IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 深▲セン▼市研一新材料有限責任公司の特許一覧

特表2024-519765ジフルオロリン酸リチウムの製造方法、ジフルオロリン酸リチウム及び非水電解液電池
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】ジフルオロリン酸リチウムの製造方法、ジフルオロリン酸リチウム及び非水電解液電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/455 20060101AFI20240514BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240514BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240514BHJP
【FI】
C01B25/455
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569863
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 CN2021129085
(87)【国際公開番号】W WO2022242053
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110552376.3
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523024990
【氏名又は名称】深▲セン▼市研一新材料有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岳 敏
(72)【発明者】
【氏名】馮 天明
(72)【発明者】
【氏名】余 意
(72)【発明者】
【氏名】王 献明
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
5H029HJ14
(57)【要約】
ジフルオロリン酸リチウム及びその製造方法並びに用途であって、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素を利用して二フッ化四塩化リン酸リチウムを生成し、続いて二フッ化四塩化リン酸リチウムを炭酸リチウムと反応させてジフルオロリン酸リチウムと塩化リチウムの混合物を得、続いて精製することにより高純度のジフルオロリン酸リチウムを得る。この方法は、ステップが簡単で、コストが低く、反応時間が短く、転化率が高い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的に水がない場合、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素を第1の非水溶媒において撹拌反応させ、脱ガスして不純物を除去し、二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を得るステップ(1)と、
得られた二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を炭酸リチウム分散液に滴下して反応させ、濾過してジフルオロリン酸リチウムと塩化リチウムの濾過ケーキ混合物を得るステップ(2)と、
前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解し、不溶物を濾過により除去し、叩解液を濃縮し、さらに非極性溶媒を加えて結晶化し、ジフルオロリン酸リチウムを得るステップ(3)と、を含む、
ことを特徴とするジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項2】
六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素と炭酸リチウムとの仕込みモル比は、1:(1~1.5):(2~2.5)である、
ことを特徴とする請求項1に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムのモル濃度は、1.5~4.0mol/Lであり、好ましくは、1.5~2.5mol/Lである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素の前記第1の非水溶媒における反応温度は、20~100℃であり、好ましくは、50~90℃であり、より好ましくは、70~90℃であり、又は、
ステップ(1)において、脱ガスして不純物を除去することに用いられるガスは、不活性ガスであり、好ましくは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどのうちの1種又は2種以上であり、脱ガスして不純物を除去する温度は、60~120℃であり、好ましくは、70~100℃であり、より好ましくは、85~100℃である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)において、前記二フッ化四塩化リン酸リチウムと炭酸リチウムとの反応温度は、30~80℃であり、好ましくは、50~80℃であり、又は、
ステップ(2)において、炭酸リチウム分散液は、炭酸リチウムと第2の非水溶媒を混合して調製して得られ、炭酸リチウムと第2の非水溶媒の質量比は、1:(3~5)であり、好ましくは、1:(4.2~5)である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項6】
第1の非水溶媒と第2の非水溶媒は、それぞれ独立して環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、及び環状エーテルのうちの1種又は2種以上であり、好ましくは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項7】
ステップ(3)において、前記濾過ケーキ混合物と酢酸エチルとの質量比は、1:(1~2)であり、好ましくは、1:(1.90~2)であり、前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解する時間は、3~5hであり、又は、
ステップ(3)において、前記濃縮叩解液は、濾液を減圧蒸留することにより完了され、減圧蒸留温度は、40~80℃であり、好ましくは、45~65℃であり、より好ましくは、50~65℃である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項8】
ステップ(3)において、非極性溶媒は、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロルエタンのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項9】
ステップ(3)において、晶析の温度は、0~5℃であり、好ましくは、0~3.5℃である、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、結晶化を行った後、さらに濾過を行って濾過ケーキを得、且つ前記濾過ケーキを乾燥してジフルオロリン酸リチウムを得、濾過ケーキを乾燥する温度は、80~120℃であり、好ましくは、100~120℃である、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項11】
ステップ(1)とステップ(2)において、反応は、いずれも不活性ガスの雰囲気中で行われ、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法で製造され、そのうち、当該ジフルオロリン酸リチウムの純度は、≧99.8%であり、遊離酸の含有量は、≦50ppmであり、好ましくは、≦25ppmである、
ジフルオロリン酸リチウム。
【請求項13】
水分の含有量は、≦10ppmであり、Clの含有量は、≦1ppmであり、好ましくは、≦0.8ppmであり、不純物金属イオンの含有量の和は、≦2ppmであり、好ましくは、≦1.5ppmである、
ことを特徴とする請求項12に記載のジフルオロリン酸リチウム。
【請求項14】
正極、負極、及び請求項12又は13に記載のジフルオロリン酸リチウムを含有する電解液を含む、
非水電解液電池。
【請求項15】
請求項12又は13に記載のジフルオロリン酸リチウムの非水電解液電池の製造における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池技術の分野に関し、具体的にはジフルオロリン酸リチウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型の移動携帯式電源として、リチウムイオン電池は、従来の鉛蓄電池及びアルカリ乾電池よりも高い比容量及び放電電圧を有し、且つ環境への汚染が小さい。現在、リチウムイオン電池は、主に携帯式移動電源、携帯電話の電池として、電気自動車、自動車などに広く応用されて動力電池として用いられる。国の政策による大きなサポート、及び近年のリチウムイオン電池技術の蓄積により、リチウムイオン電池産業は、大幅に発展している。しかし、現在、リチウムイオン電池にまだ多くの欠陥が存在し、リチウム塩の開発において、従来の六フッ化リン酸リチウムは、リチウムイオン電池の極端な条件での使用を満たすことができない。ジフルオロリン酸リチウムは、リチウムイオン電池の高低温性能を改善することができ、そのマイナス20℃のサイクル安定性を顕著に向上させ、且つ高温条件でより安定したSEI膜を形成することができ、電解液が電極及び集電体を腐食することを効果的に阻止し、それによりリチウムイオン電池の高低温性能を改善することができる。また、ジフルオロリン酸リチウムは、六フッ化リン酸リチウムよりも優れた安定性を有し、六フッ化リン酸リチウムよりも水及び酸素に対する耐性が顕著に強い。そのため、ジフルオロリン酸リチウムは、新型のリチウム塩の添加剤として、大きな工業的価値を有する。
【0003】
ジフルオロリン酸リチウムの生産方法には多くの方法があり、ジフルオロリン酸リチウム経路法、六フッ化リン酸リチウム経路法、その他の方法という3つの経路に大別されるが、既存のジフルオロリン酸リチウムの製造方法は、プロセスが複雑であり、生産機器に対する要求が高く、副生成品が多く、固体を生成しにくいなどにより、ジフルオロリン酸リチウムの工業化及び普及に非常に不利である。
【0004】
特許文献1において、五フッ化リンとフッ化ホスホリルを用いてリン酸リチウムと反応させてジフルオロリン酸リチウム製品を製造することに言及し、用いられた技術ルートは、高価、劇毒、高危険の五フッ化リンガスを用い、プロセスが複雑であり、且つ生産機器に対する要求が厳しく、製品のコストが高い。
【0005】
特許文献2において、六フッ化リン酸リチウムを用いて水と反応させてジフルオロリン酸リチウムを製造し、ハロゲン化シロキサン化合物を分解することができるが、この方法を採用して生産し、六フッ化リン酸リチウムの分解を引き起こしやすく、しかも、反応過程を制御しにくく、且つ副生成物が多く、生産に非常に不利である。
【0006】
特許文献3において、六フッ化リン酸リチウムと炭酸リチウムを採用して非プロトン性溶媒においてジフルオロリン酸リチウムを製造する方法を記述したが、当該方法は、反応時間が長く、転化率が低く、しかも、当該方法は、ジフルオロリン酸リチウムの非水溶液しか得られず、高純度のジフルオロリン酸リチウムを得ることができず、ジフルオロリン酸リチウムの普及に非常に不利であり、且つ当該塩溶液において、多かれ少なかれ有機不純物及びフッ化リチウムがあり、これらの不純物は、電池の性能に悪影響を与える可能性がある。
【0007】
特許文献4において、ジフルオロリン酸リチウムの製造方法を開示しており、そのうち、六フッ化リン酸リチウム、シュウ酸塩及び四塩化ケイ素を有機溶媒において反応させ、前記反応は、保護雰囲気下で行われる。しかし当該方法の収率が低く、特に酸価が高く、電解液の性能に影響を与え、当該方法においてアルカリ液を採用して酸性を中和することもなく、シュウ酸リチウムは、有機溶媒においてアルカリ性がほとんどない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許第103052592号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第108147385号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101847753号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第112591727号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既存技術に存在する欠陥について、本発明の目的は、製造プロセスが簡単で、コストが低く、反応時間が短く、転化率が高く、過程全体を制御しやすく、水を生成せず、精製後に副生成物不純物がないジフルオロリン酸リチウム固体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ジフルオロリン酸リチウムの製造方法を提供し、
基本的に水がない場合、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素を第1の非水溶媒において撹拌反応させ、脱ガスして不純物を除去し、二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を得るステップ(1)と、
得られた二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を炭酸リチウム分散液に滴下して反応させ、濾過してジフルオロリン酸リチウムと塩化リチウムの濾過ケーキ混合物を得るステップ(2)と、
前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解し、不溶物を濾過により除去し、叩解液を濃縮し、さらに非極性溶媒を加えて結晶化し、ジフルオロリン酸リチウムを得るステップ(3)と、を含むことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素と炭酸リチウムとの仕込みモル比は、1:(1~1.5):(2~2.5)であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムのモル濃度は、1.5~4.0mol/Lであり、好ましくは、1.5~2.5mol/Lであることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素の前記第1の非水溶媒における反応温度は、20~100℃であり、好ましくは、50~90℃であり、より好ましくは、70~90℃であることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(1)において、脱ガスして不純物を除去することに用いられるガスは、不活性ガスであり、好ましくは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどのうちの1種又は2種以上であり、脱ガスして不純物を除去する温度は、60~120℃であり、好ましくは、70~100℃であり、より好ましくは、85~100℃であることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(2)において、前記二フッ化四塩化リン酸リチウムと炭酸リチウムとの反応温度は、30~80℃であり、好ましくは、50~80℃であることを特徴とする。
【0016】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(2)において、炭酸リチウム分散液は、炭酸リチウムと第2の非水溶媒を混合して調製して得られ、炭酸リチウムと第2の非水溶媒の質量比は、1:(3~5)であり、好ましくは、1:(4.2~5)であることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、第1の非水溶媒と第2の非水溶媒は、それぞれ独立して環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、及び環状エーテルのうちの1種又は2種以上であり、好ましくは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランのうちの1種又は2種以上であることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(3)において、前記濾過ケーキ混合物と酢酸エチルとの質量比は、1:(1~2)であり、好ましくは、1:(1.90~2)であり、前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解する時間は、3~5hであることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(3)において、前記濃縮叩解液は、濾液を減圧蒸留することにより完了され、減圧蒸留温度は、40~80℃であり、好ましくは、45~65℃であり、より好ましくは、50~65℃であることを特徴とする。
【0020】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(3)において、非極性溶媒は、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロルエタンのうちの1種又は2種以上であることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(3)において、晶析の温度は、0~5℃であり、好ましくは、0~3.5℃であることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(3)において、結晶化を行った後、さらに濾過を行って濾過ケーキを得、且つ前記濾過ケーキを乾燥してジフルオロリン酸リチウムを得、濾過ケーキを乾燥する温度は、80~120℃であり、好ましくは、100~120℃であることを特徴とする。
【0023】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムの製造方法に基づき、ステップ(1)とステップ(2)において、反応は、いずれも不活性ガスの雰囲気中で行われ、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1種又は2種以上であることを特徴とする。
【0024】
本発明は、ジフルオロリン酸リチウムをさらに提供し、それは請求項1~14のいずれか1項に記載の製造方法で製造され、そのうち、当該ジフルオロリン酸リチウムの純度は、≧99.8%であり、遊離酸の含有量は、≦50ppmであり、好ましくは、≦25ppmである。
【0025】
好ましくは、上記ジフルオロリン酸リチウムに基づき、水分の含有量は、≦10ppmであり、Clの含有量は、≦1ppmであり、好ましくは、≦0.8ppmであり、不純物金属イオンの含有量の和は、≦2ppmであり、好ましくは、≦1.5ppmであることを特徴とする。
【0026】
本発明は、正極、負極、及び前述したジフルオロリン酸リチウムを含有する電解液を含む非水電解液電池をさらに提供する。
【0027】
上記ジフルオロリン酸リチウムの非水電解液電池の製造における用途である。
【発明の効果】
【0028】
既存技術に比べて、本発明は、以下の利点及び効果を有する。
【0029】
本発明にて提供されるジフルオロリン酸リチウム固体の製造方法は、二段階法の反応を採用し、プロセスが簡単で、原料が一般的な六フッ化リン酸リチウム、四塩化ケイ素及び炭酸リチウムを採用し、いずれも一般的な安価な大量化学薬品であり、製造コストが低い。第1の段階の反応過程で中間体LiPFClを生成し、その構造は、4つの塩素原子を含み、塩素原子の原子半径が大きく、リン元素との結合力がフッ素原子よりも小さく、塩素原子がより脱離しやすく、そのため、ジフルオロリン酸リチウムをより生成しやすく、速度がより速く、反応時間がより短く、且つ反応全過程に水が関与せず、生成物の加水分解による不純物が生じることにより、純度が高くないという問題を回避する。本発明では、炭酸リチウムを反応原料として用い、安価で、由来が広く、且つやや過剰であり、通常、単独で有機溶媒中の酸除去に用いられるため、本発明では、遊離酸を中和し、酸価を低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記技術的解決手段をよりよく理解するために、以下、具体的な実施例により本願の技術的解決手段を詳細に説明し、本願の実施例及び実施例における具体的な特徴は、本願の技術的解決手段に対する詳細な説明であり、本願の技術的解決手段を限定するものではなく、矛盾しない場合、本願の実施例及び実施例における技術的特徴は、互いに組み合わせることができることを理解すべきである。
【0031】
本発明にて提供されるジフルオロリン酸リチウムの製造方法は、二段階の反応法であり、その対応する化学反応式は、以下のとおりである。
【0032】
LiPF+SiCl→LiPFCl+SiF
LiPFCl+2LiCO→LiPO+2CO↑+4LiCl
【0033】
その具体的な好ましい手段において、本発明の製造方法の具体的なステップは、以下のとおりである。
【0034】
(1)基本的に水がない場合、不活性ガスの保護で、六フッ化リン酸リチウムを四塩化ケイ素と反応させ、二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を製造し、当該ステップの反応が完了した後に脱ガスして不純物を除去する必要があり、目的は、四フッ化ケイ素を取り除き、残留した四フッ化ケイ素が次のステップの反応に影響を与えることを防止することである。
【0035】
(2)製造した二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を炭酸リチウム分散液に滴下して反応させ、ジフルオロリン酸リチウムと塩化リチウムの混合物を得ることができる。
【0036】
(3)上記濾過ケーキを酢酸エチルで叩解し、濾過し、叩解液を収集し、さらに濃縮し、その後に非水溶媒を加えて晶析して濾過ケーキを得、乾燥後、ジフルオロリン酸リチウムを得る。
【0037】
ステップ(1)において、第1の非水溶媒中で反応を行う。第1の非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エステル、鎖状エステル、及び環状エーテルのうちの1種又は2種以上の混合物であり、好ましくは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランのうちの1種又は2種以上の混合物であり、より好ましくは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネートである。六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素とのモル比は、1:(1~1.5)であり、四塩化ケイ素を過剰にさせ、六フッ化リン酸リチウムが完全に反応することを保証し、モル比が1:1よりも低いと、反応液に大量の六フッ化リン酸リチウムが残留し、1:1.5よりも高いと、大量の四塩化ケイ素が残留し、後続除去にコストがかかる。六フッ化リン酸リチウムの濃度は、1.5~4.0mol/Lであり、濃度が1.5mol/Lよりも低いと、反応速度に影響を与え、濃度が4.0mol/Lよりも高いと、その溶液が変色しやすく、最終製品に影響を与える。反応温度は、20~100℃であり、好ましくは、50~90℃であり、さらに好ましくは、70~90℃である。反応温度が低すぎると反応速度が低く、温度が高すぎると、六フッ化リン酸リチウムの分解が速くなり、副生成物不純物が生じやすい。脱ガスして不純物を除去する温度は、60~120℃であり、好ましくは、70~100℃であり、より好ましくは、85~100℃である。脱ガスの温度が60℃よりも低いと、反応液中の塩素化合物の濃度が高く、非水電解液添加剤として用いられることができない。脱ガスの温度が120℃よりも高いと、溶液の突沸を引き起こし、材料の損失を引き起こす。脱ガスして不純物を除去するために用いられるガスは、不活性ガスであり、好ましくは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどのうちの1種又は2種以上である。
【0038】
ステップ(2)において、不活性ガス保護下で反応を行う。炭酸リチウム分散液は、炭酸リチウムと第2の非水溶媒で調製されてなり、炭酸リチウムと第2の非水溶媒との質量比は、1:(3~5)であり、好ましくは、1:(4.2~5)であり、質量比が1:3よりも低いと、正常なスラリー状の炭酸リチウムの均一分散液を形成することができず、反応が不十分となる可能性があり、質量比が1:5よりも大きければ、溶媒の無駄遣いになる。第2の非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エステル、鎖状エステル、及び環状エーテルのうちの1種又は2種以上の混合物であり、好ましくは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランのうちの1種又は2種以上の混合物であり、より好ましくは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネートである。六フッ化リン酸リチウムと炭酸リチウムとのモル比は、1:(2~2.5)であり、この限定値は、二フッ化四塩化リン酸リチウムが完全に反応することを保証するためであり、1:2.5よりも高いと、炭酸リチウムの無駄遣いになり、1:2よりも低いと、反応が完全に行うことができない。反応温度は、20~80℃であり、好ましくは、30~80℃であり、温度が20℃よりも低いと、反応速度が遅すぎ、温度が高すぎると、副反応が生じてPO 、PO 3-を生成しやすい。
【0039】
ステップ(1)と(2)において、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1種又は2種以上である。
【0040】
ステップ(3)において、酢酸エチルの重量は、濾過ケーキ混合物の重量の1~2倍であり、好ましくは、1.90~2倍であり、1倍よりも低ければ、生成物の抽出が不完全になりやすく、収率の低下になり、2倍を超えると溶媒の無駄遣いになる。叩解時間は、3~5hであり、ジフルオロリン酸リチウムを酢酸エチル溶液に十分に溶解させる。叩解液を収集して濃縮することは、濾液を減圧蒸留することにより完了され、減圧蒸留温度は、40~80℃であり、好ましくは、45~65℃であり、より好ましくは、50~65℃であり、40℃よりも低いと、蒸留速度が遅く、80℃よりも高いとジフルオロリン酸リチウムが溶媒に持ち込まれる可能性があり、収率に一定の損失をもたらす。
【0041】
晶析溶媒は、弱極性又は非極性溶媒を選択して晶析を行い、好ましくは、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロルエタンのうちの1種又は2種以上であり、晶析の温度は、0~5℃であり、晶析時間は、2~5hである。濾過ケーキの乾燥温度は、80~120℃であり、好ましくは、100~120℃であり、乾燥時間は、8~15hであり、好ましくは、12~15hである。所望の晶析効果を達成できれば、それらについて特に限定されない。
【0042】
本発明の方法で製造して得られたジフルオロリン酸リチウムは、純度が≧99.8%であり、遊離酸の含有量が≦50ppmであり、水分の含有量が≦10ppmであり、Clの含有量が≦1ppmであり、好ましくは、≦0.8ppmであり、不純物金属イオンの含有量の和が≦2ppmであり、好ましくは、≦1.5ppmである。
【0043】
(実施例)
本発明で用いられた原料又は試薬は、いずれも市場の主流メーカーから購入されたものであり、生産メーカー又は濃度を明記していない場合、いずれも日常的に入手可能な二級規格の原料又は試薬であり、所望の作用を果たすことができれば、特に制限されない。本実施例で用いられた計器設備は、いずれも市場の主要なメーカーから購入されたものであり、所望の役割を果たすことができれば、特に限定されない。本実施例では、具体的な技術又は条件を明記していない場合、当業者内の文献に記述された技術又は条件に従って、又は製品の明細書に従って行った。
【0044】
原料と計器について、
グローブボックスは、ミクローナから購入され、型番がSiemens S7であり、
真空乾燥ボックスは、上海一恒から購入され、型番がDZF-6050であり、
イオンクロマトグラフィーは、メトローム833型高圧イオンクロマトグラフィーを採用し、
誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)は、吉天計器ICP-5000誘導結合プラズマ発光分光分析装置を採用し、
カールフィッシャー法試験は、精泰SF-3カールフィッシャー水分試験機を採用して水分試験を行い、
ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、酢酸エチル、四塩化ケイ素は、アラジン試薬ネットから購入され、
六フッ化リン酸リチウムは、森田新能源(張家港)から購入され、
炭酸リチウムは、ガンフォンリチウムから購入された。
【0045】
(実施例1)
(1)水分の含有量が10質量ppmよりも低いグローブボックスで、250mlの三口フラスコを用意し、水分の含有量が10質量ppm以下のジメチルカーボネート150mlをフラスコ内に加え、三口フラスコをグローブボックスの冷蔵庫内に置いて冷凍し、続いて45.0gの六フッ化リン酸リチウム(0.296mol、分子量151.9g/mol)を秤量し、六フッ化リン酸リチウムのモル濃度を1.97mol/Lとなるようにした。冷凍後のジメチルカーボネート溶媒にゆっくりと溶解し、溶解過程における溶液温度を5~10℃に制御した。操作が完了した後、上記三口フラスコをグローブボックス外に移し、常温オイルバス鍋内に置いた。50.29gの四塩化ケイ素(0.296mol、四塩化ケイ素の分子量169.9g/mol)を秤量し、定電圧滴下漏斗内に急速に加え、続いて凝縮管、定電圧滴下漏斗を取り付け、体系に窒素ガス保護を行った。続いてオイルバス温度を50℃までゆっくりと上昇させると同時に、三口フラスコに四塩化ケイ素をゆっくりと滴下して反応させ、排ガスを、導管を介して水酸化ナトリウム水溶液に導入して吸収した。尾部吸引口に気泡が出なくなるまで反応した時、続いて2~3h再反応させ、反応が終了した。この時、反応液の温度を80℃に上げ、三口フラスコ内にバブラーを挿入して窒素ガスでゆっくりと泡立たせ、泡立されたガスを水酸化ナトリウム水溶液で吸収し、濡れたpH試験紙が泡立された気泡に接触して中性になるまで、残存した四塩化ケイ素と四フッ化ケイ素ガスが完全に排出されたことを説明した。この時、第1の段階で反応して生成したLiPFCl溶液を室温まで冷却し、定電圧滴下漏斗に急速に導入して密封して使用に備えた。
【0046】
(2)もう1つの500mlの三口フラスコに140mlの水分の含有量が10質量ppmよりも小さいジメチルカーボネート溶媒を加え、オイルバス鍋内に置いて室温で撹拌し、45.8gの炭酸リチウム(0.62mol、炭酸リチウムの分子量が73.9g/mol)を秤量し、三口フラスコ内に急速に加えて均一に撹拌し、炭酸リチウムのジメチルカーボネートスラリー液を形成した。前のステップ(1)で得られたLiPFCl溶液を入れた定電圧滴下漏斗と凝縮管を当該ステップ(2)の三口フラスコに取り付け、窒素ガス保護を行い、30℃でLiPFCl溶液をゆっくりと滴下し、生じた二酸化炭素ガスを排ガス吸収瓶に導入し、水酸化ナトリウム溶液で吸収し、排ガス吸収瓶内に気泡が出なくなるまで反応し、反応が終了した。室温まで冷却し、急速に濾過し、118gの湿潤固体混合物(濾過ケーキ混合物)を得、これをフラスコ内に移した。
【0047】
(3)ステップ(2)で得られた濾過ケーキ混合物に酢酸エチル160ml(144.32g)を加え、室温で叩解し、3.5h叩解した後に濾過し、叩解液を収集し、50℃で減圧蒸留を行い、適当な飽和状態まで蒸留し、減圧蒸留を停止して0℃程度まで冷却し、ジクロロメタンを加えて撹拌結晶を行い、結晶時間が3hであり、濾過した後、純白色粉末状の濾過ケーキを得、それを真空乾燥ボックス内に置き、120℃で10h乾燥し、純白色粉末状のジフルオロリン酸リチウム固体29.5gを得、収率が93.2%であった。
【0048】
前記高純度のジフルオロリン酸リチウムは、高純度の白色粉末状固体であり、イオンクロマトグラフィーによりその純度が≧99.9%であることを検出し、滴定法により遊離酸が20ppmであることを検出し、カールフィッシャー法により水分が≦10ppmであることを測定し、滴定法によりClの含有量が0.3ppmであることをテストし、ICP-OES法により不純物金属イオンの含有量の和が0.5ppmであることを測定した。具体的には表3を参照されたい。
【0049】
(実施例2~6)
表1と表2により各種物質及びその使用量、条件パラメータなどを選定した以外、その他は、実施例1と同様にした。
【0050】
(比較例1)
中国特許出願公開第107381531号明細書に開示された「六フッ化リン酸リチウム+炭酸リチウム+無水無酸素状態→ジフルオロリン酸リチウム」の技術的ルートに従ってジフルオロリン酸リチウムを製造した。
【0051】
1Lの容器に600mlのジエチルカーボネート(DEC)を加え、1.0molの炭酸リチウムを添加し、62℃まで昇温し、続いて0.5molの六フッ化リン酸リチウムをゆっくりと投入し、温度を68℃に制御し、添加した後に73℃まで昇温し、2h撹拌し、得られた反応液を濾過し、濾過した後、濾過ケーキの湿潤固体102gを得、酢酸エチル153gを加えて5h叩解し、続いて不溶性濾滓を濾過により除去し、得られた濾液を60℃で適当な飽和状態まで減圧蒸留し、0℃の氷浴に入れ、貧溶媒のジクロロメタンを加えて撹拌して晶析し、結晶時間が4hであり、得られたジフルオロリン酸リチウム製品を真空乾燥ボックス内に入れて120℃で10h乾燥し、39.42gのジフルオロリン酸リチウム固体を得、収率が73.0%であり、関連パラメータテストを表3に示した。
【0052】
(比較例2)
中国特許出願公開第108128764号明細書に開示された「六フッ化リン酸リチウム+炭酸リチウム+超純水→ジフルオロリン酸リチウム」の技術的ルートに従ってジフルオロリン酸リチウムを製造した。
【0053】
152g(1.0mol)の六フッ化リン酸リチウムを1000mlのジメチルカーボネートに溶解し、0.5gの超純水を加え、80℃まで昇温し、続いて148g(2.0mol)の炭酸リチウムを加え、1.5h撹拌反応させ、濾過した後、濾過ケーキの湿潤固体235gを得、酢酸エチル329gを加えて5h叩解し、続いて不溶性濾滓を濾過により除去し、得られた濾液を60℃で適当な飽和状態まで減圧蒸留し、0℃の氷浴に入れ、貧溶媒のジクロロメタンを加えて撹拌して晶析し、晶析時間が5hであり、得られたジフルオロリン酸リチウム製品を真空乾燥ボックス内に入れて120℃で12h乾燥し、98.5gのジフルオロリン酸リチウム固体を得、収率が92.1%であり、関連パラメータテストを表3に示した。
【0054】
(比較例3)
特許第6226643号公報に開示された「六フッ化リン酸リチウム+塩化物+水(無溶媒)→ジフルオロリン酸リチウム」及び韓国登録特許第10-2218938号公報に開示された「六フッ化リン酸リチウム+塩化物(塩化リチウム、四塩化ケイ素など)+水蒸気(水から酸素元素を供給)→ジフルオロリン酸リチウム」の方法に従ってジフルオロリン酸リチウムを製造した。
【0055】
505gのエチルメチルカーボネートに152g(1.0mol)のLiPF6と258.1g(2.0mol)のジメチルジクロロシランを溶解し、0℃に冷却した。次に36g(2mol)の水をゆっくりと滴下した後、25℃まで昇温し、3時間撹拌し、続いて30度まで昇温し、まず減圧予備脱ガスを行い、続いて30℃、絶対圧力30Paで本脱ガスし、得られたスラリー状液を濾過し、湿潤濾過ケーキ217gを得、325.5gの酢酸エチルを加えて4h叩解し、続いて不溶性濾滓を濾過により除去し、得られた濾液を60℃で適当な飽和状態まで減圧蒸留し、0℃の氷浴に入れ、貧溶媒のジクロロメタンを加えて撹拌して晶析し、晶析時間が4hであり、得られたジフルオロリン酸リチウム製品を真空乾燥ボックス内に入れて120℃で10h乾燥し、94.7gのジフルオロリン酸リチウム固体を得、収率が87.7%であり、関連パラメータテストを表3に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
記:DMCは、ジメチルカーボネートであり、DECは、ジエチルカーボネートであり、EMCは、エチルメチルカーボネートであった。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すように、実施例1~6と比較例1、2、3のテスト結果を分析すると、実施例1~6では、比較例1、2、3に比べて、収率の点で優れた効果があり、製品純度の点で大きな優位性があり、本発明の反応系では、水を含まず、水を生成しないため、製品純度と含水量の点で絶対的な優位性があることが分かった。
【0061】
テストの結果から、実施例2、4、6は、純度、収率の点で効果がより高く、叩解溶媒の加え量が相対的に多い方が有利で好ましいことが分かった。
【0062】
要すると、本発明は、まず六フッ化リン酸リチウムを四塩化ケイ素と反応させ、中間体を製造し、さらに中間体を利用して炭酸リチウムと反応させてジフルオロリン酸リチウムを生成し、当該中間体は、炭酸リチウムとより徹底的に反応することができ、直接製品純度及び収率が比較例よりも高いと表現し、また、本発明は、脱塩素して不純物を除去することにより、塩素イオンの含有量を1ppm以下に低減することができ、本発明の反応系において、水を含まず、水を生成せず、得られた製品の水分の含有量は、いずれも10ppm以下に低減することができ、リチウム電池応用の実際要求を満たした。
【0063】
以上記載したのは、本発明の具体的な実施形態に過ぎないが、本発明の保護範囲は、これに限定されず、以上は、具体的な実施例を応用して本発明を説明し、本発明の理解を助けるために過ぎず、本発明を限定しない。本発明の属する技術分野の技術者は、本発明の概念に基づき、さらにいくつかの簡単な推断、変形又は置換を行うことができる。これらの推断、変形又は置換手段も本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0064】
(付記)
(付記1)
基本的に水がない場合、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素を第1の非水溶媒において撹拌反応させ、脱ガスして不純物を除去し、二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を得るステップ(1)と、
得られた二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を炭酸リチウム分散液に滴下して反応させ、濾過してジフルオロリン酸リチウムと塩化リチウムの濾過ケーキ混合物を得るステップ(2)と、
前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解し、不溶物を濾過により除去し、叩解液を濃縮し、さらに非極性溶媒を加えて結晶化し、ジフルオロリン酸リチウムを得るステップ(3)と、を含む、
ことを特徴とするジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0065】
(付記2)
六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素と炭酸リチウムとの仕込みモル比は、1:(1~1.5):(2~2.5)である、
ことを特徴とする付記1に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0066】
(付記3)
ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムのモル濃度は、1.5~4.0mol/Lであり、好ましくは、1.5~2.5mol/Lである、
ことを特徴とする付記1又は2に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0067】
(付記4)
ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素の前記第1の非水溶媒における反応温度は、20~100℃であり、好ましくは、50~90℃であり、より好ましくは、70~90℃であり、又は、
ステップ(1)において、脱ガスして不純物を除去することに用いられるガスは、不活性ガスであり、好ましくは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどのうちの1種又は2種以上であり、脱ガスして不純物を除去する温度は、60~120℃であり、好ましくは、70~100℃であり、より好ましくは、85~100℃である、
ことを特徴とする付記1~3のいずれか1つに記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0068】
(付記5)
ステップ(2)において、前記二フッ化四塩化リン酸リチウムと炭酸リチウムとの反応温度は、30~80℃であり、好ましくは、50~80℃であり、又は、
ステップ(2)において、炭酸リチウム分散液は、炭酸リチウムと第2の非水溶媒を混合して調製して得られ、炭酸リチウムと第2の非水溶媒の質量比は、1:(3~5)であり、好ましくは、1:(4.2~5)である、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0069】
(付記6)
第1の非水溶媒と第2の非水溶媒は、それぞれ独立して環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、及び環状エーテルのうちの1種又は2種以上であり、好ましくは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする付記1~5のいずれか1つに記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0070】
(付記7)
ステップ(3)において、前記濾過ケーキ混合物と酢酸エチルとの質量比は、1:(1~2)であり、好ましくは、1:(1.90~2)であり、前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解する時間は、3~5hであり、又は、
ステップ(3)において、前記濃縮叩解液は、濾液を減圧蒸留することにより完了され、減圧蒸留温度は、40~80℃であり、好ましくは、45~65℃であり、より好ましくは、50~65℃である、
ことを特徴とする付記1~6のいずれか1つに記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0071】
(付記8)
ステップ(3)において、非極性溶媒は、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロルエタンのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか1つに記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0072】
(付記9)
ステップ(3)において、晶析の温度は、0~5℃であり、好ましくは、0~3.5℃である、
ことを特徴とする付記1~8のいずれか1つに記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0073】
(付記10)
ステップ(3)において、結晶化を行った後、さらに濾過を行って濾過ケーキを得、且つ前記濾過ケーキを乾燥してジフルオロリン酸リチウムを得、濾過ケーキを乾燥する温度は、80~120℃であり、好ましくは、100~120℃である、
ことを特徴とする付記1~9のいずれか1つに記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0074】
(付記11)
ステップ(1)とステップ(2)において、反応は、いずれも不活性ガスの雰囲気中で行われ、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする付記1~10のいずれか1つに記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【0075】
(付記12)
付記1~11のいずれか1つに記載の製造方法で製造され、そのうち、当該ジフルオロリン酸リチウムの純度は、≧99.8%であり、遊離酸の含有量は、≦50ppmであり、好ましくは、≦25ppmである、
ジフルオロリン酸リチウム。
【0076】
(付記13)
水分の含有量は、≦10ppmであり、Clの含有量は、≦1ppmであり、好ましくは、≦0.8ppmであり、不純物金属イオンの含有量の和は、≦2ppmであり、好ましくは、≦1.5ppmである、
ことを特徴とする付記12に記載のジフルオロリン酸リチウム。
【0077】
(付記14)
正極、負極、及び付記12又は13に記載のジフルオロリン酸リチウムを含有する電解液を含む、
非水電解液電池。
【0078】
(付記15)
付記12又は13に記載のジフルオロリン酸リチウムの非水電解液電池の製造における用途。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的に水がない場合、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素を第1の非水溶媒において撹拌反応させ、脱ガスして不純物を除去し、二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を得るステップ(1)と、
得られた二フッ化四塩化リン酸リチウム溶液を炭酸リチウム分散液に滴下して反応させ、濾過してジフルオロリン酸リチウムと塩化リチウムの濾過ケーキ混合物を得るステップ(2)と、
前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解し、不溶物を濾過により除去し、叩解液を濃縮し、さらに非極性溶媒を加えて結晶化し、ジフルオロリン酸リチウムを得るステップ(3)と、を含む、
ことを特徴とするジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項2】
六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素と炭酸リチウムとの仕込みモル比は、1:(1~1.5):(2~2.5)である、
ことを特徴とする請求項1に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムのモル濃度は、1.5~4.0mol/Lである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムのモル濃度は、1.5~2.5mol/Lである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素の前記第1の非水溶媒における反応温度は、20~100℃であり、又は、
ステップ(1)において、脱ガスして不純物を除去することに用いられるガスは、不活性ガスであり、脱ガスして不純物を除去する温度は、60~120℃である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)において、六フッ化リン酸リチウムと四塩化ケイ素の前記第1の非水溶媒における反応温度は、50~90℃であり、又は、
ステップ(1)において、脱ガスして不純物を除去することに用いられるガスは、不活性ガスであり、脱ガスして不純物を除去する温度は、70~100℃である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、前記二フッ化四塩化リン酸リチウムと炭酸リチウムとの反応温度は、30~80℃であり、又は、
ステップ(2)において、炭酸リチウム分散液は、炭酸リチウムと第2の非水溶媒を混合して調製して得られ、炭酸リチウムと第2の非水溶媒の質量比は、1:(3~5)である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、前記二フッ化四塩化リン酸リチウムと炭酸リチウムとの反応温度は、50~80℃であり、又は、
ステップ(2)において、炭酸リチウム分散液は、炭酸リチウムと第2の非水溶媒を混合して調製して得られ、炭酸リチウムと第2の非水溶媒の質量比は、1:(4.2~5)である、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項9】
第1の非水溶媒と第2の非水溶媒は、それぞれ独立して環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、及び環状エーテルのうちの1種又は2種以上である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項10】
第1の非水溶媒と第2の非水溶媒は、それぞれ独立してジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項11】
ステップ(3)において、前記濾過ケーキ混合物と酢酸エチルとの質量比は、1:(1~2)であり、前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解する時間は、3~5hであり、又は、
ステップ(3)において、前記濃縮叩解液は、濾液を減圧蒸留することにより完了され、減圧蒸留温度は、40~80℃である
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項12】
ステップ(3)において、前記濾過ケーキ混合物と酢酸エチルとの質量比は、1:(1.90~2)であり、前記濾過ケーキ混合物を酢酸エチルで叩解する時間は、3~5hであり、又は、
ステップ(3)において、前記濃縮叩解液は、濾液を減圧蒸留することにより完了され、減圧蒸留温度は、45~65℃である、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項13】
ステップ(3)において、非極性溶媒は、n-ヘキサン、n-ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロルエタンのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項14】
ステップ(3)において、晶析の温度は、0~5℃である
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項15】
ステップ(3)において、結晶化を行った後、さらに濾過を行って濾過ケーキを得、且つ前記濾過ケーキを乾燥してジフルオロリン酸リチウムを得、濾過ケーキを乾燥する温度は、80~120℃である
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項16】
ステップ(1)とステップ(2)において、反応は、いずれも不活性ガスの雰囲気中で行われ、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載のジフルオロリン酸リチウムの製造方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の製造方法で製造され、そのうち、当該ジフルオロリン酸リチウムの純度は、≧99.8%であり、遊離酸の含有量は、≦50ppmである
ジフルオロリン酸リチウム。
【請求項18】
正極、負極、及び請求項17に記載のジフルオロリン酸リチウムを含有する電解液を含む、
非水電解液電池。
【国際調査報告】