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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-20
(54)【発明の名称】工作機械用の電動測定アーム装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20240513BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALN20240513BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q17/09 C
B23Q17/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568219
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 GB2022050987
(87)【国際公開番号】W WO2022234248
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】21275051.7
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アンドリュー コックセッジ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ジャックス アンドリュー バーン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アダム ストゥードリー
(72)【発明者】
【氏名】サンダー マートン
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029AA23
3C029DD00
3C029EE00
(57)【要約】
工作機械用の電動測定アーム装置(2)が記載されている。装置(2)は、工作機械に取り付けるための基部(4;40)と、1つ以上のセンサを保持するための基部から延びるアーム部材(6;38)とを備える。アーム部材(6;38)は、収納位置(26b)と動作位置(26a)との間でベースに対して移動可能であり、動作位置は、機械的ストップ構成(50a、50b)の係合によって画定される。装置はまた、ベース(4;10)に対してアーム部材(6;38)を移動させるためのモータ(44)と、ベース(4;40)に対してアーム部材(6;38)を移動させるためにモータ(44)を通電させるためのモータコントローラ(52,78)とを有する。モータコントローラ(52、78)は、アーム部材(6;38)が動作位置にあるときにモータ(44)に通電して、機械的ストップ構成(50a、50b)の係合を維持するように構成される。このようにして、改善された再現性を有する動作位置が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械用の電動測定アーム装置であって、
工作機械に取り付けるためのベースと、
1つ以上のセンサを保持するために前記ベースから延びるアーム部材であって、前記アーム部材は、収納位置と動作位置との間で前記ベースに対して移動可能であり、前記動作位置は、機械的ストップ構成の係合によって画定される、アーム部材と、
前記ベースに対して前記アーム部材を移動させるためのモータと、
前記モータに通電して、前記アーム部材を前記ベースに対して移動させるためのモータコントローラと、
を備え、
前記モータコントローラは、前記アーム部材が前記動作位置にあるときに前記モータに通電して、前記機械的ストップ構成の係合を維持するように構成される電動測定アーム装置。
【請求項2】
前記モータコントローラは、前記アーム部材の前記動作位置への移動中の前記機械的ストップ構成の最初の係合の後の第1の期間の間、前記モータにドライブイン電流を供給するように構成され、前記モータコントローラはまた、前記機械的ストップ構成の係合を維持するために前記第1の期間の後に前記モータに保持電流を供給するように構成され、前記保持電流は、前記ドライブイン電流よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記モータコントローラは、第2の期間にわたって前記モータに供給される前記電流を前記ドライブイン電流から前記保持電流に減少させるように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記モータコントローラは、前記第2の期間にわたって、前記モータに供給される前記電流を前記ドライブイン電流から前記保持電流にランプダウンさせるように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記機械的ストップ構成は、前記アーム部材に取り付けられた第1の部分と、前記ベースに取り付けられた第2の部分とを備え、前記第1および第2の部分は、係合させられたときに反復可能な相対位置を採用するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1および第2の部分は、係合されたときに、運動学的に定義された相対位置を提供する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記モータは、ブラシレス直流(DC)モータを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記アーム部材が、回転ジョイントによって前記ベースに取り付けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ベースに対する前記アーム部材の回転を測定するためのロータリーエンコーダを備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記モータは、モータ回転の量を測定するための統合されたロータリーエンコーダを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記モータコントローラは、前記ロータリーエンコーダの出力を監視し、前記アーム部材に加えられている外力を示す前記アーム部材の移動の位置または速度に予期しない変化があるかどうかを決定するように構成される、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記モータコントローラは、前記可動アームに外力が加えられた場合に、前記モータを非通電にするように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ベースは、前記回転ジョイント、前記モータ、および前記機械的ストップ構成を収容するハウジングを備える、請求項8から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記モータを前記アーム部材に接続するギアボックスを備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記ベースは、前記装置を前記工作機械に固定するための取り付け機構を含み、少なくとも1つのセンサマウントが、前記アーム部材の前記遠位端にまたはその近くに提供される、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械用の電動測定アーム装置に関し、特に、少なくとも1つの測定センサを測定が行われる動作位置に出入りさせるように構成された改良された電動測定アーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
必要に応じて、工具測定デバイスまたは工具設定プローブなどの測定センサを動作位置に移動させることを可能にする測定アーム装置を工作機械に取り付けることが知られている。例えば、測定センサは、切削工具を測定または検査するために定期的に工作機械の作業容積内に移動され得るが、そのような工具測定が必要とされないときに、非動作または収納位置に移動され得る。既知の測定アームは、ユーザによって手動で移動可能であってもよく、またはそれらは、工作機械の制御下で自動運動を可能にするように電動化されてもよい。
【0003】
特許文献1は、電動測定アーム装置の一例を説明する。突出した測定アーム部材は、固定ベース部材に対して回転可能であり、運動学的ストップは、アーム部材の動作位置を画定するために使用される。モータおよびウォーム駆動は、アーム部材を回転させて運動学的ストップと係合させるために使用され、モータが動作位置に到達した後に非作動になるときにそのような係合を維持するために、テンションスプリングの複雑な配置が提供される。
【0004】
特許文献2は、固定部材とアーム部材との間の動作位置またはインデックス位置を運動学的に画定するストップを備える別の測定アームを記載する。軸方向バイアスばねおよび戻り止めプレートは、アーム部材が動作位置に移動した後にストップの係合を維持する回転力を提供するために使用される。これは、特許文献1のテンションスプリング装置よりも、よりコンパクトで堅牢な装置を提供する。
【0005】
本発明者らは、特定の状況において、特許文献1および特許文献2の配置を使用して提供されるインデックスまたは動作位置の再現性の低下があり得ることを見出した。例えば、機械振動の存在下で、またはアームが動作位置に激しく駆動されるとき(それが重いセンサを運んでいるときなど)、動作位置の再現性が損なわれる可能性がある。動作位置の任意のそのような変動は、測定アーム装置によって運ばれるセンサを使用して行われる任意の位置測定の不確実性の源として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,446,970号明細書
【特許文献2】米国特許第6,519,863号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H.J.J.ブラディック著 「Mechanical Design of Laboratory Apparatus」 Chapman and Hall 1960
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、工作機械用の電動測定アーム装置であって、
工作機械に取り付けるためのベースと、
1つ以上のセンサを保持するためにベースから延びるアーム部材であって、アーム部材は、収納位置と動作位置との間でベースに対して移動可能であり、動作位置は、機械的ストップ構成の係合によって画定される、アーム部材と
ベースに対してアーム部材を移動させるためのモータと、
モータに通電して、アーム部材をベースに対して移動させるためのモータコントローラと、を備え、
モータコントローラは、アーム部材が動作位置にあるときにモータに通電して、機械的ストップ構成の係合を維持するように構成される、電動測定アーム装置が提供される。
【0009】
したがって、本発明は、金属切断機、マシニングセンタ、研削盤、フライス盤または旋盤などの工作機械用の電動測定アーム装置を提供する。装置は、工作機械の適切な部分に取り付けることができるベースを備える。例えば、ベースは、ボルトなどを使用して工作機械のベッド、ケーシングまたはフレームに装置を取り付けることを可能にする複数の穴を含み得る。任意のそのような取り付けは、好ましくは、工作機械に対するベースの任意の動きを防止するのに十分な剛性である。ベースから延びるアーム部材も提供される。以下に説明するように、アーム部材の近位端は、回転ジョイントを介してベースに取り付けられ得、それによって、アーム部材が収納位置と動作位置との間で回転することを可能にする。アーム部材はまた、工具測定または工具設定デバイスなどの1つまたは複数のセンサを保持するように構成される。センサは、アーム部材の遠位端またはその近く、またはアーム部材に沿った任意の適切な位置に取り付けられ得る。また、以下で説明するように、アーム部材は、実質的にまっすぐであってもよく、または1つ以上の角度の付いた部分を含んでもよい。好ましい実施形態では、アーム部材は、その遠位端の近くに取り付けられたセンサを備えたL字形である。
【0010】
アーム部材は、収納位置と動作位置との間で移動することができる。アーム部材はまた、他の位置(例えば、1つまたは複数の中間位置)を採用し得る。モータコントローラの制御下で、モータは、収納位置と動作位置との間でアーム部材を駆動するために使用される。好ましい実施形態では、モータは、収納位置と動作位置との間でアーム部材を回転させる。モータコントローラは、関連する工作機械のコントローラにさらにインターフェースされて、装置の自動制御を提供し得る。
【0011】
アーム部材が動作位置にあるとき、機械的ストップ構成は係合される。機械的ストップ構成は、例えば、ベースの第2の部分(part)または複数の部分(parts)と係合するように構成されたアーム部材の第1の部分(part)または複数の部分(parts)を含み得る。以下に説明するように、好ましい実施形態では、この機械的ストップ構成は、反復可能な(例えば、運動学的に定義された)動作位置を提供する戻り止め機構を含み得る。使用中、動作位置は、アーム部材に取り付けられたセンサが、必要な測定を実行するために使用できる工作機械内の位置に保持されるように配置される。例えば、動作位置は、工具測定に適した工作機械の作業容積内の位置に工具測定センサを配置し得る。電動測定アーム装置自体は、任意の物体測定を実行しないが、そのセンサを使用して測定を行う前に、アーム部材によって動作位置に保持されるセンサを適切に配置するように配置されることに留意することが重要である。特に、電動測定アーム装置は、センサが動作位置に配置されたときに(例えば、工具の)測定値を取得するために使用できる適切なセンサ(例えば、工具測定センサ)を保持するように構成される。したがって、以下で説明するように、アーム部材は、適切なセンサをアーム部材に取り付けることを可能にするセンサマウントを含み得る。
【0012】
アーム部材は、動作位置と収納位置との間で前後に移動(例えば、モータによって回転)させることができる。収納位置への移動は、例えば、アーム部材および取り付けられたセンサを工作機械の作業容積から取り外して、切削工具、ワークピースなどに干渉しないようにし得る。収納位置はまた、アーム部材に取り付けられた任意のセンサが典型的には、この位置にあるときに使用されないため、非動作位置または非測定位置と呼ばれ得る。測定は、アーム部材がそのような位置にあるときに行われることを意図していないため、アーム部材によって採用された収納位置は、反復可能である必要はないが、ある可能性がある。アーム部材を収納位置に移動させることは、任意の切断動作中に測定アーム装置を保護するために閉じることができるドアまたはシャッターを有するハウジングまたは空洞内にアーム部材を後退させ得ることに留意されたい。あるいは、収納位置は、単純に、アーム部材を工作機械筐体内の特定の領域から離れた場所に配置してもよく、他の動作を妨げる可能性があり、および/または取り付けられたセンサを保護ハウジングまたはポケットに移動させてもよい。
【0013】
本発明によれば、モータ自体は、アーム部材が動作位置に駆動された後に機械的ストップ構成の係合を維持するのを助けるために使用される。アーム部材が収納位置から動作位置に移動した後にモータを単にオフにする代わりに、モータは、機械的ストップ構成の係合を維持するのを助けるために通電されたままである。モータが動作位置にあるときにモータに供給される電力(例えば、電流)は、モータによる過剰な発熱を停止するのに十分に低くなるように選択されることが好ましい。これは、モータへの損傷を防止するのに役立ち、また、そうでなければアーム部材の動作位置に影響を与える可能性のある熱膨張効果を最小限に抑える。したがって、モータは、機械的ストップの係合を維持するために力(トルク)を加えるように作用するが、モータをそれ以上回転させることはない。言い換えれば、モータは、アーム部材が動作位置にあるが、保持トルクまたは力を提供するように通電されたままであるときに停止する。モータに供給される電気エネルギーは、好ましくは、機械的ストップが係合された後に減少され、それによって、過度のモータ加熱を低減し、および/またはモータへの損傷を防止する。機械的ストップの係合を維持するためにモータによって加えられる力は、機械的ストップ構成を係合させ続けるためにも作用し得る他の力(例えば、ばね力、重力など)に加えてもよいことに留意されたい。
【0014】
本発明の配置は、いくつかの利点を有することが見出されている。特に、機械的ストップの係合を維持するために純粋に受動的な(ばねベースの)機械的手段を使用して得られたものよりも反復可能な動作位置を提供することが見出されている。これは、次に、そのような測定アーム装置に取り付けられたセンサを使用して複数の測定(例えば、工具測定)を行うことに関連付けられた測定の不確実性を低減する。言い換えれば、アーム部材が動作位置にあるときに、モータを使用してトルクを加えて機械的ストップ構成の係合を維持することは、従来技術の装置で発生し得る(例えば、振動などによる)アーム部材の位置の変化を低減する。したがって、改善された計測精度が提供され、特に、アーム装置が重いセンサを運ぶために使用され、および/または特定の方向に取り付けられている場合に提供される。
【0015】
有利には、モータコントローラは、アーム部材の動作位置への移動中に機械的ストップ構成の最初の係合後の第1の期間のドライブイン電流をモータに供給するように構成される。モータコントローラはまた、機械的ストップ構成のしっかりとした(正の)係合を維持するために、第1の期間の後に保持電流をモータに供給するように便利に構成される。言い換えれば、モータは、動作位置に到達したときに機械的ストップ構成が最初に係合するときにドライブイン電流を引き出し得る。特に、ドライブイン電流制限は、モータが停止するときに適用され得る。ドライブイン電流は非常に高くなる可能性がある(すなわち、モータを損傷したり、長時間維持しすぎると過熱するほど高くなる可能性がある)。数秒以下のオーダーであり得る第1の時間期間の後に、保持力またはトルクを提供する保持電流がモータに供給される。第1の時間周期は、少なくとも0.1秒、または少なくとも0.25秒、または少なくとも0.5秒、または少なくとも1秒であり得る。第1の時間周期は、10秒未満、または5秒未満、または1秒未満であり得る。次いで、保持電流制限は、動作位置が採用されている間に維持され、したがって、好ましくは、過度のモータ加熱またはモータ損傷を防止するのに十分に低い。
【0016】
保持電流は、有利には、ドライブイン電流よりも小さい。モータコントローラはまた、第2の期間にわたって駆動電流から保持電流にモータに供給される電流を減少させるように構成され得る。ドライブイン電流から保持電流への急速な減少があり得る(すなわち、第2の時間周期は非常に短い場合がある)。有利には、ドライブイン電流から保持電流へのより緩やかな減少がある。例えば、第2の時間周期は、少なくとも0.1秒、または0.25秒、または0.5秒、または1秒であり得る。第2の期間にわたってドライブイン電流から保持電流にモータに供給される電流を徐々にランプダウンするようにモータコントローラを構成することが特に有利であることが見出されている。言い換えれば、駆動電流は、ドライブイン電流から保持電流への増分またはステップで減少し得る。これにより、比較的高いドライブイン電流が印加されたときに達成される機械的ストップの良好な係合が、電流が保持電流に減少するにつれて維持されることが可能になる。言い換えれば、実質的に一定の係合力(トルク)を維持することができ、駆動系の後方の、潜在的に一貫性のない動きを実質的に防止することができる。
【0017】
有利には、モータコントローラは、モータに供給される電流を監視するように構成される。例えば、モータコントローラは、電流測定デバイスまたは回路を含み得る。このようにして、機械的ストップが係合されるときに生じ得る増加した電流(すなわち、ドライブイン電流)は、モータコントローラによって感知されることができる。電流を監視することはまた、アーム部材が外部物体と(例えば、意図的ではない)接触したかどうかを判定するために使用することができる。例えば、アーム部材がモータによって引き出された電流の任意の突然の増加を動かしている場合、アーム部材が障害物に当たったことを示し得る。そのような例では、モータは、損傷または傷害を防ぐために停止され得る。以下に説明するように、エンコーダがアーム部材の向きを測定するためにも提供される場合、エンコーダ出力を使用して、動作位置に到達するアームと、予期しない障害物に接触するアームとを区別することも可能である。
【0018】
アーム部材が動作位置にあるときにモータに供給される電流を監視することも可能である。モータが予想される保持電流よりも高い電流を引き出し始めると、外力がアーム部材に加えられていると判断することができる。この外力は、アーム部材を動作位置から手動で移動しようとする機械オペレータであり得る(例えば、工作機械が停電、衝突などの後にリセットされている場合)。そのような外力が一定の期間アーム部材に加えられていることを確認することに応答して、モータコントローラは、保持電流をオフにして、モータによって加えられた保持力を克服することなく、アーム部材を手動で移動させる(すなわち解放する)ことを可能にし得る。特に、モータコントローラは、好ましくは、外力が可動アームに加えられた場合にモータを非通電にするように構成される。しかしながら、一時的な力が振動に起因して生じ得ること、したがって、アーム部材は、好ましくは、一定の大きさの外力が一定の期間連続的に加えられる場合にのみ解放されることを覚えておくべきである。
【0019】
以下でより詳細に説明するように、装置は、可動アームの位置を測定するためのエンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダ)を含み得る。モータコントローラは、有利には、ロータリーエンコーダの出力を監視し、アーム部材に加えられている外力を示すアーム部材の移動の位置または速度に予期しない変化があるかどうかを決定するように構成される。言い換えれば、エンコーダによって行われた測定は、アームに加えられる外力から生じた位置(例えば、アーム部材が静止していると予想される場合)またはアーム部材の動きの速度(例えば、アームが動作位置と収納位置との間で移動している場合)の予期しない変化を感知するために使用され得る。モータ制御は、供給された電流の変化を監視する代わりに、またはそれに加えて、エンコーダによって測定された位置または速度の任意のそのような予期しない変化を使用して、外力がアーム部材に加えられ、そこでモータが非通電され得ることを示し得る。
【0020】
機械的ストップ構成は、好ましくは、アーム部材が動作位置にあるときの、ベースに対するアーム部材の反復可能な位置を画定する。ストップ機構は、電動測定アーム装置内に内部に設けられることが好ましいが、別個の外部ストップ(例えば、工作機械の一部に直接取り付けられる)を代替的に設けることができる。好ましい実施形態では、機械的ストップ構成は、アーム部材に取り付けられた第1の部分と、ベースに取り付けられた第2の部分とを含む。第1および第2の部分はそれぞれ、係合されるときに反復可能な相対位置を画定するように係合する複数の要素(例えば、3つの要素)を含み得る。
【0021】
有利には、第1および第2の部分は、係合されたときに、運動学的に定義された相対位置を提供する。言い換えれば、第1および第2の部分は、運動学的に制約された動作位置を画定する。この運動学的制約は、第1の部分と第2の部分との間の6つの動きの自由度のそれぞれが1つの接触点によってのみ制約されることを意味する。これは、第1の部分と第2の部分との間の非常に反復可能な相対位置を画定する。様々なタイプの運動学的接続およびマウントが知られており、(例えば)非特許文献1に記載されている。そのような運動学的制約は、準運動学的または部分的に縮退した運動学的マウントを含み得る。
【0022】
動作位置は、機械的ストップ構成の係合によって画定され、これは、好ましくは、アーム部材がベースに対して非常に反復可能な位置に到達することを可能にする。収納位置では、典型的には、アーム部材が収納位置にある状態で位置測定が行われないため、再現可能な位置を提供する必要はない。しかしながら、(例えば、さらなる機械的ストップ構成を提供することによって)反復可能な収納位置を画定することも可能であろう。収納位置に提供される任意の反復可能な位置は、動作位置に提供される位置よりも低い精度で画定され得る。
【0023】
装置のモータは、任意の好適なタイプであり得る。有利には、モータは、ブラシレスモータを含み、および/またはモータは、直流(DC)モータであってもよい。モータは、ステッピングモータを含み得る。装置はまた、ギアボックスを含み得る(すなわち、モータは、ギアボックスを介してアーム部材に動きを与えることができる)。アーム部材は、ベースに対して直線的に移動し得る。好ましい実施形態では、アーム部材は、回転ジョイントによってベースに取り付けられる。したがって、アーム部材は、収納位置と動作位置との間でモータによって回転され得る。回転は、直接駆動またはギアボックスを介して駆動され得る。動作位置と収納位置との間に任意の適切な回転角度を設け得る。有利には、収納位置と動作位置は、45°を超える、または60°を超える、または少なくとも90°を超える回転によって分離される。収納位置と動作位置との間の角度回転の量は、調整可能であり得る。例えば、収納位置および動作位置のうちの少なくとも1つの絶対角度は、調整可能であり得る。この調整は、ユーザによって行われ得る。あるいは、収納位置および/または動作位置を画定する角度は、製造中または設置エンジニアによって設定され得る。
【0024】
有利には、アーム装置は、少なくとも1つのロータリーエンコーダを備える。ロータリーエンコーダは、光学エンコーダ、誘導エンコーダ、または磁気エンコーダなどであり得る。ロータリーエンコーダは、ベースに対するアーム部材の回転を測定するために使用され得る。エンコーダは、モータを備え得、またはモータに組み込まれ得る。例えば、モータは、モータ回転の量を測定するための(例えば、1つまたは複数のホールセンサ素子を含む)統合されたエンコーダを含み得る。
【0025】
代替的に、または追加的に、エンコーダは、ベースに対するアーム部材の相対位置(例えば、角度)を測定するために、測定アーム装置の適切な部分に取り付けられ得る。モータコントローラは、エンコーダから位置情報を受信し得、それによって、それがベースに対するアーム部材の相対位置(例えば、角度)に応答して作用することを可能にする。次いで、アーム部材が動作位置または収納位置に近づくにつれて、アーム部材の速度を遅くすることが可能である。これは、装置への損傷または摩耗を低減することができ、また、動作位置に到達する際に発生し得るアーム部材の振動(vibrations)または振動(oscillations)を低減することができる。所望の位置に到達する前にこれを遅くすることができる場合、より速い速度のアーム部材の移動も可能である。
【0026】
好ましい実施形態では、ベースは、回転ジョイント、モータ、および機械的ストップ構成を収容するハウジングを備える。次いで、アーム部材は、ハウジングから延び得る。回転可能なハブは、アーム部材を運ぶために提供され得る。好ましい実施形態では、電動測定アーム装置は、特許文献2に記載されている戻り止め機構を含み得、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。特に、ベースは、3つの半径方向内突起を有するベースの開口部内で回転する3つの半径方向(外向き)突起を有する可動部分を有するハブを含み得る。突起は一緒になって、動作位置を画定するが、アーム部材の収納位置も画定する機械的ストップを提供し得る。開口部はまた、ハブ上の環状肩部を支持する環状棚上に3つの軸方向の隆起領域を有し得る。このようにして、動作位置および収納位置のそれぞれに、ハブとベース部材との間に6つの接触点がある。開口部に固定された戻り止めプレートと、その中央領域によってハブに固定された平面ばねとを備えるばね付勢装置が提供され得る。ボールベアリングは、ばね上の2つの反対側のラグに緩く保持され、2対の戻り止め穴の間で戻り止めプレートの周りを走り得る。動作位置および収納位置では、ボールベアリングは戻り止め穴の半径方向に延びるエッジ(例えば、特許文献2の図5を参照)に載っており、したがって、ばねの軸方向の力はまた、接線方向に力の成分を提供し、それによって回転力を引き起こす。
【0027】
上述したように、電動測定アーム装置は、モータをアーム部材に接続するギアボックスを含み得る。これにより、モータの回転を変換して、所望の速度とトルクを提供することができる。ギア比は、固定または可変であり得る。ギア比は、必要な速度で収納位置と動作位置との間でアーム部材(およびアーム部材に取り付けられた任意のセンサ)を回転させるのに十分なトルクを提供するように設定し得る。装置は、好ましくは、クラッチまたは同様の機構を含まない。モータは、機械的ストップ構成の係合を維持するために(例えば、保持電流を印加することによって)通電されたときに停止(stall)する(すなわち、回転しない)ように配置されることが好ましい。
【0028】
有利には、ベースは、装置を工作機械に固定するための取り付け機構を備える。例えば、ベースは、ボルトなどを使用して工作機械に取り付けることを可能にするために複数の穴を含む取り付け機構を含み得る。あるいは、他の取り付け手段(例えば、オーダーメイドのマウント、取り付けブロックなど)が提供され得る。アーム部材は、センサを取り付けることができる少なくとも1つのセンサマウントを含むことが好ましい。センサは、センサマウントに取り外し可能に取り付け可能であることが好ましい。少なくとも1つのセンサマウントは、アーム部材の遠位端またはその近くに設けられ得る。各センサマウントは、1つまたは複数のセンサを受け入れるように配置され得る。例えば、センサマウントは、工具測定センサ(例えば、非接触または接触工具設定または測定デバイス)を可動アームに取り付けることを可能にするように構成され得る。電動測定アーム装置はまた、アーム部材に(例えば、アーム部材のセンサマウントを介して)取り付けられる(例えば、取り外し可能に取り付けられる)センサを含み得る。
【0029】
電動測定アーム装置は、ベースとアーム部材の遠位端との間の1つの運動軸(例えば、回転)のみから構成され得る。装置は、関節屈曲ロボットなどではないことが好ましい。動作位置のみが測定目的に適している可能性がある(すなわち、収納された位置および他の任意の位置は、許容可能なレベルの精度または再現性で測定を可能にするのに十分に明確に定義されていない可能性がある)。装置は、取り付けられた測定センサの使用を可能にするための他の特徴を含み得る。例えば、取り付けられた測定センサが、例えば、関連するインターフェースと通信することを可能にするために、適切なケーブル配線が提供されてもよい(例えば、装置を介してルーティングされてもよい)。視覚的インジケータ(例えば、LEDまたはディスプレイ)は、装置の状態(例えば、それが動作位置にあるか、または収納位置にあるか、およびモータが通電されているか)を示すために提供され得る。
【0030】
装置はまた、アーム部材に取り付けられた1つまたは複数のセンサを含み得る。上述したように、センサは、アーム部材のセンサマウントに取り外し可能に取り付けられ得る。センサは、好ましくは、アーム部材によって動作位置内外に移動されるスタンドアロンまたは別個のセンサである。センサが測定を行う間、アーム部材は、好ましくは静止している。アーム部材は、センサが測定を行う前に、好ましくは動作位置に移動されている。取り付けられたセンサは、偏向可能なスタイラスを有する測定プローブを含み得る。例えば、アナログまたはタッチトリガ測定プローブが提供され得る。取り付けられたセンサは、工具測定センサを含み得る。工具測定センサは、偏向可能なスタイラスを有する(例えば、その遠位端にディスク、キューブなどを有する)接触ベースの工具測定センサであり得る。工具測定センサは、非接触センサであってもよい。例えば、光学式またはレーザーベースの工具測定センサである。測定センサは、英国のWotton-Under-EdgeのRenishaw plcが販売するNC4システムなどのブレークビームレーザーツールセッタ(break-beam laser tool setter)であり得る。測定センサは、またRenishaw plcによって販売されるTRS2システムなどの反射工具測定装置であり得る。装置はまた、センサが収納位置に移動するときにセンサ用の保護ハウジングまたはポケットを含み得る。
【0031】
また、本明細書に記載されるのは、電動測定アーム装置である。装置は、工作機械上で使用するように構成され得る。装置は、工作機械に取り付けるためのベースを含み得る。装置は、ベースから延びるアーム部材を含み得る。アーム部材は、1つまたは複数のセンサを保持するように構成され得る。アーム部材は、ベースに対して移動可能であり得る。そのような移動は、収納位置への移動を含み得る。そのような移動は、動作位置への移動を含み得る。動作位置は、機械的ストップ構成の係合によって画定され得る。モータは、ベースに対してアーム部材を移動させるために提供され得る。モータコントローラは、モータを通電させてアーム部材をベースに対して移動させるために提供され得る。モータコントローラは、アーム部材が動作位置にあるときにモータに通電して、機械的ストップ構成の係合を維持するように構成される。モータコントローラは、アーム部材が動作位置にあるときにモータに保持電流を供給して、アーム部材と機械的ストップとの係合を維持するように構成され得る。保持電流は、アーム部材を移動させるために使用される駆動電流よりも小さくてもよい。本明細書に記載される他のフィーチャ(feature)のいずれか1つまたは複数も提供され得る。
【0032】
工作機械用の電動測定アーム装置を動作させる方法も記載されており、この装置は、工作機械に取り付けるためのベースと、1つまたは複数のセンサを保持するためにベースから延びるアーム部材であって、アーム部材は、収納位置と動作位置との間でベースに対して移動可能であり、動作位置は、機械的ストップ構成の係合によって画定されるアーム部材と、アーム部材をベースに対して移動させるためのモータと、を備え、方法は、アーム部材が動作位置にあるときにモータに通電して機械的ストップ構成の係合を維持するステップを備える。方法はまた、類似の装置を参照して説明されたフィーチャのいずれかを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
つぎに、添付の図面を参照して、単に一例としてのみ本発明を説明する。
図1図1は、本発明の電動アーム装置を示す。
図2図2は、旋盤に取り付けられた図1の電動アーム装置を示す。
図3A図3Aは、本発明の電動アーム装置の異なる図である。
図3B図3Bは、本発明の電動アーム装置の異なる図である。
図3C図3Cは、本発明の電動アーム装置の異なる図である。
図4図4は、電動アーム装置のベース端部の分解図である。
図5図5は、2つのセンサを保持するための電動アーム装置の変形例を示す。
図6図6は、旋盤に取り付けられた電動アーム装置を示す。
図7図7は、動作位置への第1の制御された移動のためのモータ電流対時間の変化を示す。
図8図8は、動作位置への第2の制御された移動のためのモータ電流対時間の変化を示す。
図9図9は、動作位置への第3の制御された移動のためのモータ電流対時間の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、電動アーム装置2が概略的に示されている。電動アーム装置は、ベース4および可動アーム部材6を備える。アーム部材6の近位端は、ベース4に対するアーム部材6の回転を可能にするハブ8を介してベース4に取り付けられる。工具設定プローブ10は、可動アーム部材6の遠位端に取り付けられる。モータ(図示せず)は、バック駆動することができる遊星ギアボックス(図示せず)を介して軸Rを中心とした可動アーム部材6の回転を駆動するために、ベース4内に設けられる。可動アーム部材6は、作動位置または「アーム準備完了」位置で図1に示されているが、以下に説明するように、その作動位置から離れて収納位置または非作動位置に回転させることができる。
【0035】
回転を駆動するために使用されるモータは、モータの回転を測定できるホールセンサを内蔵したブラシレスDCモータである。特に、生成されるホールセンサパルスは、モータ回転の量、したがってアーム部材6の動きの直接測定を提供する。本実施形態では、アーム部材6は、図示された動作位置または「アーム準備完了」位置から収納位置(図1には示されていない)まで90°回転することができる。ギアボックス比は216:1であり、モータ回転ごとに8ホールセンサパルスがあり、したがって、アームが動作位置から収納位置に掃引するときに432ホールセンサパルスを提供する。ホールパルスをカウントし、それらの間のギャップをタイミングすることにより、アーム位置および速度に関する情報を(例えば、以下に説明するようにモータコントローラによって)決定することが可能になる。
【0036】
さらに図2を参照すると、旋盤に取り付けられた電動アーム装置2が示されている。もちろん、他のタイプの工作機械に取り付けることができる。旋盤は、ワークピースを保持するためのチャック12と、チャック12に保持されたワークピース(図示せず)を切断するための複数の切削工具16を運ぶツールホルダー14とを備える。電動アーム装置2は、1つまたは複数の切削工具16の測定を可能にする旋盤の作業容積内の位置に工具設定プローブ10を配置する、動作または「アーム準備」位置にある図2に示されている。しかしながら、工具設定プローブ10がそのような動作位置に留まっていると、切断プロセスを妨げることがわかる。したがって、切断プロセスを実行する前に、電動アーム装置2が作動して、可動アーム部材6を収納位置に回転させる。図2には示されていないが、収納位置に移動することは、工具設定プローブ10が保護収納ボックス18内に配置またはドッキングされるまでアーム部材を回転させることを伴う。次いで、旋盤は、工具設定プローブ10によって妨げられることなくチャック12に保持されたワークピースを切断することができる。
【0037】
モータコントローラは、モータを制御し、旋盤の数値コントローラとインターフェースするために提供される。本実施形態では、モータコントローラは、別個のインターフェースボックス内の回路と、ベース4内に組み込まれた回路基板との組み合わせによって提供される(ベース内の回路基板は、ケーブルによってインターフェースボックス内の回路にリンクされる)。しかしながら、当業者は、モータコントローラを様々な異なる方法で実装することができることを理解するであろう。例えば、モータコントローラ電子機器のすべてをベースに含めることができるか、またはベースとは別個のインターフェース回路として含めることができる。さらに、モータコントローラの任意の分散コンポーネント間に有線または無線接続を提供することができる。モータコントローラは、必要に応じてモータを作動させ(すなわち、適切な電力を供給することによって)、アーム部材を動作位置と収納位置との間で移動させるように配置される。特に、モータコントローラは、モータに印加される駆動信号(例えば、駆動電流)を制御および監視し、モータによって出力されるホールセンサパルスを受信する(すなわち、回転速度および回転範囲を測定する)。モータコントローラはまた、旋盤の数値コントローラから命令を受信するように構成される。モータコントローラは、ツールが測定されることを示す指示を受信すると、アーム部材を収納位置から動作位置に移動させることができ、測定がもはや必要でないことを示す指示を受信すると、アーム部材を収納位置に戻すことができる。
【0038】
したがって、工具測定が必要とされるたびに、アーム部材を動作位置に出入りさせる必要があることがわかる。この工具測定は、各切削手順中の特定の時間に、各切削操作の間に、または定期的に(例えば、著しい工具摩耗が発生した可能性がある場合、またはジョブの開始時にセットアップされた場合)行われ得る。したがって、動作位置、したがって、旋盤の局所座標系内の工具設定プローブ10の位置は、可能な限り正確かつ反復可能に定義されることが重要である。これは、測定ごとに採用される動作位置の誤差または偏差が工具測定誤差にフィードスルーされ、それが次いで、対応する切削誤差を旋盤によって作られているワークの寸法に導入するためである。
【0039】
上述のように、従来技術の電動アームは、典型的には、アーム部材がモータによってそのような位置に駆動された後に動作位置を提供するために、ばね機構と組み合わせて正確な(例えば、運動学的)機械的ストップ構成を使用する。しかしながら、本発明者らは、そのような機械的ばね力にのみ依存すると、必ずしも十分に反復可能な動作位置が達成されるとは限らないことを認識している。
【0040】
したがって、本装置のモータコントローラは、可動アーム部材が動作位置に到達したときにモータに保持電流を印加するように構成される。この保持電流は、重い振動の存在下であっても、重いセンサがアームによって運ばれている場合、またはアームが重力に対して好ましくない方向(例えば、逆さま)に取り付けられている場合に、機械的ストップ構成の係合を維持するように作用する。この保持電流は、モータに損傷または過度の加熱を引き起こすことなく、機械的ストップをしっかりと係合させ続けるのに十分なトルクを生成するように選択される。以下でより詳細に説明されるように、機械的ストップが係合されたときにモータに保持電流を印加することが好ましく、これは、アーム部材が動作位置に移動されたときに最初に印加されるドライブイン電流よりも小さい(それによって機械的ストップを係合させる)。ドライブイン電流から保持電流へのいくつかの代替的な遷移は、以下に説明される。また、以下で説明するように、装置はまた、アームがスイープの終わりに近づくと(例えば、それが動作位置または収納位置に到達すると)、制御された減速を実装し得る。この減速は、審美性を向上させ(すなわち、所望の位置に到達したときの大きな「クランク」を防止する)、摩耗(例えば、機械的ストップ構成の一部の摩耗)を低減し、エンドストップに到達したときのアーム振動(例えば、バウンスバック振動)を最小限に抑えることができる。
【0041】
モータコントローラはまた、他の機能を実装することができる。上述したように、本実施形態では、モータコントローラは、運動速度またはアーム部材の位置を監視し得る。モータコントローラはまた、モータに供給される電流を監視し得る。モータコントローラは、これらの測定値のいずれかまたは両方を使用して、装置のユーザを支援するための追加の機能を提供し得る。これらの例を以下に概説する。
【0042】
第1に、アーム部材が予想よりも速く(例えば、誰かがそれを押しているため)または遅すぎる(例えば、誰かがそれを停止させようとしているか、またはそれが物体と衝突したため)移動をしていることが判明した場合、モータは通電解除され得る。次いで、モータによって加えられる力を克服することなく、可動アームを手動で移動させることができる。これにより、例えば、ユーザは、アームを必要な位置に手動で移動させることができ、および/または障害物と接触した場合に損傷を防ぐことができる。そのようなイベントが発生した場合、警告信号が(例えば、旋盤の数値コントローラに、および/またはアラームなどを介してユーザに直接)発行され得る。
【0043】
アーム部材が保持電流によって動作位置に保持されている場合、アーム部材の位置(すなわち、エンコーダによって測定されるように)が監視され得る。振動および衝撃は、位置の一時的な変化を引き起こし得るが、モータコントローラは、アーム部材が少量(例えば、モータに組み込まれたエンコーダによって測定されるように)手動で作動されたように見える場合、モータを係合解除するように構成される。次いで、これは、アーム部材がユーザによって手動で収納されることを可能にする。アーム部材を手動で動かすこの機能は、最初の取り付け時や制御の誤動作がある場合にも役立つ。アーム部材を手動で動作位置に戻すと、保持電流を再び係合させることができる。しかしながら、反復可能な動作位置が得られることを確実にするために、動作位置への任意の戻りが電動制御下で実行されることが好ましい。
【0044】
上述したように、モータコントローラは、ホストマシンの数値コントローラ(すなわち、本例の旋盤)からコマンドを受信し、ホストマシンの数値コントローラ(すなわち、本例の旋盤)にステータス信号を発行し得る。例えば、装置は、動作位置にあるときに「アーム準備完了」信号を発行し得る。「機械準備完了」信号は、アーム部材が収納位置にあるときにも発行され得る。アーム部材によって採用される位置は、モータ内のホールセンサによって発行されるパルスをカウントすることによって測定されてもよく、またはベースに対するアーム部材の回転の角度を測定するために別個の位置エンコーダが提供されてもよい。また、特定の位置(例えば、動作位置または収納位置)に到達したことを示すために、1つまたは複数のリードスイッチなどがあってもよい。
【0045】
装置と共に提供される診断およびステータス表示もあり得る。例えば、1つまたは複数のLEDは、インターフェースボックスの外側に行くライトパイプを伴って、インターフェースボード上に設けられてもよい。一例では、赤い点滅LEDは、ホールセンサパルスから導出された角度カウントに基づいて、アーム部材が動作位置または収納位置で停止したが、リードスイッチ作動が検出されないことを示すために使用され得る(故障したリードスイッチを示唆する)。赤色/青色の点滅するLEDは、モータ駆動の問題、およびアーム部材が制御不能な位置で停止した黄色のLEDを、動作中に移動コマンドが変更されたか、または手動移動(アームを引っ張ったか押された)の結果として示すことができる。黄色LEDスローフラッシュは、移動速度が遅すぎる(例えば、停止/衝突を示す)ため、命令された移動後にアーム部材が制御されていない位置で停止したことを示し得る。黄色LED高速フラッシュは、移動速度が予想よりも高いため(例えば、それが手動で加速または押されたことを示す)、命令された移動後にアーム部材が制御されていない位置で停止したことを示し得る。青い点滅LEDは、可動アームが不明な位置に電源が入っていることを示し得る(すなわち、可動アームがスイッチを入れたときに適切に収納されておらず、プローブポケットに障害物がある可能性があることを示し得る)。緑色のLEDは、電源がオンで、すべてが期待どおりに機能していることを示し得る。
【0046】
次に図3Aから図3Cを参照すると、本発明の電動アーム装置の変形例が、動作位置および収納位置に示されている。図3Aは、アーム部材が動作位置および収納位置にあるベース24を示す装置の側面図である。アーム部材は、動作位置に示されている場合は26aとして、収納位置にある場合は26bとしてラベル付けされる。図3Bは、上から見た同じ装置を示し、図3Cは斜視図を示す。
【0047】
次に図4を参照すると、ベース36および可動アーム38の近位端の分解図が示される。ベースは、それを工作機械に固定するためのボルト穴42を有するケーシング40を含む。スプリングおよび戻り止めプレート46の中央開口部を通って適合するモータ、ギアボックス、および取り付け構造44が提供される。可動アーム38の近位端は、ケーシング40に対して回転することができるハブ48に取り付けられる。ケーシング40およびハブ48上の対応する突起50aおよび50bは、それぞれ、動作位置を画定する機械的ストップ構成を提供する(すなわち、特許文献2に記載されているものと同様の方法で)。モータ制御電子機器52もまた、エンドキャップ54によって保護された構造内に含まれる。
【0048】
図5を参照すると、図4の組み立てられたベース36および可動アーム部材38全体が示されている。可動アーム部材38は、広くL字形であり、その遠位端の近くに2つのセンサマウント64および66を有する。図5では、一般的なツールセンサがセンサマウントに取り付けられていることが示されている。好ましい実施形態では、センサマウント64および66は、非接触工具設定デバイスの送信モジュールおよび受信モジュールを保持するように配置され得る。あるいは、2つの別個のセンサをアーム部材38に取り付け得る。
【0049】
図6を参照すると、上記の装置は、旋盤に取り付けられた状態が示されている。特に、図5を参照して上述した装置は、旋盤のチャック70に保持されたワークピースを切断するために使用される測定工具のために取り付けられた状態で示される。アーム部材は、動作位置に示され、センサポケット72および74も示され、アーム部材によって運ばれるセンサは、それが収納位置に移動されるときに配置される。図4を参照して上述したように、モータ制御電子機器52は、ベース36内に設けられる。これらのモータ制御電子機器は、ケーブル76によって、インターフェースボックス78内に設けられた追加のモータ制御電子機器に接続される。このインターフェースボックス78は、さらなるケーブル80によって旋盤の数値コントローラ82に接続される。インターフェースボックス78内の電子機器およびベース36内のモータ制御電子機器52は、旋盤の数値コントローラ82からの適切な制御命令を受信すると、一緒にアーム装置を動作させるモータコントローラを形成する。
【0050】
次に図7から図9を参照すると、モータが収納位置から動作位置に移動したときにモータコントローラによってどのように制御されるかについてのさらなる詳細が提供される。
【0051】
最初に図7を参照すると、モータ駆動電流(アンペア単位)は、可動アームがモータによって収納位置から動作位置に駆動されるときの時間(秒単位)の関数として示される。グラフからわかるように、アームが重力の助けを借りて動作位置に向かって移動するにつれて、駆動電流が低下する前の最初の0.2秒間の電流にピークがある。約2.1秒後、機械的ストップ構成が最初に接触し、モータが停止し、モータ駆動電流が増加する。モータコントローラは、このようにして駆動電流がいつ増加するか(すなわち、初期接触を行う機械的ストップ構成による)を検出し、その後、約0.55Aの保持電流制限を適用するように配置される。
【0052】
保持電流制限が印加される前に、約1Aの駆動電流ピークがあることに留意されたいが、このピークの大きさはわずかに不整合であることが見出されている。許容できる位置精度を達成したが、モータの停止位置にわずかな不一致が見られた。保持電流へのこの急速な切り替えは、アームチューブが依然として目に見える共振をしている間にも発生し、特定の状況では、保持電流に切り替えた後、モータがわずかに可変的な位置に弛んで戻ることが見出された。しかしながら、この構成は、動作位置への回転中にアーム部材の位置を測定することを必要としない。
【0053】
図8は、可動アームがモータによって収納位置から動作位置に駆動されるときのモータ駆動電流(アンペア単位)を時間(秒単位)の関数として示している。この例では、モータコントローラはまた、モータのホールセンサによって生成されたパルスからアーム部材の位置を監視する。モータコントローラは、測定されたアーム部材の位置を使用して、各ホールセンサパルス間の時間の増加によって確認される、機械的ストップ構成の初期係合がいつあるべきかを決定する。特に、モータコントローラは、アーム部材が機械的ストップ構成の初期係合がある位置に移動したときに、約1.6Aのいわゆるドライブイン電流を印加する。このドライブイン電流は、約0.5Aの下限保持電流が印加される前に、約500ms保持される。保持電流は、モータとその周囲の熱放散限界を下回るように維持されながら最大化される。短期間(例えば、約500ms)のドライブイン電流を印加することは、より低い保持電流が印加される前にアーム共振の振幅を減少させることを可能にすることが見出されている。
【0054】
そのような制御されたドライブイン電流を印加することは、機械的ストップ構成の運動学に一貫したトルクをもたらし、一貫したドライブイン位置を達成することが見出されている。ドライブイン電流を短期間保持すると、任意のアーム部材の振動が減衰し、それによってアーム部材が後方に弛む傾向が低減される。しかしながら、駆動電流がドライブインから保持電流まで急速に低下すると(すなわち、1.6Aから0.5Aまで)、モータおよびギアボックスがわずかに(例えば、モータ回転の約4分の1以下で)バック駆動を引き起こすわずかな衝撃が生じる可能性がある。これにより、機械的ストップ構成の運動学上のプッシュイントルクを低減し、モータの最終的な整定位置(例えば、モータ回転の約1/16)にわずかな変動をもたらすことができる。小さいが、これは、可動アームの端部の位置における数ミクロンの変動として現れることができる。
【0055】
図9は、可動アームがモータによって収納位置から動作位置に駆動されるときのモータ駆動電流(アンペア単位)を時間(秒単位)の関数として再び示している。この例では、モータコントローラは、再び、モータのホールセンサによって生成されたパルスからアーム部材の位置を監視して、機械的ストップ構成の初期係合があるとき(すなわち、ホールパルスがより少ない頻度になるときを検出することによって)を確立する。この例では、モータコントローラは、アーム部材が最初に機械的ストップ構成に係合するときに、約1.6Aの初期駆動電流を数百ミリ秒間印加する。しかしながら、ドライブイン電流からより低い保持電流(約0.65A)への遷移は、突然ではなく、代わりに、1秒程度の期間にわたる安定したランプダウンを含む。このランプダウンは、図8を参照して上述した突然の落下ではなく、結果として生じるモータの逆巻きなしに穏やかな解放を提供する。
【0056】
図9を参照して説明した構成は、一貫したドライブイン位置を提供することが見出されており、これは、保持電流に遷移した後も変化しない。高いドライブイントルクも維持され、しっかりとした運動学的係合と改善された再現性をもたらす。
【0057】
上記の実施例は、単に本発明の好ましい実施形態であり、当業者は多くの変形例および代替例を認識していることを覚えておくべきである。例えば、旋盤は工作機械の一例にすぎず、アーム装置は任意の工作機械と共に使用され得る。回転接合されたアームの使用はまた、単なる例であり、そのベースに対するアームの他の動き(例えば、直線運動)が可能である。工具測定デバイスだけでなく、任意のセンサを可動アーム部材に取り付け得る。装置の変形例はまた、異なる負荷またはセンサを運ぶために、または異なる動作環境で動作するために提供され得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】