(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】デンドリマー-グルタミンアンタゴニストコンジュゲートおよびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/655 20060101AFI20240514BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240514BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20240514BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20240514BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240514BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240514BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240514BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240514BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240514BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240514BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240514BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240514BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240514BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240514BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240514BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240514BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240514BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240514BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240514BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20240514BHJP
C07K 5/06 20060101ALI20240514BHJP
C07F 9/24 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61K31/655
A61K9/14
A61K9/50
A61K47/59
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/48
A61P25/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P25/28
A61P25/22
A61P9/10
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P29/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P5/14
A61K35/17
A61K39/00 H
A61K38/05
A61K38/06
C07K5/06
C07F9/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562806
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022024752
(87)【国際公開番号】W WO2022221490
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】523384997
【氏名又は名称】インスティチュート オブ オーガニック ケミストリー アンド バイオケミストリー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ベル, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ライス, ラナ
(72)【発明者】
【氏名】ランガラマヌジャム, カナン
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ, アンジャリ
(72)【発明者】
【氏名】スラッシャー, バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】塚本 尚
(72)【発明者】
【氏名】ガオ, ルン-ドゥオ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー, パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】ノヴォトナ, カテリーナ
(72)【発明者】
【氏名】テノラ, ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ハジマ, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】カイザー, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ティヒ, トマス
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, シャオレイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
4H050
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA30
4C076AA53
4C076AA64
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE26
4C076EE26A
4C076EE59
4C076EE59A
4C076FF01
4C076FF11
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA15
4C084BA23
4C084BA37
4C084CA59
4C084DC50
4C084NA05
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA051
4C084ZA052
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC061
4C084ZC062
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC751
4C085AA03
4C085BB01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA30
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
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4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA36
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZC06
4C086ZC20
4C086ZC35
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA05
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZA36
4C087ZA68
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZC06
4C087ZC20
4C087ZC35
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA11
4H045EA20
4H045FA33
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】
好ましくは活性化ミクログリアにおいて、グルタミン代謝を阻害する1つまたは複数のグルタミンアンタゴニストとコンジュゲートされているデンドリマーの組成物、および病原性または調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達と関連する1つまたは複数の神経学的、腫瘍学的、および/または免疫障害を処置、緩和、および/または予防するためにそれらを使用する方法が開発されている。1つまたは複数のグルタミンアンタゴニストとコンジュゲートされているデンドリマーは、全身毒性を一切伴わずにグルタミナーゼ活性を有効に阻害する。1つまたは複数のグルタミンアンタゴニストとコンジュゲートされているデンドリマーは、損傷したまたは罹患した細胞および組織と関連する活性化ミクログリアにおいて蓄積される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
「AA」はアミノ酸を指す、以下:
【化16】
式中、R
1は、-OCH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2-OC(CH
3)
3、-NH
2、NHCH
3、-NH-AA-COOCH(CH
3)
2、および-NH-AA-COOC(CH
3)
3から選択され;
R
2は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2(インドール-3-イル)、および-CH
2CH
2C(=O)CH=N≡Nから選択され;
R
3は、-NH
2および-OHから選択され;
nは、1から32の整数値である、式A
【化17】
式中、R
1は、-OCH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2-OC(CH
3)
3、-NH
2、NHCH
3、-NH-AA-COOCH(CH
3)
2、および-NH-AA-COOC(CH
3)
3から選択され;
R
3は、-NH
2および-OHから選択され;
nは、1から16の整数値である、式B
【化18】
式中、R
2は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2(インドール-3-イル)、または-CH
2CH
2C(=O)CH=N≡Nから選択され;
R
4は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、または-CH
2CH(CH
3)
2から選択され;
R
5は、-H、-Ac、-Fmoc、ジメチルグリシン、Ac-AA-C(=O)-、ジメチルグリシン-NH-AA-C(=O)-、ジメチルグリシン-NH-DON-C(=O)-、またはC
8H
17O-C(=O)CH(NH
2)CH
2CH
2C(=O)-NH-6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン-C(=O)-から選択され;
nは、1から32の整数値である、式C
の3つの一般化学式のうちの1つを有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログと複合体化された、共有結合によりコンジュゲートされた、または分子内分散した、もしくはカプセル化されたデンドリマーを含む組成物。
【請求項2】
前記DONアナログが、
【化19-1】
【化19-2】
【化19-3】
【化19-4】
からなる群より選択される構造を有する化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記デンドリマーが、第4世代、第5世代、第6世代、第7世代、または第8世代のデンドリマーである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記デンドリマーが、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記デンドリマーが、ヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記デンドリマーが、第4世代、第5世代、または第6世代のヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記デンドリマーが、必要に応じてリンカーまたはスペーサー部分を介して、1つまたは複数の前記DONアナログに共有結合によりコンジュゲートされている、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記デンドリマーが、1つまたは複数の治療剤、予防剤、または診断剤とさらに複合体化またはコンジュゲートされている、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記デンドリマーが、1つまたは複数の神経保護剤、抗炎症剤、および/または化学療法剤とさらに複合体化またはコンジュゲートされている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
非経口投与または経口投与用に製剤化されている、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ヒドロゲル、ナノ粒子またはマイクロ粒子、懸濁物、粉末、錠剤、カプセル剤、および溶液からなる群より選択される形態で製剤化されている、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数を処置することを必要とする対象における神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数を処置するための方法であって、前記神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数と関連する1つまたは複数の症状を処置、緩和、および/または予防するために、有効量の請求項1から12のいずれかに記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記組成物が、神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数の罹患または損傷した組織と関連する1つまたは複数の標的細胞において、グルタミナーゼ活性を低下させるおよび/またはグルタメート放出を減少させるために有効な量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数の罹患または損傷した組織と関連する活性化ミクログリアにおいて、グルタミナーゼ活性を低下させるおよび/またはグルタメート放出を減少させるために有効な量で投与される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記神経学的障害が、ストレス誘発性気分障害、認知欠損、虚血、神経炎症、アルツハイマー病、および多発性硬化症からなる群より選択される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、神経炎症の減少、認知の改善、またはこれらの組合せに有効な量で投与される、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍学的障害が、乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、精巣胚細胞腫瘍、脳がん、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、および膵臓がんからなる群より選択される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、腫瘍サイズを減少させるのに有効な量で投与される、請求項13から15または18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
免疫チェックポイントモジュレーター、化学療法剤、抗感染症剤、養子T細胞療法、がんワクチン、外科手術、および放射線療法からなる群より選択される1つまたは複数を前記対象に投与することをさらに含む、請求項13から15、18、および19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫チェックポイントモジュレーターが、PD-1アンタゴニスト、PD-1リガンドアンタゴニスト、およびCTLA4アンタゴニストからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫障害が、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患、および甲状腺疾患からなる群より選択される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
対象の罹患または損傷した組織と関連する活性化ミクログリアにおいてグルタミナーゼ活性を阻害するための方法であって、有効量の請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に全身投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記組成物が経口的にまたは非経口的に投与される、請求項13から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が静脈内投与される、請求項13から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
以下:
【化20-1】
【化20-2】
【化20-3】
【化20-4】
からなる群より選択される構造を有する分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月14日に出願された米国仮特許出願第63/174,878号の優先権および利益を主張し、この米国仮出願は、本明細書によってその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に、薬物送達の分野におけるものであり、特に、それを必要とする罹患し損傷した細胞および組織の部位または領域内への選択的な取り込みのための、デンドリマーを介して結合したグルタミンアンタゴニストである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
広範に活性なグルタミンアンタゴニストの6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)は、潜在的な抗がん治療薬として60年間にわたって研究されてきた。研究では、DONが、脳がんの処置を含む、堅固な抗がん潜在能を有することが示されている。DONは、活性化ミクログリアからのグルタメート放出をブロックし、活性化免疫細胞におけるグルタメート産生を正常化し、神経炎症および興奮毒性が関与する神経学的、精神神経学的、および免疫障害における広範な治療的有用性を提供できることも実証されている。
【0004】
DONの治療的潜在能にもかかわらず、大部分が消化管(GI)関連であるその全身毒性に起因して臨床開発は行われていない。標的組織へのDONの適切な治療濃度を得るために末梢投与用量は多くなければならず、耐えがたいGI副作用が引き起こされる。したがって、DONと類似の生物学的活性および治療的潜在能を有するが、全身毒性が減少されたかまたは最小限である新規のグルタミンアンタゴニストが必要とされている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達と関連する病理学的プロセスを減少させ予防するための組成物、ならびにそれを作製する方法および使用する方法を提供することである。
【0006】
本発明の目的はまた、調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達が病原性であると推定される、さまざまなCNS、腫瘍学的、および免疫障害を処置または予防するための組成物を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログの組成物が開発されている。
【0008】
一部の他の例では、DONアナログは、「AA」がアミノ酸を指す、以下:
【化1】
式中、R
1は、-OCH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2-OC(CH
3)
3、-NH
2、NHCH
3、-NH-AA-COOCH(CH
3)
2、および-NH-AA-COOC(CH
3)
3から選択され;
R
2は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2(インドール-3-イル)、および-CH
2CH
2C(=O)CH=N≡Nから選択され;
R
3は、-NH
2および-OHから選択され;
nは、1から32の整数値である、式A
【化2】
式中、R
1は、-OCH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2-OC(CH
3)
3、-NH
2、NHCH
3、-NH-AA-COOCH(CH
3)
2、および-NH-AA-COOC(CH
3)
3から選択され;
R
3は、-NH
2および-OHから選択され;
nは、1から16の整数値である、式B
【化3】
式中、R
2は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2(インドール-3-イル)、または-CH
2CH
2C(=O)CH=N≡Nから選択され;
R
4は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、または-CH
2CH(CH
3)
2から選択され;
R
5は、-H、-Ac、-Fmoc、ジメチルグリシン、Ac-AA-C(=O)-、ジメチルグリシン-NH-AA-C(=O)-、ジメチルグリシン-NH-DON-C(=O)-、またはC
8H
17O-C(=O)CH(NH
2)CH
2CH
2C(=O)-NH-6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン-C(=O)-から選択され;
nは、1から32の整数値である、式C
の3つの一般化学式のうちの1つを有するものが使用される。
【0009】
DONアナログとしては、構造I~Xのうちのいずれか1つの構造を有する分子が挙げられる:
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
【化4-5】
【0010】
1つまたは複数のDONアナログにコンジュゲートされているデンドリマーの組成物も記載する。構造I~Xまたは一般式A~Cのうちのいずれかを有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログと複合体化された、共有結合によりコンジュゲートされた、または分子内分散した、もしくはカプセル化されたデンドリマーを含む組成物が提供される。
【0011】
例示的なデンドリマーは、第4世代、第5世代、第6世代、第7世代、または第8世代のデンドリマーである。一部の実施形態では、デンドリマーは、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマー、例えば、ヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーである。好ましい実施形態では、デンドリマーは、第4世代、第5世代、または第6世代のヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーである。
【0012】
一部の実施形態では、デンドリマーは、必要に応じてリンカーまたはスペーサー部分を介して、1つまたは複数のDONアナログに共有結合によりコンジュゲートされている。一部の実施形態では、デンドリマーは、1つまたは複数の治療剤、予防剤、または診断剤とさらに複合体化またはコンジュゲートされている。例示的な治療剤としては、神経保護剤、抗炎症剤、および/または化学療法剤が挙げられる。
【0013】
構造I~XIIまたは式A~Cのうちのいずれかを有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログと複合体化された、共有結合によりコンジュゲートされた、または分子内分散した、もしくはカプセル化されたデンドリマーと、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供される。
【0014】
医薬組成物は非経口投与または経口投与用に製剤化されており、例えば、ヒドロゲル、ナノ粒子またはマイクロ粒子、懸濁物、粉末、錠剤、カプセル剤、および溶液の形態で製剤化されている。
【0015】
神経学的、腫瘍学的、および/または免疫障害のうちの1つまたは複数を処置することを必要とする対象における神経学的、腫瘍学的、および/または免疫障害のうちの1つまたは複数を処置するための方法は、神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数と関連する1つまたは複数の症状を処置、緩和、および/または予防するために、構造I~XIIまたは一般式A~Cのうちのいずれかを有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログと複合体化された、共有結合によりコンジュゲートされた、または分子内分散した、もしくはカプセル化された有効量のデンドリマーを対象に投与することを含む。好ましくは、組成物は、神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数の罹患または損傷した組織において、グルタミナーゼ活性を低下させるために有効な量で投与される。例えば、一部の実施形態では、組成物は、神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数の罹患および/または損傷した組織と関連する活性化ミクログリアにおいて、グルタミナーゼ活性を低下させるために有効な量で投与される。これらのDONアナログで処置され得る例示的な神経学的障害としては、ストレス誘発性気分障害、認知欠損、虚血、神経炎症、アルツハイマー病、および多発性硬化症が挙げられる。一実施形態では、疾患または障害は、抑うつなどのストレス誘発性気分障害である。一部の実施形態では、組成物は、神経炎症の減少、認知の改善、またはこれらの組合せに有効な量で投与される。方法により処置され得る例示的な腫瘍学的障害としては、乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、精巣胚細胞腫瘍、脳がん、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、腎細胞がん、結腸直腸がん、および膵臓がんが挙げられる。一部の実施形態では、組成物は、腫瘍サイズを減少させるのに有効な量で投与される。方法により処置され得る例示的な免疫障害としては、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患、および甲状腺疾患が挙げられる。さらなる実施形態では、組成物は、免疫チェックポイントモジュレーター、化学療法剤、抗感染症剤、養子T細胞療法、がんワクチン、外科手術、および放射線療法の1つまたは複数と一緒に対象に投与される。例示的な免疫チェックポイントモジュレーターとして、PD-1アンタゴニスト、PD-1リガンドアンタゴニスト、およびCTLA4アンタゴニストが挙げられる。
【0016】
構造I~Xまたは式A~Cのいずれかを有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログを作製するための方法およびデンドリマーにコンジュゲートさせる方法も記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【0018】
【0019】
【
図3】
図3は、化合物IIIの合成の概略図である。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【
図7】
図7は、化合物VIIの合成の概略図である。
【0024】
【
図8】
図8は、化合物VIIIの合成の概略図である。
【0025】
【
図9】
図9は、化合物IXおよびXの合成の概略図である。
【0026】
【0027】
【
図11】
図11は、化合物XIIに関する合成スキームを示すスキームである。
【0028】
【
図12】
図12は、デンドリマー-グルタミンアンタゴニストコンジュゲートに関する一般的な合成経路の概略図である。
【0029】
【
図13】
図13は、マウスを使用した実験設定を示す概略図である。マウスには、その右線条体中にLPS(2.5mg/kg)を頭蓋内注射した。3時間後、デンドリマー-TTM020または空のデンドリマーを、DON当量で2mg/kgの用量でI.P.投与した。24および72時間後、マウスを屠殺し、右半球を取り出し、グルタミナーゼ活性測定のために、CD11b細胞を抽出した。
【0030】
【
図14】
図14は、TTM020にコンジュゲートされているデンドリマーの化学構造を示す概略図である。
【0031】
【
図15】
図15は、対照マウス、薬物処置してか24時間および72時間後の、それぞれ非コンジュゲートデンドリマー(D-EMPTY)またはDONアナログTTM020コンジュゲートデンドリマー(D-DON)で処置されたマウスのそれぞれにおいて、fmol/mg/時間で測定されたグルタミナーゼ活性を示す棒グラフである。
【0032】
【
図16】
図16は、齧歯類腫瘍接種9L神経膠肉腫モデルにおける脳の対側、腫瘍周囲および腫瘍領域でのデンドリマー-Cy5(AUC)の取り込みを示す棒グラフである。n=6。
【0033】
【
図17】
図17は、リンカーを介してDONアナログにコンジュゲートされているデンドリマーの化学構造を示す概略図である。
【0034】
【
図18】
図18Aおよび
図18Bは、C57BL/6マウスにおけるGBMのGL261ネズミモデルでの、非処置対照群、それぞれ非コンジュゲートDON(遊離DON)で処置されたマウスおよびデンドリマーKMN-045コンジュゲート(D-045)で処置されたマウスそれぞれにおける、腫瘍質量(
図18A)、および脳質量のパーセンテージとしての腫瘍負荷(
図18B)を示す棒グラフである。
【0035】
【
図19】
図19は、脳ホモジネート中のデンドリマーKMN-045コンジュゲートのin vitro安定性に関する経時的なDON放出%を示す棒グラフである。
【0036】
【
図20A】
図20Aは、60分にわたる腫瘍ホモジネート中のDON(μM)の放出を示す線グラフである。
【
図20B】
図20Bは、D-DON(TTM020)またはビヒクルで処置した場合の、同系EL4リンパ腫モデルにおける14日にわたるmm
3単位での腫瘍体積の抑制を示す線グラフである。
【
図20C】
図20Cは、D-DON(TTM020)またはビヒクルで処置した場合の、14日間にわたる体重変化のパーセントを示す線グラフである。
【0037】
【
図21】
図21は、ビヒクルで処置された対照マウス(Ctr+ビヒクル)、ビヒクルで処置されたCSDSマウス(CSDS+ビヒクル)、およびD-TTM020で処置されたCSDSマウス(CSDS+D-TTM020)を含む3つの実験群におけるグルタミナーゼ活性(fmol/mg/時間)を示す棒グラフである。
**p<0.01、Ctr+ビヒクルとCSDS+ビヒクルとの間の比較。
##p<0.01、CSDS+ビヒクルとCSDS+D-TTM020との間の比較。一元配置ANOVAによって分析、Tukeyの事後検定。条件あたりn=5。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
I.定義
「活性剤」または「生物学的薬剤」という用語は、予防的、治療的または診断的であってもよい所望の薬理学的および/または生理学的効果を誘発する治療用、予防用または診断用の化学的または生物学的化合物を指す。これらは、核酸、核酸アナログ、2kD未満、より典型的には1kD未満の分子量を有する小分子、ペプチド模倣体、タンパク質もしくはペプチド、炭水化物もしくは糖、脂質、またはこれらの組合せであってもよい。これらの用語はまた、これらに限定されないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、およびアナログを含む薬剤の薬学的に許容され薬理学的に活性な誘導体を包含する。
【0039】
「治療剤」という用語は、疾患または障害の1つまたは複数の症状を処置するために投与することができる薬剤を指す。
【0040】
「診断用薬剤」という用語は、病理学的プロセスの局在を示し、特定し、明らかにするために投与することができる薬剤を一般的に指す。診断用薬剤は、標的細胞を標識することができ、これらの標識された標的細胞のその後の検出またはイメージングを可能にすることができる。一部の実施形態では、診断用薬剤は、デンドリマーまたは好適な送達ビヒクルを介して中枢神経系(CNS)における活性化ミクログリアを標的とする/それと結合することができる。
【0041】
「予防用薬剤」という用語は、疾患またはその症状を予防するためにまたはある特定の状態を予防するために投与することができる薬剤、例えばワクチンを一般的に指す。
【0042】
「アナログ」という用語は、別の(参照化合物)のものと類似した構造を有するが、特定の構成成分、官能基、原子などに関してそれとは異なる化学化合物を指す。「6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログ」または「DONアナログ」という用語は、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシンのものと類似しているが若干異なる構造を有する化学的化合物を指す。例示的なDONアナログとしては、構造I~Xまたは一般式A~Cに包含される化合物のうちのいずれかが挙げられる。
【0043】
「誘導体」という用語は、1つまたは複数の化学反応によって親化合物から形成された化合物を指す。
【0044】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10個の炭素原子を含む、1から10個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐の飽和炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」または「C1~C6-アルキル」という用語は、1、2、3、4、5、および6個の炭素原子を含む、1から6個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐鎖炭化水素を意味する。「C1~C3-アルキル」という用語は、1、2、および3個の炭素原子を含む、1から3個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐鎖の炭化水素を意味する。アルキルの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルが挙げられる。
【0045】
「アルキレニル」という用語は、本明細書で使用される場合、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50個を含む、1から50個の炭素原子、例えば、1、2、3、4、および5個の炭素原子を含む、1から5個の炭素原子の直鎖状または分岐鎖の炭化水素由来の二価の基を指す。アルキレニルの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、および-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-が挙げられる。
【0046】
「アルケニレニル」という用語は、本明細書で使用される場合、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50個の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素-炭素結合が二重結合である、2から50個の炭素原子の直鎖状または分岐鎖の炭化水素由来の二価の基を指す。アルケニレニルの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、-CH=CH-、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH-CH2-、および-CH2CH2-CH=CH-CH2-が挙げられる。
【0047】
「アルキニレニル」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの炭素-炭素結合が三重結合である、2から50個の炭素原子、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50個の炭素原子の直鎖状または分岐鎖の炭化水素由来の二価の基を指す。アルキニレニルの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、-C≡C-、-C≡C-CH2-、-C≡C-CH2-CH2-および-CH2-C≡C-CH2-がある。
【0048】
「アルコキシル」または「アルコキシ」、「アロキシ」または「アリールオキシ」という用語は、一般的に、式-ORvによって表される化合物を記載しており、式中、Rvとしては、これらに限定されるものではないが、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換シクロアルケニル、置換または非置換ヘテロシクロアルケニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ポリアリール、置換または非置換ポリヘテロアリール、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換アルキルアリール、置換または非置換アルキルヘテロアリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換カルボニル、糖基、ホスホニウム、ホスファニル、ホスホニル、スルフィニル、シリル、チオール、アミド、およびアミノが挙げられる。例示的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。低級アルコキシ基は、1から6個の炭素原子を含有するアルコキシ基である。エーテルは、以下で定義されるような酸素によって共有結合された2つの官能基である。したがって、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、アルコキシルであるかまたはそれと類似しており、例えば、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O-アリール、-O-ヘテロアリール、-O-ポリアリール、-O-ポリヘテロアリール、-O-ヘテロシクリル等のうちの1つで表すことができる。
【0049】
「カルボニル」という用語は、本明細書で使用される場合、一般式:
【化5】
によって表され、
式中、Xは結合であるか、または酸素もしくは硫黄を表し、Rは、水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、置換もしくは非置換カルボニル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アラルキル(例えば、置換または非置換アルキルアリール、置換または非置換アリールアルキル)、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ポリアリール、置換もしくは非置換ポリヘテロアリール、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、ヒドロキシル、アルコキシ、ホスホニル、アミド、アミノ、または-(CH
2)
m-R”を表し;E”は存在しないか、またはE”は、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換アラルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ポリアリール、置換または非置換ポリヘテロアリール、置換または非置換ヘテロシクリルであり;R’は、水素、置換または非置換アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換アルキニル、置換もしくは非置換カルボニル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アラルキル(例えば、置換または非置換アルキルアリール、置換または非置換アリールアルキル)、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ポリアリール、置換もしくは非置換ポリヘテロアリール、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、ヒドロキシル、アルコキシ、ホスホニル、アミド、アミノ、または-(CH
2)
m-R”を表し;R”は、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換カルボニル基、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルケニル、置換もしくは非置換ヘテロシクリル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換ポリアリール、置換もしくは非置換ポリヘテロアリール、アルコキシ、ホスホニル、アミド、またはアミノを表し;mは0または1から8の範囲の整数である。Xが酸素であり、Rが上記のように定義される場合、その部分はカルボキシル基とも称される。Xが酸素であり、Rが水素である場合、式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R’が水素である場合、式は「ホルメート」を表す。Xが酸素であり、RまたはR’が水素ではない場合、式は「エステル」を表す。Xが結合であり、Rが水素ではない場合、上記の式は「ケトン」を表す。Xが結合であり、Rが水素である場合、上記の式は「アルデヒド」を表す。
【0050】
「ホスホリル」という用語は、本明細書で使用される場合、一般式:
【化6】
によって表され、
式中、Eは存在しないか、酸素、置換もしくは非置換アルコキシ、または置換もしくは非置換アロキシであり、Eとは独立して、R
viおよびR
viiは独立して、上記で定義された、ヒドロキシル、置換もしくは非置換アルコキシ、または置換もしくは非置換アロキシである。E、R
viおよびR
viiが置換されている場合、置換基としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン、アジド、アゾ、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、シリル、エーテル、エステル、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、アミノ(例えば四級化アミノ)、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルホニル、ヘテロシクリル、アルキルアリール、ハロアルキル、-CN、アリール、ヘテロアリール、ポリアリール、ポリヘテロアリール、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0051】
「置換された」は、本明細書で使用される場合、本明細書において記載される化合物または官能基の全ての許容される置換基を指す。最も広い意味で、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。例示の置換基としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン、ヒドロキシル基、または任意の数の炭素原子、好ましくは1~14個の炭素原子を含有し、1つまたは複数のヘテロ原子、例えば、直鎖状、分岐、または環式の構造形式の、酸素、硫黄、または窒素の集団(grouping)を必要に応じて含む任意の他の有機集団が挙げられる。代表的な置換基としては、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換フェニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ポリアリール、置換または非置換ポリヘテロアリール、置換または非置換アラルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、フェノキシ、アロキシ、シリル、チオール、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、アリールチオ、シアノ、イソシアノ、ニトロ、置換または非置換カルボニル、カルボキシル、アミノ、アミド、アゾ、オキソ、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、ホスホニウム、ホスファニル、ホスホリル、ホスホニル、アミノ酸、ポリマー、ペプチド、および糖基が挙げられる。このような置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換フェニル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換ポリアリール、置換または非置換ポリヘテロアリール、置換または非置換アラルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、フェノキシ、アロキシ、シリル、チオール、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、アリールチオ、シアノ、イソシアノ、ニトロ、置換または非置換カルボニル、カルボキシル、アミノ、アミド、オキソ、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、ホスホニウム、ホスファニル、ホスホリル、ホスホニル、アミノ酸、ポリマー、ペプチド、および糖基はさらに置換されていてもよい。
【0052】
「独立して選択される」という用語が使用される場合、言及される置換基(例えば、R基、例えば、R1基、R2基など、または変数、例えば、「m」および「n」)は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、R1とR2の両方が置換アルキルであってもよく、またはR1は水素であってもよく、R2は置換アルキルであってもよい、および同類のものであってもよい。
【0053】
本開示の化合物の説明は、当業者であれば公知の化学結合の原理によって限定される。したがって、基が、いくつかの置換基のうちの1つまたは複数で置換され得る場合、このような置換は、周囲条件、例えば、水性、中性、およびいくつかの公知の生理学的条件下で不安定である可能性が高いため、化学結合の原理に従い、本質的に不安定ではなく、および/または当業者であれば公知であろう化合物が得られるように選択される。例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールは、当業者であれば公知の化学結合の原理に従って、環ヘテロ原子を介して分子の残りに結合され、それにより、本質的に不安定な化合物が回避される。
【0054】
「薬学的に許容される」または「生体適合性」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織との接触において使用するのに好適であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、妥当な利益/リスク比率に見合った組成物、ポリマー、および他の材料ならびに/または投薬形態を指す。「薬学的に許容される担体」という句は、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクル、例えば、任意の対象組成物を、1つの臓器または身体の一部から別の臓器または身体の一部へ運ぶまたは輸送することに関与する液体または固体フィラー、希釈剤、溶媒、またはカプセル化材料を指す。各担体は、対象組成物の他の成分と適合性であり、患者に対して有害ではないという意味で「許容され」なければならない。
【0055】
「薬学的に許容される塩」という用語は当技術分野において認識されており、化合物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩を含む。薬学的に許容される塩の例としては、無機酸、例えば、塩酸および硫酸由来のもの、ならびに有機酸、例えば、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸由来のものが挙げられる。塩を形成するのに好適な無機塩基の例としては、アンモニア、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、および亜鉛の水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩がある。塩はまた、非毒性であり、このような塩を形成するのに十分強力なものを含む好適な有機塩基と形成してもよい。例示の目的で、このような有機塩基のクラスとしては、モノ-、ジ-、およびトリアルキルアミン、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、およびトリエチルアミン;モノ-、ジ-またはトリヒドロキシアルキルアミン、例えば、モノ-、ジ-、およびトリエタノールアミン;アミノ酸、例えば、アルギニンおよびリシン;グアニジン;N-メチルグルコサミン;N-メチルグルカミン;L-グルタミン;N-メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;およびN-ベンジルフェネチルアミンがあり得る。
【0056】
「生分解性」という用語は、生理学的状態下で、対象により代謝、除去、または排泄することができるより小さな単位または化学種に分解または浸食されるであろう材料を一般的に指す。分解時間は、組成および形態の関数である。
【0057】
「治療有効量」という用語は、デンドリマー中および/またはその上に組み込まれた場合、任意の医療処置に適用可能な妥当な利益/リスク比率で何らかの所望の効果をもたらす治療剤の量を指す。有効量は、処置される疾患もしくは状態、投与される特定の標的構築物、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重症度のような因子によって変わる場合がある。当業者であれば、過度の実験を必要とすることなく特定の化合物の有効量を経験的に決定してもよい。一部の実施形態では、「有効量」という用語は、1つまたは複数の疾患または障害の症状を減少または低減させる、例えば、腫瘍サイズ(例えば、腫瘍体積)を減少させるか、または自己免疫疾患の1つもしくは複数の症状、例えば、関節リウマチなどを有する患者における手首および手足の小関節における疼痛および腫脹を減少させるもしくは小さくするための治療剤または予防剤の量を指す。がんまたは腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞の数を減少させる;腫瘍サイズを減少させる;末梢臓器へのがん細胞の浸潤を阻害する;腫瘍転移を阻害する;腫瘍成長を阻害する;および/または障害と関連する症状のうちの1つもしくは複数を軽減する効果を有していてもよい。有効量は、1回または複数回の投与で投与してもよい。
【0058】
阻害の文脈における「阻害する」または「低下させる」という用語は、活性および量における低下または減少を意味する。これは、活性または量における完全な阻害または低下、または部分的な阻害または低下であってもよい。阻害または低下は、対照または標準レベルと比較してもよい。阻害は、5、10、25、50、75、80、85、90、95、99、または100%であってもよい。例えば、1つまたは複数のDONアナログを含むデンドリマー組成物は、デンドリマー組成物を与えられなかったかまたはそれで処置されなかった対象の同等の組織における同じ細胞の活性および/または量から、グルタミナーゼと関連する活性化ミクログリアの活性および/または量を約5%、10%、20%、30%、40%、50%または50%より多く阻害するかまたは減少させることができる。一部の実施形態では、阻害および低下は、mRNA、タンパク質、細胞、組織および臓器レベルで比較される。例えば、非処置の対照対象と比較した場合の、神経の損失速度、脳重量の減少速度、または海馬体積の減少速度における阻害および低下である。
【0059】
疾患、障害および/または状態に罹りやすいが、疾患、障害または状態を有するとはまだ診断されていない動物において疾患、障害または状態が生じるのを「処置すること」または「予防すること」、疾患、障害または状態を阻害すること、例えば、その進行を妨げること、ならびに/または疾患、障害、または状態を軽減すること、例えば、疾患、障害および/または状態の退行をもたらすこと。疾患または状態を処置することには、例え基本的な病態生理に影響がなかったとしても、特定の疾患または状態の少なくとも1つの症状を回復させること、例えば鎮痛剤を投与することによってそのような薬剤が疼痛の原因を処置しなかったとしても、対象の疼痛を処置することが含まれる。処置の望ましい効果としては、疾患の進行速度を低下させること、疾患の状況を回復または緩和すること、および寛解することかまたは予後を改善することがある。例えば、これらに限定されるものではないが、ニューロン損失速度の低下、疾患に起因する症状の減少、疾患に罹患したもののクオリティーオブライフの向上、疾患の処置に必要とされる他の医薬の用量の減少、疾患の進行の遅延、および/または個体の生存の延長を含む、がんと関連する1つまたは複数の症状が軽減または除去された場合、個体は成功裏に「処置される」。
【0060】
「デンドリマー」という用語は、これらに限定されるものではないが、内部コアと、この開始のコアに規則的に結合している繰返し単位の内層(または「世代」)と、最外部の世代に結合している末端基の外表面とを伴う分子構造を含む。
【0061】
「官能化」という用語は、官能基または部位の結合をもたらす様式で、化合物または分子を修飾することを意味する。例えば、分子を強力な求核試薬または強力な求電子剤にする分子を導入することによって、分子を官能化してもよい。
【0062】
「標的化部分」という用語は、具体的な場所に局在するかまたはそこから離れて局在する部分を指す。その部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸アナログ、炭水化物、または小分子であってもよい。実体は、例えば治療化合物、例えば、小分子または診断用の実体、例えば検出可能な標識であってもよい。位置は、組織、特定の細胞タイプもしくはリガンド、または細胞内コンパートメントであってもよい。一実施形態では、標的化部分は、薬剤を局在させる。好ましい実施形態では、デンドリマー組成物は、追加の標的化部分の非存在下で活性化ミクログリアなどの1つまたは複数のタイプの免疫細胞を選択的に標的とする。
【0063】
「延長された滞留時間」という用語は、薬剤が患者の身体、またはその患者の臓器もしくは組織から消失するために必要とされる時間における増加を指す。ある特定の実施形態では、「延長された滞留時間」は、比較標準、例えば、デンドリマーなどの送達ビヒクルにコンジュゲートしていない比較薬剤よりも10%、20%、50%または75%長い半減期で消失する薬剤を指す。ある特定の実施形態では、「延長された滞留時間」は、比較標準、例えば、特定の細胞タイプを特異的に標的とするデンドリマーを含まない比較薬剤よりも2、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、または10000倍長い半減期で消失する薬剤を指す。
【0064】
「組み込まれた」および「カプセル化された」という用語は、所望の適用において薬剤を放出、例えば持続放出するのを可能にする組成物中におよび/または組成物上に、このような薬剤を組み込むこと、製剤化すること、他の方法で含むことを指す。薬剤または他の材料を、デンドリマーの1つまたは複数の表面官能基に結合させることによって(共有結合、イオン結合、または他の結合相互作用によって)、物理的な混合によって、樹状構造内に薬剤を包むことによって、および/または樹状構造の内部に薬剤をカプセル化することによって、このようなデンドリマー中に組み込んでもよい。
【0065】
II.組成物
グルタミンアンタゴニスト6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)のアナログが開発されている。全身投与されたヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーは、損傷した/活性化された標的細胞および/または組織に1つまたは複数のDONアナログを送達し、同時に末梢曝露を最小限にし、したがってGI毒性を含む関連する全身毒性を最小限にできることが確立されている。したがって、対象における1つまたは複数の標的免疫細胞に送達するのに好適なデンドリマーナノ粒子にコンジュゲートされているDONアナログが記載される。
【0066】
構造I~Xまたは一般式A~Cのうちのいずれかを有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログと複合体化された、共有結合によりコンジュゲートされた、または分子内分散した、もしくはカプセル化されたデンドリマーの組成物が提供される。例示的なデンドリマーとしては、第4世代、第5世代、第6世代、第7世代、または第8世代のデンドリマーが挙げられる。一部の実施形態では、デンドリマーは、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマー、例えば、ヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーである。好ましい実施形態では、デンドリマーは、第4世代、第5世代、または第6世代のヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーである。一部の実施形態では、デンドリマーは、必要に応じてリンカーまたはスペーサー部分を介して、1つまたは複数のDONアナログに共有結合によりコンジュゲートされている。
【0067】
ある特定の実施形態において、ここで開示されるデンドリマー組成物は、式(I)の構造:
【化7】
を有する
(式中、Dは、デンドリマー、好ましくはG2からG10ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーであり;
L
1およびL
2は、それぞれ独立して、存在しないか、C
1~C
12アルキレニル、C
2~C
12アルケニレニル、C
2~C
12アルキニレニル、または(-CH
2CH
2O-)
qであり、qは1~10であり;
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、存在しないか、または第二級アミド(-CONH-)、第三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)
2-NR-)、第二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、第三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カルボネート(-O-C(O)-O-)、尿素(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、およびエーテル(-O-)から選択されるリンカーであり、Rは、アルキル基、アリール基、または複素環式基であり;
Zは、式(IIIa)もしくは式(IIIb)のDONアナログであるか、または構造I~Xもしくは一般式A~Cから選択され;
nは1から100であり;mは1から4000である)。
【0068】
一部の実施形態において、ここで開示されるデンドリマー組成物は、式(Ia)の構造:
【化8】
を有する
(式中、Dは、デンドリマー、好ましくはG2からG10ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーであり;
L
1は、存在しないか、C
1~C
12アルキレニル、C
2~C
12アルケニレニル、C
2~C
12アルキニレニル、または(-CH
2CH
2O-)
qであり、qは1~10であり;
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、存在しないか、または第二級アミド(-CONH-)、第三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)
2-NR-)、第二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、第三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カルボネート(-O-C(O)-O-)、尿素(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、およびエーテル(-O-)から選択されるリンカーであり、Rは、アルキル基、アリール基、または複素環式基であり;
Zは、式(IIIa)もしくは式(IIIb)のDONアナログであるか、または構造I~Xもしくは一般式A~Cから選択され;
pは1から10であり;nは1から100であり;mは1から4000である)。
【0069】
ある特定の実施形態において、ここで開示されるデンドリマー組成物は、式(II)の構造:
【化9】
を有する
(式中、Dは、デンドリマー、好ましくはG2からG10ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーであり;
L
1およびL
2は、それぞれ独立して、存在しないか、C
1~C
12アルキレニル、C
2~C
12アルケニレニル、C
2~C
12アルキニレニル、または(-CH
2CH
2O-)
qであり、qは1~10であり;
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、存在しないか、または第二級アミド(-CONH-)、第三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)
2-NR-)、第二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、第三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カルボネート(-O-C(O)-O-)、尿素(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、およびエーテル(-O-)から選択されるリンカーであり、Rは、アルキル基、アリール基、または複素環式基であり;
Zは、式(IIIa)もしくは式(IIIb)のDONアナログであるか、または構造I~Xもしくは一般式A~Cから選択され;
nは1から100であり;mは1から4000である)。
【0070】
一部の実施形態において、ここで開示されるデンドリマー組成物は、式(IIa)の構造:
【化10】
を有する
(式中、Dは、デンドリマー、好ましくはG2からG10ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーであり;
L
1は、存在しないか、C
1~C
12アルキレニル、C
2~C
12アルケニレニル、C
2~C
12アルキニレニル、または(-CH
2CH
2O-)
qであり、qは1~10であり;
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、存在しないか、または第二級アミド(-CONH-)、第三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)
2-NR-)、第二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、第三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カルボネート(-O-C(O)-O-)、尿素(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、およびエーテル(-O-)から選択されるリンカーであり、Rは、アルキル基、アリール基、または複素環式基であり;
Zは、式(IIIa)もしくは式(IIIb)のDONアナログであるか、または構造I~Xもしくは一般式A~Cから選択され;
pは1から10であり;nは1から100であり;mは1から4000である)。
【0071】
式(I)、(Ia)、(II)、および/または(IIa)のある特定の実施形態において、Zは、式(IIIa)または式(IIIb)のDONアナログである:
【化11】
(式中、X’およびY’は、独立して、酸素またはNHであり;
R
1およびR
2は、独立して、存在しないか、置換または非置換アルキル、カルボニル、またはホスホリルである)。
【0072】
DONアナログデンドリマーコンジュゲートは、調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達が病原性であると推定されるさまざまな神経学的、腫瘍学的、および免疫障害と関連する1つまたは複数の症状を処置または予防するのに特に適している。一般的に、1つまたは複数のDONアナログは、約0.01重量%から約30重量%、好ましくは約1重量%から約20重量%、さらに好ましくは約5重量%から約20重量%の濃度でデンドリマー複合体中にカプセル化、会合、および/またはコンジュゲートされている。好ましくは、DONアナログは、1つまたは複数の連結、例えば、ジスルフィド、エステル、エーテル、チオエステル、カルバメート、カルボネート、ヒドラジン、およびアミド連結を介して、必要に応じて、1つまたは複数のスペーサーを介してデンドリマーに共有結合によりコンジュゲートされている。
【0073】
デンドリマーは、複数の治療用、予防用、および/または診断用薬剤を同じデンドリマーを用いて送達することができるという利点を有する。1つまたは複数のタイプの薬剤は、デンドリマーにカプセル化、複合体化、またはコンジュゲートしてもよい。一実施形態では、デンドリマーは、2つまたはそれを超える異なるクラスの薬剤と複合体化されるかまたはそれらにコンジュゲートされ、標的部位における異なるまたは独立した放出動態を伴う同時送達を提供する。別の実施形態では、デンドリマーは、少なくとも1つの検出可能な部分および少なくとも1つのクラスの薬剤に共有結合により連結される。さらなる実施形態では、異なるクラスの薬剤をそれぞれ運ぶデンドリマー複合体は、組合せ処置のために同時に投与される。送達されることになる粒子に含まれる追加の薬剤は、タンパク質もしくはペプチド、糖もしくは炭水化物、核酸もしくはオリゴヌクレオチド、脂質、小分子(例えば、分子量が2000ダルトン未満、好ましくは1500ダルトン未満、より好ましくは300~700ダルトン)、またはこれらの組合せであってもよい。核酸は、タンパク質、例えばDNA発現カセットまたはmRNAをコードするオリゴヌクレオチドであってもよい。代表的なオリゴヌクレオチドとしては、siRNA、マイクロRNA、DNA、およびRNAが挙げられる。一部の実施形態では、薬剤は治療的抗体である。
【0074】
例示的な追加の活性剤としては、抗炎症薬物、化学療法薬、抗けいれん剤、血管拡張薬、および抗感染症剤が挙げられる。
【0075】
追加の薬剤の存在は、粒子のゼータ電位または表面電荷に影響を与える場合がある。一実施形態では、デンドリマーのゼータ電位は、-100mVから100mVの間、-50mVから50mVの間、-25mVから25mVの間、-20mVから20mVの間、-10mVから10mVの間、-10mVから5mVの間、-5mVから5mVの間、または-2mVから2mVの間である。好ましい実施形態では、表面電荷は中性または中性付近である。上記範囲は、-100mVから100mVまでの全ての値を包含する。
【0076】
A.グルタミンアンタゴニスト
好ましくは活性化ミクログリアにおいてグルタミン代謝を阻害するグルタミンアンタゴニストは、調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達が病原性であるかまたは病原性に寄与していると推定される、神経学的、腫瘍学的、および/または免疫障害のうちの1つまたは複数の処置に有用である。
【0077】
全身投与されたヒドロキシル末端PAMAMデンドリマーは、損傷した/活性化された組織にグルタミンアンタゴニストを選択的に送達することができ、そこで少なくとも2週間保持されるが、末梢からは迅速に除去される(血漿t1/2はおよそ6~24時間である)ことが発見されている。したがって、活性化標的組織にグルタミンアンタゴニストを送達するのを強化し、同時に末梢曝露およびGI毒性を最小限にするために、好ましくは、1つまたは複数のグルタミンアンタゴニストを、デンドリマー、好ましくはPAMAMデンドリマーにコンジュゲートさせて、損傷した/活性化された組織に選択的に送達する。好ましい実施形態では、グルタミンアンタゴニストは、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシンのアナログである。
【0078】
1.6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)のアナログ
6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)のアナログは、グルタミン代謝を阻害することを必要とする対象におけるグルタミン代謝を阻害するためのグルタミンアンタゴニストとして開発されており、好ましくはDONよりも毒性は低い。
【0079】
多くの腫瘍は、増殖に必要な炭素および窒素構成要素を得るためのグルタミンに大きく依存するようになる。腫瘍のグルタミン依存は、選択的グルタミナーゼ阻害剤で標的化されており、一部は成功を収めている。BPTES(ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,2,4-チアジアゾール-2-イル)エチルスルフィド)、化合物968、およびCB-839(Calithera)を含むいくつかのアロステリック阻害剤は、細胞培養実験において堅固な活性および有望な単一薬剤前臨床活性を示している(Elgogary A, et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2016;113(36):E5328-3611;Wang JB, et al., Cancer Cell 2010;18(3):207-19;Gao M, et al., Mol Cell 2015;59(2):298-308)。CB-839は臨床研究に進行している。標的の係合が明らかに観察されたが(Harding JJ, et al., Journal of Clinical Oncology 2015;33(15_suppl):2512)、単一薬剤の抗腫瘍活性は最小限であった。組合せ治験は現在進行中であり、有望な初期結果であった(Meric-Bernstam F, et al., Journal of Clinical Oncology 2016;34(15_suppl):4568;DeMichele A, et al., Journal of Clinical Oncology 2016;34(15_suppl):1011)。
【0080】
6-ジアゾ-5-オキソ-ノルロイシン(DON)は、最もよく研究されている広範に活性なグルタミンアンタゴニストであり、複数の根拠となる生化学的、前臨床的および臨床的評価を有している。DONは元々、1950年代にストレプトマイセスの発酵ブロスから単離された。DONは、グルタミナーゼを含むグルタミン利用酵素を低マイクロモル濃度レベルで阻害し、さらにデノボプリンおよびピリミジン合成、補酵素合成、アミノ酸合成、ならびにヘキソサミン産生に関与する複数のグルタミンアミドトランスフェラーゼを阻害する。低い1日用量を使用した1950年代のDONの臨床研究では抗腫瘍活性が示唆されたが、その後、高用量で間欠的に与えられたDONの第I相およびII相治験は、用量を制限する吐き気および嘔吐によって阻止された。DONのさらなる臨床開発は中止された。
【0081】
グルタミンアンタゴニズムの膨大な治療的潜在能を考慮して、いくつかのDONアナログが合成されている。
【0082】
一部の他の例では、DONアナログは、「AA」がアミノ酸を指す、以下:
【化12】
式中、R
1は、-OCH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2-OC(CH
3)
3、-NH
2、NHCH
3、-NH-AA-COOCH(CH
3)
2、および-NH-AA-COOC(CH
3)
3から選択され;
R
2は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2(インドール-3-イル)、および-CH
2CH
2C(=O)CH=N≡Nから選択され;
R
3は、-NH
2および-OHから選択され;
nは、1から32の整数値である、式A
【化13】
式中、R
1は、-OCH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2-OC(CH
3)
3、-NH
2、NHCH
3、-NH-AA-COOCH(CH
3)
2、および-NH-AA-COOC(CH
3)
3から選択され;
R
3は、-NH
2および-OHから選択され;
nは、1から16の整数値である、式B
【化14】
式中、R
2は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2(インドール-3-イル)、または-CH
2CH
2C(=O)CH=N≡Nから選択され;
R
4は、-H、-CH
3、-CH
2フェニル、または-CH
2CH(CH
3)
2から選択され;
R
5は、-H、-Ac、-Fmoc、ジメチルグリシン、Ac-AA-C(=O)-、ジメチルグリシン-NH-AA-C(=O)-、ジメチルグリシン-NH-DON-C(=O)-、またはC
8H
17O-C(=O)CH(NH
2)CH
2CH
2C(=O)-NH-6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン-C(=O)-から選択され;
nは、1から32の整数値である、式C
の3つの一般化学式のうちの1つを有するものが使用される。
【0083】
好ましいDONアナログは、以下の構造I~Xに示す通りである:
【化15-1】
【化15-2】
【化15-3】
【化15-4】
【化15-5】
【0084】
B.デンドリマー
デンドリマー-グルタミンアンタゴニストは、構造I~Xまたは一般式A~Cのうちのいずれかの構造を有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログと複合体化された、共有結合によりコンジュゲートされた、または分子内分散した、もしくはカプセル化されたデンドリマーを含む。
【0085】
デンドリマーは、高密度の表面末端基を含む3次元ハイパー分岐単分散球状多価高分子である(Tomalia, D. A., et al., Biochemical Society Transactions, 35, 61 (2007);およびSharma, A., et al., ACS Macro Letters, 3, 1079 (2014))。その特有の構造的かつ物理的特徴のために、デンドリマーは、標的を絞った薬物/遺伝子送達、イメージングおよび診断を含むさまざまな生物医学的用途のためのナノ担体として有用である(Sharma, A., et al., RSC Advances, 4, 19242 (2014)、Caminade, A.-M., et al., Journal of Materials Chemistry B, 2, 4055 (2014)、Esfand, R., et al., Drug Discovery Today, 6, 427 (2001)、およびKannan, R. M., et al., Journal of Internal Medicine, 276, 579 (2014))。
【0086】
デンドリマー表面基は、その生体内分布に顕著に影響を与える(Nance, E., et al., Biomaterials, 101, 96 (2016))。任意の標的化リガンドを含まない、ヒドロキシル末端第4世代PAMAMデンドリマー(およそ4nmサイズ)が、脳性麻痺(CP)のウサギモデルにおいて全身投与した場合、健常対照と比較して、障害を受けたBBBを顕著に多く(20倍を超えて)通過し、活性化ミクログリアおよびアストロサイトを選択的に標的とする(Lesniak, W. G., et al., Mol Pharm, 10 (2013))。
【0087】
「デンドリマー」という用語は、これらに限定されるものではないが、内部コアと、この内部コアに付加され、そこから広がる反復単位の層(または「世代」)とを有する分子構成であって、各層が1つまたは複数の分岐点を有し、末端基の外部表面が最も外側の世代に付加されている、分子構成を含む。一部の実施形態では、デンドリマーは、標準デンドリマーまたは「星型バースト(starburst)」分子構造を有する。
【0088】
一般的に、デンドリマーは、約1nmから約50nmの間、さらに好ましくは約1nmから約20nmの間、約1nmから約10nmの間、または約1nmから約5nmの間の直径を有する。コンジュゲートは、一般的に同じサイズ範囲内に入るが、大きなタンパク質、例えば抗体は、5~15nmサイズが大きくなる場合がある。一般的に、薬剤は、大きな世代のデンドリマー(すなわち、4またはより高次)に関しては、薬剤のデンドリマーに対する比率が1:1から4:1の間でカプセル化されている。好ましい実施形態では、デンドリマーは、脳組織を通過し、標的細胞に長時間保持されるのに有効な直径を有する。
【0089】
一部の実施形態では、デンドリマーは、約500ダルトンから約100,000ダルトンの間、好ましくは約500ダルトンから約50,000ダルトンの間、最も好ましくは約1,000ダルトンから約20,000ダルトンの間の分子量を有する。
【0090】
使用してもよい好適なデンドリマー足場としては、PAMAMとしても知られるポリ(アミドアミン)、またはSTARBURST(商標)デンドリマー、ポリプロピルアミン(POPAM)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、ポリエステル、イプチセン、脂肪族ポリ(エーテル)、および/または芳香族ポリエーテルデンドリマーが挙げられる。デンドリマーは、カルボキシル、アミン、および/またはヒドロキシル末端を有していてもよい。好ましい実施形態では、デンドリマーはヒドロキシル末端を有する。デンドリマー複合体の各デンドリマーは、同じであっても、他のデンドリマーと類似のまたは異なる化学的性質のものであってもよい(例えば、第1のデンドリマーはPAMAMデンドリマーを含んでいてもよく、一方で第2のデンドリマーは、POPAMデンドリマーであってもよい)。
【0091】
「PAMAMデンドリマー」という用語は、異なるコアを含有していてもよく、アミドアミン構築ブロックを有し、これらに限定されないが、第1世代PAMAMデンドリマー、第2世代PAMAMデンドリマー、第3世代PAMAMデンドリマー、第4世代PAMAMデンドリマー、第5世代PAMAMデンドリマー、第6世代PAMAMデンドリマー、第7世代PAMAMデンドリマー、第8世代PAMAMデンドリマー、第9世代PAMAMデンドリマー、または第10世代PAMAMデンドリマーを含む任意の世代の、カルボキシル、アミン、およびヒドロキシル末端を有していてもよいポリ(アミドアミン)デンドリマーを意味する。好ましい実施形態では、デンドリマーは製剤中に溶解性であり、第4、5または6世代(「G」)デンドリマーである。デンドリマーは、その官能表面基に結合したヒドロキシル基を有していてもよい。
【0092】
デンドリマーを作製するための方法は当業者に公知であり、中心開始コア(例えば、エチレンジアミンコア)の周囲に樹状β-アラニン単位の同心性のシェル(世代)を生成する2ステップ反復反応順序を一般的に伴う。その後の各成長ステップは、前の世代より大きな分子直径、2倍の数の反応表面部位、およびおよそ2倍の分子量を有するポリマーの新規の「世代」を表す。使用に好適であるデンドリマー足場は、さまざまな世代として市販されている。好ましくは、デンドリマー組成物は、第0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10世代デンドリマー足場に基づいている。このような足場は、それぞれ、4、8、16、32、64、128、256、512、1024、2048、および4096個の反応部位を有する。したがって、これらの足場に基づいたデンドリマー化合物は、合わせられた標的化部分、存在する場合、および薬剤の対応する数を最大として有していてもよい。
【0093】
一部の実施形態では、デンドリマーは、複数のヒドロキシル基を含む。一部の例示的な高密度ヒドロキシル基含有デンドリマーとしては、市販されているポリエステル樹状ポリマー、例えばハイパー分岐2,2-ビス(ヒドロキシル-メチル)プロピオン酸ポリエステルポリマー(例えば、ハイパー分岐ビス-MPAポリエステル-64-ヒドロキシル、第4世代)、樹状ポリグリセロールが挙げられる。
【0094】
一部の実施形態では、高密度ヒドロキシル基含有デンドリマーは、オリゴエチレングリコール(OEG)様デンドリマーである。例えば、第2世代OEGデンドリマー(D2-OH-60)は、非常に効率的で、頑強で、原子経済的な化学反応、例えばCu(I)触媒アルキン-アジドクリックおよび光触媒チオール-エンクリックケミストリーを使用して合成することができる。直交性ハイパーモノマー(orthogonal hypermonomer)およびハイパーコア戦略を使用することによって、非常に低い世代の高密度ポリオールデンドリマーは最小限の反応ステップで達成することができ、例えば、WO2019094952に記載される。一部の実施形態では、デンドリマー骨格は、非切断性ポリエーテル結合を構造全体にわたって有し、デンドリマーのin vivoでの崩壊を回避し、そのようなデンドリマーが単一の実体として身体から消失することを可能にする(非生分解性)。
【0095】
一部の実施形態では、デンドリマーは、特定の組織領域および/または細胞タイプ、好ましくは、CNS中の活性化ミクログリアを特異的に標的とする。好ましい実施形態では、デンドリマーは、標的化部分を有さない特定の組織領域および/または細胞タイプを特異的に標的とする。
【0096】
好ましい実施形態では、デンドリマーは、デンドリマーの周辺に複数のヒドロキシル(-OH)基を有する。好ましいヒドロキシル(-OH)基表面密度は、少なくとも1OH基/nm2(ヒドロキシル表面基の数/表面積nm2)である。例えば、一部の実施形態では、ヒドロキシル基表面密度は、2、3、4、5、6、7、8、9、10を超え;好ましくは少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50であるかまたは50を超える。さらなる実施形態では、ヒドロキシル(-OH)基表面密度は、約1から約50の間、好ましくは5~20OH基/nm2(ヒドロキシル表面基の数/表面積nm2)であり、同時に約500Daから約10kDaの間の分子量を有する。
【0097】
一部の実施形態では、デンドリマーは、外表面上に露出しているヒドロキシル基のフラクションを、デンドリマーの内部コアにあるもう一方のフラクションとともに有していてもよい。好ましい実施形態では、デンドリマーは、少なくとも1OH基/nm3(ヒドロキシル基の数/体積nm3)のヒドロキシル(-OH)基体積密度を有する。例えば、一部の実施形態では、ヒドロキシル基体積密度は、2、3、4、5、6、7、8、9、10であるか、または10、15、20、25、30、35、40、45、および50を超える。一部の実施形態では、ヒドロキシル基体積密度は、約4~約50基/nm3、好ましくは約5~約30基/nm3、より好ましくは約10~約20基/nm3である。
【0098】
C.カップリング剤およびスペーサー
デンドリマー複合体は、必要に応じて、デンドリマー、樹状ポリマーまたはハイパーブランチポリマー(hyperbranched polymer)にコンジュゲートされたまたは付加された1つまたは複数の追加の治療剤または化合物とともにグルタミンアンタゴニストから形成してもよい。必要に応じて、薬剤は、異なる連結、例えばジスルフィド、エステル、カルボネート、カルバメート、チオエステル、ヒドラジン、ヒドラジド、およびアミド連結を介し、1つまたは複数のスペーサー/リンカーを介してデンドリマーにコンジュゲートしている。デンドリマーと薬剤との間の1つまたは複数のスペーサー/リンカーは、デンドリマー-活性複合体のin vivoで放出可能なまたは放出不可能な形態を提供するように設計してもよい。一部の実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にエステル結合を提供する適切なスペーサーを介して生じる。一部の実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にアミド結合を提供する適切なスペーサーを介して生じる。好ましい実施形態では、デンドリマーと薬剤との間の1つまたは複数のスペーサー/リンカーは、所望のおよび有効な放出動態をin vivoで達成するように添加される。
【0099】
「スペーサー」という用語は、治療的薬剤をデンドリマーに連結するために使用する組成物を含む。スペーサーは、ポリマーと治療剤または造影剤とを架橋するために一緒に連結されている、単一の化学的実体または2つもしくはそれを超える化学的実体のいずれかとすることができる。スペーサーとしては、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホン、およびカルボネート末端を有する任意の小さな化学的実体、ペプチドまたはポリマーを挙げることができる。
【0100】
スペーサーは、スルフヒドリル、チオピリジン、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホンおよびカルボネート基が末端である化合物のクラスから選択され得る。スペーサーとしては、チオピリジン末端化合物、例えばジチオジピリジン、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート LC-SPDPまたはスルホ-LC-SPDPがあり得る。スペーサーとしては、スルフヒドリル基、例えばグルタチオン、ホモシステイン、システインおよびその誘導体を実質的に有する直鎖状または環状のペプチド、arg-gly-asp-cys(RGDC)、シクロ(Arg-Gly-Asp-d-Phe-Cys)(c(RGDfC))、シクロ(Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Cys)、シクロ(Arg-Ala-Asp-d-Tyr-Cys)を挙げることもできる。スペーサーは、メルカプト酸誘導体、例えば3メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、4メルカプト酪酸、チオラン-2-オン、6メルカプトヘキサン酸、5メルカプト吉草酸ならびに他のメルカプト誘導体、例えば2メルカプトエタノールおよび2メルカプトエチルアミンとすることができる。スペーサーは、チオサリチル酸およびその誘導体、(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-アルファ-2-ピリジルチオ)トルエン、(3-[2-ピリジチオ]プロピオニルヒドラジドとすることができる。スペーサーは、マレイミド末端を有していてもよく、スペーサーとしては、ポリマーまたは小さな化学的実体、例えばビス-マレイミドジエチレングリコールおよびビス-マレイミドトリエチレングリコール、ビス-マレイミドエタン、ビスマレイミドヘキサンが挙げられる。スペーサーとしては、ビニルスルホン、例えば1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホンを挙げることができる。スペーサーとしては、チオグリコシド、例えばチオグルコースを挙げることができる。スペーサーは、還元タンパク質、例えばウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミン、ジスルフィド結合を形成することができる任意のチオール末端化合物とすることができる。スペーサーとしては、マレイミド、スクシンイミジルおよびチオール末端を有するポリエチレングリコールを挙げることができる。
【0101】
グルタミンアンタゴニストまたは追加の薬剤および/もしくは標的化部分は、共有結合されていても分子内分散またはカプセル化されていてもよい。デンドリマーは、好ましくは、カルボキシル、ヒドロキシル、またはアミン末端を有する最大第10世代のPAMAMデンドリマーである。好ましい実施形態では、デンドリマーは、ジスルフィド、エステルまたはアミド結合で終わるスペーサーを介して薬剤に連結されている。
【0102】
D.送達されることになる追加の薬剤
デンドリマー-DONアナログ複合体は、1つまたは複数の追加の活性剤、特に、疾患または障害の1つまたは複数の症状を予防または処置するための1つまたは複数の薬剤を送達するために使用することができる。好適な治療剤、診断剤、および/または予防剤は、生体分子、例えば、ペプチド、タンパク質、炭水化物、ヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、または有機、無機、および有機金属薬剤を含む小分子薬剤(例えば、分子量2000amu未満、好ましくは1500amu未満)であってもよい。薬剤は、デンドリマー内にカプセル化されていても、デンドリマー内に分散されていても、および/またはデンドリマー表面と共有結合的にまたは非共有結合的に会合していてもよい。
【0103】
1.治療用および予防用薬剤
一部の実施形態では、デンドリマーは、デンドリマーと複合体化またはコンジュゲートされた1つまたは複数の治療用、予防用、または予後用薬剤を含む。代表的な治療剤としては、これらに限定されるものではないが、神経保護剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗感染剤、およびこれらの組合せがある。
【0104】
一実施形態では、追加の治療剤はステロイドである。好適なステロイドとしては、ビタミンD3およびD2の生物学的活性形態、例えば、米国特許第4,897,388号および同第5,939,407号に記載されているものが挙げられる。ステロイドは、神経原性の刺激もしくは誘導に、および/または神経損失の予防、特にアルツハイマー病の処置にさらに役立てるために同時投与してもよい。エストロゲンおよびエストロゲン関連分子、例えば、アロプレグナノロンは、Brinton (2001) Learning and Memory 8(3): 121-133に記載されているように、神経保護を強化するために神経強化剤と同時投与してもよい。
【0105】
他の神経活性ステロイド、例えば、米国特許第6,552,010号に記載されているようなデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)のさまざまな形態も、神経原性の刺激もしくは誘導および/または神経損失の予防にさらに役立てるために同時投与してもよい。神経の成長および神経ネットワークの伸長をもたらす他の薬剤、例えば神経成長因子(NGF)および脳由来神経栄養因子(BDNF)は、THPの投与と同時にまたはその前もしくは後に投与してもよい。さらに、神経アポトーシスの阻害剤、例えばカルパインおよびカスパーゼ、ならびに他の細胞死メカニズム、例えば壊死の阻害剤は、ある特定の神経学的疾患および神経学的欠損と関連する神経損失をさらに予防するために、神経強化剤と同時投与してもよい。
【0106】
代表的な小分子としては、メチルプレドニゾン、デキサメタゾンなどのステロイド、COX-2阻害剤を含む非ステロイド性抗炎症剤、コルチコステロイド性抗炎症剤、金化合物抗炎症剤、免疫抑制剤、抗炎症剤および抗血管新生剤、バルプロ酸、D-アミノホスホノバレレート(D-aminophosphonovalerate)、D-アミノホスホノヘプタノエート(D-aminophosphonoheptanoate)などの抗興奮毒性剤、グルタメート形成/放出阻害剤、バクロフェン、NMDA受容体アンタゴニスト、サリチレート抗炎症剤、ラニビズマブ、アフリベルセプトを含む抗VEGF剤、ならびにラパマイシンが挙げられる。他の抗炎症薬としては、非ステロイド薬、例えばインドメタシン、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウムおよびイブプロフェンが挙げられる。コルチコステロイドは、フルオシノロンアセトニドおよびメチルプレドニゾロンであってもよい。
【0107】
代表的なオリゴヌクレオチドとしては、siRNA、microRNA、DNA、およびRNAが挙げられる。
【0108】
2.診断用薬剤
一部の場合では、追加の薬剤は、診断用薬剤である。診断用薬剤の例としては、常磁性体分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種、X線造影剤、および造影媒体が挙げられる。他の好適な造影剤の例としては、放射線不透過性のガスまたはガス放出化合物が挙げられる。デンドリマーは、投与された組成物の位置を決定するのに有用な薬剤をさらに含んでいてもよい。この目的のための有用な薬剤としては、蛍光タグ、放射性核種、および造影剤がある。
【0109】
例示的な診断用薬剤としては、染料、蛍光染料、近赤外線染料、SPECT造影剤、PET造影剤、および放射性同位体が挙げられる。代表的な染料としては、カルボシアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、ツイカルボシアニン(thueicarbocyanine)、およびメロシアニン、ポリメチン、クマリン、ローダミン、キサンテン、フルオレセイン、ホウ素-ジピロメタン(BODIPY)、Cy5、Cy5.5、Cy7、VivoTag-680、VivoTag-S680、VivoTag-S750、AlexaFluor660、AlexaFluor680、AlexaFluor700、AlexaFluor750、AlexaFluor790、Dy677、Dy676、Dy682、Dy752、Dy780、DyLight547、Dylight647、HiLyte Fluor647、HiLyte Fluor680、HiLyte Fluor750、IRDye800CW、IRDye800RS、IRDye700DX、ADS780WS、ADS830WS、およびADS832WSが挙げられる。
【0110】
例示的なSPECTまたはPET造影剤としては、キレート化剤、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、ジアミンジチオール、活性化メルカプトアセチル-グリシル-グリシル-グリシン(MAG3)、およびヒドラジドニコチンアミド(HYNIC)が挙げられる。
【0111】
例示的同位体としては、Tc-94m、Tc-99m、In-111、Ga-67、Ga-68、Gd3+、Y-86、Y-90、Lu-177、Re-186、Re-188、Cu-64、Cu-67、Co-55、Co-57、F-18、Sc-47、Ac-225、Bi-213、Bi-212、Pb-212、Sm-153、Ho-166、およびDy-166が挙げられる。
【0112】
好ましい実施形態では、デンドリマー複合体は、陽電子放出断層法(PET)イメージングに好適な1つまたは複数の放射性同位体を含む。例示的な陽電子放出放射性同位体としては、炭素-11(11C)、銅-64(64Cu)、窒素-13(13N)、酸素-15(15O)、ガリウム-68(68Ga)、およびフッ素-18(18F)、例えば、2-デオキシ-2-18F-フルオロ-β-D-グルコース(18F-FDG)が挙げられる。
【0113】
さらなる実施形態では、単一のデンドリマー複合体組成物は、身体における1つまたは複数の位置で疾患または状態を同時に処置および/または診断することができる。
【0114】
III.医薬製剤
デンドリマーおよび1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログを含む医薬組成物が記載されている。デンドリマーおよびDONアナログを含む医薬組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の処理を促進する、賦形剤および助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して従来の様式で製剤化してもよい。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。好ましい実施形態では、組成物は非経口送達用に製剤化される。一部の実施形態では、組成物は、静脈内注射用に製剤化される。典型的には、組成物は、処置されることになる組織または細胞への注射用の無菌生理食塩水または緩衝溶液中で製剤化されることになる。組成物は、使用直前に再水和するための使い捨てバイアル中で凍結乾燥保存してもよい。再水和し、投与するための他の手段は当業者に公知である。
【0115】
一部の実施形態では、医薬製剤は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、1つまたは複数のデンドリマー複合体を含有する。代表的な賦形剤としては、溶媒、希釈剤、pH改変剤、保存剤、抗酸化剤、懸濁化剤、湿潤剤、粘度改変剤、等張化剤、安定化剤、およびこれらの組合せが挙げられる。好適な薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは、安全であると一般的に認められている(GRAS)材料から選択され、不所望の生物学的副作用または望ましくない相互作用をもたらすことなく個体に投与することができる。
【0116】
一般的に、薬学的に許容される塩は、水中または有機溶媒中またはこの2つの混合物中で、薬剤の遊離酸または遊離塩基の形態と化学量論量の適切な塩基または酸との反応によって調製してもよく;一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。薬学的に許容される塩としては、無機酸、有機酸由来の薬剤の塩、アルカリ金属塩、およびアルカリ土類金属塩、ならびに薬物と好適な有機リガンドとの反応によって形成された塩(例えば、第四級アンモニウム塩)が挙げられる。好適な塩のリストは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2000, p. 704で見出される。薬学的に許容される塩の形態でときとして投与される眼科用薬物の例としては、マレイン酸チモロール、酒石酸ブリモニジン、およびジクロフェナクナトリウムが挙げられる。
【0117】
組成物は、好ましくは、投与を容易にし、投薬量を均一にするための投薬単位形態に製剤化される。「投薬単位形態」という句は、処置されることになる患者に適切なコンジュゲートの物理的に個別の単位を指す。しかし、組成物の総単回投与は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることになることは理解されるであろう。治療有効用量は、細胞培養アッセイにおいてまたは動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタにおいて最初に推測してもよい。動物モデルを使用して、投与の望ましい濃度範囲および経路を達成してもよい。次に、このような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するのに有用であるはずである。コンジュゲートの治療的有効性および毒性、例えば、ED50(用量は、50%の集団において治療的に有効である)およびLD50(用量は、50%の集団に対して致死的である)は、細胞培養または実験動物において標準的な薬学的手順によって決定してもよい。毒性の治療効果に対する用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比率として示すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するためのさまざまな投薬量の製剤化において使用することができる。
【0118】
ある特定の実施形態では、組成物は、例えば、処置されることになる部位に直接注射することによって局所的に投与される。一部の実施形態では、組成物は、損傷、外科手術、または移植の部位のまたはその付近の血管組織上の血管系に注射されるか、局所的に適用されるか、または他の方法で直接投与される。例えば、一部の実施形態において、組成物は、外科手術中に露出された血管組織に局所的に適用される。典型的には、局所投与は、組成物の局所的な濃度の増加をもたらし、これは全身投与によって達成することができるものよりも高い。
【0119】
非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)および経腸投与経路用に製剤化された医薬組成物を記載する。
【0120】
A.非経口投与
一部の実施形態では、デンドリマーおよびDONアナログを含む医薬組成物は、非経口投与用に製剤化される。「非経口投与」および「非経口的に投与される」という句は、当技術分野において認識されている用語であり、経腸および局所投与以外の投与様式、例えば、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内(intradennal)、腹腔内(i.p.)、経気管、皮下(s.c.)、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内および胸骨内(intrastemal)注射および注入を介した注射を含む。デンドリマーは、硬膜下、静脈内、髄腔内、脳室内、動脈内、羊膜内、腹腔内、または皮下経路によって非経口で投与することができる。
【0121】
液体製剤に関しては、薬学的に許容される担体は、例えば、水性もしくは非水性溶液、懸濁液、エマルションまたは油であってもよい。非経口ビヒクル(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注射用)としては、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルおよび固定油がある。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、例えば、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、シクロデキストリン、エマルションまたは懸濁液が挙げられる。デンドリマーは、エマルション、例えば油中水型としても投与することができる。油の例は、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ、および鉱物油である。非経口製剤として使用するのに好適な脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0122】
非経口投与に好適な製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、ならびに目的のレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含んでいてもよい水性および非水性滅菌懸濁液を含んでいてもよい。静脈内ビヒクルは、流体および栄養補給液、電解質補給液、例えばリンゲルデキストロースベースのものを含んでいてもよい。一般的に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液、ならびにグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールは、特に注射用溶液に好ましい液体担体である。
【0123】
注射可能な組成物のための注射可能な医薬品担体は、当業者であれば周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J.B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238-250 (1982)、およびASHP Handbook on Injectable Drugs, Trissel, 15th ed., pages 622-630 (2009)を参照のこと)。
【0124】
B.経腸投与
一部の実施形態では、デンドリマーおよびDONアナログを含む医薬組成物は、経腸投与用に製剤化される。経腸で投与することができる組成物に有用な担体または希釈剤は、固体製剤用のカプセル剤または錠剤などの固体担体もしくは希釈剤、液体製剤用の液体担体もしくは希釈剤、またはこれらの混合物であってもよいし、食物混合物および液体給餌製剤を含んでもよい。
【0125】
液体製剤に関しては、薬学的に許容される担体は、例えば、水性もしくは非水性溶液、懸濁液、エマルションまたは油であってもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、例えば、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、シクロデキストリン、エマルションまたは懸濁液がある。
【0126】
油の例は、石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱物油、オリーブ油、ヒマワリ油、魚肝油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ、ペトロラタム、および鉱物である。非経口製剤として使用するのに好適な脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0127】
ビヒクルは、例えば、液体栄養補給液、電解質補給液、例えばリンゲルデキストロースベースのものを含んでいてもよい。一般的に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液は、好ましい液体担体である。これらはまた、タンパク質、脂質、糖および人工栄養乳の他の構成成分とともに製剤化される場合もある。
【0128】
好ましい実施形態では、組成物は、経口投与用に製剤化される。経口製剤は、液剤または懸濁剤、チューインガム、ゲルストリップ(gel strips)、錠剤、カプセル剤またはトローチ剤の形態であってもよい。腸溶性コーティング経口製剤を調製するためのカプセル化物質としては、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびメタクリル酸エステルコポリマーが挙げられる。固体経口製剤、例えばカプセル剤または錠剤が好ましい。エリキシル剤およびシロップ剤も周知の経口製剤である。
【0129】
IV.デンドリマーおよびそのコンジュゲートまたは複合体を作製する方法
構造I~Xのうちのいずれかを有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログを作製し、これらのDONアナログのうちの1つまたは複数と複合体化されているデンドリマーを調製する方法が提供される。上記で検討したような一般式A~Cによって包含される構造を有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログを作製し、これらのDONアナログのうちの1つまたは複数と複合体化されているデンドリマーを調製する方法は、以下で記載されるように、構造I~Xおよびこれらのデンドリマーを作製するために使用される同じまたは類似の合成法によって達成してもよく、この合成法は、当業者の技術の十分範囲内である。
【0130】
A.6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシンのアナログを作製する方法
構造I~Xのうちのいずれかを有する1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログの例示的な合成法は実施例1に記載されている。
【0131】
一部の実施形態では、構造Iに関する合成スキームは、
図1に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)Fmoc-Cl、NaHCO3、ジオキサン、0℃、2時間、67%;(ii)イソプロピル(S)-2-アミノ-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート、ジクロロリン酸フェニル、2,4,6-トリメチルピリジン、THF、0℃から室温、5時間、41%;(iii)ピペリジン、DCM、室温、2.5時間、73%を含む。
【0132】
一部の実施形態では、構造IIに関する合成スキームは、
図2に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)HATU、DIEA、Fmoc-L-Leu-OH、DCM、0℃から室温、20時間、76%;(ii)ピペリジン、DCM、室温、2時間、93%;(iii)5-(Fmoc-アミノ)-3-オキサペンタン酸、HATU、DIEA、DMF、0℃から室温、1時間、70%;(iv)ピペリジン、DCM、室温、2時間、93%を含む。
【0133】
一部の実施形態では、構造IIIに関する合成スキームは、
図3に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)Fmoc-9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸、HATU、DIEA、DMF、0℃から室温、1時間、67%;(ii)ピペリジン、DCM、室温、3時間、89%を含む。
【0134】
一部の実施形態では、構造IVに関する合成スキームは、
図4に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)HATU、DIEA、Fmoc-L-Leu-OH、DCM、0℃から室温、20時間、96%;(ii)ジエチルアミン、DCM、室温、1.5時間、88%;(iii)Fmoc-9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸、HATU、DIEA、DMF、0℃から室温、1時間、86%;(iv)ピペリジン、DCM、室温、1時間、87%を含む。
【0135】
一部の実施形態では、構造Vに関する合成スキームは、
図5に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)5-(Fmoc-アミノ)-3-オキサペンタン酸、HATU、DIEA、DMF、0℃から室温、1時間、89%;(ii)ピペリジン、DCM、室温、1時間、74%を含む。
【0136】
一部の実施形態では、構造VIに関する合成スキームは、
図6に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)臭化アリル、Cs2CO3、MeCN、室温、1時間、96%;(ii)TFA、DCM;(iii)Boc-L-Phe-OH、HATU、DIEA、DMF、室温、3時間、88%;(iv)TFA、DCM;(v)a DIEA、DCM;b (S)-2-(Fmoc-アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサン酸、EDC、HOBt、DCM、室温、2時間、71%;(vi)ジエチルアミン、DCM、75%;(vii)Fmoc-L-Leu-OH、DIEA、HBTU、DCM、室温、2時間、47%;(viii)Pd(PPh3)4、ジメドン、THF、63%を含む。
【0137】
一部の実施形態では、構造VIIに関する合成スキームは、
図7に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)臭化アリル、Cs
2CO
3、MeCN、室温、1時間、96%;(ii)TFA、DCM;(iii)Boc-L-Phe-OH、HATU、DIEA、DMF、室温、3時間、88%;(iv)TFA、DCM;(v)a DIEA、DCM;b (S)-2-(Fmoc-アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサン酸、EDC、HOBt、DCM、室温、2時間、71%;(vi)ジエチルアミン、DCM、75%;(vii)Fmoc-L-Leu-OH、DIEA、HBTU、DCM、室温、2時間、47%;(viii)Pd(PPh3)4、ジメドン、THF、63%を含む。
【0138】
一部の実施形態では、構造VIIIに関する合成スキームは、
図8に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)HATU、DIEA、H-Gly-OAll*HCl、DCM、0℃から室温、2.5時間、77%;(ii)ジエチルアミン、DCM、室温、2.5時間;(iii)(((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)(フェニル)メチルピバレート、DMF、室温、4時間、2ステップにわたって54%;(iv)Pd(PPh3)4、フェニルシラン、DCM、室温、0.5時間;(v)HATU、DIEA、H
2N-PEG5-COOAll*TFA塩、DMF、0℃から室温、4時間;(vi)Pd(PPh3)4、フェニルシラン、DCM、室温、0.5時間を含む。
【0139】
一部の実施形態では、構造IXおよびXに関する合成スキームは、
図9に示す通りであり、例示的な反応条件は、(i)LiHMDS、Fmoc-Cl、THF、-78℃;(ii)n-BuLi、TMSCHN
2、THF、-116から-78℃;(iii)ピペリジン、DMF、室温;(iv)Pd(PPh3)4、PhSiH
3、DCM、0℃;(v)HATU、DCM、DIEA、0℃;(vi)ピペリジン、DMF、室温;(vii)C
8H
17OH、DCC、DMAP、DCM、室温;(viii)Pd(PPh
3)
4、PhSiH
3、DCM、室温;(ix)HATU、DIEA、DCM、0℃;(x)ピペリジン、DMF、室温;(xi)HOBt、EDC、DIEA、THF、室温を含む。
【0140】
B.デンドリマーを作製する方法
1つまたは複数のDONアナログと複合体化されたデンドリマーは、さまざまな化学反応ステップを介して調製してもよい。デンドリマーは、構築の全ての段階においてその構造を制御するのを可能にする方法に従って通常合成される。樹状構造は、発散的なまたは収束的な2つの主要な異なるアプローチによって主に合成される。
【0141】
一部の実施形態では、デンドリマーは発散的な方法を使用して調製され、そこではデンドリマーが多官能性コアから組み立てられ、それが一連の反応、通常はマイケル反応によって外側へ延長される。戦略は、反応性基および保護基を有するモノマー分子と多官能性コア部分とのカップリングを伴い、これがコア周囲への世代の段階的な付加につながり、続いて保護基が除去される。例えば、PAMAM-NH2デンドリマーは、N-(2-アミノエチル)アクリルアミドモノマーをアンモニアコアへカップリングさせることによって最初に合成される。
【0142】
他の実施形態では、デンドリマーは、収束的な方法を使用して調製され、そこではデンドリマーが、最終的に球の表面に位置する小分子から構築され、反応は内側に進行し、内側に構築し、最終的にはコアに結合させる。
【0143】
デンドリマーを調製するための多くの他の合成経路、例えば、直交性アプローチ、加速アプローチ、2段階の収束的な方法もしくはハイパーコアアプローチ、ハイパーモノマー方法もしくは分岐モノマーアプローチ、二重指数法;直交性カップリング法または2ステップアプローチ、2モノマーアプローチ、AB2-CD2アプローチが存在する。
【0144】
一部の実施形態では、デンドリマーのコア、1つもしくは複数の分岐単位、1つもしくは複数のリンカー/スペーサー、および/または1つもしくは複数の表面基は、1つまたは複数の銅アシスト(Copper-Assisted)アジド-アルキン環化付加(CuAAC)、ディールスアルダー反応、チオール-エンおよびチオール-イン反応、ならびにアジド-アルキン反応を用いたクリックケミストリーを介してさらなる官能基(分岐単位、リンカー/スペーサー、表面基など)、モノマー、および/または薬剤にコンジュゲートするのを可能にするために修飾してもよい(Arseneault M et al., Molecules. 2015 May 20;20(5):9263-94)。一部の実施形態では、既製のデンドロンを高密度ヒドロキシルポリマーにクリックする。「クリックケミストリー」は、例えば、第1の部分の表面のアルキン部分(またはそれと同等のもの)と、第2の部分上のアジド部分(例えば、トリアジン組成物もしくはそれと同等のもの上に存在する、または任意の活性末端基、例えば、第一級アミン末端基、ヒドロキシル末端基、カルボン酸末端基、チオール末端基など)との間の1,3-双極環化付加反応を介した2つの異なる部分(例えば、コア基および分岐単位;または分岐単位および表面基)のカップリングを伴う。
【0145】
一部の実施形態では、デンドリマー合成は、1つまたは複数の反応、例えばチオール-エンクリック反応、チオール-インクリック反応、CuAAC、ディールス-アルダークリック反応、アジド-アルキンクリック反応、マイケル付加、エポキシ開環、エステル化、シラン化学、およびこれらの組合せに対して応答する。
【0146】
任意の現存する樹状プラットフォームは、高ヒドロキシル含有部分、例えば、1-チオ-グリセロールまたはペンタエリスリトールをコンジュゲートさせることによって、所望の官能性の、すなわち、高密度の表面ヒドロキシル基を有するデンドリマーを作製するために使用してもよい。例示的な樹状プラットフォーム、例えば、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリ(プロピレンイミン)(PPI)、ポリ-L-リシン、メラミン、ポリ(エーテルヒドロキシルアミン)(PEHAM)、ポリ(エステルアミン)(PEA)およびポリグリセロールを合成し、研究してもよい。
【0147】
デンドリマーはまた、2つまたはそれを超えるデンドロンを組み合わせることによって調製してもよい。デンドロンは、反応性焦点官能基を有する、デンドリマーのくさび形セクションである。多くのデンドロン足場は市販されている。それらは、2、4、8、16、32、および64個の反応性基をそれぞれ有する、第1、2、3、4、5、および6世代として販売されている。ある特定の実施形態では、1つのタイプの薬剤が1つのタイプのデンドロンに連結され、異なるタイプの薬剤が別のタイプのデンドロンに連結される。次いで、2つのデンドロンが接続されてデンドリマーが形成される。2つのデンドロンは、クリックケミストリー、すなわち、一方のデンドロン上のアジド部分ともう一方のデンドロン上のアルキン部分との間の1,3-双極環化付加反応を介して連結させて、トリアゾールリンカーを形成してもよい。
【0148】
デンドリマーを作製する例示的な方法は、国際特許出願WO2009/046446、WO2015168347、WO2016025745、WO2016025741、WO2019094952、および米国特許第8,889,101号に詳述されている。
【0149】
C.デンドリマー-DONアナログ複合体
デンドリマー複合体は、デンドリマー、樹状ポリマーまたはハイパーブランチポリマーにコンジュゲートされたまたは複合体化されたDONアナログから形成してもよい。例示的なデンドリマー-DONアナログ複合体を以下の表1に示す。
【0150】
複合体は、追加の治療剤、予防剤、または診断剤も含んでいてもよい。デンドリマーへの1つまたは複数の薬剤のコンジュゲーションは、当技術分野において公知であり、米国特許出願公開US2011/0034422号、US2012/0003155号、およびUS2013/0136697号に詳細に記載されている。
【0151】
一部の実施形態では、1つまたは複数の薬剤は、デンドリマーに共有結合されている。一部の実施形態では、薬剤は、in vivoで切断するように設計された連結部分を介してデンドリマーに結合される。連結部分は、加水分解的に、酵素的に、またはこれらの組合せで切断するように設計してもよく、その結果、薬剤のin vivoでの持続放出が提供される。連結部分の組成と薬剤へのその結合点の両方は、連結部分の切断が薬剤またはその好適なプロドラッグのいずれかを放出するように選択される。連結部分の組成はまた、薬剤の所望の放出速度を考慮して選択してもよい。
【0152】
一部の実施形態では、結合は、ジスルフィド、エステル、エーテル、チオエステル、カルバメート、カルボネート、ヒドラジン、またはアミド結合のうちの1つまたは複数を介して生じる。好ましい実施形態では、結合は、薬剤の所望の放出動態に応じて、薬剤とデンドリマーとの間にエステル結合またはアミド結合を提供する適切なスペーサーを介して生じる。一部の場合では、エステル結合は、薬物の放出可能な形態のために導入される。他の場合では、アミド結合は、薬剤の放出不能な形態のために導入される。
【0153】
連結部分は、一般的に1つまたは複数の有機官能基を含む。好適な有機官能基の例としては、第二級アミド(-CONH-)、第三級アミド(-CONR-)、スルホンアミド(-S(O)2-NR-)、第二級カルバメート(-OCONH-;-NHCOO-)、第三級カルバメート(-OCONR-;-NRCOO-)、カルボネート(-O-C(O)-O-)、尿素(-NHCONH-;-NRCONH-;-NHCONR-、-NRCONR-)、カルビノール(-CHOH-、-CROH-)、ジスルフィド基、ヒドラゾン、ヒドラジド、エーテル(-O-)、およびエステル(-COO-、-CH2O2C-、CHRO2C-)が挙げられ、ここで、Rは、アルキル基、アリール基、または複素環式基である。一般的に、連結部分内の1つまたは複数の有機官能基のアイデンティティーは、薬剤の所望の放出速度を考慮して選択される。さらに、1つまたは複数の有機官能基は、薬剤のデンドリマーへの共有結合を促進するように選択してもよい。好ましい実施形態では、結合は、薬剤とデンドリマーとの間にジスルフィド架橋を提供する適切なスペーサーを介して生じる場合がある。デンドリマー複合体は、身体において認められる還元条件下、チオール交換反応によってin vivoで薬剤の迅速な放出が可能である。
【0154】
ある特定の実施形態では、連結部分は、スペーサー基と組み合わせて、上述の有機官能基のうちの1つまたは複数を含む。スペーサー基は、オリゴマーおよびポリマー鎖を含む原子の任意のアセンブリーから構成されていてもよいが、スペーサー基における原子の合計数は、好ましくは3から200原子の間、より好ましくは3から150原子の間、より好ましくは3から100原子の間、最も好ましくは3から50原子の間である。好適なスペーサー基の例としては、アルキル基、ヘテロアルキル基、アルキルアリール基、オリゴ-およびポリエチレングリコール鎖、ならびにオリゴ-およびポリ(アミノ酸)鎖が挙げられる。スペーサー基の変形形態によって、in vivoでの薬剤の放出はさらに制御される。連結部分がスペーサー基を含む実施形態では、1つまたは複数の有機官能基は、スペーサー基を抗炎症剤とデンドリマーの両方に接続するために一般的に使用することになる。
【0155】
薬剤をデンドリマーに共有結合により付加するのに有用である反応および戦略は、当技術分野において公知である。例えば、March, “Advanced Organic Chemistry,” 5th Edition, 2001, Wiley-Interscience Publication, New York)およびHermanson, “Bioconjugate Techniques,” 1996, Elsevier Academic Press, U.S.Aを参照されたい。所与の薬剤の共有結合的な付加に適切な方法は、所望の連結部分ならびに薬剤およびデンドリマーの構造を考慮して選択してもよく、総じて官能基の適合性、保護基の戦略、および不安定な結合の存在に関連する。
【0156】
最適な薬物担持は、薬物の選択、デンドリマーの構造およびサイズ、ならびに処置されることになる組織を含む多くの因子に必然的に依存することになる。一部の実施形態では、1つまたは複数の薬剤は、約0.01重量%から約45重量%、好ましくは約0.1重量%から約30重量%、約0.1重量%から約20重量%、約0.1重量%から約10重量%、約1重量%から約10重量%、約1重量%から約5重量%、約3重量%から約20重量%、および約3重量%から約10重量%の濃度で、デンドリマーにカプセル化、会合、および/またはコンジュゲートされている。しかし、任意の所与の薬物、デンドリマー、および標的部位に最適な薬物担持は、記載済みのものなどの常用の方法によって同定することができる。
【0157】
一部の実施形態では、薬剤および/またはリンカーのコンジュゲートは、1つまたは複数の表面および/または内部基を介して生じる。したがって、一部の実施形態では、薬剤/リンカーのコンジュゲートは、コンジュゲート前のデンドリマーの利用可能な全ての表面官能基、好ましくは、ヒドロキシル基の約1%、2%、3%、4%、または5%を介して生じる。他の実施形態では、薬剤/リンカーのコンジュゲートは、コンジュゲート化の前のデンドリマーの利用可能な全ての表面官能基の5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、50%未満、55%未満、60%未満、65%未満、70%未満、75%未満で生じる。好ましい実施形態では、デンドリマー複合体は、特異的な細胞タイプを標的とするための有効量の表面官能基を保持し、同時に疾患または障害を処置、予防および/またはイメージングするのに有効量の薬剤にコンジュゲートする。
【0158】
V.使用法
デンドリマーおよびDONアナログ複合体組成物を使用する方法が記載されている。一部の実施形態では、デンドリマーおよびDONアナログ複合体は、がんを処置するために使用される。他の実施形態では、デンドリマーおよびDONアナログ複合体は、CNSおよび免疫障害を処置するために使用される。方法は、典型的には、グルタミン代謝をモジュレートするために、例えば、抗腫瘍応答を高めるために、デンドリマーおよび1つまたは複数の活性剤を含む有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。方法は、調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達と関連する1つまたは複数の状態および/または疾患を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、方法は、腫瘍成長を有効に減少させるために使用される。方法は、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)の1つまたは複数のアナログと複合体化された、コンジュゲートされた、またはカプセル化されたデンドリマーを含む有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。好ましい実施形態では、方法は、構造I~XIIで示す1つもしくは複数のDONアナログもしくは一般式A~Cのアナログ、またはこれらの薬学的に許容される塩と複合体化されたもしくはそれにコンジュゲートされたデンドリマーを含む有効量の組成物を対象に投与することを含む。
【0159】
A.処置法
デンドリマーおよびDONアナログの組成物ならびにその製剤は、感染症、炎症、および/またはがんと関連する障害、特にCNSにおける調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達と関連するものを処置するために投与してもよい。組成物は、増殖性疾患を含む他の疾患、障害および損傷を処置するため、ならびに神経が疾患または障害において役割を果たす他の組織を処置するためにも使用してもよい。組成物および方法は、予防的使用にも好適である。
【0160】
典型的には、デンドリマーと6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)の1つまたは複数のアナログとの組合せを含む有効量のデンドリマー複合体は、それを必要とする個体に投与される。デンドリマーは、標的化剤も含んでいてもよいが、実施例において実証されるように、これらは脳における損傷または罹患した組織への送達には必要とされない。
【0161】
対象に投与するデンドリマーおよびDONアナログ複合体の量は、対照、例えばデンドリマーを有さない活性剤で処置された対象と比較して、処置されることになる疾患または障害の1つまたは複数の臨床的または分子的症状を減少、予防、そうでなければ緩和するような有効量を送達するように選択する。
【0162】
一部の実施形態では、デンドリマーおよびDONアナログ複合体は、神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数の罹患または損傷した組織と関連する1つまたは複数の標的細胞においてグルタミナーゼ活性を低下させおよび/またはグルタメート放出を減少させるために有効な量で対象に投与される。好ましい実施形態では、組成物は、活性化ミクログリア、特に、神経学的、腫瘍学的、および免疫障害のうちの1つまたは複数の罹患または損傷した組織と関連するものにおいてグルタミナーゼ活性を低下させおよび/またはグルタメート放出を減少させるために有効な量で投与される。
【0163】
B.処置されることになる状態
デンドリマーおよびDONアナログ複合体の組成物は、調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達が病原性であると推定される、神経学的、腫瘍学的、および/または免疫性の疾患、状態、および障害のうちの1つまたは複数の処置に好適である。好ましい実施形態では、神経学的、腫瘍学的、および免疫性の疾患、状態、および障害のうちの1つまたは複数は、ミクログリアおよびアストロサイトの病理学的活性化とさらに関連する。これらとしては、これらに限定されるものではないが、肺、結腸直腸、脳、および膵臓のがん、抑うつ、認知欠損、虚血、神経炎症、アルツハイマー病、多発性硬化症、結核、ループス、関節リウマチ、ならびにウイルス感染が挙げられる。
【0164】
ミクログリアは、脳および脊髄全体にわたって存在するある種の神経膠細胞(グリア細胞)である。ミクログリアは、脳内に認められる全細胞の10~15%を占めている。ミクログリアは、微生物に対する一次応答、神経炎症、ホメオスタシス、および組織再生に関与し、ならびに神経変性疾患の病態形成に寄与している。研究によって、ミクログリアの多様性、多機能性、およびそのグルタメートとの関連がこれらの疾患におけるその役割を決定するために重要であることが示されている。
【0165】
常在マクロファージ細胞として、これらは中枢神経系(CNS)における活性免疫防御の第1の主要な形態として作用する。ミクログリアは、CNS損傷後に重要な役割を果たし、傷害のタイミングおよびタイプに基づいて防御効果と有害効果の両方を有する場合がある(Kreutzberg, G. W. Trends in Neurosciences, 19, 312 (1996);Watanabe, H., et al., Neuroscience Letters, 289, 53 (2000);Polazzi, E., et al., Glia, 36, 271 (2001);Mallard, C., et al., Pediatric Research, 75, 234 (2014);Faustino, J. V., et al., The Journal of Neuroscience : The Official Journal Of The Society For Neuroscience, 31, 12992 (2011);Tabas, I., et al., Science, 339, 166 (2013);およびAguzzi, A., et al., Science, 339, 156 (2013))。ミクログリアの機能における変化は、正常なニューロン発達およびシナプス刈込みにも影響を与える(Lawson, L. J., et al., Neuroscience, 39, 151 (1990);Giulian, D., et al., The Journal Of Neuroscience : The Official Journal Of The Society For Neuroscience, 13, 29 (1993);Cunningham, T. J., et al., The Journal of Neuroscience : The Official Journal Of The Society For Neuroscience, 18, 7047 (1998);Zietlow, R., et al., The European Journal Of Neuroscience, 11, 1657 (1999);およびPaolicelli, R. C., et al., Science, 333, 1456 (2011))。ミクログリアは、枝状構造からアメーバ状構造へ形態が顕著に変化し、損傷後に増殖する。結果として生じた神経炎症が損傷部位で血液脳関門を破壊し、急性および慢性のニューロン細胞死および希突起膠細胞死をもたらす。したがって、炎症促進性のミクログリアを標的とすることは、強力で有効な治療戦略のはずである。神経炎症性疾患において損傷したBBBは、薬物担持ナノ粒子を脳に輸送するために利用することができる。
【0166】
一部の実施形態では、デンドリマーおよびDONアナログ複合体組成物は、関連する毒性を一切伴わずに、病原性調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達を有する細胞/組織を処置するために有効な量で投与される。好ましい実施形態では、デンドリマー複合体組成物は、関連する毒性を一切伴わずに、ミクログリア介在性病理を処置することを必要とする対象におけるミクログリア介在性病理を処置するために有効な量で投与される。さらなる好ましい実施形態では、デンドリマー複合体組成物は、関連する毒性を一切伴わずに、活性化ミクログリアの細胞における病原性調節不全のグルタミン依存性経路および/またはグルタメート伝達を処置するために有効な量で投与される。
【0167】
一部の実施形態では、処置されることになる対象はヒトである。一部の実施形態では、処置されることになる対象は小児または乳児である。全ての方法は、処置を必要とする対象、または組成物の投与から利益を得るであろう対象を識別し、選択するステップを含んでいてもよい。
【0168】
1.がん
一部の実施形態では、デンドリマーおよびDONアナログの組成物ならびにその製剤は、それを必要とする対象におけるがんを処置するための方法において使用される。がんを処置することを必要とする対象におけるがんを処置するための方法であって、がんを処置するために、例えば、がんの1つまたは複数の症状を減少させるかまたは予防するために、治療有効量のデンドリマーおよびDONアナログを対象に投与することを含む方法。
【0169】
患者におけるがんとは、がんをもたらす細胞の典型的な特性、例えば、制御されない増殖、特化した機能の損失、不死性、顕著な転移能、抗アポトーシス活性における顕著な増加、急速な成長および増殖速度、ならびにある特定の特徴的な形態および細胞マーカーを有する細胞の存在を指す。一部の環境では、がん細胞は腫瘍の形態であることになり;このような細胞は、動物体内に局所的に存在する場合もあり、独立した細胞、例えば白血病細胞として血流内を循環する場合もある。腫瘍とは、悪性か良性かにかかわらず、全ての新生物細胞の成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を指す。固形腫瘍は一般的に、嚢胞または液体領域を含有しない組織の異常な塊である。固形腫瘍は、非限定的な例として、脳、結腸、乳房、前立腺、肝臓、腎臓、肺、食道、頭頸部、卵巣、子宮頚部、胃、結腸、直腸、膀胱、子宮、精巣、および膵臓に存在する場合がある。一部の実施形態では、固形腫瘍がここで開示される方法で処置された後、固形腫瘍は退縮するかまたはその成長が遅くなるかもしくは静止する。他の実施形態では、固形腫瘍は悪性である。一部の実施形態では、がんはステージ0のがんを含む。一部の実施形態では、がんはステージIのがんを含む。一部の実施形態では、がんはステージIIのがんを含む。一部の実施形態では、がんはステージIIIのがんを含む。一部の実施形態では、がんはステージIVのがんを含む。一部の実施形態では、がんは、難治性および/または転移性である。例えば、がんは、照射療法、化学療法を用いた処置または免疫療法を用いた単独療法に対して抵抗性であってもよい。がんとしては、限定するものではないが、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、進行性軟部組織肉腫、脳がん、転移性または侵襲性乳がん、乳癌、気管支原性癌、絨毛癌、慢性骨髄性白血病、結腸癌、結腸直腸癌、ユーイング肉腫、消化管癌、神経膠腫、多形神経膠芽腫、頭頸部扁平上皮細胞癌、肝細胞癌、ホジキン病、頭蓋内上衣芽腫、大腸がん、白血病、肝臓がん、肺癌、ルイス肺癌、リンパ腫、悪性線維性組織球腫、乳腺腫瘍、黒色腫、中皮腫、神経芽腫、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、橋腫瘍、閉経前乳がん、前立腺がん、横紋筋肉腫、細網細胞肉腫、肉腫、小細胞肺がん、固形腫瘍、胃がん、精巣がん、および子宮癌を含む新たに診断されたかまたは再発性のがんがある。一部の実施形態では、がんは急性白血病である。一部の実施形態では、がんは急性リンパ芽球性白血病である。一部の実施形態では、がんは急性骨髄性白血病である。一部の実施形態では、がんは進行性軟部組織肉腫である。一部の実施形態では、がんは脳がんである。一部の実施形態では、がんは乳がん(例えば、転移性または侵襲性乳がん)である。一部の実施形態では、がんは乳癌である。一部の実施形態では、がんは気管支原性癌である。一部の実施形態では、がんは絨毛癌である。一部の実施形態では、がんは慢性骨髄性白血病である。一部の実施形態では、がんは結腸癌(例えば、腺癌)である。一部の実施形態では、がんは結腸直腸がん(例えば、結腸直腸癌)である。一部の実施形態では、がんはユーイング肉腫である。一部の実施形態では、がんは消化管癌である。一部の実施形態では、がんは神経膠腫である。一部の実施形態では、がんは多形神経膠芽腫である。一部の実施形態では、がんは頭頸部扁平上皮細胞癌である。一部の実施形態では、がんは肝細胞癌である。一部の実施形態では、がんはホジキン病である。一部の実施形態では、がんは頭蓋内上衣芽腫である。一部の実施形態では、がんは大腸がんである。一部の実施形態では、がんは白血病である。一部の実施形態では、がんは肝臓がんである。一部の実施形態では、がんは肺がん(例えば、肺癌)である。一部の実施形態では、がんはルイス肺癌である。一部の実施形態では、がんはリンパ腫である。一部の実施形態では、がんは悪性線維性組織球腫である。一部の実施形態では、がんとしては乳腺腫瘍が挙げられる。一部の実施形態では、がんは黒色腫である。一部の実施形態では、がんは中皮腫である。一部の実施形態では、がんは神経芽腫である。一部の実施形態では、がんは骨肉腫である。一部の実施形態では、がんは卵巣がんである。一部の実施形態では、がんは膵臓がんである。一部の実施形態では、がんとしては橋腫瘍が挙げられる。一部の実施形態では、がんは閉経前乳がんである。一部の実施形態では、がんは前立腺がんである。一部の実施形態では、がんは横紋筋肉腫である。一部の実施形態では、がんは細網細胞肉腫である。一部の実施形態では、がんは肉腫である。一部の実施形態では、がんは小細胞肺がんである。一部の実施形態では、がんとしては固形腫瘍が挙げられる。一部の実施形態では、がんは胃がんである。一部の実施形態では、がんは精巣がんである。一部の実施形態では、がんは子宮癌である。
【0170】
組成物によって予防する、処置する、他の点で減少させることができるがんとしては、粘液肉腫、骨形成肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、および胃がんが挙げられる(このような障害の総説に関しては、Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia and Murphy et al., 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc., United States of Americaを参照のこと)。
【0171】
記載されているような方法および組成物は、予防的処置と治療的処置の両方に有用である。
【0172】
治療的処置は、がんと診断された後、記載されているような治療有効量の組成物またはこれらの薬学的に許容される塩を対象に投与することを伴う。
【0173】
さらなる実施形態では、組成物は、予防的使用、すなわち、発症における予防、遅延、発症後の徴候または症状の増悪における減少、根絶、または遅延、および再発の予防のために使用される。予防的使用に関しては、記載されているような治療有効量の化合物および組成物またはこれらの薬学的に許容される塩は、発症より前(例えば、がんの明らかな徴候の前)、初期の発症の間(例えば、がんの最初の徴候および症状の際)、またはがんの確立された発生後に対象に投与される。予防的投与は、症状が現れる前の数日から数年間行ってもよい。予防的投与は、例えば、前がん性の病変を示す対象、早期悪性疾患と診断されたもの、および特定のがんに対する感受性(例えば、家系的、人種的、および/または職業的なもの)を有するサブグループの化学的予防処置に使用してもよい。
【0174】
一部の実施形態では、処置されることになる対象は、1つまたは複数の固形腫瘍を有するものである。固形腫瘍は、嚢胞または液体領域を通常含有しない組織の異常な塊である。固形腫瘍は、良性(がんではない)であっても、悪性(がん)であってもよい。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫、およびリンパ腫である。好ましい実施形態では、組成物および方法は、皮膚、肺、肝臓、膵臓、脳、腎臓、乳房、前立腺、結腸および直腸、膀胱などのがんの1つまたは複数の症状の処置において有効である。さらなる実施形態では、腫瘍は、限局性リンパ腫または濾胞性リンパ腫である。
【0175】
2.神経学的および神経変性疾患
デンドリマー-DONアナログ組成物およびその製剤は、1つまたは複数の神経学的および神経変性疾患を診断および/または処置するために使用することができる。組成物および方法は、スフィンゴミエリンを含むスフィンゴ脂質の欠損した代謝および機能と関連する1つまたは複数の神経学的または神経変性疾患の処置に特に適している。一部の実施形態では、疾患または障害は、これらに限定されないが、一部の精神障害(例えば、抑うつ、統合失調症(SZ)、アルコール使用障害、およびモルヒネ抗侵害受容性の耐性)および神経学的障害(例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD))から選択される。一実施形態では、デンドリマー複合体は、アルツハイマー病(AD)または認知症を処置するために使用される。
【0176】
神経変性疾患は、神経および行動的機能に影響を与える神経系の慢性進行性障害であり、異なった組織病理学的および臨床的な症候群をもたらす生化学的変化を伴う(Hardy H, et al., Science. 1998;282:1075-9)。細胞分解機序に対して耐性がある異常なタンパク質が細胞内に蓄積する。神経損失のパターンは、1つのグループが影響を受けているのに対し、他方のグループは無傷なままという意味で、選択的である。疾患に関する明らかな誘発事象は存在しないことが多い。神経変性として古典的に記載される疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病、およびパーキンソン病である。
【0177】
活性化ミクログリアおよびアストロサイトによって介在される神経炎症は、さまざまな神経障害の主要な特質であり、潜在的な治療標的となる(Hagberg, H et al., Annals of Neurology 2012, 71, 444;Vargas, DL et al., Annals of Neurology 2005, 57, 67;およびPardo, CA et al., International Review of Psychiatry 2005, 17, 485)。複数の科学報告書では、これらの細胞を標的とすることによって初期段階で神経炎症を緩和すると、疾患の発症を遅延させることができ、ひいては処置に関して、より長期の治療域を提供できることが示唆されている(Dommergues, MA et al., Neuroscience 2003, 121, 619;Perry, VH et al., Nat Rev Neurol 2010, 6, 193;Kannan, S et al., Sci. Transl. Med. 2012, 4, 130ra46;およびBlock, ML et al., Nat Rev Neurosci 2007, 8, 57)。血液脳関門を通過して治療薬を送達することは困難な課題である。神経炎症は、血液脳関門(BBB)の破壊をもたらす。神経炎症性障害において損傷したBBBは、薬物担持ナノ粒子を脳全体にわたって輸送するために利用することができる(Stolp, HB et al., Cardiovascular Psychiatry and Neurology 2011, 2011, 10;およびAhishali, B et al., International Journal of Neuroscience 2005, 115, 151)。
【0178】
組成物および方法は、神経疾患もしくは障害または神経変性疾患もしくは障害、または中枢神経系障害を処置する活性剤を送達するためにも使用してもよい。好ましい実施形態では、組成物および方法は、神経疾患もしくは障害または神経変性疾患もしくは障害、または中枢神経系障害と関連する神経炎症の処置および/または緩和において有効である。方法は、典型的には、認知を高めるかまたは認知の低下を減少させる、認知機能を高めるかまたは認知機能低下を減少させる、記憶を高めるかまたは記憶の低下を減少させる、学習能力もしくは容量(capacity)を高めるかまたは学習能力もしくは容量の低下を減少させる、あるいはこれらの組合せのために、有効量の組成物を対象に投与することを含む。
【0179】
神経変性とは、ニューロン死を含む、ニューロンの構造または機能の進行性の損失を指す。例えば、組成物および方法は、疾患または障害、例えば、パーキンソン病(PD)およびPD関連疾患、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)および他の認知症、プリオン疾患、例えばクロイツフェルトヤコブ疾患、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、HIV関連認知機能障害、軽度認知機能障害、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳失調(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、フリードライヒ運動失調症、レビー小体疾患、アルパーズ病、バッテン病、脳-眼-顔面-骨格症候群、大脳皮質基底核変性症、ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー疾患、クールー、リー病、単肢性筋萎縮症(Monomelic Amyotrophy)、多系統萎縮症、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症(シャイドレーガー症候群)、多発性硬化症(MS)、脳鉄蓄積を伴う神経変性症、眼球クローヌスミオクローヌス、後部皮質萎縮症(Posterior Cortical Atrophy)、原発性進行型失語症、進行性核上性麻痺、血管性認知症、進行性多病巣性白質脳症、レビー小体型認知症(DLB)、ラクナ症候群(Lacunar syndrome)、水頭症、ウェルニッケコルサコフ症候群、脳炎後認知症、がんおよび化学療法関連認知機能障害および認知症、ならびに抑うつ誘発性認知症および仮性認知症を有する対象を処置するために使用してもよい。一実施形態では、神経疾患または障害は、ストレス誘発性気分障害、特に抑うつである。
【0180】
さらなる実施形態では、疾患または障害は、これらに限定されないが、注射局限性アミロイドーシス、脳アミロイド血管症、ミオパチー、ニューロパチー、脳外傷、前頭側頭型認知症、ピック病、多発性硬化症、プリオン障害、2型糖尿病、致死性家族性不眠症、心不整脈、孤立性心房アミロイドーシス(isolated atrial amyloidosis)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、家族性アミロイド多発性ニューロパチー、遺伝性非ニューロパチー性全身性アミロイドーシス、フィンランド型アミロイドーシス(Finnish amyloidosis)、格子状角膜ジストロフィー、全身性ALアミロイドーシス、およびダウン症候群から選択される。好ましい実施形態では、疾患または障害は、アルツハイマー病または認知症である。
【0181】
特定の神経学的因子における改善をアセスメントするための基準は、認知的技能、運動技能、記憶容量などを評価する方法、ならびに中枢神経系の選択された領域における物理的変化をアセスメントするための方法、例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)およびコンピューター断層撮影スキャン(CT)または他のイメージング法を含む。このような評価法は、医学、神経学、心理学などの分野において周知されており、特定の神経機能障害の状態を診断するために適切に選択することができる。アルツハイマー病における変化または関連する神経学的変化をアセスメントするために、選択されたアセスメントまたは評価試験、または試験群は、デンドリマー組成物の投与を開始するより前に行われる。この最初のアセスメント後、デンドリマー組成物を投与するための処置法が開始され、さまざまな時間間隔にわたって継続される。神経学的欠陥機能障害の最初のアセスメントに続く選択された時間間隔で、選択された神経学的基準における変化または改善を再アセスメントするために、同じアセスメントまたは評価試験が再び使用される。
【0182】
3.免疫障害
一部の実施形態では、1つまたは複数のDONアナログとコンジュゲートまたは複合体化されているデンドリマーの組成物は、免疫障害を有する対象に投与される。例示的な免疫障害としては、自己免疫性または炎症性の疾患または障害が挙げられる。自己免疫疾患は、身体の天然の防御システムが身体自体の細胞と外来性の細胞との間を有効に区別することができず、身体が正常な細胞を誤って攻撃することになる場合に生じる。身体の広範囲な部分に影響を与える80種を超えるタイプの自己免疫疾患が存在する。一般的な自己免疫疾患としては、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、1型糖尿病、炎症性腸疾患、および甲状腺疾患が挙げられる。
【0183】
一部の実施形態では、組成物は、自己免疫性または炎症性の疾患または障害、例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ球増殖性症候群(alps)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心ミオパチー、セリアックスプルー-皮膚炎、慢性疲労症候群免疫欠乏症候群(chronic fatigue syndrome immune deficiency, syndrome)(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素疾患、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グレーブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Igaネフロパシー、インスリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndrome)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティフマン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎、潰瘍性結腸炎、ブドウ膜炎、血管炎、白斑、ならびにウェゲナー肉芽腫症を処置するためにも使用してもよい。
【0184】
一部の実施形態では、デンドリマー組成物は、それを必要とする対象において望ましい免疫学的転帰を誘発するのに有効な量および投薬レジメンで投与される。組成物の投与は、免疫学的障害を有する個体における免疫環境を改善することまたはバランスを再びとることにつながる。
【0185】
4.ウイルス感染
一部の実施形態では、デンドリマー組成物およびその製剤は、1つまたは複数のウイルス感染を処置するための方法において使用される。一部の実施形態では、デンドリマー組成物およびその製剤は、特に、ウイルスによって活性化ミクログリアおよびアストロサイトが標的とされた/感染した場合、ウイルス複製、ウイルス負荷、および/またはウイルス放出を減少させるかまたは阻害するために使用される。
【0186】
一部の実施形態では、デンドリマー-DONアナログ組成物は、ウイルス特異的免疫応答がニューロン損傷のメディエーターとして関与するウイルス感染症に対する炎症応答を減少させることにおいて有効である。例えば、組成物は、流入領域リンパ節におけるリンパ球増殖の減少、CNSへの白血球浸潤の減少、炎症性サイトカインレベルの低下において有効であり、これは、上昇した炎症応答、例えばサイトカインストームと関連する1つまたは複数の症状を減少させる。
【0187】
C.投薬量および有効量
投薬量および投薬レジメンは、障害もしくは損傷の重症度および位置、ならびに/または投与方法に依存し、当業者に公知である。神経疾患の処置において使用される治療有効量のデンドリマー組成物は、典型的には、神経疾患の1つまたは複数の症状を減少させるかまたは緩和するのに十分である。好ましくは、薬剤は、罹患したまたは標的組織内に存在しないかもしくはそれらと関連していない健常細胞の活性もしくは量を標的としないかもしくはモジュレートしないか、またはCNSにおける活性化ミクログリア細胞を含む標的細胞と比較して低いレベルで標的とするかもしくはモジュレートする。このようにして、組成物と関連する副生成物および他の副作用は減少される。組成物の投与は、神経疾患、神経損傷、または加齢関連のニューロンの低下または機能障害を有する個体における神経機能の改善または増強をもたらす。一部のin vivoでのアプローチでは、デンドリマー複合体は、新規のニューロンの生成につながる神経有糸分裂を刺激または誘発し、神経原性効果を提供するための治療有効量で対象に投与される。個体のニューロン、神経突起および神経ネットワークの悪化、機能障害、または死滅を予防し、減少させ、または終息させ、神経保護効果を提供するための有効量の組成物も提供される。
【0188】
がんの処置において使用される治療有効量のデンドリマー組成物は、典型的には、がんの1つまたは複数の症状を減少させるかまたは緩和するのに十分である。がんの症状は、物理的なもの、例えば腫瘍負荷、または生物学的なもの、例えばがん細胞の増殖であってもよい。したがって、デンドリマー複合体の量は、例えば、腫瘍細胞を殺滅するかまたは腫瘍細胞の増殖もしくは転移を阻害するのに有効なものであってもよい。好ましくは、1つまたは複数の活性剤、例えば、免疫モジュレート剤を含むデンドリマー組成物は、腫瘍組織の中および周囲の細胞、例えば、腫瘍組織と関連するがん性細胞または免疫細胞(例えば、M2マクロファージ)に優先的に送達される。好ましくは、活性剤は、がん組織内に存在しないかもしくはそれらと関連していない健常細胞の活性もしくは量を標的としないかもしくはモジュレートしないか、またはがんまたはがん関連細胞と比較して低いレベルで標的とするかもしくはモジュレートする。このようにして、組成物と関連する副産物および他の副作用は減少され、好ましくは、がん細胞死に直接的または間接的につながる。一部の実施形態では、活性剤は、がん細胞の遊走、血管新生、免疫回避、放射線抵抗性、またはこれらの組合せを直接的または間接的に減少させる。一部の実施形態では、活性剤は、がん細胞自体、またはがん細胞に対する免疫応答の抑制を減少させるかもしくは活性化を誘発するその微小環境における変化を直接的または間接的に誘発する。一部のin vivoでのアプローチでは、デンドリマー複合体は、腫瘍サイズを減少させるための治療有効量で対象に投与される。一部の実施形態では、有効量の組成物は、がんを寛解させるためおよび/またはがんの寛解を維持するために使用される。がん幹細胞の増殖を減少または停止させるための有効量の組成物も提供される。
【0189】
デンドリマー複合体の実際の有効量は、投与される特定の薬剤、製剤化される特定の組成物、投与様式、および処置される対象の年齢、体重、状態、ならびに投与経路、および疾患または障害を含む因子に従って変更してもよい。組成物の投薬量は、約0.01~約100mg/kg体重;約0.1mg/kg体重~約10mg/kg体重;約0.5mg~約5mg/kg体重であり得る。一般的に、静脈内注射または注入に関しては、投薬量は経口投与用のものより低くてもよい。
【0190】
一般的に、投与のタイミングおよび頻度は、所与の処置または診断スケジュールの有効性と所与の送達システムの副作用とのバランスをとるように調整されることになる。例示的な投薬頻度は、連続注入、単回および複数回投与、例えば1時間ごと、毎日、毎週、毎月または毎年の投薬を含む。
【0191】
組成物は、治療剤の血液レベルの治療上有効な増加を提供するような量で、毎日、週2回、週1回、2週間毎またはそれ未満の頻度で投与され得る。投与が経口経路以外によるものである場合、組成物は、24時間以内に治療有効用量を生成するように、1時間を超えて、例えば3~10時間にわたって送達してもよい。あるいは、組成物は、制御放出のために製剤化してもよく、組成物は、週1回、またはそれ未満の頻度のレジメンで繰り返される単回用量として投与される。
【0192】
投薬量は変更してもよく、1日または数日間、単回または複数回用量投与で毎日投与してもよい。ガイダンスは、所与のクラスの医薬品に関する適切な投薬量に関する文献で見出すことができる。最適な投薬スケジュールは、対象または患者の身体における薬物蓄積の測定値から計算することができる。当業者であれば、最適な投薬量、投薬方法論、および反復率(repetition rates)を容易に決定することができる。最適な投薬量は、個々の医薬組成物の相対的な効力に応じて変化する場合があり、一般的に、動物モデルにおいてin vitroおよびin vivoで有効であることが認められたEC50に基づいて推測することができる。
【0193】
一部の実施形態では、レジメンは、治療ラウンド、続いて休薬(例えば、薬物なし)の1つまたは複数のサイクルを含む。休薬は、1、2、3、4、5、6、もしくは7日、または1、2、3、4週、または1、2、3、4、5、もしくは6カ月であってもよい。
【0194】
D.組合せ治療法および手順
デンドリマーおよびDONアナログ組成物は、単独でまたは1つもしくは複数の従来の治療法と組み合わせて投与してもよい。好ましい追加の治療剤の例は、所望の疾患、障害または状態を処置するための当技術分野において公知の他の従来の治療法を含む。
【0195】
アルツハイマー病の文脈において、他の治療剤としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、タクリン、リバスチグミン、ガランタミンまたはドネペジル)、ベータセクレターゼ阻害剤、例えば、JNJ-54861911、抗体、例えば、アデュカヌマブ、5-HT2A受容体に関するアゴニスト、例えば、ピマバンセリン、サルグラモスチム、AADvac1、CAD106、CNP520、ガンテネルマブ、ソラネズマブ、およびメマンチンのうちの1つまたは複数を挙げることができる。
【0196】
レビー小体型認知症の文脈において、他の治療剤としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、タクリン、リバスチグミン、ガランタミンもしくはドネペジル;N-メチルd-アスパルテート受容体アンタゴニストメマンチン;ドーパミン系治療薬、例えば、レボドパもしくはセレギリン;抗精神病薬、例えば、オランザピンもしくはクロザピン;REM障害治療薬、例えば、クロナゼパム、メラトニン、もしくはクエチアピン;抗抑うつおよび抗不安治療薬、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(シタロプラム、エスシタロプラム、セルトラリン、パロキセチンなど)、またはセロトニンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤(ベンラファクシン、ミルタザピン、およびブプロピオン)のうちの1つまたは複数を挙げることができる(例えば、Macijauskiene, et al., Medicina (Kaunas), 48(1):1-8 (2012)を参照のこと)。
【0197】
例示的な神経保護剤も当技術分野において公知であり、例えば、グルタメートアンタゴニスト、抗酸化剤、およびNMDA受容体刺激薬を含む。他の神経保護剤および処置としては、カスパーゼ阻害剤、栄養因子、抗タンパク質凝集剤、治療的低体温法、およびエリスロポエチンが挙げられる。
【0198】
神経機能不全を処置するための他の一般的な活性剤としては、運動症状を処置するためのアマンタジンおよび抗コリン作動薬、精神病を処置するためのクロザピン、認知症を処置するためのコリンエステラーゼ阻害剤、ならびに日中の眠気を処置するためのモダフィニルがある。
【0199】
1.がんの処置
一部の実施形態では、1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログとコンジュゲートまたは複合体化されているデンドリマーの組成物は、1つまたは複数の従来の治療法、例えば、従来のがん療法と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、従来の治療法は、1つまたは複数の追加の活性剤と組み合わせて、組成物のうちの1つまたは複数の投与を含む。組合せ療法は、同じ添加混合物中で一緒にまたは個別の添加混合物中で、活性剤を投与することを含んでいてもよい。したがって、一部の実施形態では、医薬組成物は、2つ、3つまたはより多くの活性剤を含む。このような製剤は、典型的には、腫瘍微小環境を標的とする有効量の免疫調節剤を含む。追加の活性剤(複数可)は、作用の同じまたは異なる機序を有していてもよい。一部の実施形態では、組合せは、がんの処置に対して相加効果をもたらす。一部の実施形態では、組合せは、疾患または障害の処置に対して相加効果を超える効果をもたらす。
【0200】
一部の実施形態では、製剤は、対象への静脈内、皮下、もしくは筋肉内投与用に、または経腸投与用に製剤化される。一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の追加の治療法または手順を用いた処置より前に、それらとともに、それらより後に、またはそれらと交互に投与される。一部の実施形態では、追加の治療法は、薬物サイクルの間または休薬中に行われ、それは組成物の投薬レジメンの一部である。例えば、一部の実施形態では、追加の治療法または手順は、外科手術、放射線療法、または化学療法である。
【0201】
追加の治療剤としては、従来のがん治療薬、例えば、化学療法剤、サイトカイン、ケモカイン、および放射線療法がある。化学療法薬物の大部分は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、および他の抗腫瘍剤に分けることができる。これらの薬物は、何らかの方法で細胞分裂またはDNA合成に影響を与え、機能する。追加の治療薬としては、モノクローナル抗体およびチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)またはGLIVEC(登録商標))が挙げられ、これは、ある特定のタイプのがん(慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍)における分子異常を直接標的とする。
【0202】
代表的な化学療法剤としては、これらに限定されるものではないが、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピポドフィロトキシン、エピルビシン、エトポシド、リン酸エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン(innotecan)、ロイコボリン、リポソーム型ドキソルビシン、リポソーム型ダウノルビシン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テニポシド、テガフール-ウラシル、テモゾロマイド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ボリノスタット、タキソール、トリコスタチンAおよびその誘導体、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、セツキシマブ、およびリツキシマブ(RITUXAN(登録商標)またはMABTHERA(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ならびにこれらの組合せが挙げられる。代表的なアポトーシス促進剤(pro-apoptotic agent)としては、これらに限定されるものではないが、フルダラビンタウロスポリン、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d-PGJ(2)5、およびこれらの組合せがある。
【0203】
一部の実施形態では、組成物および方法は、1つまたは複数の免疫チェックポイントモジュレーター(例えば、PD-1アンタゴニスト、PD-1リガンドアンタゴニスト、およびCTLA4アンタゴニスト)、養子T細胞療法、および/またはがんワクチンを使用した、チェックポイントタンパク質、例えば、PD-1/PD-L1軸またはCD28-CTLA-4軸の構成要素を阻害するような免疫療法より前にまたはそれとともに使用される。免疫療法において使用される例示的な免疫チェックポイントモジュレーターとしては、ペンブロリズマブ(抗PD1 mAb)、デュルバルマブ(抗PDL1 mAb)、PDR001(抗PD1 mAb)、アテゾリズマブ(抗PDL1 mAb)、ニボルマブ(抗PD1 mAb)、トレメリムマブ(抗CTLA4 mAb)、アベルマブ(抗PDL1 mAb)、およびRG7876(CD40アゴニストmAb)が挙げられる。
【0204】
養子T細胞療法の方法は当技術分野において公知であり、診療で使用されている。一般的に養子T細胞療法は、腫瘍特異的T細胞を単離し、ex vivoで拡大させて、ワクチン接種単独によって得ることができるものよりも多数のT細胞を得ることを伴う。次いで腫瘍特異的T細胞は、がんを攻撃し、殺滅できるT細胞を介して残存腫瘍を制圧する能力を免疫系に与えることを試みるために、がんを有する患者の体内に注入される。養子T細胞療法のいくつかの形態は、がんを処置するために使用することができ、これらに限定されないが、腫瘍浸潤性リンパ球またはTILを培養すること;1つの特定のT細胞またはクローンを単離し、拡大すること;および腫瘍を認識し、攻撃するように操作されたT細胞を使用することを含む。一部の実施形態では、T細胞は、患者の血液から直接採取される。適応性T細胞がん療法に関するin vitroでT細胞をプライミングおよび活性化する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Wang, et al, Blood, 109(11):4865-4872 (2007)およびHervas-Stubbs, et al, J. Immunol., 189(7):3299-310 (2012)を参照のこと。
【0205】
歴史的に、養子T細胞療法戦略は、大部分、腫瘍細胞を直接殺滅することができる腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の注入に焦点を当ててきた。しかし、CD4+Tヘルパー(Th)細胞、例えば、Th1、Th2、Tfh、Treg、およびTh17を使用することもできる。Thは、抗原特異的エフェクター細胞を活性化し、自然免疫系の細胞、例えば、マクロファージおよび樹状細胞を動員して、抗原提示(APC)を補助することができ、抗原刺激を受けたTh細胞は、腫瘍抗原特異的CTLを直接活性化することができる。APCを活性化した結果、抗原特異的Th1は、腫瘍における他の抗原に対する免疫を広げるエピトープまたは決定基拡散のイニシエータとして関与している。エピトープ拡散を誘発する能力によって、腫瘍における多くの潜在的な抗原に対する免疫応答が広がり、異種遺伝子型応答を開始する能力に起因してより効率的な腫瘍細胞の殺滅がもたらされ得る。このようにして、養子T細胞療法は、内因性免疫を刺激するために使用することができる。
【0206】
一部の実施形態では、T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR、CAR T細胞、またはCART)を発現する。人工T細胞受容体は、特定の特異性を免疫エフェクター細胞にグラフトする操作された受容体である。典型的には、これらの受容体は、モノクローナル抗体の特異性をT細胞にグラフトするために使用され、任意の腫瘍関連抗原を事実上標的とするために操作される場合がある。第1世代のCARは典型的には、内因性TCRからのシグナルの主な伝達物質であるCD3ζ-鎖からの細胞内ドメインを有していた。第2世代のCARは、さまざまな共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)からの細胞内シグナル伝達ドメインをCARの細胞質尾部に加えて、T細胞に追加のシグナルを提供し、第3世代のCARは、複数のシグナル伝達ドメイン、例えば、CD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40を合わせて有効性をさらに強化する。
【0207】
一部の実施形態では、組成物および方法は、がんワクチン、例えば、樹状細胞がんワクチンより前にまたはそれらとともに使用される。ワクチン接種は典型的には、治療用T細胞をin vivoで誘発するために、抗原(例えば、がん抗原)をアジュバントとともに対象に投与することを含む。一部の実施形態では、がんワクチンは、樹状細胞によって送達された抗原が、がん抗原を提示するようにex vivoで抗原刺激を受けた樹状細胞がんワクチンである。例としては、前立腺がんを処置するための樹状細胞ベースのワクチンであるPROVENGE(登録商標)(シプロイセル-T)が挙げられる(Ledford, et al., Nature, 519, 17-18 (05 March 2015))。このようなワクチンならびに免疫療法のための他の組成物および方法は、Palucka, et al., Nature Reviews Cancer, 12, 265-277 (April 2012)で総説されている。
【0208】
一部の実施形態では、組成物および方法は、例えば、原発性腫瘍転移の予防において腫瘍の外科的除去より前にまたはそれとともに使用される。一部の実施形態では、組成物および方法は、身体自体の抗腫瘍免疫機能を強化するために使用される。
【0209】
E.対照
1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログを含むデンドリマー複合体組成物の治療結果は、対照と比較してもよい。好適な対照は当技術分野において公知であり、例えば、非処置の対象、または非処置細胞を含む。典型的な対照は、標的化薬剤の投与の前後の対象の状態または症状の比較である。状態または症状は、生化学的、分子的、生理学的、または病理学的読出し情報であってもよい。例えば、特定の症状、薬理学的、または生理学的指標に対する組成物の効果は、非処置の対象、または処置前の対象の状態と比較してもよい。一部の実施形態では、症状、薬理学的、または生理学的指標は、対象において処置前に測定され、処置開始後1回または複数回再び測定される。一部の実施形態では、対照は、処置されることになる疾患または状態を有していない1つまたは複数の対象(例えば、健常対象)における症状、薬理学的、または生理学的指標の測定に基づいて決定された参照レベルまたは平均である。一部の実施形態では、処置の効果は、当技術分野で公知の従来の処置と比較される。
【0210】
VI.キット
組成物は、キットとして包装してもよい。キットは、デンドリマー中にカプセル化された、それと会合された、またはそれとコンジュゲートされた1つまたは複数の6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン(DON)アナログを含む組成物の単回用量または複数回用量と、組成物を投与するための取扱説明書とを含んでいてもよい。特に、取扱説明書は、有効量の組成物が、表示された特定の疾患、障害または不良を伴う個体に投与することを指示している。組成物は、特定の処置方法を参照しながら上述のように製剤化してもよく、任意の好都合な様式で包装してもよい。
【0211】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0212】
(実施例1)
グルタミンアンタゴニストに関する合成法
グルタミンアンタゴニストに関する合成法
図1は、化合物Iに関する合成スキームを示すスキームである。(i)Fmoc-Cl、NaHCO
3、ジオキサン、0℃、2時間、67%;(ii)イソプロピル(S)-2-アミノ-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート、ジクロロリン酸フェニル、2,4,6-トリメチルピリジン、THF、0℃から室温、5時間、41%;(iii)ピペリジン、DCM、室温、2.5時間、73%。
【0213】
図2は、化合物IIに関する合成スキームを示すスキームである。(i)HATU、DIEA、Fmoc-L-Leu-OH、DCM、0℃から室温、20時間、76%;(ii)ピペリジン、DCM、室温、2時間、93%;(iii)5-(Fmoc-アミノ)-3-オキサペンタン酸、HATU、DIEA、DMF、0℃から室温、1時間、70%;(iv)ピペリジン、DCM、室温、2時間、93%。
【0214】
図3は、化合物IIIに関する合成スキームを示すスキームである。(i)Fmoc-9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸、HATU、DIEA、DMF、0℃から室温、1時間、67%;(ii)ピペリジン、DCM、室温、3時間、89%。
【0215】
図4は、化合物IVに関する合成スキームを示すスキームである。(i)HATU、DIEA、Fmoc-L-Leu-OH、DCM、0℃から室温、20時間、96%;(ii)ジエチルアミン、DCM、室温、1.5時間、88%;(iii)Fmoc-9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸、HATU、DIEA、DMF、0℃から室温、1時間、86%;(iv)ピペリジン、DCM、室温、1時間、87%。
【0216】
図5は、化合物Vに関する合成スキームを示すスキームである。(i)5-(Fmoc-アミノ)-3-オキサペンタン酸、HATU、DIEA、DMF、0℃から室温、1時間、89%;(ii)ピペリジン、DCM、室温、1時間、74%。
【0217】
図6は、化合物VIに関する合成スキームを示すスキームである。(i)臭化アリル、Cs2CO3、MeCN、室温、1時間、96%;(ii)TFA、DCM;(iii)Boc-L-Phe-OH、HATU、DIEA、DMF、室温、3時間、88%;(iv)TFA、DCM;(v)a DIEA、DCM;b (S)-2-(Fmoc-アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサン酸、EDC、HOBt、DCM、室温、2時間、71%;(vi)ジエチルアミン、DCM、75%;(vii)Fmoc-L-Leu-OH、DIEA、HBTU、DCM、室温、2時間、47%;(viii)Pd(PPh
3)
4、ジメドン、THF、63%。
【0218】
図7は、化合物VIIに関する合成スキームを示すスキームである。(i)臭化アリル、Cs2CO3、MeCN、50℃、1時間、96%;(ii)TFA、DCM;(iii)Boc-L-Phe-OH、HATU、DIEA、DMF、室温、3時間、95%;(iv)TFA、DCM;(v)a DIEA、DCM;b (S)-2-(Fmoc-アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサン酸、EDC、HOBt、DCM、室温、2時間、60%;(vi)ジエチルアミン、MeCN;(vii)Fmoc-L-Leu-OSu、MeCN、室温、3時間、48%;(viii)Pd(PPh
3)
4、ジメドン、THF、室温、1時間、74%。
【0219】
図8は、化合物VIIIに関する合成スキームを示すスキームである。(i)HATU、DIEA、H-Gly-OAll*HCl、DCM、0℃から室温、2.5時間、77%;(ii)ジエチルアミン、DCM、室温、2.5時間;(iii)(((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)(フェニル)メチルピバレート、DMF、室温、4時間、2ステップにわたって54%;(iv)Pd(PPh3)4、フェニルシラン、DCM、室温、0.5時間;(v)HATU、DIEA、H
2N-PEG5-COOAll*TFA塩、DMF、0℃から室温、4時間;(vi)Pd(PPh
3)
4、フェニルシラン、DCM、室温、0.5時間。
【0220】
図9は、化合物IXおよびXに関する合成スキームを示すスキームである。(i)LiHMDS、Fmoc-Cl、THF、-78℃から室温;(ii)TMS-ジアゾメタン、n-BuLi、THF、-78℃;(iii)ピペリジン、DMF、室温;(iv)ジメドン、Pd(PPh
3)
4、THF;(v)HATU、DCM、DIEA、0℃;(vi)ピペリジン、DMF、室温;(vii)C
8H
17OH、DCC、DMAP、DCM、室温;(viii)Pd(PPh
3)
4、PhSiH
3、DCM、室温;(ix)HATU、DIEA、DCM、0℃;(x)ピペリジン、DMF、室温;(xi)HO-PEG4-CH
2CO
2H、HOBt、EDC、DIEA、THF、室温。
【0221】
図10は、化合物XIに関する合成スキームを示すスキームである。(i)2,2’-((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)、DCC、DMAP、DCM、室温;(ii)Pd(PPh
3)
4、PhSiH
3、DCM、0℃;(iii)化合物40、HATU、DIEA、DCM、0℃。
【0222】
図11は、化合物XIIに関する合成スキームを示すスキームである。(i)TFA、DCM、0℃から室温、1時間;(ii)Fmoc-DON-OH、HATU、DIPEA、DCM、0℃から室温、2時間、98%;(iii)Et
2NH、DCM、室温、2時間;(iv)Fmoc-DON-OH、HATU、DIPEA、DCM、0℃から室温、2時間、42%;(v)Et
2NH、DMF、室温、2時間;(vi)2,5-ジオキソピロリジン-1-イルジメチルグリシネート、DMF、室温、2時間、53%;(vii)Pd(PPh
3)
4、ジメドン、THF、室温、1時間、31%。反応条件:i)TFA、DCM、0℃から室温、1時間;ii)Fmoc-DON-OH、HATU、DIPEA、DCM、0℃から室温、2時間、98%;iii)Et
2NH、DCM、室温、2時間;iv)Fmoc-DON-OH、HATU、DIPEA、DCM、0℃から室温、2時間、42%;v)Et
2NH、DMF、室温、2時間;vi)2,5-ジオキソピロリジン-1-イルジメチルグリシネート、DMF、室温、2時間、53%;vii)Pd(PPh
3)
4、ジメドン、THF、室温、1時間、31%。
【0223】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(4-ヒドロキシブチル)カルバメート(2)
図1で示すように、4-アミノブタノール(967mg、1.00mL、10.8mmol、1.0当量)を、ジオキサン(30mL)中に溶解し、この溶液を0℃に冷却した。飽和NaHCO
3(15mL)を5分間滴加し、続いてFmoc塩化物(3.08g、11.9mmol、1.1当量)および反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応を飽和NaCl(50mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、合わせた有機層を蒸留水(40mL)、ブライン(40mL)で洗浄し、無水MgSO
4で乾燥させた。有機溶媒を真空中で蒸発させた。残渣にシリカゲルでクロマトグラフ(EtOAc/ヘキサン 1:1)を行って、所望の生成物2(2.05g、67%)を無色固形物として得た。
【0224】
イソプロピル(2S)-2-(((4-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)ブトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(3)
図1で示すように、ジクロロリン酸フェニル(1.05mL、7.05mmol、1.5当量)を、不活性雰囲気下、無水THF(8.5mL)中に溶解した。溶液を0℃に冷却し、2,4,6-トリメチルピリジン(9.28mL、70.3mmol、15当量)、続いて無水THF(8.5mL)中の2(1.46g、4.70mmol、1.0当量)の溶液を徐々に添加した。反応混合物を0℃で20分間撹拌した。無水THF(3.5mL)中のイソプロピル(S)-2-アミノ-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(1.00g、4.70mmol、1.0当量)の溶液を添加し、反応混合物を0℃で30分間、室温で2時間撹拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、粗製生成物にシリカゲルでクロマトグラフ(勾配CHCl
3/MeOH 30:1→15:1)を行って、生成物3(1.26g、41%)を黄色非晶質固形物として得た。
【0225】
イソプロピル(2S)-2-(((4-アミノブトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(構造I)
図1で示すように、化合物3(340mg、0.513mmol、1.0当量)を、不活性雰囲気下、無水DCM(7mL)中に溶解した。ピペリジン(1.00mL、10.3mmol、20当量)を添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣にシリカゲルでクロマトグラフ(CHCl
3/MeOH 1:1+2%Et
3N)を行って、所望の生成物I(165mg、73%)を黄色がかった油状物として得た。調製した生成物Iは非常に不安定であり、-80℃で保存する必要がある。
【0226】
t-ブチル(11S,14S)-14-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-11-イソブチル-3,9,12-トリオキソ-2,7-ジオキサ-4,10,13-トリアザペンタデカン-15-オエート(7)
図2で示すように、FmocHN-CH
2CH
2-OCH
2COOH(0.24g、0.71mmol、1.1当量)およびHATU(0.27g、0.71mmol、1.1当量)を、不活性雰囲気下、DMF(5mL)中に溶解した。反応混合物を0℃に冷却し、DIEA(0.37mL、2.1mmol、3.0当量)を添加した。最後に、DMF(1mL)中のH-Leu-DON-OtBu 6(0.22g、0.65mmol、1.0当量)の溶液を添加した。得られた混合物を0℃で15分間、および室温で一晩撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、EtOAc(20mL)を添加し、有機相を蒸留したH
2O(15mL)、10%KHSO
4水溶液(2×15mL)、飽和NaHCO
3(2×15mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。次いで、有機相を無水MgSO
4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/アセトン 2:1、R
f=0.28)で精製した。反応によって、生成物0.30g(70%)が黄色がかった非晶質固形物として得られた。
【0227】
t-ブチル(S)-2-((S)-2-(2-(2-アミノエトキシ)アセトアミド)-4-メチルペンタンアミド)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(構造II)
図2で示すように、化合物7(0.29g、0.44mmol、1.0当量)を、不活性雰囲気下、DCM(2mL)中に溶解した。次いで、ピペリジン(0.43mL、4.4mmol、10当量)を添加し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/NH
3 100:20:1、R
f=0.16)で精製した。反応によって、生成物0.18g(93%)が黄色がかった非晶質固形物として得られた。
【0228】
t-ブチル(15S,18S)-18-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-15-イソブチル-3,13,16-トリオキソ-2,7,10-トリオキサ-4,14,17-トリアザノナデカン-19-オエート(9)
図3で示すように、FmocHN-(CH
2CH
2-O)
2CH
2CH
2COOH(0.29g、0.73mmol、1.1当量)およびHATU(0.28g、0.73mmol、1.1当量)を、不活性雰囲気下、DMF(5mL)中に溶解した。反応混合物を0℃に冷却し、DIEA(0.37mL、2.1mmol、3.0当量)を添加した。最後に、DMF(1mL)中のH-Leu-DON-OtBu 6(0.23g、0.66mmol、1.0当量)の溶液を添加した。得られた混合物を0℃で15分間、および室温で一晩撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、EtOAc(20mL)を添加し、有機相を蒸留したH
2O(15mL)、10%KHSO4水溶液(2×15mL)、飽和NaHCO
3(2×15mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。次いで、有機相を無水MgSO
4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/アセトン 2:1、R
f=0.19)で精製した。反応によって、生成物0.32g(67%)が黄色がかった非晶質固形物として得られた。
【0229】
t-ブチル(2S,5S)-15-アミノ-2-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-5-イソブチル-4,7-ジオキソ-10,13-ジオキサ-3,6-ジアザペンタデカノエート(構造III)
図3で示すように、化合物9(65mg、0.09mmol、1.0当量)を、不活性雰囲気下、DCM(1mL)中に溶解した。次いで、ピペリジン(90μL、0.9mmol、10当量)を添加し、得られた混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 5:1、R
f=0.25)で精製した。反応によって、生成物40mg(89%)が黄色がかった非晶質固形物として得られた。
【0230】
イソプロピル(S)-2-((S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-4-メチルペンタンアミド)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(11)
化合物11を文献(Rais, R. et al., J. Med. Chem. 2016, 59 (18), 8621-8633)に従って調製した。
【0231】
イソプロピル(S)-2-((S)-2-アミノ-4-メチルペンタンアミド)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(12)
化合物12を文献(Rais, R. et al., J. Med. Chem. 2016, 59 (18), 8621-8633)に従って調製した。
【0232】
イソプロピル(15S,18S)-18-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-15-イソブチル-3,13,16-トリオキソ-2,7,10-トリオキサ-4,14,17-トリアザノナデカン-19-オエート(13)
図4で示すように、FmocHN-(CH
2CH
2-O)
2CH
2CH
2COOH(0.34g、0.84mmol、1.1当量)およびHATU(0.32g、0.84mmol、1.1当量)を、不活性雰囲気下、無水DMF(5mL)中に溶解した。反応混合物を0℃に冷却し、DIEA(0.40mL、2.3mmol、3.0当量)を添加した。最後に、DMF(1mL)中のH-Leu-DON-OiPr 12(0.25g、0.77mmol、1.0当量)の溶液を添加した。得られた混合物を0℃で15分間、室温で1時間撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、DCM(50mL)を添加し、有機相を、10%KHSO4水溶液(25mL)、蒸留したH
2O(25mL)、飽和NaHCO
3(25mL)、蒸留したH
2O(25mL)、およびブライン(25mL)で洗浄した。次いで、有機相を無水MgSO
4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 40:1、R
f=0.18)で精製した。反応によって、生成物0.47g(86%)が黄色がかった非晶質固形物として得られた。
【0233】
イソプロピル(2S,5S)-15-アミノ-2-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-5-イソブチル-4,7-ジオキソ-10,13-ジオキサ-3,6-ジアザペンタデカノエート(構造IV)
図4で示すように、化合物13(0.41g、0.58mmol、1.0当量)を、不活性雰囲気下、無水DCM(1mL)中に溶解した。次いで、ピペリジン(285μL、2.89mmol、5当量)を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 5:1+1%Et
3N、R
f=0.44)で精製した。反応によって、生成物218mg(78%)が黄色がかった非晶質固形物として得られた。
【0234】
イソプロピル(11S,14S)-14-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-11-イソブチル-3,9,12-トリオキソ-2,7-ジオキサ-4,10,13-トリアザペンタデカン-15-オエート(14)
図5で示すように、FmocHN-CH
2CH
2-OCH
2COOH(0.29g、0.84mmol、1.1当量)およびHATU(0.32g、0.84mmol、1.1当量)を、不活性雰囲気下、無水DMF(5mL)中に溶解した。反応混合物を0℃に冷却し、DIEA(0.40mL、2.30mmol、3.0当量)を添加した。最後に、無水DMF(1mL)中のH-Leu-DON-OiPr(12)(0.25g、0.77mmol、1.0当量)の溶液を添加した。得られた混合物を0℃で10分間および室温で1時間撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、DCM(50mL)を添加し、有機相を10%KHSO
4水溶液(25mL)、蒸留したH
2O(25mL)、飽和NaHCO
3(25mL)、蒸留したH
2O(25mL)およびブライン(25mL)で洗浄した。次いで、有機相を無水MgSO
4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 40:1、R
f=0.49)で精製した。反応によって、生成物0.44g(89%)が黄色がかった固形物として得られた。
【0235】
イソプロピル(S)-2-((S)-2-(2-(2-アミノエトキシ)アセトアミド)-4-メチルペンタンアミド)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(構造V)
図5で示すように、化合物14(0.39g、0.60mmol、1.0当量)を、不活性雰囲気下、無水DCM(1mL)中に溶解した。次いで、ピペリジン(0.30mL、3.12mmol、5当量)を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH 5:1+1%Et
3N、R
f=0.42)で精製した。反応によって、生成物0.19g(74%)が黄色がかった非晶質固形物として得られた。
【0236】
アリル2,2-ジメチル-4-オキソ-3,8,11,14,17-ペンタオキサ-5-アザイコサン-20-オエート(16)
図6で示すように、MeCN(20mL)中の2,2-ジメチル-4-オキソ-3,8,11,14,17-ペンタオキサ-5-アザイコサン-20-酸15(1.10g、3.0mmol)およびCs
2CO
3(1.47g、4.5mmol)を臭化アリル(0.39mL、4.5mmol)で処理した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、EtOAc(20mL)で希釈し、沈殿した塩を濾過除去した。残渣にシリカゲルカラム、5%MeOH/CHCl
3でクロマトグラフを行った。収量1.19g(98%)、シロップ状。分析データは米国特許出願公開US2012/225089号に記載されている。
【0237】
アリル(S)-6-ベンジル-2,2-ジメチル-4,7-ジオキソ-3,11,14,17,20-ペンタオキサ-5,8-ジアザ-トリコサン-23-オエート(18)
図6で示すように、CH
2Cl
2(6mL)中の16(1.22g、3.01mmol)の溶液を0℃でTFA(3mL)で処理した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで蒸発させ、トルエン(10mL)とともに共蒸留した。得られたシロップ状の17のトリフルオロ酢酸塩を真空中で維持した。その間、無水DMF(3mL)中のBoc-L-Phe(878mg、3.31mmol)およびHATU(1.37g、3.61mmol)の溶液を、0℃でDIPEA(2.62mL、15.04mmol)で処理し、10分間撹拌した。あらかじめ調製した17のトリフルオロ酢酸塩を、無水DMF(5mL)中に溶解し、混合物に添加し、次いでそれを室温で3時間撹拌した。溶液を濃縮し、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(100gのHP C18Aqカラム、50mL/分、25分で勾配0%~100%アセトニトリル/水、検出220nm)を行った。収量1.49g(90%)、シロップ状物。
【0238】
アリル(5S,8S)-8-ベンジル-5-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6,9-トリ-オキソ-2,13,16,19,22-ペンタオキサ-4,7,10-トリアザペンタコサン-25-オエート(20)
図6で示すように、CH
2Cl
2(3mL)中の18(315mg、0.57mmol)の溶液を、0℃でTFA(0.5mL)で処理した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで蒸発させ、トルエン(10mL)とともに共蒸留した。得られたシロップ状の19のトリフルオロ酢酸塩を真空中で維持した。その間、CH
2Cl
2(5mL)中のFmoc-DON(269mg、0.68mmol)、HOBt(123mg、0.91mmol)、EDC.HCl(175mg、0.91mmol)およびDMAP(4mg、0.03mmol)の混合物を、溶解が完了するまで0℃で撹拌した。
あらかじめ調製した19のトリフルオロ酢酸塩を、CH
2Cl
2(15mL)およびDIPEA(0.11mL、0.63mmol)中に溶解し、混合物に添加し、次いでそれを室温で2時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(50gのHP C18 Aqカラム、30mL/分、20分で勾配20%~100%アセトニトリル/水、検出265nm)を行った。収量335mg(71%)、凍結乾燥物。
【0239】
アリル(18S,21S)-21-アミノ-18-ベンジル-25-ジアゾ-17,20,24-トリオキソ-4,7,10,13-テトラオキサ-16,19-ジアザペンタコサノエート(21)
図6で示すように、CH
2Cl
2(3mL)中の20(315mg、0.38mmol)の溶液をEt
2NH(0.5mL)で処理し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。揮発性物質を室温で蒸発させ、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(50gのHP C18 Aqカラム、30mL/分、20分で勾配0%~100%アセトニトリル/水、検出220nm)を行った。収量172mg(75%)、凍結乾燥物(淡黄色シロップ状物)。生成物の対応する質量をUPLC-MSによって証明した。生成物をただちに次のステップに使用した。
【0240】
アリル(5S,8S,11S)-11-ベンジル-8-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-5-イソブチル-3,6,9,12-テトラオキソ-2,16,19,22,25-ペンタオキサ-4,7,10,13-テトラアザオクタコサン-28-オエート(22)
図6で示すように、無水CH
2Cl
2(3mL)中のFmoc-L-Leu-OH(110mg、0.31mmol)およびHBTU(129mg、0.34mmol)の溶液を、0℃でDIPEA(0.15mL、0.85mmol)で処理し、10分間撹拌した。次いでCH
2Cl
2(2mL)中の21(172mg、0.28mmol)の溶液を混合物に添加し、それを室温で2時間撹拌した。溶液を濃縮し、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(50gのHP C18 Aqカラム、30ml/分、20分で勾配20%~100%アセトニトリル/水、検出265nm)を行った。収量125mg(47%)、凍結乾燥物。
【0241】
(5S,8S,11S)-11-ベンジル-8-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-5-イソブチル-3,6,9,12-テトラオキソ-2,16,19,22,25-ペンタオキサ-4,7,10,13-テトラアザオクタコサン-28-酸(構造VI)
図6で示すように、THF(2mL)中の22(108mg、0.12mmol)およびジメドン(80mg、0.57mmol)の混合物を、THF(0.5mL)中のPd(PPh
3)
4(6.6mg、0.006mmol)の溶液で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで濃縮し、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(50gのHP C18 Aqカラム、30ml/分、25分で勾配0%~100%アセトニトリル/水、検出265nm)を行った。収量65mg(63%)、凍結乾燥物。
【0242】
アリル2,2-ジメチル-4-オキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-5-アザヘプタデカン-17-オエート(24)
図7で示すように、MeCN(10mL)中の1-(t-ブチルオキシカルボニル)アミノ-3,6,9-トリオキサドデカン-12-酸23(707mg、2.2mmol)およびCs
2CO
3(788mg、2.42mmol)の混合物を臭化アリル(209mL、2.42mmol)で処理した。混合物を50℃に1時間加熱し、次いで冷却し、EtOAc(10mL)で希釈し、沈殿した塩を濾過除去した。残渣にシリカゲルカラム、5%MeOH/CHCl
3でクロマトグラフを行った。収量770mg(97%)、シロップ状物。
【0243】
アリル(S)-6-ベンジル-2,2-ジメチル-4,7-ジオキソ-3,11,14,17-テトラオキサ-5,8-ジアザイコサン-20-オエート(26)
図7で示すように、CH
2Cl
2(6mL)中の24(610mg、1.69mmol)の溶液を、0℃でTFA(3mL)で処理した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで蒸発させ、トルエン(10mL)とともに共蒸留した。得られたシロップ状の25のトリフルオロ酢酸塩を真空中で維持した。その間、無水DMF(2mL)中のBoc-L-Phe(447mg、1.69mmol)およびHATU(706mg、1.86mmol)の溶液を、0℃でDIPEA(1.2mL、6.75mmol)で処理し、10分間撹拌した。あらかじめ調製した25のトリフルオロ酢酸塩を、無水DMF(5mL)中に溶解し、混合物に添加し、次いでそれを室温で3時間撹拌した。溶液を濃縮し、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(100gのHP C18 Aqカラム、60mL/分、25分で勾配0%~100%アセトニトリル/水、検出220nm)を行った。収量820mg(95%)、シロップ状物。
【0244】
アリル(5S,8S)-8-ベンジル-5-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6,9-トリオキソ-2,13,16,19-テトラオキサ-4,7,10-トリアザドコサン-22-オエート(28)
図7で示すように、CH
2Cl
2(10mL)中の26(790mg、1.55mmol)の溶液を、0℃でTFA(5mL)で処理した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで蒸発させ、トルエン(15mL)とともに共蒸留した。得られたシロップ状の27のトリフルオロ酢酸塩を真空中で維持した。その間、CH
2Cl
2(10mL)中のFmoc-DON(764mg、1.94mmol)、HOBt(393mg、2.91mmol)、EDC.HCl(558mg、2.91mmol)およびDMAP(4mg、0.03mmol)の混合物を、溶解が完了するまで0℃で撹拌した。あらかじめ調製した27のトリフルオロ酢酸塩を、CH
2Cl
2(15mL)およびDIPEA(540mL、3.10mmol)中に溶解し、混合物に添加し、次いでそれを室温で2時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(100gのHP C18 Aqカラム、60mL/分、20分で勾配20%~100%アセトニトリル/水、検出265nm)を行った。収量727mg(60%)、凍結乾燥物。
【0245】
アリル(5S,8S,11S)-11-ベンジル-8-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-5-イソブチル-3,6,9,12-テトラオキソ-2,16,19,22-テトラオキサ-4,7,10,13-テトラアザペンタコサン-25-オエート(30)
図7で示すように、MeCN(5mL)中の28(718mg、0.916mmol)の懸濁物をEt
2NH(5mL)で処理し、得られた溶液を室温で30分間撹拌した。溶媒を室温で蒸発させ、残渣(粗製物29)をMeCN(10mL)とともに共蒸留し、真空中で短時間維持した。残渣を、MeCN(10mL)中に溶解し、MeCN(10mL)中のFmoc-L-Leu-OSu(371mg、0.824mmol)の溶液で処理した。混合物を室温で4時間撹拌した。反応を、水(1mL)中のNH
2OH.HCl(14mg)およびNaHCO
3(20mg)の溶液を添加することによってクエンチした。混合物を室温で40分間撹拌し、次いで濃縮し、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(100gのHP C18 Aqカラム、60mL/分、20分で勾配20%~100%アセトニトリル/水、検出265nm)を行った。収量398mg(48%)、凍結乾燥物。
【0246】
(5S,8S,11S)-11-ベンジル-8-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-5-イソブチル-3,6,9,12-テトラオキソ-2,16,19,22-テトラオキサ-4,7,10,13-テトラアザペンタコサン-25-酸(構造VII)
図7で示すように、THF(6mL)中の30(359mg、0.40mmol)およびジメドン(168mg、1.2mmol)の混合物を、THF(0.5mL)中のPd(PPh
3)
4(18mg、0.016mmol)の溶液で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで濃縮し、残渣にRPフラッシュクロマトグラフィー(100gのHP C18 Aqカラム、60mL/分、25分で勾配0%~100%アセトニトリル/水、検出265nm)を行った。収量255mg(74%)、凍結乾燥物。
【0247】
アリル-L-ピログルタメート(31)
図9で示す化合物31を文献(Gang, Fang-li, et al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 2018, vol. 26,16, p. 4644-4649)に従って調製した。
【0248】
1-((9H-フルオレン-9-イル)メチル)2-アリル(S)-5-オキソピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(32)
図9で示すように、アリル-L-ピログルタメート31(11.64g、68.79mmol)を、無水THF(500mL)中に溶解し、溶液を-78℃に冷却した。LiHMDS(THF中1M、66mL、66mmol)の溶液を添加した。得られた混合物を-78℃で15分撹拌し、次いで、THF(300mL)中のFmoc-Cl(53.4g、206.4mmol)の溶液にカニューレを介して添加した。反応混合物を-78℃で3時間撹拌し、次いで室温に到達させ、一晩放置した。反応を飽和NH
4Cl水溶液(400mL)でクエンチした。有機層を分離し、水性部分をEtOAc(2×300mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(MgSO
4)、大部分の溶媒を蒸発させた。液体残渣をEt
2O(300mL)で希釈し、溶液を冷蔵庫内で一晩結晶化させた。結晶を濾過除去し、Et
2Oで洗浄し、濾液を濃縮した。シロップ状の残渣にシリカゲルカラム、25~50%EtOAc/ヘキサンでクロマトグラフを行った。収量26.22g(97%)、シロップ状物。
【0249】
アリル(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(33)
図9で示すように、THF(150mL)中のトリメチルシリルジアゾメタン(ヘキサン中2M溶液、41.3mL、82.6mmol)の溶液を-78℃に冷却し、n-BuLi(ヘキサン中2.5M、33.8mL、84.6mmol)で処理した。混合物を-78℃で30分撹拌し、次いで、冷却した(-78℃)THF(450mL)中の32(26.00g、66.08mmol)の溶液にカニューレを介して添加した。溶液を-78℃でさらに30分撹拌し、次いで飽和NH
4Cl(300mL)の水溶液でクエンチした。混合物を室温に到達させ、水性層を分離し、EtOAc(2×200mL)で抽出した。合わせた有機部分を乾燥させ(MgSO
4)、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム、40~50%EtOAc/ヘキサンで精製した。EtOAc/ヘキサンから結晶化を行い、20.48g(71%)を得た。
【0250】
(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサン酸(34)
図9で示すように、THF(230mL)中のアリルエステル33(20.20g、46.60mmol)およびジメドン(19.6g、139.8mmol)の溶液を、THF(70mL)中のPd(PPh
3)
4(2.15g、1.86mmol)の溶液で処理した。混合物を90分撹拌し、次いで濃縮し、残渣にシリカゲルカラム、10~20%MeOH/CH
2Cl
2でクロマトグラフを行い、10.95g(60%)を得た。
【0251】
1-((9H-フルオレン-9-イル)メチル)2-オクチル(S)-5-オキソピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(36)
図9で示すように、無水THF(200mL)中の(S)-オクチル5-オキソピロリジン-2-カルボキシレート35(10g、41.44mmol)の溶液に、LiHMDS(39.37mL、39.37mmol、THF中1M)を、不活性雰囲気下、-78℃で滴加し、混合物を20分間撹拌した。得られた黄色混合物を、-78℃の乾燥THF(150mL)中のFmoc-Cl(12.86g、49.73mmol)の溶液にカニューレを介して移した。反応混合物を-78℃で2時間撹拌し、一晩かけて徐々に室温まで加温した。反応を飽和NH
4Cl(100mL)および水(50mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(200mL)で洗浄し、無水MgSO
4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣に、シリカゲル、20~100%EtOAc/ヘキサンでクロマトグラフを行って、化合物36 18.23g(収率95%)を無色泡状物として得た。
【0252】
オクチル(S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(37)
図9で示すように、トリメチルシリルジアゾメタン(23.6mL、47.2mmol、ジエチルエーテル中2M)の溶液を、無水THF(210mL)中にアルゴン下で溶解し、-98℃に冷却した(ドライアイスアセトン浴および液体N
2)。n-BuLi(19.35mL、48.38mmol、ヘキサン中2.5M)の溶液を滴加し、溶液を-98℃で30分間撹拌した。得られた混合物を、-98℃(ドライアイスアセトン浴および液体N
2)の乾燥THF(360mL)中の化合物36(18.23g、39.33mmol)の溶液にカニューレを介して移した。反応混合物を-98℃で30分間撹拌し、次いで-78℃まで徐々に加温し、飽和NH
4Cl(200mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(200mL)で洗浄し、無水MgSO
4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲル、5%CHCl
3/アセトンでクロマトグラフを行って、化合物37 17.2g(収率86%)を淡黄色固形物として得た。
【0253】
オクチル(S)-2-アミノ-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(38)
図9で示すように、無水DMF(20mL)中の化合物37(5.06g、10mmol)の溶液に、不活性雰囲気下、ピペリジン(0.94g、11mmol)を室温で添加した。混合物を20分間撹拌し、H
2O(80mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水MgSO
4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲル、0.5%Et
3Nを含有する0~10%MeOH/DCMでクロマトグラフを行って、化合物38 2.33g(収率82%)を黄色固形物として得、これをその後のステップでただちに使用した。
【0254】
オクチル(S)-2-((S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサンアミド)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(39)
無水DCM(40mL)中の化合物34(2.75g、6.99mmol)および38(2.38g、8.39mmol)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、1.81g、13.98mmol)を添加し、混合物を、不活性雰囲気下、0℃に冷却した。HATU(2.93g、7.69mmol)を一度に添加し、混合物を0℃で1時間撹拌し、H2O(80mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲル、0~10%MeOH/DCMでクロマトグラフを行って、化合物39 4.0g(収率87%)を黄色固形物として得、これをその後のステップでただちに使用した。
【0255】
オクチル(S)-2-((S)-2-アミノ-6-ジアゾ-5-オキソヘキサンアミド)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(40)
無水DMF(20mL)中の化合物39(4.0g、6.07mmol)の溶液に、不活性雰囲気下、ピペリジン(0.57g、6.68mmol)を室温で添加した。反応を慎重にモニターし、化合物39が消失したら(およそ20分)H2O(60mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×80mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲル、0.5%Et3Nを含有する0~10%MeOH/DCMでクロマトグラフを行って、化合物40 1.8g(収率68%)を黄色固形物として得、これをその後のステップでただちに使用した。
【0256】
5-アリル1-オクチル(((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)-L-グルタメート(42)
無水DCM(100mL)中の41(3.80g、9.29mmol)の溶液に、1-オクタノール(1.21g、9.29mmol)を添加し、混合物を0℃で撹拌した。DCC(1.92g、9.29mmol)、続いて不活性雰囲気下、触媒量のDMAPを添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。沈殿したDCUを濾過除去し、溶媒を減圧下で除去した。残渣をEtOAc(100mL)中に再溶解し、残ったDCUの沈殿物を濾過除去した。溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲルカラム、10~100%EtOAc/ヘキサンでクロマトグラフを行って、化合物42 3.29g(収率68%)を白色固形物として得た。
【0257】
(S)-4-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-5-(オクチルオキシ)-5-オキソペンタン酸(43)
無水DCM(100mL)中の42(3.29g、6.31mmol)およびPhSiH3(1.37mg、12.62mmol)の溶液に、不活性雰囲気下、Pd(PPh3)4(219mg、0.19mmol)を0℃で添加し、混合物を徐々に室温まで加温し、40分間撹拌した。次いで数滴の水を添加し、揮発性物質を減圧下で除去した。残渣にシリカゲルカラム、0.5%AcOH/ヘキサンを含有する10~100%EtOAcでクロマトグラフを行って、化合物43 2.41g(収率77%)を白色固形物として得た。
【0258】
オクチル(5S,10S,13S)-10,13-ビス(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-5-((オクチルオキシ)カルボニル)-3,8,11-トリオキソ-2-オキサ-4,9,12-トリアザテトラデカン-14-オエート(44)
無水DCM(40mL)中の化合物40(1.80g、4.12mmol)および43(1.99g、4.12mmol)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、1.07g、8.25mmol)を添加し、混合物を、不活性雰囲気下、0℃に冷却した。HATU(1.73g、4.54mmol)を一度に添加し、混合物を0℃で40分間撹拌し、H2O(80mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲル、0~10%MeOH/DCMでクロマトグラフを行って、化合物44 3.2g(収率86%)を黄色固形物として得た。
【0259】
オクチル(S)-2-((S)-2-((S)-4-アミノ-5-(オクチルオキシ)-5-オキソペンタンアミド)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサンアミド)-6-ジアゾ-5-オキソヘキサノエート(構造IX)
DMF(15mL)中の化合物44(1.5g、1.67mmol)の溶液に、不活性雰囲気下、ピペリジン(0.16g、1.83mmol)を室温で添加した。混合物を40分間撹拌し、H2O(60mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×80mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲル、0.5%Et3Nを含有する0~10%MeOH/CHCl3でクロマトグラフを行って、化合物IX 0.81g(収率72%)を淡黄色固形物として得た。
【0260】
オクチル(16S,21S,24S)-21,24-ビス(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-ヒドロキシ-16-((オクチルオキシ)カルボニル)-14,19,22-トリオキソ-3,6,9,12-テトラオキサ-15,20,23-トリアザペンタコサン-25-オエート(構造X)
THF(5mL)中の化合物IX(300mg、0.44mmol)、ヒドロキシ-PEG4-CH2CO2H(122.8mg、0.49mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、200mg、1.55mmol)の溶液に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt・H2O、102mg、0.66mmol)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC塩酸塩、119mg、0.62mmol)を、不活性雰囲気下、室温で添加した。混合物を3時間撹拌し、飽和NaHCO3(10mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣を逆相分取HPLC(40%アセトニトリル/60%水、続いて60分かけて100%アセトニトリルまで増加させ、100%アセトニトリルで10分にわたって洗浄する;流速15mL/分)を使用して精製して、化合物X 142mg(収率35%)を淡黄色粘着性固形物として得た。
【0261】
5-アリル1-(2-(2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)(((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)-L-グルタメート(45)
無水DCM(20mL)中の41(1.0g、2.44mmol)の溶液に、2,2’-((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)(1.42g、7.33mmol)を添加し、混合物を0℃で撹拌した。DCC(504mg、2.44mmol)、続いて不活性雰囲気下、触媒量のDMAP(30mg、0.24mmol)を添加した。反応混合物を0℃で4時間撹拌した。沈殿したDCUを濾過除去し、溶媒を減圧下で除去した。溶媒を減圧下で除去した。残渣にシリカゲルカラム、20~100%EtOAc/ヘキサンでクロマトグラフを行って、化合物45 0.8g(収率56%)を無色油状物として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 2.00-2.07 (m, 1H), 2.22-2.29 (m, 1H), 2.39-2.51 (m, 2H), 3.58-3.71 (m, 14H), 4.22 (t, J = 6.5 Hz, 1H), 4.28-4.35 (m, 2H), 4.40-4.47 (m, 3H), 4.58 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 5.23 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 5.33-5.29 (m, 2H), 5.79 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 5.95-5.87 (m, 1H), 7.30-7.33 (m, 2H), 7.38-7.41 (m, 2H), 7.59-7.62 (m, 2H), 7.76 (d, J = 7.5 Hz, 2H). ESI MS: 608.3 ([M+Na]+).
【0262】
(S)-14-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-1-ヒドロキシ-13-オキソ-3,6,9,12-テトラオキサヘプタデカン-17-酸(46)
無水DCM(15mL)中の45(0.8g、1.37mmol)およびPhSiH3(296mg、2.73mmol)の溶液に、Pd(PPh3)4(40mg、0.035mmol)を、不活性雰囲気下、0℃で添加し、混合物を徐々に室温まで加温し、40分間撹拌した。次いで数滴の水を添加し、揮発性物質を減圧下で除去した。残渣にシリカゲルカラム、0.5%AcOHを含有する10~40%MeOH/DCMでクロマトグラフを行って、化合物46 0.49g(収率66%)を白色固形物として得た。ESI MS:568.3([M+Na]+)。
【0263】
オクチル(5S,10S,13S)-10,13-ビス(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-5-(13-ヒドロキシ-2,5,8,11-テトラオキサトリデカノイル)-3,8,11-トリオキソ-2-オキサ-4,9,12-トリアザテトラデカン-14-オエート(XI)
無水DCM(15mL)中の化合物40(200mg、0.46mmol)および46(250mg、0.46mmol)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、118mg、0.92mmol)を添加し、混合物を、不活性雰囲気下、0℃に冷却した。HATU(192mg、0.50mmol)を一度に添加し、混合物を0℃で2時間撹拌し、H2O(80mL)でクエンチした。水性相を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。残渣を逆相分取HPLC(20%アセトニトリル/80%水、続いて40分かけて70%アセトニトリルまで増加させ、100%アセトニトリルで10分にわたって洗浄する;流速15mL/分)を使用して精製して、化合物XI 145mg(収率33%)を淡黄色固形物として得た。1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 0.86 (t, J = 6.5 Hz, 3H), 1.23-1.32 (m, 10H), 1.58-1.63 (m, 2H), 1.91-2.24 (m, 6H), 2.33-2.39 (m, 3H), 2.43-2.51 (m, 4H), 3.43 (brs, 1H), 3,55-3.72 (m, 14H), 4.05-4.11 (m, 2H), 4.19-4.28 (m, 2H), 4.33-4.43 (m, 4H), 4.47-4.51 (m, 1H), 5.35-5.39 (m, 2H), 6.24 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.11 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.29-7.32 (m, 2H), 7.37-7.40 (m, 2H), 7.45 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.59-7.62 (m, 2H), 7.74 (d, J = 7.5 Hz, 2H). 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 14.0, 22.5, 25.7, 26.7, 27.7, 27.9, 28.4, 29.07, 29.09, 31.7, 36.2, 36.4, 47.1, 51.9, 52.5, 53.4, 54.8, 55.1, 61.4, 64.2, 65.7, 66.8, 68.7, 70.1, 70.3, 70.4, 72.5, 119.9, 125.1, 127.0, 127.6, 141.2, 143.7, 143.9, 156.2, 171.3, 171.6, 171.9, 172.3, 193.8, 194.8. ESI MS: 986.4 ([M+Na]+).
【0264】
アリル(S)-5-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6-ジオキソ-2,10,13,16-テトラオキサ-4,7-ジアザノナデカン-19-オエート(47)
Fmoc-DON-OH(694mg、1.76mmol、1.1当量)およびHATU(701mg、1.84mmol、1.15当量)を無水DCM(10mL)中に懸濁し、0℃に冷却し、DIPEA(1.12mL、6.41mmol、4.0当量)を添加した。10分撹拌後、無水DCM(5mL)中の25(419mg、1.60mmol、1.0当量)の溶液を滴加した。反応混合物を0℃で30分間、室温で1.5時間撹拌した。揮発性物質を真空中で蒸発させ、残渣をシリカゲル(DCM/MeOH、20:1)で精製した。所望の生成物47(1.0g、98%)が黄色がかった油状物として観察された。1H NMR (401 MHz, CDCl3): 1.90 - 2.03 (m, 1H), 2.10 - 2.16 (m, 1H), 2.37 - 2.56 (m, 2H), 2.61 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.18 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 3.58 - 3.64 (m, 10H), 3.66 - 3.78 (m, 2H), 4.21 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 4.31 - 4.44 (m, 2H), 4.58 (dt, J = 5.7, 1.4 Hz, 2H), 5.15 - 5.37 (m, 2H), 5.80 - 5.97 (m, 2H), 6.86 - 6.94 (m, 1H), 7.27 - 7.44 (m, 5H), 7.60 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.76 (d, J = 7.5 Hz, 2H). UPLC MS: [M + Na]+ (C33H40N4O9Na): 659.448.
【0265】
アリル(S)-15-アミノ-19-ジアゾ-14,18-ジオキソ-4,7,10-トリオキサ-13-アザノナデカノエート(48)
化合物47(1.0g、1.57mmol、1.0当量)を無水DCM(16mL)中に溶解し、Et2NH(1.63mL、15.7mmol、10.0当量)を添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。揮発性物質を蒸発させ、残渣48を一切精製することなくさらなる反応に使用した。
【0266】
アリル(5S,8S)-5,8-ビス(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-1-(9H-フルオレン-9-イル)-3,6,9-トリオキソ-2,13,16,19-テトラオキサ-4,7,10-トリアザドコサン-22-オエート(49)
Fmoc-DON-OH(680mg、1.73mmol、1.1当量)およびHATU(687mg、1.81mmol、1.15当量)を無水DM(15mL)中に懸濁し、0℃に冷却し、DIPEA(1.09mL、6.29mmol、4.0当量)を添加した。10分撹拌後、無水DCM(7mL)中の48(651mg、1.57mmol、1.0当量)の溶液を滴加し、反応混合物を0℃で30分間、室温で1.5時間撹拌した。揮発性物質を真空中で蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(H2O中の5%から100%アセトニトリルの勾配、25分)で精製した。所望の生成物49(525mg、42%)が黄色がかった固形物として観察された。1H NMR (401 MHz, DMSO-d6): 1.68 - 1.93 (m, 4H), 2.23 - 2.40 (m, 4H), 2.57 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.39 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 3.43 - 3.52 (m, 10H), 3.63 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.95 - 4.03 (m, 1H), 4.16 - 4.36 (m, 4H), 4.55 (dt, J = 5.4, 1.6 Hz, 2H), 5.16 - 5.32 (m, 2H), 5.83 - 6.07 (m, 3H), 7.29 - 7.46 (m, 4H), 7.56 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.68 - 7.77 (m, 2H), 7.89 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.92 - 8.02 (m, 2H). UPLC MS: [M + Na]+ (C39H47N7O11Na): 812.916.
【0267】
アリル(15S,18S)-18-アミノ-22-ジアゾ-15-(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-14,17,21-トリオキソ-4,7,10-トリオキサ-13,16-ジアザドコサノエート(50)
化合物49(525mg、0.665mmol、1.0当量)を無水DMF(5mL)中に溶解し、Et2NH(688μL、6.65mmol、10.0当量)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。揮発性物質を真空中で蒸発させ、残渣50を一切精製することなくさらなる反応に使用した。
【0268】
アリル(6S,9S)-6,9-ビス(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-2-メチル-4,7,10-トリオキソ-14,17,20-トリオキサ-2,5,8,11-テトラアザトリコサン-23-オエート(51)
化合物50(377mg、0.665mmol、1.0当量)および2,5-ジオキソピロリジン-1-イルジメチルグリシネート(266mg、1.33mmol、2.0当量)を無水DMF(5mL)中で懸濁し、懸濁物を室温で2時間撹拌した。揮発性物質を真空中で蒸発させ、残渣をシリカゲル(DCM/MeOH、10:1)で精製した。所望の生成物51(228mg、53%)が黄色がかった油状物として観察された。1H NMR (401 MHz, CDCl3): 1.95 - 2.21 (m, 4H), 2.32 (s, 6H), 2.35 - 2.58 (m, 4H), 2.91 - 3.09 (m, 2H), 3.39 - 3.47 (m, 2H), 3.52 - 3.58 (m, 2H), 3.58 - 3.66 (m, 10H), 3.77 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 4.30 - 4.42 (m, 2H), 4.59 (dt, J = 5.6, 1.5 Hz, 2H), 5.17 - 5.44 (m, 4H), 5.91 (ddt, J = 17.2, 10.4, 5.7 Hz, 1H), 6.85 - 6.92 (m, 1H), 7.48 - 7.59 (m, 1H), 7.80 (d, J = 7.2 Hz, 1H). UPLC MS: [M + H]+ (C28H45N8O10): 653.155.
【0269】
(6S,9S)-6,9-ビス(4-ジアゾ-3-オキソブチル)-2-メチル-4,7,10-トリオキソ-14,17,20-トリオキサ-2,5,8,11-テトラアザトリコサノン-23-酸(XII)(KNM472)
化合物51(176mg、0.269mmol、1.0当量)およびジメドン(113mg、0.809mg、3.0当量)を無水THF(3mL)中に溶解し、Pd(PPh3)4(12mg、0.011mmol、0.04当量)を添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。揮発性物質を真空中で蒸発させ、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(H2O中のアセトニトリルの5%から100%の勾配、25分)およびシリカゲル(DCM/MeOH、10:1+1%Et3N)で精製した。所望の生成物XII(51mg、31%)が黄色がかった油状物として観察された。1H NMR (401 MHz, DMSO-d6): 1.68 - 1.99 (m, 4H), 2.21 (s, 6H), 2.25 - 2.35 (m, 4H), 2.52 - 2.60 (m, 2H), 2.81 - 2.93 (m, 2H), 3.33 - 3.45 (m, 2H), 3.45 - 3.53 (m, 10H), 3.59 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 4.15 - 4.23 (m, 1H), 4.26 - 4.35 (m, 1H), 6.02 (bs, 2H), 7.81 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.98 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 8.14 (d, J = 7.9 Hz, 1H). UPLC MS: [M + H]+ (C25H41N8O10): 613.048.
【0270】
肝臓ホモジネート研究
肝臓またはEL4リンパ腫腫瘍組織を洗浄し、0.1Mリン酸カリウム緩衝液中で10倍希釈し、プローブ超音波処理器を使用してホモジネートした。アナログの安定性を評価するために、アリコート1mLを各マトリックスから作製し、アナログをスパイク添加して最終アッセイ濃度を20μmとした。スパイク添加された試料をオービタルシェーカー中、37℃で1時間インキュベートし、その後反応を、内部標準(IS;ロサルタン:0.5μm)を含有する3体積のアセトニトリルにより三連でクエンチした。試料をボルテックスで30秒間混合し、10000g、4℃で10分間遠心分離した。上清50マイクロリットルを水50μLで希釈し、テフロン(登録商標)キャップで密封された250μLのポリプロピレンバイアルに移した。化合物の消失を、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)を使用して経時的にモニターした。
【0271】
DON放出アッセイ
DON放出を、以前に記載した方法を使用して肝臓ホモジネートまたは腫瘍ホモジネートにおいて評価した。簡潔には、上清を、真空下、45℃で1時間乾燥させた。各管に、0.2M重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)50μLおよび10mMダブシルクロリド100μLを添加した。ボルテックスで混合した後、試料を60℃で15分間インキュベートして誘導体化し、続いて16000g、4℃で5分間遠心分離した。上清100マイクロリットルを96ウェルプレートに移し、水400μLで希釈し、LC-MS/MSに注入した。DONを、Q Exactive Focusオービトラップ質量分析計(Thermo Fisher Scientific Inc.、Waltham、MA)と連結したDionex超高性能LCシステムで分析した。分離を、1.8μm C18固定相を充てんしたAgilent Eclipse Plusカラム(100×2.1mm2、i.d.)を使用して35℃で達成した。移動相は、水中の0.1%ギ酸およびアセトニトリル中の0.1%ギ酸を含んでいた。ポンプは、勾配溶出を使用して0.3mL/分の流速で3.5分間作動させた。Xcaliburソフトウェア4.0.27.13(Thermo Scientific)で制御された質量分析計を、ポジティブイオン化モードの加熱ESIイオン源で作動させた。定量化を並行反応モニタリングモードで行った。
結果
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0272】
(実施例2)
さまざまなリンカーを有するグルタミン-アンタゴニストデンドリマーコンジュゲートの合成
グルタミンアンタゴニストの全てを、デンドリマー表面上でのコンジュゲーション化学に適したリンカーを用いて合成した。
【0273】
コンジュゲーションのために、デンドリマー表面上のヒドロキシル基を部分的に修飾して、アンタゴニスト-リンカーの基に相補的な反応性官能基を有するリンカーを付加した(
図9)。アンタゴニストを、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)の存在下で活性化酸-アミンカップリング反応を使用して、修飾されたデンドリマーの表面上にコンジュゲートした。最終的なコンジュゲートを透析で精製して、溶媒および小分子量不純物を除去した。中間体および最終的なデンドリマーコンジュゲートを、
1H-NMR、
13C-NMR、HPLC、およびMALDI-TOF/MS分析を使用して特徴付けた。コンジュゲートを高純度(95%超)で合成した。コンジュゲートの薬物負荷を、薬物プロトン対デンドリマーの内部アミドプロトンの積分を比較することによるプロトン積分法を使用して
1H-NMRによって計算した。コンジュゲートの薬物負荷は約5%w/wであった。デンドリマー-薬物コンジュゲートは水溶性であり、溶解度は50~100mg/mLの範囲であった。
以下は、
図9に示されるデンドリマー-グルタミンアンタゴニストコンジュゲートに関する詳細な合成プロトコールである:
【0274】
デンドリマー-酸の合成:DMF(20mL)中のD-OH(1g、0.07mmol)の撹拌溶液に、N,Nジイソプロピルエチルアミン(DIPEA;0.5mL)を添加し、続いて無水グルタル酸(95.8mg、0.840mmol)を添加した。反応混合物を室温(RT、およそ25℃)で24時間撹拌した。次いで反応混合物をDMFで希釈し、1kDa透析膜を使用して、DMFに対して12時間透析し、続いてさらに12時間水で透析を行った。透析プロセス中、溶媒を3~4時間ごとに交換した。水溶液を凍結乾燥させて、D-酸を白色吸湿性固形物として得た。収率:88%
【0275】
1H NMR: (500 MHz, DMSO) δ 8.27 - 7.73 (m, D-内部アミド H), 4.07 (t, D-エステル -CH2), 3.54 - 3.26 (m, D-CH2), 3.25 - 3.00 (m, D-CH2), 2.90 - 2.60 (m, D-CH2およびリンカー CH2), 2.53 - 2.31 (m, D-CH2およびリンカー CH2), 2.26 (m, D-CH2),および1.85 - 1.72 (m, リンカー -CH2).
【0276】
デンドリマー-グルタミンアンタゴニストコンジュゲートの合成:DMF(5mL)中のD-酸(200mg、0.013mmol)の撹拌溶液に、DIPEA(0.1mL)を添加し、続いてNHS(22mg、0.195mmol)およびEDC(37.2mg、0.195mmol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。続いてこれにグルタミン-アンタゴニスト(71.5mg、0.156mmol)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌した。次いで反応混合物をDMFで希釈し、1kDa透析膜を使用して、DMFに対して12時間透析し、続いてさらに12時間水で透析を行った。透析プロセス中、溶媒を3~4時間ごとに交換した。水溶液を凍結乾燥させて、デンドリマーコンジュゲートを白色吸湿性固形物として得た。収率:72%
【0277】
1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 8.29 (d, 薬物-H), 8.16 - 7.69 (m, 薬物-HおよびD-内部アミドH), 6.04 (薬物-H), 4.87 (m, 薬物-H), 4.34 (m, 薬物-H), 4.15 (m, 薬物-H), 4.01 (t, D-エステル -CH2), 3.59 (m, 薬物 H), 3.52 - 2.99 (D-CH2および薬物 H), 2.66 (m, D-CH2および薬物 H), 2.46 - 2.04 (m, D-CH2および薬物 H), 2.01 - 1.23 (m, 薬物 Hおよびリンカー-CH2), 1.17 (d, 薬物 H),および0.87 (dd, 薬物 H).
HPLC:保持時間:保持時間:11.028分;純度:99%。
【0278】
結果
一部の例示的なデンドリマーおよびグルタミンアンタゴニストコンジュゲートを以下の表2に示す。
【表2】
【0279】
(実施例3)
グルタミンアンタゴニストデンドリマーコンジュゲートTTM020(構造VII)は、神経炎症のネズミモデルにおける脳標的係合を示す
方法
動物および薬物投与
マウスの右線条体中にLPS(2.5mg/kg)を頭蓋内注射した。1時間後、デンドリマー-TTM020または空のデンドリマーを、DON当量で2mg/kgの用量でIP投与した。12および72時間後、マウスを屠殺し、右半球を取り出し、以下で記載されるようにCD11b細胞を抽出した。以下で記載されるようにグルタミナーゼ活性アセスメントを行った。
【0280】
脳CD11b+細胞の単離
断頭術によってマウスを屠殺し、右線条体をただちに取り出した。CD11b+細胞を単離した。簡単に述べると、脳組織をHBSS(カタログ番号55021C、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)中で刻み、製造業者の取扱説明書に従って、神経組織解離キット(P)(カタログ番号130-092-628、MACS Militenyi Biotec、Auburn、CA)で解離した。70μmセルストレーナーに通過させた後、得られたホモジネートを300×gで10分間遠心分離した。上清を除去し、細胞ペレットを再懸濁し、ミエリンを、製造業者の取扱説明書に従って、Myelin Removal Beads II(カタログ番号130-096-733、MACS Militenyi Biotec、Auburn、CA)によって除去した。ミエリンを除去した細胞ペレットを再懸濁し、CD11b MicroBeads(カタログ番号130-093-634、MACS Militenyi Biotec、Auburn、CA)と15分間インキュベートし、LSカラムにロードし、quadroMACSマグネットで分離した。CD11b+細胞をLSカラムから洗い流し、次いで洗浄し、無菌HBSS(カタログ番号55037C、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)中に再懸濁した。生存細胞の数を血球計および0.1%トリパンブルー染色を使用して決定した。各脳抽出から5×105個の生存可能なCD11b+細胞が得られた。この抗体結合マイクロビーズ法によって脳ホモジネートから単離されたCD11b+細胞は、ミクログリアが豊富な集団(単離された細胞の95%超)であることが実証されている。
【0281】
グルタミナーゼ活性
次に、CD11b+細胞におけるグルタミナーゼ活性測定を行った。簡潔には、細胞を、プロテアーゼ阻害剤(カタログ番号04693116001、Roche)を含有する氷冷リン酸カリウム緩衝液(45mM、pH8.2)中で超音波処理することによって溶解した。前頭前皮質、海馬、および小脳から単離されたCD11b+および非CD11b+細胞に関しては、溶解物を[3H]-グルタミン(0.09μM、2.73μCi)と室温で180分間インキュベートし、反応を、96ウェルマイクロプレート中、50μlの反応体積で行った。次いで、反応を、イミダゾール緩衝液(20mM、pH7)を添加することによって終了させた。強アニオンイオン交換樹脂(カタログ番号140-1251、Bio-Rad、AG(登録商標)1-X2樹脂、200~400メッシュ、塩化物型)を充てんした96ウェルスピンカラムを使用して、[3H]-グルタメートから未反応の[3H]-グルタミンを分離した。[3H]-グルタメートを、0.1N HClを用いてカラムから溶出し、その96ウェルLumaPlates(カタログ番号6005173)と組み合わせたPerkin Elmer’s TopCount機器を使用して放射能に関して分析した。総タンパク質の測定を、製造業者の取扱説明書に従って、BioRad’s Detergent Compatibleタンパク質アッセイキットを使用して行った。1分あたりのカウントをfmolに変換し、総タンパク質含有量に対して正規化した。データはfmol/mg/時間として表示される。
【0282】
結果
実験設定を
図12に示す。デンドリマー-TTM020(
図13)は、薬物投与後24時間と72時間の両方で非コンジュゲートデンドリマーと比較して、グルタミナーゼ活性を有効に阻害した(
図14)。デンドリマーコンジュゲートDONアナログであるTTM020は、これらのマウスの脳において持続したグルタミナーゼ阻害を提供した。
【0283】
(実施例4)
デンドリマー-CY5は全身投与後脳腫瘍に選択的に位置する
方法
腫瘍接種および処置投与
6~8週齢の雄および雌C57BL/6マウスに、DTP/DCTD/NCI腫瘍リポジトリ(National Cancer Institute、Frederick、MA)から取得したGL261ネズミ膠芽腫細胞を頭蓋内接種した。GL261細胞を、10%FBS、1%P/S、および1%L-グルタミンを含むRPMI中、37℃および5%CO2雰囲気で維持した。マウスを、ケタミン(Vedco、St.Joseph、MO)およびキシラジン(Akorn Animal Health、Lake Forest、IL)カクテルで麻酔した。正中線で頭皮の切開を行い、ブレグマの後方1mmおよび正中線の側方2mmに穿頭孔を開けた。2μLのHamiltonシリンジ(Hamilton Company、Reno、NV)を深さ2.5mmまで下げて、定位フレームおよび自動シリンジポンプ(StoeltingCo.、Wood Dale、IL)を使用して、100,000個の細胞を含有するGL261細胞溶液2μLを10分にわたって注入した。シリンジを0.5mm/分で引き抜き、切開部を縫合した(Ethicon Inc.、Somerville、NJ)。
【0284】
処置の影響をアセスメントするために、GL261脳腫瘍担持マウスを、腫瘍接種後10日目から開始し、4日ごとに2mg/kgの用量(遊離薬物およびデンドリマー-コンジュゲートと同等の薬物用量)で腹腔内投与されるデンドリマー-KMN045(
図16)または遊離DONによって処置した。接種後20日目に(またはマウスが20日目より前に安楽死基準を満たした場合は罹患時に)脳を採取した。腫瘍を切除し、まとめ、腫瘍負荷を総脳質量のうちの腫瘍質量パーセントとして計算した。
【0285】
結果
共焦点顕微鏡および齧歯類腫瘍接種9L神経膠肉腫モデルを使用すると、D-Cy5(24時間)の全身投与によって選択的な脳腫瘍取り込みが生じることが実証された(
図15)。さらに、全脳におけるD-Cy5の定量化によって、腫瘍周囲および対側脳領域と比べて、腫瘍において顕著な蓄積が示された。D-Cy5濃度を、0時間から48時間までの曲線下面積(AUC0-48h)を計算することによって定量化した(p<0.05)。TAMへの類似の選択的局在化がGL261マウスモデルにおいて示された(Zhang F, et al., Biomaterials. 2015;52およびLiaw K, et al., Bioengineering & Translational Medicine. 2020)。
【0286】
グルタミンアンタゴニストデンドリマーコンジュゲートであるD-045は、C57BL/6マウスにおけるGBMのGL261ネズミモデルで直接試験した場合、遊離DONと比べて優れた有効性を示した(
図17Aおよび17B)。コンジュゲートは20%未満の活性薬物を放出した(
図18)。これらのデータは概念実証を提供した。
【0287】
(実施例5)
デンドリマー-DON(TTM020)は、in vitroで腫瘍ホモジネートにおいてDON放出を示し、in vivoで体重に明らかな副作用を一切示さずに腫瘍成長の完全な退縮を示す。
方法
C57BL/6/EL4腫瘍担持マウスを使用して、i.p.経路でD-DONを投与した後に有効性研究を行った。簡潔には、EL4細胞をs.c.注射し(0.3×106個)、腫瘍成長をモニターした。処置に関しては、およそ400mm3の平均腫瘍体積を有する動物を2群-ビヒクルおよびD-DON(DON等価用量で2mg/kg;n=7/群)に無作為化した。動物には、2週間にわたり3日/週で投薬し、同時にVernierキャリパー(VWR、USA)を使用して腫瘍体積、体重、および死亡を記録した。研究は、腫瘍の完全な退縮まで継続した。
【0288】
結果
腫瘍ホモジネート中でインキュベートしたデンドリマー-DON(TTM020)は、DONの時間依存的放出を示した(
図19A)。DDON処置は、腫瘍の成長抑制だけではなく腫瘍の完全な退縮も示した(
図19B)。処置の際、体重への影響は観察されず、デンドリマー-DONは十分な忍容性を示したことが示唆された(
図19C)。
【0289】
デンドリマー-グルタミンアンタゴニストコンジュゲートの全身投与は、活性化免疫細胞において持続的なグルタミンアンタゴニストの薬物レベルを提供し、顕著な用量減少を可能にし、治療指数における実質的な改善をもたらし、この治療戦略を臨床開発にするのを実行可能にすることが確立された。
【0290】
(実施例6)
デンドリマー-Cy5は、慢性社会的敗北ストレス(chronic social defeat stress)(CSDS)後のマウスにおいて活性化ミクログリアによって貪食される
方法
CSDSから10日後(またはCSDSなし)のC57BL/6マウスに50mg/kgのD-Cy5を注射し、24時間後にPBSの経心的灌流を介して屠殺した。脳を4%パラホルムアルデヒドで24時間、後固定し、-80℃で凍結後、厚さ30μmの薄片にし、ミクログリア(Iba1)、アストロサイト(Aldh1l1)、および核(DAPI)に関して染色した。
【0291】
結果
Cy5を使用して、蛍光標識PAMAMデンドリマー(D-Cy5)を合成し、以前に記載されているように特徴付け(Iezzi, R. et al., Biomaterials. 2012, 33 (3), 979-988;Lesniak, W. G. et al., Mol Pharm. 2013, 10 (12), 4560-4571)、CSDS後のマウスにおけるその脳浸透を試験した。CSDS後のマウスにおける活性化ミクログリアは、デンドリマーを選択的に貪食することが観察された。陽性D-Cy5シグナルが、CSDS後にマウスの海馬の歯状回付近で観察され、Iba1染色とオーバーラップし、ミクログリア取り込みを示した。D-Cy5シグナルはアストロサイト(Aldh1l1)において観察されなかった。非CSDSマウスからの脳では陽性シグナルは一切認められなかった。
【0292】
(実施例7)
デンドリマー-TTM020は、CSDSに供されたマウスにおいてミクログリアのグルタミナーゼ活性を阻害する
方法
CSDSを確立後、マウスにD-TTM020(20mg/kg)を経口的に処置し、ミクログリアが豊富なCD11b+細胞を投与してから24時間後に海馬から単離した。次いで、タンパク質をこれらの細胞から抽出し、グルタミナーゼ活性を測定した。
【0293】
結果
以前の本発明者らの報告(Zhu, X. et al., Neuropsychopharmacology. 2019, 44 (4), 683-694)と一致して、CSDSに曝露されたマウスは、グルタミナーゼ活性の有意な増加を示した。D-TTM020は、CSDSマウスからのミクログリアが豊富なCD11b+細胞における上方調節されたグルタミナーゼ活性を減弱させ(
図20)、機能的な標的係合が成功したことを示した。
【0294】
以前の報告では、グルタミンアンタゴニズムは、ミクログリアのグルタミナーゼ活性におけるストレス誘発性の増加、炎症性サイトカイン産生を阻害し、抑うつを含むストレス誘発性精神障害を研究するために使用される十分に確立された齧歯類モデルである慢性社会的敗北ストレス(CSDS)によって誘発された社会的回避および快感消失を正常化することが示されている(Zhu, X. et al., Neuropsychopharmacology. 2019, 44 (4), 683-694)。グルタミンアンタゴニズムは堅固な治療有効性を示すが、その慢性的な投薬は、消化管毒性をもたらすことが公知であり、そのトランスレーショナルな適用は限定されている。その顕著な臨床的潜在能を考慮し、ヒドロキシル-デンドリマーナノ粒子送達システムを使用して、炎症を有する脳にグルタミンアンタゴニストを直接標的化することによってこの限定に取り組んだ。デンドリマー-TTM020(D-TTM020)の全身投与は、持続的な脳薬物レベルを提供し、同時に末梢からは迅速に消失し、その忍容性に実質的な改善をもたらし、そのストレス関連心理社会的行動欠損において堅固な有効性を維持する。
【0295】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、開示される発明が属する当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において引用される刊行物およびそこで引用される材料は、参照により具体的に組み込まれるものとする。
【0296】
当業者であれば、日常的な実験だけを使用して、本明細書において記載される本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識または確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】