(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】芳香族化合物、パラフィン、およびエタノールを多く含む燃料組成物、および特に競争用自動車両におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C10L 1/182 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
C10L1/182
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566757
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 FR2022050825
(87)【国際公開番号】W WO2022229573
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ドーファン,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】サーヴ,リサ
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013CD02
(57)【要約】
本発明は、(i)(a)芳香族化合物35~55質量%;(b)イソ-パラフィンの量のn-パラフィンの量に対する比3以上を有する、少なくとも5個の炭素原子を含有する、n-パラフィンおよびイソ-パラフィンの混合物30~50質量%;ならびに(c)ナフテン5~15質量%を含む炭化水素混合物60~94質量%;(ii)エタノール5~36質量%;ならびに(iii)ブタン1~10質量%を含む燃料組成物に関する。この組成物は、一般人による使用または競争における使用のための自動車両における火花点火エンジンに燃料を供給するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)a)芳香族化合物35~55重量%;
b)イソ-パラフィンの量のn-パラフィンの量に対する重量比が3以上の、少なくとも5個の炭素原子を含有するn-パラフィンおよびイソ-パラフィンの混合物30~50重量%;ならびに
c)ナフテン5~15重量%
を含む炭化水素混合物60~94重量%;
(ii)エタノール5~36重量%;ならびに
(iii)ブタン1~10重量%
を含む、燃料組成物。
【請求項2】
前記炭化水素混合物(i)が、前記燃料組成物の全重量に対して、65~90重量%、好ましくは70~85重量%、さらにより好ましくは70~80重量%を示すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記芳香族化合物(i)a)が、7~12個の炭素原子を含むアルキル-ベンゼン、好ましくは、8~10個の炭素原子を含むアルキル-ベンゼンの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記芳香族化合物(i)a)の含量が、前記炭化水素混合物(i)の重量に対して、40~53重量%、好ましくは45~52重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記パラフィン(i)b)が、5~12個の炭素原子、好ましくは5~9個の炭素原子、より好ましくは5~8個の炭素原子を含むパラフィンから選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記炭化水素混合物(i)が、n-パラフィン5~10重量%およびイソ-パラフィン20~45重量%を含有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
パラフィン(i)b)の含量が、前記炭化水素混合物(i)の重量に対して、32~45重量%、好ましくは35~42重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ナフテン(i)c)が、5~10個の炭素原子、より好ましくは6~9個の炭素原子を含有する環状アルカンから選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ナフテン(i)c)の含量が、前記炭化水素混合物(i)の重量に対して、7~13重量%、好ましくは8~12重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物のエタノール含量が、前記燃料組成物の全重量に対して、10~30重量%、好ましくは20~25重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物のブタン含量が、前記燃料組成物の全重量に対して、1.5~8重量%、好ましくは2~6重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
最大で2.5重量%のオレフィン、好ましくは最大で2重量%のオレフィン、より好ましくは最大で1重量%のオレフィン、さらにより好ましくは最大で0.5重量%のオレフィンを含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記炭化水素混合物(i)が、植物原料に由来することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
火花点火エンジンに燃料を供給するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
大気火花点火エンジンもしくはターボ過給火花点火エンジン、またはハイブリッドエンジン、好ましくはレース用車両において用いられるエンジンに燃料を供給するための、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有利な特性を有する、火花点火エンジン(またはガソリンエンジン)を備えた車両用の燃料組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、従来の、とりわけ自動車両において、およびレース用車両において火花点火エンジンに燃料を供給するための、こうした組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
火花点火エンジン、とりわけ自動車両におけるエンジンにおいて有用なガソリン型燃料は、ノッキング現象を避けるために十分に高いオクタン価を有するべきである。
【0004】
周知のように、オクタン価は、火花点火エンジで使用される燃料の、自己着火に対する耐性を測る。
【0005】
典型的には、欧州で販売される、規格EN228に準拠したガソリン燃料は、85よりも高いモーターオクタン価(MON)および少なくとも95のリサーチオクタン価(RON)を有する。これらの燃料は、大部分の自動車エンジンに適する。
【0006】
その効率性を増すために、最近の火花点火エンジンは、一層より高い圧縮比で、すなわち、点火される前に、エンジンにおける燃料/空気混合物に加えられる高圧縮比で作動する傾向がある。
【0007】
しかし、エンジンの体積圧縮比を高めることは、火炎前面の燃料混合物上流の局所的な自己着火によって発生する、異常なノッキング型燃焼の危険性を増す。この現象は、特徴的なノイズを生じ、エンジンを損傷する傾向がある。
【0008】
例えば、レース用車両で使用されるものなどの、極めて高出力のエンジンについて、高い圧縮体積比が特に望ましい。
【0009】
したがって、この種類のエンジンについて、ノッキングおよびプレイグニッションに対する高い耐性を有する燃料、結果として可能な限り高い「リサーチ」オクタン価(RON)を有する燃料を使用することが重要である。オクタン価が不十分である場合、燃料のノッキングまたは自己着火の現象は起こり易くなり、それは、エンジン性能を著しく低下させ、さらに重大なエンジン損傷を引き起こすことがある。
【0010】
加えて、全ての車両および一般的用途における使用のための車両について、環境への懸念に対応し、化石資源の使用を制限するために、植物に基づいたベース、とりわけいわゆる「バイオソース」ベースから配合された燃料を使用する傾向が高まっている。現在の環境への懸念は、消費者をより環境に優しい燃料を探すように駆り立てる。
【0011】
しかし、バイオソースベースに基づいた燃料組成物の使用は、燃料性能、特にオクタン価およびエンジン出力を損ねるものであってはならず、燃料性能は、維持され、さらには高められるべきである。
【0012】
高いバイオ化合物含量を有する、最も一般的に使用されるガソリン燃料は、バイオエタノールを含有するもの、例えば、E85、E10、およびE5である。しかし、これらの燃料の使用は、現在の自動車市場の小さな割合を示す。
【0013】
バイオエタノールは、SP95型のガソリン燃料と混合されることが知られている。とりわけ、含酸素化合物の組み込みに関連した規格EN228の規格書を遵守するために、エタノール含量は、最大で10体積%に制限される。
【0014】
それゆえに、一般的用途(軽自動車、重量物運搬車、オフロード車両など)における使用のため、または競争のためにかかわらず、近代の車両の要件を満たす火花点火エンジンに燃料を供給するための、新規の燃料組成物を開発する必要がある。
【0015】
それゆえに、高オクタン価、特に高RONを有し、高体積圧縮比で作動する自動車両、とりわけレース用車両のエンジン出力を最大にすることを可能にする、火花点火内部燃焼エンジン用の燃料が必要である。
【0016】
それゆえに、本発明の一目的は、特に、レース用車両用の燃料組成物に限らず、ガソリン燃料組成物の性能を改善することである。目的は、燃料のエネルギー含量を増やすことであり、その結果、大気型またはターボ過給型にかかわらず、エンジンにおけるガソリン燃料組成物の燃焼中の火花点火エンジンの出力の増加をもたらす。
【0017】
バイオソース化合物としても公知である、再生可能起源のベースおよび/または化合物からこうした組成物を配合し得る必要性も増している。
【0018】
先行技術において周知のように、オクタンブースター添加剤は、典型的には、ガソリン型燃料組成物に添加される。特に鉄、鉛、またはマンガンを含む有機金属化合物は、周知のオクタンブースターである。
【0019】
ゆえに、テトラエチル鉛(TEL)は、極めて有効なオクタンブースターとして汎用されてきた。しかし、世界のほとんどの地域で、TELおよび他の有機金属化合物は、毒性であり、エンジン損傷を引き起こす可能性があり、環境に有害であるので、仮に用いられても、燃料において極めて少量で使用され得るだけである。
【0020】
非金属系オクタンブースターには、含酸素添加剤(例えば、エーテルおよびアルコール)、ならびに芳香族アミンが挙げられる。しかし、これらの添加剤にも様々な欠点がある。例えば、N-メチルアニリン(NMA)、芳香族アミンは、燃料のオクタン価に有意な影響を及ぼすために、相対的に高い処理量(添加剤1.5~2重量%/燃料ベース重量)で使用されるべきである。NMAもまた毒性であり得る。
【0021】
例として、文献US-A-4812146には、ブタン、イソペンタン、トルエン、MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)、およびアルキレートから選択される、少なくとも4種の成分を含む、競争用エンジン用の無鉛ガソリン燃料組成物が記載される。
【0022】
文献国際公開第2010/014501号には、分枝鎖状パラフィン少なくとも45体積%、1種または複数の、モノアルキル化ベンゼンおよびジアルキル化ベンゼン最大で34体積%、3~5個の炭素原子(C3~C5と記す)を有する、少なくとも1種の直鎖状パラフィン5~6体積%、(RON+MON)/2であるAKI(アンチノックインデックス)少なくとも93に増やすのに十分な量の、2~4個の炭素原子(C2~C4と記す)を有する、1種または複数のアルカノールを含む無鉛ガソリン燃料組成物が記載される。これらの組成物は、高トルクおよび最大出力を有するものとして示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、オクタンブースター、例えば上記のものの添加を必ずしも必要としない、良好な固有特性を有する燃料組成物が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
ガソリンエンジン用の燃料配合物の開発の研究を続けることにより、出願者は、ここで、上記の目的を果たすことを可能にする組成物を見出した。
【0025】
したがって、本発明は、
(i)a)芳香族化合物35~55重量%;
b)イソ-パラフィンの量のn-パラフィンの量に対する重量比が3以上の、少なくとも5個の炭素原子を含有するn-パラフィンおよびイソ-パラフィンの混合物30~50重量%;ならびに
c)ナフテン5~15重量%
を含む炭化水素混合物60~94重量%;
(ii)エタノール5~36重量%;ならびに
(iii)ブタン1~10重量%
を含む燃料組成物に関する。
【0026】
これらの組成物は、火花点火エンジン(またはガソリンエンジン)において燃料を供給する使用向きである。
【0027】
本発明による燃料組成物は、高いRON(リサーチオクタン価)オクタン価を有する。
【0028】
燃料流量が上限を定められる用途において、とりわけ、レース用車両の場合、本発明による組成物の使用は、一定の燃料流量でのより高いレベルのエンジン出力を実現することを可能にする。
【0029】
特に、上記で定められた特定の割合で、化合物と共に組成物を配合することにより、RONオクタン価およびエンジン出力に関して相乗効果的な性能が得られ得ることが示された。
【0030】
これらの特性は、特に、レース用車両の使用のために求められる。
【0031】
本発明による組成物はまた、レース用車両以外の使用、例えば、いわゆる一般人による使用、とりわけ、軽自動車(またはLV)についても有意な利点をもたらす。必要に応じて、規格EN228の規格書に応じることができる。
【0032】
本発明による組成物は、有利なことに、全体において、または部分的に、植物起源のベースおよび/または化合物から調製され得る。特に、本発明による組成物は、1種または複数のバイオソースベース少なくとも50重量%、好ましくは1種または複数のバイオソースベース少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも75重量%を含有することができる。
【0033】
本発明はまた、火花点火エンジンに燃料を供給するための、本発明による組成物の使用に関する。
【0034】
特定の一実施形態によれば、本発明による組成物は、高効率の高出力火花点火エンジン、好ましくはレース用車両エンジンのための燃料として使用される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の他の目的、特徴、態様、および利点は、以下の記述および実施例を読むことでさらにより明確になるであろう。
【0036】
以下において、別段の指示がなければ、値の範囲の境界は、とりわけ、表現:「~と~との間」、「~から~の範囲において」、および「~から~」において、この範囲に含められる。
【0037】
さらに、本発明の記述で使用される表現「少なくとも1種」および「少なくとも」はそれぞれ、表現「1種または複数」および「~以上」と均等である。
【0038】
最後に、それ自体公知であるように、CN化合物は、その化学構造において、N個の炭素原子を含有する化合物であり、CN+化合物は、少なくともN個の炭素原子を含有する化合物である。
【0039】
燃料組成物
本発明による組成物は、
a)芳香族化合物35~55重量%;
b)イソ-パラフィンの量のn-パラフィンの量に対する重量比が3以上の、少なくとも5個の炭素原子を含有するn-パラフィンおよびイソ-パラフィンの混合物30~50重量%;ならびに
c)ナフテン5~15重量%
を含有する、炭化水素の混合物(i)を含有する。
【0040】
これらの含量は、炭化水素混合物(i)の重量に対して、重量で表される。
【0041】
こうした炭化水素混合物は、燃料組成物の全重量に対して、60~94重量%に相当し、燃料組成物の全重量に対して、好ましくは65~90重量%、より好ましくは70~85重量%、さらにより好ましくは70~80重量%を示す。
【0042】
1種または複数の芳香族化合物(i)a)は、好ましくは、7~12個の炭素原子を含むアルキル-ベンゼンから選択される。アルキル-ベンゼンは、それ自体公知であるように、1個または複数の水素原子が、1種または複数のアルキル基で置き換えられたベンゼン誘導体を意味する。
【0043】
芳香族化合物(複数可)は、特に、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(とりわけ、1,2-ジメチルベンゼンまたはオルト-キシレン、1,3-ジメチルベンゼンまたはメタ-キシレン、および1,4-ジメチルベンゼンまたはパラ-キシレン)、1-エチル-3-メチルベンゼン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、1-エチル-3,5-ジメチルベンゼン、ならびにこれらの化合物の混合物から選択され得る。
【0044】
芳香族化合物の混合物が特に好ましく、より詳細には、8~10個の炭素原子を含有するアルキル-ベンゼン、例えば、エチルベンゼン、キシレン(とりわけ1,2-ジメチルベンゼンまたはオルト-キシレン、1,3-ジメチルベンゼンまたはメタ-キシレン、および1,4-ジメチルベンゼンまたはパラ-キシレン)、1-エチル-3-メチルベンゼン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、ならびに1-エチル-3,5-ジメチルベンゼンの混合物が特に好ましい。
【0045】
好ましくは、芳香族化合物(i)a)の含量は、炭化水素混合物(i)の重量に対して、40~53重量%、好ましくは45~52重量%の範囲である。
【0046】
本発明による組成物は、少なくとも5個の炭素原子を含有するパラフィン(i)b)をさらに含有する。これらのパラフィンは非環状であり、n-パラフィンおよびイソパラフィンの混合物で構成される。
【0047】
「パラフィン」は、それ自体公知であるように、分枝鎖状アルカン(イソ-パラフィンまたはイソ-アルカンとも称される)および非分枝鎖状アルカン(n-パラフィンまたはn-アルカンとも称される)を意味する。
【0048】
パラフィンは、好ましくは、5~12個の炭素原子を含むパラフィン、より好ましくは5~9個の炭素原子を含むパラフィン、さらにより好ましくは5~8個の炭素原子を含むパラフィンから選択される。
【0049】
パラフィンには、n-パラフィン(または直鎖状アルカンであるノルマル-パラフィン)およびイソ-パラフィン(分枝鎖状アルカンである)が挙げられる。
【0050】
上記のものから選択されたn-パラフィンおよびイソ-パラフィンの混合物であって、イソ-パラフィンの量のn-パラフィンの量に対する重量比が3以上、好ましくは4以上、さらにより良好には4~5の範囲である、高い割合のイソ-パラフィンを含む、混合物が使用される。
【0051】
炭化水素混合物(i)は、有利なことに、n-パラフィン5~10重量%およびイソ-パラフィン20~45重量%を含有する。
【0052】
好ましくは、パラフィン(i)b)の含量は、炭化水素混合物(i)の重量に対して、32~45重量%、より好ましくは35~42重量%の範囲である。
【0053】
本発明による組成物は、ナフテン(i)c)をさらに含有する。
【0054】
「ナフテン」は、それ自体公知であるように、5~10個の炭素原子を含有する環状アルカン(またはシクロアルカン)を意味する。好ましくは、ナフテンは、5~10個の炭素原子、より好ましくは6~9炭素原子を含有する環状アルカンから選択される。
【0055】
好ましくは、ナフテン(i)c)の含量は、炭化水素混合物(i)の重量に対して、7~13重量%、より好ましくは8~12重量%の範囲である。
【0056】
好ましい一実施形態によれば、炭化水素混合物(i)は、植物原料に由来する。したがって、混合物(i)は、有利なことに、バイオソース炭化水素で完全に構成される。元の植物原料は、例えば、穀類(コムギ、トウモロコシ)、ナタネ、ヒマワリ、ダイズ、パーム油、サトウキビ、ビート、木くず、わら、バガス、グレープマーク、使用済み植物調理油、藻、およびリグノセルロース物質から選択され得る。
【0057】
本発明による組成物はまた、エタノールも含有する。
【0058】
好ましい一実施形態によれば、バイオエタノールとしても公知である、植物起源のエタノールが使用される。
【0059】
バイオエタノールは、従来の酵母菌株または遺伝子組み換え酵母菌株を使用して、糖、主にグルコースの発酵から製造され得る。様々な植物原料、例えば、サトウキビ、トウモロコシ、オオムギ、くず芋、サトウダイコン、およびグレープマークなどのワイン残渣を使用してバイオエタノールを製造することができる。
【0060】
組成物は、燃料組成物の全重量に対して、5~36重量%、好ましくは10~30重量%、さらにより好ましくは20~25重量%の範囲のエタノール含量を有する。
【0061】
本発明による組成物はまた、ブタンも含有し、ブタンは、n-ブタン(直鎖状ブタン)、イソ-ブタン(2-メチルプロパン)、およびこれらの2種の化合物の混合物から選択され得る。
【0062】
n-ブタンおよびイソ-ブタンの混合物が、好ましくは使用される。
【0063】
組成物は、燃料組成物の全重量に対して、1~10重量%、好ましくは1.5~8重量%、さらにより良好には2~6重量%の範囲のブタン含量を有する。
【0064】
好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物は、最大で2.5重量%のオレフィン、好ましくは最大で2重量%のオレフィン、より好ましくは最大で1重量%のオレフィン、さらにより好ましくは最大で0.5重量%のオレフィンを含む。
【0065】
上記の組成物は、全体的に、リサーチオクタン価(RON価)95以上、好ましくは99以上、より好ましくは100以上を有し、RONは規格ASTM D2699-86に従って測定される。
【0066】
上記の値は、とりわけ、オクタンブースター添加剤などの、追加の化合物を添加しない場合の、組成物の固有のオクタン価に関連する。
【0067】
上記のベース化合物に加えて、本発明による燃料組成物は、ガソリン燃料において通常用いられるものから選択される、1種または複数の添加剤を含むこともできる。
【0068】
特に、本発明による組成物は、吸入回路の清浄度を確実にする、少なくとも1種の洗浄添加剤を含むことができる。こうした添加剤は、例えば、場合により、ポリイソブチレン基で置換されたスクシンイミド、ポリエーテルアミン、ベタイン、マンニッヒ塩基、および第四級アンモニウム塩、例えば文献米国特許第4171959号および国際公開第2006/135881号において記載されたものからなる群から選択され得る。
【0069】
組成物は、とりわけ(それに限定されないが)、脂肪酸およびそのエステル誘導体またはアミド誘導体、とりわけグリセロールモノオレエート、ならびに単環式カルボン酸誘導体および多環式カルボン酸誘導体からなる群から選択される、少なくとも1種の潤滑添加剤または摩耗防止剤も含むことができる。こうした添加剤の例は、以下の文献:欧州特許第680506号、欧州特許第860494号、国際公開第98/04656号、欧州特許第915944号、仏国特許第2772783号、仏国特許第2772784号において与えられる。
【0070】
バルブリセッション防止添加剤および酸化防止添加剤などの、他の添加剤もまた、本発明による燃料組成物中に組み込まれ得る。
【0071】
上記の添加剤は、そのそれぞれについて、燃料組成物において、10~1000重量ppm、好ましくは100~500重量ppmの範囲の量で添加され得る。
【0072】
好ましい一実施形態によれば、組成物は、有利なことに、洗浄添加剤、潤滑添加剤、バルブリセッション防止添加剤、および酸化防止添加剤から選択される、少なくとも2種の異なる添加剤の組合せである、添加剤パッケージを含む。これらの添加剤は、有利なことに、前述されたものから選択される。
【0073】
本発明による燃料組成物は、全体的に、鉛含量5mg/L以下(例えば、テトラエチル鉛の形態で存在する)を有し、好ましくは、鉛または鉛含有化合物を含まない鉛フリーである。
【0074】
燃料組成物の調製
本発明による組成物は、その構成要素を単に混合することによって調製され得る。
【0075】
第1の非限定的な実施形態は、以下のステップ:
1)芳香族化合物35~55重量%、イソ-パラフィンの量のn-パラフィンの量に対する重量比が3以上の、少なくとも5個の炭素原子を含有するn-パラフィンおよびイソ-パラフィンの混合物30~50重量%、ならびにナフテン5~15重量%を含む炭化水素混合物(i)を調製するステップ、次いで
2)上記混合物(i)60~94重量%をエタノール5~36重量%およびブタン1~10重量%と混合するステップ
を含む。
【0076】
第2の非限定的な実施形態は、以下のステップ:
1’)炭化水素混合物(i)およびブタンを含むベースBを調製するステップ、次いで
2’)ベースBをエタノールと混合して、最終組成物のエタノール含量が5~36重量%の範囲であるステップ、ならびに
3’)場合により、ブタンを添加して、最終混合物のブタンの量が1~10重量%であるステップ
を含む。
【0077】
この第2の実施形態に対する、1つの好ましい代替案は、以下のステップ:
1’)炭化水素混合物(i)およびブタンを含むベースBを調製するステップ、次いで
2’)ベースB64~95重量%をエタノール5~36重量%と混合するステップ、好ましくは上記ベースB70~85重量%をエタノール15~30重量%と混合するステップ
を含む。
【0078】
上記の、第2の実施形態およびその好ましい代替案が好まれる。
【0079】
本実施形態において、ベースBは、有利なことに、植物原料から得られる。したがって、ベースBは、有利なことに、バイオソースベースである。
【0080】
好ましいバイオソースベースとして、公知の触媒転化法によってバイオ炭化水素へと転化されたバイオマスから製造されたものが、とりわけ使用され得る。
【0081】
同様に、エタノールは、好ましくはバイオエタノールである。
【0082】
したがって、本発明による組成物は、植物起源の原料から完全に調製され得る。
【0083】
使用
本発明はまた、火花点火エンジンに燃料を供給するための、上記の組成物の使用に関する。エンジンは、直接注入型のもの、または間接注入型のものであってもよい。
【0084】
燃料組成物は、有利なことに、従来の自動車両エンジン(いわゆる「一般用」エンジン)、および高効率の高出力火花点火エンジン、例えばレース用車両エンジンの両方に燃料を供給するために使用され得る。これは、とりわけ、レース用車両(サーキットまたはラリー)で使用される、大気エンジンもしくはターボ過給エンジン、または電動機と連結された内部燃焼エンジンであるハイブリッドエンジンであり得る。
【0085】
以下の実施例は、本発明を単に説明するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0086】
【実施例1】
【0087】
本実施例は、バイオマスの変換に由来するバイオアルコールの変換に由来するバイオソース炭化水素ベースBを使用して実行された。
【0088】
ベースBは以下の組成を有する:
【0089】
【0090】
本発明による燃料組成物Cは、
- ベースB83.8重量%;
- バイオエタノール10.5重量%;
- ブタン3.8重量%;
- バイオナフサ1.9重量%
を混合することによって調製された。
【0091】
使用されたバイオナフサは、15℃での密度682.9kg/m3(規格NF EN ISO12185に準拠)およびE70=28.1℃;E100=70.8℃、およびE150=99.5℃の点を有する蒸留プロファイル(規格NF EN ISO3405に準拠)を有する。
【0092】
エンジン試験は、一方で、本発明による燃料C、および他方でSP95 E10ガソリン型の市販燃料(エタノール10体積%を含有する石油起源の無鉛ガソリン95)を使用して実行された。
【0093】
これらの試験の間、極めて高い割合のバイオソースベースを含有する、本発明による燃料Cは、エンジン出力に関して十分な性能が得られることができた。さらに、従来のSP95 E10燃料と比較して、酸化窒素(NOx)排出の53%減少が観測された。
【実施例2】
【0094】
2種の燃料組成物C1および燃料組成物C2は、2種の炭化水素ベースをバイオエタノール32重量%と混合することによって調製された。
【0095】
組成物C1は、本発明に従うものであり、C5+イソ-パラフィンの量のC5+n-パラフィンの量に対する重量比が3.47(24.66:7.11)である炭化水素ベースを使用して調製された。
【0096】
その組成は、以下の表2に詳述される。
【0097】
【0098】
組成物C2は、C5+イソ-パラフィンの量のC5+n-パラフィンの量に対する重量比が2.14(21.85:10.22)である炭化水素ベースを使用して調製された比較組成物である。
【0099】
その組成物は、以下の表3に詳述される。
【0100】
【0101】
これらの組成物のそれぞれのRON(リサーチオクタン価)は、EN ISO 5164に記載された方法に従って測定された。得られた結果は、以下の表に詳述される。
【0102】
【0103】
したがって、本発明による組成物C1は、比較組成物C2よりも極めて有意により高い測定RONを有する。
【国際調査報告】