(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-15
(54)【発明の名称】フィルタモジュール付きタンディッシュ
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20240508BHJP
B22D 43/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B22D11/10 310F
B22D11/10 310G
B22D43/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568349
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022062319
(87)【国際公開番号】W WO2022234109
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518162876
【氏名又は名称】ベスビウス ユーエスエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン リショー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン クライアーホフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ログラー
(72)【発明者】
【氏名】アブヒシェク チャクラボーティ
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014NA08
(57)【要約】
タンディッシュ(10)用のフィルタリングシステムのフィルタモジュール(1)は、チャネル注入口からチャネル吐出口まで延在するチャネル(1c)を備えるフィルタユニット(1f)と、床(10f)から開口部高さ(h2)にわたって延在する開口部(2o)を画定する壁を備える壁モジュール(2)とを備える。バイパス通路(2b)は、壁モジュール(2)と最大幅(t12)のフィルタモジュール(1)との間に画定され、それによって、溶融金属は、フィルタユニット(1f)のチャネルを通るか、又はバイパス通路(2b)を通って流れることによって、注入口部分から吐出口部分にのみ流れることができる。壁モジュールは、幅(t2L)を有する壁レッジ(2L)を備える。フィルタモジュール(1)は、幅(t1L)を有し、壁レッジ(2L)に対して垂直方向にずらされてバッフルを形成するフィルタレッジ(1L)を更に含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを画定する連続金属鋳造用のタンディッシュ(10)であって、前記キャビティが、垂直軸(Z)に沿って測定されたキャビティ高さ(h10)と、長手軸(X)に沿って測定されたキャビティ長さと、及び横軸(Y)に沿って測定されたキャビティ幅とを有し、X⊥Y⊥Zであり、
前記キャビティが、
重力によって前記タンディッシュの外部から前記タンディッシュの前記キャビティ内に排出された溶融金属(20m)の流れを受け入れるように構成された注入口部分(10i)と、
前記溶融金属を前記キャビティからモールド内に排出するように構成された吐出口(11o)を備える吐出口部分(10o)と、
前記キャビティ幅全体にわたって、前記注入口部分(10i)を前記吐出口部分(10o)から分離するフィルタリングシステムを備え、
前記フィルタリングシステムが
前記キャビティ幅全体にわたって延在し、前記キャビティ内部に延在するフィルタモジュール(1)であって、前記フィルタモジュールが、前記タンディッシュの前記注入口部分(10i)に面し、前記キャビティの床(10f)から、前記垂直軸(Z)に沿って測定された前記床からの最短距離が最小フィルタモジュール高さ(h1)に等しい上部表面まで延在する注入口側を備え、
前記フィルタモジュール(1)が、前記垂直軸(Z)に沿ってフィルタ高さ(hf)にわたって延在し、チャネル(1c)を備えたフィルタユニット(1f)を備え、
前記チャネル(1c)が、
前記タンディッシュの前記注入口部分(10i)に面する注入口側において開口するチャネル注入口から、
前記吐出口部分に面し、前記注入口側からフィルタ深さ(tf)だけ離れた、前記フィルタモジュール(1)の吐出口側において開口するチャネル吐出口まで延在する、フィルタモジュール(1)と、
壁モジュール(2)であって、前記キャビティ幅全体にわたって延在し、前記キャビティ内部に延在する壁を備え、前記壁の幅にわたって分散され、前記床(10f)から前記垂直軸(Z)に沿って測定された開口部高さ(h2)にわたって分散された1つ以上の開口部(2o)を画定する、壁モジュール(2)と、を備え、
前記フィルタモジュール(1)が、前記壁モジュール(2)よりも前記吐出口(11o)の近くに配置され、前記壁モジュール(2)と前記フィルタモジュール(1)との間に前記長手軸(X)に沿って測定された最大幅(t12)のバイパス通路(2b)が画定され、それによって、前記溶融金属が、前記フィルタユニット(1f)の前記チャネルを通るか、又は前記バイパス通路(2b)を通って流れることによって、前記1つ以上の開口部を介して前記注入口部分から前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側まで、及び前記1つ以上の開口部から前記吐出口部分までのみ流れることができるものであって、
壁レッジ(2L)が、前記最小フィルタモジュール高さ(h1)より大きくない前記床(10f)からの壁レッジ距離(d2L)(すなわち、d2L≦h1)で前記壁モジュール(2)の前記壁から突出し、前記フィルタモジュール(1)に接触することなく、前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側に向かって延在し、前記壁レッジ(2L)が、前記長手軸(X)に沿って測定された幅(t2L)を有し、20mm<t2L<t12であり、
フィルタレッジ(1L)が、前記開口部高さ(h2)よりも大きい前記床(10f)からのフィルタレッジ距離(d1L)(すなわち、d1L>h2)で前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側から突出し、前記壁レッジ(2L)に対してずらされ(すなわち、d1L≠d2L)、前記フィルタレッジが、前記壁モジュール又は前記壁レッジのいずれにも接触せずに前記壁モジュール(2)に向かって延在し、前記フィルタレッジ(1L)が、前記長手軸(X)に沿って測定された幅(t1L)を有し、20mm<t1L<t12であることを特徴とする、タンディッシュ(10)。
【請求項2】
前記フィルタモジュール高さ(h1)に対する前記開口部高さ(h2)の比(h2/h1)が、20%~95%(0.2≦h2/h1≦0.95)、好ましくは40%~80%である、請求項1に記載のタンディッシュ。
【請求項3】
前記バイパス通路(2b)の最大幅(t12)に対する前記フィルタレッジ及び壁レッジ(1L、2L)の前記幅(t1L、t2L)の和の比((t1L+t2L)/t12)が、20%~150%(すなわち、0.2≦(t1L+t2L)/t12≦1.5)、好ましくは30%~120%、より好ましくは50%~100%である、請求項1に記載のタンディッシュ。
【請求項4】
前記壁モジュール(2)が、単一の開口部(2o)を備え、前記単一の開口部(2o)が、前記キャビティ高さ(h10)の0%~5%の距離だけ前記床(10f)から分離された下部境界から前記壁の下縁部まで延在し、前記開口部高さ(h2)を、前記床を前記下縁部の最も遠い点から分離する距離として画定する、請求項1に記載のタンディッシュ。
【請求項5】
前記壁モジュール(2)が、2つ以上の開口部(2o)を含み、上部開口部が、前記床(2f)から最も遠く、前記開口部高さ(h2)だけ前記床から分離された境界を有する前記開口部として画定されている、請求項1に記載のタンディッシュ。
【請求項6】
前記キャビティ高さ(h10)に対する前記開口部高さ(h2)の比(h2/h10)が、10%~60%(0.1≦h2/h10≦0.6)、好ましくは40~60%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項7】
前記バイパス通路(2b)を通過する前記注入口部分における前記床(10f)と前記吐出口部分との間に延在する直線が、
存在しないか、又は
前記垂直軸(Z)に対して70°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下の角度(θ)を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項8】
前記フィルタレッジ距離(d1L)が、前記壁レッジ距離(d2L)よりも大きい(すなわち、d1L>d2L)、請求項1~7のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項9】
前記壁モジュール(2)が、互いに平行であり、互いに接触せず、前記壁モジュール(2)の高さにわたって分散された、2つ以上の壁レッジ(2L)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項10】
前記フィルタモジュール(1)が、互いに平行であり、互いに接触せず、前記フィルタモジュール(1)の高さにわたって分散された、2つ以上のフィルタレッジ(1L)を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項11】
前記バイパス通路(2b)が、前記溶融金属の前記長手軸(X)に沿った流れ方向成分を反転させて、前記キャビティの前記注入口部分(10i)から前記吐出口部分(10o)へ流すようにする、請求項1~10のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項12】
前記フィルタユニット(1f)の下部境界が、0~10cm(すなわち、0≦hd≦10cm)、好ましくは2~5cmである距離(hd)によって前記キャビティの前記床(10f)から分離され、かつ/又は
前記フィルタユニット(1f)の上部境界が、距離(hf+hd)だけ前記床(10f)から分離され、それによって、前記開口部高さ(h2)に対する前記距離((hf+hd))の比((hf+hd)/h2)が、0.7~1.2(すなわち、70%≦(hf+hd)/h2≦120%)、好ましくは80%~100%である、請求項1~11のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項13】
壁レッジ(2L)が、前記壁の幅の一部、又は前記壁の幅全体から突出している、請求項1~12のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項14】
前記フィルタレッジ(1L)が、前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側の幅の一部、又は前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側の幅全体から突出している、請求項1~13のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、溶融金属をモールド又は金型内に鋳造する前に固体不純物を除去するためのフィルタユニットを備えた連続溶融金属鋳造用のタンディッシュに関する。特に、溶融金属が、タンディッシュの注入口部分から、溶融金属をモールド又は金型内に鋳造するためのタンディッシュ吐出口を含む吐出口部分に流れるための2つの可能な通路を課すフィルタモジュールを備えるタンディッシュに関する。溶融金属は、フィルタユニットを通って流れるか、又はフィルタユニットを通る流れを有利にするように設計されたバイパス通路を通る必要がある。しかし、フィルタユニットが詰まった場合、流れは引き続きバイパス通路を通る可能性がある。
【背景技術】
【0002】
連続的な金属成形プロセスでは、溶融金属は、ある冶金容器から別の冶金容器、モールド又は金型に移される。例えば、取鍋は、炉からの溶融金属を充填され、タンディッシュの上で駆動されて、溶融金属を取鍋から、一般に取鍋シュラウドを通してタンディッシュ内に吐出する。次に、溶融金属を、タンディッシュ吐出口からスラブ、ビレット、ビーム、薄いスラブなどを連続的に形成するためのモールド又は金型への注入ノズルを通して鋳造することができる。溶融金属の取鍋からタンディッシュへの流れ及びタンディッシュからモールド又は金型への流れは、重力によって駆動される。
【0003】
鋳物金属部品に介在物や不純物などの欠陥が存在することが懸念される。それらの欠陥は、主に、取鍋に存在したか、又は溶融金属と耐火材料との間の衝突及び摩擦によるタンディッシュの注入領域における耐火材料の摩耗によって引き起こされる破片及び不純物から生じる。鋳造金属部品の欠陥の数を減らすために、そのような破片及び不純物がタンディッシュ吐出口に到達するのを防ぐことが重要である。
【0004】
タンディッシュ吐出口に到達する破片及び不純物の量を減少させるために、EP3470149において、タンディッシュキャビティの幅全体にわたって延在するバッフルモジュールであって、タンディッシュキャビティを、取鍋から溶融金属を受け入れるタンディッシュの一部として画定される注入口部分と、タンディッシュ吐出口を含むタンディッシュキャビティの一部として画定される吐出口部分とに分離する、バッフルモジュールを含むことが提案されている。バッフルモジュールは、互いに対して垂直にずらされた2つの平行な壁と、キャビティの床と第1の壁の自由縁との間の開口部を画定する注入口部分に隣接する第1の壁と、床から第1の壁によって画定された開口部よりも高い高さまで延在する第2の壁と、から構成される。注入口部分から吐出口部分に流れる溶融金属は、バッフルモジュールによってそらされ、大部分の破片及び他の固形物が第2の壁の底部に残留させられる。しかしながら、EP3470149に記載されるバッフルモジュールは、バッフルによって課される蛇行した流れに従わない最も重い破片及び他の固形物の大部分を保持する。一方、より軽い固形物は、浮遊状態になり、バッフルモジュールを通過してタンディッシュ吐出口に到達する。溶融金属が高密度であることを考慮すると、固形物は容易に浮遊状態となり、このバッフルモジュールの除去有効性は、多くの用途において満足のいくものではない。
【0005】
タンディッシュキャビティの幅全体にわたって延在し、注入口部分と吐出口部分との間でタンディッシュキャビティを分離するフィルタモジュールを含むことも提案されている。例えば、KR200303465は、タンディッシュキャビティの断面全体にわたって延在するフィルタモジュールを備えるタンディッシュを記載しており、このフィルタモジュールは、チャネルを画定するフィルタユニットを備え、キャビティの注入口部分内の溶融金属は、必然的に流れて吐出口部分に到達しなければならず、したがって、吐出口部分に到達する溶融金属からほとんどの破片及び不純物が除去される。フィルタモジュールを使用すると、タンディッシュから金型に流出する破片及び不純物の量を実質的に減少させることが可能になるが、実質的な危険も生じる。実際、時間が経つにつれて、破片及び他の固形物がフィルタユニットの注入口側に蓄積され、したがって、フィルタユニットの透過性が実質的に低下し、フィルタユニットを通る溶融金属の流れを駆動するために必要な圧力差(ΔP)が増大する。したがって、キャビティの注入口部分における溶融金属の液位は、溶融金属がフィルタユニットを通るのではなくフィルタモジュールの上部に到達してフィルタモジュールの上方を流れるようになるまで、吐出口部分における液位に対して上昇することがある。フィルタモジュールの高さがタンディッシュ高さに近い場合、溶融金属がタンディッシュからあふれて悲惨な結果を招く深刻な危険がある。
【0006】
フィルタユニットの詰まりの場合のオーバーフローの問題を解決するために、KR101853768は、EP3470149のバッフルモジュールの第1の壁と第2の壁との間にフィルタモジュールを含むことによって、上記で論じたEP3470149及びKR200303465で提案された解決策の組み合わせを含むフィルタシステムについて説明している。このフィルタモジュールは、KR200303465に記載されているものよりも低く、第1の壁によって画定される開口部の高さと同様の高さを有する。第1の壁は、フィルタモジュールの上方を流れる溶融金属の一部を偏向させる機能と、フィルタモジュールと第1の壁との間のバイパス通路を画定する機能とを有する。これにより、フィルタユニットが詰まった場合には、溶融金属は、バイパス通路を通ってフィルタモジュール及び第2の壁の上方を流れることができ、したがって、最も重い破片及び他の固形物の一部をフィルタモジュール及び第2の壁に接触したままにしてタンディッシュ吐出口に到達することができる。この解決策の問題は、フィルタユニットが詰まっていなくても、実質的な割合の溶融金属がバイパス通路を通って流れ、フィルタユニットを通らないため、KR101853768に記載されているフィルタシステムの有効性が低下することである。
【0007】
したがって、当該技術分野における制限を克服する改善されたフィルタリングシステムが必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態は、注入口部分から吐出口部分までタンディッシュを通って流れる溶融金属に存在する破片及び他の固形物の密度に関係なく、ほとんどの破片及び他の固形物を効率的に除去し、同時に、フィルタリングシステムの機能不全のためにタンディッシュ縁部から溶融金属があふれる恐れのない高いレベルの安全性を確保するためのフィルタリングシステムに関する。本発明のこれら及び他の利点は、以下のセクションでより詳細に説明される。
【0009】
本発明の実施形態は、連続金属鋳造用のタンディッシュを提供する。様々な実施形態では、タンディッシュ(10)は、キャビティを画定し、キャビティは、垂直軸(Z)に沿って測定されたキャビティ高さ(h10)と、長手軸(X)に沿って測定されたキャビティ長さと、横軸(Y)に沿って測定されたキャビティ幅とを有し、X⊥Y⊥Zである。キャビティは、重力によってタンディッシュの外部からタンディッシュのキャビティ内に排出された溶融金属(20m)の流れを受け入れるように構成された注入口部分(10i)と、キャビティからモールド内に溶融金属を排出するように構成された吐出口(11o)を備える吐出口部分(10o)と、キャビティ幅全体にわたって、吐出口部分(10o)から注入口部分(10i)を分離するフィルタリングシステムとを備える。フィルタリングシステムは、キャビティ幅全体にわたって延在し、上記キャビティ内部に延在するフィルタモジュール(1)を備え、フィルタモジュールは、タンディッシュの注入口部分(10i)に面し、キャビティの床(10f)から、垂直軸(Z)に沿って測定された床からの最短距離が最小フィルタモジュール高さ(h1)に等しい上部表面まで延在する注入口側を含み、フィルタモジュール(1)は、垂直軸(Z)に沿ってフィルタ高さ(hf)にわたって延在し、チャネル(1c)を備え、チャネル(1c)が、タンディッシュの注入口部分(10i)に面する注入口側において開口するチャネル注入口から、吐出口部分に面し、注入口側からフィルタ深さ(tf)だけ分離された、フィルタモジュール(1)の吐出口側において開口するチャネル吐出口まで延在する、フィルタユニット(1f)を含む。フィルタリングシステムは、キャビティ幅全体にわたって延在し、上記キャビティ内部に延在する壁を備え、壁の幅にわたって分散され、床(10f)から垂直軸(Z)に沿って測定された開口部高さ(h2)にわたって分散された1つ以上の開口部(2o)を画定する壁モジュール(2)を更に備える。フィルタモジュール(1)は、壁モジュール(2)よりも吐出口(11o)の近くに配置され、バイパス通路(2b)は、壁モジュール(2)と、長手軸(X)に沿って測定された最大幅(t12)のフィルタモジュール(1)との間に画定され、それによって、溶融金属は、フィルタユニット(1f)のチャネルを通るか、又はバイパス通路(2b)を通って流れることによって、1つ以上の開口部を通って注入口部分からフィルタモジュール(1)の注入口側まで、及び1つ以上の開口部から吐出口部分までのみ流れることができる。壁レッジ(2L)は、床(10f)から最小フィルタモジュール高さ(h1)以下の壁レッジ距離(d2L)(すなわち、d2L≦h1)において壁モジュール(2)の壁から突出し、フィルタモジュール(1)に接触することなくフィルタモジュール(1)の注入口側に向かって延在し、壁レッジ(2L)は、長手軸(X)に沿って測定された幅(t2L)を有し、20mm<t2L<t12である。更に、フィルタレッジ(1L)は、床(10f)から開口部高さ(h2)よりも大きいフィルタレッジ距離(d1L)(すなわち、d1L>h2)においてフィルタレッジ(1)の注入口側から突出し、壁レッジ(2L)に対してずらされ(すなわち、d1L≠d2L)、フィルタレッジは、壁モジュール又は壁レッジのいずれにも接触せずに壁モジュール(2)に向かって延在し、フィルタレッジ(1L)は、長手軸(X)に沿って測定された幅(t1L)を有し、20mm<t1L<t12である。
【0010】
様々な実施形態では、フィルタモジュール高さ(h1)に対する開口部高さ(h2)の比(h2/h1)は、20%から95%(0.2≦h2/h1≦0.95)、好ましくは40%から80%である。
【0011】
様々な実施形態では、バイパス通路の最大幅(t12)に対するフィルタレッジ及び壁レッジの幅(t1L、t2L)の和の比((t1L+t2L)/t12)は、20%~150%(すなわち、0.2≦(t1L+t2L)/t12≦1.5)、好ましくは30%~120%、より好ましくは50%~100%である。
【0012】
様々な実施形態では、壁モジュールは、床から分離された下部境界から、キャビティ高さ(h10)の0~5%の距離だけ壁の下縁部まで延在する単一の開口部を含み、開口部高さ(h2)を、床を下縁部の最も遠い点から分離する距離として画定する。代替的に、第2の実施形態では、壁モジュールは、複数の開口部を備え、上部開口部は、床から最も遠く、床から開口部高さ(h2)だけ床から分離された境界を有する開口部として定義される。
【0013】
様々な実施形態では、開口部高さ(h2)は、10%~60%(0.1≦h2/h10≦0.6)、好ましくは40~60%である開口部高さ(h2)対キャビティ高さ(h10)の比(h2/h10)によってキャビティ高さ(h10)に関係付けることができる。
【0014】
様々な実施形態では、バイパス通路の蛇行は、注入口部分の床とバイパス通路を通過する吐出口部分との間に延在する直線を画定することによって非常に単純に特徴付けることができ、耐火物要素に当接せずに床に到達することも、若しくはバイパス通路を通過することもできないので存在しないか、又は垂直軸(Z)が70°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下の角度(θ)を形成する。
【0015】
様々な実施形態では、フィルタレッジ(1L)は、壁レッジ(2L)の「上方」にある。言い換えると、フィルタレッジ距離(d1L)は、壁レッジ距離(d2L)よりも大きくすることができる(すなわち、d1L>d2L)。あるいは、フィルタレッジ(1L)は、壁レッジ(2L)の下方にあることができる。換言すると、フィルタレッジ距離(d1L)は、壁レッジ距離(d2L)よりも低くすることができる(すなわち、d1L<d2L)。しかし、フィルタレッジは壁のレッジと同一平面を形成せず、すなわち、フィルタレッジ距離(d1L)は壁レッジ距離(d2L)と等しくない(すなわち、d1L≠d2L)。
【0016】
様々な実施形態では、壁モジュール(2)は、互いに平行であり、互いに接触せず、壁モジュール(2)の高さにわたって分散する2つ以上の壁レッジ(2L)を備えることができる。同様に、フィルタモジュール(1)は、互いに平行であり、互いに接触せず、フィルタモジュール(1)の高さにわたって分散する、2つ以上のフィルタレッジ(1L)を含み得る。1つ以上の壁レッジ及び/又はフィルタレッジは、組み合わされてバイパス通路内の追加のバッフルを画定する。
【0017】
様々な実施形態では、各バッフルは、少なくとも壁レッジ及びフィルタレッジによって画定され、バイパス通路は、溶融金属の長手軸(X)に沿って流れ方向成分の反転を課して、キャビティの注入口部分から吐出口部分まで流れる。
【0018】
少なくとも1つの実施形態では、フィルタユニットの下部境界は、キャビティの床から0~10cm(すなわち、0≦hd≦10cm)、好ましくは2~5cmである距離(hd)だけ分離され得る。フィルタユニットの上部の境界は、床から距離(hf+hd)だけ分離することができ、それによって、開口部高さ(h2)に対する上記距離((hf+hd))の比((hf+hd)/h2)が、0.7~1.2(すなわち、70%≦(hf+hd)/h2≦120%)、好ましくは80%~100%である。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、壁レッジ(2L)は、壁の幅の一部分から突出し、いくつかの実施形態では、壁レッジ(2L)は、壁の幅全体から突出している。
【0020】
少なくとも1つの実施形態では、フィルタレッジ(1L)は、フィルタモジュール(1)の注入口側の幅の一部から突出し、いくつかの実施形態では、フィルタレッジ(1L)は、フィルタモジュール(1)の注入口側の幅全体から突出している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
様々な開示された方法、プロセス、組成物、及び物品の以下の詳細な説明は、添付図面を参照する。
【0022】
【
図1】本開示の主題の少なくとも1つの実施形態による、タンディッシュを備える冶金設備の側面切断図を示す。
【
図2】本発明によるタンディッシュのキャビティの上部表面斜視図を示す。
【
図3】
図3(a)~
図3(d)は、本発明による壁部分の様々な実施形態を示す。
【
図4】
図4(a)~
図4(f)は、本発明によるフィルタリングシステムの様々な実施形態の側面切断図を示す。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、本発明によるフィルタリングシステムにおける様々な寸法を示す側面切断図を示す。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、キャビティ高さ(h10)がどのように測定されるかを示す側面斜視図を示す。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、2つ以上のタンディッシュ吐出口を備えるタンディッシュの2つの代替の実施形態の上部表面斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
連続的な金属成形プロセスでは、溶融金属は、ある冶金容器から別の冶金容器、モールド又は金型に移される。例えば、
図1に示されるように、取鍋(5L)は、炉(図示せず)からの溶融金属で充填され、タンディッシュ(10)の上で駆動されて、溶融金属を取鍋から一般に、取鍋シュラウド(5s)を介してタンディッシュ内に排出する。次いで、溶融金属は、スラブ、ビレット、ビーム、薄いスラブなどを連続的に形成するために、注入ノズル(15)を介してタンディッシュ吐出口(11o)からモールド又は金型(25)へ鋳造され得る。溶融金属の取鍋からタンディッシュへの流れ及びタンディッシュからモールド又は金型への流れは、重力によって駆動される。流量は、取鍋及びタンディッシュの吐出口と流体連通するスライドゲートによって制御することができる。取鍋スライドゲート(5g)を使用して、取鍋からの流量を制御することができ、場合によっては、密封された位置で流れを中断することができる。同様に、タンディッシュスライドゲート(図示せず)を使用して、タンディッシュからの流量を制御し、密封位置で流れを中断することができる。多くの場合、タンディッシュからの流量は、スライドゲートの代わりにストッパー(7)によって制御される。
【0024】
モールド又は金型内への金属の鋳造は連続的に実行されるため、タンディッシュは緩衝剤の役割を果たし、タンディッシュ内の溶融金属の液位(h20)は、鋳造動作全体にわたって実質的に一定でなければならない。しかし、タンディッシュの溶融金属の液位(h20)は、古い取鍋が、溶融金属で充填された新しい取鍋によって空にされた後に交換される間に低下する。タンディッシュからの流出は、(1)取鍋交換の時間を短縮し、(2)ストッパー(7)又はスライドゲートによってタンディッシュ吐出口(11o)の孔を制御することによって実質的に一定に維持される。
【0025】
鋳物金属部品に介在物や不純物などの欠陥が存在することが懸念される。そのような欠陥の1つの原因は、タンディッシュに存在する溶融金属(20m)中に異物が存在することである。スラグ(20s)も、これらの欠陥に寄与し得る。それらの欠陥は、主に、取鍋に存在したか、又は溶融金属と耐火材料との間の衝突及び摩擦によるタンディッシュの注入領域における耐火材料の摩耗によって引き起こされる破片及び不純物から生じる。鋳造金属部品の欠陥の数を減らすために、そのような破片及び不純物がタンディッシュ吐出口に到達するのを防ぐことが重要である。
【0026】
本開示の主題の様々な実施形態によれば、
図1に示されるように、本発明の少なくとも1つの実施形態による連続金属鋳造用のタンディッシュ(10)は、キャビティを画定し、キャビティは、垂直軸(Z)に沿って測定されたキャビティ高さ(h10)と、長手軸(X)に沿って測定されたキャビティ長さと、横軸(Y)に沿って測定されたキャビティ幅とを有し、X⊥Y⊥Zである。キャビティは、重力によってタンディッシュの外部からタンディッシュのキャビティ内に排出された溶融金属(20m)の流れを受け入れるように構成された注入口部分(10i)を備える。タンディッシュ(10)は、溶融金属をキャビティからモールド又は金型(25)内に排出するように構成されたタンディッシュ吐出口(11o)を備える吐出口部分(10o)を備える。キャビティは、タンディッシュの幅全体にわたって注入口部分(10i)を吐出口部分(10o)から分離し、フィルタモジュール(1)を備えるフィルタリングシステムを備え、フィルタモジュール(1)は、キャビティ幅全体にわたって延在し、垂直軸(Z)に沿ってキャビティの床(10f)から最小フィルタモジュール高さ(h1)にわたって上部表面まで延在し、フィルタモジュールは、タンディッシュの注入口部分(10i)に面する注入口側を備える。フィルタモジュール(1)は、垂直軸(Z)に沿ってフィルタ高さ(hf)にわたって延在するフィルタユニット(1f)であって、注入口側において開口するチャネル注入口から、吐出口部分に面し、注入口側からフィルタ深さ(tf)だけ分離された、フィルタモジュール(1)の吐出口側において開口するチャネル吐出口まで延在するチャネル(1c)を備える、フィルタユニット(1f)と、キャビティ幅全体にわたって延在し、垂直軸(Z)に沿って延在する壁を備え、壁の幅にわたって分散され、床(10f)から垂直軸(Z)に沿って測定された開口部高さ(h2)にわたって分散された1つ以上の開口部(2o)を画定する壁モジュール(2)とを備える。
【0027】
フィルタモジュール(1)は、壁モジュール(2)よりも吐出口(11o)の近くに配置され、バイパス通路(2b)は、壁モジュール(2)と、長手軸(X)に沿って測定された最大幅(t12)のフィルタモジュール(1)との間に画定され、それによって、溶融金属は、フィルタユニット(1f)のチャネルを通るか、又はバイパス通路(2b)を通って流れることによって、1つ以上の開口部(2o)を通って注入口部分からフィルタモジュール(1)の注入口側まで、及び1つ以上の開口部(2o)から吐出口部分までのみ流れることができる。
【0028】
キャビティ:キャビティは、垂直軸(Z)に沿って測定されたキャビティ高さ(h10)と、長手軸(X)に沿って測定されたキャビティ長さと、及び横軸(Y)に沿って測定されたキャビティ幅とを有し、X⊥Y⊥Zである。キャビティは、周囲の壁に囲まれた床(10f)によって画定されている。
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、キャビティ高さ(h10)は、キャビティの床(10f)から測定されたキャビティを充填する液体の液位に対応し、液位を越えると、液体は、キャビティの縁を越えて(キャビティを閉じる蓋がない場合)キャビティから流出する。すなわち、キャビティ高さ(h10)は、床から周囲壁の上部まで測定された周囲壁の最小の高さである。タンディッシュに吐吐出口(10s)が設けられている場合、キャビティ高さ(h10)は、床(10f)を吐吐出口の底部から分離する距離である(
図6(b))。
【0029】
タンディッシュは、重力によって溶融金属を取鍋(5L)からタンディッシュキャビティの受容部分に注入することによって、溶融金属中に送られる。あふれている流れを大気汚染から保護するために、取鍋にはしばしば取鍋シュラウド(5s)が設けられている。あふれている流れがキャビティの床に当たったときにキャビティの床を貫通するのを防ぐために、しばしば、衝撃パッド(9)(又は衝撃ボックス)が、あふれている流れが床に当たる衝突領域内に配置される。1つのタンディッシュは、通常、一度に1つの取鍋(5L)によって使用される。本開示は、マルチ取鍋供給システムに適用することができるが。
【0030】
図7(a)及び
図7(b)に例示されるように、キャビティは、取鍋(5L)によって使用される2つ以上のタンディッシュ吐出口(11o)を含み得る。いずれにしても、1つ以上のタンディッシュ吐出口(11o)に関連付けられた少なくとも1つの金属供給領域が常に存在し、各金属供給領域が、受容部分(図にはボックス又は衝撃パッド(9)の位置として示されている)とタンディッシュ吐出口(11o)との間に延在する金属流路を画定する。本発明によれば、全ての流路が、以下でより詳細に定義されるように、少なくとも1つのフィルタリングシステムによって妨害されなければならないことで十分である。複数のタンディッシュ吐出口(11o)の場合、この要件を満たすために複数のフィルタリングシステムが必要とされる場合がある。
【0031】
図1、
図4(a)~
図4(f)、及び
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、静止モードにおいて、すなわち、取鍋が現在、新鮮な溶融金属をタンディッシュに排出しているとき、キャビティには、溶融金属(20m)が実質的に一定の液位(h20)に充填される。タンディッシュが新鮮な溶融金属に送られないのは、空の取鍋(5L)が新しい取鍋に置き換えられる期間だけであり、鋳造が継続的に行われるので、タンディッシュ内の溶融金属の液位(h20)は時間とともに低下する。タンディッシュ吐出口からの一定の流量は、タンディッシュ吐出口(11o)のストッパー(7)又はスライドゲート(図示せず)によって減圧の関数として制御される。
【0032】
溶融金属が縁部を越えるか、又は吐吐出口(10s)を通ってタンディッシュから流出しないように、溶融金属(20m)の液位(h20)は、キャビティ高さ(h10)を超えることはできない(すなわち、h20<h10)。静止モードでの溶融金属の液位(h20)は、キャビティ高さ(h10)の75%~90%であることができる。液位が高いほど、オーバーフローのリスクが過度に増大し、液位が低いほど、寸法が過大なタンディッシュのコストが増大する。
【0033】
フィルタリングシステム:フィルタリングシステムは、キャビティを注入口部分(10i)及び吐出口部分(10o)に分離する。注入口部分(10i)は、新鮮な金属が取鍋(5L)からタンディッシュキャビティに注入される領域を含む。吐出口部分(10o)は、タンディッシュ吐出口(11o)を備える。溶融金属は、注入口部分に注入され、フィルタリングシステムを通ってタンディッシュ吐出口(11o)からモールド又は金型(25)内に流れなければならない。フィルタリングシステムは、壁モジュール(2)とフィルタモジュール(1)とを備え、フィルタモジュール(1)は、注入口部分(10i)に面するフィルタモジュール(1)の注入口側におけるチャネル注入口開口部から、吐出口部分(10o)に面する吐出口側におけるチャネル吐出口開口部まで延在するチャネル(1c)を備えたフィルタユニット(1f)を備える。
【0034】
溶融金属(20m)は、フィルタリングユニットを通って、フィルタリングユニット(1f)のチャネル(1c)を通って流れるか、又はフィルタモジュール(1)と壁モジュール(2)との間に画定されたバイパス通路(2b)を通って流れるための2つのオプションのみを有する。
【0035】
本開示の主題の様々な実施形態は、静止モードでは、フィルタリングシステムを通って流れる溶融金属の50%よりも多くがフィルタユニット(1f)のチャネルを通って流れるようなフィルタリングシステムの設計を対象とする。他のフィルタリングシステムと同様に、タンディッシュ(10)に使用されるフィルタユニット(1f)には、フィルタユニットの上流に滞留する破片及び固形物が詰まる。フィルタユニットの詰まりの程度を測定する1つの方法は、フィルタユニットの下流(Pd)に対する上流(Pu)における、経時的な圧力降下(ΔP=(Pu-Pd))の進行を監視することである。圧力降下は、詰まりの程度が増大するにつれて、公称圧力降下(ΔP0)に対して増大する。本発明では、公称圧力降下の2倍までの圧力降下(すなわち、ΔP/ΔP0≦2)の場合、溶融金属の50%よりも多く、好ましくは60%よりも多く、より好ましくは75%よりも多くがフィルタユニット(1f)を通って流れることが好ましい。逆に、50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは25%未満がバイパス通路(2b)を通って流れることが好ましい。
【0036】
本開示のフィルタリングシステムは、溶融金属をモールド又は金型(25)に排出する前に、溶融金属中に存在する実質的な量の破片及び他の固形物を保持することを可能にする。同時に、フィルタユニット(1f)の過度の詰まりによってフィルタユニットを横切る高降圧が生じる場合、溶融金属は、バイパス通路(2b)を介して吐出口部分(10o)に流入することができる。このようにして、溶融金属は、注入口部分(10i)において止まらず、溶融金属の液位を注入口部分内のキャビティ高さ(h10)に危険なほど近づけるか、又はそれよりも高く上昇させ、溶融金属がタンディッシュからあふれるという悲惨な結果をもたらす。
【0037】
上記で説明したKR101853768に記載のシステムとは対照的に、本開示のフィルタリングシステムは、フィルタモジュール(1)の下流に、フィルタモジュール(1)とタンディッシュ吐出口(11o)との間に位置する堰を必要としない。本開示のフィルタリングシステムの設計は、引き続き詳細に説明される。
【0038】
壁モジュール(2):壁モジュール(2)は、本発明のフィルタリングシステムの2つの必須構成要素のうちの1つであり、キャビティを注入口部分(10i)及び吐出口部分(10o)に分割する。壁モジュール(2)は、注入口部分(10i)に隣接し、フィルタモジュール(1)によってタンディッシュ吐出口から分離されている。壁モジュール(2)は、キャビティ幅全体にわたって延在し、上縁部まで垂直軸(Z)に沿って延在する壁を備える。壁モジュール(2)は、壁の幅にわたって分散され、床(10f)から垂直軸(Z)に沿って測定された開口部高さ(h2)にわたって分散された1つ以上の開口部(2o)を画定する。壁の上縁部は、溶融金属の静止液位(h20)よりも高い位置にある。上縁部は、一般に、キャビティ高さ(h10)の90%~100%、好ましくはh10の95%~100%である床(10f)からの距離に位置する。タンディッシュに吐吐出口(10s)が設けられている場合、上縁部は、h10よりも高く延在することができ、好ましくは、吐吐出口を除くタンディッシュの自由縁部と高さが同じである。これは、吐吐出口(10s)が吐出口部分(10o)に位置する場合に特に当てはまる。
【0039】
図3(a)~
図3(d)に示されるように、1つ以上の開口部(2o)は、様々な形状を有することができる。
図3(a)及び
図3(b)に示される実施形態では、単一の開口部(2o)が、床(10f)から壁の下縁部まで延在し、単一の開口部(2o)は、直線状であり、床に平行であるか(
図3(a)参照)又は湾曲していてもよい(
図3(b)参照)。開口部高さ(h2)は、床から下縁部の最も遠い点までの距離である。この実施形態の変形例では、開口部は、(段差を形成する)キャビティ高さ(h10)の最大5%の距離だけ床(10f)から分離された下部境界から壁の下縁部まで延在している。開口部高さ(h2)は、床を下縁部の最も遠い点から分離する距離として定義される(すなわち、段差の存在を無視する)。キャビティの幅全体にわたって段差が存在すると、タンディッシュからその中に残された溶融金属全体を取り除いて空にすることが妨げられ、注入口部分(10i)が段差の液位まで充填される。段差には、この問題を回避するための排水チャネルを設けることができる。
図3(c)に示された代替実施形態では、壁は、2つ以上の開口部(2o)を含むことができる。上部開口部は、床(10f)から最も遠い境界を有する開口部として定義される。開口部高さ(h2)は、上記境界を床から分離する距離として定義される。
図3(c)は、同一の丸い開口部を示す。複数の開口部が、所望に応じて任意の形状及び寸法を有することができることは明らかである。
【0040】
溶融金属が注入口部分から吐出口部分に流れるには、壁の1つ以上の開口部を通過しなければならない。注入口部分の溶融金属の液位が壁の上縁部を越えて増大しない限り、これ以外の選択肢はない。キャビティ高さ(h10)に対する開口部高さ(h2)の比(h2/h10)は、好ましくは10%~60%(すなわち、0.1≦h2/h10≦0.6)、好ましくは15%~50%、より好ましくは20~40%である。開口部高さ(h2)は、
図1(破線)に示すように、これによって、溶融金属が、衝撃パッド(9)に当たって溶融金属の表面に向かって上向きに跳ね返った後、溶融金属の流路を下向きに強制するので重要である。床から突出する段差が存在すると、最も重い固形物を保持するのに役立ち得るが、その存在は必須ではない。
【0041】
壁モジュール(2)はまた、床(10f)からの壁レッジ距離(d2L)において壁の幅全体から突出し、フィルタモジュール(1)に接触することなくフィルタモジュール(1)の注入口側に向かって延在する壁レッジ(2L)を含み、壁レッジ(2L)は、長手軸(X)に沿って測定された幅(t2L)を有する。直線状上縁部を有する単一の開口部を備える壁の場合、壁レッジは、上縁部と高さが同じであることができ、それによって、壁レッジ距離(d2L)は、例えば、
図1、
図3(a)、
図4(a)、
図4(b)、
図4(e)、及び
図5(a)に示されるように、開口部高さ(h2)と等しくなる(すなわち、h2L=h2)。代替的に、壁レッジ(2L)は、h2<d2L<h10の80%であり、好ましくはd2Lがh10の70%より小さくなるように、床から任意の距離(d2L)に存在することができる。上部開口部の下縁部と同一平面を形成しない壁レッジのこの実施形態は、
図3(d)、
図4(c)、
図4(d)、
図4(f)、及び
図5(b)に示されている。いくつかの実施形態では、壁レッジ(2L)は、壁の幅の一部から突出し、いくつかの実施形態では、壁レッジ(2L)は、壁の幅全体から突出している。
【0042】
壁モジュール(2)は、
図4(e)に示されるように、壁モジュール(2)の高さにわたって分散された2つ以上の壁レッジ(2L)を含むことができる。様々な実施形態では、2つ以上の壁レッジは、直線状であり、互いに、かつ床(10f)に平行に延在する。2つ以上の壁レッジ(2L)は、互いに平行ではない場合、好ましくは、互いに接触しない。壁レッジ距離(d2L)は、床(10f)に最も近い位置にある壁レッジの床までの距離である。様々な実施形態では、壁及び壁レッジ(2L)は、耐火材料、好ましくは、キャビティの周辺壁及び床を裏打ちするのと同じ耐火材料で作られる。
【0043】
フィルタモジュール:フィルタモジュール(1)は、キャビティ幅全体にわたって延在し、垂直軸(Z)に沿ってキャビティの床(10f)から最小フィルタモジュール高さ(h1)にわたって上部表面まで延在している。フィルタモジュールは、吐出口部分(10o)に隣接して位置し、タンディッシュの注入口部分(10i)に面した注入口側を含む。フィルタモジュール(1)は、チャネル(1c)を備えたフィルタユニット(1f)を備え、チャネル(1c)は、注入口側において開口するチャネル注入口から、吐出口部分に面し、注入口側からフィルタ深さ(tf)だけ分離された、フィルタモジュール(1)の吐出口側において開口するチャネル吐出口まで延在する。フィルタユニット(1f)は、垂直方向に、好ましくは上部表面の下方に延在し、それによって、上部表面はフィルタユニット(1f)の一部ではない。フィルタユニット(1f)は、所望に応じて、タンディッシュ幅の任意の部分にわたって延在し得る。平面(Y、Z)内の面積が大きいほど、所与の透過率のフィルタユニットを通る体積スループットが高くなる。
【0044】
少なくとも1つの実施形態では、フィルタレッジ(1L)は、開口部高さ(h2)よりも大きい床(10f)からのフィルタレッジ距離(d1L)において(すなわち、d1L>h2)、フィルタモジュール(1)の注入口側の幅全体から突出している。フィルタレッジ(1L)は、壁レッジ(2L)に対してずらされ(すなわち、d1L≠d2L)、同じ液位において向かい合っていない。フィルタレッジ(1L)は、壁モジュール又は壁レッジのいずれにも接触せずに壁モジュール(2)に向かって延在し、フィルタレッジ(1L)は、長手軸(X)に沿って測定された幅(t1L)を有する。いくつかの実施形態では、フィルタレッジ(1L)は、フィルタモジュール(1)の注入口側の幅の一部から突出し、いくつかの実施形態では、フィルタレッジ(1L)は、フィルタモジュール(1)の注入口側の幅全体から突出している。
【0045】
フィルタモジュール(1)は、
図4(f)に示されるように、フィルタモジュール(1)の高さにわたって分散された複数のフィルタレッジ(1L)を備えることができる。少なくとも1つの実施形態では、2つ以上のフィルタレッジは、直線状であり、互いに並行に、かつ床(10f)に平行に延在している。2つ以上のフィルタレッジ(1L)は、互いに平行でない場合、好ましくは、互いに接触せず、壁のレッジ(2L)に接触しない。フィルタレッジ距離(d1L)は、床(10f)に最も近い位置にあるフィルタレッジの床までの距離である。
【0046】
一実施形態では、床までのフィルタレッジ距離(d1L)は、壁レッジ距離(d2L)よりも大きい(すなわち、d1L>d2L)。この実施形態は、
図1、
図4(a)~
図4(c)、
図4(e)、
図5(a)、及び
図5(b)に示されている。代替実施形態では、
図4(d)及び
図4(f)に示されているように、床までのフィルタレッジ距離(d1L)は、壁レッジ距離(d2L)よりも小さい(すなわち、d1L<d2L)。
【0047】
フィルタユニット(1f)は、連続金属鋳造の技術分野において既知の任意のタイプのフィルタユニットであり得る。フィルタユニット(1f)の機能は、溶融金属がチャネル(1c)を介してフィルタユニットを通って流れ(=濾過)、そこからタンディッシュ吐出口(11o)まで流れることを可能にしながら、フィルタユニットの上流において全ての破片及び固形物を保持する(=残留)ことである。チャネルは、直線状又は蛇行状にすることができ、チャネルの寸法(断面及び長さ)が、フィルタユニットの透過率の画定に寄与する。フィルタユニットの透過率は、特定の用途の要件に依存し、当業者は、それに応じてフィルタユニット(1f)の特性を最適化する方法を知っている。
【0048】
フィルタユニット(1f)の下部境界は、0~10cm(すなわち、0≦hd≦10cm)、好ましくは2~5cmである距離(hd)だけ、キャビティの床(10f)から分離することができる。同様に、フィルタユニット(1f)の上部境界は、床(10f)から距離(hf+hd)だけ分離することができ、それによって、開口部高さ(h2)に対する上記距離((hf+hd))の比((hf+hd)/h2)は、0.7~1.2(すなわち、70%≦(hf+hd)/h2≦120%)、好ましくは80%~100%である。
【0049】
バイパス通路:フィルタリングシステムに画定されたバイパス通路(2b)は、本発明の主旨である。バイパス通路(2b)は、フィルタユニット(1f)が詰まっている場合でも、鋳造を問題なく継続できるようにする必要があり、同時に、フィルタユニット(1f)を通るよりも容易な流路を提供することができず、それにより、静止状態において、金属の少なくとも50%がフィルタユニットを通って流れてタンディッシュの吐出口部分(10o)に到達する。この目的のために、本開示のバイパス通路は、長手軸(X)に沿った速度ベクトルの方向の第1及び第2の反転を金属溶融流に課すように設計される。このことは、壁とフィルタモジュール(1)との間に画定される通路にバッフルを課す壁レッジ(2L)とフィルタレッジ(1L)との組み合わせによって達成される。
【0050】
図1、
図4(a)~
図4(c)、
図4(e)、
図5(a)、及び
図5(b)に関して上記で説明されているように、壁レッジ(2L)は、フィルタレッジ(1L)よりも低くてもよい(すなわち、床(10f)により近い)。このようにして、床(10f)からの開口部高さ(h2)の上方の溶融金属の部分は、壁によって遮断され、下向きに(すなわち、開口部(2o)に向かって)偏向され、床(10f)に近づくと、フィルタモジュール(1)に向かって方向を変えることができる。溶融金属は、壁レッジ(2L)の下部表面に到達するまでのみ、壁のすぐ後ろを上向きに流れることができる。壁レッジ(2L)が開口部と高さが同じである(すなわち、d2L=h2)場合、溶融金属は壁のすぐ後ろを上向きに流れることは全くできない。同様に、床(10f)からの開口部高さ(h2)の下方の溶融金属の部分は、壁のすぐ後ろを上向きに流れることができず、フィルタモジュール(1)に向かって流れるように強制される。溶融金属が壁レッジ(2L)の下部表面に当たると、流れは、フィルタモジュール(1)に向かって偏向される。フィルタ部分は、フィルタユニット(1f)に対して直線状(長手軸(X)に平行)又は下向きに流れる。バイパス部分は、フィルタレッジ(1L)の下部表面に当たるまで、フィルタモジュール(1)の注入口側に対して上向きに流れる。これによって、長手軸(X)(=X成分)に平行な速度ベクトル成分が反転することによって流れが偏向され、それによって、流れのX成分が注入口部分(10i)の方向に戻る。流れは、壁に当たり、速度ベクトルのX成分が再び反転され、それによって、流れは、注入口部分(10i)の方向に戻る。
図4(c)に示されるように、壁モジュール(2)は、速度ベクトルを長手軸(X)に対してより平行に近い方向に強制する第2の壁レッジを壁レッジ(2L)の上方に備えることができる。フィルタユニットは、対応する追加の壁レッジと組み合わされて速度ベクトルのX成分を変化させる追加のバッフルとして働く追加のフィルタレッジを備えることができる。
【0051】
図4(d)及び
図4(f)に関して上記で説明されているように、フィルタレッジ(1L)は、代替的に、壁レッジ(2L)よりも低くてもよい(すなわち、床(10f)により近くてもよい)。このようにして、フィルタユニット(1f)を通る流れに対する抵抗を感じると、溶融金属の一部が上向きに偏向され、フィルタレッジ(1L)の下部表面に当たる。これによって、速度ベクトルのX成分が反転することによって流れが偏向され、それによって、流れのX成分が注入口部分(10i)の方向に戻る。次いで、流れは、壁に当たり、壁レッジ(2L)の下部表面に当たるまで再び上向きに偏向され、壁レッジ(2L)の下部表面は、速度ベクトルのX成分の方向を再び吐出口部分(10o)の方向に変更するように流れを強制する。したがって、溶融金属は、引き続きフィルタモジュール(1)の上方を吐出口部分(10o)に向かって流れ、タンディッシュ吐出口(11o)まで流れることができる。フィルタユニットは、対応する追加の壁レッジと組み合わされて速度ベクトルのX成分を変化させる追加のバッフルとして働く追加のフィルタレッジを備えることができる。
【0052】
当業者は、バイパス通路(2b)の寸法を変更することによって、所与のフィルタユニット(1f)を通して強制される溶融金属の必要な部分を適合させて、この部分をいくらか蛇行させ、したがって、フィルタユニットを通る通路と比較して、追従することをいくらか容易にすることができる。関連する寸法は、例えば、最大幅(t12)(t12>0)、フィルタレッジ幅(t1L)、壁レッジ幅(t2L)、フィルタレッジ距離(d1L)、壁レッジ距離(d2L)、壁レッジとフィルタレッジとを分離する垂直軸(Z)に沿って測定された距離(|d1L-d2L|)などである。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、バイパス通路(2b)の最大幅(t12)に対するフィルタレッジ及び壁レッジ(1L、2L)の幅(t1L、t2L)の和の比((t1L+t2L)/t12)は、20%~150%(すなわち、0.2≦(t1L+t2L)/t12≦1.5)、好ましくは30%~120%、より好ましくは50%~100%である。
【0054】
フィルタユニットを通って流れる部分は、開口部高さ(h2)及び最小フィルタモジュール高さ(h1)にも依存する。少なくとも1つの実施形態によれば、フィルタモジュール高さ(h1)に対する開口部高さ(h2)の比(h2/h1)は、20%~95%(すなわち、0.2≦h2/h1≦0.95)、好ましくは40%~80%である。
【0055】
バイパス通路の蛇行を特徴付ける簡単な方法は、バイパス通路(2b)を通過する注入口部分の床(10f)から吐出口部分まで延在する直線を引くことである。少なくとも1つの実施形態によれば、そのような直線は、
図4(b)及び
図4(d)に示されるように床に到達しないので存在しないか、又は垂直軸(Z)に対して70°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下、最も好ましくは35°以下の角度(θ)を形成する。これは、
図4(a)及び
図4(c)に示されている。
【0056】
上記の条件は、溶融金属が、取鍋(5L)からバイパス通路(2b)を通って排出されるときに跳ね返る床から直線的な流路を辿ることを防止する。そのような流路が利用可能である場合、溶融金属の実質的な部分がフィルタユニット(1f)から分流し、代わりにバイパス通路を通って流れ、このことは明らかに不十分である。
【0057】
例えば、800~1800mm、好ましくは1000~1300mmであるキャビティ高さ(h10)のタンディッシュについては、開口部高さ(h2)は、80~600mm、好ましくは100~500mmであることができる。バイパス通路(2b)において壁をフィルタモジュールから分離する最大幅(t12)は、60~800mm、好ましくは80~600mmであることができる。床までのフィルタレッジ距離(d1L)は、80~650mm、好ましくは100~620mmであることができ、床までの壁レッジ距離(d2L)は、80~600mmであることができる。
【0058】
様々な実施形態では、壁レッジ幅(t2L)及びフィルタレッジ幅(t1L)は、20~200mmであることができ、いくつかの実施形態では、壁レッジ幅(t2L)及びフィルタレッジ幅(t1L)は、50~150mmであることができる。少なくとも1つの実施形態では、壁レッジ幅(t2L)及びフィルタレッジ幅(t1L)の各々は、最小値が20mmである。少なくとも1つの実施形態では、壁レッジ幅(t2L)及びフィルタレッジ幅(t1L)の各々は、最大値が200mmである。しかしながら、いくつかの実施形態では、壁レッジ幅(t2L)及びフィルタレッジ幅(t1L)は、タンディッシュ(10)のサイズ及び寸法に基づいて調整又はカスタマイズされてもよい。それにもかかわらず、様々な実施形態では、壁レッジ幅(t2L)及びフィルタレッジ幅(t1L)の各々はゼロではない値であり、言い換えれば、現在開示されている主題の様々な実施形態は、それらのそれぞれの幅に関係なく、壁レッジ及びフィルタレッジの存在を含む。
【0059】
本開示のタンディッシュは、金型(25)に鋳造する前に、ほとんどの破片及び他の固形物を溶融金属(20m)から除去するという利点を有する。フィルタユニット(1f)が新しい場合、又はそのチャネルが清潔であり、固体破片がない場合、フィルタユニットは、圧力損失(ΔP)がフィルタユニットの注入口側と吐出口側との間の公称圧力損失(ΔP0)に等しいことを特徴とする。使用時には、チャネルによって保持された破片やその他の固形物が蓄積し、一部又は全てのチャネルが部分的に、そして最終的には完全に閉塞する。圧力降下(ΔP)が増大し、溶融金属がフィルタユニット(1f)を通って流れることがより困難になる。圧力降下(ΔP)が増大するにつれて、溶融金属は、フィルタユニットを通るよりもバイパス通路(2b)を通って流れやすくなる。
【0060】
例えば、フィルタユニット(1f)が完全に動作可能(例えば、ΔP/ΔP0<2)であるとき、溶融金属の50%よりも多く、好ましくは60%よりも多く、より好ましくは75%よりも多く、最も好ましくは85%よりも多くがフィルタユニット(1f)を通って流れる。フィルタリングシステムを通って注入口部分(10i)から吐出口部分(10o)まで流れる溶融金属は、フィルタユニット(1f)を通って流れ、残りはバイパス通路(2b)を通って流れる。しかしながら、フィルタユニットが実質的に詰まっている場合(すなわち、圧力降下が高い値、例えば、ΔP/ΔP0>10に達する)、溶融金属には、フィルタユニット(1f)を通って流れることが困難になり、バイパス通路(2b)を通って流れる方が容易になる。これによって、溶融金属の液位(h20)が、注入口部分においてキャビティ高さ(h10)に近い危険な液位まで上昇するリスクが低減する。
【0061】
この解決策は、特定の用途の要件を満たすために効率的で容易に変調可能であることに加えて、実装も非常に簡単であり、必要とされるのは、各々が単純な設計である2つのモジュール、すなわち、壁モジュール(2)とフィルタモジュール(1)だけである。したがって、この解決策は、非常に経済的であり、金属鋳造セッションの連続性を保証する。
【0062】
キャビティを画定する連続金属鋳造用のタンディッシュ(10)であって、キャビティは、垂直軸(Z)に沿って測定されたキャビティ高さ(h10)と、長手軸(X)に沿って測定されたキャビティ長さと、横軸(Y)に沿って測定されたキャビティ幅とを有し、X⊥Y⊥Zであり、キャビティは、重力によってタンディッシュの外部からタンディッシュのキャビティ内に排出された溶融金属(20m)の流れを受け入れるように構成された注入口部分(10i)と、キャビティからモールド内に溶融金属を排出するように構成された吐出口(11o)を備える吐出口部分(10o)と、キャビティ幅全体にわたって、吐出口部分(10o)から注入口部分(10i)を分離するフィルタリングシステムとを備える、タンディッシュ(10)。フィルタリングシステムは、キャビティ幅全体にわたって延在し、上記キャビティ内部に延在するフィルタモジュール(1)を備え、フィルタモジュールは、タンディッシュの注入口部分(10i)に面し、キャビティの床(10f)から、垂直軸(Z)に沿って測定された床からの最短距離が最小フィルタモジュール高さ(h1)に等しい上部表面まで延在する注入口側を含み、フィルタモジュール(1)は、垂直軸(Z)に沿ってフィルタ高さ(hf)にわたって延在し、チャネル(1c)を備え、チャネル(1c)が、タンディッシュの注入口部分(10i)に面する注入口側において開口するチャネル注入口から、吐出口部分に面し、注入口側からフィルタ深さ(tf)だけ分離された、フィルタモジュール(1)の吐出口側において開口するチャネル吐出口まで延在する、フィルタユニット(1f)を含む。フィルタシステムは、キャビティ幅全体にわたって延在し、上記キャビティの内部に延在する壁を備え、壁の幅にわたって分散され、床(10f)から垂直軸(Z)に沿って測定された開口部高さ(h2)にわたって分散された1つ以上の開口部(2o)を画定する壁モジュール(2)を更に備える。フィルタモジュール(1)は、壁モジュール(2)よりも吐出口(11o)の近くに配置され、バイパス通路(2b)が、壁モジュール(2)と、長手軸(X)に沿って測定された最大幅(t12)のフィルタモジュール(1)との間に画定され、それによって、溶融金属は、フィルタユニット(1f)のチャネルを通るか、又はバイパス通路(2b)を通ることによって、1つ以上の開口部を介して注入口部分からフィルタモジュール(1)の注入口側まで、及び1つ以上の開口部から吐出口部分までのみ流れることができ、
a.フィルタモジュール高さ(h1)に対する開口部高さ(h2)の比(h2/h1)は、20%~95%(0.2≦h2/h1≦0.95)、好ましくは40%~80%を占め、
b.壁レッジ(2L)は、最小フィルタモジュール高さ(h1)以下の床(10f)からの壁レッジ距離(d2L)(すなわち、d2L≦h1)において壁の幅全体から突出し、フィルタモジュールに接触することなくフィルタモジュール(1)の注入口側に向かって延在し、壁レッジ(2L)は、長手軸(X)に沿って測定された幅(t2L)を有し、0<t2L<t12であり、
c.フィルタレッジ(1L)は、床(10f)から開口部高さ(h2)よりも大きいフィルタレッジ距離(d1L)(すなわち、d1L>h2)においてフィルタモジュール(1)の注入口側の幅全体から突出し、壁レッジ(2L)に対してずらされ(すなわち、d1L≠d2L)、壁モジュール又は壁レッジのいずれかにも接触せずに壁モジュール(2)に向かって延在し、フィルタレッジ(1L)は、長手軸(X)に沿って測定された幅(t1L)を有し、0<t1L<t12であり、
d.バイパス通路(2b)の最大幅(t12)に対するフィルタレッジ及び壁レッジ(1L、2L)の幅(t1L、t2L)の和の比((t1L+t2L)/t12)は、20%~150%(すなわち、0.2≦(t1L+t2L)/t12≦1.5)、好ましくは30%~120%、より好ましくは50%~100%である。
【0063】
前述の説明は、理解の明確さのためにのみ与えられており、本発明の範囲内の修正が当業者に明らかであり得るため、不必要な制限はそこから理解されるべきではない。
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを画定する連続金属鋳造用のタンディッシュ(10)であって、前記キャビティが、垂直軸(Z)に沿って測定されたキャビティ高さ(h10)と、長手軸(X)に沿って測定されたキャビティ長さと、及び横軸(Y)に沿って測定されたキャビティ幅とを有し、X⊥Y⊥Zであり、
前記キャビティが、
重力によって前記タンディッシュの外部から前記タンディッシュの前記キャビティ内に排出された溶融金属(20m)の流れを受け入れるように構成された注入口部分(10i)と、
前記溶融金属を前記キャビティからモールド内に排出するように構成された吐出口(11o)を備える吐出口部分(10o)と、
前記キャビティ幅全体にわたって、前記注入口部分(10i)を前記吐出口部分(10o)から分離するフィルタリングシステムを備え、
前記フィルタリングシステムが
前記キャビティ幅全体にわたって延在し、前記キャビティ内部に延在するフィルタモジュール(1)であって、前記フィルタモジュールが、前記タンディッシュの前記注入口部分(10i)に面し、前記キャビティの床(10f)から、前記垂直軸(Z)に沿って測定された前記床からの最短距離が最小フィルタモジュール高さ(h1)に等しい上部表面まで延在する注入口側を備え、前記フィルタモジュール(1)が、前記垂直軸(Z)に沿ってフィルタ高さ(hf)にわたって延在し、チャネル(1c)を備えたフィルタユニット(1f)を備え、
前記チャネル(1c)が、
前記タンディッシュの前記注入口部分(10i)に面する注入口側において開口するチャネル注入口から、前記吐出口部分に面し、前記注入口側からフィルタ深さ(tf)だけ離れた、前記フィルタモジュール(1)の吐出口側において開口するチャネル吐出口まで延在する、フィルタモジュール(1)と、
壁モジュール(2)であって、前記キャビティ幅全体にわたって延在し、前記キャビティ内部に延在する壁を備え、前記壁の幅にわたって分散され、前記床(10f)から前記垂直軸(Z)に沿って測定された開口部高さ(h2)にわたって分散された1つ以上の開口部(2o)を画定する、壁モジュール(2)と、を備え、
前記フィルタモジュール(1)が、前記壁モジュール(2)よりも前記吐出口(11o)の近くに配置され、前記壁モジュール(2)と前記フィルタモジュール(1)との間に前記長手軸(X)に沿って測定されたバイパス通路(2b)の最大幅(t12)が画定され、それによって、前記溶融金属が、前記フィルタユニット(1f)の前記チャネルを通るか、又は前記バイパス通路(2b)を通って流れることによって、前記1つ以上の開口部を介して前記注入口部分から前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側まで、及び前記1つ以上の開口部から前記吐出口部分までのみ流れることができるものであって、
壁レッジ(2L)が、前記最小フィルタモジュール高さ(h1)より大きくない前記床(10f)からの壁レッジ距離(d2L)(すなわち、d2L≦h1)で前記壁モジュール(2)の前記壁から突出し、前記フィルタモジュール(1)に接触することなく、前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側に向かって延在し、前記壁レッジ(2L)が、前記長手軸(X)に沿って測定された幅(t2L)を有し、20mm<t2L<t12であり、
フィルタレッジ(1L)が、前記開口部高さ(h2)よりも大きい前記床(10f)からのフィルタレッジ距離(d1L)(すなわち、d1L>h2)で前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側から突出し、前記壁レッジ(2L)に対してずらされ(すなわち、d1L≠d2L)、前記フィルタレッジが、前記壁モジュール又は前記壁レッジのいずれにも接触せずに前記壁モジュール(2)に向かって延在し、前記フィルタレッジ(1L)が、前記長手軸(X)に沿って測定された幅(t1L)を有し、20mm<t1L<t12であ
り、
前記バイパス通路(2b)の最大幅(t12)に対する前記フィルタレッジ及び壁レッジ(1L、2L)の前記幅(t1L、t2L)の和の比((t1L+t2L)/t12)が、20%よりも大きい(すなわち、0.2≦(t1L+t2L)/t12)ことを特徴とする、タンディッシュ(10)。
【請求項2】
前記フィルタモジュール高さ(h1)に対する前記開口部高さ(h2)の比(h2/h1)が、20%~95%(0.2≦h2/h1≦0.95)、好ましくは40%~80%である、請求項1に記載のタンディッシュ。
【請求項3】
前記バイパス通路(2b)の最大幅(t12)に対する前記フィルタレッジ及び壁レッジ(1L、2L)の前記幅(t1L、t2L)の和の比((t1L+t2L)/t12)が
、150%
よりも小さく(すなわち
、(t1L+t2L)/t12≦1.5)、好ましくは30%~120%、より好ましくは50%~100%である、請求項1に記載のタンディッシュ。
【請求項4】
前記壁モジュール(2)が、単一の開口部(2o)を備え、前記単一の開口部(2o)が、前記キャビティ高さ(h10)の0%~5%の距離だけ前記床(10f)から分離された下部境界から前記壁の下縁部まで延在し、前記開口部高さ(h2)を、前記床を前記下縁部の最も遠い点から分離する距離として画定する、請求項1に記載のタンディッシュ。
【請求項5】
前記壁モジュール(2)が、2つ以上の開口部(2o)を含み、上部開口部が、前記床(2f)から最も遠く、前記開口部高さ(h2)だけ前記床から分離された境界を有する前記開口部として画定されている、請求項1に記載のタンディッシュ。
【請求項6】
前記キャビティ高さ(h10)に対する前記開口部高さ(h2)の比(h2/h10)が、10%~60%(0.1≦h2/h10≦0.6)、好ましくは40~60%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項7】
前記バイパス通路(2b)を通過する前記注入口部分における前記床(10f)と前記吐出口部分との間に延在する直線が、
存在しないか、又は
前記垂直軸(Z)に対して70°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下の角度(θ)を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項8】
前記フィルタレッジ距離(d1L)が、前記壁レッジ距離(d2L)よりも大きい(すなわち、d1L>d2L)、請求項1~7のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項9】
前記壁モジュール(2)が、互いに平行であり、互いに接触せず、前記壁モジュール(2)の高さにわたって分散された、2つ以上の壁レッジ(2L)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項10】
前記フィルタモジュール(1)が、互いに平行であり、互いに接触せず、前記フィルタモジュール(1)の高さにわたって分散された、2つ以上のフィルタレッジ(1L)を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項11】
前記バイパス通路(2b)が、前記溶融金属の前記長手軸(X)に沿った流れ方向成分を反転させて、前記キャビティの前記注入口部分(10i)から前記吐出口部分(10o)へ流すようにする、請求項1~10のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項12】
前記フィルタユニット(1f)の下部境界が、0~10cm(すなわち、0≦hd≦10cm)、好ましくは2~5cmである距離(hd)によって前記キャビティの前記床(10f)から分離され、かつ/又は
前記フィルタユニット(1f)の上部境界が、距離(hf+hd)だけ前記床(10f)から分離され、それによって、前記開口部高さ(h2)に対する前記距離((hf+hd))の比((hf+hd)/h2)が、0.7~1.2(すなわち、70%≦(hf+hd)/h2≦120%)、好ましくは80%~100%である、請求項1~11のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項13】
壁レッジ(2L)が、前記壁の幅の一部、又は前記壁の幅全体から突出している、請求項1~12のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【請求項14】
前記フィルタレッジ(1L)が、前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側の幅の一部、又は前記フィルタモジュール(1)の前記注入口側の幅全体から突出している、請求項1~13のいずれか一項に記載のタンディッシュ。
【国際調査報告】