(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】組織固定時間のリアルタイム予測
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20240514BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240514BHJP
G01N 1/36 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G01N29/07
G01N1/28 J
G01N1/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569967
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022062751
(87)【国際公開番号】W WO2022238467
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507179346
【氏名又は名称】ベンタナ メディカル システムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バウアー、ダニエル アール
【テーマコード(参考)】
2G047
2G052
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047AA12
2G047BC02
2G047GG20
2G047GG30
2G047GG33
2G052AA33
2G052AD32
2G052AD52
2G052GA26
2G052GA32
2G052JA04
(57)【要約】
本開示は、1つまたは複数の流体が生物学的検体、例えばヒト被験者に由来する組織試料中に最適に拡散される推定時間の予測を容易にするシステム(200)および方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、生物学的検体が1つまたは複数の固定剤によって最適に固定されるまでの推定時間の予測を容易にするシステム(200)および方法を提供する。他の実施形態では、生物学的検体が最適に固定されるであろう将来の時間の予測は、生物学的検体が固定剤によって最適に拡散されるであろう時間を予測するのに十分に正確であるとみなされている、生物学的検体の固定中の特定の時点に取得された飛行時間データに基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が、前記流体に浸漬された生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定する方法であって、
(a)前記流体に浸漬された前記生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得することと、
(b)取得された前記音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出された前記TOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出することと、
(c)前記導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、
(d)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、
(e)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される前記時間を推定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記流体が1つまたは複数の固定剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の固定剤がアルデヒド系固定剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記流体が、エタノール、キシレン、およびパラフィンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルが、前記過去の信頼度モデルおよび前記現在の信頼度モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルが、前記過去の信頼度モデル、前記現在の信頼度モデル、および前記将来の信頼度モデルのそれぞれを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の導出されたTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定された場合に、計算された前記過去の信頼度モデルが、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記所定数の取り出された計算された候補減衰定数が前記計算された平均減衰定数の前記所定の閾値パーセンテージ値内にあるかどうかの前記決定が、収束試験を実行することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記収束試験を実行することが、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された前記理論値および計算された前記実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定された前記パーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記平均減衰定数が、(i)前記候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数を取り出すことと、(ii)取り出された前記計算された減衰定数のそれぞれを平均化することと、によって導出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記候補TOFデータ点に先行する前記所定数のTOFデータ点が、少なくとも約3である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の閾値パーセンテージ値が約5%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の閾値パーセンテージ値が約2.5%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
計算された前記現在の信頼度モデルが、計算された現在の信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るときに、所定の現在の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記現在の信頼区間が、(a)前記計算されたTOF曲線の前記計算されたTOFデータ点の一部または全部を使用してTOF曲線の非線形回帰フィットを実行することと、(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の前記信頼区間を決定することと、によって計算される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
計算された前記将来の信頼度モデルが、計算された将来の信頼区間が所定の将来の信頼度モデル閾値を下回るときに、所定の将来の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記将来の信頼区間が、(a)前記計算されたTOF曲線の前記計算されたTOFデータ点の全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行することと、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の前記信頼区間を決定することと、(c)前記TOF曲線の平均信頼区間を計算することと、によって計算される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのバイオマーカーの存在について前記生物学的検体を染色することをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのバイオマーカーががんバイオマーカーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの存在について染色された前記生物学的検体をスコアリングすることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも2つのバイオマーカーの存在について前記生物学的検体を染色することをさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
1つまたは複数の固定剤に浸漬された生物学的検体の固定完了までの時間を予測する方法であって、
(a)前記1つまたは複数の固定剤に浸漬された前記生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得すること(401)と、
(b)取得された前記音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出された前記TOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出すること(402)と、
(c)導出された前記TOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算すること(403)と、
(d)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定すること(404)と、
(e)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて前記固定完了までの時間を予測すること(405)と
を含む、方法。
【請求項23】
前記生物学的検体が、最初に、約15℃未満の温度の1つまたは複数の固定剤に浸漬される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記音響データが、前記1つまたは複数の固定剤が約15℃を超える温度に加温された後に取得される、請求項22および23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記音響データが、前記1つまたは複数の固定剤が約25℃を超える温度に加温された後に取得される、請求項22および23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルが、前記過去の信頼度モデルおよび前記現在の信頼度モデルを含む、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルが、前記過去の信頼度モデル、前記現在の信頼度モデル、および前記将来の信頼度モデルのそれぞれを含む、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
流体が、前記流体に浸漬された生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定するための命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、
a.取得された音響データから飛行時間(TOF)データを導出することと、
b.導出された前記TOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、
c.計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、
d.前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される前記時間を推定することと
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項29】
1つまたは複数の減衰定数を計算するための命令をさらに含む、請求項28に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項30】
収束試験を実行するための命令をさらに含む、請求項28および29のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項31】
前記収束試験が、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された前記理論値および計算された前記実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定された前記パーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む、請求項30に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項32】
少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定するための命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、(a)流体に浸漬された生物学的検体から取得された音響データからTOFデータを導出することと、(b)過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを、前記過去、現在、および将来の信頼度モデルのそれぞれが同時に且つ独立して所定の閾値基準を満たすまで、継続的に計算することと、(c)前記過去、現在、および将来の信頼度モデルが同時に且つ独立して満たされた、導出された前記TOFデータに対応する時点を識別することと、を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項33】
複数の導出されたTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定された場合に、計算された前記過去の信頼度モデルが、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項32に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項34】
前記所定数の取り出された計算された候補減衰定数が前記計算された平均減衰定数の前記所定の閾値パーセンテージ値内にあるかどうかの前記決定が、収束試験を実行することを含む、請求項33に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項35】
前記収束試験を実行することが、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された前記理論値および計算された前記実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定された前記パーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項36】
前記平均減衰定数が、(i)前記候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数を取り出すことと、(ii)取り出された前記計算された減衰定数のそれぞれを平均化することと、によって導出される、請求項35に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項37】
計算された前記現在の信頼度モデルが、計算された現在の信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るときに、所定の現在の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項32から36のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項38】
前記現在の信頼区間が、(a)計算されたTOF曲線の計算されたTOFデータ点の一部または全部を使用してTOF曲線の非線形回帰フィットを実行することと、(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の前記信頼区間を決定することと、によって計算される、請求項37に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項39】
計算された前記将来の信頼度モデルが、計算された将来の信頼区間が所定の将来の信頼度モデル閾値を下回るときに、所定の将来の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項32から38のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項40】
前記将来の信頼区間が、(a)計算されたTOF曲線の計算されたTOFデータ点の全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行することと、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の前記信頼区間を決定することと、(c)前記TOF曲線の平均信頼区間を計算することと、によって計算される、請求項39に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項41】
前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定するための命令をさらに含む、請求項32から40のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項42】
前記流体が、1つまたは複数の固定剤を含む、請求項41に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項43】
前記流体が、エタノール、キシレン、およびパラフィンからなる群から選択される、請求項41に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項44】
流体が、前記流体に浸漬された生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定するためのシステム(200)であって、(i)1つまたは複数のプロセッサ(206)と、(ii)前記1つまたは複数のプロセッサ(206)に結合された1つまたは複数のメモリ(205)とを備え、前記1つまたは複数のメモリ(205)がコンピュータ実行可能命令を記憶し、前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つまたは複数のプロセッサ(206)によって実行されると、前記システム(200)に、
(a)流体に浸漬された生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で取得された音響データから飛行時間(TOF)データを導出することと、
(b)導出された前記TOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、
(c)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、
(d)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定することと
を含む動作を実行させる、システム。
【請求項45】
前記流体が、1つまたは複数の固定剤を含む、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記流体が、エタノール、キシレン、およびパラフィンからなる群から選択される、請求項44に記載のシステム。
【請求項47】
1つまたは複数の固定剤が、流体に浸漬された生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定する方法であって、
(a)前記生物学的検体を前記1つまたは複数の固定剤に浸漬することであって、前記1つまたは複数の固定剤が約15℃未満の温度に維持される、浸漬することと、
(b)前記流体に浸漬された前記生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得すること(401)と、
(c)取得された前記音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出された前記TOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出すること(402)と、
(d)前記導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算すること(403)と、
(e)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定すること(404)と、
(f)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定すること(405)と
を含む、方法。
【請求項48】
前記温度が約10℃未満である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記温度が約-10℃から約10℃の範囲である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記温度が約-4℃から約4℃の範囲である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
1つまたは複数の固定剤に浸漬された生物学的検体の固定完了までの時間を予測する方法であって、
(a)前記生物学的検体を前記1つまたは複数の固定剤に浸漬することであって、前記1つまたは複数の固定剤が約20℃を超える温度に維持される、浸漬することと、
(b)前記1つまたは複数の固定剤に浸漬された前記生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得することと、
(c)取得された前記音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出された前記TOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出することと、
(d)前記導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、
(e)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、
(f)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて前記固定完了までの時間を予測することと
を含む、方法。
【請求項52】
前記温度が約25℃を超える、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記温度が約30℃を超える、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記温度が約35℃を超える、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記温度が約40℃を超える、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記温度が約45℃を超える、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月13日に出願された米国仮特許出願第63/187,976号の出願日の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
適切な医学的診断および患者の安全性は、染色前に組織試料を適切に固定することを必要とする。したがって、組織試料の適切な固定のためのガイドラインが腫瘍学者および病理学者によって確立されている。例えば、米国臨床腫瘍学会(ASCO)によれば、HER2免疫組織化学分析のための中性緩衝ホルマリン溶液中での固定持続時間の現在のガイドラインは、少なくとも6時間、好ましくはそれ以上、最大72時間である。
【0003】
ホルマリンに曝露されているかまたは過剰に曝露されている組織では、いくつかの効果が観察される。組織試料を十分に長期間ホルマリンで処理しない場合、組織が標準的な組織処理に供された場合、組織形態は、典型的には非常に不良である。例えば、不適切に固定された組織では、組織が適切な架橋格子を形成する機会がないため、エタノールへのその後の曝露は、細胞構造を収縮させ、核を凝縮させる。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)などで固定組織が染色されると、細胞と組織構造との間に多くの白い空間が観察され、核が凝縮し、細胞質が失われ、試料はピンク色に見え、ヘマトキシリン染色ではバランスがとれていない。ホルマリンなどの固定剤にあまりにも長期間曝露された組織は、典型的には、おそらく核酸および/またはタンパク質の変性および分解のために、その後の免疫組織化学プロセスにうまく機能しない。結果として、これらの組織に対する最適な抗原回収条件は適切に機能せず、したがって、組織試料は染色されているように見える。
【0004】
組織試料を通る固定剤の拡散を監視することは、固定剤が組織試料全体に注入されたかどうかを決定するために有用であり、それによって、固定不足組織または過剰固定組織を最小化または制限する。例えば、組織が「過剰固定」である場合、拡散のための経路を制限する架橋分子の過度に広範なネットワークのために、組織を通して処理液を拡散させることが困難な場合がある。一方、組織が固定不足である場合、組織は、例えば自己触媒破壊によって分解され、組織および細胞形態の喪失、ならびに診断上重要なタンパク質および核酸マーカーの喪失をもたらし得る。アルゴリズムは、適切に固定され、したがって適切且つ理想的な染色を確実にするために、固定剤によってどの程度拡散させなければならないかを決定するために利用されてきた。例えば、米国特許第10,620,037号明細書(その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、拡散モデルと相関する音響飛行時間(TOF)ベースの情報を使用して試料の拡散率定数(すなわち、拡散係数)を計算して、生物学的検体の拡散率係数を再構成するためのシステムおよびコンピュータ実装方法を記載している。’037特許は、流体内に浸漬された生物学的検体の真の拡散率定数を決定する方法であって、複数の時点にわたる試料への拡散の空間依存性をシミュレートすることと、複数の候補拡散率定数のそれぞれについて、モデルTOFを生成することと、モデルTOFを実験TOFと比較して誤差関数を得ることと、を含み、誤差関数の最小値が真の拡散率定数をもたらす、方法をさらに記載している。
【0005】
別の例として、国際公開第2016/097164号(その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、音響信号の周波数掃引の誤差関数を取得することと、誤差関数の包絡線を生成することとを含む、材料(例えば、生物学的検体)を通過する音響信号のTOFを正確に計算するためのコンピュータ実装方法であって、飛行時間が誤差関数の最小値に基づく、コンピュータ実装方法を記載している。例えば、’164公報は、3つの方法のうちの1つ、すなわち(1)誤差関数の最小値のより正確な決定を可能にする誤差関数の包絡線を計算することによって音響波のTOFを計算すること、(2)超音響波周波数掃引データを複数のシミュレートされたTOF周波数掃引にフィッティングすることであって、TOFが最良フィットから直接計算される、フィッティングすること、および/または(3)超音響波周波数掃引の個々の線形部分に対して線形回帰分析を実行して、TOF計算の誤差を表す可能性がある周波数掃引の異常セクションの識別を可能にすること、を記載している。
【0006】
組織検体を通る固定剤の拡散速度は、データ点が連続的に収集されるため、実験を通して著しく変化する可能性がある。この変動性は、TOFシステムに固有のノイズに部分的に起因するだけでなく、組織検体の真の拡散信号をマスクする組織検体に継承される変動性(例えば、散発性拡散、組織変形など)にも起因する。TOF信号が十分に有効であるかどうかをリアルタイムで予測することができるモデルを有することが望ましく、そのようなTOFデータは、組織検体の固定までの時間を決定するために使用され得る。
【発明の概要】
【0007】
開示の簡単な概要
生物学的検体、例えば組織試料または細胞学的試料の固定の変化は、下流のバイオマーカーの標識化および/または染色プロセスに影響を及ぼし、不確定な結果および/または誤診をもたらす可能性がある。したがって、適切に固定された検体に対して下流の染色および/または標識プロセスが行われ得るように、生物学的検体が適切に固定されたかどうかの決定を容易にするシステムおよび/または方法を有することが有利であろう。
【0008】
出願人は、測定されたTOF信号が、生物学的検体を通る流体、試薬、または溶液(以下、「流体」と総称する)の実際の拡散速度を正確に反映するかどうかの決定を容易にするシステムおよび方法を開発した。したがって、本開示は、流体が生物学的検体中に最適に拡散される推定時間、例えば、特定の流体が生物学的検体の中央領域などの生物学的検体の特定の位置で特定の濃度に達するのにかかる時間の予測を容易にするシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態では、流体は、1つまたは複数の固定剤(本明細書に記載のもののいずれかを含む)を含む。他の実施形態では、流体は、生物学的検体の包埋に使用される脱水試薬(例えば、勾配エタノール)、透明化剤(例えば、キシレン)およびパラフィンを含む。さらに他の流体が本明細書においてさらに説明される。本開示の特定の実施形態は、生物学的検体が1つまたは複数の固定剤に浸漬されたときに最適に固定され得る時間を推定することを記載し得るが、本開示は、任意の流体(例えば、エタノール、キシレン、パラフィン)が生物学的検体中に最適に拡散される時間を予測することに適用可能である。
【0009】
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、取得されたTOF信号の成分を分析して、取得されたTOF信号が、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間が予測され得るように十分に正確であるとみなされるかどうかを決定する。生物学的検体を1つまたは複数の固定剤によって固定する状況において、いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、取得されたTOF信号の異なる成分を分析して、取得されたTOF信号が、生物学的検体が1つまたは複数の固定剤によって最適に拡散される時間、例えば、生物学的検体の中心などにおいて、生物学的検体内または全体にわたって1つまたは複数の固定剤の特定の濃度または量を達成するのに必要な時間を予測するのに十分に正確であるとみなされるかどうかを決定する。
【0010】
上記を考慮して、本開示の実施形態の少なくともいくつかは、生物学的検体(例えば、生検カプセルまたは生検カセットなどの容器に含まれるものなど)を介してTOFデータを取得し、取得したTOFデータを、例えばリアルタイムで分析するためのシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、取得されたTOFデータは、特定の時点における取得されたTOFデータが十分に正確であるかどうかを決定するために分析され、その結果、その特定の時点におけるTOFデータは、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間または生物学的検体が(本明細書に記載の固定剤のうちの1つまたは複数を用いてなど)最適に固定される時間を計算するために使用され得る。
【0011】
上記を考慮して、本開示の一態様は、流体が、流体に浸漬された生物学的検体の中または全体に理想的に拡散される時間を推定する方法であって、流体に浸漬された生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得することと、取得された音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出されたTOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出することと、導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算すること(例えば、少なくとも2つの信頼度モデルは、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および/または将来の信頼度モデルを含む)と、計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たした決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、流体が理想的に生物学的検体中に拡散される時間を推定することと、を含む方法である。
【0012】
いくつかの実施形態では、流体は、1つまたは複数の固定剤を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の固定剤は、アルデヒド系固定剤である。いくつかの実施形態では、流体は、エタノール、キシレンおよびパラフィンからなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、計算された少なくとも2つの信頼度モデルは、過去の信頼度モデルおよび現在の信頼度モデルを含む。いくつかの実施形態では、計算された少なくとも2つの信頼度モデルは、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルのそれぞれを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の導出されたTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定されるとき、計算された過去の信頼度モデルは、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるかどうかの決定は、収束試験を実行することを含む。いくつかの実施形態では、収束試験の実行は、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された理論値および計算された実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定されたパーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む。いくつかの実施形態では、平均減衰定数は、以下によって導出される:(i)候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数を取り出すこと、および(ii)取り出された計算された減衰定数のそれぞれを平均化すること。いくつかの実施形態では、候補TOFデータ点に先行するTOFデータ点の所定数は、少なくとも約3である。いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約5%未満である。いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約2.5%未満である。
【0015】
いくつかの実施形態では、計算された現在の信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るとき、計算された現在の信頼度モデルは、所定の現在の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、現在の信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の計算されたTOFデータ点のいくつかまたは全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、および(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、によって計算される。
【0016】
いくつかの実施形態では、計算された将来の信頼区間が所定の将来の信頼度モデル閾値を下回る場合、計算された将来の信頼度モデルは、所定の将来の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、将来の信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の全ての計算されたTOFデータ点を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、および(c)TOF曲線の平均信頼区間を計算すること、によって計算される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのバイオマーカーの存在について生物学的検体を染色することをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、がんバイオマーカーである。
【0018】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのバイオマーカーの存在について染色された生物学的検体をスコアリングすることをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも2つのバイオマーカーの存在について生物学的検体を染色することをさらに含む。いくつかの実施形態では、生物学的検体に由来する単一の連続切片が、少なくとも2つのバイオマーカーの存在について染色される。
【0020】
本開示の別の態様は、1つまたは複数の固定剤に浸漬された生物学的検体の固定完了までの時間を予測する方法であって、1つまたは複数の固定剤に浸漬された生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得することと、取得された音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出されたTOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出することと、導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含み、計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定する、計算することと、計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たした決定された時点に対応するTOFデータに基づいて固定完了までの時間を予測することと、を含む、方法である。
【0021】
いくつかの実施形態では、生物学的検体は、最初に、約15℃未満の温度、例えば14℃以下、13℃以下、12℃以下、11℃以下、10℃以下、9℃以下、8℃以下、7℃以下、6℃以下、5℃以下、または4℃以下において1つまたは複数の固定剤に浸漬される。いくつかの実施形態では、音響データは、1つまたは複数の固定剤が室温などの約15℃を超える温度に(受動的または能動的に)加温された後に取得される。いくつかの実施形態では、音響データは、1つまたは複数の固定剤が約25℃を超える温度に(受動的または能動的に)加温された後に取得される。いくつかの実施形態では、音響データは、1つまたは複数の固定剤が約35℃を超える温度に(受動的または能動的に)加温された後に取得される。いくつかの実施形態では、音響データは、1つまたは複数の固定剤が約45℃を超える温度に(受動的または能動的に)加温された後に取得される。いくつかの実施形態では、音響データは、1つまたは複数の固定剤を約20℃から約50℃の温度に(受動的または能動的に)加温された後に取得される。いくつかの実施形態では、音響データは、1つまたは複数の固定剤を約20℃から約45℃の温度に(受動的または能動的に)加温された後に取得される。
【0022】
いくつかの実施形態では、計算された少なくとも2つの信頼度モデルは、過去の信頼度モデルおよび現在の信頼度モデルを含む。いくつかの実施形態では、計算された少なくとも2つの信頼度モデルは、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルのそれぞれを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、複数の導出されたTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定されるとき、計算された過去の信頼度モデルは、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるかどうかの決定は、収束試験を実行することを含む。いくつかの実施形態では、収束試験の実行は、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された理論値および計算された実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定されたパーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む。いくつかの実施形態では、平均減衰定数は、以下によって導出される:(i)候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数を取り出すこと、および(ii)取り出された計算された減衰定数のそれぞれを平均化すること。いくつかの実施形態では、候補TOFデータ点に先行するTOFデータ点の所定数は、少なくとも3である。いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約5%未満である。いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約2.5%未満である。
【0024】
いくつかの実施形態では、計算された現在の信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るとき、計算された現在の信頼度モデルは、所定の現在の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、現在の信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の計算されたTOFデータ点のいくつかまたは全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、および(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、によって計算される。
【0025】
いくつかの実施形態では、計算された将来の信頼区間が所定の将来の信頼度モデル閾値を下回る場合、計算された将来の信頼度モデルは、所定の将来の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、将来の信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の全ての計算されたTOFデータ点を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、および(c)TOF曲線の平均信頼区間を計算すること、によって計算される。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのバイオマーカーの存在について生物学的検体を染色することをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、がんバイオマーカーである。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に列挙されるバイオマーカーのいずれかを含む、少なくとも1つのバイオマーカーの存在について染色された生物学的検体をスコアリングすることをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも2つのバイオマーカーの存在について生物学的検体を染色することをさらに含む。いくつかの実施形態では、生物学的検体に由来する単一の連続切片が、少なくとも2つのバイオマーカーの存在について染色される。
【0029】
本開示の別の態様は、流体に浸漬された生物学的検体中に流体が理想的に拡散される時間を推定するための命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、取得された音響データから飛行時間(TOF)データを導出することと、導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たした決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、流体が理想的に生物学的検体中に拡散される時間を推定することと、を含む、非一時的コンピュータ可読媒体である。
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、1つまたは複数の減衰定数を計算するための命令をさらに含む。いくつかの実施形態では、収束試験を実行するための命令をさらに含む。いくつかの実施形態では、収束試験は、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された理論値および計算された実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定されたパーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む。
【0031】
本開示の別の態様は、少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定するための命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、(a)流体に浸漬された生物学的検体から取得された音響データからTOFデータを導出することと、(b)過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを、過去、現在、および将来の信頼度モデルのそれぞれが同時に且つ独立して所定の閾値基準を満たすまで、継続的に計算することと、(c)過去、現在、および将来の信頼度モデルが同時に且つ独立して満たされた、導出されたTOFデータに対応する時点を識別することと、を含む、非一時的コンピュータ可読媒体である。いくつかの実施形態では、モデルは、新たなデータが受信または取得されるときに連続的に計算され、これは本明細書に記載されるように約0.2秒から約120秒ごとに起こり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、複数の導出されたTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定されるとき、計算された過去の信頼度モデルは、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるかどうかの決定は、収束試験を実行することを含む。いくつかの実施形態では、収束試験の実行は、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された理論値および計算された実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定されたパーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む。いくつかの実施形態では、平均減衰定数は、以下によって導出される:(i)候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数を取り出すこと、および(ii)取り出された計算された減衰定数のそれぞれを平均化すること。
【0033】
いくつかの実施形態では、計算された現在の信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るとき、計算された現在の信頼度モデルは、所定の現在の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、現在の信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の計算されたTOFデータ点のいくつかまたは全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、および(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、によって計算される。
【0034】
いくつかの実施形態では、計算された将来の信頼区間が所定の将来の信頼度モデル閾値を下回る場合、計算された将来の信頼度モデルは、所定の将来の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、将来の信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の全ての計算されたTOFデータ点を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、および(c)TOF曲線の平均信頼区間を計算すること、によって計算される。
【0035】
いくつかの実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体は、流体が理想的に生物学的検体中に拡散される時間を推定するための命令をさらに含む。いくつかの実施形態では、流体は、1つまたは複数の固定剤を含む。いくつかの実施形態では、流体は、エタノール、キシレンおよびパラフィンからなる群から選択される。
【0036】
本開示の別の態様は、流体が、流体に浸漬された生物学的検体中に理想的に拡散される時間を推定するためのシステムであって、(i)1つまたは複数のプロセッサと、(ii)1つまたは複数のプロセッサに結合された1つまたは複数のメモリであって、1つまたは複数のメモリが、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、流体に浸漬された生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で取得された音響データから飛行時間(TOF)データを導出することと、導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たした決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、流体が理想的に生物学的検体中に拡散される時間を推定することと、を含む動作をシステムに実行させるコンピュータ実行可能命令を記憶する、1つまたは複数のメモリと、を備える、システムである。
【0037】
いくつかの実施形態では、流体は、1つまたは複数の固定剤を含む。いくつかの実施形態では、流体は、エタノール、キシレンおよびパラフィンからなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、複数の導出されたTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定されるとき、計算された過去の信頼度モデルは、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるかどうかの決定は、収束試験を実行することを含む。いくつかの実施形態では、収束試験の実行は、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された理論値および計算された実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定されたパーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む。いくつかの実施形態では、平均減衰定数は、以下によって導出される:(i)候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数を取り出すこと、および(ii)取り出された計算された減衰定数のそれぞれを平均化すること。いくつかの実施形態では、候補TOFデータ点に先行するTOFデータ点の所定数は、少なくとも3である。いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約5%未満である。いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約2.5%未満である。
【0039】
いくつかの実施形態では、計算された現在の信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るとき、計算された現在の信頼度モデルは、所定の現在の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、現在の信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の計算されたTOFデータ点のいくつかまたは全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、および(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、によって計算される。
【0040】
いくつかの実施形態では、計算された将来の信頼区間が所定の将来の信頼度モデル閾値を下回る場合、計算された将来の信頼度モデルは、所定の将来の信頼度モデル閾値基準を満たす。いくつかの実施形態では、将来の信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の全ての計算されたTOFデータ点を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、および(c)TOF曲線の平均信頼区間を計算すること、によって計算される。
【0041】
出願人は、驚くべきことに、本開示のシステムおよび方法が、生物学的検体の固定までの時間の正確な予測を提供することを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本開示の特徴の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同一の要素を特定するために、全体を通して同様の参照番号が使用されている。
【0043】
【
図1A】本開示の一実施形態にかかる、生物学的検体への流体(例えば、固定剤)の拡散時間を予測する本開示の方法のステップの概要を提供するフローチャートを記載している。
【
図1B】本開示の一実施形態にかかる、生物学的検体への流体(例えば、固定剤)の拡散時間を予測する本開示の方法のステップの概要を提供するフローチャートを記載している。
【
図2】いくつかの実施形態にかかる、コンピュータシステムを含む代表的なデジタル病理学システムを示している。
【
図3】いくつかの実施形態にかかる、流体拡散および/または固定予測システムにおいて利用され得る様々なモジュールを記載している。
【
図4】本開示の一実施形態にかかる、生物学的検体が最適に固定される時間を計算する方法を示している。
【
図5A】0.4時間、扁桃組織を走査しながら基準を計算する方法を示す時間経過を提供している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線または点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図5B】0.8時間、扁桃組織を走査しながら基準を計算する方法を示す時間経過を提供している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線または点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図5C】1.2時間、扁桃組織を走査しながら基準を計算する方法を示す時間経過を提供している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線または点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図5D】2.2時間、扁桃組織を走査しながら基準を計算する方法を示す時間経過を提供している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線または点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図5E】2.83時間、扁桃組織を走査しながら基準を計算する方法を示す時間経過を提供している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線または点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図5F】4.84時間、扁桃組織を走査しながら基準を計算する方法を示す時間経過を提供している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線または点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図6A】TOF曲線が
図5に示すのと同じ扁桃腺組織検体に対して有効であるかどうかを決定する例を示している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線/点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図6B】TOF曲線が
図5に示すのと同じ扁桃腺組織検体に対して有効であるかどうかを決定する例を示している。高い値を示す基準が満たされ、低い値を示す基準が満たされていない実験における全ての時点についての各個別信頼度モデルのグラフ。この特定の例では、TOF信号が組織の実際の拡散プロファイルを表すとみなされるためには、3つの基準全てが同時に満たされなければならない。(上のグラフは将来の信頼度モデルであり、中央のグラフは過去の信頼度モデルであり、下のグラフは現在の信頼度モデルである)。
【
図7A】TOF曲線が結腸組織において有効であるかどうかを決定する例を示している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線/点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図7B】TOF曲線が結腸組織において有効であるかどうかを決定する例を示している。高い値を示す基準が満たされ、低い値を示す基準が満たされていない実験における全ての時点についての各個別信頼度モデルのグラフ。TOF信号が組織の実際の拡散プロファイルを表すとみなされるためには、3つの基準全てが同時に満たされなければならない。(上のグラフは将来の信頼度モデルであり、中央のグラフは過去の信頼度モデルであり、下のグラフは現在の信頼度モデルである)。
【
図8A】TOF曲線が腎臓組織において有効であるかどうかを決定する例を提供している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線/点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図8B】TOF曲線が腎臓組織において有効であるかどうかを決定する例を提供している。高い値を示す基準が満たされ、低い値を示す基準が満たされていない実験における全ての時点についての各個別信頼度モデルのグラフ。この特定の例では、TOF信号が組織の実際の拡散プロファイルを表すとみなされるためには、3つの基準全てが同時に満たされなければならない。(上のグラフは将来の信頼度モデルであり、中央のグラフは過去の信頼度モデルであり、下のグラフは現在の信頼度モデルである)。
【
図9A】TOF曲線が胸部組織において有効であるか否かを決定する例を示している。上プロット:単一のTOFデータ点を表す黒丸を有するTOF曲線、最良フィット曲線は実線の黒い線で描かれている。95%信頼区間は破線/点線で示されている。上-中央プロット:TOF曲線の95%信頼区間の幅。下-中央プロット:取得された最新のデータ点を使用して計算された候補減衰定数。下プロット:減衰定数の95%信頼区間。
【
図9B】TOF曲線が胸部組織において有効であるか否かを決定する例を示している。高い値を示す基準が満たされ、低い値を示す基準が満たされていない実験における全ての時点についての各個別信頼度モデルのグラフ。TOF信号が組織の実際の拡散プロファイルを表すとみなされるためには、3つの基準全てが同時に満たされなければならない。(上のグラフは将来の信頼度モデルであり、中央のグラフは過去の信頼度モデルであり、下のグラフは現在の信頼度モデルである)。
【
図10A】TOF分析の結果を提供している。音響技術が多数の組織タイプにわたって機能することを実証する、複数の組織のTOF拡散データの分布。
【
図10B】TOF分析の結果を提供している。TOF曲線がいつ有効であるかを決定する提示された方法を用いて、複数のタイプの組織にわたる105個の組織を分析した、基準開発のための累積結果。有効なフィットまでの時間は、縦軸上の計算された最適固定時間に対して水平時間上にプロットされる。
【
図11A】開示された信頼度モデルの精度の分析を提供している。信号が有効であると決定された時点で計算された最適拡散時間と実験終了との差として計算された、モデルの予測誤差の分布。
【
図11B】開示された信頼度モデルの精度の分析を提供している。TOF信号全体についての試験における105個全ての組織についての平均95%信頼区間、ならびに信号がモデルによって有効であるとみなされた時点での減衰定数。
【
図12A】NBF拡散時間と染色品質との相関を示している。NBF中の異なる低温浸漬時間で取得されたH&E画像。H&Eベースの形態に基づいて、1.5時間、3時間、および5時間の低温浸漬時間は、それぞれ重度に構成された、境界線上の、および例示的な染色を生じた。
【
図12B】NBF拡散時間と染色品質との相関を示している。急速に変化するTOF信号を示す、組織をNBFに浸漬した直後の能動的NBF拡散によるTOF拡散曲線の例示的な描写。逆に、数時間後、組織およびNBFが浸透平衡に近付くにつれて、組織の拡散速度は著しく遅くなった。
【
図13A】染色品質を予測するための拡散メトリックの調整速度を示している。組織がそれぞれ境界線染色および理想的染色を有すると予想される場合、低温NBF中で3時間および5時間の扁桃組織の正規化された勾配。-7.4%/時、-8.0%/時、および-10.4%/時の異なる閾値拡散率が、それぞれ3、2、および1によって示されている。
【
図13B】染色品質を予測するための拡散メトリックの調整速度を示している。示された閾値拡散率のおおよその位置を有する6mmの扁桃からの平均TOF信号。
【
図13C】染色品質を予測するための拡散メトリックの調整速度を示している。3つの評価された閾値拡散率のそれぞれについての予測完了時間のプロット。
【
図13D】染色品質を予測するための拡散メトリックの調整速度を示している。3つの評価された閾値拡散率のそれぞれについての予測完了時間のプロット。
【
図13E】染色品質を予測するための拡散メトリックの調整速度を示している。3つの評価された閾値拡散率のそれぞれについての予測完了時間のプロット。
【
図14A】TOF拡散信号を検証するための統計的モデルの例を記載している。検証アルゴリズムがリアルタイムデータ取得中にどのように機能するかを示すTOF拡散曲線。データが収集されると、3つの統計アルゴリズム「信頼度モデル」は、データの過去、現在、および将来の態様(過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、将来の信頼度モデル)に焦点を合わせて信号の忠実度を継続的に監視する。各アルゴリズムを満たす時間(信頼度モデル)は、プロット上で収束時間の順に実線の横線でラベル付けされている。データ忠実度の3つの条件が全て満たされると、データは、組織の実際の拡散速度を表し、組織の必要な拡散時間が計算された。
【
図14B】TOF拡散信号を検証するための統計的モデルの例を記載している。現在のアルゴリズムの詳細な図が示されている。
【
図14C】TOF拡散信号を検証するための統計的モデルの例を記載している。将来のアルゴリズムの詳細な図が示されている。
【
図14D】TOF拡散信号を検証するための統計的モデルの例を記載している。過去のアルゴリズムの詳細な図が示されている。
【
図14E】TOF拡散信号を検証するための統計的モデルの例を記載している。105個の組織の拡散信号を検証する時間対予測固定時間のプロット。平均して(
図14Eの星印)、検出された拡散プロファイルが組織の実際の拡散速度に収束するのに2.04時間を要し、組織は、低温ホルマリン中で2.96時間の拡散を必要とすると予測された。
【
図15】FOXP3に対する機能的IHC染色に対するホルマリン拡散の影響を分析するために使用される放射状画像分析ワークフローの概略図を提供している。
【
図16】異なる固定プロトコルに対する染色結果の比較例を記載している。左列)組織の明視野全スライド走査。中央左列)各組織のFOXP3陽性のヒートマップ。中央右列)エッジ値の50%以内のDAB陽性によって定義される、不十分且つ適切な染色の領域を示す、各組織内の半径方向ゾーンのグラフ描写。右列)組織の縁部までの距離に対するFOXP3染色のヒストグラム。
【
図17A】異なる固定プロトコルについてのFOXP3染色の定量的分析を示している。染色がそのエッジ値の半分に低下する組織内への距離によって定義される、適切なFOXP3染色の浸透深さ。
【
図17B】異なる固定プロトコルについてのFOXP3染色の定量的分析を示している。適切なFOXP3染色を示す組織の割合。
【
図17C】異なる固定プロトコルについてのFOXP3染色の定量的分析を示している。組織内への距離に対してプロットされた正規化されたFOXP3発現。実線は、Welchの両側t検定によるp<0.002を示す。
【
図18A】異なる固定プロトコルの定量的bcl-2発現を示している。適切なbcl-2染色の浸透深さ。
【
図18B】異なる固定プロトコルの定量的bcl-2発現を示している。適切なbcl-2染色の面積。
【
図18C】異なる固定プロトコルの定量的bcl-2発現を示している。組織内への距離に対してプロットされた正規化されたbcl-2発現。
【
図19A】異なる固定プロトコルに対する染色強度の定量的分析を提供している。組織内への距離に対してプロットされたFOXP3染色の正規化された強度。
【
図19B】異なる固定プロトコルに対する染色強度の定量的分析を提供している。組織内への距離に対してプロットされたbcl-2染色の正規化された強度。
【
図20】開発された予測アルゴリズムに基づく多数の組織タイプの予測最適固定時間を示している。
【
図21】本開示のいくつかの態様において、過去の信頼度モジュールの実行されたステップを示すフローチャートを提供している。
【
図22】本開示のいくつかの態様において、現在の信頼度モジュールの実行されるステップを示すフローチャートを提供している。
【
図23】本開示のいくつかの態様において、将来の信頼度モジュールの実行されたステップを示すフローチャートを提供している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
反対に明確に示されない限り、複数のステップまたは行為を含む本明細書において特許請求の範囲に記載される任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも方法のステップまたは行為が記載される順序に限定されないことも理解されたい。
【0045】
本明細書における「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示すが、全ての実施形態は、その特定の特徴、構造、または特性を含んでも必ずしも含まなくてもよい。さらに、そのような句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、または特性に影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という単語は、文脈が別途明確に指示しない限り、「および」を含むことを意図している。「含む」という用語は、「AまたはBを含む」がA、B、またはAおよびBを含むことを意味するように、包括的に定義される。
【0047】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有することを理解されたい。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「および/または」は、包括的であるとして、例えば、少なくとも1つのいくつかの要素または要素のリストを包含するが、1つより多くのいくつかの要素または要素のリストも含み、任意に、リストに記載されていない追加の項目を含むものとして解釈されるものとする。「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」など、反対であることが明確に示される用語のみが、いくつかの要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素を包含することを指す。一般に、ここで使用される「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」など、排他性の用語が先行する場合にのみ、排他的な代替案(例えば、「一方または他方であるが双方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。「から本質的に構成される」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0048】
「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などの用語は、交換可能に使用され、同じ意味を有する。同様に、「備える(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」などは、交換可能に使用され、同じ意味を有する。具体的には、各用語は、「備える」という一般的な米国特許法の定義と一致して定義されているため、「少なくとも以下」を意味するオープンな用語として解釈され、また、追加の特徴、限定事項、態様などを除外しないように解釈される。したがって、例えば、「構成要素a、b、およびcを有する装置」は、装置が少なくとも構成要素a、b、およびcを含むことを意味する。同様に、句:「ステップa、b、およびcを含む方法」は、その方法が少なくともステップa、b、およびcを含むことを意味する。さらに、ステップおよびプロセスは、本明細書において特定の順序で概説され得るが、当業者は、順序付けのステップおよびプロセスが変化し得ることを認識するであろう。
【0049】
ここで明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という句は、要素のリストの任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的にリスト化されているありとあらゆる要素の少なくとも1つを含まなくてもなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が参照する要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関連するかどうかにかかわらず、必要に応じて存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一態様においては、Bが存在しない(および任意に、B以外の要素を含む)、任意に1つより多くを含む少なくとも1つのAを指すことができ、別の態様においては、Aが存在しない(および任意に、A以外の要素を含む)、任意に1つより多くを含む少なくとも1つのBを指すことができ、さらに別の態様においては、任意に1つより多くを含む少なくとも1つのAおよび任意に1つより多くを含む少なくとも1つのB(および任意に、他の要素を含む)を指すことができるなどである。
【0050】
本明細書で使用される場合、「生物学的検体」、「組織検体」などの用語は、ウイルスを含む任意の生物から得られる生体分子(タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、炭水化物、またはそれらの組み合わせなど)を含む任意の試料を指す。生物の他の例は、哺乳類(人間、猫、犬、馬、牛、および豚などの獣医動物、ならびにマウス、ラット、霊長類などの実験動物など)、昆虫、環形動物、クモ形類動物、有袋類、爬虫類、両生類、細菌、および菌類などを含む。生物学的検体は、組織試料(組織切片や組織の針生検など)、細胞試料(Pap塗抹検体もしくは血液塗抹検体などの細胞学的塗抹検体、またはマイクロダイセクションによって得られた細胞の試料など)、または細胞分画、断片または細胞小器官(細胞を溶解し、遠心分離などによってそれらの成分を分離することによって得られる)を含む。生物学的検体の他の例は、血液、血清、尿、精液、糞便、脳脊髄液、間質液、粘膜、涙、汗、膿、生検組織(例えば、外科的生検または針生検によって得られる)、乳頭吸引物、耳垢、乳、膣液、唾液、ぬぐい液(頬スワブなど)、または最初の生物学的検体に由来する生体分子を含む任意の材料を含む。特定の実施形態では、本明細書で使用される「生物学的検体」という用語は、被験者から得られた腫瘍またはその一部から調製された試料(均質化または液化された試料など)を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」または「マーカー」という用語は、何らかの生物学的状態または状態の測定可能な指標を指す。特に、バイオマーカーは、特異的に染色され得、細胞の生物学的特徴、例えば細胞の細胞型または生理学的状態を示すタンパク質またはペプチド、例えば表面タンパク質でもよい。免疫細胞マーカーは、哺乳動物の免疫応答に関する特徴を選択的に示すバイオマーカーである。バイオマーカーが使用されて、身体が疾患または症状の処置にどれだけ良好に応答するか、または被験者が疾患または症状にかかりやすいかを決定し得る。がんの文脈において、バイオマーカーは、体内のがんの存在を示す生体物質を指す。バイオマーカーは、腫瘍によって分泌される分子、またはがんの存在に対する身体の特異的応答であり得る。遺伝子バイオマーカー、エピジェネティックバイオマーカー、プロテオミクスバイオマーカー、グリコームバイオマーカーおよびイメージングバイオマーカーは、がんの診断、予後診断および疫学のために使用され得る。そのようなバイオマーカーは、血液または血清などの非侵襲的に収集された生体流体でアッセイされ得る。AFP(肝臓がん)、BCR-ABL(慢性骨髄性白血病)、BRCA1/BRCA2(乳がん/卵巣がん)、BRAF V600E(黒色腫/結腸直腸がん)、CA-125(卵巣がん)、CA19.9(膵臓がん)、CEA(結腸直腸がん)、EGFR(非小細胞肺がん)、HER-2(乳がん)、KIT(消化管間質腫瘍)、PSA(前立腺特異的抗原)、S100(黒色腫)などを含むがこれらに限定されないいくつかの遺伝子およびタンパク質ベースのバイオマーカーが既に患者ケアに使用されている。バイオマーカーは、診断薬(初期がんを同定するため)および/または予後診断薬(がんがどの程度侵攻性であるかを予測するため、および/または被験者が特定の処置にどのように応答するかおよび/またはがんがどの程度再発する可能性があるかを予測するため)として有用であり得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「細胞」という用語は、原核細胞または真核細胞を指す。細胞は、接着性または非接着性細胞、例えば接着性原核細胞、接着性真核細胞、非接着性原核細胞または非接着性真核細胞であり得る。細胞は、酵母細胞、細菌細胞、藻類細胞、真菌細胞、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。細胞は、哺乳動物細胞とし得る。細胞は、被験者から取得された初代細胞とし得る。細胞は、細胞株または不死化細胞であり得る。細胞は、ヒトまたはげっ歯類などの哺乳動物から取得され得る。細胞は、がんまたは腫瘍細胞であり得る。細胞は、上皮細胞であり得る。細胞は、赤血球または白血球であり得る。細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞などの免疫細胞であり得る。細胞は、ニューロン細胞、グリア細胞、アストロサイト、ニューロン支持細胞、シュワン細胞などであり得る。細胞は、内皮細胞であり得る。細胞は、線維芽細胞またはケラチノサイトであり得る。細胞は、周皮細胞、肝細胞、幹細胞、前駆細胞などであり得る。細胞は、循環がんまたは腫瘍細胞または転移性細胞であり得る。細胞は、CD8+T細胞またはCD4+T細胞などのマーカー特異的細胞であり得る。細胞は、ニューロンであり得る。ニューロンは、中枢ニューロン、末梢ニューロン、感覚ニューロン、介在ニューロン、ニューロン内ニューロン、運動ニューロン、多極ニューロン、双極ニューロン、または擬似単極ニューロンであり得る。細胞は、シュワン細胞などのニューロン支持細胞であり得る。細胞は、血液脳関門系の細胞のうちの1つであり得る。細胞は、神経細胞株などの細胞株であり得る。細胞は、被験者の脳から得られた細胞などの初代細胞であり得る。細胞は、組織生検、細胞診検体、血液試料、細針吸引物(FNA)試料、またはそれらの任意の組み合わせなど、被験者から単離され得る細胞の集団であり得る。細胞は、尿、乳、汗、リンパ液、血液、痰、羊水、房水、硝子体液、胆汁、脳脊髄液、乳び、糜粥、滲出液、内リンパ、外リンパ、胃酸、粘液、心膜液、腹水、胸水、膿、粘液、唾液、皮脂、漿液、粘液、痰、涙、嘔吐物、または他の体液などの体液から取得され得る。細胞は、がん性細胞、非がん性細胞、腫瘍細胞、非腫瘍細胞、健康な細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「拡散係数」または「拡散定数」という用語は、分子拡散によるモル流束と、拡散が観察される対象物の濃度の勾配(または拡散の駆動力)との間の比例定数を指す。拡散性は、例えば、フィックの法則および物理化学の他の多くの方程式において遭遇する。(ある物質の他の物質に対する)拡散性が高いほど、それらは互いにより速く拡散する。典型的には、化合物の拡散定数は、空気中では水中の約10,000倍である。例えば、空気中の二酸化炭素の拡散定数は16mm2/sであり、水中の二酸化炭素の拡散定数は0.0016mm2/sである。
【0054】
本明細書で使用される場合、「流体」という用語は、試薬、溶媒、溶液(例えば、極性溶媒、非極性溶媒)、混合物などを含む1つまたは複数の液体または液体組成物を指す。流体は、水性または非水性であってもよい。流体の非限定的な例は、パラフィン包埋された生物学的検体または炭化水素(例えば、アルカン、イソアルカンおよび芳香族化合物、例えばキシレン)を脱パラフィン化するための溶媒および/または溶液を含む。流体のさらに別の例は、生物学的検体を脱水または再水和するために使用される溶媒(およびそれらの混合物)を含む。いくつかの実施形態では、流体は、1つまたは複数のグリコールエーテル、例えば1つまたは複数のプロピレン系グリコールエーテル(例えば、プロピレングリコールエーテル、ジ(プロピレングリコール)エーテルおよびトリ(プロピレングリコール)エーテル、エチレン系グリコールエーテル(例えば、エチレングリコールエーテル、ジ(エチレングリコール)エーテルおよびトリ(エチレングリコール)エーテル)およびそれらの官能性類似体を含む。さらに他の解決策は、米国特許出願公開第2016/0282374号明細書に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「固定」という用語は、細胞試料の分子的および/または形態学的詳細が保存されるプロセスを指す。一般に、以下の3種類の固定プロセスがある:(1)熱固定、(2)灌流、および(3)浸漬。熱固定では、試料は、十分な時間熱源に曝露されて加熱死滅し、試料をスライドに接着させる。灌流は、化学固定剤を器官全体または生物全体に分配するための血管系の使用を含む。浸漬は、ある体積の化学固定剤に試料を浸漬し、固定剤を試料全体に拡散させることを可能にすることを含む。化学的固定は、細胞試料全体にわたる化学物質の拡散または灌流を含み、固定試薬は、構造(化学的および構造的の双方)を生細胞試料の構造に可能な限り近く保存する反応を引き起こす。
【0056】
固定剤(または「固定剤溶液」)は、動作モードに基づいて以下の2つの広いクラスに分類され得る:架橋固定剤および非架橋固定剤。架橋固定剤、典型的にはアルデヒドは、組織試料中に存在するタンパク質および核酸などの内因性生体分子間に共有化学結合を形成する。いくつかの実施形態では、固定剤は、グルタルアルデヒドおよび/またはホルマリン系溶液などのアルデヒド系架橋固定剤である。浸漬固定に頻繁に使用されるアルデヒドの例は、ホルムアルデヒド(大部分の組織に対して約5から約10%のホルマリンの標準作業濃度であるが、特定の組織に対して約20%もの高濃度のホルマリンが使用されている)、グリオキサール(標準作業濃度17から86mM)、グルタルアルデヒド(標準作業濃度200mM)を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、アルデヒドは、互いに組み合わせて使用されることが多い。標準的なアルデヒドの組み合わせは、10%ホルマリン+1%(w/v)グルタルアルデヒドを含む。フマルアルデヒド、12.5%ヒドロキシアジポアルデヒド(pH7.5)、10%クロトンアルデヒド(pH7.4)、5%ピルビン酸アルデヒド(pH5.5)、10%アセトアルデヒド(pH7.5)、10%アクロレイン(pH7.6)、および5%メタクロレイン(pH7.6)を含む非定型アルデヒドが、特定の特殊な固定用途に使用されている。免疫組織化学に使用されるアルデヒド系固定剤溶液の他の具体例が表1に記載されている:
【表1】
【0058】
ホルムアルデヒドは、組織学において最も一般に使用される架橋固定剤である。ホルムアルデヒドは、固定のために様々な濃度で使用され得るが、主に10%中性緩衝ホルマリン(NBF)として使用され、これは、リン酸緩衝生理食塩水水溶液中の約3.7%ホルムアルデヒドである。パラホルムアルデヒドは、加熱されると解重合してホルマリンを提供するホルムアルデヒドの重合形態である。グルタルアルデヒドは、ホルムアルデヒドと同様に作用するが、膜を横切る拡散速度がより遅いより大きな分子である。グルタルアルデヒド固定は、より堅固または強固に結合された固定生成物を提供し、迅速且つ不可逆的な変化を引き起こし、4℃で迅速且つ良好に固定し、良好な全体的な細胞質および核の詳細を提供するが、免疫組織化学染色には理想的ではない。いくつかの固定プロトコルは、ホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドの組み合わせを使用する。グリオキサールおよびアクロレインは、あまり一般に使用されていないアルデヒドである。変性固定剤(典型的にはアルコールまたはアセトン)は、細胞試料中の水を置換することによって作用し、タンパク質内の疎水性および水素結合を不安定化する。これは、そうでなければ水溶性タンパク質を水不溶性にして沈殿させ、これはほとんど不可逆的である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片」という用語は、組織片、例えば、被験者から得られ、ホルムアルデヒド(例えば、リン酸緩衝生理食塩水中3%~5%ホルムアルデヒド)またはブアン溶液で固定され、ワックスに包埋され、薄い切片に切断され、次いで平坦な表面、例えば顕微鏡スライドに取り付けられた生検材料を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「免疫組織化学」という用語は、抗原と抗体などの特異的結合剤との相互作用を検出することによって、試料中の抗原の存在または分布を決定する方法を指す。試料は、抗体-抗原結合を可能にする条件下で抗体と接触される。抗体-抗原結合は、抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識(直接検出)によって、または一次抗体に特異的に結合する二次抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識(間接検出)によって検出され得る。いくつかの例では、間接的な検出は、抗原の検出可能性をさらに高めるのに役立つ三次以上の抗体を含むことができる。検出可能な標識の例は、酵素、フルオロフォアおよびハプテンを含み、これらは、酵素の場合、発色性または蛍光発生性基質とともに使用され得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、「スライド」という用語は、生物学的検体が分析のために配置される任意の適切な寸法の任意の基材(例えば、全体的または部分的に、ガラス、石英、プラスチック、シリコンなどから作製された基材)、より具体的には、標準の3インチ×1インチの顕微鏡スライドまたは標準の75mm×25mmの顕微鏡スライドなどの「顕微鏡スライド」を指す。スライド上に配置され得る生物学的検体の例は、限定されるものではないが、細胞学的塗抹試料、薄い組織切片(生検からのものなど)、および生物学的検体の配列、例えば、組織配列、細胞配列、DNA配列、RNA配列、タンパク質配列、またはそれらの任意の組み合わせを含む。したがって、一実施形態では、組織切片、DNA試料、RNA試料、および/またはタンパク質は、スライド上の特定の位置に配置される。いくつかの実施形態では、スライドという用語は、SELDIおよびMALDIチップ、ならびにシリコンウェーハを指し得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「特異的結合実体」という用語は、特異的結合対のメンバーを指す。特異的結合対は、他の分子への結合を実質的に排除して互いに結合することを特徴とする分子の対である(例えば、特異的結合対は、生物学的検体中の他の分子との結合対の2つのメンバーのいずれかの結合定数よりも少なくとも103M-1大きい、104M-1大きいまたは105M-1大きい結合定数を有することができる)。特異的結合部分の例は、特異的結合タンパク質(例えば、抗体、レクチン、ストレプトアビジンなどのアビジン、およびプロテインA)を含む。特異的結合部分はまた、そのような特異的結合タンパク質によって特異的に結合される分子(またはその部分)を含むことができる。特異的結合実体は、上述した一次抗体または核酸プローブを含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「染色」、「染色している」などの用語は、一般に、生物学的検体中の特定の分子(脂質、タンパク質、または核酸など)または特定の構造(正常または悪性の細胞、細胞質ゾル、核、ゴルジ装置、または細胞骨格など)の存在、位置、および/または量(濃度など)を検出および/または区別する生物学的検体の任意の処理を指す。例えば、染色は、特定の分子または特定の細胞構造と生物学的検体の周囲の部分との間のコントラストを提供することができ、染色の強度は、検体中の特定の分子の量の尺度を提供することができる。染色は、明視野顕微鏡だけでなく、位相差顕微鏡、電子顕微鏡、および蛍光顕微鏡などの他の観察ツールを使用して、分子、細胞構造、および生物の観察を支援するために使用され得る。システムによって実行されるいくつかの染色は、細胞の輪郭を視覚化するために使用され得る。システムによって実行される他の染色は、他の細胞成分の染色なしで、または比較的少ない染色で、染色される特定の細胞成分(分子または構造など)に依存し得る。システムによって実行される染色方法のタイプの例は、これらに限定されるものではないが、組織化学的方法、免疫組織化学的方法、および核酸分子間のハイブリッド形成反応などの分子間の反応(非共有結合相互作用を含む)に基づく他の方法を含む。染色法は、これらに限定されるものではないが、一次染色法(例えば、H&E染色、Pap染色など)、酵素結合免疫組織化学的方法、および蛍光原位置ハイブリッド形成(FISH)などの原位置RNAおよびDNAハイブリッド形成法を含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、関心対象の特徴または特性の全体的またはほぼ全体的な程度または度合いを呈する定性的な条件を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約20%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約15%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約10%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約5%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約2.5%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約2%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約1.5%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約1%以内を意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「標的」という用語は、それについて存在、位置および/または濃度が決定されるか、または決定され得る任意の分子を指す。標的分子の例は、タンパク質、エピトープ、核酸配列、およびタンパク質に共有結合したハプテンなどのハプテンを含む。標的分子は、通常、特異的な結合分子と検出可能な標識との、1つまたは複数のコンジュゲートを用いて検出される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「飛行時間」(「TOF」という用語は、物体、粒子、または波(例えば、音響波、電磁波など)が媒体を通ってある距離を移動するのにかかる時間を指す。TOFは、例えば、送信機によって発せられた音響信号(「送信信号」)と受信機によって受信された音響信号(「受信信号」)との位相差を決定することによって、経験的に測定されてもよい。次いで、媒体に配置された材料(例えば、生物学的検体)の特性(材料の組成など)について学習するために、TOF情報が使用され得る。例えば、TOFは、生物学的検体(例えば、組織試料)への固定剤(例えば、ホルマリン)の拡散を決定するために使用され得る。ホルマリンは、組織切片に拡散し、タンパク質および核酸を架橋し、それによって代謝を停止させ、生体分子を保存し、パラフィンワックス浸潤のために組織を準備する。いくつかの実施形態では、アルゴリズムが利用されて、最適に固定され、したがって適切且つ理想的な染色を確実にするために、固定剤でどの程度拡散させなければならないかを決定し得る。
【0067】
概要
【0068】
本開示は、流体が生物学的検体中に最適に拡散される推定時間、例えば、流体が組織試料中の特定の位置、例えば生物学的検体の中央領域において特定の濃度に達するのにかかる推定時間の予測を容易にするシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態では、流体は、1つまたは複数の固定剤(本明細書に記載のもののいずれかを含む)を含む。他の実施形態では、流体は、生物学的検体の包埋に使用される脱水試薬(例えば、勾配エタノール)、透明化剤(例えば、キシレン)およびパラフィンを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、流体は、10%のNBFを含む。いくつかの実施形態では、流体は、約70%のエタノールを含む。いくつかの実施形態では、流体は、約80%のエタノールを含む。いくつかの実施形態では、流体は、約90%のエタノールを含む。いくつかの実施形態では、流体は、約100%のエタノールを含む。いくつかの実施形態では、流体は、キシレンを含む。いくつかの実施形態では、流体は、パラフィンを含む。
【0070】
生物学的検体への流体の拡散の程度は、下流の処理および分析方法に影響を及ぼし得ると考えられる。例えば、生物学的検体の固定品質の状況では、現在の臨床実務では、組織形態の保存と抗原性の喪失との間の妥協点を達成するために固定期間を制御することが重要である。実際に、固定持続時間が短すぎるか長すぎると、下流の試料処理に悪影響を及ぼすことがある。したがって、生物学的検体が下流処理の前に、例えば生物学的検体を1つまたは複数の特異的結合実体と接触させる前に最適に固定される時間の正確な予測が依然として必要とされている。出願人は、驚くべきことに、本開示のシステムおよび方法が、流体(例えば、1つまたは複数の固定剤)が生物学的検体、例えば組織検体または細胞学的検体中に最適に拡散される時間の正確な予測を提供することを発見した。
【0071】
上記を考慮して、また生物学的検体の固定との関連において、本開示は、生物学的検体、例えばヒト被験者に由来する組織試料が最適に固定される推定時間(本明細書では「固定までの時間」または「固定完了までの時間」とも呼ばれる)の予測を容易にするシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態では、生物学的検体が最適に固定されるであろう時間の予測は、生物学的検体内の固定剤の特定の濃度または量を達成するのに必要な時間が予測され得るように、十分に正確であるとみなされている(すなわち、特定の時点におけるTOFデータは、それが下流処理に有効且つ適切であることを示す所定の基準を満たす)固定プロセス(例えば、単一の温度固定プロセスまたは2つの温度固定プロセス)中の特定の時点で取得されたTOFデータに基づく。予測を行うための「固定完了までの時間」の決定(予測モジュール204を使用するなど)および「十分に正確であるとみなされる」TOFデータが何であるかの決定(信号モデリングモジュール203を使用するなど)は、本明細書においてさらに説明される。
【0072】
図1Aおよび
図1Bを参照すると、本開示の少なくともいくつかの実施形態は、(i)生物学的検体を介して、例えば、生物学的検体を横切る複数の位置で、TOFデータを取得し(ステップ101)、(ii)取得されたTOFデータを、例えば、リアルタイムで、生物学的検体が流体、例えば、1つまたはそれを超える固定剤に浸漬されている間に分析するためのシステムおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、流体は1つまたは複数の固定剤を含み、生物学的検体は、音響データが収集されている間、例えば連続的に収集されている間(例えば、約0.2秒から約120秒ごとに連続的に収集される)、1つまたは複数の固定剤に浸漬される。いくつかの実施形態では、取得されたTOFデータは、特定の時点における取得されたTOFデータが十分に正確であるとみなされるかどうかを決定するためにリアルタイムで分析され(ステップ102)、その結果、その特定の時点におけるTOFデータは、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定するために、例えば、流体が生物学的検体が最適に固定される時間を推定するための1つまたは複数の固定剤を含む場合に使用され得る(ステップ105)。
【0073】
いくつかの実施形態では、その特定の時点でのTOFデータが使用されて、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間または生物学的検体が最適に固定される時間を推定し得るように、特定の時点で取得されたTOFデータが十分に正確であるとみなされるかどうかの決定は、少なくとも2つの異なる信頼度モデル、例えば、過去および現在の信頼度モデルを計算することを含む。いくつかの実施形態では、3つの異なる信頼度モデルが計算される(ステップ103A、103B、および103Cを参照)。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの信頼度モデルは、新たなTOFデータが収集されるたびに再計算される。少なくとも2つの信頼度モデルが満たされる場合(ステップ104)(例えば、受信したデータが各モデルについての所定の閾値基準を独立して満たすかどうかを決定することによって同時に満たされる)、信号は、正確であるとみなされ、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間または生物学的検体が最適に固定される時間が推定され得る(ステップ105)。
【0074】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの信頼度モデルが満たされると、本明細書に記載のシステムおよび方法は、生物学的検体からのTOF信号が実際の拡散速度(現在および将来)を真に表す瞬間の決定を容易にし、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間、または生物学的検体が適切に固定される時間を予測する。いくつかの実施形態では、TOFデータが十分に正確であるとみなされる時点が、TOFデータが十分に正確であるとみなされる時点と比較して将来的である場合、生物学的検体は、1つまたは複数の固定剤溶液などの流体中に残される。他の実施形態では、TOFデータが十分に正確であるとみなされる時点が、TOFデータが十分に正確であるとみなされる時点と比較して過去である場合、生物学的検体は、1つまたは複数の固定剤溶液などの流体から除去される。いくつかの実施形態では、予測の精度は、モデルのグラウンドトゥルースの決定を実験的に有効なグラウンドトゥルース、すなわち、モデルが安定していると予測した後にどれだけフィットが変化したかと比較することによって決定され得る。
【0075】
図2および
図3を参照すると、システム200は、1つまたは複数の送信機および/または1つまたは複数の受信機(本明細書でさらに説明する)を含む信号取得モジュール201を含む。いくつかの実施形態では、信号取得モジュール201は、コンピュータ100に通信可能に結合される。コンピュータシステム100は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットなど、デジタル電子回路、ファームウェア、ハードウェア、1つまたは複数のメモリ205、コンピュータ記憶媒体(例えば、記憶モジュール240)、コンピュータプログラムまたは一連の命令(例えば、メモリまたは記憶媒体内にプログラムが記憶される)、1つまたは複数のプロセッサ206(プログラムされたプロセッサを含む)、および(本明細書でさらに記載されるような)任意の他のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアモジュールまたはそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、信号取得モジュール201は、ローカルまたはネットワーク120を介してコンピュータ100に結合され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステム200は、追加の構成要素、例えば、サーバ、データベース、顕微鏡、イメージング装置、スキャナ、他のイメージングシステム、自動スライド作成装置などに通信可能に結合され得る。これらの追加の構成要素は、本明細書に記載されている。例えば、システム200は、(本開示の方法にしたがって決定された)最適に固定された生物学的検体が、1つまたは複数のバイオマーカー(適切なバイオマーカーの非限定的な例は本明細書に記載されている)の存在について免疫酵素的になど染色され得るように、自動スライド調製装置に結合され得る。
【0077】
別の例として、システム200は、(例えば、生物学的検体が最適に固定された後に、1つまたは複数のバイオマーカーの存在について免疫酵素染色された生物学的検体の画像を取得するために)イメージング装置をさらに含み得て、イメージング装置から取り込まれた画像は、ローカルまたはサーバ上などで、さらなる処理および/または分析のためにバイナリ形式で記憶され得る。いくつかの実施形態では、イメージング装置(またはメモリに記憶された事前走査画像を含む他の画像ソース)は、1つまたは複数の画像撮像装置を含むことができるが、これに限定されない。画像撮像装置は、限定されるものではないが、カメラ(例えば、アナログカメラ、デジタルカメラなど)、光学系(例えば、1つまたは複数のレンズ、センサフォーカスレンズ群、顕微鏡対物レンズなど)、画像化センサ(例えば、電荷結合素子(CCD)、相補的金属酸化物半導体(CMOS)イメージセンサなど)、写真フィルムなどを含む。デジタル実施形態では、画像撮像装置は、オンザフライフォーカシングを証明するために協働する複数のレンズを含むことができる。イメージセンサ、例えば、CCDセンサは、検体のデジタル画像を撮像することができる。いくつかの実施形態では、画像化装置は、明視野イメージングシステム、マルチスペクトルイメージング(MSI)システム、または蛍光顕微鏡法システムである。いくつかの実施形態では、画像データは、例えば、VENTANA MEDICAL SYSTEMS,Inc.(アリゾナ州トゥーソン)によるVENTANA DP200スキャナなどの画像走査システムまたは他の適切なイメージング装置によって生成され得る。さらなるイメージング装置およびシステムは、本明細書でさらに説明される。当業者は、イメージング装置によって取得されたデジタルカラー画像が、従来、基本色画素から構成されることを理解するであろう。各色付き画素は、それぞれが同じビット数を含む3つのデジタルコンポーネントでコード化され得、各コンポーネントは、「RGB」コンポーネントという用語によっても示される、一般に赤、緑、または青の原色に対応する。
【0078】
図3は、本開示のシステム200およびシステム200内で利用される様々なモジュールの概要を提供する。いくつかの実施形態では、システム200は、1つまたは複数のプロセッサ206および1つまたは複数のメモリ205を有するコンピュータ装置またはコンピュータ実装方法を使用し、1つまたは複数のメモリ205は、1つまたは複数のプロセッサに本明細書に記載の特定の命令を実行させるために、1つまたは複数のプロセッサによる実行のための非一時的コンピュータ可読命令を記憶する。上述したように、本開示のシステム200は、生物学的検体の固定時間、すなわち生物学的検体が最適に固定される時間を予測するために利用され得る。同様に、本開示のシステム200が利用されて、流体が生物学的検体、例えば組織試料中に最適に拡散される時間を予測し得る。
【0079】
図3および
図4を参照すると、いくつかの実施形態では、システム200は、音響データセットを取得するように適合された信号取得モジュール201を含む(ステップ401)。いくつかの実施形態では、本開示のシステム200は、信号取得モジュール201から(またはそれと通信するメモリ205もしくは記憶サブシステム240から)音響データを受信し、受信した音響データを処理する信号処理モジュール202をさらに含む(例えば、信号処理モジュール202は、音響データセットを処理して、1つまたは複数のTOFデータ点、1つまたは複数のTOF曲線、1つまたは複数の減衰定数などを含むTOFデータを生成し得る)(ステップ402)。いくつかの実施形態では、TOFデータ(例えば、TOFデータおよび/またはTOF曲線の形態の信号処理モジュール202の出力)は、信号モデリングモジュール203または予測モジュール204のいずれかによって入力として取り出され得るように、メモリ205または記憶サブシステム240に記憶される。
【0080】
いくつかの実施形態では、システム200は、取得されたTOFデータ(いくつかの実施形態では、1つまたは複数のTOF曲線を含む)が、生物学的検体を通る流体(例えば、1つまたは複数の固定剤)の実際の拡散速度を正確に反映するかどうかを評価するための信号モデリングモジュール203をさらに含む。いくつかの実施形態では、信号モデリングモジュール203は、信号処理モジュール202(またはそれと通信するメモリ205もしくは記憶サブシステム240)から、TOFデータ点(例えば、所定数のTOFデータ点)、1つもしくは複数の導出されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を受信し、少なくとも2つの異なる信頼度モデルを計算する(ステップ403)。
【0081】
いくつかの実施形態では、信号モデリングモジュール203は、少なくとも2つの異なる信頼度モデルを計算するか、または3つの異なる信頼度モデルを全て計算する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの異なる信頼度モデルは、新たに受信されたTOFデータ、例えば、経時的に取得された新たに生成されたTOFデータ、または新たに取得されたTOFデータ点を含む新たに生成されたTOF曲線に基づいて、連続的に再計算される(例えば、0.2秒ごと、0.5秒ごと、1秒ごと、5秒ごと、10秒ごと、20秒ごと、30秒ごと、60秒ごとなど)。いくつかの実施形態では、信号モデリングモジュール203は、少なくとも2つの計算された信頼度モデルを連続的に評価して、少なくとも2つ信頼度モデルが所定の閾値基準を独立して満たす時期を識別する(ステップ404)。本明細書で述べるように、シグナリングモデリングモジュール203は、TOFデータが有効であり、所定の閾値基準を満たすかどうかをリアルタイムで(例えば、生物学的検体への流体の拡散中または生物学的検体の固定中に)決定するために使用される。
【0082】
いくつかの実施形態では、システム200は、流体が生物学的検体中に最適に拡散される推定時間を予測するか、または信号モデリングモジュール203から受信したデータに基づいて固定までの推定時間を予測するように適合された予測モジュール204をさらに含む(ステップ405)。その後、さらなる下流の処理ステップが生物学的検体に適用され得る。これらのモジュールのそれぞれ、および生物学的検体が最適に固定されるように生物学的検体への固定剤の拡散時間を決定するステップが、本明細書でさらに説明される。
【0083】
信号取得モジュール
【0084】
いくつかの実施形態では、システム200は、信号取得モジュール201を含む。いくつかの実施形態では、信号取得モジュール201は、例えば、生物学的検体が流体、例えば、1つまたは複数の固定剤溶液に浸漬された後などに、音響データまたは音響データセットを生成するように適合される。いくつかの実施形態では、音響データは、(i)音響信号が流体(例えば、本明細書中に記載される任意の固定剤または米国特許出願公開第2017/0336363号明細書(その開示はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)に記載される固定剤)に浸漬された生物学的検体に遭遇するように音響信号を送信し、(ii)音響信号が生物学的検体に遭遇した後に音響信号を検出することによって生成される。いくつかの実施形態では、音響データは、繰り返しおよび/または連続的に取得および/または生成される(例えば、0.2秒ごと、0.5秒ごと、1秒ごと、5秒ごと、10秒ごと、20秒ごと、30秒ごと、60秒ごとなど)。いくつかの実施形態では、音響データは、生物学的検体内の単一の点で繰り返しおよび/または連続的に取得および/または生成される。他の実施形態では、音響データは、生物学的検体内またはそれに沿った複数の点、例えば、2点以上、3点以上、4点以上、5点以上、6点以上、10点以上などに沿って繰り返しおよび/または連続的に取得および/または生成される。
【0085】
いくつかの実施形態では、信号取得モジュール201は、周波数掃引によって音響データを生成する。本明細書で使用される場合、「周波数掃引」という用語は、第1のセットの音響波が第1の一定の持続時間にわたって一定の周波数で媒体を通って放射され、後続のセットの音響波が後続の持続時間にわたって一定の周波数間隔で放射されるように、媒体(例えば、1つまたは複数の固定剤を含む媒体)を通って一定の周波数間隔で送信される一連の音響波を指す。いくつかの実施形態では、持続時間は、等しい持続時間である。
【0086】
いくつかの実施形態では、信号取得モジュール201は、1つまたは複数の送信機および受信機を備え、1つまたは複数の送信機および受信機は、送信機によって生成された音響信号が受信機によって受信され、コンピュータ可読信号に変換されるように構成される。いくつかの実施形態では、信号取得モジュール201は、超音波送信機および超音波受信機を備える。本明細書で使用される場合、「送信機」は、電気信号を音響エネルギーに変換することができる装置であり、「超音波送信機」は、電気信号を超音波音響エネルギーに変換することができる装置である。本明細書で使用される場合、「受信機」は、音響波を電気信号に変換することができる装置であり、「超音響波受信機」は、超音響波音響エネルギーを電気信号に変換することができる装置である。
【0087】
電気信号から音響エネルギーを発生させるのに有用な特定の材料は、音響エネルギーから電気信号を発生させるのにも有用である。したがって、送信機および受信機は必ずしも別個の構成要素である必要はないが、別個の構成要素であってもよい。いくつかの実施形態では、送信機および受信機は、送信波が関心のある材料、例えば生物学的検体に遭遇した後に受信機が送信機によって発生された音響波を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、受信機は、関心のある材料、例えば生物学的検体によって反射された音響波を検出するように構成される。他の実施形態では、受信機は、関心のある材料、例えば生物学的検体を通って伝送された音響波を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも2セットの送信機および受信機が提供され、少なくとも2セットのうちの少なくとも1セットは、流体(例えば、固定剤溶液)および生物学的検体を介して音響信号を送信するように配置され、少なくとも第2のセットは、流体(例えば、固定剤溶液)を介して音響信号を送信するが、生物学的検体を介さないように配置される。この実施形態では、第1のセットは、生物学的検体のTOF変化を測定するために使用され、第2のセットは、流体(例えば、固定剤溶液)を通じたTOFの変化(例えば、温度などの環境変動に起因する変化)を検出するために使用される。
【0088】
いくつかの実施形態では、送信機は、トランスデューサに動作可能に結合された波形発生器を備え、波形発生器は、トランスデューサに通信される電気信号を生成し、トランスデューサは、電気信号を音響信号に変換する。特定の実施形態では、波形発生器はプログラム可能であり、それにより、ユーザは、例えば、開始および/または終了周波数、周波数掃引の周波数間のステップサイズ、周波数ステップの数、および/または各周波数が送信される持続時間を含む、周波数掃引の特定のパラメータを変更し得る。他の実施形態では、波形発生器は、1つまたは複数の所定の周波数掃引パターンを生成するように予めプログラムされる。他の実施形態では、波形発生器は、予めプログラムされた周波数掃引とカスタマイズされた周波数掃引との両方を送信するように適合されてもよい。いくつかの実施形態では、送信機はまた、トランスデューサによって発生された音響エネルギーが予測可能に集束され、特定の領域に向けられることを可能にする集束素子を含み得る。
【0089】
動作中、送信機は、媒体を介して周波数掃引を送信し、周波数掃引は、その後、受信機によって検出され、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されるように音響データセットに変換され、および/または分析のために信号分析装置に送信される。音響データセット(例えば、物理的な音響波)が、送信された音響波と受信された音響波との間の位相差を表すデータを含む場合、音響監視システムは、送信された音響波と受信された音響波との間の位相差に対応する電気信号を生成する位相比較器も含み得る。いくつかの実施形態では、音響監視システムは、送信機および受信機に通信可能にリンクされた位相比較器を備える。位相比較器の出力がアナログ信号である実施形態では、信号取得モジュール201はまた、位相比較器のアナログ出力をデジタル信号に変換するためのアナログデジタル変換器を含み得る。いくつかの実施形態では、デジタル信号は、次いで、例えば、非一時的コンピュータ可読媒体(メモリ201または記憶サブシステム240)に記録されてもよく、または分析のために信号処理モジュール202に直接通信されてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、音響データは、周波数掃引が生物学的検体遭遇した後に検出される周波数掃引の少なくとも一部を表す。いくつかの実施形態では、検出される周波数掃引の部分は、生物学的検体によって反射される音響波を構成する。他の実施形態では、検出される周波数掃引の部分は、生物学的検体を通過した音響波を構成する。
【0091】
いくつかの実施形態では、音響データは、生物学的検体内の単一の点(例えば、組織試料の幾何学的中心またはその付近)において信号取得モジュール201によって取得されてもよい。他の実施形態では、音響データは、生物学的検体内の複数の位置(例えば、等間隔の位置間隔)で取り込まれてもよい。音響データが組織試料内の複数の位置から収集される実施形態では、送信機および受信機の共通の焦点が生物学的検体上の異なる位置に移動するように、送信機および受信機に対して組織試料を並進させるか、または組織試料に対して送信機および受信機を並進させるための装置が提供されてもよい。いくつかの実施形態では、信号取得モジュール201は、複数の送信機および受信機を装備し得て、複数の送信機および受信機のそれぞれは、異なる共通の焦点を有し、各セットは、生物学的検体内の異なる位置で音響データを取り込む。
【0092】
米国特許出願公開第2017/0284859号明細書は、複数の異なる位置にわたって音響データを取り込む方法をさらに記載し、さらに、そのような音響データを取得するための可動カセットホルダを記載している。例えば、「異なる位置」は、組織試料の内部または表面上の位置であり得る。いくつかの実施形態によれば、試料は、生検カプセルおよび音響ビーム経路の相対運動によって異なる「試料位置」に配置されてもよい。相対運動は、試料上で「走査する」ための受信機および/またはトランスデューサを段階的または連続的に移動させることを含み得る。あるいは、カセットは、可動カセットホルダによって再配置されてもよい。例えば、カセット内の全ての組織をイメージングするために、カセットホルダは、約1mm垂直に順次上昇され、各新たな位置でTOF値が取得されてもよい。本明細書で使用される「カセット」は、例えば、生検カプセルのための容器、または生検カプセル内に収容されていない組織試料を指す。好ましくは、カセットは、超音波送受信機対のビーム経路に対して自動的に選択および移動、例えば上昇および下降され得るように設計および成形され、カセットに出入りし、したがって内部に保持された組織試料にさらに出入りする液体試薬の移動を可能にする開口部をさらに有する。移動は、例えば、ロボットアームまたはカセットが装填される装置の別の自動化された可動構成要素によって実行されてもよい。他の実施形態では、カセットのみが組織試料を収容するために使用され、カセットの形状は、少なくとも部分的に、組織試料の形状を決定することができる。例えば、カセットの深さよりも僅かに厚い長方形の組織ブロックをカセットに配置し、カセットの蓋を閉じることによって、組織試料を圧縮して広げてカセットの内部空間の大部分を充填させ、したがって、組織試料は、より大きい高さおよび幅を有するがカセットの深さにほぼ対応する厚さを有するより薄い片に変換され得る。米国特許出願公開第2017/0284859号明細書の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
流体の拡散中または固定中に生物学的検体を保持するためのさらに他の容器は、国際公開第2011/071727号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、生物学的検体は、生検カプセル内に提供される。本明細書で使用される「生検カプセル」は、例えば、生検組織試料用の容器である。典型的には、生検カプセルは、試料を保持し、液体試薬、例えば緩衝液、固定剤溶液または染色溶液を組織試料に取り囲んで拡散させるためのメッシュを含む。生検カプセルは、試料を特定の形状に維持することができ、その形状は、開示された方法にしたがってモデル化するのが計算的に容易であり、したがって開示されたシステムにおける使用により適した形状を試料に有利に提供することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、固定剤溶液は、拡散プロセスの少なくとも一部の間(以下により詳細に説明するような二温度固定プロセスの間など)、特定の温度または特定の温度範囲内に保持され得る。いくつかの実施形態では、一定量の固定剤を保持するための装置は、固定剤溶液を特定の温度または特定の温度範囲内に維持するように適合され得る。いくつかの実施形態では、装置は、固定剤溶液と周囲環境との間の熱伝達を実質的に低減するために断熱されてもよい。いくつかの実施形態では、装置は、組織試料が特定の温度または特定の温度範囲内に浸漬される固定剤溶液を保持するように設計された加熱または冷却装置によって構成されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、生物学的検体に二温度浸漬固定法を組み込む。本明細書で使用される場合、「二温度固定法」は、組織を最初に低温の固定剤溶液に第1の期間浸漬し、続いて生物学的検体を第2の期間(受動的または能動的に)加熱する固定方法である。「低温」拡散ステップは、固定剤溶液が架橋を実質的に引き起こすことなく組織全体に拡散することを可能にする。いくつかの実施形態では、固定剤溶液の温度は、少なくとも、固定剤溶液が組織試料全体に拡散したことを確実にするのに十分な長さの低温に保持される。いくつかの実施形態では、拡散を可能にするための最小時間量は、低温の固定剤中の様々な時間と温度の組み合わせを使用し、組織構造の保存および免疫組織化学(例えば、分析物がタンパク質またはリン酸化タンパク質である場合、)またはインサイチュハイブリダイゼーション(標的分析物がmiRNAまたはmRNAなどの核酸である場合)による標的分析物の保存のための損失などの要因を見て、得られた組織試料を評価して経験的に決定され得る。あるいは、拡散を可能にする最小時間量は、例えば、Bauer et al.,Dynamic Subnanosecond Time-of-Flight Detection for Ultra-precise Diffusion Monitoring and Optimization of Biomarker Preservation,Proceedings of SPIE,Vol.9040,90400B-1(2014年3月20日)に概説されている方法を使用して拡散を監視することによって決定され得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび方法が利用されて、低温の固定剤が生物学的検体中(生物学的検体の中心など)に最適に拡散される時間を推定し得る(比較的高い温度、例えば少なくとも室温で固定する前に)。次いで、組織が組織全体に十分に拡散すると、加熱(または生物学的検体および/または流体を室温に加温することを可能にする)ステップは、固定剤による架橋をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび方法が利用されて、二温度浸漬固定方法のこの第2のステップ中の固定までの時間を決定し得る。
【0097】
低温拡散とそれに続く加熱ステップ(受動的または能動的加熱)との組み合わせは、標準的な方法を使用するよりも完全に固定された組織試料をもたらす。したがって、実施形態では、組織試料は、以下によって固定される:(1)未固定の組織試料を低温の固定剤溶液に浸漬し、本明細書中に開示されるようなシステムおよび方法を使用して組織試料中のTOFを監視することによって、組織試料中への固定剤の拡散を監視すること(拡散ステップ)、および(2)閾値TOFが測定された後、組織試料の温度を上昇させることを可能にすること(固定ステップ)。いくつかの実施形態では、拡散ステップは、約20℃未満、約15℃未満、約12℃未満、約10℃未満、約8℃未満、約6℃未満、約4℃未満、約0℃から約10℃の範囲、約0℃から約12℃の範囲、約0℃から約15℃の範囲、約2℃から約10℃の範囲、約2℃から約12℃の範囲、約2℃から約15℃の範囲、約5℃から約10℃の範囲、約5℃から約12℃の範囲、約5℃から約15℃の範囲である固定剤溶液中で行われる。いくつかの実施形態では、拡散ステップは、上記の温度のいずれかで実行されてもよく、試料は、約20℃未満、例えば約15℃未満、または例えば約10℃未満の温度で最大約72時間の間、固定剤中に保存されてもよい。他の実施形態では、組織試料を取り囲む固定剤溶液の温度は、固定ステップ中に、約20℃から約55℃の範囲内、例えば約20℃から約50℃の範囲内、例えば約20℃から約45℃の範囲内、例えば約20℃から約40℃の範囲内、例えば約250℃から約55℃の範囲内、例えば約25℃から約50℃の範囲内、例えば約25℃から約45℃の範囲内、または例えば約25℃から約50℃の範囲内で上昇させることが可能にされる。二温度固定プロトコルを組み込む方法を含む生物学的検体の固定方法は、米国特許出願公開第2012/0214195号明細書にさらに記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
いくつかの実施形態では、二温度固定プロセスは、例えばリン酸化タンパク質、DNAおよびRNA分子(miRNAおよびmRNAなど)を含む組織試料中の特定の不安定なバイオマーカーを検出する方法に特に有用である。PCT/EP2012/052800号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。したがって、特定の実施形態では、これらの方法を使用して得られた固定組織試料が、そのような不安定なマーカーの存在について分析され得る。いくつかの実施形態では、試料の不安定なマーカーを検出する方法であって、本明細書に開示される二温度固定にしたがって組織を固定することと、固定された組織試料を、不安定なマーカーに特異的に結合することができる分析物結合実体、例えばFOXP3と接触させることと、を含む、方法が提供される。分析物結合実体の例は、標的抗原に結合する抗体および抗体断片(一本鎖抗体を含む)、NHCに結合するt細胞受容体(一本鎖受容体を含む):抗原複合体、MHC:ペプチド多量体(特異的T細胞受容体に結合する)、特定の核酸またはペプチド標的に結合するアプタマー、特定の核酸、ペプチド、および他の分子に結合するジンクフィンガー、受容体リガンドに結合する受容体複合体(一本鎖受容体およびキメラ受容体を含む)、受容体複合体に結合する受容体リガンド、および特定の核酸にハイブリダイズする核酸プローブを含む。例えば、組織試料中のリン酸化タンパク質を検出する免疫組織化学的方法であって、上記の二温度固定法にしたがって得られた固定組織を、リン酸化タンパク質に特異的な抗体と接触させ、リン酸化タンパク質に対する抗体の結合を検出することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、核酸分子を検出するインサイチュハイブリダイゼーション方法であって、上記の二温度固定法にしたがって得られた固定組織を、関心のある核酸に特異的な核酸プローブと接触させることと、関心のある核酸へのプローブの結合を検出することと、を含む、方法が提供される。
【0099】
信号処理モジュール
【0100】
本開示のシステム200は、信号処理モジュール202をさらに含む。いくつかの実施形態では、信号処理モジュール202は、信号取得モジュール201の一部である。他の実施形態では、信号処理モジュール202は、信号取得モジュール201とは別個である。
【0101】
いずれの実施形態においても、信号処理モジュール202は、信号取得モジュール201から(またはそれと通信するメモリ201もしくは記憶サブシステム240から)音響データを受信し、受信した音響データを処理して、1つのTOFデータ点、1つもしくは複数のTOF曲線、および/または1つもしくは複数の減衰定数(本明細書では「TOFデータ」と総称する)を生成する。いくつかの実施形態では、音響データが連続的に生成され(所定の時間区間など)、信号処理モジュール202は、音響データが受信されるときに音響データを処理し、それにより、音響データが連続的に取得されるときにTOFデータを提供する。いくつかの実施形態では、信号処理モジュール202は、信号取得モジュール201から受信された音響データをリアルタイムで処理する。
【0102】
いくつかの実施形態では、信号処理モジュール202は、取り出された音響データを入力として利用して、1つまたは複数のTOFデータ点を計算する。いくつかの実施形態では、「TOFデータ点」は、ある時点におけるバルク流体と生物学的検体との間のTOF差である。いくつかの実施形態では、収集された各TOFデータ点は、(i)音響波が流体を通って移動するための計算された絶対通過時間の間の音響波の計算された通過時間差、および(ii)本明細書において以下にさらに説明するように、音響波が流体および生物学的検体の両方を通過する計算された絶対通過時間を表す。
【0103】
他の実施形態では、信号処理モジュール202は、取り出された音響データおよび/または計算されたTOFデータ点を入力として利用して、経時的に収集された「TOFデータ点」のベクトルを含む「TOF曲線」を計算する。いくつかの実施形態では、TOF曲線は、経時的且つ特定の時点(すなわち、最後のTOFデータ点が収集された時点)までの生物学的検体への外因性流体の拡散を表す。より多くのTOFデータ点が経時的に収集されるにつれて、「新たな」TOFデータ点を含む新たなTOF曲線が計算され得る。いくつかの実施形態では、信号処理モジュール202は、導出されたTOF曲線を単一の指数曲線にフィッティングするための命令を含む。
【0104】
さらに他の実施形態では、信号処理モジュール202は、受信された音響データおよび/またはTOFデータ点に基づいて減衰定数または平均減衰定数(τavg)を計算するための命令を含む。信号処理モジュール202によって実行される動作は、本明細書でさらに説明される。
【0105】
いくつかの実施形態では、1つもしくは複数のTOFデータ点、1つもしくは複数のTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数は、信号モデリングモジュール203および/または予測モジュール204への出力として提供される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のTOFデータ点、1つまたは複数のTOF曲線、および/または、1つまたは複数の計算された減衰定数は、それらが信号モデリングモジュール203または予測モジュール204のいずれかによる入力として取り出され得るように、メモリ201または記憶サブシステム240に記憶される。
【0106】
受信した音響データ
【0107】
いくつかの実施形態では、信号処理モジュール202は、取り出された音響データを利用して、信号取得モジュール201内のトランスデューサ間を音響波が移動するのにかかる時間の絶対量(「絶対通過時間」)を計算する。いくつかの実施形態では、絶対通過時間は、送信機と受信機との間で測定される、音響波が流体を通って移動する絶対通過時間である。他の実施形態では、絶対通過時間は、送信機と受信機との間で測定される、音響波が流体および生物学的検体(例えば、組織学的カセット内に配置された生物学的検体)を通過する絶対通過時間である。
【0108】
いくつかの実施形態では、信号処理モジュール202は、計算された絶対通過時間をさらに利用して、流体および生物学的検体を通過するのとは対照的に、音響波が流体のみを通過する速度を計算する。これらの実施形態では、通過時間差は、(i)音響波が流体を通って移動するための計算された絶対通過時間と、(ii)音響波が流体および生物学的検体を通って移動するための計算された絶対通過時間との間で計算される。いくつかの実施形態では、このプロセスは、経時的に繰り返される。他の実施形態では、このプロセスは、信号処理モジュール202が信号取得モジュール201から受信したデータをリアルタイムで計算するように、信号取得モジュール201によって新たなデータが取得されるにつれて連続的に繰り返される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、0.5秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、1秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、1.5秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、2秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、5秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、10秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、15秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、20秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、30秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、40秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、50秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。いくつかの実施形態では、新たなデータは、60秒ごとに少なくとも1回、信号取得モジュール201から受信される。
【0109】
いくつかの実施形態では、経時的に計算された差は、TOFの変化を表す。いくつかの実施形態では、経時的な生物学的検体の変化(例えば、1つまたは複数の固定剤を含む溶液に曝露されると、その生物学的検体が固定されるような生物学的検体の固定の状態)は、計算された差を変化させ得る。例えば、音響波は、1つまたは複数の固定剤を含む流体内に固定されるため、経時的に生物学的検体を通ってより速く移動し得る。これに基づいて、およびいくつかの実施形態では、経時的に計算された差は、生物学的検体の固定状態、経時的な固定状態の変化を予測するのに役立ち得るか、または生物学的検体が適切に固定される前に固定が継続しなければならない時間量を予測するために使用され得る。
【0110】
TOFデータ点計算
【0111】
いくつかの実施形態では、信号処理モジュール202は、1つまたは複数のTOFデータ点を計算するために使用される。いくつかの実施形態では、TOFは、送信および受信された音響波の位相を比較することによって信号処理モジュール202によって推定される。いくつかの実施形態では、実験的周波数掃引は、媒体を介して送信機によって送信され、受信機によって検出される。いくつかの実施形態では、送信波および受信波の位相が比較され、時間的位相シフトに変換される。いくつかの実施形態では、次に、様々な候補TOFにおける候補時間位相シフトをモデル化するためにシミュレーションが実行され、候補時間位相シフトと実験的時間位相シフトとの間の誤差が生成され、誤差関数としてプロットされる。いくつかの実施形態では、誤差関数の最小値をもたらすTOFが、「観察」TOFとして選択される。いくつかの実施形態では、TOFは、送信された超音波信号と受信された超音波信号との間の送信された位相シフトを記録し、記録された位相シフトを異なる候補TOFにおける複数のシミュレートされた位相シフトにフィッティングすることによって計算される。
【0112】
いくつかの実施形態では、TOFは、(i)TOF計算の包絡線法、(ii)TOFを計算する線形回帰法、または(iii)TOF計算のカーブフィッティング法を使用して計算される。TOF計算の各包絡線法、TOFを計算する線形回帰法、TOF計算のカーブフィッティング法は、以下に記載され、国際公開第2016/097164号にさらに記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
TOF計算の包絡線法
【0114】
TOF計算の包絡線法では、TOFは、計算された誤差関数の最小値の包絡線に基づく。包絡線を計算するためには、まず誤差関数が生成されなければならない。誤差関数の生成は、一般に、以下の間の比較を必要とする:(1)記録された周波数掃引から生成された時間的位相シフト、および(2)複数の候補TOFに基づいてシミュレートされた複数の候補時間位相シフト。これは、周波数掃引の周波数ごとに繰り返される。観察された時間位相シフトと候補の各時間位相シフトとの間の誤差が計算され、誤差関数としてプロットされる。次に、包絡線関数が誤差関数に適用される。包絡線関数の最小値が観察されたTOFとして選択される。
【0115】
TOF計算の線形回帰法
【0116】
TOFを計算する線形回帰法は、超音波周波数掃引の個々の線形セクションを求めてTOF信号を計算し、各領域に線形回帰を実行し、各領域の勾配を平均して真のTOFを決定する。これは、理想的な周波数を見つけるために周波数掃引の理想的な位相が決定され、その周波数の勾配が再構成されてTOFと等しくされるが、この実施形態では、位相周波数掃引の勾配が直接計算される先の実施形態とは対照的であり得る。
【0117】
TOF計算のカーブフィッティング法
【0118】
TOFを計算する「カーブフィッティング法」は、周波数掃引による累積位相比較の線形性を利用する。2つの超音波トランスデューサ間のTOFは、周波数掃引について得られた位相周波数曲線の勾配によって計算され得る。しかしながら、全サイクルが蓄積されると、位相は0に戻り、したがって、位相対超音波周波数は三角波のように見える。このアルゴリズムは、所与の振幅、周波数、および位相を有する候補三角波を生成する。候補三角波の振幅、周波数、および位相は変更され、周波数掃引から実験的に検出された三角形と比較される。次いで、候補波と実験波との間の最も近い一致が使用されて、三角波の周波数とその勾配の絶対値との間の既知の関係を使用して、観察されたTOFを直接計算する。次いで、勾配が使用されてTOFを計算する。
【0119】
TOF計算の例として、出願人は、流体、例えば1つまたは複数の固定剤に浸漬された組織試料中のナノ秒未満のTOF値をロバストに検出することができる方法を開発した。いくつかの実施形態では、プログラマブル波形発生器によってプログラムされた送信トランスデューサは、3.7MHzの正弦波信号を600μs送信する。いくつかの実施形態では、そのパルス列は、流体および組織を横断した後に受信トランスデューサによって検出され、次いで、受信および送信された超音波正弦波は、デジタル位相比較器と電子的に比較される。いくつかの実施形態では、位相比較器の出力は、アナログデジタル変換器によって照会され、平均値が記録される。いくつかの実施形態では、プロセスは、複数の音響周波数(ν)で繰り返される。いくつかの実施形態では、トランスデューサの中心周波数(約4.0MHz)および比帯域幅(約60%)を考えると、典型的な掃引は、約3.7から約4.3MHzの範囲であり、位相比較器は、約600Hzごとに照会される。いくつかの実施形態では、位相比較器からの電圧は、実験的に決定された位相(φ
exp)と呼ばれる時間的位相シフトに変換される。次に、総当たりシミュレーションが使用されて、異なるTOF値に対して観察された位相周波数掃引がどのように見えるかを計算する。いくつかの実施形態では、入力正弦波周波数の関数としての候補時間位相値は、式1にしたがって計算される:
【0120】
ここで、TOF
candは、ナノ秒単位の候補TOF値であり、Tは、ナノ秒単位の入力正弦波の周期であり、rndは、最も近い整数関数への丸めを表し、|...|は、絶対値記号である。いくつかの実施形態では、所与の候補TOFおよび周波数値(すなわち、期間)について、右側の項は、最も近いサイクル数が生じるのにかかる時間を表す。いくつかの実施形態では、この値は、TOF
candから減算されて、次の完全なサイクルへのまたは最大で次の完全なサイクルまでの時間位相を計算する。したがって、いくつかの実施形態では、位相値は、最初は200psの間隔で10~30μsの範囲の複数の候補TOF値について計算される。いくつかの実施形態では、実験的周波数掃引と候補周波数掃引との間の誤差は、式2によって個々の候補TOF値について最小二乗の意味で計算される:
【0121】
ここで、Nは、掃引における周波数の総数である。いくつかの実施形態では、候補TOFの関数としての正規化誤差関数は、光インターフェログラムに似ている。例えば、各特徴は、1音響周期(T=1/4MHz=250ns)の幅を有する。最大誤差関数は、候補位相周波数掃引が等しい波長を有するが、実験的な位相周波数掃引と位相がずれていることを示す。逆に、誤差が最小化されると、2つは完全に調和され、したがって、再構成されたTOFは、式3にしたがって誤差関数の大域的最小値として登録される:
【0122】
いくつかの実施形態では、音響波をデジタル的に比較するこの技術は、中心トラフの鋭さのために高精度をもたらし、非常によく一致した候補および実験的な位相周波数掃引をもたらす。
【0123】
いくつかの実施形態では、TOFデータ点は、新たな音響データが信号処理モジュール202によって受信され処理されるときに連続的に計算される(例えば、0.2秒ごと、0.5秒ごと、1秒ごと、5秒ごと、10秒ごと、20秒ごと、30秒ごと、60秒ごとなど)。いくつかの実施形態では、TOFデータ点は、メモリ201および/または信号処理モジュール202と通信する記憶サブシステム240に記憶される。いくつかの実施形態では、TOFデータ点またはTOF曲線は、信号モデリングモジュール203および/または予測モジュール204への入力として提供される。
【0124】
拡散速度および減衰定数計算
【0125】
いくつかの実施形態では、信号処理モジュール202は、拡散速度および/または減衰定数を計算するように適合される。いくつかの実施形態では、計算された減衰定数は、信号モデリングモジュール203および/または予測モジュール204への入力として提供される。いくつかの実施形態では、拡散速度を計算するために、TOF曲線を単一の指数曲線にフィットして、TOF減衰振幅(A)および減衰定数(τ)を導出する。いくつかの実施形態では、単一の指数曲線は、式(4)にかかる形式からなる:
【0126】
式中、Cは、一定のオフセットであり、Aは、減衰の振幅(すなわち、非拡散組織試料と完全拡散組織試料との間のTOF値差)であり、τは、減衰定数であり、tは、拡散時間であり、rは、空間依存性である(明示的に述べられている)。いくつかの実施形態では、一定のオフセットCは、組織試料とバルク溶液(例えば、組織液または試料緩衝液)との間のTOF差を表す。いくつかの実施形態では、視覚化のために定数Cは、0に設定され得る。
【0127】
生物学的検体内またはそれに沿った複数の空間位置で音響データが収集される実施形態では、空間的に平均化されたTOF曲線(すなわち、試料内の複数の空間位置におけるTOFを表す単一の曲線)を計算し、空間的に平均化されたTOF曲線を単一の指数曲線にフィッティングすることによって平均TOF振幅(A
avg)および平均減衰定数(τ
avg)を得ることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、空間的に平均化されたTOF曲線は、式(5)にかかる式からなる:
【0128】
式中、TOFavgは、空間的に平均化されたTOF曲線であり、Nは、TOF曲線が取得された空間位置の数であり、Cavgは、平均定数オフセットであり、Aavgは、減衰の平均振幅(すなわち、非拡散組織試料と完全拡散組織試料との間の平均TOF値差)であり、τavgは、平均減衰定数である。この文脈において、「平均」は、試料中の異なる点での特定の共有時点について得られたデータ値から導出された「空間平均」を意味する。
【0129】
いくつかの実施形態では、時間tにおける拡散速度は、時間tにおける単一指数曲線の導関数として計算される。いくつかの実施形態では、空間的に平均化されていないTOF曲線の拡散速度は、式(6)にしたがって計算される:
【0130】
式中、Aは、減衰の振幅(すなわち、非拡散組織試料と完全拡散組織試料との間のTOF値差)であり、τは、減衰定数であり、t
0は、拡散時間である。いくつかの実施形態では、空間的に平均化されたTOF曲線の拡散速度は、式(7)にしたがって計算される:
【0131】
式中、A
avgは、減衰の平均振幅(すなわち、非拡散組織試料と完全拡散組織試料との間のTOF差の空間平均)であり、τ
avgは、平均減衰定数であり、t
0は、拡散時間である。いくつかの実施形態では、拡散速度は、曲線の微分を時間t
0における試料の振幅(AまたはA
avg)で割ることによって、振幅正規化拡散速度として計算される。いくつかの実施形態では、振幅正規化された拡散速度は、式(8)にしたがって空間的に平均化されていないTOF曲線について計算される:
【0132】
式中、τは、減衰定数であり、t
0は、拡散時間であり、括弧は、拡散速度の単位を示し、時間は、τによる単位時間である。いくつかの実施形態では、振幅正規化された拡散速度は、式(9)にしたがって空間的に平均化されたTOF曲線について計算される:
【0133】
式中、τavgは、平均減衰定数であり、t0は、拡散時間であり、括弧は、拡散速度の単位を示し、時間は、τavgによる単位時間である。
【0134】
いくつかの実施形態では、減衰定数は、新たな音響データが信号処理モジュール202によって受信され処理されるときに連続的に計算される(例えば、0.2秒ごと、0.5秒ごと、1秒ごと、5秒ごと、10秒ごと、20秒ごと、30秒ごと、60秒ごとなど)。いくつかの実施形態では、計算された減衰定数は、メモリ205および/または信号処理モジュール202と通信する記憶サブシステム240に記憶される。いくつかの実施形態では、計算された減衰定数またはその平均は、信号モデリングモジュール203および/または予測モジュール204への入力として提供される。
【0135】
TOFデータを導出するさらなる方法は、米国特許出願公開第2017/0284920号明細書、米国特許出願公開第2017/0284859号明細書、および米国特許出願公開第2017/0284969号明細書に記載されており、それらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
信号モデリングモジュール
【0137】
システム200はまた、測定されたTOF信号が生物学的検体を通る流体(例えば、1つまたは複数の固定剤)の実際の拡散速度を正確に反映するかどうかを評価するための信号モデリングモジュール203を含む。いくつかの実施形態では、信号モデリングモジュール203は、信号処理モジュール202またはそれと通信するメモリ205もしくは記憶サブシステム240からTOFデータ(例えば、所定数のTOFデータ点、導出されたTOF曲線、および/または計算された減衰定数)を受信し、少なくとも2つの異なる信頼度モデルを計算する(ステップ403)。いくつかの実施形態では、計算された少なくとも2つの異なる信頼度モデルは、本明細書で説明するように、過去の信頼度モデルおよび現在の信頼度モデルである。他の実施形態では、計算された少なくとも2つの異なる信頼度モデルは、過去の信頼度モデルおよび将来の信頼度モデルである。他の実施形態では、計算された少なくとも2つの異なる信頼度モデルは、現在の信頼度モデルおよび将来の信頼度モデルである。他の実施形態では、信号モデリングモジュール203は、3つの異なる信頼度モデルを計算する(ステップ403)。いくつかの実施形態では、3つの計算された異なる信頼度モデルは、本明細書で説明するように、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの信頼度モデルが計算されると(ステップ403)、少なくとも2つの信頼度モデルのそれぞれは、信頼度モデルがそれぞれ独立して「満たされる」かどうかを決定するために、所定の閾値基準と独立して比較される(ステップ404)。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの信頼度モデルが計算され、少なくとも2つの信頼度モデルが独立しておよび/または同時に満たされると(ステップ404)、予測モジュール204を使用して、流体が生物学的検体を通って最適に拡散される時間または固定までの時間(ステップ405)が推定される。いくつかの実施形態では、流体が生物学的検体を通って最適に拡散される時間または固定までの時間は、少なくとも2つの信頼度モデルが独立しておよび/または同時に満たされた時点に対応するTOFデータを使用して推定される。
【0139】
他の実施形態では、3つの信頼度モデルが計算され(ステップ403)、3つの計算された信頼度モデルの少なくとも2つの信頼度モデルが満たされると(ステップ404)、予測モジュール204を使用して、流体が生物学的検体を通って最適に拡散される時間または固定までの時間が推定される。いくつかの実施形態では、流体が生物学的検体を通って最適に拡散される時間または固定までの時間は、(3つの計算された信頼度モデルの)少なくとも2つの信頼度モデルが独立しておよび/または同時に満たされた時点に対応するTOFデータを使用して推定される。
【0140】
さらに他の実施形態では、3つの信頼度モデルが計算され(ステップ403)、3つの信頼度モデルが全て独立しておよび/または同時に満たされると(ステップ404)、予測モジュール204を使用して、流体が生物学的検体を通って最適に拡散される時間または固定までの時間が推定される(ステップ405)。いくつかの実施形態では、流体が生物学的検体を通って最適に拡散される時間または固定までの時間は、3つの信頼度モデルが独立しておよび/または同時に満たされた時点に対応するTOFデータを使用して推定される。
【0141】
異なる信頼度モデルのそれぞれ、および異なる信頼度モデルを独立して「満たす」ための所定の閾値基準の例を、本明細書でさらに説明する。過去、現在、および将来の信頼度モデルとそれらの予測力を示す例示的な時間経過は、実施例1に記載され、
図5~
図9に示されている。
【0142】
いくつかの実施形態では、それぞれの新たな連続するTOFデータ点が信号処理モジュール202によって導出され、信号モデリングモジュール203によって受信された後、それぞれの信頼度モデルは、新たに受信されたTOFデータ点に基づいて更新(再計算)される。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの信頼度モデルは、新たなTOFデータが入力として受信されるときに連続的に再計算される(例えば、0.2秒ごと、0.5秒ごと、1秒ごと、5秒ごと、10秒ごと、20秒ごと、30秒ごと、60秒ごとなど)。他の実施形態では、3つの信頼度モデルのそれぞれは、新たなTOFデータが入力として受信されるときに連続的に再計算される(例えば、0.2秒ごと、0.5秒ごと、1秒ごと、5秒ごと、10秒ごと、20秒ごと、30秒ごと、60秒ごとなど)。
【0143】
いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、0.2秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて(例えば、新たに受信されたTOFデータ点を用いて)再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、0.5秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、0.7秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、1秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、1.5秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、2秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、3秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、4秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが5秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、10秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。
【0144】
いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、15秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、20秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、25秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、30秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、35秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、40秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、45秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、50秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、55秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、60秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、65秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。
【0145】
いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、70秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、80秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、90秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、100秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、110秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。いくつかの実施形態では、新たなTOFデータが、120秒ごとに少なくとも1回受信され、その後、それぞれの信頼度モデルが、新たに受信されたTOFデータを用いて再計算される。
【0146】
過去の信頼度モデル
【0147】
過去の信頼度モデルは、生物学的検体を通る1つまたは複数の流体(1つまたは複数の固定剤を含む)の測定された拡散速度がTOFシステムによって一貫して分解されたかどうかを決定する。換言すれば、過去の信頼度モデルは、候補TOFデータ点が1つまたは複数の以前に収集されたTOFデータ点と一致することを確立するために使用される。例えば、過去の信頼度モデルは、例えば、時間区間12において記録された候補TOFデータ点が、時間区間11、10、9、8、7、および6のそれぞれにおいて記録された収集されたTOFデータ点と一致することを確立するために使用され得る。
【0148】
フィックの第1の法則に基づいて、生物学的検体を通る流体(1つまたは複数の固定剤を含む)の拡散は、単一のパラメータ、すなわち拡散定数によって記述され得ることが予想される。いくつかの実施形態では、生物学的検体の拡散は、計算された減衰定数(例えば、信号処理モジュール202を使用して計算された減衰定数を参照されたい)によって支配される単一の指数関数的減衰によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、(例えば、経時的に受信された連続的に受信されたTOFデータ点について)計算された減衰定数が経時的に著しく変化する場合、それは、拡散プロファイルが「真」プロファイルに収束することができないことを示す。換言すれば、生物学的検体の固定との関連において、経時的に計算された連続した計算された減衰定数の広範な変動(例えば、所定数の連続して受信されたTOFデータ点にわたる)は、計算された拡散速度が生物学的検体を通る固定剤の真の拡散速度をまだ表していないことを示す。一方、経時的に比較的一貫した減衰定数(例えば、所定数の連続して受信されたTOFデータ点にわたる)は、計算された拡散速度が生物学的検体を通る固定剤の真の拡散速度を表すことを示す。
【0149】
いくつかの実施形態では、過去の信頼度モデルは、入力として、信号処理モジュール202またはそれと通信するメモリ201または記憶サブシステム240から、1つまたは複数の導出されたTOFデータ点および/または1つまたは複数の減衰定数を取り出し、測定された拡散速度が、所定数の連続して導出されたTOFデータ点にわたって、ある所定の閾値マージン内で一貫して解決されたかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、測定された拡散速度は、3つの連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。他の実施形態では、測定された拡散速度は、4つの連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。さらに他の実施形態では、測定された拡散速度は、5つの連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。さらなる実施形態では、測定された拡散速度は、6つの連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。またさらなる実施形態では、測定された拡散速度は、7つの連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。なおさらなる実施形態では、測定された拡散速度は、8つの連続的に導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。なおさらなる実施形態では、測定された拡散速度は、9つの連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。他の実施形態では、測定された拡散速度は、10個の連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。さらに他の実施形態では、測定された拡散速度は、12個の連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。さらなる実施形態では、測定された拡散速度は、15個の連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。またさらなる実施形態では、測定された拡散速度は、18個の連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。なおさらなる実施形態では、測定された拡散速度は、21個の連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。なおさらなる実施形態では、測定された拡散速度は、24個の連続して導出されたTOFデータ点について所定の閾値マージン内で一貫して分解されなければならない。
【0150】
いくつかの実施形態では、連続的に導出された複数のTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定されるとき、計算された過去の信頼度モデルが満たされる(すなわち、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす)。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の収束試験アルゴリズムが使用されて、計算された候補減衰定数が所定の過去の信頼度モデル閾値基準内に入るかまたはそれを満たすかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、収束試験アルゴリズムは、絶対収束、代替直列試験、直接比較試験、積分試験、限界比較試験、p直列収束、比試験、ルート試験、コーシー凝縮試験、アベル試験、ディリクレ試験、ラーベ・デュハメル試験、バートラント試験、およびガウス試験から選択される。
【0151】
いくつかの実施形態では、収束試験は、(i)「理論値」を提供するために、候補TOFデータ点の候補減衰定数を計算することと、(ii)「実験値」を提供するために、経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて、平均減衰定数を計算することと、(iii)計算された理論値および計算された実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定されたパーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む。いくつかの実施形態では、実際のパーセント誤差は、式(10)によって計算される:
誤差%=((計算理論値-計算実験値)/計算理論値)×100(10)
【0152】
いくつかの実施形態では、平均減衰定数は、以下によって導出される:(i)候補TOFデータ点に先行する所定数の連続して導出されたTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数をメモリ202または記憶サブシステム240から取り出すこと、および(ii)取り出された計算された減衰定数のそれぞれを平均化すること。いくつかの実施形態では、候補TOFデータ点は、最後に受信された導出TOFデータ点である。平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する所定数の連続して導出されたTOFデータ点について計算された減衰定数に基づく。例えば、候補TOFデータ点は、時間区間10にあってもよく、平均減衰定数は、時間区間9、8、7、6、および5において取り出されたTOFデータ点に基づいて計算される。
【0153】
いくつかの実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも2つのTOFデータ点に基づいて計算される。他の実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも3つのTOFデータ点に基づいて計算される。他の実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも4つのTOFデータ点に基づいて計算される。他の実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも5つのTOFデータ点に基づいて計算される。他の実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも6つのTOFデータ点に基づいて計算される。他の実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも7つのTOFデータ点に基づいて計算される。他の実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも8つのTOFデータ点に基づいて計算される。他の実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも9つのTOFデータ点に基づいて計算される。他の実施形態では、平均減衰定数は、候補TOFデータ点に先行する少なくとも10個のTOFデータ点に基づいて計算される。
【0154】
いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約5%未満である。他の実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約4%未満である。さらに他の実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約3%未満である。いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約1%から約3%である。他の実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約1.5%から約3%である。さらに他の実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約1.75%から約2.5%である。さらなる実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約1.75%から約2.25%である。いくつかの実施形態では、所定の閾値パーセンテージ値は、約2%である。
【0155】
いくつかの実施形態では、過去の信頼度モデルは、少なくとも5つの連続的に導出されたTOFデータ点に対応する少なくとも5つの計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるときに満たされる。他の実施形態では、過去の信頼度モデルは、少なくとも6つの連続的に導出されたTOFデータ点に対応する少なくとも6つの計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるときに満たされる。他の実施形態では、過去の信頼度モデルは、少なくとも7つの連続的に導出されたTOFデータ点に対応する少なくとも7つの計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるときに満たされる。他の実施形態では、過去の信頼度モデルは、少なくとも8つの連続的に導出されたTOFデータ点に対応する少なくとも8つの計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるときに満たされる。他の実施形態では、過去の信頼度モデルは、少なくとも9つの連続的に導出されたTOFデータ点に対応する少なくとも9つの計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるときに満たされる。他の実施形態では、過去の信頼度モデルは、少なくとも10個の連続的に導出されたTOFデータ点に対応する少なくとも10個の計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあるときに満たされる。
【0156】
現在の信頼度モデル
【0157】
現在の信頼度モデルは、将来のTOFデータ点を予測するための高い統計的信頼度が存在することを確立するために使用される。過去の信頼度モデルは、所定数の連続的に導出されたTOFデータ点にわたる拡散率が一貫しているかどうかを決定するが、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が以前に収集されたTOFデータの少なくともいくつかと一貫しているかどうかを確立し、したがって、過去の信頼度モデルによって生成された偽陽性の排除を容易にする。例えば、現在の信頼度モデルが同じ減衰定数を繰り返し計算するが、信頼度が低い場合、現在の信頼度モデルは、信号が予測を行うのに十分に有効であったと正しく決定する。
【0158】
いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも20%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも30%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも40%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも50%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも60%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも70%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも80%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも90%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも95%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも98%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が、以前に収集されたTOFデータの少なくとも99%と一致するかどうかを確立する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、現在のTOFデータ点が以前に収集されたTOFデータの全てと一致するかどうかを確立する。
【0159】
いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、(i)導出されたTOF曲線(現在の信頼度モデルが計算されている時点までのいくつかまたは全てのTOFデータ点を含む)および/または信号処理モジュール202もしくはそれと通信するメモリ201もしくは記憶サブシステム240からの1つまたは複数の導出された減衰定数を入力として取り出し、(ii)取り出された導出されたTOF曲線および/または減衰定数に基づいて信頼区間を計算し、(iii)計算された信頼区間が所定の閾値を下回るかどうかを評価する。例えば、現在の信頼度モデルは、取得されたTOF曲線内の全てのTOFデータ点に対応する導出された減衰定数に基づいて95%信頼区間を計算し、計算された信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るかどうかを評価し得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルの信頼区間は、以下によって計算される:(a)TOF曲線の取得されたTOFデータ点の一部または全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、および(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を計算すること。いくつかの実施形態では、計算されたTOFデータ点の全てが、現在の信頼度モデルを計算するために使用される。換言すれば、信頼区間が計算されている時点までに計算されたTOFデータ点の全てが、計算されたTOF曲線の非線形回帰フィッティングにおいて使用される。減衰定数の信頼区間は、フィットから計算される。いくつかの実施形態では、非線形フィッティングおよび信頼区間計算は、https://www.astro.rug.nl/software/kapteyn/kmpfittutorial.htmlに記載されている手順を使用して決定され得る。
【0161】
他の実施形態では、matlabの「nlpredci.m」アルゴリズム(「非線形回帰予測信頼区間」は、共分散行列および平均二乗誤差計算を使用して訓練される。
【0162】
いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデルは、各新たなTOFデータが導出された後、例えば、各新たなTOFデータ点、TOF曲線、および/または減衰定数が導出された後に、連続的に計算される。新たなTOFデータが導出されると、上記のフィッティングおよび統計的分析が繰り返される。
【0163】
上述したように、次いで、計算された信頼区間が現在の信頼度モデル閾値と比較されて、条件が満たされているかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.1時間から約2時間の範囲である。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.1時間から約1.8時間の範囲である。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.1時間から約1.6時間の範囲である。いくつかの実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.2時間から約1.4時間の範囲である。他の実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.3時間から約1.3時間の範囲である。他の実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.4時間から約1.1時間の範囲である。他の実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.5時間から約0.9時間の範囲である。他の実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.6時間から約0.8時間の範囲である。さらに他の実施形態では、現在の信頼度モデル閾値は、約0.7時間である。
【0164】
非線形回帰は、従属変数または基準変数がモデルパラメータおよび1つまたは複数の独立変数の非線形関数としてモデル化される回帰である。いくつかの実施形態では、非線形回帰分析は、傾向を非線形関数としてモデル化し、非線形関数は、非限定的な例として、指数関数、対数関数、三角関数、冪級数関数、またはこれらの関数の1つもしくは複数の組み合わせであり得る。非線形関数の特定のパラメータは、プロットと非線形関数との間の残差を最小にするためにカーブフィッティング技術(非限定的な例として、最小二乗法)を適用することなどによって、プロットする関数に「フィッティング」することによって決定され得る。いくつかの実施形態では、非線形回帰は、漸近回帰/成長モデル、ロジスティック集団成長モジュール、または漸近回帰/減衰モデルから選択される。
【0165】
将来の信頼度モデル
【0166】
将来の信頼度モデルは、過去、現在、および将来に取り出された信号を含む実験全体にわたる信号の信頼度を計算する。これに関して、将来の信頼度モデルは、受信されたTOFデータ点および/またはTOFフィットがTOF信号の全体的な拡散プロファイルとどの程度一致するかを分析する。将来の信頼度モデルは、拡散の振幅および将来の予測力を考慮に入れるため、過去の信頼度モデルおよび現在の信頼度モデルから一意である。過去および現在の信頼度モデルは、両方とも、減衰定数によって定義されるTOF曲線の時間プロファイルを見るように適合されている。減衰定数(すなわち、拡散速度)は、流体交換の振幅または総量とは無関係である。将来のモデルは、拡散速度および拡散の大きさに関して、モデルが新たなTOFデータ点を予測する際にどの程度確信しているかに注目する。
【0167】
既に収集されたデータの信頼度が高い傾向があると考えられるため、将来の信頼度モデルは、実験の開始時に満たすことが困難であり、実験が時間的に進行するにつれて、すなわち拡散が時間的に継続するにつれて改善する傾向があると考えられる。したがって、TOFデータ点が実験においてあまりにも早期に有効であるかどうかを決定することに対する品質チェックを提供する。例えば、誤った減衰率が継続的に解消された場合に、受信したTOFデータ点を有効であるとしてシステムが時期尚早に呼び出すことを阻止するために、将来の信頼度モデルが使用され得ると考えられる。結果として、将来の信頼度モデルはまた、より多くの標準試料よりも著しく多くの流体交換を有する可能性がある異常に大きい試料のためのシステムの品質を改善すると考えられる。
【0168】
いくつかの実施形態では、将来の信頼度モデルへの入力は、信号処理モジュール202またはそれと通信するメモリ201または記憶サブシステム240から取り出されたTOF曲線である。いくつかの実施形態では、将来の信頼度モデルは、取り出されたTOF曲線に基づいて信頼区間を計算し、計算された信頼区間の平均が所定の閾値を下回るかどうかを評価する。例えば、いくつかの実施形態では、信頼区間は、(a)計算されたTOF曲線の全ての計算されたTOFデータ点を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行すること、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の信頼区間を決定すること、および(c)TOF曲線の平均信頼区間を計算すること、によって計算される。いくつかの実施形態では、将来の信頼度モデルは、所定の時間量まで、例えば、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間など、全ての時間にわたるTOF曲線の95%信頼区間の平均を計算し得る。いくつかの実施形態では、(上述した)非線形回帰フィッティングが利用されて、取り出されたTOF曲線に基づいて信頼区間を導出し得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.7nsである。いくつかの実施形態では、閾値は、0.6nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.55nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.5nsである。他の実施形態では、閾値は、0.45nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.4nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.35nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.3nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値、0.25nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.2nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.15nsである。他の実施形態では、所定の将来の信頼度モデル閾値は、0.1nsである。
【0170】
予測モジュール
【0171】
いくつかの実施形態では、システム200は、信号モデリングモジュール203から受信したデータに基づいて、流体が生物学的検体を通って最適に拡散される推定時間または固定までの推定時間を予測するように適合された予測モジュール204をさらに含む。少なくとも2つの信頼度モデルの計算(ステップ403)および計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立しておよび/または同時に所定の閾値基準を満たすという決定(ステップ404)に続いて、予測モジュール204を使用して、流体が生物学的検体を通って最適に拡散される推定時間または固定完了までの推定時間が計算される(ステップ405)。いくつかの実施形態では、予測モジュール204は、少なくとも2つの信頼度モデルが独立しておよび/または同時に満たされた時点でTOFデータを利用する。例えば、少なくとも2つの信頼度モデルが2.5時間の時点で独立して満たされた場合、予測モジュール204は、2.5時間の時点で収集されたTOFデータ(例えば、TOFデータ点、TOF曲線、および/または減衰定数)を利用し、これは、TOFデータが有効であると考えられる時点であるためである。換言すれば、生物学的検体の固定との関連において、少なくとも2つの信頼度モデルが独立しておよび/または同時に所定の閾値基準を満たすと、システム200は、その時点で、生物学的検体からのTOF信号が実際の拡散速度を真に表すと決定し、組織がいつ適切に固定されるかを予測する。
【0172】
いくつかの実施形態では、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間の推定または完了までの固定時間の推定は、本明細書に記載のTOF曲線を使用して計算される。いくつかの実施形態では、TOF曲線は、生物学的検体内の単一の位置で測定される(式(11)を参照)。他の実施形態では、TOF曲線は、生物学的検体を用いて複数の位置で測定される(空間平均TOF曲線)(式(12)を参照)。
【0173】
TOF曲線が単一の位置で測定される実施形態では、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間または固定完了までの時間は、式(11)にしたがって推定される:
【0174】
式中、tdoneは、拡散または固定完了までの推定時間であり、|...|記号は、絶対値を示す。いくつかの実施形態では、Tdoneは、組織が固定剤によって十分に拡散される予測時間(時間)を表す。
【0175】
空間的に平均化されたTOF曲線が使用される実施形態では、流体が生物学的検体中に最適に拡散される時間または固定完了までの時間は、式(12)にしたがって計算され得る:
【0176】
式中、tdoneは、拡散固定完了までの時間(および組織が十分に拡散されると予測される時間単位の時間を表す)であり、τavgは、組織の空間的に平均化された減衰定数であり、mは、TOF曲線の正規化された閾値勾配である(「閾値」は、勾配が「閾値」値まで減少すると、拡散が十分に減速し、組織が十分に適切に拡散され、本発明者らのモデルが適切に染色すると予測することを意味する)。いくつかの実施形態では、mthresは、0.074である。
【0177】
いくつかの実施形態では、生物学的検体の固定の文脈において、固定までの予測時間が決定された後、予測された固定時間が将来であると仮定して、予測された固定時間に達するまで、生物学的検体は固定剤内に浸漬されたままである。一方、予測された固定までの時間が現在または過去であれば、生物学的検体は、固定剤溶液から除去される。生物学的検体は、最適に固定されると、さらなる下流プロセスにおいて使用され得る。
【0178】
生物学的検体内の1つまたは複数のバイオマーカーの標識化
【0179】
生物学的検体が適切に固定されると、生物学的検体は、1つまたは複数の下流プロセス、例えば抗原回収、染色などにおいて利用され得る。いくつかの実施形態では、生物学的検体は、1つまたは複数のバイオマーカーの存在について標識されてもよく、および/または固定が完了する(または完了すると推定される)と対比染色されてもよい。例えば、生物学的検体は、Ki-67およびp16INK4aバイオマーカーの存在について染色され得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のバイオマーカーの存在について染色された生物学的検体は、機械学習アルゴリズムおよび/または「人工知能」を含む1つまたは複数の自動画像解析アルゴリズムを使用してイメージングされ、続いて分析され得る。
【0180】
生物学的検体内の1つまたは複数のバイオマーカーを標識する方法は、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、検出可能な部分(例えば、ハプテン、発色団、蛍光団など)は、生物学的検体内の標的上または標的に近接して堆積される。いくつかの実施形態では、発色団または検出可能な部分の共有結合的付着は、チラミド信号増幅(TSA)を用いて達成され、これは触媒レポーター付着(CARD)とも呼ばれている。その開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,583,001号明細書は、検出可能な標識信号を増幅するために触媒レポーター付着に依存する分析物依存性酵素活性化システムを使用して分析物を検出および/または定量する方法を開示している。CARD法またはTSA法における酵素の触媒作用は、標識フェノール分子を酵素と反応させることによって増強される。TSAを利用する現代の方法は、有意なバックグラウンド信号増幅をもたらさずに、IHCアッセイおよびISHアッセイから得られる信号を効果的に増加させる(例えば、チラミド増幅試薬に関する開示についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0171668号明細書を参照)。これらの増幅アプローチのための試薬は、以前は達成できなかった堅牢な診断能力を提供するために臨床的に重要な標的に適用されている(VENTANA OptiView Amplification Kit、Ventana Medical Systems、アリゾナ州トゥーソン、カタログ番号760-099)。
【0181】
TSAは、チラミドに作用するホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)によって触媒される反応を利用する。H2O2の存在下で、チラミドは、タンパク質上の電子に富むアミノ酸残基と優先的に反応する高度に反応性で短命のラジカル中間体に変換される。次いで、共有結合した検出可能な部分は、種々の発色視覚化技術および/または蛍光顕微鏡法によって検出され得る。空間的および形態学的な状況が非常に重要であるIHCおよびISHでは、ラジカル中間体の寿命が短いことは、生成部位に近接した組織に対するチラミドの共有結合をもたらし、それによってタンパク質および核酸標的の位置に離散的かつ特異的な信号を与える。
【0182】
他の実施形態では、発色団または検出可能な部分の共有結合的付着は、キノンメチド化学を用いて行われる。2019年1月1日に与えられた「Quinone Methide Analog Signal Amplification」と題する米国特許第10,168,336号明細書は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれ、TSAのように、バックグラウンド信号を著しく増加させることなく信号増幅を増加させるために使用され得る技術(「QMSA」)を記載している。特に、米国特許第10,168,336号明細書は、新規なキノンメチド類縁体前駆体、および生物学的検体中の1つまたは複数の標的を検出するためにキノンメチド類縁体前駆体を使用する方法を記載している。特定の実施形態では、検出方法は、試料を検出抗体またはプローブと接触させること、次いで試料を、アルカリホスファターゼ(AP)酵素および結合部分を含む標識コンジュゲートと接触させることを含み、結合部分は抗体またはプローブを認識する(例えば、ハプテンもしくは種特異的抗体エピトープ、またはそれらの組合せに結合することによって)。標識コンジュゲートのアルカリホスファターゼ酵素は、検出可能な部分を含むキノンメチドアナログ前駆体と相互作用し、それによって反応性キノンメチドアナログを形成し、これは標的の近位にまたは直接的に生物学的検体に共有結合する。次いで、検出可能な標識は、視覚的にまたはイメージング技術などによって検出される。米国特許第10,168,336号明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0183】
検出可能な部分を付着させるための別の技術は、「クリック」ケミストリーを用いて、試料中の検出可能な部分と形態学的マーカーまたはバイオマーカーとの間に共有結合を形成する。「クリックケミストリー」は、SharplessおよびMeldalのグループによって独自に定義された化学哲学であり、共に小さなユニットを結合することによって物質を迅速且つ確実に生成するように調整された化学を説明する。「クリックケミストリー」は、信頼度が高く自律的な有機反応のコレクションに適用されている(Kolb,H.C.;Finn,M.G.;Sharpless,K.B.Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,2004-2021)。検出可能な標識を生物学的検体上に共有結合的に付着させる文脈において、クリックケミストリー技術は、米国特許出願公開第2019/0204330号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。この技術では、上記のチラミド堆積または同じく上記のキノンメチド堆積のいずれかが使用されて、クリックケミストリー反応に関与することができる第1の反応性基を生物学的検体に共有結合的に固定する。次いで、クリックケミストリー反応に関与することができる対応する第2の反応基を有する検出系の第2の成分が第1の反応基と反応されて、第2の成分を生物学的検体に共有結合させる。
【0184】
特定の実施形態では、記載される技術は、生物学的検体を第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させることを含む。第1の検出プローブは、一次抗体または核酸プローブであり得る。続いて、試料を、第1の酵素を含む第1の標識コンジュゲートと接触させる。いくつかの実施形態では、第1の標識コンジュゲートは、一次抗体(抗体の取得元となった種など)または核酸プローブにコンジュゲートされた標識(ハプテンなど)のいずれかに特異的な二次抗体である。次に、生物学的検体をクリックコンジュゲート対の第1のメンバーと接触させる。第1の酵素は、チラミドまたはキノンメチド前駆体を有するクリックコンジュゲート対の第1のメンバーを切断し、それにより、第1のメンバーを、第1の標的の近位にまたは直接的に生物学的検体に共有結合する反応性中間体に変換する。次に、クリックコンジュゲート対の第2のメンバーを生物学的検体と接触させ、クリックコンジュゲート対の第2のメンバーは、第1のレポーター部分(例えば、発色団)および第2の反応性官能基を含み、第1のクリックコンジュゲートの対の第2のメンバーの第2の反応性官能基は、クリックコンジュゲート対の第1のメンバーの第1の反応性官能基と反応することができる。最後に、第1のレポーター部分からの信号が検出される。
【0185】
バイオマーカーの例
【0186】
本明細書で述べるように、固定推定エンジンは、複数の別様に固定された訓練生物学的検体から取得された訓練スペクトルデータセットを使用して訓練される。いくつかの実施形態では、既知の固定持続時間のクラスラベルは、機能的IHC試験によって検証される。以下に特定されるのは、その発現が機能的IHC染色によって決定され得るバイオマーカーの非限定的な例である。特定のマーカーは、特定の細胞の性質である一方、他のマーカーは、特定の疾患または症状に関連付けられたものとして識別される。既知の予後マーカーの例は、例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼII、ニューロン特異的エノラーゼ、プロトンATPアーゼ-2および酸性ホスファターゼなどの酵素マーカーを含む。ホルモンまたはホルモン受容体マーカーは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、副腎皮質刺激ホルモン、がん胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、gC1q-R/p33補体受容体、IL-2受容体、p75ニューロトロフィン受容体、PTH受容体、甲状腺ホルモン受容体およびインスリン受容体を含む。
【0187】
リンパ系マーカーは、アルファ-1-抗キモトリプシン、アルファ-1-抗トリプシン、B細胞マーカー、bcl-2、bcl-6、Bリンパ球抗原36kD、BM1(骨髄系マーカー)、BM2(骨髄系マーカー)、ガレクチン-3、グランザイムB、HLAクラスI抗原、HLAクラスII(DP)抗原、HLAクラスII(DQ)抗原、HLAクラスII(DR)抗原、ヒト好中球デフェンシン、免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンG、免疫グロブリンM、カッパ軽鎖、カッパ軽鎖、ラムダ軽鎖、リンパ球/組織球抗原、マクロファージマーカー、ムラミダーゼ(リゾチーム)、p80未分化リンパ腫キナーゼ、形質細胞マーカー、分泌白血球プロテアーゼ阻害剤、T細胞抗原受容体(JOVI 1)、T細胞抗原受容体(JOVI 3)、ターミドヌクレオチジルトランスフェラーゼ、非クラスター化B細胞マーカーを含む。
【0188】
腫瘍マーカーは、アルファフェトプロテイン、アポリポタンパク質D、BAG-1(RAP46タンパク質)、CA19-9(シアリルルイス)、CA50(がん腫関連ムチン抗原)、CA125(卵巣がん抗原)、CA242(腫瘍関連ムチン抗原)、クロモグラニンA、クラステリン(アポリポタンパク質J)、上皮膜抗原、上皮関連抗原、上皮特異的抗原、上皮成長因子受容体、エストロゲン受容体(ER)、肉眼的嚢胞性疾患流体タンパク質-15、肝細胞特異的抗原、HER2、ヘレグリン、ヒト胃ムチン、ヒト乳脂肪球、MAGE-1、マトリックスメタロプロテイナーゼ、メランA、メラノーママーカー(HMB45)、メソテリン、メタロチオネイン、微小フタル転写因子(MITF)、Muc-1コア糖タンパク質、Muc-1糖タンパク質、Muc-2糖タンパク質、Muc-5AC糖タンパク質、Muc-6糖タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、Myf-3(横紋筋肉腫マーカー)、Myf-4(横紋筋肉腫マーカー)、MyoD1(横紋筋肉腫マーカー)、ミオグロビン、nm23タンパク質、胎盤アルカリホスファターゼ、プレアルブミン、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺インヒビンペプチド、PTEN、腎細胞がんマーカー、小腸粘液性抗原、テトラネクチン、甲状腺転写因子-1、マトリックスメタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ2の組織阻害剤、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質-1、ビリン、フォンウィルブランド因子、CD34、CD34、クラスII、CD51 Ab-1、CD63、CD69、Chk1、Chk2、クラスピンC-met、COX6C、CREB、サイクリンD1、サイトケラチン、サイトケラチン8、DAPI、デスミン、DHP(1-6ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン)、E-カドヘリン、EEA1、EGFR、EGFRvIII、EMA(上皮膜抗原)、ER、ERB3、ERCC1、ERK、E-セレクチン、FAK、フィブロネクチン、FOXP3、ガンマ-H2AX、GB3、GFAP、ジャイアンチン、GM130、Golgin97、GRB2、GRP78BiP、GSK3ベータ、HER-2、ヒストン3、ヒストン3_K14-エース[抗アセチル-ヒストンH3(Lys14)]、ヒストン3_K18-エース[ヒストンH3-アセチルLys18)、ヒストン3_K27-TriMe、[ヒストンH3(トリメチルK27)]、ヒストン3_K4-diMe[アンチジメチル-ヒストンH3(Lys4)]、ヒストン3_K9-エース[アセチル-ヒストンH3(Lys9)]、ヒストン3_K9-triMe[ヒストン3-トリメチルLys9]、ヒストン3_S10-Phos[抗PhosphoヒストンH3(Ser10)、有糸分裂マーカー]、ヒストン4、ヒストンH2A.X-5139-Phos[PhosphoヒストンH2A.X(Ser139)抗体]、ヒストンH2B、ヒストンH3_DiMethyl K4、ヒストンH4_TriMethyl K20-Chip grad、HSP70、ウロキナーゼ、VEGF R1、ICAM-1、IGF-1、IGF-1R、IGF-1レセプタベータ、IGF-II、IGF-IIR、IKB-Alpha IKKE、IL6、IL8、インテグリンアルファVベータ3、インテグリンアルファVベータ6、インテグリンアルファV/CD51、インテグリンB5、インテグリンB6、インテグリンB8、インテグリンベータ1(CD29)、インテグリンベータ3、インテグリンベータ5インテグリンB6、IRS-1、Jagged1、抗プロテインキナーゼC Beta2、LAMP-1、ライトチェーンAb-4(カクテル)、ラムダ軽鎖、カッパ軽鎖、M6P、Mach2、MAPKAPK-2、MEK1、MEK1/2(Ps222)、MEK2、MEK1/2(47E6)、MEK1/2ブロッキングペプチド、MET/HGFR、MGMT、ミトコンドリア抗原、Mitotracker Green FM、MMP-2、MMP9、E-カドヘリン、mTOR、ATPase、N-カドヘリン、ネフリン、NFKB、NFKB p105/p50、NF-KB P65、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、OxPhos複合体IV、p130Cas、p38 MAPK、p44/42MAPK抗体、P504S、P53、P70、P70 S6K、パンカドヘリン、パキシリン、P-カドヘリン、PDI、pEGFR、ホスホAKT、ホスホCREB、ホスホEGF受容体、ホスホGSK3ベータ、ホスホH3、ホスホHSP-70、ホスホMAPKAPK-2、PHospho MEK1/2、phospho p38 MAPキナーゼ、Phospho p44/42 MAPK、Phospho p53、Phospho PKC、Phospho S6リボソームタンパク質、Phospho Src、Phospho-Akt、Phospho-Bad、Phospho-IKB-a、Phospho-mTOR、Phospho-NF-カッパB P65、Phospho-p38、Phospho-p44/42 MAPK、Phospho-p70 S6キナーゼ、Phospho-Rb、Phospho-Smad2、PIM1,PIM2,PKCβ,ポドカリキシン、PR、PTEN、R1、Rb 4H1、R-カドヘリン、リボヌクレオチドレダクターゼ、RRM1、RRM11、SLC7A5、NDRG、HTF9C、HTF9C、CEACAM、p33、S6リボソームタンパク質、Src、サバイビン、シナポポディン、シンデカン4、タリン、テンシン、チミジル酸シンターゼ、ツベリン、VCAM-1、VEGF、ビメンチン、凝集素、YES、ZAP-70およびZEBを含む。
【0189】
細胞周期関連マーカーは、アポトーシスプロテアーゼ作動因子-1、bcl-w、bcl-x、ブロモデオキシウリジン、CAK(cdk作動キナーゼ)、細胞アポトーシス感受性タンパク質(CAS)、カスパーゼ2、カスパーゼ8、CPP32(カスパーゼ-3)、CPP32(カスパーゼ-3)、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンA、サイクリンB1、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンG、DNA断片化因子(N末端)、Fas(CD95)、Fas関連デスドメインタンパク質、Fasリガンド、Fen-1、IPO-38、Mc1-1、ミニ染色体維持タンパク質、ミスマッチ修復タンパク質(MSH2)、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ、増殖細胞核抗原、p16タンパク質、p27タンパク質、p34cdc2、p57タンパク質(Kip2)、p105タンパク質、Stat1α、トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼIIα、トポイソメラーゼIIIα、トポイソメラーゼIIβを含む。
【0190】
神経組織マーカーおよび腫瘍マーカーは、αBクリスタリン、α-インターネキシン、αシヌクレイン、アミロイド前駆体タンパク質、βアミロイド、カルビンジン、コリンアセチルトランスフェラーゼ、興奮性アミノ酸輸送体1、GAP43、グリア原線維酸性タンパク質、グルタミン酸受容体2、ミエリン塩基性タンパク質、神経成長因子受容体(gp75)、神経芽細胞腫マーカー、神経線維68kD、神経線維160kD、神経線維200kD、ニューロン特異的エノラーゼ、ニコチン性アセチルコリン受容体アルファ4、ニコチン性アセチルコリン受容体ベータ2、ペリフェリン、タンパク質遺伝子産物9、S-100タンパク質、セロトニン、SNAP-25、シナプシンI、シナプトフィシン、タウ、トリプトファンヒドロキシラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、ユビキチンを含む。
【0191】
クラスター分化マーカーは、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3delta、CD3epsilon、CD3gamma、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8alpha、CD8beta、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16a、CD16b、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD44R、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CDw60、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CDw92、CDw93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CDw108、CD109、CD114、CD115、CD116、CD117、CDw119、CD120a、CD120b、CD121a、CDw121b、CD122、CD123、CD124、CDw125、CD126、CD127、CDw128a、CDw128b、CD130、CDw131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CDw149、CDw150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD157、CD158a、CD158b、CD161、CD162,CD163,CD164,CD165,CD166,およびTCRゼータを含む。
【0192】
他の細胞マーカーは、セントロメアタンパク質-F(CENP-F)、ジアンチン、インボルクリン、ラミンA&C[XB 10]、LAP-70、ムチン、核孔複合体タンパク質、p180層状体タンパク質、ran、r、カテプシンD、Ps2タンパク質、Her2-neu、P53、S100、上皮マーカー抗原(EMA)、TdT、MB2、MB3、PCNAおよびKi67を含む。
【0193】
検出のためのさらに他の適切なマーカーは、以下の表2に示されるものを含む:
【表2】
【0194】
他の下流処理ステップおよびシステム構成要素
【0195】
本開示のシステム200は、推定された固定までの時間が決定された後、および/または生物学的検体が本開示にしたがって固定された後などに、組織検体に対して1つまたは複数の調製プロセスを実行することができる生物検体処理装置に結合されてもよい。調製プロセスは、限定されるものではないが、検体の脱パラフィン、検体のコンディショニング(例えば、細胞コンディショニング)、検体の染色、抗原回収の実行、免疫組織化学染色(標識を含む)または他の反応の実行、および/またはインサイチュハイブリッド形成(例えば、SISH、FISHなど)染色(標識を含む)または他の反応の実行、ならびに顕微鏡検査、微量分析、質量分析法、または他の分析方法のための検体を調製するための他のプロセスを含むことができる。
【0196】
処理装置は、検体に固定剤を塗布することができる。固定剤は、架橋剤(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、およびグルタルアルデヒドなどのアルデヒド、ならびに非アルデヒド架橋剤)、酸化剤(例えば、四酸化オスミウムおよびクロム酸などの金属イオンおよび複合体)、タンパク質変性剤(例えば、酢酸、メタノール、エタノール)、メカニズム不明の固定剤(例えば、塩化水銀、アセトン、およびピクリン酸)、配合試薬(例えば、カルノイ固定剤、メタカーン、ブアン液、B5固定剤)、ロスマンの液体、およびゲンドレの液体、マイクロ波、およびその他の固定剤(例えば、容積固定および蒸気固定を除外)を含むことができる。
【0197】
検体がパラフィンに包埋された試料である場合、試料は、適切な脱パラフィン液を使用して脱パラフィン化され得る。パラフィンを除去した後、任意の数の物質が連続して検体に塗布され得る。物質は、前処理(例えば、タンパク質架橋を逆転させる、細胞の酸を露出させるなど)、変性、ハイブリッド形成、洗浄(例えば、厳密洗浄)、検出(例えば、視覚的またはマーカー分子のプローブへの結合)、増幅(例えば、タンパク質、遺伝子などの増幅)、逆染色、カバースリップなどのためのものとすることができる。
【0198】
検体処理装置は、検体に幅広い物質を塗布することができる。物質は、これらに限定されるものではないが、染色剤、プローブ、試薬、リンス、および/またはコンディショナを含む。物質は、流体(例えば、気体、液体、または気体/液体混合物)などとすることができる。液体は、溶媒(例えば、極性溶媒、非極性溶媒など)、溶液(例えば、水溶液または他のタイプの溶液)などとすることができる。試薬は、染色剤、湿潤剤、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)、抗原回収液(例えば、水性または非水性ベースの抗原回収溶液、抗原回収緩衝液など)を含むことができるが、これらに限定されない。プローブは、検出可能な標識またはレポーター分子に付着した、単離された核酸または単離された合成オリゴヌクレオチドとすることができる。標識は、放射性同位元素、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光または蛍光剤、ハプテンおよび酵素を含むことができる。本明細書で使用される場合、「流体」という用語は、水、溶媒、緩衝液、溶液(例えば、極性溶媒、非極性溶媒)、および/または混合物を含む任意の液体または液体組成物を指す。流体は、水性または非水性であってもよい。流体の非限定的な例は、洗浄液、すすぎ溶液、酸性溶液、アルカリ性溶液、移送溶液、および炭化水素(例えば、アルカン、イソアルカンおよび芳香族化合物、例えばキシレン)を含む。いくつかの実施形態では、洗浄液は、スライドの検体を有する表面上への洗浄液の拡散を容易にするための界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、酸性溶液は、脱イオン水、酸(例えば、酢酸)、および溶媒を含む。いくつかの実施形態では、アルカリ溶液は、脱イオン水、塩基、および溶媒を含む。いくつかの実施形態では、移送溶液は、1つまたは複数のグリコールエーテル、例えば1つまたは複数のプロピレン系グリコールエーテル(例えば、プロピレングリコールエーテル、ジ(プロピレングリコール)エーテルおよびトリ(プロピレングリコール)エーテル、エチレン系グリコールエーテル(例えば、エチレングリコールエーテル、ジ(エチレングリコール)エーテルおよびトリ(エチレングリコール)エーテル)およびそれらの官能性類似体を含む。緩衝剤の非限定的な例は、クエン酸、リン酸二水素カリウム、ホウ酸、ジエチルバルビツール酸、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、ジメチルアルシン酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(TRIS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(TAPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、マスキング解除剤は水である。他の実施形態では、緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(TRIS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(TAPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、またはそれらの組み合わせから構成され得る。追加の洗浄溶液、移送溶液、酸性溶液、およびアルカリ性溶液は、米国特許出願公開第2016/0282374号明細書に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0199】
染色は、組織化学染色モジュールまたは別個のプラットフォーム(例えば、自動化されたIHC/ISHスライド染色機など)を用いて行われ得る。自動化IHC/ISHスライド染色器は、典型的には、少なくとも、染色プロトコルで用いられる様々な試薬の貯蔵容器、試薬をスライド上に分配するための貯蔵容器と流体連通した、試薬分配ユニット、スライドから、使用済みの試薬と他の廃棄物を取り除くための、廃棄物除去システム、および、試薬分配ユニットと廃棄物除去システムの作用を調製する制御システムを含む。染色ステップの実施に加えて、多くの自動スライド染色装置はまた、スライドベーキング(試料をスライドに接着させるため)、脱脂(脱パラフィン化ともいう)、抗原回収、対比染色、脱水および透明化、カバーガラス被覆など、染色に付随するステップも行うことができる(または、そのような付随的なステップを実施する別のシステムと互換性がある)。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Prichard,Overview of Automated Immunohistochemistry,Arch Pathol Lab Med.,Vol.138,pp.1578-1582(2014)は、intelliPATH(Biocare Medical)、WAVE(Celerus Diagnostics)、DAKO OMNISおよびDAKO AUTOSTAINER LINK 48(Agilent Technologies)、BENCHMARK(Ventana Medical Systems,Inc.)、Leica BOND、ならびにLab Vision Autostainer(Thermo Scientific)自動スライド染色装置を含む自動化IHC/ISHスライド染色装置およびそれらの様々な特徴のいくつかの具体的な例を記載している。Ventana Medical Systems,Inc.は、米国特許第5,650,327号明細書、米国特許第5,654,200号明細書、米国特許第6,296,809号明細書、米国特許第6,352,861号明細書、米国特許第6,827,901号明細書および米国特許第6,943,029号明細書、ならびに米国特許出願公開第20030211630号明細書および米国特許出願公開第20040052685号明細書を含む、自動分析を実行するシステムおよび方法を開示する複数の米国特許の譲受人であり、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書中で使用される場合、用語「試薬」とは、別の実体と共有結合的または非共有結合的に反応すること、別の実体と結合すること、別の実体と相互作用すること、または別の実体にハイブリダイズすることができる1つまたは複数の作用物質を含む溶液または懸濁液を指す。そのような作用物質の非限定的な例は、特異的結合実体、抗体(一次抗体、二次抗体、または抗体コンジュゲート)、核酸プローブ、オリゴヌクレオチド配列、検出プローブ、反応性官能基または保護された官能基を有する化学部分、色素分子または染色分子の酵素、溶液または懸濁液を含む。
【0200】
市販の染色ユニットは、通常、以下のいずれかの原理で動作する:(1)オープン個別スライド染色(open individual slide staining)、ここでは、スライドを水平に配置し、組織試料を含むスライドの表面に試薬を水たまりとして分配する(DAKO AUTOSTAINER Link 48(Agilent Technologies)およびintelliPATH(Biocare Medical)染色装置などで実施される);(2)液体オーバーレイ技術、ここでは、試薬は、試料上に堆積した不活性流体層で覆われるか、それを通って試料に対して分配される(VENTANA BenchMarkおよびDISCOVERY染色装置などで実施される);(3)毛細管ギャップ染色、ここでは、スライド表面を別の表面(別のスライドまたはカバープレートなど)の近くに配置して狭いギャップを作り、これを通って、毛細管力が吸引され、液体試薬が試料と接触し続ける(DAKO TECHMATE、Leica BOND、およびDAKO OMNIS染色装置で使用される染色原理など)。毛細管ギャップ染色を何回か繰り返しても、ギャップ内の流体は混ざらない(例えばDAKO TECHMATEおよびLeica BONDなどにおいて)。ダイナミックギャップ染色と呼ばれる毛細管ギャップ染色のバリエーションでは、毛細管力を利用してスライドに試料を塗布し、その後インキュベーション中に平行表面を互いに対して並進させて試薬を撹拌して試薬混合を行う(例えばDAKO OMNISスライド染色装置(Agilent)に実装されている染色原理)。並進ギャップ染色では、並進可能なヘッドがスライドの上に配置される。ヘッドの下面は、スライドの並進中にスライド上の液体から液体のメニスカスが形成されるのを可能にするのに十分な小ささの第1のギャップ分だけ、スライドから間隔が空いている。スライドの幅よりも小さい横寸法を有する混合延長部が、並進可能なヘッドの下面から延在して、混合延長部とスライドとの間の第1のギャップよりも小さい第2のギャップを画定する。ヘッドの並進中、混合延長部の横寸法は、スライド上の液体中に、概ね第2のギャップから第1のギャップに至る方向に横の移動を生じさせるのに十分である。国際公開第2011-139978号を参照されたい。最近、スライド上に試薬を付着させるためにインクジェット技術を使用することが提案された。国際公開第2016-170008号を参照されたい。染色技術のこの一覧は包括的なものであることを意図しておらず、バイオマーカー染色を実施するための、あらゆる完全または半自動化システムが、組織化学染色プラットフォームに組み込まれ得る。
【0201】
形態学的に染色された試料も所望される場合、自動化されたH&E染色プラットフォームが使用され得る。H&E染色を実施するための自動システムは、典型的には、2つの染色原理:バッチ染色(「dip’n dunk」とも呼ばれる)または個別スライド染色のうちの1つで動作する。バッチ染色装置は、一般に、多くのスライドを同時に浸漬する試薬バットまたは槽を使用する。一方、個別スライド染色装置は、試薬を各スライドに直接塗布し、同じアリコートの試薬を2枚のスライドで共有することはない。市販のH&E染色装置の例は、RocheのVENTANA SYMPHONY(個別スライド染色装置)およびVENTANA HE 600(個別スライド染色装置)シリーズH&E染色装置;Agilent TechnologiesのDako CoverStainer(バッチ染色装置);Leica Biosystems Nussloch GmbHのLeica ST4020 Small Linear Stainer(バッチ染色装置)、Leica ST5020 Multistainer(バッチ染色装置)、およびLeica ST5010 Autostainer XLシリーズ(バッチ染色装置)H&E染色装置を含む。
【0202】
検体が染色された後、染色された試料が顕微鏡において手動で分析され得、および/または染色された試料のデジタル画像がアーカイブおよび/またはデジタル分析のために取得され得る。デジタル画像は、20倍、40倍、または他の倍率で染色されたスライドを走査して高解像度全スライドデジタル画像を生成することができるスライドスキャナなどの走査プラットフォームを介して取り込まれ得る。基本的なレベルでは、典型的なスライドスキャナは、少なくとも以下を含む:(1)レンズ対物レンズを備えた顕微鏡、(2)光源(染料に応じて、ハロゲン、発光ダイオード、白色光、および/またはマルチスペクトル光源など)、(3)スライドガラスを移動させるもしくは光学素子をスライドの周りに移動させるまたはその双方のロボット工学、(4)画像取り込み用の1つまたは複数のデジタルカメラ、(5)ロボット工学を制御し、デジタルスライドを操作、管理、および表示するためのコンピュータおよび関連ソフトウェア。スライド上の複数の異なるX-Y位置(場合によっては複数のZ面)のデジタルデータが、カメラの電荷結合素子(CCD)によって取り込まれ、これらの画像が合わさって、走査した面全体の合成画像を形成する。これを実現するための一般的な方法は、以下を含む:
【0203】
(1)スライドステージまたは光学系を非常に小さな増分で移動させて正方形の画像フレームを取り込み、この画像フレームが隣接する正方形と僅かに重なり合っている、タイルベースの走査。その後、取り込まれた正方形が自動的に互いに照合され、合成画像を作成する。
【0204】
(2)取得中にスライドステージが単一軸で移動して多数の合成画像「ストリップ」を取り込む線ベースの走査。その後、画像ストリップは、より大きな合成画像を形成するために、互いに照合され得る。
【0205】
様々なスキャナ(蛍光および明視野の双方)の詳細な概要は、Farahani et al.,Whole slide imaging in pathology:advantages,limitations,and emerging perspectives,Pathology and Laboratory Medicine Int’l,Vol.7,p.23-33(2015年6月)において、これを見出すことができ、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。市販のスライドスキャナの例は、以下を含む:3DHistech PANNORAMIC SCAN II;DigiPath PATHSCOPE;Hamamatsu NANOZOOMER RS,HT,およびXR;Huron TISSUESCOPE 4000,4000XT,およびHS;Leica SCANSCOPE AT,AT2,CS,FL,およびSCN400;Mikroscan D2;Olympus VS120-SL;Omnyx VL4,およびVL120;PerkinElmer LAMINA;Philips ULTRA-FAST SCANNER;Sakura Finetek VISIONTEK;Unic PRECICE 500,およびPRECICE 600x;VENTANA ISCAN COREOおよびISCAN HT;およびZeiss AXIO SCAN.Z1。他の例示的なシステムおよび特徴は、例えば国際公開第2011-049608号、またはIMAGING SYSTEMS,CASSETTES,AND METHODS OF USING THE SAMEと題された2011年9月9日出願の米国特許出願第61/533,114号において、これを見出すことができ、それらの内容は、その全体が参照により組み込まれる。
【0206】
いくつかの実施形態では、任意のイメージングは、米国特許第10,317,666号明細書および第10,313,606号明細書に開示されているシステムのいずれかを使用して達成され得、それらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。イメージング装置は、Ventana Medical Systems,Inc.によって販売されているiScan Coreo(商標)明視野スキャナまたはDP 200スキャナなどの明視野イメージャであってもよい。
【0207】
場合によっては、画像は、画像分析システムで分析されてもよい。画像分析システムは、本明細書に記載される技術および動作を実行することができる、デスクトップコンピュータ、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、サーバ、特定用途向けコンピュータ装置または任意の他のタイプの電子装置など、1つまたは複数のコンピュータ装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、画像分析システムは、単一の装置として実装されてもよい。他の実施形態では、画像分析システムは、本明細書で論じられる様々な機能性をともに実現する2つ以上の装置の組み合わせとして実装されてもよい。例えば、画像分析システムは、1つまたは複数のローカルエリアネットワークおよび/またはワイドエリアネットワーク(インターネットなど)を介して互いに通信可能に接続された、1つまたは複数のサーバコンピュータと1つまたは複数のクライアントコンピュータとを含んでもよい。画像分析システムは、典型的には、少なくともメモリ、プロセッサ、およびディスプレイを含む。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)などの読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、光ディスクなど、任意のタイプの揮発性または不揮発性メモリの任意の組み合わせを含み得る。メモリは、単一の装置に含めることができ、2つ以上の装置にわたって分散させることもできることが理解される。プロセッサは、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、専用信号または画像プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、テンソル処理装置(TPU)などの任意のタイプの1つまたは複数のプロセッサを含み得る。プロセッサは、単一の装置に含まれてもよく、2つ以上の装置にわたって分散されてもよいことが理解される。ディスプレイは、LCD、LED、OLED、TFT、プラズマなど、任意の適切な技術を使用して実装され得る。いくつかの実装形態では、ディスプレイは、タッチ感知ディスプレイ(タッチスクリーン)であってもよい。画像分析システムはまた、典型的には、プロセッサ上で実行可能な命令セットを備えるメモリ上に記憶されたソフトウェアシステムを含み、命令は、物体識別、染色強度定量化などの様々な画像分析タスクを含む。本明細書に開示のモジュールを実装するのに有用な、例示的な市販のソフトウェアパッケージは、VENTANA VIRTUOSO;Definiens TISSUE STUDIO、DEVELOPER XD、およびIMAGE MINER;ならびにVisopharm BIOTOPIX、ONCOTOPIX、およびSTEREOTOPIXソフトウェアパッケージを含む。
【0208】
検体が処理された後、ユーザは、検体を含むスライドをイメージング装置に搬送することができる。いくつかの実施形態では、イメージング装置は、明視野イメージャスライドスキャナである。明視野イメージャの1つは、Ventana Medical Systems,Inc.によって販売されているiScan Coreo明視野スキャナである。自動化された実施形態では、イメージング装置は、IMAGING SYSTEM AND TECHNIQUESと題された、国際特許出願第PCT/US2010/002772号(国際公開第2011/049608号)に開示された、または2011年9月9日に出願され、IMAGING SYSTEMS,CASSETTES,AND METHODS OF USING THE SAMEと題された米国特許出願第61/533,114号に開示されたデジタル病理装置である。国際特許出願第PCT/US2010/002772号および米国特許出願第61/533,114号は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0209】
本明細書に記載の主題および動作の実施形態は、デジタル電子回路、または本明細書に開示される構造およびそれらの構造的均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェア、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせで実装され得る。本明細書に記載の主題の実施形態は、1つまたは複数のコンピュータプログラム、例えば、データ処理装置による実行のために、またはデータ処理装置の動作を制御するためにコンピュータ記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実装され得る。本明細書で説明されるモジュールのいずれも、プロセッサによって実行されるロジックを含み得る。本明細書で使用される「ロジック」は、プロセッサの動作に影響を与えるために適用され得る命令信号および/またはデータの形態を有する任意の情報を指す。ソフトウェアはロジックの例である。
【0210】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶装置、コンピュータ可読記憶基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリアレイまたは装置、あるいはそれらの1つまたは複数の組み合わせとすることができるか、またはそれらに含めることができる。さらに、コンピュータ記憶媒体は伝搬信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人工的に生成された伝搬信号に符号化されたコンピュータプログラム命令のソースまたは宛先とすることができる。コンピュータ記憶媒体はまた、1つまたは複数の別個の物理的構成要素または媒体(例えば、複数のCD、ディスク、または他の記憶装置)とすることができるか、またはそれらに含めることができる。本明細書に記載されている動作は、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶装置に記憶されているか、または他のソースから受信されたデータに対してデータ処理装置によって実行される動作として実装され得る。
【0211】
「プログラムされたプロセッサ」という用語は、データを処理するためのあらゆる種類の装置、装置、およびマシンを包含し、例えば、プログラム可能なマイクロプロセッサ、コンピュータ、チップ上のシステム、または前述の複数のもの、またはそれらの組み合わせを含む。装置は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)などの特別な目的のロジック回路を含むことができる。装置はまた、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムの実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、仮想マシン、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせを構成するコードを含むことができる。装置および実行環境は、ウェブサービス、分散コンピューティング、グリッドコンピューティングインフラストラクチャなど、様々な異なるコンピューティングモデルインフラストラクチャを実現することができる。
【0212】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、またはコードとも呼ばれる)は、コンパイルまたは解釈された言語、宣言言語または手続き型言語を含む、あらゆる形式のプログラミング言語で記述され得、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、またはコンピューティング環境での使用に適したその他のユニットとして含む、あらゆる形式で展開され得る。コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応してもよいが、対応する必要はない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語ドキュメントに保存された1つまたは複数のスクリプト)、当該プログラム専用の単一ファイル、または複数の調整されたファイル(例えば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を記憶するファイル)に記憶され得る。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータ、または1つのサイトに配置されているか、複数のサイトに分散され、通信ネットワークによって相互接続されている複数のコンピュータで実行されるように展開され得る。
【0213】
本明細書に記載のプロセスおよびロジックフローは、入力データを操作して出力を生成することによってアクションを実行するために、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサによって実行され得る。プロセスおよびロジックフローは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)などの特殊用途のロジック回路によって実行され得、装置は、それらとして実装され得る。
【0214】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用および特殊目的の双方のマイクロプロセッサ、および任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つまたは複数のプロセッサを含む。一般に、プロセッサは、読み取り専用メモリまたはランダムアクセスメモリ、あるいはその双方から命令とデータを受信する。コンピュータの本質的な要素は、命令にしたがってアクションを実行するためのプロセッサと、命令およびデータを記憶するための1つまたは複数のメモリ装置である。一般に、コンピュータはまた、データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶装置、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、または光ディスクを含むか、またはデータを受信するか、データを転送するか、またはその双方に動作可能に結合される。しかしながら、コンピュータは、そのような装置を必要とするわけではない。さらに、コンピュータは、ほんの数例を挙げると、別の装置、例えば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、モバイルオーディオまたはビデオプレーヤ、ゲームコンソール、全地球測位システム(GPS)受信機、またはポータブル記憶装置(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)に組み込まれ得る。コンピュータプログラムの命令およびデータを記憶するのに適した装置は、例として半導体メモリ装置、例えば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリ装置を含む、全ての形態の不揮発性メモリ、メディアおよびメモリ装置、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク、光磁気ディスク、およびCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む。プロセッサおよびメモリは、特別な目的のロジック回路によって補完され、またはこれに組み込まれ得る。
【0215】
ユーザとの相互作用を提供するために、本明細書に記載の主題の実施形態は、ディスプレイ装置、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、LED(発光ダイオード)ディスプレイ、またはOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ、ユーザに情報を表示するためのディスプレイ、およびユーザがコンピュータに入力を提供することができる、キーボードおよびポインティング装置、例えば、マウスまたはトラックボールを有するコンピュータ上に実装され得る。いくつかの実装形態では、情報を表示してユーザからの入力を受信するために、タッチスクリーンが使用され得る。他の種類の装置が使用されて、ユーザとの対話を提供することもできる。例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック、または触覚的フィードバックなど、任意の形態の感覚的フィードバックとすることができる。また、ユーザからの入力は、音響、音声、または触覚入力を含む任意の形式で受信され得る。さらに、コンピュータは、例えば、Webブラウザから受信した要求に応答して、ユーザのクライアント装置上のWebブラウザにWebページを送信することによるなど、ユーザが使用する装置との間でドキュメントを送受信することにより、ユーザと対話することができる。
【0216】
本明細書に記載される主題の実施形態は、例えば、データサーバとしてのバックエンドコンポーネントを含むか、またはアプリケーションサーバなどのミドルウェアコンポーネントを含むか、または、例えば、ユーザがこの明細書に記載されている主題の実装と対話することができるグラフィカルユーザインタフェースまたはWebブラウザを有するクライアントコンピュータなどのフロントエンドコンポーネント、または1つまたは複数のそのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせを含むコンピューティングシステムに実装され得る。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形式または媒体、例えば通信ネットワークによって相互接続され得る。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)およびワイドエリアネットワーク(「WAN」)、ネットワーク間(例えば、インターネット)、およびピアツーピアネットワーク(例えば、アドホックピア-ピアツーピアネットワーク)を含む。例えば、
図2のネットワーク20は、1つまたは複数のローカルエリアネットワークを含むことができる。
【0217】
コンピューティングシステムは、任意の数のクライアントおよびサーバを含むことができる。クライアントおよびサーバは、通常、互いにリモートであり、通常、通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントおよびサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行され且つクライアント-サーバの関係を互いに有するコンピュータプログラムによって発生する。いくつかの実施形態では、サーバは、(例えば、データを表示し、クライアント装置と対話するユーザからのユーザ入力を受信する目的で)データ(例えば、HTMLページ)をクライアント装置に送信する。クライアント装置で生成されたデータ(例えば、ユーザの操作の結果)は、サーバにおいてクライアント装置から受信され得る。
【0218】
1つまたは複数の固定剤に浸漬された試料のTOFを計算する他の方法
【0219】
いくつかの実施形態では、拡散速度は、ホルマリン浸漬組織試料の異なる音響特性に基づいて音響プローブのシステムによって監視され得る。拡散監視および実験的TOF測定のためのそのようなシステムは、米国特許出願公開第2013/0224791号明細書、米国特許出願公開第2017/0284969号明細書、米国特許出願公開第2017/0336363号明細書、米国特許出願公開第2017/0284920号明細書、および米国特許出願公開第2017/0284859号明細書にさらに詳細に記載されており、それらの開示は、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0220】
TOF監視のための好適なシステムおよび方法のさらなる例は、国際公開第2016/097163号および米国特許出願公開第2017/0284859号明細書に記載されており、これらの内容も、それらが本開示と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。参照される用途は、組織試料を通って移動し、組織試料の実質的に全厚にわたって拡散する液体固定剤と接触し、処理中の組織試料の状態および状態を評価するために連続的または定期的に監視される音響特性に基づいて分析される固体組織試料を記載している。例えば、間質液よりも大きい体積弾性率を有するホルマリンなどの固定剤は、間質液を置換する際にTOFを有意に変化させる可能性がある。組織試料の音響特性は、液体試薬(例えば、液体固定剤)が試料を通って移動するにつれて変化し得る。試料の音響特性は、例えば、プレソークプロセス(例えば、低温の固定剤の拡散)、固定プロセス、染色プロセスなどの間に変化する可能性がある。固定プロセス(例えば、架橋プロセス)において、音響エネルギーの伝達速度は、組織試料がより強く架橋されるにつれて変化する可能性がある。試料を通る固定剤の移動を正確に追跡するために、リアルタイムモニタリングが使用され得る。
【実施例】
【0221】
実施例
【0222】
実施例1-過去、現在、および将来の信頼度モデルのそれぞれの例示的な時間経過
【0223】
TOFデータ収集の複数の時点を示す例示的な時間経過が
図5に記載されている。一連のプロットにおいて、最初、TOF曲線の予測力は、最良フィットの黒い線から著しく逸脱する大きな点線によって示されるように、非常に悪い(上プロットを参照)。3つのパラメータは、全て、より多くのTOFデータが収集されるにつれてかなり変動する(a~d)。約2.83時間の能動拡散後、モデルは、組織のTOF曲線が有効であるとみなされると決定し、4.41時間の拡散後に組織試料が適切に染色されると予測する。モデルは、より多くのデータを収集し続け、推定値を、試料が十分に固定されていると考えられる4.7時間まで僅かに長くシフトさせる。
【0224】
過去、現在、および将来の信頼度モデルのそれぞれのより詳細なバージョンが
図6に提示されており、3つの信頼度モデル全ての基準が時間に対してプロットされている。グラフから、最初は将来および現在の信頼度モデルが満たされているが、より多くのデータが収集されるにつれて基準が逆転することが観察され得る。したがって、過去の基準が実験の開始時に満たされていなかったことは、TOF信号が実際には有効でなかったときにそれを有効としないことが極めて重要であった。
【0225】
図7は、結腸組織試料の基準選択の別の例を提示している。この特定の例では、将来および過去の信頼度モデルはより早く満たされ、現在の信頼度モデルはまだ満たされていないため、組織は有効とはみなされない。
【0226】
図8は、腎臓組織試料の基準選択のさらなる例を示している。この場合、将来の信頼度モデルは、満たされるべき最後の信頼度モデルであるが、現在の信頼度モデルは、ほぼ即座に満たされる。過去の信頼度モデルは最初は満たされているが、その後は逆になる。したがって、将来の信頼度モデルが満たされていないことにより、組織が約1.5時間の時点で有効と呼ばれることが防止された。
【0227】
図9は、乳房組織試料の基準選択のさらに別の例を示している。この場合、過去および現在の信頼度モデルは前後に「跳ね返る」が、将来の信頼度モデルは2時間まで満たされず、信号が実際に有効になる前に有効と呼ばれるのを防ぐ。
【0228】
上記の例は、TOF信号が実際に有効になるまで有効であると決定されないシステムおよび/または方法を作成するために3つの信頼度モデルがどのように協働するかを示している。TOFは、既に開示され、(
図10Aを参照)において実証されているように、多くの異なるタイプの組織に使用されている。ここでは、多数の種類の組織からの105個の試料を使用して、信頼度モデル、したがって本明細書に記載のシステムおよび方法の精度を評価した。累積結果が
図10Bに示されており、有効なフィットを受けるのに必要な時間が、計算された最適な固定時間に対してプロットされている。平均して、試料が105個の試料のうち102個(97%)に最適にフィットする前に、試料フィットは、有効なフィットに収束した。平均して、2.04時間で、組織は有効なフィットを有すると決定され、2.96時間の平均固定時間が必要であった。これは、平均して、TOF信号が有効であることが証明された後、組織が適切に0.92時間になることを示すため、重要な発見である。
【0229】
本明細書に記載の3つの信頼度モデルを使用するシステムおよび方法の精度を評価する別の方法は、収束時と実験終了時の予測最適固定時間を遡及的に比較することである。これらの結果が
図11Aにプロットされている。平均して、収束時間としての最適な固定時間は、実験終了時と0.45時間しか変わらず、これは、2つの値の間に有意な差がなかったため、高い精度を示した。さらに、収束時に、TOF曲線は、僅か0.44nsの95%信頼区間を有し、減衰定数は、僅か7分の95%信頼区間を有した(
図11Bを参照)。これらの数字は両方とも非常に低く、TOG信号が有効であるとみなされた時点での高忠実度フィットと一致していた。
【0230】
実施例2
【0231】
要約
【0232】
現代の組織病理学は、組織を生きた状態で保存するために室温の水性ホルムアルデヒド(ホルマリン)を伝統的に使用する組織固定の基礎原理に基づいている。最も重要であるにもかかわらず、現在、固定を検出する分析方法はなく、その結果、臨床診療では、固定は非常に可変的であり、重大な誤差の原因となる。低温ホルマリンへの浸漬とそれに続く加熱ホルマリンが組織形態学の保存に有益であることは以前に示されており、これは低温相が、加熱相で架橋が迅速に開始される前にホルムアルデヒドの妨げられない完全な拡散を可能にするためである。さらに、新規な二温度固定は、組織内に拡散するホルマリンを能動的に検出することができる超高感度音響モニタリング技術と組み合わされている。ここでは、リアルタイムTOF信号に基づいて組織がいつ適切に拡散されたかを決定するための予測統計モデルが開発されている。このモデルは、30個の扁桃コアの形態および特徴的な拡散曲線に基づいて訓練されている。試験モデルでは、87個の異なる扁桃試料のセットを4つの異なるプロトコルで固定した:開示された予測アルゴリズムにかかる動的固定(C/H:動的、N=18)、ゴールドスタンダードの24時間室温(RT:24時間、N=24)、低温ホルマリンで6時間、引き続いて加熱ホルマリンで1時間(C/H:6+1、N=21)、および低温ホルマリンで2時間、引き続いて加熱ホルマリンで1時間(N=24)。動的固定プロトコルを使用して固定した試料について、デジタル病理分析は、FOXP3染色が空間的に均一であり、RT:24時間およびC/H:6+1固定プロトコルと統計的に同等の染色カバレッジレベルであることを明らかにした。比較のために、意図的に固定されたC/H:2+1試料は、FOXP3染色を有意に抑制した(p<0.002)。さらにまた、開示された動的固定プロトコルは、標準的な固定技術と一致してbcl-2染色をもたらした。動的に固定された試料は、平均して冷ホルマリンに4.2時間浸漬されただけであり、有意なワークフローの改善を示した。これらの結果は、開示された開発されたシステムが、試料がいつ十分に固定され、高品質の組織化学染色を生成するかを正確に予測することができることを確立する。実際に、開示されたシステムおよび方法は、リアルタイムでの固定の質の評価を可能にすることが首尾よく実証されている。最終的に、将来の組織学検査室は、この分析方法を利用して、迅速且つ十分に文書化された事前分析ワークフローの一部として組織固定を標準化および最適化することができると考えられる。
【0233】
序論
【0234】
臨床組織処理技術は、細胞内の代謝を遮断し、鮮明で透明な細胞形態を保存する架橋剤を用いて組織を「固定」する。最も一般的な固定剤は、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)であり、これは、緩衝液中のホルムアルデヒドの水溶液であり、1世紀にわたって使用されてきた(Foxら、1985)。現在、適切な固定プロトコルは、適切な形態学的特徴について組織学的に染色された組織を検査することによって経験的に決定される。結果は、対象のオペレータ、施設、組織の種類、およびバイオマーカーに応じて適切な形態と不十分な形態の混合バッグである。さらにまた、形態が調査される時点までに、組織の質を改善するには遅すぎるため、最初の適切な固定が極めて重要である。
【0235】
組織固定は、組織の種類およびサイズに応じて、通常数時間から数日かかる時間のかかるプロセスである。患者ケアの所要時間を短縮するために圧力が高まるにつれて、迅速な固定プロトコルが導入されている。既に使用されているそのような技術の1つは、固定剤の温度を上昇させて架橋速度を増加させることである(Ferrisら、2009;Iesurumら、2006;Antunesら、2006;LooiおよびLoh、2005;HafajeeおよびLeong、2004;Adams、2004;Moralesら、2002;Arber、2002;Ruijterら、1997;Boon、1996;AinleyおよびIronside、1994;BoonおよびMarani、1991;KokおよびBoon、1990;Leong、1988;Boonら、1988;LeongおよびDuncis、1986;Kokら、1986;Boon,Kok,およびOuwerkerk-Noordam、1986;Leong,Daymon,およびMilios、1985)。これは実用的に有効であるが、固定温度の上昇の使用は、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色に基づく不十分な組織形態および日常的な免疫組織化学(IHC)染色などの他の分子分析における変動性の多くの報告をもたらした(Durgun-Yucelら、1992;Dawson、1972;EricssonおよびBiberfeld、1967)。生物学的に、加熱固定剤の使用は、十分な固定剤が浸透していない中央のタンパク質の構造を損なう一方で、組織試料の外側でタンパク質を架橋するのに役立つ。優れた組織固定をもたらすより有望な迅速な方法は、2つの温度ゾーン(低温+高温)で10%のNBFを使用する(Chafinら、2013、Theissら、2014)。低温ステップは、ホルムアルデヒドを組織内部に適切に拡散させ、続いてホルムアルデヒド系架橋を迅速に形成する短い加熱相を可能にする。
【0236】
現在、ホルムアルデヒドの組織への拡散または架橋の実際の形成のいずれかを能動的に監視する確立された方法はない。不十分に拡散した組織は、固定剤が浸透した場所で架橋および固定されるだけであり、十分に固定された組織の外側リングを形成する。不十分な固定は、解剖学的病理検査室において報告された誤差の主な原因である(Mathews,Newbury,およびHousser、2011;EngelおよびMoore、2011;De Marzoら、2002;Plebaniら、2015;Plebani、2015;Boniniら、2002)。現在の組織固定プロトコルはリアルタイムモニタリングを欠いているため、組織中の十分なホルムアルデヒド濃度を保証する方法、または逆に試料が過剰に固定されたかどうかを知る方法はなく、これも染色品質に有害な影響を及ぼす(Singhalら、2016;Arber、2002)。要するに、現在の固定技術は、組織処理検査室に品質保証または追跡能力を提供しない。これは、試料が不適切に固定された場合に、別の試料を再度調達することができれば、高価な再加工が必要になることを意味する。光学、超音波、およびMRIを含む、拡散を静的に検出するためのいくつかの方法が存在するが、これらの検出機構は、がん指標をより良好に保存するための組織処理のために実施されていない(Partridgeら、2012;Uhl M.、2014;Tanimotoら、2007;PetrasekおよびSchwille、2008;DuMondおよびYoutz、2004)。一部の研究者らは、組織を放射性ホルムアルデヒドに浸し、写真フィルムへの曝露後の流体浸透を拡散速度の尺度として測定している(Helander、1994)。しかしながら、放射能は実際にはほとんど組織に取り込まれず、長い曝露時間は曖昧で信頼できない結果をもたらした。他の者は、固定組織に固定されていない試料を比較することによって架橋を調べるために超音波モニタリングを使用している(OldenburgおよびBoppart、2010;Hallら、2000;Bamber,Hill,およびKing、1981;BamberおよびHill、1981;Bamberら、1979;BamberおよびHill、1979)。最終的に、これらの技術のいずれも、優れた組織固定および適切な機能的染色を保証するために変更が実施され得る時期をリアルタイムで監視することを可能にしない。
【0237】
したがって、適切な染色を保証するのに十分なホルムアルデヒドが組織全体に存在することを確実にするために、ホルマリン拡散のリアルタイム検出を使用して組織固定を最適化する動的方法が開発された(本明細書に記載されるように)。間質液およびホルマリンの離散音速を利用する音響飛行時間(TOF)技術を使用して生の生体組織への固定剤の浸透を検出することができる自動化システムが以前に記載されている(Bauerら、2016)。ホルマリンが組織検体に拡散して交換可能な流体(例えば、間質液)に置き換わると、組織の全体的な組成が物理的に変化し、TOF差が生じる。より速いホルマリンが試料中に拡散するにつれて、組織の正味の音速が増加し、TOF信号が単調に減少する。本開示は、試料が下流IHCアッセイから高品質の染色を生成するのに十分に適切に拡散される時期を決定するリアルタイム統計モデルおよびカスタム変更組織プロセッサシステムに関する。
【0238】
方法
【0239】
組織の取得および固定
【0240】
ヒト扁桃組織を、承認されたプロトコルとの契約上の合意の下で、アリゾナ州の地元のトゥーソン病院から新鮮且つ固定されていない状態で得た。同日の手術由来の全扁桃を、バイオハザードバッグ中の湿潤氷上でRoche Tissue Diagnosticsに輸送した。直径6mmの生検パンチ(Miltex#33-36)を使用することによって、正確なサイズの扁桃組織の試料を得た。低温+高温固定のために、6mmの扁桃コアを、予め4℃に冷却した10%のNBF(100mMリン酸緩衝液によってpH6.8~7.2に緩衝したテキサス州ヒューストンのFisher Scientific製の飽和水性ホルムアルデヒド)に入れた。次いで、試料を取り出し、45℃のNBFにさらに1時間入れて架橋を開始した。他のパンチを室温NBFに24時間入れて、十分に固定された組織の陽性対照として機能させた。追加の生検パンチを組織カセットに固定し、自動固定装置のTOFセンサの間に配置した。固定後、試料を一晩サイクルに設定した市販の組織プロセッサで処理し、ワックスに包埋した。
【0241】
飛行時間測定
【0242】
簡潔には、4MHz集束トランスデューサの対を空間的に整列させ、組織試料をそれらの共通の焦点に配置した。1つのトランスデューサは、ホルマリンおよび組織を横断した後に付随するトランスデューサによって検出された正弦波パルスを送出するようにプログラムされ、受信したパルスを使用して通過時間を計算した。ホルマリンのみを介して信号を測定することによって、初期較正TOF読み取り値を取得した。そのベースライン読み取り値を、組織が存在するTOFから差し引いて、組織から位相変化を分離した。この検出方法は、拡散に起因する音響TOFシフトを同時に分離し、環境によって誘発されるホルマリンの変動を補償した。複数のTOF測定値を各組織検体全体にわたって記録し、空間的に平均化された信号を組織の全体的なホルマリン拡散速度の代表として記録した。実際には、複数の組織タイプからのTOF拡散信号の形態は、単一指数関数減衰関数とよく相関していた。(Lerchら、2017)。
【0243】
組織学
【0244】
パラフィン組織ブロックを厚さ4μmに切片化し、Fisherbrand(商標)Superfrost(商標)Plus顕微鏡スライド(Thermo Fisher Scientific)上に置いた。組織形態を評価するために、Ventana Medical Systems HE600自動染色システムでH&Eで1つの切片を染色した。さらに、IHC染色強度およびカバレッジを評価するために、各ブロックの連続切片を、Ventana Benchmark Ultra XT自動染色システムでの製造業者のプロトコルにしたがって、抗FOXP3(SP33)または抗bcl-2(SP66)について、ジアミノベンジジン(DAB)染色で染色した。
【0245】
統計的モデリング
【0246】
TOF信号が組織の実際の拡散速度を表すときにリアルタイムで計算するために使用される統計モデルは、統計および機械学習ツールボックスからの複数の関数を使用してMATLAB(Mathworks)で記述されたカスタム開発コードを使用して最初に開発された。最終モデルが我々のTOF走査ハードウェア上での実装のために検査室に変換されたとき、それは、numpy、matplotlib、scipy、およびkapteynを含むいくつかのライブラリを使用してPythonに変換された。
【0247】
イメージングおよび画像処理
【0248】
各スライドを、DAB染色剤およびヘマトキシリン対比染色剤を用いて20倍の倍率で全スライドスキャナ(VENTANA iScan HTスライドスキャナ)でイメージングした。MATLABで書かれたカスタム開発ソフトウェアパッケージを使用して画像を分析した。セグメンテーションアルゴリズムは、組織切片全体をバックグラウンドから区別した。別個のアルゴリズムは、組織染色の割合付近の最も代表的な統計値を得るために、非染色組織(例えば、孔、亀裂、間質)を含む組織フットプリント内の領域を同定した。透過画像を対数変換し、スペクトル的に非混合して、ヘマトキシリン対比染色からDAB染色を分離した。非混合DAB濃度マッピングを使用して、グローバル閾値を使用してどのピクセルがDAB陽性であるかを決定した。DAB染色の強度を分析することができるように、生のDAB濃度も記録した。不適切な固定の影響を試験するために、DAB染色の強度およびDAB陽性を異なる固定プロトコルについて試験することができるように、最も近いエッジ画素までのユークリッド距離を計算するアルゴリズムが書かれた。
【0249】
結果
【0250】
染色品質のリアルタイム予測のための基準
【0251】
リアルタイムで最適な固定品質を予測できるモデルを構築するためには、ホルマリン拡散と形態学的特性との間の関係を理解する必要があった。拡散は、主にフィックの拡散法則にしたがって濃度勾配および時間によって制御される。4℃のNBFに浸した6mmのコアのヒト扁桃組織を使用し、続いて45℃のNBF中で1時間、いくつかの時間経過実験を行った(Lerchら、2017)。複数の実験を分析した後、許容可能な組織形態学をもたらすために、最低3時間の低温NBF(C/H:3+1)を決定した。組織形態は、低温NBF(C/H:5+1)中で5時間で改善されたが、さらなる低温浸漬時間は追加の利益をもたらさなかった。次いで、複数のコアを調べ、C/H:5+1プロトコルが高品質の染色をもたらすことが確認された(
図12Aの累積結果を参照)。
【0252】
前のセクションでは、高品質のH&E染色を生成するために必要な拡散時間を経験的に決定した。次に、ヒト扁桃組織の拡散特性を定量的に特徴付けて、試料が適切に拡散した時期を決定するための分析メトリックを開発した。いくつかの扁桃組織全体を直径6mmにコアリングした。合計38個の6mmの扁桃試料を低温(7±0.5℃)10%のNBF中で測定した。38個の試料のうち、14個を3時間監視し、残りの24個の試料を5時間監視した。各試料について、試料全体にわたって拡散を測定し(1mm間隔)、空間平均TOF曲線を計算した。特徴的なTOFベースの拡散信号は、次の形式の単一指数曲線と高度に相関していた。
【0253】
ここで、Cは、ナノ秒単位の一定のオフセットであり、Aavgは、ナノ秒単位の指数関数的減衰の振幅であり、τavgは、時間単位の組織の平均減衰定数である。3時間および5時間走査した試料は、それぞれ2.33時間および2.72時間の平均減衰定数を有した。0.39時間の差は統計的に有意ではなく、2つのデータセットが同じ物理現象を忠実に測定したことを示している。これは、TOF測定システムが、長い拡散時間および短い拡散時間について一貫した再現可能な結果をもたらしたことを確立した。
【0254】
拡散モニタリングシステムを検証した後、38(38)個の6mm扁桃試料のデータセットを分析して、各組織の拡散特性と理想的な下流染色を生成するのに必要な経験的に決定された拡散時間との間の相関を見出した。多変量解析、クラスターベースのアルゴリズム、信号の導関数の特性評価、および主成分分析を含む多数の分析技術が使用された。拡散速度を物理的に表す勾配ベースの分析は、冷ホルマリン中で3時間(すなわち、十分に染色される)対5時間(すなわち、試料全体にわたって最適に染色する)の試料の理想的で有意な識別を提供することが分かった。ノイズを大幅に緩和し、拡散の活性速度をより正確に表すために、TOF信号の導関数は、単一の指数関数へのフィットに基づいて計算された。さらに、2つのデータセットの理想的な識別は、各信号を振幅正規化することによって達成された。
【0255】
式中、mは、時間t0における振幅正規化されたTOF信号の導関数であり、括弧は、拡散1時間当たりのTOF変化パーセントの勾配の単位を示す。
図13Aは、それぞれ3時間および5時間における各試料の正規化された勾配を示している。3時間での平均拡散速度は-11.3%/時であったが、5時間では拡散速度は-5.3%/時に著しく遅くなり、いくつかの試料はほぼゼロの拡散速度によって示されるように完全な浸透平衡に近付いた。3時間および5時間での正規化された拡散速度の異なる分布は、非常に統計学的に有意であり(p<2e-15)、3時間対5時間での拡散速度の劇的且つ物理的に現実的な差を示した。したがって、TOFベースの拡散メトリックおよびH&Eベースの染色品質は高度に相関しており、適切に較正された場合、本発明者らの拡散監視システムが最終的な染色品質を根本的に予測することができたことを示している。この検証を考慮して、以下の式は、NBF拡散の基準速度に達するのに必要な時間について解かれた。
【0256】
式中、t
doneは、閾値勾配(m
thresh)に達するのに必要な時間であり、|...|記号は、絶対値を示す。所与の組織特異的減衰定数および正規化された拡散速度について、この式を使用して、試料が閾値拡散速度に達するまでに冷ホルマリン中にある必要がある時間を計算することができる。染色の質の予測因子として拡散速度を評価するために、
図13Aに視覚的に表示されるように、3つの閾値勾配値(m
thres=-7.4%/時、-8.0%/時、-10.4%/時)を評価のために選択した。大きな絶対勾配値は、1時間当たりのより多くの流体交換を表すことに留意されたい。したがって、試料の活性拡散が遅くなるにつれて、拡散速度は浸透平衡に近付く(すなわち、0%/時)。したがって、より大きい閾値勾配基準は、試料がより早く適切なホルムアルデヒドを有することを予測する。これは、ヒトの扁桃腺の代表的な6mm片について
図13Bにグラフで示されており、拡散速度の減少はより長い完了時間につながる。
【0257】
さらに、各データセット(3時間および5時間)における組織の予測された完了時間は、上記の式から計算されるように
図13C~
図13Eに表示される。例えば、
図13Cは、-10.4%/時の最大閾値勾配に対する予測完了時間を表示する。この勾配基準は、3.27時間の平均完了時間を予測した。しかしながら、6(6)個の試料(16%)の予測完了時間は3時間未満であり、本発明者らの以前の組織染色結果から、これらの試料は全体に十分に拡散されないことが知られている。さらに、1つの試料は、この勾配基準で誤って識別される。これらの知見に基づいて、全ての試料は、それらの拡散速度が-10.4%/時である場合、許容可能に染色するのに十分なホルマリンを有してはならない。-8.0%/時の中間閾値勾配値は、2つのデータセット間の理想的な識別および3~5時間の合理的な完了時間をもたらす。しかしながら、できるだけ控えめにするために、-7.4%/時の最低閾値勾配値を、試料が全体を通して最適に染色されるときの基準として選択した。この測定基準では、6mmの扁桃コアは、下流の組織学的染色から3.21時間から4.96時間かかると予測され、これは妥当であると理解された。これらの実験および分析に基づいて、正規化された拡散の試料のリアルタイム速度が遅くなると、
【0258】
試料は、理想的で均一な組織学的染色を保証するのに十分なホルマリンを全体を通して有する。
【0259】
TOF信号のリアルタイム検証のための統計モデル
【0260】
TOF技術の実用的な実施形態は、組織の真の時間拡散プロファイルのグラウンドトゥルース評価がない場合に、拡散曲線が時間的にスパースなデータで分析されることを必要とする。例えば、試料が最適に固定される時期の予測は、所与の時間におけるNBF拡散の検出された速度に基づく。しかしながら、この予測は、組織の拡散曲線の指数関数的フィットが組織の実際の拡散速度を表す場合にのみ有効である。特に、データが疎である実験の開始時に、検出された拡散速度は、TOF計算に固有のノイズに加えて、様々なソース(例えば、組織変形、熱雑音、流体変数など)に起因して著しく変化する可能性がある。これらの制限を克服するために、TOF曲線がいつ組織の真の拡散プロファイルに収束したかを検証するための統計モデルが開発され、したがって、試料が適切に固定されたかどうかに関する予測を行うのに十分正確であった。
【0261】
開発された解決策は、TOF信号の異なる成分を照会する3つの独立した成分を有する統計モデルであった。低温NBF拡散中にTOFデータ点が計算されたため、3つの成分は全て継続的に再計算された。3つ全ての統計パラメータが同時に満たされた場合、拡散プロファイルは正確であると判断された。
【0262】
条件#1(過去の信頼度モデル):この条件は、現在のTOFフィットが以前に収集されたデータと一致することを確立する。この例では、単一の指数線の減衰定数は、前の6つの減衰定数の平均に対して2%未満の差を有する10個の連続する減衰定数によって定義されるように収束しなければならない。
【0263】
条件#2(現在の信頼度モデル):この条件は、現在収集されているデータの統計的信頼度を確立する。この例では、直近の減衰定数の95%信頼区間は、0.7時間未満でなければならない。
【0264】
条件#3(将来の信頼度モデル):この条件は、将来のTOF値を予測するのに十分な統計的信頼度があることを確立する。この例では、全ての時間にわたるTOF信号の95%信頼区間(過去、現在、および将来)は、2ns未満でなければならない。
【0265】
3つ全ての統計的条件が満たされると、信頼度モデルは、組織からのTOF信号が実際の拡散速度を表すことを検証し、式15に記載された閾値条件で式14にしたがって組織が適切に固定される時点を予測した。リアルタイム統計モデルのグラフ表示が
図14Aに示されており、TOF拡散信号が3.08時間で代表的であると判断され、この時点で、予測信頼度モデルは、組織が4.47時間で適切に拡散されると計算した。現在、将来、および過去の信頼度モデルの計算は、それらが満たされた点まで、それぞれ、
図14B、
図14C、および
図14Dにプロットされている。
【0266】
方法論の全体的な有効性を、以前に収集した105個のTOF曲線(Lerchら、2017)で試験した。この事前データを統計モデルによって分析して、実際の経験的データ上でどのように挙動するかをシミュレートするシミュレーションを記述した。モデルが信号を検証した時点で、最適な固定の予測時間は、実験終了時のフィットによって計算されるように、真の時間の27分以内であると計算された。収束時の減衰定数の統計的信頼度は±7分であった。これらの結果は、TOF信号が組織の実際の拡散速度を表すときにリアルタイムで決定されたモデル、およびそのデータに基づく予測が正確であったことを確認する。
図14Eは、特性拡散曲線を検証する時間対予測固定時間をプロットしている。平均して、モデルは、試料が適切に拡散される55分前に有効なフィットに収束した。これらの結果は、どのようにしてモデルが、生物学的検体が最適に拡散される時期をそれらのほぼ1時間前に決定することができたかを詳述し、したがって、固定品質のリアルタイム評価と組み合わせたTOFベースの拡散監視の商業的実施形態の実現可能性を確立した。
【0267】
IHC染色による固定予測モデルの検証
【0268】
開発された予測モデルが最終的な染色品質を真に予測することを確認するために、各スライドの染色レベルを客観的且つ反復的に評価するためのデジタル病理ツールを開発した。デジタル分析を、単一マーカーを染色するDABおよびヘマトキシリン対比染色を用いてIHCスライドに対して行った。各スライドの全スライド走査を取得した。ソフトウェアは、組織をセグメント化し、結合組織および間質などの染色しなかった領域を特定および除去した。活性染色を有する全ての領域について、ソフトウェアは、DAB陽性であった組織の割合を定量化した。さらに、それは、組織試料の境界までの可能な最短距離として定義されるエッジ距離を計算した。次に、組織の半径方向に同心の0.33mm「ゾーン」を計算し、ほぼ等しい濃度のホルマリンを含む領域で染色を分析することができた。組織のこの幾何学的表現は、ホルマリンが周辺部から組織に拡散し、組織のコアでの染色が徐々に少なくなるため、不適切な固定の影響を明示的に分析することを可能にした。組織染色の割合を最も近い組織縁部までの距離に対してプロットするヒストグラムを計算した。最後に、抑制された染色をエッジ/最大陽性の半分未満のDAB陽性として定義することによって、組織の各半径方向ゾーンを適切な染色について分析した。画像分析ワークフローのグラフィック描写が
図15に提示されている。
【0269】
開示されたシステムおよび方法が、組織が最適に拡散された時期をリアルタイムで正確に確認することができることを確認するために、4つの固定プロトコルのうちの1つで差動的に固定された87個の別個の扁桃腺コアを用いた大規模試験を試験した。全ての固定プロトコルについて、固定後、組織を標準化された様式で処理し、パラフィンブロックに包埋し、スライドを切断し、FOXP3およびbcl-2についてDABで染色した。最初の3つの固定プロトコルは、低温NBFを2時間、引き続いて加熱されたNBFを1時間(C/H:2+1、N=24)、低温NBFを6時間、引き続いて加熱されたNBFを1時間(C/H:6+1、N=21)、および室温NBF固定を24時間(RT:24時間、N=24)であった。最後に、本発明者らのシステムが、扁桃が十分に拡散したと判断するまで、扁桃を低温NBF中に配置する低温+高温固定法を使用して、リアルタイム固定予測アルゴリズムを試験し、その時点で加熱されたホルマリンに1時間移動させて架橋を開始した(C/H:動的、N=18)。この実験では、C/H:6+1およびRT:24時間プロトコルは、これらの固定方法が高品質の染色をもたらすことが知られていたため、内部対照を表した。あるいは、C/H:2+1試料は、固定組織下で意図的に表された。各固定方法に対する染色パターンの代表的な画像が
図16に表示されている。2つの標準的な固定プロトコルは、ほぼ均一に染色された組織を生成したが、C/H:2+1組織は、組織の中心での染色を有意に抑制した。重要なことに、C/H:動的プロトコルからの組織は、2つのゴールドスタンダード固定プロトコルと一致する均一なFOXP3染色を生じた。
【0270】
さらにまた、FOXP3染色のための87組織研究全体の累積ボックスおよびウィスカのプロットが
図17に提示されている。染色浸透深さは、染色がそのエッジ値の半分に低下する距離によって定義され、
図17Aにプロットされ、適切に染色された組織の面積が
図17Bにプロットされる。両方の測定基準について、C/H:2+1試料は、他の3つの固定方法と比較して有意に減少した染色を示した(p<0.002)。重要なことに、C/H:動的試料は、RT:24時間試料およびC/H:6+1試料の両方と一致する染色結果を示した。さらに、動的に固定された試料は、低温NBF中に4.2時間しか存在せず、これは、TOF予測アルゴリズムが、染色された組織ならびに従来の固定された組織を生成したが、数時間速くなったことを意味する。さらに、4つ全ての固定プロトコルについてのFOXP3の平均空間的染色プロファイルが
図17Cにプロットされている。動的に固定された試料は、C/H:6+1およびRT:24時間の固定と一致する染色パターンを再び示した。これは、組織の縁部に対して中央での染色が約70%少ないC/H:2+1試料とは著しく対照的である。
【0271】
考察
【0272】
組織学検査室における主要な誤差源は、不適切に固定された組織によって引き起こされ、染色強度の低下および不良な形態をもたらす(Mathews,Newbury,およびHousser、2011;EngelおよびMoore、2011;De Marzoら、2002)。この研究では、下流のIHCアッセイからの理想的で空間的に均一な機能染色によって実証されるように、生物学的検体が高品質の固定を保証するのに適切なホルムアルデヒドを有する時期をリアルタイムで決定することができる最初の種類の組織固定システムの開発が示されている。予測アルゴリズムは、H&Eベースの形態学と扁桃試料からの特徴的な拡散曲線との組み合わせで訓練された。最終的に、本発明者らのシステムは、異なる固定プロトコルからの染色結果を比較することによって検証された。本発明者らの統計モデルによって積極的に制御された拡散時間を有する動的に固定された試料は、24時間の室温固定という現在の臨床的なゴールドスタンダードと比較して、同等のFOXP3およびbcl-2染色を有することが分かった。
【0273】
今日の組織学研究室では、組織固定のプロセスは、科学的原理ではなくワークフローの考慮事項によって大きく影響され、プロトコルは様々な機関で大幅に変更される可能性がある。複数の非標準化手順を有することの1つの困難は、複数の部位にわたってデータおよび結果を容易に共有することに対する阻害である。臨床医は、同じ固定プロトコルで処置された標準化された試料から収集されたデータから大いに利益を得るであろう。例えば、デジタル病理アルゴリズムは、不適切な前分析処理で試料を分析すると、一貫性のない結果を出力する可能性がある。FOXP3およびbcl-2染色のための不十分に固定された試料と比較して、適切に固定された組織では、より一貫した染色レベルが報告されている(
図19)。組織固定を標準化することの別の利点は、品質の悪さまたは組織の損失に起因する費用のかかる再加工の量を減らす効率の向上である。この再作業のコストは、検査室にかかることが多く、完全に文書化された事前分析ワークフローの一部として標準化されたシステムによって大幅に削減され得る。
【0274】
2つの温度帯に基づく新規な固定プロトコルが、リンタンパク質およびmRNAなどの不安定なバイオマーカーをより良好に保存することが以前に実証されている(Theiss、2017、二温度固定プロトコルを使用した組織学的組織におけるRNA種の検出の増加)。試料の数が増加し続け、診断アッセイが次世代バイオマーカーに依存するため、二温度固定などのより迅速で効率的な技術が必要になる。本開示は、ホルムアルデヒド浸透を標準化することによって組織を固定するこのより効率的な方法を利用するシステムを提供する。組織学的実践は数十年にわたって行われており、これらの実践は変更することが困難である。本明細書に記載の方法および機器は、同じ試薬(10%のNBF)および手順(ホルムアルデヒド架橋)を利用するため、下流のアッセイプロトコルまたは結果を変更しない。むしろ、組織標準化のこの方法および他のより効率的な方法は、将来の分析物の正確な保存および定量化を可能にするために必要である。
【0275】
この研究では、ヒト扁桃試料におけるFOXP3発現を使用してシステムおよび方法が試験および検証されたが、システムおよび方法は全てのバイオマーカーおよび組織型に適用可能であると考えられる。例えば、本発明者らの新規固定方法によるbcl-2の忠実な保存に関する追加のデータが本明細書に提示される。動的固定プロトコルは、臨床での24時間の室温固定と同等の染色を示した(
図18と
図19とを比較する)。bcl-2の発現パターンは、固定の質に対する大きな依存性を示さなかったが、これは、bcl-2が堅牢な臨床バイオマーカーとして知られているために予想された。この結果は、固定の改善が不安定なバイオマーカーにとって特に有益であることを強調している。示差的に固定された組織の染色強度の分析が
図20に提示されている。さらに、34の異なる組織タイプの拡散データが以前に生成され、それぞれがそれ自体の特徴的な拡散速度を有することが示されており、したがって、開示された予測統計モデルは、複数の組織タイプ(
図20)に適用され得る(Bauerら、2016)。
【0276】
この技術の次のステップの1つは、他の組織タイプおよびバイオマーカー、特に前分析的に感受性であることが知られているバイオマーカーに対するこの予測アルゴリズムの使用を経験的に探索することである。将来の研究は、扁桃腺組織を用いて開発された本発明者らの現在の基準を複数の組織タイプに拡張して、普遍的な固定基準を実現できるようにすることを伴う。現在の計測は、全てのタイプの組織がいつ適切に固定されるかを最適に予測することができる一般化可能なモデルを作成するように調整され得ると仮定される。将来の組織学検査室は、個々の組織試料が最適に固定され、組織固定を科学に真に変換することを確実にし、文書化することができるランダムアクセス自動処理ユニットの一部としてこの分析方法を使用することができると考えられる。
【0277】
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Tanimoto,A.,J.Nakashima,H.Kohno,H.Shinmoto,and S.Kuribayashi.2007.’Prostate cancer screening:the clinical value of diffusion-weighted imaging and dynamic MR imaging in combination with T2-weighted imaging’,J Magn Reson Imaging,25:146-52.
【0324】
Theiss,A.P.,D.Chafin,D.R.Bauer,T.M.Grogan,and G.S.Baird.2014.’Immunohistochemistry of colorectal cancer biomarker phosphorylation requires controlled tissue fixation’,PLoS One,9:e113608.
【0325】
Uhl M.,Altehoefer C.,Kontny U.,II’yasov,K.,Buchert M.,Langer M.2014.’MRI-diffusion imaging of neuroblastomas:first results and correlation’,European Radiology.
【0326】
追加の実施形態
【0327】
Hine(Stain Technol.1981年3月;56(2):119-23)は、固定後、包埋および切片化の前に、組織試料をヘマトキシリン溶液およびエオシン溶液に浸漬することによって組織ブロック全体を染色する方法を開示している。さらに、固定は、多くの場合、固定されていない組織試料を一定量の固定剤溶液に浸漬することによって行われ、固定剤溶液は、組織試料中に拡散させられる。Chafinら(PLoS ONE 8(1):e54138.doi:10.1371/journal.pone.0054138(2013))によって実証されているように、固定剤が組織中に十分に拡散したことを確実にすることができないと、組織試料の完全性が損なわれる可能性がある。したがって、一実施形態では、本システムおよび方法が適用されて、下流プロセス、例えば、対比染色剤(ヘマトキシリンおよびエオシンなど)による染色および/または1つまたは複数のバイオマーカーの標識の前に、組織試料への固定剤の十分な拡散時間を決定する。
【0328】
いくつかの実施形態では、本システムおよび方法は、組織試料に対して二温度浸漬固定法を実行するために使用される。本明細書で使用される場合、「二温度固定法」は、組織が最初に第1の期間にわたって低温の固定剤溶液に浸漬され、続いて第2の期間にわたって組織を加熱する固定方法である。低温ステップは、架橋を実質的に引き起こすことなく、固定剤溶液が組織全体に拡散することを可能にする。次いで、組織が組織全体に十分に拡散すると、加熱ステップは固定剤による架橋をもたらす。低温拡散とそれに続く加熱ステップとの組み合わせは、標準的な方法を使用するよりも完全に固定された組織試料をもたらす。したがって、いくつかの実施形態では、組織試料は、以下によって固定される:(1)未固定の組織試料を低温の固定剤溶液に浸漬し、本明細書中に開示されるようなシステムおよび方法を使用して組織試料中のTOFを監視することによって、組織試料中への固定剤の拡散を監視すること(拡散ステップ)、および(2)閾値TOFが測定された後、組織試料の温度を上昇させることを可能にすること(固定ステップ)。
【0329】
本明細書中で言及されるおよび/または出願データシートにおいてリスト化される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願、および刊行物の概念を使用してさらに別の実施形態を提供するように変更され得る。
【0330】
本開示は、いくつかの例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本開示の原理の精神および範囲内に含まれるであろう多くの他の変更および実施形態が当業者によって考案され得ることを理解されたい。より具体的には、合理的な変形および変更は、本開示の精神から逸脱することなく、前述の開示、図面、および添付の特許請求の範囲内の主題の組み合わせ構成の構成部品および/または配置において可能である。構成部品および/または配置の変形および変更に加えて、代替の使用法も当業者にとって明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が、前記流体に浸漬された生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定する方法であって、
(a)前記流体に浸漬された前記生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得することと、
(b)取得された前記音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出された前記TOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出することと、
(c)前記導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、
(d)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、
(e)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される前記時間を推定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記流体が1つまたは複数の固定剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の固定剤がアルデヒド系固定剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記流体が、エタノール、キシレン、およびパラフィンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルが、前記過去の信頼度モデルおよび前記現在の信頼度モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルが、前記過去の信頼度モデル、前記現在の信頼度モデル、および前記将来の信頼度モデルのそれぞれを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の導出されたTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定された場合に、計算された前記過去の信頼度モデルが、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記所定数の取り出された計算された候補減衰定数が前記計算された平均減衰定数の前記所定の閾値パーセンテージ値内にあるかどうかの前記決定が、収束試験を実行することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記収束試験を実行することが、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された前記理論値および計算された前記実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定された前記パーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記平均減衰定数が、(i)前記候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数を取り出すことと、(ii)取り出された前記計算された減衰定数のそれぞれを平均化することと、によって導出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記候補TOFデータ点に先行する前記所定数のTOFデータ点が、少なくとも約3である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の閾値パーセンテージ値が約5%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の閾値パーセンテージ値が約2.5%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
計算された前記現在の信頼度モデルが、計算された現在の信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るときに、所定の現在の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
前記現在の信頼区間が、(a)前記計算されたTOF曲線の前記計算されたTOFデータ点の一部または全部を使用してTOF曲線の非線形回帰フィットを実行することと、(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の前記信頼区間を決定することと、によって計算される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
計算された前記将来の信頼度モデルが、計算された将来の信頼区間が所定の将来の信頼度モデル閾値を下回るときに、所定の将来の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記将来の信頼区間が、(a)前記計算されたTOF曲線の前記計算されたTOFデータ点の全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行することと、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の前記信頼区間を決定することと、(c)前記TOF曲線の平均信頼区間を計算することと、によって計算される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのバイオマーカーの存在について前記生物学的検体を染色することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのバイオマーカーががんバイオマーカーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの存在について染色された前記生物学的検体をスコアリングすることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも2つのバイオマーカーの存在について前記生物学的検体を染色することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項22】
1つまたは複数の固定剤に浸漬された生物学的検体の固定完了までの時間を予測する方法であって、
(a)前記1つまたは複数の固定剤に浸漬された前記生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得すること(401)と、
(b)取得された前記音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出された前記TOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出すること(402)と、
(c)導出された前記TOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算すること(403)と、
(d)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定すること(404)と、
(e)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて前記固定完了までの時間を予測すること(405)と
を含む、方法。
【請求項23】
前記生物学的検体が、最初に、約15℃未満の温度の1つまたは複数の固定剤に浸漬される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記音響データが、前記1つまたは複数の固定剤が約15℃を超える温度に加温された後に取得される、請求項22および23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記音響データが、前記1つまたは複数の固定剤が約25℃を超える温度に加温された後に取得される、請求項22および23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルが、前記過去の信頼度モデルおよび前記現在の信頼度モデルを含む、請求項22
および23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルが、前記過去の信頼度モデル、前記現在の信頼度モデル、および前記将来の信頼度モデルのそれぞれを含む、請求項22
および23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
流体が、前記流体に浸漬された生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定するための命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、
a.取得された音響データから飛行時間(TOF)データを導出することと、
b.導出された前記TOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、
c.計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、
d.前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される前記時間を推定することと
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項29】
1つまたは複数の減衰定数を計算するための命令をさらに含む、請求項28に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項30】
収束試験を実行するための命令をさらに含む、請求項28および29のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項31】
前記収束試験が、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された前記理論値および計算された前記実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定された前記パーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む、請求項30に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項32】
少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定するための命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体であって、(a)流体に浸漬された生物学的検体から取得された音響データからTOFデータを導出することと、(b)過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを、前記過去、現在、および将来の信頼度モデルのそれぞれが同時に且つ独立して所定の閾値基準を満たすまで、継続的に計算することと、(c)前記過去、現在、および将来の信頼度モデルが同時に且つ独立して満たされた、導出された前記TOFデータに対応する時点を識別することと、を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項33】
複数の導出されたTOFデータ点に対応する所定数の取り出された計算された候補減衰定数が、それぞれ、計算された平均減衰定数の所定の閾値パーセンテージ値内にあると決定された場合に、計算された前記過去の信頼度モデルが、所定の過去の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項32に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項34】
前記所定数の取り出された計算された候補減衰定数が前記計算された平均減衰定数の前記所定の閾値パーセンテージ値内にあるかどうかの前記決定が、収束試験を実行することを含む、請求項33に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項35】
前記収束試験を実行することが、(i)候補の計算されたTOFデータ点の候補減衰定数を計算して、理論値を提供することと、(ii)経時的に計算され、候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点に対応する所定数の計算された減衰定数に基づいて平均減衰定数を計算して、実験値を提供することと、(iii)計算された前記理論値および計算された前記実験値に基づいて実際のパーセント誤差を決定することと、(iv)決定された前記パーセント誤差を所定の閾値パーセンテージ値と比較することと、を含む、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項36】
前記平均減衰定数が、(i)前記候補TOFデータ点に先行する所定数のTOFデータ点のそれぞれについて計算された減衰定数を取り出すことと、(ii)取り出された前記計算された減衰定数のそれぞれを平均化することと、によって導出される、請求項35に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項37】
計算された前記現在の信頼度モデルが、計算された現在の信頼区間が所定の現在の信頼度モデル閾値を下回るときに、所定の現在の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項32から36のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項38】
前記現在の信頼区間が、(a)計算されたTOF曲線の計算されたTOFデータ点の一部または全部を使用してTOF曲線の非線形回帰フィットを実行することと、(b)実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の前記信頼区間を決定することと、によって計算される、請求項37に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項39】
計算された前記将来の信頼度モデルが、計算された将来の信頼区間が所定の将来の信頼度モデル閾値を下回るときに、所定の将来の信頼度モデル閾値基準を満たす、請求項3
2に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項40】
前記将来の信頼区間が、(a)計算されたTOF曲線の計算されたTOFデータ点の全部を使用して、TOF曲線の非線形回帰フィットを実行することと、(b)時間0から将来の時点までの実行された非線形回帰フィッティングに基づいて、取り出された計算された減衰定数の前記信頼区間を決定することと、(c)前記TOF曲線の平均信頼区間を計算することと、によって計算される、請求項39に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項41】
前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定するための命令をさらに含む、請求項3
2に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項42】
前記流体が、1つまたは複数の固定剤を含む、請求項41に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項43】
前記流体が、エタノール、キシレン、およびパラフィンからなる群から選択される、請求項41に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項44】
流体が、前記流体に浸漬された生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定するためのシステム(200)であって、(i)1つまたは複数のプロセッサ(206)と、(ii)前記1つまたは複数のプロセッサ(206)に結合された1つまたは複数のメモリ(205)とを備え、前記1つまたは複数のメモリ(205)がコンピュータ実行可能命令を記憶し、前記コンピュータ実行可能命令が、前記1つまたは複数のプロセッサ(206)によって実行されると、前記システム(200)に、
(a)流体に浸漬された生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で取得された音響データから飛行時間(TOF)データを導出することと、
(b)導出された前記TOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、
(c)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、
(d)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定することと
を含む動作を実行させる、システム。
【請求項45】
前記流体が、1つまたは複数の固定剤を含む、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記流体が、エタノール、キシレン、およびパラフィンからなる群から選択される、請求項44に記載のシステム。
【請求項47】
1つまたは複数の固定剤が、流体に浸漬された生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定する方法であって、
(a)前記生物学的検体を前記1つまたは複数の固定剤に浸漬することであって、前記1つまたは複数の固定剤が約15℃未満の温度に維持される、浸漬することと、
(b)前記流体に浸漬された前記生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得すること(401)と、
(c)取得された前記音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出された前記TOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出すること(402)と、
(d)前記導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算すること(403)と、
(e)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定すること(404)と、
(f)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて、前記流体が前記生物学的検体中に最適に拡散される時間を推定すること(405)と
を含む、方法。
【請求項48】
前記温度が約10℃未満である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記温度が約-10℃から約10℃の範囲である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記温度が約-4℃から約4℃の範囲である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
1つまたは複数の固定剤に浸漬された生物学的検体の固定完了までの時間を予測する方法であって、
(a)前記生物学的検体を前記1つまたは複数の固定剤に浸漬することであって、前記1つまたは複数の固定剤が約20℃を超える温度に維持される、浸漬することと、
(b)前記1つまたは複数の固定剤に浸漬された前記生物学的検体に沿った1つまたは複数の位置で音響データを取得することと、
(c)取得された前記音響データから飛行時間(TOF)データを導出することであって、導出された前記TOFデータが、1つもしくは複数の計算されたTOFデータ点、1つもしくは複数の計算されたTOF曲線、および/または1つもしくは複数の計算された減衰定数を含む、導出することと、
(d)前記導出されたTOFデータに基づいて少なくとも2つの信頼度モデルを同時に計算することであって、前記少なくとも2つの信頼度モデルが、過去の信頼度モデル、現在の信頼度モデル、および将来の信頼度モデルを含む、計算することと、
(e)計算された前記少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して所定の閾値基準を満たす時点を決定することと、
(f)前記計算された少なくとも2つの信頼度モデルがそれぞれ独立して前記所定の閾値基準を満たした、決定された時点に対応するTOFデータに基づいて前記固定完了までの時間を予測することと
を含む、方法。
【請求項52】
前記温度が約25℃を超える、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記温度が約30℃を超える、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記温度が約35℃を超える、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記温度が約40℃を超える、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記温度が約45℃を超える、請求項51に記載の方法。
【国際調査報告】