(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-20
(54)【発明の名称】抗CD40抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240513BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240513BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240513BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240513BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240513BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240513BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240513BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240513BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240513BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240513BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240513BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240513BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240513BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240513BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240513BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 D
A61K39/395 Y
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/00
A61P37/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568232
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2022095229
(87)【国際公開番号】W WO2022247905
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202110577432.9
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523415316
【氏名又は名称】アンホイ バイオエックス-ビジョン バイオロジカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ANHUI BIOX-VISION BIOLOGICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】5th Fl., Block C, Huayi Science Park 71 Tianda Road Hefei, Anhui 230088 CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】523415327
【氏名又は名称】サンヨウ バイオファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SANYOU BIOPHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3rd Floor, B-C, Building 6 No. 188 Xinjunhuan Road, Minhang District Shanghai 201114 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ラン グオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ワン グオシン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ウェンハイ
(72)【発明者】
【氏名】イェン ルン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ペイペイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ヒト、カニクイザル及びマウスCD40分子を特異的に認識し、前記CD40分子を弱く刺激する抗CD40抗体又はその抗原結合断片、並びに前記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含む免疫コンジュゲート、薬物組成物及び組み合わせ製品に関する。本発明はさらに、前記抗CD40抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸、及び前記核酸を含む宿主細胞、並びに前記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を製造する方法に関する。本発明はさらに、被験体の腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療における前記抗CD40抗体又はその抗原結合断片の用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3である三つの相補性決定領域を含む軽鎖可変領域と、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3である三つの相補性決定領域を含む重鎖可変領域とを含む抗CD40抗体又は抗原結合断片であって、
(a)LCDR1は、SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(b)LCDR2は、SEQ ID NO: 2、5、6、7から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 2、5、6、7のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(c)LCDR3は、SEQ ID NO: 3、4から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 3、4のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(d)HCDR1は、SEQ ID NO: 8、12、14、20から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 8、12、14、20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(e)HCDR2は、SEQ ID NO: 9、21から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 9、21のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(f)HCDR3は、SEQ ID NO: 10、11、13、15、16、17、18、19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 10、11、13、15、16、17、18、19のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
ここで、前記アミノ酸変化は、アミノ酸の付加、欠失又は置換である、抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項2】
(i)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO: 4の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:11又はSEQ ID NO: 11の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 5又はSEQ ID NO: 5の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 12又はSEQ ID NO: 12の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO: 13の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 6又はSEQ ID NO: 6の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 14又はSEQ ID NO: 14の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:15又はSEQ ID NO: 15の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:16又はSEQ ID NO: 16の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:17又はSEQ ID NO: 17の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:18又はSEQ ID NO: 18の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:19又はSEQ ID NO: 19の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 7又はSEQ ID NO: 7の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 20又はSEQ ID NO: 20の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 21又はSEQ ID NO: 21の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3を含む、請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
アミノ酸配列RSSQGIRSSLA(SEQ ID NO: 1)のようなものを含有するLCDR1、アミノ酸配列GX
1SSLX
2X
3(SEQ ID NO: 56)のようなものを含有するLCDR2、及びアミノ酸配列 QQLX
4SFPST(SEQ ID NO: 57)のようなものを含有するLCDR3であって、X
1がA又はGであり、X
2がE又はLであり、X
3がG又はVであり、X
4がN又はAであるもの、及び
アミノ酸配列GFTX
5GSYEMX
6(SEQ ID NO: 58)のようなものを含有するHCDR1、アミノ酸配列YISSX
7GETTD(SEQ ID NO: 59)のようなものを含有するHCDR2、及びアミノ酸配列 DVFFFX
8X
9SX
10X
11X
12X
13AYGMDV(SEQ ID NO: 60)のようなものを含有するHCDR3であって、X
5がF、A又はPであり、X
6がN又はDであり、X
7がS又はAであり、X
8がD又はSであり、X
9がS又はPであり、X
10がG又はRであり、X
11がD、P、S又はFであり、X
12がP、N又はRであり、X
13がG又はHであるものを含み、
例えば、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、
(i)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:4を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:11を含有するLCDR3、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 5を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 12を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:13を含有するLCDR3、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 6を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 14を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:15を含有するLCDR3、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:16を含有するLCDR3、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:17を含有するLCDR3、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:18を含有するLCDR3、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:19を含有するLCDR3、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 7を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 20を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 21を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3を含む、請求項1又は2に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、ここで、
(i)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23、29、33、39、53のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含有し、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25、31、35、37、41、43、45、47、49、51、55のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含有し、又は
(ii)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23、29、33、39、53のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25、31、35、37、41、43、45、47、49、51、55のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、
例えば、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、
(i) アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含有する重鎖可変領域、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含有する重鎖可変領域、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:31を含有する重鎖可変領域、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:35を含有する重鎖可変領域、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:37を含有する重鎖可変領域、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:41を含有する重鎖可変領域、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:43を含有する重鎖可変領域、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:45を含有する重鎖可変領域、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:47を含有する重鎖可変領域、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:49を含有する重鎖可変領域、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:51を含有する重鎖可変領域、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO:53を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:55を含有する重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は完全ヒト抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
それはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体であり、好ましくは、それはIgG1又はIgG4抗体であり、さらに好ましくは、それはヒトIgG1又はヒトIgG4抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗原結合断片はFab、Fab'、F(ab')2、Fv、単鎖Fv、単鎖Fab、ダイアボディ(diabody)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
(1)ForteBio動力学結合アッセイによって測定するように、高親和性でCD40に結合し、それを活性化し、例えば、約10
-7 M~約10
-10 M KdでCD40、例えば、ヒトCD40、カニクイザルCD40及びマウスCD40に結合すること、
(2)CD40とCD40Lとの結合を増強すること、
(3)抗原提示細胞上に発現するCD40に結合することによって、抗原提示細胞を活性化し、例えば、前記抗原提示細胞が、樹状細胞(DC)と、B細胞と、単球と、マクロファージとを含むこと、
(4)CD40を発現するB細胞によるCD95発現を誘導すること、
(5)B細胞媒介性免疫応答を増強すること、
(5)架橋効果が形成された時にB細胞媒介性免疫応答を著しく増強すること、
(6)架橋効果が形成されていない時に、B細胞媒介性免疫応答をほとんど増強しないか、又は弱く増強することのうちの一つ又は複数の特性を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
免疫グロブリンFc領域のCH2ドメインにおけるグリコシル化部位が除去され、例えば、ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインにおけるN297残基を突然変異させて該グリコシル化部位を除去し、例えば、N297残基をGly、Ala、Gln、Asp又はGluに変え、好ましくは、N297残基をGlnに変える、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含むベクターであって、好ましくは、前記ベクターは、発現ベクター、例えば、pcDNA3.3ベクターである、ベクター。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸又は請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、前記宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であり、さらに好ましくは、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、又は抗体もしくはその抗原結合断片の製造に適した他の細胞から選択され、最も好ましくは、前記宿主細胞は293細胞又はCHO細胞である、宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片を製造する方法であって、前記方法は、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片をコードする核酸の発現に適した条件下で請求項11に記載の宿主細胞を培養し、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片を任意に単離させることを含み、任意選択的に、前記方法は、前記宿主細胞から前記抗CD40抗体又は抗原結合断片を回収することをさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片及び他の物質、例えば、細胞傷害性薬剤を含む、免疫コンジュゲート。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片又は請求項13に記載の免疫コンジュゲート、及び任意選択的な薬用アジュバントを含む、薬物組成物。
【請求項15】
薬物組成物であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片又は請求項13に記載の免疫コンジュゲート、及び他の治療剤、並びに任意選択的な薬用アジュバントを含み、好ましくは、前記他の治療剤は、化学療法剤、他の抗体(例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)、細胞傷害性薬剤から選択される、薬物組成物。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片又は請求項13に記載の免疫コンジュゲート、及び一つ又は複数の他の治療剤、例えば、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、他の抗体、好ましくは抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を含む、組み合わせ製品。
【請求項17】
被験体において腫瘍又は感染性疾患を予防又は治療する薬物を製造するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片又は請求項13に記載の免疫コンジュゲートの用途。
【請求項18】
前記腫瘍は、癌、例えば、リンパ腫(例えば、びまん性大B細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、乳癌(例えば、転移性乳癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌(HCC))、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、ステージIV又は再発性非小細胞肺癌、NSCLC腺癌、又はNSCLC扁平上皮癌)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病)、皮膚癌(例えば、黒色腫(例えば、ステージIII又はステージIV黒色腫)又はMerkel細胞癌)、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))、脊髄異形成症候群、膀胱癌(例えば、移行上皮癌)、膵臓癌、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、例えば、明細胞腎細胞癌、例えば、進行性又は転移性明細胞腎細胞癌)及び結腸癌(例えば、結腸腺癌)であり、特に、前記腫瘍は、リンパ腫、腎細胞癌、非小細胞肺癌、肝臓癌、膵臓癌、結腸腺癌、乳癌であり、又は前記感染性疾患は、例えば、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染又は原生動物感染であり、好ましくは、前記感染性疾患は慢性感染である、請求項17に記載の用途。
【請求項19】
試料におけるCD40を検出するキットであって、前記キットは、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片を含み、
(a)試料を請求項1~8のいずれか一項に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片と接触させるステップ、及び
(b)前記抗CD40抗体又は抗原結合断片とCD40との間の複合体の形成を検出するステップを実施するためのものであり、任意選択的に、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、検出可能に標識される、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗CD40抗体又はその抗原結合断片に関する。具体的には、本発明は、ヒト、カニクイザル及びマウスCD40分子を特異的に認識し、前記CD40分子を弱く刺激する抗CD40抗体又はその抗原結合断片、並びに前記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を含む免疫コンジュゲート、薬物組成物及び組み合わせ製品に関する。本発明はさらに、前記抗CD40抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸、及び前記核酸を含む宿主細胞、並びに前記抗CD40抗体又はその抗原結合断片を製造する方法に関する。本発明はさらに、被験体の腫瘍又は感染性疾患の予防又は治療における前記抗CD40抗体又はその抗原結合断片の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
CD40アゴニスト(例えば、selicrelumab、dacetuzumab、APX005Mなど)は、臨床試験により、様々な適応症で臨床活性を示すことが示されている(Hassan SBら, Anti-CD40-mediated cancer immunotherapy: an update of recent and ongoing clinical trials. Immunopharmacol Immunotoxicol 2014;36:96-104)。しかし、これらの研究は、前記CD40アゴニストが、用量制限毒性(dose-limiting toxicity)をもたらす有害事象に関連することも示している。最も一般的な有害事象は、サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome、CRS)及び肝毒性を含む。現在の臨床試験で一般的に使用されるのは、正常なFc機能を持つCD40アゴニストであり、このようなアゴニストは、アゴニスト活性により二種類に分けられ得、ここで、いくつかのアゴニストは、免疫反応を非特異的で過剰に活性化することができるため、毒性が強く、治療薬剤としてあまり適していないが、別のいくつかのアゴニストは、免疫活性を有する抗CD40モノクローナル抗体を形成するために、架橋効果(Crosslinking効果)を必要とし、CD40を発現する免疫細胞を限定的で制御可能に活性化することにより局所的な免疫増強応答を形成することによって、限られた範囲内で腫瘍細胞を殺傷する。
【0003】
近年、治療指数(TI)は、薬物の安全性を評価する重要な指標になっている。TIは、治療効果を引き起こす薬物量と毒性を引き起こす薬物量を比較するものであり、患者に投与される薬物の用量において、薬物の薬効が高く毒性が低いほど、治療指数が高くなり安全性が高くなることを意味する。従来技術において、現在既知の抗CD40抗体は、治療指数が低く、患者に実際に投与される用量において、抗体が病巣位置で形成した免疫細胞殺傷活性と、他の部位で引き起こした非特異的アゴニスト活性(例えば、肝毒性)との比が高くない。そのため、当分野では、十分な免疫刺激を提供するとともに、従来のCD40アゴニストによる有害事象を低減することができる新たなCD40アゴニストの開発が必要である。
【0004】
また、新たなCD40アゴニストの開発において、前臨床段階の動物モデル評価は、薬物の安全性及び治療効果を評価する重要な一環である。齧歯類動物(例えば、マウス)は、ヒト疾患の動物モデルの確立に広く用いられている。しかし、マウスCD40と交差反応性のない抗CD40抗体(例えば、Rocheにより開発されたselicrelumab)は、その生体内での薬効及び安全性を反映するために、ヒトCD40トランスジェニックマウス腫瘍モデルで使用する必要がある。マウスモデルにおける抗CD40二重特異性抗体の薬効試験においても、マウスCD40交差反応性を同時に有するアゴニスト性抗CD40抗体の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、治療指数が高いアゴニスト性抗CD40抗体を提供し、前記抗体は、被験体において十分な免疫刺激を提供するとともに、CD40活性化による非特異的免疫活性化の悪影響を減弱することができ、それは、
(1)ForteBio動力学結合アッセイによって測定するように、高親和性でCD40に結合し、それを活性化し、例えば、約10-7 M~約10-10 MでCD40、例えば、ヒトCD40、カニクイザルCD40及びマウスCD40に結合すること、
(2)CD40とCD40Lとの結合を増強すること、
(3)抗原提示細胞上に発現するCD40に結合することによって、抗原提示細胞を活性化し、例えば、前記抗原提示細胞が、樹状細胞(DC)と、B細胞と、単球と、マクロファージとを含むこと、
(4)CD40を発現するB細胞によるCD95発現を誘導すること、
(5)架橋効果が形成された時にB細胞媒介性免疫応答を著しく増強すること、
(6)架橋効果が形成されていない時に、B細胞媒介性免疫応答をほとんど増強しないか、又は弱く増強することのうちの一つ又は複数の特性を有する。
【0006】
本発明の抗CD40抗体は、完全なヒト配列を有し、ヒト抗体である。本発明の抗CD40抗体は、ヒト被験体に対して最小の免疫原性を有し、より少ない抗薬物抗体(ADA)を誘導することによって、ADAに関連する、治療用抗CD40抗体に対する除去率を最小限にし、ヒト被験体が該治療用抗CD40抗体に対して良好な耐性を有することが期待される。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、前記軽鎖可変領域は、三つの相補性決定領域を含み、それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3であり、前記重鎖可変領域は、三つの相補性決定領域を含み、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3であり、ここで、
(a)LCDR1は、SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(b)LCDR2は、SEQ ID NO: 2、5、6、7から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 2、5、6、7のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(c)LCDR3は、SEQ ID NO: 3、4から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 3、4のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(d)HCDR1は、SEQ ID NO: 8、12、14、20から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 8、12、14、20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(e)HCDR2は、SEQ ID NO: 9、21から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 9、21のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(f)HCDR3は、SEQ ID NO: 10、11、13、15、16、17、18、19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 10、11、13、15、16、17、18、19のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
ここで、前記アミノ酸変化は、アミノ酸の付加、欠失又は置換である。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、
(i)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO: 4の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:11又はSEQ ID NO: 11の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 5又はSEQ ID NO: 5の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 12又はSEQ ID NO: 12の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO: 13の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 6又はSEQ ID NO: 6の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 14又はSEQ ID NO: 14の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:15又はSEQ ID NO: 15の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:16又はSEQ ID NO: 16の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:17又はSEQ ID NO: 17の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:18又はSEQ ID NO: 18の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:19又はSEQ ID NO: 19の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 7又はSEQ ID NO: 7の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 20又はSEQ ID NO: 20の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 21又はSEQ ID NO: 21の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、
アミノ酸配列RSSQGIRSSLA(SEQ ID NO: 1)のようなものを含有するLCDR1、アミノ酸配列GX1SSLX2X3(SEQ ID NO: 56)のようなものを含有するLCDR2、及びアミノ酸配列 QQLX4SFPST(SEQ ID NO: 57)のようなものを含有するLCDR3であって、X1がA又はGであり、X2がE又はLであり、X3がG又はVであり、X4がN又はAであるもの、及び
アミノ酸配列GFTX5GSYEMX6(SEQ ID NO: 58)のようなものを含有するHCDR1、アミノ酸配列YISSX7GETTD(SEQ ID NO: 59)のようなものを含有するHCDR2、及びアミノ酸配列 DVFFFX8X9SX10X11X12X13AYGMDV(SEQ ID NO: 60)のようなものを含有するHCDR3であって、X5がF、A又はPであり、X6がN又はDであり、X7がS又はAであり、X8がD又はSであり、X9がS又はPであり、X10がG又はRであり、X11がD、P、S又はFであり、X12がP、N又はRであり、X13がG又はHであるものを含む。
【0010】
いくつかの具体的な実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、
(i)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:4を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:11を含有するLCDR3、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 5を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 12を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:13を含有するLCDR3、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 6を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 14を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:15を含有するLCDR3、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:16を含有するLCDR3、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:17を含有するLCDR3、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:18を含有するLCDR3、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:19を含有するLCDR3、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 7を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 20を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 21を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、ここで、
(i)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23、29、33、39、53のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含有し、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25、31、35、37、41、43、45、47、49、51、55のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含有し、又は
(ii)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23、29、33、39、53のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25、31、35、37、41、43、45、47、49、51、55のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、
(i) アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含有する重鎖可変領域、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含有する重鎖可変領域、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:31を含有する重鎖可変領域、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:35を含有する重鎖可変領域、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:37を含有する重鎖可変領域、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:41を含有する重鎖可変領域、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:43を含有する重鎖可変領域、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:45を含有する重鎖可変領域、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:47を含有する重鎖可変領域、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:49を含有する重鎖可変領域、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:51を含有する重鎖可変領域、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO:53を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:55を含有する重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は完全ヒト抗体である。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体であり、好ましくは、それはIgG1又はIgG4抗体であり、さらに好ましくは、それはヒトIgG1又はヒトIgG4抗体である。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、抗原結合断片であり、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、単鎖Fv、単鎖Fab、ダイアボディ(diabody)を含むが、それらに限らない。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、その免疫グロブリンFc領域のCH2ドメインにおけるグリコシル化部位が除去され、例えば、ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインにおけるN297残基を突然変異させて該グリコシル化部位を除去し、例えば、N297残基をGly、Ala、Gln、Asp又はGluに変え、好ましくは、N297残基をGlnに変える。
【0016】
第2の態様では、本発明は、本発明の抗CD40抗体を製造する方法を提供し、前記方法は、本発明の抗CD40抗体をコードする核酸の発現に適した条件下で、本発明の抗CD40抗体をコードする核酸又は前記核酸を含む発現ベクターが導入された宿主細胞を培養し、前記抗CD40抗体を単離させることを含み、任意選択的に、前記方法は、前記宿主細胞から前記抗CD40抗体を回収することをさらに含む。
【0017】
第3の態様では、本発明は、本発明の抗CD40抗体及び他の物質、例えば、細胞傷害性薬剤を含む免疫コンジュゲートを提供した。
【0018】
第4の態様では、本発明は、本発明の抗CD40抗体又は免疫コンジュゲート、及び任意選択的な薬用アジュバントを含む薬物組成物を提供した。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CD40抗体又は免疫コンジュゲート、及び他の治療剤、並びに任意選択的な薬用アジュバントを含む薬物組成物を提供し、好ましくは、前記他の治療剤は、化学療法剤、他の抗体(例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)、細胞傷害性薬剤から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CD40抗体又は免疫コンジュゲート、及び一つ又は複数の他の治療剤、例えば、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、他の抗体、好ましくは抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を含む組み合わせ製品を提供した。
【0021】
第5の態様では、本発明は、被験体において被験体又は個体の腫瘍又は感染性疾患を予防又は治療する方法を提供し、有効量の本発明の抗CD40抗体、免疫コンジュゲート、薬物組成物、又は組み合わせ製品を被験体に投与することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体、免疫コンジュゲート、薬物組成物、又は組み合わせ製品により予防又は治療される腫瘍は、癌、例えば、CD40分子を発現する癌又はCD40分子を発現しない癌であり、又は本発明の抗CD40抗体、免疫コンジュゲート、薬物組成物、又は組み合わせ製品により予防又は治療される感染性疾患は、例えば、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染又は原生動物感染であり、好ましくは、前記感染性疾患は慢性感染であり、前記感染において被験体又は個体の免疫力が低下する。
【0023】
第6の態様では、本発明は、検出試料におけるCD40のキットを提供し、前記キットは、本発明の抗CD40抗体を含み、
(a)試料を本発明の抗CD40抗体と接触させるステップ、と、
(b)前記抗CD40抗体とCD40との間の複合体の形成を検出するステップを実施するためのものであり、任意選択的に、前記抗CD40抗体は、検出可能に標識され、
これによって、被験体又は個体からの試料におけるCD40発現レベルを判断する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下に詳細に説明される本発明の好ましい実施形態は、以下の図面と併せて読むとより良く理解されるであろう。本発明を説明する目的のために、現在の好ましい実施形態が図に示されている。しかしながら、本発明は、図に示される実施形態の正確な配置及び手段に限定されないことが理解されるべきである。
【
図1】CD40抗原P17-Fcと二つの対照抗体のダセツズマブ及びBleslumabマブのそれぞれとの結合を示した図である。アイソタイプヒトIgG1抗体を陰性対照として用いた。図中の横座標は抗体濃度である。
【
図2】ビオチン標識されていないP17-Fc及びビオチン標識されたP17-Fcと二つの対照抗体のダセツズマブ及びBleslumabのそれぞれとの結合の比較を示した図である。図において、「P17-Fc-CD40-ble」は、「ビオチン標識されていないP17-FcとBleslumabマブとの結合(本明細書においてCD40-Ble又はCD40-bleとも呼ばれる)」を表し、「P17-Fc-CD40-dac」は、「ビオチン標識されていないP17-Fcとダセツズマブとの結合(本明細書においてCD40-Dac又は CD40-dacとも呼ばれる)」を表す。
【
図3】ヒト天然抗体のファージディスプレイライブラリーに対する三ラウンドのパニングの後のファージライブラリーELISA結果を示した図である。図において、「VCSM13」は、「VCSM13ヘルパーファージ」を表し、Stratagene(米国)から入手した。
【
図4】ヒト天然抗体のファージディスプレイライブラリーからスクリーニングして得たC8クローンCD40 Fab分子とCD40との結合親和性を示した図であり、Bleslumabマブを陽性対照として用い、アイソタイプヒトIgG1抗体を陰性対照として用いた。図中の横座標は抗体濃度である。
【
図5A】C8クローン抗CD40 Fab分子と、CHO細胞上で安定的に発現するヒトCD40との結合を示した図である。
【
図5B】C8クローン抗CD40 Fab分子と、CHO細胞上で安定的に発現するカニクイザルCD40との交差反応性を示した図である。
【
図6A】全長抗CD40候補抗体と、CHO細胞上で安定的に発現するヒトCD40との親和性を示した図である。
【
図6B】全長抗CD40候補抗体と、CHO細胞上で安定的に発現するカニクイザルCD40との親和性を示した図である。
【
図6C】全長抗CD40候補抗体と、CHO細胞上で安定的に発現するマウスCD40との親和性を示した図である。アイソタイプヒトIgG1抗体は陰性対照として用いた。
【
図7】CD40発現CHO細胞へのCD40Lの結合に対する全長抗CD40抗体の影響を示した図である。
【
図8B】ELISAにより測定されたIL-12分泌量及びFACSにより測定されたCD83発現によってディスプレイされる、抗CD40抗体誘導性iDC活性化試験を示した図である。
【
図9】FACSにより測定された抗CD40抗体がRamos細胞上でのCD95発現を誘導することを示した図である。
【
図10A】抗CD40抗体を投与した後のRamos細胞マウス腫瘍モデルの最終的腫瘍体積を示した図である。
【
図10B】抗CD40抗体を投与した後のRamos細胞マウス腫瘍モデルの最終的腫瘍重量を示した図である。
【
図10C】抗CD40抗体を投与した後のRamos細胞マウス腫瘍モデルの腫瘍体積の経時的変化を示した図である。図において、NSは、有意差がないことを表し、PBS群に比べて、*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表す。
【
図10D】MC-38細胞腫瘍モデルにおいて、抗CD40抗体を投与した後の最終的腫瘍重量を示した図である。
【
図11A】CHO-K細胞上での親和性変異体全長候補抗体の非特異的結合を示した図である。
【
図11B】HEK293細胞上での親和性変異体全長候補抗体の非特異的結合を示した図である。
【
図12B】親和性変異体全長候補抗体と、CHO細胞上で安定的に発現するヒトCD40との親和性を示した図である。
【
図12D】親和性成熟全長候補抗体と、CHO細胞上で安定的に発現するマウスCD40との親和性を示した図である。
【
図13B】FACSにより測定されたC8分子及びその親和性変異体全長候補抗体が、架橋剤の存在下で、Ramos細胞上でのCD95発現を誘導することを示した図である。
【
図13D】FACSにより測定されたC8分子及びその親和性変異体全長候補抗体が、架橋剤なしでRamos細胞上でのCD95発現を誘導することを示した図である。
【
図14D】C8分子及びその親和性変異体全長候補抗体が、架橋剤の存在下で、NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導する能力を示した図である。
【
図15D】C8分子及びその親和性変異体全長候補抗体が、架橋剤なしでNF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導する能力を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特に限定しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。なお、本明細書に記載の材料、方法及び例は、単に例示的なものであり、限定することを意図していない。本発明の他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び図面、並びに添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0026】
I. 定義
【0027】
本明細書を説明するために、以下の定義が使用され、且つ適切であれば、単数形で使用される用語は複数も含み、その逆も同様である。本明細書で使用される用語は、単に具体的実施形態を説明するためのものであり、且つ限定することを意図していないことを理解されたい。
【0028】
「約」という用語は、数字や数値と併用される場合、指定された数字や数値よりも5%小さい下限から指定された数字や数値よりも5%大きい上限までの範囲内の数字や数値をカバーすることを意味する。
【0029】
本明細書で使用されるように、「及び/又は」という用語は、選択肢のうちのいずれか一つ又は選択肢のうちの二つ以上を意味する。
【0030】
本明細書において、「包含」又は「含む」という用語が使用される場合、特に明記しない限り、述べられた要素、整数又はステップからなる場合もカバーする。例えば、ある具体的な配列を「包含」する抗体可変領域を言及する場合、該具体的な配列からなる抗体可変領域をカバーすることも意図されている。
【0031】
「CD40発現細胞」という用語は、CD40分子を発現する任意の細胞を指し、樹状細胞(DC)と、B細胞と、マクロファージと、単球とを含む抗原提示細胞(APC)を含むが、それに限らない。CD40は、他のタイプの細胞、例えば、上皮細胞、内皮細胞及び血小板上にも発現する。CD40発現は、すでにB細胞リンパ腫と腎臓癌細胞とを含めて、多くの腫瘍細胞上で確認された。一具体的な実施形態において、CD40発現細胞は、CD40を発現する細胞株、例えば、Jurkat細胞、Raji細胞、Ramos細胞及びDaudi細胞を含む。別の実施形態において、CD40発現細胞は、腫瘍細胞又は癌細胞である。別の実施形態において、CD40発現細胞は、腫瘍への浸潤が発見されるB細胞、NK細胞、T細胞を含み、腫瘍浸潤リンパ球とも呼ばれる。
【0032】
「抗原提示細胞」又は「APC」という用語は、MHCと複合体化された外来性抗原をその表面でディスプレイする細胞である。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を用いて該複合体を認識する。APCの例としては、樹状細胞(DC)、末梢血単核細胞(PBMC)、単球、Bリンパ芽球様細胞、及び単球に由来する樹状細胞(DC)を含むが、それらに限らない。
【0033】
「抗原提示」という用語は、APCが抗原を捕捉し、T細胞による抗原の認識、例えば、抗原をプロセシングしてMHC-I及び/又はMHC-IIコンジュゲートの成分とすることを可能にするプロセスを指す。
【0034】
「MHC分子」は、MHC クラスI及びMHC クラスIIの二つのタイプの分子を含む。MHC クラスI分子は、抗原を特異的CD8+ T細胞に提示し、MHC クラスII分子は、抗原を特異的CD4+ T細胞に提示する。APCに外因的に送達される抗原は、主にMHC クラスIIに結合するためのものである。逆に、APCに内因的に送達される抗原は、主にMHC クラスIに結合するためのものである。
【0035】
「T細胞媒介性応答」という用語は、T細胞(エフェクターT細胞(例えば、CD8+細胞)とヘルパーT細胞(例えば、CD4+細胞)とを含む)により媒介される任意の応答を指す。T細胞媒介性応答は、例えば、T細胞の細胞傷害性及び増殖を含む。
【0036】
「抗体」という用語は、本明細書において最も広い意味で使用され、抗原結合部位を含むタンパク質、様々な構造をカバーする天然抗体及び人工抗体を指し、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、単鎖抗体、完全抗体及び抗体断片を含むが、それらに限らない。
【0037】
「抗体断片」又は「抗原結合断片」は、完全な抗体の一部を含み、完全な抗体が結合する抗原に結合する、完全な抗体と異なる分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体、二価もしくは二重特異性抗体又はそれらの断片、ラクダ科抗体(重鎖抗体)、及び抗体断片で形成された二重特異性抗体又は多重特異性抗体を含むが、それらに限らない。
【0038】
「交差反応」は、本発明の抗体が異なる種からのCD40に結合する能力を指す。例えば、ヒトCD40に結合する本発明の抗体は、別の種のCD40に結合することもできる。交差反応性は、結合アッセイ(例えば、SPR、ELISA)において精製されたCD40抗原との特異的反応性を検出するか、又は生理学的CD40発現細胞と結合するかもしくは他の方式で機能的に相互作用することによって測定される。交差反応性を確定する方法は、例えば、OctetTM QKe計器を用いるバイオレイヤー干渉法(BLI)又はBiacoreTM 2000 SPR計器(Biacore AB,Uppsala,Sweden)を用いるBiacoreTM表面プラズモン共鳴(SPR)分析もしくはフローサイトメトリー技術を含む。
【0039】
「相補性決定領域」又は「CDR領域」又は「CDR」は、抗体可変ドメインにおいて、配列が高可変であり、且つ構造が確定されたループ(「超可変ループ」)が形成され、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触点」)を含有する領域である。CDRは、主に抗原エピトープに結合することを担当する。重鎖のCDRは、通常、CDR1、CDR2及びCDR3と呼ばれ、N-末端から順に番号が付けられる。所与の重鎖可変領域アミノ酸配列において、各CDRの正確なアミノ酸配列境界は、いくつかの公知の抗体CDR割り当てシステムのいずれか一つ又はその組み合わせで確定することができ、前記割り当てシステムは、例えば、抗体の三次元構造及びCDRループのトポロジーに基づくChothia(Chothiaら. (1989)Nature 342: 877-883、Al-Lazikaniら, “Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins”, Journal of Molecular Biology, 273, 927-948 (1997))、抗体配列可変性に基づくKabat(Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987))、AbM (University of Bath)、Contact (University College London)、国際ImMunoGeneTics database(IMGT)(http://imgt.cines.fr/)、及び多数の結晶構造を利用する近接伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義を含む。
【0040】
特に断りのない限り、本発明において、「CDR」又は「CDR配列」という用語は、上記いずれか一つの方式で確定されたCDR配列をカバーする。
【0041】
CDRはまた、参照CDR配列(例えば、本発明に例示されるCDRのいずれか一つ)と同じAbM番号付け位置を有することに基づいて確定されてもよい。一実施形態において、本発明の抗体のCDRは、AbM番号付けプロトコルに基づいて位置が確定される。
【0042】
特に断りのない限り、本発明において、抗体可変領域及びCDRにおける残基位置(重鎖可変領域残基を含む)が言及される場合、AbM番号付けシステムに基づく番号付け位置を指す。
【0043】
異なる特異性(即ち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。しかしながら、CDRは抗体間で異なるが、CDR内には限られた数のアミノ酸位置のみが抗原結合に直接関与している。Kabat, Chothia, AbM及びContact方法のうちの少なくとも二つを用いて、最小重複領域を確定することによって、抗原結合用の「最小結合単位」を提供することができる。最小結合単位はCDRのサブパートであってもよい。当業者に明らかなように、抗体の構造とタンパク質の折りたたみによって、CDR配列の他の部分の残基を確定することができる。そのため、本発明は、本明細書に提示される任意のCDRの変異体も考慮する。例えば、一つのCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基は、そのままであってもよいが、Kabat又はChothia又はAbMに基づいて定義された他のCDR残基は、保存アミノ酸残基に置換されてもよい。
【0044】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞によって生成されるか又は非ヒト供給源に由来し、ヒト抗体ライブラリー又は他のヒト抗体コード配列を利用する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体という定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0045】
「Fc領域」という用語は、本明細書において免疫グロブリン重鎖のC末端区域を定義するためのものであり、前記領域は少なくとも一部の定常領域を含む。該用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域とを含む。いくつかの実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から重鎖のカルボニル基末端まで延びる。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても又は存在しなくてもよい。Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、別段の説明がない限り、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに基づいて行われる。
【0046】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、通常、類似した構造を有し、ここで、各ドメインは、四つの保存的フレームワーク領域(FR)及び三つの相補性決定領域(CDR)を含む。(例えば、KindtらKuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.ページ91(2007)を参照されたい)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を与えるには十分である。
【0047】
本明細書で使用されるように、「結合」又は「特異的結合」という用語は、結合作用が抗原に対して選択的であり、且つ望ましくないか又は非特異的相互作用と区別することができること意味する。抗体が特定の抗原に結合する能力は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、SPR又はバイオレイヤー干渉技術又は当分野で既知の他の一般的な結合アッセイによって測定され得る。
【0048】
「共刺激分子」という用語は、T細胞又はB細胞の完全な活性化のために共刺激シグナルを提供する細胞表面分子及びそのリガンドを指す。共刺激分子は、抗原受容体又はそのリガンド以外の、有効な免疫応答に役立つ細胞表面分子を指す。共刺激分子は、MHC クラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、OX40、CD40、GITR、4-1BB(即ちCD137)、CD27及びCD28などを含むが、それらに限らない。
【0049】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞群により放出され、細胞間媒体として別の細胞に作用するタンパク質の総称である。このようなサイトカインの例としては、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-15のようなリンフォカイン、モノカイン、インターロイキン(IL)、TNF-α又はTNF-βのような腫瘍壊死因子、及びγ-インターフェロンを含む他のポリペプチド因子がある。
【0050】
「免疫コンジュゲート」は、一つ又は複数の他の物質(細胞傷害性薬剤又は標識を含むが、それらに限らない)にコンジュゲートされた抗体を指す。
【0051】
CDC又はADCC誘導で使用される「誘導」及び「増加」という用語は、特定の直接細胞殺傷機構を刺激することを意味する。例えば、一実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、CD40発現細胞の活性化によるADCCによって、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%の腫瘍細胞又はウイルス、細菌などに感染した細胞の溶解をもたらす。
【0052】
「アゴニスト」という用語は、与えられる分子(例えば、共刺激分子)のいくつかのパラメータ(例えば、活性)を上昇させることを指す。例えば、この用語は、与えられる分子(例えば、CD40)の活性を少なくとも5%、10%、20%、30%、40%又はそれ以上向上させる物質を含む。そのため、アゴニスト作用は、必ずしも100%ではない。
【0053】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的「エフェクター機能」は、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方制御などを含む。このようなエフェクター機能は、一般的には、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と会合することを必要とし、様々なアッセイ、例えば、本明細書に開示されるものを用いて評価され得る。
【0054】
「エフェクター機能」は、抗体Fc領域に起因し、抗体アイソタイプによって変化する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化を含む。
【0055】
「Fc受容体」という用語は、免疫グロブリンFc領域に結合した後、該受容体を担持する細胞にエフェクター機能を実行するように刺激するシグナル伝達事象を惹起するFc受容体を指す。Fc受容体は、FcγRIIIa (CD16a)、FcγRI (CD64)、FcγRIIa (CD32)及びFcαRI (CD89)を含む。
【0056】
「有効量」という用語は、単回又は複数回の用量で患者に投与された後、治療又は予防を必要とする患者に所期の効果をもたらす、本発明の抗CD40抗体又はコンジュゲート又は組成物の量又は用量を指す。有効量は、当業者である主治医が、哺乳動物の種、体重、年齢及び一般的な健康状況、関連する具体的な疾患、疾患の程度又は重症度、個々の患者の応答、投与される具体的な抗体、投与モード、投与される製剤の生物学的利用能特性、選択される投与レジメン、及び任意の併用療法の使用などの様々な因子を考慮した上で、容易に決定することができる。
【0057】
「治療有効量」は、必要な用量で、かつ必要な期間にわたって、所望の治療結果を効果的に達成する量を指す。抗体もしくは抗体断片又はそれらのコンジュゲートもしくは組成物の治療有効量は、疾患状態、個体の年齢、性別及び体重並びに抗体又は抗体部分が個体において所望の応答を惹起する能力などの様々な要因に依存して変化し得る。治療有効量はまた、抗体もしくは抗体断片又はそれらのコンジュゲートもしくは組成物の任意の毒性又は有害作用が治療上の有益作用に及ばない量でもある。治療されていない対象に対して、「治療有効量」は、測定可能なパラメータ(例えば、腫瘍増殖率、腫瘍体積など)を、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約50%、60%又は70%、なおさらに好ましくは少なくとも約80%又は90%抑制する。化合物が測定可能なパラメータ(例えば、癌)を抑制する能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系において評価され得る。
【0058】
「予防有効量」は、必要な用量で、かつ必要な期間にわたって、所望の予防結果を効果的に達成する量を指す。通常、予防用量は、対象において、疾患の早い段階よりも前又は疾患の早い段階に使用されるため、予防有効量は、治療有効量より小さい。
【0059】
「治療指数」(therapeutic index、TI)は、通常、半致死量(LD50)と半有効量(ED50)との比を指し、薬物の安全性指標である。
【0060】
「個体」又は「被験体」という用語は、交換可能に使用され、哺乳動物を含む。哺乳動物は、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類動物)、ウサギ及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されない。特に、個体又は被験体は、ヒトである。
【0061】
「腫瘍」及び「癌」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、固形腫瘍及び液性腫瘍をカバーする。
【0062】
「癌」及び「癌性」という用語は、哺乳動物における、細胞増殖が制御できない生理学的疾患を指す。
【0063】
「腫瘍」という用語は、悪性又は良性を問わず、全ての腫瘍性(neoplastic)細胞成長及び増殖、並びに全ての前がん(pre-cancerous)及び癌性細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、互いに排他的というわけではない。
【0064】
「腫瘍免疫回避」は、腫瘍が免疫認識及び除去から逃れるプロセスを指す。このように、治療概念として、このような回避が弱まる場合に腫瘍免疫が「治療」され、且つ腫瘍が免疫系により認識され攻撃される。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍縮小及び腫瘍除去を含む。
【0065】
「感染性疾患」という用語は、病原体により引き起こされる疾患を指し、例えば、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染又は原生動物、例えば、寄生虫感染を含む。
【0066】
「慢性感染」という用語は、感染源(例えば、ウイルス、細菌、寄生虫のような原生動物、真菌などのような病原体)が、感染した宿主において免疫応答を誘導したが、急性感染の場合のように宿主から除去又は排除されていない感染を指す。慢性感染は、持続的、潜伏的、又は緩徐であり得る。
【0067】
本明細書で使用される「標識」という用語は、試薬(例えば、ポリヌクレオチドプローブ又は抗体)に直接又は間接的にコンジュゲート又は融合され、且つそれがコンジュゲート又は融合した試薬の検出を促進する化合物又は組成物を指す。標識自体は、検出可能なもの(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)であってもよく、又は酵素的標識の場合に、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変化を触媒することができる。用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体にカップリング(即ち、物理的接続)することによるプローブ又は抗体の直接標識、及び直接に標識される別の試薬と反応することによるプローブ又は抗体の間接的標識をカバーすることを意図している。間接的標識の例は、蛍光標識された第2の抗体を用いた第1の抗体の検出、及び蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるようにビオチンを有するDNAプローブの末端標識を含む。
【0068】
「単離された」抗CD40抗体は、既にその天然環境の成分から単離されたものを指す。いくつかの実施形態において、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって確定されたように、抗CD40抗体を95%又は99%超の純度まで精製する。抗体純度を評価するための方法に関する概説は、例えば、Flatmanら,J.Chromatogr.B848:79-87(2007)を参照されたい。
【0069】
「単離された」核酸は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、該核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、該核酸分子は、染色体外又はその天然染色体位置と異なる染色体位置に存在する。「単離された、抗CD40抗体をコードする核酸」は、抗CD40抗体の鎖又はその断片をコードする一つ又は複数の核酸分子を指し、単一ベクター又は個別のベクターにおけるこのような核酸分子、及び宿主細胞における一つ又は複数の位置に存在するこのような核酸分子を含む。
【0070】
配列間の配列同一性の計算は以下のように行われる。
【0071】
二つのアミノ酸配列又は二つの核酸配列の「同一性」の割合を確定するために、最適な比較を目的として前記配列をアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸配列又は核酸配列の一方又は両方にギャップを導入するか又は比較するために非相同配列を棄却してもよい)。一好ましい実施形態において、比較するために、アラインメントされる参照配列の長さは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%の参照配列長さである。その後に、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列中の対応する位置における同じアミノ酸残基又はヌクレオチドに占められている場合、前記分子はこの位置において同じである。
【0072】
二つの配列の間の配列比較及び同一性割合の計算は、数学的アルゴリズムを利用して実現され得る。一好ましい実施形態において、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれたNeedlema及びWunsch ((1970)J. Mol. Biol. 48:444-453)アルゴリズム(http://www.gcg.comから入手可能)、Blossum 62マトリックス又はPAM250マトリックス並びにギャップ重み16、14、12、10、8、6又は4及び長さ重み1、2、3、4、5又は6を使用して、二つのアミノ酸配列の間の同一性割合を確定する。さらに別の好ましい実施形態において、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラム(http://www.gcg.comから入手可能)、NWSgapdna.CMPマトリックス並びにギャップ重み40、50、60、70又は80及び長さ重み1、2、3、4、5又は6を使用して、二つのヌクレオチド配列の間の同一性割合を確定する。特に好ましいパラメータセット(及び別段の説明がない限り使用されるべきパラメータセット)は、ギャップペナルティ12、ギャップ延長ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5を用いるBlossum 62スコアマトリックスである。
【0073】
さらに、PAM120重み付け余数表、ギャップ長さペナルティ12、ギャップペナルティ4)を用い、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組込まれたE. Meyers及びW. Millerアルゴリズムを利用して、((1989)CABIOS, 4:11-17)二つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列の間の同一性割合を確定することができる。
【0074】
追加的に又は代替的に、本明細書に記載の核酸配列及びタンパク質配列は、共通データベースに対して検索を実施して、例えば、他のファミリーメンバー配列又は関連する配列を同定するために、「照会配列」としてさらに使用されてもよい。
【0075】
「薬物組成物」という用語は、それに含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを許容する形態で存在し、且つ前記組成物が投与される被験体に対して許容されない毒性を有する他の成分を含まない組成物を指す。
【0076】
「薬用アジュバント」という用語は、活性物質と共に投与される希釈剤、アジュバント、ベクター、賦形剤又は安定剤などを指す。
【0077】
本明細書に用いられる場合、「治療」は、既に存在する症状、病態、状態又は疾患の進行又は重症度を減速、中断、阻止、寛解、停止、低下、又は逆転することを指す。所望の治療効果は、疾患の発生又は再発の防止、症状の軽減、疾患の、任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮減、転移の予防、病状進行の速度の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含むが、それらに限らない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体分子は、疾患の進行を遅延させるか、又は疾患の進行を減速させることに用いられる。
【0078】
本明細書に用いられる場合、「予防」は、疾患もしくは病態又は特定の疾患もしくは病態の症状の発生又は進行に対する抑制を含む。いくつかの実施形態において、がんの家族歴を有する被験体は予防的レジメンの候補である。通常、癌との関連で、「予防」という用語は、癌の徴候又は症状が発生する前、特に癌のリスクがある被験体に発生する前の薬物投与を指す。
【0079】
本明細書に記載の「治療剤」という用語は、腫瘍(例えば、癌)及び感染(例えば、慢性感染)の予防又は治療に有効な任意の物質をカバーし、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、他の抗体、抗感染活性剤、低分子薬物又は免疫調節剤を含む。
【0080】
「化学療法剤」は、癌の治療に効果的な化学化合物を含み、アルキル化剤を含む抗腫瘍剤、代謝拮抗剤、天然産物、抗生物質、酵素、ヘテロ試薬、ホルモン及びアンタゴニスト、抗エストロゲン剤、抗アンドロゲン剤、並びに非ステロイド系抗アンドロゲン剤等を含むが、それらに限らない。化学療法剤の例は、WO2015/153513又はWO2016/028672又はWO2015/138920に開示されるものを参照されたい。
【0081】
本明細書で使用される「免疫調節剤」は、免疫応答を抑制又は調節する天然の又は合成される活性剤又は薬物を指す。免疫応答は、体液性応答又は細胞応答であってもよい。免疫調節剤は、免疫チェックポイント分子抑制剤と、共刺激分子活性化剤とを含む。
【0082】
本明細書で使用されるように、「細胞傷害性薬剤」という用語は、細胞機能を抑制又は阻止し、及び/又は細胞死又は細胞破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性薬剤の例は、WO2015/153513、WO2016/028672又はWO2015/138920に開示されるものを参照されたい。
【0083】
「ベクター(vector)」という用語は、本明細書で使用される場合、それと連結される別の核酸を増殖可能な核酸分子を指す。当該用語は、自己複製核酸構造としてのベクター及びそれを導入した宿主細胞のゲノムに結合するベクターを含む。いくつかのベクターは、それに有効に連結される核酸の発現を導くことができる。このようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
【0084】
「宿主細胞」という用語は、外因性ポリヌクレオチドがすでにそれに導入された細胞、及びこのような細胞の子孫を指す。宿主細胞は、継代数を考慮せず、一次形質転換された細胞及びそれに由来する子孫を含む「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含む。子孫は、核酸物質について親細胞と完全に同じではない場合があり、突然変異を含んでもよい。本明細書において、最初に形質転換された細胞からスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異体子孫を含む。宿主細胞は、本発明の抗体分子を産生することに用いられ得る任意のタイプの細胞系であり、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞と、原核細胞、例えば、大腸菌細胞とを含む。宿主細胞は、培養された細胞を含み、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養された植物組織もしくは動物組織内部の細胞も含む。
【0085】
「被験体/患者試料」は、患者又は被験体から得た細胞、組織又は体液の集合である。組織又は細胞試料の供給源は、固形組織であってもよく、例えば、新鮮で、凍結及び/又は保存された器官又は組織試料もしくは生検試料もしくは穿刺試料からのもの、血液又は任意の血液成分、脳脊髄液、羊膜液(羊水)、腹膜液(腹水)、又は間質液のような体液、被験体からの妊娠中又は任意の発育段階の細胞である。組織試料は、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養素、抗生物質などのような自然界において組織と天然に混合しない化合物を含み得る。本明細書において、腫瘍試料の例としては、腫瘍生検、微細針吸引物、気管支洗浄液、胸膜液(胸水)、痰、尿、手術検体、循環中の腫瘍細胞、血清、血漿、循環中の血漿タンパク質、腹水、腫瘍に由来するか又は腫瘍様性質を示す初代細胞培養物又は細胞株、及びホルマリンで固定され、パラフィンに包埋される腫瘍試料又は凍結される腫瘍試料のような保存された腫瘍試料を含むが、それらに限らない。
【0086】
II. 本発明の抗CD40抗体
【0087】
本発明は、従来のCD40アゴニストによる有害事象を低減又は回避することができる次世代抗ヒトCD40抗体を提供した。
【0088】
本発明の抗CD40抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、前記軽鎖可変領域は、三つの相補性決定領域を含み、それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3であり、前記重鎖可変領域は、三つ相補性決定領域を含み、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3であり、ここで、
(a)LCDR1は、SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(b)LCDR2は、SEQ ID NO: 2、5、6、7から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 2、5、6、7のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(c)LCDR3は、SEQ ID NO: 3、4から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 3、4のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(d)HCDR1は、SEQ ID NO: 8、12、14、20から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 8、12、14、20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(e)HCDR2は、SEQ ID NO: 9、21から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 9、21のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(f)HCDR3は、SEQ ID NO: 10、11、13、15、16、17、18、19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 10、11、13、15、16、17、18、19のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
ここで、前記アミノ酸変化は、アミノ酸の付加、欠失又は置換であり、例えば、前記アミノ酸変化は、保存的アミノ酸置換である。
【0089】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、
アミノ酸配列RSSQGIRSSLA(SEQ ID NO: 1)のようなものを含有するLCDR1、アミノ酸配列GX1SSLX2X3(SEQ ID NO: 56)のようなものを含有するLCDR2、及びアミノ酸配列 QQLX4SFPST(SEQ ID NO: 57)のようなものを含有するLCDR3であって、X1がA又はGであり、X2がE又はLであり、X3がG又はVであり、X4がN又はAであるもの、及び
アミノ酸配列GFTX5GSYEMX6(SEQ ID NO: 58)のようなものを含有するHCDR1、アミノ酸配列YISSX7GETTD(SEQ ID NO: 59)のようなものを含有するHCDR2、及びアミノ酸配列 DVFFFX8X9SX10X11X12X13AYGMDV(SEQ ID NO: 60)のようなものを含有するHCDR3であって、X5がF、A又はPであり、X6がN又はDであり、X7がS又はAであり、X8がD又はSであり、X9がS又はPであり、X10がG又はRであり、X11がD、P、S又はFであり、X12がP、N又はRであり、X13がG又はHであるものを含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、ここで、
(i)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23、29、33、39、53のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含有し、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25、31、35、37、41、43、45、47、49、51、55のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含有し、又は
(ii)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23、29、33、39、53のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25、31、35、37、41、43、45、47、49、51、55のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、免疫グロブリンFc領域を含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、そのFab断片のC末端が免疫グロブリンFc領域に連結され、任意選択的に、アミノ酸リンカーを介して連結され、例えば、長さが1~20個のアミノ酸であるアミノ酸リンカーを介して連結される。いくつかの実施形態において、前記アミノ酸リンカーのうちの少なくとも90%は、グリシン及び/又はセリンアミノ酸である。いくつかの実施形態において、前記Fc領域は、IgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4からのものである。いくつかの実施形態において、前記Fc領域はIgG1からのものである。いくつかの実施形態において、前記Fc領域はヒトIgG1からのものである。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のアミノ酸変化は、アミノ酸の置換、付加又は欠失を含む。好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変化は、アミノ酸置換であり、より好ましくは保存的置換である。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明に記載のアミノ酸変化は、CDRの外の領域(例えば、FR)で起こる。いくつかの実施形態において、置換は保存的置換である。保存的置換は、一つのアミノ酸が同じクラス内の別のアミノ酸で置換され、例えば、一つの酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸で置換され、一つの塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸で置換され、又は一つの中性アミノ酸が別の中性アミノ酸で置換されることを指す。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書による抗CD40抗体は、改変することによってそのグリコシル化程度を増加又は低下させる。抗CD40抗体のグリコシル化部位への付加又は欠失は、一つ又は複数のグリコシル化部位を産生又は除去するようにアミノ酸配列を改変することによって容易に実現することができる。抗CD40抗体がFc領域を含む場合、Fc領域のグリコシル化を改変することができる。いくつかの用途において、望ましくないグリコシル化部位修飾の除去は有用であり得、例えば、フコース修飾の除去は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を向上させることができる(Shieldら(2002)JBC277:26733を参照されたい)。他の用途において、ガラクトシル化修飾を行って補体依存性細胞傷害(CDC)を調節することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、その免疫グロブリンFc領域のCH2ドメインにおけるグリコシル化部位が除去され、例えば、ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインにおけるN297残基を突然変異させて該グリコシル化部位を除去し、例えば、N297残基をGly、Ala、Gln、Asp又はGluに変え、好ましくは、N297残基をGlnに変える。
【0096】
本発明の抗CD40抗体は、ForteBio動力学結合アッセイによって測定するように、高親和性でCD40に結合し、例えば、約10-7 M~約10-10 MでCD40、例えば、ヒトCD40、カニクイザルCD40及びマウスCD40に結合することができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、約0.5×10-8M~2×10-8Mの親和性でヒトCD40抗原に結合する。本発明の抗CD40抗体は、カニクイザルCD40及びマウスCD40と交差反応性を有する。
【0097】
本発明の抗CD40抗体は、抗原(例えば、腫瘍関連抗原(TAA))に対する免疫応答を増強し、例えば、B細胞媒介性免疫応答、B細胞活性化及び/又はサイトカイン産生を増強することによって、抗原(例えば、腫瘍関連抗原(TAA))に対する免疫応答を増強する。
【0098】
一実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、抗原に対する免疫応答を増強し、CD40発現細胞(例えば、CD40を発現する腫瘍細胞)に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することができる。また、測定されたCD95による発現が増加する場合、本発明の抗CD40抗体はアポトーシスを誘導する。
【0099】
別の実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、CD40発現細胞の抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/又はCD40発現細胞の補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導することなく、抗原に対する免疫応答を増強することができるため、本発明の抗CD40抗体は、CD40を発現しない腫瘍細胞又は感染性疾患に対しても、抗原に対する免疫応答を増強し、例えば、B細胞媒介性免疫応答を増強することによって役割を果たすことができる。
【0100】
一実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、エフェクター機能のない定常領域を含むように修飾される。例えば、本発明の抗CD40抗体がFc領域を含む場合、Fc領域におけるグリコシル化部位N297残基をGly、Ala、Gln、Asp又はGluなどに突然変異させることによって、本発明の抗CD40抗体のエフェクター機能を減少又は除去することができる。また、本発明の抗CD40抗体がFc領域を含む場合、Fc領域によるエフェクター機能を減少又は除去するために、さらにFc領域には、FcγRIIIA(CD16A)に対する本発明の抗CD40抗体の結合親和性を減少する修飾が含まれ得る。一実施形態において、前記修飾は、Fc領域のCH2ドメイン、例えば、重鎖の329番目の位置(EU番号)(例えば、P329G)にある。一実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、重鎖の234番目及び235番目の位置(EU番号)にあるアミノ酸置換を含む。一具体的な実施形態において、前記アミノ酸置換は、L234A及びL235A (「LALA突然変異」とも呼ばれる)である。
【0101】
一実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、抗体とFc受容体との結合に依存することなく、免疫応答を増強することができる。例えば、本発明の抗CD40抗体は、Fc受容体、例えば、FcγRを架橋することなく、有効なCD40アゴニスト特徴を示すことができる。これらのアゴニスト特徴は、例えば、B細胞活性の増加及び/又はB細胞活性化の増加を測定することによって確定されることを含む。
【0102】
別の実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、CD40と、CD40発現細胞におけるCD40L(CD154)との結合を増強する。具体的な実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、可溶性CD40LとCD40発現細胞との結合を少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%増強する。具体的な実施形態において、例えば、FACS、バイオレイヤー干渉法(BLI)又はBiacoreにより測定するように、抗CD40抗体は、可溶性CD40LとCD40発現細胞との結合を少なくとも約50%増強する。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、Ramos細胞とともにインキュベートされる場合、CD95の発現を誘導する。いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、ヒトB細胞とともにインキュベートされる場合、B細胞の増殖を増加させる。いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、樹状細胞とともにインキュベートされる場合、IL-12の分泌及びCD83発現を増加させる。
【0104】
本発明の抗CD40抗体は、被験体に投与された後、用量制限毒性、サイトカイン放出症候群(CRS)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)の濃度上昇に関連する肝毒性などの有害反応を引き起こさないか又は有害反応が弱いことが予想される。
【0105】
III. 免疫コンジュゲート
【0106】
本発明はさらに、他の物質とコンジュゲートする本発明抗CD40抗体(「免疫コンジュゲート」)に関する。いくつかの実施形態において、他の物質は、例えば、治療剤(例えば、細胞傷害性薬剤)である。細胞傷害性薬剤は、細胞に有害な任意の薬剤を含む。免疫コンジュゲートを形成することに適した細胞傷害性薬剤(例えば、化学療法剤)の例は、当分野において既知である。例えば、細胞傷害性薬剤は、放射性同位体、成長抑制剤、その断片及び/又は変異体を含む、低分子毒素又は細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的活性毒素のような毒素、及び既知の様々な抗腫瘍剤又は抗癌剤を含むが、それらに限らない。
【0107】
免疫コンジュゲートを形成することに適した細胞傷害性薬剤(例えば、化学療法剤)の例はさらに、例えば、WO2015/153513又はWO2015/138920などを参照されたい。
【0108】
本発明の抗CD40抗体はまた、固相支持体に連結されてもよく、前記支持体は、特に免疫測定法又は標的抗原の精製に用いられ得る。このような固相支持体は、玻璃、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンを含むが、それらに限らない。
【0109】
いくつかの実施形態において、前記免疫コンジュゲートは、腫瘍を予防又は治療するためのものである。いくつかの実施形態において、腫瘍は癌である。いくつかの実施形態において、前記免疫コンジュゲートは、感染、例えば、慢性感染、例えば、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、原生動物感染などを予防又は治療するためのものである。
【0110】
IV. 本発明の核酸及びそれを含む宿主細胞
【0111】
一態様では、本発明は、以上の任意の抗CD40抗体又はその断片又はそのいずれか一つの鎖をコードする核酸を提供した。一実施形態において、前記核酸を含むベクターが提供される。一実施形態において、ベクターは発現ベクターである。一実施形態において、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。一実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞又は293細胞)又は抗体もしくはその抗原結合断片の製造に適した他の細胞から選択される。別の実施形態において、宿主細胞は原核細胞である。
【0112】
例えば、本発明の核酸は、SEQ ID NO:23、25、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55から選択されるいずれか一つに示すアミノ酸配列をコードする核酸、又はSEQ ID NO:23、25、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55から選択されるいずれか一つに示すアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0113】
本発明はさらに、ストリンジェントな条件下で下記核酸とハイブリダイズする核酸、又は下記核酸に比べて一つ又は複数のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)、欠失又は挿入を有するポリペプチド配列をコードする核酸をカバーする:SEQ ID NO:23、25、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55から選択されるいずれか一つに示すアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸、又はSEQ ID NO:23、25、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55から選択されるいずれか一つに示すアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸。
【0114】
一実施形態において、前記核酸を含む一つ又は複数のベクターが提供される。一実施形態において、ベクターは、発現ベクター、例えば、真核発現ベクターである。ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージ又は酵母人工染色体(YAC)を含むが、それらに限らない。一実施形態において、ベクターはpcDNA3.3ベクターである。
【0115】
発現するための発現ベクター又はDNA配列が製造されると、発現ベクターを適切な宿主細胞にトランスフェクト又は導入してもよい。様々な技術、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、逆転写ウイルスの形質導入、ウイルストランスフェクト、遺伝子ガン、リポフェクション又は他の一般的な技術は、この目的の実現に用いられ得る。産生されたトランスフェクト細胞を培養し、産生された抗体分子を回収するための方法及び条件は、当業者に既知であり、且つ本明細書及び従来技術に既知の方法に基づいて、使用される特定の発現ベクター及び哺乳動物宿主細胞に応じて変更又は最適化され得る。
【0116】
また、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする一つ又は複数のマーカーを導入することによって、既にDNAをその染色体に安定的に組み込んだ細胞を選定することができる。マーカーは、例えば、栄養要求性宿主に原栄養株、殺生物耐性(例えば、抗生物質)又は重金属(例えば、銅)耐性などを提供することができる。選択可能な標識遺伝子は、発現されるDNA配列と直接連結されるか又は同時形質転換によって同じ細胞に導入され得る。mRNAを最適に合成するために、追加のエレメントが必要になることもある。これらのエレメントは、スプライシングシグナル、転写プロモーター、エンハンサー及び終結シグナルを含んでもよい。
【0117】
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態において、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞、又は抗体の製造に適した他の細胞から選択される。適切な宿主細胞は、大腸菌のような原核微生物を含む。宿主細胞はさらに、糸状菌もしくは酵母のような真核微生物、又は様々な真核細胞、例えば、昆虫細胞などであってもよい。また、脊椎動物細胞を宿主として用いてもよい。例えば、懸濁成長に適するように操作された哺乳動物細胞株を用いてもよい。有用な哺乳動物宿主細胞株の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胎児腎臓株(HEK 293又は293F細胞)、293細胞、ベビーハムスター腎臓細胞胞(BHK)、ザル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、CHOS細胞、NSO細胞、Y0、NS0、P3X63及びSp2/0などのような骨髄腫細胞株を含む。一好ましい実施形態において、前記宿主細胞はCHO細胞又は293細胞である。
【0118】
V. 本発明の抗CD40抗体の生産及び精製
【0119】
一実施形態において、本発明は、抗CD40抗体を製造する方法を提供し、ここで、前記方法は、前記抗CD40抗体をコードする核酸の発現に適した条件下で、前記抗CD40抗体をコードする核酸又は前記核酸の発現ベクターを含む宿主細胞を培養することと、前記抗CD40抗体を任意に単離させることとを含む。ある実施形態において、前記方法は、前記宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗CD40抗体を回収することをさらに含む。
【0120】
本発明の抗CD40抗体を組換え生成するために、まず本発明の抗CD40抗体をコードする核酸を単離させ、宿主細胞においてさらにクローニング及び/又は発現を行うために、前記核酸をベクターに挿入する。このような核酸は、通常の規程で単離及び配列決定を行うことが容易であり、例えば、本発明の抗CD40抗体をコードする核酸に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いて行われる。
【0121】
本明細書に記載されるように製造された本発明の抗CD40抗体は、既知の従来技術、例えば、高速液体クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどによって精製され得る。特定のタンパク質を精製するための実際の条件はまた、正味の電荷、疎水性、親水性などの要素に依存し、且つこれらは当業者にとって明らかである。本発明の抗CD40抗体の純度は、複数の周知の分析方法のうちのいずれか一つの方法によって確定することができ、前記周知の分析方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィなどを含む。
【0122】
VI. 本発明の抗CD40抗体の活性測定法
【0123】
本明細書による抗CD40抗体は、当分野に既知の複数の測定法によって同定し、スクリーニングし、又はその物理的/化学的特性及び/又は生物学的活性を特徴づけることができる。一方、本発明の抗CD40抗体に対してその抗原結合活性を試験し、例えば、ELISA、Westernブロットなどの既知の方法によって行われる。CD40への結合は、当分野に既知の方法によって測定することができ、本明細書には例示的な方法が開示された。いくつかの実施形態において、SPR又はバイオレイヤー干渉を用いて、CD40への本発明の抗CD40抗体の結合を測定する。
【0124】
本発明は、生物学的活性を有する抗CD40抗体を同定するための測定法をさらに提供した。生物学的活性は、例えば、細胞表面CD40 (例えば、ヒトCD40、サルCD40、マウスCD40)への結合、CD40/CD40L結合の増強、抗原提示細胞に対する活性化、CD40を発現する腫瘍細胞によるCD95発現の誘導、B細胞媒介性免疫応答の増強などを含んでもよい。
【0125】
任意の上記インビトロ測定法に用いられる細胞は、CD40を天然に発現するか又はCD40を発現するように操作される細胞株を含む。前記の、CD40を発現するように操作される細胞株は、正常にはCD40を発現せず、CD40をコードするDNAを細胞にトランスフェクトした後にCD40を発現する細胞株である。
【0126】
理解できるように、任意の上記測定法は、抗CD40抗体の代わりに、本発明の免疫コンジュゲートを用いて行われ得る。
【0127】
VII. 薬物組成物及び薬物製剤
【0128】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の任意の抗CD40抗体又はその免疫コンジュゲートを含む組成物を提供し、好ましくは、組成物は薬物組成物である。一実施形態において、前記組成物は、薬用アジュバントをさらに含む。一実施形態において、組成物(例えば、薬物組成物)は、本発明の抗CD40抗体又はその免疫コンジュゲート、及び一つ又は複数の他の治療剤(例えば、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、他の抗体、抗感染活性剤、低分子薬物又は免疫調節剤、好ましくは抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)の組み合わせを含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、腫瘍を予防又は治療するためのものである。いくつかの実施形態において、腫瘍は癌である。いくつかの実施形態において、前記組成物は、感染、例えば、慢性感染、例えば、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、原生動物感染などを予防又は治療するためのものである。
【0130】
本発明は、抗CD40抗体又はその免疫コンジュゲートを含む組成物(薬物組成物又は薬物製剤を含む)、及び/又は抗CD40抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物(薬物組成物又は薬物製剤を含む)をさらに含む。これらの組成物は、当分野に既知の薬用ベクター、緩衝剤を含む薬用賦形剤のような適切な薬用アジュバントをさらに含んでもよい。
【0131】
本明細書で使用されるように、「薬用ベクター」は、生理学的に適合性の任意の全ての溶媒、分散媒体、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。本発明に適する薬用ベクターは、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などのような、石油、動物、植物又は合成供給源のものを含む油及び水のような無菌の液体であってもよい。薬物組成物が静脈内投与される場合、水は好適なベクターである。また、生理食塩水、水性デキストロース及びグリセリン溶液を液体ベクター、特に注射用溶液として用いてもよい。適切な賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセリルモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、ジオール、水、エタノールなどを含む。賦形剤の使用及びその用途については、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」, 第五版, R.C.Rowe, P.J.Seskey 及びS.C.Owen, Pharmaceutical Press, London, Chicagoも参照されたい。所望であれば、前記組成物は、少量の湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝剤をさらに含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、粉末、持続放出製剤などの形態をとることができる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンのような標準的な薬用ベクター及び/又は賦形剤を含んでもよい。
【0132】
本明細書に記載の抗CD40抗体を含む薬物製剤は、所望の純度を有する本発明の抗CD40抗体を、一つ又は複数の任意選択的な薬用アジュバント(Remington's Pharmaceutical Sciences,第16 版,Osol,A. による編集(1980))と混合することによって、好ましくは、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で製造され得る。
【0133】
本発明の薬物組成物又は製剤は、治療される特定の適応症に必要とされる二つ以上の活性成分をさらに含んでもよく、好ましくは、互いに悪影響を及ぼしない、相補的活性を有するそれらの活性成分を有する。例えば、他の抗癌活性成分又は抗感染活性成分、例えば、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、他の抗体、抗感染活性剤、低分子薬物又は免疫調節剤、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体などをさらに提供することが望ましい。前記活性成分は、目的用途に有効な量で適切に組み合わせて存在する。
【0134】
持続放出製剤を製造することができる。持続放出製剤の好適な例としては、本発明の抗CD40抗体の固体疎水性ポリマーを含有する半透過性マトリックスが挙げられ、前記マトリックスは、成形品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態を呈する。
【0135】
VIII. 組み合わせ製品又はキット
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CD40抗体又は抗原結合断片、又はその免疫コンジュゲート、及び一つ又は複数の他の治療剤(例えば、化学療法剤、他の抗体、細胞傷害性薬剤、抗感染活性剤、低分子薬物又は免疫調節剤など)を含む組み合わせ製品をさらに提供する。いくつかの実施形態において、他の抗体は、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体である。
【0137】
いくつかの実施形態において、前記組み合わせ製品は、腫瘍を予防又は治療するためのものである。いくつかの実施形態において、腫瘍は癌などである。
【0138】
いくつかの形態において、前記組み合わせ製品のうちの二つ又は複数の成分は、被験体に順次、別々又は同時に併用投与され得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CD40抗体、薬物組成物、免疫コンジュゲート又は組み合わせ製品を含むキット、及び投与を指示する任意の包装インサートをさらに提供する。
【0140】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CD40抗体、薬物組成物、免疫コンジュゲート、組み合わせ製品を含む薬物製品をさらに提供し、任意選択的に、前記薬物製品は、投与を指示する包装インサートをさらに含む。
【0141】
IX. 本発明の抗CD40抗体の用途
【0142】
一態様では、本発明は、個体における免疫反応を調節する方法に関する。該方法は、有効量の本明細書に開示された抗CD40抗体又は前記抗CD40抗体を含む薬物組成物又は免疫コンジュゲート又は組み合わせ製品を対象に投与することによって、対象における免疫反応を調節することを含む。一実施形態において、本明細書に開示された治療有効量の抗CD40抗体又は薬物組成物又は免疫コンジュゲート又は組み合わせ製品は、対象における免疫反応を回復、増強、刺激又は増加する。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明は、個体においてCD40の活性を向上させ、CD40とCD40Lとの結合を増強し、IL-12などのサイトカインの分泌を誘導する方法に関し、該方法は、有効量の本明細書に開示された抗CD40抗体又はそれを含む薬物組成物又は免疫コンジュゲート又は組み合わせ製品を対象に投与することを含む。
【0144】
別の態様では、本発明は、被験体の腫瘍(例えば、癌)を予防又は治療する方法に関し、前記方法は、有効量の本明細書に開示された抗CD40抗体又はそれを含む薬物組成物又は免疫コンジュゲート又は組み合わせ製品を前記被験体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、腫瘍は腫瘍免疫回避である。いくつかの実施形態において、前記腫瘍は癌である。
【0145】
別の態様では、本発明は、被験体において抗体依存性細胞により媒介される細胞傷害性を引き起こす方法に関し、前記方法は、有効量の本明細書に開示された抗CD40抗体又はそれを含む薬物組成物又は免疫コンジュゲート又は組み合わせ製品を前記被験体に投与することを含む。
【0146】
被験体は、哺乳動物、例えば、霊長類、好ましくは、高度な霊長類、例えば、ヒト(例えば、本明細書に記載の疾患に罹患しているか又は本明細書に記載の疾患に罹患するリスクのある患者)であり得る。一実施形態において、被験体は、本明細書に記載の疾患(例えば、本明細書に記載の腫瘍又は感染性疾患)に罹患しているか又は本明細書に記載の疾患に罹患するリスクがある。いくつかの実施形態において、被験体は、他の治療、例えば、化学療法治療及び/又は放射線療法を受けるか又は既に受けた。代替的に又は組み合わせ下で、被験体は、感染で免疫無防備状態になったか又は感染で免疫無防備状態になるリスクがある。
【0147】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の腫瘍、例えば、癌は、固形腫瘍、血液癌、軟部腫瘍及び転移病巣を含むが、それらに限らない。
【0148】
固形腫瘍の例としては、肝臓、肺、乳腺、リンパ、消化管(例えば、結腸)、膵臓、尿生殖路(例えば、腎、膀胱上皮細胞)、前立腺及び咽頭を侵すそれらの癌のような、悪性腫瘍、例えば、複数の器官系の肉腫及び癌(腺癌と扁平上皮癌とを含む)を含む。腺癌は、大部分の結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌における非小細胞肺癌、小腸癌及び食道癌のような悪性腫瘍を含む。扁平上皮癌は、肺、食道、皮膚、頭頸部、口腔、肛門、子宮頸におけるそれらの癌のような悪性腫瘍を含む。一実施形態において、癌は、黒色腫、例えば、進行性黒色腫である。一実施形態において、癌は、リンパ腫、腎細胞癌、非小細胞肺癌、肝臓癌、膵臓癌、結腸腺癌、乳癌である。前述の癌の転移病巣も、本発明の方法及び組成物を用いて治療又は予防され得る。
【0149】
治療するための好ましい癌の非限定的例としては、リンパ腫(例えば、びまん性大B細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、乳癌(例えば、転移性乳癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌(HCC))、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、ステージIV又は再発性非小細胞肺癌、NSCLC腺癌、又はNSCLC扁平上皮癌)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病)、皮膚癌(例えば、黒色腫(例えば、ステージIII又はステージIV黒色腫)又はMerkel細胞癌)、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))、脊髄異形成症候群、膀胱癌(例えば、移行上皮癌)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、例えば、明細胞腎細胞癌、例えば、進行性又は転移性明細胞腎細胞癌)及び結腸癌を含む。また、難治性又は再発性悪性腫瘍(例えば、膵臓癌)は、本明細書に記載の抗CD40抗体又はそれを含む薬物組成物又は免疫コンジュゲート又は組み合わせ製品を用いて治療され得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体は、B細胞又は抗原提示細胞表面のCD40に結合して、カスケード効果を生じさせ、T細胞を活性化することによって、腫瘍を治療する。
【0151】
いくつかの実施形態において、CD40が表面に過剰発現している腫瘍に対して、本発明の抗CD40抗体は、ADCC、CTL及び/又は腫瘍細胞アポトーシスを誘導することによって腫瘍を治療する。
【0152】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD40抗体又はそれを含む免疫コンジュゲート又は組成物又は組み合わせ製品は、病態及び/又は病態に関連する症状の発作を遅延させる。
【0153】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の予防又は治療方法は、本明細書に開示された抗CD40抗体又は薬物組成物又は免疫コンジュゲート又は組み合わせ製品、及び一つ又は複数の他の療法、例えば、治療方式及び/又は他の治療剤を前記被験体又は個体に併用投与することをさらに含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、治療方式は、外科手術(例えば、腫瘍切除術)、放射線療法(例えば、それに照射領域が設計される三次元原体放射線療法に関する外粒子線療法、)、局所照射(例えば、予め選択された標的又は器官に向けられた照射)又は集束照射)などを含む。集束照射は、定位的放射線手術、分割照射による定位的放射線手術及び強度変調放射線療法から選択され得る。集束照射は、WO 2012/177624において記述されているように、粒子線(プロトン)、コバルト-60(光子)及び線形加速器(X線)から選択される放射線源を有し得る。
【0155】
放射線療法は、いくつかの方法のうちの一つ又は方法の組み合わせによって投与することができ、前記方法は、外粒子線療法、内部放射線療法、インプラント照射、定位的放射線手術、全身放射線療法、放射線療法及び永続的又は一時的間質近接放射線療法を含むが、それらに限らない。
【0156】
いくつかの実施形態において、治療剤は、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、他の抗体、抗感染活性剤、低分子薬物又は免疫調節剤(例えば、共刺激分子の活性化剤又は免疫チェックポイント分子の抑制剤)から選択される。
【0157】
例示的な他の抗体は、免疫チェックポイント分子の抑制剤(例えば、抗PD-1、抗PD-L1、抗TIM-3、抗CEACAM又は抗LAG-3)、免疫細胞を刺激する抗体(例えば、アゴニストGITR抗体又はCD137抗体)などを含むが、それらに限らない。好ましくは、他の抗体は、抗PD-1抗体及び/又は抗PD-L1抗体から選択される。さらに好ましくは、前記抗PD-1抗体は、ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)社のニボルマブ(Nivolumab)、メルク(Merck)社のペムブロリズマブ(Pembrolizumab)であり、前記抗PD-L1抗体は、ロシュ(Roche)が開発したatezolizumab、メルク(Merck KGaA)及びファイザー(Pfizer)が共同開発したavelumab、アストラゼネカが開発したdurvalumabである。
【0158】
いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、共刺激分子の活性化剤又はアゴニストである。一実施形態において、共刺激分子のアゴニストは、以下の分子のアゴニスト(例えば、アゴニスト抗体又はその抗原結合断片、又は可溶性融合物)から選択される:OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1 (CD11a/CD18)、ICOS (CD278)、4-1BB (CD137)、GITR、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3又はCD83リガンド。
【0159】
本発明の併用療法は、併用投与(ここで、二つ又はそれ以上の治療剤が同一の製剤又は個別の製剤に含まれる)及び個別投与をカバーする。個別投与の場合に、本発明の抗CD40抗体又は免疫コンジュゲートなどの投与は、他の療法の投与の前、同時及び/又は後に実施され得る。
【0160】
一実施形態において、抗CD40抗体の投与と他の療法(例えば、治療方式又は治療剤)の投与とは、互いに約一か月以内、又は約一、二もしくは三週間以内、又は約1、2、3、4、5、又は6日以内に実施する。
【0161】
本発明の抗CD40抗体(及びそれを含む薬物組成物又は免疫コンジュゲート)は、任意の適切な方法で投与されてもよく、非経口投与、肺内投与及び鼻内投与を含み、且つ、局所治療が必要であれば、病巣内投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与を含む。投薬が短期的であるか長期的であるかにある程度応じて、任意の適切な経路、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によって投薬を行うことができる。本明細書は、様々な投薬スケジュールをカバーし、単回投与又は複数の時点での複数回投与、ボーラス注入投与及びパルス注入を含むが、それらに限らない。
【0162】
疾患を予防又は治療するために、本発明の抗CD40抗体の適切な用量(単独で又は一つ又は複数の他の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患のタイプ、抗CD40抗体のタイプ、疾患の重症度及び進行、前記抗CD40抗体が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の臨床病歴及び前記抗CD40抗体に対する応答、並びに主治医の判断力に依存する。前記抗CD40抗体は、一回の治療又は一連の治療によって患者に適切に投与される。抗CD40抗体の用量及び治療計画は、当業者によって確定され得る。
【0163】
理解できるように、任意の上記予防又は治療は、抗CD40抗体の代わりに、本発明の免疫コンジュゲート又は組成物又は組み合わせ製品を用いて行われ得る。
【0164】
X. 診断及び検出のための方法及び組成物
【0165】
いくつかの実施形態において、本明細書による任意の抗CD40抗体は、生物試料におけるCD40の存在の検出に用いることができる。「検出」という用語は、本明細書で使用される場合、定量又は定性検出を含み、例示的検出方法は、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子と複合体化された磁気ビーズ、ELISA測定法に関してもよい。いくつかの実施形態において、生物試料は、血、血清又は生物由来の他の体液試料である。いくつかの実施形態において、生物試料は、細胞又は組織を含む。いくつかの実施形態において、生物試料は、過剰増殖性又は癌性病巣からのものである。
【0166】
一実施形態において、診断又は検出方法に用いられるCD40抗体を提供した。別の態様では、CD40の生物試料での存在を検出する方法を提供した。いくつかの実施形態において、方法は、CD40タンパク質の生物試料での存在を検出することを含む。いくつかの実施形態において、CD40はヒトCD40である。いくつかの実施形態において、前記方法は、抗CD40抗体とCD40との結合が許容される条件下で、生物試料を本明細書に記載の抗CD40抗体と接触させ、抗CD40抗体とCD40との間に複合体が形成されたか否かを検出することを含む。複合体の形成は、CD40が存在することを表す。該方法は、インビトロ又はインビボ方法であってもよい。一実施形態において、抗CD40抗体は、抗CD40抗体による治療に適した被験体を選択することに用いられ、例えば、ここで、CD40は、前記被験体を選択するための生物マーカーである。
【0167】
一実施形態において、本発明の抗CD40抗体を用いて、癌又は腫瘍を診断することができ、例えば、対象における本明細書に記載の疾患(例えば、過剰増殖性又は癌性疾患)の治療又は進行、その診断及び/又はステージを評価(例えば、モニタリング)する。いくつかの実施形態において、標識された抗CD40抗体が提供される。標識は、直接検出された標識又は部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識及び放射性標識)、及び例えば、酵素的反応又は分子相互作用によって、間接的に検出された部分、例えば、酵素又はリガンドを含むが、それらに限らない。例示的標識は、放射性同位体32P、14C、125I、3H及び131I、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体のような蛍光団、ローダミン及びその誘導体、ダンシル(dansyl)、ウンベリフェロン(umbelliferone)、ルシフェラーゼ(luceriferase)、例えば、蛍ルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、フルオレセイン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HR)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、溶解酵素、炭水化物オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼのような複素環オキシダーゼ、並びにHRのような過酸化水素酸化染料前駆体を利用する酵素、ラクトパーオキシダーゼ、又はミクロペルオキシダーゼ(microperoxidase)、ビオチン/アビジン、スピン標識、ファージ標識、安定ラジカルなどを含むが、それらに限らない。
【0168】
本明細書による任意の発明のいくつかの実施形態において、試料は、抗CD40抗体による治療前に得られた。いくつかの実施形態において、試料は、癌が既に転移した後に得られた。いくつかの実施形態において、試料は、ホルマリンで固定され、パラフィン(FFPE)に包埋される。いくつかの実施形態において、試料は、生検(例えば、コア生検)、手術検体(例えば、手術切除からの検体)、又は微細針吸引物である。
【0169】
いくつかの実施形態において、CD40は、治療前、例えば、治療開始前又は治療間隔後のある治療の前に検出される。
【0170】
いくつかの実施形態において、腫瘍又は感染を治療する方法を提供し、前記方法は、被験体(例えば、試料)(例えば、癌細胞を含む被験体試料)に対してCD40の存在を検査し、それによってCD40値を確定し、CD40値を対照値(例えば、健康な個体の試料におけるCD40の値)と比較し、且つCD40値が対照値より小さい場合、一つ又は複数の他の療法と任意に組み合わせる抗CD40抗体(例えば、本明細書に記載の抗CD40抗体)の治療有効量を被験体に投与し、それによって腫瘍又は感染を治療することを含む。
【0171】
理解できるように、本発明の各部分に記述されている各実施形態、例えば、疾患、治療剤、治療方式及び投与などは、本発明の他の部分の実施形態にも同様に適し、又は他の部分の実施形態と組み合わせることができる。本発明の各部分に記述されている、抗CD40抗体に適した性質、用途及び方法などの実施形態は、抗CD40抗体を含む組成物、コンジュゲート、組み合わせ製品及びキットなどにも同様に適する。
【0172】
XI. 本発明の例示的抗CD40抗体の配列
【0173】
本発明の例示的抗CD40抗体の配列は以下の表に示すとおりである。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために記述される。実施例は、本発明の保護範囲を限定することを意図せず、如何なる方法でもそのように解釈されるべきではない。
【0178】
実施例
【0179】
実施例1:抗CD40抗体の製造
【0180】
1.1. P17-Fc抗原の製造
【0181】
ヒトCD40の細胞外ドメイン(CD40 ECD)(Uniprot:P25942の21~193位)遺伝子断片をヒトIgG1 Fc断片のDNA配列N末端に融合させ、該CD40 ECD-Fc融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を合成し、pcDNA3.3 (Invitrogen)ベクターのポリクローナル部位にクローニングし、CD40 ECD-Fc融合タンパク質を発現する発現ベクターを得て、本明細書において、P17-Fc融合タンパク質発現ベクターとも呼ばれる。
【0182】
P17-Fc融合タンパク質発現ベクターをCHO-K細胞(Thermo Fisher)に導入して真核発現を行って(製造ステップの詳細は、書籍『Therapeutic Fc-Fusion Proteins』(Steven M. Chamowら,ページ45~62 「Methods of Production for Fc-Fusion Proteins」の関連内容を参照)、P17-Fc融合タンパク質を得た。P17-Fc融合タンパク質と抗CD40抗体ダセツズマブ(Dacetuzumab)(EP1885399B1を参照されたく、以下、CD40-Dacと略称することがある)及びBleslumab(US20100234578を参照されたく、以下、CD40-Bleと略称することがある)との結合状況を標準ELISA方法で測定することによって、製造されたP17-Fc融合タンパク質の免疫原性を検証した。
図1に示すように、P17-Fc融合タンパク質は、ダセツズマブ及びBleslumabに対する親和性を示した。
【0183】
1.2. P17-Fc融合タンパク質のビオチン化
【0184】
メーカーの指示に従い、EZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-ビオチン化キット(EZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-Biotinylation Kit, Thermo Fisher、品番: 21435)を用いて、計算量のEZ-Link Sulfo-NHS-LC-ビオチンをP17-Fc融合タンパク質上に標識した。ビオチン標識されたP17-Fc融合タンパク質(本明細書において「P17-Fc-ビオチン」、「ビオチン化されたP17-Fc融合タンパク質」とも呼ばれる)の量をビオチン定量キット(Thermo Fisher、28005)によって測定した。
【0185】
さらに、実施例1.1と同様の方法を用いて、ダセツズマブ及びBleslumabに対するELISA測定法によって、ビオチン化されたP17-Fc融合タンパク質のコンホメーションを検証した。
【0186】
図2に示すように、ビオチン化されていないP17-Fc融合タンパク質のダセツズマブ及びBleslumabへの結合に比べて、ビオチン化されたP17-Fc融合タンパク質は、この二つの抗CD40抗体と似ている結合を示した。
【0187】
類似している方法で、IL-23-Fc-ビオチン(IL-23配列供給源はUniprot:Q9NPF7である)を製造し、後続の抗体ライブラリースクリーニングにおいて、Fcに結合するファージを除去することに用いられる。
【0188】
類似している方法でP17-Hisタンパク質(P17の配列がUniprot:P25942の21~193位と同様である)を製造し、そのC末端には6つのヒスチジンタグがある。
【0189】
1.3. 抗体ライブラリースクリーニング
【0190】
全ヒト抗体ライブラリーの構築及びスクリーニング方法は、特許出願CN202010236256.8を参照されたい。ヒトCD40に特異的に結合する、ファージ上にディスプレイされる抗CD40 Fab抗体断片を得るために、実施例1.1のビオチン化P17-Fc融合タンパク質を用いて、全ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした。
【0191】
具体的なスクリーニング方法は以下のとおりである:磁気ビーズ法を用いて抗体ライブラリーのスクリーニングを行い、毎回実施例1.1のビオチン化P17-Fc融合タンパク質を用いて全ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーをパニングする前、該抗体ライブラリーを実施例1.1のIL-23-Fc-ビオチンでパニングすることによって、Fcに結合するファージを除去し、そしてヒトCD40タンパク質に特異的に結合できるファージモノクローナルを、ビオチン標識されたP17-Fc融合タンパク質でスクリーニングした。非特異的に吸着するファージを洗浄によって除去した後、得られたファージを収集し、大腸菌SS320細胞で増幅させた後に、続いて次のラウンドのパニングに用いられた。
【0192】
毎ラウンドのパニングにおいて、インプットファージ(input phage)とアウトファージ(output phage)との比(ratio)を計算し、CD40特異的ファージ濃縮の指標として用いた。
【0193】
ファージライブラリーELISAによって、各ライブラリーによるCD40の濃縮も確認され、ここで、三ラウンドのパニング後、CD40に結合するファージは、
図3に示すように、高度に濃縮した。
【0194】
スクリーニングして得られたファージFabとP17-Fc-ビオチン及びIL23-Fc-ビオチンとの結合を試験した。P17-Fc-ビオチンのみに対して特異的親和性を示すファージクローンを選択し、DNAを抽出し、配列決定を行った。
【0195】
独特のFab配列を含有する1つのファージクローンC8を得て、そのコードヌクレオチド、及びアミノ酸配列は以下に示すとおりである。
【0196】
【0197】
該ファージC8クローンの、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列及び軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を、それぞれpcDNA3.3ベクターに連結し、CHO-K細胞(Thermo Fisher)においてFab断片として発現させ、精製した。ELISA法によって、Fab候補分子に対して、P17-Fcに対する親和性検出を行い、結果は
図4に示すとおりである。
【0198】
図4から分かるように、C8クローンFabがCD40に結合するEC50値は約0.4764 μg/mLであり、陽性対照BleslumabマブがCD40に結合するEC50値は約0.04701 μg/mLである。
【0199】
さらに、細胞表面に発現するCD40に対する抗CD40 Fabの親和性を試験するために、ヒトCD40(Uniprot番号P25942)を細胞表面に発現するCHO-K細胞、及びカニクイザルCD40(Uniprot番号G7PG38)を細胞表面に発現するCHO-K細胞を製造した。具体的には、ヒトCD40(Uniprot番号P25942)のコード配列をpcDNA3.3 (Invitrogen)ベクターのポリクローナル部位のクローニングし、ヒトCD40を発現する発現ベクターを得て、そしてヒトCD40を発現する該発現ベクターをCHO-K細胞(Thermo Fisher)に導入して真核発現を行い、細胞表面に発現するヒトCD40のCHO-K細胞(以下、「CHO-K-huCD40細胞」とも呼ばれる)を得た。同様に、カニクイザルCD40を細胞表面に発現するCHO-K細胞(以下、「CHO-K-cynoCD40細胞」とも呼ばれる)を得た。
【0200】
CHO-K-huCD40細胞又はCHO-K-cynoCD40細胞を、1.0×105個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、希釈されたC8抗CD40 Fab候補分子を添加した。4℃で30分間インキュベートした後、細胞を洗浄し、100 μLのAPC標識されたヤギ抗ヒトIgG第2の抗体(Jackson ImmunoResearch Inc、品番:109-136-097、アロフィコシアニン標識された、F(ab')2断片に特異的に結合するヤギ抗ヒトIgG第2の抗体F(ab')2断片(Allophycocyanin(APC)AffiniPure F(ab')2 Fragment Goat Anti-Human IgG, F(ab')2 fragment specific))を添加し、4℃で30分間インキュベートした。そして、細胞を洗浄し、C8抗CD40 Fab候補分子と、細胞表面に発現するCD40分子との結合をフローサイトメトリー(Beckman Coulter)によって検出した。
【0201】
図5Aは、異なる濃度のC8クローン抗CD40 Fab分子が、CHO-K-huCD40細胞に対して結合親和性を示し、3.2 μg/mL~80 μg/mLのC8 Fab濃度範囲内で、該結合親和性がC8 Fab濃度依存性として現れることを示した。
【0202】
図5Bは、C8クローン抗CD40 Fab分子がCHO-K-cynoCD40細胞に対しても結合親和性を示し、用いられるC8 Fab濃度が80 μg/mLであることを示した。これにより、該C8クローンFab分子がカニクイザルCD40に対して交差反応性を有することが分かった。
【0203】
1.4. 全長抗体の発現、精製及び濃度測定
【0204】
実施例1.3のC8クローンFab候補分子に対して全長抗体構築を行い、ここで、ヒトIgG1 Fcの配列を該Fab分子重鎖配列のC末端に連結した。
【0205】
具体的には、得られた、抗体重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列及び抗体軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列をそれぞれ、操作された、軽、重鎖定常領域断片を含有する真核発現ベクタープラスミドpcDNA3.3(Invitrogen)に構築し、メーカーの指示に従って、ExpiCHO一過性発現系(Thermo Fisher、A29133)を用いて、CHO-K細胞に抗体の全長重鎖及び軽鎖を共発現し、そしてタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、C8クローン抗CD40全長抗体を得た。
【0206】
精製された全長抗体に対して、A280吸収値によって濃度測定を行い、SDS-PAGE、示差走査型蛍光法(DSF)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって全長抗体の品質を検証した。品質検査に合格したら、分注して-80℃で保存した。具体的な方法は、特許出願第CN 202010236256.8号の記載を参照されたい。
【0207】
【0208】
実施例2:抗CD40抗体の細胞ベースの機能アッセイ
【0209】
2.1. 候補抗CD40全長抗体のCD40結合特性及び種交差反応性
【0210】
本発明の実施例1.4で製造された全長抗CD40抗体のCD40に対する結合活性及び交差反応性を確認するために、CHO-K-huCD40細胞又はCHO-K-cynoCD40細胞を1.0×10
5個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種した。希釈された、実施例1.4で製造された抗CD40候補抗体100 μLを96ウェルプレートに添加した。4℃で30分間インキュベーした後、細胞を洗浄し、100 μLのAPC標識された抗ヒトIgG第2の抗体(アロフィコシアニン標識された、Fcγ断片に特異的に結合するヤギ抗ヒトIgG第2の抗体(Allophycocyanin(APC)AffiniPure Goat Anti-Human IgG, Fcγ fragment specific),Jackson ImmunoResearch Inc、品番:109-135-098)を添加し、さらに4℃で30分間インキュベートした。そして、細胞を洗浄し、全長抗CD40抗体と、細胞に発現するCD40分子との結合をフローサイトメトリーによって検出した。結果は、
図6A及び
図6Bに示すとおりである。
【0211】
図6A及び
図6Bから分かるように、C8クローンFab断片に対して全長抗体構築を行った後、C8クローン抗CD40全長抗体は、C8クローンFab断片の、ヒトCD40に対する親和性及びカニクイザルCD40に対する交差反応性を依然として保持していた。
【0212】
実施例1.3と類似しているように、全長マウスCD40(Uniprot番号P27512)を発現するCHO-K細胞(以下、「CHO-K-mouseCD40細胞」とも呼ばれる)を製造した。CHO-K-mouseCD40細胞を用いて、実施例1.4で製造された候補C8全長抗CD40抗体とマウスCD40との交差反応性を試験した。CHO-K-mouseCD40細胞を1.0×10
5個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種した。100 μLの希釈された抗CD40候補抗体及び二つの対照抗体(ダセツズマブ、APX005)をそれぞれ96ウェルプレートに添加した。4℃で30分間インキュベートした後、細胞を洗浄し、FITC標識された抗ヒトIgG Fcγ第2の抗体(Fcγ断片と特異的に反応できるアフィニティー精製F(ab')
2断片化ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(AffiniPure F(ab')
2 Fragment Goat Anti-Human IgG, Fcγ fragment specific),Jackson Immunoresearch、品番:109-006-098)を添加し、4℃で30分間インキュベートした。そして、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって試験した。結果は、
図6Cに示すとおりである。
【0213】
図6Cから分かるように、C8クローン全長抗体分子はマウスCD40との顕著な結合活性を示しているが、対照抗体ダセツズマブ及びAPX005はいずれもマウスCD40に対する交差反応活性を持っていなかった。
【0214】
2.2. CD40とCD40Lとの結合に対する候補抗CD40抗体の影響
【0215】
CD40とCD40Lとの結合に対する実施例1.4で製造された全長抗CD40抗体の影響を試験するために、ヒトCD40を発現するCHO-K細胞(即ち、CHO-K-huCD40細胞)を1.0×105細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、100 μLの希釈された抗CD40全長抗体又はアイソタイプ対照(即ち、精製されたヒトIgG1アイソタイプ対照組換え抗体(Biolegend、品番403502))を96ウェルプレートに添加した。4℃で30分間インキュベートした後、細胞を洗浄した。
【0216】
実施例1に記載の方式に従って、CD40L(ACRO Biosystems、品番CDL-H5248)をビオチン化し、ビオチン化されたCD40Lタンパク質を200 ng/mLに希釈し、100 μLの希釈された、ビオチン化されたCD40L(本明細書において、CD40L-ビオチンとも呼ばれる)を96ウェルプレートに添加した。4℃で30分間インキュベートした後、細胞を洗浄し、そして100 μLのPE標識されたストレプトアビジン(eBioscience 品番12-4317-87)を添加し、さらに4℃で30分間インキュベートした。そして、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって試験した。
【0217】
図7に示すように、候補抗体C8クローンは、濃度が0.01~20 μg/mLである場合に、CD40とCD40Lとの結合を増強する活性を示し、CD40アゴニスト型になる可能性を有する抗CD40抗体である。対照抗体Bleslumabマブは、CD40とCD40Lとの結合を顕著に抑制し、ダセツズマブは、低い濃度下でCD40とCD40Lとの結合に影響を与えず、高い濃度下でCD40とCD40Lとの結合を抑制した。
【0218】
2.3. 候補抗CD40抗体媒介性未熟樹状細胞の活性化アッセイ
【0219】
未熟樹状細胞(immature dendritic cells, iDC)は、抗CD40抗体により活性化された後に成熟DC細胞に形質転換され、本実施例において、成熟DC細胞が分泌したIL-12サイトカイン、CD83マーカーの発現などを試験することによって候補抗体媒介性iDCの活性化活性を評価した。
【0220】
1000 U/mL rhGM-CSF(PeproTech 品番:300-03-50)及び500 U/mL rhIL-4(PeproTech品番:200-04-50)が添加され、10%FCSが補充されたRPMI 1640培地で、ヒト末梢血から製造された単球をiDC細胞に発達させ、そして5.0×104個のiDC細胞/ウェルで6ウェルプレートに接種した。候補抗CD40全長抗体及び各対照抗体、CD40L(ACRO Biosystems、品番CDL-H5248)の希釈液をiDC細胞に添加し三日間培養し、培養液及び細胞を収集した。
【0221】
収集された培養液については、ELISA又はフローサイトメトリーによりIL-12分泌を測定し、収集された細胞については、CD83マーカーの発現を測定した。
【0222】
図8A及び
図8Bに示すように、C8クローン全長抗体は、顕著で用量依存的iDC活性化活性を示した。この点では、ダセツズマブに類似しているように、C8クローン全長抗体は、CD40の弱いアゴニストである。対照としてのCD40Lは、大量のIL-12分泌をもたらした。
【0223】
2.4. 候補抗CD40抗体媒介性Ramos細胞におけるCD95誘導
【0224】
Ramos細胞は、CD40分子が細胞表面に天然に発現しているヒトリンパ腫細胞である。抗CD40抗体がRamos細胞上のCD40と結合しCD40の下流シグナル伝達経路を活性化するか否かを試験するために、Ramos細胞(ATCC No.:CRL-1596)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)が補充されたRPMI 1640培地(以下、「完全RPMI 1640培地」とも呼ばれる)を含有するマイクロタイタープレートのウェルに1.0×10
5個の細胞/ウェルで敷き詰めた。希釈された抗CD40抗体又はCD40L(最初のウェルに10 μg/mL、2倍階段希釈し、4つの濃度スポットがあり、濃度の詳細は
図9に示す)をRamos細胞に加え、37℃で一晩インキュベートした。そして、Ramos細胞表面に誘導されたCD95発現をフローサイトメトリーにより測定した。
【0225】
図9に示すとおり、陰性対照としてのhIgG1に比べて、C8クローン全長抗体は、用量依存的CD95誘導活性を示し、弱いアゴニスト活性を有することを示した。
【0226】
実施例3:抗CD40抗体のインビボ薬効試験
【0227】
3.1. 抗CD40アゴニスト型抗体によるRamos細胞のマウスCDXモデルにおける腫瘍増殖抑制
【0228】
腫瘍細胞株異種移植(CDX、cell derived xenograft)モデルは、腫瘍細胞株をヌードマウス又はNSGマウス体内に移植して構築した腫瘍モデルである。本実施例において、Ramos細胞をマウスの皮下に移植することによって、マウスCDXモデルを構築し、該マウスCDXモデルでの候補抗CD40抗体の抗腫瘍効果を試験した。
【0229】
0日目(腫瘍細胞を接種した日から開始し、0日と定義し、翌日を1日と定義する)に、500万個のヒトリンパ腫Ramos細胞を六週齢のメスヌードマウス(維通利華Balb/c Nude)に皮下注射した。平均腫瘍体積が250 mm
3に達した場合、1群あたり8匹の動物で、全てのマウスに0.2 mg/kg、1 mg/kg又は5 mg/kg (以下、mg/kgはmpkとも略される)のC8抗CD40全長抗体を腹膜内注射によって投与した。週に三回投与(TIW)し、二週間続いた。毎回注射する前に、腫瘍体積を測定し、最初の投与から二週間後に腫瘍の重量を測定した。最終の腫瘍体積及び腫瘍重量は、それぞれ
図10A及び
図10Bに示され、腫瘍体積の変化は
図10Cに示された。
【0230】
対照抗体APX005M(本明細書において、APX又はAPX005とも呼ばれる)(US20170246297、Apexigen社を参照されたい)に比べて、C8抗CD40全長抗体は、似ている抗腫瘍効果を示した。
【0231】
各群の抗体のTGI(腫瘍増殖抑制率)は表4に示すとおりである。
【0232】
【0233】
3.2. 抗CD40アゴニスト型抗体によるMC-38細胞のマウスモデルにおける腫瘍増殖抑制
【0234】
MC38は、マウスp53タンパク質(mp53)を高発現するマウス結腸腺癌細胞株であり、CD40分子を発現しない。
【0235】
MC-38細胞のマウス皮下移植モデルにおいて、候補抗CD40抗体の抗腫瘍効果を試験した。
【0236】
100万個のマウス結腸腺癌細胞(MC-38細胞)(中国実験細胞資源共有プラットフォーム、品番3111C0001CCC000523)を六週齢のメスマウス(維通利華C57BL/6)の腋窩に皮下注射した。平均腫瘍体積が80~100 mm
3に達した場合、(各群8匹)マウスに1.5 mg/kg、5 mg/kg又は15 mg/kg(以下、「mg/kg」は「mpk」とも略される)のC8抗CD40抗体を腹膜内注射によって投与した。週に三回投与(TIW)し、三週間続いた。毎回注射する前に、腫瘍体積を測定し、最初の投与から三週間後に腫瘍の重量を測定した。最終の腫瘍重量は
図10Dに示される。
【0237】
図10Dから分かるように、陰性対照PBSに比べて、抗CD40アゴニスト型抗体C8分子は、濃度勾配の抗腫瘍効果を示した。
【0238】
実施例4. C8クローン抗CD40抗体の親和性変異体
【0239】
C8クローンの全長抗体によるCD40抗原親和性に対する改変を得るために、本実施例は、C8クローンの全長抗体に対してさらなる親和性変異体設計及び機能アッセイを行った。
【0240】
4.1. 親和性変異体ファージディスプレイライブラリーの構築
【0241】
まず、実施例1.3で得られたC8-WT-VL及びC8-WT-VHに対して、AbM番号の方式を用いてCDR及びフレームワーク領域を定義し、そして一連のプライマーを設計して、それぞれのCDRに対して単一点又は連続した三点突然変異を行って、親和性変異体ファージディスプレイライブラリーの構築を行った。
【0242】
4.2親和性変異体ファージディスプレイライブラリーのスクリーニング
【0243】
親和性変異体ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングは、免疫チューブスクリーニング(即ち固相スクリーニング)を用い、抗原タンパク質P17-His(実施例1における類似している方法を用いて製造される)で免疫チューブをコーティングし、抗原に結合する免疫チューブ及び親和性変異体ファージディスプレイライブラリーをインキュベートし、洗浄し溶出させるパニング過程によって、2~3ラウンドのパニングを経て、抗原に対する特異性モノクローナル抗体を大量に濃縮させることができる。該ファージディスプレイライブラリーからC8親和性変異体をスクリーニングする具体的な実施方法は、特許出願第202010236256.8号における免疫チューブスクリーニング方法を参照されたい。
【0244】
親和性変異体ファージディスプレイライブラリーからC8親和性変異体をスクリーニングした後、ELISAレベルで、P17-His抗原に高い特異性で結合できる多くの候補抗体を得た。Fab分子の結合親和性に応じて、結合親和性が最も高い最初の11個の候補分子をその中から選択して全長抗体構築を行い、ここで、ヒトIgG1 Fc silent(N297Q 突然変異)の配列(即ち、huIgG1(N297Q))をFab分子の重鎖配列に連結して、軽鎖がいずれもκ型である全ヒトIgG1(N297Q)抗体を得た。
【0245】
4.3. 親和性変異体候補クローンの全長抗体製造
【0246】
具体的な方法は、実施例1.4の「全長抗体の発現、精製及び濃度測定」を参照されたい。C8-1抗体、C8-2抗体、C8-3抗体、C8-4抗体、C8-5抗体、C8-6抗体、C8-7抗体、C8-8抗体、C8-9抗体、C8-10抗体、C8-11抗体を得た。C8親抗体及び各変異体抗体の可変領域ヌクレオチド及びアミノ酸配列は表3に示すとおりである。
【0247】
4.4. 親和性変異体候補抗体の非特異的結合アッセイ
【0248】
得られた親和性変異体候補抗体の異なる細胞に対する非特異的結合と、使用される抗体濃度との間の関係を最初に検出した。HEK293細胞及びCHO-K細胞が、いずれもCD40分子を細胞表面に天然に発現させない細胞であるため、CD40に特異的に結合する抗体は、HEK293細胞及びCHO-K細胞に特異的に結合しない。本実験で使用される陽性対照は、特許CN202010825379.5に記述されているF4AM4抗体であり、F4AM4抗体は全ヒト抗体であり、その抗体軽重鎖配列がそれぞれ表5におけるF4AM4-LC及びF4AM4-HCに示すとおりである。
【0249】
実験では、HEK293(ATCC: CRL-3216)及びCHO-K(ATCC: CCL-61)細胞を1.0×105個の細胞/ウェルでそれぞれ96ウェルプレートに接種した。100 μLの階段希釈された、実施例4.3で製造された抗CD40候補抗体を96ウェルプレートに添加した。4℃で60分間インキュベートした後、FACS緩衝液(PBS+5%FBS+2%BSA)で細胞を5回洗浄し、100 μLのPE標識された抗ヒトIgG-Fc第2の抗体(Goat F(ab')2 Anti-Human IgG-Fc(PE)、pre-adsorbed、Abcam、品番: ab98596)を添加し、さらに4℃で30分間インキュベートした。そして、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって試験した。
【0250】
図11A及び11Bに示すように、濃度の高いC8-8クローンは、HEK293及びCHO-K細胞上でいずれも非特異的結合を示しており、C8-6は高濃度(100 μg/mL)でHEK293にある程度で非特異的に結合したが、他の候補クローン及びIgG1は、いずれもこの二つの細胞株に非特異的に結合しなかった。そのため、後続の実験において、非特異的に結合していない候補分子を用いて、次の試験を行った。
【0251】
【0252】
4.5. 親和性変異体候補抗体の細胞ベースの機能アッセイ
【0253】
4.5.1. 親和性変異体候補抗体のCD40結合及び交差反応性
【0254】
実施例4.3の親和性変異体抗体の結合活性及び交差反応性を確認するために、人工的に構築された、全長ヒトCD40を発現するCHO-K細胞(CHO-K-huCD40細胞)を1.0×105個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種した。希釈された、実施例4.3で製造された抗CD40候補抗体100 μLを96ウェルプレートに添加した。4℃で30分間インキュベートした後、FACS 緩衝液(PBS+5%FBS+2%BSA)で細胞を5回洗浄し、100 μLのAPC標識された抗ヒトIgG第2の抗体を添加し、さらに4℃で30分間インキュベートした。そして、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって試験した。
【0255】
図12A及び
図12Bに示すように、親和性変異体Fabに対して全長抗体構築を行った後、全ての候補抗体は、いずれもヒトCD40に対する親和性を示し、対照抗体APX005と同等である(APX005が臨床ステージII期の結果において、膵臓癌に対する良好な治療効果を示したため、C8抗体親和性変異体に関連する実験では、対照抗体をAPX005に設定し、APX005配列供給源がApexigen Inc. US20120301488であり、三優生物により製造される)。
【0256】
人工的に構築された、全長マウスCD40(Uniprot#P27512)を発現するCHO-K細胞(CHO-K-mouseCD40細胞)を用い、実施例4.3で製造された親和性変異体候補抗体とマウスCD40との交差反応性を試験した。マウスCD40を発現するCHO-K細胞を1.0×105個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種した。100 μLの希釈された親和性変異体候補抗体及び対照抗体(APX005)をそれぞれ96ウェルプレートに添加した。4℃で30分間インキュベートした後、細胞を洗浄し、FITC標識された抗ヒトIgGFcγ(Fcγ断片と特異的に反応できるアフィニティー精製F(ab')2断片化ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(AffiniPure F(ab')2 Fragment Goat Anti-Human IgG, Fcγ fragment specific)、Jackson Immunoresearch、品番:109-006-098)を添加し、4℃で30分間インキュベートした。そして、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって試験した。
【0257】
図12C及び
図12Dに示すように、C8-6は、親C8-WTよりも良好なマウスCD40抗原結合活性を有することを示した。C8-1、C8-2、C8-7、C8-8、C8-9、C8-10、C8-11は、いずれもマウスCD40抗原との結合活性を示した。
【0258】
4.5.2. 親和性変異体候補抗体により媒介されるRamos細胞におけるCD95誘導(架橋剤があり、即ちCrosslinking効果が存在する)
【0259】
架橋剤がある場合に、親和性変異体候補抗体がRamos細胞上のCD40と結合しCD40の下流シグナル伝達経路を活性化するか否かを試験するために、Ramos細胞(ATCC No.:CRL-1596)を1.0×105個の細胞/ウェルで完全RPMI 1640培地に敷き詰めた。希釈された親和性変異体候補抗体、対照抗体APX005及びCD40L(最初のウェルに20 μg/mL、3倍階段希釈し、8つの濃度スポットがある)をRamos細胞に加えるとともに、架橋剤(Fcγ断片と特異的に反応できるアフィニティー精製F(ab')2断片化ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(AffiniPure F(ab')2 Fragment Goat Anti-Human IgG, Fcγ fragment specific)、Jackson Immunoresearch、品番:109-006-098)を加え、架橋剤濃度が20 μg/mLであり、37℃で一晩インキュベートした。そして、フローサイトメトリーによってCD95発現を測定した。
【0260】
図13A及び
図13Bに示すように、全ての親和性変異体抗体は、いずれもAPX005と同等なCD95誘導活性を示し、有意差がなかった。
【0261】
4.5.3. 親和性変異体候補抗体により媒介されるRamos細胞におけるCD95誘導(架橋剤がなく、即ちCrosslinking効果が存在しない)
【0262】
架橋剤がない場合に、親和性変異体候補抗体がRamos細胞上のCD40と結合しCD40の下流シグナル伝達経路を活性化するか否かを試験するために、Ramos細胞 (ATCC No.:CRL-1596)を1.0×105個の細胞/ウェルで完全RPMI 1640培地に敷き詰めた。希釈された親和性変異体候補抗体、対照抗体APX005及びCD40L(最初のウェルに20 μg/mL、3倍階段希釈し、8つの濃度スポットがある)をRamos細胞に加え、37℃で一晩インキュベートした。そして、フローサイトメトリーによってCD95発現を測定した。
【0263】
図13C及び
図13Dに示すように、全ての親和性変異体抗体は、いずれもAPX005及びCD40Lよりも弱いCD95誘導活性を示し、ここで、C8-2、C8-6、C8-9、C8-10、C8-11は、APX005よりも10倍程度弱いCD95誘導活性を示した。これにより、架橋剤がない場合に、本発明の候補分子は、APX005に比べて、著しく低いCD40分子活性化能力を示し、CD40分子を弱くアゴニストするとともに、APX005よりも著しく小さい毒性の副作用を有することが予想され得ることが示されている。現在臨床試験が行われている抗CD40アゴニスト型抗体の主な有害事象は、肝毒性であり、肝臓細胞表面にFcR受容体が大量に発現しており、一方、臨床試験で使用されるアゴニスト型抗体(例えば、APX005)が、通常正常なFc機能を有し、肝細胞表面のFcR受容体と架橋効果(Crosslinking効果)を形成して、肝細胞表面において、CD40を発現する免疫細胞を非特異的に活性化することができるため、肝毒性を引き起こし、その治療指数が低い。架橋効果の発生機構を分析することにより、肝毒性を引き起こす架橋効果が、Fc受容体の結合で発生し、Fc受容体による架橋効果を制御し病巣位置での活性化効果著しく増強することができれば、肝毒性を制御し治療指数を向上させることができることが分かり、架橋効果の有無での抗体薬物分子のアゴニスト活性の差に対してより高い要求が出されている。
【0264】
殺傷薬効と毒性との比の最大化を実現するために、本発明は、Crosslinking効果の存在及び不存在下で、アゴニスト効果の最大差の程度を拡大し、即ち架橋効果が形成された時に、免疫活性化反応を著しく発生させ、架橋効果がない場合に、免疫活性化効果を発生させないか又はわずかにしか発生させないことによって治療指数を向上させることが望まれる。本実施例から分かるように、APX005分子は、架橋剤の有無での免疫細胞アゴニスト活性の差が小さく、つまり最終投与後の薬効と毒性との比が小さく、一方、本発明の候補抗体は、架橋剤の有無で、薬効と毒性との比の最大化を実現し、腫瘍微小環境における免疫細胞の殺傷作用の活性化を最大限に実現することができ、非腫瘍位置での免疫細胞の非特異的活性化による肝毒性などの毒性の副作用を回避した。本発明の候補抗体で二重抗体を構築すれば、この特徴を利用して、病巣位置での免疫細胞の特異的で高強度な活性化を実現し、架橋効果を形成できない肝細胞などの位置で低いアゴニスト活性を実現することによって、肝毒性などの有害事象を引き起こすことなく腫瘍細胞を特異的に殺傷するという目的を達成し、治療指数を有効に向上させ、安全性を向上させることができる。
【0265】
4.5.4. Jurkat NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の安定的トランスフェクト細胞株の製造
【0266】
まず、エレクトロポレーター(Invitrogen、NeonTM Transfection System、MP922947)により、ベクターpGL4.32[Luc2p/NF-κB-RE/Hygro]プラスミド(Promega、品番E8491)をJurkat 細胞(ATCC(R) TIB-152TM)にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、得られた細胞をそれぞれ、体積百分率が10%であるFBS(Gibco、15140-141)を含有するが、抗生物質を含まないRPMI 1640培地(Hyclone、SH30243.01)に移し、そして細胞を6ウェルプレートの細胞培養皿に接種して48時間培養し、次に平均1500個の細胞/ウェルの密度で細胞を96ウェルの細胞培養プレートに分注し、最終濃度が500 μg/mLであるハイグロマイシン B(源培、S160J7)を加えてスクリーニングし、2~3週間程度で細胞株クローンの成長状況を観察し、クローンを形成した細胞株を選択して24ウェルプレートに移し、細胞培養が拡大した後、一部のクローンを取って96ウェルのホワイト底板(Corning、3610)に移し、ホルボールエステル(使用濃度10 ng/ml)及びイオノマイシン(使用濃度1 nM)刺激を行い、37℃で、5%CO2インキュベータで6 h培養した後にBright-Lite基質(Vazyme, DD1204-03)を加え、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices:Spectramax i3x)によりシグナル値を読み取った後に異なるクローンNF-κBの発現レベルを評価して、NF-κB遺伝子を高発現するJurkat細胞株を得た。NF-κBの発現レベルが高いJurkat NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の安定的トランスフェクト細胞クローンを凍結保存した。
【0267】
4.5.5. Jurkat CD40/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞株の構築
【0268】
本実施例では、構築されたJurkat CD40/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞株は、CD40下流シグナル活性を活性化できる候補抗体分子をスクリーニングするためのものである。実施例4.5.4で製造されたJurkat NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の安定的トランスフェクト細胞株を用いて、これに加えて、CD40の全長発現遺伝子配列(Uniprot Gene ID: P25942)を安定的にトランスフェクトし、モノクローナル細胞株をスクリーニングした。この細胞株培養系にCD40L組換えタンパク質を加え、CD40に結合することによって、細胞内NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の転写及び発現を活性化し、ルシフェラーゼの触媒基質を加えて蛍光シグナルを産生した。Jurkat CD40/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞株の製造過程は以下のとおりである:
全長ヒトCD40(Met1-Gln277)を発現するプラスミドの構築:遺伝子合成技術によってヒトCD40タンパク質を含有するDNA断片を合成し、それをpLVX-Puro発現ベクター(Clontech, 632164)にクローニングした。形質転換の方法によって大腸菌を導入した。大腸菌モノクローナルを選択して配列決定して正確なプラスミドクローンを得て、プラスミドを抽出し、再び配列決定を行って確認した。エレクトロポレーション:Gibco のRPMI 1640無血清培地(品番:11875085)を用いて実施例4.5.4で製造されたJurkat細胞を培養した。エレクトロポレーション前日に、細胞を2×105/mLに継代し、翌日、Invitrogenのエレクトロポレーションキット(品番:MPK10096)及びエレクトロポレーター(品番:MP922947)を用いて、構築されたプラスミドをJurkat NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の安定的トランスフェクト細胞株細胞に形質転換した。エレクトロポレーション後の細胞をRPMI 1640培地に移し、37℃の細胞インキュベータに入れて48 h培養した。エレクトロポレーションされた細胞の播種:エレクトロポレーションされたJurkat細胞を1000個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに播き、最終濃度が2 μg/mLであるピューロマイシンを加え、37℃の二酸化炭素インキュベータに入れて培養し、14日後に2 μg/mLのピューロマイシンが加えられたRPMI 1640培地を補充した。クローン選択、細胞拡大培養及びFACS同定:96ウェルプレートで成長した単一細胞クローンを採取し、24ウェルの培養プレートに移して拡大培養し続け、その後、ヒトCD40安定的トランスフェクトに成功した細胞株をFACSによって同定した。
【0269】
4.5.6. 親和性変異体の候補抗体の、CD40下流NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子シグナルを活性化する活性(架橋剤があり、即ちCrosslinking効果が存在する)
【0270】
本実施例では、親和性変異体候補抗体が、架橋剤のある場合に、CD40シグナル経路を活性化する機能を有するか否かを試験するために、実施例4.5.5で製造されたJurkat CD40/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞株を材料として用い、候補分子がCD40に結合することによって下流NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を活性化する能力を検出した。具体的な実施形態は以下のとおりである:
親C8分子及び親和性変異体候補抗体、対照抗体APX005(最初のウェルに10 μg/mL、3倍階段希釈し、8つの濃度スポットがある)をRPMI 1640培地で階段希釈し、10 μg/mLの架橋剤(Fcγ断片と特異的に反応できるアフィニティー精製F(ab')2断片化ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(AffiniPure F(ab')2 Fragment Goat Anti-Human IgG, Fcγ fragment specific)、Jackson Immunoresearch、品番:109-006-098)を加えて予備混合を行い、抗体及び架橋剤の予備混合液を1ウェルあたり50 μLで96ウェルプレートに加え、Jurkat CD40/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞株を蘇生させ、2~4回継代され成長状態が良好な細胞を実験に用い、RPMI 1640培地で細胞を洗浄し再懸濁させ、計数後に、細胞密度を2×106個の細胞/mLに調整し、抗体及び架橋剤の予備混合液のある96ウェルの細胞培養プレートに1ウェルあたり50 μLで加え、37℃の細胞インキュベータに入れて6hインキュベートした。培養が終了した後、各ウェルに30 μLのルシフェラーゼ基質Bright-Lite(Vazyme, DD1204-03)を加え、5 min振とうした後に96ウェルプレートの蛍光値を検出した。
【0271】
図14A、
図14B、
図14C及び
図14Dに示すように、架橋剤がある場合に、親C8分子及び全ての親和性変異体抗体は、いずれもAPX005と同等な、CD40下流NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子シグナルを活性化する活性を示し、有意差がなかった。
【0272】
4.5.7. 親和性変異体の候補抗体の、CD40下流NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子シグナルを活性化する活性(架橋剤がなく、即ちCrosslinking効果が存在しない)
【0273】
実施例では、親和性変異体候補抗体が、架橋剤のない場合に、CD40シグナル経路を活性化する機能を有するか否かを試験するために、Jurkat CD40/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞株を材料として用い、候補分子がCD40に結合することによって下流NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を活性化する能力を検出した。具体的な実施形態は以下のとおりである。
【0274】
親C8分子及び各親和性変異体候補抗体、対照抗体APX005(最初のウェルに10 μg/mL、3倍階段希釈し、8つの濃度スポットがある)をRPMI 1640培地で階段希釈し、希釈された候補抗体及び対照抗体を1ウェルあたり50 μLで96ウェルプレートに加え、Jurkat CD40/NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子細胞株を蘇生させ、2~4回継代され成長状態が良好な細胞を実験に用い、RPMI 1640培地で細胞を洗浄し再懸濁させ、計数後に、細胞密度を2×106個の細胞/mLに調整し、抗体のある96ウェルの細胞培養プレートに1ウェルあたり50 μLで加え、37℃の細胞インキュベータに入れて6hインキュベートした。培養が終了した後、各ウェルに30 μLのルシフェラーゼ基質Bright-Lite(Vazyme, DD1204-03)を加え、5 min振とうした後に96ウェルプレートの蛍光値を検出した。
【0275】
図15A、
図15B、
図15C及び
図15Dに示すように、架橋剤がない場合に、APX005は、CD40下流NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子シグナルを活性化する高い活性を示したが、親和性突変異体候補抗体は、C8-7及びC8-9がある程度の活性化能力を有する以外、他の候補抗体がいずれも活性化能力を持たず、これらの分子は、CD40分子を弱くアゴニストするとともに、APX005よりも著しく小さい毒性の副作用を有することが予想され得る。
図14A~
図14D及び
図15A~
図15Dにおける、各候補分子によるCD40シグナル経路の活性化状況を比較すると、Crosslinking効果がある又はない場合に、親C8分子及び各親和性変異体候補分子がCD40シグナル経路を活性化する状況は、
図13A~
図13DにおけるB細胞活性化状況と実質的に一致し、これはまた、分子機構から、B細胞(Ramos細胞)活性化試験の結果を検証した。試験結果から、本発明における抗CD40抗体によるB細胞活性化は、CD40シグナル経路の活性化により形成されることが分かった。
【0276】
4.6. 親和性変異体の候補抗体アフィニティーの動態学的検出
【0277】
本実施例では、Fortebio Octet RED96計器を用いて、C8親抗体(C8-WT)及び親和性変異体抗体とヒトCD40抗原(P17-His)との親和性を検出した。
【0278】
材料の準備:1 gのBSAを秤取し、500 μLのTween 20を量り取り、1000 mL の1×PBSに加え、均一に混合した。濾過した後に分注して保存する。0.1 mLの0.1M pH 2.0のグリシン溶液を吸引し、0.9 mLの超純水を加え、均一に混合した。KB緩衝液で抗体を10 μg/mLに希釈し、KB緩衝液で抗原を、順に40 nM、20 nM、10 nM、5 nM、0 nMである一連の濃度階段に希釈した。
【0279】
実験の流れ:センサ(Protein A sensor)を少なくとも10 min遮光してプリウェットした後、試料プレート(GreinierBio、PN655209)に対する試験を開始し、試験してエラーがなければ予め設定された手順に従って実施した。ここで、試料プレート1の1、10及び12列目に200 μL/ウェルの KB緩衝液を加え、11列目に0.01M pH2.0のグリシン溶液を加え、2~8列目に製造された試料溶液を加え(一つの試料を5つのウェルに加え)、九列目にP17-Hisを濃度の高い順に加えた。データ結果の詳細を表6に示す。
【0280】
【0281】
表6から分かるように、C8親抗体(C8-WT)及び親和性変異体抗体は、約0.5×10-8M~2×10-8Mの親和性でヒトCD40抗原に結合し、ここで、全ての親和性変異体抗体は、C8親抗体(C8-WT)の親和性に比べて親和性が改善され、親和性成熟抗体である。
【配列表フリーテキスト】
【0282】
配列番号1~55:抗体配列
配列番号56:(2)..(2) Xaaは、Ala又はGly であってもよい
配列番号56:(6)..(6) Xaaは、Glu又はLeu であってもよい
配列番号56:(7)..(7) Xaaは、Gly又はValであってもよい
配列番号57:(4)..(4) Xaaは、Asn又はAla であってもよい
配列番号58:(4)..(4) Xaaは、Phe、Ala又はProであってもよい
配列番号58:(10)..(10) Xaaは、Asn又はAspであってもよい
配列番号59:(5)..(5) Xaaは、Ser又はAlaであってもよい
配列番号60:(6)..(6) Xaaは、Asp又はSerであってもよい
配列番号60:(7)..(7) Xaaは、Ser又はProであってもよい
配列番号60:(9)..(9) Xaaは、Gly又はArgであってもよい
配列番号60:(10)..(10) Xaaは、Asp、Pro、Ser又はPheであってもよい
配列番号60:(11)..(11) Xaaは、 Pro、Asn又はArgであってもよい
配列番号60:(12)..(12) Xaaは、Gly又はHisであってもよい
配列番号61、62:抗体配列
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれLCDR1、LCDR2及びLCDR3である三つの相補性決定領域を含む軽鎖可変領域と、それぞれHCDR1、HCDR2及びHCDR3である三つの相補性決定領域を含む重鎖可変領域とを含む抗CD40抗体又は抗原結合断片であって、
(a)LCDR1は、SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(b)LCDR2は、SEQ ID NO: 2、5、6、7から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 2、5、6、7のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(c)LCDR3は、SEQ ID NO: 3、4から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 3、4のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(d)HCDR1は、SEQ ID NO: 8、12、14、20から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 8、12、14、20のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(e)HCDR2は、SEQ ID NO: 9、21から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 9、21のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
(f)HCDR3は、SEQ ID NO: 10、11、13、15、16、17、18、19から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 10、11、13、15、16、17、18、19のうちのいずれか一つのアミノ酸配列の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化の変異体を含み、
ここで、前記アミノ酸変化は、アミノ酸の付加、欠失又は置換である、抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項2】
(i)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:4又はSEQ ID NO: 4の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:11又はSEQ ID NO: 11の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 5又はSEQ ID NO: 5の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 12又はSEQ ID NO: 12の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO: 13の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 6又はSEQ ID NO: 6の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 14又はSEQ ID NO: 14の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:15又はSEQ ID NO: 15の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:16又はSEQ ID NO: 16の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:17又はSEQ ID NO: 17の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:18又はSEQ ID NO: 18の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2又はSEQ ID NO: 2の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8又はSEQ ID NO: 8の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9又はSEQ ID NO: 9の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:19又はSEQ ID NO: 19の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1又はSEQ ID NO: 1の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 7又はSEQ ID NO: 7の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO: 3の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 20又はSEQ ID NO: 20の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 21又はSEQ ID NO: 21の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するHCDR2、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO: 10の2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸変化を含有するLCDR3を含む、請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
アミノ酸配列RSSQGIRSSLA(SEQ ID NO: 1)のようなものを含有するLCDR1、アミノ酸配列GX
1SSLX
2X
3(SEQ ID NO: 56)のようなものを含有するLCDR2、及びアミノ酸配列 QQLX
4SFPST(SEQ ID NO: 57)のようなものを含有するLCDR3であって、X
1がA又はGであり、X
2がE又はLであり、X
3がG又はVであり、X
4がN又はAであるもの、及び
アミノ酸配列GFTX
5GSYEMX
6(SEQ ID NO: 58)のようなものを含有するHCDR1、アミノ酸配列YISSX
7GETTD(SEQ ID NO: 59)のようなものを含有するHCDR2、及びアミノ酸配列 DVFFFX
8X
9SX
10X
11X
12X
13AYGMDV(SEQ ID NO: 60)のようなものを含有するHCDR3であって、X
5がF、A又はPであり、X
6がN又はDであり、X
7がS又はAであり、X
8がD又はSであり、X
9がS又はPであり、X
10がG又はRであり、X
11がD、P、S又はFであり、X
12がP、N又はRであり、X
13がG又はHであるものを含み、
例えば、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、
(i)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:4を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:11を含有するLCDR3、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 5を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 12を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:13を含有するLCDR3、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 6を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 14を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:15を含有するLCDR3、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:16を含有するLCDR3、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:17を含有するLCDR3、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:18を含有するLCDR3、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 2を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 8を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 9を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:19を含有するLCDR3、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を含有するLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 7を含有するLCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含有するLCDR3、並びにアミノ酸配列SEQ ID NO: 20を含有するHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 21を含有するHCDR2及びアミノ酸配列SEQ ID NO:10を含有するLCDR3を含む、請求項1又は2に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、ここで、
(i)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23、29、33、39、53のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含有し、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25、31、35、37、41、43、45、47、49、51、55のうちのいずれか一つのアミノ酸配列を含有し、又は
(ii)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:23、29、33、39、53のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:25、31、35、37、41、43、45、47、49、51、55のうちのいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、
例えば、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、
(i) アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含有する重鎖可変領域、
(ii)アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含有する重鎖可変領域、
(iii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:31を含有する重鎖可変領域、
(iv)アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:35を含有する重鎖可変領域、
(v)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:37を含有する重鎖可変領域、
(vi)アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:41を含有する重鎖可変領域、
(vii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:43を含有する重鎖可変領域、
(viii)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:45を含有する重鎖可変領域、
(ix)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:47を含有する重鎖可変領域、
(x)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:49を含有する重鎖可変領域、
(xi)アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:51を含有する重鎖可変領域、又は、
(xii)アミノ酸配列SEQ ID NO:53を含有する軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列SEQ ID NO:55を含有する重鎖可変領域を含み、
好ましくは、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は完全ヒト抗体である、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
それはIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体であり、好ましくは、それはIgG1又はIgG4抗体であり、さらに好ましくは、それはヒトIgG1又はヒトIgG4抗体である、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗原結合断片はFab、Fab'、F(ab')2、Fv、単鎖Fv、単鎖Fab、ダイアボディ(diabody)である、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
(1)ForteBio動力学結合アッセイによって測定するように、高親和性でCD40に結合し、それを活性化し、例えば、約10
-7 M~約10
-10 M KdでCD40、例えば、ヒトCD40、カニクイザルCD40及びマウスCD40に結合すること、
(2)CD40とCD40Lとの結合を増強すること、
(3)抗原提示細胞上に発現するCD40に結合することによって、抗原提示細胞を活性化し、例えば、前記抗原提示細胞が、樹状細胞(DC)と、B細胞と、単球と、マクロファージとを含むこと、
(4)CD40を発現するB細胞によるCD95発現を誘導すること、
(5)B細胞媒介性免疫応答を増強すること、
(5)架橋効果が形成された時にB細胞媒介性免疫応答を著しく増強すること、
(6)架橋効果が形成されていない時に、B細胞媒介性免疫応答をほとんど増強しないか、又は弱く増強することのうちの一つ又は複数の特性を有する、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
免疫グロブリンFc領域のCH2ドメインにおけるグリコシル化部位が除去され、例えば、ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインにおけるN297残基を突然変異させて該グリコシル化部位を除去し、例えば、N297残基をGly、Ala、Gln、Asp又はGluに変え、好ましくは、N297残基をGlnに変える、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含むベクターであって、好ましくは、前記ベクターは、発現ベクター、例えば、pcDNA3.3ベクターである、ベクター。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸又は請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、前記宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であり、さらに好ましくは、大腸菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、又は抗体もしくはその抗原結合断片の製造に適した他の細胞から選択され、最も好ましくは、前記宿主細胞は293細胞又はCHO細胞である、宿主細胞。
【請求項12】
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片を製造する方法であって、前記方法は、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片をコードする核酸の発現に適した条件下で請求項11に記載の宿主細胞を培養し、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片を任意に単離させることを含み、任意選択的に、前記方法は、前記宿主細胞から前記抗CD40抗体又は抗原結合断片を回収することをさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片及び他の物質、例えば、細胞傷害性薬剤を含む、免疫コンジュゲート。
【請求項14】
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片又は請求項13に記載の免疫コンジュゲート、及び任意選択的な薬用アジュバントを含む、薬物組成物。
【請求項15】
薬物組成物であって、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片又は請求項13に記載の免疫コンジュゲート、及び他の治療剤、並びに任意選択的な薬用アジュバントを含み、好ましくは、前記他の治療剤は、化学療法剤、他の抗体(例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)、細胞傷害性薬剤から選択される、薬物組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片又は請求項13に記載の免疫コンジュゲート、及び一つ又は複数の他の治療剤、例えば、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、他の抗体、好ましくは抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を含む、組み合わせ製品。
【請求項17】
被験体において腫瘍又は感染性疾患を予防又は治療する薬物を製造するための、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片又は請求項13に記載の免疫コンジュゲートの用途。
【請求項18】
前記腫瘍は、癌、例えば、リンパ腫(例えば、びまん性大B細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、乳癌(例えば、転移性乳癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌(HCC))、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、ステージIV又は再発性非小細胞肺癌、NSCLC腺癌、又はNSCLC扁平上皮癌)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病)、皮膚癌(例えば、黒色腫(例えば、ステージIII又はステージIV黒色腫)又はMerkel細胞癌)、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))、脊髄異形成症候群、膀胱癌(例えば、移行上皮癌)、膵臓癌、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、例えば、明細胞腎細胞癌、例えば、進行性又は転移性明細胞腎細胞癌)及び結腸癌(例えば、結腸腺癌)であり、特に、前記腫瘍は、リンパ腫、腎細胞癌、非小細胞肺癌、肝臓癌、膵臓癌、結腸腺癌、乳癌であり、又は前記感染性疾患は、例えば、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染又は原生動物感染であり、好ましくは、前記感染性疾患は慢性感染である、請求項17に記載の用途。
【請求項19】
試料におけるCD40を検出するキットであって、前記キットは、
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片を含み、
(a)試料を
請求項1に記載の抗CD40抗体又は抗原結合断片と接触させるステップ、及び
(b)前記抗CD40抗体又は抗原結合断片とCD40との間の複合体の形成を検出するステップを実施するためのものであり、任意選択的に、前記抗CD40抗体又は抗原結合断片は、検出可能に標識される、キット。
【国際調査報告】