(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-17
(54)【発明の名称】深いキャネルア内部に段差を有する弾薬ケーシング
(51)【国際特許分類】
F42B 5/285 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
F42B5/285
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572163
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022018233
(87)【国際公開番号】W WO2022250755
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518022514
【氏名又は名称】シェル ショック テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッジャーノ,アンソニー
(57)【要約】
弾薬カートリッジ用のケーシング(720)は、スリーブ部分(722)とベース部分(724)を備える。ケーシングは2ピースで作ることができ、ベース部分は、フレア端を有するニップル(728)によってスリーブ部分に固定される。ベース部分は、フランジ(755)から長手方向に延びるキャネルア(746)を備える。好ましくは湾曲しているキャネルアは、従来式のキャネルアよりも深く、そのため、ケーシングの重量を減少する。キャネルアは、火器のボルト(90)のフック(92)のリップ(94)の内側への移動を制限するために、フランジに隣接する段差(750)を有する。あるいは、ケーシング(1020)は、ベースとスリーブが一体である1ピースのケーシングであってもよい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火器に用いられる弾薬用ケーシングであって、長手方向中心線と、プライマーを収容するよう形成される凹部を有する近位端と、発射体を収容し保持するマウスを備える対向する遠位端とを有し、前記ケーシングが、
一定量の火薬を保持するためのスリーブ部分であって、前記マウスによって特徴付けられる遠位端と、関連する直径を有する円筒形の外面が長手方向に走行する対向する近位端とを有する前記スリーブ部分、
ベースであって、前記スリーブ部分の前記近位端としっかりと嵌合しているかまたは一体の円筒形部分によって特徴付けられる遠位端と、前記ケーシングの近位端の少なくとも一部を形成する第1の側の環状フランジ表面と、前記遠位端に面する対向する第2の側の環状フランジ面とを有するフランジによって特徴付けられる近位端を有し、前記ベースは、前記フランジと前記ベースの前記遠位端との間に位置するキャネルアによってさらに特徴付けられる前記ベース、
前記キャネルアであって、
前記第2の側の環状フランジ面の少なくとも一部を含む、遠位側に面する第1のキャネルア面部分と、
第2のキャネルア面部分であって、前記第1のキャネルア面部分に隣接するか、または溝により離隔され、前記第2のキャネルア面部分は、前記フランジの直径より短い直径を有する段差として長手方向に延びる、前記第2のキャネルア面部分と、
第3のキャネルア面部分であって、前記第2のキャネルア面部分から前記ケーシングの中心線に向かって平面または曲線に沿って内方へ走行し、次いで、円筒状または曲線状に長手方向に延びる、前記第3のキャネルア面部分と、
第4のキャネルア面部分であって、前記第3のキャネルア面部分から外方へ前記ケーシングの長手方向中心線から離れるように走行しており、前記面部分は円錐形または湾曲した形状のいずれかを有する、前記第4のキャネルア面部分
によって特徴付けられる、前記キャネルア、
を備える、前記ケーシング。
【請求項2】
前記第3のキャネルア面部分は、曲線に沿って前記ケーシング中心線に向かって内方へ走行し、次いで、湾曲するように長手方向に延びている、請求項1に記載のケーシング。
【請求項3】
前記第3のキャネルア面部分は、曲線に沿って前記ケーシング中心線に向かって内方へ走行し、次いで、湾曲して長手方向へ延びており、前記第4のキャネルア面部分は、前記長手方向の中心線に関して外方へ湾曲して延びている、請求項1に記載のケーシング。
【請求項4】
前記キャネルアの第3の面部分が、円筒状に長手方向に走行し、前記第4のキャネルア面部分が、前記ベースの前記中心線に関して円錐状に外方へ走行している、請求項1に記載のケーシング。
【請求項5】
前記スリーブ部分と前記ベース部分とは、互いに一体である、請求項4に記載のケーシング。
【請求項6】
前記ベース及び前記スリーブは、互いに接続される別個の構成要素である、請求項1に記載のケーシング。
【請求項7】
前記ベースは、中央の長手方向の通路を有し、前記スリーブは、前記長手方向の通路の内部に配置されたニップルを含み、前記ニップルの先端は、前記ベース及び前記スリーブを互いに保持するために、前記通路の内部の肩部に対してフレア状である、請求項6に記載のケーシング。
【請求項8】
前記マウスに配置された発射体と、前記スリーブ部分内部の一定量の火薬と、前記ベース部分の孔の内部のプライマーキャップと組み合わされて、カートリッジを形成しており、さらに火器のボルトと組み合わされて、前記ボルトがフックを有し、前記フランジの前記近位端は前記ボルトと接触し、前記フックは、前記ボルトが前記ボルトから離れる方向に移動するときに前記フランジの第1の面を引っ張るように配置されたリップを有し、前記フックの前記リップは前記段差の第1の面に静置される、請求項1に記載のケーシング。
【請求項9】
火器におけるカートリッジから発射体を発射する方法であって、
(a)請求項1に記載のケーシングを含むカートリッジを形成し、前記ベース部分の前記近位端の前記凹部にプライマーを配置し、一定量の火薬を前記スリーブ部分の内部に配置し、前記スリーブ部分の前記マウスの内部に発射体を配置すること、
(b)前記カートリッジの前記ケーシングの前記近位端を、前記火器のボルトの面と接触させることにより、前記カートリッジを前記火器の薬室内に押すことであって、前記ボルトの可動フック部分の端部にある前記リップが、前記ケーシングのフランジを把持し、前記リップが、前記ケーシングの前記ベースの前記段差に接触する、前記押すこと、
(c)前記ボルト内部の発射ピンを通じて、前記スリーブ部分内部の前記火薬を爆燃し、これにより、前記発射体を前記ケーシング部分のマウスから放出すること、及び
(d)前記ボルト及び前記フックにより、前記火器の前記薬室から前記ケーシングを引き出すこと、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火器用弾薬、特に、そのような弾薬を備えるカートリッジ及びケーシングの構成及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Drobockyiらの米国特許第9,939,236号、及びViggianoらの米国特許第10,260,847号は、特にスリーブ及びベースから構成される2ピースのケーシングを記載している。好ましくは磁気的に誘引性のあるステンレス鋼から作成されるスリーブは、火薬を収容するための凹部と、第1の端部に、発射体を保持するためのマウスとを有している。反対側の第2の端部において、スリーブは、ベースの中央通路内に配置された一体型のニップルを有する。ニップルの先端は、通路内の肩部に広がっている。例えば9mmの弾薬に適用されるとき、ベースはアルミニウム合金から形成されていてもよく、キャネルアは公知のキャネルアと一致していてもよい。第236号及び第847号の特許の教示に従って製造されたケーシングは、重量の低減、火薬量の増加、及び磁気的な誘引性などの、従来の鍛造された真鍮製ケーシングに比べて優れた利点をもたらす。
【0003】
7.62×51mmのNATO弾薬と同様に、ケーシングが、9mmの弾薬に関連するものと比較して特に高い火薬の爆燃の圧力を受けるときには、ベースを高強度の鋼合金から製造することが有利であることが分かった。アルミニウム合金の使用と比較して、これは、ケーシングの重量を増加させる望ましくない作用を有する。Viggianoらの米国特許第10,697,743号は、深い曲線区間のキャネルアを有することによって特徴付けられる弾薬のケーシングを記載しており、これは、よく知られている弾薬におけるキャネルアの円筒形の部分と円錐台状の部分とを組み合わせたものと比較される。本願の
図3は、米国特許第10,697,743号のキャネルアを有するケーシングを部分的な断面図で示す。この特殊なキャネルアは、ケーシングの性能を損なうことなく、鋼、またはアルミニウムより重いその他の材料の使用に付随する重量の損失を軽減する。
【0004】
上述の深いキャネルアによって特徴付けられる2ピースのケーシングから構成されるカートリッジの広範囲な発展試験の間、特定の火器が高速で繰り返し発射されたとき、火器銃尾において時折消費されるケーシングの詰まりが生じた。本発明の目的は、このような問題を回避することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、火器用のケーシング及びカートリッジを提供することであり、双方とも、高い発射速度を有する自動連発式火器の詰まりの傾向を最小限に抑えながら、(よく知られているキャネルアの構造を有する一般的な弾薬と比較して)物品の重量を減らす、キャネルアを備える。
【0006】
本発明の実施形態において、弾薬用カートリッジは、スリーブ及びベースを含むケーシングを有する。スリーブとベースは一体であってもよいし、2ピースのケーシングとして互いに固定された別個の部品であってもよい。スリーブは、使用時に火薬を含み、内部に発射体が保持されるマウスを有するケーシングの部分である。スリーブは、ベースに隣接しており、典型的には円筒形である。ベースの近位端は、従来のケーシングの場合と同様に、空のケーシングの火器の薬室から抜き取ることを可能にするために、火器のボルトのフックに把持されるように形成されるフランジを備える。ケーシングは、フランジの遠位側の面からスリーブの近傍まで延在するキャネルアを有する。キャネルアは、従来式の公知の弾薬のキャネルアと比較して深く、重量が減るという利点をもたらす。
【0007】
レッジとも呼ばれ得る周方向に走行する段差は、フランジに隣接するキャネルア内部にある。この段差は、ボルトのフックの先端のリップがキャネルアに進入可能な程度を制限する。段差は、円筒面を有し得るか、または例えば、フランジからの距離に応じて、軸を延長するケーシングに向かって内方へ軽く湾曲する面を有し得る。段差は、溝によってフランジから離間され得る。好ましくは、キャネルアは、段差から内方へケーシングの中心線に向かって走行する、好ましくは湾曲した部分と、前述の部分から円錐状または曲線状に外側に向かって、スリーブの直径に等しい直径を有するベースの円筒面まで走行する連続した部分とを有する。段差は、火器のボルトのフードの先端部がキャネルアの湾曲部に楔式に接触するいずれの傾向をも回避する。別の実施形態では、キャネルアは、円筒形に延び、次いで、段差から湾曲して走行することができる。
【0008】
使用中、典型的な火器のボルトがカートリッジのケーシングの近位端に係合すると、ボルトの回動可能なフック部分の端部におけるリップはキャネルアに進入するが、その内方移動は、ケーシングのキャネルアを備える段差によって制限される。本発明のカートリッジは、スリーブのマウスに配置された発射体と、スリーブ内部の所定量の火薬と、通路近位端内部のプライマーとを有する発明のケーシングを含む。本発明の目的は、軽量の深いキャネルアのカートリッジを、詰まらせることなく連発式火器で発射することによって成し遂げられる。
【0009】
本発明の上述した及び他の目的、特徴、及び利点は、好ましい実施形態及び付属の図面の以下の説明から、より明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自動発射武器のボルトによって接触される先行技術のカートリッジの一部の分解斜視図である。
【
図2】
図1に関する
図2は、従来のカートリッジのケーシングの部分的な側面図であり、ケーシングのフランジがボルトのフック部分によってどのように係合されているのかを示している。
【
図3】深く湾曲したキャネルアを有する2ピースケーシングの部分的な断面図である。
【
図4】A、B、及びCは、部分的にファントムで示されている、火器のボルトと、断面で示されているケーシングのベースとの係合が、まずボルトのフックをそのホームポジションから半径方向外方へ移動させる様子を示す、関連する連続した図面である。次いで、ボルトの更なる動作により、
図4Cは、ばね作動されるフックのリップ端部が、ケーシングのフランジを把持するためにどのように半径方向内方へ移動するかを示している。
【
図5】部分的に断面で示され、ボルトのフックによって把持された、ボルトと嵌合しながら湾曲したキャネルアを有するケーシングのベースの側面図である。
【
図6】フックの先端部の半径方向内方への動きを制限する外接している段差を有する、湾曲したキャネルアを有する2つのピースケーシングの部分的な切欠きの側面図である。
【
図7】火器のボルトと係合したケーシングを示す、
図6と同様のケーシングの一部の側面図である。ボルトの内部の詳細は部分的な断面図に示されている。
【
図8】フランジの内側(遠位)面から間隔を置いた段差を有するキャネルアを有するケーシングの一部の側面図である。
【
図9】長手方向軸に向かって湾曲する、半径方向に面する表面を有する段差を備えるキャネルアを有するケーシングの一部の側面図である。
【
図10】キャネルアの段差を有する単一ピースのケーシングの一部である側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書におけるカートリッジ(「ラウンド」とも称される場合がある)への言及は、一般に、火器における発射に適した弾薬ピースを指す。カートリッジは、ケーシングと、ケーシング内の火薬と、発射体と、プライマーとを備える。周知のケーシングは、ケーシング/カートリッジの近位端にあるケーシングフランジから遠位に走行する、キャネルア、外接する半径方向に窪んだ領域または溝を有する。近位端は中央の凹部を有する。ケーシングの反対側の遠位端は、ケーシングマウスを有する。火器において発射態勢のカートリッジは、ケーシングの凹部内側の火薬と、マウス端部内部に保持された発射体と、近位端の中央凹部にセットされたプライマーとを含む。
【0012】
本明細書におけるほとんどの発明の実施形態は2ピースのケーシングに関連して説明されているが、その他の実施形態は1ピースのケーシングの形式である。本発明を具現化する2ピースのケーシングは、火薬を保持し、マウスを閉じる発射体を収容するよう形成されるスリーブと呼ばれる第1の部分と、プライマーを保持するよう形成されるベースと呼ばれる嵌合する第2の部分とを備える。スリーブ部分及びベース部分は、Neugebauerの米国特許第9,625,241号、Drobockyiらの同第9,939,236号、Viggianoらの同第10,260,847号、及びViggianoの同第10,697,743号らに記載されているように別々に形成されかつ互いに取り付けられてもよい。当該特許の開示は、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の別の実施形態では、スリーブ部分及びベース部分は、(従来の鍛造された真鍮製ケーシングの場合のように)互いに一体であってもよい。
【0013】
よく知られている先行技術及び本発明のケーシングでは、外接溝またはキャネルアが、フランジと、ケーシングのスリーブ部分との間に配置されている。キャネルアは、火器のボルトに掛かるフックが、ラウンドの発射の後に火器の薬室からケーシングを引き抜くことを可能にする。本発明の機能及び利点について知らせるために、最初に、火器の薬室にラウンドを配置すること、及び発射後のその除去というプロセスの理解について、ここで説明する。
【0014】
図1は、先行技術のケーシング20と組み合わされた火器ボルト90の端部の半概略的な分解図である。
図2は、ボルトに係合している同じケーシングを示している。
図3は、米国特許第11,262,172号に記載の改良されたキャネルアを示している。
図4A、
図4B及び
図4Cは連続しており、ボルトが、カートリッジ「ホーム」を、すなわち火器の薬室(図示せず)内へ押し込む準備をしているカートリッジのベースにどのように近づくかを示している。
【0015】
図1及び
図2を参照すると、ケーシング20は、スリーブ部分67と、一体的なベース部分24とを含んでいる。ケーシング20は、よく知られている先行技術の7.62×51mmのNATOカートリッジのような、典型的な周知の形態のキャネルア46を含む。キャネルア46は、ケーシングの外部に外接する溝またはチャネルを含んでいる。キャネルアは、フランジからスリーブの近傍の点まで走行する長手方向寸法(幅とも称され得る)を有しており、この位置において、ベースは、スリーブの隣接する部分の直径に等しい公称的に一定の直径を有している。キャネルア46は、以下のように特徴付けられる。まず、近位端における、表面61、すなわち、フランジ55の遠位に面する表面。第2に、その中央部分における、連続した円筒面63。第3に、その遠位端における、ケーシングのスリーブ部分に隣接したベースの円筒面67に接するように、両方の外側に向かって走行している連続した円錐面65。例示的に、フランジ55の厚さは、約1.23mmであってよく、表面63の直径は、約10.3~10.4mmであってよい。
【0016】
図1及び
図7を特に参照すると、典型的なボルト90はフック92を備えている。フックは、ピン97を中心に回転するシャンクを備える。フックの最も外側の端部には、ボルトの中心線CLに向かって半径方向内方に延びるリップ94がある(ボルトによって係合させられるあらゆるケーシングの中心線でもある)。ボルトの面91がカートリッジの近位端と嵌合するときに、フックのリップがキャネルアに落下し、カートリッジを火器の薬室内に押す。カートリッジ/ラウンドの発射後にボルトが薬室から後退するとき、フックがケーシングのフランジを引っ張り、これを薬室から引き抜く。
図2に示したように、従来のキャネルアを有するケーシングと共に使用されるとき、リップ94の先端19の内方へ面した表面は、キャネルア46の円筒面63に静置し得る。また、典型的には、フックのシャンクとフランジ55の縁部との間に小さな空隙のスペースが存在している。
【0017】
火器が繰り返しの発射または自動的な発射用に構成されるとき、カートリッジは弾倉装入またはベルト装入で火器の銃尾に入り、その中で銃尾はボルトを並進させる。代表的な発射サイクルでは、ボルトは、カートリッジを火器の空の薬室(図示せず)の中へ押し込む。発射後にボルトが後退し、使用済みのケーシングを薬室から引き出して銃尾の領域に戻し、これから、ボルト内のばね搭載のピン96によって即座に排出される。
図7は、例示的な本発明のケーシング720と組み合わされた、ボルト90の一部の断面を示しており、このケーシングについて下で論じる。
図1及び
図7には、ボルトの様々な詳細が、幾らか簡略化されて、または半ば概略的に示されている。
【0018】
特に
図1及び
図7を参照すると、新しいカートリッジが銃尾において設けられるとき、ボルトは、カートリッジを火器の薬室内へ挿入するために長手方向軸CLに沿って前方へ移動する。その過程で、平らなベース表面91を有するボルト面の凹部95内部にケーシングフランジ55が収容される。薬室内部でカートリッジ「ホーム」を押すと、ケーシングフランジ55が、薬室開口を取り囲む火器構造(図示せず)に当たる。次いで、ボルトは、その軸CLを中心に周方向に小さな角度だけ回転し、これにより、ボルトスプラインセグメント93を備えた手段でボルトをロックし、これにより、ボルトはケーシング内部での爆燃圧力からの反力に抵抗できる。発射体の発射後に、ボルトは第1の回転に対して逆方向に回転し、ボルトの後方移動と薬室からのケーシングの抜き出しとを同時に可能にする。
【0019】
前述したことと相補的に、ボルトが最初にカートリッジのケーシング部分に接触すると、フック92のリップ94の角度が付けられた終端は、フックの自由端を半径方向外方へ変位させる。
図4A及び4Bを参照されたい。ピン97を中心とするフックの回動は、ボルトばね98を圧縮する。
図7を参照されたい。ボルトとケーシングとの間の距離の継続的な減少により、ケーシングのベースは、ボルトの面の凹部95内部に収容され、ばね98が、フックをピン97を中心として回転させ、これにより、リップ94は半径方向内方へ移動し、キャネルア46内へ落下する。
図4Cを参照されたい。次いで、ボルトは、カートリッジが火器の薬室と共にその定位置で停止するまで、前方へ続く。火薬の爆燃に起因する火器銃身内部のガス圧は両方とも、発射体を銃身から推進し、火器内部のチャネリングを介して、ボルトを回転によりロック解除させ、薬室から離れるように、後方に移動させる。ボルトが薬室から離れるように移動すると、フック92がフランジ55を引っ張り、ひいては、空になったケーシング全体を薬室から引き出す。ボルト面における凹部95内部には、ばね99によって付勢される抽出ピン96がある。(ピンは、
図7においてケーシングとボルトとの接触により内方へ押し付けられた状態で示されている)。ボルトが後退して薬室からケーシングのマウスを引き込むとき、ばね付勢された排出ピンがケーシングを押し、ケーシングを凹部95から、またフック92との係合から飛ばし、使用済みのケーシングは、武器の銃尾から上方及び側方に向いて空間に飛ぶ。このようにすることで銃尾に新たなカートリッジを導入できるようになり、これによって装填、発射、排出のサイクルが繰り返し行われる。使用済みのケーシングが銃尾から適切に飛ばない場合、詰まりが発生する可能性が高い。
【0020】
図3は、米国特許第10,697,743号に開示されているケーシングと一致する、湾曲したキャネルアを有する2ピースのケーシング620の部分的な断面図である。ケーシング620はスリーブ622を備えており、これは、スリーブニップル628によってベース624に固定され、その端部は、ベースを通って長手方向に走行する通路の孔内部の肩部に対して広がっている。キャネルア646は、フランジ655の遠位側の表面から半径方向内方へ延在する平らな表面647によって画定されており、連続的な長手方向に延在する湾曲面は、第1の内向きかつ長手方向に走行する第1の部分649と、スリーブ622の外側と実質的に同じ直径を有する、ベースの円筒面653に接するように湾曲するように外側に走行する第2の部分651とを含む。上述した面全部を回転面と呼ぶことができる。
【0021】
連続する湾曲部分649、651の最小の直径は、
図2に示したような従来の先行技術のケーシング20の円筒面63の直径よりも実質的に短い。したがって、鋼または他の強金属合金で作られたケーシング620は、有利には、従来の形状のキャネルアを備えた同じ口径の同一金属のケーシングと比較して重量が軽いが、それにもかかわらず、ケーシングは、NATO7.62×51mmカートリッジのような関連する高爆燃圧力に耐えるのに十分な強度がある。スリーブに取り付けられたベースを有する2ピースのケーシングの代替的な構成が使用され得て、この構成には、スリーブとベースとを互いに保持するために第3の構成要素のリベットが使用されるケーシングが含まれ、その例が、上記のNeugebauerの特許第9,625,241号の
図3に接続構成要素24として示されている。代替的に、ケーシングは、2ピースのケーシングについて説明したのと実質的に同じキャネルアを有する1ピースのケーシングとして形成されていてよい。
【0022】
自動連発式の火器においてケーシング620を含むカートリッジを発射することにより、多数の試験が実施された。ボルトが時折詰まることが観察された。詰まりの発生率が低いことは、原因の究明が困難であることを意味していた。
図5は、精密製造プロセスと考えられていたにもかかわらず、ことによると形状または仕上がりのわずかな製造のばらつきに起因して、キャネルアが長手方向に湾曲して走行し始める箇所59でのキャネルアに対するリップ94の先端19の楔付けの程度によって詰まりが引き起こされ得るという、未検証の疑いを明示するために、ボルト90のフック92と係合するケーシング620のベース624を示す。
【0023】
詰まりは、湾曲したキャネルア内部に、本明細書では段差と呼ばれるが、レッジとも呼ばれ得る特徴を形成することによって排除された。キャネルア内部の段差は、段差が存在しなければ、フックのリップが、従来のキャネルアを特徴付けるよりも小さい最小直径寸法を有する本発明のキャネルア内へより深く延在させることができたときに、ケーシングの中心線に向かうフックのリップの半径方向内方移動を、楔入りせずに制限するように構成された、キャネルアの外接表面部分である。
【0024】
図6及び
図7は、本発明の実施形態が示されており、すなわち、フレア状のニップル728によってベース724に取り付けられたスリーブ722から構成される2ピースのケーシング720を示す。ベース724は、湾曲したキャネルア746を有しており、この内部に段差750がある。
図7は、ボルト90に接触して保持されたケーシング720を示しており、リップ94の先端19が段差750と接触し、フックのリップ94がフランジ755の遠位面を把持している。
【0025】
本発明を使用する際に、カートリッジ720のベース724がボルト90と係合されると、フック92のリップ94の先端19の半径方向内方に面した表面が段差750に静置され、これにより、長手方向軸CLに向かう、ばねによって誘発されるリップの半径方向内方への移動の程度が制限される。
【0026】
NATO7.62×51mmのカートリッジ用の典型的な段差は、約10.3mmの直径及び約0.7mmの軸方向の長さを有する。(例示的なケーシング720の段差の直径は、従来の7.62×51mmのラウンドの円筒面63の直径とほぼ同じであってよい。
図2を参照されたい。)参考までに、例示的なケーシングにおいて、7.62×51mmのカートリッジを使用した代表的な火器におけるケーシングの段差またはキャネルア(該当するような)と接触するフック92のリップ94の先端19のCLの軸方向の長さは、約1.3mmである。参考までに、例示的なケーシングでは、約11.8mmというフランジの直径を有し、外側リム位置における厚さは約1.23mmであり、これらの寸法は両方とも、公称的に、従来のカートリッジのフランジを特徴付けるものと同じである。
【0027】
再び
図7を参照すると、NATO7.62×51mmのケーシングの実施形態では、この段差により、フック下面がフランジのリムの周面と接触することが防止されている。例えば、フックとフランジの周面との間には約0.03~0.05mmの隙間87が存在する。
【0028】
再び
図6を参照すると、本発明の実施形態においては、ケーシング720の段差750が、7.62×51mmのカートリッジのフランジ755の半径の約5.9mmより短い寸法RAである半径を有する円筒面である。例示的な寸法RAは、約1mmである。同じサイズのカートリッジの他の実施形態では、寸法RAは1mm~1.6mmであることができる。上述したように、寸法RAは、好ましくは、特定のボルト及びフック構成のために、フック本体の中心線に面した面が、フランジの外面と接触しないように選択される。本発明の実施形態では、フランジ755の軸方向の長さ(厚さ)LBは、それが7.62×51mmのカートリッジと共に使用するように構成されているので、約1.3mmであり、段差の軸方向の長さ(段差の幅とも呼ばれる)LAは、約0.6mm~1.27mmであってよい。軸方向の長さが幾分小さいまたは幾分大きい段差を使用してもよい。深いキャネルアの目的はベースの重量を減じることにあるので、段差の軸方向の長さを最小限に抑えることが好ましい。しかしながら、ボルトのリップの半径方向に面した表面全体がキャネルアの外接面に接触することが望ましい場合には、中心線の軸CLに対して平行である、リップの長さに近似する段差の長さを有することが望ましいであろう。
【0029】
例示的なキャネルア746の長さLCは、指摘されたように、段差の軸方向の長さを含めて約3mmである。したがって、長さ0.6mm~1.27mmの例示的な段差は、例示的なキャネルアの長さ3mmの約20~約42%であることになる。
【0030】
図8は、本発明の別の実施形態、すなわち、段差850が、フランジ855の遠位側の環状面から内方へ延びる、遠位に面した環状面861から溝851によって離間されているベース824を示している。段差のフランジ遠位面から遠位縁までの距離である
図8の寸法LDは、
図6の寸法LAに等しくてもよい。したがって、ベース824の構成により、ケーシングの重量を低減しながら、ケーシング720(
図6に示される)の段差750と同等の機能を有する段差を設けることができる。本発明の実施形態では、段差は、フックの内向きの運動を制限することに関して機能的に同等である限り、滑らかな円筒面以外にし得る。例えば、段差は、近接して間隔を置いている複数の外接リブを含んでもよい。別の例では、
図9は、長手方向で内方に湾曲する外方に面した表面を有する段差950を備えたベース924を備えるケーシング920を示しており、その曲率は、上述して仮定したフックの楔止めを引き起こし得る曲率よりも小さい。
【0031】
本発明の実施形態では、キャネルアが、米国特許第10,697,743号に記載されているように、連続的に湾曲した表面を含むことが好ましいが、曲線の近似、例えば一連の連続的な円錐面は、等価物として本発明の範囲内にある。
【0032】
図10は、段差を含む湾曲していないキャネルアを有する1ピースのケーシング1020の実施形態を示している。この段差を除いて、ケーシング1020は、
図2の先行技術のカートリッジ真鍮ケーシング20を特徴付けるキャネルアと概ね同様のキャネルア1065を有している。ケーシング1020は、フランジ1055を備えており、キャネルア1046は、フランジ1055の環状遠位面から内方へ延在する環状部分と、隣接する円筒区分1063と、隣接する外方へ走行する円錐区分とを備えている。ケーシング1020は、ケーシング720に関して上述したものと一致する直径を有する円筒形の段差1050を備える。ケーシング720について先に記載された段差の直径及び長さの寸法ならびに段差のバリエーション(例えば、隣接する溝及び/または長手方向の曲面)が、例示的なケーシング1020で使用されてもよい。
【0033】
1ピースのケーシング1020の実施形態では、キャネルアの円筒区分1063の最小直径が、同等の先行技術のケーシングのキャネルアの直径よりも実質的に短い場合、ケーシング1020の材料は、スリーブ部分を形成するのに十分に成形可能であり、かつベースに加えられる爆燃圧力に抵抗するのに十分に強いものである必要がある。このようなケーシング1020の実現可能性は、キャネルアの大きさ、爆燃圧力の程度、及び材料の選択に依存する。ケーシング1020において示されたような形状のキャネルアを有する2ピースケーシングは、本発明の範囲内である。1ピースのケーシングに対する2ピースのケーシングの利点は、スリーブの金属を主にその成形性のために選択することができ、ベースの金属を、主にその強度のために選択することができるということである。
【0034】
本発明のケーシングの実施形態を特徴付ける別の方法は、以下のものである。ケーシングが、中心長手方向軸と、ケーシングの近位端にあるフランジを有するベース部分と、発射体を収容するように成形されたマウスを有するスリーブ部分とを備えており、マウスはケーシングの遠位端にある。ベース部分は、近位側に面し、プライマーを収容するように成形された凹部を取り囲む、フランジの第1の環状側を備える。キャネルアは、フランジの対向する第2の環状側からベース部分がスリーブ部分に嵌合するかまたは一体になる近傍まで遠位方向に延びる。キャネルアは、中心長軸に外接する以下の表面部分から構成される。
(a)遠位側に面した第1の環状部分であって、フランジの遠位側に面した面と同一平面にある第1の環状部分、
(b)第2のキャネルア部分(段差部分とも呼ばれる)であって、第1の環状部分に隣接しているか、または溝によりそれと離間しており、段差部分が長手方向に延在しており、フランジの外径よりも小さい直径を有する、第2のキャネルア部分、
(c)第3のキャネルア部分であって、段差の部分に隣接し、(i)段差の部分から平面か湾曲に沿ってケーシングの中心線に向かって内方へ走行し、次いで(ii)段差部分から、ケーシングの遠位端の方向へ円筒状にまたは曲線に長手方向に延在し、第2のキャネルア部分の直径よりも短い直径を有する副次的部分を有する、第3のキャネルア部分、及び
(d)隣接するスリーブと公称的に同じ直径を有する、ベースの円筒部分に至る、中心線軸からベースまで湾曲してまたは円錐状に離れて走行する第3のキャネルア面部分に隣接する第4のキャネルア面部分。
【0035】
述べたばかりのケーシングは、1ピースのケーシングであっても、ベースに取り付けられたスリーブから構成される2ピースのケーシングであってもよい。
【0036】
本発明の実施形態は、火器におけるカートリッジから発射体を発射する方法であって、(a)前述のケーシングを含むカートリッジを形成することであって、ベース部分の近位端の凹部にプライマーを配置し、一定量の火薬をスリーブ部分の内部に配置し、スリーブ部分のマウスの内部に発射体を固定する、形成すること、(b)カートリッジのケーシングの近位端を、火器のボルトの面と接触させることにより、カートリッジを火器の薬室内に押すことであって、ボルトの可動フック部分の端部にあるリップが、該ケーシングのフランジを把持し、該リップが、ケーシングのベースの段差に接触する、押すこと、(c)ボルト内部の発射ピンにより、スリーブ部分内部の火薬を爆燃し、これにより、発射体をケーシング部分のマウスから放出すること、及び(d)次いで、該ボルト及びフックにより、火器の薬室からケーシングを引き出すこと、を含む、方法を含む。
【0037】
本発明は、明示的及び暗示的な変形及び利点を有しながら、いくつかの実施形態に関して説明及び図示されている。それらの実施形態は、限定的ではなく例示的とみなすべきである。「好ましい」及び変形などの単語の任意の使用は、望ましいが必ずしも必須ではない特徴または組み合わせを示唆している。したがって、いずれかのそのような好ましい特徴または組み合わせを欠いた実施形態は、以下の特許請求の範囲内に含まれ得る。当業者は、特許請求された発明の範囲から逸脱することなく、記載された本発明の実施形態の形態及び詳細に様々な変更を加えることができる。
【国際調査報告】