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▶ メネギニ トーマスの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-15
(54)【発明の名称】消毒剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/10 20060101AFI20240508BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20240508BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240508BHJP
   A01N 37/04 20060101ALI20240508BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20240508BHJP
   A23L 3/3508 20060101ALI20240508BHJP
   A23L 3/349 20060101ALI20240508BHJP
   A23L 3/3562 20060101ALI20240508BHJP
   A23L 3/3526 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A01N37/10
A01N37/36
A01P3/00
A01N37/04
A01N25/30
A23L3/3508
A23L3/349
A23L3/3562
A23L3/3526
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023561708
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022060342
(87)【国際公開番号】W WO2022223573
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021002147.9
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021002640.3
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523379498
【氏名又は名称】メネギニ トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】メネギニ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フィーガー マルセル
(72)【発明者】
【氏名】メネギニ ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B021
4H011
【Fターム(参考)】
4B021LA44
4B021LW09
4B021MC01
4B021MK02
4B021MK14
4B021MK16
4B021MK17
4B021MK20
4B021MK22
4B021MK28
4B021MP01
4H011AA01
4H011BA05
4H011BB06
4H011BC03
4H011BC04
4H011BC18
4H011DA13
4H011DA16
4H011DA17
4H011DA18
(57)【要約】
本発明は、消毒剤に関し、この消毒剤は、クエン酸、乳酸、コハク酸、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機酸と、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、若しくは安息香酸カルシウム、又はこれらの混合物からなる群から選択されるベンゾエートと、水に可溶性又は乳化性又は分散性である1種以上の非イオン性及び/又は両性活性剤と、を含み、消毒剤は、水性液体組成物又は固体組成物の中に存在し、1種以上の非イオン性界面活性剤が水性液体組成物中に1.1~3重量%の範囲の量で、及び/又は1種又はそれ以上の両性界面活性剤が1.1~30重量%の範囲の量で存在するが、非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤以外の他の界面活性剤も、C-C-(イソ)アルコールも存在しない。消毒剤は、殺細菌作用、殺真菌作用(殺酵母作用)及び殺ウイルス作用が改善されており、これは最大30秒の極めて迅速な接触時間で行われる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒剤であって、
クエン酸、乳酸、コハク酸、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機酸と、
安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム又は安息香酸カルシウム、又はこれらの混合物からなる群から選択されるベンゾエートと、
水に可溶性又は乳化性又は分散性である非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤からなる群から選択される1種以上の界面活性剤と、
を含み、
前記消毒剤は、水性液体組成物又は固体組成物の中に存在し、
前記消毒剤の水性液体組成物は、前記1種以上の非イオン性界面活性剤を1.1~3重量%の範囲の量で含有し、及び/又は前記1種以上の両性界面活性剤を1.1~30重量%の範囲の量で含有し、
ただし、前記非イオン性及び/又は両性界面活性剤以外の他の界面活性剤は存在せず、C-C-(イソ)アルコールは存在せず、化合物クロルヘキシジンジグルコン酸塩、カプリル酸ソルビタン及びフェノキシエタノールを含まない、消毒剤。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤は、脂肪アルコールアルコキシレート、例えばポリアルキレングリコールエーテル、脂肪アルコールプロポキシレート、脂肪アミンアルコキシレート、例えば脂肪アミンエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸ポリグリコールアミド、ポリグリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエステル、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルカノールアミド、グリセリンアルキルエステル、又は糖界面活性剤、例えばアルキルグリコシド、アルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシド(APG)、メチルグルコシドエステル、エチルグルコシドエステル、N-メチルグルカミド、サッカロースエステルから、それぞれ単独で又はこれらの混合物からなる群から選択されることと、
好ましくは、脂肪アルコールアルコキシレート又は糖界面活性剤、例えばアルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシド(APG)で、それぞれ単独で又はこれらの混合物であることと、
特に好ましくは、ラウリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、セチルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、セチルステアリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、ステアリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル若しくはオレイルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、ポリソルベート、ソルビタンエステル、又はアルキルポリグリコシド若しくはアルキルポリグルコシドからなる群から選択されるポリアルキレングリコールエーテルで、それぞれ単独で又はこれらの混合物であることと、
極めて特に好ましくは、ラウリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、C-C11パレス-8、C-C10アルキルポリグリコシド又はグルコシド、又はソルビタンエステルで、それぞれ単独で又はこれらの混合物であること、
を特徴とする、請求項1に記載の消毒剤。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤は、≧7、特に≧12のHLB値を有すること、又は40℃以上の曇点(100mLの水中1g)を有すること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の消毒剤。
【請求項4】
前記1種以上の両性界面活性剤が、ベタイン、特にコカミドプロピルベタイン、スルタイン、特にコカミドプロピルヒドロキシスルタイン、アミンオキシド、特にC12-C14アミンオキシド、ココアンホジ酢酸二ナトリウム又はアンホ酢酸塩、好ましくはアミンオキシド、非常に特に好ましくはC12-C14アミンオキシドからなる群から選択されること
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項5】
前記消毒剤は、水性液体組成物中に存在するか、又は濃縮物の形態の固体組成物として存在し、特に溶液、乳濁液、ローション、スプレー、ゲル、フォームとして、又は濃縮物の形態の固体として存在し、前記濃縮物は水溶性であるか、水中で乳化性又は分散性であること
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項6】
前記消毒剤中に、固体組成物の形態で前記1種以上の有機酸が、用途に応じて、5~85重量%、10~85重量%、15~85重量%、20~85重量%、25~85重量%又は30~85重量%から選択される量で存在すること、
又は
前記消毒剤中に、水性液体組成物の形態で前記1種以上の有機酸が、用途に応じて、0.1~15重量%、好ましくは0.5~12重量%から選択される量で存在すること
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項7】
前記消毒剤中に、固体組成物の形態で前記1種以上のベンゾエートが、用途に応じて、1.5~30重量%、2.0~29重量%、3.0~28重量%、又は4.0~27重量%、好ましくは5.0~26.0重量%から選択される量で存在すること、
又は
前記消毒剤中に、水性液体組成物の形態で前記1種以上のベンゾエートが、用途に応じて、0.1~5.0重量%、0.15~5.0重量%、又は0.2~4.5重量%、好ましくは0.25~3.5重量%から選択される量で存在すること
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項8】
前記消毒剤中に、固体組成物の形態で前記1種以上の非イオン性界面活性剤が、用途に応じて、1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%、又は7.5~22重量%から選択される量で存在すること、
又は
前記消毒剤中に、水性液体組成物の形態で前記1種以上の非イオン性界面活性剤が、用途に応じて、1.1~3.0重量%又は1.1~2.9重量%又は1.1~2.8重量%又は1.1~2.7重量%又は1.1~2.6重量%又は1.1~2.5重量%又は1.1~2.4重量%又は1.1~2.3重量%又は1.1~2.2重量%又は1.1~2.1重量%又は1.1~2.0重量%又は1.1~1.9重量%又は1.1~1.8重量%又は1.1~1.7重量%又は1.1~1.6又は1.1~1.5重量%から選択される量で存在し、指定された範囲の下限も、1.15重量%又は1.2重量%又は1.25重量%又は1.3重量%又は1.35重量%又は1.4重量%であり得ること
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項9】
前記消毒剤中に、固体組成物の形態で前記1種以上の両性非イオン性界面活性剤が、用途に応じて、1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%、又は7.5~22重量%から選択される量で存在すること、
又は
前記消毒剤中に、水性液体組成物の形態で前記1種以上の両性非イオン性界面活性剤が、用途に応じて、1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%又は7.5~22重量%から選択される量で存在すること
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項10】
前記消毒剤中に1種以上の添加剤が含まれ、前記1種以上の添加剤は、
好ましくは2~10個の炭素原子を有するグリコール、特にブチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、カプリグリコール及び1,2-ヘキサンジオールと、グリシン及びグリセロールと、並びにこれらの混合物から選択される1種以上の湿度調節剤であって、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%の量で存在する、1種以上の湿度調節剤、及び/又は
ショウガ・マセレート又は活性成分6-ギンゲロール、及び/又は
1種以上の芳香剤、及び/又は
1種以上の可溶化剤、及び/又は
特にKCl、NaCl及び/又はLiClから選択される1種以上の一価の塩
から選択されること
を特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項11】
前記固体組成物が、濃縮物として希釈された形で水性液体組成物として存在し、前記水性液体組成物中に、前記1種以上の非イオン性界面活性剤が1.1~3重量%の量で、及び/又は前記1種以上の両性界面活性剤が1.1~30重量%の量で存在すること
を特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項12】
1種以上の非イオン性界面活性剤が存在する場合、1種以上の湿度調節剤が同時に存在することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項13】
前記消毒剤は、固体組成物の中に存在し、前記固体組成物は、
5~85重量%の有機酸、
1.5~30重量%のベンゾエート、
1.1~30重量%の非イオン性界面活性剤及び/又は1.1~30重量%の両性界面活性剤、
0~2.0重量%のショウガ・マセレート又は6-ギンゲロール、
0.1~10.0重量%の1種以上の湿度調節剤、
0~2.0重量%の1種以上の香料、
0~25.0重量%の、特にNaCl、KCl及び/又はLiClから選択される1種以上の一価の塩、及び
0~10重量%の可溶化剤、
を含むこと、又はそれらからなること、
又は前記消毒剤は、水性液体組成物として存在し、前記水性液体組成物は、
0.1~15重量%、好ましくは0.5~12重量%の有機酸、
0.1~5.0重量%、好ましくは0.25~3.5重量%のベンゾエート、
1.1~3,0重量%の非イオン性界面活性剤及び/又は1.1~30重量%の両性界面活性剤、
0.1~10.0重量%の1種以上の湿度調節剤、
0~2.0重量%の1種以上の香料、
0~25.0重量%の、好ましくは0.5~5重量%の、特にNaCl、KCl及び/又はLiClから選択される1種以上の一価の塩、
0~10重量%の可溶化剤、
及び
67.0~98.7重量%の水
を含むこと、又はそれらからなること
を特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項14】
手、食品、表面を消毒するために、及びin situ生産殺菌プロセスにおいて、請求項1~13のいずれか一項に記載の消毒剤の使用であって、特に、前記消毒剤との30秒の接触時間が、その完全な消毒作用を示すのに十分である、消毒剤の使用。
【請求項15】
大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、プルラリバクター・ゲルゴビエ、カンジダ・アルビカンス及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンシスに対する請求項14に記載の消毒剤の使用であって、前記消毒剤との30秒の接触時間後に、バイ菌負荷が検出限界未満に減少する、消毒剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒剤及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的なウイルスパンデミックは、細菌負荷及びウイルス負荷を低減するための薬剤が非常に重要であることを示した。したがって、特に手の消毒剤、食品消毒剤及び表面消毒剤として有効な消毒剤に対する需要が増している。
【0003】
消毒剤は、通常、表面、器具、食品又は皮膚を消毒し、水を殺菌するための化学組成物又は化合物である。主に治療すべき病原体、特に細菌(Bakterien)、ウイルス、真菌等に応じて、消毒剤は、殺細菌、殺ウイルス剤又はウイルス不活性化剤及び殺真菌剤(殺真菌剤)活性を有する。ここで消毒とは、所定の試験プロセスで検査されるバイ菌の減少を意味し、増殖可能なバイ菌(Keime)、すなわち、1グラム当たりのコロニー形成単位(cfu/g)を調査し、バイ菌の減少を観察する。
【0004】
消毒剤には、幅広い用途がある。これらは、臨床分野、例えば、病院又は医療行為において、公共分野、例えばプールにおいて、又は個人において、例えば化粧品又は家庭において使用することができ、数年来、承認プロセスの対象となっている。個々の製品の使用は、特定のグループの人、例えば、特に有資格者に限定されることもある。
【0005】
多くの強力に有効な消毒剤の欠点は、それらが健康に有害なバイ菌を破壊するだけでなく、それらが使用される皮膚又は表面も損傷する可能性があることである。したがって、強力な消毒剤は、通常、例えば粘膜を刺激し、損傷し得る強力な酸化剤を含有する。対照的に、弱い消毒剤は、皮膚又は消毒すべき表面を損傷しないが、十分な殺菌作用を及ぼさない。したがって、バイ菌を迅速に、しかも持続的に破壊するが、手の消毒に使用しても長期的に皮膚細菌叢を著しく損なわない消毒剤を開発することは、常に関心を集めている。
【0006】
さらに、特に強力な消毒剤は、環境に悪影響を与える可能性がある。例えば、多くの消毒剤に含まれるフェノールは、水に生態毒性を及ぼし、水中での洗浄作用にとって重要な細菌種を破壊する。多くの消毒剤は、エッチング性であり、皮膚及び/又は粘膜を刺激し、可燃性であるか、又は爆発性であるか、又は他の家庭用洗浄剤との混合物として有毒塩素ガスを放出することがある。さらに、アレルギーを引き起こし得る毒性及び発癌性消毒剤も知られている。したがって、表面消毒だけでなく、手の消毒及び食品消毒にも無害に使用することができ、同時に手の皮膚へのバイ菌の定着を大幅に軽減できる肌に優しい消毒剤に対する大きな関心が寄せられている。これらが、例えば細菌、ウイルス及び真菌を死滅又は不活性化することが望ましい。これにより、さらに、人から人へのバイ菌移動を防止することができる。
【0007】
従来技術から多数の消毒剤が公知である。本明細書では、そのいくつかを取り上げ、詳細に簡単に説明する。
【0008】
例えば、pHを調節するために、キレート剤として、あるいは脱石灰化のために、クエン酸を含有する消毒剤が公知である。
【0009】
特許文献1は、医療分野のための、特に医師又は病院における使用のための消毒剤を記載しており、活性成分としてイソチアゾリン-3-オキシ及び/又はその誘導体又が含まれている。pHを約pH4.5~約pH10.5の範囲に調節するために、弱有機酸、例えば酢酸、クエン酸、尿酸、グルコン酸、アミノスルホン酸、イソチオン酸又はスルホフタル酸を添加する。
【0010】
Salveco社の特許文献2には、植物ベース及び再生可能性の化合物を含む植物由来の濃縮殺生物剤配合物を記載されており、これらの化合物は、完全に生物学的に分解される。これには、
・レモン果汁のクエン酸、ナナカマドの木のソルビン酸、植物の根又は根茎のシュウ酸、チコリ抽出物から選択される0.01%~20%のキレート剤と、
・0.03%~25%のグリコシド型、ポリグリセリンエステル又はソルビタン-エステル型の非イオン性界面活性剤と、
・ポリグリコシド及び/又はポリグリセリン型のポリエトキシル化/プロポキシル化アルキル及び/又はポリオールのカルボキシル酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、並びにアルキルカルボン酸塩及び/又はアルキル硫酸塩型の界面活性剤を形成する酸性の化学構造に関連するものから選択される0.03%~25%のアニオン性界面活性剤であって、6~20個の炭素原子を有する炭素鎖を有するアニオン性界面活性剤と、
・クエン酸、乳酸及びコハク酸から選択される0.1%~75%の少なくとも1種の有機酸と、
・A-ミント、N-ミント、G-ユーカリ等のエーテル油、植物性エッセンス、植物抽出物から選択される0.001%~8%の天然香料と、
を含む。しかしながら、ベンゾエート又は安息香酸は、ここには記載されていない。
【0011】
さらに、特許文献3には、食品加工産業における手及び表面を消毒するための消毒剤が開示され、この消毒剤は、クエン酸塩及び乳酸塩をベースとする有機酸及びエタノール等のアルコールを含む。これらの消毒剤は、殺菌効果がある。
【0012】
さらに、特許文献4には、手及び皮膚の消毒のための消毒剤が記載されており、この消毒剤は、それぞれ消毒剤全体に対して、以下の成分(a)、(b)、(c)及び(d)を有するが、微生物殺菌剤の消毒のためのさらなる消毒作用物質を含まない。
(a)40~90重量%のエタノール、イソプロピルアルコール又はこれらの混合物、
(b)0.1~2重量%の乳酸、
(c)0.01~2重量%のクエン酸、及び
(d)溶液中で亜鉛イオンを放出する亜鉛含有化合物の0.001~0.1重量%。しかしながら、亜鉛イオンは皮膚を乾燥させ、除去が困難な堆積物を残し得るので、皮膚への適用には不利である。亜鉛含有化合物、エタノール及びイソプロピルアルコールは、好ましくは、本発明の消毒剤中に含まれない。
【0013】
特許文献5には、水性ベースの消毒剤が記載されており、この消毒剤は、
a)少なくとも1種のアルキルアミン及び/又は少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物、及び
b)少なくとも1つの脂肪酸RCOOH及び/又はその塩
を含み、
Rは、少なくとも7個の炭素原子を有する基であることと、
また、B型肝炎ウイルスを不活性化するための消毒剤の使用についても記載されている。これらの成分の他にも、消毒剤は、場合により短鎖有機酸、例えば乳酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸又はそれらの塩を、アミン配合物を9.0~9.5の好ましいpH値に調整するために使用する。
【0014】
さらに、特許文献6は、脱石灰化、清浄化及び/又は消毒のための混合物に関し、これは、混合物の全量に対して、少なくとも25重量%のクエン酸及び混合物の全量に対して0.1~75重量%のリンゴ酸及び/又は酒石酸を含む添加剤混合物を含む。
【0015】
さらに、クエン酸を含む消毒剤は、ウイルス及び細菌に対しても使用される。
【0016】
例えば、特許文献7は、B型肝炎ウイルス、細菌芽胞及びレジオネラ・ニューモフィラを不活性化するための殺ウイルス、殺細菌及び殺胞子活性物質としてクエン酸を含有する水性消毒剤(任意に濃縮された形態)の、熱可逆性の医療器具及び機器ならびにその部品、透析装置及び表面の消毒における使用に関する。任意に、リンゴ酸及び/又は乳酸を添加することができる。
【0017】
さらに、特許文献8(Unilever N.V.の特許文献9)は、消費に適し、したがって、好ましくは食品及び飲料の製造に使用される消毒剤が記載されている。この消毒剤組成物は、
(a)C10-C18アルキルサルフェートのアルカリ金属塩及びジ(C-C10アルキル)スルホスクシネートのアルカリ金属塩から選択されるアニオン性界面活性剤と、
(b)クエン酸、リン酸、硫酸、塩酸、酢酸、グルコン酸、乳酸、プロピオン酸、リンゴ酸及び酒石酸から選択される酸と、
(c)水に容易に可溶で、ポリエトキシル化ソルビタンエステルを含む非イオン性界面活性剤と、
を含む。さらに、場合により安息香酸又は安息香酸ナトリウムを添加することもできる。本発明の消毒剤は、特許文献8とは対照的に、外部用途にのみ意図されている。安息香酸/安息香酸ナトリウムの使用は、単に任意であり、したがって、本発明からむしろ離れている。さらに、アニオン性界面活性剤は、本発明による消毒剤中に存在しない。さらに、特許文献8に記載されているような溶媒としてのアルコール、例えばイソプロパノール又はエタノールの使用は、本発明による消毒剤では望ましくない。
【0018】
さらに、防腐剤としてベンゾエートを含む組成物も知られている。
【0019】
例えば、特許文献10は、微生物の攻撃に対してより良好に食品、特に飲料を保護するための防腐剤の可溶化物を記載している。防腐剤の無水可溶化物であって、ソルビン酸及び/又は安息香酸並びに9~16のHLB値を有する1種以上の乳化剤、特にポリソルベートを含む。非解離酸のみが殺細菌作用を発現すべきであることが記載されている。
【0020】
以下の刊行物は、クエン酸及びベンゾエートを含むことができる抗菌活性組成物を記載している。
【0021】
非特許文献1では、スティックの形態又は水溶液の形態のスキンケア製品を提供している。この組成物は、とりわけ、安息香酸ナトリウム、クエン酸、ポリソルベート80、クエン酸芳香族及びにクロルヘキシジンジグルコン酸塩を含む。この組成物は、特にクロルヘキシジンジグルコン酸塩に基づいて抗菌作用を有する。しかしながら、本発明の消毒剤は、クロルヘキシジンジグルコン酸塩を含まない。
【0022】
特許文献11は、洗浄組成物を含むウェットティッシュを開示しており、これは、
・約0.12重量%~約1.0重量%のカプリル酸ソルビタンを含む防腐剤強化剤と、
・安息香酸又はその塩を含む防腐剤と、
・クエン酸-クエン酸緩衝系又はクエン酸と、
を含み、
洗浄組成物は、少なくとも97.1重量%の水を含み、防腐料及び防腐剤増強剤は、洗浄組成物の約0.24重量%~約1.12重量%を含み、洗浄組成物は、5未満のpH値を有し、洗浄組成物中の保存料と保存料増強剤との重量比は、約1:0.5~約1:5である。洗浄組成物は、さらなる成分として非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を有することができる。しかしながら、本発明の消毒剤には、カプリル酸ソルビタンを含まない。
【0023】
さらに、特許文献12には液体洗浄組成物が記載されており、この液体洗浄組成物は、
洗浄成分と、
抗菌系と、
を含み、この抗菌系は、
抗菌剤と、
特に、クエン酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、ギ酸、酪酸、プロピオン酸、吉草酸、リンゴ酸、シュウ酸、炭酸、タウリン等及びこれらの組み合わせの有機酸から選択される抗菌強化剤と、を含み、
抗菌剤と抗菌強化剤との重量比は、約0.30:1以上0.65:1以下である。抗菌剤は、フェノキシエタノールであり、このフェンオキシエタノールは、実施例によれば抗菌効果の必須成分とみなされる。非イオン性界面活性剤も同様に可能な成分として記載されている。例として挙げられる防腐剤は、とりわけ安息香酸ナトリウムである。しかしながら、フェノキシエタノールは、本発明の消毒剤中に存在しない。
【0024】
さらに、特許文献13は、局所的に抗菌作用を有する水性液体組成物に関し、この組成物は、
a)0.001~1重量%の界面活性剤と、
b)少なくとも1種のカルボン酸又はその塩、例えばクエン酸又は乳酸と、を含み、
この水性液体組成物は、約4.7以下のpHを有する。ベンゾエート、特に安息香酸ナトリウムが防腐剤として記載される。防腐剤は、好ましくは約1.5重量%までの量で存在すべきであるが、この実施例においては、0.2重量%までの安息香酸ナトリウムしか使用していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】独国特許出願公開第3702546号明細書
【特許文献2】欧州特許第2677867号明細書
【特許文献3】特開2002-253188号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第2135507号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10223934号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102007045210号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第4200066号明細書
【特許文献8】国際公開第96/097761号パンフレット
【特許文献9】欧州特許第078324号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第102006010809号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2020/0120928号明細書
【特許文献12】国際公開第2018/022016号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2020/165566号パンフレット
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】MEDOFFICE: Med-Cover Lemon Glycerin Swab Stick, 6, Material Safety Data Sheet,イズミル,トルコ,2018年
【発明の概要】
【0027】
本発明は、細菌、ウイルス、真菌等によるバイ菌負荷を著しく低減し、手指消毒、食品の消毒及び表面消毒にも適している改善された消毒剤を提供することを課題とする。さらに、消毒剤は、できるだけ肌に優しく、環境に適合した成分を含み、かつ強い酸化剤、例えば塩素、過酸化水素又はC-C-(イソ)アルコールを含有してはならない。さらに、即効性のある消毒作用と同時に、幅広い殺細菌作用スペクトルを有するべきである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上記の課題は、本発明によれば、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を示す。
【0029】
特に、消毒剤が提供され、
クエン酸、乳酸、コハク酸、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機酸と、
安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム又は安息香酸カルシウム、又はこれらの混合物からなる群から選択されるベンゾエートと、
水に可溶性又は乳化性又は分散性である非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤からなる群から選択される1種以上の界面活性剤と、
を含み、
前記消毒剤は、水性液体組成物又は固体組成物の中に存在し、
前記消毒剤の水性液体組成物は、前記1種以上の非イオン性界面活性剤を1.1~3重量%の範囲の量で含有し、及び/又は前記1種以上の両性界面活性剤を1.1~30重量%の範囲の量で含有し、
ただし、前記非イオン性及び両性界面活性剤以外の他の界面活性剤は存在せず、特にアニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤は存在しない。さらに、C-C-(イソ)アルコールは存在すべきではなく、化合物クロルヘキシジンジグルコン酸塩、カプリル酸ソルビタン及びフェノキシエタノールを含まない。
【0030】
-C-(イソ)アルコールとは、メタノール、エタノール、N-プロパノール及びイソプロパノールであると理解される。
【0031】
驚くべきことに、クエン酸、乳酸及び/又はコハク酸、ベンゾエート及び水溶性又は水分散性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の組み合わせは、特に手の消毒剤、食品消毒剤及び表面消毒剤における使用に有益で、消毒効果が大幅に向上することが見出された。実験は、この組み合わせが存在する場合に、消毒剤の特に高い有効性が得られるだけでなく、この作用も予期せぬ短時間で生じることを示した。これは、高度な細菌負荷、また場合によっては高度なウイルス負荷の危険性をできるだけ迅速に防止するために非常に重要である。したがって、検出限界を下回るバイ菌含有量へのバイ菌の減少は、30秒以内に達成され、これは、通常の実験室試験EN1650/EN13624、EN1275、EN1276/EN13727及びEN14476においても、EN1500/EN1499による使用試験においても検証することができた。
【0032】
消毒剤は、水性液体組成物として、又は固体組成物として、特に濃縮物の形態で存在してよい。例えば、消毒剤は、溶液、乳濁液、ローション、スプレー、ゲル、フォームであっても、又は固体であってもよい。固体は、可能な限り広く理解すべきであって、例えば粉末、顆粒及びデンプン、さらには固体の割合が高い固液混合物、例えば60重量%超、70重量%超又は75重量%超の固液混合物、すなわちペーストのような流動性でない固液混合物を含む。使用される固体組成物は、水溶性又は水に乳化又は分散可能な濃縮物であることが好ましい。使用する水としては、特に限定されず、例えば蒸留水、脱塩水、飲料水、水道水等が挙げられる。
【0033】
一般に、固体組成物中の消毒剤は、それぞれの使用のために濃縮物として水で希釈され、水性液体組成物が得られる。本発明によれば、水性液体組成物中には、1種以上の非イオン性界面活性剤が1.1~3重量%の量で存在し、及び/又は1種以上の両性界面活性剤が1.1~30重量%の量で存在する。これらの範囲は、消毒剤の効果にとって特に有利であることが判明した。
【0034】
以下に、本発明による消毒剤の個々の成分を詳細に説明する。
【0035】
本発明の消毒剤には、クエン酸、乳酸及び/又はコハク酸から選択される有機酸が使用される。
【0036】
本発明の消毒剤では、有機酸として、例えばクエン酸が用いられる。クエン酸は、無色の無臭固体であり、水に非常に容易に溶解する。これは、炭素骨格の3位にヒドロキシル基を有するトリカルボン酸であり、したがってヒドロキシカルボン酸でもあり、いわゆる果実酸に属する。クエン酸及びその塩は、例えば、食品の保存及び食品の酸性化剤又は酸調節剤として使用されている。これは、しばしば石灰溶解洗浄剤中でも使用される。
【0037】
本発明の消毒剤は、さらなる有機酸又は代替の有機酸として、乳酸を使用することができる。乳酸は、ヒドロキシカルボン酸であり、水と完全に混和する。これは、光学的に活性であり、製造に応じてD-又はL-乳酸又は両方の異性体の混合物、例えばラセミ体(両方の異性体の1:1混合物)が存在してもよい。乳酸は、例えば、化粧品、スキンクリーム及び、ニキビを治療する他の製品で使用される。
【0038】
本発明による消毒剤中で使用することができる追加又は代替の有機酸は、コハク酸である。コハク酸は、無色無臭の結晶性固体の形態で存在する脂肪族ジカルボン酸である。これは、水溶性であり、例えば食品添加剤として使用される。
【0039】
クエン酸、乳酸及びコハク酸から選択される2つ又は3つ全ての有機酸の混合物を使用することもできる。
【0040】
消毒剤が固体組成物の形態、特に濃縮物の形態である場合、1種以上の有機酸は、用途に応じて、好ましくは5~85重量%、10~85重量%、15~80重量%、20~85重量%、25~85重量%、好ましくは30~85重量%から選択される量で存在する。
【0041】
消毒剤が水性液体組成物の形態で存在する場合、1種以上の有機酸は、用途に応じて、好ましくは0.1~15重量%、又は0.15~14重量%、又は0.2~13重量%、好ましくは0.5~12重量%から選択される量で存在する。
【0042】
本発明による消毒剤の別の必要な成分は、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム又は安息香酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択されるベンゾエートである。
【0043】
安息香酸は、カルボキシ基を有するフェニル基からなる公知の芳香族カルボン酸である。安息香酸の塩は、ベンゾエートと呼ばれる。安息香酸は、水に難溶性である特徴的な臭いを有する無色固体である(20℃で3.4g/L)。これに対して、塩は水に容易に可溶である。安息香酸ナトリウム(E211)、ベンゼン酸カリウム(E212)又は安息香酸カルシウム(E213)の塩を防腐剤として使用する。それらの防腐特性のために、これらは、例えば食品産業及び化粧品において使用される。
【0044】
安息香酸の消毒作用は、特に安息香酸が完全に溶液中に存在する場合に発揮されることが判明した。この理由から、水に容易に溶解する安息香酸の塩が使用される。それらは、防腐剤としての作用はかなり緩やかであるため、手の消毒剤に殺菌剤として使用されることはなかった。
【0045】
固体組成物の形態の前記消毒剤中に、ベンゾエートの量は、用途に応じて、好ましくは1.5~30重量%、2.0~29重量%、3.0~28重量%、又は4.0~27重量%、好ましくは5.0~26.0重量%から選択される。
【0046】
水性液体組成物の形態の前記消毒剤中に、ベンゾエートの量は、用途に応じて、好ましくは0.1~5.0重量%、0.15~5.0重量%、又は0.2~4.5重量%、好ましくは0.25~3.5重量%から選択される。
【0047】
本発明による消毒剤の第三の必要な成分は、1種以上の界面活性剤であり、これは、1種以上の非イオン性界面活性剤及び/又は1種以上の非イオン性両性界面活性剤からなり、またそれぞれ水に可溶性又は乳化性又は分散性である非イオン性及び両性界面活性剤の混合物を含む。したがって、本発明によれば、1種以上の非イオン性界面活性剤が存在してもよく、そうでなければ他の界面活性剤は存在しない。代替として、1種以上の両性界面活性剤が存在してもよく、そうでなければ、他の界面活性剤が存在しない。1種以上の非イオン性界面活性剤と1種以上の両性界面活性剤との組み合わせが存在してもよく、そうでなければ、他の界面活性剤、例えばアニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤が存在しない。
【0048】
「非イオン性界面活性剤」とは、解離性官能基を有さないので、水溶液中でイオンを形成しない界面活性物質を意味する。これらは、極性及び非極性分子部分を有するが、電荷は有さず、したがって中性である。本発明で使用される非イオン性界面活性剤は、水溶性である。ここで、「水溶性」とは、非イオン性界面活性剤が水に溶解し、透明な溶液が生じることを意味する。しかしながら、非イオン性界面活性剤が水中で安定な形で乳化もしくは分散して存在する、すなわち非イオン性界面活性剤が水と混和性である乳濁液も生成することができる。水中の非イオン性界面活性剤の溶解度は、HLB値(Hydrophil-Lipophil-Balance:親水性-親油バランス)に基づいて決定することができる。HLB値は、非イオン性界面活性剤中の極性部分と非極性部分との質量比を以下の式により示す。
HLB=20*(Mhydrophil/Mtotal
式中、Mhydrophilは、非イオン性界面活性剤の親水性成分のモル質量であり、Mは、分子全体のモル質量である。係数20は、スケーリング係数である。1のHLB値は、親油性化合物に相当し、20のHLB値を有する化合物は、高い親水性割合を有する。本発明により使用される非イオン性界面活性剤のHLB値は、好ましくは≧7で、透明な溶液だけでなく、(安定な)乳濁液も含む。本発明により使用される非イオン性界面活性剤のHLB値は、≧12又は≧13であってもよい。
【0049】
非イオン性界面活性剤は、水に可溶性又は乳化性又は分散性であり、高いHLB値を有し、したがって、親水性表面の良好な濡れをもたらすという利点を有する。これにより、消毒作用の改善を期待することができる。
【0050】
HLB値の代わりに、非イオン性界面活性剤の曇点を使用することもできる。特定の温度から、非イオン性界面活性剤は、もはや水に不溶性であり、次いで、溶液の濁りによって示される界面活性剤リッチ相を形成する。この温度は、「曇点」とも呼ばれ、したがって、水溶性非イオン性界面活性剤を特徴付けるために使用することができる。この曇点は、HLB値が高いほど高い。本発明により使用される非イオン性界面活性剤は、したがって、水中で40℃以上の曇点を有することが好ましい。
【0051】
非イオン性界面活性剤は、例えば、脂肪アルコールアルコキシレート、例えば、ポリアルキレングリコールエーテル(脂肪アルコールエトキシレート)、ノニルフェノールエトキシレート、脂肪アルコールプロポキシレート、脂肪アミンアルコキシレート、例えば、脂肪アミンエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸ポリグリコールアミド、ポリグリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエステル、オクチルフェノールエトキシレート(オクトキシノール-9又はトリトンX-100)、アルカノールアミド、グリセリンアルキルエステル又は糖質(グルコシド又はグリコシド、従来技術では用語が一貫して使用されていない)、例えばアルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシド、好ましくはC-C10アルキルポリグルコシド又はグリコシド、メチルグルコシドエステル、エチルグルコシドエステル、N-メチルグルカミド、サッカロースエステルから、それぞれ単独で又はこれらの混合物から選択される。
【0052】
好ましい非イオン性界面活性剤は、脂肪アルコールアルコキシレート及び糖界面活性剤、例えばアルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシド(APG)で、それぞれ単独で又はこれらの混合物である。
【0053】
本発明による好ましい脂肪アルコールアルコキシレートは、脂肪アルコールポリグリコールエーテル又は脂肪アルコールエトキシレートとも呼ばれるポリアルキレングリコールエーテルである。これらは非イオン性界面活性剤であり、その親油性部分は脂肪アルコール、特にラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はオレイン酸から誘導されるアルコールからなり、その親水性部分は短鎖ポリエチレングリコール又はポリオキシエチレンからなる。ポリアルキレングリコールエーテルの例示的な公知の商品名として、Brij(登録商標)、Genapol(登録商標)及びLutensol(登録商標)が挙げられる。非イオン性界面活性剤としてのポリアルキレングリコールエーテルは、ボディケア製品において広く使用されている。
【0054】
好ましく使用されるポリアルキレングリコールエーテルは、ラウレス-4、ラウレス-6、ラウレス-9又はラウレス-23等のラウリルアルコール、のポリオキシエチレンエーテル、セテス-10又はセテス-20等のセチルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、セテアレス-20、セテアレス-25等のセチルステアリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、ステアレス-10又はステアレス-20等のステアリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、オレス-10又はオレス-20等のオレイルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、又はC9-11パレス8(8EO(エチレン-オキシド単位)を有する脂肪アルコールエトキシレート、例えばGenapol(登録商標)UD88)である。
【0055】
特に好ましいポリアルキレングリコールエーテルは、ラウレス-4(4EOを有する脂肪アルコールエトキシレート)、ラウレス-6(6EOを有する脂肪アルコールエトキシレート)、ラウレス-9(9EOを有する脂肪アルコールエトキシレート)又はラウレス-23(23EOを有する脂肪アルコールエトキシレート)等のラウリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、及び/又は一連のGenapol(登録商標)製品(ポリアルキレングリコールエーテル)の非イオン性界面活性剤である。
【0056】
好ましいアルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシドは、C-C10(オクチル~デシル-)ポリグルコシド又はポリグリコシド及びC16/C18までのC鎖を有するココポリグルコシド又はココグリコシドである。
【0057】
糖界面活性剤から選択される非イオン性界面活性剤は、極性水溶性分子部分及び非極性脂肪可溶性分子部分からなる。これらは、糖とアルキル基との間の化学結合に応じてエーテル、エステル、アミン又はアミドであり得る。糖界面活性剤のHLB値は、極性基としての糖の重合度と、アルキル鎖の数及び長さとに依存する。糖界面活性剤は、環境適合性であり、一般に良好な皮膚適合性を示す。本発明の消毒剤に使用される好ましい糖界面活性剤は、アルキルグルコシドであり、例えば、常に>10のHLB値を有するポリソルベート20(Tween20)、アルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシド(APG)で、例えば、Plantacare(登録商標)(例えば、Plantacare(登録商標)810UPであり、C-C10アルキルポリグルコシド又はグリコシド)又はソルビタンエステル、例えば、8.6のHLB値を有するソルビタンモノラウレートをベースとする。糖界面活性剤は、化粧品産業において、例えばシャンプー、ヘアリンス、入浴剤又は皮膚清浄剤の成分として使用されている。
【0058】
特に好ましい糖界面活性剤は、ポリソルベート、アルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシド(APG)等のアルキルグルコシド、Plantacare(登録商標)等のカプリリル/カプリルグルコシド又はグリコシド、又はソルビタンエステル、特にソルビタンモノラウレートであり、それぞれ単独で又はこれらの混合物である。
【0059】
非イオン性界面活性剤としてポリソルベート、特にポリソルベート80を使用しない場合が有利なことがある。
【0060】
本発明によると、特に好ましい非イオン性界面活性剤は、したがって、ポリアルキレングリコールエーテルであり、ラウレス-4、ラウレス-6、ラウレス-9又はラウレス-23等のラウリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、セテス-10又はセテス-20等のセチルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、セテアレス-20、セテアレス-25等のセチルステアリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、ステアレス-10又はステアレス-20等のステアリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、又はオレス-10又はオレス-20等のオレイルアルコールのポリオキシエチレンエーテルから、それぞれ単独で又はこれらの混合物からなる群から選択され、アルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシド(APG)、特にC-C10アルキルポリグルコシド又はグリコシド、例えば、Plantacare(登録商標)(例えばPlantacare(登録商標)810UP:C-C10アルキルポリグルコシドもしくは-グリコシドをベースとする)又はC9-11パレス8(ポリアルキレングリコールエーテル、特に8EOを有する脂肪アルコキシエトキシレート)等のカプリリル/カプリルグルコシド又はグリコシドであり、「パレス-」は、アルカノール(アルキルアルコール)のPEGエーテルを表し、先行する数字「Cx-y」は、アルキル(炭素)鎖の長さを示し、「パレス」の後の数字は、Genapol(登録商標)UD88等の分子単位-CH-CH-O-(例えば、)又はソルビタンモノラウレート等のソルビタンエステルの平均数である。
【0061】
極めて特に好ましい非イオン性界面活性剤は、ラウリルアルコールの特に透明水溶性のポリオキシエチレンエーテルであり、C-C11パレス-8、アルキルポリグルコシド又はグリコシド、特にC-C10アルキルポリグルコシド又はグリコシド又はソルビタンエステルである。
【0062】
非イオン性界面活性剤の利点は、それらが一般にヒトに良好に適合し、刺激性がないことである。
【0063】
「グルコシド」は、本来、アルコールがグリコシド結合を介してグルコースに結合している有機化合物であることに留意されたい。「グリコシド」は、アルコールがグリコシド結合を介して糖に結合した有機化合物である。グルコシドは、また、グリコシドのサブグループである。しかしながら、グルコシドはグリコシドを指すのによく使用されるため、これらの用語は、従来技術では一貫して使用されない。本発明では、用語は、グルコシドがグリコシドも含み、その逆も同様であるように、交換可能に使用されるものとする。
【0064】
固体組成物の形態の消毒剤中に、1種以上の非イオン性界面活性剤の量は、用途に応じて、好ましくは1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%、又は7.5~22重量%から選択される。
【0065】
消毒剤が水性液体組成物の形態で存在する場合、1種以上の非イオン性界面活性剤は、用途に応じて、好ましくは、1.1~3.0重量%又は1.1~2.9重量%又は1.1~2.8重量%又は1.1~2.7重量%又は1.1~2.6重量%又は1.1~2.5重量%又は1.1~2.4重量%又は1.1~2.3重量%又は1.1~2.2重量%、又は1.1~2.1重量%、又は1.1~2.0重量%、又は1.1~1.9重量%、又は1.1~1.8重量%、又は1.1~1.7重量%、又は1.1~1.6重量%、又は1.1~1.5重量%から選択され、特定の範囲の下限は、1.15重量%又は1.2重量%又は1.25重量%又は1.3重量%又は1.35重量%又は1.4重量%であってもよい。
【0066】
非イオン性界面活性剤の代替又は追加として、1種以上の両性界面活性剤を使用することもできる。「両性」又は双性イオン性界面活性剤は、負に荷電した官能基及び正に荷電した官能基の両方を含む界面活性物質である。これらは、しばしば固体であり、水に非常に良好に溶解する極性化合物である。これらは、共界面活性剤として非イオン性界面活性剤と混合してもよく、又は単独で使用してもよい。両性界面活性剤は、例えば、手洗い用洗剤、シャンプー及び他の化粧品に使用される。
【0067】
本発明によれば、1種以上の両性界面活性剤は、特にアルキル-及びアルキルアミドプロピルベタイン等のベタイン、特にコカミドプロピルヒドロキシスルタイン等のスルタイン、特にC12-C14アミンオキシド、アルキルアンホアセテート及びアルキルアンホジアセテート等のアミンオキシドからなる群から選択される。アミンオキシドが好ましく、市販品Ammonyx LO等のC12-C14アミンオキシドが特に好ましい。
【0068】
いくつかの両性界面活性剤は、pHに依存して電荷シフトを示す。したがって、両性界面活性剤は、酸性pH値で正の範囲への電荷シフトを示す。この場合、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤と同様に挙動する。アルカリ性pH値の場合、負の範囲への電荷シフトが起こり、その結果、界面活性剤はアニオン性界面活性剤と同様に挙動する。明確にするために、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤は、一般に本発明の消毒剤中に存在するべきではなく、両性界面活性剤ではなく、すなわち、異なるpH値で電荷シフトを示さない界面活性剤を意味することをここで指摘しておく。
【0069】
したがって、一実施形態によると、消毒剤には、非イオン性界面活性剤のみを含み、他の界面活性剤、特に両性、カチオン性又はアニオン性界面活性剤を含まないこともできる。
【0070】
さらなる実施形態によれば、消毒剤には、非イオン性界面活性剤及び/又はアミンオキシドを含むことができ、さらなる界面活性剤、特にさらなる両性界面活性剤及びカチオン性又はアニオン性界面活性剤を含まない。
【0071】
さらなる実施形態によれば、消毒剤には、アミンオキシドのみを含み、さらなる両性界面活性剤、特に非イオン性、カチオン性又はアニオン性界面活性剤は含まない。
【0072】
固体組成物の形態の消毒剤中に、1種以上の両性界面活性剤の量は、用途に応じて、好ましくは1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%又は7.5~22重量%の範囲である。
【0073】
消毒剤が水性液体組成物の形態で存在する場合、1種以上の両性界面活性剤の量は、用途に応じて、好ましくは1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%、又は7.5~22重量%である。
【0074】
ここで、選択された有機酸/ベンゾエート/非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の組み合わせが、広い抗菌活性スペクトルを提供することが見出された。特にグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌に対する高い効果が観察される。グラム染色は、顕微鏡検査のための細菌の区別染色に役立つ。細胞壁の構造に応じて、細菌を2つのグループに分けることができる。グラム陽性細菌は、顕微鏡下の対応する染色反応において青色になり、例えば、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎球菌等の細菌株、及びバチルス等の好気性芽胞形成菌を含む。グラム陰性細菌は顕微鏡下で赤色になり、例えば大腸菌、ヘリコバクター・ピロリ、エンテロバクター・ゲルゴビエ及びスピリルム・ボルタンス等の細菌株を含む。
【0075】
消毒剤の優れた効果は、特に、典型的な環境細菌である大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及び/又はプルラリバクター・ゲルゴビエに対して観察された。
【0076】
使用実験では、殺細菌及び殺真菌作用に加えて、消毒剤が真菌及び酵母に対しても作用することを確認されている。酵母菌は、例えば、カンジダ・アルビカンスが、よく知られたカビは、例えば、アスペルギルス・ブラジリエンシス等である。
【0077】
本発明による消毒剤組成物は、特にその殺細菌作用、殺真菌作用(殺酵母作用)及び殺ウイルス作用によって特徴付けられる。
【0078】
本発明の一態様によれば、クエン酸、乳酸及び/又はコハク酸/ベンゾエート/非イオン性及び/又は両性界面活性剤の組み合わせの相乗効果が前提とされる。成分の組み合わせの場合、組み合わせ作用が個々の作用の合計で消失せず、消毒に関する全作用が個々の天然成分の作用を超える場合、相乗効果が存在する。これは、成分の効果を比較及び対照することによって行うことができ、証明することができる。例えば、この効果は、3つの成分の合計効果が、組成物単独で達成できる効果よりも優れている場合に相乗効果とみなされる。
【0079】
試験により、クエン酸、乳酸及び/又はコハク酸から選択される有機酸が、1種以上のベンゾエート及び1種以上の非イオン性及び/又は両性界面活性剤と一緒に相乗的な消毒作用を示すことが分かった。これは、微生物学的から見ると、ベンゾエート(防腐剤)及び界面活性剤がpH<5で活性が遅いため、これはさらに驚くべきことである。本発明による消毒剤組成物は、著しく速い消毒効果をもたらし、これは、消毒剤の異常に速い曝露時間に反映される。実施した試験は、消毒剤がその消毒抑制作用を完全に発揮することができるように30秒の接触時間が既に十分であることを実証している。これは、予期せぬ迅速な接触時間である。同時に、この非常に短い接触時間において、バイ菌負荷は、極端に低減され、その結果、存在する細菌、真菌、酵母、及び場合によりウイルスもほぼ完全に殺される。さらに、長期間持続する有効性も得られる。本発明による消毒剤のための定量的なバイ菌負荷及び接触時間を測定するプロセスは、試験において詳細に記載されている。
【0080】
さらに、非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤に加えて、さらなる界面活性剤が存在しない場合が有用であり、特に有利であることが判明した。特に、本発明の消毒剤は、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を含まない。
【0081】
消毒剤のための溶剤として水が使用される。消毒剤が化粧品分野で、例えば手による消毒のために使用される場合、化粧品の製造のために、好ましくは精製無菌化水が使用される。これは、蒸留水又はイオン交換体又は逆浸透によって脱塩されることによって、無菌化水であってよい。飲料水を使用することもでき、又は特定の用途のために水道水を使用することもできる。
【0082】
本発明の消毒剤は、既に説明したように、例えば溶液、乳濁液、スプレー、ローション、ゲル又はフォームの形で、あるいは固体の形で存在していてよい。例えば、本発明による消毒剤は、水含有の液状配合物として存在する。アルコール又はアルコール混合物は、本発明による消毒剤中で溶媒として有利に使用されないことが好ましい。したがって、消毒剤中にアルコールを使用しないことが好ましく、特にエタノール、メタノール、イソプロパノール又はN-プロパノールの溶媒のいずれも使用しない。本発明の消毒剤は、溶媒として水のみを含むことが好ましい。
【0083】
本発明による消毒剤は、固体の形の濃縮物として存在することもでき、使用時に初めて水中に溶解させることができる。次いで、濃縮物を水で希釈し、使用事例に適した希釈液を調製する。例示的な希釈剤は、3.68%~50%の溶液である。他の希釈も可能である。一般に希釈は、消毒剤が水性液体組成物中で1.1~3.0重量%の範囲の非イオン性界面活性剤の含有量及び/又は1.1~30.0重量%の範囲の両性界面活性剤の含有量を有するように選択される。その結果、液体消毒剤の効果は特に高くなる。
【0084】
本発明の一実施形態によると、本発明の消毒剤は、消毒性能をさらに高めることができるショウガ・マセレートをさらに含むことができる。ショウガ・マセレートは、ショウガの水抽出物、特に冷水抽出物であり、ショウガの含有物を溶解する。マセレートは、好ましくは0~2重量%、特に好ましくは0~0.5重量%の量で本発明の消毒剤に使用される。その量は、意図される用途に依存する。特に、ショウガの成分6-ギンゲロール及びショガオールは、抗菌効果を示し、これについては、例えば、Ruchi Badoni Semwal, Deepak Kumar Semwal,Sandra Combrinck及びAlvaro M. ViljoenによってPhytochemistry, Vol.117(2015年9月,pp554-568)に記載されている。
【0085】
ショウガ・マセレートの代わりに、ショウガの成分を、ギンゲロール及びショガオール、好ましくは6-ギンゲロールの形で、適当な量で消毒剤に添加することもできる。
【0086】
本発明の別の態様によれば、本発明による消毒剤は、当業者に公知の通常の添加剤を含有してもよい。その例は、好ましくはラベンダー油及び/又はペパーミント油の群から選択される1種以上の精油等の香料、及び/又はポリグリセリル-10-ラウレート等、例えば精油を可溶化するための1種以上の可溶化剤であるが、これらに限定されない。 添加剤は、消毒剤の効果を高めることに寄与することができる。
【0087】
上記で例示的に挙げた添加剤は、当業者であれば、消毒剤の成分である有機酸/ベンゾエート/非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の組み合わせを背景として、これらとの完全な相溶性を考慮して選択することができ、所望であれば適切で十分な量で添加することができる。例えば、1種以上のエーテル油は、0~2重量%、好ましくは0~0.1重量%の量で使用される。1種以上の可溶化剤を使用する場合、これらは、例えば0~10重量%の量で使用される。
【0088】
さらに、「保湿剤」とも呼ばれる皮膚の湿度を調節するための1種以上の薬剤を使用することもでき、これらは、例えば、2~10個の炭素原子を有するグリコール、例えば、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール(1,2-オクタンジオール)(商品名Dermosoft(登録商標)Octiol)、カプリグリコール(Capricglykol)又は1.2ヘキサンジオール(商品名Hydrolite 6)、グリシン又はグリセロール等のである。1種以上の湿度調節剤は、例えば、0~10重量%の範囲で使用される。好ましい範囲は、0.1~10重量%であり、特に好ましくは、2~10個の炭素原子を有するグリコール、例えば、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール(1,2-オクタンジオール)(商品名Dermosoft(登録商標)Octiol)、カプリグリコール又は1.2ヘキサンジオール(商品名Hydrolite 6)が使用される。一実施形態によれば、液体組成物中の各グリコールの量は、それぞれ0.1~2.0重量%の範囲であり、特に0.5~1.5重量%の範囲であるのが好ましい。例えば、液体消毒剤中にヘキシレングリコール及びカプリリルグリコールが湿潤度調節剤として存在する場合、ヘキシレングリコールが0.1~2.0重量%の範囲、特に0.5~1.5重量%の範囲にあり、カプリリルグリコールが同様に0.1~2.0重量%の範囲、特に0.5~1.5重量%の範囲にあることが好ましい。
【0089】
皮膚の湿度調節剤が、消毒作用をさらに明らかに支援できることが見出された。特に、カンジダ・アルビカンス及びアスペルギルス・ブラジリエンシス等の殺真菌バイ菌が存在する場合、本発明の消毒剤の効果は、1種以上の湿度調節剤の存在によって明らかに改善され得ることが見出された。
【0090】
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明の消毒剤に、1種以上の非イオン性界面活性剤が存在する場合、同時に1種以上の湿度調節剤が存在する。これによって、消毒剤の効果に有利な向上をもたらされる。
【0091】
1種以上の両性界面活性剤のみが界面活性剤として消毒剤中に存在する場合、湿度調節剤を省くこともできる。
【0092】
好ましくは、活性物質に加えて、有機酸、ベンゾエート及び非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤は、さらなる活性物質は存在せず、賦形剤又は添加剤のみを含み、好ましくは、1種以上の芳香剤、1種以上の可溶化剤、1種以上の一価の塩、及び1種以上の皮膚の湿潤度調節薬剤を含むか、又はそれらからなる。
【0093】
固体組成物中に存在する本発明の消毒剤は、
5~85重量%、10~85重量%、15~85重量%、20~85重量%、25~85重量%又は30~85重量%の有機酸、
1.5~30重量%、2.0~29重量%、3.0~28重量%、4.0~27重量%又は5.0~26.0重量%のベンゾエート、
1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%又は7.5~22重量%の非イオン性界面活性剤及び/又は1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%、又は7.5~22重量%の両性界面活性剤、
0~2.0重量%のショウガ・マセレート又は6-ギンゲロール、
0.1~10.0重量%の1種以上の湿度調節剤、
0~2.0重量%の1種以上の香料、
0~25.0重量%の、特にNaCl、KCl及び/又はLiClから選択される一価の塩、及び
0~10重量%の可溶化剤、
を含む、又はそれらからなる。
【0094】
一実施形態によれば、液体消毒剤が提供され、この液体消毒剤は、
0.1~15重量%、好ましくは0.5~12重量%の有機酸、
0.1~5.0重量%、0.15~5.0重量%、又は0.2~4.5重量%、好ましくは0.25~3.5重量%のベンゾエート、
1.1~3.0重量%又は1.1~2.9重量%又は1.1~2.8重量%又は1.1~2.7重量%又は1.1~2.6重量%又は1.1~2.5重量%又は1.1~2.4重量%又は1.1~2.3重量%又は1.1~2.2重量%又は1.1~2.1重量%又は1.1~2.0重量%又は1.1~1.9重量%又は1.1~1.8重量%又は1.1~1.7重量%又は1.1~1.6又は1.1~1.5重量%であって、前記範囲の下限が1.15重量%又は1.2重量%又は1.25重量%又は1.3重量%又は1.35重量%又は1.4重量%であり得る非イオン性界面活性剤及び/又は1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%、又は7.5~22重量%の両性界面活性剤、
0.1~10重量%の1種以上の湿度調節剤、特に2~10個の炭素原子を有するグリコール、例えばブチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、カプリグリコール、1,2-ヘキサンジオール、グリシン又はグリセロール及びこれらの混合物から選択される湿度調節剤、
0~2.0重量%の1種以上の香料、特にラベンダー油及び/又はペパーミント油から選択される香料、
0~25.0重量%、好ましくは0.5~5重量%の1種以上の一価塩、特にNaCl、KCl及び/又はLiClから選択される塩、
0~10重量%の可溶化剤、
及び
67.0~98.7重量%の水
を含む、又はそれらからなる。
【0095】
当然のことながら、消毒剤中の成分の量は、それぞれ合計が100重量%となるように選択される。
【0096】
本発明の消毒剤は、1.5~4.2の範囲の酸性pH値を有し、2.0~3.5の範囲のpHが特に好ましい。したがって、ベンゾエートが主に溶解した安息香酸(pKa4.2)として存在し、これが実際に有効な成分であることを意味する。
【0097】
さらに、本発明は、手、食品及び表面の消毒における消毒剤の使用に関し、すなわち、本発明の消毒剤は、手、食品及び表面消毒剤として適当であって、特に、消毒剤の接触時間30秒は、その完全な消毒作用を発揮するのに十分である。
【0098】
公共及び/又は私的分野における消毒剤としての従来からの使用の他に、これは、in situ生産殺菌プロセスにおいても使用することができる。これは、固化又はさらなる加工のために殺菌されなければならない原料を使用する製造プロセスにおける応用である。これは、バイ菌無しで又は可能な限りバイ菌無しで作業されるべきことが意図される全ての場所で重要である。
【0099】
したがって、消毒剤は、低バイ菌原料の使用が特に重要である化粧品の製造における使用にも特に興味深い。そのため、本発明による消毒剤の使用によって、手及び表面の既存の消毒作用に加えて、in situプロセスでも問題となる細菌添加原料を殺菌することができる。これらは、例えば、オリーブ殻粉、アプリコット殻粉、クルミ殻粉、トウモロコシ粉等の天然の未処理のバイ菌粉の形態のスクラブ剤(Reibekoerper)又は研磨剤であり得る。原料は、そのために費用のかかる照射プロセス(ガンマ線)又は加熱プロセス(>70℃)を使用する必要なく、製造プロセスの中で直接殺菌することができる。したがって、原料の複雑な殺菌プロセスを省略することができる。さらに、本発明による消毒剤は、非常に迅速に、例えば30秒以内に、ほぼ完全な殺菌が行われるという大きな利点を有する。これは、in situ生産殺菌プロセスにおいて、経済的にも生態学的にも極めて大きな利点も有することを意味する。
【0100】
本発明による消毒剤の利点は、極めて多岐に及ぶ。
【0101】
したがって、消毒剤のための成分は、食品分野又は化粧品産業における個々の成分として既に使用されており、したがって毒性がない。これらの成分の一部は、それらの肌に優しい特性に関して知られている。さらに、これらの成分は、皮膚及び環境適合性にも特徴がある。
【0102】
強力な酸化剤を使用していないにもかかわらず、消毒剤は、特にグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌、真菌及びウイルスに対して優れた殺細菌効果を提供し、それらを高度に死滅させる。これは、有機酸/ベンゾエート/非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の3つの成分の相乗効果に起因する。
【0103】
これにより、試験で証明された極めて迅速な消毒作用が生じ、これは、最大30秒の接触時間で現れる。特に意外なことに、ベンゾエートの使用によってバイ菌死滅速度を増加させ、非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の添加によって予想外に高い程度に増加させることができる。これにより、有機酸の使用量を著しく減少させることができる。同時に、この非常に短い接触時間でバイ菌負荷が明らかに低減される。実験によって、本発明の消毒剤が大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及び/又はプルラリバクター・ゲルゴビエに対して顕著な作用を示すことが確認され、30秒の消毒剤の接触時間の後、バイ菌負荷又はバイ菌含有量は、検出限界未満に減少する。本発明の消毒剤が真菌、特にカンジダ・アルビカンス及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンシスに対しても顕著な作用を示すことが、さらなる実験により確認され、30秒の消毒剤の接触時間の後、バイ菌負荷又はバイ菌含有量は、検出限界未満に低減される。さらに、長期間持続する有効性も得られる。
【0104】
本発明の消毒剤は、種々の形態で、例えば溶液、乳濁液、スプレー、ローション、ゲル又はフォームとして、あるいは固体の水溶性濃縮物として提供することができる。水が溶媒として使用され、C-C-(イソ)アルコールは溶媒として使用されない。
【0105】
本発明の一実施形態によると、消毒剤は、消毒性能をさらに高めることができるショウガ・マセレートをさらに含むことができる。
【0106】
消毒剤は、水性液体組成物として、又は固体組成物として、特に濃縮物の形態で存在してもよい。濃縮物は、それぞれの用途において、水性液体組成物を得るために、水で希釈することができる。
【0107】
添加剤、特に香料、例えば好ましくはラベンダー油及び/又はペパーミント油から選択される精油、可溶化剤又は湿度調節剤の任意の使用は、消毒剤の有効性を高めることができる。特に、湿度調節剤の使用は、有効性の著しい改善を示し得る。非イオン性界面活性剤及び1種以上の湿度調節剤の好ましい使用が特に有利であることが判明した。
【0108】
公共及び/又は私的分野における従来からの使用の他に、消毒剤は、加工前に原料を殺菌するために、in situ生産殺菌プロセスにおいても使用することができる。これは、特に化粧品産業において重要な役割を果たす。原料は、その後、手間のかかる照射プロセス(ガンマ線)又は加熱プロセス(>70℃)を用いる必要なしに、製造プロセスの上流で直接殺菌することができる。この場合、本発明による消毒剤の30秒の短い接触時間は、極めて有利に作用する。これは、経済的な観点でも生態学的観点でも極めて大きな利点を意味する。
【0109】
本発明の消毒剤は、毎日、繰り返して使用することができる。消毒方法として、EN1275、EN1276/EN1650の一般的に使用される任意の方法も、EN1500/1499の適用試験も使用することができる。
【0110】
したがって、本発明の消毒剤は、高い殺細菌作用、殺真菌作用(殺酵母作用)及び殺ウイルス作用を特徴とする。この消毒剤は、非常に即効性のある手、食品及び表面の消毒剤である。
【実施例
【0111】
以下、本発明を実験に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0112】
(化粧品製剤における殺菌のための実験)
以下に記載の実験において、以下の装置を使用した。
【0113】
試験機器:
BF720インキュベータを使用する。
スパイラルプレータがプレーティング装置として使用され、このスパイラルプレータによって、バイ菌に対して検査すべき懸濁液の所定の体積が栄養培地に適用される。例えば、EddyJet 2Wスパイラルプレータを使用する。
バイ菌含有量の測定のために、手動コロニー計数器を使用する。
【0114】
材料:
サブロー寒天培地プレート
Caso培地プレート
Eddy-Jet使い捨て注射器
Eddy-Jet試料ビーカー
【0115】
バイ菌計数は、Ph.Eur.6.8第2.6.12章に従って確認するためにEnvirocheck(登録商標)システムを用いてスクリーニングする。
【0116】
(一般的な手順)
接種:
・接種は、要件に応じて、対応するプログラムを有するスパイラルプレータを用いて行われる(例えば、あるプログラムでは、適用された製品の勾配によって、より高いバイ菌数をより良好に分解することができ、又は別のプログラムでは、より多くの量を適用することができ、それによって、決定下限が低下する)。
・各試料について、それぞれ1つの(重複試料の場合には2つの)真菌培地及び1つの細菌培地を採取する。
・標準的な総バイ菌数試験を重複測定なしに実施する。
【0117】
中和:
中和を行う場合、50%NaOHを用いて行う。
【0118】
インキュベーション:
細菌:30±2℃で2~3日間、対応するインキュベータで行い、
酵母/真菌:室温で3~5日間、光を排除して行う。
【0119】
評価:
確認されたバイ菌含有量測定に基づいて行われる。
【0120】
測定不確実性:
定量的なバイ菌含有量測定の主な不確実性は、試料塗布量(約5%RSD、相対標準偏差)である。評価は、10~1000cfu/プレートの間で線形であり、0.1logレベル未満の測定不確実性(MU)を有する。したがって、全体測定不確実性は、約0.15logレベルである。
・プレート上の100cfuの計数は、1000cfu/mLに相当し、したがって、最大では790~1260cfu/mLの間である。
【0121】
1.バイ菌ベースの測定
複数の予備試験において、バイ菌ベースとして、汚染を検査するのに、特に適した物質を決定した。特に、オリーブ殻粉、アプリコット殻粉、クルミ殻粉、トウモロコシ粉等の天然の未処理のバイ菌粉の形態のスクラブ剤又は研磨剤がこの目的に適している。クルミ殻粉及びトウモロコシ粉がバイ菌ベースとして特に適当であることが判明したので、これらは以下の試験においてそれぞれ使用される。
【0122】
2.クルミ殻粉及びトウモロコシ粉の初期汚染の測定
試験において、固体又は水性スラリーとしてのクルミ殻粉及びトウモロコシ粉の初期汚染を調べた。バイ菌数を測定するために、欧州薬学書(欧州薬局方又はEuropean Pharmacopoeia,Ph.Eur.)6.8第2.6.12章からの試験プロセスを使用した。この試験では、それぞれ5つの異なるバッチの試料を採取し、試験する。クルミ殻粉の固体として又は水性スラリーとしての未処理のクルミ殻粉中のバイ菌含有量測定の結果を以下の表1及び表2に要約する。
【表1】
DF・・・・・希釈倍率
n.c.・・・・計数不能
TGC・・・・総バイ菌数
-・・・・・・酵母の場合、<7cfu/g又はmL
【0123】
バイ菌数は、希釈されていない元の生成物に対してcfu/g又はmL(コロニー形成単位)に相当し、すなわち、希釈に応じて、希釈倍率を乗算しなければならない。
【表2】
DF・・・・・希釈倍率
TGC・・・・総バイ菌数
-・・・・・・酵母の場合、<7cfu/g又はmL
【0124】
この場合、酵母/真菌の培地では、細菌がさらに増殖した。
【0125】
未処理のトウモロコシ粉の水性スラリーのバイ菌含有量測定の結果を以下の表3に要約する。
【表3】
DF・・・・・希釈倍率
TGC・・・・総バイ菌数
-・・・・・・酵母の場合、<7cfu/g又はmL
1)・・・・・そのうち1500cfu/mLが好気性胞子形成剤
2)・・・・・そのうち2800cfu/mLが好気性胞子形成剤
3)・・・・・そのうち8400cfu/mLが好気性胞子形成剤
4)・・・・・そのうち1100cfu/mLが好気性胞子形成剤
【0126】
この値は、希釈から決定したが、その理由は、これが実際に、そのようにも使用されるからである。
【0127】
バイ菌数(細菌/酵母/菌類)に関して、DIN ISO 17516で要求される、微生物学的限界値は、2000cfu/g未満である場合に満たされる。小児での使用又は粘膜の近傍での使用に適合した製品の特別な場合、限界値は200cfu/g未満である。
【0128】
予想されるように、固体としての乾燥粉のバイ菌状態は、非常に低い(表1及び表3参照:希釈なし、VF=1)。水(VF=10)の添加によって初めて、総バイ菌数が増加して、106cfu/gまで増加することもある。このように、DIN ISO 17516による許容可能な総バイ菌数2000cfu/gをはるかに超えている。したがって、バイ菌を減らすことが必要である。
【0129】
3.有機酸による殺菌
3.1.クエン酸による殺菌
試験において、106cfu/gまでの汚染濃度を有する水中のクルミ殻粉スラリーにクエン酸を添加し、pHを2.9に調整した。このために、1.6重量%のクエン酸水和物を使用した。この量は、以下の試験でpH2.9に維持した。所定の時間間隔T(分)の後に、それぞれ1つの試料を取り出し、この試料を48時間インキュベータ中で培養し、引き続き、そのバイ菌負荷を測定した。したがって、時間間隔Tは、消毒剤、この場合はクエン酸のみの接触時間に対応する。
【0130】
試料採取後に試料中の消毒作用がそれ以上進行せず、値が歪まないことを保証するために、50%水酸化ナトリウム溶液の添加によって試料を採取直後にpH値を7.0に調整することによって消毒作用を停止した。
【0131】
接触時間又はサンプル採取は、T=5分、T=15分、T=30分、T=45分又はT=60分であった。
【0132】
培養後のバイ菌計数は、Environcheck(登録商標)試験棒を用いて直ちに又は外部実験室中で行う。外部試験のために、生成物を8℃で少なくとも1日間冷却貯蔵し、発泡スチロールの箱に移す。
【0133】
採取した試料の詳細を表4に示す。
【表4】
【0134】
バイ菌含有量の定量測定の結果は、以下の通りであった。
【0135】
バイ菌含有量の測定は、Ph.Eur.6.8-バイ菌含有量、第2.6.12章に基づく。
【表5】
TGC・・・・総バイ菌数
-・・・・・・<7cfu/g又はmL
【0136】
細菌は、ここでは好気性胞子形成剤である。
細菌の栄養寒天:酵母及び真菌の更なる増殖が観察された。
酵母及び真菌の栄養寒天:好気性胞子形成剤の更なる増殖が観察された。
【0137】
バイ菌数は、元の生成物に対してcfu/g又はmL(コロニー形成単位)に相当する。
【0138】
T=0分における水性クルミ殻粉スラリー(P366-001)の初期バイ菌数(総バイ菌数TGC)は、650cfu/gで非常に少ない。それにもかかわらず、バイ菌数は、pH値2.9を有するクエン酸の添加によって15分後に250cfu/gに減少させることができた。この数は、スラリーのより長い酸処理によって最小限しか変化しなかった。
【0139】
3.2.乳酸による殺菌
クルミ殻粉の水性スラリーへのクエン酸を添加及び無添加の場合について3.1で記載した試験を、クエン酸の代わりに乳酸を使用したことを除いて、上記と同じ方法で実施した。
【0140】
乳酸の作用は幾分強く、その結果、T=5分後に、既に著しいバイ菌負荷の減少が認められた。
【0141】
3.3.異なるpH値での殺菌
クエン酸(第3.1節の試験)及び乳酸(第3.2節の試験)を用いた試験をそれぞれ繰り返したが、いずれの場合も、2.9のpH値の代わりに、それぞれ2.5又は2.0又は1.5のpH値を、クエン酸又は乳酸を水性のクルミ殻粉スラリー中に添加することによって調整した。T=5分、T=15分、T=30分、T=45分又はT=60分の時間間隔の後、試料を取り出し、それによって接触時間を決定した。試料中の酸の消毒作用が試料採取後に終了し、それ以上進行せず、そのように値を歪まないことを保証するために、再び50%水酸化ナトリウム溶液を用いてpH値を7.0に調整した。その後の試料のインキュベーションは、48時間にわたって行った。
【0142】
pH値を下げても、非常に低い効果しか有していないことが確認された。バイ菌のない状況は、60分後に初めて達成される。インキュベーション時間を24時間に短縮すると、バイ菌のない状況は、30分後に既に確認できた。
【0143】
4.クエン酸及び安息香酸ナトリウムによる殺菌
4.1.予備試験
安息香酸ナトリウムによって代表されるベンゾエートの添加によって、どのように死滅率を高めることができるかを検討する必要がある。
【0144】
安息香酸ナトリウムは、微生物学的に見て活性成分ではなく、すなわち、公知の防腐剤として非常に低い消毒作用しか有していないと予想される。安息香酸ナトリウムは、pH値の低下(4.2のpKa値)で活性安息香酸に解離し、すなわち、4.2では、安息香酸ナトリウムは、50%解離する。安息香酸ナトリウムは、556g/Lで、20℃で非常に良好に水溶性であるが、安息香酸は、3.4g/Lで、20℃で非常に難水溶性である。したがって、最大0.34%の安息香酸が水に溶解するにすぎない。したがって、pH4.2で0.68%の安息香酸ナトリウムを使用する場合、0.34%の安息香酸は、溶解した活性形態で存在する。沈殿した安息香酸は、もはや微生物学的に活性ではない。したがって、溶解度生成物を決定することが重要であり、その結果、安息香酸は、pH値が下がると、結晶形態では存在しない。
【0145】
このために、予備試験において、pH値が1、2、3、4及び5における活性安息香酸の溶解度積を測定する。溶解度を高めるために、製造用の典型的な冷水(約10℃)も使用される。
【0146】
したがって、予め決められたより低いpH値で安息香酸が沈殿することなく、どの程度の量の安息香酸ナトリウムを中性領域のpH7で溶解できるかを最初に説明する。
【0147】
変数として、クエン酸を用いてpH値を1~5に下げ、水への溶解性を試験する。24時間後、結晶が溶液中に存在するかどうかを確認する。それに対してクエン酸は、3.13のpKaで、20℃で1450g/Lの水中で全pH範囲にわたって極めて容易に可溶性である。
【0148】
結果:予備試験によって、0.25重量%の安息香酸ナトリウムを使用すると、pH1のpH値で困難なく溶液中に留まることが確認された。pH値の上昇により、安息香酸-/安息香酸ナトリウム平衡の溶解度も高くなる。したがって、さらなる試験は、0.25重量%の安息香酸ナトリウムを用いて実施される。
【0149】
4.2.クエン酸及び安息香酸ナトリウムを用いた試験
106cfu/gまでの総バイ菌数を有する水中のクルミ殻粉のスラリーに、測定した量の安息香酸ナトリウムを添加し、溶解させた。クエン酸を用いてpHを2.9に下げ、時間T後にそれぞれ1つの試料を取り出した(Tは、汚染されたクルミ殻粉スラリーへのクエン酸及び安息香酸ナトリウムの接触時間に相当する)。次いで、水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7に再度調整し、48時間インキュベータ中でインキュベートした。その後、個々の試料のバイ菌計数を、Envirocheck(登録商標)システムを用いて内部で、又は外部機関を用いて、予め冷却して保管した製品を介して1日間行った。
【0150】
接触時間Tは、T=5分、T=15分、T=30分、T=45分、T=60分であった。中和は、50%水酸化ナトリウム溶液を使用して行った。
【0151】
試料の詳細を表6に示す。
【表6】
【0152】
バイ菌含有量の定量測定の結果は、以下の通りであった。
【0153】
バイ菌含有量の測定は、Ph.Eur.6.8-バイ菌含有量、第2.6.12章に基づく。
【表7】
TGC・・・・総バイ菌数
-・・・・・・<7cfu/g又はmL
【0154】
細菌は、ここでは好気性胞子形成剤である。
細菌の栄養寒天:酵母及び真菌の更なる増殖が観察された。(試料P375-001の場合のみ)。
酵母及び真菌の栄養寒天:好気性胞子形成剤の更なる増殖が観察された。
【0155】
バイ菌数は、元の生成物に対してcfu/g又はmL(コロニー形成単位)に相当する。
【0156】
クエン酸を用いてpH値を2.9に調整したクルミ殻粉スラリーに、0.25重量%の安息香酸ナトリウムを使用することにより、バイ菌負荷をわずか15分後に40cfu/gの非常に許容可能な値に調整することができた。
【0157】
驚くべきことに、安息香酸のような防腐剤は、クエン酸と組み合わせて非常に短時間後に既に消毒作用を示す。
【0158】
クエン酸によってpH値を2.3に調節した場合、この結果をさらに改善することができた。
【0159】
4.3.乳酸及び安息香酸ナトリウムを用いた試験
4.2の試験を繰り返したが、クエン酸の代わりに乳酸を使用した。3.9のpKaを有する乳酸は、水に完全に可溶であり、水と混和性である。
【0160】
試料の詳細を表8に示す。
【表8】
【0161】
バイ菌含有量の定量測定の結果は、以下の通りであった。
【0162】
バイ菌含有量の測定は、Ph.Eur.6.8-バイ菌含有量、第2.6.12章に基づく。
【表9】
TGC・・・・総バイ菌数
-・・・・・・<7cfu/g又はmL
1)そのうち50cfu/mLが好気性胞子形成剤
【0163】
細菌は、ここでは好気性胞子形成剤である。
酵母及び真菌の培地:細菌の増殖が観察された。
【0164】
バイ菌数は、元の生成物に対してcfu/g又はmL(コロニー形成単位)に相当する。
【0165】
明らかに分かるように、病原菌の減少は、わずか5分後に明らかに見える。嫌気性の胞子形成剤のみが残っているが、これはシステム中で不可避であり、最終生成物が十分に保存されている際には成長しない。
【0166】
5.本発明の消毒剤による接触時間の調査
本発明の消毒剤の接触時間を調査し、有機酸としてクエン酸、ベンゾエートとして安息香酸ナトリウム、及び非イオン性界面活性剤としてGenapol(登録商標)UD88(C9-11パレス8)(ポリアルキレングリコールエーテルに属し、8EOの脂肪アルコールエトキシレートである)を使用した。安息香酸ナトリウム、クエン酸及び非イオン性界面活性剤の量は、それぞれ本発明の範囲内であった。以下のプロセスを使用した。
【0167】
pH値の電位差測定:Ph.Eur.8.8-pH値、第2.2.3章。
バイ菌含有量測定:Ph.Eur.6.8-バイ菌含有量、第2.6.12章。これを逸脱して、中和又は希釈がなされた。簡単な測定を行った。
【0168】
未処理のクルミ殻粉の水性スラリーのバイ菌汚染は、数えられないほど高かった。この高度にバイ菌汚染された材料を用いて試験を実施した。すなわち、本発明による消毒剤をスラリーに添加し、接触時間T後にそれぞれ1つの試料を取り出し、前述の実験で既に詳細に説明したように、そのバイ菌汚染を検査した。
【0169】
試験により、本発明の消毒剤の接触時間30秒が、所望のバイ菌低減を達成するために、既に十分であることを示した。
【0170】
消毒剤の消毒作用を停止させ、値の改竄を防止するための予防措置として、試料採取直後の試料の中和は、NaOHの添加の有無にかかわらず、バイ菌の減少が実質的に同一であったので、実際には必要なかった。
【0171】
これまでの実験は、クエン酸のみの使用がバイ菌負荷を減少させるが、これは十分ではないことを示した。クエン酸への安息香酸ナトリウムの添加は、スラリー中のバイ菌負荷をさらに減少させることができたが、顕著な結果を得るためには、少なくとも15分間の接触時間が必要であった。対照的に、本発明によるクエン酸/安息香酸ナトリウム/Genapol(登録商標)UD88(C9-11パレス8)の組み合わせは、消毒作用の相乗的増加を与えて、バイ菌の減少を最小限に抑えるには30秒の接触時間で十分であった。
【0172】
6.本発明のさらなる消毒剤による接触時間の調査
a)5の試験を繰り返したが、非イオン性界面活性剤Genapol(登録商標)UD88(C9-11パレス8)の代わりに、別の非イオン性界面活性剤、すなわちPlantacare(登録商標)810UP(C-C10アルキルポリグルコシド又はグリコシド)を使用した。
【0173】
同じ短い30秒の消毒剤による接触時間で、試料中のスラリーのバイ菌負荷を最小限に抑えるのに既に十分であることが分かった。
【0174】
b)5の実験を繰り返したが、非イオン性界面活性剤の代わりに、両性界面活性剤、すなわちAmmonyx LO(C12-C14アミンオキシド)を使用した。
【0175】
同じ短い30秒の消毒剤の接触時間で、試料中のスラリーのバイ菌負荷を最小限に抑えるのに既に十分であることが分かった。
【0176】
c)5の実験を繰り返したが、非イオン性界面活性剤の代わりに、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の混合物、すなわち、非イオン性界面活性剤としてのPlantacare(登録商標)810 UP(C-C10アルキルポリグルコシド又はグリコシド)及び両性界面活性剤としてのAmmmonyx LO(C12-C14アミンオキシド)を使用した。界面活性剤の1:1混合物を使用した。
【0177】
同じ短い30秒の消毒剤の接触時間で、試料中のスラリーのバイ菌負荷を最小限に抑えるのに既に十分であることが分かった。
【0178】
7.本発明による消毒剤を用いたin situプロセスにおけるバイ菌低減の測定
殺菌すべき媒体として、pH値6.7を有する水性3%のクルミ殻粉スラリーを使用した。
【0179】
本発明による消毒剤(1)は、クエン酸、安息香酸ナトリウム、及びGenapol(登録商標)UD88の形態の非イオン性界面活性剤の水溶液を、それぞれ本発明による範囲内で含有した。
【0180】
本発明による消毒剤(2)は、クエン酸、安息香酸ナトリウム、及びPlantacare(登録商標)810UPの形態の非イオン性界面活性剤の水溶液を、それぞれ本発明の範囲内で含有した。
【0181】
以下のプロセスを使用した。
pH値の電位差測定:Ph.Eur.8.8-pH値、第2.2.3章。
バイ菌含有量測定:Ph.Eur.6.8-バイ菌含有量、第2.6.12章。
【0182】
以下の手順を行った。
1.6.7のpH値を有する水性クルミ殻粉スラリーのバイ菌数を測定した。
2.その後、本発明による消毒剤を用いてpH2.9に酸性化を行った。
3.pH値を30秒間維持し、次いで、バイ菌数を測定した。
4.次いで、スラリーの一部を50%NaOH溶液でpH7にし、バイ菌数を再び測定した。
5.その後、残りのスラリーを50%NaOH溶液でpH7にし、バイ菌数を再び測定した。
【0183】
結果は、以下の通りであった。わずか30秒後に、本発明による消毒剤の使用により、検出限界を下回るバイ菌の減少があった。
【0184】
8.実施例1~8
異なる個々のバイ菌における本発明による消毒剤の種々の組成のバイ菌低減の測定
本発明による消毒剤を用いて、種々の細菌に対するバイ菌の減少を詳細に検査した。
【0185】
以下の細菌を試験した。
【表10】
【0186】
本発明の消毒剤は、表11に示す組成を有していた。
【0187】
試験プロセス:
4つの個々のバイ菌に対して水溶液中で消毒試験を実施した(方法:BCL M 04.01.01)。
【0188】
試料の説明及び試験目的:
試験した試料は、それぞれ水溶液中で消毒特性を有する酸粉末混合物である。本調査では、短い接触時間を用いて、この特性を4つの細菌性試験バイ菌に対して試験した。
【0189】
バイ菌低減試験-試験の説明:
表11に示した組成物のそれぞれから、それぞれ13%水溶液を製造した。
【0190】
表10に挙げた細菌の新たに調製した懸濁液を接種剤として調整した。これらの溶液の滴定(Titer)は、外部希釈系列によって確認した。
【0191】
溶液の各10mLバッチに、4種の接種懸濁液のうちの1種100μlを一つずつ接種した。30秒、1分、2分及び5分後、それぞれの接種バッチを0.1モル水酸化ナトリウム溶液で中和した。これらの、今や中和された溶液を、スパイラルプレータを用いて100μlまでCASO栄養寒天皿上にプレーティングした。皿を全部で5日間30℃のインキュベータ中でインキュベートし、2日後及び5日後に細菌コロニーの増殖について計数した。
【0192】
評価:
以下の表11~15は、本発明による消毒剤のそれぞれの組成及び4つの試験バイ菌に対するバイ菌低減試験の結果を示す。
【0193】
使用されるPlantacare(登録商標)810UPは、C-C10アルキルポリグルコシド又はグリコシドをベースとする非イオン性界面活性剤である。これは、35~38%の含水率を有する粘性液体組成物として市販されている。使用されるGenapol(登録商標)UD88も、同様に組成C9-11パレスを有する非イオン性界面活性剤である。Desmosoft(登録商標)Octiolは、カプリリルグリコール(1,2-オクタンジオール)であり、湿度調節剤である。それは、室温(20~25℃)で固体である。
【0194】
【表11】
【0195】
それぞれ固体濃縮物として存在する本発明による組成物は、13%水溶液中で希釈して使用した。13%水溶液の組成を以下の表12に示す。
【表12】
【0196】
【表13】
【表14】
【0197】
具体的には、組成物Aのバイ菌含有量測定は、以下の通りであった。
【表15】
【0198】
実施例2~8の組成物について、異なる試験の開始時の接種バイ菌数は、それぞれ対応する大きさであった。
【0199】
結果:
実施例1~8で使用した本発明による消毒剤のバイ菌低減試験は、13%水溶液中で、細菌性試験バイ菌である大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及びプルラリバクター・ゲルゴビエに対して、いずれも驚くほど高いバイ菌低減作用を示した。わずか30秒間の接触時間の後に、これらのバイ菌を、それぞれ当初の1E6コロニー形成単位(cfu)/mL以上から、13cfu/mL未満に減少させることができた。言い換えれば、本発明の消毒剤は、わずか30秒の接触時間後に、その効果を最大限に発揮し、典型的なバイ菌におけるバイ菌負荷を最小限に低減した。
【0200】
9.実施例9~22
本発明による消毒剤のさらなる組成物に基づくバイ菌低減の測定
本発明による消毒剤のためのいくつかの水性液体組成物を用いて、バイ菌低減を再び詳細に調べた。組成物及び結果を以下の表に詳細に要約する。
【0201】
使用されるPlantacare(登録商標)810UPは、C-C10アルキルポリグルコシド又はグリコシドをベースとした水溶液の形態で市販されている非イオン性界面活性剤である。 Ammonyx LOは、C12~C14アミンオキシドの形態の両性界面活性剤である。Desmosoft(登録商標)Octiolは、カプリリルグリコールであり、湿度調節剤である。Hydrolite6は、1,2-ヘキサンジオールであり、湿度調節剤である。グリセリンは、湿度調節剤である。
【0202】
【表16A】
+・・・30秒以内にバイ菌数が検出限界以下に減少
【表16B】
+・・・30秒以内にバイ菌数が検出限界以下に減少
【0203】
結果:
実施例9~22で使用した本発明による消毒剤のバイ菌低減試験は、細菌性試験バイ菌である大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及びプルラリバクター・ゲルゴビエに対して、いずれも驚くべき高いバイ菌低減作用を示した。わずか30秒間の接触時間の後に、これらのバイ菌を、それぞれ当初の1E6コロニー形成単位(cfu)/mL以上から、検出限界未満に減少させることができた。本発明の消毒剤は、わずか30秒の接触時間後に、その効果を最大限に発揮し、典型的なバイ菌におけるバイ菌負荷を最小限に低減した。
【0204】
とりわけ、1つ以上の湿度調節剤の存在は、それらが消毒剤の抗菌効果、特に殺真菌効果をさらに高めるので、特に有利である。
【0205】
10.本発明によるの消毒剤中の安息香酸ナトリウムの量の変化
試験の結果、本発明に従って安息香酸ナトリウムの量を0.01~30.0重量%の全範囲で変化させると、特に0.25~30.0重量%では、溶液中で飽和するまで活性安息香酸の最大存在量に増加するため、所望の短い反応時間でバイ菌低減をもたらすことが示された。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒剤であって、
クエン酸、乳酸、及びコハク酸、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機酸と、
安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム又は安息香酸カルシウム、又はこれらの混合物からなる群から選択されるベンゾエートと、
水に可溶性又は乳化性又は分散性である非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤からなる群から選択される1種以上の界面活性剤と、
を含み、
前記消毒剤は、水性液体組成物又は固体組成物中に存在し、
前記消毒剤の水性液体組成物は、前記1種以上の非イオン性界面活性剤を1.1~3重量%の範囲の量で含有し、及び/又は前記1種以上の両性界面活性剤を1.1~30重量%の範囲の量で含有し、
前記固体組成物は、濃縮物であり、前記水性液体組成物は、1.1~3重量%の範囲の量の前記1種以上の非イオン性界面活性剤、及び/又は1.1~30重量%の範囲の量の前記1種以上の両性界面活性剤を含有する希釈形態の濃縮物であり、
前記消毒剤は外用のみを意図し、
前記1種以上の非イオン性界面活性剤は、脂肪アルコールアルコキシレート、アルキルポリグルコシド又はアルキルポリグリコシド(APG)、それぞれ個別に、又はそれらの混合物からなる群から選択され、
前記1種以上の両性界面活性剤は、アミンオキシドからなる群から選択され、
1種以上の非イオン性界面活性剤が存在する場合、1種以上の湿度調整剤が0.1~5重量%の量で同時に存在し、
ただし、前記非イオン性及び/又は両性界面活性剤以外の他の界面活性剤は存在せず、C-C-(イソ)アルコールは存在せず、 -C -(イソ)アルコールはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールであり、化合物クロルヘキシジンジグルコン酸塩、カプリル酸ソルビタン及びフェノキシエタノールを含まない、消毒剤。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤は、ラウリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、C-C11パレス-8、C-C10-アルキルポリグリコシド又はグルコシドで、それぞれ単独で又はこれらの混合物からなる群から選択されるこ
特徴とする、請求項1に記載の消毒剤。
【請求項3】
前記1種以上の非イオン性界面活性剤は、≧7、特に≧12のHLB値を有すること、又は40℃以上の曇点(Truebungspunkt)(100mlの水中1g)を有すること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の消毒剤。
【請求項4】
前記1種以上の両性界面活性剤が、C 12-C14-アミンオキシドから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項5】
前記消毒剤は、水性液体組成物中に存在するか、又は濃縮物の形態の固体組成物として存在し、特に溶液、乳濁液、ローション、スプレー、ゲル、フォームとして、又は濃縮物の形態の固体として存在し、前記濃縮物は水溶性であるか、水中で乳化性もしくは分散性であること
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項6】
前記消毒剤中に、固体組成物の形態で前記1種以上の有機酸が、用途に応じて、5~85重量%、10~85重量%、15~85重量%、20~85重量%、25~85重量%又は30~85重量%から選択される量で存在すること、
又は
前記消毒剤中に、水性液体組成物の形態で前記1種以上の有機酸が、用途に応じて、0.1~15重量%、好ましくは0.5~12重量%から選択される量で存在すること
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項7】
前記消毒剤中に、固体組成物の形態で前記1種以上のベンゾエートが、用途に応じて、1.5~30重量%、2.0~29重量%、3.0~28重量%、又は4.0~27重量%、好ましくは5.0~26.0重量%から選択される量で存在すること、
又は
前記消毒剤中に、水性液体組成物の形態で前記1種以上のベンゾエートが、用途に応じて、0.1~5.0重量%、0.15~5.0重量%、又は0.2~4.5重量%、好ましくは0.25~3.5重量%から選択される量で存在すること
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項8】
前記消毒剤中に、固体組成物の形態で前記1種以上の非イオン性界面活性剤が、用途に応じて、1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%、又は7.5~22重量%から選択される量で存在すること、
又は
前記消毒剤中に、水性液体組成物の形態で前記1種以上の非イオン性界面活性剤が、用途に応じて、1.1~3.0重量%又は1.1~2.9重量%又は1.1~2.8重量%又は1.1~2.7重量%又は1.1~2.6重量%又は1.1~2.5重量%又は1.1~2.4重量%又は1.1~2.3重量%又は1.1~2.2重量%又は1.1~2.1重量%又は1.1~2.0重量%又は1.1~1.9重量%又は1.1~1.8重量%又は1.1~1.7重量%又は1.1~1.6又は1.1~1.5重量%から選択される量で存在し、指定された範囲の下限も、1.15重量%又は1.2重量%又は1.25重量%又は1.3重量%又は1.35重量%又は1.4重量%であり得ること
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項9】
前記消毒剤中に、固体組成物の形態で前記1種以上の両性非イオン性界面活性剤が、用途に応じて、1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%、又は7.5~22重量%から選択される量で存在すること、
又は
前記消毒剤中に、水性液体組成物の形態で前記1種以上の両性非イオン性界面活性剤が、用途に応じて、1.1~30重量%、1.5~25重量%、2.0~24重量%、5~23重量%又は7.5~22重量%から選択される量で存在すること
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項10】
前記1種以上の湿度調節剤は、2~10個の炭素原子を有するグリコール、特にブチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、カプリグリコール及び1,2-ヘキサンジオールと、グリシン及びグリセリンと、並びにこれらの混合物から選択されるこ
特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項11】
前記消毒剤中に1種以上の添加剤が含まれ、前記1種以上の添加剤は、
ショウガ・マセレート又は活性成分6-ギンゲロール、及び/又は
1種以上の芳香物質、及び/又は
1種以上の可溶化剤、及び/又は
特にKCl、NaCl及び/又はLiClから選択される1種以上の一価の塩
から選択されること
を特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項12】
前記消毒剤は、固体組成物の中に存在し、前記固体組成物は、
5~85重量%の有機酸、
1.5~30重量%のベンゾエート、
1.1~30重量%の非イオン性界面活性剤及び/又は1.1~30重量%の両性界面活性剤、
0~2.0重量%のショウガ・マセレート又は6-ギンゲロール、
0.1~5.0重量%の1種以上の湿度調節剤、
0~2.0重量%の1種以上の香料、
0~25.0重量%の、特にNaCl、KCl及び/又はLiClから選択される1種以上の一価の塩、及び
0~10重量%の可溶化剤、
を含むこと、又はそれらからなること、
又は前記消毒剤は、水性液体組成物として存在し、前記水性液体組成物は、
0.1~15重量%、好ましくは0.5~12重量%の有機酸、
0.1~5.0重量%、好ましくは0.25~3.5重量%のベンゾエート、
1.1~3.0重量%の非イオン性界面活性剤及び/又は1.1~30重量%の両性界面活性剤、
0.1~5.0重量%の1種以上の湿度調節剤、
0~2.0重量%の1種以上の香料、
0~25.0重量%の、好ましくは0.5~5重量%の、特にNaCl、KCl及び/又はLiClから選択される1種以上の一価の塩、
0~10重量%の可溶化剤、
及び
67.0~98.7重量%の水
を含むこと、又はそれらからなること
を特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項13】
手、食品、表面を消毒するために、及びin situ生産殺菌プロセスにおいて、請求項1~12のいずれか一項に記載の消毒剤の使用であって、特に、前記消毒剤との30秒の接触時間が、その完全な消毒作用を示すのに十分である、消毒剤の使用。
【請求項14】
大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌及び/又はプルラリバクター・ゲルゴビエに対する請求項13に記載の消毒剤の使用であって、前記消毒剤との30秒の接触時間後に、バイ菌負荷が検出限界未満に減少する、消毒剤の使用。
【国際調査報告】