(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-20
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20240513BHJP
C23C 16/36 20060101ALI20240513BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20240513BHJP
C23C 16/30 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B23B27/14 A
B23B27/14 B
C23C16/36
C23C16/40
C23C16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568243
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022062300
(87)【国際公開番号】W WO2022234095
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フォン フィーアント, リーナ
(72)【発明者】
【氏名】リンダール, エリック
(72)【発明者】
【氏名】ブール, キャタリン
【テーマコード(参考)】
3C046
4K030
【Fターム(参考)】
3C046FF03
3C046FF10
3C046FF11
3C046FF13
3C046FF16
3C046FF22
3C046FF39
3C046FF40
3C046FF44
3C046FF46
3C046FF48
3C046FF52
3C046FF53
4K030AA03
4K030AA04
4K030AA05
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA18
4K030BA20
4K030BA38
4K030BA41
4K030BA43
4K030BB01
4K030BB12
4K030CA03
4K030DA03
4K030FA10
4K030JA01
4K030LA22
(57)【要約】
本発明は、コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基材を備えるコーティングされた切削工具に関し、前記基材は、金属結合剤中の硬質構成物質で構成された超硬合金で作製され、前記金属結合剤は、60重量%超のNiを含み、前記コーティングは、2つ以上の層を備え、基材に隣接する層は、W(C
xN
1-x)
y層であり、式中、0.6≦x≦0.8かつ1.1≦y≦1.8であり、W(C
xN
1-x)
y層厚は0.4~7μmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基材を備えるコーティングされた切削工具であって、前記基材は、金属結合剤中の硬質構成物質で構成された超硬合金で作製され、前記金属結合剤は、60重量%超のNiを含み、前記コーティングは、2つ以上の層を備え、基材に隣接する層は、W(C
xN
1-x)
y層であり、式中、0.6≦x≦0.8かつ1.1≦y≦1.8、好ましくは0.67≦x≦0.72かつ1.17≦y≦1.76であり、W(C
xN
1-x)
y層厚は、0.4~7μmである、コーティングされた切削工具。
【請求項2】
W(C
xN
1-x)
y層が、六方晶相である、請求項1に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項3】
W(C
xN
1-x)
y層が、柱状の粒で構成される、請求項1または2に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項4】
W(C
xN
1-x)
y層の平均粒幅が、0.14~0.40μm、好ましくは0.15~0.30μmである、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項5】
W(C
xN
1-x)
y層が、前記W(C
xN
1-x)
y層の断面に対するEBSDで測定される配向を示し、分析エリアは幅が100μmおよび高さが全W(C
xN
1-x)
y層厚であり、W(C
xN
1-x)
y層の表面法線は、前記層の成長方向に平行であり、分析エリアの75%以上がW(C
xN
1-x)
y層の表面法線から30度以内に<11-20>方向を有し、好ましくは分析エリアの80%以上がW(C
xN
1-x)
y層の表面法線から30度以内に<11-20>方向を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項6】
金属結合剤が、65~90重量%のNi、好ましくは70~87重量%のNi、より好ましくは75~85重量%のNiを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項7】
超硬合金中の金属結合剤含有量が、3~20重量%、好ましくは5~15重量%、最も好ましくは5~10重量%である、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項8】
コーティングが、TiCN層を備え、好ましくは、TiCN層の厚さは6~12μmである、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項9】
TiCN層が、Cu Kα照射およびθ-2θ走査を使用したX線回折により測定される、Harrisの式、
[式中、I(hkl)は、(hkl)反射の測定強度(積分面積)である]に従って定義される組織係数TC(hkl)を示し、I
0(hkl)は、ICDDのPDF-カード番号42-1489に従う標準強度であり、nは、反射の数であり、計算に使用される反射は、(1 1 1)、(2 0 0)、(2 2 0)、(3 1 1)、(3 3 1)、(4 2 0)、(4 2 2)および(5 1 1)であり、TC(4 2 2)は、≧3.5以上、好ましくは≧4である、請求項8に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項10】
コーティングの全厚が、2~25μmである、請求項1から9のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項11】
コーティングが、好ましくは切削工具の最外表面とW(C
xN
1-x)
y層との間に位置するAl
2O
3の層をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項12】
Al
2O
3層が、α-Al
2O
3層である、請求項11に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項13】
前記α-Al
2O
3層が、Cu Kα照射およびθ-2θ走査を使用したX線回折により測定される、Harrisの式に従って定義される組織係数TC(hkl)を示し、式中、I(hkl)は、(hkl)反射の測定強度(積分面積)であり、I
0(hkl)は、ICDDのPDF-カード番号00-010-0173に従う標準強度であり、nは、計算に使用される反射の数であり、使用される(hkl)反射は、(1 0 4)、(1 1 0)、(1 1 3)、(0 2 4)、(1 1 6)、(2 1 4)、(3 0 0)および(0 0 12)であり、TC(0 0 12)が≧5、好ましくは6以上、より好ましくは≧7であることを特徴とする、請求項12に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項14】
Al
2O
3層の厚さが、4~8μmである、請求項11から13のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【請求項15】
コーティングが、CVDコーティングである、請求項1から14のいずれか一項に記載のコーティングされた切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた切削工具に関する。切削工具はCVDコーティングされ、基材は超硬合金であり、超硬合金中の金属結合剤はNiを含む。CVDコーティングは、W(CxN1-x)yの内側層を備える。
【背景技術】
【0002】
CVDコーティングされた切削工具は、チップ形成金属切削操作用の切削工具の分野において周知である。コーティングされた切削工具の基材は、通常超硬合金であり、超硬合金は、Coの金属結合剤中のWCで作製される。Coを含まない、またはCoの量が低減された代替の結合剤が開発されているが、市場の製品においてはまだ稀であるか、または存在しない。超硬合金自体の製造だけでなく、超硬合金のコーティングもまた要求が厳しいが、これは、特に高温の反応性ガスを使用して行われる化学気相堆積中に、気相と超硬合金との間で相互作用が生じるためである。
【0003】
代替の金属結合剤のうち、NiおよびFeの混合物が有望な候補である。Niは、例えばTiとの高い反応性を示し、超硬合金中の多量のNiは、Ni3Ti等の金属間相が超硬合金とコーティングとの間の接触面およびコーティング内にも形成するため、Ti含有コーティングの化学気相堆積において問題を引き起こす。Ti含有コーティングの接触面またはより下の部分におけるNi3Ti等の金属間相は、コーティング接着を低減し、Ti含有コーティング上にその後堆積されるコーティングの耐摩耗性に悪影響を及ぼす。
【0004】
Ni金属基材へのTiNコーティングの堆積中のNi3Tiの形成の問題は、L. von Fieandtらによる「Chemical vapor deposition of TiN on tansition metal substrates」、Surface and Coatings Technology 334 (2018) 373~383において分析されている。Ni3Tiの形成は、CVDプロセス中の過剰のN2分圧および低いH2分圧により低減され得ると結論付けられた。
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性CVDコーティングを有するNi含有超硬合金基材を有する切削工具を提供することである。また、Ni含有超硬合金基材、特に60重量%超のNiを有する金属結合剤を含有する基材上に、001配向α-Al2O3の層を備えるコーティングを堆積させる方法を提供することも、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
上述の目的の少なくとも1つは、請求項1に記載の切削工具により達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0007】
本発明は、コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基材を備えるコーティングされた切削工具に関し、前記基材は、金属結合剤中の硬質構成物質で構成された超硬合金で作製され、前記金属結合剤は、60重量%超のNiを含み、前記コーティングは、2つ以上の層を備え、基材に隣接する層は、W(CxN1-x)y層であり、式中、0.6≦x≦0.8かつ1.1≦y≦1.8、好ましくは0.67≦x≦0.72かつ1.17≦y≦1.76であり、W(CxN1-x)y層厚は、0.4~7μmである。
【0008】
超硬合金材料は、高い靭性と組み合わされたその高い硬度および高い耐摩耗性に起因して、極めて要求の厳しい切削工具用途に有用である。超硬合金材料は、粉末冶金法により製造され、出発粉末は、混合され、ミリングされ、素地に成形され、予備焼結され、焼結される。
【0009】
超硬合金材料は、一般に、例えばCoまたはNiおよびFeと組み合わされたCoの金属結合剤中のWCの硬質構成物質、ならびに任意選択の炭化物および/または窒化物、例えばTiCからなる。本発明において、金属結合剤は、60重量%超のNiを含む。金属結合剤中の高含有量のNiは、CVD堆積において特に要求が厳しいことが示されている。超硬合金組成、および特に金属結合剤組成は、化学分析により分析され得る。
【0010】
驚くべきことに、前記組成および0.4μm以上の厚さを有するW(CxN1-x)y層は、その後堆積された層に金属結合剤中のNiが悪影響を及ぼすことを防止し得ることが判明した。それにより、W(CxN1-x)y層は、拡散バリア層の機能を有し、基材がコーティング品質に影響するのを防止した。したがって、0.4μm超の層厚を有するW(CxN1-x)y層は、TiとNiとの間の反応生成物の形成を防止し得る。
【0011】
1.1≦y≦1.8、好ましくは1.17≦y≦1.76である本発明のW(CxN1-x)y層中の多量のCおよびNは、通常高圧および高温が示唆される金属切削用途にコーティングが曝露された場合でも、安定な層に寄与すると考えられる。
【0012】
本発明の一実施形態において、W(CxN1-x)y層は、六方晶相である。六方晶W(C,N)の熱膨張係数はWCの熱膨張係数に類似しているため、これは有利である。これは、コーティングされた切削工具の製造中の熱亀裂の形成を防止し得、また、切削工具は通常、断続切削等の切削における使用中に熱サイクルに曝露されるため、工具の寿命に対する影響を有し得る。六方晶相とは、本明細書において、δ-WC六方晶相を意味する。
【0013】
本発明の一実施形態において、W(CxN1-x)y層は、柱状の粒で構成される。柱状とは、本明細書において、粒幅に対する粒長のアスペクト比が1超であることを意味する。
【0014】
本発明の一実施形態において、W(CxN1-x)y層の平均粒幅は、0.14~0.40μm、好ましくは0.15~0.30μmである。
【0015】
本発明の一実施形態において、W(CxN1-x)y層は、前記W(CxN1-x)y層の断面に対するEBSDで測定される配向を示し、分析エリアは幅が100μmおよび高さが全W(CxN1-x)y層厚であり、W(CxN1-x)y層の表面法線は、前記層の成長方向に平行であり、分析エリアの75%以上がW(CxN1-x)y層の表面法線から30度以内に<11-20>方向を有し、好ましくは分析エリアの80%以上が<11-20>方向から30度以内である。
【0016】
本発明の一実施形態において、金属結合剤は、65~90重量%のNi、好ましくは70~87重量%のNi、より好ましくは75~85重量%のNiを含む。
【0017】
本発明の一実施形態において、金属結合剤は、10~20重量%のFe、好ましくは10~15重量%のFeを含む。
【0018】
本発明の一実施形態において、金属結合剤は、3~8重量%のCo、好ましくは5~6重量%のCoを含む。
【0019】
本発明の一実施形態において、金属結合剤は、65~90重量%のNi、10~20重量%のFeおよび3~8重量%のCoを含む。一実施形態において、金属結合剤は、Ni-Fe-Co合金である。
【0020】
本発明の一実施形態において、超硬合金中の金属結合剤含有量は、3~20重量%、好ましくは5~15重量%、最も好ましくは5~10重量%である。
【0021】
本発明の一実施形態において、コーティングは、TiN層を備え、TiN層の厚さは、0.3~1μmである。
【0022】
本発明の一実施形態において、コーティングは、TiCN層を備え、好ましくは、TiCN層の厚さは、6~12μmである。
【0023】
本発明の一実施形態において、TiCN層は、Cu Kα照射およびθ-2θ走査を使用したX線回折により測定される、Harrisの式に従って定義される組織係数TC(hkl)を示し、
式中、I(hkl)は、(hkl)反射の測定強度(積分面積)であり、I
0(hkl)は、ICDDのPDF-カード番号42-1489に従う標準強度であり、nは、反射の数であり、計算に使用される反射は、(1 1 1)、(2 0 0)、(2 2 0)、(3 1 1)、(3 3 1)、(4 2 0)、(4 2 2)および(5 1 1)であり、TC(4 2 2)は、≧3.5である。
【0024】
本発明の一実施形態において、コーティングの全厚は、2~25μmである。
【0025】
本発明の一実施形態において、コーティングは、好ましくは切削工具の最外表面とW(CxN1-x)y層との間に位置するAl2O3の層をさらに備える。
【0026】
本発明の一実施形態において、Al2O3層は、α-Al2O3層である。
【0027】
本発明の一実施形態において、α-Al2O3層は、Cu Kα照射およびθ-2θ走査を使用したX線回折により測定される、Harrisの式に従って定義される組織係数TC(hkl)を示し、式中、I(hkl)は、(hkl)反射の測定強度(積分面積)であり、I0(hkl)は、ICDDのPDF-カード番号00-010-0173に従う標準強度であり、nは、計算に使用される反射の数であり、使用される(hkl)反射は、(1 0 4)、(1 1 0)、(1 1 3)、(0 2 4)、(1 1 6)、(2 1 4)、(3 0 0)および(0 0 12)であり、TC(0 0 12)が≧7、好ましくは≧7.2であることを特徴とする。
【0028】
本発明の一実施形態において、Al2O3層の厚さは、4~8μmである。
【0029】
本発明の一実施形態において、切削工具は、ドリル、フライスインサートまたは旋削用インサート、好ましくは旋削用インサートである。
【0030】
一実施形態において、W(CxN1-x)y層は、CVD層である。一実施形態において、TiCN層は、CVD層である。一実施形態において、Al2O3層は、CVD層である。本発明の一実施形態において、コーティングは、CVDコーティングである。
【0031】
本発明のさらに他の目的および特徴は、添付の図面と併せて考慮される以下の定義および例から明らかとなる。
【0032】
方法
W(CxN1-x)y層の組成
表面法線に対して67.5°の入射角度、および45°の反跳粒子検出角度で36MeVの127I8+ビームを利用して、ToF-ERDA(飛行時間型弾性反跳粒子検出分析)によりW(CxN1-x)y層の元素組成を分析した。ガスイオン化チャンバ検出器は、散乱127I8+イオンの数およびエネルギーの両方を検出するが、より重要なことには、試料からの反跳原子もまた検出する。この分析は、エネルギー検出と共に原子質量の計算も可能にする飛行時間型分析器と組み合わされた。それにより、コーティングの元素深さプロファイルが得られた。
【0033】
データ分析は、Potkuソフトウェアを使用して行った。試料表面から約30~200nmの深さプロファイルを積分することにより、250×1015~2000×1015原子/cm2の濃度が計算された。
【0034】
W(CxN1-x)y層の相分析
W(CxN1-x)y層内の粒の相組成を分析するために、斜入射X線回折(GI-XRD)測定を行った。1°の入射角度を使用した。GI-XRD測定は、Cu Kα源および平行入射ビームを形成するGobelミラーを有するPhilips MRD X’Pert回折計を使用して行った。1.4mmビームを許容するミラースリットを使用し、一次ビーム側に0.04radソーラスリットを設置した。二次ビームは0.27°コリメータで平行化し、強度は比例検出器で記録した。試料高さおよび0-傾斜は、直接ビームを使用してz-、ω-および微細z-走査を適用することによりアラインした。アラインメント中のビーム強度は、Cu/Ni手動ビーム減衰器により低減し、ミラースリットもまた、0.09mmのビームサイズを得るために低減した。アラインメントのための二次ビームコリメータの単一チャネルを選択するために、平行板コリメータ受光スリットを挿入した。
【0035】
W(CxN1-x)y層の粒幅および配向
電子後方散乱回折(EBSD)分析を使用して、W(CxN1-x)y層の粒幅および配向または組織構造を分析した。
【0036】
AKASEL製の黒色導電性フェノール樹脂にCNMG120408-PMインサートのそれぞれを埋め込み、これをその後約1mmまで粉砕し、次いでダイヤモンドスラリー溶液を使用して粗研磨(9μm)および微細研磨(1μm)の2つのステップで研磨することにより、研磨断面の調製を行った。コロイド状シリカ溶液を使用した最終研磨を適用した。全ての試料を70°の角度のプレチルトホルダに装着し、最大データ収集効率を確実にした。データ分析の間、顕微鏡内での位置ずれを補正するために座標系をアラインした。
【0037】
全てのEBSD測定において、収集されたデータが全てW(CxN1-x)yコーティングに由来することを確実にするために、WC-Co基材からの粒をデータから除外した。幅が少なくとも100μmで高さが全層厚である領域を、50nmのステップサイズで分析し、速度1ビニングモード(622×512pix)を全てのEBSD調査に使用した。粒幅測定において、各粒幅の決定に少なくとも700個の粒を使用した。
【0038】
W(CxN1-x)y層の配向は、設定された軸からのある特定の角度変位内にある分析試料中のW(CxN1-x)yの(%)での量として決定した。表面法線に平行な方向として、<11-20>W(CxN1-x)y方向を選択した。W(CxN1-x)y層の配向は、<11-20>W(CxN1-x)y方向から30°以内の変位であった分析エリアの量として計算した。1回の自動クリーンアップステップを使用して、データのノイズレベルを緩やかに低減した。次いで、W(CxN1-x)y層の配向を、前記W(CxN1-x)y層の断面に対するEBSD結果から定義し、分析エリアは幅が100μmおよび高さが全W(CxN1-x)y層厚であり、W(CxN1-x)y層の表面法線は、前記層の成長方向に平行であり、分析エリアの75%以上がW(CxN1-x)y層の表面法線から30度以内に<11-20>方向を有し、好ましくは分析エリアの80%以上がW(CxN1-x)y層の表面法線から30度以内に<11-20>方向を有する。
【0039】
前のセクションで言及したのと同じ測定エリアのEBSDを使用することにより、W(CxN1-x)yの平均粒幅を分析した。粒幅測定は、フィッティングされた楕円短径による粒サイズ決定を用いるAztec Crystal v.2.0ソフトウェアパッケージを使用して行った。楕円が各粒にフィッティングされ、各楕円の短径が粒幅として決定される。1回の自動クリーンアップステップを使用して、データのノイズレベルを緩やかに低減し、5ピクセル未満の面積を有する全ての粒を破棄して、測定ノイズが含まれないことを確実にし、そのようにして測定の精度を増加させた。粒閾値は10°に設定した。
【0040】
WC、Acta Crystallogr、[ACCRA9]、1961、第14巻、200~201頁の基準パターンを、EBSD測定のW(CxN1-x)yに使用し、53のリフレクタを測定に使用した。
【0041】
Oxford Symmetry EBSD検出器を備えたZeiss Supra 55VPを全てのEBSD測定に使用した。加速電圧を20kVに設定し、10~30nAのプローブ電流を使用した。
【0042】
SEM調査:
Zeiss Supra 55VP顕微鏡でSEM調査を行った。加速電圧は3kVであり、プローブ電流は300pAであった。
【0043】
TiCNおよびα-Al2O3層の配向
TiCNおよびアルミナ層の配向を調査するために、PIXcel検出器を備えたPANalytical CubiX3回折計を使用して、切削工具インサートの逃げ面に対してX線回折を行った。コーティングされた切削工具インサートを試料ホルダに装着し、切削工具インサートの逃げ面が試料ホルダの基準表面に平行になり、また逃げ面が適切な高さになることを確実にした。Cu Kα照射を測定に使用し、電圧は45kV、電流は40mAであった。1/2度の散乱防止スリットおよび1/4度の発散スリットを使用した。コーティングされた切削工具からの回折強度は、20°~140° 2θの範囲、すなわち10~70°の入射角度θ範囲にわたり測定した。
【0044】
PANalyticalのX’Pert HighScore Plusソフトウェアを使用して、データのバックグラウンド除去、Cu Kα2ストリッピングおよびプロファイルフィッティングを含むデータ分析を行った。フィッティングの概説を以下に示す。次いで、このプログラムからの出力(プロファイルフィッティング曲線の積分ピーク面積)を使用して、上で開示されたHarrisの式(1)を用いて特定の層(例えばTiCNまたはα-Al2O3の層)のPDF-カードによる標準強度データに対する測定強度データの比率を比較することにより、層の組織係数を計算した。層は有限の厚さを有するため、異なる2θ角におけるピークの対の相対強度は、層を通る経路長の差に起因して、バルク試料に対するものとは異なる。したがって、TC値を計算する際に、層の線吸収係数もまた考慮して、プロファイルフィッティング曲線の抽出された積分ピーク面積強度に薄膜補正を適用した。例えばα-Al2O3層の上方の可能なさらなる層は、α-Al2O3層に入りコーティング全体から出るX線強度に影響するため、これらに対しても同様に、層内のそれぞれの化合物の線吸収係数を考慮して補正を行う必要がある。TiCN層が例えばα-Al2O3層の下に位置する場合も、同様の処理がTiCN層のX線回折測定に適用される。代替として、アルミナ層の上方のTiN等のさらなる層は、XRD測定結果に実質的に影響しない方法、例えば化学エッチングにより除去され得る。
【0045】
TiCN層の柱状粒の異なる成長方向に対する組織係数TC(hkl)を、Harrisの式に従って計算した。
式中、I(hkl)は、(hkl)反射の測定(積分面積)強度であり、I
0(hkl)は、ICDDのPDF-カード番号42-1489に従う標準強度であり、nは、計算に使用される反射の数である。この場合、使用される(hkl)反射は、(1 1 1)、(2 0 0)、(2 2 0)、(3 1 1)、(3 3 1)、(4 2 0)、(4 2 2)および(5 1 1)である。
【0046】
α-Al2O3層の組織構造を調査するために、Cu Kα照射を使用してX線回折を行い、α-Al2O3層の柱状粒の異なる成長方向に対する組織係数TC(hkl)をHarrisの式に従って計算したが、式中、I(hkl)=(hkl)反射の測定(積分面積)強度、I0(hkl)=ICDDのPDF-カード番号00-010-0173に従う標準強度、n=計算に使用される反射の数である。この場合、使用される(hkl)反射は、(1 0 4)、(1 1 0)、(1 1 3)、(0 2 4)、(1 1 6)、(2 1 4)、(3 0 0)および(0 0 12)である。測定積分ピーク面積を薄膜補正し、α-Al2O3層の上方(すなわちその上)の任意のさらなる層に対して補正してから、前記組織係数を計算する。
【0047】
ピークの重複は、例えばいくつかの結晶層を含むコーティング、および/または結晶相を含む基材上に堆積されたコーティングのX線回折分析において生じ得る現象であり、これを考慮および補償する必要があることに留意されたい。α-Al2O3層からのピークとTiCN層からのピークとの重複は測定に影響し得るため、考慮する必要がある。また、例えば基材中のWCおよびコーティング中のW(CxN1-x)yもまた、測定に影響し得る回折ピークを有し得るため、考慮する必要があることに留意されたい。
【0048】
本発明の実施形態は、付属の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】W(C
xN
1-x)
y層(1)、基材(2)、TiCN層(3)およびα-Al
2O
3層が示された、本発明の一実施形態によるコーティングされた切削工具(試料E1)のW(C
xN
1-x)
y層を示す断面SEM顕微鏡写真である。
【
図2】W(C
xN
1-x)
y層(1)、基材(2)、TiCN層(3)およびα-Al
2O
3層が示された、
図1に示されるコーティングされた切削工具のEBSDバンドコントラスト顕微鏡写真である。
【
図3】
図1に示されるコーティングされた切削工具のW(C
xN
1-x)
y層の拡大図である。
【
図4】基準(試料C)に従うコーティングされた切削工具の薄すぎるW(C
xN
1-x)
y層を示す断面SEM顕微鏡写真である。
【
図5】試料E1の斜入射X線回折図である。破線は、δ-WC基準のピーク位置(Z. Anorg. Allg. Chem.、1926、第156巻、27~36頁)を示し、数字は、ピークが属する結晶面を示す。より低い強度のピークを目立たせるために、強度の目盛りは対数である。回折図は、六方晶δ-WC相のみがコーティングに存在することを示している。
【実施例】
【0050】
本発明の実施形態は、以下の実施例に関連してより詳細に開示される。実施例は例示であり、実施形態を制限しないと解釈されるべきである。以下の実施例において、コーティングされた切削工具(インサート)は、切削試験で製造、分析および評価された。
【0051】
基材
本明細書においてNiFeCo結合剤と呼ばれる代替の結合剤を有する超硬合金基材を、約80.7重量%のNi、13.7重量%のFeおよび5.6重量%のCoを含む結合剤を用いて製造した。超硬合金中の結合剤含有量は、約7重量%であった。代替の結合剤を有する超硬合金基材を、約6.09重量%のNi、1.02重量%のFe、0.039重量%のCo、1.80重量%のTi、2.69重量%のTa、0.41重量%のNb、0.09重量%のNおよび残りのWCの組成を有する粉末混合物から製造した。粉末混合物をミリングし、乾燥させ、圧縮して1450℃で焼結した。焼結超硬合金基材は、基材表面から、光学顕微鏡で測定される立方晶炭化物を本質的に含まない本体内への約30μmの深さまでの結合剤に富む表面ゾーンを備えていた。粉末中の炭素量は約6.07重量%であったが、焼結超硬合金の化学分析において測定された炭素量は約5.87重量%であった。焼結超硬合金は、約0.4重量%のCo、1.0重量%のFeおよび5.9重量%のNiを含んでいた。Coは主に、ミリングステップ中に摩耗するミリング体に由来した。超硬合金基材の断面のSEM顕微鏡写真では、遊離グラファイトまたはイータ相は観察されなかった。
【0052】
基準として、本明細書においてCo結合剤と呼ばれる金属結合剤中のCoを有する超硬合金基材を、約7.20重量%のCo、1.80重量%のTi、2.69重量%のTa、0.41重量%のNb、0.09重量%のNおよび残りのWCの組成を有する粉末混合物から製造した。粉末混合物をミリングし、乾燥させ、圧縮して1450℃で焼結した。焼結超硬合金基材は、基材表面から、光学顕微鏡で測定される立方晶炭化物を本質的に含まない本体内への約23μmの深さまでのCoに富む表面ゾーンを備えていた。焼結超硬合金基材は、約7.2重量%のCoを含んでいた。超硬合金基材の断面のSEM顕微鏡写真では、遊離グラファイトまたはイータ相は観察されなかった。これらの基材は、ここでは基準として含まれ、Ni拡散に関連した問題はなかった。
【0053】
超硬合金基材の形状は、旋削用のISO型CNMG120408の形状であった。
【0054】
コーティングの堆積
2つの超硬合金組成物上にCVDコーティングを堆積させた。コーティングの堆積前に、全ての基材を穏やかなブラストステップで清浄化して、表面から最外金属を除去した。堆積の少し前に、基材をエタノール浴中で30分間清浄化した。
【0055】
J. Gerdin Hulkko、MuspelおよびSurtr: CVD system and control program for WF6 chemistry、Licentiate thesis、Monograph、Uppsala University、2019において詳細に説明されているホットウォール横型管状炉反応器内で、W(CxN1-x)y層を堆積させた。ここで、反応器システムの主な特性を説明する。管は、Kanthalからのフェライト鉄-クロム-アルミニウム合金で作製されたものである。等方性黒鉛で作製された内側管は、外側管の広範囲のエッチングを防止し、47mmの内径を有する。管は、炉に到達する前に長さ175mmの低温ゾーンを有する。炉は、130mmの非加熱ゾーンに続いて、250mm、500mm、250mmの3つの別個の加熱ゾーン、そして最後に130mmの非加熱ゾーンを有する。加熱ゾーン内の温度は、Eurotherm 3216 PIDコントローラにより制御され、K型熱電対が反応器管の外側および炉の内側の各ゾーンの中央に設置される。中央ゾーンの内側温度は、3mmのOリング封止ポートを通して挿入されたK型熱電対を用いて較正された。プロセス中、3つの加熱ゾーンは同じ温度に維持された。
【0056】
前駆体流量は、WF6(5.5純度)、H2(5.6純度)およびAr(6.0純度)についてはMKS GM50Aマスフローコントローラにより制御され、CH3CN(>99.9%純度)については40℃の温度に維持されたMKS 1152Cマスフローコントローラにより制御される。CH3CNエバポレーターシリンダは25℃に維持され、シリンダとマスフローコントローラとの間のパイプは45℃に維持される。他の全てのガスは、シリンダ内で室温に維持される。ガスは316ステンレススチールパイプ内で運搬され、接続部には銀めっきVCRまたは銅ガスケットが使用される。バルクガス(Arで希釈されたH2)は、反応器正面で直接反応器管に進入する。他の2つの前駆体(Arを含むWF6およびArを含むCH3CN)は、別個のInconel600パイプ内で第1の加熱ゾーンを通して運搬され、反応器管に中央加熱ゾーンの25mm内側に進入する。Ebara technologiesからのS20Nルーツポンプ(最大容量100m3/時、最終圧力3.75×10-2Torr)により低圧が維持される。ガス流量はOリング封止バタフライ弁(MKS153D)によりスロットル調整され、PID真空制御システム(MKS946)により調節される。圧力測定には、1Torrフルレンジ温度安定化キャパシタンスマノメータ(MKS627B)が使用される。圧力の読み出しは、ターボ分子ポンプによりシステムを高真空範囲までポンピングすることにより較正された。
【0057】
堆積ゾーンはガス混合点から90~230mmの間であり、均一な厚さ、同じ結晶相および同じ支配的組織構造のコーティングを得ることができた。
【0058】
W(CxN1-x)yは、1.8体積%のWF6、1.2体積%のCH3CN、25体積%のH2および残りのArを使用して、715℃および133Paの圧力で堆積させた。全ガス流量は350sccmに設定し、堆積速度は約0.5μm毎時であった。
【0059】
その後、試料C、D、E1、E2、FおよびGを、10000個の半インチサイズ切削インサートを収納可能なラジアルIonbond Bernex TM型CVD機器530サイズでの追加層の堆積のために移した。
【0060】
まず、基材を885℃でTiCl4、N2およびH2を使用してTiN層でコーティングした。TiN堆積時間は、0.4μmの全TiN層厚が達成されるように適合させた。
【0061】
その後、周知のMTCVD技術を用い、885℃でTiCl
4、CH
3CN、N
2、HClおよびH
2を使用して、約8μmのTiCN層を堆積させた。TiCN層のMTCVD堆積の初期部分におけるTiCl
4/CH
3CNの体積比率は6.6であり、後続の期間は3.7のTiCl
4/CH
3CNの比率を使用した。TiNおよびTiCN堆積の詳細を表1に示す。
【0062】
TiCN外層の堆積後、75体積%のH2および25体積%のN2の雰囲気中で、温度を885℃から1000℃に上昇させた。
【0063】
4つの別個の反応ステップからなるプロセスにより、0.7~2μmの厚さの結合層をMTCVD TiCN層の上に1000℃で堆積させた。第1のHTCVD TiCNステップは400mbarのTiCl4、CH4、N2、HClおよびH2を使用し、次いで第2のステップ(TiCNO-1)は70mbarのTiCl4、CH3CN、CO、N2およびH2を使用し、次いで第3のステップ(TiCNO-2)は70mbarのTiCl4、CH3CN、CO、N2およびH2を使用し、最後に第4のステップ(TiN-3)は70mbarのTiCl4、N2およびH2を使用した。第3の堆積ステップ中、COガス流量を、表2に示されるように開始値から停止値まで連続して直線的に増加させた。他の全てのガス流量は一定に維持したが、そのため全体的なガス流量は増加する。全てのガスの濃度はこれによって幾分影響を受ける。その後のAl2O3核形成の開始前に、結合層をCO2、CO、N2およびH2の混合物中で4分間酸化させた。
【0064】
【0065】
結合層の上に、α-Al2O3層を堆積させた。α-Al2O3層は全て、2つのステップで1000℃および55mbarで堆積させた。第1のステップは1.2体積%のAlCl3、4.7体積%のCO2、1.8体積%のHClおよび残りのH2を使用して約0.1μmのα-Al2O3を生成し、以下に開示される第2のステップは約5μmの全α-Al2O3層厚を生成した。α-Al2O3層の第2のステップは、1.16%のAlCl3、4.65%のCO2、2.91%のHCl、0.58%のH2Sおよび残りのH2を使用して堆積された。
【0066】
試料FおよびGにはまた、TiNの最外摩耗指示層を設けた。
【0067】
【0068】
コーティングの分析
ERDAにより、基準試料に対してW(CxN1-x)y層の組成は43.7at%のW、39.2at%のCおよび17.1at%のNと決定されたが、これは化学式W(C0.7N0.3)1.3に対応する。
【0069】
斜入射X線回折を使用して、W(CxN1-x)y層の相を分析した。回折図は、コーティング中に六方晶相のみが存在したことを示しており、立方晶WC1-xまたはWNy(0.5≦y≦2)反射は特定されず、またタングステンに富むW2C相(六方最密充填W副格子および八面体空隙の半分におけるC原子)の反射は特定されなかった。基準反射は、Z. Anorg. Allg. Chem.、1926、第156巻、27~36頁から計算される。
【0070】
W(CxN1-x)y層をSEMで精査すると、W(CxN1-x)y粒が柱状であることが分かった。基材とW(CxN1-x)y層との間の接触面またはW(CxN1-x)y層内にはイータ相は見られなかった。イータ相は、基準試料B1およびB2の基材への接触面、ならびにTiNおよびTiCN層内に見られた。
【0071】
平均粒幅およびW(C
xN
1-x)
y層の配向をEBSDで分析した。結果を表4に示す。
【0072】
六方晶δ-WC相の対称性に起因して、結果は以下のように解釈され得る。±30°の角度範囲内に、<0001>方向に垂直な全ての可能な結晶学的方向が含まれる。選択された間隔はまた、粒内の<0001>方向が基材表面平面から30°の最大角度だけずれることを意味する。したがって、コーティングの組織構造は、<0001>方向が優先的に基材表面に平行に、またはそこから若干傾いている六角柱として説明され得る。
【0073】
TiCN層およびα-Al
2O
3層の組織係数TC(hkl)を、上で開示されたように、Cu Kα照射およびθ-2θ走査を使用したX線回折により分析した。TC(0 0 12)およびTC(4 2 2)を表5に示す。
【0074】
X線回折分析および組織係数から、約250nmのW(CxN1-x)y層が設けられた基準試料Cは、約640nmのW(CxN1-x)y層が設けられた本発明の試料Dと比較して、より低いTC(4 2 2)およびより低いTC(0 0 12)を示すと結論付けることができる。
【0075】
切削試験
ISO型CNMG120408のコーティングされた切削工具を、以下の切削データを使用した軸受鋼(100CrMo7-3)での縦方向旋削において試験した。
切削速度vc:220m/分
切削送り量、f:0.3mm/回転
切削深さ、ap:2mm
【0076】
水に混和性の金属加工流体を使用した。
【0077】
切削工具当たり1つの切削刃を評価した。
【0078】
クレーター摩耗の分析において、光学顕微鏡を使用して露出基材の面積を測定した。露出基材の表面積が0.2mm
2を超えた場合、工具が寿命に達したと見なした。各切削工具の摩耗を、2分の切削後に光学顕微鏡で評価した。次いで、工具寿命尺度に達するまで、切削プロセスおよび各2分間の作業後の測定を継続した。クレーター面積のサイズが0.2mm
2を超えた場合、工具寿命尺度が満たされるまでの時間を、最後の2回の測定間の想定一定摩耗速度に基づいて推定した。クレーター摩耗の他に、逃げ面摩耗もまた監視した。各種のコーティングに対して3つの並行試験を行った。平均工具寿命として示される結果を表6に示す。
【0079】
本発明によるW(CxN1-x)y層が設けられたE2試料は、基準試料B2を上回る性能を示すと結論付けることができる。予測されるように、超硬合金の金属結合剤相内に邪魔なNiを含まない基準試料Aもまた、良好な性能を示す。
【0080】
本発明を様々な例示的実施形態に関連して説明したが、本発明は開示された例示的実施形態に限定されず、逆に、添付の特許請求の範囲内の様々な修正および同等の構成を包含することが意図されることを理解されたい。
【国際調査報告】