(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】触媒
(51)【国際特許分類】
C07F 7/28 20060101AFI20240514BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240514BHJP
C08F 4/02 20060101ALI20240514BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20240514BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C07F7/28 G CSP
C08F4/6592
C08F4/02
C08F10/02
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568610
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 GB2022051160
(87)【国際公開番号】W WO2022234292
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516256191
【氏名又は名称】オックスフォード・ユニヴァーシティ・イノヴェイション・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】オヘア,ダーモット
(72)【発明者】
【氏名】ブッフェイ,ジョン・チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ゾーイ
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ・ライス,クレメント
【テーマコード(参考)】
4H049
4J015
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VN05
4H049VP01
4H049VQ92
4H049VR32
4H049VR41
4H049VU14
4J015EA00
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4J128AA01
4J128AB01
4J128AC10
4J128AD02
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4J128AD13
4J128BA01A
4J128BB01A
4J128BB01B
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4J128CA30A
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4J128EB02
4J128EC01
4J128EC03
4J128FA02
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA03
4J128GA06
4J128GB01
(57)【要約】
エチレンなどのオレフィンの重合における使用のために好適な化合物が説明される。さらに説明されるのは、説明される化合物を使用してオレフィンを重合させるためのプロセスである。化合物は、高い重合活性を示し、高い分子量および低い多分散性を含む工業的に望ましい特性を有するポリオレフィンを与える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示される式I:
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、水素、(1~6C)アルキル、(1~6C)ハロアルキル、(1~6C)アルコキシ、(2~6C)アルケニル、(2~6C)アルキニル、-NR
3R
4、および-(O)
n-(CR
5R
6)
m-R
7(式中、nは、0または1であり、mは、0または1である。)からなる群からそれぞれ独立して選択され、R
3およびR
4は、水素および(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素または(1~2C)アルキルであり、R
7は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
7は、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
8基で、独立して任意選択的に置換され、
R
aおよびR
bは、(1~4C)アルキル、(2~4C)アルケニル、およびアリールからそれぞれ独立して選択され、
各Yは、ヒドリド、ハロ、(1~5C)アルキル、(1~5C)アルコキシ、-(CH
2)
pSi(R
9)
3、-NR
10R
11、および-(O)
q-(CR
12R
13)
r-R
14(式中、pは、1または2であり、qは、0または1であり、rは、0または1であり、各R
9は、独立して(1~3C)アルキルであり、R
10およびR
11は、水素および(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
12およびR
13は、水素および(1~2C)アルキルから独立して選択され、R
14は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
14は、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
15基で、独立して任意選択的に置換される。)からなる群から独立して選択される。]
の構造を有する、化合物。
【請求項2】
R
1およびR
2が、水素、(1~5C)アルキル、(1~5C)アルコキシ、および-(O)
n-(CR
5R
6)
m-R
7からなる群からそれぞれ独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
7が、フェニルおよび5~6員ヘテロアリールからなる群から選択され、前記5~6員ヘテロアリールが、1または2個の窒素ヘテロ原子を含有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R
7が、フェニルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R
8が、ハロおよび(1~3C)アルキルからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R
1およびR
2が、水素、メチル、tert-ブチル、および-C(CH
3)
2Phからなる群からそれぞれ独立して選択され、Phが、フェニルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R
aおよびR
bが、メチルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
各Yが、ヒドリド、クロロ、ブロモ、ヨード、(1~3C)アルキル、(1~3C)アルコキシ、-(CH
2)
pSi(R
9)
3、-NR
10R
11、および-(O)
q-(CR
12R
13)
r-R
14からなる群から独立して選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
pが、1であり、R
9が、メチルであり、R
10およびR
11が、(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
12およびR
13が、水素である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R
14が、フェニルおよび5~6員ヘテロアリールからなる群から選択され、前記5~6員ヘテロアリールが、1または2個の窒素ヘテロ原子を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
R
15が、(1~4C)アルキルからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
各Yが、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、-CH
2Si(CH
3)
3、-N(CH
3)
2、および-O-2,6-ジイソプロピルフェニルからなる群から独立して選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
Yが、クロロである、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
以下に示される式I-A:
【化2】
[式中、R
1、R
2、およびYは、請求項1~13のいずれか1項に記載した定義のとおりである。]
の構造を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
以下に示される式I-B:
【化3】
[式中、R
1、R
2、R
a、およびR
bは、請求項1~14のいずれか1項に記載した定義のとおりである。]
の構造を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
以下に示される式I-C:
【化4】
[式中、R
1およびR
2は、請求項1~14のいずれか1項に記載した定義のとおりである。]
の構造を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
シリカ、層状複水酸化物、シリカ担持メチルアルミノキサン、層状複水酸化物担持メチルアルミノキサン、および固体ポリメチルアルミノキサンからなる群から選択される担持基材上に担持された、請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
ポリオレフィンの調製のためのプロセスであって、少なくとも1種のオレフィンを、請求項1~17のいずれか1項において定義される式Iの化合物と接触させることを含む、プロセス。
【請求項19】
前記少なくとも1種のオレフィンが、前記ポリオレフィンがポリエチレンホモポリマーとなるような、エチレンである、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記少なくとも1種のオレフィンが、前記ポリオレフィンがコポリマーとなるような、エチレンおよび3~10個の炭素原子を有する他のα-オレフィンの混合物である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
前記他のα-オレフィンが、1-ヘキセンおよび1-オクテンから選択される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記コポリマー内の繰り返し単位の60%超が、エチレンの重合に由来する、請求項20または21に記載のプロセス。
【請求項23】
式Iの前記化合物が、担持されておらず、前記プロセスが、溶液相において行われる、請求項18~22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
式Iの前記化合物が、担持基材上に担持され、前記プロセスが、スラリー相において行われる、請求項18~22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
有機アルミニウム化合物の存在下行われる、請求項18~24のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンなどのオレフィンの重合において、触媒としての使用に好適な新規の化合物に関する。本発明はまた、エチレンなどのオレフィンの重合のためのプロセスにおける化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン(および一般に、α-オレフィン)は、特定の遷移金属触媒の存在下、低または中程度の圧力で容易に重合できることが知られている。これらの触媒は一般に、チーグラー・ナッタ型触媒として知られている。
【0003】
エチレン(および一般に、α-オレフィン)の重合の触媒作用をする、これらのチーグラー・ナッタ型触媒の特定の基は、多くの場合、アルミノキサン活性化剤と組み合わされて、メタロセン遷移金属触媒を含んでいる。メタロセンは、2個のη5-シクロペンタジエニル型リガンドの間で結合された金属を含むものである。
【0004】
メタロセンおよびポストメタロセン化学における最近の発展にもかかわらず、オレフィン重合、特にエチレン重合反応における使用のための向上された触媒への必要性は、依然として存在している。特に、増大された活性、向上されたコモノマーの組み込み、および/または、得られるポリオレフィンに望ましい特性(例えば、高い分子量、低い多分散性など)を付与する能力を有する新規の触媒への必要性が依然として存在している。
【0005】
本発明は、上記を念頭に置いて見出されたものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、以下に示される式I:
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、水素、(1~6C)アルキル、(1~6C)ハロアルキル、(1~6C)アルコキシ、(2~6C)アルケニル、(2~6C)アルキニル、-NR
3R
4、および-(O)
n-(CR
5R
6)
m-R
7(式中、nは、0または1であり、mは、0または1である。)からなる群からそれぞれ独立して選択され、R
3およびR
4は、水素および(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素または(1~2C)アルキルであり、R
7は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
7は、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
8基で、独立して任意選択的に置換され、
R
aおよびR
bは、(1~4C)アルキル、(2~4C)アルケニル、およびアリールからそれぞれ独立して選択され、
各Yは、ヒドリド、ハロ、(1~5C)アルキル、(1~5C)アルコキシ、-(CH
2)
pSi(R
9)
3、-NR
10R
11、および-(O)
q-(CR
12R
13)
r-R
14(式中、pは、1または2であり、qは、0または1であり、rは、0または1であり、各R
9は、独立して(1~3C)アルキルであり、R
10およびR
11は、水素および(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
12およびR
13は、水素および(1~2C)アルキルから独立して選択され、R
14は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
14は、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
15基で、独立して任意選択的に置換される。)からなる群から独立して選択される。]
に従う構造を有する化合物が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、以下に示される式I:
【化2】
[式中、
R
1およびR
2は、水素、(1~6C)アルキル、(1~6C)ハロアルキル、(1~6C)アルコキシ、(2~6C)アルケニル、(2~6C)アルキニル、-NR
3R
4、および-(O)
n-(CR
5R
6)
m-R
7(式中、nは、0または1であり、mは、0または1である。)からなる群からそれぞれ独立して選択され、R
3およびR
4は、水素および(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素または(1~2C)アルキルであり、R
7は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
7は、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
8基で、独立して任意選択的に置換され、
R
aおよびR
bは、(1~4C)アルキルおよび(2~4C)アルケニルからそれぞれ独立して選択され、
各Yは、ヒドリド、ハロ、(1~5C)アルキル、(1~5C)アルコキシ、-(CH
2)
pSi(R
9)
3、-NR
10R
11、および-(O)
q-(CR
12R
13)
r-R
14(式中、pは、1または2であり、qは、0または1であり、rは、0または1であり、各R
9は、独立して(1~3C)アルキルであり、R
10およびR
11は、水素および(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
12およびR
13は、水素および(1~2C)アルキルから独立して選択され、R
14は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
14は、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
15基で、独立して任意選択的に置換される。)からなる群から独立して選択される。]
に従う構造を有する化合物が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、ポリオレフィンの調製のためのプロセスであって、少なくとも1種のオレフィンを、本明細書で定義される式Iの化合物と接触させることを含む、プロセスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[定義]
用語「(m~nC)」または「(m~nC)基」は、単独でまたは接頭語として使用され、m~n個の炭素原子を有する任意の基を指す。
【0010】
用語「アルキル」は、本明細書にて、直鎖および分岐鎖アルキル基の両方を含む。「プロピル」などの個別のアルキル基への言及は、直鎖式のみに特定的であり、「イソプロピル」などの個別の分岐鎖アルキル基への言及は、分岐鎖式のみに特定的である。例えば、「(1~6C)アルキル」は、(1~4C)アルキル、(1~3C)アルキル、プロピル、イソプロピル、およびt-ブチルを含む。
【0011】
用語「アルケニル」は、2個以上の炭素原子を含む直鎖および分岐鎖アルキル基を指し、基内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合が存在するものである。アルケニル基として、例えば、エテニル、プロペニル、およびブタ-2,3-エニルが挙げられ、すべての可能な幾何(E/Z)異性体を含む。
【0012】
用語「アルキニル」は、2個以上の炭素原子を含む直鎖および分岐鎖アルキル基を指し、基内に少なくとも1個の炭素-炭素三重結合が存在するものである。アルキニル基としては、例えば、アセチレニルおよびプロピニルが挙げられる。
【0013】
用語「アルコキシ」は、O-連結した直鎖および分岐鎖アルキル基を指す。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、およびt-ブトキシが挙げられる。
【0014】
用語「ハロアルキル」は、本明細書にて、1または複数の水素原子が、ハロゲン(フッ素など)原子によって置き換えられた、アルキル基を指す。多くの場合、ハロアルキルは、フルオロアルキルである。ハロアルキル基としては、例えば、-CH2F、-CHF2、および-CF3が挙げられる。最も多くの場合、ハロアルキルは、-CF3である。
【0015】
用語「ハロ」または「ハロゲノ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード、好適には、フルオロ、クロロ、およびブロモ、より好適には、フルオロおよびクロロを指す。最も好適には、ハロはクロロである。
【0016】
用語「カルボシクリル」、「炭素環式」、または「炭素環」は、非芳香族飽和または部分的飽和単環式、縮合、架橋、またはスピロ二環式炭素含有環系を意味する。炭素環式基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロへキシル、シクロヘキセニル、およびスピロ[3.3]ヘプタニルが挙げられる。
【0017】
用語「ヘテロシクリル」、「ヘテロ環式」、または「ヘテロ環」は、窒素、酸素、または硫黄から選択される1または複数(例えば、1~4個、特に1、2、または3個)のヘテロ原子を組み込む、非芳香族飽和または部分的飽和単環式、縮合、架橋、またはスピロ二環式ヘテロ環式環系を意味する。ヘテロ環としては、例えば、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロトリアジニル、およびテトラヒドロピラゾリルなどが挙げられる。
【0018】
用語「アリール」または「芳香族」は、本明細書にて、6、7、8、9、または10個の環炭素原子を含む芳香族環系を意味する。アリールは、多くの場合フェニルであるが、2個以上の環を有し、そのうちの少なくとも1個が芳香族である多環式環系であってもよい。この用語は、例えば、フェニルおよびナフチルなどの基への言及を含む。
【0019】
用語「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」は、窒素、酸素、または硫黄から選択される1または複数(例えば、1~4個、特に1、2、または3個)のヘテロ原子を組み込む、芳香族単環式環、二環式環、または多環式環を意味する。5員ヘテロアリール基としては、例えば、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、フラザニル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、およびテトラゾリル基が挙げられるが、これらに限定されない。6員ヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、およびトリアジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
用語「置換された」は、本明細書にて部分を参照して使用され、前記部分における水素原子のうちの1または複数、特に最大5個までが、説明される置換基の対応する数によって、互いに独立して置き換えられていることを意味する。好ましくは、「置換された」は、部分を参照して本明細書で使用され、前記部分における水素原子のうちの1、2または3個が、説明される置換基の対応する数によって、互いに独立して置き換えられていることを意味する。さらにより好ましくは、「置換された」は、部分を参照して本明細書で使用され、前記部分における水素原子のうちの1または2個が、説明される置換基の対応する数によって、互いに独立して置き換えられていることを意味する。用語「任意選択的に置換された」は、本明細書にて、置換されているか、または置換されていないことを意味する。
【0021】
当然ながら、置換基は、化学的に可能な位置のみにあってもよく、当業者が、不適切な努力をすることなく、特定の置換が可能であるかを(実験的にまたは理論的に)決定できることが理解されるであろう。
【0022】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体にわたって、用語「含む(comprise)」(または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」)を使用して、本明細書で主題が説明される場合、代替的に、用語「からなる(consist of)」(または「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」)または「本質的に、からなる(consist essentially of)」(または「本質的に、からなる(consists essentially of)」または「本質的に、からなる(consisting essentially of)」)を使用して説明される同じ主題も企図されている。
【0023】
本明細書の説明および請求項の全体にわたって、単数形の語は、文脈上別段の必要がない限り、複数形の語を包含する。特に、不定冠詞が使用されている場合、文脈上別段の必要がない限り、本明細書では単数性だけでなく複数性も考慮されているとして理解されるべきである。
【0024】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例と併せて説明される特徴は、本明細書で説明される任意の他の態様、実施形態、または実施例において、不適合でない限り適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の請求項、要約、および図面を含む)において開示される特徴のすべて、および/または本明細書にて開示される任意の方法もしくはプロセスの工程のすべては、そのような特徴および/または工程の少なくともいくつかが、相互排他的である組み合わせを除く任意の組み合わせで、組み合わされてもよい。本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態のうちのいずれのものの詳細にも、制限されない。本発明は、本明細書(任意の添付の請求項、要約、および図面を含む)に開示の特徴の、任意の新規の1つ、もしくは任意の新規の組み合わせ、または本明細書に開示の、任意の方法もしくはプロセスの工程の、任意の新規の1つ、または任意の新規の組み合わせに及ぶものである。
【0025】
別段の指定がない限り、所与の生成物の特定の成分の分量または濃度が、重量パーセント(wt.%または%w/w)として指定される場合、当該重量パーセントは、生成物全体としての全重量に対する前記成分の重量パーセントを指す。生成物のすべての成分の重量パーセントの合計は、合計100wt.%となることが当業者によって理解されるであろう。一方で、すべての成分が列挙されていない場合(例えば、生成物が、1または複数の特定の成分を「含む」と言われている場合)、重量パーセントの均衡は、任意選択的に、指定されない混合物成分によって100wt%にされてもよい。
【0026】
式(I)の化合物
本発明の第1の態様によれば、以下に示される式I:
【化3】
[式中、
R
1およびR
2は、水素、(1~6C)アルキル、(1~6C)ハロアルキル、(1~6C)アルコキシ、(2~6C)アルケニル、(2~6C)アルキニル、-NR
3R
4、および-(O)
n-(CR
5R
6)
m-R
7(式中、nは、0または1であり、mは、0または1である。)からなる群からそれぞれ独立して選択され、R
3およびR
4は、水素および(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素または(1~2C)アルキルであり、R
7は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
7は、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
8基で、独立して任意選択的に置換され、
R
aおよびR
bは、(1~4C)アルキル、(2~4C)アルケニル、およびアリールからそれぞれ独立して選択され、
各Yは、ヒドリド、ハロ、(1~5C)アルキル、(1~5C)アルコキシ、-(CH
2)
pSi(R
9)
3、-NR
10R
11、および-(O)
q-(CR
12R
13)
r-R
14(式中、pは、1または2であり、qは、0または1であり、rは、0または1であり、各R
9は、独立して(1~3C)アルキルであり、R
10およびR
11は、水素および(1~3C)アルキルから独立して選択され、R
12およびR
13は、水素および(1~2C)アルキルから独立して選択され、R
14は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
14は、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
15基で、独立して任意選択的に置換される。)からなる群から独立して選択される。]
に従う構造を有する化合物が提供される。
【0027】
厳密な調査を通して、本発明者らは、オレフィン、特にエチレンの重合において、非常に魅力的な前駆触媒として機能する新規の化合物を見い出した。ポストメタロセン分野における最近の発展と比較した場合、本発明に係る化合物は、増大されたオレフィン重合活性と、高い分子量および低い多分散性を含む工業的に魅力的なポリオレフィン特性との二重の恩恵を提供するものである。
【0028】
以下の節は、式(I)の化合物についてさらに詳細に議論し、本発明の第1および第2の態様の両方に適用可能である。
【0029】
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、(1~5C)アルキル、(1~5C)アルコキシ、および-(O)n-(CR5R6)m-R7からなる群から選択されてもよい。好適には、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、(1~4C)アルキル、および-(O)n-(CR5R6)m-R7からなる群から選択される。
【0030】
R7は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択されてもよい。好適には、R7は、フェニルおよび5~6員ヘテロアリールからなる群から選択され、前記5~6員ヘテロアリールは、1または2個の窒素ヘテロ原子を含有する。最も好適には、R7は、フェニルである。R7は、1または複数のR8基で、独立して任意選択的に置換されていてもよい。
【0031】
R8は、ハロおよび(1~3C)アルキルからなる群から選択されてもよい。
【0032】
特定の一実施形態にて、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、メチル、tert-ブチル、および-C(CH3)2Phからなる群から選択され、Phは、フェニルを表す。好適には、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、tert-ブチル、および-C(CH3)2Phからなる群から選択される。特定の非限定的な例としては、(i)R1は、tert-ブチルであり、R2は、メチルである;(ii)R1およびR2は、両方、tert-ブチルである;ならびに(iii)R1およびR2は、両方、-C(CH3)2Phである;が挙げられ、これらのうち、例(ii)が特に好適である。
【0033】
RaおよびRbは、独立して、(1~3C)アルキルおよびアリールから選択されてもよく、それらの特定の例としては、メチル、n-プロピル、およびフェニルが挙げられる。例えば、RaおよびRbは、それぞれ、メチルおよびメチル、またはそれぞれ、メチルおよびn-プロピル、またはそれぞれ、メチルおよびフェニルであってもよい。
【0034】
RaおよびRbは、独立して、(1~3C)アルキルから選択されてもよく、それらの特定の例としては、メチルおよびn-プロピルが挙げられる。好適には、RaおよびRbの両方は、同一である。より好適には、RaおよびRbは、両方、メチルである。
【0035】
各Yは、独立して、ヒドリド、クロロ、ブロモ、ヨード、(1~3C)アルキル、(1~3C)アルコキシ、-(CH2)pSi(R9)3、-NR10R11、および-(O)q-(CR12R13)r-R14からなる群から選択されてもよい。
【0036】
好適には、pは、1であり、R9は、メチルである。
【0037】
R10およびR11は、独立して、(1~3C)アルキル、特にメチルから選択されてもよい。
【0038】
R12およびR13は、水素であってもよい。
【0039】
R14は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択されてもよい。好適には、R14は、フェニルおよび5~6員ヘテロアリールからなる群から選択され、前記5~6員ヘテロアリールは、1または2個の窒素ヘテロ原子を含有する。最も好適には、R14は、フェニルである。R14は、独立して、1または複数のR15基で、任意選択的に置換されていてもよく、それらのそれぞれは、好適には、独立して、(1~4C)アルキルからなる群から選択される。
【0040】
特定の非限定的な-(O)
q-(CR
12R
13)
r-R
14基としては、例えば、
【化4】
[式中、各R
16は、独立して、水素およびR
15から選択される。]
が挙げられる。
【0041】
特定の一実施形態にて、各Yは、独立して、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、-CH2Si(CH3)3、-N(CH3)2、および-O-2,6-ジイソプロピルフェニルからなる群から選択される。好適には、各Yは、独立して、クロロ、ブロモ、ヨード、およびメチルからなる群から選択される。より好適には、両方のYは、同一である。
【0042】
特に好適な一実施形態にて、Yは、クロロである。
【0043】
特定の一実施形態にて、式Iの化合物は、以下に示される式I-A:
【化5】
[式中、R
1、R
2、およびYは、上記に定義されるとおりである。]
に従う構造を有する。
【0044】
特定の一実施形態にて、式Iの化合物は、以下に示される式I-B:
【化6】
[式中、R
1、R
2、R
a、およびR
bは、上記に定義されるとおりである。]
に従う構造を有する。
【0045】
特定の一実施形態にて、式Iの化合物は、以下に示される式I-C:
【化7】
[式中、R
1およびR
2は、上記に定義されるとおりである。]
に従う構造を有する。
【0046】
特定の一実施形態にて、式Iの化合物は、以下の構造:
【化8】
[式中、
tBuは、tert-ブチルを表し、
iPrは、イソ-プロピルを表し、Phは、フェニルを表し、Bnは、ベンジルを表す。]
のうちの1つを有する。
【0047】
式(I)の化合物は、担持基材に関連付けられて(固定されて、または担持されて、など)もよい。好適には、担持基材は、固体である。化合物は、直接的にまたは好適な連結部分を介して、1または複数の共有結合またはイオン性の相互作用によって、担持基材に固定されてもよいことが認識されるだろう。担持基材の化合物の固定の結果として生じる軽微な構造的な変更(例えば、Y基の1個または両方の喪失)も、本発明の範囲内であることが認識されるだろう。
【0048】
担持基材は、好適には、固体ポリメチルアルミノキサン、シリカ担持メチルアルミノキサン、アルミナ、ゼオライト、層状複水酸化物、および層状複水酸化物担持メチルアルミノキサンから選択される。より好適には、担持基材は、固体ポリメチルアルミノキサン、シリカ担持メチルアルミノキサン、および層状複水酸化物担持メチルアルミノキサンから選択され、これらのうち、低い多分散性を有する、特に高い分子量のポリオレフィンが求められる場合、層状複水酸化物担持メチルアルミノキサンが好ましいことがある。
【0049】
特定の一実施形態にて、担持基材は、固体ポリメチルアルミノキサンである。固体ポリメチルアルミノキサン担持基材におけるAlの、式Iの化合物中の金属Xに対するモル比(すなわち、[Al担持]/[X])は、50:1~400:1であってもよく、好適には150:1~250:1である。
【0050】
用語「固体MAO」、「sMAO」、および「固体ポリメチルアルミノキサン」は、本明細書にて同一の意味で使用され、一般式-[(Me)AlO]n-(式中、nは4から50までの整数(例えば、10~50)である)を有する固体相材料を指す。任意の好適な固体ポリメチルアルミノキサンが使用されてもよい。
【0051】
固体ポリメチルアルミノキサンと他の従来のMAOとの間には、多数の実質的な構造的および挙動的な差異が存在する。おそらく最も顕著には、固体ポリメチルアルミノキサンは、多くの炭化水素溶媒におけるその不溶性によって、他のMAOから区別され、したがって、異質の担持系として作用する。スラリー重合における活性化剤種として、または別個の固体担持基材(例えば、SiO2)の表面を改変させるために伝統的に使用される従来の炭化水素可溶性MAOとは対照的に、本発明の一部として有用である固体ポリメチルアルミノキサンは、それ自体が固体相担持基材としての使用に好適である。したがって、本発明の一部として使用される固体ポリメチルアルミノキサン担持基材は、固体担持基材(例えば、SiO2、Al2O3、およびZrO2などの無機材料)であると考えられ得る他のいかなる種も欠いている。さらに、固体ポリメチルアルミノキサンの二重の機能(触媒担持基材および活性化剤種として)を考慮すると、固体ポリメチルアルミノキサンに担持された本発明に係る化合物は、オレフィン重合反応に使用される場合、追加の触媒活性化剤種(例えば、TIBA)の存在を必要としなくてもよい。
【0052】
固体ポリメチルアルミノキサンは、MAOおよび炭化水素溶媒(例えば、トルエン)を含有する溶液を加熱して固体ポリメチルアルミノキサンを析出することによって調製されてもよい。MAOおよび炭化水素溶媒を含有する溶液は、炭化水素溶媒(例えば、トルエン)中でトリメチルアルミニウムおよび安息香酸を反応させ、次いで得られた混合物を加熱することによって調製されてもよい。
【0053】
固体ポリメチルアルミノキサンのアルミニウム含有量は、好適には30~50wt%の範囲内であり、好適には36~41wt%である。
【0054】
本発明の一部として有用である固体ポリメチルアルミノキサンは、トルエンおよびn-ヘキサンにおける極めて低い溶解度によって特徴付けられる。一実施形態にて、25℃のn-ヘキサンにおける固体ポリメチルアルミノキサンの溶解度は0~2mol%である。好適には、25℃のn-ヘキサンにおける固体ポリメチルアルミノキサンの溶解度は0~1mol%である。より好適には、25℃のn-ヘキサンにおける固体ポリメチルアルミノキサンの溶解度は0~0.2mol%である。代替的にまたは追加的に、25℃のトルエンにおける固体ポリメチルアルミノキサンの溶解度は0~2mol%である。好適には、25℃のトルエンにおける固体ポリメチルアルミノキサンの溶解度は0~1mol%である。より好適には、25℃のトルエンにおける固体ポリメチルアルミノキサンの溶解度は0~0.5mol%である。溶媒における溶解度は、JP-B(KOKOKU)-H07 42301において説明される方法によって測定することができる。
【0055】
特に好適な一実施形態にて、固体ポリメチルアルミノキサンは、WO2010/055652またはWO2013/146337に説明されるとおりであり、東ソー・ファインケム株式会社、日本から取得可能である。
【0056】
[オレフィンの重合]
本発明の第3の態様によれば、ポリオレフィンの調製のためのプロセスであって、少なくとも1種のオレフィンを、本明細書にて定義する式Iの化合物と接触させることを含む、プロセスが提供される。
【0057】
式Iの化合物は、オレフィン、特にエチレンの重合において、非常に効果的な前駆触媒として機能する。特に、本発明に係る化合物は、増大されたオレフィン重合活性と、高い分子量および低い多分散性を含む工業的に魅力的なポリオレフィン特性との二重の恩恵を提供する。
【0058】
プロセスは、活性化剤または共触媒の存在下で行われてもよい。好適には、活性化剤または共触媒は、1または複数の有機アルミニウム化合物である。より好適には、1または複数の有機アルミニウム化合物は、アルキルアルミニウム化合物である。アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、メチルアルミノキサン、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、およびトリエチルアルミニウムが挙げられる。最も好適には、有機アルミニウム化合物は、トリイソブチルアルミニウムである。好適には、有機アルミニウム化合物中のAlの、式Iの化合物中の金属Xに対するモル比(すなわち、[Alco-cat]/[X])は、75:1~5000:1であってもよい。好適には、[Alco-cat]/[X]は、400:1~1000:1である。より好適には、Alco-cat]/[X]は、400:1~600:1である。
【0059】
式(I)の化合物は、エチレンの単独重合において特に有用である。したがって、少なくとも1種のオレフィンは、得られるポリオレフィンがポリエチレンホモポリマーとなるように、エチレンであってもよい。得られるポリエチレンは、好適には、高分子量ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン)、特に、低い多分散性を有する高分子量ポリエチレンである。
【0060】
式(I)の化合物は、エチレンおよび他のα-オレフィンの共重合においても有用である。したがって、少なくとも1種のオレフィンは、ポリオレフィンがコポリマーとなるように、エチレンおよび3~10個の炭素原子を有する別のα-オレフィンの混合物であってもよい。好適には、少なくとも1種のオレフィンは、ポリオレフィンがコポリマーとなるように、エチレンおよび3~8個の炭素原子を有する他のα-オレフィンの混合物であってもよい。他のα-オレフィンは、好適には、1-ヘキセンおよび1-オクテンから選択される。
【0061】
共重合プロセスに使用されるエチレンおよび他のα-オレフィンの分量は、得られるコポリマー内の繰り返し単位の60%超が、エチレンの重合に由来するものであってもよい。代替的には、共重合プロセスに使用されるエチレンおよび他のα-オレフィンの分量は、得られるコポリマー内の繰り返し単位の70%超が、エチレンの重合に由来するものである。また代替的には、共重合プロセスに使用されるエチレンおよび他のα-オレフィンの分量は、得られるコポリマー内の繰り返し単位の80%超が、エチレンの重合に由来するものである。さらに代替的には、共重合プロセスに使用されるエチレンおよび他のα-オレフィンの分量は、得られるコポリマー内の繰り返し単位の90%超が、エチレンの重合に由来するものである。
【0062】
式(I)の化合物は、担持されていなくてもよく、この場合、プロセスは、溶液相において行われる。このような実施形態にて、プロセスは、非配位性アニオン、例えば、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(すなわち、BARF)の存在下で行われてもよい。このようなアニオンを用いた式(I)の化合物の活性化は、飛躍的に向上されたオレフィン重合活性を生じさせることができる。
【0063】
代替的に、式Iの化合物は、担持基材上に担持されてもよく、この場合、プロセスは、スラリー相において行われる。任意の好適な溶媒が、どちらのプロセスにも使用できる。好適には、溶媒は、非極性、非芳香族炭化水素溶媒である。より好適には、溶媒は、ヘキサンである。
【0064】
当業者は、重合プロセスを行うために適切な条件(例えば、温度、圧力など)を選択することが可能である。好適には、プロセスは、25~90℃の温度で行われてもよい。より好適には、プロセスは、30~75℃の温度で行われる。さらに好適には、プロセスは、35~70℃の温度で行われる。
【0065】
以下に付番したステートメント1~51は、特許請求の範囲ではないものの、代替的に、請求項に係る発明の特定の態様および実施形態を定義するものとして機能する。
1. 以下の式I:
【化9】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素、(1~6C)アルキル、(1~6C)ハロアルキル、(1~6C)アルコキシ、(2~6C)アルケニル、(2~6C)アルキニル、-NR
3R
4、および-(O)
n-(CR
5R
6)
m-R
7(式中、nは、0または1であり、mは、0または1である。)からなる群から選択され、R
3およびR
4は、独立して、水素および(1~3C)アルキルから選択され、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または(1~2C)アルキルであり、R
7は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
7は、独立して、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
8基で、任意選択的に置換され、
R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、(1~4C)アルキル、(2~4C)アルケニル、およびアリールから選択され、
各Yは、独立して、ヒドリド、ハロ、(1~5C)アルキル、(1~5C)アルコキシ、-(CH
2)
pSi(R
9)
3、-NR
10R
11、および-(O)
q-(CR
12R
13)
r-R
14(式中、pは、1または2であり、qは、0または1であり、rは、0または1であり、各R
9は、独立して(1~3C)アルキルであり、R
10およびR
11は、独立して、水素および(1~3C)アルキルから選択され、R
12およびR
13は、独立して、水素および(1~2C)アルキルから選択され、R
14は、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、およびヘテロシクリルからなる群から選択され、各R
14は、独立して、ハロ、ヒドロキシ、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される1または複数のR
15基で、任意選択的に置換される。)からなる群から選択される。]
に従う構造を有する、化合物。
2.R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素、(1~5C)アルキル、(1~5C)アルコキシ、および-(O)
n-(CR
5R
6)
m-R
7からなる群から選択される、上記ステートメント1の化合物。
3.R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素、(1~4C)アルキル、および-(O)
n-(CR
5R
6)
m-R
7からなる群から選択される、上記ステートメント1または2の化合物。
4.R
7は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される、上記ステートメント1~3のいずれか1つの化合物。
5.R
7は、フェニルおよび5~6員ヘテロアリールからなる群から選択され、前記5~6員ヘテロアリールが、1または2個の窒素ヘテロ原子を含有する、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
6.R
7は、フェニルである、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
7.R
8は、ハロおよび(1~3C)アルキルからなる群から選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
8.R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素、メチル、tert-ブチル、および-C(CH
3)
2Phからなる群から選択され、Phは、フェニルを表す、上記ステートメント1の化合物。
9.R
1およびR
2は、tert-ブチルである、上記ステートメント1の化合物。
10.R
aおよびR
bが、それぞれ独立して、(1~4C)アルキルおよび(2~4C)アルケニルから選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
11.R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、(1~3C)アルキルおよびアリール(例えば、フェニル)から選択される、上記ステートメント1~9のいずれか1つの化合物。
12.R
aおよびR
bのうちのいずれか1つは、メチルである、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
13.R
aおよびR
bは、同一である、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
14.R
aおよびR
bは、メチルである、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
15.各Yが、独立して、ヒドリド、クロロ、ブロモ、ヨード、(1~3C)アルキル、(1~3C)アルコキシ、-(CH
2)
pSi(R
9)
3、-NR
10R
11、および-(O)
q-(CR
12R
13)
r-R
14からなる群から選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
16.pは、1であり、R
9は、メチルである、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
17.R
10およびR
11は、独立して、(1~3C)アルキルから選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
18.R
12およびR
13は、水素である、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
19.R
14は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
20.R
14は、フェニルおよび5~6員ヘテロアリールからなる群から選択され、前記5~6員ヘテロアリールは、1または2個の窒素ヘテロ原子を含有する、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
21.R
14は、フェニルである、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
22.R
15は、(1~4C)アルキル、(1~4C)ハロアルキル、および(1~3C)アルコキシからなる群から選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
23.R
15は、(1~4C)アルキルからなる群から選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
24.各Yは、独立して、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、-CH
2Si(CH
3)
3、-N(CH
3)
2、および-O-2,6-ジイソプロピルフェニルからなる群から選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
25.各Yは、独立して、クロロ、ブロモ、ヨード、およびメチルからなる群から選択される、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
26.両方のYは、同一である、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
27.Yが、クロロである、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
28.以下に示される式I-A:
【化10】
[式中、R
1、R
2、およびYは、先行するステートメントのいずれか1つにおいて定義されるとおりである。]
に従う構造を有する、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
29.以下に示される式I-B:
【化11】
[式中、R
1、R
2、R
a、およびR
bは、上記ステートメント1~27のいずれか1つにおいて定義されるとおりである。]
に従う構造を有する、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
30.以下に示される式I-C:
【化12】
[式中、R
1およびR
2は、上記ステートメント1~27のいずれか1つにおいて定義されるとおりである。]
に従う構造を有する、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
31.
【化13】
[式中、
tBuは、tert-ブチルを表し、
iPrは、イソ-プロピルを表し、Phは、フェニルを表し、Bnは、ベンジルを表す。]
のうちのいずれか1つに従う構造を有する、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
32.担持基材上に担持された、先行するステートメントのいずれか1つの化合物。
33.担持基材は、シリカ、層状複水酸化物、シリカ担持メチルアルミノキサン、層状複水酸化物担持メチルアルミノキサン、および固体ポリメチルアルミノキサンからなる群から選択される、上記ステートメント32の化合物。
34.担持基材は、層状複水酸化物担持メチルアルミノキサンである、上記ステートメント33の化合物。
35.担持基材は、固体ポリメチルアルミノキサンである、上記ステートメント33の化合物。
36.ポリオレフィンの調製のためのプロセスであって、少なくとも1種のオレフィンを、上記ステートメント1~35のいずれか1つにおいて定義されるような式Iの化合物と接触させることを含む、プロセス。
37.少なくとも1種のオレフィンは、ポリオレフィンがポリエチレンホモポリマーとなるように、エチレンである、上記ステートメント36のプロセス。
38.少なくとも1種のオレフィンは、ポリオレフィンがコポリマーとなるように、エチレンおよび3~10個の炭素原子を有する他のα-オレフィンの混合物である、上記ステートメント36のプロセス。
39.他のα-オレフィンは、1-ヘキセンおよび1-オクテンから選択される、上記ステートメント38のプロセス。
40.コポリマー内の繰り返し単位の60%超は、エチレンの重合に由来する、上記ステートメント38または39のプロセス。
41.コポリマー内の繰り返し単位の70%超は、エチレンの重合に由来する、上記ステートメント38または39のプロセス。
42.式Iの化合物は、担持されておらず、プロセスは、溶液相において行われる、上記ステートメント36~41のいずれか1つのプロセス。
43.非配位性アニオン、(例えば、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート)の存在下行われる、上記ステートメント42のプロセス。
44.式Iの化合物は、担持基材上に担持され、プロセスは、スラリー相において行われる、上記ステートメント36~41のいずれか1つのプロセス。
45.アルキルアルミニウム化合物の存在下行われる、上記ステートメント36~44のいずれか1つのプロセス。
46.アルキルアルミニウム化合物は、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、トリエチルアルミニウム、およびトリメチルアルミニウムからなる群から選択される、上記ステートメント45のプロセス。
47.アルキルアルミニウム化合物は、トリイソブチルアルミニウムである、上記ステートメント46のプロセス。
48.25~90℃の温度で行われる、上記ステートメント36~47のいずれか1つのプロセス。
49.30~75℃の温度で行われる、上記ステートメント36~47のいずれか1つのプロセス。
50.35~70℃の温度で行われる、上記ステートメント36~47のいずれか1つのプロセス。
51.非極性、非芳香族炭化水素溶媒中で行われる、上記ステートメント36~50のいずれか1つのプロセス。
52.溶媒は、ヘキサンである、上記ステートメント51のプロセス。
【0066】
以下に、例示のみを目的として、添付図面を参照しながら、本発明の1または複数の実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1A】sMAO担持
Me2SB(
tBu,MeArO,I*)TiCl
2(四角形)、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2(三角形)、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)Ti(CH
2SiMe
3)
2(白抜きの三角形)、
Me2SB(
クミル2ArO,I*)TiCl
2(円形)、および
Me2SB(
tBu,MeArO,Ind)TiCl
2(菱形)の温度の関数として、スラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図1B】sMAO担持
Me2SB(
tBu,MeArO,I*)TiCl
2(四角形)、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2(上向き三角形)、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)ZrCl
2(下向き三角形)、
Me2SB(
クミル2ArO,I*)TiCl
2(円形)、および
Me2SB(
tBu,MeArO,Ind)TiCl
2(菱形)、rac-
Me,nPrSB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2(星形)、rac-
Me,PhSB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2(白抜きの星形)の温度の関数として、スラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図2A】sMAO担持
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiR
2、R=Cl(塗りつぶされた三角形)、Br(塗りつぶされた三角形)、I(白抜きの三角形)、CH
2SiMe
3(塗りつぶされた四角形)、Me(白抜きの四角形)、O
2,6-iPrAr(塗りつぶされた円形)、およびNMe
2(白抜きの円形)のスラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図2B】sMAO担持
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiR
2、R=Cl(上向き三角形)、Br(右向き三角形)、I(左向き三角形)、Me(下向き三角形)、Bn(CH
2Ph、白抜きの上向き三角形)、CH
2SiMe
3(白抜きの左向き三角形)、OEt(白抜きの右向き三角形)、O
2,6-iPrAr(白抜きの下向き三角形)、およびNMe
2(半分塗りつぶされた三角形)のスラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図3A】sMAO担持
Me2SB(
tBu,MeArO,I*)TiCl
2(四角形)、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2(三角形)、
Me2SB(
クミル2ArO,I*)TiCl
2(円形)、および
Me2SB(
tBu,MeArO,Ind)TiCl
2(菱形)の温度の関数として、ポリエチレンの重量平均分子量(M
w)を示すグラフである。PDI(M
w/M
n)が注釈されている。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。
【
図3B】sMAO担持
Me2SB(
tBu,MeArO,I*)TiCl
2(四角形)、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiR
2、{R=Cl(上向き三角形)、Br(右向き三角形)、I(左向き三角形)、Me(下向き三角形)、CH
2SiMe
3(白抜きの左向き三角形)、OEt(白抜きの右向き三角形)、O
2,6-iPrAr(白抜きの下向き三角形)、およびNMe
2(半分塗りつぶされた三角形)}、
Me2SB(
クミル2ArO,I*)TiCl
2(円形)、および
Me2SB(
tBu,MeArO,Ind)TiCl
2(菱形)、rac-
Me,nPrSB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2(星形)、rac-
Me,PhSB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2(白抜きの星形)の温度の関数として、ポリエチレンの重量平均分子量(M
w)を示すグラフである。PDI(M
w/M
n)が注釈されている。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。
【
図4】sMAO(三角形)、SSMAO(円形)、LDHMAO(Mg
3Al-CO
3-1H/MAO、四角形)上に担持された
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の温度の関数として、スラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
MAO担持]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図5A】溶液相の(菱形)、およびsMAO(三角形)、SSMAO(円形)、LDHMAO(四角形)上に担持された
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の温度の関数として、スラリー相および溶液相重合活性を示すグラフである。スラリー相重合条件:[Al
MAO担持]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。エラーバーは1つの標準偏差で示される。溶液相重合条件:[Al
MAO]
0/[Ti]
0=1000、エチレン(2バール)、414.4μgの錯体、1mLのトルエン、49mLのヘキサン、および5分(より長い反応時間後に生じる反応器ファウリングに起因して)。
【
図5B】sMAO(三角形)、SSMAO(円形)、LDHMAO(Mg
3Al-CO
3-1H/MAO、四角形)上に担持された、および溶液相(菱形)の
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2に関して、重合温度の関数として、ポリエチレンの重量平均分子量(M
w)を示すグラフである。PDI(M
w/M
n)が注釈されている。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。溶液相重合条件:414.1μgの錯体、MAO(41.5mg、[Al
MAO]
0/[Ti]
0=1000)、エチレン(2バール)、ヘキサン(49mL)、トルエン(1mL)、および5分。
【
図5C】(i)sMAO、(ii)SSMAO、(iii)LDHMAO上に担持された、および(iv)溶液相の
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2を使用して合成されたポリエチレンの走査電子顕微鏡写真である。スラリー相重合条件:[Al
担持]
0/[Ti]
0=200、150mgのTIBA、2バールのエチレン、10mgの触媒、50mLのヘキサン、60℃、および30分。溶液相重合条件:[Al
MAO]
0/[Ti]
0=1000、2バールのエチレン、414μgの触媒、49mLのヘキサン、1mLのトルエン、60℃、および5分。
【
図6】
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2/MAO、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiMe
2/TB、およびsMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の温度の関数として、エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)またはMAO([Al
MAO]
0/[Ti]
0=1000)またはTB([TB]
0/[Ti]
0=1)、エチレン(2バール)、プレ触媒(714nmol
Ti)、ヘキサン(50mL)、5~30分(または撹拌が終わるまで)、および60℃。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図7】様々なアルミニウム共触媒を用いた、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のスラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、30分、60℃、およびメチルアルミノキサン(MAO、41.5mg)、トリエチルアルミニウム(TEA、81.6mg)、トリメチルアルミニウム(TMA、51.5mg)、またはトリイソブチルアルミニウム(TIBA、150mg)のいずれか。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図8】様々なアルミニウム共触媒を用いた、ポリエチレンの重量平均分子量(M
w)を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、30分、60℃、およびメチルアルミノキサン(MAO、41.5mg)、トリエチルアルミニウム(TEA、81.6mg)、トリメチルアルミニウム(TMA、51.5mg)、またはトリイソブチルアルミニウム(TIBA、150mg)のいずれか。
【
図9】[AlTIBA]0/[Ti]0の関数として、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のスラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、30分、および60℃。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図10】[Al
TIBA]
0/[Ti]
0の関数として、ポリエチレンの重量平均分子量(M
w)を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、30分、および60℃。
【
図11】50mL(塗りつぶされた四角形)または250mL(白抜きの四角形)のスケールのいずれかでの反応時間の関数として、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のスラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、エチレン(2バール)、TIBA(150mgまたは750mg)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mLまたは250mL)、30分、および60℃。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図12】50mL(塗りつぶされた四角形)または250mL(白抜きの四角形)のスケールのいずれかでの反応時間の関数として、ポリエチレンの重量平均分子量(M
w)を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、エチレン(2バール)、TIBA(150mgまたは750mg)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mLまたは250mL)、および60℃。
【
図13】触媒量の関数として、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のスラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、エチレン(2バール)、TIBA(150mg)、プレ触媒(x mg)、ヘキサン(50mL)、30分、および60℃。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図14】触媒量の関数として、ポリエチレンの重量平均分子量(M
w)を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、エチレン(2バール)、TIBA(150mg)、プレ触媒(xmg)、ヘキサン(50mL)、30分、および60℃。
【
図15A】sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のコモノマー体積の関数として、スラリー相エチレン/1-ヘキセン共重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、1-ヘキセン(x μL)、30分、および50℃(塗りつぶされた四角形)、60℃(半分塗りつぶされた四角形)、または70℃(白抜きの四角形)のいずれか。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図15B】sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のコモノマー体積の関数として、スラリー相エチレン/1-ヘキセン共重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、1-ヘキセン(0~5000μL)、30分、および30~90℃。エラーバーは1つの標準偏差で示される。アステリスク(*)はゲル形成を表す。
【
図16】sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のコモノマー体積の関数として、スラリー相エチレン/1-オクテン共重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、1-オクテン(x μL)、30分、および50℃(塗りつぶされた四角形)、60℃(半分塗りつぶされた四角形)、または70℃(白抜きの四角形)のいずれか。エラーバーは1つの標準偏差で示される。
【
図17】明確さのために、注釈された融解温度T
mで正規化された、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって生成されるポリエチレン-co-オクテンの示差走査熱量測定のグラフ(10K min
-1)である。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、1-オクテン(x μL)、30分、および60℃。
【
図18】1-ヘキセンの分量の関数として、融解温度(T
m)を示し、結晶化度が注釈されているグラフである。0%の結晶化度を有する非晶質試料は、T
mを有しない。
【
図19A】
図19Aおよび
図19Bは、コモノマー体積の関数として、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって生成されたLLDPEへのLAO組み込みを示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、LAO(x μL)、30分、および50℃(塗りつぶされた四角形)、60℃(半分塗りつぶされた四角形)、または70℃(白抜きの四角形)のいずれか。
【
図19B】
図19Aおよび
図19Bは、コモノマー体積の関数として、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって生成されたLLDPEへのLAO組み込みを示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、LAO(x μL)、30分、および50℃(塗りつぶされた四角形)、60℃(半分塗りつぶされた四角形)、または70℃(白抜きの四角形)のいずれか。
【
図20】コモノマー体積の関数として、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって生成されるポリエチレン-co-オクテンへの1-オクテン組み込み(1000炭素当たりの分岐の数として報告される)を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、1-オクテン(x μL)、30分、および50℃(塗りつぶされた四角形)、60℃(半分塗りつぶされた四角形)、または70℃(白抜きの四角形)のいずれか。
【
図21】sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のコモノマーの量の関数として、50℃(塗りつぶされた四角形)、60℃(半分塗りつぶされた四角形)、および70℃(白抜きの四角形)でのポリエチレン-co-1-ヘキセンの重量平均分子量(M
w)を示すグラフである。PDI(M
w/M
n)が注釈されている。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、LAO(x μL)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。
【
図22】sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のコモノマーの量の関数として、50℃(白抜きの四角形)、60℃(半分塗りつぶされた四角形)、および70℃(塗りつぶされた四角形)でのポリエチレン-co-1-オクテンの重量平均分子量(M
w)を示す。PDI(M
w/M
n)が注釈されている。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、TIBA(150mg)、エチレン(2バール)、1-オクテン(x mL)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、および30分。
【
図23A】0%(三角形)および2%(白抜きの三角形)のH
2を使用して、sMAO上に担持された
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の温度の関数として、スラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。エラーバーは1つの標準偏差で示される。重合温度の関数としてのポリエチレンの重量平均分子量(M
w)。PDI(M
w/M
n)が注釈されている。
【
図23B】0%(三角形)および2%(白抜きの三角形)のH
2を使用して、sMAO上に担持された
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の温度の関数として、スラリー相エチレン重合活性を示すグラフである。エラーバーは1つの標準偏差で示される。重合温度の関数としてのポリエチレンの重量平均分子量(M
w)。PDI(M
w/M
n)が注釈されている。
【
図24】sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって合成されたUHMWPEの
13C CPMAS ssNMRスペクトルを示す。
【
図25】30℃でsMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって合成されたUHMWPEの熱重量分析を示す。
【
図26】30℃でsMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって合成されたUHMWPEの波長の関数として、UV-Vis-NIR分光光度法を示す。
【
図27】30℃でsMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって合成されたUHMWPEの、ISO527-2/5Aにしたがって測定された工学的引張応力ひずみ曲線を示す。E
t=627MPa、σ
B=50.2MPa、ε
B=197.8%。
【
図28A】アニール時間の関数として、DSCピークの正規化領域の進展を示すグラフである。
【
図28B】アニール時間の関数として、DSCピークの正規化領域の進展を示すグラフである。
【
図29A】30℃でsMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって合成されたUHMWPEの時間掃引および周波数掃引レオロジー的特徴付けを示すグラフである。
【
図29B】30℃でsMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって合成されたUHMWPEの時間掃引および周波数掃引レオロジー的特徴付けを示すグラフである。
【
図30A】
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の
1H NMRスペクトル(400MHz、ベンゼン-d
6、298K)を示すグラフである。アステリスク(*)は、ベンゼンの残留プロトン(residual protio-benzene)を表す。
【
図30B】
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の固体状態構造ならびに結晶学的パラメーターの表、Åでの結合長および°での角度、30%確率で描かれる熱変位楕円体である。すべての水素原子は明確さのために省略されている。
【
図31】モノマー組成物の関数として、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2のスラリー相重合活性を示すグラフである。重合条件:[Al
sMAO]
0/[Ti]
0=200、[Al
MAO]/[Ti]
0=1000、モノマー(2バール)、プレ触媒(10mg)、ヘキサン(50mL)、30分、および60℃。
【
図32】EPMのゲルパーミエーションクロマトグラム、M
w=296kDa、PDI=3.2、GPC-IRから算出した57wt%のプロピレンを示すグラフである。
【実施例】
【0068】
[材料および方法]
デュアルマニホールド真空/窒素管、またはMBraun Labmaster100グローブボックスで標準シュレンク管技法1を用いて、窒素の不活性雰囲気下、空気および水分に感受性の化合物を操作した。
【0069】
MBraun SPS800溶媒精製装置を使用して、ペンタン、ヘキサン、トルエン、およびベンゼンを乾燥させ、カリウムミラー(potassium mirror)上で保管し、使用前に、部分真空下で脱ガスした。MBraun SPS800装置を使用して無水DCMを乾燥させ、前活性化した3Å分子ふるい上で保管し、使用前に、部分真空下で脱ガスした。ナトリウム/ベンゾフェノンからテトラヒドロフランを蒸留し、前活性化した3Å分子ふるい上で保管し、使用前に、部分真空下で脱ガスした。
【0070】
重溶媒をカリウム金属(ベンゼン-d6およびトルエン-d8)またはCaH2(クロロホルム-d、ピリジン-d5、およびテトラヒドロフラン-d8)上で乾燥させ、減圧下で還流し、静的真空下で蒸留し、凍結-減圧-解凍脱ガスを3回行い、前活性化した3または4Å分子ふるい上で保管した。空気および水分に感受性ではない試料のために、クロロホルム-dを供給されたまま使用した。
【0071】
Bruker AvanceIII HD NanoBay NMR(9.4T、400.2MHz)、Bruker AvanceIII NMR(11.75T、499.9MHz)、またはBruker Avance NMR(11.75T、500.3MHz)のいずれかで13C-検出クライオプローブを用いて、NMRスペクトルを記録した。別段に記載されていない限り、298Kでスペクトルを記録し、残留プロトン溶媒共鳴を内部標準とした。化学シフトδは、テトラメチルシラン(δ=0ppm)に対して、百万分率(ppm)で報告されている。乾燥させた重溶媒を使用して、グローブボックス中で窒素の不活性雰囲気下で空気感受性の試料を調製し、5mmのYoung栓NMR管中に密閉した。固体NMRスペクトルは、Dr Nicholas Rees(オックスフォード大学)が、Bruker AvanceIII HD NanoBay固体NMR分光計(9.4T、399.9MHz)で記録した。13Cおよび29Siに関して10kHz、および27Alに関して20kHzの回転速度で、マジック角で試料を回転させた。13C NMRスペクトルはアダマンタンを、27Alはアルミニウム硝酸を、および29Siはカオリナイトを標準とした。
【0072】
単結晶X線回折データ収集および構造決定は、Dr Zoe R.Turner(オックスフォード大学)が行った。ペルフルオロポリエーテルオイルを使用して、結晶をMiTeGen MicroMountsにマウントし、Oxford Cryosystems Cryostreamオープンフロー(open-flow)窒素冷却装置に装着した回折計のゴニオメーターヘッドに速やかに移した。2ミラー単色化CuKα放射線(λ=1.54178Å)を使用して、Oxford Diffraction Supernova回折計でデータ収集を150Kで行い、CryAlisProを使用してデータを処理した。3構造を直接法(SIR-92)4またはチャージフリッピングアルゴリズム(SUPERFLIP)5を使用して解析し、Win-GXソフトウェアスイートを使用して、完全行列最小二乗法によって精密化した。6必要とされる場合PLATONを使用して7、分子結合長および角度を算出した。ORTEPを使用して固体状態分子構造の例示を作成した。8熱楕円体を30%確率で示した。
【0073】
IR5赤外線検出器(GPC-IR5)を用いて、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフで、Ms Liv ThobruおよびMs Sara Herum(Norner AS、ノルウェー)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行った。300ppmの3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)に160℃で90分間溶解することによって試料を調製し、次いで、GPCカラムを通す前に10μm SSフィルターを用いてろ過した。1mg mL-1のBHTを流量マーカーとして加えて、300ppmのBHTを含有するTCBを移動相として使用して、0.5mL min-1の流量下で試料を流した。GPCカラムおよび検出器の温度を、それぞれ145および160℃に設定した。
【0074】
Mettler Toledo TGA/DSC1システムで、10K min-1の速度で25~180℃の範囲の温度内で、示差走査熱量測定を行った。ポリマー試料を100μLアルミニウムるつぼに密封した。参照として空のるつぼを用い、インジウムを使用してDSCを較正した。
【0075】
2,3,4,5,6,7-ヘキサメチルインデン(SCG Chemicals Co.,Ltd.)、nBuLi(ヘキサン中、1.6M、Sigma Aldrich)、4-メチル-2-tert-ブチルフェノール(Sigma Aldrich)、6-ブロモ-2,4-ジ-tert-ブチルフェノール(Alfa Aesar)、および臭素(Sigma Aldrich)を、すべて受け取ったまま使用した。文献にしたがってTiCl4.2THFを調製した。9Et3NをKOH上で乾燥させ、静的真空下で蒸留し、使用前に凍結-減圧-解凍脱ガスを行った。使用前に、2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノール(Sigma Aldrich)を熱いエタノールから再結晶させた。使用前に、前活性化した3Å分子ふるい上でMe2SiCl2(Sigma Aldrich)を乾燥させた。NaHCO3、続いて蒸留水を用いてアリル臭化物を洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。エチレンは、CK Special Gases Ltdによって供給され、使用前に分子ふるいに通した。固体ポリメチルアルミノキサン(sMAO)は、SCG Chemicals Co.,Ltd(タイ)によってトルエン中のスラリーとして供給され、使用前に減圧下で乾燥させた。MAOは、Chemtura Corporationによってトルエン中のスラリーとして供給され、使用前に減圧下で乾燥させた。
【0076】
[PHEN-I*化合物の合成]
Me(R1)
SB(
R,R’
ArO,I*)MCl
2
の合成、(R
1
=Me、
n
Pr、Ph。R、R’=
t
Bu、Me;
t
Bu、
t
Bu;クミル、クミル。M=Ti、Zr。)
下記スキーム1に示すように、90分間撹拌した、DCM中での化学量論反応において定量的に出発フェノールの求電子性オルト臭素化を達成した。ブロモジアルキルフェノールおよび1.5当量の臭化アリルの溶液を1.5当量のNaOHの10%水溶液に滴下することによって、アリル保護を行った。保護されたブロモフェノールを、-78℃で1.3当量のnBuLi、次いで、3当量のMe(R1)SiCl2で処理し、良好な収率(57~83%)で望ましいクロロシリル中間体を得た。THF中でInd#Liとこれらの中間体を一晩撹拌して、マルチグラムスケールで75%の収率でアリル保護されたプロリガンドを得た。トリエチルアミンの存在下、nBuLiでプロリガンドを処理し、次いでMCl4.2THFを加えた。処理後、得られた赤れんが色の固体生成物をペンタンで洗浄し、19~30%の収率でチタンジクロロ錯体、Me(R1)SB(R,R’ArO,I*)MCl2を得た。
【0077】
【0078】
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の
1H NMRスペクトル(
図30A)は、PHENI*錯体の診断共鳴を示している。スペクトルは、2Hzの
4J
H-H定数で、2.66~1.96ppmの間に6つのI*-Me一重線、1.50~1.38ppmの間に
tBu一重線、0.72~0.66ppmの間にジメチルシリル一重線、および7.58~7.19ppmの間にメタのアリールプロトンに関する芳香族対の二重線を含む。
図30Bに、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の固体状態構造および結晶学的パラメーターの表を示す。
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2および他の選択された
Me(R1)SB(
R,R’ArO,I*)MCl
2化合物に関するスペクトル割り当てを以下に略述する。
【0079】
<Me2SB(tBu2ArO,I*)TiCl2>
1H NMR (400 MHz, ベンゼン-d6, 298 K): δ 7.58 (d, 4JH-H= 2.4 Hz, 1H, 3,5-C6H2), 7.56 (d, 4JH-H= 2.4 Hz, 1H, 3,5-C6H2), 2.65 (s, 3H, I*Me), 2.55 (s, 3H, I*Me), 2.12 (s, 3H, I*Me), 2.05 (s, 3H, I*Me), 2.02 (s, 3H, I*Me), 1.96 (s, 3H, I*Me), 1.50 (s, 9H, CMe3), 1.38 (s, 9H, CMe3),および0.72 (s, 6H, SiMe) ppm.
13C{1H} NMR(126 MHz, ベンゼン-d6, 298 K): δ 167.32 (1-C6H2), 146.91 (2,4-C6H2), 144.39 (I*), 137.60 (I*), 136.61 (I*), 136.15 (I*), 136.10 (2,4-C6H2), 133.14 (6-C6H2), 132.24 (I*), 131.61 (I*), 130.85 (I*), 130.62 (I*), 127.07 (3,5-C6H2), 124.87 (3,5-C6H2), 110.40 (I*Si), 35.11 (CMe3), 34.61 (CMe3), 31.44 (CMe3), 29.73 (CMe3), 21.37 17.11 16.88 16.29 16.12 15.47 (I*Me), 3.35および1.44 (SiMe) ppm.
【0080】
<Me2SB(tBu,MeArO,I*)TiCl2>
1H NMR (400 MHz, ベンゼン-d6, 298 K): δ 7.22 (d, 4JH-H= 1.9 Hz, 1H, 3,5-C6H2), 7.19 (d, 4JH-H= 2.0 Hz, 1H, 3,5-C6H2), 2.66 (s, 3H, I*Me), 2.56 (s, 3H, I*Me), 2.27 (s, 3H, 4-C6H2Me), 2.14 (s, 3H, I*Me), 2.03 (s, 3H, I*Me), 2.02 (s, 3H, I*Me), 1.98 (s, 3H, I*Me), 1.46 (s, 9H, CMe3), 0.68 (s, 3H, SiMe),および0.66 (s, 3H, SiMe) ppm.
13C{1H} NMR (126 MHz, ベンゼン-d6, 298 K): δ167.79 (1-C6H2), 144.68 (I*), 138.03 (I*), 136.99 (2-C6H2), 136.95 (I*), 136.51 (I*), 134.04 (6-C6H2), 133.98 (4-C6H2), 132.50 (I*), 131.98 (I*), 131.37 (3,5-C6H2), 131.22 (I*), 131.01 (I*), 129.04 (3,5-C6H2), 110.75 (I*Si), 35.12 (CMe3), 30.05 (CMe3), 21.81 (I*Me), 21.44 (4-C6H2Me), 17.46 17.26 16.66 16.50 15.69 (I*Me), 3.62および1.49 (SiMe) ppm.
【0081】
<Me2SB(クミル2ArO,I*)TiCl2>
1H NMR (400 MHz, ベンゼン-d6, 298 K): δ 7.51 (d, 4JH-H= 2.4 Hz, 1H, 3,5-C6H2), 7.46 (d, 4JH-H= 2.4 Hz, 1H, 3,5-C6H2), 7.37-7.17 (m, 8H, CMe2Ph), 7.13-7.07 (m, 1H, CMe2Ph), 7.06-7.00 (m, 1H, CMe2Ph), 2.62 (s, 3H, I*Me), 2.42 (s, 3H, I*Me), 2.09 (s, 3H, I*Me), 2.00 (s, 3H, I*Me), 1.98 (s, 3H, I*Me), 1.90 (s, 3H, I*Me), 1.73 (s, 6H, CMe2Ph), 1.70 (s, 3H, CMe2Ph), 1.67 (s, 3H, CMe2Ph), 0.60 (s, 3H, SiMe),および0.59 (s, 3H, SiMe) ppm.
13C{1H} NMR(126 MHz, ベンゼン-d6, 298 K): δ 166.74 (Ar), 151.09 (Ar), 169.81 (Ar), 146.72 (Ar), 144.62 (Ar), 137.54 (Ar), 136.74 (Ar), 136.51 (Ar), 136.28 (Ar), 133.84 (6-C6H2), 132.43 (Ar), 131.65 (Ar), 130.97 (Ar), 130.74 (Ar), 129.83 (3,5-C6H2), 128.46 (CMe2Ph), 128.35 (CMe2Ph), 128.32 (CMe2Ph), 128.16 (CMe2Ph), 127.97 (CMe2Ph), 127.68 (3,5-C6H2), 127.13 (CMe2Ph), 126.39 (CMe2Ph), 126.19 (CMe2Ph), 125.58 (CMe2Ph), 110.69 (I*Si), 43.34,および42.92 (CMe2Ph), 31.26 31.23 30.60 29.00 (CMe2Ph), 21.65 17.44 17.31 16.65 16.39 15.66 (I*Me), 3.93 1.41 (SiMe) ppm.観察されないことによって追加の芳香族共鳴が予期される。
【0082】
Me2
SB(
R,R’
ArO,I*)TiR”
2
の合成(R”=Br、I、OEt、NMe
2
、Me、CH
2
SiMe
3
、O
iPr2
Ar)
下記スキーム2に示すように、補助クロリドリガンドを、ベンゼンまたはベンゼン-d6中で行われる化学量論反応において定量的収率で、ハライド、アルキル、アルコキシド、アリールオキシド、およびアミド基を含む様々な他のリガンドによって置き換えた。ブロモトリメチルシランおよびヨードトリメチルシランをそれぞれ使用して、ハライド錯体を合成し、残りの錯体は、関連するアルカリ金属塩を使用して合成した。
【0083】
【0084】
[担持されたPHEN-I*化合物の合成]
sMAO-
Me2
SB(
R,R’
ArO,I*)TiR”
2
sMAO(40.2wt%のAl、250mg、3.72mmol[Al])を0.005当量のPHEN-I*化合物(0.0186mmol [Ti])と混合し、物理的混合物を完全に均質化した。次いで、トルエン(50mL)を加え、混合物を、1時間、頻繁に渦状に混ぜながら60℃に、または溶液が無色になるまで加熱した。沈殿させた後、トルエン上清をデカントし、23℃にて2時間、減圧下で固体生成物を乾燥させ、75~90%の収率で回収した。
【0085】
SSMAO-
Me2
SB(
R,R’
ArO,I*)TiR”
2
40wt%のdMAOでシリカ(PQ-ES70X、600℃で6時間焼成された)を処理することによって、シリカ担持MAO(SSMAO)を合成した。SSMAOを0.005当量のPHEN-I*化合物と混合し、物理的混合物を完全に均質化した。次いで、トルエン(50mL)を加え、混合物を、1時間、頻繁に渦状に混ぜながら60℃に、または溶液が無色になるまで加熱した。沈殿させた後、トルエン上清をデカントし、23℃にて2時間、減圧下で固体生成物を乾燥させた。
【0086】
Mg
3
Al-CO
3
-1H/MAO-
Me2
SB(
R,R’
ArO,I*)TiR”
2
層状複水酸化物担持MAO(LDHMAO)を、1-ヘキサノールで洗浄したマグネシウム-アルミニウムLDH、40wt%のdMAOで処理したMg3Al-CO3-1H(150℃で6時間焼成された)から合成した。LDHMAOを0.005当量のPHEN-I*化合物と混合し、物理的混合物を完全に均質化した。次いで、トルエン(50mL)を加え、混合物を、1時間、頻繁に渦状に混ぜながら60℃に、または溶液が無色になるまで加熱した。沈殿させた後、トルエン上清をデカントし、23℃にて2時間、減圧下で固体生成物を乾燥させた。
【0087】
[重合の検討]
エチレン単独重合
150mLのRotafloアンプルに入った50mLのヘキサン中の10mgの担持触媒、2バールのモノマー圧、ならびに共触媒開始剤および捕捉剤として作用する150mgのTIBAを用いて、スラリー相エチレン重合の検討を行った。
【0088】
図1Aおよび
図1Bに、sMAO担持チタンジクロロPHEN-I*錯体のすべては、比較基準であるsMAO担持インデニル-PHENICS錯体と比較して飛躍的により高いエチレン重合活性を示すことを示す。
図2Aおよび
図2Bに、クロロが他の補助リガンドと置き換えられた場合、高いエチレン重合活性も観察されたことを示す。
【0089】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーは、sMAO担持PHEN-I*錯体によって生成されるポリエチレンが、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)として特徴付けることができ、分子量は10
6~10
7Daのオーダーである(
図3Aおよび
図3Bを参照されたい。)ことを示す。すべての場合において、重合温度の上昇にともなって分子量は減少した。sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2によって生成されるポリエチレンの分子量は、90℃での1.52MDaから30℃での3.38MDaまでの範囲であり、tert-ブチル-メチルおよびビス-クミル錯体より大きく、比較基準であるsMAO担持インデニル-PHENICS錯体に対して実質的に増大した。さらに、sMAO担持PHEN-I*化合物のすべてが、比較基準であるsMAO担持インデニル-PHENICS錯体を用いて得られるものより実質的に低い多分散性を有するポリエチレンをもたらした。
【0090】
図4に、sMAO担持基材をシリカ担持MAOおよびLDH担持MAOで置き換えると、比較基準であるsMAO担持インデニル-PHENICS錯体で観察されるものより依然として高いとはいえ、エチレン重合活性の低減をもたらすことを示す。
【0091】
図5Aに、担持基材が使用されず、重合が溶液相において行われる場合、さらにより高いエチレン重合活性が達成されたことを例示する。
図5Bに、得られたポリエチレンの分子量への担持基材の効果を示す。
図5Cに、スラリー相(i~iii)および溶液相(iv)条件下で合成したポリエチレンの走査電子顕微鏡写真を示す。
【0092】
sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2を用いたエチレンの単独重合に関して、アルキルアルミニウム共触媒、ならびにその充填量、反応時間、およびスケールを変化させることの効果を検討することによって条件最適化を行った。[Ph
3C][BAr
F
4](トリチルペルフルオロアリールボレート、TB)を用いた
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiMe
2の化学量論活性化により、
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2/MAOまたはsMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2系のいずれかより飛躍的に高い活性にいたった。TIBAを共触媒として使用することにより最も高い重合活性にいたることが見出され、最も高い活性は[Al
TIBA]
0/[Ti]
0=500と記録された(
図6~14を参照されたい。)。
【0093】
エチレン共重合
sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2ならびに様々な量の1-ヘキセンおよび1-オクテンを用いて、スラリー相共重合を行った。1-ヘキセンおよび1-オクテン共重合の両方で有益なコモノマー効果が観察された(
図15A、
図15B、および
図16を参照されたい。)。より高い温度およびより多いコモノマー充填量において、コポリマーが可溶性ゲルとして形成し、より低い活性をもたらす反応混合物内での拡散は制限された。
【0094】
ポリマー融解温度の90.54℃への有意な低下が、1250μLの1-オクテンで、部分的な結晶化度の喪失をともなって観察された(
図17を参照されたい。)。コポリマーの融解温度に対する1-ヘキセンの分量の効果は、
図18に示す。
【0095】
コモノマー組み込みは、GPC-IRおよび高温溶液相
13C{
1H}NMRの両方によって測定されたのであり、コモノマー充填量の増大にともなって、コモノマー組み込みがほぼ直線的に増大することを示す(
図19Aおよび
図19Bを参照されたい。)。1-オクテン組み込みは、高温溶液相
13C{
1H}NMRによって測定されたのであり、コモノマー充填量の増大にともなって、1000炭素当たりの分岐の数がほぼ直線的に増大することを示す(
図20を参照されたい。)。
図21および
図22は、種々の重合温度で行われた場合の、得られるコポリマーの分子量および多分散性に対する1-ヘキセンおよび1-オクテンコモノマー量の効果を示す。
【0096】
共触媒としてMAO([Al
MAO]/[Ti]
0=1000)を用いて、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2を用いて60℃で、エチレン-プロピレン共重合を行った。エチレン-プロピレンゴム(EPR)を合成し、活性は547.7kg
EPRmol
Ti
-1h
-1バール
-1、ポリマーへのプロピレンの組み込みは、高温
13C NMRによって決定されて31mol%であった(
図31を参照されたい。)。
図32は、EPMのゲルパーミエーションクロマトグラムを示す。
【0097】
水素の効果
98:2のエチレン:水素供給ガスを使用して重合を行うことによって、sMAO-
Me2SB(
tBu2ArO,I*)TiCl
2の水素応答性を調べた。重合活性が適度に低減した一方で、分子量の実質的な低下が観察された(
図23Aおよび
図23Bを参照されたい。)。
【0098】
ポリエチレン特性
PHENI*触媒によって合成されたUHMWPEの物性を様々な方法によって検討した(
図24~
図29を参照されたい。)。TGAは、約470℃で単一の質量減少事象を示す(
図25を参照されたい。)。
【0099】
ISO1183に従って密度を測定し、930kg m-3であることがわかった。
【0100】
熱的アニールは、実質的に解きほぐされたUHMWPEの形成を示し、sMAO担持PHENI*触媒によって合成された新生ポリエチレンにおいて最も低い絡み合い密度が観察された。sMAOを使用するスラリー相重合により、2つの融解ピーク(約135および142℃で)の急速な形成によって立証されるように、実質的に解きほぐされたUHMWPE(disUHMWPE)の生成にあたり、アニール時間が増大するに従って、高温ピークを犠牲にして低温ピークが増大した。高い融解ピークは、残存する新生結晶から生じ、一方で低い融解ピークは、アニール中に連続する鎖が切れることから形成される融解-結晶化部から起こる。所与のM
wに関して、正規化された領域における低い融解ピークのより急速な増大は、より多くの解きほぐされたポリマーを示唆している(
図28Aおよび
図28Bを参照されたい。)。
【0101】
レオロジー的測定によって、解きほぐされたUHMWPEを確認したのであり、ここで、貯蔵弾性率の蓄積は、新生ポリマーにおける低減された絡み合い密度と一致している(
図29Aおよび
図29Bを参照されたい。)。
【0102】
以上、本明細書において、本発明の特定の一実施形態について参照および例示目的のために説明してきたが、様々な修正および変形は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者にとって明らかなものであろう。
【0103】
[参考文献]
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