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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】口内デバイスの設計方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20240514BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20240514BHJP
   A61B 13/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
A61C19/00 M
A61M16/06 D
A61B13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568712
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 ES2022070301
(87)【国際公開番号】W WO2022258861
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21382508.6
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507267023
【氏名又は名称】バイオテクノロジー インスティチュート、アイ エムエーエス ディー、 エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アニトゥア アルデコア、エデュアルド
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA20
(57)【要約】
CAD/CAMソフトウェア技術によって、とりわけ歯ぎしり及び/又は睡眠時無呼吸を治療するための口内スプリント型デバイス1を設計するための方法が開示される。本発明の方法は口内走査で開始され、引き続いて、熱シミュレーションによって、一片メッシュとして定義された歯列2、3を認識される必要がある歯科片4と同じ数の歯科片に変換することを特徴とする。この区分化により、個々の歯科片4の周りに口内デバイス1を設計するために個々の歯科片4の幾何構造を隔離することができる。言い換えると、この区分化により、患者のニーズに応じて、歯科片4毎に厚さ6c、高さ、等々を非一様に修正することができる。この方法によれば、使用者は、このようにして創出される口内デバイス1を極めて正確に取り扱うことができ、個々の歯科片4の機械的及び歯科的ニーズを満たすことができ、且つ、優れた快適性を患者に提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CADソフトウェアを使用したスプリント型口内デバイス(1)の設計方法であって、口内走査又は患者の先行するモデルの走査に基づくファイルが開かれ、患者の少なくとも1つの歯列(2、3)のデータはメッシュ即ち片の形態であり、前記設計方法が、
- ある温度(A)の熱点を歯科片(4)に割り当て、また、別の温度(B)の熱の点を温度(A)の熱点を含む歯科片に隣接する歯科片(4)に割り当て、したがって前記隣接する歯科片(4)が異なる熱点(A、B)を有する熱シミュレーションによって、前記歯列メッシュ(2、3)を異なる歯科片(4)に区分化するステップと、
- 個々の歯科片(4)に対する少なくともいくつかの局所ベクトル(5)及び重心(5b)を定義するステップであって、このステップが前記口内デバイス(1)の最終輪郭(6)の支持曲線の方向を定義することになる、ステップと
を含むことを特徴とする設計方法。
【請求項2】
前記設計方法が、
- 少なくとも1つの歯科片(4)の輪郭(6)の少なくとも1つの厚さ(6c)を個別に修正する追加ステップと、
- 前記口内デバイス(1)の前記最終輪郭(6)のシミュレーションを生成する追加ステップであって、個々の歯科片(4)中の前記口内デバイス(1)の高さを表すための制限曲線(7)が生成される、追加ステップと、
- 前記患者の補綴治療ニーズに応じて、個々の歯科片(4)の中に画定された前記制限曲線(7)のいくつかの点(7a)を最終曲線(7b)に向かって移動させることによって前記デバイス(1)の前記高さを修正する追加ステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項3】
前記メッシュの前記区分化が、異なる歯科片(4)同士の間の最小曲率半径の領域に伝導によって熱を伝達することによって実施されることを特徴とする請求項1に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項4】
前記厚さ(6c)の前記修正が、個々の歯科片(4)の前記厚さ(6c)を画定している外部線(6a)と内部線(6b)の間の距離を調整する追加ステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項5】
前記厚さ(6c)の前記修正が、上顎歯列(2)の前記口内デバイス(1)と、対向する下顎歯列(3)の前記口内デバイス(1)との接触がスプリント-スプリントではなく、歯科片-スプリントであるよう、少なくとも1つの接触領域の前記厚さ(6c)を完全に除去する追加ステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項6】
前記厚さ(6c)の前記修正により、前方孔(8)を門歯歯科片が配置される前記口内デバイス(1)の前方領域にあけることができることを特徴とする請求項2に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項7】
前記口内デバイス(1)の前記高さを画定している前記制限曲線(7)の前記修正が、前記点(7a)を前記制限曲線(7)から前記歯科片(4)の赤道の下方の最終曲線(7b)へ移し、垂直方向の切欠き即ち溝(9)を生成する追加ステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項8】
前記設計方法が、
- 前記最終輪郭(6)をメッシュ即ち単一片に変換するために、前記スプリント型口内デバイス(1)の個々の歯科片(4)の個別の幾何構造を結合する追加ステップと、
- 前記スプリント型口内デバイス(1)の前記最終輪郭(6)メッシュから材料を除去する追加ステップ又は前記最終輪郭(6)メッシュに材料を追加する追加ステップと、
- 製造のために、3Dプリンタ又は別のCAMデバイスに送るように設計されたスプリント型デバイス(1)を使用してファイルを作成する追加ステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項9】
追加ブール演算がメッシュ材料を追加する前記ステップ又は除去する前記ステップの間に実施されることを特徴とする請求項8に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項10】
前記ブール演算がハウジングを生成することからなり、チタン又はワイヤーなどの抵抗材料のボタンが固定されて、前記デバイス(1)のより薄い厚さ(6c)で、接触領域、即ち前記患者の歯科歯列(2、3)同士の間の強力な咬合の領域により大きい硬さ及び耐性を提供する、請求項9に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項11】
前記ブール演算がハウジングを生成することからなり、前記患者の口のより柔軟性に富んだ咬合、及びより薄い厚さ(6c)の前記口内デバイス(1)を必要とする治療のために、弾性材料のボタンが取り付けられる、請求項9に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項12】
前記ブール演算が、下顎骨アドバンスメント機構又は他の歯科矯正システムを固定するための突起(12)を前記スプリント(1)の中に生成することからなる、請求項9に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項13】
前記ブール演算が、独立した片として前記突起(12)を保持するための接着剤を置くことが意図された孔(12a)を前記スプリント(1)の中に生成することからなり、前記下顎骨アドバンスメント機構が固定される、請求項9に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項14】
前記ブール演算が、サージカル・ガイド又は他の同様のアプリケーションと共に使用されるフライス削りツールを案内するように働く金属デバイス又は他の材料を置くことが意図された案内孔を前記スプリント型デバイス(1)の中に生成することからなる、請求項9に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【請求項15】
前記ブール演算が、前記スプリント型デバイス(1)の内部表面に、湾曲座標変換によって前記スプリント型デバイス(1)の内部幾何構造に調整されるYZ平面の幾何学パターンから創出される網状の構造を生成することからなる、請求項9に記載の、口内デバイス(1)の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ支援設計、以下CAD(Computer-Aided Design)のためのコンピュータ及びプログラム即ちソフトウェアを使用した、口内デバイスを設計するための方法に関する。詳細には、方法は、口内デバイス、即ち口腔スプリントを設計するためのものであり、この口腔スプリントには、とりわけ歯ぎしり、口腔呼吸又はいびき、及び/又は睡眠時無呼吸などの様々な顎障害を治療するために使用者の口の中に置かれることが意図されている。
【背景技術】
【0002】
現在、歯ぎしり及び睡眠時無呼吸を患者が眠っている間に治療するために、下顎骨リリース及び/又はアドバンスメントのための様々な口内デバイス即ち下顎骨デバイスが知られている。
【0003】
これらの下顎骨デバイスは、患者の特定のニーズに合致するように造られており、また、ディスチャージ即ち下顎骨アドバンスメント・スプリントとして知られている。下顎骨ディスチャージ・スプリントは、一方では、患者の口の中、一般的には上顎歯列弓の中に置かれる、非金属の剛直材料でできたデバイスであり、それらは、上顎歯科片が下顎歯科片に押し付けられるのを防止する。更に、スプリントは、スプリントが所定の位置に位置している時間の間、それらが必要以上の力を加えないよう、顎骨(上顎骨及び下顎骨)を適切な位置に維持し、筋肉を弛緩状態にして、それらが緊張するのを防止する。
【0004】
これらの下顎骨デバイス即ち下顎骨アドバンスメント・スプリントは、他方では、下顎のわずかなアドバンスメントを同じくもたらすことができ、これは、患者が眠っている間、気道が閉じるのを防止する。このデバイスは患者のための測定を実施するように造られており、上顎歯列の中に置かれることが意図された上部領域、及び下顎歯列の中に置かれることが意図された下部領域をデバイスが備える方法で患者の口の内側に置かれる。下顎骨アドバンスメント機構は上部ゾーンと下部ゾーンの間に接続され、下部ゾーンが上部ゾーンに対して前進した状態を維持する方法で配置され、且つ、張力が加えられる。これは、患者の正規の咬合に対して両方の部分が互いに重なり合う静止位置と比較すると、上顎に対する顎のわずかな前進をもたらす。これは、口腔空洞の後ろ側でより大きい空間を開け、したがって咽頭への、また、咽頭からの空気の通過を容易にする。
【0005】
上で定義した下顎骨デバイスは、CAD/CAM技術を使用して設計され、且つ、製造されており、CADはコンピュータ支援設計であり、また、CAM(Computer Aided Manufacturing)はコンピュータ支援製造である。この技術は歯科分野で広く知られており、歯科分野では、通常、クラウン、インプラント又はスプリントなどのあらゆる歯科要素がCADを使用して設計され、また、CAM又は3D印刷を使用して印刷されている。
【0006】
このコンピュータ実現CAD/CAM技術を使用した下顎骨デバイス又は歯科要素の設計は、患者の口内走査で開始される。口内スキャナはコンピュータ・システムであり、患者のデータ及び補綴処方箋が入力される。データが入力されると、光ファイバ・デバイスが患者の口の中に挿入され、完全な3D画像が得られるまで患者の口の画像を撮影する。この3D画像は、データと相俟ってファイルを形成し、このファイルは、個々の患者に対する個人化された適合のために設計プログラムに送られる。歯科要素の設計はCADソフトウェアを使用して実施される。
【0007】
現在、歯科市場で知られている設計ソフトウェアは、患者の口又は歯列を定義するメッシュの生成及び修正を介した下顎骨デバイスの設計に基づいている。メッシュは、単一の要素としての空間における患者の歯列の表面を定義するデータ・セットである。歯列は、患者の上顎及び下顎の歯列を形成している門歯、犬歯及び臼歯歯科片のセットである。上記設計ソフトウェアは、一様な厚さの完全なメッシュで動作し、このメッシュは後で3D印刷に送られて、手動で完成される。
【0008】
製造される歯科製品が設計されると、ファイルが作成されて歯科プリンタ即ち3Dプリンタに送られる。通常、3D印刷プロセスは以下の通りであり、即ちプリンタが設計ファイルからの命令に従って材料を堆積させ、且つ、固化させる。第1の層が固化すると、3D印刷プロセスは第2の層を継続し、既に設計済みの三次元対象が層状構造で形成される方法で同じプロセスを繰り返す。しかしながら印刷された歯科対象は一様な厚さを有するメッシュで構築されており、したがって印刷後、対象を手動で調整して修正し、且つ、材料の過剰部分を除去しなければならない。デバイスを患者の口に適合させるためのこの修正は極めて面倒であり、また、歯列同士の間の接触領域がそれほど詳細ではない。言い換えると、上記プロセスによって生成されるスプリントは、患者にとって最も正確でも、また、最も快適でもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、製造後の手動調整を最少化することに加えて、患者にとってより快適な、より個人化された設計を提供する、スプリント型口内デバイスを設計するための、改善された、より正確な方法を提供することである。それと同時に、本発明のこの方法は、歯ぎしり、睡眠時無呼吸、いびき、舌機能を治療するために必要な個人化された治療を提供し、更にはサージカル・ガイドを創出する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、とりわけ歯ぎしり障害、いびきとして知られている口腔呼吸障害、舌異常機能障害及び睡眠時無呼吸障害を治療するための、しばしば歯科スプリントと呼ばれている口内即ち下顎骨デバイスを設計するための、改善された、より正確な方法である。詳細には、本発明の方法の実施態様は、本発明の設計方法を制限することなく、口内デバイス即ちスプリントの設計に的を絞ることになる。本発明の方法は、コンピュータにインストールされたCADソフトウェアを使用することによって実施され、最初に、患者の先行するモデルの口内又は口外走査に基づいてファイルが創出される。ファイルは、患者の少なくとも1つの歯列又は先行するモデルの口腔データを含み、また、メッシュ即ち単一片の形態で、患者に属する少なくとも1つの歯列を視覚化し、また、患者に属する少なくとも1つの歯列で動作するためにCADソフトウェアに転送される。ファイルが開かれると、歯列メッシュが熱シミュレーションによって様々な歯科部分に区分化されるステップを最初に含むことを特徴とする本発明の設計方法が開始する。熱シミュレーションは、ある温度の熱点を歯科片に割り当て、また、異なる温度の熱点を第1の温度の熱点を有する歯科片に隣接する歯科片に割り当てることからなる。この方法によれば、隣接する歯科片は異なる熱点を有する。
【0011】
CADソフトウェアによってすべての歯科片に熱点が割り当てられると、伝導によって熱シミュレーションが実施され、したがって、互いに隣接する歯科片は異なる温度にあるため、隣接する歯科片同士の間では熱は伝達されないため、すべての歯科片が個別に定義される。
【0012】
個々の歯科片が個別の歯科片として定義されると、デバイスの設計は個別に輪郭が描かれることになるため、発明の方法は、引き続いて個々の歯科片に対する局所ベクトル及び重心を定義し、したがって局所ベクトルはスプリントの最終輪郭を生成するための支持曲線の方向を定義することになる。
【0013】
説明される方法には、患者毎の個々の歯科片の機械的ニーズ及び快適性ニーズを満足するために、識別された歯科片の個々の、且つ、すべての歯科片を識別する、などの様々な利点がある。更に、説明される方法は、非一様な厚さをスプリント全体にわたって与えることができる、などの設計に対するより正確な制御を与える。個々の歯科片の周りに個別にスプリントを設計する可能性により、互いに対向する歯列間の接触表面を監視することができ、且つ、より高い精度で設計することができ、また、設計により、スプリントの内力を制御し、将来における患者の咬合の変化を防止することができる。要するに、本発明の方法によれば、より正確な方法で、患者毎に個人化された口内デバイスを設計し、且つ、製造することができる。
【0014】
更に、材料の量及び厚さを制御する可能性のおかげで、3D印刷を容易にするためにより少ない材料で口内デバイスを製品に適合させることが同じく可能である。
【0015】
本発明の詳細は、本発明の範囲を制限することを意図していない以下の図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の方法に従って設計及び製造されたスプリント型の口内デバイス(1)を示す図である。
図2】本発明の方法の第1のステップにおける患者の歯列(2、3)を示す図である。
図3】取り組むべき歯列(2、3)に対する本発明の方法の第2のステップを示す図である。
図3a】本発明の方法の第2のステップの後の歯列(2、3)の別の図である。
図4】本発明の第3のステップにおけるソフトウェアを示す図である。
図5】本発明の第4のステップの開始時におけるソフトウェアを示す図である。
図6】本発明の第4のステップのためのソフトウェアを示す図である。
図7】本発明の方法の可能実施例を示す図である。
図8】本発明の第5のステップのためのソフトウェアを示す図である。
図9】本発明の方法の別の可能実施例を示す図である。
図10】本発明の第6のステップの後の図である。
図11】本発明の方法の別の可能実施例を示す図である。
図12】本発明の方法の別の可能実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、図1に示されているような歯科スプリント即ちアライナーなどの口内デバイス(1)を設計するための、改善された正確な方法に関している。口内デバイスの目的は歯科治療であり、最も一般的には、歯ぎしり及び/又は睡眠時無呼吸を治療することである。他の設計方法の場合と同様、本発明の方法も、患者の口内走査、又は患者の先行するモデルの口外走査に基づく他の口内デバイスの設計、患者の歯科片に適合されたコンピュータ及びCADソフトウェア技術を使用したデバイス(1)の後続する設計、及び最後にCAM技術を使用したデバイス(1)の3D印刷に同じく適用することができる。
【0018】
口内走査は、患者の口の3Dデジタル・ファイルの創出、及び後続するその3Dデジタル・ファイルに対する取組みに基づいている。したがって本発明の方法の場合、取り組む歯科片の少なくとも1つの歯列(2、3)を使用して少なくとも1つのファイルを作成するために、最初に患者の口の口内走査が実施される。通常、患者の上顎歯列(2)及び下顎歯列(3)を分離する2つのファイルが作成される。引き続いて、歯列ファイル(2、3)を使用して口内走査がCADプログラム即ち設計ソフトウェアに転送され、その歯列ファイル(2、3)に対してスプリント型口内デバイス(1)設計が構成され、それを患者の歯科ニーズに適合する。図2から分かるように、ファイルがプログラムの中で開かれると、取り組むべき患者の歯列(2、3)は、上で説明した初期データによって確立される一様な厚さを有する単一片即ちメッシュとして見える。
【0019】
しかしながら本発明の方法は、メッシュ即ち単一片として定義された歯列(2、3)を取り組むべき歯科片(4)と同じ数の部分に区分化することを特徴としている。CADソフトウェアによる歯列(2、3)の区分化は、図3から分かるように、異なる歯科片(4)中に温度A及びBの熱点を割り当てることにより、熱シミュレーションによって実施される。異なる温度の熱点が割り当てられ、ある温度(A)の特定の熱点がいくつかの歯科片(4)に割り当てられ、また、別の温度(B)の他の熱点が、温度(A)の熱点を含む歯科片(4)に隣接する歯科片(4)に割り当てられる。この方法によれば、隣接する歯科片(4)は異なる温度にある。CADソフトウェアでは、これらの熱点(A、B)は、図3から分かるように異なる色で表示される。
【0020】
これらの熱点(A、B)は、仕事が実施される歯列(2、3)を区分化するように設計され、伝導によって熱を伝達することによって歯列(2、3)の異なる歯科片(4)を定義する。詳細には、熱シミュレーションはソフトウェアを使用して実施され、図3aに示されているように、熱点(A、B)はメッシュを介して、別の温度によって定義される点へ熱を伝達することが分かる。要約すると、互いに隣接する歯科片(4)は異なる温度の熱点(A、B)を含んでいるため、熱は、別の温度によって定義されている、隣接する歯科片(4)が開始する部分へ伝達される。熱がもはや伝達されない限界は、最小曲率領域に対応する、互いに隣接する歯科片(4)の間の境界である。最小曲率領域は、歯科片(4)同士の間、及び歯科片(4)と歯茎(4a)の間の空間に見出される。この方法によれば、熱は異なる歯科片(4)同士の間では伝達されないため、個々の歯科片(4)の幾何構造を隔離することができる。
【0021】
この区分化により、個々の歯科片(4)の幾何構造を隔離することができ、口内デバイス(1)を個々の患者のニーズに応じて非一様な方法で、個々の歯科片(4)の周りに個別に設計することができる。この方法によれば、使用者は、創出される口内デバイス(1)を極めて正確に取り扱うことができ、個々の歯科片(4)の機械的及び歯科的ニーズを満たすことができ、且つ、優れた快適性を患者に提供することができる。この方法によれば、最適設計を創出して、歯ぎしり、睡眠時無呼吸などのあらゆる顎又は歯科障害を治療することができ、又はアライナー或いはサージカル・ガイドを設計することができる。
【0022】
次に、歯科片(4)が分離されると、3D空間がそれらに割り当てられ、図4に示されているように、個々の歯科片(4)の重心(5b)からの3つの方向(x、y、z)を定義するベクトル即ち局所軸(5)及び重心(5b)を確立する。重心(5b)は、身体の重力の幾何学的中心の位置として理解される。個々の歯科片(4)の局所軸(5)は、隣接する歯科片(4)の重心(5b)に従って計算されることになり、隣接する重心(5b)同士の間の二等分線は個々の歯科片(4)の方向軸(Y)である。二等分線は、ある角度の頂点を原点とする平面の点及びその角度の辺から等距離の幾何学的場所として理解され、頂点は、解析された歯科片(4)の重心(5b)であり、また、角度の辺は、解析された歯科片(4)の重心(5b)を隣接する重心(5b)に結合する線である。方向軸(X)は方向軸(Y)に対して直角であり、また、方向軸(Z)は、初期データの中で与えられた軸と同じであり、即ち軸(Z)は、図4から分かるように、一般軸(5a)の軸(Z)に対して平行である。これらの軸(5)は、図5及び図6から分かるように、個々の歯科片(4)の周りの口内デバイス(1)の輪郭(6)の方向を定義する役割を担うことになる。
【0023】
次に、図5及び図6から分かるように、個々の歯科片(4)に対応する領域には曲線が画定されており、この曲線は、本発明の方法によるスプリント型口内デバイス(1)の最終輪郭(6)のための支持として働くことになる。口内デバイス(1)の輪郭表面(6)は、ベクトル(5)及び個々の歯科片(4)の表面曲線によって画定された外部線(6a)によって画定されており、また、独立して設計し、且つ、適合させることができる。次の図6には、方向(Y、Z)の平面における歯科片(4)の断面図が示されている。外部線(6a)は口内デバイス(1)の外部輪郭(6)を画定し、また、内部線(6b)は歯科片(4)の外部表面を画定している。外部線(6a)と内部線(6b)の間の距離は口内デバイス(1)の輪郭(6)の厚さ(6c)を画定している。この方法によれば、個々の歯科片(4)は、最後の臼歯を除き、表面案内曲線を有することになり、この表面案内曲線は、図5及び図6から分かるように、口内デバイス(1)の輪郭(6)のクロージャを得るために必要な程度だけこの方向平面(Y、Z)を回転させることができる。このステップにより、曲線の厚さ(6c)を画定している個々の断面を適合させ、且つ、画定して、歯科片毎に口内デバイス(1)の厚さ(6c)を決定することができ、患者の機械的又は補綴ニーズに応じて、外部線(6a)と内部線(6b)の間の距離を調整することができる。更に、このステップにより、図6に示されているように、対向する歯科片(40)との接触表面を監視することができる。それにより、歯科診断に応じて、また、無限の可能性を有する治療に応じて、スプリント(1)の異なる領域に非一様な厚さ(6c)のスプリント型口内デバイス(1)を生成することができる。
【0024】
本発明の方法によれば、患者の歯列(2、3)のメッシュを単一片として使用する代わりに、独立した幾何構造の歯科片(4)を使用してスプリント型口内デバイス(1)を設計し、且つ、製造することができる。言い換えると、方法は、初期データの幾何構造を追従することを強制されない表面を生成する。個々の歯科片(4)に対する口内デバイス(1)の輪郭(6)のこの高度に個人化された区分化及び適合は、患者の歯列(2、3)のメッシュをいくつかの独立した歯科片(4)に変換した本発明の方法の先行するステップのおかげで達成される。
【0025】
任意選択で、特定の望ましい接触領域では、設計に応じて、又は歯科基準に応じて、上顎歯列(2)と対向する下顎歯列(3)との接触がスプリント-スプリントではなく、歯科片-スプリントであるよう、厚さ(6c)を完全に除去することさえ可能である。これは、患者の口の中に置かれる口内デバイス(1)の総合厚さ(6c)を薄くすることによってより優れた快適性を患者に提供する、断続した口内デバイス(1)を達成する。更に、デバイス(1)を生成している間に患者が患者の歯列(2、3)のうちの一方の歯科片(4)を失うと、失った歯科片に材料が充填され、したがってデバイス(1)は追加材料を含んでいるため、後で他の必要な操作を実施するためにデバイス(1)の厚さ(6c)を完全に除去することができる。
【0026】
任意選択で、図7は、前方領域の輪郭(6)の厚さ(6c)を除去し、門歯歯科片が合致する前方孔(8)を創出することができる、本発明の方法の可能実施例を示したものである。前方孔(8)は、門歯によって加えられる荷重を歯科片(4)の根元の領域に向かって伝達することができるため、この前方孔(8)により、この荷重を軽減することができる。これは、患者のためのより優れた快適性を達成し、また、苦痛を軽減し、或いはあり得る将来の歯科問題を軽減する。これは、本発明の方法が、口内デバイス(1)の設計によって内力の作用を制御し、将来の咬合の変化を防止し、或いはそれが治療の目的である場合、咬合の変化を誘導することができる様子を示す実例である。
【0027】
口内デバイス(1)の厚さ(6c)が歯列(2、3)の歯科片(4)毎に画定されると、CADプログラムの次のステップは、図8から分かるように口内デバイス(1)の高さを表す制限曲線(7)が存在する先行するステップで画定された、口内デバイス(1)の最終輪郭(6)のシミュレーションを生成することである。次のステップは、口内デバイス(1)の最終輪郭(6)の高さを修正すること、即ちいくつかの点(7a)をCAD設計ではSplineと呼ばれる制限曲線(7)上に移すことにより、個々の歯科片(4)に対する口内デバイス(1)の高さを画定することである。
【0028】
高さ調整は、制限曲線(7)即ちスプラインのいくつかの点(7a)を個々の歯科片(4)から、図8に示されている最終曲線(7b)によって画定された所望の高さへ移すことによって実施される。点(7a)の高さを前庭領域及び舌領域(口の内側)の両方で調整して、個々の患者の基準又はニーズに対して口内デバイス(1)の高さを調整することができる。スプリントの高さは、患者の口の中に置かれた場合に最小の保持を保証するために、歯科片の赤道より上になることが推奨される。この方法によれば、基準に応じて、或いは患者の歯科的ニーズ又は治療ニーズに応じて、歯科片(4)の個々の断面における口内デバイス(1)の高さを画定することができる。
【0029】
更に、代替として、本発明の方法の別の可能実施例は、歯科片同士の間に形成された空間として画定される、歯茎(4a)によって占有される少なくとも1つの隣接面間領域における口内デバイス(1)の高さの修正からなっている。この修正は、制限曲線(7)の点(7a)を歯科片の赤道の下方の線へ移動させ、図9に示されているように切欠き即ち垂直方向の溝(9)を生成して、より快適な挿入力で、歯列(2、3)中における口内デバイス(1)の保持を保証することからなっている。
【0030】
口内デバイス(1)の厚さ(6c)及び高さが調整されると、個々の歯科片(4)における最終輪郭(6)が生成され、CADプログラムの中に作成された設計が受け入れられる。引き続いて口内デバイス(1)のすべての断片、即ち個々の歯科片(4)のすべての幾何構造が一体に結合され、口内デバイス(1)を再びメッシュに変換し、その時点から、全体として口内デバイス(1)として動作する。口内デバイス(1)のメッシュが生成されると、歯列(2、3)と対向する歯列(2、3)の交点が計算され、患者のニーズに応じて、歯列(2、3)同士の間の接触領域における材料の望ましい量を画定することができる。
【0031】
図10から分かるように、口内デバイス(1)をメッシュに変換した後の方法の次のステップは、口内デバイス(1)をマップして、歯列(2、3)同士の間の接触領域を視覚化することである。通常、ソフトウェアの設計では、歯列(2、3)同士の間の接触は、歯列(2、3)と対向する歯列との接触即ち交差に応じた少なくとも3つの陰影によって定義される色の勾配を使用して定義される。通常、色勾配は、図10に示されているように、交差の程度に応じた赤-橙-緑である。この方法によれば、ソフトウェア・ツールの中に確立された基準に従って、材料を追加し、或いは除去する領域を単純に示し、且つ、材料を追加するか除去するかどうかを単純に選択することにより、患者を煩わせることになる接触領域における材料の量を少なくすることができ、或いは多くすることができる領域を視覚化することができる。このステップにより、歯科歯列(2、3)同士の間の口内デバイス(1)の接触を適合させることができ、咬合を手動で印刷し、成形することなく、適切な咬合調整を達成することができる。
【0032】
口内デバイス(1)における材料の量が患者の補綴ニーズに適合され、且つ、先行するステップが検証されると、最後から2番目のステップは、ブール演算を実施することからなっている。ブール演算は、数学演算を介してそれらのうちの2つを組み合わせることによって対象を創出するための演算として定義され、その2つの対象は、控除され、結合され、或いは交差されて新しい対象を形成することができる。CADを使用する設計分野では、これは、他の体積の追加、控除又は交差から体積を得るための平面、表面又は立体を使用して3Dで使用される技法である。
【0033】
任意選択で、ブール演算による本発明の方法の可能実施例によれば、歯列(2、3)同士の間の接触領域に、図12に見られる孔などの孔(12a)と同様のハウジングを生成することができる。上記ハウジングの内側には、チタン又はワイヤーなどの抵抗材料でできたボタンが存在している。口内デバイス(1)に挿入されたこれらのボタンにより、ハウジングが構築される領域を補強することができ、また、接触点、即ち歯列(2、3)同士の間の強力な咬合の領域により大きい硬さ及び耐性を提供することができる。この方法によれば、輪郭(6)に材料を追加し、或いは輪郭(6)の厚さ(6c)を分厚くする代わりに、口内デバイス(1)は、より薄い厚さ(6c)の輪郭(6)で、より大きい頑丈性を獲得する。この方法によれば、口内デバイス(1)のこわさを制御することができ、したがって快適な咬合及び強力な口内デバイス(1)が得られる。別法としては、より柔軟性に富んだ咬合を必要とする治療のために、弾性材料でできたボタンをハウジングに挿入することも可能である。要するに、これらの代替演算によれば、設計の耐性及び柔軟性を得ることができる。
【0034】
更に、睡眠時無呼吸治療の場合、下顎骨アドバンスメント機構を接続する必要があり、これらの下顎骨アドバンスメント機構は、患者の上顎歯列(2)及び下顎歯列(3)の側面に固定され、下顎歯列(3)が上顎歯列(2)に対して前進した状態を維持する方法で配置され、且つ、張力が加えられる。本発明の方法の別の可能実施例によれば、図11に示されている突起などの突起(12)を生成し、或いは独立した部品として突起(12)を保持するための、図12に示されている接着剤を置くことが意図されたギャップ(12a)を生成することにより、下顎骨アドバンスメント機構又は任意の他の歯科矯正システムを口内デバイス(1)の中に固定することができる。
【0035】
本発明の設計方法の別の可能ブール演算は、患者が歯科片(4)を失ったスプリントの領域におけるスプリント型デバイス(1)の中に案内孔を生成することからなっている。これらの孔は、サージカル・ガイドと共に使用される穿孔ツールを挿入し、且つ、案内するように働き、例えばインプラント又は他の同様のアプリケーションを配置するように働く金属製又は別の材料のデバイスを置くことが意図されている。
【0036】
本発明の方法の別の可能ブール演算は、口内デバイス(1)の内部表面に網状の構造を生成することに基づいている。内部網状構造は、引き続いて湾曲座標の変換を介して口内デバイス(1)の内部幾何構造に調整される、YZ平面の幾何学パターンから創出される。この方法によれば、より少ない材料を使用して、また、それと同時により優れた快適性を患者に与える、不規則な内部を有する、それほど剛直ではない口内デバイス(1)が得られる。
【0037】
本発明の方法の別の可能ブール演算は、上顎歯列又は下顎歯列(2、3)の内部部分に、特定の機能、例えば舌が勝手な位置を取らないよう、或いは押し付けてはならない領域で押し付けないよう、舌を教育する機能を有する、円錐形状などの定義済み突起形状をスプリント(1)に選択的に加えることからなっている。言い換えると、舌を門歯に押し付ける、或いは舌を門歯に対して位置付ける患者は、その位置を回避する方法で不愉快な表面を認識する。したがって、何ら機能的目的を有していないすべての顎運動である異常機能習慣を防止することができる。
【0038】
あらゆる修正が3D印刷を容易にするCADによってなされるため、本発明の設計方法のすべてのこれらの可能性により、個々の患者を治療するための口内(1)即ち下顎骨デバイスを正確に生成することができ、且つ、材料を節約することができる。
【0039】
最後に、CAD設計プログラムの方法及び使用を完成するために、図1から分かるように、口内デバイス(1)を観察するために歯科部分(4)が空にされ、患者の口の中に置かれる口内デバイス(1)のための入口-出口経路が画定され、通路は不規則にすることができる。本発明の場合、本発明は、スプリント(1)を患者の口に容易に、且つ、快適な方法でぴったりと合わせることができるよう、歯科医及び患者による外科でなされるように、口内デバイス(1)中への患者の実際の歯列(2、3)の入口をシミュレートするために、口内デバイス(1)中に患者の歯列(2、3)のネガを生成することからなっている。
【0040】
顎運動のシミュレーションを実施して、口内デバイス(1)が交差しているかどうか、即ち所望の治療を達成しているかどうかを観察することを同じく推奨することができる。このシミュレーションにより、口内デバイス(1)を3Dプリンタに送る前に、必要に応じて設計を修正することができる。
【0041】
コンピュータCADプログラムを使用した口内デバイス(1)の設計が終了すると、デバイス(1)を製造するために、3Dプリンタ又は他のCAMデバイスに送られる必要なすべてのデータを使用してファイルが作成される。
図1
図2
図3
図3a
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】