(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物のオーバースプレーのない塗布の方法、及びその方法に使用される樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B05D 7/24 20060101AFI20240507BHJP
C09D 175/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B05D7/24 301J
C09D175/02
B05D7/24 301K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566760
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022061088
(87)【国際公開番号】W WO2022229209
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518326445
【氏名又は名称】オルネクス ネザーランズ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ウォルフ、エルウィン アロイシウス コルネリウス アドリアヌス
(72)【発明者】
【氏名】ボスマ、マルタン
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA85
4D075AA86
4D075CA48
4D075DC12
4D075DC13
4D075EA07
4D075EA10
4D075EB32
4D075EB35
4J038DG061
4J038MA13
4J038MA14
4J038PB07
(57)【要約】
本発明は、基板表面への非水チキソトロピー樹脂組成物のオーバースプレーのない塗布の方法、並びにその方法に使用される樹脂及びポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤を含む非水チキソトロピー樹脂組成物であって、樹脂組成物の1000±50s
-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSVが100mPa.s未満であり、且つ300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmaxが250Pa
-1未満であることを特徴とする、非水チキソトロピー樹脂組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面への樹脂組成物のオーバースプレーのない塗布の方法であって、
a.樹脂組成物を用意する工程、
b.複数の開けられた穴を含むプレートを含むプリントヘッドを備えたオーバースプレーのない塗布器を用意する工程、
c.前記樹脂組成物の複数の液滴流又は噴出流を前記複数の穴から前記基板表面に噴出して、前記樹脂組成物の層を形成する工程を含み、
前記樹脂組成物が、樹脂と、ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤とを含む非水チキソトロピー樹脂組成物であって、
100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、最も好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sである、23℃にて1000±50s
-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSV、及び
250Pa
-1未満、好ましくは150Pa
-1未満、更により好ましくは50Pa
-1未満である、23℃にて300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmax
を有することを特徴とする非水チキソトロピー樹脂組成物である、上記方法。
【請求項2】
前記ポリ尿素粒子の量が、0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、又は最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間であり、cwt%が、任意の顔料又は充填剤の重量を含まない前記樹脂組成物の全重量に対する重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プリントヘッド及び前記基板が0.1から15cmの間、好ましくは0.5から12cmの間、より好ましくは1から10cmの間、より好ましくは2から6cmの間の塗布間隔にあり、好ましくは、前記穴の直径が10から200マイクロメートルの間、好ましくは50から150マイクロメートルの間、より好ましくは70から130マイクロメートルの間であり、好ましくは、前記プリントヘッドの前記穴を通る前記組成物の流量が好ましくは穴1つ当たり2から10g/minの間、好ましくは3から9g/minの間、より好ましくは4から8g/minの間であり、前記穴から出る前記組成物の平均速度が好ましくは少なくとも2、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも6、最も好ましくは少なくとも8m/sである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非水チキソトロピー樹脂組成物が、前記層の厚みよりも少なくとも20%、より好ましくは40%、より好ましくは60%小さいHegman微粉度を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
樹脂と、ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤とを含む非水チキソトロピー樹脂組成物であって、前記組成物は
a)100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sである、23℃にて1000±50s
-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSV、及び
b)250Pa
-1未満、好ましくは150Pa
-1未満、更により好ましくは50Pa
-1未満である、23℃にて300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmax、
c)0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間である、前記ポリ尿素粒子の量
を有することを特徴とし、
非水チキソトロピー樹脂組成物は、好ましくは、顔料を含まないクリアコート組成物である、上記非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリ尿素粒子が、ポリイソシアナート、好ましくはジイソシアナート若しくはトリイソシアナートとモノアミンの異方性(半)結晶性粒子状反応生成物であるか、又は別の場合にはポリアミン、好ましくはジアミン若しくはトリアミンとモノイソシアナートの反応生成物であり、好ましくは、前記ポリ尿素粒子が、
a.前記モノアミン、若しくは別の場合には前記モノイソシアナートが少なくとも部分的にキラルであるか、又は
b.前記ポリ尿素粒子が音響振動補助法において形成されたか、又は
c.前記ポリ尿素粒子が樹脂、好ましくは溶剤に溶解した樹脂の存在下で形成されたか、又は
d.a)、b)及びc)のうち2つ以上の組合せ、好ましくはa)及びb)の組合せ若しくはa)、b)及びc)の組合せである、
高性能ポリ尿素粒子である、請求項5に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリ尿素粒子が、ポリイソシアナートと少なくとも1つのアミンの反応生成物であり、
a.前記ポリイソシアナートが、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(HMDI)、そのイソシアヌラート三量体若しくはビウレット、trans-シクロへキシレン-1,4-ジイソシアナート、パラ-及びメタ-キシリレンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、且つ/又は
b.前記アミンがモノアミンであり、一級アミン、好ましくは脂肪族アミン、より好ましくはヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、3-メトキシプロピルアミンからなる群から選択される(置換)アルキルアミン、分枝状アルキルアミン若しくはシクロアルキルアミン、又はベンジルアミン、R-α-メチルベンジルアミン、S-α-メチルベンジルアミン、2-フェネチルアミン若しくはそれらの混合物からなる群から選択される(アルキルアリール)アミンであり、
好ましくは、前記ポリ尿素粒子が、ベンジルアミンとヘキサメチレンジイソシアナート、3-メトキシプロピルアミンとトリスイソシアヌラート、より好ましくはS-α-メチルベンジルアミンとヘキサメチレンジイソシアナートの反応生成物である、請求項5又は6に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項8】
a.前記ポリ尿素粒子が少なくとも部分的にキラルなモノアミン、好ましくはS-α-メチルベンジルアミンに由来し、且つ/又は
b.前記ポリ尿素粒子が音響振動補助法において形成され、且つ/又は
c.前記ポリ尿素粒子が、40mwt%未満、好ましくは25mwt%未満、より好ましくは15mwt%未満、最も好ましくは10mwt%未満の量のポリマー樹脂材料を含むマスターバッチとして溶剤中で形成され、mwt%が、前記マスターバッチの全重量に対する重量%である、
請求項5から7までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項9】
前記チキソトロピー樹脂組成物に含まれる前記ポリ尿素粒子の融点(T
m1)が、前記組成物の意図された硬化温度(T
cur)よりも10℃を超えて低い、請求項5から8までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項10】
前記チキソトロピー樹脂組成物が、(a)前記組成物の意図された硬化温度(T
cur)よりも少なくとも10℃低い融点(T
m1)を有し、それにより要件T
m1<(T
cur-10℃)を満たすポリ尿素粒子、及び(b)少なくとも前記硬化温度までの温度でその粒子特性を保持する第2のチキソトロピー誘発性粒子状成分を含み、前記第2のチキソトロピー誘発性粒子状成分(b)が、好ましくは、少なくとも前記硬化温度T
curの融点T
m2を有するポリ尿素粒子を含む、請求項5から9までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項11】
前記チキソトロピー樹脂組成物における前記ポリ尿素(a)と前記第2のチキソトロピー誘発性粒子状成分(b)の比(重量による)が5:95より大きく、より好ましくは10:90より大きく、最も好ましくは20:80より大きく、95:5より小さく、より好ましくは90:10より小さく、最も好ましくは80:20より小さい、請求項10に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項12】
40マイクロメートルより小さい、好ましくは20マイクロメートルより小さい、更により好ましくは15マイクロメートルより小さいHegman微粉度値を有する、請求項5から11までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項13】
組成物が、膜形成樹脂を含む塗料組成物、又は接着樹脂を含む接着剤組成物、又は封止樹脂を含む封止剤組成物である、請求項5から12までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項14】
(I)樹脂及び有機揮発性溶剤を含み、実質的に水を含まない非水の溶剤型樹脂組成物であって、好ましくは、前記樹脂が、好ましくは膜形成樹脂成分及び架橋樹脂成分を含む架橋性樹脂である、非水の溶剤型樹脂組成物であるか、又は(II)架橋性樹脂を含み、実質的に有機溶剤を含まず、実質的に水を含まない非水の無溶剤樹脂組成物であって、前記架橋性樹脂が、好ましくは、ポリマー、オリゴマー若しくはモノマーの樹脂又はそれらの組合せであり、任意に反応性希釈剤を含む、非水の無溶剤樹脂組成物である、請求項5から13までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項15】
a.好ましくは30~90、好ましくは40~80、より好ましくは45~70cwt%の総量の架橋性樹脂であって、好ましくは、前記架橋性樹脂が反応性官能基Aを含む膜形成樹脂成分及び官能基Bを含む架橋樹脂成分を含む、架橋性樹脂、
b.10から70の間、好ましくは20~60、より好ましくは30~65cwt%の量の揮発性溶剤、
c.0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間の量のポリ尿素粒子、
d.0~10、好ましくは0.002~5、より好ましくは0.005~1cwt%の任意の架橋触媒
を含む、非水の溶剤型チキソトロピー樹脂組成物、好ましくは、顔料を含まないクリアコート組成物である、請求項5から14までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項16】
a.化学線硬化性官能基、好ましくはエチレン性不飽和基、より好ましくは(メタ)アクリロイル、マレイン酸エステル又はフマル酸エステルを有するポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーの樹脂成分、
a.0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間のポリ尿素粒子、
b.任意に、0.001~10、好ましくは0.002~8、より好ましくは0.005~6cwt%の光開始剤
を含む、非水の無溶剤チキソトロピー樹脂組成物である、請求項5から15までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物。
【請求項17】
請求項5から16までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物の調製の方法であって、
a.樹脂、ポリ尿素粒子、並びに任意に、架橋剤、有機揮発性溶剤、顔料、着色剤、反応性希釈剤、硬化触媒、反応性調整剤、安定化剤及び/又は塗料添加剤を含む1つ又は複数の更なる成分を用意する工程、
b.100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sである、23℃にて1000±50s
-1のせん断速度で測定した規定の高せん断粘度HSV、及び250Pa
-1未満、好ましくは150Pa
-1未満、更により好ましくは50Pa
-1未満である、23℃にて300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定した規定のクリープコンプライアンスJmaxとなる量の前記成分を混合する工程
を含む、上記方法。
【請求項18】
塗料樹脂組成物、接着剤樹脂組成物又は封止剤樹脂組成物の塗布のためのオーバースプレーのない塗布方法における、請求項5から16までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物の使用。
【請求項19】
物品、好ましくは自動車部品の塗装の方法であって、前記物品の非水平表面の少なくとも一部に、請求項1から4までのいずれか一項に記載のオーバースプレーのない塗布方法を使用して、請求項5から16までのいずれか一項に記載の非水チキソトロピー樹脂組成物、好ましくはクリアコート組成物の塗工層を塗布する工程、及び前記層を硬化して、硬化塗膜を形成する工程を含む、上記方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法により得られる塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、樹脂組成物のオーバースプレーのない塗布の方法、及びその方法に使用される樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の記述
大型の対象物、例えば自動車本体部品、飛行機、列車、又はガレージのドアへの液体塗料の塗布は、塗布される塗料を回転ベルカップを用いて噴霧する、回転式噴霧器を用いた静電スプレーにより行われることが多い。空気圧スプレーに比べて、静電スプレーは、塗料液滴の帯電によりオーバースプレーの量を減らすことで移動効率を改善するという利点を提供する。ここで、オーバースプレーは、目標位置に到達しないが例えば意図されない位置に堆積するか又は周囲の気流に運び去られる、噴霧された塗料を示すために用いられる。静電スプレーであっても、オーバースプレーの量は依然として20~30%もの多さになり得る。
【0003】
オーバースプレーはまた、例えばマルチトーンの車、縞若しくはロゴの塗布の場合、又は塗料がはっきりと定められた位置のみに塗布される必要のあるあらゆる他の場合、極めて望ましくない。スプレー塗布技術では、塗工されることが意図されない部分は、この目的のためにマスキングされる必要がある。マスキングは時間がかかり、人手を要し、コストのかかる方法であり、相当な浪費流をもたらす。
【0004】
液体塗料のスプレー塗布の上述した不具合は、オーバースプレーのない塗布技術を用いることにより強く低減され得るか又は除去され得る。この技術では、液滴オンデマンド又は噴出流オンデマンドを提供するプリントヘッド塗布器装置を用いて、塗料は目標位置に堆積される。これに関連して噴出流とは、個々の液滴から形成される流れとは対照的に、塗料の主に連続的な流れを言う。プリントヘッド塗布器装置は、典型的には、液体樹脂組成物が圧縮される複数の小さい穴を含む、穴が開けられたプレートを備える。プリントヘッドは、塗工される目標位置の近くに位置され得、塗料が目標位置のみにて対象物に作用することを保証し、それにより実際上、オーバースプレーを除外する。オーバースプレーのない塗布の例は、例えば、WO2011138048、WO2014121926、EP1884365、US2015/0086723及びUS2017182516に記載される。
【0005】
WO2011138048/US2013284833は、少なくとも1つの粘着コーティング剤噴流を放出して、塗布振動によりコーティング剤ノズルと部品の間で液滴に粉砕するように構成された少なくとも1つのコーティング剤ノズルからコーティング剤を放出する少なくとも1つの塗布装置を備えた、塗工装置を記載している。
【0006】
WO2014121926は、組成物の塗布のための特定のノズルプレートを記載している。開いているノズルは0.2mmより小さい。
【0007】
EP1884365は、対象物の表面に塗料を塗布するための塗布器ヘッドであって、その塗布器ヘッドが、少量の塗料を噴出させることができるように配置された、塗料における圧力パルスを生じるための作動手段が配置された、塗料のための少なくとも1つの流体供給路及び少なくとも1つのノズル出口を備えた塗布器ヘッドを記載している。
【0008】
US2015/0086723は、多くの液滴オンデマンド印刷ノズルを備えた手動操作型塗布装置による、表面にコーティング材料の均一層を塗布するための装置及び方法を記載している。
【0009】
US2017182516は、とがった端部でオーバースプレーなしでコーティング剤を塗布するオーバースプレーのない塗布器により、車本体のような部品を装飾塗料により印刷するための印刷方法を記載している。
【0010】
先行技術文献は、穴が開けられたプレート又はノズルを有するプレートを用いたオーバースプレーのない塗工又は印刷の方法及び装置に関するのみであり、樹脂組成物についても、オーバースプレーのない塗布方法に使用される樹脂組成物から生じる要件又は具体的な問題についても記載されていない。
【0011】
穴が開けられたプレートを有する印刷ヘッドを有するオーバースプレーのない塗布(OFA)において樹脂組成物を塗布する課題の1つは、印刷ヘッドプレートにわたる大きな圧力低下である。この圧力低下は、プレートの厚み、穴を通る樹脂組成物の流量、及び組成物の粘度とともに上昇し、穴の直径の低下とともに非常に大きく上昇する。実際、十分な機械的強度を保証するために最低限のプレートの厚みが求められ、求められる液滴流又は噴出流の形成を保証するために小さい穴が求められ、樹脂組成物の塗布時間を短縮するため及び適切な液滴流又は噴出流の形成性能のために高い流量が必要とされる。非水樹脂組成物の粘度が高すぎる場合には、圧力低下が大きすぎ不規則で不安定な噴出流又は液滴流のリスクがある。
【0012】
オーバースプレーのない塗布では、スプレー塗布とは反対に、プリントヘッドと覆われる基板表面の間の距離が、典型的には、15cm未満、好ましくは10未満、より好ましくは6未満、又は5cm未満でさえあり、典型的には、約0.1を超え、好ましくは0.5を超え、より好ましくは1cmを超え、更により好ましくは2cmを超え、一方でスプレー印刷において、距離は、典型的には、15cmより大きく、典型的には、約15~25cmの範囲である。塗料がプリントヘッドを離れてから印刷される基板表面に到達するまでの時間は、スプレー塗布とは反対に非常に短く、典型的には、50ミリ秒(ms)未満、好ましくは25ms未満、より好ましくは15ms未満、又は10ms未満でさえあり、これはオーバースプレーのない塗布では組成物が基板表面に到達する前に実質的に溶剤の蒸発は行われ得ないという重要な差異をもたらす。従って、基板に到達する樹脂組成物の組成及び粘度は、プリントヘッドを離れる樹脂組成物と実質的に同じである。従って、ニュートン樹脂組成物は、オーバースプレーのない塗布に求められる樹脂組成物の低い粘度の結果として、基板表面に塗布される際にも低い粘度を有し、非水平の配向表面において及び車の屋上のような実質的に水平な表面の一部においてさえ、許容できないほどに大きなタレ(sagging)をもたらす。高いタレ性はまた、例えば対象物の穴又はとがった端部において端部の覆いが不十分であることをもたらす。従って、オーバースプレーのない塗布においては、一方では印刷ヘッドの非常に小さい開口部を通って樹脂組成物の噴出流又は液滴流を噴出できるための低粘度、及び他方では基板表面に塗布される際の樹脂組成物の低いタレ性の要件という、相反する要件がある。
【0013】
水性樹脂分散液は、高せん断条件下での粘度と低せん断条件下での粘度の間の相当なほとんど即時の差異を引き起こすそれらの分散コロイド挙動のために、強力な擬弾性を示し得ることから、この問題は、樹脂の水性分散液のオーバースプレーのない塗布において克服しやすいと仮定される。しかしながら、上述した要件の衝突は、非水性樹脂組成物、例えば有機溶剤中に溶解した樹脂を含む溶剤型組成物、又は低分子量架橋剤成分を含み、実質的に有機溶剤を含まない硬化性組成物、例えばUV硬化性組成物においては克服するのが難しい。オーバースプレーのない塗布の技術分野では、オーバースプレーのない塗布の適用の範囲を広げ、水性樹脂分散液の一定の不利益、例えば蒸発速度の遅さ、乾燥時間の長さ、機械的特性、耐薬品性及び得られる層の光学的品質等を克服する非水樹脂組成物を使用できることも望まれる。
【0014】
塗膜のオーバースプレーのない塗布の別の問題は、硬化膜の表面における噴出流パターンの視認性である。プリントヘッドから出る噴出流は、それらの直径と比べて印刷ヘッドの方向と垂直に相当広範な領域にわたって拡散する必要がある。連続的で滑らかな塗装層を形成するためには、隣接する噴出流からの堆積層が融合する必要があり、噴出流パターンが平らになる必要がある。第2の堆積した塗装層が隣接する第1の堆積した塗装層と融合して平らになる必要のある(重複)領域において、同様の問題が起こる。非常に低いタレ性を有する塗料は、通常、基板にわたって均一に流れる能力が低い。従って、塗布工程により導入された表面ムラ、及び下層基板に由来するムラは、必要なほどには平らにされ得ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、プリントヘッド塗布器を用いたオーバースプレーのない塗布に用いることができ、上述した不利益の1つ又は複数を有さない、樹脂組成物(単数又は複数)、特に非水樹脂組成物のオーバースプレーのない塗布の方法を提供することであり、特に、基板表面のタレの不具合を最小限にするか又は除去しさえするが、プリントヘッドの穴が開けられたプレートに許容できない大きな圧力低下をもたらすことがなく、ノズルを塞ぐという大きなリスクがなく、穴が開けられた印刷プレートの穴から出る安定した液滴流又は噴出流をもたらす非水樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の簡単な概要
本発明の1つの態様によれば、基板表面への樹脂組成物のオーバースプレーのない塗布の方法であって、
a.樹脂組成物を用意する工程、
b.複数の開けられた穴を含むプレートを含むプリントヘッドを備えたオーバースプレーのない塗布器を用意する工程、
c.樹脂組成物の複数の液滴流又は噴出流を複数の穴から基板表面に噴出して、樹脂組成物の層を形成する工程を含み、
樹脂組成物が、樹脂と、ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤とを含む非水チキソトロピー樹脂組成物であって、
100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sである、23℃にて1000±50s-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSV、及び
250Pa-1未満、好ましくは150Pa-1未満、更により好ましくは50Pa-1未満、最も好ましくは25Pa-1未満である、23℃にて300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmax
を有することを特徴とするチキソトロピー樹脂組成物である、上記方法を提供することにより、上述した問題の1つ又は複数が解決された。
【0017】
驚くべきことに、特定のチキソトロピー樹脂組成物を用いた本明細書の上記に記載のような方法(「OFA」法)は、ポリ尿素粒子が存在するにもかかわらず、塗布器のヘッドの穴を塞ぐことのない安定した噴出流又は液滴流による安定した塗布方法もたらし、非水平表面上の塗布層のタレが最小限であるか又はタレのない塗膜をもたらすことが分かった。規定されたようなクリープコンプライアンスJmaxの上限を有するチキソトロピー樹脂組成物におけるポリ尿素粒子は、穴を塞いて噴出流を妨げることなく、基板表面に新たに塗布された場合にチキソトロピー樹脂組成物において非常に速い相当な粘度増加をもたらす。
【0018】
別の態様において、本発明は、樹脂と、ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤とを含む、好ましくは本発明の方法に使用される、非水チキソトロピー樹脂組成物であって、
a)100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sである、23℃にて1000±50s-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSV、及び
b)250Pa-1未満、好ましくは150Pa-1未満、更により好ましくは50Pa-1未満、最も好ましくは25Pa-1未満である、23℃にて300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmax、
c)0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間である、ポリ尿素粒子の量(ここで、cwt%は、任意の顔料又は充填剤の重量を含まない樹脂組成物の全重量に対する重量%である)、
を有することを特徴とする非水チキソトロピー樹脂組成物に関する。
【0019】
本発明のチキソトロピー樹脂組成物は非水組成物であり、これはチキソトロピー樹脂組成物が相当な量の水を含まないことを意味し、相当ではないとは、10cwt%未満、好ましくは5cwt%未満、より好ましくは1cwt%未満の水を意味し、ここで及び本明細書の以下においてcwt%は、樹脂組成物の全重量に対する重量パーセンテージを意味し、全重量は顔料又は充填剤の重量は含まない。非水チキソトロピー樹脂組成物は、以下により詳細に記載されるように、溶剤型、即ち有機揮発性溶剤を含んでも、無溶剤であってもよい。
【0020】
当該分野では、チキソトロピー剤を用いることによりスプレー塗布におけるタレを防ぐことが公知である。公知のチキソトロピー剤は、例えば、コロイダルシリカ、ミクロゲル、及びタレ制御剤(SCA)とも呼ばれる異方性ポリ尿素粒子である。普通のスプレー塗布では、SCAの量は比較的少ないものであり得、これは、相当な量の溶剤が、基板表面に接する前に噴出した塗料液滴から蒸発し、樹脂固形分におけるSCAの濃度及び粘度が十分な抗タレ効果を提供するのに十分なほど高くなるためである。しかしながら、基板に接触する前の噴出した液滴流又は噴出流において、OFA塗布においては溶剤の蒸発は実質的に起こらないことから、そのような樹脂組成物において必要な樹脂組成物におけるSCAの量は大幅に多くなる必要がある。このことは、粒子が半結晶性であり、直径寸法の少なくとも2、好ましくは少なくとも5又は少なくとも10倍までもの典型的な長さ寸法を有する異方性針状であることから、粒子状ポリ尿素SCAの場合には特に、問題として捉えられる。走査電子顕微鏡法分析により示された長さ寸法は、数十ミクロンであり得る。ポリ尿素粒子はまた、塗布器ヘッドの穴の直径の1桁分のより大きな凝集体を形成する傾向を有し得る。従って、OFA塗料にポリ尿素粒子を添加することは、非常に小さい穴の1つ又は複数を塞ぐか又は妨げることを引き起こし、噴出流又は液滴オンデマンド挙動が不十分となり、結果として不十分な塗布結果になると予測された。これらの問題はまた、チキソトロピー樹脂組成物のポリ尿素粒子が、高せん断条件下で崩壊することが難しい低せん断条件下での空間充填構造を築き上げる場合に起こることが予測された。更に、チキソトロピー剤は、樹脂組成物のレオロジー特性を変えるだけでなく、望ましいレオロジー効果のために多量のチキソトロピー剤が必要な場合には確かに、得られる塗膜の特性、例えば視覚的表面外観も変えることがある。驚くべきことに、本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物は、非チキソトロピー類縁物と比べて、OFA装置の穴が開けられたプレートにわたって望まれない非常に大きな圧力低下をもたらさない。更に、それらは、穴が開けられたプレートから出るチキソトロピー樹脂組成物に求められる液滴流又は噴出流の形成に悪影響を及ぼさず、驚くべきことに、ポリ尿素粒子が存在するにもかかわらず、非常に小さい穴を塞ぐ有意なリスクがないことが分かった。
【0021】
別の態様において、本発明は、塗料組成物、接着剤組成物又は封止剤組成物のオーバースプレーのない塗布における、本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物の使用、物品、好ましくは自動車部品の塗装の方法であって、物品の非水平表面に、本発明のオーバースプレーのない塗布方法を使用して、本発明のチキソトロピー樹脂組成物の塗工層を塗布する工程、及び層を硬化して、硬化塗膜を形成する工程を含む、方法、並びに(部分的に)非水平な部分においてさえタレが少ないこと、及びとがった端部を良好に覆うことにより良好な外観を有する、本発明の方法により得られる塗装物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面の簡単な記述
【
図1】
図1は、それぞれ0、0.34及び0.63cwt%のポリ尿素粒子を有する比較例No-SCA、CE1及びCE2と、本発明の例であるそれぞれ1.24及び1.6cwt%の高性能ポリ尿素粒子を有する例-1及び例-4とを比較した、いくつかの樹脂組成物の1.0Paのクリープ応力でのクリープコンプライアンス測定を示すグラフである。例1及び4のみが大きなタレを示さなかった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な記述
基板表面への樹脂組成物のオーバースプレーのない塗布(OFA)の方法は、
a)樹脂組成物を用意する工程、
b)複数の開けられた穴を含むプレートを含むプリントヘッドを備えたオーバースプレーのない塗布器を用意する工程、
c)樹脂組成物の複数の液滴流又は噴出流を複数の穴から基板表面に噴出して、樹脂組成物の層を形成する工程を含む。
【0024】
OFA塗布では、プリントヘッド及び基板は、典型的には、0.1から15cmの間、好ましくは0.5から12cmの間、より好ましくは1から10cmの間、更により好ましくは2から6cmの間の塗布間隔にある。穴は、通常10から200マイクロメートルの間、好ましくは50から150マイクロメートルの間、より好ましくは70から130マイクロメートルの間の小さい直径を有し、プリントヘッドの開いた穴を通る組成物の流量は、典型的には、穴1つ当たり2から10g/minの間、好ましくは3から9g/minの間、より好ましくは4から8g/minの間である。穴が開けられたプリントヘッドの穴は、すべてが同じ直径を有していなくてもよく、穴のうち少なくともいくつかは、コンピューター制御により制御された要求に応じて穴を開閉する手段が備えられていてもよい。プリントヘッドはまた、噴出流の代わりに液滴流を供給するように構成されてもよい。上述した流量は、多量の樹脂組成物が非常に小さい穴から噴出されることを示す。結果として、穴から出る樹脂組成物の速度及びせん断速度は非常に速いものであり、速度は、典型的には、少なくとも2、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも6、最も好ましくは少なくとも8m/sである。
【0025】
基板への噴出流又は液滴流は高速で接近しているため、その流れは、非常に安定していなければならず、プリントヘッドから穴が開いたプレートと垂直な角度で一直線に出なければならない。穴の1つ又は複数の閉塞又は詰まりは、噴出流又は液滴オンデマンド挙動が不十分となり、結果として塗布結果が不良となることから、避けなければならない。基板表面に塗布された液滴流又は噴出流は、基板に膜を形成させるのに十分近くなければならず、これはまたその流れが基板に到達する前に融合するか又はプリントヘッドと垂直な直線から離れるリスクが高まることから、穴の直径は非常に小さく、穴間の距離もまた非常に小さい。上記のOFA法の特徴は、樹脂組成物の配合の自由に高い要件及び制限をもたらす。
【0026】
驚くべきことに、OFA法において、樹脂と、ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤とを含む非水チキソトロピー樹脂組成物であって、
a)100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sである、23℃にて1000±50s-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSV、及び
b)250Pa-1未満、好ましくは150Pa-1未満、更により好ましくは50Pa-1未満、最も好ましくは25Pa-1未満である、23℃にて300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmax
を有することを特徴とする非水チキソトロピー樹脂組成物を使用することにより、問題が解決され、良好な結果が得られることが分かった。
【0027】
樹脂はまた、以下により詳細に説明するように異なる樹脂の混合物であり得、チキソトロピー剤はまた、異なるチキソトロピー剤の組合せであり得、混合物はポリ尿素粒子及び1つ又は複数の他の異なるチキソトロピー剤を含み、好ましくは2つ以上のポリ尿素粒子の混合物であることが知られる。
【0028】
チキソトロピー樹脂組成物は、低い高せん断粘度(HSV)を有する。ここで、高せん断粘度HSVは、1000±50s-1のせん断速度で23℃にて、最新式のエアベアリングレオメーター、例えば陽極酸化アルミニウムコーンが40mmの直径、4°の角度及び107マイクロメートルの切り捨てを有するコーン及びプレートのジオメトリを用いたTA InstrumentsのAR2000を用いて決定した定常状態の粘度を示す。本発明の樹脂組成物のHSVは、100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満である。比較的低分子量の樹脂、当業者に公知のいわゆる高固形分若しくは超高固形分樹脂組成物を選択すること、及び/又は比較的多量の溶剤を用いることにより、求められる低いHSVを得ることができる。樹脂組成物のHSVは、好ましくは、少なくとも30mPa.s、好ましくは少なくとも40mPa.s、より好ましくは少なくとも50mPa.sである。
【0029】
チキソトロピー樹脂組成物が基板表面に塗布される場合、新たに塗布された層の効果的なせん断応力作用は、プリントヘッドにおける液体の高せん断条件の作用に比べてはるかに低く、次いで、本発明のチキソトロピー樹脂組成物の低せん断粘度の非常に速く相当な増加が起こり、23℃にて1.0Paのクリープ応力を用いて300秒のクリープ時間で上述したレオメーターを用いて決定したクリープコンプライアンスJmaxの上限値により特徴付けられる、タレの問題を最小限にする。Jmaxの高い値は、高いタレ性を有する樹脂組成物をもたらし、一方で特定の低いJmax値を有する樹脂組成物は、相当なタレの不具合は示さない。本発明のチキソトロピー樹脂組成物のJmaxの値は、250Pa-1未満、より好ましくは150Pa-1未満、更により好ましくは50Pa-1未満、最も好ましくは25Pa-1未満である。これらの2つの要件はひどく相殺するものであるため、OFA塗料の重大な課題は、低いHSVを十分に低いJmaxと組み合わせることであった。HSVが低いほどJmaxは高くなり、結果として内在する塗料のタレ性が高くなる。非チキソトロピー(ニュートン)塗料については、Jmaxの値は、300をHSVで割ったものに等しい。例として、粘度が75mPa.sの非チキソトロピーニュートン塗料のJmaxの値は4000Pa-1である。
【0030】
従って、大気圧でのフラッシュオフ乾燥期間のチキソトロピー樹脂組成物の内在するタレ性は、23℃にて300s後に1Paのクリープ応力でクリープ試験において決定した、チキソトロピー樹脂組成物のクリープコンプライアンスJmaxにより特徴付けられる。このクリープ応力は、層厚みが100マイクロメートルで比重が約1g/ccの垂直に配向された湿潤組成物への重力作用による応力に相当する。オーバースプレーのない塗布装置によるチキソトロピー樹脂組成物の塗布をシミュレーションするため、クリープ試験の前に高せん断前処理が適用され、まず組成物におけるSCAネットワークの構造を除去し、そのまま次いで2秒のゼロせん断速度とし、コーンの回転を停止させて慣性効果を取り除く。クリープコンプライアンスを本明細書の以下、Jと言い、300s後に1.0Paのクリープ応力を用いて決定したクリープコンプライアンス値をJmaxと言う。Jmaxは、300秒後に測定したコンプライアンス値として定義される。クリープコンプライアンスは、測定したひずみを適用したクリープ応力で割ったものである。定義により、ひずみ及びそれによるクリープコンプライアンスは、クリープ試験の開始時はゼロである。
【0031】
Jmaxの値は、コーン及びプレートのジオメトリを用いた回転式エアベアリングレオメーターを用いて決定される(陽極酸化アルミニウムコーンが40mmの直径及び4°のコーン角度)。チキソトロピー樹脂組成物の試験試料が得られ、クリープコンプライアンス試験の前に高せん断処理(1000s-1で30s)がなされ、その後にコーンの回転が停止されて、2s間、ゼロせん断速度に保持され、次いで、23℃にて1.0Paのクリープ応力を用いてひずみが測定され、Jmaxは、300sのクリープ時間後に得られるひずみを適用したクリープ応力で割ったものである。Jmaxの単位はPa-1である。
【0032】
従って、低いクリープコンプライアンスJmaxは、フラッシュオフ乾燥期間の低いタレ性及び従って良好な耐タレ性を意味する。これを
図1に示し、
図1は本発明のSCAを含む組成物及びSCAを含まない同様の組成物についての時間の関数としてのクリープコンプライアンスのプロットを示す。SCAを含まない組成物のJmaxの値は約5000Pa
-1であり、一方でSCAを含むチキソトロピー樹脂組成物である例-4のそれは約14Pa
-1であった。これは、ポリ尿素粒子の添加が99.5%を超えるJmaxの低下をもたらしたことを意味する。
【0033】
一方では印刷ヘッドプレートにわたる大きな圧力低下を防ぐためのHSVの低い値、及び他方では基板表面に塗布された際の樹脂組成物の高すぎるタレ性を防ぐためのJmaxの低い値という相反する要件は、組成物が基材表面に到達する前に相当な溶剤の蒸発が行われ得ないオーバースプレーのない塗布において、達成することは特に難しい。
【0034】
本発明者らは、驚くべきことに、チキソトロピー樹脂組成物は、比較的高いポリ尿素粒子の濃度でポリ尿素粒子が存在するにもかかわらずOFA塗布に用いられ得、これは上述した低い値のHSVと組み合わせた低い値のJmaxを得ることができることを意味することを見出した。OFA法では、ポリ尿素粒子濃度は、好ましくは、少なくとも0.4cwt%、好ましくは少なくとも0.5cwt%、より好ましくは少なくとも0.6cwt%、最も好ましくは少なくとも0.7cwt%となるように選択されるが、1cwt%より多いか又は1.3若しくは1.5cwt%より多くさえあり得る。しかしながら、チキソトロピー樹脂組成物におけるポリ尿素粒子の高い濃度はまた、OFA塗布において穴を塞ぐリスクとなり、塗膜の外観にも悪影響を及ぼし得る。従って、ポリ尿素粒子濃度は、好ましくは2.5cwt%未満、より好ましくは2cwt%未満、更により好ましくは1.8cwt%未満、最も好ましくは1.7cwt%未満である。従って、本発明のチキソトロピー非水樹脂組成物において、ポリ尿素粒子の量は、好ましくは0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、又は最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間であり、ここで及び本明細書の以下においてcwt%は、任意の顔料及び充填剤の重量を含まない非水チキソトロピー樹脂組成物の全重量に対する重量%である。
【0035】
耐タレ性の要求の高い塗布領域について、OFA法におけるポリ尿素粒子濃度は、通常少なくとも0.4cwt%、好ましくは少なくとも0.7cwt%、より好ましくは少なくとも1.6cwt、最も好ましくは少なくとも1.7cwt%、通常2.5cwt%以下、好ましくは1.7cwt%以下である。ポリ尿素粒子濃度の特に好ましい範囲は1.7~2.5cwt%であり、cwt%は、任意の顔料又は充填剤の重量を含まない樹脂組成物の全重量に対する重量%である。チキソトロピー樹脂組成物の望ましい非常に強力なチキソトロピーレオロジー特性を達成し、最終的な硬化塗膜の光学特性及び機械的特性への粒子の不利な効果を最小限にし、コストも明らかに最小限にすることは課題である。非常に高いチキソトロピー性能を有するチキソトロピー剤を用いることで目的が達成され得、これは、塗料組成物に用いられた場合、チキソトロピー剤は少ない量のチキソトロピー剤で高いチキソトロピー効果をもたらす(Jmaxを下げる)ことを意味することが分かった。そのような高性能のポリ尿素粒子は、以下により詳細に記載される。ろ過及び詰まりの問題を防ぎ、硬化塗膜においてSCA粒子が視認できることを防ぐため、用いられるポリ尿素粒子は、好ましくは、相当な濃度の大粒子又は粒子の大きな集合体が存在することなく、高いチキソトロピー性能を組み合わせるべきである。ポリ尿素SCA粒子及び集合体の大きさを決定するためにいくつかの方法が用いられ得る。一次ポリ尿素SCA粒子の大きさ及び形態を決定するために走査電子顕微鏡法(SEM)が用いられ得る。しかしながら、粒子の非常に小さい区画のみがSEM画像に取り込まれるため、一次ポリ尿素SCA粒子の平均粒径を決定するにはあまり適さない。更に、SEMは、最も大きいポリ尿素SCA粒子又は集合体の大きさを決定するには適切ではない。平均ポリ尿素SCA粒径を決定するのに適切な方法は、非常に多数の粒子の大きさ及びその分布を決定することから、レーザー回折である。このレーザー回折技術は散乱粒子が球状であると仮定しており、従って、この技術により決定される粒径は、典型的には、SEM画像で見られる一次ポリ尿素SCA粒子の長さより小さい。本発明のポリ尿素粒子は、典型的には20μm以下、好ましくは15μm以下、更により好ましくは10μm以下のレーザー回折により測定した平均粒径を典型的には有し、それは、このことが塗膜において視認できる塊をもたらすとともにOFA塗布の間のろ過及び詰まりの問題のリスクを上昇させることがあるためである。更に、20μmより大きい直径を有する粒子の体積パーセンテージは、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。好ましくは、10μmより大きい直径を有する粒子の体積パーセンテージは、10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0036】
平均粒径は、典型的には、波長632.8nm、ビーム長さ2.4mm及び2つの後方散乱検出器を含む光散乱測定のために最適化された42要素アレイ検出器のHe-Neレーザーを備えたMalvern Mastersizer 3000を用い、レーザー回折を用いて確認される。平均粒径は、体積モーメント平均径D[4,3]として決定される。ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー組成物1グラムを9グラムの酢酸ブチルに希釈することにより試料を調製した。その後、ボルテックスミキサーを用いて2~3分間、分散するまで試料を予め撹拌した。不明瞭化が10から12.5%の間であり、測定セル中で少なくとも30秒間、試料を脱気及び循環させた場合に測定を開始した。Mie理論に基づく多分散分析モデルを用い、粒子屈折率1.5330、連続媒体屈折率1.4000と仮定し、粒子は完全に不透明であると仮定して測定データを分析した。
【0037】
大粒子が存在することを決定するための特に適切な方法は、以下により詳細に記載するHegman微粉度を決定することによる。更に、ポリ尿素粒子により形成された空間充填ネットワークは、高せん断条件、例えばOFA装置において起こる条件の条件下で、すばやく崩壊するべきである。従って、非常に高いチキソトロピー効果に次いで、本発明のチキソトロピー樹脂組成物が、塗布層の厚みよりも少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、又は更には60%小さいHegman微粉度を有することもまた好ましい。チキソトロピー樹脂組成物では、Hegman微粉度の値は、好ましくは40未満、より好ましくは20未満、最も好ましくは15マイクロメートル未満である。
【0038】
Hegman法は、通常、SCA組成物の「引き下げ」試料の表面外観の目視観察を行う、熟練のヒトの操作者により評価される。引き下げ評価は、典型的には、American Society for Testing and Materials (ASTM) Standard D1210(米国材料試験協会(ASTM)規格D1210) "Standard Test Method for Fineness of Dispersion of Pigment-Vehicle Systems by Hegman- Type Gage"に記載されるように、通常「Hegmanゲージ」と言う、「Hegman微粉度ゲージ」として公知の装置を用いる。Hegmanゲージは、硬化鋼(又はステンレス鋼又はクロムめっきステンレス鋼)のブロック(Hegmanゲージブロックと呼ばれる)及び同様の材料からなる硬化スクレーパーを含む。硬化鋼ブロックは平坦な研磨された平面を有し、その127ミリメーターの長さに沿って機械加工された次第に小さくなるパスを有する。次第に小さくなるパスは、一端で例えば50マイクロメートルの深さであり、パスは次第に小さくなってその他端でゼロの深さになる。手動の引き下げのためのHegmanゲージは、半インチ幅のパスを有する。パスの横の端に沿ってキャリブレーション目盛りが示される。一方の端に沿って、目盛りはマイクロメートルで示される(次第に小さくなるパスの深さを示す)。所定量の塗料が、Hegmanゲージブロックの次第に小さくなるパスの深くなっている端に堆積される。硬化鋼スクレーパーが鋼ブロック上に配置され、その長さに沿って引かれ、次第に小さくなるパスに、その厚みが最大厚みから最小厚みへと次第に小さくなる塗料の膜様の堆積物を残す。操作者は試料を目視観察し、塗料の膜表面から突き出た大粒子を探す。これらの突き出たものが「粒子」、「小片」又は「スキャット」として知られている。操作者は、ゲージに沿って、小片が最初に現れる場所を視覚的に決定する。引き下げ試料の外観は、ペースト又は塗料の試料が乾燥し始めるにつれて変化することから、目視観察はすぐになされる必要がある。引き下げの約10秒以内に、操作者は引き下げ試料の外観の目視観察を行う。操作者は、ゲージに沿って、多数の小片の確かなパターンが現れる点を決定する(粉末粒子又は非常に少ない粒子は考慮されない)。この点が「微粉度ライン」又は「微粉度寸法」と呼ばれ、SCAの微粉度又は品質の表示を提供する。
【0039】
本発明の方法は、塗料、クリアコート、ラッカー、ワニス及びインクを含む塗料組成物のOFA塗布の方法に主に関する。しかしながら、OFA塗布の方法はまた、原理的には他のチキソトロピー樹脂組成物、例えば接着剤組成物又は封止剤組成物に用いられ得る。
【0040】
本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物は、樹脂と、ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤とを含み、組成物は、
a)1000±50s-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSVが100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sであり、且つ
b)300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmaxが250Pa-1未満、好ましくは150Pa-1未満、更により好ましくは50Pa-1未満、最も好ましくは25Pa-1未満であり、
c)ポリ尿素粒子の量が0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間であり、cwt%が、任意の顔料又は充填剤の重量を含まない樹脂組成物の全重量に対する重量%である
ことを特徴とし、
非水チキソトロピー樹脂組成物は、好ましくは、顔料を含まないクリアコート組成物である。
【0041】
好ましい実施形態において、本発明は、樹脂と、ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤とを含む、好ましくは本発明の方法に使用される、非水チキソトロピー樹脂組成物であって、
a)100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sである、23℃にて1000±50s-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSV、且つ
b)250Pa-1未満、好ましくは150Pa-1未満、より好ましくは50Pa-1未満、更により好ましくは25Pa-1未満である、23℃にて300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmax、
c)通常少なくとも0.4cwt%、好ましくは少なくとも0.7cwt%、より好ましくは少なくとも1.6cwt%、最も好ましくは少なくとも1.7cwt%であり、通常2.5cwt%以下、好ましくは1.7cwt%以下であり、特に好ましい範囲は1.7~2.5cwt%である、ポリ尿素粒子の量(ここで、cwt%は、任意の顔料又は充填剤の重量を含まない樹脂組成物の全重量に対する重量%である)
を有することを特徴とする非水チキソトロピー樹脂組成物に関する。
【0042】
チキソトロピー樹脂組成物におけるポリ尿素粒子チキソトロピー剤は、ポリイソシアナート、好ましくはジイソシアナート若しくはトリイソシアナートとモノアミンの反応生成物、又は別の場合にはポリアミン、好ましくはジアミン若しくはトリアミンとモノイソシアナートの反応生成物であり得、好ましくは、ポリ尿素粒子が、a)モノアミン、若しくは別の場合にはモノイソシアナートが少なくとも部分的にキラルであるか、又はb)ポリ尿素粒子が音響振動補助法において形成されたか、又はc)ポリ尿素粒子が樹脂の存在下で形成されたか、又はd)a)、b)若しくはc)のうち2つ以上の組合せ、好ましくはa)及びb)の組合せ、より好ましくはa)、b)及びc)の組合せである、高いチキソトロピー性能を有するポリ尿素粒子である。ポリ尿素は、固体粒子状であり、且つ通常、長軸が断面直径よりはるかに大きい異方性の、例えば針状の粒子を形成する。ポリ尿素は、通常、半結晶性である。
【0043】
高いチキソトロピー性能を有するポリ尿素粒子は、ポリイソシアナートと、少なくとも部分的にキラルなモノアミンであるモノアミンから、又はポリアミンと、少なくとも部分的にキラルであるモノイソシアナートから形成することができる。本明細書では、少なくとも、キラルなモノアミン又はキラルなモノイソシアナートにおいてイソシアナート基又はアミン基が結合する元素が、キラルであることが好ましい。高いチキソトロピー性能を得ることを考慮すると、ポリ尿素粒子が樹脂の存在下で形成されたことが更により好ましく、音響振動補助法、好ましくは超音波補助法が更により好ましい。樹脂の存在下での形成反応が好ましいが、音響振動補助法において得られたポリ尿素は、樹脂の存在下で反応させなくても非常に高いチキソトロピー性能を有する。最も好ましくは、高いチキソトロピー性能を有するポリ尿素粒子は上述した選択の組合せ、音響振動補助法において樹脂の存在下で形成されたポリイソシアナートと少なくとも部分的にキラルなモノアミンの反応生成物である。
【0044】
好ましくは、ポリ尿素粒子はポリイソシアナートとアミンの反応生成物であり、a)ポリイソシアナートが、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(HMDI)、そのイソシアヌラート三量体若しくはビウレット、trans-シクロへキシレン-1,4-ジイソシアナート、パラ-及びメタ-キシリレンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、且つ/又はb)アミンがモノアミンであり、一級アミン、好ましくは脂肪族アミン、より好ましくはヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン、3-メトキシプロピルアミンのような(置換)アルキルアミン、分枝状アルキルアミン若しくはシクロアルキルアミン、又はベンジルアミン、R-α-メチルベンジルアミン、S-α-メチルベンジルアミン、2-フェネチルアミン若しくはそれらの混合物のような(アルキルアリール)アミンである。単独で又は他のアミンとの混合物として用いられる更に好ましいアミンは、3-アミノメチルピリジンである。ポリ尿素粒子が、ベンジルアミンとヘキサメチレンジイソシアナート、3-メトキシプロピルアミンとトリスイソシアヌラート、最も好ましくはS-α-メチルベンジルアミンとヘキサメチレンジイソシアナートの反応生成物を含む場合に、良好な結果が得られた。これらの上述したSCAの組合せを用いることが可能である。
【0045】
クリアコートの透明性及び不透明性が、ポリ尿素粒子により悪影響を受けないことが望ましい。更に、本発明のポリ尿素粒子は、例えば褐色への塗料及び塗膜の激しい変色を引き起こすべきではない。
【0046】
チキソトロピー樹脂組成物は、好ましくは、40マイクロメートルより小さい、好ましくは20マイクロメートルより小さい、更により好ましくは15マイクロメートルより小さいHegman微粉度値を有し、このことは、より良好な塗膜の外観及び穴を塞ぐリスクの低下をもたらす。そのようなHegman微粉度は、高性能のポリ尿素粒子を用いることでより容易に得られる。
【0047】
チキソトロピー樹脂組成物は当該分野で公知であるが、OFA塗布ではなく標準的な塗布方法、例えばローリング、ブラシがけ、スプレー等のために設計される。OFA塗布に用いる本明細書で規定されたような樹脂組成物の特徴の組合せを記載している先行技術文献はない。ポリ尿素粒子チキソトロピー剤の調製方法についての以下に記載された従来技術の方法の詳細及び例について述べる。
【0048】
EP0198519は、担体樹脂中で、チキソトロピー特性を与えるSCAマスターバッチとして用いられ得るポリ尿素SCAを調製することを記載している。塗料配合者が、1つ又は複数の異なる樹脂を含み得る想定される塗料組成物においてSCA粒子形成を行い、高品質で一貫したチキソトロピー挙動を得ることは実際上、不可能であることから、塗料配合者は典型的にはSCAマスターバッチを用いる。
【0049】
EP0192304は、低い硬化温度でも十分にチキソトロピックな塗料組成物に用いる、イソシアヌレートをベースとしたポリ尿素SCAを記載している。EP1641887及びEP1641888は、光学活性なモノアミン若しくはポリアミン又はモノイソシアナート若しくはポリイソシアナートをベースとしたポリ尿素SCAを記載している。EP1902081は、第1のポリイソシアナートと第1の好ましくはキラルなアミンとの第1のポリ尿素反応生成物、及び第1のポリ尿素反応生成物とは異なり、第1の反応生成物の存在下で沈殿された、第2のポリイソシアナートと第2のアミン、好ましくはキラルでないアミンとの第2のポリ尿素反応生成物を含むポリ尿素SCAを記載している。
【0050】
WO2018083328A1は、ポリ尿素粒子の調製の方法であって、その方法が、液体媒体中でポリイソシアナート(a)及びモノアミン(b)を含む反応物(I)、又はポリアミン(a)及びモノイソシアナート(b)を含む反応物(II)を接触及び反応させてポリ尿素を形成する工程、並びにポリ尿素を沈殿させてポリ尿素粒子を形成する工程を含み、反応物の接触の間若しくは形成されたポリ尿素粒子の後処理として又はその両方として音響振動が適用される、方法を記載している。これは、EP0198519に記載されたSCAマスターバッチとは対照的に、担体樹脂を含まないか又は担体樹脂の相当な量を含まない有機非ポリマー溶剤中に、比較的高いポリ尿素粒子の濃度を有するチキソトロピー組成物を含む。ポリ尿素粒子は、良好なHegman微紛度と合わさった高いチキソトロピー性能を有する。塗料の配合物におけるこのチキソトロピー組成物の使用は、担体樹脂中にSCAを含むマスターバッチの使用に比べて、想定される樹脂組成物において、樹脂組成物の想定される特性のために望ましい最適な樹脂でないかもしれない相当な量の担体樹脂を導入しないという利点を有する。
【0051】
EP1902081は、高いチキソトロピー性能を得ることを考慮すると好ましいポリ尿素SCAを記載している。ここでは、チキソトロピー剤SCAは、第1のポリイソシアナートと第1のアミンとの第1のポリ尿素反応生成物、及び第1の反応生成物のコロイド粒子の存在下で沈殿された、第1のポリ尿素反応生成物とは異なる、第2のポリイソシアナートと第2のアミンとの第2のポリ尿素反応生成物を含む。
【0052】
ポリイソシアナート及びポリアミンへの接頭語「ポリ」の使用は、述べられた官能性の少なくとも2つがそれぞれの「ポリ」化合物に存在することを示す。ポリ尿素生成物がアミンのポリイソシアナートとの反応生成物により調製される場合、ジ尿素生成物又はトリ尿素生成物を調製することが好ましいことが知られている。好ましくは、用いられるポリ尿素反応物は、ポリイソシアナート及びモノアミンを含む。
【0053】
ポリイソシアナートは、好ましくは、脂肪族、脂環式、アラールキレン、及びアリーレンのポリイソシアナートからなる群より、より好ましくは置換又は非置換の直鎖状脂肪族ポリイソシアナート(及びそれらのイソシアヌラート、ビウレット、ウレトジオン)及び置換又は非置換のアリーレン、アラールキレン、及びシクロへキシレンのポリイソシアナートからなる群から選択される。
【0054】
ポリイソシアナートは、通常、イソシアナート(NCO)基間に2~40個、好ましくは4~12個の炭素原子を含む。ポリイソシアナートは、好ましくは、多くて4個のイソシアナート基、より好ましくは多くて3個のイソシアナート基、最も好ましくは2個のイソシアナート基を含む。対称な脂肪族又はシクロへキシレンジイソシアナートを用いることが更により好ましい。ジイソシアナートの適切な例は、EP1902081(その全体が参照により援用される)に記載されている。
【0055】
ジイソシアナートの適切な例は、好ましくは、テトラメチレン-1,4-ジイソシアナート、ペンタメチレン-1,5-ジイソシアナート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(HMDI)、trans-シクロへキシレン-1,4-ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート、1,5-ジメチル-(2,4-[オメガ]-ジイソシアナトメチル)ベンゼン、1,5-ジメチル(2,4-[オメガ]-ジイソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメチル(2,4-[オメガ]-ジイソシアナトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリエチル(2,4-[オメガ]-ジイソシアナトメチル)ベンゼン、メタ-キシリレンジイソシアナート、パラ-キシリレンジイソシアナート、ジシクロヘキシル-ジメチルメタン-4,4’-ジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、及びジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアナート(MDI)からなる群から選択される。更なる適切なポリイソシアナートは、好ましくは、HMDIの縮合誘導体、例えばウレトジオン、ビウレット、イソシアヌラート(三量体、トリスイソシアヌラート)、及び非対称三量体等を含むHMDIに基づくポリイソシアナートからなる群から選択され、それらの多くはDesmodur(登録商標)N及びTolonate(登録商標)HDB及びTolonate(登録商標)HDTとして市場に出されている。特に好ましいポリイソシアナートは、HMDI、そのイソシアヌラート三量体、そのビウレット、trans-シクロへキシレン-1,4-ジイソシアナート、パラ-及びメタ-キシリレンジイソシアナート、並びにトルエンジイソシアナートからなる群から選択される。最も好ましくは、HMDI又はそのイソシアヌラートが選択される。
【0056】
環境利益を考慮すると、組成物において可能な限り高いパーセンテージの再生可能資源に由来する成分を用いることが好ましい。従って、本発明のSCAにおけるポリイソシアナートは好ましくはバイオベースのものであり、例えばDesmodur ECON7300である。再生可能なバイオベース資源に由来するアミンは当該分野で周知である(例えばアミノ酸)。
【0057】
当業者に理解されるように、ブロッキング剤がある限り分裂後に2つ以上のイソシアナートをその場で生じる、本発明のレオロジー改質剤の形成を妨げない従来のブロックされたポリイソシアナートを用いることも可能である。本明細書を通して、用語「ポリイソシアナート」はすべてのポリイソシアナート及びポリイソシアナートを生じる化合物を表すために用いられる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリ尿素生成物を調製するために用いられるアミンはモノアミンを含む。多くのモノアミンが、ポリ尿素反応生成物を生成するためにポリイソシアナートと組み合わせて用いられ得る。脂肪族及び芳香族アミン、並びに一級及び二級アミンが用いられ得る。
【0059】
好ましくは、一級アミンが用いられ、本発明によれば、これらのなかでもアルキルアミン及びエーテル置換アルキルアミンが特に有用である。任意に、アミンは他の官能基、例えばヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、シラン基又はエチレン性不飽和基を含んでよい。好ましいモノアミンは、脂肪族アミン、特に脂肪族(任意にエーテル置換)アルキルアミン、分枝状アルキルアミン若しくはシクロアルキルアミン、例えばシクロヘキシルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン若しくは3-メトキシプロピルアミン、又は(アルキルアリール)アミン、例えば2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、R-α-メチルベンジルアミン及びS-α-メチルベンジルアミン、並びにそれらの混合物を含む。単独で又は他のアミンとの混合物として用いられる更に好ましいアミンは、3-アミノメチルピリジンである。
【0060】
ポリ尿素生成物は、いずれかのモノイソシアナート若しくはポリイソシアナートといずれかのポリアミンから、又はいずれかのモノアミンといずれかのポリイソシアナートから形成され得る。ポリ尿素生成物は、ポリ尿素分子当たりいずれかの数の尿素基を含むポリマーであり得る。好ましくは、ポリ尿素生成物は、分子当たり少なくとも2個、多くて6個の尿素結合の平均数を含む。好ましくは、ポリ尿素分子における尿素連結(尿素結合)の平均数は分子当たり少なくとも2個、多くて5個であり、より好ましくは少なくとも2個、多くて4個であり、最も好ましくは少なくとも2個、多くて3.5個である。ポリ尿素生成物の分子量は限定されない。好ましくは、分子量は3,000ダルトン未満、より好ましくは2,000ダルトン未満、最も好ましくは1,000ダルトン未満である。好ましくは、分子量は200ダルトンより大きく、より好ましくは300ダルトンより大きく、最も好ましくは350ダルトンより大きい。
【0061】
好ましくは、ポリ尿素生成物はポリイソシアナートとモノアミンから形成される。特に好ましいポリ尿素生成物は、HMDI(の誘導体)とベンジルアミンの付加物、HMDI(の誘導体)と3-メトキシプロピルアミンの付加物、及びHMDI(の誘導体)とキラルアミンの付加物、並びにそれらの混合物である。これらの好ましいポリ尿素付加物は当該分野で公知であり、通常、60から200℃の間の融点を有する。モノアミンに次ぐ成分としてのジアミン(例えばエチレンジアミン)の使用もまた、高融点ポリ尿素を生成するための選択肢であり得る。ポリ尿素生成物を調製するために用いられるモノアミン又はモノアミンの一部は、キラルなモノアミンであり得、US8207268に記載されたようなポリ尿素生成物は本発明の一部であると考えられる。
【0062】
ポリ尿素形成反応は、不活性溶剤、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、N-メチルピロリジン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル又は脂肪族炭化水素、例えば石油エーテル、アルコール、及び水、並びにそれらの混合物の存在下で、より好ましくは、好ましくは溶剤中に溶解した樹脂である樹脂の存在下で行われてよく、最終的な非水組成物のためのマスターバッチとして用いられ得る。好ましくは、ポリ尿素形成は、キシレン又はいずれかの他の芳香族溶剤、酢酸ブチル、アルコール、水、樹脂又はそれらの混合物の存在下で行われる。ここで、用語「不活性」は、溶剤がポリ尿素形成反応に大きく干渉しないことを示し、これは溶剤が存在する場合に形成されたポリ尿素の量が、溶剤が存在しない場合に生成された量の少なくとも80%であることを意味する。特に、バインダーを形成する樹脂がアミン又はイソシアナートのいずれかとの反応性が高い場合、これらを、ポリ尿素SCAを形成するために予め混合することはできない。用語「反応性が高い」により、ここではアミン又はイソシアナートの30%より多くが、アミン及びイソシアナートが反応してポリ尿素生成物を形成する前にバインダーと反応することが意味される。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリ尿素粒子は、樹脂の存在下及び/又は溶剤中でマスターバッチとして調製される。これは、樹脂及び/若しくは溶剤とイソシアナートの混合物を用意し、次いでアミンと混合するか、又は樹脂及び/若しくは溶剤とアミンの混合物を用意し、次いでイソシアナートと混合するか、樹脂及び/若しくは溶剤とアミンの混合物を、樹脂及び/若しくは溶剤とイソシアナートの混合物と混合するか、又はイソシアナートとアミンを樹脂及び/若しくは溶剤と同時に混合することにより行うことができる。
【0064】
この方法で調製されたポリ尿素粒子は、本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物の製造に用いられるマスターバッチとして用いられ得る。このマスターバッチは、マスターバッチの全重量に対して少なくとも0.1mwt%、好ましくは少なくとも1mwt%、より好ましくは少なくとも1.5mwt%、更により好ましくは少なくとも2.5mwt%、最も好ましくは少なくとも4mwt%、典型的には15mwt%未満、好ましくは10mwt%未満、最も好ましくは8mwt%未満のポリ尿素粒子を含み得る。マスターバッチは、20から95mwt%の間、好ましくは30から85mwt%の間、より好ましくは35から80mwt%の間、最も好ましくは40から75mwt%の間の量のポリマー樹脂材料を更に含み得、mwt%は、マスターバッチの全重量に対する重量%である。
【0065】
好ましくは、ポリ尿素粒子は、本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物の製造に用いられるマスターバッチとして溶剤中で形成され、マスターバッチは、マスターバッチの全重量に対して少なくとも4mwt%、好ましくは少なくとも6mwt%、より好ましくは少なくとも8mwt%、更により好ましくは少なくとも10mwt%、少なくとも15mwt%までも、典型的には40mwt%未満、好ましくは30mwt%未満、より好ましくは25mwt%未満のポリ尿素粒子を含む。マスターバッチは、40mwt%未満、好ましくは25mwt%未満、より好ましくは15mwt%未満、最も好ましくは10mwt%未満の量のポリマー樹脂材料を更に含んでよい。マスターバッチがポリマー樹脂材料を含む場合、ポリマー樹脂材料の量は好ましくは少なくとも1mwt%、より好ましくは少なくとも8mwt%である。
【0066】
マスターバッチは、本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物の製造に用いられる単一のポリ尿素粒子源として用いることができるが、1つ又は複数の他のポリ尿素含有マスターバッチ又は当該分野で公知の他のチキソトロピー剤と組み合わせられてもよい。
【0067】
硬化膜の表面における噴出流パターンの視認性を防ぐために、塗膜は、塗膜乾燥の後期、最終的に架橋する前に、依然として十分な可動性(「流動性」)が残ることが望ましい。これは、チキソトロピー誘発性粒子の少なくとも一部の融点が、その粒子特性及びそれにより低せん断粘度に与えるその影響が硬化温度より低い温度で効果的に失われるように選択される場合に、達成することができる。
【0068】
本発明の好ましい実施形態によれば、チキソトロピー樹脂組成物に含まれるポリ尿素粒子の融点(Tm1)が、組成物の意図された硬化温度(Tcur)よりも10℃を超えて低い。ポリ尿素粒子の融点が60℃より高いが、ポリ尿素粒子が用いられる組成物の硬化温度より10℃を超えて低いことが更に好ましい(即ち60℃<Tm1<Tcur-10℃)。そのポリ尿素粒子の融点(Tm1)が(Tcur-80℃)より高く、より好ましくは(Tcur-60℃)より高く、更により好ましくは(Tcur-40℃)より高いこともまた好ましい。
【0069】
ポリ尿素粒子の融点の値は、試料を室温で乾燥した後、示差走査熱量測定(DSC)実験により得られる。DSC実験は、典型的には、TA Instruments Q2000及び10+/-5mgの材料を含むアルミニウム製の密封封止るつぼを用いて行われる。試料はまず-90℃まで冷却され、20分間等温調整される。この後、温度を210℃の温度まで10℃/分の速度で上昇させる。温度プログラムは窒素雰囲気下で実行される(25ml/分)。ポリ尿素粒子の融点は、最初の加熱実行において記録された熱流量において見られる小さい吸熱ピークをもたらし、この吸熱ピークの開始として定義される(接線法)。
【0070】
ポリ尿素生成物の調製反応では、結晶化調整剤として作用する、より具体的には沈殿時の結晶サイズ又は得られる結晶のコロイド安定性を変える、少量の共反応性成分が意図的に用いられることもまた可能である。同様に、分散剤及び他の補助剤が、それらの導入工程のいずれかにおいて存在してもよい。ポリ尿素生成物の調製は、バッチにおいて又は連続的方法において、通常、激しく撹拌される反応物により、いずれの都合のよい方法で行われてもよい。アミン成分がイソシアナートに添加されてもよく、イソシアナートがアミン成分に添加されてもよく、いずれか最も都合のよいほうでよい。別の場合には、ポリ尿素生成物は別個の反応において形成され、通常、適切な撹拌下で樹脂と混合され得る。ポリ尿素粒子を形成するアミノ基のイソシアナート基に対する反応性モル比は、通常0.9から1.1の間、好ましくは0.95から1.05の間である。
【0071】
ポリ尿素チキソトロピー剤は、異なる種類のポリ尿素粒子の混合物であり得、且つ/又は当該分野で知られている他のチキソトロピー剤、例えば、これらに限定されないが、シリカ、(ポリマー)アミド、(無機)粘土、ミクロゲル、ワックス又はそれらの組合せを更に含むことができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、且つ特にチキソトロピー樹脂組成物が60℃より高い温度(Tcur)で硬化されることが意図される場合、そのチキソトロピー樹脂組成物は、(a)意図された硬化温度(Tcur)よりも少なくとも10℃低い融点(Tm1)を有し、それにより要件Tm1<(Tcur-10℃)を満たすポリ尿素粒子、及び(b)少なくともその硬化温度までの温度でその粒子特性を保持する第2のチキソトロピー誘発性粒子状成分を含む。好ましくは、第2のチキソトロピー誘発性粒子状成分(b)は、ポリ尿素粒子、特に本明細書の上記に記載のような少なくとも硬化温度Tcurの融点Tm2を有するものを含む。
【0073】
好ましくは、チキソトロピー樹脂組成物におけるポリ尿素粒子(a)と第2のチキソトロピー誘発性粒子状成分(b)の比(重量による)は5:95より大きく、より好ましくは10:90より大きく、最も好ましくは20:80より大きい。更に、好ましくは、チキソトロピー樹脂組成物におけるポリ尿素粒子(a)と第2の成分(b)の比(重量による)は95:5より小さく、より好ましくは90:10より小さく、最も好ましくは80:20より小さい。
【0074】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、特にチキソトロピー樹脂組成物が60℃より高い温度(Tcur)で硬化されることが意図される場合、そのチキソトロピー樹脂組成物は、樹脂及び意図された硬化温度より少なくとも10℃低い融点(Tm1)を有するポリ尿素粒子を含むチキソトロピー剤を含み、組成物は、
a)1000±50s-1のせん断速度で測定した高せん断粘度HSVが100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、より好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満であり、好ましくは少なくとも30mPa.s、より好ましくは少なくとも40mPa.s、更により好ましくは少なくとも50mPa.sであり、且つ
b)300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定したクリープコンプライアンスJmaxが100Pa-1未満、好ましくは50Pa-1未満、更により好ましくは25Pa-1未満であり、
c)ポリ尿素粒子の量が、通常少なくとも0.4cwt%、好ましくは少なくとも0.7cwt%、より好ましくは少なくとも1.6cwt%、最も好ましくは少なくとも1.7cwt%であり、通常2.5cwt%以下、好ましくは1.7cwt%以下であり、特に好ましい範囲は1.7~2.5cwt%であり、cwt%が、任意の顔料又は充填剤の重量を含まない樹脂組成物の全重量に対する重量%であることを特徴とし、
非水チキソトロピー樹脂組成物は、好ましくは、顔料を含まないクリアコート組成物である。
【0075】
樹脂組成物は、基板への塗布後、希釈剤の蒸発並びに/又は乾燥及び/若しくは硬化された固体樹脂をもたらす架橋反応により固体樹脂となる樹脂を含む液体として、本明細書において定義される。得られる固体樹脂の十分な機械的特性を得ることを考慮すると、樹脂組成物における樹脂は、好ましくは架橋性であるか、又は樹脂は、好ましくは少なくとも2000g/molの高分子量を有する必要がある。得られる固体樹脂の想定される化学的特性及び機械的特性を考慮すると、樹脂組成物における樹脂が架橋性樹脂であることが好ましい。架橋性樹脂は、反応して硬化固体樹脂の体積の全体に架橋ネットワークを形成する反応性官能基を含む、1つ又は複数の架橋性樹脂成分を含む。架橋性樹脂は、互いに反応できる2つ以上の官能基Aを含む架橋性成分を含むか(A-A、例えばエチレン性不飽和基)、又は互いに反応する2つ以上の異なる反応性官能基を含む架橋性成分を含むことができる(A-B、例えばヒドロキシル-イソシアナート、カルボン酸/エポキシ、ヒドロキシル/アミノ樹脂、Michaelドナー-アクセプター等)。反応性官能基A及びBは、1つの架橋性樹脂成分上にあっても2つ以上の別個の樹脂成分上にあってもよい。樹脂成分Aの分子量が樹脂成分Bの分子量より実質的に大きい(少なくとも2又は3倍大きい)実施形態では、樹脂成分Aは、膜形成樹脂成分又はバインダー樹脂成分のいずれかa1)と呼ばれ、樹脂成分Bは、架橋剤成分b)と呼ばれる。架橋性樹脂組成物は架橋触媒c)を含むことができる。
【0076】
樹脂組成物は、樹脂組成物の粘度、特にHSVを下げるための希釈剤を含むことができる。希釈剤は、通常、揮発性有機溶剤であっても水であっても反応性希釈剤であってもよい。得られる固体樹脂の望ましい特性を考慮すると、樹脂は普通、疎水性であることから、水は適切な溶剤ではない。水は分散媒であり得るが、本発明は水分散液である樹脂組成物には及ばない。従って、樹脂組成物は非水であり、実質的に水を含まない。実質的に水を含まないとは、10未満、好ましくは5、3、2未満又は1cwt%未満でさえあることを意味する。揮発性有機溶剤及び存在する場合はいずれの極わずかな量の水も、塗布後に蒸発して固体樹脂を形成する。反応性希釈剤は硬化時に架橋性成分と反応して固体樹脂の一部となるための、これらは、樹脂固形分含有量を低下させることなく、粘度を下げるために添加することができる。
【0077】
従って、1つの実施形態(I)において、樹脂組成物は、樹脂及び有機揮発性溶剤を含み、実質的に水を含まない非水の溶剤型樹脂組成物であって、好ましくは、樹脂は、好ましくは膜形成樹脂成分及び架橋樹脂成分を含む架橋性樹脂である、非水の溶剤型樹脂組成物である。別の実施形態(II)において、樹脂組成物は、架橋性樹脂を含み、実質的に有機溶剤を含まず、実質的に水を含まない非水の無溶剤樹脂組成物であって、架橋性樹脂が、好ましくは、ポリマー、オリゴマー若しくはモノマーの樹脂又はそれらの組合せであり、任意に反応性希釈剤を含む、非水の無溶剤樹脂組成物である。
【0078】
実施形態(I)の樹脂組成物は、好ましくは、ヒドロキシル官能基、カルボキシル官能基又はエポキシ官能基を有する膜形成樹脂成分A、及び樹脂成分Aの官能基と反応可能な官能基を含む架橋剤成分Bを含む。実施形態(II)の樹脂組成物は、最も好ましくは、UV硬化性のエチレン性不飽和官能基を有する架橋性樹脂を含む。
【0079】
非水チキソトロピー樹脂組成物における樹脂は広く定義される。樹脂組成物は、塗料組成物、例えば溶剤型塗料又はクリアコート組成物であり得るだけでなく、化学線、例えばUV硬化性組成物でもあり得る。樹脂組成物はまた、接着樹脂を含む接着剤組成物、又は封止樹脂を含む封止剤組成物でもあり得る。
【0080】
好ましい実施形態(I)において、本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物は、非水の溶剤型チキソトロピー樹脂組成物、好ましくは、より好ましくは顔料を含まないクリアコート組成物である塗料組成物であり、a)好ましくは30~90、好ましくは40~80、より好ましくは45~70cwt%の総量の架橋性樹脂であって、以下により詳細に記載されるように、好ましくは、架橋性樹脂が反応性官能基Aを含む膜形成樹脂成分及び官能基Bを含む架橋樹脂成分を含む、架橋性樹脂、b)10から70の間、好ましくは20~60、より好ましくは30~65cwt%の量の揮発性溶剤、c)0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間の量のポリ尿素粒子、d)0~10、好ましくは0.002~5、より好ましくは0.005~1cwt%の任意の架橋触媒を含む。実施形態(I)のこの非水の溶剤型チキソトロピー樹脂組成物において、ポリ尿素粒子、好ましくは高性能ポリ尿素粒子の量は、0.8から5rwt%の間、好ましくは1.2から4rwt%の間、より好ましくは1.5から3.5rwt%の間、最も好ましくは2から3.5rwt%の間であり、rwt%は、樹脂組成物における全樹脂固形分重量に対する重量%である。樹脂固形分重量は、溶剤の重量を引き、且つ顔料、充填剤及びポリ尿素粒子の重量を引いた、チキソトロピー樹脂組成物の全重量である。樹脂固形分重量は、存在する場合は架橋剤又は反応性希釈剤の固形分重量を含む。樹脂固形分とは別に、ISO 3251に準拠して決定されるように乾燥又は硬化後のあらゆる不揮発性材料を含み、且つ樹脂固形分及びポリ尿素粒子及び存在する場合は他の固形分、例えば顔料及び充填剤を含む、用語NVMが用いられることが知られている。
【0081】
別の好ましい実施形態(II)において、本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物は、非水の無溶剤チキソトロピー樹脂組成物であり、a)UV硬化性官能基、好ましくはエチレン性不飽和基、より好ましくは(メタ)アクリロイルを有するポリマー、オリゴマー及び/又はモノマーの樹脂成分、b)0.4から2.5cwt%の間、好ましくは0.5から2.0cwt%の間、より好ましくは0.6から1.8cwt%の間、最も好ましくは0.7から1.7cwt%の間のポリ尿素粒子、c)任意に、0.001~10、好ましくは0.002~8、より好ましくは0.005~6cwt%の光開始剤を含む。この組成物は、例えば接着性を改善するため、収縮を低減するために他の成分を、又は好ましくは30、20、10未満若しくは5cwt%未満までもの量の顔料を更に任意に含むことができる。
【0082】
好ましい実施形態において、本発明の樹脂組成物は、樹脂として少なくとも1つの膜形成樹脂a1)を含む。膜形成樹脂a1)は、モノマー、オリゴマー若しくはポリマー又はそれらの混合物であり、好ましくは、膜形成樹脂a1)はポリマー又はオリゴマーである。膜形成樹脂a1)のポリマー又はオリゴマーの骨格の種類に主要な限定はない。好ましくは、膜形成樹脂a1)は、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、並びにそれらの混合物及びハイブリッドからなる群から選択される。そのようなポリマーは通常当業者に知られており、市販されている。本発明のチキソトロピー樹脂組成物は、同様の又は異なる骨格を有し得る1種より多い膜形成樹脂a1)を含むことができる。
【0083】
膜形成樹脂a1)は、好ましくは、架橋剤b)及び/又はa1)と同じか若しくは異なり得る別の膜形成樹脂a1)と反応可能な官能基を含む。官能基はあらゆる官能基であり得る。好ましい官能基は、ヒドロキシ、一級アミン、二級アミン、メルカプタン、カルボン酸、エポキシド又は活性不飽和C=C部分である。より好ましい官能基はヒドロキシ、一級アミン、エポキシドである。最も好ましい官能基はヒドロキシ基である。
【0084】
官能基はまた、化学反応によりブロックすることもでき、例えばケチミンはケトンによりブロックされた一級アミンのブロックバージョンである。当業者はそのような化学的なブロッカーをよく知っている。膜形成樹脂a1)は、1種より多い官能基を含むことができる。これらの異なる種類の官能基は、同じ分子に存在しても異なる分子に存在してもよい。
【0085】
多種多様な潜在的に適切な膜形成樹脂a1)のなかでも、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂、アミノ樹脂、又はそれらの混合物若しくはハイブリッドが好ましい。
【0086】
本発明のチキソトロピー樹脂組成物において用いられる膜形成樹脂a1)の分子量Mn及びMwは限定されない。好ましくは、膜形成樹脂a1)は、30,000ダルトン未満、より好ましくは10,000ダルトン未満、最も好ましくは5,000ダルトン未満の重量平均分子量Mwを有する。好ましくは、膜形成樹脂a1)は、少なくとも1,000ダルトン、好ましくは2,000ダルトン、より好ましくは3,000ダルトンのMwを有する。
【0087】
膜形成樹脂a1)の数平均分子量Mnは、好ましくは、大きくて10,000ダルトン、より好ましくは大きくて5,000ダルトン、最も好ましくは大きくて3,000ダルトンである。重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnによって割ることにより決定される膜形成樹脂a1)の分子量分布の多分散性は、好ましくは1から10の間、より好ましくは1.5から6の間、最も好ましくは1.7から4の間である。膜形成樹脂a1)のMnは、好ましくは少なくとも700ダルトン、好ましくは少なくとも1,000ダルトン、より好ましくは少なくとも2,000ダルトンである。
【0088】
膜形成樹脂a1)のガラス転移温度Tgは、好ましくは-80℃より高く、より好ましくは-40℃より高く、最も好ましくは-30℃より高い。膜形成樹脂a1)のガラス転移温度は、好ましくは100℃、より好ましくは90℃、最も好ましくは80℃を超えない。ガラス転移温度Tgは、典型的には、10℃/分の加熱速度で示差走査熱量測定(DSC)によりASTM規格D3418-03に準拠して決定される。
【0089】
膜形成樹脂a1)は、官能基のモル当たり50~2500グラムの範囲の樹脂a1)、好ましくは官能基のモル当たり80~400グラムの範囲の樹脂a1)、より好ましくは官能基のモル当たり100~300グラムの範囲の樹脂a1)の当量を有する。
【0090】
膜形成樹脂a1)の第1の特に好ましい実施形態によれば、樹脂a1)はポリオールである。ポリオールa1)は、平均で少なくとも2、好ましくは2を超える-OH基を含む。好ましくは、ポリオールa1)は、平均で少なくとも2.2の-OH基、より好ましくは平均で少なくとも2.5の-OH基を含む。ポリオールa1)は、好ましくは、ポリエステルポリオール、(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、並びにその混合物及びハイブリッドからなる群から選択される。そのようなポリマーは通常当業者に公知であり、市販されている。多種多様な潜在的に適切なポリオールa1)のなかでも、ポリオールa1)は、好ましくは、本明細書の以下に更に記載されるようなポリエステルポリオール及び(メタ)アクリルポリオール、並びにその混合物及びハイブリッドからなる群から選択される。例えば、任意に1つ以上の単官能カルボン酸及び/又はそのC1~C4アルキルエステル及び/又は単官能ヒドロキシ化合物との組合せで、1つ又は複数のジ-及び/又はより高度に官能性のヒドロキシ化合物の、1つ又は複数のジ-及び/又はより高度に官能性のカルボン酸、そのC1~C4アルキルエステル及び/又は無水物との重縮合により、適切なポリエステルポリオールを得ることができる。
【0091】
モノカルボン酸の非限定的な例は、4~30個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状のアルキルカルボン酸、例えばステアリン酸、2-エチルヘキサン酸及びイソノナン酸である。非限定的な例として、ジ-及び/又はより高度に官能性のヒドロキシ化合物は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、イソソルビド、スピログリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリヒドロキシエチルイソシアヌラート及びペンタエリスリトールからなる群から選択される1つ又は複数のアルコールであり得る。非限定的な例として、ジ-及び/又はより高度に官能性のカルボン酸は、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びそれらの機能的等価物からなる群から選択される1つ又は複数である。ポリエステルポリオールは、ジ及び/又はより高度に官能性のヒドロキシ化合物、並びにカルボン酸及び/又はその酸の無水物及び/又はC1~C4アルキルエステルから調製され得る。
【0092】
ポリオールの典型的な好ましい酸価は15未満、好ましくは10未満、最も好ましくは8mgKOH/g未満である。酸価はISO 3682-1996に準拠して決定され得る。適切な(メタ)アクリルポリオールは、例えば、フリーラジカル開始剤の存在下でのヒドロキシ官能性(メタ)アクリルモノマーの他のエチレン性不飽和コモノマーとの(共)重合により得ることができる。非限定的な例として、(メタ)アクリルポリオールは、1つ又は複数の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸のポリプロピレングリコールエステル、並びに(メタ)アクリル酸の混合ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールエステルの重合により形成された残基を含むことができる。(メタ)アクリルポリオールは、更に好ましくは、ヒドロキシル基を含まないモノマー、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸(置換)シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸を含む。(メタ)アクリルポリオールは、任意に、(メタ)アクリル酸エステルではないモノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン又は他の置換スチレン誘導体、(分枝状)モノカルボン酸のビニルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸及びマレイン酸のモノアルキルエステルを含む。
【0093】
第2の好ましい実施形態によれば、ポリオールa1)は、2つ以上のポリオールa1)の混合物、特に本明細書の上記に好ましい実施形態として記載のような少なくとも1つの(メタ)アクリルポリオールa1)と少なくとも1つのポリエステルポリオールa1)の混合物を含む。
【0094】
ポリオールa1)は、(メタ)アクリルポリオールがポリエステルポリオール中のその場で調製される、いわゆるハイブリッドポリアクリラートポリエステルポリオールであり得る。(メタ)アクリルポリオール及びポリエステルポリオールは、好ましくは、(メタ)アクリルポリオール及びポリエステルポリオールについて本明細書の上記に記載されたものと同じモノマーにより得られる。
【0095】
第3の特に好ましい実施形態によれば、膜形成樹脂a1)はアミノ樹脂、好ましくはメラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。メラミンホルムアルデヒド樹脂は非常に周知であり、以前から市販されていて、CYMEL(登録商標)及びSETAMINE(登録商標)の商品名でAllnexから得ることができる。これらのメラミンアミノ樹脂は、任意に対応する有機溶剤中の溶液において、様々なメチロール化度、エーテル化度又は縮合度(単環又は多環)を有する生成物を含む。
【0096】
第4の特に好ましい実施形態によれば、膜形成樹脂a1)は活性不飽和C=C部分(RMAアクセプター基)である官能性を含む。この第4の好ましい実施形態によれば、膜形成樹脂a1)は(メタ)アクリロイル化合物、好ましくはアクリロイル化合物である。電子求引基(RMAドナー基)、例えばα位のカルボニル基により炭素-炭素二重結合が活性化される、エチレン性不飽和官能基を有する適切な膜形成樹脂が、US2759913(6欄、35行~7欄、45行)、DE-PS-835809(3欄、16行~41行)、US4871822(2欄、14行~4欄、14行)、US4602061(3欄、14行~4欄、14行)、US4408018(2欄、19行~68行)及びUS4217396(1欄、60行~2欄、64行)に開示される。
【0097】
この第4の好ましい実施形態によれば、膜形成樹脂a1)は、好ましくはアクリラート、フマラート及びマレアートである。最も好ましくは、そのような膜形成樹脂a1)は不飽和アクリロイル官能性成分である。活性不飽和C=C部分を有するその成分は、2~6個のヒドロキシル基及び1~30個の炭素原子を含む成分のアクリルエステルの第1の好ましい群から選択され得る。これらのエステルは任意にヒドロキシル基を含んでよい。特に好ましい例は、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリスリトールトリアクリラート及びジ-トリメチロールプロパンテトラアクリラートを含む。他の適切な化合物は、樹脂、例えばペンダント活性不飽和基を含むポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、エポキシ樹脂、及び/又はアルキド樹脂の群から選択され得る。好ましくは、他の適切な化合物は、樹脂、例えばペンダント活性不飽和基を含むポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、及び/又はアルキド樹脂の群から選択され得る。これらは例えば、ポリイソシアナートのヒドロキシル基含有アクリルエステル、例えばアクリル酸のヒドロキシアルキルエステル又はポリヒドロキシル成分の化学量論量より少ないアクリル酸とのエステル化により調製された成分との反応により得られたウレタンアクリラート;ヒドロキシル基含有ポリエーテルのアクリル酸とのエステル化により得られたポリエーテルアクリラート;アクリル酸ヒドロキシアルキルのポリカルボン酸及び/又はポリアミノ樹脂との反応により得られた多官能性アクリラート;アクリル酸のエポキシ樹脂との反応により得られたポリアクリラート;並びにモノアルキルマレアートエステルのエポキシ樹脂及び/又はヒドロキシ官能性オリゴマー若しくはポリマーとの反応により得られたポリアルキルマレアートを含む。そのような化合物は非常に周知であり、以前から市販されていて、EBECRYL(登録商標)の商品名でAllnexから得ることができる。アクリロイルエステルとは別に、適切な成分の種類はアクリルアミドである。既に記載された(少なくとも)2つの官能基を有する膜形成バインダーa1)に加えて、少なくとも1つの官能基を有するモノマー膜形成バインダーa1)を用いることも可能である。例えば、エチレン性不飽和成分、例えば(メタ)アクリル酸のエステル、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸のポリプロピレングリコールエステル、並びに(メタ)アクリル酸の混合ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸(置換)シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸が、この第4の好ましい実施形態において用いられ得る。また、(メタ)アクリル酸エステルではないエチレン性不飽和コモノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン又は他の置換スチレン誘導体、(分枝状)モノカルボン酸のビニルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸及びマレイン酸のモノアルキルエステルを用いることができる。
【0098】
本発明のチキソトロピー樹脂組成物は、任意に架橋剤成分b)を含む。架橋剤成分b)は、通常、膜形成樹脂a1)と反応可能な少なくとも2つの官能基を有するオリゴマー又はポリマー化合物を含む。架橋剤成分b)は、好ましくは、アミノ架橋剤、例えばメラミンホルムアルデヒド樹脂及びホルムアルデヒドを含まないベース樹脂、イソシアナート若しくはブロックされたイソシアナート、又はメラミンホルムアルデヒド樹脂と(ブロックされた)イソシアナートの混合物から選択される。
【0099】
メラミンホルムアルデヒド樹脂は非常に周知であり、以前から市販されていて、CYMEL(登録商標)及びSETAMINE(登録商標)の商品名でAllnexから得ることができる。これらのメラミンホルムアルデヒド樹脂は、任意に対応する有機溶剤中の溶液において、様々なメチロール化度、エーテル化度又は縮合度(単環又は多環)を有する生成物を含む。好ましいアミノ架橋剤樹脂は、CYMEL 202、CYMEL 232、CYMEL 235、CYMEL 238、CYMEL 254、CYMEL 266、CYMEL 267、CYMEL 272、CYMEL 285、CYMEL 301、CYMEL 303、CYMEL 325、CYMEL 327、CYMEL 350、CYMEL 370、CYMEL 701、CYMEL 703、CYMEL 736、CYMEL 738、CYMEL 771、CYMEL 1141、CYMEL 1156、CYMEL 1158、CYMEL 1168、CYMEL NF 3041、CYMEL NF 2000、CYMEL NF 2000A、SETAMINE US-132 BB-71、SETAMINE US-134 BB-57、SETAMINE US-138 BB-70、SETAMINE US-144 BB-60、SETAMINE US-146 BB-72、SETAMINE US-148 BB-70及びそれらの混合物の名で販売される。SETAMINE US-138 BB-70、CYMEL 327、CYMEL NF 2000及びCYMEL NF 2000Aが特に好ましい。
【0100】
架橋剤成分b)はまた、少なくとも2つの遊離の-NCO(イソシアナート)基を有するイソシアナート化合物を含み得る。イソシアナート架橋剤は周知であり、当該分野で広く述べられてきた。イソシアナート化合物は、通常、少なくとも2つの-NCO基を含む脂肪族、脂環式、及び芳香族ポリイソシアナート並びにそれらの混合物から選択される。架橋剤b)は次いで、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,2-シクロへキシレンジイソシアナート、1,4-シクロへキシレンジイソシアナート、4,4’-ジシクロへキシレンジイソシアナートメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロへキシレンジイソシアナートメタン、ノルボルナンジイソシアナート、m-及びp-フェニレンジイソシアナート、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアナート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)、1,5-ジメチル-2,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4-及び2,6-トルエンジイソシアナート、2,4,6-トルエントリイソシアナート、4,4’-ジフェニレンジイソシアナートメタン、4,4’-ジフェニレンジイソシアナート、ナフタレン-1,5-ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアナート、並びに上述したポリイソシアナートの混合物から選択される。他の好ましいイソシアナート架橋剤は、ポリイソシアナートの付加物、例えばビウレット、イソシアヌラート、イミノオキサジアジンジオン、アロファン酸エステル、ウレトジオン、及びそれらの混合物である。そのような付加物の例は、ヘキサメチレンジイソシアナート又はイソホロンジイソシアナート2分子のジオール、例えばエチレングリコールへの付加物、ヘキサメチレンジイソシアナート3分子の水1分子への付加物、トリメチロールプロパン1分子のイソホロンジイソシアナート3分子への付加物、ペンタエリスリトール1分子のトルエンジイソシアナート4分子への付加物、ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラート(DESMODUR(登録商標)(E)N3390又はTOLONATE(登録商標)HDT-LV、TOLONATE(登録商標)HDT-90の商品名で入手可能)、商品名DESMODUR(登録商標)N3400のウレトジオンとヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラートの混合物、商品名DESMODUR(登録商標)LS 2101で入手可能なヘキサメチレンジイソシアナートのアロファン酸エステル、及び商品名VESTANAT(登録商標)T1890で入手可能なイソホロンジイソシアナートのイソシアヌラートである。更に、イソシアナート官能性モノマー、例えばα,α’-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアナートの(コ)ポリマーを用いるのが適切である。必要に応じて、疎水的又は親水的に改質されたポリイソシアナートを用いて塗膜に特定の特性を付与することも可能である。
【0101】
十分に低い非ブロック化温度を有するブロッキング剤が上述したイソシアナート架橋剤成分b)のいずれかをブロックするために用いられる場合、架橋剤成分b)はまた、ブロックされたイソシアナートを含み得る。その場合、架橋剤成分b)はブロックされていないイソシアナート基含有化合物を実質的に含まず、架橋性組成物は一成分配合物として配合され得る。ブロックされたイソシアナート成分を調製するために用いることのできるブロッキング剤は、当業者に周知である。
【0102】
通常、組成物における膜形成樹脂a1)、ポリ尿素粒子a2)、架橋剤成分b)及び存在する場合は触媒c)の合計に対する架橋剤成分b)の重量パーセンテージは、10から89%の間、好ましくは20から80%の間である。
【0103】
架橋性チキソトロピー樹脂組成物は、膜形成樹脂a1)の官能基と、架橋剤b)及び/又は膜形成樹脂a1)の官能基それ自体及び/又は膜形成樹脂a1’)の間の反応を触媒するために触媒c)を任意に含み得る。当業者は、触媒c)の種類は、通常、架橋剤成分の種類に依存することを知っている。1つの実施形態では、触媒c)は有機酸であり、より具体的にはスルホン酸、カルボン酸、リン酸及び/又は酸性リン酸エステルから選択される。好ましくはスルホン酸である。適切なスルホン酸の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNSA)、パラトルエンスルホン酸(pTSA)である。酸触媒はまた、ブロックされた形態でも用いられ得る。結果として、知られているように、例えば、ブロックされた触媒を含む組成物の保存可能期間が改善する。酸触媒をブロックする適切な物質の例は、アミン、例えば好ましくは三級アルキル化アミン又は複素環アミンである。ブロックされたスルホン酸触媒は、例えば、ブロックされたDDBSA、ブロックされたDNNSA又はブロックされたp-TSAであり得る。スルホン酸触媒のこのブロッキングは、例えば、アミン、例えば好ましくは三級アルキル化アミン又は複素環アミン、例えば2-アミノ-2メトキシプロパノール、ジイソプロパノールアミン、ジメチルオキサゾリジン又はトリメチルアミンにより同様に行われる。別の方法では、任意に有機溶剤中又は水中に溶解したNH3が、スルホン酸触媒をブロックするために用いられ得る。共有結合でブロックされたスルホン酸触媒を用いることもまた可能である。この場合、ブロッキングは、共有結合で結合するブロッキング剤、例えばエポキシ化合物又はエポキシ-イソシアナート化合物を用いて行われる。これらの種類のブロックされたスルホン酸触媒は、特許公報米国特許第5,102,961号に詳細に記載される。触媒は、例えば、CYCAT(登録商標)(allnex製)又はNACURE(登録商標)の商品名で入手可能であり、本発明の組成物に直接用いられ得る。
【0104】
別の実施形態では、触媒c)は金属系触媒である。金属系触媒における好ましい金属は、スズ、ビスマス、亜鉛、ジルコニウム及びアルミニウムを含む。好ましい金属系触媒c)は、上述した金属のカルボン酸錯体又はアセチルアセトン錯体である。本発明で任意に用いられる好ましい金属系触媒c)は、カルボン酸スズ、カルボン酸ビスマス及びカルボン酸亜鉛であり、ジラウリン酸ジメチルスズ、ジバーサティック酸ジメチルスズ、ジオレイン酸ジメチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ、及びオクタン酸スズ、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスがより特に好ましい。マレイン酸ジアルキルスズ、及び酢酸ジアルキルスズもまた適切である。金属系触媒の混合物及び組合せ、(ブロックされた)酸触媒の混合物、並びに金属系触媒の(ブロックされた)酸触媒との混合物を用いることも可能である。
【0105】
典型的には、触媒c)は、膜形成樹脂a1)、ポリ尿素生成物a2)、架橋剤b)及び触媒c)の合計量のうち、0から10の間、好ましくは0.001~5、より好ましくは0.002~5、最も好ましくは0.005~1重量%の量で本発明の組成物に存在する。
【0106】
本発明の組成物は、1つ又は複数の揮発性有機化合物d)を任意に含んでよい。通常、これらは大気圧での沸点が200℃未満の化合物である。適切な揮発性有機化合物d)は、これらに限定されないが、炭化水素、例えばトルエン、キシレン、Solvesso 100、Solvesso 150、ケトン、テルペン、例えばジペンテン又はパイン油;ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン;エーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル;エステル、例えば酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-ブチル;エーテルエステル、例えば酢酸メトキシプロピル、酢酸ブチルグリコール及びプロピオン酸エトキシエチル;アルコール、例えばn-ブタノール及び2-エチルヘキサノールから選択することができる。これらの化合物の混合物もまた用いることができる。
【0107】
通常、本発明の組成物は、上述した本発明のチキソトロピー樹脂組成物の望ましいHSVとなるようにそのような揮発性有機化合物で希釈され得る。好ましくは、本発明の塗料組成物は、塗布粘度で、全組成物に対して700g/l未満の揮発性有機化合物d)、より好ましくは550g/l未満、更により好ましくは500g/l、最も好ましくは420g/L未満を含む。
【0108】
本発明のチキソトロピー樹脂組成物はまた、反応性希釈剤を含み得る。反応性希釈剤は、通常、膜形成樹脂a1)及び/又は架橋剤b)の官能基と比べて同様の又は異なる少なくとも1つの官能基を含むモノマー又はオリゴマーの液体化合物であり、チキソトロピー樹脂組成物の高せん断粘度を下げるために用いられ、膜形成樹脂a1)及び/又は架橋剤b)の官能基と反応し得る。好ましくは、反応性希釈剤は揮発性ではなく(大気圧での沸点が200℃より高い)、従って、組成物の全揮発性有機含有量に寄与しない。任意に、本発明のチキソトロピー樹脂組成物は、膜形成樹脂a1)、ポリ尿素化合物a2)及び反応性希釈剤の全重量に対して0から45重量%の間の量の反応性希釈剤を含む。任意に、本発明のチキソトロピー樹脂組成物は、膜形成樹脂a1)、ポリ尿素化合物a2)、任意の架橋剤b)、任意の触媒c)及び反応性希釈剤の全重量に対して0から20重量%の間の量の反応性希釈剤を含む。
【0109】
上述した成分に加えて、他の化合物が本発明のチキソトロピー樹脂組成物に存在することができる。そのような化合物は、上述した膜形成樹脂a1)及び/又は架橋剤b)と架橋し得る反応性基を任意に含む、膜形成樹脂a1)以外のバインダー樹脂を含み得る。そのような他の化合物の例は、ケトン樹脂、並びに潜在的アミノ官能性化合物、例えばオキサゾリジン、ケチミン、アルジミン、及びジイミンである。これら及び他の化合物は当業者に公知であり、特にUS5214086に述べられている。そのようなバインダーの量は通常30重量%未満である。
【0110】
架橋性組成物は、塗料組成物に一般的に用いられる他の成分、添加剤又は補助剤を更に含んでよい。これらは、特定の重要な塗料特性を改善するために一般的により少ない量、好ましくは10wt%未満、通常5wt%未満で用いられる添加剤を含み得る。これらの添加剤は、大気圧での沸点が200℃以下の溶剤を含む揮発性部分、及び不揮発性部分を含んでよい。そのような添加剤の非限定的な例は、例えば、界面活性剤、顔料分散助剤、レベリング剤、湿潤剤、へこみ防止剤、消泡剤、熱安定剤、光安定剤、ポリ尿素粒子a2)以外のチキソトロピー剤、UV吸収剤及び酸化防止剤である。
【0111】
チキソトロピー樹脂組成物は、反応性調整剤を更に含んでよい。そのような反応性調整剤は、チキソトロピー樹脂組成物のポットライフを上昇させる化合物を含み得る。これらの種類のポットライフを上昇させる反応性調整剤は、当業者に周知である。本発明の架橋性組成物において特に有用な別の種類の反応性調整剤は、例えばUV光の下で化学線硬化性ポリマー組成物の重合を開始させることが可能な光化学開始剤である。光化学開始剤(光開始剤ともいう)は、光、典型的にはUV光の吸収によりラジカルを生成することのできる化合物である。そのような放射線硬化性組成物における光開始剤の量は、好ましくは、放射線硬化性組成物の全重量に対して0.1重量%から10重量%の間、より好ましくは0.5から5重量%の間である。放射線硬化性組成物はまた、0~5重量%の当該分野で周知の1つ又は複数の光増感剤を含んでよい。別の場合には、組成物は、特に電子線により、開始剤の存在なしで硬化され得る。適切な光開始剤の例は、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、ベンジルジメチルケタール、アシルホスフィン、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン、及びそれらの混合物であってよく、好ましくは、適切な光開始剤は、α-ヒドロキシケトン、ベンゾフェノン、アシルホスフィン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。異なる種類の反応性調整剤の混合物が用いられ得る。
【0112】
架橋性組成物はまた、着色組成物であってよい。その場合、顔料及び/又は充填剤が組成物中に存在する。顔料は、通常、塗料媒体中での溶解度の低い固形成分であり、色をもたらすために組成物に添加される。充填剤もまた、通常、塗料媒体中での溶解度の低い固形成分であり、他の塗料パラメーターを改善する、例えば塗料の体積を上昇させる又は防食性を提供するために組成物に添加される。充填剤又は顔料の量及び種類は、着色組成物のJmax又はHSVに影響を及ぼし得、そのため当業者は、OFA法において用いられる着色組成物が本発明に規定されたHSV及びJmaxの基準を満たすような組合せで組成物の成分を選択するべきである。
【0113】
塗布粘度での本発明の組成物の不揮発性物質含有量は、好ましくは、コスト及び低いVOC排出を考慮すると高いが、良好な膜形成特性を得ることを考慮すると十分に低く、従って、全組成物に対して少なくとも35wt%、好ましくは少なくとも40wt%、より好ましくは45wt%より高く、最も好ましくは50wt%より高く、更に55wt%より高く、典型的には70、65若しくは60wt%未満、固形分含有量は、好ましくは、HSVが40から100mPa.sの間、好ましくは50から90mPa.sの間の範囲となるように選択される。
【0114】
本発明はまた、非水チキソトロピー樹脂組成物の調製の方法であって、a)樹脂、ポリ尿素粒子、並びに任意に、架橋剤、有機揮発性溶剤、顔料、着色剤、反応性希釈剤、硬化触媒、反応性調整剤、安定化剤及び/又は塗料添加剤を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の更なる成分を用意する工程、b)100mPa.s未満、好ましくは90mPa.s未満、好ましくは80mPa.s未満、更により好ましくは70mPa.s未満である、23℃にて1000±50s-1のせん断速度で測定した規定の高せん断粘度HSV、及び250Pa-1未満、好ましくは150Pa-1未満、更により好ましくは50Pa-1未満、最も好ましくは25Pa-1未満である、23℃にて300秒後に1.0Paのクリープ応力を用いて測定した規定のクリープコンプライアンスJmaxとなる量の成分を混合する工程を含む、方法に関する。上述したように、HSVは、例えば有機溶剤の量を増大させるか又は樹脂の量及び/若しくは分子量を低減させることにより要求水準に設定され得、Jmaxは、好ましくは十分に多い量のポリ尿素粒子、好ましくは高性能ポリ尿素粒子を選択することにより要求水準に設定され得る。
【0115】
上記方法の1つの実施形態では、少なくとも1つの膜形成樹脂a1)及びポリ尿素粒子a2)が、組成物(配合物とも言う)中で少なくとも1つの他の架橋性オリゴマー若しくはポリマー及び/又は少なくとも1つの架橋剤と組み合わせられる。チキソトロピー樹脂組成物は、膜形成樹脂a1)、ポリ尿素粒子a2)、架橋剤b)及び触媒c)を組み合わせる工程を含む方法により適切に調製され得る。この実施形態は一成分組成物と呼ばれる。別の場合には、チキソトロピー樹脂組成物は、膜形成樹脂a1)、ポリ尿素粒子a2)及び触媒c)を組み合わせてバインダー成分を形成する工程、並びに使用直前にそのバインダー成分を架橋剤b)と混合する工程を含む方法により調製され得る。この実施形態は二成分組成物と呼ばれる。
【0116】
通常どおり、架橋剤b)がイソシアナート官能性架橋剤である場合、ヒドロキシ官能性バインダー及びイソシアナート官能性架橋剤を含む架橋性組成物であれば、本発明の組成物は限定されたポットライフを有する。従って、組成物は多成分組成物として適切に供給され得、反応性成分が別個の部分に、例えば二成分組成物として又は三成分組成物として保持され、一方でポリオールa1)が、他方で架橋剤b)が、少なくとも2つの異なる成分の部分である。従って、本発明はまた、架橋性組成物を調製する部分のキットであって、少なくとも1つの膜形成樹脂a1)、少なくとも1つのポリ尿素粒子a2)及び任意に少なくとも1つの触媒c)を含むチキソトロピーバインダー部分、少なくとも1つの架橋剤b)を含む架橋剤部分を含む、キットに関する。別の場合には、部分のキットは、i)膜形成樹脂a1)及びポリ尿素粒子a2)を含むチキソトロピーバインダー部分、ii)架橋剤b)を含む架橋剤部分、並びにiii)揮発性有機希釈剤を含む希釈剤部分を含む三成分を含んでよく、触媒c)は、部分i)、ii)又はiii)にわたって分けられ得、部分のうち少なくとも1つが任意に触媒c)を含む。
【0117】
架橋剤b)が貯蔵温度で膜形成樹脂a1)と容易に反応しない場合、例えば架橋剤b)がメラミンホルムアルデヒド樹脂及び/又はブロックされたイソシアナート基を含む場合、すべての成分a)~c)は一部分で供給され得る。
【0118】
架橋性樹脂の他の成分は、その部分が求められる貯蔵安定性を示す限り、上述した部分にわたって異なる方法に分けられてよい。貯蔵時に互いに反応する架橋性組成物の成分は、好ましくは一部分には組み合わせられない。必要に応じて、塗料組成物の成分は、更に多くの部分、例えば4部分又は5部分にわたって分けられてよい。
【0119】
本発明のチキソトロピー樹脂組成物は、いずれの基板にも塗布され得る。基板は、例えば、金属、例えば鉄、鋼鉄、ブリキ及びアルミニウム、プラスチック、木、ガラス、合成材料、紙、皮革、コンクリート又は別の塗工層であってよい。他の塗工層は本発明の組成物からなり得、又はそれは異なる組成物であり得る。本発明の組成物は、クリアコート、ベースコート、着色トップコート、プライマー、及び充填剤として特に有用性を示す。
【0120】
本発明はまた、非水平表面へのオーバースプレーのない塗布における、塗料組成物、接着剤組成物又は封止剤組成物、好ましくはクリアコート組成物としての本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物の使用に関する。クリアコートは本質的に顔料を含まず、可視光を通過させる。しかしながら、クリアコート組成物は、塗膜の光沢度を制御するために艶消し剤、例えばシリカ系艶消し剤を含んでよい。
【0121】
本発明の架橋性組成物がクリアコートである場合、それは色及び/又は効果を付与するベースコートに塗布されることが好ましい。その場合、クリアコートは、典型的には自動車の外側に塗布されるような多層ラッカー塗膜の最上層を形成する。ベースコートは、水型ベースコートであっても溶剤型ベースコートであってもよい。本発明のチキソトロピー樹脂組成物はまた、塗装対象物のための着色又は色の付いたトップコートとしても適切である。塗装され得る基板の種類は原理的には限定されず、塗布性は主に経済的要因及び塗布器ロボットの設計に依存する。基板の典型的な例は、自動車、機械、ドア、家具、橋、パイプライン、工場又は建物、石油及びガス設備、船又はそれらの一部である。組成物は、自動車及び大型運搬用車両、例えば列車、トラック、バス、飛行機及び自動車の仕上げ及び再仕上げを行うのに特に適切である。本発明のチキソトロピー樹脂組成物は、噴出流オンデマンド技術若しくは液滴流オンデマンド技術、又は組成物を基板に移す、オーバースプレーのないあらゆる他の方法により塗布されるが、噴出流オンデマンドが好ましい。
【0122】
本発明はまた、物品の塗装の方法であって、物品の非水平表面の少なくとも一部に、上述した本発明のオーバースプレーのない塗布方法を使用して本発明の非水チキソトロピー樹脂組成物の塗工層を塗布する工程、及び層を硬化して、硬化塗膜を形成する工程を含む、方法に関する。本発明はまた、この方法により得られる塗装物品に関する。特に、上記方法は、運搬用車両の表面の少なくとも一部にわたって塗膜を供給し、上記方法は、本発明の塗料組成物を運搬用車両の外面の少なくとも一部に塗布する工程、及び塗布された塗料組成物を、好ましくは5~180℃の温度範囲で硬化する工程を含む。当業者は、硬化温度が架橋剤b)の種類に依存し、例えば、高温で固める塗布において80から180℃の間、より好ましくは100から160℃の間、又は低温で固める塗布において10から100℃の間、より好ましくは15から80℃の間で行われ得ることを知っている。
【0123】
本発明のチキソトロピー樹脂組成物は、化学線への曝露に際して少なくとも部分的に硬化性であってよい。放射線硬化性組成物は、通常、光開始剤の存在下、放射線、典型的には紫外線(UV)放射により硬化される。それらはまた電子線放射により硬化され得、光開始剤を含まない組成物の使用を可能にする。放射線硬化は、好ましくは、高エネルギー放射線、即ちUV放射若しくは日光、例えば172~750nmの波長の光への曝露により、又は高エネルギー電子(電子線、70~300keV)による照射により達成される。様々な種類の化学線、例えば紫外線(UV)放射、γ線、及び電子線が用いられ得る。放射線硬化の好ましい手段は紫外線放射である。1つの実施形態によれば、UV放射はUV-A、UV-B、UV-C及び/又はUV-V放射である。
【0124】
本発明のチキソトロピー樹脂組成物は、標準的な方法に比べて高温で固める硬化工程の数が少ない方法及びプロセスに用いられる架橋性クリアコート組成物に用いるのに特に適切であることが分かった。高温で固める硬化工程の数が少ないこれらの方法及びプロセスは、通常プライマー層が電着塗装にスプレー塗布され、次いで第1の高温で固める硬化工程、続いて水性ベースコート層のスプレー塗布、フラッシュオフ、クリアコート層のスプレー塗布及び第2の高温で固める硬化がなされる標準的な塗布方法に比べて、塗料及びエネルギー消費に関してより経済的である。高温で固める硬化は、140℃で又は160℃でも行われることが多い。対照的に、高温で固める硬化工程の数が少ないOFA法は、プライマー層及び第1の高温で固める硬化工程を除外することを特徴とすることが多い。代わりに、高温で固める硬化工程の数が少ない方法では、電着層に第1の水性着色層が任意に塗布され、次いでフラッシュオフ、水性ベースコート層の塗布、別のフラッシュオフ及びクリアコート層の塗布、次いで層のうち少なくとも1つがOFAにより塗布されたすべての層について同時に1つの高温で固める硬化工程がなされる。ここで、フラッシュオフは通常短く、典型的には1時間未満であり、しばしばたった80℃までの低い温度で行われる。
【0125】
本発明のチキソトロピー樹脂組成物、特に膜形成樹脂a1)、ポリ尿素粒子a2)、架橋剤c)及び任意に触媒d)を含む樹脂組成物、より好ましくはクリアコート組成物が、高温で固める硬化工程の数が少ない方法に特に適切であり、良好な外観、優れた耐タレ性及び非常に良好な耐薬品性を与えることが分かった。
【0126】
従って、本発明はまた、塗膜、好ましくは運搬用車両の外面の少なくとも一部のための塗膜を供給する方法であって、上記方法が、電着層を任意に含む金属に第1の水性又は溶剤型着色層を塗布する工程、次いでフラッシュオフ、次いで任意にOFAを用いた水性又は溶剤型ベースコート層の塗布、別のフラッシュオフ及びその後の本明細書の上記に記載のような本発明のチキソトロピー樹脂組成物を含むOFAを用いたクリアコート層の塗布、次いですべての層についての同時の1つの高温で固める硬化工程を含む、方法に関する。フラッシュオフは通常短く、好ましくは長くて1時間であり、しばしばたった90℃、好ましくは80℃までである低い温度で行われる。高温で固める硬化は、少なくとも80℃、好ましくは少なくとも120℃、最も好ましくは少なくとも140℃の温度で行われることが多い。高温で固める硬化は、好ましくは高くて180℃である。本発明の高温で固める硬化工程の数が少ないこの方法では、好ましくは-OH反応性基を含む、少なくとも2つの異なる膜形成バインダーa1)、特に本明細書の上記に記載のようなポリエステルポリオールa1)及び(メタ)アクリルポリオールa1)に基づくポリオールa1)を用いることが好ましい。別の場合には、ポリエステルポリアクリラートハイブリッドの種類の1つの種類の膜形成樹脂a1)が用いられ得る。
【0127】
本発明は、本明細書の上記に記載のような本発明の組成物を用いること又は本発明の方法により得られた、塗膜及び塗装基板に更に関する。本発明の組成物は、オーバースプレーのない塗布性の可能性を提供し、それにより塗料及び例えばマスキング材料の無駄を大幅に低減し、非常に良好な外観と他の特性、例えば硬さ、耐薬品性、柔軟性及び耐久性を組合せ、それらを自動車用途、例えば装飾塗膜のために特に適切なものとする塗膜をもたらす。
【実施例】
【0128】
例
使用した略語:BAはベンジルアミン、HMDIはヘキサメチレンジイソシアナート、o-キシレンはオルトキシレン、NVMは不揮発性材料(ISO 3251に準拠して決定)、SCAはタレ制御剤、SAMBAは(S)-(-)-α-メチルベンジルアミン、HSVは23℃にて1000±50s-1のせん断速度で決定した高せん断粘度、wt%は重量パーセントである。
【0129】
使用した製品:
AllnexのSETAL 91715 SS-55は、キシレン/ソルベントナフサ(60/40)溶剤(52wt% NVM)中のポリ尿素タレ制御剤(SCA)により改質された飽和ポリエステル樹脂であり、
AllnexのSETAL 41715 SS-55は、ポリ尿素タレ制御剤(SCA)がより高いチキソトロピー性能を有することを除いてSETAL 91715 SS-55に相当し、
AllnexのSETAL 1715 VX-74は、71~73wt%のNVMを有するソルベントナフサ/キシレン(75/25)を含む溶剤中の4.4%OH(不揮発物について計算)を有する溶剤型飽和ポリエステル樹脂であり、
AllnexのSETAMINE US-138 BB-70は、69~73wt%のNVMを有するn-ブタノール中に供給されたn-ブチル化高イミノメラミン架橋剤を含む架橋剤樹脂である。
【0130】
すべての配合した塗料組成物を、試験前に十分に均一化し、10又は20マイクロメートルのフィルターでろ過した。
【0131】
40mm直径及び4°のコーン角度の陽極酸化アルミニウムコーンを用いたコーン及びプレートのジオメトリを用いた回転式エアベアリングレオメーター(AR2000、TA Instruments)を用い、23℃にて、調製した塗料のレオロジー特性を決定した。望ましくない溶剤の蒸発を防ぐために溶剤トラップを用いた。1000±50s-1のせん断速度での記録された上下の流れ曲線(粘度vsせん断応力)から、HSVを決定した。23℃にて300s後に1.0Paのクリープ応力でクリープコンプライアンスJmaxを測定した。クリープ試験に先立ち、高せん断処理(1000s-1で30s)及び短い停止工程(0s-1で2s)を行った。
【0132】
市販の粉砕Hegmanゲージ(Byk 1511、最大深さ50マイクロメートルの2つの平行ゲージ)を用いてHegman微粉度を決定した。
【0133】
配合された塗料のオーバースプレーのない塗布の特性は、固定されたEcoPaintJet装置(Durr製、48のノズルを有するノズルプレート)を用いて決定された。圧力計(RS pro、型828-5745、最大圧力は16barである)を用い、EcoPaintJetユニットの圧力低下を連続的に測定した。磁気結合ギアポンプ(Tuthill製、24kg/hrの最大流量、17.2barの最大圧力低下)を、EcoPaintJetを通して塗料をポンプで送るために用いた。Coriolis流量計(Bronkhorst製、mini Cori-Flow)を、実際の流量を決定及び制御するために用いた。インラインフィルター(HNPM、型316、25マイクロメートル)をポンプの注入口側に配置した。ズームレンズ(Computar製、MLH-10x)及び専用ソフトウェアを備えたビデオカメラ(Mightex製、CCE-B013-U)を用いて、EcoPaintJetのノズルプレートの48の穴から出る噴出流の形成を連続的にモニタリングした。
【0134】
平均粒径は、波長632.8nm、ビーム長さ2.4mm及び2つの後方散乱検出器を含む光散乱測定のために最適化された42要素アレイ検出器のHe-Neレーザーを備えたMalvern Mastersizer 3000を用いたレーザー回折法を用いて確認された。平均粒径は、体積モーメント平均径D[4,3]として決定される。ポリ尿素粒子を含むチキソトロピー組成物1グラムを9グラムの酢酸ブチルに希釈することにより試料を調製した。その後、ボルテックスミキサーを用いて2~3分間、分散するまで試料を予め撹拌した。不明瞭化が10から12.5%の間であり、測定セル中で少なくとも30秒間、試料を脱気及び循環させた場合に測定を開始した。Mie理論に基づく多分散分析モデルを用い、粒子屈折率1.5330、連続媒体屈折率1.4000と仮定し、粒子は完全に不透明であると仮定して測定データを分析した。
【0135】
用いたSCAの融点の値は、試料を室温で乾燥した後、SCAマスターバッチの示差走査熱量測定(DSC)実験により得られた。DSC実験は、TA Instruments Q2000及び10+/-5mgの材料を含むアルミニウム製の密封封止るつぼを用いて行われた。試料はまず-90℃まで冷却され、20分間等温調整された。この後、温度を10℃/分の速度で210℃の温度まで上げた。温度プログラムは窒素雰囲気下で実行された(25ml/分)。SCAの融点は、最初の加熱実行において記録された熱流量において見られる小さい吸熱ピークをもたらす。SCAの融点は、この吸熱ピークの開始として定義される(接線法)。
(例1)
【0136】
架橋性膜形成樹脂成分としてのポリエステルポリオールを含む18.3gのSETAL 1715 VX-74、及びアミン官能性架橋剤樹脂成分を含む20.2gのSETAMINE US-138 BB-70を、ポリエステル樹脂及び溶剤中にHMDI-BAポリ尿素粒子SCAを含むポリ尿素チキソトロピー剤である37.9gのSETAL 91715 SS-55と混合することにより、本発明のSCA改質溶剤型非水クリアコート(CC)組成物(CC-Ex1)を調製した(全不揮発性物質NVM53wt%を有し、HMDI-BAポリ尿素SCAの量は3.28cwt%である)。得られたCCは、全樹脂固形分重量49.7cwt%、及び全樹脂固形分重量に対するHMDI-BAポリ尿素粒子濃度1.24cwt%を有する。レーザー回折法を用いて決定した平均粒径は10μm未満であった。樹脂組成物CC-Ex1は60mPa.sのHSVを有し、クリープコンプライアンスJmaxは238Pa-1であった。同じHSVを含むがSCAを含まないCCは300/0.06=5000Pa-1のJmaxの値を有するため、クリープコンプライアンスJmaxはSCA改質により95%を超えて減少した。
【0137】
CC-Ex1の組成、そのレオロジー特性(HSV及びJmax)、そのオーバースプレーのない塗布の特性(300g/minの流量での圧力低下及び噴出流形成挙動)及び約40マイクロメートルの乾燥膜厚みでの垂直パネルでのタレ性を表1に示す。本明細書において層厚みは、Fischer Deltascope FMP10により測定した厚みとして定義される。300g/minの流量でのEcoPaintJetユニットを用いたCC-Ex1のオーバースプレーのない塗布の間の圧力低下は約7barであり、すべての48の噴出流は、1つ又は複数のノズルの詰まり又は妨害なく高品質で形成した。約40マイクロメートルの乾燥膜厚みにおける垂直パネルでのCC-Ex1のタレ性は低く、深刻なタレの不具合は生じなかった。
(例2)
【0138】
例1に記載のような同じ架橋性膜形成樹脂成分及び架橋剤樹脂成分を表1に示す異なる量で用い、以下に記載のように調製されたHMDI-SAMBAポリ尿素マスターバッチMB-1を用いて、本発明のSCA改質溶剤型非水CC配合物(CC-Ex2)を調製した。MB-1の固形分含有量は53wt%であり、それは3.29cwt%のSCAを含む。レーザー回折法を用いて決定した平均粒径は10μm未満であった。このCC-Ex2の組成を表1に示す。CC-Ex2におけるSCA濃度は0.90%である。CC-Ex2は53mPa.sのHSVを有し、Jmaxの値は202Pa-1であった。
【0139】
300g/minの流量でのEcoPaintJetユニットを用いたCC-Ex2のオーバースプレーのない塗布の間の圧力低下は約6barであり、すべての48の噴出流は高品質で形成した(詰まりなし)。約40マイクロメートルの乾燥膜厚みにおける垂直パネルでのCC-Ex2のタレ性は低く、深刻なタレの不具合は生じなかった。
【0140】
1リットル丸底ガラス反応器、滴下漏斗及び機械的に固定したスターラーからなるバッチ反応器でCC-Ex2に用いられるMB-1マスターバッチ樹脂を調製した。Pt100温度計を、固定したスターラーに近接して反応器内の液体に配置させる。反応器を、水及び角氷で満たした超音波浴(Bandelin Sonorex Digiplus DL 102 H;120W超音波公称電力)に位置させる。完全な生成プロセスの間、超音波浴のスイッチを入れたままにした。反応器を、500gのSETAL 1715 VX-74(Allnex製、NVMは72wt%である)及び14.03gのSAMBAを予め混合したもので満たす。滴下漏斗をHMDI(9.83g)及びo-キシレン(165.32g)の混合物で満たす。スターラーを約300rpmに設定し、反応器の内容物を、冷水を含む冷却浴により約10℃以下の温度まで冷却する。その後、HMDI/キシレン混合物を10分で滴下漏斗から反応器に添加する。最後に、滴下漏斗をo-キシレン(35g)で洗浄し、最終的に3.29cwt%のHMDI-SAMBA含有量を得る。反応混合物は、HMDI投与手順(後処理)の完了後、30分の間、撹拌されたままであり、この間に超音波浴はスイッチを入れたままであった。後処理の30分後、HMDI-SAMBAマスターバッチ樹脂MB-1を反応器から取り出す。
(例3)
【0141】
本発明のチキソトロピー溶剤型クリアコート(CC)配合物をSETAL 41715 SS-55に基づいて調製した(Allnex製、NVMは53wt%、SCA含有量は3.28cwt%である)。このCC-Ex3の組成を表1に示す。得られたCCは、0.77cwt%のSCA濃度を有する。レーザー回折法を用いて決定した平均粒径は10μm未満であった。CC-Ex3は65mPa.sのHSVを有し、クリープコンプライアンスJmaxは108Pa-1であった。300g/minの流量でのEcoPaintJetユニットを用いたCC-Ex3のオーバースプレーのない塗布の間の圧力低下は約7barであり、すべての48の噴出流は高品質を示した(詰まりなし)。約40マイクロメートルの乾燥膜厚みでの垂直パネルでのCC-Ex3のタレ性は低く、深刻なタレの不具合は生じなかった。
(例4)
【0142】
HMDI-BA SCA、即ちSETAL 91715 SS-55(Allnex製、NVMは53wt%、SCA含有量は3.28cwt%、融点Tm2は175℃である)及びo-キシレン中に10wt%のSCAを含み、融点Tm1は117℃である濃縮HMDI-SAMBA SCA-分散液(SCAdisp-1)の組合せに基づいて、本発明のSCA改質溶剤型非水クリアコート(CC)配合物を調製した。これは、ポリ尿素形成の間に超音波振動を用い、WO2018083328A1の例2の手順に従って調製したが、樹脂の存在下ではなかった。CC-Ex4の組成及び特性を表1に示す。得られたCCは、1.60cwt%の全SCA濃度、及び71mPa.sのHSVを有し、クリープコンプライアンスJmaxは14Pa-1であった(JmaxはSCA改質により99.5%を超えて減少した)。レーザー回折法を用いて決定した平均粒径は10μm未満であった。300g/minの流量でのEcoPaintJetユニットを用いたCC-Ex4のオーバースプレーのない塗布の間の圧力低下は約8barであり、すべての48の噴出流は高品質で形成した(詰まりなし)。約40マイクロメートルの乾燥膜厚みでの垂直パネルでのCC-Ex4のタレ性は非常に低く、タレの不具合は生じなかった。クリアコートを140℃の硬化温度(Tcure)で24分間硬化させた。
(比較実験Comp-1及びComp-2)
【0143】
クリアコート配合物を車の垂直部分に塗布するために用いられる従来の静電スプレー塗布において、HMDI-BAポリ尿素粒子の固形分重量における典型的な濃度は0.7~1.2wt%の間の範囲である。比較例として、CC-Ex1、即ちSETAL 91715 SS-55(Allnex製、NVMは53wt%、SCA含有量は3.28cwt%である)で用いられたのと同じHMDI-BAマスターバッチ樹脂に基づいて、2つのクリアコート配合物を調製し、試験した。Comp-1及びComp-2の組成及び特性を表1に示す。両方のクリアコート配合物はCC-Ex1と同様のHSVを有する。SCAの濃度は、Comp-1及びComp-2のそれぞれについて0.34cwt%及び0.63cwt%である。レーザー回折法を用いて決定した平均粒径は10μm未満であった。CC-Ex1~CC-Ex4に比べて、Comp-1及びComp-2の両方がはるかに高いJmaxの値を有する。Comp-1及びComp-2は、オーバースプレーのない塗布の間に大きすぎる圧力低下とはならず、すべての噴出流が完全に生じた。しかしながら、Comp-1及びComp-2の両方は許容できないほどに高い程度のタレを示し、非水平のオーバースプレーのない塗布又はとがった端部を有する部分へのオーバースプレーのない塗布に不適切なものとなった。
(比較実験Comp-3)
【0144】
SCAを含まないCCとしてComp-3を調製した。Comp-3のHSVは、CC-Ex1~CC-Ex4のものより高い。Comp-3の組成及び特性を表1に示す。Comp-3はSCAを含まず、ニュートンのレオロジー挙動を有するという事実にもかかわらず、オーバースプレーのない装置を用いたComp-3の塗布は、実際の流量での高すぎる圧力及び少ない流量での不十分すぎる噴出流挙動のために不可能であった。不十分すぎる噴出流挙動は、すべての噴出流が完全に生じないことにより示される。結果として、特定の目標位置に塗料は堆積しないか又は不十分に堆積する。
【表1】
【0145】
クリープコンプライアンス測定を
図1のグラフに示す。グラフは、樹脂組成物の1.0Paのクリープ応力でのクリープコンプライアンス測定を示す。SCAを含まない非チキソトロピー組成物、並びにチキソトロピー樹脂組成物である例-1、CE-1及びCE-2は、約48cwt%の同等の樹脂固形分含有量、及び60~63mPa.sの同等の高せん断粘度HSV(1000+/-50s
-1のせん断速度で測定)を有する。比較例CE1及びCE2は、それぞれ0.34cwt%及び0.63cwt%の量のポリ尿素粒子を含む標準的なスプレー塗料の測定である。CE-1及びCE-2におけるポリ尿素粒子の添加はSCAを含まない同様の樹脂組成物と比べてより低いJmaxをもたらしたが、これらの組成物のJmaxは高すぎ、これらの組成物は、過度にタレるために非水平のOFA塗布には適さなかった。例-1及び例-4は、1.24cwt%及び1.60cwt%の高性能チキソトロピー剤を含むチキソトロピー樹脂組成物の測定であり、OFA塗布に用いられ得、そのうえ大きなタレは示さなかった。
(比較実験Comp-4)
WO2020187928の例10についてレオロジー特性を決定した。HSVが112mPa.s、クリープコンプライアンスJmaxが1620Pa
-1であることが分かった。この配合物はOFA塗布には適さず、HSV及びJmaxの値が高すぎ、良好な噴出流形成がなされず、耐タレ性が不十分であることが分かった。
【国際調査報告】