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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】吸入器システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 13/00 20060101AFI20240514BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20240514BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240514BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61M13/00
A61M15/00 Z
A61K31/573
A61K9/20
A61K9/22
A61K9/08
A61P11/00
A61P11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566429
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022061579
(87)【国際公開番号】W WO2022229437
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】2106254.2
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルトン‐エドワーズ,マーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA36
4C076AA38
4C076BB01
4C076CC15
4C076FF31
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA35
4C086NA06
4C086NA12
4C086NA20
4C086ZA59
(57)【要約】
対象者の呼吸器疾患の増悪後治療の用途の経口コルチコステロイドを備える医薬組成物が提供され、増悪後治療は、初期1用量の前記経口コルチコステロイドを含む。増悪後治療は、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入による吸入パラメータ基準の充足、及び/又は、対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器の増悪後使用に関するレスキュー吸入器使用基準の充足まで継続され、当該充足の時点で経口コルチコステロイドの1用量が上記初期1用量から変更される。さらに、吸入パラメータ基準が充足されているかを判定するための、かつ、吸入パラメータの増悪後値を吸入パラメータのベースライン値と比較するためのシステムおよび方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の呼吸器疾患の増悪後治療の用途の経口コルチコステロイドを備える医薬組成物であって、前記増悪後治療は、初期1用量の前記経口コルチコステロイドを含み、前記増悪後治療は、前記対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入による吸入パラメータ基準の充足、及び/又は、前記対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器の増悪後使用に関するレスキュー吸入器使用基準の充足まで継続され、当該充足の時点で前記経口コルチコステロイドの1用量が前記初期1用量から変更される、医薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの吸入器は、前記1回又は複数回の増悪後吸入の際に前記対象者にメンテナンス薬剤を送達するように構成されたメンテナンス吸入器を備える、
請求項1に記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの吸入器は、前記1回又は複数回の増悪後吸入の際に前記対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器を備える、
請求項1または請求項2に記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項4】
前記経口コルチコステロイドの前記1用量が、前記吸入パラメータ基準の充足及び/又は前記レスキュー吸入器使用基準の充足後に、前記初期1用量に対して減らされる、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項5】
前記経口コルチコステロイドの前記1用量が、前記吸入パラメータ基準の充足及び/又は前記レスキュー吸入器使用基準の充足後に、ゼロにまで減らされる、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項6】
前記対象者がベースラインレスキュー吸入器使用を有し、前記レスキュー吸入器使用基準の充足が、増悪後レスキュー吸入器使用と前記ベースラインレスキュー吸入器使用との比較に基づいて判定される、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項7】
前記対象者が、吸入パラメータのベースライン値によって示されるベースライン肺機能を有し、
前記吸入パラメータ基準の充足が、前記1回又は複数回の増悪後吸入から得られた前記吸入パラメータの増悪後値と前記ベースライン値との比較に基づいて判定される、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項8】
前記吸入パラメータ基準は、前記増悪後値が前記ベースライン値に対して定義された所定の許容範囲内にあることによって充足される、
請求項7に記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項9】
前記吸入パラメータは、ピーク吸入流量を備える、
請求項7または請求項8に記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項10】
前記吸入パラメータは、吸入体積を備える、
請求項7から請求項9のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項11】
前記吸入パラメータは、吸入持続時間を備える、
請求項7から請求項10のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項12】
前記吸入パラメータは、ピーク吸入流量に達するまでの時間を備える、
請求項7から請求項11のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項13】
前記吸入パラメータの増悪後値は、前記ベースライン肺機能への復帰中に前記ベースライン値に向かって増加し、前記吸入パラメータ基準は、前記増悪後値が前記ベースライン値の少なくとも70%であることによって充足される、
請求項7から請求項11のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項14】
前記吸入パラメータの増悪後値は、前記ベースライン肺機能への復帰中に前記ベースライン値に向かって増加し、前記吸入パラメータ基準は、前記増悪後値が前記ベースライン値の少なくとも80%であることによって充足される、
請求項7から請求項11のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項15】
前記吸入パラメータの増悪後値は、前記ベースライン肺機能への復帰中に前記ベースライン値に向かって増加し、前記吸入パラメータ基準は、前記増悪後値が前記ベースライン値の少なくとも90%であることによって充足される、
請求項7から請求項11のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項16】
前記増悪後値は、複数の前記増悪後吸入から得られた前記吸入パラメータの複数の増悪後値の平均値を備える、
請求項7から請求項15のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項17】
前記経口コルチコステロイドの前記初期1用量は、前記経口コルチコステロイドの初期1日用量である、
請求項1から請求項16のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物は、錠剤の形態である、
請求項1から請求項17のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物は、遅延放出錠剤の形態である、
請求項1から請求項17のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物は、液体の形態である、
請求項1から請求項17のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項21】
前記経口コルチコステロイドは、プレドニゾンまたはプレドニゾロンを備える、
請求項1から請求項20のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項22】
前記初期1用量は、18歳以上の成人に対して1日5~60mgの範囲である、
請求項21に記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項23】
前記初期1用量は、18歳以上の成人に対して1日25~60mgの範囲である、
請求項21または請求項22に記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項24】
前記初期1用量は、18歳以上の成人に対して1日30~50mgの範囲である、
請求項21から請求項23のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項25】
前記初期1用量は、18歳以上の成人に対して1日40~50mgの範囲である、
請求項21から請求項24のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項26】
前記初期1用量は、12~17歳の小児に対して1日40~50mgの範囲である、
請求項21に記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項27】
前記初期1用量は、1ヶ月~11歳の小児に対して1日1~2mg/kgの範囲である、
請求項21に記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項28】
前記呼吸器疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、
請求項1から請求項27のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項29】
前記呼吸器疾患は、喘息である、
請求項1から請求項27のいずれかに記載の前記用途の医薬組成物。
【請求項30】
対象者の呼吸器疾患の増悪後治療の方法であって、
当該方法は、
前記対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入による吸入パラメータ基準の充足、及び/又は、前記対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器の増悪後使用に関するレスキュー吸入器使用基準の充足まで、初期1用量の経口コルチコステロイドで前記対象者を治療することを備え、当該充足の時点で前記経口コルチコステロイドの1用量を、前記初期1用量から変更する、方法。
【請求項31】
対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信すること、
少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の増悪後吸入から決定された前記吸入パラメータの増悪後値を受信すること、および、
前記増悪後値と前記ベースライン値との比較に基づいて、増悪後の前記対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するための吸入パラメータ基準の充足を判定すること、を備える、方法。
【請求項32】
ベースラインレスキュー吸入器使用を受信すること、
増悪後レスキュー吸入器使用を受信すること、および、
前記増悪後レスキュー吸入器使用と前記ベースラインレスキュー吸入器使用との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するためのレスキュー吸入器使用量の基準の充足を判定すること、を備える、方法。
【請求項33】
対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信すること、
前記対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信すること、
ユーザインターフェースを制御して、前記ベースライン値を伝達すること、および、
前記ユーザインターフェースを制御して、前記増悪後値と前記ベースライン値との比較を可能するように前記増悪後値を伝達すること、を備える、方法。
【請求項34】
ベースラインレスキュー吸入器使用を受信すること、
増悪後レスキュー吸入器使用を受信すること、
ユーザインターフェースを制御して、前記ベースラインレスキュー吸入器使用を伝達すること、および、
前記ユーザインターフェースを制御して、前記増悪後レスキュー吸入器使用と前記ベースラインレスキュー吸入器使用との比較を可能にするように前記増悪後レスキュー吸入器使用を伝達すること、を備える、方法。
【請求項35】
前記ベースライン値は、前記対象者が増悪中でないときの前記少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の吸入から決定される、
請求項31または請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記ベースラインレスキュー吸入器使用は、前記対象者が増悪中でないときに決定される、
請求項32または請求項34に記載の方法。
【請求項37】
コンピュータプログラムコードを備えるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムコードは、前記コンピュータプログラムが1つ又は複数の物理コンピューティングデバイス上で実行されると、前記1つ又は複数の物理コンピューティングデバイスに請求項31から請求項36のいずれかに記載の方法を実施させるように構成されている、コンピュータプログラム。
【請求項38】
1つ又は複数の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記コンピュータ可読媒体は、当該コンピュータ可読媒体上に記憶されたコンピュータプログラムを有し、前記コンピュータプログラムは、1つ又は複数の物理コンピューティングデバイス上で実行されると、前記1つ又は複数の物理コンピューティングデバイスに請求項31から36のいずれかに記載の方法を実施させるように構成されたコンピュータプログラムコードを備える、コンピュータ可読媒体。
【請求項39】
システムであって、
センサシステムを有する少なくとも1つの吸入器、および、
1つ又は複数のプロセッサ、を備え、
前記センサシステムは、対象者が前記少なくとも1つの吸入器を用いて行った吸入から吸入パラメータの値を決定するように構成され、
前記1つ又は複数のプロセッサは、
前記対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信し、
前記少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の増悪後吸入から決定された前記吸入パラメータの増悪後値を受信し、かつ、
前記増悪後値と前記ベースライン値との比較に基づいて、増悪後の前記対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するための吸入パラメータ基準の充足を判定するように構成されている、
システム。
【請求項40】
システムであって、
使用判定システムを有するレスキュー吸入器、および、
1つ又は複数のプロセッサ、を備え、
前記使用判定システムは、対象者にレスキュー薬剤を送達するための前記対象者による前記レスキュー吸入器の使用を判定するように構成され、
前記1つ又は複数のプロセッサは、
ベースラインレスキュー吸入器使用を受信し、
増悪後レスキュー吸入器使用を受信し、かつ、
増悪後レスキュー吸入器使用と前記ベースラインレスキュー吸入器使用との比較に基づいて、増悪後の前記対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するためのレスキュー吸入器使用基準の充足を判定するように構成されている、
システム。
【請求項41】
システムであって、
センサシステムを有する少なくとも1つの吸入器、
ユーザインターフェース、および、
1つ又は複数のプロセッサ、を備え、
前記センサシステムは、対象者が前記少なくとも1つの吸入器を用いて行った吸入から吸入パラメータの値を決定するように構成され、
前記1つ又は複数のプロセッサは、
前記対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信し、
前記対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行った1回又は複数回の増悪後吸入から決定された前記吸入パラメータの増悪後値を受信し、
前記ユーザインターフェースを制御して、前記ベースライン値を伝達し、かつ、
前記ユーザインターフェースを制御して、前記増悪後値と前記ベースライン値との比較を可能にするように前記増悪後値を伝達するように構成されている、
システム。
【請求項42】
システムであって、
使用判定システムを有するレスキュー吸入器、および、
1つ又は複数のプロセッサ、を備え、
前記使用判定システムは、対象者にレスキュー薬剤を送達するための前記対象者によるレスキュー吸入器の使用を判定するように構成され、
前記1つ又は複数のプロセッサは、
ベースラインレスキュー吸入器使用を受信し、
増悪後レスキュー吸入器使用を受信し、
ユーザインターフェースを制御して、前記ベースラインレスキュー吸入器使用を伝達し、かつ、
前記ユーザインターフェースを制御して、前記増悪後レスキュー吸入器使用と前記ベースラインレスキュー吸入器使用との比較を可能にするように、前記増悪後レスキュー吸入器使用を伝達するように構成されている、
システム。
【請求項43】
前記ベースライン値は、前記対象者が増悪中でないときの前記少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の吸入から決定される、
請求項39または請求項41に記載のシステム。
【請求項44】
前記ベースラインレスキュー吸入器使用は、前記対象者が増悪中でないときに決定される、
請求項40または請求項42に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、喘息及び/又はCOPDなどの呼吸器疾患に罹患している対象者の増悪後治療のための経口コルチコステロイドまたは生物学的製剤などの他の薬剤の継続または減量使用をガイドするための治療方法、システム、および、関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の多くは、患者の症状を管理しかつ不可逆的な変化のリスクを低減するために薬剤の長期間の投与を治療に伴う生涯にわたる疾患である。喘息やCOPDなどの病気を完治(cure)する方法は今のところない。治療(treatment)には2つの形態がある。第1には、気道の炎症を抑え、その結果、将来的に症状をコントロールすることを目的とした治療というメンテナンスの側面である。メンテナンス療法は、通常、吸入コルチコステロイド単独または長時間作用性の気管支拡張剤及び/又はムスカリンアンタゴニストとの併用で提供される。第2には、喘鳴、咳、胸の圧迫感、息切れなどの急性の発作を緩和するために、患者が即効性の気管支拡張剤を投与される療法というレスキュー(リリーバー)の側面である。
【0003】
喘息またはCOPDなどの呼吸器疾患を患っている患者は、症状が急激に悪化する呼吸器疾患の偶発的な再燃、すなわち増悪を経験するかもしれない。最悪の場合、増悪は、生命を脅かし得る。
【0004】
患者の呼吸器疾患の増悪の臨床診断後に、患者は経口コルチコステロイドで治療される場合がある。このような経口コルチコステロイドの投与は、制御された流量の酸素と組み合わせることもできるが、これは入院を必要とする。
【0005】
経口コルチコステロイドの投与を伴う増悪後の治療は、患者の転帰を改善し、場合によっては入院期間を短縮することができる。しかしながら、経口コルチコステロイドの投与に問題がないわけではない。特に、経口コルチコステロイドのこのような使用には様々な薬物有害反応(adverse drug reaction)(ADR)が関係する。
【発明の開示】
【0006】
[概要]
従って、本開示は、対象者の呼吸器疾患の増悪後治療の用途の経口コルチコステロイドを備える医薬組成物を提供し、この増悪後治療は、初期1用量(an initial dose)の経口コルチコステロイドを含む。
【0007】
本開示は、また、経口コルチコステロイドの継続または減量使用をガイドするためのシステムおよび方法を提供する。
【0008】
さらに、対象者の呼吸器疾患の増悪後治療の方法であって、対象者を初期1用量の経口コルチコステロイドで治療することを備える方法が提供される。
【0009】
増悪後治療は、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入による吸入パラメータ基準の充足、及び/又は、対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器の増悪後使用に関するレスキュー吸入器使用基準の充足まで継続され、その時点で、経口コルチコステロイドの1用量が初期1用量から変更される。
【0010】
経口コルチコステロイドの投与により患者の転帰が改善されるにもかかわらず、経口コルチコステロイドのこのような使用に関連して様々な副作用(ADR)が、特に治療期間や治療をどのようにやめるかを決定するために考慮される。経口コルチコステロイドの投与期間が長くなると、突然やめるのではなく、ウィーニング・離脱(weaning)として知られる治療終了時の漸減が必要になる傾向がある。
【0011】
経口コルチコステロイドの初期1用量を適宜調節できるように、対象者の、言い換えれば患者の呼吸器疾患をモニタリング(監視)することが望ましい。このようなモニタリングは、例えば、患者の状態が改善していることが観察された場合に、1用量を、初期1用量に対して減らすことを正当化するために用いることができる。長期にわたる経口コルチコステロイドの使用では、このようなモニタリングにより、経口コルチコステロイドの用量を計画的に減らすことができる。
【0012】
このようなモニタリングは、通常、特に患者の退院後においては困難である。1秒間強制呼気容量(forced expiratory volume in 1 second)(FEV1)を用いることができる。しかし、このような呼気流量検査は、追加/異なる操作という形で患者に負担を与える。この負担は、経口コルチコステロイドの初期1用量の調整を正当化するためのデータ収集量の減少につながるかもしれない。したがって、患者は、特にADRのリスクの観点から、必要または望ましいよりも長く経口コルチコステロイドの初期1用量を維持するかもしれない。
【0013】
本開示に係る増悪後治療は、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入による吸入パラメータ基準の充足、及び/又は、対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器の増悪後使用に関するレスキュー吸入器使用基準の充足まで継続される。増悪後吸入は、呼吸器疾患のモニタリングの目的に関係なく、患者が行うことができる。したがって、患者の負担を最小限にする方法でモニタリングを実施することができ、それによって、経口コルチコステロイドの初期1用量の調整を正当化するために必要なデータが適時に得られる可能性を高めることができる。
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明するが、これらは限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係るシステムのブロック図である。
図2図2は、別の実施形態に係るシステムを示す。
図3A図3Aは、実施形態に係る方法のフローチャートである。
図3B図3Bは、別の実施形態に係る方法のフローチャートである。
図3C図3Cは、さらに別の実施形態に係る方法のフローチャートである。
図3D図3Dは、さらなる実施形態に係る方法のフローチャートである。
図4図4は、吸入器の正面斜視図である。
図5図5は、図4に示される吸入器の断面内部透視図である。
図6図6は、図4に示される吸入器の例示の分解斜視図である。
図7図7は、図4に示される吸入器のトップキャップと電子モジュールの分解斜視図である。
図8図8は、図4に示される例示の吸入器を通る空気流量対圧力のグラフである。
【0016】
[詳細な説明]
詳細な説明および特定の例示は、装置、システムおよび方法の模範的な実施形態を示す一方で、例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解されるべきである。本発明の装置、システムおよび方法のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の請求項、および添付の図面からよりよく理解されるであろう。図面が概略的なものにすぎず、正寸で描かれていないことを理解されたい。また、図全体を通して同じ参照符号を使用して同一または類似の部品を表していることも理解されたい。
【0017】
喘息およびCOPDは、気道の慢性炎症疾患である。これらはいずれも、気流閉塞および気管支痙攣の変化しかつ再発する症状によって特徴づけられる。症状には、喘鳴、咳、胸部圧迫感、および、息切れの発症がある。
【0018】
症状は、誘因を回避することによって、および、薬剤、特に吸入される薬剤の使用によって管理される。薬剤は、吸入コルチコステロイド(ICS)および気管支拡張剤を含む。
【0019】
吸入コルチコステステロイド(ICS)は、呼吸器疾患の長期制御に用いられるステロイドホルモンである。これは、気道の炎症を軽減することで機能する。例示は、ブデソニド、ベクロメタゾン(ジプロピオン酸)、フルチカゾン(プロピオン酸またはフロ酸)、モメタゾン(フロ酸)、シクレソニド、および、デキサメタゾン(ナトリウム)を含む。括弧は、好ましい塩またはエステルの形成を示す。とりわけ、ブデソニド、ベクロメタゾン、フルチカゾン、特にブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾンが挙げられる。
【0020】
異なるクラスの気管支拡張剤は、気道内の異なる受容体を標的とする。2つのよく使われるクラスは、β-アゴニストと抗コリン剤である。
【0021】
β-アドレナリンアゴニスト(または“β-アゴニスト”)は、平滑筋弛緩を誘導するβ-アドレナリン受容体に作用し、気管支経路を拡張させる。それらは、作用の持続時間によって分類される傾向がある。長時間作用性のβ-アゴニスト(LABA)の例示は、フォルモテロール(フマル酸)、サルメテロール(キシナホ酸)、インダカテロール(マレイン酸)、バンブテロール(塩酸)、クレンブテロール(塩酸)、オロダテロール(塩酸)、カルモテロール(塩酸)、ツロブテロール(塩酸)およびビランテロール(トリフェニル酢酸)を含む。短時間作用性のβ-アゴニスト(SABA)の例示は、アルブテロール(硫酸)およびテルブタリン(硫酸)を含む。とりわけ、フォルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、ビランテロール、特に、フマル酸フォルモテロール、キシナホ酸サルメテロール、マレイン酸インダカテロール、トリフェニル酢酸ビランテロールを挙げることができる。
【0022】
典型的には、短時間作用性の気管支拡張剤は、急性気管支収縮を速やかに緩和し(そして、しばしば「レスキュー」薬または「リリーバー」薬と称され)、一方で、長時間作用性の気管支拡張剤は、より長期の症状の制御および予防を助ける。しかしながら、いくつかの速効型の長時間作用性の気管支拡張剤は、フォルモテロール(フマル酸)のように、レスキュー薬として使用されてもよい。したがって、レスキュー薬は、急性気管支収縮を緩和する。レスキュー薬は、必要に応じて/必要なときに(pro re nata)服用される。レスキュー薬はまた、例えばICS-フォルモテロール(フマル酸)、典型的にはブデソニド-フォルモテロール(フマル酸)といった組合せ製品の形態であってもよい。したがって、レスキュー薬は、好ましくは、SABAまたは速攻作用性のLABA、より好ましくはアルブテロール(硫酸)またはフォルモテロール(フマル酸)、最も好ましくはアルブテロール(硫酸)である。
【0023】
典型的には硫酸塩として投与されるアルブテロール(サルブタモールとしても知られる)は、本開示の好ましいレスキュー薬である。
【0024】
抗コリン剤(または「抗ムスカリン剤」)は、神経細胞の受容体を選択的に遮断することにより、神経伝達物質のアセチルコリンを遮断する。局所適用では、抗コリン剤は、気道に存在するM3ムスカリン受容体に主に作用し、平滑筋弛緩をもたらし、したがって気管支拡張作用を生じさせる。長時間作用性のムスカリンアンタゴニスト(LAMA)の例示は、チオトロピウム(臭化物)、オキシトロピウム(臭化物)、アクリジニウム(臭化物)、イプラトロピウム(臭化物)、グリコピロニウム(臭化物)、オキシブチニン(塩酸または臭化水素酸)、トルテロジン(酒石酸)、トロスピウム(塩化物)、ソリフェナシン(コハク酸)、フェソテロジン(フマル酸)、および、ダリフェナシン(臭化水素酸)を含む。とりわけ、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、グリコピロニウム、特に、チオトロピウム臭化物、アクリジニウム臭化物、ウメクリジニウム臭化物、グリコピロニウム臭化物を挙げることができる。
【0025】
ドライパウダー吸入器(DPI)、加圧定量吸入器(pMDI)またはネブライザーを介してといった吸入による送達のためにこれらの薬剤を調製および処方する際に、多くのアプローチが取られている。
【0026】
GINA(Global Initiative for Asthma)ガイドラインによれば、喘息の治療に段階的なアプローチをとることができる。軽度の喘息を表すステップ1では、患者には、必要に応じて、硫酸アルブテロールなどのSABAが投与される。患者にはまた、必要に応じて低用量ICS-フォルモテロールが投与されてもよいし、または、SABAが服用される場合には必ず低用量ICSが投与されてもよい。ステップ2では、定期的な低用量ICSがSABAと並行して投与されるか、必要に応じて低用量ICS-フォルモテロールが投与される。ステップ3では、LABAが追加される。ステップ4では、用量を増やし、ステップ5では、抗コリン剤または低用量経口コルチコステロイドといった、さらなるアドオン治療が含まれる。したがって、それぞれのステップは、治療レジメンと見なすことができ、呼吸器疾患の急性重症度の程度に応じてレジメンのそれぞれが構成されてよい。
【0027】
COPDは、世界中において主要な死因である。それは、慢性気管支炎、肺気腫を含みまた小気道を伴う異質の長期疾患である。COPDの患者に生じる病理学的変化は、圧倒的には、気道、肺実質および肺血管系に局在する。表現型的には、これらの変化は、気体を吸収し放出する肺の健康な能力を低下させる。
【0028】
気管支炎は、気管支の長期的な炎症を特徴とする。共通の症状には、喘鳴、息切れ、咳嗽および喀痰の喀出などがあり、いずれも不快感が強く、患者の生活の質に有害である。肺気腫は、長期の気管支の炎症にも関係しており、その炎症反応は、肺組織の崩壊や、気道の進行性狭窄をもたらす。時間が経つにつれて、肺組織はその自然な弾性を失い、拡大する。このようにして、ガスが交換される効力は減少し、呼吸気はしばしば肺内に閉じ込められる。これは、局所的な低酸素症をもたらし、吸入の度に、患者の血流中に送達されている酸素の体積を減少させる。したがって、患者は、息切れや呼吸困難を経験する。
【0029】
COPDを患って生きている患者は、これらの症状の、すべてではないにするとしても、いくつかを日常的に経験する。それらの重症度は、一連の要因によって決まるであろうが、最も一般的には、疾患の進行と相関するであろう。これらの症状は、その重症度とは無関係に、安定のCOPDを示しており、この病態は、様々な薬の投与を通して維持され、管理される。治療は様々であるが、しばしば吸入気管支拡張薬、抗コリン剤、長時間作用型および短時間作用型β-アゴニストおよびコルチコステロイドが含まれる。薬剤は、しばしば、単独療法として、または、併用治療として投与される。
【0030】
患者は、GOLDガイドライン(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease, Inc.)で定義されたカテゴリーを用いてCOPDの重症度により分類される。カテゴリーは、A~Dとラベル付けされ、治療の推奨される第1の選択はカテゴリーによって異なる。患者グループAは、必要に応じて、短時間作用性のムスカリンアンタゴニスト(SAMA)、または、必要に応じて短時間作用性のβ2-アゴニスト(SABA)が推奨される。患者グループBは、長時間作用性のムスカリンアンタゴニスト(LAMA)または長時間作用性のβ2-アゴニスト(LABA)が推奨される。患者グループCは、吸入コルチコステロイド(ICS)+LABA、または、LAMAが推奨される。患者グループDは、ICS+LABA、及び/又は、LAMAが推奨される。
【0031】
喘息又はCOPDのような呼吸器疾患に罹患している患者は、その状態のベースラインの日々の変動を超えて周期的な増悪に苦しむ。増悪とは、呼吸器症状が急性に悪化し、追加療法、すなわち維持療法を超えた治療を必要とする状態のことである。
【0032】
喘息の場合、中等度の増悪に対する追加療法は、SABA、経口コルチコステロイド及び/又は制御された流量の酸素(後者は入院を必要とする)の繰返しの投与である。重度の増悪は、抗コリン(典型的には臭化イプラトロピウム)、噴霧化されたSABAまたはIV硫酸マグネシウムを追加する。
【0033】
COPDの場合、中等度の増悪に対する追加療法は、SABA、経口コルチコステロイド、及び/又は、抗生物質の繰返しの投与である。重度の増悪は、制御された流量の酸素、及び/又は、呼吸補助を追加する(いずれも入院を必要とする)。
【0034】
本開示の意味の範囲内での増悪は、中等度および重度の両方の増悪を含む。
【0035】
対象者の呼吸器疾患の増悪後治療の用途の経口コルチコステロイドを備える医薬組成物が提供され、この増悪後治療は、初期1用量の経口コルチコステロイドを含む。「経口コルチコステロイド」とは、経口投与される(そして、飲み込まれる)コルチコステロイドを意味する。
【0036】
さらに、対象者の呼吸器疾患の増悪後治療の方法が提供され、当該方法は、初期1用量の経口コルチコステロイドで対象者を治療することを備える。
【0037】
経口コルチコステロイドの当該初期1用量は、経口コルチコステロイドの初期1日(1日当たり)用量とすることができる。初期1日用量は、朝などの任意の適切な時間に投与することができる。
【0038】
医薬組成物は、錠剤の形態、遅延放出錠剤の形態、または液体の形態とすることができる。
【0039】
液体の形態の例示として、経口コルチコステロイドは、経口溶液に溶解または分散される。このような経口溶液は、経口コルチコステロイドの任意の適切な濃度、例えば1mg/mL~20mg/mL、好ましくは5mg/mL~15mg/mLを有することができる。
【0040】
医薬組成物は、プレドニゾン、プレドニゾロン(ナトリウム)、デキサメタゾン(ナトリウム)などの任意の適切な経口コルチコステロイドを含むことができる。とりわけ、プレドニゾンとプレドニゾロン(ナトリウム)が挙げられる。プレドニゾロンは、プレドニゾンの活性代謝物である。
【0041】
いくつかの実施形態では、プレドニゾンまたはプレドニゾロンの初期1用量が、18歳以上の成人で1日(1日あたり)5~60mgの範囲である。
【0042】
好ましくは、プレドニゾンまたはプレドニゾロンの初期1用量は、18歳以上の成人で1日25~60mgの範囲である。
【0043】
より好ましくは、プレドニゾンまたはプレドニゾロンの初期1用量は、18歳以上の成人で1日30~50mgの範囲である。
【0044】
最も好ましくは、プレドニゾンまたはプレドニゾロンの初期1用量は、18歳以上の成人で1日40~50mgの範囲である。
【0045】
いくつかの実施形態では、プレドニゾンまたはプレドニゾロンの初期1用量は、12~17歳の小児に対して1日40~50mgの範囲である。
【0046】
いくつかの実施形態では、プレドニゾンまたはプレドニゾロンの初期1用量は、1ヵ月から11歳の小児に対して1日1~2mg/kgの範囲である。
【0047】
増悪後治療は、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入が吸入パラメータ基準(または、いくつかの非限定的な例では複数の吸入パラメータ基準)を充足するまで継続され、その時点で経口コルチコステロイドの1用量が、初期1用量から変更される。
【0048】
代替的または追加的に、増悪後治療は、対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器の増悪後使用に関するレスキュー吸入器使用基準(または、いくつかの非限定的な例では複数のレスキュー吸入器使用基準)の充足まで継続される。
【0049】
経口コルチコステロイドの投与を備える増悪後治療は、患者の転帰を改善し、入院期間を短縮する可能性がある。しかしながら、経口コルチコステロイドの投与に問題がないわけではない。特に、経口コルチコステロイドのこのような使用には様々な薬物有害反応(ADR)が関係する。
【0050】
ADRは、特に、治療期間や治療をどのようにやめるべきかを決定するために考慮される。経口コルチコステロイドの投与期間が長くなると、1用量を、突然にやめるのではなく、ウィーニング・離脱(weaning)として知られる治療終期に向かって漸減することが必要になる傾向がある。しかし、これは、減少を裏付ける経験的なデータがほとんどないまたは全くないまま行われることがある。
【0051】
経口コルチコステロイドの初期1用量を適宜調節できるように、患者の呼吸器疾患をモニタリング(監視)することが望ましい。このようなモニタリングは、例えば、患者の状態が改善していることが観察された場合に、初期1用量に対する1用量の減少を正当化するために用いることができる。長期にわたる経口コルチコステロイドの使用では、このようなモニタリングが、経口コルチコステロイドの1用量を計画的に減量または増量することをガイドできる。
【0052】
本開示に係る増悪後治療は、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入により吸入パラメータ基準が充足されるまで、及び/又は、対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器の増悪後使用に関するレスキュー吸入器使用基準が充足されるまで、継続される。増悪後吸入は、呼吸器疾患のモニタリングの目的に関係なく、患者によって行われてよい。したがって、患者の負担を最小限にする方法でモニタリングを実施することができ、それによって、経口コルチコステロイドの初期1用量の調整を正当化するために必要なデータが適時に得られる可能性を高めることができる。
【0053】
特定の実施形態では、経口コルチコステロイドの1用量は、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足後、初期1用量に対して減らされる。これらの基準のどちらか一方または両方の充足は、したがって、経口コルチコステロイドの1用量を減らすことが正当化される程度まで患者が回復したことを示し得る。このように、これらの基準のどちらか一方または両方の充足は、患者の呼吸器疾患に関連するリスクと経口コルチコステロイドに関連するADRによってもたらされるリスクとのバランスをとることの助けとなることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、経口コルチコステロイドの1用量は、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足後にゼロまで減らされる。この場合、経口コルチコステロイドは、2週間未満などの短期間にわたって、例えば毎日患者に投与されているため、経口コルチコステロイドからの離脱は正当化されないかもしれない。それにもかかわらず、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準は、経口コルチコステロイドの投与を安全に中止できる時期の目安を提供する。
【0055】
代替の実施形態では、初期1用量は、まず、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足に基づき、後続1用量まで減らされ、次いで、後続1用量は、追加の吸入パラメータ基準及び/又は追加のレスキュー吸入器使用基準の充足に基づき、後続1用量よりも少ない追加の後続1用量まで減らされる。
【0056】
このようにして、患者は、吸入器を用いて行った吸入を介した当該患者の状態のモニタリングに基づいて、経口コルチコステロイドから徐々に離脱することができる。
【0057】
このような吸入パラメータ付き及び/又はレスキュー吸入器使用ガイド付きの離脱は、経口コルチコステロイドが、例えば2週間以上のような比較的長期にわたって、例えば毎日患者に投与されている場合に特に有用である。このような比較的長期にわたる経口コルチコステロイドの投与は、例えば、呼吸器疾患の重症度及び/又は副腎不全に関する懸念のために用いられ得る。
【0058】
代替的または追加的に、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量に対して増加させることを正当化する方法を提供してよい。例えば、経口コルチコステロイドの1用量は、1~3週間以内などの所定の期間内に吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準を充足しなかった場合に、初期1用量から増やしてよい。
【0059】
少なくとも1つの吸入器の各々は、吸入パラメータの増悪後値を測定するように構成されたセンサシステムを備えてよい。
【0060】
レスキュー吸入器は、レスキュー吸入器の増悪後使用を判定するように構成された使用判定システムを備えてよい。
【0061】
より一般的には、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足は、本明細書でより詳細に説明されるように、経験的に、及び/又は、以前の増悪前の個人のベースライン値に基づいて確立されてよい。
【0062】
少なくともいくつかの実施形態において、少なくとも1つの吸入器は、1回又は複数回の増悪後吸入の際に対象者にメンテナンス薬剤を送達するように構成されたメンテナンス吸入器を備える。
【0063】
したがって、患者は、経口コルチコステロイドによる増悪後治療と同時に、メンテナンス療法を開始または再開することができる。患者は、メンテナンス薬剤の投与のために、吸入を日常的に行っているため、患者の状態のモニタリングは、呼気流量パラメータを決定するためのスパイロメトリー測定などの追加測定を患者が行うことを必要としない。これにより、前述のように患者の負担が軽減される。
【0064】
非限定的な例示では、メンテナンス薬剤は、ブデソニド、ベクロメタゾン(ジプロピオン酸)、フルチカゾン(プロピオン酸またはフロ酸)、および、フルチカゾン(プロピオン酸またはフロ酸)と組み合わせたサルメテロール(キシナホ酸)から選択される。
【0065】
代替的または付加的に、少なくとも1つの吸入器は、1回又は複数回の増悪後吸入の際に対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器を備える。
【0066】
少なくとも1つの吸入器に含まれるレスキュー吸入器は、(レスキュー吸入器使用基準が利用される実施形態において)、レスキュー吸入器であって対象者によるその増悪後使用がレスキュー吸入器使用基準の充足を決定するために用いられるレスキュー吸入器と同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
したがって、患者が行うレスキュー吸入は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から適切に調節することを視野に入れて患者の状態をモニタリングするために使用することができる。必須のレスキュー吸入中に収集されたレスキュー吸入器使用データ及び/又は吸入パラメータデータは追加のスパイロメトリー測定の必要性を回避し得るので、患者の負担を軽減することができる。
【0068】
レスキュー薬剤は、対象者が必要に応じて使用し得るものなので、レスキュー吸入器の使用は、増悪後回復を追跡するための有用なインジケータを提供する。レスキュー吸入の回数が少ないほど、例えば1日当たりのレスキュー吸入の回数が少ないほど、対象者の状態が改善していることを示すであろう。
【0069】
特定の実施形態において、対象者はレスキュー吸入器のベースライン使用を有し、レスキュー吸入器使用基準の充足は、1回又は複数回の増悪後吸入から得られたレスキュー吸入器の増悪後使用とベースラインレスキュー吸入器使用との比較に基づいて判定される。
【0070】
レスキュー吸入器のベースライン使用は、例えば、対象者が増悪中でなく、かつ、そのような増悪前の悪化中の期間にも増悪後の回復期間にもないときに決定されてよい。
【0071】
レスキュー吸入器のベースライン使用は、例えば、ベースライン期間におけるレスキュー吸入器使用から決定されてよい。このようなベースライン期間は、例えば、5~30日の期間であってよい。
【0072】
レスキュー吸入器使用基準は、例えば、1日(1日当たり・毎日)増悪後レスキュー吸入器使用の回数が、例えば最小日数などの最小期間における、レスキュー吸入器使用の既定閾値1日回数と等しいか、またはそれ未満であることによって充足されてよい。例えば、既定閾値は、レスキュー吸入器使用のベースライン1日回数、例えば、対象者が行ったレスキュー吸入器使用のベースラインアベレージ(例えば平均(mean))1日回数よって定義されてよい。
【0073】
このようなレスキュー吸入器使用のベースライン1日回数、例えば、レスキュー吸入器使用のベースラインアベレージ(例えば平均)1日回数は、例えば、対象者が増悪中でなく、かつ、そのような増悪前の悪化中の期間にも増悪後の回復期間にもないときに決定されてよい。
【0074】
レスキュー薬剤は、本明細書で上記のように定義したとおりであり、典型的には、SABA、SAMA、フォルモテロール(フマル酸)などの速攻作用性のLABA、SAMAとLABA及び/又はICSとの組み合わせ、または、LAMAとLABA及び/又はICSとの組み合わせである。
【0075】
レスキュー薬剤は、例えばICS-フォルモテロール(フマル酸)、典型的にはブデソニドフォルモテロール(フマル酸)といった組み合わせ製品の形態でよい。このようなアプローチは、「MART」(maintenance and rescue therapy)と呼ばれている。
【0076】
非限定的な例では、レスキュー薬剤は、アルブテロール(硫酸)、フォルモテロール(フマル酸)、ブデソニドとホルモテロール(フマル酸)との組み合わせ、ベクロメタゾン(ジプロピオン酸)とアルブテロール(硫酸)との組み合わせ、フルチカゾン(プロピオン酸またはフロ酸)とアルブテロール(硫酸)との組み合わせから選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、吸入パラメータ基準の充足の判定は、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行った1回又は複数回の増悪後吸入の際の吸入器を通る気流に関する吸入パラメータに基づく。
【0078】
いくつかの実施形態において、対象者は、吸入パラメータのベースライン値によって示されるベースライン肺機能を有し、吸入パラメータ基準の充足は、前記1回又は複数回の増悪後吸入から得られた吸入パラメータの増悪後値とベースライン値との比較に基づいて判定される。
【0079】
少なくとも1つの吸入器に含まれるセンサシステムは、吸入パラメータの増悪後値を測定するように構成されてよい。
【0080】
吸入パラメータのベースライン値は、例えば、患者が増悪を経験していない期間中の吸入パラメータの1つ又は複数の非増悪値の測定によって確立することができる。
【0081】
当該ベースライン値は、例えば、ベースライン期間中に対象者が行った吸入(複数可)から決定されてよい。このようなベースライン期間は、例えば、5日から30日の期間であってよい。
【0082】
このような1つ又は複数の非増悪値は、また、例えば、少なくとも1つの吸入器に含まれるセンサシステムによって測定されてもよい。あるいは、吸入パラメータの1つ又は複数の非増悪値は、スパイロメータから、言い換えれば、患者が増悪中でないときに測定された呼気流量から計算されてもよい。このような計算は、例えば、ピーク呼気流量とピーク吸入流量との間に確立された相関関係に基づいてよい。
【0083】
吸入パラメータ基準は、より一般的には、少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の増悪後吸入の際の気流に関する要件とみなしてよい。
【0084】
吸入パラメータは、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う吸入中の気流に関するパラメータとみなすことができる。吸入パラメータは、対象者の肺の状態の代理として機能し得る。
【0085】
任意の適切な吸入パラメータを考慮することができる。非限定的な例では、吸入パラメータは、ピーク吸入流量、吸入体積、吸入持続時間、および、ピーク吸入流量に到達するのに要した時間(本明細書では「ピーク吸入流量までの時間」とも呼ぶ)のうちの1つ又は複数を備え、いくつかの例では、これらの1つ又は複数のみからなる。
【0086】
吸入器(複数可)を用いて患者が行う複数の増悪吸入中における、ピーク吸入流量の増加、吸入体積の増加、吸入持続時間の延長、及び/又は、ピーク吸入流量に達するまでの時間の短縮は、患者の肺の状態の改善を指し示し得る。逆に、ピーク吸入流量、吸入体積、および、吸入持続時間の場合、これらのパラメータが変わらないか減少している(ピーク吸入流量に達するまでの時間の場合、増加している)場合は、患者の肺の状態が悪化していることを指し示し得る。したがって、このような情報は、経口コルチコステロイドの初期1用量を変更するかどうか、いつ変更するか、及び/又は、どのように変更するかを決定する上で貴重である。
【0087】
より一般的には、増悪後値とベースライン値との比較により、患者の状態の改善または悪化の評価を行うことができる。ベースライン値に向かうまたはそれへの回帰、あるいはベースライン値を超える改善を示すこのような比較は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量に対して変更、特に減らすことを正当化するために用いることができる。
【0088】
このような比較は、任意の適切な方法で定量化することができる。非限定的な例では、吸入パラメータ基準は、増悪後値がベースライン値に対して定義された所定の許容範囲内にあることによって充足される。
【0089】
これにより、ベースラインレベルまたは増悪前/非増悪レベルに対する増悪後値の「近接性」の評価とみなすことができる。
【0090】
特定の非限定的な例では、吸入パラメータの増悪後値は、前記ベースライン肺機能への復帰中にベースライン値に向かって増加する。これは、例えば、吸入パラメータがピーク吸入流量、吸入体積、及び/又は、吸入持続時間の場合である。
【0091】
前記ベースライン肺機能への復帰中に吸入パラメータがベースライン値に向かって増加するそのような例では、吸入パラメータ基準は、増悪後値がベースライン値の少なくとも70%、ベースライン値の少なくとも80%、または、ベースライン値の少なくとも90%であることによって充足することができる。
【0092】
少なくともいくつかの実施形態では、増悪後値は、複数の前記増悪後吸入から得られた吸入パラメータの複数の増悪後値の平均値を備えてよい。
【0093】
複数の増悪後値、例えば複数の日数にわたって収集された増悪後値に基づく吸入パラメータ基準の充足に基づくことにより、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量からより確実に変更してもよいであろう。言い換えれば、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更することに関連する信頼性は、1つ以上の吸入パラメータデータの点を特に増悪後の複数の日数にわたる点を用いることによって、増加し得る。このような値のばらつきを考慮して平均値を決定するために、適切な数の増悪後値を使用することができる。
【0094】
また、方法、例えば、コンピュータにより実施される方法が提供され、当該方法は、対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信すること、および、少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信することを備える。
【0095】
方法は、さらに、増悪後値とベースライン値との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するための、例えば変更するのに適した吸入パラメータ基準の充足を判定することを備える。
【0096】
代替的または付加的に、方法は、ベースラインレスキュー吸入器使用、例えば1日(1日当たり・毎日)レスキュー吸入のベースライン回数を受信すること、増悪後レスキュー吸入器使用、例えば1日(1日当たり・毎日)増悪後レスキュー吸入の回数を受信すること、を備える。このような方法は、さらに、増悪後レスキュー吸入使用とベースラインレスキュー吸入使用との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するための、例えば変更するのに適したレスキュー吸入使用基準の充足を判定することを備える。
【0097】
レスキュー吸入器使用基準は、例えば、1日増悪後レスキュー吸入器使用の回数がレスキュー吸入器使用の既定閾値1日回数と等しいか、またはそれ未満であることによって充足されてよい。例えば、既定閾値は、前述の通り、レスキュー吸入器使用のベースライン1日回数、例えば、対象者が行ったレスキュー吸入器使用のベースラインアベレージ(例えば平均(mean))1日回数よって定義されてよい。
【0098】
したがって、本方法は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更することができるような吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準が充足されたときを自動判定することを提供してよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、吸入パラメータは、前述のように、ピーク吸入流量、吸入体積、吸入持続時間、および、ピーク吸入流量に達するのに要した時間のうちの1つ又は複数を備え、または場合によっては、これらの1つ又は複数のみからなる。
【0100】
代替的または追加的に、吸入パラメータ基準は、増悪後値がベースライン値に対して定義された所定の許容範囲内にあることによって充足される。これにより、ベースラインレベルまたは増悪前/非増悪レベルに対する増悪後値の「近接性」の評価を提供することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、吸入パラメータの増悪後値は、前記ベースライン肺機能への復帰中にベースライン値に向かって増加する。これは、例えば、吸入パラメータがピーク吸入流量、吸入体積、及び/又は、吸入持続時間の場合である。
【0102】
そのような実施形態において、吸入パラメータ基準は、増悪後値がベースライン値の少なくとも70%、ベースライン値の少なくとも80%、または、ベースライン値の少なくとも90%であることによって充足することができる。
【0103】
少なくともいくつかの実施形態では、増悪後値は、複数の前記増悪後吸入から得られた吸入パラメータの複数の増悪後値の平均値を備える。
【0104】
前述の通り、増悪後値のばらつきを考慮して平均値を決定するために、適切な数の増悪後値を使用することができる。
【0105】
さらに、対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信すること、および、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行った1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信すること、を備える方法が提供される。本方法はさらに、ユーザインターフェースを制御してベースライン値を伝達すること、および、ユーザインターフェースを制御して、増悪後値と少なくとも1つのベースライン値との比較を可能にするように増悪後値を伝達すること、をさらに備える。
【0106】
代替的または付加的に、方法は、ベースラインレスキュー吸入器使用を、例えば1日(1日当たり)レスキュー吸入器使用のベースライン回数を受信すること、および、増悪後レスキュー吸入器使用を、例えば1日(1日当たり・毎日)増悪後レスキュー吸入の回数を受信すること、を備える。この方法は、さらに、ユーザインターフェースを制御してベースラインレスキュー吸入器使用を伝達すること、および、ユーザインターフェースを制御して、増悪後レスキュー吸入器使用とベースライン吸入器使用との比較を可能にするように増悪後レスキュー吸入器使用を伝達すること、を備える。
【0107】
ベースライン値と増悪後値との比較、及び/又は、ベースラインレスキュー吸入器使用と増悪後レスキュー吸入器使用との比較を可能にするようにユーザインターフェースを制御することにより、本方法は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するかどうか、及び/又は、どのように変更するかを決定する技術タスクにおいて、ユーザ、例えば臨床医を支援する。
【0108】
このような伝達は、例えば、ベースライン値と増悪後値の同時表示、及び/又は、ベースラインレスキュー吸入器使用と増悪後レスキュー吸入器使用の同時表示を適切なディスプレイデバイス上で行うなど、任意の適切な方法で実施されてよい。このような同時表示は、比較が可能であれば、任意の適切な形態をとることができる。
【0109】
特に、値のグラフ表示について言及するが、このグラフ表示は、ヘルスケアプロバイダが、増悪後値及び/又は増悪後レスキュー吸入器使用の経時的変化を見定め、また、現在の増悪後値をベースライン値と比較し、及び/又は、増悪後レスキュー吸入器使用をベースラインレスキュー吸入器使用と比較することを支援し得る。ベースライン値及び/又はベースラインレスキュー吸入器使用は、例えば、増悪後値及び/又は増悪後レスキュー吸入器使用(それぞれ)対時間のグラフに重畳された線として表されてよい。
【0110】
ベースライン値と増悪後値、及び/又は、ベースラインレスキュー吸入器使用と増悪後レスキュー吸入器使用を、それらの間の比較を可能にするように伝達する別の方法も、当業者には自明であろう。例えば、ベースライン値/ベースラインレスキュー吸入器使用は、目盛りのついた(例えばグラフのような)ダイヤル上に表示されてよく、増悪後値/増悪後レスキュー吸入器使用の変化は、ダイヤルに対する針の動きによって表されてよい。
【0111】
吸入パラメータ基準の充足及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足を判定すること備える上記に要約された方法は、ベースライン値と増悪後値との比較及び/又はベースラインレスキュー吸入器使用と増悪後レスキュー吸入器使用との比較を可能にする方法と組み合わされてもよいことが理解されるべきである。したがって、これらの機能を組み合わせた方法が提供される。
【0112】
方法が、吸入パラメータ基準の充足を判定することを備えるか、または、ベースライン値と増悪後値との比較を可能にすることを備えるかにかかわらず、ベースライン値は、対象者が増悪中でなく、かつ、そのような増悪前の悪化中の期間にも増悪後の回復期間にもないときの少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の吸入から決定することができる。
【0113】
さらに、方法が、レスキュー吸入器使用基準の充足を判定することを備えるか、またはベースラインレスキュー吸入器使用と増悪後レスキュー吸入器使用との比較を可能にすることを備えるかどうかにかかわらず、ベースラインレスキュー吸入器使用は、対象者が増悪中でなく、かつ、そのような増悪前の悪化中の期間にも増悪後の回復期間にもないときに決定することができることは、前述の通りである。
【0114】
本開示は、また、コンピュータプログラムであって、前記プログラムが1つ又は複数の物理コンピューティングデバイス上で実行されるとき、前記1つ又は複数の物理コンピューティングデバイスに上述の方法の1つ又は複数を実施させるように構成されたコンピュータプログラムコードを備えるコンピュータプログラムを提供する。
【0115】
同様に、本開示は、1つ又は複数の非一時的なコンピュータ可読媒体であって、そこに記憶されたコンピュータプログラムを有するコンピュータ可読媒体を提供し、当該コンピュータプログラムは、前記コンピュータプログラムが1つ又は複数の物理コンピューティングデバイス上で実行されるとき、前記1つ又は複数の物理コンピューティングデバイスに上述の方法の1つ又は複数を実施させるように構成されたコンピュータプログラムコードを備える。
【0116】
センサシステムを有する少なくとも1つの吸入器を備え、当該センサシステムが当該少なくとも1つの吸入器を用いて対象者が行った吸入から吸入パラメータの値を決定するように構成されたシステムが提供される。
【0117】
本システムは、対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信し、かつ、少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信するように構成された1つ又は複数のプロセッサをさらに備える。1つ又は複数のプロセッサは、さらに、増悪後値とベースライン値との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するための、例えば変更するのに適した吸入パラメータ基準の充足を判定するように構成されている。
【0118】
代替的または追加的に、システムが提供され、このシステムは、対象者にレスキュー薬剤を送達するための対象者によるレスキ、および、1つ又は複数のプロセッサを備え、当該1つ又は複数のプロセッサは、ベースラインレスキュー吸入器使用を受信し、増悪後レスキュー吸入器使用を受信し、かつ、増悪後レスキュー吸入器使用とベースラインレスキュー吸入器使用との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するためのレスキュー吸入器使用基準の充足を判定する。
【0119】
従って、システムは、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更することができるような吸入パラメータ基準が充足されるときを自動判定することを提供してよい。
【0120】
システムは、例えば、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足の判定に応答する出力を提供するように構成されたユーザインターフェースを含んでよい。
【0121】
このような出力は、例えば、ヘルスケアプロバイダへの通知の形態をとってよい。このような通知は、例えば、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更すべきかどうか、いつ、及び/又は、どのように変更すべきかについてのインディケーションを含んでよい。
【0122】
代替的または追加的に、システムは、1つ又は複数のプロセッサと通信可能な、例えば無線通信可能な、薬剤コンテナを備えてよい。薬剤コンテナは、経口コルチコステロイドを、例えば錠剤または遅延放出錠剤の形態で含む。このような非限定的な例では、薬剤コンテナは、対象者が経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するのを補助するような吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準が充足されたことの判定に応答してよい。
【0123】
上述のシステムの機能性の代替案としてまたはこれに加えて、本開示は、センサシステムを有する少なくとも1つの吸入器と、ユーザインターフェースとを備え、センサシステムが、少なくとも1つの吸入器を用いて対象者が行う吸入から吸入パラメータの値を決定するように構成されたシステムを提供する。
【0124】
本システムは、対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信し、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行った1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信するように構成された1つ又は複数のプロセッサをさらに備える。1つ又は複数のプロセッサは、さらに、ユーザインターフェースを制御してベースライン値を伝達し、かつ、ユーザインターフェースを制御して増悪後値とベースライン値との比較を可能にするように増悪後値を伝達するように構成される。
【0125】
代替的または付加的に、システムが提供され、このシステムは、対象者にレスキュー薬剤を送達するための対象者によるレスキュー吸入器使用を判定するように構成された使用判定システムを有するレスキュー吸入器、および、1つ又は複数のプロセッサを備え、当該1つ又は複数のプロセッサは、ベースラインレスキュー吸入器使用を受信し、増悪後レスキュー吸入器使用を受信し、ユーザインターフェースを制御してベースラインレスキュー吸入器使用を伝達し、かつ、ユーザインターフェースを制御して増悪後レスキュー吸入器使用とベースラインレスキュー吸入器使用との比較を可能にするように増悪後レスキュー吸入器使用を伝達するように構成されている。
【0126】
ベースライン値と増悪後値との比較を可能にするべくベースライン値と増悪後値とを伝達するように、及び/又は、増悪後レスキュー吸入器使用とベースラインレスキュー吸入器使用との比較を可能にするべくベースラインレスキュー吸入器使用と増悪後レスキュー吸入器使用とを伝達するように、ユーザインターフェースが制御されることにより、システムは、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するかどうか、及び/又は、どのように変更するかを決定する技術タスクにおいて、ユーザ、例えば臨床医を支援する。
【0127】
より一般的には、増悪後治療方法および上述の用途のための医薬組成物に関して議論された任意の実施形態は、方法、コンピュータプログラム、非一時的なコンピュータ可読媒体、および、システムに適用してもよく、方法、コンピュータプログラム、非一時的なコンピュータ可読媒体、および、システムに関して記載された任意の実施形態は、増悪後治療方法および医薬組成物に適用してもよい。
【0128】
上記の説明は、経口コルチコステロイドの投与を備える増悪後治療に焦点を当ててきたが、原理はより広範に適用可能である。従って、本開示は、対象者の呼吸器疾患の増悪後治療の用途の薬剤を備える医薬組成物を提供し、この増悪後治療は、初期1用量の薬剤を含み、前記増悪後治療は、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行う1回又は複数回の増悪後吸入によって吸入パラメータ基準が充足されるまで、及び/又は、対象者にレスキュー薬剤を送達するように構成されたレスキュー吸入器の増悪後使用に関するレスキュー吸入器使用基準が充足されるまで継続され、充足の時点で、薬剤の1用量が初期1用量から変更される。
【0129】
薬剤は、呼吸器疾患治療用、例えば増悪後治療で採用される任意の薬剤であるか、当該任意の薬剤を備える。例えば、薬剤は、ICS、LABA、LAMA、SABA、SAMA、または、そのような薬剤の任意の組み合わせでよい。このようなICS、LABA、LAMA、SABA、SAMA薬剤の具体例は、本明細書の上述において同定されている。
【0130】
薬剤は、例えば、対象者の呼吸器疾患の治療、例えば呼吸器疾患の増悪後の治療のための生物学的薬剤であり得る。生物学的薬剤は、例えば、オマリズマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブおよびデュピルマブのうちの1つ又は複数であり、または、これらの1つ又は複数を備える。
【0131】
「生物学的薬剤」という用語は、生物源によって作られた、または、生物源に由来する1つ又は複数の活性物質を含む薬を指し得る。
【0132】
生物学的薬剤の費用が比較的高いことは、生物学的薬剤の投与期間には慎重な検討および正当化を必要とする傾向があることを意味する。本開示によるシステムおよび方法は、生物学的薬剤を初期1用量から変更するかどうか、いつ、及び/又は、どのように変更するかを正当化するための信頼できる指標を提供し得る。例えば、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準が充足されると、生物学的薬剤の1用量の減量が正当化され得る。
【0133】
図1は、実施形態に係るシステム10のブロック図である。システム10は、第1吸入器100と、1つ又は複数のプロセッサ14とを備える。第1吸入器100は、メンテナンス薬剤またはSABAのようなレスキュー薬剤を対象者に送達するために使用され得る。SABAは、例えば、アルブテロールを含んでよい。第1吸入器100は、センサシステム12A、及び/又は、使用判定システム12Bを含んでよい。
【0134】
システム10は、例えば、代替的に「吸入器アセンブリ」と称されることがある。
【0135】
センサシステム12Aは、対象者が第1吸入器を用いて行う吸入から吸入パラメータの値を測定するように構成されてよい。センサシステム12Aは、例えば、1つ又は複数の圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、配向センサ、音響センサ、及び/又は、光学センサなどの1つ又は複数のセンサを備えてよい。圧力センサ(単数または複数)は、気圧センサ(例えば、大気圧センサ)、差圧センサ、絶対圧センサ、及び/又は、同様のものを含んでよい。センサは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)及び/又はナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)技術を採用してよい。
【0136】
対象者による吸入中の空気流は、関連する圧力変化を測定することによって監視され得るので、圧力センサは、パラメータを測定するのに特に好適であり得る。図4図8を参照してより詳細に説明されるように、圧力センサは、例えば、吸入中に対象者によって空気および薬剤が引き入れられる流路内に位置するか、または、当該流路と流体連通して配置されてよい。適切な流量センサを介するなど、パラメータを測定する代替的な方法も当業者には自明であろう。
【0137】
代替的または追加的に、センサシステム12Aは、差圧センサを備えてよい。差圧センサは、例えば、対象者が吸入する空気通路のセクションを横切る圧力差を測定するためのデュアルポートタイプのセンサを備えてよい。代替的に、シングルポートゲージタイプのセンサが用いられてもよい。後者は、吸入時と無流時の空気通路の圧力差を測定することにより作動する。読取値の差は、吸入と関連する圧力降下に相当する。
【0138】
図1には示されていないが、システム10は、対象者にレスキュー薬剤またはメンテナンス薬剤などの薬剤を送達するための第2吸入器をさらに備えてよい。第1および第2吸入器は、例えば、互いに異なる薬剤を送達するように構成されてよい。第2吸入器は、第1吸入器100のセンサシステム12Aおよび使用判定システム12Bとは区別されるセンサシステム12A及び/又は使用判定システム12Bを含んでよい。第2吸入器のセンサシステム12Aは、対象者が第2吸入器を用いて行う吸入から吸入パラメータの値を測定するように構成されてよい。例えば、センサシステム12Aは、吸入パラメータの値を測定するために、追加のマイクロエレクトロメカニカルシステム圧力センサ、または、追加のナノエレクトロメカニカルシステム圧力センサといった、追加の圧力センサを含んでよい。
【0139】
このようにして、対象者の肺機能及び/又は肺の健康に関連する情報を収集するために、薬剤、例えばレスキュー薬剤及び/又はメンテナンス薬剤の吸入が用いられてよい。
【0140】
各吸入は、吸入が行われていないときに対する、空気流路内の圧力の減少に関連し得る。圧力が最も低くなる点は、吸入流量のピークに対応する場合がある。センサシステム12Aは、吸入のこの点を検出してよい。ピーク吸入流量は、吸入ごとに異なる場合があり、対象者の臨床状態に依存するかもしれない。ピーク吸入流量の増加は、患者の状態が増悪の後に改善していることを示し得る。
【0141】
各吸入と関連する圧力変化は、代替的または追加的に、吸入体積を決定するために用いられてよい。これは、例えば、センサシステム12Aによって測定された吸入中の圧力変化を用いて、最初に吸入の時間にわたる流量を決定することによって達成されてもよく、次いて、そこから総吸入体積が導出されてもよい。より大きな吸入体積を有する吸入は、患者の状態の増悪後の改善を示し得る。
【0142】
各吸入と関連する圧力変化は、代替的または追加的に、吸入持続時間を決定するために用いられてよい。時間が、例えば、吸入の開始と一致する、圧力センサ12Aによって測定された圧力の最初の減少から、圧力が吸入が行われていないことに対応する圧力に戻るまで記録されてよい。増悪後治療が進むにつれて、対象者の長時間吸入する能力が高まり得るので、吸入時間が長いほど患者の回復を示し得る。
【0143】
一実施形態では、吸入パラメータは、例えば、ピーク吸入流量、吸入体積、及び/又は、吸入持続時間の代替又は追加として、ピーク吸入流量までの時間を含む。この吸入流量ピークまでの時間パラメータは、例えば、吸入の開始と一致する、センサシステム12Aによって測定された圧力の最初の減少から、ピーク流量に対応する最小値に達する圧力まで記録されてよい。状態が改善してきている患者は、吸入流量がピークに達するまでの時間が短くなる傾向がある。これは、増悪中に値が増加する吸入パラメータの一例であることに留意されたい。その後、その増悪後の値は減少してベースライン値に向けて戻り得る。この場合、吸入パラメータ基準は、増悪後値がベースライン値に比例して定義され得る所定の閾値未満である場合に満たされてよい。例えば、吸入パラメータ基準は、増悪後値がベースライン値の130%未満、または120%未満、または110%未満である場合に充足されてよい。
【0144】
非限定的な例では、第1及び/又は第2吸入器は、通常の吸入の場合に、吸入の開始後約0.5秒の間、それぞれの薬剤が分配されるように構成されてよい。対象者の吸入が、0.5秒経過後、例えば約1.5秒後にしかピーク吸入流量に達しないことは、対象者の肺の状態が損なわれていることを部分的に示し得る。対象者の状態の改善は、それに応じて、吸入流量がピークに達するまでのより短い時間、特に指定された約0.5秒の時間に近づくことによって観察され得る。
【0145】
図1に示す非限定的な例では、使用判定システム12Bは、対象者によって行われる吸入(単数または複数)(例えば、吸入器がレスキュー吸入器である場合には対象者による各レスキュー吸入、吸入器がメンテナンス吸入器である場合には対象者による各メンテナンス吸入)を登録するように構成される。
【0146】
非限定的な例では、吸入器100は、薬剤リザーバ(図1では示されない)と、当該リザーバから1用量(1回分の用量)のレスキュー薬剤を計量するように構成された用量計量アセンブリ(図1では示されない)とを備えている。使用判定システム12Bは、用量計量アセンブリによる1用量の計量を登録するように構成されてよく、各計量はそれによって、第1吸入器100を用いて対象者によって行われたレスキュー吸入を示すものとなる。したがって、1用量は対象者によって吸入される前に用量計量アセンブリを介して計量されるはずなので、吸入器100は、薬剤の吸入の回数をモニタリングするように構成されてよい。計量配置の非限定的な一例は、図4~8を参照してより詳細に説明される。
【0147】
代替的または追加的に、使用判定システム12Bは、当業者によって自明な異なる方法で、及び/又は、追加的又は代替的なフィードバックに基づいて、各吸入を登録してよい。例えば、使用判定システム12Bは、センサシステム12Aからのフィードバックがユーザによる1回の吸入が発生したことを示す場合に(例えば圧力測定値または流量が上首尾の吸入と関連付けられた所定の閾値を超える場合のように)、対象者による1回の吸入を登録するように構成されてよい。さらに、いくつかの例では、使用判定システム12Bは、吸入器のスイッチまたは外部デバイス(例えば、スマートフォンのタッチスクリーン)のユーザ入力が、吸入前、吸入中、または、吸入後に対象者によって手動でアクチュエートされたときに、吸入を登録するように構成されてよい。
【0148】
各吸入を登録するために、センサ(例えば圧力センサ)が、例えば、使用判定システム12Bに含まれてよい。このような例示では、使用判定システム12Bおよびセンサシステム12Aは、それぞれのセンサ(例えば圧力センサ)を採用してよいし、または、使用検出および吸入パラメータセンシングの両方の機能を果たすように構成された共通のセンサ(例えば共通の圧力センサ)を採用してよい。
【0149】
センサが使用判定システム12Bに含まれる場合、当該センサは、例えば、図4図8を参照してより詳細に説明されるように、用量計量アセンブリを介して計量された1用量がユーザによって吸入されることを確認するため、またはその程度を評価するために用いられてよい。
【0150】
一実施形態では、センサシステム12A及び/又は使用判定システム12Bは、音響センサを含む。この実施形態における音響センサは、対象者がそれぞれの吸入器100を通じて吸入する際に発生するノイズを感知するように構成される。音響センサは、例えば、マイクロフォンを含んでよい。
【0151】
非限定的な例では、それぞれの吸入器は、例えば、対象者がデバイスを通じて吸入するときにスピンするように配置されたカプセルを備えてよく、カプセルのスピンは、音響センサによる検出のためのノイズを発生させる。カプセルのスピンは、したがって、使用及び/又は吸入パラメータデータを導出するために、適切に解読可能なノイズ、例えばガタガタ音を提供し得る。
【0152】
アルゴリズムが、例えば、使用データ(音響センサが使用判定システム12Bに含まれる場合)を、及び/又は、吸入中の気流に関係する吸入パラメータのための値(音響センサがセンサシステム12Aに含まれる場合)を決定するべく、音響データを解析するために用いられてよい。
【0153】
例えば、P. Colthorpeら、「Adding Electronics to the Breezhaler: Satisfying the Needs of Patients and Regulators」、Respiratory Drug Delivery 2018、1、71-80で説明されるようなアルゴリズムが用いられてよい。発生した音が検出されると、アルゴリズムは、生の音響データを処理して、使用及び/又は吸入パラメータデータを生成してよい。
【0154】
システム10に含まれる1つ又は複数のプロセッサ14は、様々な方法で構成されてよい。図1においてセンサシステム12Aとプロセッサ14との間の矢印によって概略的に表されるように、プロセッサ14は、センサシステム12Aから吸入パラメータデータを受信してよい。同様に、1つ又は複数のプロセッサ14は、使用判定システム12Bから使用データを受信することができる。
【0155】
レスキュー吸入器使用基準の充足は、レスキュー吸入器の増悪後使用に基づく。レスキュー薬剤は、対象者により必要に応じて使用され得るものなので、レスキュー吸入器の使用は、増悪後の回復を追跡するための有用なインジケータとなり得る。使用判定システム12Bを介して決定されるような、増悪後レスキュー吸入の減少、例えば、1日(1日あたり)のレスキュー吸入減少は、例えば、対象者の状態の改善を指し示し得る。
【0156】
一実施形態では、1つ又は複数のプロセッサ14は、対象者によるレスキュー吸入器のベースライン使用を受信するように構成されている。そのようなベースライン使用は、任意の適切な方法で1つ又は複数のプロセッサ14に提供され得る。例えば、ベースライン使用は、例えば1つ又は複数のプロセッサ14によって、前述のように、使用判定システム12Bによって判定された非増悪レスキュー吸入器使用から導出されてよい。
【0157】
1つ又は複数のプロセッサ14は、また、使用判定システム12Bを介して判定されるようなレスキュー吸入器の増悪後使用を受信するようにも構成されている。
【0158】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のプロセッサ14は、さらに、増悪後使用とベースライン使用との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するためのレスキュー吸入器使用基準の充足を判定するように構成されている。
【0159】
代替的または追加的に、1つ又は複数のプロセッサ14は、対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信するように構成されている。このようなベースライン値は、任意の適切な方法で1つ又は複数のプロセッサ14に提供することができる。例えば、ベースライン値は、例えば1つ又は複数のプロセッサ14によって、前述のように、センサシステム12Aによって測定された1つ又は複数の非増悪値から導出されてよい。
【0160】
1つ又は複数のプロセッサ14は、吸入器(複数可)100を用いた1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信するようにも構成されている。そのような増悪後値は、センサシステム12Aから、1つ又は複数のプロセッサ14によって受信されてよい。
【0161】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のプロセッサ14は、増悪後値とベースライン値との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するための吸入パラメータ基準の充足を判定するように構成されている。
【0162】
したがって、システム10は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更することができるような吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準が充足されたときを自動判定することを提供してよい。
【0163】
図1では示されていないが、システム10は、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足の判定に応答する出力を提供するように構成されたユーザインターフェースを含んでよい。そのような出力は、例えば、ヘルスケアプロバイダへの通知の形態であってよい。そのような通知は、前述の通り、例えば、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更すべきかどうか、いつ、及び/又は、どのように変更すべきかについてのインディケーションを含んでよい。
【0164】
代替的または追加的に、システム10は、1つ又は複数のプロセッサ14と通信可能な、例えば無線通信可能な、ピルボックス(図示略)のような薬剤コンテナを備えてよい。薬剤コンテナは、経口コルチコステロイドを、例えば錠剤または遅延放出錠剤の形態で含む。このような非限定的な例では、薬剤コンテナは、対象者が経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更することを支援するような吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準が充足されたことの判定に応答してよい。
【0165】
これは、任意の適切な方法で実施することができる。薬剤コンテナは、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更すべきかどうか、いつ、及び/又は、どのように変更すべきかに関するインディケーションを提供するために、1つ又は複数のプロセッサによって制御されるユーザインターフェースを含んでよい。代替的または追加的に、薬剤コンテナは、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準が充足されているとの判定に応答して、薬剤コンテナ内の経口コルチコステロイドの少なくともいくつかの剤形へのアクセスを制限するように構成されたロック可能な構成要素を備えてよい。これにより、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足に伴って、患者が経口コルチコステロイドの初期1用量とは異なる、例えば低1用量に変更することを支援してよい。
【0166】
別の実施形態では、1つ又は複数のプロセッサ14は、対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信し、吸入器100を用いて対象者が行った1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信するように構成される。このような増悪後値は、前述のように、センサシステム12Aから、1つ又は複数のプロセッサ14によって受信されてよい。1つ又は複数のプロセッサ14は、さらに、例えばディスプレイデバイス(図1では示されない)を備える、または、ディスプレイデバイスの形態のユーザインターフェースを制御して、ベースライン値を伝達し、かつ、ユーザインターフェースを制御して、増悪後値とベースライン値との比較を可能にするように増悪後値を伝達するように構成される。
【0167】
代替的または追加的に、1つ又は複数のプロセッサ14は、対象者によるレスキュー吸入器のベースライン使用を受信するようにも構成される。1つ又は複数のプロセッサ14は、レスキュー吸入器の増悪後使用を受信するように構成される。そのような増悪後使用は、前述のように、使用判定システム12Bから、1つ又は複数のプロセッサ14によって受信されてよい。1つ又は複数のプロセッサ14は、さらに、例えばディスプレイデバイス(図1では示されない)を備える、または、ディスプレイデバイスの形態のユーザインターフェースを制御して、レスキュー吸入器のベースライン使用を伝達し、かつ、ユーザインターフェースを制御して、増悪後使用とベースライン使用との比較を可能にするようにレスキュー吸入器の増悪後使用を伝達するように構成されている。
【0168】
このようにして、システム10は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するかどうか、及び/又は、どのように変更するかを決定する技術タスクにおいて、ユーザ、例えば臨床医を支援する。
【0169】
より一般的には、システム10の1つ又は複数のプロセッサ14は、任意の適切な方法で提供され、実施されてよい。非限定的な例では、1つ又は複数のプロセッサ14は、それぞれの第1及び/又は第2吸入器とは別個に設けられてもよく、その場合、1つ又は複数のプロセッサ14は、それに送信されるレスキュー吸入の回数およびパラメータデータを第1及び/又は第2吸入器のセンサシステム12Aおよび使用判定システム12Bから受信する。このような外部処理ユニット、例えば外部デバイスの処理ユニット、またはサーバ、例えばリモートサーバで、データを処理することにより、吸入器の電池寿命を有利に維持することができる。
【0170】
代替的な非限定的な例では、1つ又は複数のプロセッサ14は、例えば、第1及び/又は第2吸入器のメインハウジングまたはトップキャップ(図1には示されない)内に含まれるなど、第1及び/又は第2吸入器に組み込まれた部分であってよい。このような例では、外部デバイスへの接続性に頼る必要はない。
【0171】
また、1つ又は複数のプロセッサ14の機能の一部は、第1及び/又は第2吸入器に含まれる内部処理ユニットによって実行されてもよく、1つ又は複数のプロセッサ14の他の機能は、外部処理ユニットによって実行されてもよいことが想定もされ得る。
【0172】
より一般的には、システム10は、例えば、判定された増悪後レスキュー吸入器使用、及び/又は、決定された吸入パラメータの増悪後値を対象者及び/又はヘルスケアプロバイダ(例えば、臨床医)に伝達するように構成された通信モジュール(図1には示されない)を含んでよい。その後、対象者及び/又は臨床医は、それに応じて適切な措置をとることができる。例えば、スマートフォン処理ユニットがプロセッサに含まれる場合、判定された増悪後レスキュー吸入器使用及び/又は決定された増悪後値をヘルスケアプロバイダに伝達するために、SMS、電子メール、Bluetooth(登録商標)などのスマートフォンの通信機能が採用されてもよい。
【0173】
図2は、システム10の非限定的な例を示す。システム10は、第1吸入器100と、外部デバイス15(例えば、モバイルデバイス)と、パブリック及び/又はプライベートネットワーク16(例えば、インターネット、クラウドネットワーク等)と、個人データ記憶デバイス17とを含む。外部デバイス15は、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、ワイヤレス対応メディアデバイス、メディアストリーミングデバイス、タブレットデバイス、ウェアラブルデバイス、Wi-Fiまたはワイヤレス通信対応テレビ、または任意の他の適切なインターネットプロトコル対応デバイスを含んでよい。例えば、外部デバイス15は、Wi-Fi通信リンク、Wi-MAX通信リンク、Bluetooth(登録商標)またはBluetooth(登録商標)Smart通信リンク、近距離無線通信(NFC)リンク、セルラー通信リンク、テレビホワイトスペース(TVWS)通信リンク、または、それらの任意の組合せを介してRF信号を送信及び/又は受信するように構成されてよい。外部デバイス15は、パブリックネットワーク16及び/又はプライベートネットワーク16を介して個人データ記憶デバイス17にデータを転送することができる。
【0174】
第1吸入器100は、また、外部デバイス15にデータを転送するためのBluetooth(登録商標)無線などの通信回路を含んでよもい。データは、吸入パラメータデータの上述の増悪後値及び/又は増悪後レスキュー吸入器使用データを含んでよい。
【0175】
第1吸入器100は、また、例えば、プログラム命令、オペレーティングシステムの変更、投与情報、警告または通知、確認応答などのデータを外部デバイス15から受信してよい。
【0176】
外部デバイス15は、1つ又は複数のプロセッサ14の少なくとも一部を含み、それによって吸入パラメータデータを処理、分析、及び/又は、通信してよい。例えば、外部デバイス15は、ブロック18Aによって表されるように、吸入パラメータ基準及び/又はレスキュー吸入器使用基準の充足を判定するようにデータを処理し、そのような情報を個人データ記憶デバイス17に提供し、そこに遠隔記憶させてよい。
【0177】
いくつかの非限定的な例では、外部デバイス15は、また、ブロック18Bによって表されるように、データを処理して、吸入なしイベント、低吸入イベント、良好吸入イベント、過剰吸入イベント及び/又は呼気イベントを識別してよい。外部デバイス15は、また、ブロック18Cによって表されるように、データを処置して、過少使用イベント、過剰使用イベント、および、最適使用イベントを識別してもよい。外部デバイス15は、例えば、データを処理して、送達された用量及び/又は残りの用量の数を見積もり、かつ、エラー状態、例えば、用量計量アセンブリによって計量された1用量の薬剤を対象者が吸入しなかったことを示すタイムスタンプエラーフラグに関連付けられたエラー状態を識別してもよい。外部デバイス15は、グラフィカルユーザインターフェースを通じて使用パラメータを視覚的に提示するためのディスプレイおよびソフトウェアを含んでよい。
【0178】
個人データ記憶デバイス17に記憶されるように図示されているが、いくつかの実施例では、ブロック18Aで表されるように、吸入なしイベント、低吸入イベント、良好吸入イベント、過剰吸入イベント、及び/又は、ブロック18Bで表されるように、呼気イベント、及び/又は、ブロック18Cで表されるように、過少使用イベント、過剰使用イベント、および、最適使用イベントの少なくとも一部の判定は、外部デバイス15に記憶されてもよい。
【0179】
上述の薬剤コンテナもシステム10に含まれる場合、薬剤コンテナは、前述したように、外部デバイス15、特に、1つ又は複数のプロセッサ14と通信するためのBluetooth(登録商標)無線などの追加の通信回路を含んでよい。
【0180】
図3A図3Dは、本開示の実施形態に係る方法20、30、40、50のフローチャートを示す。方法20、30、40、50は、図1及び/又は図2に示されるシステム10などのシステムによって実施されてよい。例えば、第1及び/又は第2吸入器、外部デバイス15、及び/又は、個人データ記憶デバイス17のうちの1つ又は複数が、方法20、30、40、50の全体又は一部を実施するように構成されてもよい。すなわち、ステップ22、24、26、および、32、34、36、38、および、42、44,46、および、52、54、56、58の任意の組み合わせが、第1吸入器、第2吸入器、外部デバイス15、及び/又は、個人データ記憶デバイス17の任意の組み合わせによって実施されてもよい。
【0181】
図3Aに目を向けると、方法20は、対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信すること22、および、少なくとも1つの吸入器を用いた1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信すること24、を備える。図3Aは、ベースライン値の受信22が増悪後値受信24の前に行われる様子を示しているが、これらの動作の順序は逆でもよい。
【0182】
方法20は、さらに、増悪後値とベースライン値との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するための、例えば変更するのに適した吸入パラメータ基準の充足を判定すること26を備える。
【0183】
したがって、方法20は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更することができるような吸入パラメータ基準が充足されたときを自動判定することを提供してよい。
【0184】
図3Bに目を向けると、方法30は、対象者のベースライン肺機能を示す吸入パラメータのベースライン値を受信すること32、および、対象者が少なくとも1つの吸入器を用いて行った1回又は複数回の増悪後吸入から決定された吸入パラメータの増悪後値を受信すること34を備える。
【0185】
方法30は、さらに、ユーザインターフェースを制御して、ベースライン値を伝達すること36、および、ユーザインターフェースを制御して、増悪後値と少なくとも1つのベースライン値との比較を可能にするように増悪後値を伝達すること38を備える。
【0186】
図3Bに描かれているステップ32、34、36、38の順序は限定的なものとみなされるべきではなく、方法30は、任意の適切な順序で実施できることに留意されたい。
【0187】
図3Cに目を向けると、方法40は、ベースラインレスキュー吸入器使用を受信すること42、増悪後レスキュー吸入器使用を受信すること44、および、増悪後レスキュー吸入器使用とベースラインレスキュー吸入器使用との比較に基づいて、増悪後の対象者に投与される経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更するためのレスキュー吸入器使用基準の充足を判定すること46、を備える。
【0188】
したがって、方法40は、経口コルチコステロイドの1用量を初期1用量から変更できるようなレスキュー吸入器使用基準が充足されたときを自動判定することを提供してよい。
【0189】
図3Cは、ベースラインレスキュー吸入器使用を受信すること42が増悪後レスキュー吸入器使用を受信すること44の前に行われることを示しているが、これらの操作の順序は逆でもよい。
【0190】
図3Dに目を向けると、方法50は、ベースラインレスキュー吸入器使用を受信すること52、増悪後レスキュー吸入器使用を受信すること54、ユーザインターフェースを制御してベースラインレスキュー吸入器使用を伝達すること56、および、ユーザインターフェースを制御して、増悪後レスキュー吸入器使用とベースラインレスキュー吸入器使用との比較を可能にするために増悪後レスキュー吸入器使用を伝達すること58を備える。
【0191】
図3Dに描かれているステップ52、54、56、58の順序は限定的なものとみなされるべきではなく、方法50は、任意の適切な順序で実施できることに留意されたい。
【0192】
図4図8は、システム10に含まれてよい吸入器の非限定的な例を提供する。
【0193】
図4は、非限定的な実施例に係る第1吸入器100の前面斜視図を提供する。吸入器100は、例えば、呼吸作動式吸入器でよい。吸入器100は、トップキャップ102、メインハウジング104、マウスピース106、マウスピースカバー108、電子モジュール120、及び/又は、通気口126を備えてよい。マウスピースカバー108は、開閉してマウスピース106を露出させることができるように、メインハウジング104にヒンジ止めされてよい。ヒンジ接続されたものが例示されているが、マウスピースカバー108は、他のタイプの接続を介して吸入デバイス100に接続されてよい。さらに、電子モジュール120は、メインハウジング104の上部のトップキャップ102内に収容されるように図示されているが、電子モジュール120は、吸入器100のメインボディ104内に組み込まれ及び/又は収容されてもよい。
【0194】
図5は、例示的な吸入器100の断面内部透視図である。メインハウジング104の内部に、吸入器100は、薬剤リザーバ110(例えばホッパー)、ベローズ112、ベローズスプリング114、ヨーク(図示されない)、投与カップ116、投与チャンバ117、脱凝集器121、および、流路119を含んでよい。薬剤リザーバ110は、ドライパウダー薬剤など、対象者への送達のための薬剤を含んでよい。マウスピースカバー108が閉位置から開位置に動かされると、ベローズ112が圧縮し、薬剤リザーバ110から投与カップ116に1用量の薬剤を送達し得る。その後、対象者は、1用量の薬剤を受け取るべく、マウスピース106を通じて吸入してよい。
【0195】
対象者の吸入から発生する空気流は、脱凝集器121が投与カップ116内の薬剤の凝集体を崩すことによって1用量の薬剤をエアロゾル化することをもたらす。脱凝集器121は、流路119を通る空気流がある流量に合致するか、またはある流量を超えるか、または、特定の範囲内にある場合に、薬剤をエアロゾル化するように構成されてよい。エアロゾル化されると、1用量の薬剤は、投与カップ116から投与チャンバ117内へ、そして、流路119を通り、マウスピース106から対象者へ移動し得る。流路119を通る空気流がある速度に合致しないか、またはある速度を超えないか、または特定の範囲内にない場合、薬剤が投与カップ116内に残るかもしれない。投与カップ116内の薬剤が脱凝集器121によってエアロゾル化されていない場合には、マウスピースカバー108がその後に開かれたときに、別の1用量の薬剤が薬剤リザーバ110から送達されないかもしれない。したがって、1用量の薬剤は、当該用量が脱凝集器121によってエアロゾル化されるまで、投与カップ116内に溜まっているかもしれない。1用量の薬剤が送達されると、投与確認が、投与確認情報として吸入器100におけるメモリに格納されてよい。
【0196】
対象者がマウスピース106を通して吸入すると、空気が通気口に入り、対象者に薬剤を送達するための空気の流れを提供し得る。流路119は、投与チャンバ117からマウスピース106の端まで延在してよく、投与チャンバ117およびマウスピース106の内部部分を含んでよい。投与カップ116は、投与チャンバ117内に、またはそれに隣接して存在してよい。さらに、吸入器100は、投与カウンタ111を備えてよく、これは、最初に、薬剤リザーバ110内の全投与回数(全用量数)に設定されるように、かつ、マウスピースカバー108が閉位置から開位置へ動かされるたびに、1つずつ減少するように構成されてよい。
【0197】
トップキャップ102は、メインハウジング104に取り付けられてよい。例えば、トップキャップ102は、メインハウジング104上の凹部に係合する1つ又は複数のクリップの使用を介してメインハウジング104に取り付けられてよい。トップキャップ102は、接続されたときにメインハウジング104の一部に重なってよく、例えば、それにより、実質的な空気圧シールがトップキャップ102とメインハウジング104との間に存在するようにしてよい。
【0198】
図6は、トップキャップ102が取り外されて電子モジュール120が露出した状態の例示の吸入器100の分解斜視図である。図6の通り、メインハウジング104の頂面は、1つ又は複数(例えば、2つ)のオリフィス146を含んでよい。オリフィス146の1つは、スライダ140を受けるように構成されてよい。例えば、トップキャップ102がメインハウジング104に取り付けられているとき、スライダ140はオリフィス146の1つを介してメインハウジング104の頂面を突出してよい。
【0199】
図7は、例示の吸入器100のトップキャップ102および電子モジュール120の分解斜視図である。図7の通り、スライダ140は、アーム142と、ストッパ144と、末端145とを規定してよい。末端145は、スライダ140の底部でよい。スライダ140の末端145は、(例えば、マウスピースカバー108が閉位置にあるまたは部分的開位置にあるとき)メインハウジング104内にあるヨークに当接するように構成されてよい。末端145は、ヨークが任意の半径方向の向きにあるときに、ヨークの上面に当接するように構成されてよい。例えば、ヨークの上面は、複数の開口(図示せず)を含んでよく、スライダ140の末端145は、例えば、開口の1つがスライダ140と整列しているかどうかにかかわらず、ヨークの上面に当接するように構成されてよい。
【0200】
トップキャップ102は、スライダスプリング146およびスライダ140を受けるように構成されたスライダガイド148を含んでよい。スライダスプリング146は、スライダガイド148内に存在してよい。スライダスプリング146は、トップキャップ102の内面に係合してよく、スライダスプリング146は、スライダ140の上部(例えば、近位端)に係合(例えば、当接)してよい。スライダ140がスライダガイド148内に設けられるとき、スライダスプリング146は、スライダ140の頂部とトップキャップ102の内面との間で部分的に圧縮されてよい。例えば、スライダスプリング146は、マウスピースカバー108が閉じられているとき、スライダ140の末端145がヨークと接触したままであるように構成されてよい。スライダ140の末端145はまた、マウスピースカバー108が開かれるまたは閉じられている間、ヨークと接触したままであってもよい。スライダ140のストッパ144は、例えば、スライダ140がマウスピースカバー108の開閉を通してスライダガイド148内に保持されるように、スライダガイド148のストッパと係合することができ、逆もまた同様である。ストッパ144およびスライダガイド148は、スライダ140の上下(例えば、軸方向)移動を制限するように構成されてよい。この制限は、ヨークの上下移動よりも小さくてよい。したがって、マウスピースカバー108が全開位置へ動かされる際、ヨークはマウスピース106に向かって上下方向に動き続けてよいが、ストッパ144は、スライダ140の末端145がヨークにもはや接触しなくなるようにスライダ140の上下移動を止めてよい。
【0201】
より一般的には、ヨークは、マウスピースカバー108に機械的に接続され、マウスピースカバー108が閉位置から開かれるとベローズスプリング114を圧縮するように動き、次いで、マウスピースカバーが全開位置に達すると圧縮されたベローズスプリング114を解放し、それによってベローズ112が薬剤リザーバ110から投与カップ116に1用量を送達するように構成されてよい。ヨークは、マウスピースカバー108が閉位置にあるとき、スライダ140と接触していてよい。スライダ140は、マウスピースカバー108が閉位置から開かれるときにヨークによって移動され、マウスピースカバー108が全開位置に達したときにヨークから離れるように配置されてよい。マウスピースカバー108を開くと1用量の薬剤が計量されるので、この配置は、先に説明された用量計量アセンブリの非限定的な例とみなし得る。
【0202】
用量計量の際のスライダ140の動きによって、スライダ140がスイッチ130に係合してこれを作動させてよい。スイッチ130が、電子モジュール120が用量計量を登録することのトリガとなってよい。したがって、スライダ140およびスイッチ130は、電子モジュール120と共に、上述の使用判定システム12Bの非限定的な一例に対応し得る。スライダ140は、この例では、使用判定システム12Bが用量計量アセンブリによる1用量の計量を登録するように構成されるようにする手段とみなし得るものであり、各計量はそれによって、対象者が吸入器100を用いて行った吸入を示すものとなる。
【0203】
スライダ140によるスイッチ130の作動はまた、例えば、電子モジュール120を第1電力状態から第2電力状態に移行させ、マウスピース106からの対象者による吸入を感知させてもよい。
【0204】
電子モジュール120は、プリント回路基板(PCB)アッセンブリ122、スイッチ130、電源(例えば、バッテリ126)、及び/又は、電源ホルダ124を備えてよい。PCBアッセンブリ122は、センサシステム128、無線通信回路129、スイッチ130、及び/又は、1つ又は複数の発光ダイオード(LED)といった1つ又は複数のインジケータ(図示されない)といった、表面に取り付けられた構成要素を含んでよい。電子モジュール120は、コントローラ(例えば、プロセッサ)及び/メモリを含んでよい。コントローラ及び/又はメモリは、PCB122とは物理的に別の構成要素でよい。あるいは、コントローラおよびメモリは、PCB122に取り付けられた他のチップセットの一部でよく、例えば、無線通信回路129は、電子モジュール120用のコントローラ及び/又はメモリを含んでよい。電子モジュール120のコントローラは、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の適切な処理デバイスもしくは制御回路を含んでよい。
【0205】
コントローラは、メモリからの情報にアクセスし、メモリにデータを格納してよい。メモリは、取外不能なメモリ及び/又は取外可能なメモリなど、任意のタイプの適切なメモリを含んでよい。取外不能なメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、または任意の他のタイプのメモリ記憶デバイスを含んでよい。取外可能なメモリは、加入者識別モジュール(SIM)カード、メモリスティック、セキュアデジタル(SD)メモリカードなどを含んでよい。メモリは、コントローラの内部にあってよい。コントローラはまた、サーバまたはスマートフォン上など、電子モジュール120内に物理的に位置していないメモリからデータにアクセスし、その中にデータを格納してよい。
【0206】
センサシステム128は、1つ又は複数のセンサを含んでよい。センサシステム128は、センサシステム12Aの一例でよい。センサシステム128は、例えば、1つ又は複数の圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、配向センサ、音響センサ、及び/又は、光学センサといった、異なるタイプの1つ又は複数のセンサを含んでよいが、これらに限定されるものではない。1つ又は複数の圧力センサは、気圧センサ(例えば、大気圧センサ)、差圧センサ、絶対圧センサ、及び/又は、同様のものを含んでよい。センサは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)、及び/又は、ナノエレクトロメカニカルシステム(NEMS)技術を採用してよい。センサシステム128は、電子モジュール120のコントローラに瞬間的な読取値(例えば圧力値)、及び/又は、時間にわたり集計された読取値(圧力値)を提供するように構成されてよい。図5および図6に示すように、センサシステム128は、吸入器100の流路119の外側にあって、流路119に通気連結されてよい。
【0207】
電子モジュール120のコントローラは、センサシステム128からの測定値に対応する信号を受信してよい。コントローラは、センサシステム128から受信した信号を用いて、1つ又は複数の空気流指標を演算または決定してよい。当該空気流指標は、吸入器100の流路119を通じた気流のプロファイルを示し得る。例えば、圧力システム128が、0.3キロパスカル(kPA)の圧力変化を記録する場合、電子モジュール120は、その変化が流路119を通る約45リットル/分(Lpm)の空気流量に対応するものであると決定してよい。
【0208】
図8は、気流率対圧力のグラフである。図8に示される空気流量およびプロファイルは単なる例であり、決定された空気流量は、吸入デバイス100およびその構成要素のサイズ、形状、および、設計に依存し得る。
【0209】
1つ又は複数のプロセッサ14は、例えば、吸入器100がどのように使用されているかの、及び/又は、使用が1用量の薬剤全部の送達をもたらす可能性があるかどうかの評価の一部として、センサシステム128から受信した信号、及び/又は、決定された空気流指標を、1つ又は複数の閾値または範囲と比較することによって、個人化されたデータをリアルタイムで生成してよい。例えば、決定された空気流指標が特定の閾値未満の空気流量を有する吸入に対応する場合、1つ又は複数のプロセッサ14は、吸入器100のマウスピース106からの吸入がなかったか、または不十分な吸入があったと判定してよい。決定された空気流指標が特定の閾値を超える空気流量を有する吸入に対応する場合、1つ又は複数のプロセッサ14は、マウスピース106からの過剰な吸入があったと判定してよい。決定された空気流指標が特定の範囲内の空気流量を有する吸入に対応する場合、1つ又は複数のプロセッサ14は、吸入が「良好」である、または1用量の薬剤全部が送達されることをもたらすであろう、と判定してよい。
【0210】
圧力測定値及び/又は演算された空気流指標は、吸入器100からの吸入の質または強度を示し得る。例えば、特定の閾値または値の範囲と比較される場合、読取値及び/又は指標は、吸入を、良好吸入イベント、低吸入イベント、吸入なしイベント、または、過剰吸入イベントといった、特定のタイプのイベントとして分類するために、用いられてよい。吸入の分類は、対象者の個人化されたデータとして格納された使用パラメータでよい。
【0211】
吸入なしイベントは、30Lpm未満の空気流量といった特定の閾値未満の圧力測定読取値及び/又は空気流指標と関連付けられてよい。吸入なしイベントは、対象者がマウスピースカバー108を開いた後および測定サイクル中にマウスピース106から吸入しないときに生じ得る。吸入なしイベントはまた、対象者の吸入努力が流路119を介した薬剤の適切な送達を確実にするのに不十分である場合(例えば、吸入努力が脱凝集器121を作動させ、それによって投与カップ116内の薬剤をエアロゾル化するのに不十分な空気流量を生成する場合)にも生じ得る。
【0212】
低吸入イベントは、30Lpmと45Lpmとの間の空気流量といった特定の範囲内の圧力測定値及び/又は空気流指標と関連付けられてよい。低吸入イベントは、対象者がマウスピースカバー108を開いた後にマウスピース106から吸入し、対象者の吸気努力が、少なくとも薬剤の一部の用量が流路119を介して送達されることをもたらす場合に生じ得る。すなわち、吸入は、薬剤の少なくとも一部分が投与カップ116からエアロゾル化されるように脱凝集器121を作動させるのに十分であればよい。
【0213】
良好吸入イベントは、45Lpmと200Lpmとの間の空気流量といった、低吸入イベントを超える圧力測定値及び/又は空気流指標と関連付けられてよい。良好吸入イベントは、対象者がマウスピースカバー108を開いた後にマウスピース106から吸入し、対象者の吸入努力が流路119を介した薬剤の適切な送達を確実にするのに十分である場合(例えば、吸入努力が、脱凝集器121を作動させ、投与カップ116内の1用量の薬剤をエアロゾル化するのに十分な気流を生成する場合)に生じ得る。
【0214】
過剰吸入イベントは、200Lpmを超える空気流量といった、良好吸入イベントを超える圧力測定値及び/又は空気流指標と関連付けられてよい。過剰吸入イベントは、対象者の吸気努力が吸入器100の通常の動作パラメータを超えたときに生じ得る。過剰吸入イベントはまた、対象者の吸気努力が正常範囲内であっても、デバイス100が使用中に適切に位置決めまたは保持されていない場合にも生じ得る。例えば、対象者がマウスピース106から吸入している間に(例えば、指または親指によって)通気口が遮断または閉塞された場合、演算された空気流量は200Lpmを超えるかもしれない。
【0215】
任意の適切な閾値または範囲が、使用されて、特定のイベントを分類してよい。イベントのいくつかまたは全部が用いられてよい。例えば、吸入なしイベントは、45Lpm未満の空気流量と関連付けられてよく、良好吸入イベントは、45Lpmと200Lpmとの間の空気流量と関連付けられてよい。したがって、低吸入イベントは、場合によっては全く用いられなくてよい。
【0216】
圧力測定値及び/又は演算された空気流指標はまた、吸入器100の流路119を通る流れの方向を示し得る。例えば、圧力測定値が圧力の負の変化を反映する場合、読取値は、流路119を介してマウスピース106から流れ出る空気を示し得る。圧力測定値が圧力の正の変化を反映する場合、読取値は、流路119を介してマウスピース106に流れ入る空気を示し得る。したがって、圧力測定値及び/又は空気流指標は、対象者がマウスピース106内へ呼息しているかどうかを判定するために用いられてよく、これは、対象者がデバイス100を適切に使用していないことを示し得る。
【0217】
吸入器100の使用から集められた、またはそれに基づいて計算された個人化されたデータ(例えば、圧力指標、空気流指標、肺機能指標、投与確認情報など)は、外部デバイスを介して(例えば、部分的にまたは全体的に)演算され及び/又は評価されてよい。より具体的には、電子モジュール120内の無線通信回路129は、トランスミッタ及び/又はレシーバ(例えば、トランシーバ)、並びに、追加の回路を含んでよい。例えば、無線通信回路129は、Bluetoothチップセット(例えばBluetooth Low Energyチップセット)、ZigBeeチップセット、Threadチップセットなどを含んでよい。したがって、電子モジュール120は、圧力測定値、空気流指標、肺機能測定値、投与確認情報、及び/又は、吸入器100の使用に関する他の状況といった個人化されたデータを、スマートフォンなどの外部デバイスに無線で提供してよい。個人化されたデータは、使用時間、吸入デバイス100がどのように使用されているかを示す吸入器100からのリアルタイムデータ、および、対象者の肺機能及び/又は医療治療に関するリアルタイムデータといった吸入器のユーザについての個人化されたデータに基づく上述の可能性の判定を可能にするために、外部デバイスにリアルタイムで提供されてよい。外部デバイスは、受信した情報を処理し、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して、吸入器100のユーザに、コンプライアンスおよびアドヒアランスフィードバックを提供するためのソフトウェアを含んでよい。
【0218】
空気流指標は、吸入/呼息の平均流量、吸入/呼息のピーク流量(例えば、受け取った最大吸気)、吸入/呼息の体積、吸入/呼息のピークまでの時間、及び/又は、吸入/呼息の持続時間のうちの1つ又は複数といった、吸入器100からリアルタイムで集められる個人化されたデータを含んでよい。空気流指標はまた、流路119を通る流れの方向を示し得る。すなわち、圧力の負の変化は、マウスピース106からの吸入に対応し得るものであり、圧力の正の変化は、マウスピース106への呼息に対応し得る。空気流指標を計算するとき、電子モジュール120は、環境条件によってもたらされるあらゆる歪み(ひずみ)を除去または最小化するように構成されてよい。例えば、電子モジュール120は、空気流指標を計算する前または計算した後に、大気圧の変化を考慮するために再度ゼロにしてよい。1つ又は複数の圧力測定値及び/又は空気流指標は、タイムスタンプされ、電子モジュール120のメモリに格納されてよい。
【0219】
空気流指標に加えて、吸入器100または別の演算デバイスは、空気流指標を使用して、追加の個人化されたデータを生成してよい。例えば、吸入器100の電子モジュール120のコントローラは、空気流指標を、例えば、ピーク吸気流指標、ピーク呼気流指標、及び/又は1秒間強制呼気容量(FEV1)といった、医師に理解される対象者の肺機能及び/又は肺の健康を示す他の指標に変換してよい。吸入器の電子モジュール120は、回帰モデルといった数理モデルを用いて、対象者の肺機能及び/又は肺の健康の尺度を決定してよい。数理モデルは、吸入の総体積とFEV1との間の相関を特定してよい。数理モデルは、ピーク吸気流とFEV1との間の相関を特定してよい。数理モデルは、吸入の総体積とピーク呼気流との間の相関を特定してよい。数理モデルは、ピーク吸気流とピーク呼気流との間の相関を特定してよい。
【0220】
バッテリ126は、PCB122の構成要素に電力を供給してよい。バッテリ126は、例えばコインセルバッテリのような、電子モジュール120に電力を供給するための任意の適切な電源であってよい。バッテリ126は、再充電可能であっても、再充電不可能であってもよい。バッテリ126は、バッテリホルダ124によって収容されてよい。バッテリホルダ124は、バッテリ126がPCB122と連続的に接触し続けるように、及び/又は、PCB122の構成要素と電気的に接続するように、PCB122に固定されてよい。バッテリ126は、バッテリ126の寿命に影響を及ぼし得る特定のバッテリ容量を有してよい。以下でさらに説明されるように、バッテリ126からPCB122の1つ又は複数の構成要素への電力の分配は、バッテリ126が吸入器100及び/又はその中に含まれる薬剤の有効寿命にわたって電子モジュール120に電力を供給することができることを保証するように管理されてよい。
【0221】
接続状態では、通信回路およびメモリが電力供給によりオンにされてよく、電子モジュール120がスマートフォンなどの外部デバイスと「ペアリング」されてよい。コントローラは、メモリからデータを取り出し、そのデータを外部デバイスに無線で送信してよい。コントローラは、メモリに現在格納されているデータを取り出し、送信してよい。コントローラはまた、メモリに現在格納されているデータの一部を取り出し、送信してもよい。例えば、コントローラは、どの部分が既に外部デバイスに送信されているか判定することができ、それから、以前に送信されていない部分を送信することができてよい。代わりに、外部デバイスは、特定の時刻の後にまたは外部デバイスへの最後の送信の後に、電子モジュール120によって収集された任意のデータといった特定のデータを、コントローラから要求してよい。コントローラは、もしあれば、メモリから特定のデータを取り出し、その特定のデータを外部デバイスに送信してよい。
【0222】
電子モジュール120のメモリに格納されたデータ(例えば、スイッチ130によって生成された信号、センサシステム128によって取得された圧力測定読取値、及び/又は、PCB122のコントローラによって演算された空気流指標)は、外部デバイスに送信されてよく、外部デバイスは、データを処理し、分析して、吸入器100と関連付けられた使用パラメータを決定してよい。さらに、モバイルデバイスに存在するモバイルアプリケーションは、電子モジュール120から受信したデータに基づいて、ユーザのためにフィードバックを生成してよい。例えば、モバイルアプリケーションは、毎日、毎週、または、毎月のレポートを生成し、エラーイベントまたは通知の確認を提供し、対象者に教育的なフィードバックを提供し、及び/又は、同様のものを提供してよい。
【0223】
開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、開示、および添付の特許請求の技術の検討から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。特許請求の範囲において、単語「備える(comprising)」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用されることができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
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図6
図7
図8
【国際調査報告】