(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】水性組成物官能影響判定方法、水性組成物成分量判定方法、および対応するシステム
(51)【国際特許分類】
G16C 20/30 20190101AFI20240514BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G16C20/30
A61L9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557444
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022061432
(87)【国際公開番号】W WO2022229365
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング フィーバー
(72)【発明者】
【氏名】レスティ マグトト
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA14
4C180EB03X
4C180EB06X
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB12X
4C180EB14X
4C180EB15X
4C180EC01
4C180KK10
4C180LL20
(57)【要約】
水性組成物官能影響判定方法(100)は、少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子を入力するステップ(105)と、入力すべき関連する芳香分子の量を表す値を関連付けるステップ(106)と、少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子を入力するステップ(107)と、水相中およびミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって演算するステップ(110)と、少なくとも1種の前記芳香分子の液体-気体分配係数を演算デバイスによって取得するステップ(115)と、少なくとも1種の前記芳香分子の気相濃度を演算するステップ(120)と、少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度を推定するステップ(125)と、配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度を出力するステップ(130)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成物官能影響判定方法(100)であって、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップ(105)であって、前記入力によって配合物を定義する、ステップ(105)と、
- 少なくとも1種の入力された芳香分子デジタル識別子について、入力すべき関連する芳香分子の量を表す値を関連付けるステップ(106)と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップ(107)であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された前記界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された前記芳香分子が水相と前記界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、ステップ(107)と、
- 前記水相中および対応する界面活性剤によって形成された前記ミセル相中の前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子および入力された前記界面活性剤分子デジタル識別子についての入力された前記配合物および関連する量に応じて演算するステップ(110)と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液体-気体分配係数を演算デバイスによって取得するステップ(115)と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の気相濃度を、演算デバイスによって、前記液体-気体分配係数および前記芳香分子の前記水相における前記相対濃度に応じて演算するステップ(120)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度を、演算デバイスによって、演算された前記気相濃度に応じて推定するステップ(125)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の前記心理物理学的官能強度をコンピュータインタフェースに出力するステップ(130)と
を含むことを特徴とする、水性組成物官能影響判定方法(100)。
【請求項2】
- 水または空気の温度、
- 水性組成物の液体体積、
- 前記芳香分子が移動して入る空気体積、
- 前記水性組成物の適用表面および経時的な展開、
- 希釈係数、
- 適用表面積、
- 水の添加速度、
- 水相の撹拌、ならびに/または
- 周囲空気流、
のうちの少なくとも1つを表す官能評価パラメータの値をコンピュータインタフェースに設定するステップ(150)をさらに含み、そのような値を、出力する前記ステップ(130)の上流のステップのうちの少なくとも1つで使用する、請求項1記載の方法(100)。
【請求項3】
気相濃度を演算デバイスによって演算する前記ステップ(120)を時間に応じて実施し、推定される前記心理物理学的官能強度を前記気相濃度に応じて判定する、請求項1または2記載の方法(100)。
【請求項4】
演算する前記ステップ(110)を、方程式:
K
M=AF・P
O/W
[式中、
- K
Mは、ミセル相と水相との間の前記芳香分子のミセル-水分配係数であり、
- AFは、親和性係数であり、
- P
O/Wは、オクタノール-水分配係数を表す]
を使用して実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法(100)。
【請求項5】
評価パラメータを、演算デバイスによって、水性組成物と水流との接触からの時間を表す値に応じて判定するステップ(150)をさらに含み、気相濃度を演算する前記ステップ(120)を、判定された前記評価パラメータに応じて実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法(100)。
【請求項6】
前記入力された配合物中の少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子を、演算デバイスによって、前記成分それぞれの推定心理物理学的官能強度および少なくとも1種の他の芳香分子の推定心理物理学的官能強度に応じて置換するステップ(155)を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法(100)。
【請求項7】
少なくとも1種の判定される芳香分子デジタル識別子の心理物理学的官能強度閾値をコンピュータインタフェースに定義するステップ(160)を含み、置換する前記ステップ(155)を、判定された閾値に応じて実施する、請求項6記載の方法(100)。
【請求項8】
芳香分子の心理物理学的官能強度展開関数を、演算デバイスによって、
- 前記芳香分子の前記気相濃度、および
- 気相濃度を心理物理学的官能強度に結び付ける特徴的な心理物理学的官能強度用量反応曲線
に応じて計算するステップ(165)を含み、
置換する前記ステップ(155)を、置換されるようにおよび/または前記配合物中の別の芳香分子を置換するように構成された芳香分子の前記心理物理学的官能強度展開関数に応じて実施する、請求項6または7記載の方法(100)。
【請求項9】
芳香分子の特徴的な心理物理学的官能強度用量反応曲線の基準点における気相濃度の変動の感度を表す値を演算デバイスによって判定するステップ(170)をさらに含み、置換する前記ステップ(155)を、置換されるようにおよび/または前記配合物中の別の芳香分子を置換するように構成された芳香分子の感度に応じて実施する、請求項8記載の方法(100)。
【請求項10】
水性組成物成分量判定方法(200)であって、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップ(205)であって、前記入力によって配合物を定義する、ステップ(205)と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップ(206)であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された前記界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された前記配合物が水相と前記界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、ステップ(206)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の目標心理物理学的官能強度の値をコンピュータインタフェースに定義するステップ(210)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の気相濃度を、演算デバイスによって、定義された前記目標心理物理学的官能強度に応じて推定するステップ(215)と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液相濃度を、演算デバイスによって、前記芳香分子の推定気相濃度に応じて演算するステップ(220)と、
- 前記水相中および対応する界面活性剤によって形成された前記ミセル相中の前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、演算された前記液相濃度に応じて演算するステップ(225)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の前記相対濃度をコンピュータインタフェースに出力するステップ(230)と
を含むことを特徴とする、水性組成物成分量判定方法(200)。
【請求項11】
前記方法から得られる前記配合物を組み合わせるステップ(175)をさらに含む、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法(100,200)。
【請求項12】
水性組成物官能影響判定システム(300)であって、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段(305)であって、前記入力によって配合物を定義する、手段(305)と、
- 少なくとも1種の入力された芳香分子デジタル識別子について、入力すべき関連する芳香分子の量を表す値を関連付ける手段(307)と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段(306)であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された前記界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された前記芳香分子が水相と前記界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、手段(306)と、
- 前記水相中および対応する界面活性剤によって形成された前記ミセル相中の前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子および入力された前記界面活性剤分子デジタル識別子についての入力された前記配合物および関連する量に応じて演算するための手段(310)と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液体-気体分配係数を取得するための手段(315)と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の気相濃度を、前記液体-気体分配係数および前記芳香分子の前記水相における前記相対濃度に応じて演算するための手段(320)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度を、演算された前記気相濃度に応じて推定するための手段(325)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の前記心理物理学的官能強度をコンピュータインタフェースに出力するための手段(330)と
を含むことを特徴とする、水性組成物官能影響判定システム(300)。
【請求項13】
水性組成物成分量判定システム(400)であって、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段(405)であって、前記入力によって配合物を定義する、手段(405)と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段(406)であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された前記界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された前記配合物が水相と前記界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、手段(406)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の目標心理物理学的官能強度の値をコンピュータインタフェースに定義するための手段(410)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の気相濃度を、定義された前記目標心理物理学的官能強度に応じて推定するための手段(415)と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液相濃度を、前記芳香分子の推定気相濃度に応じて演算するための手段(420)と、
- 前記水相中および対応する界面活性剤によって形成された前記ミセル相中の前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算された前記液相濃度に応じて演算するための手段(425)と、
- 前記配合物の少なくとも1種の芳香分子の前記相対濃度をコンピュータインタフェースに出力するための手段(430)と
を含むことを特徴とする、水性組成物成分量判定システム(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物官能影響判定方法、水性組成物成分量判定方法、および対応するシステムに関する。本発明は、香料の一般的な分野全般に適用することができ、特に、パーソナルケアおよびホームケア適用物に関連し得る。
【0002】
背景技術
ブルーム(Bloom)は、一般に、パーソナルケアおよびホームケアのための水性界面活性剤ベース適用物の希釈後の芳香の官能影響(感覚的な影響、sensorial impact)と呼ばれる。ブルーミングは、液体ハンドソープ、シャワーゲル、シャンプー、または硬質表面クリーナーなどの心地良さに関与する。したがって、このパラメータは、そのような適用物の好ましさの基準として長年にわたって研究されてきた。パーソナルケアまたはホームケア適用物が水と接触したときに特定の香料がどのように挙動するかを予測する能力は、この領域でのより効率的な設計および評価プロセスの鍵である。
【0003】
経験的実験に基づく従来の方法は、特定の適用における配合物を設計および生成することを中心として展開するものであり、制御されたシミュレーション環境(例えば、シャワー室など)で前記配合物を被験者に試験させ、次いで、配合物の特定のブルームがどのように認識されたかを評価するための調査を被験者に受けさせる。そのような調査の結果はまた、配合物の再設計およびアップグレードに使用された。
【0004】
米国特許第9,364,409号明細書に開示されているような最新のアプローチには、規定された官能性能を提供する界面活性剤分子と香料との組み合わせが開示されている。特に、香料と界面活性剤分子との所定の組み合わせのブルーム効率に関する情報を提供する匂い強度スコア(OIS)が記載されている。そのようなアプローチは、界面活性剤分子と香料との相対的な割合を考慮しておらず、水とのおよび/または空気領域内での特定の適用物の相互作用も考慮していないという点で制限されている。
【0005】
米国特許出願第2007/0071780号に開示されているような他の最新のアプローチは、効率的な香料ブルームを有するパーソナルケア適用物に関する。香料ブースターアコード(perfume booster accord)を含む界面活性剤分子の組み合わせ。これらのブースターアコードは、低いODT(匂い検出閾値)および高い「ヒト認識勾配係数(HRSF)」によって定義される。しかしながら、そのようなアプローチは、適用物中の芳香成分と界面活性剤との間の相互作用を考慮しておらず、水とのおよび/または空気領域内での特定の適用物の相互作用も考慮していないという点で制限されている。
【0006】
したがって、水性芳香組成物のブルームをモデル化する満足のいくシステムは現在存在せず、適用物の設計時間およびコストの増加がもたらされる。
【0007】
発明の概要
本発明は、これらの欠点の全てまたは一部を改善することを意図している。
【0008】
この趣旨で、第1の態様によれば、本発明は、水性組成物官能影響判定方法であって、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップであって、前記入力によって配合物を定義する、ステップと、
- 少なくとも1種の入力された芳香分子デジタル識別子について、入力すべき関連する芳香分子の量を表す値を関連付けるステップと、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップであって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された芳香分子が水相と界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、ステップと、
- 水相中および対応する界面活性剤によって形成されたミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子および入力された界面活性剤分子デジタル識別子についての入力された配合物および関連する量に応じて演算するステップと、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液体-気体分配係数を演算デバイスによって取得するステップと、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の気相濃度を、演算デバイスによって、液体-気体分配係数および前記芳香分子の水相における相対濃度に応じて演算するステップと、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度を、演算デバイスによって、演算された気相濃度に応じて推定するステップと、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度をコンピュータインタフェースに出力するステップと
を含む、水性組成物官能影響判定方法を目的とする。
【0009】
そのような提供によって、ベース香料の相互作用、ならびにその後の液相-気相の相互作用、気相濃度、および最終的に知覚されるブルームの強度の正確なモデル化が可能になる。そのようなモデルによって、香料の設計中により動的かつモジュール的な検討が可能になり、そのようなステップのコストおよび時間が抑制される。
【0010】
そのような実施形態によって、水による希釈、特定の時間遅延、および環境の定義などのブルーム経験のための重要なパラメータをモデル化すること、ならびに適用物ベース(すなわち、界面活性剤分子)を定義することが可能になる。
【0011】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法は、
- 水または空気の温度、
- 水性組成物の液体体積、
- 芳香分子が移動して入る空気体積、
- 水性組成物の適用表面および経時的な展開、
- 希釈係数、
- 水の添加速度、
- 水相の撹拌、
- 周囲空気流、ならびに/または
- 時間間隔または総期間
のうちの少なくとも1つを表す官能評価パラメータの値をコンピュータインタフェースに設定するステップをさらに含み、そのような値は、出力するステップの上流のステップのうちの少なくとも1つで使用される。
【0012】
そのような実施形態によって、所与の環境におけるブルーム性能のより正確な予測が可能になる。これによって、この香料が使用されることが意図される環境特性に応じて香料設計の最適化が可能になる。
【0013】
特定の実施形態では、気相濃度を演算デバイスによって演算するステップは、時間に応じて実施され、推定される心理物理学的官能強度は、前記気相濃度に応じて判定される。
【0014】
そのような実施形態によって、香料の経時的な挙動の予測が可能になる。
【0015】
特定の実施形態では、相対濃度を演算するステップは、方程式:
KM=AF・PO/W
[式中、
- KMは、ミセル相と水相との間の芳香分子のミセル-水分配係数であり、
- AFは、親和性係数であり、
- PO/Wは、オクタノール-水分配係数を表す]
を使用して実施される。
【0016】
そのような実施形態によって、実際にブルーミングに寄与する適用物の部分の正確なモデル化が可能になる。
【0017】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法は、相対濃度を演算するステップの上流に、
- 少なくとも1種の水性芳香分子および少なくとも1種の界面活性剤分子を自己拡散NMR分光分析するステップと、
- 各前記界面活性剤分子の計算された親和性係数値をコンピュータメモリ内に書き込むステップと
をさらに含み、
相対濃度を演算するステップは、コンピュータメモリ内に保存された少なくとも1つの親和性係数値に応じて実施される。
【0018】
そのような実施形態によって、ブルーム現象のより正確なモデル化を可能にする親和性係数値のデータベースの作成が可能になる。
【0019】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法は、評価パラメータを、演算デバイスによって、水性組成物と水流との接触からの時間を表す値に応じて判定するステップをさらに含み、気相濃度を演算するステップは、判定された評価パラメータに応じて実施される。
【0020】
そのような実施形態によって、身体もしくは髪への、または表面上への適用物の広がりの展開、およびブルーミング現象に対するその領域の影響の正確なモデル化が可能になる。
【0021】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法は、入力された配合物中の少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子を、演算デバイスによって、前記成分それぞれの推定心理物理学的官能強度および少なくとも1種の他の芳香分子の推定心理物理学的官能強度に応じて置換するステップをさらに含む。
【0022】
そのような実施形態によって、前記成分のブルーム性能に基づいて、配合物中の成分を別の成分によって動的に置換することまたはその置換を提案することが可能になる。
【0023】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法は、少なくとも1種の判定される芳香分子デジタル識別子の心理物理学的官能強度閾値をコンピュータインタフェースに定義するステップをさらに含み、置換するステップは、判定された閾値に応じて実施される。
【0024】
そのような実施形態によって、代替成分を、定義された閾値に応じて選択することが可能になる。
【0025】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法は、芳香分子の心理物理学的官能強度展開関数(psychophysical sensorial intensity evolution function)を、演算デバイスによって、
- 前記芳香分子の気相濃度、および
- 気相濃度を心理物理学的官能強度に結び付ける特徴的な心理物理学的官能強度用量反応曲線
に応じて計算するステップをさらに含み、
置換するステップは、置換されるようにおよび/または配合物中の別の芳香分子を置換するように構成された芳香分子の心理物理学的官能強度展開関数に応じて実施される。
【0026】
そのような実施形態によって、前記成分が、それらの相対濃度が増加した場合にそれらのブルーミング性能を増加させる能力に応じて、代替成分を選択することが可能になる。そのようなパラメータは、より高い香料設計の柔軟性を呈する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法は、芳香分子の特徴的な心理物理学的官能強度用量反応曲線の基準点における気相濃度の変動の感度を表す値を演算デバイスによって判定するステップをさらに含み、置換するステップは、置換されるようにおよび/または配合物中の別の芳香分子を置換するように構成された芳香分子の感度に応じて実施される。
【0028】
第2の態様によれば、本発明は、水性組成物成分量判定方法であって、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段であって、前記入力によって配合物を定義する、手段と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された芳香分子が水相と界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、手段と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の目標心理物理学的官能強度の値をコンピュータインタフェースに定義するステップと、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の気相濃度を、演算デバイスによって、定義された目標心理物理学的官能強度に応じて推定するステップと、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液相濃度を、演算デバイスによって、前記芳香分子の推定気相濃度に応じて演算するステップと、
- 水相中および対応する界面活性剤によって形成されたミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、演算された液相濃度に応じて演算するステップと、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度をコンピュータインタフェースに出力するステップと
を含む、水性組成物成分量判定方法を目的とする。
【0029】
これらの提供によって、成分が所望のブルーム性能に応じて選択されるおよび/またはこれらの成分の相対濃度が前記性能に応じて判定される逆香料設計(reverse perfume design)が可能になる。
【0030】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法は、前記方法から得られる配合物を組み合わせるステップをさらに含む。
【0031】
そのような実施形態によって、入力される配合物、生成される配合物、または修正される配合物の実体化が可能になる。
【0032】
第3の態様によれば、本発明は、水性組成物官能影響判定システムであって、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段であって、前記入力によって配合物を定義する、手段と、
- 少なくとも1種の入力された芳香分子デジタル識別子について、入力すべき関連する芳香分子の量を表す値を関連付ける手段と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された芳香分子が水相と界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、手段と、
- 水相中および対応する界面活性剤によって形成されたミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子および入力された界面活性剤分子デジタル識別子についての入力された配合物および関連する量に応じて演算するための手段と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液体-気体分配係数を取得するための手段と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の気相濃度を、液体-気体分配係数および前記芳香分子の水相における相対濃度に応じて演算するための手段と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度を、演算された気相濃度に応じて推定するための手段と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度をコンピュータインタフェースに出力するための手段と
を含む、水性組成物官能影響判定システムを目的とする。
【0033】
このシステムの利点は、対応する方法の利点と同様である。
【0034】
第4の態様によれば、本発明は、水性組成物成分量判定システムであって、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段であって、前記入力によって配合物を定義する、手段と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された配合物が水相と界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、手段と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の目標心理物理学的官能強度の値をコンピュータインタフェースに定義するための手段と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の気相濃度を、演算デバイスによって、定義された目標心理物理学的官能強度に応じて推定するための手段と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液相濃度を、演算デバイスによって、前記芳香分子の推定気相濃度に応じて演算するための手段と、
- 水相中および対応する界面活性剤によって形成されたミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、演算された液相濃度に応じて演算するための手段と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度をコンピュータインタフェースに出力するための手段と
を含む、水性組成物成分量判定システムを目的とする。
【0035】
このシステムの利点は、対応する方法の利点と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の他の利点、目的、および特定の特徴は、本明細書に添付されている図面に関連して、本発明の対象である少なくとも1つの特定の方法およびシステムの以下の非網羅的な記載から明らかになるであろう。
【
図1】本発明の主題である方法の第1の特定の一連のステップを概略的に表す図である。
【
図2】本発明の主題である方法の第2の特定の一連のステップを概略的に表す図である。
【
図3】本発明の主題であるシステムの第1の特定の実施形態を概略的に表す図である。
【
図4】本発明の主題であるシステムの第2の特定の実施形態を概略的に表す図である。
【0037】
発明の詳細な説明
一実施形態の各特徴をその他の実施形態のその他の特徴と有利な手法で組み合わせることができるため、この記載は、網羅的なものではない。また、様々な発明概念を1つ以上の方法として具体化することができ、そのうちの一例が提供されている。方法の一部として実施される動作を任意の適切な手法で順序付けすることができる。したがって、例示的な実施形態では連続的な動作として示されているが、動作が例示とは異なる順序で実施される実施形態を構築することができ、これは、幾つかの動作を同時に実施することを含んでよい。
【0038】
ここで本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、明確に反対に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0039】
ここで本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「および/または」という語句は、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、結合して存在する場合もあれば分離して存在する場合もある要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」を用いて一覧にされている複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」であると解釈されるべきである。「および/または」の節によって具体的に識別される要素以外にも、他の要素が、具体的に識別されるこれらの要素に関連していても関連していなくても、任意選択的に存在してよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への参照は、「含む」などのオープンエンドな言葉と組み合わせて使用されるとき、一実施形態ではAのみ(B以外の要素を任意選択的に含む)、別の実施形態ではBのみ(A以外の要素を任意選択的に含む)、さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(他の要素を任意選択的に含む)などを指してよい。
【0040】
ここで本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、先に定義されているような「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧内の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、多数または一覧の要素および任意選択的に一覧にはない追加的な項目のうちの少なくとも1つ(ただし、1つより多くを含む)を含むと解釈されるべきである。「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」などの反対のことを明確に示す用語のみが、または特許請求の範囲で使用される場合は「からなる」が、多数または一覧の要素のうちの正確に1つの要素を含むことを指すことになる。一般に、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの一方」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの正確に1つ」などの排他的用語が続く場合、排他的な代替を示すものとしてのみ解釈されるべきである(すなわち、「どちらか一方であり、両方ではない」)。「から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するべきである。
【0041】
ここで本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素の一覧に関連する「少なくとも1つ」という語句は、要素の一覧にある要素のうちの任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであって、要素の一覧内の具体的に一覧にされているあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、要素の一覧にある要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義によって、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素の一覧内で具体的に識別される要素以外の要素が、具体的に識別されるこれらの要素に関連していても関連していなくても、任意選択的に存在してよいことも可能になる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(言い換えるなら、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、言い換えるなら、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない(B以外の要素を任意選択的に含む)任意選択的に1つより多くのAを含む少なくとも1つのA、別の実施形態では、Aが存在しない(A以外の要素を任意選択的に含む)任意選択的に1つより多くのBを含む少なくとも1つのB、さらに別の実施形態では、(他の要素を任意選択的に含む)任意選択的に1つより多くのAを含む少なくとも1つのAおよび任意選択的に1つより多くのBを含む少なくとも1つのBなどを指してよい。
【0042】
特許請求の範囲において、ならびに先の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「携持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」などのような移行句は全て、オープンエンドであること、すなわち、含むがこれに限定されないことを意味すると理解されたい。「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれクローズドまたはセミクローズドな移行句であるべきである。
【0043】
この時点で、図は縮尺通りではないことに留意すべきである。
【0044】
米国特許第62/911,096号明細書の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「芳香分子」という用語は、動物、好ましくはヒトの匂い物質受容体を活性化する、フレーバリング能力または芳香能力を呈することが好ましい任意の分子を示す。言い換えるなら、ここで、「芳香分子」とは、快楽効果を付与するために賦香調製物または組成物に使用される、すなわち、匂いを与えるまたは調節するという主な目的のために使用される、化合物を意味する。言い換えるなら、賦香共成分であると考えられるそのような共成分は、単に香りを有するものとしてではなく、組成物の匂いを有利にまたは心地良いように付与または改変することができるものとして当業者に認識されるはずである。「化合物」または「成分」という用語は、「芳香分子」と同じものを指す。芳香分子は、香料原料(PRM)としても知られている。ここで、ベース中に存在する芳香成分の性質およびタイプは、それ以上詳細な記載を保証するものではなく、いずれの場合も、網羅するものではないため、当業者であれば、その一般的な知見に基づき、意図される使用または用途および望ましい官能効果に応じて、これらを選択することができる。一般に、これらの芳香成分は、アルコール類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペノイド類、窒素含有または硫黄含有複素環式化合物および精油のような多様な化学物質分類に属し、前記芳香成分は、天然由来のものまたは合成由来のものであってよい。芳香成分の例は、参考文献、例えば、S. Arctanderによる書籍Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAもしくはそのより新しい版、または類似の種類の他の著作物、ならびに香料の分野における豊富な特許文献に一覧にされている。
【0046】
「配合物」という用語は、少なくとも1種の芳香分子の液体、固体、または気体集合体を示す。この配合物は、少なくとも1種の香料担体および/または少なくとも1種の香料アジュバントをさらに含んでよい。
【0047】
ここで、「香料担体」とは、香料の観点から実質的に中性である、すなわち、賦香成分の官能特性を著しくは変化させない材料を意味する。前記担体は、液体または固体であってよい。
【0048】
液体担体としては、非限定的な例として、乳化系、すなわち、溶媒および界面活性剤系、または香料において一般的に使用される溶媒を挙げることができる。香料に一般的に使用される溶媒の性質およびタイプの詳細な記載は、網羅できるものではない。しかしながら、非限定的な例として、溶媒、例えば、ブチレングリコールまたはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、Eastmanから入手可能)、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノール、クエン酸トリエチル、またはそれらの混合物を挙げることができ、これらは、最も一般的に使用されるか、または同様に、グリセロール、もしくはパーム油、ヒマワリ油もしくはアマニ油などの様々な植物油のような天然由来の溶媒である。香料担体および香料ベースの両方を含む組成物について、先に明記したもの以外の適切な香料担体は、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、イソパラフィン、例えばIsopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)という商標で知られているもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えばDowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)という商標で知られているもの、または水添ヒマシ油、例えばCremophor(登録商標)RH 40(製造元:BASF)という商標で知られているものであってもよい。
【0049】
固体担体は、賦香組成物または賦香組成物の幾つかの要素が化学的または物理的に結合可能な材料を示すことを意味する。一般に、そのような固体担体は、組成物を安定化するために、または組成物もしくは幾つかの成分の蒸発速度を制御するために用いられる。固体担体は、当技術分野で現在使用されており、当業者は、所望の効果を得る方法を知っている。しかしながら、固体担体の非限定的な例として、吸収性ガムもしくはポリマーまたは無機材料、例えば、多孔質ポリマー、シクロデキストリン、デキストリン、マルトデキストリン、木材ベース材料、有機もしくは無機ゲル、粘土、石膏タルク、またはゼオライトを挙げることができる。
【0050】
固体担体の他の非限定的な例として、カプセル化材料を挙げることができる。そのような材料の例は、壁形成および可塑化材料、例えば、グルコースシロップ、天然もしくは変性デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチン、植物ガム、例えばアカシアガム(アラビアガム)、尿素、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ゼオライト、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、粘土、タルク、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、石膏、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、炭水化物、糖類、例えば、スクロース、単糖類、二糖類および多糖類、ならびに誘導体、例えば、キトサン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ポリオール/糖アルコール、例えば、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリトリトール、およびイソマルト、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリジン(PVP)、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、アクリレート、ポリアクリル酸および関連物、無水マレイン酸コポリマー、アミン官能性ポリマー、ビニルエーテル、スチレン、ポリスチレンスルホネート、ビニル酸、エチレングリコール-プロピレングリコールブロックコポリマー、植物ガム、アカシアガム、ペクチン、キサンタン、アルギネート、カラギーナン、クエン酸もしくは任意の水溶性固体酸、脂肪アルコールもしくは脂肪酸、ならびにそれらの混合物、またはさらにH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996などの参考文献に引用されている物質を含んでよい。カプセル化は、当業者に周知の方法であり、例えば、噴霧乾燥、凝集もしくはさらに押出のような技法を使用することによって実施してよいか、またはコアセルベーションおよび複合的なコアセルベーション技法を含むコーティングカプセル化からなる。
【0051】
固体担体の非限定的な例としては、特に、任意選択的にポリマー安定剤またはカチオン性コポリマーの存在下で、重合、界面重合、コアセルベーション、またはこれら全て(前記技術は全て、従来技術に記載されている)によって誘発される相分離プロセスのような技術を使用する、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素もしくはポリウレタンタイプの樹脂、またはそれらの混合物(前記樹脂は全て、当業者に周知である)を有するコア-シェルカプセルを挙げることができる。
【0052】
樹脂は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物)と、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾールなどのアミン、ならびにそれらの混合物との重縮合によって生成してよい。あるいは、予め成形された樹脂であるアルキロール化ポリアミン、例えば、Urac(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(製造元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)、またはLuracoll(登録商標)(製造元:BASF)という商標で市販されているものを使用してよい。
【0053】
他の樹脂は、グリセロールのようなポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートのトリマー、またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、またはキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパン(Takenate(登録商標)という商品名で知られている、製造元:Mitsui Chemicals)とのトリマーのようなポリイソシアネートとの重縮合によって生成されるものであり、なかでも、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのトリマーおよびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットが好ましい。
【0054】
アミノ樹脂、すなわち、メラミンベース樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関連する重要な文献のうちの幾つかは、K. Dietrich et al.によって出版されたものなどの論文であるActa Polymerica, 1989, vol. 40, pages 243, 325および683、ならびに1990, vol. 41, page 91を含む。そのような論文には、従来技術の方法に従ったそのようなコア-シェルマイクロカプセルの調製に影響を与える様々なパラメータがすでに記載されており、これらの方法は、特許文献においてさらに詳述および例示されてもいる。Wiggins Teape Group Limitedの米国特許第4,396,670号明細書は、後者のものの関連する初期的な例である。それ以降、他の多くの著者がこの分野の文献を充実させてきたため、ここで全ての公開された開発を包含することは不可能であり得るが、カプセル化技術の一般的な知識は、非常に重要である。そのようなマイクロカプセルの適切な使用を開示する関連性のあるより最近の刊行物は、例えば、K. BruyninckxおよびM. Dusselierの論文であるACS Sustainable Chemistry & Engineering, 2019, vol. 7, pages 8041-8054に示されている。
【0055】
ここで、「香料アジュバント」とは、色、特定の耐光性、化学的安定性などのような更なる付加的な利益を付与することができる成分を意味する。賦香組成物において一般的に使用されるアジュバントの性質およびタイプの詳細な記載は、網羅できるものではなく、前記成分は、当業者に周知であることに言及する必要がある。特定の非限定的な例として、以下のものを挙げることができる:粘度剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化および/またはレオロジー調整剤)、安定剤(例えば、保存剤、酸化防止剤、熱/光および/もしくは緩衝剤またはキレート化剤、例えばBHT)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、保存剤(例えば、抗菌剤、または抗微生物剤、または抗真菌剤、または抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、定着剤、防虫剤、軟膏、ビタミン、ならびにそれらの混合物。ここでは、「調節剤」とも呼ばれる「定着剤」とは、その観察者または使用者が、前記調節剤を組み込んだ組成物の匂い、特に蒸発速度および強度を、調節剤なしでの同じ知覚と比較して、経時的に知覚することができるように影響を及ぼす能力を有する薬剤であると理解される。特に、調節剤によって、それらの芳香が知覚される時間を延長することが可能になる。適切な調節剤の非限定的な例は、メチルグルコシドポリオール;エチルグルコシドポリオール;プロピルグルコシドポリオール;イソセチルアルコール;PPG-3ミリスチルエーテル;ネオペンチルグリコールジエチルヘキサノエート;ラウリン酸スクロース;ジラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、トリステアリン酸スクロース、ヒアルロン酸二糖ナトリウム塩、ヒアルロン酸ナトリウム、プロピレングリコールプロピルエーテル;ジセチルエーテル;ポリグリセリン-4エーテル;イソセテス-5;イソセテス-7、イソセテス-10;イソセテス-12;イソセテス-15;イソセテス-20;イソセテス-25;イソセテス-30;ラウロアンホジプロピオン酸二ナトリウム;ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル;およびそれらの混合物;ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール;エチルヘキサン酸セテアリル;パンテノールエチルエーテル、DL-パンテノール、N-ヘキサデシルn-ノナノエート、ノクタデシルn-ノナノエート、プロフレグランス(profragrance)、シクロデキストリン、カプセル化、およびそれらの組み合わせを含んでよい。賦香組成物の総重量に基づいて最大20重量%の調節剤を、賦香される消費者製品に組み込むことができる。
【0056】
本明細書では、「実体化された」という用語は、本発明のデジタル環境の外側に存在するものとして意図されている。「実体化された」とは、例えば、自然界で容易に見つかること、または実験室もしくは化学工場で合成されることを意味してよい。いずれの場合も、実体化された組成物は、有形の実在物を表す。「調合された」または「調合する」という用語は、成分を抽出して組み合わせようと、成分を合成して組み合わせようと、組成物を実体化する動作を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「演算システム」という用語は、単一型または分散型にかかわらず、デジタルインタフェースなどのあらゆる種類のインタフェースによって数値入力を受け取って、かつあらゆる種類のインタフェースに対して数値出力を提供することができる任意の電子演算デバイスを指す。典型的には、演算システムは、データストレージへのアクセスを有するソフトウェアを実行するコンピュータ、またはデータおよび/もしくは計算がサーバー側で実施される一方でクライアント側がインタフェースとして機能するクライアント-サーバーアーキテクチャのいずれかを指す。
【0058】
演算を含む全てのステップは、前記ステップの結果の使用前に実行することができることに留意されたい。あるいは、これらのステップは、コンピュータメモリから演算結果を抽出する対応するステップで置換してよい。そのような演算は、所定の実験条件に対応する特定の入力値に対して実施することができる。これらのステップのうちの幾つかの結果は、定数に同化されることさえある。それにも関わらず、本発明の概念を明確にして理解するために、
図1および
図2は、これらの演算するステップが互いに連続しているものとして示す。
【0059】
本発明の重要な利点のうちの1つは、現実的な物理的相互作用、ならびに実体化された配合物および実体化すべき配合物における得られるブルーム性能を予測する能力であると理解すべきである。そのような利点によって、前記配合物の予測された性能に基づいた配合物の動的、効率的、かつ迅速な再配合が可能になる。
【0060】
発明者等は、以下の関係を発見した:ブルーミングの嗅覚的影響は、時間に応じて、水で希釈したときに水溶液から蒸発したヘッドスペース内の揮発性物質の濃度に一次的に関係する。蒸発のプロセスは、ミセル/水分配係数KMおよび水/空気分配係数KGLという2つの独立した分配係数によって決まる。KMは、n-オクタノール/水分配係数(ほとんどの場合、logPO/Wとして知られている)であるPO/Wに比例し、さらに、いわゆる親和性係数によって表される界面活性剤の性質に依存する(Colloids and Surfaces A 539, 2018, 310-318)。熱力学的平衡では、芳香分子などの疎水性分子は、適用物ベースの界面活性剤分子によって構成されるミセル相と水相との間にそれぞれ分布している。KMは、分子の疎水性に応じて調整され、結果として、分子の疎水性が増加すると、芳香分子の分配が水相からミセル相にシフトする。第2の分配係数KGLは、ヘンリー則定数に比例しており、それぞれ個々の芳香分子に固有である。それによって、水溶液の上方の気相濃度は、液相中の揮発性分子の濃度に関連付けられる。したがって、揮発性物質の気相濃度は、ミセル水分配係数に直接的に依存しており、結果として、芳香分子のlogPO/W、ならびにミセル化された界面活性剤分子の性質および濃度にそれぞれ依存している。最後に、所与の芳香分子の官能影響は、適用条件下での気相におけるその濃度に関連しており、知覚される心理物理学的官能強度は、特定の芳香分子の用量-反応曲線の関数である。
【0061】
図1は、本発明の対象である方法100の特定の一連のステップを示す。この水性組成物官能影響判定方法100は、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップ105であって、前記入力によって配合物を定義する、ステップ105と、
- 少なくとも1種の入力された芳香分子デジタル識別子について、入力すべき関連する芳香分子の量を表す値を関連付けるステップ106と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップ107であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された芳香分子が水相と界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、ステップ107と、
- 水相中および対応する界面活性剤によって形成されたミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子および入力された界面活性剤分子デジタル識別子についての入力された配合物および関連する量に応じて演算するステップ110と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液体-気体分配係数を演算デバイスによって取得するステップ115と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の気相濃度を、演算デバイスによって、液体-気体分配係数および前記芳香分子の水相における相対濃度に応じて演算するステップ120と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度を、演算デバイスによって、演算された気相濃度に応じて推定するステップ125と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度をコンピュータインタフェースに出力するステップ130と
を含む。
【0062】
水性組成物官能影響判定方法は、水性組成物官能影響シミュレーション方法として理解することができることに留意すべきである。この方法の目的は、適用物使用条件における芳香分子の挙動の予測を可能にすることである。
【0063】
入力するステップ105は、例えば、キーボード、マウスもしくはタッチスクリーンなどの任意のタイプのコンピュータインタフェース、または
図3に表されているようなキーボード304と相互作用しているコントローラ305などのソフトウェアコントローラを使用して実施される。そのようなインタフェースは、ユーザの相互作用および入力を可能にするグラフィカルユーザインタフェース(GUI)をさらに含んでよい。このGUIは、パーソナルコンピュータまたはコンピュータサーバーなどの演算手段によって実行されるソフトウェアの一部であってよい。変形例では、コンピュータインタフェースは、本質的に論理的であり、入力は、電子ネットワークまたはケーブルを介して受信された、コマンド手段から生じる、コマンドに対応する。そのような変形例では、インタフェースは、例えば、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)であってよい。
【0064】
図1~4で使用される演算システムの特定のアーキテクチャは、本発明に関しては重要ではない。すなわち、そのような演算システムは、クライアント-サーバーアーキテクチャまたはローカルおよび/もしくは遠隔演算リソースを使用して、分散型で統合させることができる。保存およびアクセスされるデータは、従来のデータベース、コンピュータメモリ、または分散型データベースに保存してよい。
【0065】
この入力するステップ105中に、ユーザまたはプログラムは、配合物に追加する1種以上の芳香分子デジタル識別子を選択してよい。芳香分子デジタル識別子は、例えば、アイコン、テキストラベル、または数字であってよい。そのような芳香分子デジタル識別子は、好ましくは、コンピュータメモリまたはデータベースへのエントリに対応する。
【0066】
配合物は、液相量で表されることが好ましい各芳香分子の量をさらに含んでよい。そのような量は、例えば、百万分率(ppm)または総液体量における芳香分子の相対濃度で表すことができる。
【0067】
図1に示されているものなどの特定の実施形態では、方法100は、芳香分子の量を絶対値または相対値のいずれかで入力するステップ106を含む。そのような入力するステップ106は、入力するステップ105の任意の変形例と機能的および構造的に同様である。
【0068】
少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子を入力するステップ107は、入力するステップ105の任意の変形例と機能的および構造的に同様である。
【0069】
界面活性剤分子の性質およびタイプは、適用に依存することになる。適切な適用の非限定的な例は、任意選択的にポッドまたはタブレットの形態にある液体または固体洗剤などの布地ケア製品、布地柔軟剤、液体または固体セントブースター、ドライヤーシート、布地リフレッシャー、アイロン水、紙、漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品;ボディケア製品、例えば、ヘアケア製品(例えば、シャンプー、リーブオンもしくはリンスオフヘアコンディショナー、カラーリング調製物またはヘアスプレー、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品)、消毒剤、インティメイトケア製品;化粧品(例えば、スキンクリームもしくはローション、バニシングクリーム、またはデオドラントもしくは制汗剤(例えば、スプレーまたはロールオン)、除毛剤、タンニング、または日焼けもしくは日焼け後製品、ネイル製品、スキンクレンジング、メイクアップ);またはスキンケア製品(例えば、石鹸、シャワーもしくはバスムース、オイルもしくはジェル、または衛生製品、またはフット/ハンドケア製品);空気ケア製品、例えば、エアフレッシュナーまたは家庭空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴、もしくは車)および/もしくは公共空間(ホール、ホテル、モールなど)で使用可能な「すぐに使用できる(ready to use)」粉末エアフレッシュナー;またはホームケア製品、例えば、カビ取り剤、家具ケア製品、ワイプ、食器洗剤、もしくは硬質表面(例えば、床、浴室、衛生品、もしくは窓クリーニング)洗剤;レザーケア製品;カーケア製品、例えば、つや出し剤、ワックス、またはプラスチッククリーナーを含んでよい。
【0070】
そのような界面活性剤分子デジタル識別子は、例えば、以下のものであってよいが、これらに限定されることはない:
- C12~C15パレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタインの群から選択することができる界面活性剤分子、
- ラウレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタインを含む界面活性剤分子、
- ラウリン酸、ミリスチン酸、ラウレス硫酸ナトリウム、およびステアリン酸を含む界面活性剤分子、
- ラウレス硫酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン、およびアルキルポリグリコシドを含む界面活性剤分子、
- ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、およびコカミドプロピルベタインを含む界面活性剤分子、または
- 線状アルキルベンゼンスルホネート、エトキシル化脂肪アルコール、およびラウレス硫酸ナトリウムを含む界面活性剤分子。
【0071】
この入力するステップ107の特定の実施形態では、ユーザまたはプログラムは、コンピュータインタフェースに、利用可能な界面活性剤分子の一覧の中から界面活性剤分子デジタル識別子を選択することができる。
【0072】
この入力するステップ107の特定の実施形態では、ユーザまたはプログラムは、コンピュータインタフェースに、配合物についての意図された適用を選択することができ、前記適用は、選択に関して自動的に選択されるかまたはユーザもしくはプログラムに指示されるかのいずれかである少なくとも1種の界面活性剤分子に関連付けられている。
【0073】
そのような適用は、例えば、以下のものであってよいが、これらに限定されることはない:
- ボディケア(液体ハンドソープ、シャワーゲル、固形石鹸)、
- ヘアケア(シャンプー、コンディショナー)、
- 表面ケア(万能クリーナー)、
- トイレケア(リムブロック、液体トイレクリーナー、粉末トイレクリーナー)、
- 食器洗浄液体、および
- 布地ケア(液体洗剤、洗濯用固形剤、洗濯用粉末)。
【0074】
そのような適用は、例えば、以下のものに対応してよいが、これらに限定されることはない:
- ボディケア適用の場合、C12~C15パレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタインの群から選択することができる界面活性剤分子、
- ボディケア適用の場合、アルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸アンモニウム、アルキルアンホアセテート、コカミドMEA、アルキルグルコシド、およびアミノ酸ベース界面活性剤からなる群から選択することができる界面活性剤分子、
- ボディケア適用の場合、ラウレス硫酸ナトリウムおよびコカミドプロピルベタインを含む界面活性剤分子、
- ボディケア適用の場合、ラウリン酸、ミリスチン酸、ラウレス硫酸ナトリウム、およびステアリン酸を含む界面活性剤分子、
- ボディケア適用の場合、ラウレス硫酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン、およびアルキルポリグリコシドを含む界面活性剤分子、
- ヘアケア適用の場合、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、およびコカミドプロピルベタインを含む界面活性剤分子、
- 布地ケア適用、特に柔軟剤の場合、ジアルキル第4級アンモニウム塩、ジアルキルエステル第4級アンモニウム塩、ハンブルクエステルクワット、トリエタノールアミンクワット、シリコーン、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる界面活性剤分子、
- 布地ケア適用、特に液体洗剤の場合、アルキルベンゼンスルホネート、線状アルキルベンゼンスルホネート、第2級アルキルスルホネート、第1級アルコールスルフェート、ラウリルエーテルスルフェート、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、メチルエステルスルホネート、アルキルアミン、アルカノールアミド、脂肪アルコールポリ(エチレングリコール)エーテル、脂肪アルコールエトキシレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドコポリマー、アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、アルキルポリグルコサミド、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる界面活性剤分子、
- 布地ケア適用、特に固体洗剤の場合、線状アルケンベンゼンスルホネート、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルファオレフィンスルホネート、メチルエステルスルホネート、アルキルポリグリコシド、第1級アルコールエトキシレート、特にラウリルアルコールエトキシレート、第1級アルコールスルホネート、石鹸、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる界面活性剤分子、ならびに
- 表面ケア適用の場合、線状アルキルベンゼンスルホネート、エトキシル化脂肪アルコール、およびラウレス硫酸ナトリウムを含む界面活性剤分子。
【0075】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法100は、少なくとも1種の界面活性剤分子の量を入力するステップを含み、前記量は、演算するステップ110中に使用される。
【0076】
演算するステップ110は、例えば、専用ソフトウェアを実行するように構成された演算システムによって実施される。この演算するステップ110中に、水相中および界面活性剤によって形成されたミセル相中の成分の相対濃度をそれぞれ判定することが目的である。水相中の画分のみが最終的に蒸発してブルーミングに寄与することができ、ミセル中の画分は利用可能ではない。この相対濃度は、KMと表記されるミセル-水分配係数として知られている。この係数は、式:
KM=cミセル/c水相
[式中、
- cミセルは、ミセル相中の成分の濃度を示し、
- c水相は、水相中の成分の濃度を示す]
によって判定することができる。
【0077】
ミセル-水分配係数の値が高くなるほど、蒸発およびユーザの匂い物質受容体による検出に利用可能な芳香分子がより少なくなる。
【0078】
図1に示されているような特定の実施形態では、この演算するステップ110は、方程式:
K
M=AF・P
O/W
[式中、
K
Mは、ミセル-水分配係数であり、
AFは、親和性係数であり、
P
O/Wは、オクタノール-水分配係数を表す]
を使用して実施される。
【0079】
親和性係数は、界面活性剤環境に関連している。そのような活性係数値は、Wolfgang Fieber, Sandy Frank, Cesar Herreroによって出版された文書“Competition between surfactants and apolar fragrances in micelle cores” (Colloids and Surfaces A 539 (2018) 310-318)に開示されている自己拡散核磁気共鳴(NMR)に基づく方法によって得ることができる。サンプル値も同様にその文書に見ることができる。この文書は、参照によって本出願の内容にさらに含まれる。
【0080】
PO/Wは、有機分子の極性を記述するパラメータであり、典型的には、非極性分子は、極性分子よりも高いPO/W値を有する。これは、その対数形式(logPO/W)でより一般に知られている。
【0081】
したがって、他の既知の値からc水相の値を判定することが可能である。
【0082】
取得するステップ115は、例えば、専用ソフトウェアを実行するように構成された演算システムによって実施される。取得するステップ115中に、データベースまたはハードドライブなどのデジタル記憶装置から液体-気体分配係数KGLの値を取得することが目的である。無次元ヘンリー定数とも呼ばれる。この係数は、以下のように計算することができる:
KGL=cガス/c液体(水相)
[式中、
- KGLは、特定の芳香分子のヘンリー定数を示し、
- cガスは、気相中の成分の濃度を示し、
- c液体(水相)は、演算するステップ110のc水相に対応する]。
【0083】
KGLの値は、サンプル芳香分子のヘンリー定数値のデータベースまたはコンピュータメモリから抽出することができる。そのようなデータベースは、例えば、実験データベース、オンラインデータベース、または出版物に対応する。他の実施形態では、この値は、適切なソフトウェアで演算し、データベースまたはコンピュータメモリ内に保存することができる。別の実施形態では、ヘンリー定数は、プログラムCOSMOthermで演算することができる。
【0084】
ヘンリー定数および液相の水中の芳香分子の濃度の両方が分かれば、気相濃度を計算することができる。
【0085】
演算するステップ120は、例えば、専用ソフトウェアを実行するように構成された演算システムによって実施される。演算するステップ120中に、液相から気相への物質移動速度のフィック則を実装することが目的である。この法則に対応する、本発明の文脈に適合した方程式は、以下の通り、例えば、著者Marcus HarrisonおよびBrian P. HillsによるJ. Agric. Food Chem. 1997, 45, 1883-1890の文書“Mathematical Model of Flavor Release from Liquids Containing Aroma-Binding Macromolecules”などに開示されている
dn/dt=kAGL[cL(t)-cG(t)/KGL]
であってよい。
【0086】
式中、
- dn/dtは、時間に応じて液体から気相に移動した芳香分子のモル量に対応し、
- cL(t)は、判定するステップ110に関して提示されたように、時間に応じたc水相に対応し、
- cG(t)は、方程式を解くべき目的となる値、すなわち、時間に応じた気相濃度に対応し、
- kは、物質移動定数に対応し、
- AGLは、幾つかの変形例で定数に近似することができる液体表面積に対応する。
【0087】
液体体積、空気体積、表面、希釈係数、時間、および他の要因は全て、動的ブルーム性能を評価するために設計された官能プロトコルに適合させることができる。
【0088】
本発明で、一実施形態では、連続希釈を考慮することができ、物質移動方程式は、0.1秒の時間ステップで計算することができ、それぞれの時間希釈係数(例えば、10gのベースに対して15Lまでに対応)、物質移動係数(激しい撹拌から停滞まで)、および液体表面積(シャワートレイ全体を覆う時計皿から)を再計算することができる。結果は、コンピュータメモリ内に保存することができる。
【0089】
したがって、特定の実施形態では、気相濃度を演算デバイスによって演算するステップ120は、時間に応じて実施され、心理物理学的官能強度は、前記気相濃度に応じて推定される。
【0090】
図1に示されているような特定の実施形態では、方法100は、コンピュータインタフェースに官能評価パラメータの値を設定するステップ150を含み、そのような値は、出力するステップの上流のステップのうちの1つで使用される。
【0091】
そのような評価パラメータは、以下のうちの少なくとも1つであってよい:
- 水または空気の温度(例えば、37℃)、
- 水性組成物の液体体積、
- 芳香分子が移動して入る空気体積または周囲空気流(例えば、1.6m3)、
- 水性組成物の適用表面積および任意選択的に経時的な展開(例えば、0.008~0.8m2)、
- 物質移動係数によって表される水相の撹拌、および任意選択的に経時的な展開、例えば、撹拌しない場合はk=0.4×10-6m/sまたは撹拌する場合はk=1×10-5m/s、
- 希釈倍率(例えば、1500)、
- 水の添加速度(例えば、10L/分)および/または時間間隔もしくは総期間(例えば、水の投入から10秒~60秒)。
【0092】
そのような評価パラメータは、例えば、シミュレーション環境、芳香特徴、および/または界面活性剤分子を標的とすることができる。界面活性剤分子は、一般に、適用物ベースに対応する。
【0093】
図1に示されているような特定の実施形態では、方法100は、評価パラメータを、演算デバイスによって、水性組成物と水流との接触からの時間を表す値に応じて判定するステップ150を含み、気相濃度を演算するステップ120は、判定された液体表面積に応じて実施される。
【0094】
判定するステップ150は、例えば、入力するステップ105の変形例のうちの1つと同様に実施される。この判定するステップ150中に、例えば、GUIは、演算するステップ120で使用すべき評価パラメータの初期値およびシミュレーション終了時の最終値を入力するようにユーザに指示することができる。次いで、例えば線形補間または多項式補間を介して、評価パラメータを判定することができる。
【0095】
あるいは、自動または手動で設定された初期値から、より高度なモデルを使用して評価パラメータを演算してよい。そのようなより高度なモデルは、例えば、流体力学計算を使用してよい。
【0096】
本発明で、別の実施形態では、初期希釈ステップを含み、続いて、物質移動方程式を様々な時間ステップで計算することができ、かつ毎回評価パラメータが経時的に一定であるプロセスを含む、瞬間希釈を考慮することができる。結果は、コンピュータメモリ内に保存することができる。
【0097】
別の実施形態では、評価パラメータは、密閉されたキャビン内での評価のために調整される。
【0098】
別の実施形態では、評価パラメータは、開放されたキャビン内での評価のために調整される。
【0099】
別の実施形態では、評価パラメータは、カップ内での評価のために調整される。
【0100】
別の実施形態では、評価パラメータは、シンク内での評価のために調整される。
【0101】
別の実施形態では、評価パラメータは、バケツ内での評価のために調整される。
【0102】
別の実施形態では、評価パラメータは、皮膚上での評価のために調整される。
【0103】
別の実施形態では、評価パラメータは、毛髪スワッチ上での評価のために調整される。
【0104】
別の実施形態では、評価パラメータは、硬質表面上での評価のために調整される。
【0105】
別の実施形態では、評価パラメータは、以下の適用を表すように調整されるが、これらに限定されることはない:
- ボディケア(液体ハンドソープ、シャワーゲル、固形石鹸)、
- ヘアケア(シャンプー、コンディショナー)、
- 表面ケア(万能クリーナー)、
- トイレケア(リムブロック、液体トイレクリーナー、粉末トイレクリーナー)、
- 食器洗浄、および
- 布地ケア(液体洗剤、洗濯用固形剤、洗濯用粉末)。
【0106】
そのような適用は、上述のものに対応してよい。
【0107】
評価するステップ125は、例えば、専用ソフトウェアを実行するように構成された演算システムによって実施される。推定するステップ125中に、演算された気相濃度を、この気相濃度に対応する、前記芳香分子の既存の心理物理学的官能強度と比較することができる。
【0108】
より高度な実施形態では、この推定するステップ125は、用量-反応曲線を利用する。そのような用量-反応曲線は、気相濃度と心理物理学的官能強度との間の関係を定義する数式(または対応する重要なパラメータ)である。そのような用量-反応曲線は、典型的には、シグモイド状であり、芳香分子の特定の所定の気相濃度についてパネリストから得られた実験結果に対応する値間のフィット関数に対応する。
【0109】
出力するステップ130は、例えば、コンピュータ画面と、そのような値を出力するように設計されたコンピュータプログラムに関連付けられたグラフィックユーザインタフェース(GUI)とを使用して実施される。他の実施形態では、出力するステップ130は、推定されたデータを別のデバイスまたはコンピュータプログラムに提供するAPIまたは通信ネットワークなどのデータ/デジタル出力を使用して実施される。
【0110】
図1に示されているものなどのより高度な実施形態では、方法100は、入力された配合物中の少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子を、演算デバイスによって、前記芳香分子それぞれの推定心理物理学的官能強度および少なくとも1種の他の芳香分子の推定心理物理学的官能強度に応じて置換するステップ155を含む。
【0111】
置換するステップ155は、例えば、専用ソフトウェアを実行するように構成された演算システムによって実施される。置換するステップ155中に、幾つかの代替的または累積的な置換基準を使用してよい。
【0112】
そのような基準は、例えば、現在配合物中にある入力された芳香分子よりも芳香分子の心理物理学的官能強度が高いことであってよい。
【0113】
別の基準は、例えば、芳香分子の心理物理学的官能強度が、入力された芳香成分よりも少ない量において、入力された芳香分子と同様であることであってよい。
【0114】
別の基準は、例えば、前記成分の経済的コストに依存することなど、芳香分子自体の外因性に結び付けてよい。そのような変形例では、芳香分子の心理物理学的官能強度が、入力された芳香成分よりも低い経済的コストにおいて、入力された芳香分子と同様であることであってよい。
【0115】
置換するステップ155は、演算デバイスによって候補芳香分子のセットに対して対応するアルゴリズムを実行して、前記基準が満たされるかどうかを判定することによって実施される。そのようである場合、芳香分子デジタル識別子は、前記基準を満たす芳香分子の新しいデジタル識別子に自動的に変更してよい。あるいは、前記基準を満たす芳香分子の新しいデジタル識別子は、手動または自動の第三者による確認のために、演算インタフェース(例えば、GUIまたはAPI)に出力してよい。
【0116】
変形例では、置換のための全ての候補芳香分子が、確認のために提供されるか、または置換のために使用される。他の変形例では、1種の候補芳香分子のみが、確認のために提供されるか、または置換のために使用される。典型的には、候補芳香分子は、設定された基準を最も満たす分子であってよい。
【0117】
図1に示されているものなどのより高度な実施形態では、方法100は、少なくとも1種の判定される芳香分子デジタル識別子の心理物理学的官能強度閾値をコンピュータインタフェースに定義するステップ160を含み、置換するステップ155は、判定された閾値に応じて実施される。
【0118】
代替的な実施形態では、置換するステップ155は、配合物中にすでに存在する芳香分子の代替量を提供するように構成されており、そのような代替量は、例えば、増加または減少である。そのような代替量の芳香分子は、この場面では、候補芳香分子と同等である。
【0119】
置換するステップ160は、例えば、入力するステップ105と同様の手法(構造的および/または機能的に)で実施される。設定された閾値は、置換の可能性を評価するための基準としての最小値または最大値のいずれかとして使用することができる。
【0120】
したがって、候補芳香分子を、次いで、アルゴリズム的に閾値と比較することができ、基準が満たされる場合、置換として使用することまたは置換の確認のために(例えば、GUIに)提供することができる。
【0121】
図1に示されているものなどのより高度な実施形態では、方法100は、芳香分子の心理物理学的官能強度展開関数を、演算デバイスによって、
- 前記芳香分子の気相濃度、および
- 気相濃度を心理物理学的官能強度に結び付ける特徴的な心理物理学的官能強度用量反応曲線
に応じて計算するステップ165を含み、
置換するステップ155は、置換されるようにおよび/または配合物中の別の芳香分子を置換するように構成された芳香分子の心理物理学的官能強度展開関数に応じて実施される。
【0122】
計算するステップ165は、例えば、専用ソフトウェアを実行するように構成された演算システムによって実施される。計算するステップ165中に、「ブルームポテンシャル」と呼ばれる心理物理学的官能強度展開関数は、基準心理物理学的官能強度を達成するために必要な気相濃度に対する、所定の設定で(すなわち、芳香分子が配合物において100%で使用されたかのように)達成することができる芳香分子の最大気相濃度の比率を表す。
【0123】
このブルームポテンシャルを置換の基準として使用することができる。
【0124】
特定の実施形態では、本発明の対象である方法100は、芳香分子の特徴的な心理物理学的官能強度用量反応曲線の基準点における気相濃度の変動の感度を表す値を演算デバイスによって判定するステップ170を任意選択的にさらに含み、置換するステップ155は、置換されるようにおよび/または配合物中の別の芳香分子を置換するように構成された芳香分子の感度に応じて実施される。
【0125】
そのような基準点は、例えば、用量反応曲線における変曲点、または所定の基準点であってよい。
【0126】
感度を表すそのような値は、強度勾配に対応してよい。
【0127】
そのような判定するステップ170は、例えば、演算デバイスにおいて動作する専用ソフトウェアによって実施することができる。
【0128】
図示されていない他の実施形態では、本発明の対象である方法100は、少なくとも1種の芳香分子の基準心理物理学的官能強度に達する遅延を表す値を判定するステップを含む。そのような値は、秒数で測定してよいか、または一連の芳香成分間の相対的ランキングに対応してよい。
【0129】
そのような判定するステップは、例えば、専用ソフトウェアを実行するように構成された演算システムによって実施される。この判定するステップ中に、芳香分子の用量反応曲線の「強度勾配」を使用してよい。強度勾配は、シグモイド関数の変曲点における用量反応曲線の勾配である。
【0130】
あるいは、芳香分子の用量反応曲線の「リアルタイム勾配」を使用してよい。リアルタイム勾配は、適用条件下で得られる芳香分子の実際の気相濃度における用量応答曲線の勾配である。
【0131】
基準心理物理学的官能強度に達する遅延を表すこの値を置換の基準として使用することができる。
【0132】
他の実施形態では、本発明の対象である方法100は、「ブルーム効率」と呼ばれる、最終知覚強度に対する配合物中の芳香分子の量の増加の影響を表す値を判定するステップ167を含む。ブルーム効率は、前記強度を満たす用量の増加に対する強度の増加の比率である。ブルーム効率は、幾つかの用量変動増分または強度変動増分について計算することができる。
【0133】
そのような判定するステップ167は、例えば、専用ソフトウェアを実行するように構成された演算システムによって実施される。
【0134】
このブルーム効率を置換の基準として使用することができる。
【0135】
様々な閾値を上回る気相濃度の評価などの他の基準を使用して、置換芳香分子デジタル識別子を判定することができる。
【0136】
そのような変形例では、本発明の対象である方法100は、少なくとも1種の前記芳香分子の気相濃度を、演算デバイスによって、液体-気体分配係数および前記芳香分子の水相における相対濃度に応じて演算するステップを含んでよい。次いで、そのような気相濃度を以下のものと比較することができる:
- 前記芳香分子の匂い検出閾値を表す値、
- 前記芳香分子の匂い認識閾値を表す値、
- 1.0の強度を達成するために必要な気相濃度を表す値(0~6のスケールであり、0は、知覚強度がないことを表し、6は、その化合物の最大知覚強度を表す)、
- 1.5の強度を達成するために必要な気相濃度を表す値(0~6のスケールであり、0は、知覚強度がないことを表し、6は、その化合物の最大知覚強度を表す)、
- 2.0の強度を達成するために必要な気相濃度を表す値(0~6のスケールであり、0は、知覚強度がないことを表し、6は、その化合物の最大知覚強度を表す)、
- 2.5の強度を達成するために必要な気相濃度を表す値(0~6のスケールであり、0は、知覚強度がないことを表し、6は、その化合物の最大知覚強度を表す)、
- 3.0の強度を達成するために必要な気相濃度を表す値(0~6のスケールであり、0は、知覚強度がないことを表し、6は、その化合物の最大知覚強度を表す)、
- 用量反応曲線の変曲点における強度に等しい強度を達成するために必要な気相濃度を表す値。
【0137】
置換の候補は、先の閾値の比較の結果に応じて得ることができる。
【0138】
芳香分子の全体的なブルームパラメータなどの他の基準を使用して、置換芳香分子デジタル識別子を判定することができる。
【0139】
芳香成分の混合物または配合物のそのような全体的なブルームパラメータ(「ブルームスコア」)は、全ての個々の芳香成分の上述の閾値のうちの1つを上回る気相濃度の合計として定義することができる。
【0140】
そのようなブルームパラメータは、以下の方程式:
【数1】
によって、または以下の方程式:
【数2】
によって対数形式で定義することができる。
【0141】
特定の実施形態では、ブルームパラメータは、前記芳香分子の気相濃度における変動に関する芳香分子の感度に依存する。
【0142】
そのような実施形態では、方法100は、シグモイド関数の変曲点における用量反応曲線の強度勾配を演算デバイスによって取得するステップをさらに含んでよい。
【0143】
そのような実施形態では、方法100は、シグモイド関数の変曲点における用量反応曲線のリアルタイム勾配を演算デバイスによって取得するステップをさらに含んでよい。
【0144】
以下の基準によって芳香分子を4つの群に分類するなどの他の基準を使用して、置換芳香分子デジタル識別子を判定することができる。
- (群1)芳香分子の強度が基準強度を上回り、強度勾配が基準強度勾配を上回る、
- (群2)芳香分子の強度が基準強度を上回り、強度勾配が基準強度勾配を下回る、
- (群3)芳香分子の強度が基準強度を下回り、強度勾配が基準強度勾配を上回る、または
- (群4)芳香分子の強度が基準強度を下回り、強度勾配が基準強度勾配を下回る。
【0145】
芳香のブルーム性能は、群1、続いて、群3、群2、および群4の芳香分子によってそれぞれ左右される。したがって、芳香のブルーム性能を増加させるためには、群1に分類される芳香分子の割合を増加させることが望ましい。あるいは、これらが基準強度、または基準勾配、またはその両方に達して群1に分類されるためには、群2、群3、または群4に分類される他の芳香分子の割合を増加させることが望ましいであろう。
【0146】
したがって、置換基準は、置換すべき芳香分子の所属、および特定の群におけるこの芳香分子を置換する可能な候補であってよい。
【0147】
1種の芳香分子に使用される基準を配合物全体に使用して、全体的なブルーム性能を評価することができると理解されるべきである。この全体的なブルーム性能を全体的な性能基準(先に論じた芳香分子の性能基準と同様)と比較することができる。配合物が前記基準を満たさない場合、この方法は、少なくとも1種の構成芳香成分の置換を引き起こすことがある。
【0148】
図2は、本発明の対象である方法200の特定の実施形態を概略的に示す。この水性組成物成分量判定方法200は、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップ205であって、前記入力によって配合物を定義する、ステップ205と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するステップ206であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された配合物が水相と界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、ステップ206と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の目標心理物理学的官能強度の値をコンピュータインタフェースに定義するステップ210と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の気相濃度を、演算デバイスによって、定義された目標心理物理学的官能強度に応じて推定するステップ215と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液相濃度を、演算デバイスによって、前記芳香分子の推定気相濃度に応じて演算するステップ220と、
- 水相中および対応する界面活性剤によって形成されたミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、演算された液相濃度に応じて演算するステップ225と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度をコンピュータインタフェースに出力するステップ230と
を含む。
【0149】
この方法は、
図1に示される方法100の教示の逆の使用に対応する。したがって、構成ステップは、それらの
図1の対応物の変形例と構造的および/または機能的に同一である。さらに、
図1の全ての変形例および特定の実施形態も、この方法200に関して実装することができる。
【0150】
本発明の特定の実施形態では、方法100および/または200は、前記方法から得られる配合物を組み合わせるステップ175をさらに含む。
【0151】
そのような組み合わせるステップ175は、化学配合物を組み合わせるために使用される任意の手段によって実施することができる。そのような手段は、例えば、実験室または化学製造工場などであってよい。
【0152】
図3は、本発明の対象であるシステム300の特定の実施形態を概略的に示す。この水性組成物官能影響判定システム300は、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段305であって、前記入力によって配合物を定義する、手段305と、
- 少なくとも1種の入力された芳香分子デジタル識別子について、入力すべき関連する芳香分子の量を表す値を関連付ける手段307と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段306であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された芳香分子が水相と界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、手段306と、
- 水相中および対応する界面活性剤によって形成されたミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算デバイスによって、少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子および入力された界面活性剤分子デジタル識別子についての入力された配合物および関連する量に応じて演算するための手段310と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液体-気体分配係数を取得するための手段315と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の気相濃度を、液体-気体分配係数および前記芳香分子の水相における相対濃度に応じて演算するための手段320と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度を、演算された気相濃度に応じて推定するための手段325と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の心理物理学的官能強度をコンピュータインタフェースに出力するための手段330と
を含む。
【0153】
システム300の手段の特定の実施形態および実装形態の可能性は、
図1に関して開示されている。したがって、入力のための手段305は、専用ソフトウェアに関連付けられたGUI、またはAPIであってよい。演算するための手段310、取得するための手段315、演算および推定するための手段325は、例えば、演算デバイスなどの電子回路で動作する専用ソフトウェアであってよい。この演算デバイスは、ローカルまたは遠隔であってよい。
【0154】
図4は、本発明の対象であるシステム400の特定の実施形態を概略的に示す。水性組成物成分量判定システム400は、
- 少なくとも1種の芳香分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段405であって、前記入力によって配合物を定義する、手段405と、
- 少なくとも1種の界面活性剤分子デジタル識別子をコンピュータインタフェースに入力するための手段406であって、前記識別子が界面活性剤分子を表しており、入力された界面活性剤分子がミセル状に組織化されており、入力された配合物が水相と界面活性剤分子のミセル相との間で分配している、手段406と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の目標心理物理学的官能強度の値を定義するための手段410と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の気相濃度を、定義された目標心理物理学的官能強度に応じて推定するための手段415と、
- 少なくとも1種の前記芳香分子の液相濃度を、前記芳香分子の推定気相濃度に応じて演算するための手段420と、
- 水相中および対応する界面活性剤によって形成されたミセル相中の配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度を、演算された液相濃度に応じて演算するための手段425と、
- 配合物の少なくとも1種の芳香分子の相対濃度をコンピュータインタフェースに出力するための手段430と
を含む。
【0155】
同様に、
図2について、
図4のシステム400は、
図3のシステム300および
図2の方法200の両方の構成手段およびステップの特定の使用に対応する。したがって、このシステム400の構成手段は、システム300の手段と同様である。
【国際調査報告】