(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-17
(54)【発明の名称】半導体デバイス、並びに該デバイスを製造する及び動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/00 20230101AFI20240510BHJP
【FI】
H10N60/00 Z ZAA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562512
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2021061237
(87)【国際公開番号】W WO2022228678
(87)【国際公開日】2022-11-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アゼーフ,パヴェル
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC45
4M113AC50
(57)【要約】
半導体デバイスは、結晶基板と、該結晶基板上にエピタキシャルに配置されたナノワイヤとを有する。該ナノワイヤは、上記基板の上に配置されたゲーティング層と、ゲーティング層の上に配置された量子井戸と、ゲーティング層と量子井戸との間に配置された中間バリアと、量子井戸の上に配置された上部バリアと、を有する。ナノワイヤにゲーティング層を組み込むことにより、基板がボトムゲートを組み込む必要なしに、量子井戸のボトムゲーティングが可能になる。当該半導体デバイスを動作させる方法、及び当該半導体デバイスを製造する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶基板と、
前記結晶基板上にエピタキシャルに配置されたナノワイヤと、
を有し、
前記ナノワイヤは、
前記基板の上に配置されたゲーティング層と、
前記ゲーティング層の上に配置された量子井戸と、
前記ゲーティング層と前記量子井戸との間に配置された中間バリアと、
前記量子井戸の上に配置された上部バリアと、
を有する、
半導体デバイス。
【請求項2】
前記結晶基板と前記ゲーティング層との間に配置された下部バリア、を更に有する請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記上部バリアの上に配置された超伝導体コンポーネント、を更に有する請求項1又は2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記ゲーティング層は量子井戸である、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記中間バリアは、少なくとも2つの異なる材料の層を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記ナノワイヤの上に配置されたゲートスタック、を更に有する請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記ゲーティング層に接続された第1の電気コンタクトと、
前記量子井戸に接続された第2の電気コンタクトと、
を更に有する請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記ナノワイヤは分岐して第1リム及び第2リムを持ち、前記第1の電気コンタクトは前記第1リムで接続し、前記第2の電気コンタクトは前記第2リムで接続する、請求項7に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
当該半導体デバイスは更に、前記量子井戸を電気的に空乏化させるためのカッターゲートを有し、該カッターゲートは、前記第2リムをゲート制御するように構成され、オプションで、該カッターゲートはラップアラウンドゲートである、請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の半導体デバイスを動作させる方法であって、
前記ゲーティング層に静電ポテンシャルを印加するステップであり、それにより、前記ゲーティング層が、前記量子井戸をゲート制御するためのゲート電極として機能する、ステップ、
を有する方法。
【請求項11】
量子井戸をゲート制御するための半導体層の使用であって、当該半導体層は前記量子井戸の下にあり、当該半導体層と前記量子井戸との間に中間バリアが存在し、該中間バリアは更なる半導体の層を有する、半導体層の使用。
【請求項12】
半導体デバイスを製造する方法であって、
結晶基板の上にマスクを形成するステップであり、該マスクは、ナノワイヤを成長させるためのエリアを画成する開口を持つ、ステップと、
続いて、前記エリア内で前記結晶基板上にエピタキシャルにナノワイヤを成長させるステップと、
を有し、
前記ナノワイヤを成長させることは、
前記基板の上に下部バリアを成長させ、
前記下部バリアの上にゲーティング層を成長させ、
前記ゲーティング層の上に中間バリアを成長させ、
前記中間バリアの上に量子井戸を成長させ、
前記量子井戸の上に上部バリアを成長させる、
ことを有する、
方法。
【請求項13】
前記成長の処理の全てが1つの成長チャンバ内で実行され、且つ/或いは前記ナノワイヤは分子線エピタキシによって成長される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記上部バリアの上に超伝導体コンポーネントを形成するステップ、を更に有する請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記マスクは、前記ナノワイヤが分岐して第1リム及び第2リムを含むことになるように構成され、
当該方法は更に、ナノワイヤを成長させた後に、前記ナノワイヤの前記第1リムを選択的にエッチングして前記ゲーティング層の一部を露出させるステップ、を有する、
請求項12乃至14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
トポロジカル量子コンピューティングは、半導体が超伝導体に結合されている領域内に、“マヨラナゼロモード”(Majorana zero modes;MZMs)の形態をした非アーベル(non-abelian)エニオンが形成され得る現象に基づく。非アーベルエニオンは、準粒子の一種であり、正確には粒子ではないが、少なくとも部分的に粒子のように振る舞う電子液体における励起を意味する。MZMはそのような準粒子の特定の束縛状態である。特定の条件下で、これらの状態を、超伝導体で被覆された、ある長さの半導体から形成されたナノワイヤにおける半導体-超伝導体界面の近くに形成することができる。MZMがナノワイヤ内で誘起されるとき、それは“トポロジカルレジーム”にあると言われる。これを誘起するには、従来は外部から印加されるものである磁場とともに、超伝導体材料において超伝導挙動を誘起する温度へのナノワイヤの冷却を必要とする。それはまた、ナノワイヤの一部を静電ポテンシャルでゲート制御することも必要とし得る。
【0002】
そのようなナノワイヤのネットワークを形成し、該ネットワークの所々にトポロジカルレジームを誘起することにより、量子コンピューティングの目的で操作されることができる量子ビットを作り出すことが可能である。量子ビットは、キュービットとも称され、2つの可能な結果を持つ測定をその上で行うことができるが、任意の所与の時点(測定されないとき)で実際に、それら相異なる結果に対応する2つの状態の量子重ね合わせであることができる要素である。
【0003】
MZMを誘起するため、超伝導体(例えば、アルミニウム、Al)が超伝導挙動を示す温度までデバイスを冷却する。超伝導体が、隣接する半導体に近接効果を引き起こし、それにより、超伝導体との界面付近の半導体の領域も超伝導特性を示し、すなわち、超伝導体及び隣接する半導体の中に、トポロジカル相挙動が誘起される。MZMが形成されるのは半導体のこの領域内である。
【0004】
MZMが生じることができるトポロジカル相を誘起するための別の1つの条件は、半導体中のスピン縮退を解除(リフト)するための磁場の印加である。量子系の文脈における縮退は、相異なる量子状態が同じエネルギー準位を持つ場合を指す。縮退を解除するとは、それらの状態が相異なるエネルギー準位を採るようにさせることを指す。スピン縮退は、相異なるスピン状態が同じエネルギー準位を持つ場合を指す。スピン縮退は磁場によって解除されることができ、異なるようにスピン偏極した電子間でエネルギー準位分裂を生じさせる。これはゼーマン効果として知られている。典型的に、磁場は外部の電磁石によって印加される。しかし、米国特許出願第16/246287号が、外部の磁石を必要とせず、スピン縮退を解除するための磁場を内部で印加するために、超伝導体と半導体との間に強磁性絶縁体の層が配置されたヘテロ構造も開示している。強磁性絶縁体に関して与えられた例は、EuS、GdN、Y3Fe5O12、Bi3Fe5O12、YFeO3、Fe2O3、Fe3O4、GdN、Sr2CrReO6、CrBr3/CrI3、YTiO3の形態の重元素の化合物を含んでいた(重元素は、ユーロピウム、ガドリウム、イットリウム、鉄、ストロンチウム及びルテニウムである)。
【0005】
MZMを誘起することはまた、典型的に、静電ポテンシャルでナノワイヤをゲート制御することを必要とする。静電ポテンシャルは、ゲート電極を用いて印加される。静電ポテンシャルを印加することは、半導体コンポーネントの伝導帯又は価電子帯における電荷キャリアの数を操作する。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本発明は半導体デバイスを提供する。当該半導体デバイスは、結晶基板と、該結晶基板上にエピタキシャルに配置されたナノワイヤとを有する。該ナノワイヤは、上記基板の上に配置されたゲーティング層と、ゲーティング層の上に配置された量子井戸と、ゲーティング層と量子井戸との間に配置された中間バリアと、量子井戸の上に配置された上部バリアと、を有する。ナノワイヤにゲーティング層を組み込むことにより、基板がボトムゲートを組み込む必要なしに、量子井戸のボトムゲーティングが可能になる。
【0007】
関連する一態様は、半導体デバイスを動作させる方法を提供する。当該方法は、ゲーティング層に静電ポテンシャルを印加することを有し、それにより、ゲーティング層が、量子井戸をゲート制御するためのゲート電極として機能する。
【0008】
他の一態様は、量子井戸をゲート制御するための半導体層の使用を提供し、当該半導体層は量子井戸の下にあり、当該半導体層と量子井戸との間に中間バリアが存在し、中間バリアが更なる半導体の層を有する。半導体層、量子井戸、及び中間バリアは各々、ナノワイヤのコンポーネントとし得る。当該使用は、ここに記載されるようなデバイスの文脈においてとし得る。
【0009】
より更なる一態様において、本発明は、半導体デバイスを製造する方法を提供する。当該方法は、結晶基板の上にマスクを形成するステップであり、該マスクは、ナノワイヤを成長させるためのエリアを画成する開口を持つ、ステップと、続いて、該エリア内で結晶基板上にエピタキシャルにナノワイヤを成長させるステップと、を有する。ナノワイヤを成長させることは、上記基板の上に下部バリアを成長させ、該下部バリアの上にゲーティング層を成長させ、該ゲーティング層の上に中間バリアを成長させ、該中間バリアの上に量子井戸を成長させ、該量子井戸の上に上部バリアを成長させる、ことを有する。
【0010】
この概要は、詳細な説明で更に後述される複数の概念の一部を簡略化した形態で紹介するために提示されるものである。この概要は、特許請求される事項の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではないし、特許請求される事項の範囲を限定するために使用されることを意図したものでもない。特許請求される事項は、ここに記載される欠点のいずれか又は全てを解決する実装に限定されるものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の実施形態の理解を助けるとともに、それらの実施形態がどのように実施され得るかを示すために、単に例として、添付の図面を参照する。
【
図1】半導体デバイスの一例を示す概略斜視図である。
【
図2】半導体デバイスのゲート電極の例示的な構成を示している。
【
図3】一組の電気コンタクトの第1の例を含む半導体デバイスの一例の側面図である。
【
図4】一組の電気コンタクトの第2の例を含む半導体デバイスの一例の斜視図である。
【
図6】半導体デバイスを製造する方法を概説するフローチャートである。
【0012】
図面は概略的であり、縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
動詞‘有する’は、ここでは‘含む又はからなる’の省略表現として使用される。換言すれば、動詞‘有する’は、閉じていない用語であることを意図しているが、特に、化学組成に関連して使用される場合、閉じた用語‘からなる’でのこの用語の置き換えが明示的に企図される。
【0014】
例えば“頂部”、“底部”、“左”、“右”、“上”、“下”、“水平”、及び“垂直”などの方向用語は、ここでは説明の便宜上使用され、関連する図に示された向きに関する。誤解を避けるために、この用語は、外部座標系におけるデバイスの向きを限定することを意図していない。
【0015】
ここで使用されるとき、用語“超伝導体”は、その材料の臨界温度Tcより低い温度に冷却されたときに超伝導となる材料を指す。この用語の使用は、デバイスの温度を限定することを意図していない。
【0016】
“ナノワイヤ”は、ナノスケール幅と、少なくとも10、又は少なくとも100、又は少なくとも500、又は少なくとも1000の長さ対幅の比とを持つ細長い部材である。ナノワイヤは典型的に、10-500nm、オプションで50-100nm又は75-125nmの範囲内の幅を持つ。長さは典型的に、例えば少なくとも1μm又は少なくとも10μmといった、マイクロメートルのオーダーのものである。例えば、ナノワイヤは、2-20μmの範囲内の長さと、40-200nmの範囲内の幅とを持ち得る。
【0017】
“半導体-超伝導体ハイブリッド構造”は、特定の動作条件下で互いに結合され得る半導体コンポーネント及び超伝導体コンポーネントを有する。特に、この用語は、例えばマヨラナゼロモードなどのトポロジカル挙動又は量子コンピューティング用途に有用な他の励起を示すことが可能な構造を指す。動作条件は、一般に、構造体を超伝導体コンポーネントのTcより低い温度に冷却すること、構造体に磁場を印加すること、及び構造体に静電ゲーティングを適用することを有する。一般に、半導体コンポーネントの少なくとも一部は超伝導体コンポーネントと密接に接触し、例えば、超伝導体コンポーネントが半導体コンポーネント上にエピタキシャル成長され得る。しかしながら、半導体コンポーネントと超伝導体コンポーネントとの間に1つ以上の更なるコンポーネントを持つ特定のデバイス構造が提案されている。
【0018】
半導体デバイスをゲート制御することには様々な手法がとられてきた。ボトムゲーティング型デバイスを提供することが特に有用であろう。
【0019】
蒸気-液体-固体(vapour-liquid-solid;VLS)成長ナノワイヤのためにボトムゲーティングを実装することは比較的簡単である。VLSナノワイヤを含むデバイスを製造するには、先ず、成長基板上にナノワイヤが成長される。VLSによって生成されるナノワイヤは垂直に配向され:それらの長さ軸は成長基板の面に垂直である。次いで、ナノワイヤが成長基板から劈開され、デバイス基板上に水平向きに配置される。ナノワイヤを付与する前に、デバイス基板上に前もって、例えばパターニングされた金属層の形態をしたボトムゲート電極が形成され得る。
【0020】
VLSナノワイヤに基づくデバイスは、成長基板からナノワイヤを劈開する要件のために、限られたスケーラビリティを持つ。ナノワイヤを位置付けることは、繊細で時間のかかるプロセスであり、デバイスの複雑さが増すにつれて急速に非実用的になる。
【0021】
ナノワイヤを製造する他の一手法は選択エリア成長である。選択エリア成長はマスクの使用を伴い、該マスクの開口によって画成されるエリア内に結晶半導体が選択的に成長されることを可能にする。選択エリア成長は水平配向ナノワイヤを形成し、それがデバイス基板上に直接成長される。従って、劈開又は転写は行われない。これは、ナノワイヤの比較的複雑なネットワークを生成することを可能にし得る。
【0022】
選択エリア成長ナノワイヤのボトムゲーティングは難題である。1つの手法は、例えば、マスクを形成する前に基板の表面にわたって導電性バッファ層を形成することによって、基板をボトムゲートとして構成するものである。このアプローチは、ボトムゲーティングが達成されることを可能にするが、制限を持つ。導電性バッファ層は、可能な回路設計を制限する。また、導電性バッファ層が形成された後にマスクが形成されるので、ナノワイヤとバッファ層との間に電荷トラップが生成され得る。これは、デバイスの性能に悪影響を及ぼし得る。
【0023】
ここでは、絶縁性の基板の使用を可能にしながら選択エリア成長ナノワイヤにボトムゲートを組み込む半導体デバイスが提供される。当該デバイスは、特にキュービットデバイスのコンポーネントとして有用であり得るが、量子井戸をボトムゲート制御することが望まれる他の状況にも適用可能である。
【0024】
次に、
図1を参照して、一例の半導体デバイス100を説明する。当該デバイスは、基板110上に配置されたナノワイヤを有する。
図1は、デバイス100の概略斜視図である。
【0025】
デバイス100は基板110を含んでいる。該基板は、ウエハ、すなわち、一片の単結晶材料を有する。ウエハ材料の一例はインジウム燐である。ウエハ材料の他の例は、ガリウム砒素、インジウムアンチモン、インジウム砒素、及びシリコンを含む。
【0026】
基板はウエハからなり得る。あるいは、基板は、例えば集積電気回路などの追加の構造を更に有した機能化ウエハであってもよい。
【0027】
ウエハ上には誘電体マスク112が配置されている。ここで提供されるナノワイヤは、選択エリア成長を用いて製造され得る。選択エリア成長は、マスク112を利用して、コンポーネントのエピタキシャル成長が行われる位置を制御する。マスク112は、成長中に選択性を提供する任意の材料を有することができ、特に、アモルファス誘電体材料を有し得る。このコンポーネントは、例えば分子線エピタキシ(“MBE”)、有機金属気相エピタキシ(“MOVPE”)、又はこれらに類するものなどの技術を用いて成長され得る。マスク112は典型的に、コンポーネントを成長させた後に除去されず、従って、完成したデバイス内に存在したままである。マスクを形成するのに有用な誘電体材料の例は、酸化シリコンSiOx、窒化シリコンSiNx、酸化アルミニウムAlOx、及び酸化ハフニウムHfOxを含む。
【0028】
この例では選択エリア成長によって得ることができるナノワイヤ(“SAGナノワイヤ”としても参照する)であるナノワイヤは、基板110の表面から誘電体マスク112の開口を通って延びる。ナノワイヤは水平に配向される。換言すれば、ナノワイヤの長さ次元が基板の表面に平行である。
図1に示すナノワイヤの相対的な高さは誇張されている。
【0029】
ナノワイヤは複数の層を有し、バリア層130、150、170を更に有するサンドイッチ構造内に配置されたゲーティング層140及び量子井戸160を含む。量子井戸160は、デバイスの活性領域であり、使用時に、関心ある量子励起がこの層内で生成される。ゲーティング層140は、量子井戸160のボトムゲートとして機能する。
【0030】
基板とは対照的にSAGナノワイヤ自体の中にボトムゲートを組み込むことにより、基板にボトムゲートを組み込むことによって課される設計制約が取り除かれる。一例として、基板は絶縁基板であってもよく、それにより、基板上に電気回路を形成することを可能にする。これは、より広範なシステムに当該半導体デバイスを組み込むことを可能にし得る。
【0031】
ゲーティング層140の性質は、電圧源に接続されたときに、量子井戸160をゲート制御するための静電界をゲーティング層140が提供可能であれば、特に限定されない。ゲーティング層140は量子井戸であってもよい。あるいは、ゲーティング層140は、半導体、特に、ドープされた半導体であってもよい。ドープされた半導体は、アンドープの半導体と比較して相対的に高い導電率を持つ。
【0032】
次に、このナノワイヤ例の中に存在する様々な層の各々を順に説明する。
【0033】
このナノワイヤ例の最下層は、オプションのバッファ層120である。バッファ層120は、結晶基板110の表面上にエピタキシャルに配置される。ナノワイヤはエピタキシャル成長によって形成されるので、ナノワイヤの直に隣接する層間の良好な格子整合が望ましい。換言すれば、隣接する層は、望ましくは、可能な限り同様の格子定数を持つ。この目的のために、バッファ層120は、結晶基板の格子定数と、この例では下部バリア130である次の層の格子定数との間の格子定数を持つように選択された材料を有し得る。デバイスの任意の2つのコンポーネント間に適切なバッファ層が設けられてもよい。
【0034】
バッファ層120の上に下部バリア130が配置されている。下部バリアは、ゲーティング層140内に電荷を局在化させる働きをする絶縁コンポーネントである。下部バリアは、単一材料の層を有してもよいし、2つ以上の異なる材料の複数の層を有してもよい。例えば、下部バリアは、2つの異なる材料の層の交互スタックを有し得る。そのような層の数は特に限定されない。
【0035】
ナノワイヤのコンポーネントは、III-V半導体材料又はII-VI半導体材料を有し得る。III-V族半導体材料は、インジウム、アルミニウム及びガリウムから選択される少なくとも1つのIII族元素と、ヒ素、リン及びアンチモンから選択される少なくとも1つのV族元素とを有する化合物又は合金とし得る。
【0036】
バッファ層及び/又は下部バリア層は、例えば、各々独立に、式1:
AlxInyGazAs
の材料を含むことができ、x、y、及びzの値は独立に選択され、0から1の範囲である。x、y、及びzは合計で1とし得る。この材料は、インジウム砒素、アルミニウムインジウム砒素、インジウムガリウム砒素、アルミニウムガリウム砒素、及びアルミニウムインジウムガリウム砒素から選択され得る。
【0037】
別個のバッファ層を含めることはオプションであり、下部バリア層が基板の表面上に直接配置されてもよい。下部バリア層は、2つ以上の異なる材料を有した2つ以上の層を有してもよい。各材料が式1の材料であるとし得る。
【0038】
ゲーティング層140が、下部バリア130上に配置され、下部バリア130と中間バリア150との間に挟まれる。ゲーティング層140は、下部バリア130及び中間バリア150のバンドギャップと比較して相対的に小さいバンドギャップを持つ半導体材料の層を有する。
【0039】
ゲーティング層140は式1の材料を有し得る。x、y、及びzの値を変えることによって、材料の電子特性、特にバンドギャップを制御することが可能である。例えば、バリア層はアルミニウムガリウム砒素を有することができ、量子井戸層はガリウム砒素を有することができる。
【0040】
使用時、ゲーティング層140は導電層として機能し、電荷がゲーティング層140内に局在化される。これは、ゲーティング層140が量子井戸160をゲート制御するためのゲート電極として動作されることを可能にする。
【0041】
ゲーティング層140上に中間バリア150が配置される。下部バリア130と同様に、中間バリア150は絶縁コンポーネントである。中間バリア150は、ゲーティング層140と量子井戸160との間の電流の流れを防止するためのゲート誘電体として機能する。
【0042】
中間バリア150は、下部バリア130と同様の構造を持つことができ、例えば式1の材料といった、比較的高いバンドギャップの(1つ以上の)半導体材料の1つ以上の層を有することができる。
【0043】
図示した例において、中間バリアは、第1の層152、第2の層154、及び第3の層156を有している。複数の層からバリアを構築することは、欠陥フィルタリングを提供することができ、すなわち、使用される材料の結晶構造内の転位の影響を低減させることができる。
【0044】
中間バリア150上に量子井戸160が配置される。量子井戸160は、バリアのバンドギャップと比較して相対的に小さいバンドギャップを持つ半導体材料の層を有し得る。量子井戸を形成するのに有用な材料は、例えば、Odoh及びNjapba,“A Review of Semiconductor Quantum Well Devices”,Advances in Physics Theories and Applications,vol.46,2015,pp.26-32、及び、S.Kasap,P.Capper(編集),“Springer Handbook of Electronic and Photonic Materials”,DOI 10.1007/978-3-319-48933-9_40に記載されている。
【0045】
量子井戸160は、半導体デバイスの活性作動コンポーネントである。使用時、例えばマヨラナゼロモードなどの関心ある励起が量子井戸160内に生成されることができ、ゲーティング層140が量子井戸160のボトムゲートとして働く。
【0046】
この例では、量子井戸160の上に上部バリア170が配置されている。上部バリア170は、構造において下部及び中間バリア130、150と同様とし得る。上部バリア170は、式1の材料の1つ以上の層を有し得る。
【0047】
上部バリア170上に超伝導体コンポーネント180が配置される。このデバイス例は、半導体-超伝導体ハイブリッドデバイスとして構成されている。換言すれば、超伝導体コンポーネント180が、量子井戸160の材料と、量子井戸160とのエネルギー準位混成を受けるように構成され得る。上部バリア170は、量子井戸160と超伝導体コンポーネント180との間の相互作用の強さを調整する働きをすることができる。
【0048】
存在する場合、超伝導体の性質は特に限定されず、適宜に選択され得る。該超伝導体は、典型的には、s波超伝導体である。当技術分野で知られている様々なs波超伝導体のいずれが使用されてもよい。例は、アルミニウム、インジウム、錫、及び鉛を含み、一部の状況ではアルミニウムが好ましい。アルミニウムが使用される実施形態において、超伝導体コンポーネントは、例えば、3-20nmの範囲内の厚さを持ち得る。
【0049】
図示した構造には様々な変更が為され得る。例えば、上部バリア170はオプションであり、省略されてもよい。超伝導体コンポーネント180は省略されてもよい。当該デバイスは、2つ以上の量子井戸を含んでもよい。当該デバイスは、2つ以上のゲーティング層を含んでもよい。例えば、超伝導体コンポーネント180を、トップゲートとして機能するように構成された更なるゲーティング層で置き換えることができる。
【0050】
第1の量子井戸140によって提供されるボトムゲーティングは、他の形態のゲーティングと組み合わせて使用されてもよい。デバイスの異なる部分が異なってゲート制御されることで、デバイスの挙動のいっそう精緻な制御を可能にし得る。次に、
図2を参照して、ここに記載される半導体デバイスに対する追加のゲート電極の構成例を説明する。
図2は、例示的なデバイスの簡略化された概略断面図である。
【0051】
一般に、ゲーティングを提供するための構造は、ゲート電極と、ゲート電極とデバイスの更なるコンポーネントとの間の電流の流れを防止するためのゲート誘電体とを含む。このような構造はゲートスタックと称され得る。
【0052】
図2は、
図1を参照して説明したような、誘電体マスク212、半導体デバイス220、及び基板210を含んだ、一例のデバイス200を示している。半導体デバイス220の詳細は、表現の明瞭さのために図から省略されている。デバイス200は、サイドゲーティング及びトップゲーティングされる点でデバイス100と異なる。
【0053】
サイドゲーティングはサイドゲート230によって提供される。サイドゲート230は、空間Sによって半導体デバイス220から横方向に離隔された電極である。該空間は、サイドゲート230と半導体デバイス220との間のゲート誘電体として機能する。図示のように空間Sはエンプティ空間であってもよいし、該空間内に誘電体材料の層が設けられてもよい。
【0054】
図2は更に、トップゲートのためのゲートスタックの一例を示している。該ゲートスタックは、ゲート電極240及びゲート誘電体242を含んでいる。ゲート電極240は、半導体デバイス220の上を延在し、ゲート誘電体242によって半導体デバイス220から離隔される。
【0055】
ゲート誘電体を形成するのに有用な材料の例は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、及び窒化シリコンを含む。ゲート誘電体242は単一の層として示されているが、誘電体材料の2つ以上の層が存在してもよい。
【0056】
半導体コンポーネントとゲートスタックとの間に超伝導体コンポーネントが配置される場合、超伝導体コンポーネントは、ゲートスタックによって印加される静電界から半導体コンポーネントを遮蔽し得る。従って、典型的に、超伝導体コンポーネントを含まないデバイスの部分にトップゲーティング又はサイドゲーティングが適用される。あるいは、トップゲート又はサイドゲートが、超伝導体コンポーネントを担持していない半導体コンポーネントの面と揃えられ得る。
【0057】
図示した例は、トップゲート及びサイドゲートを含んでいる。実際には、デバイスは如何なる数のゲートを含んでもよく、各ゲートの性質が独立に適宜に選択され得る。
【0058】
使用時、ゲーティング層及び量子井戸は各々、それぞれの電気コンタクトに接続される。電気コンタクトは様々な方式で配置され得る。第1の配置例を、一例のナノワイヤの長さに沿った断面図である
図3に示す。
【0059】
一例のナノワイヤ300は、ゲーティング層340及び量子井戸360を含んでいる。ゲーティング層340は、下部バリア330と中間バリア350との間に挟まれている。量子井戸360は、中間バリア350と上部バリア370との間に挟まれている。超伝導体コンポーネント380が、量子井戸360の上に配置され、上部バリア370によって量子井戸360から離隔されている。これらのゲーティング層、量子井戸、バリア、及び超伝導体コンポーネントは、
図1を参照して前述した通りとし得る。
【0060】
端部領域において、ナノワイヤ300は、ゲーティング層340用の第1の電気コンタクト390と、量子井戸360用の第2の電気コンタクト395に接続している。
【0061】
短絡を生じることを回避するために、第1の電気コンタクト390及び第2の電気コンタクト395は互いに絶縁される。図示した例では、例えばエッチングによって、上部バリア層370及び量子井戸360の一部が除去されている。下部バリア330、ゲーティング層340、及び中間バリア350は、上部バリア層370及び量子井戸360よりも更に先まで延在している。これは、第1の電気コンタクト390が第2の電気コンタクト395aから横方向に離隔されることを可能にしている。
【0062】
第1の電気コンタクト390を下部バリア330上に配置し、第2の電気コンタクトを中間バリア350上に配置することによって、第1の電気コンタクト390と第2の電気コンタクト395aとの間の垂直方向の隔たりが設けられている。
【0063】
ゲーティング層340は、量子井戸360に静電界を印加するためのものである。従って、ゲーティング層は典型的に1つの電気コンタクト390のみに接続される。電流がゲーティング層340を通って流れる必要はない。
【0064】
対照的に、量子井戸360を通る電流の流れを可能にすることが望ましいと言える。従って、量子井戸360は典型的に、ナノワイヤ300の第2端に配置された更なる電気コンタクト395bに接続する。
【0065】
電気コンタクトの第2の配置例を
図4及び
図5に示す。
図4は、一例のデバイス400の一端の領域の概略斜視図であり、
図5は、デバイス400の概略平面図である。
【0066】
図1のデバイスと同様に、一例のデバイス400は、下部、中間、及び上部バリア430、450、470によって挟まれたゲーティング層440及び量子井戸460を含んでいる。量子井戸460の上で、超伝導体コンポーネント480が上部バリア470上に配置されている。
【0067】
一例のデバイス400は、ナノワイヤの一端が分岐して2つのリム402、404に分かれているという点でデバイス300と異なる。
図5に示すように、ナノワイヤは、平面視したときに、‘T’字ジャンクションに似たセクションを含む。ゲーティング層440用の第1の電気コンタクト490は、ナノワイヤの第1リム402に接続し、量子井戸460用の第2の電気コンタクト495aは、ナノワイヤの第2リム404に接続する。
【0068】
ゲーティング層440へのより容易な接続を可能にするために、上部バリア470及び量子井戸460は、例えばエッチングによって、第1リム402から選択的に除去され得る。
【0069】
これらの電気コンタクトを分岐ナノワイヤの相異なるリム上に配置することは、短絡を回避するための一技術である。加えて、この構成は、ゲーティング層440がゲート電極として動作し続けることを可能にしながら量子井戸460を選択的に空乏化させるように動作され得るカッターゲート499を含めることを可能にする。
【0070】
カッターゲート499は、分岐ナノワイヤの第2リム404上に配置される。第1リム402上の第1の電気コンタクト490はカッターゲート499の下流である。カッターゲート499は一片の材料として図示されている。実際には、カッターゲートからの電流の流れを防止するためのゲート誘電体が、カッターゲート499とデバイスの残りのコンポーネントとの間に配置される。カッターゲート499は、図示のようにラップアラウンドゲートであってもよいし、任意の他の適切な形態をとってもよい。
【0071】
使用時、カッターゲート499は、量子井戸460を電気コンタクト495からアイソレートするように動作されることができる。これは、ナノワイヤのリム上でのカッターゲート499の配置により、同時にゲーティング層440を第1の電気コンタクト490からアイソレートすることなしに達成されることができる。これは、カッターゲート及びゲーティング層が互いに別々且つ独立に動作されることを可能にする。
【0072】
デバイス300と同様に、量子井戸460用の更なる電気コンタクト495bが、ナノワイヤの反対側の端部に設けられ得る。
【0073】
図示した構造には様々な変更が為され得る。
【0074】
第1の電気コンタクト490を担持する分岐402は、ナノワイヤの端部近くにあるものとして図示されている。しかしながら、分岐402は、分岐402が第2の電気コンタクトとはカッターゲートの反対側にある限り、ナノワイヤの長さに沿った任意の箇所にあってもよい。
【0075】
図示した例は単一のカッターゲート499を持っている。更なる電気コンタクト495bと分岐402との間に更なるカッターゲートが配置されてもよい。
【0076】
図示した分岐はT字ジャンクションの形態をとっているが、分岐とナノワイヤの長さとの間の角度は、必ずしも直角である必要はなく、適宜に選択され得る。
【0077】
ここでは、半導体デバイスを動作させる方法も提供される。当該デバイスが超伝導体コンポーネントを含む実装において、当該デバイスは、例えば適切な極低温チャンバを用いて、半導体コンポーネントの動作温度まで冷却され得る。磁場が当該デバイスに印加されてもよい。静電ポテンシャルがゲーティング層に印加される。これは、ゲーティング層に、量子井戸でゲート制御するためのゲート電極として挙動させる。例えばマヨラナゼロモードといった有用な量子状態が量子井戸内に生成され得る。量子井戸に対して測定が行われ得る。当該デバイスは、例えばキュービットデバイスのコンポーネントとして使用され得る。
【0078】
次に、
図6を参照して、ここで提供される半導体デバイスを製造する方法の一例を説明する。
図6は、当該方法を概説するフロー図である。
【0079】
当該方法は、選択エリア成長を用いてデバイスの半導体コンポーネントを製造し、次いで、例えば電気コンタクトを付加すること及び超伝導体コンポーネントを形成することなどの、任意の所望のポスト製造処理を行うことを含む。
【0080】
ブロック601にて、結晶基板の上にマスクは形成される。マスクは、半導体コンポーネントが成長されることになるエリアを画成する少なくとも1つの開口を持つ。マスクは、任意の適切な技術によって形成されることができる。典型的に、マスクは、例えば電子ビームリソグラフィなどのリソグラフィプロセスによって形成される。
【0081】
電子ビームリソグラフィを用いてマスクを形成することは、例えばスピンコーティングによって、レジストの層を結晶基板に塗布し、レジストの領域を選択的に電子ビームに曝し、次いでレジストを現像してマスクを形成することを有する。
【0082】
続いて、マスク内の開口によって画成されたエリア内に半導体デバイスの様々な層が順に成長される。これらの層は、分子線エピタキシ、有機金属気相エピタキシ(“MOVPE”)、又は結晶材料をエピタキシャル成長させるための任意の他の好適プロセスによって成長され得る。
【0083】
成長処理の各々が同一の成長チャンバ内で行われてもよい。成長工程の全てが完了するまで同一の成長チャンバ内に基板が維持され得る。換言すれば、基板は好ましくは、成長工程の間に大気に曝されない。これは、層間の界面の品質を向上させ、それにより、電荷トラップの生成を回避し得る。電荷トラップはデバイスの性能を低下させ得る。例えば、基板の表面全体を覆うバッファ層としてなど、マスクを形成する前にボトムゲートが形成される場合、電荷トラップが生成されることが見出されている。
【0084】
成長処理は、ブロック602にて、マスク内の開口によって画成されたエリアにナノワイヤの下部バリア部分を成長させることを含む。オプションで、この工程に先立って、開口内にバッファ層を成長させる処理が行われ得る。下部バリアが複数の材料層を含む実装では、各層が順次に堆積される。
【0085】
ブロック603にて、下部バリアの上にゲーティング層が成長される。
【0086】
次いで、ブロック604にて、ゲーティング層の上に中間バリアが成長される。ブロック602の処理と同様に、中間バリアが複数の層を含む実装では、中間バリアが層ごとに構築される。
【0087】
次いで、ブロック605にて、中間バリアの上に量子井戸が成長される。
【0088】
続いて、ブロック606にて、量子井戸の上に上部バリアが成長され得る。上部バリアは、下部バリア及び中間バリアと同様に複数の材料層を含んでもよいし、単一の層であってもよい。
【0089】
半導体コンポーネントを成長させた後に、ナノワイヤの上に超伝導体コンポーネントが製造され得る。例えば、超伝導体の層が、基板の表面の上にグローバルに堆積され、次いで、当該超伝導体の層から所望の超伝導体コンポーネントをパターン形成するように選択的にエッチングされ得る。この堆積は、上記成長工程と同じチャンバ内で行われてもよいし、異なる装置を用いて行われてもよい。一部の実装において、チャンバは真空チャンバとし得る。そのような実装では、超伝導体材料を堆積させた後まで基板を真空下に維持することができる。
【0090】
その後、電気コンタクト及び/又は追加のゲート電極がデバイスに付加され得る。デバイスが超伝導体コンポーネントを有する実装において、電気コンタクト及び/又はゲート電極は、超伝導体コンポーネントと同時に形成されてもよいし、例えば金などの非超伝導金属から形成されてもよい。電気コンタクトを形成する前に、例えば、
図3及び
図4に示した構成を形成するなど、ゲーティング層及び量子井戸への容易なアクセスを可能にするために、ナノワイヤの一部が選択的にエッチングされ得る。2つ以上の材料が除去される実装において、該エッチングは複数の順次のエッチング工程を有し得る。
【0091】
理解されることには、以上の実施形態は単に例として記載されたものである。
【0092】
より一般的には、ここに開示される一態様によれば、結晶基板と、該結晶基板上にエピタキシャルに配置されたナノワイヤと、を有する半導体デバイスが提供される。ナノワイヤは、ゲーティング層と、ゲーティング層の上に配置された量子井戸と、ゲーティング層と量子井戸との間に配置された中間バリアと、量子井戸の上に配置された上部バリアとを有する。ナノワイヤ内にゲーティング層を含めることにより、基板の変更を必要とすることなく、量子井戸をボトムゲーティングすることが可能になる。基板を変更することなくボトムゲーティングを可能にすることは、絶縁性の基板を使用し得るので、より広範な回路設計を可能にし得る。
【0093】
ゲーティング層は量子井戸であってもよい。
【0094】
ナノワイヤは選択エリア成長ナノワイヤとすることができる。ナノワイヤは、マスクによって囲まれた外周を持つことができる。マスクはハードマスクとし得る。基板の表面とマスクとの間に回路を配置することができる。
【0095】
当該半導体デバイスは更に、上部バリアの上に配置された超伝導体コンポーネントを有することができる。超伝導体コンポーネントをデバイスに組み込むことは、興味深い量子力学的挙動をデバイス内で誘起することを可能にし得る。例えば、一部の実装において、マヨラナゼロモードが量子井戸内に生成され得る。特に、デバイスがキュービットデバイスに組み込まれる実装において、デバイスは超伝導体コンポーネントを含み得る。
【0096】
当該半導体デバイスは更に、結晶基板とゲーティング層との間に配置された下部バリアを有し得る。これは、改善された電子特性を得ることを可能にし得る。下部バリアは、2つ以上の異なる材料の2つ以上の層を含み得る。2つ以上の層から下部バリアを形成することは、欠陥フィルタリングを提供し得る。
【0097】
結晶基板と下部バリアとの間にバッファ層が配置されてもよい。バッファ層は、下部バリアがより容易に成長されることを可能にし得る。
【0098】
中間バリアは、少なくとも2つの異なる材料の層を有してもよい。バリアを多層構造として構成することにより、バリアの電子特性が向上され得る。例えば、2つ以上の層の使用は欠陥フィルタリングを提供し得る。
【0099】
量子井戸のボトムゲーティングを可能にするゲーティング層に加えて、当該半導体デバイスは更に、追加のゲート電極を有してもよい。例えば、当該デバイスは、ナノワイヤの上にゲートスタックを配置することによってトップゲートを含むことができる。代わりに、あるいは加えて、当該半導体デバイスは更にサイドゲートを有してもよい。
【0100】
当該半導体デバイスは更に、ゲーティング層に接続された第1の電気コンタクトと、量子井戸に接続された第2の電気コンタクトとを有し得る。例えば第2の電気コンタクトとはナノワイヤの反対の端部で、量子井戸に第3の電気コンタクトも接続され得る。ゲーティング層は、量子井戸に静電界を印加するためのものであり、ちょうど1つの電気コンタクトを持つとし得る。
【0101】
ナノワイヤは分岐されてもよく、第1リム及び第2リムを持つことができる。第1の電気コンタクトが第1リムに接続され得るとともに、第2の電気コンタクトが第2リムに接続され得る。このような実装において、当該半導体デバイスは更に、量子井戸を電気的に空乏化させるためのカッターゲートを有することができ、カッターゲートは、第2リムをゲート制御するように構成される。この構成は、量子井戸がその電気コンタクトからアイソレートされることを可能にしながら、同時にゲーティング層がゲート電極として独立して動作し続けることを可能にする。
【0102】
カッターゲートはラップアラウンドゲートとし得る。ラップアラウンドゲートは、ナノワイヤの2つ以上の面から静電界を印加し得るので、向上されたゲーティングを提供し得る。
【0103】
関連する一態様は、半導体デバイスを動作させる方法を提供する。当該方法は、ゲーティング層に静電ポテンシャルを印加することを有し、それにより、ゲーティング層が、量子井戸をゲート制御するためのゲート電極として機能する。ナノワイヤの構成は、ゲーティング層が量子井戸をゲート制御するためのボトムゲートとして動作することを可能にする。
【0104】
他の一態様は、量子井戸をゲート制御するための半導体層の使用を提供し、当該半導体層は量子井戸の下にあり、当該半導体層と量子井戸との間に中間バリアが存在し、中間バリアが更なる半導体の層を有する。半導体層、量子井戸、及び中間バリアは各々、ナノワイヤのコンポーネントとし得る。当該使用は、ここに記載されるようなデバイスの文脈においてとし得る。
【0105】
より更なる一態様は、半導体デバイスを製造する方法を提供する。当該方法は、結晶基板の上にマスクを形成するステップであり、該マスクは、ナノワイヤを成長させるためのエリアを画成する開口を持つ、ステップと、続いて、該エリア内で結晶基板上にエピタキシャルにナノワイヤを成長させるステップと、を有する。換言すれば、ナノワイヤが選択エリア成長によって成長される。ナノワイヤを成長させることは、
基板の上に下部バリアを成長させ、
下部バリアの上にゲーティング層を成長させ、
ゲーティング層の上に中間バリアを成長させ、
中間バリアの上に量子井戸を成長させ、
量子井戸の上に上部バリアを成長させる、
ことを有する。
【0106】
成長処理は、1つの成長チャンバ内で行われることができる。成長動作が完了するまで基板を成長チャンバ内に保持することができる。例えば、ナノワイヤが真空チャンバ内で成長される実装において、少なくともナノワイヤの成長が完了するまでナノワイヤを真空下に保つことができる。開放雰囲気への基板の曝露を回避することで汚染を回避することができ、これは、層間のより高品質の界面が得られることを可能にし得る。例えば、電荷トラップの形成が回避され得る。これは、完成したデバイスの動作特性を改善し得る。
【0107】
当該方法は更に、デバイス態様を参照してここで説明された更なる要素のうちのいずれかを製造することを有し得る。例えば、当該方法は更に、上部バリアの上に超伝導体コンポーネントを形成することを有し得る。
【0108】
マスクは、ナノワイヤが分岐して第1リム及び第2リムを含むことになるように構成されることができる。当該方法は更に、ナノワイヤを成長させた後に、ナノワイヤの第1リムを選択的にエッチングしてゲーティング層の一部を露出させることを有し得る。
【0109】
ナノワイヤのコンポーネントは、任意の適切なプロセスによって成長され得る。例えば、ナノワイヤは分子線エピタキシによって成長され得る。
【0110】
ここでの開示を所与として、当業者には、開示された技術の他の変形又はユースケースが明らかになり得る。本開示の範囲は、記載された実施形態によって限定されるものではなく、添付の請求項によってのみ限定される。
【国際調査報告】