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特表2024-519522壁紙に適用するための積層体及びそれを用いた物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-15
(54)【発明の名称】壁紙に適用するための積層体及びそれを用いた物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240508BHJP
   D06N 7/00 20060101ALI20240508BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20240508BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240508BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240508BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B32B27/00 M
D06N7/00
B32B27/00 101
B32B27/12
B32B7/06
C09J7/38
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565132
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 IB2022053428
(87)【国際公開番号】W WO2022224081
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021073650
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】根本 勝理
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】谷口 絵美
(72)【発明者】
【氏名】クリュル,ブレット ピー.
(72)【発明者】
【氏名】タン,ダウド エイチ.
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F055AA17
4F055AA30
4F055BA14
4F055CA03
4F055CA18
4F055DA02
4F055DA19
4F055EA24
4F055FA27
4F055GA32
4F100AH03B
4F100AH03D
4F100AK25A
4F100AK25E
4F100AK36B
4F100AK36D
4F100AK46B
4F100AK46D
4F100AK52B
4F100AK52D
4F100AL02B
4F100AL02D
4F100AL06B
4F100AL06D
4F100BA04
4F100BA05
4F100CA13C
4F100CB05B
4F100CB05D
4F100DD11
4F100DG15C
4F100EJ39
4F100GB08
4F100JA07B
4F100JA07D
4F100JK06
4F100JK06A
4F100JK06E
4F100JK07B
4F100JK07D
4F100JL13B
4F100JL13D
4F100JL14A
4F100JL14E
4F100YY00B
4F100YY00D
4J004AA18
4J004AB01
4J004BA04
4J004BA08
4J004CB01
4J004CB04
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
(57)【要約】
壁紙に貼り付けた際に良好な保持力を維持することができ、壁紙から剥がす際に感圧接着剤の残留や壁紙への損傷を低減又は抑制して剥がすことができる壁紙用積層体、それを用いた物品、壁紙用積層体用中間部材及びロール体が提供される。本開示の実施形態による壁紙用積層体は、フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第1の剥離ライナーと、変性シリコーンを含有する第1の感圧接着剤層と、12g/m以上の坪量を有する不織布層と、変性シリコーンを含有する第2の感圧接着剤層と、フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第2の剥離ライナーとを、この順番で含む。壁紙用積層体はエンボスパターンを有し、第1の感圧接着剤層は壁紙に適用及び剥離可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁紙用積層体であって、
フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第1の剥離ライナーと、
変性シリコーンを含む第1の感圧接着剤層と、
12g/m以上の坪量を有する不織布層と、
第2の感圧接着剤層と、をこの順番で含み、
前記壁紙用積層体がエンボスパターンを有し、
前記第1の感圧接着剤層が壁紙に適用及び剥離可能である、壁紙用積層体。
【請求項2】
前記エンボスパターンが海島構造を呈し、前記海島構造における海部がエンボス部を含み、島部が非エンボス部を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記積層体を上方から見たときの前記島部の形状が、略多角形状、略円形状、略楕円形状、略直線形状、略波形状、又はこれらの組み合わせである、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
基部を含む物品であって、
前記物品の裏側の基部面に、請求項1~3のいずれか一項に記載の壁紙用積層体が、第2の感圧接着剤層を介して貼り付けられており、
前記基部面が少なくとも1つの凹部を有する、物品。
【請求項5】
壁紙用積層体であって、
フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第1の剥離ライナーと、
変性シリコーンを含む第1の感圧接着剤層と、
発泡層と、
第2の感圧接着剤層と、をこの順番で含み、
前記第1の感圧接着剤層が壁紙に適用及び剥離可能である、壁紙用積層体。
【請求項6】
フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第2の剥離ライナーを更に含む、請求項1~3及び5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記第2の感圧接着剤層が変性シリコーンを含む、請求項1~3、5及び6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1及び第2の感圧接着剤層のうちの少なくとも一方が、30~70質量%のMQ樹脂を含む、請求項1~3、5及び6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記変性シリコーンが、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー、及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3、5、及び6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記変性シリコーンがシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含み、
前記シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーが、少なくとも5000g/molの数平均分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンと、ポリイソシアネートとの反応生成物を含有する、請求項1~3及び5~9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記変性シリコーンが、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー、及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーが、式Aの繰り返し単位:
【化1】
(式A中、
各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、若しくはアリールであるか、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり、
各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり、
各Gは、独立して、結合であるか、又は式RHN-G-NHRのジアミンから2つの-NHR基を除いたものに等しい二価の残基であり、
各Rは、独立して、水素若しくはアルキルであるか、又は各Rは、Gと、R及びGの両方が結合している窒素と共に複素環基を形成し、
各nは独立して0~1500の整数であり、
各pは独立して1~10の整数であり、
各qは独立して1以上の整数であり、qのうちの少なくとも50%は整数2である)
を少なくとも2つ含むコポリマーを含む、請求項1~3及び5~9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
前記変性シリコーンの重量平均分子量が10000以上である、請求項1~3及び5~11のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
前記感圧接着剤層の-20℃における弾性率が、2×10Pa以上且つ7×10Pa以下である、請求項1~3及び5~12のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項14】
前記壁紙用積層体が第2の剥離ライナーを含み、前記第1の剥離ライナーの剥離層に対する前記第1の感圧接着剤層の剥離強度と、前記第2の剥離ライナーの剥離層に対する前記第2の感圧接着剤層の剥離強度とが、2.0倍以上異なる、請求項1~3及び5~13のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項15】
前記第1の剥離ライナー及び前記第2の剥離ライナーの剥離層が、非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層である、請求項1~3及び5~14のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙用積層体、それを用いた物品、並びに壁紙用積層体用の中間部材及びロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、壁面に貼り付けて使用する接着物品が開発されている。
【0003】
特許文献1(特開2020-531641号公報)は、物体を壁面に取り付けるための接着物品であって、第1の接着剤層と、第1の接着剤層に隣接して周囲を画定する不織布層であって、不織布層材料を含み、第1の主面と第2の主面とを含む、不織布層と、不織布層の少なくとも第1の主面上の凹部の第1の配置パターンであって、凹部の各々が不織布層材料を含むフィルムで終端する、第1の配置パターンと、底壁面上の接着界面であって、第1の接着剤層とフィルムとの間の接触部を含む、接着界面と、を含む接着物品を含む。
【0004】
特許文献2(特開2016-002403号公報)には、表面の下端にフック片が一体に設けられたフック本体の裏面が対象壁面に自己接着により着脱可能に貼り付けられる自己接着フックであって、フック本体の裏面には、表面が裏面に接着されたアクリル発泡体接着剤層と、表面がアクリル発泡体接着剤層の裏面に接着されたポリウレタン自己接着剤層とを有する接着シートが設けられ、接着シートは、フック本体の裏面の上下左右の周縁部に非粘着性であり、且つ下端に対象壁面に非粘着性である糊阻害部が設けられた非粘着部位が存在する状態で貼り付けられている自己接着フックを開示している。
【発明の概要】
【0005】
例えば、壁紙は、たいていの場合、家屋内の壁面に貼られる。通常、壁紙は、デザインを付与するために表面に凹凸パターンが形成されているか、又は接着性に悪影響を与え得る可塑剤を含有したポリ塩化ビニル樹脂や、接着しにくいポリオレフィン樹脂などの種々の材料を用いて形成されている。そのため、コンクリート壁面や塗装壁面等に接着物品を貼付する場合と比較して、良好な保持力を維持しながら壁紙に接着物品を貼付することが困難であった。
【0006】
場合によっては、壁紙は、例えば、発泡体から構成される。そのため、壁紙は、コンクリート壁面や塗装壁面等に比べて脆く、破れなどの損傷を受けやすい素材である。そのため、良好な保持力を維持しながら接着物品を壁紙に貼り付けることができたとしても、感圧接着剤の残留なしで、且つ壁紙を傷つけることなく壁紙から接着物品を剥離することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、壁紙に貼り付けた際に良好な保持力を維持することができ、壁紙から剥がす際に感圧接着剤の残留や壁紙への損傷を低減又は抑制して剥がすことができる壁紙用積層体、それを用いた物品、壁紙用積層体用中間部材及びロール体を提供することにある。
【0008】
本発明の一実施形態は、壁紙用積層体であって、フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第1の剥離ライナーと、変性シリコーンを含有する第1の感圧接着剤層と、12g/m以上の坪量を有する不織布層と、変性シリコーンを含有する第2の感圧接着剤層と、フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第2の剥離ライナーとを、この順番で含み、壁紙用積層体がエンボスパターンを有し、第1の感圧接着剤層が壁紙に適用及び剥離可能である、壁紙用積層体を提供する。
【0009】
本開示の別の実施形態は、基部(base)を含む物品であって、物品の裏側の基部面に、壁紙用積層体が第2の感圧接着剤層を介して貼り付けられており、基部面が少なくとも1つの凹部を有する、物品を提供する。
【0010】
本開示の別の実施形態は、壁紙用積層体であって、フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第1の剥離ライナーと、変性シリコーンを含有する第1の感圧接着剤層と、発泡層と、変性シリコーンを含有する第2の感圧接着剤層と、フッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する第2の剥離ライナーとを、この順番で含み、第1の感圧接着剤層が壁紙に適用及び剥離可能である、壁紙用積層体を提供する。
【0011】
本開示の別の実施形態は、壁紙用積層体で使用するための中間部材であって、剥離層を有する剥離ライナーと、変性シリコーンを含有する感圧接着剤層と、剥離層を有する剥離ライナーとをこの順番に含み、2つの剥離ライナーのいずれか一方が、第1の剥離ライナー又は第2の剥離ライナーを構成し、感圧接着剤層が、第1の感圧接着剤層又は第2の感圧接着剤層を構成する、中間部材を提供する。
【0012】
本開示の別の実施形態は、壁紙用積層体で使用するためのロール体であって、両面に剥離層を有する剥離ライナーと、変性シリコーンを含有する感圧接着剤層とを、この順番に含み、剥離ライナーが、第1の剥離ライナー又は第2の剥離ライナーを構成し、感圧接着剤層が、第1の感圧接着剤層又は第2の感圧接着剤層を構成する、ロール体を提供する。
【0013】
本開示は、壁紙に貼り付けた際に良好な保持力を維持することができ、壁紙から剥がす際に感圧接着剤の残留や壁紙への損傷を低減又は抑制して剥がすことができる壁紙用積層体、それを用いた物品、壁紙用積層体用中間部材及びロール体を提供することができる。
【0014】
上記の説明は、本発明の全ての実施形態及び本発明の全ての利点が開示されていることを意味すると解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の実施形態による壁紙用積層体の概略断面図である。
図2】剥離ライナーが取り外された状態の、本開示の実施形態によるエンボスパターンを有する壁紙用積層体の概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態によるエンボスパターンの概略図である。
図4】本開示の別実施形態によるエンボスパターンの概略図である。
図5】壁紙から剥離されたときの本開示の実施形態による物品の概略図である。
図6a】本開示の一実施形態による壁紙用積層体を貼り付ける前の、物品の(a)背面図である。
図6b】本開示の一実施形態による壁紙用積層体を貼り付ける前の、物品の平面図である。
図6c】本開示の一実施形態による壁紙用積層体を貼り付ける前の、物品の正面図である。
図6d】本開示の一実施形態による壁紙用積層体を貼り付ける前の、物品の側面図である。
図6e】本開示の一実施形態による壁紙用積層体を貼り付ける前の、物品の底面図である。
図7a】本開示の別実施形態による壁紙用積層体を貼り付ける前の、物品の側面図である。
図7b】本開示の別実施形態による壁紙用積層体を貼り付ける前の、物品の底面図である。
図8】壁紙から取り外されたれたときの本開示の実施形態による物品の概略図である。
図9】本開示の実施形態による中間部材の概略断面図である。
図10】本開示の実施形態によるロール体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施形態を、必要に応じて図面を参照しながら非常に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本開示では、「壁紙に適用及び剥離可能」とは、第1の感圧接着剤層を介して壁紙用積層体を壁紙に貼り付けられた際に、壁紙用積層体が所望の保持力を呈し且つ壁紙から剥離せずに保持される一方で、壁紙から壁紙用積層体を剥離する際に、壁紙への損傷を低減又は抑制しつつ、剥離後の壁紙表面に感圧接着剤が残留することなく剥離できることを意味する。一実施形態では、「剥離可能」とは、壁紙用積層体が、特別な治具を使用することなく、適度な力(例えば、成人女性の力)で、壁紙を引き裂くことなく剥離され得ることを意味し得る。
【0018】
本開示では、「海島構造」とは、図3に示すように、海部となる連続したエンボス部の中に、島部となる不連続な非エンボス部が配設された構造のほか、図4に示すように、少なくとも一方向に少なくとも2つの直線状又は非直線状の連続したエンボス部(海部)を有し、エンボス部の間に非エンボス部(島部)が配置された構造を意味する。
【0019】
本開示では、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0020】
本開示では、「非フッ素系且つ非シリコーン系」とは、材料が非フッ素系且つ非シリコーン系であることを意味する。すなわち、使用される材料はフッ素系材料でも、シリコーン系材料でもない。
【0021】
本明細書で使用される場合、「硬化」は、一般に「架橋」と称される概念も包含してもよい。
【0022】
本明細書で使用するとき、「フィルム」は、「シート」と称される物品も包含する。
【0023】
本開示では、「実質的に」とは、製造誤差等によるばらつきを含むことを意味し、±20%程度のばらつきを許容することを意図している。
【0024】
本開示では、例えば、「基部(substrate)上に配置された剥離層」にという語句における「上」とは、剥離層が基部上に直接配置されていること、又は剥離層が別の層が介して基部上に間接的に配置されていることを意味する。
【0025】
本開示では、例えば、「第1の剥離ライナー、第1の感圧接着剤層、及び不織布層をこの順に備える(含む)積層体」における「この順」とは、3つの構成要素、すなわち第1の剥離ライナー、第1の感圧接着剤層、及び不織布層に着目した場合に、これらの構成要素をこの順に含むことを意味する。これらの構成要素の間、例えば、第1の剥離ライナーと第1の感圧接着剤層との間には、印刷層等の他の層が介在していてもよい。
【0026】
図1は、本開示の実施形態による壁紙用積層体(簡単に「積層体」と称されることもある)の概略断面図である。図1の壁紙用積層体100は、第1の剥離ライナー101、第1の感圧接着剤層103、不織布層又は発泡層としてのコア層105、第2の感圧接着剤層107、及び第2の剥離ライナー109を、この順番で含む。コア層が不織布層である場合、本発明の壁紙用積層体は、図2図4に図示されるように、エンボスパターンを有する。
【0027】
実施形態では、本開示の第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーの両方とも、基部上に配置されたフッ素系剥離層又は非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有し、剥離層を介して第1の感圧接着剤層又は第2の感圧接着剤層に適用される。このような剥離層は、典型的なシリコーン系剥離層と比較して、変性シリコーンを含有する本発明の第1の感圧接着剤層及び第2の感圧接着剤層に対して優れた剥離性能を呈することができる。特に、エンボス積層体における剥離ライナーの浮きや剥がれ、製造コスト等の観点から、非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層(「NSNF剥離層」とも称される)であることが好ましい。
【0028】
第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーにおける剥離層は、同じであっても異なっていてもよい。ここで、剥離層が異なる構成の例としては、例えば、第1の剥離ライナーの剥離層がフッ素系剥離層であり、第2の剥離ライナーの剥離層が非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層である構成や、第1の剥離ライナーの剥離層が非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層であり、第2の剥離ライナーの剥離層がフッ素系剥離層である構成など、剥離層の材質が異なる構成が挙げられる。第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーの剥離層は両方とも、フッ素系剥離層(又は非フッ素系及び非シリコーン系剥離層)であるが、第1の剥離ライナーの剥離層に対する第1の感圧接着剤層の剥離強度と、第2の剥離ライナーの剥離層に対する第2の感圧接着剤層の剥離強度とが異なる構成も包含する。
【0029】
壁紙用積層体の使用性の観点から、第1の剥離ライナーの剥離層に対する第1の感圧接着剤層の剥離強度と、第2の剥離ライナーの剥離層に対する第2の感圧接着剤層の剥離強度とは、約2.0倍以上、約2.5倍以上、又は約3.0倍以上、約20倍以下、且つ約10倍以下、約5.0倍以下、約4.5倍以下、又は約4.0倍以下異なることが好ましい。両方の感圧接着剤層の剥離強度は、第1の剥離ライナーの剥離層に対する第1の感圧接着剤層の剥離強度が高くてもよいし、第2の剥離ライナーの剥離層に対する第2の感圧接着剤層の剥離強度が高くてもよい。
【0030】
フッ素系剥離層は、特に限定されないが、ペルフルオロアルキル基含有ビニルエーテルポリマーなどのフルオロカーボン含有材料、フルオロシリコーン含有材料、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂をバインダー樹脂に分散させたコーティング剤などのフッ素系剥離剤のうちの少なくとも1種を使用して形成することができる。このようなフッ素系剥離層としては、米国特許第4,472,480号、同第4,980,443号、及び同第4,736,048号において記載されるようなフッ素系剥離層を好適に用いることができる。
【0031】
例えば、各剥離層に用いられるフッ素系剥離剤の種類や量を適宜調整することにより、フッ素系剥離剤を用いて上述した剥離強度を差異化させることができる。
【0032】
非フッ素系及び非シリコーン系剥離層は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系剥離剤のうちの少なくとも1種を用いて形成することができる。
【0033】
実施形態では、(メタ)アクリル系剥離剤として、ポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有し、20℃及び周波数1Hzで約1.0×10Pa~約3.0×10Paの貯蔵弾性率を有する(メタ)アクリル系剥離剤であり、25.4mN/mの湿潤張力を有するメタノール/水混合溶液(体積比90/10)に対して約15°以上の接触角を呈する剥離層を形成するために用いられる(メタ)アクリル系剥離剤を用いることができる。この接触角は、アクリル系剥離剤の剥離層の表面への感圧接着剤の濡れ広がりを効果的に抑制し、感圧接着剤との親和性を低下させることができる傾向にあるため有利である。
【0034】
貯蔵弾性率は、約5.0×10Pa以上、約1.0×10Pa以上、又は約1.5×10Pa以上であってもよく、約3.0×10Pa以下、約1.0×10Pa以下、又は約1.0×10Pa以下であってもよい。
【0035】
ここで、本開示では、(メタ)アクリル系剥離剤の貯蔵弾性率(G’)は、粘弾性装置(例えば、TA Instruments Japan Inc.、ロータリーレオメーターARES-G2)を用いて、20℃及び周波数1Hzの剪断モードで測定した値である。
【0036】
例えば、接触角は、約20°以上、約25°以上、又は約30°以上であってもよく、又は約55°以下、約50°以下、又は約45°以下であることができる。
【0037】
ここで、本発明では、「接触角」は、JIS K6768:1999に記載されるように、25.4mN/mの湿潤張力を有するメタノールと水の混合溶液(体積比90/10)で測定した接触角の値として定義される。この測定は、23±1℃の温度、50±5%の相対湿度での条件下で実行される。
【0038】
(メタ)アクリル系剥離剤は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどのポリマーを含有するポリマー組成物である。
【0039】
ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、12個以上の炭素原子を有するアルキル基を有する(メタ)アクリレート(「第1のアルキル(メタ)アクリレート」とも称される)と、12個以下の炭素原子を有するアルキル基を有する(メタ)アクリレート(「第2のアルキル(メタ)アクリレート」とも称される)とを含む(メタ)アクリルモノマー成分からなるコポリマーが挙げられる。第1のアルキル(メタ)アクリレート及び第2のアルキル(メタ)アクリレートは、両方とも12個の炭素原子を有するアルキル基を有してもよい。
【0040】
第1のアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、典型的には、そのようなコポリマー中で比較的長い側鎖を構成することができるようなものである。このような長いアルキル側鎖は、剥離層の表面エネルギーを低下させるのに有効である。ここで、この表面エネルギーは、上述したように接触角によって推定される。第1のアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基中の炭素原子の数は、14個以上、18個以上、20個以上、又は24個以上であり得る。炭素原子の数の上限値は、例えば、36個以下、34個以下、32個以下又は30個以下であってもよい。
【0041】
長鎖アルキル側鎖は、剥離力などの観点から、カルボキシル基、水酸基、窒素又はリン含有基などの極性官能基を含まないことが好ましい。好ましい第1のアルキル(メタ)アクリレートの例としては、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。第1のアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく、その2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
第2のアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、典型的には、コポリマー中で比較的短い側鎖を構成することができるようなものである。このような短いアルキル側鎖は、剥離剤のガラス転移温度を約30℃以下に低下させることができる。これにより、貯蔵弾性率も約1×10から約3×10Paまで低減することができ、(メタ)アクリル系剥離剤により形成された剥離層と感圧接着剤層との間でがたつきのない剥離を得ることができる。第2のアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基中の炭素原子の数は、10個以下、8個以下、又は6個以下であり得る。炭素数の下限値は、例えば、1個以上、2個以上、又は3個以上であってもよい。
【0043】
短いアルキル側鎖は、剥離力などの観点から、第1のアルキル(メタ)アクリレートのアルキル側鎖と同様に、上述した極性官能基を含まないことが好ましい。
【0044】
コポリマーにおける上述の2つの(メタ)アクリル系モノマー成分の比率は、特に限定されない。例えば、第1のアルキル(メタ)アクリレートと第2のアルキル(メタ)アクリレートとの合計質量に対して、第1のアルキル(メタ)アクリレート又は第2のアルキル(メタ)アクリレートを10質量%~90質量%含有することが、がたつきのない剥離性の観点から好ましい。例えば、第1のアルキル(メタ)アクリレートと第2のアルキル(メタ)アクリレートとの比率を調整することにより、上記剥離強度を異ならせることができる。例えば、第1のアルキル(メタ)アクリレートと第2のアルキル(メタ)アクリレートのそれぞれの比率を、約10質量%以上、約20質量%以上、約30質量%以上、又は約40質量%以上、且つ約90質量%以下、約80質量%以下、約70質量%以下、又は約60質量%以下から選択される範囲内で適切に調整することによって、剥離強度を制御することができる。
【0045】
一実施形態では、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分から誘導される。分岐アルキル基中の炭素原子の数は、10個以上、14個以上、18個以上、20個以上、又は24個以上であり得る。炭素原子の数の上限値は、例えば、36個以下、34個以下、32個以下又は30個以下であってもよい。
【0046】
8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-ヘプチルウンデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、及びイソノニル(メタ)アクリレートが挙げられる。このような分岐側鎖を有する(メタ)アクリレートは、それ自体の結晶性が低下するため、貯蔵弾性率及び表面エネルギーを低下させることができる。したがって、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いる場合には、上述したような第1のアルキル(メタ)アクリレート及び第2のアルキル(メタ)アクリレートの2成分を用いなくてもよい。これらの中でも、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの(メタ)アクリレートを用いて調製されたポリ(メタ)アクリル酸エステルは、剥離層の表面エネルギーを容易に低下させることができる。
【0047】
(メタ)アクリル系剥離剤に含有されるポリマーは、剥離力、重合反応の取り扱い性などの観点から、約100000以上、約300000以上、又は約500000以上、且つ約2000000以下、約1500000以下、又は約1000000以下の重量平均分子量を有することが好ましい。ここで、本開示において、「重量平均分子量」とは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるとき、ポリスチレン換算の重量平均分子量を指す。
【0048】
上述のモノマー成分を含有する重合性前駆体組成物は、一般には、重合開始剤の存在下で重合される。重合方法は様々であり得るが、コーティング形成に有利な高分子量を有するポリマーが得られ、したがって、重合性成分を溶媒に溶解させる溶液重合が好ましい。溶液重合を用いる場合には、重合終了後、重合生成物の溶液を(メタ)アクリル系ポリマー剥離剤としてそのまま用いることができる。
【0049】
重合溶媒として、n-ヘキサン又はn-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチル又は酢酸ブチルなどのエステル、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、若しくはこれらの混合溶媒を用いることができる。また、分子量制御の観点から、連鎖移動剤又は鎖延長剤を用いることもできる。
【0050】
連鎖移動剤の例としては、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-1-プロパノール、ドデカンチオール、チオグリコール酸イソオクチル、及び2-メルカプト-エチルアミンなどのチオール化合物が挙げられる。
【0051】
鎖延長剤の例としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの二価の(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。
【0052】
加えて、(メタ)アクリル系剥離剤は、ベンゾフェノン構造又はアセトフェノン構造を側鎖に有する(メタ)アクリル系モノマーなどの電離放射線活性基を側鎖に有する(メタ)アクリル系モノマーを更に含んでいてもよい。そのようなモノマーは、モノマー成分と一緒に重合性前駆体組成物に配合されて、ポリマーの一部を構成してもよい。電離放射線活性基(例えば、ベンゾフェノン構造、アセトフェノン構造)は、電子ビーム、紫外線などの電離放射線の照射によりラジカルを発生する。発生したラジカルは、重合性前駆体組成物の重合生成物の架橋、及び架橋から得られる硬化生成物の基部への結合を促進する。側鎖に電離放射線活性基を有する(メタ)アクリルモノマーを用いることにより、例えば、剥離層の製造効率を向上させることができる。側鎖に電離放射線活性基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いてもよく、その2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
重合性前駆体組成物の溶液重合は、典型的には、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で約2時間~約100時間、約50℃~約100℃の反応温度で実行することができる。
【0054】
重合開始剤としては、一般的な重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))などのアゾ系化合物、並びに過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルなどの過酸化物が挙げられる。
【0055】
使用される重合開始剤の量は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分の100質量部に対して、約0.005質量部以上且つ約0.5質量部以下であることが好ましい。使用される重合開始剤の量を約0.005質量部以上とすることにより、実用的な重合速度を確保することができる。使用される重合開始剤の量を約0.5質量部以下とすることにより、重合生成物の分子量をコーティング形成に十分な程度まで高めることができる。
【0056】
実施形態では、剥離ライナーは、上述の剥離剤を基部にコーティングし、必要に応じて乾燥、加熱による硬化、電離放射線(例えば、電子ビーム又は紫外線)による硬化などを実施することによって形成される。
【0057】
基部としては、特に限定されないが、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又はポリブチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)などのプラスチックフィルム、紙(例えば、クラフト紙)、又はこれらのプラスチック材料でコーティングした紙基部を使用することができる。
【0058】
基部の厚さは特に限定されず、例えば、約10マイクロメートル以上、約15マイクロメートル以上、又は約20マイクロメートル以上であってよく、約300マイクロメートル以下、約200マイクロメートル以下、又は約150マイクロメートル以下であってよい。
【0059】
適用される上述の剥離剤の量は、基部に応じて変化し得る。例えば、剥離剤は、一般には、乾燥厚さが約0.01マイクロメートル以上且つ約10マイクロメートル以下であるように適用される。基部がポリエステル又はポリオレフィンなどのプラスチックフィルムでコーティングされている紙基部、又はプラスチック材料でコーティングされた紙基部の場合、乾燥厚さは一般に約0.05マイクロメートル以上且つ約1マイクロメートル以下である。紙のような吸収性又は低平滑性を有する基部の場合、乾燥厚さは一般に約0.1マイクロメートル以上且つ約5マイクロメートル以下である。
【0060】
実施形態では、剥離ライナーの剥離層に対する感圧接着剤層の剥離強度(エンボス加工なし)は、約10N/25mm以下、約7.5N/25mm以下、約5.0N/25mm以下、約3.0N/25mm以下、又は約1.5N/25mm以下、且つ約0.01N/25mm以上、約0.02N/25mm以上、約0.05N/25mm以上、約0.10N/25mm以上、又は約0.20N/25mm以上である。ここで、剥離強度は、JIS Z0237に準拠して、剥離ライナーを180°の方向に300mm/分で剥離した際の剥離強度である。例えば、エンボス加工前に約0.3N/25mm未満の剥離強度を呈する剥離ライナーは軽剥離ライナーとして使用することができ、約0.3N/25mm以上の剥離強度を呈する剥離ライナーは重剥離ライナーとして使用することができる。更に、実施形態では、剥離ライナーの剥離層に対する感圧接着剤層の剥離強度(エンボス加工あり)は、約5.0N/25mm以下、約4.0N/25mm以下、約3.0N/25mm以下、約2.5N/25mm以下、又は約1.5N/25mm以下、且つ約0.01N/25mm以上、約0.02N/25mm以上、約0.05N/25mm以上、約0.10N/25mm以上、又は約0.20N/25mm以上である。
【0061】
本発明の壁紙用積層体においては、不織布層又は発泡層の両面に、変性シリコーンを含有する第1の感圧接着剤層及び第2の感圧接着剤層が配置されている。壁紙用積層体が適用される壁紙の表面は、種々の材料(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、一般に可塑剤を含有するポリオレフィン樹脂)から形成されている。本発明の感圧接着剤層は、変性シリコーンを含有するので、上述のような様々な材質の壁紙に壁紙用積層体を貼り付けることができ、壁紙に感圧接着剤が残留せず、引裂きなどの損傷を生じさせずに壁紙から壁紙用積層体を剥離するのに有効である。ここで、本開示において、「変性シリコーン」とは、シリコーンの主鎖に官能基(例えば、ウレタン構造を有する官能基)が付与されたシリコーンを意味する。変性シリコーンは、単独で用いてもよく、その2つ以上を組み合わせて用いてもよい。なお、接着剤層と不織布層又は発泡層とは直接接触していてもよく、接着剤層と不織布層又は発泡層との間に他の層が独立して存在していてもよい。実施形態では、接着剤層と発泡層との間に樹脂層(例えば、熱可塑性フィルム)が存在する。
【0062】
第1の感圧接着剤層と第2の感圧接着剤層とは、同一であっても、又は異なっていてもよい。第1の感圧接着剤層は、壁紙に適用及び剥離可能である。「感圧接着剤層が異なる」構成は、第1の感圧接着剤層がシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含み、第2の感圧接着剤層がシリコーンポリオキサミドブロックコポリマーを含有するように、感圧接着剤層の材料の種類が異なる構成に加えて、第1の感圧接着剤層と第2の感圧接着剤層の両方がシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含有するが、感圧接着力が異なる構成を包含する。
【0063】
実施形態では、第1の感圧接着剤層及び第2の感圧接着剤層は、感圧接着剤表面の取り違えによる製品故障のリスクを防止するために、同じ材料から作製される。また、第1の感圧接着剤層と第2の感圧接着剤層とに異なる感圧接着剤を用いる場合、例えば、第2の剥離ライナーを先に剥離して第2の剥離ライナーを剥離することによって現れる第2の感圧接着剤層を、得られる積層体の実使用を考慮して、フックやポスターなどに接触する感圧接着剤表面として使用することができる。この場合、第2の感圧接着剤層の剥離強度又は接着力は、第1の感圧接着剤層(壁紙と接する感圧接着剤表面)の剥離強度又は接着力よりも低く設計することができる。
【0064】
実施形態では、第1の感圧接着剤層及び第2の感圧接着剤層の-20℃での弾性率は、それぞれ独立して、約2×10Pa以上、約5×10Pa以上、又は約1×10Pa以上、且つ約7×10Pa以下、約3×10Pa以下、又は約2×10Pa以下である。ここで、弾性率は、粘弾性測定装置Discovery HR2(TA Instrument,DE,USA)を用いて、次の条件:平行平板:φ8mm、昇温速度:3℃/分、測定温度範囲:-65℃~150℃、周波数:1Hz(6.28ラジアン/秒)で測定した値である。
【0065】
実施形態では、第1の感圧接着剤層及び第2の感圧接着剤層に含有される変性シリコーンのソフトセグメント(シリコーン部分)の重量平均分子量は、それぞれ独立して、約5000以上、約10000以上、約15000以上、且つ約70000以下、約60000以下、又は約50000以下である。
【0066】
変性シリコーンは、シリコーンの主鎖に官能基(例えば、ウレタン構造を有する官能基)が付与されたシリコーンであり、典型的には、この主鎖を構成するシリコーン部分がソフトセグメントを構成し、官能基部分がハードセグメントを構成する。実施形態では、第1の感圧接着剤層及び第2の感圧接着剤層のそれぞれに含まれる変性シリコーンにおけるソフトセグメントとハードセグメントとの質量比は、独立して、ソフトセグメント:ハードセグメント=約1000:約1~約50:約1、約900:約1~約100:約1、又は約600:約1~約200:約1である。
【0067】
第1の感圧接着剤層及び第2の感圧接着剤層のそれぞれにおいて配合される変性シリコーンの量は、独立して、例えば、感圧接着剤層の全量に対して、約30質量%以上、約35質量%以上、約40質量%以上、約45質量%以上、又は約50質量%以上、且つ約80質量%以下、約75質量%以下、約70質量%以下、約65質量%以下、約60質量%以下、又は約55質量%以下であってよい。
【0068】
実施形態では、第1の感圧接着剤層及び/又は第2の感圧接着剤層は、MQ樹脂(「MQ粘着付与樹脂」と称されることもある)を含有する。
【0069】
有用なMQ樹脂としては、例えば、MQシリコーン樹脂、MQDシリコーン樹脂、及びMQTシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのMQ樹脂は、約100以上、又は約500以上、且つ約50000以下、又は約20000以下の数平均分子量を有してもよく、メチル置換基を有してもよい。ここで、本開示において、「数平均分子量」とは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるとき、ポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
【0070】
MQシリコーン樹脂は、非官能性樹脂及び官能性樹脂の両方を含むことができる。官能性シリコーン樹脂は、例えば、ケイ素結合水素、ケイ素結合アルケニル、又はシラノール基を含む1つ以上の官能基を有する。
【0071】
MQシリコーン樹脂は、R’SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)を有する共重合性シリコーン樹脂である。このような樹脂は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,vol.15,John Wiley & Sons,New York,(1989),pp.265~270、並びに米国特許第2,676,182号(Daudtら)、米国特許第3,627,851号(Brady)、米国特許第3,772,247号(Flannigan)、及び米国特許第5,248,739号(Schmidtら)に記載されている。官能基を有するMQシリコーン樹脂は、例えば、米国特許第4,774,310号(Butler)(シリルヒドリド基を記載)、米国特許第5,262,558号(Kobayashiら)(ビニル基及びトリフルオロプロピル基を記載)、及び米国特許第4,707,531号(Shirahata)(シリルヒドリド基及びビニル基を記載)に開示されている。上述の樹脂は一般に、溶媒中で調製され得る。乾燥させた又は無溶媒の、MQシリコーン樹脂は、米国特許第5,319,040号(Wengroviusら)、米国特許第5,302,685号(Tsumuraら)、及び国際公開第4,935,484号(Wolfgruberら)に記載されている方法で調製することができる。
【0072】
MQDシリコーン樹脂は、例えば、米国特許第5,110,890号(Butler)に記載されるとおり、R’SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、及びR’SiO2/2単位(D単位)を有するターポリマーである。
【0073】
MQTシリコーン樹脂は、R’SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、及びR’SiO3/2単位(T単位)を有するターポリマー(MQT樹脂)である。
【0074】
MQシリコーン樹脂は、典型的には、有機溶媒中で供給される。市販のMQシリコーン樹脂としては、Momentive Performance Materials Japan LLCから入手可能である、トルエン中のSilGrip(商標名)SR-545MQ樹脂、PCR,Inc.(Gainesville,Fla.)から入手可能である、トルエン中のMQOH樹脂が挙げられる。MQシリコーン樹脂のこれらの有機溶液は、供給業者によって提供されるように使用されてもよく、又は当該技術分野において既知の任意の数の技術によって乾燥されて、100パーセントの不揮発性含量でMQシリコーン樹脂を提供してもよい。適切な乾燥方法としては、噴霧乾燥、炉内乾燥、蒸気分離乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
例えば、感圧接着剤層において配合されるMQ樹脂の量は、感圧接着剤層の全量に対して、約20質量%以上、約25質量%以上、又は約35質量%以上、又は約45質量%以上であってもよく、約70質量%以下、約65質量%以下、約60質量%以下、又は約55質量%以下であってもよい。このうち、壁紙に適用される第1の感圧接着剤層に含まれる配合されるMQ樹脂の量は、壁紙に対する適用性及びそれからの剥離性などの観点から、好ましくは約30質量%以上、約40質量%以上、約45質量%以上、又は約50質量%以上であり、好ましくは約70質量%以下、約60質量%以下、約55質量%以下、又は約50質量%以下である。フックなどの部材に適用される第2の感圧接着剤層に含まれる配合されるMQ樹脂の量は、そのような部材の保持性などの観点から、好ましくは、約30質量%以上、約40質量%以上、約45質量%以上、又は約50質量%以上であり、好ましくは約70質量%以下、約60質量%以下、約55質量%以下、又は約50質量%以下である。
【0076】
変性シリコーンは、壁紙に対する適用性及び壁紙からの剥離性、並びに部材保持のバランスの観点から、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー、及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0077】
実施形態では、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミン(ときには「シリコーンジアミン」とも称される)と、ポリイソシアネートと、任意選択で、有機ポリアミンとの反応生成物を含有する。シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、単独で用いてもよく、その2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
好適なシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、式Iの繰り返し単位:
【化1】
によって表される。
【0079】
式I中、Rは、好ましくは、それぞれ独立して、約1個~12個の炭素原子を有するアルキル部分であるか、又は好ましくは、式R(CHCH=CH(式中、Rは-(CH-又は(CHCH=CH-であり、aは1、2、又は3であり、bは0、3、又は6であり、cは3、4、又は5である)で表される高級アルケニル基、約6個~12個の炭素原子を有するシクロアルキル部分、アルキル基、フルオロアルキル基、及びビニル基で置換されていてもよい部分、又は好ましくは、約6個~20個の炭素原子を有するアリール部分、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、及びビニル基で置換されていてもよい部分であり、あるいは、Rは、米国特許第5,028,679号に記載されているペルフルオロアルキル基、米国特許第5,236,997号に記載されているフッ素含有基、又は米国特許第4,900,474号及び米国特許第5,118,775号に記載されているペルフルオロポリエーテル含有基であり;好ましくは、R部分のうちの少なくとも50%はメチル基であり、残りは、1個~20個の炭素原子を有する一価アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、フェニル基、又は置換フェニル基であり;Zはそれぞれ多価基であり、好ましくは約6個~20個の炭素原子を有するアリーレン基又はアラルキレン基であり、好ましくは約6個~20個の炭素原子を有するアルキレン基又はシクロアルキレン基であり、好ましくは、Zは、2,6-トルイレン、4,4’-メチレンジフェニレン、3,3’-ジメトキシー4,4’-ビフェニレン、テトラメチル-m-キシリレン、4,4’-メチレンジシクロヘキシレン、3,5,5-トリメチル-3-メチレンシクラメートキシレン、1,6-ヘキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、2,2,4-トリメチレンヘキシレン、及びこれらの混合物であり;Yは、各々独立して、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、好ましくは6個~20個の炭素原子を有するアラルキレン基又はアリーレン基であり;Dは、各々、水素、1個~10個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル、及びB又はYと一緒に環構造を完成させて複素環を形成する基からなる群から選択され;式Iにおいて、Bは、アルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、並びにそれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択される多価基であり;mは0~約1000の数であり、nは少なくとも1の数であり、pは少なくとも10、好ましくは約15~約2000、より好ましくは30~1500の数である。
【0080】
有用なシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、例えば、米国特許第5,512,650号、米国特許第5,214,119号、米国特許第5,461,134号、国際公開第96/17726A号、国際公開第96/34028A号、国際公開第96/34030A号、及び国際公開第97/40103A号に公開されている。
【0081】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの合成に使用される有用なシリコーンジアミンの例としては、以下の式(II):
【化2】
によって表されるポリジオルガノシロキサンジアミンが挙げられる。好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンの数平均分子量は、約700g/mol以上である。
【0082】
式II中、R、Y、D、及びpは、各々、上記のように定義される。
【0083】
有用なポリジオルガノシロキサンジアミンとしては、式IIの範囲内のポリジオルガノシロキサンジアミンのいずれかを挙げることができる。これらの中でも、壁紙に対する適用性及びそれからの剥離性、並びに部材保持性のバランスの観点から、約700g/mol以上、約1000g/mol以上、約3000g/mol以上、約5000g/mol以上、約10000g/mol以上、約15000g/mol以上、約20000g/mol以上、又は約25000g/mol以上、且つ約150000g/mol以下、約100000g/mol以下、約80000g/mol以下、約60000g/mol以下、約50000g/mol以下、又は約40000g/mol以下の数平均分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを好適に用いることができる。
【0084】
ポリジオルガノシロキサンジアミンの好適な合成方法及びポリジオルガノシロキサンジアミンは、例えば、米国特許第3,890,269号、米国特許第4,661,577号、米国特許第5,026,890号、米国特許第5,276,122号、国際公開第95/03354A号、及び国際公開第96/35458A号に公開されている。
【0085】
有用なポリジオルガノシロキサンジアミンの例としては、ポリジメチルシロキサンジアミン、ポリジフェニルシロキサンジアミン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンジアミン、ポリフェニルメチルシロキサンジアミン、ポリジエチルシロキサンジアミン、ポリジビニルシロキサンジアミン、ポリビニルメチルシロキサンジアミン、ポリ(5-ヘキセニル)メチルシロキサンジアミン、及びこれらの組み合わせ又はコポリマーが挙げられる。
【0086】
好適なポリジオルガノシロキサンジアミンは、例えば、Shin-Etsu Silicones of America Inc.(Torrance,California)及びHules America,Inc.から市販されている。ポリジオルガノシロキサンジアミンは、好ましくは、実質的に純粋であり、米国特許第5,214,119号に公開されるような方法で合成することができる。そのような高純度のポリジオルガノシロキサンジアミンは、テトラメチルアンモニウム-3アミノプロピルジメチルシラノレートなどの無水アミノアルキル官能性シラノレート触媒を、好ましくは環状オルガノシランの総量に基づいて1.15重量%未満の量で使用して、環状オルガノシランとビス(アミノアルキル)ジシロキサンとを2段階反応させることによって合成することができる。特に好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンは、セシウム及びルビジウム触媒を使用して合成され、そのような合成方法は、例えば、米国特許第5,512,650号に公開されている。
【0087】
ポリジオルガノシロキサンジアミン成分は、合成されたシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの弾性率を調整するための手段を提供し得る。一般に、高分子量ポリジオルガノシロキサンジアミンは、低弾性率コポリマーをもたらすことができ、一方、低分子量ポリジオルガノシロキサンポリアミンは、高弾性率コポリマーをもたらし得る。
【0088】
有用なポリアミンの例としては、HUNTSMAN(Houston,Texas)から商品名:JEFFAMINE(商標名)D-230(すなわち、230g/molの数平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE(商標名)D-400(すなわち、400g/molの数平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE(商標名)D-2000(すなわち、2,000g/molの数平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE(商標名)D-4000、JEFFAMINE(商標名)ED-2001、及びJEFFAMINE(商標名)EDR-148(すなわち、トリエチレングリコールジアミン)で入手可能なポリオキシアルキレンジアミンを含むポリオキシアルキレンジアミン;HUNTSMANから商品名T-403、T-3000、及びT-5000で入手可能なポリオキシアルキレントリアミンを含むポリオキシアルキレントリアミン;並びにDuPont(Wilmington,Delaware)から商品名Dytek(商標名)A及びDytek(商標名)EPで入手可能なエチレンジアミンとポリアルキレンとを含むアルキレンジアミンが挙げられる。
【0089】
任意のポリアミンは、コポリマーの弾性率を調整するための手段を提供し得る。有機ポリアミンの濃度、種類、及び分子量を調整することによって、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの弾性率を調整することができる。
【0090】
実施形態では、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、好ましくは約3mol以下、より好ましくは約0.25molから約2molを含有する。好ましくは、ポリアミンは、約300g/mol以下の数平均分子量を有する。
【0091】
ポリイソシアネートは特に限定されず、例えば、ジイソシアネート、トリイソシアネートなどを用いることができる。
【0092】
好適なジイソシアネートの例としては、芳香族ジイソシアネート、例えば2,6-トルエンジイソシアネート、2,5-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o-クロロフェニルジイソシアネート)、メチレンジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、ポリカーボネートジイミド修飾メチレンジフェニレンジイソシアネート、(4,4’-ジイソシアネート-3,3’,5,5’-テトラエチル)ジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジメトキシビフェニル(o-ジアニシジンジイソシアネート)、5-クロロ-2,4-トルエンジイソシアネート、及び1-クロロメチル-2,4-ジイソシアネートベンゼンなど、芳香族-脂肪族ジイソシアネート、例えばm-キシレンジイソシアネート及びテトラメチル-m-キシレンジイソシアネートなど、脂肪族ジイソシアネート、例えば1,4-ジイソシアネートブタン、1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,12-ジイソシアネートドデカン、及び2-メチル-1,5-ジイソシアネートペンタンなど、並びに脂環式ジイソシアネート、例えばメチレンジシクロヘキシレン-4,4’-ジイソシアネート、及び3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネートが挙げられる。
【0093】
ポリアミン、特にポリジオルガノシロキサンジアミンと反応することができる任意のトリイソシアネートが好適である。そのようなトリイソシアネートの例としては、ビウレット、イソシアヌレート、及び付加物から生成される多官能性イソシアネートがある。市販のポリイソシアネートの例としては、Bayer AGから商品名DESMODUR(商品名)及びMONDUR(商品名)、Asahi Kasei Corporationから商品名Duranate(商品名)及びDow Plastics Co.から商品名PAPI(商品名)で入手可能な一連のポリイソシアネートの一部が挙げられる。
【0094】
ポリイソシアネートは、好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンと任意のポリアミンとの量に基づく化学量論的な量で存在する。
【0095】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、例えば、溶媒系反応、無溶媒反応、又はこれらの組み合わせによって合成され得る。有効な溶媒系工程については、例えば、Tyagiら、「Segmented Organosiloxane Copolymers:2.Thermal and Mechanical Properties of Siloxane-Urea Copolymers,」Polymer,Vol.25,1984年12月及び米国特許第5,214,119号(Leirら)に記載されている。シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの有用な製造方法は、例えば、米国特許第5,512,650号、米国特許第5,214,119号、米国特許第5,461,134号、国際公開第96/35458A号、国際公開第98/17726A号、国際公開第96/34028A号、及び国際公開第97/40103A号にも記載されている。
【0096】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含有する感圧接着剤組成物は、例えば、溶媒系反応、無溶媒反応、又はこれらの組み合わせを使用して調製することができる。
【0097】
溶媒系反応では、MQ樹脂を、ポリアミンとポリイソシアネートとを反応混合物に導入する前、導入中、又は導入後に取り入れることができる。ポリアミンとポリイソシアネートとの反応は、単一溶媒又は混合溶媒中で実行することができる。好ましくは、溶媒はポリアミン又はポリイソシアネートと反応しない。重合反応中及び重合反応終了後に、出発材料と最終生成物とが溶媒中で完全に混和されていることが好ましい。これらの反応は、室温又は反応溶媒の沸点以下で実行することができる。反応は、好ましくは最高で約50℃の周囲温度で実行される。
【0098】
実質的に無溶媒の反応において、ポリアミンとポリイソシアネートとは、反応容器内でMQ樹脂と混合され、ポリアミンとポリイソシアネートと反応してシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを生成し、生成物はMQ樹脂と反応して感圧接着剤組成物を生成することができる。
【0099】
溶媒系及び無溶媒反応を含む1つの有用な方法は、無溶媒反応を使用してシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを調製し、次いで、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを溶媒中のMQ樹脂の溶液と混合することによって実施される。好ましくは、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー系感圧接着剤組成物は、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーとMQ樹脂との混合物を生成する上述の組み合わせ方法によって合成され得る。
【0100】
実施形態では、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドコポリマーは、式Aの繰り返し単位:
【化3】
を少なくとも2つ含有する。
【0101】
式A中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、若しくはアリールであるか、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり、各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり、各Gは、独立して、結合であるか、又は式RHN-G-NHRのジアミンから2つのNHR基を除いたものに等しい二価の残基であり、各Rは、独立して、水素若しくはアルキルであるか、又は各Rは、Gと、R及びGの両方が結合している窒素と共に複素環基を形成し、各nは独立して0~1500の整数であり、各pは独立して1~10の整数であり、各qは独立して1以上の整数である。qの少なくとも50%は整数2である。
【0102】
式A中のRに好適なアルキル基は、典型的には、1個~10個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有する。例示的なアルキル基としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、及びイソブチルが挙げられる。多くの場合では、Rに好適なハロアルキル基は、対応するアルキル基の水素原子の一部分のみがハロゲンで置き換えられている。例示的なハロアルキル基としては、1個~3個のハロ原子及び3個~10個の炭素原子を有するクロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。Rに好適なアルケニル基は、多くの場合、2個~10個の炭素原子を有する。例示的なアルケニル基は、多くの場合、2個~8個、2個~6個、又は2個~4個の炭素原子を有し、エテニル、n-プロペニル、及びn-ブテニルなどである。Rに好適なアリール基は、多くの場合、6個~12個の炭素原子を有する。フェニルは、例示的なアリール基である。アリール基は、非置換であってもよく、又はアルキル(例えば、1個~10個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、1個~10個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有するアルコキシ)、若しくはハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)で置換されていてもよい。Rに好適なアラルキル基は、典型的には、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基及び6個~12個の炭素原子を有するアリール基を有する。例示的なアラルキル基のいくつかにおいて、アリール基はフェニルであり、アルキレン基は、1個~10個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有する(すなわち、アラルキルの構造は、アルキレンがフェニル基に結合しているアルキレン-フェニルである)。
【0103】
実施形態では、式Aのいくつかの繰り返し単位中のR基のうちの少なくとも40パーセント、好ましくは少なくとも50パーセントがメチルである。例えば、R基のうちの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%がメチルであってもよい。残りのR基は、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、及びアリール、並びにアルキル、アルコキシ、及びハロで置換されたアリールから選択することができる。
【0104】
式A中の各Yは、独立してアルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、典型的には、最大で10個の炭素原子、最大で8個の炭素原子、最大で6個の炭素原子、又は最大で4個の炭素原子を有する。例示的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレン等が挙げられる。好適なアラルキレン基は、典型的には、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6個~12個の炭素原子を有するアリーレン基を有する。例示的なアラルキレン基のいくつかにおいて、アリーレン部分はフェニレンである。すなわち、二価のアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、このフェニレンは、1個~10個、1個~8個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合する。本明細書で使用される場合、Y基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン基及びアラルキレン基から選択される2つ以上の基の組み合わせを意味する。例えば、組み合わせは、単一のアルキレンに結合した単一のアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であり得る。1つの例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1個~10個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有する。
【0105】
式A中の各Gは、独立して、結合であるか、又は式RHN-G-NHRのジアミン化合物から2つのアミノ基(すなわち、-NHR基)を除いたものに等しい残基単位である。Gが結合である場合、コポリマーは、シリコーンポリオキサミド-ヒドラジドである。実施形態では、Gは結合であり、各Rは水素である。
【0106】
Gが残基単位である場合、コポリマーは、シリコーンポリオキサミドである。ジアミンは、第一級又は第二級アミノ基を有し得る。R基は、水素若しくはアルキル(例えば、1個~10個、1個~6個、若しくは1個~4個の炭素原子)であるか、又はRは、Gと、R及びGの両方が結合する窒素と共に複素環基を形成する(例えば、RHN-G-NHRはピペラジンである)。大部分の実施形態において、Rは、水素又はアルキルである。多くの実施形態では、ジアミンの両方のアミノ基は第一級アミノ基であり(すなわち、両方のR基は水素である)、ジアミンは、式HN-G-NHを有する。
【0107】
実施形態では、Gは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレンは、多くの場合、2個~10個、2個~6個、又は2個~4個の炭素原子を有する。例示的なアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。好適なヘテロアルキレンは、多くの場合、少なくとも2つのエチレン単位を有するポリオキシエチレン、少なくとも2つのプロピレン単位を有するポリオキシプロピレン、又はこれらのコポリマーなどのポリオキシアルキレンである。好適なアラルキレン基は、典型的には、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6個~12個の炭素原子を有するアリーレン基を含有する。例示的なアラルキレン基のいくつかは、フェニレン-アルキレンであり、このフェニレンは、1個~10個の炭素原子、1個~8個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合する。本明細書で使用される場合、G基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、及びアラルキレンから選択される2つ以上の基の組み合わせを意味する。例えば、この組み合わせは、アルキレンに結合したアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であり得る。1つの例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1個~10個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有する。
【0108】
式A中の各下付き文字nは、独立して、0~1,500の整数である。例えば、下付き文字nは、最大で1000、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、最大で100、最大で80、最大で60、最大で40、最大で20、又は最大で10の整数であってもよい。nの値は、多くの場合、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも40である。例えば、下付き文字nは、40~1500、0~1000、40~1000、0~500、1~500、40~500、1~400、1~300、1~200、1~100、1~80、1~40、又は1~20の範囲であってもよい。
【0109】
各下付き文字pは、独立して、1~10の整数である。例えば、pの値は、多くの場合、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、又は最大で2である整数である。pの値は、1~8、1~6、又は1~4の範囲であってもよい。
【0110】
各下付き文字qは、独立して1以上の整数であり、qのうちの少なくとも50%は整数2である。実施形態では、qのうちの少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも99%、又は全てが整数2である。
【0111】
一実施形態では、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーは、式:-R-(CO)-NH-(式中、Rはアルキレンである)を有する基を含まない傾向がある。コポリマー材料の主鎖に沿う全てのカルボニルアミノ基は、オキサリルアミノ基(例えば、a-(CO)-(CO)-NH-基)の一部である。すなわち、コポリマー材料の主鎖に沿うあらゆるカルボニル基は、別のカルボニル基に結合しており、オキサリル基の一部である。より具体的には、コポリマーは、複数のアミノオキサリルアミノ基を含有する。
【0112】
シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーは、線状ブロックコポリマー(すなわち、ハードブロックとソフトブロックとを含有する)であり、エラストマーであり得る。これらは、既知のポリジオルガノシロキサンポリオキサミドよりも良好な耐溶剤性を有する傾向がある。コポリマーのいくつかは不溶性であり、例えば、トルエン又は更にはテトラヒドロフランに不溶性である。ここで、以下の方法は、コポリマーが特定の溶媒に「不溶性」であるかどうかを決定することができる。約1gの試料コポリマーをジャーに入れ、約100gの所望の溶媒を加え、ジャーを密封し、周囲温度下で約4時間ローラー上に置いた。試料コポリマーを一定重量まで乾燥させた後に元の質量の90%以上が保持される場合、コポリマー試料は不溶性であると考えられる。
【0113】
シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーは、例えば、本開示の方法に従って調製することができる。以下の方法を使用して、少なくとも2つの式Bの繰り返し単位:
【化4】
を含有するコポリマー材料を製造することができる。
【0114】
式B中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、若しくはアリールであるか、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり、各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり、各Gは、独立して、結合であるか、又は式RHN-G-NHRのジアミンから2つの-NHR基を除いたものに等しい二価の残基であり、各Rは、独立して、水素若しくはアルキルであるか、又はRは、Gと、R及びGの両方が結合している窒素と共に複素環基を形成し、各nは独立して0~1500の整数である。
【0115】
、Y、G、及びRの好適な例は、式Aに関して上に述べたものと同様である。
【0116】
本開示の方法の第1の工程は、式C:
【化5】
の化合物の使用を伴い得る。
【0117】
式C中、pは1~10の整数である。
【0118】
式Cの化合物は、少なくとも1個のポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2個のオキサリルアミノ基を含有する。R基、Y基、及び下付き文字nは、式Bについて記載されたものと同じであり、pは1~10の整数である。各R基は、独立して、アルキル、ハロアルキル、若しくはアリールであるか、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであるか、又はNを介して結合する式D:
【化6】
である。
【0119】
式D中、各Rは、独立して、水素、アルキル、若しくはアリールであるか、又はRは一緒になって環を形成する。
【0120】
式C中のRに好適なアルキル基及びハロアルキル基は、多くの場合、1個~10個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有する。三級アルキル基(例えば、t-ブチル)及びハロアルキル基を使用することができるが、多くの場合、第一級又は第二級炭素原子は隣接するオキシ基に直接付着させる。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、及びイソ-ブチルが挙げられる。例示的なハロアルキル基としては、対応するアルキル基上の水素原子のいくつか(全てではない)が、ハロ原子で置換されている、クロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。例えば、クロロアルキル基又はフルオロアルキル基は、クロロメチル、2-クロロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、3-クロロプロピル、4-クロロブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチルなどであってよい。Rに好適なアリール基としては、6個~12個の炭素原子を有するもの、例えば、フェニルなどが挙げられる。アリール基は、非置換であってよく、又は、アルキル(例えば、メチル、エチル、又はn-プロピルなどの、1個~4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシなどの、1個~4個の炭素原子を有するアルコキシ)、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)、若しくはアルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、又はプロポキシカルボニルなどの、2個~5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル)によって置換されていてもよい。
【0121】
式Cの化合物は、単一化合物を包含することができ(すなわち、化合物の全てがp及びnについて同一の値を有する)、又は複数の化合物を含むことができる(すなわち、化合物がpについての異なった値、nについての異なった値、又はp及びnの両方についての異なった値を有する)。異なるn値を有する化合物は、異なる長さのシロキサン鎖を有する。少なくとも2のp値を有する化合物は、鎖が延長されている。
【0122】
実施形態では、下付き文字pが1に等しい式Cの第1の化合物と下付き文字pが少なくとも2に等しい式Cの第2の化合物との混合物である。第1の化合物は、異なるn値を有する複数の異なる化合物を包含することができる。第2の化合物は、異なるp値、異なるn値、又はpとnの両方について異なる値を有する複数の化合物を包含することができる。混合物は、混合物中の第1及び第2の化合物の総重量に基づいて、少なくとも50質量%の式Cの第1の化合物(すなわち、pは1に等しい)及び50質量%以下の式Cの第2の化合物(すなわち、pは少なくとも2に等しい)を含有することができる。混合物のいくつかにおいて、第1の化合物は、式Cの化合物の総量に基づいて、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、少なくとも65質量%、少なくとも70質量%、少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%、少なくとも95質量%、又は少なくとも98質量%の量で存在する。混合物は、多くの場合、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は2質量%以下の第2の化合物を含有する。
【0123】
混合物中の異なる量の式Cの鎖延長化合物により、式Bのエラストマー材料の最終特性に影響が及ばされ得る。すなわち、式Cの第2の化合物(すなわち、pは少なくとも2に等しい)の量により、様々な特性を有するエラストマー材料を提供するために有利に変化させることができる。例えば、式Cの第2の化合物の量を増加させることにより、溶融レオロジーを調整する(例えば、溶融物として存在する場合にエラストマー材料をより容易に流動させる)、エラストマー材料の可撓性を調整する、エラストマー材料の弾性率を減少させる、又はこれらの組み合わせを実現することができる。
【0124】
本開示の方法の第1の工程において、式Cの化合物及びモル過剰の以下の式E:
【化7】
のジアミンが、反応条件下で組み合わされる。
【0125】
式E中のR及びG基は、式Bについて記載したものと同様である。
【0126】
式Eのジアミンは、任意選択で、有機ジアミンとして、又は例えば、アルキレンジアミン、ヘテロアルキレンジアミン、アリーレンジアミン、アラルキレンジアミン、若しくはアルキレン-アラルキレンジアミンから選択されるものなどの有機ジアミンを有するポリジオルガノシロキサンジアミンとして分類されてもよい。ジアミンはアミノ基を2個しか持たないので、得られるポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及びポリオキサミド-ヒドラジドは直鎖ブロックコポリマーであり、これは多くの場合、エラストマーであり、高温で溶融し、いくつかの一般的な有機溶媒に可溶性である。ジアミンは、2つ以上の第一級又は第二級アミノ基を有するポリアミンを有さない。式Cの化合物と反応しない第三級アミンが存在し得る。
【0127】
例示的なポリオキシアルキレンジアミン(すなわち、Gは、ヘテロ原子が酸素であるヘテロアルキレンである)としては、上に列挙したHUNTSMAN(Woodlands,TX)からの商品名JEFFAMINE(商標名)D-230、JEFFAMINE(商標名)D-400、JEFFAMINE(商標名)D-2000、及びJEFFAMINE(商標名)EDR-148に加えて、商品名JEFFAMINE(商標名)HK-511(すなわち、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の両方を有し、220g/molの数平均分子量を有するポリエーテルジアミン)、及び商品名JEFFAMINE(商標名)ED-2003(すなわち、2000g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコール)で市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
例示的なアルキレンジアミン(すなわち、Gはアルキレンである)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジアミン(すなわち、Dupont(Wilmington,DE)より商品名DYTEK(商標名)Aで市販)、1,3-ペンタンジアミン(Dupontより商品名DYTEK(商標名)EPで市販)、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン(Dupontより商品名DHC-99で市販)、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン及び3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
例示的なアリーレンジアミン(すなわち、Gはフェニレンなどのアリーレンである)としては、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、及びp-フェニレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアラルキレンジアミン(すなわち、Gはアルキレン-フェニルなどのアラルキレンである)としては、4-アミノメチル-フェニルアミン、3-アミノメチル-フェニルアミン、及び2-アミノメチル-フェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルキレン-アラルキレンジアミン(すなわち、Gはアルキレン-フェニレン-アルキレンなどのアルキレン-アラルキレンである)としては、4-アミノメチル-ベンジルアミン、3-アミノメチル-ベンジルアミン、及び2-アミノメチル-ベンジルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
例示的なヒドラジン(すなわち、Gは結合である)としては、ヒドラジン及びN,N’-ジアミノピペラジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
好ましい実施形態のいくつかでは、式Eのジアミンは、ヒドラジン、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ジアミノヘキサン、及びm-キシレンジアミンからなる群から選択される。
【0132】
式Cの化合物とモル過剰の式Eのジアミンとの反応により、式F:
【化8】
のアミン末端ポリマーが得られる。
【0133】
反応は、式Cの複数の化合物、複数のジアミン、又はこれらの組み合わせを使用して実行することができる。異なる数平均分子量を有する式Cの複数の化合物を、反応条件下で、単一のジアミン又は複数のジアミンと混合することができる。例えば、式Cの化合物は、異なる値のn、異なる値のp、又はn及びpの両方について異なる値を有する材料の混合物を包含してもよい。複数のジアミンは、例えば、有機ジアミンである第1のジアミン、及びポリジオルガノシロキサンジアミンである第2のジアミンを包含することができる。同様に、式Cの単一の化合物を反応条件下で複数のジアミンと組み合わせることができる。
【0134】
式Cの化合物とジアミンとの縮合反応は、多くの場合、室温又は高温(例えば、最大約250℃の温度)で実行される。例えば、この反応は、多くの場合、室温又は最大約100℃の温度で実行することができる。他の例では、反応は、少なくとも約100℃、少なくとも約120℃、又は少なくとも約150℃の温度で実行することができる。例えば、この反応温度は、多くの場合、約100℃~約220℃の範囲、約120℃~約220℃の範囲、又は約150℃~約200℃の範囲である。この縮合反応は、多くの場合、約1時間未満、約2時間未満、約4時間未満、約8時間未満、又は約12時間未満で完了する。
【0135】
反応は、溶媒の存在下又は非存在下にて生じることができる。好適な溶媒は、典型的には、反応に関連する反応物又は生成物とも反応しない。更に、好適な溶媒は、典型的には、プロセス全体を通して全ての反応物及び全ての生成物を溶液中に維持することができる。例示的な溶媒としては、限定するものではないが、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンなどのアルカン)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0136】
反応の完了後、存在する場合、過剰のジアミン及び溶媒を除去する。過剰のジアミンは、例えば真空蒸留によって除去することができる。
【0137】
次いで、得られた式Fのアミン末端ポリマーをシュウ酸エステルで処理して、アミン末端基を利用して式Fの繰り返し単位を形成する。有用なシュウ酸エステルは、以下の式G:
【化9】
を有する。
【0138】
式Gのオキサレートは、例えば、式R-OHのアルコールをオキサリルジクロリドと反応させることにより調製できる。市販の式Gのオキサレート(例えば、Sigma-Aldrich(Milwaukee,WI)及びVWR International(Bristol,CT)から)としては、ジメチルオキサレート、ジエチルオキサレート、ジ-n-ブチルオキサレート、ジ-tert-ブチル-オキサレート、ビス(フェニル)オキサレート、ビス(ペンタフルオロフェニル)オキサレート、1-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2,3,4,5,6-ペンタクロロフェニル)オキサレート、及びビス(2,4,6-トリクロロフェニル)オキサレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
式Gの特に有用なシュウ酸エステルとしては、例えば、フェノール、エタノール、ブタノール、メチルエチルケトンオキシム、アセトンオキシム、及びトリフルオロエタノールのシュウ酸エステルが挙げられる。
【0140】
任意の好適な反応器(例えば、ガラス容器又は撹拌器を備えた一般的な容器)若しくはプロセスを使用して、本開示の方法に従ってシリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーを調製することができる。この反応は、バッチプロセス、半バッチプロセス、又は連続プロセスを用いて行うことができる。
【0141】
存在する任意の溶媒は、反応の終わりに、得られたポリジオルガノシロキサンポリオキサミド又はポリオキサミド-ヒドラジドから除去することができる。この除去プロセスは、多くの場合、少なくとも約100℃、少なくとも約125℃、又は少なくとも約150℃の温度で実行される。この除去プロセスは、典型的には、約300℃未満、約250℃未満、又は約225℃未満の温度で実行される。
【0142】
溶媒の非存在下で反応を実施することが望ましい場合がある。反応物及び生成物の両方と相溶性でない溶媒中では、反応は不完全になり、重合度は低くなる。
【0143】
本開示の感圧接着剤層は、本開示の効果を阻害しない範囲で、任意成分として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、流動性向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、充填剤、顔料、染料を含むことができる。
【0144】
本開示の壁紙用積層体は、コア層として不織布層又は発泡層を有する。ここで、「コア層」とは、図1に示すように、壁紙用積層体の第1の感圧接着剤層と第2の感圧接着剤層との間に配置される層である。
【0145】
本開示の不織布層は、壁紙に対する適用性及び壁紙からの剥離性、並びに部材保持性のバランスの観点から、約12g/m以上の坪量を有する。一実施形態では、不織布層の坪量は、約15g/m以上、約20g/m以上、約25g/m以上、約30g/m以上、約35g/m以上、約40g/m以上、約50g/m以上、約55g/m以上、約60g/m以上、又は約70g/m以上、且つ約260g/m以下、約230g/m以下、約200g/m以下、約150g/m以下、又は約130g/m以下である。坪量は、10cm×10cmの試料の重量から計算される。
【0146】
いくつかの実施形態では、不織布層は、不織布基部を含む。不織布基部は、不織布又は不織ウェブを製造するための一般的に知られているプロセスのいずれかによって製造された不織布又は不織ウェブであり得る。本開示において、「不織布」は、個々の繊維又はフィラメントの構造を有し、マット形態でランダムに及び/又は一方向に組み込まれているが、編布のような識別可能な性質を有さない布を指す。
【0147】
不織布又は不織ウェブは、メルトブローンプロセス、スパンボンドプロセス、スパンレースプロセス、結合カードウェブプロセス、エアレイイングプロセス、及びウェットレイイングプロセスなどの、様々なプロセスで形成することができる。いくつかの実施形態では、不織布層は、例えば、メルトブローン不織布のうちの少なくとも1つの層、及びスパンボンド不織布のうちの少なくとも1つの層、又は不織布材料の任意の他の好適な組み合わせを有する、多層不織布材料を含有する。例えば、不織布層は、スパンボンド-メルトボンド-スパンボンド、スパンボンド-スパンボンド、又はスパンボンド-スパンボンド-スパンボンドの多層材料であってもよい。実施形態では、長繊維ベースのナイロンスパンボンド不織布、ポリエステルベースのスパンボンド不織布、及びポリオレフィンベースのスパンボンド不織布が好ましい。
【0148】
本開示において、「メルトブローン」とは、ダイ中の複数のオリフィスを通じて溶融繊維形成材料を押出し、繊維を形成しながら、この繊維を空気又は他の減衰性流体と接触させて、繊維を微細繊維に細くし、次いで微細繊維を捕集することによって、不織繊維ウェブを形成するための方法を意味する。例示的なメルトブローンプロセスは、例えば米国特許第6,607,624号(Berriganら)で教示されている。「メルトブローン繊維」は、メルトブロー法又はメルトブロー法によって製造された繊維を意味する。
【0149】
本開示において、「スパンボンディング」及び「スパンボンドプロセス」とは、紡糸口金の複数の微細な毛細管から連続又は半連続繊維として溶融繊維形成材料を押出し、その後、細くなった繊維を捕集することによって、不織繊維ウェブを形成するための方法を意味する。例示的なスパンボンドプロセスは、例えば、米国特許第3,802,817号(Matsukiら)に開示されている。「スパンボンド繊維(spunbond fibers)」及び「スパンボンド繊維(spunbonded fibers)」は、スパンボンド又はスパンボンドプロセスを使用して製造された繊維を意味する。このような繊維は、一般に連続繊維であり、十分に交絡又は点結合されて、一体化した(coherent)不織繊維ウェブを形成する。したがって、そのような繊維の塊から1つの完全なスパンボンド繊維を取り出すことは一般に不可能である。繊維は、既知でない形状を有する繊維を記載している米国特許第5,277,976号(Hogleら)に記載されているような形状を有してもよい。
【0150】
本開示において、「カーディング」及び「カーディングプロセス」は、コーミング又はカーディングユニットで短繊維を処理することによって不織繊維ウェブを形成する方法を指し、短繊維は、分離又は破断され、長さ方向に整列されて、概して長さ方向に配向された繊維不織ウェブを形成する。例示的なカーディングプロセス及びカーディング機械は、例えば、米国特許第5,114,787号(Chaplinら)及び米国特許第5,643,397号に教示されている。
【0151】
本開示において、「結合カードウェブ」とは、カードプロセスによって形成された不織繊維ウェブを指し、繊維の少なくとも一部分が、例えば、熱点結合、自己結合、熱風結合、超音波結合、ニードルパンチング、カレンダー加工、スプレー接着剤の適用などが含まれる方法によって一緒に結合される。不織ウェブ及び不織ウェブを含む積層体の製造及び特性に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第9,469,091号(Henkeら)に見出すことができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0152】
本開示において、「エアレイイング」とは、約3ミリメートル~約52ミリメートル(mm)の典型的な長さを有する小繊維の束が分離されて給気に取り込まれた後、典型的には、真空供給の助けで形成スクリーンの上に堆積されるプロセスを指す。次いで、ランダムに配向された繊維を、例えば、熱点結合、自己結合、熱風結合、ニードルパンチング、カレンダー加工、スプレー接着剤などを使用して、互いに結合してもよい。例示的なエアレイイングプロセスは、例えば米国特許第4,640,810号(Laursenら)で教示されている。
【0153】
本開示における「ウェットレイイング」は、約3ミリメートル~約52ミリメートル(mm)の典型的な長さを有する小繊維の束が分離されて供給液に取り込まれた後、典型的には、真空供給の助けで形成スクリーンの上に堆積されるプロセスを指す。水は、典型的には、好ましい液体である。ランダムに堆積された繊維を、更に絡合(例えば、水流絡合)してもよく、又は例えば、熱点結合、自己結合、熱風結合、超音波結合、ニードルパンチ、カレンダー加工、スプレー接着剤の適用などを使用して、互いに結合してもよい。例示的なウェットレイイング及び結合プロセスは、例えば米国特許第5,167,765号(Nielsenら)で教示されている。例示的な結合プロセスは、例えば、米国特許第9,139,940号(Berriganら)にも開示されている。
【0154】
有用な不織布層を提供する繊維質材料は、天然繊維(例えば、木質繊維又は綿繊維)、合成繊維(例えば、熱可塑性繊維)、又は天然繊維と合成繊維との組み合わせで作製することができる。
【0155】
熱可塑性繊維を形成するための例示的材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、ブチレンコポリマー、並びにこれらのポリマーのコポリマー及びブレンド)、ポリエステル、及びポリアミドが挙げられる。
【0156】
不織布層を構成する不織布基部は、任意の好適な熱可塑性ポリマー材料製の繊維又はフィラメントから形成することができる。適切なポリマー材料としては、ポリオレフィン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリ酢酸ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー(例えば、ポリエチレン-co-ポリビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、及びポリカーボネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
好適なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、アルファオレフィンコポリマー(例えば、エチレン又はプロピレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセンとのコポリマー)、ポリエチレン-co-1-ブテン、及びポリ(エチレン-co-1-ブテン-co-1-ヘキセンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
好適なフッ素化ポリマーとしては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えばポリ(エチレン-co-クロロトリフルオロエチレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
好適なポリアミドとしては、ポリイミノアジポイルイミノヘキサメチレン、ポリイミノアジポイルイミノデカメチレン、及びポリカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリイミドには、ポリピロメリットイミドが挙げられる。
【0160】
好適なポリエーテルスルホンとしては、ポリジフェニルエーテルスルホン及びポリジフェニルスルホン-co-ジフェニレンオキシドスルホンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
好適なビニルアセテートのコポリマーとしては、ポリエチレン-co-ビニルアセテート、及びコポリマー中でアセテート基のうちの少なくともいくつかが加水分解され、ポリエチレン-co-ビニルアルコールなどの各種のポリビニルアルコールを生成するようなコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
繊維はまた、例えば、ある熱可塑性材料のコア及び別の熱可塑性材料のシースを有する、多成分繊維であってもよい。シースは、コアよりも低い温度で溶融してもよく、繊維のマットがシース溶融物に曝露されると、繊維間に部分的にランダムな結合を提供する。異なる融点を有する単成分繊維の組み合わせもまた、この目的に有用であり得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、本開示による不織布層に有用な不織布又は不織ウェブは、少なくとも部分的に弾性である。弾性繊維を作製するためのポリマーの例としては、ABAブロックコポリマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー(例えば、メタロセンポリオレフィンエラストマー)、オレフィンブロックコポリマー、ポリアミドエラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー、及びポリエステルエラストマーなどの、熱可塑性エラストマーが挙げられる。ABAブロックコポリマーエラストマーは、一般に、Aブロックがポリスチレン系であり、Bブロックが共役ジエン(例えば、低級アルキレンジエン)から調製される、エラストマーである。Aブロックは一般に、置換(例えば、アルキル化)若しくは非置換スチレン系部分(例えば、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、又はポリ(t-ブチルスチレン))から主に形成され、1モル当たり約4000グラム~50000グラムの数平均分子量を有する。Bブロックは一般に、置換若しくは非置換であり得る共役ジエン(例えば、イソプレン、1,3-ブタジエン、又はエチレン-ブチレンモノマー)から主に形成され、1モル当たり約5000グラム~500000グラムの数平均分子量を有する。Aブロック及びBブロックは、例えば、線状、放射状、又は星形構成で構成されてもよい。ABAブロックコポリマーは、複数のAブロック及び/又はBブロックを含有してもよく、これらのブロックは同じ又は異なるモノマーから製造されてもよい。典型的なブロックコポリマーは、Aブロックが同一であっても異なっていてもよい線状ABAブロックコポリマー、又は主にAブロックで停止する4つ以上のブロックを有するブロックコポリマーである。マルチブロックコポリマーは、例えば、より感圧接着性のエラストマーフィルムセグメントを形成する傾向がある、ある特定の割合のABジブロックコポリマーを含有してもよい。他の弾性ポリマーを、ブロックコポリマーエラストマーとブレンドすることができ、様々な弾性ポリマーを、様々な程度の弾性特性を提供するようにブレンドしてもよい。数多くの種類の熱可塑性エラストマーが市販されており、それらの例としては、例えば、BASF(Florham Park,N.J.)から商品名「STYROFLEX(商標名)」として市販されているもの、Kraton(商標名)Polymers(Houston,Tex.)から商品名「KRATON(商品名)」として市販されているもの、Dow Chemical(Midland,Mich.)から商品名「PELLETHANE(商標名)」、「INFUSE(商標名)」、「VERSIFY(商標名)」、「NORDEL(商標名)」として市販されているもの、DSM(Heerlen,Netherlands)から「ARNITEL(商標名)」の商品名で市販されているもの、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商品名「HYTREL(商標名)」で市販されているもの、ExxonMobil(Irving,Tex.)から商品名「VISTAMAXX(商標名)」で市販されているものなどが挙げられる。
【0164】
例えば、不織ウェブは、カーディング、エアレイイング、ウェットレイイング、スパンレース、スパンボンディング、電界紡糸、又はメルトブロープロセス、例えばメルトスパン若しくはメルトブローイング、又はこれらの組み合わせによって製造することができる。不織ウェブのいずれかは、熱可塑性ポリマーの種類、形状、及び/又は厚さが異なる単一の種類の繊維又は2種以上の繊維から作られてもよく、単一の繊維種類又は複数の繊維種類のうちの少なくとも1つはそれぞれ、上記のような多成分繊維であってもよい。
【0165】
短繊維もまた、ウェブ中に存在してよい。短繊維の存在は、一般に、メルトブローンマイクロファイバーのみから形成されたウェブよりも高いロフト(嵩)及び低い密度のウェブをもたらす。より高いロフトのウェブは、不織布層又は不織布層自体のバルクにおける界面において、より低い凝集力を有してもよく、1つ以上の感圧接着剤層から分離することをより容易にする。
【0166】
不織布層は、任意選択的に、1層以上のスクリムを更に含み得る。例えば、不織布層の主面のいずれか又は両方が、任意選択的に、スクリム層を更に含み得る。スクリムは、典型的には、繊維から作製された織布又は不織布のための補強材であり、強度を提供するために不織布物品に含まれる。好適なスクリム材料としては、ナイロン、ポリエステル、繊維ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。スクリムの平均厚さは様々であってもよい。スクリムの層は、任意選択的に、不織布基部に結合されてもよい。様々な接着剤を用い、スクリムを不織布基部に結合することができる。あるいは、スクリムは、不織布に熱的に結合されてもよい。
【0167】
不織布層の不織ウェブはまた、静電気制御、電気分極率、着色、難燃性、UV安定性、吸収性、及び当業者に明らかな他の特性などの特性を改善するために、様々な技術で処理/仕上げすることができる。
【0168】
有用な不織布層は、特定の用途に望ましい任意の好適な有効繊維直径(EFD)を有し得る。本開示において、「有効繊維直径」は、1気圧及び室温での空気が、指定された厚さ及び指定された面速度(5.3cm/秒)でウェブ試料を通され、対応する圧力低下が測定される、空気透過試験に基づく、繊維ウェブ内の繊維の見かけの直径である。測定された圧力低下に基づいて、有効繊維直径は、Davies,C.N.,The Separation of Airborne Dust and Particulates,Institution of Mechanical Engineers,London Proceedings,1B(1952)に記載されている方法などで計算される。いくつかの実施形態では、不織布基部の繊維は、約0.1マイクロメートル以上、約1マイクロメートル以上、約2マイクロメートル以上、又は約4マイクロメートル以上、及び約125マイクロメートル以下、約75マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約35マイクロメートル以下、約25マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、約15マイクロメートル以下、約10マイクロメートル以下、約8マイクロメートル以下、又は約6マイクロメートルであってもよい。例えば、スパンボンド不織布層は、典型的には、約35マイクロメートル以下の有効繊維直径を有するが、エアレイド不織布層は、約100マイクロメートルのより大きな有効繊維直径を有し得る。
【0169】
不織布層のロフト(嵩)は、ソリディティで評価することができる。ソリディティは、不織繊維ウェブの嵩密度の測定値をウェブの固体部分を構成する材料の密度で割ることによって求める。ウェブの嵩密度は、最初にウェブ(例えば、10cm×10cmの部分)の重量を測定することによって求めることができる。ウェブの重量の測定値をウェブの面積で割ってウェブの坪量を求め、ウェブの坪量は、g/mの単位で表される。ウェブの厚さは、135mmの直径を有するウェブのディスクを(例えば、ダイカットによって)取り出し、100mmの直径を有する230gの重りをウェブ上に中心合わせした状態でウェブ厚さを測定することによって測定することができる。ウェブの嵩密度は、ウェブの坪量をウェブの厚さで割ることによって決定され、g/mで表される。次に、不織繊維ウェブの嵩密度を、ウェブの固体フィラメントを含有する材料(例えば、ポリマー)の密度で割ることによって、ソリディティを決定する。ポリマーの嵩密度は、供給業者が材料密度を特定していない場合、標準的手段によって測定することができる。
【0170】
ロフトは、100%からソリディティを引いたものとして報告される(例えば、7%ソリディティは93%ロフトに等しい)。より高いロフトは、パターンエンボス加工された不織布層にとって特に有利である。これは、感圧接着剤が熱エネルギー及び/又は圧力の印加中に比較的容易に空隙体積全体に浸透して流れることができるからである。いくつかの実施形態では、高ロフト不織布層は、エンボスパターン化プロセスにおいて結合され、必要とされる凹部のアレイを作製することができる。
【0171】
不織布層のソリディティは、約2.0%~12.0%未満であり得る(すなわち、ロフトは、約98.0%~88.0%超である)。いくつかの実施形態では、不織布層のソリディティは、最大で約7.5%、最大で約7.0%、又は最大で約6.5%であってよく、少なくとも約5.0%、少なくとも約5.5%、又は少なくとも約6.0%であってよい。
【0172】
本開示の発泡層は、任意の好適な厚さ、組成、及び不透明度又は透明度を有する発泡体の形態であってもよい。発泡層は、単層発泡体又は多層発泡体であることができる。
【0173】
いくつかの実施形態では、発泡層は、第1の感圧接着剤層及び第2の感圧接着剤層を越えて延びて、壁紙用積層体が引き伸ばされて壁紙から剥がされるときのハンドルとして機能するプルタブ部を有する。プルタブ部の形状、大きさ、厚み、透明性は、設計、取り扱い性などを考慮して適宜設定することができる。
【0174】
いくつかの実施形態では、発泡層は、フィルム層が発泡体に適用された複合材であってもよい。例えば、発泡体に接合されたフィルム層を含む複合材は、例えば、フィルム及び発泡体の共押出成形、共成形、押出コーティング、結合剤による結合、圧力結合、熱結合、及びこれらの組み合わせを含む任意の好適な手法を用いて形成することができる。複合材を構成するフィルム又は発泡体の1つの部材のみが、壁紙からの剥離を達成するために延伸される場合、部材は、その目的を達成するために十分な物理的特性を呈し、十分な厚さを有するべきである。
【0175】
発泡層は、典型的には、壁紙用積層体における使用に適した機械的特性を有するように選択される。例えば、発泡層は、破断することなく第1の方向(例えば、長手方向)に少なくとも50パーセント延伸(伸長)され得るように選択される。すなわち、発泡層を破断することなく少なくとも約50パーセント延伸することにより、発泡層の長さなどの少なくとも1つの寸法を増加させることができる。いくつかの実施形態では、発泡層は、破損させることなく、少なくとも100パーセント、少なくとも150パーセント、少なくとも200パーセント、少なくとも300パーセント、少なくとも400パーセント、又は少なくとも500パーセント引き伸ばすことが可能である。発泡層は、多くの場合、破損させることなく、最大で1200パーセント、最大で1000パーセント、最大で800パーセント、最大で750パーセント、又は最大で700パーセントまで引き伸ばすことが可能である。これらの比較的大きな伸長値は、壁紙に適用された後の壁紙用積層体の延伸剥離を促進することができる。
【0176】
発泡層のヤング率は、延伸に対する発泡層の抵抗性を示す指標となり得る。いくつかの実施形態では、発泡層のヤング率は、約520MPa以下、約345MPa以下、約170MPa以下、約70MPa以下、約20MPa以下、約7MPa以下、又は約3.4MPa以下であり得る。発泡層のヤング率の下限は、特に限定されないが、例えば、約0.1MPa以上、約0.5MPa以上、約1.0MPa以上、約1.5MPa以上、又は約2.0MPa以上であり得る。ヤング率は、ASTM D790-07又はASTM D882-02の方法を使用して測定することができる。
【0177】
発泡層は、例えば、ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、及び線形超低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、並びにポリブチレン)、ビニルコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル及びポリ酢酸ビニル)、オレフィンコポリマー(例えば、エチレン/メチルアクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、及びエチレン/プロピレンコポリマー)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリウレタン、並びにこれらの組み合わせ又は配合物から調製され得る。例示的な配合物としては、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレン配合物、ポリウレタン/ポリオレフィン配合物、ポリウレタン/ポリカーボネート配合物、及びポリウレタン/ポリエステル配合物を挙げることができる。他の好適な配合物としては、例えば熱可塑性ポリマー、エラストマー性ポリマー、及びこれらの組み合わせの配合物を挙げることができる。好適な配合物としては、例えば、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリクロロプレン(すなわち、ネオプレン)、ニトリルゴム、ブチルゴム、多硫化ゴム、cis-1,4-ポリイソプレン、エチレン-プロピレンターポリマー(例えば、EPDMゴム)、シリコーンゴム、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー、ポリウレタンゴム、天然ゴム、(メタ)アクリレートゴム、熱可塑性ゴム(例えばスチレン-ブタジエンブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー、及びスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー)、熱可塑性ポリオレフィンゴム材料、並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0178】
有用な発泡層は、典型的には可撓性であり、例えば、発泡層上に配置された第1の感圧接着剤層と壁紙表面との間の表面接触の程度を増加させることができる。発泡層は、約50パーセント~約600パーセントの伸びを達成することができる(すなわち、発泡層は、少なくとも約50パーセント~約600パーセント伸張可能である)。発泡層の破断点伸びは、壁紙用積層体が貼り付けられた壁紙から壁紙用積層体を剥離する際に、発泡層が失われない状態を維持できる程度に高いことが好ましい。
【0179】
発泡層は、多くの場合、可撓性及び弾力性などの特性を最適化するように選択される。可撓性及び弾性ポリマー発泡体は、壁紙用積層体が凹部及び凸部を有する壁紙に適用される意図された用途に適している。
【0180】
発泡層は、壁紙に対する適用性及び壁紙からの剥離性、並びに部材保持性のバランスの観点から、約5倍以上、約10倍以上、又は約15倍以上、且つ約50倍以下、約40倍以下、又は約35倍以下の発泡倍率を有することが好ましい。発泡層の発泡倍率は、JIS K7222に準拠した方法で見掛け密度を測定し、その逆数を発泡倍率として求めた。
【0181】
発泡層は、任意の好適な厚さを有することができる。好適な発泡層は、多くの場合、少なくとも100マイクロメートル、少なくとも200マイクロメートル、少なくとも300マイクロメートル、少なくとも400マイクロメートル、少なくとも500マイクロメートル、少なくとも600マイクロメートル、又は少なくとも700マイクロメートルの厚さを有する。厚さは、最大5.0mm、最大4.0mm、最大3.0mm、又は最大2.0mmであってもよい。いくつかの実施形態では、発泡層は多層構成であってもよく、発泡層の各層は、密度、伸長率、引張強度、及びそれらの組み合わせなどの様々な特性に寄与することができる。
【0182】
有用なポリエチレン酢酸ビニルコポリマー発泡体は、Voltek,Division of Sekisui America Corporation(Lawrence,Massachusetts)から商品名VOLEXTRA(商標名)及びVOLARA(商標名)シリーズで入手可能である。
【0183】
発泡層が、フィルム層が発泡体に適用される複合材の形態である場合、発泡層は、例えば、単層又は多層フィルム、多孔質フィルム、及びこれらの組み合わせが含まれる様々な形態であり得る。フィルム層は、1つ以上の充填剤(例えば、炭酸カルシウム)を含むことができる。フィルム層は、連続層であってもよく、あるいは不連続層であってもよい。多層フィルムは、複合フィルム、積層フィルム、及びこれらの組み合わせの形態で、互いに一体的に結合されていることが好ましい。多層フィルムは、例えば、共成形、共押出成形、押出コーティング、結合剤による結合、圧力結合、熱結合、及びこれらの組み合わせを含む任意の好適な方法を使用して調製することができる。
【0184】
発泡層が少なくとも1つの発泡体層及び少なくとも1つのフィルム層を含む実施形態において、このフィルム層は、少なくとも2種の異なるアルケンモノマーに由来するポリ(アルキレン)コポリマーを含有してもよい。ポリ(アルキレン)コポリマーは、1)エテン、プロペン、又はこれらの混合物から選択される第1のアルケンと、2)4個~8個の炭素原子を有する1,2-アルケンから選択される第2のアルケンモノマーとを含有するアルケン混合物の反応生成物であり得る。例えば、第2のアルケンモノマーは、多くの場合、4個、6個、又は8個の炭素原子を有する。すなわち、このアルケン混合物は、1)エテン、プロペン、又はこれらの混合物と、2)ブテン、ヘキサン、オクタン、又はこれらの混合物とを含有する。これらのコポリマーは、メタロセン触媒を使用して調製されてもよい。また、これらのコポリマーの混合物又は組み合わせも使用できる。
【0185】
上述した不織布層をコア層として含む本開示の壁紙用積層体は、図2図4に示すように、エンボスパターンを有する。エンボスパターンは、壁紙用積層体の一方の面のみにあってもよく、又は両面にあってもよい。エンボスパターンは、壁紙に対する適用性及び壁紙からの剥離性、並びに部材保持性のバランスの観点から、両面にあることが好ましい。両面にエンボスパターンを形成する場合、図2に示すように、両面に同じパターンを形成してもよいし、異なるパターンを用いてもよい。
【0186】
壁紙は、通常、設計を付与するために凹凸を有しており、脆弱な発泡体で形成されており、各種材料(例えば、可塑剤含有ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂)を用いて形成されている。本開示による壁紙用積層体は、不織布層を含み、エンボスパターンを有することにより、このような壁紙に対して良好な保持力を発揮することができ、壁紙から剥離する際に、破れなどの損傷を低減又は抑制しつつ、感圧接着剤の残留なしで壁紙から剥離することができる、接着性と剥離性とのバランスに優れた構造を提供することができる。
【0187】
エンボスパターンの中でも、壁紙への適用性及びそれからの剥離性、並びに部材保持のバランスの観点から、図2図4に示すように、エンボス部が海部であり、非エンボス部が島部である、海島構造を有するエンボスパターンが好ましい。
【0188】
非エンボス部としての島部は、図3に示すように不連続に形成されていてもよいし、図4に示すように一方向(例えば、図4のx方向)に連続して形成されていてもよい。いくつかの実施形態では、エンボス部は、非エンボス部として島部に非連続的に形成されてもよい。
【0189】
図3に示すように、非エンボス部としての島部が不連続に形成されている場合、例えば、図3に示すように、y方向における島部のアレイと、y方向において隣り合う島部のアレイとが非対称となるように配置されていてもよいし、対称となるように配置されていてもよい。
【0190】
壁紙用積層体を上方から見たときの島部の形状は、図3に示すような略円形状、図4に示すような略波形状に加えて、略多角形状(例えば、略三角形状、略正方形状、略長方形状、略正五角形状、略六角形状、略正八角形状、略台形状、略菱形状、略星形状、略格子形状)、略楕円形状、略直線形状(略ストライプ状)であってもよく、これらを組み合わせた形状であってもよい。
【0191】
図2は、剥離ライナーが除去された、エンボスパターンを有する本開示の実施形態による壁紙用積層体の概略断面図である。図2の壁紙用積層体200は、第1の感圧接着剤層203と、コア層としての不織布層205と、第2の感圧接着剤層207とをこの順に含む。エンボス部及びその周辺では、不織布層と感圧接着剤層とが加熱エンボス加工により熱溶着されている。
【0192】
島部とこれに隣接する島部との間の最短ピッチ間隔bと、このピッチ間隔bに対応する位置のエンボストップの長さaとの大きさは、同じであっても異なっていてもよい。エンボスロールの剥離性の観点から、a及びbは、式A>bを満たすことが好ましい。ここで、本開示における「ピッチ間隔」とは、島部の最下部からそれに隣接する島部の最下部までの距離を意味する。
【0193】
島部の頂部の形状は、図2に示すように略平坦であってもよいし、略凸状又は略凹状であってもよい。
【0194】
ピッチ間隔bは、全領域にわたって同じであってもよいし、異なっていてもよい。図2に示すように、積層体の上下両面のピッチ間隔bは同じであってもよいし、異なっていてもよい。ピッチ間隔bは、壁紙に対する適用性及び壁紙からの剥離性、並びに部材保持性のバランスの観点から、好ましくは約0.01mm以上、約0.05mm以上、又は約0.1mm以上であり、好ましくは約3.0mm以下、約2.0mm以下、又は約1.0mm以下である。
【0195】
エンボスの深さhは、積層体の厚さ方向全域にわたって同じであってもよいし、異なっていてもよい。図2に示すように、積層体の上下両面のエンボスの深さhは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。エンボスの深さhは、例えば、壁紙に対する適用性及び壁紙からの剥離性、並びに部材保持性のバランスの観点から、好ましくは約0.01mm以上、約0.05mm以上、又は約0.1mm以上であってもよく、約3.0mm以下、約2.0mm以下、又は約1.0mm以下であってもよい。ここで、エンボスの深さhとは、エンボス部の最底部から非エンボス部の頂部までの距離を企図する。
【0196】
本発明の壁紙用積層体において、それぞれの層の間(例えば、感圧接着剤層とコア層との間)には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、印刷層、装飾層、マスキング層などの他の層が配置されていてもよい。他の層は、面全体に、又は部分的に適用されてもよい。
【0197】
以下に、本開示の壁紙用積層体の製造方法の一例を示すが、製造方法はこの方法に限定されない。この方法に用いられる剥離ライナー、感圧接着剤層、コア層(不織布層又は発泡層)としては、上述したものを同様に用いることができる。
【0198】
感圧接着剤は、任意の既知の方法によってコア層上に配設することができる。例えば、コア層を感圧接着剤で直接コーティングしてもよく、又は、例えば、剥離ライナーを感圧接着剤でコーティングして別個の層を形成し、次いで別個の層をコア層に積層してもよい。後者の方法は、不織布又は発泡体への感圧接着剤の耐浸透性の観点から好ましい。
【0199】
感圧接着剤をコア層又は剥離層に適用する方法は、特に限定されず、使用可能な方法としては、ノッチバーコーティング、ナイフコーティング、ロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、巻線ロッドコーティング、スロットオリフィスコーティング、スロットダイコーティング、及び押出コーティングなどの溶剤コーティング法、水系コーティング法、又はホットメルトコーティング法が挙げられる。感圧接着剤をコア層又は剥離ライナーに適用した後、必要に応じて、乾燥、硬化などの任意選択の工程を適用してもよい。
【0200】
剥離ライナーに感圧接着剤を適用して別の層を形成する方法としては、図9に示すように、剥離ライナーの剥離層に感圧接着剤を適用して感圧接着剤層を形成した後、剥離層を介して別の剥離ライナーを結合して、剥離ライナー901、感圧接着剤層903及び剥離ライナー904をこの順に含む中間部材900を得る方法や、図10に示すように、両面に剥離層を有する剥離ライナーの一方の剥離層に感圧接着剤を適用して感圧接着剤層を形成するとともにロール状に巻き取ってロール体1000を得る方法が挙げられる。前者の中間部材は、非連続バッチ式の製造方法に好適に用いることができ、後者のロール体は、連続式の製造方法に好適に用いることができる。
【0201】
中間部材及びロール体の両方は、最終的な壁紙用積層体の一部を構成することができる。すなわち、中間部材の2つの剥離ライナーのいずれか一方が第1の剥離ライナー又は第2の剥離ライナーを構成し、感圧接着剤層が第1の感圧接着剤層又は第2の感圧接着剤層を構成することができ、ロール体の剥離ライナーが第1の剥離ライナー又は第2の剥離ライナーを構成することができ、感圧接着剤層が第1の感圧接着剤層又は第2の感圧接着剤層を構成することができる。
【0202】
ここで、中間部材に含まれる2つの剥離ライナー(第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナー)は、同じ種類の剥離ライナーであってもよいし、異なる種類の剥離ライナーであってもよい。実施形態では、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーは両方ともフッ素系剥離層を有する剥離ライナーであるか、又は第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーは両方とも非フッ素系剥離層及び非シリコーン系剥離層を有する剥離ライナーである。あるいは、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーは、それぞれ、フッ素系剥離層を有する剥離ライナー及び非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する剥離ライナー、又は、それぞれ、非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する剥離ライナー及びフッ素系剥離層を有する剥離ライナーであり得る。また、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーとして、異なるフッ素系剥離層を有する剥離ライナー(又は異なる非フッ素系且つ非シリコーン系剥離層を有する剥離ライナー)を用いることもできる。
【0203】
コア層に感圧接着剤をコーティングした場合には、コア層の両面に適用された感圧接着剤層上に更に剥離ライナーを適用し、必要に応じてエンボス加工や切削加工などを施すことにより壁紙用積層体を得ることができる。
【0204】
シリコーン感圧接着剤層の厚さは、約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、且つ約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下であり得る。ここで、感圧接着剤層の厚さとは、積層体構成の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で測定し、積層体構成を有する感圧接着剤層における少なくとも5箇所の任意の位置における厚さの平均値である。このような厚み測定方法は、上述した積層体を構成する各層(例えば、基部及び剥離層)についても同様に用いることができる。
【0205】
図9に示すような構成の中間部材を用いる場合には、一方の剥離ライナー904を除去し、コア層の両面に感圧接着剤層903を介して感圧接着剤層903及び剥離ライナー901を適用し、必要に応じてエンボス加工などを施すことにより、壁紙用積層体を得ることができる。
【0206】
図10に示すような構成を有するロール体を用いる場合には、ロール体1000から剥離ライナー1001及び感圧接着剤層1003を巻き出し、それらをコア層の両面に感圧接着剤層1003を介して適用し、必要に応じてエンボス加工や切削加工などを施すことにより、壁紙用積層体を得ることができる。
【0207】
エンボス加工は、特に限定されず、例えば、所望のエンボス部のアレイに対応する凹凸領域を有する少なくとも1つのパターン化された(例えば、彫刻された)エンボスロールに壁紙用積層体を通過させることによって行われてもよく、あるいは、所望のエンボス部のアレイに対応する凹凸領域を有する少なくとも1つのパターン化された(例えば、彫刻された)エンボス型に配置された壁紙用積層体を押圧することによって行われてもよい。前者のエンボス法はロータリーエンボス法と称され、後者のエンボス法はヒートプレスエンボス法と称されることがある。特に、生産性の観点から、ロータリーエンボス法が好ましい。ロータリーエンボス法を用いる場合、中間部材又はロール体の剥離層として、上述した非フッ素系且つ非シリコーン系の剥離層を用いることが好ましい。このような剥離層は、フッ素系剥離層と比較して、ロータリーエンボス法を用いて形成された壁紙用積層体において、意図しない剥離ライナーの剥がれや反りなどの製造後の不具合を低減又は抑制することができる。
【0208】
エンボス加工の温度及び圧力は、剥離ライナー、感圧接着剤層、コア層の種類や厚み、要求されるエンボスパターンの大きさや形状などに応じて適宜設定することができる。例えば、エンボス加工温度は、約70℃以上、約80℃以上、約90℃以上、又は約100℃以上であってよく、約220℃以下、約200℃以下、約180℃以下、又は約150℃以下であってよい。エンボス加工圧力は、約50N/cm以上、約100N/cm以上、約150N/cm以上、約200N/cm以上、又は約250N/cm以上であってよく、約1kN/cm以下、約800N/cm以下、約600N/cm以下、又は約500N/cm以下であってよい。本開示の壁紙用積層体は、このようなエンボス加工を施した場合であっても、種々の良好な性能を表すことができる。
【0209】
得られた壁紙用積層体は、必要に応じて切断してもよい。切断は、特に限定されず、レーザーカット、ダイカット、スタンピング、クリンピング、又はこれらの組み合わせなどの公知の切断を採用することができる。
【0210】
例えば、本開示の壁紙用積層体は、様々な方法で使用することができる。いくつかの実施形態では、壁紙用積層体は、被着体(例えば、壁紙及び壁紙に適用される物品を構成する部材)に適用され、取り付けられ、又は押し付けられる。この方法によって、壁紙用積層体が被着体に接触する。剥離ライナーが存在する場合、剥離ライナーは、壁紙用積層体が被着体に適用、付着又は押し付けられる前に取り外される。いくつかの実施形態では、被着体の少なくとも一部分は、壁紙用積層体が被着体に適用、付着又は押し付けられる前に、イソプロピルアルコールで拭き取ってもよい。
【0211】
壁紙用積層体を被着体から剥離するには、壁紙用積層体の少なくとも一部を被着体から引き剥がしてもよいし(例えば、被着体に対して90度方向に引き剥がしてもよいし)、壁紙用積層体の少なくとも一部を伸長させて(例えば、被着体と平行に伸長させて)被着体から引き剥がしてもよい。プルタブが存在する実施形態では、ユーザは、プルタブを把持し、それを使用して壁紙用積層体を引き伸ばして壁紙から剥がすか又は取り外すことができる。いくつかの実施形態では、プルタブの伸長角度は、典型的には壁紙に対して35°以下である。本開示の壁紙用積層体は、変性シリコーンを含有する感圧接着剤層を用いているため、例えば35°を超え90°以下の角度であっても、壁紙から壁紙用積層体を剥離することができる。
【0212】
図5は、本開示の実施形態による壁紙用積層体が適用された物品としてフック部材を示し、フック部材が壁紙から分離された状態を示す概略図である。図5によれば、例えば、フック部材の湾曲したフック部を把持して壁紙からフック部材を剥がそうとすると、非エンボス部に適用された感圧接着剤層を非エンボス部から剥がして引き伸ばしながら壁紙から順次剥がすことができ、フック部材を壁紙から取り外すことができる。
【0213】
いくつかの実施形態では、本開示の壁紙用積層体は、第2の剥離ライナーを除去した後の基部付き物品の裏側に位置する、少なくとも1つの凹部を有する基部面に、第2の感圧接着剤層を介して貼り付けられた状態で使用される。壁面などに貼り付けて使用される物品の裏面は、感圧接着剤層との接着性を向上させるために、通常、実質的に平坦な形状を呈する。物品の裏面が実質的に平坦な形状である場合、裏面に貼り付けられた感圧接着剤層は、物品の裏面全体に支持された状態で壁紙に貼り付けられるので、支持された感圧接着剤層の全面で壁紙に貼り付けることができる。その結果、感圧接着剤層は壁紙及び物品の両方に良好に接着し、したがって壁紙用積層体を壁紙又は物品から取り外すことが困難になる場合がある。
【0214】
一方、本開示の物品は、図6(e)に示すように、感圧接着剤層に接着する物品の基部面に凹部612を有する。例えば、図6(e)に示す凹部612を覆うように、感圧接着剤層を介して壁紙用積層体を貼り付ける場合、感圧接着剤層は、凹部612を除いて基部面610に支持される。この状態の感圧接着剤層は、基部面の一部に支持されているため、基部面の全面に支持されている感圧接着剤層と比較して、物品と感圧接着剤層との間の感圧接着力が弱い。その結果、図8に示すように、壁紙用積層体を介して壁紙に貼り付けられた物品を、二段階で容易に取り外すことができる。このような基部面を有する物品に、本開示の壁紙用積層体を好適に用いることができる。中でも、不織布層をコア層として含み、エンボスパターンを有する本開示の壁紙用積層体は、物品の保持力に優れ、物品の二段階剥離をより容易に実施することができるため、より好適に用いることができる。
【0215】
本開示の壁紙用積層体は、物品の基部面の全体に適用されてもよく、基部面の一部に適用されてもよい。
【0216】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの凹部を有する基部面を有する物品の構成は、図5に示されるように、剥離のためのタブとして機能するようにサイズ決めされた突起(例えば、フック部分)が、壁紙側の反対側の物品表面上に配置されない構成を含む。このような構成を有する物品としては、例えば、図6及び図7に示すように、クリップ、ホワイトボード、フレーム、写真パネル、及びミラーを挙げることができる。
【0217】
ここで、突起の形状は特に限定されず、例えば、角張った形状、及び丸い形状などが挙げられる。実施形態では、保持力の観点から、フック部分を有する角張った突起の寸法は、約15mm以上、約20mm以上、又は約25mm以上であり得る。寸法の上限は特に限定されないが、約70mm以下、約60mm以下、又は約55mm以下であり得る。また、フック部を有する丸い突起の直径は、保持力の観点から、約20mm以上、約30mm以上、又は約40mm以上とすることができ、上限は、約70mm以下、約60mm以下、又は約50mm以下とすることができる。これらの角張った突起及び丸い突起の高さ(厚さ方向の長さ)は、フック部の形状によって異なるが、一般的には、最高点において、約5mm以上、約7mm以上、又は約10mm以上から、約30mm以下、約20mm以下、又は約15mm以下までの範囲とすることができる。
【0218】
図6は、本開示の壁紙用積層体を適用することができる物品として、表面に突起がない略円形のクリップ600を示す。クリップ600は、支持部材605を介して基部601とクランプ部603とが取り付けられている。クリップは、支持部材と一体的に又は別個に形成されたばねなどの部材を含むことができる。
【0219】
図6及び図7に示されるような丸いクリップの場合、直径は、約20mm以上、約30mm以上、又は約40mm以上且つ約70mm以下、約60mm以下、又は約50mm以下であり得る。また、高さ(厚さ方向の長さ)は、クリップの形状によっても異なるが、一般的には、約5mm以上、約6mm以上、又は約7mm以上から、約20mm以下、約15mm以下、又は約10mm以下の範囲とすることができる。
【0220】
このような構造のクリップを壁紙から取り外す場合、通常、クリップの側面を親指と人差し指などでつまんで取り外す。クリップ600の基部面601に凹部612が形成されているので、挟みにくいクリップ600であっても壁紙から容易に取り外すことができる。ここで、本発明の基部面における「凹部」には、図6に示すように、基部601とクリップのクランプ部603とを接合するために設けられた接合部607における凹部など、他の目的で形成された凹部は含まれない。
【0221】
凹部の形状、大きさ、数及び深さは、物品の壁紙への保持性能及び壁紙からの剥離性能を考慮して、用途に応じて適宜設定することができる。
【0222】
凹部の形状としては、例えば、略多角形状(例えば、略三角形状、略正方形状、略長方形状、略正五角形状、略六角形状、略正八角形状、略台形状、略菱形状、略星形状等)、略円形状、略楕円形状、略半円形状、略半楕円形状などを挙げることができる。これらの形状は単独で用いてもよく、それらの2つ以上を組み合わせて用いてもよい。凹部の形状が略多角形状である場合、角部が曲線形状を有していてもよい。
【0223】
凹部のサイズは、物品のサイズに応じて変えることができる。凹部の大きさは、例えば、図6(e)に示すように、基部面610側から見たときの、凹部612を含む基部面610の総面積に対する凹部612の総面積の比率とすることができる。総面積の比率は、例えば、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、又は約50%以上、且つ約95%以下、約90%以下、約80%以下、約70%以下、又は約60%以下であり得る。
【0224】
凹部の数は、例えば、1以上、2以上、4以上、又は6以上であってもよい。凹部の数の上限値は、特に限定されず、例えば、1000以下、700以下、500以下、300以下、100以下、80以下、60以下、50以下、40以下、30以下、又は20以下とすることができる。
【0225】
凹部の深さは、例えば、約0.5mm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、約4mm以上、又は約5mm以上とすることができる。深さの上限は特に限定されないが、例えば、約1cm以下、約9mm以下、約8mm以下、約7mm以下、約6mm以下、又は約5mm以下であり得る。ここで、「凹部の深さ」とは、凹部の最底部から基部面までの距離を意味する。
【0226】
図7は、表面に突起がない構成を有する別の実施形態の略円形のクリップ700を示している。このクリップ700は、基部701とクランプ部703とが一体化された構成を有している。クリップは、基部701とクランプ部703との間にフック部707を有し、物体をクランプするのを助ける。
【0227】
図7のクリップの裏側の基部面710は、第1の凹部712と第2の凹部714とを有する。例えば、壁紙用積層体がこれらの凹部のみを覆うように適用される場合には、他の凹部は基部面における「凹部」に含まれない。ただし、壁紙用積層体が、例えば、基部面710全体を覆うように貼り付けられる場合には、他の凹部は、第3の凹部722、第4の凹部724、第5の凹部726、第6の凹部728として扱われる。
【0228】
凹部の形成方法は、特に限定されず、例えば、射出成形、切削、3Dプリンティングなどが挙げられる。
【0229】
本開示の壁紙用積層体及びこの積層体を含む物品は、第1の感圧接着剤層を介して壁紙に貼り付けられる。このような感圧接着剤層は、上述した変性シリコーンを含有しているので、様々な壁紙に適用及び剥離可能である。
【0230】
壁紙の材質は特に限定されず、それらの例には、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、及び(メタ)アクレート樹脂を挙げることができる。これらの材料は可塑剤を含有してよい。これらの壁紙材料は単独で用いてもよく、それらの2つ以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂の発泡体に、シリコーン樹脂などの防汚層や、ポリオレフィン樹脂若しくは(メタ)アクリル酸エステル樹脂などの保護層を設けてもよい。
【0231】
ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、又はポリイソプレンなどの単独樹脂、4個以上の炭素原子を有するアルファオレフィンのコポリマー(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE));エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-アクリル酸メチルコポリマー、エチレン-アクリル酸エチルコポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマーなどのエチレン(メタ)アクリル酸系コポリマー;エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー鹸化物、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、アイオノマーなどの少なくとも1種である。
【0232】
壁紙は、発泡体又は非発泡体であり得る。壁紙の表面には、エンボス加工などにより凹凸のあるパターンが設けられていてもよい。本発明の壁紙用積層体は、感圧接着剤層が上記変性シリコーンを含有するので、発泡体などの壊れやすい壁紙や、感圧接着剤が剥がれやすい凹凸のあるパターンを有する壁紙であっても、感圧接着剤層を適用して剥離することができる。
【0233】
不織布層をコア層とする本発明の壁紙用積層体は、エンボスパターンを付与し、特定の坪量を有する不織布層、特定の感圧接着剤層、特定の剥離ライナーを用いることにより構成されて、例えば壁紙表面に対して約90度の方向に引っ張った場合に、壁紙を破くことなく壁紙から剥離し、被着体である壁紙に適用して剥離することができる。また、発泡層をコア層とする本発明の壁紙用積層体は、特定の感圧接着剤層及び特定の剥離ライナーを用いて構成されているので、例えば、壁紙表面に対して平行な方向に延伸した場合に、壁紙を破くことなく延伸して壁紙から剥離することができ、被着体である壁紙に適用して剥離することができる。
【0234】
いくつかの実施形態では、本開示の壁紙用積層体は、以下に記載される保持力試験において、約7000分以上、約8000分以上、約9000分以上、又は約10000分以上の保持力を呈する。保持力の上限は特に限定されず、例えば、約50000分以下であってもよく、約30000分以下であってもよく、又は約20000分以下であってもよい。
【0235】
いくつかの実施形態では、壁紙に対する本開示の壁紙用積層体の接着力は、後述する90度剥離強度試験において、約1.0N/25mm以上、約1.3N/25mm以上、又は約1.5N/25mm以上、且つ約10N/25mm以下、約9.5N/25mm以下、約9.0N/25mm以下、又は約8.0N/25mm以下である。
【実施例
【0236】
本開示の具体的な実施形態を以下の実施例において例示するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。全ての部及び百分率は、別途の記載がない限り、質量に基づく。この数値は、本質的に測定原理や測定装置に起因する誤差を含んでいる。数値は、通常の四捨五入処理を行った有効数字で示される。
【0237】
実験例1
実験例1では、第1及び第2の剥離ライナーと同じ剥離ライナーを用いて作製した壁紙用積層体について検討した。なお、表3ではエンボスパターンの違いについて更に検討し、表4~6では不織布の違いについて更に検討した。実験例1で使用した各種材料を表1に示す。ここで、表中の「Mw」は重量平均分子量を指し、「Ra」は表面粗さを意味し、「Sdr」は「展開面積比」を意味し、「DEHP」はフタル酸ジ-2-エチルヘキシルを意味し、「DINP」は可塑剤フタル酸ジノニルを意味する。
【0238】
【表1-1】
【0239】
【表1-2】
【0240】
作製した試料について、以下の評価を行った。
【0241】
保持力試験:壁紙に対する保持力
壁紙及びステンレス鋼パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、保持力試験を以下のように実施した:
(1)50mm×100mm×1.0mmのステンレス鋼(SUS304BA)パネルの片面に両面テープ(ST-416、3M(St.Paul,Minnesota)より入手可能)を貼り付けた。両面テープから剥離紙を剥がした後、壁紙に皺が寄らないように指でしっかり押さえながら、壁紙を両面テープに貼り付けた。
(2)評価用積層体を25mm×30mmに切断し、評価用積層体中の剥離ライナーを1枚除去した。次に、この積層体を30mm×50mm×1.0mmのステンレス鋼(SUS304BA)パネルに貼り付け、指で強く押し付けた。ここでは、ステンレス鋼パネルの長手方向(長辺方向)の一端のほぼ中央付近にφ5mmの穴を設ける。
(3)積層体のもう一方の剥離ライナーを剥がし、上記(1)でステンレス鋼パネルに貼り付けた壁紙に、φ5mmの穴が設けられた端部が下端になるように貼り付けた。
(4)積層体を静荷重約15kgで5秒間プレスし、試験パネルを得た。全ての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)で24時間硬化させた。
(5)24時間後、室温(23±1℃、相対湿度50±5%)で、試験パネルの下端に位置する穴に200gの重りを吊るし、各試験パネルの保持時間を記録した。
【0242】
表中、例えば、「>10080」は保持力が10080分よりも長いことを意味し、「<720」は保持力が720分よりも短いことを意味する。
【0243】
90度剥離強度試験:壁紙に対する接着力
壁紙及びステンレス鋼パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、90度剥離強度試験を以下のように実施した:
(1)50mm×100mm×1.0mmのステンレス鋼(SUS304BA)パネルの片面に両面テープ(3Mから入手、ST-416)を貼り付けた。両面テープの剥離紙を剥がした後、壁紙を両面テープに貼り付け、皺が寄らないように指でしっかり押さえ、壁紙の上から7kgのスチールローラーを用いて300mm/分の速度で1往復させ、試験基部を得た。
(2)室温(23±1℃、相対湿度50±5%)下で25mm×40mmの評価用積層体から剥離ライナーを1枚剥がした後、積層体を試験基部の壁紙表面に貼り付け、7kgスチールローラーを用いて300mm/分の速度で1往復させて圧着した。
(3)評価用積層体の他方の剥離ライナーを剥がした後の試験試料の片面(評価用積層体の感圧接着剤層面)に、バッキング材(裏打ち材)として、30mm×100mm×0.21mmの上質紙(180gsm、MCSPA1R4、Epson Corporationから入手)を重ね合わせ、7kgスチールローラーを用いて300mm/分の速度で1往復させて試験試料を得た。
(4)試験試料を室温(23±1℃、相対湿度50±5%)で2日間硬化させた。
(5)万能材料試験機(A&D Company,Limited(Toshima-ku,Tokyo,Japan)から入手可能なTENSILON)を使用して、裏材としての上質紙を300mm/分の速度で90度方向に引っ張りながら、試験試料が剥がれたときの接着力を測定した。
【0244】
無損傷剥離試験:壁紙の損傷及び感圧接着剤の残留の確認
壁紙及びステンレス鋼パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、無損傷剥離試験を以下のように実施した:
(1)50mm×100mm×1.0mmのステンレス鋼(SUS304BA)パネルの片面に両面テープ(3Mから入手、ST-416)を貼り付けた。両面テープの剥離紙を剥がした後、壁紙を両面テープに貼り付けた。壁紙に皺が入らないように指で強く押し付けた。
(2)評価用積層体を25mm×30mmに切断し、評価用積層体の一方の剥離ライナーを剥がした後、小さなフックに貼り付け、指で強く押した。
(3)積層体のもう一方の剥離ライナーを剥がし、上記(1)でステンレス鋼パネルに貼り付けた壁紙に小さなフックを貼り付けた。
(4)壁紙に貼り付けた小さなフックを、静荷重約15kgで5秒間プレスし、試験パネルを得た。全ての試験パネルを室温(23±1℃、相対湿度50±5%)で1週間間硬化させた。
(5)硬化後、フックを壁紙から手で剥がし、壁紙の損傷、壁紙への感圧接着剤の残留、汚れの程度を目視で観察し、以下に示す基準の各々に基づいて評価した。ここでは、スコア0~1を合格レベルとして評価することができ、スコア2~3を不合格レベルとして評価することができる。
【0245】
壁紙の損傷度
0:壁紙が損傷しなかった。
1:壁紙がわずかに損傷した(10%未満)。
2:壁紙が広範囲に損傷した(10%~50%)。
3:壁紙がより広範囲に損傷した(50%超~100%)。
感圧接着剤の残留の程度
0:壁紙に感圧接着剤剤が残らなかった。
1:壁紙に感圧接着剤がわずかに残っていた(10%未満)。
2:壁紙に感圧接着剤が広範囲に残っていた(10%~50%)。
3:壁紙に感圧接着剤がより広範囲に残っていた(50%超~100%)。
汚れ度
0:汚れが観察されなかった。
1:限定された領域で汚れがわずかに観察された。
2:全ての領域で汚れがわずかに観察された。
3:汚れが明確に観察された。
【0246】
濡れ性試験:壁紙に対する感圧接着剤の濡れ性
壁紙をイソプロピルアルコールで洗浄した後、濡れ性試験を以下のように実施した:
(1)評価用積層体を25mm×30mmに切断し、壁紙(EB7112)に貼り付け、約15kgの静荷重で5秒間プレスした。
(2)試験試料をドライアイス上で30分間調整した後、直ちに剃刀でスリットし、感圧接着剤層と壁紙との界面における断面領域を観察した。
(3)この断面領域における断面視野を、デジタルマイクロスコープVHX-1000(Keyence Corporation(Osaka-shi,Osaka,Japan))を用いて観察し、感圧接着剤層と壁紙との界面をデジタル撮像した。
(4)下記式Xに基づいて、評価用積層体の感圧接着剤の壁紙表面に対する濡れ性(表面接触率)を算出した。
【数1】
【0247】
ここで、壁紙の表面長さとは、観察した試験試料の断面視野において、感圧接着剤層と壁紙との界面を形成する壁紙表面の長さをいう。感圧接着剤の接触長さは、感圧接着剤層と壁紙との界面において、感圧接着剤層が壁紙に接触していない壁紙表面の長さを、同様に観察した試験試料の同じ断面視野内でそれぞれ測定し、測定した長さを合わせ、壁紙の表面長さから感圧接着剤層の壁紙に対する非接触領域の長さの合計値を引いた値である。測定は4回繰り返し、測定値の平均値を表に示した。
【0248】
壁紙の分析
表1に示す各壁紙の表面粗さ(Ra)及び展開面積率(Sdr)を、広域三次元測定装置(VR-5200、Keyence Corporation(Osaka-shi,Osaka,Japan)から入手)を用いて、ISO25178に準拠して分析した。分析において、壁紙を装置のステージ上に貼り付け、24mm×19mmの領域を観察した。
【0249】
FT-IR測定装置(Nicolet 6700、Thermoから入手)を用いて壁紙の表面成分を分析し、GC-MS測定装置(7890A+5975C、Agilent、Technologiesから入手)を用いて壁紙中の可塑剤の濃度を分析した。
【0250】
実施例1
225mLのガラス瓶にMQ樹脂及び変性シリコーンを表2に示した所定の量で添加し、混合物をハイブリッドミキサー(ARE-250、Thinky Corporation(Chiyoda-ku,Tokyo,Japan)から入手)にかけ、2000rpmで5分間振盪した後、約25rpmに設定されたローラーで12時間以上振盪して感圧接着剤組成物を得た。
【0251】
剥離ライナーFD-75を、0.25~0.26mmのウェットギャップを用いて感圧接着剤組成物でコーティングして、約0.050~約0.065mmの厚さを有する感圧接着剤層を調製した。コーティングされた感圧接着剤試料を70℃のオーブン内で10分間乾燥させた。
【0252】
感圧接着剤層が不織布層に面するように、感圧接着剤試料を不織布層の両面に配置することによって、積層体試料を得た。この積層体試料を、約0.3kN/cmの圧力、115℃で1秒間、略六角形状にパターン付けされたエンボス型を備えた熱プレス機に通した後、25×30mmの大きさに打ち抜き、評価用積層体を得た。得られた積層体のエンボスパターンは、略六角形状の海島構造(エンボス部が海部、非エンボス部が島部)であった。非エンボス部(島部)のピッチ間隔(図2のピッチ間隔b)は約0.6~約0.7mmであり、エンボスの深さ(図2のエンボス深さh)は約0.1mmであった。
【0253】
実施例2、4、及び12~14
以下に記載する前駆体ポリマー1を用いて調製した剥離ライナー1を用い、配合を表2の配合に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2、4、及び12~14の評価用積層体を得た。
【0254】
前駆体ポリマー1
STA、ISA、及びAEBPを、これらのモノマーのブレンド比率が、それぞれ50.0質量部、50.0質量部、及び0.2質量部となるように混合した。モノマー混合物を、モノマー濃度が50質量%となるまで、酢酸エチル/n-ヘプタン(50質量%/50質量%)の混合溶媒で希釈した。更に、開始剤としてV-601をアルキル(メタ)アクリレートモノマー成分に基づいて0.20質量部の比率で添加し、系内を2分間窒素パージした。その後、65℃の恒温槽中で48時間反応を進め、粘稠な溶液状の前駆体ポリマー1を得た。
【0255】
剥離ライナー1
前駆体ポリマー1をトルエン/MEK混合溶媒(50質量%/50質量%)で1質量%に希釈した。バーコーター(#04)を用いて、ポリエステルフィルム(EMBLET(商標名)S-50)に希釈溶液をコーティングした。次いで、溶媒を蒸発させて、約0.1マイクロメートルの厚さを有する剥離前駆体層を形成した。
【0256】
紫外線照射装置(F300、中圧水銀ランプ(Hバルブ)、Heraeus(Hanau,Hessen,Germany))を用いて、窒素ガス雰囲気中、ライン速度20m/分で、剥離前駆体層を有するポリエステルフィルムに紫外線を1パス照射して剥離前駆体層を硬化させることにより、剥離ライナー1を製造した。照射時に、化学線計UV POWER PUCK(商品名)II(EITから入手可能)で測定した1パスあたりの紫外線量は350mJ/cm(UVA 168mJ/cm、UVB 158mJ/cm、及びUVC 24mJ/cm)であった。ここでは、剥離ライナーについては、例えば、剥離ライナー1を表中の「ライナー1」と略記する。また、表中の「NSNF系」は、非フッ素系且つ非シリコーン系を意味する。
【0257】
実施例3、5~7、及び9~11
配合を表2の配合に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3、5~7、及び9~11の評価用積層体を得た。なお、実施例11についても、不織布をS0703WDOに変更した。
【0258】
実施例8
225mLのガラス瓶にAerosil(商標名)R812とMQ樹脂を入れ、ハイブリッドミキサー(ARE-250、Thinky Corporation(Chiyoda-ku,Tokyo,Japan)から入手)を用いて2000rpmで5分間混合した。次に、変性シリコーンを添加し、混合物をハイブリッドミキサーに供し、2000rpmで5分間振盪し、次いで約25rpmに設定したローラーで少なくとも12時間振盪して、感圧接着剤組成物を得た。
【0259】
この感圧接着剤組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の評価用積層体を得た。
【0260】
比較例1
225mLのガラス瓶にDowsil(商標名)4584を添加し、トルエンとDowsil(商標名)NC-25をそれに添加した。混合物をハイブリッドミキサー(ARE-250、Thinky Corporation(Chiyoda-ku,Tokyo,Japan)から入手)にかけ、2000rpmで5分間振盪した後、約25rpmに設定されたローラーで12時間以上振盪して感圧接着剤組成物を得た。
【0261】
この感圧接着剤組成物を用いたこと、及び不織布をT0703WDOに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の評価用積層体を得た。
【0262】
実施例1~14及び比較例1の評価用積層体について、上述した評価を実施し、結果を表2に示す。
【0263】
【表2-1】
【0264】
【表2-2】
【0265】
実施例15~20
表3に示す配合及び海島構造(エンボス部が海部であり、非エンボス部が島部である)のエンボスパターンを用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例15~20の評価用積層体を得た。なお、表3に示すエンボスパターンにおいて、非エンボス部(島部)のピッチ間隔は図2におけるピッチ間隔bに相当し、エンボスの深さは図2におけるエンボス深さhに相当する。
【0266】
実施例15~20の評価用積層体について、上述した評価を実施し、結果を表3に示す。
【0267】
【表3】
【0268】
実施例21~24
不織布を表4に示した不織布に変更した以外は実施例17と同様にして、実施例21~24の評価用積層体を得た。
【0269】
実施例21~24の評価用積層体について、上述した評価を実施し、結果を表4に示す。
【0270】
【表4】
【0271】
実施例25~29
不織布を表5に示した不織布に変更した以外は実施例17と同様にして、実施例25~29の評価用積層体を得た。
【0272】
実施例25~29の評価用積層体について、上述した評価を実施し、結果を表5に示す。
【0273】
【表5】
【0274】
実施例30~34
不織布を表6に示した不織布に変更した以外は実施例17と同様にして、実施例30~34の評価用積層体を得た。
【0275】
実施例30~34の評価用積層体について、上述した評価を実施し、結果を表6に示す。
【0276】
【表6】
【0277】
実験例2
実験例2では、変性シリコーンを含有する感圧接着剤層に適用可能な、非フッ素系且つ非シリコーン系の剥離層を有する剥離ライナー(「NSNF剥離ライナー」と称する場合がある)について検討した。
【0278】
実施例2において使用した種々の材料を表7に示す。ここで、HCA-32については、米国特許第8,137,807号の8~9頁(14欄63行~15欄8行)の方法2に開示されている反応条件及び精製方法を用いて、2-テトラデシル-1-オクタデカノール(イソ-C32アルコール)と塩化アクリロイルとのエステル化反応からHCA-32(2-テトラデシルオクタデシルアクリレート)を合成した。
【0279】
【表7】
【0280】
前駆体ポリマー2~9
前駆体ポリマー2~9を、配合を表8に示すように配合に変更した以外は、上述の前駆体ポリマー1と同じ方法で得た。
【0281】
【表8】
【0282】
剥離ライナー2~9
剥離ライナー2~9を、表8に示した前駆体ポリマー2~9をそれぞれ剥離ライナー2~9に用いた以外は、上述の剥離ライナー1と同じ方法で得た。ここで、前駆体ポリマー8及び9については、これらの前駆体ポリマーを、トルエン/MEK/n-ヘプタンの混合溶媒(34質量%/33質量%/33質量%)で1.06質量%に希釈した。
【0283】
製造された剥離ライナーを用いた感圧接着テープの作製
評価されるテープの試料は、以下の2つの方法で調製した。
【0284】
(1)製造した剥離ライナー上に感圧接着剤溶液を適用する(直接適用)
SPU33Kの50質量部と、XR37-B1795の50質量部とを混合して感圧接着剤溶液を調製した。作製した剥離ライナーを感圧接着剤溶液でコーティングし、105℃で10分間乾燥した。乾燥した感圧接着剤層は、約50マイクロメートルの厚さを有していた。この感圧接着剤層上に剥離ライナーFD-75を適用して、感圧接着テープを得た。
【0285】
(2)製造した剥離ライナーを感圧接着剤層に適用する(乾燥積層)
剥離ライナーFD-75を上述した感圧接着剤溶液でコーティングし、105℃で10分間乾燥した。乾燥した感圧接着剤層は、約50マイクロメートルの厚さを有していた。感圧接着剤層上に製造した剥離ライナーを適用して、感圧接着テープを得た。
【0286】
製造した接着テープについて以下の評価を実施し、その結果を表9~12に示す。
【0287】
剥離強度試験:製造した剥離ライナーの剥離層に対する感圧接着剤層の剥離強度
感圧接着テープから剥離ライナーFD-75を剥がし、感圧接着テープの感圧接着剤層にポリエステルフィルム(COSMOSHINE(商標名)A4100)を貼り付けた。次に、ポリエステルフィルムとSUSパネルとを両面テープを介して貼り合わせた。製造した剥離ライナー(NSNF剥離ライナー)を、精密万能試験機(Shimadzu Corporation(Kyoto-shi,Kyoto,Japan))を用いて、300mm/分の剥離速度で180度方向に剥離したときの剥離強度を測定した。表9は、直接適用によって作製された接着テープの試験結果を示す。表10は、直接適用によって作製された接着テープを50℃及び80%RHの環境で数週間エージングしたときの試験結果を示す。表11は、直接適用によって調製された接着テープ及び乾燥積層によって作製された接着テープの試験結果を示す。
【0288】
残留接着力試験
剥離強度試験後、SUSパネルに残った感圧接着剤層付きポリエステルフィルムを両面テープから剥がし、ポリエステルフィルムに露出した感圧接着剤層をSUS304(BA)パネルに貼り付けた。それを室温で30分間放置した後、精密万能試験機オートグラフAG-X(Shimadzu Corporation(Kyoto-shi,Kyoto,Japan))を用いて、180度方向に300mm/分の剥離速度でポリエステルフィルムを剥離したときの接着力を残留接着力として測定した。なお、表12には、2つのフッ素系剥離ライナー(FD-75)を用いて上述した直接的用法(1)により製造した接着テープの残留接着力を参考例1として示す。
【0289】
【表9】
【0290】
表9の結果から、例えば、軽剥離型剥離ライナー(剥離強度0.3N/25mm未満)と、剥離強度が0.3N/25mmの重剥離型剥離ライナーとを別々に製造できることが確認できた。
【0291】
【表10】
【0292】
【表11】
【0293】
【表12】
【0294】
表12の結果から、NSNF剥離ライナーにおける感圧接着剤層の残留接着力は、参考例1のフッ素系剥離ライナーと同等であることが確認できた。
【0295】
実験例3
実験例3では、非フッ素系且つ非シリコーン系の剥離層を有する剥離ライナーと、フッ素系剥離層を有する剥離ライナーとを用いて作製した壁紙用積層体について検討した。
【0296】
実験例3において使用した種々の材料を表13に示す。
【0297】
【表13】
【0298】
実施例59
225mLのガラス瓶にMQ樹脂及び変性シリコーンを表14に示した所定の量で添加し、混合物をハイブリッドミキサー(ARE-250、Thinky Corporation(Chiyoda-ku,Tokyo,Japan)から入手)にかけ、2000rpmで5分間振盪した後、約25rpmに設定されたローラーで12時間以上振盪して感圧接着剤組成物を得た。
【0299】
フッ素系剥離ライナーFD-75を、0.25~0.26mmのウェットギャップを用いて感圧接着剤組成物でコーティングして、約0.050~約0.065mmの厚さを有する感圧接着剤層を調製した。コーティングされた感圧接着剤試料1を70℃のオーブン内で10分間乾燥させた。
【0300】
同様に、上述したNSNF剥離ライナーであるライナー1を、0.25~0.26mmのウェットギャップを用いて感圧接着剤組成物でコーティングして、約0.050~約0.065mmの厚さを有する感圧接着剤層を調製した。コーティングされた感圧接着剤試料2を70℃のオーブン内で10分間乾燥させた。
【0301】
感圧接着剤試料1を不織布層の一方の面に、感圧接着剤試料2を不織布層の他方の面に、感圧接着剤層が不織布層と対向するように配置し、積層体試料を得た。この積層体試料を、約0.3kN/cmの圧力、115℃で1秒間、略六角形状にパターン付けされたエンボス型を備えた熱プレス機に通した後、50×100mmの大きさに打ち抜き、評価用積層体を得た。得られた積層体のエンボスパターンは、略六角形の海島構造を有し、非エンボス部(島部)のピッチ間隔は約0.6~約0.7mmであり、エンボスの深さは約0.1mmであった。
【0302】
実施例59の評価用積層体について、保持力試験、無損傷剥離試験、及び以下の試験を行い、結果を表14に示す。
【0303】
剥離強度試験:エンボス加工前後の剥離強度
評価用積層体のNSNF剥離ライナー(ライナー1)のエンボス加工前後の剥離力を以下のように評価した。
(1)エンボス加工前後の評価用積層体を用いて、幅25mm、長さ100mmの試験片を採取した。
(2)フッ素系剥離ライナーFD-75を剥離した。
(3)ステンレス鋼(SUS304BA)パネルをイソプロピルアルコールで洗浄した後、試験片の感圧接着剤層面をステンレスパネル面に貼り付けた。
(4)万能材料試験機(TENSILON、A&D Company,Limited(Toshima-ku,Tokyo,Japan)から入手可能)を用いて、試験片のNSNF剥離ライナー(ライナー1)を300mm/分の速度で180度方向に剥離したときの剥離強度を測定した。
【0304】
【表14】
【0305】
実験例4
実験例4では、ロータリーエンボス法を用いて製造された壁紙用積層体について検討した。
【0306】
実験例4において使用した種々の材料を表15に示す。
【0307】
【表15】
【0308】
剥離ライナー9の基部をEMBLET(商標名)SD-75に変更したこと、及び剥離ライナー9と同様にして製造された剥離ライナー10及び剥離ライナー9の基部を、フッ素系剥離ライナーFD-75以外のEMBLET(商標名)SD-100に変更したこと以外は、剥離ライナー9と同様にして製造した剥離ライナー11を用いた。
【0309】
実施例60
225mLのガラス瓶にMQ樹脂及び変性シリコーンを表16に示した所定の量で添加し、混合物をハイブリッドミキサー(ARE-250、Thinky Corporation(Chiyoda-ku,Tokyo,Japan)から入手)にかけ、2000rpmで5分間振盪した後、約25rpmに設定されたローラーで12時間以上振盪して感圧接着剤組成物aを得た。
【0310】
剥離ライナー10上に、感圧接着剤組成物aを表16に示すコーティング量となるようにコーティングして感圧接着剤層を作製した。コーティングした感圧接着剤試料は、70℃のオーブン中で10分間乾燥させた。
【0311】
感圧接着剤層が不織布層に面するように、感圧接着剤試料を不織布層の両面に配置することによって、積層体試料を得た。積層体試料を、表17に示すエンボス加工条件で、略六角形状にパターン付けされたエンボス型を備えた熱プレス機に通し、評価用積層体を得た。得られた積層体のエンボスパターンは、略六角形の海島構造を有し、非エンボス部(島部)のピッチ間隔は約0.6~約0.7mmであり、エンボスの深さは約0.1mmであった。
【0312】
実施例61~64
実施例61において、ロータリーエンボス法によるエンボス加工条件を変更し、実施例62~64において、剥離ライナー10を剥離ライナー11に変更し、表17に示すエンボス加工条件を採用した以外は、実施例60と同様にして、実施例61~64の評価用積層体を得た。
【0313】
実施例65~67
感圧接着剤組成物a及びコーティング量を表16に示す感圧接着剤組成物b及びコーティング量に変更し、剥離ライナーをFD-75に変更し、エンボス加工条件を表17に示すように変更した以外は実施例60と同様にして、実施例65~67の評価用積層体を得た。
【0314】
【表16】
【0315】
実施例60~67の評価用積層体をロータリーエンボス法により製造した直後及び切断時に、剥離ライナーの剥がれなどの不良を目視で観察し、以下の基準で評価し、結果を表17に示した。表17において、積層体の上面に位置する感圧接着剤層を「第1の感圧接着剤層」と称し、下面に位置する感圧接着剤層を「第2の感圧接着剤層」と称する。ここで、積層体の「上面」とは、ロータリーエンボス装置のトップロール側に位置する面をいい、「下面」とは、ロータリーエンボス装置のボトムロール側に位置する面をいう。
【0316】
エンボス加工時に:
A:剥離フィルムの浮きや剥がれが見られなかった。
B:剥離フィルムの一部に浮きや剥がれが見られた。
C:剥離フィルムの大部分が浮いているか、剥がれていた。
D:剥離フィルムが完全に剥がれている。
【0317】
切断時に:
A:剥離フィルムの浮きや剥がれが見られなかった。
B:剥離フィルムの一部に浮きや剥がれが見られた。
C:剥離フィルムの大部分が浮いているか、剥がれていた。
D:剥離フィルムが完全に剥がれている。
【0318】
【表17】
【0319】
実験例5
実験例5では、壁紙用積層体が貼り付けられた基部面に凹部を有する物品の剥離性について検討した。
【0320】
実施例68
図6に示す構成を有するABS樹脂製のクリップを用意した。なお、このクリップの図6(b)に示す円形部分の直径は約3.8cmであり、円形部分の面積は約11cmであり、図6(c)における長手方向の高さは約1.1cmであった。
【0321】
変性シリコーンとしてSPU33Kを用いた実施例11のエンボスパターンを有する積層体、又は変性シリコーンとしてSPO20Kを用いた実施例10のエンボスパターンを有する積層体を作製した。この積層体の一方の剥離ライナーを剥がし、図6(e)の8つの凹部612を覆うが接合部607を覆わないように、クリップの基部面610に感圧接着剤層を介して貼り付けた。
【0322】
壁紙(カタログ「SP2015-2017」におけるNo.SP9924、Sangetsu Corporation(Nagoya-shi,Aichi,Japan))をイソプロピルアルコールで洗浄した。次に、積層体の他方の剥離ライナーを除去し、積層体を壁紙に貼り付けた。次いで、クリップを10kgで5秒間プレスし、次いで1時間放置した。
【0323】
いずれの積層体においても、クリップを指でつまんで貼り付けたクリップを剥がすと、図8に示すように、クリップのみを剥がすことができた。次に、積層体を壁紙から取り外すことができた。
【0324】
参考例2
図6に示す構成において、接合部を除く基部面が略平坦であるABS樹脂製のクリップを用意した。
【0325】
このクリップに実施例68と同様にして実施例10又は実施例11の積層体を貼り付け、実施例68と同様の操作を実施した。
【0326】
両方の積層体について、貼り付けたクリップを取り外すためにクリップを指でつまむと、クリップは実施例68よりも取り外すのが困難であったため、より多くの労力が必要であった。クリップの取り外しに成功したら、積層体をクリップの裏面に一体的に取り付けた。
【0327】
実施例69
図7に示す構成を有するABS樹脂製のクリップを用意した。ここで、このクリップの前面の円形部分の直径は約3.8cm、円形部分の面積は約11cmであり、図7(a)における横幅は約0.7cmであった。
【0328】
変性シリコーンとしてSPU33Kを用いた実施例11のエンボスパターンを有する積層体、又は変性シリコーンとしてSPO20Kを用いた実施例10のエンボスパターンを有する積層体を作製した。この積層体の一方の剥離ライナーを剥がし、図7の第2の凹部714、第5の凹部726、及び第6の凹部728を覆うように、積層体をクリップの基部面710に感圧接着剤層を介して貼り付けた。
【0329】
壁紙(カタログ「SP2015-2017」におけるNo.SP9924、Sangetsu Corporation(Nagoya-shi,Aichi,Japan))をイソプロピルアルコールで洗浄した。次に、積層体の他方の剥離ライナーを除去し、積層体を壁紙に貼り付けた。次いで、クリップを10kgで5秒間プレスし、次いで1時間放置した。
【0330】
いずれの積層体においても、クリップを指でつまんで貼り付けたクリップを剥がすと、図8に示すように、クリップのみを剥がすことができた。次に、積層体を壁紙から取り外すことができた。
【0331】
参考例3
図7の第2の凹部714、第5の凹部726及び第6の凹部728の部分が略平坦な形状であること以外は、図7に示す構成と同じABS樹脂製のクリップを用意した。
【0332】
このクリップに実施例69と同様にして実施例10又は実施例11の積層体を貼り付け、実施例69と同様の操作を実施した。
【0333】
両方の積層体について、貼り付けたクリップを取り外すためにクリップを指でつまむと、クリップは実施例69よりも取り外すのが困難であったため、より多くの労力が必要であった。クリップの取り外しに成功したら、積層体をクリップの裏面に一体的に取り付けた。
【0334】
本発明の基本原理から逸脱することなく、上記の実施形態及び実施例に様々な変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。加えて、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、種々の改良及び変更を行ってもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0335】
符号の説明
100:壁紙用積層体
101:第1の剥離ライナー
103:第1の感圧接着剤層
105:コア層(不織布層又は発泡層)
107:第2の感圧接着剤層
109:第2の剥離ライナー
200:剥離ライナーが除去された壁紙用積層体
203:第1の感圧接着剤層
205:コア層(不織布層)
207:第2の感圧接着剤層
600:クリップ
601:基部
603:クランプ部
605:支持部材
607:接合部
610:基部面
612:凹部
700:クリップ(一体型)
701:基部
703:クランプ部
707:フック部
710:基部面
712:第1の凹部
714:第2の凹部
722:第3の凹部
724:第4の凹部
726:第5の凹部
728:第6の凹部
801:壁紙
803:壁紙用積層体
805:物品
900:中間部材
901:剥離ライナー(第1又は第2の剥離ライナー)
903:感圧接着剤層(第1又は第2の感圧接着剤層)
904:剥離ライナー
1000:ロール体
1001:剥離ライナー(第1又は第2の剥離ライナー)
1003:感圧接着剤層(第1又は第2の感圧接着剤層)
a:エンボストップの長さ
b:ピッチ間隔
h:エンボスの深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図8
図9
図10
【国際調査報告】