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特表2024-519735インターバル閉ループ適応経頭蓋フォトバイオモジュレーションのための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】インターバル閉ループ適応経頭蓋フォトバイオモジュレーションのための方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240514BHJP
   H05B 47/19 20200101ALI20240514BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20240514BHJP
【FI】
A61N5/06 A
H05B47/19
H05B47/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568414
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2022054240
(87)【国際公開番号】W WO2022234544
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,234
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520461026
【氏名又は名称】センズ.エーアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SENS.AI INC.
【住所又は居所原語表記】2768 Coyote Place, Whistler, British Columbia, CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, パオラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリーン, コーリー
【テーマコード(参考)】
3K273
4C082
【Fターム(参考)】
3K273PA09
3K273QA13
3K273SA12
3K273SA17
3K273SA31
3K273SA45
3K273TA15
3K273TA27
3K273TA33
3K273TA36
3K273TA37
3K273TA54
3K273TA62
3K273UA22
4C082PA01
4C082PC01
4C082PC04
4C082PE05
4C082PE10
4C082PJ11
(57)【要約】
インターバルベースの閉ループ適応経頭蓋フォトバイオモジュレーションを用いた脳波変調のための方法が提供される。本発明の方法は、脳波(EEG)センサを含む生体センサを利用して、身体からの生体信号を測定し、脳の電気活動を変化させるためにパターン化された光パルスを適応させるために前記信号を処理する。本発明の方法を実施するためのヘッドセットなどのウェアラブルデバイスの形態のシステムも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体センサを用いて個人の生体信号を測定することと、
前記生体信号を処理することと、
前記処理された生体信号に基づいてフォトバイオモジュレーションを適応させることと、
フォトバイオモジュレーションを前記個人に提供することと、
前記フォトバイオモジュレーションが前記個人の前記生体信号を目標状態に近づけるように適応されるバイオフィードバックループを生成することと、
を含む、適応経頭蓋フォトバイオモジュレーションのための方法。
【請求項2】
前記生体センサは、EEG、PPGセンサ、EKGセンサ、および、ガルバニック皮膚反応センサの1以上である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体信号は、脳、心臓、血液、および皮膚からの活動に基づいて変化する、1以上の電気信号および光信号の測定である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体信号を測定する前記ステップは、前記個人の前記ベースライン生体信号を決定することを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ベースライン生体信号は、帯域パワー、ピーク帯域周波数、ガルバニック皮膚反応、血中酸素濃度、脈拍数、心拍数、および心拍変動のうちの1以上であり得る、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生体測定センサ、前記フォトバイオモジュレーション光パルスのための少なくとも1つの光源、および制御ユニットを含むヘッドマウントウェアラブルデバイスを個人に提供することをさらに含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記目標状態は、前記制御ユニットへのユーザ又は技術者の入力により設定されるか、または前記制御ユニットにより独立して選択される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生体信号を前記目標状態に近づけるための前記フォトバイオモジュレーションの前記適応は、前記PBMの1以上の属性を変調、および、前記測定された生体信号への影響を評価することにより達成される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記PBMの前記変調された属性は、LED位置、LEDデューティサイクル、LEDパワー、パルス周波数、パルス持続時間、パルスギャップ持続時間、繰り返し持続時間、および休止間隔のうちの1つ以上を含み得る、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フォトバイオモジュレーションの前記適応は、ベースライン指標の変化を参照、および、フィードバックループを生成することによって、EEG帯域パワーまたはピーク帯域周波数を目標状態に近づけるために達成される、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記フォトバイオモジュレーションの前記適応は、ベースライン指標の変化を参照、および、フィードバックループを生成することによって、脳または心臓の帯域パワー、ピーク帯域周波数、ガルバニック皮膚反応、血中酸素濃度、脈拍量、心拍数または心拍変動を目標状態に近づけるために達成される、
請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記ウェアラブルデバイスは、スマートフォンまたは他の無線対応デバイスによる前記ウェアラブルデバイスの制御を可能にする無線通信モダリティをさらに備える、
請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行関連出願
本出願は、先に出願された米国仮出願63/185,234の優先権の利益を主張する。「オリジナル文書」で画像を見られます。
【0002】
本発明は、インターバル閉ループ適応経頭蓋フォトバイオモジュレーションを用いた脳波変調方法に関する。具体的には、本発明は、脳波図(EEG)センサを含む生体センサを使用して身体からの生体信号を測定し、細胞構造内で光化学的変化を引き起こし、脳の電気活動に影響を与えるためにパターン化された光パルスを適応させるために前記信号を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
身体からの生体信号に影響を与えることは、医学、療法、瞑想、呼吸法、バイオフィードバック、ニューロフィードバック、生体刺激など、多くの分野や方法にまたがる。神経刺激は、神経系の活動を意図的に変調する生体刺激のひとつである。フォトバイオモジュレーション(PBM)(Photobiomodulation)として知られる神経刺激のそのような方法のひとつは、近赤外光を変調させて神経系を刺激する。
【0004】
フォトバイオモジュレーションは赤外線治療の一種である。フォトバイオモジュレーションは赤外線療法の一種である。赤外線療法は、皮膚、代謝プロセス、神経系、免疫系に良い影響を与える。より健康的な肌のために、コラーゲン産生を増加させることが示されている。
【0005】
フォトバイオモジュレーション技術は、エネルギーの伝搬を通じて細胞内のミトコンドリアを刺激することができる。ミトコンドリア内では、シトクロム酸化酵素が、赤色光や近赤外光を吸収し、それをエネルギーであるアデノシン三リン酸(ADT)に変換する能力を有している。経頭蓋フォトバイオモジュレーションシステムは多くの場合、633~810ナノメートルの波長で光を照射するが、810ナノメートルは生体組織により深く浸透する能力があるため、理想的な波長である。
【0006】
さらに、経頭蓋フォトバイオモジュレーションは、脳の電気的活動の変化を通して見ることができる精神状態の知覚可能な変化を生成する、個人の脳活動を変調または変化させるために使用される神経技術である。脳波の状態は、一定期間における脳の集合的な電気的活動として定義されることができ、その後、疲労、集中、ストレス、創造性などの精神状態に分類され得る。
【0007】
脳刺激には他にも以下のようなものがあるが、これらに限定されるものではない:
・tACS-経頭蓋交流電流刺激法
・tRNS-経頭蓋ランダムノイズ刺激
・tDCS-経頭蓋直流電流刺激法
【0008】
これまで経頭蓋フォトバイオモジュレーションは、静的光または一定周波数の光パルスを用いて行われてきた。最近では、研究者が刺激セッション内で光の周波数を変化させる実験を開始している。異なるパルス周波数を使用することは、結果として、被験者によって報告された測定や主観的に感じられた効果が異なることを示している。パルス光刺激のさまざまな効果は、まだ完全には解明されていない。しかしながら、本発明者らは、この効果は脳細胞が光エネルギーにさらされる時間を変化させた直接の結果であると提案する。したがって、これらの効果は、光の周波数とデューティサイクルの両方の結果である。
【0009】
既存の方法では、人によって、あるいは同一人物であっても、時間経過によって結果に大きなばらつきがあり、あるときには、脳波の活動が低下する結果となり、また、別の場合には、脳波の活動が増加する結果となる。また、一部の人々はまた、既存のtPBM技術によって、頭痛、吐き気、めまい、および、ふらつきを報告している。
【0010】
光に基づく神経刺激は、電気に基づく刺激とは著しく異なることが示されており、既存の電気刺激法で使用されている技術は、この分野にそのまま転用できない。いくつかの研究で、フォトバイオモジュレーションはArndt-Schulzの法則として知られる二相性の線量-反応曲線を持つことが示されている(図4)。閾値を超える低線量では効果がなく、高線量ではエネルギー伝達の生体阻害が起こる。生体組織への光の浸透はまた、皮膚および頭蓋骨の厚さ、また毛髪によっても同様に、それらの違いに基づいて人によって変化することも示されている。重要なことは、経頭蓋フォトバイオモジュレーション(tPBM)が関係している場合、現実世界の環境では、1平方センチメートルあたりの線量(J/cm2)を測定することが、エネルギー吸収の直接的な測定でもないし、個々の人に対する線量の測定でもない。先行技術はまた、経時的な線量の変化がArndt-Schlz二相性の反応曲線にどのように影響するかについての理解を欠いている。先行技術のデバイスは、すべての被験者に一貫したエネルギー線量出力を適用する。これらのデバイスは、エネルギーの浸透と吸収の違いを考慮していない。
【0011】
使用されるデバイスの中には、頭痛、吐き気、めまい、および、ふらつきを引き起こすもことが報告されている。線量吸収限度を超えると、EEGパワーが低下し、報告されている副作用は、個々の人の線量吸収限度を超えた結果である可能性が高い。
【0012】
脳の電気活動は極めて複雑である。これは、人によって、および瞬間によって、および脳内の異なる位置において、著しく変化し得る。重要なことに、脳の電気的活動または脳波は、非定常信号であるとみなすことができる。先行技術は、tPBM技術が脳波活動を変化させることができることを実証しているが、これらの試みは脳の非定常性を説明することができない。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、セッション中の異なる人、複数のセッションにわたる同一人物、および脳波の非定常性に適応するために、本発明に用いられるリアルタイムの閉ループフィードバック機構を欠いている先行技術に対して著しい改善を実証する。既知のアプローチは、静的な光を使用するか、この方法で定義される複雑なパルス間隔パターンを欠いているため、さらに不十分である。前記パターンは、LEDのデューティサイクルやパルス周波数とは無関係に、経時的にエネルギーをパーソナライズするために重要である。さらに、本発明は、個別化されたエネルギー吸収率を測定し、説明することができ、頭痛、吐き気、めまい、および、ふらつきに関する先行技術の問題も解決する。
【0014】
本発明者らによって実施され、図2および図3に証明された試験の結果は、標的とする脳波活動を増加させる本発明の能力を明確に示しており、先行技術において使用された方法では、多くの場合、刺激前のベースラインから有意な変化、または応答阻害さえも、もたらさないか、または図3に示されるように、標的とされた脳波のパワーが著しく低下することをもたらす。本発明は、1以上の脳波(EEG)センサを含む生体センサを使用して身体からの生体信号を測定し、前記信号を処理して光パルスを適応させる方法であって、光パルスは脳の電気的活動を変化させるために使用される方法に関する。生体センサとフォトバイオモジュレーションライトは身体に配置され、前記センサは一定期間にわたって生体信号のベースラインを確立するために使用される。さらに、本発明はフォトバイオモジュレーションの効果を測定し、自動化された方法で前記刺激の調整を行い、閉ループシステムを構築する。
【0015】
本発明の方法は、脳波活動の非定常性を説明せず、個人間又は同一個人の経時的な差異に適応しない、既知の方法に対する改善を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態によるウェアラブルヘッドセットと接続されたモバイルデバイスおよびコンピュータシステムを示す図である。
図2図2は、人に対する一定周波数経頭蓋フォトバイオモジュレーション刺激の前後のEEG測定値を示すグラフである。
図3図3は、本発明の実施形態による、人に対するインターバル閉ループ適応経頭蓋フォトバイオモジュレーション刺激の前後のEEG測定値を示すグラフである。
図4図4は、フォトバイオモジュレーションの線量応答曲線を示すグラフである。
図5図5は、本発明の実施形態による適応閉ループ経頭蓋フォトバイオモジュレーション中のピークアルファ周波数を示すグラフである。
図6図6は、経頭蓋フォトバイオモジュレーションを行わない場合のピークアルファ周波数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、特定の実施形態および添付図面を参照して、本発明の詳細な説明を提供する。一態様において、本発明は、図1に図示したヘッドホン2および6を備えたヘッドマウントデバイス1内のEEGセンサおよびフォトバイオモジュレーション(PBM)LED7を提供する。図1に図示される実施形態では、本発明のヘッドホンは、ヘッドホンを備えたウェアラブルヘッドマウントデバイス内の、EEG測定用のEEG(脳波記録)センサ3、4および5と、心拍数および心拍変動(HRV)測定用のPPG(Phoplethysmography)センサ8とを、組み合わせている。PPGセンサ8は、周囲のノイズを低減し、高精度を可能とするオーバーイヤー型ヘッドホンデザインの内部に組み込まれてもよい。本発明は、ユーザから生理学的信号を収集する生体センサを組み込んだウェアラブルヘッドマウントヘッドホンセット1を提供する。このデバイスには、デバイス1および2を、グラフィックタッチスクリーンディスプレイ10を備えたスマートフォンまたはモバイルデバイス9である得る制御ユニットに接続するために使用され得るブルートゥース(登録商標)(無線)オーディオおよびデータ伝送12が含み、前記制御ユニット9は、コンピュータ11であり得る、遠隔に配置されたマスター制御ユニットと無線wi-fi接続を有する。デバイス1はまた、充電式バッテリー、スピーカ、マイクを含むことができる。
【0018】
本発明は、国際10-20配置システムに従って、FZ、F3、F4、CZ、PZ、P3およびP4に配置された様々なフォトバイオモジュレーションLEDを利用する。本発明はさらに、国際10-20配置システムに従ってFz、CzおよびPzを含む位置から記録されたEEGを利用する。他の実施形態では、追加的または代替的なLEDおよびEEGセンサの配置を利用することができる。
【0019】
この方法では、フォトバイオモジュレーションセッションのために、目標脳波パターンが選択される。一実施形態では、人が所望の結果に基づいて所望のパターンを選択する。別の実施形態では、人を支援する技術者が目標パターンを選択することができ、さらに別の実施形態では、システムが人の現在の生体測定値に基づいて目標脳波パターンを自動的に選択または提案する。ここで、選択されたパターンは、1以上の目標周波数および1以上の目標位置を表す。例えば、パターンは、位置Pz、P3およびP4において10Hz、位置FZ、F3、F4、CZ、Pz、P3、およびP4において40Hzを含むことができる。目標脳波パターンは、例えば、平静、集中、または瞑想などの目標の状態に対応することができる。
【0020】
次に、EEGセンサとtPBM LEDを備えたウェアラブルデバイスを頭に装着する。人は、制御ユニットを使ってセッションを開始する。一実施形態では、デバイスは人の頭部にあることを検知し、自動的にセッションを開始することができる。デバイスは、生体信号データを制御ユニットに無線で送信する。ここで、前記生体信号データは、人の脳の上の1以上の位置からのEEG信号データを含む。前記制御ユニットは、前記生体信号データに様々な信号処理技術を適用する。信号処理には、ノイズフィルタ(すなわちローパス、ハイパスなど)および解析技術(すなわちフーリエ変換、ウェーブレット解析など)を含む、当業者に公知の様々な技術を含み得る。処理されたデータは、平均帯域パワーおよびピーク帯域周波数を含むがこれに限定されない、その人のベースラインレベルを確立するために使用される。ここで、脳波帯域は、デルタ、シータ、アルファ、アルファ-シータ、ローベータ、ミッドメタ、ハイベータおよびガンマを含む。
【0021】
次に、制御ユニットは、ベースライン生体測定レベルと目標脳波パターンに基づいて、各光位置での光パルスパターンを決定し、デバイスはLEDにパルスパターンを適用する。この方法では、前記光パルスパターンは以下のように構成される:
1.1以上のLED位置。
2.LEDのデューティサイクル。
3.LEDパワー出力。
4.光パルス周波数、光は、所定の周波数でパルス状にオンおよびオフされる。
5.光パルス持続時間、光は、指定された持続時間、所定の周波数でパルス化される。
6.光パルスギャップ持続時間、光パルスは、光パルス持続時間に続いて休止される。
7.繰り返し持続時間、光パルスとギャップのシーケンスが指定された持続時間繰り返される。
8.休止間隔、繰り返し持続時間の後、パターンは所定の期間休止される。
【0022】
制御ユニットとデバイスは、LEDパワー出力、LEDデューティサイクルを変更すること、および、光パルスギャップおよび休止間隔を利用することによって、経時的にエネルギー線量出力を調整することができる。光パルスギャップ持続時間および休止間隔は、人の脳に、吸収されたエネルギーを変換し、個人の線量吸収限界内で安定する時間を与えるという重要な利点を提供する。これは、さらに、生体組織にさらに深く浸透する高エネルギーのLEDの使用を可能とする。最終的には、このことは、デューティサイクルを変更することなく、経時的な線量の制御を可能とする。LEDパルス周波数とデューティサイクルの組み合わせは、各々の光パルスの期間に細胞の照射時間に影響を与えるためである。
【0023】
デバイスおよび制御ユニットは、様々な信号解析および分類技術を利用して、人の生体信号を継続的に評価する。一実施形態では、制御ユニットは人のEEGパワーと線量-反応曲線をモニターする(図4)。ここで、制御ユニットは、EEGパワーレベルの傾向と傾きに基づいて、その人のエネルギー吸収を線量-反応曲線にマッピングする。ここで、人のEEGパワーの傾きは、線量反応曲線に関連して増加および減少する。
【0024】
別の実施形態では、ピークアルファ周波数はベースライン期間中に記録される。この実施形態では、制御ユニットは、ピークアルファ周波数の傾向と傾きに基づいて、その人のエネルギー吸収を線量-反応曲線にマッピングする。ピークアルファ周波数に対する増加は用量反応曲線にマッピングされ、tPBM刺激の継続的な吸収に対応し、減少は、ピーク線量-反応曲線の終わりを示す。人のピークアルファ周波数の傾きが変化するからです。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態では、心拍数(HR)、心拍変動(HRV)、脈拍量、呼吸数、ガルバニック皮膚反応(GSR)、EEG同期、EEG振幅、相対EEGパワー、および総EEGパワーを含む、tPBM刺激の用量反応曲線をマッピングおよび測定するために、1以上の他の生体指標を使用することができる。
【0026】
好ましい実施形態では、制御ユニットは、用量-反応曲線、目標脳波パターン、EEGパワー、ピーク帯域周波数、ベースライン生体情報レベル、およびその後の生体情報信号の変化に基づいて、各光位置での光パルスパターンを適応させる。システムは、フォトバイオモジュレーションセッションの間、このプロセスを繰り返す。制御ユニットは、その人のマッピングされた生体情報レベルに基づいて検出された用量-反応曲線に基づいて、tPBM用量を経時的に増減させる。制御ユニットはさらに、生体レベルが平坦化することによって示されるように、その人が線量-反応曲線(図4)の最上部に達したと判定する。この実施形態では、制御ユニットは、用量-反応曲線の最上部に達したときにtPBMセッションを停止する。代替実施形態では、デバイスおよび制御ユニットは同じ物理デバイスであってもよい。別の実施形態では、制御ユニットは、信号処理のために、生の信号データを中央マスター制御ユニットに送信する。マスター制御ユニットは、前記適応が複数のフォトバイオモジュレーションセッションに基づく中央サーバであってもよい。ここで、システムは時間の経過とともに個人の最適な用量-反応曲線に適応するように学習する。
【0027】
一実施形態では、本発明は、体温、心拍数、心拍変動、呼吸数、血中酸素濃度(SPO2)、呼吸数、および血圧のような1以上の追加の生体センサを含むことができる。これらの追加センサは、光刺激間隔の適応をさらに知らせるためにシステムによって使用されてもよい。
【0028】
別の実施形態では、前記光パルスパターンは、一連の光パルス周波数、ギャップ、および繰り返し持続時間を含むことができる。さらに別の実施形態では、すべてのフォトバイオモジュレーションライトは、同一の光パターンを同時に使用して動作する。別の実施形態では、各フォトバイオモジュレーションライトは、独立して、またはグループ内で所定の光パターンで動作させることができる。
【0029】
さらに別の実施形態では、システムは、人のベースラインレベルを確立するために、現在のバイオメトリック信号に加えて、長期にわたって収集されたバイオメトリックデータの履歴を利用することができる。さらにシステムは、個人が光刺激パターンの変化にどのように反応するかを時間経過とともに学習し、光パターンを適応させる際にこれらの学習をリアルタイムで取り入れることができる。
【0030】
さらに別の変形例では、システムはサーバおよびデータベースを含むことができ、多くの異なるユーザのセッションからの学習が光パルスパターンを適応させるために使用される。このバージョンでは、システムは光パターンをどのように適応させるかを決定する機械学習アルゴリズムを含むことができる。
【0031】
ここで、様々な実施例、および、本発明の方法と従来のアプローチとの比較を参照する。
【0032】
図2を参照すると、このグラフは、前記刺激法を用いてEEG振幅が有意に低下したことを示している。データは、10-20配置システムに基づいて、頭部のPZ位置で8~12Hzの範囲(アルファバンド)で収集された。ここで、最初の60秒間のベースラインは、10を底とする対数スケールを使用してデシベル範囲を確立するために使用された。その後、4分間の刺激前データが収集され、続いて10Hzの周波数を使用して10分間の一定周波数刺激が行われ、その後、4分間の刺激後データが収集された。図2は、図3と直接比較されることができる。
【0033】
図3を参照すると、このグラフは、前記刺激法を用いてEEG振幅が有意に増加したことを示している。データは、10-20配置システムに基づいて、頭部のPZ位置で8~12Hzの範囲(アルファバンド)で収集された。ここで、最初の60秒間のベースラインは、10を底とする対数スケールを使用してデシベル範囲を確立するために使用された。その後、4分間の刺激前データが収集され、続いて10Hzの光パルス周波数を使用して10分間のインターバル閉ループ適応刺激が行われ、その後、4分間の刺激後データが収集された。図3図2と直接比較されることができる。
【0034】
本明細書で既に述べたように、図4は、フォトバイオモジュレーションの用量応答曲線を示す。したがって、本発明の方法は、閉ループ技術の使用により、適応経頭蓋フォトバイオモジュレーションを、ピーク吸収またはその付近で停止させようとするものである。
【0035】
図5および図6は、本明細書に開示した本発明方法による適応閉ループ経頭蓋フォトバイオモジュレーションの有用性および有効性を示している。これらのグラフを調べるとわかるように、ピークアルファ周波数は、適応閉ループ技術の使用により大幅に向上する。
ピークアルファ周波数は、研究に基づいて認知能力と相関している。
【0036】
本明細書で提供される開示は、特許請求される発明の例示的な実施形態を提供することを意図されるが、排他的または網羅的であることを意図されない。当業者であれば、特許請求された本発明の範囲から逸脱することなく、特許請求されたデバイスおよび方法の変形が可能であることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】