(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】筋ジストロフィを処置するための組換えAAVベクターの産生
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20240514BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240514BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240514BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240514BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240514BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240514BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240514BHJP
C12N 7/02 20060101ALI20240514BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240514BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K38/02
A61K35/76
A61K31/7088
A61K48/00
A61P21/02
C12N15/12
C12N7/02
C12N5/10
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571156
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022029328
(87)【国際公開番号】W WO2022245675
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501237039
【氏名又は名称】サレプタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アラム, マルーフ
(72)【発明者】
【氏名】ロディーノ-クラパック, ルイーズ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA94
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA94
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA94
(57)【要約】
本開示は、ヒトマイクロ-ジストロフィン遺伝子を発現させるために懸濁条件で培養された哺乳動物の接着細胞中で産生された組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)などの遺伝子治療ベクターを提供する。また、本開示は、筋ジストロフィ(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィなど)を処置するためのこれらのrAAVの組成物およびその使用方法を提供する。上記rAAVは、本明細書中に記載の懸濁シードプロセスによって、懸濁条件で培養された接着細胞から産生され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁シードプロセスによって哺乳動物接着細胞中で組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンを産生する方法であって、
(a)N-2コンテナ中で、細胞を、血清を含む第1の成長培地を用いて培養する工程;
(b)前記第1の培地から前記細胞を取り出す工程;
(c)N-1コンテナ中で、前記工程(b)由来の細胞を、血清を含まないか、前記第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に接種する工程;
(d)前記N-1コンテナ中で前記細胞を懸濁条件下で培養する工程;および
(e)バイオリアクター中の第3の培地に前記工程(d)由来の細胞を接種する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記rAAVが、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記rAAVが、配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記rAAVが、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁シードプロセスが、
(f)前記接着細胞を、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミド、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミド、ならびにアデノウイルスヘルパープラスミドでトランスフェクトする工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミドが、
配列番号9の核酸配列;
配列番号3のヌクレオチド55~5021;または
配列番号8のヌクレオチド1~4977
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミドが、AAV2rep遺伝子およびrAAVrh74cap遺伝子を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記アデノウイルスヘルパープラスミドが、アデノウイルス5型のE2A遺伝子、E4ORF6遺伝子、およびVA RNA遺伝子を含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記懸濁シードプロセスが、
(g)前記接着細胞を溶解する工程
をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着細胞を、凍結融解、固体せん断、高張および/もしくは低張溶解、液体せん断、超音波処理、高圧押出し、界面活性剤溶解、またはこれらの組み合わせによって溶解する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記懸濁シードプロセスが、
(h)少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップによって前記rAAVを精製する工程
をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップが、陰イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記懸濁シードプロセスが、N-3コンテナ中で、細胞を、前記第1の成長培地を用いて培養する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記懸濁シードプロセスが、N-4コンテナ中で、細胞を、前記第1の成長培地を用いて培養する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記バイオリアクターが接着性バイオリアクターである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記rAAVを、接着性バイオリアクター中で産生された培養物から精製する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記バイオリアクター中の第3の培地が、少なくとも1つの細胞接着を促進する因子を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの細胞接着を促進する因子が、血清、FBS、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、カルシウムイオン、細胞外基質のプロテオグリカンまたは非プロテオグリカンポリサッカリド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオリアクター中の第3の培地が、DMEMおよび10%FBSを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記接着細胞を、懸濁条件下で約48~72時間培養する、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記N-1コンテナが懸濁振盪フラスコである、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記接着細胞が、HeLa細胞、CHO細胞、HEK-293細胞、VERO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、およびCOS細胞からなる群から選択される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記接着細胞が、HeLa細胞またはHEK-293細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記接着細胞がHEK-293細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記接着細胞が懸濁に適合していない、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞を懸濁条件下で培養する工程が、前記細胞の接着依存性を変化させない、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記培養する工程が、前記細胞を、新規の細胞株を作出するように変化させない、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンを含む組成物であって、前記rAAVが、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法によって作製される、組成物。
【請求項29】
前記組成物が、
a)配列番号9の核酸配列を含むrAAV粒子;
b)配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV粒子;および/または
c)配列番号8のヌクレオチド1~4977を含むrAAV粒子
を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置する方法であって、請求項29に記載の組成物を前記ヒト被験体に投与する工程を含む、方法。
【請求項31】
前記rAAVを、全身投与経路を使用し、約5.0×10
12vg/kg~約1.0×10
15vg/kgの用量で投与する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記全身投与経路が静脈内経路であり、前記rAAVの投与用量が約2×10
14vg/kgである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記rAAVの用量を約10mL/kgの濃度で投与する、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記rAAVを、注射、注入、または移植によって投与する、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記rAAVを、およそ1時間にわたって注入によって投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記rAAVを、四肢の末梢静脈を介した静脈内経路によって投与する、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記筋ジストロフィが、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィである、請求項30~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記筋ジストロフィがデュシェンヌ型筋ジストロフィである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記被験体の細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現レベルが、前記rAAVの投与後に前記rAAVの投与前の前記マイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現レベルと比較して増加する、請求項30~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、前記rAAVの投与前および投与後に生検を実施した筋肉中のウェスタンブロットによってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記発現が、rAAVの投与後に投与前と比較して少なくとも55.4%である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記被験体の筋肉組織中のマイクロ-ジストロフィン陽性線維の平均百分率が、rAAVの投与後に、前記rAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィン陽性線維数と比較して増加する、請求項30~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記rAAVの投与前および投与後の筋生検において免疫蛍光(IF)によって検出した場合、前記マイクロ-ジストロフィン陽性線維の平均百分率が少なくとも70.5%であり、平均強度が少なくとも116.9%である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ベクターゲノムカウントによるマイクロ-ジストロフィン形質導入が、核あたり少なくとも3.87の平均ベクターゲノムコピー数である、請求項30~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物を、遺伝子型判定した患者に投与する、請求項30~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記遺伝子型判定した患者を、ヒトジストロフィン(DMD)遺伝子のエクソン18~79中の少なくとも1つの変異について遺伝子型判定する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ヒト被験体のDMD遺伝子を、前記ヒト被験体への前記組成物の投与前に遺伝子型判定する工程をさらに含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記遺伝子型判定が、DMD遺伝子のエクソン18~79中の少なくとも1つの変異を検出する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つの変異が、前記ヒトジストロフィンタンパク質が発現しなくなるフレームシフト欠失、フレームシフト重複、未熟終止、または他の病原性バリアントである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置するための請求項28または29に記載の組成物の使用。
【請求項51】
筋ジストロフィの処置のための医薬の製造における請求項28または29に記載の組成物の使用。
【請求項52】
前記筋ジストロフィが、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィである、請求項50または51に記載の使用。
【請求項53】
前記筋ジストロフィがデュシェンヌ型筋ジストロフィである、請求項52に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月8日出願の米国仮出願第63/253,998号、2021年9月14日出願の米国仮出願第63/243,944号、2021年6月11日出願の米国仮出願第63/209,733号、および2021年5月17日出願の米国仮出願第63/189,676号(その全体が本明細書中で参考として援用される)の利益を主張する。
電子的に提出された配列表の参照
【0002】
本出願と共に提出されたASCIIテキストファイルで電子的に提出された配列表(ファイル名:4140_052PC04_Seqlisting_ST25.txt;サイズ:60,194バイト;および作成日:2022年5月13日)の内容は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
分野
【0003】
本開示は、遺伝子治療分野に属する。より具体的には、本開示は、小型化ヒトマイクロ-ジストロフィン遺伝子を発現するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどの遺伝子治療ベクターであって、ここで、AAVは、懸濁条件で培養された接着細胞から産生される、遺伝子治療ベクターを提供する。また、本開示は、筋ジストロフィを罹患している被験体において、骨格筋(横隔膜および心筋が挙げられる)中でマイクロ-ジストロフィンを発現し、筋線維を傷害から保護し、筋力を増大させ、線維症を軽減および/または予防するためにこれらのベクターを使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
背景
移動および呼吸などの日常活動ならびに全身代謝のために筋肉量および筋力が重要であることには疑いの余地がない。筋機能が欠損すると筋力低下および筋消耗を特徴とする筋ジストロフィ(MD)を発症し、生活の質に深刻な影響を及ぼす。最もよく特徴づけられたMDは、ジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)のメンバーをコードする遺伝子の変異に起因する。これらのMDは、DAPCによる筋線維鞘-細胞骨格係留の喪失に関連する膜脆弱性に起因する。デュシェンヌ型筋ジストロフィ(DMD)は、新生男児5,000人あたり1人が罹患する最も破壊的な筋疾患のうちの1つである。
【0005】
DMDは、mRNAの減少およびジストロフィン(ジストロフィン結合タンパク質複合体(DAPC)に結合する427kD筋線維鞘タンパク質)の不在に至るDMD遺伝子の変異が原因である(Hoffman et al.,Cell 51:919-28,1987)。DAPCは、筋線維鞘において、ジストロフィン、アクチン結合タンパク質、およびアルファ-ジストログリカン(ラミニン結合タンパク質)を介して細胞外基質(ECM)と細胞骨格との間に連結構造を形成する複数のタンパク質から構成される。これらの連結構造は、収縮中の筋細胞膜を安定させ、収縮によって誘発される損傷から保護するように作用する。ジストロフィンが喪失すると膜が脆弱になり、その結果、筋線維鞘が裂け、カルシウムが流入し、カルシウム活性化プロテアーゼの作用を誘発し、限局的に線維が壊死する(Straub et al.,Curr Opin.Neurol.10:168-75(1997))。この無制御の筋肉の変性および再生サイクルは、最終的に筋幹細胞集団を疲労させ(Sacco et al.,Cell 143:1059-1071(2010);Wallace et al.,Annu Rev Physiol 71:37-57(2009))、その結果、進行性の筋力低下、筋内膜炎症、および線維瘢痕化に至る。
ジストロフィンまたはマイクロ-ジストロフィンに由来する膜安定化がない場合、DMDは、無制御の組織の損傷および修復サイクルとして発現し、最終的に結合組織の増殖を介して喪失した筋線維が線維性瘢痕組織に置き換わるであろう。線維症は、ECM基質タンパク質(コラーゲンおよびエラスチンが挙げられる)の過剰な沈着物を特徴とする。ECMタンパク質は、主に、ストレスおよび炎症に応答している活性化された線維芽細胞によって放出されるサイトカイン(TGFβなど)から産生される。DMDの主な病理学的特徴が筋線維の変性および壊死であるにもかかわらず、病理学的結果としての線維症が及ぼす影響は同等である。線維性組織の過剰産生により、筋再生が制限され、この制限がDMD患者における進行性の筋力低下に寄与する。1つの研究では、10年間の追跡において、最初のDMD筋生検での線維症の存在は、運動能力低下アウトカムと高度に相関した(Desguerre et al.,J Neuropathol Exp Neurol 68:762-767(2009))。これらの結果は、線維症がDMD筋機能不全の主な寄与因子であることを示し、明白な線維症を発現する前の早期介入の必要性を際立たせている。
国際公開番号WO2019/245973A1号(その全体が本明細書中で参考として援用される)は、ヒト被験体における筋ジストロフィ(例えば、DMD)を処置するためのマイクロ-ジストロフィン遺伝子のAAVベクター送達を記載している。しかしながら、かかるAAVベクターの改良された産生方法、特に、かかる遺伝子治療ベクターの大規模製造に好適な方法が当該分野で依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hoffman et al.,Cell 51:919-28,1987
【非特許文献2】Straub et al.,Curr Opin.Neurol.10:168-75(1997)
【非特許文献3】Sacco et al.,Cell 143:1059-1071(2010)
【非特許文献4】Wallace et al.,Annu Rev Physiol 71:37-57(2009)
【非特許文献5】Desguerre et al.,J Neuropathol Exp Neurol 68:762-767(2009)
【発明の概要】
【0008】
要旨
本開示は、筋線維を傷害から保護し、筋力を増大させ、線維症を軽減および/または予防するための、骨格筋(横隔膜および心筋が挙げられる)中でヒトマイクロ-ジストロフィン遺伝子を発現する本明細書中に記載の懸濁シードプロセスによって産生された遺伝子治療ベクター(例えば、AAVベクター)に関する。
【0009】
本開示は、懸濁シードプロセスによって哺乳動物接着細胞中で組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンを産生する方法であって、(a)N-2コンテナ中で、細胞を、血清を含む第1の成長培地を用いて培養する工程;(b)前述の第1の培地から前述の細胞を取り出す工程;(c)N-1コンテナ中で、前述の工程(b)由来の細胞を、血清を含まないか、前述の第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に接種する工程;(d)前述のN-1コンテナ中で前述の細胞を懸濁条件下で培養する工程;および(e)バイオリアクター中の第3の培地に前述の工程(d)由来の細胞を接種する工程を含む、方法を提供する。
【0010】
いくつかの態様では、本明細書中に記載の方法で使用されるrAAVは、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含む。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含む。
【0011】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、(f)前述の接着細胞を、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミド、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミド、ならびにアデノウイルスヘルパープラスミドでトランスフェクトする工程をさらに含む。
【0012】
いくつかの態様では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミドは、配列番号9の核酸配列;配列番号3のヌクレオチド55~5021;または配列番号8のヌクレオチド1~4977を含む。いくつかの態様では、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミドは、AAV2rep遺伝子およびrAAVrh74cap遺伝子を含む。いくつかの態様では、アデノウイルスヘルパープラスミドは、アデノウイルス5型のE2A遺伝子、E4ORF6遺伝子、およびVA RNA遺伝子を含む。
【0013】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、(g)接着細胞を溶解する工程をさらに含む。いくつかの態様では、接着細胞を、凍結融解、固体せん断、高張および/もしくは低張溶解、液体せん断、超音波処理、高圧押出し、界面活性剤溶解、またはこれらの組み合わせによって溶解する。
【0014】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、(h)少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップによってrAAVを精製する工程をさらに含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップは、陰イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、またはこれらの組み合わせを含む。
【0015】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、N-3コンテナ中で、細胞を、第1の成長培地を用いて培養する工程をさらに含む。いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、N-4コンテナ中で、細胞を、第1の成長培地を用いて培養する工程をさらに含む。
【0016】
いくつかの態様では、バイオリアクターは接着性バイオリアクターである。いくつかの態様では、rAAVを、接着性バイオリアクター中で産生された培養物から精製する。
【0017】
いくつかの態様では、バイオリアクター中の第3の培地は、少なくとも1つの細胞接着を促進する因子を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの細胞接着を促進する因子は、血清、FBS、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、カルシウムイオン、細胞外基質のプロテオグリカンまたは非プロテオグリカンポリサッカリド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、バイオリアクター中の第3の培地は、DMEMおよび10%FBSを含む。
【0018】
いくつかの態様では、接着細胞を、懸濁条件下で約48~72時間培養する。
【0019】
いくつかの態様では、N-1コンテナは懸濁振盪フラスコである。
【0020】
いくつかの態様では、接着細胞は、HeLa細胞、CHO細胞、HEK-293細胞、VERO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、およびCOS細胞からなる群から選択される。いくつかの態様では、接着細胞は、HeLa細胞またはHEK-293細胞である。いくつかの態様では、接着細胞はHEK-293細胞である。いくつかの態様では、接着細胞は、懸濁に適合していない。いくつかの態様では、細胞を懸濁条件下で培養する工程は、細胞の接着依存性を変化させない。いくつかの態様では、培養する工程は、細胞を、新規の細胞株を作出するように変化させない。
【0021】
また、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンを含む組成物であって、前述のrAAVが本明細書中に記載の方法のうちのいずれかによって作製される、組成物を提供する。いくつかの態様では、組成物は、a)配列番号9の核酸配列を含むrAAV粒子;b)配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV粒子;および/またはc)配列番号8のヌクレオチド1~4977を含むrAAV粒子を含む。
【0022】
いくつかの態様では、本開示は、筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置するための組成物であって、前述の組成物は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAV.rh74MHCK7.マイクロジストロフィンを含み、ここで、rAAVは接着細胞中で産生され、接着細胞はN-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養される、組成物を提供する。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含む。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号7のMHCK7プロモーター配列および配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列を含む。
【0023】
いくつかの態様では、組成物は、(a)配列番号9の核酸配列を含むrAAV;(b)配列番号9の核酸配列を含むrAAV粒子;(c)配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV;(d)配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV粒子;(e)配列番号8のヌクレオチド1~4977を含むrAAV;および/または(f)配列番号8のヌクレオチド1~4977を含むrAAV粒子を含む。
【0024】
また、本開示は、筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置する方法であって、本明細書中に記載のrAAVを含む組成物を前述のヒト被験体に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの態様では、rAAVを、全身投与経路を使用し、約5.0×1012vg/kg~約1.0×1015vg/kgの用量で投与する。いくつかの態様では、全身投与経路は静脈内経路であり、rAAVの投与用量は約2×1014vg/kgである。
【0025】
いくつかの態様では、rAAVの用量を、約10mL/kgの濃度で投与する。いくつかの態様では、rAAVを、注射、注入、または移植によって投与する。いくつかの態様では、rAAVを、およそ1時間にわたって注入によって投与する。いくつかの態様では、rAAVを、四肢の末梢静脈を介した静脈内経路によって投与する。
【0026】
いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィである。いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィである。
【0027】
いくつかの態様では、被験体の細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現レベルは、rAAVの投与後にrAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現レベルと比較して増加する。いくつかの態様では、細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、rAAVの投与前および投与後に生検を実施した筋肉中のウェスタンブロットによってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。いくつかの態様では、発現は、rAAVの投与後に投与前と比較して少なくとも55.4%である。
【0028】
いくつかの態様では、被験体の筋肉組織中のマイクロ-ジストロフィン陽性線維の平均百分率は、rAAVの投与後に、rAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィン陽性線維数と比較して増加する。いくつかの態様では、rAAVの投与前および投与後の筋生検において免疫蛍光(IF)によって検出した場合、マイクロ-ジストロフィン陽性線維の平均百分率は少なくとも70.5%であり、平均強度は少なくとも116.9%である。いくつかの態様では、ベクターゲノムカウントによるマイクロ-ジストロフィン形質導入は、核あたり少なくとも3.87の平均ベクターゲノムコピー数である。
【0029】
いくつかの態様では、組成物を、遺伝子型判定した患者に投与する。いくつかの態様では、患者のヒトジストロフィン(DMD)遺伝子を、遺伝子型判定する。いくつかの態様では、遺伝子型判定した患者を、ヒトジストロフィン(DMD)遺伝子のエクソン18~79中の少なくとも1つの変異について遺伝子型判定する。
【0030】
いくつかの態様では、筋ジストロフィを処置する方法は、前述のヒト被験体のDMD遺伝子を、前述のヒト被験体への前述の組成物の投与前に遺伝子型判定する工程をさらに含む。いくつかの態様では、遺伝子型判定は、DMD遺伝子のエクソン18~79中の少なくとも1つの変異を検出する。いくつかの態様では、少なくとも1つの変異は、ヒトジストロフィンタンパク質が発現しなくなるフレームシフト欠失、フレームシフト重複、未熟終止、または他の病原性バリアントである。
【0031】
また、本開示は、筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置するための本明細書中に記載の組成物の使用を提供する。いくつかの態様では、また、本開示は、筋ジストロフィの処置のための医薬の製造における本明細書中に記載の組成物の使用を提供する。
【0032】
いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィである。いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、rAAV.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を示す。この構築物では、cDNA発現カセットは、AAV2逆位末端反復配列(ITR)に隣接している。構築物は、インフレームのロッド欠失(R4-R23)を特徴とし、一方、ヒンジ1、2、および4(H
1、H
2、およびH
4)ならびにシステインリッチドメインは依然として138kDaタンパク質を産生する。マイクロ-ジストロフィンタンパク質(3579bp)の発現は、MHCK7プロモーター(795bp)によってガイドされる。イントロンおよび5’UTRは、プラスミドpCMVβ(Clontech)に由来する。マイクロ-ジストロフィンカセットは、ATG開始コドンおよびmRNA終結のための小型の53bp合成ポリAシグナルの直前にコンセンサスKozakを有していた。ヒトマイクロ-ジストロフィンカセットは、Harper et al.(Nature Medicine 8:253-261(2002))によって以前に記載された(R4-R23/Δ71-78)ドメインを含んでいた。
【0034】
【
図2-1】
図2は、AAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの核酸配列(配列番号3)を提供する。
【0035】
【
図3】
図3は、pNLREP2-Caprh74 AAV ヘルパープラスミドマップを提供する。
【0036】
【
図4】
図4は、AdヘルパープラスミドpHELPを提供する。
【0037】
【
図5】
図5は、rAAV.MCK.マイクロ-ジストロフィンプラスミド構築物を示す。
【0038】
【
図6-1】
図6は、rAAVrh74.MCK.マイクロ-ジストロフィンの核酸配列(配列番号5)を提供する。
【0039】
【
図7】
図7は、免疫細胞化学によって測定した場合の腓腹筋生検の筋線維中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子発現を実証する。
【0040】
【
図8-1】
図8A~8Cは、正確な分子量でのマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現を実証しているウェスタンブロットを提供する。
図8Aおよび8Bでは、ウェスタンブロット分析により、被験体1(5歳)、被験体2(4歳)、および被験体3(6歳)においてマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現が検出された。
図8Cでは、被験体4の試料(*)を、最初の分析でULDQ(80%超)を超えたので1:4(線形範囲まで)に希釈し、正常と比較する最終値を得るために、平均値に希釈補正係数を乗じた。正常に対する平均マイクロ-ジストロフィン発現は、方法1において182.7%および方法2において222.0%であった。
【0041】
【
図9-1】
図9A~9Cは、被験体1(
図9A)、被験体2(
図9B)、および被験体3(
図9C)においてrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンがDAPCタンパク質(アルファ-サルコグリカンおよびベータ-サルコグリカン)の発現を上方制御することを実証している。
【0042】
【
図10】
図10は、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを投与した場合のクレアチンキナーゼ(CK)値の持続的な劇的低下を示すグラフを提供する。
【0043】
【
図11】
図11は、270日目までのベースラインからの平均クレアチンキナーゼ(CK)の変化を示すグラフを提供する。このデータは、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与後に経時的にCKが有意に減少したことを実証している。
【0044】
【
図12】
図12は、270日目までのベースラインからの平均NSAAの変化および平均CKの変化を示すグラフを提供する。このデータは、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与後に経時的にNSAAが有意に増加したことを実証している。
【0045】
【
図13】
図13は、AAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物の4977塩基の核酸配列(配列番号9)を提供する。以下に分子エレメントを説明する:5’ITR(塩基1~145);MHCK7プロモーター(190~981(792塩基));イントロン(991~1140(150塩基));ヒトマイクロ-ジストロフィン配列(1151~4729(3579塩基));ポリAテール(4732~4784(53塩基));および3’ITR(4833~4977(145塩基))。
【0046】
【
図14】
図14は、AAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンプラスミド構築物を示す。
【0047】
【
図15-1】
図15は、カナマイシン耐性遺伝子を含むAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンプラスミド構築物の核酸配列(配列番号8)を提供する。
【0048】
【
図16】
図16は、本明細書中に記載のハイブリッドシードトレイン拡大法の視覚的表示である。
【0049】
【
図17】
図17は、本明細書中に記載のハイブリッドシードトレイン拡大法を使用したAAV粒子産生の視覚的表示である。
【0050】
【
図18】
図18A~18Bは、本明細書中に開示のハイブリッドシードトレイン拡大法に従って培養した場合(
図18A)および接着条件下のみで培養した場合(
図18B)のHEK-293細胞の生存能を示すグラフを提供する。
【0051】
【
図19】
図19A~19Bは、本明細書中に開示のハイブリッドシードトレイン拡大法に従って培養した場合(
図19A)および接着条件下のみで培養した場合(
図19B)のHEK-293細胞の生存細胞密度を示すグラフを提供する。
【0052】
【
図20】
図20は、実施例7に記載のコホート1(rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンで処置した第1の11人の患者)由来の平均NSAAスコアを示すグラフである。第1の11人の患者は、ベースラインから3ポイント改善した。6~7歳(n=9)では、ベースラインから2.9ポイント改善した。各時点は、11人の患者を示す。
【0053】
【
図21】
図21A~21Cは、実施例11で考察するように、生理食塩水(
図21A)と比較した、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の12週間後(
図21B)および24週間後(
図21C)のDMD
mdxラットの骨格筋および心筋中のマイクロ-ジストロフィンの発現(免疫蛍光)を実証する。略語:LTA=左前脛骨筋;HRT=心臓。
【0054】
【
図22】
図22A~22Bは、実施例11で考察するように、デランディストロゲンモキセパルボベック(delandistrogene moxeparvove)での処置の12週間後および24週間後のDMD
mdxラットの筋組織中のマイクロ-ジストロフィン発現(免疫蛍光)(
図22A)およびベクター形質導入(ベクターゲノムコピー数)(
図22B)の定量を示す棒グラフである。略語:TA=脛骨筋;HRT=心臓;MG=内側腓腹筋;LG=外側内側腓腹筋;DIA=横隔膜;TRI=三頭筋;PSO=大腰筋。
【0055】
【
図23】
図23A~23Bは、実施例11で考察するように、生理食塩水と比較した、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の12週間後および24週間後のDMD
mdxラットにおける歩行(
図23A)および立ち上がり行動(
図23B)の増加を示す棒グラフである。活動ケージ中でのラットの運動(歩行および立ち上がり行動)を、1時間あたりのレーザー光線の遮断数によって測定した。各ポイントは、各動物についての値を示す。データを平均±SDとして報告する;
***=p<0.001;
**=p<0.01。SD=標準偏差。
【0056】
【
図24-1】
図24A~24Bは、実施例11で考察するように、生理食塩水と比較して、DMD
mdxラットにおけるデランディストロゲンモキセパルボベック遺伝子導入の12週間後および24週間後の骨格筋における中心核形成分析によって筋肉変性が有意に軽減したこと示す。
図24Aは、腓腹筋のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を示す。
図24Bは、中心核を有する線維の百分率を示す棒グラフである。バーを平均±SDとして報告する;
****=p<0.0001。SD=標準偏差。
【0057】
【
図25-1】
図25A~25Bは、実施例11で考察するように、生理食塩水と比較して、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の12週間後および24週間後にDMD
mdxラットにおいて線維症の軽減を示す、骨格筋および心筋中のコラーゲン沈着の分析を示す。
図25Aは、処置12時間後のマッソントリクローム(Trichome)染色を示す。
図25Bは、処置の12週間後および24週間後についての骨格筋および心筋中のコラーゲン沈着を定量した棒グラフを提供する。略語:HRT=心臓;MG=内側腓腹筋;DIA=横隔膜。データを平均±SDとして報告する;
****=p<0.0001;
*=p<0.05。SD=標準偏差。
【0058】
【
図26】
図26は、実施例11で考察するように、生理食塩水と比較して、血中の血清トロポニンIレベルが、DMD
mdxラットにおけるデランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の1週間後および12週間後に有意に変化しないことを示す棒グラフである。バーは、平均+SDを示す。各ポイントは、各動物についての値を示す。
【0059】
【
図27】
図27A~27Cは、実施例11で考察するように、生理食塩水と比較して、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の24週間後のDMD
mdxラットにおける心エコー検査法によって決定された心機能を分析している棒グラフである。
図27Aは、左室収縮末期径(LVESD)についてのデータを示す。
図27Bは、駆出率(%)(EF)についてのデータを示す。
図27Cは、短縮率(%)(FS)についてのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
詳細な説明
本開示は、ヒトマイクロ-ジストロフィンを発現する遺伝子治療ベクター(例えば、rAAV)であって、rAAVが哺乳動物の接着細胞中に産生され、接着細胞がN-1コンテナ中で懸濁条件下にて培養される、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0061】
本開示は、懸濁シードプロセスによって哺乳動物接着細胞中で組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンを産生する方法であって、(a)N-2コンテナ中で、細胞を、血清を含む第1の成長培地を用いて培養する工程;(b)前述の第1の培地から前述の細胞を取り出す工程;(c)N-1コンテナ中で、前述の工程(b)由来の細胞を、血清を含まないか、前述の第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に接種する工程;(d)前述のN-1コンテナ中で前述の細胞を懸濁条件下で培養する工程;および(e)バイオリアクター中の第3の培地に前述の工程(d)由来の細胞を接種する工程を含む、方法を提供する。
【0062】
また、本開示は、本明細書中に開示のrAAVを含む組成物(例えば、医薬組成物)および本明細書中に開示の組成物を使用して筋ジストロフィ(例えば、DMD)を処置する方法を提供する。
【0063】
DMD診断の最初期に行った筋生検において顕著な結合組織増殖が明らかである。筋線維症は、多くの場合に有害である。筋線維症は、結合組織バリアを介した筋内膜の栄養素の正常な通過を減少させ、血流を減少させ、筋肉から血管由来の栄養成分を奪い、四肢拘縮による早期の歩行不能に機能的に寄与する。顕著な筋線維症の結果として、長期間の複数回の処置が試みられる。これを、連続した時点で結合組織増殖を比較する筋生検において観察することができる。この過程は悪化し続け、歩行不能に至り、特に車椅子使用者において制御不能が加速する。
【0064】
線維症を軽減するための並行アプローチを含む早期処置を行わない場合、エクソンスキッピング、終止コドンリードスルー、または遺伝子置換治療の利点を完全に得ることができる可能性は低い。小分子またはタンパク質の置換ストラテジーでさえも、筋線維症を軽減するためのアプローチを使用しない場合に失敗する可能性が高い。AAV.マイクロ-ジストロフィンで処置した既存の線維症を有する老齢mdxマウスにおける以前の研究において、本発明者らが完全な機能回復を達成できなかったことが実証された(Liu,M.et al.,Mol Ther 11:245-256(2005))。DMD心筋症の進行には心室壁中の瘢痕および線維症を伴うことも公知である。
定義
【0065】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般に理解されている意味を有する。矛盾がある場合、定義を含む本出願を優先するであろう。文脈によって別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0066】
本開示を通して、用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、1またはそれを超える実体を指す;例えば、「ポリヌクレオチド」は、1またはそれを超えるポリヌクレオチドを示すと理解される。そのようなものとして、用語「a」(または「an」)、「1またはそれを超える」、および「少なくとも1つの」は、本明細書中で互換的に使用され得る。
【0067】
さらに、本明細書中で使用される「および/または」は、2つの指定した特徴または構成要素の各々の、他の特徴または構成要素を含むか含まない具体的開示と解釈されるものとする。従って、本明細書中の「Aおよび/またはB」などの句で使用される用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)が含まれることが意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの句で使用される用語「および/または」は、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0068】
用語「約」を、およそ、大体、おおよそ、またはその領域内を意味するために本明細書中で使用する。用語「約」を数値範囲と併せて使用する場合、これは、記載した数値の上下の境界を拡大することによってその範囲を修正する。別段の指示がない限り、一般に、用語「約」は、本明細書中で、記載した値の上下10パーセントのばらつきに数値を修正する(上げるまたは下げる(より高くするまたはより低くする))ために使用される。
【0069】
1つの数値または一連の数値の前の「少なくとも」という用語は、文脈から明確な場合、用語「少なくとも」に隣接する数値、および論理的に含まれ得る全ての後続の数値または整数を含むと理解される。例えば、核酸分子中のヌクレオチド数は、整数でなければならない。例えば、「21ヌクレオチドの核酸分子の少なくとも18ヌクレオチド」は、18、19、20、または21ヌクレオチドが表示の性質を有することを意味する。一連の数値または範囲の前に少なくともが存在する場合、「少なくとも」が一連の数値または範囲中の各々の数値を修飾することができると理解される。また、「少なくとも」は、整数に制限されない(例えば、「少なくとも5%」には、有効数字の数値を考慮することなく、5.0%、5.1%、5.18%が含まれる)。
【0070】
具体的に他の意味を示さない限り、本明細書中ではヌクレオチド配列を右から左に5’から3’への方向で一本鎖のみを示す。ヌクレオチドおよびアミノ酸を、本明細書中では、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する様式で、または(アミノ酸については)一文字表記または三文字表記のいずれかによって、共に連邦規則集37編§1.822および確立された用法にしたがって示す。
【0071】
本明細書中で使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、ホスホジエステル結合によって連結したヌクレオチド配列を意味する。ポリヌクレオチドを、本明細書中では、5’から3’の方向で示す。本開示のポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)分子またはリボ核酸(RNA)分子であり得る。ヌクレオチド塩基を、本明細書中で、以下の一文字表記によって示す:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)、およびウラシル(U)。
【0072】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、別段の指示がない限り、ペプチドおよびタンパク質の両方を包含する。
【0073】
用語「コード配列」または「コードする」配列を、本明細書中で、特定のタンパク質(例えば、インスリンまたはグルコキナーゼなど)を「コードする」DNA領域またはRNA領域(転写された領域)を意味するために使用する。コード配列は、適切な調節領域(プロモーターなど)の調節下に置かれた場合にin vitroまたはin vivoで転写され(DNA)、ポリペプチドに翻訳される(RNA)。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列としては、原核生物または真核生物由来のcDNA、原核生物または真核生物由来のゲノムDNA、および合成DNA配列を挙げることができるが、これらに限定されない。転写終結配列を、コード配列の3’側に配置することができる。
【0074】
遺伝子は、いくつかの作動可能に連結された断片(プロモーター、5’リーダー配列、イントロン、コード配列、および3’非翻訳配列(例えば、ポリアデニル化部位またはシグナル配列を含む)など)を含むことができる。本明細書中で使用される場合、「遺伝子の発現」は、遺伝子がRNAに転写され、そして/または活性タンパク質に翻訳される過程を指す。
【0075】
本明細書中で使用される場合、用語「プロモーター」は、遺伝子の転写開始部位の転写方向に対して上流に配置された1またはそれを超える遺伝子(またはコード配列)の転写を調節するように機能する核酸配列または断片を指し、DNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位、および任意の他のDNA配列(転写因子結合部位、サプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位、ならびにプロモーターからの転写量を直接または間接的に制御することが当業者に公知の任意の他のヌクレオチド配列が挙げられるが、これらに限定されない)の存在によって構造的に同定される。「構成的」プロモーターは、ほとんどの生理学的条件および発生条件下で活性なプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、生理学的条件および発生条件に依存して制御されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特定の分化細胞/組織型で優先的に活性である。
【0076】
本明細書中で使用される場合、用語「エンハンサー」は、隣接遺伝子の転写を刺激または阻害するシス作用エレメントである。また、転写を阻害するエンハンサーは、「サイレンサー」とも称される。エンハンサーは、コード配列および転写領域の下流の位置から数キロベース対(kb)までの距離にわたっていずれかの方向で機能することができる(例えば、コード配列と会合することができる)。
【0077】
用語「作動可能に連結された」は、制御エレメントのヌクレオチド配列(例えば、プロモーターのヌクレオチド配列)の、前述の制御エレメントによって前述のヌクレオチド配列を発現させるための位置決めを指す。
【0078】
本明細書中で使用される場合、用語「導入遺伝子」は、細胞に移入される遺伝子(例えば、マイクロ-ジストロフィン)または核酸分子を指す。導入遺伝子の一例は、治療ポリペプチドをコードする核酸である。いくつかの態様では、遺伝子は存在することができるが、いくつかの場合、遺伝子は、細胞中で正常に発現されないか、不十分なレベルで発現される。この文脈では、「不十分な」は、前述の遺伝子が細胞中で正常に発現されるが、症状および/または疾患を依然として発症し得ることを意味する。ある特定の態様では、導入遺伝子は、遺伝子の発現を増加させるか過剰に発現させることが可能である。導入遺伝子は、細胞に由来する配列を含むことができるか、細胞中に天然に存在しない配列を含むことができるか、両方の組み合わせを含むことができる。ある特定の態様では、導入遺伝子は、遺伝子発現に適切な制御配列に作動可能に連結することができる配列を含むことができる。いくつかの態様では、導入遺伝子は、宿主細胞のゲノムに組み込まれない。
【0079】
本明細書中で使用される場合、用語「AAV」は、アデノ随伴ウイルスの標準的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、同時感染しているヘルパーウイルスによってある特定の機能が提供された細胞中でのみ成長する一本鎖DNAパルボウイルスである。現在、AAVは、13種類の血清型が特徴づけられている。AAVの一般的な情報および概説を、例えば、Carter,1989,Handbook of Parvoviruses,Vol.1,pp.169-228およびBerns,1990,Virology,pp.1743-1764,Raven Press,(New York)に見出すことができる。しかしながら、種々の血清型が、遺伝子レベルにおいてさえも構造および機能の両方において極めて密接に関連していることが周知であるので、これらの同一の原理を追加のAAV血清型に適用可能であることは十分に予想される。(例えば、Blacklowe,1988,pp.165-174 of Parvoviruses and Human Disease,J.R.Pattison,ed.;およびRose,Comprehensive Virology 3:1-61(1974)を参照のこと)。例えば、全てのAAV血清型は、相同rep遺伝子によって媒介される非常に類似した複製特性を見かけ上示す;全てが、3つの関連するキャプシドタンパク質(AAV2中で発現するものなど)を保有する。この類似度は、ゲノムの長さに沿った血清型間の広域の交差ハイブリッド形成;および「逆位末端反復配列」(ITR)に対応する末端での類似の自己アニーリングセグメントの存在を明らかにするヘテロ二重鎖分析によってさらに示唆される。また、類似の感染性パターンは、各血清型における複製機能が類似の制御管理下にあることを示唆している。
【0080】
本明細書中で使用される場合、用語「アデノ随伴ベクター」または「AAVベクター」は、AAV末端反復配列(ITR)に隣接する1またはそれを超える目的のポリヌクレオチド(またはマイクロ-ジストロフィンなどの導入遺伝子)を含むベクターを指す。かかるAAVベクターは、rep遺伝子産物およびcap遺伝子産物をコードして発現するベクターでトランスフェクトされている宿主細胞中に存在するときに複製され、感染性ウイルス粒子にパッケージングされ得る。
【0081】
本明細書中で使用される場合、用語「AAVビリオン」、「AAVウイルス粒子」、または「AAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質およびキャプシド形成したポリヌクレオチドAAVベクターから構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達されるべき導入遺伝子などの野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、この粒子は、典型的には、「AAVベクター粒子」または単純に「AAVベクター」と称される。したがって、AAVベクター粒子の産生は、必然的に、AAVベクターの産生を含む。そのようなものとして、ベクターは、AAVベクター粒子内に含まれる。
【0082】
用語「筋特異的調節エレメント」は、筋組織中の発現に特異的なコード配列の発現を制御するヌクレオチド配列を指す。これらの調節エレメントとしては、エンハンサーおよびプロモーターが挙げられる。本開示は、筋特異的調節エレメントであるMCKH7プロモーター、MCKプロモーター、およびMCKエンハンサーを含む構築物を提供する。
【0083】
「筋肉細胞」または「筋組織」は、任意の種類の筋肉(例えば、骨格筋および平滑筋(例えば、消化管、膀胱、血管、または心組織に由来する))由来の細胞または細胞群を意味する。かかる筋肉細胞は、分化または未分化であり得る(筋芽細胞、筋細胞、筋管、心筋細胞、および心筋芽細胞など)。
【0084】
本明細書中で使用される場合、用語「形質導入」は、レシピエント細胞によってマイクロ-ジストロフィンを発現する、本開示の複製欠損性rAAVを介したin vivoまたはin vitroのいずれかでのマイクロ-ジストロフィンのコード領域のレシピエント細胞への投与/送達を指す。
【0085】
本明細書中で使用される場合、細胞の「トランスフェクション」という用語は、細胞を遺伝的に改変する目的で遺伝子材料を細胞に移入することを意味する。トランスフェクションを、当該分野で公知の種々の手段(例えば、形質導入またはエレクトロポレーション)によって行うことができる。
【0086】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞に送達されるべきポリヌクレオチドを含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。「組換え」は、自然界で一般に見出されるものと異なることを意味する。
【0087】
ベクターまたはウイルスキャプシドに関する「血清型」は、キャプシドタンパク質配列およびキャプシド構造に基づいた免疫学的プロファイルの相違によって定義される。
【0088】
「AAV Cap」は、AAV Capタンパク質、VP1、VP2、およびVP3、ならびにそのアナログを意味する。
【0089】
「AAV Rep」は、AAV Repタンパク質またはそのアナログを意味する。
【0090】
本明細書中で使用される場合、他のエレメントに隣接する配列に関する「隣接する」は、配列に対して上流側および/または下流側(すなわち、5’側および/または3’側)の1またはそれを超える隣接エレメントの存在を示す。用語「隣接する」は、配列が必ず連続していることを示すことを意図しない。例えば、導入遺伝子をコードする核酸と隣接エレメントの間に介在配列が存在し得る。2つの他のエレメント(例えば、ITR)に「隣接する」配列(例えば、導入遺伝子)は、一方のエレメントが配列に対して5’側に配置されており、他方が配列に対して3’側に配置されていること示す;しかしながら、間に介在配列が存在してよい。
【0091】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子治療」は、疾患または症状を処置するための核酸配列(例えば、導入遺伝子(例えば、マイクロ-ジストロフィン)をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む核酸)の、個体の細胞および/または組織への挿入を指す。かかる導入遺伝子は、外因性であり得る。外因性の分子または配列は、処置すべき細胞、組織、および/または個体中に通常は存在しない分子または配列であると理解される。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子型判定」は、ゲノム内の1またはそれを超える位置で細胞および/または被験体の特異的対立遺伝子の組成を、例えば、その位置での核酸配列の決定によって決定するプロセスを指す。遺伝子型判定は、核酸分析および/または核酸レベルでの分析を指す。いくつかの態様では、被験体のヒトジストロフィン遺伝子(DMD)を、本明細書中に開示の組成物を用いた処置が特に実現可能と考えられる遺伝子の変異を特徴づけるために遺伝子型判定する。多数の遺伝子型判定技術が当業者に公知である。
【0093】
用語「ストリンジェントな」を、当該分野で一般的にストリンジェントと理解される条件を指すために使用する。ハイブリッド形成のストリンジェンシーは、温度、イオン強度、および変性剤(ホルムアミドなど)の濃度によって主に決定される。ハイブリッド形成および洗浄についてのストリンジェントな条件の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム(65~68℃)または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミド(42℃)である。Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)を参照のこと。よりストリンジェントな条件(より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤など)も使用してよいが、しかしながら、ハイブリッド形成率に影響を及ぼすであろう。デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成を考慮する場合、追加の例示的なストリンジェントなハイブリッド形成条件には、37℃(14塩基オリゴ用)、48℃(17塩基オリゴ用)、55℃(20塩基オリゴ用)、および60℃(23塩基オリゴ用)での6×SSC(0.05%ピロリン酸ナトリウム含有)中の洗浄が挙げられる。非特異的および/またはバックグラウンドハイブリッド形成を軽減する目的で、他の薬剤をハイブリッド形成緩衝液および洗浄緩衝液に含めてもよい。例は、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニル-ピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、NaDodSO4(SDS)、ficoll、デンハルト溶液、超音波処理済みサケ精子DNA(または他の非相補的DNA)、および硫酸デキストランであるが、他の好適な薬剤も使用することができる。これらの添加物の濃度および型を、ハイブリッド形成条件のストリンジェンシーに実質的に影響を及ぼすことなく変化させることができる。ハイブリッド形成実験を、通常はpH6.8~7.4で行うが、しかしながら、典型的なイオン強度条件では、ハイブリッド形成率は、pHにほぼ依存する。Anderson,M.L.M.et al.,Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach,Ch.4,IRL Press Limited(Oxford,England)(1998)を参照のこと。当業者は、ハイブリッド形成条件を、これらの変動に適合し、配列関連性が異なるDNAとのハイブリッド形成を可能にするために調整することができる。
【0094】
本明細書中で使用される場合、用語「培地(media)」、「培地(medium)」、「細胞培養培地」、「培養培地」、「組織培養培地(tissue culture medium)」、「組織培養培地(tissue culture media)」、および「成長培地」は、成長中の培養真核細胞に栄養を与える栄養素を含む溶液を指す。典型的には、これらの溶液は、最小限の成長および/または生存のために細胞が必要とする必須および非必須のアミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、および微量元素を提供する。また、溶液は、最小の速度を超える成長および/または生存を増強する構成要素(ホルモンおよび成長因子が挙げられる)を含むことができる。溶液は、細胞の生存および増殖に最適なpHおよび塩濃度に配合される。また、培地は、「限定培地」または「既知組成培地」(タンパク質、加水分解物、未知の組成物の構成要素を含まない無血清培地)であり得る。限定培地は、動物由来の構成要素を含まず、全ての構成要素が既知の化学構造を有する。当業者は、限定培地が組換え糖タンパク質またはタンパク質(例えば、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、および他のシグナル伝達分子が挙げられるが、これらに限定されない)を含むことができると理解する。
【0095】
本明細書中で使用される場合、用語「基本培地調合物」または「基本培地」は、補足やある特定の構成要素の選択的除去のいずれによっても改変されていない、細胞培養のために使用される任意の細胞培養培地を指す。
【0096】
本明細書中で使用される場合、用語「培養物」、「細胞培養物」、および「真核細胞培養物」は、真核細胞集団の生存および/または成長に好適な条件下にて培地中で維持されたか成長した、表面に付着しているか(すなわち、接着性)懸濁液中のいずれかの真核細胞集団を指す。当業者に明白なように、本明細書中で使用されるこれらの用語は、哺乳動物細胞集団と集団が懸濁された培地とを含む組み合わせを指すことができる。
【0097】
本明細書中で使用される場合、用語「回分培養」は、細胞培養において最終的に使用される全ての構成要素(培地および細胞自体が挙げられる)が、培養過程の開始時に提供される細胞培養方法を指す。回分培養を、典型的には、いくつかの時点で停止し、培地中の細胞および/または構成要素を採取し、必要に応じて精製する。
【0098】
本明細書中で使用される場合、用語「流加培養」は、培養過程開始後のいくつかの時点で追加の構成要素を培養物に提供する細胞培養方法を指す。流加培養を、基本培地を使用して開始することができる。培養過程開始後のいくつかの時点で追加の構成要素を培養物に提供する培養培地は、フィード培地である。提供される構成要素は、典型的には、培養過程中に枯渇した細胞のための栄養補給剤を含む。流加培養を、典型的には、いくつかの時点で停止し、培地中の細胞および/または構成要素を採取し、必要に応じて精製する。
【0099】
本明細書中で使用される場合、用語「灌流培養」は、培養過程開始後に追加の構成要素を連続的または半連続的に培養物に提供する細胞培養方法を指す。提供される構成要素は、典型的には、培養過程中に枯渇した細胞のための栄養補給剤を含む。培地中の細胞および/または構成要素の一部を、典型的には連続的または半連続的に採取し、必要に応じて精製する。
【0100】
細胞培養の「増殖期」は、細胞が一般に急速に分裂する指数関数的細胞成長期(対数期)を指す。この期の間、細胞を、一定期間(通常は、1~4日間)、細胞成長が最大になるような条件下で培養する。宿主細胞の成長周期を、過度の実験を行うことなく予想される特定の宿主細胞について決定することができる。「細胞成長が最大になる期間およびかかる条件下」などは、特定の細胞株について細胞の成長および分裂に最適であると決定される培地条件を指す。いくつかの態様では、増殖期中、細胞を、特定の細胞株が最適に成長するように、必要な添加物を含む栄養培地中にて、一般に、約25℃~40℃の加湿された制御雰囲気下で培養する。
【0101】
いくつかの態様では、細胞を、およそ1日間と7日間との間の期間(例えば、2日間と6日間の間、例えば、6日間)、増殖期で維持する。特定の細胞のための増殖期の長さを、過度の実験を行うことなく決定することができる。例えば、増殖期の長さは、培養物が成長条件下に維持された場合に可能な限り最大の生存細胞密度の約20%~80%の範囲内の生存細胞密度に特定の細胞を再生するのに十分な期間であろう。いくつかの態様では、「最大成長速度」は、特異的な細胞株/クローンの、細胞が新鮮な培養培地に存在する間のその指数関数的増殖期に測定された(例えば、栄養素が十分に存在し、かつ培養物の任意の構成要素に由来するいかなる有意な成長阻害も存在しない場合の培養中のある時点で測定された)成長速度を指す。
【0102】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞生存能」は、所与の一連の培養条件または多様な実験条件下にて培養物中で細胞が生存する能力を指す。また、本明細書中で使用されるこの用語は、特定の時点での培養物中の生細胞および死細胞の総細胞数に対するその時点で生存している細胞の部分を指す。
【0103】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞密度」は、所与の培地体積中に存在する細胞数を指す。
【0104】
本明細書中で使用される場合、用語「バイオリアクター」または「培養容器」は、哺乳動物細胞培養物の成長のために使用される任意の容器を指す。バイオリアクターは、哺乳動物細胞の培養に有用である限り、任意のサイズであり得る。
【0105】
本明細書中で使用される場合、用語「バイオリアクターの運転」は、細胞培養サイクル中の誘導期、対数期、またはプラトー期の成長期のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0106】
本明細書中で使用される場合、用語「N-l培養容器」、「N-lシードトレイン培養容器」、「N-l容器」、「N1-培養」、または「N1コンテナ」は、N培養容器(製造培養容器)の直前の培養容器を指し、その後のN(製造)培養容器への接種のために高い生存細胞密度まで細胞培養物を成長させるために使用される。N-l培養容器中で成長させる細胞培養物を、N-l培養容器前のいくつかの容器(N-4、N-3、およびN-2容器など)中での細胞培養後に得てもよい。
【0107】
本明細書中で使用される場合、用語「N培養容器」、「製造培養容器」、「N容器」、「Nバイオリアクター」、または「製造バイオリアクター」は、N-lバイオリアクター後のバイオリアクター中の細胞培養物を指す。N培養物を、AAVの産生で使用する。
【0108】
本明細書中で使用される場合、用語「播種」または「接種」は、細胞培養物をバイオリアクターまたは別の容器に提供する過程を指す。1つの態様では、細胞は、別のバイオリアクターまたは容器中で事前に増殖されている。別の態様では、細胞は、バイオリアクターまたは容器への提供直前に凍結融解されている。この用語は、任意の数の細胞(単一細胞が挙げあられる)を指す。
rAAVおよびrAAV(またはrAAVを含む組成物)(例えば、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン)の産生方法
【0109】
本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAV.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを含む組成物であって、ここで、rAAVが哺乳動物接着細胞中で産生され、接着細胞がN-1コンテナ中、懸濁条件下で培養される、組成物を提供する。いくつかの態様では、rAAVは、血清型AAVrh.74(例えば、rAAV.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン)のrAAVである。
【0110】
また、本開示は、懸濁シードプロセスによって哺乳動物接着細胞中で組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンを産生する方法であって、(a)N-2コンテナ中で、細胞を、血清を含む第1の成長培地を用いて培養する工程;(b)前述の第1の培地から前述の細胞を取り出す工程;(c)N-1コンテナ中で、前述の工程(b)由来の細胞を、血清を含まないか、前述の第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に接種する工程;(d)前述のN-1コンテナ中で前述の細胞を懸濁条件下で培養する工程;および(e)バイオリアクター中の第3の培地に前述の工程(d)由来の細胞を接種する工程を含む方法、を提供する:
【0111】
いくつかの態様では、本明細書中に記載の方法で使用されるrAAVは、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含む。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含む。
【0112】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、(f)前述の接着細胞を、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミド、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミド、ならびにアデノウイルスヘルパープラスミドでトランスフェクトする工程をさらに含む。
【0113】
いくつかの態様では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミドは、配列番号9の核酸配列;配列番号3のヌクレオチド55~5021;または配列番号8のヌクレオチド1~4977を含む。いくつかの態様では、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミドは、AAV2rep遺伝子およびrAAVrh74cap遺伝子を含む。いくつかの態様では、アデノウイルスヘルパープラスミドは、アデノウイルス5型のE2A遺伝子、E4ORF6遺伝子、およびVA RNA遺伝子を含む。
【0114】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、(g)接着細胞を溶解する工程をさらに含む。いくつかの態様では、接着細胞を、凍結融解、固体せん断、高張および/もしくは低張溶解、液体せん断、超音波処理、高圧押出し、界面活性剤溶解、またはこれらの組み合わせによって溶解する。
【0115】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、(h)少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップによってrAAVを精製する工程をさらに含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップは、陰イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、またはこれらの組み合わせを含む。
【0116】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、N-3コンテナ中で、細胞を、第1の成長培地を用いて培養する工程をさらに含む。いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、N-4コンテナ中で、細胞を、第1の成長培地を用いて培養する工程をさらに含む。
【0117】
いくつかの態様では、バイオリアクターは接着性バイオリアクターである。いくつかの態様では、rAAVを、接着性バイオリアクター中で産生された培養物から精製する。
【0118】
いくつかの態様では、バイオリアクター中の第3の培地は、少なくとも1つの細胞接着を促進する因子を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの細胞接着を促進する因子は、血清、FBS、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、カルシウムイオン、細胞外基質のプロテオグリカンまたは非プロテオグリカンポリサッカリド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、バイオリアクター中の第3の培地は、DMEMおよび10%FBSを含む。
【0119】
いくつかの態様では、接着細胞を、懸濁条件下で約48~72時間培養する。
【0120】
いくつかの態様では、N-1コンテナは懸濁振盪フラスコである。
【0121】
いくつかの態様では、接着細胞は、HeLa細胞、CHO細胞、HEK-293細胞、VERO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、およびCOS細胞からなる群から選択される。いくつかの態様では、接着細胞は、HeLa細胞またはHEK-293細胞である。いくつかの態様では、接着細胞はHEK-293細胞である。いくつかの態様では、接着細胞は、懸濁に適合していない。いくつかの態様では、細胞を懸濁条件下で培養する工程は、細胞の接着依存性を変化させない。いくつかの態様では、培養する工程は、細胞を、新規の細胞株を作出するように変化させない。
【0122】
いくつかの態様では、哺乳動物接着細胞中でrAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンを産生するために使用される懸濁シードプロセスは、以下を含む:
(a)N-2コンテナ中で、細胞を、血清を含む第1の成長培地を用いて培養する工程;
(b)前述の第1の培地から前述の細胞を取り出す工程;
(c)N-1コンテナ中で、前述の工程(b)由来の細胞を、血清を含まないか、前述の第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に接種する工程;
(d)前述のN-1コンテナ中で前述の細胞を懸濁条件下で培養する工程;
(e)バイオリアクター中の第3の培地に前述の工程(d)由来の細胞を接種する工程、
(f)前述の細胞を、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミド、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミド、およびアデノウイルスヘルパープラスミドでトランスフェクトする工程、
(g)前述の細胞を溶解する工程、および
(h)少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップによってrAAVを精製する工程。
【0123】
いくつかの態様では、rAAVは、国際公開番号WO2019/245973A1号(その全体が本明細書中で参考として明確に援用される)に記載されている。
【0124】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は複製欠損性パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、約4.7kb長であり、145個のヌクレオチド逆位末端反復(ITR)を含む)。AAVには複数の血清型が存在する。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は公知である。例えば、AAV血清型2(AAV2)ゲノムのヌクレオチド配列は、Srivastava et al.,J Virol.45:555-564(1983)に示されている(Ruffing et al.,J Gen Virol.75:3385-3392(1994)によって修正済み)。他の例として、AAV-1の全ゲノムは、Genbank受入番号NC_002077に提供されている;AAV-3の全ゲノムは、Genbank受入番号NC_1829に提供されている;AAV-4の全ゲノムは、Genbank受入番号NC_001829に提供されている;AAV-5ゲノムは、Genbank受入番号AF085716に提供されている;AAV-6の全ゲノムは、Genbank受入番号NC_00 1862に提供されている;AAV-7ゲノムおよびAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれGenbank受入番号AX753246およびAX753249に提供されている(AAV-8に関しては米国特許第7,282,199号および同第7,790,449号も参照のこと);AAV-9ゲノムは、Gao et al.,J.Virol.78:6381-6388(2004)に提供されている;AAV-10ゲノムは、Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)に提供されている;AAV-11ゲノムは、Virology,330(2):375-383(2004)に提供されている。AAVrh.74血清型のクローニングは、Rodino-Klapac et al.,Journal of Translational Medicine 5:45(2007)に記載されている。ウイルスDNA複製(rep)、キャプシド形成/パッケージング、および宿主細胞染色体組み込みを指示するシス作用配列は、ITR内に含まれる。3つのAAVプロモーター(マップ上の相対的な位置からp5、p19、およびp40と命名)は、rep遺伝子およびcap遺伝子をコードする2つのAAV内部読み取り枠の発現を駆動する。2つのrepプロモーター(p5およびp19)は、単一のAAVイントロン(例えば、AAV2ヌクレオチド2107および2227での)の差異的スプライシングと連動して、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、およびrep40)を産生する。repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製を担う複数の酵素特性を保有する。cap遺伝子はp40プロモーターから発現され、3つのキャプシドタンパク質VP1、VP2およびVP3をコードする。オルタナティブスプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位は、3つの関連するキャプシドタンパク質の産生を担う。単一のコンセンサスポリアデニル化部位は、AAVゲノムのマップ位置95に位置する。AAVの生活環および遺伝学は、Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology 158:97-129(1992)に概説されている。
【0125】
AAVは、例えば、遺伝子治療で外来DNAを細胞に送達するためのベクターとして魅力的な独自の特徴を保有している。培養細胞のAAV感染は非細胞変性であり、ヒトおよび他の動物への自然感染は無症状かつ無症候性である。さらに、AAVは多くの哺乳動物細胞に感染し、in vivoで多くの異なる組織を標的にすることが可能である。さらに、AAVは分裂速度の遅い細胞および非分裂細胞に形質導入し、転写活性を示す核エピソーム(染色体外エレメント)として本質的に前述の細胞の生涯にわたって存続することができる。AAVプロウイルスゲノムは、プラスミド中のクローン化DNAとして感染性を示すため、組換えゲノムの構築が可能になる。さらに、AAVの複製、ゲノムのキャプシド形成、および組み込みを指示するシグナルがAAVゲノムのITR内に含まれるので、ゲノム内部のおよそ4.3kb(複製および構造キャプシドタンパク質rep-capをコードする)のいくつかまたはすべては、プロモーター、目的のDNA、およびポリアデニル化シグナルを含む遺伝子カセットなどの外来DNAと置換され得る。repタンパク質およびcapタンパク質はトランスで提供されてもよい。AAVの別の重要な特徴は、非常に安定した頑強なウイルスであることである。AAVはアデノウイルスを不活化するために使用される条件(56℃から65℃で数時間)に容易に耐えるため、AAVの冷蔵保存の重要性は低くなる。AAVは凍結乾燥さえも可能である。最後に、AAVに感染した細胞は重複感染に耐性を示さない。
【0126】
複数の研究により、筋肉における長期(1.5年超)の組換えAAV媒介タンパク質発現が実証されている。Clark et al.,Hum Gene Ther 8:659-669(1997);Kessler et al.,Proc Nat.Acad Sc.USA 93:14082-14087(1996);およびXiao et al.,J Virol 70:8098-8108(1996)を参照のこと。Chao et al.,Mol Ther 2:619-623(2000)and Chao et al.,Mol Ther 4:217-222(2001)も参照のこと。さらに、Herzog et al.、Proc Natl Acad Sci USA 94:5804-5809(1997)およびMurphy et al.、Proc Natl Acad Sci USA 94:13921-13926(1997)に記載のように、筋肉は高度に血管新生しているので、組換えAAV形質導入により、筋肉内注射後の体循環中に導入遺伝子産物が出現した。さらに、Lewis et al.、J Virol.76:8769-8775(2002)は、骨格筋線維が抗体の正しいグリコシル化、折り畳み、および分泌に必要な細胞因子を保有していることを実証しており、これは筋肉が分泌タンパク質治療薬を安定して発現することができることを示している。
【0127】
本開示の組換えAAVゲノムは、本開示の核酸分子および核酸分子に隣接する1またはそれを超えるAAV ITRを含む。rAAVゲノム中のAAV DNAは、組換えウイルスを誘導することができる任意のAAV血清型(AAV血清型AAVrh.74、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、およびAAV-13が挙げられるが、これらに限定されない)に由来し得る。シュードタイプ化rAAVの産生は、例えば、WO01/83692号に開示されている。他のタイプのrAAVバリアント(例えば、キャプシド変異を有するrAAV)も意図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy 22(11):1900-1909(2014)を参照のこと。上記の背景の節で述べたように、種々のAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は、当技術分野で公知である。骨格筋特異的発現を促進するために、AAV1、AAV6、AAV8、またはAAVrh.74を使用することができる。
【0128】
本開示のDNAプラスミドは、本開示のrAAVゲノムを含む。DNAプラスミドは、rAAVゲノムを感染性ウイルス粒子に組み立てるために、AAVのヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、E1欠失アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)の感染が許容され得る細胞に導入される。パッケージングすべきAAVゲノム、rep遺伝子およびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が細胞に提供されるrAAV粒子を産生する技術は、当該技術分野において標準的である。rAAVの産生には、以下の構成要素が単一細胞(本明細書中ではパッケージング細胞として示される)内に存在することが必要である:rAAVゲノム、rAAVゲノムとは別個の(すなわち、rAAVゲノム中にはない)AAV repおよびcap遺伝子、およびヘルパーウイルス機能。AAV rep遺伝子およびcap遺伝子は、組換えウイルスを誘導することができる任意のAAV血清型に由来してよく、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型に由来してよい。これらの血清型には、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAVrh.74、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、およびAAV-13が挙げられるが、これらに限定されない。シュードタイプ化rAAVの産生は、例えば、WO01/83692号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されている。
【0129】
パッケージング細胞を生成する方法は、AAV粒子産生に必要なすべての構成要素を安定に発現する細胞株を作出することである。例えば、AAV repおよびcap遺伝子を欠くrAAVゲノム、rAAVゲノムとは別個のAAV repおよびcap遺伝子、およびネオマイシン耐性遺伝子などの選択マーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)を、細胞のゲノムに組み込む。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al.,Proc.Natl.Acad.S6.USA 79:2077-2081(1982)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む合成リンカーの付加(Laughlin et al.,Gene 23:65-73(1983))などの手順によるか、直接の平滑末端ライゲーション(Senapathy&Carter,J.Biol.Chem.259:4661-4666(1984))によって細菌プラスミドに導入されている。次いで、パッケージング細胞株を、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスに感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大規模産生に好適なことである。適切な方法の他の例は、プラスミドよりもむしろアデノウイルスまたはバキュロウイルスを使用して、rAAVゲノムならびに/またはrepおよびcap遺伝子をパッケージング細胞に導入する。
【0130】
rAAV産生の一般原理は、例えば、Carter,Current Opinions in Biotechnology 1533-539(1992);およびMuzyczka,N.,Curr.Topics Microbial.Immunol.158:97-129(1992)に概説されている。種々のアプローチは、Ratschin et al.、Mol.Cell.Biol.4:2072(1984);Hermonat et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6466(1984);Tratschin et al.、Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985);McLaughlin et al.、J.Virol.、62:1963(1988);およびLebkowski et al.、Mol.Cell.Biol.、7:349(1988).Samulski et al.、J.Virol.、63:3822-3828(1989);米国特許第5,173,414号;WO95/13365号および対応する米国特許第5,658.776号;WO95/13392号;WO96/17947号;PCT/US98/18600号;WO97/09441号(PCT/US96/14423号);WO97/08298号(PCT/US96/13872号);WO97/21825号(PCT/US96/20777号);WO97/06243号(PCT/FR96/01064号);WO99/11764号;Perrin et al.Vaccine 13:1244-1250(1995);Paul et al.Human Gene Therapy 4:609-615(1993);Clark et al.Gene Therapy 3:1124-1132(1996);米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;ならびに米国特許第6,258,595号に記載されている。前述の文書は、その全体が本明細書中で参考として援用され、rAAV産生に関する文書の節に特に重点を置いている。
【0131】
したがって、本開示は、感染性rAAVを産生するパッケージング細胞を提供する。1つの態様では、パッケージング細胞は、HeLa細胞、293細胞、およびPerC.6細胞(同族293株)などの安定に形質転換された癌細胞であり得る。別の態様では、パッケージング細胞は、形質転換癌細胞ではない細胞(継代数の低い293細胞(アデノウイルスのE1で形質転換されたヒト胎児腎臓細胞)、MRC-5細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、WI-38細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、Vero細胞(サル腎臓細胞)、およびFRhL-2細胞(アカゲザル胎児肺細胞)など)である。
【0132】
本開示の組換えAAV(すなわち、感染性キャプシド化rAAV粒子)は、rAAVゲノムを含む。例示的な態様では、両方のrAAVのゲノムはAAVrepDNAおよびAAVcapDNAを欠いている(すなわち、ゲノムのITRの間にAAVrepDNAまたはAAVcapDNAが存在しない)。本開示の核酸分子を含むように構築され得るrAAVの例は、国際特許公開第PCT/US2012/047999号(WO2013/016352号)(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0133】
例示的な態様では、本発明の組換えAAVベクターは、AAVベクタープラスミドであるrAAV.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン、pNLRep2-Caprh74、およびpHELPを使用するトリプルトランスフェクション法(Xiao et al.,J Virol 72:2224-2232(1998))によって産生される。rAAVは、AAV2逆位末端反復配列(ITR)に隣接するマイクロ-ジストロフィン遺伝子発現カセットを含む。AAVrh74ビリオンにキャプシド化されるのはこの配列である。プラスミドは、マイクロ-ジストロフィン配列ならびに遺伝子発現を駆動するためのMHCK7エンハンサーおよび筋肉特異的プロモーターのコアプロモーターエレメントを含む。また、発現カセットは、高レベルの遺伝子発現を促進するためのSV40イントロン(SD/SA)を含み、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルが効率的な転写終結のために使用される。
【0134】
pNLREP2-Caprh74は、血清型rh74由来の4つの野生型AAV2repタンパク質および3つの野生型AAV VPキャプシドタンパク質をコードするAAVヘルパープラスミドである。pNLREP2-Caprh74プラスミドの概略地図を
図3に示す。
【0135】
pHELPアデノウイルスヘルパープラスミドは11,635bpであり、Applied Viromicsから入手した。このプラスミドは、AAV複製に重要なアデノウイルスゲノムの領域、つまり、E2A、E4ORF6、およびVA RNAを含む(アデノウイルスE1機能は、293細胞によって提供される)。このプラスミド中に存在するアデノウイルス配列は、アデノウイルスゲノムの約40%のみを表しており、アデノウイルス末端反復などの複製に重要なシスエレメントを含まない。したがって、かかる産生システムからは感染性アデノウイルスが生成されることは予想されない。pHELPプラスミドの概略マップを
図4に示す。
【0136】
rAAVを、本明細書中に開示するように、当技術分野で標準的な方法によって(カラムクロマトグラフィまたは塩化セシウム勾配などによって)精製し得る。ヘルパーウイルスからrAAVベクターを精製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、Clark et al.,Hum.Gene Ther.10(6):1031-1039(1999);Schenpp and Clark,Methods Mol.Med.69 427-443(2002);米国特許第6,566,118号、およびWO98/09657に開示の方法が挙げられる。
【0137】
1つの態様では、本開示は、筋特異的調節エレメントのヌクレオチド配列、およびマイクロ-ジストロフィンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むrAAVを提供する。例えば、ヌクレオチド配列は、機能的マイクロ-ジストロフィンタンパク質をコードし、ここで、ヌクレオチドは、例えば、配列番号1に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より典型的には少なくとも90%、91%、92%、93%、または94%、さらにより典型的には少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有し、このタンパク質は、マイクロ-ジストロフィン活性を保持する。マイクロジストロフィンタンパク質は、筋肉の収縮中に筋肉膜に安定性をもたらし、例えば、マイクロジストロフィンは、筋肉の収縮中にショック・アブソーバとして作用する。
【0138】
1つの態様では、rAAVは、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン(すなわち、MHCK7プロモーター/エンハンサーによって駆動されるマイクロジストロフィン導入遺伝子を含む核酸発現カセットまたはゲノムをキャプシドで包んでいるrAAV血清型rh74キャプシドのウイルス粒子形態)であり、被験体への投与の文脈においては、非専売薬物名デランディストロゲンモキセパルボベックとも称されている。いくつかの態様では、デランディストロゲンモキセパルボベックを投与した実施形態における被験体の研究に言及する場合、データ(例えば、棒グラフ)を、より簡潔に「処置済み」と示し得る。
【0139】
1つの態様では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、または配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のrAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンであり、ここで、rAAVは、接着細胞中で産生され、接着細胞を、N-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のrAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0140】
また、本開示は、rAAVであって、ここで、そのヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸配列またはその相補物にハイブリッド形成するヌクレオチド配列を含み、機能的マイクロ-ジストロフィンタンパク質をコードする、rAAVを提供する。
【0141】
1つの態様では、rAAVは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンと呼ばれる非複製の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)であり、ここで、rAAVは、接着細胞中で産生され、接着細胞を、N-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する。このベクターゲノムは、遺伝子発現に必要な最小限のエレメント(AAV2 逆位末端反復(ITR)、マイクロ-ジストロフィン、SV40イントロン(SD/SA)、および合成ポリアデニル化(ポリA)シグナルが挙げられる)を含み、これらは全てMHCK7プロモーター/エンハンサーの調節下にある。ベクターゲノムおよび発現カセットの概略図を
図1に示す。AAVrh74血清型を使用して、IV投与後の骨格筋および心筋中に効率的に遺伝子導入することができる。
【0142】
1つの態様では、本開示は、rAAVであって、ここで、筋特異的調節エレメントは、ヒト骨格アクチン遺伝子エレメント、心臓アクチン遺伝子エレメント、筋細胞特異的エンハンサー結合因子(MEF)、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、短縮MCK(tMCK)、ミオシン重鎖(MHC)、ハイブリッドα-ミオシン重鎖エンハンサー-/MCKエンハンサー-プロモーター(MHCK7)、C5-12、マウスクレアチンキナーゼエンハンサーエレメント、骨格速筋トロポニンc遺伝子エレメント、心遅筋トロポニンc遺伝子エレメント、遅筋トロポニンi遺伝子エレメント、低酸素症誘導性核性因子、ステロイド誘導性エレメント、または糖質コルチコイド応答エレメント(GRE)である、rAAVを提供する。
【0143】
例えば、筋特異的調節エレメントは、MHCK7プロモーターヌクレオチド配列(配列番号2または配列番号7)であるか、あるいは筋特異的調節エレメントは、MCKヌクレオチド配列(配列番号4)である。さらに、本開示の任意のrAAVベクター中で、筋特異的調節エレメントのヌクレオチド配列(例えば、MHCK7またはMCKのヌクレオチド配列)は、マイクロ-ジストロフィンタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結される。例えば、MHCK7プロモーターのヌクレオチド配列(配列番号2または配列番号7)は、
図1もしくは
図2(配列番号3)または
図13(配列番号9)に提供された構築物中に記載のヒトマイクロ-ジストロフィンコード配列(配列番号1)に作動可能に連結される。別の例では、MCKプロモーター(配列番号4)は、
図5または
図6に提供される構築物(配列番号5)に示されるように、ヒトマイクロ-ジストロフィンコード配列(配列番号1)に作動可能に連結される。別の態様では、本開示は、配列番号1および配列番号2、または配列番号1および配列番号7のヌクレオチド配列を含むrAAVベクターを提供する。また、本開示は、配列番号1および配列番号4のヌクレオチド配列を含むrAAVベクターを提供する。
【0144】
さらなる態様では、本開示は、配列番号3、配列番号5、配列番号6、または配列番号8のヌクレオチド配列を含むプラスミド中に含まれるrAAV構築物を提供する。例えば、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンベクターは、配列番号3のITR内にあり、かつそれを含み、
図2に示されるヌクレオチド配列を含む。別の態様では、rAAVベクターは、5’ITR、MHCK7プロモーター、キメライントロン配列、ヒトマイクロ-ジストロフィン遺伝子のコード配列、ポリA、および3’ITRを含む。1つの態様では、ベクターは、配列番号3のヌクレオチド55~5021を含む。配列番号3に記載のプラスミドは、アンピシリン耐性およびpBR322複製起点を有するpGEXプラスミドバックボーンをさらに含む。
【0145】
別の態様では、本開示は、配列番号9のヌクレオチド配列を含むrAAVであって、ここで、rAAVは、接着細胞中で産生され、接着細胞を、N-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する、rAAVを提供する。例えば、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンベクター構築物は、配列番号9のヌクレオチド配列を含み、
図13に示される。このrAAVベクター構築物は、MHCK7プロモーター、キメライントロン配列、ヒトマイクロ-ジストロフィン遺伝子のコード配列、およびポリAを含む。1つの態様では、rAAVベクター構築物は、プロモーターの5’側にITR、およびポリAの3’側にITRをさらに含む。1つの態様では、rAAVはAAVrh74である。
【0146】
別の態様では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンベクター(すなわち、ウイルスベクター)は、配列番号8のITR内にあり、かつそれを含み、
図15に示されるヌクレオチド配列を含む。rAAVベクターは、5’ITR、MHCK7プロモーター、キメライントロン配列、ヒトマイクロ-ジストロフィン遺伝子のコード配列、ポリA、および3’ITRを含む。1つの態様では、ベクターは、配列番号9のヌクレオチド1~4977を含む。配列番号3に記載のプラスミドは、カナマイシン耐性およびpBR322複製起点を有するpGEXプラスミドバックボーンをさらに含む。
【0147】
別の態様では、本開示は、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含むプラスミドを提供する。1つの態様では、プラスミドは、5’ITR、MHCK7プロモーター、キメライントロン配列、ヒトマイクロ-ジストロフィン遺伝子のコード配列、ポリA、および3’ITRを含む。1つの態様では、プラスミドはカナマイシン耐性を含み、必要に応じて、pBR322複製起点を有するpGEXプラスミドバックボーンを含む。特定の態様では、プラスミドは配列番号8に記載され、
図14および15に示される。
【0148】
本開示は、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーターヌクレオチド配列を含む組換えAAVベクターであって、ここで、rAAVは、接着細胞中で産生され、接着細胞を、N-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する、組換えAAVベクターを提供する。このrAAVベクターは、AAV血清型AAVrh.74である。
【0149】
また、本開示は、配列番号3中のITR内にあり、かつそれを含むAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物のヌクレオチド配列、配列番号8中のITR内にあり、かつそれを含むヌクレオチド配列、または配列番号9に記載のヌクレオチド配列を含むrAAVをであって、ここで、rAAVは、接着細胞中で産生され、接着細胞を、N-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する、rAAVを提供する。このrAAVベクターは、AAV血清型AAVrh.74である。
【0150】
本開示のrAAVベクターは、任意のAAV血清型(血清型AAVrh.74、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、またはAAV13など)であり得る。
【0151】
また、本開示は、本開示のrAAVベクターのいずれかを含む医薬組成物(または本明細書中では単に「組成物」と呼ばれることもある)も提供する。
【0152】
別の態様では、本開示は、rAAVベクター粒子を産生する方法であって、本開示の任意のrAAVベクターでトランスフェクトされている細胞を培養する工程、およびトランスフェクトされた細胞の上清からrAAV粒子を回収する工程を含む、方法を提供する。また、本開示は、本開示の組換えAAVベクターのいずれかを含むウイルス粒子を提供する。
rAAVを含む組成物およびその投与
【0153】
別の態様では、本開示は、本開示のrAAVを含む組成物を意図する。本開示の組成物は、rAAVおよび薬学的に許容され得る担体を含む。また、組成物は、希釈剤およびアジュバントなどの他の成分を含み得る。許容され得る担体、希釈剤、およびアジュバントは、レシピエントに対して無毒であり、使用される投薬量および濃度で不活性であることが好ましく、緩衝液および表面活性剤(プルロニック(登録商標)など)を含む。
【0154】
本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを含む、筋ジストロフィ(例えば、DMD)の処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置するための組成物であって、ここで、rAAVは、接着細胞中で産生され、接着細胞を、N-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する、組成物を提供する。
【0155】
いくつかの態様では、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンを含む組成物であって、ここで、rAAVを、本明細書中に記載の懸濁シードプロセスによって哺乳動物接着細胞中で産生する、組成物を提供する。いくつかの態様では、組成物は、a)配列番号9の核酸配列を含むrAAV粒子;b)配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV粒子;および/またはc)配列番号8のヌクレオチド1~4977を含むrAAV粒子を含む。
【0156】
本開示の方法で投与されるrAAVの力価は、例えば、特定のrAAV、投与様式、処置目標、個体、および標的となる細胞型(複数可)に応じて変動するであろう。力価は、当該分野で標準的な方法によって決定され得る。rAAVの力価は、mlあたり約1×106、約1×107、約1×108、約1×109、約1×1010、約1×1011、約1×1012、約1×1013~約1×1014またはそれを超えるDNase耐性粒子(DRP)の範囲であり得る。また、投薬量は、ウイルスゲノム(vg)の単位で表され得る。カプセル化ベクターゲノム力価を決定する1つの例示的な方法は、(Pozsgai et al.,Mol.Ther.25:855-869(2017))に記載の方法などの定量的PCRを使用する。
【0157】
in vivoまたはin vitroで標的細胞にrAAVを形質導入する方法が本開示によって意図される。in vivo方法は、有効用量または有効複数回用量の本開示のrAAVを含む組成物を、必要とする動物(ヒトが挙げられる)に投与するステップを含む。障害/疾患の発症前に用量が投与される場合、その投与は予防的である。障害/疾患の発症後に用量が投与される場合、その投与は治療的である。本開示の態様では、有効用量は、処置される障害/病態に関連する少なくとも1つの徴候を軽減(消失または軽減)する、障害/病態への進行を遅らせるか予防する、障害/病態の進行を遅らせるか予防する、疾患の程度を軽減する、疾患の(部分的または完全な)寛解をもたらす、および/または延命する用量である。本開示の方法を用いた予防または処置が意図される疾患の一例は、DMDである。
【0158】
併用療法も本開示によって意図される。本明細書で使用される組み合わせは、同時処置および逐次処置の両方を含む。本開示の方法と標準的な医学的処置(例えば、コルチコステロイド)との組み合わせは、新規の治療法との組み合わせと同様に、特に意図される。
【0159】
有効用量の組成物の投与は、当該分野で標準的な経路(筋肉内、非経口、静脈内、経口、口内、鼻腔、肺、頭蓋内、骨内、眼内、直腸、または膣が挙げられるが、これらに限定されない)によるものであり得る。本開示のrAAVのAAV構成要素(特に、AAV ITRおよびキャプシドタンパク質)の投与経路(複数可)および血清型(複数可)は、処置中の感染症および/または疾患状態ならびにマイクロ-ジストロフィンタンパク質を発現することになる標的細胞/組織(複数可)を考慮して当業者によって選択および/または適合され得る。
【0160】
本開示は、有効用量の本開示のrAAVおよび組成物の局所投与および全身投与を提供する。例えば、全身投与は、全身が影響を受けるように循環系に投与される。全身投与としては、胃腸管を通した吸収などの経腸投与および注射、注入、または移植による非経口投与が挙げられる。
【0161】
特に、本開示のrAAVの実際の投与は、rAAV組換えベクターを動物の標的組織に輸送する任意の物理的方法を使用することによって達成され得る。本開示による投与としては、筋肉への注射および血流への注射が挙げられるが、これらに限定されない。rAAVをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁するだけで、筋組織発現に有用なビヒクルを提供するのに十分であることが実証されており、rAAVと同時投与できる担体や他の成分については既知の制限はない(とはいえ、rAAVを用いた通常の様式では、DNAを分解する組成物は回避されるべきである)。rAAVのキャプシドタンパク質は、rAAVが筋肉などの特定の目的の標的組織を標的とするように改変され得る。例えば、WO02/053703号(その開示が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。医薬組成物を、注射用製剤として、または経皮輸送によって筋肉に送達される局所用製剤として調製することができる。筋肉内注射および経皮輸送の両方のための多数の製剤が以前に開発されており、本開示の実施で使用することができる。rAAVを、投与および取り扱いを容易にするために、任意の薬学的に許容され得る担体とともに使用することができる。
【0162】
本開示の1つの態様では、本明細書中に記載のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、20mM Tris(pH8.0)、1mM塩化マグネシウム(MgCl2)、200mM塩化ナトリウム(NaCl)、および0.001%ポロクサマー188を含む緩衝液中で製剤化される。
【0163】
本明細書中に開示の方法で投与すべきrAAVの用量は、例えば、特定のrAAV、投与様式、処置目標、個人、および標的となる細胞型に応じて変化するであろう。前述の用量は、当該分野で標準的な方法によって決定され得る。投与される各rAAVの力価は、mlあたり約1×106、約1×107、約1×108、約1×109、約1×1010、約1×1011、約1×1012、約1×1013、約1×1014、約2×1014、または約1×1015またはそれを超えるDNase耐性粒子(DRP)の範囲であり得る。また、投薬量は、ウイルスゲノム(vg)の単位で表され得る(すなわち、それぞれ、1×107vg、1×108vg、1×109vg、1×1010vg、1×1011vg、1×1012vg、1×1013vg、1×1014vg、2×1014vg、1×1015vg)。また、投薬量は、体重1キログラム(kg)あたりのウイルスゲノム(vg)の単位で表され得る(すなわち、それぞれ、1×1010vg/kg、1×1011vg/kg、1×1012vg/kg、1×1013vg/kg、1×1014vg/kg、1.25×1014vg/kg、1.5×1014vg/kg、1.75×1014vg/kg、2.0×1014vg/kg、2.25×1014vg/kg、2.5×1014vg/kg、2.75×1014vg/kg、3.0×1014vg/kg、3.25×1014vg/kg、3.5×1014vg/kg、3.75×1014vg/kg、4.0×1014vg/kg、1×1015vg/kg)。AAVの力価を測定する方法は、Clark et al.,Hum.Gene Ther.,10:1031-1039(1999)に記載されている。
【0164】
特に、本開示のrAAVの実際の投与は、rAAV組換えベクターを動物の標的組織に輸送する任意の物理的方法を使用することによって達成され得る。本開示による投与としては、筋肉への注射および血流への注射が挙げられるが、これらに限定されない。rAAVをリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁するだけで、筋組織発現に有用なビヒクルを提供するのに十分であることが実証されており、rAAVと同時投与できる担体や他の成分については既知の制限はない(とはいえ、rAAVを用いた通常の様式では、DNAを分解する組成物は回避されるべきである)。rAAVのキャプシドタンパク質は、rAAVが筋肉などの特定の目的の標的組織を標的とするように改変され得る。例えば、WO02/053703号(その開示が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。医薬組成物を、注射用製剤として、または経皮輸送によって筋肉に送達される局所用製剤として調製することができる。筋肉内注射および経皮輸送の両方のための多数の製剤が以前に開発されており、本開示の実施で使用することができる。rAAVを、投与および取り扱いを容易にするために、任意の薬学的に許容され得る担体とともに使用することができる。
【0165】
筋肉内注射の目的のために、ゴマ油またはピーナッツ油などのアジュバント中の溶液、または水性プロピレングリコール中の溶液、ならびに滅菌水溶液を使用することができる。かかる水溶液は、必要に応じて緩衝することができ、液体希釈剤は最初に生理食塩水またはグルコースと等張にすることができる。遊離酸(DNAは酸性リン酸基を含む)または薬理学的に許容され得る塩としてのrAAVの溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合した水中で調製することができる。また、rAAVの分散液を、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中、ならびに油中で調製することができる。通常の保管および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含む。これに関連して、使用される滅菌水性媒体はすべて、当業者に周知の標準技術によって容易に入手可能である。
【0166】
注射に好適な薬学的担体、希釈剤、または賦形剤は、滅菌水溶液または分散液および注射用の滅菌溶液または懸濁液の即時調製のための滅菌散剤を含む。あらゆる場合において、前述の形態は、無菌でなければならず、シリンジ操作が容易な範囲の流体でなければならない。前述の形態は、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、ならびに植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。微生物作用を、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールなど)によって防止することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用よって、注射用組成物を長期間吸収させることができる。
【0167】
滅菌注射液を、適切な溶媒中に必要量のrAAVを、必要に応じて上記列挙の種々の他の成分と共に組み込み、その後に濾過滅菌することによって調製する。一般に、分散液を、基本分散媒および必要な上記列挙の成分由来の他の成分を含む滅菌ビヒクルに滅菌有効成分を組み込むことによって調製する。滅菌注射液調製用の滅菌散剤の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌した有効成分の溶液から有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。
【0168】
また、rAAVを用いた形質導入はin vitroで実施され得る。1つの態様では、所望の標的筋細胞が被験体から取り出され、rAAVで形質導入され、被験体に再移入される。あるいは、被験体において不適切な免疫応答を生じない同系または異種の筋肉細胞を使用することができる。
【0169】
形質導入および形質導入された細胞の被験体への再移入のための好適な方法は、当該分野で公知である。1つの態様では、例えば、適切な培地中でrAAVを筋肉細胞と組み合わせ、サザンブロットおよび/またはPCRなどの従来の技術を使用して、または選択マーカーを使用して目的のDNAを保有する細胞をスクリーニングすることによって、細胞にin vitroで形質導入することができる。次いで、形質導入された細胞を医薬組成物に製剤化し、その組成物を、筋肉内、静脈内、皮下、および腹腔内注射、または例えばカテーテルを使用した平滑筋および心筋への注射などによる様々な技術によって被験体に移入することができる。
【0170】
本開示のrAAVで細胞を形質導入すると、マイクロ-ジストロフィンタンパク質が持続的に発現する。したがって、本開示は、マイクロ-ジストロフィンタンパク質を発現するrAAVを動物、好ましくはヒトに投与/送達する方法を提供する。これらの方法は、組織(筋肉などの組織、肝臓および脳などの臓器、ならびに唾液腺などの腺が挙げられるが、これらに限定されない)に1またはそれを超える本開示のrAAVを形質導入する工程を含む。形質導入は、組織特異的調節エレメントを含む遺伝子カセットを用いて実行され得る。例えば、本開示の1つの態様は、筋特異的調節エレメント(myoD遺伝子ファミリーなどのアクチンおよびミオシン遺伝子ファミリー(Weintraub et al.,Science,251:761-766(1991)を参照のこと)、筋細胞特異的エンハンサー結合因子MEF-2(Cserjesi and Olson,Mol Cell Biol 11:4854-4862(1991))、ヒト骨格アクチン遺伝子(Muscat et al.,Mol Cell Biol,7:4089-4099(1987))、心臓アクチン遺伝子、筋クレアチンキナーゼ配列エレメント(Johnson et al.,Mol Cell Biol 9:3393-3399(1989)を参照のこと)、およびマウスクレアチンキナーゼエンハンサー(mCK)エレメントに由来する調節エレメント、骨格速筋トロポニンC遺伝子、心遅筋トロポニンC遺伝子、および遅筋トロポニンI遺伝子に由来する調節エレメント:低酸素症誘導性核性因子(Semenza et al.,Proc Natl Acad Sci USA 88:5680-5684(1991))、ステロイド誘導性エレメントおよびプロモーター(糖質コルチコイド応答エレメント(GRE)が挙げられる)(Mader and White,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603-5607(1993)を参照のこと)に由来する調節エレメント、ならびに他の調節エレメントに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない)によって指示される筋肉細胞および筋組織に形質導入する方法を提供する。
【0171】
筋組織は、必須器官ではなく、アクセスが容易であるため、in vivoDNA送達にとって魅力的な標的である。本開示は、形質導入された筋線維からのマイクロ-ジストロフィンの持続的発現を意図する。
【0172】
したがって、本開示は、有効用量(または本質的に同時に投与される用量または間隔をあけて与えられる用量)のマイクロ-ジストロフィンをコードするrAAVを、それを必要とする被験体(筋ジストロフィを有する被験体)に投与する方法を提供する。
【0173】
本開示は、配列番号3、8、または9のヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。また、本開示は、配列番号9の核酸配列または配列番号8のヌクレオチド1~4977または配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV、および配列番号9の核酸配列または配列番号8のヌクレオチド1~4977または配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV粒子を提供し、ここで、rAAVは、接着細胞中で産生され、接着細胞を、N-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する。
【0174】
本開示の別の態様は、配列番号3、8、または9のヌクレオチド配列を含む核酸分子、配列番号9の核酸配列または配列番号8のヌクレオチド1~4977または配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV、および配列番号9の核酸配列または配列番号8のヌクレオチド1~4977または配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV粒子を含む組成物を提供し、ここで、rAAVは、接着細胞中で産生され、接着細胞を、N-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する。本明細書中に開示の方法のいずれかは、これらの組成物を用いて実施され得る。
接着細胞のハイブリッドシードトレインによる拡大
【0175】
本開示のいくつかの態様は、細胞を拡大する方法であって、(a)N-2コンテナ中で、細胞を、血清を含む第1の培地を用いて培養する工程;(b)前述の第1の培地から前述の細胞を取り出す工程;(c)N-1コンテナ中で、前述の工程(b)由来の細胞を、血清を含まないか、前述の第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に接種する工程;(d)前述のN-1コンテナ中で前述の細胞を懸濁条件下で培養する工程;および(e)バイオリアクター中の第3の培地に前述の工程(d)由来の細胞を接種する工程を含む、方法に関する。1つの態様では、第2の培地は無血清培地である。別の態様では、第2の培地は、第1の培地中の血清濃度より低い濃度の血清を含む。
【0176】
本開示のいくつかの態様は、シードトレイン拡大方法であって、(a)N-3コンテナ中で、細胞を、血清を含む第1の培地を用いて培養する工程;(b)前述の第1の培地から前述の細胞を取り出す工程;(c)N-2コンテナ中で、前述の工程(b)由来の細胞を、血清を含まないか、前述の第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に接種する工程;(d)前述のN-2コンテナ中で前述の細胞を懸濁条件下で培養する工程;(e)およびN-1容器中の前述の第2の培地に前述の工程(d)由来の細胞を接種する工程;および(f)バイオリアクター中の第3の培地に前述の工程(d)由来の細胞を接種する工程を含む、方法に関する。1つの態様では、第2の培地は無血清培地である。別の態様では、第2の培地は、第1の培地中の血清濃度より低い濃度の血清を含む。
【0177】
本開示のいくつかの態様は、接着細胞の細胞拡大方法であって、(a)血清を含む第1の培地中で接着細胞を接着条件下で培養する工程;(b)第1の培地から接着細胞を取り出す工程;(c)接着細胞を、血清を含まないか、第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に懸濁する工程;(d)前述の接着細胞を懸濁条件下で培養する工程;および(e)バイオリアクター中の第3の培地に、工程(d)由来の接着細胞を接種する工程を含む、方法に関する。いくつかの態様では、方法は、工程(a)の接着細胞を、接着条件下で少なくとも1回継代することをさらに含むことができる。いくつかの態様では、方法は、工程(d)の接着細胞を、懸濁条件下で少なくとも1回継代することをさらに含むことができる。1つの態様では、第2の培地は無血清培地である。別の態様では、第2の培地は、N-1コンテナ中の第1の培地より低い濃度の血清を含む。
【0178】
第1の培地、第2の培地、および第3の培地は、培養される特定の細胞に好適な任意の培地であり得る。いくつかの態様では、培地は、例えば、無機塩、炭水化物(例えば、グルコース、ガラクトース、マルトース、またはフルクトースなどの糖)、アミノ酸、ビタミン(例えば、ビタミンB群(例えば、B12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミン、およびビオチン)、脂肪酸および脂質(例えば、コレステロールおよびステロイド)、タンパク質およびペプチド(例えば、アルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチン、およびフェチュイン)、血清(例えば、アルブミン、成長因子および成長抑制物質、例えば、ウシ胎児血清、新生仔ウシ血清、およびウマ血清を含む組成物)、微量元素(例えば、亜鉛、銅、セレン、およびトリカルボン酸中間体)、加水分解産物(植物源および動物源由来の加水分解タンパク質)、およびこれらの組み合わせを含む。成長培地は、5倍濃縮DMEM/F12(Invitrogen)、CD OptiCHO feed(Invitrogen)、CD EfficientFeed(Invitrogen)、Cell Boost(HyClone)、BalanCD CHO Feed(Irvine Scientific)、BD Recharge(Becton Dickinson)、Cellvento Feed(EMD Millipore)、Ex-cell CHOZN Feed(Sigma-Aldrich)、CHO Feed Bioreactor Supplement(Sigma-Aldrich)、SheffCHO(Kerry)、Zap-CHO(Invitria)、ActiCHO(PAA/GE Healthcare)、Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地([MEM]、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地([DMEM]、Sigma)などの市販の培地であり得る。
【0179】
いくつかの態様では、血清を含まないか、第1の血清より低い濃度の血清を含む無血清二次成長培地は、細胞の係留を支持すると考えられるカルシウムイオン、ウシ胎児血清(FBS)、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、細胞外基質のプロテオグリカンまたは非プロテオグリカンポリサッカリドを実質的に含まない(超微量以下を含む)。1つの態様では、第2の培地は無血清培地である。別の態様では、第2の培地は、第1の培地中の血清濃度より低い濃度の血清を含む。
【0180】
いくつかの態様では、成長培地は、約6.5と約7.5との間、約6.5と約7.4との間、約6.5と約7.3との間、約6.5と約7.2との間、約6.5と約7.1との間、約6.5と約7.0との間、約6.5と約6.9との間、約6.5と約6.8との間、約6.5と約6.7との間、約6.6と約7.5との間、約6.6と約7.4との間、約6.6と約7.3との間、約6.6と約7.2との間、約6.6と約7.1との間、約6.6と約7.0との間、約6.6と約6.9との間、約6.6と約6.8との間、約6.7と約7.5との間、約6.7と約7.4との間、約6.7と約7.3との間、約6.7と約7.2との間、約6.7と約7.1との間、約6.7と約7.0との間、約6.7と約6.9との間、約6.8と約7.5との間、約6.8と約7.4との間、約6.8と約7.3との間、約6.8と約7.2との間、約6.8と約7.1との間、約6.8と約7.0との間、約6.9と約7.5との間、約6.9と約7.4との間、約6.9と約7.3との間、約6.9と約7.2との間、約6.9と約7.1との間、約7.0と約7.5との間、約7.0と約7.4との間、約7.0と約7.3との間、約7.0と約7.2との間、約7.1と約7.5との間、約7.1と約7.4との間、約7.1と約7.3との間、約7.2と約7.5との間、約7.2と約7.4、または約7.3と約7.5との間のpHを有することができる。
【0181】
いくつかの態様では、細胞を、32℃~約39℃、約32℃~約37℃、約32℃と約37.5℃との間、約34℃と約37℃との間、約35℃と約37℃との間、約35.5℃と約37.5℃との間、約36℃と約37℃との間、または約36.5℃の温度で培養することができる。いくつかの態様では、細胞を、培養期間の開始から終了まで約37℃の温度で培養することができる。いくつかの態様では、温度は、変化させることができるか、培養期間中(例えば、時間または日の単位で)わずかに変動してよい。いくつかの態様では、温度を、培養期間開始から約1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、14日後、もしくは15日後、または培養期間内の任意の時点で変化させるか移行(例えば、増加または減少)することができる。いくつかの態様では、温度を、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10.0℃上方へ移行させることができる。いくつかの態様では、温度を、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10℃下方へ移行させることができる。
【0182】
いくつかの態様では、約1%~約15%CO2を含む大気を使用して細胞を培養することができる。いくつかの態様では、約14%CO2、12%CO2、10%CO2、8%CO2、6%CO2、5%CO2、4%CO2、3%CO2、2%CO2、または約1%CO2を含む大気を使用して細胞を培養することができる。
【0183】
いくつかの態様では、細胞培養物中の溶存酸素(dO2)を、約3%と約55%との間、約3%と約50%との間、約3%と約45%との間、約3%と約40%との間、約3%と約35%との間、約3%と約30%との間、約3%と約25%との間、約3%と約20%との間、約3%と約15%との間、約5%と約55%との間、約5%と約50%との間、約5%と約45%との間、約5%と約40%との間、約5%と約35%との間、約5%と約30%との間、約5%と約25%との間、約5%と約20%との間、約5%と約15%との間、約5%と約10%との間、約10%と約55%との間、約10%と約50%との間、約10%と約45%との間、約10%と約40%との間、約10%と約35%との間、約10%と約30%との間、約10%と約25%との間、約10%と約20%との間、約15%と約55%との間、約15%と約50%との間、約15%と約45%との間、約15%と約40%との間、約15%と約35%との間、約15%と約30%との間、約15%と約25%との間、約15%と約20%との間、約20%と約55%との間、約20%と約50%との間、約20%と約45%との間、約20%と約40%との間、約20%と約35%との間、約20%と約30%との間、約20%と約25%との間、約25%と約55%との間、約25%と約50%との間、約25%と約45%との間、約25%と約40%との間、約25%と約35%との間、約25%と約30%との間、約30%と約55%との間、約30%と約50%との間、約30%と約45%との間、約30%と約40%との間、約30%と約35%との間、約35%と約55%との間、約35%と約50%との間、約35%と約45%との間、約35%と約40%との間、約40%と約55%との間、約40%と約50%との間、約40%と約45%との間、約45%と約55%との間、約45%と約50%との間、または約50%と約55%との間に維持することによって細胞を培養することができる。
【0184】
いくつかの態様では、細胞培養物のpHを、塩基溶液(アルカリ塩基溶液など)の添加によって特異的pH値に維持することができる。細胞培養物のpHを、約6.5と約7.5との間、約6.5と約7.4との間、約6.5と約7.3との間、約6.5と約7.2との間、約6.5と約7.1との間、約6.5と約7.0との間、約6.5と約6.9との間、約6.5と約6.8との間、約6.5と約6.7との間、約6.6と約7.5との間、約6.6と約7.4との間、約6.6と約7.3との間、約6.6と約7.2との間、約6.6と約7.1との間、約6.6と約7.0との間、約6.6と約6.9との間、約6.6と約6.8との間、約6.7と約7.5との間、約6.7と約7.4との間、約6.7と約7.3との間、約6.7と約7.2との間、約6.7と約7.1との間、約6.7と約7.0との間、約6.7と約6.9との間、約6.8と約7.5との間、約6.8と約7.4との間、約6.8と約7.3との間、約6.8と約7.2との間、約6.8と約7.1との間、約6.8と約7.0との間、約6.9と約7.5との間、約6.9と約7.4との間、約6.9と約7.3との間、約6.9と約7.2との間、約6.9と約7.1との間、約7.0と約7.5との間、約7.0と約7.4との間、約7.0と約7.3との間、約7.0と約7.2との間、約7.1と約7.5との間、約7.1と約7.4との間、約7.1と約7.3との間、約7.2と約7.5との間、約7.2と約7.4との間、または約7.3と約7.5との間のpHに維持することができる。
【0185】
いくつかの態様では、静置または混合/振盪懸濁細胞拡大に好適な任意のタイプの細胞培養フラスコ中で(例えば、T-フラスコ、ローラーボトル、スピナーフラスコ、もしくは振盪フラスコ;またはこれらの組み合わせを使用して)懸濁条件下で細胞培養を行うことができる。いくつかの態様では、N-1コンテナは、振とうフラスコである。
【0186】
いくつかの態様では、懸濁条件には、いくつかの撹拌形態を含むことができる。いくつかの態様では、撹拌は、回転撹拌であり得る。いくつかの態様では、約25RPM~約500RPM、約25RPMと約480RPMとの間、約25RPMと約460RPMとの間、約25RPMと約440RPMとの間、約25RPMと約420RPMとの間、約25RPMと約400RPMとの間、約25RPMと約380RPMとの間、約25RPMと約360RPMとの間、約25RPMと約340RPMとの間、約25RPMと約320RPMとの間、約25RPMと約300RPMとの間、約25RPMと約280RPMとの間、約25RPMと約260RPMとの間、約25RPMと約240RPMとの間、約25RPMと約220RPMとの間、約25RPMと約200RPMとの間、約25RPMと約180RPMとの間、約25RPMと約160RPMとの間、約25RPMと約140RPMとの間、約25RPMと約120RPMとの間、約25RPMと約100RPMとの間、約25RPMと約80RPMとの間、約25RPMと約60RPMとの間、約25RPMと約40RPMとの間、約25RPMと約35RPMとの間、約25RPMと約30RPMとの間、約50RPMから約500RPMの間、約50RPMと約480RPMとの間、約50RPMと約460RPMとの間、約50RPMと約440RPMとの間、約50RPMと約420RPMとの間、約50RPMと約400RPMとの間、約50RPMと約380RPMとの間、約50RPMと約360RPMとの間、約50RPMと約340RPMとの間、約50RPMと約320RPMとの間、約50RPMと約300RPMとの間、約50RPMと約280RPMとの間、約50RPMと約260RPMとの間、約50RPMと約240RPMとの間、約50RPMと約220RPMとの間、約50RPMと約200RPMとの間、約50RPMと約180RPMとの間、約50RPMと約160RPMとの間、約50RPMと約140RPMとの間、約50RPMと約120RPMとの間、約50RPMと約100RPMとの間、約50RPMと約80RPMとの間、約50RPMと約60RPMとの間、約75RPMから約500RPMの間、約75RPMと約480RPMとの間、約75RPMと約460RPMとの間、約75RPMと約440RPMとの間、約75RPMと約420RPMとの間、約75RPMと約400RPMとの間、約75RPMと約380RPMとの間、約75RPMと約360RPMとの間、約75RPMと約340RPMとの間、約75RPMと約320RPMとの間、約75RPMと約300RPMとの間、約75RPMと約280RPMとの間、約75RPMと約260RPMとの間、約75RPMと約240RPMとの間、約75RPMと約220RPMとの間、約75RPMと約200RPMとの間、約75RPMと約180RPMとの間、約75RPMと約160RPMとの間、約75RPMと約140RPMとの間、約75RPMと約120RPMとの間、約75RPMと約100RPMとの間、約75RPMと約80RPMとの間、約100RPMから約500RPMの間、約100RPMと約480RPMとの間、約100RPMと約460RPMとの間、約100RPMと約440RPMとの間、約100RPMと約420RPMとの間、約100RPMと約400RPMとの間、約100RPMと約380RPMとの間、約100RPMと約360RPMとの間、約100RPMと約340RPMとの間、約100RPMと約320RPMとの間、約100RPMと約300RPMとの間、約100RPMと約280RPMとの間、約100RPMと約260RPMとの間、約100RPMと約240RPMとの間、約100RPMと約220RPMとの間、約100RPMと約200RPMとの間、約100RPMと約180RPMとの間、約100RPMと約160RPMとの間、約100RPMと約140RPMとの間、約100RPMと約120RPMとの間、約150RPMから約500RPMの間、約150RPMと約480RPMとの間、約150RPMと約460RPMとの間、約150RPMと約440RPMとの間、約150RPMと約420RPMとの間、約150RPMと約400RPMとの間、約150RPMと約380RPMとの間、約150RPMと約360RPMとの間、約150RPMと約340RPMとの間、約150RPMと約320RPMとの間、約150RPMと約300RPMとの間、約150RPMと約280RPMとの間、約150RPMと約260RPMとの間、約150RPMと約240RPMとの間、約150RPMと約220RPMとの間、約150RPMと約200RPMとの間、約150RPMと約180RPMとの間、約150RPMと約160RPMとの間、約200RPMから約500RPMの間、約200RPMと480RPMとの間、約200RPMと約460RPMとの間、約200RPMと約440RPMとの間、約200RPMと約420RPMとの間、約200RPMと約400RPMとの間、約200RPMと約380RPMとの間、約200RPMと約360RPMとの間、約200RPMと約340RPMとの間、約200RPMと約320RPMとの間、約200RPMと約300RPMとの間、約200RPMと約280RPMとの間、約200RPMと約260RPMとの間、約200RPMと約240RPMとの間、約200RPMと約220RPMとの間、約240RPMと約500RPMとの間、約240RPMと約480RPMとの間、約240RPMと約460RPMとの間、約240RPMと約440RPMとの間、約240RPMと約420RPMとの間、約240RPMと約400RPMとの間、約240RPMと約380RPMとの間、約240RPMと約360RPMとの間、約240RPMと約340RPMとの間、約240RPMと約320RPMとの間、約240RPMと約300RPMとの間、約240RPMと約280RPMとの間、約240RPMと約260RPMとの間、約260RPMと約500RPMとの間、約260RPMと約480RPMとの間、約260RPMと約460RPMとの間、約260RPMと約440RPMとの間、約260RPMと約420RPMとの間、約260RPMと約400RPMとの間、約260RPMと約380RPMとの間、約260RPMと約360RPMとの間、約260RPMと約340RPMとの間、約260RPMと約320RPMとの間、約260RPMと約300RPMとの間、約260RPMと約280RPMとの間、約280RPMと約500RPMとの間、約280RPMと約480RPMとの間、約280RPMと約460RPMとの間、約280RPMと約440RPMとの間、約280RPMと約420RPMとの間、約280RPMと約400RPMとの間、約280RPMと約380RPMとの間、約280RPMと約360RPMとの間、約280RPMと約340RPMとの間、約280RPMと約320RPMとの間、約280RPMと約280RPMとの間、約300RPMと約500RPMとの間、約380RPMと約480RPMとの間、約380RPMと約460RPMとの間、約380RPMと約440RPMとの間、約380RPMと約420RPMとの間、約380RPMと約400RPMとの間、約400RPMと約500RPMとの間、約400RPMと約480RPMとの間、約400RPMと約460RPMとの間、約400RPMと約440RPMとの間、または約400RPMと約420RPMとの間の回転数で撹拌することができる。連続的または周期的に撹拌することができる。
【0187】
いくつかの態様では、細胞を、懸濁条件下で2回以下継代する。
【0188】
いくつかの態様では、細胞を、懸濁培養において約24~約96時間培養する。いくつかの態様では、細胞を、懸濁培養において約36~約84時間培養する。いくつかの態様では、細胞を、懸濁培養において約48~約72時間培養する。いくつかの態様では、細胞を、懸濁培養において約54~約66時間培養する。いくつかの態様では、細胞を、懸濁培養において約24、約30、約36、約42、約48、約54、約60、約66、約72、約78、約84、約90、または約96時間培養する。
【0189】
本開示のいくつかの態様では、細胞は接着細胞である。いくつかの態様では、接着細胞は、HeLa細胞、CHO細胞、HEK-293細胞、VERO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、またはCOS細胞である。いくつかの態様では、接着細胞はヒトである。いくつかの態様では、接着細胞は、HeLa細胞またはHEK-293細胞である。いくつかの態様では、接着細胞はHEK-293細胞である。
【0190】
いくつかの態様では、接着細胞は、懸濁に適合していない。いくつかの態様では、細胞を懸濁条件下で培養する工程は、細胞の接着依存性を変化させない。いくつかの態様では、方法は、細胞を、新規の細胞株を作出するように変化させない。本明細書中に開示の方法は、細胞のゲノムプロファイルまたはトランスクリプトームプロファイルを変化させない。本明細書中に開示の方法は、細胞の表現型を変化させない。
【0191】
いくつかの態様では、細胞を、N-1コンテナに接種する前に接着条件下にて血清を補足した成長培地中で複数回継代する。いくつかの態様では、細胞を、N-1コンテナに接種する前にN-2、N-3、N-4、N-5、N-6、N-7、N-8、N-9、またはN-10コンテナ中で培養する。いくつかの態様では、細胞を、N-3およびN-2コンテナ中で培養する。いくつかの態様では、細胞を、N-4、N-3、およびN-2コンテナ中で培養する。
【0192】
いくつかの態様では、バイオリアクターは接着性バイオリアクターである。いくつかの態様では、接着細胞を、接着性バイオリアクター中に産生された培養物から精製する。
【0193】
いくつかの態様では、バイオリアクターは、少なくとも1つの、より好ましくは複数の担体を含み、この担体上は、拡大された細胞が接着する傾向にあり、バイオリアクター中で浮遊または固定され得る。好ましくは、前述の担体を、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、DEAE-デキストラン、コラーゲン、ガラス、アルギナート、またはアクリルアミドを使用して作製することができる。いくつかの態様では、バイオリアクターは、ビーズ型微小担体(例えば、Cytodex(登録商標)ブランドのビーズ、GE Healthcare Inc.division of General Electric Corp.で販売されている)またはマトリックス型担体(例えば、Fibra-Cell(商標)ブランドのディスク、Eppendorf Corp.で販売されている)を含むバイオリアクターであり得る。いくつかの態様では、バイオリアクターは、iCELLis(登録商標)ナノまたはiCELLis(登録商標)500バイオリアクター(Advanced Technology Materials Inc.(Brussels,Belgium)およびPall corporation(Fall River,Mass)から市販されている)などで使用されるポリエステル繊維担体を使用する。
【0194】
いくつかの態様では、バイオリアクター中の第3の培地は、少なくとも1つの細胞接着を促進する因子を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの細胞接着を促進する因子は、FBS、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、カルシウムイオン、細胞外基質のプロテオグリカンまたは非プロテオグリカンポリサッカリド;およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、少なくとも1つの細胞接着を促進する因子を、バイオリアクター中への懸濁細胞の接種の直前、間、または後に第3の培地に添加することができる。
【0195】
いくつかの態様では、成長培地は、DMEMおよび約10重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約2重量%~約20重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約3重量%~約19重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約4重量%~約18重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約5重量%~約17重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約6重量%~約16重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約7重量%~約15重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約8重量%~約14重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約9重量%~約13重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約10重量%~約12重量%のFBSを含む。いくつかの態様では、成長培地は、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20重量%のFBSを含む。
【0196】
いくつかの態様では、工程(d)由来の懸濁液で拡大された細胞を、バイオリアクター中に直接接種することができる。いくつかの態様では、バイオリアクター中への細胞の接種量は、バイオリアクターのサイズに基づいて変動する。いくつかの態様では、4m2のバイオリアクター(例えば、iCELLis(登録商標)ナノバイオリアクター)を使用する。いくつかの態様では、4m2のバイオリアクターに、約1×108細胞と1×109細胞との間を接種する。いくつかの態様では、4m2のバイオリアクターに、約3×108細胞と7×108細胞との間を接種する。いくつかの態様では、4m2のバイオリアクターに、約4×108細胞と6×108細胞との間を接種する。いくつかの態様では、4m2のバイオリアクターに、約5×108細胞を接種する。いくつかの態様では、他のサイズのバイオリアクターについては、等価な細胞密度を使用する。
【0197】
いくつかの態様では、本開示の方法は、バイオリアクター中で細胞を培養する工程をさらに含むことができる。いくつかの態様では、細胞培養は、回分培養を含む。いくつかの態様では、細胞培養は、流加培養を含む。いくつかの態様では、細胞培養は、灌流培養を含む。
【0198】
流加培養は、細胞培養物から成長培地を実質的にまたは相当に除去することなく、最初の細胞培養物にフィード培養培地を漸増的(周期的)または連続的に添加することを含む。流加培養中の細胞培養物を、バイオリアクター(例えば、10,000Lの製造バイオリアクターなどの製造バイオリアクター)中に配置することができる。いくつかの態様では、フィード培養培地は、成長培地と同一であり得る。フィード培養培地は、液体または乾燥粉末のいずれかであり得る。いくつかの態様では、フィード培養培地は、濃縮形態の成長培地であり、そして/または乾燥粉末として添加される。いくつかの態様では、第1の液体フィード培養培地および異なる第2の液体フィード培養培地の両方を、成長培地に添加する(例えば、連続的に添加する)ことができる。いくつかの態様では、培養物への第1の液体フィード培養培地の添加および第2の液体フィード培養培地の添加を、ほぼ同時に開始することができる。いくつかの態様では、全培養期間にわたって培養物に添加される第1の液体フィード培養培地および第2の液体フィード培養培地の総体積は、ほぼ同一であり得る。
【0199】
フィード培養培地を連続的に添加する場合、フィード培養培地の添加速度を、培養期間にわたって一定に保持するか、増加(例えば、着実に増加)させることができる。フィード培養培地の連続添加を、培養期間中の特定の時点(例えば、細胞が標的生存細胞密度(例えば、約1×106細胞/mL、約1.1×106細胞/mL、約1.2×106細胞/mL、約1.3×106細胞/mL、約1.4×106細胞/mL、約1.5×106細胞/mL、約1.6×106細胞/mL、約1.7×106細胞/mL、約1.8×106細胞/mL、約1.9×106細胞/mL、または約2.0×106細胞/mLの生存細胞密度)に到達したとき)で開始することができる。いくつかの態様では、フィード培養培地の連続添加を、培養期間の2日目、3日目、4日目、または5日目に開始することができる。
【0200】
いくつかの態様では、フィード培養培地の漸増的(周期的)添加を、細胞が標的細胞密度(例えば、約1×106細胞/mL、約1.1×106細胞/mL、約1.2×106細胞/mL、約1.3×106細胞/mL、約1.4×106細胞/mL、約1.5×106細胞/mL、約1.6×106細胞/mL、約1.7×106細胞/mL、約1.8×106細胞/mL、約1.9×106、または約2.0×106細胞/mL)に到達したときに開始することができる。いくつかの態様では、フィード培養培地の漸増添加を、一定間隔で(例えば、毎日、2日毎、または3日毎)行うことができるか、細胞が特定の標的細胞密度(例えば、培養期間にわたって増加する標的細胞密度)に到達したときに行うことができる。いくつかの態様では、フィード培養培地の添加量を、フィード培養培地の第1の漸増添加とフィード培養培地のその後の添加との間で漸増させることができる。いくつかの態様では、培養期間中の任意の24時間にわたって最初の細胞培養物に添加される液体培養のフィード培養培地の体積は、培養物を含むバイオリアクターの最初の体積のいくつかの画分または最初の培養物の体積のいくつかの画分であり得る。
【0201】
いくつかの態様では、液体フィード培養培地の(連続的または周期的な)添加を、培養期間の開始後6時間と7日間との間、約6時間と約6日間との間、約6時間と約5日間との間、約6時間と約4日間との間、約6時間と約3日間との間、約6時間と約2日間との間、約6時間と約1日間との間、約12時間と約7日間との間、約12時間と約6日間との間、約12時間と約5日間との間、約12時間と約4日間との間、約12時間と約3日間との間、約12時間と約2日間との間、約1日間と約7日間との間、約1日間と約6日間との間、約1日間と約5日間との間、約1日間と約4日間との間、約1日間と約3日間との間、約1日間と約2日間との間、約2日間と約7日間との間、約2日間と約6日間との間、約2日間と約5日間との間、約2日間と約4日間との間、約2日間と約3日間との間、約3日間と約7日間との間、約3日間と約6日間との間、約3日間と約5日間との間、約3日間と約4日間との間、約4日間と約7日間との間、約4日間と約6日間との間、約4日間と約5日間との間、約5日間と約7日間との間、または約5日間と約6日間との間である時点で行うことができる。
【0202】
いくつかの態様では、任意の24時間の期間にわたって最初の細胞培養物に(連続的または周期的に)添加される液体フィード培養培地の体積は、バイオリアクターの容量の0.01倍と約0.3倍との間であり得る。画分は、バイオリアクターの容量の約0.01倍と約0.28倍との間、約0.01倍と約0.26倍との間、約0.01倍と約0.24倍との間、約0.01倍と約0.22倍との間、約0.01倍と約0.20倍との間、約0.01倍と約0.18倍との間、約0.01倍と約0.16倍との間、約0.01倍と約0.14倍との間、約0.01倍と約0.12倍との間、約0.01倍と約0.10倍との間、約0.01倍と約0.08倍との間、約0.01倍と約0.06倍との間、約0.01倍と約0.04倍との間、約0.02倍と約0.3倍との間、約0.02倍と約0.28倍との間、約0.02倍と約0.26倍との間、約0.02倍と約0.24倍との間、約0.02倍と約0.22倍との間、約0.02倍と約0.20倍との間、約0.02倍と約0.18倍との間、約0.02倍と約0.16倍との間、約0.02倍と約0.14倍との間、約0.02倍と約0.12倍との間、約0.02倍と約0.10倍との間、約0.02倍と約0.08倍との間、約0.02倍と約0.06倍との間、約0.02倍と約0.05倍との間、約0.02倍と約0.04倍との間、約0.02倍と約0.03倍との間、約0.025倍と約0.3倍との間、約0.025倍と約0.28倍との間、約0.025倍と約0.26倍との間、約0.025倍と約0.24倍との間、約0.025倍と約0.22倍との間、約0.025倍と約0.20倍との間、約0.025倍と約0.18倍との間、約0.025倍と約0.16倍との間、約0.025倍と約0.14倍との間、約0.025倍と約0.12倍との間、約0.025倍と約0.10倍との間、約0.025倍と約0.08倍との間、約0.025倍と約0.06倍との間、約0.025倍と約0.04倍との間、約0.05倍と約0.3倍との間、約0.05倍と約0.28倍との間、約0.05倍と約0.26倍との間、約0.05倍と約0.24倍との間、約0.05倍と約0.22倍との間、約0.05倍と約0.20倍との間、約0.05倍と約0.18倍との間、約0.05倍と約0.16倍との間、約0.05倍と約0.14倍との間、約0.05倍と約0.12倍との間、約0.05倍と約0.10倍との間、約0.1倍と約0.3倍との間、約0.1倍と約0.28倍との間、約0.1倍と約0.26倍との間、約0.1倍と約0.24倍との間、約0.1倍と約0.22倍との間、約0.1倍と約0.20倍との間、約0.1倍と約0.18倍との間、約0.1倍と約0.16倍との間 約0.1倍と約0.14倍との間、約0.1倍の間、約0.15倍と約0.3倍との間、約0.15倍と約0.2倍との間、約0.2倍と約0.3倍との間、または約0.25倍と約0.3倍との間であり得る。
【0203】
いくつかの態様では、培養期間中の任意の24時間の期間にわたって最初の細胞培養物に(連続的または周期的に)添加される液体フィード培養培地の体積は、最初の細胞培養物の体積の0.02倍と約1.0倍との間、約0.02倍と約0.9倍との間、約0.02倍と約0.8倍との間、約0.02倍と約0.7倍との間、約0.02倍と約0.6倍との間、約0.02倍と約0.5倍との間、約0.02倍と約0.4倍との間、約0.02倍と約0.3倍との間、約0.02倍と約0.2倍との間、約0.02倍と約0.1倍との間、約0.02倍と約0.08倍との間、約0.02倍と約0.06倍との間、約0.02倍と約0.05倍との間、約0.02倍と約0.04倍との間、約0.02倍と約0.03倍との間、約0.05倍と約1.0倍との間、約0.05倍と約0.8倍との間、約0.05倍と約0.7倍との間、約0.05倍と約0.6倍との間、約0.05倍と約0.5倍との間、約0.05倍と約0.4倍との間、約0.05倍と約0.3倍との間、約0.05倍と約0.2倍との間、約0.05倍と約0.1倍との間、約0.1倍と約1.0倍との間、約0.1倍と約0.9倍との間、約0.1倍と約0.8倍との間、約0.1倍と約0.7倍との間、約0.1倍と約0.6倍との間、約0.1倍と約0.5倍との間、約0.1倍と約0.4倍との間、約0.1倍と約0.3倍との間、約0.1倍と約0.2倍との間、約0.2倍と約1.0倍との間、約0.2倍と約0.9倍との間、約0.2倍と約0.8倍との間、約0.2倍と約0.7倍との間、約0.2倍と約0.6倍との間、約0.2倍と約0.5倍との間、または約0.2倍と約0.4倍との間であり得る。
【0204】
いくつかの態様では、全培養期間にわたって(連続的または周期的に)添加されるフィード培養培地の総量は、最初の培養物の体積の約1%と約40%との間(例えば、約1%と約35%との間、約1%と約30%との間、約1%と約25%との間、約1%と約20%との間、約1%と約15%との間、約1%と約10%との間、約1%と約5%との間、約1%と約4%との間、約2%と約40%との間、約2%と約35%との間、約2%と約30%との間、約2%と約25%との間、約2%と約20%との間、約2%と約15%との間、約2%と約10%との間、約2%と約5%との間、約3%と約40%との間、約3%と約35%との間、約3%と約30%との間、約3%と約25%との間、約3%と約20%との間、約3%と約15%との間、約3%と約10%との間、約3%と約5%との間、約4%と約40%との間、約4%と約35%との間、約4%と約30%との間、約4%と約25%との間、約4%と約20%との間、約4%と約15%との間、約4%と約10%との間、約4%と約8%との間、約5%と約40%との間、約5%と約35%との間、約5%と約30%との間、約5%と約25%との間、約5%と約20%との間、約5%と約15%との間、約5%と約10%との間、約10%と約40%との間、約10%と約35%との間、約10%と約30%との間、約10%と約25%との間、約10%と約20%との間、約10%と約15%との間、約15%と約40%との間、約15%と約35%との間、約15%と約30%との間、約15%と約25%との間、約15%と約20%との間、約20%と約40%との間、約20%と約35%との間、約20%と約30%との間、約20%と約25%との間、約25%と約40%との間、約25%と約35%との間、約25%と約30%との間、約30%と約40%との間、約30%と約35%との間、約35%と約40%との間)であり得る。
【0205】
いくつかの態様では、2つの異なるフィード培養培地を、フィードバッチ培養中に(連続的または漸増的に)添加する。いくつかの態様では、第1のフィード培養培地および第2のフィード培養培地の添加量または添加体積は、実質的に同一であり得るか、異なり得る。いくつかの態様では、第1のフィード培養培地は、液体の形態であり得、第2のフィード培養培地は固体の形態であり得る。いくつかの態様では、第1のフィード培養培地および第2のフィード培養培地は、液体フィード培養培地であり得る。
【0206】
灌流培養は、バイオリアクターから第1の体積の成長培地を除去し、製造バイオリアクターに第2の体積の第2の成長培養培地を添加する工程を含み、ここで、第1の体積および第2の体積はほぼ等しい。細胞は、細胞保持デバイスによるか、沈降コーン中での細胞沈降などの技術によってバイオリアクター中に保持される。いくつかの態様では、成長培地の除去および添加を、同時もしくは連続的、またはこれら2つのいくかの組み合わせで行うことができる。いくつかの態様では、除去および添加を、バイオリアクターの容量の0.1%から800%の間、1%と700%との間、1%と600%との間、1%と500%との間、1%と400%との間、1%と350%との間、1%と300%との間、1%と250%との間、1%と100%との間、100%と200%との間、5%と150%との間、10%と50%との間、15%と40%との間、8%と80%との間、または4%と30%との間の体積を除去および置換する速度などで連続的に行うことができる。
【0207】
いくつかの態様では、除去される第1の体積の第1の成長培地および添加される第2の体積の第2の成長培地を、各々の24時間の期間にわたっておよそ同一に保持することができる。いくつかの態様では、第1の体積の第1の成長培地を除去する速度(体積/単位時間)および第2の体積の第2の成長培地を添加する速度(体積/単位時間)を、変動することができ、この速度は特定の細胞培養系の条件に依存する。いくつかの態様では、第1の体積の第1の成長培地を除去する速度(体積/単位時間)および第2の体積の第2の成長培地を添加する速度(体積/単位時間)は、ほぼ同一であり得るか、異なり得る。
【0208】
いくつかの態様では、除去体積および添加体積を、各々の24時間の期間にわたって漸増させることによって変化させることができる。いくつかの態様では、各々の24時間の期間内に除去される第1の成長培地の体積および添加される第2の成長培地の体積を、培養期間にわたって増加させることができる。いくつかの態様では、体積を、24時間の期間にわたってバイオリアクターの容積の0.5%から約20%までの間である体積分を増加させることができる。いくつかの態様では、体積を、24時間の期間にわたってバイオリアクターの容量または第1の液体培養培地の体積約25%~約150%である体積まで培養期間にわたって増加させることができる。
【0209】
いくつかの態様では、培養期間の第1の48~96時間後、各々の24時間の期間中に、除去される第1の体積の第1の成長培地および添加される第2の体積の第2の成長培地は、第1の成長培地の体積の約10%~約95%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、約85%~約95%、約60%~約80%、または約70%である。
【0210】
いくつかの態様では、第1の成長培地および第2の成長培地は、同一のタイプの培地であり得る。いくつかの態様では、第1の成長培地および第2の成長培地は異なり得る。いくつかの態様では、第2の液体培養培地は、1またはそれを超える培地の構成要素の濃度がより高くてよい。
【0211】
いくつかの態様では、第1の体積の第1の成長培地を、任意の自動化システムを使用することによって除去することができる。いくつかの態様では、交互接線流濾過を使用し得る。いくつかの態様では、第1の体積の第1の成長培地を、細胞を排除する分子量カットオフを有する滅菌メンブレンを介した第1の体積の第1の成長培地の浸透または重力流によって除去することができる。いくつかの態様では、第1の体積の第1の成長培地を、少なくとも1分間、少なくとも2分間、3分間、4分間、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、40分間、50分間、または1時間、撹拌を停止するか撹拌速度を有意に低下させ、製造バイオリアクターの上部から第1の体積の成長培地を除去または吸引することによって除去することができる。
【0212】
いくつかの態様では、第2の体積の第2の液体培養培地を、ポンプによって第1の液体培養培地に添加することができる。いくつかの態様では、第2の液体培養培地を、第1の液体培地に、第1の液体培養培地上に第2の体積の第2の液体培養培地を直接ピペット操作するか注入することなどによって手作業で添加することができるか、自動化様式で添加することができる。
【0213】
いくつかの態様では、方法は、細胞を第1のポリヌクレオチド配列と接触させる工程をさらに含む。いくつかの態様では、方法は、細胞をポリヌクレオチド配列でトランスフェクトする工程をさらに含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列はプラスミドである。いくつかの態様では、プラスミドは、AAV、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、ポリオーマウイルス、およびワクシニアウイルスからなる群から選択される組換えウイルス粒子のキャプシドをコードする。いくつかの態様では、細胞を、バイオリアクター中に細胞を接種する前にトランスフェクトする。いくつかの態様では、細胞を、バイオリアクター中に細胞を接種した後にトランスフェクトする。いくつかの態様では、細胞を、第2のポリヌクレオチドを用いて接触させるかトランスフェクトし、導入遺伝子をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、細胞を、ウイルスベクターを産生する条件下で培養する。いくつかの態様では、方法は、産生されたウイルスベクターを単離する工程をさらに含む。
【0214】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドはウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。これらのベクターは、多数の分裂性および非分裂性の細胞型(滑膜細胞および肝細胞が挙げられる)に感染する。上に示すように、細胞侵入後のアデノウイルスベクターおよびAAVベクターはエピソーム性を示すため、これらのベクターは治療に適用するのに好適である(Russell,J.Gen.Virol.81:2573-2604(2000));Goncalves,Virol J.2(1):43 2005))。AAVベクターは、導入遺伝子を非常に長期間安定性して発現させることができる(イヌにおいて9年間まで(Niemeyer et al.,Blood 113(4):797-806(2009))およびヒトにおいて2年間まで(Nathwani et al.,N Engl J Med.365(25):2357-2365(2011);Simonelli et al.,Mol Ther.18(3):643-50(2010),Epub 2009 Dec.1))。いくつかの態様では、Russell(2000,前出)によって概説されるように、アデノウイルスベクターは、宿主応答を軽減するように改変される。AAVベクターを使用した遺伝子の治療方法は、Wang et al.,2005,J Gene Med.March 9(オンライン先行公開);Mandel et al.,Curr Opin Mol Ther.6:482-90(2004);Martin et al.,Eye 18:1049-55(2004);Nathwani et al,N Engl J Med.22;365:2357-65(2011);およびApparailly et al,Hum Gene Ther.16(4):426-34(2005)によって記載されている。
【0215】
いくつかの態様では、第1のポリヌクレオチド配列は、逆位末端反復、少なくとも1つのAAV複製タンパク質をコードする核酸、少なくとも1つのAAVパッケージングタンパク質をコードする核酸、少なくとも1つのAAV構造キャプシドタンパク質をコードする核酸、またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。
【0216】
いくつかの態様では、細胞を、組換えウイルス粒子を産生する条件下で培養する。いくつかの態様では、方法は、産生された組換えウイルス粒子を単離する工程をさらに含む。
【0217】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、適切な制御配列に作動可能に連結された導入遺伝子を含む。用語「制御配列」としては、プロモーター、エンハンサー、およびタンパク質の転写または翻訳を調節する他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が挙げられる。かかる制御配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology,Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。いくつかの態様では、制御配列は、プロモーター配列を含むことができる。いくつかの態様では、プロモーター配列は、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター、ウイルス長末端反復 プロモーター(LTR)(モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、ラウス肉腫ウイルス、またはHTLV-1に由来するものなど)、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、または単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターであり得る。
【0218】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、さらなるポリペプチドをコードするさらなるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、さらなるポリペプチドは、ウイルスベクターを含む細胞を同定、選択、および/またはスクリーニング可能な(選択)マーカーポリペプチドであり得る。いくつかの態様では、マーカーポリペプチドは、蛍光タンパク質GFP、および選択マーカー遺伝子HSVチミジンキナーゼ(HAT培地での選択用)、細菌ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(ハイグロマイシンBでの選択用)、Tn5アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(G418での選択用)、およびジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)(メトトレキサートでの選択用)、CD20、低親和性神経成長因子遺伝子であり得る。これらのマーカー遺伝子を得るための供給源およびその使用方法は、Sambrook and Russel(2001)‘‘Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに提供されている。
ウイルスベクター(例えば、AAV)の産生方法
【0219】
本開示のいくつかの態様は、ウイルスベクター(例えば、本明細書中に開示のrAAV)を産生する方法であって、本明細書中に開示のシードトレイン拡大法のうちのいずれか1つにしたがって細胞を拡大する工程、バイオリアクター中の成長培地に細胞を接種する工程、ウイルス粒子をコードするポリヌクレオチド配列で細胞をトランスフェクトする工程、および細胞をバイオリアクター中で前述のウイルス粒子が産生される条件下にて培養する工程を含む、方法に関する。いくつかの態様では、ウイルスベクターの産生は、米国特許出願第63/123,602号(本明細書中で参考として明確に援用される)に開示されている。
【0220】
外因性核酸を宿主細胞に移入する方法は、当該分野で周知であり、使用される宿主細胞によって変動するであろう。技術としては、デキストラン媒介トランスフェクション、硫酸カルシウム沈降、塩化カルシウム処理、ポリエチレンイミン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウイルスまたはファージ感染、リポソーム中のポリヌクレオチド(複数可)のカプセル化、および核へのDNAの直接微量注入が挙げられるが、これらに限定されない。トランスフェクションは、一過性または安定性のいずれかであり得る。
【0221】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列はプラスミドである。いくつかの態様では、プラスミドは、AAV由来のウイルス粒子をコードする。
【0222】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列はウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、ウイルス粒子をコードする。好ましい態様では、ウイルス粒子はAAVに由来する。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号9の核酸配列を含む。いくつかの態様では、本開示は、配列番号9の核酸配列を含むrAAV粒子を提供する。いくつかの態様では、本開示は、配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAVを提供する。いくつかの態様では、本開示は、配列番号3のヌクレオチド55~5021を含むrAAV粒子を提供する。いくつかの態様では、rAAVは、配列番号8のヌクレオチド1~4988を含む。いくつかの態様では、本開示は、配列番号8のヌクレオチド1~4977を含むrAAV粒子を提供する。
【0223】
いくつかの態様では、ウイルスベクターはAAVベクターである。いくつかの態様では、AAVベクターは、組換えAAVベクター(rAAV)を含むことができる。本明細書中で使用される「rAAVベクター」は、本明細書中に開示のAAV血清型由来のキャプシドタンパク質のタンパク質シェル中にキャプシド形成されたAAVゲノムの一部を含む組換えベクターを指す。いくつかの態様では、AAVベクターは、アデノ随伴ウイルス血清型(AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、AAVRH10、AAV11、AAV12など)由来の逆位末端反復(ITR)を含むことができる。
【0224】
典型的には、ベクターゲノムは、rAAVキャプシド中へのベクターゲノムの効率的なパッケージングを可能にするための隣接する5’および3’ITR配列を使用することが必要である。いくつかの態様では、rAAVベクター中に存在するrAAVゲノムは、少なくとも、AAV血清型のうちの1つの逆位末端反復領域(ITR)のヌクレオチド配列、または前述のヌクレオチド配列と実質的に一致しているヌクレオチド配列、および好適な制御エレメント(例えば、プロモーター)の調節下で導入遺伝子をコードする核酸配列を含み、ここで、制御エレメントおよび改変された核酸配列(複数可)が、2つのITRの間に挿入されている。
【0225】
いくつかのAAV血清型および対応するITRの全ゲノムは、配列決定されている(Chiorini et al.J.of Virology 73:1309-1319(1999))。これらを、クローン化するか、当該分野で公知の化学合成(例えば、オリゴヌクレオチド合成機(例えばApplied Biosystems Inc.(Fosters,Calif.,USA)が提供する)を使用)または標準的な分子生物学技術によって作製することができる。ITRを、AAVウイルスゲノムからクローン化するか、AAV ITRを含むベクターから切り出すことができる。ITRヌクレオチド配列のいずれかの末端を、標準的な分子生物学技術を使用して1またはそれを超える治療タンパク質をコードするヌクレオチド配列にライゲートすることができるか、ITRの間の野生型AAV配列を、所望のヌクレオチド配列と置換することができる。
【0226】
いくつかの態様では、パッケージングされたウイルスベクターのウイルスキャプシド構成要素は、パルボウイルスキャプシド(例えば、AAV Cap)および/またはキメラキャプシドであり得る。好適なパルボウイルスのウイルスキャプシド構成要素の例は、パルボウイルス科(自律性パルボウイルスまたはディペンドウイルスなど)由来のキャプシド構成要素である。例えば、ウイルスキャプシドは、AAVキャプシド(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVRH8 AAV9、AAV10、AAVRH10、AAV11、またはAAV12キャプシド;当業者は、同一または類似の機能を果たす依然として同定されていない他のバリアントが存在する可能性が高いことを知っているであろう)であり得るか、あるいは、2またはそれを超えるAAVキャプシド由来の構成要素を含み得る。AAV Capタンパク質の完全な相補物は、VP1、VP2、およびVP3を含む。AAV VPキャプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むORFは、完全未満の相補性のAAV Capタンパク質を含むことができるか、あるいは、AAV Capタンパク質の完全な相補物を提供することができる。
【0227】
いくつかの態様では、AAV Capタンパク質のうちの1つまたは複数は、2またはそれを超えるウイルス、好ましくは2またはそれを超えるAAV由来のAAV Capのアミノ酸配列を含むキメラタンパク質であり得る。例えば、キメラウイルスキャプシドは、AAV1 Capタンパク質またはサブユニットおよび少なくとも1つのAAV2 Capまたはサブユニットを含むことができる。いくつかの態様では、rAAVベクター中に存在するrAAVゲノムは、いかなるウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列(AAVのrep(複製)またはcap(キャプシド)遺伝子など)も含まない。いくつかの態様では、rAAVゲノムは、マーカーまたはレポーター遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子、蛍光タンパク質(例えば、gfp)をコードする遺伝子または当該分野で公知の化学的、酵素的、またはその他の検出可能なおよび/もしくは選択可能な産物(例えば、lacZ、aphなど)をコードする遺伝子など)をさらに含むことができる。
【0228】
いくつかの態様では、前述のrAAVベクター中に存在するrAAVゲノムは、導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター配列をさらに含むことができる。
【0229】
いくつかの態様では、また、好適な3’非翻訳配列を、導入遺伝子をコードする改変された核酸配列に作動可能に連結することができる。好適な3’非翻訳領域は、ヌクレオチド配列に天然に会合するものであり得るか、例えば、ウシ成長ホルモン3’非翻訳領域などの異なる遺伝子(例えば、bGHポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサー配列)に由来し得る。
【0230】
別段の指示がある場合を除き、当業者に公知の方法は、組換えパルボウイルスおよびAAV(rAAV)構築物、パルボウイルスRepおよび/またはCap配列を発現するパッケージングベクター、ならびに一過性にまたは安定に処理されたパッケージング細胞の構築のために使用され得る。かかる技術は、当業者に公知である。例えば、SAMBROOK et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,N.Y.,1989);AUSUBEL el al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley Sons,Inc.,New York)を参照のこと。
【0231】
いくつかの態様では、また、好適な3’非翻訳配列を、導入遺伝子をコードする核酸配列に作動可能に連結することができる。好適な3’非翻訳領域は、ヌクレオチド配列に天然に会合するものであり得るか、例えば、ウシ成長ホルモン3’非翻訳領域などの異なる遺伝子(例えば、bGHポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサー配列)に由来し得る。
【0232】
いくつかの態様では、追加のヌクレオチド配列を、導入遺伝子をコードする核酸配列(シグナル配列、核局在化シグナル、および発現エンハンサーなどをコードするヌクレオチド配列など)に作動可能に連結することができる。
【0233】
別段の指示がある場合を除き、当業者に公知の方法は、レンチウイルス構築物、ベクター、および一過性におよび安定に処理されたパッケージング細胞の構築のために使用され得る。かかる技術は、当業者に公知である。例えば、SAMBROOK et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,N.Y.,1989);AUSUBEL el al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley Sons,Inc.,New York)を参照のこと。
【0234】
いくつかの態様では、本開示の方法は、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミド、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミド、ならびにアデノウイルスヘルパープラスミドで細胞をトランスフェクトする工程を含む。いくつかの態様では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミドは、以下を含む:配列番号9の核酸配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、または配列番号8のヌクレオチド1~4977。いくつかの態様では、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミドは、AAV2rep遺伝子およびrAAVrh74cap遺伝子を含む。いくつかの態様では、アデノウイルスヘルパープラスミドは、アデノウイルス5型のE2A遺伝子、E4ORF6遺伝子、およびVA RNA遺伝子を含む。
【0235】
いくつかの態様では、方法は、産生されたウイルス粒子を単離する工程をさらに含む。ウイルスベクターは、細胞の内側で複製されることよって増幅され、ウイルス粒子を産生する。ウイルス感染により、トランスフェクトされた細胞が溶解する。したがって、AAVなどのウイルスベクターの溶解特性により、ウイルス粒子の産生および単離という異なる2つの様式が可能である。第1の様式は、細胞を溶解するための外部因子を使用して、細胞溶解前にウイルス粒子を採取することである。第2の様式は、産生されたウイルスによるほとんど完全な細胞溶解後の上清からのウイルス粒子の採取である。
【0236】
活性細胞溶解のために使用することができる方法は、当業者に公知である。いくつかの態様では、細胞を、凍結融解、固体せん断、高張および/もしくは低張溶解、液体せん断、超音波処理、高圧押出し、界面活性剤溶解、ならびに前述の組み合わせなどによって溶解することができる。
【0237】
いくつかの態様では、細胞を、少なくとも1つの界面活性剤を使用して溶解することができる。いくつかの態様では、界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性、および非イオン性の界面活性剤を挙げることができる。いくつかの態様では、界面活性剤の濃度は、約0.1%~5%(w/w)であり得る。いくつかの態様では、界面活性剤は、Triton(登録商標)X-100であり得る。
【0238】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼを使用して、トランスフェクトされた細胞から夾雑物を含む核酸(すなわち、未変性核酸)を除去することができる。いくつかの態様では、ヌクレアーゼは、BENZONASE(登録商標)、PULMOZYME(登録商標)、または当該分野で一般的に使用されている任意の他のDNaseおよび/もしくはRNaseであり得る。
【0239】
トランスフェクトされた細胞からウイルスベクターを採取または単離する方法は、WO2005/080556号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に広く開示されている。
【0240】
いくつかの態様では、ウイルスベクターの採取または単離の時間は、トランスフェクション後約24時間と120時間との間、約36と108時間との間、トランスフェクション後約48時間と約96時間との間、トランスフェクション後約60時間と約84時間との間である。いくつかの態様では、ベクターの採取または単離の時間は、トランスフェクション後約72時間である。
【0241】
いくつかの態様では、単離されたウイルス粒子をさらに精製することができる。いくつかの態様では、ウイルス粒子の精製を、清澄化、限外濾過、透析濾過、またはクロマトグラフィを用いた分離を含むいくつかの工程で行うことができる。かかる方法は、WO2005/080556号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。いくつかの態様では、清澄化は、細胞溶解物から細胞デブリおよび他の夾雑物を除去する濾過工程によって行われ得る。いくつかの態様では、限外濾過を使用して、ウイルス溶液を濃縮する。いくつかの態様では、透析濾過、緩衝液交換、または限外濾過膜を使用して、塩および糖などを除去および交換することができる。当業者は、各精製工程に最適な条件を見出す方法を心得ている。
【0242】
いくつかの態様では、密度勾配遠心分離によって精製することができる。いくつかの態様では、精製は、少なくとも1つのクロマトグラフィ工程を使用する。いくつかの態様では、ウイルスベクターを、陰イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、またはこれらの組み合わせによって精製することができる。
筋ジストロフィ(例えば、DMD)を処置する方法
【0243】
本開示は、筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAV.MHCK7.マイクロジストロフィンを投与する工程を含み、ここで、rAAVを、全身投与経路によって約5.0×1012vg/kg~約1.0×1015vg/kgの用量で投与し、rAAVを哺乳動物の接着細胞中で産生し、接着細胞をN-1コンテナ中にて懸濁条件下で培養する、方法を提供する。いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィである。いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィである。
【0244】
また、本開示は、筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置する方法であって、本明細書中に記載のrAAVを含む組成物を前述のヒト被験体に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの態様では、rAAVを、全身投与経路を使用し、約5.0×1012vg/kg~約1.0×1015vg/kgの用量で投与する。いくつかの態様では、全身投与経路は静脈内経路であり、rAAVの投与用量は約2×1014vg/kgである。
【0245】
いくつかの態様では、rAAVの用量を、約10mL/kgの濃度で投与する。いくつかの態様では、rAAVを、注射、注入、または移植によって投与する。いくつかの態様では、rAAVを、およそ1時間にわたって注入によって投与する。いくつかの態様では、rAAVを、四肢の末梢静脈を介した静脈内経路によって投与する。
【0246】
いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィである。いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィである。
【0247】
いくつかの態様では、被験体の細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現レベルは、rAAVの投与後にrAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現レベルと比較して増加する。いくつかの態様では、細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、rAAVの投与前および投与後に生検を実施した筋肉中のウェスタンブロットによってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。いくつかの態様では、発現は、rAAVの投与後に投与前と比較して少なくとも55.4%である。
【0248】
いくつかの態様では、被験体の筋肉組織中のマイクロ-ジストロフィン陽性線維の平均百分率は、rAAVの投与後に、rAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィン陽性線維数と比較して増加する。いくつかの態様では、rAAVの投与前および投与後の筋生検において免疫蛍光(IF)によって検出した場合、マイクロ-ジストロフィン陽性線維の平均百分率は少なくとも70.5%であり、平均強度は少なくとも116.9%である。いくつかの態様では、ベクターゲノムカウントによるマイクロ-ジストロフィン形質導入は、核あたり少なくとも3.87の平均ベクターゲノムコピー数である。
【0249】
いくつかの態様では、DMDを有する患者を処置する方法におちえ、組成物を、遺伝子型判定した患者に投与する。いくつかの態様では、患者のヒトジストロフィン(DMD)遺伝子を、遺伝子型判定する。いくつかの態様では、遺伝子型判定した患者を、ヒトジストロフィン(DMD)遺伝子のエクソン18~79中の少なくとも1つの変異について遺伝子型判定する。
【0250】
いくつかの態様では、筋ジストロフィを処置する方法は、前述のヒト被験体のDMD遺伝子を、前述のヒト被験体への前述の組成物の投与前に遺伝子型判定する工程をさらに含む。いくつかの態様では、遺伝子型判定は、DMD遺伝子のエクソン18~79中の少なくとも1つの変異を検出する。いくつかの態様では、少なくとも1つの変異は、ヒトジストロフィンタンパク質が発現しなくなるフレームシフト欠失、フレームシフト重複、未熟終止、または他の病原性バリアントである。
【0251】
いくつかの態様では、ヒトジストロフィンタンパク質が発現しなくなるフレームシフト欠失、フレームシフト重複、未熟終止、または他の病原性バリアントが検出された場合、被験体が本明細書中に開示の組成物を投与されるのに適することが確認される。
【0252】
1つの態様では、DMD遺伝子中の少なくとも1つの変異が、エクソン1~17中の変異、インフレーム欠失、インフレーム重複、意義不明の変異(VUS)、またはエクソン45中に完全に含まれる変異である場合、被験体が本明細書中に開示の組成物を投与されるのに適さないと同定される。
【0253】
また、本開示は、筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置するための本明細書中に記載の組成物の使用を提供する。いくつかの態様では、本開示。また、本開示は、筋ジストロフィの処置のための医薬の製造における本明細書中に記載の組成物の使用を提供する。
【0254】
いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィである。いくつかの態様では、筋ジストロフィは、デュシェンヌ型筋ジストロフィである。
【0255】
例えば、rAAVの投与用量は、約5.0×1012vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約5.0×1013vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約2.0×1013vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約1.0×1013vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約5.0×1013vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または1.0×1013vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または5.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または5.0×1013vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約4.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.0×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または 約1.25×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~1.0×1015、または約1.25×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または1.25×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または1.5×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または1.75×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.25×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~1.0×1015、または約2.0×1014vg/kg~6.0×1014、または約2.0×1014vg/kg~5.0×1014、または約2.0×1014vg/kg~約4.0×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kgである。
【0256】
いくつかの態様では、ヒト被験体は、約4歳と8歳未満との間である。いくつかの態様では、ヒト被験体は、約4歳、約4.25歳、約4.5歳、約4.75歳、約5歳、約5.25歳、約5.5歳、約5.75歳、約6歳、約6.25歳、約6.5 約6.75歳、約7歳、約7.25歳、約7.5歳、または約7.75歳である。
【0257】
いくつかの態様では、ヒト被験体は、約8歳と18歳未満との間である。いくつかの態様では、ヒト被験体は、約8歳、約8.25歳、約8.5歳、約8.75歳、約9歳、約9.25歳、約9.5歳、約9.75歳、約10歳、約10.25歳、約10.5歳、約10.75歳、約11歳、約11.25歳、約11.5歳、約11.75歳、約12歳、約12.25歳、約12.5歳、約12.75歳、約13歳、約13.25歳、約13.5歳、約13.75歳、約14歳、約14.5歳、約14.75歳、約15歳、約15.25歳、約15.5歳、約15.75歳、約16歳、約16.25歳、約16.5歳、約16.75歳、約17歳、約17.25歳、約17.5歳、または約17.75歳である。
【0258】
1つの態様では、本開示の方法は、rAAVの全身投与を含み、ここで、全身投与経路は静脈内経路であり、rAAVの投与用量は約2.0×1014vg/kgである。別の態様では、本開示の方法は、rAAVの全身投与を含み、ここで、全身投与経路は静脈内経路であり、rAAVの投与用量は、約5.0×1012vg/kg、または約6.0×1012vg/kg、または約7.0×1012vg/kg、または約8.0×1012vg/kg、または約9.0×1012vg/kg、または約1.0×1013vg/kg、または約1.25×1013vg/kg、または約1.5×1013vg/kg、または約1.75×1013vg/kg、または約2.25×1013vg/kg、または約2.5×1013vg/kg、または約2.75×1013vg/kg、または約3.0×1013vg/kg、または約3.25×1013vg/kg、または約3.5×1013vg/kg、または約3.75×1013vg/kg、または約4.0×1013vg/kg、または約5.0×1013vg/kg、または約6.0×1013vg/kg、または約7.0×1013vg/kg、または約8.0×1013vg/kg、または約9.0×1013vg/kg、または約1.0×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg、または約2.25×1014vg/kg、または約2.5×1014vg/kg、または約2.75×1014vg/kg、または約3.0×1014vg/kg、または約3.25×1014vg/kg、または約3.5×1014vg/kg、または約3.75×1014vg/kg、または約4.0×1014vg/kg、または約5.0×1014vg/kg、または約6.0×1014vg/kg、または約1×1015vg/kgである。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンまたはAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0259】
本開示の方法のうちのいずれかでは、rAAVの用量を、約5mL/kg~約15mL/kg、または約8mL/kg~約12mL/kg、または8mL/kg~約10mL/kg、または5mL/kg~約10mL/kgまたは約10mL/kg~12mL/k、または約10mL/kg~15mL/kg、または10mL/kg~約20mL/kgで投与することができる。特定の態様では、用量またはrAAVを、約10mL/kgで投与する。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンまたはAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0260】
本開示の方法のうちのいずれかでは、rAAVの用量を、注射、注入、または移植によって投与することができる。例えば、rAAVの用量を、およそ1時間にわたる注入によって投与する。さらに、rAAVの用量を、四肢の末梢静脈(腕の末梢静脈または脚の末梢静脈など)を介した静脈内経路によって投与する。あるいは、およそ30分間、またはおよそ1.5時間、またはおよそ2時間、またはおよそ2.5時間、またはおよそ3時間にわたって注入によって投与され得る。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0261】
本開示の方法のうちのいずれかによって投与されるrAAVは、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列、配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含むことができる。さらに、本開示の方法のうちのいずれかによって投与されるrAAVは、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含む。例えば、rAAVは、配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を含むことができる。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。
【0262】
1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0263】
本開示の方法のうちのいずれかでは、投与されるrAAVは、血清型AAVrh7.4のrAAVである。
【0264】
いくつかの態様では、本開示の方法は、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィを処置する。例示的な態様は、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体においてデュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィを処置する方法であって、ある用量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAV.MHCK7.マイクロジストロフィンを投与する工程を含み、ここで、投与経路が静脈内注入であり、rAAVの投与用量が、およそ1時間にわたって約2×1014vg/kgであり、rAAVベクターが、配列番号9のヌクレオチド配列もしくは配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む、方法である。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9もしくは配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0265】
筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体の細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現レベルは、rAAVの投与後に増加する。細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、rAAVの投与前および投与後に生検を実施した筋肉中のウェスタンブロットによってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。特に、マイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルは、rAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィンレベルと比較して、rAAVの投与後に少なくとも約70%~少なくとも約80%、または少なくとも約70%~少なくとも約90%、または少なくとも約80%~少なくとも約90%増加する。例えば、マイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルは、rAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィンレベルと比較して、rAAVの投与後に少なくとも約70%または少なくとも約71%または少なくとも約72%または少なくとも約73%または少なくとも約74%または少なくとも約75%または少なくとも約76%または少なくとも約77%または少なくとも約78%または少なくとも約79%または少なくとも約80%、または少なくとも約81%、または少なくとも約82%、または少なくとも約83%、または少なくとも約84%、または少なくとも約85%増加する。
【0266】
さらに、細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、rAAVの投与前および投与後の筋生検における免疫組織化学によってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。マイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルは、rAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィンレベルと比較して、rAAVの投与後に少なくとも約70%~少なくとも約80%、または少なくとも約70%~少なくとも約90%、または少なくとも約80%~少なくとも約90%増加する。例えば、マイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルは、rAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィンレベルと比較して、rAAVの投与後に少なくとも約70%または少なくとも約71%または少なくとも約72%または少なくとも約73%または少なくとも約74%または少なくとも約75%または少なくとも約76%または少なくとも約77%または少なくとも約78%または少なくとも約79%または少なくとも約80%、または少なくとも約81%、または少なくとも約82%、または少なくとも約83%、または少なくとも約84%、または少なくとも約85%増加する。
【0267】
筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後に減少する。例えば、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約65%~約90%または約65%~約95%または約75%~約90%または約80%~約90%または約85%~約95%または約87%~約95%または約87%~約90%減少する。特に、本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約87%減少し、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約72%減少し、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約73%減少し、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約78%減少する。あるいは本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約95%減少する。筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体の筋組織中のマイクロ-ジストロフィン陽性線維数は、rAAVの投与前のマイクロ-ジストロフィン陽性線維数と比較して、rAAVの投与後に増加する。例えば、マイクロ-ジストロフィン陽性線維数を、rAAVの投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。
【0268】
筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、本明細書中に記載のように、rAAVを投与すると、DAPCタンパク質(アルファ-サルコグリカンまたはベータ-サルコグリカンなど)の発現が上方制御される。例えば、被験体中のアルファ-サルコグリカンレベルは、rAAVの投与前のアルファ-サルコグリカンレベルと比較して、rAAVの投与後に増加する。さらに、被験体中のベータ-サルコグリカンレベルは、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカンレベルと比較して、rAAVの投与後に増加する。アルファ-サルコグリカンまたはベータ-サルコグリカンのレベルを、rAAVの投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってアルファ-サルコグリカンまたはベータ-サルコグリカンのタンパク質レベルを測定することによって検出する。
【0269】
筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体における疾患の進行は、6分間歩行試験、立ち上がり所要時間、4段昇り、4段階段昇降、ノース・スター歩行能力評価(NSAA)、10メートル計時試験、100メートル計時試験、ハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)、タイムアップアンドゴー、および/または粗大運動サブテスト調整(Bayley-III)スコアのいずれかによって測定した場合に、rAAVの投与後に遅延する。
【0270】
例えば、方法のうちのいずれかでは、被験体は、rAAVの投与前のNSAAスコアと比較して、rAAV投与の少なくとも270日後にNSAAスコアが少なくとも1.5、2.0、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5ポイント改善する。さらに、方法のうちのいずれかでは、被験体は、rAAV投与前の立ち上がり所要時間と比較して、rAAV投与の少なくとも270日後に立ち上がり所要時間が少なくとも約0.8秒改善する。さらに、方法のうちのいずれかでは、被験体は、rAAV投与前の4段昇り所要時間試験と比較して、rAAV投与の少なくとも270日後に4段昇り所要時間試験が少なくとも約1.2秒改善する。さらに、方法のうちのいずれかでは、被験体は、rAAV投与前の100m計時試験と比較して、rAAV投与の少なくとも270日後に100m計時試験が少なくとも約7秒改善する。
【0271】
別の態様では、本開示は、患者の細胞中でマイクロ-ジストロフィン遺伝子を発現させる方法であって、配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を患者に投与する工程を含む、方法を提供する。例えば、患者の細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、rAAV.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物の投与前および投与後の筋生検におけるウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。さらに、マイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現は、患者において核あたりより多くのベクターゲノム数を検出することによって測定され、ここで、核あたり1ベクターゲノムは約50%マイクロ-ジストロフィン発現であり、核あたり1コピー超はマイクロ-ジストロフィンの発現レベルと一致する。例えば、細胞は、核あたり1.2ベクターコピー、または核あたり1.3ベクターコピー、または核あたり1.4ベクターコピー、または核あたり1.5ベクターコピー、または核あたり1.6ベクターコピー、または核あたり1.7ベクターコピー、または核あたり1.8ベクターコピー、または核あたり1.9ベクターコピーを有する。
【0272】
いくつかの態様では、本開示は、血清CKレベルを減少させることを必要とする患者において血清CKレベルを低下させる方法であって、患者に配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を投与する工程を含む、方法を提供する。例えば、患者中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに少なくとも約65%~約90%または約65%~約95%または約75%~約90%または約80%~約90%または約85%~約95%または約87%~約95%または約87%~約90%減少する。特に、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約87%減少し、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約72%減少し、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約73%減少し、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約78%減少し、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置する方法のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日までに約95%減少する。
【0273】
また、本開示は、患者の筋組織中のマイクロ-ジストロフィン陽性線維を増加させる方法であって、患者に配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を投与する工程を含む、方法を提供する。例えば、マイクロ-ジストロフィン陽性線維数を、rAAVの投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。さらに、マイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現は、患者において核あたりより多くのベクターゲノム数を検出することによって測定され、ここで、核あたり1ベクターゲノムは約50%マイクロ-ジストロフィン発現であり、核あたり1コピー超はマイクロ-ジストロフィンの発現レベルと一致する。例えば、細胞は、核あたり1.2ベクターコピー、または核あたり1.3ベクターコピー、または核あたり1.4ベクターコピー、または核あたり1.5ベクターコピー、または核あたり1.6ベクターコピー、または核あたり1.7ベクターコピー、または核あたり1.8ベクターコピー、または核あたり1.9ベクターコピーを有する。
【0274】
別の態様では、本開示は、アルファ-サルコグリカンの発現を増大させることを必要とする患者においてアルファ-サルコグリカンの発現を増大させる方法であって、患者に配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を投与する工程を含む、方法を提供する。例えば、アルファ-サルコグリカンレベルを、rAAVの投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってアルファ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出する。
【0275】
さらに、本開示は、ベータ-サルコグリカンの発現を増大させることを必要とする患者においてベータ-サルコグリカンの発現を増大させる方法であって、患者に配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を投与する工程を含む、方法を提供する。例えば、ベータ-サルコグリカンレベルを、rAAVの投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出する。
【0276】
また、本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー筋ジストロフィを有する患者を処置する方法であって、6分間歩行試験、立ち上がり所要時間、4段昇り、4段階段昇降、ノース・スター歩行能力評価(NSAA)、10メートル計時試験、100メートル計時試験、ハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)、タイムアップアンドゴー、および/または粗大運動サブテスト調整(Bayley-III)スコアのいずれかによって測定した場合に、患者における疾患の進行が遅延するように、患者に配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0277】
例えば、方法のうちのいずれかでは、被験体は、rAAVの投与前のNSAAスコアと比較して、rAAV投与の少なくとも270日後にNSAAスコアが少なくとも1.5、2.0、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5ポイント改善する。さらに、方法のうちのいずれかでは、被験体は、rAAV投与前の立ち上がり所要時間と比較して、rAAV投与の少なくとも270日後に立ち上がり所要時間が少なくとも約0.8秒改善する。さらに、方法のうちのいずれかでは、被験体は、rAAV投与前の4段昇り所要時間試験と比較して、rAAV投与の少なくとも270日後に4段昇り所要時間試験が少なくとも約1.2秒改善する。さらに、方法のうちのいずれかでは、被験体は、rAAV投与前の100m計時試験と比較して、rAAV投与の少なくとも270日後に100m計時試験が少なくとも約7秒改善する。
【0278】
「線維症」は、傷害時の組織(骨格筋、心筋、肝臓、肺、腎臓、および膵臓が挙げられる)における細胞外基質(ECM)構成要素の過剰または無秩序な沈着および異常な修復プロセスを指す。沈着するECM構成要素としては、フィブロネクチンおよびコラーゲン(例えば、コラーゲン1、コラーゲン2、またはコラーゲン3)が挙げられる。
【0279】
また、本開示は、筋ジストロフィを罹患している被験体における線維症を軽減または予防する方法であって、治療有効量の、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーターヌクレオチド配列を含むrAAV;または配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含むrAAVベクターを投与する工程を含む、方法を提供する。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号3のヌクレオチド55~5021のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。別の態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。別の態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号8のヌクレオチド1~4977または配列番号6のヌクレオチド56~5066のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。さらなる態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0280】
別の態様では、本開示は、線維症の予防を必要とする被験体における線維症を予防する方法であって、治療有効量の、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーターヌクレオチド配列;または配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAV74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を含むrAAVベクターを投与する工程を含む、方法を提供する。例えば、本開示のrAAVのいずれかを、線維症を予防するために筋ジストロフィを罹患している被験体に投与することができ、例えば、ヒトマイクロ-ジストロフィンタンパク質を発現する本開示のrAAVを、被験体において線維症が観察される前に投与する。さらに、ヒトマイクロ-ジストロフィン遺伝子を発現する本開示のrAAVを、線維症を発症するリスクのある被験体(筋ジストロフィ(例えば、DMD)を罹患しているか、または診断された被験体など)に投与することができる。本開示のrAAVを、筋ジストロフィを罹患している被験体に、これらの被験体における新たな線維症を予防するために投与することができる。
【0281】
本開示は、被験体において線維症が観察される前にrAAVを投与することを意図する。さらに、rAAVを、線維症を発症するリスクのある被験体(筋ジストロフィ(例えば、DMD)を罹患しているか、または診断された被験体など)に投与することができる。rAAVを、線維症をすでに発症している筋ジストロフィを罹患している被験体に、これらの被験体者における新たな線維症を予防するために投与することができる。
【0282】
また、本開示は、筋ジストロフィを罹患している被験体における筋力および/または筋肉量を増加させる方法であって、治療有効量の配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーターヌクレオチド配列;または配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含むrAAVを投与する工程を含む、方法を提供する。
【0283】
本開示は、被験体において線維症が観察される前、筋力が低下する前、または筋肉量が減少する前に、DMDと診断された被験体にrAAVベクターを投与することを意図する。
【0284】
また、本開示は、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーターヌクレオチド配列;または配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を含むrAAVを、線維症をすでに発症している筋ジストロフィを罹患している被験体に、これらの被験体者における新たな線維症を予防するために、またはこれらの被験体者における線維症を軽減するために投与することを意図する。また、本開示は、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーターヌクレオチド配列;または配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を含むrAAVベクターを、筋力がすでに低下しているか、筋肉量が低下している筋ジストロフィを罹患している被験体に、さらなる傷害から筋肉を保護するために投与することを提供する。
【0285】
また、本開示は、筋ジストロフィ(例えば、DMD)を有するヒト被験体における心筋症を処置する方法であって、本明細書中に記載の組成物のうちのいずれか(例えば、デランディストロゲンモキセパルボベック)を前述のヒト被験体に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの態様では、この方法を、DMDを有する被験体における心機能を改善するために使用する。いくつかの態様では、心機能は、例えば、駆出率(EF)の増加;短縮率(FS)の増加;拡張期左心室内径(LVIDd)の減少;左室収縮末期径(LVESD)の減少;および/または血清トロポニン血中レベルの維持もしくは減少によって改善される。本開示の方法のうちのいずれかでは、被験体は、筋ジストロフィ(DMDなど)、または任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィを罹患していてもよい。
【0286】
本明細書中に記載の本開示の方法のうちのいずれかの他の態様では、被験体中の血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後に、以下からなる群から選択される百分率のレベルが減少する:
a)投与後90、180、または270日までに少なくとも78%;
b)投与後270日までに少なくとも46、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、または85%;
c)投与後180日までに少なくとも72、73、74、または95%;
d)投与後90日までに少なくとも87、88、93、または95%;
e)投与後270日までに少なくとも70%;
f)投与後90、180、または270日までに70~95%;
g)投与後90、180、または270日までに少なくとも56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95%;および
h)投与後90、180、または270日までに少なくとも56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95%。
【0287】
別の態様では、本開示は、筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体において筋ジストロフィを処置するための組成物であって、前述の組成物は、ある用量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAV.MHCK7.マイクロジストロフィンを含み、前述の組成物は、全身投与経路のために製剤化されており、前述のrAAVの用量は、約1×1014vg/kg~約4×1014vg/kgである、組成物を提供する。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0288】
例えば、本開示の組成物は、約5.0×1012vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約5.0×1013vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約2.0×1013vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約1.0×1013vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約5.0×1013vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または1.0×1013vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または5.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または5.0×1013vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約4.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.0×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または 約1.25×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~1.0×1015、または約1.25×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または1.25×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または1.5×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または1.75×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.25×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~1.0×1015、または約2.0×1014vg/kg~6.0×1014、または約2.0×1014vg/kg~5.0×1014、または約2.0×1014vg/kg~約4.0×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kgの用量のrAAVを含む。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0289】
1つの態様では、本開示の組成物は、静脈内投与のために製剤化され、約2.0×1014vg/kgである用量のrAAVを含む。別の態様では、本開示の組成物は、静脈内投与のために製剤化され、約5.0×1012vg/kg、または約6.0×1012vg/kg、または約7.0×1012vg/kg、または約8.0×1012vg/kg、または約9.0×1012vg/kg、または約1.0×1013vg/kg、または約1.25×1013vg/kg、または約1.5×1013vg/kg、または約1.75×1013vg/kg、または約2.25×1013vg/kg、または約2.5×1013vg/kg、または約2.75×1013vg/kg、または約3.0×1013vg/kg、または約3.25×1013vg/kg、または約3.5×1013vg/kg、または約3.75×1013vg/kg、または約4.0×1013vg/kg、または約5.0×1013vg/kg、または約6.0×1013vg/kg、または約7.0×1013vg/kg、または約8.0×1013vg/kg、または約9.0×1013vg/kg、または約1.0×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg、または約2.25×1014vg/kg、または約2.5×1014vg/kg、または約2.75×1014vg/kg、または約3.0×1014vg/kg、または約3.25×1014vg/kg、または約3.5×1014vg/kg、または約3.75×1014vg/kg、または約4.0×1014vg/kg、または約5.0×1014vg/kg、または約6.0×1014vg/kg、または約1×1015である用量のrAAVを含む。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。別の態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0290】
本開示の組成物のうちのいずれかでは、rAAVの用量は、約5mL/kg~約15mL/kg、または約8mL/kg~約12mL/kg、または8mL/kg~約10mL/kg、または5mL/kg~約10mL/kg、または約10mL/kg~12mL/kg、または約10mL/kg~15mL/kg、または10mL/kg~約20mL/kgで送達される。特定の態様では、組成物は、約10mL/kgで送達される用量のrAAVを含む。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。別の態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0291】
本開示の組成物は、注射、注入、または移植による投与のために製剤化される。例えば、組成物は、およそ1時間にわたる注入による投与のために製剤化される。さらに、本開示の組成物は、四肢の末梢静脈(腕の末梢静脈または脚の末梢静脈など)を介した静脈内投与のために製剤化される。あるいは、およそ30分間、またはおよそ1.5時間、またはおよそ2時間、またはおよそ2.5時間、またはおよそ3時間にわたって注入によって投与され得る。
【0292】
本開示の組成物のうちのいずれかは、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含むrAAV、または配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含むrAAVベクターを含む。
【0293】
特に、本開示の組成物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィを処置するために使用する。例えば、本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体においてデュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィの処置を行うための組成物であって、組成物は、ある用量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAV.MHCK7.マイクロジストロフィンを含み、組成物は、およそ1時間にわたる静脈内注入による投与のために製剤化されており、rAAVの投与用量は約2×1014vg/kgであり、rAAVは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含む、組成物を提供する。
【0294】
別の態様では、また、本発明は、線維症を軽減することを必要とする被験体における線維症を軽減するためのrAAVを含む組成物を提供する。さらに、本開示は、筋ジストロフィを罹患している被験体における線維症を予防するためのrAAVベクターを含む組成物を提供する。
【0295】
また、本開示は、筋ジストロフィを罹患している被験体における筋力および/または筋肉量を増加させるためのrAAVを含む組成物を提供する。さらなる態様では、本開示は、筋ジストロフィの処置のための本開示のrAAVのうちのいずれかを含む組成物を提供する。
【0296】
本開示の組成物のいずれかの他の態様では、筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体への前述の組成物の投与後、被験体中の血清CKレベルは、組成物の投与前の血清CKレベルと比較して、以下からなる群から選択される百分率のレベルが減少する:
a)投与後90、180、または270日までに少なくとも78%;
b)投与後270日までに少なくとも46、55、70、または85%;
c)投与後180日までに少なくとも72、73、74、または95%;
d)投与後90日までに少なくとも87、99、93、または95%;
e)投与後270日までに少なくとも70%;
f)投与後90、180、または270日までに70~95%;
g)投与後90、180、または270日までに少なくとも69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95%;および
h)投与後90、180、または270日までに69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95%。
【0297】
別の態様では、本開示は、筋ジストロフィの治療を必要とするヒト被験体における筋ジストロフィの治療のための医薬の調製のための、ある用量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAV.MHCK7.マイクロジストロフィンの使用であって、ここで、医薬は全身投与経路用に製剤化されており、rAAVの用量は約1×1014vg/kg~約4×1014vg/kgである、使用を提供する。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0298】
例えば、医薬は、約5.0×1012vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約5.0×1013vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約2.0×1013vg/kg、または約5.0×1012vg/kg~約1.0×1013vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約5.0×1013vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または約1.0×1013vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または1.0×1013vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または5.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または約5.0×1013vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または5.0×1013vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約6.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約5.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約4.0×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.0×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または1.0×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または 約1.25×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.25×1014vg/kg~1.0×1015、または約1.25×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または1.25×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または1.5×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.5×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または1.75×1014vg/kg~約1.0×1015vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~6.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~5.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~4.0×1014、または約1.75×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約3.0×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.75×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.25×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg~約2.0×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~1.0×1015、または約2.0×1014vg/kg~6.0×1014、または約2.0×1014vg/kg~5.0×1014、または約2.0×1014vg/kg~約4.0×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.75×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.5×1014vg/kg、または約2.0×1014vg/kg~約3.25×1014vg/kgの用量のrAAVを含む。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0299】
1つの態様では、本開示の医薬は、ある用量のrAAVの全身投与のために製剤化されており、ここで、全身投与経路は静脈内経路であり、rAAVの投与用量は約2.0×1014vg/kgである。別の態様では、本開示の医薬は、ある用量のrAAVの全身投与のために製剤化されており、ここで、全身投与経路は静脈内経路であり、rAAVの用量は、約5.0×1012vg/kg、または約6.0×1012vg/kg、または約7.0×1012vg/kg、または約8.0×1012vg/kg、または約9.0×1012vg/kg、または約1.0×1013vg/kg、または約1.25×1013vg/kg、または約1.5×1013vg/kg、または約1.75×1013vg/kg、または約2.25×1013vg/kg、または約2.5×1013vg/kg、または約2.75×1013vg/kg、または約3.0×1013vg/kg、または約3.25×1013vg/kg、または約3.5×1013vg/kg、または約3.75×1013vg/kg、または約4.0×1013vg/kg、または約5.0×1013vg/kg、または約6.0×1013vg/kg、または約7.0×1013vg/kg、または約8.0×1013vg/kg、または約9.0×1013vg/kg、または約1.0×1014vg/kg、または約1.25×1014vg/kg、または約1.5×1014vg/kg、または約1.75×1014vg/kg、または約2.25×1014vg/kg、または約2.5×1014vg/kg、または約2.75×1014vg/kg、または約3.0×1014vg/kg、または約3.25×1014vg/kg、または約3.5×1014vg/kg、または約3.75×1014vg/kg、または約4.0×1014vg/kg、または約5.0×1014vg/kg、または約6.0×1014vg/kg、または約1×1015vg/kgである。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0300】
本開示の使用のいずれかでは、医薬は、約5mL/kg~約15mL/kg、または約8mL/kg~約12mL/kg、または8mL/kg~約10mL/kg、または5mL/kg~約10mL/kg、または約10mL/kg~12mL/kg、または約10mL/kg~15mL/kg、または10mL/kg~約20mL/kgのrAAVの用量を含む。特定の態様では、用量またはrAAVは、約10mL/kgで送達される用量のrAAVを含む。1つの態様では、rAAVは、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンである。別の態様では、rAAVは、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。1つの態様では、AAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンは、配列番号5のヌクレオチド56~4820のAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンである。
【0301】
本開示の使用のいずれかでは、医薬は、注射、注入、または移植による投与のために製剤化される。例えば、医薬は、およそ1時間にわたる注入による投与のために製剤化される。さらに、医薬は、四肢の末梢静脈(腕の末梢静脈または脚の末梢静脈など)を介した静脈内投与のために製剤化される。あるいは、およそ30分間、またはおよそ1.5時間、またはおよそ2時間、またはおよそ2.5時間、またはおよそ3時間にわたって注入によって投与され得る。
【0302】
本開示の使用のいずれかでは、医薬は、配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーター配列を含むrAAV、または配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含む。
【0303】
本開示の特定の用途は、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィの処置のための医薬の調製のためである。例えば、本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィの処置を必要とするヒト被験体におけるデュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー型筋ジストロフィの処置のための医薬の調製のための、ある用量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)rAAV.MHCK7.マイクロジストロフィンの使用であって、ここで、医薬はおよそ1時間にわたる静脈内注入による投与のために製剤化され、rAAVの投与用量が約2×1014vg/kgであり、rAAVは、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含む、使用を提供する。
【0304】
さらなる態様では、本開示は、線維症の軽減を必要とする被験体における線維症を軽減するための医薬を調製するためのrAAVの使用を提供する。例えば、必要とする被験体は、DMDまたは任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィなどの筋ジストロフィを罹患している可能性がある。
【0305】
別の態様では、本開示は、筋ジストロフィを罹患している被験体における線維症を予防するための医薬を調製するためのrAAVの使用を提供する。
【0306】
さらに、本開示は、筋ジストロフィを罹患している被験体の筋力および/または筋肉量を増加させるための医薬を調製するためのrAAVの使用を提供する。
【0307】
また、本開示は、筋ジストロフィの処置用の医薬を調製するためのrAAVの使用を提供する。
【0308】
本開示は、筋ジストロフィの処置のための医薬を調製するための配列番号1のヒトマイクロ-ジストロフィンヌクレオチド配列および配列番号2または配列番号7のMHCK7プロモーターヌクレオチド配列を含むrAAVベクター、または筋ジストロフィの処置のための配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、もしくは配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrf74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含むrAAVベクターの使用を提供する。
【0309】
本開示の使用のうちのいずれかの他の態様では、被験体中の血清CKレベルは、被験体へのrAAVの投与後、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、以下からなる群から選択される百分率のレベルが減少する:
a)投与後90、180、または270日までに少なくとも78%;
b)投与後270日までに少なくとも46、55、70、または95%;
c)投与後180日までに少なくとも72、73、74、または95%;
d)投与後90日までに少なくとも87、88、93、または95%;
e)投与後270日までに少なくとも70%;
f)投与後90、180、または270日までに70~95%;
g)投与後90、180、または270日までに少なくとも69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95%;および
h)投与後90、180、または270日までに69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95%。
【0310】
筋ジストロフィを処置するための組成物または筋ジストロフィを処置するための医薬の使用のうちのいずれかでは、被験体の細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現レベルは、組成物または医薬の投与後に増加する。細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、組成物または医薬の投与前および投与後に生検を実施した筋肉中のウェスタンブロットによってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。特に、マイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルは、組成物または医薬の投与前のマイクロ-ジストロフィンレベルと比較して、組成物または医薬の投与後に少なくとも約70%~少なくとも約80%、または少なくとも約70%~少なくとも約90%、または少なくとも約80%~少なくとも約90%増加する。例えば、マイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルは、組成物または医薬の投与前のマイクロ-ジストロフィンレベルと比較して、組成物の投与後に少なくとも約70%または少なくとも約71%または少なくとも約72%または少なくとも約73%または少なくとも約74%または少なくとも約75%または少なくとも約76%または少なくとも約77%または少なくとも約78%または少なくとも約79%または少なくとも約80%、または少なくとも約81%、または少なくとも約82%、または少なくとも約83%、または少なくとも約84%、または少なくとも約85%増加する。
【0311】
さらに、細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、組成物または医薬の投与前および投与後の筋生検における免疫組織化学によってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。マイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルは、組成物または医薬の投与前のマイクロ-ジストロフィンレベルと比較して、rAAVの投与後に少なくとも約70%~少なくとも約80%、または少なくとも約70%~少なくとも約90%、または少なくとも約80%~少なくとも約90%増加する。例えば、マイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルは、組成物または医薬の投与前のマイクロ-ジストロフィンレベルと比較して、組成物または医薬の投与後に少なくとも約70%または少なくとも約71%または少なくとも約72%または少なくとも約73%または少なくとも約74%または少なくとも約75%または少なくとも約76%または少なくとも約77%または少なくとも約78%または少なくとも約79%または少なくとも約80%、または少なくとも約81%、または少なくとも約82%、または少なくとも約83%、または少なくとも約84%、または少なくとも約85%増加する。
【0312】
筋ジストロフィを処置するための組成物のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後に減少する。例えば、被験体中の血清CKレベルは、組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約65%~約90%または約65%~約95%または約75%~約90%または約80%~約90%または約85%~約95%または約87%~約95%または約87%~約90%減少する。特に、本開示の筋ジストロフィを処置するための組成物のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約87%減少するか、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置するための組成物または筋ジストロフィを処置するための医薬の使用のいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約72%減少するか、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置するための組成物のうちのいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約73%減少するか、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置するための組成物または筋ジストロフィを処置するための医薬の使用のいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、組成物の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約78%減少するか、あるいは本開示の筋ジストロフィを処置するための組成物または筋ジストロフィを処置するための医薬の使用のいずれかでは、被験体中の血清CKレベルは、組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約95%減少する。筋ジストロフィを処置するための組成物または筋ジストロフィを処置するための医薬の使用のうちのいずれかでは、被験体の筋組織中のマイクロ-ジストロフィン陽性線維数は、組成物または医薬の投与前のマイクロ-ジストロフィン陽性線維数と比較して、組成物または医薬の投与後に増加する。例えば、マイクロ-ジストロフィン陽性線維数を、組成物または医薬の投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。
【0313】
筋ジストロフィを処置するための組成物または筋ジストロフィを処置するための医薬の使用のうちのいずれかでは、組成物または医薬を投与すると、DAPCタンパク質(アルファ-サルコグリカンまたはベータ-サルコグリカンなど)の発現が上方制御される。例えば、被験体中のアルファ-サルコグリカンレベルは、組成物または医薬の投与前のアルファ-サルコグリカンレベルと比較して、組成物または医薬の投与後に増加する。さらに、被験体中のベータ-サルコグリカンレベルは、組成物または医薬の投与前のベータ-サルコグリカンレベルと比較して、組成物または医薬の投与後に増加する。アルファ-サルコグリカンまたはベータ-サルコグリカンのレベルを、組成物または医薬の投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってアルファ-サルコグリカンまたはベータ-サルコグリカンのタンパク質レベルを測定することによって検出する。
【0314】
筋ジストロフィを処置するための組成物または筋ジストロフィを処置するための医薬の使用のうちのいずれかでは、被験体における疾患の進行は、6分間歩行試験、立ち上がり所要時間、4段昇り、4段階段昇降、ノース・スター歩行能力評価(NSAA)、10メートル計時試験、100メートル計時試験、ハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)、タイムアップアンドゴー、および/または粗大運動サブテスト調整(Bayley-III)スコアのいずれかによって測定した場合に、組成物または医薬の投与後に遅延する。
【0315】
例えば、筋ジストロフィを処置するための組成物のいずれかの投与または筋ジストロフィを処置するための医薬の使用の後に、被験体は、rAAVの投与前のNSAAスコアと比較して、組成物または医薬の投与の少なくとも270日後にNSAAスコアが少なくとも1.5、2.0、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5ポイント改善する。さらに、方法のうちのいずれかでは、被験体は、組成物または医薬の投与前の立ち上がり所要時間と比較して、組成物または医薬の投与の少なくとも270日後に立ち上がり所要時間が少なくとも約0.8秒改善する。さらに、本開示の方法または使用のいずれかでは、被験体は、組成物または医薬の投与前の4段昇り所要時間試験と比較して、組成物または医薬の投与の少なくとも270日後に4段昇り所要時間試験が少なくとも約1.2秒改善する。さらに、本開示の方法または使用のいずれかでは、被験体は、組成物または医薬の投与前の100m計時試験と比較して、組成物または医薬の投与の少なくとも270日後に100m計時試験が少なくとも約7秒改善する。
【0316】
別の態様では、本開示は、配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を含む、患者の細胞中でマイクロ-ジストロフィン遺伝子を発現させための組成物を提供する。さらなる態様では、本開示は、患者の細胞中でマイクロ-ジストロフィン遺伝子を発現させるための医薬の調製のための、ある用量の配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物の使用を提供する。例えば、患者の細胞中のマイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現を、rAAV.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の投与前および投与後の筋生検におけるウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってマイクロ-ジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。さらに、マイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現は、患者において核あたりより多くのベクターゲノム数を検出することによって測定され、ここで、核あたり1ベクターゲノムは約50%マイクロ-ジストロフィン発現であり、核あたり1コピー超はマイクロ-ジストロフィンの発現レベルと一致する。例えば、細胞は、核あたり1.2ベクターコピー、または核あたり1.3ベクターコピー、または核あたり1.4ベクターコピー、または核あたり1.5ベクターコピー、または核あたり1.6ベクターコピー、または核あたり1.7ベクターコピー、または核あたり1.8ベクターコピー、または核あたり1.9ベクターコピーを有する。
【0317】
さらなる態様では、本開示は、血清CKレベルを減少させることを必要とする患者において血清CKレベルを低下させるための組成物であって、組成物は、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含む、組成物を提供する。さらに、本開示は、血清CKレベルを減少させることを必要とする患者において血清CKレベルを低下させるための医薬の調製のための、ある用量の配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の使用を提供する。例えば、患者中の血清CKレベルは、組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに少なくとも約65%~約90%または約65%~約95%または約75%~約90%または約80%~約90%または約85%~約95%または約87%~約95%または約87%~約90%減少する。特に、被験体中の血清CKレベルは、組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約87%減少するか、あるいは組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約72%減少するか、あるいは組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約73%減少するか、あるいは組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約78%減少するか、あるいは組成物または医薬の投与前の血清CKレベルと比較して、組成物または医薬の投与後60日までに約95%減少する。
【0318】
また、本開示は、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含む、患者の筋組織中のマイクロ-ジストロフィン陽性線維を増加させるための組成物を提供する。さらに、本開示は、患者の筋組織中のマイクロ-ジストロフィン陽性線維を増加させるための医薬の調製のための、ある用量の配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の使用を提供する。例えば、マイクロ-ジストロフィン陽性線維数は、組成物または医薬の投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってジストロフィンタンパク質レベルを測定することによって検出する。さらに、マイクロ-ジストロフィン遺伝子の発現は、患者において核あたりより多くのベクターゲノム数を検出することによって測定され、ここで、核あたり1ベクターゲノムは約50%マイクロ-ジストロフィン発現であり、核あたり1コピー超はマイクロ-ジストロフィンの発現レベルと一致する。例えば、細胞は、核あたり1.2ベクターコピー、または核あたり1.3ベクターコピー、または核あたり1.4ベクターコピー、または核あたり1.5ベクターコピー、または核あたり1.6ベクターコピー、または核あたり1.7ベクターコピー、または核あたり1.8ベクターコピー、または核あたり1.9ベクターコピーを有する。
【0319】
別の態様では、本開示は、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含む、アルファ-サルコグリカンの発現を増大させることを必要とする患者においてアルファ-サルコグリカンの発現を増大させるための組成物を提供する。また、本開示は、アルファ-サルコグリカンの発現を増大させることを必要とする患者においてアルファ-サルコグリカンの発現を増大させるための医薬の調製のための、ある用量の配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の使用を提供する。例えば、アルファ-サルコグリカンレベルを、組成物または医薬の投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってアルファ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出する。
【0320】
さらに、本開示は、配列番号9、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物ヌクレオチド配列を含む、ベータ-サルコグリカンの発現を増大させることを必要とする患者においてベータ-サルコグリカンの発現を増大させるための組成物を提供する。また、本開示は、ベータ-サルコグリカンの発現を増大させることを必要とする患者においてベータ-サルコグリカンの発現を増大させるための医薬の調製のための、配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の使用を提供する。例えば、ベータ-サルコグリカンレベルを、組成物または医薬の投与前または投与後の筋生検に対するウェスタンブロットまたは免疫組織化学によってベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出する。
【0321】
また、本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィまたはベッカー筋ジストロフィを有する患者を処置するための医薬の調製のための、ある用量の配列番号9のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、配列番号8のヌクレオチド1~4977、または配列番号6のヌクレオチド56~5022のAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の使用であって、前述の医薬の投与により、6分間歩行試験、立ち上がり所要時間、4段昇り、4段階段昇降、ノース・スター歩行能力評価(NSAA)、10メートル計時試験、100メートル計時試験、ハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)、タイムアップアンドゴー、および/または粗大運動サブテスト調整(Bayley-III)スコアのいずれかによって測定した場合に、患者における疾患の進行が遅延する、使用を提供する。
【0322】
例えば、被験体は、組成物または医薬の投与前のNSAAスコアと比較して、組成物または医薬の投与の少なくとも270日間後にNSAAスコアが少なくとも1.5、2.0、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5ポイント改善する。さらに、被験体は、組成物または医薬の投与前の立ち上がり所要時間と比較して、組成物または医薬の投与の少なくとも270日後に立ち上がり所要時間が少なくとも約0.8秒改善する。さらに、被験体は、組成物または医薬の投与前の4段昇り所要時間試験と比較して、組成物または医薬の投与の少なくとも270日後に4段昇り所要時間試験が少なくとも約1.2秒改善する。さらに、被験体は、組成物または医薬の投与前の100m計時試験と比較して、組成物または医薬の投与の少なくとも270日後に100m計時試験が少なくとも約7秒改善する。
【0323】
概要および要約の節ではなく、詳細な説明の節がクレームを解釈するために使用されることが意図されると認識すべきである。概要および要約の節は、本発明者(複数可)が予期する本開示の1またはそれを超える例示的な態様を記載しているが全てではない可能性があり、したがって、いかなる方法によっても本開示および添付のクレームを制限することを意図しない。
【0324】
以下の実施例は、例示として提供されるものであり、本発明を限定するものではない。記載の数値範囲は、各範囲内の各整数値ならびに記載された整数の最小値および最大値を含む。
【実施例】
【0325】
実施例
実施例1
A)AAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の生成
AAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンプラスミドは、AAV2逆位末端反復配列(ITR)に隣接したヒトマイクロ-ジストロフィンcDNA発現カセットを含む(
図1を参照のこと)。マイクロ-ジストロフィン構築物は、インフレームのロッド欠失(R4-R23)を特徴としていた一方で、ヒンジ1、2、および4、ならびにシステインリッチドメインは依然として138kDaタンパク質を産生する。マイクロ-ジストロフィンタンパク質(3579bp)の発現は、MHCK7プロモーター(792bp)によってガイドされた。プラスミドを、MCKプロモーターを除去し、MHCK7プロモーターを挿入することによって、rAAV.MCK.マイクロ-ジストロフィンプラスミドから構築した。コアプロモーターの後に、53bpの内因性マウスMCKエクソン1(非翻訳)が効率的な転写開始のために存在し、SV40後期16S/19Sスプライスシグナル(150bp)および小型5’UTR(61bp)が続く。イントロンおよび5’UTRは、プラスミドpCMVβ(Clontech)に由来する。マイクロ-ジストロフィンカセットは、ATG開始コドンおよびmRNA終結のための小型の53bp合成ポリAシグナルの直前にコンセンサスKozakを有していた。ヒトマイクロ-ジストロフィンカセットは、Harper et al.(Nature Medicine 8,253-261(2002))によって以前に記載された(R4-R23/Δ71-78)ドメインを含んでいた。相補DNAは、ヒトで使用するためにコドン最適化されており、GenScript(Piscataway,NJ)(Mol Ther 18,109-117(2010))によって合成した。このベクター中に含まれる唯一のウイルス配列は、ウイルスのDNA複製およびパッケージングに必要なAAV2の逆位末端反復であった。マイクロ-ジストロフィンカセットは、mRNA終結のための小型53bp合成ポリAシグナルを有する。
【0326】
以前の研究において、MHCK7プロモーターを使用した心臓での発現(Salva et al.、Mol Ther 15、320-329(2007)ならびにAAVrh74が骨格筋、横隔膜、および心筋で発現すること(Sondergaard et al.Annals of Clinical and Transl Neurology 2,256-270(2015))が立証されており、
図1の構築物の配列を、AAVrh.74ビリオン中にキャプシド化した。AAVrh.74血清型の分子クローンを、アカゲザルリンパ節からクローン化した。これはRodino-Klapac et al.Journal of Translational Medicine 5,45(2007)で考察されている。
【0327】
表1は、プラスミドAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン分子(配列番号3)の特徴を示す。
【表1】
B)AAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物
およびカナマイシン(Kan)耐性をコードするプラスミドの生成
【0328】
MHCK7.μDys.KANのクローン化を、MHCK7.μDys.AMPプラスミドおよびカナマイシンバックボーンからMHCK7.μDys断片を単離し、NEBuilderクローニングワークフローを使用してこれらをアニーリングすることによって行った。MHCK7.μDys断片を、SnaBIでの制限酵素消化によって単離した。50μLの総反応体積にて1×CutSmart緩衝液(NEB)および1μL SnaBI中、37℃で1時間消化を行った。得られた断片を、1%アガロースゲルを用い、105ボルトで1.5時間運転した電気泳動によって単離した。MHCK7.μDysインサートに対応するバンドを切り出し、ゲル精製キット(Macherey-Nagel)を使用して精製した。得られた断片は、DNA濃度が10ng/μLであった。Kanバックボーン断片を、50μLの反応体積にて1×CutSmart緩衝液(NEB)および1μL XbaIを用いた37℃で1時間のXbaI制限酵素消化によって単離した。得られた断片を、1%アガロースゲルを用い、105ボルトで1.5時間運転した電気泳動によって単離した。Kanバックボーンに対応するバンドを切り出し、ゲル精製キット(Macherey-Nagel)によって精製した。得られた断片は、DNA濃度が8.1ng/μLであった。2つの断片を、重複配列と有する2つの断片を接合することができるNEB Builderクローニングワークフローを使用してアニーリングした。NEBuilderクローニング反応を、製造者のプロトコールに従って、総体積20μLについて1×NEBuilder HiFi DNAアセンブリマスターミックス中で比率1:1のMHCK7.μDysおよびカナマイシンバックボーンを使用して、50℃で15分間行った。得られたクローンを、2.5μLクローニング産物を細胞に添加し、その後に氷上に30秒間、次いで、42℃で30秒間、および氷上でさらに5分間置くことによってNEB(登録商標)Stable Competent E.coli(C3040)に形質転換した。形質転換後、950μLの増殖培地を細胞に添加し、225rpmで振盪しながら30℃で1.5時間成長させた。増殖後、450μLのこれらの細胞を、50μg/mLのカナマイシンLB寒天プレートにプレートし、乾燥インキュベーター内で30℃で一晩インキュベートした。コロニーをこのプレートから採取し、50μg/mLのカナマイシンを含むLB内で一晩成長させた。QIAprep(登録商標)Spin Miniprep Kit(Qiagen)を使用して、3mLのこの培養物からDNAを単離した。このDNAを、クローニング産物を確認するために使用した。クローニング産物を、PmeI、MscI、およびSmaIによる制限酵素消化、それに続くゲル電気泳動によって確認した。クローニング産物を、配列決定によって追加で確認した。得られたプラスミドを、配列番号8に記載し、
図14および15に示す。配列番号9の配列に対応する
図13の構築物の配列、および配列番号8のヌクレオチド1~4977を、上記のAAVrh.74ビリオンにキャプシド化した。
実施例2
デュシェンヌ型筋ジストロフィの全身遺伝子送達臨床試験
【0329】
これは、DMD被験体についての配列番号3のヌクレオチド55~5021のrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを使用した単一用量対照試験であった。コホートAは、3ヶ月から3歳までの6人の被験体を含んでおり、コホートBは、4歳から7歳までの6人の被験体を含んでいた。全ての被験体に、静脈内マイクロ-ジストロフィンベクター(10mL/kg中2×1014vg/kg)を投与した。rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを、20mM Tris(pH8.0)、1mM塩化マグネシウム(MgCl2)、200mM塩化ナトリウム(NaCl)、および0.001%ポロクサマー188を含む緩衝液中で製剤化した。
【0330】
この研究では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを、体内の全ての筋肉に到達することができるように、腕の末梢静脈を介して注入した。コホートA中の3ヶ月から3歳までの6人のDMD被験体、およびコホートB中の4歳から7歳までの6人のDMD被験体が登録された。全ての被験体に、静脈内マイクロ-ジストロフィンベクター(10mL/kg中2×1014vg/kg)を投与した。投与用量についてのカプセル化ベクターゲノムの力価を、MHCK7プロモーターに指向するプライマーを用いたPrism7500 Taqman検出システム(PE Applied Biosystems)を使用する定量PCRを使用して、スーパーコイルDNAプラスミド標準と比較して決定した(Pozsgai et al.,Mol.Ther.25(4):855-869(2017))。
【0331】
被験体に、Nationwide Children’s Hospitalの小児集中治療室(PICU)で1時間にわたって注入を行った。遺伝子治療の前に、筋生検をスクリーニング来院時に行った。被験体は、送達90日後に遺伝子が喪失ジストロフィンタンパク質と置き換えられたかを決定するための第2の筋生検を受けるであろう。遺伝子導入後、患者を、処置による任意の副作用について慎重にモニタリングした。このモニタリングには、遺伝子注射に由来する副作用がないことを確認するためのスクリーニング来院中および0、1、7、14、30、60、90、および180日目、ならびに9、12、18、24、30、および36ヶ月目の血液検査および尿検査、ならびに身体検査を含んでいた。
【0332】
コホートAの被験体(n=6)は、3ヶ月から3歳の間であり、この被験体にrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンベクター(10mL/kg中2×1014vg/kg)を静脈内投与した。遺伝子導入の1日前に、コホートAの被験体に対して、プレドニゾンまたはデフラザコルト1mg/kgを開始し、免疫応答をモニタリングしながら30日間維持した。30日目に陰性の場合、ステロイドを1週間にわたって休薬した。AAVまたはマイクロ-ジストロフィンに対するT細胞応答が125SFC/106PBMCを超える場合、ステロイドレベルをこの閾値未満に低下するまで維持した。
【0333】
コホートBの被験体(n=6)は、4歳から7歳の間であり、この被験体にrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンベクター(10mL/kg中2×1014vg/kgを静脈内投与した。これらの被験体に対して、試験を通して安定な用量のコルチコステロイドを維持したが、AAVまたはマイクロ-ジストロフィンに対するT細胞応答が125SFC/106PBMCを超える場合は、短期間増量する場合があった。
適格基準
【0334】
研究の選択基準は以下の通りであった:
・参加年齢:コホートA:3ヶ月から7歳まで、およびコホートB:4~7歳の間(両端の数値を含む)。
・分子がフレームシフト(欠失または重複)を有するDMD遺伝子、またはエクソン18から58までの間の未熟終止コドン変異を特徴とすること。
・1000U/Lを超えるCKの上昇
・コホートA被験体:9以下の調整スコアとして定義される粗大運動についてのBayley-III運動査定が平均未満
・コホートB:推定80%未満として定義される100メートル計時試験が平均未満
・任意の人種集団の男性。
・運動査定試験に協力できること。
・コホートA被験体:以前にコルチコステロイドで処置されていないこと。
・コホートB被験体:スクリーニングおよび投与前の少なくとも12週間の経口コルチコステロイドと等価な安定用量が、研究を通して一定(体重変化に適応させるための修正を除く)のままであることが予想されること。
【0335】
研究の除外基準は、以下の通りであった:
・臨床所見に基づいた活動性ウイルス感染。
・心筋症の兆候(駆出率40%未満の心エコー図が挙げられる)。
・HIV感染、またはB型肝炎もしくはC型肝炎感染の血清学的証拠。
・自己免疫疾患の診断(または処置中)
・臨床的に有意とみなされる異常な臨床検査値
・PIの意見による、遺伝子導入の不必要なリスクが生じる併発疾患または慢性薬物処置の必要性。
・ELISA免疫アッセイによって判定した場合のAAVrh74またはAAV8の抗体価が1:400を超える被験体。
・治験責任医師の意見によると、被験体がプロトコールに必要とされる試験もしくは手技に従う能力を損ない得るか、患者の福祉、安全性、または臨床上の解釈可能性を損ない得る病状または酌量すべき病状。
・遺伝子導入のための来院の4週間前以内の重度の感染症(例えば、肺炎、腎盂腎炎、または髄膜炎)(参加は延期され得る)。
・この試験のためのスクリーニングの最後の6ヶ月前に、実験または他の目的で任意の研究中の薬剤(コルチコステロイド以外)またはエクソンスキッピング剤(ExonDys51(登録商標)が挙げられる)を投与されていること。
・任意のタイプの遺伝子治療、細胞ベースの治療(例えば、幹細胞移植)、またはCRISPR/Cas9治療を受けていたこと。
・家族が、患者の研究参加をかかりつけ医および他の医療提供者に開示することを望まない場合。
アウトカム尺度
【0336】
主要アウトカム尺度は、有害事象(時間枠:3年間)を有する参加者数に基づくと安全であった。有害作用をモニタリングし、重症度および研究項目に対する関係性についてスコアリングした。
【0337】
副次アウトカム尺度は以下の通りであった:
【0338】
粗大運動サブテスト調整(Bayley-III)スコア(時間枠:スクリーニング、30日目~3年間):粗大運動調整スコアにより、運動発達を測定した。Bayley-III粗大運動サブテストにより、コホートAについて30日目から開始して3年間にわたって追跡来院毎にスコアリングした。スクリーニング時点で43~47ヶ月(両端の数値を含む)であった任意の被験体は、42ヶ月の小児の基準データと比較して計算された調整スコアを有していた。Bayley-IIIから、1~42ヶ月の小児についての基準データを得た。
【0339】
理学療法査定である100メートル計時試験(100m)(時間枠:スクリーニング、30日間~3年間):100mは、コホートBの主要運動アウトカムであった。100メートル計時試験は、小児が3歳になってからできるだけ早期にコホートAについて開始される診査アウトカムであった。
【0340】
理学療法査定であるノース・スター歩行能力評価(NSAA)(時間枠:スクリーニング、30日目~3年間):ノース・スター歩行能力評価(NSAA)は、小児が4歳になってからできるだけ早期のコホートAおよびコホートBについて開始される診査アウトカムであった。NSAAは、デュシェンヌ型筋ジストロフィを有する男児における歩行の質を測定する。
【0341】
理学療法査定である小児のために修正されたタイムアップアンドゴー(TUG)(時間枠:スクリーニング、30日目~3年間):コホートBのための診査アウトカムは、小児のために修正されたタイムアップアンドゴー(TUG)を含んでいた。
【0342】
理学療法査定である4段階段昇降(時間枠:スクリーニング、30日目~3年間):コホートBのための診査アウトカムは、4段階段昇降を含むであろう。
【0343】
理学療法査定であるハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)(時間枠:スクリーニング、30日目~3年間):コホートBのための診査アウトカムは、膝伸筋および膝屈筋、ならびに肘屈筋および肘伸筋についてのハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)を含んでいた。
【0344】
免疫蛍光によるマイクロ-ジストロフィン遺伝子発現の定量(時間枠:スクリーニング、90日目):マイクロ-ジストロフィン遺伝子発現レベルを、免疫蛍光によって定量し、筋生検の前および後に比較した。
【0345】
ウェスタンブロットによるマイクロ-ジストロフィン遺伝子発現の定量(時間枠:スクリーニング、90日目):マイクロ-ジストロフィン遺伝子発現レベルを、ウェスタンブロット分析によって定量し、筋生検の前および後に比較した。
【0346】
遺伝子治療後のCKの減少(時間枠:3年間):循環血中のCKレベルの減少。
【0347】
心臓の磁気共鳴画像法(1年目)。
マイクロ-ジストロフィン遺伝子発現
【0348】
免疫蛍光(IF)線維強度を介したマイクロ-ジストロフィン発現のベースラインからの変化を、分析および定量した。表2に示すように、被験体1(5歳)では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与後に腓腹筋生検の筋線維中の78%のマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現が実証された;被験体2(4歳)では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与後に腓腹筋生検の筋線維中の73.5%のマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現が実証された;被験体3(6歳)では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与後に腓腹筋生検の筋線維中の77.0%のマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現が実証された。被験体4(4歳)では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与後に腓腹筋生検の筋線維中の96.2%のマイクロ-ジストロフィン発現が実証された。全患者は、形質導入されたマイクロ-ジストロフィンの頑強な発現を示し、これは、免疫組織化学によって測定した場合に筋線維鞘に適切に局在化されている(
図7)。
【表2】
【0349】
また、ベースラインから60日目までのマイクロ-ジストロフィン遺伝子発現の変化を、生検を行った筋組織のウェスタンブロットによって測定したマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現の定量によって査定した。
図8Aおよび8Bに示すように、ウェスタンブロット分析により、被験体1(5歳)、被験体2(4歳)、および被験体3(6歳)においてマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現が検出された。
図8Cは、被験体4(4歳)におけるマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現を検出するウェスタンブロット分析を提供する。全ての処置後生検は、ウェスタンブロットによって測定した場合に健全なレベルのマイクロ-ジストロフィンを示し、被験体1~4の平均は、方法1を利用して正常と比較した場合に74.3%であり、脂肪線維および線維性組織について調整している方法2に従って正常と比較した場合に95.8%であった。
【0350】
各被験体について、筋線維の核あたりのベクターゲノムコピー数を測定した。表3に示すように、ヌクレアーゼあたりのベクターゲノムコピー数は、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与後に被験体の各々について1を超えていた。1コピーのベクターは、マイクロ-ジストロフィン遺伝子のおよそ50%発現を示す。細胞核あたり平均1.6個のベクターコピー数が被験体1~3で測定され、これは、観察された高マイクロ-ジストロフィン発現レベルと一致していた。被験体4の値を含んだ場合、平均ベクターコピー数/μgDNAは10
5を超え、細胞核あたり平均ベクターコピー数は3.3であった。
【表3】
【0351】
筋生検組織におけるアルファ-サルコグリカンおよびベータ-サルコグリカンのタンパク質レベルを、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与前および投与後の免疫組織化学によって測定した。また、rAAVrh74.MHCK7の投与により、被験体におけるDAPCタンパク質が上方制御された。
図9に示すように、筋生検組織中のアルファ-サルコグリカンおよびベータ-サルコグリカンの発現は、被験体1(
図9A)、被験体2(
図9B)、および被験体3(
図9C)において、rAAVrh74.MHCK7の投与前の筋生検中のこれらのタンパク質のレベルと比較して増加した。
循環血清CKレベル
【0352】
血液試料を、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンベクター(10mL/kg中2×10
14vg/kg)の静脈内注入による投与後30日毎に得た。CKレベルを、各来院時に測定し、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与前(来院0日目)に得たベースラインレベルと比較した。ベースライン血清CKレベル(単位/リットル)を、以下の表4に提供する。
図10に示すように、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与2ヶ月後に循環血清CKレベルが約87%減少した。全被験体は、血清クレアチンキナーゼ(CK)レベルの有意な減少を示し、処置2ヶ月後の平均CK減少率は87%を超えた(n=3)。CKは、筋損傷に関連する酵素であり、DMDを有する患者は、高レベルのCKを一様に示す。実際、有意に上昇したCKは、DMDの予備診断ツールとして使用されることが多く、次いで、確認のための遺伝子検査が続く。
【0353】
表4および
図10は、各被験体についてのCKレベルを提供する。
図11は、経時的な平均CKレベルを提供し、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの投与後に平均CKレベルが経時的に有意に減少することを実証している。平均ベースラインCKレベル27,064U/L(表4の平均)は、平均9,982U/L(平均、270日目、表5)まで約63%減少する。
【表4】
【表5】
有効性の査定
【0354】
マイクロ-ジストロフィンおよびCKレベルに加えて、以下の機能試験によって有効性を測定した:床からの立ち上がり所要時間、4段昇り、ノース・スター歩行能力評価(NSAA)、立ち上がり所要時間試験、四段階段昇り試験、10メートル計時試験(10m)、および100メートル計時試験(100m)。データを以下の表6および表7に提供し、このデータは、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン投与の9ヶ月後の時点で、一貫性のある永続的な改善を実証している。また、NSAAの経時的な改善を、
図12に提供する。
【表6】
【表7】
安全性の査定
【0355】
研究において重篤な有害事象(SAE)は認められなかった。3人の被験体でガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)が上昇したが、1週間以内にステロイドを増量することによって解決され、ベースラインに戻った。他の臨床的に有意な検査所見は認められなかった。患者は、一般に治療の第1週中に一過性の嘔気を生じ、これは、ステロイドの投与量の増加と一致した。これは、肝臓酵素の上昇やいかなる他の異常とも相関しなかった。
実施例3
無作為化二重盲検プラセボ対照全身遺伝子
送達第I/IIa相臨床試験
【0356】
これは、DMD被験体についてのrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを使用した無作為化二重盲検単回用量試験である。この研究は、24人の4~7歳の被験体を含んでいた。被験体を、参加時に処置群またはプラセボ群に無作為化した。12人の被験体に、rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンベクター(およそ10mL/kg中2×1014vg/kg)を静脈内投与し、13人の被験体に、10mL/kgプラセボ(乳酸加リンゲル液)を投与した。プラセボ被験体は、12人の予め処置された被験体と同一の様式で施される処置を、最後の処置被験体への投与1年後に受けるであろう。被験体に、マイクロ-ジストロフィンを保有するrAAVまたは乳酸加リンゲル液をおよそ1時間にわたって注入する。処置前および処置後(90日後)の針筋生検を腓腹筋に対して行う。
【0357】
この研究の主目的は、四肢の末梢静脈を介したDMD被験体のためのrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンの静脈内投与の安全性の査定である。安全性エンドポイントを、血液学、血清化学、尿検査、rAAVrh74およびマイクロ-ジストロフィンに対する免疫応答、ならびに報告された病歴および徴候の所見の変化によって査定する。ジストロフィン遺伝子発現は、安全性と共に主要アウトカム尺度としての機能を果たす。立証済みの免疫蛍光および免疫ブロットアッセイを使用して定量する。遺伝子治療後のCKの減少は、二次アウトカムとしての機能を果たす。以下の機能試験によって有効性を測定する:立ち上がり所要時間、4段昇り、ノース・スター歩行能力評価(NSAA)、10メートル計時試験(10m)、100メートル計時試験(100m)。診査尺度としては、膝伸筋および膝屈筋、ならびに肘屈筋および肘伸筋についてのハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)が挙げられる。
【0358】
研究のための選択基準は、以下の通りである:
・参加年齢:4~7歳の間(両端の数値を含む)。
・分子がフレームシフト(欠失または重複)を有するDMD遺伝子、またはエクソン18から58までの間の未熟終止コドン変異を特徴とすること。
・症候性筋ジストロフィの指標:1000U/Lを超えるCK上昇および100メートル歩行試験での平均推定時間の百分率未満
・任意の人種集団の男性が適格であろう。
・運動査定試験に協力できること。
・スクリーニングおよび投与前の少なくとも12週間の経口コルチコステロイドと等価な安定用量が、研究を通して一定(体重変化に適応させるための考え得る修正を除く)のままであることが予想されること。
【0359】
研究の除外基準は、以下の通りである:
・臨床所見に基づいた活動性ウイルス感染。
・心筋症の兆候(駆出率40%未満の心エコー図が挙げられる)。
・HIV感染、またはB型肝炎もしくはC型肝炎感染の血清学的証拠。
・自己免疫疾患の診断(または処置中)
・臨床的に有意とみなされる異常な臨床検査値(GGT 3×ULN超、ビリルビン3.0mg/dL以上、クレアチニン1.8mg/dL以上、Hgb 8g/Dl未満または18g/Dl超;WBC18,500/cmm超)、血小板50,000以下)。
・PIの意見による、遺伝子導入の不必要なリスクが生じる併発疾患または慢性薬物処置の必要性。
・ELISA免疫アッセイによって判定した場合のAAVrh74またはAAV8の抗体価が1:400を超える被験体。エンドポイント力価がスクリーニング時に陽性である場合、除外前に試験を繰り返し得る。
・治験責任医師の意見によると、被験体がプロトコールに必要とされる試験もしくは手技に従う能力を損ない得るか、患者の福祉、安全性、または臨床上の解釈可能性を損ない得る病状または酌量すべき病状を有すること。
・遺伝子導入のための来院の4週間前以内の重度の感染症(例えば、肺炎、腎盂腎炎、または髄膜炎)(参加は延期され得る)。
・この研究のためのスクリーニングの最後の6ヶ月前に、実験または他の目的で任意の試験中の薬剤(コルチコステロイド以外)またはエクソンスキッピング剤(ExonDys51(登録商標)が挙げられる)を投与されていたこと。
・任意のタイプの遺伝子治療、細胞ベースの治療(例えば、幹細胞移植)、またはCRISPR/Cas9治療を受けていたこと。
・家族が、患者の研究参加をかかりつけ医および他の医療提供者に開示することを望まない場合。
有効性の査定
【0360】
ジストロフィン遺伝子発現は、安全性と共に主要アウトカム尺度としての機能を果たす。立証済みの免疫蛍光および免疫ブロットアッセイを使用して定量する。遺伝子治療後のCKの減少は、二次アウトカムとしての機能を果たす。さらに、以下の機能試験によって有効性を測定する:床からの立ち上がり所要時間、4段昇り、ノース・スター歩行能力評価(NSAA)、10メートル計時試験(10m)、100メートル計時試験(100m)]。診査尺度としては、膝伸筋および膝屈筋、ならびに肘屈筋および肘伸筋についてのハンドヘルドダイナモメトリー(HHD)が挙げられる。
【0361】
超音波誘導を用いた筋生検を使用して、ベースラインと90日目を比較して導入遺伝子発現を定量する。最初の生検と同一の筋肉であるが、反対側の脚の筋肉に対して生検を行う。全被験体が投与された1年後に、プラセボクロスオーバー被験体は、来院1日目に研究タイムラインを再開するであろう。プラセボ被験体は、第2のベースラインスクリーニングで以下を行わないであろう:心臓MRIおよび筋生検。プラセボ被験体は、90日目に筋生検を受ける(合計で3回の筋生検)。凍結切片を、間接的免疫蛍光(IF)を使用してジストロフィンについて染色する。スライドのフルスキャニングを行い、マイクロ-ジストロフィンの強度および陽性線維率を、立証済みの画像走査およびMuscleMap(商標)解析アルゴリズムを使用して定量する。筋肉の形態計測(線維サイズヒストグラムが挙げられる)を盲検で行う。盲検による凍結筋生検切削物を使用して、立証済みのウェスタンブロット法を使用したマイクロ-ジストロフィンについてのタンパク質定量分析を行う。
【0362】
腓腹筋の筋肉針生検(PIによって特定の被験体には禁忌とされるとみなされない場合に限る。禁忌の場合、PIは代替の筋肉生検を選択するであろう)を使用して、マイクロ-ジストロフィン発現を定量する。
有効性分析
【0363】
主要有効性エンドポイントは、生検を行った筋組織のウェスタンブロットによって測定した場合のマイクロ-ジストロフィンタンパク質の発現量におけるベースラインから90日目までの変化である。処置群の主要有効性エンドポイントの相違を、固定因子としての処置および共変量としてのベースライン値を用いた共分散分析(ANCOVA)モデルを用いて査定する。ウィルコクソンの順位和検定を、支援的分析として行う。免疫蛍光(IF)線維強度を介したマイクロ-ジストロフィン発現のベースラインからの変化を、同様に分析する。
【0364】
支援的有効性エンドポイントは、床からの立ち上がり所要時間、4段昇り、NSAA、10メートル計時試験(10m)、100メートル計時試験(100m)、およびCK変化の各々の予定された査定に対するベースラインからの変化を含む。診査尺度は、膝伸筋および膝屈筋、ならびに肘屈筋および肘伸筋についてのHHDを含む。処置群の差を、固定因子としての処置および共変量としてのベースライン値を用いたANCOVAモデルを用いて査定する。ウィルコクソンの順位和検定を、支援的分析として行う。
実施例4
【0365】
上記の実施例2および3に記載の試験および研究を、配列番号9に記載の;配列番号8(ヌクレオチド1~4977)に記載の;または配列番号6(ヌクレオチド56~5022)に記載のrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を代わりに利用して行う。
実施例5
pAAV.MCK.マイクロ-ジストロフィン構築物の生成
【0366】
pAAV.MCK.マイクロ-ジストロフィンプラスミドを、コドン最適化されたヒトマイクロ-ジストロフィンcDNA配列を駆動するMCK発現カセットを、AAVクローニングベクターpsub201に挿入することによって構築した(Samulski,R.J.et al.,J.Virol.61(10):3096-3101(1987))。筋特異的制御エレメントを、筋特異的遺伝子発現を駆動するために構築物中に含めた。この制御エレメントは、351bp MCKコアプロモーター(近位)に融合したマウスMCKコアエンハンサー(206bp)を含んでいた。コアプロモーターの後に、構築物は、効率的な転写開始のための53bp内因性マウスMCKエクソン1(非翻訳)を含み、SV40後期16S/19Sスプライスシグナル(97bp)および小型5’UTR(61bp)が続く。イントロンおよび5’UTRは、プラスミドpCMVβ(Clontech)に由来していた。マイクロ-ジストロフィンカセットは、ATG開始の直前のコンセンサスKozakおよびmRNA終結のための小型53bp合成ポリAシグナルを有する。Harper et al.,Nat.Med.8(3):253-61(2002)によって以前に記載のように、ヒトマイクロ-ジストロフィンカセットは、(R4-R23/Δ71-78)ドメインを含む。
【0367】
pAAV.MCK.マイクロ-ジストロフィンプラスミドは、AAV2逆位末端反復配列(ITR)に隣接したヒトマイクロ-ジストロフィンcDNA発現カセットを含んでいた(
図5を参照のこと)。この配列を、AAVrh.74ビリオンにキャプシド化した。AAVrh.74血清型の分子クローンを、アカゲザルリンパ節からクローン化した。これはRodino-Klapac et al.、J Transl.Med.5:45(2007)に記載されている。
実施例6
ハイブリッドシードトレイン拡大を使用したrAAV産生
【0368】
以下の過程を使用して、本明細書中に記載のrAAV構築物を産生することができる。
【0369】
HEK-293細胞を、接着条件で4回継代した。最後から2番目の拡大培養に入る前に、細胞を採取し、遠心分離して血清を洗い流し(300gで5分間)、懸濁振盪フラスコ中の無血清成長培地(EXPI293)中にて播種密度0.5+E6細胞/mLで再懸濁した。次いで、細胞を48~72時間成長させて細胞数を拡大した。次いで、懸濁細胞を回収し、バイオリアクターへの接種に必要な生存細胞数に応じて振とうフラスコ中またはWAVEバッグ中に接種した。72時間後に、生存細胞の濃度を、セルカウンティング装置を使用して決定した。次いで、好ましい総生存細胞数を含めるために必要な体積を、DMEMおよび10%FBSを含む接着性バイオリアクターに添加した。最終FBS濃度が10%に維持されるように、無血清懸濁培養物体積の添加を考慮して追加のFBSを適切に添加した。
【0370】
図18に示すように、シードトレインおよび接着システムの両方における細胞生存能は類似していた。生存細胞密度(VCD)に関して、ハイブリッドシードトレインシステムでは、第6継代後のVCDは第1継代後のものより高く(
図19A)、これは、接着システムに匹敵する(
図19B)。
【0371】
接着性バイオリアクター(iCELLis(登録商標))への接種に続いて、接着培養物を、本明細書中に記載のマイクロ-ジストロフィン構築物を保有する導入遺伝子プラスミド(例えば、配列番号8の導入遺伝子プラスミド中に含まれる配列番号9に記載の構築物が挙げられる)で一過性にトランスフェクトする。導入遺伝子プラスミドに加えて、rep/capプラスミド(AAV2rep/rh74cap)およびヘルパープラスミドを含める。所望の成長期間後に、rAAV粒子を、細胞溶解およびカラムクロマトグラフィによって採取する。
【0372】
いくつかの態様では、rAAVを、以下を含む懸濁シードプロセスによって産生する:
(a)N-2コンテナ中で、細胞を、血清を含む第1の成長培地を用いて培養する工程;
(b)前述の第1の培地から前述の細胞を取り出す工程;
(c)N-1コンテナ中で、前述の工程(b)由来の細胞を、血清を含まないか、前述の第1の培地より低い濃度の血清を含む第2の培地中に接種する工程;
(d)前述のN-1コンテナ中で前述の細胞を懸濁条件下で培養する工程;および
(e)バイオリアクター中の第3の培地に前述の工程(d)由来の細胞を接種する工程。
【0373】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、以下をさらに含む:
(f)細胞を、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミド、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミド、およびアデノウイルスヘルパープラスミドでトランスフェクトする工程。
【0374】
いくつかの態様では、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を含む導入遺伝子プラスミドは、以下を含む:配列番号9の核酸配列、配列番号3のヌクレオチド55~5021、または配列番号8のヌクレオチド1~4977。いくつかの態様では、AAVrep遺伝子およびAAVcap遺伝子を含むプラスミドは、AAV2rep遺伝子およびrAAVrh74cap遺伝子を含む。
【0375】
いくつかの態様では、アデノウイルスヘルパープラスミドは、アデノウイルス5型のE2A遺伝子、E4ORF6遺伝子、およびVA RNA遺伝子を含む。
【0376】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、(g)細胞を溶解する工程をさらに含む。いくつかの態様では、細胞を、凍結融解、固体せん断、高張および/もしくは低張溶解、液体せん断、超音波処理、高圧押出し、界面活性剤溶解、またはこれらの組み合わせによって溶解する。
【0377】
いくつかの態様では、懸濁シードプロセスは、(h)少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップによってrAAVを精製する工程をさらに含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのカラムクロマトグラフィステップは、陰イオン交換クロマトグラフィもしくはサイズ排除クロマトグラフィまたはこれらの組み合わせを含む。
実施例7
デュシェンヌ型筋ジストロフィを有する被験体におけるrAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物由来の安全性および拡大を評価するための市販の代表的材料を使用したオープンラベル全身遺伝子送達研究
【0378】
これは、デュシェンヌ型筋ジストロフィを有する男児で行ったrAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の市販の代表的材料を使用した第1b相非盲検研究である。最初に、20人の患者が参加し、この実施例7は、8歳未満の最初の11人の患者由来のデータを示す(例えば、2人の患者は4~5歳である;9人の患者は6~7歳である)(コホート1;4歳以上から8歳未満までの20人までの男性DMDの歩行可能な被験体)(表7)。実施例8にさらに記載するように、研究を、コホート2(8歳以上18歳未満のおよそ6人の男性DMD歩行可能被験体)およびコホート3(およそ6人のDMD歩行不可能被験体)を含むようにその後に拡大した。
【表8-1】
【表8-2】
【0379】
主目的は、生検を行った筋組織のウェスタンブロットによって測定した場合の注入後12週目(パート1)のrAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物(例えば、市販の代表的材料)由来のマイクロ-ジストロフィン発現を、ウェスタンブロットによって測定した場合のベースラインから12週目まで(パート1)のマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現量の変化の対応するエンドポイントを使用して評価することであった。副次的目的は、以下を査定することであった:(1)12週目での免疫蛍光(IF)線維強度によるマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現;(2)12週目のジストロフィン陽性線維のIF百分率(PDPF)によるマイクロ-ジストロフィン発現;および(3)安全性。
研究のための実施例7および8に適用可能な選択基準は、以下の通りである:
【0380】
被験体は、この研究に参加するための適格性を有するために、以下の基準の全てを満たさなければならない:
1.コホート1のみ(8歳未満で歩行可能):出生時に男性であり、歩行可能であり、スクリーニング時に4歳以上から8歳未満までであり、スクリーニング来院時にNSAAスコアが17超かつ26以下である。
2.コホート2のみ(8歳以上で歩行可能):出生時に男性であり、歩行可能であり、スクリーニング時に8歳以上から18歳未満までであり、スクリーニング来院時にNSAAスコアが15以上かつ26以下である。
3.コホート3のみ(歩行不可能):出生時に男性であり、最短で9ヶ月間歩行不可能であり、NSAA歩行スコアが「0」であり、スクリーニング来院時に10MWRを実施不可能であり、PUL登録項目スコアが2以上である。歩行喪失の発生を、参加者または介護者が車椅子の連続使用を報告した年齢(直近の月に近似)と定義する。
4.臨床所見の書類に基づいたスクリーニング前および確認のための遺伝子検査前に、臨床診断のための遺伝子検査を用いたDMDの確定診断を受けている。
5.以下の症候性筋ジストロフィの指標を有する:
・CK評価 1000U/L超および
・コホート1および2のみ(歩行可能):100MWRに関する予測時間の95パーセント未満。
6.運動査定試験に協力できること。
7.スクリーニングおよび投与前の少なくとも12週間の経口コルチコステロイドと等価な安定週間用量が、研究の初年を通して一定(体重変化に適応させるための修正を除く)のままであることが予想されること。
8.ELISAによって決定した場合のrAAVrh74の抗体価が1:400以下(すなわち、上昇なし)である。
9.性的に活動的な被験体は、全研究期間にコンドームを使用することに同意しなければならず、女性の性的パートナーも、医学的に許容され得る産児制限形態(例えば、経口避妊薬)を使用しなければならない。
10.親(複数可)または法的後見人(複数可)を有するか、研究のための来院スケジュールおよび全ての他のプロトコール要件を理解し、遵守することができる18歳以上の被験体である。
11.インフォームド・アセントまたはインフォームド・コンセント(該当する場合)を提供する意思があり、親(複数可)または法的後見人(複数可)を有するか、研究に参加するための被験体のための書面によるインフォームド・コンセントを提供する意志がある18歳以上の被験体である。
研究の除外基準は、以下の通りであった:
【0381】
以下の基準のうちのいずれかを満たす被験体は、この研究から除外されるであろう:
1.スクリーニング時のECHOにおいて左室駆出率40%未満または心筋症の臨床徴候および/もしくは症状がある。
2.コホート2および3のみ(8歳以上で歩行可能および歩行不可能):スクリーニング時のFVCが予測値の50%未満および/または夜間の換気補助を必要とする。
3.1日目以前の3ヶ月以内の大手術またはこの研究中のいずれかの時期に手術を予定していること。
4.DMD以外の任意の他の有意な遺伝病の存在。
5.現在、慢性、または活性なヒト免疫不全ウイルス、C型肝炎、またはB型肝炎の感染症の血清学的証拠を有する。
6.自己免疫疾患の診断を受けている。
7.治験責任医師の意見によると遺伝子導入の不必要なリスクが生じる併発疾患または慢性薬物処置の必要性を有する。
8.治験責任医師の意見によると、被験体がプロトコールに必要とされる試験もしくは手技に従う能力を損ない得るか、患者の福祉、安全性、または臨床上の解釈可能性を損ない得る病状または酌量すべき病状を有する。
9.1日目以前の4週間以内に徴候性感染(例えば、上気道感染、肺炎、腎盂腎炎、髄膜炎)を有する。
10.治験責任医師の意見によると、運動発達と混同し得る認知の低下または機能障害が実証される。
11.以下に指定の時間枠に従った以下の治療のうちのいずれかでの処置:
・任意の時期:
-遺伝子治療
-細胞ベースの治療(例えば、幹細胞移植)
-CRISPR/Cas9、または任意の他の遺伝子編集形態
・1日目の12週間以内:
-ヒト増殖因子、またはバモロロンの使用
・1日目の6ヶ月以内:
-任意の試験中の投薬
-コホート1のみ:ジストロフィン発現を増加させるように設計された任意の処置(例えば、Translarna(商標)、EXONDYS51、VYONDYS53、VILTEPSO(商標))。注釈:これらの処置を行ったコホート2および3の被験体は、1日目以前に休薬することが期待される。ジストロフィン発現を増加させるように設計された処置を、72週間後に再開および/または開始してよい。
12.1日目の来院の4週間以内に生ウイルスワクチンを受けたか、2週間以内に不活性ワクチンを受けたか、1日目から最初の3か月後の間にワクチン接種を受けることが予想される。
13.以下が挙げられるが、これらに限定されない臨床的に有意とみなされる異常な臨床検査値を有する:
・ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)が正常上限(ULN)の2倍を超える
・総ビリルビンがULNを超える。総ビリルビンの上昇がジルベール症候群に起因するとみなされる場合は除外されないことに留意のこと。
・白血球数18,500/μl超
・血小板数150,000/μL以下
14.被験体または家族が、被験体の研究参加を一般医/かかりつけ医および他の医療提供者に開示することを望まない場合。
【0382】
治験責任医師の意見として、被験体が研究プロトコールを遵守する可能性が低い。全被験体に、単回IV注入によってrAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物(1.33×1014vg/kg)(例えば、市販の代表的材料)を投与した。
有効性の査定:
【0383】
マイクロ-ジストロフィン発現の評価のための筋生検を、ベースラインおよび12週目の全被験体から回収した。筋生検を、開放生検またはVACORAコア生検を使用して回収した。生検は、腓腹筋内側からの筋組織の回収が必要であった。腓腹筋内側で実行できない場合、代替の筋肉の使用について治験依頼者からの事前承認が必要であった。
【0384】
生検試料を使用して、ウェスタンブロット、IF強度、およびPDPFによって導入遺伝子発現を定量した。
【0385】
核あたりの平均ベクターゲノムコピー数、およびベースラインからの変化は、3.87(±2.4)であることが決定された。ウェスタンブロットによって決定した場合、正常なマイクロ-ジストロフィン発現の平均百分率、およびベースラインからの変化は、55.4%(±43.4)であることが決定された。免疫蛍光によって決定した場合、ジストロフィン陽性線維の平均百分率は、70.5%(57.7%(±22.2)のベースラインからの変化)であり、平均強度は116.9%(75.9%±46.4のベースラインからの変化)であることが決定された。これらの結果は、実施例4に記載の材料を投与した実施例3のプラセボ群患者と一致する(例えば、核あたりの平均ベクターコピー数-2.62;正常発現の百分率-51.7%;ジストロフィン陽性線維の百分率-79.2%;強度百分率100.6%)。
【0386】
図20は、コホート1(rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィンで処置した第1の11人の患者)由来の平均NSAAスコアのグラフを示す。第1の11人の患者は、ベースラインから3ポイント改善した。6~7歳(n=9)では、ベースラインから2.9ポイント改善した。各時点は、11人の患者を示す。
【0387】
市販の代表的材料の安全性は、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物を用いた事前の経験と一致していた。79の処置により発現した有害事象が、11人の患者で認められた。最もよく見られる有害事象は嘔吐であり、この嘔吐は典型的には第1週内で発症し、軽症であり、標準的な制吐薬を用いて処置した。肝酵素の増加は一過性であり、これはステロイドに対する応答であり、いかなる患者においても肝機能障害の兆候はなかった。2人の患者において重篤な有害事象が認められたが、完全に解決された。1人の患者はトランスアミナーゼが増加し、静脈内ステロイドで処置した。1人の患者に嘔気および嘔吐があった。補体媒介事象を示唆する有害事象は認められなかった。
【0388】
概して、rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン構築物の特徴を、市販の代表的材料を用いて確認した。頑強な形質導入(例えば、核あたりの平均ベクターゲノムコピー数3.87)が認められた。筋線維鞘膜に適切に局在した平均頑強発現が認められた(例えば、ウェスタンブロット-55.4%;陽性線維-70.5%;強度-116.9%)。安全で、忍容性が高く、かつ一貫した安全性プロファイルが、市販の代表的材料の投与で認められた。臨床的に補体の出現は認められなかった。まとめると、これらの結果は、製造過程および分析を裏付けるのに十分であり、デュシェンヌ集団に供給するのに十分である。
実施例8
【0389】
実施例7に記載の試験および研究を、以下の3つのコホートにわたるおよそ32人の被験体に拡大する:コホート1は、4歳以上から8歳未満までの20人の男性DMD歩行可能被験体からなる;コホート2は、8歳以上から18歳未満までのおよそ6人の男性DMD歩行可能被験体からなる;コホート3は、およそ6人の男性DMD歩行不可能被験体からなる。
【0390】
各コホート中の最初に参加した2人の被験体は、少なくとも1週間の間隔をおいて投与された前哨被験体であろう。コホート2および3の組み合わせでは、50kg未満の少なくとも3人の被験体を参加させ、50kg以上の少なくとも3人の被験体を参加させるであろう。研究は、以下のとおり4つの期間からなるであろう:
1.およそ3週間までのスクリーニング期間(注入前)。この期間に疾患の特徴およびベースライン治療を査定し、注入前評価を完了する。
2.ベースライン期間(注入前)。この期間は、適格性が確認されたときに開始して1日目の注入の前日に終了し、この間にベースライン査定を完了するであろう。
3.注入期間。この期間中、rAAVrh74酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)試料取得の31日以内に、全被験体にオープンラベルrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを単回静脈内(IV)注入するであろう。1日目に70kg未満の被験体に、IV rAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン(1.33×1014vg/kg)を投与するであろう;1日目に70kg以上の被験体に、総固定用量が9.31×1015vg(70kg被験体についての1.33×1014vg/kgの用量と等価である)のrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンを投与するであろう。注入の前日から開始して、被験体に、注入から少なくとも60日後に被験体のベースライン安定経口コルチコステロイド用量に加えて少なくとも1mg/kgの糖質コルチコイド(プレドニゾン等価物)を毎日投与するであろう;総1日量60mg/日まで1mg/kg/日のステロイドの追加投与が続くであろう(関連するGGT増加事象および/または他の臨床的に有意な肝機能異常事象におけるステロイドの追加を除く)。注入後にGGTレベルが150U/L以上であることが確認されるか、他の臨床的に有意な肝機能の異常が認められる場合、注入後の免疫抑制のための糖質コルチコイドの追加を、1日2mg/kgまで増加すべきである(すなわち、被験体の固定用量が60mg/日である場合、この用量を120mg/日まで増加するべきである)。治験責任医師は、その後の急性肝外傷または他のAEの経過に対して、その後の免疫抑制療法を調整し得る。肝臓生化学(ベースラインに対するGGT、ビリルビン、およびALTが挙げられる)の重篤なまたな重症の上昇、または2mg/kg/日もしくは120mg/日に応答しない上昇についてそれぞれ肝臓専門医に助言を求めなければならない。この状況では、IVボーラスステロイドが考慮され得る。この実施例8、および実施例7に示した投薬量を、線状化DNA qPCR標準を使用して決定する。そうでなければ、本明細書中に示した投薬量を、スーパーコイルDNA qPCR標準を利用して決定する。例えば、実施例7および8に示した投薬量1.33×1014vg/kgは、本明細書中に別記の投薬量2×1014vg/kgに相当する。上の実施例7および8に記載の試験および研究を、現在および過去において、配列番号9に記載の;配列番号8(ヌクレオチド1~4977)に記載の;または配列番号6(ヌクレオチド56~5022)に記載のrAAVrh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィン構築物を利用して行う。
4.260週の追跡期間(注入後)。この期間に安全性、有効性、および発現のパラメーターを評価するであろう。被験体は、必要な手技/査定を完了するために、遠隔および対面の来院の両方に出席すると予想されるであろう。追跡期間のパート1は、注入後(1日目)から開始され、12週目まで続くであろう。追跡期間のパート2は、12週後から開始され、260週目まで続くであろう。注入後の第1の12週間(パート1)は、頻繁な来院(ほぼ毎週)が必要である。治験責任医師の臨床判断にしたがって、さらなる予定外の来院が許可される。研究を完了する被験体について、260週目に最後の研究のために来院するであろう。注入後の追跡を早期に中断する被験体について、早期終了のための来院が必要であろう;しかしながら、注入後260週までの追跡を研究し続けるために、各被験体に強く働きかけるべきである。
【0391】
研究を、3歳以上から4歳未満までのおよそ6人の男性DMD歩行可能被験体からなるコホート4を含むようにさらに拡大する。コホート4の被験体(スクリーニング時に被験体のDMDのための経口コルチコステロイドを投与されていない)は、注入の1週間前に1.5mg/kg/日のプレドニゾン/プレドニゾロン投与を開始し、注入後少なくとも60日間継続するであろう。
【0392】
以下の除外基準を、コホート1および4のみのために指定する:ジストロフィン発現を増加させるように設計された任意の処置(例えば、Translarna(商標)、EXONDYS51、VYONDYS53、VILTEPSO(商標))。ジストロフィン発現を増加させるように設計された処置を、72週間後に再開および/または開始してよい。
実施例9
遺伝子診断
【0393】
追加の研究では、あるいは、上記の研究では、該当する場合、被験体は、臨床所見の書類に基づいたスクリーニング前および臨床診断のための遺伝子検査を使用した確認のための遺伝子検査前にDMDの確定診断を受けていなければならない。
【0394】
遺伝子検査を使用して、ヒトジストロフィン(DMD)遺伝子中の少なくとも1つの変異について患者を遺伝子型判定する。本明細書中で使用される場合、「遺伝子型判定」は、ゲノム内の1またはそれを超える位置の細胞および/または被験体の特異的な対立遺伝子組成を、例えば、その位置の核酸配列を決定することによって決定する過程を指す。遺伝子型判定は、核酸分析および/または核酸レベルでの分析を指す。
【0395】
1つの態様では、本明細書中に記載のDMDを処置する方法は、ヒト被験体のヒトジストロフィン(DMD)遺伝子を、前述のヒト被験体に組成物を投与する前に遺伝子型判定する工程をさらに含む。
【0396】
いくつかの態様では、被験体のヒトジストロフィン遺伝子(DMD)を遺伝子型判定して、本明細書中に開示の組成物での処置に適していると考えられる遺伝子の変異を特徴づける。
【0397】
いくつかの態様では、被験体を、DMD遺伝子のエクソン18~79中の少なくとも1つの変異について遺伝子型判定する。具体的には、被験体に対して、患者中のジストロフィンタンパク質の不在に至ると予想される変異を遺伝子型判定する。例えば、いくつかの態様では、患者に対して、エクソン18から79の間を完全に含むDMD遺伝子中のフレームシフト欠失、フレームシフト重複、未熟終止、または他の病原性バリアントを遺伝子型判定する。これらの変異のうちの少なくとも1つが同定される場合、患者が本開示の処置に適格であることを示す。
【0398】
いくつかの態様では、患者に対してDMD遺伝子を遺伝子型判定すると、被験体が本開示の処置に適格ではないことを示す結果を得ることができる。例えば、エクソン1~17の間または両端の数値を含む数値の間の変異、インフレーム欠失、インフレーム重複、意義不明の変異(「VUS」)、エクソン45内に完全に含まれる変異を実証する遺伝子型判定の結果は、患者が本開示の処置に適格ではないことを示す。
【0399】
多数の遺伝子型判定技術が当業者に公知である。
実施例10
デュシェンヌ型筋ジストロフィを有する被験体におけるデランディストロゲンモキセパルボベックの安全性および有効性を評価するための、第3相多国籍ランダム化二重盲検プラセボ対象全身遺伝子送達研究
【0400】
これは、およそ120人の4歳以上から8歳未満までの男性DMD歩行可能被験体における、治験薬rAAVrh74.MHCK7.マイクロジストロフィン(上の実施例6~8にも記載)の全身遺伝子送達のランダム化二重盲検プラセボ対照2パート研究である。ランダム化を、ランダム化時の年齢群(4歳以上から6歳未満まで対6歳以上から8歳未満まで)およびスクリーニング時のNSAA総スコア(22歳以下対22歳超)に層別化するであろう;少なくとも50%の被験体を、ランダム化時に4歳以上から6歳未満までの群にランダム化しなければならない。全患者は、パート1またはパート2のいずれかで静脈内(IV)治験薬(1.33×1014vg/kg)を投与される機会を有するであろう。処置アームでは、参加者は、1日目に治験薬を単回静脈内(IV)注入されるであろう。次いで、参加者は、2年目に適合するプラセボを単回IV注入されるであろう。プラセボアームでは、参加者は、1日目に適合するプラセボをIV注入されるであろう。次いで、参加者は、2年目に治験薬を単回IV注入される機会を有するであろう。研究は、以下のとおり4つの期間からなるであろう:
・スクリーニング期間(注入前)。1日目の注入の最大31日前に開始し、この期間に疾患の特徴およびベースライン治療を査定し、注入前評価を完了するであろう。
・ベースライン期間(注入前)。この期間は、適格性が確認されたときに開始して1日目の注入の前日に終了し、この間にベースライン査定を完了するであろう。
・注入期間。この期間に、rAAVrh74酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)試料取得の31日以内に、二重盲検で治験薬またはプラセボを単回静脈内(IV)注入するであろう。パート1の注入期間に、およそ60人の被験体にIV治験薬(1.33×1014vg/kg;線状DNA qPCR標準を使用して決定した場合)を投与し、およそ60人の被験体にプラセボ(生理食塩水、0.9%塩化ナトリウム溶液)を投与するであろう。パート2の注入期間に、パート1でプラセボを投与した被験体にIV治験薬を投与し、パート1で治験薬を投与した被験体にプラセボを投与するであろう。非盲検の施設の薬剤師を除く全ての被験体、両親/介護者、治験責任医師、施設のスタッフは、被験体への処置(治験薬またはプラセボ)に対して盲検化されるであろう。全被験体に追加の糖質コルチコイド(プレドニゾン等価物)を、注入の前日から開始して、少なくとも60日間投与するであろう。
・104週の追跡期間(パート1注入後)。この期間にパート1およびパート2における安全性および有効性のパラメーターを評価するであろう。被験体は、必要な手技/査定を完了するために、遠隔および対面の来院の両方に出席すると予想されるであろう。追加で、治験責任医師の臨床判断にしたがって、予定外の来院が許可される。研究を完了する被験体について、パート2の52週目に最後の研究のために来院するであろう。注入後の追跡を早期に中断する被験体について、研究終了/早期終了のための来院が必要であろう;しかしながら、各注入後52週までの追跡を研究し続けるために、各被験体に強く働きかけるべきである。
選択/除外基準:
選択基準:
【0401】
被験体は、この研究に参加するための適格性を有するために、以下の基準の全てを満たさなければならない:
1.出生時に男性であり、歩行可能であり、ランダム化時に4歳以上から8歳未満までである。
2.臨床所見の書類に基づいたスクリーニング前および確認のための遺伝子検査前に、臨床診断のための遺伝子検査を用いたDMDの確定診断を受けている。遺伝子の報告書には、ジストロフィンタンパク質の消失に至ると予想されるエクソン18~79の間(両端の数値を含む)に完全に含まれるDMD遺伝子中のフレームシフト欠失、フレームシフト重複、未熟終止(「ナンセンス」)、標準的なスプライス部位の変異、または他の病原性バリアントを記載していなければならない。
a.エクソン1~17の間または両端の数値を含む数値の間の変異は、適格ではない。
b.インフレーム欠失、インフレーム重複、および意義不明の変異(「VUS」)は、適格ではない。
c.エクソン45(この数値を含む)内に完全に含まれる変異は、適格ではない。
3.運動査定試験に協力できること。
4.スクリーニング来院時のNSAAスコアが16超かつ29未満である。
5.スクリーニング来院時の床からの立ち上がり所要時間が5秒未満である。
6.スクリーニングおよび投与およびレジメンの前の少なくとも12週間の経口コルチコステロイドの安定な1日量が、研究を通して一定(体重変化に適応させるための修正を除く)のままであることが予想される。
7.ELISAによって決定した場合、rAAVrh74抗体価が1:400未満である(すなわち、上昇していない)。
8.性的に活動的な被験体は、全研究期間にコンドームを使用することに同意しなければならず、女性の性的パートナーも、医学的に許容され得る産児制限形態(例えば、経口避妊薬)を使用しなければならない。
9.研究のための来院スケジュールおよび全ての他のプロトコール要件を理解し、遵守することができる親(複数可)または法的後見人(複数可)を有する。
10.インフォームド・コンセント(該当する場合)を提供する意思があり、研究に参加するための被験体のためのインフォームド・コンセントを提供する意志がある親(複数可)または法的後見人(複数可)を有する。
除外基準
【0402】
以下の基準のうちのいずれかを満たす被験体は、この研究から除外されるであろう:
1.スクリーニング時のECHOにおいて左室駆出率40%未満または心筋症の臨床徴候および/もしくは症状がある。
2.1日目以前の3ヶ月以内の大手術またはこの研究中のいずれかの時期に研究実施を妨害すると考えられる手術もしくは手技を予定していること。
3.任意の他の臨床的に有意な疾患(心臓、肺、肝臓、腎臓、血液学的、免疫学的、もしくは行動の疾患、または感染症もしくは悪性疾患が挙げられる)、または治験責任医師の意見による、遺伝子導入の不必要なリスクが生じる併発疾患もしくは慢性薬物処置の必要性、または治験責任医師の意見による、被験体がプロトコールに必要とされる試験もしくは手技に従う能力を損ない得るか、被験体の福祉、安全性、もしくは臨床上の解釈可能性を損ない得る病状もしくは酌量すべき病状の存在。
4.現在、慢性、または活性なヒト免疫不全ウイルス、C型肝炎、またはB型肝炎の感染症の血清学的証拠を有する。
5.1日目以前の4週間以内に徴候性感染(例えば、上気道感染、肺炎、腎盂腎炎、髄膜炎)を有する。
6.治験責任医師の意見によると、運動発達と混同し得る認知の低下または機能障害が実証される。
7.以下に指定の時間枠に従った以下の治療のうちのいずれかでの処置:
・任意の時期:
-遺伝子治療
-細胞ベースの治療(例えば、幹細胞移植)
-CRISPR/Cas9、または任意の他の遺伝子編集形態
・1日目の12週間以内および研究中の任意の時期:
-ヒト増殖因子またはバモロロンの使用
・1日目の6ヶ月以内および研究中の任意の時期:
-任意の試験中の投薬
-ジストロフィン発現を増加させるように設計された任意の処置(例えば、Translarna(商標)、EXONDYS51(商標)、VILTEPSO(商標))
8.1日目の来院の4週間以内に生ウイルスワクチンを受けたか、2週間以内に不活性ワクチンを受けたか、1日目から最初の3か月後の間にワクチン接種を受けることが予想される。
9.以下が挙げられるが、これらに限定されない臨床的に有意とみなされる異常な臨床検査値を有する:
・ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼが正常上限(ULN)の2倍を超える
・グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)が15U/Lを超える
・総ビリルビンがULNを超える。注釈;総ビリルビンの上昇がジルベール症候群に起因すると確認される場合は除外されない。
・白血球数18,500/μl超
・血小板数150,000/μL以下
10.家族が、被験体の研究参加を一般医/かかりつけ医および他の医療提供者に開示することを望まない場合。
11.治験責任医師の意見として、被験体が研究プロトコールを遵守する可能性が低い。
遺伝子診断
【0403】
被験体は、臨床所見の書類に基づいたスクリーニング前および確認のための遺伝子検査前に、臨床診断のための遺伝子検査を用いたDMDの確定診断を受けていなければならない。遺伝子の報告書には、ジストロフィンタンパク質の不在に至ると予想されるエクソン18から79(両端の数値を含む)の間を完全に含むDMD遺伝子中のフレームシフト欠失、フレームシフト重複、未熟終止、または他の病原性バリアントを記載していなければならない。
a.エクソン1~17の間または両端の数値を含む数値の間の変異は、適格ではない。
b.インフレーム欠失、インフレーム重複、および意義不明の変異(「VUS」)は、適格ではない。
c.エクソン45(この数値を含む)内に完全に含まれる変異は、適格ではない。
統計学的方法:
サンプルサイズ:
【0404】
この研究のサンプルサイズは、ベースラインから52まで(パート1)の主要有効性エンドポイント(NSAA総スコアの変化)の検出力に基づく。
【0405】
第一種過誤0.05(両側)を用いて全被験体における標準偏差3.5および52週目(パート1)の低下率10%を仮定すると、ランダム化比1:1のサンプルサイズ120は、治験薬群とプラセボ群との間のベースラインから52週目まで(パート1)のNSAA総スコアの変化の平均値の差2.2を検出ための検出力はおよそ90%であろう。
【0406】
また、研究は、4歳以上から6歳未満までの年齢群に検出力を有する。研究には少なくとも60人の4歳以上から6歳未満までの被験体が参加するであろう。第一種過誤0.05(両側)を用いて4歳以上から6歳未満までの年齢群における主要エンドポイントについての標準偏差3.2および52週目(パート1)での低下率10%を仮定すると、ランダム化比1:1のサンプルサイズ60は、治験薬群とプラセボ群との間のベースラインから52週目まで(パート1)のNSAA総スコアの変化の平均値の差2.5を検出ための検出力は少なくとも80%であろう。
【0407】
多重性を調整するための試験手順を使用して、両側レベル0.05での第一種過誤全体を調節するであろう。詳細は、SAP中に指定される。
ランダム化
【0408】
被験体を、単回IV注入によって治験薬またはプラセボのいずれかを投与するために、1:1の比にランダム化するであろう。研究のパート1で治験薬を投与した被験体に、パート2でプラセボを投与するであろう。研究のパート1でプラセボを投与した被験体は、パート2で治験薬を投与する機会を有するであろう。
【0409】
ランダム化を、ランダム化時の年齢群(4歳以上から6歳未満までまたは6歳以上から8歳未満まで)およびスクリーニング時のNSAA総スコア(22歳以下または22歳超)に層別化するであろう;少なくとも50%の被験体を、ランダム化時に4歳以上から6歳未満までの年齢群にランダム化しなければならない。全患者は、パート1またはパート2のいずれかで静脈内(IV)治験薬(1.33×1014vg/kg)を投与される機会を有するであろう。
コルチコステロイド
【0410】
被験体は、最初のスクリーニング来院の前の少なくとも12週間の経口コルチコステロイドの1日量が安定でなければならず、この用量は、研究を通して一定(体重変化に適応させるための修正を除く)のままである。コルチコステロイドのタイプ、投与頻度、コルチコステロイド投薬の開始日および終了日、ならびに投薬量の全ての変化は、被験体の原始書類中またはeCRF上に記録されるであろう。
注入前の免疫抑制剤
【0411】
注入(治験薬またはプラセボ)の前日に、被験体は、被験体のDMDのためのベースライン安定経口コルチコステロイドに加えて、免疫抑制のための追加の糖質コルチコイド(プレドニゾン等価物)を開始するであろう。被験体のDMDのためにベースラインの毎日のコルチコステロイド投与を受けている被験体は、追加される1mg/kg/日の免疫抑制用量に加えて、被験体の通常のDMDコルチコステロイドを投与されるであろう。1mg/kg/日の投与が、総1日量60mg/日まで続くであろう。
注入後の免疫抑制剤
【0412】
注入後最初の60日間、被験体は、被験体のDMDのためのベースラインの毎日の安定な経口コルチコステロイド用量を維持し、それに加えて、免疫抑制のために1mg/kg/日の糖質コルチコイド(プレドニゾン等価物)を投与されるであろう。メディカルモニターの了承を得た上で有害事象(AE)を管理するために早期に漸減させることが許可され得る。総1日量60mg/日まで1mg/kg/日の投与が続くであろう(GGT増加および/または他の臨床的に有意な肝機能異常事象におけるステロイドの追加を除く)。
【0413】
被験体が嘔吐のために経口免疫抑制糖質コルチコイドに耐えることができない場合、糖質コルチコイドを静脈内投与すべきである。
【0414】
注入後にGGTレベルが150U/L以上であることが確認されるか、他の臨床的に有意な肝機能の異常が認められる場合、注入後の免疫抑制のための糖質コルチコイドの追加を増加すべきである。治験責任医師は、その後の急性肝外傷または他のAEの経過に対して、その後の免疫抑制療法を調整し得る。肝臓生化学(ベースラインに対するGGT、ビリルビン、GLDH、およびALTが挙げられる)の重篤なまたな重症の上昇、または2mg/kg/日もしくは120mg/日に応答しない上昇についてそれぞれ肝臓専門医に助言を求めなければならない。この状況では、IVボーラスステロイドが考慮され得る。
・被験体が被験体のDMDステロイドに加えて免疫抑制のために1mg/kgのステロイドを追加している場合、被験体のDMDステロイドに加えて、この用量を、摂取すべき免疫抑制のためのステロイドを追加して2mg/kgに増加すべきである。
・被験体が60mg/日の固定用量にある場合、この用量を120mg/日に増加すべきである。
【0415】
60日目のGGT値が正常であり、かつ急性肝外傷の兆候がない被験体は、2週間にわたって被験体に対する免疫抑制糖質コルチコイドを漸減すべきである。漸減期間を、治験責任医師の判断に従ってAEを管理するために調整してよいが、90日を超えたベースラインの毎日のレジメンを超える用量でのステロイドの継続は、メディカルモニターと議論すべきである。60日目にGGT値が上昇し、そして/または急性肝外傷の兆候が認められる被験体における免疫抑制糖質コルチコイドを、GGT値が正常になり(あるいは、明確に正常に向かう傾向がある)、かつ急性肝外傷の全ての兆候が解決されるまで上記のように管理すべきであり、その時点で、被験体の免疫抑制糖質コルチコイドを2週間にわたって漸減すべきである。免疫抑制のための追加のステロイドが漸減された時点で、体重に基づいて任意に必要な調整を行いながらDMDのための被験体のベースラインの毎日のステロイドレジメンを維持すべきである。
有効性分析:
ノース・スター歩行能力評価(NSSA)
【0416】
主要エンドポイントおよびいくつかの副次評価項目を、両側0.05レベルでのファミリーあたりの第一種過誤率を強力に調節する適切な多重検定アプローチを使用した階層的様式で試験するであろう。
【0417】
ベースラインから52週目まで(パート1)のNSAA総スコアの変化の主要エンドポイントについて、要約統計量は、処置群によって、ベースラインでのNSAA総スコア、パート1中の各ベースライン後来院、およびベースラインからパート1中の各ベースライン後来院までの変化について提供されるであろう。2スコアのNSAAが回収されるベースラインおよび52週目(パート1)の来院について、平均NSAAスコアを分析で使用するであろう。
【0418】
主要解析として、制限付き最大尤度に基づく混合モデル反復測定分析を使用して、ベースラインから52週目まで(パート1)のNSAA総スコアの変化について2つの処置群を比較するであろう。このモデルでは、応答ベクトルは、パート1中の各ベースライン後来院でのNSAA総スコアのベースラインからの変化からなる。このモデルは、処置群(カテゴリカル)、来院(カテゴリカル)、処置群-来院交互作用、ランダム化での年齢群の共変量を含むであろう。
【0419】
NSAAは、種々の機能活動の遂行を格付けする臨床医が施すスケールである(Mazzone,E et.al.,Neuromuscul Disord.20(11):712-716(2010))。これは、立つことができるDMDの男児で使用されるように設計され、研究年齢範囲(4歳以上かつ8歳未満)のDMD男児で使用されている(Connolly AM et al.,‘‘Motor and cognitive assessment of infants and young boys with Duchenne Muscular Dystrophy:results from the Muscular Dystrophy Association DMD Clinical Research Network,’’ Neuromuscul Disord.23(7):529-539(2013));Mercuri E et al.,‘‘Revised North Star Ambulatory Assessment for Young Boys with Duchenne Muscular Dystrophy,’’ PLoS One 11(8):e0160195(2016))。
【0420】
この査定の間、被験体は、17種の異なる機能活動(10MWR、座位からの立ち上がり,片足での直立、ボックス階段の昇り、ボックス階段の降り、臥位から座位への起き上がり、床からの起き上がり、床からの頭部の持ち上げ、かかと立ち、および跳躍が挙げられる)を行う。
【0421】
被験体を、以下のように格付けするであろう:2=正常、明確な活動の変容なし;1=方法は修正されるが、他者からの身体介助なしで目的を果たす;および0=独立して目的を果たすことが不可能。
【0422】
NSAA投与の詳細は、臨床評価者マニュアルに提供されている。
【0423】
2つのNSAAスコアを、ベースラインの2つの個別の日、パート1中の52週目の2つの個別の日、およびパート2中の52週目の2つの個別の日に収集するであろう。
床からの立ち上がり所要時間
【0424】
床からの立ち上がり所要時間試験は、NSAA(項目数11)の一部であり、被験体が両腕を体側につけた状態の仰臥位から開始して、両腕を体側につけた状態で直立位置に立ち上がるために必要な時間を定量する(Henricson,EK et al.,Muscle Nerve 48(1):55-67(2013))。被験体がこのタスクを完了するために必要な時間を、NSAA実施中に記録するであろう。NSAAと同様に、床からの立ち上がり所要時間を、ベースラインならびにパート1およびパート2中の52週目の来院時に2日分収集するであろう。
10メートル歩行/走行
【0425】
計時10MWRは、NSAA(項目数17)の一部であり、被験体が(真っ直ぐな通路を)立位から10メートルを走行または歩行するのに要する時間を定量する(McDonald,CM et al.,Muscle Nerve 48(3):357-368(2013))。被験体は、10メートルのマークを走り抜けるように促される。被験体がこの距離を走行するのに要する時間を、NSAA実施中に記録するであろう。NSAAと同様に、計時10MWRを、ベースラインならびにパート1およびパート2中の52週目の来院時に2日分収集するであろう。
4段昇りに要する時間
【0426】
計時4段試験は、被験体が標準的な4つの階段を昇るのに要する時間を定量する(各階段の高さは6インチである)(Bushby,K et al.,Clin Investig(Lond).1(9):1217-1235(2011))。被験体が4つの標準的なサイズの階段を昇るのに要する時間を記録するであろう。
100メートル歩行/走行
【0427】
100MWRは、被験体が(真っ直ぐな通路を)立位から100メートルを走行または歩行するのに要する時間を定量する(Alfano,LN et al.,Neuromuscul Disord.27(5):452-457(2017))。被験体は、100メートルのマークを走り抜けるように促される。被験体がこの距離を走行するのに要する時間を、記録するであろう。
ウェアラブルデバイス
【0428】
被験体に、毎日の身体活動を収集するためのウェアラブルデバイスを提供するであろう。ウェアラブルデバイスの目的は、調査施設への来院を除く日常生活中の被験体の運動および活動レベルを正確に測定することである。デバイスは、2つのセンサーからなり、そのうちの1つを各々のくるぶしに装着する。ウェアラブルデバイスの電池を毎日使用後に充電する必要があるので、センサーは夜間に装着しないであろう。施設の人員、被験体、および親/介護者を、デバイスを正確に使用するように訓練するであろう。
【0429】
注入前期間中、ウェアラブルデバイスを、ベースライン値を得るために3週間にわたって両方のくるぶしに毎日装着するであろう。追跡期間中、ウェアラブルデバイスを、パート1およびパート2中の12、24、36、および52週目/早期終了のためのクリニック来院前の3週間にわたって両方のくるぶしに毎日装着するであろう。ウェアラブルデバイスは、クリニック来院中は装着しないであろうが、被験体は、クリニック内での試験の完了直後に使用を再開するであろう。
マイクロ-ジストロフィン発現
【0430】
マイクロ-ジストロフィン発現の評価のための筋生検を、パート1の12週目およびパート2の12週目に被験体の部分集団から回収するであろう。筋生検を、治験依頼者の承認を得て開放生検またはVACORAコア生検を使用して回収すべきである。生検は、腓腹筋内側からの筋組織の回収を要件としなければならない。腓腹筋内側で実行できない場合、代替の筋肉の使用前に治験依頼者からの事前承認が必要である。
【0431】
生検試料を使用して、筋肉含有量のために調整されたウェスタンブロットによるマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現を定量し、マイクロ-ジストロフィンの局在化を、IF強度としての免疫組織化学、およびPDPFを使用して査定するであろう。生検組織の取り扱いおよび処理についてのさらなる詳細については、「Biopsy Surgical and Laboratory Manual」を参照のこと。
ベクターゲノムおよび定量
【0432】
血清を回収して、種々の時点でのベクター定量を査定するであろう。1日目に、試料を、注入終了からおよそ4時間~6時間後に回収するであろう。
【0433】
筋生検試料中のベクターゲノムコピー数を、パート1中の12週目およびパート2中の12週目に、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して測定するであろう。
クレアチンキナーゼ
【0434】
治験薬注入後のクレアチンキナーゼレベルは、診査有効性の尺度としての機能を果たすであろう。
患者報告アウトカム測定法情報システム
【0435】
地域的に利用可能である被験体の部分集団に対してPROMIS尺度を完了するであろう;参加国は、研究運用マニュアルに概説されるであろう。
【0436】
PROMISは、健康に関連した生活の質を査定するために開発され、検証された一連の手段である(PROMIS小児自身および親の代理による回答プロフィール手段。http://www.healthmeasures.net/images/PROMIS/manuals/PROMIS_Pediatric_and_Proxy_Profile_Scoring_Manual.pdf.,10 October 2018,Bevans,KB et al.,Expert Rev Pharmacoecon Outcomes Res.10(4):385-396(2010)で利用可能である。PROMIS尺度は、患者報告アウトカムの査定のための食品医薬品局の方法論的基準と連携して開発されており(Bevans,KB et al.,Food and Drug Administration.Guidance for Industry Patient-Reported Outcome Measures:Use in Medical Product Development to Support Labeling Claims;https://www.fda.gov/downloads/drugs/guidances/ucm193282.pdf.;10 October 2018)、成人および小児の身体、精神、および社会的な健康を評価およびモニタリングする人間中心の項目から構成される。この研究における小児アウトカムの具体的な尺度は、以下の代理尺度を含むであろう:
・PROMIS親代理項目バンクV2.0-可動性
・PROMIS親代理SF V2.0-上肢-縮小版8a
・PROMIS親代理SF V2.0-疲労-縮小版10a
【0437】
被験体が研究期間内に8歳になる場合、以下の小児用PROMIS尺度も被験体によって実施し、完了するであろう。親/介護者は、代理尺度を継続して完了させるであろう。
・PROMIS小児用項目バンクV2.0-可動性
・PROMIS小児用項目バンクV2.0-上肢-縮小版8a
・PROMIS小児用項目バンクV2.0-疲労-縮小版10a
パート1における重要な有効性の査定のまとめ:
【0438】
主要アウトカム尺度:52週目のNSAA総スコアのベースラインからの変化。
【0439】
副次アウトカム尺度:
-参加者の部分集団におけるウェスタンブロットによって測定した場合の12週目のマイクロ-ジストロフィンタンパク質発現量(12週目)。
-52週目の床からの立ち上がり所要時間、100および10メートル歩行/走行を完了するのに要する時間、および計時四段階段昇り試験のベースラインからの変化(ベースライン、52週目)
-ウェアラブルデバイスによって測定した場合のストライド速度の95センタイル(SV95C)のベースラインからの変化(52週目までのベースライン)
-52週目のドメインあたりの患者報告アウトカム測定法情報(PROMIS)スコアのベースラインからの変化(ベースライン、52週目)
PROMISは、健康に関連した生活の質を査定するために開発され、検証された一連の手段である。親は、「お子さんの観察可能な症状、身体能力、日常的活動を行う能力、および全体的な健康の全ての局面を考慮した場合、以下の格付けスケールを使用して、研究開始以後のお子さんの臨床的状態の変化をどのように格付するでしょうか?:1=非常に改善した、2=より改善した、3=改善は最小限であった、4=変化なし、5=悪化は最小限であった、6=より悪化した、および7=非常に悪化した」と依頼されるであろう。
-パート1:NSAAによって測定した場合の52週目の取得または改善したスキルの数(52週目までのベースライン)。
実施例11
デランディストロゲンモキセパルボベックの全身送達後のDMDmdxラットにおける心機能の評価
【0440】
DMDmdxラットモデルは、ヒトDMD病理学に非常に近い表現型特性を有するデュシェンヌ型筋ジストロフィ(Duchenne muscular dystophy)(DMD)の有益な小型動物モデルである。Larcher T.et al.,Plos One 9(10):e110371(2014);Szabo-,P.L.et al.,Disease Models&Mechanisms 14:dmm047704.doi:10.1242/dmm.047704(2021)を参照のこと。この研究の目的は、単回用量(1.33×1014vg/kg)のデランディストロゲンモキセパルボベックの全身送達後の21~28日齢の雄Sprague-Dawley DMD変異ラット(DMDmdxラット)の心機能を生理食塩水と比較して評価することであった。
【0441】
研究エンドポイントは、安全性についての薬理学的測定、骨格筋および心筋中の標的マイクロ-ジストロフィン(micro-dytrophin)発現、生体内分布、組織学、および心機能を評価するための心エコー図を含んでいた。処置コホートは、単回用量(1.33×1014vg/kg)の本明細書中に記載のrAAV rh74.MHCK7.マイクロ-ジストロフィンベクター(デランディストロゲンモキセパルボベック)を全身投与されたDMDmdxラットを含んでいた。対照コホートは、生理食塩水を投与されたDMDmdxラットを含んでいた。下記のように、2コホート間の心機能を、12週目および24週目の時点で査定した。
骨格筋および心筋中のマイクロ-ジストロフィンの標的発現
【0442】
デランディストロゲンモキセパルボベックの全身送達により、骨格筋および心筋の両方での標的化発現が実証された。生理食塩水に対するデランディストロゲンモキセパルボベックでの処置後のDMD
mdxラットの骨格筋および心筋(免疫蛍光)中のマイクロ-ジストロフィン発現の可視化を、
図21A~21Cに示す。
図21A~21Cは、生理食塩水(
図21A)と比較した、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の12週間後(
図21B)および24週間後(
図21C)のDMD
mdxラットの骨格筋(「LTA」)および心筋(「HRT」)中のマイクロ-ジストロフィン発現を実証している。
【0443】
図22A~22Bは、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の12週間後および24週間後のDMD
mdxラットのいくつかの筋組織中のマイクロ-ジストロフィン発現(免疫蛍光)(
図22A)およびベクター形質導入(ベクターゲノムコピー数)(
図22B)の定量を示す。略語:TA=脛骨筋;HRT=心臓;MG=内側腓腹筋;LG=外側内側腓腹筋;DIA=横隔膜;TRI=三頭筋;PSO=大腰筋。
筋肉変性および線維症の軽減
【0444】
生理食塩水と比較して、DMD
mdxラットにおいてデランディストロゲンモキセパルボベック投与の12週間後および24週間後の両方で、骨格筋における中心核形成分析によって筋肉変性の有意な軽減が認められた。
図24Aは左内側腓腹筋のH&E染色を示し、これは、生理食塩水で処置したDMD
MDXラットで示されたより重度のジストロフィ表現型と比較して、デランディストロゲンモキセパルボベック処置DMD
MDXラットの筋肉病理学が改善されたことを示した。
【0445】
LMG中の組織学的パラメーターの定量も行った。中心核形成および線維径(筋肉変性のマーカー)を試験した。Pastoret,C.et al.,J Neur Sci 129:97-105(1995);L.R.Rodino-Klapac et al.,Mol Genet.22:4929-4937(2013),Potter R.A.et al.Hum Gene Ther.32:375-89(2021)を参照のこと。平均中心核形成は、処置動物の中心核形成(CN)が改善されたことを示し、これは、処置動物における筋肉変性の減少を示していた。生理食塩水を投与したラットは、12週および24週コホートの両方についての中心核形成の平均陽性率が50%を超えた一方で、12週および24週コホートの両方についてのデランディストロゲンモキセパルボベックによる中心核形成は25%未満であった(
図24B)。12週目および24週目の生理食塩水で処置した動物とデランディストロゲンモキセパルボベックで処置した動物との間の差は、共に統計的に有意であり、デランディストロゲンモキセパルボベック処置を用いた変性/再生過程の改善および筋線維損傷の減少が実証された。線維径は、12週目および24週目の両方で生理食塩水に対してデランディストロゲンモキセパルボベックで処置した線維のサイズ分布の正常化および線維の平均直径の増加を示し、これは、筋肉環境の正常化を示す。
【0446】
線維症を、組織切片中のコラーゲンの百分率を定量することによって分析した。
図25A~25Bは、骨格筋および心筋中のコラーゲン沈着の分析を示す。
図25A中の画像は、処置12時間後のマッソントリクローム(Trichome)染色を示す。
図25A中の代表的な画像は、デランディストロゲンモキセパルボベックおよび生理食塩水で処置した動物の投与12時間後のMGおよびHRTの線維症を示す。青色染色は線維症を示し、赤色染色は筋線維を示す。線維症は、生理食塩水と比較して、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の12週間後および24週間後のDMD
mdxラットにおいて軽減された。
図25Bは、処置の12週間後および24週間後の種々のタイプの骨格筋および心筋中のコラーゲン沈着を定量している。線維症の定量により、全ての分析された組織において、デランディストロゲンモキセパルボベック処置コホートが、生理食塩水処理コホートよりも染色筋肉切片あたりの線維領域の百分率が低かった(
図25B)ことが示された。(HRT=心臓;MG=内側腓腹筋;DIA=横隔膜)。
心機能の評価
【0447】
DMD
mdxラットにおける収縮期心室の性能を、生理食塩水と比較したデランディストロゲンモキセパルボベックの投与の24週間後に心エコー検査法によって評価した。「処置」コホート対対照(「生理食塩水」)コホートについてのデータを示す棒グラフを、
図27A(左室収縮末期径(LVESD)について;
図27B(駆出率(%)(EF)について)l、および
図27C(短縮率(%)(FS)について)中に示す。
【0448】
デランディストロゲンモキセパルボベックの投与により、生理食塩水処置DMD
MDXラットに対して、駆出率(EF)(
図27B)および短縮率(FS)(
図27B)がわずかに改善される。デランディストロゲンモキセパルボベックを用いると拡張が逆転する傾向により、LVIDd(左心室内径、拡張期)およびLVIDs(左心室内径、収縮期)/LVESD(左室収縮末期径)の軽度の減少、ならびに拡張末期容量(EDV)の低下に至った。生理食塩水に対するデランディストロゲンモキセパルボベックでの処置24時間後の左室収縮末期径の軽度の減少を、
図27Aの棒グラフに示す。
【0449】
心機能の3つの心エコー測定を反映する
図27A~27C中に示すデータは、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置の24週間後の心機能の維持に向かう正の傾向を示す。データは、DMD
MDXラットにおける心機能の改善および有害な心臓リモデリングの逆行におけるデランディストロゲンモキセパルボベックの有効性を裏付けている。
歩行および垂直運動の改善
【0450】
DMDmdxラットの運動を、オープンフィールド活動ケージ中のレーザーモニタリングを使用して生存中に測定した。歩行および立ち上がり行動(垂直運動の測定)を、1時間あたりの光線の遮断数に基づいて測定した。罹患動物は、筋損傷に起因して経時的に歩行および垂直運動の能力を失う。活動ケージを、剖検の2週間以内に行った。
【0451】
運動(歩行および立ち上がり行動の両方)は、全ての処置群について全ての時点で有意に増加した。デランディストロゲンモキセパルボベックの全身送達の12週間後に歩行および立ち上がり行動の統計的に有意な増加が実証された(
図23Aおよび23B)。同一の傾向が24週目の時点で認められる。
【0452】
生理食塩水コホートに対して処置コホートにおいて24週間で歩行に有意差が認められる(
図23A)。24週目の立ち上がり行動の改善はあまり顕著ではないが、生理食塩水で処置した年齢適合DMD
MDXコホートと比較して依然として統計的に有意である(
図23B)。
【0453】
要するに、このデータは、12週および24週の両方の時点において、生理食塩水に対してデランディストロゲンモキセパルボベックでの処置後にDMDMDXラットの可動性が有意に機能的に改善することを示す。
血清トロポニンレベル
【0454】
血清中のトロポニンIレベルを、生理食塩水(n=6)投与に対して1.33×1014デランディストロゲンモキセパルボベック(n=6)の投与1週間後(7日後)のDMDmdxラットの部分集団において評価した。トロポニンIを、生理食塩水(n=5)に対して、剖検での投与12週間後の動物(n=5)の異なる部分集団において評価した。
【0455】
トロポニンIは、血清中のトロポニンIタンパク質レベルを測定する。これらのタンパク質は、心筋が損傷されたときに放出され、心臓発作などを伴う。心臓がさらに損傷を受けると、血清中のトロポニンIの存在量が増加する。DMD動物モデルと一致して、血清中のトロポニンIの上昇および心疾患は、DMDMDXラットモデルの特徴である。
【0456】
しかしながら、
図26に示すように、血清トロポニン1の血中レベルは、生理食塩水で処置した動物とデランディストロゲンモキセパルボベックで処置した動物との間で投与1週間後および投与12週間後の両方において有意差がなかった-これは、遺伝子治療による処置に原因する心毒性が存在しないことを示唆している。
結論
【0457】
この研究を、DMDMDXラットモデルにおけるデランディストロゲンモキセパルボベック処置の有効性および機能改善を試験するためにデザインした。DMDMDXラットモデルは、DMDMDXマウスモデルよりも重度の表現型を示し、DMD患者の心臓および線維症表現型のより良好なモデルである。
【0458】
生存中の活動ケージの機能アウトカムは、デランディストロゲンモキセパルボベックでの処置による改善を示した。立ち上がり行動および歩行の両方は、全時点にわたって生理食塩水対照と比較して処置動物で有意に改善された。全時点にわたる機能改善の維持は、臨床的に意図される用量の1.33×1014vg/kgデランディストロゲンモキセパルボベックの全身送達の発現および機能の耐久性を実証している。
【0459】
心エコー検査法では、処置の12週間後および24週間後の両方において、デランディストロゲンモキセパルボベック全身処置により心疾患の指標が改善された。概して、このデータは、送達後24週間を通して、DMDMDXラットモデルにおいてデランディストロゲンモキセパルボベック処置で心機能が改善されたことを実証している。
【0460】
マイクロ-ジストロフィンは、DMD
mdxラットモデルにおいて筋肉の至る所(心臓が挙げられる)に発現し、これは、ジストロフィ発症の軽減および歩行の改善に関連していた。心エコー検査法によって実証されるように、心臓中のマイクロ-ジストロフィンの標的発現は、心筋線維症を軽減し、心機能を改善した。要するに、デランディストロゲンモキセパルボベックは、骨格筋および心筋中の標的発現が実証され、この発現は、mdxラットモデルにおける機能的アウトカム(例えば、心臓)の改善に対応していた。
文献
【化1】
【化2】
【化3】
【配列表】
【国際調査報告】