(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】DKC1を使用するRNA編集の組成物、系、及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240514BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240514BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240514BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240514BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20240514BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20240514BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/11 Z
C12N9/00
C12N15/52 Z
A61K38/43
A61K31/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568295
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 CN2022095172
(87)【国際公開番号】W WO2022247896
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/096122
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416276
【氏名又は名称】モディット セラピューティクス ベイジン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, メイファン
(72)【発明者】
【氏名】イー, チェンチ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AA95Y
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4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA27
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4B065CA46
4C084AA02
4C084BA44
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4C084ZB211
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4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB21
(57)【要約】
RNAの標的化されたシュードウリジン化のための方法、組成物、及び系を提供する。いくつかの態様において、宿主細胞において標的RNA(例えばmRNA)を編集するための方法であって、操作されたガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)を宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞において細胞質内局在を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)及びDKC1タンパク質をコードする核酸分子を前記宿主細胞の中へ導入することを含み、前記gsnoRNAが、前記標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、前記gsnoRNAが、前記DKC1タンパク質を動員して、前記標的RNA中の前記標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法。
【請求項2】
宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを前記宿主細胞の中へ導入することを含み、前記gsnoRNAが、前記標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、前記gsnoRNAが、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含み、前記gsnoRNAが、前記宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、前記標的RNA中の前記標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法。
【請求項3】
宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを前記宿主細胞の中へ導入することを含み、前記gsnoRNAが、前記標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、前記gsnoRNAが、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、前記gsnoRNAが、前記宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、前記標的RNA中の前記標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法。
【請求項4】
前記DKC1タンパク質をコードする核酸を前記宿主細胞の中へ導入することをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記DKC1タンパク質が、前記宿主細胞の内在性DKC1タンパク質である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記DKC1タンパク質が、前記宿主細胞において細胞質内局在を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記DKC1タンパク質が、ヒトDKC1アイソフォーム3タンパク質のアミノ酸残基41~420に対応するDKC1タンパク質断片を含み、アミノ酸ナンバリングは配列番号2に従う、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記DKC1タンパク質が、配列番号88に少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記DKC1タンパク質が、前記宿主細胞において細胞質内局在のある天然に存在するDKC1アイソフォームを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって(a)操作されたgsnoRNA及び(b)スプライス-スイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を前記宿主細胞の中へ導入することを含み、前記gsnoRNAが、前記標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、前記ASOが、前記宿主細胞において細胞質内局在のある内在性DKC1アイソフォームであるDKC1タンパク質の発現を促進し、前記gsnoRNAが、前記DKC1タンパク質を動員して、前記標的RNA中の前記標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法。
【請求項11】
前記DKC1アイソフォームが、ヒトDKC1タンパク質のアイソフォーム3に対応する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記DKC1タンパク質が、配列番号2に少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記標的RNAが、リボソームRNA(rRNA)ではない、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記gsnoRNAが、ACA19、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含む、請求項1及び請求項4~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記gsnoRNAが、ACA2bに由来するスキャフォールド配列を含む、請求項2または14に記載の方法。
【請求項16】
前記gsnoRNAが、ACA36に由来するスキャフォールド配列を含む、請求項2または14に記載の方法。
【請求項17】
前記gsnoRNAが、前記ACA36スキャフォールドの3’ヘアピン中に突然変異を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記gsnoRNAが、ACA19に由来するスキャフォールド配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記gsnoRNAが、1つまたは複数のガイド配列を含み、各々が、前記野生型H/ACA-snoRNAのヘアピン構造に対応する領域中に所在する、請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数のガイド配列のうちの少なくとも1つが、前記野生型H/ACA-snoRNAの3’端末部でのヘアピン構造中に所在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数のガイド配列のうちの少なくとも1つが、前記野生型H/ACA-snoRNAの5’端末部でのヘアピン構造中に所在する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記gsnoRNAが、前記野生型ACA19の1つまたは複数のヘアピン構造中に1つまたは複数の突然変異を含む、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記操作されたgsnoRNAが、前記野生型H/ACA-snoRNA中のポリU配列のヌクレオチド中に1つまたは複数の置換突然変異を含み、前記ポリU配列が、少なくとも連続する4つのU残基を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記操作されたgsnoRNAが、前記標的ウリジンへハイブリダイズする前記ガイド領域中の前記ヌクレオチド残基と前記野生型H/ACA snoRNAのH/ACAボックスとの間に位置する1つまたは複数の挿入突然変異または欠失突然変異を含み、それによって、前記操作されたgsnoRNAが、前記標的ウリジンへハイブリダイズする前記ガイド領域中の前記ヌクレオチド残基と前記H/ACAボックスとの間に14または15ヌクレオチドを含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記1つまたは複数の突然変異が、UUCUによる残基26~29の置換、UGUUによる残基26~29の置換、残基115後の3’ヘアピン構造へのGの添加、及び残基8後の5’ヘアピンへのCUの添加からなる群から選択され、ナンバリングが、配列番号37に従う、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記gsnoRNAが、配列番号3~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項3~4及び14~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記gsnoRNAが、配列番号15~19からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項4または26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記gsnoRNAをコードする核酸分子を前記宿主細胞の中へ導入することを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記gsnoRNAをコードする前記核酸分子が、U6プロモーター及びU1プロモーターからなる群から選択されるプロモーター下にある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記gsnoRNAをコードする前記核酸分子が、第1のエクソン配列と第2のエクソン配列との間に所在するイントロン配列中に埋め込まれ、前記第1のエクソン配列、前記イントロン配列、及び前記第2のエクソン配列が、天然に存在する遺伝子に由来する、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記DKC1タンパク質をコードする前記核酸分子及び/または前記gsnoRNAをコードする前記核酸分子が、ウイルスベクター中に存在する、請求項1、4、及び28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、前記DKC1タンパク質をコードする第1の核酸配列及び前記gsnoRNAをコードする第2の核酸配列を含むベクターを前記宿主細胞の中へ導入することを含む、請求項1または4に記載の方法。
【請求項33】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記gsnoRNAが、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間連結を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記gsnoRNAが、2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記gsnoRNAが、10以下、8以下、6以下、または4以下の化学的に修飾されたヌクレオシドを含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記gsnoRNAが、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記gsnoRNAが、10以下、9以下、8以下、または6以下のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む、請求項35~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記gsnoRNAが、5’キャップ修飾を含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記5’キャップ修飾が、7-メチルグアノシン(m
7G)キャップである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記標的RNAを編集する効率が、少なくとも10%である、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記標的RNAが、mRNAである、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記標的RNA中の前記標的ウリジンを含む前記配列が、終止コドンであり、前記標的ウリジンのシュードウリジンへの修飾が、前記終止コドンをコーディングコドンとして翻訳されるようにする、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記終止コドンが、未成熟終止コドン(PTC)である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記PTCが、遺伝性の疾患または病態と関連する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記DKC1タンパク質が、前記gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記宿主細胞が、古細菌細胞または真核生物細胞である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記宿主細胞が、ヒト細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記方法が、インビボで実行される、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記方法が、エクスビボで実行される、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
対象における標的RNA中のPTCと関連する疾患または病態を治療する方法であって、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法を使用して、前記対象の細胞における前記標的RNAを編集することを含み、前記gsnoRNAが、前記標的RNA中の前記PTCへハイブリダイズするガイド配列を含み、前記PTC中の前記ウリジン残基のシュードウリジン残基への修飾が、前記標的RNA中の前記PTCの翻訳リードスルーを引き起こし、それによって、前記対象における前記疾患または病態を治療する、前記方法。
【請求項54】
前記疾患または病態が、嚢胞性線維症、ハーラー症候群、α-1-アンチトリプシン(A1AT)欠乏症、パーキンソン病、アルツハイマー病、白皮症、筋萎縮性側索硬化症、喘息、8-サラセミア、カダシル症候群、シャルコー・マリー・トゥース病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、遠位脊髄性筋萎縮症(DSMA)、デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、栄養障害性表皮水疱症、水疱性表皮剥離症、ファブリー病、第V因子ライデン関連障害、家族性腺腫様ポリープ、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、血友病、遺伝性ヘモクロマトーシス、ハンター症候群、ハンチントン舞踏病、炎症性腸疾患(IBD)、遺伝性多凝集症候群、レーベル先天黒内障、レッシュ・ナイハン症候群、リンチ症候群、マルファン症候群、ムコ多糖症、筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィーI型及びII型、神経繊維腫症、ニーマン・ピック病A型、B型、及びC型、NY-esol関連癌、ポイツ・ジェガース症候群、フェニルケトン尿症、ポンペ病、原発性線毛疾患、プロトロンビン突然変異関連障害(プロトロンビンG20210A突然変異等)、肺高血圧症(常染色体優性)、網膜色素変性症、サンドホフ病、重症複合免疫不全症候群(SCID)、鎌形赤血球貧血症、脊髄筋萎縮症、スタルガルト病、テイ・サックス病、アッシャー症候群、X連鎖免疫不全症、スタージ・ウェーバー症候群、及びがんからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含む操作されたgsnoRNAであって、前記gsnoRNAが、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、前記gsnoRNAが、前記宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、前記標的RNA中の前記標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、前記操作されたgsnoRNA。
【請求項56】
宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含む操作されたgsnoRNAであって、前記gsnoRNAが、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含み、前記gsnoRNAが、前記宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、前記標的RNA中の前記標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、前記操作されたgsnoRNA。
【請求項57】
前記gsnoRNAが、5’キャップ修飾を含む、請求項55~56のいずれか1項に記載の操作されたgsnoRNA。
【請求項58】
前記5’キャップ修飾が、7-メチルグアノシン(m
7G)キャップである、請求項57に記載の操作されたgsnoRNA。
【請求項59】
前記gsnoRNAが、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間連結を含む、請求項55~58のいずれか1項に記載の操作されたgsnoRNA。
【請求項60】
前記gsnoRNAが、2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む、請求項55~59のいずれか1項に記載の操作されたgsnoRNA。
【請求項61】
前記gsnoRNAが、10以下、8以下、6以下、または4以下の化学的に修飾されたヌクレオシドを含む、請求項55~60のいずれか1項に記載の操作されたgsnoRNA。
【請求項62】
前記gsnoRNAが、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む、請求項55~61のいずれか1項に記載の操作されたgsnoRNA。
【請求項63】
前記gsnoRNAが、10以下、9以下、8以下、または6以下のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む、請求項62に記載の操作されたgsnoRNA。
【請求項64】
請求項55~632のいずれか1項に記載のgsnoRNAをコードする配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項65】
(a)宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含むgsnoRNA、または前記gsnoRNAをコードする核酸分子;及び
(b)DKC1タンパク質、または前記DKC1タンパク質をコードする核酸分子
を含み、
前記gsnoRNAが、前記DKC1タンパク質を動員して、前記標的RNA中の前記標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、
操作されたRNA編集系。
【請求項66】
請求項55~63のいずれか1項に記載のgsnoRNA、請求項64に記載の核酸分子、または請求項65に記載の操作されたRNA編集系、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項67】
請求項55~63のいずれか1項に記載のgsnoRNA、請求項64に記載の核酸分子、または請求項65に記載の操作されたRNA編集系を含む、宿主細胞。
【請求項68】
請求項55~63のいずれか1項に記載のgsnoRNA、請求項64に記載の核酸分子、または請求項65に記載の操作されたRNA編集系を含む、宿主細胞における標的RNAを編集するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月26日に出願された国際特許出願第PCT/CN2021/096122号の優先権利益を主張し、その内容は、参照することによってその全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表の参照による援用
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容:配列表のコンピューター可読形態(CRF)(ファイル名:165392000441SEQLIST.TXT、記録した日付:2022年5月24日、サイズ:75,959バイト)は、参照することによってその全体が本明細書に援用される。
【0003】
本出願は、DKC1を使用する標的化シュードウリジン化を介してRNAを編集するための組成物、系、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
シュードウリジン(Ψ)は、安定的なRNA(tRNA、rRNA、snRNA、及びmRNAが挙げられる)中で最も豊富な転写後修飾ヌクレオチドであり、全リボヌクレオチドのうちのおよそ5%を構成する。ウリジンのΨへの変換(シュードウリジン化)は、2つの別個の化学反応:C1’-N1グリコシド結合の破壊、及び塩基を糖へ再連結する新しい炭素-グリコシド(C1’-C5)結合の成形を要求する。シュードウリジン化は真の異性化反応であり、余剰の水素結合供与体を生成し、Ψを保有するRNAの型及びRNA配列内の位置に依存して、様々な機能的側面(タンパク質合成、及び終止コドンリードスルー増加等)に影響を及ぼす(Yu and Meier,2014,RNA Biology 11:1483-1494)。mRNAのΨの多くはコード領域中に存在し、大多数のそれらは環境ストレスへ応答し、機能的有意性を示す(Carlile et al.2014,Nature 515:143)。
【0005】
真核生物及び古細菌において、シュードウリジン化は、ボックスH/ACAリボヌクレオタンパク質(RNP)によって導入され得、当該RNPの各々は、ユニークな小分子RNA(ボックスH/ACA RNA(2つの主要クラスの核小体低分子RNAまたは「snoRNA」のうちの1つ)及び4つのコアタンパク質(ジスケリン(DKC1)、NHP2、NOP10、及びGAR1)を含有する。ジスケリン(DKC1;NAP57/CBF5としても公知である)は、高度に保存された多機能性タンパク質であり、RNAガイド型シュードウリジン合成酵素として作用し、特異的なウリジンのシュードウリジンへの酵素的変換を指令する。それは、核小体及びカハール体(CB)中に濃縮され、そこで、3つの他の高度に保存されたタンパク質(Nop10、Nhp2、Gar1)と会合して、重要な生物学的な機能を演じる異なる核RNPの組成物中に侵入することが可能な四量体を構成する。核小体内で、四量体は、H/ACA核小体低分子RNA(snoRNA)と会合して、rRNAプロセシングを調節し、snoRNAガイド型塩基相補性によってRNA標的をシュードウリジン化する、H/ACA snoRNPを構成する。CB内で、当該四量体は、CB特異的小分子RNA(scaRNA)と会合して、スプライセオソームsnRNAのシュードウリジン化を指令する、scaRNPを構成する。NAP57/ジスケリン(DKC1)/CBF5は、化学反応を触媒し、標的ウリジンをΨへ変換する。RNA構成要素は、基質RNAとの塩基対相互作用を介して、シュードウリジン化のための標的ウリジンを指定するガイドとして働く(Ge and Yu,2013,Trends Biochem Sci 38(4):2l0-218)。このガイド-基質塩基対スキームに基づいて、Karijolich and Yu (2011,Nature 474:395-398)は、人工的なボックスH/ACA RNAをデザインして、S.cerevisiaeにおいて未成熟終止コドン(PTC)でmRNAの中へΨを導入した。彼らは、ΨがPTCでTRM4 mRNAの中へ実際取り込まれることを実証した。シュードウリジン化PTCは、リボソーム解読の変更によってナンセンス抑制を促進した(Fernandez et al.2013,Nature 500:107-110;Wu et al.2015,Methods in Enzymology 560:187-217;US8,603,457)。類似の戦略を使用して、他の人々は、人工的なH/ACA RNAが、アフリカツメガエル卵母細胞の中へのマイクロインジェクション後に、部位特異的にプレmRNAをシュードウリジン化し得ることを示した(Chen et al.2010,Mol Cell Biol 30:4108-4119)。両方の例において、人工的なH/ACA RNAは、ガイド配列として働くループを変更するために修飾されたが、他の点では、これらのsnoRNAは変更されなかった。
部位特異的シュードウリジン化または標的RNAは可能性のある強力な技法であるが、ここまで利用可能な方法は、標的RNAの低い編集効率をもたらしてきた。したがって、最適化されたgsnoRNA、gsnoRNAベースの遺伝子編集システム、及びシュードウリジン化によって標的RNAを編集する方法についての当技術分野において必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yu and Meier,2014,RNA Biology 11:1483-1494
【非特許文献2】Carlile et al.2014,Nature 515:143
【非特許文献3】Ge and Yu,2013,Trends Biochem Sci 38(4):2l0-218
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、gsnoRNA及びDKC1タンパク質を使用して、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法を提供する。方法の実施形態は、本明細書において「RESTART」方法としても参照され、未成熟終止コドン(PTC)を有するRNA転写物のリードスルーを可能にするために使用され得る。
【0008】
いくつかの態様において、本出願は、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、ガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)及びDKC1タンパク質をコードする核酸分子を宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含む。
【0009】
いくつかの態様において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、野生型ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、またはACA17に由来するスキャフォールド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞の内在性DKC1タンパク質である。いくつかの実施形態において、方法は、DKC1タンパク質をコードする核酸を宿主細胞の中へ導入することをさらに含む。
【0010】
いくつかの態様において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、表2、表3、または表4中で提供されるヌクレオチド配列からなる基から選択されるヌクレオチド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。
【0011】
いくつかの態様において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。
【0012】
いくつかの態様において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、配列番号20~21及び145~150からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞の内在性DKC1タンパク質である。いくつかの実施形態において、方法は、DKC1タンパク質をコードする核酸を宿主細胞の中へ導入することをさらに含む。
【0013】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞において細胞質内局在を有する。
【0014】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、ヒトDKC1アイソフォーム3タンパク質のアミノ酸残基41~420に対応するDKC1タンパク質断片を含み、アミノ酸ナンバリングは配列番号2に従う。
【0015】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88に少なくとも85%(例えば少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちの任意の1つ)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88のアミノ酸配列を含む。上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞において細胞質内局在のある天然に存在するDKC1アイソフォームを含む。
【0016】
いくつかの態様において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、宿主細胞が、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォームを発現し、gsnoRNAが、DKC1アイソフォームを動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。
【0017】
いくつかの態様において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、(a)操作されたgsnoRNA及び(b)スプライス-スイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、ASOが、宿主細胞において細胞質内局在のある内在性DKC1アイソフォームであるDKC1タンパク質の発現を促進し、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含む。
【0018】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1アイソフォームは、ヒトDKC1タンパク質のアイソフォーム3に対応する。
【0019】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号2に少なくとも85%(例えば少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちの任意の1つ)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0020】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、全長ヒトDKC1アイソフォーム1タンパク質のアミノ酸残基1~419に対応するDKC1タンパク質断片を含み、アミノ酸ナンバリングは配列番号1に従う。
【0021】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA2bに由来するスキャフォールド配列を含む。上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36スキャフォールドの3’ヘアピン中に突然変異を含む。
【0022】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19に由来するスキャフォールド配列を含む。
【0023】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数のガイド配列を含み、各々は、野生型H/ACA-snoRNAのヘアピン構造に対応する領域中に所在する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のガイド配列のうちの少なくとも1つは、野生型H/ACA-snoRNAの3’端末部でのヘアピン構造(本明細書において「3’ヘアピン構造」としても参照される)中に所在する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のガイド配列のうちの少なくとも1つは、野生型H/ACA-snoRNAの5’端末部でのヘアピン構造(本明細書において「5’ヘアピン構造」としても参照される)中に所在する。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、単一のガイド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2つ以上の(例えば2、3、4、5、6、またはそれ以上の)ガイド配列を含む。
【0024】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、野生型ACA19の1つまたは複数のヘアピン構造(例えば3’ヘアピン構造及び/または5’ヘアピン構造)中に1つまたは複数の突然変異(例えば置換、挿入、及び/または欠失)を含む。
【0025】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、野生型H/ACA-snoRNA中のポリU配列のヌクレオチド中に1つまたは複数の置換突然変異を含み、ポリU配列は、少なくとも連続する4つのU残基を含む。
【0026】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基と野生型H/ACA snoRNAのH/ACAボックスとの間に位置する1つまたは複数の挿入突然変異または欠失突然変異を含み、それによって、操作されたgsnoRNAは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基とH/ACAボックスとの間に14または15ヌクレオチドを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、UUCUによる残基26~29の置換、UGUUによる残基26~29の置換、残基115後の3’ヘアピン構造へのGの添加、及び残基8後の5’ヘアピンへのジヌクレオチド配列(XX、例えばCU)の添加からなる群から選択され、配列中、Xは、A、U及びC及びGから選択されるヌクレオチドであり、ナンバリングは、配列番号37に従う。いくつかの実施形態において、ジヌクレオチド配列は、標的RNAへハイブリダイズするようにデザインされたガイドRNAの一部である。
【0028】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号3~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号15~19からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0029】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号20~21及び145~150からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0030】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、方法は、gsnoRNAをコードする核酸分子を宿主細胞の中へ導入することを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸分子は、小分子RNAプロモーター下にある。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸分子は、U6プロモーター(例えば、ポリメラーゼIIIによって転写される)及びU1プロモーター(例えば、ポリメラーゼIIによって転写されるからなる群から選択されるプロモーター下にある。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸分子は、第1のエクソン配列と第2のエクソン配列との間に所在するイントロン配列中に埋め込まれ、第1のエクソン配列、イントロン配列、及び第2のエクソン配列は、天然に存在する遺伝子に由来する。いくつかの実施形態において、イントロン配列は、宿主細胞における内在性遺伝子のイントロンからであり、遺伝子は、EIF3A、SNHG12、RPL21、及びRPSAからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、イントロン配列は、外来性遺伝子(HBB等)のイントロンからである。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸は、イントロン配列中に埋め込まれない。
【0031】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質をコードする核酸分子は、ウイルスベクター中に存在する。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸分子は、ウイルスベクター中に存在する。上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、方法は、DKC1タンパク質をコードする第1の核酸配列及びgsnoRNAをコードする第2の核酸配列を含むベクターを宿主細胞の中へ導入することを含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質をコードする核酸分子及びgsnoRNAをコードする核酸分子は、分離したベクター中に存在する。いくつかの実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0032】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、10以下、8以下、6以下、または4以下の化学的に修飾されたヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、10以下、9以下、8以下、または6以下のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、5’キャップ修飾を含む。いくつかの実施形態において、5’キャップ修飾は、7-メチルグアノシン(m7G)キャップである。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオシド間連結を含まない。キャップ。
【0033】
【0034】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、標的RNAを編集する効率は、少なくとも10%(例えば少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、またはそれ以上のうちの任意の1つ)である。
【0035】
標的RNA中の標的ウリジンを含む配列が、タンパク質をコードする配列中の未成熟終止コドンである、上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、方法は、宿主細胞において、未成熟終止コドン無しの全長タンパク質の発現レベルの少なくとも4%(例えば少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%)の全長のタンパク質の発現をもたらす。
【0036】
標的RNA中の標的ウリジンを含む配列が、タンパク質をコードする配列中の未成熟終止コドンである、上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、方法は、全長タンパク質の発現をもたらし、タンパク質の発現は、エンリッチメント無しで(例えば免疫沈降によるエンリッチメント無しで)検出可能である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、タグ(例えば蛍光タグを介して)を介して検出される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、当技術分野において公知の方法に従って免疫染色によって検出される。
【0037】
標的RNA中の標的ウリジンを含む配列が、タンパク質をコードする配列中の未成熟終止コドンである、上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、方法は、宿主細胞のうちの少なくとも20%(例えば宿主細胞のうちの少なくとも25%、少なくとも30%または少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%)において全長タンパク質の発現をもたらす。
【0038】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、標的RNAは、リボソームRNA(rRNA)(宿主細胞の内在性rRNA等)ではない。
【0039】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、標的RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)である。いくつかの実施形態において、標的RNA中の標的ウリジンを含む配列は、終止コドンであり、標的ウリジンのシュードウリジンへの修飾は、終止コドンをコーディングコドンとして翻訳されるようにする。いくつかの実施形態において、終止コドンは、未成熟終止コドン(PTC)である。いくつかの実施形態において、PTCは、遺伝性の疾患または病態と関連する。いくつかの実施形態において、標的RNA中の標的ウリジンを含む配列は、終止コドンであり、標的ウリジンのシュードウリジンへの修飾は、ナンセンス媒介性崩壊(NMD)を低減または防止する。
【0040】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、RNP複合体は、NOP10、GAR1、及びNHP2を含む。
【0041】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、宿主細胞は、古細菌細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、真核生物細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、ヒト細胞である。
【0042】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、方法は、インビボで実行される。いくつかの実施形態において、方法は、エクスビボで実行される。
【0043】
いくつかの態様において、対象における標的RNA中のPTCと関連する疾患または病態を治療する方法であって、上で記載される方法のうちの任意のものを使用して、対象の細胞における標的RNAを編集することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中のPTCへハイブリダイズするガイド配列を含み、PTC中のウリジン残基のシュードウリジン残基への修飾が、標的RNA中のPTCの翻訳リードスルーを引き起こし、それによって、対象における疾患または病態を治療する、前記方法が本明細書において提供される。
【0044】
いくつかの実施形態において、疾患または病態は、嚢胞性線維症、ハーラー症候群、α-1-アンチトリプシン(A1AT)欠乏症、パーキンソン病、アルツハイマー病、白皮症、筋萎縮性側索硬化症、喘息、8-サラセミア、カダシル症候群、シャルコー・マリー・トゥース病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、遠位脊髄性筋萎縮症(DSMA)、デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、栄養障害性表皮水疱症、水疱性表皮剥離症、ファブリー病、第V因子ライデン関連障害、家族性腺腫様ポリープ、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、血友病、遺伝性ヘモクロマトーシス、ハンター症候群、ハンチントン舞踏病、炎症性腸疾患(IBD)、遺伝性多凝集症候群、レーベル先天黒内障、レッシュ・ナイハン症候群、リンチ症候群、マルファン症候群、ムコ多糖症、筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィーI型及びII型、神経繊維腫症、ニーマン・ピック病A型、B型、及びC型、NY-esol関連癌、ポイツ・ジェガース症候群、フェニルケトン尿症、ポンペ病、原発性線毛疾患、プロトロンビン突然変異関連障害(プロトロンビンG20210A突然変異等)、肺高血圧症(常染色体優性)、網膜色素変性症、サンドホフ病、重症複合免疫不全症候群(SCID)、鎌形赤血球貧血症、脊髄筋萎縮症、スタルガルト病、テイ・サックス病、アッシャー症候群、X連鎖免疫不全症、スタージ・ウェーバー症候群、及びがんからなる群から選択される。
【0045】
いくつかの態様において、宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含む操作されたgsnoRNAが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、gsnoRNAは、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号20~21及び145~150からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、gsnoRNAは、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である。
【0046】
いくつかの態様において、宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含む操作されたgsnoRNAであって、gsnoRNAが、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、前記gsnoRNAが本明細書において提供される。
【0047】
上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、5’キャップ修飾を含む。いくつかの実施形態において、5’キャップ修飾は、7-メチルグアノシン(m7G)キャップである。上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間連結を含む。上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意の1つに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、10以下、8以下、6以下、または4以下の化学的に修飾されたヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、10以下、9以下、8以下、または6以下のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。
【0048】
上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA2bに由来するスキャフォールド配列を含む。上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36スキャフォールドの3’ヘアピン中に突然変異を含む。
【0049】
上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19に由来するスキャフォールド配列を含む。
【0050】
上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数のガイド配列を含み、各々は、野生型H/ACA-snoRNAのヘアピン構造に対応する領域中に所在する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のガイド配列のうちの少なくとも1つは、野生型H/ACA-snoRNAの3’端末部でのヘアピン構造中に所在する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のガイド配列のうちの少なくとも1つは、野生型H/ACA-snoRNAの5’端末部でのヘアピン構造中に所在する。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、単一のガイド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2つ以上の(例えば2、3、4、5、6、またはそれ以上の)ガイド配列を含む。
【0051】
上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、野生型ACA19の1つまたは複数のヘアピン構造(例えば3’ヘアピン構造及び/または5’ヘアピン構造)中に1つまたは複数の突然変異(例えば置換、挿入、及び/または欠失)を含む。
【0052】
上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、野生型H/ACA-snoRNA中のポリU配列のヌクレオチド中に1つまたは複数の置換突然変異を含み、ポリU配列は、少なくとも連続する4つのU残基を含む。
【0053】
上で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基と野生型H/ACA snoRNAのH/ACAボックスとの間に位置する1つまたは複数の挿入突然変異または欠失突然変異を含み、それによって、操作されたgsnoRNAは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基とH/ACAボックスとの間に14または15ヌクレオチドを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、UUCUによる残基26~29の置換、UGUUによる残基26~29の置換、残基115後の3’ヘアピン構造へのGの添加、及び残基8後の5’ヘアピンへのジヌクレオチド配列(XX、例えばCU)の添加からなる群から選択され、配列中、Xは、A、U及びC及びGから選択されるヌクレオチドであり、ナンバリングは、配列番号37に従う。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、配列番号15~19からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0055】
いくつかの態様において、宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含む操作されたgsnoRNAであって、gsnoRNAが、野生型ACA19に由来するスキャフォールド配列を含み、操作されたgsnoRNAが、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基と野生型ACA19のH/ACAボックスとの間に位置する1つまたは複数の挿入突然変異または欠失突然変異を含み、それによって、操作されたgsnoRNAが、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基とH/ACAボックスとの間に14または15ヌクレオチドを含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、前記gsnoRNAが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、UUCUによる残基26~29の置換、UGUUによる残基26~29の置換、残基115後の3’ヘアピン構造へのGの添加、及び残基8後の5’ヘアピンへのジヌクレオチド配列(XX、例えばCU)の添加からなる群から選択され、配列中、Xは、A、U及びC及びGから選択されるヌクレオチドであり、ナンバリングは、配列番号37に従う。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号15~19からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0056】
いくつかの態様において、先行する実施形態のうちの任意のものの操作されたgsnoRNAをコードする配列を含む単離された核酸分子が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、核酸分子を含むベクター(例えばウイルスベクター)が本明細書において提供される。
【0057】
いくつかの態様において、(a)宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含むgsnoRNA、またはgsnoRNAをコードする核酸分子;及び(b)DKC1タンパク質、またはDKC1タンパク質をコードする核酸分子を含み、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、操作されたRNA編集系が本明細書において提供される。
【0058】
いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞において細胞質内局在を有する。上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、ヒトDKC1アイソフォーム3タンパク質のアミノ酸残基41~420に対応するDKC1タンパク質断片を含み、アミノ酸ナンバリングは配列番号2に従う。
【0059】
上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88に少なくとも85%(例えば少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちの任意の1つ)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88のアミノ酸配列を含む。上で記載される方法のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞において細胞質内局在のある天然に存在するDKC1アイソフォームを含む。
【0060】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1アイソフォームは、ヒトDKC1タンパク質のアイソフォーム3に対応する。
【0061】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号2に少なくとも85%(例えば少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちの任意の1つ)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0062】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、全長ヒトDKC1アイソフォーム1タンパク質のアミノ酸残基1~419に対応するDKC1タンパク質断片を含み、アミノ酸ナンバリングは配列番号1に従う。
【0063】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA2bに由来するスキャフォールド配列を含む。上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36スキャフォールドの3’ヘアピン中に突然変異を含む。
【0064】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19に由来するスキャフォールド配列を含む。
【0065】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数のガイド配列を含み、各々は、野生型H/ACA-snoRNAのヘアピン構造に対応する領域中に所在する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のガイド配列のうちの少なくとも1つは、野生型H/ACA-snoRNAの3’端末部でのヘアピン構造中に所在する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のガイド配列のうちの少なくとも1つは、野生型H/ACA-snoRNAの5’端末部でのヘアピン構造中に所在する。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、単一のガイド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2つ以上の(例えば2、3、4、5、6、またはそれ以上の)ガイド配列を含む。
【0066】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、野生型ACA19の1つまたは複数のヘアピン構造(例えば3’ヘアピン構造及び/または5’ヘアピン構造)中に1つまたは複数の突然変異(例えば置換、挿入、及び/または欠失)を含む。
【0067】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、野生型H/ACA-snoRNA中のポリU配列のヌクレオチド中に1つまたは複数の置換突然変異を含み、ポリU配列は、少なくとも連続する4つのU残基を含む。
【0068】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基と野生型H/ACA snoRNAのH/ACAボックスとの間に位置する1つまたは複数の挿入突然変異または欠失突然変異を含み、それによって、操作されたgsnoRNAは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基とH/ACAボックスとの間に14または15ヌクレオチドを含む。
【0069】
操作されたRNA編集系のいくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、リボヌクレオタンパク質複合体は、NOP10、GAR1、及び/またはNHP2を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、UUCUによる残基26~29の置換、UGUUによる残基26~29の置換、残基115後の3’ヘアピン構造へのGの添加、及び残基8後の5’ヘアピンへのジヌクレオチド配列(XX、例えばCU)の添加からなる群から選択され、配列中、Xは、A、U及びC及びGから選択されるヌクレオチドであり、ナンバリングは、配列番号37に従う。
【0071】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号3~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号15~19からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0072】
上で記載される操作されたRNA編集系のうちの任意のものに従ういくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号20~21及び145~150からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0073】
いくつかの態様において、上で記載されるgsnoRNA、核酸分子、または操作されたRNA編集系のうちの任意のもの、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が本明細書において提供される。
【0074】
いくつかの態様において、上で記載されるgsnoRNA、核酸分子、または操作されたRNA編集系のうちの任意のものを含む宿主細胞が本明細書において提供される。
【0075】
いくつかの態様において、上で記載されるgsnoRNA、核酸分子、または操作されたRNA編集系のうちの任意のものを含む宿主細胞における標的RNAを編集するためのキットが本明細書において提供される。
【0076】
上で記載される方法のうちの任意の1つにおける使用のための組成物、キット、及び製造物品も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】操作されたガイドsnoRNAによって媒介される未成熟終止コドンのリードスルーを示す。Aは、「RESTART」方法デザインの概略図を提供する。snoRNP複合体を破線ボックス中に示す。Bは、レポーター-1及びガイドsnoRNAコンストラクトの構造を示す概略図を提供する。レポーター-1において、15塩基が、154番目と155番目のアミノ酸のコドンの間の位置の中へ挿入される。15塩基のDNA配列が示され、未成熟終止コドン(PTC)部位(TAG)が示される。陽性対照(Venus-GGT)が含まれる。C~Dでは、HEK293T細胞にレポーター-1及びガイドsnoRNAコンストラクトをコトランスフェクションした。Venus発現は、ハイコンテントイメージング系によって検出された。Cは、Venusの発現レベルを示す細胞の代表的な蛍光画像を示す。バー、200μm。Dは、Venus陽性細胞の相対的割合を示すドットプロットを示す。Eは、DKC1の安定的なノックダウンに際しての、DKC1タンパク質の発現レベルを示すウエスタンブロット分析である。Fは、レポーター-1及びgsnoRNAコンストラクトをコトランスフェクションしたsh対照及びDKC1の安定的なノックダウン細胞におけるVenus陽性細胞の相対的割合を示すバープロットである。
【0078】
【
図2】異なるコンストラクトのgsnoRNAによって媒介されるPTCリードスルー効果を示す。ドットプロットは、レポーター-1及び宿主イントロン内のgsnoRNA(A)、HBBイントロン内のgsnoRNA(B)、または小分子RNAプロモーターから転写されたgsnoRNA(C)をコトランスフェクションしたVenus陽性細胞の相対的割合を示す。gsnoRNAコンストラクトの構造を、各々のパネルの下部において示した。
【0079】
【
図3】
図1A~1F中で使用されるgsnoRNAスキャフォールドの予測される二次構造を示す。二次構造及び塩基対合確率は、Gruber et al.(The Vienna RNA websuite.Nucleic Acids Res 36,W70-4 (2008))(その内容は参照することによってその全体が本明細書に援用される)中で記載されるように、RNAfold serverを使用して予測される。
【0080】
【
図4】gsnoRNAスキャフォールドの最適化がPTCリードスルーの効率を改善することを示す。Aは、gACA19、gACA2b、及びgACA36スキャフォールドの予測される二次構造である。二次構造及び塩基対合確率を、RNAfold serverを使用して予測する。gACA19スキャフォールドの構造中で、7つの突然変異が示される。Bは、gsnoRNAコンストラクトの構造である。Cは、(B)コンストラクトのレポーター-1及びgsnoRNAをコトランスフェクションしたVenus陽性細胞の相対的割合を示すドットプロットである。Dは、(B)コンストラクトのレポーター-1及びgsnoRNAをコトランスフェクションした細胞の代表的な蛍光画像である。バー、200μm。Eは、レポーター-1及び異なる突然変異を備えた操作されたgACA19スキャフォールドをコトランスフェクションしたVenus陽性細胞の相対的割合を示すドットプロットである。gACA19の操作された位置は、(A)中で注釈される。Fは、(E)の代表的な蛍光画像である。バー、200μm。
【0081】
【
図5】
図4A~4F中で使用されるgsnoRNAスキャフォールドの予測される二次構造を示す。二次構造及び塩基対合確率を、RNAfold serverを使用して予測する。
【0082】
【
図6】gACA36スキャフォールドの操作を示す。Aは、操作されたgACA36スキャフォールドの予測される二次構造である。二次構造及び塩基対合確率を、RNAfold serverを使用して予測する。Bは、レポーター-1及び異なるgsnoRNAコンストラクトをコトランスフェクションしたVenus陽性細胞の相対的割合を示すドットプロットである。
【0083】
【
図7A】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。ヒトDKC1転写物の2つのアイソフォームの構造である。エクソンを上部にナンバリングし、コード領域を塗りつぶしたボックスによって表わし、UTRを白色ボックスによって表わす。NLS、核局在化シグナル。
【
図7B】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。レポーター-3コンストラクトの構造を示す概略図であり、gsnoRNAは、レポーターと共にタンデムにアレンジされる。PTC部位を囲む配列及びPTC部位(TAA/TAG/TGA)を示す。
【
図7C】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。HEK293T DKC1安定的な過剰発現細胞におけるDKC1タンパク質の発現レベルを示すウエスタンブロット分析である。Santa Cruz及びAbcamの抗DKC1抗体は、DKC1タンパク質のC末端領域及びN末端領域をそれぞれ標的化する。
【
図7D】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。示されたレポーター-3コンストラクトを、対照HEK293T、DKC1アイソフォーム1の安定的過剰発現細胞、及びDKC1アイソフォーム3つの安定的過剰発現細胞の中へ、それぞれトランスフェクションした。細胞の代表的な蛍光画像である。バー、200μm。
【
図7E】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。示されたレポーター-3コンストラクトを、対照HEK293T、DKC1アイソフォーム1の安定的過剰発現細胞、及びDKC1アイソフォーム3つの安定的過剰発現細胞の中へ、それぞれトランスフェクションした。EGFP陽性細胞の相対的割合を示すバープロットである。
【
図7F】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。示されたレポーター-3コンストラクトを、対照HEK293T、DKC1アイソフォーム1の安定的過剰発現細胞、及びDKC1アイソフォーム3つの安定的過剰発現細胞の中へ、それぞれトランスフェクションした。EGFP強度の相対的割合を示すバープロットである。
【
図7G】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。異なるレポーター-3コンストラクトをトランスフェクションしたHEK293T細胞、ならびに異なるレポーター-3及びDKC1アイソフォーム3(200ng)コンストラクトをコトランスフェクションしたHEK293T細胞におけるEGFP陽性細胞の相対的割合を示すバープロットである。
【
図7H】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。異なるレポーター-3コンストラクトをトランスフェクションしたHEK293T細胞、ならびに異なるレポーター-3及びDKC1アイソフォーム3(200ng)コンストラクトをコトランスフェクションしたHEK293T細胞におけるEGFP強度の相対的割合を示すバープロットである。
【
図7I】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。レポーター-3転写物における遺伝子座特異的Ψ修飾を、放射性同位体標識無しのqPCRベースの方法によって検出した。高解像度融解分析によって曲線を得た。Ψ部位を、CMC化学物質によって特異的に標識し、逆転写後に、Ψ-CMC付加物は、cDNA中のΨ部位でまたはその周囲で突然変異/欠失を引き起こし、したがって溶融温度におけるシフトを生じさせる。HEK293T細胞に、異なるレポーター-3及びDKC1アイソフォーム3(200ng)コンストラクトをコトランスフェクションした。
【0084】
【
図8】外来性DKC1アイソフォーム3タンパク質がPTC-RTの効率を改善することを示す。A~C、レポーター-1コンストラクトを、対照HEK293T、DKC1アイソフォーム1の安定的過剰発現細胞、及びDKC1アイソフォーム3つの安定的過剰発現細胞の中へ、それぞれトランスフェクションした。Aは、細胞の代表的な蛍光画像である。バー、200μm。Bは、Venus陽性細胞の相対的割合を示すバープロットである。Cは、Venus強度の相対的割合を示すバープロットである。Dは、空ベクター(Vec)、DKC1アイソフォーム1(DKC1 iso1)、またはDKC1アイソフォーム3(DKC1 iso3)コンストラクトと一緒にレポーター-3をコトランスフェクションしたEGFP陽性細胞の相対的割合を示すドットプロットである。バープロットの統計解析は、対応のないスチューデントのt検定である。
【0085】
【
図9】DKC1アイソフォーム3の異なる短縮のリードスルー効率を示す。レポーター-3及び異なるDKC1アイソフォーム3短縮コンストラクトをコトランスフェクションしたEGFP陽性細胞の相対的割合を示すドットプロットである。
【0086】
【
図10】異なる終止コドンについてのリードスルー効率の比較を示す。Aは、異なるレポーター-3コンストラクトをトランスフェクションした細胞の代表的な蛍光画像である。バー、200μm。Bは、示されたレポーター-3及びDKC1アイソフォーム3(200ng)コンストラクトをコトランスフェクションした細胞の代表的な蛍光画像である。バー、200μm。C~Eは、DKC1アイソフォーム3コンストラクトの量を減少させると共に、レポーター-3-TAA(C)、レポーター-3-TAG(D)、またはレポーター-3-TGA(E)をコトランスフェクションしたEGFP陽性細胞の相対的割合を示すバープロットである。
【0087】
【
図11】遺伝子座特異的Ψ修飾の検出を示す。HEK293T細胞に、異なるレポーター-3及びDKC1アイソフォーム3(200ng)コンストラクトをコトランスフェクションした。レポーター-3転写物(A)及び18S rRNA中のΨ1045部位(B~C)内の遺伝子座特異的Ψ修飾を、放射性同位体標識無しのqPCRベースの方法によって検出した。高解像度融解分析によって曲線を得た。
【0088】
【
図12】ガイドsnoRNAは、ナンセンス突然変異によって引き起こされた遺伝的障害を標的化する。PTC疾患レポーター及びgsnoRNAコンストラクトの概略図である。gsnoRNA(上部)とPTC疾患遺伝子中の標的部位(下部)との間の相補性領域である。
【0089】
【
図13】gsnoRNA(上部)とPTC疾患遺伝子中の標的部位(下部)との間の相補性領域である。
【0090】
【
図14A】RESTARTが、遺伝的障害を引き起こし得るナンセンス突然変異を修正することを示す。示されたgsnoRNA及びRESTART v1 PTC疾患レポーターコンストラクトをコトランスフェクションしたEGFP陽性細胞の相対的割合を示すドットプロットである。
【
図14B】RESTARTが、遺伝的障害を引き起こし得るナンセンス突然変異を修正することを示す。示されたgsnoRNA及びRESTART v2 DKC1アイソフォーム3コンストラクトをコトランスフェクションしたEGFP陽性細胞の相対的割合を示すドットプロットである。
【
図14C】RESTARTが、遺伝的障害を引き起こし得るナンセンス突然変異を修正することを示す。示されたgsnoRNA及びPTC疾患レポーターを、DKC1アイソフォーム3コンストラクト有りまたは無しでコトランスフェクションしたEGFP陽性細胞の相対的割合を示すバープロットである。
【0091】
【
図15A】RNAオリゴヌクレオチドによるRESTARTの送達を示す。インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAの構造である。
【
図15B】RNAオリゴヌクレオチドによるRESTARTの送達を示す。インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAの構造である。
【
図15C】RNAオリゴヌクレオチドによるRESTARTの送達を示す。インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAの構造である。
【
図15D】RNAオリゴヌクレオチドによるRESTARTの送達を示す。示されたgsnoRNAコンストラクト、インビトロ転写されたgsnoRNAオリゴヌクレオチド、または化学的に合成されたgsnoRNAオリゴヌクレオチドをトランスフェクションしたEGFP陽性細胞の相対的割合を示すバープロットである。
【
図15E】RNAオリゴヌクレオチドによるRESTARTの送達を示す。化学的に合成されたgsnoRNAオリゴヌクレオチドの構造である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本出願は、宿主細胞中の標的RNAを編集するための方法及び組成物であって、操作されたガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)を宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法及び組成物を提供する。いくつかの態様において、gsnoRNAは、野生型H/ACAスキャフォールドに比較して、1つまたは複数の突然変異を含む操作されたgsnoRNAである。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、gsnoRNAの編集効率を増加させる。いくつかの態様において、方法は、細胞質内局在のあるDKC1タンパク質の細胞レベルを増加させ、それによってgsnoRNA/DKC1タンパク質複合体の編集効率が増加することをさらに含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法及び組成物は、標的遺伝子mRNA中の未成熟終止コドン(PTC)を編集し、それによって、mRNAのナンセンス媒介性崩壊を抑制し、全長タンパク質の翻訳を促進するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される方法は、標的遺伝子中のPTCに関連する疾患を治療するために使用され得る。
【0093】
いくつかの態様において、本開示は、操作されたgsnoRNA及びgsnoRNAスキャフォールド、またはgsnoRNAをコードする核酸分子を提供する。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAスキャフォールドは、他のスキャフォールドに比較してより高い編集効率を有するとして本発明者らによって同定された野生型H/ACA snoRNAスキャフォールドに基づく。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAスキャフォールドは、編集効率を増加させる突然変異を含む。
【0094】
本出願において記載される方法及び組成物は、細胞質内局在のあるDKC1のアイソフォーム(例えばヒトDKC1のアイソフォーム3)の発現が、gsnoRNA/DKC1系を使用する標的RNAの編集効率を有意に増加させるという予想外の探索に少なくとも部分的に基づく。一態様において、本発明者らは、細胞質内局在のある外来性DKC1アイソフォームを導入することによって、gsnoRNAの編集効率を増加させ得ることを認識した。別の態様において、本発明者らは、gsnoRNAの編集効率を増加させるために使用され得るDKC1タンパク質の短縮バリアント及び欠失バリアントを同定した。
【0095】
いくつかの態様において、本明細書において記載される方法に従う使用のためのgsnoRNAをコードする核酸コンストラクトが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、本発明者らは、gsnoRNAの編集効率の増加を提供するgsnoRNA発現のためのプロモーター及びコンストラクトの構成を同定した。
【0096】
I.定義
用語は、別段定義されない限り、概して当技術分野において使用されるように、以下の通り本明細書において使用される。
【0097】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド配列」、及び「核酸配列」という用語は、互換的に使用される。それらは、任意の長さのデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体のいずれかのヌクレオチドのポリマー形態を指す。
【0098】
本明細書において使用される時、「相補性」は、伝統的なワトソン・クリック型塩基対合及び揺らぎ塩基対合によって、核酸が別の核酸と水素結合(複数可)を形成する能力を指す。パーセント相補性は、第2の核酸と水素結合(すなわちワトソン・クリック型塩基対合及び揺らぎ塩基対合)を形成し得る核酸分子中の残基のパーセンテージを示す(例えば10中の約5、6、7、8、9、10は、それぞれ約50%、60%、70%、80%、90%、及び100%相補的である)。「完全に相補的である」は、すべての核酸配列の連続した残基が、第2の核酸配列中の連続した残基の同じ数と水素結合を形成することを意味する。「実質的に相補的である」は、本明細書において使用される時、約40、50、60、70、80、100、150、200、250、もしくはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、もしくは100%のうちの任意の1つである相補性の程度を指すか、またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0099】
「ハイブリダイゼーション」への参照は、典型的には、特異的なハイブリダイゼーションを指し、非特異的ハイブリダイゼーションを除外する。特異的なハイブリダイゼーションは、プローブと標的との間の安定的相互作用の大多数が、プローブ及び標的が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する場合に確実にされるように、当技術分野において周知の技法を使用して、選ばれた実験条件下で起こり得る。
【0100】
「ミスマッチ」という用語は、本明細書において、ワトソン・クリック型対合法則及び揺らぎ塩基対合法則に従って完全な塩基対を形成しない、二本鎖RNA複合体中の向かい合うヌクレオチドを指すように使用される。ミスマッチヌクレオチドは、G-A、C-A、U-C、A-A、G-G、C-C、U-Uペアである。揺らぎ塩基対は、G-U、I-U、I-A、及びI-C塩基対である。
【0101】
本開示は、ポリヌクレオチドベースまたはポリペプチドベースの複数の型の組成物(バリアント及び誘導体を包含する)を提供する。これらのものとしては、例えば置換、挿入、欠失、及び共有結合のバリアント及び誘導体が挙げられる。「誘導体」という用語は、「バリアント」という用語と同義であり、概して、参照分子または出発分子に比べて、任意の手法で修飾及び/または変化された分子を指す。
【0102】
それゆえ、参照配列(特に本明細書において開示されるポリペプチド配列)に関して、置換、挿入及び/または添加、欠失、ならびに共有結合修飾を含有するペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本開示の範囲内に含まれる。例えば、配列タグまたはアミノ酸(1つまたは複数のリジン等)は、ペプチド配列(例えばN末端またはC末端で)へ添加され得る。配列タグは、ペプチドの検出、精製、または局在化のために使用され得る。リジンは、ペプチド可溶性を増加させるかまたはビオチン化を可能にするために使用され得る。代替的に、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシ末端領域及びアミノ末端領域に所在するアミノ酸残基は、任意選択で欠失され、短縮配列を提供し得る。ある特定のアミノ酸(例えばC末端残基またはN末端残基)は、代替的に、配列の用途(例えば可溶性であるかまたは固体支持体へ連結される、より大きな配列の一部としての配列の発現)に依存して、欠失され得る。
【0103】
「同一性」という用語は、ポリマー分子間の、例えばポリヌクレオチド分子(例えばDNA分子及び/またはRNA分子)間の、及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関係性を指す。2つのポリ核酸配列のパーセント同一性の計算は、例えば最適な比較目的のために2つの配列をアライメントさせることによって遂行され得る(例えば最適なアライメントのために、ギャップは、第1核酸配列及び第2の核酸配列のうちの1つまたは両方に導入され得、非同一配列は、比較の目的のために無視され得る)。ある特定の実施形態において、比較の目的のためにアライメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで対応するヌクレオチド位置でのヌクレオチドは比較される。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じヌクレオチドによって占有される場合に、その時分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセンテージ同一性は、2つの配列の最適なアライメントのために導入される必要のあるギャップの数及び各々のギャップの長さを考慮に入れて、配列が共有する同一である位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間のパーセント同一性の決定は数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。例えば、2つの核酸配列間のパーセント同一性は、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991(その各々は参照することによって本明細書に援用される)中で記載されるもの等の方法を使用して決定され得る。例えば、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)の中へ組み込まれたE.Meyers and W.Miller(CABIOS,1989,4:11-17)のアルゴリズムを使用して、PAM 120重み付け残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用して、決定され得る。2つの核酸配列間のパーセント同一性は、代替的に、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用するGCGソフトウェアパッケージ中のGAPのプログラムを使用して、決定され得る。配列間のパーセント同一性を決定するために一般的に用いられる方法としては、Carillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J Applied Math.,48:1073 (1988)(参照することによって本明細書に援用される)中で開示されるものが挙げられるがこれらに限定されない。同一性の決定のための技法は、公的に利用可能なコンピュータープログラムにおいて体系化される。2つの配列間の相同性を決定する例示的なコンピューターソフトウェアとしては、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research,12(1),387(1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.,215,403(1990))が挙げられるがこれらに限定されない。
【0104】
本明細書において同定されるポリペプチド配列に関して、「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮して配列をアライメントさせた後に、比較されているポリペプチド中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、例えば公的に利用可能なコンピューターソフトウェア(BLAST、BLAST-2、ALIGN、MEGALIGN(DNASTAR)、またはMUSCLEソフトウェア等)を使用して、当業者の範囲内の様々な手法で達成され得る。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたる最大のアライメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを包含する、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定し得る。しかしながら、本明細書における目的のために、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータープログラムMUSCLE(Edgar,R.C.,Nucleic Acids Research 32(5):1792-1797,2004;Edgar,R.C.,BMC Bioinformatics 5(1):113,2004、これらの各々は、それらの全体をすべての目的のために参照することによって本明細書に援用される)を使用して生成される。
【0105】
「天然に存在しない」または「操作された」という用語は、互換的に使用され、人手の関与を示す。当該用語は、核酸分子またはポリペプチドを指す場合に、核酸分子またはポリペプチドが、天然に存在する核酸分子またはポリペプチドに比較して、少なくとも1つの修飾(例えば少なくとも1つの突然変異(置換、挿入、または欠失等)、または少なくとも1つの天然に存在しない化学修飾)を含むか、またはそれらが自然界で天然に会合し、自然界で見出されるような少なくとも1つの他の構成要素が少なくとも実質的にないことを意味する。
【0106】
「野生型」という用語は、ACAスキャフォールド配列を参照して本明細書において使用される時、天然に存在するボックスH/ACA核小体低分子RNAの配列を指す。
【0107】
本明細書において使用される時、「発現」は、DNA鋳型からポリヌクレオチドが(及びmRNAまたは他のRNA転写物等へと)転写されるプロセス、及び/または転写されたmRNAが後続してペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質へと翻訳されるプロセスを指す。転写物及びコードされたポリペプチドは、集合的に「遺伝子産物」と称され得る。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来するならば、発現は、真核生物細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。
【0108】
「ポリペプチド」または「ペプチド」という用語は、本明細書において、すべての種類の天然に存在するタンパク質及び合成タンパク質を網羅し、すべての長さのタンパク質断片、融合タンパク質、及び修飾されたタンパク質(糖タンパク質、そして他のすべての型の修飾されたタンパク質(例えばリン酸化、アセチル化、ミリストイル化、パルミトイル化、糖鎖付加、酸化、ホルミル化、アミド化、ポリグルタミル化、ADPリボシル化、PEG化、ビオチン化などからもたらされるタンパク質)が限定されずに挙げられる)を包含するように使用される。
【0109】
「医薬組成物」という用語は、その中に含有される活性成分の生物学的活性が効果的であることを許容し、且つ製剤が投与されるであろう対象に許容できない毒性の追加の構成要素を含有しないような形態である調製物を指す。
【0110】
「薬学的に許容される担体」は、対象へ非毒性である活性成分以外の医薬製剤中の1つまたは複数の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、バッファー、賦形剤、安定化物質、凍結保護物質、等張化剤、防腐物質、及びそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。薬学的に許容される担体または賦形剤は、好ましくは毒性学試験及び製造試験の要求される基準を満たし、及び/または、米国食品医薬品局もしくは他の州政府/連邦政府によって立案されたInactive Ingredient Guideに含まれるか、または哺乳動物における(より具体的にはヒトにおける)使用のために米国薬局方もしくは他の一般的に認められた薬局方中でリストされる。
【0111】
「パッケージ挿入物」という用語は、治療製品の商業用パッケージ中に慣習的に含まれる指示書を指すように使用され、これは、かかる治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌、及び/または使用に関する警告についての情報を含有する。
【0112】
「製造品」は、少なくとも1つの試薬(例えば疾患もしくは病態(例えばコロナウイルス感染)の治療のための医薬品、または本明細書において記載されるバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブ)を含む、任意の製造物(例えばパッケージまたは容器)またはキットである。ある特定の実施形態において、製造物またはキットは、本明細書において記載される方法の遂行のための単位として促進、分布、または販売される。
【0113】
本明細書において記載される実施形態は、「からなる」実施形態及び/または「から本質的になる」実施形態を包含することが理解される。
【0114】
本明細書における値またはパラメーターの「約」への参照は、その値またはパラメーターそれ自体に関する変動を包含する(及び記載する)。例えば、「約X」を参照する記載は、「X」の記載を包含する。
【0115】
本明細書において使用される時、値またはパラメーターの「ではない」への参照は、概して、値またはパラメーターの「以外」を意味及び記載する。例えば、方法がX型の疾患を治療するために使用されないとは、方法がX型以外の疾患を治療するために使用されることを意味する。
【0116】
本明細書において使用される「約X~Y」という用語は、「約X~約Y」と同じ意味を有する。
【0117】
本明細書及び添付の請求項において使用される時、単数形「a」、「an」、または「the」は、別段文脈が明らかに指示しない限り、複数の指示対象を包含する。
【0118】
「及び/または」という用語は、「A及び/またはB」等の語句中で本明細書において使用される時、A及びBの両方;AまたはB;A(単独);ならびにB(単独)を包含することが意図される。同様に、「及び/または」という用語は、「A、B、及び/またはC」等の語句中で本明細書において使用される時、以下の実施形態の各々:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)を網羅することが意図される。
【0119】
II.組成物及び系
いくつかの態様において、宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含む操作されたgsnoRNAであって、gsnoRNAが、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、前記gsnoRNAが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、10以下、8以下、6以下、または4以下の化学的に修飾されたヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、10以下、9以下、8以下、または6以下のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、5’キャップ修飾(例えば7-メチルグアノシン(m7G)キャップ修飾)を含む。いくつかの実施形態において、5’キャップ修飾は、m7G(5’)ppp(5’)Gキャップ類似体を使用して、インビトロの転写によって導入される。
【0120】
いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、インビトロの転写によって産生される。いくつかの実施形態において、インビトロの転写によって産生される操作されたgsnoRNAは、全長gsnoRNA(例えば3’ヘアピン、5’ヘアピン、Hボックス、及びACAボックスを含む)である。いくつかの実施形態において、インビトロの転写によって産生される操作されたgsnoRNAは、5’キャップ修飾(例えば7-メチルグアノシン(m7G)キャップ修飾)を含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、単一のヘアピン及びHボックスを含むが、ACAボックスを含まない。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、配列番号179の配列を含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、単一のヘアピン及びACAボックスを含むが、Hボックスを含まない。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、配列番号180の配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、10以下、8以下、6以下、または4以下の化学的に修飾されたヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、10以下、9以下、8以下、または6以下のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。
【0122】
いくつかの態様において、宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含む操作されたgsnoRNAであって、gsnoRNAが、野生型ACA2bまたはACA36に由来するスキャフォールド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、前記gsnoRNAが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号11または12の配列に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号11または12に比較して、1、2、3、または4つの置換変異、欠失変異、及び/または挿入変異を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、10以下、8以下、6以下、または4以下の化学的に修飾されたヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、10以下、9以下、8以下、または6以下のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、5’キャップ修飾(例えば7-メチルグアノシン(m7G)キャップ修飾)を含む。いくつかの実施形態において、5’キャップ修飾は、m7G(5’)ppp(5’)Gキャップ類似体を使用して、インビトロの転写によって導入される。
【0123】
いくつかの態様において、本明細書において提供されるgsnoRNAをコードする配列を含む単離された核酸分子が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA2bに由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、核酸分子は、DKC1タンパク質のアイソフォーム3の発現を促進する物質をコードする配列(例えばスプライス-スイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ASOは宿主細胞において細胞質内局在のある内在性DKC1アイソフォームであるDKC1タンパク質の発現を促進する)をさらに含む。いくつかの実施形態において、核酸分子は、DKC1アイソフォームまたはDKC1タンパク質バリアントをコードする配列をさらに含み、アイソフォームまたはバリアントは細胞質内局在を有する。例示的なDKC1タンパク質は、以下のセクションII A中で記載される。
【0124】
いくつかの態様において、(a)宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含むgsnoRNA(以下のセクションII B中で記載されるgsnoRNAのうちの任意の1つ等)、またはgsnoRNAをコードする核酸分子;及び(b)DKC1タンパク質(以下のセクションII A中で記載されるgsnoRNAのうちの任意の1つ等)、またはDKC1タンパク質をコードする核酸分子を含み、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、操作されたRNA編集系が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォームである。
【0125】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるgsnoRNA、核酸コンストラクト/分子、または操作されたRNA編集系のうちの任意のものを含む宿主細胞が本明細書において提供される。
【0126】
いくつかの態様において、本明細書において記載されるgsnoRNA、核酸コンストラクト/分子、または操作されたRNA編集系のうちの任意のものを含む宿主細胞における標的RNAを編集するためのキットが本明細書において提供される。
【0127】
A.DKC1タンパク質
本出願は、いくつかの実施形態において、操作されたDKC1タンパク質、またはDKC1タンパク質をコードする核酸コンストラクトを提供する。
【0128】
ジスケリン(DKC1)は、高度に保存された多機能性タンパク質であり、RNAガイド型シュードウリジン合成酵素として作用し、特異的なウリジンのシュードウリジンへの酵素的変換を指令する。DKC1は、核小体及びカハール体(CB)中に濃縮され、そこで、3つの他の高度に保存されたタンパク質(Nop10、Nhp2、Gar1)と会合して、重要な生物学的な機能を演じる異なる核RNPの組成物中に侵入することが可能な四量体を構成する。核小体内で、四量体は、H/ACA核小体低分子RNA(snoRNA)と会合して、rRNAプロセシングを調節し、snoRNAガイド型塩基相補性によってRNA標的をシュードウリジン化する、H/ACA snoRNPを構成する。CB内で、当該四量体は、CB特異的小分子RNA(scaRNA)と会合して、スプライセオソームsnoRNAのシュードウリジン化を指令する、scaRNPを構成する。
【0129】
ヒト細胞において2つのDKC1アイソフォームがある。DKC1アイソフォーム1は、二部構成のN末端及びC末端の核局在化シグナル(NLS)を含有するカノニカルなDKC1形態である。DKC1アイソフォーム3は、オルタナティブスプライシングバリアントであり、それはイントロン12の保持によって産生され、C末端NLSを欠如する(
図9A)。アイソフォーム1の内在性mRNA発現レベルは、アイソフォーム3のものよりもおよそ20倍高い
5。驚くべきことに、本発明者らは、DKC1アイソフォーム3のレベルを増加させることが、gsnoRNAによってガイドされる標的シュードウリジン化編集効率(例えば標的mRNAの編集効率)を促進することを見出した。
【0130】
いくつかの態様において、本開示の組成物は、DKC1タンパク質の発現のための核酸コンストラクトを含む。いくつかの態様において、本開示の組成物は、DKC1タンパク質(例えばgsnoRNAとの複合体中のDKC1タンパク質)を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、哺乳動物のDKC1タンパク質のアイソフォーム3である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、ヒトDKC1タンパク質のアイソフォーム3に相同である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、ヒトDKC1タンパク質のアイソフォーム3に少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、ヒトDKC1タンパク質のアイソフォーム3である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号2に少なくとも85%(例えば少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちの任意のもの)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。全長のDKC1(アイソフォーム1)及びアイソフォーム3 DKC1の配列、以下の表1中で示される。
【0131】
いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、リボヌクレオタンパク質複合体は、NOP10、GAR1、及び/またはNHP2を含む。
【0132】
いくつかの態様において、短縮されたDKC1タンパク質バリアント及びそれをコードする核酸コンストラクトが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、同じ種の野生型DKC1タンパク質に比べて核局在化シグナル(NLS)の欠失を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、DKC1アイソフォーム3のアミノ酸残基9~21の欠失を含み、アミノ酸ナンバリングは、配列番号2に基づく。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、DKC1アイソフォーム3のアミノ酸残基22~420を含み、アミノ酸ナンバリングは、配列番号2に基づく。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、DKC1アイソフォーム3のアミノ酸残基35~420を含み、アミノ酸ナンバリングは、配列番号2に基づく。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、DKC1アイソフォーム3のアミノ酸残基41~420を含み、アミノ酸ナンバリングは、配列番号2に基づく。配列番号2におけるDKC1配列は、ヒトDKC1のアイソフォーム3であるが、当業者であれば、配列アライメントに基づいた相同なDKC1タンパク質の対応する短縮バリアント及び欠失バリアント(例えば他の哺乳動物種からのDKC1タンパク質の対応する欠失バリアント/短縮バリアント)を生成する方法を理解するだろう。
【0133】
いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号85に少なくとも85%(例えば少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちの任意のもの)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号86に少なくとも85%(例えば少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちの任意のもの)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号87に少なくとも85%(例えば少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちの任意のもの)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88に少なくとも85%(例えば少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のうちの任意のもの)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるDKC1タンパク質のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、DKC1の(例えばDKC1の触媒ドメインの)、またはリボヌクレオタンパク質複合体中での他のタンパク質との相互作用の、安定性及び/または他の生物学的特性を改善することが所望され得る。リボヌクレオタンパク質複合体中のDKC1及び他のタンパク質の構造は、Rashid et al.(Molecular Cell(2006)21(2):249-260)及びCzekay et al.(Front.Microbiol.(2021)12:654370)(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)中で例えば記載されている。DKC1タンパク質のアミノ酸配列バリアントは、標的結合部分をコードするヌクレオチド配列の中へ適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾としては、例えば標的結合部分のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/または当該残基の中への挿入、及び/または当該残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終的なコンストラクトに到達するために行なわれ得るが、但し、最終的なコンストラクトは所望される特徴を保持するものとする。
【0135】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有するDKC1タンパク質バリアントが提供される。アミノ酸置換がDKC1タンパク質の中へ導入され、産物は所望される活性についてスクリーニングされ得る。
【0136】
【0137】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従って異なるクラスへと分類され得る。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0138】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うだろう。
【0139】
天然に存在するDKC1タンパク質の断片またはその機能的バリアント、及び例えばDKC1断片のN末端、C末端、または内部の所在位置での異種のアミノ酸配列を含む融合タンパク質も企図される。
【0140】
B.核酸コンストラクト及び操作されたgsnoRNA
いくつかの態様において、H/ACA snoRNAに基づく操作されたgsnoRNAが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、単一のガイド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2つのガイド配列を含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、2つを超える(例えば3、4、5、6、またはそれ以上の)ガイド配列を含む。例えば、H/ACA snoRNAは、2つのヘアピン、続いてHボックスモチーフ及びACAボックスモチーフを含有する。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される操作されたgsnoRNAの両方のヘアピンは、標的シュードウリジン化部位を標的化することが可能なガイド配列を含有する。他の実施形態において、操作されたgsnoRNAの1つのヘアピンのみが、標的シュードウリジン化部位を標的化することが可能なガイド配列を含有する。例示的な操作されたgsnoRNA配列は、以下の表2及び3中で提供される。
【0141】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるgsnoRNAは、合成オリゴヌクレオチドであり、当技術分野において公知の方法に従って合成され得る。いくつかの実施形態において、本開示に従うgsnoRNAは、オリゴリボヌクレオチド(完全なRNA(full RNA))である。しかしながら、いくつかの実施形態において、本開示のgsnoRNAは、DNAを含み得る。いくつかの実施形態において、特に生物学的な系において発現され得るヌクレオチドまたは連結のみからなる場合に、gsnoRNAは、例えばプラスミドまたはウイルスベクターからインサイチューで発現され得る。
【0142】
いくつかの態様において、gsnoRNAは、ACA2b及びACA36からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの態様において、野生型H/ACAスキャフォールドに由来するgsnoRNAの編集効率は、哺乳動物細胞において(例えばHEK293T細胞等のヒト細胞において)、少なくとも5%(例えば約5%~15%または5~10%の間)である。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA2bに由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19に由来するスキャフォールド配列を含む。
【0143】
いくつかの態様において、操作されたgsnoRNA、及び野生型H/ACA-snoRNAに由来する(例えばACA2b、ACA36、またはACA19からの)操作されたgsnoRNAスキャフォールドであって、gsnoRNAが、タンパク質をコードするRNA中のPTCを修飾することが可能であり、前記修飾が、全長タンパク質の発現をもたらす、前記gsnoRNA及び前記gsnoRNAスキャフォールドが本明細書において開示される。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、宿主細胞において、未成熟終止コドン無しの全長タンパク質の発現レベルの少なくとも4%(例えば少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%)の全長のタンパク質の発現を引き起こすことが可能である。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、全長タンパク質の発現を引き起こすことが可能であり、タンパク質の発現は、エンリッチメント無しで(例えば免疫沈降によるエンリッチメント無しで)検出可能である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、タグ(例えば蛍光タグを介して)を介して検出される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、当技術分野において公知の方法に従って免疫染色によって検出される。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、宿主細胞のうちの少なくとも20%(例えば宿主細胞のうちの少なくとも25%、少なくとも30%または少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%)において全長タンパク質の発現を引き起こすことが可能である。
【0144】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数のガイド配列を含み、各々は、野生型H/ACA-snoRNAのヘアピン構造に対応する領域中に所在する。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、野生型H/ACA-snoRNAの3’端末部でヘアピン構造中に所在する1つまたは複数のガイド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、野生型H/ACA-snoRNAの5’端末部でヘアピン構造中に所在する1つまたは複数のガイド配列を含む。
【0145】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、野生型ACA19の1つまたは複数のヘアピン構造(例えば3’ヘアピン構造及び/または5’ヘアピン構造)中に1つまたは複数の突然変異(例えば置換、挿入、及び/または欠失)を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、野生型スキャフォールドに比較して、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基とH/ACAボックスとの間の距離を変更する、1つまたは複数の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、1つまたは複数のヌクレオチド残基の挿入または欠失を含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基とH/ACAボックスとの間に14のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチド残基とH/ACAボックスとの間に15のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、前記突然変異は、野生型スキャフォールドに比較して、少なくとも1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、または1.6倍までシュードウリジン化の効率(例えばPTCリードスルーの効率)を増加させる。
【0146】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、小ポリU配列(例えば4以上または5以上の連続したウリジン(U)残基の配列)中の置換を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、連続2つ以下のU残基を含むように小ポリU配列を変更することを含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、「UUUU」配列中に単一塩基突然変異を含む。いくつかの実施形態において、突然変異は、「UUCU」突然変異または「UGUU」突然変異である。いくつかの実施形態において、突然変異されたポリU配列は、gsnoRNAスキャフォールドのループ領域中に所在する。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、配列番号49または50の配列を含む。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、配列番号15または16の配列を含む。いくつかの実施形態において、前記突然変異は、野生型スキャフォールドに比較して、少なくとも1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、または1.6倍までシュードウリジン化の効率(例えばPTCリードスルーの効率)を増加させる。
【0147】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、野生型スキャフォールドのガイド領域に比較して、ガイド領域の開放性を増加させる突然変異を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、gsnoRNAスキャフォールドのガイド領域(例えばgACA19スキャフォールドの5’ガイド領域)内の1つまたは複数の残基の塩基対合確率を低減する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、残基8の後のCUの添加を含み、ナンバリングは配列番号37に従う。いくつかの実施形態において、操作されたgsnoRNAは、配列番号53のgsnoRNAである。gACA19-5addCU(配列番号53)の予測される二次構造は、
図5D中で示される。いくつかの実施形態において、前記突然変異は、野生型スキャフォールドに比較して、少なくとも1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、または1.6倍までシュードウリジン化の効率(例えばPTCリードスルーの効率)を増加させる。
【0148】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、UUCUによる残基26~29の置換、UGUUによる残基26~29の置換、残基115後の3’ヘアピン構造へのGの添加、及び残基8後の5’ヘアピンへのジヌクレオチド配列(XX、例えばCU)の添加からなる群から選択され、配列中、Xは、A、U及びC及びGから選択されるヌクレオチドであり、ナンバリングは、配列番号37に従う。
【0149】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号17~19及び22~29からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号15~19からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、gsoRNAは、配列番号20~21及び145~150からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、疾患を標的化するgsnoRNA(例えば表4中に提供されるgsnoRNA配列のうちの任意のもの)である。
【0154】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2’O-メチル(2’-OMe)修飾または2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、本開示に従うgsnoRNAのほとんど全体は、例えば2’-O-メチル化された糖部分(2’-OMe)を備えたヌクレオチド及び/または2’-Oメトキシエチル糖部分(2’-MOE)を備えたヌクレオチドの提供によって化学的に修飾され得る。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、20以下、15以下、10以下、8以下、6以下、または4以下の2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、約2~約6の2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、約4の2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、5以下の修飾された糖を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの5’端で修飾された糖部分(例えば2’-OMe)を含む2つのヌクレオシド、及び3’端で修飾された糖部分(例えば2’-OMe)を含む2つのヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの5’端で修飾された糖部分(例えば2’-OMe)を含む4、3、または2以下のヌクレオシド、及び3’端で修飾された糖部分(例えば2’-OMe)を含む4、3、または2以下のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、20以下、15以下、10以下、8以下、または6以下のホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、約2~約10のホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、約6つのホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの5’端で約3つのホスホロチオエート連結及び3’端で約3つのホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの5’端で5、4、または3以下のホスホロチオエート連結及び3’端で5、4、または3以下のホスホロチオエート連結を含む。実施例7は、限定的な数の修飾が、gsnoRNAオリゴヌクレオチドの安定性及び機能のために十分であることを実証する結果を提供する。
【0155】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、2’O-メチル(2’-OMe)修飾または2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)修飾を有する1つまたは複数のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、本開示に従うgsnoRNAのほとんど全体は、例えば2’-O-メチル化された糖部分(2’-OMe)を備えたヌクレオチド及び/または2’-Oメトキシエチル糖部分(2’-MOE)を備えたヌクレオチドの提供によって化学的に修飾され得る。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは5’ヘアピン、Hボックス(コンセンサス配列ANANNA)、3’ヘアピン、及びACAボックス(コンセンサス配列ANA)を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、単一のヘアピン及びHボックス(それぞれ5’半分のgsnoRNAコード配列またはgsnoRNAオリゴヌクレオチドについて、gH5またはrH5として本明細書において称される)を含み、ACAボックスを欠如する。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、単一のヘアピン及びACAボックス(それぞれ3’半分のgsnoRNAコード配列またはgsnoRNAオリゴヌクレオチドについて、gH3またはrH3として本明細書において称される)を含み、Hボックスを欠如する。いくつかの実施形態において、単一のヘアピンを含むgsnoRNAは、60~70ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態において、単一のヘアピンを含むgsnoRNAは、約65ヌクレオチドの長さである。
【0156】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、インビトロの転写によって調製される。いくつかの実施形態において、インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAは、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36のうちの任意の1つの配列を含む。いくつかの実施形態において、インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAは、5’キャップ修飾または5’ヘアピン(例えばU6+U27発現カセットの)を含む。いくつかの実施形態において、インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAは、5’キャップ修飾を含む。いくつかの実施形態において、5’キャップ修飾は、m
7G修飾(例えばキャップ0修飾、キャップ1修飾、またはキャップ2修飾)またはm
6A
m修飾である。RNAオリゴヌクレオチドへの5’キャップの添加に好適な方法は、例えば米国特許第10,494,399号(その内容は参照することによってその全体が本明細書に援用される)中で記載されている。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、3’ヘアピンをさらに含む(例えばgsnoRNAは、配列番号4~6、9~12、15~19、及び22~36のうちの任意の1つの配列、ならびに3’ヘアピンを含む)。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、5’キャップ修飾を含み、3’ヘアピンを含まない(例えば
図15A中で示されるような)。いくつかの実施形態において、5’キャップ修飾は、m
7G(5’)ppp(5’)Gキャップ類似体を使用して、インビトロの転写によって導入される。
【0157】
様々なケミストリー及び修飾は、オリゴヌクレオチドの分野において公知であり、本開示に従って容易に使用され得る。ヌクレオチド間の規則的なヌクレオシド間連結は、ホスホジエステル結合のモノチオエーション(monothioation)またはジチオエーション(dithioation)によって変更されて、それぞれホスホロチオエートエステルまたはホスホロジチオエートエステルをもたらし得る。ヌクレオシド間連結の他の修飾は可能であり、アミド化リンカー及びペプチドリンカーが挙げられる。好ましい態様において、本開示のgsnoRNAは、gsnoRNAの最も端末のヌクレオチド間で(したがって好ましくは5’端及び3’端の両方で)1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のホスホロチオエート連結を有し、3つのホスホロチオエート連結の事例において、その結果、最終的な4つのヌクレオチドが連結されることを意味する。かかる連結の数が、標的配列に依存して、または他の態様(毒性等)に基づいて、各々の端部で変動し得ることが、当業者によって理解されよう。しかしながら、gsnoRNAが、端末の7つのヌクレオチドでの任意の位置間で1つまたは複数のPS連結を含むことは、本開示のいくつかの実施形態である。
【0158】
リボース糖は、低級アルキル(2’-OMe等のC1-4)、アルケニル(C2-4)、アルキニル(C2-4)、メトキシエチル(2’-メトキシエトキシ;または2’-O-メトキシエチル;または2’-MOE)、または他の置換基による2’-O部分の置換によって修飾され得る。いくつかの実施形態において、2’OH基の置換基は、メチル基、メトキシエチル基、または3,3’-ジメチルアリル基である。後者は、その嵩高さに起因してヌクレアーゼ感度を阻害する一方で、ハイブリダイゼーションの効率を改善する特性が公知である。代替的に、リボース環の内部の2’-4’の分子内架橋(通常2’酸素と4’炭素との間のメチレン架橋)連結を含むロック核酸配列(LNA)が適用され得る。プリン核酸塩基及び/またはピリミジン核酸塩基は、それらの特性を変更するたに、例えばヘテロ環式環のアミノ化または脱アミノ化によって修飾され得る。本開示のgsnoRNA中に存在し得る他の修飾は、2’-F修飾糖、BNA、及びcEtである。厳密なケミストリー及びフォーマットは、オリゴヌクレオチドコンストラクト毎に、及び適用毎に異なり、当業者の希望及び好みに従って遂行され得る。
【0159】
本開示のgsnoRNA中の化学修飾の例は、糖部分の修飾であり、糖(リボース)部分内の置換基の架橋(例えばLNAまたはロック核酸、BNA、cEt、及び同種のものにおけるように)によるもの、上で指定される長さを有する、アルキル(例えば2’-O-メチル)基、アルキニル(2’-O-アルキニル)基、アルケニル(2’-O-アルケニル)基、アルコキシアルキル(例えば2’-O-メトキシエチル、2’-MOE)基、及び同種のものによる2’-O原子の置換によるものが挙げられる。本開示の文脈において、糖「修飾」は、2’デオキシリボースも含む(DNA中でのように)。加えて、主鎖のホスホジエステル基は、チオエーション(thioation)、ジチオエーション(dithioation)、アミド化、及び同種のものによって修飾されて、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデートなどのヌクレオシド間連結をもたらし得る。ヌクレオシド間連結は、ペプチド連結によって完全にまたは部分的に置き換えられて、ペプチド核酸(peptidonucleic acid)配列及び同種のものをもたらし得る。代替的にまたは加えて、核酸塩基は、アミノ化によって(脱)修飾されて、イノシンまたは2’6’-ジアミノプリン及び同種のものをもたらし得る。さらなる修飾は、ヌクレオチドのシチジン部分中のC5のメチル化かあり得、CpG配列と関連することが公知である潜在的な免疫原性特性を低減する。
【0160】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間連結を含まない。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、非天然のヌクレオシド間連結を含まない。
【0161】
哺乳動物のH/ACA snoRNAは、概して、タンパク質をコードする遺伝子のプレmRNAイントロン領域内に埋め込まれる(位置する)。転写伸長の間に、シュードウリジン化における機能的役割のある複数のタンパク質(NOP10、ジスケリン(DKC1)、またはNHP2等)は、新生H/ACA snoRNA配列へ結合する。スプライシングに続いて、ガイドRNAは、デブランチング及び末端核酸分解プロセシングを介してプロセシングされ、「核内低分子リボ核タンパク質」(snRNP、またはsnRNP複合体)と呼ばれるRNAタンパク質複合体をもたらす。ボックスH/ACA snoRNAは、イントロンの5’端または3’端に対する局在化の優先性はなく、小さなイントロンまたは非常に大きなイントロン中に存在し得るが、通常、3’スプライス部位の60~90ヌクレオチド上流に局在し、比較的小さなイントロンでコードされるボックスC/D snoRNAとは対照的である。所与のsnoRNA配列が、任意の所与の能動的にスプライスされたmRNAのイントロン領域から切除され、完全にプロセシングされ得ることが、Kiss and Filipowicz(1995,Genes Dev 9(11):1411-1424)によって示唆されている。このsnoRNAプロセシングが、宿主イントロンコンテキストとは独立して実行可能であることを示すために、Kiss and Filipowiczは、ヒトβ-グロビン遺伝子の第2のイントロンの中へ複数のsnoRNA(III7a、U17b、及びU19)を人工的に埋め込み、線維芽細胞様細胞においてもたらされたベクターを発現させた。トランスフェクション後に、人工的なイントロンにより送達されたsnoRNAが、ヒトβ-グロビンイントロンから適切にプロセシングされ、β-グロビンプレmRNAが正確にスプライスされることを見出した。Darzacq et al.(2002,EMBO J 21(11);2746-2756)は、他のガイドRNAが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下の発現ベクターを使用して、ヒトβ-グロビン遺伝子の第2のイントロンの中へ挿入され、トランスフェクションを介して哺乳動物細胞へ送達され得ることを確認した。
【0162】
本出願の発明者らは、予想外に、異なるgsnoRNAのシュードウリジン化編集効率に対する多様な宿主イントロンコンテキスト依存性効果を同定した(実施例1中で考察されように)。例えば、本発明者らは、野生型ACA19(EIF3Aの宿主イントロン中に埋め込まれた)、ACA-44(SNHG12の宿主イントロン中に埋め込まれた)、ACA27(RPL21の宿主イントロン中に埋め込まれた)、及びE2(RPSAの宿主イントロン中に埋め込まれた)の宿主遺伝子に基づくgsnoRNA、ならびにHBB遺伝子の非宿主イントロン中に埋まれたgsnoRNAのPTCリードスルー効率を試験した(
図2A及び2B)。驚くべきことに、本発明者らは、E2スキャフォールドに基づくgsnoRNAの編集効率は、gE2がHBBイントロン中に埋め込まれ場合に宿主RPSAイントロンに比較してより低いが、gACA19の編集効率は、HBBイントロン中に埋め込まれた場合に宿主EIF3Aイントロンに比較して類似していたことを見出した。宿主遺伝子配列が異なるgsnoRNAに対して多様な効果を有するというこの観察に基づいて、本発明者らは、宿主遺伝子効果無しでgsnoRNAを直接的に発現させることは、PTCリードスルーの効率をさらに増加させ得ることを想定した。したがって、本発明者らは、gsnoRNAをコードする核酸分子がイントロン中に埋め込まれていないgsnoRNA発現コンストラクトのシリーズをデザインした。実施例1において考察されるように、本発明者らは、hU6プロモーター(III型RNAポリメラーゼIIIプロモーター)及びhU1プロモーター(snRNA型RNAポリメラーゼIIプロモーター)によって駆動されるgsnoRNAをコードする核酸分子において、イントロン中に埋め込まれていないgsnoRNAのシュードウリジン化活性が促進されることを実証した。したがって、一態様において、gsnoRNAをコードする核酸分子であって、小分子RNAプロモーター(例えばU6プロモーターまたはU1プロモーター)の制御下にある、前記核酸分子が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸は、イントロン配列中に埋め込まれない。
【0163】
いくつかの態様において、gsnoRNAをコードする核酸コンストラクトが本明細書において提供される。本明細書において記載される方法のうちのいくつかの実施形態において、方法は、gsnoRNAをコードする核酸分子を宿主細胞の中へ導入することを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸分子は、小分子RNAプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態において、小分子RNAプロモーターは、U6プロモーター(ポリメラーゼIIIによって転写される)またはU1プロモーター(ポリメラーゼIIによって転写される)である。いくつかの実施形態において、本明細書において開示される方法に従う小分子RNAプロモーターからのgsnoRNAの発現は、宿主イントロン配列または他のイントロン配列中に埋め込まれた同じgsnoRNAに比較して、シュードウリジン化効率の増加(例えばPTCリードスルー効率の増加)を提供する。いくつかの実施形態において、小分子RNAプロモーターの制御下の核酸から発現されたgsnoRNAのシュードウリジン化効率は、宿主イントロン中に埋め込まれた同じgsnoRNAに比較して1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、または2倍高い。実施例1(
図1A~1E及び
図2A~2C)は、イントロンに埋め込まれたgsnoRNAに比較して、小分子RNAプロモーターの制御下の核酸から発現されたgsnoRNAによるPTCリードスルーの促進を実証する結果を提供する。
【0164】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸分子は、第1のエクソン配列と第2のエクソン配列との間に所在するイントロン配列中に埋め込まれる。いくつかの実施形態において、第1のエクソン配列、イントロン配列、及び第2のエクソン配列は、天然に存在する遺伝子に由来する。いくつかの実施形態において、イントロンは、追加のヌクレオチドを含み得る(ガイド領域を含む本開示の核酸分子の他に)。ガイド領域がイントロン配列から発現されるので、かかる追加のヌクレオチドは、イントロンからの最も効率的な発現を与えるように選択され得る。いくつかの実施形態において、エクソンA/イントロン/エクソンB配列は、ベクター(プラスミドまたはウイルスベクター等)中に存在する。かかるベクターを使用して、エクソン-イントロン-エクソン配列を細胞へ送達することができる。追加のイントロン及びエクソンは、かかるベクター中に存在し得る。いくつかの実施形態において、エクソンA配列(gsnoRNAをコードする核酸(それは転写後に発現される)を保有するイントロンの上流)は、ヒトβ-グロビン遺伝子のエクソン1を含むかまたは当該エクソンからなり、エクソンB配列(gsnoRNAをコードする核酸(それは転写後に発現される)を保有するイントロンの下流)は、ヒトβ-グロビン遺伝子のエクソン2を含むかまたは当該エクソンからなる。いくつかの実施形態において、エクソンA配列(gsnoRNAをコードする核酸(それは転写後に発現される)を保有するイントロンの上流)は、ヒトヘモグロビンサブユニットβ(HBB)遺伝子のエクソン2を含むかまたは当該エクソンからなり、エクソンB配列(gsnoRNAをコードする核酸(それは転写後に発現される)を保有するイントロンの下流)は、ヒトヘモグロビンサブユニットβ(HBB)遺伝子のエクソン3を含むかまたは当該エクソンからなる。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードする核酸分子は、第1のエクソン配列と第2のエクソン配列との間のイントロン配列中に埋め込まれ、イントロン配列、第1のエクソン配列、及び第2のエクソン配列は、天然に存在するsnoRNAを保有する宿主遺伝子の配列に対応する。いくつかの実施形態において、イントロンに埋め込まれたgsnoRNAコード配列を含むコンストラクトは、CMVプロモーターの制御下にある。
【0165】
いくつかの態様において、疾患関連PTCを標的化する操作されたgsnoRNAが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、疾患関連PTCを標的化する操作されたgsnoRNAは、gsnoRNAの編集効率及び/または発現を促進するために1つまたは複数の突然変異を含む。いくつかの実施形態において、疾患関連PTCを標的化する操作されたgsnoRNAは、配列番号71~84から選択される(
図14~15中で示される)。疾患関連PTCを標的化する例示的な操作されたgsnoRNAの配列は、以下の表4中で示される。
【0166】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、遊離形態(またはベクターのコンテキストの無い「裸の」)で投与され得るか、または他の手段(リポソームまたはナノ粒子等)によって、もしくはイオントフォレシスの使用によって細胞へ送達され得る。いくつかの実施形態において、gsnoRNAはリボヌクレオタンパク質複合体中で(例えばDKC1、HNP2、NOP10、及び/またはGAR1を含む複合体中で)投与され得る。いくつかの実施形態において、遊離gsnoRNAは、上で記載されるような1つまたは複数の化学的に修飾されたヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間連結を含む。
【0167】
いくつかの態様において、DKC1(例えば上のセクションIIA中で記載されるDKC1タンパク質のうちの任意のもの)をコードする核酸コンストラクトが本明細書において提供される。本明細書において記載される方法のうちのいくつかの実施形態において、方法は、DKC1タンパク質をコードする核酸分子を宿主細胞の中へ導入することを含む。いくつかの実施形態において、核酸分子は、DKC1をコードするヌクレオチド配列へ作動可能に連結されたプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、pol IIプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーターである。
【0168】
本明細書において開示される時、ベクターは、DNAまたはRNAを保有してもよく、概して、ベクターが導入される細胞中でプロセシングされた後に、本開示のgsnoRNAコンストラクト及び/またはDKC1タンパク質コンストラクトを発現させるために使用される。これは、概して、ベクター中に存在するDNAまたはRNAの転写を介するものである。いくつかの実施形態において、ベクターは、当業者に公知の様々な手法で細胞の中へ導入され得るウイルスベクター(治療される標的細胞を感染させるために使用され得る)、またはプラスミドである。
【0169】
いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質をコードする核酸分子及び/またはgsnoRNAをコードする核酸分子は、ウイルスベクター中に存在する。いくつかの実施形態において、方法は、DKC1タンパク質をコードする第1の核酸配列及びgsnoRNAをコードする第2の核酸配列を含むベクター(例えばプラスミドまたはウイルスベクター)を宿主細胞の中へ導入することを含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0170】
例示的な操作されたACAスキャフォールド配列は、以下の表2中で示される。ガイド配列は、(Xn)として示され、下線が引かれ、配列中、Xnは、長さnのXヌクレオチドの配列であり、Xは、A、U、G、またはCのうちの任意のものであり、nは、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である。ガイド配列(Xn)は、当業者によって理解されるように、所望される標的部位へgsnoRNAを標的化するために修飾され得る。いくつかの実施形態において、nは、ガイド領域に好適な長さの整数である。いくつかの実施形態において、nは、4、5、6、7、8、または9である。
【0171】
例示的なガイド配列を含む例示的な操作されたgsnoRNA配列は、以下の表3中で示される。
【0172】
例示的な疾患関連PTCを標的化する例示的な操作されたgsnoRNA配列は、以下の表4中で示される。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0173】
一態様において、本発明者らは、gsnoRNAがその標的RNAとタンデムにコードされた場合にgsnoRNAの編集効率が驚くほど高いことを見出した。実施例3は、gsnoRNA及び標的RNAをタンデムにコードするレポーターコンストラクトを使用して、編集効率の増加を実証する結果を提供する。
【0174】
したがっていくつかの態様において、ガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)をコードするヌクレオチド配列を標的RNAをコードするヌクレオチド配列とタンデムに含む核酸分子が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードするヌクレオチド配列は、U6プロモーターまたはU1プロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、標的RNAをコードするヌクレオチド配列は、同じプロモーターまたは異なるプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、標的RNAをコードするヌクレオチド配列とタンデムにコードされたgsnoRNAは、標的RNAとは分離した核酸分子中でコードされた同じgsnoRNAに比較して、少なくとも標的RNAの1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、または2倍の多い編集効率を提供する。
【0175】
III.方法
いくつかの実施形態において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)及びDKC1タンパク質をコードする核酸分子を宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォーム(例えばアイソフォーム3)である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、同じ種の野生型DKC1タンパク質に比べて核局在化シグナル(NLS)の欠失を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、短縮されたDKC1バリアントまたは欠失を含むDKC1バリアント(上のセクションIIA中で記載される短縮バリアントまたは欠失バリアントのうちの任意のもの等)である。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、宿主細胞において、NOP10、GAR1、及びNHP2を動員する。
【0176】
いくつかの実施形態において、方法は、gsnoRNAをコードする核酸(例えば核酸ベクター)を細胞の中へ導入することを含む。他の実施形態において、方法は、gsnoRNAオリゴヌクレオチドを細胞の中へ導入することを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、第1のヘアピン及びHボックス、及び第2のヘアピン、及びACAボックスを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、インビトロの転写によって調製される。いくつかの実施形態において、インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAは、配列番号4~6、9~12、及び15~19、22~36のうちの任意の1つの配列を含む。いくつかの実施形態において、インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAは、5’キャップ修飾または5’ヘアピン(例えばU6+U27発現カセットの)を含む。いくつかの実施形態において、インビトロの転写によって調製されたgsnoRNAは、5’キャップ修飾を含む。いくつかの実施形態において、5’キャップ修飾は、m
7G修飾(例えばキャップ0修飾、キャップ1修飾、またはキャップ2修飾)またはm
6A
m修飾である。RNAオリゴヌクレオチドへの5’キャップの添加に好適な方法は、例えば米国特許第10,494,399号(その内容は参照することによってその全体が本明細書に援用される)中で記載されている。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、3’ヘアピンをさらに含む(例えばgsnoRNAは、配列番号4~6、9~12、15~19、及び22~36のうちの任意の1つの配列、ならびに3’ヘアピンを含む)。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、5’キャップ修飾を含み、3’ヘアピンを含まない(例えば
図15A中で示されるような)。いくつかの実施形態において、インビトロで転写されたgsnoRNAは、細胞におけるガイディング標的化シュードウリジン化が可能である。いくつかの実施形態において、5’キャップ修飾は、m
7G(5’)ppp(5’)Gキャップ類似体を使用して、インビトロの転写によって導入される。
【0177】
いくつかの実施形態において、方法は、gsnoRNAの半分の(例えば単一のヘアピン及びHボックスを含むか、または単一のヘアピン及びACAボックスを含む)gsnoRNAをコードする核酸(例えば核酸ベクター)を細胞の中へ導入することを含む。他の実施形態において、方法は、gsnoRNAの半分の(例えば単一のヘアピン及びHボックスを含むか、または単一のヘアピン及びACAボックスを含む)gsnoRNAを細胞の中へ導入することを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、20以下、15以下、10以下、8以下、6以下、または4以下の2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、約2~約6の2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、約4の2’-OMe修飾または2’-MOE修飾を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、5以下の修飾された糖を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの5’端で修飾された糖部分(例えば2’-OMe)を含む2つのヌクレオシド、及び3’端で修飾された糖部分(例えば2’-OMe)を含む2つのヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの5’端で修飾された糖部分(例えば2’-OMe)を含む4、3、または2以下のヌクレオシド、及び3’端で修飾された糖部分(例えば2’-OMe)を含む4、3、または2以下のヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、1つまたは複数のホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、20以下、15以下、10以下、8以下、または6以下のホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、約2~約10のホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、約6つのホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの5’端で約3つのホスホロチオエート連結及び3’端で約3つのホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの5’端で5、4、または3以下のホスホロチオエート連結及び3’端で5、4、または3以下のホスホロチオエート連結を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは5’ヘアピン、Hボックス(コンセンサス配列ANANNA)、3’ヘアピン、及びACAボックス(コンセンサス配列ANA)を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、単一のヘアピン及びHボックス(それぞれ5’半分のgsnoRNAコード配列またはgsnoRNAオリゴヌクレオチドについて、gH5またはrH5として本明細書において称される)を含み、ACAボックスを欠如する。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、単一のヘアピン及びACAボックス(それぞれ3’半分のgsnoRNAコード配列またはgsnoRNAオリゴヌクレオチドについて、gH3またはrH3として本明細書において称される)を含み、Hボックスを欠如する。いくつかの実施形態において、単一のヘアピンを含むgsnoRNAは、60~70ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態において、単一のヘアピンを含むgsnoRNAは、約65ヌクレオチドの長さである。
【0178】
本開示は、通常、翻訳終止及びmRNA分解を導くナンセンス終止突然変異の効果(ナンセンス媒介性崩壊を介して、以下参照)を回復させるがこれらに限定されないことによって、例示される。別の態様において、標的化シュードウリジン化は、例えば重要なタンパク質領域(タンパク質キナーゼ活性部位等)においてアミノ酸置換を介してタンパク質機能を調節する手段としての、ウリジン含有コドンを再コードする手段として作用し得る。
【0179】
遺伝子のコーディング配列中のPTCを導く突然変異の帰結のうちの1つは、mRNAのレベルの減少である。これはナンセンス媒介性崩壊(NMD)として公知のメカニズムに起因し、異常なmRNAの転写物を分解し、正確にプロセシングされなかった転写物が翻訳されることを防止する、細胞監視メカニズムである。遺伝的障害の3分の1がPTCへ導く突然変異の結果であると推定される(例えばCF、網膜色素変性症(RP)、及びβサラセミアにおいて等)。正常なシナリオにおいて、エクソン-ジャンクション複合体(EJC)は、スプライシングの間に形成される。次いで第1の翻訳ラウンドの間に、リボソームは、これらのEJCを置き換える。その一方で、PTCが最後のEJCの50~54ヌクレオチド以上上流に所在する場合に、NMD経路は、EJC関連NMD因子からなる終結複合体の形成によって誘発される。これが翻訳の最初のパイオニアラウンドの間に起こり、リボソームが少なくとも1つのEJCとそれらの所在位置の下流で共存する場合に、このことは、脱キャッピング及び5’から3’のエキソヌクレアーゼ活性、ならびにさらにテールの脱アデニル化及び3’から5’のエキソヌクレアーゼ媒介性転写物崩壊を誘発する。前述の遺伝的障害または類似の突然変異に起因する任意の障害に取り組むために、したがって、遺伝子特異的様式及び配列特異的様式でのこの経路の阻害は重要である。
【0180】
いくつかの態様において、mRNAのレベルの増加をもたらし、再コードmRNAの全長のタンパク質への翻訳リードスルーをもたらす、PTCを再コードするための方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法及び組成物は、4%超、5%超、10%超、12%超、15%超、20%超、または30%超のPTCリードスルーを可能にする。いくつかの実施形態において、本明細書における方法及び組成物は、10%超、12%超、15%超、20%超、または30%超までナンセンス媒介性崩壊(NMD)の抑制を可能にする。PTCリードスルーは、タンパク質レベルの評価によって(タンパク質発現を直接的に定量することによって、または発現させたタンパク質の活性のアッセイによって、のいずれかで)アッセイされ得る。NMD抑制を査定するための方法も、当技術分野において公知である。例えば、NMD抑制を査定するために、公知のNMD阻害レポーターアッセイ(Zhang et al.1998,RNA 4(7):801-815)が使用され得、PTCを保有する遺伝子の翻訳リードスルーも査定され得る。本明細書において例証されるように、ナンセンス突然変異を保有する蛍光レポーター遺伝子は、標的配列として使用された。修正無しでは、このナンセンス突然変異は、より低い存在量のmRNA(NMDの結果として)、そして短縮されたタンパク質を導き、蛍光シグナルの非存在をもたらす。本明細書において示されるように、標的化シュードウリジン化を介する突然変異の修正は、全長タンパク質がmRNAから翻訳されることを可能にする。当業者は、本明細書において記載される蛍光レポーターコンストラクトのPTC領域が、他のモデルまたは関心のある治療的に関連する標的RNAによって、交換され得ることを理解する。
【0181】
いくつかの実施形態において、タンパク質をコードするRNA中のPTCを再コードするための方法であって、宿主細胞において、未成熟終止コドン無しの全長タンパク質の発現レベルの少なくとも4%(例えば少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%)の全長タンパク質の発現をもたらす、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、方法は、全長タンパク質の発現をもたらし、タンパク質の発現は、エンリッチメント無しで(例えば免疫沈降によるエンリッチメント無しで)検出可能である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、タグ(例えば蛍光タグを介して)を介して検出される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、当技術分野において公知の方法に従って免疫染色によって検出される。いくつかの実施形態において、方法は、宿主細胞のうちの少なくとも20%(例えば宿主細胞のうちの少なくとも25%、少なくとも30%または少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%)において全長タンパク質の発現をもたらす。
【0182】
いくつかの態様において、標的mRNAのナンセンス媒介性RNA崩壊を、治療、予防、及び/またはブロックするための方法であって、ガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)及びDKC1タンパク質をコードする核酸分子を宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的mRNA中の標的ウリジン残基を含む未成熟終止コドン(PTC)配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾し、それによって、標的ウリジンのシュードウリジン化が、PTCのリードスルーを促進する、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォームである。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、同じ種の野生型DKC1タンパク質に比べて核局在化シグナル(NLS)の欠失を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、短縮されたDKC1バリアントまたは欠失を含むDKC1バリアント(上のセクションIIA中で記載される短縮バリアントまたは欠失バリアントのうちの任意のもの等)である。
【0183】
いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞の内在性タンパク質である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞の内在性の天然に発現されるDKC1アイソフォームであり、DKC1アイソフォームは、宿主細胞において細胞質内局在を有する。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、ヒトDKC1タンパク質のアイソフォーム2に対応する。
【0184】
いくつかの実施形態において、DKC1及びsnoRNAは、細胞の中へ一緒に(例えばリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部として)送達され得る。いくつかの実施形態において、snoRNPは、gsnoRNA、ならびにDKC1、NHP2、GAR1、及び/またはNOP10を含む。
【0185】
いくつかの実施形態において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA(例えばmRNA)中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、宿主細胞が、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォームを発現し、gsnoRNAが、DKC1アイソフォームを動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、方法は、スプライス-スイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を宿主細胞の中へ導入することを含み、ASOは、宿主細胞において細胞質内局在のある内在性DKC1アイソフォームであるDKC1タンパク質の発現を促進する。
【0186】
スプライス-スイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、スプライス部位選択を指令することによってスプライシングを変更する。スプライス-スイッチングASOは、標的プレmRNAへ結合し、特定のスプライス部位へのスプライシング装置のアクセスをブロックすることによって、プレmRNAスプライシングを調節し、新規のスプライスバリアントを産生するか、異常なスプライシングを修正するか、またはオルタナティブスプライシングをマニピュレーションするために使用され得る。スプライス-スイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチドのデザイン及び細胞への送達のための方法は、例えば米国特許公報US20180334677及びUS20120040917、米国特許第10,190,117号、及びDisterer et al.Hum Gene Ther.2014 Jul;25(7):587-98(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)中で記載されている。
【0187】
いくつかの実施形態において、スプライス-スイッチングASOは、DKC1遺伝子のプレmRNAへ結合し、DKC1アイソフォーム3のスプライシングを指令する。いくつかの実施形態において、スプライス-スイッチングASOの導入は、ASOの非存在下の宿主細胞における同じアイソフォームの発現に比較して、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍まで、宿主細胞において細胞質内局在のある内在性DKC1アイソフォームであるDKC1タンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態において、スプライス-スイッチングASOの投与は、ASOの非存在下の宿主細胞におけるDKC1アイソフォーム3の発現に比較して、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍まで、DKC1アイソフォーム3の発現を増加させる。
【0188】
いくつかの実施形態において、スプライス-スイッチングASOは、アプタマー、逆分子センチネルナノプローブ、ASOカプセル化リポソームDNAポリカチオン、またはASOカプセル化リポソーム-プロタミン-ヒルロイック酸(hyluronic acid)ナノ粒子、及び同種のものを介して送達され得る。アプタマーを送達する好適な方法は、Kotula,J.W.,et al.,Aptamer-mediated delivery of splice-switching oligonucleotides to the nuclei of cancer cells.Nucleic Acid Ther,2012.22(3):p.187-95(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)中で見出され得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、野生型ACA19、ACA44、ACA27、E2、ACA3、ACA17、ACA2b、またはACA36に由来するスキャフォールド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA(例えばmRNA)中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、野生型ACA2bまたはACA36に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォームである。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。
【0190】
いくつかの実施形態において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、野生型ACA19、ACA44、ACA27、E2、ACA3、ACA17、ACA2b、またはACA36に由来するスキャフォールド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA(例えばmRNA)中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。操作されたgsnoRNAは、セクションIIB中で記載される操作されたgsnoRNAのうちの任意の1つでありえる。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォームである。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、同じ種の野生型DKC1タンパク質に比べて核局在化シグナル(NLS)の欠失を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、短縮されたDKC1バリアントまたは欠失を含むDKC1バリアント(上のセクションIIA中で記載される短縮バリアントまたは欠失バリアントのうちの任意のもの等)である。
【0191】
いくつかの実施形態において、宿主細胞において標的RNAを編集するための方法であって、操作されたgsnoRNAを宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAが、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、gsnoRNAが、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する、前記方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォームである。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、全長ヒトDKC1タンパク質のアミノ酸残基1~419に対応するDKC1タンパク質断片を含み、アミノ酸ナンバリングは配列番号1に従う。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、同じ種の野生型DKC1タンパク質に比べて核局在化シグナル(NLS)の欠失を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、短縮されたDKC1バリアントまたは欠失を含むDKC1バリアント(上のセクションIIA中で記載される短縮バリアントまたは欠失バリアントのうちの任意のもの等)である。
【0192】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法は、ガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)をコードするヌクレオチド配列を標的RNAをコードするヌクレオチド配列とタンデムに含む核酸分子を宿主細胞の中へ導入することを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードするヌクレオチド配列は、U6プロモーターまたはU1プロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、標的RNAをコードするヌクレオチド配列は、同じプロモーターまたは異なるプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、標的RNAをコードするヌクレオチド配列とタンデムにコードされたgsnoRNAは、標的RNAとは分離した核酸分子中でコードされた同じgsnoRNAに比較して、少なくとも標的RNAの1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、または2倍の多い編集効率を提供する。
【0193】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法は、宿主細胞の内在性核酸分子へのガイド核小体低分子RNA(gsnoRNA)を導入することを含み、内在性核酸分子は、標的RNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、導入は、gsnoRNAをコードするヌクレオチド配列を、標的RNAをコードする領域へ直接的または間接的に隣接する内在性核酸分子の領域の中へ挿入することを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAをコードするヌクレオチド配列は、U6プロモーターまたはU1プロモーターによって駆動される。ヌクレオチド配列を内在性核酸分子の中へ挿入する方法は、当技術分野において公知であり、ガイド型ヌクレアーゼ(例えばCRISPR/Cas)編集及び相同組み換え修復等である。いくつかの実施形態において、標的RNAをコードするヌクレオチド配列へ直接的または間接的に隣接する内在性核酸分子の領域の中へ挿入されたgsnoRNAは、標的RNAとは分離した核酸分子中でコードされた同じgsnoRNAに比較して、少なくとも標的RNAの1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、または2倍多い編集効率を提供する。
【0194】
いくつかの実施形態において、細胞において存在するシュードウリジン化される実体を動員及び向け直す程度は、gsnoRNAの投薬及び投薬レジメンによって調節され得る。これは、実験者(例えばインビトロ)、または通常第I相及び/または第II相の臨床試験において臨床医によって決定されることである。
【0195】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法は、真核生物(例えば後生動物細胞またはヒト細胞等の哺乳動物細胞)における標的RNA(例えばmRNA)配列の修飾を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法及び組成物は、任意の器官(例えば皮膚、肺、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、腸、筋肉、腺、眼、脳、血液、及び同種のもの)からの細胞により使用され得る。細胞は、インビトロまたはインビボに置かれ得る。本開示の方法、組成物、系、キット、及び製造品の1つの利点は、生きている生物体中で細胞によりインサイチューでそれらが使用され得るが、培養中でも細胞により使用され得るということである。いくつかの実施形態において、細胞は、エクスビボで治療され、次いで生きている生物体の中へ導入される(例えばそれらが元々由来する生物体の中へ再導入される)。本開示の方法、組成物、系、キット、及び製造品は、いわゆるオルガノイド内の細胞における標的RNA配列を編集するためにも使用され得る。オルガノイドは三次元のインビトロ由来の組織として見なされ得るが、個別の単離された組織を生成するための特定の条件を使用して行なわれる(例えばLancaster and Knoblich.2014,Science 345(6194):1247125を参照)。治療設定において、患者の細胞からインビトロで由来し、次いで自己由来材料として患者に再導入され得、それは通常の移植よりも拒絶される可能性が低いので、オルガノイドは有用である。治療される細胞は、概して遺伝的突然変異を有するだろう。突然変異は、ヘテロ接合体またはホモ接合体であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法及び組成物は、点突然変異を修飾するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法及び組成物は、例えばヒト対象がPTCと関連する疾患を患う場合に、対象(例えばヒト対象)の疾患状態に関与する細胞、組織、または器官における配列の修飾に好適である。
【0196】
本開示は、編集される部位を標的化し、RNA編集タンパク質(例えばDKC1)を動員して編集反応(複数可)をもたらすことが可能なオリゴヌクレオチド(例えば上のセクションIIB中で記載されるgsnoRNAのうちの任意のもの、または上のセクションIIB中で記載される操作されたスキャフォールドに基づく任意のgsnoRNA)の使用を介して真核生物細胞における標的RNA配列の変化(シュードウリジン化)を行うために使用され得る方法を提供する。いくつかの実施形態において、DKC1は、内在性DKC1である。いくつかの実施形態において、DKC1は、外来的に送達される。いくつかの実施形態において、方法は、DKC1アイソフォーム3または細胞質内局在のあるDKC1タンパク質の相対的比率を増加させることを含む。標的RNA配列は、修正または変更することを望む点突然変異(トランジションまたはトランスバージョン)等の突然変異を含み得る。標的RNAは、任意の細胞配列またはウイルスRNA配列であり得るが、通常は、タンパク質コーディング機能を備えたプレmRNAまたはmRNAである。いくつかの実施形態において、標的配列は、真核生物(例えば哺乳類、例えばヒト)細胞に対して内在性である。
【0197】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される方法は、PTCのリードスルーの促進に好適であり、PTCは、オパールコドン(UGA)、アンバーコドン(UAG)、またはオーカーコドン(UAA)である。いくつかの実施形態において、PTCは、オパールコドンであり、方法は、リードスルー効率は、PTCを欠如する対照に比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%のリードスルー効率もたらし、タンパク質の発現または活性(例えば蛍光強度)のパーセントとしてアッセイされる。いくつかの実施形態において、PTCは、アンバーコドン(UAG)であり、方法は、リードスルー効率は、PTCを欠如する対照に比較して、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも12%、または少なくとも14%のリードスルー効率もたらし、タンパク質の発現または活性(例えば蛍光強度)のパーセントとしてアッセイされる。いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、または70%の検出可能なレベルの、PTCを含む標的遺伝子によりコードされた全長タンパク質を発現する細胞をもたらす。
【0198】
いくつかの実施形態において、標的RNA中の標的ウリジンは、タンパク質をコードする配列中の未成熟終止コドンであり、方法は、宿主細胞において、未成熟終止コドン無しの全長タンパク質の発現レベルの少なくとも4%(例えば少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、またはそれ以上)の全長タンパク質の発現をもたらす。
【0199】
いくつかの実施形態において、標的RNA中の標的ウリジンは、タンパク質をコードする配列中の未成熟終止コドンであり、方法は、全長タンパク質の発現をもたらし、タンパク質の発現は、エンリッチメント無しで(例えば免疫沈降によってエンリッチメント無しで)検出可能である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、タグ(例えば蛍光タグを介して)を介して検出される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、当技術分野において公知の方法に従って免疫染色によって検出される。
【0200】
いくつかの実施形態において、標的RNA中の標的ウリジンは、タンパク質をコードする配列中の未成熟終止コドンであり、方法は、宿主細胞のうちの少なくとも20%(例えば宿主細胞のうちの少なくとも25%、少なくとも30%または少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、またはそれ以上のパーセンテージ)において全長タンパク質の発現をもたらす。
【0201】
本明細書において記載される方法(標的RNAを編集する方法または治療の方法等)のうちの任意の1つにおける使用のための、本明細書において記載される操作されたgsnoRNA組成物または操作されたRNA編集系も提供される。疾患または病態の治療のための医薬品の調製物中で本明細書において記載される操作されたgsnoRNA組成物または操作されたRNA編集系のうちの任意の1つの使用。
【0202】
A.治療の方法
いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、標的RNAを修飾するためにDKC1タンパク質を動員するgsnoRNAを使用して、標的RNAを修飾することを含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、標的ウリジン残基を含む標的配列へハイブリダイズし、RNAの修飾は、標的ウリジンのシュードウリジンへの修飾を含む。
【0203】
いくつかの実施形態において、標的RNAは、細胞(例えば哺乳動物細胞またはヒト細胞等の真核生物細胞)の内在性RNAである。いくつかの実施形態において、標的RNAは、細胞の内在的に転写された(例えば細胞の内在性核酸配列から転写された)RNAである。いくつかの実施形態において、標的RNAは、細胞の中へ導入された核酸配列から転写される(例えば外来的に添加された核酸分子から転写されたRNA)。いくつかの実施形態において、標的RNAは、リボソームRNAである。いくつかの実施形態において、標的RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)である。
【0204】
いくつかの実施形態において、標的RNA中の標的ウリジンを含む配列は、終止コドンであり、標的ウリジンのシュードウリジンへの修飾は、終止コドンをコーディングコドンとして翻訳されるようにする。いくつかの実施形態において、終止コドンは、未成熟終止コドン(PTC)である。いくつかの実施形態において、PTCは、遺伝性の疾患または病態と関連する。本開示の手段及び方法の使用によって、かかるPTC中の標的ウリジンをシュードウリジンへ変換すると、次いで翻訳の間の読み取りフレームの適切なリードスルーをもたらし、それによって、(部分的または完全に)機能的な全長タンパク質を提供する。
【0205】
いくつかの実施形態において、対象における標的RNA中のPTCと関連する疾患または病態を治療する方法であって、本明細書において記載されるRNA編集方法のうちの任意のものを使用して、対象の細胞における標的RNAを編集することを含み、gsnoRNAが、標的RNA中のPTCへハイブリダイズするガイド配列を含み、PTC中のウリジン残基のシュードウリジン残基への修飾が、標的RNA中のPTCの翻訳リードスルーを引き起こし、それによって、対象における疾患または病態を治療する、前記方法が本明細書において提供される。
【0206】
いくつかの実施形態において、対象における標的RNA中のPTCと関連する疾患または病態を治療する方法は、操作されたgsnoRNAを対象の宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAは、標的RNA中のウリジン残基を含むPTCへハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAは、野生型ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、またはACA17に由来するスキャフォールド配列を含み、gsnoRNAは、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞の内在性DKC1タンパク質である。いくつかの実施形態において、方法は、DKC1タンパク質をコードする核酸を宿主細胞の中へ導入することをさらに含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞において細胞質内局在を有する。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、ヒトDKC1アイソフォーム3タンパク質のアミノ酸残基41~420に対応するDKC1タンパク質断片を含み、アミノ酸ナンバリングは配列番号2に従う。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88に少なくとも85%(例えば少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちの任意の1つ)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88のアミノ酸配列を含む。
【0207】
いくつかの実施形態において、対象における標的RNA中のPTCと関連する疾患または病態を治療する方法は、操作されたgsnoRNAを対象の宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAは、標的RNA中の標的ウリジン残基を含むPTCへハイブリダイズするガイド配列を含み、gsnoRNAは、配列番号4~6、9~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み、gsnoRNAは、宿主細胞においてDKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞の内在性DKC1タンパク質である。いくつかの実施形態において、方法は、DKC1タンパク質をコードする核酸を宿主細胞の中へ導入することをさらに含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、宿主細胞において細胞質内局在を有する。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、ヒトDKC1アイソフォーム3タンパク質のアミノ酸残基41~420に対応するDKC1タンパク質断片を含み、アミノ酸ナンバリングは配列番号2に従う。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88に少なくとも85%(例えば少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちの任意の1つ)の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、配列番号88のアミノ酸配列を含む。
【0208】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、gsnoRNAの半分(例えば単一のヘアピン及びHボックス、または単一のヘアピン及びACAボックスを含む)である。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、
図12B及び
図13中で示されるように、配列番号89~100及び113~128において示される配列のうちの任意の1つを含むかまたはそれらからなる。
【0209】
いくつかの実施形態において、対象における標的RNA中のPTCと関連する疾患または病態を治療する方法は、操作されたgsnoRNAを対象の宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAは、配列番号71~84から選択される配列を含む。例示的な疾患関連PTCのウリジン残基を標的化する例示的な操作されたgsnoRNAの配列は、表4中で示される。
【0210】
いくつかの実施形態において、対象における標的RNA中のPTCと関連する疾患または病態を治療する方法は、(a)操作されたgsnoRNA及び(b)スプライス-スイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を対象の宿主細胞の中へ導入することを含み、gsnoRNAは、標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含み、ASOは、宿主細胞において細胞質内局在のある内在性DKC1アイソフォームであるDKC1タンパク質の発現を促進し、gsnoRNAは、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾する。いくつかの実施形態において、スプライス-スイッチングASOは、DKC1遺伝子のプレmRNAへ結合し、DKC1アイソフォーム3のスプライシングを指令する。いくつかの実施形態において、スプライス-スイッチングASOの導入は、ASOの非存在下の宿主細胞における同じアイソフォームの発現に比較して、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍まで、宿主細胞において細胞質内局在のある内在性DKC1アイソフォームであるDKC1タンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態において、スプライス-スイッチングASOの投与は、ASOの非存在下の宿主細胞におけるDKC1アイソフォーム3の発現に比較して、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍まで、DKC1アイソフォーム3の発現を増加させる。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19、ACA2b、ACA36、ACA44、ACA27、E2、ACA3、及びACA17からなる群から選択される、野生型H/ACA-snoRNAに由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA2bに由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA36に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ACA19に由来するスキャフォールド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号3~12、15~19、22~36、及び177~179からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、配列番号15~19からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0211】
いくつかの実施形態において、疾患または病態は、嚢胞性線維症、ハーラー症候群、α-1-アンチトリプシン(A1AT)欠乏症、パーキンソン病、アルツハイマー病、白皮症、筋萎縮性側索硬化症、喘息、8-サラセミア、カダシル症候群、シャルコー・マリー・トゥース病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、遠位脊髄性筋萎縮症(DSMA)、デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、栄養障害性表皮水疱症、水疱性表皮剥離症、ファブリー病、第V因子ライデン関連障害、家族性腺腫様ポリープ、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース-6-リン酸脱水素酵素、血友病、遺伝性ヘモクロマトーシス、ハンター症候群、ハンチントン舞踏病、炎症性腸疾患(IBD)、遺伝性多凝集症候群、レーベル先天黒内障、レッシュ・ナイハン症候群、リンチ症候群、マルファン症候群、ムコ多糖症、筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィーI型及びII型、神経繊維腫症、ニーマン・ピック病A型、B型、及びC型、NY-esol関連癌、ポイツ・ジェガース症候群、フェニルケトン尿症、ポンペ病、原発性線毛疾患、プロトロンビン突然変異関連障害(プロトロンビンG20210A突然変異等)、肺高血圧症(常染色体優性)、網膜色素変性症、サンドホフ病、重症複合免疫不全症候群(SCID)、鎌形赤血球貧血症、脊髄筋萎縮症、スタルガルト病、テイ・サックス病、アッシャー症候群、X連鎖免疫不全症、スタージ・ウェーバー症候群、及びがんからなる群から選択される。標的RNA中のPTCと関連する例示的な疾患または病態は、Human Gene Mutation Database(HGMDR(hgmd.cf.ac.ukで利用可能))及びClinVar database(Landrum et al.ClinVar:improvements to accessing data.Nucleic Acids Res.2020;48(D1):D835-D844を参照;ncbi.nlm.nih.gov/clinvar/introで利用可能)中でリストされる。いくつかの実施形態において、スレオニンまたはセリンは、ΨAAコドン及びΨAGのコドンで取り込まれ、フェニルアラニンまたはチロシンは、ΨGAコドンで取り込まれる。
【0212】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書においてリストされる疾患のうちの1つまたは複数の治療のための医薬品の製造における核酸分子(本明細書において記載される操作されたgsnoRNAをコードする)の使用を提供する。いくつかの実施形態において、嚢胞性線維症(CF)の治療における使用のための操作されたgsnoRNAが本明細書において提供される。例えば国際特許公開WO2019191232(それらの内容は参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される)中で記載されるように、CFと関連する例示的なPTCは当技術分野において公知である。例示的な嚢胞性線維症関連PTC突然変異は、G542X(UGA)、W1282X(UGA)、R553X(UGA)、R1162X(UGA)、Y122X(UAA)、W1089X、W846X、及びW401Xの突然変異が挙げられるがこれらに限定されず、これらは、シュードウリジン化を介してアミノ酸をコードするコドンへ修飾され得、それによって全長タンパク質への翻訳を可能にする。例えば、終止コドンとして見なされる代わりに、ΨAAコドン及びΨAGコドンの両方がセリンまたはスレオニンへ翻訳されるが、ΨGAがチロシンまたはフェニルアラニンへ翻訳されることは、当技術分野において十分に確立されている(Karijolich and Yu,2011)。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、古細菌細胞または真核生物細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態において、方法は、インビボで実行される。他の実施形態において、方法は、エクスビボで実行される。
【0213】
本開示の方法は、広範囲の公知の疾患関連PTCについて、疾患関連PTCのNMDを抑制する、及び/またはPTCリードスルーを促進するために適用され得る。それぞれの疾患遺伝子中のナンセンス突然変異から生じる多数のヒト疾患がある。例えば、アッシャー症候群は、聴覚障害及び失明の併発の主要な原因である遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)である。ナンセンス突然変異がアッシャー症候群患者の12%において起こり、異なる遺伝子(USH2A遺伝子等)において記載されている。骨格異常及び認知機能不全を患う何人かのハーラー症候群患者は、これらの患者において機能的な全長IDUAタンパク質の産生を防止するIDUA遺伝子中のナンセンス突然変異を保有する。肺及び消化器系に影響する疾患である嚢胞性線維症(CF)症例のかなりの割合は、CFTR遺伝子中のナンセンス突然変異に起因する。これらのナンセンス突然変異から生じるPTCは、複数の異なる部位のコード領域中で同定され、その各々は機能的な全長CFTRタンパク質の完全な欠如を導く。ナンセンス突然変異は、多くのがん患者のいくつかの関連するがん遺伝子中でも見出され、全長タンパク質産物の完全な欠如をもたらす。遺伝子発現及び疾患におけるナンセンス突然変異の有害な役割を考慮すると、ナンセンス抑制は、魅力的な戦略であり、これらの疾患と闘う最終的な目標となる。
【0214】
C.標的細胞への送達
いくつかの態様において、本明細書において提供される方法は、gsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質、あるいはgsnoRNAをコードする核酸及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸を、標的RNAを含む宿主細胞へ送達すること(例えば投与すること)を含む。投与されるgsnoRNAをコードする核酸及び/またはDKC1タンパク質の量、投薬量、及び投薬レジメンは、細胞型間の差、治療される疾患、標的集団、投与モード(例えば全身vs局所)、疾患の重症度、及び副活性の許容されるレベルで変動し得るが、これらは、インビトロの研究の間に試行錯誤によって、前臨床試験及び臨床試験において、査定され得、そして査定されるべきである。修飾された配列が容易に検出される表現型変化を導く場合に、試験は特に簡単である。
【0215】
いくつかの実施形態において、方法は、1つもしくは複数の核酸(例えばgsnoRNA、あるいはgsnoRNAをコードする核酸及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸)及び/または前形成されたgsnoRNAタンパク質複合体(それは、gsnoRNA、DKC1タンパク質、NOP10タンパク質、GAR1タンパク質、及び/またはNHP2タンパク質を含み得る)を、細胞(例えば哺乳動物細胞またはヒト細胞)へ送達することを含む。例示的な細胞内送達方法としては、ウイルスまたはウイルス様物質;化学物質ベースのトランスフェクション方法(リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソーム、または陽イオン性ポリマー(例えばDEAEデキストランまたはポリエチレンイミン)を使用するもの等);非化学的な方法(マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、セルスクイージング、ソノポレーション、光学的トランスフェクション、インペールフェクション、プロトプラスト融合、細菌の接合、プラスミドの送達、またはトランスポゾン等);粒子ベースの方法(遺伝子銃の使用、マグネクトフェクション(magnectofection)または磁石支援トランスフェクション、粒子衝撃等);及びハイブリッド方法(ヌクレオフェクション等)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、本出願は、かかる方法によって産生された細胞、及びかかる細胞を含むかまたは当該細胞から産生された生物体(例えば非ヒト哺乳動物)をさらに提供する。
【0216】
核酸の非ウイルス性送達の方法としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロゾーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸複合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及び薬剤促進DNA取り込みが挙げられる。リポフェクションは、例えば米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、及び同第4,897,355号中で記載され、リポフェクション試薬は商業的に販売される(例えばTRANSFECTAMINE(商標)及びLIPOFECTAMIN(登録商標))。いくつかの実施形態において、LIPOFECTAMINE(登録商標)2000は、gsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸(例えばgsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸ベクター)をトランスフェクションするために使用される。
【0217】
1つの好適な試験技法は、本開示に従う核酸分子を細胞抽出物、細胞株、または試験生物体へ送達し、次いでその後に様々な時間点で生検サンプルを採取することを包含する。標的RNAの配列は、生検サンプル中で査定され得、修飾を有する細胞の割合は容易に追跡され得る。この試験が一回遂行された後でも、次いで生検サンプルを採取する必要なしに、知見は保持され、今後の送達は遂行され得る。本開示の方法は、したがって細胞の標的RNA配列中の所望される変化の存在を同定し、それによって標的RNA配列が修飾されていると確認するステップを包含し得る。変化は、タンパク質のレベル(長さ、糖鎖付加、機能、または同種のもの)について、または例えば標的RNA配列によってコードされたタンパク質がイオンチャンネルである場合に、いくつかの機能的な読み取り((誘導性)電流等)によって査定され得る。CFTR機能の事例において、ヒトを含む哺乳動物におけるウッシングチャンバーアッセイまたはNPD試験は、回復または機能獲得を査定する当業者に周知である。
【0218】
シュードウリジン化が細胞中で起こった後に、修飾されたRNAは、例えば細胞分裂、編集されたRNAの限定的な半減期などに起因して、時間の経過と共に希釈されるようになり得る。したがって、実践的な治療期間において、本開示の方法は、患者へ有形の利益を提供する、及び/または利益を経時的に維持するために、十分な標的RNAが修飾されるまでオリゴヌクレオチドの反復して送達することを包含し得る。
【0219】
いくつかの実施形態において、gsnoRNAは、ネイキッド核酸の形態で細胞へ送達され得る。かかるコンストラクト(gsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質、あるいはgsnoRNAをコードする核酸及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸)が細胞へ送達され得る(インビトロ、エクスビボ、またはインビボのいずれかで)他の手法によるものは、送達ビヒクル(ウイルスベクター等)の使用によるものである。
【0220】
核酸送達のための従来のウイルスベースの系としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、及び単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。宿主ゲノム中での組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルス方法により可能であり、多くの場合挿入された導入遺伝子の長期的な発現をもたらす。追加で、高い形質導入効率は、異なる細胞型において観察されている。レトロウイルスの指向性は、外因性エンベロープタンパク質を取り込むことによって変更され得、標的細胞の可能性のある標的集団を増大させる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入または感染し、典型的には、高ウイルス力価を産生することが可能なレトロウイルスベクターである。レトロウイルスベクターは、6~10kbまでの外因性配列をパッケージングする能力を備えたシス作用長末端反復から構成される。最小のシス作用LTRは、ベクターの複製及びパッケージングのために十分であり、次いでそれは、核酸を標的細胞の中へ組み込んで永続的な導入遺伝子発現を提供するために使用される。広く使用されるレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組み合わせに基づくものが挙げられる。一過性発現が好ましい適用において、アデノウイルスベースの系が使用され得る。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞タイプにおいて非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を要求しない。かかるベクターにより、高力価及び高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純な系において大量に産生することができる。
【0221】
パッケージング細胞は、典型的には、宿主細胞に感染することが可能なウイルス粒子を形成するために使用される。かかる細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293T細胞、及びレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞が挙げられる。ウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子へとパッケージングする細胞株の産生によって生成される。ベクターは、典型的には、パッケージング及び後続する宿主の中への組み込みのために要求される最小のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現されるポリヌクレオチド(複数可)のための発現カセットによって置き換えられる。欠損しているウイルス機能は、典型的には、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子療法において使用されるAAVベクターは、典型的には、パッケージング及び宿主ゲノムの中への組み込みのために要求される、AAVゲノムからのITR配列のみを保持する。ウイルスDNAは、細胞株(他のAAV遺伝子(すなわちrep及びcap)をコードするがITR配列を欠如するヘルパープラスミドを含有する)中でパッケージングされる。細胞株は、ヘルパーとしてのアデノウイルスによっても感染され得る。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如に起因して有意な量でパッケージングされない。アデノウイルスの混入は、例えば熱処理によって低減させることができ、アデノウイルスはAAVよりも熱処理により感受性がある。
【0222】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、例えばレトロウイルスベクター(レンチウイルスベクター及び同種のもの等)である。また、プラスミド、人工染色体、ならびに細胞のヒトゲノム中の標的化された相同組み換え及び組み込みのために使用可能なプラスミドは、本明細書において記載されるgsnoRNAの送達のために好適に適用され得る。いくつかの実施形態において、gsnoRNAがウイルスベクターによって送達される場合に、これは、転写物の一部中で本開示に従うオリゴヌクレオチドの配列を含むRNA転写物の形態である。いくつかの実施形態において、本開示に従うAAVベクターは、組み換えAAVベクターであり、AAV血清型に由来するカプシドタンパク質のタンパク質シェル中で本開示に従うエクソン-イントロン-エクソン配列を含むAAVゲノムの一部をカプシドで包まれて含むAAVベクターを指す。AAVゲノムの一部は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、及び他等のアデノ随伴ウイルス血清型に由来する逆方向末端反復(ITR)を含有し得る。カプシドタンパク質から構成されるタンパク質シェルは、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び他等のAAV血清型に由来し得る。タンパク質シェルは、カプシドタンパク質シェルとも命名され得る。AAVベクターは、1つまたはすべての野生型AAV遺伝子を欠失し得るが、依然として機能的なITR核酸配列を含み得る。機能的なITR配列は、AAVビリオンの複製、レスキュー、及びパッケージングのために必要である。ITR配列は、野生型配列であり得るか、または野生型配列と少なくとも80%、85%、90%、95、もしくは100%の配列同一性を有し得るか、またはそれらが機能的なままである限り、例えばヌクレオチドの挿入、突然変異、欠失、もしくは置換で改変され得る。この文脈において、機能性は、ゲノムのカプシドシェルの中へのパッケージングを指令し、次いで感染される宿主細胞または標的細胞中での発現を可能にする能力を指す。本開示の文脈においてカプシドタンパク質シェルは、AAVベクターゲノムITRとは異なる血清型であり得る。本開示に従うAAVベクターは、したがってカプシドタンパク質シェル(すなわち1つのAAV血清型(例えばAAV血清型2)のカプシドタンパク質(VP1、VP2、及び/またはVP3)を含む、20面体カプシド)から構成され得るが、そのAAV2ベクター中で含有されるITR配列は、AAV2ベクターを含む上で記載されるAAV血清型のうちの任意のものであり得る。したがって「AAV2ベクター」は、AAV血清型2のカプシドタンパク質シェルを含む一方で、例えば「AAV5ベクター」は、AAV血清型5のカプシドタンパク質シェルを含み、それによって、いずれかは、本開示に従う任意のAAVベクターゲノムITRをカプシドで包み得る。いくつかの実施形態において、本開示に従う組み換えAAVベクターは、AAV血清型2、5、8、またはAAV血清型9のカプシドタンパク質シェルを含み、前記AAVベクター中に存在するAAVゲノムまたはITRは、AAV血清型2、5、8、またはAAV血清型9に由来し;かかるAAVベクターは、AAV2/2、AAV2/5、AAV2/8、AAV2/9、AAV5/2、AAV5/5、AAV5/8、AAV5/9、AAV8/2、AAV8/5、AAV8/8、AAV8/9、AAV9/2、AAV9/5、AAV9/8、またはAAV9/9ベクターと称される。
【0223】
いくつかの実施形態において、本開示に従う組み換えAAVベクターは、AAV血清型2のカプシドタンパク質シェルを含み、前記ベクター中に存在するAAVゲノムまたはITRは、AAV血清型5に由来し;かかるベクターは、AAV2/5ベクターと称される。いくつかの実施形態において、本開示に従う組み換えAAVベクターは、AAV血清型2のカプシドタンパク質シェルを含み、前記ベクター中に存在するAAVゲノムまたはITRは、AAV血清型8に由来し;かかるベクターは、AAV2/8ベクターと称される。いくつかの実施形態において、本開示に従う組み換えAAVベクターは、AAV血清型2のカプシドタンパク質シェルを含み、前記ベクター中に存在するAAVゲノムまたはITRは、AAV血清型9に由来し;かかるベクターは、AAV2/9ベクターと称される。いくつかの実施形態において、本開示に従う組み換えAAVベクターは、AAV血清型2のカプシドタンパク質シェルを含み、前記ベクター中に存在するAAVゲノムまたはITRは、AAV血清型2に由来し;かかるベクターは、AAV2/2ベクターと称される。いくつかの実施形態において、選択の核酸配列によって提示される本開示に従うエクソン-イントロン-ガイドRNA-イントロン-エクソン配列を保有する核酸分子は、上で同定されるAAVゲノムまたはITR配列の間に、例えばコーディング配列へ作動可能に連結された発現調節エレメント及び3’終結配列を含む発現コンストラクトの間に挿入される。「AAVヘルパー機能」は、概して、トランスでAAVベクターへ供給されるAAV複製及びパッケージングのために要求される対応するAAV機能を指す。AAVヘルパー機能は、AAVベクターにおいて欠損しているAAV機能を補完するが、AAV ITRを欠如する(それはAAVベクターゲノムによって提供される)。AAVヘルパー機能は、AAVの2つの主要ORF(すなわちrepコード領域及びcapコード領域またはその機能的な実質的に同一の配列)を含む。Rep領域及びCap領域は、当技術分野において周知である。AAVヘルパー機能は、プラスミドであり得るAAVヘルパーコンストラクト上で供給され得る。
【0224】
ヘルパーコンストラクトの宿主細胞の中への導入は、本明細書において同定されるAAVベクター中に存在するAAVゲノムの導入の前またはそれと同時に、例えば形質転換、トランスフェクション、または形質導入によって生じ得る。したがって、本開示のAAVヘルパーコンストラクトは、一方ではAAVベクターのカプシドタンパク質シェルについて、他方では前記AAVベクターの複製及びパッケージング中に存在するAAVゲノムについて、血清型の所望される組み合わせを産生するように選ばれ得る。「AAVヘルパーウイルス」は、AAVの複製及びパッケージングのために要求される追加機能を提供する。
【0225】
好適なAAVヘルパーウイルスとしては、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV1型及び2型等)、及びワクシニアウイルスが挙げられる。US6,531,456中で記載されるように、ヘルパーウイルスによって提供された追加機能は、ベクターを介しても宿主細胞の中へ導入され得る。いくつかの実施形態において、本開示に従う組み換えAAVベクター中に存在するAAVゲノムは、ウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列(AAVのrep(複製)遺伝子またはcap(カプシド)遺伝子等)を含まない。AAVゲノムは、マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子(例えば抗生物質耐性遺伝子、蛍光タンパク質(例えばgfp)をコードする遺伝子、あるいは当技術分野において公知の化学的に、酵素的に、または他の場合には検出可能な及び/または選択可能な産物をコードする遺伝子(例えばlacZ、aphなど)等)をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、本開示に従うAAVベクターは、AAV2/5ベクター、AAV2/8ベクター、AAV2/9ベクター、またはAAV2/2ベクターである。
【0226】
いくつかの実施形態において、gsnoRNA及びDKC1は、リボヌクレオタンパク質複合体(例えばgsnoRNA、DKC1、NOP10、GAR1、及び/またはNHP2を含む複合体)として細胞へ送達される。タンパク質またはタンパク質複合体(前形成されたgsnoRNA-DKC1/NOP10/GAR1/NHP2複合体等)の細胞内送達のための方法としては、機械的方法(マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、及びマイクロ流体デバイスを使用する細胞の機械的変形等);担体ベースの方法(細胞透過性ペプチド(CPP)、ウイルス様粒子、超荷電タンパク質、ナノ担体、超分子担体ベースの送達系、及びナノ粒子安定化ナノカプセル剤等)が挙げられるがこれらに限定されない。例えばFu et al.Bioconjugate Chem.2014,25,1602-1608を参照されたい。いくつかの機械的方法(マイクロインジェクション及びエレクトロポレーション等)は侵襲的且つ低スループットであり得る。いくつかの実施形態において、リボヌクレオタンパク質複合体は、マイクロ流体系(CELL SQUEEZE(登録商標)等)を介して細胞を通過させる間に細胞膜を介して複合体を挿入することによって、細胞の中へ送達される(例えば米国特許出願公開第20140287509号を参照)。
【0227】
上で記載されるように、本開示に従う核酸分子の細胞の中への導入は、当業者に公知の一般的な方法によって遂行される。シュードウリジン化後に、効果の読み取り(標的RNA配列の変異)は、任意選択の同定ステップにおいて異なる手法を介してモニタリングされ得る。したがって、標的ウリジンの所望されるシュードウリジン化が実際に起こったかどうかの同定ステップは、概して、標的RNA配列中の標的ウリジンの位置、及びウリジンの存在によって生じる効果(点突然変異、PTC)に依存する。したがって、いくつかの実施形態において、UからΨへの変換の最終的な効果に依存して、同定ステップは、機能的な、伸長した、全長の、及び/または野生型のタンパク質の存在の査定;プレmRNAのスプライシングがシュードウリジン化によって変更されたかどうかの査定;またはシュードウリジン化後の標的RNAが、機能的な、全長の、伸長した、及び/または野生型のタンパク質をコードする、機能的な読み取りの使用を含む。本明細書において言及される疾患の各々についての機能的な査定は、概して、当業者に公知の方法に従うだろう。
【0228】
核酸分子(gsnoRNA発現コンストラクトまたは本開示に従うベクター等)は、好適には、薬学的使用と適合する、添加物、賦形剤、他の成分を任意選択で含む、水溶液(例えば食塩水)または懸濁物中で投与される。投与は、鼻内、経口の吸入(例えば霧化を介する)による、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、硝子体内、筋肉内、気管内、腹腔内、直腸内、及び同種のものの注射または点滴によるものであり得る。投与は、固体の形態で、粉末、ピルの形態で、またはヒトにおける薬学的使用と適合する他の形態であり得る。本開示は、遺伝性疾患(CF)の治療のために特に好適である。
【0229】
いくつかの実施形態において、核酸分子(gsnoRNA、発現コンストラクト、またはベクター等)は、全身的に送達され得る。いくつかの実施形態において、核酸分子(gsnoRNA、発現コンストラクト、またはベクター等)は、細胞に送達されるか、または標的配列の表現型が観察される組織に局所的に送達され得る。例えば、CFTRにおける突然変異は、肺上皮組織において主として見られるCFを引き起こし、したがって、CFTR標的配列に関するいくつかの実施形態において、肺へオリゴヌクレオチドコンストラクトを特異的且つ直接的に送達する。これは、典型的には、ネブライザーの使用を介して、例えば粉末またはエアロゾルの吸入によって好都合に達成され得る。いくつかの実施形態において、ネブライザーは、いわゆる振動メッシュを使用するネブライザーであり、PARI eFlow (Rapid)またはRespironicsからのi-nebが挙げられる。本開示に従うオリゴヌクレオチドコンストラクトの吸入送達も、効率的にこれらの細胞を標的化し、CFTR遺伝子標的化の症例においてCFと関連する胃腸症状の軽快も導き得ることが期待される。いくつかの疾患において、粘液層は厚みの増加を示し、肺を介する医薬品の吸収の減少を導く。かかる疾患の1つは、慢性気管支炎であり、別の例はCFである。様々な粘液正常化物質が、入手可能であり、DNase、高張生理食塩水、またはマンニトール等が、Bronchitolのという名称で商業的に入手可能である。粘液正常化物質が、シュードウリジン化オリゴヌクレオチドコンストラクト(本開示に従うgsnoRNAコンストラクト等)と組み合わせて使用される場合に、それらは、医薬品の有効性を増加させ得る。したがって、本開示に従うオリゴヌクレオチドコンストラクトの対象(ヒト対象等)への投与は、粘液正常化物質と組み合わせられ得る。加えて、本開示に従うオリゴヌクレオチドコンストラクトの投与は、CFの治療のための小分子(ポテンシエーター化合物(例えばKalydeco(イバカフトール;VX-770))、またはコレクター化合物(例えばVX-809(ルマカフトール)及び/またはVX-661)等)の投与と組み合わせられ得る。代替的に、または粘液正常化物質と組み合わせて、粘液透過性の粒子またはナノ粒子中の送達は、例えばシュードウリジン化分子の肺及び腸の上皮細胞への効率的な送達のために適用され得る。いくつかの実施形態において、本開示に従うオリゴヌクレオチドコンストラクトの対象(ヒト対象等)への投与は、細菌感染、ならびに粘液増加及び/またはバイオフィルム形成等の細菌感染の症状を低減させるために抗生物質治療と組み合わせられる。抗生物質は、全身的もしくは局所的または両方で投与され得る。CF患者における適用のために、本開示に従うオリゴヌクレオチドコンストラクト、または本開示に従うパッケージングまたは複合体化オリゴヌクレオチドコンストラクトは、任意の粘液正常化物質(DNase、マンニトール、高張生理食塩水、及び/または抗生物質等)、及び/またはCFの治療のための小分子(ポテンシエーター化合物(例えばイバカフトール)、またはコレクター化合物(例えばルマカフトール及び/またはVX-661)等)と組み合わせられる。標的細胞へのアクセスを増加させるために、気管支肺胞ファベージ(Broncheo-Alveolar Favage)(BAF)を適用して、本開示に従うオリゴヌクレオチドの投与の前に肺を洗浄することができる。
【0230】
IV.医薬組成物、キット、及び製造品
いくつかの態様において、本明細書において記載されるgsnoRNA、核酸コンストラクト/分子、または操作されたRNA編集系のうちの任意のもの、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が本明細書において提供される。
【0231】
医薬組成物は、所望される純度を有する本明細書において記載される治療剤を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化物質(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製され得る。許容される担体、賦形剤、または安定化物質は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントへ非毒性であり、バッファー、抗酸化物質(アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、メタ重亜硫酸ナトリウムを包含する);防腐物質、等張化物質(例えば塩化ナトリウム)、安定化物質、金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);キレート剤(EDTA及び/または非イオン性界面活性物質等)が挙げられる。
【0232】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、一回使用のバイアル(一回使用の密封バイアル)中で含有される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、複数回使用のバイアル中で含有される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、容器中でバルクで含有される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、凍結保存される。
【0233】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、gsnoRNAを含む。他の実施形態において、医薬組成物は、gsnoRNAをコードする核酸コンストラクト(例えばプラスミドベクターまたはウイルスベクター等のベクター)を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、遊離gsnoRNA(「ネイキッド」gsnoRNA)、または取り込みのための及び/または細胞内トラフィッキングのための他の構成要素(標的化のためのリガンド等)へコンジュゲートされたgsnoRNAを含む。gsnoRNAは、水溶液(概して薬学的に許容される担体及び/または溶媒)中で使用され得るか、またはトランスフェクション剤、リポソーム、もしくはナノ粒子の形態(例えばSNALP、LNP、及び同種のもの)を使用して製剤化され得る。かかる製剤は、生物学的利用能及び同種のものを促進するために機能的なリガンドを含み得る。
【0234】
本出願は、本明細書において記載される治療方法の任意の実施形態で使用されるキット及び製造品をさらに提供する。キット及び製造品は、本明細書において記載される製剤及び医薬組成物のうちの任意の1つを含み得る。
【0235】
いくつかの態様において、セクションIIB中で記載されるgsnoRNAまたは核酸分子のうちの任意のものを含む宿主細胞中の標的RNAを編集するためのキットが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、キットは、宿主細胞における内在性DKC1アイソフォーム3の発現の促進のための薬剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、スプライス-スイッチングアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含み、ASOは、宿主細胞において細胞質内局在のある内在性DKC1アイソフォームであるDKC1タンパク質の発現を促進する。いくつかの実施形態において、キットは、DKC1タンパク質をコードするDKC1タンパク質または核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォーム(例えばアイソフォーム3)である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、同じ種の野生型DKC1タンパク質に比べて核局在化シグナル(NLS)の欠失を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、短縮されたDKC1バリアントまたは欠失を含むDKC1バリアント(上のセクションIIA中で記載される短縮バリアントまたは欠失バリアントのうちの任意のもの等)である。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書において記載される方法のうちの任意のものに従う標的RNAを編集するための指示書をさらに含む。
【0236】
いくつかの態様において、宿主細胞において標的RNAを編集するためのキットであって、操作されたRNA編集系を含み、操作されたRNA編集系が、(a)宿主細胞における標的RNA中の標的ウリジン残基を含む配列へハイブリダイズするガイド配列を含むgsnoRNA、またはgsnoRNAをコードする核酸分子;及び(b)DKC1タンパク質、またはDKC1タンパク質をコードする核酸分子を含み、gsnoRNAが、DKC1タンパク質を動員して、標的RNA中の標的ウリジン残基をシュードウリジン残基へと修飾することが可能である、前記キットが本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォームである。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、細胞質内局在のあるDKC1アイソフォーム(例えばアイソフォーム3)である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、gsnoRNAと会合するリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の一部である。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、同じ種の野生型DKC1タンパク質に比べて核局在化シグナル(NLS)の欠失を含む。いくつかの実施形態において、DKC1タンパク質は、短縮されたDKC1バリアントまたは欠失を含むDKC1バリアント(上のセクションIIA中で記載される短縮バリアントまたは欠失バリアントのうちの任意のもの等)である。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書において記載される方法のうちの任意のものに従う標的RNAを編集するための指示書をさらに含む。
【0237】
本開示のキットは、好適なパッケージング中にある。好適なパッケージングとしては、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟なパッケージング(例えば密封マイラーバッグまたはプラスチックバッグ)、及び同種のものが挙げられるがこれらに限定されない。キットは、任意選択で追加の構成要素(バッファー及び解釈の情報等)を提供し得る。本出願は、したがって製造物品も提供し、バイアル(密封バイアル等)、ボトル、ジャー、柔軟なパッケージング、及び同種のものを含む。
【0238】
組成物の使用に関する指示書は、概して、意図される治療のための投薬量、投薬スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば複数回用量パッケージ)、またはサブ単位用量であり得る。例えば、個体または多くの個体の有効な治療を提供するために、gsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質、あるいは本明細書において開示されるgsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸分子の十分な投薬量を含有するキットが提供され得る。追加で、個体への複数の投与を可能にするために、十分な投薬量のgsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質、あるいはgsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸分子を含有するキットが提供され得る。キットは、複数の単位用量の医薬組成物及び使用のための指示書も含み、薬局(例えば病院薬局及び調剤薬局)における、保管及び使用のために十分な量でパッケージングされる。
【0239】
いくつかの実施形態において、キットは、送達系を含む。送達系は、単位用量送達系であり得る。これらの様々な投薬形態についての送達系は、単位用量パッケージまたは複数回の用量パッケージのいずれかでの、シリンジ、ドロッパーボトル、プラスチックスクイーズユニット、アトマイザー、ネブライザー、または薬学的エアロゾルであり得る。いくつかの実施形態において、gsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質、あるいはgsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸分子ならびにgsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質の送達のためのデバイス、あるいはgsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸分子を含む、gsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質、あるいは本明細書において記載されるgsnoRNA及び/またはDKC1タンパク質をコードする核酸分子のうちの任意の1つの送達系が提供される。
【0240】
本明細書において開示される特色のすべては、任意の組み合わせで組み合わせられ得る。本明細書において開示される各々の特色は、同じ、同等、または類似する目的を供する代替の特色によって置き換えられ得る。したがって、別段明示的に述べられない限り、開示される各々の特色は、一般的なシリーズの同等または類似の特色の例のみである。
【実施例】
【0241】
本開示は、以下の実施例への参照によってより完全に理解されるだろう。しかしながら、それらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。本明細書において記載される実施例及び実施形態は、例示のみを目的とするものであり、それらに照らした様々な修飾または変化は、当業者に示唆され、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されるものであることが理解される。
【0242】
実施例1。未成熟終止コドンのリードスルーのために操作されたガイドsnoRNAの活用
本実施例は、操作されたガイドsnoRNAによる標的RNAのシュードウリジン化(例えばシュードウリジン化依存性PTCリードスルーによって証明される、mRNAのシュードウリジン化)の効率を実証し、ガイドsnoRNAのための異なる発現系を提供する。
【0243】
mRNA中での部位特異的シュードウリジン化をインビボで達成するために、人工ガイドsnoRNA(gsnoRNA)を、修飾のために特異的なmRNAを標的化するように操作した(
図1A)。H/ACA snoRNAは、Hボックスモチーフ及びACAボックスモチーフが続く2つのヘアピンを含有し、本明細書において提供される操作されたsnoRNAの両方のヘアピンは、PTC部位を標的化することが可能なガイド配列を含有する。PTCリードスルーの効率を査定するために、Venusレポーター(レポーター-1)を、154番目アミノ酸コドンと155番目のアミノ酸コドンとの間に挿入したアンバーコドン(TAG)を備えたVenus蛍光レポーター遺伝子を発現させて、Venus翻訳を未成熟に終結させるようにデザインした。かかるレポーターは、Venusの発現レベルのモニタリングによってPTCリードスルーの効率の測定を可能にする。同じ位置でグリシンコドン(GGT)を備えた陽性対照が含まれていた(
図1B)。snoRNAガイド型シュードウリジン化による対応する終止コドンの修飾の結果としてのPTCリードスルーをアッセイするために、レポーター-1(VenusTAG)または対照(Venus-GGT)を、gsnoRNA発現コンストラクト(gCtrl(配列番号14)、gACA19(配列番号37)、gACA44(配列番号38)、gACA27(配列番号39)、gE2(配列番号40)、gACA19-S(配列番号41)、またはgACA19-L(配列番号42))と共に、HEK293T細胞の中へコトランスフェクションした。PTCリードスルーの効果を、ハイコンテントイメージング系によって測定し、陽性対照群と比較することによって定量した(
図1C、1D)。相対的Venus発現を、対照(Venus-GGT)に比較して検出されたVenusのパーセント(%)として報告する。これらのgsnoRNAは、第一世代RESTART(RESTART v1)として供された。
【0244】
対照gsnoRNA(gCtrl)の配列を以下で提供し、ガイド領域に下線を引いた(配列番号14)。
【化1】
【0245】
ヒトゲノム中で、snoRNA遺伝子の90%超は、プレmRNAイントロン中にコードされる
1。本発明者らは、最初に宿主遺伝子イントロン中に所在する複数のgsnoRNAによって媒介されるPTCリードスルーの効果を評価した(RESTART v1.0)。本発明者らは、最初に、ACA19、ACA44、ACA27、及びE2(それぞれEIF3A、SNHG12、RPL21、RPSAの宿主遺伝子内の)を含むヒト2において高発現レベルを有する4つの内在性snoRNAを選択し(
図2A~2C及び
図3A~3F)、VenusレポーターPTCを標的化するために、これらのスキャフォールドに基づいてgsnoRNAを操作した。snoRNAを含む宿主遺伝子断片を、CMVプロモーターによって駆動されるコンストラクトの中へクローニングした。レポーター-1を、これらのgsnoRNAを発現するコンストラクト(宿主-gCtrl;宿主-gACA19、宿主gACA-44、宿主-gACA27、及び宿主-gE2)と共にコトランスフェクションした後に、Venus発現によって示されるPTCリードスルーの証拠が観察され、5.2%及び5.0%のVenus陽性細胞(対照Venus-GGTレポーターに比較して)が、それぞれ宿主-gACA19及び宿主-gE2をトランスフェクションした細胞から検出された一方で、他のものは無視できるシグナルを示した(
図2A)。対照gsnoRNA(gCtrl)がVenus発現を活性化することができなかったので、Venus発現は明らかに配列依存性であった。本発明者らは、gACA19スキャフォールド及びgE2スキャフォールド(他のスキャフォールドよりも高い活性を示した)は、gACA44及びgACA27よりも安定的な二次構造を有することが予測され(
図3A~3D)、PTCリードスルーによって証明される標的修飾のより高い効率は、二次構造の安定性と相関していることを示唆することを認識した。PTCリードスルー効率に対するgsnoRNAを保有する宿主遺伝子配列の効果を試験するために、本発明者らは、ヘモグロビンサブユニットβ(HBB)遺伝子のエクソン2とエクソン3との間のイントロンの中へ異なるgsnoRNAをクローニングすることによって、さらなる比較を実行した。gACA19は、レポーター-1についてのPTCリードスルーの媒介において最も高い効率(相対的Venus陽性細胞:7.3%)を再び示し、gE2は、2番目に最も高い効率(相対的Venus陽性細胞:1.8%)を示した(
図2B)。
【0246】
宿主遺伝子配列が異なるgsnoRNAに対して多様な効果があるという本発明者らの観察に基づいて(
図2A~2B中で示されるように)、本発明者らは、宿主遺伝子効果無しでgsnoRNAを直接的に発現させることは、PTCリードスルーの効率をさらに増加させ得ることを想定した。したがって、本発明者らは、hU6(III型RNAポリメラーゼIIIプロモーター)及びhU1(snRNA型RNAポリメラーゼIIプロモーター)プロモーター(RESTART v1.1)によって駆動されるgsnoRNA発現コンストラクトのシリーズをデザインし(
図1C~1D及び
図2C)、それらをレポーター-1と一緒にHEK293T細胞の中へコトランスフェクションした。hU6プロモーター駆動gACA19のPTCリードスルー効率は、宿主遺伝子イントロンに埋め込まれたgACA19及びHBBイントロンに埋め込まれたgACA19のものに比較して、それぞれ1.9倍及び1.3倍増加した(
図1C~1D及び
図2A~2B)。hU6プロモーター駆動されるgsnoRNAの効率は、hU1プロモーター駆動gsnoRNAのものに類似する(
図2C)。PTCリードスルーの効果は、gsnoRNAを伸長または短縮することによってさらに特徴づけられた。明白な効果は、gACA19の伸長(gACA19-L、5’で9ヌクレオチド及び3’で9ヌクレオチド)から観察されなかったが、短縮されたgACA19(gACA19-S、5’で3ヌクレオチド)は、全長gACA19に比較して、レポーター-1 PTCリードスルー効率を35%に低減した(
図1D及び
図2E~2F)。小分子RNAプロモーターによって駆動されるgsnoRNAが、イントロンに埋め込まれたgsnoRNAに比較して、PTCリードスルーの媒介においてより高い効率を示したので、本発明者らは、hU6プロモーターによって駆動されるgsnoRNAを選択して、後続の分析を遂行した。
【0247】
内在性DKC1タンパク質が上記の観察についての原因であるかどうか決定するために、本発明者らは、DKC1を安定的にノックダウンした(DKC1 KD)HEK293T細胞に対してRESTART v1.1を実行した(
図1E)。PTCリードスルーは、DKC1-KD細胞からのgsnoRNAについて観察されなかったが、これらのgsnoRNAは、対照群におけるVenusの発現を活性化し(
図1F)、レポーター-1のPTCリードスルーの媒介における内在性DKC1の役割を支持する(
図1A)。まとめると、これらの観察は、gsnoRNAが標的化された転写のPTCリードスルーを誘導し得ることを実証した。
【0248】
実施例2:gsnoRNAスキャフォールドの最適化は、PTCリードスルーの効率を改善する
最適なgsnoRNAスキャフォールドを同定するために、本発明者らは、さらなる特性評価(RESTART v1.2)のための候補スキャフォールドとして、RNAfold
3によって予測された安定的二次構造を備えた5つのsnoRNA(gACA3、gACA17、gACA19、gACA2b、及びgACA36)を選択した(
図4A及び
図5A)。本発明者らは、hU6プロモーター駆動gsnoRNA及びCMVプロモーター駆動BFP遺伝子(トランスフェクション効率を正規化するために利用された)からなるsnoRNA発現コンストラクトをデザインした(
図4B)。その中でも、gACA36及びgACA2bは、gACA19に勝り、最も高い効率のPTCリードスルー(相対的Venus陽性細胞は、それぞれ13.7%及び12.2%)を示した(
図4C~4D)。gACA19は、-37.10kcal/molの最小自由エネルギーを有し、gACA2bは、-54.90kcal/molの最小自由エネルギーを有し、gACA36は、-43.50kcal/molの最小自由エネルギーを有する。gsnoRNAスキャフォールドの安定性と編集効率との間に直接関係がないように思われる。
【0249】
gsnoRNAの2つのヘアピンの役割を調査するために、本発明者らは、それぞれ5’ガイドエレメント及び3’ガイドエレメント中に突然変異を導入した(
図4A、
図5A、及び
図6A)。gACA19 5’ヘアピン突然変異(gACA19-5m)の編集効率は、gACA19のものに匹敵した一方で、gACA19-3mは効率の低減を示した(
図4E~4F)。gACA36について、gACA36-3mの編集効率は、gACA36のものに匹敵した一方で、gACA36-5mは無視できるシグナルを示した(
図6B)。これらの結果は、gACA19/gACA36の1つのヘアピンのみが主要な役割を果たし、同じ部位を標的化するgsnoRNAの2つのヘアピンは互いと競合しないかもしれないことを示した。
【0250】
次に本発明者らは、gsnoRNAスキャフォールド(RESTART v1.3)を操作することによってPTCリードスルー効率をさらに改善しようと努力した(
図4E~4F及び
図3~4)。RNAポリメラーゼIIIが小ポリUストレッチで転写を終結させることを考慮して、本発明者らは、gACA19の頂点ループにおける「UUUU」配列へ単一塩基突然変異を導入した(
図4A及び
図5C)。顕著なことには、gACA19-UUCU及びgACA19-UGUUの両方は、改善を示した(
図4E~4F)。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチドとH/ACAボックスとの間の距離が、14ヌクレオチドであるように、gsnoRNAヘアピン中の距離を変更することが、gsnoRNAの編集効率を増加させたことを認識した。一例において、本発明者らは、標的ウリジンへハイブリダイズするガイド領域中のヌクレオチドとH/ACAボックスとの間の距離が、14ヌクレオチドであるように、gACA19のU115後に単一の塩基を挿入した(
図4A及び
図5D)。gACA19-3addGは、非修飾gACA19に比較して、1.4倍まで効率を増加させた(
図4E~4F)。さらに、理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、gsnoRNAヘアピンのガイドエレメントをよりオープンにすること(例えばガイド領域内の二次構造の塩基対合確率を減少させること)が、gsnoRNAの編集効率を増加させ得ることを見出した。ガイドエレメントをよりオープンにするために、本発明者らは、gACA19の5’ヘアピン中のU8後にジヌクレオチドを挿入した(
図4A及び
図5D)。顕著なことには、gACA19-5addCUは、PTCリードスルー効率を60%増加させた(
図4E~4F)。しかしながら、操作されたgACA36スキャフォールドは、PTCリードスルーの効率をさらに改善はしなかった(
図6A~6B)。本発明者らは、gACA19の最適化された突然変異を組み合わせて2つのタンデムgsnoRNAも発現させたが、どちらもさらに効率を改善はしなかった。
【0251】
実施例3:gsnoRNA及び標的PTC部位の空間的近接効果
本発明者らは、次に、gsnoRNA及び標的PTC部位の空間的近接が、PTCリードスルーの効率に対して影響を有するかどうかを問うた。本発明者らは、2つの新しいレポーターをデザインした。(1)レポート-2は、mCherryとEGFPのコード領域との間にPTC部位を含有し、RESTART v1.3からのgsnoRNAによって活性化された。mCherryを、トランスフェクション効率を正規化するために利用した。(2)レポーター-3(RESTART v1.4)において、gsnoRNAを、PTCレポーターとタンデムにアレンジし、これはレポーター-2と同じPTCレポーターである。gsnoRNAは、レポーター-2及びレポーター-1の両方のPTCの抑制において匹敵する効率を有し、gsnoRNAは、異なるレポーターで働くことを示す。予想外に、gsnoRNAは、レポーター-3におけるPTCリードスルー効率を増加させた(相対的EGFP陽性細胞:約30%、RESTART v1.3に比較して約2倍)。
【0252】
実施例4。RESTARTは、複数の細胞株におけるPTCリードスルーを可能にする
本発明者らは、3つのヒト細胞株及び1つのマウス細胞株を含む、別個の組織から生じた4つの異なる細胞株においてRESTART v1.4を試験した。効率的なPTCリードスルー事象が、試験されたすべての細胞株について観察され、本開示のgsnoRNAデザインが、異なる哺乳動物細胞型においてPTCを抑制する多用性のある戦略であることを示唆した。
【0253】
実施例5。DKC1アイソフォーム3発現の増加は、有意にPTCリードスルーを改善する
顕著なことには、最適化された突然変異の組み合わせも、2つのタンデムgsnoRNAのコンストラクトのトランスフェクションによるgsnoRNA発現レベルの増加も、PTCリードスルーをさらに増加させず、RESTART v1.3は、最適な構造及び発現レベルを備えたgsnoRNAを提供することが示唆される。本開示の操作されたgsnoRNAが、最適化されたgsnoRNA構造及び発現レベルを提供したという本発明者の認識に基づいて、本発明者らは、gsnoRNA安定性及び発現ではなく、酵素レベル及びアクセス容易性が、律速因子であるのではないかと考えた。DKC1は、シュードウリジンのsnoRNAガイド型付着及び付随するRESTARTにおけるPTCリードスルーに関与する(
図1A、1F)。ヒト細胞において2つのDKC1アイソフォームがある。DKC1アイソフォーム1は、二部構成のN末端及びC末端の核局在化シグナル(NLS)を含有するカノニカルなDKC1形態である。DKC1アイソフォーム3は、オルタナティブスプライシングバリアントであり、それはイントロン12の保持によって産生され、C末端NLSを欠如する(
図7A)。アイソフォーム1の内在性mRNA発現レベルは、アイソフォーム3のものよりもおよそ20倍高い
4。
【0254】
最初に、本発明者らは、DKC1を安定的に過剰発現する細胞株を生成し、前記DKC1アイソフォーム1を過剰発現する細胞にレポーター-3をトランスフェクションした(
図7B~7C)。DKC1アイソフォーム1の過剰発現は、対照細胞のものに比較して、EGFP陽性細胞の相対的割合及び相対的EGFP強度を、それぞれ1.2倍及び1.3倍にわずかに増加させただけである(
図7D~7F)。驚くべきことに、アイソフォーム3過剰発現細胞において、EGFP陽性細胞の相対的割合及び相対的EGFP強度は、それぞれ2.5倍及び5.2倍に大きく増加した(
図7D~7F)。これらの観察は、レポーター-1及びgsnoRNAコンストラクトをDKC1を安定的に過剰発現する細胞の中へコトランスフェクションすることによってさらに確認された(
図8A~8C)。DKC1の一過性の役割をさらに調査するために、レポーター-3を、DKC1を発現するコンストラクトと一緒にコトランスフェクションした。この場合もやはり、アイソフォーム3の一過性過剰発現は、PTCリードスルーを大きく増加させた(
図8D)。DKC1アイソフォーム3のN末端NLSも欠失させ、これらの短縮は、アイソフォーム3と類似するPTCリードスルーの効率を有していた(
図9)。これらの予想外の結果は、外来性DKC1アイソフォーム3がPTCリードスルーの効率を有意に改善し、61.4%のEGFP陽性細胞(対照レポーターに比べて)及び13.2%のEGFP強度(対照レポーターに比べて)を達成できることを実証する。gsnoRNA及びDKC1アイソフォーム3は、第二世代RESTART(RESTART v2)として供された。
【0255】
RESTARTをより特徴づけるために、レポーター3の追加のセットを、3つの型すべての終止コドンを含むように構築し、もたらされたレポーターコンストラクトを、外来性DKC1アイソフォーム3有り及び無しで、HEK293Tの中へトランスフェクションした(
図7B)。RESTART媒介性リードスルーの効率は、基底翻訳リードスルーまたは薬物誘導性翻訳リードスルーのものと正に相関し
5、オパールコドン(UGA)で最も高いリードスルー、続いてアンバーコドン(UAG)、次いでオーカーコドン(UAA)であった(
図7G~7H及び
図10A~10D)。UGA(オパール)コドンについて、EGFP陽性細胞の相対的割合及び相対的EGFP強度は、それぞれ45.3%及び5.8%(RESTART v1.4)、ならびに72.3%及び28.6%(RESTART v2)であった。一方で、UAAコドンは、外来性DKC1無しで無視できるシグナルを示し(RESTART v1.4)、DKC1アイソフォーム3過剰発現で、2.9%の相対的EGFP陽性細胞及び0.2%の相対的EGFP強度であった(RESTART v2)(
図7G~7H及び
図10A~10B)。DKC1アイソフォーム3発現コンストラクトの量の増加は、14.8%の相対的EGFP陽性細胞までUAA(オーカー)コドンのPTCリードスルーを改善したが、UAG(アンバー)及びUGA(オパール)に比較して、依然として、それぞれ25%及び19%であった(
図10C~10E)。総合すると、RESTARTは、3つのすべてのナンセンスコドンリードスルーを促進した。
【0256】
次に、3つの終止コドンの各々のレポーター-3コンストラクトを、200ngのDKC1アイソフォーム3発現コンストラクトと一緒に、HEK293T細胞の中へ個別にコトランスフェクションした。標的の遺伝子座特異的シュードウリジン修飾を、放射性同位体標識無しのqPCRベースの方法
6によって検出した(
図7I及び
図11A~11C)。融解曲線への変化は、3つのすべての終止コドンについて観察された(
図7I)一方で、無視できる変化がΨ修飾を欠くgCtrl群について観察された(
図11A)。これとは対照的に、18S rRNA中のΨ1045部位についての融解曲線変化は、gACA19群とgCtrl群との間に匹敵していた(
図11A~11C)。まとめると、これらの結果から、DKC1アイソフォーム3によってgsnoRNAガイド型シュードウリジン化が3つのすべてのPTCコドンリードスルーを効率的に促進することができることが実証される。
【0257】
実施例6。RESTARTは、疾患関連PTCを抑制する
この実施例は、RESTARTを使用する、疾患関連未成熟終止コドン(PTC)の修正を実証する。RESTART系による疾患関連PTCのRNAガイド型シュードウリジン化は、全長遺伝子産物の発現をもたらした。さらに、RESTARTを使用するタンパク質の機能の回復を、疾患関連PTCを含有するCFTR遺伝子について実証した。以下の実施例において、「X」は、終止コドン突然変異を示す。試験したgsnoRNAの配列を、表4中で提供する。
【0258】
PTC部位を含有する疾患遺伝子の後にEGFPが続く、PTC疾患レポーターを構築した(
図12A中で示されるように)。gACA19ベースのgsnoRNA及びgACA36ベースのgsnoRNAをデザインし、6つの病原遺伝子(PEX7、SMN1、ALDOB、C8orf37、PCCB、及びCBS)からの7つの疾患関連ナンセンス突然変異を標的化して試験した(
図12B~13)。HEK293T細胞におけるgsnoRNA/PTC疾患遺伝子ペアの共発現によって(RESTARTv1)、すべての部位でPTCリードスルーが達成された。6.7%(ALDOB-W148Xを発現する細胞)、25.2%(SMN1-W190X)、33.8%(PEX7-R232X)、1.7%(C8orf37-W185X)、38.8%(PCCB-R111X)、22.1%(CBS-C275X)、及び8.0%(CBS-W390X)のEGFP陽性細胞が、陽性対照に比較して、それぞれ検出された(
図14A)。次に、疾患遺伝子のPTCリードスルーを、RESTARTv2(DKC1アイソフォーム3の過剰発現)について試験した(
図14B)。DKC1アイソフォーム3の過剰発現(RESTARTv2)は、RESTARTv1に比較して、EGFP陽性細胞(PTCリードスルーを示す)の相対的割合を平均で約2.8倍増加させた。ALDOB-W148X及びCBS-W390Xを発現する細胞について、EGFP陽性細胞の相対的割合は、
図14A~14B中で示されるように、DKC1アイソフォーム3つの過剰発現(それぞれ4.8倍及び6.3倍によって)により大きく増加した。
【0259】
RESTARTは、
図14C中で示されるように、疾患関連PTC LMNA-R225X(伝導障害を伴う家族性拡張型心筋症(DCM)(DCM-CD)と関連)、F9-Y22X及びF9-G21X(血友病Bと関連)、ABCA4-R408X(スタルガルト病と関連)、RS1-Y65X(X連鎖性網膜分離症と関連)、及びRpe65-R44X(レーベル先天黒内障と関連)の抑制についてさらに確認された。
【0260】
最終的に、RESTARTを使用するタンパク質機能の回復を、疾患関連PTCを含有するCFTR CFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)遺伝子について実証した。CFTRにおける突然変異は、単遺伝子疾患の嚢胞性線維症を引き起こし、白人の生存出生のおよそ1:2500で発症する。RESTARTが、CFTR R553X(CGA-TGA)PTC部位及びW1282X(TGG-TGA)PTC部位を修復し、タンパク質機能を回復させる能力を、CFTRの機能的なレスキューの評価のための「ゴールドスタンダード」である電気生理学アッセイによって試験した。RESTARTの送達後に、PTCを含有するCFTRの機能を野生型CFTRレベルの約30%までレスキューすることができ、ある特定の単遺伝子疾患の標的化におけるRESTARTの治療能力を示した。
【0261】
実施例7。臨床的に妥当なgsnoRNAのフォーマットによるRESTARTの送達
この実施例は、細胞へのgsnoRNA送達のための機能的なオリゴヌクレオチドのデザイン及び合成を実証する。
【0262】
全長gsnoRNAオリゴヌクレオチドを、インビトロ転写(IVT)によって調製した。細胞におけるgsnoRNAオリゴヌクレオチドの安定性を増加させるために、5’キャップ修飾(m
7G(5’)ppp(5’)Gキャップ類似体)を、gsnoRNAオリゴヌクレオチドへ添加した。5’キャップ修飾は、内在性イントロンsnoRNA中に存在しない。一例として、レポーター-2(rACA19)を標的化する5’キャップ修飾された全長gACA19オリゴヌクレオチドを、インビトロ転写によって調製した(
図15A~C)。注目すべきことには、rACA19は、gACA19発現コンストラクトベクターに比較して、RESTARTv1及びRESTARTv2の両方についてPTCリードスルーの効率を増加させた(
図15D;平均値±標準偏差として示されたデータ)。
【0263】
図15E中で示されるように、2’-Oメチル及びホスホロチオエート連結修飾を備えた化学的に合成されたrACA19オリゴヌクレオチドの半分を調製し、細胞における効率的なPTCリードスルーを達成する能力について試験した(「P」はホスホロチオエート連結を示し、「2’O-メチル」2’O-メチル修飾ヌクレオシドを示す)。gsnoRNAを、トランスフェクションによって細胞へ送達した。
【0264】
有利なことには、gsnoRNAオリゴヌクレオチドの半分は、効率的に合成するには長すぎる全長のgsnoRNA(約130ヌクレオチド)に比較して、化学的合成を促進する。さらに、rH5及びrH3のオリゴヌクレオチドは、1つのオリゴヌクレオチドあたり、6つのホスホロチオエート連結及び4つの2’O-メチル修飾のみを備えて合成され、少数の修飾が、化学的に合成されたgsnoRNAの半分の安定性及び機能を促進するのに十分であると示した。5’ヘアピンコンストラクト(gH5、Hボックス有り)及び3’ヘアピンコンストラクト(gH3、ACAボックス有り)は、IVTによって調製したgACA19オリゴヌクレオチドに比較して、PTCリードスルーの効率を低減した。しかしながら、rH5オリゴヌクレオチド及びrH3オリゴヌクレオチドの両方(それはgH5及びgH3と同じ配列を有する)は、全長gACA19コンストラクトに匹敵する効率を呈した(
図15D)。
【0265】
これらの結果は、インビトロ転写によって調製した全長RNAオリゴヌクレオチド(例えば安定性を増加させるために5’キャップを備えた)として、または化学合成によって調製した5’ヘアピンもしくは3’ヘアピンを含むオリゴヌクレオチドの半分として、gsnoRNAを細胞へ効果的に送達できることを示す。さらに、データから、6つのホスホロチオエート連結及び4つの2’O-メチル修飾のみを備えた、化学的に合成されたrH3またはrH5が、細胞において安定的且つ機能的であることを実証される。有利なことには、少数の修飾を備えた化学的に合成されたrH3オリゴヌクレオチド及びrH5オリゴヌクレオチドの使用は、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを調製する費用を低減することができる。送達されたRNAオリゴヌクレオチドは、同じgsnoRNAコンストラクトをコードするDNAベクターとして細胞へ送達された同じコンストラクトよりも、良好に機能し得る。
【0266】
参照文献
1.Dieci,G.,Preti,M.& Montanini,B.Eukaryotic snoRNAs: a paradigm for gene expression flexibility.Genomics 94,83-8 (2009).
【0267】
2.Jorjani,H.et al.An updated human snoRNAome.Nucleic Acids Res 44,5068-82 (2016).
【0268】
3.Gruber,A.R.,Lorenz,R.,Bernhart,S.H.,Neubock,R.& Hofacker,I.L.The Vienna RNA websuite.Nucleic Acids Res 36,W70-4 (2008).
【0269】
4.Angrisani,A.,Turano,M.,Paparo,L.,Di Mauro,C.& Furia,M.A new human dyskerin isoform with cytoplasmic localization.Biochim Biophys Acta 1810,1361-8 (2011).
【0270】
5.Dabrowski,M.,Bukowy-Bieryllo,Z.& Zietkiewicz,E.Translational readthrough potential of natural termination codons in eukaryotes--The impact of RNA sequence.RNA Biol 12,950-8(2015).
【0271】
6.Lei,Z.& Yi,C.A Radiolabeling-Free,qPCR-Based Method for Locus-Specific Pseudouridine Detection.Angew Chem Int Ed Engl 56,14878-14882(2017).
【配列表】
【国際調査報告】