニル化部位を含む3’非翻訳領域のうちの1つ以上を含有し得る。他の実施形態では、「導入遺伝子」という用語は、標的細胞に挿入される外因性供給源からの1つ以上のDNA配列を指す。典型的に、ウイルスベクターを産生するためのかかる発現カセッは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルに隣接する本明細書に記載される遺伝子産物のコード配列、及び本明細書に記載のものなどの他の発現制御配列を含む。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、2つ以上の発現カセットを含み得る。
【0040】
ヌクレアーゼのコード配列に加えて、特定の実施形態では、遺伝子編集ベクターには、宿主細胞においてヌクレアーゼの発現を指示する調節配列が含まれる。特定の実施形態では、調節エレメントは、プロモーターを含む。特定の実施形態では、本システムは、肝細胞における変異又は表現型を特徴とする代謝障害の治療のために設計され、遺伝子編集ベクターは、ヌクレアーゼが肝臓特異的プロモーターの制御下で発現されるように設計され得る。本明細書に記載の例示的なプラスミド及びベクターは、配列番号41の配列を特徴とする、肝臓特異的プロモーターであるチロキシン結合グロブリン(TBG)を使用する。他の実施形態では、配列番号11の配列を特徴とするTBGの短縮バージョン(本明細書ではTBG-S1と呼ばれるバリアント)が有用である。別の実施形態では、配列番号12の配列を有するハイブリッド肝臓プロモーター(HLP)を利用する。
【0041】
いくつかの実施形態では、低転写活性を有するプロモーター、又は弱いプロモーターを利用することが望ましい。一実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターの弱化バージョンである。一実施形態では、弱いプロモーターは、天然プロモーター又はTBG-S1配列の5’又は3’末端で切断される。別の実施形態では、プロモーターは、TBG-S1プロモーターから3’末端113nt
のみを保持し、F113と呼ばれる(TBG-S1-F113とも呼ばれる)(配列番号19、nt206~318)。2020年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/016,145号、2020年6月2日に出願された第63/033,738号、2020年10月9日に出願された第63/089,796号、2021年4月27日にともに出願されたPCT/US21/29386号及びPCT/US21/29403号は、各々「低転写活性を有するAプロモーターを使用してヌクレアーゼ発現及びオフターゲット活性を低下させるための組成物及び方法」と題され、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0042】
あるいは、他の肝臓特異的プロモーター、例えば、α1アンチトリプシン(A1AT)、ヒトアルブミン(Miyatake et al.,J.Virol.,71:5124 32(1997))、及びB型肝炎ウイルスコアプロモーター(Sandig et
al.,Gene Ther.,3:1002 9(1996)、TTR最小エンハンサー/プロモーター、α-アンチトリプシンプロモーター、LSP(845nt)を使用してもよい。例えば、肝臓特異的遺伝子プロモーターデータベース、Cold Spring Harbor、http://rulai.schl.edu/LSPDを参照されたい。あるいは、他の組織特異的プロモーター、例えば、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーターなどの筋肉特異的プロモーター又は筋肉ハイブリッド(MH)プロモーターなどを使用してもよい。あるいは、他のプロモーター、例えば、構成的プロモーター(CMV、CBG、CB7など)、調節可能(誘導性)プロモーター[例えば、WO2011/126808及びWO2013/049493を参照されたい(参照により本明細書に援用される)]、又は生理学的キューに応答するプロモーターを、本明細書に記載のベクターに利用してもよい。任意選択的に、調節可能なシステムが選択される場合、調節機能を提供するために第3のベクターが必要になる可能性がある。
【0043】
プロモーターに加えて、遺伝子編集カセット、発現カセット、及び/又はベクターは、1つ以上の適切な「調節エレメント」又は「調節配列」を含有することができ、これには、エンハンサー、転写因子、転写終結因子、スプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナル(ポリA)などの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定させる配列(例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE))、翻訳効率を向上させる配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)、タンパク質の安定性を向上させる配列、並びに必要に応じて、コードされた産物の分泌を向上させる配列が含まれるが、これらに限定されない。好適なポリA配列の例としては、例えば、SV40、ウシ成長ホルモン(bGH)、及びTKポリAが挙げられる。好適なエンハンサーの例としては、例えば、とりわけαフェトタンパク質エンハンサー、TTR最小プロモーター/エンハンサー、LSP(TH結合グロブリンプロモーター/α1-マイクログロブリン/ビクニンエンハンサー)が挙げられる。これらの制御配列又は調節配列は、ヌクレアーゼコード配列及び導入遺伝子コード配列に作動可能に連結される。
【0044】
特定の実施形態では、遺伝子編集ベクターは、TBGプロモーター、1つ以上のαmic/bikエンハンサー、ARCUSメガヌクレアーゼのコード配列、任意選択的に、WPRE、及びポリAを含む。特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号42のnt211~nt2964を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集成分は、ヌクレアーゼをPCSK9標的遺伝子座における標的部位に導く配列を更に含む。PCSK9に特異的なメガヌクレアーゼなどの特定の実施形態では、ヌクレアーゼを標的部位に導くために更なる配列は必要とされない。しかしながら、例えば、Cas9の場合、「シングルガイドRNA」又は「sgRNA」と呼ばれる、標的配列に特異的な追加の配列が提供される。sgRNAは、Cas9と同じベクター上に(シス)、又は異なるベクター上に(トランス)提供され得る。本明細
書で使用される場合、sgRNAは、gRNA足場と組み合わせて、特異的DNA結合(すなわち、標的DNAと相同)のための少なくとも20塩基の配列(又は約24~28塩基、シード領域と呼ばれることもある)を有する。sgRNAの転写は、その5’末端で正確に開始される必要がある。鋳型DNA鎖を標的化する場合、sgRNAの塩基対形成領域は、転写配列と同じ配列同一性を有する。非鋳型DNA鎖を標的化する場合、sgRNAの塩基対形成領域は、転写配列の逆相補鎖である。任意選択的に、遺伝子編集ベクターは、2つ以上のsgRNAを含み得る。sgRNAは、Cas9(又はCpf1)酵素によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある。典型的には、sgRNAは、PAM配列の「すぐに」5’側にあり、すなわち、スペーサー又は介在配列が存在しない。一実施形態では、sgRNA「シード」コード配列は、AAGTTGGTCCCCAAAGTCCC(配列番号8)であり、これは、SaCas9がヒト及びマカクPCSK9のエクソン7を標的化するのに有用である。しかしながら、他のsgRNAも、当業者によって設計され得る。
【0046】
特定の実施形態では、sgRNAは、少なくとも20個のヌクレオチドを含み、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合し、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある。いくつかの実施形態では、シード領域は、PCSK9遺伝子における標的部位と100%の相補性を共有する。他の実施形態では、シード領域は、標的部位と比較して、1、2、3、4、又は5つのミスマッチを含有する。
【0047】
sgRNAは、RNAポリメラーゼプロモーター及び/又はターミネーターの制御下にある。特定の実施形態では、RNAポリメラーゼプロモーターは、U6プロモーターなどのPolIIIプロモーターである。別の実施形態では、プロモーターは、H1プロモーターである。例示的なU6プロモーターの配列は、配列番号10に見出すことができる。他の実施形態では、sgRNA及びRNAポリメラーゼプロモーターは、ドナーベクターに位置する。
【0048】
他の実施形態では、例えば、ヌクレアーゼがCas9である場合、遺伝子編集成分は、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)を更に含む。一実施形態では、NLSは、Cas9のコード配列に隣接する。特定の実施形態では、NLSは、配列番号5のnt4241~4288の配列を有する。例えば、Lu et al.Types of nuclear localization signals and mechanisms of protein import into the nucleus,Cell Commun Signal(May 2021)19:60(参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
【0049】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼのコード配列は、メッセンジャーRNA(mRNA)として提供される。mRNAは、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、及び/又はコード若しくは翻訳配列を含み得る。特定の実施形態では、Cas9のコード配列は、mRNAとして提供される。
【0050】
mRNAは、天然に存在する又は天然に存在しないmRNAであり得る。mRNAは、1つ以上の修飾核酸塩基、ヌクレオシド、又はヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の組成物中のmRNAは、少なくとも1つの修飾を含み、例えば、インビボでのヌクレアーゼ消化に対する改善された耐性を含む、核酸に向上した又は強化された安定性を付与する。mRNAは、数十、数百、又は数千の塩基対を含む、任意の数の塩基対を含み得る。任意の数(例えば、全て、いくつか、又はなし)の核酸塩基、ヌクレオシド、又はヌクレオチドは、置換、修飾、又はそうでなければ天然に存在しない正準種の類似体であり得る。特定の実施形態では、特定の核酸塩基型の全てが修飾され得る。例え
ば、mRNAにおける全てのシトシンが、5-メチルシトシンであり得る。本明細書で使用される場合、「修飾」及び「修飾された」という用語は、かかる用語が本明細書に提供される核酸に関連する場合、好ましくは、安定性を向上させ、mRNAを、野生型のmRNA又は天然に存在するバージョンのmRNAよりも安定(例えば、ヌクレアーゼ消化に耐性)にする少なくとも1つの改変を含む。本明細書で使用される場合、「安定した」及び「安定性」という用語は、かかる用語が本発明の核酸に関連する場合(特に、mRNAに関して)、例えば、通常、そのようなmRNAを分解することができるヌクレアーゼ(すなわち、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼ)による分解に対する向上した又は強化された耐性を指す。安定性の向上には、例えば、内因性酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ若しくはエキソヌクレアーゼ)による加水分解、又は他の破壊、又は標的細胞若しくは組織内の状態に対する感受性の低下が含まれ得、それによって、標的細胞、組織、対象、及び/又は細胞質におけるそのようなmRNAの存在を増加又は増強する。本明細書に提供される安定化mRNA分子は、それらの天然に存在する非修飾対応物(例えば、mRNAの野生型バージョン)と比較して、より長い半減期を示す。また、「修飾」及び「修飾された」という用語は、かかる用語が本発明のmRNAに関連する場合、例えば、タンパク質翻訳の開始において機能する配列(例えば、コザックコンセンサス配列)の包含を含む、mRNA核酸の翻訳を改善又は増強する改変も企図する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のmRNAは、それらをより安定にするために、化学的又は生物学的な修飾を受けている。mRNAに対する例示的な修飾としては、塩基の枯渇(例えば、1つのヌクレオチドの欠失若しくは別のヌクレオチドとの置換による)又は塩基の修飾(例えば、塩基の化学修飾)が挙げられる。本明細書で使用される「化学修飾」という語句は、自然に存在するmRNAに見られるものとは異なる化学物質を導入する修飾、例えば、修飾されたヌクレオチドの導入などの共有結合修飾(例えば、ヌクレオチド類似体、又はそのようなmRNA分子における天然には見出されないペンダント基の包含)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、mRNA配列におけるC及び/又はU残基の数が減少する。別の実施形態では、C及び/又はU残基の数は、特定のアミノ酸をコードする1つのコドンが、同じ又は関連するアミノ酸をコードする別のコドンに置換されることによって減少する。本発明のmRNA核酸に対する想定される修飾には、プソイドウリジン、プソイドウリジン(ψ)又は5-メチルシトシン(m5C)の組み込みも含まれる。本発明のmRNAに対する置換及び修飾は、当業者に容易に知られている方法によって行うことができる。
【0053】
特定の実施形態では、mRNAは、5’キャップ構造、鎖終結ヌクレオチド、ステムループ、及び/又はポリアデニル化シグナルを含む。キャップ構造又はキャップ種は、リンカーによって結合された2つのヌクレオシド部分を含む化合物であり、天然に存在するキャップ、天然に存在しないキャップ若しくはキャップ類似体、又はアンチリバースキャップ類似体から選択され得る。mRNAは、代わりに又は追加的に、鎖終結ヌクレオシドを含み得る。
【0054】
特定の実施形態では、mRNAは、ヒストンステムループなどのステムループを含む。ステムループは、1、2、3、4、5、6、7、8つ、又はそれ以上のヌクレオチド塩基対を含み得る。ステムループは、mRNAの任意の領域に位置し得る。例えば、ステムループは、非翻訳領域(5’非翻訳領域若しくは3’非翻訳領域)、コード領域、又はポリA配列若しくはポリAテールの中、前、又は後に位置し得る。
【0055】
特定の実施形態では、mRNAは、ポリA配列を含む。ポリA配列は、アデニンヌクレオチド又はその類似体若しくは誘導体の全体又は大部分で構成され得る。特定の実施形態
では、ポリA配列は、mRNAの3’非翻訳領域に隣接して位置するテールである。
【0056】
mRNAは、任意の天然に存在する若しくは天然に存在しない、又はそうでなければ修飾されたポリペプチドを含む、目的の任意のポリペプチド(例えば、ヌクレアーゼ)をコードし得る。mRNAによってコードされるポリペプチドは、任意のサイズであり得、任意の二次構造又は活性を有し得る。いくつかの実施形態では、mRNAによってコードされるポリペプチドは、細胞内で発現された場合、治療効果を有し得る。
【0057】
ドナーベクター
組成物、キット、及び方法は、治療用導入遺伝子のコード配列を提供するドナーベクターを含む。特定の実施形態では、ドナーベクターは、導入遺伝子をコードする核酸配列と、標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列と、を含む、発現カセットを含む。特定の実施形態では、導入遺伝子は、肝臓代謝障害又は他の遺伝性障害において異常に発現するタンパク質をコードする。導入遺伝子は、PCSK9以外のタンパク質をコードする。そのようなタンパク質としては、OTC、低密度リポタンパク質受容体(LDLr)、第IX因子、例えば、配列番号55若しくは56に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列、及び第VIII因子、例えば、配列番号53若しくは54に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
ドナーベクターを介して送達され得る更なる例示的な遺伝子としては、糖原病又は1A型欠損症(GSD1)に関連するグルコース-6-ホスファターゼ、PEPCK欠損症に関連するホスホエノールピルビン酸-カルボキシキナーゼ(PEPCK)、発作及び重度の神経発達障害に関連するセリン/スレオニンキナーゼ9(STK9)としても知られているサイクリン依存性キナーゼ様5(CDKL5)、ガラクトース血症に関連するガラクトース-1リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(例えば、配列番号63若しくは64に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、フェニルケトン尿症(PKU)に関連するフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、ヒドロキシ酸オキシダーゼ1(GO/HAO1)(例えば、配列番号49若しくは50に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)及びAGXT(例えば、配列番号47若しくは48に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)を含む原発性高シュウ酸尿症1型に関連する遺伝子産物、メープルシロップ尿症に関連するBCKDH、BCKDH-E2、BAKDH-E1a、及びBAKDH-E1bを含む分岐鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ、チロシン血症1型に関連するフマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ、メチルマロン酸血症に関連するメチルマロニル-CoAムターゼ、中鎖アセチルCoA欠損症に関連する中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症に関連するオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、シトルリン血症に関連するアルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)(例えば、配列番号69若しくは70に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症、メチルマロン酸血症(MMA)、ニーマン・ピック病C1型に関連するNPC1、プロピオン酸血症(PA)、家族性高コレステロール血症(FH)に関連する低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質(例えば、配列番号73若しくは74に示され
る配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列(例えば、WO2015/164778に記載されているものなどLDLRバリアント)、あるいは配列番号に示される配列、又は、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、認知症に関連するApoE及びApoCタンパク質、クリグラー・ナジャー病に関連するリポタンパク質リパーゼ(LPL)(例えば、配列番号67若しくは68に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ、重症複合免疫不全症に関連するアデノシンデアミナーゼ、痛風及びレッシュ・ナイハン症候群に関連するヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ビオチミダーゼ欠損症に関連するビオチミダーゼ、ファブリー病に関連するα-ガラクトシダーゼA(α-GalA)(例えば、配列番号75若しくは76に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、GM1ガングリオシドーシスに関連するβ-ガラクトシダーゼ(GLB1)、ウィルソン病に関連するATP7B、ゴーシェ病2型及び3型に関連β-グルコセレブロシダーゼ(例えば、配列番号51若しくは52に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、ツェルウェーガー症候群に関連するペルオキシソーム膜タンパク質70kDa、異染性白質ジストロフィーに関連するアリールスルファターゼA(ARSA)、クラッベ病に関連するガラクトセレブロシダーゼ(GALC)酵素、ポンペ病に関連するα-グルコシダーゼ(GAA)(例えば、配列番号79若しくは80に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、ニーマン・ピック病A型に関連するスフィンゴミエリナーゼ(SMPD1)遺伝子、カルノシナーゼ(CN1)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)、エリスロポエチン(EPO)、カルバミルリン酸シンテターゼ(CPS1)、N-アセチルグルタミン酸シンテターゼ(NAGS)、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)(アルギニノコハク酸尿症)(例えば、配列番号57若しくは58に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)及びアルギナーゼ(AG)、成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)に関連するアルギニノコハク酸シンターゼ(WO2018/144709、参照により本明細書に援用される)、尿素サイクル障害に関連するカルバモイルリン酸シンターゼ1(CPS1)、脊髄性筋萎縮症に関連する運動神経細胞生存(SMN)タンパク質、ファーバー脂肪肉芽腫症に関連するセラミダーゼ、GM2ガングリオシドーシス及びテイ・サックス病及びサンドホフ病に関連するb-ヘキソサミニダーゼ、アスパルチルグルコサミン尿症に関連するアスパルチルグルコサミニダーゼ、フコシドーシスに関連するα-フコシダーゼ、α-マンノシドーシスに関連するα-マンノシダーゼ、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)に関連するポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、アルファ-1アンチトリプシン欠損症(肺気腫)の治療のためのα-1アルファ-1アンチトリプシン(例えば、配列番号77若しくは78に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、サラセミア又は腎不全による貧血の治療のためのエリスロポエチン、虚血性疾患の治療のための血管内皮増殖因子、アンジオポエチン-1、及び線維芽細胞増殖因子、アテローム性動脈硬化症、血栓症、又は塞栓症などに見られる閉塞した血管の治療のためのトロンボモジュリン及び組織因子経路阻害因子、パーキンソン病の治療のための芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)及びチロシンヒドロキシラーゼ(
TH)、うっ血性心不全の治療のためのβアドレナリン受容体、ホスホランバンに対するアンチセンス又はホスホランバンの変異型、筋小胞体アデノシントリホスファターゼ-2(SERCA2)、及び心臓アデニリルシクラーゼ、様々ながんの治療のためのp53などの腫瘍抑制遺伝子、炎症性障害、免疫障害、及びがんの治療のためのサイトカイン(例えば、様々なインターロイキンのうちの1つ)、筋ジストロフィーの治療のためのジストロフィン若しくはミニジストロフィン及びユートロフィン若しくはミニユートロフィン、並びに糖尿病の治療のためのインスリン又はGLP-1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
送達のための好適な導入遺伝子の例としては、家族性高コレステロール血症(例えば、VLDLr、LDLr、ApoE、例えば、参照により本明細書に援用されるWO2020/132155、WO2018/152485、WO2017/100682を参照)、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、及び希少疾患又は奇病に関連するものが含まれ得る。そのような希少疾患の例としては、とりわけ、脊髄性筋萎縮症(SMA)、ハンチントン病、レット症候群(例えば、メチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)、UniProtKB-P51608)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、フリードライヒ運動失調症(例えば、フラタキシン)、プログラニュリン(PRGN)(前頭側頭型認知症(FTD)、進行性非流暢性失語症(PNFA)、及び意味認知症を含む、非アルツハイマー性脳変性に関連する)が含まれ得る。他の有用な遺伝子産物としては、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、アルギノコハク酸シンテターゼ、アルギノコハク酸リアーゼ欠損症の治療のためのアルギノコハク酸リアーゼ(ASL)、アルギナーゼ、フマル酢酸ヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ-1アンチトリプシン、アカゲザルアルファ-フェトプロテイン(AFP)、アカゲザル絨毛性ゴナドトロピン(CG)、グルコース-6-ホスファターゼ(例えば、配列番号59若しくは60に示される配列、又は配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、遺伝性血管浮腫に関連する血漿プロテアーゼC1阻害剤(SERPING1)(例えば、配列番号61若しくは62に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、ホモシスチン尿症に関連するシスタチオンβシンターゼ(例えば、配列番号65若しくは66に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列)、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、β-グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、プロテインH、プロテインT、嚢胞性線維症膜貫通制御因子(CFTR)配列、及びジストロフィン遺伝子産物[例えば、ミニ又はマイクロジストロフィン]が挙げられる。更に他の有用な遺伝子産物は、酵素補充療法に有用であり得るような酵素を含み、これは酵素の不十分な活性に起因する様々な状態において有用である。例えば、マンノース-6-リン酸を含む酵素は、リソソーム蓄積症の治療に利用され得る(例えば、好適な遺伝子は、β-グルクロニダーゼ(GUSB)をコードする遺伝子を含む)。送達のための好適な導入遺伝子の例としては、参照により本明細書に援用される、2020年12月18日に出願されたPCT/US20/66167、2019年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/950,834号、及び2021年1月11日に出願された米国仮特許出願第63/136,059号に記載される、AAVベクターで送達されるヒトフラタキシンが挙げられ得る。送達のための好適な導入遺伝子の別の例としては、例えば、参照により本明細書に援用される、現在はWO2020/223362A1として公開されている、2020年4月30
日のPCT/US20/30493、現在はWO2020/223356A1として公開されている、2020年4月20日のPCT/US20/30484、2019年4月30日に出願された米国仮特許出願第62/840,911号、2019年10月10日に出願された米国仮特許出願第62/913,401号、2020年5月14日に出願された米国仮特許出願第63/024,941号、及び2020年11月4日に出願された米国仮特許出願第63/109,677号に記載される、AAVベクターで送達されるヒト酸-α-グルコシダーゼ(GAA)が含まれ得る。また、送達のための好適な導入遺伝子の別の例としては、例えば、参照により本明細書に援用される、現在はWO2014/151341として公開されている2014年3月13日のPCT/US2014/025509、及び2013年3月15日に出願された米国仮特許出願第61/788,724号に記載される、AAVベクターで送達されるヒトα-L-イドゥロニダーゼ(IDUA)が含まれ得る。
【0060】
他の有用な治療用産物としては、心筋を含む筋肉で発現されるものが挙げられる。導入遺伝子によってコードされる他の有用な治療用産物としては、ホルモン並びに増殖因子及び分化因子が含まれ、限定されないが、インスリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮増殖因子(EGF)、形質転換増殖因子α(TGFα)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン増殖因子I及びII(IGF-I及びIGF-II)、形質転換増殖因子βスーパーファミリーのうちのいずれか1つ(TGFβ、アクチビン、インヒビン)、又は骨形成タンパク質(BMP)BMP1-15のうちのいずれか、成長因子のヘレグルイン/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1つ、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン(NT-3及びNT-4/5)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのうちのいずれか1つ、ネトリン-1及びネトリン-2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグ、チロシンヒドロキシラーゼが挙げられる。本明細書で有用な他の導入遺伝子としては、ムコ多糖症I-VII型(IDUA、IDS、GNA、HGSNAT、NAGLU、SGSH、GALNS、GLB1、ARSB、GUSB)を治療するためのものが挙げられる。MPSIを治療するのに有用な例示的な配列は、WO2019/010335に見出すことができる(参照により本明細書に援用される)。MPSIIを治療するのに有用な例示的な配列は、WO2019/060662に見出すことができる(参照により本明細書に援用される)。MPSIIIaを治療するのに有用な例示的な配列は、WO2019/108857に見出すことができる(参照により本明細書に援用される)。MPSIIIbを治療するのに有用な例示的な配列は、WO2019/108856に見出すことができる(参照により本明細書に援用される)。
【0061】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子カセットは、プロモーター、導入遺伝子コード配列、及びポリA配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーター(例えば、TBGプロモーター、TBG-S1プロモーター、HLPプロモーター)又は本明細書に記載の他のプロモーターである。他の実施形態では、導入遺伝子は、プロモーターなしで提供され、天然PSCK9プロモーターの下流のゲノムに挿入される。
【0062】
導入遺伝子カセット、発現カセット、及び/又は(編集若しくはドナー)ベクターは、
エンハンサー、転写因子、転写終結因子、スプライシング及びポリアデニル化シグナル(ポリA)などの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNA、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)を安定させる配列、翻訳効率を向上させる配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)、タンパク質安定性を向上させる配列、並びに必要に応じて、コードされた産物の分泌を向上させる配列を含むが、これらに限定されない、1つ以上の適切な「調節エレメント」又は「調節配列」を含有し得る。好適なポリA配列の例としては、例えば、SV40、ウシ成長ホルモン(bGH)、及びTKポリAが挙げられる。好適なエンハンサーの例としては、例えば、とりわけαフェトタンパク質エンハンサー、TTR最小プロモーター/エンハンサー、LSP(TH結合グロブリンプロモーター/α1-マイクログロブリン/ビクニンエンハンサー)が挙げられる。これらの制御配列又は調節配列は、ヌクレアーゼコード配列又は導入遺伝子コード配列に作動可能に連結される。
【0063】
導入遺伝子カセットに加えて、特定の実施形態では、ドナーベクターはまた、導入遺伝子カセットの5’及び3’側に相同組換え(HDR)アームを含み、内因性ゲノムへの導入遺伝子の相同組換えを促進する。相同性アームは、標的PCSK9遺伝子座に向けられ、様々な長さのものであり得る。いくつかの実施形態では、HDRアームは、各々、約100bp~約1000bpの長さである。他の実施形態では、HDRアームは、各々、約130bp~約500bpである。他の実施形態では、HDRアームは、各々、約100bp~約300bpである。他の実施形態では、HDRアームは、各々、約100bp~約400bpである。他の実施形態では、HDRアームは、各々、約250bp~約500bpである。他の実施形態では、HDRアームは、各々、約300bp~約500bpである。特定の実施形態では、HDRアームは、各々、約100bp、125bp、150bp、175bp、200bp、225bp、250bp、275bp、300bp、325bp、350bp、375bp、400bp、425bp、450bp、450bp、475bp、又は500bpである。一実施形態では、HDRアームは、130bpである。別の実施形態では、HDRアームは、137bpである。他の実施形態では、HDRアームは、約130bp~140bpである。別の実施形態では、HDRアームは、約500bpである。別の実施形態では、HDRアームは、存在しない。HDRアームは、理想的には、100%の相補性である必要はないが、標的PCSK9遺伝子座と高レベルの相補性を共有する。いくつかの実施形態では、各HDRアームには、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、又はそれ以上のミスマッチが許される。PCSK9エクソン7を標的化するための好適なHDRアーム配列は、配列番号24~29に示されている。一実施形態では、HDRアーム配列は、配列番号24~29から選択される。
【0064】
また、本明細書では、OTC欠損症を有する患者に長期の治療効果を提供する、ゲノムのPCSK9セーフハーバーにおけるOTC導入遺伝子カセットのヌクレアーゼ媒介性部位特異的組み込みのための組成物、キット、及び方法も提供される。OTCの操作されたコード配列は、本明細書ではhOTCco2と称され、配列番号17に示される。配列番号17の配列、又は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.9%の同一性を共有する配列を有する核酸が提供される。一実施形態では、核酸は、配列番号30に示される天然OTCコード配列と、80%未満、79%未満、78%未満、77%未満、76%未満、75%未満、74%未満、73%未満、72%未満、71%未満、又は70%未満の同一性を共有する。
【0065】
OTCの治療に有用な他の配列は、WO2015/138348及びWO2015/138357に記載されている(参照により本明細書に援用される)。PKUの治療に有用な例示的な配列は、WO2018/126112に記載されている(参照により本明細書
に援用される)。他の配列は、配列番号71若しくは72に示される配列、又はそれと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列である。
【0066】
ウイルスベクター及び非ウイルスベクター
本明細書に記載の(遺伝子編集及びドナー)発現カセット又はコード配列は、標的細胞(例えば、肝細胞)への送達のために、任意の好適な遺伝エレメント(例えば、ベクター)に操作され得る。本明細書で使用される「ベクター」は、核酸配列を含む生物学的又は化学的部分であり、当該核酸配列の複製又は発現のために適切な宿主細胞に導入され得る。一般的なベクターとしては、非ウイルスベクター及びウイルスベクターが挙げられる。本明細書で使用される場合、非ウイルス系は、ナノ粒子、エレクトロポレーションシステム、及び新規の生体材料、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、プラスミド、コスミド(Phillip McClean、www.ndsu.edu/pubweb/~mcclean/-plsc731/cloning/cloning4.htm)、並びに人工染色体(Gong,Shiaoching,et al.“A gene expression atlas of the central nervous system based on bacterial artificial chromosomes.”Nature 425.6961(2003):917-925)から選択され得る。一実施形態では、核酸は、本明細書に記載される、又は当該技術分野で既知の非ウイルスベクター又は脂質ナノ粒子を介して送達される。
【0067】
特定の実施形態では、遺伝子編集成分は、脂質ナノ粒子(LNP)にカプセル化される。例えば、Conway et al,Non-viral Delivery of Zinc Finger Nuclease mRNA Enables Highly
Efficient In Vivo Genome Editing of Multiple Therapeutic Gene Targets,Molecular
Therapy,27(4):866-877(April 2019)(参照により本明細書に援用される)を参照されたい。本明細書で使用される場合、「脂質ナノ粒子」という語句は、1つ以上の脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及びPEG修飾脂質)を含む移送ビヒクルを指す。好ましくは、脂質ナノ粒子は、1つ以上のmRNAを1つ以上の標的細胞(例えば、肝臓及び/又は筋肉)に送達するように製剤化される。好適な脂質の例には、例えば、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシド)が含まれる。また、単独で、又は他の移送ビヒクルと組み合わせての、移送ビヒクルとしてのポリマーの使用も企図される。好適なポリマーには、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギネート、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン、デンドリマー、及びポリエチレンイミンが含まれ得る。一実施形態では、移送ビヒクルは、標的細胞へのmRNAのトランスフェクションを促進するその能力に基づいて選択される。mRNAに有用な脂質ナノ粒子は、タンパク質産生のためのデポーとして機能する標的細胞へのmRNAの送達をカプセル化及び/又は増強するための陽イオン性脂質を含む。本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」という語句は、選択されたpH、例えば、生理的pHで正味の正電荷を担持するいくつかの脂質種のいずれかを指す。企図される脂質ナノ粒子は、1つ以上のカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及びPEG修飾脂質を用いる変動する比の多成分脂質混合物を含むことによって調製され得る。いくつかのカチオン性脂質が文献に記載されており、その多くは市販されている。例えば、WO2014/089486、US2018/0353616A1、及びUS8,853,377B2を参照されたく、これらは参照により組み込まれる。特定の実施形態では、LNP製剤は、コレステロール、イオン化性脂質、ヘルパー脂質、PEG脂質、及びカ
プセル化核酸の周囲に脂質二重層を形成するポリマーを含む慣例的な手順を使用して実施される(Kowalski et al.,2019,Mol.Ther.27(4):710-728)。いくつかの実施形態では、LNPは、ヘルパー脂質DOPEを有するカチオン性脂質(すなわち、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、又は1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP))を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、イオン化性脂質Dlin-MC3-DMAイオン化性脂質、又はジケトピペラジン系イオン化性脂質(cKK-E12)を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)又はポリ(β-アミノ)エステル(PBAE)を含む。例えば、WO2014/089486、US2018/0353616A1、US2013/0037977A1、WO2015/074085A1、US9670152B2、及びUS8,853,377B2を参照されたく、これらは参照により組み込まれる。特定の実施形態では、遺伝子編集成分は、Cas9 mRNAを含み、LNPは、gRNAも含む。
【0068】
本明細書で有用な特定のLNPとしては、WO2021/077066及びWO2021/055892に記載されているものが挙げられる(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)。有用なLNPとしては、肝臓への送達の増強を示すものが挙げられる。LNP製剤は、肝臓送達を増強するために変動し得る。例えば、型及びイオン化可能な脂質:mRNA比、mRNA:sgRNA比、イオン化可能な脂質のモル比、リン脂質、コレステロール、及びPEG脂質などが変動し得る。一実施形態では、LNPは、Kauffman,K.J.;Dorkin,J.R.;Yang,J.H.;Heartlein,M.W.;DeRosa,F.;Mir,F.F.;Fenton,O.S.;Anderson,D.G.,Optimization of lipid
nanoparticle formulations for mRNA delivery in vivo with fractional factorial and definitive screening designs.Nano letters 2015,15(11),7300-7306(参照により本明細書に援用される)に記載されているものである。特定の実施形態では、LNPは、5:1~25:1の間で変化するイオン化可能な脂質:mRNA重量比で設計される。特定の実施形態では、イオン化可能な脂質:mRNA重量比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12.5:1、15:1、20:1、又は25:1である。特定の実施形態では、mRNA:sgRNA重量比は、1:1、1:2、2:1、1:4、1:5、5:1、4:1、3:1、又は2:1である。
【0069】
他のLNPも記載されており、本明細書で有用である。例えば、WO2016/118724、US10,413,618B2、US10,723,692B2、及びUS8754062B2(これらの各々は、参照により本明細書に援用される)を参照されたい。
【0070】
本明細書の特定の例は、AAVベクターゲノムにおける遺伝子編集成分(ヌクレアーゼ)コード配列及び導入遺伝子コード配列を含有するAAVベクターの使用を例示する。しかしながら、本明細書に記載の構築物の使用は、AAV構築物に限定されず、他のベクターに使用することができる。特定の実施形態では、ベクターゲノムは、異なるベクター(例えば、組換えボカウイルス)にパッケージングされ得る。特定の実施形態では、発現カセットは、異なるウイルスベクターに、非ウイルスベクターに、及び/又は異なる送達系にパッケージングされ得る。特定の実施形態では、遺伝子編集成分は、LNP中に提供される。
【0071】
「プラスミド」又は「プラスミドベクター」は、一般に、本明細書では、ベクター名の前及び/又は後に小文字のpで示される。本発明に従って使用することができるプラスミ
ド、他のクローニング及び発現ベクター、それらの特性、並びにそれらの構築/操作方法は、当業者には容易に明らかである。一実施形態では、本明細書に記載される核酸配列又は本明細書に記載される発現カセットは、ウイルスベクターを生成すること、及び/又は宿主細胞、例えば、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどへの送達に有用であり、その上で担持されるヌクレアーゼ配列を転写する、好適な遺伝要素(ベクター)に操作される。選択されるベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技法、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合を含む、任意の好適な方法によって送達され得る。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技法を含む。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい。
【0072】
特定の実施形態では、発現カセットは、ウイルスカプシドへのパッケージングのためにベクターゲノムに位置する。例えば、AAVベクターゲノムについて、発現カセットの成分は、AAV逆位末端反復配列によって5’最末端及び3’最末端に隣接される。例えば、5’AAV ITR、発現カセット、3’AAV ITR。他の実施形態では、自己相補性AAVが選択されてもよい。他の実施形態では、レトロウイルス系、レンチウイルスベクターシステム、又はアデノウイルス系が使用され得る。
【0073】
AAVベクター
特定の実施形態では、遺伝子編集ベクター及び/又はドナーベクターは、組換えAAVとして提供される。「組換えAAV」又は「rAAV」は、2つの要素、AAVカプシド、及びAAVカプシド内にパッケージングされた少なくとも非AAVコード配列を含むベクターゲノムを含むDNAse耐性ウイルス粒子である。特に明記しない限り、この用語は「rAAVベクター」又は「AAVベクター」という語句と互換的に使用され得る。rAAVは、任意の機能的AAV rep遺伝子又は機能的AAV cap遺伝子を欠き、後代を生成することができないため、「複製欠損ウイルス」又は「ウイルスベクター」である。特定の実施形態では、唯一のAAV配列は、AAV逆位末端反復配列(ITR)であり、ITR間に位置する遺伝子及び調節配列がAAVカプシド内にパッケージングされることを可能にするために、典型的にはベクターゲノムの5’及び3’最末端に位置する。
【0074】
AAVカプシドの供給源は、数十種の天然に発生し、利用可能なアデノ随伴ウイルス、及び操作されたAAVのうちのいずれかの1つであり得る。遺伝子編集ベクター及び/又はドナーベクターのためのAAVカプシドの供給源は、一実施形態では、同じである。別の実施形態では、遺伝子編集ベクター及び/又はドナーベクターのためのAAVカプシドの供給源は、異なる。アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターは、AAVタンパク質カプシドを有するAAV DNase耐性粒子であり、その中に、標的細胞に送達するための核酸配列がパッケージングされる。AAVカプシドは、60個のカプシド(cap)タンパク質サブユニット、VP1、VP2、及びVP3で構成され、選択されるAAVに応じて、およそ1:1:10~1:1:20の比で二十面体対称に配置される。上述のAAVウイルスベクターのカプシドの供給源として、様々なAAVが選択され得る。例えば、米国特許出願公開第2007/0036760-A1号、米国特許出願公開第2009/0197338-A1号、EP1310571を参照されたい。また、WO2003/042397(AAV7及び他のサルAAV)、米国特許第7790449号及び米国特許第7282199号(AAV8)、WO2005/033321及びUS7,906,111(AAV9)、並びにWO2006/110689、WO2003/042397(rh.10)及びWO2018/160582(AAVhu68)も参照されたい
。これらの文献は、AAVを生成するために選択され得る他のAAVも記載し、参照により組み込まれる。
【0075】
別途指定されない限り、本明細書に記載されるAAVカプシド、ITR、及び他の選択されるAAV成分は、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV8bp、AAV7M8、AAVAnc80、AAVrh10、AAVrh79、及びAAVPHP.Bとして一般的に同定されるAAV、並びに既知の若しくは言及されたAAVのうちのいずれかのバリアント、又は未だ発見されていないAAV若しくはそのバリアント、又はそれらの混合物を含む任意のAAVの中から容易に選択され得る。例えば、参照により本明細書に援用される、WO2005/033321を参照されたい。一実施形態では、AAVカプシドは、AAV1カプシド若しくはそのバリアント、AAV8カプシド若しくはそのバリアント、AAV9カプシド若しくはそのバリアント、AAVhu.68カプシド若しくはそのバリアント、AAVrh.10カプシド若しくはそのバリアント、AAVrh64R1カプシド若しくはそのバリアント、AAVhu.37カプシド若しくはそのバリアント、又はAAV3B若しくはそのバリアントである。一態様では、カプシドは、AAVhu.37カプシドである。例えば、WO2019/168961及びWO2019/169004(参照により本明細書に援用される)を参照されたい。他の実施形態では、AAVカプシドは、AAVrh79カプシド又はそのバリアントである。他の実施形態では、AAVカプシドは、AAVrh.90又はそのバリアントである。
【0076】
特定の実施形態では、rAAVは、AAVhu37カプシドを含む。AAVhu37カプシドは、配列番号38のアミノ酸配列をコードする核酸配列の産物であるvp1タンパク質の異種集団、配列番号38の少なくとも約アミノ酸138~738でのアミノ酸配列をコードする核酸配列の産物であるvp2タンパク質の異種集団、及び配列番号38の少なくともアミノ酸204~738をコードする核酸配列の産物であるvp3タンパク質の異種集団を含み、vp1、vp2、及びvp3タンパク質は、配列番号38のアスパラギン-グリシン対中の少なくとも2つの高度脱アスパラギン(N)を含むアミノ酸修飾を有する亜集団を含み、任意選択的に、他の脱アミド化アミノ酸を含む亜集団を更に含み、脱アミド化は、アミノ酸変化をもたらす。AAVhu37は、AAVhu37 VP1(配列番号38)の番号付けに基づいて、例えばN57位、N263位、N385位、及び/又はN514位に高度脱アミド化残基を有することによって特徴付けされる。
【0077】
脱アミド化は、以下の表に示されるように、他の残基において、及び、例えば、WO2019/168961(2019年9月6日公開、参照により本明細書に援用される)において観察されている。特定の実施形態では、AAVhu37カプシドは、トリプシン酵素を用いた質量分析を使用して決定される、以下に提供される範囲で、以下の位置のうちの1つ以上で修飾される。特定の実施形態では、以下の位置、又はNに続くグリシンのうちの1つ以上は、本明細書に記載されるように修飾される。例えば、特定の実施形態では、Gは、例えば、58位、264位、386位、又は515位でS又はAに修飾され得る。一実施形態では、AAVhu37カプシドは、N57位/G58位からN57Q位又はG58A位で修飾され、この位置で減少した脱アミド化を有するカプシドを得る。別の実施形態では、N57/G58は、NS57/58又はNA57/58に改変される。しかしながら、特定の実施形態では、NGがNS又はNAに改変される場合、脱アミド化の増加が観察される。特定の実施形態では、NG対のNは、Gを保持しながらQに修飾される。特定の実施形態では、NG対の両方のアミノ酸が修飾される。特定の実施形態では、N385Qは、その位置における脱アミド化の有意な低減をもたらす。特定の実施形態では、N499Qは、その位置における脱アミド化の有意な増加をもたらす。
【0078】
特定の実施形態では、AAVhu37は、これら又は他の残基が、例えば、典型的には
10%未満で脱アミド化され得、かつ/又はメチル化(例えば、~R487)(典型的には、所与の残基で5%未満、より典型的には1%未満)、異性化(例えば、D97で)(典型的には、所与の残基で5%未満、より典型的には1%未満、リン酸化(例えば、存在する場合、約10~約60%、又は約10~約30%、又は約20~約60%の範囲)(例えば、S149、~S153、~S474、~T570、~S665のうちの1つ以上で)、若しくは酸化(例えば、W248、W307、W307、M405、M437、M473、W480、W480、W505、M526、M544、M561、W621、M637、及び/又はW697のうちの1つ以上で)を含む他の修飾を有し得る。任意選択的に、Wは、キヌレニンに酸化され得る。
【表1】
【0079】
更に他の位置は、これら又は他の修飾(例えば、アセチル化又は更なる脱アミド化)を有し得る。特定の実施形態では、AAVhu37 vp1カプシドタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号37で提供される。他の実施形態では、配列番号37と70%~99.9%同一の核酸配列を選択して、AAVhu37カプシドタンパク質を発現し得る。特定の他の実施形態では、核酸配列は、配列番号37と少なくとも約75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は少なくとも99%同一である。しかしながら、配列番号38のアミノ酸配列をコードする他の核酸配列は、rAAVhu37カプシドの産生に使用するために選択され得る。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号37の核酸配列、又は配列番号38をコードする配列番号37と少なくとも70%~99%同一、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を有する。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号37の核酸配列、又は配列番号37の約nt412~約nt2214と、少なくとも70%~99%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を有し、配列番号38のvp2カプシドタンパク質(約aa138~738)をコードする。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号37の約nt610~約nt2214の核酸配列、又は配列番号37のntと少なくとも70%~99%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を有し、配列番号38のvp3カプシドタンパク質(約aa204~738)をコードする。EP2345731B1及びその中の配列番号88(参照により援用される)を参照されたい。
【0080】
特定の実施形態では、rAAVは、AAV8カプシドを含む。AAV8カプシドは、質量分析を使用して決定される、カプシド中のVPタンパク質の総量に基づいて、以下の表に定義されるように脱アミド化されるVPアイソフォームの異種集団を含む。好適な修飾には、脱アミド化標識された上記段落に記載の修飾が含まれ、本明細書に援用される。特定の実施形態では、AAVカプシドは、質量分析を使用して決定されるように、以下に提供される範囲で、以下の位置のうちの1つ以上で修飾される。特定の実施形態では、以下の位置、又はNに続くグリシンのうちの1つ以上は、本明細書に記載されるように修飾される。特定の実施形態では、人工NGは、以下に示される位置の1つとは異なる位置に導入される。特定の実施形態では、以下の位置、又はNに続くグリシンのうちの1つ以上は、本明細書に記載されるように修飾される。例えば、特定の実施形態では、Gは、例えば、58位、67位、95位、216位、264位、386位、411位、460位、500位、515位、又は541位でS又はAに修飾され得る。NG57/58がNS57/58又はNA57/58に改変される場合、脱アミド化の有意な減少が観察される。しかしながら、特定の実施形態では、NGがNS又はNAに改変される場合、脱アミド化の増加が観察される。特定の実施形態では、NG対のNは、Gを保持しながらQに修飾される。特定の実施形態では、NG対の両方のアミノ酸が修飾される。特定の実施形態では、N385Qは、その位置における脱アミド化の有意な低減をもたらす。特定の実施形態では、N499Qは、その位置における脱アミド化の有意な増加をもたらす。特定の実施形態では、NG変異は、N263(例えば、N263A)に位置する対に作製される。特定の実施形態では、NG変異は、N514(例えば、N514A)に位置する対に作製される。特定の実施形態では、NG変異は、N540(例えば、N540A)に位置する対に作製される。特定の実施形態では、複数の変異及びこれらの位置での変異の少なくとも1つを含むAAV変異が操作される。特定の実施形態では、変異は、N57位に作製されない。特定の実施形態では、変異は、N94位に作製されない。特定の実施形態では、変異は、N305位に作製されない。特定の実施形態では、変異は、G386位に作製されない。特定の実施形態では、変異は、Q467位に作製されない。特定の実施形態では、変異は、N479位に作製されない。特定の実施形態では、変異は、N653位に作製されない。特定の実施形態では、カプシドは、「NG」対以外の位置で「N」又は「Q」を減少させるように修飾される。残基番号は、配列番号36に再現される公開されたAAV8配列に基づく。
【表2-1】
【表2-2】
【0081】
特定の実施形態では、rAAVは、2019年9月6日に公開されたWO2019/169004(参照により本明細書に援用される)に記載されているようなAAVrh79カプシドを含む。一実施形態では、AAVrh79カプシドは、AAVrh79 vp1タンパク質、AAVrh79 vp2タンパク質、及びAAVrh79 vp3タンパク質の異種集団を含む。一実施形態では、AAVrh79カプシドは、配列番号34の1~738の予測されたアミノ酸配列をコードする核酸配列から発現することにより産生される。任意選択的に、vp1固有領域(約aa1~137)又はvp2固有領域(約aa1~203)を除く核酸配列からのvp3タンパク質、配列番号33から産生されるvp1タンパク質、又は配列番号34の1~738の予測されたアミノ酸配列をコードする配列番号33と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp1タンパク質を共発現する配列。他の実施形態では、配列番号34の少なくとも約アミノ酸138~738の予測されたアミノ酸配列をコードする核酸配列からの発現により産生されるAAVrh79 vp2タンパク質、配列番号33の少なくともヌクレオチド412~2214を含む配列から産生されるvp2タンパク質、若しくは配列番号34の少なくともアミノ酸約138~738の予測されたアミノ酸配列をコードする、配列番号33の少なくともヌクレオチド412~2214と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp2タンパク質、配列番号34の少なくともアミノ酸約204~738の予測されたアミノ酸配列をコードする核酸配列からの発現により産生されるAAVrh79 vp3タンパク質、配列番号33の少なくともヌクレオチド610~2214を含む配列から産生されるvp3タンパク質、若しくは配列番号34の少なくとも約アミノ酸204~738の予測されたアミノ酸配列をコードする、配列番号33の少なくともヌクレオチド610~2214と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp3タンパク質。
【0082】
特定の実施形態では、AAVrh79カプシドは、配列番号34のアミノ酸配列をコードする核酸配列の産物であるvp1タンパク質の異種集団、配列番号34の少なくとも約アミノ酸138~738でのアミノ酸配列をコードする核酸配列の産物であるvp2タン
パク質の異種集団、及び配列番号34の少なくともアミノ酸204~738をコードする核酸配列の産物であるvp3タンパク質の異種集団を含む。
【0083】
AAVrh79 vp1、vp2、及びvp3タンパク質は、配列番号34におけるアスパラギン-グリシン対中の少なくとも2つの高度脱アミド化アスパラギン(N)を含むアミノ酸修飾を有する亜集団を含み、任意選択的に、他の脱アミド化アミノ酸を含む亜集団を更に含み、脱アミド化は、アミノ酸変化をもたらす。配列番号34の数と比較して、N-G対N57、N263、N385、及び/又はN514で高いレベルの脱アミド化が観察される。脱アミド化は、以下の表及び実施例に示されるように、他の残基において観察されている。特定の実施形態では、AAVrh79は、他の残基が、例えば、典型的には10%未満で脱アミド化され得、かつ/又はメチル化(例えば、~R487)(典型的には、所与の残基で5%未満、より典型的には1%未満)、異性化(例えば、D97で)(典型的には、所与の残基で5%未満、より典型的には1%未満、リン酸化(例えば、存在する場合、約10~約60%、又は約10~約30%、又は約20~約60%の範囲)(例えば、S149、~S153、~S474、~T570、~S665のうちの1つ以上で)、若しくは酸化(例えば、W248、W307、W307、M405、M437、M473、W480、W480、W505、M526、M544、M561、W621、M637、及び/又はW697のうちの1つ以上で)を含む他の修飾を有し得る。任意選択的に、Wは、キヌレニンに酸化され得る。
【表3】
【0084】
特定の実施形態では、AAVrh79カプシドは、トリプシン酵素を用いた質量分析を使用して決定される、上記の表で特定された位置の1つ以上で、以下に示す範囲で修飾される。特定の実施形態では、以下の位置、又はNに続くグリシンのうちの1つ以上は、本明細書に記載されるように修飾される。残基番号は、本明細書に提供されるAAVrh7
9配列に基づく。配列番号34を参照されたい。
【0085】
特定の実施形態では、AAVrh79 vp1カプシドタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号33で提供される。他の実施形態では、配列番号33と70%~99.9%同一の核酸配列を選択して、AAVrh79カプシドタンパク質を発現し得る。特定の他の実施形態では、核酸配列は、配列番号33と少なくとも約75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、又は少なくとも99%、又は99.9%同一である。しかしながら、配列番号34のアミノ酸配列をコードする他の核酸配列は、rAAVカプシドの産生に使用するために選択され得る。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号33の核酸配列、又は配列番号34をコードする配列番号33と少なくとも70%~99%同一、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を有する。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号33の核酸配列、又は配列番号33の約nt412~約nt2214と少なくともと少なくとも70%~99%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を有し、配列番号34のvp2カプシドタンパク質(約aa138~738)をコードする。特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号33の約nt610~約nt2214の核酸配列、又は配列番号34のvp3カプシドタンパク質(約aa204~738)をコードする配列番号33のntと少なくとも70%~99%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%同一の配列を有する。
【0086】
本発明はまた、変異体AAVrh79をコードする核酸配列を包含し、1つ以上の残基は、本明細書で特定される脱アミド化又は他の修飾を低減させるために改変されている。かかる核酸配列は、変異体rAAVrh79カプシドの産生において使用することができる。
【0087】
特定の実施形態では、rAAVは、2020年11月5日に公開されたWO2020/223232(参照により本明細書に援用される)に記載されているAAVrh.90カプシドを含む。更なる態様では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供され、これは、(A)AAVrh.90カプシドであって、(1)配列番号40の1~738の予測されたアミノ酸配列をコードする核酸配列からの発現により産生されるvp1タンパク質、配列番号39から産生されるvp1タンパク質、若しくは配列番号40の1~738の予測されたアミノ酸配列をコードする配列番号39と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp1タンパク質から選択されるAAVrh.90 vp1タンパク質の異種集団、配列番号40の少なくとも約アミノ酸138~738の予測されたアミノ酸配列をコードする核酸配列からの発現により産生されるvp2タンパク質、配列番号39の少なくともヌクレオチド412~2214を含む配列から産生されるvp2タンパク質、若しくは配列番号40の少なくとも約アミノ酸138~738の予測されたアミノ酸配列をコードする配列番号39の少なくともヌクレオチド412~2214と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp2タンパク質から選択されるAAVrh.90 vp2タンパク質の異種集団、配列番号40の少なくとも約アミノ酸204~738の予測されたアミノ酸配列をコードする核酸配列からの発現により産生されるvp3タンパク質、配列番号39の少なくともヌクレオチド610~2214を含む配列から産生されるvp3タンパク質、若しくは配列番号40の少なくとも約アミノ酸204~738の予測されたアミノ酸配列をコードする配列番号39の少なくともヌクレオチド610~2214と少なくとも70%同一の核酸配列から産生されるvp3タンパク質から選択されるAAVrh.90 vp3タンパク質の異種集団、並びに/又は(2)配列番号40のアミノ酸配列をコードする核酸配列の産物であるvp1タンパク質の異種集団、配列番号40の
少なくとも約アミノ酸138~738のアミノ酸配列をコードする核酸配列の産物であるvp2タンパク質の異種集団、及び配列番号40の少なくともアミノ酸204~738をコードする核酸配列の産物であるvp3タンパク質の異種集団、を含み、vp1、vp2、及びvp3タンパク質が、配列番号40のアスパラギン-グリシン対中に少なくとも2つの高度脱アミド化アスパラギン(N)を含むアミノ酸修飾を有する亜集団を含み、任意選択的に、他の脱アミド化アミノ酸を含む亜集団を更に含み、脱アミド化が、アミノ酸変化をもたらす、AAVrh.90カプシドタンパク質のうちの1つ以上を含む、AAVrh.90カプシドと、(B)AAVrh.90カプシド中のベクターゲノムであって、ベクターゲノムが、AAV逆位末端反復配列を含む核酸分子、及び宿主細胞における産物の発現を指示する配列と作動可能に連結された産物をコードする非AAV核酸配列を含む、ベクターゲノムと、を含む。
【0088】
特定の実施形態では、AAVrh.90のvp1、vp2、及びvp3タンパク質は、配列番号40のアスパラギン-グリシン対中に少なくとも2つの高度脱アミド化アスパラギン(N)を含むアミノ酸修飾を有する亜集団を含み、任意選択的に、他の脱アミド化アミノ酸を含む亜集団を更に含み、脱アミド化が、アミノ酸変化をもたらす。配列番号40の数と比較して、N-G対の~N57、~N263、~N385、及び/又は~N514で、高いレベルの脱アミド化が観察される。以下の表に示されるように、脱アミド化は、他の残基において観察されている。特定の実施形態では、AAVrh.90は、脱アミド化された他の残基を有し得(例えば、~N305、~N499、及び/若しくは~N599、典型的には20%未満)、かつ/又はリン酸化(例えば、S149で)(例えば、存在する場合、約2~約30%、又は約2~約20%、若しくは約2~約10%の範囲で)、又は酸化(例えば、~W23、~M204、~M212、W248、W282、M405、M473、W480、W505、M526、~N544、M561、及び/若しくは~M607のうちの1つ以上で)を含む他の修飾を有し得る。任意選択的に、Wは、キヌレニンに酸化され得る。
【表4】
【0089】
特定の実施形態では、AAVrh.90カプシドは、上記の表で特定される1つ以上の位置、提供される範囲で修飾されており、トリプシン酵素を用いた質量分析を使用して決定される。特定の実施形態では、1つ以上の位置、又はNに続くグリシンは、本明細書に記載されるように修飾されている。残基番号は、本明細書に提供されるAAVrh.90配列に基づく。配列番号40を参照されたい。
【0090】
特定の実施形態では、AAVrh.90カプシドは、配列番号40のアミノ酸配列をコ
ードする核酸配列の産物であるvp1タンパク質の異種集団、配列番号40の少なくとも約アミノ酸138~738でのアミノ酸配列をコードする核酸配列の産物であるvp2タンパク質の異種集団、及び配列番号40の少なくともアミノ酸204~738をコードする核酸配列の産物であるvp3タンパク質の異種集団を含む。
【0091】
特定の実施形態では、パルボウイルスベクターカプシドは、肝臓トロピズムについて選択され、治療される患者が、肝臓代謝障害を有する。特定の実施形態では、パルボウイルスベクターカプシドは、心臓トロピズムについて選択され、治療される患者が、心臓障害を有する。特定の実施形態では、パルボウイルスベクターカプシドは、骨格筋の細胞トロピズムについて選択され、治療される患者が、筋肉障害を有する。
【0092】
本明細書で使用される場合、「ベクターゲノム」は、ウイルス粒子を形成するrAAVカプシド内にパッケージングされる核酸配列を指す。かかる核酸配列は、AAV逆位末端反復配列(ITR)を含む。本明細書の実施例では、ベクターゲノムは、少なくとも、5’から3’へ、AAV 5’ITR、その発現を指示する調節配列に作動可能に連結された導入遺伝子又はコード配列を含む発現カセット、及びAAV 3’ITRを含む。ITRは、ベクター生成の際にゲノムの複製及びパッケージングに関与する遺伝エレメントであり、rAAVを生成するために必要とされる唯一のウイルスシスエレメントである。一実施形態では、ITRは、カプシドを供給するものとは異なるAAV由来である。好ましい実施形態では、利便性のために使用され得る、AAV2由来のITR配列、又はその欠失バージョン(ΔITR)。しかしながら、他のAAV起源からのITRが選択されてもよい。ITRの供給源がAAV2由来であり、AAVカプシドが別のAAV供給源由来である場合、得られるベクターは、擬似型と称され得る。典型的には、AAVベクターゲノムは、AAV5’ITRと、遺伝子産物をコードする核酸配列と、任意の制御性配列と、AAV3’ITRと、を含む。しかしながら、これらの要素の他の構成も好適であり得る。一実施形態では、自己相補性AAVが使用される。D配列及び末端分離部位(trs)が欠失している、5’ITRの短縮バージョン(ΔITRと呼ばれる)が記載されている。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、130塩基対の短縮されたAAV2 ITRを含み、ここで、外部「a」要素は欠失している。短縮されたITRは、内部A要素をテンプレートとして使用して、ベクターDNA増幅中に145塩基対の野生型長に戻される。他の実施形態では、全長AAV 5’及び3’ITRが使用される。他の実施形態では、全長ITR又は操作されたITRが選択され得る。AAV2からのITR、カプシドとは異なる供給源AAV、又は全長ITR以外が選択され得る。ITRは、産生中のrep機能又はトランス相補性AAVを提供するAAVと同じAAV供給源由来である。更に、他のITRが使用され得る。好適なITR配列の例は、配列表、例えば、配列番号42、nt1~130及び3052~3181に示される。更に、ベクターゲノムは、(例えば、転写及び/又は翻訳を調節することによって、直接的又は間接的に)遺伝子産物の発現を直接調節する制御配列を含む。ベクターゲノムの好適な成分が本明細書でより詳細に考察される。
【0093】
特定の実施形態では、遺伝子編集ベクターゲノムは、TBGプロモーター、1つ以上のαMIC/bikエンハンサー、ARCUSメガヌクレアーゼのコード配列、任意選択的に、WPRE、及びポリAを含む。特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号42のnt211~nt2964を含み、5’及び3’ITRに隣接する。
【0094】
AAVウイルスベクター(例えば、組換え(r)AAV)の産生における使用のために、発現カセットは、パッケージング宿主細胞に送達される任意の好適なベクター、例えば、プラスミド上に担持され得る。本発明に有用なプラスミドは、特に、インビトロで原核細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞に複製及びパッケージングするのに好適であるように操作され得る。好適なトランスフェクション技法及びパッケージング宿主細胞は、既知であり
、かつ/又は当業者によって容易に設計することができる。
【0095】
ベクターとしての使用に好適なAAVを生成及び単離するための方法は、当該技術分野において既知である。一般に、例えば、Grieger & Samulski,2005,“Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production
and clinical applications,”Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145、Buning et al.,2008,“Recent developments in adeno-associated virus vector technology,”J.Gene Med.10:717-733、及び以下に引用される参考文献を参照されたい(これらの各々全体が参照により本明細書に援用される)。導入遺伝子をビリオンにパッケージングするために、ITRは、発現カセットを含む核酸分子と同じ構築物中でシスに必要とされる唯一のAAV成分である。cap及びrep遺伝子は、トランスで供給され得る。
【0096】
「AAV中間体」又は「AAVベクター中間体」という用語は、それにパッケージングされた所望のゲノム配列を欠失している組み立てられたrAAVカプシドを指す。これらは、「空の」カプシドと称され得る。かかるカプシドは、発現カセットの検出可能なゲノム配列を含んでいなくてもよく、又は遺伝子産物の発現を達成するには不十分な部分的にパッケージングされたゲノム配列のみを含んでいてもよい。これらの空のカプシドは、宿主細胞に目的の遺伝子を導入するために非機能的である。
【0097】
本明細書に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、既知の技法を使用して生成され得る。例えば、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、US7588772B2を参照されたい。かかる方法は、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列、機能性rep遺伝子、少なくとも、AAV逆位末端反復(ITR)及び導入遺伝子で構成される発現カセット、並びに発現カセットをAAVカプシドタンパク質にパッケージングするのを可能にするのに十分なヘルパー機能を含有する宿主細胞を培養することを含む。カプシドを生成する方法、そのためのコード配列、及びrAAVウイルスベクターの産生方法が記載されている。例えば、Gao,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(10),6081-6086(2003)及びUS2013/0045186A1を参照されたい。
【0098】
一実施形態では、組換えAAVを産生するために有用な産生細胞培養物が提供される。かかる細胞培養物は、宿主細胞中でAAVカプシドタンパク質を発現する核酸、AAVカプシドへのパッケージングに好適な核酸分子、例えば、AAV ITR及び宿主細胞中の産物の発現を指示する配列と作動可能に連結される遺伝子産物をコードする非AAV核酸配列を含有するベクターゲノム、並びに組換えAAVカプシドへの核酸分子のパッケージングを可能にするのに十分なAAV rep機能及びアデノウイルスヘルパー機能を含有する。一実施形態では、細胞培養物は、哺乳動物細胞(例えば、とりわけ、ヒト胎児腎臓293細胞)又は昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス)からなる。
【0099】
任意選択的に、rep機能は、カプシドを提供するAAV以外のAAVによって提供される。例えば、repは、これらに限定されないが、AAV1repタンパク質、AAV2repタンパク質、AAV3repタンパク質、AAV4repタンパク質、AAV5repタンパク質、AAV6repタンパク質、AAV7repタンパク質、AAV8repタンパク質、又はrep78、rep68、rep52、rep40、rep68/78、及びrep40/52、又はそれらの断片、又は別の供給源であり得る。任意選択的に、rep及びcap配列は、細胞培養物中の同じ遺伝エレメント上にある。rep配列とcap遺伝子との間にスペーサーが存在し得る。これらのAAV又は変異体AAVカ
プシド配列のいずれかは、宿主細胞中でそれらの発現を指示する外因性調節制御配列の制御下にあり得る。
【0100】
一実施形態では、細胞は、好適な細胞培養(例えば、HEK293)細胞において製造される。本明細書に記載される遺伝子療法ベクターを製造するための方法には、遺伝子療法ベクターの産生に使用されるプラスミドDNAの生成、ベクターの生成、及びベクターの精製などの、当該技術分野で周知の方法が含まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、AAVベクターであり、生成されたプラスミドは、AAVゲノム及び目的の遺伝子をコードするAAVシス-プラスミド、AAV rep及びcap遺伝子を含有するAAVトランス-プラスミド、並びにアデノウイルスヘルパープラスミドである。ベクター生成プロセスは、細胞培養の開始、細胞の継代、細胞の播種、プラスミドDNAによる細胞のトランスフェクション、トランスフェクション後の無血清培地への培地交換、並びにベクター含有細胞及び培養培地の回収などの方法ステップを含み得る。回収されたベクター含有細胞及び培養培地は、本明細書では粗細胞回収物と称される。更に別のシステムでは、遺伝子療法ベクターは、バキュロウイルスベースのベクターによる感染によって昆虫細胞に導入される。これらの産生システムに関するレビューについては、概して、例えば、Zhang et al.,2009,“Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale
recombinant adeno-associated virus production,”Human Gene Therapy 20:922-929を参照されたい(その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される)。これら及び他のAAV産生系を作製及び使用する方法はまた、以下の米国特許に記載されており、これらの各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される:5,139,941、5,741,683、6,057,152、6,204,059、6,268,213、6,491,907、6,660,514、6,951,753、7,094,604、7,172,893、7,201,898、7,229,823、及び7,439,065。
【0101】
粗細胞回収物は、その後、ベクター回収物の濃縮、ベクター回収物のダイアフィルトレーション、ベクター回収物の微小流動化、ベクター回収物のヌクレアーゼ消化、微小流動化された中間体の濾過、クロマトグラフィによる粗精製、超遠心分離による粗精製、タンジェンシャルフロー濾過によるバッファー交換、並びに/又はバルクベクターを調製するための製剤化及び濾過などの、方法ステップに供され得る。
【0102】
高塩濃度での2ステップのアフィニティクロマトグラフィ精製、続いてアニオン交換樹脂クロマトグラフィを用いて、ベクター薬物産物を精製し、空のカプシドを除去する。これらの方法は、国際特許公開第2017/160360号に更に詳細に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。AAV8についての国際特許公開第2017/100676号、及びrh10についての国際特許公開第2017/100704号、及びAAV1についての国際特許公開第2017/100674号の精製方法は、全て参照により本明細書に援用される。
【0103】
空及び充填粒子含有量を算出するために、選択された試料(例えば、本明細書の例では、イオジキサノール勾配で精製された調製物、GCの数=粒子の数)についてのVP3バンド体積が、ロードされたGC粒子に対してプロットされている。得られた線形方程式(y=mx+c)を用いて、被験試料のピークのバンド体積中の粒子の数を算出する。ロードされた20μL当たりの粒子の数(pt)に、次いで50を掛けて、粒子(pt)/mLを得る。Pt/mLをGC/mLで割ることにより、ゲノムコピーに対する粒子の比(pt/GC)が得られる。Pt/mL-GC/mLは、空pt/mLを与える。空pt/mLをpt/mLで割り、100を掛けることにより、空粒子のパーセンテージが得られ
る。
【0104】
一般に、空のカプシド及びパッケージングされたゲノムを含むAAVベクター粒子をアッセイするための方法は、当該分野において既知である。例えば、Grimm et al.,Gene Therapy(1999)6:1322-1330、Sommer et al.,Molec.Ther.(2003)7:122-128を参照されたい。変性されたカプシドについて試験するために、本方法は、3つのカプシドタンパク質を分離することができる任意のゲル、例えば、緩衝液中に3~8%のTris-アセテートを含有する勾配ゲルからなる、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に処理されたAAVストックを供し、次いで試料材料が分離されるまでゲルを泳動し、ナイロン又はニトロセルロース膜、好ましくは、ナイロンにゲルをブロットすることを含む。抗-AAVカプシド抗体は、次いで、変性したカプシドタンパク質、好ましくは、抗-AAVカプシドモノクローナル抗体、最も好ましくは、B1抗-AAV-2モノクローナル抗体に結合する主要な抗体として使用される(Wobus et al.,J.Virol.(2000)74:9281-9293)。次いで、一次抗体に結合し、一次抗体、より好ましくは、抗体に共有結合した検出分子を含有する抗-IgG抗体、最も好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼに共有結合したヒツジ抗-マウスIgG抗体との結合を検出するための手段を含む、二次抗体が使用される。一次抗体と二次抗体との間の結合を半定量的に決定するために、結合を検出するための方法、好ましくは、放射性アイソトープ放射、電磁放射、又は比色変化を検出することができる検出方法、最も好ましくは、化学発光検出キットが使用される。例えば、SDS-PAGEでは、カラムフラクションからの試料を取って、還元剤(例えば、DTT)を含有するSDS-PAGE充填緩衝液中で加熱することができ、カプシドタンパク質は、プレキャスト勾配ポリアクリルアミドゲル(例えば、Novex)中で分解された。SilverXpress(Invitrogen、CA)を製造元の指示に従って、又は他の好適な染色方法、すなわち、SYPROルビー若しくはクマシー色素を用いて、銀染色を実施してもよい。一実施形態では、カラム画分中のAAVベクターゲノム(vg)の濃度は、定量的リアルタイムPCR(Q-PCR)によって測定することができる。試料は希釈され、DNaseI(又は別の好適なヌクレアーゼ)で消化されて、外因性DNAが除去される。ヌクレアーゼの不活性化後、試料は、更に希釈され、プライマー及びプライマー間のDNA配列に特異的なTaqMan(商標)蛍光発生プローブを用いて増幅される。規定レベルの蛍光(閾値サイクル、Ct)に到達するのに必要とされるサイクル数は、Applied Biosystems Prism 7700配列検出システム上で各試料について測定される。AAVベクター中に含有されるものと同一の配列を含有するプラスミドDNAを用いて、Q-PCR反応における標準曲線を生成する。試料から得られたサイクル閾値(Ct)の値を使用して、プラスミド標準曲線のCt値に対してそれを正規化することによって、ベクターゲノム力価を決定する。デジタルPCRに基づくエンドポイントアッセイも使用可能である。
【0105】
一態様では、広域スペクトル血清プロテアーゼ、例えば、プロテイナーゼK(例えば、Qiagenから商業的に入手可能なもの)を利用する最適化されたq-PCR方法が使用される。より具体的には、最適化されたqPCRゲノム力価アッセイは、DNaseI消化の後に、試料がプロテイナーゼKバッファーで希釈され、プロテイナーゼKで処理され、続いて熱不活性化されることを除き、標準的なアッセイと同様である。適切には、試料は、試料サイズと等しい量のプロテアーゼK緩衝液で希釈される。プロテイナーゼK緩衝液は、2倍以上に濃縮され得る。典型的に、プロテアーゼK治療は、約0.2mg/mLであるが、0.1mg/mL~約1mg/mLで変動し得る。処理ステップは、一般に、約55℃で約15分間実施されるが、より低い温度(例えば、約37℃~約50℃)でより長時間(例えば、約20分~約30分)にわたって、又はより高い温度(例えば、最高約60℃)でより短時間(例えば、約5~10分)行われてもよい。同様に、熱不活性化は、一般に、約95℃で約15分間であるが、温度を下げてもよく(例えば、約70~
約90℃)、時間を延ばしてもよい(例えば、約20分~約30分)。次いで、試料は希釈され(例えば、1000倍)、標準アッセイで記載されるように、TaqMan分析に供される。
【0106】
加えて又はあるいは、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)を使用してもよい。例えば、ddPCRによる一本鎖及び自己相補性AAVベクターゲノム力価を決定するための方法が記載されている。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。ddPCR法は、カプシド化ベクターゲノムの濃度を直接測定する。試料をDNaseIで処理して、試料中に存在する任意の非カプシド化DNAを消化し、続いて、プロテイナーゼKで処理してカプシドを破壊する。次いで、試料を、アッセイ範囲に適合するように希釈する。試料を、ddPCR Supermixと混合し、PCSK9遺伝子に特異的なメガヌクレアーゼ(M2PCSK9)を標的化する配列特異的プライマーをこの同じ領域にハイブリダイズする蛍光標識プローブと組み合わせて使用して、検出を達成する。20マイクロリットルのddPCR反応混合物を、Bio-Rad液滴生成器で処理し、ddPCR反応混合物を≧10,000の液滴に分割する。液滴生成後、ddPCR反応混合物をPCR増幅し、増幅したddPCR反応混合物をBio-Rad Droplet Readerを使用して読み取る。
【0107】
感染ユニット(IU)アッセイを使用して、RC32細胞(rep2を発現するHeLa細胞)におけるrAAVベクターの生産的取込み及び複製を測定することができる。以前公開されたものと同様の96-ウェルエンドポイント形式を用いた。簡潔に言うと、RC32細胞は、rAAVの各希釈において12レプリケートで、rAAV BDSの段階希釈液及びAd5の均一希釈液によって同時感染される。感染の72時間後、細胞を溶解し、qPCRを実施して、インプットに対するrAAVベクター増幅を検出する。エンドポイント希釈50%の組織培養感染用量(TCID50)の計算(Spearman-Karber)は、感染力価を測定するために行われ、IU/mLとして表される。「感染性」値は、細胞と接触する各粒子、受容体結合、内部移行、核への輸送、及びゲノム複製に依存するので、それらは、アッセイ幾何学、並びに使用される細胞株における適切な受容体の存在、及び結合後経路によって影響を受ける。受容体及び結合後経路は、不死化細胞株において通常は維持されず、故に、感染性アッセイ力価は、存在する「感染性」粒子の数の絶対的尺度ではない。しかしながら、カプシドに封入されたGC対「感染ユニット」の比(GC/IU比として記載される)は、ロットからロットへの産物一貫性の尺度として使用されることができる。
【0108】
簡潔に言うと、パッケージングされたゲノム配列を有するrAAV粒子をゲノム欠損AAV中間体から分離するための方法は、組換えAAVウイルス粒子及びAAVカプシド中間体を含む懸濁液を高性能液体クロマトグラフィに供することを含み、AAVウイルス粒子及びAAV中間体は、高pHで平衡化された強力アニオン交換樹脂に結合され、約260及び約280で紫外吸光度のために溶出液をモニタリングしながら、塩勾配に供される。pHは、選択されたAAVに応じて調節され得る。例えば、参照により本明細書に援用されるWO2017/160360(AAV9)、WO2017/100704(AAVrh10)、WO2017/100676(例えば、AAV8)、及びWO2017/100674(AAV1)]を参照されたい。この方法では、AAV完全カプシドは、A260/A280の比が変曲点に到達すると溶出される画分から回収される。一実施例では、アフィニティクロマトグラフィステップのために、ダイアフィルトレーションされた産物を、AAV2血清型を効率的に捕らえるCapture Select(商標)Poros-AAV2/9アフィニティ樹脂(Life Technologies)に適用し
てもよい。これらのイオン性条件下、残留細胞DNA及びタンパク質の有意なパーセンテージは、カラムの中を流れ、AAV粒子は、効率的に捕捉される。
【0109】
デュアルベクターシステム
別の態様では、遺伝性障害を治療するためのデュアルベクターシステムが提供される。システムは、(a)遺伝子編集成分であって、PCSK9を標的化するヌクレアーゼをコードする核酸配列、及び任意選択的に、PCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、遺伝子編集成分と、(b)ドナーベクターであって、PCSK9遺伝子座からの発現のための外因性産物をコードする核酸配列を含み、挿入された核酸配列が、PCSK9をコードしない、ドナーベクターと、を含み、本システムが、ヌクレアーゼに、天然PCSK9遺伝子座を特異的に標的化するように指示する配列を更に含む。システムは、任意選択的に、例えば、誘導性プロモーターを用いた誘導剤の使用を介して、デュアルベクターシステムを用いた投与後に、標的細胞中の天然PCSK9がアブレーション又は低減されることを可能にする成分を含む。一実施形態では、遺伝子編集成分は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む発現カセットと、PCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列と、を含む、遺伝子編集ベクターに含まれる。デュアルベクターの成分は、本明細書に記載されるものと同じである。
【0110】
このシステムは、遺伝子編集成分とドナーベクターとの比が約1~約1である場合に有効であり得るが、ドナー鋳型ベクターが遺伝子編集成分より多く存在することが望ましい。一実施形態では、編集ベクター(a)とドナーベクター(b)との比は、約1:3~約1:100、又は約1:10である。遺伝子編集酵素(例えば、Cas9又はメガヌクレアーゼ)とドナー鋳型とのこの比は、酵素がAAVベクター以外の供給源によって追加的又は代替的に供給される場合でも維持され得る。
【0111】
一実施形態では、デュアルベクターシステムは、遺伝子編集AAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、メガヌクレアーゼをコードする配列であって、PCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるメガヌクレアーゼの発現を指示する調節配列の制御下でPCSK9を標的化する、配列、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAVベクター、並びにドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む。
【0112】
別の実施形態では、デュアルベクターシステムは、遺伝子編集AAVであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’核局在化シグナル(NLS)、Cas9をコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるSaCas9の発現を指示する調節配列、3’NLS、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAV、並びにドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、U6プロモーター、sgRNAであって、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する少なくとも20個のヌクレオチドを含み、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNA、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む。
【0113】
別の実施形態では、デュアルベクターシステムは、遺伝子編集AAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、U6プロモーター、sgRNAであって、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する少なくとも20個のヌクレオチドを含み、当
該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNA、5’核局在化シグナル(NLS)、Cas9をコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるCas9の発現を指示する調節配列、3’NLS、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAVベクター、並びにドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む。
【0114】
本明細書に記載のシステムの特定の実施形態では、遺伝子編集AAVベクタードナーAAVベクターは、同じAAVカプシドを有する。他の実施形態では、遺伝子編集AAVベクター及びドナーAAVベクターは、異なるAAVカプシドを有する。いくつかの実施形態では、AAVカプシドは、AAV8、AAV9、rh10、AAV6.2、AAV3B、hu37、rh79、及びrh64から選択される。
【0115】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼであり、Cas9は、Staphylococcus aureus Cas9又はStreptococcus
pyogenes Cas9から選択される。
【0116】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼ及び/又は導入遺伝子は、組織特異的プロモーターの制御下にある。特定の実施形態では、ヌクレアーゼ及び/又は導入遺伝子は、構成的プロモーターの制御下にある。特定の実施形態では、ヌクレアーゼ及び/又は導入遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下にある。特定の実施形態では、ヌクレアーゼ及び/又は導入遺伝子は、肝臓特異的プロモーター、任意選択的に、ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、又はハイブリッド肝臓プロモーター(HLP)の制御下にある。特定の実施形態では、本システムは、誘導剤を更に含む。
【0117】
別の実施形態では、システムは、(a)遺伝子編集成分であって、PCSK9を標的化するヌクレアーゼをコードする核酸配列、及びLNPにカプセル化されたPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、遺伝子編集成分と、(b)ドナーベクターであって、LNPにカプセル化されたPCSK9遺伝子座からの発現のための外因性産物をコードする核酸配列を含み、挿入された核酸配列が、PCSK9をコードしない、ドナーベクターと、を含み、本システムが、ヌクレアーゼに、天然PCSK9遺伝子座を特異的に標的化するように指示する配列を更に含む。システムは、任意選択的に、例えば、誘導性プロモーターを用いた誘導剤の使用を介して、デュアルベクターシステムを用いた投与後に、標的細胞中の天然PCSK9がアブレーション又は低減されることを可能にする成分を含む。
【0118】
別の実施形態では、システムは、(a)遺伝子編集成分であって、PCSK9を標的化するヌクレアーゼをコードする核酸配列、及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含み、遺伝子編集成分が、AAVベクターを介して提供される、遺伝子編集成分と、(b)ドナーベクターであって、LNPにカプセル化されたPCSK9遺伝子座からの発現のための外因性産物をコードする核酸配列を含み、挿入された核酸配列が、PCSK9をコードしない、ドナーベクターと、を含み、本システムが、ヌクレアーゼに、天然PCSK9遺伝子座を特異的に標的化するように指示する配列を更に含む。システムは、任意選択的に、例えば、誘導性プロモーターを用いた誘導剤の使用を介して、デュアルベクターシステムを用いた投与後に、標的細胞中の天然PCSK9がアブレーション又は低減されることを可能にする成分を含む。
【0119】
別の実施形態では、システムは、(a)遺伝子編集成分であって、PCSK9を標的化
するヌクレアーゼをコードする核酸配列、及びLNPにカプセル化されたPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、遺伝子編集成分と、(b)ドナーベクターであって、PCSK9遺伝子座からの発現のための外因性産物をコードする核酸配列を含み、ドナーベクターが、AAVベクターであり、挿入された核酸配列が、PCSK9をコードしない、ドナーベクターと、を含み、本システムが、ヌクレアーゼに、天然PCSK9遺伝子座を特異的に標的化するように指示する配列を更に含む。システムは、任意選択的に、例えば、誘導性プロモーターを用いた誘導剤の使用を介して、デュアルベクターシステムを用いた投与後に、標的細胞中の天然PCSK9がアブレーション又は低減されることを可能にする成分を含む。
【0120】
一実施形態では、デュアルベクターシステムは、(a)mRNAを含むLNPであって、mRNAが、メガヌクレアーゼをコードし、メガヌクレアーゼが、PCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるメガヌクレアーゼの発現を指示する調節配列の制御下でPCSK9を標的化する、LNP、並びに(b)ドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む。
【0121】
別の実施形態では、デュアルベクターシステムは、(a)LNPであって、Cas9をコードする配列を含む核酸と、sgRNAであって、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する少なくとも20個のヌクレオチドを含み、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNAと、を含む、LNP、並びに(b)ドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、ドナーAAVベクター、を含む。Cas9をコードする配列は、mRNAとして提供される。
【0122】
別の実施形態では、デュアルベクターシステムは、遺伝子編集AAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、U6プロモーター、sgRNAであって、PCSK9遺伝子における標的部位に特異的に結合する少なくとも20個のヌクレオチドを含み、当該標的部位が、Cas9によって特異的に認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の5’側にある、sgRNA、5’核局在化シグナル(NLS)、Cas9をコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるCas9の発現を指示する調節配列、3’NLS、及び3’ITRを含む、第1のベクターゲノムと、を含む、遺伝子編集AAVベクター、並びにドナーAAVベクターであって、AAVカプシドと、5’ITR、5’相同組換え(HDR)アーム、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列、3’HDRアーム、及び3’ITRを含む、第2のベクターゲノムと、を含む、ドナーAAVベクター、を含む。
【0123】
薬学的組成物
別の態様では、薬学的組成物が提供され、これは、rAAV遺伝子編集ベクターを含む第1のrAAVストックであって、rAAV遺伝子編集ベクターが、PCSK9を標的化するヌクレアーゼをコードする核酸配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、発現カセットを含む、第1のrAAVストックと、rAAVドナーベクターを含む、第2のrAAVストックであって、rAAVドナーベクターが、導入遺伝子をコードする核酸配列及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列を含む、導入遺伝子カセットを含む、第2のrAAVストックと、を含む。薬学的組成物は、任意選択的な担体、賦形剤、及び/又は防腐剤を含有する。いくつかの実施形態では、ドナーベクターは、導入遺伝子カセットの5’及び3’側に相同
組換え(HDR)アームを更に含む。一実施形態では、ドナーベクター、遺伝子編集ベクター、又はその両方のAAVカプシドは、AAVrh79カプシドである。別の実施形態では、ドナーベクター、遺伝子編集ベクター、又はその両方のAAVカプシドは、AAVrh.90カプシドである。別の実施形態では、ドナーベクター、遺伝子編集ベクター、又はその両方のAAVカプシドは、AAVhu.37カプシドである。一実施形態では、ドナーベクター、遺伝子編集ベクター、又はその両方のAAVカプシドは、AAV8カプシドである。一実施形態では、ドナーベクター、遺伝子編集ベクター、又はその両方のAAVカプシドは、AAVrh.91カプシドである。一実施形態では、ドナーベクター、遺伝子編集ベクター、又はその両方のAAVカプシドは、AAVhu.68カプシドである。
【0124】
本明細書で使用される場合、「担体」は、任意及び全ての溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁物、コロイドなどを含む。薬学的な活性物質のためのかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補足活性成分を組成物中に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されるときにアレルギー又は類似の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。リポソーム、ナノカプセル、ミクロ粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞などのような送達ビヒクルが、本発明の組成物を好適な宿主細胞に導入するために使用され得る。特に、rAAVベクター送達ベクターゲノムは、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、又はナノ粒子などのいずれかに封入された送達ために製剤化され得る。
【0125】
一実施形態では、組成物は、対象への送達に好適な最終製剤を含み、例えば、生理的に適合するpH及び塩濃度まで緩衝された水性液体懸濁液である。任意選択的に、1つ以上の界面活性剤が製剤中に存在する。別の実施形態では、組成物は、対象への投与のために希釈される濃縮物として輸送され得る。他の実施形態では、組成物は、凍結乾燥され、投与時に再構築されてもよい。
【0126】
製剤を作製するための当該技術分野で周知の方法及び薬剤は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,Mack Publishing Company,Easton,Pa.に記載されている。製剤は、例えば、賦形剤、担体、安定剤、若しくは希釈剤、例えば、滅菌水、生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物由来の油、若しくは水素化ナフタレン、保存剤(オクタデシルジメチルベンジル、塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール、メチル若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール)、低分子量ポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、及びリジン、単糖類、二糖類、並びにグルコース、マンノース、及びデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖類、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含有してもよい。
【0127】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって調製された、マイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルジョンにおける、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マ
イクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセルに封入されてもよい。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0128】
好適な界面活性剤、又は界面活性剤の組み合わせは、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択されてもよい。一実施形態では、例えば、中性pHを有し、8400の平均分子量を有する、ポロキサマー188としても知られている、Pluronic(登録商標)F68[BASF]などの、第一級ヒドロキシル基末端の二機能的ブロックコポリマー界面活性剤が選択される。他の界面活性剤及び他のポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖からなる非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリル酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及びポリエチレングリコールが選択され得る。一実施形態では、製剤は、ポロキサマーを含有する。これらのコポリマーは、一般に、文字「P」(ポロキサマーについて)に続いて、3桁数字を用いて命名され、初めの2桁数字×100は、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子質量を示し、最後の数字×10は、ポリオキシエチレン含有量パーセントを示す。一実施形態では、ポロキサマー188が選択される。界面活性剤は、懸濁液の最高約0.0005%~約0.001%の量で存在し得る。
【0129】
ベクターは、細胞をトランスフェクトするのに十分な量で投与され、十分なレベルの遺伝子導入及び発現を提供して、過度の悪影響なしに、又は医学的に許容される生理学的効果を伴う治療効果を提供し、これは当業者によって決定され得る。従来及び薬学的に許容される投与経路には、所望の臓器(例えば、肝臓(任意で肝動脈を介して)、肺、心臓、眼、腎臓)、経口、吸入、鼻腔内、髄腔内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮膚内、及び他の親の投与経路への直接送達が含まれるが、これらに限定されない。投与経路は、所望される場合、組み合わされてもよい。
【0130】
ウイルスベクターの投与量は、主に、治療される状態、患者の年齢、体重、及び健康状態などの因子に依存し、したがって、患者間で異なり得る。例えば、ウイルスベクターの治療有効なヒト投薬量は、概して、約25~約1000マイクロリットル~約100mLの約1×10~1×1016ゲノムウイルスベクターの濃度を含む溶液の範囲である。投与量は、任意の副作用に対する治療効果のバランスをとるように調整され、かかる投与量は、組換えベクターが利用される治療用途に応じて変化し得る。導入遺伝子の発現レベルをモニタリングして、ウイルスベクター(好ましくは、ミニ遺伝子を含有するAAVベクター)をもたらす投薬頻度を決定することができる。任意選択的に、治療目的で記載されているものと同様の投与レジメンは、本発明の組成物を使用した免疫化に利用され得る。
【0131】
ベクター組成物は、ヒト患者にとって、範囲内の全ての整数又は分数を含む、(体重70kgの平均的な対象を治療するために)約1.0×10GC~約1.0×1016GCの範囲、好ましくは1.0×1012GC~1.0×1014GCの範囲にある量の複製欠陥ウイルスを含有する投与量単位で製剤化することができる。一実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、又は9x10GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、又は9
×1010GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、又は9×1011GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、又は9×1012GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、又は9×1013GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、又は9×1014GCを含むように製剤化される。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、又は9×1015GCを含むように製剤化される。一実施形態では、ヒトへの適用のために、用量は、範囲内の全ての整数又は少数を含む、用量当たり1×1010~約1×1012GCの範囲であり得る。
【0132】
これらの上述の用量は、治療される領域のサイズ、使用されるウイルス力価、投与経路、及び方法の所望の効果に応じて、約25~約1000マイクロリットルの範囲、又はそれより大きな体積、又はその範囲内の全ての数を含む様々な体積の担体、賦形剤、若しくは緩衝液製剤で投与され得る。
【0133】
任意の好適な投与経路が選択され得る。したがって、薬学的組成物は、任意の適切な投与経路のために、例えば、液体溶液又は懸濁液の形態で(例えば、静脈内投与、経口投与などのために)製剤化され得る。あるいは、薬学的組成物は、固体形態(例えば、例えば、経口投与のための、錠剤又はカプセルの形態)であってもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、粉末、点滴、エアロゾルなどの形態であり得る。
【0134】
一態様では、本明細書に記載の少なくとも1つの遺伝子編集ベクター及び少なくとも1つのドナーベクターを製剤緩衝液中に含むパルボウイルスベクターを少なくとも含む、薬学的組成物が本明細書に提供される。特定の実施形態では、薬学的組成物は、異なるベクター集団の組み合わせを含む。一実施形態では、本明細書に記載の単一のrAAV集団を製剤緩衝液中に含む、薬学的組成物が提供される。本明細書に提供される方法は、2つの別個のベクター含有懸濁液の同時投与を提供する。
【0135】
方法
本明細書に提供される組成物は、肝臓代謝障害を含む様々な遺伝性障害の治療に有用である。特定の実施形態では、組成物は、オルニチントランスカルバミラーゼの治療に有用である。他の実施形態では、組成物は、家族性高コレステロール血症の治療に有用である。他の実施形態では、組成物は、フェニルケトン尿症の治療に有用である。
【0136】
治療することができる例示的な肝疾患又は障害としては、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルファ-1アンチトリプシン欠損症、肝臓がん、胆管がん、肝細胞腺腫、トランスサイレチン(TTR)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)ベースの疾患若しくは障害、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。更なる障害としては、糖原病若しくは1A型欠損症(GSD1)、PEPCK欠損症、CDKL5欠損症、ガラクトース血症、フェニルケトン尿症(
PKU)、原発性高シュウ酸尿症1型、メープルシロップ尿症、チロシン血症1型、メチルマロン酸血症、中鎖アセチルCoA欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、シトルリン血症、レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症、アメチルマロン酸血症(MMA)、ニーマン・ピック病、プロピオン性血症(PA)、家族性高コレステロール血症(FH)、認知症、リポタンパク質リパーゼ欠損症、クリグラー・ナジャー病、重度複合免疫不全症、痛風及びレッシュ・ナイハン症候群、ビオチニダーゼ欠損症、ファブリー病、GM1ガングリオシドーシス、ウィルソン病、ゴーシェ病2型及び3型、ツェルウェーガー症候群、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病、ポンペ病、ニーマン・ピック病A型、アルギニノコハク酸尿症、成人発症II型シトルリン血症、尿素サイクル異常症、ファーバー脂肪肉芽腫症、アスパルチルグルコサミン尿症、フコシドーシス、α-マンノシドーシス、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、アルファ-1アンチトリプシン欠損症(肺気腫)、サラセミア又は腎不全による貧血、虚血性疾患、閉塞した血管(アテローム性動脈硬化症、血栓症、又は塞栓症などに見られる)、パーキンソン病、うっ血性心不全、筋ジストロフィー、並びに糖尿病が挙げられる。
【0137】
本明細書に記載の特定の方法では、天然PCSK9の発現が低減又はアブレーションされ、導入遺伝子が、天然PCSK9遺伝子座における挿入から発現される。別の実施形態では、天然PCSK9の発現が低減又は除去され、導入遺伝子が、外因的に、すなわち、対象のゲノムに組み込まれることなく、発現される。
【0138】
本明細書に記載されるデュアルベクターシステムを同時投与することによって、ヒトにおける障害を治療する方法が本明細書に提供される。
【0139】
一実施形態では、対象における肝臓代謝障害を治療する方法が提供される。本方法は、肝臓代謝障害を有する対象に、PCSK9を標的化するヌクレアーゼをコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるヌクレアーゼの発現を指示する調節配列を含む、遺伝子編集AAVベクターと、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列を含む、ドナーAAVベクターと、を同時投与することを含む。別の実施形態では、本方法は、肝臓代謝障害を有する対象に、Cas9ヌクレアーゼをコードする配列及びPCSK9遺伝子を含む標的細胞におけるPCSK9を標的化するsgRNAを含む、LNPと、導入遺伝子及び標的細胞における導入遺伝子の発現を指示する調節配列を含む、ドナーAAVベクターと、を同時投与することを含む。一実施形態では、対象は、新生児である。
【0140】
特定の実施形態では、遺伝子編集AAVベクター及びドナーベクターは、本質的に、同じ経路を介して同時に送達される。他の実施形態では、遺伝子編集ベクターが、最初に投与される。他の実施形態では、ドナーベクターが、最初に投与される。
【0141】
一実施形態では、rAAVの投与量は、(体重70kgの平均的な対象を治療するために)用量当たり、約1×10GC~約1×1015ゲノムコピー(GC)であり、好ましくは、ヒト患者にとって、1.0×1012GC~2.0×1015GCである。別の実施形態では、用量は、対象の約1×1014GC/kg体重未満である。特定の実施形態では、患者に投与される用量は、少なくとも約1.0×10GC/kg、約1.5×10GC/kg、約2.0×10のGC/g、約2.5×10GC/kg、約3.0×10GC/kg、約3.5×10GC/kg、約4.0×10GC/kg、約4.5×10GC/kg、約5.0×10GC/kg、約5.5×10GC/kg、約6.0×10GC/kg、約6.5×10GC/kg、約7.0×10GC/kg、約7.5×10GC/kg、約8.0×10GC/kg、約8.5×10GC/kg、約9.0×10GC/kg、約9.5×10GC/kg、約1.0×1010GC/kg、約1.5×1010GC/kg、約2.0×1010GC/kg、約2
.5×1010GC/kg、約3.0×1010GC/kg、約3.5×1010GC/kg、約4.0×1010GC/kg、約4.5×1010GC/kg、約5.0×1010GC/kg、約5.5×1010GC/kg、約6.0×1010GC/kg、約6.5×1010GC/kg、約7.0×1010GC/kg、約7.5×1010GC/kg、約8.0×1010GC/kg、約8.5×1010GC/kg、約9.0×1010GC/kg、約9.5×1010GC/kg、約1.0×1011GC/kg、約1.5×1011GC/kg、約2.0×1011GC/kg、約2.5×1011GC/kg、約3.0×1011GC/kg、約3.5×1011GC/kg、約4.0×1011GC/kg、約4.5×1011GC/kg、約5.0×1011GC/kg、約5.5×1011GC/kg、約6.0×1011GC/kg、約6.5×1011GC/kg、約7.0×1011GC/kg、約7.5×1011GC/kg、約8.0×1011GC/kg、約8.5×1011GC/kg、約9.0×1011GC/kg、約9.5×1011GC/kg、約1.0×1012GC/kg、約1.5×1012GC/kg、約2.0×1012GC/kg、約2.5×1012GC/kg、約3.0×1012GC/kg、約3.5×1012GC/kg、約4.0×1012GC/kg、約4.5×1012GC/kg、約5.0×1012GC/kg、約5.5×1012GC/kg、約6.0×1012GC/kg、約6.5×1012GC/kg、約7.0×1012GC/kg、約7.5×1012GC/kg、約8.0×1012GC/kg、約8.5×1012GC/kg、約9.0×1012GC/kg、約9.5×1012GC/kg、約1.0×1013GC/kg、約1.5×1013GC/kg、約2.0×1013GC/kg、約2.5×1013GC/kg、約3.0×1013GC/kg、約3.5×1013GC/kg、約4.0×1013GC/kg、約4.5×1013GC/kg、約5.0×1013GC/kg、約5.5×1013GC/kg、約6.0×1013GC/kg、約6.5×1013GC/kg、約7.0×1013GC/kg、約7.5×1013GC/kg、約8.0×1013GC/kg、約8.5×1013GC/kg、約9.0×1013GC/kg、約9.5×1013GC/kg、又は約1.0×1014GC/kg体重若しくは対象である。
【0142】
本明細書に記載の組成物を使用して治療され得る好適な疾患の他の例は、家族性高コレステロール血症、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、及び希少疾患又は奇病である。かかる希少疾患の例としては、中でも、脊髄性筋萎縮症、ハンチントン病、レット症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、フリードライヒ運動失調症、脊髄小脳失調症2型(SCA2)/ALS、プログラニュリン(PRGN)(前頭側頭型認知症(FTD)、進行性非流暢性失語症(PNFA)、及び意味性認知症を含む非アルツハイマー型脳変性に関連する)が挙げられ得る。例えば、www.orpha.net/consor/cgi-bin/Disease_Search_List.php;rarediseases.info.nih.gov/diseasesを参照されたい。本明細書に記載の導入遺伝子によって示される他の疾患も、本明細書に記載の方法を使用して治療してもよい。
【0143】
ベクターは、細胞をトランスフェクトするのに十分な量で投与され、十分なレベルの遺伝子導入及び発現を提供して、過度の悪影響なしに、又は医学的に許容される生理学的効果を伴う治療効果を提供し、これは当業者によって決定され得る。望ましい投与経路には、所望の臓器(例えば、肝臓(任意選択的に肝動脈を介して)、肺、心臓、眼、腎臓)への直接送達、経口、吸入、鼻腔内、気管内、髄腔内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及び他の非経口投与経路が含まれるが、これらに限定されない。投与経路は、所望される場合、組み合わされてもよい。
【0144】
本明細書に記載のシステムは、患者の状態を改善するのに十分な量の機能的酵素又はタンパク質が生成される場合、治療上有用であり得る。特定の実施形態では、健康な患者の
5%と低い遺伝子発現レベルは、患者が非遺伝子療法アプローチで治療可能であるのに十分な治療効果を提供するであろう。他の実施形態では、遺伝子発現レベルは、ヒト(又は他の獣医学的対象)で観察される正常範囲(レベル)の少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、最大100%である。例えば、「機能性酵素」とは、疾患に関連しない野生型酵素又はその天然のバリアント若しくは多形の生物学的活性レベルの少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれとほぼ同じ、又は100%以上を提供する野生型酵素(例えば、OTCase)をコードする遺伝子を意味する。より具体的には、ヘテロ接合型患者は、約50%以下の酵素機能レベルを有し得るため、効果的な治療には、酵素活性を「正常」又は非欠損患者の範囲内のレベルに置き換える必要がない可能性がある。同様に、検出可能な量の酵素を有していない患者は、酵素機能を100%未満の活性レベルまで送達することによって救済され得、任意選択的に、その後、更なる治療を受けることができる。遺伝子機能がドナー鋳型によって送達される特定の実施形態では、患者は、「正常な」健康な対象で見出されるよりも高いレベルを発現し得る。更に他の実施形態では、遺伝子発現の低減が所望される場合、20%~50%の低減又は最大約100%の低減が、所望の利益を提供し得る。本明細書に記載されるように、本明細書に記載の療法は、他の治療(すなわち、対象の(患者の)診断のための標準治療)と併せて使用され得る。
【0145】
一実施形態では、本方法は、免疫抑制性併用療法を対象に投与することを更に含む。そのような免疫抑制性併用療法は、例えば、AAVカプシドに対する望ましくないほど高い中和抗体レベルが検出された場合、rAAV又は開示される組成物の送達前に開始されてもよい。ある特定の実施形態では、予防措置として、rAAVの送達の前に、併用療法を開始してもよい。ある特定の実施形態では、免疫抑制性併用療法は、rAAVの送達後、例えば、治療後に望ましくない免疫応答が観察された場合に開始される。
【0146】
かかる併用療法のための免疫抑制剤としては、限定されないが、グルココルチコイド、ステロイド、抗代謝剤、T細胞阻害剤、マクロライド(例えば、ラパマイシン又はラパログ)、及び細胞分裂阻害剤(アルキル化剤、抗代謝剤、細胞傷害性抗生物質、抗体、又はイムノフィリンに対して活性な薬剤を含む)が挙げられる。免疫抑制剤には、プレドニゾロン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、白金化合物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、IL-2受容体(CD25)特異的抗体又はCD3特異的抗体、抗IL-2抗体、シクロスポリン、タクロリムス
、シロリムス、IFN-β、IFN-γ、オピオイド、又はTNF-α(腫瘍壊死因子-α)結合剤を含み得る。ある特定の実施形態では、免疫抑制療法は、rAAV投与の0日、1日、2日、7日以上前、又はrAAV投与の0日、1日、2日、3日、7日以上後に開始され得る。かかる療法は、同じ日に単一の薬物(例えば、プレドニゾロン)又は2つ以上の薬物(例えば、プレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/又はシロリムス(すなわち、ラパマイシン))の同時投与を伴い得る。これらの薬物のうちの1つ以上が、遺伝子療法投与後に、同じ用量又は調整された用量で継続され得る。かかる療法は、必要に応じて、約1週間(7日間)、2週間、3週間、約60日間、又はそれ以上であり得る。特定の実施形態では、タクロリムスを含まないレジメンが選択される。
【0147】
別の実施形態では、本方法は、標準的なOTC療法との同時処置を含む。OTC欠損症の治療は、主に、高アンモニア血症を回避するために、又は高アンモニア血症エピソード中に血液から過剰なアンモニアを除去するために、血中アンモニアレベルの食事管理に焦点を当てている(NORD、2021)。OTC欠損症を有する個体は、血中アンモニアレベルを制御するために、タンパク質摂取を制限する食事制限に従う。食事制限は、高アンモニア血症エピソードを引き起こす可能性のある過剰なタンパク質摂取を避けながら、適切な成長を確保するために十分なタンパク質を摂取する必要がある乳幼児において、慎重にバランスをとらなければならない(Berry and Steiner,2001)。したがって、乳幼児は、必須アミノ酸が補充された高カロリー、低タンパク質の食事が与えられる。高アンモニア血症エピソードでは、全てのタンパク質が患者の食事から24時間除去され得る(NORD、2021)。
【0148】
血流からの窒素の除去を刺激するように設計されたいくつかの薬がある。フェニル酪酸ナトリウム(Buphenyl)は、OTC欠損症を有する患者の慢性高アンモニア血症の治療のために、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。Buphenylは、代謝されると、フェニルアセテートに変換される。これが、グルタミンとコンジュゲートして、フェニルアセチルグルタミンを形成し、それが、腎臓によって排泄され、窒素排泄の代替経路を提供する。グリセロールフェニル酪酸(Ravicti)は、尿素サイクル障害を有する患者における慢性高アンモニア血症の治療についてFDA承認されている。Buphenylと同様に、Ravictiはフェニルアセテートに変換され、窒素を排泄するための同じ機構に従う(Lichter-Konecki et al.,1993、Gordon,2003、Magellan,2021)。最後に、Ammonul(フェニル酢酸ナトリウム及び安息香酸ナトリウム)は、尿素サイクル障害を有する患者の急性高アンモニア血症の治療のための補助療法としてFDAによって承認されている。Ammonulのフェニル酢酸ナトリウム成分は、Buphenyl及びRavictiによって生成されたフェニル酢酸塩代謝産物と同じ窒素排泄機構に従う。Ammonulの安息香酸ナトリウム成分は、グリシンとコンジュゲートして、馬尿酸を形成し、馬尿酸が、腎臓によって排泄され、このプロセスを介して窒素が除去される。安息香酸ナトリウムは、OTC欠損症の長期維持のための経口調製物としても与えられ、副作用が少ないと考えられたため、多くの場合、Buphenyl及びRavictiよりも好ましい(Lichter-Konecki et al.,1993)。
【0149】
一態様では、本明細書に記載されるプロモーターの制御下で、ヒトPCSK9遺伝子における部位を認識するメガヌクレアーゼコード配列を含むヌクレアーゼ発現カセットを使用して、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を有する患者を治療するための方法が提供される。本方法は、本明細書に記載されるように、配列番号17のOTC導入遺伝子又はそれと少なくとも90%の同一性を共有する配列を保有する発現カセットの投与を更に含む。かかる発現カセットは、ウイルス又は非ウイルスベクターを介して送達され得る。特定の実施形態では、発現カセットは、LNPを使用して送達され得る。天然ヒトOTCコード配列は、配列番号30に示される。配列番号17及び配列番号30は
、約75.89%の同一性を共有する。
【0150】
別の態様では、ヒトPCSK9遺伝子内の部位を認識するsgRNA及びCas9コード配列を含むヌクレアーゼ発現カセットを使用して、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症を有する患者を治療するための方法が提供される。本方法は、本明細書に記載されるように、配列番号17のOTC導入遺伝子又はそれと少なくとも90%の同一性を共有する配列を保有する発現カセットの投与を更に含む。かかる発現カセットは、ウイルス又は非ウイルスベクターを介して送達され得る。特定の実施形態では、発現カセットは、LNPを使用して送達され得る。
【0151】
インビトロでOTCの発現及び活性レベルを測定するための様々なアッセイが存在する。例えば、X Ye,et al,1996 Prolonged metabolic
correction in adult ornithine transcarbamylase-deficient mice with adenoviral vectors.J Biol Chem 271:3639-3646)又はインビボを参照されたい。例えば、OTC酵素活性は、[1,2,3,4,5-13C5]シトルリン(98%13C)に正規化されたシトルリンの形成を検出するために、液体クロマトグラフィ質量分析安定同位体希釈法を使用して測定することができる。本方法は、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ活性の検出のために以前に開発されたアッセイから適合される[Morizono H,et al,Mammalian N-acetylglutamate synthase.Mol Genet Metab.2004;81(Suppl 1):S4-11.]。新鮮な凍結肝臓の破片を秤量し、10mMのHEPES、0.5%のTritonX-100、2.0mMのEDTA、及び0.5mMのDTTを含有する緩衝液中で短時間均質化する。均質化緩衝液の体積を調整して、50mg/mlの組織を得る。50mMのTris-酢酸、4mMのオルニチン、5mMのカルバミルリン酸塩(pH8.3)中の250μgの肝臓組織を使用して、酵素活性を測定する。酵素活性は、50mMのTris-酢酸(pH8.3)に溶解させた新鮮に調製した50mMのカルバミルリン酸を添加することで開始し、25℃で5分間進行させ、等量の30%のTCA中の5mMの13C5-シトルリンを添加することによってクエンチする。デブリを5分間の微量遠心分離によって分離し、上清を質量分析のためにバイアルに移す。10μLの試料を、93%溶媒A(1Lの水中の1mlのトリフルオロ酢酸):7%溶媒B(1Lの水/アセトニトリル(1:9)中の1mlのトリフルオロ酢酸)の移動相を用いたアイソクラティック条件下、Agilent1100シリーズLC-MSに注入する。シトルリン[176.1質量:電荷比(m/z)]及び13C5シトルリン(181.1m/z)に対応するピークを定量化し、それらの比を、各アッセイで実行されたシトルリンの標準曲線について得られた比と比較する。試料は、全肝臓組織又はBio-Radタンパク質アッセイキット(Bio-Rad,Hercules,CA)を使用して決定されたタンパク質濃度のいずれかに対して正規化される。肝臓生検を必要としない他のアッセイも使用され得る。そのようなアッセイの1つは、血漿アミノ酸アッセイであり、ここでは、グルタミンとシトルリンとの比が評価され、グルタミンが高く(>800マイクロリットル/リットル)、シトルリンが低い(例えば、一桁)場合、尿素サイクルの欠損が疑われる。血漿中アンモニアレベルを測定してもよく、1リットル当たり約100マイクロモルの濃度は、OTCDを示す。血液ガスは、患者が過呼吸している場合に評価することができ、呼吸性アルカローシスは、OTCDで頻繁に起こる。尿中のオロチン酸、例えば、約20マイクロモル/ミリモルクレアチンを超えるオロチン酸は、アロプリノールチャレンジ試験後の尿中オロチン酸の上昇と同様に、OTCDを示す。OTCDの診断基準は、Tuchman et al,2008,Urea Cycle Disorders Consortium(UCDC)of the Rare Disease Clinical Research Network(RDCRN).Tuchman
M,et al.,Consortium of the Rare Disease
s Clinical Research Network.Cross-sectional multicenter study of patients with urea cycle disorders in the United States.Mol Genet Metab.2008;94:397-402(参照により本明細書に援用される)に記載されている。また、OTCDの現在の標準治療の議論を提供する、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK154378/も参照されたい。
【0152】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるヌクレアーゼ発現カセット、非ウイルスベクター、ウイルスベクター(例えば、rAAV)、又は薬学的組成物中のそれらのいずれかは、患者における遺伝子編集のために投与可能である。特定の実施形態では、本方法は、非胚性遺伝子編集に有用である。特定の実施形態では、患者は、乳児(例えば、出生~約9ヵ月)である。特定の実施形態では、患者は、幼児以上、例えば、12ヵ月以上である。
【0153】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、又は「the」は、1つ又は2つ以上を意味することができる。例えば、「a」細胞は、単一の細胞又は複数の細胞を意味することができる。
【0154】
本明細書で使用される場合、「特異性」という用語は、認識配列と称される塩基対の特定の配列でのみ、又は特定のセットの認識配列でのみ、二本鎖DNA分子を認識及び切断するヌクレアーゼの能力を意味する。認識配列のセットは、特定の保存位置又は配列モチーフを共有するが、1つ以上の位置で変性であり得る。高度に特異的なヌクレアーゼは、1つのみ又は非常に少ない認識配列を切断することができる。特異性は、当該技術分野で既知の任意の方法によって決定することができる。
【0155】
略称「sc」は、自己相補性(self-complementary)を指す。「自己相補的AAV」は、組換えAAV核酸配列が担持するコーディング領域が、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計される構築物を指す。感染時には、第2の鎖の細胞媒介性合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補性の片割れが会合して、即時の複製及び転写に備えのある1つの二本鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成するであろう。例えば、D M McCarty et al,“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,Pages 1248-1254を参照されたい。自己相補性AAVは、例えば、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号、及び同第7,456,683号に記載されており、その各々は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0156】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、目的の遺伝子に連続している発現制御配列、及びトランスで又は離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列の両方を指す。
【0157】
核酸配列又はタンパク質を説明するために使用される「外因性」という用語は、核酸又はタンパク質が、染色体又は宿主細胞に存在する位置では、天然に発生しないことを意味する。外因性核酸配列はまた、同じ発現カセット又は宿主細胞に由来し、それらに挿入されるが、非天然状態(例えば、異なるコピー数、又は異なる調節エレメントの制御下)で存在する配列を指す。
【0158】
タンパク質又は核酸を参照して使用される場合、「異種性」という用語は、タンパク質又は核酸が、天然では互いに同じ関係で見出されない、2つ以上の配列又は部分配列を含むことを示す。例えば、新規の機能的核酸を作製するために配置された関連のない遺伝子からの2つ以上の配列を有する核酸は、典型的に、組換えにより産生される。例えば、一実施形態では、核酸は、異なる遺伝子由来のコード配列の発現を指向するように配置された、ある遺伝子由来のプロモーターを有する。
【0159】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、ベクター(例えば、組換えAAV)が産生プラスミドから産生されるパッケージング細胞株を指し得る。代替的に、「宿主細胞」という用語は、導入遺伝子の発現が望まれる任意の標的細胞を指し得る。したがって、「宿主細胞」は、任意の手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合技法、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合によって細胞に導入された外因性又は異種核酸配列を含有する原核細胞又は真核細胞を指す。本明細書の特定の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載される組成物のインビトロ評価のための様々な哺乳動物種の細胞の培養物を指す。本明細書の他の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、ウイルスベクター又は組換えウイルスを生成及びパッケージングするために使用される細胞を指す。更に他の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、本明細書に記載される疾患又は状態についてインビボで治療される対象の標的細胞を指すことが意図される。特定の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、肝臓細胞又は肝細胞である。
【0160】
「対象」は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ)又は非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ヒヒ、若しくはゴリラ)である。患者は、ヒトを指す。獣医学的対象は、非ヒト哺乳動物を指す。特定の実施形態では、対象は、PCSK9遺伝子に欠損を有しない。
【0161】
「複製欠損ウイルス」又は「ウイルスベクター」は、合成又は人工ウイルス粒子を指し、ここで、目的の遺伝子を含有する発現カセットは、ウイルスカプシド又はエンベロープ中にパッケージングされ、同様にウイルスカプシド又はエンベロープ内にパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列は、複製欠損である、すなわち、それらは、後代ビリオンを生成することができないが、標的細胞に感染する能力を保持する。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要な酵素をコードする遺伝子を含まない(ゲノムは、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要なシグナルに隣接する目的の遺伝子のみを含有する、「ガットレス」となるように操作することができる)が、これらの遺伝子は、産生中に供給され得る。したがって、それは、後代ビリオンによる複製及び感染が、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下以外で生じることができないために、遺伝子療法における使用のために安全であると考えられる。
【0162】
核酸配列の文脈で「配列同一性」、「パーセント配列同一性」、又は「同一パーセント」という用語は、最大限対応するようにアラインメントさせたときに同じである2つの配列中の残基を指す。配列同一性の比較の長さは、ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長、又は、少なくとも約500~5000個のヌクレオチドの断片にわたってもよく、これが望ましい。しかしながら、例えば、少なくとも約9個のヌクレオチド、通常は少なくとも約20~24個のヌクレオチド、少なくとも約28~32個のヌクレオチド、少なくとも約36個以上のヌクレオチドの、より小さい断片間の同一性も望まれ得る。同様に、「パーセント配列同一性」は、タンパク質の全長わたるアミノ酸配列又はその断片について容易に決定することができる。好適には、断片は、少なくとも約8アミノ酸長であり、最大で約700アミノ酸長であり得る。好適な断片の例は、本明細書に記載されている。
【0163】
「実質的相同性」又は「実質的類似性」という用語は、核酸、又はその断片を参照する場合、別の核酸(又はその相補的鎖)と適切なアミノ酸挿入又は欠失によって最適にアラインメントされるとき、アラインメントされる配列の少なくとも約95~99%のアミノ酸配列同一性を有することを示す。好ましくは、相同性は、全長配列、若しくはそのタンパク質、例えば、capタンパク質、repタンパク質、又は少なくとも8アミノ酸長であるそれらの断片、若しくはより好ましくは、少なくとも15アミノ酸長にわたる。好適な断片の例は、本明細書に記載されている。
【0164】
「高度に保存された」という用語は、少なくとも80%の同一性、好ましくは、少なくとも90%の同一性、より好ましくは、97%超の同一性を意味する。同一性は、当業者によって知られているアルゴリズム及びコンピュータプログラムに頼ることによって、当業者によって容易に決定される。
【0165】
一般的に、2つの異なるアデノ随伴ウイルス間の「同一性」、「相同性」又は「類似性」について言及する場合、「同一性」、「相同性」又は「類似性」は、「アラインメントされた」配列を参照して決定される。「アラインメントされた」配列又は「アラインメント」とは、複数の核酸配列又はタンパク質(アミノ酸)配列を指し、参照配列と比較して、多くの場合、欠損又は追加塩基又はアミノ酸についての補正を含む。実施例では、公開されたAAV9配列を参照点として使用してAAV整列を行う。アラインメントは、公的又は商業的に利用可能な様々な多重配列整列プログラムのいずれかを使用して行われる。かかるプログラムの例としては、インターネット上のウェブサーバを通してアクセス可能な「Clustal Omega」、「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「MAP」、及び「MEME」が挙げられる。かかるプログラムの他のソースは、当業者に既知である。あるいは、Vector NTIユーティリティもまた使用される。また、当該技術分野で既知のいくつかのアルゴリズムが存在し、上記のプログラムに含まれるものを含め、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができる。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムであるFasta(商標)を用いて比較することができる。Fasta(商標)は、照会及び検索配列の間の最良の重複領域のアラインメント及び配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、本明細書に参考として組み込まれる、GCG Version 6.1で提供される、そのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6及びスコアリングマトリックスのためのNOPAM因子)を用いるFasta(商標)を使用して決定することができる。例えば、「Clustal Omega」、「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、及び「Match-Box」プログラムなどのアミノ酸配列のための複数の配列アラインメントプログラムも利用可能である。一般に、これらのプログラムのいずれかがデフォルト設定で使用されるが、必要に応じて、当業者は、これらの設定を変更することができる。あるいは、当業者は、参照のアルゴリズム及びプログラムによって提供されるものと少なくとも同じレベルの同一性又はアラインメントを提供する、別のアルゴリズム又はコンピュータプログラムを利用することができる。例えば、J.D.Thomson et al,Nucl.Acids.Res.,“A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”,27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0166】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、参照整数から±10%の変動及びその間の値を指す。例えば、「約」40塩基対は、±4を含む(すなわち、36~44、これには整数36、37、38、39、40、41、42、43、44が含まれる)。他の値について、特に、パーセンテージ(例えば、90%同一性、約10%分散、又は約36%ミスマッチ)に言及される場合、「約」という用語は、整数及び分数の両方を含む範囲
内の全ての値を含む。
【0167】
本出願全体を通して、本発明の様々な態様は、範囲形式で提示され得る。範囲形式の記載は、単に利便性及び簡潔性のためであり、本発明の範囲に関する確固たる限定として解釈するべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などを具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0168】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して使用される場合、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」という用語、及びそのバリアントは、他の成分、要素、整数、ステップなどを含む。逆に、「構成する(consisting)」という用語及びその変形は、他の成分、要素、整数、ステップなどを除外する。
【0169】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって、及び本明細書で使用されている多数の用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する公開された文書を参照することによって、一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【実施例
【0170】
オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症は、高い死亡率に関連するX連鎖性尿素サイクル障害である。アデノ随伴ウイルス(AAV)新生児遺伝子療法は、遅発性OTC欠損症に対する有望な治療法であるが、組み込まれていないゲノムが肝細胞の増殖中に失われるため、短期的な治療効果しか得られないであろう。ゲノムのセーフハーバーにおけるOTCミニ遺伝子カセットのヌクレアーゼ媒介性部位特異的組み込みは、OTC欠損症を有する患者に長期的な治療効果を提供するであろう。遺伝子標的化のためのセーフハーバーのうちの1つは、PCSK9遺伝子(例えば、エクソン7領域)である。ヌクレアーゼは、PCSK9を標的化する操作されたメガヌクレアーゼ(ARCUS2)又はPCSK9を標的化する特異的sgRNAを有するCRISPR/Cas9であり得る。ドナーベクターは、肝臓特異的プロモーター(例えば、TBGプロモーター)、コドン最適化hOTCコード配列、及びポリA配列を含むミニ遺伝子を含む。ヌクレアーゼ及びドナー鋳型のいずれも、AAVベクター(デュアルAAVベクターシステム)によって送達され得る。新生児の非ヒト霊長類(NHP)におけるデュアルAAVベクターの単回静脈内注射の12週間後、12%の肝細胞における持続的な導入遺伝子の発現及び効率的な遺伝子標的化を実証した。ドナーベクターにおけるミニ遺伝子は、相同組換え(HDR)アームに隣接している。
【0171】
新生児又は乳幼児としてのデュアルAAVベクターの単回注射後の治療用タンパク質を発現するためのPCSK9遺伝子座のインビボでのヌクレアーゼ媒介性遺伝子標的化のNHPにおける初めての実証。ヒト/NHPのPCSK9遺伝子座を遺伝子標的化するためのOTCミニ遺伝子を含有するドナーベクターの組成は、OTC欠損症の治療のための臨床試験が行われていない。遺伝子標的化効率については、新生児NHPにおいてhOTCドナーベクターを試験し、有効性については、新生児トランスジェニックOTC欠損マウスにおいてhOTCドナーベクターを試験する。
【0172】
多くの代謝性疾患は、早期介入及び療法を必要とするが、AAV媒介性の新生児遺伝子療法は、新生児期における速い肝細胞増殖(liver proliferation)
及びAAVベクターの非組み込み的性質により不安定である。セーフハーバーへの治療用ミニ遺伝子カセットの標的化組み込みにより、ゲノムレベルで治療用遺伝子が持続的に発現され、細胞分裂を介して治療効果が維持されるであろう。OTC欠損症などの多くの代謝性疾患の場合、臨床的利益のために、肝臓における十分な形質導入効率を達成する必要がある。
【0173】
本発明者らは、乳幼児期に致死的な高アンモニア血症のエピソードを引き起こし得る、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)の治療のためのゲノム編集アプローチを説明する。ゲノム編集の目標は、治療効果が持続し、変異にかかわらず全てのOTCD患者で達成されることである。本発明者らは、生存している新生児を2つのAAVベクターで処置することによって、これを達成することを提案する:1つ目は、ヌクレアーゼを送達してセーフハーバー部位に二本鎖切断を生じさせることであり、2つ目は、この部位にノックインするためのOTCミニ遺伝子を送達することである。本発明者らの仮定は、新生児肝臓の肝細胞を分割することは、OTC遺伝子の効率的なノックインを促し、希釈によって組み込まれていない入力ベクターゲノムを排除することである。本発明者らは、ARCUSのAAV送達後のPCSK9の安全で、効率的で、安定した減少を示した成体マカクにおける本発明者らの以前の研究に基づいて、セーフハーバー部位としてのPCSK9遺伝子及びそれを標的化するARCUSと呼ばれるメガヌクレアーゼを使用することを決定した。OTCDのためのゲノム編集の本発明者らの最初の研究は、内因性PCSK9遺伝子のエクソン7の生殖系修飾を介して、PCSK9 ARCUSヌクレアーゼに感受性になったOTC欠損マウスで行われた。2つのベクターを新生児マウスに注射すると、ヒトOTCミニ遺伝子の効率的なノックインが得られ、高タンパク質ダイエットでチャレンジした場合の致死性高アンモニア血症に対する保護がもたらされた。臨床試験の準備として、本発明者らは、新生児及び乳幼児マカクにおいて、重要な安全性及び有効性パラメータを評価した。合計24匹の動物をAAVベクターで処置し、3ヵ月目及び12ヵ月目の肝臓生検の検査を含む分析を行った。これらの試験では、本発明者らは、編集効率及び毒性に対する以下のパラメータの影響を評価した:導入遺伝子(ヒト第IX因子及びヒトOTC)、ARCUSを駆動するプロモーター、クレードEカプシド、導入遺伝子に隣接するドナーの長さ、及び投薬時のマカクの年齢。ここで、少なくとも3ヵ月目の生検結果を含む24匹中16匹の動物の予備データを報告する。本発明者らは、AAVベクターの注射が、非常に安全であり、いずれのARCUS処置動物においても、トランスアミナーゼの上昇又は肝臓の組織病理の証拠がないことを見出した。霊長類モデルにおける有効性の重要な尺度は、形質導入効率であり、これは、ヒトOTC mRNA及びタンパク質をそれぞれ発現する細胞を検出するためのインサイツハイブリダイゼーション及び免疫染色によって測定される。最も高く、最も一貫性のある結果は、第1のベクターにおいてTBGプロモーターを有するARCUSを駆動する新規のクレードEカプシドを使用し、ドナーベクター上に500bpの隣接する相同性アームを使用するベクターを用いて得られた。この組み合わせにより、10.0±6.4%(N=6)の形質導入が達成された。これは、患者に実質的な利益をもたらし得ると考えられる閾値(OTC発現細胞の約5%である)よりも高い。予備データは、3ヵ月齢までのマカクに注射した場合、編集レベルが1年にわたって安定し、効率的な標的化挿入が達成され得ることを示唆する。PCSK9標的遺伝子座の分子解析は、ベクターゲノムのノックインの大部分が、相同組換え修復(HDR)ではなく、非相同末端結合(NHEJ)を介していたことを示唆した。要約すると、OTCDの新生児形態の実質的に満たされていないニーズは、本報告書に記載されているようなゲノム編集などの実験的療法の検討を正当化する。
【0174】
実施例1-材料及び方法
材料及び方法
AAVベクターは、以前に確立された手順及び製造業者の指示に従って構築した。AAVhu37カプシドを、示されている場合、本明細書に記載される実験に使用した。
【0175】
全ての動物手順は、Institutional Animal Care and Use Committee of the University of Pennsylvaniaによって承認されたプロトコルに従って実施した。
【0176】
実施例2-パイロット試験:新生児NHPにおけるARCUS2又はSaCas9によるPCSK9遺伝子座におけるhFIXミニ遺伝子のノックイン
この試験では、新生児非ヒト霊長類(NHP)におけるオンターゲット(PSK9)SaCas9又はARCUS媒介性遺伝子編集及びhFIX又はOTCミニ遺伝子ノックの効率を評価した。図1は、エクソン7内のドナースプライス部位及び目的のドナー鋳型(例えば、hFIX、hOTC)を含むHDRドナーベクターを示す、rhPCSK9遺伝子座の概略図を示す。更に、図3A図3Cは、SaCas9又はARCUS媒介性遺伝子修正のためのデュアルAAVベクターシステムの概略図を示す。図3Aは、ARCUS2媒介性遺伝子修正のためのデュアルAAVhu37ベクターシステムの概略図を示し、AAVhu37ドナーベクターは、hOTCドナー鋳型配列を含む。図3Bは、Sa-Cas9媒介性遺伝子修正(トランス;AAVhu37-SaCas9)のためのデュアルAAVhu37ベクターシステムの概略図を示し、AAV.hu37.shRNAドナーベクターは、hOTCドナー鋳型配列を含む。図3Cは、Sa-Cas9媒介性遺伝子修正のためのデュアルAAVhu37ベクターシステム(シス;AAVhu37.PCSK9-sgRN.SaCas9)の概略図を示し、AAV.hu37ドナーベクターは、hOTCドナー鋳型配列を含む。
【0177】
遺伝子編集ヌクレアーゼ及びドナー鋳型を含む上記のデュアルAAVhu37ベクターを、新生児NHPにおいて使用して、SaCas9又はARCUS2のいずれかによって媒介性されるPCSK9遺伝子座におけるhFIXミニ遺伝子のノックインを調べた。遺伝子編集AAVhu37ベクターを、1×1013GC/kgの用量で送達し、ドナー鋳型AAVhu37ベクターを、3×1013GC/kgで送達した。全体として、以下の3つの処置NHP群があった:1)AAVhu37.EGFP及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIX.U6.sgR、2)AAVhu37.ARCUS2及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIX、3)AAVhu37.SaCas9及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIX.U6.sgR。図2は、新生児NHPにおけるARCUS2又はSaCas9によるPCSK9遺伝子座におけるhFIXミニ遺伝子ノックインを含むパイロット研究のタイムラインを示す。この試験では、0日目にNHPを注射し、血液試料を、2~4週間ごとに採取し(血清化学、血漿中のhFIX発現、血清中のPCSK9レベル、LDLレベル、及び中和抗体(NAb)レベルを調べるため)、第1の肝臓生検を84日目に行った(ベクターゲノムレベル、遺伝子発現レベル、オフターゲット編集、及び組織学を調べるため)。
【0178】
ヌクレアーゼ媒介性遺伝子標的化のインビボ試験を、新生児及び乳幼児のNHPにおいて行った。図4A、4B、及び5Gに示すように、動物に、1×1013GC/kgのAAVhu37.ARCUS2.WPRE及び3×1013GC/kgのAAVhu37.hFIXco-HDR、又は1×1013GC/kgのAAVhu37.SaCas9.WPRE及び3×1013GC/kgのAAVhu37.hFIXco-HDR.U6.sgR、又は1×1013GC/kgのAAVhu37.GFP.WPRE及び3×1013GC/kgのAAVhu37.hFIXco-HDR.U6.sgRを投与した。図4Cは、処置後0日~13ヵ月目の示された時点でのhFIXレベルを示す(ng/mLとしてプロットされている)。図4Dは、処置後0日~12ヵ月目の示された時点でのPCSK9レベルを示す(0日目のベースラインのパーセンテージとしてプロットされている)。図4Eは、処置後0~196日目の示された時点でのALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)レベルを示す(U/Lとしてプロットされている)。図4Fは、処置後
0日~196日目の示された時点での抗FIX IgGレベルを示す(希釈係数、1/希釈としてプロットされている)。図4Gは、処置後0日~196日目の指示された時点でのPCSK9レベルを示す(ng/mLとしてプロットされている)。図4Hは、治療後0日~196日目の示された時点で測定された体重を示す(gとしてプロットされている)。図5Aは、乳幼児NHPにおける、示された時点でのhFIXレベル(ng/mLとしてプロットされている)を示す。図5Bは、乳幼児NHPにおける、示された時点でのPCSK9レベル(0日目のベースラインのパーセンテージとしてプロットされている)を示す。図5Cは、乳幼児NHPにおける、示された時点(U/Lとしてプロットされている)でのALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)レベルを示す。図5Dは、乳幼児のNHPにおける、示された時点での抗FIX IgGレベル(希釈係数、1/希釈としてプロットされている)を示す。図5Eは、乳幼児NHPにおける、示された時点でのPCSK9レベル(ng/mLとしてプロットされている)を示す。図5Fは、乳幼児NHPにおける、示された時点(gとしてプロットされている)で測定された体重を示す。図5Gは、図4A~5Gに記載の実験からのデータを示す要約表である。図5Hは、試験した新生児と乳幼児のNHPとの間の様々なデータの比較を示す。
【0179】
図6A~6Eは、NHPにおける処置後に示される日に採取された肝臓生検試料におけるベクターの形質導入(GC)及び導入遺伝子の発現を示す。図6Aは、二倍体細胞当たりのAAVゲノムコピー(GC)としてプロットされた、肝臓生検試料におけるベクターの形質導入のレベルを示す。図6Bは、肝臓生検試料における導入遺伝子RNAの相対発現を示す。図6Cは、肝臓生検においてFIX及びARCUSを検出するための特異的プローブを使用したデュアルインサイツハイブリダイゼーション(ISH)を示す。図6Dは、形質導入の定量に使用されるデジタル化ISH画像を示す。図6Eは、ISHによって定量化され、パーセント形質導入としてプロットされたFIX導入遺伝子の形質導入効率を示す。図6Fは、肝臓におけるゲノムコピーを示す。両方の時点で、新生児よりも高いFIXcoのGCが乳幼児(3倍)で観察された。第2の生検では、第1の生検よりもFIXcoのGCが減少した(1.5~2倍)。図6Gは、肝臓生検における導入遺伝子のmRNAを示す。FIXco mRNAは、乳幼児では、3ヵ月から1年の間で安定していたが、FIXco mRNAは、新生児処置動物では、3ヵ月から1年の間で3倍減少した。図6Hは、肝臓試料に対する分子解析の結果を示す。アンプリコン-seqで測定されたインデル、及びITR-seqで測定されたオフターゲットを示す。加えて、366日目の動物20-196についてのナノポアロングリード配列決定の結果を示す。0.6%のリードが、両側にHDRの組み込みを示した。図6Iは、図6A図6Hに記載されているデータの要約表である。
【0180】
図7A図7Lは、NHPにおける処置の84日後に採取された肝臓生検におけるFIX及びARCUSを検出するための特異的プローブを使用した、様々な倍率の視野で示されたデュアルインサイツハイブリダイゼーション(ISH)を示す(AAVhu37.ARCUS2及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIXで処置されたNHP)。図7Aは、4倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたARCUSを示す。図7Bは、4倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図7Cは、4倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図7Dは、4倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図7Eは、10倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたARCUSを示す。図7Fは、10倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図7Gは、10倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図7Hは、10倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図7Iは、20倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたARCUS発現を示す。図
7Jは、20倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図7Kは、20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図7Lは、20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたARCUS及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。ベクターの形質導入(GC/二倍体ゲノム)の要約を、以下の表1に示す。
【表5】
【0181】
図8A図8Mは、NHPにおける処置の84日後に採取された肝臓生検におけるFIX及びARCUSを検出するための特異的プローブを使用した、様々な倍率の視野で示されたデュアルインサイツハイブリダイゼーション(ISH)を示す(AAVhu37.EGFP及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIX.U6.sgRで処置されたNHP)。図8Aは、4倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたGFP-WRPEを示す。図8Bは、4倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図8Cは、4倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図8Dは、4倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図8Eは、10倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたGFP-WRPEを示す。図8Fは、10倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図8Gは、10倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図8Hは、10倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図8Iは、20倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたGFP-WRPEの発現を示す。図8Jは、20倍の倍率で観察した、肝臓生検におけるISHで検出されたhFIXを示す。図8Kは、20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXの重ね合わせた画像を示す。図8Lは、20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。図8Mは、未処理の対照において20倍の倍率で観察した、ISHで検出されたGFP-WRPE及びhFIXを、DAPI(核の染色)と重ね合わせた画像として示す。ベクターの形質導入(GC/二倍体ゲノム)の要約を、以下の表2に示す。
【表6】
【0182】
図9は、AAVhu37.ARCUS2及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIXで処理されたNHPにおけるARCUS媒介性オンターゲット編集を示す。処置の
84日後に、肝臓生検試料を採取し、そこに存在する標的領域における総インデルのパーセンテージを計算した。更に、AAVhu37.ARCUS2及びAAVhu37.Donor-HDR-hFIXで処理されたNHPにおけるARCUS媒介性オンターゲット編集。処置の84日後に、肝臓生検試料を採取し、そこに存在する標的領域における総インデルの頻度を計算し、標的に対する固有UMI OTリードの頻度としてプロットした。アンプリコン-seqによって定量化されたインデルの要約を、以下の表3に示す。
【表7】
【0183】
実施例3-新生児NHPにおけるARCUS2媒介性hOTC遺伝子標的化
新生児(1~16日齢)又は乳幼児(3~4ヵ月齢)のアカゲザルを、非GLP準拠POC薬理試験に使用した。M2PCSK9メガヌクレアーゼは、ヒト及びアカゲザルのPCSK9遺伝子に存在する22-bpの配列を標的化する。したがって、アカゲザルを使用して、オンターゲット編集(薬理学)及び安全性/毒性学を評価することができる。更に、新生児及び乳幼児のアカゲザルは、ヒトの乳幼児と同様の解剖学的及び生理学的特徴を有し、意図された臨床ROA(IV)の使用を可能にするであろう。解剖学的構造及びROAの類似性は、代表的なベクター分布及び形質導入プロファイルをもたらすことが予想され、これにより、オンターゲット及びオフターゲット編集、並びに新生児マウスでは不可能な臨床病理学を含む、被験試料の薬理学及び毒性のより正確な評価が可能になる。
【0184】
この試験では、新生児NHPに、ARCUS2ヌクレアーゼベクターと、様々な長さのHDRアーム(500bpアーム又は短いHDRアーム)を有するドナーベクターとを投与した。ベクターの概略図を、図11Jに示す。図12Aは、実験からのデータを示す要約表である。全ての14匹の新生児マカクは、ベクターの注入に十分に耐容性であり(すなわち、明らかな臨床後遺症がない)、時間の経過とともに体重が増加した(図11I)。肝臓酵素レベルは、14日目の一部の動物におけるALTレベルの一過性及び軽度の上昇を除いて、正常範囲内であった(図11C)。
【0185】
投薬前に新生児から採取された0日目の血漿試料の分析は、3匹の動物(21-111、21-113、21-122)がAAVrh79に対する高レベル(400以上)の結合抗体を有することを示した(図11A)。これらの既存の抗AAVrh79抗体は、AAV遺伝子導入を遮断するであろう。
【0186】
ドナーのみの対照動物を含む全ての新生児動物において、PCSK9レベルを経時的に追跡した。0日目のPCSK9レベルは、新生児間で異なっていた(図11B)。9匹の動物は、1匹のドナーのみの対照動物を含むベクター投与後のPCSK9レベルの低下の傾向を示し、一方、残りの5匹の動物は、投与後のPCSK9レベルの持続的又は一過性の上昇を示した(図11B)。
【0187】
84日目に、開腹術による肝臓生検を行った。肝臓におけるhOTCの形質導入効率を、導入遺伝子mRNAを検出するためのhOTC特異的プローブ及びM2PCSK9特異的プローブを用いるデュアルISH、並びにヒトOTCタンパク質を検出するためのOTC免疫蛍光、続いて、スキャンされたスライド上での定量によって評価した(図11D)。投薬時に既存の抗AAVrh79結合抗体を有する3匹の動物(21-111、21-113、及び21-122)は、両方の方法で、OTC陽性肝細胞を示した。ドナーのみの2匹の対照動物は、低レベルのhOTC形質導入(1%以下)を示した。最高の形質導入効率(OTC免疫蛍で11.9%及び18.6%)は、AAVrh79.TBG.PI.M2PCSK9.WPRE.bGH及びAAVrh79.rhHDR.TBG.hOTCco.bGHドナーベクター(G6)を同時投与された2匹の動物において検出された。陽性のhOTC発現肝細胞も、クラスター中に存在していることが見出された。これらのレベルは、患者に実質的な利益をもたらす閾値(OTC発現細胞の約5%である)を上回っている。
【0188】
各動物からの84日目の肝臓生検試料の分子解析を行い、二倍体ゲノム当たりの導入遺伝子コピー数、mRNA発現レベル、オンターゲット編集、及びオフターゲット編集を測定した(図11F)。トランスダクション効率分析と一致して、群6の2匹の動物(21-157及び21-175)は、最も高いhOTCベクターのGC(図11F)、hOTC mRNA(図12I)、及びオンターゲットインデル(%)(図11H)を有した。動物におけるM2PCSK9ベクターのGCは、hOTCベクターのGCよりも2倍~7倍低かったが、M2PCSK9 mRNAレベルは、hOTC mRNAレベルよりも23倍及び765倍低かった(図11F及び11G)。
【0189】
ITR-seqによって評価されたオフターゲット活性は、この試験の84日目の肝臓生検試料において2~40の潜在的なオフターゲットを同定した。いくつかのオフターゲット部位は、それぞれ、試験2及び試験3において、hFIX乳幼児及びhFIX新生児動物を含む複数の動物において検出された。オフターゲット編集は、潜在的なオフターゲット部位のアンプリコン-seqによって更に特徴付けられる。
【0190】
まとめると、本発明者らは、M2PCSK9ベクター及びhOTCcoドナーベクターの組み合わせを同定し、これは、新生児マカクに同時投与した場合、投与後3ヵ月で肝臓において12~18.6%の形質導入効率を達成することができ、両方とも、実質的に有益な患者の閾値(すなわち、約5%のOTC発現肝細胞)よりも高い。この試験における動物は、長期的な効率及び安全性評価のために追跡されている。本発明者らは、投与後1年で第2の肝臓生検を行い、hOTC形質導入の安定性、肝臓における組織病理学、及び肝臓におけるオンターゲティング及びオフターゲティングを評価する。
【0191】
実施例4-PCSK9-hE7-KIマウスモデル
ヒト及びマカクのPCSK9遺伝子におけるM2PCSK9標的化配列は、マウスPcsk9遺伝子では保存されないため、マウスの遺伝子座におけるゲノム編集にM2PCSK9を使用することはできない。したがって、本発明者らは、エクソン7を含むマウスPcsk9遺伝子の領域を、エクソン7を含むヒトPCSK9遺伝子の領域に置き換えるノックインマウスモデル(PCSK9-hE7-KIマウスと名付けられた)を生成するよ
うにThe Jackson Laboratoryに依頼した(図10A~10C)。このモデルは、インビボゲノム編集及び遺伝子標的化効率の評価に使用することができる。次いで、PCSK9-hE7-KIマウスを、sparse fur ash(spfash)マウスと交配した。spfashマウスは、Otc遺伝子のエクソン4の末端のスプライスドナー部位でGからAへの点変異を有し、これは、Otc mRNAの異常なスプライシングをもたらし、OTC mRNA及びタンパク質発現の両方で20倍の減少をもたらす(Hodges and Rosenberg,1989)。罹患した動物は、5~10%の残存OTC活性を有し、固形飼料(chow diet)で生存することができるが、高タンパク質ダイエットの場合は致死的であり得る高アンモニア(hyperammonia)を発症する(Yang et al.,2016)。
【0192】
PCSK9-hE7-KI.spfashマウスモデルは、ヒトOTCのインビボ遺伝子標的化の有効性の評価、及び標的化効率と有効性との相関の実証に使用することができる。しかしながら、新生児マウスのサイズが小さいため、血液臨床病理及び遺伝子標的化の臨床的有効性の評価は、マウスが離乳した後、十分な体重に達してから、最終手順としてのみ行うことができる。
【0193】
図12は、PCSK9-hE7ノックインアレルのヒトPCSK9配列、マウスPcsk9(mPCSK9)及びアカゲザルPcsk9(rhPCSK9)を表す、265bp配列の配列アラインメントを示す。この265bp領域には、ヒト配列とアカゲザル配列との間に6つのミスマッチがある。げっ歯類及び霊長類の配列は、様々なLINE及びLTRの挿入のために、この枠を超えて分岐する。ヒトとマウスとの間には、エクソン7における2つのアミノ酸の違いが存在する。hE7-KIマウスは、測定されたELISAによって正常レベルのmPCSK9を発現している。
【0194】
実施例5-PCSK9-hE7-KI.spfash仔におけるPCSK9遺伝子座に対するインビボOTC遺伝子標的化
この進行中の非GLP準拠薬理試験は、新生児PCSK9-hE7-KI.spfashマウスにおけるヒトOTC遺伝子のM2PCSK9メガヌクレアーゼ媒介性ノックインが、意図された臨床ROA(IV)を介したM2PCSK9ヌクレアーゼ発現ベクター及びヒトOTCドナーベクターの単回の同時投与後、OTC欠損(肝臓)の治療のための標的組織における治療用ヒトOTC発現を達成できるかどうかを評価することを目的とする。実験設計の概略図を、図14Aに示し、投薬量群を、図14Bに示す。
【0195】
0日目に、新生児(PND1~2)雄PCSK9-hE7-KI.spfashマウスに、3.0×1013GC/kgの用量の3つの異なるAAVrh79 hOTCcoドナーベクターのうちの1つと組み合わせて、1.0×1013GC/kgの用量のM2PCSK9メガヌクレアーゼを発現するAAVrh79ベクター(AAVrh79.TBG.PI.M2PCSK9.WPRE.bGH)を、IV同時投与した。本試験で評価したM2PCSK9メガヌクレアーゼ発現ベクター(AAVrh79.TBG.PI.M2PCSK9.WPRE.bGH)は、リード臨床候補と同一であり、一方、各hOTCcoドナーベクターは、HDRアームを除いて、リード臨床候補と同一であった。具体的には、臨床的候補は、ヒトHDR配列の長鎖バージョン(AAVrh79.hHDR.TBG.hOTCco.bGH)を含むが、本試験で評価したhOTCcoドナーベクターには、マウス-ヒトハイブリッドHDR配列(AAVrh79.mhHDR.TBG.hOTCco.bGH)、ヒトHDR配列の短鎖バージョン(AAVrh79.shHDR.TBG.hOTCco.bGH)、又はHDR配列なし(AAVrh79.TBG.hOTCco.bGH)が含まれる。図13は、HDRアームと、ヒト配列、ノックインマウス配列、及びNHP配列との相同性の比較を示す。陰性対照として、追加の年齢適合PCSK9-hE7-KI.spfashマウスに、メガヌクレアーゼを発現しないAAVrh
79ベクター(AAVrh79.TBG.PI.EGFP.WPRE.bGH)を、AAVrh79.mhHDR.TBG.hOTCco.bGHと組み合わせて投与した。
【0196】
インライフ評価には、毎日行われる生存率モニタリング、体重測定、高タンパク質ダイエットチャレンジ後の血漿中PCSK9、及び血漿中NH、及び尿中オロチン酸のレベルの評価、並びに3分の2の部分肝切除後のヒトOTC形質導入の安定性を評価するための120日目の部分肝切除が含まれる。49日目及び170日目に、各コホートからのサブグループに、10日間の高タンパク質ダイエットでチャレンジし、チャレンジの終了時に剖検を行う。剖検では、肝臓を採取して、ヒトOTC mRNAの発現(インサイツハイブリダイゼーション)、OTCタンパク質の発現(免疫染色)、並びに染色及び/又は酵素活性アッセイによって評価されるOTC酵素活性の評価を含む、ヒトOTC遺伝子のノックインを評価する。肝臓のDNAを単離して、オンターゲット編集(アンプリコン-seq、Oxfordナノポアロングリード配列決定)を評価し、ベクターゲノムコピーを評価する。
【0197】
予備結果は、mhHDRアームを有するベクターを投与されたマウスが、野生型マウスと同等の生存率を示し、shHDR処置マウスが、10日間の高タンパク質ダイエットチャレンジ後に80%の生存率を達成することを示す(図14C)。処置マウスは全て、KI-spf-ash未処置マウスよりも体重を良好に維持した(図14D)。mHDR処置マウスの血漿中アンモニアレベルは、未処置マウスと比較して、顕著に低下した(図14E)。
【0198】
mPCSK9レベルを、48日目に測定し、全ての処置マウスが、減少を示した(図14F)。インデルの割合(%)は、HDRタイプ間でかなり一貫していた(図14G)。hOTCレベルは、shHDR及びmhHDRで処置したマウスで増加した(図14H)。
【0199】
実施例6-新生児アカゲザルにおけるPCSK9遺伝子座へのインビボでのOTC遺伝子の標的化
この進行中の非GLP準拠薬理試験は、新生児アカゲザルにおけるヒトOTC遺伝子のM2PCSK9メガヌクレアーゼ媒介性ノックインが、意図された臨床ROA(IV)を介したM2PCSK9メガヌクレアーゼ発現ベクター及びヒトOTCドナーベクターの単回の同時投与後、OTC欠損(肝臓)の治療のための標的組織における治療用ヒトOTC発現を達成できるかどうかを評価することを目的とする。
【0200】
0日目に、新生児(1~16日齢)アカゲザルに、3.0×1013GC/kgの用量の2つの異なるAAV hOTCcoドナーベクターのうちの1つと組み合わせて、1.0×1013GC/kgの用量のM2PCSK9メガヌクレアーゼを発現する2つの異なるベクターを、IV同時投与した。3.0×1013GC/kgの用量でAAV hOTCcoドナーベクターのみを投与された非ヌクレアーゼ群を、ドナーのみの対照として含めた。
【0201】
PCSK9遺伝子を標的化するAAVベクターについて、本発明者らは、肝臓においてM2PCSK9を発現する2つのAAVベクター構築物を比較した。AAV.TBG.PI.M2PCSK9.WPRE.bGHは、全長TBGプロモーター及び2コピーのエンハンサーエレメントを含み、WPREは、短くて弱いプロモーターを含むAAV.TBG-S1-F113.PI.M2PCSK9.bGHよりも高いレベルのヌクレアーゼを発現する。hOTCドナーベクターについて、本発明者らは、hOTCco導入遺伝子カセットに隣接する相同性アームの長さが異なる2つのAAV.hOTCcoドナーベクターを比較した。
【0202】
NHPは、0日目に、2つのベクターをIV投与され、生存率について毎日モニタリングされている。インライフ評価には、体重の測定、血液の臨床病理、及び血漿の遺伝子編集分析が含まれる。ゲノム編集効率、ベクターゲノムコピー、導入遺伝子の発現、組織病理学、免疫染色、及びRNA ISH染色の分析のための肝臓組織を単離するために、2つの開腹術を計画する。NHPは、長期間追跡され、剖検され(日付は未定)、その時点で、ゲノム編集効率、ベクターゲノムコピー、導入遺伝子の発現、組織病理学、免疫染色、及びRNA ISH染色の評価のために、肝臓及び他の主要な臓器から組織が採取される。
【0203】
実施例7-PCSK9-hE7-KI.SPFash仔における有効性の評価及びベクターの比の決定
この計画された非GLP準拠薬理試験は、意図された臨床ROA(IV)を介したM2PCSK9ヌクレアーゼ発現ベクター及びヒトOTCドナーベクターの単回の同時投与後、OTC欠損(肝臓)の治療のための新生児PCSK9-hE7-KI.spfashマウスにおけるヒトOTC遺伝子のM2PCSK9メガヌクレアーゼ媒介性ノックインの最高の有効性を達成するために必要なベクター成分の比を評価することを目的とする。
【0204】
0日目に、新生児(PND1~2)雄PCSK9-hE7-KI.spfashマウスに、マウス-ヒトハイブリッドHDR配列(AAVrh79.mhHDR.TBG.hOTCco.bGH)を含むhOTCcoドナーベクターの3つの用量のうちの1つと組み合わせて、3つの用量のうちの1つの用量のM2PCSK9メガヌクレアーゼ(AAVrh79.TBG.PI.M2PCSK9.WPRE.bGH)を発現するAAVrh79ベクターを、IV同時投与する。本試験で評価したM2PCSK9メガヌクレアーゼ発現ベクター(AAVrh79.TBG.PI.M2PCSK9.WPRE.bH)は、臨床候補と同一であり、一方、hOTCcoドナーベクターは、HDRアームを除いて、臨床候補と同一であった。具体的には、臨床的候補は、ヒトHDR配列の長鎖バージョン(AAVrh79.hHDR.TBG.hOTCco.bGH)を含むが、本試験で評価したhOTCcoドナーベクターには、マウス-ヒトハイブリッドHDR配列(AAVrh79.mhHDR.TBG.hOTCco.bGH)が含まれる。
【0205】
ドナーベクター内のマウス-ヒトハイブリッドHDR配列(AAVrh79.mhHDR.TBG.hOTCco.bGH)を、本試験のために選択して、ドナー配列がPCSK9-hE7-KI.spfashマウスの配列と直接相同である、このアプローチの薬理学の評価を可能にした。
【0206】
インライフ評価には、毎日行われる生存モニタリング、体重測定、高タンパク質ダイエットチャレンジ後の血漿中NH及び尿中オロチン酸のレベルの評価が含まれる。81日目に、マウスに10日間の高タンパク質ダイエットでチャレンジし、チャレンジの終了時に剖検を行う。剖検では、肝臓を採取して、ヒトOTC mRNAの発現(インサイツハイブリダイゼーション)、OTCタンパク質の発現(免疫染色)、並びに染色及び/又は酵素活性アッセイによって評価されるOTC酵素活性の評価を含む、ヒトOTC遺伝子のノックインを評価する。また、肝臓のDNAを単離して、オンターゲット編集(アンプリコン-seq)を評価し、ベクターゲノムコピーを評価する。
【0207】
実施例8-PCSK9-hE7-KI.SPFash仔における有効性の評価及び最小有効用量の決定
この計画されたGLP準拠薬理試験は、新生児PCSK9-hE7-KI.spfashマウスモデルにおけるIV投与AAVの有効性を評価し、MEDを決定することを目的とする。M2PCSK9メガヌクレアーゼを発現するAAVrh79ベクター(AAVr
h79.TBG.PI.M2PCSK9.WPRE.bGH)は、計画されたGLP準拠毒性のために製造される毒性学的ベクターロットになる。ヒトHDR配列の長鎖バージョン(AAVrh79.hHDR.TBG.hOTCco.bGH)を含む被験試料を利用する代わりに、本試験は、マウス-ヒトハイブリッドHDR配列(AAVrh79.mhHDR.TBG.hOTCco.bGH)を含むhOTCcoドナーベクターを利用することになる。このベクターは、臨床候補の毒性学的ベクターロットと同等の方法で製造されるであろう。
【0208】
この試験のために、ドナーベクター内のマウス-ヒトハイブリッドHDR配列(AAVrh79.mhHDR.TBG.hOTCco.bGH)(ドナー配列がPCSK9-hE7-KI.spfashマウスにおける配列と直接相同である)を使用することを選択して、このアプローチの薬理学を効果的に研究することを可能にした。
【0209】
この試験では、N=60匹の新生児(PND1~2)新生児PCSK9-hE7-KI.spfashマウス、及び対照としてのN=15匹の年齢適合雄PCSK9-hE7-KI.WT(野生型)を評価する。この試験には、1つの剖検時点(90日)が含まれることになる。有効性評価のために、マウスは、81日目から90日目までの10日間コースの高タンパク質ダイエットによってチャレンジされる。生存率、身体状態、及びバイオマーカーの変化を評価することになる。3つの用量レベルのAAVを、IV投与を使用して評価する。用量レベルは、以前の非臨床試験で評価された用量範囲に基づいて選択される。評価された用量レベルは、予想される臨床用量を包含する。
【0210】
インライフ評価には、毎日の生存チェック、生存のモニタリング、体重測定、高タンパク質ダイエットチャレンジ後の血清中PCSK9レベル、血漿中NH、及び尿中オロチン酸レベルの評価が含まれる。剖検は、90日目に行われる。剖検では、CBC/鑑別及び血清臨床化学分析のために、血液を採取する。組織病理学的評価のために、組織リストが収集される。肝臓を採取して、ヒトOTC mRNAの発現(インサイツハイブリダイゼーション)、OTCタンパク質の発現(免疫染色)、並びに染色及び/又は酵素活性アッセイによって評価されるOTC酵素活性の評価を含む、ヒトOTC遺伝子のノックインを評価する。また、肝臓のDNAを単離して、オンターゲット編集(アンプリコン-seq)を評価し、ベクターゲノムコピーを評価する。
【0211】
MEDは、ビヒクル処置新生児PCSK9-hE7-KI.spfash分対照マウスと比較して、AAV処置新生児PCSK9-hE7-KI.spfashの高タンパク質ダイエット後の生存率、高タンパク質ダイエットチャレンジの終了時の血漿中NHレベル、ヒトOTC mRNA及びタンパク質の発現、OTCの酵素活性、並びにオンターゲット編集の分析に基づいて、決定される。
【0212】
実施例9-PCSK9-hE7-KI.spfash仔における毒性試験
新生児(PND1~2)PCSK9-hE7-KI.spfashマウスにおいて、IV同時投与後の被験試料の安全性、耐容性、薬理学、及び薬物動態を調べるために、6ヵ月間のGLP準拠安全性試験を実施する。中間解析は、オンターゲット編集、オフターゲット編集、導入遺伝子の発現、及び組織病理学的分析を含み、この解析を、60日目及び180日目(これらの時点は、投与後にヌクレアーゼ依存性遺伝子挿入が安定した定常レベルに到達するのに十分な時間を与える)に実施する。新生児PCSK9-hE7-KI.spfashマウスに、3つの用量レベル(1.0×1012GC/kgヌクレアーゼベクター及び3.0×1012GC/kgドナーベクター、3.3×1012GC/kgヌクレアーゼベクター及び1.0×1013GC/kgドナーベクター、又は1.0×1013GC/kgヌクレアーゼベクター及び3.0×1013GC/kg、1用量当たりN=20)のうちの1つの被験試料又はビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水[PBS]、N
=20)を投与する。被験試料又はビヒクルの投与後、インライフ評価には、苦痛の兆候及び異常行動を毎日モニタリングするための臨床観察、体重測定、並びに血液の臨床血清化学(具体的には、ALT、AST、及び総ビリルビン)が含まれる。
【0213】
被験試料投与の60日後、コホート1、3、5、及び7を安楽死させ、脳、脊髄、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、肺、生殖器、副腎、及びリンパ節を含むが、これらに限定されない組織の包括的なリストに対して、組織病理学的分析を行う。必要に応じて、臓器の重量を測定する。
【0214】
肝臓試料は、アンプリコン-seq及びAMP-seqによるオンターゲット編集、ITR-seq及びアンプリコン-seqによるオフターゲット編集、ベクターの生体内分布、及び導入遺伝子の発現のために採取及び分析される。肝臓試料において、生体内分布は、PCRによって評価され、メガヌクレアーゼのRNA発現は、RT-PCRによって分析される。高度に灌流された臓器は、メガヌクレアーゼRNAについて分析され、メガヌクレアーゼRNAの検出可能な発現を有する組織は、オンターゲット編集についてアンプリコン-seqによって評価される。検出可能なオンターゲット編集を有する組織は、オフターゲット編集について更に評価される。
【0215】
ベクターの生体内分布については、デュアルベクターの導入遺伝子(M2PCSK9及びhOTCco)に特異的なqPCR検出が開発される。アッセイの効率、直線性、精度、再現性、及び検出限界は、標的配列の代用としてのAAVシスプラスミドを使用して評価される。アッセイの定量下限(LLOQ)は、試験組織又は排泄物に対するアッセイが開始される前に決定される。認定計画は、導入遺伝子特異的アッセイを以前に実施した認定試験に橋渡しするために実装される。試験したマトリックスには、意図された標的、生体内分布のための肝臓が含まれる。マトリックス効果は、生体内分布試験の過程で試験された全ての試料からのスパイクされた標的対照の回収、並びに以前に実施された認定試験から差し引かれたデータに基づいて更に評価される。
【0216】
実施例10-PCSK9-hE7-KI.ldlr/ldlr.apobec/apobec仔(hoFHモデル)におけるSaCas9によるPCSK9遺伝子座におけるhLDLRミニ遺伝子ノックイン
本試験は、新生児PCSK9-hE7-KI.ldlr/ldlr.apobec/apobecマウスにおけるヒトLDLR遺伝子のCas9媒介性ノックインが、意図された臨床ROA(IV)を介したSaCas9ヌクレアーゼ発現ベクター及びヒトLDLRドナーベクターの単回の同時投与後、家族性高コレステロール血症(肝臓)の治療のための標的組織における治療用ヒトLDLR発現を達成できるかどうかを評価することを目的とする。図15の実験設計を使用して、マウスモデルを生成した。マウスモデルでは、マウスPCSK9エクソン7が、SaCas9標的化配列を含有するヒトPCSK9エクソン7に置き換えられる。
【0217】
0日目に、新生児PCSK9-hE7-KI.ldlr/ldlr.apobec/apobecマウスに、3.0×1013GC/kgの用量で、2つの異なるAAVrh79 hLDLRドナーベクターのうちの1つと組み合わせて、1.0×1013GC/kgの用量のCas9を発現するAAVrh79ベクター(AAVrh79.U6.sgR3.PSCK9.APB2.HLP.SaCas9.bGH)を、IV同時投与した。使用したベクターを示す概略図を、図16に示す。具体的には、この試験で評価したドナーベクターのうちの1つは、マウス-ヒトハイブリッドHDR配列(AAVrh79.mhHDR.hLDLR011)を含み、他方は、ヒトHDR配列のより短鎖バージョン(AAVrh79.shHDR.hLDLR011)を含んだ。陰性対照として、追加の年齢適合PCSK9-hE7-KI.spfashマウスに、AAVrh79.sh
HDR.hLDLR011と組み合わせて、saCas9を発現しないAAVrh79ベクターを投与した。
【0218】
インライフ評価には、毎日行われる生存率モニタリング、並びに42、63、90、120、及び150日目の血清LDL-cレベルの評価が含まれる。ヒトLDLR形質導入の安定性を評価するための63日目の部分肝切除、及び150日目の剖検。剖検では、肝臓を採取して、ヒトLDLR mRNAの発現(インサイツハイブリダイゼーション)、LDLRタンパク質の発現(免疫染色)の評価を含む、ヒトLDLR遺伝子のノックインを評価する。肝臓のDNAを単離して、オンターゲット編集(アンプリコン-seq、Oxfordナノポアロングリード配列決定)を評価し、ベクターゲノムコピーを評価する。実験設計を、図17に示す。
【0219】
予備結果は、saCas9及びドナーベクターを投与されたマウスは、血清中LDLレベルが有意に減少したことを示す。安定した組み込みを示す2/3部分肝切除後のLDLの変化はなかった(図18A)。インデルは、mhHDR及びshHDRドナーベクターを使用して一貫していた(図18B)。63日目に、shHDR処置マウスは、わずかに高いhLDLRレベル(図18C)を示したが、mhHDR及びshHDR(saCas9)ベクターの場合、血清中LDLレベルが類似していた(図18D)。
【0220】
図19は、部分肝切除後63日目の肝臓におけるhLDLRの発現の免疫組織化学的評価を示す。
【0221】
本明細書に引用される全ての文献は、参照により本明細書に援用され、本明細書に添えて提出される配列表の配列及びテキストも、参照により援用される。2021年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/180,603号、2021年9月9日に出願された第63/242,474号、2021年9月14日に出願された第63/244,205号、2022年1月21日に出願された第63/301,933号、2022年4月15日に出願された第63/331,385号は、各々、それらの全体が参照により援用される。本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正を行うことができることが理解されよう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A-7D】
図7E-7H】
図7I-7L】
図8A-8D】
図8E-8H】
図8I-8M】
図9
図10A
図10B
図11A
図11B-1】
図11B-2】
図11C-1】
図11C-2】
図11D
図11E-1】
図11E-2】
図11F
図11G
図11H
図11I
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図14I
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
【配列表】
2024519469000001.app
【国際調査報告】