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特表2024-519541マグナス効果航空機のための遠隔制御システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-15
(54)【発明の名称】マグナス効果航空機のための遠隔制御システム
(51)【国際特許分類】
   B64F 3/00 20060101AFI20240508BHJP
   B64C 23/08 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C23/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573062
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2022064342
(87)【国際公開番号】W WO2022248631
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】2105554
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523444110
【氏名又は名称】ウィンド フィッシャー
【氏名又は名称原語表記】WIND FISHER
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】スミス ギャレット
(72)【発明者】
【氏名】タルデッラ アルマン
(57)【要約】
航空機のための遠隔制御システムであって、-長手方向軸(Y)に沿って延在するシリンダ(1)を備えるマグナス効果型の航空機であって、シリンダ(1)が長手方向軸(Y)の周りで回転することが可能である、航空機と、-航空機から離れて配置された1対の回転可能要素(2)と、-1対の回転可能要素(2)の回転運動を駆動するように配置された駆動手段(3)と、-駆動手段(3)によって駆動される1対の回転可能要素(2)の回転運動が航空機のシリンダ(1)に機械的に伝達されて、シリンダ(1)を長手方向軸(Y)の周りで回転させるように、1対の回転可能要素(2)を航空機のシリンダ(1)に接続するように配置された接続ケーブル(4)と、を備える、遠隔制御システム。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のための遠隔制御システムであって、
-長手方向軸(Y)に沿って延在するシリンダ(1)を備えるマグナス効果型の航空機であって、前記シリンダ(1)が前記長手方向軸(Y)の周りで回転することが可能である、航空機と、
-前記航空機から離れて配置された1対の回転可能要素(2)と、
-前記1対の回転可能要素(2)の回転運動を駆動するように配置された駆動手段(3)と、
-前記駆動手段(3)によって駆動される前記1対の回転可能要素(2)の前記回転運動が前記航空機の前記シリンダ(1)に機械的に伝達されて、前記シリンダ(1)を前記長手方向軸(Y)の周りで回転させるように、前記1対の回転可能要素(2)を前記航空機の前記シリンダ(1)に接続するように配置された接続ケーブル(4)と
を備える、遠隔制御システム。
【請求項2】
前記接続ケーブル(4)が、前記駆動手段(3)によって駆動される前記1対の回転可能要素(2)の前記回転運動が前記接続ケーブル(4)上の摩擦によって前記航空機の前記シリンダ(1)に機械的に伝達されて、前記シリンダ(1)を前記長手方向軸(Y)の周りで回転させるように、前記航空機の前記シリンダ(1)の周りに巻き付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記駆動手段(3)によって駆動される前記1対の回転可能要素(2)の前記回転運動が伝達デバイス(6)によって前記航空機の前記シリンダ(1)に機械的に伝達されて、前記シリンダ(1)を前記長手方向軸(Y)の周りで回転させるように、前記接続ケーブル(4)および前記航空機の前記シリンダ(1)と機械的に協働するように配置された前記伝達デバイス(6)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記伝達デバイス(6)が、前記シリンダ(1)への前記1対の回転可能要素(2)の前記回転運動の機械的伝達が中断され、その結果前記シリンダ(1)が前記長手方向軸(Y)の周りを自由に回転できるようになるという構成を備え、前記伝達デバイス(6)が、好ましくはフリーホイールまたはクラッチを備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
揚力状態にある前記航空機が、風(V)を受けるよう意図されており、前記システムが、前記風(V)の関数として前記駆動手段(3)を制御するように構成された制御手段を備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記航空機が、最大ロール角を規定する前記シリンダ(1)に対して相対的な2つの位置間で前記接続ケーブル(4)をガイドするように配置されたガイド手段(7)を備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記シリンダ(1)が、第1および第2の長手方向端部(10、11)を有し、前記システムが、前記シリンダ(1)の前記第1および/または第2の長手方向端部(10、11)にそれぞれ固定され、かつ、第1および/または第2のウインチ(2’)にそれぞれ接続された、第1および/または第2の取り付けケーブル(CA)を備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
-前記航空機から離れて配置された追加の対の回転可能要素(2)と、
-追加の接続ケーブル(4)と
を備え、
-前記駆動手段(3)が、前記追加の対の回転可能要素(2)の回転運動を駆動するように配置され、
-前記追加の接続ケーブル(4)が、前記駆動手段(3)によって駆動される前記追加の対の回転可能要素(2)の前記回転運動が前記航空機の前記シリンダ(1)に機械的に伝達されて、前記シリンダ(1)を前記長手方向軸(Y)の周りで回転させるように、前記追加の対の回転可能要素(2)を前記航空機の前記シリンダ(1)に接続するように配置される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
-前記航空機が、それぞれ第1および第2の長手方向軸(Y、Y’)に沿って延在する第1および第2のシリンダ(1、1’)を備え、前記第1および第2のシリンダ(1、1’)が、それぞれ前記第1および第2の長手方向軸(Y、Y’)の周りで回転することが可能であり、
-前記接続ケーブル(4)が、前記駆動手段(3)によって駆動される前記1対の回転可能要素(2)の前記回転運動が前記航空機の前記第1のシリンダ(1)に機械的に伝達されて、前記第1のシリンダ(1)を前記第1の長手方向軸(Y)の周りで回転させるように、前記1対の回転可能要素(2)を前記航空機の前記第1のシリンダ(1)に接続するように配置され、
-前記追加の接続ケーブル(4)が、前記駆動手段(3)によって駆動される前記追加の対の回転可能要素(2)の前記回転運動が前記航空機の前記第2のシリンダ(1’)に機械的に伝達されて、前記第2のシリンダ(1’)を前記第2の長手方向軸(Y’)の周りで回転させるように、前記追加の対の回転可能要素(2)を前記航空機の前記第2のシリンダ(1’)に接続するように配置される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
-前記航空機から離れて配置された2対の回転可能要素(2)と、
-2本の接続ケーブル(4)と
をそれぞれが備える第1および第2のアセンブリを備え、
-前記航空機が、それぞれ第1および第2の長手方向軸(Y、Y’)に沿って延在する第1および第2のシリンダ(1、1’)を備え、第1および第2のシリンダ(1、1’)が、それぞれ第1および第2の長手方向軸(Y、Y’)の周りで回転することが可能であり、
-前記駆動手段(3)が、前記第1および第2のアセンブリの前記回転可能要素(2)の回転運動を駆動するように配置され、
-前記第1のアセンブリの各接続ケーブル(4)が、前記駆動手段(3)によって駆動される前記第1のアセンブリの前記回転可能要素(2)の前記回転運動が前記航空機の前記第1のシリンダ(1)に機械的に伝達されて、前記第1のシリンダ(1)を前記第1の長手方向軸(Y)の周りで回転させるように、前記第1のアセンブリの1対の回転可能要素(2)を前記航空機の前記第1のシリンダ(1)に接続するように配置され、
-前記第2のアセンブリの各接続ケーブル(4)が、前記駆動手段(3)によって駆動される前記第2のアセンブリの前記回転可能要素(2)の前記回転運動が前記航空機の前記第2のシリンダ(1’)に機械的に伝達されて、前記第2のシリンダ(1’)を前記第2の長手方向軸(Y’)の周りで回転させるように、前記第2のアセンブリの1対の回転可能要素(2)を前記航空機の前記第2のシリンダ(1’)に接続するように配置される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
揚力状態にある前記航空機が、ヨー軸(Z)を有し、風(V)を受けるよう意図されており、前記システムが、
-前記第1のシリンダ(1)に接続された第1のブランチ(520)と、
-前記第2のシリンダ(1’)に接続された第2のブランチ(521)と
を有するエルボ要素(52)を備え、前記第1および第2のブランチ(520、521)が、前記風(V)の関数として前記航空機を前記ヨー軸(Z)に沿って安定させるように適合されたスイープ角を形成する、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記回転可能要素(2)がウインチのドラムである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記接続ケーブル(4)が、前記航空機の揚力運動が前記回転可能要素(2)に機械的に伝達され得るように、前記航空機を前記1対の回転可能要素(2)に接続するように配置される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記航空機の前記揚力運動の機械的伝達(TM)によって得られる前記1対の回転可能要素(2)の回転をエネルギーに変換するように配置されたコンバータを備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
揚力状態にある前記航空機が、ヨー軸(Z)を有し、風(V)を受けるよう意図されており、前記システムが、前記風(V)の関数として前記航空機を前記ヨー軸(Z)に沿って安定させるように配置された尾部デバイス(8)を備える、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグナス効果型の航空機を制御するためのシステムの技術分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、
-電気エネルギーを生産すること、
-例えば通信用または監視用のペイロードを搭載すること
に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
マグナス効果航空機の動作は、当業者に知られており、特に、R.Schmehlらによる著書「Airborne Wind Energy:Advances in Technology Development and Research」、Springer、280ページおよび304ページにおいて説明されている。
【0004】
先行技術から知られているマグナス効果航空機を制御するためのシステムは、
-長手方向軸に沿って延在するシリンダを備えるマグナス効果型の航空機であって、シリンダが長手方向軸の周りで回転することが可能である、航空機と、
-シリンダを長手方向軸の周りで回転させるために航空機に配置された電気モータと、
-回転することが可能なドラムを備えるウインチと、
-航空機の揚力運動がウインチに機械的に伝達され得るように、航空機をウインチに接続するように配置された接続ケーブルであって、モータに電力を供給するように配置された電源ケーブルである、接続ケーブルと、
-航空機の揚力運動の機械的伝達によって得られるウインチのドラムの回転を電気エネルギーに変換するように配置された発電機と
を備える。
【0005】
このような先行技術のシステムは、航空機に搭載されたシリンダを駆動するためのモータが接続ケーブルによって電力供給される必要がある限りにおいて、自律性の問題を克服するには完全に満足できるものではない。このため、導電性が必要な接続ケーブルの選択に制限が生じることになる。しかしながら、電気接続ケーブルの結合具は、大きな応力を受け、したがって、劣化して崩壊する恐れがある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、前述の欠点のすべてまたはいくつかに対処することを目的とする。この目的を達成するために、本発明の主題は、
-長手方向軸に沿って延在するシリンダを備えるマグナス効果型の航空機であって、シリンダが長手方向軸の周りで回転することが可能である、航空機と、
-航空機から離れて配置された回転可能要素と、
-回転可能要素の回転運動を駆動するように配置された駆動手段と、
-駆動手段によって駆動される回転可能要素の回転運動が航空機のシリンダに機械的に伝達されて、シリンダを長手方向軸の周りで回転させるように、回転可能要素を航空機のシリンダに接続するように配置された接続ケーブルと
を備える、航空機のための遠隔制御システムである。
【0007】
したがって、本発明によるそのようなシステムは、シリンダを長手方向軸(すなわち、航空機のピッチ軸)の周りで回転させるために航空機に搭載される電気モータを不要にする。実際には、本発明によれば、シリンダは、回転可能要素による接続ケーブルを介した機械的転送によって長手方向軸の周りで回転させられ、これにより、エネルギー変換損失を先行技術と比較して低減することが可能になる。先行技術とは異なり、接続ケーブルの選択は制限されず、接続ケーブルは導電性である必要がなく、これにより結合具の潜在的な劣化の問題が克服される。
【0008】
したがって、長手方向軸の周りでのシリンダの回転駆動は、例えば、回転可能要素および回転可能要素を駆動するための手段が配置され得る陸上または海上ステーション内でオフセットされ、これにより航空機の軽量化が可能になる。
【0009】
本発明によるシステムは、以下の特徴のうちの1つまたは複数を備えることができる。
【0010】
本発明の一特徴によれば、接続ケーブルは、駆動手段によって駆動される回転可能要素の回転運動が接続ケーブル上の摩擦によって航空機のシリンダに機械的に伝達されて、シリンダを長手方向軸の周りで回転させるように、航空機のシリンダの周りに巻き付けられる。
【0011】
したがって、提供される利点の1つは、長手方向軸の周りでのシリンダの回転速度を制御することによってピッチ軸に沿って航空機を制御するために、接続ケーブルと航空機のシリンダとの間の直接的な機械的転送を可能にすることである。
【0012】
本発明の一特徴によれば、システムは、駆動手段によって駆動される回転可能要素の回転運動が伝達デバイスによって航空機のシリンダに機械的に伝達されて、シリンダを長手方向軸の周りで回転させるように、接続ケーブルおよび航空機のシリンダと機械的に協働するように配置された伝達デバイスを備える。
【0013】
したがって、提供される利点の1つは、長手方向軸の周りでのシリンダの回転速度を制御することによってピッチ軸に沿って航空機を制御するために、(伝達デバイスによって)接続ケーブルと航空機のシリンダとの間の間接的な機械的転送を可能にすることである。
【0014】
本発明の一特徴によれば、伝達デバイスは、シリンダへの回転可能要素の回転運動の機械的伝達が中断され、その結果シリンダが長手方向軸の周りを自由に回転できるようになるという構成を備え、伝達デバイスは、好ましくはフリーホイールまたはクラッチを備える。
【0015】
したがって、この構成によって提供される利点の1つは、機械的伝達が中断されたときに航空機のシリンダに動力を伝達することなく接続ケーブルを巻き戻すことができることである。
【0016】
本発明の一特徴によれば、揚力状態にある航空機は、風を受けるよう意図されており、システムは、風の関数として駆動手段を制御するように構成された制御手段を備える。
【0017】
したがって、提供される利点の1つは、回転可能要素のトルクおよび回転速度を制御できることである。
【0018】
本発明の一特徴によれば、航空機は、最大ロール角を規定するシリンダに対して相対的な2つの位置間で接続ケーブルをガイドするように配置されたガイド手段を備える。
【0019】
したがって、提供される利点の1つは、航空機のロール角を制御することによって航空機の操縦を容易にすることである。ガイド手段は、最大ロール角を規定する2つの位置間でシリンダの長手方向軸に平行な軸に沿った接続ケーブルの運動を維持するために、シリンダに対して相対的に配置される。
【0020】
本発明の一特徴によれば、シリンダは、第1および第2の長手方向端部を有し、システムは、シリンダの第1および/または第2の長手方向端部にそれぞれ固定され、かつ、第1および/または第2のウインチにそれぞれ接続された、第1および/または第2の取り付けケーブルを備える。
【0021】
したがって、提供される利点の1つは、航空機と第1および/または第2のウインチとの間の第1および/または第2の取り付けケーブルの長さをそれぞれ制御することによって、ロール軸に沿って航空機を制御できることである。
【0022】
本発明の一特徴によれば、システムは、航空機から離れて配置されたアンカリング・ゾーンを備え、接続ケーブルはアンカリング・ゾーンに固定される。
【0023】
したがって、アンカリング・ゾーンによって提供される利点の1つは、空気力学的な力と接続ケーブルの各セクションにおける張力の合計との間の平衡とは無関係に、シリンダにかかるトルクを制御できることである。
【0024】
本発明の一特徴によれば、システムは、航空機から離れて配置された1対の回転可能要素を備え、
-駆動手段は、1対の回転可能要素の回転運動を駆動するように配置され、
-接続ケーブルは、駆動手段によって駆動される1対の回転可能要素の回転運動が航空機のシリンダに機械的に伝達されて、シリンダを長手方向軸の周りで回転させるように、1対の回転可能要素を航空機のシリンダに接続するように配置される。
【0025】
したがって、1対の回転可能要素によって提供される利点の1つは、長手方向軸(ピッチ軸)の周りでの航空機のシリンダの回転の2方向を制御し、これにより接続ケーブルの交差部分を回避することである。航空機と回転可能要素との間の接続ケーブルの長さを制御することにより、航空機の往復揚力運動(前後)を生み出すことが可能になる。1対の回転可能要素は、第1および第2の回転可能要素を含む。第1および第2の回転可能要素は、異なる回転速度(巻き取り、巻き戻し、停止)を有することができるという意味で、独立していてもよい。
【0026】
本発明の一特徴によれば、システムは、
-航空機から離れて配置された追加の対の回転可能要素と、
-追加の接続ケーブルと
を備え、
-駆動手段は、追加の対の回転可能要素の回転運動を駆動するように配置され、
-追加の接続ケーブルは、駆動手段によって駆動される追加の対の回転可能要素の回転運動が航空機のシリンダに機械的に伝達されて、シリンダを長手方向軸の周りで回転させるように、追加の対の回転可能要素を航空機のシリンダに接続するように配置される。
【0027】
したがって、提供される利点の1つは、接続ケーブルまたは追加の接続ケーブルを巻き戻すときを含め、いつでも所望の動力をシリンダに伝達できることである。
【0028】
本発明の一特徴によれば、
-航空機は、それぞれ第1および第2の長手方向軸に沿って延在する第1および第2のシリンダを備え、第1および第2のシリンダは、それぞれ第1および第2の長手方向軸の周りで回転することが可能であり、
-接続ケーブルは、駆動手段によって駆動される1対の回転可能要素の回転運動が航空機の第1のシリンダに機械的に伝達されて、第1のシリンダを第1の長手方向軸の周りで回転させるように、1対の回転可能要素を航空機の第1のシリンダに接続するように配置され、
-追加の接続ケーブルは、駆動手段によって駆動される追加の対の回転可能要素の回転運動が航空機の第2のシリンダに機械的に伝達されて、第2のシリンダを第2の長手方向軸の周りで回転させるように、追加の対の回転可能要素を航空機の第2のシリンダに接続するように配置される。
【0029】
したがって、提供される利点の1つは、1対の回転可能要素と追加の対の回転可能要素との間に回転速度の差を導入することによって、ヨー軸に沿って航空機を制御できることである。これにより、航空機のヨー軸の周りにトルクを生成する差動抗力が生じる。この場合、航空機をヨー軸に沿って安定させるための尾部デバイスを不要にすることが可能である。また、往復するために所与の高度で「8」の字状の軌道を作ることによって、航空機をヨー軸の周りで操作することを想定した動的飛行を企図することも可能である。「動的飛行」という用語は、航空機が絶えず移動しており、風の特性に継続的に適応する飛行を意味すると理解される。
【0030】
本発明の一特徴によれば、システムは、
-航空機から離れて配置された2対の回転可能要素と、
-2本の接続ケーブルと
をそれぞれが備える第1および第2のアセンブリを備え、
-航空機は、それぞれ第1および第2の長手方向軸に沿って延在する第1および第2のシリンダを備え、第1および第2のシリンダは、それぞれ第1および第2の長手方向軸の周りで回転することが可能であり、
-駆動手段は、第1および第2のアセンブリの回転可能要素の回転運動を駆動するように配置され、
-第1のアセンブリの各接続ケーブルは、駆動手段によって駆動される第1のアセンブリの回転可能要素の回転運動が航空機の第1のシリンダに機械的に伝達されて、第1のシリンダを第1の長手方向軸の周りで回転させるように、第1のアセンブリの1対の回転可能要素を航空機の第1のシリンダに接続するように配置され、
-第2のアセンブリの各接続ケーブルは、駆動手段によって駆動される第2のアセンブリの回転可能要素の回転運動が航空機の第2のシリンダに機械的に伝達されて、第2のシリンダを第2の長手方向軸の周りで回転させるように、第2のアセンブリの1対の回転可能要素を航空機の第2のシリンダに接続するように配置される。
【0031】
したがって、提供される利点の1つは、対応するアセンブリの2本の接続ケーブルのうちの1本を巻き戻すときを含め、いつでも所望の動力を対応するシリンダに伝達できることである。
【0032】
本発明の一特徴によれば、揚力状態にある航空機は、ヨー軸を有し、風を受けるよう意図されており、システムは、
-第1のシリンダに接続された第1のブランチと
-第2のシリンダに接続された第2のブランチと
を有するエルボ要素を備え、第1および第2のブランチは、風の関数として航空機をヨー軸に沿って安定させるように適合されたスイープ角を形成する。
【0033】
本発明の一特徴によれば、回転可能要素はウインチのドラムである。
【0034】
したがって、ウインチによって提供される利点の1つは、
-ドラムと航空機との間に延在する接続ケーブルの長さと、
-ドラムの回転速度と
の両方を制御できることである。
【0035】
本発明の一特徴によれば、接続ケーブルは、航空機の揚力運動が回転可能要素に機械的に伝達され得るように、航空機を回転可能要素に接続するように配置される。
【0036】
本発明の一特徴によれば、システムは、航空機の揚力運動の機械的伝達によって得られる回転可能要素の回転をエネルギーに変換するように配置されたコンバータを備える。
【0037】
したがって、提供される利点の1つは、航空機の揚力運動から生じる機械エネルギーを回収できることである。
【0038】
本発明の一特徴によれば、揚力状態にある航空機が、ヨー軸を有し、風を受けるよう意図されており、システムが、風の関数として航空機をヨー軸に沿って安定させるように配置された尾部デバイスを備える。
【図面の簡単な説明】
【0039】
さらなる特徴および利点は、本発明の様々な実施形態の詳細な開示から明らかとなり、本開示には、実施例および添付の図面への参照が伴う。
図1】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、接続ケーブルが固定されるアンカリング・ゾーンが存在することを示している。
図2】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、リターン・プーリの形態で製造された複数の回転可能要素が存在することを示している。
図3】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、回転可能要素の回転運動を間接的に駆動するリニア・モータが存在することを示している。
図4a】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、回転可能要素を回転させる伝達シャフト(スタビライザ付き)が存在することを示しており、伝達シャフトは弾性戻り手段の作用に抗して回転可能要素に装着されている。
図4b】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、回転可能要素に接続されたリービングを示している。
図5】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、連続したループを形成する接続ケーブルを示している。
図6】本発明によるシステムの第1の主要な実施形態の概略側面図である。図6の挿入図は、最大ロール角を規定するように、シリンダに対して相対的な2つの位置間で接続ケーブルをガイドできるようにする、接続ケーブルをガイドするための手段の一実施形態の分解図である。
図7図6に示す本発明によるシステムの第1の主要な実施形態の概略斜視図である。
図8】本発明によるシステムに属する航空機のシリンダの一実施形態の概略斜視透視図である。
図9】本発明によるシステムの第2の主要な実施形態の概略斜視図であり、特に、2つのシリンダが存在することを示している。
図10】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、2つのシリンダ間のスイープ角を示している。
図11】本発明によるシステムの部分概略上面図であり、特に、2つのシリンダを接続するエルボ要素を示している。
図12】本発明によるシステムの第3の主要な実施形態の概略斜視図である。
図13】本発明によるシステムの第4の主要な実施形態の概略斜視図である。
図14a】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、シリンダの一方の端部に取り付けケーブルが存在することを示している。
図14b】本発明によるシステムの概略斜視図であり、特に、シリンダの端部に2本の取り付けケーブルが存在することを示している。
図15】本発明によるシステムの一実施形態の概略斜視図である。
図16】特に、航空機の揚力運動の機械的伝達によって得られる回転可能要素の回転をエネルギーに変換するための手段を示す概略図である。
図17a】本発明によるシステムの部分概略斜視図であり、発電段階中の尾部デバイスの位置を示している。
図17b】本発明によるシステムの部分概略斜視図であり、接続ケーブルを巻き戻す段階中の尾部デバイスの位置を示している。 上記の図面は概略的なものであり、読みやすくするために、また図面が容易に理解され得るように、必ずしも一定の縮尺ではないことに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0040】
簡略化のために、様々な実施形態において、同一の要素、または同じ機能を提供する要素は、同じ参照符号を使用する。
【0041】
本発明の目的は、
-長手方向軸Yに沿って延在するシリンダ1を備えるマグナス効果型の航空機であって、シリンダ1が長手方向軸Yの周りで回転することが可能である、航空機と、
-航空機から離れて配置された回転可能要素2と、
-回転可能要素2の回転運動を駆動するように配置された駆動手段3と、
-駆動手段3によって駆動される回転可能要素2の回転運動が航空機のシリンダ1に機械的に伝達されて、シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させるように、回転可能要素2を航空機のシリンダ1に接続するように配置された接続ケーブル4と
を備える、航空機のための遠隔制御システムである。
航空機
【0042】
シリンダ1は航空機の翼を形成する。シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させることにより、航空機の揚力を増加させるためにマグナス効果を使用することが可能になる。シリンダ1は、第1および第2の長手方向端部10、11(図8に示す)を有する。航空機は、有利には、航空機の空力性能を向上させるように、シリンダ1の第1および第2の長手方向端部10、11にそれぞれ装着された第1および第2のディスク100、110を備える。第1および第2のディスク100、110は、有利には、着陸装置機能を提供するようにシリンダ1との係合を解除するために、シリンダ1の第1および第2の長手方向端部10、11に着脱可能に装着されている。第1および第2のディスク100、110は、有利には、航空機が地上にあるとき、シリンダ1に対して自由に回転する。飛行中、第1および第2のディスク100、110は、シリンダ1と一体となって回転する。
【0043】
シリンダ1は、有利には、Dで示された直径を有する円形の断面を有する。シリンダ1は、有利には、Lで示された、長手方向軸Yに沿った長さを有し、6から12の間の範囲のL-D比を確立する。
【0044】
シリンダ1は、有利には、アルキメデスの揚力を生み出すように、空気密度よりも低い質量密度を有するガスで充填される。したがって、航空機の質量は空気の質量よりも小さくなり、その結果、航空機はエアロスタットになる。ガスは、水素またはヘリウムとすることができる。ガスは、シリンダ1の寸法に応じて、例えば20ミリバールから50ミリバールの間で加圧され得、その結果、シリンダ1内のガスの圧力は、大気圧よりも高くなる。シリンダ1は、バルーンの形態で製造され得る。シリンダ1は、気密繊維材料で作られたケーシングを備えることができる。加圧されたガスはシリンダ1を硬化させる。シリンダ1の機械的強度を向上させるために、シリンダ1には、有利には、シリンダ1の長手方向軸Yに平行な軸に沿って延在する長手方向ロッドの形態で製造され得る補強部材12が設けられる。図8に示すように、シリンダ1は、例えば、シリンダ1の機械的強度を強化するように配置される、ディスクの形態で製造された内部要素13を備えることができる。内部要素13はまた、シリンダ1の内部に、例えば加圧ガス用の区画を形成するように配置され得る。
【0045】
航空機は、有利には、機械エネルギー(長手方向軸Yの周りのシリンダ1の回転)を電気エネルギーに変換するように配置された発電電動機械を備える。発電電動機械によって生成された電気エネルギーは、センサ、搭載コンピュータ、除氷デバイス、シリンダ1内のガスの圧力を維持するためのデバイスなどの航空機の構成要素に電力を供給することができる。長手方向軸Yの周りのシリンダ1の回転の機械エネルギーを変換(例えば、除氷のための熱に変換)できる他のタイプの機械を使用することも可能である。
【0046】
航空機には、有利には、風Vの特性を表すデータをマイクロコントローラなどの処理/制御手段に送るように構成された風速計など、シリンダ1に対して吹く風の特性を取得するための手段が装備される。処理/制御手段は、航空機に搭載され得る。航空機には、有利には、風Vに対して相対的なシリンダの配向、シリンダ1の速度、シリンダ1の加速度などを表すデータを処理/制御手段に送信するように構成された慣性ユニットなど、シリンダ1に特有のパラメータを取得するための手段が装備される。
【0047】
航空機は、それぞれ第1および第2の長手方向軸Y、Y’に沿って延在する第1および第2のシリンダ1、1’を備えることができ、第1および第2のシリンダ1、1’は、それぞれ第1および第2の長手方向軸Y、Y’の周りで回転することが可能である。
【0048】
航空機は、シリンダ1を支持するように配置された支持構造体5を備える。シリンダ1は、支持構造体5上で長手方向軸Yの周りを回転することが可能であるように装着されている。支持構造体5は、シリンダのフレームを形成する1組のブランチを備えることができる。支持構造体は、シリンダ1の長手方向軸Yに平行な第1の軸に沿ってそれぞれが延在する、2つの長手方向ブランチ50を備えることができる。支持構造体5は、それぞれが第1の軸に垂直な第2の軸に沿って延在し、かつ、長手方向ブランチ50に接続される、2つの横方向ブランチ51を備えることができる。シリンダ1は、例えば機械軸510および機械軸受511(特に図7に示す)によって、支持構造体5の横方向ブランチ51上で長手方向軸Yの周りで回転できるように装着され得る。
【0049】
揚力状態にある航空機は、ヨー軸Zを有し、風Vを受けるよう意図されている。慣例により、シリンダ1が延在する長手方向軸Yは、ピッチ軸である。ヨー軸Zおよびロール軸Xは、互いに直交しており、長手方向軸Y(すなわち、ピッチ軸)に対して直交する平面内に延在する。ピッチ軸Yが水平である場合、ヨー軸Zは垂直であり、ロール軸Xは水平である。図7に示すように、ピッチ軸Y、ヨー軸Z、およびロール軸Xは互いに直交している。
【0050】
システムは、有利には、
-第1のシリンダ1に接続された第1のブランチ520と、
-第2のシリンダ1’に接続された第2のブランチ521と
を有するエルボ要素52(図10および図11に示す)を備え、第1および第2のブランチ520、521は、風Vの関数として航空機をヨー軸Zに沿って安定させるように適合されたスイープ角を形成する。
【0051】
代替実施形態によれば、システムは、第1および第2のシリンダ1、1’を接続するように配置された直線接続要素53(図9および図15に示す)を備える。
【0052】
航空機は、航空機の離陸および着陸を容易にするために支持構造体5上に配置されたプロペラ(図示せず)を備えることができる。
回転可能要素
【0053】
回転可能要素2は、有利には、ウインチのドラムであり、回転運動を接続ケーブル4の直線運動に変換することが可能であり、またその逆も可能である。一例として、接続ケーブル4の線速度は、0m.s-1から40m.s-1までの範囲とすることができる。接続ケーブル4は、有利には、ウインチのドラムの周りに巻き付けられる。
【0054】
図2に示す代替実施形態によれば、システムは2対の回転可能要素2を備えることができ、各回転可能要素2は、リターン・プーリの形態で製造される。回転可能要素2の各対は、接続ケーブル4をクランプするように配置される。
【0055】
図4aに示す代替実施形態によれば、シリンダ1には、パルスによってシリンダ1を回転させる伝達シャフト30を設けることができ、伝達シャフト30は、例えばバネなどの弾性戻り手段31の作用に抗して航空機に装着される。接続ケーブル4は、伝達シャフト30を回転可能要素2に接続する。回転可能要素2は、接続ケーブル4にパルスを送信し、接続ケーブル4は、伝達シャフト30を引き寄せて、シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させる。航空機には、有利には、弾性戻り手段31によって生成されるトルクを補償するように配置された水平スタビライザ82(「尾部デバイス」の段落を参照)が設けられる。
駆動手段
【0056】
駆動手段3は、回転可能要素2の回転運動を駆動するように配置されたモータ、好ましくは電気モータを備えることができる。駆動手段3は、回転可能要素2を直接的または間接的に駆動することができる。間接的な駆動の一例が図3に示されており、リニア・モータ3は、接続ケーブル4を引いて、それによって回転可能要素2を回転させる。システムが、航空機から離れて配置された1対の回転可能要素2(第1および第2の回転可能要素2)を備える場合、駆動手段は、1対の回転可能要素2の回転運動を駆動するように配置される。言い換えれば、駆動手段は、1対の第1および/または第2の回転可能要素2を駆動するように配置される。第1および第2の回転可能要素は異なる回転速度(巻き取り、巻き戻し、停止)を有することができるという意味で、第1および第2の回転可能要素は独立していてもよい。言い換えれば、1対の第1の回転可能要素2と第2の回転可能要素2との間に回転速度の差を取り入れることが可能である。
【0057】
揚力状態にある航空機は、風Vを受けるよう意図されている。システムは、有利には、風Vの関数として駆動手段を制御するように構成された制御手段を備える。したがって、回転可能要素2の回転速度を変化させることによって、航空機の揚力、したがって航空機の高度を変化させることが可能である。
【0058】
制御手段は、シリンダ1のある箇所での接線速度がシリンダ1のこの箇所の近傍に吹く風Vの速度(見かけの風)よりも速くなるように、ウインチのドラムの回転速度を制御することができる。
ステーション
【0059】
システムは、有利には、1つまたは複数の回転可能要素2および駆動手段3が配置されたステーション、好ましくは陸上または海上ステーションを備える。ステーションは、地球基準座標系に固定されるか、または地球基準座標系に対して相対的に可動であり得る。可動ステーションは、潜水艦などの車両の形態で製造され得る。
【0060】
一実施形態によれば、図示されていないが、システムは、ステーションと航空機との間の接続ケーブル4の方向を修正するように配置された、方向を修正するための手段(例えばリターン・プーリ)を備えることができる。これにより、例えば、接続ケーブル4が地面に存在する障害物に接触するのを防止することが可能である。
【0061】
ステーションおよび航空機には、有利には、通信手段、好ましくは無線通信手段が設けられ、その結果、ステーションと航空機との間で通信が確立され得る。
接続ケーブル
【0062】
接続ケーブル4は、誘電体材料で作製され得る。接続ケーブル4は、有利には、高い引張強度を有する。接続ケーブル4は、高分子材料、例えば、高密度ポリエチレンで作製され得る。接続ケーブル4は、シリンダ1に加圧されたガスを供給するように配置されたガス・ダクトを備えることができる。
【0063】
図1および図12に示すように、システムは、航空機から離れて配置されたアンカリング・ゾーンZAを備えることができ、接続ケーブル4はアンカリング・ゾーンZAに固定される。
【0064】
図4bに示すように、接続ケーブル4は、連続したループを形成するようにリービング40に接続され得る。したがって、駆動手段3は、回転可能要素2に対して相対的にオフセットされ得る。
【0065】
図5に示す代替実施形態によれば、接続ケーブル4は、連続したループを形成するように1組の回転可能要素2に接続され得、駆動手段3は回転可能要素2に対して相対的にオフセットされる。図5に示す2つの回転可能要素2のうちの1つは、シリンダ1を長手方向軸Yの周りに回転させるために、接続ケーブル4の並進運動を可能にするように回転を阻止され得る。
シリンダへの回転可能要素の回転運動の伝達
【0066】
一実施形態によれば、接続ケーブル4は、駆動手段3によって駆動される回転可能要素2の回転運動が接続ケーブル4上の摩擦によって航空機のシリンダ1に機械的に伝達されて、シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させるように、航空機のシリンダ1の周りに巻き付けられる。
【0067】
システムが航空機から離れて配置された1対の回転可能要素2を備える場合、接続ケーブル4は、駆動手段3によって駆動される1対の回転可能要素2の回転運動が接続ケーブル4上の摩擦によって航空機のシリンダ1に機械的に伝達されて、シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させるように、航空機のシリンダ1の周りに巻き付けられる。
【0068】
代替実施形態によれば、システムは、駆動手段3によって駆動される回転可能要素2の回転運動が伝達デバイス6によって航空機のシリンダ1に機械的に伝達されて、シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させるように、接続ケーブル4および航空機のシリンダ1と機械的に協働するように配置された伝達デバイス6を備える。伝達デバイス6は、有利には、シリンダ1への回転可能要素2の回転運動の機械的伝達が中断され、その結果シリンダ1が長手方向軸Yの周りを自由に回転できるようになるという構成を備える。伝達デバイス6は、好ましくは、フリーホイールまたはクラッチを備える。伝達デバイス6は、有利には、図9に示すように、シリンダ1の第1および第2の長手方向端部10、11に装着される。
【0069】
システムが航空機から離れて配置された1対の回転可能要素2を備える場合、伝達デバイス6は、駆動手段3によって駆動される1対の回転可能要素2の回転運動が伝達デバイス6によって航空機のシリンダ1に機械的に伝達されて、シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させるように、接続ケーブル4および航空機のシリンダ1と機械的に協働するように配置される。伝達デバイス6は、有利には、シリンダ1への1対の回転可能要素2の回転運動の機械的伝達が中断され、その結果シリンダ1が長手方向軸Yの周りを自由に回転できるようになるという構成を備える。
ガイド手段
【0070】
航空機は、有利には、最大ロール角を規定するシリンダ1に対して相対的な2つの位置間で接続ケーブル4をガイドするように配置されたガイド手段を備える。ガイド手段は、有利には、航空機の支持構造体5に装着され、接続ケーブル4を受け入れるように適合された、リング7を備える。ガイド手段は、有利には、航空機の支持構造体5上に配置されたチューブ70を備える。それぞれ接続ケーブル4を受け入れるように適合された2つのリング7は、有利には、最大ロール角を規定するように、例えばスライダ700を使用してチューブ70上にスライド可能に装着される。代替実施形態として、ガイド手段は、接続ケーブル4との摩擦を最小限に抑えるためのローリング要素(例えば、プーリ、ローラ)とすることができる。
【0071】
ガイド手段は、有利には、シリンダ1の表面S上で接続ケーブル4をガイドするように配置される。システムは、例えば、当業者に知られているキャプスタン公式(エイテルワイン公式とも呼ばれる)によって、シリンダ1の両側の接続ケーブル4にかかる張力の関数として、シリンダ1の表面S上の接続ケーブル4の巻き角を制御するように(したがって、伝達される動力を制御するように)有利に構成される。
取り付けケーブル
【0072】
ガイド手段の代替実施形態として、システムは、シリンダ1の第1および/または第2の長手方向端部10、11にそれぞれ固定され、かつ、第1および/または第2のウインチ2’にそれぞれ接続された、第1および/または第2の取り付けケーブルCAを備えることができる。図14aに示すように、システムは、シリンダ1の長手方向端部10、11に固定された取り付けケーブルCAを備える。図14bに示すように、システムは、シリンダ1とは別の長手方向端部10、11にそれぞれが取り付けられた2本の取り付けケーブルCAを備える。
【0073】
図10に示すように、システムは、航空機のピッチ角を制御するために、エルボ要素52に固定され、かつ、ウインチ2’に接続された、取り付けケーブルCAを備えることができる。
シリンダを用いた実施形態
【0074】
特に図6および図7に示す第1の実施形態によれば、システムは、航空機から離れて配置された1対の回転可能要素2を備えることができ、
-駆動手段3は、1対の回転可能要素2の回転運動を駆動するように配置され、
-接続ケーブル4は、駆動手段3によって駆動される1対の回転可能要素2の回転運動が航空機のシリンダ1に機械的に伝達されて、シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させるように、1対の回転可能要素2を航空機のシリンダ1に接続するように配置される。
【0075】
図示されていない第2の実施形態によれば、システムは、
-航空機から離れて配置された追加の対の回転可能要素2と、
-追加の接続ケーブル4と
を備えることができ、
-駆動手段3は、追加の対の回転可能要素2の回転運動を駆動するように配置され、
-追加の接続ケーブル4は、駆動手段3によって駆動される追加の対の回転可能要素2の回転運動が航空機のシリンダ1に機械的に伝達されて、シリンダ1を長手方向軸Yの周りで回転させるように、追加の対の回転可能要素2を航空機のシリンダ1に接続するように配置される。
2つのシリンダを用いた実施形態
【0076】
航空機は、それぞれ第1および第2の長手方向軸Y、Y’に沿って延在する第1および第2のシリンダ1、1’を備えることができ、第1および第2のシリンダ1、1’は、それぞれ第1および第2の長手方向軸Y、Y’の周りで回転することが可能である。
【0077】
特に図10および図15に示す第1の実施形態によれば、システムは、
-航空機から離れて配置された、1対の回転可能要素2および追加の対の回転可能要素2と、
-接続ケーブル4および追加の接続ケーブル4と
を備えることができる。
【0078】
駆動手段3は、1対の回転可能要素2および追加の対の回転可能要素2の回転運動を駆動するように配置される。
【0079】
接続ケーブル4は、駆動手段3によって駆動される1対の回転可能要素2の回転運動が第1のシリンダ1に機械的に伝達されて、第1のシリンダ1を第1の長手方向軸Yの周りで回転させるように、1対の回転可能要素2を航空機の第1のシリンダ1に接続するように配置される。
【0080】
追加の接続ケーブル4は、駆動手段3によって駆動される追加の対の回転可能要素2の回転運動が航空機の第2のシリンダ1’に機械的に伝達されて、第2のシリンダ1’を第2の長手方向軸Y’の周りで回転させるように、追加の対の回転可能要素2を航空機の第2のシリンダ1’に接続するように配置される。
【0081】
特に図9および図13に示す第2の実施形態によれば、システムは、
-航空機から離れて配置された2対の回転可能要素2と、
-2本の接続ケーブル4と
をそれぞれが備える第1および第2のアセンブリを備えることができ、
-駆動手段3は、第1および第2のアセンブリの回転可能要素2の回転運動を駆動するように配置され、
-第1のアセンブリの各接続ケーブル4は、駆動手段3によって駆動される第1のアセンブリの回転可能要素2の回転運動が航空機の第1のシリンダ1に機械的に伝達されて、第1のシリンダ1を第1の長手方向軸Yの周りで回転させるように、第1のアセンブリの1対の回転可能要素1を航空機の第1のシリンダ1に接続するように配置され、
-第2のアセンブリの各接続ケーブル4は、駆動手段3によって駆動される第2のアセンブリの回転可能要素2の回転運動が航空機の第2のシリンダ1’に機械的に伝達されて、第2のシリンダ1’を第2の長手方向軸Y’の周りで回転させるように、第2のアセンブリの1対の回転可能要素2を航空機の第2のシリンダ1’に接続するように配置される。
【0082】
3つ以上のシリンダ1、1’が存在し、各シリンダ1、1’が少なくとも1対の回転可能要素2に接続されることを企図することが可能である。
尾部デバイス
【0083】
揚力状態にある航空機は、ヨー軸Zを有し、風Vを受けるよう意図されている。システムは、有利には、風Vの関数として航空機をヨー軸Zに沿って安定させるように配置された尾部デバイス8を備える。尾部デバイス8は、航空機の支持構造体5に装着される。より具体的には、尾部デバイス8は、支持構造体5の長手方向ブランチ50上で長手方向ブランチ50の第1の軸の周りで回転できるように装着され得る。
【0084】
尾部デバイス8は、有利には、長手方向軸に沿って延在するアーム80を備える。アーム80は、対向する第1および第2の端部を有する。アーム80は、支持体5の構造の前記長手方向ブランチ50上で、例えば関節機構800によって長手方向ブランチ50の第1の軸の周りで枢動可能に装着されている。尾部デバイス8は、有利には、アーム80の長手方向軸に垂直な第1の方向に延在する、垂直スタビライザと呼ばれる第1のスタビライザ81を備える。アーム80の長手方向軸が水平である場合、第1の方向は垂直である。第1のスタビライザ81は、アーム80の第1の端部に固定されている。尾部デバイス8は、有利には、第1の方向およびアーム80の長手方向軸に対して垂直な第2の方向に延在する、水平スタビライザと呼ばれる第2のスタビライザ82を備える。アーム80の長手方向軸が水平である場合、第2の方向は水平である。第2のスタビライザ82は、アーム80の第1の端部に固定されている。第2のスタビライザ82は、第1のスタビライザ81の安定化効果を最大化するために、見かけの風Vに対する尾部デバイス8の受動的位置合せを可能にする。
【0085】
第1のスタビライザ81は、有利には、第1のスタビライザ81が延在する第1の方向の周りで枢動可能に装着された2つの独立した制御面810を備える。図17aおよび図17bに示すように、第1のスタビライザ81の第1の方向に対して相対的な2つの制御面810のピボット角は、ヨー軸Zの周りに運動学的な運動を生成するように風向きVに適合される。アーム80の長手方向軸の位置は、風向きVと平行である。
【0086】
図6および図7に示すように、尾部デバイス8は、有利には、アーム80の第2の端部に装着されたセンサ・モジュール83を備える。非限定的な例として、センサ・モジュール83は、風Vの方向および速度、航空機の位置、高度、速度、および加速度を測定するように適合され得る。代替実施形態として、図9に示すように、センサ・モジュール83は、航空機の支持構造体5に装着され得る。
エネルギー変換への応用
【0087】
接続ケーブル4は、有利には、航空機の揚力運動が回転可能要素2に機械的に伝達され得るように、航空機を回転可能要素2に接続するように配置される。
【0088】
システムは、有利には、航空機の揚力運動の機械的伝達によって得られる回転可能要素2の回転をエネルギーに変換するように配置されたコンバータを備える。
【0089】
一実施形態によれば、コンバータは、回転可能要素の回転を電気エネルギーに変換するように配置された発電機を備えることができる。回転可能要素2がウインチのドラムである場合、駆動手段3は、接続ケーブル4を巻き込むためにエネルギーを消費する一方、航空機の揚力運動により接続ケーブル4がほどかれ、電気エネルギーが回収される。例えば、ステーション内に配置される発電機は、電気相互接続手段9を介して、電気ネットワークRE(図9に示す)、またはエネルギー貯蔵システムに電気的に接続され得る。電気ネットワークREは、電気相互接続手段9を介して、ステーション、具体的には駆動手段3に電力を供給することができる。
【0090】
図16に示す実施形態によれば、各回転可能要素2は、機械的伝達部TMに接続される。機械的伝達部TMは、
-機械的伝達部TMがポンプなどの油圧(もしくは空気圧)発生機Gに接続される第1の位置、または
-機械的伝達部TMが油圧(もしくは空気圧)モータMに接続される第2の位置
を有する。
【0091】
油圧/空気圧発生機Gは、低圧タンク900と高圧タンク901とを備える油圧/空気圧回路90に属する。油圧/空気圧発生機Gは、油圧/空気圧回路90の流体(例えば、油または圧縮空気)を低圧タンク900(例えば、空気圧回路90の場合は大気)から高圧タンク901に圧送する。したがって、高圧タンク901内の流体の圧力によって、エネルギーが貯蔵される。
【0092】
接続ケーブル4を巻き戻す必要がある場合、機械的伝達部TMは、第1の位置から第2の位置に切り替わる。高圧タンク901から低圧タンク900への流体の流れによって、エネルギーが消費される。
【0093】
電気を生産するために、油圧/空気圧回路90は、発電機G’を起動する追加の油圧/空気圧モータM’に接続される。したがって、この(数時間程度の)一時的な貯蔵システムを介して、電気生産を円滑化することができ、または、電気生産を電気消費の需要の要件に応じて適合させることができる。
【0094】
本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者は、開示された実施形態の技術的に有効な組合せを検討し、それらを均等物に置き換えることができる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16
図17a
図17b
【国際調査報告】