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特表2024-519594超音波脊椎手術方法及び関連する手術器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-17
(54)【発明の名称】超音波脊椎手術方法及び関連する手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572161
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-21
(86)【国際出願番号】 US2022026501
(87)【国際公開番号】W WO2022245499
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】17/327,041
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502167588
【氏名又は名称】ミソニクス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Misonix,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】セオドア, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイク, ダン
(72)【発明者】
【氏名】ミクス, ポール
(72)【発明者】
【氏名】バロール, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲヴィチ, シャロン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ42
4C160NN01
(57)【要約】
細長い超音波剥離子シェーバープローブは、シャフトの遠位端から遠位方向及び横方向に延びる横方向に拡大されたヘッドを有し、渦巻状のリブの組を備える。椎間腔の準備処置では、プローブを2つの椎体終板の間の椎間板に挿入し、超音波振動エネルギーをプローブに伝達し、プローブを操作して横方向に拡大したヘッドを椎間板内で3つの空間方向に動かし、それにより椎間腔から摘出される断片に椎間板材料を分断して細片化し、一部は吸引により、一部は鉗子を使用して、椎間板断片を椎体終板の間の作業領域又は手術部位から取り除く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブであって、
細長いシャフトと、
前記プローブに機械的な定在波を発生させるために、前記シャフトを超音波振動エネルギー源に作用可能に結合するための前記シャフトの近位端にあるコネクタと、
前記シャフトの遠位端にある横方向に拡大されたヘッドと
を含み、前記横方向に拡大されたヘッドは、前記シャフトの縦軸に対して直交する向きの主要面にある少なくとも1つの凸状の弓状縁部を含み、前記横方向に拡大されたヘッドは、前記主要面において、一方向での大きさが、該一方向に対して斜めである他の方向での大きさよりも大きく、
前記横方向に拡大されたヘッドは、前記主要面から前記シャフトへの近位方向で先細りになっており、
前記横方向に拡大されたヘッドは、前記主要面から前記シャフトと反対側の前記プローブの自由端への遠位方向で先細りになっている、
超音波プローブ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの凸状の弓状縁部は、前記主要面にある2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部のうちの1つである、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部が楕円に沿って配置される、請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記横方向に拡大されたヘッドは、それぞれが断面が楕円の円錐の形態である遠位端面及び近位端面を含み、前記遠位端面及び前記近位端面のそれぞれが、前記2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部の両方と接する、請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部と、前記遠位端面と、前記近位端面とが、ザラザラにされるか又はローレット加工されている、請求項4に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記シャフトは流路又は管腔を有し、前記横方向に拡大されたヘッドは遠位側に開口部を有し、該開口部が前記流路又は前記管腔と繋がる、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記横方向に拡大されたヘッドは、渦巻状のリブを備えて形成される、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記横方向に拡大されたヘッドは、楕円体又は卵形の形状を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記横方向に拡大されたヘッドは、外面がザラザラにされるか又はローレット加工されている、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記横方向に拡大されたヘッドは、それぞれが少なくともほぼ楕円の断面を有する遠位端面及び近位端面を含み、前記シャフトは流路又は管腔を有し、前記横方向に拡大されたヘッドは遠位側に開口部を有し、該開口部が前記流路又は管腔と繋がる、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項11】
脊椎手術キットであって、
細長いシャフトと、該シャフトの遠位端にある横方向に拡大されたヘッドとを含む超音波プローブと、
遠位端に把持ジョーを有する鉗子と
を含み、前記シャフト及び前記横方向に拡大されたヘッドは、患者の2つの椎体終板の間の椎間板に前記横方向に拡大されたヘッドを配置するのに適した構成であり、前記鉗子は、患者の椎間板に前記把持ジョーを配置するのに適した構成であり、
前記超音波プローブは、該プローブで超音波機械定在波を発生させるために、超音波振動子に作用可能に接続されるように構成される、
脊椎手術キット。
【請求項12】
前記横方向に拡大されたヘッドは、前記シャフトの縦軸に直交する主要面にある少なくとも1つの凸状の弓状縁部を含み、前記横方向に拡大されたヘッドは、前記主要面において前記縦軸に直交して最大寸法を有し、前記横方向に拡大されたヘッドは、前記主要面から前記シャフトへの近位方向で先細りになっており、前記横方向に拡大されたヘッドは、前記主要面から前記シャフトと反対側の前記プローブの自由端への遠位方向で先細りになっている、請求項11に記載の脊椎手術キット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの凸状の弓状縁部は、前記主要面にある2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部のうちの1つであり、前記2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部は、対向する椎体終板の表面から椎間板材料を除去するのに適した構成である、請求項12に記載の脊椎手術キット。
【請求項14】
椎体終板間の空間から断片化した椎間板物質を吸引することができるように吸引源に作用可能に接続可能なカニューレ又は管状部材を更に含む、請求項11に記載の脊椎手術キット。
【請求項15】
前記鉗子が下垂体鉗子である、請求項11に記載の脊髄手術キット。
【請求項16】
前記超音波プローブ及び前記鉗子を保持する入れ物を更に含む、請求項11に記載の脊椎手術キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に椎間板切除術及び椎間腔の準備処置として知られる外科手術に関する。
【背景技術】
【0002】
脊柱は、一部は骨又は椎骨で構成され、一部は椎間に配置される繊維状の椎間板で構成される。椎間板は、通常は椎骨を分けるクッションとして機能する。加齢に伴い、椎間板の乾燥により、クッション効果が低下することがある。また、損傷によって椎間板が膨隆して、脊柱から出る神経根を圧迫し、激しい痛みを引き起こすことがある。
【0003】
より詳細には、線維輪と呼ばれる椎間板の外壁が加齢や損傷で弱くなると、それが破れて椎間板内部の柔らかい部分である髄核が膨らむことがある。これは、椎間板ヘルニア、椎間板脱出、脊椎すべり症又は椎間板膨隆と呼ばれる。椎間板内部の物質が椎間板外壁の正常な縁を越えて外に出ると、脊椎の非常に敏感な神経組織を圧迫し得る。「膨隆した」椎間板が神経組織を圧迫したり、損傷さえすることがあり、これは背中や片足若しくは両足に脱力、しびれ、又は痛みを生じることがある。神経の圧迫はまた、腸や膀胱の機能障害をもたらすことがある。
【0004】
椎間板切除術は、一般的に脊柱から出る神経を圧迫している椎間板の一部を取り除く外科手術である。この手術は、脚の痛みを引き起こしている腰椎椎間板(腰にある)で最もよく行われる。しかし、それは首での頸椎椎間板について用いられることもある。
【0005】
切開での椎間板切除術は、通常は全身麻酔下(患者は意識がない)で行われ、一般的には1日程度の入院が必要である。それは、患者がうつ伏せ又は膝立ちの状態で行われる。手術の際、外科医は脊椎の患部の皮膚を約1インチ(2.54cm)切開する。患部の椎間板の上下で骨から筋肉組織が取り除かれ、椎骨と椎間板が外科医によく見えるように、開創器は筋肉及び皮膚を手術部位から離して保持する。場合によっては、外科医が神経組織を傷つけずに椎間板の膨隆を見て、次にアクセスすることができるように、骨及び靭帯を除去しなければならないこともあり、これは骨の除去量に応じて椎弓切除術又は部分的椎弓切除術と呼ばれる。
【0006】
外科医は、椎骨、椎間板及び他の周辺構造を見えるようにできたら、椎間板の壁から突き出ている椎間板の部分と、椎間板から出た可能性のある他の椎間板の破片を除去する。これは、多くの場合に拡大して行われる。
【0007】
現在の椎間板切除術及び椎間腔の準備処置では、環状切開のための鋭利なブレード、初期アクセス及び髄核除去のための下垂体鉗子、椎間板材料を解放するためのキュレット、椎間板材料除去のための下垂体鉗子、終板準備のためのやすりの使用を伴う。理想的には、器具の数及び椎間腔に出入りする器具の通過回数は、最小限にされるべきである。
【0008】
椎間板膨隆の治療では、通常は除去した椎間板の組織を置き換える材料は使用されない。切開部は縫合糸で閉じられて、患者は術後室に運ばれる。椎間腔の準備処置では、一部又は全体の椎間板切除が完了したら、脊椎ケージのようなプロテーゼが椎間腔に挿入される。このような椎間板切除術では、プロテーゼの配置を可能にするのに十分な椎間板材料が除去される。対向する椎体終板の表面は、椎骨組織とのプロテーゼの結合や癒合を可能にするために、軟組織が取り除かれる。
【0009】
椎間板切除術の最も一般的な問題は、別の椎間板の部分がヘルニアになり、やがて同様の症状を引き起こす可能性があることである。これはいわゆる再発性椎間板ヘルニアで、この発症のリスクは約10~15%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、椎間腔の準備のための改良された器具を提供することを目的とする。本発明は、従来の技術よりも少なくとも一部で迅速であり、より完全で、実施が容易である外科的な椎間腔の準備処置を可能にする器具を考える。より具体的には、本発明は、低侵襲的処置において使用するための外科用の椎間腔の準備器具を提供することを目的とする。本発明による器具は、器具の数及び椎間腔に出入りする器具の通過回数を最小にしないまでも減少させる、典型的には椎間腔の準備処置でのような、外科的な椎間板切除術又は髄核摘出術の実施を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シャフトと、シャフトの遠位端から遠位方向及び横方向に延びる横方向に拡大されたヘッドとを含む、対称な剥離子シェーバーの形態の細長い超音波プローブを考える。そのヘッドは、例えばローレット又は歯、より好ましくは渦巻状のリブの組の形態で、複数のエネルギー集中用の突起を備える。エネルギー集中用の突起は、いかなる形態であってもよい。交差する2つの渦巻状のリブの組が効果的であることが分かっているが、他の構成のリブ又は突起が用いられることもできる。
【0012】
このプローブは、脊椎手術での使用に適するものであり、超音波振動エネルギーがプローブに伝達されて、プローブに定在波を発生させる。より具体的には、超音波プローブの遠位端は、2つの椎体終板の間の椎間板への挿入に適するようにされており、プローブが椎間板内で動かされると、椎間腔から吸引するには大きすぎる断片を含む様々な大きさの断片にプローブヘッドが椎間板材料を分断して細かく刻むようにプローブが構成されている。(大きな断片は、鉗子を使用して椎間腔から取り出されることができる。)鉗子は、椎間板断片を椎体終板の間の作業領域又は手術部位から摘出するように構成されている。より小さな粒子は、吸引によって除去されることができる。
【0013】
したがって、本発明は、特別に適した超音波プローブと、鉗子と、任意で吸引チューブ又はカニューレとを含むキットを考える。吸引チューブ又はカニューレは、椎間腔(手術部位)に、例えば低侵襲的処置で挿入して、手術部位に供給される灌流液から一部が生成されるスラリー中の小さな粒子や椎間板の破片を除去するように設計されている。吸引は、超音波プローブによる椎間板材料の断片化と同時又は交互に行われる。破片除去のための媒体を提供することに加えて、潅注液は、超音波による分解、すなわちキャビテーションによるより小さな断片の生成を可能にし、したがって吸引による椎間板材料の除去を容易にする。
【0014】
本発明による超音波プローブは、個別に提供されるか、鉗子及び任意で吸引チューブと共にキットの構成要素として提供されるかにかかわらず、椎間板除去処置中に3つの空間軸に沿って、すなわち、遠位方向及び近位方向に交互に、左右に交互に、並びに椎体終板の表面方向(表面に近づく及び表面から離れる方向)に交互に移動可能な横方向に拡大したヘッドを示す。(最後の動作は、プローブヘッドと椎体終板の間に弾力性のある椎間板物質を繰り返し捕捉し又は押し潰して、椎間板物質の断片への切断を可能にしないまでも促進する)。横方向に拡大されたヘッドは、通常はかつ好ましくはヘッドの遠位部分及び近位部分よりも突出する弧状の外周部を含み、好ましい実施形態では、椎間腔に面する凹状の椎体終板表面の曲率半径に近似する曲率半径を有するローレット状又は歯状の縁部を構成する。
【0015】
本明細書に記載されるような器具を用いた椎間腔の準備処置は、対象の椎間板の全てを除去する必要はないことに留意されたい。剛性のケージやゲルを充填した袋のようなプロテーゼの設置を可能にするのに十分なだけの椎間板材料を除去することが必要である。例えば、椎間腔の準備処置の椎間板切除部分は、髄核又はその一部のみを含んでもよいし、線維輪の一部もまた含んでもよい。椎体終板表面の清掃は、プロテーゼの終板への固定又は取り付けを可能にするために必要である。
【0016】
本発明による超音波プローブは、椎間板への挿入に適した遠位端のヘッドを有し、そのプローブは、椎間板での環状切開術の実施中に、超音波振動エネルギーを伝達して定在波を伝えるように構成される。超音波器具は更に、超音波プローブの遠位端を椎間板に挿入する前かつ環状切開を行うために超音波プローブを操作する前に、一方又は両方の椎体終板から骨棘を除去することができるように構成される。これは、椎間腔への癒合ケージの挿入及び配置を可能にする特別な場合に、特に必要である。
【0017】
超音波プローブは、骨棘を除去し、環状切開を行い、椎間板切除を行い、椎体終板表面から椎間板材料、軟組織及び軟骨を取り除くために使用されることができる剥離子シェーバー器具を構成することに留意されたい。その結果、必要とされる器具の数が減少し、椎間腔の準備処置全体が容易になるだけでなく、標的でない組織の不注意による損傷のおそれも減少する。
【0018】
したがって、本発明は、超音波プローブの横方向に拡大されたヘッドが、シャフトの縦軸に直交する主要面にある少なくとも1つの凸状の弓状縁部を含むことを考える。この縁部は、好ましくは凹状の椎体終板表面の曲率に一致する若しくは近似する曲率又は形状を有する細長い形を有し、したがってそれぞれの椎間板の主要部の少なくとも実質的な除去後に、終板表面から軟組織を取り除くことを容易にする。
【0019】
好ましくは、ヘッドは、ヘッドの主要面にある、2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部を有する。超音波プローブへ音波振動エネルギーを伝達している間に、そのプローブは、最初に椎体終板の一方、次に他方が、2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部のそれぞれと当たるように操作され、それによって椎体終板の両方の表面から椎間板物質を除去する。凸状の縁部の曲率は、椎体終板表面の曲率に概ね又はほぼ適合しており、それにより軟組織の除去を最適化しかつ椎体終板からの骨組織の除去を最小化する。
【0020】
横方向に拡大されたヘッドは、シャフトの縦軸に直交する主要面で測定されるその最大の横方向寸法を有する。これに伴い、横方向に拡大されたヘッドは、主要面からシャフトへの近位方向と、主要面からシャフトとは反対側の自由端への遠位方向とで先細りになっている。
【0021】
本発明の超音波プローブの使用により、1ミリメートル未満から1センチメートル以上の範囲の大きさの椎間板断片が生じる。場合により、椎間板断片は数ミリメートルの幅で2~3センチメートルの長さになることもある。本発明による脊椎手術キットは、このような大きな断片を除去するための鉗子又は把持器を含む。このキットは、超音波プローブの想定される使用に際して椎間腔内からより小さな粒子状の断片又は粒子を吸引するための吸引源(例えば、ポート又はニップルを介して)に接続するための吸引チューブを任意で含む。
【0022】
椎間板除去処置での使用に特別に適合された超音波プローブは、細長いシャフトと、プローブに機械的な定在波を発生させるために、そのシャフトを超音波振動エネルギー源に作用可能に結合するためのシャフトの近位端にあるコネクタと、シャフトの遠位端にある横方向に拡大されたヘッドとを含む。横方向に拡大されたヘッドは、主要面からシャフトへの近位方向と、主要面からシャフトと反対側のプローブの自由端への遠位方向とで先細りになっている。横方向に拡大されたヘッドは、シャフトの縦軸に対して少なくともほぼ直交する向きの主要面にある、少なくとも1つの凸状の弓状縁部を含む。好ましくは、横方向に拡大されたヘッドは、ヘッドのその主要面において、一方向での大きさが、その一方向に対して斜めである他の方向での大きさよりも大きい。言い換えれば、そのヘッドは、主要面での横断面(及び通常はそれと平行な他の面)において、長円又は縦長のアメリカンフットボールの形状を呈するようして扁円又は扁平である。
【0023】
少なくとも1つの凸状の弓状縁部は、好ましくはヘッドの主要面にある2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部のうちの1つである。2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部は、楕円に沿って配置されてもよい。それらの凸状の縁部は、主要面で反対に位置する複数の頂点で接続してもよいし、あるいはそれより曲率が大きい(それより曲率半径が小さい)弧で互いに滑らかに接続してもよい。後者の場合には、横方向に拡大されたヘッドは、それぞれが断面が楕円の円錐の形態である遠位端面及び近位端面を含むことができ、遠位端面及び近位端面のそれぞれが、2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部の両方と接する。
【0024】
好ましくは、2つの反対を向いた鏡面対称の凸状の縁部と、遠位端面と、近位端面とは、ザラザラにされるか又はローレット加工されている。ザラザラにすること又はローレット加工は、プローブヘッドの遠位端面及び近位端面を渦巻状のリブを備えて形成することによってなされてもよい。そのリブは、平行である互いに間隔を空けて配置されたリブの組を、2組が重なり合って又は交差して含んでもよく、一方の組のリブは一方向に配向され、他方の組のリブは別の方向に斜めにされている。他のリブの構成や他のものを用いてもよい。
【0025】
シャフト又はプローブは、好ましくは流路又は管腔を備え、有利には潅注液又は冷却液を手術部位に送るために使用される。横方向に拡大されたヘッドは遠位側に開口部を有し、この開口部は流路又は管腔と繋がっている。開口部は、シャフトとは反対側であるヘッドの遠位側で円形の周縁を有していてもよく、それはプローブが遠位方向に動かされた時に椎間板材料への侵入を容易にする。
【0026】
一つの考えられる実施形態では、横方向に拡大されたヘッドは、アメリカの競技でのフットボールのような楕円体又は卵形の形状を有する。そのヘッドの各端は、程度の差はあるもののあまり鋭利でないか尖っていなくてもよく、球状の一部の形態を取ることができる。横方向に拡大されたヘッドは、遠位端面及び近位端面を含み、そのそれぞれが少なくともほぼ楕円形の断面を有する。
【0027】
本明細書に記載されるようにして椎間板を除去した後、2つの椎体終板は、例えば椎体終板に結合する剛性のケージの挿入により、互いに癒合されてもよい。あるいは、椎間板プロテーゼ又は移植片が、2つの椎骨の間に挿入されてもよい。椎体終板と接触している間にヘッドを超音波振動させることで、対向する複数の面にざらつきのある面を提供する働きをその一部がする。椎骨表面を平らにすること及びザラザラにすることは、椎骨での血管へのアクセスを開放し、その後の骨の成長及び骨の椎間板プロテーゼ又は移植片の材料への結合を促進させる。
【0028】
プローブシャフトでの流路又は管腔及びそれと繋がるプローブヘッドでの開口部は、椎骨の対向する複数の面との接触中にプローブヘッド、特にそのローレット面に冷却液を供給するためにその一部が使用されてもよい。更に、その流路又は管腔は、超音波分断過程で形成された粒子状物質を吸引するために使用されてもよい。プローブの遠位端を椎間板に挿入することは、器具を操作して椎間板の環状部分に開口部を形成し、その開口部を通って椎間板に入れることを含む。
【0029】
粒子状の椎間板物質の吸引は、プローブでの定在波の発生中にその一部が生じてもよい。あるいは、その器具の振動は、吸引過程中に一時的に中断されてもよい。吸引と潅注は交互に行われることができ、潅注は(i)超音波作動中にプローブを冷却し、(ii)吸引による摘出のために粒子状物質をスラリーにし、(iii)流路又は管腔の遠位端、例えばプローブヘッドに嵌り込む可能性のあるより大きな断片を取り除く役割を果たす。
【0030】
粒子捕集器を備えた吸引源と、加圧潅注液の供給部は、例えば少なくとも1つのフットスイッチによって作動する弁を備えたマニホールドを介してプローブシャフトの流路又は管腔に接続されることができ、それは外科処置の要件に応じて、執刀医がプローブの機能を変化させることを可能にする。
【0031】
本発明による脊椎手術方法は、標的の椎間腔へのアクセスを得るために、従来の観血手術又は低侵襲的処置を利用して、これを組み合わせてもよい。本発明の手術方法は、用いられるアクセス方法に関係なく、同じようにして進行する。
【0032】
本発明による超音波プローブは、手動で実施される処置において、又はコンピュータガイドのロボット機構を介して部分的に自動で実施される処置において使用されることができる。手動又はロボットによる実施のいずれであっても、処置は、例えばスキャナ又はトラッカーと、関連するコンピュータソフトウェアとを含む操縦システムの支援を受けて実施されてもよく、操縦システムは、患者の脊髄組織を、例えば手術の開始前に画像化し、手術中にプローブ、特に患者内のプローブヘッドの位置を追跡する。したがって、プローブは、脊髄構造に対するプローブヘッドの位置及び任意でプローブの向きをコンピュータで追跡することを容易にするために、例えばX線不透過性の位置合わせマーク、1つ以上の無線送信器、又は他の位置符号化装置を備えて、コンピュータ画面で脊髄構造に対してプローブを一緒に画像化することができる。例示の操縦システムとして、メドトロニック社のステルスステーションS8 EMナビゲーションシステムや、ストライカー社のNAV3iプラットフォームが挙げられる。このようなシステムは、様々な手術器具と併用されることで、手術器具を追跡して、手術精度を上げて、患者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による椎間板切除術又は椎間腔の準備処置の実施で使用される先行技術システムの、一部での超音波プローブの概略側面図と、一部での付随する構成要素のブロック図である。
図2図1の先行技術のプローブの遠位端の拡大斜視図である。
図3】本発明による椎間板切除術又は椎間腔の準備処置を説明及び実施するために簡便的に用いられる解剖学的モデルの背面図である。
図4図3のモデルの側面図であり、本発明による手術方法を説明するために、図3のモデルの椎間板に配置された図1、2の超音波プローブを示す。
図5】本発明による手術方法のステップを示す、椎間板の概略平面図又は底面図である。
図6図5の椎間板及び隣接する椎体終板の概略側面図であり、本発明による手術方法の更なるステップを示す。
図7図5と同様の概略平面図であり、本発明による手術方法における更なるステップを示す。
図8】本発明よる外科処置で使用するための、本発明の超音波外科用プローブ又は器具の遠位端部の概略的な拡大斜視図である。
図9】本発明の器具の遠位端についての、図8の超音波外科用プローブの概略正面図である。
図10】本発明による外科処置で使用するための、本発明の別の超音波外科用プローブ又は器具の遠位端部の概略的な拡大斜視図である。
図11】本発明による外科処置で使用するための、本発明の更なる超音波外科用プローブ又は器具の遠位端部の概略的な拡大斜視図である。
図12】本発明による外科処置で使用するための、本発明の更に別の超音波外科用プローブ又は器具の遠位端部の概略的な拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
「椎間板切除術」の用語は、本明細書では、2つの椎骨又は椎体終板の間にある椎間板から椎間板物質を除去する処置を指すのに使用される。除去される椎間板材料は、例えば脊髄への椎間板の衝突を防ぐためであり、小さくてもよい。あるいは、椎間板切除術は、髄核のような椎間板のかなりの部分、又は髄核と線維輪の両方を含む椎間板全体の除去を伴ってもよい。
【0035】
本開示による「椎間腔の準備」処置は、実質的な椎間板切除、すなわち椎間板のかなりの部分又は全部の除去を含むだけでなく、2つの椎体終板の間の椎間腔に挿入されたプロテーゼが終板に十分に密着するように、隣接する椎骨端面を準備することも考えられる。椎間腔の準備は、椎間板材料、軟組織及び軟骨を椎骨端面から清掃又は除去することを含み、それによりプロテーゼが椎骨に適切に接着する可能性が高まる。椎体終板の面又は表面の清掃は、一般的に望ましくないが避けられない骨組織の除去をもたらす可能性がある。脊椎の骨棘は、その過程で除去されることがある。椎体終板をきれいにするための超音波プローブの使用は、椎骨にほとんど力を加える必要がない点で利点がある。したがって、より優れた操作が可能であり、外科医は、プロテーゼが椎骨端面を突き破って破壊する可能性を不必要に増大させることなく、プロテーゼと骨組織の癒合を可能にするのに十分なだけの椎間板材料及び軟骨を除去することができる。
【0036】
「プローブ」又は「超音波プローブ」の用語は、本明細書では、所定の超音波周波数の超音波定在波を伝達するように設計された細長い金属の道具を指すのに使用され、プローブの遠位端の作用面又作用端が、所定の超音波周波数で最大振幅、したがって患者内の標的の有機組織への超音波振動エネルギーの最大限の伝達をもたらたすようにされる。
【0037】
本明細書では、「主要面」の用語は、プローブヘッドの幅が最も広い、したがって最大の横方向の寸法を有する、超音波プローブの縦軸に対して横方向に延在する面を表すために使用される。プローブヘッドは、好ましくはその主要(横方向に延在する)面にある1つの刃先、より好ましくは2つの反対を向いた刃先を有する。
【0038】
本明細書では、「横方向に拡大された」の用語は、プローブシャフトの遠位端よりも幅の広いプローブヘッドを表すために使用される。プローブヘッドは、シャフトよりも側方に突出し、少なくとも部分的に椎体終板の面との接触を容易にする。
【0039】
詳細な説明
図1、2は、椎間板切除術又は椎間腔の準備処置で使用されることができる超音波器具を示す。その器具は、直線状の遠位シャフト部12と、シャフト部12の遠位端(個別に符号を付されない)から遠位方向と、横方向又は側方の両方に延びる軸対称のヘッド14とを含む細長い剥離子シェーバープローブ10である。ヘッド14は、円錐形の遠位端面16と、円錐形の近位端面18とを有し、これらは円形の縁部20で互いに繋がる。遠位端面16及び近位端面18はそれぞれ、遠位端面16及び近位端面18を定める円錐形の壁を覆う2組の渦巻状のリブ22、24によって付加された又は生成されたローレット又は歯のようなエネルギー集中用の突起を備える。リブ22は一方向に渦巻状であり、リブ24は異なる角度で渦巻状であるので、リブ22、24は互いに交差して、遠位端面16及び近位端面18をダイヤモンド形又は菱形の網状又はクモの巣状として形成する。
【0040】
剥離子シェーバープローブ10は、ハンドル又はハウジング30内の圧電又は磁歪振動子28に接続可能なねじ結合部26を含み、圧電又は磁歪振動子28は、次に超音波波形発生器32に作用可能に接続される。振動子28は、発生器32から印加又は入力される電気波形を、プローブ10で定在波を生成する機械的な超音波振動に変換する。
【0041】
図3に示されるように、脊柱SCは、直線配列で互いに間隔を空けられた、棘突起PP及び椎弓板SLを含む一連の椎骨要素を含む。図3は、観血手術の椎間板切除術又は椎間腔の準備処置の一ステップを示しており、そこでは棘突起及び関連する椎弓板が脊柱SCから除去されて、標的の椎間板SD(図4~7)及び隣接する椎体終板V1、V2(図4及び6)へのアクセスを可能にする開口部AOを形成する。
【0042】
図4図6に示されるように、外科的な椎間板切除術又は椎間腔の準備処置は、ヘッド14(又は図8図12を参照して本明細書に開示されるいずれかのヘッド)と、シャフト12の遠位端部を、椎間板SDに隣接する椎体終板V1、V2に概ね平行な方向で椎間板に挿入することを伴う。プローブ10の挿入中、波形発生器32と振動子28はプローブを超音波振動させる。その後、プローブ10が超音波振動を続けている間に、ハンドル又はハウジング30によりプローブを操作して、両矢印34で示されるように外科用ヘッド14を遠位方向及び近位方向(外科医から離れる方向及び外科医に向かう方向)に交互に動かし、更に両矢印36で示されるように、椎間板SD内で左右に交互に移動させる。この概して反復的であるが選択的に変えられる動きは、椎間板SDの材料を、椎体終板V1、V2間の椎間腔S(図6参照)から吸引するには大きすぎる断片40を含め、さまざまな大きさの断片38、39、40(図7)に分断して細かく刻む。作業領域又は手術部位Sから断片を摘出するために、断片40は、下垂体鉗子のような把持器又は鉗子42(図7)を使用することによって椎間腔Sから取り出される。
【0043】
ヘッド14の円形縁部20は、それぞれの椎体終板V1、V2の主要面48、50を向く一対の反対を向いた凸状の弓状縁部44、46を含む。円形縁部20、したがって凸状の弓状縁部44、46は、シャフト12の縦軸54に対して直交する向きであるヘッド14の1つの主要面52にあって、主要面52を定める。その「主要面」の用語は、本明細書ではその主要面に平行な他のすべての面よりも大きな断面であるヘッド14(114、214、314、414)での面を指すのに使用される。扁平なプローブヘッドは、典型的にはプローブの縦軸に垂直な1つの主要面と、プローブ又はシャフトの軸を包含する別の主要面を有する。
【0044】
一部は把持器42による空間Sからの大きな椎間板断片40の取り出しによって、そして一部は吸引源58(図1)に接続された吸引カニューレ56による粒子状の椎間板材料39の吸引によって、分断された椎間板SD又はそのかなりの部分を摘出した後に、プローブ10は、図6に両矢印60、62で示されるように、椎体終板V1、V2のそれぞれの表面48、50に沿って縁部44、46を移動させるように操作されて、椎間板材料を終板から除去し、かつ終板を椎間のプロテーゼの配置に備えて粗面化する。
【0045】
プローブ10は、椎間板SDの材料を分断し、細かく刻み、そしてばらばらにする際に効果的に機能する。プローブヘッド14は、椎体終板V1、V2の表面48、50の清掃及び粗面化において許容し得る程度によく機能するが、その目的には異なる形状が最適である。図8、9は、シャフト112と、プローブシャフト112の縦軸154に対して垂直に配向された主要面MP図9の紙面に平行である)での一方向に沿って最大横断寸法d1を有する横方向に拡大されたヘッド114とを有するプローブ110を示す。ヘッド114は、尖った頂点又は丸みを帯びた先端145、147で互いに連続する一対の細長い凸状の弓状縁部144、146で面MPと交差する。ヘッド14と同様に、ヘッド114は、自由端に向かう遠位方向及びシャフト112に向かう近位方向の両方において先細りになっている。より具体的には、ヘッド114は、横方向に変形した円錐形の遠位端面116及び横方向に変形した円錐形の近位端面118を呈し、それぞれが一方の横方向で扁平にされ、別の横方向で引き伸ばされ、細長い凸状の弓状縁部144、146及び丸みを帯びた先端145、147を含む概ね楕円形の縁部120で互いに繋がる。ヘッド14の表面16、18と同様に、遠位端面116及び近位端面118はそれぞれ、ローレット又は歯を、特に互いに対して鋭角に延びる2組のエネルギー集中用の渦巻状のリブ(図示せず)の形態で備え、端面116、118をダイヤモンド形又は菱形の網状又はクモの巣状として形成し、かつ弓状縁部144、146及び丸みを帯びた先端145、147にギザギザを付ける。本明細書に開示されるプローブヘッドのエネルギー集中用の突起は、ヘッドの他の外面領域よりも外側へ高くなっており、特に渦巻状のリブを含むことが理解される。
【0046】
弓状縁部144、146は、凹状の椎体終板の表面48、50の曲率に一致して、その表面48、50に適合するようにして最適に細長くされ、したがって本明細書で上述したように、それぞれの椎間板SDの主要部の少なくとも実質的な除去後の終板表面の清掃を容易にする。縁部144、146は、ヘッド114の主要面MPにある2つの反対を向いた鏡面対称のギザギザにされた研磨用の縁部を構成する。超音波プローブ110への超音波振動エネルギーの伝達の間に、そのプローブは、最初に椎体終板V1、V2の一方、次に他方が、縁部144、146とそれぞれ当たるように操作され、プローブ110は、図6において矢印60、62によって示されるように、椎骨表面48、50に沿って遠位方向及び近位方向に前後に交互に動かされ、それによって表面48、50から椎間板材料を除去する。凸状縁部144、146の曲率は、終板表面48、50の曲率に概ね又はほぼ適合し、それにより椎間板材料とは対照的に、椎体終板V1、V2からの骨組織の除去を最小限にする。
【0047】
ヘッド114は、主要面MPにおいて、シャフト112の縦軸154にいずれもが直交する長軸及び短軸(個別に符号を付されない)のそれぞれに沿って、その最大の横断寸法d1、d2を有する。プローブヘッド14、114の縁部20、120は、異なる傾斜の2つの表面44、46及び144、146の交わる部分又は接合部として形成される。図10は、楕円形の刃先220を形成するために交わる遠位端面216及び近位端面218を有する横方向に拡大されたヘッド214を備えたプローブ210を示し、端面216、218は、円錐台面116、118のように直線状に傾斜するのではなく、外面が凹状である。楕円形の刃先220は、ヘッド214の横方向に延びる主要面MPにあって、主要面MPを定める。
【0048】
図11は、楕円形の刃先320を形成するために交わる遠位端面316及び近位端面318を有する横方向に拡大されたヘッド314を備えたプローブ310を示し、端面316、318は、凹状又は直線状に傾斜するのではなく、外面が凸状である。楕円形の刃先320は、ヘッド314の横方向に延びる主要面MPにあって、主要面MPを定める。
【0049】
ヘッド214、314はいずれも、それぞれのシャフト軸254、354に対する横方向において、扁円又は扁平である。したがって、ヘッド114と同様に、各ヘッド214、314は、それぞれのシャフト縦軸254、354に垂直であるすべての平面において長円形又は楕円形の横断面を呈する。横方向に拡大されたそのような各ヘッド114、214、314は、それぞれの長円形の縁部120、220、320の面からそれぞれのシャフト112、212、312までの近位方向及び長円形の縁部からシャフトとは反対側にある自由端までの遠位方向で、先細りになっている。
【0050】
図12は、シャフト412と、横方向に拡大されたヘッド414とを備えたプローブ410を示す。ヘッド414は、楕円体の遠位端面416及び楕円体の近位端面418を有し、それらは端面416、418の曲率C2、C3よりも曲率C1が大きい(曲率半径が小さい)先端が丸い環状の縁部又は横方向で最も外側の面420によって互いに接合されている。端面420は、例えば、軸平面において円形である。プローブ410は、髄核摘出のような部分的な椎間板切除術、又は部分的な椎間板切除術の実施を含む椎間腔の準備処置の実施に有用である。ヘッド414は、回転する楕円の弧の軌跡である楕円体の形状を取ることができる。最も外側の表面420は、ヘッド414を横断する主要面MPによって二等分され、それに伴い主要面MPを定める。
【0051】
本発明は、主としてシャフト12、112、212、312、412が、冷却液又は潅注液の加圧供給部66(図1)と繋がるそれぞれの流路又は管腔64、164、264、364、464を備えて形成されることを考える。潅注液は、通常は超音波外科処置の間、特に発生器32からの電気波形に応答して振動子28によって発生される超音波機械振動エネルギーでプローブ10、110、210、310、410を作動させる間、供給部66から流路又は管腔64、164、264、364、464を通って導かれる。潅注液は、ヘッドの遠位端又は自由端の開口部68、168、268、368、468を通って、更に任意で、交差する渦巻状のリブ22、24(図2)の間で遠位端部16、116、216、316、416及び/又は近位端部18、118、218、318、418に備えられた1つ又は複数の開口部(図示せず)を通って、ヘッド14、114、214、314、414から出る。ヘッド114、214、314、414はすべて、好ましくは網状の交差する渦巻状のリブ22、24(図2)を備えて形成される。潅注液は、その一部が、患者内でプローブが超音波作動している間に、器具と組織を熱平衡に保つ役割を果たす。潅注液はまた、超音波キャビテーションを可能にして、吸引によって取り出されることができる椎間板及び終板表面の粒子のスラリーを生じさせる役割も果たす。
【0052】
椎間板断片38、39、40は、1ミリメートル未満から1センチメートル以上の範囲の大きさを有する。大きな椎間板断片40は、幅が数ミリメートルで、長さが2~3センチメートルになることもある。このような大きな断片は把持器又は鉗子42により取り出されるが、より小さな粒子状の断片又は粒子39は、カニューレ56を介して吸引源58によって手術部位又は作業領域Sから吸引されることができる。
【0053】
縁部120、220、320はそれぞれ、ヘッド114、214、314の主要面にある2つの反対を向いた鏡面対称の凸状縁部144、146及び244、246及び344、346を含む。2つの反対を向いた鏡面対称の凸状縁部144、146及び244、246及び344、346は、それぞれ楕円に配置されてもよい。2つの反対を向いた鏡面対称の凸状縁部144、146及び244、246及び344、346が、共に同じ楕円に配置される場合、それぞれの遠位端面116、216、316及び近位端面118、218、318は、それぞれ断面が楕円錐台の形を取り、それぞれの遠位端面及び近位端面は、2つの反対を向いた鏡面対称の凸状縁部144、146及び244、246及び344、346の両方と接する。
【0054】
上記のように椎間板SDを除去した後、椎体終板V1、V2を互いに癒着させてもよい。あるいは、椎間板プロテーゼ又は移植片が2つの椎骨V1、V2の間に挿入されてもよい。椎体終板V1、V2と接触してのヘッド14、114、214、314、414の超音波振動(矢印60、62)は、椎間板材料及び軟骨組織のないざらつきのある面を、対向する面48、50に提供する役割をその一部が果たす。椎骨表面を平らにすること及びザラザラにすることは、椎骨での血管へのアクセスを開放し、その後の骨の成長及び骨の椎間板プロテーゼ又は移植片の材料への結合を促進させる。
【0055】
流路又は管腔64、164、264、364、464及びそれに繋がるプローブヘッド14、114、214、314、414での開口部68、168、268、368、468は、椎体終板V1、V2の対向する面48、50との接触中にプローブヘッド及び周囲組織又は隣接組織に潅注液を送るために使用される。更に、場合によっては、超音波分断過程で形成された粒子状物質39を吸引するために、流路又は管腔64、164、264、364、464を使用することが有利であり得る。カニューレ56又はプローブ10、110、210、310、410のいずれかによる粒子状の椎間板材料の吸引は、プローブでの定在波の発生中にその一部が生じてもよい。あるいは、その器具の振動は、吸引過程中に一時的に中断されてもよい。吸引と潅注は交互に行われることができ、潅注は(i)超音波作動中にプローブを冷却し、(ii)吸引による摘出のために粒子状物質をスラリーにし、(iii)流路又は管腔の遠位端、例えばプローブヘッドに嵌り込む可能性のあるより大きな断片を取り除く役割を果たす。
【0056】
吸引源58は、粒子捕集器を含み、弁、例えば少なくとも1つのフットスイッチ72によって作動する弁を備えたマニホールド70(図1)を介して、流路又は管腔64、164、264、364、464に潅注液を加圧して供給し、それは外科処置の要件に応じて、執刀医がプローブの機能を変化させることを可能にする。
【0057】
本発明による脊椎手術方法は、標的の椎間腔へのアクセスを得るために、従来の観血手術又は低侵襲的処置を利用して、これを組み合わせてもよい。本発明の手術方法は、用いられるアクセス方法に関係なく、同じようにして進行する。更に、本発明は、患者の組織構造に対する器具の動きの制御を容易にするために、ロボット装置及び既存の操縦システムと共に使用されてもよい。操縦システムには、手術前に患者の脊髄組織の3D構造データを記録するために使用されることができるスキャナ又はトラッカー、及び関連するコンピュータソフトウェアが含まれる。このシステムは、手術中の手術器具の位置、特に患者内の手術器具のエンドエフェクタ又は作用端の位置を追跡する。プローブは、脊髄構造に対するプローブヘッドの位置及び任意でプローブの向きをコンピュータで追跡することを容易にするために、位置合わせマーク、電磁波送信器、又は他の位置符号化装置を備え、コンピュータ画面で脊髄構造に対してプローブを一緒に画像化することができる。例示の操縦システムとして、メドトロニック社のステルスステーションS8 EMナビゲーションシステムや、ストライカー社のNAV3iプラットフォームが挙げられる。このようなシステムは、様々な手術器具と併用されることで、手術器具を追跡して、手術精度を上げて、患者の安全性を高めることができる。
【0058】
本発明は、主として椎間板材料へのプローブの機械的作用により、椎間板の破砕と断片化をもたらす。椎間板材料は非常に弾力性があり、しばしば超音波切除ができない。しかしながら、本発明の方法は、超音波振動エネルギーとより多くの機械的運動の適用を組み合わせることで、超音波及び多くの機械的運動の個々の適用に対し、革新的な向上を提供する。プローブヘッドと椎体終板との間に椎間板物質を捕捉することで、弾力性のある椎間板物質の選択的破砕が容易になる。本発明により提供される椎間板断片化の第二の手段は、超音波キャビテーション又は超音波分解であり、これは椎間腔への潅注液の導入により可能となる。更なる技術は、椎間板内での及び/又は椎体終板の面での超音波プローブの作動及び運動の前及びその間に、無線周波の電磁エネルギーを標的の椎間板に照射することを含む。その放射線は、椎間板材料の弾性を低下させて、椎間板の断片化及び椎骨清掃を改善する。
【0059】
本明細書で開示される超音波プローブ12、112、212、312、412は、プローブヘッド14、114、214、314、414が椎体終板V1、V2の表面に接触した時に執刀医が直ちに感知することができるように、触覚フィードバックを提供することにも留意されたい。このフィードバックは、力の適用及び場合によってはプローブの移動方向の変更を促し、椎体終板V1、V2から骨組織を過度に摩耗させること及び切除することがなく、終板表面の清掃を容易にする。
【0060】
本明細書に記載の椎間腔の準備処置用の外科器具のセットは、剥離子シェーバー12、112、212、312及び/又は412と、1つ又は複数の吸引カニューレ56と、1つ又は複数の把持器又は鉗子42とを含むキットとして組み合わされてもよい。これらは、1つの入れ物に一緒にまとめられることができ、あるいは一緒に販売されることができる。
【0061】
本発明は、超音波プローブ10、110、210、310又は410と、把持器又は鉗子42と、任意でカニューレ又は吸引カニューレ56とを含む、あらかじめまとめられた脊椎手術キットを考える。そのキットは、一方を市販の吸引源又は真空発生装置に、他方をカニューレ56に接続するようにされたチューブ(図示せず)を更に含んでもよい。そのキットは、箱、真空パッケージ、又は袋などの適切な形態の入れ物を必然的に含む。入れ物の形態は本発明にとって重要ではない。しかし、その入れ物は滅菌可能であって、外科器具である内容物の無菌を保つことができるものでなければならない。
【符号の説明】
【0062】
10、110、210、310、410 剥離子シェーバープローブ
12、112、212、312、412 遠位シャフト部
14、114、214、314、414 ヘッド
16、116、216、316、416 ヘッドの遠位端面
18、118、218、318、418 ヘッドの近位端面
22、24 リブ
26 ねじ結合部
28 圧電又は磁歪振動子
30 ハンドル又はハウジング
32 超音波波形発生器
42 把持器又は鉗子
44、46、144、146、244、246、344、346 弓状縁部
54、154、254、354 シャフトの縦軸
56 吸引カニューレ
58 吸引源
MP、MP、MP、MP ヘッドの主要面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】