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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-17
(54)【発明の名称】電池の電解質用の難燃剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240510BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240510BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240510BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240510BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560910
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 US2022028468
(87)【国際公開番号】W WO2022240803
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/187,107
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グー,ジョンシン
(72)【発明者】
【氏名】ベーカー,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】リウ・インチィー
(72)【発明者】
【氏名】イアン,フーアシアン
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ08
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
本発明は、リチウム電池用の非水電解質溶液を提供する。本非水電解質溶液は、液体電解質媒質と、リチウム含有塩と、少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池用の非水電解質溶液であって、前記溶液は、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤であって、
a)臭素化モノエステルであって、
α)3個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有するか、または
β)少なくとも4個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次の式で表される前記臭素化モノエステル
【化1】
(式中、R及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R及びRの少なくとも1つは少なくとも1個の臭素原子を有すが、ただし、Rがベンジル基であり、前記ベンジル基中に少なくとも1個の臭素原子が存在する場合には、Rは分岐鎖または直鎖のアルキル基である)、及び
b)少なくとも6個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次式で表される臭素化ジエステル
【化2】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R、R、及びRの少なくとも1つは、少なくとも1個の臭素原子を有する)、から選択される前記少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む、前記溶液。
【請求項2】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、
a)4~約12個の炭素原子及び/または1~約8個の臭素原子を有する臭素化モノエステル、または
b)6~約20個の炭素原子及び/または1~約8個の臭素原子を有する臭素化ジエステルである、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、
a)Rが少なくとも1個の臭素原子及び1~約8個の炭素原子を有する臭素化モノエステル、または
b)約6~約18個の炭素原子及び/または1~約6個の臭素原子を有する臭素化ジエステルである、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、
a)Rが少なくとも1個の臭素原子及び2~約8個の炭素原子を有する臭素化モノエステル、または
b)Rが少なくとも1個の臭素原子を有し、及び/またはR及びRが同一である臭素化ジエステルである、請求項1に記載の溶液。
【請求項5】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、
a)R及びRがそれぞれ少なくとも1個の臭素原子を有し、Rが1~約8個の炭素原子を有し、Rが1~約9個の炭素原子を有する臭素化モノエステル、または
b)少なくとも1個の臭素原子がR、R、及びRのそれぞれに存在する臭素化ジエステルである、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、
a)Rが第四級炭素原子を含まない臭素化モノエステル、または
b)Rが第四級炭素原子を含まない臭素化ジエステルである、請求項1に記載の溶液。
【請求項7】
前記臭素化モノエステルが、2-ブロモエチルアセテート、4-ブロモブチルアセテート、2-ブロモビニルアセテート、3-ブロモアリルアセテート、3-ブロモアリルブチレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノエート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、メチル3-ブロモ-2-プロペノエート、メチル2-ブロモ-アクリレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、または(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロモアセテートである、請求項1~3のいずれかに記載の溶液。
【請求項8】
の2~約4個の炭素原子が、前記臭素化ジエステル中の前記2つのエステル部分の間に架橋を形成する、請求項1~5のいずれかに記載の溶液。
【請求項9】
前記臭素化ジエステルが、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルジアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、または2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)である、請求項1~5または8のいずれかに記載の溶液。
【請求項10】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、前記溶液の総重量に対して、約9.5重量%以上の臭素の量である、請求項1~9のいずれかに記載の溶液。
【請求項11】
前記液体電解質媒質が、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはそれらの混合物である、及び/または前記リチウム含有塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項1~10のいずれかに記載の溶液。
【請求項12】
さらに、
a)3~約6個の炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約5個の炭素原子及び1~約4個のフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約9個の炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファ
イト、
d)3~約12個の炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約8個の炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環または6員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルファイト、
g)5員環または6員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、
h)6員環、7員環、または8員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を含む、請求項1~11のいずれかに記載の溶液。
【請求項13】
前記電気化学的添加剤が、
a)3~約4個の炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約4個の炭素原子及び1~約2つのフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約6個の炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)3~約9個の炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約4個の炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環を有し、2~約4個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルファイト、
g)5員環を有し、2~約4個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、
h)6員環または7員環、及び2~約4個の炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、請求項12に記載の溶液。
【請求項14】
前記電気化学的添加剤が、
a)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約12重量%の量の不飽和環状カーボネート、
b)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約8重量%の量のフッ素含有飽和環状カーボネート、
c)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.1重量%~約5重量%の量のトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスフェート、
d)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量のトリヒドロカルビルホスフェート、
e)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%の量の環状スルトン、
f)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の飽和環状ヒドロカルビルサルファイト、
g)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%の量の飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、
h)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、請求項12または13に記載の溶液。
【請求項15】
各電気化学的添加剤が、他の電気化学的添加剤と共に使用されない、請求項12~14のいずれかに記載の溶液。
【請求項16】
前記溶液がニトリル化合物をさらに含む、請求項1~14のいずれかに記載の溶液。
【請求項17】
前記ニトリル化合物がスクシノニトリルである、請求項15に記載の溶液。
【請求項18】
前記溶液がニトリル化合物、及び別のリチウム含有塩をさらに含む、請求項1~14のいずれかに記載の溶液。
【請求項19】
前記ニトリル化合物がスクシノニトリルであり、前記リチウム含有塩がジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項18に記載の溶液。
【請求項20】
正極、負極、及び請求項1~19のいずれかに記載の非水電解質溶液を含む、非水リチウム電池。
【請求項21】
リチウム電池用の非水電解質溶液であって、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)メチルブロモアセテート、2-ブロモエチルアセテート、4-ブロモブチルアセテート、2-ブロモビニルアセテート、3-ブロモアリルアセテート、3-ブロモアリルブチレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノネート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、メチル3-ブロモ-2-プロペノエート、メチル2-ブロモ-アクリレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロモアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルジアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、及び2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)からなる群から選択される、少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む、前記溶液。
【請求項22】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、前記溶液の総重量に対して、約9.5重量%以上の臭素の量である、請求項21に記載の溶液。
【請求項23】
前記液体電解質媒質が、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはそれらの混合物である、及び/または前記リチウム含有塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項21~22のいずれかに記載の溶液。
【請求項24】
前記溶液がニトリル化合物、または、ニトリル化合物及び別のリチウム含有塩をさらに含む、請求項21~23のいずれかに記載の溶液。
【請求項25】
前記ニトリル化合物がスクシノニトリルであるか、または前記ニトリル化合物がスクシノニトリルであり、前記リチウム含有塩がジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム
である、請求項24に記載の溶液。
【請求項26】
正極、負極、及び請求項21~25のいずれかに記載の非水電解質溶液を含む、非水リチウム電池。
【請求項27】
リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するプロセスであって、前記プロセスは、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤であって、
a)臭素化モノエステルであって、
α)3個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有するか、または
β)少なくとも4個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次の式で表される前記臭素化モノエステル
【化3】
(式中、R及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R及びRの少なくとも1つは少なくとも1個の臭素原子を有すが、ただし、Rがベンジル基であり、前記ベンジル基中に少なくとも1個の臭素原子が存在する場合には、Rは分岐鎖または直鎖のアルキル基である)、及び
b)少なくとも6個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次式で表される臭素化ジエステル
【化4】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R、R、及びRの少なくとも1つは、少なくとも1個の臭素原子を有する)、から選択される前記少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む成分を配合することを含む、前記プロセス。
【請求項28】
前記構成成分が、さらに、
a)3~約6個の炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約5個の炭素原子及び1~約4個のフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約9個の炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)3~約12個の炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約8個の炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環または6員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルファイト、
g)5員環または6員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、
h)6員環、7員環、または8員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するためのプロセスであって、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)メチルブロモアセテート、2-ブロモエチルアセテート、4-ブロモブチルアセテート、2-ブロモビニルアセテート、3-ブロモアリルアセテート、3-ブロモアリルブチレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノネート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、メチル3-ブロモ-2-プロペノエート、メチル2-ブロモ-アクリレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロモアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルジアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、及び2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)からなる群から選択される、少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む成分を配合することを含む、前記プロセス。
【請求項30】
前記構成成分が、さらに、ビニレンカーボネート、4-フルオロ-エチレンカーボネート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリアリルホスフェート、1,3-プロパンスルトン、1,3-プロペンスルトン、エチレンサルファイト、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及びこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
以下のそれぞれの分子を、新規組成物として個別に特許請求する、
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル-プロパノエート、
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、
2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、
2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、
2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の電解質溶液用の臭素系難燃剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の安全性に影響を与える要素の1つは、リチウム含有電解質溶液に可燃性溶媒を使用していることである。電解質溶液に難燃剤を含めることは、これらの溶液の可燃性を軽減する1つの方法である。難燃剤が電解質溶液の適切な成分であるためには、電解質への溶解度に加えて、電池動作範囲にわたる電気化学的安定性、及び電池性能に対する悪影響が最小限であることが必要である。電池性能に対する悪影響には、活物質に対する伝導率化学的不安定性の低下、リチウムの消費、及び/または活物質への抵抗性界面の形成が挙げられ得るが、これらは、初期サイクル中の固体電解質界面(SEI)形成に悪影響を及ぼし、その結果、電解質の化学的劣化を招く可能性がある。
【0003】
リチウムイオン電池の電気化学的性能への影響を最小限に抑えながら、合理的なコストでリチウムイオン電池の可燃性を効果的に抑制できる難燃剤が望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤を含有する、リチウム電池用の非水電解質溶液を提供する。酸素含有臭素系難燃剤(複数可)の存在下では、少なくとも実験室条件下で、これらの非水電解質溶液で火が消える。
【0005】
本発明の実施形態は、リチウム電池用の非水電解質溶液であり、この溶液は、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)
a)臭素化モノエステルであって、
α)3個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有するか、または
β)少なくとも4個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次式で表される臭素化モノエステル
【化1】
(式中、R及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R及びRの少なくとも1つは少なくとも1個の臭素原子を有すが、ただし、Rがベンジル基であり、ベンジル基中に少なくとも1個の臭素原子が存在する場合には、Rは分岐鎖または直鎖のアルキル基である)、及び
b)少なくとも6個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次式で表される臭素化ジエステル
【化2】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R、R、及びRの少なくとも1つは、少なくとも1個の臭素原子を有する)、から選択される少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む。
【0006】
本発明の別の実施形態は、リチウム電池用の非水電解質溶液であり、この溶液は、i)液体電解質媒質と、ii)リチウム含有塩と、iii)少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む。酸素含有臭素系難燃剤は、メチルブロモアセテート、2-ブロモエチルアセテート、4-ブロモブチルアセテート、2-ブロモビニルアセテート、3-ブロモアリルアセテート、3-ブロモアリルブチレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロピオネート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、3-ブロモ-2-プロペノエート、メチル2-ブロモ-アクリレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロモアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルジアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、及び2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)からなる群から選択される。
【0007】
本発明のこれら及び他の実施形態及び特徴は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書全体を通して、「電解質溶液」という語句は、「非水電解質溶液」という語句と同じ意味で使用される。
【0009】
液体電解質媒質は、リチウム電池で使用されるリチウム電解質溶液の液体電解質媒質を通常形成する、1つまたは複数の溶媒からなり、これらの溶媒は、極性及び非プロトン性であり、電気化学的サイクルに対して安定していて、好ましくは低粘度である。これらの溶媒には通常、非環状炭酸エステル、環状炭酸エステル、エーテル、硫黄含有化合物、及びホウ酸のエステルが含まれる。
【0010】
本発明の実施で液体電解質媒質を形成することができる溶媒には、エチレンカーボネート(1,3-ジオキソラン-2-オン)、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジオキソラン、ジメトキシエタン(グリム)、テトラヒドロフラン、エチレンスルファイト、1,3-プロピレングリコールホウ酸エステル、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル及び前述のうちの任意の2つ以上の混合物が含まれる。
【0011】
好ましい溶媒には、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びそれらの混合物が含まれる。より好ましいのは、特に約20:80~約40:60、より好ましくは約25:75~約35:65のエチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートの比の体積比でのエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合物である。
【0012】
本発明の実施で適切なリチウム含有塩には、過塩素酸リチウム、硝酸リチウム、チオシアン酸リチウム、アルミン酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、テトラフルオロアルミン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、ビス(オキソラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、アルキル基が1~6個の炭素原子を有するアルキル炭酸リチウム、メチルスルホン酸リチウム、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム、ペンタフルオロエチルスルホン酸リチウム、ペンタフルオロフェニルスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(エチルスルホニル)(トリフルオロメチル-スルホニル)イミド、及び前述のうちの任意の2つ以上の混合物が含まれる。好ましいリチウム含有塩には、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、及びジ(フルオロ)(オキソラト)ホウ酸リチウム、及びビス(オキソラト)ホウ酸リチウムが含まれる。
【0013】
電解質溶液中のリチウム含有塩の通常の濃度は、約0.1M~約2.5M、好ましくは約0.5M~約2M、より好ましくは約0.75M~約1.75M、更により好ましくは約0.95M~約1.5Mの範囲である。複数のリチウム含有塩がリチウム含有電解質を形成する場合、濃度は、電解質溶液中に存在するすべてのリチウム含有塩の総濃度を指す。
【0014】
電解質溶液は、リチウム塩に加えて他の塩を含むことができるが、かかる他の塩(複数可)が、所望の用途のための電池の性能または電解質溶液の難燃性のいずれかを実質的に劣化させない場合に限る。リチウム塩以外の適切な電解質には、他のアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、及びセシウム塩、ならびにアルカリ土類金属塩、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、及びバリウム塩が含まれる。いくつかの態様では、非水電解質溶液中の塩は、1つ以上のリチウム塩のみである。
【0015】
電解質溶液中に存在し得る適切なアルカリ金属塩には、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、テトラクロロアルミン酸ナトリウム、テトラフルオロアルミン酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、及びヘキサフルオロリン酸ナトリウムなどのナトリウム塩、ならびに塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、過塩素酸カリウム、硝酸カリウム、チオシアン酸カリウム、アルミン酸カリウム、テトラクロロアルミン酸カリウム、テトラフルオロアルミン酸カリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、及びヘキサフルオロリン酸カリウムなどのカリウム塩が含まれる。
【0016】
電解質溶液中に存在し得る適切なアルカリ土類金属塩には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、チオシアン酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、テトラクロロアルミン酸マグネシウム、テトラフルオロアルミン酸マグネシウム、テトラフェニルホウ酸マグネシウム、テトラフル
オロホウ酸マグネシウム、及びヘキサフルオロリン酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、ならびに塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、過塩素酸カルシウム、硝酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、テトラクロロアルミン酸カルシウム、テトラフルオロアルミン酸カルシウム、テトラフェニルホウ酸カルシウム、テトラフルオロホウ酸カルシウム、及びヘキサフルオロリン酸カルシウムなどのカルシウム塩が含まれる。
【0017】
本発明の実施にて、液体臭素系難燃剤は、非水電解質溶液の液体媒質と混和性があり、ここで「混和性」とは、臭素系難燃剤が、電解質溶液から分離した相を形成しないことを意味する。更に具体的には、撹拌装置で24時間振とうした後、1.2Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する30重量%のエチレンカーボネートと70重量%のエチルメチルカーボネートの混合物中に、単相を形成する場合、臭素系難燃剤は混和性があり、振とうを停止した後に別の相は形成されず、臭素系難燃剤は、非水電解質溶液から沈殿したり、懸濁液またはスラリーを形成したりすることはない。臭素系難燃剤は、非水電解質溶液の他の成分のいずれかの沈殿、または懸濁液もしくはスラリーの形成を引き起こさないことが推奨され、かつ好ましい。
【0018】
本発明の実施にて、固形臭素系難燃剤は、非水電解質溶液の液体媒質と溶解性があり、ここで「溶解性」とは、臭素系難燃剤が、電解質溶液から沈殿しないことを意味する。更に具体的には、撹拌装置で24時間振とうした後、1.2Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する30重量%のエチレンカーボネートと70重量%のエチルメチルカーボネートの混合物中に、単相を形成する場合、臭素系難燃剤は溶解性があり、振とうを停止した後に別の相または沈殿物は形成されず、臭素系難燃剤は、非水電解質溶液から沈殿したり、懸濁液またはスラリーを形成したりすることはない。臭素系難燃剤は、非水電解質溶液の他の成分のいずれかの沈殿、または懸濁液もしくはスラリーの形成を引き起こさないことが推奨され、かつ好ましい。
【0019】
本発明の実施にて、酸素含有臭素系難燃剤は、一般に、酸素含有臭素系難燃剤の重量に基づいて約30重量%以上、好ましくは約35重量%以上の臭素含量を有する。本発明の実施で酸素含有臭素系難燃剤は、分子中の臭素含量が約30重量%~約75重量%、より好ましくは約35重量%~約75重量%の範囲である。
【0020】
本発明における臭素系難燃剤の沸点は約75℃以上、好ましくは約95℃以上である。一般的に、本発明の実施に使用される臭素系難燃剤は、非水電解質溶液の溶媒または溶媒混合物の沸点の近傍またはそれを上回る沸点を有する。本明細書全体で説明されている沸点は、特に明記されていない限り、標準の温度と圧力(標準状態)でのものである。
【0021】
本発明の実施に使用される臭素系難燃剤は、一般に極性かつ非プロトン性であり、電気化学サイクルに対して安定である。液状の臭素系難燃剤もまた、好ましくは低い粘度を有する。
【0022】
本発明の実施にて、非水電解質溶液中の難燃剤の量は、溶液が以下に記載される修正された水平UL-94試験に合格するのに十分な難燃剤が存在することを意味する。難燃剤の量は、多くの場合、臭素系難燃剤ごとに異なる。本発明の臭素化モノエステルについて、電解質溶液中の難燃剤の量は、通常、非水電解質溶液の総重量に対して、約9.5重量%以上、好ましくは約10重量%以上の臭素(原子)である。臭素化ジエステルについて、電解質溶液中の難燃剤の量は、通常、非水電解質溶液の総重量に対して、約9.5重量%以上、好ましくは約11重量%以上の臭素(原子)である。本発明の臭素化モノエステル及び臭素化ジエステルのいずれも、分子換算の難燃剤の量は、通常、非水電解質溶液の全重量に対して、約20重量%以上、場合によっては25重量%以上である。
【0023】
本発明の酸素含有臭素系難燃剤は、いくつかの全体的な特徴を共有している。これらの臭素系難燃剤にて、臭素含量は、難燃剤分子の総重量に対して、約30重量%以上、好ましくは約35重量%以上、好ましくは約30重量%~約75重量%、より好ましくは約35重量%~約72重量%であり、酸素含有臭素系難燃剤分子には少なくとも1個の臭素原子、好ましくは1~6個の臭素原子がある。
【0024】
いくつかの実施形態では、酸素含有臭素系難燃剤は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは4~約12個の炭素原子、より好ましくは4~約10個の炭素原子、及び少なくとも1個の臭素原子、好ましくは1~8個の臭素原子、より好ましくは1~約6個の臭素原子、さらにより好ましくは1~約4個の臭素原子を有する臭素化モノエステルである。
【0025】
臭素化モノエステルが4個以上の炭素原子を有する場合、臭素化モノエステルは次式で表され、
【化3】
式中、R及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R及びRの少なくとも1つは少なくとも1個の臭素原子を有する。いくつかの実施形態では、Rは臭素を含む。他の実施形態では、Rは臭素を含む。さらに他の実施形態では、R及びRの両方が臭素を含む。R及び/またはRに臭素原子が1個だけ存在するいくつかの実施形態では、臭素原子は基の末端(ω)炭素原子に位置する。いくつかの実施形態では、Rは第四級炭素原子を含まない。他の実施形態では、Rは第四級炭素原子を含まず、好ましくは、R及びRのいずれも第四級炭素原子を含まない。
【0026】
が臭素を含む実施形態では、Rは、好ましくは1~約8個の炭素原子、より好ましくは1~約4個の炭素原子、及び、1~約4個の臭素原子、好ましくは1~約3個の臭素原子、より好ましくは1~約2個の臭素原子を有する。臭素含有R基は、分岐鎖または直鎖のアルキル基、分岐鎖または直鎖のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基であり得、好ましくは分岐鎖または直鎖のアルケニル基である。臭素がRに存在する場合の好ましいアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニル、特にビニル及びアリルが挙げられる。Rが臭素を含み、Rが臭素を含まないこれらの実施形態では、Rは、好ましくは1~約7個の炭素原子、より好ましくは1~約3個の炭素原子を有し、分岐鎖または直鎖のアルキル基、分岐鎖または直鎖のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基、好ましくは分岐鎖または直鎖のアルキル基であり得る。Rが臭素を含まない場合の好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、及びn-ブチルが挙げられ、より好ましいのは、メチル及びエチル、特にメチルである。
【0027】
が臭素を含む実施形態では、Rは、好ましくは2~約8個の炭素原子、より好ましくは2~約7個の炭素原子、及び、1~約4個の臭素原子、好ましくは1~約3個の臭素原子を有する。臭素含有R基は、分岐鎖または直鎖のアルキル基、分岐鎖または直鎖のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基であり得る。臭素が存在する場合のRの好ましい基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ネオペンチル、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、
ヘキセニル、及びベンジルが挙げられ、より好ましいのは、エチル、n-ブチル、ネオペンチル、ビニル、アリル、及びベンジルである。Rが臭素を含み、Rが臭素を含まない実施形態では、Rは、好ましくは1~約8個の炭素原子、より好ましくは1~約6個の炭素原子を有し、分岐鎖または直鎖のアルキル基、分岐鎖または直鎖のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基、好ましくは分岐鎖または直鎖のアルキル基であり得る。Rが臭素を含まない場合の好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソブチル、及びn-ブチルが挙げられ、より好ましいのは、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソプロピル、特にメチルである。
【0028】
がベンジル基であり、ベンジル基中に少なくとも1個の臭素原子がある場合、Rは分岐鎖または直鎖のアルキル基であり、場合により、かつ好ましくは、Rは1つ以上の臭素原子を含む。
【0029】
及びRの両方が少なくとも1個の臭素原子を含む実施形態では、Rは、好ましくは1~約8個の炭素原子、より好ましくは1~約4個の炭素原子、及び、1~約4個の臭素原子、好ましくは1~約3個の臭素原子、より好ましくは1~約2個の臭素原子を有する。Rは、分岐鎖または直鎖のアルキル基、分岐鎖または直鎖のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基であり得、好ましくは分岐鎖または直鎖のアルキル基である。好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、及びn-ブチルが挙げられ、より好ましいのは、メチル及びエチル、特にメチルである。R及びRの両方が臭素を含む場合、好ましい臭素含有R基はブロモメチルである。
【0030】
及びRの両方が臭素を含む実施形態では、Rは、1~約9個の炭素原子、より好ましくは約2~約8個の炭素原子、及び、1~約4個の臭素原子、好ましくは1~約3個の臭素原子、より好ましくは1~約2個の臭素原子を有する。Rは、分岐鎖または直鎖のアルキル基、分岐鎖または直鎖のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基であり得、好ましくは分岐鎖または直鎖のアルケニル基またはアラルキル基である。Rの好ましい基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びベンジルが挙げられ、より好ましいのは、アリル及びベンジルである。[R及びRの両方が臭素を含む場合、好ましい臭素含有R基としては、2,3-ジブロモアリル、(3,5-ジブロモフェニル)メチル、及び(4-ブロモフェニル)メチルが挙げられる。
【0031】
好ましくは、臭素化モノエステルは、メチルブロモアセテート、2-ブロモエチルアセテート;4-ブロモブチルアセテート;2-ブロモビニルアセテート;3-ブロモアリルアセテート;3-ブロモアリルブチレート;2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、(2,3-ジブロモアリルアセテートとも呼ばれる);2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノエート、(2,3-ジブロモアリルプロパノエートとも呼ばれる);2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、(2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルイソブチレートとも呼ばれる);(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート;3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、(トリブロモネオペンチルアセテートとも呼ばれる);メチル3-ブロモ-2-プロペノエート;メチル2-ブロモ-アクリレート;2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート;または(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロモアセテートである。
【0032】
いくつかの実施形態では、臭素化モノエステルは、3個の炭素原子、及び、少なくとも1個の臭素原子、好ましくは1~約4個の臭素原子、より好ましくは1~約3個の臭素原子を有する。3個の炭素原子を有する臭素化モノエステルは、上記の式により表すことができ、先に記載したように、いくつかの実施形態では、Rは臭素を含み、他の実施形態
では、Rは臭素を含み、さらに他の実施形態では、R、Rの両方が臭素を含む。いくつかの好ましい実施形態では、Rはブロモメチルである。3個の炭素原子を有する好ましい臭素化モノエステルとしては、ブロモアセテートメチルが挙げられる。
【0033】
本発明の実施において、臭素化モノエステルは、好ましくは4個以上の炭素原子を有する。
【0034】
別の実施形態では、酸素含有臭素系難燃剤は、1~約8個の臭素原子、好ましくは1~約6個の臭素原子、より好ましくは2~約6個の臭素原子を有する臭素化ジエステルである。臭素化ジエステルには、約6~約20個の炭素原子、好ましくは約6~約18個の炭素原子、より好ましくは約6~約15個の炭素原子が存在する。臭素化ジエステルの臭素含有量は、臭素化ジエステルの重量に基づいて、約35重量%以上、好ましくは約35重量%~約70重量%、より好ましくは約40重量%~約65重量%である。
【0035】
臭素化ジエステルは次の式で表され、
【化4】
式中、R、R、及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R、R、及びRの少なくとも1つは、少なくとも1個の臭素原子を有する。好ましくは、Rは少なくとも1個の臭素原子を有する。
【0036】
及びRは、それぞれ独立して、1~約6個の炭素原子、好ましくは1~約5個の炭素原子、より好ましくは1~約4個の炭素原子、及び、1~約4個の臭素原子、好ましくは1~約3個の臭素原子、より好ましくは1~約2個の臭素原子を有する。R及びRはそれぞれ、独立して、分岐鎖もしくは直鎖のアルキル基、分岐鎖もしくは直鎖のアルケニル基、またはアリール基であり得る。R及びRの好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びn-ブチルが挙げられ、より好ましいのは、メチル、n-プロピル、及びイソプロピルであり、好ましいアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルが挙げられ、好ましいアリール基としてはフェニルが挙げられる。いくつかの実施形態では、R及び/またはRは臭素を含まなくてもよい。R及びRは同じでも異なっていてもよく、いくつかの実施形態では、R及びRは好ましくは同じである。
【0037】
は、2個のエステル部分を架橋する基であり、Rは、好ましくは2~約8個の炭素原子、好ましくは2~約6個の炭素原子、及び、1~約4個の臭素原子、好ましくは1~約3個の臭素原子、より好ましくは1~2個の臭素原子を有する。好ましくは、Rの少なくとも2個の炭素原子が2個のエステル部分間の架橋を形成する。Rは、フェニレン基またはアリーレン基以外の基であることが好ましい。Rは、分岐鎖もしくは直鎖のアルキレニル基、または、分岐鎖もしくは直鎖のアルケニレニル基であり得る。いくつかの好ましい実施形態では、Rは第四級炭素原子を含まない。Rについて、好ましいアルキル基としては、エチル、n-プロピル、n-ブチル、及びネオペンチルが挙げられ、好ましいアルケニル基としては、エチレニル、プロピレニル、ブテニル、ペンテニル、及
びヘキセニル、特にブテニルが挙げられる。
【0038】
臭素原子がRに存在するいくつかの実施形態では、基R及びRは臭素原子を含まない。他の実施形態では、臭素原子はR及び/またはRに存在し、好ましくは、少なくとも1個の臭素原子がR、R、及びRのそれぞれに存在する。
【0039】
が第四級炭素原子を含有する場合、好ましくはR、R、及びRのそれぞれに少なくとも1個の臭素原子が存在している。より好ましくは、R中に少なくとも1個の臭素原子が存在し、基R及びRは臭素原子を含まない。好ましくは、R及びRのいずれも第四級炭素原子を含まない。
【0040】
好ましい臭素化ジエステルとしては、2,3-ジブロモブト-2-エン-1,4-ジイルジアセテート;2,3-ジブロモブテン-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブテン-1,4-ジイル-1,4-ジイソブチレートとも呼ばれる;2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート);2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、ジブロモネオペンチルジアセテートとも呼ばれる;2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)が挙げられる。
【0041】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体電解質媒質は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはそれらの混合物である。より好ましくは、リチウム含有塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態で、少なくとも1個の電気化学的添加剤は、非水電解質溶液に含まれる。
【0043】
本発明の実施にて、電気化学的添加剤は、非水電解質溶液の液体媒質に可溶であるか、またはそれと混和性である。液体形態の電気化学的添加剤は、非水電解質溶液の液体媒質と混和性であり、「混和性」とは、電気化学的添加剤が電解質溶液から別の相を形成しないことを意味する。更に具体的には、撹拌装置で24時間振とうした後、1.2Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する30重量%のエチレンカーボネートと70重量%のエチルメチルカーボネートの混合物中に、単相を形成する場合、電気化学的添加剤は混和性があり、振とうを停止した後に別の相は形成されず、電気化学的添加剤は、非水電解質溶液から沈殿したり、懸濁液またはスラリーを形成したりすることはない。
【0044】
「可溶性」という用語は、通常固体の電気化学添加剤に使用され、電気化学的添加剤が一旦溶解すると、非水電解質溶液から沈殿したり、非水電解質溶液中で懸濁液やスラリーを形成したりしないことを示す。更に具体的には、撹拌装置で24時間振とうした後、1.2Mのヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する30重量%のエチレンカーボネートと70重量%のエチルメチルカーボネートの混合物中に溶解し、振とうを停止した後に沈殿、懸濁液またはスラリーを形成しなければ、電気化学的添加剤は可溶性がある。電気化学的添加剤は、非水電解質溶液の他の成分のいずれかの沈殿、または懸濁液もしくはスラリーの形成を引き起こさないことが推奨され、かつ好ましい。
【0045】
臭素系難燃剤、電気化学的添加剤、及びそれらの混合物は、一般に電気化学的サイクルに対して安定していて、好ましくは低粘度であり、及び/または非水電解質溶液の粘度を著しく増加させない。
【0046】
様々な実施形態にて、電気化学的添加剤は、a)3~約4個の炭素原子を含有する、不
飽和環状カーボネート、b)3~約4個の炭素原子と1~約2個のフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、c)3~約6個の炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、d)3~約9個の炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、e)3~約4個の炭素原子を含有する、環状スルトン、f)5員環を有し、2~約4個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルファイト、g)5員環を有し、2~約4個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、h)6員環または7員環を有し、2~約4個の炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、i)別のリチウム含有塩、及びj)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態にて、電気化学的添加剤は、3~約6個の炭素原子、好ましくは3~約4個の炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネートである。適切な不飽和環状カーボネートには、ビニレンカーボネート(1,3-ジオキソール-2-オン)、4-メチル-1,3-ジオキソール-2-オン、及び4,5-ジメチル-1,3-ジオキソール-2-オンが含まれる。ビニレンカーボネートは、好ましい不飽和環状カーボネートである。不飽和環状カーボネートは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約12重量%、より好ましくは約0.5重量%~約3重量%、または約8重量%~約11重量%の量である。
【0048】
電気化学的添加剤が、3~約5個の炭素原子、好ましくは3~約4個の炭素原子、及び1~約4個のフッ素原子、好ましくは1~約2個のフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネートである場合、適切なフッ素含有飽和環状カーボネートには、4-フルオロ-エチレンカーボネート、及び4,5-ジフルオロ-エチレンカーボネートが含まれる。好ましくは、フッ素含有飽和環状カーボネートは、4-フルオロ-エチレンカーボネートである。フッ素含有飽和環状カーボネートは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約8重量%、より好ましくは約1.5重量%~約5重量%の量である。
【0049】
トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト電気化学的添加剤は、3~約9個の炭素原子、好ましくは約3~約6個の炭素原子を含有する。トリヒドロカルビルシリル基は、同じでも異なっていてもよい。適切なトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイトには、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、ビス(トリメチルシリル)(トリエチルシリル)ホスファイト、トリス(トリエチルシリル)ホスファイト、ビス(トリメチルシリル)(トリエチルシリル)ホスファイト、ビス(トリメチルシリル)(トリ-n-プロピルシリル)ホスファイト、及びトリス(トリ-n-プロピルシリル)ホスファイトが含まれる。トリス(トリメチルシリル)ホスファイトは、好ましいトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイトである。トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイトは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.1重量%~約5重量%、より好ましくは約0.15重量%~約4重量%、更により好ましくは約0.2重量%~約3重量%の量である。
【0050】
いくつかの実施形態にて、電気化学的添加剤は、3~約12個の炭素原子、好ましくは3~約9個の炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェートである。ヒドロカルビル基は飽和でも不飽和でもよく、トリヒドロカルビルホスフェート中のヒドロカルビル基は同じでも異なっていてもよい。適切なトリヒドロカルビルホスフェートには、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、トリ-n-プロピルホスフェート、トリアリルホスフェート、及びトリビニルホスフェートが挙げられる。トリアリルホスフェートは、好ましいトリヒドロカルビルホスフェートである。トリヒドロカルビルホスフェートは、一般に、非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約5重量%、より好ましくは約2重量%~
約4重量%の量である。
【0051】
電気化学的添加剤が、3~約8個の炭素原子、好ましくは3~約4個の炭素原子を含有する、環状スルトンである場合、適切な環状スルトンとしては、1-プロパン-1,3-スルトン(1,3-プロパンスルトン)、1-プロペン-1,2-スルトン(1,3-プロペンスルトン)、1,3-ブタンスルトン(5-メチル-1,2-オキサチオラン2,2-ジオキシド)、2,4-ブタンスルトン(3-メチル-1,2-オキサチオラン2,2-ジオキシド)、1,4-ブタンスルトン(1,2-オキサチアン2,2-ジオキシド)、2-ヒドロキシ-アルファ-トルエンスルホン酸スルトン(3H-1,2-ベンゾオキサチオール2,2-ジオキシド)、及び1,8-ナフトスルトンが挙げられる。好ましい環状スルトンとしては、1-プロパン-1,3-スルトン、及び1-プロペン-,1,3-スルトンが挙げられる。環状スルトンは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.25重量%~約5重量%、より好ましくは約0.5重量%~約4重量%の量である。
【0052】
飽和環状ヒドロカルビルスルファイト電気化学的添加剤は、2~約6個の炭素原子、好ましくは2~約4個の炭素原子を含有し、5員環または6員環、好ましくは5員環を有する。メチル基またはエチル基、好ましくは1つまたは複数のメチル基などの1つまたは複数の置換基が環上に存在することができ、より好ましくは、環上に置換基は存在しない。適切な飽和環状ヒドロカルビルスルファイトには、1,3,2-ジオキサチオラン2-オキシド(1,2-エチレンスルファイト)、1,2-プロパンジオールスルファイト(1,2-プロピレンスルファイト)、4,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサチオラン2-オキシド、1,3,2-ジオキサチアン2-オキシド、4-メチル-1,3-ジオキサチアン、2-オキシド(1,3-ブチレンスルファイト)が含まれる。好ましい環状ヒドロカルビルスルファイトには、1,3,2-ジオキサチオラン、2-オキシド(1,2-エチレンスルファイト)が含まれる。環状ヒドロカルビルスルファイトは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約5重量%、より好ましくは約1重量%~約4重量%の量である。
【0053】
いくつかの実施形態では、電気化学的添加剤は、2~約6個の炭素原子、好ましくは2~約4個の炭素原子を含有し、5員環または6員環、好ましくは5員環を有する、飽和環状ヒドロカルビルスルフェートである。メチル基またはエチル基、好ましくは1つまたは複数のメチル基などの1つまたは複数の置換基が環上に存在することができ、より好ましくは、環上に置換基は存在しない。適切な飽和環状ヒドロカルビルスルフェートとしては、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド(1,2-エチレンスルフェート)、1,3,2-ジオキサチアン2,2-ジオキシド(1,3-プロピレンスルフェート)、4-メチル-1,3,2-ジオキサチアン2,2-ジオキシド(1,3-ブチレンスルフェート)、及び5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサチアン2,2-ジオキシドが挙げられる。飽和環状ヒドロカルビルスルフェートは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.25重量%~約5重量%、より好ましくは約1重量%~約4重量%の量である。
【0054】
電気化学的添加剤が環状ジオキサジチオポリオキシド化合物である場合、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物は、2~約6個の炭素原子、好ましくは2~約4個の炭素原子を含有し、6員環、7員環、または8員環を有する。好ましくは、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物は、2~約4個の炭素原子を含有し、6員環または7員環を有する。メチル基またはエチル基、好ましくは1つまたは複数のメチル基などの1つまたは複数の置換基が環上に存在することができ、より好ましくは、環上に置換基は存在しない。適切な環状ジオキサジチオポリオキシド化合物には、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、1,5,2,4-ジオキサジチエパン2,2,4,4-テト
ラオキシド(シクロジソン)、3-メチル-1,5,2,4-ジオキサジチエパン2,2,4,4-テトラオキシド、及び1,5,2,4-ジオキサジチオカン2,2,4,4-テトラオキシドが含まれる。1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシドが好ましい。環状ジオキサジチオポリオキシド化合物は、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約5重量%、より好ましくは約1重量%~約4重量%の量である。
【0055】
「別のリチウム含有塩」及び「他のリチウム含有塩」という語句は、電解質溶液の調製に少なくとも2つのリチウム塩が使用されていることを示している。電気化学的添加剤が別のリチウム含有塩である場合、それは、非水電解質溶液の総重量に対して、好ましくは約0.5重量%~約5重量%の量である。適切なリチウム含有塩には、上述のすべてのリチウム含有塩が含まれる。ジ(フルオロ)(オキソラト)ホウ酸リチウム、及びビス(オキソラト)ホウ酸リチウムが好ましい。
【0056】
同じ種類の様々な電気化学的添加剤及び/または異なる種類の電気化学的添加剤を含む、前述の電気化学的添加剤のうちの任意の2つ以上の混合物を使用できる。電気化学的添加剤の混合物を使用する場合、電気化学的添加剤の合計量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%である。不飽和環状カーボネートと飽和環状ヒドロカルビルスルファイトの混合物、または環状スルトン、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、及び環状ジオキサジチオポリオキシド化合物の混合物が好ましい。
【0057】
リチウム電池用の電解質溶液にしばしば含まれる追加の成分もまた、本発明の電解質溶液中に存在することができる。そのような追加の成分としては、スクシノニトリル、及びパーフルオロアルキルニトリルなどのニトリル化合物、及び、ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物が挙げられる。好ましい追加成分はニトリル化合物であり、スクシノニトリルは好ましいニトリル化合物である。通常、任意の成分の量は、非水電解質溶液の総重量に対して、約1重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約4重量%の範囲である。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態では、ニトリル化合物及び別のリチウム含有塩が電解質溶液の成分である。ニトリル化合物及びリチウム含有塩については上記の通りである。好ましくは、ニトリル化合物はスクシノニトリルであり、他のリチウム含有塩は、好ましくはジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウムである。
【0059】
本発明の別の実施形態は、リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)
a)臭素化モノエステルであって、
α)3個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有するか、または
β)少なくとも4個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次の式で表される臭素化モノエステル
【化5】
(式中、R及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R及びRの少なくとも1つは少なくとも1個の臭素原子を有すが、ただし、Rがベンジル基であり、ベンジル基中に少なくとも1個の臭素原子が存在する場合には、Rは分岐鎖または直鎖のアルキル基である)、及び
b)少なくとも6個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次式で表される臭素化ジエステル
【化6】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R、R、及びRの少なくとも1つは、少なくとも1個の臭素原子を有する)、から選択される少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む成分を配合することを含む。
【0060】
任意選択で、構成成分は、iv)上述のような少なくとも1つの電気化学的添加剤を更に含む。酸素含有臭素系難燃剤は、電解質溶液中に難燃剤の量で存在する。成分は任意の順序で配合することができるが、すべての成分を液体電解質媒質に加えることが好ましい。任意選択の成分も、液体電解質媒質に加えることが好ましい。液体電解質媒質、リチウム含有塩、酸素含有臭素系難燃剤(複数可)、電気化学的添加剤(複数可)、及び各成分の量の特徴ならびに好ましさは、上述のとおりである。
【0061】
本発明の更に別の実施形態は、リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、i)液体電解質媒質と、ii)リチウム含有塩と、iii)少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、含む成分を配合することを含む。任意選択で、構成成分は、iv)上述のような少なくとも1つの電気化学的添加剤を更に含む。酸素含有臭素系難燃剤は、メチルブロモアセテート、2-ブロモエチルアセテート、4-ブロモブチルアセテート、2-ブロモビニルアセテート、3-ブロモアリルアセテート、3-ブロモアリルブチレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロピオネート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、メチル3-ブロモ-2-プロペノエート、メチル2-ブロモ-アクリレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロモアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルジアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2
,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、及び2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)からなる群から選択される。液体電解質媒質、リチウム含有塩、電気化学的添加剤(複数可)、及び各成分の量の好ましさは、上述のとおりである。
【0062】
1つまたは複数の臭素系難燃剤を含有する、本発明の非水電解質溶液は、通常、正極、負極、及び非水電解質溶液を含む、非水リチウム電池で使用される。非水リチウム電池は、任意選択でそれらの間にセパレータを有する、負極と正極との間に非水電解質溶液を注入することによって得ることができる。
【0063】
分子2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノエート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロノエート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、及び2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)は、新しい組成物物質である。
【0064】
以下の実施例は、例示の目的のために提示され、本発明の範囲に制限を課すことを意図するものではない。
【0065】
実施例1では、修正された水平UL-94試験を行った。この修正された水平UL-94試験は、既知の公開されている水平UL-94試験と非常によく似ている。この点に関しては、例えば、Otsuki,M.et al.「Flame-Retardant Additives for Lithium-Ion Batteries.」Lithium-IonBatteries.Ed.M.Yoshio et al.New York,Springer,2009,275-289を参照のこと。変更されたUL-94試験は以下の通りであった:
円筒状のグラスファイバーの芯から芯を切り取り、切り口を滑らかにした後、芯の表面からほこりや粒子を取り除いた。試験前に芯を120℃で20時間乾燥させた。芯の長さは、5±0.1インチ(12.7±0.25cm)であった。
試験する各試験片は,ドライボックスの中で,4オンス(120mL)のガラス瓶の中に準備され、所望の量の難燃剤、及び、存在する場合は電気化学的添加剤を、所望の量の電解質溶液と配合することによって、例えば、20重量%の臭素系難燃剤と80重量%の電解質溶液を配合して、難燃剤を含有する電解質溶液を形成した。難燃剤と配合する前に、電解質溶液には、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(重量比3:7)に1.2MのLiPFが含まれていた。各芯を電解質溶液に30分間浸した。
各試験片を電解質溶液から取り出し、滴下がなくなるまで電解質溶液上に保持し、その後、4oz.(120mL)ガラス瓶に配置し、電解質溶液の蒸発を防ぐためにキャップを閉めた。
バーナーを点火し、高さ20±1mmの青い炎を生成するように調整した。
試験片を4oz.(120mL)ガラス瓶の容器から取り出し、試料片を金属支持固定具上に水平に置き、芯の一端を固定した。
排気扇が作動している場合、試験のために停止した。
炎は、水平の芯に対して45±2度の角度にあった。バーナーにバーナー管がある場合にこれを達成する1つの方法は、バーナー管の中心軸を試験片の端に向かって水平から45±2度の角度で傾けることであった。
炎を、その位置を変えずに30±1秒にわたって試験片の自由端部に適用し、30±1秒後、または試験片上の燃焼フロントが1インチ(2.54cm)の印に達するとすぐに、バーナーを取り外した。
試験片が試験炎を除去した後に燃焼を継続した場合に、炎が消えるまでの時間(秒)、または、燃焼フロント(炎)が1インチ(2.54cm)の印から4インチ(10.16cm)の印まで達するまでの時間(秒)のいずれかを記録した。
【0066】
バーナーを取り外したときに炎が消えた場合、試験片は「可燃性ではない」とみなされた。1インチ(2.54cm)のマークに達する前に炎が消えた場合、試験片は「難燃性」であるとみなされた。4インチ(10.16cm)の印に達する前に炎が消えた場合、試験片は「自己消火性」であるとみなされた。
【0067】
以下に報告する修正された水平UL-94試験結果はそれぞれ3回の試験の平均である。
【0068】
実施例1
上述のように調製した異なる酸素含有臭素系難燃剤を含有する、様々な非水電解質溶液を、上述の修正UL-94試験に供した。結果を以下の表1にまとめる。上述のように、報告された数値は、3回実施した平均値である。
【表1】
【0069】
実施例2
コイン電池のいくつかの難燃剤の試験も実施した。コイン電池は、所望の量の難燃剤を含有する、非水電解質溶液を使用して組み立てられた。次に、コイン電池を、C/5で4.2VへのCCCV充電の電気化学サイクルに供し、CV部分ではC/50の電流遮断を伴い、C/5~3.0VでCC放電を行った。
【0070】
1個の試料は、難燃剤を含まない非水電解質溶液であり、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(重量比3:7)中に1.2MのLiPFを含んでいた。残りの試料には、電解質溶液中に所望の量の難燃剤が含まれていた。結果を以下の表2にまとめる。クーロン効率の誤差範囲は、約±0.5%~約±1.0%である。
【表2】
【0071】
実施例3
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノエートの合成
500mLの4つ口丸底フラスコに、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-オール(35.5g)、プロピオン酸(34.71g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.30g)及びトルエン(250mL)を装填した。混合物を撹拌しながら加熱還流し、113~117℃で5時間維持し、その間に水を除去し、ディーン・スターク装置を介して収集した。反応はガスクロマトグラフィー(GC)で監視した。GCにより反応が完了したことが示された後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(4×90mL)で数回洗浄し、相を分離した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。濾過後、ロータリーエバポレーターを使用して有機層からトルエンを除去し、次いで有機層を高真空(約1トル)下でさらに乾燥させて、40.56gの生成物を透明な液体として得た。
【0072】
実施例4
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテートの合成
500mLの4つ口丸底フラスコに、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-オール(17.2g)、ブロモアセテート(30g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.
83g)及びトルエン(250mL)を装填した。
混合物を撹拌しながら加熱還流し、115~117℃で3時間維持し、その間に水を除去し、ディーン・スターク装置を介して収集した。反応はガスクロマトグラフィー(GC)で監視した。GCにより反応が完了したことが示された後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(4×80mL)で数回洗浄し、相を分離した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。濾過後、ロータリーエバポレーターを使用して有機層からトルエンを除去し、次いで有機層を高真空(55℃で0トル、1.5時間)下でさらに乾燥させて、24.97gの生成物を透明な液体として得た。
【0073】
実施例5
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-メチルプロパノエートの合成
500mLの4つ口丸底フラスコに、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1-オール(34.47g)、イソ酪酸(39.65g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.30g)及びトルエン(250mL)を装填した。混合物を撹拌しながら加熱還流し、116~118℃で4時間維持し、その間に水を除去し、ディーン・スターク装置を介して収集した。反応はガスクロマトグラフィー(GC)で監視した。GCにより反応が完了したことが示された後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(5×80mL)で数回洗浄し、相を分離した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。濾過後、ロータリーエバポレーターを使用して有機層からトルエンを除去し、次いで有機層を高真空(約1トル)下でさらに乾燥させて、41.12gの生成物を透明な液体として得た。
【0074】
実施例6
2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)の合成
500mLの4つ口丸底フラスコに、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジオール(49.18g)、イソ酪酸(105.60g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(3.60g)及びトルエン(250mL)を装填した。混合物を撹拌しながら加熱還流し、118℃で2時間維持し、その間に水を除去し、ディーン・スターク装置を介して収集した。反応はガスクロマトグラフィー(GC)で監視した。GCにより反応が完了したことが示された後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(8×80mL)で数回洗浄し、相を分離した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。濾過後、ロータリーエバポレーターを使用して有機層からトルエンを除去し、次いで有機層を高真空(約1トル)下でさらに乾燥させて、73.77gの生成物を透明な液体として得た。
【0075】
実施例7
2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)の合成
500mLの4つ口丸底フラスコに、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジオール(20g)、2-ブロモ酪酸(54.33g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.32g)及びトルエン(250mL)を装填した。混合物を撹拌しながら加熱還流し、117℃で4時間維持し、その間に水を除去し、ディーン・スターク装置を介して収集した。反応はガスクロマトグラフィー(GC)で監視した。GCにより反応が完了したことが示された後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(5×150mL)で数回洗浄し、相を分離した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。濾過後、ロータリーエバポレーターを使用して有機層からトルエンを除去し、次いで有機層を高真空(約1トル)下でさらに乾燥させて、37.69gの生成物をわずかに黄色の液体として得た。
【0076】
実施例8
2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)の合成
500mLの4つ口丸底フラスコに、2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジオール(20g)、ブロモアセテート(42.44g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.23g)及びトルエン(250mL)を装填した。混合物を撹拌しながら加熱還流し、114℃で4.5時間維持し、その間に水を除去し、ディーン・スターク装置を介して収集した。反応はガスクロマトグラフィー(GC)で監視した。GCにより反応が完了したことが示された後、反応混合物を室温まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(5×150mL)で数回洗浄し、相を分離した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過した。濾過後、ロータリーエバポレーターを使用して有機層からトルエンを除去し、次いで有機層を高真空(約1トル)下でさらに乾燥させて、33.38gの生成物を透明な液体として得た。
【0077】
本明細書または特許請求の範囲のいずれかで化学名または化学式によって言及される成分は、単数または複数で言及されるかどうかにかかわらず、化学名または化学型で言及される別の物質(例えば、別の成分、溶媒など)と接触する前に存在するものとして同定される。そのような変化、変換、及び/または反応は、特定の成分を本開示に従って要求される条件下で一緒にすることの自然な結果であるため、結果として得られる混合物または溶液でどのような化学変化、変換、及び/または反応が起こるかは問題ではない。したがって、この成分は、所望の操作の実行または所望の組成物の形成に関連して一緒にされる成分として識別される。また、以下の請求項は、物質、構成要素、及び/または成分を現在形で言及してもよいけれども(「含む」、「である」など)、言及は、本開示に係る1以上の他の物質、構成要素、及び/または成分とそれが最初に接触された、ブレンドされた、または混合された直前の時点でそれが存在したときの物質、構成要素、または成分に対するものである。物質、構成要素、または成分は、本開示及び化学者の通常の技術に従って実施された場合、接触、ブレンドまたは混合の操作の過程で化学反応または変換により元の同一性を失った可能性があるという事実はしたがって、実質上問題はない。
【0078】
本発明は、本明細書に列挙される材料及び/または手順を含んでもよいし、それらからなってもよいし、またはそれらから本質的になってもよい。
【0079】
本明細書で使用されるとき、本発明の組成物中のまたは本発明の方法で使用される、成分の量を修飾する「約」という用語は、例えば、典型的な測定及び現実世界での濃縮物の作製または溶液の使用に使用される液体処理手順を介して;これらの手順の不注意によるエラーを介して;組成物の製造または方法の実行に使用される成分の製造、供給源、または純度の差異を介して;その他を介して発生し得る、数的な量の変化を指す。約という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物の異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語で修飾されているかどうかにかかわらず、請求項にはその量と等価なものが包含される。
【0080】
本明細書で使用される冠詞「a」または「an」は、本明細書で用いる場合、特に明示的に示される場合を除き、詳細な説明または特許請求の範囲を、その冠詞が指す単一の要素に対して限定することを意図するものではなく、限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、冠詞「a」または「an」とは、本明細書で用いる場合、本文で別段明記されていない限り、1以上のそのような要素を網羅することを意図している。
【0081】
本発明は、その実施においてかなりの変動を受けやすい。したがって、前述の説明は、本発明を上記に提示された特定の例示に限定することを意図するものではなく、限定するものとして解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム電池用の非水電解質溶液であって、前記溶液は、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤であって、
a)臭素化モノエステルであって、
α)3個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有するか、または
β)少なくとも4個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次の式で表される前記臭素化モノエステル
【化1】
(式中、R及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R及びRの少なくとも1つは少なくとも1個の臭素原子を有すが、ただし、Rがベンジル基であり、前記ベンジル基中に少なくとも1個の臭素原子が存在する場合には、Rは分岐鎖または直鎖のアルキル基である)、及び
b)少なくとも6個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次式で表される臭素化ジエステル
【化2】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R、R、及びRの少なくとも1つは、少なくとも1個の臭素原子を有する)、から選択される前記少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む、前記溶液。
【請求項2】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、
I)
a)4~約12個の炭素原子及び/または1~約8個の臭素原子を有する臭素化モノエステル、または
b)6~約20個の炭素原子及び/または1~約8個の臭素原子を有する臭素化ジエステル、または
II)
a)Rが少なくとも1個の臭素原子及び1~約8個の炭素原子を有する臭素化モノエステル、または
b)約6~約18個の炭素原子及び/または1~約6個の臭素原子を有する臭素化ジエステルである、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、
I)
a)Rが少なくとも1個の臭素原子及び2~約8個の炭素原子を有する臭素化モノエステル、または
b)Rが少なくとも1個の臭素原子を有し、及び/またはR及びRが同一である臭素化ジエステル、または
II)
a)R及びRがそれぞれ少なくとも1個の臭素原子を有し、Rが1~約8個の炭素原子を有し、Rが1~約9個の炭素原子を有する臭素化モノエステル、または
b)少なくとも1個の臭素原子がR、R、及びRのそれぞれに存在する臭素化ジエステルである、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、
a)Rが第四級炭素原子を含まない臭素化モノエステル、または
b)Rが第四級炭素原子を含まない臭素化ジエステルである、請求項1に記載の溶液。
【請求項5】
前記臭素化モノエステルが、2-ブロモエチルアセテート、4-ブロモブチルアセテート、2-ブロモビニルアセテート、3-ブロモアリルアセテート、3-ブロモアリルブチレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノエート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、メチル3-ブロモ-2-プロペノエート、メチル2-ブロモ-アクリレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、または(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロ
モアセテートである、請求項1~2のいずれかに記載の溶液。
【請求項6】
の2~約4個の炭素原子が、前記臭素化ジエステル中の前記2つのエステル部分の間に架橋を形成する、請求項1~3のいずれかに記載の溶液。
【請求項7】
前記臭素化ジエステルが、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルジアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、または2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)である、請求項1~3または6のいずれかに記載の溶液。
【請求項8】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、前記溶液の総重量に対して、約9.5重量%以上の臭素の量である、請求項1~7のいずれかに記載の溶液。
【請求項9】
前記液体電解質媒質が、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはそれらの混合物である、及び/または前記リチウム含有塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項1~8のいずれかに記載の溶液。
【請求項10】
さらに、
I)
a)3~約6個の炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約5個の炭素原子及び1~約4個のフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約9個の炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)3~約12個の炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約8個の炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環または6員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルファイト、
g)5員環または6員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、
h)6員環、7員環、または8員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、または
II)
a)3~約4個の炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約4個の炭素原子及び1~約2つのフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約6個の炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)3~約9個の炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約4個の炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環を有し、2~約4個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルファイト、
g)5員環を有し、2~約4個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、
h)6員環または7員環、及び2~約4個の炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオ
ポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を含む、請求項1~9のいずれかに記載の溶液。
【請求項11】
前記電気化学的添加剤が、
a)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約12重量%の量の不飽和環状カーボネート、
b)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約8重量%の量のフッ素含有飽和環状カーボネート、
c)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.1重量%~約5重量%の量のトリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスフェート、
d)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量のトリヒドロカルビルホスフェート、
e)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%の量の環状スルトン、
f)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の飽和環状ヒドロカルビルサルファイト、
g)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.25重量%~約5重量%の量の飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、
h)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)前記非水電解質溶液の総重量に対して、約0.5重量%~約5重量%の量の別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
各電気化学的添加剤が、他の電気化学的添加剤と共に使用されない、請求項10または11のいずれかに記載の溶液。
【請求項13】
前記溶液がさらにニトリル化合物を含み、任意に、前記ニトリル化合物が、スクシノニトリルであるか、または、前記溶液がさらにニトリル化合物及び別のリチウム含有塩を含み、任意に、前記ニトリル化合物が、スクシノニトリルであり、前記リチウム含有塩がジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウムである請求項1~8、10または11のいずれかに記載の溶液。
【請求項14】
前記少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤が、メチルブロモアセテート、2-ブロモエチルアセテート、4-ブロモブチルアセテート、2-ブロモビニルアセテート、3-ブロモアリルアセテート、3-ブロモアリルブチレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノネート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、メチル3-ブロモ-2-プロペノエート、メチル2-ブロモ-アクリレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロモアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルジアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、及び2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)からなる群から選択される、請求項1に記載のリチウム電池用の非水電解質溶液。
【請求項15】
前記酸素含有臭素系難燃剤が、前記溶液の総重量に対して、約9.5重量%以上の臭素の量である、請求項14に記載の溶液。
【請求項16】
前記液体電解質媒質が、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはそれらの混合物である、及び/または前記リチウム含有塩が、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、またはビス(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項14~15のいずれかに記載の溶液。
【請求項17】
前記溶液がニトリル化合物、任意に、前記ニトリル化合物がクシノニトリルである、または、ニトリル化合物及び別のリチウム含有塩をさらに含み、任意に、前記ニトリル化合物がスクシノニトリルであり、前記リチウム含有塩がジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウムである、請求項14~16のいずれかに記載の溶液。
【請求項18】
正極、負極、及び請求項1~17のいずれかに記載の非水電解質溶液を含む、非水リチウム電池。
【請求項19】
リチウム電池用の非水電解質溶液を製造するプロセスであって、前記プロセスは、
i)液体電解質媒質と、
ii)リチウム含有塩と、
iii)少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤であって、
a)臭素化モノエステルであって、
α)3個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有するか、または
β)少なくとも4個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次の式で表される前記臭素化モノエステル
【化3】
(式中、R及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R及びRの少なくとも1つは少なくとも1個の臭素原子を有すが、ただし、Rがベンジル基であり、前記ベンジル基中に少なくとも1個の臭素原子が存在する場合には、Rは分岐鎖または直鎖のアルキル基である)、及び
b)少なくとも6個の炭素原子と少なくとも1個の臭素原子を有し、かつ、次式で表される臭素化ジエステル
【化4】
(式中、R、R、及びRはそれぞれ少なくとも1個の炭素原子を有し、R、R、及びRの少なくとも1つは、少なくとも1個の臭素原子を有する)、から選択される前記少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤と、を含む成分を配合することを含む、前記プロセス。
【請求項20】
前記構成成分が、さらに、
a)3~約6個の炭素原子を含有する、不飽和環状カーボネート、
b)3~約5個の炭素原子及び1~約4個のフッ素原子を含有する、フッ素含有飽和環状カーボネート、
c)3~約9個の炭素原子を含有する、トリス(トリヒドロカルビルシリル)ホスファイト、
d)3~約12個の炭素原子を含有する、トリヒドロカルビルホスフェート、
e)3~約8個の炭素原子を含有する、環状スルトン、
f)5員環または6員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルファイト、
g)5員環または6員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、飽和環状ヒドロカルビルスルフェート、
h)6員環、7員環、または8員環を有し、2~約6個の炭素原子を含有する、環状ジオキサジチオポリオキシド化合物、
i)別のリチウム含有塩、及び
j)前述のうちの任意の2つ以上の混合物、から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記少なくとも1つの酸素含有臭素系難燃剤が、メチルブロモアセテート、2-ブロモエチルアセテート、4-ブロモブチルアセテート、2-ブロモビニルアセテート、3-ブロモアリルアセテート、3-ブロモアリルブチレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルプロパノネート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルアセテート、3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピルアセテート、メチル3-ブロモ-2-プロペノエート、メチル2-ブロモ-アクリレート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、(3,5-ジブロモフェニル)メチルブロモアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルジアセテート、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジイルジアセテート、及び2,2-ビス(ブロモメチル)プロパン-1,3-ジイルビス(ブロモアセテート)からなる群から選択される、請求項19に記載のリチウム電池用の非水電解質溶液を製造するためのプロセス。
【請求項22】
前記構成成分が、さらに、ビニレンカーボネート、4-フルオロ-エチレンカーボネート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリアリルホスフェート、1,3-プロパンスルトン、1,3-プロペンスルトン、エチレンサルファイト、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド、1,5,2,4-ジオキサジチアン2,2,4,4-テトラオキシド、ジ(フルオロ)(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、及びこれらのうちの任意の2つ以上の混合物から選択される、少なくとも1つの電気化学的添加剤を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
以下のそれぞれの分子を、新規組成物として個別に特許請求する、
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル-プロパノエート、
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イル2-メチルプロパノエート、
2,3-ジブロモプロプ-2-エン-1-イルブロモアセテート、
2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-メチルプロパノエート)、
2,3-ジブロモブタ-2-エン-1,4-ジイルビス(2-ブロモブタノエート)。
【国際調査報告】