(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】レーザ焼結用のポリケトン粉末
(51)【国際特許分類】
C08G 67/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C08G67/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023559758
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022029422
(87)【国際公開番号】W WO2022245721
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073570
【氏名又は名称】ジャビル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】クビアク,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】ディッペル,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】トロシアン,マシュー エー
(72)【発明者】
【氏名】フライ,トーマス
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AB01
4J005BA00
4J005BB02
(57)【要約】
一例において、積層製造に有用な半結晶性ポリケトン粉末は、20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される二峰性溶融ピーク並びに最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径により特徴付けられる。組成物は、溶融ピークおよび再結晶化ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末からなり、この溶融ピークおよび再結晶化ピークは重複しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される二峰性溶融ピーク並びに最大300マイクロメートルのD
90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物。
【請求項2】
前記半結晶性ポリケトン粉末の粒子の数で少なくとも90%が、少なくとも約0.9の真円度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリケトンが:
【化1】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から10,000である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記半結晶性ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、請求項1から3いずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記他のアルケン単量体がオレフィンである、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記オレフィンがプロピレンである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記エチレンが、約2から100のエチレン/他のアルケンの比で存在する、請求項4から6いずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリケトンが、アルキル基、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、エーテルまたはその組合せで終端されている、請求項1から7いずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリケトンが、初期の加熱および冷却DSC走査中に前記二峰性溶融ピークの一部と重複する再結晶化ピークを有する、請求項1から8いずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリケトンが、その後のDSC走査の際に、単峰性溶融ピークを有する、請求項1から9いずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
前記その後のDSC走査が、前記単峰性溶融ピークの一部と重複する再結晶化ピークを有する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリケトンが、少なくとも約15体積%の結晶化度を有する、請求項1から11いずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記粉末が、15mmのノズルを使用してASTM D1895により決定される、少なくとも約0.5g/秒の流動性を有する、請求項1から12いずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、紫外線安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、難燃剤、他の高分子粉末、または溶媒の1つ以上をさらに含む、請求項1から13いずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が溶媒を実質的に含まない、請求項1から14いずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD
90粒径、(ii)少なくとも10μmのD
10、および(iii)約20μmから約50μmの平均粒径を有する、請求項1から15いずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
20℃/分の加熱速度と冷却速度で走査される示差走査熱量測定(DSC)によって決定される溶融ピークと再結晶化ピークであって、重複しない溶融ピークと再結晶化ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末からなる組成物。
【請求項18】
前記溶融ピークおよび前記再結晶化ピークが、互いに少なくとも10℃離れた、溶融ピーク開始温度および再結晶化開始温度をそれぞれ有する、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリケトンが:
【化2】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から10,000である、請求項17または18記載の組成物。
【請求項20】
前記半結晶性ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、請求項17から19いずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
前記他のアルケン単量体がオレフィンである、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記他のアルケン単量体がプロピレンである、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
前記エチレンが、約2から100の質量比のエチレン対他のアルケンの比で存在する、請求項20から22いずれか1項記載の組成物。
【請求項24】
前記ポリケトンが、アルキル基、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、エーテルまたはその組合せで終端されている、請求項20から23いずれか1項記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリケトンが、少なくとも約15体積%の結晶化度を有する、請求項17から24いずれか1項記載の組成物。
【請求項26】
前記粉末が、15mmのノズルを使用してASTM D1895により決定される、少なくとも約0.5g/秒の流動性を有する、請求項17から25いずれか1項記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、紫外線安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、難燃剤、または溶媒の1つ以上をさらに含む、請求項17から26いずれか1項記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が溶媒を実質的に含まない、請求項17から27いずれか1項記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD
90粒径、(ii)少なくとも10μmのD
10、および(iii)約20μmから約50μmの平均粒径を有する、請求項17から28いずれか1項記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリケトン粉末が、検出可能な量の8族から10族の遷移金属触媒を有する、請求項1から29いずれか1項記載の組成物。
【請求項31】
前記8族から10族の遷移金属触媒が、ニッケル、コバルト、パラジウムまたはその組合せである、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
積層製造物品を製造するのに有用なポリケトン粉末を形成する方法であって、
(iv)8族から10族の遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素とアルケン単量体を反応させて、原料ポリケトン粉末を形成する工程と、
(ii)前記原料ポリケトン粉末を回収する工程と、
(iii)前記原料ポリケトン粉末を分離して、最大300マイクロメートルのD
90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有するポリケトン粉末および大き過ぎるポリケトン粉末を形成する工程と、
を有してなる方法。
【請求項33】
前記粒子の少なくとも約90%が、少なくとも約0.9の真円度を有する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記大き過ぎるポリケトン粉末を破砕して、破砕されたポリケトン粉末を形成する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記破砕されたポリケトン粉末の数で少なくとも90%が、少なくとも約0.8の真円度を有する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記破砕されたポリケトン粉末が、最大150マイクロメートルのD
90粒径および1マイクロメートルから100マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記ポリケトン粉末、前記原料ポリケトン粉末、または前記破砕されたポリケトン粉末が、該ポリケトン粉末をさらに結晶化させる条件に施される、請求項32から36いずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記さらに結晶化させる工程が、前記ポリケトン粉末のいずれか1つを、結晶化度を増加させて、結晶化度が増加したポリケトンを形成する時間に亘り、DSCで決定されるピーク溶融温度より50℃低い温度にに熱処理する工程からなる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記結晶化度が増加したポリケトンが、少なくとも10℃離れた、溶融ピーク開始温度および再結晶化開始温度を有する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
回収された前記原料ポリケトン粉末が加熱され、ペレットに形成され、次いで、該ペレットを結晶化させ、製粉し、分類して、さらに結晶化したポリケトン粉末を形成する、請求項32記載の方法。
【請求項41】
物品を形成する方法であって、請求項1から31いずれか1項記載の組成物を、該組成物のポリケトン粉末を溶融し、結合して、該物品を形成するのに十分な温度に加熱する工程を含む方法。
【請求項42】
前記方法が積層製造方法である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記積層製造方法が、前記組成物のポリケトン粉末の直接溶融による選択的融合からなる、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が、再利用されたポリケトン粉末からなる、請求項41から43いずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記再利用されたポリケトン粉末が、前記組成物中に存在するポリケトン粉末の約10質量%から50質量%の量で存在する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
請求項41から45いずれか1項記載の方法により形成される物品からなる物品。
【請求項47】
20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される溶融ピークおよび結晶化ピーク並びに最大300マイクロメートルのD
90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物であって、前記溶融ピークと前記結晶化ピークが重複する、組成物。
【請求項48】
前記溶融ピークが単峰性である、請求項17または47記載の組成物。
【請求項49】
前記溶融ピークが、少なくとも5ジュール/グラムのポリケトン粉末の溶融エンタルピーを有する、請求項1から31いずれか1項記載の組成物。
【請求項50】
前記溶融エンタルピーが、少なくとも20ジュール/グラムのポリケトン粉末である、請求項49記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脂肪族ポリケトンからなる積層製造用高分子粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ポリケトンは、1つには、低コストのエンジニアリングプラスチックとしての物理的性質と耐薬品性のために、有望な高分子となっている。ポリケトンは、通常、特許文献1および2に記載されているようなパラジウム(または他の)触媒の存在下での共重合により生成されるエチレン(および/または他のオレフィンまたはアルケン)と一酸化炭素の共重合体である。ひいては、脂肪族ポリケトンは、通常、重合反応器中に存在する他の成分から分離される。これらの他の成分には、未反応アルケン、未反応一酸化炭素、メタノール(または他の)反応媒体、および触媒があるであろう。他の成分から分離された(例えば、分離と乾燥により)ポリケトン生成物は、「反応器フレーク(reactor flake)」と称される。この反応器フレークは、取扱いと出荷を困難にする微細な粒径のために、通常、市販用のペレットを形成するために、加熱され、押し出される。
【0003】
積層製造の粉末に基づく方法には、以下のものがある:選択的レーザ焼結(SLS)は、連続層で粉末材料を溶融するためにレーザを使用する3Dプリンティング技術である(例えば、特許文献3を参照のこと)。高速焼結(HSS)およびマルチジェットフュージョン(MJF)3Dプリンティングでは、粉末材料上に赤外線吸収(IR吸収)インクの連続層を同様に堆積させる多数のジェットが利用され、その後、粉末層は、選択的溶融のためにIRエネルギーに暴露される。電子写真3Dプリンティングでは、物体を台座から層毎に構築する回転式光伝導体が利用される。
【0004】
選択的レーザ焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(MJF)、および高速焼結(HSS)3Dプリンティング方法では、同じタイプの浮遊性の固定されていない粉末床が使用される。それらには、一般に、積層構築された物体が、溶融相を得るために加熱機構が異なるだけで、同様の応力を経験するので、プリンティングプロセスに適合するための同じ材料要件がある。典型的に、プリントされた物体に予測される残留応力を決定するために、3Dプリント物体の自由物体図を使用することができる。これは、物体をうまく構築するために必要である。残留応力が高すぎると、その物体は、変形するか、または許容範囲を超えて形が崩れることになる。
【0005】
残留応力は、典型的に、溶融温度と再結晶化温度との間に十分に大きい窓(window)がある結晶性または半結晶性熱可塑性高分子を使用することによって、これらの粉末床に基づく3Dプリンタについて最小にされてきた。残念ながら、これは、SLSおよびMJF法を使用して大きいまたは複雑な部品をプリントするためにうまく使用されてきた高分子(例えば、ポリアミド)に限定され、それゆえ、これらの積層製造方法の使用が制限されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4835250号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0058494号明細書
【特許文献3】米国特許第5597589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、SLS、HSS、MJF、および上述したものなどの方法によって、積層製造物品を製造するために、1つ以上の問題を回避する熱可塑性高分子を提供することが望ましいであろう。特に、高い強度、靱性、高温抵抗、難燃性、およびある場合には、光学的に透明な物品を提供できる熱可塑性高分子を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、脂肪族ポリケトンであって、浮遊性粉末床法によってこれらの材料の積層製造を可能にする特定の粉末形態および熱的特性を有する脂肪族ポリケトンを発見した。意外なことに、一例では、ポリケトン粉末は、二峰性形状または多峰性(例えば、三、四以上)形状を示す、重複するDSC溶融ピークと、このDCS溶融ピーク内に特徴付けられる再結晶化ピークを示す。
【0009】
本発明の第1の態様は、20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される二峰性溶融ピーク並びに最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物である。意外なことに、これらの粉末は、重複する溶融ピークと再結晶化ピークを示したとしても(すなわち、加熱中の溶融ピークの開始温度が、冷却中の再結晶化ピークの開始温度より低い)、SLS、HSSおよびMJFなどの浮遊性粉末床積層製造技術によって、印刷することができる。同様に、これらの粉末は、単峰性になる溶融ピークのように、熱的特性が変わるけれども、良好な積層製造リサイクル性を示す。二峰性ピークは、ここでは、そのピークが、開始温度と終了温度との間に2つの極大値と1つの極小値を示し、手作業で、または市販の曲線フィッティングソフトウェアにより決定できることを意味する。
【0010】
本発明の第2の態様は、20℃/分の加熱速度と冷却速度で走査される示差走査熱量測定(DSC)によって決定される溶融ピークと再結晶化ピークであって、重複しない溶融ピークと再結晶化ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末からなる組成物である。「重複しない」とは、加熱中の溶融ピークの開始温度が、冷却中の再結晶化ピークの開始温度より高いことを意味する。
【0011】
本発明の第3の態様は、積層製造物品を製造するのに有用なポリケトン粉末を形成する方法であって、
(i)8族から10族の遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素とアルケン単量体を反応させて、原料ポリケトン粉末を形成する工程と、
(ii)その原料ポリケトン粉末を回収する工程と、
(iii)その粉末を分離して、最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有するポリケトン粉末および大き過ぎるポリケトン粉末を形成する工程と、
を有してなる方法である。第3の態様の方法は、本発明の第1の態様の組成物を調製するのに有用である。その大き過ぎるポリケトン粉末は、製粉によってさらに処理して、所望の粒径を実現し、さらに処理を施して、粉末の結晶化度を増加させ、例えば、第2の態様の組成物を実現することができる。原料粉末にも、加熱や押出しなどのさらなる処理を施して、ペレット(さらに結晶化が施され、破砕されて、第2の態様の組成物を実現する)を形成することができる。
【0012】
本発明の第4の態様は、物品を形成する方法であって、第1または第2の態様の組成物を、その組成物のポリケトン粉末を溶融し、結合して、その物品を形成するのに十分な温度に加熱する工程を含む方法である。この方法は、浮遊性粉末床法などの積層製造方法(例えば、SLS、HHSおよびMJF法)によって物品を形成するのに特に有用である。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1と第2の態様の組成物の融合粒子からなる物品である。その物品は、積層製造されたときに形成されるものなどの、層内と層間の融合粒子の物品であることが望ましい。
【0014】
前記組成物は、このエンジニアリングプラスチックの特性(例えば、耐熱性および耐薬品性)を生かして、積層製造物品に作ることができる。そのような用途の例に、生体適合性(医療)、電気、輸送(例えば、自動車、鉄道、トラック輸送)、配管、航空宇宙、食品接触、工業(例えば、機械)および民生用(例えば、電化製品)用途がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の組成物のポリケトン粉末の粒径分布のプロット
【
図2】本発明の組成物のポリケトン粉末の光学顕微鏡写真
【
図3】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【
図4】本発明の組成物のポリケトン粉末の粒径分布のプロット
【
図5】本発明の組成物のポリケトン粉末の光学顕微鏡写真
【
図6】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【
図7】本発明の組成物のポリケトン粉末の粒径分布のプロット
【
図8】本発明の組成物のポリケトン粉末の光学顕微鏡写真
【
図9】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【
図10】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【
図11】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここに提示された説明と実例は、本発明、その原理、およびその実用的応用を当業者に知らせる意図がある。記載された本開示の特定の実施の形態は、包括的であること、または本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0017】
ここに用いられているような「1つ以上」は、列挙された構成要素の少なくとも1つ、または複数が、開示されたように使用されてもよいことを意味する。任意の成分または構成要素の機能性は、原材料の不完全さ、反応体の不完全な変換、および副生成物の形成のために、平均的な機能性であることがあるのが理解されよう。
【0018】
浮遊性粉末床積層製造方法に有用なポリケトン粉末の組成物は、8族から10族の遷移金属触媒の存在下での一酸化炭素とアルケン単量体の反応によって形成できることが見出された。詳しくは、その方法は、各々がここに全て引用される、特許文献1、米国特許第4894435号明細書、および米国特許第5138032号明細書、並びに特許文献2に記載されたものの内のいずれか1つであることがある。詳しくは、その方法、反応条件、および単量体は、ここに具体的に引用される、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第52行から第5欄の第17行までに記載されたものである。そのような触媒の例としては、コバルト、ニッケルおよびパラジウムが挙げられる。
【0019】
アルケン単量体が、2から12、8または6の炭素を有するオレフィンからなることが望ましい。実例として、アルケン単量体はエチレンである、またはアルケン単量体は、エチレンと、プロピレンなどの少なくとも1種類の他のオレフィン単量体とを含む。ポリケトンが、エチレンと、別のオレフィン単量体(例えば、プロピレン)との共重合体である場合、エチレンと他のオレフィンの量は、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第17行から第3欄の第14行に記載されたようなものであってよい。
【0020】
第1の態様の組成物は、20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される二峰性溶融ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末からなる。上述したように、半結晶性ポリケトン粉末は、反応器から直接粉末を回収し、当該技術分野で公知(例えば、洗浄)であり、先に記載された文献に記載されたものなどの任意の精製方法を行い、その後、粉末を分離して、所望の粉末サイズとサイズ分布を実現することによって、形成することができる。
【0021】
反応器からの原料ポリケトン粉末粒子の分類または分離は、その所望の粒径および形態を有するポリケトンを形成するために、当該技術分野で公知のもなど、どの適切な方法によって行われてもよい。実例として、原料粒子を篩にかけて、任意の大き過ぎるまたは小さ過ぎる粒子を除去し、それにしたがって、サイズ分布を変えることができる。遠心分離、沈降およびエアーサイクロンなど、他の分粒方法も利用してよい。
【0022】
意外なことに、結晶化または再結晶化ピーク(ここでは置き換え可能に使用される)は、ポリケトン粉末の初期DCS走査における溶融ピークと重複し、それでも、良好な特性で、反りや歪みがなく、積層製造できる粉末を生成することができる。
【0023】
ポリケトン粉末の結晶化温度(Tc)は、溶融ピークと結晶化ピークにより、そして、二峰性ピークの場合には、温度が低い方のピークにより、決定される半結晶性高分子の溶融温度(Tm)より低い。一般に、ポリケトンのTcは、Tmより約10℃から40または50℃低い。TmとTcは、溶融ピークの中点を使用して、ASTM D3418に記載されているように、DSCの溶融ピークから決定される。TmピークとTcピークの開始は、ASTM D3418(すなわち、線形からの走査の偏差)のように決定される。
【0024】
直接生成されたポリケトン粉末は、流動補助剤(flow aid)がなくとも積層製造できる形態を有することがある。望ましくは、そのような望ましい流動特性を有するポリケトンは、粒子形状、特に、粒子の丸みに関して、真球度(sphericity)を有し、これは、流動性に役立ち、個々の粒子の顕微鏡画像から導いて、円形特徴、または真円度(circularity)に関して表されることがあり、ここで、個々の粒子の真円度は、4πA/P2と定義され、式中、両方とも、無作為の視点から見て、Aは粒子の面積であり、Pは粒子の外周長さである。関連パラメータである真球度は、真円度の平方根として導かれる。真円度は、ゼロより大きく、1以下の数値である。完全に円形の粒子は、1.00の真円度を有すると称される。様々なレベルの真円度(例えば、0.65、0.75、0.85、0.90、および0.95)に、表の値より大きい真円度を持つ粒子試料集団の百分率が付随するようなやり方で、集団真円度データの表が提示されている。真円度は、0.9または0.95のソリディティ・フィルタ(solidity filter)レベルで決定される。ソリディティ・フィルタは、市販の画像解析ソフトウェアで利用できる二次元顕微鏡写真において重複する粒子を取り除くために使用されるフィルタである。ソリディティは、本質的に、二次元顕微鏡写真における粒子面積の主軸と単軸で規定される区域の面積上にある粒子の面積(粒子面積)である。粒子のサイズと形状は、直径で粒径を測定するための当該技術分野で公知のどの適切な方法で測定しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、粒子のサイズと形状は、当該技術分野で公知のようにレーザ回折で決定される。例えば、粒径は、粒子の取り込み画像を解析するためのPartAnSIソフトウェアを使用して、静止画像解析アクセサリを備えたMicrotrac S3500などのレーザ回折計を使用して、決定することができる。粒子の少なくとも約65%、70%、80%、95%または99%(数で)が、精製以外にさらに処理を行わずに、反応器から分離され、分類された粉末について、少なくとも約0.8、0.85、0.9または0.95の真円度を有することが望ましい。
【0025】
同様に、どのような流動補助剤も加えずに、反応器から直接分離され、分類されたポリケトン粉末は、一般に、ASTM D1895の方法Aで決定されるように、15mmのノズルを使用して、少なくとも約0.5g/秒、1g/秒または2g/秒から任意の実際的に達成可能な速度(例えば、50g/秒)の流動性を有する。
【0026】
本発明のポリケトン粉末の別の実例では、反応器からの大き過ぎるポリケトン粉末に、粉砕(size reduction)過程を施し、所望であれば、さらに分離と分類を行ってもよい。粉砕は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法で行ってもよい。実例として、半結晶性ポリケトンが砕けやすくなる温度での製粉が、使用されることがあり、通常、冷凍製粉と称される。一般に、冷凍製粉の温度は、約0℃未満、-25℃未満、-50℃未満から約-75℃、-100℃、-150℃、または-190℃のどの温度であってもよい。ある実施の形態において、冷却は、ドライアイスまたは液体窒素により行われる。これらの粉末は、粉砕過程のために、減少した流動性と真円度を有するであろうが、それにもかかわらず、流動補助剤など、当該技術分野で公知の加工助剤と共に使用されるときに、所望の積層製造物品を形成するために、使用されることがある。
【0027】
本発明のポリケトン粉末の別の実例に、反応器からのポリケトン粉末に、押出機内で加熱と成形を行って、ペレットを形成するものがある。次に、ペレットは、前の段落に記載されたように、粉砕され、任意の所望の分離と分類が行われることがある。反応器内での形成後のその後の熱履歴のために、これらの粉末は、単峰性Tmを有し、溶融ピークと結晶化ピークがほとんどまたは全く重複しない傾向にある。同様に、これらの粉末は、粉砕されているので、大き過ぎる反応器粉末について記載されたものと類似の形態を有する傾向にある。
【0028】
本発明の上述した半結晶性ポリケトンは、少なくとも約15質量%から実質的に結晶性の結晶化度を有し、結晶化度の度合いが高いほど望ましい。結晶化度が、20%、25%または30%から、実質的に結晶性、90%、80%、75%、60%または55%のどこかであることが望ましい。結晶化度は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって決定されてもよい。実例として、結晶化度のパーセントは、例えば、Rigaku SmartLab X線回折計を使用することなど、広角X線回折(WAXD)を含むX線回折により、またはTA Instruments DSC250示差走査熱量計ASTM D3418-15を使用することなど、示差走査熱量測定(DSC)により、決定することができる。
【0029】
別の実例では、上述したポリケトン粉末のいずれかに処理を行って、そのポリケトン粉末の結晶化度を増加させることができる。そのような処理には、高分子の溶解と沈殿、またはポリケトンが焼結または溶解する温度より低い温度(一般に、溶融ピークの開始温度より低く、その約20℃以内)への加熱を含む任意の適切な処理があるであろう。雰囲気は、ポリケトンの劣化を防ぐのに有用などの雰囲気であってもよいが、空気、乾燥空気、不活性ガス(例えば、窒素または希ガス)であることがある。そのような方法の例が、同時係属の米国仮特許出願第63/208243号および同第63/147822号の各明細書に記載されている。
【0030】
さらに結晶化したポリケトン粉末は、溶融ピークと結晶化ピークが重複しないDSC走査を示すことがある。溶融ピークと結晶化ピークの開始温度の間の間隔は、5、10またはさらには20から50℃であることがある。結晶化度を増加させるための処理は、上述したように反応器から直接分類されたポリケトン粉末について記載されたものと類似の粉末の形態を保つまたは改善することもある。例えば、結晶化度を増加させるための熱処理により、粒子が、より滑らかな表面および付随して上述したような増加した真円度を有することになり、これにより、流動補助剤なくとも、浮遊性床積層製造方法にとって十分な流動性を有する粉末が得られるであろう。
【0031】
ポリケトンは、SLSなどの積層製造に有用な粉末を製造するのに有用な任意のDSC溶融ピークエンタルピーを有することがある。典型的に、エンタルピーは、少なくとも3ジュール/グラムであるが、望ましくは、少なくとも5、10、20、30、40または50ジュール/グラム以上から、200ジュール/グラムなどの任意の実際的な量である。DSC溶融ピークのエンタルピーは、ASTM D3418に記載されている様式にしたがって、決定することができる。
【0032】
前記組成物のポリケトンは、
【0033】
【0034】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から本発明に有用な所望の数平均分子量を実現するための任意の実際的な量である。例示の有用な数平均分子量は、約175℃または210℃から約270℃または300℃の溶融温度を提供するものであることがあり、約1000から250,000または約10,000から200,000g/モルであることがある。
【0035】
前記組成物のポリケトンが、一酸化炭素、エチレンおよび別のアルケン単量体(例えば、3から12、8または6の炭素のオレフィン、特にプロピレン)のターポリマーであるものであることが望ましい。そのようなポリケトンは、無作為の繰り返し単位:
【0036】
【0037】
で表されることがあり、式中、Gは、二重結合で重合した3から12、8または6の炭素のオレフィンの飽和残基であり、x/yは少なくとも2から100または50または20である。Gがプロピレンであることが望ましい。実例として、他のアルケンに対するエチレンの比が、質量で2から100であることが望ましいであろう。このポリケトンは、アルキル基、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、エーテルまたはその組合せなど、どの有用な基で終端されてもよい。特定の末端基は、メタノールなどの低分子量アルコールまたは水もしくはその組合せなどの溶媒を使用することにより生じることがある。
【0038】
上述した粒子の半結晶性ポリケトンは、一般に、積層製造物品を製造するのに有用な粒径とサイズ分布を有し、典型的に、体積で、約1マイクロメートル(μm)、10μm、20μm、30μmまたは40μmから、150μm、125μm、110μmまたは100μmの、平均または中央粒径(D50)を有する。同様に、粉末の一貫した加熱と溶解を可能にするために、半結晶性ポリケトンが、最大で300μm、200μmまたは150μmのD90を有することが望ましい。流動性に役立つように、ポリケトンは、体積で、少なくとも0.1μm、0.5μmまたは1μmのD10を有することが望ましい。D90は、粒子の90体積%がそのサイズ以下である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、同様に、D50は、粒子の少なくとも50体積%がそのサイズ未満である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、D10は、粒子の少なくとも10体積%がそのサイズ未満である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味する。粒径は、例えば、十分な数の粒子(約100から約200の粒子)のレーザ回折または顕微鏡写真の画像解析を含む、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって決定されてもよい。代表的なレーザ回折計は、Microtrac S3500などのMicrotracにより製造されているものである。
【0039】
本発明の組成物は、積層製造物品などの物品を製造するための当該技術分野で公知のものなど、有用な添加剤をさらに含むことがある。その組成物は、ポリアミド(例えば、ナイロン6;ナイロン6,6;ナイロン4,6;ナイロン6,9;ナイロン5,10;ナイロン6,10;ナイロン11;ナイロン6,12およびナイロン12)など、積層製造に有用なさらなる熱可塑性高分子粉末からなることもある。例えば、その組成物は、紫外線(UV)安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、難燃剤、または溶媒の1つ以上を有することがある。その組成物が、溶媒を実質的に含まない(すなわち、組成物の最大10質量百万分率(ppm)、1ppmである、最大でも微量)ことが望ましい。任意の特定の添加剤の量は、それから形成される物品の印刷のための特定の性質または特徴を実現するためのどの有用な量であってよい。一般に、添加剤の量は、存在する場合、組成物の最大約50体積%、25体積%、10体積%または5体積%である。流動補助剤は、粉末の流動性を改善するためのどの公知の化合物であってもよく、その例にヒュームドシリカ(例えば、Aerosil 200)がある。
【0040】
充填剤は、当該技術分野で公知のものなど、どの有用な充填剤であってもよい。充填剤の例としては、セラミック、金属、炭素(例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン)、印刷温度で溶融または分解しない高分子微粒子(例えば、架橋した高分子微粒子、加硫ゴム微粒子など)、植物系充填剤(例えば、木材、堅果の殻、穀粒および籾殻粉末または粒子)が挙げられる。例示の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土、硫酸カルシウム、マイカ、無機ガラス(例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ「石英」、およびカルシア)、炭化物(例えば、炭化ホウ素および炭化ケイ素)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、オキシ窒化物、オキシ炭化物の組合せ、またはその組合せが挙げられる。特定の実施の形態において、充填剤は、タルク、粘土鉱物、無機ガラス単繊維、金属単繊維、または炭素単繊維、ムライト、マイカ、珪灰石、またはその組合せなどの針状充填剤を含む。特別な実施の形態において、充填剤はタルクからなる。
【0041】
本発明の組成物のポリケトンにより、変形したり、望ましくない量の残留応力を有したりしない造形物品を形成できることが分かった。例えば、以下に限られないが、本発明の組成物は、SLS、MJF、HSSまたは電子写真術などの積層製造方法によって、物体に製造されることがある。実例として、SLSにおいて、本発明の組成物の層が、ポリケトン粉末の溶融温度より低い固定温度で床上に堆積されることがあり、その床の所定の(選択された)区域が、上述したようにレーザ制御され、向けられるような加熱源を使用して、互いに焼結(融合)される。次に、複数の層が、連続して堆積されて、その層内と先の層に焼結されて、積層製造された部品を構築する。
【0042】
意外なことに、前記組成物のポリケトン粉末は、変形せずに溶融ピークと結晶化ピークの重複を示した場合でさえ、互いに融合する、または積層製造部品の層内に、特に、それらの層間に、望ましくない量の残留応力を有する。この挙動が観察される理由は理解されていないが、制限するものではなく、ある場合には、二峰性溶融ピークの存在によるものであろう。典型的に、半結晶性熱可塑性高分子を積層製造するための「作業範囲」は、材料が溶融する開始温度と、再結晶化する開始温度(「Tc」)との間の温度差であり、これは、できるだけ大きいべきである。上述したことから、さらに結晶化されたポリケトンは、作業範囲が、10℃、15℃、または20℃から60℃、50℃、30℃、または25℃のどこかであるようにさらに最適化されることがある。
【0043】
本発明の組成物のポリケトン粉末は、溶融ピークと結晶化ピークが重複する場合でさえ、良好な三次元印刷適性を示すので、それらの粉末は、粉末の床を、ポリケトンの開始溶融温度より直ぐ下の温度に加熱し、維持する工程を含む粉末積層製造方法で印刷された後に、さらに処理せずに、再利用され、再使用されることがある。所望であれば、再利用される粉末は、所望の印刷適性または部品特性を実現するために、まだ積層製造されていない、ここに記載されたポリケトン粉末のいずれかと混合されてもよい。本発明の組成物を構成する再利用ポリケトンの割合は、組成物の実質的に全て、90質量%、75質量%、50質量%、40質量%または30質量%から、約1質量%、5質量%または10質量%の任意の量であってよい。再利用粉末の熱的特性は、一般に、本発明のポリケトン粉末について造粒され、粉砕されたポリケトンについて先に記載されたようなものである。形態およびサイズ分布は、同様に、ここに記載されたようなものであり、形態は、積層製造物品を形成するために使用される特定の初期ポリケトン粉末の形態に最も似ている。
【0044】
本発明の組成物は、本発明の複数の融合ポリケトンからなる積層製造物品を製造するために使用されることがある。特に、その組成物は、SLS、HSSおよびMJFなど、層内と層間で粒子を融合する粉末層の連続した選択的加熱によって製造される積層製造物品を製造するために使用されることがある。
【実施例】
【0045】
実施例1:
ポリケトン粉末を、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第52行から第5欄の第17行に記載されたやり方の過程で製造する。反応器から直接得られた粉末を、150マイクロメートルの開口を有する篩にかけて、水中でMicrotrac S3500を使用して測定される、
図1に示されるような粒径および体積による粒径分布を有するポリケトン粉末および大き過ぎるポリケトン粉末(篩を通過しない粒子)を形成する。D
10は約82マイクロメートルであり、D
50は約110マイクロメートルであり、D
90は約152マイクロメートルである。粉末の形状と形態が、
図2の光学顕微鏡写真に示されており、ここで、粒子は極めて均一であり、実質的に円形であり、平均真円度は0.9を超えるのが明らかである。溶融ピークと結晶化ピークが、
図3のDSC走査に示されており、ここで、溶融ピークは二峰性であり、結晶化ピークと溶融ピークは重複するのが明らかである。
【0046】
ポリケトン粉末を、Farsoon ST252P SLSプリンタを使用して印刷する。印刷部品(例えば、機械的試験用のドッグボーン試料)は、歪みなく印刷され、表1に示されたような良好な表面仕上げと特性を有した。
【0047】
【0048】
実施例2:
大き過ぎるポリケトン粉末を、
図4~6に示された、粒径と粒径分布、粒子形態および熱的特性を有するポリケトン粉末を生成する時間に亘り冷凍製粉する。D
10は約57マイクロメートルであり、D
50は約90マイクロメートルであり、D
90は約170マイクロメートルである。重ねて、ポリケトン粉末は二峰性溶融ピークを有し、結晶化ピークと二峰性溶融ピークは重複するのが極めて明らかである。この粉末は、歪みがなく、実施例1と同じ様式で印刷され、表2に示されたような良好な機械的性質を有する。
【0049】
【0050】
実施例3:
実施例1の試料の印刷からの70質量%の再利用粉末を、実施例1の30質量%のポリケトン粉末と混合して、70%が再利用されたポリケトン粉末を形成する。その粒径と粒径分布、粒子形態および熱的特性が、
図7から9に示されている。この粉末は、実施例1と同じやり方で印刷され、その部品は、表3に示されるような性質を有し、歪みは示さなかった。図面から、溶融ピークの二峰性は明白ではないが、それは、実施例1の粉末に帰属する30%または再利用粉末の熱履歴により、溶融ピークの低温尾部が生じ、これが、今回も、結晶化ピークと重複するのかもしれない。言い換えると、制限するものではなく、その重複は、印刷過程中に経験した溶融温度より高い短期間、またはポリケトンの溶融温度より低いSLS粉末床の保持温度のためであるかもしれない。
【0051】
【0052】
実施例4:
実施例1からの原料ポリケトン粉末を押出機で造粒する。ポリケトンペレットを冷凍製粉し、実施例1におけるように篩にかける。粉末の熱的特性が、
図10に示されている。図面から、溶融ピークは実質的に単峰性であるが、それでも、結晶化ピークと重複しているのが明らかである。
【0053】
実施例5:
実施例4からのポリケトンペレットを、4時間に亘り185℃で空気中において加熱することによって、さらに結晶化させる。粉末の熱的特性が、
図11に示されている。図面から、溶融ピークは、はっきりと区別でき、溶融ピークと結晶化ピークに重複がないのが明白であり、その間隔は約15℃であるのが明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脂肪族ポリケトンからなる積層製造用高分子粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ポリケトンは、1つには、低コストのエンジニアリングプラスチックとしての物理的性質と耐薬品性のために、有望な高分子となっている。ポリケトンは、通常、特許文献1および2に記載されているようなパラジウム(または他の)触媒の存在下での共重合により生成されるエチレン(および/または他のオレフィンまたはアルケン)と一酸化炭素の共重合体である。ひいては、脂肪族ポリケトンは、通常、重合反応器中に存在する他の成分から分離される。これらの他の成分には、未反応アルケン、未反応一酸化炭素、メタノール(または他の)反応媒体、および触媒があるであろう。他の成分から分離された(例えば、分離と乾燥により)ポリケトン生成物は、「反応器フレーク(reactor flake)」と称される。この反応器フレークは、取扱いと出荷を困難にする微細な粒径のために、通常、市販用のペレットを形成するために、加熱され、押し出される。
【0003】
積層製造の粉末に基づく方法には、以下のものがある:選択的レーザ焼結(SLS)は、連続層で粉末材料を溶融するためにレーザを使用する3Dプリンティング技術である(例えば、特許文献3を参照のこと)。高速焼結(HSS)およびマルチジェットフュージョン(MJF)3Dプリンティングでは、粉末材料上に赤外線吸収(IR吸収)インクの連続層を同様に堆積させる多数のジェットが利用され、その後、粉末層は、選択的溶融のためにIRエネルギーに暴露される。電子写真3Dプリンティングでは、物体を台座から層毎に構築する回転式光伝導体が利用される。
【0004】
選択的レーザ焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(MJF)、および高速焼結(HSS)3Dプリンティング方法では、同じタイプの浮遊性の固定されていない粉末床が使用される。それらには、一般に、積層構築された物体が、溶融相を得るために加熱機構が異なるだけで、同様の応力を経験するので、プリンティングプロセスに適合するための同じ材料要件がある。典型的に、プリントされた物体に予測される残留応力を決定するために、3Dプリント物体の自由物体図を使用することができる。これは、物体をうまく構築するために必要である。残留応力が高すぎると、その物体は、変形するか、または許容範囲を超えて形が崩れることになる。
【0005】
残留応力は、典型的に、溶融温度と再結晶化温度との間に十分に大きい窓(window)がある結晶性または半結晶性熱可塑性高分子を使用することによって、これらの粉末床に基づく3Dプリンタについて最小にされてきた。残念ながら、これは、SLSおよびMJF法を使用して大きいまたは複雑な部品をプリントするためにうまく使用されてきた高分子(例えば、ポリアミド)に限定され、それゆえ、これらの積層製造方法の使用が制限されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4835250号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0058494号明細書
【特許文献3】米国特許第5597589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、SLS、HSS、MJF、および上述したものなどの方法によって、積層製造物品を製造するために、1つ以上の問題を回避する熱可塑性高分子を提供することが望ましいであろう。特に、高い強度、靱性、高温抵抗、難燃性、およびある場合には、光学的に透明な物品を提供できる熱可塑性高分子を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、脂肪族ポリケトンであって、浮遊性粉末床法によってこれらの材料の積層製造を可能にする特定の粉末形態および熱的特性を有する脂肪族ポリケトンを発見した。意外なことに、一例では、ポリケトン粉末は、二峰性形状または多峰性(例えば、三、四以上)形状を示す、重複するDSC溶融ピークと、このDCS溶融ピーク内に特徴付けられる再結晶化ピークを示す。
【0009】
本発明の第1の態様は、20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される二峰性溶融ピーク並びに最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物である。意外なことに、これらの粉末は、重複する溶融ピークと再結晶化ピークを示したとしても(すなわち、加熱中の溶融ピークの開始温度が、冷却中の再結晶化ピークの開始温度より低い)、SLS、HSSおよびMJFなどの浮遊性粉末床積層製造技術によって、印刷することができる。同様に、これらの粉末は、単峰性になる溶融ピークのように、熱的特性が変わるけれども、良好な積層製造リサイクル性を示す。二峰性ピークは、ここでは、そのピークが、開始温度と終了温度との間に2つの極大値と1つの極小値を示し、手作業で、または市販の曲線フィッティングソフトウェアにより決定できることを意味する。
【0010】
本発明の第2の態様は、20℃/分の加熱速度と冷却速度で走査される示差走査熱量測定(DSC)によって決定される溶融ピークと再結晶化ピークであって、重複しない溶融ピークと再結晶化ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末からなる組成物である。「重複しない」とは、加熱中の溶融ピークの開始温度が、冷却中の再結晶化ピークの開始温度より高いことを意味する。
【0011】
本発明の第3の態様は、積層製造物品を製造するのに有用なポリケトン粉末を形成する方法であって、
(i)8族から10族の遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素とアルケン単量体を反応させて、原料ポリケトン粉末を形成する工程と、
(ii)その原料ポリケトン粉末を回収する工程と、
(iii)その粉末を分離して、最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有するポリケトン粉末および大き過ぎるポリケトン粉末を形成する工程と、
を有してなる方法である。第3の態様の方法は、本発明の第1の態様の組成物を調製するのに有用である。その大き過ぎるポリケトン粉末は、製粉によってさらに処理して、所望の粒径を実現し、さらに処理を施して、粉末の結晶化度を増加させ、例えば、第2の態様の組成物を実現することができる。原料粉末にも、加熱や押出しなどのさらなる処理を施して、ペレット(さらに結晶化が施され、破砕されて、第2の態様の組成物を実現する)を形成することができる。
【0012】
本発明の第4の態様は、物品を形成する方法であって、第1または第2の態様の組成物を、その組成物のポリケトン粉末を溶融し、結合して、その物品を形成するのに十分な温度に加熱する工程を含む方法である。この方法は、浮遊性粉末床法などの積層製造方法(例えば、SLS、HHSおよびMJF法)によって物品を形成するのに特に有用である。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1と第2の態様の組成物の融合粒子からなる物品である。その物品は、積層製造されたときに形成されるものなどの、層内と層間の融合粒子の物品であることが望ましい。
【0014】
前記組成物は、このエンジニアリングプラスチックの特性(例えば、耐熱性および耐薬品性)を生かして、積層製造物品に作ることができる。そのような用途の例に、生体適合性(医療)、電気、輸送(例えば、自動車、鉄道、トラック輸送)、配管、航空宇宙、食品接触、工業(例えば、機械)および民生用(例えば、電化製品)用途がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の組成物のポリケトン粉末の粒径分布のプロット
【
図2】本発明の組成物のポリケトン粉末の光学顕微鏡写真
【
図3】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【
図4】本発明の組成物のポリケトン粉末の粒径分布のプロット
【
図5】本発明の組成物のポリケトン粉末の光学顕微鏡写真
【
図6】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【
図7】本発明の組成物のポリケトン粉末の粒径分布のプロット
【
図8】本発明の組成物のポリケトン粉末の光学顕微鏡写真
【
図9】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【
図10】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【
図11】本発明の組成物のポリケトン粉末の示差走査熱量測定のプロット
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここに提示された説明と実例は、本発明、その原理、およびその実用的応用を当業者に知らせる意図がある。記載された本開示の特定の実施の形態は、包括的であること、または本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0017】
ここに用いられているような「1つ以上」は、列挙された構成要素の少なくとも1つ、または複数が、開示されたように使用されてもよいことを意味する。任意の成分または構成要素の機能性は、原材料の不完全さ、反応体の不完全な変換、および副生成物の形成のために、平均的な機能性であることがあるのが理解されよう。
【0018】
浮遊性粉末床積層製造方法に有用なポリケトン粉末の組成物は、8族から10族の遷移金属触媒の存在下での一酸化炭素とアルケン単量体の反応によって形成できることが見出された。詳しくは、その方法は、各々がここに全て引用される、特許文献1、米国特許第4894435号明細書、および米国特許第5138032号明細書、並びに特許文献2に記載されたものの内のいずれか1つであることがある。詳しくは、その方法、反応条件、および単量体は、ここに具体的に引用される、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第52行から第5欄の第17行までに記載されたものである。そのような触媒の例としては、コバルト、ニッケルおよびパラジウムが挙げられる。
【0019】
アルケン単量体が、2から12、8または6の炭素を有するオレフィンからなることが望ましい。実例として、アルケン単量体はエチレンである、またはアルケン単量体は、エチレンと、プロピレンなどの少なくとも1種類の他のオレフィン単量体とを含む。ポリケトンが、エチレンと、別のオレフィン単量体(例えば、プロピレン)との共重合体である場合、エチレンと他のオレフィンの量は、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第17行から第3欄の第14行に記載されたようなものであってよい。
【0020】
第1の態様の組成物は、20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される二峰性溶融ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末からなる。上述したように、半結晶性ポリケトン粉末は、反応器から直接粉末を回収し、当該技術分野で公知(例えば、洗浄)であり、先に記載された文献に記載されたものなどの任意の精製方法を行い、その後、粉末を分離して、所望の粉末サイズとサイズ分布を実現することによって、形成することができる。
【0021】
反応器からの原料ポリケトン粉末粒子の分類または分離は、その所望の粒径および形態を有するポリケトンを形成するために、当該技術分野で公知のもなど、どの適切な方法によって行われてもよい。実例として、原料粒子を篩にかけて、任意の大き過ぎるまたは小さ過ぎる粒子を除去し、それにしたがって、サイズ分布を変えることができる。遠心分離、沈降およびエアーサイクロンなど、他の分粒方法も利用してよい。
【0022】
意外なことに、結晶化または再結晶化ピーク(ここでは置き換え可能に使用される)は、ポリケトン粉末の初期DCS走査における溶融ピークと重複し、それでも、良好な特性で、反りや歪みがなく、積層製造できる粉末を生成することができる。
【0023】
ポリケトン粉末の結晶化温度(Tc)は、溶融ピークと結晶化ピークにより、そして、二峰性ピークの場合には、温度が低い方のピークにより、決定される半結晶性高分子の溶融温度(Tm)より低い。一般に、ポリケトンのTcは、Tmより約10℃から40または50℃低い。TmとTcは、溶融ピークの中点を使用して、ASTM D3418に記載されているように、DSCの溶融ピークから決定される。TmピークとTcピークの開始は、ASTM D3418(すなわち、線形からの走査の偏差)のように決定される。
【0024】
直接生成されたポリケトン粉末は、流動補助剤(flow aid)がなくとも積層製造できる形態を有することがある。望ましくは、そのような望ましい流動特性を有するポリケトンは、粒子形状、特に、粒子の丸みに関して、真球度(sphericity)を有し、これは、流動性に役立ち、個々の粒子の顕微鏡画像から導いて、円形特徴、または真円度(circularity)に関して表されることがあり、ここで、個々の粒子の真円度は、4πA/P2と定義され、式中、両方とも、無作為の視点から見て、Aは粒子の面積であり、Pは粒子の外周長さである。関連パラメータである真球度は、真円度の平方根として導かれる。真円度は、ゼロより大きく、1以下の数値である。完全に円形の粒子は、1.00の真円度を有すると称される。様々なレベルの真円度(例えば、0.65、0.75、0.85、0.90、および0.95)に、表の値より大きい真円度を持つ粒子試料集団の百分率が付随するようなやり方で、集団真円度データの表が提示されている。真円度は、0.9または0.95のソリディティ・フィルタ(solidity filter)レベルで決定される。ソリディティ・フィルタは、市販の画像解析ソフトウェアで利用できる二次元顕微鏡写真において重複する粒子を取り除くために使用されるフィルタである。ソリディティは、本質的に、二次元顕微鏡写真における粒子面積の主軸と単軸で規定される区域の面積上にある粒子の面積(粒子面積)である。粒子のサイズと形状は、直径で粒径を測定するための当該技術分野で公知のどの適切な方法で測定しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、粒子のサイズと形状は、当該技術分野で公知のようにレーザ回折で決定される。例えば、粒径は、粒子の取り込み画像を解析するためのPartAnSIソフトウェアを使用して、静止画像解析アクセサリを備えたMicrotrac S3500などのレーザ回折計を使用して、決定することができる。粒子の少なくとも約65%、70%、80%、95%または99%(数で)が、精製以外にさらに処理を行わずに、反応器から分離され、分類された粉末について、少なくとも約0.8、0.85、0.9または0.95の真円度を有することが望ましい。
【0025】
同様に、どのような流動補助剤も加えずに、反応器から直接分離され、分類されたポリケトン粉末は、一般に、ASTM D1895の方法Aで決定されるように、15mmのノズルを使用して、少なくとも約0.5g/秒、1g/秒または2g/秒から任意の実際的に達成可能な速度(例えば、50g/秒)の流動性を有する。
【0026】
本発明のポリケトン粉末の別の実例では、反応器からの大き過ぎるポリケトン粉末に、粉砕(size reduction)過程を施し、所望であれば、さらに分離と分類を行ってもよい。粉砕は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法で行ってもよい。実例として、半結晶性ポリケトンが砕けやすくなる温度での製粉が、使用されることがあり、通常、冷凍製粉と称される。一般に、冷凍製粉の温度は、約0℃未満、-25℃未満、-50℃未満から約-75℃、-100℃、-150℃、または-190℃のどの温度であってもよい。ある実施の形態において、冷却は、ドライアイスまたは液体窒素により行われる。これらの粉末は、粉砕過程のために、減少した流動性と真円度を有するであろうが、それにもかかわらず、流動補助剤など、当該技術分野で公知の加工助剤と共に使用されるときに、所望の積層製造物品を形成するために、使用されることがある。
【0027】
本発明のポリケトン粉末の別の実例に、反応器からのポリケトン粉末に、押出機内で加熱と成形を行って、ペレットを形成するものがある。次に、ペレットは、前の段落に記載されたように、粉砕され、任意の所望の分離と分類が行われることがある。反応器内での形成後のその後の熱履歴のために、これらの粉末は、単峰性Tmを有し、溶融ピークと結晶化ピークがほとんどまたは全く重複しない傾向にある。同様に、これらの粉末は、粉砕されているので、大き過ぎる反応器粉末について記載されたものと類似の形態を有する傾向にある。
【0028】
本発明の上述した半結晶性ポリケトンは、少なくとも約15質量%から実質的に結晶性の結晶化度を有し、結晶化度の度合いが高いほど望ましい。結晶化度が、20%、25%または30%から、実質的に結晶性、90%、80%、75%、60%または55%のどこかであることが望ましい。結晶化度は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって決定されてもよい。実例として、結晶化度のパーセントは、例えば、Rigaku SmartLab X線回折計を使用することなど、広角X線回折(WAXD)を含むX線回折により、またはTA Instruments DSC250示差走査熱量計ASTM D3418-15を使用することなど、示差走査熱量測定(DSC)により、決定することができる。
【0029】
別の実例では、上述したポリケトン粉末のいずれかに処理を行って、そのポリケトン粉末の結晶化度を増加させることができる。そのような処理には、高分子の溶解と沈殿、またはポリケトンが焼結または溶解する温度より低い温度(一般に、溶融ピークの開始温度より低く、その約20℃以内)への加熱を含む任意の適切な処理があるであろう。雰囲気は、ポリケトンの劣化を防ぐのに有用などの雰囲気であってもよいが、空気、乾燥空気、不活性ガス(例えば、窒素または希ガス)であることがある。そのような方法の例が、同時係属の米国仮特許出願第63/208243号および同第63/147822号の各明細書に記載されている。
【0030】
さらに結晶化したポリケトン粉末は、溶融ピークと結晶化ピークが重複しないDSC走査を示すことがある。溶融ピークと結晶化ピークの開始温度の間の間隔は、5、10またはさらには20から50℃であることがある。結晶化度を増加させるための処理は、上述したように反応器から直接分類されたポリケトン粉末について記載されたものと類似の粉末の形態を保つまたは改善することもある。例えば、結晶化度を増加させるための熱処理により、粒子が、より滑らかな表面および付随して上述したような増加した真円度を有することになり、これにより、流動補助剤なくとも、浮遊性床積層製造方法にとって十分な流動性を有する粉末が得られるであろう。
【0031】
ポリケトンは、SLSなどの積層製造に有用な粉末を製造するのに有用な任意のDSC溶融ピークエンタルピーを有することがある。典型的に、エンタルピーは、少なくとも3ジュール/グラムであるが、望ましくは、少なくとも5、10、20、30、40または50ジュール/グラム以上から、200ジュール/グラムなどの任意の実際的な量である。DSC溶融ピークのエンタルピーは、ASTM D3418に記載されている様式にしたがって、決定することができる。
【0032】
前記組成物のポリケトンは、
【0033】
【0034】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から本発明に有用な所望の数平均分子量を実現するための任意の実際的な量である。例示の有用な数平均分子量は、約175℃または210℃から約270℃または300℃の溶融温度を提供するものであることがあり、約1000から250,000または約10,000から200,000g/モルであることがある。
【0035】
前記組成物のポリケトンが、一酸化炭素、エチレンおよび別のアルケン単量体(例えば、3から12、8または6の炭素のオレフィン、特にプロピレン)のターポリマーであるものであることが望ましい。そのようなポリケトンは、無作為の繰り返し単位:
【0036】
【0037】
で表されることがあり、式中、Gは、二重結合で重合した3から12、8または6の炭素のオレフィンの飽和残基であり、x/yは少なくとも2から100または50または20である。Gがプロピレンであることが望ましい。実例として、他のアルケンに対するエチレンの比が、質量で2から100であることが望ましいであろう。このポリケトンは、アルキル基、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、エーテルまたはその組合せなど、どの有用な基で終端されてもよい。特定の末端基は、メタノールなどの低分子量アルコールまたは水もしくはその組合せなどの溶媒を使用することにより生じることがある。
【0038】
上述した粒子の半結晶性ポリケトンは、一般に、積層製造物品を製造するのに有用な粒径とサイズ分布を有し、典型的に、体積で、約1マイクロメートル(μm)、10μm、20μm、30μmまたは40μmから、150μm、125μm、110μmまたは100μmの、平均または中央粒径(D50)を有する。同様に、粉末の一貫した加熱と溶解を可能にするために、半結晶性ポリケトンが、最大で300μm、200μmまたは150μmのD90を有することが望ましい。流動性に役立つように、ポリケトンは、体積で、少なくとも0.1μm、0.5μmまたは1μmのD10を有することが望ましい。D90は、粒子の90体積%がそのサイズ以下である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、同様に、D50は、粒子の少なくとも50体積%がそのサイズ未満である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、D10は、粒子の少なくとも10体積%がそのサイズ未満である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味する。粒径は、例えば、十分な数の粒子(約100から約200の粒子)のレーザ回折または顕微鏡写真の画像解析を含む、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって決定されてもよい。代表的なレーザ回折計は、Microtrac S3500などのMicrotracにより製造されているものである。
【0039】
本発明の組成物は、積層製造物品などの物品を製造するための当該技術分野で公知のものなど、有用な添加剤をさらに含むことがある。その組成物は、ポリアミド(例えば、ナイロン6;ナイロン6,6;ナイロン4,6;ナイロン6,9;ナイロン5,10;ナイロン6,10;ナイロン11;ナイロン6,12およびナイロン12)など、積層製造に有用なさらなる熱可塑性高分子粉末からなることもある。例えば、その組成物は、紫外線(UV)安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、難燃剤、または溶媒の1つ以上を有することがある。その組成物が、溶媒を実質的に含まない(すなわち、組成物の最大10質量百万分率(ppm)、1ppmである、最大でも微量)ことが望ましい。任意の特定の添加剤の量は、それから形成される物品の印刷のための特定の性質または特徴を実現するためのどの有用な量であってよい。一般に、添加剤の量は、存在する場合、組成物の最大約50体積%、25体積%、10体積%または5体積%である。流動補助剤は、粉末の流動性を改善するためのどの公知の化合物であってもよく、その例にヒュームドシリカ(例えば、Aerosil 200)がある。
【0040】
充填剤は、当該技術分野で公知のものなど、どの有用な充填剤であってもよい。充填剤の例としては、セラミック、金属、炭素(例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン)、印刷温度で溶融または分解しない高分子微粒子(例えば、架橋した高分子微粒子、加硫ゴム微粒子など)、植物系充填剤(例えば、木材、堅果の殻、穀粒および籾殻粉末または粒子)が挙げられる。例示の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土、硫酸カルシウム、マイカ、無機ガラス(例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ「石英」、およびカルシア)、炭化物(例えば、炭化ホウ素および炭化ケイ素)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、オキシ窒化物、オキシ炭化物の組合せ、またはその組合せが挙げられる。特定の実施の形態において、充填剤は、タルク、粘土鉱物、無機ガラス単繊維、金属単繊維、または炭素単繊維、ムライト、マイカ、珪灰石、またはその組合せなどの針状充填剤を含む。特別な実施の形態において、充填剤はタルクからなる。
【0041】
本発明の組成物のポリケトンにより、変形したり、望ましくない量の残留応力を有したりしない造形物品を形成できることが分かった。例えば、以下に限られないが、本発明の組成物は、SLS、MJF、HSSまたは電子写真術などの積層製造方法によって、物体に製造されることがある。実例として、SLSにおいて、本発明の組成物の層が、ポリケトン粉末の溶融温度より低い固定温度で床上に堆積されることがあり、その床の所定の(選択された)区域が、上述したようにレーザ制御され、向けられるような加熱源を使用して、互いに焼結(融合)される。次に、複数の層が、連続して堆積されて、その層内と先の層に焼結されて、積層製造された部品を構築する。
【0042】
意外なことに、前記組成物のポリケトン粉末は、変形せずに溶融ピークと結晶化ピークの重複を示した場合でさえ、互いに融合する、または積層製造部品の層内に、特に、それらの層間に、望ましくない量の残留応力を有する。この挙動が観察される理由は理解されていないが、制限するものではなく、ある場合には、二峰性溶融ピークの存在によるものであろう。典型的に、半結晶性熱可塑性高分子を積層製造するための「作業範囲」は、材料が溶融する開始温度と、再結晶化する開始温度(「Tc」)との間の温度差であり、これは、できるだけ大きいべきである。上述したことから、さらに結晶化されたポリケトンは、作業範囲が、10℃、15℃、または20℃から60℃、50℃、30℃、または25℃のどこかであるようにさらに最適化されることがある。
【0043】
本発明の組成物のポリケトン粉末は、溶融ピークと結晶化ピークが重複する場合でさえ、良好な三次元印刷適性を示すので、それらの粉末は、粉末の床を、ポリケトンの開始溶融温度より直ぐ下の温度に加熱し、維持する工程を含む粉末積層製造方法で印刷された後に、さらに処理せずに、再利用され、再使用されることがある。所望であれば、再利用される粉末は、所望の印刷適性または部品特性を実現するために、まだ積層製造されていない、ここに記載されたポリケトン粉末のいずれかと混合されてもよい。本発明の組成物を構成する再利用ポリケトンの割合は、組成物の実質的に全て、90質量%、75質量%、50質量%、40質量%または30質量%から、約1質量%、5質量%または10質量%の任意の量であってよい。再利用粉末の熱的特性は、一般に、本発明のポリケトン粉末について造粒され、粉砕されたポリケトンについて先に記載されたようなものである。形態およびサイズ分布は、同様に、ここに記載されたようなものであり、形態は、積層製造物品を形成するために使用される特定の初期ポリケトン粉末の形態に最も似ている。
【0044】
本発明の組成物は、本発明の複数の融合ポリケトンからなる積層製造物品を製造するために使用されることがある。特に、その組成物は、SLS、HSSおよびMJFなど、層内と層間で粒子を融合する粉末層の連続した選択的加熱によって製造される積層製造物品を製造するために使用されることがある。
【実施例】
【0045】
実施例1:
ポリケトン粉末を、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第52行から第5欄の第17行に記載されたやり方の過程で製造する。反応器から直接得られた粉末を、150マイクロメートルの開口を有する篩にかけて、水中でMicrotrac S3500を使用して測定される、
図1に示されるような粒径および体積による粒径分布を有するポリケトン粉末および大き過ぎるポリケトン粉末(篩を通過しない粒子)を形成する。D
10は約82マイクロメートルであり、D
50は約110マイクロメートルであり、D
90は約152マイクロメートルである。粉末の形状と形態が、
図2の光学顕微鏡写真に示されており、ここで、粒子は極めて均一であり、実質的に円形であり、平均真円度は0.9を超えるのが明らかである。溶融ピークと結晶化ピークが、
図3のDSC走査に示されており、ここで、溶融ピークは二峰性であり、結晶化ピークと溶融ピークは重複するのが明らかである。
【0046】
ポリケトン粉末を、Farsoon ST252P SLSプリンタを使用して印刷する。印刷部品(例えば、機械的試験用のドッグボーン試料)は、歪みなく印刷され、表1に示されたような良好な表面仕上げと特性を有した。
【0047】
【0048】
実施例2:
大き過ぎるポリケトン粉末を、
図4~6に示された、粒径と粒径分布、粒子形態および熱的特性を有するポリケトン粉末を生成する時間に亘り冷凍製粉する。D
10は約57マイクロメートルであり、D
50は約90マイクロメートルであり、D
90は約170マイクロメートルである。重ねて、ポリケトン粉末は二峰性溶融ピークを有し、結晶化ピークと二峰性溶融ピークは重複するのが極めて明らかである。この粉末は、歪みがなく、実施例1と同じ様式で印刷され、表2に示されたような良好な機械的性質を有する。
【0049】
【0050】
実施例3:
実施例1の試料の印刷からの70質量%の再利用粉末を、実施例1の30質量%のポリケトン粉末と混合して、70%が再利用されたポリケトン粉末を形成する。その粒径と粒径分布、粒子形態および熱的特性が、
図7から9に示されている。この粉末は、実施例1と同じやり方で印刷され、その部品は、表3に示されるような性質を有し、歪みは示さなかった。図面から、溶融ピークの二峰性は明白ではないが、それは、実施例1の粉末に帰属する30%または再利用粉末の熱履歴により、溶融ピークの低温尾部が生じ、これが、今回も、結晶化ピークと重複するのかもしれない。言い換えると、制限するものではなく、その重複は、印刷過程中に経験した溶融温度より高い短期間、またはポリケトンの溶融温度より低いSLS粉末床の保持温度のためであるかもしれない。
【0051】
【0052】
実施例4:
実施例1からの原料ポリケトン粉末を押出機で造粒する。ポリケトンペレットを冷凍製粉し、実施例1におけるように篩にかける。粉末の熱的特性が、
図10に示されている。図面から、溶融ピークは実質的に単峰性であるが、それでも、結晶化ピークと重複しているのが明らかである。
【0053】
実施例5:
実施例4からのポリケトンペレットを、4時間に亘り185℃で空気中において加熱することによって、さらに結晶化させる。粉末の熱的特性が、
図11に示されている。図面から、溶融ピークは、はっきりと区別でき、溶融ピークと結晶化ピークに重複がないのが明白であり、その間隔は約15℃であるのが明らかである。
【0054】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0055】
実施形態1
20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される二峰性溶融ピーク並びに最大300マイクロメートルのD
90
粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物。
【0056】
実施形態2
前記半結晶性ポリケトン粉末の粒子の数で少なくとも90%が、少なくとも約0.9の真円度を有する、実施形態1に記載の組成物。
【0057】
実施形態3
前記ポリケトンが:
【0058】
【0059】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から10,000である、実施形態1または2に記載の組成物。
【0060】
実施形態4
前記半結晶性ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、実施形態1から3いずれか1つに記載の組成物。
【0061】
実施形態5
前記他のアルケン単量体がオレフィンである、実施形態4に記載の組成物。
【0062】
実施形態6
前記オレフィンがプロピレンである、実施形態5に記載の組成物。
【0063】
実施形態7
前記エチレンが、約2から100のエチレン/他のアルケンの比で存在する、実施形態4から6いずれか1つに記載の組成物。
【0064】
実施形態8
前記ポリケトンが、アルキル基、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、エーテルまたはその組合せで終端されている、実施形態1から7いずれか1つに記載の組成物。
【0065】
実施形態9
前記ポリケトンが、初期の加熱および冷却DSC走査中に前記二峰性溶融ピークの一部と重複する再結晶化ピークを有する、実施形態1から8いずれか1つに記載の組成物。
【0066】
実施形態10
前記ポリケトンが、その後のDSC走査の際に、単峰性溶融ピークを有する、実施形態1から9いずれか1つに記載の組成物。
【0067】
実施形態11
前記その後のDSC走査が、前記単峰性溶融ピークの一部と重複する再結晶化ピークを有する、実施形態10に記載の組成物。
【0068】
実施形態12
前記ポリケトンが、少なくとも約15体積%の結晶化度を有する、実施形態1から11いずれか1つに記載の組成物。
【0069】
実施形態13
前記粉末が、15mmのノズルを使用してASTM D1895により決定される、少なくとも約0.5g/秒の流動性を有する、実施形態1から12いずれか1つに記載の組成物。
【0070】
実施形態14
前記組成物が、紫外線安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、難燃剤、他の高分子粉末、または溶媒の1つ以上をさらに含む、実施形態1から13いずれか1つに記載の組成物。
【0071】
実施形態15
前記組成物が溶媒を実質的に含まない、実施形態1から14いずれか1つに記載の組成物。
【0072】
実施形態16
前記ポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD
90
粒径、(ii)少なくとも10μmのD
10
、および(iii)約20μmから約50μmの平均粒径を有する、実施形態1から15いずれか1つに記載の組成物。
【0073】
実施形態17
20℃/分の加熱速度と冷却速度で走査される示差走査熱量測定(DSC)によって決定される溶融ピークと再結晶化ピークであって、重複しない溶融ピークと再結晶化ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末からなる組成物。
【0074】
実施形態18
前記溶融ピークおよび前記再結晶化ピークが、互いに少なくとも10℃離れた、溶融ピーク開始温度および再結晶化開始温度をそれぞれ有する、実施形態17に記載の組成物。
【0075】
実施形態19
前記ポリケトンが:
【0076】
【0077】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から10,000である、実施形態17または18に記載の組成物。
【0078】
実施形態20
前記半結晶性ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、実施形態17から19いずれか1つに記載の組成物。
【0079】
実施形態21
前記他のアルケン単量体がオレフィンである、実施形態20に記載の組成物。
【0080】
実施形態22
前記他のアルケン単量体がプロピレンである、実施形態21に記載の組成物。
【0081】
実施形態23
前記エチレンが、約2から100の質量比のエチレン対他のアルケンの比で存在する、実施形態20から22いずれか1つに記載の組成物。
【0082】
実施形態24
前記ポリケトンが、アルキル基、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、エーテルまたはその組合せで終端されている、実施形態20から23いずれか1つに記載の組成物。
【0083】
実施形態25
前記ポリケトンが、少なくとも約15体積%の結晶化度を有する、実施形態17から24いずれか1つに記載の組成物。
【0084】
実施形態26
前記粉末が、15mmのノズルを使用してASTM D1895により決定される、少なくとも約0.5g/秒の流動性を有する、実施形態17から25いずれか1つに記載の組成物。
【0085】
実施形態27
前記組成物が、紫外線安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、難燃剤、または溶媒の1つ以上をさらに含む、実施形態17から26いずれか1つに記載の組成物。
【0086】
実施形態28
前記組成物が溶媒を実質的に含まない、実施形態17から27いずれか1つに記載の組成物。
【0087】
実施形態29
前記ポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD
90
粒径、(ii)少なくとも10μmのD
10
、および(iii)約20μmから約50μmの平均粒径を有する、実施形態17から28いずれか1つに記載の組成物。
【0088】
実施形態30
前記ポリケトン粉末が、検出可能な量の8族から10族の遷移金属触媒を有する、実施形態1から29いずれか1つに記載の組成物。
【0089】
実施形態31
前記8族から10族の遷移金属触媒が、ニッケル、コバルト、パラジウムまたはその組合せである、実施形態30に記載の組成物。
【0090】
実施形態32
積層製造物品を製造するのに有用なポリケトン粉末を形成する方法であって、
(iv)8族から10族の遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素とアルケン単量体を反応させて、原料ポリケトン粉末を形成する工程と、
(ii)前記原料ポリケトン粉末を回収する工程と、
(iii)前記原料ポリケトン粉末を分離して、最大300マイクロメートルのD
90
粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有するポリケトン粉末および大き過ぎるポリケトン粉末を形成する工程と、
を有してなる方法。
【0091】
実施形態33
前記粒子の少なくとも約90%が、少なくとも約0.9の真円度を有する、実施形態32に記載の方法。
【0092】
実施形態34
前記大き過ぎるポリケトン粉末を破砕して、破砕されたポリケトン粉末を形成する工程をさらに含む、実施形態32に記載の方法。
【0093】
実施形態35
前記破砕されたポリケトン粉末の数で少なくとも90%が、少なくとも約0.8の真円度を有する、実施形態34に記載の方法。
【0094】
実施形態36
前記破砕されたポリケトン粉末が、最大150マイクロメートルのD
90
粒径および1マイクロメートルから100マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する、実施形態35に記載の方法。
【0095】
実施形態37
前記ポリケトン粉末、前記原料ポリケトン粉末、または前記破砕されたポリケトン粉末が、該ポリケトン粉末をさらに結晶化させる条件に施される、請求項32から36いずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態38
前記さらに結晶化させる工程が、前記ポリケトン粉末のいずれか1つを、結晶化度を増加させて、結晶化度が増加したポリケトンを形成する時間に亘り、DSCで決定されるピーク溶融温度より50℃低い温度に熱処理する工程からなる、実施形態37に記載の方法。
【0097】
実施形態39
前記結晶化度が増加したポリケトンが、少なくとも10℃離れた、溶融ピーク開始温度および再結晶化開始温度を有する、実施形態38に記載の方法。
【0098】
実施形態40
回収された前記原料ポリケトン粉末が加熱され、ペレットに形成され、次いで、該ペレットを結晶化させ、製粉し、分類して、さらに結晶化したポリケトン粉末を形成する、実施形態32に記載の方法。
【0099】
実施形態41
物品を形成する方法であって、実施形態1から31いずれか1つに記載の組成物を、該組成物のポリケトン粉末を溶融し、結合するのに十分な温度に加熱して、該物品を形成する工程を含む方法。
【0100】
実施形態42
前記方法が積層製造方法である、実施形態41に記載の方法。
【0101】
実施形態43
前記積層製造方法が、前記組成物のポリケトン粉末の直接溶融による選択的融合からなる、実施形態42に記載の方法。
【0102】
実施形態44
前記組成物が、再利用されたポリケトン粉末からなる、実施形態41から43いずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態45
前記再利用されたポリケトン粉末が、前記組成物中に存在するポリケトン粉末の約10質量%から50質量%の量で存在する、実施形態44に記載の方法。
【0104】
実施形態46
実施形態41から45いずれか1つに記載の方法により形成される物品からなる物品。
【0105】
実施形態47
20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される溶融ピークおよび結晶化ピーク並びに最大300マイクロメートルのD
90
粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物であって、前記溶融ピークと前記結晶化ピークが重複する、組成物。
【0106】
実施形態48
前記溶融ピークが単峰性である、実施形態17または47に記載の組成物。
【0107】
実施形態49
前記溶融ピークが、少なくとも5ジュール/グラムのポリケトン粉末の溶融エンタルピーを有する、実施形態1から31いずれか1つに記載の組成物。
【0108】
実施形態50
前記溶融エンタルピーが、少なくとも20ジュール/グラムのポリケトン粉末である、実施形態49に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される二峰性溶融ピーク並びに最大300マイクロメートルのD
90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する
脂肪族半結晶性ポリケトン粉末
であって、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である脂肪族半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物。
【請求項2】
前記他のアルケン単量体が
、3から12の炭素を有するオレフィンであ
り、前記エチレンが、約2から100のエチレン/他のアルケンの比で存在する、
請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記オレフィンがプロピレンである、
請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリケトンが、初期の加熱および冷却DSC走査中に前記二峰性溶融ピークの一部と重複する再結晶化ピークを有する、
請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリケトンが、その後のDSC走査の際に、単峰性溶融ピークを有する、
請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記その後のDSC走査が、前記単峰性溶融ピークの一部と重複する再結晶化ピークを有する、
請求項5記載の組成物。
【請求項7】
20℃/分の加熱速度と冷却速度で走査される示差走査熱量測定(DSC)によって決定される溶融ピークと再結晶化ピークであって、重複しない溶融ピークと再結晶化ピークを有する
脂肪族半結晶性ポリケトン粉末
であって、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である脂肪族半結晶性ポリケトン粉末からなる組成物。
【請求項8】
前記溶融ピークおよび前記再結晶化ピークが、互いに少なくとも10℃離れた、溶融ピーク開始温度および再結晶化開始温度をそれぞれ有する、
請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記半結晶性ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および
3から12の炭素を有するオレフィンである少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体であ
り、前記エチレンが、約2から100のエチレン/他のアルケンの比で存在する、
請求項7記載の組成物。
【請求項10】
前記他のアルケン単量体がプロピレンである、
請求項9記載の組成物。
【請求項11】
積層製造物品を製造するのに有用な
脂肪族ポリケトン粉末を形成する方法であって、
(iv)8族から10族の遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素とアルケン単量体を反応させて、原料ポリケトン粉末を形成する工程と、
(ii)前記原料ポリケトン粉末を回収する工程と、
(iii)前記原料ポリケトン粉末を分離して、最大300マイクロメートルのD
90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有するポリケトン粉末および大き過ぎるポリケトン粉末を形成する工程
であって、前記ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、工程と、
を有してなる方法。
【請求項12】
前記ポリケトン粉末、前記原料ポリケトン粉末、または前記破砕されたポリケトン粉末が、該ポリケトン粉末をさらに結晶化させる条件に施され
、前記さらに結晶化させる工程が、前記ポリケトン粉末のいずれか1つを、結晶化度を増加させて、結晶化度が増加したポリケトンを形成する時間に亘り、DSCで決定されるピーク溶融温度より50℃低い温度に熱処理する工程からなる、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記結晶化度が増加したポリケトンが、少なくとも10℃離れた、溶融ピーク開始温度および再結晶化開始温度を有する、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、前記組成物中に存在するポリケトン粉末の約10質量%から50質量%の量で存在する再利用されたポリケトン粉末からなる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
20℃/分での初期示差走査熱量測定(DSC)走査により決定される溶融ピークおよび結晶化ピーク並びに最大300マイクロメートルのD
90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する
脂肪族半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物であって、前記溶融ピークと前記結晶化ピークが重複
し、前記脂肪族半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、組成物。
【請求項16】
前記溶融ピークが単峰性である、
請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記溶融ピークが、少なくとも5ジュール/グラムのポリケトン粉末の溶融エンタルピーを有する、
請求項1から10、15、および16いずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリケトン粉末が、検出可能な量の8族から10族の遷移金属触媒を有する、
請求項1から10、15、および16いずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD
90粒径、(ii)少なくとも10μmのD
10、および(iii)約20μmから約50μmの平均粒径を有する、
請求項1から10、15、および16いずれか1項記載の組成物。
【請求項20】
物品を形成する方法であって、
請求項1から10、15、および16いずれか1項記載の組成物を、該組成物のポリケトン粉末を溶融し、結合
するのに十分な温度に加熱
して、積層製造方法により前記物品を形成する工程を含む方法。
【国際調査報告】