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特表2024-519494コールタール由来の粗フェノール類からの汚染物質除去
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-14
(54)【発明の名称】コールタール由来の粗フェノール類からの汚染物質除去
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/04 20060101AFI20240507BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B01D11/04 C
B01D15/00 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567957
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021030626
(87)【国際公開番号】W WO2022235260
(87)【国際公開日】2022-11-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502212040
【氏名又は名称】チャイナ・ペトロリアム・アンド・ケミカル・コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】グオ,リウェイ
(72)【発明者】
【氏名】レーン,ニーレシュ
【テーマコード(参考)】
4D017
4D056
【Fターム(参考)】
4D017AA04
4D017BA04
4D017CA01
4D017CA05
4D017CA06
4D017CB01
4D017DA01
4D017DA05
4D017DA08
4D017DB03
4D017DB10
4D056AB18
4D056AC02
4D056AC04
4D056AC06
4D056AC11
4D056AC21
4D056AC22
4D056CA15
4D056CA26
4D056DA01
4D056DA05
(57)【要約】
石炭由来のフェノール類から汚染物質を除去するプロセスが記載されている。本プロセスは、抽出プロセスと、吸着剤を含有する少なくとも2つの吸着ゾーンとを組み合わせたものである。液-液抽出プロセスおよび酸塩基抽出プロセスが使用され得る。吸着剤はクレイおよび/またはゼオライトであってもよい。本プロセスは、有機窒素化合物および有機硫黄化合物を10ppmw未満のレベルまで低減し、無色の生成物を生成するために使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭由来の粗フェノール類から汚染物質を除去する方法であって、
抽出プロセスを使用して、石炭由来の粗フェノール類を含む粗フェノール流から有機硫黄化合物および有機窒素化合物を除去し、粗フェノール流と比較して有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数のレベルが低減された抽出流出流を形成するステップと、
第1の吸着剤を有する第1の吸着ゾーンおよび第2の吸着剤を有する第2の吸着ゾーンを含む吸着プロセスを使用して、抽出流出流から有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数の一部を除去し、抽出流出流と比較して有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数のレベルが低減された吸着流出流を形成するステップであって、第1の吸着剤がクレイを含み、第2の吸着剤がゼオライトを含むステップと、を含む、方法。
【請求項2】
抽出流出流における有機硫黄化合物の低減後のレベルが100ppmw未満であるか、または抽出流出流における有機窒素化合物の低減後のレベルが100ppmw未満であるか、またはその両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸着流出流における有機硫黄化合物の低減後のレベルが10ppmw未満であるか、または吸着流出流における有機窒素化合物の低減後のレベルが10ppmw未満であるか、またはその両方である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
フェノール類回収率が90%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抽出プロセスが、酸-塩基液体抽出プロセスまたはメタノール水溶液液体抽出プロセスを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
クレイが、ベントナイトおよびHCl活性化ベントナイトのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ゼオライトが、HZSM-5ゼオライト、およびHBETAゼオライトのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
吸着プロセスが、第3の吸着剤を含む第3の吸着ゾーンをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第3の吸着剤が、第1の吸着剤および第2の吸着剤とは異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の吸着剤のクレイが、ベントナイトおよびHCl活性化ベントナイトのうちの1つまたは複数を含み、第2の吸着剤のゼオライトが、HZSM-5ゼオライトおよびHBETAゼオライトのうちの1つまたは複数を含み、第3の吸着剤が、HZSM-5ゼオライト、HBETAゼオライト、シリカゲル、セピオライト、およびフラー土のうちの1つまたは複数を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
吸着プロセスが、第3の吸着剤を有する第3の吸着ゾーンをさらに含み、第1の吸着剤がHCl活性化ベントナイトを含み、第2の吸着剤がHZSM-5ゼオライトを含み、第3の吸着剤がフラー土またはセピオライトのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1の吸着剤ゾーンと第2の吸着剤ゾーンが別の容器内にある、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の吸着剤ゾーンおよび第2の吸着剤ゾーンが1つの容器内にあり、第1の吸着剤ゾーンが第2の吸着剤ゾーンの上方に配置されているか、または第2の吸着剤ゾーンが第1の吸着剤ゾーンの上方に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
粗フェノール流が、上向流または下向流で吸着剤床を通過する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
吸着流出流が無色である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
粗フェノール流が石炭由来の供給流の一部を含み、一部が約300℃以下の沸点を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
粗フェノール流が、低温コールタール流、中温コールタール流、高温コールタール流、クレゾール酸流、または粗フェノール混合物のうちの1つまたは複数の一部を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
第1の吸着ゾーンおよび第2の吸着ゾーンのうちの少なくとも1つが、固定床、流動床、移動床および回転床のうちの少なくとも1つを備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
石炭由来の粗フェノール類から汚染物質を除去する方法であって、
抽出プロセスを使用して、石炭由来の粗フェノール類を含む粗フェノール流から有機硫黄化合物および有機窒素化合物を除去し、粗フェノール流と比較して有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数のレベルが低減された抽出流出流を形成するステップであって、抽出プロセスが、酸-塩基液体抽出プロセス、およびメタノール水溶液液体抽出プロセスのうちの1つまたは複数を含む、ステップと、
第1の吸着剤を有する第1の吸着ゾーンおよび第2の吸着剤を有する第2の吸着ゾーンを含む吸着プロセスを使用して、抽出流出流から有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数の一部を除去し、抽出流出流と比較して有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数のレベルが低減された吸着流出流を形成するステップであって、第1の吸着剤が、ベントナイト、HCl活性化ベントナイト、シリカゲル、セピオライト、およびフラー土のうちの1つまたは複数を含み、第2の吸着剤が、HZSM-5ゼオライト、およびHBETAゼオライトを含むステップと、を含む、方法。
【請求項20】
石炭由来の粗フェノール類から汚染物質を除去する方法であって、
抽出プロセスを使用して、石炭由来の粗フェノール類を含む粗フェノール流から有機硫黄化合物および有機窒素化合物を除去し、粗フェノール流と比較して有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数のレベルが低減された抽出流出流を形成するステップと、
吸着剤を有する少なくとも1つの吸着ゾーンを含む吸着プロセスを使用して、抽出流出流から有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数の一部を除去し、抽出流出流と比較して有機硫黄化合物および有機窒素化合物のうちの1種または複数のレベルが低減された吸着流出流を形成するステップであって、吸着剤が、ベントナイト、HCl活性化ベントナイト、シリカゲル、セピオライト、フラー土のうちの1つまたは複数、およびHZSM-5ゼオライト、HBETAゼオライトのうちの1つまたは複数の混合物を含むステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]低・中温コールタールは、特に300℃未満の留分において、相当量の貴重なフェノール類を含有している。フェノール混合物(粗フェノール類)は、水酸化ナトリウム水溶液で抽出後に強無機酸で中和する方法、選択的溶媒抽出法、イオン交換樹脂吸着法などのさまざまな物理的および化学的方法を用いて、留分から抽出され得る。
【0002】
[0002]通常、低・中温コールタールの窒素分および硫黄分は、どちらも1.0%以下である。上記の抽出法は、粗フェノール類から有機硫黄化合物および有機窒素化合物の一部を除去するのに有効である。粗フェノール類中に残存する微量の有機硫黄化合物および有機窒素化合物は、除去されなければならない。これは、例えば、触媒による脱アルキル化およびトランスアルキル化によって、価値の低いフェノール系化合物がより価値の高いフェノール類および芳香族に変換される下流のアップグレードプロセスにおいて、有機硫黄化合物および有機窒素化合物が触媒毒として作用するためである。
【0003】
[0003]工業的には、油から有機窒素および有機硫黄を除去するために最も一般的に利用される方法は水素化処理である。しかし、水素化処理は窒素および硫黄を除去するための選択的なプロセスではない。水素化脱窒素(HDN)および水素化脱硫(HDS)に加えて、水素化脱金属(HDM)、水素化脱酸素(HDO)、水素化脱芳香族(HDA)、オレフィン飽和を含む他のプロセスも並行して起こる。油中に最も多く含まれるヘテロ原子(S、N、O)のうち、窒素は水素化処理による除去が最も困難である。加えて、HDOおよびHDAはどちらもフェノール類を破壊する。窒素は除去が最も困難であり、水素化処理によってフェノール類が破壊されるため、フェノール類から窒素系汚染物質を除去するのは良い手法ではないと認識されている。「Simultaneous hydrodenitrogenation and hydrodeoxygenation of model compounds in a trickle bed reactor」、Journal of Catalysis(1983)、81(2):335~346頁;「Hydrorefining Coal-Tar Naphthalene,Hydrogenolysis over cobalt molybdate catalyst removes impurities containing sulfur,oxygen,and nitrogen and yields a refined product of high purity」、Industrial and Engineering Chemistry、第53巻、第12号、1961年、993~6頁;「Hydrotreatment of model compounds with catalysts of NiW/Al and NiWP/Al to simulate low temperature coal tar oil」、RSC Adv.、2017年、7、54512頁。加えて、フェノール類からの硫黄系汚染物質除去は、触媒的水素化脱硫(HDS)では効率的でない。これは、HDSがクレゾールのようなフェノール類によって阻害されるためである。「Catalytic hydrodeoxygenation:II.Interactions between catalytic hydrodeoxygenation of m-cresol and hydrodesulfurization of benzothiophene and dibenzothiophene」、Journal of Catalysis(1983)、80(1):65~75頁。
【0004】
[0004]硫黄および/または窒素を除去するために、他のプロセスも使用されてきた。例えば、GB738177では、コールタール蒸留物中のフェノール類はアルカリ水溶液で抽出され、続いて得られたフェノレート溶液を以下の吸着剤のうちの1つまたは複数で処理して精製している:モンモリロナイトグループのクレイから製造される漂白土(フラー土、ベントナイト、ノントロナイト、バイデライト、ヘクトライト(Mg-ベントナイト))、アルミナ、Fe、MgまたはCaのいずれかの塩基性酸化物、水酸化物または炭酸塩、フェノレートアルカリ液残渣を石灰と加熱して得られる「苛性スラリー」。酸、特にCOで中和後、フェノール類は許容できる臭気のある透明な液体として得られた。窒素系汚染物質の除去は対象とされていない。
【0005】
[0005]別のプロセスがUS2,247,523に記載されている。フェノール類がコールタール蒸留物から水酸化ナトリウム水溶液に抽出された。続いて、得られたフェノレート溶液をフラー土、珪藻土、活性炭などの吸着剤で処理するステップが行われた。フェノレート溶液をHCl、HSO、COなどの酸で処理して、フェノール類を遊離させた。フェノール類はまだ着色しているか、少なくとも、特に光に当てて静置すると黒くなり、場合によっては不快な臭いがした。フェノール類の臭いおよび色は、少量のホルムアルデヒドの添加、およびその後の減圧蒸留によって最終的に改善された。窒素および硫黄系汚染物質の除去は対象とされていない。
【0006】
[0006]US2,744,938には、酸化によって変色したアルキルフェノールを脱色するプロセスが記載されている。このプロセスは、超大気圧下において水素の存在下、約40~約150℃の温度で、溶媒中アルキルフェノールの溶液を、活性炭、アルミナ、クレイおよびシリカゲルからなる群から選択される吸着剤と接触させるステップを伴う。窒素および硫黄系汚染物質の除去は対象とされていない。
【0007】
[0007]CN102188962は、石炭ベースのフェノール類を精製するための触媒吸着剤を開示している。この触媒吸着剤は、以下の活性成分を含む:カオリナイト0~99質量%、アクティブクレイ15~99質量%、セピオライト0~20質量%、珪藻土0~45質量%、モルデナイト0~80質量%、およびZSMゼオライト0~99質量%。得られた最高の結果では、硫黄分が約1000ppmから27ppmに低減した(97.3%の硫黄除去)。窒素分の低減については言及されていない。
【発明の概要】
【0008】
[0008]したがって、コールタールから粗フェノール類を回収し、粗フェノール類から窒素および硫黄系汚染物質を除去し、粗フェノール類を効率的にアップグレードすることができるプロセスが必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009]本発明のプロセスの一実施形態を示す図である。
図2】[0010]吸着前の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
図3A】[0011]ベントナイト-HClを用いた吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
図3B】[0012]HZSM-5ゼオライトを用いた吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
図4A】[0013]セピオライトを用いた吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
図4B】[0014]HZSM-5を用いた吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
図5A】[0015]セピオライトを用いた吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
図5B】[0016]ベントナイト-HClを用いた吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
図6A】[0017]フラー土を用いた吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
図6B】[0018]ベントナイト-HClを用いた吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0019]本発明のプロセスは、石炭由来のフェノール類から汚染物質を除去する方法を提供する。窒素化合物は、酸素化合物および硫黄化合物と比較して反応性が非常に低い。また、窒素化合物は触媒の活性部位に強く吸着して、粗フェノール類のアップグレードプロセスを妨げる。
【0011】
[0020]抽出プロセスに続いて吸着プロセスを組み合わせることで、硫黄および窒素のレベルが100ppmw未満、場合によっては10ppmw未満の、よりクリーンな粗フェノール類を、石炭由来の供給流から調製できることが発見された。
【0012】
[0021]低温コールタール、中温コールタール、高温コールタール、クレゾール酸、または粗フェノール混合物などの石炭由来の供給流は、フェノール、アルキルフェノール類(メチルフェノール類(クレゾール)、エチルフェノール類、ジメチルフェノール類(キシレノール)、プロピルフェノール類、ブチルフェノール類、メチルエチルフェノール類など)、および重質アルキルフェノール類(インダノール、ナフトールなど)を含有する。コールタールは石炭を乾留・ガス化するプロセスによって生成され、該プロセスで用いられる温度に基づいて分類される(400~600℃(低温)、600~1000℃(中温)、1000℃超(高温))。クレゾール酸は、フェノールとアルキルフェノール類の組み合わせを指す総称であり、例えば石炭または石油のいずれの処理からも得られ得る。粗フェノール混合物は、コールタール油の処理、および例えばコークス炉、低温炭化、水素化プラントからのフェノール含有廃棄物の精製によって得られ得る。供給流の組成は、その供給源によって異なる。
【0013】
[0022]石炭由来の供給流は、さまざまな流れへと分離され得る。好適な分離プロセスは、蒸留、酸/塩基抽出、溶媒抽出などを含むが、これらに限定されるものではない。粗フェノール流は、石炭由来の供給流の一部を含んでもよい。粗フェノール流は、低温コールタール流、中温コールタール流、高温コールタール流、クレゾール酸流、または粗フェノール混合物のうちの1つまたは複数の一部を含んでもよい。粗フェノール流は、約300℃以下の沸点を有してもよい。例えば、粗フェノール流は、例えば約300℃以下の沸点を有する低温または中温コールタール蒸留物流の一部を含んでもよい。
【0014】
[0023]粗フェノール流は、抽出プロセスに供され、不純物(有機窒素、有機硫黄、および中性油)を最小限しか含まない抽出流出流を生成し、その後の吸着プロセスを容易にする。コールタール蒸留物(例えば、約300℃以下)からフェノール系化合物を効果的に分離するために、液-液抽出法が使用されてもよい。好適な液-液抽出プロセスは、酸-塩基液体抽出プロセスおよびメタノール水溶液液体抽出プロセスを含むが、これらに限定されるものではない。メタノール水溶液抽出は、より安全かつ操作が容易であるが、窒素および硫黄系汚染物質除去には酸/塩基液体抽出がより効果的であると結論付けられている。抽出には、エタノール、プロパノール、グリコール、アルコールアミンなどを含むが、これらに限定されるものではない他の液体が使用されてもよい。窒素および/または硫黄系汚染物質除去の観点からは、これら2つの抽出法は、フェノール類を破壊しないため、水素化処理よりも優れている。
【0015】
[0024]いくつかの実施形態において、酸-塩基抽出プロセスは、コールタール蒸留物流中の有機窒素を100ppmw未満に低減し、有機硫黄を100ppmw未満、または50ppmw未満に低減する。コールタール蒸留物流またはその芳香族系溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン)中溶液は、塩基性水溶液(例えば、3M水酸化ナトリウム水溶液)で複数回抽出される。次いで、残留する中性およびアルカリ性のコールタール成分を除去するため、合わせた抽出液がヘキサンとジクロロメタンの80:20混合液で洗浄される。酸性溶液(例えば塩酸、硫酸)で酸性化した後、粗フェノールは油として回収されるか、フェノール類回収率を上げるため、ジクロロメタンで複数回抽出される。溶媒を除去すると、粗フェノールが油として得られる。
【0016】
[0025]抽出プロセスに続いて吸着プロセスを行い、残存する微量の、除去が困難な(refractory)窒素および硫黄系汚染物質を除去して、流れのさらなる処理に必要な、汚染物質の低いレベルを得る。2つ以上の吸着剤ゾーンを使用することにより、改善された吸着が達成され得ることが発見されている。少なくとも2つの異なる吸着剤ゾーンを設けることができる。第1の吸着剤ゾーンはクレイを含み、第2の吸着剤ゾーンはゼオライトを含む。吸着剤ゾーンの順序は交換可能である。
【0017】
[0026]吸着プロセスは、室温~約90℃の範囲の温度で、大気圧または超大気圧下において、数時間~数日間、振とう機またはカラムで実施されてもよい。
[0027]第1の吸着剤ゾーンは、約20%以上、または約30%以上、または約40%以上、または約50%以上、または約60%以上、または約70%以上、または約80%以上、または約90%以上、または約95%以上の、1種または複数のクレイを含む。好適なクレイは、ベントナイト、HCl活性化ベントナイト、シリカゲル、セピオライト、およびフラー土を含むが、これらに限定されるものではない。
【0018】
[0028]第2の吸着剤ゾーンは、約20%以上、または約30%以上、または約40%以上、または約50%以上、または約60%以上、または約70%以上、または約80%以上、または約90%以上、または約95%以上の、1種または複数のゼオライトを含む。好適なゼオライトは、HZSM-5ゼオライト、およびHBETAゼオライトを含むが、これらに限定されるものではない。
【0019】
[0029]第3の吸着剤を含む第3の(またはそれ以上の)吸着剤ゾーンを設けることができる。第3の吸着剤は、1種または複数のクレイおよび/または1種または複数のゼオライトを含むことができる。第3の吸着剤ゾーンは、第1の吸着剤および/または第2の吸着剤とは異なる吸着剤を含むことができる。あるいは、第3の吸着剤は、第1の吸着剤または第2の吸着剤のいずれかと同じであってもよい。例えば、一実施形態において、第1の吸着剤のクレイは、ベントナイトおよびHCl活性化ベントナイトのうちの1つまたは複数を含むことができ、第2の吸着剤のゼオライトは、HZSM-5ゼオライトおよびHBETAゼオライトのうちの1つまたは複数を含むことができ、第3の吸着剤は、HZSM-5ゼオライト、HBETAゼオライト、シリカゲル、セピオライト、およびフラー土のうちの1つまたは複数を含むことができる。一実施例では、第1の吸着剤のクレイは、HCl活性化ベントナイトを含み、第2の吸着剤のゼオライトは、HZSM-5ゼオライトを含み、第3の吸着剤は、フラー土またはセピオライトのうちの1つまたは複数を含む。
【0020】
[0030]第1および第2の(および第3のまたはそれ以上の)吸着剤という呼称は、単にそれらを区別するためのものである。該呼称は、プロセスの中でどれが最初であるかを特定することを意味するものではない。言い換えれば、第1の吸着剤は第2の吸着剤の上流にあることもできるし、下流にあることもできる。第3の吸着剤は、第1の吸着剤と第2の吸着剤の両方の上流にあることも、両方の下流にあることも、その中間にあることもできる(すべての場合について、第1の吸着剤は第2の吸着剤の上流または下流にある)。
【0021】
[0031]第1および第2の吸着剤ゾーンは、単一の容器内に配置されていてもよく、異なる容器内に配置されていてもよい。第1および第2の吸着剤ゾーンが同じ容器内に配置されている場合、第1の吸着剤ゾーンが第2の吸着剤ゾーンの上方に配置されていてもよく、第2の吸着剤ゾーンが第1の吸着剤ゾーンの上方に配置されていてもよい。
【0022】
[0032]あるいは、第1および第2の吸着剤ゾーンが同じ容器内に配置されているとき、第3の吸着剤ゾーンが存在する場合には、第3の吸着剤ゾーンが第1の吸着剤ゾーンおよび/または第2の吸着剤ゾーンと同じ容器内に配置されていてもよく、別の容器内に配置されていてもよい。
【0023】
[0033]あるいは、2種以上の吸着剤の混合物を含む1つの吸着剤ゾーンを設けることができ、吸着剤は、クレイおよびゼオライトのうちの1つを含む。
[0034]第1の吸着ゾーンおよび/または第2の吸着ゾーンは、固定床、流動床、移動床および回転床のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
【0024】
[0035]粗フェノール流は、上向流または下向流で吸着剤床を通過させることができる。
[0036]抽出流出流は、200ppmw未満、または175ppmw未満、または150ppmw未満、または125ppmw未満、または100ppmw未満、または75ppmw未満、または50ppmw未満の有機硫黄化合物を有してもよい。抽出流出流は、1500ppmw未満、または1250ppmw未満、または1000ppmw未満、または750ppmw未満、または500ppmw未満、または250ppmw未満、または100ppmw未満の有機窒素化合物を有してもよい。有機硫黄分は、窒素および硫黄分析装置を使用して測定される。Elementar trace SN cube(Elementar Analysensysteme GmbH、Langenselbold、Germanyから入手可能)を使用し、ASTM D5453-16に従って硫黄分析を行う。有機窒素分は、窒素および硫黄分析装置を使用して測定される。Elementar trace SN cubeを使用し、ASTM D4629-17に従って窒素分析を行う。
【0025】
[0037]吸着流出流は、100ppmw未満、または75ppmw未満、または50ppmw未満、または40ppmw未満、または30ppmw未満、または25ppmw未満、または20ppmw未満、または15ppmw未満、または10ppmw未満の有機硫黄化合物を有してもよい。吸着流出流は、100ppmw未満、または75ppmw未満、または50ppmw未満、または40ppmw未満、または30ppmw未満、または25ppmw未満、または20ppmw未満、または15ppmw未満、または10ppmw未満の有機窒素化合物を有してもよい。フェノール系化合物自体は無色であるため、粗フェノール流に色がついていることは、粗フェノール中に窒素および/または硫黄による汚染がある証拠である。吸着流出流は、目視判定を用いて無色であり得るが、これは有機窒素および/または有機硫黄化合物のレベルが低減されていることを示す。
【0026】
[0038]第1の吸着剤がHCl活性化ベントナイトであり、第2の吸着剤がH-ZSM5であり、第3の吸着剤がフラー土である吸着プロセス(抽出の後)は、無色の吸着剤流出流を生成した。対照的に、同じ3種の吸着剤を1つの混合床は、吸着剤流出流の色を完全には排除しなかった。しかし、このレベルの窒素および硫黄系汚染物質が許容される下流プロセスが存在する場合がある。
【0027】
[0039]本プロセスは、75%以上、または80%以上、または85%以上、または90%以上、または92%以上、または93%以上、または94%以上、または95%以上のフェノール類回収率をもたらし得る。これは、フェノール類の90%超が破壊される水素化処理プロセスと比較されてもよい。
【0028】
[0040]フェノール類回収率は、以下の式:
【0029】
【数1】
【0030】
によって計算される。
[0041]例えば、ベントナイト-HCl/H-ZSM5/フラー土を用いた3ゾーン吸着プロセス後、明らかな組成変化は見られなかった。GC-MS分析を利用して、吸着プロセス前後におけるフェノール類組成の変化を測定した。
【0031】
[0042]図1はプロセス100を示す。コールタールまたは粗フェノール供給流105は、1つまたは複数の蒸留塔110で1つまたは複数の流れへと分離される。例えば、コールタールまたは粗フェノール供給流105は、沸点が約150℃未満の流れ115、沸点が約150℃~約300℃の粗フェノール流120、および沸点が300℃超の流れ125に分けられてもよい。当業者であれば、コールタールまたは粗フェノール供給流105の他の分割が可能であることがわかるであろう。
【0032】
[0043]粗フェノール流120は、コールタールまたは粗フェノール供給流105中のフェノール系化合物の大部分を含有する。粗フェノール流120は、1つまたは複数の抽出カラム130へと送られる。有機硫黄化合物および有機窒素化合物の一部が粗フェノール流120から除去され、その結果、流入する粗フェノール流120と比較して有機硫黄化合物および有機窒素化合物のレベルが低減された抽出流出流135と、フェノール類のレベルが低減され、粗フェノール流120から除去された有機硫黄化合物および有機窒素化合物を含む油を含有する流れ140とが得られる。抽出プロセスは、酸-塩基液体抽出プロセスまたはメタノール水溶液液体抽出プロセスであり得る。
【0033】
[0044]抽出流出流135は、第1および第2の吸着剤を含有する第1および第2の吸着ゾーンを備える吸着ユニット145へと送られる。吸着ユニット145は、当該技術分野で知られているように、各々が1つまたは複数の吸着ゾーンを含有する1つまたは複数の吸着容器を含むことができる。吸着ユニットは、上記のように3つ以上の吸着ゾーンを備えてもよい。有機硫黄および有機窒素化合物の追加の部分が、吸着ユニット145において抽出流出流135から除去され、その結果、流入する抽出流出流135と比較して有機硫黄および有機窒素化合物のレベルが低減された吸着流出流150が得られる。
【0034】
[0045]吸着流出流150は、下流のフェノール類分離および/またはさらなる処理に送られてもよい。
[0046]吸着剤の組み合わせの選択は、コールタールの吸着剤選択性調査から得られた知見に基づいている。吸着は、ガスクロマトグラフィー-窒素化学発光検出器(GC-NCD)を使用して測定された。NCDは窒素特異的な検出ツールであり、N含有化合物のみがクロマトグラムに現れるため、コールタール試料中の残留する窒素系汚染物質の検出において非常に高感度で有用である。
【0035】
[0047]単一の吸着剤では、汚染物質を所望のレベルまで低減するのに十分な効率が得られないことが判明した。しかし、抽出流出液が同じ実験条件下で異なる単一の吸着剤に並行して供された場合、得られたGC-NCDクロマトグラムの比較から、これらの吸着剤の窒素系汚染物質吸着選択性に関する貴重な情報が得られた。
【0036】
[0048]例えば、図2は、酸-塩基抽出プロセスからの流出液である試料1の、吸着前のGC-NCDクロマトグラムを示す。
[0049]図3Aおよび図3Bは、それぞれベントナイト-HCl(図5Bおよび図6Bと同じ材料であるが、スケールが異なる)ならびにHZSM-5ゼオライト(図4Bと同じ材料であるが、スケールが異なる)を使用した吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムを示す。見てわかるように、残存するピークは異なっており、これは2種の吸着剤が異なる窒素分子を吸着することを意味する。
【0037】
[0050]図4Aおよび図4Bは、それぞれセピオライト(図5Aと同じ材料で同じスケール)およびHZSM-5ゼオライト(図3Bと同じ材料であるが、スケールが異なる)を使用した吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムを示す。残存するピークは2種の吸着剤で異なっており、これらの吸着剤が異なる窒素分子を吸着することを示す。
【0038】
[0051]図5Aおよび図5Bは、それぞれセピオライト(図4Aと同じ材料で同じスケール)およびベントナイト-HCl(図3Aおよび図6Bと同じ材料であるが、スケールが異なる)を使用した吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムを示す。残存するピークの違いは、これらの吸着剤が異なる窒素分子を吸着することを意味する。
【0039】
[0052]図6Aおよび図6Bは、それぞれフラー土およびベントナイト-HCl(図3Aおよび図5Bと同じ材料であるが、スケールが異なる)を使用した吸着後の試料1のGC-NCDクロマトグラムを示す。残存するピークの違いは、これらの吸着剤が異なる窒素分子を吸着することを意味する。
【0040】
[0053]メタノール水溶液抽出プロセスからの流出液を用いた実験でも、同様の結果が得られた。すなわち、異なる吸着剤が異なる窒素分子を吸着した。
[0054]吸着剤選択性調査は、異なる吸着剤が、抽出流出液から異なる窒素化合物を吸着することを示した。したがって、窒素系汚染物質除去において吸着剤の性能は相補的であり、吸着剤が組み合わせて使用されると相乗効果を生み出すことが示された。
【0041】
[0055]このことから、異なる吸着剤が異なる硫黄分子を吸着することが予想される。
[0056]便宜上、本プロセスがコールタールに使用される場合について以下に説明されるが、当業者であれば、石炭液化プロセスによって生成される液体を含むがこれに限定されない他の石炭由来の液体にも、本プロセスが使用され得ることを認識するであろう。
【実施例
【0042】
実施例1
[0057]抽出プロセス
[0058]コールタール留分(150~250℃、初期Nレベル4200ppmw、Sレベル700ppmw)の一部を酸/塩基抽出プロセスに供した。留分(2.3kg)をトルエン5.6kgに溶解した。得られたトルエン溶液を、3.0M NaOH水溶液で3回(1回目8.6kg、2回目6.3kg、3回目4.0kg)、室温で抽出した。合わせた水相をヘキサン/ジクロロメタン(4:1 v/v)で2回抽出し(各2.6kg)、残留する中性およびアルカリ性成分を除去した。6M塩酸(9.5kg)を撹拌下、10℃で水相にゆっくりと添加し、pH1.0まで酸性化した。酸性化した水相をジクロロメタンで3回抽出した(各5.3kg)。合わせたジクロロメタン溶液を蒸留(DI)水で2回(各0.5L)洗浄し、残留塩を除去した。ジクロロメタンおよび残留水をロータリーエバポレーションにより除去し、粗フェノール流(1.25kg、収率55重量%)を得た。
【0043】
[0059]酸/塩基抽出プロセスからの流出液は、窒素96ppmwおよび硫黄47ppmwを有していた(試料1)。
[0060]同じ留分の別の部分を、メタノール水溶液抽出プロセスに供した。留分(1.0kg)をメタノール4.0Lに溶解し、続いてDI水1.7Lを添加した。メタノールと水の体積比は70:30である。極性の低い成分(非フェノール系化合物)が溶けなくなったため、濁った混合物が生じた。メタノール水溶液中の濁った混合物をヘキサンで3回抽出した(各回1.0L)。メタノールおよび水をロータリーエバポレーションで除去すると、粗フェノール油が得られた。粗フェノール油をさらに1.0M塩酸で2回抽出し(各200mL)、アルカリ性有機窒素化合物を除去した。真空(10mmHg)中、50℃で4時間ロータリーエバポレーションを行い、残留水を除去した後、粗フェノール流(0.56kg、収率52重量%)が得られた。
【0044】
[0061]メタノール水溶液抽出プロセスからの流出液は、窒素1468ppmwおよび硫黄174ppmwを有していた(試料2)。
【0045】
実施例2
[0062]吸着プロセス
[0063]次いで、試料1および2を、種々の吸着剤を使用した吸着に供した。
【0046】
[0064]吸着剤の前処理:
[0065]酸活性化ベントナイト(ベントナイト-HCl):
[0066]ベントナイトクレイ40.0gに3.0M塩酸(HCl)80mLを添加した。得られた混合物を、穏やかに撹拌しながら70℃で12時間加熱した。濾過後、回収した固体を105℃で12時間乾燥した。乾燥したHCl処理ベントナイトは、使用前に粉砕し、30~50メッシュの大きさにした。乾燥したベントナイトを、窒素下で保存した。
【0047】
[0067]ゼオライト吸着剤(HZSM-5、HBETAなど)を30~50メッシュの大きさにし、540℃で3時間焼成した。すべての他の吸着剤は、使用前に150℃で1時間前処理し、吸着化合物を除去した。
【0048】
[0068]吸着プロセス1:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト-HCl 5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤セピオライト5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ5ppmwおよび6ppmwである無色の油が得られた。
【0049】
[0069]吸着プロセス2:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト-HCl 5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤フラー土5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ8ppmwおよび6ppmwである無色の油が得られた。フェノール類回収率は93%であった。
【0050】
[0070]吸着プロセス3:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト-HCl、HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)およびフラー土(各5g)の混合物を添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して吸着剤混合物を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ42ppmwおよび10ppmwである淡褐色の油が得られた。フェノール類回収率は92%であった。
【0051】
[0071]吸着プロセス4:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト-HCl 5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤HBETA(Clariant社、HCZB150)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ18ppmwおよび9ppmwである淡黄色の油が得られた。
【0052】
[0072]吸着プロセス5:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト-HCl 5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ29ppmwおよび15ppmwである淡褐色の油が得られた。フェノール類回収率は95%であった。
【0053】
[0073]吸着プロセス6:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ62ppmwおよび22ppmwである淡褐色の油が得られた。
【0054】
[0074]吸着プロセス7:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤シリカゲル5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ42ppmwおよび12ppmwである淡褐色の油が得られた。
【0055】
[0075]吸着プロセス8:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤シリカゲル5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去した後、第4の吸着剤フラー土5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ15ppmwおよび4ppmwである無色の油が得られた。フェノール類回収率は93%であった。
【0056】
[0076]吸着プロセス9:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤HBETA(Clariant社、HCZB150)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ26ppmwおよび9ppmwである淡褐色の油が得られた。
【0057】
[0077]吸着プロセス10:試料1(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤HBETA(Clariant社、HCZB150)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去した後、第4の吸着剤フラー土5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ17ppmwおよび5ppmwである無色の油が得られた。
【0058】
[0078]吸着プロセス11:試料2(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト-HCl 5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤シリカゲル5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去し、溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ403ppmwおよび96ppmwである褐色の油が得られた。
【0059】
[0079]吸着プロセス12:試料2(10.0g)をトルエン30.0gに溶解し、続いてベントナイト-HCl 5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第1の吸着剤を除去した後、第2の吸着剤HZSM-5(Zeolyst社、CBV3024E)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第2の吸着剤を除去した後、第3の吸着剤シリカゲル5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して第3の吸着剤を除去した後、第4の吸着剤HBETA(Clariant社、HCZB150)5.0gを添加した。得られた混合物を2~24時間振とうさせた。濾過して溶媒を除去した後、NおよびSのレベルがそれぞれ299ppmwおよび59ppmwである褐色の油が得られた。
【0060】
[0080]
【0061】
【表1】
【0062】
[0081]
【0063】
【表2】
【0064】
[0082]酸/塩基抽出プロセスと70%メタノール水溶液抽出プロセスは、コールタールからのフェノール類の抽出において同等であるが、窒素および硫黄系汚染物質の除去効率の観点からは、酸/塩基抽出プロセスがメタノール水溶液抽出プロセスよりも大いに優れている。
【0065】
[0083]窒素および硫黄系汚染物質の除去効率に最も優れた吸着剤の組み合わせは、ベントナイト-HCl/HZSM-5/フラー土およびベントナイト-HCl/HZSM-5/セピオライトであった。どちらの組み合わせも、窒素および硫黄系汚染物質のレベルを10ppm未満に低減させた。
【0066】
[0084]用語「約」は、値の10%以内、または5%以内、または1%以内を意味する。
[0085]前述の発明の詳細な説明において、少なくとも1つの例示的な実施形態が提示されたが、膨大な数の変形例が存在することが理解されるべきである。また、例示的な一実施形態または例示的な複数の実施形態は例に過ぎず、本発明の範囲、適用性、または構成をいかなる形でも限定することが意図されるものではないことも理解されるべきである。むしろ、前述の詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に記載された要素の機能および配置においてさまざまな変更がなされてもよいことが理解される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【国際調査報告】