(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-15
(54)【発明の名称】CD19特異的キメラ抗原受容体T細胞療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240508BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240508BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240508BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240508BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240508BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240508BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240508BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240508BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240508BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240508BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240508BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240508BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/68
A61K39/395 T
C12N5/10 ZNA
C07K14/705
C12N5/0783
C07K16/00
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568007
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022062374
(87)【国際公開番号】W WO2022234134
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】PCT/ES2021/070316
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523030500
【氏名又は名称】フンダシオ デ レセルカ クリニック バルセロナ-インスティテュート ディンベスティガシオンス ビオメディケス アウグスト ペイ イ スニェー
(71)【出願人】
【識別番号】513295630
【氏名又は名称】ホスピタル クリニック デ バルセロナ
(71)【出願人】
【識別番号】513295641
【氏名又は名称】ユニベルシタ デ バルセロナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フアン オテロ マネル
(72)【発明者】
【氏名】ウルバノ イスピッツア アルバロ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル カプデビラ マリオナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャグエ リベス ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】デルガド ゴンサレス フリオ
(72)【発明者】
【氏名】エステべ レイナー ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】カスティッラ カスティッラ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ボロナット バラド アナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB12
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB50
4C085CC03
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、CD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、及びCD19+悪性腫瘍の治療におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD19+悪性腫瘍の治療における使用のための、複数の細胞を含む組成物であって、前記細胞が、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を有する、抗体、F(ab’)2、Fab、scFab又はscFvを順に含む、キメラ抗原受容体(CAR)を含み、前記VHが、HCDR1、HCDR2及びHCDR3ポリペプチドを含み、VLがLCDR1、LCDR2及びLCDR3ポリペプチドを含み、HCDR1が配列番号1の配列のみからなり、HCDR2が配列番号2の配列のみからなり、HCDR3が配列番号3の配列のみからなり、LCDR1が配列番号4の配列のみからなり、LCDR2が配列番号5の配列のみからなり、LCDR3が配列番号6の配列のみからなり、細胞の漸進的分割投与が行われ、投与される細胞の割合が、投与される各連続分割量において漸進的に増加することを特徴とする、複数の細胞を含む組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のCD19+悪性腫瘍の治療に使用するための、複数の細胞を含む組成物であって、前記細胞が、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を有する、抗体、F(ab’)2、Fab、scFab又はscFvを順に含む、キメラ抗原受容体(CAR)を含み、前記VHが、HCDR1、HCDR2及びHCDR3ポリペプチドを含み、VLがLCDR1、LCDR2及びLCDR3ポリペプチドを含み、HCDR1が配列番号1の配列のみからなり、HCDR2が配列番号2の配列のみからなり、HCDR3が配列番号3の配列のみからなり、LCDR1が配列番号4の配列のみからなり、LCDR2が配列番号5の配列のみからなり、LCDR3が配列番号6の配列のみからなり、細胞の分割投与が、0日目に総用量の10%程度を含む第1の分割量を投与し、続いて総用量の30%程度を含む第2の分割量、及び総用量の60%程度を含む第3の分割量を投与することによって行われることを特徴とする、複数の細胞を含む組成物。
【請求項3】
前記抗体、F(ab’)2、Fab、scFab、又はscFvが、VLドメイン及びVHドメインを含み、前記VLドメインが、配列番号7のみからなり、前記VHドメインが、配列番号8のみからなる、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記CARが、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達ドメイン、及び/又は細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記CARのヒンジ及び膜貫通ドメインが配列番号9のCD8aのみからなり、前記共刺激シグナル伝達ドメインが配列番号10の4-1BBのみからなり、前記細胞内シグナル伝達ドメインが配列番号11のCD3δのみからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記CARが配列番号12を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記細胞が、T細胞又はNK細胞であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬組成物であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
急性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫若しくは慢性リンパ性白血病、又は任意のCD19+障害の治療における、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
総用量が0.5×10
6細胞/kg~5×10
6細胞/kg、好ましくは1×10
6細胞/kgであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に関する。特に、本発明は、新たなscFvに基づくCD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法、及びCD19+悪性腫瘍の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自家T細胞を遺伝子改変してCARを発現させ、それによって腫瘍細胞を排除するようにリダイレクトすることは、癌治療、特にCD19+B細胞悪性腫瘍の革新的な治療法である。
【0003】
CARは、特定の抗原への結合を担う細胞外領域と、T細胞の細胞毒性活性及び増殖を促進する細胞内領域とで構成される。選択された抗原へのCARの結合は、通常、モノクローナル抗体の単鎖可変フラグメント(scFv)によって媒介される。scFv由来の領域は、CARとそのリガンドとの中程度~高い親和性とMHC非依存性の相互作用をもたらす。第2世代のCARとして、このscFvは細胞内共刺激ドメイン(通常はCD28又は4-1BB)及び活性化促進細胞毒性ドメイン(CD3z)と組み合わされる。
【0004】
第1世代のCARでは当初は期待外れの結果であったが、第2世代の抗CD19 CAR T細胞を用いた最新の臨床試験では、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、及び急性リンパ性白血病(ALL)を有する患者において目覚ましい結果が示されている。ペンシルベニア大学、メモリアルスローンケタリング癌センター、国立癌研究所、及びフレッドハッチンソン癌研究センターを含むいくつかの学術団体が、わずかに異なるCARコンストラクトを用いてこれらの独創的な研究を進めており、これらのコンストラクトは現在多くの国際多施設臨床試験で評価されている。FMC63クローンと名付けられたモノクローナル抗体に由来するscFvをベースにしたこれらのCAR生成物のうち2つ(チサゲンレクロイセル及びアキシカブタゲンシロロイセル)は、最近、米国食品医薬品局及び欧州医薬品庁によって臨床使用が承認された。有効性については、B細胞悪性腫瘍及びCARコンストラクトの種類にもよるが、奏効率は50%~85%の範囲であり、無増悪生存期間及び全生存期間は非常に優れている。安全性については、治療に反応した患者は通常、持続性のB細胞形成不全と一過性サイトカイン放出症候群を発症するが、これは一部の患者で重症化する可能性がある。
【0005】
このような目覚ましい結果にもかかわらず、この治療法はほんの一握りの施設でしか利用できず、他の場所でいつ、どのくらいの費用でこれを利用できるかは不明である。
【0006】
したがって、本発明は、CD19+悪性腫瘍の治療のためのFMC63クローンと名付けられたモノクローナル抗体とは異なる新たなscFvに基づく新たなCD19特異的キメラ抗原受容体T細胞療法の開発に焦点を当てている。
【発明の概要】
【0007】
上記で説明したように、本発明は、CD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法及びCD19+悪性腫瘍の治療に対するその使用に関する。
【0008】
本発明で得られた結果(実施例1を参照されたい)によれば、本発明のCART細胞は、in vitroでCD19+細胞に対して高い細胞毒性を有し、炎症誘発性サイトカインの分泌及びCART細胞の増殖を誘導する。in vivoでは、本発明のCART細胞は、NSG異種移植B-ALLマウスモデルにおける疾患の進行を完全に制御することができる。前臨床データに基づいて、本発明のCART細胞はCD19+細胞に対して明らかに機能的であると結論付けることができる。
【0009】
一方、本発明は、CD19+B細胞悪性腫瘍の第I相臨床試験に関連して、28個のCAR T細胞生成物を生産することを示している(実施例2を参照されたい)。このシステムは、CD4-CD8細胞選択、レンチウイルス形質導入、及びIL-7/IL-15を用いたT細胞拡大を含む。製造された28種類のCAR T細胞生成物のうち27種類が仕様の全リストを満たし、有効な生成物と見なされた。ex vivoでの細胞拡大は平均8.5日間続き、平均形質導入率は30.6%±13.44であった。得られた全ての生成物は、CD19+細胞に対して細胞毒性活性を示し、炎症誘発性サイトカインの分泌に長けていた。健康なドナーの細胞と比較して、患者の細胞では拡大動態が遅かった。しかしながら、生成物の効力は同等であった。CAR T細胞サブセットの表現型は患者によって大きく異なり、主に初期生成物によって決定された。得られたT細胞表現型は、TCM及びTEMが優勢であった。平均して、得られたCAR T細胞の38.7%は、TN又はTCM表現型を示し、これらの表現型は、患者のT細胞記憶を長期間持続させることができるサブセットである。最適なT細胞表現型に寄与する個々の要因を特定するための詳細な分析により、ex vivoでの細胞の拡大によりTN細胞、TSCM細胞、及びTEFF細胞の数が減少し、TCM細胞は、細胞拡大とCAR発現の両方により増加することが明らかになった。全体として、これらの結果は、重度の前治療を受けた患者向けに臨床グレードのCAR T細胞を生産するための実現可能なシステムであり、得られた生成物がこの分野の現在の品質基準を満たしていることを示している。ex vivoでの拡大が減少すると、in vivoでの持続性が向上したCAR T細胞生成物が得られる可能性がある。
【0010】
最後に、本発明のCAR T細胞の投与が評価され、治療が安全で効果的であることを確認する結果が得られたことを考慮することが最も重要である(実施例3を参照されたい)。
【0011】
したがって、本発明の第1の実施の形態は、軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)とを含む、抗体、F(ab’)2、Fab、scFab又はscFv(以下、本発明の抗体、F(ab’)2、Fab、scFab、又はscFv)に関し、上記VHは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3ポリペプチドを含み、VLは、LCDR1、LCDR2及びLCDR3ポリペプチドを含み、HCDR1は配列番号1の配列のみからなり、HCDR2は配列番号2の配列のみからなり、HCDR3は配列番号3の配列のみからなり、LCDR1は配列番号4の配列のみからなり、LCDR2は配列番号5の配列のみからなり、LCDR3は配列番号6の配列のみからなる。
【0012】
特に、相補性決定領域(CDR)配列は以下のとおりである:
HCDR1(配列番号1):FAFSSYWMNWV
HCDR2(配列番号2):GQIYPGDGDT
HCDR3(配列番号3):RKRITAVIT
LCDR1(配列番号4):RASESVDNFGNSFMH
LCDR2(配列番号5):IYIASNLES
LCDR3(配列番号6):HQNNEDPLTF
【0013】
好ましい実施の形態において、本発明の抗体、F(ab’)2、Fab、scFab又はscFvは、軽鎖可変領域(VLドメイン)と重鎖可変領域(VHドメイン)とを含み、VLドメインは配列番号7のみからなり、VHドメインは配列番号8のみからなる。
【0014】
特に、VL及びVHの配列は以下のとおりである:
VL(配列番号7)
TGNIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDNFG
NSFMHWYQQKSGQPPRLLIYIASNLESGVPARFSGSGSRTDFTLTIDPVEADDAATYY
CHQNNEDPLTFGAGTKLELK
注:CDRには下線が引かれる。
VH(配列番号8)
HSQIQLQQSGAELVRPGSSVKISCKASGFAFSSYWMNWVKQRPGQGLEWIGQIYP
GDGDTKYNVKFRGKATLTADESSSTAYIQLTSLTSEDSGVYFCARKRITAVITTVFD
VWGAGTTVTVSS
注:CDRには下線が引かれる。
【0015】
本発明の第2の実施の形態は、VLドメインと、VHドメインと、スペーサーとを順に含むscFvを含むCAR(以下、本発明のCAR)に関し、VLドメインは配列番号7のみからなり、VHドメインは配列番号8のみからなる。
【0016】
好ましい実施の形態において、本発明のCARは、膜貫通ドメイン、共刺激性シグナル伝達ドメイン、及び/又は細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む。
【0017】
好ましい実施の形態において、ヒンジ及び膜貫通ドメインは配列番号9のCD8aのみからなり、共刺激シグナル伝達ドメインは配列番号10の4-1BBのみからなり、細胞内シグナル伝達ドメインは配列番号11のCD3δのみからなる。
【0018】
特に、CD8a、4-1BB、及びCD3δの配列は以下のとおりである:
CD8a(配列番号9)
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCG
VLLLSLVITLYC
4-1BB(配列番号10)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
CD3δ(配列番号11)
RVKFSRSA DAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNEL
QKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0019】
好ましい実施の形態において、本発明のCARは配列番号12を含む。
【0020】
特に、本発明のCARの配列は以下のとおりである:
CAR(配列番号12)
[VL+スペーサー+VH+CD8a+4-1BB+CD3δ]
TGNIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDNFG
NSFMHWYQQKSGQPPRLLIYIASNLESGVPARFSGSGSRTDFTLTIDPVEADDAATYYCHQNNEDPLTFGAGTKLELK
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
HSQIQLQQSGAELVRPGSSVKISCKASGFAFSSYWMNWVKQRPGQGLEWIGQIYP
GDGDTKYNVKFRGKATLTADESSSTAYIQLTSLTSEDSGVYFCARKRITAVITTVFD
VWGAGTTVTVSS
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCG
VLLLSLVITLYC
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
RVKFSRSA
DAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
注:CDRには下線が引かれる。
【0021】
本発明の第3の実施の形態は、本発明のCARをコードする核酸、好ましくは配列番号13を含む核酸に関する。
【0022】
特に、本発明のCARをコードする核酸の配列は以下のとおりである:
レンチウイルスベクター(配列番号13)
[EF1Aプロモーター+CD8ペプチドリーダー+VL+スペーサー+VH+CD8a+4-1BB+CD3δ]
CGCCTTTTTCCGGAGGGTGGGGGAGAACCGTATATAAGTGCAGTAGTCCGTGAACGTTCTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGTAAGTGCCGTGTGTGGTTCCCGCGGGCCTGGCCTCTTTACGGGTTATGGCCCTTGCGTGCCTTGAATTACTTCCACCTGGCTGCAGTACGTGATTCTTGATCCCGAGCTTCGGGTTGGAAGTGGGTGGGAGAGTTCGAGGCCTTGCGCTTAAGGAGCCCCTTCGCCTCGTGCTTGAGTTGAGGCCTGGCCTGGGCGCTGGGGCCGCCGCGTGCGAATCTGGTGGCACCTTCGCGCCTGTCTCGCTGCTTTCGATAAGTCTCTAGCCATTTAAAATTTTTGATGACCTGCTGCGACGCTTTTTTTCTGGCAAGATAGTCTTGTAAATGCGGGCCAAGATCTGCACACTGGTATTTCGGTTTTTGGGGCCGCGGGCGGCGACGGGGCCCGTGCGTCCCAGCGCACATGTTCGGCGAGGCGGGGCCTGCGAGCGCGGCCACCGAGAATCGGACGGGGGTAGTCTCAAGCTGGCCGGCCTGCTCTGGTGCCTGGCCTCGCGCCGCCGTGTATCGCCCCGCCCTGGGCGGCAAGGCTGGCCCGGTCGGCACCAGTTGCGTGAGCGGAAAGATGGCCGCTTCCCGGCCCTGCTGCAGGGAGCTCAAAATGGAGGACGCGGCGCTCGGGAGAGCGGGCGGGTGAGTCACCCACACAAAGGAAAAGGGCCTTTCCGTCCTCAGCCGTCGCTTCATGTGACTCCACTGAGTACCGGGCGCCGTCCAGGCACCTCGATTAGTTCTCGTGCTTTTGGAGTACGTCGTCTTTAGGTTGGGGGGAGGGGTTTTATGCGATGGAGTTTCCCCACACTGAGTGGGTGGAGACTGAAGTTAGGCCAGCTTGGCACTTGATGTAATTCTCCTTGGAATTTGCCCTTTTTGAGTTTGGATCTTGGTTCATTCTCAAGCCTCAGACAGTGGTTCAAAGTTTTTTTCTTCCATTTCAGGTGTCATGA
GCCTCATCCCGAATG GCT CTG CCT GTC ACT GGA CTG CTG CTG TCA CTG GGG CTG CTG CTG CAC GCC GCA AGA CCA
ACC GGT AAC ATC GTG CTG ACT CAG AGC CCA GCA TCC CTG GCC GTC TCA CTG GGA CAG CGG GCT ACC ATC AGC TGC AGA GCA AGC GAG TCC GTG GAC AAC TTC GGA AAT TCC TTT ATG CAC TGG TAC CAG CAG AAG TCT GGC CAG CCC CCT CGA CTG CTG ATC TAT ATT GCC TCT AAC CTG GAG AGT GGC GTG CCA GCT AGG TTC TCT GGC AGT GGG TCA CGC ACA GAC TTT ACC CTG ACA ATT GAT CCC GTC GAA GCC GAC GAT GCC GCT ACC TAC TAT TGC CAC CAG AAC AAC GAG GAC CCA CTG ACT TTC GGA GCA GGG ACA AAA CTG GAA CTG AAG
GGTGGAGGCGGGAGC GGAGGAGGCGGGTCG GGAGGAGGAGGATCG GGTGGCGGAG GCTCA
CAT TCT CAG ATT CAG CTG CAG CAG TCAGGG GCA GAG CTG GTG CGG CCA GGG TCC TCA GTC AAG ATT AGT TGT AAG GCT TCA GGC TTT GCT TTC AGC TCC TAC TGG ATG AAC TGG GTG AAA CAG CGA CCA GGA CAG GGA CTG GAG TGG ATC GGA CAG ATC TAC CCC GGA GAC GGC GAT ACA AAG TAT AAT GTC AAA TTT CGG GGC AAG GCC ACC CTG ACA GCT GAC GAG TCT AGT TCA ACC GCC TAC ATC CAG CTG ACT TCA CTG ACC AGC GAA GAT TCC GGC GTG TAT TTC TGC GCT CGA AAG CGG ATC ACT GCA GTC ATT ACC ACA GTG TTT GAC GTG TGG GGG GCA GGA ACT ACC GTG ACC GTC AGC TCC
ACA ACT ACG CCG GCG CCG AGA CCA CCT ACA CCT GCA CCA ACT ATT GCC TCT CAG CCA CTG AGT CTG CGC CCC GAG GCA TGT CGA CCT GCC GCT GGC GGG GCT GTG CAC ACC AGG GGC CTA GAC TTC GCC TGC GAT ATC TATATT TGG GCT CCA CTG GCA GGA ACC TGT GGC GTG CTG CTG CTG TCT CTG GTC ATC ACA CTG TAC TGC
AAA AGA GGC AGG AAG AAA CTG CTG TAT ATT TTC AAG CAG CCC TTT ATG AGA CCT GTG CAG ACA ACT CAG GAG GAA GAC GGG TGC AGC TGT AGG TTC CCT GAG GAA GAG GAA GGA GGC TGT GAG CTG
CGC GTG AAA TTT TCT CGG AGT GCA GAT GCC CCA GCT TAC CAG CAG GGC CAG AAC CAG CTG TAT AAC GAG CTG AAT CTG GGG CGG AGA GAG GAA TAC GAC GTG CTG GAT AAG AGG CGC GGG CGA GAT CCA GAA ATG GGA GGA AAA CCC CAG CGA CGG AAG AAC CCT CAG GAG GGA CTG TAC AAT GAA CTG CAG AAG GAC AAA ATG GCA GAG GCC TAT TCC GAA ATC GGG ATG AAA GGA GAA AGA AGG CGC GGC AAG GGG CAT GAT GGC CTG TAT CAG GGA CTG TCA ACC GCA ACA AAA GAT ACT TAT GAT GCT CTG CAC ATG CAG GCT CTG CCC CCG CGG TAA
【0023】
本発明の第4の実施の形態は、本発明のCAR又は本発明のCARをコードする核酸を含む細胞(以下、本発明のCAR細胞)に関する。
【0024】
好ましい実施の形態において、細胞はT細胞(以下、本発明のCART細胞)又はNK細胞である。
【0025】
本発明の第5の実施の形態は、複数の本発明の細胞と、任意に、薬学的に許容可能な担体又は添加剤とを含む医薬組成物(以下、本発明の医薬組成物)に関する。
【0026】
本発明の第6の実施の形態は、医薬品としての、好ましくはCD19+悪性腫瘍の治療における、より好ましくは急性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫若しくは慢性リンパ性白血病、又は任意のCD19+障害の治療における使用のための本発明の細胞又は医薬組成物に関する。
【0027】
あるいは、この第6の実施の形態は、治療上有効な用量の本発明の細胞又は医薬組成物を投与することを含む、CD19+悪性腫瘍、より好ましくは急性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫若しくは慢性リンパ性白血病、又は任意のCD19+障害を治療する方法に関する。
【0028】
好ましい実施の形態において、本発明の細胞組成物の分割投与、特に漸進的用量分割(progressive dose fractionation)が行われた。漸進的用量分割とは、患者が本発明の組成物の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの分割量を受けたことを意味し、投与される細胞の割合は、連続する分割量ごとに漸進的に増加する。好ましい実施の形態において、漸進的用量分割は、0日目に第1の分割量(10%程度)、その後に続く第2の分割量(30%程度)及び第3の分割量(60%程度)を含む。
【0029】
したがって、最初の患者は本発明の組成物の単回静脈内注入を受けたが、漸進的用量分割の概念実証として、次の患者は0日目に第1の分割量(10%程度)を受け、続いて第2の分割量(30%程度)及び第3の分割量(60%程度)を受けた。第2の分割量は、第1の分割量の24時間~48時間後に投与するのが好ましく、第3の分割量は、患者にCRSの徴候又は症状がない場合にのみ、第2の分割量の24時間~48時間後に投与することが好ましい。
【0030】
この漸進的分割投与の提案の理由は、致死性毒性が3例検出されたため、毒性を回避するためであった。
【0031】
好ましい実施の形態において、本発明の細胞組成物の総用量は、(実施例で説明されているように)治療すべき特定の患者に依存する。典型的な用量は、0.1×106細胞/kg~5×106細胞/kg、好ましくは0.5×106細胞/kg~5×106細胞/kg、より好ましくは1×106細胞/kg~5×106細胞/kgである。上記で説明したように、総用量を3つの分割量に分割することが好ましい。
【0032】
本発明の目的のために、以下の用語が定義される:
【0033】
「含む(comprising)」という用語は、「含む」という語の前にある(follows)全てのものを含むが、これに限定されないことを意味する。したがって、「含む」という用語の使用は、列挙された要素が必要であるか、又は必須であるが、他の要素は任意選択であり、存在してもしなくてもよいことを示す。
【0034】
「のみからなる(consisting of)」とは、「のみからなる」という表現の前にある全てのものを「含み、これに限定される」ことを意味する。したがって、「のみからなる」という表現は、列挙された要素が必要であるか、又は必須であり、かつ他の要素が何ら存在し得ないことを示す。
【0035】
「薬学的に許容可能な添加剤又は担体」とは、本発明の組成物において任意選択で含まれてよい、患者に有意な有害毒性学的作用を引き起こさない化合物を指す。
【0036】
本発明の組成物の「治療有効用量」とは、本明細書に記載のとおりに投与した場合に、CD19+悪性腫瘍に罹患している被験体において治療反応が良好となる量を意図する。正確な必要量は、年齢、被験体の全身状態、治療される状態の重症度、投与様式等に応じて、被験体ごとに異なる。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、本明細書に提供されている情報に基づいて、日常的な実験を用いて当業者により決定され得る。
【0037】
「Fab」は50kDa程度の大きさの抗体フラグメントであり、重鎖と軽鎖のそれぞれに1つの定常ドメインと1つの可変ドメインとを含む抗体分子の抗原結合ドメインである。ジスルフィド架橋チオールを含むフラグメントは「Fab’フラグメント」と呼ばれ、チオール官能基がないフラグメントは「Fabフラグメント」と呼ばれる。「Fab」フラグメントを生成するには、2つの異なる方法を用いることができる。主な方法は、抗体全体を酵素的/化学的に切断することであり、この方法では、抗体全体が酵素(パパイン、ペプシン、及びフィシン等)によって切断されて「F(ab’)2」フラグメントを形成し、その後、それらのフラグメントを還元して「Fab」フラグメントを生成する。別の方法は、「F(ab’)2」抗体フラグメントを組換え合成し、続いてこれらのフラグメントを化学還元してFabユニットを生成することである。Fcヒンジ領域のごく一部を保持する「F(ab’)2」フラグメントは、抗原との親和性を高める可能性のある2つの抗原結合領域を有する。「F(ab’)2」フラグメントを還元すると、他の分子との共役に有用な遊離のスルフヒドリル基を持つ2つの一価Fab’フラグメントが産生される。酵素的/化学的切断法を利用して「Fab」フラグメントを生成することは便利で効率的であるが、出発物質として大量のモノクローナル抗体が必要である。単鎖の「Fab」フラグメント(scFab)は、「Fab」フラグメントの機能及び産生の改善につながる可能性がある。いくつかの研究によると、「scFab」フラグメントは「Fab」と比較して優れた抗原結合能を示し、大腸菌(E. coli)での可溶性Fab産生のいくつかの欠点を補っている。
【0038】
「単鎖可変フラグメント」又は「scFv」という用語は、ペプチドリンカーによって互いに連結した抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変ドメインを含む融合タンパク質を指す。この用語は、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)も含む。ジスルフィド結合によってscFvを安定化する方法は、Reiter et al., 1996. Nat Biotechnol. 14(10):1239-45に開示されている。
【0039】
「漸進的用量分割」という表現は、患者が本発明の組成物の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの分割量を受けたことを意味し、投与される細胞の割合は、連続する分割量ごとに漸進的に増加する。好ましい実施の形態において、漸進的用量分割は、0日目に第1の分割量(10%程度)、その後に続く第2の分割量(30%程度)及び第3の分割量(60%程度)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明のCARのin vitro抗腫瘍活性を示す図である。(A)CART19細胞対NALM6細胞の細胞毒性アッセイ。未処理と比較した標的生存細胞のパーセントを示す(3回の実験の平均±SEM)。右側のパネルは、E:T比=1:8の代表的なフローサイトメトリープロットを示す。(B)CFSEアッセイによって測定されたCAR19 T細胞のin vitroでの増殖を示す。左側のパネルは、代表的なフローサイトメトリーの画像を示す。右側のパネルは、増殖指数(PI)の定量化を示す。3回の実験の平均±SEMを示す。(C)ELISAで測定した、NALM6細胞と共培養したCART19細胞のサイトカイン産生(IFNγ、TNFα、及びIL-10)。3回の実験の平均±SEMを示す。(
*)は統計的有意性を示し、p<0.05を示す。n.s.は統計的に有意ではないことを示す。
【
図2】本発明のCARのin vivo抗腫瘍活性を示す図である。(A)上のパネルは、実験計画のタイムラインを示す。下のパネルには、異なる日数の疾患の進行を示す生物発光画像を示す。(#)で示された動物は、疾患の進行が進んだため、16日目に屠殺した。残りの動物は17日目に屠殺した。(B)(a)に示すマウスの骨髄中の腫瘍(CD19+)細胞の検出(平均±SD)。(C)血液中の腫瘍(CD19+)細胞の検出。
【
図3】本発明のCART細胞とFMC63ベースのCART細胞との抗腫瘍活性の比較を示す図である。上のパネルは、実験計画のタイムラインを示す(
*Im、生物発光画像、
*BI、血液試料)。下のパネルは、異なる日数の疾患の進行を示す生物発光画像を示す。
【
図4】CliniMACS Prodigyにおける本発明のCAR細胞の拡大を示す図である。(A)本発明のCAR細胞の拡大動態(総細胞数)。灰色の点は個々の生成物を示す。黒い三角形は平均±SD及び調整曲線を示す。(B)CAR19+細胞(赤)の拡大動態、及び総細胞数(黒)。平均±SDを表す。(C)健康な対照及び異なる種類の疾患を比較する、本発明のCAR細胞の拡大動態(総細胞数)。平均±SEMを表す。(D)フローサイトメトリーにより測定されたCD3及びCAR19陽性細胞の割合。平均±SDも示す。右側のパネルは、本発明のCAR細胞(最終生成物)及び対照T細胞(非形質導入細胞)におけるCAR19及びCD3染色に対応するフローサイトメトリーの代表画像を示す。
【
図5】本発明のCAR細胞の細胞効力を示す図である。(A)指定の比率で本発明のCAR細胞をNALM6細胞と共培養した4時間後の細胞毒性アッセイ。27種類のCAR T細胞生成物全ての平均±SDを示す。(#)破線は、有効とみなされる生成物における本発明のCAR細胞の細胞毒性レベルの最小値を示す。(B)細胞毒性アッセイの上清において測定されたIFNγ、TNFα、及びグランザイムBのレベル。E:T比0は標的細胞がないことを示す。(
*)は統計的有意性、p<0.05を示す。(C)指定の比率での本発明のCAR細胞とNALM6細胞との4時間共培養後の細胞毒性の可能性の比較。平均±SDを示す。「n.s.」は統計的に有意ではないことを示す(ノンパラメトリック検定)。(D)E:T比1:1での細胞毒性アッセイの上清において測定されたIFNγ、TNFα、及びグランザイムBのレベルの比較。「HD」は健康なドナーを示す。「n.s.」は統計的に有意ではないことを示す(IFNγ及びTNFαにはパラメトリック検定を適用し、グランザイムBにはノンパラメトリック検定を適用した)。
【
図6】本発明のCAR細胞のサブセット特性評価を示す図である。(A)CD4-CD8細胞選択後及び最終生成物のアフェレーシス生成物のCD4/CD8比。(B)細胞拡大中のCD4/CD8比の変動。左側のパネルは、初期比率が1未満の生成物に対応する。右側のパネルは、初期比率が1を超える生成物に対応する。(C)CD4細胞及びCD8細胞におけるCAR19形質導入効率。平均±SDを示す。(D)初期生成物(CD4-CD8細胞選択)及び最終生成物(CAR-細胞及びCAR+細胞)におけるT細胞亜集団の割合。(E)初期生成物と最終生成物におけるCD45RAとCCR7のMFIの差。下のパネルは、CCR7 MFIのペア分析を示す。(
*)は統計的有意性、p<0.05を示す。n.s.は統計的に有意ではないことを示す。
【
図7】急性リンパ芽球性白血病を有する患者の臨床結果を示す図である。(A~D)投与タイプ(コホート1及びコホート2対コホート3)による修正最大解析対象集団(modified full analysis set)(n=38)に属する急性リンパ芽球性白血病を有する患者の無増悪生存期間(A)、全生存期間(B)、B細胞形成不全の持続性によって測定される本発明のCAR細胞のin vivo生存率(C)、及び処置関連死亡率(D)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明を、その保護範囲を限定する意図なしに、以下の実施例によって例示する。
【実施例】
【0042】
実施例1.本発明の抗CD19 CARの開発
実施例1.1材料及び方法
実施例1.1.1.ドナー、細胞株、及び抗CD19モノクローナル抗体
全てのプロトコルは、対応する機関審査委員会によって承認された。健康なドナーの血液バフィーコートは、地元の参照血液バンク(Banc de Sang i Teixits、バルセロナ)から入手した。NALM6、HL60、K562、及び300.19の細胞株をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から購入した。これら4つの細胞株を、RPMI培地+10%FBS+抗生物質中で培養した。HEK293T細胞株もATCC(#CRL-11268)から購入し、DMEM+10%FBS+抗生物質中で培養した。全ての細胞株を、37℃及び5%CO2で成長させた。300.19-hCD19の安定的トランスフェクト細胞を、pUNO1-CD19 cDNA(InvivoGen、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して生成した。
【0043】
本発明のマウス抗CD19モノクローナル抗体を、免疫学科(ホスピタル・クリニック・デ・バルセロナ)で作製し、その抗CD19特異性を確認した。
【0044】
実施例1.1.2.CAR19クローニング及びレンチウイルス産生
本発明の抗体のVL及びVH領域に対応する配列を、マウスIg-プライマーセット(Novagen、カタログ番号69831-3)を用いてハイブリドーマ細胞から抽出した。完全なCAR19配列(シグナルペプチド、抗体scFv、CD8ヒンジ及び膜貫通領域、4-1BB及びCD3zを含む)をGeneScriptによって合成し、EF1αプロモーターの制御下で第3世代レンチウイルスベクターpCCL(ミラノのサンラファエル病院のルイジ・ナルディーニ博士から善意により提供)にクローニングした。
【0045】
前臨床研究用のレンチウイルス粒子を産生するため、HEK293T細胞に、直鎖ポリエチレンイミンMW25000(PEI)(Polysciences、カタログ番号23966-1)を使用して、パッケージングプラスミドpMDLg/pRRE(Addgene、#12251)、pRSV-Rev(Addgene、#12253)、及びエンベローププラスミドpMD2.G(Addgene、#12259)と共に本発明者らのトランスファーベクター(pCCL-EF1α-CAR19)をトランスフェクトした。簡潔には、トランスフェクションの24時間前に、6×106個のHEK293T細胞を10cmのディッシュにプレーティングした。トランスフェクション時に、14μgのトータルDNA(6.9μgのトランスファーベクター、3.41μgのpMDLg/pRRE、1.7μgのpRSV-Rev及び2μgのpMD2.G)を無血清DMEMで希釈した。35μgのPEIを混合物に加え、室温で20分間インキュベートした。インキュベーション後、7mlの完全なDMEM培地で培養した細胞にDNA-PEI複合体を加えた。培地を4時間後に交換した。ウイルス上清を48時間後に収集し、0.45μmフィルターを用いた遠心分離及び濾過により清澄化した。超遠心分離を使用して26000rpmで2時間30分ウイルス上清を濃縮した。ウイルスを含むペレットを完全XVivo15培地に再懸濁し、使用するまで-80℃で保存した。
【0046】
実施例1.1.2.レンチウイルス滴定
形質導入単位の数(TU/ml)を、限界希釈法によって決定した。簡潔には、HEK293T細胞を、形質導入の24時間前に播種した。次いで、ウイルス上清の1:10希釈液を調製し、完全DMEM培地+5μg/mlポリブレン中の細胞の上に添加した。48時間後に細胞をトリプシン処理し、フローサイトメトリーで分析する前に、APCコンジュゲート型AffiniPureF(ab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-136-072)で標識した。陽性細胞の2%~20%に相当する希釈液を使用してウイルス力価を計算した。
【0047】
実施例1.1.3.T細胞形質導入及び培養条件
倫理委員会の指示に従って提供が同意された後、密度勾配遠心分離(Ficoll)によりバフィーコートから健康なドナーPBMCを得た。単球を従来のプレート接着によって除去したが、残りの細胞をX-VIVO15細胞培地(Cultek、#BE02-060Q)、5%ABヒト血清(Sigma、カタログ番号H4522)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100μg/ml)、IL-2(50IU/ml;Miltenyi Biotec)で培養した。次いで、CD3及びCD28 mAbとコンジュゲートしたビーズ(ダイナビーズ、Gibco、#11131D)を使用して細胞を24時間活性化及び拡大させ、24時間後に8μg/mlのポリブレン(Santa Cruz、#sc-134220)の存在下で一晩インキュベートしてレンチウイルスにより形質導入した。実験を行う前に、6日~8日間の細胞拡大期間が必要であった。3種の異なるPBMCドナーを用いた3種の異なる細胞形質導入を使用して、実験を三連で行った。
【0048】
実施例1.1.4.フローサイトメトリー
ヒトタンパク質に対する以下のmAb:CD3-FITC、CD4-BV421、CD8-APC、CD19-PE、及びCD33-PEを使用した(いずれもBD Biosciences製)。7-AAD(ThermoFisher、#A1310)を生存率マーカーとして使用した。CAR19の発現を、APCコンジュゲート型AffiniPureF(ab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-136-072)で検出した。試料を蛍光活性化細胞選別フローサイトメーターBD FACSCanto II(BD Biosciences)に通し、BD FACSDivaソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0049】
実施例1.1.5.抗腫瘍効果のin vitroアッセイ
CART19又は非形質導入T(UT)細胞を、特に明記されていない限り、腫瘍標的細胞株(NALM6又はHL60)又は初代B-ALL腫瘍細胞と、異なるエフェクター対ターゲット(E:T)比で16時間共培養し、一定数の標的細胞を維持した。次いで、細胞をTruCOUNTチューブ(BD、カタログ番号340334)に移し、ヒトCD4、CD8、CD19(又はCD33)及び7-AADに対してmAbと共にインキュベートした。細胞毒性を、生存している標的細胞(NALM6標的細胞及びHL60標的細胞について、それぞれ7-AAD陰性/CD19又はCD33陽性細胞として同定された)の数を計算することによって決定した。一定数のビーズを取得して絶対細胞数を計算した後、取得を停止し、異なるE:T比を比較できるようにした。共培養上清をサイトカイン産生(IFNγ、TNFα、及びIL-10)について、製造元の指示(BD OptEIA)に従ってELISAによって分析した。全ての実験を3連で実行した。
【0050】
CD19抗原に応答したCAR細胞増殖を、CFSEアッセイを用いて測定した。簡潔には、CAR細胞を1μM CFSEで標識し、洗浄して、増殖刺激のあり又はなしで培養した(IL-2 50U/ml、NALM6細胞又はK562細胞)。NALM6又はK562を、E:T比=1:1で添加した。96時間後にアッセイを停止し、細胞を抗CD4及び抗CD8で染色した。CFSE染色をCD4+細胞及びCD8+細胞において測定し、増殖指数(PI)を計算した(PI=異なる世代の細胞数の合計/計算された元の細胞数)。
【0051】
実施例1.1.6.抗腫瘍効果及び安全性のin vivo異種移植モデル
動物実験は、動物実験の管轄倫理委員会であるCEEA-UBによって承認された。
【0052】
生後3カ月のNOD.Cg-Prkdcscid Il2rdtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスに、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びルシフェラーゼを発現するNALM6腫瘍細胞(1×106細胞/マウス)を静脈内(尾静脈)注入した。次いで、マウスをCAR細胞(10×106/マウス)、UT細胞(10×106細胞/マウス)、又はビヒクルのいずれかにランダムに割り当てた。
【0053】
CAR細胞又はUT細胞を、NALM6の注入の3日後に注入した。D-ルシフェリンの静脈内投与後、生物発光イメージング(Hamamatsuの検出器)により腫瘍成長を毎週評価した。マウスを16日目~17日目に屠殺し、血液及び骨髄の試料中の腫瘍量をフローサイトメトリーで測定した。
【0054】
実施例1.1.7.患者規模のCAR細胞生産
健康なドナーからの白血球アフェレーシスを、インフォームドコンセントのもと、ホスピタル・クリニック・デ・バルセロナのアフェレーシスユニットで入手し、当院の倫理委員会によって承認された。アフェレーシス処置を、Amicus装置(Fresenius Kabi、イリノイ州レイクズーリック)を使用して実施した。50mlの血漿で希釈した最低1×108個のT細胞が必要であった。細胞を、3%のヒトAB血清とIL-7、IL-15(それぞれ、Miltenyi Biotecの#170-076-111及び#170-076-114)を補充したTexMACS(商標)培地を使用して、CliniMACS Prodigy(商標)システム(Miltenyi Biotec)で培養した。T細胞の活性化には、TransAct GMPグレード(Miltenyi Biotec、カタログ番号170-076-156)を使用した。
【0055】
実施例1.2.結果
実施例1.2.1.本発明の抗hCD19モノクローナル抗体の検証
本発明の抗hCD19モノクローナル抗体は、hCD19でトランスフェクトされたマウスリンパ腫細胞株300.19に対して反応するが、トランスフェクトされていない細胞には反応しない。本発明の抗hCD19モノクローナル抗体は、予想通り、ヒト末梢血細胞のサブセットとも反応する。抗hCD19モノクローナル抗体はB細胞株Raji及びDaudiと反応するが、T細胞株、骨髄細胞株又はNK細胞株を使用した場合に反応性は観察されず、CD19の発現パターンと一致している。さらに、本発明者らは、Daudi細胞を抗CD19 FMC63抗体とプレインキュベートすると、モノクローナル抗体の結合がブロックされ、CD19に対する特異性が確認されることを示す。最後に、抗hCD19モノクローナル抗体を使用すると、Daudi細胞から、CD19の予想分子量と一致する100kDa程度のバンドが沈澱した。これら全てのデータを総合すると、本発明のモノクローナル抗体はヒトCD19タンパク質に対する高感度で高特異度の抗体であることがわかる。
【0056】
実施例1.2.2.CAR有効性のin vitro評価
本発明の抗CD19抗体のscFvを、レンチウイルスベクター(pCCL)内の残りのCARシグナル伝達ドメインと共にインフレームでクローニングした。CAR19の有効性を評価するために、バフィーコートから分離されたPBMCをCD3及びCD28ダイナビーズを使用して活性化し、続いてCAR19を含むレンチウイルスを使用して形質導入した。拡大期間の後、T細胞でのCAR19の発現をフローサイトメトリーによって確認した。CAR細胞の割合は、実験に応じて20%~56%の間で変動した。
【0057】
CAR細胞の細胞毒性を、CD19陽性NALM6細胞株のin vitro根絶によって測定した。この目的のため、本発明者らは、生存可能なCD19+細胞の数を定量化するフローサイトメトリーベースのアッセイを開発した(材料及び方法のセクションを参照されたい)。NALM6細胞は、E:T比が非常に低くても(8個の標的細胞ごとに1個のエフェクター細胞)、16時間の共培養後にほぼ完全に除去された。また、本発明者らは、同種反応性による非形質導入(UT)細胞のわずかな細胞毒性効果も観察した(
図1A)。CAR細胞との共培養におけるCD19陰性HL60細胞株の生存率を測定することにより、標的細胞の特異性も試験した。予想通り、この場合、CARが媒介する死滅は認められなかった。CAR細胞の細胞毒性は、初代B-ALL細胞に対しても試験され、同様の有効性が実証された。これら全てのデータを総合すると、本発明者らのCAR細胞はin vitroでCD19陽性細胞に対して強力で特異的な細胞毒性効果を示すことがわかる。
【0058】
CD19結合時のCAR細胞応答をよりよく特徴付けるため、96時間の時点で標準のCFSEアッセイを使用して細胞増殖を測定した。抗原結合は、in vivoで腫瘍を排除するためにCAR細胞の拡大を促進できるはずである。
図1Bに示すように、CAR細胞はCD19+NALM6細胞株と接触し、IL-2に反応して(わずかな程度で)増殖した。刺激がない場合又はCD19陰性細胞株(K562)と接触した場合、増殖は観察されず、細胞増殖がCD19認識によって媒介されたことが確認された。
【0059】
最後に、16時間後にエフェクター-標的細胞共培養物の上清においてCAR細胞のサイトカイン産生を測定し、ELISAアッセイを用いて分析した。CAR細胞又はUT細胞を用いた共培養物からのサイトカインレベルを比較した(
図1C)。UT細胞はIFNγ及びTNFαの増加を示さなかったが、CAR細胞はこれら2つの炎症誘発性サイトカインの有意な増加を示した。予想通り、抗炎症性サイトカインIL-10のごくわずかで有意ではない増加が観察された。
【0060】
実施例1.2.3.本発明のCAR細胞と他のCART19コンストラクトとの細胞毒性活性の比較
本発明の抗体由来のscFvを含むCAR細胞が、現在CD19+悪性腫瘍の治療に使用されている他のCART19細胞と比較してどのように機能するかを調べるために、本発明者らは、本発明者らのベクターにFMC63抗体のscFvをクローニングした。残りのCARコンストラクトは同じままであったことから、本発明者らは、両方のscFvフラグメントの効率を直接比較することができた。これらの分析では、本発明者らは、各CARコンストラクトを含むレンチウイルスによりPBMCを形質導入した。CAR19タンパク質の発現が、ウエスタンブロットによって確認された。次いで、本発明の抗体とFMC63 CART細胞の細胞毒性活性をin vitroで比較した。両CAR間で細胞毒性効力に有意差はなく、本発明の抗体のscFvは同等にCD19に結合して細胞毒性応答を引き起こすことができることを示している。
【0061】
実施例1.2.4.CAR有効性のin vivo評価
CART19細胞のin vivoでの有効性を評価するために、本発明者らは、NSGマウスで異種移植実験を行った。
【0062】
マウスを、ビヒクル(A)、UT細胞(B)、CAR細胞(C)、NALM6細胞(D)、NALM6細胞+UT細胞(E)、及びNALM6細胞+CAR細胞(F)の投与にランダムに割り当てた。群D、群E、及び群Fに対応するマウスに、1日目に尾静脈からNALM6-Luc+GFP+(CD19+)細胞を接種した。4日目に、群B、群C、群E、及び群Fに属するマウスにUT細胞又はCAR細胞のいずれかを注入した。
【0063】
図2Aに示すように、NALM6群(6匹中5匹の動物が進行)及びNALM6+UT細胞群(4匹中4匹の動物が進行)のNALM6細胞注入から2週間後に疾患の進行が明確に観察された。しかしながら、NALM6+CAR群に属するマウスはいずれも疾患は検出されなかった(6匹中0匹のマウスが進行した)。実験は完了し、NALM6群に属する動物が疾患の明らかな兆候を示し始めた16日目~17日目に動物を屠殺した。生物発光イメージングデータを確認するために、骨髄及び血液細胞をフローサイトメトリー用に処理した。抗ヒトCD19染色により、NALM6群及びNALM6+UT群に腫瘍細胞の存在が確認されたが、他の群では対照と比較して有意な割合の腫瘍細胞は検出されなかった(
図2B~
図2C)。
【0064】
また、
図3は、本発明のCART細胞とFMC63ベースのCART細胞との抗腫瘍活性の比較を示す。上のパネルは、実験計画のタイムラインを示す(
*Im、生物発光画像、
*BI、血液試料)。下のパネルには、異なる日数の疾患の進行を示す生物発光画像を示す。
【0065】
実施例1.2.5.CAR19レンチウイルスの大規模生産
CAR細胞の有効性及び特異性をin vivo及びin vitroで実証したため、本発明者らは、患者規模のCAR細胞生産のための条件の設定及び標準化を進めた。
【0066】
臨床試験を完了するのに十分な量のレンチウイルス上清を生産するために、本発明者らはウイルス生産方法を拡大し、GMPガイドラインに従ってクリーンルーム施設内で全プロセスを実施したが、レンチウイルス上清は医薬品局の承認という点では中間試薬と見なされていた。各ロットは4Lの濃縮されていないウイルスからなり、1ロットあたりの生産時間は12日であった。HEK293Tをパッケージング細胞株として使用した。生産を開始する前に、HEK293Tのマスターセルバンク及びワーキングセルバンクを作製していたため、全てのロットを同じ継代からHEK293Tを使用して生産した。生産するたびに、本発明者らは、最初にT175フラスコでHEK293Tを2継代拡大した(80×106細胞から最低2829×106細胞に拡大した)。次いで、細胞を4つの10層セルスタック細胞培養チャンバー(Corning)と1つの1層セルスタックに移し、細胞増殖を制御した。翌日、1リットルあたり3.86mgのPEI、763μgのトランスファーベクター、377μgのpMDLg/pRRE、188μgのpRSV-Rev、及び221μgのpMD2.Gを使用してプラスミドトランスフェクションを実施した。ウイルス上清を2日後に収集し、0.45μmのPVDF膜を用いて清澄化した。4Lのウイルス上清を最終的に濃縮し、KrosFlo Research IIiタンジェンシャルフロー濾過システム(商標)(Spectrum Labs)及び500kD mPESの中空繊維を使用して透析濾過した。2LのPBSを透析濾過バッファーとして使用した。各ロットを100mlに濃縮し、10mlバッグに分注し、使用するまで-80℃に保った。ウイルス力価測定、無菌性及び純度分析のため、より小さなアリコートも保管した。プロトコルの検証のために、3つのウイルスロットを生産して分析した。これら3つのロットで実施された分析の結果を表1に示す。凍結濃縮ウイルスのウイルス力価は、1.1×108TU/ml~2.2×108TU/mlの範囲であった。品質管理試験では、3つのロット全てが細菌真菌の成長、マイコプラズマ、又は複製能力のあるレンチウイルス(RCL)について陰性であることが示された。ウイルスの同定は、主要なウイルス成分のPCR増幅によっても確認された。
【0067】
【0068】
実施例1.2.6.CAR細胞の生産
CAR細胞を、CliniMACS Prodigy(Miltenyi)を使用して生産した。アフェレーシス生成物をCD4及びCD8の陽性選択に供し、次いで、100×106個のT細胞を培養し、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を使用して活性化した。活性化の24時間後、細胞をMOI=10のCAR19レンチウイルスにより形質導入した。細胞をIL-7及びIL-15を含む培地で所望の細胞数に達するまで(通常は8日~9日)培養した。生成物を、NaCl0.9%+0.5%HSA中に収集した。本発明者らの生産方法の一貫性及び堅牢性を試験するために、本発明者らは、3人の異なる健康なドナーからのアフェレーシス生成物を使用して3つの手順を実施した。本発明者らの目標は、最低でも35×106個のCAR細胞と20%以上の形質導入効率を達成することであった。
【0069】
拡大時間は8日~11日の間で変動した。ProdigyのT細胞拡大能を試験するため、11日目までランを続けることができたが、既に必要な最小細胞数に達していたため、残りのランを早めに中止した(それぞれ9日目及び8日目)。平均3780×106個の総細胞が得られ、細胞拡大が終了した時点での形質導入率は平均35.8%であった。したがって、3つの手順の全てで許容基準に達した。最終生成物に対して実施された品質試験の全リスト、及びそれぞれについて規定された許容基準を表2に提供する。同じ表に示されているように、得られた全てのCAR生成物は、純度、安全性、及び効力に関する全てのパラメーターについて定められた許容基準を満たしていた。
【0070】
【0071】
実施例2.CAR T細胞生産
実施例2.1.材料及び方法
実施例2.1.1.患者及び試料
この原稿を提出した時点で、CD19+B細胞悪性腫瘍の第I相臨床試験に登録された27人の患者から28種類の生成物が生産されている。27人の患者のうち、22人がALL(成人患者14人及び小児患者8人)、4人がNHL、1人がCLLを有していた。臨床試験に含まれた全ての患者は、疾患が再発していた。患者の前治療計画を表3に要約する。
【0072】
【0073】
成人患者は、インフォームドコンセントに署名した後、ホスピタル・クリニックのアフェレーシスユニットで白血球フェレーシスを受け、小児患者はサン・ジョアン・ド・デウ病院/BSTのアフェレーシスユニットで白血球アフェレーシスを受けた。アフェレーシス処置を、Amicus装置(Fresenius Kabi、イリノイ州レイクズーリック)を使用して実施した。50mlの血漿で希釈した最低1×108個の全T細胞が必要であった。この研究は、ホスピタル・クリニックの研究倫理委員会(CeIm)によって承認された:HCB/2017/0001.臨床試験:CART19-BE-01.Eudra:2016-002972-29。
【0074】
実施例2.1.2.本発明のCAR細胞の生産
アフェレーシス生成物をCliniMACS Prodigy(商標)システム(Miltenyi Biotec)チューブセットに接続した。Centricultユニットでの密度勾配遠心分離により、赤血球及び血小板を除去した。残りの細胞を、CD4及びCD8でコーティングされた磁気ビーズを使用して選択した。選択した細胞を「リアプリケーションバッグ(Reapplication Bag)」で溶出した。選択後、1×108個のT細胞(リアプリケーションバッグから)を使用して細胞培養を開始した。残りの細胞をバッグ及びバイアルに入れて凍結保存し、生成物の品質アッセイのための対照細胞として、また生産が失敗した場合のバックアップとして使用した。細胞を、3%のヒトAB血清(血液バンクBSTから取得)と、155IU/mL IL-7及び290IU/mL IL-15(それぞれ、Miltenyi Biotec#170-076-111及び#170-076-114)を補充したTexMACS(商標)培地を使用して培養した。TransAct GMPグレード(Miltenyi Biotec、カタログ番号170-076-156)を使用して細胞を直ちに活性化し、24時間後にCAR19を含むレンチウイルスをMOI=10で使用して形質導入を行った。細胞培養物の洗浄を、形質導入の48時間後にプログラムした。次いで、所望の細胞数に達するまで(通常、細胞培養開始の7日~10日後)、振蕩を漸増させながら細胞を培養し続けた。最終的に細胞を100ml 0.9%NaCl+1%HSAで溶出し、本発明のCAR細胞の所望の用量に従って分注し、注入するまで凍結保存した。
【0075】
目的は、患者1人あたり、2用量の本発明のCAR細胞を達成することであった。計画された目標細胞用量は、患者の疾患によって異なる。典型的には、ALL及びCLLを有する患者の場合は1×106個の本発明のCAR細胞(細胞/kg)、NHL患者の場合は5×106個の本発明のCAR細胞(細胞/kg)である。
【0076】
実施例2.1.3.モノクローナル抗体
CAR19の発現を、APCコンジュゲート型AffiniPureF(ab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories、115-136-072)で検出した。本発明のCAR細胞を含む生成物の組成を、以下の抗体(いずれもBD製)による染色を用いたフローサイトメトリーによって決定した:CD45-APC、CD3-BV421、CD4-FITC、CD8-PerCPCy5.5、CD19-PECy7、CD16-PE、CD56-PE。
【0077】
T細胞サブセット特性評価実験では、CD19-Fc組換えタンパク質キメラ(R&D、カタログ番号9269-CD-050)と二次抗体FITC-ヤギF(ab)2抗ヒトIgG(Life Technologies、カタログ番号H10101C)を使用してCAR+細胞を検出した。この染色を、以下のモノクローナル抗体(いずれもBD製)と併用した:CD3-BV421、CD8-APC.Cy7、CD45RA-PECy7、CD45RO-APC、CCR7-PerCPCy5.5、CD28-BV510及びCD95-PE(又はCD27-PE)。T細胞亜集団を次のように定義した:TN:CD45RA+、CCR7+;TSCM:CD45RA+、CCR7+、CD95+;TCM:CD45RA-、CCR7+;TEM:CD45RA-、CCR7-及びTEFF:CD45RA+、CCR7-。
【0078】
細胞内サイトカイン測定には、いずれもBD製の以下の抗体を使用した:CD3-BV450、CD8-APC.H7、CD4-BV500、IFNγ-PerCP.Cy5.5、TNFα-PE。
【0079】
反復チャレンジ実験で使用した抗体は、いずれもBD製の以下のものであった:CD3-APC、CD4-BV510、CD8-APC.Cy7、CD19-PE。
【0080】
フローサイトメトリー分析では、FACS Canto II(BD)を使用して細胞を取得し、続いてFlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0081】
実施例2.1.4.生成物の品質管理
生成物の効力アッセイを、フローサイトメトリーによって実施した。リアルタイムPCRを使用して、1細胞あたりのコピー数を測定し、最終生成物に含まれる複製能力のあるレンチウイルス(RCL)の存在を評定した。生成物の無菌性、マイコプラズマ、エンドトキシン、及び外来ウイルスが存在しないことを、認定された検査室によって判断した。外来ウイルスとしては、とりわけHIVウイルスの存在の決定を含んだ。従来のHIV検出方法では、細胞形質導入に使用されるレンチウイルス導入遺伝子の存在も検出されるため、Env遺伝子の検出に基づく代替PCRアッセイを使用して、HIV感染とレンチウイルス形質導入とを区別した。
【0082】
実施例2.1.5.サイトカイン測定
サイトカインレベルを、Milliplex MAPヒトサイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネル(Millipore)を使用して測定した。IFNγ、IL-10、IL-1β、IL-6、TNFα、IL-12(P40)、IL-17、IL-2、IL-4、及びIP-10には10プレックスキット、IL-8、IL-15、及びMIP1Aには3プレックスキット(カタログ番号HCYTOMAG-60K)、及びグランザイムBには1プレックスキット(カタログ番号HCD8MAG-15K)を使用した。アッセイを製造元の指示に従って実施した。試料を、Luminex 200システムで実行した。
【0083】
あるいは、細胞内サイトカイン産生(IFNγ及びTNFα)をフローサイトメトリーで測定した。簡潔には、細胞を最初に細胞外マーカーCD4、CD8、及びCD3について標識し、15分間インキュベートした。次いで、BDの1×溶解液(カタログ番号349202)を使用して細胞を固定し、更に15分間インキュベートした。2回の洗浄後、FACSバッファー+0.1%サポニンを用いて細胞を透過処理し、15分間インキュベートした。次いで、細胞を抗IFNγ及び抗TNFαと共に4℃で30分間インキュベートした。その後、細胞をPBSで洗浄して分析した。
【0084】
実施例2.1.6.小規模T細胞拡大
0.5×106個のT細胞をX-Vivo15細胞培地(Cultek、カタログ番号BE02-060Q)、5%ABヒト血清(Sigma、カタログ番号H4522)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100μg/ml)、及び指定のサイトカイン:50IU/ml IL-2(Miltenyi Biotec)、又は155IU/mL IL-7及び290IU/mL IL-15(Miltenyi Biotec)で培養した。サイトカインを48時間ごとに培地に追加した。解凍後24時間で、製造元の指示に従って細胞をダイナビーズヒトTアクティベーターCD3/CD28(Gibco、カタログ番号11131D)で活性化した。更に24時間後にMOI 10で細胞を形質導入し、次に0.5×106個のT細胞/ml~1.5×106個のT細胞/mlの濃度で11日間拡大させた。
【0085】
実施例2.1.7.標的細胞による反復チャレンジ後のT細胞拡大
抗原遭遇後のT細胞増殖能力を分析するために、本発明者らは、CAR-T細胞とNALM6細胞を1:1の比率(それぞれ250000細胞)で共培養した。4日間のインキュベーション後、培養液のアリコートを採取して分析し、T細胞数を決定した。細胞をCD3、CD4、CD8、及びCD19で標識し、次いで20μlのビーズ(CountBright、カタログ番号C36950、Invitrogen)を試料に加えて絶対細胞数を決定した。このプロセスを3回繰り返した。
【0086】
実施例2.1.8.統計
統計的有意性を、SPSSソフトウェアを使用して評定した。特に明示されない限り、対応のないT検定を使用した。マンホイットニーU検定を、非正規分布の変数の比較に使用した。p値が0.05以下の場合、統計的に有意とした。
【0087】
実施例2.2.結果
実施例2.2.1.CAR T細胞拡大
臨床試験に含まれた27人の患者から28種類のアフェレーシス生成物を得た。1人の患者については、本発明のCAR細胞の生産不良(T10生成物及びT13生成物は同じ患者のもの)により、アフェレーシス生成物を2回入手した。アフェレーシス生成物の説明を表4に示す。患者のアフェレーシス生成物を、CliniMACS Prodigyシステムを使用するCD4+及びCD8+の磁気選択に供した。1つ(患者T27)を除く全てのケースで、最小数のT細胞(100×106個)が得られた(表4)。患者T27では、50×106個の細胞で細胞培養を開始した。
【0088】
【0089】
27種の生成物についてCliniMACS Prodigyにおける細胞拡大の結果を
図4A~
図4Bに示す。細胞を平均8.5日間、7日~10日の範囲で拡大した。最終生成物で得られた平均総細胞数は2548×10
6、範囲は600×10
6~5200×10
6であった。50×10
6個の細胞で細胞培養を開始した1人の患者でも、最終生成物は許容基準を満たしていた。この特定の場合では、細胞培養を13日間維持し、最終的に3300×10
6個の細胞を得た。健康なドナー(過去3回の検証で使用)と比較すると、健康なドナーで実施されるランの数が限られていても、患者の細胞はよりゆっくりと拡大するようである(
図4C)。
【0090】
生成物を、外観、量、同一性、純度、安全性、及び効力の観点から分析した。
【0091】
実施例2.2.2.生成物の純度及び形質導入効率
最終生成物を、細胞生存率、CD3+細胞の割合、及びCAR+細胞の割合の観点から特性評価した。このデータを表5に要約する。
【0092】
【0093】
全ての生成物は、細胞生存率及びCD3+細胞の割合に関する許容基準(両方のパラメーターで70%超)を満たしていた。検出された最低値は、細胞生存率について91%、CD3+細胞について85.7%であった(
図4D)。
【0094】
CAR+細胞の割合を分析するために、本発明者らは、最初にAPCコンジュゲート型F(ab’)2抗マウス抗体の使用に基づく検出方法を検証した。この目的のために、本発明者らは、CAR19とGFPを共発現させるベクターを操作した。GFP+APC+細胞又はGFP-APC-細胞間の相関は93.5%であり、これにより検出方法の感度及び特異度が良好であったことを示す。
【0095】
この検出システムを使用して、本発明者らは、患者の生成物に含まれるCAR+細胞(本発明のCAR細胞)の割合を評定した。1つを除く全ての生成物が、20%を超える本発明のCAR細胞の仕様を満たしていた。1つの生成物(T10)では、本発明のCAR細胞は14.5%しか検出されなかった。その結果、この生成物は生産不良と見なされた。この患者については、2回目のアフェレーシス(T13)からCAR T細胞の生産を繰り返した。この時には、有効な生成物を入手できた。このシリーズのCAR+細胞の割合の平均(±SD)は30.6±13.44(
図4B~
図4D)であり、小規模拡大で達成された形質導入効率よりわずかに低かった(45.3%)。健康なドナーと患者との間(35.8%対30.6%)、又は異なる疾患間で形質導入効率に有意差は観察されなかった。細胞拡大中の経時的なCAR+細胞の割合も調査した。患者間で大きなばらつきが認められ、一部の患者ではCAR+細胞の割合が増加し、他の患者では減少した。患者1人あたりの細胞用量の数に関しては、成人で70kg及び小児患者で25kgの標準体重を考慮すると、全てのALL患者に対して最低2回の細胞用量(1×10
6個の本発明のCAR細胞の用量;細胞/kg)が迅速に(7日目までに)得られた。NHL患者(5×10
6個の本発明のCAR細胞の用量、細胞/kg)では、9日目までに4人の患者のうち3人に2回の細胞用量が得られた。実際、ALLで得られた細胞用量の数は、必要量をはるかに上回り(成人患者では9回の細胞用量、小児患者では25.4回の細胞用量)、これは、これらの患者群では、必要に応じてex vivo細胞拡大の時間を短縮できることを示している。NHLの場合、得られた本発明のCAR細胞用量の平均数は2.5であった。これまでに生産されたCLL患者は1人だけである。この患者のT細胞は成長が遅く、10日間の拡大が必要で、最終的に398×10
6個の本発明のCAR細胞が得られた。
【0096】
CAR19形質導入を、DNAコピー/細胞の観点からも評定した。表5に示すように、CAR19は全ての生成物で0.4コピー/細胞~2.9コピー/細胞の範囲で検出された(いずれも1細胞あたり10コピー未満という安全と見なされる制限を下回っていた)。予想通り、CAR+細胞の割合とDNAコピー/細胞との間に正の相関関係が得られ、両方の手法が更に検証された。
【0097】
実施例2.2.3.生成物の効力
注入前に、各生成物の細胞毒性の可能性をin vitroで分析した。最終生成物とNALM6細胞株との共培養を、異なるE:T比で開始した。生きたCD19+細胞の割合を、4時間後にフローサイトメトリーによって測定した。対照として、同じ患者の非形質導入CD4+CD8+細胞の細胞毒性活性も測定した。本発明のCAR細胞とのCD19+細胞(比率:1:1)の生存率が70%未満の場合、生成物は有効であると見なした。結果を表5及び
図5Aに示す。得られた生成物はいずれも、E:T比1:1でのCD19+生存率が70%未満であるという仕様を満たし、これは、調製された全ての生成物に、CD19+細胞を除去する固有の能力があることを示している。
【0098】
サイトカインレベルを、細胞毒性アッセイの上清でも測定した。予想通り、本発明のCAR細胞をNALM6と共培養した場合、本発明のCAR細胞単独と比較して、IFNγ及びTNFα等の炎症誘発性サイトカインのレベルの上昇が観察された。グランザイムBのレベルも有意に増加し(
図5B)、本発明のCAR細胞の細胞毒性活性と一致していた。
【0099】
細胞毒性活性及びサイトカイン産生の観点から、患者から生産されたCAR T細胞を健康な対照から得られたCAR-T細胞と比較した。
図5Cに示すように、患者及び健康なドナーのCAR T細胞は同様の細胞毒性の可能性を示した(統計的に有意ではなかったが、患者の細胞ではわずかに高かった)。炎症誘発性サイトカイン(IFNγ及びTNFα)及びグランザイムBの産生も同等であった(
図5D)。
【0100】
実施例2.2.4.T細胞サブセットの特性評価
生成物の組成を、CD4/CD8比とT
N、T
SCM、T
CM、T
E、及びT
EMサブセットの観点から更に分析した。CAR T細胞療法の候補となった患者の大規模なサブセットでは、CD4/CD8比が逆転した(CD4/CD8比<1)(
図6A)。アフェレーシス生成物の平均CD4/CD8比は0.93±0.67であった。この比率は、大多数の患者においてCD4及びCD8細胞選択後に有意に変化しなかった。しかしながら、細胞拡大中にCD4細胞の割合の有意な増加が検出された。CD4/CD8比は、CD4-CD8細胞選択後の0.64±0.61から、最終生成物では1.61±1.04に増加した。このデータを更に詳しく分析したところ、CD4/CD8比が1未満で開始した患者では、CD4+細胞の割合は、細胞拡大中に増加する傾向があったのに対し、細胞選択後に1を超えるCD4/CD8比を得た患者では、CD4+細胞の割合が減少する傾向があったことが明らかになった(
図6B)。そのため、細胞拡大前後のCD4/CD8比の差(ΔCD4/CD8)は、初期比率によって有意に異なっていた。CD4は有意に高いCAR+細胞の割合を示したため、CD4+サブセットとCD8+サブセットとの間で形質導入の効率が異なった(
図6C)。
【0101】
T
N、T
SCM、T
CM、T
E、及びT
EMのサブセットに関しては、本発明者らは、患者の最終生成物間で大きな変動を観察した(
図6D)。この高い変動性は、様々な患者の試料におけるCD45RA及びCCR7の発現レベルの違いによって例示されており(
図6E)、異なる疾患に起因するものではない。最終生成物のCAR+T細胞では、大多数の患者で記憶表現型(CM及びEM)が優勢であった。最終生成物のCAR+細胞内の各亜集団の平均割合及びSDは次のとおりである:T
N:7.71±13.9、T
SCM:5.26±12.0、T
CM:31.01±16.7、T
EM:35.11±17.7及びT
E:4.2±9.5。CD4細胞とCD8細胞を別々に分析したところ、CD8細胞はCD4細胞よりもT
N、T
SCM、及びT
CMの表現型を多く有することが示された。また、本発明者らは、初期(CD4-CD8細胞選択後)と最終生成物とのT細胞サブセットを比較することにより、これらのサブセットがex vivo細胞拡大中にどのように変化するか、またCARの発現がT細胞亜集団に影響したかどうか(CAR-細胞対CAR+細胞)を分析した。
図6Dに示すように、本発明者らは、T
N細胞とT
EFF細胞が減少する一方で、細胞拡大中にT
CMの割合が大幅に増加することを観察した。T細胞サブセットのこれらの変化は、細胞活性化時に予想されるCD45RA発現の減少に起因する可能性がある(
図6E)。
【0102】
最終生成物中のCAR-細胞とCAR+細胞との間でT細胞サブセットに統計的に有意な変化は検出されなかったが、CAR-と比較してCAR+細胞でT
CMの更なる増加、及びその結果としてのT
EFF細胞の減少が観察された(
図6D)。一貫して、CCR7発現のわずかな増加は、CAR+細胞対CAR-細胞でも検出された(
図6E)。CCR7に対するCAR発現の影響を、独立した小規模拡大で更に調査した(次のセクションを参照されたい)。CD27、CD28、及びCD95の発現の変化もフローサイトメトリーによって評定した。CD95は細胞拡大中に増加し、CD27は減少した。CD28は、CAR-細胞と比較してCAR+でより高い発現を示したが、拡大中に有意な変化を示さなかった。
【0103】
実施例2.2.5.CAR T細胞の小規模拡大
培養条件又はCAR発現がCD4/CD8比又はT細胞表現型の割合に及ぼす影響を更に評価するために、患者の選択された細胞からの細胞拡大を、様々な条件下で小規模な実験で繰り返した。本発明者らは、CD4-CD8細胞選択後に凍結された残存細胞が入手できた患者のうち6人(成人ALL3人及びNHL3人)を選択した。本発明者らは、4つの異なる条件で患者の細胞を拡大させた:(1a)IL2-非形質導入T細胞、(1b)IL2-CAR T細胞、(2a)IL7/IL15-非形質導入T細胞、(2b)IL7/IL15-CAR T細胞。細胞を、11日間で17倍~100倍拡大させた。CAR19形質導入T細胞は、非形質導入T細胞と比較して拡大が少ない(又は遅い)ため、IL2成長細胞はIL7/IL15(非形質導入条件とCAR19条件の両方)よりも拡大した。細胞形質導入又は使用したサイトカインは、CD4/CD8比を一貫して調整しなかった。ただし、Prodigyシステムを使用して拡大された生成物で以前に検出されたように、CD4/CD8比>1で開始した患者(T04及びT34)では比率が低下する傾向があり、CD4/CD8比<1で開始した患者(T02、T15、T22、及びT34)では比率が増加する傾向があった。実際、Prodigyシステムよりも小規模な拡大の方が、拡大が長く維持されたため、本発明者らは、CD4/CD8の比率は多かれ少なかれ顕著に増減する可能性があるが、細胞を長期間培養するとCD4/CD8=1になる傾向があることを観察した。
【0104】
興味深いことに、培養条件によってT細胞サブセットに関して有意差が見られた。このシリーズの患者では、成長培地に使用されたサイトカインでは、異なるサブセットごとに有意差は示されなかった。しかしながら、ほとんど全てのサブセットで、CAR19発現細胞と非形質導入T細胞で有意かつ一貫した差が認められた。CAR19形質導入の結果、培養培地に使用されたサイトカインとは無関係に、TN、TSCM、及びTCMのサブセットの割合がはるかに高くなった。逆に、TEM細胞は、非形質導入試料と比較してCAR19+細胞で減少した。この場合、どちらの条件でも、細胞はex vivoで活性化及び増殖したため、TN及びTSCMの減少を説明することができる、非形質導入細胞とCAR19+細胞との間のCD45RA MFIの差は観察されなかった。しかしながら、CAR19+細胞では、非形質導入細胞と比較してCCR7の発現が有意に増加することを観察した。この増加は、TN、TSCM、及びTCMサブセットの割合が高く、TEMが低いことを説明している。4-1BB活性化時のCCR7発現の増加は、単球で以前に説明されており、CAR T細胞でも提案されている。4-1BBの活性化がCAR+細胞で本発明者らが観察したCCR7の増加の原因であるかどうかを試験するため、本発明者らは、共刺激ドメインをCD28に変更して本発明者らのCARコンストラクトを改変した。次いで、健康なドナーからのT細胞を形質導入しないままにするか、4-1BB又はCD28を含むCARにより形質導入し、10日間in vitroで拡大させた。繰り返すが、本発明者らは、4-1BBを含むコンストラクトにより形質導入された細胞のCAR陽性画分では、非形質導入細胞又はCD28を含むCAR+細胞と比較して、CCR7の発現が増加することを観察した。予想通り、TCM細胞の割合は4-1BBを含むCAR+細胞でも高い。
【0105】
最後に、Prodigyシステム及び小規模拡大で製造されたCAR T細胞の機能性も比較した。この比較では、IL-7/IL-15を用いて拡大した3人の患者の細胞を使用した。炎症誘発性サイトカインの産生、細胞毒性の可能性、及びT細胞拡大を、同じ割合のCAR+細胞について調整した後に測定した。IFNγ及びTNFαの産生を、CAR T細胞をNALM6と1:1の比率で共培養した後、4時間の時点で測定した。これら2つのサイトカインのレベルは、細胞内染色及び培地中に存在するサイトカインの両方で測定され、一貫した結果が得られた。Prodigyシステムで製造された細胞は、小規模拡大で製造された細胞よりも一貫してわずかに多くのIFNγ及びTNFαを産生した。しかしながら、これらの差は統計的に有意ではなかった。細胞毒性の可能性に関しては、両方の方法で生産された細胞は同等の結果を示した。最後に、新鮮な標的細胞(NALM6)でチャレンジを繰り返した際のT細胞拡大は、統計的有意性には至らなかったものの、小規模拡大よりもProdigyシステムで製造された細胞の方がわずかに高かった。したがって、本発明者らは、Prodigyシステムで製造された細胞は、小規模拡大で製造された細胞と機能的に同等か、わずかに活性が高いと結論付ける。
【0106】
これら全てのデータを総合すると、本発明者らは、ex vivoでの細胞拡大により、TN及びTEFFが失われると結論付け、これは、Prodigyシステムと小規模拡大の両方で観察される。それとは対照的に、TCM細胞は、ex vivo拡大とCAR発現(共刺激ドメインとして4-1BBを含むCARにおける)の両方の結果として、大きく蓄積される。Prodigyシステムで生産された細胞は、小規模拡大で生産された細胞と機能的に類似する。
【0107】
実施例3.CD19+再発/難治性悪性腫瘍を有する患者における細胞療法
実施例3.1.材料及び方法
実施例3.1.1.患者集団
実施された研究は、R/R B細胞悪性腫瘍を有する患者における本発明のCAR細胞の安全性及び有効性を評価する単群多施設非盲検パイロット研究であった。適格患者は、(i)ALL、DLBCL、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫、又はマントル細胞リンパ腫を含むCD19陽性B細胞悪性腫瘍、(ii)年齢2歳~80歳、(iii)ECOGパフォーマンスステータス0~2、(iv)3カ月~2年の推定平均余命、及び(v)適切な静脈アクセスの全てを有していなければならなかった。主な除外基準は、寛解期間が3年以上経過していない限り、悪性腫瘍の既往歴;重度の腎臓、肝臓、肺、又は心臓の機能障害;積極的な免疫抑制療法;HIV感染;活動性HBV又はHCVの感染;及び全身療法を必要とする活動性感染症を含んだ。注目すべきことに、CNSへの関与も以前のalloHCTもこの試験の除外基準ではなかった。全ての患者は、書面によるインフォームドコンセントを提供した。スペイン医薬品庁(AEMPS)及び各研究サイトの機関審査委員会/倫理委員会は、ヘルシンキ宣言の原則に従って実施された試験を承認した。
【0108】
実施例3.1.2.研究計画、手順、及び治療
主要評価項目は、100日目及び1年目の処置関連死亡率及びグレード3~グレード4の毒性により決定される安全性であった。特に重要な有害事象(AE)は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性(現在は免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群[ICANS]として知られている)、及び二次腫瘍であった。AEを、共通用語規準(CTC)バージョン4.0に従って採点した。CRSについては、本発明者らは、グレーディングシステムを使用した。副次的評価項目は、NCCN、Lugano、又はIWCLL基準による客観的奏効率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、B細胞形成不全期間、及び治療が生活の質に及ぼす影響を含んだ。
【0109】
本発明のCAR細胞を注入する前に、患者は、-6日目、-5日目、及び-4日目に30mg/m2/日のフルダラビン+300mg/m2/日のシクロホスファミドを受けた。0日目に、患者は0.5×106細胞/kg~5×106細胞/kgの用量で本発明のCAR細胞の単回静脈内注入を受けた(後に分割投与に改正された;下記を参照されたい)。
【0110】
当初の試料サイズは10人の患者(コホート1)であった。研究開始から5カ月後、大幅な改正により試料サイズを39人の患者に増やし、3カ月以内にB細胞が正常回復(早期B細胞回復)、CD19陽性の疾患再発、又はCD19陽性の難治性疾患のいずれかを有する患者に、本発明のCAR細胞の2回目の投与を受けさせた(コホート2)。研究開始から12カ月後、すでに19人の患者が募集されていたため、2回目の大幅な改正により、試料サイズを合計54人の患者(コホート3)に増やし、第1及び/又は第2の分割量の後のCRSの欠如を条件とした、本発明のCAR細胞の分割投与(総用量の10%、30%、及び60%)、またグレード2のCRSを有する患者におけるトシリズマブの早期投与が義務付けられた。この2回目の改正の動機は、グレード5の毒性が3例あったことによるものである。
【0111】
実施例3.1.3.統計分析
統計分析は純粋に記述的なものであり、有害事象及び奏効率を95%の正確なClopper-Pearson信頼区間で示した。処置関連死亡率(PRM)を、疾患の再発を競合事象として考慮した累積発生率として計算した。OS、PFS、DOR、及びB細胞形成不全の持続性をKaplan-Meier法を用いてプロットした。B細胞形成不全の持続性がPFSに及ぼす影響を、Mantel-Byar法を用いて評価した。全ての統計分析は、SASバージョン9.4(SAS Institute、ノースカロライナ州ケアリー)及びRバージョン3.6(R Foundation for Statistical Computing、オーストリア、ウィーン)を使用して実施した。
【0112】
実施例3.2.結果
実施例3.2.1.ベースライン特性
58人の患者が研究に登録されたが、そのうち4人はスクリーニング段階を通過せず、2人の患者は選択/除外基準を満たさず、2人は最終的に当時入手可能になった市販製品による治療に紹介された。残りの54人の患者のうち、47人が本発明のCAR細胞による治療を受け、19人がコホート1~コホート2(単回注入)、28人がコホート3(分割注入)であった。これら47人の患者(修正最大解析対象集団[mFAS])は、ALL(38人)、DLBCL(4人、うち1人はCLLからのリヒター形質転換)、原発性縦隔B細胞リンパ腫(2人)、濾胞性リンパ腫(2人)、及びCLL(1人)と診断された。mFASに含まれる患者のベースライン特性を表6に示す。
【0113】
【0114】
年齢の中央値は26歳(範囲、3歳~67歳)であり、17人の患者(36%)が女性であった。データ締め切り日は2019年11月5日であり、注入を受けた全ての患者が最低100日間のフォローアップを受けたか、疾患の再発又は死亡を経験した。当時、フォローアップの中央値は、本発明のCAR細胞の注入から5.48カ月(範囲、1.87~23.6)であった。
【0115】
アフェレーシスに進んだ54人の患者のうち、47人(87%)及び7人(13%)がそれぞれ1回及び2回の処置を必要とした。注入した患者は全員、フルダラビン+シクロホスファミドリンパ球枯渇を受け、研究組み入れ後中央値54日(範囲、34日~215日)に本発明のCAR細胞を受けた。当初の目標用量は、本発明のCAR細胞の0.5×106(細胞/kg)~5×106(細胞/kg)の範囲であり、AEMPSは、最初の患者が最小用量(0.5×106個の本発明のCAR細胞、細胞/kg)を受けなければならないという条件を課していた。コホート3では、1人の患者が、CRSが原因で0.4×106個の本発明のCAR細胞(細胞/kg)(すなわち、最後の分割量は省略)を受けた。
【0116】
実施例3.2.2.毒性
本発明のCAR細胞を注入する前であっても、研究対象から生じた全ての有害事象(AE)を採点して報告した。グレード3以上のAEは、+100日目にALLを有する患者の68.4%、NHLを有する患者の75%で報告されたのに対し、重篤なAE(SAE)はALL及びNHLを有する患者の44.7%と50%でそれぞれ観察された(表7)。+100日目での処置関連死亡率(PRM)は、ALLを有する患者で7.9%(95%信頼区間[CI]1.7%~21.4%)、NHLを有する患者で0%であった。4人の患者において、予期しない重篤な副作用の疑い(SUSAR)が観察され、そのうち2人の患者が致死性CRSを発症し、1人の患者がグレード4のCRSからの回復中に偽膜性大腸炎で死亡した。コホート1~コホート2に属するこの3人の患者は、前述のように研究の2回目の大幅な改正の動機となった。4人目のSUSARは、グレード2のCRSからの回復中にグレード4の中毒性表皮壊死症を発症したコホート3の濾胞性リンパ腫患者で報告された。
【0117】
特に関心のあるAEについては、ALL及びNHLを有する患者のそれぞれ55.3%(グレード3以上の13.2%)と87.5%(グレード3以上の25%)でCRSが報告された。ALLを有する患者において、本発明者らは、2回目の改正後にグレード3以上のCRS率が26.7%(コホート1~コホート2)から4.3%(コホート3)に低下し、著しく低下したことを観察した(表7)。
【0118】
【0119】
さらに、グレード3以上のICANSは、ALLを有する患者の1人(2.6%)でのみ観察された。この研究で観察された唯一のグレード3以上の二次悪性腫瘍は、ALLと診断され、IO及びalloHCTを含む6種類の治療をすでに受けていた7歳の女児の骨髄異形成であった。この患者は最近、この原因で2回目のalloHCTを受けた。
【0120】
世界的に見ると、ALLを有する患者における最も一般的なAEは、好中球減少症(97.4%)、貧血(84.2%)、低ガンマグロブリン血症(78.9%)、血小板減少症(76.3%)、及びリンパ球減少症(73.7%)である。主にalloHCTの既往患者において、ASTの増加(50%)、ALTの増加(47.4%)、GGTの増加(39.5%)、及びアルカリホスファターゼの増加(36.8%)を含む肝臓毒性も頻繁に発生した。NHLを有する患者でも同様の数値が観察された。alloHCT及びIO療法の既往歴のあるALLを有する患者2人(38人中2人、5%)は、重症肝類洞閉塞症候群(SOS)を発症したが、従来の支持療法で解消した。
【0121】
実施例3.2.3.有効性
ALLを有する患者において、測定可能な残存病変(MRD)陰性完全奏効率(CRR)は、+100日目で71.1%(95%CI 54%~85%)であった。評価可能な全ての患者(すなわち、早期死亡患者を除く)は、中央値100日間(95%CI 56日~100日)続く絶対B細胞形成不全を発症した。ALLコホート全体の1年時のPFS率は47%(27%~67%)であったが、1年時のOS率は68.6%(49%~88%)(小児で78%、成人で65%)であった(
図7)。+100日目までに治療に反応した患者のみを考慮したDORの中央値は14.8カ月であった。本発明のCAR細胞注入後に疾患が進行した15人の患者のうち、腫瘍細胞は13人(87%)でCD19を発現し、2人(13%)はCD19陰性であった。B細胞形成不全の持続とPFSとの間に関連はなかった(P=0.33、Mantel-Byar検定)。ヒト抗マウス抗体(HAMA)は、ALLを有する患者36人中9人(25%)で検出され、そのうち3人は本発明のCAR細胞の注入前に検出された。HAMAの発生とB細胞形成不全の喪失又は疾患再発との間に関連はなかった。
【0122】
投与タイプ(コホート1~コホート2対コホート3)及び年齢別のサブグループ分析を表8に示す。
【0123】
【0124】
小児集団で明らかに低い奏効率が認められるのは、+100日目の前に本発明のCAR細胞の2回目の投与を2人の患者に早期に受けたためであることを強調することが重要である。その時までに両方の患者はMRD陰性CR状態であったが、この時点の少し前に2回目の注入を受けた。本発明者らが両者を奏効者として数えると、小児患者のCRRは55%ではなく72%、集団全体のCRRは71%ではなく76%になる。
【0125】
NHLを有する患者では、+100日目の全奏効率は75%(35%~97%)であったが、CRRは50%(16%~84%)であった。
【0126】
実施例3.2.4.分割投与
本発明の細胞組成物を患者に投与した。最初の15人の患者は、0日目に0.5×106細胞/kg~1×106細胞/kg(成人)又は5×106細胞/kg(小児)の単回静脈内注入を受けた。次の38人の患者は、年齢に関係なく1×106細胞/kgを受け、0日目に第1の分割量(10%程度)、続いて第2の分割量(30%程度)及び第3の分割量(60%程度)が続いた。患者にCRSの徴候又は症状がない場合に限り、第2の分割量は第1の分割量の24時間~48時間後に投与され、第3の分割量は第2の分割量の24時間~48時間後に投与された。この提案の理由は、致死毒性の症例が3例あることであった(難治性CRSで死亡した11歳及び19歳の患者2人、及びグレード4のCRSの合併症として偽膜性大腸炎で死亡した35歳の患者1人)。
【0127】
有害事象及び奏効率は、95%の正確なClopper-Pearson CIで示される。CRS(全グレード及びグレード3以上)、スクリーニング時の腫瘍量(骨髄(BM)における芽球が5%未満対5%以上)、及び投与タイプ(単回投与対分割投与)との間の可能性がある関連性をFisherの正確検定を用いて評定した。また、本発明者らは、以下の変数:年齢(25歳未満対25歳以上)、投与タイプ、腫瘍量、及びB細胞形成不全(BCA)の喪失の無増悪生存期間(PFS)及び全生存期間(OS)への影響も分析した(後者は時間依存の共変量として)。PFS/OS曲線を、時間固定共変量の場合はKaplan-Meier法、BCA喪失の場合はSimon-Makuch法を使用してプロットした。BCA喪失の最も適切な時期を特定するために、ランドマーク解析を行った。単変量Cox回帰を使用してこれらの共変量がPFS/OSに与える影響を評価し、BenjaminiHochbergの調整済みp値が0.1未満のものを多変量Cox回帰に導入した。シェーンフェルト残差を使用して、比例ハザードの仮定を確認した。R/R ALLを有する53人の患者が、本発明の細胞組成物による治療法を受けた。年齢の中央値は30歳(範囲、3歳~68歳)であり、24人(45%)の患者は女性であった。
【0128】
患者に、参加後、中央値55.5日(範囲、27日~216日)に本発明の細胞組成物を投与し、静脈から静脈まで(vein-to-vein)(アフェレーシスから注入まで)の時間の中央値は43日(範囲、21日~190日)であった。当初の目標用量は、CRSにより0.1×106細胞/kg~0.4×106細胞/kgを受けた3人(5.7%)の患者を除く全ての患者に注入された。CRSは56.6%(95%CI 42.3%~70.2%)の患者で報告され、11.3%がグレード3以上(95%CI 4.3%~23%)であり、それぞれ20.7%及び11.3%の患者でトシリズマブ及びステロイドによる治療が必要であった。BM内のリンパ芽球が5%以上の患者は、リンパ芽球が5%未満の患者と比較して、CRSの発生率が高かった(任意のグレード:82%対39%、p=0.0022、グレード3以上:27%対0%、p=0.0036)。さらに、CRSの発生率と重症度は、細胞の単回用量対分割投与とも関連していた(任意のグレード:87%対45%、p=0.0064、グレード3以上:27%対5%、p=0.047)。神経毒性は患者の13.2%(95%CI 5.5%~25.3%)で観察され、グレード3以上の自己限定発生(1.9%)が1回発生した。以前に報告された骨髄異形成症例(1/53、1.9%)を除いて、新たな二次悪性腫瘍は報告されていない。
【0129】
安全性プロファイルは類似製品と同等であり、グレード3以上のCRS/神経毒性率は5%未満であった。2 6さらに、同様の研究と同じく、分割投与と腫瘍量の両方がCRSの発生率と有意に関連していた。注目すべきことに、CUPに登録された2人の患者は、第1の分割量(0.1×106細胞/kg)でグレード3以上のCRSを経験したが、トシリズマブによる治療後に正常に回復した。どちらの患者も、研究に参加した時点で腫瘍量が大きかった(BMの芽球数が90%超)が、それでも不可逆的な毒性を回避しながら治療を受けることができた。
【0130】
測定可能な残存疾患(MRD)陰性CR率は、+28%日目に88.6%(95%CI 77.0%~95.7%)、+100日目に79.2%(95%CI 65.9%~89.2%)であった。毒性のために、受けた細胞数が1×106細胞/kg未満であった3人の患者全員が、MRD陰性のCRを達成した。評価可能な全ての患者(n=50)が絶対BCAを発症し、中央値は4.2カ月(95%CI 3.32カ月~7.53カ月)持続した。PFSは1年及び2年でそれぞれ、50.9%(95%CI 38.4%~67.4%)と32.9%(95%CI 20.6%~52.6%)であったが、1年及び2年のOSは70.2%(95%CI 58.1%~84.8%)と53.9%(95%CI 40.5%~71.8%)であった。27人(50.9%;95%CI 36.8%~64.9%)の患者に進行性疾患が発生し、その中央値は5.3(範囲、0.2~23.1)カ月であった。腫瘍細胞はこれらの再発のうち24人(89%)でCD19を発現し、3人(11%)はCD19陰性であった。3人(6%)の患者では、これらの細胞がalloHCTへの橋渡し役を果たした。2回目の注入は9人の患者(以前に報告されたものより3人多い:CD19+再発による4人、及びBCAの早期喪失を伴う患者の5人)で報告された。その結果、一過性の奏効と短期間のBCAが見られたが、その奏効のうち1回で患者は2回目のalloHCTを受けることができた。
【0131】
単変量解析によると、PFSに影響を及ぼす可能性のある変数は2つのみ、すなわち、2年PFSが52.5%(95%CI 36.4%~75.7%)対10.7%(95%CI 2.1%~54.4%)の腫瘍量(スクリーニング時のBM中のリンパ芽球数が5%未満対5%以上)、及び芽球が5%以上の患者に対するHR 2.14(95%CI 1.04~4.42)(調整済みp=0.077)であった。一方、BCAの喪失のHRは4.41(95%CI 1.59対12.2)で、調整済みp=0.0172であった。どちらの変数(腫瘍量及びBCAの喪失)も多変量モデルで確認され、スクリーニング時に芽球数が5%以上の患者のHRは2.05(95%CI 1.004~4.17)(p=0.0484)、BCAを欠く患者のHRは4.32(95%CI 1.57~11.86)(p=0.0045)であった。OSに関しては、評価された共変量のいずれも、多変量解析を正当化するほど十分な影響はなかった。BCAの喪失がPFSにこのような影響を及ぼしていることを踏まえ、本発明者らは一連のランドマーク分析を行い、臨床診療に最も適したカットオフを特定した。本発明者らのシリーズでBCAが失われるまでの期間の中央値が4.2カ月であったため、潜在的なランドマーク期間として3カ月及び6カ月を選択した。これらの分析によると、3カ月の時点が統計的有意性に最も近かった(HR 1.83、95%CI 0.82~4.11、p=0.15)。
【0132】
結論として、腫瘍量とBCA喪失の両方がPFSに大きな影響を及ぼすようであり、細胞注入後の患者の管理において臨床医の指針となる可能性がある。細胞の分割投与の有効性も確認された。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特許請求の範囲CD19+悪性腫瘍の治療における使用のための、複数の細胞を含む組成物であって、前記細胞が、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を有する、抗体、F(ab’)2、Fab、scFab又はscFvを順に含む、キメラ抗原受容体(CAR)を含み、前記VHが、HCDR1、HCDR2及びHCDR3ポリペプチドを含み、VLがLCDR1、LCDR2及びLCDR3ポリペプチドを含み、HCDR1が配列番号1の配列のみからなり、HCDR2が配列番号2の配列のみからなり、HCDR3が配列番号3の配列のみからなり、LCDR1が配列番号4の配列のみからなり、LCDR2が配列番号5の配列のみからなり、LCDR3が配列番号6の配列のみからなる、複数の細胞を含む組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のCD19+悪性腫瘍の治療における使用のための、複数の細胞を含む組成物であって、前記細胞が、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を有する、抗体、F(ab’)2、Fab、scFab又はscFvを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を順に含み、前記VHが、HCDR1、HCDR2及びHCDR3ポリペプチドを含み、VLがLCDR1、LCDR2及びLCDR3ポリペプチドを含み、HCDR1が配列番号1の配列のみからなり、HCDR2が配列番号2の配列のみからなり、HCDR3が配列番号3の配列のみからなり、LCDR1が配列番号4の配列のみからなり、LCDR2が配列番号5の配列のみからなり、LCDR3が配列番号6の配列のみからなり、細胞の漸進的分割投与が行われ、投与される細胞の割合が、投与される各連続分割量において漸進的に増加することを特徴とする、複数の細胞を含む組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のCD19+悪性腫瘍の治療に使用するための、複数の細胞を含む組成物であって、前記細胞が、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を有する、抗体、F(ab’)2、Fab、scFab又はscFvを順に含む、キメラ抗原受容体(CAR)を含み、前記VHが、HCDR1、HCDR2及びHCDR3ポリペプチドを含み、VLがLCDR1、LCDR2及びLCDR3ポリペプチドを含み、HCDR1が配列番号1の配列のみからなり、HCDR2が配列番号2の配列のみからなり、HCDR3が配列番号3の配列のみからなり、LCDR1が配列番号4の配列のみからなり、LCDR2が配列番号5の配列のみからなり、LCDR3が配列番号6の配列のみからなり、細胞の分割投与が、0日目に総用量の10%程度を含む第1の分割量を投与し、続いて総用量の30%程度を含む第2の分割量、及び総用量の60%程度を含む第3の分割量を投与することによって行われることを特徴とする、複数の細胞を含む組成物。
【請求項4】
前記抗体、F(ab’)2、Fab、scFab、又はscFvが、VLドメイン及びVHドメインを含み、前記VLドメインが、配列番号7のみからなり、前記VHドメインが、配列番号8のみからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記CARが、膜貫通ドメイン、共刺激シグナル伝達ドメイン、及び/又は細胞内シグナル伝達ドメインを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記CARのヒンジ及び膜貫通ドメインが配列番号9のCD8aのみからなり、前記共刺激シグナル伝達ドメインが配列番号10の4-1BBのみからなり、前記細胞内シグナル伝達ドメインが配列番号11のCD3δのみからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記CARが配列番号12を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記細胞が、T細胞又はNK細胞であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬組成物であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
急性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫若しくは慢性リンパ性白血病、又は任意のCD19+障害の治療における、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
総用量が0.5×106細胞/kg~5×106細胞/kg、好ましくは1×106細胞/kgであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【国際調査報告】