(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】リザーバピストン装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/40 20060101AFI20240514BHJP
B29C 45/44 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B60T8/40
B29C45/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571216
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022055366
(87)【国際公開番号】W WO2022248090
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021205371.8
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】エルトレ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バライス,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】レフラー,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
3D246
4F202
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246GA13
3D246GA22
3D246GB01
3D246LA67A
3D246LA75A
3D246LA80Z
4F202AG06
4F202AG13
4F202AG19
4F202AG26
4F202AG28
4F202AH17
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK12
4F202CK32
4F202CK42
4F202CK54
(57)【要約】
【課題】 本発明は、請求項1の構成要件に基づくリザーバピストン装置(10)に関する。
【解決手段】 リザーバピストン装置(10)は、電子式にスリップ制御可能な車両ブレーキ設備の圧力媒体リザーバで、ブレーキ圧制御の枠内でホイールブレーキから放出される圧力媒体を中間保存するために利用される。特に電気駆動可能な自動車において、このような圧力媒体リザーバはブレーキプロセスのたびに使用される。このとき特に重要なのは、この圧力媒体リザーバのできる限り低い反応圧力である。それによりブレーキエネルギーの回生の効率性が促進され、リザーバピストン装置(10)と付属の収容部との間の摩擦が低減され、リザーバピストンの案内部ないし封止部での摩耗が最小化されるからである。この目的のために、第1のスカート区域(18a)の第1の円周に第1の案内リング(14a)を有するリザーバピストン(12)を有するリザーバピストン装置(10)が提案され、この第1の案内リングはピストンスカート(18)を取り囲み、外側寸法に関してさらに大きいピストンスカート(18)の第2のスカート区域(18b)の上へ径方向に突き出す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、好ましくは電気駆動可能な自動車の電子式に圧力制御可能な非人力ブレーキ設備でブレーキ圧制御をするためのハイドロリックユニットの圧力媒体リザーバのための、リザーバピストン装置(10)であって、
スリーブ状のピストンスカート(18)と、前記スリーブ状のピストンスカート(18)をその1つの端部で閉止するピストン底面(20)とを有するリザーバピストン(12)を有し、
前記ピストンスカート(18)はピストン長軸(L)の方向でそれぞれ異なる外側寸法の連続するスカート区域(18a,18b)に区分され、
前記スカート区域(18a,18b)の外側寸法は、前記ピストン底面(20)が配置されて最小の外側寸法を有する第1のスカート区域(18a)を起点として段階的に増加していき、
前記第1のスカート区域(18a)と、前記ピストン長軸(L)で後続するスカート区域(18b)との間の第1の段部は、前記第1のスカート区域(18a)に配置される、前記リザーバピストン装置(10)のシール材(16)のためのストッパ肩部(22)を構成する、リザーバピストン装置において、
前記リザーバピストン(12)は前記第1のスカート区域(18a)に、前記ピストンスカート(18)を取り囲み、前記ピストンスカート(18)の後続する前記スカート区域(18b)の上へ径方向に突き出す案内リング(14a)を装備していることを特徴とする、リザーバピストン装置。
【請求項2】
前記シール材(16)は前記第1のスカート区域(18a)の円周で前記第1の案内リング(14a)と前記ストッパ肩部(22)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のリザーバピストン装置(10)。
【請求項3】
前記シール材(16)は、前記ピストン長軸(L)の方向で閉じたエッジをもって前記ストッパ肩部(22)に支持されるリップシールリングであることを特徴とする、請求項2に記載のリザーバピストン装置。
【請求項4】
前記第1の案内リング(14a)は前記リザーバピストン(12)の前記第1のスカート区域(18a)にある環状溝(24a)の中に区域的に収容され、前記環状溝(24a)から区域的に径方向へ突出することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項5】
前記リザーバピストン(12)は、前記ピストン長軸(L)の方向に成形金型(30)から離型可能である、プラスチックからなる射出成形品であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項6】
前記シール材(16)は、前記リザーバピストン(12)の前記第1のスカート区域(18a)の、切削式の後加工なしに射出成形技術で製作される外套壁に当接することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項7】
前記リザーバピストン(12)は、前記リザーバピストン(12)の最大の外側寸法を有する前記スカート区域(18b)に第2の案内リング(14b)を装備しており、
前記案内リング(14a,14b)の外側寸法は互いに少なくとも近似的に呼応することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項8】
前記リザーバピストン装置(10)の少なくとも前記第1の案内リング(14a)は前記ピストンスカート(18)の前記第1のスカート区域(18a)に物質接合式に一体成形されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項9】
前記ピストン長軸(L)の方向で前記ピストン底面(20)のほうを向く、前記第1の案内リング(14a)の側方のエッジは前記リザーバピストン(12)で覆われないことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項10】
前記リザーバピストン(12)は、前記第1のスカート区域(18a)とちょうど1つの第2のスカート区域(18b)とを有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項の構成要件を有するリザーバピストン装置に関する。このような種類のリザーバピストン装置は、たとえば特許文献1からすでに公知である。
【背景技術】
【0002】
リザーバピストン装置は、特に、自動車のブレーキ設備で電子式の圧力制御をするためのハイドロリックユニットの圧力媒体リザーバで利用される。そのために、リザーバピストン装置はリザーバシリンダの中で可動に案内されて収容され、液圧式の圧力媒体で充填可能なリザーバ室を、リザーバピストン装置を付勢する少なくとも1つのピストンばねが中に配置された空気室から分離する。ブレーキ圧制御の枠内で車両ブレーキ設備の付属の少なくとも1つのホイールブレーキから放出される圧力媒体が、ピストンばねの力に抗してリザーバ室に流入する。
【0003】
従来式に、すなわち内燃機関によって、駆動される自動車では、このような種類のブレーキ圧制御は、通常、ホイールブレーキに付属するホイールでの最新のスリップ状況に依存して行われる。その際の目的は、当該ホイールのブロックに対処して、ホイールにおける横安定を、およびその帰結としての車両の安定した走行状態を、維持することにある。そのようにクリティカルな走行状態は比較的稀にしか発生しないので、圧力媒体リザーバは比較的低い負荷しか受けない。
【0004】
電子式にスリップ制御可能ないし圧力制御可能な車両ブレーキ設備は、ABS/ESPブレーキ設備の名称で十分に知られている。
【0005】
近年、内燃機関に加えて電気駆動を装備する車両や、電気モータだけで駆動される車両が市場に多く出回るようになっている。電気駆動は、局所的にエミッションのない動作に加えて、発電機動作へと切換可能であり、その間に車両の運動エネルギーが電気エネルギーに変換され、それによって車両を制動することができるという利点がある。得られたエネルギーを、後の時点で車両の駆動のために利用することができ、このことは最終的に、このような車両のドライブトレーンの効率を向上させる。
【0006】
車両の電気駆動を発電機動作へと単に切り換えることで、車両の従来の液圧ブレーキ設備を利用することなく、運転者の多くのブレーキ希望を具体化することができる。発電機ブレーキトルクが車両の所望の減速のために単独では十分でない場合にだけ、液圧ブレーキ設備の操作によって補助的なブレーキトルクが呼び出される。
【0007】
ただし発電機ブレーキトルクは車両速度とともに、およびそれに伴う駆動されるロータの回転数とともに、低下していく。それに応じて、運転者により設定されるブレーキ希望ないしそれに応じた全体ブレーキトルクを提供するために、発電機ブレーキトルクの割合の低下につれて液圧ブレーキトルクの割合が高くなっていく。こうしたいわゆるトルクブレンドについて運転者がなるべく気づかないようにするために、電気駆動車両ではブレーキプロセス中に液圧ブレーキ圧の継続的な適合化が必要である。このような適合化は、液圧式の非人力ブレーキ設備のハイドロリックユニットを通じて行われ、ないしは、圧力媒体リザーバの操作を通じて行われる。
【0008】
したがって、従来式に駆動される自動車とは異なり、電気駆動が行われる車両のブレーキプロセスでは、ハイドロリックユニットの圧力媒体リザーバがほぼすべてのブレーキプロセスに関与し、それに応じていっそう強い負荷を受ける。さらに電気駆動車両では、ブレーキプロセスのときの前述したエネルギー回収のできる限り高い効率性が重要となる。そのためには、圧力媒体リザーバが低い反応圧力を有することが前提条件になり、すなわち、そのリザーバピストン装置を操作するのに低い圧力差だけで足りることが前提条件になる。
【0009】
周知の圧力媒体リザーバはこの点に関して不都合である。そのリザーバピストン装置は、リザーバシリンダの中での効果的な案内と封止のために、比較的高い径方向の圧着力をもってリザーバシリンダの壁部に沿って案内されるからである。そのように高い圧着力が必要になる理由は、リザーバピストン装置がしばしばプラスチックで製作され、それに伴い、金型から径方向に離型されることにある。その際に、後にシール材が設けられるリザーバピストン装置の領域で、密封状況に不都合な影響を及ぼすバリが生じるため、圧着力を高めることによってこれを考慮に入れなくてはならない。
【0010】
このような不都合を回避するために、好ましくはアルミニウムから旋削部品として製作されるリザーバピストン装置を使用することが可能であるものの、そのような製造方法は高いコストがかかって高価であり、ハイドロリックユニットの総重量の増加につながる。
【0011】
さらに別の欠点は、従来式の圧力媒体リザーバのシール材が、引き上げられた圧着力に基づき、ないしは摩耗防止の理由から、中実のシール断面を有する成形パッキンを装備していることにある。このような種類の成形パッキンは、その低減された弾性に基づき、周囲温度が下がったときの密閉特性および/または摩擦特性に関して欠点がある。したがってその結果、周知の圧力媒体リザーバはエネルギー回生における効率性に負担をかけ、最終的に圧力媒体リザーバが空になるのを遅くし、それに伴ってブレーキプロセスの終了時のブレーキ圧低減を遅くする反応挙動を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102012219054A1号明細書
【発明の概要】
【0013】
それに対して請求項1の構成要件に基づく発明は、提案されるリザーバピストン装置により、きわめて良好な反応挙動を有する圧力媒体リザーバが提供されるという利点がある。この良好な反応挙動は、特に、リザーバシリンダの中でのリザーバピストン装置の案内と封止のために、低い径方向の圧着力だけで足りることに帰せられる。それが意味するのは、案内リングが比較的低い力をもってリザーバシリンダの壁部に押圧され、それに応じて低い摩擦しか受けず、したがって改善された摩耗挙動を有するということである。
【0014】
このことは、リザーバピストンをピストン長軸の方向で軸方向に成形金型から取り出すことを可能にする、リザーバピストン装置の構成によって実現される。それに伴い、少なくともリザーバピストン装置にシール材が配置される領域で、バリを回避することができる。さらに、リザーバピストン装置ないしそのリザーバピストンを低コストに、かつ低い重量で、プラスチックから製作可能である。そのために、従来の射出成形法を適用することができるのが好ましい。
【0015】
これに加えて、圧力媒体リザーバの良好な反応挙動は、ブレーキプロセスの最後に、圧力媒体リザーバのリザーバ容積が迅速に空になること、および、それに応じて迅速なブレーキ圧低減がなされるという結果を生む。
【0016】
本発明のその他の利点や好ましい発展例は、従属請求項または以下の説明から明らかとなる。
【0017】
低い径方向の圧着力に基づき、シール材としてリップシールリングを使用できるようになる。リップシールリングはその弾性に基づき、特に、同時にリザーバシリンダの壁部での低い摩擦およびそれに応じた少ない摩耗のもとで、広い温度範囲にわたって良好な封止特性をもつという特徴がある。さらにリップシールリングは、その材料の選択に関して、周知の成形パッキンよりも所与の封止状況に合わせて適合化可能である。
【0018】
案内リングは、本発明によるリザーバピストン装置では2つの機能を担う。一方における、リザーバシリンダ内でのリザーバピストンの案内、および他方における、ピストン長軸の方向でのリザーバピストン装置のシール材の支持である。後者はリザーバピストンの設計上の構成を簡素化する。
【0019】
特に金型コストに関して好ましい本発明の発展例では、案内リングはリザーバピストンのピストンスカートに物質接合式に一体成形されていてよく、このことは、たとえば従来の2成分射出成形法を用いて可能である。
【0020】
本発明の実施例が図面に示されており、以下の記述において詳細に説明する。そのために図面は、互いに対応する構成部品に統一的な符号が付された複数の図を含んでいる。
【0021】
各図面は実施例を断面図で示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明によるリザーバピストン装置の第1の実施例を示す斜視図である。
【
図2】成形金型で製造されているリザーバピストン装置のリザーバピストンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すリザーバピストン装置(10)の第1の実施例は、リザーバピストン(12)と、このリザーバピストン(12)の外側円周で互いに向き合う端部にそれぞれ取り付けられた2つの案内リング(14a,14b)と、案内リング(14a,14b)の間に配置されたシールリング(16)とで構成されている。
【0024】
リザーバピストン(12)はそれ自体では中空ピストンとして構成されており、スリーブ状のピストンスカート(18)と、このピストンスカート(18)の
図1で見て上側に位置する端部を閉止するピストン底面(20)とを含んでいる。ピストン底面(20)の外方を向く端面は任意に構成することができ、図示した実施例では、例示として星形に構造化されている。
【0025】
ピストンスカート(18)はピストン長軸(L)の方向で、例示として全部で2つの円筒状のスカート区域(18a,18b)に区分され、これらは外側寸法に関して互いに相違する。ピストン底面(20)が配置されている第1のスカート区域(18a)は、これに後続する、ピストン底面(20)に向かい合うように下方に向かって開いたリザーバピストン(12)の端部を有する第2のスカート区域(18b)よりも小さい外径を有している。第1および第2のスカート区域の間の移行部は、例示として直角の段部として製作されている。この段部は、第1のスカート区域(18a)の円周に配置された、リザーバピストン装置(10)のシール材(16)のためのストッパ肩部(22)を形成する。
【0026】
このシール材(16)は、ピストン長軸(L)の方向に延びる2つのシールリップを有するリップシールリングとして構成されている。シールリング(16)はストッパ肩部(22)のほうを向くエッジでは閉じられており、これと向かい合うエッジは開いている。そこでシールリップはそれぞれの間に、第1の案内リング(14a)に向かって開いた楔形の円周溝を包囲する。
【0027】
リップシールリングは、第1の案内リング(14a)とストッパ肩部(22)との間で、リザーバピストン装置(10)の第1のスカート区域(18a)に配置されている。第1の案内リング(14a)は閉じたリングとして製作されていて、その全体断面は、案内リングの内径を規定する第1の断面領域と、案内リング(14a)の外径を規定する第2の断面領域とに区分される。案内リング(14a)の第1の断面領域は、リザーバピストン(12)の第1のスカート区域(18a)に構成された環状溝(24a)に挿入され、それに対して第2の断面領域は径方向でこの環状溝(24a)から突出して、ピストンスカート(18)の第2のスカート区域(18b)の上へ径方向に突き出す。案内リング(14a)のこの第2の断面領域はピストン底面(20)に向かって露出しており、すなわち、ピストン底面(20)から径方向に突出するその側方のエッジは、リザーバピストン(12)で覆われていない。
【0028】
リザーバピストン装置(10)の第2の案内リング(14b)は第2のスカート区域(18b)で、すなわちリザーバピストン(12)の大きいほうの外側寸法を有するスカート区域で、同じく環状溝(24b)の中に配置されている。両方の案内リング(14a,14b)の外径は近似的に等しい大きさである。
【0029】
図2は、
図1に示すリザーバピストン(12)をプラスチックから射出成形技術で製作するための成形金型(30)を示している。この成形金型(30)は、カップ状の鋳型(32)と、この鋳型(32)に挿入される成形ダイ(34)と、鋳型(32)の付属の水平方向間隙の中へそれぞれ異なる高さで反対方向から挿入可能である、側方の2つのスライダ対(36a,36b)とで構成されている。両方のスライダ対(36a,36b)を用いて、両方の案内リング(14a,14b)を収容するために意図される、ピストンスカート(18)の第1および第2のスカート区域(18a,18b)の外側円周にある環状溝(24a,24b)が形成される。鋳型(32)の内壁はリザーバピストン(12)の外側輪郭をかたどり、すなわち、両方のスカート区域(18a,18b)のそれぞれ異なる外側寸法、ならびに、これら両方のスカート区域(18a,18b)の間の移行部にあるストッパ肩部(22)をかたどる。鋳型(32)の底面は、ピストン底面(20)の外方を向く端面にある、上で説明した星形のテクスチャを形成するために構成されている。
【0030】
成形ダイ(34)はダイプレート(38)により、鋳型(32)の開口部を外方に向かって閉止する。このダイプレート(38)にダイ(40)が取り付けられていて、このダイは、閉じられた状態のときに鋳型(32)の内部へ突入して、ダイ(40)の外壁と鋳型(32)の内壁との間で中空スペースが包囲されるようになっている。この中空スペースが、射出プロセスのときにプラスチックが中空スペースに充填されることによって製作されるリザーバピストン(12)を収容する。射出されたプラスチック素材が冷却され、スライダ対(36a,36b)が引き戻され、成形ダイが取り外された後に、このリザーバピストン(12)をピストン長軸(L)の方向に鋳型(32)から軸方向へ離型することができる。リザーバピストン(12)の軸方向への離型可能性を
図2の方向矢印R1およびR2が示唆している。
【0031】
このような鋳型(32)からのリザーバピストン(12)の軸方向への離型可能性に基づき、第1のスカート区域(18a)にある環状溝(24a)とストッパ肩部(22)との間に構成されて、後にリザーバピストン装置(10)のシール材(16)が配置されることになるリザーバピストン(12)の少なくとも1つの領域(42)を、特別に高い表面品質をもって、および特に支障となるバリなしに、製作することができる。バリがないことは、リザーバピストン装置(10)のための収容部に対して比較的低い径方向の初期応力で押圧されるシール材(16)の使用を可能にし、それに伴い、中実なシール材断面を有するシール材(16)に代わるリップシール材の使用を可能にする。
【0032】
図3は、案内リング(14a,14b)が装備されたリザーバピストン(12)の第2の実施例を断面で示している。このリザーバピストン(12)は、その内部および外部の形状に関して、
図1または
図2の記述との関連で説明したリザーバピストン(12)に相当している。しかし上で説明したリザーバピストン(12)と相違するのは、両方の案内リング(14a,14b)が環状溝の中に配置されるのではなく、むしろ2成分射出成形法でリザーバピストン(12)の円周面に直接的に一体成形ないし射出成形されていることにある。一体成形される、すなわち物質接合式にリザーバピストン(12)に取り付けられる、案内リング(14a,14b)により、リザーバピストン製作時に、案内リングを収容するための環状溝を製作するための金型のスライダ対を省略することができる。それに伴って必然的に、それぞれのスライダ対の間の分離面で生じるバリも回避される。さらに、リザーバピストン(12)を製作するための鋳型が、およびこれに伴ってその手間が、簡素化される。
【0033】
当然ながら、リザーバピストン装置(10)での上記の範囲を超える改変または補足も、そのような改変が請求項1またはその従属請求項のうちの1つの権利保護範囲から逸脱することなく考えられる。
【符号の説明】
【0034】
10 リザーバピストン装置
12 リザーバピストン
14a 第1の案内リング
14b 第2の案内リング
16 シール材
18 ピストンスカート
18a,18b スカート区域
20 ピストン底面
22 ストッパ肩部
24a 環状溝
30 成形金型
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバピストン装置(10)であって、
スリーブ状のピストンスカート(18)と、前記スリーブ状のピストンスカート(18)をその1つの端部で閉止するピストン底面(20)とを有するリザーバピストン(12)を有し、
前記ピストンスカート(18)はピストン長軸(L)の方向でそれぞれ異なる外側寸法の連続するスカート区域(18a,18b)に区分され、
前記スカート区域(18a,18b)の外側寸法は、前記ピストン底面(20)が配置されて最小の外側寸法を有する第1のスカート区域(18a)を起点として段階的に増加していき、
前記第1のスカート区域(18a)と、前記ピストン長軸(L)で後続するスカート区域(18b)との間の第1の段部は、前記第1のスカート区域(18a)に配置される、前記リザーバピストン装置(10)のシール材(16)のためのストッパ肩部(22)を構成する、リザーバピストン装置において、
前記リザーバピストン(12)は前記第1のスカート区域(18a)に、前記ピストンスカート(18)を取り囲み、前記ピストンスカート(18)の後続する前記スカート区域(18b)の上へ径方向に突き出す
第1の案内リング(14a)を装備していることを特徴とする、リザーバピストン装置。
【請求項2】
前記シール材(16)は前記第1のスカート区域(18a)の円周で前記第1の案内リング(14a)と前記ストッパ肩部(22)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のリザーバピストン装置(10)。
【請求項3】
前記シール材(16)は、前記ピストン長軸(L)の方向で閉じたエッジをもって前記ストッパ肩部(22)に支持されるリップシールリングであることを特徴とする、請求項2に記載のリザーバピストン装置。
【請求項4】
前記第1の案内リング(14a)は前記リザーバピストン(12)の前記第1のスカート区域(18a)にある環状溝(24a)の中に区域的に収容され、前記環状溝(24a)から区域的に径方向へ突出することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項5】
前記リザーバピストン(12)は、前記ピストン長軸(L)の方向に成形金型(30)から離型可能である、プラスチックからなる射出成形品であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項6】
前記シール材(16)は、前記リザーバピストン(12)の前記第1のスカート区域(18a)の、切削式の後加工なしに射出成形技術で製作される外套壁に当接することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項7】
前記リザーバピストン(12)は、前記リザーバピストン(12)の最大の外側寸法を有する前記スカート区域(18b)に第2の案内リング(14b)を装備しており、
前記
第1の案内リング(14a
)と前記第2の案内リング(14b)の外側寸法は互いに少なくとも近似的に呼応することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項8】
前記リザーバピストン装置(10)の少なくとも前記第1の案内リング(14a)は前記ピストンスカート(18)の前記第1のスカート区域(18a)に物質接合式に一体成形されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項9】
前記ピストン長軸(L)の方向で前記ピストン底面(20)のほうを向く、前記第1の案内リング(14a)の側方のエッジは前記リザーバピストン(12)で覆われないことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項10】
前記リザーバピストン(12)は、前記第1のスカート区域(18a)とちょうど1つの第2のスカート区域(18b)とを有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【請求項11】
前記リザーバピストン装置は、電気駆動可能な自動車の電子式に圧力制御可能な非人力ブレーキ設備でブレーキ圧制御をするためのハイドロリックユニットの圧力媒体リザーバのためのリザーバピストン装置である、請求項1から10までのいずれか1項に記載のリザーバピストン装置。
【国際調査報告】