(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】高電圧(HV)回路部分と低電圧(LV)回路部分との間にガルバニック絶縁を含み、増加された沿面距離を有する電気回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566742
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2022060278
(87)【国際公開番号】W WO2022228940
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】アッケルマン ベルント
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB43
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730ZZ05
5H730ZZ11
5H730ZZ16
(57)【要約】
本開示においては、高電圧(HV)回路部分と低電圧(LV)回路部分との間にガルバニック絶縁を有する電気回路であって、前記HV回路部分及び前記LV回路部分を供給する基板と、前記ガルバニック絶縁を供給するための電気的構成要素であって、第1の一次端子と第1の二次端子との間の前記基板上に沿面距離が設けられるように、前記基板に設けられると共に、前記第1の一次端子で前記HV回路部分に接続される一次側、及び前記第1の二次端子で前記LV回路部分に接続される二次側を有する電気的構成要素と、前記基板に設けられ、第1端部で、前記HV回路部分内の低周波(LF)電圧ノードに接続される導電性トレースであって、前記LF電圧ノードにおける電位の周波数が、前記第1の一次端子における電位の周波数より低く、前記導電性トレースが、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に設けられ、それによって、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の前記沿面距離を増大させる導電性トレースとを有する電気回路が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧回路部分と低電圧回路部分との間にガルバニック絶縁を有する電気回路を含むスイッチモード電源であって、前記電気回路が、
前記高電圧回路部分及び前記低電圧回路部分を供給する基板と、
前記ガルバニック絶縁を供給するための電気的構成要素であって、第1の一次端子と第1の二次端子との間の前記基板上に沿面距離が設けられるように、前記基板に設けられると共に、前記第1の一次端子で前記高電圧回路部分に接続される一次側、及び前記第1の二次端子で前記低電圧回路部分に接続される二次側を有する電気的構成要素と、
前記基板に設けられ、第1端部で、前記高電圧回路部分内の低周波電圧ノードに接続される導電性トレースであって、前記低周波電圧ノードにおける電位の周波数が、前記第1の一次端子における電位の周波数より低く、前記導電性トレースが、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に設けられ、それによって、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の前記沿面距離を増大させる導電性トレースとを有するスイッチモード電源。
【請求項2】
前記低周波電圧ノードが、グランドである請求項1に記載のスイッチモード電源。
【請求項3】
前記電気的構成要素が、
トランス、
オプトカプラ、
コンデンサのうちのいずれかである請求項1乃至2のいずれか一項に記載のスイッチモード電源。
【請求項4】
前記電気的構成要素が、前記第1の一次端子と第2の一次端子とを有する一次巻線を含むトランスであり、前記導電性トレースが、前記第1端部で前記第2の一次端子に接続される請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスイッチモード電源。
【請求項5】
前記導電性トレースが、第2端部で同じ低周波電圧ノードに接続される請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスイッチモード電源。
【請求項6】
前記電気的構成要素が、表面実装デバイス又はスルーホール実装デバイスのうちのいずれかである請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスイッチモード電源。
【請求項7】
前記電気的構成要素が、スルーホール実装デバイスであり、前記導電性トレースが、前記基板の上面に設けられ、前記電気回路が、
前記基板の底面に設けられ、第1端部で、前記高電圧回路部分内の前記低周波電圧ノードに接続される更なる導電性トレースであって、前記基板の前記底面の側において、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に設けられ、それによって、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の前記沿面距離を増大させる更なる導電性トレースを有する請求項6に記載のスイッチモード電源。
【請求項8】
前記基板が、プリント回路基板である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のスイッチモード電源。
【請求項9】
前記導電性トレースが、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の仮想直線に対して垂直に延在する請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスイッチモード電源。
【請求項10】
前記電気回路が、スイッチモード電源を有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載のスイッチモード電源。
【請求項11】
前記スイッチモード電源が、窒化ガリウム技術を使用する請求項10に記載のスイッチモード電源。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のスイッチモード電源を有する発光ダイオードベースの照明デバイス。
【請求項13】
高電圧回路部分と低電圧回路部分との間にガルバニック絶縁を有する電気回路を含むスイッチモード電源を供給する方法であって、
前記高電圧回路部分及び前記低電圧回路部分を有する基板を設けるステップと、
前記ガルバニック絶縁を供給するための電気的構成要素であって、第1の一次端子と第1の二次端子との間の前記基板上に沿面距離が設けられるように、前記第1の一次端子で前記高電圧回路部分に接続される一次側、及び前記第1の二次端子で前記低電圧回路部分に接続される二次側を有する電気的構成要素を、前記基板に組み立てるステップと、
第1端部で、前記高電圧回路部分内の低周波電圧ノードに接続される導電性トレースを、前記基板に設けるステップであって、前記低周波電圧ノードにおける電位の周波数が、前記第1の一次端子における電位の周波数より低く、前記導電性トレースが、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に設けられ、それによって、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の前記沿面距離を増大させるステップとを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガルバニック絶縁を提供する電気回路を対象とし、より具体的には、電気回路内のガルバニック絶縁をブリッジする(bridge)電気的構成要素の一次側と二次側との間の沿面距離を増加させるための概念を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ガルバニック絶縁は、電気回路の2つの電気部品間に電流が流れないようにこれらの2つの電気部品を電気的に絶縁する既知の原理である。即ち、2つの電気部品を接続する導電部はない。
【0003】
ガルバニック絶縁をブリッジする電気的構成要素を使用して、電気部品間で、電力、又は何らかの情報を交換することは依然として可能である。これらの電気的構成要素は、例えば、トランス、オプトカプラ又はコンデンサであり得る。
【0004】
ガルバニック絶縁は、例えば、安全目的のために使用される。このような絶縁は、2つの回路を接続する導電部がないので、第1回路部分に存在する高電圧が、絶縁された第2回路部分に存在する低電圧に移行することができないことを確実にする。従って、ガルバニック絶縁は、安全のために使用されることができ、例えば、予想外の電流が人体を通ってグランドに到達することを防止する。
【0005】
ガルバニック絶縁は、2つ以上の電気回路部分が通信する必要がある場合に使用され得るが、それらのグランドは、異なる電位にある可能性がある。それは、グランド導体を共有する2つのユニット間に望ましくない電流が流れることを防止することによって、グランドループを破壊する効果的な方法である。
【0006】
従って、ガルバニック絶縁、即ち、安全絶縁は、回路の潜在的に安全ではない高電圧部分を、電気回路の安全な低電圧部分から分離し得る。特定の条件に応じて、(i)間隙(clearance)、(ii)沿面距離、及び(iii)絶縁体を介した距離(distance through insulation)の要件が適用される。これらの全てが、(i)空気を介した幾何学的距離、(ii)表面に沿った幾何学的距離及び(iii)固体を介した幾何学的距離として表される。
【0007】
上記の要件は、トランス、オプトカプラ、並びにX及びYコンデンサのような、ガルバニック絶縁をブリッジする構成要素でも満たされ得る。即ち、これらの構成要素は、回路の高電圧部分と回路の低電圧部分との両方に取り付けられ得る。これらの構成要素においては、回路の高電圧部分と低電圧部分とが、トランスにおいては磁界によって、オプトカプラにおいては光によって、X及びYコンデンサにおいては電界よって、互いに結合される。トランスは、電力伝送をもたらし、オプトカプラは、情報伝送をもたらし、X及びYコンデンサは、電磁干渉(EMI)を低減するために使用される、非常に高い周波数の電流の伝送をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のものの不利な面のうちの1つは、電気回路の安全で正常な動作を確実にするために上記の距離が満たされる必要があり、このことが、設計の自由度を犠牲にしていることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
改善された沿面距離を有する電気回路を提供することが、本開示の或る態様である。発光ダイオード(LED)ベースの照明デバイス、及び本開示による電気回路を設けるための方法を提供することが、本開示の更なる態様である。
【0010】
本開示の第1態様においては、高電圧(HV)回路部分と低電圧(LV)回路部分との間にガルバニック絶縁を有する電気回路であって、
- 前記HV回路部分及び前記LV回路部分を供給する基板と、
- 前記ガルバニック絶縁を供給するための電気的構成要素であって、第1の一次端子と第1の二次端子との間の前記基板上に沿面距離が設けられるように、前記基板に設けられると共に、前記第1の一次端子で前記HV回路部分に接続される一次側、及び前記第1の二次端子で前記LV回路部分に接続される二次側を有する電気的構成要素と、
- 前記基板に設けられ、第1端部で、前記HV回路部分内の低周波(LF)電圧ノードに接続される導電性トレースであって、前記LF電圧ノードにおける電位の周波数が、前記第1の一次端子における電位の周波数より低く、前記導電性トレースが、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に設けられ、それによって、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の前記沿面距離を増大させる導電性トレースとを有する電気回路が提供される。
【0011】
考慮に入れられるべきである前記沿面距離は、電圧レベルだけでなく、前記HV回路部分における電位/電圧の周波数にも依存するということが、本発明者の洞察であった。ノードの電位の周波数が高ければ高いほど、その特定のノードの沿面距離は大きくなる。
【0012】
従って、本発明者は、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に接続される導電性トレースであって、前記HV回路部分に、より具体的には、前記HV回路部分内の低周波(LF)電圧ノードに接続される導電性トレースを、前記基板に導入することを見出した。
【0013】
この特定の導電性トレースの沿面要件は、前記HV回路部分における電圧に依存するが、前記LF電圧ノードの電位の(期待)周波数にも依存する。この特定の場合においては、前記特定の導電性トレースの沿面要件が、前記第1の一次端子の沿面要件と比べてより厳しくないように、前記LF電圧ノードにおける電位の周波数は、前記第1の一次端子における電位の周波数より低い。
【0014】
前記第1の一次端子の沿面要件は、前記導電性トレースの導入によって変化しない。前記第1の一次端子から、直接、前記第1の二次端子までクリープする(creep)ことは、もはや可能ではないので、実際の沿面距離は変化する。前記沿面距離は、前記導電性トレースの導入によって影響を及ぼされる。クリープ経路(creep route)は、前記導電性トレースを横切ることができず、それ故、前記導電性トレースを迂回する必要がある。このことは、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の前記実際の沿面距離を増大させる。
【0015】
例においては、前記導電性トレースは、その第1端部でグランドに接続される。他の例においては、前記導電性トレースは、前記HV回路部分において供給電圧に接続されてもよい。
【0016】
更なる例においては、前記電気的構成要素は、トランス、オプトカプラ、又はX若しくはYコンデンサのような、コンデンサのうちのいずれかである。
【0017】
例においては、前記電気的構成要素は、前記第1の一次端子と第2の一次端子とを有する一次巻線を含むトランスであり、前記導電性トレースは、前記第1端部で前記第2の一次端子に接続される。
【0018】
前記トランスは、例えば、フライバックコンバータのようなスイッチモード電源(SMPS)において使用されるトランスである。前記トランスは、その一次巻線とその二次巻線との間に磁気結合を供給するので、前記トランスは、前記ガルバニック絶縁をブリッジする。
【0019】
前記一次巻線は、前記第1の一次端子を介して、スイッチ、例えば、電界効果トランジスタ(FET)、より具体的には、窒化ガリウム(GaN)FET又は炭化ケイ素(SiC)FETに接続されてもよい。前記SMPSにおけるこのようなFETのスイッチング動作は、前記第1の一次端子の電位に、高い周波数、即ち、前記FETのゲートが制御されるのと同じ周波数を持たせ得る。前記一次巻線は、例えば、前記第2の一次端子を介して供給電圧に接続されてもよい。このことは、前記第2の一次端子における電位が、前記FETの前記ゲートに供給される信号の周波数に応じて切り替わるものではないことを意味する。前記第2の一次端子における電位は、前記供給電圧と等しいという点で、相対的に静的である。
【0020】
それは、前記第2の一次端子に関する沿面要件が、前記第1の一次端子に関する沿面要件と比べてより厳しくないことを意味する。これらの端子における絶対電位は同じ値に達する可能性があるが、これらの端子における電位の周波数は異なる。
【0021】
更なる例においては、前記導電性トレースは、第2端部で同じLF電圧ノードに接続される。
【0022】
前記導電性トレースは、前記第2端部が前記HV回路部分における他のノードに接続されないという意味において、フローティング(floating)であってもよい。前記導電性トレースは、前記第2端部で同じLF電圧ノードに接続されてもよいことにも留意されたい。その状況においては、前記導電性トレースには電流は流れない。
【0023】
更なる例においては、前記電気的構成要素は、表面実装デバイス(SMD)又はスルーホール実装デバイス(through-hole mounted device)のうちのいずれかである。
【0024】
表面実装技術は、前記電気的構成要素が、前記基板、例えばプリント回路基板(PCB)の底面側又は上面側に直接取り付けられる方法を指すことがある。そうである場合には、前記電気的構成要素は表面実装デバイス(SMD)と呼ばれる。表面実装技術は、とりわけコストを削減し、品質を向上させる製造自動化の拡大を可能にするので、有益である可能性がある。更に、前記表面実装技術は、より多くの構成要素が前記基板の所与の領域に収まることを可能にする可能性がある。
【0025】
SMD構成要素は、通常、より小さいリード線を持つ、又はリード線を全く持たないことから、そのスルーホールの対応するものよりも小さい。前記SMD構成要素は、前記構成要素の本体に、様々なスタイルの短いピン若しくはリード線、平らな接点、はんだボールのマトリックス、又は終端を有し得る。
【0026】
更なる例においては、前記電気的構成要素は、スルーホール実装デバイスであり、前記導電性トレースは、前記基板の上面に設けられ、前記電気回路は、
- 前記基板の底面に設けられ、第1端部で、前記HV回路部分における前記LF電圧ノードに接続される更なる導電性トレースであって、前記基板の前記底面の側において、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に設けられ、それによって、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の前記沿面距離を増大させる更なる導電性トレースを有する。
【0027】
スルーホール実装デバイスの場合、前記端子は、前記基板の前記上面の側及び前記基板の前記底面の側において前記基板に接続され得る。その場合には、必要とされる沿面距離は、前記基板の前記上面の側において接続される前記第1の一次端子から出発して満たされる必要があるが、前記基板の前記底面の側において接続される前記第1の一次端子から出発して満たされる必要もある。
【0028】
前記更なる導電性トレースは、前記電気的構成要素がSMDデバイスである場合にも使用され得ることに留意されたい。なぜなら、前記SMDデバイスが、前記基板、即ち、前記PCBの縁端部の近くに取り付けられる場合にも利点が得られる可能性があるからである。その場合には、沿面経路は、上面から底面に進む可能性があり、故に、この状況においては、前記更なる導電性トレースも、実際の沿面経路を増加させるのに役立つ可能性がある。
【0029】
更に、前記基板の前記上面に設けられる導電性トレースと、前記基板の前記底面に設けられる前記更なる導電性トレースとが、例えばPCB縁端部めっきを使用して前記基板の少なくとも1つの縁端部において互いに接続され得ることに留意されたい。
【0030】
更なる例においては、前記基板は、プリント回路基板(PCB)である。
【0031】
別の例においては、前記導電性トレースは、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の仮想直線に対して実質的に垂直に延在する。
【0032】
換言すれば、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の真っすぐな見通し線は、前記導電性トレースによって、好ましくは実質的に垂直なように、横切られる。
【0033】
更なる例においては、前記電気回路は、例えば窒化ガリウム(GaN)又は炭化ケイ素(SIC)技術を使用した、スイッチモード電源(SMPS)を有する。
【0034】
エネルギ効率の良い世界に向けて考えられている次のステップのうちの1つは、電力効率の向上、小型化、軽量化、全体的なコストの削減を可能にし、時として、これらの全てを同時に可能にするワイドバンドギャップ半導体などの、新材料の使用にある。
【0035】
あらゆる種類のドライバが、小さな、トランス、インダクタ、コンデンサのような受動的構成要素から恩恵を受け得る。このような小さな受動的構成要素は、窒化ガリウム(GaN)技術によって可能にされる高いスイッチング周波数によって可能になり得る。
【0036】
GaNによって可能にされる、例えば、数100kHzから数MHzまでの高いスイッチング周波数は、安全性及び/又はガルバニック絶縁のための大きな最小沿面距離の要件をもたらす。上述のように、前記沿面距離は、電圧レベルだけでなく、周波数レベルにも依存する。従って、本開示は、前記HV回路部分において、例えば70kHz乃至20MHzの範囲内の、相対的に高い周波数が使用される状況において、特に有用である。
【0037】
更なる例においては、先の例のいずれかによる電気回路を有する発光ダイオード(LED)ベースの照明デバイスが提供される。
【0038】
別の態様においては、高電圧(HV)回路部分と低電圧(LV)回路部分との間にガルバニック絶縁を有する電気回路を供給する方法であって、
- 前記HV回路部分及び前記LV回路部分を有する基板を設けるステップと、
- 前記ガルバニック絶縁を供給するための電気的構成要素であって、第1の一次端子と第1の二次端子との間の前記基板上に沿面距離が設けられるように、前記第1の一次端子で前記HV回路部分に接続される一次側、及び前記第1の二次端子で前記LV回路部分に接続される二次側を有する電気的構成要素を、前記基板に組み立てるステップと、
- 第1端部で、前記HV回路部分内の低周波(LF)電圧ノードに接続される導電性トレースを、前記基板に設けるステップであって、前記LF電圧ノードにおける電位の周波数が、前記第1の一次端子における電位の周波数より低く、前記導電性トレースが、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間に設けられ、それによって、前記第1の一次端子と前記第1の二次端子との間の前記沿面距離を増大させるステップとを有する方法が提供される。
【0039】
下記の実施形態を参照して、本発明のこれら及び他の態様を説明し、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】ガルバニック絶縁を有する電気回路の例を開示する。
【
図2】ガルバニック絶縁を供給するトランスを有するプリント回路基板(PCB)レイアウトの例を開示する。
【
図3】高電圧(HV)回路部分と低電圧(LV)回路部分との間の実際の沿面距離の例を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、参照符号2を有する破線で示されているようなガルバニック絶縁を有する電気回路1の例を開示している。
【0042】
図1において示されている電気回路1は、所謂フライバックコンバータである。フライバックコンバータは、交流(AC)を直流(DC)に変換する際に使用され得るが、DCをDCに変換する際にも使用され得る。
図1においては、後者が示されている。
【0043】
図1において示されている電気回路は、高電圧(HV)回路部分3と低電圧(LV)回路部分4とを有する。高電圧回路部分3は、例えば48V DCを上回る若しくは30Vrms ACを上回る、又は例えば400V DCを上回る若しくは230Vrms ACを上回る、又は同様の、相対的に高い電圧のために設計され得る。低電圧回路部分4は、例えば48V DCより低い若しくは30Vrms ACより低い、又は同様の、相対的に低い電圧のために設計され得る。
【0044】
ガルバニック絶縁は、電気回路1のHV回路部3とLV回路部4とを絶縁して、これらの部分の間の電流の流れを防止する原理である。これらの回路部分の間の直接伝導経路は許されない。エネルギ又は情報は、静電容量、誘導若しくは電磁波などの他の手段によって、又は光学的、音響的若しくは機械的手段によって、依然として、回路部分3、4の間でやり取りされることができる。
【0045】
ガルバニック絶縁は、2つ以上の電気回路が通信しなければならない場合に使用されるが、それらのグランドは、異なる電位にある可能性がある。それは、グランド導体を共有する2つのユニット間に望ましくない電流が流れることを防止することによって、グランドループを破壊する効果的な方法である。ガルバニック絶縁は、安全のためにも使用され、予想外の電流が人体を通ってグランドに到達することを防止する。
【0046】
ガルバニック絶縁は、認められた規格、例えば、IEC規格、及び国際安全機関によって定義されている適度に安全なレベルまで絶縁破壊閾値を確保するために使用され得る。
【0047】
電気回路1は、HV回路部分3とLV回路部分4とを供給する基板を有する。基板は、
図1自体には示されていないが、電気回路1が設けられるプリント回路基板(PCB)のような担体から成り得る。
【0048】
電気回路1は、ガルバニック絶縁2を供給する少なくとも1つの電気的構成要素5を更に有する。従って、電気的構成要素5は、第1の一次端子6と第1の二次端子8との間の前記基板上に沿面距離が設けられるように、第1の一次端子6で前記HV回路部分3に接続される一次側、及び前記第1の二次端子8で前記LV回路部分4に接続される二次側を有するという点で、電気的構成要素5は、ガルバニック絶縁をブリッジする。
【0049】
沿面距離は、基板の表面に沿って測定される、2つの導電部間の最短距離として定義され得る。この特定の場合においては、沿面距離は、基板上の、第1の一次端子6と第1の二次端子8との間で決定され得る。
【0050】
図1において示されている電気回路1においては、電気的構成要素5は、2つの端子、即ち、第1の一次端子6及び第2の一次端子7でHV回路部分3に接続され得る。第1の一次端子6は、フライバックコンバータのスイッチ10に接続されているという事実のため、第1の一次端子6における電位の周波数は、第2の一次端子7における電位の周波数と比べてより高くなり得る。フライバックコンバータのトポロジは、既知であると考えられ、本明細書においては更に詳細には開示されない。
【0051】
更に、第1の一次端子6の電位と第2の一次端子7の電位とが等しくてもよいことに留意されたい。
【0052】
本発明者は、例えば対応する安全規格によって課される、必要とされる沿面距離は、HV回路部分3における期待電圧レベルだけでなく、HV回路部分3における対応するノードの電位の周波数にも依存することに気付いた。電位の周波数が高ければ高いほど、沿面距離は大きくなることが予想される。
【0053】
本発明者は、基板において、第1の一次端子と第1の二次端子との間に導電性トレースを導入することによって、第1の一次端子と第1の二次端子との間の実際の沿面距離が影響を及ぼされ得ることを見出した。
【0054】
導電性トレースは、第1端部で、HV回路部分内の低周波(LF)電圧ノードに接続される。このことは、LF電圧ノードにおける電位の周波数は、第1の一次端子における電位の周波数よりも低いことを意味する。この効果は、基板における導電性トレースのために必要とされる沿面距離が、第1の一次端子のために必要とされる沿面距離に比べてより小さくなることである。これは、第1の一次端子における電位の周波数と、LF電圧ノードにおける電位の周波数との差によるものである。
【0055】
従って、導電性トレースは、第1の一次端子6と第1の二次端子8との間に設けられる。これについて、
図2を参照してより詳細に説明する。
【0056】
図2は、ガルバニック絶縁を供給するトランスを有するプリント回路基板(PCB)レイアウトの例を開示している。より具体的には、トランスのPCBフットプリント21が示されている。
【0057】
フットプリント21は、再び、HV回路部分3及びLV回路部分4、並びにガルバニック絶縁2を示している。
【0058】
この場合も先と同様に、第1の一次端子は、参照符号6で示されている。第2の一次端子は、参照符号7で示されている。第1の二次端子は、参照符号8で示されている。導電性トレースは、参照符号23で示されている。
【0059】
図2において示されているように、トランスの一次側と二次側との間に導電性トレース23が設けられる。このことは、
図3のフットプリント31においても示されているように、トランスの一次側と二次側の間の実際の沿面経路に直接影響を及ぼす。
【0060】
図3においては、導電性トレース23の導入によって、トランスの一次側と二次側の間の、実際の沿面経路22が影響を及ぼされており、従って、それによって、実際の沿面距離も影響を及ぼされている。沿面経路は、トランスの一次ピンとトランスの二次ピンとの間の最短距離ではない。
図3において示されているように、沿面経路は、導電性トレース23を迂回する必要がある。沿面経路22は、部分的に空中を通過する。このことは、もはや沿面距離要件は適用されず、高い周波数においてはより厳しくない間隙要件(clearance requirement)のみが適用されることを意味する。
【0061】
この特定の例においては、導電性トレース23は、或る端部で、第2の一次端子7である低周波(LF)電圧ノードに接続されている。しかしながら、好ましくは、導電性トレースは、前記第1端部でグランドに接続され得ることに留意されたい。導電性トレースの第2端部は、同じノードに接続されることがあり、例えばグランドに接続されることもある。
【0062】
本開示の利点は、電気的構成要素5であるトランスに関して説明されている。しかしながら、本開示の利点は、ガルバニック絶縁をブリッジするあらゆる種類の電気的構成要素、例えば、オプトカプラ及びコンデンサに適用できることに留意されたい。
【0063】
当業者は、請求項記載の発明の実施において、図面、明細及び添付の特許請求の範囲の研究から、開示されている実施形態に対する他の変形を、理解し、達成することができる。特許請求の範囲において、「有する」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形表記は、複数性を除外しない。単に、或る特定の手段が、相互に異なる従属請求項において挙げられているという事実は、これらの手段の組み合わせは有利になるようには使用されることができないことを示すものではない。
【0064】
特許請求の範囲における如何なる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】