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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】光電子構成要素及びレーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20240514BHJP
【FI】
H01S5/183
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571209
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2022063415
(87)【国際公開番号】W WO2022248301
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021113598.2
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021128124.5
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルブリッター フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】アヴラメスク アドリアン シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クライナー ローラ
(72)【発明者】
【氏名】イェンチュ ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス-イグレシアス アルバロ
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC02
5F173AC20
5F173AC61
5F173AC70
5F173AF12
5F173AF35
5F173AG21
5F173AR94
(57)【要約】
光電子構成要素は、フォトニック結晶(1)及び利得媒体(3)を含むスタックを含む。利得媒体が、少なくとも2つの量子ウェル(30)及び少なくとも1つのトンネル接合部(31)の層列を含み、電磁波を放出するように構成されている。フォトニック結晶は利得媒体に電磁で結合する。スタックは基板(5)に配置される。択一的または付加的に、利得媒体は少なくとも1つの量子ウェルを含んでいる。フォトニック結晶は誘電体層に構造化され、利得媒体と電磁結合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニック結晶(1)及び利得媒体(3)を含むスタックを含む光電子構成要素であって、
-前記利得媒体が、少なくとも2つの量子ウェル(30)及び少なくとも1つのトンネル接合部(31)の層列を含み、電磁波を放出するように構成されており、
-前記フォトニック結晶(1)が前記利得媒体に電磁で結合され、
-前記スタックが基板(5)に配置される、前記光電子構成要素。
【請求項2】
フォトニック結晶(1)及び利得媒体(3)を含むスタックを含む光電子構成要素であって、
-前記利得媒体は、少なくとも1つの量子ウェル(30)を含み、電磁波を放出するように構成され、
-前記フォトニック結晶(1)は、誘電体層(14)に構造化され、前記利得媒体に電磁で結合され、
-前記スタックは基板(5)に配置される、前記光電子構成要素。
【請求項3】
フォトニック結晶(1)及び利得媒体(3)を含むスタックを含む光電子構成要素であって、
-利得媒体は、少なくとも1つの量子ウェル(30)を含み、電磁波を放出するように構成され、
-前記フォトニック結晶(1)は、導電層(21)に構造化され、前記利得媒体に電磁で結合され、
-前記スタックは基板(5)に配置される、前記光電子構成要素。
【請求項4】
-前記層列は、前記少なくとも2つの量子ウェル(30)と前記少なくとも1つのトンネル接合部(31)とを含み、
-フォトニック結晶(1)は、誘電体層(14)に構造化される、請求項1に記載の光電子構成要素。
【請求項5】
前記フォトニック結晶(1)は、前記フォトニック結晶が層列に配置されるように、前記利得媒体(3)に含まれている、請求項1から4のいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項6】
前記フォトニック結晶(1)は、前記フォトニック結晶が層列の外層に配置されるように、前記利得媒体(3)とは別に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項7】
-前記利得媒体(3)は、1つ以上のクラッド(32)を有し、
-前記1つ以上のクラッドは、量子ウェル(30)がトンネル接合部(31)から離間されるように、層列に配置される、請求項1から6のいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項8】
前記1つ以上のクラッド(32)は、前記利得媒体(3)から基本モードを結合できるようにそれぞれ前記量子ウェル(30)と前記トンネル接合部(31)との間の距離を調整する、請求項7に記載の光電子構成要素。
【請求項9】
前記1つ以上のクラッド(32)は、それぞれ前記量子ウェル(30)と前記トンネル接合部(31)との間の距離を調整して、前記利得媒体(3)から複数の単一モードを結合できるようにし、前記単一モードをエネルギー伝達によって結合する、請求項7に記載の光電子構成要素。
【請求項10】
前記フォトニック結晶(1)は、クラッド(33)を含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項11】
誘電体層(14)は、
-第1の誘電体材料、
-第2の誘電体材料及び/または前記電磁波の領域において透明な導電性材料を備え、及び/または導電層(21)は、
-第1の導電性材料、
-第2の導電性材料及び/または前記電磁波の領域で透明な誘電体材料を備える、請求項2から10のいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項12】
前記フォトニック結晶(1)のフォトニック結晶構造体(11)は、前記第1の誘電体材料を含み、前記第2の誘電体材料及び/または透明導電性材料に完全に埋め込まれている、請求項11に記載の光電子構成要素。
【請求項13】
前記フォトニック結晶(1)の前記フォトニック結晶構造体(11)は、量子ウェルに面する側の前記第2の誘電体材料及び/または透明導電性材料には少なくとも部分的に埋め込まれてはいない、請求項12に記載の光電子構成要素。
【請求項14】
前記フォトニック結晶(1)のフォトニック結晶構造体(11)は、前記利得媒体(3)に直接接触している、請求項12または13に記載の光電子構成要素。
【請求項15】
前記フォトニック結晶(1)は、導電性材料を含まない層に構造化されている、請求項1から14のいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項16】
レーザであって、
-請求項1から15のいずれか1項に記載の光電子構成要素のうちの1つ以上、及び
-前記利得媒体によって振起放出を励起するように構成されたポンプ源、を備える、前記レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光電子構成要素及びレーザが記載されている。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザは、その小さいサイズ及びパワースペクトルのため、広範囲の用途において、例えば集積センサの解決法において使用される。半導体レーザは、一般に2つのクラス、すなわち、レーザ光が半導体チップのウェハ表面に対して平行に伝播し、劈開されたエッジで反射または結合される端面発光レーザと、光が半導体ウェハの表面に対して垂直に伝播する面発光レーザとに分類することができるあまり一般的でない面発光レーザのカテゴリは、レーザ光が実質的にウェハ表面に沿った空洞において伝搬するように構成されている(面内レーザ)。この種のレーザの1つの実現形態は、フォトニック結晶構造体を有する面内レーザ共振器が実現されるフォトニック結晶面発光レーザ(PCSEL)である。同じ構造体がまた、出力ビームを形成するために、光の一部を反射する。ここでは、単一周波数動作を達成することができ、これは、例えば、3Dセンシング及び光データ伝送における用途にとって重要であり得る。
【0003】
フォトニック結晶面発光レーザ、つまりPCSELは、例えば、機能層のスタックによって実現することができる。端面発光レーザとは対照的に、レーザは、製造を簡素化し、特定の用途に合わせてレーザ特性を調整するために、用途に応じて結合導波路を備えることができ、またそうすべきである。同時に、使用されるフォトニック結晶などの質の高い構成要素が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの目的は、より簡単な製造及び改善されたレーザ特性を可能にする光電子構成要素及びレーザを明記することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの課題は、独立請求項に記載の光電子構成要素及びレーザによって解決される。光電子構成要素及びレーザのさらなる実施形態は、従属請求項の説明の対象である。
【0006】
光電子構成要素の一実施形態によれば、光電子構成要素は、フォトニック結晶及び利得媒体を含むスタックを含む。利得媒体は、少なくとも2つの量子ウェルと少なくとも1つのトンネル接合部との層列を含む。スタックは、電磁波の放出される領域において透明な基板に配置される。利得媒体は、電磁波を放出するように構成されている。フォトニック結晶は利得媒体に電磁で結合する。
【0007】
レーザ、特にフォトニック結晶面発光レーザ、PCSELの輝度を増加させるために、スタックを備える光電子構成要素が有利であり得る。複数の接合部を有する他の半導体レーザとは異なり、導波路を結合することも可能であり、多くの場合に必要である。これにより、例えば、各導波路に対してフォトニック結晶層を実装することを省略できる。
【0008】
導波路を結合することにより、回折的に制限されたビームコリメーションのみで、出力密度が高い大面積のレーザを生成することができる。さらに、スタックは、スーパー導波管内に配置することができる。
【0009】
トンネル接合部に助けられ、個々の量子ウェルを小さな空間を隔ててコヒーレントに結合することができる。この概念では、1つのフォトニック結晶層しか必要とされないため、ナノ構造化は量子ウェル及びトンネル接合部の堆積後にのみ行わなければならず、ひいてはデバイスの最も高い感度な層に追加の欠陥が生じないため、作製がさらに容易である。
【0010】
一実施形態では、光電子構成要素は、フォトニック結晶及び利得媒体を含むスタックを含む。利得媒体は、少なくとも1つの量子ウェルを含み、電磁波を放出するように構成されている。フォトニック結晶は誘電体層に構造化され、利得媒体と電磁結合する。スタックは、基板に配置される。基板は、例えば、電磁波を結合するために、電磁波の領域において透過性であってもよい。代替的に、例えば電磁波がこの側から結合しない場合、基板は電磁波の領域において不透明であってもよい。
【0011】
PCSELの高いコリメーションの質により、基板に結合が行われる場合であっても、ビームの大幅な拡幅は生じない。すなわち、レーザとして使用される光電子構成要素の光学特性は、「厚い」基板、例えば100μm超によっても損なわれず、それゆえ、以前に提案された基板よりもはるかに厚い基板を用いて構成要素を製造することも可能である。
【0012】
高い質のフォトニック結晶構造体を用いたこのアプローチを実現するために、フォトニック結晶を半導体材料の内部に直接構造化するのではなく、活性ゾーンに近い付加的に挿入された層で構造化することができる。この層は、例えば、別の誘電体材料及び/または酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電性材料と組み合わせた誘電体材料を含む。良好な光学特性を有し、同時に高い熱伝導率を有する材料が誘電体材料として特に適しているのに対して、熱特性が相対的に良好でない他の誘電体材料も原理上適している。
【0013】
代替的な概念に対するこのアプローチの1つの利点として、半導体材料の比較的薄い層しか必要とされない、ということが挙げられる。その結果、対応するエピタキシャルのプロセスにかかる時間が大幅に短くなり、そのため比較的単純なアーキテクチャの低コストの構成要素が有効になる。誘電体の構造化により、半導体の欠陥を低減することができ、または回避することさえできる。
【0014】
一実施形態では、光電子構成要素は、フォトニック結晶及び利得媒体を含むスタックを含む。利得媒体は、少なくとも1つの量子ウェルを含み、電磁波を放出するように構成されている。フォトニック結晶(1)は、導電層に構造化され、利得媒体に電磁で結合される。スタックは、基板に配置される。基板は、例えば、電磁波を結合するために、電磁波の領域において透過性であってもよい。代替的に、例えば電磁波がこの側から結合しない場合、基板は電磁波の領域において不透明であってもよい。
【0015】
これにより、例えば、InGaNレーザなどのp側のフォトニック結晶構造体が可能になる。例えばp側にITOを含む導電層の内部の実現により、p側(ARコーティング)を介した結合を容易にする完全に平坦化された構造を可能にし、例えばn側を介した熱結合を可能にする。
【0016】
少なくとも1つの実施形態では、層列は、少なくとも2つの量子ウェルと少なくとも1つのトンネル接合部とを含む。また、フォトニック結晶は、電気層に構造化されている。
【0017】
光電子構成要素の少なくとも1つの実施形態では、フォトニック結晶は、フォトニック結晶が層列に配置されるように、利得媒体に含まれている。
【0018】
代替的に、フォトニック結晶は、フォトニック結晶が層列の外層に配置されるように、利得媒体とは別に配置され得る。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、利得媒体は1つ以上のクラッドを有する。1つ以上のクラッドは、量子ウェルがトンネル接合部から離間されるように、層列に配置される。
【0020】
少なくとも1つの実施形態では、量子ウェルとトンネル接合部との間の距離は、それぞれ、利得媒体から基本モードを結合可能であるように調整される。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、1つ以上のクラッドは、それぞれ複数の単一のモードを利得媒体から結合し、単一のモードをエネルギー伝達によって結合することができるように、量子ウェルとトンネル接合部との間の距離が調整されるように、距離で調整される。
【0022】
少なくとも1つの実施形態においては、フォトニック結晶は、クラッドを含む。
【0023】
少なくとも1つの実施形態では、誘電体層は第1の誘電体材料を含む。誘電体層は、第2の誘電体材料及び/または電磁波の領域で透明な導電性材料をさらに含む。
【0024】
少なくとも1つの実施形態では、導電層は、第1の導電性材料、第2の導電性材料、及び/または電磁波の領域において透明である誘電体材料を含む。
【0025】
さらに、導電層と誘電体層とを適切な材料選択によって組み合わせることができる。したがって、例えば、部分的に誘電性の層及び部分的に導電層を設けることができる。
【0026】
少なくとも1つの実施形態では、フォトニック結晶のフォトニック結晶構造体は、第1の誘電体材料を含み、第2の誘電体材料及び/または透明導電性材料に完全に埋め込まれている。フォトニック結晶のフォトニック結晶構造体は、量子ウェルに面した側の第2の誘電体材料及び/または透明導電性材料に、少なくとも部分的に埋め込まれていなくてよい。
【0027】
少なくとも1つの実施形態では、フォトニック結晶のフォトニック結晶構造体は、利得媒体と直接的に接触している。
【0028】
少なくとも1つの実施形態では、フォトニック結晶は、導電性材料を有しない層に構造化される。
【0029】
少なくとも1つの実施形態では、レーザは、本明細書に記載されている概念による光電子構成要素の1つ以上を含む。さらに、ポンプ源が設けられており、利得媒体により振起放出を励起するように構成されている。
【0030】
少なくとも1つの実施形態では、光電子構成要素を製造する方法は、以下のステップを含む。まず、フォトニック結晶と利得媒体をスタック状に配置する。スタックは、電磁波の放出される領域において透明な基板にさらに配置される。利得媒体は、少なくとも2つの量子ウェルと少なくとも1つのトンネル接合部とを、層列において含む。利得媒体は、電磁波を放出するように構成されている。最終的に、フォトニック結晶は利得媒体に電磁で結合する。
【0031】
少なくとも1つの実施形態では、光電子構成要素を製造する方法は、以下のステップを含む。まず、フォトニック結晶と利得媒体をスタック状に配置する。スタックは、電磁波の放出される領域において透明な基板に配置される。利得媒体は、少なくとも1つの量子ウェルを含み、電磁波を放出するように構成されている。フォトニック結晶は誘電体層に構造化され、利得媒体と電磁結合する。
【0032】
光電子構成要素または光電子構成要素を製造する方法のさらなる実施形態、及びさらなる発展は、図1図11に関連して以下に説明される例示的な実施形態から明らかになる。図面において、同一、類似、または同一に作用する回路のパーツには、同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】光電子構成要素の例を示す。
図2】光電子構成要素の例を示す。
図3】光電子構成要素の例を示す。
図4】光電子構成要素の例を示す。
図5】光電子構成要素の例を示す。
図6】光電子構成要素の例を示す。
図7】光電子構成要素の例を示す。
図8】光電子構成要素の例を示す。
図9】光電子構成要素の例を示す。
図10】光電子構成要素の例を示す。
図11】光電子構成要素の例を示す。
図12】光電子構成要素の例を示す。
図13】光電子構成要素の例を示す。
図14】光電子構成要素の例を示す。
図15】光電子構成要素の例を示す。
図16】光電子構成要素の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、光電子構成要素を示す。この例及び以下の例では、光電子構成要素は、フォトニック結晶1及び利得媒体3を含むスタックを含む。
【0035】
フォトニック結晶1は、例えば半導体材料、例えばヒ化ガリウム、GaAs、窒化ガリウム、GaN、またはリン化インジウム、InPの薄層からなり、これは放出すべき電磁波に対して透過性であり、すなわち吸収しないかまたは吸収がわずかである。放出されるべき電磁波は、例えば、電磁スペクトルの赤外線、IR、紫外線、UV、または可視光線、VISの一部である。フォトニック結晶1は、周期的な屈折率構造であり、電磁波を誘導、フィルタリング、及び/または波長選択的に、例えば回折及び干渉などの光学的過程により反射させることができるフォトニック構造体11を含む。周期的なフォトニック構造体は、例えば、光電子構成要素から放射され得る電磁波の放射方向、波長及び発散を決定または規定する。
【0036】
フォトニック結晶構造体11は、所定の方向または領域に延在するフォトニック結晶構造体を形成するように、パターン(例えば、正方形または三角形のパターン)で配置された1次元または2次元配列の構造要素12を備える。構造要素は、空気孔または誘電性材料を含むことができる。2次元フォトニック結晶構造体としては、いわばラテラルキャビティとして機能する。例えば、フォトニック構造体は、構造要素同士の距離(ピッチ)、またはそれらの充填率及び他のパラメータによって特徴付けられる。図示されていないのは、1つの平面へのフォトニック結晶の拡張であり、結果として周期的フォトニック構造体の2次元分布となる。原則的に、フォトニック結晶は1つの方向に沿って延在することができ、これによって周期的なフォトニック構造体の1次元分布となる。
【0037】
利得媒体3は、量子ウェル30、トンネル接合部31、及びクラッド32の層列を含む。量子ウェルは活性媒体であり、適切に励起されたときに、振起放出によって電磁波を放出するように構成されている。利得媒体は、2つの外側クラッドによって画定されている。この例では、フォトニック結晶は、利得媒体のための第1の外側クラッドである。第2の外側クラッド33は、スタックが配置されている基板5から利得媒体を画定する。基板は電磁放射線の領域に対して透過的である。第1の外側クラッドと第2の外側クラッドとは、利得媒体のクラッド32とは異なる層の厚さを有することができる。利得媒体のスタックは、第1及び第2の外側クラッドによって画定される共通の導波路を形成する。この例では、利得媒体のクラッド32は、等しい層の厚さを有する。例えば、層の厚さは、100nm~500nmの範囲にある。クラッドはドープされた半導体を含み、例えばnドープまたはpドープである。
【0038】
スタックは、複数の量子ウェルを含み、この例では3つであるが、少なくとも2つの量子ウェルを含む。この構造は、多重量子ウェルと呼ばれる。第1の量子ウェルは、フォトニック結晶にフォトニック結合されている。この例では、フォトニック結晶は、第1の量子ウェルに配置されている。「フォトニック結合」という用語は、光電子結晶が動作(例えばレーザ)しているときに、フォトニック結晶と量子ウェルとの間にエバネッセント場を形成させる、この空間的近接性を指す。これについては以下でより詳しく説明する。
【0039】
この層列では、第1の量子ウェルの後にさらなるクラッド32が続き、その後に第1のトンネル接合部31及び別のクラッド32が続く。この配列は、さらなるクラッド32を有する第2の量子ウェル30に対して繰り返され、続いて、第2のトンネル接合部31及びさらなるクラッド32が続く。このクラッドに続いて第3の量子ウェル30が設けられており、これは、ある意味では、基板5の方向でスタックを終了させる。第3の量子ウェル30は、第2の外側クラッド33に配置されている。
【0040】
トンネル接合部31は、例えば、pn接合を表す。したがって、nドープ領域及びpドープ領域の有利なシーケンスを、層列によって調整することができる。この例では、それぞれの量子ウェル、クラッド及びトンネル接合部のシーケンスによって、量子ウェル1つあたり1つの基本モードのみが適切な励起によって確立されることが保証される。複数の量子ウェル(多重量子ウェル)を配置することにより、重ね合わせによって「超」基本モードが確立され、これは量子ウェルの層の厚さ及び相対的な位置によって決定される。このためには1μm未満の層の厚さが本目的に有利であることが判明しており、層の厚さは、それぞれの量子ウェル、クラッド及びトンネル接合部のシーケンスを表す。このようにして、量子ウェルは互いに非常に近接しているので、量子ウェルは互いに光子で結合され、「極」基本モードが確立される。スタックにおけるトンネル接合部の位置は、基本モードがノードなどを有していないため、あまり重要でないことが判明している。したがって、基本モードに対応するエバネッセント場の中で、フォトニック結晶構造体をフォトニック結晶層の下の薄い活性層(量子ウェル)に結合させることにより、振起放出によるレーザ利得を実現することができる。
【0041】
基板は、2つの対向する表面を含む。一方の表面51には、外側クラッド33が設けられているので、層列は、基板に配置されている。対向面52には、任意選択的に反射コーティング53が設けられている。この反射コーティングは、例えば、(金属)反射器またはブラッグミラーを含む。反射コーティングはまた、表面51に設けられてもよい。反射コーティングは、それが共振器の構成要素ではないことから、あるいは、基板における高い反射率がレーザ活性のために必ずしも必要とされないことから任意選択である。
【0042】
光電子構成要素は、レーザの一部として動作させ得る。適切なポンプ源は、電気的または光学的であり、利得媒体に振起放出を生じさせる。例えば、活性領域、すなわち量子ウェルをポンピングするための電流が、金属電極を介して、光電子構成要素の上面及び下面に、例えばフォトニック結晶及び基板の反対側の表面52に印加される。電極は図示されていない。この例では、レーザ発光は、フォトニック結晶が配置された上面(矢印で示す)を介して発生する。例えば、電極は、放出面のごく一部、例えば10μm~100μm程度の寸法を有する矩形の領域のみを覆う。中央から矩形の領域が取り除かれた上部電極を使用することも可能である。これにより、フォトニック結晶モードのポンピングがその外側領域において生じるのに対し、出力結合は中央領域において可能である。
【0043】
モードのエバネッセント場の中で、フォトニック結晶1のフォトニック結晶構造体11を、フォトニック結晶層11の下の活性層(利得層)としての利得媒体の量子ウェル30に結合することによって、振起放出によるレーザ利得を実現する。ここで、クラッドは、量子ウェルとトンネル接合部との間の距離をそれぞれ調整し、利得媒体から基本モードを結合できるようにする。活性領域は、活性領域に閉じ込められた電荷キャリアを維持するために、層列においてフォトニック構造体から分離されるが、クラッド32及びトンネル接合部31のシーケンスによって、フォトニックで結合される。
【0044】
ドープされた半導体(外側クラッド33及びフォトニック結晶1)の光学的に透明で、導電性のクラッド層は、スタックの上方及び下方に位置している。したがって、それぞれの量子ウェル、クラッド及びトンネル接合部のシーケンスによって、量子ウェル1つあたり1つの基本モードが確立される。複数の量子ウェル(多重量子ウェル)を配置することにより、重ね合わせによって「超」基本モードが確立され、これは量子ウェルの層の厚さ及び相対的な位置によって決定される。層列の一方の側の反射コーティング53、例えばブラッグ反射器(ブラッグミラー)により、より効率的な電力抽出を達成することができる。
【0045】
導波路を結合することにより、回折で制限されたビームコリメーションのみで、高出力密度の大面積のレーザを生成できる。さらに、光電子構成要素は、超導波管内部に配置できる。トンネル接合部により、個々の量子ウェルをわずかな空間距離でコヒーレントに結合することができる。この概念では、1つのフォトニック結晶層しか必要とされないため、ナノ構造化は量子ウェル及びトンネル接合部の堆積後にのみ行うことができ、そのためデバイスの最も高感度な層に追加の欠陥が生じないため、作製がさらに容易になる。
【0046】
図2は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素は、前の例に基づいており、図1と比較して以下の特徴でのみ変更されている。
【0047】
今は、反射コーティング53は、フォトニック結晶の外面12に配置されている。この反射コーティングは、例えば(金属)反射器またはブラッグミラーを含み、それが共振器の構成要素ではないので任意選択であるか、または高い反射率がレーザ活性に必ず必要とされるわけではない。基板5の方向でのレーザ光の結合を補助するために、反射防止コーティング54を基板の表面52に適用し得る。この例では、レーザ発光は、構成要素の底面に沿って(矢印で示す)、すなわち基板5の方向に生じる。
【0048】
図3は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素はまた、図1の例をさらに発展させたものであり、以下の特徴でのみ変更されている。
【0049】
利得媒体3は、図1に記載されているのとは異なる層列を含む。この層列では、第1の量子ウェルに最初にクラッド32が続き、次にトンネル接合部31が続く。これに、さらなるクラッド32が続いている。このクラッドに第2の量子ウェル30が続いており、これは、ある意味では、基板5の方向で層列を終了する。この例では、第3の量子ウェルは設けられていない。その代わりに、第2の量子ウェルは外側クラッド33によって終端されている。フォトニック結晶1は、別の外側クラッドを表す。
【0050】
図1とは異なり、クラッド32はそれぞれ、トンネル接合部31または量子ウェル30とは異なる層の厚さを有している。クラッド32の層の厚さは、量子ウェルとトンネル接合部との間の距離が調整され、利得媒体からいくつかの単一モードが結合され得るように選択される。選択された距離に起因して、単一のモードがエネルギーの移動によって結合される。
【0051】
モードのエバネッセント場の中で、フォトニック結晶1のフォトニック結晶構造体11を、フォトニック結晶層11の下の活性層(利得層)としての利得媒体の量子ウェル30に結合することによって、振起放出によるレーザ利得を実現する。ここで、クラッドは、それぞれ利得媒体が2つの導波路に分割されて、それぞれが単一のモードを形成するように、量子ウェルとトンネル接合部との間の距離を調整する。活性領域は、活性領域に閉じ込められた電荷キャリアを維持するために、層列においてフォトニック構造体から分離されるが、クラッド32及びトンネル接合部31のシーケンスによって、フォトニックでそれに結合される。ドープされた半導体(外側クラッド33及びフォトニック結晶1)の光学的に透明で、導電性のクラッド層は、層列の上方及び下方に位置している。
【0052】
したがって、量子ウェル、クラッド、及びトンネル接合部のシーケンスによって、量子ウェルまたは導波管ごとに1つのシングルモードが生じる。量子ウェル(多重量子ウェル)、トンネル接合部及びクラッドの層の厚さを選択することによって、導波路がコヒーレントに結合されることを達成することができる。単一モードの確立は、結合によって重なり合い、エネルギーを交換する。これにより、レーザ光を中央フォトニック結晶から結合させることができる。
【0053】
図4は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素は、前の例に基づいており、図3と比較して以下の特徴でのみ変更されている。
【0054】
今は、反射コーティング53は、フォトニック結晶の外面12に配置されている。この反射コーティングは、例えば(金属)反射器またはブラッグミラーを含み、それが共振器の構成要素ではないので任意選択であるか、または高い反射率がレーザ活性に必ず必要とされるわけではない。基板5の方向でのレーザ光の結合を補助するために、反射防止コーティング54を基板の表面52に適用し得る。この例では、レーザ発光は、構成要素の底面に沿って(矢印で示す)、基板5の方向に生じる。
【0055】
図5は、光電子構成要素の別の例を示す。この例では、フォトニック結晶は、層列に配置されている。
【0056】
さらなる実施形態では、フォトニック結晶はまた、導波路間に、例えばトンネル接合部の内部または中間クラッド32の内部に配置されてもよい。薄い、低損失のトンネル接合部が有利であり得る。フォトニック結晶構造体はまた、基板側に配置することもできる。フォトニック結晶の構造(ピッチ、フィルファクタなど)によって、放出方向、波長及び発散が決定される、または定められる。
【0057】
PCSELの高いコリメーションの質に基づき、基板を介して結合が行われる場合であっても、ビームの大幅な拡幅は生じない。すなわち、光電子構成要素自体は、その光学特性において、いくらか「厚い」基板(例えば>100μm)においてて大きな影響を受けず、それゆえ、従来提案されてきたものよりも著しく厚い基板を有する構成要素を作製することができる。質の良いフォトニック結晶構造体を用いてこのアプローチを実現するために、フォトニック結晶を半導体材料の内部に直接埋め込むことなく、誘電体層に構造化することができる。この付加的に挿入された層は、利得媒体の活性領域、すなわち量子ウェルの近くに配置することができる。誘電体におけるこの種の構造化により、半導体における欠陥を回避することができる。
【0058】
図6は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素は、フォトニック結晶1及び利得媒体3を含むスタックを含む。利得媒体は、活性媒体として電磁波を放出するように構成された量子ウェル30を含む。
【0059】
利得媒体は、透明基板5に配置される。基板は、半導体材料、例えばヒ化ガリウム、GaAs、窒化ガリウム、GaN、またはリン化インジウム、InPを含んでおり、これは、放出される電磁波に対して透過性であり、すなわち吸収しないか、または吸収がわずかである。放出されるべき電磁波は、例えば、電磁スペクトルの赤外線、IR、紫外線、UV、または可視光線、VISの一部にある。
【0060】
基板5の方向へのレーザ光の結合を補助するために、基板の表面52に反射防止コーティング54が適用されている。さらに、表面52には、電極53、例えばnコンタクトが配置されている。この例では、レーザ発光は、底面(矢印で示す)に沿って発生する。電極は、表面53のごくわずかな部分、例えば、10μm~100μm程度の寸法を有する矩形の領域のみを覆うように構成されている。中央から矩形の領域が取り除かれた電極を使用することも可能である。これにより、フォトニック結晶モードのポンピングがその外側領域において生じるのに対し、出力結合は中央領域において可能である。
【0061】
表面52とは反対側の基板の別の表面51には、利得媒体が層列と共に配置される。層列は、量子ウェル30を取り囲む、異なってドーピングされた半導体を含む。この例では、nドープされたGaNの第1の半導体層34が表面51に配置されており、これに量子ウェル30が続いている。pドープされたGaNの第2の半導体層34は、順次、量子ウェルに配置されている。
【0062】
利得媒体、特に層列の実施形態は、図1図5の実施形態によって置き換えまたは拡張することが可能であり、この場合、半導体層34は、クラッドによって置き換えまたは補完することが可能である。このようにして、図1図5の実施形態を図6図10の実施形態に置き換えまたは補完することができる。
【0063】
フォトニック結晶1は、誘電体層14に構造化され、利得媒体に電磁で結合される。この点に関して、誘電体層14は、第1の誘電体材料、この例ではITOを含む第1の層15を含む。フォトニック構造体11は、第1の誘電体材料も含む第2の層16に構造化されている。構造要素13は、第2の誘電体材料を含む。誘電体層14はさらに、利得媒体に接触する第3の層17を含む。
【0064】
誘電体層14は、別の誘電体材料及び/または酸化インジウムスズ(短くすると、ITO)などの透明導電性材料と組み合わせた誘電体材料を含む。良好な光学特性と同時に高い熱伝導率を備えた材料は、誘電体材料として特に適しているが、熱の特性がそれほど良好ではない他の誘電体材料もまた原理上適している、ただし他の欠点がある可能性もある。ITOは、TCOと混合することができ、ここで、TCOは、透明な導電性酸化物を指す。適切な材料は、例えば以下のものである:
ITO/CaF n_TCO>n_誘電体
ITO/SiO n_TCO>n_誘電体
ITO/MgF n_TCO>n_誘電体
ITO/TiO n_TCO<n_誘電体
ITO/TaO n_TCO<n_誘電体
【0065】
例えば、以下に示す屈折率を使用することができる。
【0066】
さらに、フォトニック結晶に第2の電極18、例えばpコンタクトを配置する。電極は、例えば、電磁放射線を放射するために反射性の材料を含む(例えばAuまたはAl)。任意選択で、電極を、電流開口を設けるため開口19という形態で構成された絶縁体に含ませることができる。
【0067】
2つの電極によって、光電子構成要素を励起し、電磁波をレーザ放射として振起放出及び放射することができる。ここで提案されている構造では、誘電体材料で作製されるフォトニック構造体を完全に透明導電性材料に埋め込んでフォトニック結晶を形成する。p-GaN及び直接的に隣接する閉じたITO層の層の厚さは、好ましくは、量子ウェルからのフォトニック結晶の小さな間隔(<300nm、好ましくは<100nm~約50nm)を保証するために非常に薄い。代替の疑念と比較されるこのアプローチの利点は、利得媒体において半導体材料の比較的薄い層しか必要とされないことである。その結果、対応するエピタキシャルのプロセスにかかる時間が大幅に短くなり、そのため、比較的単純なアーキテクチャを有する低コストの構成要素が有効になる。
【0068】
図7は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素は図6の例に対応するが、この実施形態では、フォトニック構造体の他に開口20が設けられている。開口を、フォトニック結晶と直接同じ材料系及び/または金属などの別の材料から直接作製することができる。例えば、開口は誘電体層(例えば層16、17)を画定する。開口は、ビームの広がりまたは発散などのレーザの特性に有利に影響を及ぼすために使用することができる。
【0069】
図8は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素は、図6の例に対応するが、誘電体層14は第1の層15及び第2の層16のみを含み、第3の層17は含まないことが異なる。その代わりに、利得媒体への接触は、第2の層16によって直接的に確立される。したがって、このセットアップでは、p-GaNとフォトニック結晶との間に閉じた誘電体層、例えばITO層を設けないことにより、フォトニック構造体と量子ウェルとの間の距離がさらに短くなる。ここでは、活性ゾーンへの良好な電荷輸送を依然として行えることが重要である。この場合も、開口19は、フォトニック結晶に構造化することができる。
【0070】
図9は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素は、図8をさらに発展させたもので、フォトニック結晶が、導電性材料を含まない誘電体層14の中に構造化されている、という違いを有する。例えば、誘電体層は、異なる屈折率を有する2つの誘電体材料を含む。それにもかかわらず、良好な接触を保証するために、中間層35が、フォトニック結晶1と利得媒体3との間の非常に良好な横方向の導電性(例えばp++GaN)を有する層列に挿入されている。
【0071】
さらに、フォトニック結晶に第2の電極18、例えばpコンタクトを配置する。誘電体層14は、電極に埋め込まれる。電極は、放射される電磁放射に対して反射する材料(例えばAuまたはAl)を含む。任意選択で、電極を、電流開口を設けるため(電流)開口19という形態で構成された絶縁体に含ませることができる。さらに、基板5はまた、表面52の(電流)開口19、電極55、例えばnコンタクト及び反射防止コーティング54を有することもできる。
【0072】
図10は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素は、図9の例示的な実施形態をさらに発展させたものである。このセットアップにおいて、フォトニック結晶は、導電性材料(例えばTCO)と誘電体との組み合わせによって構成され、例えば、導電性材料が2つの異なるTCO材料からなるか、またはTCOが2つの異なる方法によって堆積される。まず、TCO1膜21を例えばALDによって堆積し、フォトニック結晶のGaNp++に接する深さに、該TCO1膜21を堆積する。次のステップでは、平坦なTCO2膜22が堆積され、これは、フォトニック結晶を平坦に封止するが、フォトニック結晶を埋め込まない。したがって、pコンタクトは、TCO2及びTCO1からp-GaNを介して実現される。
【0073】
結果、誘電体層14は、構造要素13が埋め込まれた第1の層15を含む。誘電体層15及び構成要素は、誘電膜21で覆われている。フィルム22は、フィルム21に平面状のシールを形成する。
【0074】
光電子構成要素は、さらに発展することができる。例えば、シリコンなどの形状保持層の成形によりフォトニック結晶構造体を加工する。シリコンは、このプロセスで構造化される。その後、誘電体が堆積し、これがシリコンのモールドを形成する。その後、シリコンを再び除去する(しかしながら、波長/その波長でのSiの吸収に応じて、シリコンが残る場合がある)。さらなるプロセスを、図10に記載されているように行うことができる。一般に、誘電体の代わりに、例えば高屈折率のa-Siを使用することができる。薄い層のため、Siにおける吸収は、例えば450nmであっても許容可能である(例えば、450nmで、100nmの厚さで透過率80%)。しかしながら、Siはフォトニック結晶の一部しか占めないので、透過率はひと際高い(フィルファクタ)。a-Siは、他の誘電体に比べて、例えば非常に正確に構造化することができるという利点がある。
【0075】
ここに提示した概念はGaNベースのPC-VCSELに適しているが、GaAsベース及びInPベースのシステムにも適用可能である。特に、この場合には利点が非常に明確になる。原則的に、ミラーはまた、基板側で使用することができる。この例示的実施形態は、上面を介してレーザ発光を結合するように構成されていてもよく、この目的で、例えば以下のメタライゼーションが適合される。
SiO n=1.465
SiN n=2.055
TaO n~2.16
TiO n~2.8
NbO n~2.445
HfO n~1.91
CaF n=1.438
MgF2 n=1.38
AlO n~1.77
AlN n~2.2
ITO n~1.9(TCO材料に応じて)
GaN n~2.46
【0076】
ここで、ITOという用語が、さまざまなTCO(透明導電性酸化物)材料を表すために使用されており、ITOはその中の1つである。
【0077】
図11は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素は、フォトニック結晶及び利得媒体を含むスタックを含む。利得媒体は、電磁波を放出するように構成された活性媒体である量子ウェル30を含む。
【0078】
利得媒体は、透明基板5に配置される。基板は、半導体材料、例えばヒ化ガリウム、GaAs、窒化ガリウム、GaN、またはリン化インジウム、InPを含んでおり、これは、放出される電磁波に対して透過性であり、すなわち吸収しないか、または吸収がわずかである。放出されるべき電磁波は、例えば、電磁スペクトルの赤外線、IR、紫外線、UV、または可視光線、VISの一部である。利得媒体は、2つの半導体層34を含む。例えば、第1の半導体層はpドープであり、第2の半導体層はnドープである。この例では、第2の半導体層は、利得媒体に面しており、nドープ(例えば、nGaN)されており、第1の半導体層は、導電層21に面しており、pドープ(例えば、pGaN)されている。
【0079】
この実施形態及び以下の実施形態の利得媒体の設計、特に層列は、図1図10の実施形態によって置き換えまたは拡張することが可能であり、この場合、半導体層34は、例えばクラッドによって置き換えまたは補完することが可能である。このようにして、図示された例示的な実施形態を置き換えるかまたは補足することができる。
【0080】
フォトニック結晶は、導電層21に構造化され、利得媒体に電磁で結合される。これに関して、導電層21は、第1の導電性材料を含む第1の層22を含む。これは、TCOになり得、「TCO」は、透明な導電性酸化物を指す。この例では、第1の導電性材料はITOである。第1の層22は、光電子構成要素を横方向に封止するために用いられる。フォトニック構造体は、第1の導電性材料も含む第2の層23に構造化される。フォトニック構造体は、構造要素25(ボイド)によって形成される。構造要素は、右側の図に拡大して示されており、例えば光電子構成要素の同様の発光波長、例えば約300nmである。第2の層23ひいては構造要素25の構造化は、例えば縁取りプロセスによって行われる。導電層21はさらに、利得媒体3に接触する第3の層24を含む。この例では、第3の導電層24は、利得媒体の表面に平面状に配置される。
【0081】
導電層21または層22、23、24はそれぞれ、異なる堆積法、例えば原子層堆積(ALD)、スパッタリング法またはセッティングによって製造することができる。過度に成長したまたは過度にスパッタリングされたボイド25の変形例は、エッチングされた構造が、最後に必要とされるものよりも最初は大きくてよい(スパッタリングの間に部分的に過度に成長するため)という付加的な利点を有する。これにより、構造化プロセス及び解像度に関して、より多くの自由度またはさらなる選択肢が得られる。特に、反射防止コーティング(AR)は、閉構造に適用することができる。
【0082】
図12は、光電子構成要素の別の例を示す。光電子構成要素、特に図11の導電層21は、エッチング及びマスキングによって構造化することができる。このプロセスでは、異なる深さの構造要素25を製造することができる。
【0083】
左側の図は、それぞれエッチングステップが続く2つのリソグラフィステップの組み合わせによって達成することができる構造化を示している。これに代えて、1回のグレーリソグラフィステップ及び1回のエッチングステップを実施でき、これにより部分格子間の良好な位置合わせが可能となる。択一的に、異なる深さの構造26、27を第2の層23に導入することができる。次いで、これらの構造は、第2の層23を単独で、及び/または第1の層22と一緒に堆積させて、構造要素25を形成することによって、形成することができる。右側の図面には、その後に形成される構造要素が示されている。導電性材料、例えばITOは、スパッタリングによって適用され、構造26、27をカプセル化することができる。さらに、第1の層22をこのステップで被着し、最終的に平坦化することもできる。
【0084】
図13は、光電子構成要素のさらなる例を示す。左側の図には、図11による光電子構成要素が示されており、付加的に電気コンタクトが示されている。基板の表面52には、電極53、例えばnコンタクトが配置されている。選択的に、レーザ光の結合を補助するために、表面52に反射防止コーティングを設けることができる。
【0085】
この例では、レーザの放出は、底面52に沿って生じている。電極は、表面52のごくわずかな部分、例えば、10μm~100μm程度の寸法を有する矩形の領域のみを覆うように構成されている。中央から矩形の領域が取り除かれた電極を使用することも可能である。これにより、フォトニック結晶モードのポンピングがその外側領域において生じるのに対し、出力結合は中央領域において可能である。
【0086】
さらに、フォトニック結晶に第2の電極18、例えばpコンタクトを配置する。電極は、例えば、電磁放射線を放射するために反射性の材料を含む(例えばAuまたはAl)。第2の電極18は、裏面からの接触が可能である。任意選択で、第1及び第2の電極を、電流開口を設けるため開口19という形態で構成された絶縁体に含ませることができる。
【0087】
図の右側には、第2の電極18の択一的な配置が示されている。基板の表面52の代わりに、電極は、半導体層34に、かつ利得媒体に隣接して、例えば利得媒体に面した第2のnドープ半導体層に配置される。したがって、第2の電極18は、表側からの接触を可能にする。
【0088】
2つの電極によって、光電子構成要素を励起し、電磁波をレーザ放射線として振起放出及び放射することができる。ここで提案している設定では、導電性材料から作製されるフォトニック構造体が完全に透明導電性材料に埋め込まれており、かようにしてフォトニック結晶が形成される。電極は、第1の電極の開口19によって基板側に放出が発生するように構成されている。
【0089】
図14には、光電子構成要素のさらなる例が示されている。図の左側には、図12による光電子構成要素(左)が示されており、反射器26、特にepi-DBR反射器が付加的に基板に配置されている。電極は、第1の電極の開口19によって上側で放出が生じるように構成されている。
【0090】
図15は、光電子構成要素の別の例を示す。この構成要素は、図11に示した構成要素に対応するが、導電層21は開口されており、すなわち、光電子構成要素を横方向に封止するために第1の層21は設けられていない。構造26、27は、封入されずに残り、したがって光電子構成要素の構造要素を形成する。電流の分布は、導電層21の横方向に、例えばITOの中間リッジに形成可能である。
【0091】
図16は、光電子構成要素のさらなる例を示す。これらの構成要素は、図15に示したものに対応し、反射器、特にepi-DBR反射器は、基板に付加的に配置されている。
【0092】
本特許出願は、ドイツ特許出願第102021113598.2号及び第102021128124.5号の優先権を主張するものであり、この開示内容を参照により本明細書に援用する。
【0093】
本発明は、例示的な実施形態に基づく説明によりそれに限定されるものではない。むしろ、特に特許請求の範囲の特徴の任意の組み合わせを含む任意の新しい特徴及び特徴の任意の組み合わせは、この特徴または組み合わせ自体が特許請求の範囲または例示的な実施形態に明示的に記載されていなくても、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 フォトニック結晶
3 利得媒体
5 基板
11 フォトニック構造体
12 フォトニック結晶の表面
13 構造要素
14 誘電体層
15 第1の層
16 第2の層
17 第3の層
18 電極
19 (電流)開口
20 開口
21 導電層
22 第1の層
23 第2の層
24 第3の層
25 構造要素
26 反射器
30 量子ウェル
31 トンネル接合部
32 クラッド
33 外側クラッド
34 半導体層
35 中間層
51 表面
52 表面
53 反射コーティング
54 反射防止コーティング
55 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ちょうど1つのフォトニック結晶(1)及び利得媒体(3)を含むスタックを含む光電子構成要素であって、
-前記利得媒体が、少なくとも2つの量子ウェル(30)及び少なくとも1つのトンネル接合部(31)の層列を含み、電磁波を放出するように構成されており、
-前記フォトニック結晶(1)が前記利得媒体に電磁で結合され、
-前記スタックが基板(5)に配置される、前記光電子構成要素。
【請求項2】
フォトニック結晶(1)及び利得媒体(3)を含むスタックを含む光電子構成要素であって、
-前記利得媒体は、少なくとも1つの量子ウェル(30)を含み、電磁波を放出するように構成され、
-前記フォトニック結晶(1)は、誘電体層(14)に構造化され、前記利得媒体に電磁で結合され、
-前記スタックは基板(5)に配置される、前記光電子構成要素。
【請求項3】
ちょうど1つのフォトニック結晶(1)及び利得媒体(3)を含むスタックを含む光電子構成要素であって、
-利得媒体は、少なくとも1つの量子ウェル(30)を含み、電磁波を放出するように構成され、
-前記フォトニック結晶(1)は、導電層(21)に構造化され、前記利得媒体に電磁で結合され、
-前記スタックは基板(5)に配置される、前記光電子構成要素。
【請求項4】
-前記層列は、前記少なくとも2つの量子ウェル(30)と前記少なくとも1つのトンネル接合部(31)とを含み、
-フォトニック結晶(1)は、誘電体層(14)に構造化される、請求項1に記載の光電子構成要素。
【請求項5】
前記フォトニック結晶(1)は、前記フォトニック結晶が層列に配置されるように、前記利得媒体(3)に含まれている、請求項1からのいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項6】
前記フォトニック結晶(1)は、前記フォトニック結晶が層列の外層に配置されるように、前記利得媒体(3)とは別に配置される、請求項1からのいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項7】
-前記利得媒体(3)は、1つ以上のクラッド(32)を有し、
-前記1つ以上のクラッドは、量子ウェル(30)がトンネル接合部(31)から離間されるように、層列に配置される、請求項1からのいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項8】
前記1つ以上のクラッド(32)は、前記利得媒体(3)から基本モードを結合できるようにそれぞれ前記量子ウェル(30)と前記トンネル接合部(31)との間の距離を調整する、請求項7に記載の光電子構成要素。
【請求項9】
前記1つ以上のクラッド(32)は、それぞれ前記量子ウェル(30)と前記トンネル接合部(31)との間の距離を調整して、前記利得媒体(3)から複数の単一モードを結合できるようにし、前記単一モードをエネルギー伝達によって結合する、請求項7に記載の光電子構成要素。
【請求項10】
前記フォトニック結晶(1)は、外側クラッド(33)を含む、請求項7に記載の光電子構成要素。
【請求項11】
誘電体層(14)は、
-第1の誘電体材料、
-第2の誘電体材料及び/または前記電磁波の領域において透明な導電性材料を備え、及び/または導電層(21)は、
-第1の導電性材料、
-第2の導電性材料及び/または前記電磁波の領域で透明な誘電体材料を備える、請求項2または3に記載の光電子構成要素。
【請求項12】
前記フォトニック結晶(1)のフォトニック結晶構造体(11)は、前記第1の誘電体材料を含み、前記第2の誘電体材料及び/または透明導電性材料に完全に埋め込まれている、請求項11に記載の光電子構成要素。
【請求項13】
前記フォトニック結晶(1)の前記フォトニック結晶構造体(11)は、量子ウェルに面する側の前記第2の誘電体材料及び/または透明導電性材料には少なくとも部分的に埋め込まれてはいない、請求項12に記載の光電子構成要素。
【請求項14】
前記フォトニック結晶(1)のフォトニック結晶構造体(11)は、前記利得媒体(3)に直接接触している、請求項12に記載の光電子構成要素。
【請求項15】
前記フォトニック結晶(1)は、導電性材料を含まない層に構造化されている、請求項1からのいずれか1項に記載の光電子構成要素。
【請求項16】
レーザであって、
-請求項1からのいずれか1項に記載の光電子構成要素のうちの1つ以上、及び
-前記利得媒体によって振起放出を励起するように構成されたポンプ源、を備える、前記レーザ。
【国際調査報告】