(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】絶縁された電力ケーブルシステムのための機能的信頼性評価
(51)【国際特許分類】
G01R 31/58 20200101AFI20240514BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
G01R31/58
H02H9/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570362
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022029174
(87)【国際公開番号】W WO2022241208
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523429070
【氏名又は名称】アンダーグラウンド・システムズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エフ・スミス
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ジェイ・ウィルス
(72)【発明者】
【氏名】ダンカン・キャンベル・ブリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・アラン・アレックス
【テーマコード(参考)】
2G014
5G013
【Fターム(参考)】
2G014AA17
2G014AA23
2G014AA33
2G014AB33
2G014AB52
5G013AA01
5G013AA11
5G013BA02
5G013CB01
5G013DA12
(57)【要約】
高電圧ケーブル回路のためのケーブルシールドシステムの機能的信頼性は、回路の長さ方向に沿って導電性シールドの区間をグラウンドから電気的に絶縁し、徐々に振幅が増大する試験電圧を絶縁されたシールド区間に供給することによって決定される。供給された試験電圧に応答して、電流がシールド区間および接続されたシールド電圧リミッター(SVL)に流れる。SVLを流れる電流が監視され、シールドシステムの動作の完全性が、SVLにかかる電圧およびSVLを流れる監視された電流に応じて決定される。電流は、シールド区間が接続されるリンクボックスに含まれるSVLによって放散される熱を検知することによって監視される。SVLにかかる電圧およびSVLを流れる監視された電流を表す情報は離れた位置に送信され、そこでSVLの動作の完全性が決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル経路に沿った少なくとも1つの区間からなる高電圧ケーブル回路のためのケーブルシールドシステムの機能的信頼性を試験するための方法であって、前記ケーブルシールドシステムが、前記高電圧ケーブルの対応する区間の位相を同心的に囲む導電性シールドの少なくとも1つの区間を含み、前記導電性シールドが回路の長さ方向に沿って延び、少なくとも、前記回路の長さ方向に沿った1つの点において、正常動作の間は電気的なグラウンドに物理的に接続され、前記導電性シールドが、シールド電圧リミッター(SVL)を通じて、覆われた構造物内のコネクタリンクを介して、少なくとも、1つの接地されていない点においてグラウンドに接続され、
前記導電性シールドの区間を前記回路の長さ方向に沿ってグラウンドから電気的に絶縁するステップと、
徐々に増大する振幅の試験電圧を前記SVLに供給するステップと、
前記供給された試験電圧に応答して、前記SVLにかかる電圧および前記SVLを流れる電流を監視するステップと、
前記SVLにかかる前記監視された電圧および前記SVLに流れる前記監視された電流に応じて、前記ケーブルシールドシステムの前記機能的信頼性を決定するステップとを備える、方法。
【請求項2】
前記SVLにかかる前記電圧および前記SVLに流れる前記電流が、前記構造物の中のセンサによって監視される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造物が、前記SVLによって放散される熱を検知するために配設される熱センサを含み、前記SVLを流れる電流が、前記放散された熱を検出することによって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ケーブルシールドシステムの前記機能的信頼性が、前記SVLにかかる前記電圧および前記SVLを流れる前記電流を表す情報を、前記構造物から離れた位置に送信することによって、前記離れた位置において決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記SVLを流れる前記電流を表す前記情報が、前記SVLによって放散される検知された熱を表す熱情報を備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記覆われた構造物が、前記高電圧ケーブルのそれぞれの位相の前記導電性シールドを異なる位相の前記導電性シールドおよびそれぞれのSVLに物理的に接続するためのコネクタリンクを格納するリンクボックスハウジングであり、前記導電性シールドの区間をグラウンドから電気的に絶縁する前記ステップが、試験されているケーブルシールド区切りの前記区間のすべての点において前記導電性シールドをグラウンドから切断するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ケーブルシールドシステムが、前記高電圧ケーブルの第1の位相の前記導電性シールドが前記高電圧ケーブルの第2の位相の前記導電性シールドに電気的に接続される第1のリンクボックスと、前記高電圧ケーブルの前記第2の位相の前記導電性シールドが前記高電圧ケーブルの第3の位相の前記導電性シールドに電気的に接続される第2のリンクボックスとを含み、前記第1のリンクボックスから遠い前記高電圧ケーブルの前記第1の位相の前記導電性シールドの点が、正常動作の間は電気的なグラウンドに物理的に接続され、前記第2のリンクボックスから遠い前記高電圧ケーブルの前記第3の位相の前記導電性シールドの点が、正常動作の間は電気的なグラウンドに物理的に接続され、前記導電性シールドの区間をグラウンドから電気的に絶縁する前記ステップが、前記高電圧ケーブルの前記第1の位相および前記第3の位相の前記導電性シールドの前記遠い点をグラウンドから切断するステップを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
グラウンドから絶縁された前記シールド区間の端部に試験電圧を供給する前記ステップが、グラウンドから絶縁されている前記シールド区間の前記端部に徐々に増大するDC電圧を供給するステップを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グラウンドから絶縁されている前記シールド区間の端部に試験電圧を供給する前記ステップが、グラウンドから絶縁されている前記シールド区間の前記端部に徐々に増大するAC電圧を供給するステップを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記SVLを流れる前記電流が、前記SVLにかかる前記電圧に対する相対的な位相シフトを示し、前記SVLを流れる前記電流を監視する前記ステップが、前記SVLにかかる前記電圧に対する相対的な前記電流の前記位相シフトを監視するステップを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記SVLにかかる前記電圧に対する相対的な前記SVLに流れる前記電流の前記位相シフトが、前記SVLが示す力率に関連し、前記監視された位相シフトが、前記SVLの前記機能的信頼性を示すものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ワイヤレス送信が、電圧および電流の情報を前記構造物から前記離れた位置に送信するために使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記ワイヤレス送信が、低電力ワイドエリアネットワーク(LP-WAN)を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
光ファイバケーブルが、電圧および電流の情報を前記構造物から前記離れた位置に送信するために使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記構造物の中に、または近くに配設されるストアに、前記SVLにかかる前記電圧を表す情報および前記SVLによって放散される前記検知された熱を表す熱情報を記憶するステップと、前記離れた位置から受け取られた命令に応答して、前記LP-WANを介して前記記憶されている電圧および熱の情報を送信するステップとをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ケーブルシールドシステムの前記機能的信頼性が、前記SVLにかかる前記電圧における前記SVLを流れる前記電流が前記SVLの所定の特徴的な特性と合致するとき、機能する状態であると決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記ケーブルシールドシステムの前記機能的信頼性が、前記SVLにかかる前記電圧における前記SVLからの前記熱情報が前記SVLの所定の特性と合致するとき、機能する状態であると決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
ケーブル経路に沿った少なくとも1つの区間からなる高電圧ケーブル回路のためのケーブルシールドシステムの機能的信頼性を試験するための評価システムであって、前記ケーブルシールドシステムが、前記高電圧ケーブルの対応する区間の位相を同心的に囲む導電性シールドの少なくとも1つの区間を含み、前記導電性シールドが回路の長さ方向に沿って延び、少なくとも、前記回路の長さ方向に沿った1つの点において、正常動作の間は電気的なグラウンドに物理的に接続され、前記導電性シールドが、シールド電圧リミッター(SVL)を通じて、前記高電圧ケーブルの1つの位相の前記シールドをグラウンドに電気的に接続するためのコネクタリンクを含むリンクボックスに接続され、前記評価システムが、
試験の間に、徐々にまたはステップ状に振幅が増大する試験電圧を提供するための電圧源と、
前記リンクボックスから遠くグラウンドから絶縁されている前記シールド区間の端部に前記電圧源からの前記試験電圧を供給し、それにより前記SVLにかかる電圧を供給するためのコネクタと、
前記試験電圧に応答して前記SVLにかかる前記電圧および前記SVLを流れる電流を表す情報を提供するための、前記リンクボックス内に配設される少なくとも1つのセンサと、
前記リンクボックスから離れた位置にセンサ情報を送信するための送信機と、
前記電圧情報および前記電流情報に応じて前記ケーブルシールドシステムの前記機能的信頼性を決定するための前記試験の間に取得される、前記リンクボックスからのセンサ情報を供給されるプロセッサとを備える、評価システム。
【請求項19】
前記SVLにかかる前記電圧が導通電圧閾値を超えるとき、前記SVLを流れる電流が不釣り合いに増大する、請求項18に記載の評価システム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのセンサが、前記SVLによって放散される熱を検知するために配設される熱センサを含み、前記電流情報が、前記検知された熱によって表される、請求項18に記載の評価システム。
【請求項21】
前記電圧源が、徐々に増大するDC電圧を前記絶縁されたシールド区間に提供する、請求項18に記載の評価システム。
【請求項22】
前記電圧源が、徐々に増大するAC電圧を前記絶縁されたシールド区間に提供する、請求項18に記載の評価システム。
【請求項23】
前記SVLを流れる前記電流が、前記SVLにかかる前記電圧に対する相対的な位相シフトを示し、前記センサが、前記SVLの前記機能的信頼性を示すものとして、前記SVLにかかる前記電圧に対する相対的な前記電流の前記位相シフトを検知するための回路を含む、請求項22に記載の評価システム。
【請求項24】
前記送信機がワイヤレス送信機を備える、請求項18に記載の評価システム。
【請求項25】
前記ワイヤレス送信機が、低電力ワイドエリアネットワーク(LP-WAN)を備える、請求項24に記載の評価システム。
【請求項26】
前記送信機が光ファイバ送信機を備える、請求項18に記載の評価システム。
【請求項27】
前記センサ情報および前記電圧情報を記憶するための、前記リンクボックスの中または近くに配設されるストアをさらに備え、前記送信機が前記センサ情報および前記電圧情報をワイヤレスに送信する、請求項24に記載の評価システム。
【請求項28】
前記プロセッサが、前記SVLにかかる前記電圧における前記センサ情報が前記SVLの所定の特徴的な特性と合致するとき、前記シールドシステムが機能する状態であると決定する、請求項18に記載の評価システム。
【請求項29】
前記プロセッサが、前記SVLにかかる前記電圧が前記導通電圧閾値を超えるときに前記センサ情報が所定の量未満であるとき、前記シールドシステムが機能しない状態であると決定する、請求項18に記載の評価システム。
【請求項30】
前記プロセッサが、前記SVLにかかる前記電圧が前記導通電圧閾値未満であるときに前記検知される熱が所定の量より多いとき、前記シールドシステムが不適合状態であると決定する、請求項20に記載の評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧電気ケーブル、ならびに、それらのケーブルの金属シールドのボンディングおよび接地構成の機能的信頼性を評価するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下の用途向けの高電圧電力ケーブルは、絶縁体、金属シールド、および保護ジャケットの順序で覆われた、高電圧導体からなる。典型的なAC高電圧回路は、共通のダクトバンクに収容された別々のコンジットの中に設置される3本の個々の位相のための高電圧ケーブルを含み、これは、変電所、架線、および海底ケーブルトランジションを相互接続するための、地下の三相acケーブル回路を形成する。これらのケーブルの製造される長さは、包装、輸送、および設置の制約により制限されるので、得られるケーブル回路は、一般にマンホールによって分離されるケーブル経路に沿った複数の区間または区切りからなり、個々の位相(A、BおよびC)の各々は、同じ位相の別の区間に接合される。各区間は、数メートル、たとえば数百メートル、または数キロメートルにわたり得る。
【0003】
最も簡単な構成では、ケーブル回路の各位相は、絶縁体によって囲まれた高電圧導体からなり、そして絶縁体は導電性シールドおよび非金属保護ジャケットによって囲まれる。すなわち、ある位相(たとえば、位相A)の導体区間は、シールドの対応する区間(やはり位相A)によって同心的に囲まれ、導体とシールドの両方が、高電圧ケーブル回路の長さ方向に延びる。シールドは、電気的なストレスをケーブル電気絶縁体に閉じ込め、システム故障電流のための適切な戻り経路を提供することを意図している。
【0004】
ケーブルシールドは、回路の長さ方向に沿って1つより多くの点で接地するように接続され得る(多点接地配置)が、これにより、接地された点と点の間でケーブルシールドに電流が流れる。シールドに流れる電流の量は、ダクトバンク内の位相導体の配置、ケーブルシールドの導電性、および高電圧ケーブル導体に流れる負荷電流に依存する。この「誘導シールド電流」は、シールドにおいて望ましくない熱損失を生み出すのに十分大きいことがあり、ケーブル回路の許容電流(通電容量)を制限することがある。
【0005】
ある選択肢として、ケーブルシールドは、回路の長さ方向に沿って一点だけで電気的なグラウンドに物理的に接続されることがある(一点接地構成)。この構成では、ケーブルの許容電流を制限するような循環する電流はない。しかし、この一点接地構成では、誘導シールド電圧が接地点からの距離とともに増大する。このシールド電圧は、ケーブル位相間の物理的な分離および導体の負荷電流にも依存する。誘導シールド電圧は、普通の負荷のもとでもかなり大きいことがあり、故障および過渡的なサージ条件では損傷をもたらすレベルに達することがある。負荷の切り替えまたは落雷により時々起こり得るような、高いシールド電圧による損傷を最小にし、または避けるために、しばしばシールド電圧リミッター(SVL)とも呼ばれるサージアレスタが、普通はシールドの接地されていないより簡単に立ち入りできる端点に設置される。SVLは、シールドとグラウンドとの間で発生する過渡的な電位差を、受け入れられるレベルに制限する。SVLは、SVLにかかる電圧がその導通閾値電圧を超えて増大するにつれて抵抗値が低下を示す非線形抵抗器として特徴付けられ得る、セラミック金属酸化物ブロックからなる。SVLの電圧クラスおよびエネルギー容量は様々である。SVLは、正常な電力動作の間には開放回路のように、かつ、SVLにかかる電位がその導通閾値電圧を超える過渡的なサージの間には短絡回路のように振る舞うものとして考えられ得る。知られているように、高電圧ケーブルの正常な電力動作とは、ケーブルを流れる典型的な60Hzまたは50Hzの周波数(すなわち、電力周波数)の電流を指す。
【0006】
一点接地構成では、起こり得る過電圧をケーブルジャケットの絶縁耐力より十分低いレベルに保つために、接地されていないシールド区間の端部とグラウンドとの間にSVLが設置される。したがって、SVLは、高電圧の過渡的なサージにより生じる故障からケーブルジャケットを保護する。連続する区間を接合するケーブルスプライスは、「シールドブレイク」と呼ばれるシールド中断ギャップを含み、これは、それぞれのシールド区間を互いに実質的に絶縁し、それらが異なる電位で動作することを可能にする。したがって、これらのギャップは過渡的なサージに耐えなければならない。
【0007】
SVLは、よく明らかにされ理解されている特徴的な電圧-電流の関係を有する非線形デバイスである。SVLの抵抗は、デバイスに印加される電圧に依存する。SVLの導通閾値電圧を超えると、電圧のあらゆる増大が、不釣り合いに増大する電流をもたらす。導通の間に加えられたエネルギーは、熱としてSVLにより放散される。その導通閾値電圧未満では、SVLを流れる電流は容量性であり、SVLにかかる電圧に比例しておりそれと位相がずれている。この電流は、正常動作では、実質的にエネルギーが放散されず、SVLの表面での温度上昇が検出可能ではないほど小さいレベルである(1ミリアンペア未満)。しかし、SVLにかかる電圧が徐々に上昇して導通閾値電圧レベルを超えると、SVLは抵抗のように振る舞い、電流が指数関数的に増大して電圧と位相が揃うようになり、SVLの表面温度の上昇を引き起こす熱を発生させる。この表面温度の上昇は、SVLがその定格エネルギー容量より低い電圧レベルでの非常に短期間の過渡的なサージを受けるときですら観測され得る。これは正常であり、サージが拡散した後冷却が起きる。
【0008】
加えて、SVLを流れる電流は、SVLにかかる電圧と位相がずれている。
【0009】
クロスボンディング構成では、ケーブルシールドシステムの電流を最小にするために、各位相導体のシールド区間を接続(またはクロスボンディング)しながら、端から端までシールド接地の連続性が維持される。クロスボンディングは、好ましくは回路の長さ方向に沿った接地点と接地点の間の1/3の点と2/3の点に位置する、2つのマンホールにおいて行われる。このクロスボンディング構成では、三相の各々からシールドへと誘導される電圧のネットベクトル和は0であり、ケーブルシールドに電流は流れず、シールドのクロス接続された点とグラウンドとの間に測定可能な電圧はほとんど発生しない。
【0010】
しかしながら、故障状態または過渡電圧事象のもとでは、ケーブルシールド回路は位相間の均衡がとれておらず、生じる電圧と電流は、正常な電力周波数動作に基づく予想の通りにはならない。これらの事象は非常に短期間であり、定格の観点から見て重大なものではないが、損傷を引き起こす高いシールド電圧をもたらし得る。
【0011】
クロスボンディングシールド構成を容易にするために、各位相導体の周りでのケーブルシールドの連続性は、ある位相のシールドの異なる位相のシールドへの接続を可能にするために、クロスボンディング点において中断される(シールド中断ギャップ)。このシールドブレイクは、シールド区間が異なる電位で動作することを可能にし、過電圧の過渡事象に耐えるための十分な絶縁耐力を有していなければならない。SVLは、シールド電圧をケーブルジャケットとシールドブレイクの両方にとって安全な耐久レベルに保つために利用される。ケーブルシールド電圧は、正常動作の間は典型的には100ボルト未満であるが、過渡的なサージのためにSVLによって保護される部品の絶縁耐力は、20kVより高くなるように設計される。SVLは、設置されると、ケーブルシールドシステムの部品の耐力より十分低いレベルに電圧を保つ。
【0012】
回路に対して最大の許容電流を達成するために、一点接地およびクロスボンディング構成からなるケーブルシールド配置が同じ回路に対して一緒に適用され得る。例として、クロスボンディングされたシールド配置で構成される3つのケーブル区切りまたは区間は、一点接地シールド区間として構成される後続の区間も含んでもよく、これにより、これらの4つの区間におけるシールド電流は最小限になり、または実質的になくなる。
【0013】
リンクボックスは、ケーブルシールドのクロスボンディングおよび接地に関連するハードウェアと、ケーブルジャケットおよびシールドブレイクを故障から保護するために使用されるSVLとを収容する、密閉された構造物である。リンクボックスはしばしば、シールドの再構成、ならびにケーブルジャケットおよびシールドブレイクギャップの稼働停止時の保守試験を容易にするために、取り除くことができる導体リンクを格納する。ジャケット、シールドブレイク、またはSVLの絶縁が破壊されると、ケーブルの動作定格において考慮されないケーブルシールド電流およびそれに関連するシールドにおける熱損失が生じ、高いケーブル動作温度が予想されるよりも高くなり得る。SVLへの損傷は、持続的な過電圧(SVL導通遷移領域での長期の動作)から、および、SVLが安全に扱うことができるレベルより高い過渡事象にさらされることから生じ得る。これらの条件は、SVLの内部加熱、SVLの劣化および場合によっては故障につながる。
【0014】
リンクボックスは一般に、ケーブルおよびシールド区間がスプライスハードウェアによって接合されるマンホールにおいて見出される。マンホールへの立ち入りには、高電圧ケーブル回路への電力供給を止め、マンホールの中に存在する水を取り除き、ガスについて試験し、重要な安全対策に従い、ケーブル回路とシールドを点検することを、すべて非常に狭い空間で行うことが必要である。したがって、特定の保守試験を含み得る、定期的な「稼働停止時」検査からなる動作検証は、時間がかかり高価であり、滅多に行われない。多くの事例では、リンクボックスの中の部品の故障は、障害後の調査の間に発見される。すべての内部の部品を実質的に短絡した、水で満たされたリンクボックスを定期検査および障害後検査において発見することは、まれではない。
【0015】
相互接続されたシールド区間を流れる電流、リンクボックスからグラウンドに流れる電流、リンク導体(またはケーブルシールド)とグラウンドとの間に現れる電圧、設置されたSVLの表面温度、または密閉されたリンクボックス構造物内に存在する環境条件(気圧、温度、および湿度)のその位置での測定を実行するためのセンサが、よく知られており市販されている。しかしながら、これらのセンサを選択してリンクボックス構造物の境界内に入れ、典型的には地下であるそのような位置からのセンサ情報を、そのような情報が、ケーブルシールドシステム、特にそのシステムの中のSVLの動作検証、または状態評価、および潜在的な異常の診断を実行するために処理されて使用される位置に、送信する必要がある。
【0016】
これまで、設置されているSVLの状態評価は、保守のための稼働停止の間の視覚的な検査に限られていた。これは、リンクボックスが位置するマンホールに入り、リンクボックスを物理的に開けてリンクとSVLの状態を観察し、そしてそれらの外観に基づいてSVLの動作の「健康状態」(すなわち、動作の完全性)を推定することを必要とする。一部の事業者は、この手順の弱点を認識し、SVLを単に交換し、その後の実験室での試験で動作に適していることが示されたものを再利用する。現在実行されているような現場検査は、価値が非常に小さいものであり、労働集約的であり、安全上の問題をはらむ。結果として、検査はせいぜい長い間隔でしか実行されないので、特に設置されているSVLの状態を評価することについてのその価値は限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
マンホールに入ることを必要としない、リンクボックスに設置されているSVLの動作の完全性を検証するための、現場試験と組み合わせられた、不良動作を特定するためのシールドシステムパラメータの遠隔監視は、ケーブルシールドシステム、特に設置されているSVLの電気的な挙動を直接または間接的に特徴付けることができる安全で低コストの手段と方法を事業者に提供し、それにより、現在行われている従来の慣習と比べて顕著な改善を提供するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ある利点として、本発明は、高電圧ケーブルシールドシステムと、SVLを含むその関連する部品との機能的信頼性を確かめ、必要な修理または交換を行い、そしてシステム動作が設計された通りであることを確認するための、「稼働停止時」保守試験を行うための、手段および方法を提供する。ケーブルシールドシステムにおける状態評価および異常の診断は、ケーブルシールドの区間が接続される構造物(たとえば、リンクボックス)内に好ましくは展開されたセンサからのセンサ入力(たとえば、電圧、電流、温度)の組合せから導かれる。
【0019】
SVLの機能的信頼性、または動作機能性は、その特徴的な電圧-電流関係から決定され得る。この電圧-電流関係は、ランプ試験電圧またはステップ状試験電圧をSVLに印加しながら、それを流れる電流を監視することによって測定される。SVLの導通閾値電圧において、電流は指数関数的に増大し、金属酸化物ブロックの温度の上昇を引き起こす。したがって、SVLの電圧-電流特性は、直接測定され、またはその電圧-温度特性を通じて推測され得る。正常動作の間にSVLの表面温度を測定し、したがって異常を検出するために設けられ得る温度センサが、SVLの表面温度を監視し、それにより、SVLを導通領域に至らせる試験プロトコル(すなわち、試験電圧)に対するSVLの応答を監視するために、利用され得る。表面温度の上昇は、SVL電流と直接相関し得るので、SVLの機能的信頼性、または動作の完全性を評価するための有効な手段である。
【0020】
地下の位置を含む離れた位置にあり得るリンクボックス構造物の境界内のセンサからの情報が送信され、正常動作の間にリンクボックス状態を監視するために使用される。稼働停止中の保守試験の間に収集される電圧、電流、および温度情報は、故障の前にSVLの異常を特定することができる。
【0021】
先進的な異常状態の警告は、計画的な是正対策の機会を提供する。しかしながら、従来は、簡単な警告手段が利用可能ではなかった。本発明は、センサを使用して、設置されているSVLの動作特性を検証するために、保守試験の間にリンクボックス内の動作条件および環境条件を測定して監視することを可能にする。
【0022】
増大する試験電圧レベルをケーブルシールドに印加し、SVLを通る電流を直接または間接的に測定することは、新しいユニットまたは参照ユニットとの比較のための特徴的な電圧-電流または電圧-温度曲線を生む。そのようなSVL特性は、正常動作の間にシールドシステムを監視するために使用されるのと同じセンサを用いて測定され得る。本発明は、設置されているSVLをその特徴的な導通遷移領域を通じて追跡するのに十分に感度のある、その場での試験プロトコルを利用する。
【0023】
本発明の目的は、システム試験の間に、構造物を含むシールドシステムの状態を、それらの構造物の密閉されたカバーを開ける必要なく検知し、試験し、評価し、診断し、および/または報告するためのシステムと方法を提供することである。これは、関連する部品を含むケーブルシールドシステムの電気的な状態および環境条件についてのセンサ入力の集合体を、マンホールに立ち入ることなく、およびそれらの構造物の環境的な密閉を損ない得る密閉されたカバーの開放なしで、様々な通信の選択肢(LP-WANを含む)を使用してほぼリアルタイムでシステム運用者に送信することによって達成される。
【0024】
本発明の別の目的は、ケーブルシールドシステム、および特に設置されているSVLの、機能しているボンディングおよび接地配置の予想される挙動を示す測定可能な応答を模擬するための保守試験を提供することである。
【0025】
保守試験は、ケーブルシールド区間に供給される外部試験電圧に応答して、SVLにかかる電圧およびそれに流れる電流を監視する。一実施形態では、SVL電流は、SVLによって放散され熱センサによって検知される熱により表される。
【0026】
本発明の一態様によれば、高電圧ケーブル回路の高電圧ケーブルシールドシステムの状態は、保守試験を受けるケーブルシールド区間のすべての動作上の接地点を電気的に切断し、それによりその区間をグラウンドから絶縁することによって、保守試験の間に決定される。徐々に振幅が増大する試験電圧が、接地されていないシールドがシールド電圧リミッター(SVL)を介して接地電位にそれにより接続されるコネクタリンクを収容するカバーされた構造物から遠い、絶縁されたシールド区間の終わりに供給される。SVLにかかる電圧、および印加された試験電圧に応答して生じるSVLの表面温度が、好ましくはリンクボックス内で監視され記録される。SVLの状態は、設置されているSVLの電圧-温度特性を、同じもしくは似ている参照SVLの電圧-温度特性と、または、同じ試験電圧を受けない隣接するSVLと比較することによって決定される。
【0027】
本発明のさらなる特徴によれば、連続するシールド区間をクロスボンディングする構造物またはリンクボックスは、ケーブル回路上の複数の設置されているSVLへの電気的な接続を提供する。
【0028】
一実施形態では、少なくとも1つの他のリンクボックスは、異なる位相のシールドをさらに別の位相のシールドに接続するためのコネクタリンクを収容する。したがって、第1の位相のシールドは、第1のリンクボックスの中のコネクタリンクを通じて第2の位相のシールドに電気的に接続され、第2の位相のシールドは、他のリンクボックスの中のコネクタリンクを通じて第3の位相のシールドに接続される。この構成では、リンクボックスの中のセンサが試験電圧へのそれぞれのSVLの局所的な応答を監視する間、複数のリンクボックスの中のSVLはその試験電圧を同時に受けてもよい。
【0029】
本発明の別の特徴として、ケーブルシールドシステムの状態は、日常的な「稼働中の」動作の間に、および「稼働停止中の」保守試験の間に、SVLの電圧、電流、および温度を表す情報がケーブルシールドシステムの状態の処理と評価のために送信される、離れた位置において決定される。たとえば、電圧、電流、および温度情報は、低電力ワイドエリアネットワーク(LP-WAN)もしくは他のワイヤレスシステムを介して、または光ファイバケーブルによって、離れた位置に送信される。この情報は、ケーブル回路のシールドボンディングおよび接地システムの動作の完全性を確立するために分析される、ケーブル回路上に展開される他のセンサからの同様のデータと組み合わせられ得る。
【0030】
本発明の様々な他の目的および利点が、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。新規の特徴は、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘される。
【0031】
本発明は、添付の図面とともに以下の詳細な説明によって最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】シールド連続性の途切れおよびSVLを伴う高電圧ケーブル回路の典型的な接続またはスプライスを示す図である。
【
図2】本発明が手近な用途を見出す一点シールド接地構成のためのSVLを伴う三相リンクボックスの構造を示す図である。
【
図3】本発明が手近な用途を見出すクロスボンディングシールド構成のためのSVLを伴う三相リンクボックスを示す図である。
【
図4A】ケーブルシールドシステムの稼働中の動作データおよび稼働停止中の保守試験データを提供するための、三相クロスボンディングリンクボックスの中のそれぞれのシールド区間に設置されるパラメータセンサのAC等価回路概略図である。
【
図4B】ケーブルシールドシステムの稼働停止中の保守データを提供するための、三相クロスボンディングリンクボックスの中のそれぞれのシールド区間に設置されるパラメータセンサのDC等価回路概略図である。
【
図4C】ホール効果電流センサを使用してケーブルシールドシステムの稼働停止中の保守試験データを提供するための、三相クロスボンディングリンクボックスの中のそれぞれのシールド区間に設置されるパラメータセンサの等価DC回路概略図である。
【
図5】
図4Aおよび
図4Bに概略的に示されるパラメータセンサを組み込む三相クロスボンディングリンクボックスを示す図である。
【
図6】SVLを通るいくつかの大きさの動作電流についてのSVLの電圧-電流特性を記述するグラフィカルな表現の図である。
【
図7A】典型的なSVLの電圧-電流特性をグラフィカルに表し、特に導通遷移領域を示す図である。
【
図7B】典型的なSVLの電圧-温度(表面温度)特性をグラフィカルに表し、特に導通遷移領域を示す図である。
【
図7C】典型的なSVLの電圧-力率特性をグラフィカルに表し、特に導通遷移領域を示す図である。
【
図8】接地点間に3つのシールド区間があるクロスボンディングシールド配置の接地とボンディングの構成を示す図である。
【
図9】接地点間に3つのシールド区間があるクロスボンディングシールド配置での保守試験構成を概略的に示す図である。
【
図10】接地点間に3つのシールド区間があるクロスボンディングシールド配置での代替的な保守試験構成を概略的に示す図である。
【
図11】本発明によるクロスボンディングされたシールドを試験するための実施形態の簡略化された概略的な図である。
【
図12】本発明による、その状態が評価される2つの一点接地ケーブル区間からなるケーブルシールドシステムの正常動作構成の簡略化された概略的な図である。
【
図13】本発明による、その状態が評価される2つの一点接地ケーブル区間からなるケーブルシールドシステムの正常動作構成のさらに別の構成の簡略化された概略的な図である。
【
図14】本発明による、その状態が評価される2つの一点接地ケーブル区間からなるケーブルシールドシステムの正常動作構成のさらなる構成の簡略化された概略的な図である。
【
図15】3つより多くのクロスボンディングされたケーブル区間を格納するケーブルシールドシステムの簡略化された概略的な図である。
【
図16】3つより多くのクロスボンディングされたケーブル区間を格納するケーブルシールドシステムの稼働停止中の保守試験構成の簡略化された概略的な図である。
【
図17】ケーブルシールドシステムの機能的信頼性が離れた位置で評価される、本発明の実施形態の概略的な図である。
【
図18】3つの小さい区切りを含む1つの大きな区切りがあるケーブルシールドシステムのための別の稼働停止中の保守試験構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで、全体で同様の参照番号が使用されている図面を見ると、
図1は、示されるスプライスハードウェアに含まれる導体スプライス103によって電気的に接続された高電圧導体104および104’から形成される2つの区間または区切りを含む、高電圧ケーブル回路102を示す。理解されるように、高電圧ac伝送のために、導体104および104’は、典型的な三相伝送システムにおいて同位相、たとえば位相Aである。絶縁体106がケーブル回路102の示される区間の導体104を囲み、そして、絶縁体106はケーブルシールド108によって同心的に囲まれる。同様に、絶縁体106’が接合された区間の導体104’を囲み、絶縁体106’はケーブルシールド108’によって同心的に囲まれる。ケーブルジャケット112、112’は、ケーブル回路の各々のそれぞれの区間を囲む。
【0034】
シールドブレイク(またはシールド中断ギャップ)118は、シールド区間108をシールド区間108’から電気的に絶縁し、シールド区間108からシールド区間108’への電気的な連続性を途絶えさせて、ケーブルシールド区間とケーブルシールド区間の間で電流が流れるのを防ぐ。シールドブレイクは、そうされなければシールド区間の中を流れてケーブルの許容電流を減らすであろう、循環するシールド電流をなくす。シールドブレイクは、誘電性の絶縁材料で満たされており、シールド区間108と108’が異なる電位で動作することを可能にする。これらの電位差、ならびに、それぞれのシールド区間とグラウンドとの間に存在する電位差は、一般にケーブル回路の正常動作の間は小さいが、電力系統の障害、またはスイッチングおよび雷サージにより引き起こされる過渡的な過電圧が起こると、シールドブレイクの絶縁またはケーブルジャケットの絶縁故障を引き起こすのに十分大きくなり得る。シールドブレイクまたはケーブルジャケットの絶縁故障(たとえば、グラウンドへの短絡)は、ケーブルの定格を決めるときに考慮されないケーブルシールド区間への意図されない電流につながることがあり、よりケーブル動作温度が高くなるとともに、シールドブレイクにおけるシールド区間とシールド区間の間のトラッキングとしても知られている、アーキングおよびアーキングにより引き起こされる表面炭素の生成により開始されることがあるケーブル故障が発生する可能性がある。知られているように、リンクボックスは、シールドブレイクおよびケーブルジャケットへの損傷なしで維持され得るレベルに過電圧を制限することによって絶縁故障を防ぐために設置されるSVLを含む、ケーブルシールド区間の接地およびボンディングを構成するのに必要なハードウェアを格納する。
【0035】
図1は、電気的なグラウンド124に物理的に接続されている、シールド区間108として示されている1つの区間のボンディング線116と、シールド電圧リミッター(SVL)110を通じて電気的なグラウンド124に接続されている、他の接合された区間、すなわちシールド区間108’のボンディング線116’とを示す。簡略化のために、図は高電圧ケーブル回路の三相のうちの1つだけを示す。一点シールド接地配置では、このケーブルシールド接続が各位相に対して典型的である。SVL110は、以下で説明される構造物、好ましくはリンクボックス114に収容される。以下で説明されるように、他のリンクボックス構成では、接合された区間のケーブルシールド108、108’のボンディング線116、116’は、コネクタリンクを通じて相互接続され得る。
【0036】
図1に示されるケーブルシールドシステムは、ケーブルシールド108がリンクボックス114の位置で接地され、その離れた端部、すなわちリンボックスから離れた端部では接地されていない(グラウンドへの直接接続から絶縁されている)ような、一点ケーブルシールド接地構成を表す。同様に、ケーブルシールド108’は、リンクボックス114において接地されておらず(グラウンドに直接されておらず)、リンクボックス114から離れた点(図示されない)でグラウンドに接続される。リンクボックス114の中で、シールド108’とグラウンド124との間の電圧が臨界値を超えた場合に放電電流のためのグラウンドへの低抵抗の電流経路を提供し、それによりシールドとグラウンドとの間の過渡的な電圧を制限し、それによりそのような過渡事象がケーブルジャケット112’またはシールドブレイク118の絶縁耐力を超えないことを確実にするために、SVL110がシールド108’の接地されていない点へとボンディング線116’によって接続される。
【0037】
図2は、
図1に示されるシールドボンディングおよび接地配置をサポートするように構成される三相リンクボックスの図解である。示されるように、SVL110a、110b、および110cは、ボンディング線116’a、116’b、および116’cによってそれぞれ(図示されない)ケーブルシールド108’a、108’b、および108’cに電気的かつ物理的に接続される。
図2はまた、接地線124を介した外部グラウンドへの共通のSVLグラウンド導体122の接続を示す。示されるように、
図2は、内部接続122を介したグラウンド124へのボンディング線116a、116b、および116cの接地を示す。
【0038】
図3を見ると、クロスボンディングリンクボックス314の例が示されている。リンクボックスは、外部ボンディング線コネクタ320a、320b、320cを伴う構造物として形成され、これらのコネクタは適切な封止を通じて構造物の内部から外側に突出し(
図3の下部に見られるように)、位相A、B、およびCのシールド(図示されない108a、108b、および108c)からの絶縁されたボンディング線116a、116b、および116cがそれぞれ、それらのコネクタに機械的かつ電気的に接続される。そして、ボンディング線コネクタは、それぞれコネクタリンク318a、318b、および318cに接続される。代替的に、ボンディング線コネクタ320a、320b、および320cはハウジング内に配置されてもよく、絶縁されたボンディング線116a、116b、および116cは、リンクボックスの中の封止可能な貫通物を通って経路を定められ、それぞれコネクタリンク318a、318b、および318cに接続され得る。ボンディング線コネクタ(図示されない)は、適切な封止を通じて構造物の内部から外側に突出し、位相A’、B’、およびC’のシールド(図示されない108’a、108’b、および108’c)からのボンディング線116’a、116’b、および116’c(
図3の上側に見られるような)がそれぞれ、それらのコネクタに機械的かつ電気的に接続される。コネクタリンク318a、318b、および318cは、ボンディング線116aをボンディング線116’bに、ボンディング線116bをボンディング線116’cに、およびボンディング線116cをボンディング線116’aにそれぞれ接続するための、クロスボンディングリンクとしての役割を果たす。したがって、位相Aのシールドは、位相B’のシールドに電気的に接続され(すなわち、クロスリンクされ)、位相Bのシールドは位相C’のシールドに電気的に接続され、位相Cのシールドは位相A’のシールドに電気的に接続される。したがって、位相A、B、およびCのケーブル導体区間のシールドは、それぞれ、位相B’、C’、およびA’のケーブル導体区間のシールドにクロスボンディングされる。位相B’、C’、およびA’のシールドは、位相C’’、A’’、およびB’’へと回路の長さ方向に沿って次のリンクボックスの中で同じようにクロスボンディングされ、同様の長さの3つの区間をそれぞれ形成する(図示されない)。3つのケーブルシールド区間のケーブルシールドの離れた端部(図示されない)が接地される。この配置では、接地された離れた端部とシールドとの間のネット誘導シールド電流が最小になる。
【0039】
図3はまた、集合的にSVL310と呼ばれる、シールド電圧リミッター(SVL)の接続を示す。SVL310aは、リンク318aを介してボンディング線116aおよび116’bに、したがってケーブルシールド区間108aおよび108’bに接続される。SVLが導通するとき、SVLは、すべてのSVLに共通のグラウンド接続322を介して、グラウンド324へのこれらのケーブルシールド区間のための低抵抗の電流経路を提供する。同様に、SVL310bは、これらのケーブルシールド区間からグラウンドへの低抵抗の電流経路を提供するために、ケーブルシールド108bおよび108’cに接続される。そして、SVL310cは、これらのケーブルシールド区間からグラウンドへの低抵抗の電流経路を提供するために、ケーブルシールド108cおよび108’aに接続される。上で言及されたように、SVLは、主にスイッチングおよび雷サージの結果として過渡的な過電圧がそれぞれのシールド区間上で発生するときに、それを制限するために設置される。
【0040】
ある代替の実施形態では、示される配置におけるように、コネクタリンク318aが位相Aのシールドを位相B’のシールドに依然として接続するように、ボンディング線116’bはボンディング線コネクタ320’aに接続され得る。同様に、コネクタリンク318bが位相Bのシールドを位相C’のシールドに依然として接続するように、ボンディング線116’cはボンディング線コネクタ320’bに接続されてもよく、コネクタリンク318cが位相Cのシールドを位相A’のシールドに依然として接続するように、ボンディング線116’aはボンディング線コネクタ320’cに接続されてもよい。
【0041】
ケーブルシールドの電流を防ぎ、または最小にするための、ケーブルシールドの一点接地構成のための、およびクロスボンディングシールド構成のための高電圧ケーブル回路の適切な動作は、少なくとも一部、過電圧がケーブルジャケットおよびシールドブレイクを損傷するのを防ぐために、SVLが適切に機能することに依存する。従来は、リンクボックス部品の機能的信頼性の決定は、定期的な稼働停止中のハードウェアの視覚および触覚による検査、ならびにシールドボンディング部品の絶縁耐久試験に基づいていた。この検査プロセスは、リンクボックスが通常位置するマンホールへと物理的に入るためだけに、回路の稼働停止、交通規制対策、および狭い空間に入る手順を必要とし、このすべてを行った後に、検査およびその後の復元のためにリンクボックスを物理的に開けることができる。その結果、これらの現在の検査方法は労働集約的であり、せいぜい稀にしか実行されない。結果として、システム故障を機会とする後の調査で発見されるまで、部品の劣化、損傷、または故障が気付かれないままになる。以下で論じられるように、本発明はこれらの問題をなくし、ケーブルシールドシステムの機能的信頼性の評価と決定の、したがって、高電圧ケーブル回路の全体的な信頼性の改善をもたらす。
【0042】
図4Aは、
図3に示されるクロスボンディングリンクボックスに存在する3つのボンディングリンクの各々に設置されるパラメータセンサの概略的な表現である。簡略化のために、コネクタリンク318aおよびSVL310aに設置されるセンサが示される。同一のセンサが、コネクタリンク318bおよびSVL310bに、ならびにコネクタリンク318cおよびSVL310cに設置されることが認識されるだろう。
【0043】
高電圧ケーブル(通常50~60Hzで動作する)の正常で連続的な回路電力周波数動作の間、ボンディング線116aを116’bに接続する導体リンク318aを流れるあらゆる電流は、電流センサ440aによって検出され、導体リンク318aとグラウンド324との間に電気的に結合されるSVL310aにわたって現れる電圧は、電圧センサ442aによって検出される。電流センサ440aは、従来の変流器、Rogowskiコイル、または導体リンクを流れる電流の大きさを定量化するための任意の適切な手段であり得る。電圧センサ442aは、抵抗性もしくは容量性の分圧器、または、SVL310aにかかる電圧の大きさを定量化するための他の電圧検知手段であり得る。好ましくは、正常な回路動作の間にセンサ442aによって検知されるSVL電圧は、SVL310aの導通閾値電圧未満にとどまる。この動作状態では、SVL310aの外見上の抵抗は高く、SVLを流れる電流およびその関連する導通損失は軽微である。SVL表面温度は周辺温度にとどまる。SVLと電圧センサの接合部からグラウンドに接続される電流センサ444aによって検出されるグラウンドへの電流は、正常動作電圧では電圧センサ442aを流れる軽微な電流だけである。ミリ秒のオーダーの長さの電力系統障害の間に、電圧センサ442aによって測定されるようなSVL310aにかかる電圧がSVL導通閾値電圧に達することがあり、SVL310aを流れる電流の増大とSVL310aの加熱を引き起こす。この状況は、その反対側が接地されている長いケーブルシールド区間の接地されていない端部にSVLが配置されるような、
図2に示される一点接地シールド配置において起こる可能性がより高い。そのようなことが起こる場合、生じるシールド電圧は電圧センサ442aによって検出され、SVLの導通の結果としてグラウンドに流れる電流は電流センサ444aによって検出される。この事象の間にSVLに加えられるエネルギーは、SVLの表面温度を上昇させ、これは、非接触式赤外線温度センサ446a、または場合によっては熱電対によって検出される。論じられるように、電圧、電流、および温度上昇は、設置されているSVLの既知の電圧-電流および電圧-温度特性と比較されてもよく、それによりSVLの動作可能性を示す。
【0044】
SVLの導通閾値電圧を超える、スイッチング動作または落雷によって引き起こされる過渡的な電気サージ(マイクロ秒単位で測定される)では、過渡的な電流の増大が予想され、生じた熱により、SVLの表面温度が上昇し、その後冷却する。電圧センサ442aおよび電流センサ444aは、この電圧および電流を捕捉して測定してもよく、温度センサ446aは、表面温度の上昇とその後の低下を捕捉する。
【0045】
特定の回路に割り当てられた各リンクボックスの各位相からの、リンク電流センサ440a、グラウンド電流センサ444a、電圧センサ442a、および温度センサ446aから得られた稼働中データは、稼働中のケーブルシールドシステム動作を継続的にほぼリアルタイムで検証でき、さらなる調査および場合によっては修復を正当化し得る異常を検出できることが、ケーブルシールドボンディングおよび接地システムの設計、設置、ならびに保守の当業者により理解されるだろう。
【0046】
前述の議論において、センサは、リンクボックスおよび設置されているSVLが、動作中の事象の間に正しく反応したかどうかを、確認または検証するだけである。これは、現在の慣習と比較すれば明確に価値があるが、ここでの状態評価は、異常を検出するための過去の動作中の事象、すなわち、事実が起きた後のセンサ情報に依存する。しかしながら、説明されるように、保守試験の間にケーブルシールド回路に印加された外部試験電圧への正しいセンサ応答を検証することによって、過渡的なサージなどの過去の事象の発生による異常を検出するために使用されたのと同じこれらのセンサを、設置されているSVLの機能的信頼性を評価するために使用することができる。
【0047】
図4Bは、外部から印加されるDC電圧を使用した稼働停止中の現場での保守試験を受けるときにケーブルシールド区間に現れるであろう、DC電圧のDC等価概略図である。DC条件のもとでは、変流器440aおよび444aは存在するが機能しないので、図面を簡単にするために、
図4Bの等価回路では示されていない。この場合、外部から印加されたDC電圧の結果としての、ケーブルシールド上の、およびSVLにかかるDC電圧は、電圧センサ442aによって検出される。SVL導通閾値電圧未満の電圧では、SVLを流れる電流は軽微であり、温度センサ446aによって検出される検出可能なSVL表面温度の上昇はない。導通閾値電圧を超える電圧では、SVL電流が増大し、SVL310aによって放散される熱が、センサ446aにより検出される表面温度の上昇をもたらす。
【0048】
図4Cは、SVLを流れるDC電流を直接測定するための実施形態の概略図である。この図は、SVL310aと直列のホール効果デバイス450aを示す。代替として、ホール効果デバイスは、452aとして、グラウンドと、SVLおよび電圧センサ442aの接合部との間に配置されてもよく、これは、
図4Aにおける電流センサ444aと同じ位置であり、すなわち、外に向かうグラウンド接続452aでは、電圧検知回路に関連する電流が小さいことを考慮すると、正確さの低下はわずかしかない。ホール効果デバイスはよく知られており、磁場の強さを測定してそれに比例する電圧出力を生み出す。したがって、ホール効果デバイスは、数ミリアンペア程度の小さいDCおよびAC電流の測定のために使用され得る。一実施形態では、この磁場を集中させるために強磁性のコアが使用され、非常に低いレベルの電流を検出することを可能にする。これらのデバイスは普通は数アンペア以上のオーダーの電流レベルを測定するために使用されるが、一桁ミリアンペアまで測定し、出力が4~20ミリアンペアであるトランスデューサを較正してトラブルシューティングするために使用できる器具が市販されている。ホール効果デバイスは、リンクボックスから外部のグラウンド接続への電流を測定するための、
図4Aに関連して上で論じられた変流器の代替的な選択肢である。ホール効果デバイスの使用は、試験電圧を印加するためにDC電圧源を使用する保守試験において特に有利である。ホール効果デバイスによって生み出された電流情報は、SVLを通る電流を直接測定し、表面温度センサの必要性をなくす。電圧センサ442aによって検出される線区間116aの試験電圧が増大するにつれて、ホール効果デバイス450aによって、または代替としてホール効果デバイス452aによって検出されるようなSVLを通る電流も、設置されているSVLの特性に従って同様に増大する。この電流情報は、SVLにかかる試験電圧の大きさを表す電圧情報とともに得られ、それにより、設置されているSVLの電圧-電流特性を確立し、これは新しいまたは参照SVLの電圧-電流特性と比較され得る。この比較の結果として、SVLの機能的信頼性が決定され得る。
【0049】
図5は
図3のリンクボックスの実施形態を示し、これは、リンク電流を測定するための、
図4Aの電流センサ440と同様の電流センサ540、グラウンドへの電流を測定するための、
図4Aの電流センサ444と同様の電流センサ544、SVLにかかる電圧を測定するための、
図4Aの電圧センサ442と同様の電圧センサ542、およびSVLの表面温度を測定するための、
図4Aのセンサ446と同様の温度センサ546などの、
図4Aに概略的に示されるセンサを含む。リンクボックスハウジング内の温度、気圧、および湿度などの大気条件が、プリント回路基板548に搭載される1つまたは複数の環境センサ(図示されない)によって測定される。一例として、センサデータの取得と記憶を制御するために、マイクロプロセッサまたは他の処理回路がプリント回路基板に搭載される。この例では、センサを動作させるための電力は、密閉された分離可能なハウジング560に格納された電池によって提供される。
図5の実施形態は、周辺コントローラなどの遠隔処理回路と動作命令およびデータを交換するための、コネクタ552に結合された光ファイバ通信および制御インターフェース550も含む。センサによって取得されるデータは、個別に、または同じリンクボックス内の他のセンサからのデータと組み合わせて、処理回路によって分析され得る。このデータは、同じケーブル回路に関連する他のリンクボックスの中のセンサから取得された類似するデータとともに処理されて、連続的な正常動作のもとで、また、スイッチングおよび落雷の過渡事象などの間の時々起こる障害条件のもとで、稼働中の性能指標(電圧、電流、および温度)を電力施設管理者に提供することができる。
【0050】
図5において、導体リンクを流れる電流は、変流器540a、540b、および540cのカスケード配置を用いて測定され、それらの二次導線が、図示されない変流器の一次導線を形成する。変流器のこのカスケード配置は、起こり得る障害条件を分析するために、250アンペア以上にのぼり得る実効リンク電流を、たとえばマイクロプロセッサによる処理のために送信されることになるミリアンペアのオーダーの管理可能な信号レベルへと減らす。変流器のカスケード配置は、電流測定回路の過渡電圧耐久能力も改善する。
【0051】
図5に示される実施形態では、電圧センサの各々は、測定された電圧を受け取り処理するマイクロプロセッサに通常提供される入力レベルと合致するレベルへとSVLにかかる実際の電圧を下げるための高電圧分圧回路を形成するために、低電圧抵抗器と直列に接続された高電圧抵抗器で形成される。
【0052】
示される実施形態では、温度センサ546は、SVLの表面温度を表す出力信号を生み出すための、それぞれのSVL310の近くに配置された非接触型赤外線(IR)センサである。温度センサによって生み出される出力信号は、リンクボックス内に配設されるプリント回路基板(PCB)548上のプロセッサなどのコントローラに結合される。代替として、出力信号は、リンクボックスの外側に配設され、リンクボックスが位置するマンホールの中に位置する、プロセッサに結合され得る。温度センサは、表面温度の上昇を引き起こすSVL導通閾値電圧を超える動作から生じる、SVL表面温度の上昇を検出する。
【0053】
SVLの典型的な電圧-電流関係が
図6に示されている。図からわかるように、SVL電圧が正常動作範囲(導通閾値電圧未満)で増大するにつれて、SVLを流れる電流はそれに比例して増大する。導通閾値電圧において、SVLの抵抗は、増大する電圧とともに指数関数的に低下および減少し、より大きい電流、より大きい電気エネルギーの損失、およびSVLを形成する金属酸化物ブロックの温度の関連する上昇をもたらす。この点を超える動作電圧は、SVLにより生成される熱が安全に放散され得ることを確実にしてSVLの故障を防ぐために、SVLの定格によりますます短い期間へと制限される。
図6に示されるように、SVLを通る正常で連続的な動作電流は1ミリアンペアであるが、10kA以上の落雷放電レベルにおけるシールドブレイクおよびケーブルジャケットへの損傷を防ぐために、マイクロ秒の長さのスイッチングおよび雷サージがクランプされ得る。この電圧-電流関係は、実質的にすべてのSVLを表すものであり、大半のSVLでは約1ミリアンペアである、SVLがその導通遷移領域に入る電圧にのみ違いがある。
【0054】
図7Aは、定格3kVのSVLの導通遷移領域における電圧-電流(V-I)特性を示し、
図7Bは、このSVL電流の結果として生じる電圧-表面温度特性を示す。示されるように、電気エネルギー曲線と熱エネルギー曲線との関係は非常に似ている。適切に機能するkV定格のSVLは、これらの曲線に従うことが予想され、SVLの動作可能性は、生じた電流またはSVL表面温度を監視しながら、SVLにその導通閾値領域を通らせるその場での試験を用いて確認され得る。予想される導通遷移曲線を示さないSVLは、動作の完全性が低いものと考えられ得る。
【0055】
図4に示されるように、ホール効果デバイスは、SVLを通るDC電流の測定を行うためのセンサとして使用され得る。構造物の内部で外に向かうグラウンド接続(
図4C)に置かれる単一のホール効果デバイス452aは、許容可能なDC電流の測定結果を提供する。それぞれのSVLを流れる電流を表す情報を提供するために、他の既知の電流検知デバイスが使用され得る。しかしながら、SVLの電圧-温度関係は、実装がよりロバストで、簡単で、安価であることがわかっている。
図7Aおよび
図7Bにおいて表される定格3kVのSVLでは、4.5kV未満のSVLにかかるDC電圧は顕著な表面温度の上昇を生むとは予想されないが、4.5kVを超えて5kVに近づくDC電圧はそうではない。
【0056】
従来は、稼働停止中のリンクボックスの現場での保守検査試験は、リンクボックスが位置するマンホールに入り、技術者による視覚的な検査のためにリンクボックスを開けることを必要とする。本発明は、現在行われている従来の慣習と比べて顕著な改善をもたらし、マンホールに入ることを必要としないので、設置されているSVLの電気的な挙動を、およびしたがって、設置されているSVLを含むリンクボックスの機能的信頼性を特徴付けるための、安全で低コストの代替手段を事業者に提供する。
【0057】
図8は、3つの「小さい」シールド区切り108a、108b、108cがどのようにリンクボックス314および815において接続され、1つの完全な「大きい」クロスボンディングされたシールド区切りを形成するかを示す、簡略化された図である。
図8は、リンクボックス314の中のコネクタリンク318aによる高電圧導体104Bの位相Bのシールド区間108bへの高電圧導体104Aの位相Aのシールド区間108aのつながれた接続、およびリンクボックス815の中のコネクタリンク818bによる高電圧導体104Cの位相Cのシールド区間108cへのシールド区間108bの接続を示す。この概略的な図解では、リンクボックスの各々は
図3に示されるタイプであってもよく、コネクタリンク318aおよび818bは
図3においてコネクタリンク318として示されるタイプであってもよい。
図8はまた、SVL310aにかかる電圧がその導通閾値電圧を超えるとき、グラウンドへのシールドボンディングリンク318aのための低抵抗の電流経路を提供するために、リンクボックス314に含まれるSVL310aを概略的に示す。リンクボックス815に含まれるSVL810bは、グラウンドへのシールドボンディングリンク818bのための同様の低抵抗の電流経路を提供する。従来のように、正常動作の間、シールド区間108aは、シールドの長さ方向に沿った1つの点、好ましくは、リンクボックス314から離れており遠い点にある電気的なグラウンドに接続される。同様に、正常動作の間、シールド区間108cは、シールドの長さ方向に沿った1つの点、好ましくは、リンクボックス815から離れており遠い点にある電気的なグラウンドに接続される。図を簡単にするために、リンクボックス314およびリンクボックス815の中にある3つのクロス接続のうちの1つだけが(他は
図3に示されるように存在するので)、
図8に示されていることに留意されたい。
【0058】
図9は、従来使用されている、稼働停止中の保守検査試験手順の一種の概略的な図解である。この試験において、通常はグラウンドに接続されるシールドの区間、たとえばシールド区間108aは、グラウンドから電気的に切断される。加えて、通常は接地されているシールド区間108cの点はグラウンドから切断され、区間108a、108b、および108cをグラウンドから実質的に絶縁する。この試験において、電圧源924はシールド区間108cに接続される。この試験手順によれば、リンクボックス314および815が開けられ、SVL310aおよび810bがコネクタリンク318aおよび818bから切断され、それにより、そうされなければ電圧源924からケーブルシールドシステムに供給される試験電圧が望ましい試験電圧レベルに達するのを妨げる可能性があり得る、接続されたSVLを介したシールド区間108a、108b、および108cのためのグラウンドへの電流経路を取り除く。SVLがコネクタリンクから切断されている限り、SVLは電圧源924からの試験電圧を受けず、ケーブルジャケットおよび中断ギャップのみが試験される。SVLは電気的に試験されないので、視覚的に精査され、保守試験の後に使用が再開されるか新しいSVLと交換されるかのいずれかである。いくつかの場合、取り除かれたSVLは、実験室でのベンチテストを受け、機能するものと判明した場合には再利用される。
【0059】
前述の保守試験手順において、好ましくはDC電圧である試験電圧が、たとえば、所望の試験レベルへとステップ状に上げられて、指定された期間、典型的には数分間、その試験レベルに維持される。これは、シールド区間108a、108b、および108cに関連するケーブルジャケットと中断ギャップにおける電圧を試験電圧にする。試験が完了した後、シールド区間は区間108aおよび108cの端部においてグラウンドに再接続され、別の3つの区間(図示されない)がグラウンドから絶縁されて同様に試験される。
【0060】
この稼働停止中の保守試験は基本的に、ケーブルジャケットおよび中断ギャップの絶縁耐久試験であり、これらは、SVLの定格電圧を上回りジャケットおよび中断ギャップの設計耐久レベルを下回る電圧試験レベルで導通する。上で言及されたように、この試験手順は、各リンクボックスが開けられて各SVLが切断または除去されることとともに、SVLならびに接続ハードウェア、すなわちコネクタリンク、ボンディング線、およびリンクボックスのボンディング線コネクタの視覚的な精査を必要とする。リンクボックスの中のSVLは、それらが適切に機能していることを評価するために、別々に個別に試験され得る。これは、特別な器具を必要とし、検査プロセスを非常に長くする。その上、リンクボックスを開けて再び密閉する必要があることで、それらのリンクボックス内に収容されている部品を最終的に腐食させ別様に損傷させるような不適切な密閉が生じる可能性がある。
【0061】
図3に示されるタイプの、外部ボンディング線接続を有するリンクボックスに接続されるケーブルシールドシステムを試験するためにこれまで使用されてきた代替的な試験配置が
図10に示されており、このとき、リンクボックス314および815が試験のために開けられる必要はなく、(
図9の場合にそうであったように)SVLが試験電圧の印加のためにコネクタリンクから切断される必要はない。
図10では、シールド区間のそれぞれの位相からの
図3に示されるボンディング線116a、116b、116cは、ボンディング線コネクタ320a、320b、320cから切断され、ボンディング線116’a、116’b、116’cは、ボンディング線コネクタ320’a、320’b、320’cから切断される。示されるように、一時的なジャンパ1014aおよび1015bがシールド区間108a、108b、および108cを接続し、それにより、リンクボックス314、815を迂回する。結果として、3つのシールド区間のケーブルジャケットおよび中断ギャップが一緒に試験される。
【0062】
図9においてそうであったように、シールド108aは、普通はグラウンドに接続されるこのシールド区間の点を切断することによって、グラウンドから電気的に絶縁される。また、リンクボックス815から離れており普通は接地されているシールド区間108cの点はグラウンドから切断され、電圧源924はシールド区間108cに結合される。
図10に示される電圧源924は、
図9に示されるものと同じ、典型的にはDC電圧源であるが、どちらの事例でもac電圧源であってもよい。
【0063】
図10に概略的に示されるケーブルシールドシステムは、
図9の試験手順について前に説明されたのと同じ方式で試験される。この試験は、電圧源924によってケーブルシールドシステムに供給される試験電圧を徐々に上げることによって実行される。この試験構成は、リンクボックス314および815のカバーを開けることに関連する欠点を回避するが、それでも、リンクボックスが位置するマンホールに技術者が入り、外部ボンディング線を切断し、一時的なジャンパを適用し、場合によっては、リンクボックスが透明なカバーを伴う場合には、SVLを含む囲まれたハードウェアの略式の視覚的な検査を実行しなければならない。試験が実行された後、試験のために必要とされる一時的なジャンパは取り除かれ、ボンディング線が再接続されて再び密閉される。この手順も時間がかかり、ボンディング線を再接続して密閉材料をリンクボックスに再び適用するときに過誤が生じやすい。
【0064】
従来技術の上述の欠点および問題は、本発明により回避される。ケーブルシールドシステムの機能的信頼性を試験するための本発明の一実施形態は、
図11に概略的に示される試験構成を有する。この図では、
図8に示されるものと同じ参照番号は同じ構成要素を特定する。示されるように、位相Aシールド108aは、位相Bシールド108bにリンクボックス1114の中のコネクタリンク318aによって接続され、位相Bシールド108bは、位相Cシールド108cにリンクボックス1115の中のコネクタリンク818bによって接続される。リンクボックス1114は、SVL310a、SVL310aの表面温度を測定するように適合される温度センサ1128a、およびSVL310aにかかる電圧を測定するように適合される電圧センサ1130aを含む。同様に、リンクボックス1115は、SVL810b、温度センサ1128b、および電圧センサ1130bを含む。好ましくは、温度センサは、SVLと併置されSVLによって放散された熱を検知するように適合される熱センサを備える。前に言及されたように、SVLにかかる電圧が増大するにつれて、SVL導通閾値電圧に達するまで、SVLを通る電流は線形に増大する。その点において、電圧の増大は、SVLを通る電流の不釣り合いな増大をもたらし、そしてこれは、内部加熱および検出可能なSVL表面温度の上昇をもたらす。
【0065】
一実施形態では、熱センサ1128a、1128bは、SVL310aおよび810bによって放散される熱に関連する赤外線放射を検出する赤外線(IR)センサを備える。適切なIRセンサの一例は、Melexisモデル90614などの非接触型赤外線センサであり、これはSVL表面から放射された熱に基づく信号を生み出す。通常のように、そして
図7に表されるように、このSVL加熱の検出は、印加された電圧がSVLの導通閾値に達してそれを超えるとより急激に生じる表面温度の変化として測定される。周辺温度を超える表面温度の上昇を検出することは、SVLがその導通閾値を超えて動作していることを示すものであり、これは、SVLの定格を超えた異常な稼働中の動作の間に、または、より高い電圧の過渡的なサージの間に起こり得る。論じられるように、稼働停止中の保守検査試験の間に意図的に印加される試験電圧は、表面温度の上昇を引き起こすように設計される。温度および電圧センサによって検知される、SVLのそのような電圧および温度の特性は、ケーブルシールドシステムおよびSVLの機能を確認するために使用される。
【0066】
電圧センサ1130aは、リンクボックス1114の中のコネクタリンク318aとグラウンドとの間に現れる電圧を測定し、電圧センサ1130bは、リンクボックス1115の中のコネクタリンク818bとグラウンドとの間に現れる電圧を測定する。監視される電圧は、SVL310aおよび810bにわたって検知される電圧であることがわかる。
【0067】
図11に示される本発明の実施形態に従ってケーブルシールドシステムの機能的信頼性を評価するための技法が、ここで説明される。グラウンドへの位相Aシールド区間108aの接続はグラウンドから切断され、位相Cシールド区間108cの接続は同様にグラウンドから切断され、それにより、シールド区間108a、108b、および108cをグラウンドから絶縁する。電圧源924と似た電圧源1124が、任意の地点、しかし好ましくは立ち入り可能な地上の位置にある、絶縁されたシールド区間に接続される。
図11において、電圧源1124はシールド区間108cに接続される。
【0068】
前に説明されたように、電圧源は、たとえば3つの大きな区切りの各々に別々に印加され、他の2つの区切りはシールドブレイクを含むように試験を拡張するために接地され、電圧源は大きな区切りのすべてに逐次別々に印加されることになる。
【0069】
電圧源1124がDC電圧源である実施形態では、この電圧源によって供給されるDC試験電圧が徐々に、たとえばステップ状に上げられる。一実施形態では、示されるケーブルシールドシステムに供給されるDC電圧レベルが各ステップにおいて知られているように、またはあらかじめ決められているように、電圧源が制御される。代替として、電圧源1124は、そのプロセッサによって指示される徐々に増大するDC電圧レベルを供給するように、プロセッサによって制御され得る。たとえば、電圧源1124は、数分以内でケーブルシールド回路の電圧を上げ、導通遷移領域へと同時に至り得るSVLからの電流需要を支えるのに十分な電力を有する、多くの市販のユニットの1つであり得る。ある代替例では、電圧源は、ケーブルシールドシステムにAC試験電圧を供給するように適合されるAC電圧源であり得る。上で言及されたように、AC試験電圧が供給される場合、SVLを流れる電流およびそれにかかる電圧は、位相が揃っていないことがある。SVL電流とSVL電圧との間の位相角は、インピーダンス、およびより具体的には、SVLが導通遷移領域に至る際のインピーダンスの変化を示すものである。この位相角が測定されてもよく、位相角の測定結果は、ケーブルシールドシステムの機能的信頼性を決定するための、処理回路に供給される電圧および電流の情報を提供する。
【0070】
SVL電流とSVL電圧との間の位相角を測定するための1つの技法では、SVLを流れる電流のゼロクロスが検出され、SVLにかかる電圧のゼロクロスが検出される。そのようなゼロクロス間の時間差は、電流と電圧との間の位相角、または位相シフトφを表す。この位相シフトは力率pf=cos(φ)に比例し、これはSVLが導通領域に入るにつれて増大する。したがって、電流のゼロクロスと電圧のゼロクロスとの間の時間差を検出することによって、力率が測定または検知され得る。
図7Cは、容量性の挙動から抵抗性への挙動へのSVLの遷移に関連する力率の増大を示す。
図7からわかるように、SVLの電圧-力率特性は、SVLの電圧-電流特性および電圧-温度特性の良い近似である。
【0071】
試験電圧が増大するにつれて、電流は、ケーブルシールド区間および接続されたSVLにおける電圧を徐々に増大させるような方式で、電圧源1124から区間108cを通り、導体リンク818b、区間108b、導体リンク318a、区間108aへと順番に流れる。リンク318aの電圧は、電圧センサ1130aによってリンクボックス1114の中でローカルに測定されてもよく、リンク818bの電圧は、リンクボックス1115の中で電圧センサ1130bによって測定されてもよい。SVLの電圧-電流特性は非線形であり、試験電圧がSVL導通閾値に向かって増大するにつれて、より大きい電流が流れ始める。SVLにかかる電圧が導通領域に入るにつれて、SVLの外見上の抵抗は低下し、SVLを流れる電流はマイクロアンペアからミリアンペアに増大する。SVL電流のこの増大は、SVLの表面温度の増大をもたらす。したがって、それぞれ、センサ1128aおよび1128bによってリンクボックス1114および1115の中のSVL310aおよび810bによって放散される熱を監視または測定することは、SVLの機能的信頼性を決定するための手段をもたらす。
【0072】
前に論じられ、
図7Aおよび
図7Bにおいてグラフィカルに示されるように、SVLの特徴的な電圧-温度(V-T)曲線は、その特徴的な電圧-電流(V-I)曲線に酷似している。したがって、センサ1128aおよび1128bによって生み出される熱情報は、SVLを流れる電流を良く表す。同様に、
図7Cに示される電圧-力率曲線は、SVL電流ならびにSVLによって放散される熱を良く表す。したがって、別の実施形態では、温度センサ1128は、前に説明された力率センサで置き換えられ得る。
【0073】
上で言及されたように、典型的なSVLの電圧-電流(V-I)関係または特性は、一般にSVL製造業者の技術文献において見出され得る。様々な製造業者のSVLのV-I特性およびそれらのSVLのモデル番号を参照するデータベースは、文献から、またはSVLの導通遷移領域の単純な実験室での試験を通じて、容易に作成され得る。特定のSVLに対応するV-IおよびV-T特性が、そのデータベースに記憶され得る。
図11に概略的に示されるケーブルシールドシステムが試験されるとき、SVL310aおよび810bのV-I特性は、データベースに記憶されているV-I特性と比較され得る。試験対象のSVLのV-I特性がデータベースに記憶されている既知のV-I特性に対応する(すなわち、それと非常に似ている)場合、SVLは機能するように動作可能であり、「良好」であるものとして認識される。しかしながら、試験対象のSVLのV-I特性がデータベースに記憶されているV-I特性と異なる場合、これはシステム部品の劣化または故障を明確に示すものであり、さらなる診断が正当化され得る。SVLの故障、スプライスハードウェア内での中断ギャップの短絡、またはケーブルジャケットの損傷である可能性のある異常の原因は、リンクボックス、回路上の他のリンクボックスの中のコンパニオンセンサ、およびシールドシステムに接続される試験機器、たとえば電圧源1124によって供給される電圧と電流から収集されたデータを使用することによって、決定され得る。さらに、シールドブレイクの絶縁試験を迂回し、それにより、欠陥のあるまたは故障したシールドブレイクへと異常の原因を切り分けるために、電圧源を大きい区切りの他の位置に接続することができる。したがって、マンホールに入りその中でリンクボックスを開ける必要なく、ケーブルシールドシステムの機能的信頼性が簡単にかつ効果的に決定され得る。
【0074】
したがって、供給された試験電圧においてSVLを通る電流が、SVLの所定のV-I特性の性質と合致する、すなわち、電流と試験電圧が所定の基準の関係に適合する関係を示すとき、シールドシステムの状態は機能する状態にあると決定される。同様に、温度センサによって監視されるような、供給される試験電圧におけるSVLからの熱がSVLの所定の特性と合致するとき、シールドシステムの状態は機能する状態にあると決定される。言い換えると、シールドシステムの状態は、センサによって監視されるようなSVLからの熱が予想される挙動と矛盾するとき、故障状態または不適合状態にあると決定され得る。
【0075】
本発明を利用する実施形態は、
図12~
図14の概略的な図解に関連して説明されるシールドボンディングおよび接地構成を含み得る。
図12~
図14は、ケーブルシールドの一方の端部が接地され、離れた接地されていない端部がSVLに接続されるような、1つのケーブル区間からなるケーブルシールドシステムを示す。
図12は、スプライスハードウェア1203において接合される三相高電圧ケーブルの単相(たとえば、位相A)の導体ケーブル区間1204および1204’を示す。スプライスハードウェアは
図1のスプライス103と似ていてもよい。
図1のシールド108および108’と同様に、ケーブル区間1204および1204’は、シールド1208および1208’によって囲まれる。
図2と同様にシールド1208の一方の端部または点はグラウンドに直接接続され、他方は、リンクボックス、グラウンドボックスなどであり得るハウジング1214に含まれるSVL1210によってグラウンドに結合される。この実施形態では、リンクボックス1214は、シールド区間1208をシールド区間1208’にクロスリンクまたはクロスボンディングしない。むしろ、この実施形態では、ハウジング1214は、シールド区間1208’をグラウンド1213に接続する導体を含む。シールド区間1208’は、その離れた端部において、ハウジング1214’に含まれる1210’によってグラウンドに接続される。ハウジング1214’は、ハウジング1214に似ていてもよく、
図2に示されるように、別のシールド区間(図示されない)をグラウンドに接続する別の導体を含んでもよい。加えて、
図12に示されるように、故障電流が存在する場合にそのための経路を提供するために、接地連続性導体1225が設置される。すべての位相(すなわち、位相A、BおよびC)に対して単一の接地連続性導体が設置され得る。ケーブル位相間の物理的離隔が比較的近いこと、および接地連続性導体のさらなる離隔により、接地連続性導体に誘導される電流は最小限であり、したがって、高電圧ケーブルの定格において考慮すべき追加の熱損失はなく、または最小限である。
【0076】
設置されたSVLを含むシールドボンディングおよび接地システムの機能的信頼性または動作の完全性を評価するために、本発明に従って、
図12に示されるケーブルシールドシステムが試験される。この保守試験を実行するために、高電圧導体1204、1204’は電力供給を止められ、シールド区間1208はハウジング1214から離れたシールド区間1208の点をグラウンドから切断することによってグラウンドから絶縁される。前に説明されたDCまたはAC電圧源などの、破線の中に示されている電圧源1224が、その点に接続される。この電圧源によって供給される試験電圧の大きさがSVL1210の導通閾値電圧以上に増大すると、SVLを流れる電流の大きさは
図7Aに示される方式で増大し、この電流は
図7Bに示されるようにSVLの表面温度を上昇させることが理解される。したがって、SVLを通る電流の増大は、表面温度の上昇と良く相関する。SVLの状態評価は、SVL電圧が増大するにつれて適切な電流センサを使用してSVLを流れる電流を監視することによって、または好ましくは、SVL電圧が増大するにつれてSVLの表面温度の上昇を監視するために温度センサ1228を使用することによって行われ得る。後者は、特にSVL1210において、ケーブルシールドシステムの故障状態または異常のよりロバストで効果的な指標である。電圧センサ1230、電流センサ(図示されない)、および温度センサ1228によって保守試験の間に得られる電圧、電流、および温度情報が、ケーブルシールドボンディングおよび接地システムの状態、特に設置されたSVLの機能的信頼性を評価するために利用される。
【0077】
同様に、シールド区間1208’およびSVL1210’が、それらの状態を評価するために試験される。電力供給を止められた高電圧導体のシールド区間1208’は、ハウジング1214の中のグラウンド1213からそれを切断することによってグラウンドから絶縁される。次いで、上で論じられたDCまたはAC電圧源などの破線の中に示されている電圧源1224’は、あらゆる立ち入り可能な位置にある絶縁されたシールド区間に接続される。これはハウジング1214の外側で行うことができ、シールドなどの電力供給されている導電性部品と電力供給を止められた導電性部品または表面との間でのフラッシオーバを防ぐのに十分なクリアランスが設けられるので、区間1208’からグラウンド電位を取り除く目的でハウジング1214に入る必要はないことが理解される。この場合、金属の支持構造などの、ハウジング1214の中のシールド区間1208’に接続されるあらゆるハードウェアが、試験の間に電力供給される。
【0078】
電圧源1224’から区間1208’に供給される試験電圧が増大するにつれて、SVL1210’からのSVL表面温度情報は、温度センサ1228’によって取得される。試験対象のSVLの得られる電圧-温度特性は、SVL1210’の動作の完全性を決定するために、データベースの中のファイル上の類似する機能しているSVLの電圧-温度特性と比較される。したがって、ケーブルシールドシステムにおける故障状態または異常は単に、設置されたSVL(たとえば、SVL1210、1210’)の電圧-温度特性を新しいSVLのそれらと比較することによって検出され得る。
【0079】
図13および
図14は、接地連続性導体1325、1425を伴う一点接地ケーブルシールドのための代替的なシールド接地およびボンディング方式である。これらの代替的な方式の動作は、
図12のケーブルシールドシステムの動作と実質的に同じであり、グラウンドとSVL接続の位置が異なる。それでも、試験の間に、上で論じられたのと同じ手順、すなわち、高電圧ケーブル回路の電力供給を止め、SVLを含む試験対象のシールド区間をグラウンドから絶縁し、増大する試験電圧を印加し、SVL表面温度を監視することが実施される。
【0080】
図13は、
図1のスプライス103と同様に、三相高電圧ケーブルの単相の区間1304および1304’がスプライスハードウェア1303において接合されるような構成を示す。ケーブル区間1304および1304’のシールド区間1308および1308’は、
図12のシールド区間1208および1208’と実質的に同じである。
図13に示される構成は、シールド区間1308’がハウジング1314の中のSVL1310’によってグラウンド電位に結合されるという点で、
図12に示される構成と異なる。ハウジング1314から離れた区間1308’の他方の端部がグラウンドに接続される。
【0081】
図13に示されるケーブルシールドシステムは、高電圧導体の電力供給を止め、区間1308および1308’をグラウンドから絶縁(すなわち、切断)することによって試験される。破線の中に示されている電圧源1324がグラウンドの代わりに絶縁された区間1308に接続され、試験が実行される。別個の電圧源1324’または代替として試験電圧源1324が区間1308’に移され、絶縁された区間1308’に接続される。シールド区間1308および1308’ならびにそれらに接続されるSVL1310、1310’は、上で説明された手順に従って試験される。試験の間に得られた電圧および温度情報は、シールドボンディングおよび接地システムの機能的信頼性を決定するために使用される。
【0082】
図14は、三相高電圧ケーブルの単相の区間1404および1404’がスプライスハードウェア1403において接合されるような、さらに別の一点接地構成を示す。ケーブル区間1404および1404’のシールド区間1408および1408’は、たとえばスプライスハードウェアの位置において、またはその近くで、グラウンド1413に共通に結合される。共通のグラウンド接続から離れたシールド区間の点は、それぞれ、ハウジング1414および1414’の中のSVL1410および1410’を介してグラウンドに結合される。
図14はまた、適切な故障電流のための経路を提供するための、グラウンド連続性1425を示す。
【0083】
図14のケーブルシールドシステムは、シールド区間をグラウンドから切断することによって、高電圧導体の電力供給を止めてシールド区間1408および1408’を絶縁することにより試験される。破線の中に示されている前に説明されたDCまたはAC電圧源と同様の電圧源1424は、グラウンド1413の代わりに区間1408および1408’の共通の接続に接続される。代替として、リンクボックス1414または1414’を含むあらゆる立ち入り地点において、電圧源を絶縁されたシールド区切りに接続することができ、言及されたように、試験のためにシールド区間を絶縁するために、グラウンド1413はシールド区間から切断される。シールド区間およびそれに接続されるSVLは、上で説明された手順に従って試験される。試験の間に得られるSVL表面温度および電圧情報は、ケーブルシールドシステムにおける故障状態または異常を検出するために利用される。
【0084】
図14は、区間1408と1408’の両方、ならびにSVL1410と1410’の両方を同時に試験するための試験手順を説明するが、望まれる場合、区切り1408および1408’を独立に試験できることが理解されるだろう。
【0085】
上述の議論は、クロスボンディングおよび一点接地されたケーブルシールドに関連するリンクボックスの適用例に当てはまる。実際には、現実的な長さの最大値により回路が3つより多くのケーブルの区切りからなるときのように、いくつかのクロスボンディングおよび一点接地構成が回路の経路上で見つかり得る。長さ4マイルの高電圧ケーブル回路が見つかることは珍しくない。現実的なケーブルの長さは通常は2000フィートのオーダーであるが、そのような回路は、上で説明されたように、および
図15に概略的に示されるように、共通の接地点間の3つの小さい区切りから各々構成される複数の大きいクロスボンディングされた区切りを含み得る。上で論じられた試験配置は、ここで説明されるような任意の数の区切りに適用され得る。
【0086】
図15に示される構成は
図11に示されるものと似ているが、
図15は、2つの追加のクロスリンクボックス1514および1515ならびに1つの中央接地ボックス1536を利用する、ケーブルの6つの区切りを示す。この構成は、1つのクロスボンディング回路配置を別のものに結合することによって、
図11の構成の2倍の回路長を収容する。ここで、シールド区間108cが電気的なグラウンドに接続される点は、マンホールの中に配置され得る接地ボックス1536を通る。示されるように、接地ボックス内のコネクタリンク1537は、区間108cをグラウンドに物理的に接続する。代替として、接地ボックス1536は省略されてもよく、それぞれのシールドボンディング線はグラウンドに直接接続されてもよい。
【0087】
接地ボックス1536は、高電圧ケーブル104cのシールド区間1508cを電気的なグラウンドに物理的に接続する別のコネクタリンク1538も含む。区間1508cは、区間108cに似ており、たとえば、高電圧導体104cの位相Cシールドである。
図15において、区間1508cは、リンクボックス1515に含まれるコネクタリンク1518bを介して、導体104bの位相B区間1508bに結合される。リンクボックス1515は、リンクボックス1115に似ており、SVL810bと似たSVL1510b、リンクボックス1115の中のセンサ1128bと似たセンサ1528bを含む。リンクボックス1515はまた、SVL1510bにかかる電圧を検知するように適合された、
図11の電圧センサ1130bと似た電圧センサ1530bを含む。同様に、リンクボックス1514は、高電圧導体104bの位相B区間1508bを高電圧導体104aの位相A区間1508aに電気的に接続するコネクタリンク1518aを含む。リンクボックス1514は、リンクボックス1114に似ており、SVL310aと似たSVL1510a、およびリンクボックス1114の中のセンサ1128aと似たセンサ1528aを含む。リンクボックス1514はまた、SVL1510aにかかる電圧を検知するように適合された、
図11の電圧センサ1130aと似た電圧センサ1530aを含む。それぞれ、リンクボックス1114および1514から離れた位相Aシールド区間108aおよび1508aの外側の端部が、正常動作の間は電気的なグラウンドに接続される。
【0088】
図15に示されるケーブルシールドシステムが本発明に従って試験される方式が、
図16に概略的に示される。
図15のケーブルシールドシステムが試験されるとき、リンクボックス1514から離れた区間1508aの回路の長さ方向に沿った点のように、リンクボックス1114から離れた区間108aの回路の長さ方向に沿った点における電気的なグラウンドへの物理的な接続がグラウンドから切断され、それにより、区間108aおよび1508aをグラウンドから絶縁する。加えて、正常動作の間に区間108cおよび1508cをグラウンドに接続する接地ボックス1536もグラウンドから切断され、1626において示されるように、リンクボックス1114、1115、1514、および1515において電気的に接続されるシールド区間をグラウンドから実質的に絶縁する。これはハウジングの外部で行うことができるので、コネクタリンク1537および1538からグラウンドを取り除く目的でハウジング1536を開ける必要はないことがある。この実施形態では、コネクタリンク1537および1538は、ハウジング1536の外部で接地され得る他のシールド区間に共通に接続されない。
【0089】
したがって、区間108cおよび1508cはグラウンドから電気的に絶縁される。
図11に関連して上で説明された試験構成と同様に、
図16のケーブルシールドシステムは、任意の便利な点から試験することができる。試験電圧は電圧源1624によって供給され、これは、ここでは区間108aの端部に接続されるものとして示されている、
図11の電圧源1124に似たDC電圧源またはAC電圧源であり得る。徐々に増大する試験電圧が、区間108aの電気的に絶縁された端部に供給される。試験電圧の大きさは、所定のステップで徐々に上げられてもよく、または代替として、線形に増大する電圧であってもよい。
【0090】
図11の試験構成と同様に、電圧源1624によって供給される試験電圧が増大するにつれて、区間108a、導体リンク318a、SVL310a、区間108b、導体リンク818b、区間108c、導体リンク1537および1538、区間1508c、導体リンク1518b、区間1508b、導体リンク1518a、そして最終的に区間1508aの電圧が、同様に増大する。SVLの導通閾値を超えて試験電圧が増大するにつれて、SVLが導通閾値領域より上で動作するとき、増大する電流がSVLを流れる。
図7AのSVL V-I特性によって表されるように、SVLの所定の導通閾値電圧を供給された試験電圧が超えるとき、そのSVLを流れる電流は不釣り合いに増大する。各SVLによって放散される熱はそれを流れる電流に関連し、この熱を検知することはSVL電流の良好な近似である。IRセンサであり得る熱センサ1128aおよび1128bは、SVL310aおよび810bによって放散される熱を検出し、センサ1528aおよび1528bは、SVL1510aおよび1510bによって放散される熱を検出する。したがって、熱センサによって生み出される信号は、SVLを流れる電流を表す情報を構成する。SVLにかかる電圧は、SVLにかかる電圧を表す情報を生み出すために、電圧センサ1130a、1130b、1530a、1530bによって検知される。この電圧および熱(電流を表す)の情報は、ケーブルシールドシステムの機能的信頼性を評価するために取得される。電圧源1624は、他の区切りが接地されている間に、各々の絶縁された区切りに別々に逐次印加され得る。
【0091】
図17は、
図5に示されるクロスボンディング構成を使用し、たとえば
図11のセンサおよび環境センサを含むリンクボックスセンサのパッケージを含む、上で論じられたタイプのケーブルシールドシステムの機能的信頼性を評価するための遠隔監視システムの概略ブロック図である。電圧VA、VB、およびVCは、それぞれ、電圧センサ1730a、1730b、および1730cによって検知されるSVL1710a、1710b、および1710cにかかる電圧を表す。これらの電圧センサは、
図11の電圧センサ1130aおよび1130bと似ていていもよい。
図17はまた、それぞれの電流センサ1732a、1732b、および1732cによって検知されるような、コネクタリンクを流れる電流IA、IB、およびICを示す。電流センサは、
図4Aの電流センサ440aと似ていてもよい。
図17はまた、それぞれ温度センサ1728a、1728b、および1728cによって検知されるような、SVL1710a、1710b、および1710cの表面温度Ta、Tb、およびTcを示す。ブロック1734は、ハウジング内の周辺温度、気圧、および湿度などの、リンクボックス構造物内の周辺条件を監視するための内部環境センサを表す。当業者により知られているような、他の周辺条件も監視され得る。
【0092】
電圧VA、VB、およびVCは、SVLにわたって検知または監視される電圧を表す。これらの電圧は、正常な稼働中動作の間に定期的に監視され得る。本発明と合致して、SVLにかかる電圧は、ケーブルシールドシステムの稼働停止中の保守試験の間に継続的に監視され得る。
図11に関連して上で論じられたように、電圧センサ1730は、保守試験の間に意図的に導入されるより高い電圧、ならびに故障およびサージの結果として稼働中に起こり得る高電圧を下げるための、抵抗性分圧器を備え得る。抵抗性分圧器は、マイクロプロセッサなどの処理回路に適したレベルにそのようなSVL電圧を下げる。これらの過電圧事象が、センサを含む監視回路を故障させることがあってはならない。電流IA、IB、およびICは、
図11に示されるクロスボンディングシールド構成において各導体リンクに流れる電流を表す。
【0093】
SVL表面温度Ta、Tb、およびTcは、温度センサ1728a、1728b、および1728cによって検知され、高電圧ケーブルの正常な稼働中動作の間に定期的に監視され得る。本発明と合致して、SVL表面温度は、稼働停止中の保守試験の間に検知される。一実施形態では、温度センサは、データに対する要求などの処理回路からのコマンドに応答して、休止状態からオンまたはアクティブ化され得る。代替として、温度センサは、そのような検知された電圧および/または電流が所定のレベルを超える過渡事象の間に起こるSVL表面温度の変化を検出して記録するために、電圧センサおよび電流センサによって生成される信号に応答して、または電圧センサおよび電流センサに応答してアクティブ化され得る。
【0094】
構造物ハウジング内に存在する、周辺温度、気圧、および湿度などの環境条件も、密閉の欠陥および緩んだ内部接続を示すものであり得る、水の流入および高いハウジング温度を検知して監視するために、センサによって監視される。ハウジング内の周辺温度は、SVL表面温度の上昇が比較され得る基準も提供する。
【0095】
一実施形態では、センサによって生み出される信号、たとえば、電流、電圧、温度、気圧、および湿度の信号は、マイクロプロセッサまたは他の処理回路などの、リンクボックスコントローラ1735と呼ばれるコントローラに、ハードワイヤによって送信される。リンクボックスコントローラは、たとえば、予定された時間にセンサからセンサ情報を取得するための命令を記憶し得る。センサデータを記憶するために、コントローラの中に、またはその近くにストアも設けられ得る。センサデータは、センサから受け取られたような元の形式で記憶され、または記憶空間を節約するために縮小され得る(たとえば、統計的に圧縮されるなど、圧縮され得る)。リンクボックスハウジングはまた、電力をリンクボックスコントローラおよびセンサに与える電池を収容し得る。センサデータのデータ圧縮は、電池持続時間を延ばすのに役立つ。好ましい実施形態では、リンクボックスコントローラからのセンサデータは、たとえば低電力ワイドエリアネットワーク(LP-WAN)通信プロトコルを介して、遠隔の中心位置にワイヤレスに送信される。別の実施形態では、センサデータは、遠隔の位置に光ファイバケーブルを介して送信される。
【0096】
別の実施形態では、遠隔監視デバイスコントローラ1736は、リンクボックスと中央サーバとの間の制御および通信インターフェースとして使用され得る。一実施形態では、遠隔監視デバイスコントローラは、センサ情報を遠隔処理回路1738にワイヤレスに送信するための低電力ワイドエリアネットワーク(LP-WAN)送信機を含む。適切な低電力ワイドエリアネットワークの一例は、米国特許第10,607,475号において説明されている。リンクボックスコントローラ1735および遠隔監視デバイスコントローラ1736は、同じマンホールの中に配置され得る。代替として、遠隔監視デバイスコントローラ1736は、センサ情報がリンクボックスコントローラ1735からそれへと供給される、別の地下の位置などにあるリンクボックスの位置とは離隔する位置に配設され得る。
【0097】
好ましくは、リンクボックスコントローラ1735は、リンクボックスコントローラに記憶されている、電圧、電流、およびSVL温度情報、ならびに環境情報などのセンサ情報を、定期的にまたは時々測定し、計算し、比較し、記憶し、送信するための、遠隔処理回路1738から受信され得る命令に応答する。受信される命令は、ケーブルシールドシステムの状態を評価する(すなわち、必要なときにデータを送信する)ために使用されるデータに対する競合する需要と、特にデータ送信間隔の間の電池消費とのバランスをとろうとすることが理解される。
【0098】
さらに別の実施形態では、リンクボックスコントローラ1735に含まれる処理回路は、通知を触発する重大な異常についての定例のオンボードチェックとして最近取得されたデータと比較するための過去データの基礎を提供するために、電圧、電流、および温度を含む取得されたセンサデータのローカルでの処理と記憶を行う。
【0099】
センサデータは、ローカルで特定するのが難しい動作上の異常がそれから決定され得る、同じケーブル回路上の他のリンクボックスからのデータを集めるように動作可能な中央サーバにアップロードされてもよく、それにより、回路のシールドボンディングおよび接地システムの完全性の評価を可能にする。たとえば、正常動作の間、クロスボンディングされたシステムのリンクされたケーブルシールド区間の各々を流れる電流は同じである。しかし、あらゆる逸脱が、意図されない電流経路または回路の故障を示唆する。
【0100】
上で論じられた試験手順は、SVLの各々に対して検出される表面温度の変化を考慮するように電圧の上昇または低下の速さを制御する処理回路にフィードバックされる、SVL電圧および表面温度を用いて自動化され得る。上で論じられた電圧源によって供給される試験電圧の上昇の後で、SVLが時間とともに冷却するように電圧が低下すべきであることが理解されるだろう。自動化のフィードバック制御は、SVL導通閾値に試験電圧が近づくと遅くすることができる電圧上昇の速さを初期により大きくするのを可能にすることによって試験期間を短くし、それにより、オーバーシュートを防ぎ、導通遷移領域における電圧-温度特性のより高い測定再現性を促進する。有利なことに、処理回路に送信されるセンサからの温度測定結果は、コンピュータ接続または携帯電話通信を通じて、ほぼリアルタイムで現場の試験技術者に送信され得る。
【0101】
SVL温度を検知し、試験電圧を知ることによって、SVL、ケーブルジャケット、接地システム、およびスプライスハードウェアの中の中断ギャップの状態が容易に検出され、潜在的な問題に事前に備える。たとえば、(変電所における)ケーブル端部からケーブルシールドシステムに可変DC試験電圧を供給することにより、SVLの動作可能性は、SVL電流が導通閾値領域に入るにつれて、試験電圧に応じたSVL温度上昇を検知することによって決定される。したがって、マンホールに入り、ケーブルボーディング線を切断し、またはリンクボックスもしくは他の構造物を開けて試験と保守のためにリンクを取り除くことを必要としない、ケーブルシールドシステムの保守試験が得られる。
【0102】
いくつかの現実的な診断が本発明から導かれる。たとえば、SVLに供給される試験電圧が導通閾値未満であり、SVLによって放散される熱がほとんどまたはまったくないが、試験電圧がSVL導通閾値を超えるとSVLが測定可能な熱を放散するとき、ギャップ、ジャケット、SVL、およびグラウンド接続は、受け入れられる動作状態にあると決定され、保守は必要ではない。
【0103】
一方、試験電圧がSVL導通閾値電圧を超えるときに熱がSVLから検出されない場合、中断ギャップおよびジャケットは適切に機能しているが、SVLまたは関連するグラウンド接続に問題がある可能性が高いと決定され得る。しかしながら、試験電圧がSVL導通閾値電圧未満であるときにSVLによって放散される大量の熱が検出される場合、中断ギャップおよびジャケットの状態は適切である可能性が高いが、SVLが損傷または短絡している可能性があり、または不適切なSVLが存在する。
【0104】
別の例として、試験電圧源によって供給される電流がその最大値にあるが、それでもSVLにかかる電圧がSVL導通電圧に達しない、またはそれを超えず、SVLの表面において熱が検出されない場合、中断ギャップまたはケーブルジャケットが試験経路の予想されない負荷を引き起こしている可能性が高く、回路短絡が疑われる。
【0105】
これらの例は、
図18に関連して以下でより詳しく説明されるように、これは、高電圧ケーブルの大きい区切りについて実行される試験の概略的な図解である。
【0106】
図17の実施形態では、リンクボックスコントローラ1735は、センサ信号を記録する(たとえば、単に記憶する)ことができるが、所定のレベルを超えるセンサ入力、たとえば、あらかじめ設定されたレベルを超える電圧データによって触発されない限り、センサデータを送信することができない。そのような事象は、正常動作とは異なり、予定されないデータ送信事象として認識される。
【0107】
電圧、電流、温度、および環境情報の最近の履歴(たとえば、数週間)は、リンクボックスコントローラにオンボードで記憶されてもよいが、長期の履歴は、高電圧電力ケーブル回路の挙動を表すために、遠隔処理回路1738のように遠隔で記憶されてもよく、長期的な挙動と合致する制御、通知、および警告の点を設定するために使用され得る。そのような情報のデータベースは、製造履歴および定格などの、監視されているSVLの具体的な詳細を含む多くのパラメータを含み得る。
【0108】
したがって、本発明は、高電圧電力ケーブル回路のシールドボンディングおよび接地システムの機能的信頼性を評価するための手段および方法をシステム運用者に提供することがわかる。本発明は、遠隔の位置、すなわちマンホールの中のデータを収集するためにセンサのセットを利用し、この情報をほぼリアルタイムで中央サーバに送信し、そこで、ケーブルシールドシステムの電気的なおよび環境的な動作状態を評価するためにその情報にアクセスすることができる。この情報は、ケーブル回路が稼働停止中であり、本明細書で説明される試験プロトコルを受けるときに取得され得る。
【0109】
ここで、
図1および
図11において使用される参照番号が同様の構成要素を特定するために使用される
図18を見ると、試験電圧源1124はケーブルシールド区間108aに結合され、シールド区間108’bおよび108’cが、それらの回路端部などにおいて接地される。示されていないが、前に説明された電流センサ440と似た従来の電流計が、電圧源によってケーブルシールド区間に供給される電流の尺度を提供するために、電圧源の出力に結合される。リンクボックス1114の中のコネクタリンク318aは、位相Bのシールド区間108bに位相Aのシールド区間108aをクロス接続し、リンクボックス1115の中のコネクタリンク818bは、位相Cのシールド区間108cにシールド区間108bをクロス接続する。試験電圧を受ける複数のシールド区間がある。リンクボックス1114は、
図3(または
図5)のリンクボックス314に示されるタイプであり得る。やはりリンクボックス1114の中で、コネクタリンク318bは、位相Cのシールド区間108’’cに位相Bのシールド区間108’bをクロス接続し、やはりリンクボックス1114の中で、コネクタリンク318cは、位相Aのシールド区間108’aに位相Cのシールド区間108’cをクロス接続する。
図18はまた、位相Aのシールド区間108’aからシールド区間108aを電気的に絶縁するスプライスハードウェアの中に存在するシールド中断ギャップ118a、位相Bのシールド区間108’bからシールド区間108bを絶縁するスプライスハードウェアの中に存在するシールド中断ギャップ118b、および位相Cのシールド区間108’cからシールド区間108cを絶縁するスプライスハードウェアの中に存在するシールド中断ギャップブレイク118cを示す。
【0110】
電圧源1124がシールド区間108aに接続され、シールド区間108’cが接地されるので、異常がないときに中断ギャップ118aにかかる電圧Vgapは、電圧源によって供給される試験電圧Vtestと等しくなければならない。同様に、リンクボックス1114の中のコネクタリンク318aは、シールド区間108aにおける電圧Vtestをシールド区間108bに結合するが、区間108’bは接地され、異常がないとき、電圧源によって供給される試験電圧Vtestに等しい電圧Vgapが中断ギャップ118bにわたって生じる。リンクボックス1114の中のコネクタリンク318bは、シールド区間108’’cにグラウンド電位を結合し、言及されたように、シールド区間108’cが接地され、Vgap=0という電圧Vgapが中断ギャップ118cにわたって生じる。リンクボックス1115の中のコネクタリンクが、接地電位にあるシールド区間108’’cをシールド区間108’’aに結合した結果として、シールド区間108’aをシールド区間108’’aから絶縁する中断ギャップにおいて生じる電位Vgapは0になることが理解される。さらに、異常がないとき、シールド区間108bをシールド区間108’bから絶縁する中断ギャップ118bに現れる電位、また、シールド区間108’cをシールド区間108’’cから絶縁する中断ギャップ118cに現れる電位も、Vtestになる。
【0111】
図18に示されるように、3つのシールド区間の1つの接続されたグループが絶縁されるような試験、たとえば、シールド区間108a、108b、108cが、残りの3区間グループであるシールド区間108’b、108’’c、108’’aおよびシールド区間108’c、108’a、108’’bが接地された状態で試験されるような試験は、その絶縁された区間に関連するケーブルジャケット、シールドブレイク、およびSVLの機能試験となる。グラウンドに接続される絶縁されていないシールド区間と、シールド区間108’b、108’’c、108’’aを絶縁し、シールド区間108’c、108’a、108’’bを絶縁するために、試験手順がさらに2回繰り返される。
【0112】
上で説明されたように、各リンクボックス内に、SVL、温度センサ、および電圧センサが含まれる。リンクボックス1114が代表的であり、示されるように、リンクボックス1114は、SVL310a(可変抵抗器として示されている)、温度センサ1128a、および電圧センサ1130aを格納する。実質的に、リンクボックス1114およびリンクボックス1115などの他のリンクボックスの中の他のクロスリンクされたシールド区間と、同じ部品が関連付けられる。ここで、あり得る試験結果の6つの例が説明される。しかしながら、本発明はこれらの例だけに限定されず、本明細書で説明される試験手順は他の機能性の例について使用されてもよいことを理解されたい。
【0113】
例1:シールド区間108’bおよび108’cが接地され、試験電圧が電圧源1124によってシールド区間108aに供給される。SVL310aにわたって現れる電圧が、電圧センサ1130aによってリンクボックスにおいて測定される。試験電圧レベルが、SVL310aの導通閾値電圧のすぐ下のレベルVthresh-に上げられる。この電圧は、ケーブルジャケット(ケーブルジャケットのインピーダンスは抵抗Rjとして
図18において特定される)、中断ギャップ(Vgap)、ならびにシールド区間108a、108b、および108cに関連する(すなわち、結合される)SVLにわたって現れる。したがって、ケーブルジャケット、中断ギャップ、およびSVLは、指定された期間、この試験電圧レベルVthresh-において絶縁耐久電圧試験を受ける。この電圧レベルでは、SVLは導通せず、各SVLの外見上の抵抗は非常に高い。結果としてSVLに流れる電流は非常に小さく、SVLの加熱を引き起こすとは予想されない。ここで、温度センサは顕著な温度を検出せず、すなわち、温度センサ1128aは周辺温度を検出する。検知されたSVL電圧V
SVLが試験電圧Vthresh-に実質的に等しく、SVLの表面において温度上昇が検出されないと仮定すると、この第1の試験の例の結果は、ケーブルジャケットおよび中断ギャップが機能するように動作しており、SVLが短絡しておらず、その導通遷移領域に時期尚早に入っていないことを示唆する。SVLの機能性の確認は、例2において以下で説明される追加の試験によって取得され得る。
【0114】
例2:例1の試験手順に従うが、SVLをその導通遷移領域に至らせるためにより高い試験電圧を用い、SVLが機能していることを実証する。例2では、電圧源1124によって供給される試験電圧は、SVL310aのSVL導通閾値電圧のすぐ上のレベルVthresh+に上げられる。例1のように、シールド区間108’bおよび108’cが接地される。この電圧Vthresh+において、適切に機能しているSVLの外見上の抵抗は低下し、それにより、SVLの加熱を引き起こす十分な電流が試験電圧源1124から引き出され、温度センサ1128によって検出される表面温度の上昇をもたらす。導通閾値電圧を超える試験電圧を供給する試験電圧源からより大きい電流が引き出され、SVL表面温度が周辺より高いので、SVLは適切に動作しており、中断ギャップ118aまたはケーブルジャケットに故障または欠陥はないと結論付けられ得る。
【0115】
例3:シールド区間108’bおよび108’cが接地され、電圧源1124によってシールド区間108aに供給される試験電圧は、例1のように、SVL310aの導通閾値電圧のすぐ下のレベルVthresh-に上げられる。電圧源からの出力電流(示されていない電流計によって測定される)が、導通閾値電圧Vthresh未満で動作するSVLにより予想されるものよりはるかに大きく、リンクボックスの中の電圧センサが、SVLにかかる電圧が試験電圧Vthreshレベルに実質的に等しいことを検知し、検知されるSVL表面温度が周辺温度でありそれを超えない場合、これは、SVLの外部のグラウンドへの低抵抗の経路を示すものである。これは、電圧源からの大きい電流が、ジャケットまたは中断ギャップの欠陥によって引き起こされていることを強く示唆する。
【0116】
例4:シールド区間108a、108’b、および108’cがすべて、グラウンドから絶縁されて共通に接続され、電圧源1124からの試験電圧、この場合はVthresh-が、共通に接続された区間に供給される。すべてのシールド区間が同じ電圧にある結果として、すべての中断ギャップ118a、118b、118cにかかる電圧Vgap、また、中断ギャップ118’a、118’b、118’cにわたって現れる電圧も0である。中断ギャップを流れる電流はないので、例3と同様に、SVLの表面温度の上昇を示すものが検知されない場合、しかし、過剰な電流が電圧源1124から引き出されている場合、ジャケットの欠陥がある可能性が高い。代替として、電圧源1124から引き出される電流が、機能しているシールドシステムについて予想されるものと合致する、たとえば、SVLが導通するレベル(Ithresh-)より小さい場合、欠陥は中断ギャップの1つに関連する可能性が高い。
【0117】
例5:例1に従って試験を実行する過程において、試験電圧をVthresh-に上げる間、電流Iが、リンクボックスの中のSVLにわたって現れる電圧について予想される電流より大きく、すなわち、SVLにかかる電圧はVthresh--(導通閾値電圧よりはるかに低い)であり、電流がIthresh以上であり、リンクボックスの周辺温度より高いSVLの表面温度が検知される。これは、SVLの損傷を示すSVLの未熟な導通、または場合によっては、小さすぎるSVLが設置されていることを示唆する。
【0118】
例6:例2の試験を実行する過程において、試験電圧を、SVLの導通閾値電圧を大きく上回るVthresh++に上げる間、電流Iがリンクボックスの中のSVLにわたって現れる電圧について予想される電流よりはるかに小さく(たとえば、I≦Ithresh--)、SVLの表面温度がリンクボックスの中の周辺温度と実質的に等しい。これは、損傷したまたは不適切な大きさのSVLが設置されていることを示唆する。
【0119】
したがって、設置されたセンサ、試験手順、および診断は、ケーブルシールドシステムの全体的な機能を評価するためだけではなく、欠陥のあるまたは損傷した部品を切り分けて特定するためにも使用され得ることが理解される。
【0120】
【0121】
本発明は、好ましい実施形態に関して示され説明されたが、本発明はそれらの厳密な実施形態に限定されないと理解されるべきである。形態および詳細の他の修正と変形が、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者により行われ得る。
【符号の説明】
【0122】
102 高電圧ケーブル回路
104 高電圧導体
106 絶縁体
108 シールド区間
110 電圧センサ
112 ケーブルジャケット
114 リンクボックス
116 ボンディング線
118 シールド中断ギャップ
124 グラウンド
310 SVL
314 リンクボックス
318 コネクタリンク
320 ボンディング線コネクタ
322 グラウンド接続
324 グラウンド
440 電流センサ
442 電圧センサ
444 電流センサ
446 温度センサ
450 ホール効果デバイス
452 ホール効果デバイス
540 電流センサ
542 電圧センサ
544 電流センサ
546 温度センサ
548 プリント回路基板
550 光ファイバ通信および制御インターフェース
552 コネクタ
560 ハウジング
810 SVL
815 リンクボックス
818 コネクタリンク
924 電圧源
1014 ジャンパ
1015 ジャンパ
1114 リンクボックス
1115 リンクボックス
1124 電圧源
1128 温度センサ
1130 電圧センサ
1203 スプライスハードウェア
1204 ケーブル区間
1208 シールド
1210 SVL
1213 グラウンド
1214 ハウジング
1224 電圧源
1225 接地連続性導体
1228 温度センサ
1230 電圧センサ
1303 スプライスハードウェア
1304 ケーブル区間
1308 シールド区間
1310 SVL
1314 ハウジング
1324 電圧源
1325 接地連続性導体
1403 スプライスハードウェア
1404 ケーブル区間
1408 シールド区間
1410 SVL
1413 グラウンド
1414 ハウジング
1425 接地連続性導体
1508 シールド区間
1510 SVL
1514 リンクボックス
1515 リンクボックス
1518 コネクタリンク
1528 センサ
1530 電圧センサ
1536 中央接地ボックス
1537 コネクタリンク
1538 コネクタリンク
1624 電圧源
1710 SVL
1728 温度センサ
1730 電圧センサ
1732 電流センサ
1735 リンクボックスコントローラ
1736 遠隔監視デバイスコントローラ
1738 遠隔処理回路
【国際調査報告】