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特表2024-519484ポゾラン材料及び微細充填材を含む結合材組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ポゾラン材料及び微細充填材を含む結合材組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240507BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 14/08 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 14/26 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 22/12 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 24/18 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 24/30 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240507BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B28/04
C04B22/06 Z
C04B18/14 A
C04B18/14 Z
C04B18/08 Z
C04B14/10 A
C04B18/10 B
C04B14/08
C04B14/26
C04B22/12
C04B22/14 A
C04B22/10
C04B22/08 B
C04B24/12 Z
C04B24/18 Z
C04B24/30 A
C04B24/22
C04B24/26 E
C04B20/00 B
C04B24/26 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566766
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022061569
(87)【国際公開番号】W WO2022229432
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21305565.0
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522395978
【氏名又は名称】エコセム マテリアルズ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523224752
【氏名又は名称】エコール ノーマル シュペリウール パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】ECOLE NORMALE SUPERIEURE PARIS-SACLAY
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】523407285
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・デ・シアンス・アプリケ・ドゥ・トゥールーズ
(71)【出願人】
【識別番号】506018536
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ 3
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・フルアン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルタ・アルファニ
(72)【発明者】
【氏名】ターニャ・グツァレンコ
(72)【発明者】
【氏名】トマ・ワッテス
(72)【発明者】
【氏名】モヘンド・シャウーシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン・シール
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA03
4G112PA06
4G112PA10
4G112PA27
4G112PA29
4G112PA33
4G112PB04
4G112PB07
4G112PB08
4G112PB10
4G112PB20
4G112PB23
4G112PB25
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB35
(57)【要約】
本発明は:a.乾燥質量で1%~30%のポルトランドセメント、石灰又はこれらの混合物;b.乾燥質量で1%~40%の高炉スラグ微粉末;c.乾燥質量で20%~50%の少なくとも1つのポゾラン材料;d.乾燥質量で20%~65%の少なくとも1つの充填材;e.成分a、b、c及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.5%~10%の少なくとも1つの活性剤;f.成分a、b、c及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.05%~1.5%の少なくとも1つの減水ポリマー;を含み、前記充填材は:- 充填材の総質量に関して10質量%~90質量%の、0.05μm以上及び厳密に8μm未満のd50を有する粒子、並びに- 充填材の総質量に関して10質量%~90%質量%の、8μm以上及び厳密に200μm未満のd50を有する粒子の粒子混合物である、結合材組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.乾燥質量で1%~30%のポルトランドセメント、石灰、又はこれらの混合物;
b.乾燥質量で1%~40%の粉砕された粒子状高炉スラグ;
c.乾燥質量で20%~50%の少なくとも1つのポゾラン材料;
d.乾燥質量で20%~65%の少なくとも1つの充填材;
e.成分a、b、c、及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.5%~10%の少なくとも1つの活性化剤;
f.成分a、b、c、及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.05%~1.5%の少なくとも1つの減水ポリマー;
を含む結合材組成物であって、
前記充填材が、
- 充填材の総質量に対して10質量%~90質量%の、0.05μm以上及び厳密に8μm未満のd50を有する粒子、並びに
- 充填材の総質量に対して10質量%~90%質量%の、8μm以上及び厳密に200μm未満のd50を有する粒子
の粒子混合物であり、
50の測定が、レーザー回折分光法としても公知のレーザー回折分析によって、レーザー回折測定装置(例えば、MALVERN社により市販される「Mastersizer 2000」)によって湿式法で行われる、
結合材組成物。
【請求項2】
前記ポゾラン材料が、シリカヒューム、フライアッシュ、か焼片岩、メタカオリン、か焼イライト、か焼ベントナイト、か焼モンモリロナイト、か焼スメクタイト、バイオマスアッシュ、もみ殻灰、珪藻土、粉末の蛋白石、炭酸化塩基性酸素高炉スラグ、炭酸化カンラン石、炭酸化ケイ灰石、及びこれらの混合物を含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される、請求項1に記載の結合材組成物。
【請求項3】
前記充填材が、採石場から供給される天然材料、例えば、方解石及びその多形体(アラレ石又はヴァテライトなど)、並びにドロマイト又は沈降炭酸カルシウム、並びにこれらの混合物である、請求項1又は2に記載の結合材組成物。
【請求項4】
前記活性化剤が、アルカリ金属塩、好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム;アルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、ジエタノールアミン(DEA)、又はこれらの混合物、好ましくは硫酸ナトリウムである、請求項1から3のいずれか一項に記載の結合材組成物。
【請求項5】
前記減水ポリマーが、リグノスルホネートポリマー、メラミンスルホネートポリマー、ナフタレンスルホネートポリマー、ポリカルボン酸エーテルポリマー、ポリオキシエチレンホスホネート、ビニルコポリマー、メタリルエーテルポリカルボン酸エーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の結合材組成物。
【請求項6】
前記の粉砕された粒子状高炉スラグの少なくとも一部が、2.5μm以下のd50を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の結合材組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの骨材及び請求項1から6のいずれか一項に記載の結合材組成物を含む乾式コンクリート組成物又は乾式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル、及び床被覆用モルタル。
【請求項8】
少なくとも1つの骨材、請求項1から6のいずれか一項に記載の結合材組成物、及び水を含む湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル、及び床被覆用モルタル。
【請求項9】
請求項8に記載の湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物から得られる、硬化したコンクリート組成物又は硬化した産業用モルタル組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物を調製する方法であって、少なくとも1つの骨材及び請求項1から6のいずれか一項に記載の結合材組成物と水とを混合する工程を含み、前記結合材組成物が、混合工程の前又は混合工程の間にその場で別個に及び/又は予混合物(プレミックス)の形態で取得される結合材組成物のさまざまな成分の少なくとも一部から調製される、方法。
【請求項11】
結合材組成物に対する水の比が、0.1~0.5、有利には0.15~0.45、より有利には0.2~0.4である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル、及び床被覆用モルタルのフレッシュな状態のレオロジーを改善するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の結合材組成物の使用。
【請求項13】
ペーストのフレッシュな状態の降伏応力が、0Pa~200Pa、有利には5Pa~100Pa、より有利には10Pa~50Paである、請求項12に記載の結合材組成物の使用。
【請求項14】
ペーストのフレッシュな状態の粘度が、0Pa.s~5Pa.s、有利には0.1Pa.s~3Pa.s、より有利には0.25Pa.s~1.5Pa.s.である、請求項12に記載の結合材組成物の使用。
【請求項15】
プレキャストコンクリート又は生コンクリートを調製するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の結合材組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンクリート又は産業用モルタルを調製するための結合材組成物の分野に関する。本発明の技術分野は、モルタル又はコンクリートの組成物などの、固化及び硬化が可能な組成物に使用される、少なくとも1つのスラグ、例えば粉砕された粒子状高炉スラグ(高炉スラグ微粉末)(GGBS又はスラグ)を含む水硬性無機結合材に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、水硬性結合材としての少なくとも1つのスラグ、同様に少なくとも1つのポゾラン材料及び微細石灰石充填材(fine limestone filler)を含む、建築産業用の固化及び硬化が可能な結合材及び組成物に関する。
【0003】
本発明はまた、これらのスラグ-ベースの結合材、固化及び硬化が可能なこれらの乾式又は湿式組成物の調製方法にも関する。
【0004】
これらの組成物から得られる固化及び硬化された製造物から作製される建築用途もまた本発明の分野である。
【背景技術】
【0005】
ポルトランドセメント製造は、大量の二酸化炭素の放出により、環境に強い悪影響を及ぼす。セメントの製造はもともと、焼成炉中の非常に高い温度(1450℃)での原材料のか焼中に、石灰石の脱炭酸を通して、COを生じる(式(1)):
CaCO(s)→CaO(s)+CO(g) (式(1))
【0006】
加えて、セメント焼成炉を加熱するために必要な化石燃料の燃焼の結果として、二酸化炭素が放出される。粉砕による追加の放出を加えると、1トンのポルトランドセメント当たり、ほぼ1トンのCOが得られる。結局、セメント産業は、世界中の二酸化炭素放出の約7~9%の責任を負っている。
【0007】
その上、ポルトランドセメントの取り扱いは、特に、その高いアルカリ性に起因して(13より高いpH)健康問題(アレルギーなど)をもたらす恐れがある。加えて、混錬時に、六価クロム(Cr(VI))などの有害元素が放出されるおそれがあり、これもまた、皮膚に接触した場合に作業員にとって健康によくない。Cr(VI)還元剤(硫酸第一鉄など)が、通常はセメント粉末に含まれるが、その効果は時間的に制限がある。建築作業員、特に第三世界における建築作業員がそのような処理に関連する期限を頻繁に確認することは期待されない。
【0008】
新しい結合材に関する現在の探索の大部分は、様々な用途において、セメントを、環境的影響がより低い結合材に置き換えることを目的としている。1つの経路は、他の産業からの副産物などのように、資源をその高価な処理を伴うことなく使用することである(ある産業にとっては廃棄物であるが、他の産業では主要資源である)。鉄産業の副産物である溶鉱炉スラグがその例である。溶鉱炉スラグを微細粉末に粉砕することにより(GGBS)、セメントの部分的代替に使用されうるか、又は化学的活性化剤を添加することによって単独で使用されうるセメント質材料を得ることができる。
【0009】
GGBSの使用は、環境にやさしいだけではなく、モルタル及びコンクリートを配合するのに使用された場合、硫酸塩攻撃に対する高い耐性、低い透過性、化学的に攻撃的な環境における良好な耐性、低い水和熱(大型構造物に必要とされる)、一般に優れた耐久性、重金属又は放射性核種の固定化の可能性などの、いくつかの強化された特性をもたらすことにも留意することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記との関連において、本発明は、以下の課題のうちの少なくとも1つを満足することを通して、上記の問題及び/又は必要性の少なくとも1つに対処することを目的とする:
-O1- 普通ポルトランドセメント(OPC)ベースの組成物に対する魅力的な代替物である、スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物を提供すること。
-O2- 環境にやさしい、スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物を提供すること。
-O3- 健康及び安全性の問題に関して、OPCベースの組成物よりも許容される、スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物を提供すること。
-O4- 振動締固め、噴霧、コテ塗り、鋳造などのいくつかの方法によって製造されるのに適当な能力を有する、乾式モルタル、乾式及び半乾式の事前成型(プレキャスト)コンクリート並びに湿式モルタル及びコンクリートの配合物をもたらす、スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物を提供すること。
-O5- 適当なレオロジー特性、すなわち、前記湿式配合物の使用者により必要とされる通例の固化時間(例えば数分から数時間まで)内での安定したレオロジー(良好な作業可能性)を有する湿式配合物をもたらす、スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物を提供すること。
-O6- 必要とされる機械的特性、特に許容される初期強度(例えば24時間)を有する硬化材料をもたらす、スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物を提供すること。
-O7- 必要とされる耐久性を有する硬化材料をもたらす、スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物を提供すること。
-O8- 通例、必要とされる固化時間(例えば数分から数時間まで)を有する硬化材料をもたらす、スラグベースの結合材又は前記GGBSベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物を提供すること。
-O9- 目標-O1-から-O9-のうちの少なくとも1つを満たす、スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物の、簡単で且つ安価な調製方法を提供すること。
-O10- スラグベースの結合材又は前記スラグベースの結合材を含むモルタル若しくはコンクリートの組成物の湿式形態の、簡単で且つ安価な調製方法を提供すること。
-O11- 少なくとも部分的結合材としてのスラグを含む、建築産業用の硬化製造物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は:
a.乾燥質量で1%~30%のポルトランドセメント、石灰、又はこれらの混合物;
b.乾燥質量で1%~40%の粉砕された粒子状高炉スラグ(高炉スラグ微粉末);
c.乾燥質量で20%~50%の少なくとも1つのポゾラン材料;
d.乾燥質量で20%~65%の少なくとも1つの充填材;
e.成分a、b、c、及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.5%~10%の少なくとも1つの活性化剤;
f.成分a、b、c、及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.05%~1.5%の少なくとも1つの減水ポリマー;
を含み、
前記充填材が、
- 充填材の総質量に対して10質量%~90質量%の、0.05μm以上且つ厳密に8μm未満のd50を有する粒子、並びに
- 充填材の総質量に対して10質量%~90%質量%の、8μm以上且つ厳密に200μm未満のd50を有する粒子
の粒子混合物である、
結合材組成物によって達成される。
【0012】
本発明はまた、少なくとも1つの骨材及び上述した結合材組成物を含む乾式コンクリート組成物又は乾式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル及び床被覆用モルタルにも関する。
【0013】
本発明は更に、少なくとも1つの骨材、上述の結合材組成物及び水を含む湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル及び床被覆用モルタルに関する。
【0014】
本発明は、加えて、上述した湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物から得られる硬化コンクリート組成物又は硬化産業用モルタル組成物を対象とする。
【0015】
更に、本発明は、上述した湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物を調製する方法であって、少なくとも1つの骨材及び上述した結合材組成物と水とを混合する工程を含み、結合材組成物が、混合工程の前、又は混合工程の間にその場で、別々に及び/又は予混合物(プレミックス)の形態で得られる結合材組成物のさまざまな成分の少なくとも一部から調製される、方法に関する。
【0016】
本発明は、湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル、及び床被覆用モルタルのフレッシュな状態のレオロジーを改善するための、上述した結合材組成物の使用に関する。
【0017】
定義
本明細書の用語の使用方法により、以下の非限定的な定義を考慮しなければならない。
【0018】
「スラグ」は、鉱石の製錬又は精製中に、金属から分離される石質の副産物を表す。
【0019】
「GGBS」又は「GGBFS」:粉砕された粒子状高炉スラグ(高炉スラグ微粉末)(Ground Granulated Blast Furnace Slag)は、高炉スラグ、粒状高炉スラグ(GBFS)(Granulated Blast Furnace Slag)、高炉水砕スラグ粉末、及び高炉スラグ細骨材と同等のものである。
【0020】
「ポゾラン材料」は、温度制御処理が適用された、天然起源又は天然資源由来のいずれかの粉末状物質を意味することが理解される。ポゾラン材料は、より詳細には、水及びCaO源の混合物の添加によって硬化する種類の材料を指す。
【0021】
「セメント」は、モルタル又はコンクリートの作製における使用のために作製される粉末状物質を意味することが理解される。セメントは、無機結合材であり、有機化合物を含まない可能性が高い。セメントは、任意の普通セメントを指し、スラグポルトランドブレンド及びアルカリ活性化ベースのセメントを含む。
【0022】
「結合材」は、水を添加するだけで硬化する、GGBS及びセメントのような任意の材料を意味する「水硬性結合材」を指す。
【0023】
「モルタル」は、結合材、砂などの骨材、及び混和材のような他の成分から構成される材料を指す。
【0024】
「コンクリート」は、結合材、砂及び砂利などの骨材、並びに混和材のような他の成分から構成される材料を指す。
【0025】
「d50」は、材料の粒子の粒度分布の中位径を与える(通例、セメンテーション材料に関してマイクロメートル単位での)。d50は、粒子の50%が、規定された数より小さい径を有し、かつ、粒子の50%がその規定された数より大きい径を有することを意味する。d50の測定は、レーザー回折分光法としても公知のレーザー回折分析により、レーザー回折測定装置、たとえば、MALVERN社により市販されている「Mastersizer 2000」によって、湿式法で行われる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<結合材組成物>
本発明による結合材組成物は:
a.乾燥質量で1%~30%のポルトランドセメント、石灰、又はこれらの混合物;
b.乾燥質量で1%~40%の粉砕された粒子状高炉スラグ(高炉スラグ微粉末);
c.乾燥質量で20%~50%の少なくとも1つのポゾラン材料;
d.乾燥質量で20%~65%の少なくとも1つの充填材;
e.成分a、b、c、及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.5%~10%の少なくとも1つの活性化剤;
f.成分a、b、c、及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.05%~1.5%の少なくとも1つの減水ポリマー;
を含み、
前記充填材が、
- 充填材の総質量に対して10質量%~90質量%の、0.05μm以上及び厳密に8μm未満のd50を有する粒子、並びに
- 充填材の総質量に対して10質量%~90%質量%の、8μm以上及び厳密に200μm未満のd50を有する粒子
の粒子混合物である。
【0027】
<成分a>
本発明による結合材組成物は、成分aを、乾燥質量で1%~30%、好ましくは、3%~25%、より好ましくは5%~20%含む。
【0028】
成分aは、ポルトランドセメント、石灰、又はこれらの混合物でありうる。
【0029】
<成分b>
本発明による結合材組成物は、粉砕された粒子状高炉スラグ(高炉スラグ微粉末)(GGBS)である成分bを、乾燥質量で1%~40%、好ましくは、5%~40%、より好ましくは15%~40%、更により好ましくは25%~40%含む。
【0030】
有利な実施形態では、高炉スラグ微粉末の少なくとも一部は、2.5μm以下のd50を有する。この実施形態は、本発明による結合材組成物で得られる、粘度の低減及び圧縮強度の増加という技術的効果を強化することが可能であるため、有利である。
【0031】
<成分c>
本発明による結合材組成物は、ポゾラン材料である成分cを、乾燥質量で20%~50%、好ましくは25%~45%、より好ましくは30%~40%含む。
【0032】
ポゾラン材料は、水の存在下で石灰又はセメントと反応して、水和物を生成することが可能な材料である。言い換えれば、ポゾラン材料は、ポルトランドセメント及び石灰の水硬性挙動を強化する材料であり、水硬性挙動は、水の存在下で固化及び硬化する能力である。
【0033】
好ましくは、ポゾラン材料は、シリカヒューム、フライアッシュ、か焼片岩、メタカオリン、か焼イライト、か焼ベントナイト、か焼モンモリロナイト、か焼スメクタイト、バイオマスアッシュ、もみ殻灰、珪藻土、粉末の蛋白石(粉砕されたオパール)、炭酸化塩基性酸素高炉スラグ、炭酸化カンラン石、炭酸化ケイ灰石、及びこれらの混合物を含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0034】
<成分d>
本発明による結合材組成物は、充填材である成分dを、乾燥質量で20%~65%、好ましくは25%~50%、より好ましくは30%~40%含む。
【0035】
充填材は、不活性である、粒状化された無機材料である。言い換えれば、充填材は、水の存在下で、水和物を生成するために、石灰又はセメントと反応することができない。
【0036】
好ましくは、充填材は石灰石充填材であり、より好ましくは、充填材は、採石場から供給される天然材料、例えば、方解石及びその多形体(アラレ石又はヴァテライトなど)、並びにドロマイト又は沈降炭酸カルシウム、並びにこれらの混合物である。
【0037】
本発明によれば、充填材は、
- 充填材の総質量に対して10質量%~90質量%の、0.05μm以上且つ厳密に8μm未満のd50を有する粒子、並びに
- 充填材の総質量に関して10質量%~90%質量%の、8μm以上且つ厳密に200μm未満のd50を有する粒子
の粒子混合物である。
【0038】
この充填材配分は、本発明による結合材組成物及びコンクリート又は産業用モルタルの、粘度の低減及び圧縮強度の増加という技術的効果を得ることを可能にする。
【0039】
一部の実施形態では、充填材は、
- 充填材の総質量に対して20質量%~80質量%、好ましくは25質量%~50質量%、より好ましくは30質量%~40質量%の、0.05μm以上且つ厳密に8μm未満のd50を有する粒子、並びに
- 充填材の総質量に対して20質量%~80質量%、好ましくは30質量%~70質量%、より好ましくは40質量%~65質量%の、8μm以上且つ厳密に200μm未満のd50を有する粒子
の粒子混合物である。
【0040】
<成分e>
本発明によれば、結合材組成物は、成分a、b、c、及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.5%~10%の少なくとも1つの活性化剤を更に含む。
【0041】
活性化剤の含有量は、成分a、b、c、及びdの配分に関して決定される。言い換えれば、活性化剤の乾燥質量百分率は、成分a、b、c、及びdの含有量の合計が、乾燥質量で100%を表すことを考慮して決定される。
【0042】
好ましくは、活性化剤は、アルカリ金属塩、好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム;アルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、ジエタノールアミン(DEA)、又はこれらの混合物、より好ましくは硫酸ナトリウムである。
【0043】
<成分f>
本発明によれば、結合材組成物は、成分a、b、c、及びdの総質量に対して、乾燥質量で0.05%~1.5%の少なくとも1つの減水ポリマーを更に含む。
【0044】
減水ポリマーの含有量は、成分a、b、c、及びdの配分に関して決定される。言い換えれば、減水ポリマーの乾燥質量百分率は、成分a、b、c、及びdの含有量の合計が、乾燥質量で100%を表すことを考慮することによって決定される。
【0045】
好ましくは、減水ポリマーは、リグノスルホネートポリマー、メラミンスルホネートポリマー、ナフタレンスルホネートポリマー、ポリカルボン酸エーテルポリマー、ポリオキシエチレンホスホネート、ビニルコポリマー、メタリルエーテルポリカルボン酸エーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0046】
<任意選択の他の成分>
結合材組成物は、1種又は数種の他の構成成分を有利には追加で含み、それらは成分、特に機能性添加剤であり、それらは好ましくは以下のリストから選択される。
【0047】
・ 保水剤
保水剤は、固化する前に、混合水を保持する特性を有する。水は、湿式配合物ペースト中に閉じ込められ、その結合を改善する。ある程度まで、水は支持体によって少ない量しか吸収されない。
【0048】
保水剤は、好ましくは、変性セルロース、変性グアー、変性したセルロースエーテル及び/又はグアーエーテル、並びにこれらの混合物を含む群、より好ましくは、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
・ レオロジー改質剤
可能なレオロジー改質剤(「増粘剤」とも称される)は、好ましくは、デンプンエーテル、セルロースエーテル、及び/又はガム(例えば、ウェランガム、グアーガム、キサンタンガム、スクシノグリカン)、変性多糖類(好ましくは変性デンプンエーテルからのもの)、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、海泡石(セピオライト)、及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0050】
・ 脱泡剤/消泡剤
可能な脱泡剤は、好ましくは、ポリエーテルポリオール及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0051】
・ 殺生物剤
可能な殺生物剤は、好ましくは、無機酸化物(酸化亜鉛など)及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0052】
・ 顔料
可能な顔料は、好ましくは、TiO、酸化鉄、及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0053】
・ 難燃剤
難燃剤(又は防炎剤)は、耐火性を向上させ、及び/又は組成物の延焼速度を低下させることを可能にする。
【0054】
・ 空気連行剤(Air-entraining agents)
空気連行剤(界面活性剤)は、有利には、天然樹脂、硫酸化又はスルホン化された化合物、合成界面活性剤、有機脂肪酸、及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群、好ましくは、リグノスルホネート、脂肪酸の塩基性せっけん、及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群、並びにより好ましくは、スルホネートオレフィン、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0055】
・ 遅延剤
遅延剤は、有利には、酒石酸及びその塩:ナトリウム又はカリウム塩、クエン酸及びその塩:ナトリウム塩(クエン酸三ナトリウム)及びこれらの混合物を含む群、より好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0056】
加えて、他の成分は以下のものであってよい。
・ 可塑剤
・ 繊維
・ 分散粉末
・ 湿潤剤
・ ポリマー樹脂
・ 錯化剤
・ ポリオールをベースとする乾燥収縮低減剤。
【0057】
結合材組成物中のこれらの任意選択の他の成分の総含有量は、好ましくは、結合材組成物の総質量の0.001質量%~10質量%を構成する。
【0058】
<乾式コンクリート組成物又は乾式産業用モルタル組成物>
本発明はまた、少なくとも1つの骨材及び上述した結合材組成物を含む、乾式コンクリート組成物又は乾式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル、及び床被覆用モルタルにも関する。乾式コンクリート又は産業用モルタルの組成物は、最終的に、他の混和材及び添加物を含有してもよい。
【0059】
本発明によれば、「乾式」コンクリート組成物又は「乾式」産業用モルタル組成物は、粉末形態であり、水との混合準備完了状態の組成物を指す。言い換えれば、本発明の乾式コンクリート組成物又は乾式産業用モルタル組成物は、いくらかの水分を含有してもよいが、本質的に、その適用前に、水と混合されることを意図した固体成分を含む。
【0060】
骨材は、砂、砂利、砕石、スラグ(粒状化されていない)、リサイクルされたコンクリート及びジオシンセティック骨材を含む、建築に使用される、大きな範疇の粒状材料を含む。これらは、複合材料全般に強度を付与するための増強材として役立つ。
【0061】
有利には、上記乾式コンクリート組成物又は乾式産業用モルタル組成物はまた、骨材以外に、1つ又はいくつかの成分、特に機能性混和材、添加物及び繊維も含んでよく、これらは結合材組成物の詳細な説明において定義した上述の他の任意選択成分と同じであることができる。
【0062】
乾式コンクリート組成物又は乾式産業用モルタル組成物中のこれらの任意選択による他の成分の総含有量は、好ましくは、結合材組成物の総質量の0.1質量%~10質量%を構成する。
【0063】
<湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物>
本発明はまた、少なくとも1つの骨材、上述した結合材組成物、及び水を含む、湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル及び床被覆用モルタルにも関する。
【0064】
特定の実施形態では、湿式産業用モルタル組成物は、「即時使用可能な」モルタルとも呼ばれる。「即時使用可能な」モルタルは、建築現場における組み立て用のれんが又はブロックとして使用される。それらは、混合設備で、組成物の全要素(結合材、骨材、及び他の成分)を水と直接混合することによって得られる。それらは固化遅延剤を含み、そのレオロジー及び硬化特性を維持しながら、数日までの輸送及び遅延された使用を可能にする。
【0065】
<湿式コンクリート組成物又は湿式モルタル組成物を調製する方法>
本発明はまた、上述した湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物を調製する方法であって、少なくとも1つの骨材及び上述した結合材組成物と水とを混合する工程を含み、結合材組成物は、混合工程の前又は混合工程の間にその場で別個に及び/又は予混合物(プレミックス)の形態で取得される結合材組成物のさまざまな成分の少なくとも一部から調製される方法にも関する。
【0066】
言い換えれば、湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物は、2つの別の方法によって調製されうる。
【0067】
第1の方法では、結合材組成物を調製し、次に少なくとも1つの骨材と混合する。乾式コンクリート組成物又は乾式モルタル組成物を、その後、水と混合する。
【0068】
第2の方法では、湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物は、結合材組成物及び骨材の各成分を水中で混合することによって調製される。
【0069】
本開示によれば、用語「混合」は、任意の形態の混合と理解されなければならない。
【0070】
好ましい実施形態では、結合材組成物の一部及び水の少なくとも一部は、骨材との混合前に、共に混合される。
【0071】
好ましい実施形態では、本方法は、0.1~0.5、有利には0.15~0.45、より有利には0.2~0.4となる、水硬性結合材に対する水の比で実施される。
【0072】
<硬化コンクリート組成物又は硬化産業用モルタル組成物>
本発明はまた、上述した湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物から得られる、硬化コンクリート組成物又は硬化産業用モルタル組成物に言及する。
【0073】
<結合材組成物の使用>
本発明はまた、湿式コンクリート組成物又は湿式産業用モルタル組成物、特に、タイル用接着剤、コーティング、組み立て用モルタル、修繕用モルタル、下塗り、工業用モルタル、及び床被覆用モルタルのフレッシュな状態のレオロジーを改善するための、上述した結合材組成物の使用についても対象とする。
【0074】
有利には、本発明による使用のために、ペーストのフレッシュな状態の降伏応力は、0Pa~200Pa、有利には5Pa~100Pa、より有利には10Pa~50Paである。
【0075】
有利には、本発明による使用のために、ペーストのフレッシュな状態の粘度は、0Pa.s~5Pa.s、有利には0.1Pa.s~3Pa.s、より有利には0.25Pa.s~1.5Pa.s.である。
【0076】
本発明はまた、事前成型(プレキャスト)コンクリート又は生コンクリートの調製のための、上述した結合材組成物の使用をも対象とする。
【実施例
【0077】
(実施例1:充填材粒子の粒度分布の相乗効果)
6種のペーストを、NF EN 196-3規格に準拠して調製した。それらの組成を以下の表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
レオロジー特性を、NF EN 196-3規格に準拠して決定し、結果を下の表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
微細石灰石充填材を含有するが、粗い石灰石充填材を含有しない、比較例CE1のペーストの降伏応力及びフレッシュな状態のペースト粘度は、非常に高い。粗い石灰石充填材を含有するが、微細な石灰石充填材を含有しない比較例CE2のペーストの降伏応力及びフレッシュな状態のペースト粘度は、CE1のものより非常に低い。微細な石灰石充填材をCE2のペーストに添加することによって、本発明による実施例E1をもたらし、より低く且つ2より大きい数で割れるような(すなわち1/2より低い)フレッシュなペースト粘度を有する組成物が得られることは驚くべきことである。
【0082】
この相乗効果は、結合材組成物が、ポルトランドセメントの代わりに石灰を含む場合、更に顕著である。実際に、微細な石灰石充填材を含有するが粗い石灰石充填材を含有しない比較例CE3のペーストの降伏応力及びフレッシュな状態のペースト粘度は、粗い石灰石充填材を含有するが微細な石灰石充填材を含有しない比較例CE4のペーストの降伏応力及びフレッシュな状態のペースト粘度と同様に非常に高い。微細な石灰石充填材をCE4のペーストに添加することによって、本発明による実施例E2をもたらし、より低く且つ2より大きい数で割れるような(すなわち1/2より低い)ペーストの降伏応力度を有し、非常に低く且つほぼ5で割れるような(すなわちほぼ1/5の)フレッシュなペースト粘度を有する組成物が得られることは驚くべきことである。
【0083】
これらの6種のペーストから、NF EN 196-1規格に準拠して、これらを骨材と混合することによって6種のモルタルを調製した。これらのモルタルの圧縮強度を、NF EN 196-1規格に準拠して決定した。結果を下の表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
表3からわかるように、モルタルの圧縮強度は、有意に異なることはない。
【0086】
したがって、本発明による結合材組成物は、レオロジーを改善し、すなわち、ペーストの降伏応力及びフレッシュな状態のペースト粘度を低下させ、圧縮強度を維持することを可能にする。
【0087】
(実施例2:極微細GGBSの効果)
追加のペーストを、NF EN 196-3規格に準拠して調製した。その組成を下の表4に示し、E1の組成を表4に再掲する。
【0088】
【表4】
【0089】
レオロジー特性を、NF EN 196-3規格に準拠して決定し、結果を下の表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
極微細GGBSを含有する実施例E3のペーストの降伏応力及びフレッシュな状態のペースト粘度は、極微細GGBSを含有しない実施例E1のペーストの降伏応力及びフレッシュな状態のペースト粘度と同様である。
【0092】
このペーストから、NF EN 196-1規格に準拠して、このペーストを骨材と混合することによってモルタルを調製した。このモルタルの圧縮強度を、NF EN 196-1規格に準拠して決定した。結果を下の表6に示し、E1からのモルタルの結果を再掲する。
【0093】
【表6】
【0094】
表6から分かるように、極微細GGBSを含むE3からのモルタルの圧縮強度は、E1からのモルタルの圧縮強度より大きい。
【0095】
したがって、極微細GGBSは、本発明による組成物の圧縮強度を増大させ、レオロジーを維持し、すなわち、微細な充填材と粗い充填材との組合せの相乗効果により得られる、ペーストの降伏応力及びフレッシュな状態のペースト粘度の低下を可能にする。
【国際調査報告】