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特表2024-519613テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム、および試料を分析するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-20
(54)【発明の名称】テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム、および試料を分析するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240513BHJP
   H01J 49/10 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G01N27/62 F
H01J49/10
G01N27/62 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568233
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022027460
(87)【国際公開番号】W WO2022235659
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/183,240
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/183,281
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501351357
【氏名又は名称】レステック・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス,シェーン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ター,ブランドン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】リニンガー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ピータース,トレイシー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ミキリッシュ,ライアン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,ディエゴ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ナイマン,ハイディ
(72)【発明者】
【氏名】ケーン,トーマス・イー
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス-リオス,ジャーマン・エイ
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041AA07
2G041CA01
2G041DA05
2G041EA03
2G041EA11
2G041GA19
(57)【要約】
テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置が開示され、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置、デバイス操作装置を水平に、垂直に、および垂直配向と水平配向との間で作動させるように構成される第1、第2、および第3のアクチュエータを含む。デバイス操作装置は、シャフト、テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントに取り外し可能に係合するように構成される据え付け部分、受け用マウントを切り離すように構成される取り出し装置、および、テイラーコーンエミッターデバイスを所定のラジアル配向に誘導し、テイラーコーンエミッターデバイスを所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェースを含む。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、テイラーコーンエミッターデバイスを垂直配向で設置し、テイラーコーンエミッターデバイスを水平配向に回転させ、テイラーコーンエミッターデバイスを分析機器に提示するように構成される。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置を使用して試料を分析するための取り扱いシステムおよび方法が開示される。
【選択図】図6(d)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置であって、
作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置であって、
シャフト、
前記シャフトの端部に配置された据え付け部分であって、テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントに取り外し可能に係合するように構成される、据え付け部分、
前記テイラーコーンエミッターデバイスの前記受け用マウントを切り離すように構成される取り出し装置、および、
前記テイラーコーンエミッターデバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェース
を含む、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置と、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を水平作動させるように構成される第1のアクチュエータと、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直作動させるように構成される第2のアクチュエータと、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直配向と水平配向との間で回転作動させるように構成される第3のアクチュエータとを備え、
テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記垂直配向で設置し、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記水平配向に回転させ、前記テイラーコーンエミッターデバイスを分析機器に提示するように構成される、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置。
【請求項2】
前記据え付け部分は、前記受け用マウントとしてピペット先端部受け用マウントに取り外し可能に係合するように構成されるピペッター先端部据え付け部分である、請求項1に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置。
【請求項3】
前記テイラーコーンエミッターデバイスは、被覆ブレードスプレーデバイスである、請求項1に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置。
【請求項4】
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を前記シャフトに沿う軸の周りに回転作動させるように構成される第4のアクチュエータをさらに含む、請求項1に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置。
【請求項5】
前記テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記分析機器に位置合わせするため、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置の前記シャフトに沿う前記軸の周りに回転させるように構成される、請求項4に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置。
【請求項6】
前記第1のアクチュエータに直交して前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を水平作動させるように構成される第5のアクチュエータをさらに含む、請求項1に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置。
【請求項7】
前記第5のアクチュエータおよび前記第1のアクチュエータは、マイクロタイターアレイトレイの所定のウェルにある前記テイラーコーンエミッターデバイスを選択的に係合させるまたは切り離すために協働するように構成される、請求項6に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置。
【請求項8】
テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステムであって、
試料入口を有する分析機器と、
前記分析機器の前記試料入口が試料装填アンティチャンバによって覆われるように前記分析機器に設置された試料装填アンティチャンバであって、試料装填アンティチャンバは、
試料装填アンティチャンバを不活性雰囲気で充填するように構成されるガスパージ、
テイラーコーンエミッターデバイスを受け取るように構成される試料アパーチャ、および、
前記試料装填アンティチャンバの内部に配置され、前記テイラーコーンエミッターデバイスが前記分析機器の前記試料入口に対して所定の位置および配向にあるときに、前記テイラーコーンエミッターデバイスに接触するように構成される高圧電力電極を含む、試料装填アンティチャンバと、
テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置であって、
作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置であって、
シャフト、
前記シャフトの端部に配置された据え付け部分であって、前記テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントに取り外し可能に係合するように構成される、据え付け部分、
前記テイラーコーンエミッターデバイスの前記受け用マウントを切り離すように構成される取り出し装置、および、
前記テイラーコーンエミッターデバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェース
を含む、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置と、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を水平作動させるように構成される第1のアクチュエータと、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直作動させるように構成される第2のアクチュエータと、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直配向と水平配向との間で回転作動させるように構成される第3のアクチュエータとを備える、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置とを備え、
前記テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、
前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記垂直配向で設置し、
前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記水平配向に回転させ、
前記テイラーコーンエミッターデバイスを、前記試料アパーチャを通して前記試料装填アンティチャンバに挿入し、
前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記分析機器の前記試料入口に提示する
ように構成される、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項9】
前記据え付け部分は、前記受け用マウントとしてピペット先端部受け用マウントに取り外し可能に係合するように構成されるピペッター先端部据え付け部分である、請求項8に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項10】
前記テイラーコーンエミッターデバイスは、被覆ブレードスプレーデバイスである、請求項8に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項11】
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を前記シャフトに沿う軸の周りに回転作動させるように構成される第4のアクチュエータをさらに含む、請求項8に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項12】
前記テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記分析機器に位置合わせするため、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置の前記シャフトに沿う前記軸の周りに回転させるように構成される、請求項11に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項13】
前記第1のアクチュエータに直交して前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を水平作動させるように構成される第5のアクチュエータをさらに含む、請求項8に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項14】
前記第5のアクチュエータおよび前記第1のアクチュエータは、マイクロタイターアレイトレイの所定のウェルにある前記テイラーコーンエミッターデバイスを選択的に係合させるまたは切り離すために協働するように構成される、請求項13に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項15】
前記試料装填アンティチャンバの外部に配置され、前記テイラーコーンエミッターデバイスが前記水平配向にある間に、前記テイラーコーンエミッターデバイスに第1の溶離溶媒を適用するように構成される第1の溶離溶媒計量分配器をさらに含む、請求項8に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項16】
前記試料装填アンティチャンバの外部に配置され、前記テイラーコーンエミッターデバイスが前記水平配向にある間に、前記テイラーコーンエミッターデバイスに第2の溶離溶媒を適用するように構成される第2の溶離溶媒計量分配器をさらに含む、請求項15に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項17】
前記分析機器は質量分析計であり、前記試料入口は質量分析計入口である、請求項8に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項18】
前記試料装填アンティチャンバは、前記分析機器の前記試料入口に溶媒エーロゾルを適用するように構成される溶媒エーロゾル計量分配器をさらに含む、請求項8に記載のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム。
【請求項19】
試料を分析するための方法であって、
テイラーコーンエミッターデバイスをテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置に対して垂直配向で設置することであって、前記テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、
作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置であって、
シャフト、
前記シャフトの端部に配置された据え付け部分であって、前記テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントに取り外し可能に係合するように構成される、据え付け部分、
前記テイラーコーンエミッターデバイスの前記受け用マウントを切り離すように構成される取り出し装置、および、
前記テイラーコーンエミッターデバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェース
を含む、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置と、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を水平作動させるように構成される第1のアクチュエータと、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直作動させるように構成される第2のアクチュエータと、
前記作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直配向と水平配向との間で回転作動させるように構成される第3のアクチュエータとを含む、設置することと、
前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記水平配向に回転させることと、
前記テイラーコーンエミッターデバイスを、試料装填アンティチャンバの試料アパーチャを通して前記試料装填アンティチャンバに挿入することであって、前記試料装填アンティチャンバは、分析機器の試料入口が前記試料装填アンティチャンバによって覆われるように前記分析機器に設置され、前記試料装填アンティチャンバは、
前記試料装填アンティチャンバを不活性雰囲気で充填するように構成されるガスパージ、
前記テイラーコーンエミッターデバイスを受け取るように構成される前記試料アパーチャ、および、
前記試料装填アンティチャンバの内部に配置され、前記テイラーコーンエミッターデバイスが前記分析機器の前記試料入口に対して所定の位置および配向にあるときに、前記テイラーコーンエミッターデバイスに接触するように構成される高圧電力電極を含む、挿入することと、
前記テイラーコーンエミッターデバイスを前記分析機器の前記試料入口に対して前記所定の位置および配向で、前記分析機器の前記試料入口に提示することと、
前記テイラーコーンエミッターデバイスと接触状態にある前記高圧電力電極に通電することと、
前記テイラーコーンエミッターデバイスから生成されるイオンを前記分析機器の前記試料入口を通して収集することと、
前記収集されたイオンを前記分析機器を用いて分析することと、
前記試料装填アンティチャンバから前記テイラーコーンエミッターデバイスを取り外すことと
を含む、方法。
【請求項20】
前記試料装填アンティチャンバは、溶媒エーロゾル計量分配器をさらに含み、方法は、前記溶媒エーロゾル計量分配器を通して前記分析機器の前記試料入口に溶媒エーロゾルを適用することによって前記試料入口を清掃することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、「A Container-Multiwell Plate Assembly for Housing Solid Phase Microextraction Devices」という名称の2021年5月3日に出願された米国仮特許出願第63/183,240号および「Apparatus and Method for Analyzing a Sample」という名称の2021年5月3日に出願された米国仮特許出願第63/183,281号に対する利益および優先権を主張し、これらの出願が、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
[0002]本出願は、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム、およびテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置を用いて試料を分析するための方法を対象とする。特に、本出願は、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム、およびテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置を用いて試料を分析するための方法を対象とし、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、テイラーコーンエミッターデバイスを垂直配向と水平配向との間で移行させる。
【背景技術】
【0003】
[0003]テイラーコーンエミッターデバイス
【0004】
[0004]テイラーコーンエミッターデバイスは、液体の存在下でかつ電界の影響下でテイラーコーンを形成することが可能なデバイスである。テイラーコーンは、対象の化学被分析物質種を含有することができる。テイラーコーンエミッターデバイスは、とりわけ、被覆エレクトロスプレーニードル、被覆ブレードスプレーデバイス(以下で説明する)、吸着剤被覆電極、SPME先端部、および多孔質成形プローブを含む。
【0005】
[0005]「表面電荷(electrical surface charge)」は、電圧がエミッターまたは導体に印可されるときに表面上に生成される電荷である。表面電荷は、最も高い曲率を有する領域に集中する。したがって、鋭利な縁部または尖った先端部は、局所電荷密度を上げるために使用され得る。表面(金属、高分子、または他のものであってもよい)上の電界は、表面電荷から生じかつ表面に垂直であり、その強度は、表面電荷密度に比例する。電界勾配は、電界が降下するレートであり、電界勾配は、そのような縁部およびラインおよびポイントで最も強い。高電界勾配の領域は、適用される溶媒からテイラーコーンを生成する可能性が最も高い。
【0006】
[0006]好ましくは、テイラーコーンは、エミッターの特定の領域、特に、エミッターから解放されるコーンが、質量分析計または他のイオン化粒子分析器内へのコーンから生成されるイオン化粒子の収集を容易にするために配置される場所に局在化される。
【0007】
[0007]テイラーコーンエミッターは、テイラーコーンを形成するために高電界勾配の領域を生成することが可能な形状を備える。
【0008】
[0008]テイラーコーンを局在化させるために、エミッターデバイス形状は、鋭利なポイントまたは縁部等の小さい曲率半径を有する領域を含んでもよいが、必ずしもそれを有しない。局在化電界は、ロッドまたはコーンの場合と同様に、薄い断面、小さい直径、または高アスペクト比を有する凸部によっても達成される。
【0009】
[0009]テイラーコーンエミッターは、層または被覆物の形態で単一材料(基体)または2つ以上の材料から生産されてもよく、最も上の表面の少なくとも一部分は、被分析物質化合物を収集し解放するのに役立つ。
【0010】
[0010]適切な被分析物質収集材料は、大型試料から化学被分析物質を収集してもよい。収集機構は、吸着、分解、吸収、または特定の結合(例えば、抗原抗体結合、金属有機構造体等の孔形状およびサイズ選択)であってもよい。
【0011】
[0011]エミッターの固有の最も上の表面は、被分析物質収集材料として役立つことができる、または、被分析物質収集材料は、最も上の表面に適用され得る。知られている適用される材料は、粒子および不規則なまたはコンフォーマルな連続被覆物によって形成された吸着床を含む。被分析物質収集材料は、多孔質または非多孔質であってもよい。収集材料は、浸透性または非浸透性であってもよい。通常、収集材料は、テイラーコーンを生産するために採用される試料および溶媒に化学的に適合する。
【0012】
[0012]被覆ブレードデバイス
【0013】
[0013]被覆ブレードスプレー(「CBS:Coated Blade Spray」)は、試料からの対象の被分析物質の収集、および、基体スプレー事象(すなわち、エレクトロスプレーイオン化)を介しての質量分析システムへのその後の直接的なインターフェースを促進する、文献(Pawliszyn等、米国特許第9,733,234号)で過去に記載された固相微量抽出(「SPME:solid phase microextraction」)ベース分析技術である。固相微量抽出デバイスは、試料を保持するのに適する基体を有することを、通常、特徴とするテイラーコーンエミッターデバイスの形態である。CBSデバイスは、通常、鋭利なポイントまたは縁部等の小さい曲率半径を有する領域を有する。
【0014】
[0014]「被覆ブレードスプレー(Coated blade spray)」、「CBSブレード(CBS blade)」、および「ブレードデバイス(blade device)」は、本明細書において、同意語として使用される。CBSブレードは、磁気CBSブレードを含むことができるが、それに限定されない。
【0015】
[0015]CBSベース化学分析には2つの基本的なステージ:(1)被分析物質の収集、および、その後の、(2)機器分析、が存在する。被分析物質の収集は、ブレードデバイスの吸着剤被覆端部を試料に直接に浸漬することによって実施される。液体試料の場合、抽出ステップは、一般に、バイアルまたはウェルプレートに収容される試料を用いて実施される。
【0016】
[0016]被分析物質の収集後、ブレードデバイスは、試料から取り出され、一連の洗浄ステップ後、ブレードデバイスは、分析のための質量分析計(「MS(:mass spectrometer)」)の入口に提示される。この方式では、ブレードデバイスは数回の移送ステップを受ける。したがって、手動のおよびロボットによる自動の両方の取り扱い環境のために、これらのステップの各ステップについてのブレードデバイスの信頼性のある配置が重要である。
【0017】
[0017]ダイレクト・ツー・MS(direct-to-MS)化学分析デバイスとして、ブレードデバイスは、収集した被分析物質を解放し、エレクトロスプレーイオン化プロセス(テイラーコーンの形成)を促進するために、抽出物質の事前湿潤化を必要とする。その後、基体の非被覆エリアとMSシステムの入口との間に電位差が適用され、CBSデバイスの先端部において電子スプレーを発生させる。信頼性のあるラン・ツー・ラン(run-to-run)精度を保証するためにブレードとMSシステムとの間の電界が再現可能に形成されなければならない。したがって、ブレードデバイスのラジアル(または、回転)配向を含む、MS入口に対するブレードデバイスの適切な配置が非常に重要である。
【0018】
[0018]一般に、ブレードデバイスのブレード部分は、2つの側部(side)、上側側部および下側側部を有する。幾つかの場合、異なる吸着剤被覆物は、ブレードの平坦な側部の各平坦な側部に存在してもよく、したがって、2回の試料分析は順番に:最初に、上側側部の分析、それに続いて、下側側部の第2の分析、が実施され得る。他の例では、同じ吸着剤被覆物がブレードの平坦な側部の各平坦な側部に存在してもよく、したがって、2回の試料分析は、順番にしかし異なる機器内で:最初に、機器Aにおいて上側側部の分析、それに続いて、機器Bにおいて下側側部の第2の分析、が実施され得る。いずれの場合も、ブレードのラジアル配向がやはり重要である。
【0019】
[0019]上記開示は、質量分析計への入口部分に対して個別のブレードデバイスを適切に配置するために個別のブレードデバイスを手動で取り扱うことを説明する。他の例は、大型ホルダでのブレードデバイスの1次元アレイおよび2次元アレイを説明する。これらの実施形態は、2つ以上のブレードデバイスを収容することが可能な剛体支持体を含む。この配置構成の例は米国特許第7,259,019号を含む。これらの例は、一般に、標準的な実験室試料採取プラスチック製品、最も一般的に、8×12のウェルの配置構成を有するマイクロタイターアレイトレイに位置合わせされ、ウェルは約9mmの中心部分を有する。標準的な試料トレイの設置面積を維持するために、互いにより近くに配置された小型の試料ウェルを有する高密度トレイも市販されている。
【0020】
[0020]MSデバイスへの入口が単一であるため、試料分析ステージは、これらのアレイベースデザインを使用するとき、依然として逐次処理プロセスである。大型のアレイ内の選択したブレードデバイスは、エレクトロスプレーイオン化のために配置される。このデザインは、ブレードデバイスのアレイ全体をMSにほぼ近接して配置することにもなるという欠点を有し、それは、エレクトロスプレーイオン化プロセス中に隣接するブレードデバイス間の電気的および/または化学的クロストークのかなりのリスクを生じる。これは、次に、生体液の臨床的および法医学的スクリーニング等の管理の連鎖(chain-of-custody)試料分析アプリケーションを特に害する。
【0021】
[0021]参照により本明細書に組み込まれ、米国内で国内段階に入り、米国特許出願第2021/0055192号として公開されたPCT出願PCT/US2020/047201は、CBSデバイスを開示することによって現状技術を進歩させ、そのPCT出願において、密接配置アレイ配置構成が標準的なマイクロタイターアレイトレイを使用して試料抽出プロセス中に維持され、個別のブレードデバイスは、試料採取・ツー・分析プロセス全体の間にブレードのラジアル配置を維持しながら、質量分析計のイオン化領域に導入される。
【0022】
[0022]マイクロピペッターデバイスの説明
【0023】
[0023]正確な体積の液体を輸送するための実験室での一般的なツールはマイクロピペッターである。この配置構成の例は、米国特許第4,284,604号、米国特許第5,650,124号、および米国特許第7,421,913号を含む。マイクロピペッターは、所定の液体体積をデバイスに引き入れ、その後、液体を計量分配するために、種々の機構を採用する。標準的なピペッターについての精密体積容量は0.1μL~10mLに及ぶ。試料汚染のリスクを低減するために、使い捨てピペット先端部が採用される。マイクロピペット先端部は、ピペッターを先端部に押し込むことによってピペッターに設置され、摩擦は、先端部を所定の場所に維持する。液体が計量分配された後、先端部は、ピペッターの端部から取り出され、プロセス全体が繰り返される。
【0024】
[0024]多くの液体移送ステップが高並列プロセスのために実施される場合、2つ以上の液体計量分配チャンネルを採用するマイクロピペッターデバイスが利用可能である。この配置構成の例は、米国特許第5,021,217号を含む。これらのデバイスは、使い捨て先端部の摩擦嵌合取り付け機構を依然として採用する。
【0025】
[0025]明確にするために、用語「ピペット(pipette)」、「ピペッター(pipettor)」、「マイクロピペッター(micropipettor)」、および「マルチチャンネルピペッター(multichannel pipettor)」は、本明細書では同意語として使用される。用語「ピペット先端部(pipette tip)」および「マイクロピペット先端部(micropipette tip)」も同意語として使用される。
【0026】
[0026]同等の液体体積が、各先端部について引き出され、送出される。ピペッターアレイ内の先端部位置は、インストレーションを容易にするために、保管ラック内の先端部位置に位置合わせされる。
【0027】
[0027]マルチチャンネルピペットデバイスは、1次元アレイおよび2次元アレイの保管ラック内でピペット先端部と共に使用されるため、一列の使い捨て先端部はマイクロピペッターに並列に設置され得る。
【0028】
[0028]マイクロピペッター技術はロボットシステムにも適合されており、そのシステムでは、液体移送シーケンス全体は、手動ユニットのために採用されるものと同じであるが、自動化されている。
【0029】
[0029]実験室におけるマイクロピペッターの存在がユビキタスであるため、手動使用およびロボットオートメーションセットアップへの統合の両方の場合、マイクロピペッター技術の物理的寸法に対してのCBSデバイスの適合性を維持することが有利である。
【0030】
[0030]マイクロピペット先端部
【0031】
[0031]マイクロピペッターを採用する多くのアプリケーションが化学汚染に敏感であるため、使い捨ての1回使用ピペット先端部が利用可能である。標準的なマイクロピペット先端部は、ドッキングした先端部にわたってデバイスを芯出し、デバイスを先端部の開口部に優しく打ち込むことによって、ピペッターデバイスに装填される。先端部は、摩擦によって設置され、使用の準備が整う。使用後、汚れたマイクロタイター先端部は、先端部取り外し装置、通常、デバイスのシャフトの周りの摺動可能シースであって、使い捨て先端部の上側リップに係合し、摩擦接続に打ち勝つために押す、摺動可能シースによって、デバイスから取り外される。試料抽出のために修正されたピペット先端部の例は米国特許第7,595,026号を含む。
【0032】
[0032]一般的なマイクロピペット先端部は円錐形であり、通常の操作のためにラジアル配向要件を持たない。
【0033】
[0033]導電性先端部は、自動化ピペット操作ロボットにおけるキャリーオーバーを防止するために使用される。導電性先端部の例は、原材料ポリプロピレンに対する黒鉛の添加であり、それは、ピペット先端部を電気伝導性にし、先端部に不透明黒色の外観を与える。ピペット先端部の一部分が導電性である代替の実施形態は、米国特許第9,346,045号に記載される。ロボットワークステーション内の先端部の相対位置は、電気容量を測定することにより識別される。先端部内の液体の充填レベルは、電流を測定することによって試料および試薬容器内で決定され得るため、先端部の浸漬深さは充填レベルに合うように調整され得る。
【0034】
[0034]標準的な試料採取取り扱いの実践において先端部交換が頻繁であるため、複数の先端部が、先端部が環境汚染から保護されるラックに保管される。上記で説明したアレイ位置標準に対応するために、使い捨て先端部の大量保管は、標準的な先端部中心・ツー・中心位置を有する(tip center-to-center position)、8×12、96個の先端部アレイ、または、96の倍数個の先端部を一般に採用する。これは、マルチチャンネルピペットデバイスへの直接の装填を可能にし、実験室内でのおよびオートメーションワークステーションプラットフォーム上での標準的なラック設置面積を維持する。
【0035】
[0035]マイクロピペット先端部を収容するためのラック容器は、標準的なピペット先端部のラジアル配向を維持する要素を含まない。
【0036】
[0036]マイクロタイターアレイトレイ
【0037】
[0037]業界標準マイクロタイターアレイトレイ(「マイクロタイタープレート(microtiter plate)」、「マイクロプレート(microplate)」、「マイクロウェルプレート(microwell plate)」、「マルチウェル(multiwell)」とも呼ばれる)は、ANSI SLAS 1-2004(R2012)、「Microplate Footprint Dimensions」、ANSI SLAS 2-2004(R2012)、「Microplate Height Dimensions」、ANSI SLAS 3-2004(R2012)、「Microplate Bottom Outside Flange Dimensions」、ANSI SLAS 4-2004(R2012)、「Microplate Well Positions」、およびANSI SLAS 6-2012、「Microplate Well Bottom Elevation」に従って形成される。マイクロタイターアレイトレイは、ウェルがオートメーションによってアクセスされる実験室機器にしばしばドッキングされるかまたはその他の方法で係合される。マイクロタイターウェルにアクセスする一般的なオートメーションプロセスは、液体計量分配を含む。多くのオートメーションシステムにおいて、複数のマイクロタイターアレイトレイがドッキングされ、互いに対するならびに近傍のマイクロタイターアレイトレイに対するウェル位置の正確な知識を必要とする。マイクロタイターアレイトレイは、トレイ長およびトレイ幅について標準化された値を有する。マイクロタイターアレイトレイは、任意選択で、トレイスカートから窪んだトレイ壁を有することができる。業界標準寸法は、127.71mm長×85.43mm幅×14.10mm高さである。マイクロタイターアレイトレイは、一般に、いろいろな体積の6(2×3)、12(3×4、24(4×6)、48(6×8)、96(8×12)、または384(16×24)のウェルならびに規格において説明される他のアレイを備える。体積は、ウェルの数、サイズ、および深さによって決定される。これらのマイクロタイタートレイのトレイ設置面積は、関連するANSI規格において指定される。
【0038】
[0038]MS分析
【0039】
[0039]近年、分析ターンアラウンドタイム(「TAT:turnaround time」)を短縮することを目標とする幾つかの新しいダイレクト・ツー・MS技術が、開発されており、分析ターンアラウンドタイムは、臨床分析の場合、分析者による試料の受け取りから分析結果の医師への送出までにかかる時間である。この新しい技術のセットの中で、クロマトグラフ的分離ステップおよび試料調製ステップの使用がないMS技術は、TAT低減において最も成功していることが証明された。しかしながら、これらの技術のほとんどは、定量化および経時的な機器の頑健性に関して制限される。時間を犠牲にして感度を改善することを目標として採用される1つのアプローチは、質量分析計との直接インターフェースに先立つ簡単な試料調製アプローチの使用である。今まで調査された試料調製方策の中で、容易に小型化され得る方策が最も効率的であった。被分析物質収集/抽出は、液相抽出材料(例えば、有機溶媒)上でまたは固相抽出材料(例えば、高分子材料)上で実施され得る。固相で材料を抽出する場合、マイクロ固相抽出(「μSPE:micro-solid phase extraction」)、分散固相抽出(「dSPE:disperse solid phase extraction」)、磁気固相抽出(「mSPE:magnetic solid phase extraction」)、オープンベッドSPE(「oSPE:open bed SPE」)、固相微量抽出(「SPME:solid phase microextraction」)、および磁気固相微量抽出(「mSPME:magnetic SPME」)は、最も一般的に使用される戦略である。oSPE法とSPME法との間にまたは磁気mSPME法とmSPE法との間に明確な技術的差が常に存在するわけではない。したがって、本明細書で、SPME、μSPE、mSPME、およびmSPEは同意語として使用される。
【0040】
[0040]質量分析機器と直接インターフェースされるSPMEは、既存のダイレクト・ツー・MS技術、または、クロマトグラフ的分離によるMSに直接ハイフン付けされるSPME法の性能を改善する手段として急増した。クロマトグラフ的方法に基づく方法と比較すると、ダイレクト・ツー・MS結合は、通常、ターンアラウンドタイム、感度、簡単さ、または試料当たりのコストの少なくとも1つを改善することに集中する。
【0041】
[0041]SPME-MS開発は、被分析物質イオン化機構(例えば、エレクトロスプレーイオン化(「ESI:electrospray ionization」))、被分析物質堆積/溶離機構(すなわち、液体、熱、またはレーザーに基づく方法)、試料採取デバイスおよび/または抽出相を製造するために使用される材料、微量抽出デバイスが実装されたアプリケーションのいずれかに基づいて分類されてもよい。ESIは、MS用のイオンを生成するために液体クロマトグラフィ(「LC:liquid chromatography」)と組み合わせて伝統的に使用される技法である。従来、対象の被分析物質を担持する液体は、イオン化源(例えば、ステンレス鋼毛細管)に圧送され、そこで、エーロゾルスプレーが、ステンレス鋼毛細管と質量分析計入口との間における励起電圧電位差の印加によって形成される。ほとんどの場合、励起電圧は数千ボルトを含む。霧化ガスの助けを借りて、スプレーからの溶媒液滴は、質量分析計の入口に先立って急速な溶媒蒸発を受け、質量分析計における分析のためにイオンを気相に解放する。市販のほとんどのESI源も、脱溶媒の効率を上げるために熱を使用する。ESI-MSの感度は、帯電した液滴内の被分析物質分子から気相イオンを生産する効率(イオン化効率)および大気圧イオン源から高真空MS分析器への帯電した種の効果的な移送(イオン伝達効率)によって決定される。ナノエレクトロスプレーイオン化(nano-ESI:nano-electrospray ionization)は、質量分析法によるダイレクト分析のために液体試料を導入する最も効率的な方法として広く認識されている。その技法は、その技法が実施される方式によって、より従来的な形態のエレクトロスプレーから区別される。1~2マイクロリットルの試料が、1μmオーダーの先端部直径を有するガラスまたは石英チューブに堆積され、溶液に電圧を印加することによって先端部から噴射される。実際の流量は、普通、数nL/分~数十nL/分であり、先端部の直径、印加電圧、およびチューブ内容物に時として印加される背圧によって制御される。ナノESIは、塩および他の種からの干渉効果を低減し、高レベルの塩によって汚染された試料内で、ペプチドおよびオリゴ糖を含む、種々の被分析物質に対する良好な感度を提供する。イオン化効率は、高流量でのエレクトロスプレーと比較して、減少した液滴サイズに起因する。
【0042】
[0042]基体スプレーイオン化は、ペーパーのリーフまたはピース等の固体基体から、テイラーコーンを生成するために十分に湿潤した基体上で上記基体と質量分析計入口との間に高電位差を印加することによって、イオンが生成されるタイプのESIである。非導電性基体の場合、電位は溶媒に直接印加される。試料調製ステップが分析ワークフローに本質的でない、現在まで開発された基体ESIデバイスのほとんどは、アンビエントイオン化技術(例えば、ペーパースプレーイオン化)として分類されてきた。その名前に従って、現在まで報告されたほとんどの基体スプレーイオン化デバイスは、完全に開放した環境でESIを生成する。
【0043】
[0043]伝統的なESIと違って、テイラーコーンエミッターデバイスにおいてエレクトロスプレーイオン化のために使用される液体は、毛細管上に収容されないし、毛細管全体を通して加圧もされない。実際には、エレクトロスプレープロセス中にテイラーコーンエミッターの先端部に向かう液体の流れは、重力(適用される場合)、および、テイラーコーンエミッターの先端部と質量分析計の入口との間に電位差を印加するときに形成される電気浸透流(テイラーコーンエミッターの先端部が十分に湿潤している間)に主に依存する。結果として、液体の上記流れおよびエレクトロスプレーイオン化プロセス自身は、それを囲む環境条件の影響を受け易い。
【0044】
[0044]デカルト座標は、ポイントの位置を規定する順序付けられた数値のセットである。ポイントが平面上にある場合、2つの数値が使用される。3次元空間内のポイントの位置を規定するために、3つの座標が必要とされる。さらに、オイラー角が、固定座標系に対する上記剛体の配向を記述するために使用される。本明細書で、上記デカルト座標およびオイラー角は、それぞれ、ミリメートル(mm)および度(°)で表現される。
【0045】
[0045]エミッターベース化学分析には2つの基本的なステージ:(1)公称垂直位置上のテイラーコーンエミッターを用いた被分析物質の収集、および、(2)公称水平位置上のテイラーコーンエミッターを用いた機器分析、が存在する。これらのステップは、分離して実施される;被分析物質収集は、公称垂直位置上のテイラーコーンエミッターをウェルプレートまたはバイアル上に配置された試料内に直接浸漬させることによって実施される。公称垂直位置において、エミッターのアレイは、代替的に、複数のエミッターアレイを輸送し、試料収集ステップを並列に実施することによって、試料収集中にバッチ処理され得る。試料分析ステップは、溶離溶媒が、エミッターの少なくとも1つの平坦な側部に適用され、テイラーコーン放出中に表面上に保持されることを必要とする。この仕様は、エミッターが、溶離溶媒の保持を容易にするために、水平位置または本質的に水平な位置に配置されることを要求する。これらの2つの位置要件は、実験室標準液体取り扱いオートメーションを使用して実施されることから2つのステップを基本的に分離する。試料収集中のバッチ処理は、2つのステップをさらに遠ざける。なぜなら、MS入口が1つだけであるため、分析が、単一エミッターを用いて逐次実施されるからである。被分析物質収集ステップ後、テイラーコーンエミッターは、保管装置またはハウジング内で公称垂直位置に保管されるかまたは試料分析ステップに直接進められる。テイラーコーンエミッターは、公称水平位置上での分析のために、質量分析計のMS入口に提示される。
【0046】
[0046]生成されたイオンの効果的な伝達のために、エミッターの位置は、2つの方法:MS入口に対するエミッター先端部の位置およびエミッターの平坦な側部の公称水平位置、で制御される。エミッターの平坦な側部の公称水平位置は、分析中の溶離溶媒の収集および保持を保証し、MS入口に対するエミッター先端部の位置は、エミッターとMS入口との間の相対的な電位差によって生じる電界要件に対処し、MSによる効果的な収集のためにテイラーコーンによって生成されるイオンを方向付ける。両方の位置は、標準的なx-y-z座標によって示され得る;しかしながら、エミッターの平坦な側部の平坦な性質によって、さらなる回転位置が予想され、上記回転は、上記x-y-z座標に対応する所与のオイラー角φ、ψ、およびθによって規定される。そのような配置は、市販の多くのMSモデルのデザイン変動性を考慮すると、エミッターによって生成されると共にMSによって収集されるイオン信号の最適化を可能にする。テイラーコーンエミッターデバイスとMSシステムとの間の電界は、信頼性のあるラン・ツー・ラン(run-to-run)精度(すなわち、再現可能な機器信号)を保証するために再現可能に形成されなければならない。したがって、テイラーコーンエミッターのラジアル(または、回転)配向を含む、MS入口開口部に対するテイラーコーンエミッターの適切な配置が非常に重要である。
【0047】
[0047]異なるタイプの運動ハードウェアは、試料調製ワークフロー全体を行うために、または、調製デバイスをクロマトグラフ的分析機器にインターフェースするために説明された。液体取り扱い装置は、少量の液体をピペット先端部によって1つの場所から別の場所に移送することに集中する運動ハードウェアを採用する。一般に、市販の液体取り扱い装置は、SPMEファイバーのセット等の小型デバイスを1つの場所から別の場所に移送するために適合された。これらの場合、小型デバイスの位置は、液体取り扱いシステムに固有の公称垂直位置を維持する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0048】
[0048]1つの例示的な実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置と、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を水平作動させるように構成される第1のアクチュエータと、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直作動させるように構成される第2のアクチュエータと、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直配向と水平配向との間で回転作動させるように構成される第3のアクチュエータとを含む。作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置は、シャフトと、シャフトの端部に配置された据え付け部分であって、テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントに取り外し可能に係合するように構成される、据え付け部分と、テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントを切り離すように構成される取り出し装置と、テイラーコーンエミッターデバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、テイラーコーンエミッターデバイスを所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェースとを含む。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、テイラーコーンエミッターデバイスを垂直配向で設置し、テイラーコーンエミッターデバイスを水平配向に回転させ、テイラーコーンエミッターデバイスを分析機器に提示するように構成される。
【0049】
[0049]別の例示的な実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステムは、試料入口を有する分析機器と、分析機器の試料入口が試料装填アンティチャンバによって覆われるように分析機器に設置される試料装填アンティチャンバと、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置とを含む。試料装填アンティチャンバは、試料装填アンティチャンバを不活性雰囲気で充填するように構成されるガスパージと、テイラーコーンエミッターデバイスを受け取るように構成される試料アパーチャと、試料装填アンティチャンバ内に配置され、テイラーコーンエミッターデバイスが分析機器の試料入口に対して所定の位置および配向にあるときに、テイラーコーンエミッターデバイスに接触するように構成される高圧電力電極とを含む。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置と、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を水平作動させるように構成される第1のアクチュエータと、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直作動させるように構成される第2のアクチュエータと、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直配向と水平配向との間で回転作動させるように構成される第3のアクチュエータとを含む。作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置は、シャフトと、シャフトの端部に配置された据え付け部分であって、テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントに取り外し可能に係合するように構成される、据え付け部分と、テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントを切り離すように構成される取り出し装置と、テイラーコーンエミッターデバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、テイラーコーンエミッターデバイスを所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェースとを含む。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、テイラーコーンエミッターデバイスを垂直配向で設置し、テイラーコーンエミッターデバイスを水平配向に回転させ、テイラーコーンエミッターデバイスを、試料アパーチャを通して試料装填アンティチャンバに挿入し、テイラーコーンエミッターデバイスを分析機器の試料入口に提示するように構成される。
【0050】
[0050]別の例示的な実施形態において、試料を分析するための方法は、テイラーコーンエミッターデバイスをテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置に対して垂直配向で設置することを含む。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置は、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置と、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を水平作動させるように構成される第1のアクチュエータと、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直作動させるように構成される第2のアクチュエータと、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置を垂直配向と水平配向との間で回転作動させるように構成される第3のアクチュエータとを含む。作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置は、シャフトと、シャフトの端部に配置された据え付け部分と、テイラーコーンエミッターデバイスの受け用マウントを切り離すように構成される取り出し装置と、テイラーコーンエミッターデバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、テイラーコーンエミッターデバイスを所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェースとを含む。方法は、テイラーコーンエミッターデバイスを水平配向に回転させること、テイラーコーンエミッターデバイスを、試料装填アンティチャンバに試料装填アンティチャンバの試料アパーチャを通して挿入することをさらに含み、試料装填アンティチャンバは、分析機器の試料入口が試料装填アンティチャンバによって覆われるように分析機器に設置される。試料装填アンティチャンバは、試料装填アンティチャンバを不活性雰囲気で充填するように構成されるガスパージを含む。試料アパーチャはテイラーコーンエミッターデバイスを受け取るように構成される。試料装填アンティチャンバは、試料装填アンティチャンバ内に配置され、テイラーコーンエミッターデバイスが分析機器の試料入口に対して所定の位置および配向にあるときに、テイラーコーンエミッターデバイスに接触するように構成される高圧電力電極をさらに含む。方法は、テイラーコーンエミッターデバイスを分析機器の試料入口に対して所定の位置および配向で、分析機器の試料入口に提示すること、テイラーコーンエミッターデバイスと接触状態にある高圧電力電極に通電すること、テイラーコーンエミッターデバイスから生成されるイオンを分析機器の試料入口を通して収集すること、分析機器を用いて収集されたイオンを分析すること、および試料装填アンティチャンバからテイラーコーンエミッターデバイスを取り外すことをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】[0051]本開示の実施形態による、質量分析計の入口に対して配置されたテイラーコーンエミッターデバイスを示す。
図2】[0052]市販のマイクロピペッターおよび使い捨てピペット先端部の関連機械的要素を示す図である。
図3(a)】[0053]図3(a)は、本開示の実施形態による、保管容器に収容された状態の、ラジアル配向の制御のためのフィン要素を有するテイラーコーンエミッターデバイスの側面図である。
図3(b)】図3(b)は、本開示の実施形態による、保管容器に収容された状態の、ラジアル配向の制御のためのフィン要素を有するテイラーコーンエミッターデバイスの正面図である。
図3(c)】図3(c)は、本開示の実施形態による、保管容器に収容された状態の、ラジアル配向の制御のためのフィン要素を有するテイラーコーンエミッターデバイスの斜視図である。
図4(a)】[0054]図4(a)は、フィン要素を有するテイラーコーンエミッターデバイスのラジアル配向の制御を促進するための機械的要素の3つの実施例を有するテイラーコーンエミッターデバイス保管装置の上面図である。
図4(b)】図4(b)は、フィン要素を有するテイラーコーンエミッターデバイスのラジアル配向の制御を促進するための機械的要素の3つの実施例を備えるテイラーコーンエミッターデバイス保管装置の側面図である。
図5】[0055]フィン要素を有する3つの例示的な適切にドッキングされたテイラーコーンエミッターデバイスを有するテイラーコーンエミッターデバイス保管装置の実施例を示す図である。
図6(a)】[0056]本開示の実施形態による、テイラーコーンエミッターデバイスを装填する前のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置を示す図である。
図6(b)】本開示の実施形態による、テイラーコーンエミッターデバイスを装填した後のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置を示す図である。
図6(c)】本開示の実施形態による、テイラーコーンエミッターデバイスの配向を垂直から水平に変更した後のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置を示す図である。
図6(d)】本開示の実施形態による、テイラーコーンエミッターデバイスを試料入口に近づけた後のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置を示す図である。
図7(a)】[0057]本開示の実施形態による、テイラーコーンエミッターデバイスの配向を垂直から水平に変更した後のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステムを示す図である。
図7(b)】本開示の実施形態による、テイラーコーンエミッターデバイスを試料装填アンティチャンバに挿入した後のテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステムを示す図である。
図8】[0058]本開示の実施形態による、少なくとも1つの試料を分析するための方法を示す図である。
図9】[0059]本開示の実施形態による、実験1からの実験結果を示す図である。
図10】[0060]本開示の実施形態による、実験2からの実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[0061]可能な限り、同じ参照符号は図面全体を通して同じ部分を表すために使用される。
【0053】
[0062]本明細書で説明する構造部の少なくとも1つを欠くデバイス、システム、および方法と比較すると、本実施形態のデバイス、システム、および方法は、試料処理および分析時間を減少させ、試験スループットを増加させ、分析誤差を減少させ、スクリーニング効率を増加させ、空間効率を増加させ、MS入口に対するテイラーコーンエミッターの配置の精度および再現性を増加させ、テイラーコーンエミッターの少なくとも1つの場所上への溶離/イオン化溶媒の送出の精度および再現性を増加させ、励起電圧の精度および再現性を増加させ、テイラーコーンエミッターに印加される電位差のタイミングの精度および再現性を増加させ、分析ワークフロー全体を通した注入の間のMS入口の効率的な清掃およびテイラーコーンエミッターを囲む一貫性のある環境を増加させ、またはその組み合わせを行う。
【0054】
[0063]本明細書で使用されるように、「約(about)」は、別段に逆に指示されない限り、「約」によって修飾される値の±20%の分散を示す。
【0055】
[0064]本明細書で使用されるように、「水平(horizontal)」は、完全水平から±15°を含む範囲を示す。
【0056】
[0065]本明細書で使用されるように、「垂直(vertical)」は、完全垂直から±15°を含む範囲を示す。
【0057】
[0066]本明細書で使用されるように、「テイラーコーンエミッター(Taylor cone emitter)」は、限定はしないが、固相微量抽出デバイスまたはCBSデバイスを含む、テイラーコーンを形成することが可能な物品を含むが、それに限定されない。テイラーコーンエミッターデバイスは、鋭利な縁部または尖った先端部を有することができるが、それを有する必要はない。固相微量抽出デバイスは、テイラーコーンエミッターデバイスの形態であるが、全てのテイラーコーンエミッターデバイスが固相微量抽出デバイスであるわけではない。
【0058】
[0067]「対象の被分析物質(analyte of interest)」は、テイラーコーンエミッターデバイス上で収集されるかまたはそれによって抽出される任意の被分析物質として理解されるべきである。幾つかの例において、対象の被分析物質は、標的にされない(すなわち、質量分析計分析器内で選択/検出ステップ中に明示的にモニターされない)。「対象の被分析物質」、「ターゲット被分析物質(target analyte)」、(「(TA:target analyte)」)、および「対象の化合物(compound of interest)」は、同意語であると理解されるべきである。幾つかの実施形態において、対象の化合物は、「対象の化学物質(chemical of interest)」または「対象の分子(molecule of interest)」または「分子タグ(molecular tag)」であってもよい。
【0059】
[0068]表現「被分析物質収集(analyte collection)」、「被分析物質抽出(analyte extraction)」、「被分析物質富化(analyte enrichment)」、および「被分析物質装填(analyte loading)」は、同意語的用語として理解されることを意図される。
【0060】
[0069]用語「抽出材料(extractive material)」、「吸着剤(sorbent)」、「吸着剤(adsorbent)」、「吸収剤(absorbent)」、「高分子相(polymeric phase)」、「高分子吸着剤(polymer sorbent)」、「磁性粒子(magnetic particle)」、「被覆磁性粒子(coated magnetic particles)」、および「機能性磁性粒子(functionalized magnetic particles)」は、対象の被分析物質を収集するために使用される材料を指すことを意図される。
【0061】
[0070]適切な被分析物質収集材料は、大量試料から化学被分析物質を収集することができる。収集機構は、吸着、分解、吸収、特定の結合(例えば、抗原抗体結合、金属有機構造体等の孔形状およびサイズ選択)、またはその組み合わせであってもよい。
【0062】
[0071]本明細書で使用されるように、「固相微量抽出(solid phase microextraction)」は、高分子吸着剤被覆物で被覆された固体基体を含むが、それに限定されず、被覆物は、基体に物理的にまたは化学的に取り付けられる、金属粒子、シリカベース粒子、金属-高分子粒子、高分子粒子、またはその組み合わせを含むことができる。幾つかの非限定的な例では、固体基体は、基体の表面内に配置された少なくとも1つの凹部またはその上に配置された凸部を有し、上記基体は、少なくとも1つの凹部または凸部の内にまたはその上に配置された少なくとも1つの高分子吸着剤被覆物を含む。用語「固相微量抽出」は、固体基体上で磁性粒子または磁性分子を収集するための少なくとも1つの磁気構成要素を収容する少なくとも1つの凹部または凸部を有する固体基体をさらに含む。
【0063】
[0072]テイラーコーンエミッターの固有の一番上の表面は、被分析物質収集材料として役立つことができる、または、被分析物質収集材料は、一番上の表面に適用されることができる。適用される材料の例は、粒子および不規則なまたはコンフォーマルな連続被覆物によって形成された吸着床を含むことができる。被分析物質収集材料は、多孔質または非多孔質であってもよい。収集材料は、浸透性または非浸透性であってもよい。
【0064】
[0073]用語「被分析物質注入(analyte injection)」は、質量分析計入口にイオンビームを注入する行為(act)として理解されるべきである。「被分析物質注入」は、「エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization)」、「イオン放出(ion ejection)」、「イオン吐出(ion expelling)」、および「被分析物質スプレー(analyte spray)」の同意語として理解されるべきである。
【0065】
[0074]用語「質量分析計入口(mass spectrometer inlet)」、「入口(inlet)」、「スキマーコーン(skimmer cone)」、「MS注入アパーチャ(MS injection aperture)」、および「質量分析計フロントエンド(mass spectrometer front-end)」は、本明細書で同意語として使用される。
【0066】
[0075]テイラーコーンエミッターは、限定はしないが、金属、金属合金、ガラス、織物、高分子、高分子金属酸化物、またはその組み合わせを含む任意の適切な材料であってもよい。基体は、非限定的な例として、ニッケル、ニチノール、チタン、アルミニウム、真ちゅう、銅、ステンレス鋼、青銅、鉄、またはその組み合わせを含んでもよい。同様に、基体は、限定はしないが、シリコンウェハ、ガラス繊維強化高分子(「ファイバーグラス(fiberglass)」)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドフィルム、ポリカーボネート-アクリロニトリルブラジエンスチレン(「PC-ABS:polycarbonate-acrylonitrile butadiene styrene」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT:polybutylene terephthalate」)、ポリ乳酸、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート(「PC:polycarbonate」)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(「ABS:acrylonitrile butadiene styrene」)、ポリエーテルイミド(例えば、ULTEM)、ポリフェニルスルホン(「PPSF:polyphenylsulfone」)、ポリカーボネート-ISO(「PC-ISO:polycarbonate-ISO」)、またはその組み合わせ等の、付加製造、3D印刷、リソグラフィ、または回路製造のために使用される任意の材料を含んでもよい。
【0067】
[0076]フレーズ「励起電圧(excitation voltage)」は、エレクトロスプレーイオン化機構または大気圧化学イオン化機構によって、基体エレクトロスプレーエミッターから安定したイオンビームを吐出し生成するために必要な電圧として理解されるべきである。励起電圧は、複数の変数に応じて、数ボルトから数百ボルトまたはさらに数千ボルトに及ぶことができ、複数の変数は、テイラーコーンエミッター構成、質量分析計入口に対するテイラーコーンエミッターの場所、およびエレクトロスプレーが生成される環境の特性を含む。励起電圧は、0.1Vと8,000Vとの間、代替的に1,500Vと5,500Vとの間、代替的に2,000Vと4,000Vとの間に及ぶ。励起電圧は、交流供給部、直流供給部、またはその組み合わせ等の異なる供給源によって送出され得る。励起電圧供給は、一定である、パルス状である、変調される、または任意の他の電圧関数に従ってもよい。励起ステージは、一定期間の間、テイラーコーンエミッターに励起電圧を印加することを含むことができる。
【0068】
[0077]幾つかの例において、励起電圧の印加は、パルス(<1秒)と考えられるほどに十分に短い。他の例において、質量分析計において記録される信号は、複数のパルスを印加することによって得られる。特定の例において、パルスは、矩形、三角形、鋸歯状、正弦波、またはその組み合わせであってもよい。特定の例において、電圧は、低電圧から励起電圧まで漸増され得る。他の例において、電圧は、最適より高い電圧から励起電圧まで漸減され得る。さらなる例において、励起ステージは、励起電圧への漸増および漸減の複数の組み合わせを含んでもよい。励起電圧は、電子的にまたは機械的にまたは電気機械的に任意の時点で得られ得る。好ましい例において、励起電圧は、高電圧リレー等、電気機械的に得られ得る。
【0069】
[0078]溶媒送出システムは、離散的または連続的であってもよい。溶媒送出システムの例は、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、液体クロマトグラフィポンプ、微小液滴溶媒計量分配システム、音響液滴送出システム、またはその組み合わせを含むが、それに限定されない。溶離溶媒送出システムは、1回または複数回の用量の溶媒をテイラーコーンエミッターの1つまたは複数の場所に計量分配することができ、一方、上記用量は、離散的にまたは連続的に計量分配され得る。
【0070】
[0079]用語「溶媒エーロゾル噴霧器(solvent aerosol sprayer)」は、「溶媒ブラスター(solvent blaster)」、「溶媒クラウド(solvent cloud)」、「入口清掃システム(inlet cleaning system)」、「液滴噴霧器(droplet sprayer)」、「ミスト噴霧器(mist sprayer)」、および「ベンチュリ噴霧器(venturi sprayer)」の同意語として理解されるべきである。
【0071】
[0080]図1を参照すると、一実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス200は、質量分析計入口(スキマーコーン)150の前に配置される。テイラーコーンエミッターデバイス200は、少なくとも1つの平坦な表面235を有する基体230と、少なくとも1つの平坦な表面235の少なくとも一部分に配置された吸着剤層240と、基体230からテイラーコーンエミッターデバイス200の分析端部に向かって延在するテーパ状先端部245とを含む。基体230は、約4mm幅×約40mm長×約0.5mm厚を含むが、それに限定されない任意の適切な寸法を有することができる。基体230は、限定はしないがステンレス鋼等の導電性材料を含むが、それに限定されない任意の適切な材料から作られ得る。吸着剤層240は、高分子粒子(例えば、C18基を用いて修飾されたシリカ)および結合剤(例えば、ポリアクリロニトリル)を含むが、それに限定されない抽出相吸着剤を含むことができる。
【0072】
[0081]テイラーコーンエミッター先端部245の配置は、x160、y161、およびz162と名付けられた所与の座標のセットによって示され、スキマーコーン150のアパーチャ155に対する先端部245の位置に関連する。イオンは、スキマーコーン150を通過し、その後、質量分析計によって分析される。エミッター先端部245とスキマーコーンアパーチャ150との間の距離152は、テイラーコーンイオン束が通過することができる要素間の最短経路である。
【0073】
[0082]別のデカルト座標、x163、y164、およびz165は、エミッター遠位端233に対して記述され、スキマーコーン150に対する平坦な表面235の位置に関連する。平坦な表面235の位置は、テイラーコーン生成中に溶離溶媒を効率的に受け取り保持する能力に関連する傾斜またはレベルの程度に関連する。平坦な表面235が大地に対して完全に水平である場合、溶離溶媒は、吸着剤に関する毛細管効果および印加電界に関する電気浸透力によって影響を受ける。平坦な表面235が完全に水平である以外の角度にある場合、さらなる重力は、液体保持または流れを容易にするために採用され得る。テイラーコーンエミッターデバイス200の回転は、各軸上でオイラー角のセットφ166、ψ167、およびθ168によって記述される。これらのさらなる移動の程度は、平坦な表面235の平坦な性質に関連する。1つの特定の実施形態において、テイラーコーンエミッターの理想的な場所は、X座標によって、それぞれ、0mm、5mm、0mmである。同様に、エミッター受け部の場所は、X座標によって、スキマーコーン150に関して、40mm、5mm、および0mmである。X次元上での回転角度φは0°(すなわち、完全に水平)である。
【0074】
[0083]図2は、一般的な市販の手動マイクロピペッター100を示す。ピペッターは、最初に液体をピペット先端部110に引き込み、その後、液体を計量分配することが可能なプランジャ変位ベースデバイスである。プランジャ機構は示されず、ピペッターのハウジング108内でプランジャシャフト102とピペット端部109との間に存在する。標準的なマイクロピペット先端部110は、ピペット端部109にわたってデバイス100を芯出しし、デバイス100を先端部112の開口部に優しく打ち込むことによって、ピペッターデバイス100に装填される。先端部112は、ピペット端部109の円錐外側表面104に対しての摩擦によって、設置され、使用の準備が整う。操作者は、最初に、プッシュボタン101を押下し、ピペット先端部110を対象の液体に浸漬させる。ブッシュボタンを解放することは、或る体積の液体をピペット先端部の容器部分113に引き込む。液体は、再びプッシュボタン101を押下することによって移送され、液体が計量分配される。所望の回数の液体移送操作の後、ピペット先端部110は、先端部取り出し装置ボタン105を押下することによってピペッターから取り出される。この操作は、先端部取り外し装置106をピペットシャフト103の長さの下方に押し、取り外し装置シャフト107の下部表面は、ピペット先端部110をピペッター端部109の円錐外側表面104から離すように押す。この手順の全体は、その後、必要に応じて繰り返される。ピペットデバイスの手動バーションが示されるが、自動化バーションおよびロボットバージョンは、同じ関連の機械要素を含む。ピペット端部109の円錐形状および寸法、取り外し装置シャフト107の下部表面、およびピペット先端部カップ111は、当技術分野で標準化される。一実施形態において、本明細書で開示される固相微量抽出バイスは、インストールされた実験室機器に容易にインターフェースするためにこれらの標準化寸法に適合される。
【0075】
[0084]テイラーコーンエミッターデバイス200が固相微量抽出バイスである図3(a)~(c)を参照すると、テイラーコーンエミッターデバイス200の基本要素は、少なくとも1つの平坦な表面235を有する基体230と、少なくとも1つの平坦な表面235の少なくとも一部分に配置される吸着剤層240と、基体230からデバイス200の分析端部の方に延在するテーパ状先端部245と、受け取りデバイスの据え付け部分に対する取り外し可能な取り付けのために構成される受け用マウント210とを含む。基体230は、限定しないが、約4mm幅×約40mm長さ×約0.5mm厚さを含む任意の適切な寸法を有することができる。基体230は、限定しないが、ステンレス鋼等の導電性材料を含むが、それに限定しない任意の適切な材料から作られ得る。吸着剤層240は、限定しないが、高分子粒子(例えば、C18基を用いて修正されたシリカ)および結合剤(例えば、ポリアクリロニトリル)を含む抽出相吸着剤を含むことができる。
【0076】
[0085]一実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス200は、標準的なピペット先端部寸法に適合されたCBSデバイス300である。ブレード部分220は、ピペッター端部109上の据え付け部分104に取り付けられるように構成される受け用マウント210としてのカップを装備する。受け用マウント210は、基体230に固定され、吸着剤層240およびテーパ状先端部245からの対向端部に配置される。受け用マウント210の内側表面は、標準的な市販のピペット先端部カップと整合性がある、摩擦嵌合機構を採用するように成形される。受け用マウント210は、限定しないが、ポリプロピレン等の、標準的なピペット先端部と整合性がある電気絶縁高分子、または、限定しないが、炭素含浸ポリプロピレン等の、電気伝導性高分子から作られ得る。
【0077】
[0086]一実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス200は、受け取りデバイス100に対する平坦な表面235のラジアル配向を固定するように構成される時計構造部305を含む。「時計(clocking)」は、平坦な表面235のラジアル配向を示すためのパラダイムとしてアナログの時計文字盤の周りでの針の通過を暗示することを意図される。一実施形態において、時計構造部305は、受け取りデバイスの相補的な凸部または相補的な凹部の少なくとも一方に対応する凹部または凸部のうちの少なくとも一方を含み、それにより、テイラーコーンエミッターデバイス200が受け取りデバイスに設置されるときに、時計構造部305は、受け取りデバイスに対するテイラーコーンエミッターデバイス200のラジアル配向を所定の数のラジアル位置までに制限する。所定の数のラジアル位置は、単一ラジアル位置、2つのラジアル位置からなってもよい、または、任意の適切な大きい数のラジアル位置を含んでもよい。テイラーコーンエミッターデバイス200は、受け用マウント210上での少なくとも1つの平坦な表面235のラジアル配向の視覚的目印を含むことができる。このような視覚的目印は、平坦な表面235自体が見ることができないときに少なくとも1つの平坦な表面235のラジアル配向を示すのに役立つことができる。
【0078】
[0087]一実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス200はピペッター適合CBSデバイス300であり、受け用マウント210はピペット先端部受け用マウント210であり、据え付け部分104はピペット先端部受け用マウント210に取り外し可能に係合するように構成されるピペッター先端部据え付け部分104である。本明細書で使用されるように、「取り外し可能な(removable)」は、損傷なしの取り外しのための構成を示す。受け取りデバイスは、ピペッターまたはテイラーコーンエミッターデバイス操作装置を含むが、それに限定されない任意の適切なデバイスであってもよい。
【0079】
[0088]一実施形態において、受け用マウント210は、時計構造部305として機能する、受け用マウント210から等距離に延在する2つのフィン凸部310を有する。この構成における2つのフィン凸部310の存在は、ブレードのラジアル位置状態320を2つの離れた等価な位置(すなわち、0°および180°)に帰着させる。ここで示される2つのフィンのデザインは、例証のためのものである;より多くのまたはより少ないフィンを採用する他の構成が採用され得る、または、据え付け部分に係合されるときにテイラーコーンエミッターデバイス200のラジアル回転が制限される受け用マウント210上の他の構造部が考えられ得る。フィン凸部310がラジアル位置を制御するために、フィン凸部310は、鍵と鍵穴の配置構成(lock-and-key arrangement)で受け取りデバイスに係合する。
【0080】
[0089]図4(a)、4(b)、および図5は、ドッキングされている間にテイラーコーンエミッターデバイス200を配向させる従来のテイラーコーンエミッターデバイス保管装置400を示す。テイラーコーンエミッターデバイス保管装置400は、チャンバ401を囲み画定する保管装置壁405と、保管装置壁405に配置された複数のオリフィス420であって、複数のオリフィス420のそれぞれがテイラーコーンエミッターデバイス200の基体230および受け用マウント210を受け取り保持するように構成される、複数のオリフィス420と、保管装置壁405に配置された複数の時計構造部インターフェース406であって、複数の時計構造部インターフェース406のそれぞれがテイラーコーンエミッターデバイス200の時計構造部305を所定のラジアル配向に誘導し、テイラーコーンエミッターデバイス200を所定のラジアル配向で固定するように構成される、複数の時計構造部インターフェース406とを含む。チャンバ401は、テイラーコーンエミッターデバイス200の基体230を受け入れるように構成され、その際、基体230および基体230から延在するテーパ状先端部245は、保管装置壁405またはテイラーコーンエミッターデバイス保管装置400に配置される任意の隣接するテイラーコーンエミッターデバイス200との接触状態から遠隔にある。
【0081】
[0090]示すように、テイラーコーンエミッターデバイス保管装置400は、ラジアル方向に配置され、CBSデバイス300の時計構造部305と整合性がある、時計構造部インターフェース406としての2つのスリット410を含む。示すように、ブレードフィン310のテーパ部分は、テイラーコーンエミッターデバイス保管装置400のテーパ状先端部245およびオリフィス420の軸中心に対してわずかにオフセットしたCBSデバイス300の成功裏のドッキングを支援するさらなる機構を提供する。示すように、時計構造部インターフェース406は、CBS300がテイラーコーンエミッターデバイス保管装置400にドッキングされるときにCBS300の適切な位置合わせを促進するために、オリフィス420を囲む誘導凸部430を含む。CBSデバイス300が、時計構造部インターフェース406に対しての時計構造部305の配向に対してラジアル方向にオフアクシスである場合、誘導凸部430は、ポイント432に向かってテーパが付き、オリフィス420の基部において谷形状435を形成するように接合される。誘導凸部430のテーパ部分は、テイラーコーンエミッターデバイス保管装置400にドッキングされている間CBSデバイス300が適切に配置されるようにオフアクシスCBSデバイス300を誘導し再位置合わせする機構を提供する。
【0082】
[0091]図6(a)~6(d)を参照すると、一実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600は、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610と、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610を(図1に示すx軸に沿って)水平作動させるように構成される第1のアクチュエータ620と、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610を(図1に示すy軸に沿って)垂直作動させるように構成される第2のアクチュエータ630と、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610を垂直配向と水平配向との間で回転作動させるように構成される第3のアクチュエータ640とを含む。適切なアクチュエータは、リニアアクチュエータ、ロータリーアクチュエータ、油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、電気アクチュエータ、電気機械アクチュエータ、電気油圧式アクチュエータ、熱アクチュエータ、磁気アクチュエータ、機械アクチュエータ、スーパーコイル型高分子アクチュエータ、ヒンジ、ピボットヒンジ、スライダー・クランク、偏心カム、またはその組み合わせを含むが、それに限定されない。アクチュエータは、独立であるが、一般的な制御下にあってもよい、または、6軸ロボット等の包括的な相互接続されたシステムの一部であってもよい。作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610は、シャフト650と、シャフト650の端部109に配置された据え付け部分660を含む。据え付け部分660は、テイラーコーンエミッターデバイス200の受け用マウント210に取り外し可能に係合するように構成される。作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610は、テイラーコーンエミッターデバイス200の受け用マウント210を切り離すように構成される取り出し装置670と、テイラーコーンエミッターデバイス200の時計構造部305を所定のラジアル配向に誘導し、テイラーコーンエミッターデバイスを所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェース680とをさらに含む。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600は、テイラーコーンエミッターデバイス200を垂直配向で設置し、テイラーコーンエミッターデバイス200を水平配向に回転させ、テイラーコーンエミッターデバイス200を分析機器710に提示するように構成される。
【0083】
[0092]据え付け部分660は、受け用マウント210としてピペット先端部受け用マウント210に取り外し可能に係合するように構成されるペット先端部据え付け部分104を含むが、それに限定されない任意の適切なマウントであってもよい。
【0084】
[0093]一実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス200は、被覆ブレードスプレーデバイス300である。
【0085】
[0094]第3のアクチュエータ640は、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610を、垂直と水平との間の、またはさらに垂直および水平を超える任意の度数に回転作動させることができる。例として、水平の上方または下方の45°のピッチが、溶離溶媒送出およびテイラーコーン生成を最適化するために使用され得る。
【0086】
[0095]テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600は、任意の適切な数のさらなるアクチュエータをさらに含むことができる。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600は、作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610を、シャフトに沿う(オイラー角ψ167に対応する回転軸を示す、図1に示すy軸に沿う)軸の周りに回転作動させるように構成される第4のアクチュエータ690を含んでもよい。第4のアクチュエータ690は、テイラーコーンエミッターデバイス200を分析機器710に位置合わせするために、図1のy軸の周りにテイラーコーンエミッターデバイス200を回転させるように構成され得る。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600は、第1のアクチュエータ620に直交して(図1に示すz軸に沿って)作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610を水平作動させるように構成される第5のアクチュエータ692を含んでもよい。第5のアクチュエータ692および第1のアクチュエータ620は、マイクロタイターアレイトレイの所定のウェルにあるテイラーコーンエミッターデバイス200を選択的に係合させるまたは切り離すために協働するように構成され得る。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600は、異なる位置にある分析デバイスのセレクションの任意の分析デバイスにテイラーコーンエミッターデバイス200を誘導するために使用され得る、オイラー角θ168に対応する回転軸を示す、図1に示すy軸の周りの軸の周りに作動式テイラーコーンエミッターデバイス操作装置610を回転作動させるように構成される第6のアクチュエータ694を含んでもよい。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600は、第4のアクチュエータ690、第5のアクチュエータ692、および第6のアクチュエータ694の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0087】
[0096]図7(a)~7(b)を参照すると、一実施形態において、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム700は、試料入口150を有する分析機器710と、試料装填アンティチャンバ720であって、分析機器710の試料入口150が試料装填アンティチャンバ720によって覆われるように、分析機器710に設置される、試料装填アンティチャンバと、テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600とを含む。試料装填アンティチャンバ720は、試料装填アンティチャンバ720を不活性雰囲気(乾燥窒素、希ガス、またはその組み合わせを含むが、それに限定されない)で充填するように構成されるガスパージ730と、テイラーコーンエミッターデバイス200を受け取るように構成される試料アパーチャ740と、高圧電源755に接続され、試料装填アンティチャンバ720内に配置され、テイラーコーンエミッターデバイス200が分析機器710の試料入口150に対して所定の位置および配向にあるときに、テイラーコーンエミッターデバイス200に接触するように構成される高圧電力電極750とを含む。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600は、テイラーコーンエミッターデバイス200を、試料アパーチャ740を通して試料装填アンティチャンバ720に挿入して、テイラーコーンエミッターデバイス200を分析機器710の試料入口150に提示するように構成される。
【0088】
[0097]テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム700は、試料装填アンティチャンバ720の外部に配置され、テイラーコーンエミッターデバイス200が水平配向にある間に、テイラーコーンエミッターデバイス200に第1の溶離溶媒を適用するように構成される第1の溶離溶媒計量分配器760をさらに含むことができる。テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム700は、試料装填アンティチャンバ720の外部に配置され、テイラーコーンエミッターデバイス200が水平配向にある間に、テイラーコーンエミッターデバイス200に第2の溶離溶媒を適用するように構成される第2の溶離溶媒計量分配器765をさらに含むことができる。第1の溶離溶媒計量分配器760および第2の溶離溶媒計量分配器765は、存在する場合、それぞれ、第1の液体制御デバイス780および第2の液体制御デバイス785によって動作され得る。
【0089】
[0098]分析機器710は質量分析計であることができ、試料入口150は質量分析計入口であることができる。
【0090】
[0099]試料装填アンティチャンバ720を試料装填アンティチャンバ720内の不活性ガスの不活性雰囲気で充填するガスパージ730は、所定の湿度を維持し、試料装填アンティチャンバ720から任意の化学汚染物質を一掃することができる。
【0091】
[0100]テイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱いシステム700は、溶媒エーロゾルを分析機器710の試料入口150に適用するように構成される試料装填アンティチャンバ720内に延在する溶媒エーロゾル計量分配器770をさらに含むことができる。溶媒エーロゾル計量分配器770は、溶媒制御デバイス790によって動作され得る。
【0092】
[0101]図7(a)、図7(b)、および図8を参照すると、一実施形態において、試料を分析するための方法は、テイラーコーンエミッターデバイス200をテイラーコーンエミッターデバイス自動化取り扱い装置600に対して垂直配向で設置すること、テイラーコーンエミッターデバイス200を水平配向に回転させること、テイラーコーンエミッターデバイス200を、試料装填アンティチャンバ720の試料アパーチャ740を通して試料装填アンティチャンバ720に挿入すること、テイラーコーンエミッターデバイス200を分析機器710の試料入口150に対して所定の位置および配向で、分析機器710の試料入口150に提示すること、テイラーコーンエミッターデバイス200と接触状態にある高圧電力電極750に通電すること、テイラーコーンエミッターデバイスから生成されるイオンを分析機器710の試料入口150を通して収集すること、分析機器710を用いて、収集されたイオンを分析すること、および、試料装填アンティチャンバ720からテイラーコーンエミッターデバイス200を取り外すことを含む。
【0093】
[0102]方法は、溶媒エーロゾル計量分配器770を通して分析機器710の試料入口150に溶媒エーロゾルを適用することによって試料入口150を清掃することをさらに含むことができる。溶媒エーロゾル計量分配器は、試料入口150上に残存する物質を除去するために、試料入口150に液滴のミストを送出することができる。これは、偽陽性または機器性能の低下の機会を低減することができる。エーロゾル計量分配器770は、ベンチュリ効果下で動作することができる。
【0094】
実施例
[0103]CBSワークフローの試料収集および試料分析ステージを実施することが可能な自動化システムは、Thermo Fisher TSQ Altis質量分析計に取り付けられた、Opentrons OT2液体取り扱いロボットから作られた。CBSインターフェースは、図7(a)~7(b)で説明したシステムと同様の実験室構築システムであった。エミッターを公称水平位置に回転させることが可能な実験室構築ロボットピペッターも作られた。
【0095】
[0104]実験1:洗浄用エーロゾルシステムがない状態での機器キャリーオーバー
【0096】
[0105]25,000ng/mLのプロプラノロールを含有する試料のインターカレート式注入(intercalated injection)後に収集されたブランク信号(Blank signal)が図9に提示される。
【0097】
[0106]分析ワークフローは、以下のステップを含んだ。
試料調製
1.公称垂直位置上のHLB被覆ブレードが、1,000rpmで5分間、300μLのMeOH:IPA:ACN溶液上にブレードを浸漬させることによって事前清掃された。
2.その後、25,000ng/mLのプロプラノロールを含有する200μLの血漿試料が、ウェルプレート上に送出され、内部標準物質(internal standard)を含有する100μLのマトリックス修飾剤(緩衝液 95:5 水:ACN、1.4%FA)が、血漿試料の上部に添加され、1,000rpmで5分間、シェイクされた。
3.その後、公称垂直位置上の事前清掃されたCBSデバイスが、5分間、試料・緩衝液混合物上に浸漬され、1,000rpmで撹拌された。
4.最後に、公称垂直位置上のCBSデバイスが、被覆物を洗浄するためのLC・MS水を含有する別個のウェルプレート上で、10秒間、浸漬された。
溶離/イオン化シーケンス
5.被分析物質収集後、公称水平位置上の対象の被分析物質を含有するCBSデバイスが、Thermo TSQ Altisの入口に、入口から最適XYZ距離で提示された。
6.その後、7.5μLの95:5メタノール:水0.1%FA溶液が、溶媒送出システムによってデバイスの被覆エリアに添加され、5秒後、高圧電位差が、ブレードの先端からエレクトイロスプレーを生成するために、5秒間、ブレードの未被覆エリアに印加された。
7.スプレー事象が終了した後、インターフェースは、次の注入に先立ってMS入口を清掃した。
定量分析
8.データ分析は、TraceFinder 5.0を使用して実施され、イオンクロマトグラム全体についての曲線下のエリアが、別段に述べられない限り、積分された(すなわち、5秒スプレー事象)。
【0098】
[0107]図9に見ることができるように、試料ブランクについての機器応答は、ターゲット被分析物質を収集するために利用されたブレードが、高濃度の試料(例えば、MTXの5,000ng/mL)を形成した直後にブランク試料が注入された場合に、通常のブランク信号ともはや整合性がなかった。見ることができるように、注入番号1(ブランク)と注入番号2(高濃度の試料後のブランク)との間に27倍の増分が存在する。さらに、高濃度の試料がブランク試料後にインターカレート式に注入された場合、aid「ブランク(blank)」信号が元の閾値にもどらなかったことが観測された。
【0099】
[0108]実験2:洗浄用エーロゾルシステムがある状態での機器キャリーオーバー
【0100】
[0109]図10は、以下の化合物を含む10個の高濃度の試料の注入前(三角形)、注入中(正方形)、および注入後(円形)に得られたブランク信号を提示し、以下の化合物とは、メトトレキサート、フェンタニル、ブプレノルフィン、およびプロプラノロール(すなわち、それぞれ、5,000ng/mL、3,000ng/mL、10,000ng/mL、および1,500ng/mL)である。溶媒エーロゾルスプレーは、全ての注入後に使用されて、全ての注入後に入口に残存する被分析物質の残留物を清掃した。
【0101】
[0110]表1.P値
【表1】
【0102】
[0111]表1は、10個のインターカレート式高濃度試料の注入前に取得されたブランク(三角形)が、それの注入後に取得されたブランク(円形)と異なる確率(不等分散(unequal variance)を仮定する片側t検定(one-tail t-test)に基づく)を表示する。表1に見ることができるように、P値が0.05より小さくないことを考慮すると、ブランク注入間の差は、統計的に有意であると考えられない。溶媒エーロゾルスプレーは、全ての注入後に使用されて、全ての注入後に入口に残存する被分析物質の残留物を清掃した。
【0103】
[0112]機器キャリーオーバーは、ダイレクト・ツー・MSおよびAMSについて過去に認識されなかったが、機器キャリーオーバーは、実際の臨床および法医学状況における任意のsans-クロマトグラフィ技術の実装を妨げる可能性がある、確かに基準である。なぜなら、機器キャリーオーバーが、かなりの量の偽陽性をもたらす場合があるからである。CBSブレードが再利用されなかったCBSデバイスによって、機器キャリーオーバーが存在しない可能性があることを理解すると、機器信号の考えられる他の供給源が、過去の注入(複数可)によってMS入口に残存する被分析物質であったことが発見された。この問題を解決することを目標として、MSの入口部分に残存する被分析物質は、入口清掃システムを使用して、2秒未満の時間内で、清掃された。図10および表1に見ることができるように、実験結果は、高濃度の試料の前と後のブランク信号が統計的に同一であったことを立証する。
【0104】
[0113]上記仕様は例示的な実施形態を示して説明するが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ得、等価物がその要素と置換され得ることが、当業者によって理解されるであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多くの修正が、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために行われ得る。したがって、本発明が、本発明を実施するために企図される最良モードとして開示される特定の実施形態に限定されないこと、しかし、本発明が、添付特許請求項の範囲に入る全ての実施形態を含むことになることが意図される。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図7(a)】
図7(b)】
図8
図9
図10
【国際調査報告】