(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】植え込み型医療デバイスのための通信システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/37 20060101AFI20240514BHJP
A61N 1/362 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61N1/37
A61N1/362
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555767
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022063418
(87)【国際公開番号】W WO2022248303
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タフ、ブライアン エム.
(72)【発明者】
【氏名】スウェエンソン、クルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルグストロム、ディーン
(72)【発明者】
【氏名】マーリン、ジュリアン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053KK02
(57)【要約】
本発明は、植え込み型医療デバイスIMD、40と外部デバイス60との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信システムを対象とする。限られたリソースの通信スキームにおいて効果的にメッセージを調整/管理する通信システムであって、IMD40が、患者の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は患者に治療信号を送達するように構成され、IMD40が、プロセッサと、外部デバイス60と双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、プロセッサが、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、IMD40のプロセッサが、応答メッセージ201、202、203、204をトランシーバ・モジュールから外部デバイス60に送るために、これらの応答メッセージ201、202、203、204を作成するように構成される、通信システムが開示される。本発明は、対応する通信方法、コンピュータ・プログラム製品及びコンピュータ可読データ・キャリアをさらに対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み型医療デバイス(IMD、40)と外部デバイス(60)との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信システム(10)であって、前記IMD(40)が、患者(30)の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は前記患者に治療信号を送達するように構成され、前記IMD(40)が、プロセッサと、前記外部デバイス(60)と双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、前記プロセッサが、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、前記IMD(40)の前記プロセッサが、応答メッセージ(201、202、203、204)を前記トランシーバ・モジュールから前記外部デバイス(60)に送るために前記応答メッセージ(201、202、203、204)を作成するように構成され、各応答メッセージ(201、202、203、204)が、前記応答メッセージ(201、202、203、204)内の事前定義されたロケーションにプロセッサ状態フィールドを含み、
前記プロセッサが現在事前定義された処理状態にある限り、事前定義された第1の値が、前記プロセッサ状態フィールドに割り当てられ、
前記プロセッサが現在前記処理状態にない場合に、前記第1の値とは異なる事前定義された第2の値が、前記プロセッサ状態フィールドに割り当てられる、通信システム(10)。
【請求項2】
前記プロセッサ状態フィールドの長さが、1ビットから4ビットである、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記応答メッセージ(201、202、203、204)が、近接応答メッセージ、ステータス報告応答メッセージ、データ・ペイロード/中継応答メッセージ、前記外部デバイスによって生成されたトリガ・ルーチンを通して取得された測定データを搬送する応答メッセージ、又は肯定応答メッセージである、請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記プロセッサ状態フィールドに割り当てられた前記第1の値を含む応答メッセージ(201、202、203、204)を前記IMD(40)から受信する前記外部デバイス(60)が、最新の応答メッセージ(201、202、203、204)が、前記プロセッサ状態フィールドに割り当てられた前記第2の値を含むまで、前記IMD(40)の前記トランシーバ・モジュールにすべての新規要求メッセージを送るのを待機するように構成される、請求項1から3までのいずれかに記載の通信システム。
【請求項5】
植え込み型医療デバイス(IMD、40)と外部デバイス(60)との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信システム(10)であって、前記IMD(40)が、患者(30)の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は前記患者に治療信号を送達するように構成され、前記IMD(40)が、プロセッサと、前記外部デバイス(60)と双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、前記プロセッサが、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、前記外部デバイス(60)が、要求メッセージ(101、102、103)を前記IMD(40)の前記トランシーバ・モジュールに送るために前記メッセージを作成するように構成され、各要求メッセージ(101、102、103)が、前記要求メッセージ(101、102、103)内の事前定義されたロケーションにシーケンス・フィールドを含み、前記シーケンス・フィールドが、前記シーケンス・フィールドに関連付けられた少なくとも第1の値と第2の値との間でトグルされ、前記外部デバイス(60)が、直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答を前記IMD(40)から受信した場合、第2の要求メッセージ(101、102、103)が、トグルされた前記第2の値を含み、又はその逆である、通信システム(10)。
【請求項6】
前記シーケンス・フィールドの長さが、1ビットから4ビットである、請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記要求メッセージ(101、102、103)が、近接要求メッセージ、ステータス要求メッセージ、データ要求メッセージ、モニタリング要求メッセージ、実行/測定要求メッセージ、プログラム書込みメッセージ、プログラム要求メッセージ、ステータス要求メッセージ、実行要求メッセージ、又はデータ要求メッセージである、請求項5又は6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記IMDが、直前に受信した要求メッセージ(101、102、103)の前記シーケンス・フィールドに割り当てられた値に等しい、前記シーケンス・フィールドに割り当てられた値を含む要求メッセージ(101、102、103)を前記外部デバイス(60)から受信した場合、前記IMD(40)が、前記外部デバイス(60)に繰り返し応答メッセージを送るよう構成される、ように構成される、請求項5から7までのいずれかに記載の通信システム。
【請求項9】
植え込み型医療デバイス(IMD、40)と外部デバイス(60)との間のデータ転送のための通信方法であって、前記IMD(40)が、患者(30)の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は前記患者に治療信号を送達するように構成され、前記IMD(40)が、プロセッサと、前記外部デバイス(60)と双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、前記プロセッサが、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、前記IMD(40)の前記プロセッサが、応答メッセージ(201、202、203、204)を作成して、前記応答メッセージ(201、202、203、204)を前記トランシーバ・モジュールから前記外部デバイス(60)に送るように構成され、各応答メッセージ(201、202、203、204)が、前記応答メッセージ(201、202、203、204)内の事前定義されたロケーションにプロセッサ状態フィールドを含み、
前記プロセッサが現在事前定義された処理状態にある限り、事前定義された第1の値が、前記プロセッサ状態フィールドに割り当てられ、
前記プロセッサが現在前記処理状態にない場合に、前記第1の値とは異なる事前定義された第2の値が、前記プロセッサ状態フィールドに割り当てられる、通信方法。
【請求項10】
前記プロセッサ状態フィールドに割り当てられた前記第1の値を含む応答メッセージ(201、202、203、204)を前記IMD(40)から受信する前記外部デバイス(60)が、最新の応答メッセージ(201、202、203、204)が、前記プロセッサ状態フィールドに割り当てられた前記第2の値を含むまで、前記IMD(40)の前記トランシーバ・モジュールにすべての新規要求メッセージ(101、102、103)を送るのを待機する、請求項9に記載の通信方法。
【請求項11】
植え込み型医療デバイス(IMD、40)と外部デバイス(60)との間のデータ転送のための通信方法であって、前記IMD(40)が、患者(30)の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は前記患者に治療信号を送達するように構成され、前記IMD(40)が、プロセッサと、前記外部デバイス(60)と双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、前記プロセッサが、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、前記外部デバイス(60)が、要求メッセージ(101、102、103)を前記IMD(40)の前記トランシーバ・モジュールに送るために前記メッセージを作成するように構成され、各要求メッセージ(101、102、103)が、前記要求メッセージ(101、102、103)内の事前定義されたロケーションにシーケンス・フィールドを含み、前記シーケンス・フィールドが、前記シーケンス・フィールドに関連付けられた少なくとも第1の値と第2の値との間でトグルされ、前記外部デバイス(60)が、直前に送られた第1の要求メッセージ(101、102、103)に対する有効な応答を前記IMD(40)から受信した場合、第2の要求メッセージ(101、102、103)が、トグルされた前記第2の値を含み、又はその逆である、通信方法。
【請求項12】
前記応答メッセージ(201、202、203、204)が、近接応答メッセージ、ステータス報告応答メッセージ、データ・ペイロード/中継応答メッセージ、前記外部デバイスによって生成されたトリガ・ルーチンを通して取得された測定データを搬送する応答メッセージ、又は肯定応答メッセージであり、前記要求メッセージ(101、102、103)が、近接要求メッセージ、ステータス要求メッセージ、データ要求メッセージ、モニタリング要求メッセージ、実行/測定要求メッセージ、プログラム書込み要求メッセージ、プログラム要求メッセージ、ステータス要求メッセージ、実行要求メッセージ、又はデータ要求メッセージである、請求項9又は10に記載の通信方法。
【請求項13】
前記IMD(40)が、直前に受信した要求メッセージ(101、102、103)の前記シーケンス・フィールドに割り当てられた値と等しい、前記シーケンス・フィールドに割り当てられた値を含む要求メッセージ(101、102、103)を前記外部デバイス(60)から受信した場合、前記IMD(40)が、繰り返しメッセージを前記外部デバイス(60)に送る、請求項9から12までのいずれかに記載の通信方法。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、請求項9から13までのいずれかに記載の方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータ・プログラム製品。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータ・プログラム製品を記憶するコンピュータ可読データ・キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え込み型医療デバイス(IMD: implantable medical device)と外部デバイスとの間のデータ転送のために通信システムであって、IMDが、患者の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は患者に治療信号を送達するように構成される、通信システムを対象とする。外部デバイスは、少なくとも部分的に体外に配置されている。本発明は、対応するデータ転送のための方法、対応するコンピュータ・プログラム及び対応するコンピュータ可読データ・キャリアをさらに対象とする。コンピュータ・プログラム製品は、例えば、IMD及び/又は外部デバイス内のハードウェア・サポート手段に関連するソフトウェア・ルーチンであってもよい。
【背景技術】
【0002】
能動及び受動植え込み型医療デバイス(IMD)、例えば、ペースメーカ(リード付き)、植え込み型心臓モニタ(ICM:Implantable Cardiac Monitor)、植え込み型リードレス・ペーサ(ILP:Implantable Leadless Pacer)、植え込み型リードレス圧力センサ(ILPS:Implantable Leadless Pressure Sensor)、植え込み型心臓除細動器(ICD:Implantable Cardiac Defibrillator)又は皮下植え込み型心臓除細動器(Subcutaneous Implantable Cardiac Defibrillator)(すなわち、S-ICD)は、患者の健康ステータスをモニタリングするために生理学的信号を収集し、それらをデータとして、外部デバイスを使用して医師のデバイス又はリモート・サーバに送信するセンサを含む。これらの様々な又は任意のそのようなセンサから収集されたデータは、限定されないが、ECG、インピーダンス、活動、姿勢、心音、圧力、呼吸、及び他のデータを含むことができる。能動IMD(例えば、ペースメーカ、ILP、ICD、又はS-ICD)は、治療出力、例えば、心腔(例えば、心房又は心室)内の電気的刺激を患者に提供してもよい。
【0003】
通常、そのようなIMDは、データ処理のためのプロセッサと、例えば、患者の体内に植え込まれている場合に外部デバイスと双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとで構成される。場合によりそれ自体のトランシーバを使用する外部デバイスもまた、IMDのトランシーバ・モジュールと双方向にメッセージを交換するように構成される。外部デバイスは、コンピュータ(プログラマと呼ばれる場合もある)に接続された別個のデバイスであってもよいし、コンピュータなどのリモート・デバイス内に一体化されたモジュールであってもよい。外部デバイスは、例えば、患者の健康ステータス若しくはIMDのステータスに関するデータをIMDから受信するため、又は(患者に適切な治療を適用するようにIMDを構成する目的で)プログラミングするために、要求の形でメッセージを作成し、それらをIMDのトランシーバに送る。
【0004】
データを処理したり、データにアルゴリズムを適用したり、IMDに外部デバイスとの通信の管理を行わせたりすることは、IMD内の低電力要件や限られた計算リソースに起因する困難や欠点を呈する。そのようなルーチンの管理の大半は、デバイスの寿命に悪影響を及ぼすリスクを伴うことなしにIMD内で行うことはできない。(有意義な臨床的利益への最良のアクセスを実現して)IMDの寿命を延ばすためには、IMD内により多くの電力/エネルギーを収容する要望がある。残念ながら、高電力/エネルギー密度のバッテリ・ケミストリを通して、IMD内にそのような電力/エネルギーを組み込むことができない場合、寿命を延ばすために、より大きなバッテリを使用することが求められ得る。最新技術のIMDのサイズが小さいことを考慮すると、バッテリが大きくなると、IMDの物理的サイズが増大するリスクがあり、このこともまた、寿命が損なわれることと同様に、臨床的に望ましくない(特に心臓ボリューム内に駐留するタイプのデバイスであるリードレス・ペースメーカIMDの場合)。したがって、IMDシステム内で必要となる通信インフラ及びメッセージ処理は、低エネルギー動作のために最適化される必要がある。
【0005】
そのような最適化された通信及びメッセージングはまた、通信インフラの過負荷(例えば、バスに対する情報ルーティング等)を回避し、
1.)外部デバイスなどのシステム内コマンド開始ソースが、それの生成された(instate)要求の処理についてIMDなどのダウンストリーム・ハンドラにより通知されるような方法で、
2.)IMDが、外部デバイスからの繰り返しの要求を受ける、起こり得るあらゆる種類の問題のある処理(すなわち、外部デバイスが、IMDを要求したことに気づいておらず、したがって「再試行した」場合)を回避するような方法で、
3.)望ましくないオーバーヘッドをもたらすことなく、IMD内のデータ・メモリを通してナビゲーションを管理するための手段を提供するような方法で、
コマンド/応答ダイナミックを適切に構築する必要がある。
【0006】
通信プロトコル/アーキテクチャは、システム内のデータ処理ユニットのステータスをポーリングするための何らかの機能を備えていることが知られている。そのようなサポートは、しばしば、ダウンストリーム・ハンドラが前に発行した要求のサービス状況における進捗に関して報告することができる1つ又は複数のシステム内コマンド開始ソースからの「ピング」要求を具体化する(例えば、Windows(登録商標)アプリケーションのインストール・プロセスでよく見るタスク完了バー)。そのような状況は、複雑度の異なる様々な形を取る可能性があるが、しばしば、ダウンストリーム・ハンドラに「終了しましたか?」と尋ねる特定のコマンド又は一連のコマンドに相当する。しかしながら、そのような通信プロシージャは、IMDと外部デバイスとの間のデータ・メッセージ・リンクの過度な混雑を引き起こす可能性があり、システムが、持続時間内に長引かせないような方法で要求及びデータ転送に効率的に対処することが困難となる。
【0007】
また、通信システムでは、システムが、アクションへの呼び出しを生成するアップストリーム・コマンド開始ソースによる繰り返しの衝撃を受ける混乱/困難を防止するアーキテクチャ的特徴を、ダウンストリーム・ハンドラに設けていることが一般的である。そのような機構は、しばしば、そのような要求を保持することができるバッファ又はスタックをダウンストリーム・ハンドラ内に具体化する。最良の実施例では、そのようなシステムは、特定の順序で要求されたコマンドのリストを積み上げることができ、データ・ハンドラがより古い要求を完了すると、ローカル・バッファが「ポップ」されて、さらなるアクションを進めることができる。さらに、適切な判断力を伴って、バッファをロードする機能が、コマンドの繰り返しをフィルタリングし、新規アイテムを伴うバッファ/スタックをだけをロードすることもできる。この手法は、システム内のユニット(すなわち、ダウンストリーム・ハンドラ)に解釈、対処、及び管理の複雑さを追加する可能性があり、内部で利用可能な計算及びストレージ・リソースとの兼ね合いが良くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、限られたリソースの通信スキームにおいて、メッセージを効果的に調整/管理する通信システム及び方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、請求項1及び/又は請求項5の特徴を有する、IMDと外部デバイスとの間のデータ転送のための通信システム、請求項9及び/又は請求項11の特徴を有する対応する通信方法、請求項14の特徴を有するコンピュータ・プログラム製品、並びに請求項15の特徴を有するコンピュータ可読データ・キャリアによって解決される。
【0010】
具体的には、課題は、特に植え込み型医療デバイス(IMD)と外部デバイスとの間のワイヤレス・データ転送のための通信システムであって、IMDが患者の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は患者に治療信号を送達するように構成され、IMDが、プロセッサと、外部デバイス(IMDが、例えば、患者の体内に植え込まれている場合)との間の双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、プロセッサが、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、IMDのプロセッサが、応答メッセージをIMDのトランシーバ・モジュールから外部デバイスに送るために、これらの応答メッセージを作成するように構成され、各応答メッセージが、応答メッセージ内の事前定義されたロケーションにプロセッサ状態フィールド又はセクションを備え、
・プロセッサが現在(すなわち、現時点で)事前定義された処理状態にある限り、事前定義された第1の値が、プロセッサ状態セクションに割り当てられ、
・プロセッサが現在(すなわち、現時点で)処理状態にない場合に、第1の値とは異なる事前定義された第2の値が、プロセッサ状態セクションに割り当てられる、通信システムによって解決される。
【0011】
IMDは、上で定義されたように、患者の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は患者に治療信号を送達するように構成された植え込み型医療デバイスである。
【0012】
プロセッサ状態フィールドは、1ビットより長いことがあるため、値はまた、以下のように定義することができる。
・プロセッサが現在事前定義された処理状態にある限り、事前定義された第1の値のセットが、プロセッサ状態フィールドに割り当てられ、
・プロセッサが現在処理状態にない場合に、第1の値とは異なる事前定義された第2の値が、プロセッサ状態フィールドに割り当てられる。
【0013】
代替又は追加として、特定の要求メッセージのタイプ又はセットに対する異なるレベルの感受性を反映する、すなわち、現在のプロセッサ/タスク優先度を外部デバイスに公開し、どのようなタイプの要求がIMDによって受け付けられ、現在進行中のプロセッサ活動を中断するのかを伝えるような、異なる状態が定義され得る。
【0014】
IMDは、データ処理のためのプロセッサと、外部デバイスからメッセージ(すなわち、通信信号)を送り、外部デバイスにメッセージを送信するためのトランシーバ・モジュール(例えば、適切な通信管理機能又はアンテナに接続されたコイル)とを備える。IMDのトランシーバ・モジュールによって送られたメッセージは、以下で「応答メッセージ」と呼ばれる。メッセージは、明確に定義されたアルゴリズム及びデータ構造において表現され、それらによって解釈される通信プロトコルの一部として定義された構文・意味システムに埋め込まれたビット列である。要求メッセージとも呼ばれる、IMDのトランシーバ・モジュールによって受信されたメッセージは、データ処理のためにプロセッサに中継される。同様に、プロセッサは、信号/メッセージの内容を作成し、これらの信号/メッセージは、次いで、外部デバイスに応答メッセージとして送るためにトランシーバ・モジュールに中継される。
【0015】
IMDは、データを記憶するためのメモリ、バッテリ・サポート等を含む電源、患者から生理学的信号を取得するための少なくとも1つのセンサ、並びに/又は、例えば、電気若しくは電磁治療信号を発生及び投与するための信号発生器などのさらなるモジュールを備えてもよい。トランシーバ・モジュール、メモリ、電源、少なくとも1つのセンサ、及び/又は信号発生器は、プロセッサに電気的に接続されてもよい。
【0016】
IMDのメモリは、ランダム・アクセス・メモリ(RAM:random access memory)、リードオンリー・メモリ(ROM:read-only memory)、不揮発性RAM(NVRAM:non-volatile RAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM: electrically-erasable programmable ROM)、フラッシュ・メモリ、又は任意の他のメモリ・デバイスなど、任意の揮発性、不揮発性、磁気、又は電気媒体を含んでもよい。
【0017】
外部デバイスは、少なくとも部分的に体外に配置されてもよく、プロセッサを有するコンピュータ(例えば、医師のデバイス、リモート・サーバ、プログラマ)にワイヤレス又は有線で接続された別個のモジュールであってもよい。代替として、外部デバイスは、そのようなコンピュータの一体型ユニットであってもよく、例えば、プログラマの一体型ユニットを形成してもよい。双方向通信のために、外部デバイスは、メッセージ(信号)のためのトランシーバ、例えば、通信モジュール又はアンテナに接続されたコイルを備えてもよい。通信モジュールは、特に、コンピュータとは別個のモジュールである場合、プロセッサを備えてもよいし、それとインタフェースしてもよい。
【0018】
外部デバイスとIMDとのワイヤレス通信は、(無線の)空中通信を含む。通信は、誘導型磁気手段、音響的方法(例えば、超音波)、並びに/又は音響波、光波及び/若しくは電磁波、例えば、無線周波数領域におけるBluetooth、WLAN、ZigBee、NFC、Wibree若しくはWiMAX、又は赤外若しくは光周波数領域におけるIrDA若しくは自由空間光通信(FSO:free-space optical communication)を使用してもよい。
【0019】
本発明に関して言えば、各プロセッサは、命令制御ユニット並びに算術及び論理ユニットを含む、命令を解釈及び実行する、それぞれ、IMD、外部デバイス及び/又はコンピュータの機能ユニットとしてみなされる。(リモート)コンピュータ又は外部デバイス、すなわち、例えば、パーソナル・モバイル・デバイス(PMD:personal mobile device)、デスクトップ・コンピュータ、サーバ・コンピュータ、クラスタ/ウェアハウス・スケール・コンピュータ又は埋め込みシステムなど、人間の介入なしに多数の算術演算及び論理演算を含む、実質的な計算を行うことができる機能ユニットである。
【0020】
本発明によれば、IMDのプロセッサは、少なくともアクティブ状態及び/又は処理状態を採用する。処理状態では、プロセッサは、(1つ又は複数の応答において)内部に記憶されたデータを収集する、集める、若しくは外部に送信するか、又はIMDの即座応答能力を遅らせる期間、(例えば、治療用途のために)測定を収集する若しくはルーチンを実行するための制御若しくはアクションを行う必要がある。したがって、処理状態では、プロセッサは、外部要求に応答し、且つ/又は内部ルーチン/アルゴリズムに従ってデータを処理するように動作する。以下では、処理状態は、「ビジー状態」とも呼ばれる。IMDの通信サポートが、「ビジー状態」ではないが、外部デバイスとの通信リンクに携わっているとき、これは、単に「アクティブ状態」(トランシーバが、オンであり、IMDが外部デバイスとのさらなるインタラクションのための準備ができている)にある。アクティブ状態では、プロセッサは、「ビジー」ではなく、次に対処され得る外部デバイスからの要求を受信することができる。プロセッサが、「アクティブ状態」(すなわち、初期スタンバイ状態)から「処理状態」へと変化する条件は、事前定義され、例えば、IMDのデータ・メモリに記憶されてもよいし、外部デバイスからの任意の特定の要求の対処及びそのような対処のために結果として必要となる緊急の持続時間により、単にそのような遷移が生成されてもよい。IMDを「ビジー状態」に留めていた各々のタスクを終了した後、プロセッサは、「アクティブ状態」に切り替え復帰する。
【0021】
本発明に従って、プロセッサの状態について外部デバイスに通知するために、IMD(すなわち、そのトランシーバ・モジュール)によって送られる各応答メッセージは、応答メッセージ内の事前定義されたロケーションにプロセッサ状態フィールドを含み、
・プロセッサが現在事前定義された処理状態にある限り、事前定義された第1の値が、プロセッサ状態フィールドに割り当てられ、
・プロセッサが現在処理状態にない場合に、第1の値とは異なる事前定義された第2の値が、プロセッサ状態フィールドに割り当てられる。
【0022】
ロケーション(情報)は、ラッパ(すなわち、非ペイロード部分)内の単一ビットであってもよい。このビットは、通信システムにおける送信側及び受信側の双方によって理解されているロケーションである。このビットが、送信側及び受信側の双方によって知られている/理解されているロケーションである限り、文字通りそれがメッセージ内のどこに存在するのかは重要ではない。これは、最初のビット又は何らかの他のビットである可能性がある。署名確認が、しばしば、メッセージの最後に存在しているため、最後のビットである可能性は低いが、そのような設計を強制する規則があるわけではない。
【0023】
IMDによって送信されるすべてのメッセージは、IMDのプロセッサが、上で定義されたように、それぞれ、少なくとも第1の値又は第2の値を、送信されたメッセージ内のプロセッサ状態フィールドに割り当てることを伴う。したがって、このフィールド内の追加の値の送信も排除されないが、フィールドの長さによる。一実施例では、プロセッサ状態フィールドの長さは、1ビットから4ビットである。プロセッサ状態フィールドが1ビット(「ビジー・ビット」)である場合、例えば、第1の値は、値1であってもよく、第2の値は、値0であってもよい。この非常に簡略化された手法は、IMDが、はい/いいえ、ビジー/ビジーではない、1/0のみのスタイルのトグルを使用して最後に受信された要求メッセージからの処理タスクをプロセッサが完了したか否かを(プロセッサ状態フィールドを通して)報告することを意味する。
【0024】
コマンド・ソース(外部デバイス)が、コマンド・ハンドラ(IMD)の準備状態を判断するための手段について上で説明した。これはまた、コマンド・ハンドラ(IMD)がコマンドを受信する準備ができるまで、コマンド・ソース(外部デバイス)が追加のコマンドの送信を制限するために使用される。また、コマンド・ソース(外部デバイス)は、このステータスへの更新に対してポーリングする追加の非コマンドを送ってもよい。
【0025】
一実施例では、プロセッサ状態フィールドに割り当てられた第1の値を含む応答メッセージをIMDから受信する外部デバイスは、外部デバイスがプロセッサ状態フィールドに割り当てられた第2の値を含むメッセージを受信するまで、IMDのトランシーバ・モジュールにすべての新規要求メッセージを送るのを停止するように構成される。待機を必要とするそのような要求メッセージは、事前定義され、例えば、外部デバイスのデータ・メモリに記憶されてもよいし、前述したように、任意の受信した要求/命令に対処するときに処理時間を延長するIMD内の優勢状況から単に出現してもよい。
【0026】
上で定義されたリードレス通信スキームは、シングルスレッド・コマンド処理の概念に基づいている。これに関連して、現在のコマンドの処理及び対処がIMDによって完了されるまで新規コマンドを処理することはできない。そのようなサポートが、特に適切であることが判明したケースは、デバイスのフォローアップの問合せ、プログラミング、及びテスト・ルーチンに見られる。本発明によれば、IMDは、シングルスレッド・アーキテクチャを破壊することになる要求の混雑に直面するのを回避する手段として、その事前定義された処理状態(すなわち、「進行中」又は「ビジー」ステータス)をユーザ側インフラ(すなわち、外部デバイス)に報告するための手段を提供する。本発明によれば、プロセッサ状態セクションは、IMDから中継されたメッセージに組み込まれ、リードレス・システム・パケット設計の一部として使用されて、IMDステータス通信が、前に受信した要求に関連する対処が完了する前に、外部デバイス側のリソースからの新規要求の調整をサポートすることを可能にする。
【0027】
本発明による通信システムは、IMDのプロセッサの処理状態に関してリードレス通信インフラ内で能動フィードバックを提供し、高レベル機能サポートを最適化するための労力を困難にする可能性のある要求メッセージの氾濫により、限られたリソースのシステムが圧倒されるのを回避する。IMDから外部デバイスにリアルタイムのストリーミング・データを渡すためのサポートを不必要に邪魔することなくコマンド・データが管理され得るため、通信システムは、送信側(すなわち、外部デバイス)と受信側(すなわち、IMD)との間のデータ中継のための帯域幅節約ハンドシェイク機構を提供する。
【0028】
一実施例では、要求メッセージ(外部デバイスからIMDに送られるメッセージ)は、(近接コマンド中継とも呼ばれる)IMDと外部デバイスとの間のデータ・リンクを維持することを名目上意図された近接要求メッセージ(すなわち、指定された時間間隔で送られる、外部デバイスからの通常要求)、モニタリング要求メッセージ(すなわち、IMD内に記憶されるか若しくはIMDによって収集可能な特定の実際の生理学的信号を決定することの要求)、データ要求メッセージ(すなわち、IMD内で記憶された特定のデータ若しくはIMD内のパラメータ状態の送達の要求)、プログラム書込みメッセージ(すなわち、特定の治療パラメータ等を設定するための命令)、ステータス要求メッセージ(すなわち、充電のバッテリの状態などのステータス・パラメータの状況を提供することの要求)、又は実行要求メッセージ(すなわち、指定されたルーチン若しくはプログラム・シーケンスの実行の要求)である。
【0029】
一実施例では、プロセッサ状態フィールドに割り当てられた第1の値を含む応答メッセージをIMDから受信する外部デバイスは、最新の応答メッセージがプロセッサ状態フィールドに割り当てられた第2の値を含むまで、IMDのトランシーバ・モジュールに特定のタイプの新規要求メッセージを送るのを待機するように構成される。
【0030】
一実施例では、応答メッセージ(IMDによって外部デバイスに送られるメッセージ)は、近接応答メッセージ(すなわち、近接要求メッセージに対する応答)又は報告応答メッセージ(すなわち、モニタリング、データ要求、プログラム、若しくは実行要求メッセージに対する応答)であり、後者は、IMDが必要な対処を完了した後に送信される。IMDの結果的な任務が、対応する要求をIMDが受信したこと(すなわち、肯定応答)を単に外部デバイスに通知することのみを中心とする場合には、名目上の瞬時応答となる。
【0031】
一実施例では、応答メッセージは、近接応答メッセージ、ステータス報告応答メッセージ、データ・ペイロード/中継応答メッセージ、外部デバイスによって生成されたトリガ・ルーチンを通して取得された測定データを搬送する応答メッセージ、又は肯定応答メッセージである。
【0032】
追加又は代替として、外部デバイスは、送信要求メッセージをIMDのトランシーバ・モジュールに送るために、これらのメッセージを作成するように構成されてもよく、各要求メッセージは、要求メッセージ内の事前定義されたロケーションにシーケンス・フィールドを含み、シーケンス・フィールドは、シーケンス・セクションに関連付けられた少なくとも第1の値と第2の値との間でトグルされ、外部デバイスが、第1の値を含む直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージは、トグルされた第2の値を含み、又はその逆である(すなわち、外部デバイスが、第2の値を含む直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージは、トグルされた第1の値を含む)。
【0033】
したがって、上記課題はまた、特に、植え込み型医療デバイス(IMD)と外部デバイスとの間のワイヤレスのデータ転送のための通信システムであって、IMDが患者の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は患者に治療信号を送達するように構成され、IMDが、プロセッサと、外部デバイス(IMDが、例えば、患者の体内に植え込まれている場合)と双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、プロセッサが、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、IMDのプロセッサが、応答メッセージをIMDのトランシーバ・モジュールから外部デバイスに送るために、これらの応答メッセージを作成するように構成され、外部デバイスは、送信要求メッセージをIMDのトランシーバ・モジュールに送るために、これらのメッセージを作成するように構成されてもよく、各要求メッセージが、要求メッセージ内の事前定義されたロケーションにシーケンス・フィールドを含み、シーケンス・フィールドは、シーケンス・セクションに関連付けられた少なくとも第1の値と第2の値との間でトグルされ、外部デバイスが、第1の値を含む直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージが、トグルされた第2の値を含み、又はその逆である(すなわち、外部デバイスが、第2の値を含む直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージが、トグルされた第1の値を含む)、通信システムによって解決され得る。
【0034】
一実施例では、外部デバイスは、要求メッセージを生成し、それらをIMDのトランシーバ・モジュールに送信するように構成され、各要求メッセージは、要求メッセージ内の事前定義されたロケーションにシーケンス・フィールドを含み、シーケンス・フィールドは、シーケンス・セクションに関連付けられた少なくとも第1の値と第2の値との間でトグルされ、外部デバイスが、第1の値を含む直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージは、トグルされた第2の値を含み、又はその逆である(すなわち、外部デバイスが、第2の値を含む直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージは、トグルされた第1の値を含む)。一実施例では、シーケンス・フィールドの長さは、1ビットから4ビットである。シーケンス・フィールドが1ビット(「シーケンス・ビット」)である場合、例えば、第1の値は1であり、第2の値は0である。
【0035】
一実施例では、要求メッセージは、近接要求メッセージ、ステータス要求メッセージ、データ要求メッセージ、モニタリング要求メッセージ、実行/測定要求メッセージ、プログラム書込みメッセージ、プログラム要求メッセージ、ステータス要求メッセージ、実行要求メッセージ、又はデータ要求メッセージである。
【0036】
一実施例では、通信システムは、IMDが、直前に受信した要求メッセージのシーケンス・フィールドに割り当てられた値に等しい、シーケンス・フィールドに割り当てられた値を含む要求メッセージを外部デバイスから受信した場合、IMDが、繰り返し応答メッセージとも呼ばれる、その応答メッセージの繰り返しを外部デバイスに送るよう構成されるように、構成される。IMDからの適切なメッセージ応答又は応答メッセージを受信することを条件として、外部デバイスは、次のメッセージのシーケンス・フィールドに、最後に送られた要求メッセージの値とは異なる値を割り当てることになる。ただし、外部デバイスが、所定の持続時間又は他の満たされた条件の後に適切な応答メッセージを受信しなかった場合、外部デバイスは、その最後に送られたメッセージを繰り返し、その繰り返されたメッセージ内のシーケンス・フィールドを変更せずにおく(すなわち、最後の要求コマンド状態と同じにする)。外部デバイスからIMDに送られた最後の要求メッセージのシーケンス・フィールド値は、新規コマンド又は成功しなかったメッセージングの再試行が実施されているかどうかを管理するための手段としてIMD及び/又は外部デバイス内のメモリに記憶されてもよい。
【0037】
IMDと外部デバイスとの間の通信は、介在する患者の解剖学的構造により、システム内の送信モジュールと受信モジュールとの間に実質的な物理的隔離がもたらされるチャネルを使用するため、すべての要求メッセージがIMDに到達するわけではなく、すべての応答メッセージが外部デバイスに到達するわけではないことが認識されていた。したがって、外部デバイスが、送られた要求メッセージがIMDによって処理されたかどうかを判断できない場合、システムは、外部デバイスが要求メッセージを繰り返していることをIMDが認識し、そのような着信メッセージングの対処が、複雑でない方法で生じることを確実にするための手段を備えることが重要である。シーケンス・フィールド機構はまた、IMD内の大きなメモリ・ブロックの問合せが行われる必要がある場合に通信データ・リンクの効率性にアクセスするために利用されてもよい。特定のIMD内メモリ・アドレス・ターゲットを含むコマンド要求を作成するのではなく、単に、「問合せ」が進められることを求めるようにコマンド及びシステム設計を構築することができる。システム(すなわち、IMD及び外部デバイス)は、所与のIMDタイプに対して問合せ可能な主要情報が、IMDメモリの所定部分に常に存在するように設計される。設計によって決定されるこの情報により、外部デバイスとIMDとの間で送られるメッセージング内にアドレス指定を含む必要がない。システムは、そのようなシーケンスの一部としてどの程度のメモリが読み出される必要があるかを(事前に)知り、今度は、IMDに対する「問合せ」スタイルのコマンドを発行する。このような「問合せ」スタイルのコマンドは、最初に送られたときに新規状態に設定されるシーケンス・フィールドを含む。IMDが、このプロセスによって要求されたデータの適切な最初の部分を外部デバイスに返す場合、外部デバイスは、シーケンス・フィールド値を変更し、「問合せ」スタイルのコマンドを再発行することができる。変更されたシーケンス・フィールドをIMDが認識することは、外部デバイスが、「問合せ」スタイルのコマンドによって要求されたデータの最初の部分を受信したことをIMDに通知し、今度は、外部デバイスが読み出すことを目的としているIMD内データの大きなブロックのうちの「次の」部分を送ることによって応答する。このプロセスは、データの全ブロックが、成功裏に外部デバイスに中継されるまで続くことになる(そのようなプロセス中の再試行は、最後に送られた「問合せ」スタイルのコマンドに一致した状態にシーケンス・フィールドを留める、「問合せ」スタイルのコマンドの逐次的送信を通して可能にされる)。上述したように、このプロセスをサポートするためのシーケンス・フィールドとして、送られた要求メッセージ内の1つ又は複数のビットを使用することができる。これらのシーケンス・フィールドの状態は、外部デバイス側インフラが、有効な応答をIMDから受信するたびに更新される。すべてのコマンド及び応答が、破壊、パケット損失、又は干渉なしに通信チャネルを通過した場合、外部デバイスから中継された各コマンドは、少なくとも2つの利用可能な状態の間で行ったり来たりするシーケンス・フィールドに割り当てられた値を示す。要求メッセージがIMDによって受信されなかった場合(したがって応答する能力がなかった場合)、又はIMDが応答したが、その応答が外部デバイス側インフラに到達しなかった場合、シーケンス・フィールドに割り当てられた値は、定常状態を保持する。1つ又は複数のタイムアウト機構(例えば、IMDがコマンドに対処して応答することが可能となる十分な時間の間待機すること)ことを条件として、外部デバイス側インフラは、コマンドが受信又は対処されていないことを知ることができ、シーケンス・フィールドが変更されていない未処理/未回答のコマンドを再送し得る。変更されていないシーケンス・フィールドを持つコマンドを受信することにより、IMDはコマンドが再試行であることを知ることができ、これにより、IMDは、コマンドを繰り返すか又は単に同じ応答を再送することが可能となる。このようにして、本手法は、大きなデータ・ブロックのセグメント化/問合せの必要性に容易に対処しやすくする。
【0038】
本手法は、着信要求メッセージのIMDの対処が、個々の要求の「新規」対「再試行」の状態に関して常に通知され、コマンドの実行/処理を再開することにより生じ得る潜在的な問題のある状況の回避を支援することを確実にするための専用機構をリードレス通信インフラ内に設ける。また、シーケンス・フィールドの使用/実施例は、データのセグメント化のための(すなわち、長い書込み又は読出しが必要となる際に外部デバイス側インフラからメモリ又はロケーション・ポインタ情報を送るのではなく)帯域幅節約トランスポート機構を設ける。IMD内のデータの次のセグメントに「ホップする」ことが適切なタイミングで植え込み機器に通知するだけで、メッセージ自体を短くすることができる。さらに、上で説明した機能は、ベースライン・メッセージ構造内に機能を埋め込み、IMD内のメッセージ・バッファリング・スキームの必要性を回避することにより、低オーバーヘッドの方法で実現することができる。
【0039】
IMD内のメモリの大きなブロックとの連携を管理するための上述のメッセージング・スキームは、確かに、説明した通信プロトコルに関連付けられた必要なプロセッサ状態及びシーケンス・フィールドを含むコマンド及び応答メッセージを伴うが、これらは、メッセージ送信間の事前定義された許容可能な最大持続時間との相互作用に起因して、コマンド・インタラクションが目標とする完全なペイロードを欠くIMD応答を伴うように特別に設計されている。そのような場合、完全なターゲット・ペイロードは、各々が別個に送られるIMDからのいくつかの応答にわたって分割される。これらの部分的なセグメント化された応答の各々内のフィールドは、今度は、各々が搬送するペイロードの長さ(例えば、1から4ビット)を定義するビット列を提供する。
【0040】
同様に、上記課題は、植え込み型医療デバイス(IMD)と外部デバイスとの間のデータ転送のための通信方法によって解決される。本方法は、システムに関して前述したような利点を有する。具体的には、IMDは、患者の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は患者に治療信号を送達するように構成され、IMDは、プロセッサと、外部デバイスと双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、プロセッサは、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、IMDのプロセッサは、応答メッセージを作成して、これらの応答メッセージをそのトランシーバ・モジュールから外部デバイスに送り、各応答メッセージは、応答メッセージ内の事前定義されたロケーションにプロセッサ状態フィールドを含み、
・プロセッサが現在事前定義された処理状態にある限り、事前定義された第1の値が、プロセッサ状態フィールドに割り当てられ、
・プロセッサが現在処理状態にない場合に、第1の値とは異なる事前定義された第2の値が、プロセッサ状態フィールドに割り当てられる。
【0041】
したがって、一実施例では、プロセッサ状態フィールドに割り当てられた第1の値を含む応答メッセージをIMDから受信する外部デバイスは、最新の応答メッセージがプロセッサ状態フィールドに割り当てられた第2の値を含むまで、IMDのトランシーバ・モジュールにすべての新規要求メッセージを送るのを待機する(又はある1つの新規要求メッセージを送るのを待機する)。
【0042】
追加又は代替として、外部デバイスは、要求メッセージを作成し、それらを、IMDのトランシーバ・モジュールに送ってもよく、各要求メッセージは、要求メッセージ内の事前定義されたロケーションにシーケンス・フィールドを含み、シーケンス・フィールドは、シーケンス・フィールドに関連付けられた少なくとも第1の値と第2の値との間でトグルされ、外部デバイスが、直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージは、トグルされた第2の値を含み、又はその逆である。
【0043】
したがって、上記課題はまた、植え込み型医療デバイス(IMD)と外部デバイスとの間のデータ転送のための通信方法であって、IMDが、患者の健康ステータスをモニタリングするように構成され、且つ/又は患者に治療信号を送達するように構成され、IMDが、プロセッサと、外部デバイスと双方向にメッセージを交換するように構成されたトランシーバ・モジュールとを備え、プロセッサが、少なくとも事前定義されたアクティブ状態及び事前定義された処理状態を採用し、外部デバイスが、要求メッセージをIMDのトランシーバ・モジュールに送るために、これらのメッセージを作成し、各要求メッセージが、要求メッセージ内の事前定義されたロケーションにシーケンス・フィールドを含み、シーケンス・フィールドが、シーケンス・フィールドに関連付けられた少なくとも第1の値と第2の値との間でトグルされ、外部デバイスが、直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージが、トグルされた第2の値を含み、又はその逆である、通信方法によって解決され得る。
【0044】
代替又は追加として、外部デバイスは、要求メッセージをIMDのトランシーバ・モジュールに送るために、これらのメッセージを作成し、各要求メッセージは、要求メッセージ内の事前定義されたロケーションにシーケンス・フィールドを含み、シーケンス・フィールドは、シーケンス・フィールドに関連付けられた少なくとも第1の値と第2の値との間でトグルされ、外部デバイスが、直前に送られた第1の要求メッセージに対する有効な応答をIMDから受信した場合、第2の要求メッセージは、トグルされた第2の値を含み、又はその逆である。
【0045】
さらに、一実施例では、IMDが、直前に受信した要求メッセージのシーケンス・フィールドに割り当てられた値に等しい、シーケンス・フィールドに割り当てられた値を含む要求メッセージを外部デバイスから受信した場合、IMDは、その応答メッセージの繰り返しを外部デバイスに送るように構成される。
【0046】
上記方法のうちの少なくとも1つは、例えば、(外部デバイス及び/又はIMD内で、特に、必要に応じてそれらの各々のプロセッサを利用して実行される)ルーチン又はアルゴリズムとして実現され、このルーチン又はアルゴリズムは、システムが計算又は制御動作を実行することを可能にする上記及び以下で指定される命令及びデータ定義の組合せであるか、又は特定のプログラミング言語の規則に準拠し、上記及び以下で指定される機能、タスク、若しくは課題解決に必要な宣言及び文若しくは命令で構成される構文単位である。
【0047】
また、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、上で定義された方法のステップを実行させる命令を備えるコンピュータ・プログラム製品が開示される。したがって、そのようなコンピュータ・プログラム製品を記憶するコンピュータ可読データ・キャリアについて説明する。
【0048】
ここで、添付の概略的図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】植え込み型リードレス・ペースメーカ(ILP:implantable leadless pacemaker)と外部デバイスとを備える本発明の通信システムの一実施例を示し、ILPが患者の心臓の断面内に示される図である。
【
図2】本発明の通信方法の第1の実施例のフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、例示の通信システム10と、患者30の心臓20(右心室21及び右心房22を有する)とを示す。システム10は、IMDの実例としてのリードレス心室ペースメーカ・デバイス40(以下「ILP40」)と、外部デバイス60とを備える。ILP40は、心臓20の右心室21内に植え込まれ、この心室をペーシングし、内因性心室脱分極及びインピーダンスを検知し、検出した心室脱分極に応答して心室ペーシングを抑制するように構成されてもよい。ILP40は、(例えば、重力による加速力を求めることにより)患者30の姿勢を測定するための加速度計センサをさらに備えてもよい。プログラマ(図示せず)が、外部デバイス60を使用してILP40をプログラミングするために使用されてもよい。外部デバイス60は、体外に配置され、ILP40と双方向に通信するように適合されている。
【0051】
ILP40は、プロセッサ、データ・メモリ、処置信号(例えば、ペーシング信号)を提供するための信号発生器ユニット、ECG測定ユニットを備える測定ユニット、DCインピーダンス・センサ及び加速度計センサ、外部デバイス60とメッセージを送受信するためのトランシーバ、並びに電源などのモジュールを備えてもよく、前記モジュールの各々が、IMD内で何らかの方法で電気的に接続されている。電源は、バッテリ(例えば、充電式又は非充電式バッテリ)を備えてもよい。データ・メモリ・モジュールは、上述の任意のメモリ・タイプを含んでもよい。ILP40のプロセッサは、少なくとも上で説明したアクティブ状態及び上で説明した処理状態を採用してもよい。
【0052】
外部デバイス60は、プロセッサ61と、ILP40とのメッセージの交換のためのトランシーバ62とを備え、これらは、互いに電気的に接続されている。さらに、外部デバイス60は、他の外部デバイス及び/又はリモート・サーバ(図示せず)とデータを交換してもよい。外部デバイス60は、プログラマであってもよい。ILP40との双方向のメッセージ交換は、両方向矢印50によって記号化されている。外部デバイス60とILP40とのリードレス通信は、誘導型磁気通信、伝導通信、及び/又は音響通信であってもよい。
【0053】
以下では、
図2を使用して、通信システム及び方法の一実施例の動作について説明する。同図は、イベント及びインタラクションの例示のシーケンスを示しており、特に、外部デバイス60を備えるプログラマ側インフラが、ペース振幅がILP40によって測定されることを要求する場合について示す。外部デバイス60によって送られる要求メッセージは、黒の封筒で記号化されており、一方、白の封筒は、ILP40の応答メッセージを示す。また、各封筒の左側にある各々の矩形から、いくつかの主要情報の内容又は関連するメッセージによって使用されるアドレス指定を導き出すことができる。具体的には、外部デバイス60の要求メッセージは、上述したように1ビットの長さを持つシーケンス・フィールド(
図2では「シーケンス」)を含む。したがって、値0及び1が、シーケンス・フィールドに関連付けられ、これらは、
図2において「シーケンス=0」又は「シーケンス=1」として示されている。また、ILP40の応答メッセージは、上述したように1ビットの長さを持つプロセッサ状態フィールド(
図2では「ビジー」)を含んでもよい。したがって、値0及び1が、プロセッサ状態フィールドに関連付けられてもよく、これらは、
図2において「ビジー=0」又は「ビジー=1」として示されている。
【0054】
図2に示すこのイベントのシーケンスでは、Vペース振幅測定要求メッセージ101が、外部デバイス60からILP40に送られ、ILP40のプロセッサは、開始時においてアクティブ状態である。メッセージ内のシーケンス・フィールドは、「0」の初期状態で開始する(「シーケンス=0」、別の時点では「1」であった可能性がある)。ILP40は、Vペース振幅測定を行うための要求メッセージを受信すると、応答メッセージ201「ACK」を送り、また、プロセッサ状態フィールドの値を、ILPの状態が処理状態に変更されることを示す「1」(「ビジー=1」)に変更することにより、これに肯定応答する。プロセッサは、測定を収集するための機会を待ち、この時間中、外部デバイス60は、IMDが要求されたタスクを完了するまで、追加のサポートについての要求メッセージを送ることを回避すべきである。測定が行われ、その値が、報告のために利用可能となることを待つ間、外部デバイス側インフラは、一連の近接要求メッセージ102を送り、これらのメッセージは、ILP40が要求された測定を完了するのを待つ間、ILP40と外部デバイス60との間のデータ・リンクを維持し、外部デバイスにストリーミングのリアルタイムのIEGMを中継することのみの役割を果たす(図示の実例では、近接要求メッセージのサイクルが、200msごとに生じる)。このプロセス全体を通して、外部デバイスは、いわゆるNull応答(しばしば肯定応答とも呼ばれる)と呼ばれるILPの応答メッセージ202、203におけるプロセッサ状態フィールドの値をモニタリングする。Vペース・イベントが生じると(
図2の参照番号300参照)、ILP40は、Vペースの測定を行う。次いで、変更されたプロセッサ状態フィールド(「1」から「0」に変更された)を持つILP40の応答メッセージ203が送られ、ILP40がアクティブ状態に復帰し、利用可能な測定値を報告するように命令できる状態であることを、外部デバイス60に知らせる。次いで、外部デバイス60は、測定の結果を要求するメッセージ103を送り、ILP40は、要求メッセージ103の受信後直ぐに(この特定の実例では)2.5Vの振幅を報告する応答メッセージ204を送る。この応答メッセージ204では、ILP40のプロセッサが、応答メッセージ204を用いて測定値を送ることにより、受信直後にこの要求を終了するため、プロセッサ状態フィールドには、値「0」が関連付けられる。
【0055】
代替実施例は、IMDに単に2.5Vの振幅の報告を返させることもでき、これは、Null応答203を送る代わりに次のサイクル204において行われる。この手法は、振幅を、その利用可能性についてIMDに最初に報告させることなく、また、外部デバイスが別のデータ収集コマンドを発行することに依拠することなく、外部デバイスに返すことになる。そのような応答では、「ビジー」ビットは、応答203で対処されたのと同じように「0」に設定される。
【0056】
シーケンス・フィールドに関して、
図2から、各要求メッセージ101、102、103を用いてシーケンス・フィールドがトグルされる、すなわち、第1の要求メッセージ101における初期値「0」から、第2の要求メッセージ102における第2の値「1」へ、第3の要求メッセージ102における第1の値「0」へ、第4の要求メッセージ102における第2の値「1」へ、最終的に、最後の要求メッセージ103における第1の値「0」へとトグルされることを導き出すことができる。なぜなら、外部デバイス60は、各々の関与するデータ・メッセージング・サイクルの一部として前の要求メッセージに関してILP40から適切な応答を受信しているからである。要求メッセージ101、102、103のうちの1つが、ILP40に到達しなかった場合、ILP40からの応答はなく、シーケンス・フィールドの値は、変更されない(シーケンス・フィールドは、IMD40からの応答が外部デバイス60に成功裏に到達しなかったいずれのサイクルにおいても変更されないことに留意されたい)。したがって、外部デバイス60によって各々の要求メッセージが送られた後、ILPは、シーケンス・フィールドの値が、前の要求メッセージと同じであることをこの要求メッセージから導き出すことになる。次いで、ILP40のプロセッサは、1つの暫定的な要求メッセージが適切に受信又は処理されなかった(すなわち、1つの応答が、外部デバイスによって見逃された)と結論づけるため、ILP40は、1.)認識されたコマンドによって要求されたルーチンを再実行し、応答する、又はおそらくより最適には、2.)応答を外部デバイス60に単に再送することになる。
【国際調査報告】