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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】レーザ焼結用のポリケトン粉末
(51)【国際特許分類】
   C08G 67/02 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
C08G67/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023561767
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022029424
(87)【国際公開番号】W WO2022245722
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/189,609
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/217,451
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073570
【氏名又は名称】ジャビル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】フライ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ジョン ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】クビアク,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】ディッペル,ニコラス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】トロシアン,マシュー アルティン
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AB01
4J005BB02
4J005BC00
(57)【要約】
積層製造に有用な半結晶性ポリケトン粉末は、50℃より高く、ポリケトンの溶融温度より低い温度で、示差走査熱量測定(DSC)単峰性溶融ピークを有するポリケトンを溶かし、冷却、非溶媒の添加、またはその組合せによって、溶けたポリケトンを沈殿させることによって、製造することができる。この方法を使用して、出発ポリケトンよりも大きいエンタルピーを持つ、DSC溶融ピークを有するポリケトンを形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10℃/分の加熱速度を使用した示差走査熱量測定(DSC)により決定される、少なくとも50ジュール/グラムの溶融ピークエンタルピーを有する溶融ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記半結晶性ポリケトン粉末の粒子の数で少なくとも80%が、少なくとも約0.8の真円度を有する、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリケトンが:
【化1】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から10,000である、請求項1から3いずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記半結晶性ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記他のアルケン単量体がプロピレンである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記溶融ピークおよび再結晶化ピークが重複しない、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記溶融ピークが、少なくとも10℃隔てられた溶融ピーク開始温度および再結晶化ピーク開始温度を有する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記半結晶性ポリケトン粉末が、少なくとも約15体積%の結晶化度を有する、請求項7または8記載の組成物。
【請求項10】
前記半結晶性ポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD90粒径、(ii)少なくとも10μmのD10、および(iii)約20μmから約150μmの平均粒径を有する、請求項7から9いずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
前記溶融ピークが、少なくとも75ジュール/グラムの溶融エンタルピーを有する、請求項7から10いずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
前記溶融エンタルピーが少なくとも100ジュール/グラムである、請求項1から6および11いずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
積層製造物品を製造するのに有用なポリケトン粉末を形成する方法において、
(i)溶媒に溶融開始温度を有する初期ポリケトンを、50℃より高く、該初期ポリケトンの該溶融開始温度より低い温度で溶かして、溶解ポリケトンを含む溶液を形成する工程、
(ii)前記溶液の冷却、該溶液への非溶媒の添加、またはその組合せによって、前記溶解ポリケトンを沈殿させて、半結晶性ポリケトン粉末を形成する工程、および
(iii)前記溶媒から前記半結晶性ポリケトン粉末を分離する工程、
を含む方法。
【請求項14】
前記ポリケトン粉末を粉砕して、粉砕されたポリケトン粉末を形成する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
工程(iii)の前記半結晶性ポリケトン粉末を、半結晶性ポリケトンの溶融開始温度の20%以内の温度に加熱して、熱処理されたポリケトンを形成する工程をさらに含む、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記半結晶性ポリケトンが、少なくとも75ジュール/グラムの溶融ピークエンタルピーを有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記溶融ピークエンタルピーが少なくとも100ジュール/グラムである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記粉砕されたポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD90粒径、(ii)少なくとも10μmのD10、(iii)約20μmから約150μmの平均粒径を有し、(iv)該粉砕されたポリケトン粉末の数で少なくとも80%が、少なくとも約0.8の真円度を有する、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記結晶化度を増加させるための条件が、該結晶化度を増加させて、結晶化度が増加したポリケトンを形成するある時間に亘り、前記ポリケトン粉末のいずれか1つを、50℃から、DSCで決定される前記溶融ピーク開始温度より低い温度で熱処理することからなる、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記溶かす工程が、100℃から150℃の温度で行われる、請求項13から19いずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記沈殿させる工程が、水からなる非溶媒を添加することによって行われる、請求項13から20いずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記沈殿させる工程が、75℃から130℃の温度で行われる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記沈殿させる工程が、80℃から100℃未満の温度で行われる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記初期ポリケトンが、各々重複しない開始温度を有する、単峰性の溶融ピークおよび結晶化ピークを有する、請求項13から22いずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記非溶媒が水である、請求項21から24いずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒が極性非プロトン性溶媒である、請求項21から25いずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒が、15から50の誘電率を有する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒が、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート(PGMEA)、およびジメチルホルムアミドからなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層製造物品を製造するのに有用な粉末に関する。特に、本発明は、脂肪族半結晶性ポリケトン粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
積層製造の粉末に基づく方法には、以下のものがある:選択的レーザ焼結(SLS)は、連続層で粉末材料を溶融するためにレーザを使用する3Dプリンティング技術である(例えば、特許文献1を参照のこと)。高速焼結(HSS)およびマルチジェットフュージョン(MJF)3Dプリンティングでは、粉末材料上に赤外線吸収(IR吸収)インクの連続層を同様に堆積させる多数のジェットが利用され、その後、粉末層は、選択的溶融のためにIRエネルギーに暴露される。電子写真3Dプリンティングでは、物体を台座から層毎に構築する回転式光伝導体が利用される。
【0003】
選択的レーザ焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(MJF)、および高速焼結(HSS)3Dプリンティング方法では、同じタイプの浮遊性の固定されていない粉末床が使用される。それらには、一般に、積層構築された物体が、溶融相を得るために加熱機構が異なるだけで、同様の応力を経験するので、プリンティングプロセスに適合するための同じ材料要件がある。典型的に、プリントされた物体に予測される残留応力を決定するために、3Dプリント物体の自由物体図を使用することができる。これは、物体をうまく構築するために必要である。残留応力が高すぎると、その物体は、変形するか、または許容範囲を超えて形が崩れることになる。
【0004】
残留応力は、典型的に、溶融温度と再結晶化温度との間に十分に大きい窓(window)がある結晶性または半結晶性熱可塑性高分子を使用することによって、これらの粉末床に基づく3Dプリンタについて最小にされてきた。残念ながら、これは、SLSおよびMJF法を使用して大きいまたは複雑な部品をプリントするためにうまく使用されてきた高分子(例えば、ポリアミド)に限定され、それゆえ、これらの積層製造方法の使用が制限されてきた。
【0005】
脂肪族ポリケトンは、1つには、低コストのエンジニアリングプラスチックとしての物理的性質と耐薬品性のために、有望な高分子となっている。ポリケトンは、通常、特許文献2および3に記載されているようなパラジウム(または他の)触媒の存在下での共重合により生成されるエチレン(および/または他のオレフィンまたはアルケン)と一酸化炭素の共重合体である。ひいては、脂肪族ポリケトンは、通常、重合反応器中に存在する他の成分から分離される。これらの他の成分には、未反応アルケン、未反応一酸化炭素、メタノール(または他の)反応媒体、および触媒があるであろう。他の成分から分離された(例えば、分離と乾燥により)ポリケトン生成物は、「反応器フレーク(reactor flake)」と称される。この反応器フレークは、取扱いと出荷を困難にする微細な粒径のために、通常、市販用のペレットを形成するために、加熱され、押し出されて、ペレットを形成するときの溶融温度より高い温度への曝露による、ポリケトンの架橋の可能性や、低い溶融ピークエンタルピーなどの望ましくない特性が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5597589号明細書
【特許文献2】米国特許第4835250号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0058494号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、SLS、HSS、MJF、および上述したものなどの方法によって、積層製造物品を製造するために、1つ以上の問題を回避する熱可塑性高分子を提供することが望ましいであろう。特に、高い強度、靱性、高温抵抗、難燃性、およびある場合には、光学的に透明な物品を提供できる熱可塑性高分子を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、脂肪族ポリケトンを処理して、浮遊性粉末床法によってこれらの材料の改善された積層製造を可能にする特定の粉末形態および熱的特性を実現する方法を発見した。意外なことに、一例では、ポリケトン粉末は、高いエンタルピーピーク(少なくとも75J/g)を示すDSC溶融ピークを示す。溶融ピークのエンタルピーは、ポリケトンの架橋を避けつつ、相当増加させることができ、このことは、3Dプリンティングに有用であろう(例えば、エンタルピーは、ポリケトンの30、40、50、60、75、100、125、150またさらには175ジュール/グラムより大きいことがある)。
【0009】
本発明の第1の態様は、少なくとも約50ジュール/グラムの溶融エンタルピーを有する溶融ピークを持つ半結晶性ポリケトン粉末からなる半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物である。
【0010】
第3の態様は、改良型半結晶性ポリケトンを形成する方法であって、
(i)溶媒に初期ポリケトンを、50℃より高く、ポリケトンの溶融開始温度より低い温度で溶かして、溶解ポリケトンを含む溶液を形成する工程、
(ii)溶液の冷却、溶液への非溶媒の添加、またはその組合せによって、溶解ポリケトンを沈殿させて、改良型半結晶性ポリケトンを形成する工程、および
(iii)溶媒から改良型半結晶性ポリケトンを分離する工程、
を含む方法である。改良型ポリケトン粉末は、所望の粒径を実現するために製粉によりさらに処理され、積層製造に望ましいように、結晶化度を変え、DSC溶融特性を変える(例えば、本発明の第1の態様を実現する)ためのさらなる処理に施されることがある。分離されたポリケトンは、非溶媒中でのさらなる洗浄など、望ましくない溶媒を除去するためのさらなる処理に施されることがある。
【0011】
態様1および2におけるものなどの方法により形成されるポリケトンは、浮遊性粉末床法などの積層製造方法(例えば、SLS、HHSおよびMJF法)によって物品を形成するのに特に有用である。そのようなポリケトン粉末が、最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有することが望ましい。これらのポリケトンは、SLS、HSSおよびMJFなどの浮遊性粉末床積層製造技術によって印刷することができる。前記組成物は、このエンジニアリングプラスチックの特性(例えば、耐熱性および耐薬品性並びに多くの他の材料に関する低い摩擦係数)を生かして、積層製造物品に作ることができる。そのような用途の例に、生体適合性(医療)、電気、輸送(例えば、自動車、鉄道、トラック輸送)、配管、航空宇宙、食品接触、工業(例えば、機械)および民生用(例えば、電化製品)用途がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明ではないポリケトンの示差走査熱量測定(DSC)のプロット
図2】本発明の組成物のポリケトン粉末のDCSプロット
図3】本発明の組成物のポリケトン粉末のDCSプロット
図4】本発明のポリケトン粉末の光学顕微鏡写真
図5】異なる熱処理が施されたポリケトンの動的機械分析プロット
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここに提示された説明と実例は、本発明、その原理、およびその実用的応用を当業者に知らせる意図がある。記載された本開示の特定の実施の形態は、包括的であること、または本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0014】
ここに用いられているような「1つ以上」は、列挙された構成要素の少なくとも1つ、または複数が、開示されたように使用されてもよいことを意味する。任意の成分または構成要素の機能性は、原材料の不完全さ、反応体の不完全な変換、および副生成物の形成のために、平均的な機能性であることがあるのが理解されよう。
【0015】
前記方法は、溶媒に初期ポリケトンを、50℃より高く、ポリケトンの溶融開始温度より低い温度で溶かして、溶解ポリケトンを含む溶液を形成する工程を組む。一般に、溶媒は、100℃より高い温度から、特定のポリケトンの溶融開始温度より低い温度に加熱され、その溶融開始温度は、ここに記載されたような示差走査熱量測定(DSC)で決定される。実例として、溶媒は、75℃または100℃より高く、ポリケトンの溶融開始温度より5%、10%または20%低い温度に加熱され、その例は、最高約200℃、180℃、170℃または160℃である。
【0016】
初期ポリケトンは、
【0017】
【化1】
【0018】
で表される繰り返し単位からなるいずれであってもよく、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から本発明に有用な所望の数平均分子量を実現するための任意の実際的な量である。例示の有用な数平均分子量は、約175℃または210℃から約270℃または300℃の溶融温度を提供するものであることがあり、約1000から250,000または約10,000から200,000であることがある。
【0019】
前記組成物の初期ポリケトンが、一酸化炭素、エチレンおよび別のアルケン単量体(例えば、3から12、8または6の炭素のオレフィン、特にプロピレン)のターポリマーであるものであることが望ましい。そのようなポリケトンは、無作為の繰り返し単位:
【0020】
【化2】
【0021】
で表されることがあり、式中、Gは、二重結合で重合した3から12、8または6の炭素のオレフィンの飽和残基であり、x/yは少なくとも2から100または50または20である。Gがプロピレンであることが望ましい。このポリケトンは、アルキル基、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、エーテルまたはその組合せなど、どの有用な基で終端されてもよい。特定の末端基は、メタノールなどの低分子量アルコールまたは水もしくはその組合せなどの溶媒を使用することにより生じることがある。
【0022】
初期ポリケトンは、典型的に、結晶化ピークから隔てられた単峰性溶融ピークを示し、これは、ポリケトンをペレットに形成するためのポリケトンの溶融押出しによるものであろう。当該技術分野で公知のもの(例えば、韓国所在のヒョースンから商標名POKETON(商標)で市販されているもの)などの市販のポリケトンが、初期ポリケトンとして有用であろう。
【0023】
最高加熱温度(溶解温度)での時間は、ポリケトンの所望の溶解を実現する任意の時間である(典型的に、3または4分から3または4時間)。この過程中に、複数の高温が使用される(に保持される)ことがある。例えば、ポリケトンを溶かすために、より高い温度(溶解温度)が使用されることがあり、ポリケトンを沈殿させるときに、より低い温度(沈殿温度)が使用されることがある。沈殿温度は、ポリケトンが冷却されて沈殿を開始する温度または非溶媒の添加により沈殿が誘発される温度である。沈殿温度は、約20℃の周囲温度以上から、溶解温度(非溶媒の添加により沈殿した場合)まで、溶解温度より低い温度(例えば、130℃、125℃、100℃、75℃、または50℃)までの有用ないずれの温度であってもよい。沈殿温度が、非溶媒が沸騰し始める温度(ここで溶融ピークが決定されるのと同じやり方でDSCにより決定されるような沸騰開始温度)より低いことが望ましい。任意の部分または全過程で撹拌が使用されることがある。
【0024】
撹拌とは、一般に、固定子内で回転する羽根車を使用して、剪断力が生じて、流れと乱流のパターンを作り出す条件下で、液体または懸濁混合物中で成分をかき混ぜるものと、一般に理解される。かき混ぜは、所望の粒径と形状がもたらされる剪断速度を実現するのに有用ないずれであってもよい。羽根車が一旦、混合物を中に引きつけたら、混合物が遠心力で固定子の壁に接触するか、もしくは、方向と加速の最終な崩壊変化における圧力および速度下で、固定子の孔に押し通されるように、方向と加速の急な変化に混合物は曝される。高剪断混合条件の例示の実施の形態において、混合は、毎分50回転(rpm)から500rpmの速度での作動を含む。
【0025】
雰囲気が、溶媒と他の化学物質がその雰囲気と有害に反応しない、いずれかであることが望ましい。典型的に、揮発損失を最小にするために、密閉容器内において周囲圧力またはその近くでの印加圧力(例えば、大気圧の±10%、±1%または±0.1%)で溶解が行われる。高圧が使用されることがあるが、必須ではない。例示の雰囲気としては、溶媒に応じて、窒素または希ガス(例えば、アルゴン)もしくはその組合せまたは空気(例えば、乾燥空気)が挙げられるであろう。
【0026】
溶媒に溶けるポリケトンの量は、次に、冷却、非溶媒の導入またはその組合せの際に溶液から沈殿することのある、どの有用な量であってもよい。実例として、溶けるポリケトンの量は、1質量%、5質量%、10質量%から、任意の実際的な量(ゲル化しない)、50質量%、40質量%、30質量%または25質量%までであろう。
【0027】
ポリケトンは、8族から10族の遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素とアルケン単量体を重合することによって製造される高分子を包含する。詳しくは、ポリケトンは、各々がここに全て引用される、特許文献2、米国特許第4894435号明細書、および米国特許第5138032号明細書、並びに特許文献3に記載されたものの内のいずれか1つなどの方法によって製造されたいずれであってもよい。詳しくは、その方法、反応条件、および単量体は、ここに具体的に引用される、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第52行から第5欄の第17行までに記載されたものである。
【0028】
アルケン単量体が、2から12、8または6の炭素を有するオレフィンからなることが望ましい。実例として、アルケン単量体はエチレンである、またはアルケン単量体は、エチレンと、プロピレンなどの少なくとも1種類の他のオレフィン単量体とを含む。ポリケトンが、エチレンと、別のオレフィン単量体(例えば、プロピレン)との共重合体である場合、エチレンと他のオレフィンの量は、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第17行から第3欄の第14行に記載されたようなものである。
【0029】
溶媒は、極性非プロトン性溶媒などの、ポリケトンを溶かすためのどの有用な溶媒であってもよい。典型的に、溶媒は、沈殿したポリケトンを溶媒から分離する工程など、その後の処理工程での除去を容易にできる揮発性または低粘度を有する。典型的に、溶媒は、周囲条件での水の粘度の一桁以内の粘度(例えば、約20℃から25℃および1気圧(約101kPa)で約1センチポアズ)を有する。すなわち、粘度は、典型的に、10センチポアズ未満から0.1センチポアズ(cp)である。同様に、1気圧(約101kPa)での沸点(または沸点範囲)で測定される揮発性は、典型的に、約30℃、50℃または75℃から150℃、200℃または250℃である。溶媒は、典型的に、最大約500g/モル、200g/モル、またさらには150g/モルから少なくとも約30g/モルまでのMwの分子量(重量平均Mw)を有する。ある場合には、溶媒は、周囲条件で固体であることがあるが、上述した沸点および溶解が行われる高温で有用な粘度(例えば、約100cp未満または10cp未満)を有すると理解される。
【0030】
溶媒は、溶媒の混合物であることがある。実例として、溶媒は、室温で液体である溶媒と、その液体溶媒中に溶ける室温で固体である別の溶媒との混合物であることがあり、溶けた溶媒は、1つ以上の所望の特性(例えば、ポリケトンの改善された溶解度または溶液からポリケトンを沈殿させるために非溶媒を使用するときの粒子の形成)を与える。
【0031】
溶媒は、いくらか水を含有し、それでも、溶解と沈殿を生じさせるのにまだ有用であることがある。一般に、溶媒中の水の量は、最大約1質量%、0.5質量%、0.2質量%、0.1質量%、0.05質量%、0.01質量%または10質量百万分率(ppm)である。水濃度は、カールフィッシャー滴定法など、どの適切な方法で決定されてもよい。所望の水濃度を実現するために、当該技術分野で公知のものなどの、溶媒を乾燥させるどの適切な方法を利用してもよい。例えば、溶媒は、蒸留により乾燥させて、または分子篩と接触させて、水を除去してもよい。乾燥した溶媒は、米国連邦規則集第27編、21節、151条に記載され、規定されているように、さらに変性されてもよい。所望の水濃度は、公知の方法(例えば、蒸留および吸着)により実現することができる。
【0032】
溶媒は、少なくとも10であり、典型的に約100未満の誘電率を実現するために十分な双極子を作る1つ以上の基を有する。そのような基の例としては、エーテル、カルボニル、エステル、アルコール、アミン、アミド、イミド、ハロゲンまたはその任意の組合せが挙げられる。溶媒の誘電率が、少なくとも約15から約90、80または50、40、または30であることが望ましい。誘電率は、溶媒分子中に存在する双極子から計算しても、J.Phys.Chem. (2017), 121, 2, 1025-1031に記載されているように、実験に基づいて決定してもよい。
【0033】
溶媒は、溶媒が少なくとも約10の誘電率を有する限り、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N、S、Siまたはハロゲン)から約10、8、6、4または3のヘテロ原子を持ち、上述したMwを有し、直鎖、分岐、芳香族または環状であってよい。典型的に、炭素の量は、1から24、18、16、12または6である。有用であろう極性非プロトン性溶媒の例としては、ケトン(例えば、アセトン、ジイソプロピルケトンおよびメチルブチルケトン)、脂肪族または芳香族ハロゲン化炭化水素溶媒(例えば、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、または1,1,1-トリクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、および1,2,3-トリクロロベンゼン)、炭酸塩(例えば、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸クロロエチレン、フルオロカーボネート溶媒(例えば、炭酸フルオロエチレンおよび炭酸トリフルオロメチルプロピレン)、並びに炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、および炭酸エチルプロピル(EPC)などの炭酸ジアルキル溶媒が挙げられる。
【0034】
スルホン溶媒のいくつかの例としては、メチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルイソプロピルスルホン(MIPS)、プロピルスルホン、ブチルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、フェニルビニルスルホン、アリルメチルスルホン、メチルビニルスルホン、ジビニルスルホン(ビニルスルホン)、ジフェニルスルホン(フェニルスルホン)、ジベンジルスルホン(ベンジルスルホン)、ビニレンスルホン、ブタジエンスルホン、4-メトキシフェニルメチルスルホン、4-クロロフェニルメチルスルホン、2-クロロフェニルメチルスルホン、3,4-ジクロロフェニルメチルスルホン、4-(メチルスルホニル)トルエン、2-(メチルスルホニル)エタノール、4-ブロモフェニルメチルスルホン、2-ブロモフェニルメチルスルホン、4-フルオロフェニルメチルスルホン、2-フルオロフェニルメチルスルホン、4-アミノフェニルメチルスルホン、スルトン(例えば、1,3-プロパンスルトン)、およびエーテル基を含有するスルホン溶媒(例えば、2-メトキシエチル(メチル)スルホンおよび2-メトキシエトキシエチル(エチル)スルホン)が挙げられる。
【0035】
前記極性非プロトン性溶媒は、ケイ素含有であっても、例えば、シロキサンまたはシランであってもよい。シロキサン溶媒のいくつかの例としては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、ポリシロキサン、およびポリシロキサン-ポリオキシアルキレン誘導体が挙げられる。シラン溶媒のいくつかの例としては、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、および2-(エトキシ)エトキシトリメチルシランが挙げられる。
【0036】
極性非プロトン性溶媒の他の例としては、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジグリム、トリグリム、1,3-ジオキソラン、およびフッ素化エーテル(例えば、上述したエーテルのいずれかのモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-およびペル-フルオロ誘導体)および1,4-ブチロラクトン、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、ギ酸(例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、またはギ酸プロピル)、およびフッ素化エステル(例えば、上述したエステルのいずれかのモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-およびペル-フルオロ誘導体)が挙げられる。ニトリル溶媒のいくつかの例としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル、およびブチロニトリルが挙げられる。スルホキシド溶媒のいくつかの例としては、ジメチルスルホキシド、エチルメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルプロピルスルホキシド、およびエチルプロピルスルホキシドが挙げられる。アミド溶媒のいくつかの例としては、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ガンマ-ブチロラクタム、およびN-メチルピロリドンが挙げられる。
【0037】
極性非プロトン性溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N-メチルピロリジノン(NMP)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が挙げられる。
【0038】
沈殿温度で沈殿を誘発するために使用される非溶媒は、どの適切なものであってもよい。実例として、溶媒は、NMP、DMPU、PGMEAまたはHMPAであることがあり、非溶媒は、水、低分子量アルコール(例えば、C1からC4アルコール)またはその混合物などのプロトン性溶媒であることがある。非溶媒の量は、所定の沈殿温度で沈殿を生じるのに必要ないずれの量であってもよく、その量は、所望の沈殿したポリケトンの粒径、粒径分布および形態を実現するのに有用ないずれかである。典型的に、添加される非溶媒の濃度は、溶媒と非溶媒の0.1体積%、1体積%、5体積%または10体積%から、典型的に75体積%、50体積%または25体積%であることがある。
【0039】
典型的に、初期ポリケトン粉末と溶媒の混合物(スラリー)は、スラリーを撹拌しながら、周囲条件で調製される。典型的に、ポリケトンを溶解させる溶解温度にするために、温度は上昇させられる。溶解温度が、少なくとも10℃だけ溶媒の沸点より低いことが望ましい。所望の粒子の沈殿と形成を促進するために、溶液を冷却して、沈殿温度により、ポリケトンを好ましくは粉末形態で溶液から沈殿させる。次に、ポリケトン粉末は、濾過、遠心分離、浮力または他の公知の方法もしくはその組合せなど、どの適切な方法で分離してもよい。分離は、低分子量の溶媒、界面活性剤、浮力向上剤など、1種類以上の添加剤により促進させてもよい。分離は、濾過(例えば、真空濾過)で行われることがある。
【0040】
添加剤は、浮遊性床積層製造技術に有用なポリケトン粉末に1つ以上の所望の特性を与えるために、前記方法の最中に添加されることがある。例えば、紫外線安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、または難燃剤の内の1つ以上が添加されることがある。その添加剤は、この方法を実施するときに溶媒中に固体として残っていれば、核形成剤の機能を果たし、沈殿するポリケトンにより取り囲まれることがある。どの特定の添加剤の量も、それから形成される物品の印刷または特性に関して特定の性質を実現するためのどの有用な量であってよい。一般に、(1種類または複数の)添加剤の量は、存在する場合、組成物の最大約50体積%、25体積%、10体積%または5体積%である。流動補助剤は、粉末の流動性を改善するためのどの公知の化合物であってもよく、その例にフュームドシリカ(例えば、Aerosil 200)がある。
【0041】
充填剤は、当該技術分野で公知のものなど、どの有用な充填剤であってもよい。充填剤の例としては、セラミック、金属、炭素(例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン)、印刷温度で溶融または分解しない高分子微粒子(例えば、架橋した高分子微粒子、加硫ゴム微粒子など)、植物系充填剤(例えば、木材、堅果の殻、穀粒および籾殻粉末または粒子)が挙げられる。例示の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土、硫酸カルシウム、マイカ、無機ガラス(例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ「石英」、およびカルシア)、炭化物(例えば、炭化ホウ素および炭化ケイ素)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、オキシ窒化物、オキシ炭化物の組合せ、またはその組合せが挙げられる。
【0042】
前記方法は、意外なことに、二峰性形状のピーク(二峰性ピーク)も有することがある、エンタルピーがより大きいDSC溶融ピークを持つ脂肪族ポリケトンを製造できることが見出された。溶融ピークのエンタルピーは、出発ポリケトンの出発溶融ピークエンタルピーよりも10%、20%または30%以上大きいことがある。典型的に、この方法を実施した後、溶融ピーク開始温度は、結晶化温度の開始と重複しない。溶融エンタルピーが高いポリケトンが、このポリケトンの溶融開始温度の5%、10%または20%以内に加熱されると、結晶化ピークと重複せず、エンタルピーが減少していることがある、溶融ピークをまだ有するポリケトンが形成されることがあるが、そのプロセスにより、溶融ピーク開始温度と結晶化開始温度の分離の同調性が得られることも見出された。
【0043】
実例として、本発明の方法で沈殿した後のポリケトンは、空気、不活性雰囲気または窒素など、どの適切な雰囲気中で加熱されてもよい。加熱速度は、どの有用な速度であってもよく、使用されるピーク温度(徐冷温度)に依存することがある。例えば、加熱速度は、徐冷温度が、ポリケトンの溶融開始温度より高い(例えば、1℃以上、5℃以上、10℃以上、20℃以上)など、より高い場合、より速いことが望ましいであろう。同様に、徐冷温度は、どの有用な時間に亘り保持されてもよく、加熱速度と同様に、使用される徐冷温度に依存することがある。実例として、徐冷温度が溶融開始温度以上である場合、典型的に、徐冷時間は、2時間未満、1時間未満、または0.5時間未満である。
【0044】
前記方法は、ポリケトンを積層製造に使用できなくすることがある架橋の、または部分架橋の場合には、例えば、層内と層間の融合と接着を妨害するポリケトンの問題が避けられることも見出された。架橋の程度は、動的機械分析により示されることがあり、ここで、架橋の増加は、溶融挙動がなくなる(貯蔵弾性率が減少を示さなくなる)まで、貯蔵弾性率が減少する温度の上昇により示される。ASTM D4065に記載されているような、3℃/分の典型的な加熱速度および1Hzの周波数を使用することができる。すなわち、この方法は、どのような架橋もない、または形成された状態のポリケトンが有するよりも多い量の架橋を持たないポリケトン粉末を調製するために使用できる。例えば、流動床、回転窯または垂直管型炉を含む、当該技術分野で公知のものなどの、大きな塊を加熱し、冷却する問題を最小にした、加熱し、徐冷する方法が利用されることが好ましいであろう。
【0045】
沈殿させるために使用される撹拌および特定の方法に応じて、形成されたポリケトンは、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって、さらに分類、粉砕などを行ってもよい。例示の分類方法としは、遠心分離、沈降およびエアーサイクロンが挙げられるであろう。サイズの減少(size reduction)(粉砕(comminution))は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法で行ってもよい。実例として、半結晶性ポリケトンが砕けやすくなる温度での製粉が、使用されることがあり、通常、冷凍製粉と称される。一般に、冷凍製粉の温度は、約0℃未満、-25℃未満、-50℃未満から約-75℃、-100℃、-150℃、または-190℃のどの温度であってもよい。ある実施の形態において、冷却は、ドライアイスまたは液体窒素により行われる。冷凍製粉後、製粉されたポリケトン粉末は、さらに分類されることがあり、所望のサイズを実現するために、所望のサイズより大きい任意の粒子は、分離され、さらなる製粉が施され、小さすぎる粒子は、任意の適切なやり方で融合され、分類されるか、または製粉されてもよい。
【0046】
結晶化または再結晶化ピーク(ここでは置き換え可能に使用される)は、ポリケトン粉末の初期DCS走査における溶融ピークと重複し、それでも、良好な特性で、反りや歪みがなく、積層製造できる粉末を生成することができる。しかし、典型的に、溶融および結晶化開始温度は重複しない。
【0047】
ポリケトン粉末の結晶化温度(Tc)は、溶融ピークと結晶化ピークにより、そして、二峰性ピークの場合には、温度が低い方のピークにより、決定される半結晶性高分子の溶融温度(Tm)より低い。一般に、ポリケトンのTcは、Tmより約5℃から40または50℃低い。TmとTcは、溶融ピークの中点を使用して、ASTM D3418に記載されているように、DSCの溶融ピークから決定される。TmピークとTcピークの開始は、ASTM D3418(すなわち、線形からの走査の偏差)のように決定される。
【0048】
直接生成されたポリケトン粉末は、流動補助剤(flow aid)がなくとも積層製造できる形態を有することがある。望ましくは、そのような望ましい流動特性を有するポリケトンは、粒子形状、特に、粒子の丸みに関して、真球度(sphericity)を有し、これは、流動性に役立ち、個々の粒子の顕微鏡画像から導いて、円形特徴、または真円度(circularity)に関して表されることがあり、ここで、個々の粒子の真円度は、4πA/Pと定義され、式中、両方とも、無作為の視点から見て、Aは粒子の面積であり、Pは粒子の外周長さである。関連パラメータである真球度は、真円度の平方根として導かれる。真円度は、ゼロより大きく、1以下の数値である。完全に円形の粒子は、1.00の真円度を有すると称される。様々なレベルの真円度(例えば、0.65、0.75、0.85、0.90、および0.95)に、表の値より大きい真円度を持つ粒子試料集団の百分率が付随するようなやり方で、集団真円度データの表が提示されている。真円度は、0.9または0.95のソリディティ・フィルタ(solidity filter)レベルで決定される。ソリディティ・フィルタは、市販の画像解析ソフトウェアで利用できる二次元顕微鏡写真において重複する粒子を取り除くために使用されるフィルタである。ソリディティは、本質的に、二次元顕微鏡写真における粒子面積の主軸と単軸で規定される区域の面積上にある粒子の面積(粒子面積)である。粒子のサイズと形状は、直径で粒径を測定するための当該技術分野で公知のどの適切な方法で測定しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、粒子のサイズと形状は、当該技術分野で公知のようにレーザ回折で決定される。例えば、粒径は、粒子の取り込み画像を解析するためのPartAnSIソフトウェアを使用して、静止画像解析アクセサリを備えたMicrotrac S3500などのレーザ回折計を使用して、決定することができる。粒子の少なくとも約65%、70%、80%、95%または99%(数で)が、精製以外にさらに処理を行わずに、反応器から分離され、分類された粉末について、少なくとも約0.8、0.85、0.9または0.95の真円度を有することが望ましい。
【0049】
同様に、どのような流動補助剤も加えられていないポリケトン粉末は、一般に、ASTM D1895の方法Aで決定されるように、15mmのノズルを使用して、少なくとも約0.5g/秒、1g/秒または2g/秒から任意の実際的に達成可能な速度(例えば、50g/秒)の流動性を有する。
【0050】
本発明の上述した半結晶性ポリケトンは、少なくとも約15質量%から実質的に結晶性の結晶化度を有し、結晶化度の度合いが高いほど望ましい。結晶化度が、20%、25%または30%から、実質的に結晶性、90%、80%、75%、60%または55%のどこかであることが望ましい。結晶化度は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって決定されてもよい。実例として、結晶化度のパーセントは、例えば、Rigaku SmartLab X線回折計を使用することなど、広角X線回折(WAXD)を含むX線回折により、またはTA Instruments DSC250示差走査熱量計ASTM D3418-15を使用することなど、示差走査熱量測定(DSC)により、決定することができる。
【0051】
前記組成物のポリケトンは、SLSなどの積層製造に有用な粉末を製造するのに有用な任意のDSC溶融ピークエンタルピーを有することがある。典型的に、エンタルピーは、少なくとも3ジュール/グラムであるが、望ましくは、少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70または75ジュール/グラム以上から、200ジュール/グラムなどの任意の実際的な量である。DSC溶融ピークのエンタルピーは、ASTM D3418に記載されている様式にしたがって、決定することができる。
【0052】
上述した粒子の半結晶性ポリケトンは、一般に、積層製造物品を製造するのに有用な粒径とサイズ分布を有し、典型的に、体積で、約1マイクロメートル(μm)、10μm、20μm、30μmまたは40μmから、150μm、125μm、110μmまたは100μmの、平均または中央粒径(D50)を有する。同様に、粉末の一貫した加熱と溶解を可能にするために、半結晶性ポリケトンが、最大で300μm、200μmまたは150μmのD90を有することが望ましい。流動性に役立つように、ポリケトンは、体積で、少なくとも0.1μm、0.5μmまたは1μmのD10を有することが望ましい。D90は、粒子の90体積%がそのサイズ以下である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、同様に、D50は、粒子の少なくとも50体積%がそのサイズ未満である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、D10は、粒子の少なくとも10体積%がそのサイズ未満である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味する。粒径は、例えば、十分な数の粒子(約100から約200の粒子)のレーザ回折または顕微鏡写真の画像解析を含む、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって決定されてもよい。代表的なレーザ回折計は、Microtrac S3500などのMicrotracにより製造されているものである。
【0053】
本発明の組成物は、積層製造物品などの物品を製造するための当該技術分野で公知のものなど、有用な添加剤をさらに含むことがある。例えば、その組成物は、紫外線安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、難燃剤、または溶媒の1つ以上を有することがある。その組成物が、溶媒を実質的に含まない(すなわち、組成物の最大10質量百万分率(ppm)、1ppmである、最大でも微量)ことが望ましい。任意の特定の添加剤の量は、それから形成される物品の印刷のための特定の性質または特徴を実現するためのどの有用な量であってよい。一般に、添加剤の量は、存在する場合、組成物の最大約50体積%、25体積%、10体積%または5体積%である。流動補助剤は、粉末の流動性を改善するためのどの公知の化合物であってもよく、その例にヒュームドシリカ(例えば、Aerosil 200)がある。
【0054】
本発明の組成物のポリケトンにより、変形したり、望ましくない量の残留応力を有したりしない造形物品を形成できることが分かった。例えば、以下に限られないが、本発明の組成物は、SLS、MJF、HSSまたは電子写真術などの積層製造方法によって、物体に製造されることがある。実例として、SLSにおいて、本発明の組成物の層が、ポリケトン粉末の溶融温度より低い固定温度で床上に堆積されることがあり、その床の所定の(選択された)区域が、上述したようにレーザ制御され、向けられるような加熱源を使用して、互いに焼結(融合)される。次に、複数の層が、連続して堆積されて、その層内と先の層に焼結されて、積層製造された部品を構築する。
【0055】
典型的に、半結晶性熱可塑性高分子を積層製造するための「作業範囲」は、材料が溶融する開始温度と、再結晶化する開始温度(「Tc」)との間の温度差であり、これは、一般に、できるだけ大きい。上述したように、ポリケトンは、迅速に加熱し、その温度(徐冷温度)に短時間保持して、溶融ピーク形状および溶融開始温度を調整することによって、調整されることがある。例えば、そのポリケトンは、作業範囲が、5℃、10℃、または20℃から60℃、50℃、30℃、または25℃など、任意の実現される温度差のどこかであるようにさらに最適化されることがある。
【0056】
本発明の組成物のポリケトン粉末は、良好な三次元印刷適性を示すので、それらの粉末は、粉末の床を、ポリケトンの開始溶融温度より直ぐ下の温度に加熱し、維持する工程を含む粉末積層製造方法で印刷された後に、さらに処理せずに、再利用され、再使用されることがある。所望であれば、再利用される粉末は、所望の印刷適性または部品特性を実現するために、まだ積層製造されていない、ここに記載されたポリケトン粉末のいずれかと混合されてもよい。本発明の組成物を構成する再利用ポリケトンの割合は、組成物の実質的に全て、90質量%、75質量%、50質量%、40質量%または30質量%から、約1質量%、5質量%または10質量%の任意の量であってよい。再利用粉末の熱的特性は、一般に、本発明のポリケトン粉末について造粒され、粉砕されたポリケトンについて先に記載されたようなものである。形態およびサイズ分布は、同様に、ここに記載されたようなものであり、形態は、積層製造物品を形成するために使用される特定の初期ポリケトン粉末の形態に最も似ている。
【0057】
本発明の組成物は、本発明の複数の融合ポリケトンからなる積層製造物品を製造するために使用されることがある。特に、その組成物は、SLS、HSSおよびMJFなど、層内と層間で粒子を融合する粉末層の連続した選択的加熱によって製造される積層製造物品を製造するために使用されることがある。
【実施例
【0058】
実施例1:
ポリケトン粉末を、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第52行から第5欄の第17行に記載されたやり方の過程で製造し、溶融押出しして(約240℃)、ポリケトンのペレット(ペレット化されたポリケトン)を形成する。このペレット化されたポリケトンの熱挙動が、図1のDSC曲線に示されている。溶融ピークエンタルピーは40J/gであり、溶融ピーク開始温度は180℃であり、結晶化開始温度は175℃である。
【0059】
10グラムのペレット化されたポリケトンを、かき混ぜながら、130℃から150℃で100mLのN-メチルピロリドン(NMP)に溶かす。NMP中に完全に溶解した際に、温度をほぼ130℃に低下させる。粘度は相当増加しており、所望であれば、溶液をさらに冷却して、ゲルを形成してもよい。溶液の温度が約130℃に到達すると、この溶液に室温のDI(脱イオン)水を加えて、溶液からポリケトンを沈殿させて、濃厚スラリーを形成する。さらなる沈殿が観察されなくなるまで、水を加える。沈殿した粉末を溶媒から真空濾過し、さらに水で洗浄して、残りのNMPを除去する。乾燥した沈殿粉末を空気中において110℃で乾燥させる。得られた粉末の熱挙動が、図2示されている。図2から、沈殿粉末は、出発ポリケトンよりも高いエンタルピー溶融ピークを有し、エンタルピーピークと結晶化ピークの開始温度は重複しないことが明白である。これも図2から、10℃/分の加熱速度で二回目に加熱し、約2分間250℃の温度で保持した際に、ポリケトンは、実質的に減少した溶融ピークエンタルピーを有することが示されている。
【0060】
実施例2:
沈殿が終わるまで、非溶媒の水を約95℃の温度で導入することを除いて、実施例1を繰り返す。図3は、この実施例のポリケトンのDSCであり、これは、175ジュール/グラムより大きい溶融ピークエンタルピーを示し、溶融ピークと結晶化ピークの開始温度が重複しないことを示す。二回目に加熱した際に、溶融ピークは、一桁以上低下している。図4は、この方法により形成され、次いで、積層製造に有用な粉末を製造するために必要に応じて後ですり潰すことのできる多孔質ポリケトン粒子の光学顕微鏡写真である。
【0061】
図5は、異なる加熱温度に曝されたポリケトンの動的機械分析の結果を示している。この図から、ポリケトンは溶融温度より低くても架橋し、この方法により、架橋を導入せずに、ポリケトンへの加熱の影響なく、積層製造に有用なポリケトンを製造できるのが容易に明白である。記載された温度は、高分子の流れや溶融を表し、一方で、そのような温度がないことは、架橋高分子を表す。温度の上昇は、架橋の増加を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層製造物品を製造するのに有用な粉末に関する。特に、本発明は、脂肪族半結晶性ポリケトン粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
積層製造の粉末に基づく方法には、以下のものがある:選択的レーザ焼結(SLS)は、連続層で粉末材料を溶融するためにレーザを使用する3Dプリンティング技術である(例えば、特許文献1を参照のこと)。高速焼結(HSS)およびマルチジェットフュージョン(MJF)3Dプリンティングでは、粉末材料上に赤外線吸収(IR吸収)インクの連続層を同様に堆積させる多数のジェットが利用され、その後、粉末層は、選択的溶融のためにIRエネルギーに暴露される。電子写真3Dプリンティングでは、物体を台座から層毎に構築する回転式光伝導体が利用される。
【0003】
選択的レーザ焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(MJF)、および高速焼結(HSS)3Dプリンティング方法では、同じタイプの浮遊性の固定されていない粉末床が使用される。それらには、一般に、積層構築された物体が、溶融相を得るために加熱機構が異なるだけで、同様の応力を経験するので、プリンティングプロセスに適合するための同じ材料要件がある。典型的に、プリントされた物体に予測される残留応力を決定するために、3Dプリント物体の自由物体図を使用することができる。これは、物体をうまく構築するために必要である。残留応力が高すぎると、その物体は、変形するか、または許容範囲を超えて形が崩れることになる。
【0004】
残留応力は、典型的に、溶融温度と再結晶化温度との間に十分に大きい窓(window)がある結晶性または半結晶性熱可塑性高分子を使用することによって、これらの粉末床に基づく3Dプリンタについて最小にされてきた。残念ながら、これは、SLSおよびMJF法を使用して大きいまたは複雑な部品をプリントするためにうまく使用されてきた高分子(例えば、ポリアミド)に限定され、それゆえ、これらの積層製造方法の使用が制限されてきた。
【0005】
脂肪族ポリケトンは、1つには、低コストのエンジニアリングプラスチックとしての物理的性質と耐薬品性のために、有望な高分子となっている。ポリケトンは、通常、特許文献2および3に記載されているようなパラジウム(または他の)触媒の存在下での共重合により生成されるエチレン(および/または他のオレフィンまたはアルケン)と一酸化炭素の共重合体である。ひいては、脂肪族ポリケトンは、通常、重合反応器中に存在する他の成分から分離される。これらの他の成分には、未反応アルケン、未反応一酸化炭素、メタノール(または他の)反応媒体、および触媒があるであろう。他の成分から分離された(例えば、分離と乾燥により)ポリケトン生成物は、「反応器フレーク(reactor flake)」と称される。この反応器フレークは、取扱いと出荷を困難にする微細な粒径のために、通常、市販用のペレットを形成するために、加熱され、押し出されて、ペレットを形成するときの溶融温度より高い温度への曝露による、ポリケトンの架橋の可能性や、低い溶融ピークエンタルピーなどの望ましくない特性が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5597589号明細書
【特許文献2】米国特許第4835250号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0058494号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、SLS、HSS、MJF、および上述したものなどの方法によって、積層製造物品を製造するために、1つ以上の問題を回避する熱可塑性高分子を提供することが望ましいであろう。特に、高い強度、靱性、高温抵抗、難燃性、およびある場合には、光学的に透明な物品を提供できる熱可塑性高分子を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、脂肪族ポリケトンを処理して、浮遊性粉末床法によってこれらの材料の改善された積層製造を可能にする特定の粉末形態および熱的特性を実現する方法を発見した。意外なことに、一例では、ポリケトン粉末は、高いエンタルピーピーク(少なくとも75J/g)を示すDSC溶融ピークを示す。溶融ピークのエンタルピーは、ポリケトンの架橋を避けつつ、相当増加させることができ、このことは、3Dプリンティングに有用であろう(例えば、エンタルピーは、ポリケトンの30、40、50、60、75、100、125、150またさらには175ジュール/グラムより大きいことがある)。
【0009】
本発明の第1の態様は、少なくとも約50ジュール/グラムの溶融エンタルピーを有する溶融ピークを持つ半結晶性ポリケトン粉末からなる半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物である。
【0010】
第3の態様は、改良型半結晶性ポリケトンを形成する方法であって、
(i)溶媒に初期ポリケトンを、50℃より高く、ポリケトンの溶融開始温度より低い温度で溶かして、溶解ポリケトンを含む溶液を形成する工程、
(ii)溶液の冷却、溶液への非溶媒の添加、またはその組合せによって、溶解ポリケトンを沈殿させて、改良型半結晶性ポリケトンを形成する工程、および
(iii)溶媒から改良型半結晶性ポリケトンを分離する工程、
を含む方法である。改良型ポリケトン粉末は、所望の粒径を実現するために製粉によりさらに処理され、積層製造に望ましいように、結晶化度を変え、DSC溶融特性を変える(例えば、本発明の第1の態様を実現する)ためのさらなる処理に施されることがある。分離されたポリケトンは、非溶媒中でのさらなる洗浄など、望ましくない溶媒を除去するためのさらなる処理に施されることがある。
【0011】
態様1および2におけるものなどの方法により形成されるポリケトンは、浮遊性粉末床法などの積層製造方法(例えば、SLS、HHSおよびMJF法)によって物品を形成するのに特に有用である。そのようなポリケトン粉末が、最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有することが望ましい。これらのポリケトンは、SLS、HSSおよびMJFなどの浮遊性粉末床積層製造技術によって印刷することができる。前記組成物は、このエンジニアリングプラスチックの特性(例えば、耐熱性および耐薬品性並びに多くの他の材料に関する低い摩擦係数)を生かして、積層製造物品に作ることができる。そのような用途の例に、生体適合性(医療)、電気、輸送(例えば、自動車、鉄道、トラック輸送)、配管、航空宇宙、食品接触、工業(例えば、機械)および民生用(例えば、電化製品)用途がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明ではないポリケトンの示差走査熱量測定(DSC)のプロット
図2】本発明の組成物のポリケトン粉末のDCSプロット
図3】本発明の組成物のポリケトン粉末のDCSプロット
図4】本発明のポリケトン粉末の光学顕微鏡写真
図5】異なる熱処理が施されたポリケトンの動的機械分析プロット
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここに提示された説明と実例は、本発明、その原理、およびその実用的応用を当業者に知らせる意図がある。記載された本開示の特定の実施の形態は、包括的であること、または本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0014】
ここに用いられているような「1つ以上」は、列挙された構成要素の少なくとも1つ、または複数が、開示されたように使用されてもよいことを意味する。任意の成分または構成要素の機能性は、原材料の不完全さ、反応体の不完全な変換、および副生成物の形成のために、平均的な機能性であることがあるのが理解されよう。
【0015】
前記方法は、溶媒に初期ポリケトンを、50℃より高く、ポリケトンの溶融開始温度より低い温度で溶かして、溶解ポリケトンを含む溶液を形成する工程を組む。一般に、溶媒は、100℃より高い温度から、特定のポリケトンの溶融開始温度より低い温度に加熱され、その溶融開始温度は、ここに記載されたような示差走査熱量測定(DSC)で決定される。実例として、溶媒は、75℃または100℃より高く、ポリケトンの溶融開始温度より5%、10%または20%低い温度に加熱され、その例は、最高約200℃、180℃、170℃または160℃である。
【0016】
初期ポリケトンは、
【0017】
【化1】
【0018】
で表される繰り返し単位からなるいずれであってもよく、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から本発明に有用な所望の数平均分子量を実現するための任意の実際的な量である。例示の有用な数平均分子量は、約175℃または210℃から約270℃または300℃の溶融温度を提供するものであることがあり、約1000から250,000または約10,000から200,000であることがある。
【0019】
前記組成物の初期ポリケトンが、一酸化炭素、エチレンおよび別のアルケン単量体(例えば、3から12、8または6の炭素のオレフィン、特にプロピレン)のターポリマーであるものであることが望ましい。そのようなポリケトンは、無作為の繰り返し単位:
【0020】
【化2】
【0021】
で表されることがあり、式中、Gは、二重結合で重合した3から12、8または6の炭素のオレフィンの飽和残基であり、x/yは少なくとも2から100または50または20である。Gがプロピレンであることが望ましい。このポリケトンは、アルキル基、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、エーテルまたはその組合せなど、どの有用な基で終端されてもよい。特定の末端基は、メタノールなどの低分子量アルコールまたは水もしくはその組合せなどの溶媒を使用することにより生じることがある。
【0022】
初期ポリケトンは、典型的に、結晶化ピークから隔てられた単峰性溶融ピークを示し、これは、ポリケトンをペレットに形成するためのポリケトンの溶融押出しによるものであろう。当該技術分野で公知のもの(例えば、韓国所在のヒョースンから商標名POKETON(商標)で市販されているもの)などの市販のポリケトンが、初期ポリケトンとして有用であろう。
【0023】
最高加熱温度(溶解温度)での時間は、ポリケトンの所望の溶解を実現する任意の時間である(典型的に、3または4分から3または4時間)。この過程中に、複数の高温が使用される(に保持される)ことがある。例えば、ポリケトンを溶かすために、より高い温度(溶解温度)が使用されることがあり、ポリケトンを沈殿させるときに、より低い温度(沈殿温度)が使用されることがある。沈殿温度は、ポリケトンが冷却されて沈殿を開始する温度または非溶媒の添加により沈殿が誘発される温度である。沈殿温度は、約20℃の周囲温度以上から、溶解温度(非溶媒の添加により沈殿した場合)まで、溶解温度より低い温度(例えば、130℃、125℃、100℃、75℃、または50℃)までの有用ないずれの温度であってもよい。沈殿温度が、非溶媒が沸騰し始める温度(ここで溶融ピークが決定されるのと同じやり方でDSCにより決定されるような沸騰開始温度)より低いことが望ましい。任意の部分または全過程で撹拌が使用されることがある。
【0024】
撹拌とは、一般に、固定子内で回転する羽根車を使用して、剪断力が生じて、流れと乱流のパターンを作り出す条件下で、液体または懸濁混合物中で成分をかき混ぜるものと、一般に理解される。かき混ぜは、所望の粒径と形状がもたらされる剪断速度を実現するのに有用ないずれであってもよい。羽根車が一旦、混合物を中に引きつけたら、混合物が遠心力で固定子の壁に接触するか、もしくは、方向と加速の最終な崩壊変化における圧力および速度下で、固定子の孔に押し通されるように、方向と加速の急な変化に混合物は曝される。高剪断混合条件の例示の実施の形態において、混合は、毎分50回転(rpm)から500rpmの速度での作動を含む。
【0025】
雰囲気が、溶媒と他の化学物質がその雰囲気と有害に反応しない、いずれかであることが望ましい。典型的に、揮発損失を最小にするために、密閉容器内において周囲圧力またはその近くでの印加圧力(例えば、大気圧の±10%、±1%または±0.1%)で溶解が行われる。高圧が使用されることがあるが、必須ではない。例示の雰囲気としては、溶媒に応じて、窒素または希ガス(例えば、アルゴン)もしくはその組合せまたは空気(例えば、乾燥空気)が挙げられるであろう。
【0026】
溶媒に溶けるポリケトンの量は、次に、冷却、非溶媒の導入またはその組合せの際に溶液から沈殿することのある、どの有用な量であってもよい。実例として、溶けるポリケトンの量は、1質量%、5質量%、10質量%から、任意の実際的な量(ゲル化しない)、50質量%、40質量%、30質量%または25質量%までであろう。
【0027】
ポリケトンは、8族から10族の遷移金属触媒の存在下で一酸化炭素とアルケン単量体を重合することによって製造される高分子を包含する。詳しくは、ポリケトンは、各々がここに全て引用される、特許文献2、米国特許第4894435号明細書、および米国特許第5138032号明細書、並びに特許文献3に記載されたものの内のいずれか1つなどの方法によって製造されたいずれであってもよい。詳しくは、その方法、反応条件、および単量体は、ここに具体的に引用される、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第52行から第5欄の第17行までに記載されたものである。
【0028】
アルケン単量体が、2から12、8または6の炭素を有するオレフィンからなることが望ましい。実例として、アルケン単量体はエチレンである、またはアルケン単量体は、エチレンと、プロピレンなどの少なくとも1種類の他のオレフィン単量体とを含む。ポリケトンが、エチレンと、別のオレフィン単量体(例えば、プロピレン)との共重合体である場合、エチレンと他のオレフィンの量は、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第17行から第3欄の第14行に記載されたようなものである。
【0029】
溶媒は、極性非プロトン性溶媒などの、ポリケトンを溶かすためのどの有用な溶媒であってもよい。典型的に、溶媒は、沈殿したポリケトンを溶媒から分離する工程など、その後の処理工程での除去を容易にできる揮発性または低粘度を有する。典型的に、溶媒は、周囲条件での水の粘度の一桁以内の粘度(例えば、約20℃から25℃および1気圧(約101kPa)で約1センチポアズ)を有する。すなわち、粘度は、典型的に、10センチポアズ未満から0.1センチポアズ(cp)である。同様に、1気圧(約101kPa)での沸点(または沸点範囲)で測定される揮発性は、典型的に、約30℃、50℃または75℃から150℃、200℃または250℃である。溶媒は、典型的に、最大約500g/モル、200g/モル、またさらには150g/モルから少なくとも約30g/モルまでのMwの分子量(重量平均Mw)を有する。ある場合には、溶媒は、周囲条件で固体であることがあるが、上述した沸点および溶解が行われる高温で有用な粘度(例えば、約100cp未満または10cp未満)を有すると理解される。
【0030】
溶媒は、溶媒の混合物であることがある。実例として、溶媒は、室温で液体である溶媒と、その液体溶媒中に溶ける室温で固体である別の溶媒との混合物であることがあり、溶けた溶媒は、1つ以上の所望の特性(例えば、ポリケトンの改善された溶解度または溶液からポリケトンを沈殿させるために非溶媒を使用するときの粒子の形成)を与える。
【0031】
溶媒は、いくらか水を含有し、それでも、溶解と沈殿を生じさせるのにまだ有用であることがある。一般に、溶媒中の水の量は、最大約1質量%、0.5質量%、0.2質量%、0.1質量%、0.05質量%、0.01質量%または10質量百万分率(ppm)である。水濃度は、カールフィッシャー滴定法など、どの適切な方法で決定されてもよい。所望の水濃度を実現するために、当該技術分野で公知のものなどの、溶媒を乾燥させるどの適切な方法を利用してもよい。例えば、溶媒は、蒸留により乾燥させて、または分子篩と接触させて、水を除去してもよい。乾燥した溶媒は、米国連邦規則集第27編、21節、151条に記載され、規定されているように、さらに変性されてもよい。所望の水濃度は、公知の方法(例えば、蒸留および吸着)により実現することができる。
【0032】
溶媒は、少なくとも10であり、典型的に約100未満の誘電率を実現するために十分な双極子を作る1つ以上の基を有する。そのような基の例としては、エーテル、カルボニル、エステル、アルコール、アミン、アミド、イミド、ハロゲンまたはその任意の組合せが挙げられる。溶媒の誘電率が、少なくとも約15から約90、80または50、40、または30であることが望ましい。誘電率は、溶媒分子中に存在する双極子から計算しても、J.Phys.Chem. (2017), 121, 2, 1025-1031に記載されているように、実験に基づいて決定してもよい。
【0033】
溶媒は、溶媒が少なくとも約10の誘電率を有する限り、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N、S、Siまたはハロゲン)から約10、8、6、4または3のヘテロ原子を持ち、上述したMwを有し、直鎖、分岐、芳香族または環状であってよい。典型的に、炭素の量は、1から24、18、16、12または6である。有用であろう極性非プロトン性溶媒の例としては、ケトン(例えば、アセトン、ジイソプロピルケトンおよびメチルブチルケトン)、脂肪族または芳香族ハロゲン化炭化水素溶媒(例えば、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、または1,1,1-トリクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、および1,2,3-トリクロロベンゼン)、炭酸塩(例えば、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸クロロエチレン、フルオロカーボネート溶媒(例えば、炭酸フルオロエチレンおよび炭酸トリフルオロメチルプロピレン)、並びに炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、および炭酸エチルプロピル(EPC)などの炭酸ジアルキル溶媒が挙げられる。
【0034】
スルホン溶媒のいくつかの例としては、メチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルイソプロピルスルホン(MIPS)、プロピルスルホン、ブチルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、フェニルビニルスルホン、アリルメチルスルホン、メチルビニルスルホン、ジビニルスルホン(ビニルスルホン)、ジフェニルスルホン(フェニルスルホン)、ジベンジルスルホン(ベンジルスルホン)、ビニレンスルホン、ブタジエンスルホン、4-メトキシフェニルメチルスルホン、4-クロロフェニルメチルスルホン、2-クロロフェニルメチルスルホン、3,4-ジクロロフェニルメチルスルホン、4-(メチルスルホニル)トルエン、2-(メチルスルホニル)エタノール、4-ブロモフェニルメチルスルホン、2-ブロモフェニルメチルスルホン、4-フルオロフェニルメチルスルホン、2-フルオロフェニルメチルスルホン、4-アミノフェニルメチルスルホン、スルトン(例えば、1,3-プロパンスルトン)、およびエーテル基を含有するスルホン溶媒(例えば、2-メトキシエチル(メチル)スルホンおよび2-メトキシエトキシエチル(エチル)スルホン)が挙げられる。
【0035】
前記極性非プロトン性溶媒は、ケイ素含有であっても、例えば、シロキサンまたはシランであってもよい。シロキサン溶媒のいくつかの例としては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、ポリシロキサン、およびポリシロキサン-ポリオキシアルキレン誘導体が挙げられる。シラン溶媒のいくつかの例としては、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、および2-(エトキシ)エトキシトリメチルシランが挙げられる。
【0036】
極性非プロトン性溶媒の他の例としては、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジグリム、トリグリム、1,3-ジオキソラン、およびフッ素化エーテル(例えば、上述したエーテルのいずれかのモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-およびペル-フルオロ誘導体)および1,4-ブチロラクトン、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、ギ酸(例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、またはギ酸プロピル)、およびフッ素化エステル(例えば、上述したエステルのいずれかのモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-およびペル-フルオロ誘導体)が挙げられる。ニトリル溶媒のいくつかの例としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル、およびブチロニトリルが挙げられる。スルホキシド溶媒のいくつかの例としては、ジメチルスルホキシド、エチルメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルプロピルスルホキシド、およびエチルプロピルスルホキシドが挙げられる。アミド溶媒のいくつかの例としては、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、ガンマ-ブチロラクタム、およびN-メチルピロリドンが挙げられる。
【0037】
極性非プロトン性溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N-メチルピロリジノン(NMP)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が挙げられる。
【0038】
沈殿温度で沈殿を誘発するために使用される非溶媒は、どの適切なものであってもよい。実例として、溶媒は、NMP、DMPU、PGMEAまたはHMPAであることがあり、非溶媒は、水、低分子量アルコール(例えば、C1からC4アルコール)またはその混合物などのプロトン性溶媒であることがある。非溶媒の量は、所定の沈殿温度で沈殿を生じるのに必要ないずれの量であってもよく、その量は、所望の沈殿したポリケトンの粒径、粒径分布および形態を実現するのに有用ないずれかである。典型的に、添加される非溶媒の濃度は、溶媒と非溶媒の0.1体積%、1体積%、5体積%または10体積%から、典型的に75体積%、50体積%または25体積%であることがある。
【0039】
典型的に、初期ポリケトン粉末と溶媒の混合物(スラリー)は、スラリーを撹拌しながら、周囲条件で調製される。典型的に、ポリケトンを溶解させる溶解温度にするために、温度は上昇させられる。溶解温度が、少なくとも10℃だけ溶媒の沸点より低いことが望ましい。所望の粒子の沈殿と形成を促進するために、溶液を冷却して、沈殿温度により、ポリケトンを好ましくは粉末形態で溶液から沈殿させる。次に、ポリケトン粉末は、濾過、遠心分離、浮力または他の公知の方法もしくはその組合せなど、どの適切な方法で分離してもよい。分離は、低分子量の溶媒、界面活性剤、浮力向上剤など、1種類以上の添加剤により促進させてもよい。分離は、濾過(例えば、真空濾過)で行われることがある。
【0040】
添加剤は、浮遊性床積層製造技術に有用なポリケトン粉末に1つ以上の所望の特性を与えるために、前記方法の最中に添加されることがある。例えば、紫外線安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、または難燃剤の内の1つ以上が添加されることがある。その添加剤は、この方法を実施するときに溶媒中に固体として残っていれば、核形成剤の機能を果たし、沈殿するポリケトンにより取り囲まれることがある。どの特定の添加剤の量も、それから形成される物品の印刷または特性に関して特定の性質を実現するためのどの有用な量であってよい。一般に、(1種類または複数の)添加剤の量は、存在する場合、組成物の最大約50体積%、25体積%、10体積%または5体積%である。流動補助剤は、粉末の流動性を改善するためのどの公知の化合物であってもよく、その例にフュームドシリカ(例えば、Aerosil 200)がある。
【0041】
充填剤は、当該技術分野で公知のものなど、どの有用な充填剤であってもよい。充填剤の例としては、セラミック、金属、炭素(例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン)、印刷温度で溶融または分解しない高分子微粒子(例えば、架橋した高分子微粒子、加硫ゴム微粒子など)、植物系充填剤(例えば、木材、堅果の殻、穀粒および籾殻粉末または粒子)が挙げられる。例示の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土、硫酸カルシウム、マイカ、無機ガラス(例えば、シリカ、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩など)、酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ「石英」、およびカルシア)、炭化物(例えば、炭化ホウ素および炭化ケイ素)、窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、オキシ窒化物、オキシ炭化物の組合せ、またはその組合せが挙げられる。
【0042】
前記方法は、意外なことに、二峰性形状のピーク(二峰性ピーク)も有することがある、エンタルピーがより大きいDSC溶融ピークを持つ脂肪族ポリケトンを製造できることが見出された。溶融ピークのエンタルピーは、出発ポリケトンの出発溶融ピークエンタルピーよりも10%、20%または30%以上大きいことがある。典型的に、この方法を実施した後、溶融ピーク開始温度は、結晶化温度の開始と重複しない。溶融エンタルピーが高いポリケトンが、このポリケトンの溶融開始温度の5%、10%または20%以内に加熱されると、結晶化ピークと重複せず、エンタルピーが減少していることがある、溶融ピークをまだ有するポリケトンが形成されることがあるが、そのプロセスにより、溶融ピーク開始温度と結晶化開始温度の分離の同調性が得られることも見出された。
【0043】
実例として、本発明の方法で沈殿した後のポリケトンは、空気、不活性雰囲気または窒素など、どの適切な雰囲気中で加熱されてもよい。加熱速度は、どの有用な速度であってもよく、使用されるピーク温度(徐冷温度)に依存することがある。例えば、加熱速度は、徐冷温度が、ポリケトンの溶融開始温度より高い(例えば、1℃以上、5℃以上、10℃以上、20℃以上)など、より高い場合、より速いことが望ましいであろう。同様に、徐冷温度は、どの有用な時間に亘り保持されてもよく、加熱速度と同様に、使用される徐冷温度に依存することがある。実例として、徐冷温度が溶融開始温度以上である場合、典型的に、徐冷時間は、2時間未満、1時間未満、または0.5時間未満である。
【0044】
前記方法は、ポリケトンを積層製造に使用できなくすることがある架橋の、または部分架橋の場合には、例えば、層内と層間の融合と接着を妨害するポリケトンの問題が避けられることも見出された。架橋の程度は、動的機械分析により示されることがあり、ここで、架橋の増加は、溶融挙動がなくなる(貯蔵弾性率が減少を示さなくなる)まで、貯蔵弾性率が減少する温度の上昇により示される。ASTM D4065に記載されているような、3℃/分の典型的な加熱速度および1Hzの周波数を使用することができる。すなわち、この方法は、どのような架橋もない、または形成された状態のポリケトンが有するよりも多い量の架橋を持たないポリケトン粉末を調製するために使用できる。例えば、流動床、回転窯または垂直管型炉を含む、当該技術分野で公知のものなどの、大きな塊を加熱し、冷却する問題を最小にした、加熱し、徐冷する方法が利用されることが好ましいであろう。
【0045】
沈殿させるために使用される撹拌および特定の方法に応じて、形成されたポリケトンは、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって、さらに分類、粉砕などを行ってもよい。例示の分類方法としは、遠心分離、沈降およびエアーサイクロンが挙げられるであろう。サイズの減少(size reduction)(粉砕(comminution))は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法で行ってもよい。実例として、半結晶性ポリケトンが砕けやすくなる温度での製粉が、使用されることがあり、通常、冷凍製粉と称される。一般に、冷凍製粉の温度は、約0℃未満、-25℃未満、-50℃未満から約-75℃、-100℃、-150℃、または-190℃のどの温度であってもよい。ある実施の形態において、冷却は、ドライアイスまたは液体窒素により行われる。冷凍製粉後、製粉されたポリケトン粉末は、さらに分類されることがあり、所望のサイズを実現するために、所望のサイズより大きい任意の粒子は、分離され、さらなる製粉が施され、小さすぎる粒子は、任意の適切なやり方で融合され、分類されるか、または製粉されてもよい。
【0046】
結晶化または再結晶化ピーク(ここでは置き換え可能に使用される)は、ポリケトン粉末の初期DCS走査における溶融ピークと重複し、それでも、良好な特性で、反りや歪みがなく、積層製造できる粉末を生成することができる。しかし、典型的に、溶融および結晶化開始温度は重複しない。
【0047】
ポリケトン粉末の結晶化温度(Tc)は、溶融ピークと結晶化ピークにより、そして、二峰性ピークの場合には、温度が低い方のピークにより、決定される半結晶性高分子の溶融温度(Tm)より低い。一般に、ポリケトンのTcは、Tmより約5℃から40または50℃低い。TmとTcは、溶融ピークの中点を使用して、ASTM D3418に記載されているように、DSCの溶融ピークから決定される。TmピークとTcピークの開始は、ASTM D3418(すなわち、線形からの走査の偏差)のように決定される。
【0048】
直接生成されたポリケトン粉末は、流動補助剤(flow aid)がなくとも積層製造できる形態を有することがある。望ましくは、そのような望ましい流動特性を有するポリケトンは、粒子形状、特に、粒子の丸みに関して、真球度(sphericity)を有し、これは、流動性に役立ち、個々の粒子の顕微鏡画像から導いて、円形特徴、または真円度(circularity)に関して表されることがあり、ここで、個々の粒子の真円度は、4πA/Pと定義され、式中、両方とも、無作為の視点から見て、Aは粒子の面積であり、Pは粒子の外周長さである。関連パラメータである真球度は、真円度の平方根として導かれる。真円度は、ゼロより大きく、1以下の数値である。完全に円形の粒子は、1.00の真円度を有すると称される。様々なレベルの真円度(例えば、0.65、0.75、0.85、0.90、および0.95)に、表の値より大きい真円度を持つ粒子試料集団の百分率が付随するようなやり方で、集団真円度データの表が提示されている。真円度は、0.9または0.95のソリディティ・フィルタ(solidity filter)レベルで決定される。ソリディティ・フィルタは、市販の画像解析ソフトウェアで利用できる二次元顕微鏡写真において重複する粒子を取り除くために使用されるフィルタである。ソリディティは、本質的に、二次元顕微鏡写真における粒子面積の主軸と単軸で規定される区域の面積上にある粒子の面積(粒子面積)である。粒子のサイズと形状は、直径で粒径を測定するための当該技術分野で公知のどの適切な方法で測定しても差し支えない。いくつかの実施の形態において、粒子のサイズと形状は、当該技術分野で公知のようにレーザ回折で決定される。例えば、粒径は、粒子の取り込み画像を解析するためのPartAnSIソフトウェアを使用して、静止画像解析アクセサリを備えたMicrotrac S3500などのレーザ回折計を使用して、決定することができる。粒子の少なくとも約65%、70%、80%、95%または99%(数で)が、精製以外にさらに処理を行わずに、反応器から分離され、分類された粉末について、少なくとも約0.8、0.85、0.9または0.95の真円度を有することが望ましい。
【0049】
同様に、どのような流動補助剤も加えられていないポリケトン粉末は、一般に、ASTM D1895の方法Aで決定されるように、15mmのノズルを使用して、少なくとも約0.5g/秒、1g/秒または2g/秒から任意の実際的に達成可能な速度(例えば、50g/秒)の流動性を有する。
【0050】
本発明の上述した半結晶性ポリケトンは、少なくとも約15質量%から実質的に結晶性の結晶化度を有し、結晶化度の度合いが高いほど望ましい。結晶化度が、20%、25%または30%から、実質的に結晶性、90%、80%、75%、60%または55%のどこかであることが望ましい。結晶化度は、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって決定されてもよい。実例として、結晶化度のパーセントは、例えば、Rigaku SmartLab X線回折計を使用することなど、広角X線回折(WAXD)を含むX線回折により、またはTA Instruments DSC250示差走査熱量計ASTM D3418-15を使用することなど、示差走査熱量測定(DSC)により、決定することができる。
【0051】
前記組成物のポリケトンは、SLSなどの積層製造に有用な粉末を製造するのに有用な任意のDSC溶融ピークエンタルピーを有することがある。典型的に、エンタルピーは、少なくとも3ジュール/グラムであるが、望ましくは、少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70または75ジュール/グラム以上から、200ジュール/グラムなどの任意の実際的な量である。DSC溶融ピークのエンタルピーは、ASTM D3418に記載されている様式にしたがって、決定することができる。
【0052】
上述した粒子の半結晶性ポリケトンは、一般に、積層製造物品を製造するのに有用な粒径とサイズ分布を有し、典型的に、体積で、約1マイクロメートル(μm)、10μm、20μm、30μmまたは40μmから、150μm、125μm、110μmまたは100μmの、平均または中央粒径(D50)を有する。同様に、粉末の一貫した加熱と溶解を可能にするために、半結晶性ポリケトンが、最大で300μm、200μmまたは150μmのD90を有することが望ましい。流動性に役立つように、ポリケトンは、体積で、少なくとも0.1μm、0.5μmまたは1μmのD10を有することが望ましい。D90は、粒子の90体積%がそのサイズ以下である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、同様に、D50は、粒子の少なくとも50体積%がそのサイズ未満である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味し、D10は、粒子の少なくとも10体積%がそのサイズ未満である、粒径分布における粒径(相当球径)を意味する。粒径は、例えば、十分な数の粒子(約100から約200の粒子)のレーザ回折または顕微鏡写真の画像解析を含む、当該技術分野で公知のものなど、どの適切な方法によって決定されてもよい。代表的なレーザ回折計は、Microtrac S3500などのMicrotracにより製造されているものである。
【0053】
本発明の組成物は、積層製造物品などの物品を製造するための当該技術分野で公知のものなど、有用な添加剤をさらに含むことがある。例えば、その組成物は、紫外線安定剤、充填剤、滑剤、可塑剤、顔料、流動補助剤、難燃剤、または溶媒の1つ以上を有することがある。その組成物が、溶媒を実質的に含まない(すなわち、組成物の最大10質量百万分率(ppm)、1ppmである、最大でも微量)ことが望ましい。任意の特定の添加剤の量は、それから形成される物品の印刷のための特定の性質または特徴を実現するためのどの有用な量であってよい。一般に、添加剤の量は、存在する場合、組成物の最大約50体積%、25体積%、10体積%または5体積%である。流動補助剤は、粉末の流動性を改善するためのどの公知の化合物であってもよく、その例にヒュームドシリカ(例えば、Aerosil 200)がある。
【0054】
本発明の組成物のポリケトンにより、変形したり、望ましくない量の残留応力を有したりしない造形物品を形成できることが分かった。例えば、以下に限られないが、本発明の組成物は、SLS、MJF、HSSまたは電子写真術などの積層製造方法によって、物体に製造されることがある。実例として、SLSにおいて、本発明の組成物の層が、ポリケトン粉末の溶融温度より低い固定温度で床上に堆積されることがあり、その床の所定の(選択された)区域が、上述したようにレーザ制御され、向けられるような加熱源を使用して、互いに焼結(融合)される。次に、複数の層が、連続して堆積されて、その層内と先の層に焼結されて、積層製造された部品を構築する。
【0055】
典型的に、半結晶性熱可塑性高分子を積層製造するための「作業範囲」は、材料が溶融する開始温度と、再結晶化する開始温度(「Tc」)との間の温度差であり、これは、一般に、できるだけ大きい。上述したように、ポリケトンは、迅速に加熱し、その温度(徐冷温度)に短時間保持して、溶融ピーク形状および溶融開始温度を調整することによって、調整されることがある。例えば、そのポリケトンは、作業範囲が、5℃、10℃、または20℃から60℃、50℃、30℃、または25℃など、任意の実現される温度差のどこかであるようにさらに最適化されることがある。
【0056】
本発明の組成物のポリケトン粉末は、良好な三次元印刷適性を示すので、それらの粉末は、粉末の床を、ポリケトンの開始溶融温度より直ぐ下の温度に加熱し、維持する工程を含む粉末積層製造方法で印刷された後に、さらに処理せずに、再利用され、再使用されることがある。所望であれば、再利用される粉末は、所望の印刷適性または部品特性を実現するために、まだ積層製造されていない、ここに記載されたポリケトン粉末のいずれかと混合されてもよい。本発明の組成物を構成する再利用ポリケトンの割合は、組成物の実質的に全て、90質量%、75質量%、50質量%、40質量%または30質量%から、約1質量%、5質量%または10質量%の任意の量であってよい。再利用粉末の熱的特性は、一般に、本発明のポリケトン粉末について造粒され、粉砕されたポリケトンについて先に記載されたようなものである。形態およびサイズ分布は、同様に、ここに記載されたようなものであり、形態は、積層製造物品を形成するために使用される特定の初期ポリケトン粉末の形態に最も似ている。
【0057】
本発明の組成物は、本発明の複数の融合ポリケトンからなる積層製造物品を製造するために使用されることがある。特に、その組成物は、SLS、HSSおよびMJFなど、層内と層間で粒子を融合する粉末層の連続した選択的加熱によって製造される積層製造物品を製造するために使用されることがある。
【実施例
【0058】
実施例1:
ポリケトン粉末を、米国特許第5138032号明細書の第2欄の第52行から第5欄の第17行に記載されたやり方の過程で製造し、溶融押出しして(約240℃)、ポリケトンのペレット(ペレット化されたポリケトン)を形成する。このペレット化されたポリケトンの熱挙動が、図1のDSC曲線に示されている。溶融ピークエンタルピーは40J/gであり、溶融ピーク開始温度は180℃であり、結晶化開始温度は175℃である。
【0059】
10グラムのペレット化されたポリケトンを、かき混ぜながら、130℃から150℃で100mLのN-メチルピロリドン(NMP)に溶かす。NMP中に完全に溶解した際に、温度をほぼ130℃に低下させる。粘度は相当増加しており、所望であれば、溶液をさらに冷却して、ゲルを形成してもよい。溶液の温度が約130℃に到達すると、この溶液に室温のDI(脱イオン)水を加えて、溶液からポリケトンを沈殿させて、濃厚スラリーを形成する。さらなる沈殿が観察されなくなるまで、水を加える。沈殿した粉末を溶媒から真空濾過し、さらに水で洗浄して、残りのNMPを除去する。乾燥した沈殿粉末を空気中において110℃で乾燥させる。得られた粉末の熱挙動が、図2示されている。図2から、沈殿粉末は、出発ポリケトンよりも高いエンタルピー溶融ピークを有し、エンタルピーピークと結晶化ピークの開始温度は重複しないことが明白である。これも図2から、10℃/分の加熱速度で二回目に加熱し、約2分間250℃の温度で保持した際に、ポリケトンは、実質的に減少した溶融ピークエンタルピーを有することが示されている。
【0060】
実施例2:
沈殿が終わるまで、非溶媒の水を約95℃の温度で導入することを除いて、実施例1を繰り返す。図3は、この実施例のポリケトンのDSCであり、これは、175ジュール/グラムより大きい溶融ピークエンタルピーを示し、溶融ピークと結晶化ピークの開始温度が重複しないことを示す。二回目に加熱した際に、溶融ピークは、一桁以上低下している。図4は、この方法により形成され、次いで、積層製造に有用な粉末を製造するために必要に応じて後ですり潰すことのできる多孔質ポリケトン粒子の光学顕微鏡写真である。
【0061】
図5は、異なる加熱温度に曝されたポリケトンの動的機械分析の結果を示している。この図から、ポリケトンは溶融温度より低くても架橋し、この方法により、架橋を導入せずに、ポリケトンへの加熱の影響なく、積層製造に有用なポリケトンを製造できるのが容易に明白である。記載された温度は、高分子の流れや溶融を表し、一方で、そのような温度がないことは、架橋高分子を表す。温度の上昇は、架橋の増加を表す。
【0062】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0063】
実施形態1
10℃/分の加熱速度を使用した示差走査熱量測定(DSC)により決定される、少なくとも50ジュール/グラムの溶融ピークエンタルピーを有する溶融ピークを有する半結晶性ポリケトン粉末を含む組成物。
【0064】
実施形態2
前記組成物が、最大300マイクロメートルのD 90 粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する、実施形態1に記載の組成物。
【0065】
実施形態3
前記半結晶性ポリケトン粉末の粒子の数で少なくとも80%が、少なくとも約0.8の真円度を有する、実施形態1または2に記載の組成物。
【0066】
実施形態4
前記ポリケトンが:
【0067】
【化3】
【0068】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から10,000である、実施形態1から3いずれか1つに記載の組成物。
【0069】
実施形態5
前記半結晶性ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、実施形態4に記載の組成物。
【0070】
実施形態6
前記他のアルケン単量体がプロピレンである、実施形態5に記載の組成物。
【0071】
実施形態7
前記溶融ピークおよび再結晶化ピークが重複しない、実施形態1に記載の組成物。
【0072】
実施形態8
前記溶融ピークが、少なくとも10℃隔てられた溶融ピーク開始温度および再結晶化ピーク開始温度を有する、実施形態7に記載の組成物。
【0073】
実施形態9
前記半結晶性ポリケトン粉末が、少なくとも約15体積%の結晶化度を有する、実施形態7または8に記載の組成物。
【0074】
実施形態10
前記半結晶性ポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD 90 粒径、(ii)少なくとも10μmのD 10 、および(iii)約20μmから約150μmの平均粒径を有する、実施形態7から9いずれか1つに記載の組成物。
【0075】
実施形態11
前記溶融ピークが、少なくとも75ジュール/グラムの溶融エンタルピーを有する、実施形態7から10いずれか1つに記載の組成物。
【0076】
実施形態12
前記溶融エンタルピーが少なくとも100ジュール/グラムである、実施形態1から6および11いずれか1つに記載の組成物。
【0077】
実施形態13
積層製造物品を製造するのに有用なポリケトン粉末を形成する方法において、
(i)溶媒に溶融開始温度を有する初期ポリケトンを、50℃より高く、該初期ポリケトンの該溶融開始温度より低い温度で溶かして、溶解ポリケトンを含む溶液を形成する工程、
(ii)前記溶液の冷却、該溶液への非溶媒の添加、またはその組合せによって、前記溶解ポリケトンを沈殿させて、半結晶性ポリケトン粉末を形成する工程、および
(iii)前記溶媒から前記半結晶性ポリケトン粉末を分離する工程、
を含む方法。
【0078】
実施形態14
前記ポリケトン粉末を粉砕して、粉砕されたポリケトン粉末を形成する工程をさらに含む、実施形態13に記載の方法。
【0079】
実施形態15
工程(iii)の前記半結晶性ポリケトン粉末を、半結晶性ポリケトンの溶融開始温度の20%以内の温度に加熱して、熱処理されたポリケトンを形成する工程をさらに含む、実施形態13または14に記載の方法。
【0080】
実施形態16
前記半結晶性ポリケトンが、少なくとも75ジュール/グラムの溶融ピークエンタルピーを有する、実施形態15に記載の方法。
【0081】
実施形態17
前記溶融ピークエンタルピーが少なくとも100ジュール/グラムである、実施形態16に記載の方法。
【0082】
実施形態18
前記粉砕されたポリケトン粉末が、(i)約150μm未満のD 90 粒径、(ii)少なくとも10μmのD 10 、(iii)約20μmから約150μmの平均粒径を有し、(iv)該粉砕されたポリケトン粉末の数で少なくとも80%が、少なくとも約0.8の真円度を有する、実施形態14に記載の方法。
【0083】
実施形態19
前記結晶化度を増加させるための条件が、該結晶化度を増加させて、結晶化度が増加したポリケトンを形成するある時間に亘り、前記ポリケトン粉末のいずれか1つを、50℃から、DSCで決定される前記溶融ピーク開始温度より低い温度で熱処理することからなる、実施形態16に記載の方法。
【0084】
実施形態20
前記溶かす工程が、100℃から150℃の温度で行われる、実施形態13から19いずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態21
前記沈殿させる工程が、水からなる非溶媒を添加することによって行われる、実施形態13から20いずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態22
前記沈殿させる工程が、75℃から130℃の温度で行われる、実施形態21に記載の方法。
【0087】
実施形態23
前記沈殿させる工程が、80℃から100℃未満の温度で行われる、実施形態22に記載の方法。
【0088】
実施形態24
前記初期ポリケトンが、各々重複しない開始温度を有する、単峰性の溶融ピークおよび結晶化ピークを有する、実施形態13から22いずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態25
前記非溶媒が水である、実施形態21から24いずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態26
前記溶媒が極性非プロトン性溶媒である、実施形態21から25いずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態27
前記溶媒が、15から50の誘電率を有する、実施形態26に記載の方法。
【0092】
実施形態28
前記溶媒が、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート(PGMEA)、およびジメチルホルムアミドからなる群より選択される、実施形態25に記載の方法。

【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10℃/分の加熱速度を使用した示差走査熱量測定(DSC)により決定される、少なくとも50ジュール/グラムの溶融ピークエンタルピーを有する溶融ピークを有する半結晶性脂肪族ポリケトン粉末を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物が、最大300マイクロメートルのD90粒径および1マイクロメートルから150マイクロメートルの等価球直径の平均粒径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記半結晶性脂肪族ポリケトンが:
【化1】
で表される繰り返し単位からなり、式中、Aは、飽和炭化水素基に転化されるアルケン単量体の残基であり、mは約1から6であり、nは少なくとも約2から10,000である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記半結晶性脂肪族ポリケトン粉末が、エチレン、一酸化炭素、および少なくとも1種類の他のアルケン単量体の共重合体である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記他のアルケン単量体がプロピレンである、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記溶融ピークおよび再結晶化ピークが重複しない、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記溶融ピークが、少なくとも10℃隔てられた溶融ピーク開始温度および再結晶化ピーク開始温度を有する、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記半結晶性脂肪族ポリケトン粉末が、少なくとも約15体積%の結晶化度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記溶融ピークが、少なくとも75ジュール/グラムの溶融エンタルピーを有する、請求項1から8いずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
積層製造物品を製造するのに有用な脂肪族ポリケトン粉末を形成する方法において、
(i)溶媒に溶融開始温度を有する初期脂肪族ポリケトンを、50℃より高く、該初期脂肪族ポリケトンの該溶融開始温度より低い温度で溶かして、溶解脂肪族ポリケトンを含む溶液を形成する工程、
(ii)前記溶液の冷却、該溶液への非溶媒の添加、またはその組合せによって、前記溶解脂肪族ポリケトンを沈殿させて、半結晶性脂肪族ポリケトン粉末を形成する工程、および
(iii)前記溶媒から前記半結晶性脂肪族ポリケトン粉末を分離する工程、
を含む方法。
【請求項11】
工程(iii)の前記半結晶性脂肪族ポリケトン粉末を、半結晶性脂肪族ポリケトンの溶融開始温度の20%以内の温度に加熱して、熱処理された半結晶性脂肪族ポリケトンを形成する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記溶かす工程が、100℃から150℃の温度で行われ、前記沈殿させる工程が、75℃から130℃の温度で行われる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記沈殿させる工程が、水からなる非溶媒を添加することによって行われ、前記溶媒が、15から50の誘電率を有する極性非プロトン性溶媒である、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記初期脂肪族ポリケトンが、各々重複しない開始温度を有する、単峰性の溶融ピークおよび結晶化ピークを有する、請求項10から13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒が、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート(PGMEA)、およびジメチルホルムアミドからなる群より選択される、請求項13記載の方法。
【国際調査報告】