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特表2024-5195861-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンを含む新規な注射用製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-17
(54)【発明の名称】1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンを含む新規な注射用製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/40 20060101AFI20240510BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240510BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240510BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240510BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K31/40
A61P1/04
A61P31/04
A61P29/00
A61K9/08
A61K47/40
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571143
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 KR2022007479
(87)【国際公開番号】W WO2022250469
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067636
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0064451
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOONG PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】35-14,Jeyakgongdan 4-gil,Hyangnam-eup,Hwaseong-si,Gyeonggi-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヨンジン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,サンウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,グァンヨン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC04
4C076CC16
4C076CC32
4C076DD23D
4C076DD38D
4C076DD41Z
4C076DD67D
4C076EE39
4C076FF14
4C086AA01
4C086BC05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA10
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZB11
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンまたはその薬学的に許容可能な塩を含む注射用製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩;シクロデキストリン;および等張化剤を含み、
pHは、4.0~6.0である、
注射用製剤。
【化1】
【請求項2】
前記シクロデキストリンは、(2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリン、またはスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリンである、
請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項3】
前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、前記シクロデキストリンを4.5~15.0重量部含む、
請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項4】
前記等張化剤は、塩化ナトリウム(NaCl)、D-マンニトール、デキストロース、グリセリン、または塩化カリウム(KCl)である、
請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項5】
前記注射用製剤のオスモル濃度(osmolarity)は、100~700mOsmol/Lである、
請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項6】
pHは、5.0~6.0である、
請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項7】
前記注射用製剤は、pH調整剤を含まない、
請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項8】
前記注射用製剤は、凍結乾燥補助剤を追加的に含み、
前記凍結乾燥補助剤は、D-マンニトール、スクロース、ソルビトール、またはトレハロースである、
請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項9】
前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比、前記凍結乾燥補助剤を3.0~25.0重量部含む、
請求項8に記載の注射用製剤。
【請求項10】
前記注射用製剤の溶媒は、蒸留水、注射用水、アセテートバッファー(Acetate buffer)、または生理食塩水である、
請求項1に記載の注射用製剤。
【請求項11】
前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、前記注射用製剤中に1~8mg/mL含まれる、
請求項1に記載の注射用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年5月26日付の韓国特許出願第10-2021-0067636号および2022年5月26日付の韓国特許出願第10-2022-0064451号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンを含む新規な注射用製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
同一の活性成分を含む製剤でも製剤に含まれる追加的な構成成分により活性成分の溶解度、溶出特性および生体利用率のような薬学的に重要な性質に差を示し得ることが知られている。したがって、新規な化合物の開発とともに、開発された化合物の薬理効果を最大化させることができる、製剤に含まれる構成成分を開発することも非常に重要である。
【0004】
一方、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンは、韓国特許登録番号第10-1613245号に記載された物質であって、優れた抗-潰瘍活性(つまり、プロトンポンプ抑制活性など)およびヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)除菌活性およびGPCR抑制作用を有することによって、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクター・ピロリによる胃腸管損傷の予防および治療に有用な物質である。
【0005】
ただし、前記物質またはその塩酸塩は、中性pH環境で水溶解度が低く(2.17mg/ml、pH6.8)、溶解度が良い酸性環境では酸分解生成物が増加するなど安定性が良くない問題点を示して、水溶液中で溶解および安定化による注射用製剤化に大きな困難があった。したがって、溶解度および安定性の間の均衡をなすことができる注射用製剤を開発するために、適正pHの調整および医薬活性成分以外の成分の組み合わせが研究される必要性が台頭した。
【0006】
そこで、本発明者らは、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンの溶解度と安定性の改善による注射用製剤化を試みた結果、特定のpH範囲内で特定の等張化剤を含む場合、上記を解決できることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶解度が高くて安定性に優れた、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミン、またはその薬学的に許容可能な塩の注射用製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記の化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩;シクロデキストリン;および等張化剤を含み、この時、pHが4.0~6.0である注射用製剤を提供する。
【化1】
【0009】
前記化1で表される化合物の化学名は、1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンであって、韓国特許登録番号第10-1613245号に記載された物質である。
【0010】
前記化1で表される化合物は、本発明の注射用製剤において薬理効果を示す活性成分であって、優れた抗-潰瘍活性(つまり、プロトンポンプ抑制活性など)およびヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)除菌活性およびGPCR抑制作用を有することによって、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクター・ピロリによる胃腸管損傷の予防および治療に有用な物質である。
【0011】
また、本発明の注射用製剤の薬理効果を示す活性成分として、前記化1で表される化合物以外にも、その薬学的に許容可能な塩を使用することができる。塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩のように、当業界で通常使用される塩を制限なく使用可能である。本発明の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、患者に比較的非毒性の、無害な有効作用を有する濃度として、この塩に起因した副作用が化1で表される化合物の有利な効能を低下させない前記化合物の任意のすべての有機または無機付加塩を意味する。
【0012】
前記化1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩は、無機酸または有機酸を用いて通常の方法で薬学的に許容可能な塩を得ることができる。例えば、前記化1で表される化合物を水混和性有機溶媒、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、またはアセトニトリルに溶解させ、有機酸または無機酸を加えて沈殿した結晶をろ過して製造、乾燥させて薬学的に許容可能な塩を得ることができる。あるいは、酸の付加された反応混合物で溶媒や過剰の酸を減圧して、残渣を乾燥させて製造したり、または他の有機溶媒を加えて析出した塩をろ過して製造することができる。この時、好ましい塩として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、またはトルエンスルホン酸などから誘導された塩が挙げられる。
【0013】
前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、水溶解度が低くて、注射用製剤として製造するためには、過剰の可溶化剤および有機溶剤を必要とする。しかし、過剰の可溶化剤などは、患者への投与時に過敏症を誘発する恐れがある。そこで、本発明では、一般に注射用製剤に使用される可溶化剤を使用しない代わりに、シクロデキストリンおよび等張化剤を使用し、pHを調整することによって、前記化1で表される化合物の優れた溶解度と安定性を同時に有する注射用製剤を確保した。
【0014】
本発明による注射用製剤に使用される成分であるシクロデキストリンは、6~12個のブドウ糖分子がアルファ-1,4-グリコシド結合をした環状のオリゴ糖であって、本発明において安定化剤として使用される。好ましくは、前記シクロデキストリンは、ベータ-シクロデキストリン、またはガンマ-シクロデキストリンであり、より好ましくは、ベータ-シクロデキストリンである。より好ましくは、前記ベータ-シクロデキストリンは、(2-ヒドロキシプロピル)-ベータ-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリンであり、英略字としてはそれぞれ「HP-β-CD」および「SBE-β-CD」である。
【0015】
一般に、注射用製剤に使用される安定化剤の中で、前記シクロデキストリンが前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の安定化のために適する。
【0016】
好ましくは、前記シクロデキストリンは、前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比3.0~25.0重量部使用する。前記含有量が3.0重量部未満の場合には、前記化1で表される化合物の安定化に十分でなくて、注射用製剤の再水和が難しかったり、長期保管時に総類縁物質が増加する問題がある。また、前記含有量が25.0重量部を超える場合には、安定化剤の使用量が過度に多くて、注射用製剤の粘度が高くなったり、または患者への投与時に過敏症を誘発する恐れがある。
【0017】
より好ましくは、前記シクロデキストリンは、前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比3.5重量部以上、4.0重量部以上、または4.5重量部以上であり;20.0重量部以下、19.0重量部以下、18.0重量部以下、17.0重量部以下、16.0重量部以下、15.0重量部以下、14.0重量部以下、13.0重量部以下、12.0重量部以下、11.0重量部以下、または10.0重量部以下である。
【0018】
一方、本発明による注射用製剤に使用される「等張化剤」とは、前記注射用製剤の浸透圧を体内の浸透圧と類似にするために入れる添加剤である。注射用製剤は、別途の希釈過程なしに体内に直接投与されるので、体内投与時の副作用を低減するためには、体内と同一の浸透圧で製造しなければならない。好ましくは、前記等張化剤は、塩化ナトリウム(NaCl)、D-マンニトール、デキストロース、グリセリン、または塩化カリウム(KCl)であってもよく、より好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)、デキストロース、グリセリン、または塩化カリウム(KCl)であってもよく、最も好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)、デキストロース、または塩化カリウム(KCl)であってもよい。
【0019】
前記等張化剤は、電解質または非電解質であるか否かにより、目的とする注射用製剤のオスモル濃度(osmolarity)に到達するために必要な含有量が異なる。したがって、前記等張化剤は、具体的な物質の種類によって本発明による注射用製剤のオスモル濃度が100~700mOsmol/Lとなるように含まれることが好ましい。より好ましくは、前記注射用製剤のオスモル濃度が150~650mOsmol/L、150~450mOsmol/L、250~450mOsmol/L、または270~420mOsmol/Lであってもよい。
【0020】
好ましくは、本発明による注射用製剤のpHは、5.0~6.0である。好ましくは、本発明の注射用製剤は、本発明の液状薬学的組成物自体の化学的特性によって前記pHの範囲を有することが可能で、前記注射用製剤は、pH調整のために追加的なpH調整剤を含まなくてもよい。ここで、pH調整剤はこれを添加することによって、溶液のpHを調整して水難溶性または不溶性化合物の溶解性を向上させる物質であって、製薬学的に許容可能な酸剤またはアルカリ剤が使用される。その例としては、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよびトリエタノールアミンのいずれか1つ以上を使用することができる。
【0021】
好ましくは、本発明による注射用製剤は、凍結乾燥補助剤を追加的に含む。一般に、注射用製剤は、大量生産した後、これを凍結し、減圧下で保管および流通するが、これは活性成分の安定性増進および長期保管安定性を改善させることができる。したがって、凍結乾燥過程で活性物質の安定性が維持されなければならず、そこで、本発明では、凍結乾燥補助剤を追加的に含むことができる。好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、D-マンニトール、スクロース、ソルビトール、またはトレハロースであり、より好ましくは、D-マンニトールである。
【0022】
好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比3.0~25.0重量部使用する。前記含有量が3.0重量部未満の場合には、前記化1で表される化合物の安定化に十分でなくて、注射用製剤の再水和が難しかったり、長期保管時に類縁物質が増加する問題がある。また、前記含有量が25.0重量部超過の場合には、凍結乾燥補助剤の使用量が過度に多くて、注射用製剤の粘度が高くなったり、または患者への投与時に過敏症を誘発する恐れがある。
【0023】
より好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩1重量部対比3.5重量部以上、4.0重量部以上、または4.5重量部以上であり;20.0重量部以下、15.0重量部以下、13.0重量部以下、10.0重量部以下、9.0重量部以下、8.0重量部以下、7.0重量部以下、または6.0重量部以下である。
【0024】
好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記シクロデキストリン1重量部対比0.5~5.0重量部使用する。より好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記シクロデキストリン1重量部対比0.6重量部以上、0.7重量部以上、または0.8以上であり;4.5重量部以下、4.0重量部以下、3.5重量部以下、3.0重量部以下、2.5重量部以下、2.3重量部以下、2.0重量部以下、1.9重量部以下、1.8重量部以下、1.7重量部以下、1.6重量部以下、1.5重量部以下、1.4重量部以下、1.3重量部以下、または1.2重量部以下である。
【0025】
好ましくは、前記注射用製剤は、液状形態の薬学的組成物を製造するために、本発明の属する技術分野における通常の溶媒を使用することができる。一例として、前記注射用製剤の溶媒は、蒸留水、注射用水、アセテートバッファー(Acetate buffer)、または生理食塩水であってもよい。
【0026】
好ましくは、前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、前記注射用製剤中に1~8mg/mL含む。つまり、前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の含有量は、前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の含有量(mg)を前記注射用製剤の総体積(mL)で割った値で定義できる。
【0027】
より好ましくは、前記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、前記注射用製剤中に2mg/mL以上、3mg/mL以上、または4mg/mL以上、または5mg/mL以上であり;7mg/mL以下、6mg/mL以下、または5.5mg/mL以下で含む。
【0028】
また、必要に応じて、本発明による注射用製剤は、保存剤、抗酸化剤などを追加的に含むことができ、前記保存剤および抗酸化剤としては、本発明の属する技術分野で一般に使用されるものであれば特に制限されない。
【0029】
さらに、本発明による注射用製剤は、溶媒を除いた上述した成分を溶媒に混合して製造することができ、この過程で必要に応じて各成分の溶媒への添加順序を調節することができ、またはすべての成分を溶媒に添加する前に混合して溶媒に添加することができる。ただし、このような製造方法に限定されるものではなく、前記注射用製剤の製造は当該技術分野で公知の方法により変形が可能である。
【0030】
前記製造された注射用製剤は、必要に応じて滅菌および/またはろ過段階を適用することができ、保管および流通のために凍結乾燥することができる。
【発明の効果】
【0031】
上述のように、本発明の1-(5-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-((3-フルオロフェニル)スルホニル)-4-メトキシ-1H-ピロール-3-イル)-N-メチルメタンアミンまたはその薬学的に許容可能な塩の注射用製剤は、特定のpH範囲を満足し、等張化剤を含み、溶解度が高くかつ安定性に優れた特性を示すことが可能で、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクター・ピロリによる胃腸管損傷の予防および治療に有用な注射用製剤として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例1】
【0033】
上述した化1で表される化合物の塩酸塩(以下、「API」という)40mgに、下記表1のように記載された組成でpHを調整した溶液をそれぞれ調製した。
【0034】
以後、各調製液をバイアルに充填して液状形態で苛酷条件(60℃、80%RH)のチャンバで4週間保管後に安定性を評価して、その結果を表2に示した。安定性は、液状溶液の類縁物質の含有量をHPLCで分析して、検出された類縁物質の総量を測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
前記表2に示されているように、液状溶液状態で苛酷条件で4週間保管した時、pHが4.0~6.0である#1-2~#1-4の組成物は、相対的に総類縁物質の生成が大きく増加しない安定性を有することを確認した。
【実施例2】
【0038】
実施例1において、総類縁物質の生成が最も少ないpH6.0を選定して、以下の実験を行った。
【0039】
下記表3のように、APIの濃度を異ならせて調製することによって、濃度に応じた性状の褐変様相を確認した。各調製された溶液を肉眼で評価し、その結果を下記表4に示した。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
前記表4に示されているように、低濃度である#2が苛酷条件で4週間保管時にも性状が変化しないことを確認した。
【実施例3】
【0043】
実施例2において、性状が安定していた濃度(4mg/mL)を選定して、以下の実験を行った。
【0044】
下記表5のように、それぞれの等張化剤を溶液の浸透圧が380mOsmol/Lとなるように(または体内浸透圧と類似するように)量を異ならせて調製した。調製された溶液は、実施例1と同様の方法により、苛酷条件(60℃、80%RH)のチャンバで4週間保管して性状および安定性を評価し、その結果を下記表6に示した。
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
前記表6に示されているように、等張化剤が添加された溶液とも苛酷条件で4週間保管しても性状の変化がないことを確認した。そして、特に#3-1~#3-4の組成物は、比較群である#2より総類縁物質の生成程度がより安定した数値を示すことを確認した。
【0048】
参考例1
実施例3において、相対的に安定していた等張化剤の中からNaClを選定して、以下の実験を行った。
【0049】
下記表7のように、pH調整剤を入れなかったり、種類を異ならせて各溶液を調製した。調製された溶液は、実施例1と同様の方法により、苛酷条件(60℃、80%RH)のチャンバで4週間保管して性状および安定性を評価し、その結果を下記表6に示した。
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
前記表8に示されているように、pH調整剤を含まない#4-1は、pH調整剤を含む#3-1または#4-2の組成物より総類縁物質の生成量が少なくて、優れた安定性を有することを確認した。
【0053】
参考例2
実施例3および参考例1で確認した2つの実験群(HCl/NaOH pH調整剤有/無)を選定して、液状組成物状態での長期間保管実験を行った。各実験群の組成は下記表9の通りである。
【0054】
各調製された溶液を加速条件(40℃、75%RH)のチャンバで6ヶ月間保管し、実施例1と同様の方法により、性状および安定性を評価して、その結果を下記表10に示した。
【0055】
【表9】
【0056】
【表10】
【0057】
前記表10に示されているように、pH調整剤を含まない#4-1を液状で長期間保管したにもかかわらず性状の変化がなく、総類縁物質の生成もほとんどなくて、優れた安定性を有することを確認した。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記シクロデキストリン1重量部対比0.5~5.0重量部使用する。より好ましくは、前記凍結乾燥補助剤は、前記シクロデキストリン1重量部対比0.6重量部以上、0.7重量部以上、または0.8重量部以上であり;4.5重量部以下、4.0重量部以下、3.5重量部以下、3.0重量部以下、2.5重量部以下、2.3重量部以下、2.0重量部以下、1.9重量部以下、1.8重量部以下、1.7重量部以下、1.6重量部以下、1.5重量部以下、1.4重量部以下、1.3重量部以下、または1.2重量部以下である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
下記表7のように、pH調整剤を入れなかったり、種類を異ならせて各溶液を調製した。調製された溶液は、実施例1と同様の方法により、苛酷条件(60℃、80%RH)のチャンバで4週間保管して性状および安定性を評価し、その結果を下記表に示した。
【国際調査報告】