(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】3Dプリンティング用高強度アルミニウム合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/08 20060101AFI20240514BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240514BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240514BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240514BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240514BHJP
【FI】
C22C21/08
B22F10/28
B22F1/00 N
B33Y10/00
B33Y70/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568282
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2022006336
(87)【国際公開番号】W WO2022235053
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0057849
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416069
【氏名又は名称】アクツ テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ACTS TECHNOLOGIES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】イ クンヒ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
4K018BA08
4K018BB02
(57)【要約】
本発明は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)及び不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことを特徴とする、3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金に関する。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金において、
前記Xは、前記アルミニウム(Al)と反応してAl-X金属間化合物(Intermetallic compound)を形成し、
前記Yは、前記マグネシウム(Mg)と反応してMg-Y金属間化合物を形成することを特徴とする、3Dプリンティング用Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金。
【請求項2】
前記Xは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Cs)、ハフニウム(Hf)及びイットリウム(Y)の中から選択されるいずれか1種の元素であり、
前記Yは、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)及びゲルマニウム(Ge)の中から選択されるいずれか1種の元素であることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンティング用Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金。
【請求項3】
重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことを特徴とする、3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【請求項4】
3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことを特徴とする、請求項3に記載の3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金。
【請求項5】
前記3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、前記カルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%さらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金。
【請求項6】
前記3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、粉末状又はワイヤー状に提供されることを特徴とする、請求項3に記載の3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金。
【請求項7】
3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品において、
前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、
前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことを特徴とする、3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【請求項8】
前記高強度アルミニウム合金製品の降伏強度が400~500MPaであることを特徴とする、請求項7に記載の3Dプリンティングで製造された、Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品。
【請求項9】
前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことを特徴とする、請求項7に記載の3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品。
【請求項10】
前記高強度アルミニウム合金製品の延伸率が7%以上であることを特徴とする、請求項7に記載の3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品。
【請求項11】
(a)重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすAl-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーを準備する段階と、
(b)前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末を3Dプリンティングして製品を製造する段階と、を含むことを特徴とする、3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品の製造方法。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【請求項12】
前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーは、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことを特徴とする、請求項11に記載の3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項13】
前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーは、カルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%さらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、ジルコニウム(Zr)0.5~1.5、及び残部のアルミニウム(Al)からなる3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属3Dプリンティング(3dimensional printing)は、AM(additive manufacturing)に基づいた加工方式であって、CAD(computer aided design)モデルを用いて、既存の製造技術では実現することができない複雑な形態の製品を容易に製造することができる加工技術である。
【0003】
金属3Dプリンティングは、伝統的な加工技術である鋳造(casing)、鍛造(forging)、溶接(welding)、押出(extruding)などに比べて、製品の開発にかかる時間を短縮することができるという利点がある。
【0004】
かかる利点により、韓国登録特許第10-1754523号、韓国登録特許第10-1145124号などの様々な先行特許で、金属3Dプリンティング技術を応用して金属製品を製造する方法を開示しており、韓国レーザー加工学会誌などの多数の論文で関連技術を発表している。
【0005】
しかし、現在までも十分な強度と延伸率を同時に確保するためのAl-Mg系アルミニウム合金の組成を決定するのに困難があり、かつ、添加される元素の種類及び添加量によって生産性及び品質に顕著な差が発生してこれを適切に調和させるのに多くの困難がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題点を解決するために、本発明は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、ジルコニウム(Zr)0.5~1.5、及び残部のアルミニウム(Al)から構成して降伏強度と生産性を確保した3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一実施例は、Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金において、前記Xは、前記アルミニウム(Al)と反応してAl-X金属間化合物(Intermetallic Compound)を形成し、前記Yは、前記マグネシウム(Mg)と反応してMg-Y金属間化合物を形成することを特徴とする、3Dプリンティング用Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金に関する。
【0008】
前記一実施例によれば、前記Xは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Cs)、ハフニウム(Hf)及びイットリウム(Y)の中から選択されるいずれか1種の元素であり、前記Yは、ケイ素(Si)スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及びゲルマニウム(Ge)の中から選択されるいずれか1種の元素であり得る。
【0009】
前記一実施例によれば、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことを特徴とする、3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金を提供することができる。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【0010】
前記一実施例によれば、3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことができる。
【0011】
前記一実施例によれば、前記3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、カルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%さらに含むことができる。
前記一実施例によれば、前記3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、粉末状又はワイヤー状に提供されることができる。
【0012】
本発明の他の一実施例によれば、本発明は、3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品において、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、及びケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことを特徴とする、3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品に関する。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
前記一実施例によれば、前記高強度アルミニウム合金製品の降伏強度が400~500MPaであり得る。
前記一実施例によれば、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことができる。
前記一実施例によれば、前記高強度アルミニウム合金製品の延伸率が7%以上であり得る。
【0013】
本発明の別の一実施例によれば、本発明は、(a)重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすAl-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーを準備する段階と、(b)前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末を3Dプリンティングして製品を製造する段階と、を含むことを特徴とする、3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品の製造方法に関する。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【0014】
前記一実施例によれば、前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーは、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことができる。
【0015】
前記一実施例によれば、前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーは、前記カルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%さらに含むことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の製造方法によれば、前記アルミニウム合金の組成を、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、ジルコニウム(Zr)0.5~1.5、及び残部のアルミニウム(Al系)と不可避的不純物に限定することにより、400MPa以上の降伏強度を有する3Dプリンティング用アルミニウム合金製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】レーザー出力を170Wに固定したとき、ケイ素の含有量によるビーム速度と極限引張強度との相関関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金及び製造方法について詳細に説明する。次に紹介される図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるように例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態で具体化されてもよく、以下に提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示されてもよい。この際、使用される技術用語及び科学用語において他の定義がなければ、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明及び添付図面において本発明の要旨を不要に不明確にするおそれのある公知の機能及び構成についての説明は省略する。
【0019】
一般に、Al-Mg系アルミニウム合金においてさらに添加される元素の種類及び添加量を調節して所望の強度と延伸率などの物理的性質を確保した。この過程で適切な強度と延伸率を同時に確保することに困難があり、かつ、添加される元素の種類及び添加量によって生産性及び品質に顕著な差が発生してこれを適切に調和させるのに多くの困難がある。
【0020】
本発明の一実施例は、3Dプリンティング用Al-Mg系高強度アルミニウム合金、さらに好ましくはさらに好ましくは、Al-Mg系アルミニウム合金に2種以上の元素を含ませたAl-Mg-X-Y系アルミニウム合金に関する。
【0021】
本明細書において、前記X及び前記Yは、Al-Mg系アルミニウム合金に含まれた元素を意味する。具体的に、前記Xは、前記Al-Mg系アルミニウム合金のうち、アルミニウム(Al)と金属間化合物(intermetallic compound)を形成する元素を意味し、前記Yは、前記Al-Mg系アルミニウム合金のうち、マグネシウム(Mg)と金属間化合物を形成する元素を意味する。
【0022】
実施例によれば、前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金は、X又はYの組成を適切な範囲に設計して機械的特性を制御することができる。例えば、前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金において前記Xの組成が増加すると、3Dプリンティング用Al-Mgの一般的な現象である熱間亀裂(hot cracking)を防止し、強度を向上させることができる。特に、3Dプリンティングの際にレーザーエネルギーを吸収して発生した溶融と、急冷工程(106℃/sec)を経て、前記Xは、前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金で過飽和された状態で存在することができる。
【0023】
その後、前記Xは、熱処理過程で内部に析出して前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金の強度を大きく向上させることができる。しかし、前記Xが前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金に過剰含まれる場合、一部Xが不飽和になって偏析の形態で存在することができる。これにより、前記アルミニウム合金の延伸率を大幅に減少させ、脆性を増加させることができる。
【0024】
前記Yは、前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金においてアルミニウム(Al)と反応せず、マグネシウム(Mg)と反応する特徴がある。具体的に、前記Yは、前記マグネシウム(Mg)と金属間化合物を形成して高速で成形の際に熱間亀裂(hot cracking)を防止することにより、3Dプリンティング製品の品質を向上させることができ、前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金の強度を向上させることができる。前記Yも、前記Xと同様に、前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金の内部に析出して強度を大きく向上させることができる。さらに、前記Yも、前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金に過剰に含まれる場合、延伸率を大きく減少させ、脆性を増加させることができる。
【0025】
実施例によれば、前記Xは、前記アルミニウム(Al)と反応してAl-X金属間化合物を生成し、前記Yは、前記マグネシウム(Mg)と反応してMg-Y金属間化合物を形成することができる。また、前記Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金内の前記Al-X金属間化合物と前記Mg-Y金属間化合物の分率及び合金の微細構造は、3Dプリンティング工程条件(例えば、レーザーパワー、ビームスピード、レーザービーム直径、レーザービームスキャンパターン、及び3Dプリンティング工程時のbuild plate温度、及び3Dプリンティング出力後の熱処理条件)によって変化することができ、これにより、ユーザーは製品の物性、品質、生産性を制御することができる。
【0026】
実施例によれば、前記Xは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Sc)、ハフニウム(Hf)及びイットリウム(Y)の中から選択されるいずれか1種の元素であり、前記Yは、ケイ素(Si)スズ(Sn)、亜鉛(Zn)及びゲルマニウム(Ge)の中から選択されるいずれか1種の元素であることを特徴とするが、これに限定されず、前記アルミニウム(Al)又は前記マグネシウム(Mg)と反応可能な所定の成分に変形することができることは自明である。
以下、本明細書では、前記X元素としてジルコニウム(Zr)、前記Y元素としてケイ素(Si)を例示して説明する。
【0027】
そこで、本発明は、Al-Mg系アルミニウム合金にケイ素(Si)及びジルコニウム(Zr)を添加するが、合金の組成を、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、最終的に400MPa以上の降伏強度(Yield Strength、YS)を有する3Dプリンティングで製造されたアルミニウム合金の製品を製造することができる3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金及びその製造方法を提供することができる。
【0028】
また、本発明の他の一実施例によれば、前記3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金にカルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%さらに含むことにより、合金の製造過程でマグネシウム(Mg)の酸化及び気化を抑制して生産性を向上させることができる。
【0029】
通常のAl-Mg系アルミニウム合金は、製造過程でマグネシウム(Mg)の酸化が進んでMgO、Al2O3、Al2MgO4などの酸化物が多量形成され、これにより金属内の多様な欠陥が発生することができる。
【0030】
これを防止するために、本発明は、Al-Mg系アルミニウム合金、好ましくはAl-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金にカルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%添加することができる。前記カルシウム(Ca)は、前記アルミニウム合金に含まれているマグネシウム(Mg)と反応して(Mg、Ca)O2皮膜を形成することができる。これにより、前記マグネシウム(Mg)の酸化を防止することができる。
【0031】
また、通常のAl-Mg系アルミニウム合金は、3Dプリンティングの際にレーザービームによる溶融により発生するメルトプール(Melt pool)によって、前記マグネシウム(Mg)の一部が気化により損失する現象が発生することがある。この過程で一部のマグネシウムが気化して空気中に浮遊するヒューム(fume)現象が発生することがある。この場合、発生した前記ヒューム(fume)は、3Dプリンターのレーザースキャンの際に、レーザービームを散乱させて3Dプリンティングの生産性と製品の品質に悪影響を与えることができる。これを防止するために、本発明では、前記カルシウム(Ca)を含んでマグネシウム(Mg)の発火温度を上昇させることができる。
【0032】
すなわち、前記カルシウム(Ca)によってマグネシウム(Mg)の発火温度が上昇することにより、溶融部位に過度なヒューム(fume)が発生することを防止することができ、前記メルトプール(melt pool)において前記マグネシウム(Mg)が気化により損失することを減少させることができる。これにより、生産性を向上させることができる。
【0033】
以下、本発明の実施例による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の組成範囲について詳細に説明する。以下では、特に言及がない限り、単位は重量%である。
【0034】
一実施例によれば、前記3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなることができる。
マグネシウム(Mg)は、2~13重量%含まれる。
【0035】
前記マグネシウム(Mg)は、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の強度を決定する役割を果たすことができる。具体的に、前記マグネシウム(Mg)は、合金内の前記ケイ素(Si)とMg2Si相を析出させて析出強化(Precipitation strengthening)効果を実現することができる。このような理由から、Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の強度を確保するために、前記マグネシウム(Mg)は、2重量%以上で含まれることが好ましい。もし、前記マグネシウム(Mg)が2重量%未満で含まれると、十分な強度を確保し難くなる。
【0036】
一方、前記マグネシウム(Mg)が13重量%を超えると、3Dプリンティング過程で過度なヒューム(fume)が発生して良好な製品を出力或いは製造することが難しい。これは、前記マグネシウム(Mg)の一部が気化して発生したヒューム(fume)がレーザービームを散乱させることができるためである。このような理由から、前記マグネシウム(Mg)の含有量は、2~13重量%、好ましくは5~10重量%で提供されてもよく、より好ましくは5~7重量%であってもよい。
ケイ素(Si)は、1~5重量%含まれる。
【0037】
前記ケイ素(Si)は、上述したように、前記マグネシウム(Mg)と反応して高い硬度のMg2Si相を析出させることができる。これは、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金で析出硬化(Precipitation Strengthening)を誘導して強度を大きく向上させることができる。もし、前記ケイ素(Si)が1重量%未満で含まれると、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金が3Dプリンティング過程で高速にて成形の際に亀裂(Hot cracking)が発生して3Dプリンティング出力製品の品質が減少することがある。
【0038】
実施例によれば、前記アルミニウム合金の十分な強度を確保するために、前記ケイ素(Si)は1重量%以上含まれ得る。但し、前記ケイ素が5重量%を超えると、Mg2Si相の分率があまり多くて延伸率が減少するという利点がある。
【0039】
一方、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金において、前記ケイ素(Si)と前記マグネシウム(Mg)は、下記関係式1を満たすことができる。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【0040】
前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金内の前記マグネシウム(Mg)と前記ケイ素(Si)の重量%の比率が1.5未満であれば、前記ケイ素(Si)に比べて前記マグネシウム(Mg)の量が不足してMg
2Si相が析出する程度が減少することがあり、その影響により強度の向上が微々たるものであり得る。さらに、3Dプリンティングの際に、ケイ素重量の比率減少は、3Dプリンティングの際に必要エネルギーを増加させて生産性に大きな影響を与えることができる。前記ケイ素(Si)による生産性減少効果は、後述する
図2を参照してより具体的に説明する。
【0041】
逆に、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金内の前記マグネシウム(Mg)と前記ケイ素(Si)の重量%の比率が8.5以上であれば、相対的に前記ケイ素(Si)が減少してMg2Si相が十分に析出しないことがある。このような理由から、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金内の前記マグネシウム(Mg)と前記ケイ素(Si)の比は1.5~8.5であり、より好ましくは1.5~7.0であり得る。
ジルコニウム(Zr)は、0.5~1.5重量%含まれる。
【0042】
前記ジルコニウム(Zr)は、通常のアルミニウム(Al)合金では、結晶粒微細化に寄与してAl-Mg系アルミニウム合金の3Dプリンティングの際に亀裂(Hot cracking)を抑制する役割を果たすことができる。また、前記ジルコニウム(Zr)は、前記アルミニウム(Al)と反応してAl3Zr相を形成することができる。すなわち、前記ジルコニウム(Zr)は、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金において結晶粒微細化によって延伸力を向上させることができ、同時にAl3Zr相を析出させて強度を強化することができる。このような効果を実現するために、前記ジルコニウム(Zr)は0.5重量%以上添加されることが好ましい。
【0043】
但し、前記Zrが1.5重量%を超えると、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の溶解温度が上昇してマグネシウム(Mg)が気化して損失する量が増加することがあり、かつ、一部の前記ジルコニウム(Zr)が不飽和になって偏析により析出することがある。これは、Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の延伸率を大幅に減少させ、脆性を向上させることができ、最終的に前記3Dプリンティング製品の品質を低下させることができる。このような理由から、前記ジルコニウム(Zr)は0.5~1.5重量%含まれることが好ましい。
カルシウム(Ca)は、0.2重量%以下で含まれる。
【0044】
前記カルシウム(Ca)は、前述した通りに、前記マグネシウム(Mg)の酸化を防止することができ、前記マグネシウムのマグネシウム(Mg)の発火温度を上昇させて、ヒューム(fume)が発生することを抑制することができる。
【0045】
前記カルシウム(Ca)は、合金内の前記マグネシウム(Mg)の含有量に応じて選択的に含まれることができる。例えば、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金内のマグネシウム(Mg)が5重量%以下であれば、前記マグネシウム(Mg)が酸化されてアルミニウム合金に及ぼす影響が微々たるものであってカルシウム(Ca)が含まれないことがある。
【0046】
しかし、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金内のマグネシウム(Mg)が5重量%を超えると、前記マグネシウム(Mg系)が酸化されることにより、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の強度及び生産性に影響を与えることがある。この場合、前記カルシウム(Ca)は、前記マグネシウム(Mg)によって可変的に含まれることができ、好ましくは、前記マグネシウム(Mg)と前記カルシウム(Ca)の重量比が1:0.8~1:1.2で含まれることができる。
【0047】
前記マグネシウム(Mg)と前記カルシウム(Ca)の重量比が1:0.8未満であれば、前記マグネシウム(Mg)に比べて相対的にカルシウム(Ca)が少なく含まれて前記マグネシウム(Mg)の酸化及び気化により生産性が減少することがあり、前記マグネシウム(Mg)と前記カルシウム(Ca)の重量比が1:1.2を超えると、前記カルシウム(Ca)が前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の不純物として作用して前記アルミニウム合金の強度が減少することがある。
【0048】
このような理由から、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金において、前記マグネシウム(Mg)と前記カルシウム(Ca)の重量比は、1:0.8~1:1.2であることが好ましい。
【0049】
実施例によれば、前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、断片、粉末又はワイヤーなどの形状を有することができるが、これに限定されない。
【0050】
以上、本発明の実施例による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の組成について説明した。以下、本発明の実施例による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の製造方法について説明する。
図1は、本発明の実施例による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0051】
図1を参照すると、本発明の実施例による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の製造方法は、(a)重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすAl-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーを準備する段階、及び前記(b)前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末を3Dプリンティングして製品を製造する段階を含むことができる。この時、前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーは、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことができる。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【0052】
前記(a)段階は、上述した組成のアルミニウム合金をアトマイジング(Gas atomizing)又は押出後引抜き(extrusion after drawing)などの方法を用いてアルミニウム合金の粉末を製造することができる。
【0053】
まず、先立って説明した組成の母金属又は母合金の配合物を溶解して溶湯を製造し、該溶湯からアルミニウム合金のインゴット(ingot)を製造することができる。この際、前記溶解のために、真空又は大気の誘導溶解炉(induction melting furnace)又は電気抵抗炉(electric resistance furnace)などを使用することができる。
【0054】
その後、ガスアトマイジング(Gas atomizing)又は押出後引抜き(extrusion after drawing)などの方法を用いてアルミニウム合金の粉末を製造することができる。溶解及び粉末を製造する過程は公知の方法を使用したので、具体的な製造過程は省略する。
【0055】
前記(b)段階では、前記(a)段階で生成したアルミニウム合金の粉末を3Dプリンティングして所望の製品を製造することができる。ここで、3Dプリンティングは、金属粉末をレーザーを利用して溶融及び焼結させる粉末焼結方法(Powder Bed Fusion、PBF)を意味することができる。具体的に、前記粉末焼結方法(PBF)は、上述した段階で製作されたアルミニウム合金の粉末を積層し、積層された粉末にエネルギーレーザービームを照射してアルミニウム合金の粉末を溶融結合することにより製品を製造する方法を意味する。
【0056】
実施例によれば、前記(b)段階は、粉末焼結方法(Powder Bed Fusion、PBF)を用いるが、レーザーの種類、出力又はレーザービームの直径に応じてライン間の間隔(ハッチ間隔)は50~1,000μm、厚さは10~100μmにして積層して提供することができる。また、パウダーやワイヤーを供給するDED(Direct Energy Deposition)方式による3Dプリンティング工程にも適用でき、その他の通常のBinder Jet 3D金属プリンティング工程にも適用できる。
【0057】
一方、本発明の一実施例によって製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の製品は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことができる。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
前記関係式1についての説明は省略する。
【0058】
実施例によれば、上述した組成及び製造方法によって製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の製品は、降伏強度が400~500MPaであることができるとともに、2.7%以上の延伸率を有することができる。
【0059】
以下、実施例によって本発明による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金及び製造方法についてさらに詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照に過ぎず、本発明は、これに限定されるものではなく、様々な形態で実現できる。
【0060】
また、他に定義されていない限り、全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明の属する当業者の一つによって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書の説明に使用される用語は、特定の実施例を効果的に記述するためであり、本発明を制限するものと意図されない。また、明細書において特に記載していない添加物の単位は重量%であり得る。
【0061】
A.成分組成による降伏強度の比較
下記表1のような組成で金属原料を準備し、前記金属原料を溶解させた後、ガスアトマイズ(gas atomizing)してAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金の粉末を製造した。
【0062】
製造されたアルミニウム合金の粉末をPBF(Powder Bed Fusion)方式の3Dプリンティングで出力した。金属3Dプリンターは、DAEGUNTECH社製のdpert M135を用いた。前記金属3Dプリンターを用いて前記アルミニウム合金の粉末に170Wのレーザーを走査して層厚さ30μmのハッチ間隔150μmで積層したアルミニウム合金試験片を製作した。
【0063】
【0064】
前記実施例1~7及び比較例1~7は、製造した3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金を標点距離10mm、直径4mmの大きさに加工して引張用試験片を製作した。
【0065】
製造された試験片の表面を機械加工してASTM E8金属材の引張試験の標準試験法(Standard Test Methods for Tension Testing of Metallic Materials)に基づいて常温で引張試験(tensile test)を実施した。測定された降伏強度及び延伸率を下記表2に記載した。
【0066】
【0067】
前記表2を参照すると、実施例1~7で製造した3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、共通して400MPa以上の降伏強度を持っていることを確認することができる。
【0068】
これに対し、ジルコニウム(Zr)を含んでいない比較例1は、降伏強度が328.1MPa、延伸率が8%であって、同一の組成でジルコニウムを1.2重量%含む実施例2に比べて降伏強度が85.9MPa、延伸率が3%それぞれ減少したことが分かる。
【0069】
これは、前述したように、ジルコニウム(Zr)が含まれないため、結晶粒微細化及びAl3Zr相が形成される効果が実現されていないからである。これにより、比較例1は、実施例2に比べて降伏強度と延伸率の両方ともが減少した。
【0070】
ケイ素(Si)を0重量%含む比較例2は、降伏強度が309.2MPa、延伸率が17.6%であって、前記ケイ素(Si)を除いた残りの組成が類似した実施例5、実施例6に比べて降伏強度が114.2~129.4MPa減少したことが分かる。
【0071】
これは、前記比較例2の場合には、ケイ素(Si)が含まれないためMg2Si相が形成されず、相対的にAl3Zr相の分率が増加したからと解釈される。すなわち、前記Al3Zr相が増加して延伸率は向上したが、前記Mg2Si相が形成されないため強度が減少した。これにより、前記比較例2は、実施例5及び6に比べて降伏強度が減少したことを確認することができる。
【0072】
マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量比が1.25である比較例3と、マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量比が15である比較例4とは、降伏強度が320MPa、310MPaである。これに対し、マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量比が1.5~8.5である実施例1~7は、降伏強度が400MPaであることが分かる。これは、前記マグネシウム(Mg)とケイ素(Si)が適切に含まれないため、適正量のMg2Si相が析出していないからである。具体的に、前記比較例3は、前記Mg2Si相が過度に形成されて延伸率が大きく減少し、降伏強度以前に破断する試験片が多数発生した。前記比較例4は、前記Mg2Si相が不足して降伏強度が減少した。このような理由から、前記マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量%は、下記関係式1を満たす範囲で含まれることが好ましい。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【0073】
特に、前記マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量%が前記関係式1を満たす状態で、前記マグネシウム(Mg)が5~7重量%含まれた実施例1~3は、460MPa以上の降伏強度を有するとともに、延伸率も7.8%以上であることを確認することができる。これにより、前記マグネシウム(Mg)は、前記関係式1を満たす範囲内で5~7重量%含まれることが、降伏強度と延伸率を同時に確保することができる組成であることを確認することができる。
【0074】
また、前記比較例4は、過度に含まれたマグネシウム(Mg)により製造過程で過度なヒューム(fume)が発生した。この過程でレーザーが散乱して引張用試験片の品質が低下することを確認した。このような理由から、前記マグネシウム(Mg)は、2~13重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは、前記関係式1を満たす範囲内で5~7重量%含まれることが好ましい。
【0075】
ジルコニウム(Zr)が0.3重量%含まれた比較例5は、同じ組成でジルコニウムを1.2重量%含む実施例2に比べて降伏強度が79MPa減少したことが分かる。
【0076】
これは、前述したように、前記ジルコニウム(Zr)が0.5重量%未満で含まれ、Al3Zr相により強化される程度が非常に微々たるものであったためである。これにより、比較例5は、実施例2に比べて降伏強度が減少した。
【0077】
ケイ素(Si)が0.5重量%含まれた比較例6、及びケイ素(Si)が7重量%含まれた比較例7は、降伏強度がそれぞれ381MPa、280MPaであって、同じ組成でケイ素(Si)を2重量%含む実施例2、4重量%含む実施例3に比べて降伏強度が減少したことが分かる。さらに、比較例7は、延伸率が0.2%に急減したことが分かる。
【0078】
これは、前述したように、比較例6の場合には前記ケイ素(Si)が1重量%未満含まれてMg2Si相による析出強化効果が十分に実現されておらず、比較例7の場合には前記ケイ素(Si)が5重量%を超過したため、Mg2Si相の分率があまり多くて脆性が増加して延伸率が急減したからである。実際に、前記比較例7によって製造した引張試験片は、降伏強度以前に破断されることを確認した。
【0079】
B.成分組成による生産性の比較
図2は、レーザー出力を170Wに固定したとき、ケイ素の含有量によるビーム速度と極限引張強度との相関関係を説明するためのグラフである。
一般に、3Dプリンティングにおいてレーザー出力、ハッチ間隔(=ビームスキャン間隔、hatching space)、積層厚さを固定すれば、レーザービーム速度と製品の出力速度が比例する。すなわち、上述した条件を固定すれば、ビーム速度が製品の出力速度の増加を意味する。この状態で適切な降伏強度を維持するかを確認することにより、生産性を比較することができる。
【0080】
このような理由から、上述した実施例1、2、3、比較例2及び組成が下記表3のようなアルミニウム合金試験片(実施例8、実施例9及び比較例8)をさらに製作した。
【0081】
【0082】
その後、前記表3のような組成で製造されたアルミニウム合金試験片を対象に、レーザー出力を170W、3Dプリンティングの積層厚さを30μm、ハッチ間隔を150μmに固定した後、ビーム速度を200~450mm/sに変化したとき、極限引張強度(UTS)測定値を下記表4に示し、一部の試験片に対して200~600mm/sに変化したとき、極限引張強度(UTS)の測定値を
図2に示す。
【0083】
【0084】
表4を参照すると、前記マネシウム(Mg)を5~7重量%、前記ケイ素(Si)を1~5重量%添加した実施例1~3及び実施例8は、ビーム速度が200~450mm/secの範囲で極限引張強度(UTS)が450MPa以上、好ましくは450~550MPaを維持する。
【0085】
これに対し、前記ケイ素(Si)が1重量%未満で含まれた比較例2及び比較例8は、ビーム速度が300mm/s以上であれば、極限引張強度(UTS)が400MPa以下に急激に低下し、ビーム速度が350mm/s以上であれば、試験片が形成されないことが分かる。実際に、前記ケイ素(Si)が含まれていない試験片は、ビーム速度が350mm/s以上に増加すると、熱間亀裂(hot cracking)により3Dプリンティングが不可能であった。
【0086】
すなわち、前記ケイ素(Si)が1重量%未満で含まれれば、生産性を向上するのに限界があることを確認することができる。具体的に、前記ケイ素(Si)を1~5重量%添加した実施例1~3及び実施例8は、前記ケイ素(Si)が1重量%未満で含まれた比較例2及び比較例8に比べて、生産性は約2倍以上上昇したことを確認した。
【0087】
一方、前記マグネシウム(Mg)を8重量%、前記ケイ素(Si)を1重量%含む実施例9は、前記ビーム速度が200~450mm/sの状態でも、3Dプリンティングを介してアルミニウム合金を製造することができることを確認することができる。ただし、前記実施例9は、前記ケイ素(Si)の含有量が前記マグネシウム(Mg)に比べて相対的に少ないため、ビーム速度が350mm/sを超えると、極限引張強度(UTS)が急激に弱くなることを確認することができる。これは、前記実施例9が十分な強度を確保するためには一定水準のビーム速度が維持されなければならないということを意味し、これは、前記実施例に比べて生産性が減少することができることを意味する。
【0088】
図2を参照すると、ビーム速度が350~450mm/sの状態で極限引張強度(UTS)が400MPa以下に減少し、ビーム速度が500mm/sを超えると、再び極限引張強度(UTS)が減少することを確認することができる。実際に、実施例9で製造された試験片は、前記ケイ素(Si)を2~4重量%添加した実施例1~3及び実施例8よりも約0.6倍減少したことを確認することができる。
【0089】
前記実施例9によって、前記3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品の生産性を維持するためには、言い換えれば、レーザー出力を170Wに固定したとき、前記マグネシウム(Mg)と前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式2を満たすことがさらに好ましいことを確認することができる。
[関係式2]
1.5≦[Mg]/[Si]≦7.0
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【0090】
以上、本発明の実施例による3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al系)と不可避的不純物からなることができる。
【0091】
また、3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品を製造するためには、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たす範囲で組成が構成されることができる。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【0092】
さらに好ましくは、前記3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品が一定の水準の生産性を確保するためには、言い換えれば、ビーム速度が200~450mm/secの範囲で極限引張強度(UTS)が450MPa以上を維持するためには、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式2を満たすことがさらに好ましい。
[関係式2]
1.5≦[Mg]/[Si]≦7.0
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【0093】
最後に、前記関係式1及び2を同時に満たしながら450MPa以上の降伏強度及び7%以上の延伸率を有するアルミニウム合金製品を製造するためには、マグネシウム(Mg)の重量%が5~7重量%であることが好ましい。
【0094】
以上のように特定された事項と限定された実施例によって本発明が説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正及び変形が可能である。
【0095】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等であるか或いは等価的変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するというべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金において、
前記Xは、前記アルミニウム(Al)と反応してAl-X金属間化合物(Intermetallic compound)を形成し、
前記Yは、前記マグネシウム(Mg)と反応してMg-Y金属間化合物を形成することを特徴とする、3Dプリンティング用Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金。
【請求項2】
前記Xは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Cs)、ハフニウム(Hf)及びイットリウム(Y)の中から選択されるいずれか1種の元素であり、
前記Yは、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)及びゲルマニウム(Ge)の中から選択されるいずれか1種の元素であることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリンティング用Al-Mg-X-Y系アルミニウム合金。
【請求項3】
重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことを特徴とする、3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【請求項4】
3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことを特徴とする、請求項3に記載の3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金。
【請求項5】
前記3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は
、カルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%さらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金。
【請求項6】
前記3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、粉末状又はワイヤー状に提供されることを特徴とする、請求項3に記載の3Dプリンティング用Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金。
【請求項7】
3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品において、
前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、
前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすことを特徴とする、3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【請求項8】
前記高強度アルミニウム合金製品の降伏強度が400~500MPaであることを特徴とする、請求項7に記載の3Dプリンティングで製造された、Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品。
【請求項9】
前記Al-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金は、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことを特徴とする、請求項7に記載の3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品。
【請求項10】
前記高強度アルミニウム合金製品の延伸率が7%以上であることを特徴とする、請求項7に記載の3Dプリンティングで製造されたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品。
【請求項11】
(a)重量%で、マグネシウム(Mg)2~13、ケイ素(Si)1~5、及びジルコニウム(Zr)0.5~1.5を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避的不純物からなり、前記マグネシウム(Mg)及び前記ケイ素(Si)の重量%が下記関係式1を満たすAl-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーを準備する段階と、
(b)前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末を3Dプリンティングして製品を製造する段階と、を含むことを特徴とする、3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品の製造方法。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【請求項12】
前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーは、前記マグネシウム(Mg)を5~10重量%含むことを特徴とする、請求項11に記載の3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品の製造方法。
【請求項13】
前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーは、カルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%さらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の3Dプリンティングを用いたAl-Mg-Zr-Si系高強度アルミニウム合金製品の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
前記一実施例によれば、前記Xは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Cs)、ハフニウム(Hf)及びイットリウム(Y)の中から選択されるいずれか1種の元素であり、前記Yは、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、及びゲルマニウム(Ge)の中から選択されるいずれか1種の元素であり得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
前記一実施例によれば、前記Al-Mg-Zr-Si系アルミニウム合金粉末又はアルミニウム合金ワイヤーは、カルシウム(Ca)を0.01~0.2重量%さらに含むことができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明の一実施例は、3Dプリンティング用Al-Mg系高強度アルミニウム合金、さらに好ましくは、Al-Mg系アルミニウム合金に2種以上の元素を含ませたAl-Mg-X-Y系アルミニウム合金に関する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
実施例によれば、前記Xは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Sc)、ハフニウム(Hf)及びイットリウム(Y)の中から選択されるいずれか1種の元素であり、前記Yは、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)及びゲルマニウム(Ge)の中から選択されるいずれか1種の元素であることを特徴とするが、これに限定されず、前記アルミニウム(Al)又は前記マグネシウム(Mg)と反応可能な所定の成分に変形することができることは自明である。
以下、本明細書では、前記X元素としてジルコニウム(Zr)、前記Y元素としてケイ素(Si)を例示して説明する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
前記カルシウム(Ca)は、前述した通りに、前記マグネシウム(Mg)の酸化を防止することができ、前記マグネシウム(Mg)の発火温度を上昇させて、ヒューム(fume)が発生することを抑制することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
これに対し、ジルコニウム(Zr)を含んでいない比較例1は、降伏強度が368.1MPa、延伸率が8%であって、同一の組成でジルコニウムを1.2重量%含む実施例2に比べて降伏強度が85.9MPa、延伸率が3%それぞれ減少したことが分かる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量比が1.25である比較例3と、マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量比が15である比較例4とは、降伏強度が320MPa、310MPaである。これに対し、マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量比が1.5~8.5である実施例1~7は、降伏強度が400MPa以上であることが分かる。これは、前記マグネシウム(Mg)とケイ素(Si)が適切に含まれないため、適正量のMg2Si相が析出していないからである。具体的に、前記比較例3は、前記Mg2Si相が過度に形成されて延伸率が大きく減少し、降伏点(yield point)以前に破断する試験片が多数発生した。前記比較例4は、前記Mg2Si相が不足して降伏強度が減少した。このような理由から、前記マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量%は、下記関係式1を満たす範囲で含まれることが好ましい。
[関係式1]
1.5≦[Mg]/[Si]≦8.5
(前記関係式1中、[Mg]はマグネシウム(Mg)の重量%を意味し、[Si]はケイ素(Si)の重量%を意味する。)
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
特に、前記マグネシウム(Mg)及びケイ素(Si)の重量%が前記関係式1を満たす状態で、前記マグネシウム(Mg)が5~7重量%含まれた実施例1及び3は、460MPa以上の降伏強度を有するとともに、延伸率も7.8%以上であることを確認することができる。これにより、前記マグネシウム(Mg)は、前記関係式1を満たす範囲内で5~7重量%含まれることが、降伏強度と延伸率を同時に確保することができる組成であることを確認することができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
これは、前述したように、比較例6の場合には前記ケイ素(Si)が1重量%未満含まれてMg2Si相による析出強化効果が十分に実現されておらず、比較例7の場合には前記ケイ素(Si)が5重量%を超過したため、Mg2Si相の分率があまり多くて脆性が増加して延伸率が急減したからである。実際に、前記比較例7によって製造した引張試験片は、降伏点(yield point)以前に破断されることを確認した。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
B.成分組成による生産性の比較
図2は、レーザー出力を170Wに固定したとき、ケイ素の含有量によるビーム速度と極限引張強度との相関関係を説明するためのグラフである。
一般に、3Dプリンティングにおいてレーザー出力、ハッチ間隔(=ビームスキャン間隔、hatching space)、積層厚さを固定すれば、レーザービーム速度と製品の出力速度が比例する。すなわち、上述した条件を固定すれば、ビーム速度
の増加が製品の出力速度の増加を意味する。この状態で適切な降伏強度を維持するかを確認することにより、生産性を比較することができる。
【国際調査報告】