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特表2024-519816第四級塩臭素化触媒を回収するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】第四級塩臭素化触媒を回収するプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/04 20060101AFI20240514BHJP
   C08C 19/12 20060101ALI20240514BHJP
   C08F 36/06 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
B01D11/04 C
C08C19/12
C08F36/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571313
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022029977
(87)【国際公開番号】W WO2022251027
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/192,285
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】リャオ、ロンイエン
(72)【発明者】
【氏名】リカード、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハル ジュニア、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホー、イーヨン
(72)【発明者】
【氏名】クラム、シャリ
【テーマコード(参考)】
4D056
4J100
【Fターム(参考)】
4D056AB17
4D056AB20
4D056AC21
4D056BA03
4D056CA06
4D056CA13
4D056DA01
4D056DA05
4J100AB02P
4J100AS02Q
4J100CA04
4J100HA22
4J100HC04
4J100HC43
4J100HE06
4J100HE14
4J100HF05
4J100HG03
(57)【要約】
三臭化第四級アンモニウム及び三臭化第四級ホスホニウムは、ヒドラジン水溶液で洗浄することによって有機溶媒から回収される。ヒドラジンは、反応して、窒素と、臭化水素酸と、一臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムとを形成する。臭化水素酸と、第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムとは、水相に移動し、それにより有機溶媒からの三臭化物の除去を達成する。臭化水素酸は、水酸化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムで中和されて、一臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムを生成することができる。生成された一臭化物は、元素状臭素と反応されて、三臭化物臭素化剤を再生させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒から三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを除去するプロセスであって、
a)前記三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを含有する有機溶媒を、前記有機溶媒中の三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムの1モル当たり少なくとも0.25モルのヒドラジンを提供するのに十分な量のヒドラジン水溶液で洗浄して、臭化水素酸と、前記三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムに対応する一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムとを含有する水相を生成するステップと、次いで、
b)前記水相を前記有機溶媒から分離するステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
前記有機溶媒は、溶解された臭素化ポリマーを含有し、及び前記プロセスは、ステップa)後、前記臭素化ポリマーを前記有機溶媒から回収するステップc)を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップa)において得られた一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを元素状臭素と組み合わせて、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを再生させるステップを更に含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
脂肪族炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を有する有機ポリマーを、ステップa)において得られた一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを元素状臭素と組み合わせることによって得られた前記再生三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムと前記有機ポリマーを接触させることによって臭素化するステップf)を更に含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップa)後、前記水相中の臭化水素酸を水酸化第四級アンモニウム又は水酸化第四級ホスホニウムで中和して、対応する一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを生成するステップd)を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
e)ステップd)において得られた一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを元素状臭素と組み合わせて、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを再生させるステップを更に含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
脂肪族炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を有する有機ポリマーを、ステップd)において得られた一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを元素状臭素と組み合わせることによって得られた再生三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムと前記有機ポリマーを接触させることによって臭素化するステップを更に含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記溶媒は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン(CHBrCl)、ジブロモメタン、1,2-ジクロロエタン、シクロヘキサン、トルエン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンの1つ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムは、三臭化フェニルトリメチルアンモニウム、三臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、三臭化テトラメチルアンモニウム、三臭化テトラエチルアンモニウム、三臭化テトラプロピルアンモニウム及び三臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの少なくとも1つである、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記溶解された臭素化ポリマーは、臭素ブタジエンホモポリマー又はブタジエンと少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとの臭素化ランダム、ブロック若しくはグラフトコポリマーである、請求項2~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記溶解された臭素化ポリマーは、ブタジエンとスチレンとのブロックコポリマーである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップa)において、前記三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを含有する前記有機溶媒は、前記有機溶媒中の三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムの1モル当たり少なくとも0.5モルのヒドラジンを提供するのに十分な量の前記ヒドラジン水溶液で洗浄される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒から第四級塩臭素化触媒を回収するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
三臭化第四級アンモニウム塩及び三臭化第四級ホスホニウム塩は、脂肪族炭素-炭素二重結合及び三重結合を含有するポリマー(ブタジエンポリマーなど)を臭素化するための有用な臭素化剤である。例えば、国際公開第2008/021417号パンフレット、国際公開第2008/021418号パンフレット及び国際公開第2010/021906号パンフレットを参照されたい。本プロセスは、有機溶媒に溶解された出発ポリマーを用いて行われる。三臭化物塩は、ポリマーが臭素化されるとき、対応する一臭化物に変換される。一臭化物は、水溶性であり、水性抽出によって有機相から除去することができる。一臭化物は、元素状臭素と組み合わせて三臭化物を再生させることができ、したがって本プロセスによってそれらの一臭化物を回収し、それらをリサイクルすることが経済的に重要である。脂肪族炭素-炭素不飽和の高選択的臭素化が達成され、存在し得るいかなる芳香環も本質的に影響を受けないままである。このようにして製造された臭素化ブタジエンポリマーは、良好な熱特性を有する傾向があり、例えばポリスチレンなどの熱可塑性ポリマーのための難燃性添加剤として使用することができる。
【0003】
小過剰の三臭化物臭素化剤を使用して本プロセスを操作することは、そうすることで臭素化速度及び出発ポリマーの脂肪族炭素-炭素不飽和が臭素化される程度が高まるため、有益である。未反応の三臭化物臭素化剤は、有機溶媒に可溶性であるが、水相に可溶性ではなく、したがって、それは、有機相及び臭素化ポリマーが回収されるときにそれに残る傾向がある。これは、幾つかの観点から望ましくない。
【0004】
そのため、有機相中に残っている残存臭素化剤は、通常、水性抽出によって有機相から除去することができる水溶性化学種にそれを変換するためにクエンチされる。選択されるクエンチ剤は、三臭化物との反応時、亜硫酸ナトリウムと、臭化水素酸と、一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムとの混合物であって、その全てが水溶性であり、容易に抽出される混合物を生成する亜硫酸水素ナトリウムであった。残念ながら、一臭化物を他の副生成物から分離することは、困難であり、したがって、この混合物は、通常、廃棄物流れに送られ、価値ある一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムが失われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、残存三臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムを有機溶媒から除去するより良好な方法が望まれている。そのような方法は、第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウム有価物が、それらを臭素化プロセスに再使用されることを可能にする形態で回収されることを可能にするであろう。加えて、そのようなプロセスは、好ましくは、臭素の回収を可能にし、したがって、それは、臭素化プロセスに再使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、有機溶媒から三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを除去するプロセスであって、
a)三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを含有する有機溶媒を、有機溶媒中の三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムの1モル当たり少なくとも0.25モルのヒドラジンを提供するのに十分な量のヒドラジン水溶液で洗浄して、臭化水素酸と、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムに対応する一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムとを含有する水相を生成するステップと、次いで、
b)水相を有機溶媒から分離するステップと
を含むプロセスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、一態様において、有機溶媒から三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを除去するプロセスであって、
a)三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを含有する有機溶媒を、有機溶媒中の三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムの1モル当たり少なくとも0.25モルのヒドラジンを提供するのに十分な量のヒドラジン水溶液で洗浄して、臭化水素酸と、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムに対応する一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムとを含有する水相を生成するステップと、次いで、
b)水相を有機溶媒から分離するステップと
を含むプロセスである。
【0008】
このプロセスは、三臭化物を有機溶媒から除去する経済的且つ効率的な方法である。反応生成物は、任意の便利な気/液分離法を用いて水相から分離することができる窒素と;回収し、且つ臭素化剤として再使用するために再臭素化することができる一臭素化物と、必要に応じて中和して、臭素化プロセスにも再使用することができる臭素有価物を回収することができる臭化水素酸とである。それらの反応生成物の全ては、水溶性であり、ほとんど専ら水相に分配し、有機溶媒からの三臭化物の優れた分離をもたらす。
【0009】
好ましい実施形態において、有機溶媒は、臭素化ポリマーを含有し、及び本プロセスは、ステップa)後、臭素化ポリマーを有機溶媒から回収するステップc)を更に含む。
【0010】
本プロセスは、ステップa)後、水相中の臭化水素酸を水酸化第四級アンモニウム又は水酸化第四級ホスホニウムで中和して、対応する一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを生成するステップd)も含み得る。そのような実施形態において、臭素は、一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムの形態で回収される。一臭化物は、追加の臭素と接触して対応する三臭化物を再生させ、それは、順にその後の臭素化反応に使用することができる。
【0011】
更に他の好ましい実施形態において、本プロセスは、e)ステップa)及び/又はステップd)において得られた一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを元素状臭素と組み合わせて、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを再生させるステップを更に含む。
【0012】
本プロセスは、脂肪族炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を有する有機ポリマーを、ステップe)において得られた再生三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムと前記有機ポリマーを接触させることによって臭素化する更なるステップf)を更に含む。
【0013】
脂肪族炭素-炭素二重及び/又は三重結合を含有する有機ポリマーを、三臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムを使用して臭素化するプロセスは、一般に、例えば米国特許第7,851,558号明細書、国際公開第2008/021417号パンフレット、国際公開第2008/021418号パンフレット、国際公開第2009/126531号明細書及び国際公開第2010/021906号パンフレットに記載されている。そのようなプロセスにおいて、脂肪族炭素-炭素不飽和(すなわち隣接する炭素原子が互いに二重又は三重結合しており、且つそれらの二重又は三重結合が共役系又は芳香環構造の部分を形成しない部位)を含有する出発ポリマーは、脂肪族炭素-炭素不飽和のいくらか又は全てを臭素化するために三臭化第四級アンモニウム及び/又は三臭化第四級ホスホニウム臭素化剤と接触される。通常、臭素化される脂肪族炭素-炭素不飽和の1モル当たり0.5~5モルの三臭化物臭素化剤を使用することが有利であり;より好適な量は、約0.9~約2.5モル/モル、更により好適な量は、1~1.5モル/モルである。
【0014】
反応は、好ましくは、水-非混和性である有機溶媒に出発ポリマーが溶解及び/又は分散されている状態で行われる。「水-非混和性」とは、その物質が25℃で水の1リットル当たり5グラム以下、好ましくは2グラム以下の程度に水に可溶性であることを意味する。臭素化温度は、-20~100℃の範囲であり得、好ましくは0~85℃、とりわけ10~40℃である。反応は、2原子の臭素の除去後の三臭化物臭素化剤に対応する一臭化第四級アンモニウム及び/又は一臭化第四級ホスホニウムを生成する。
【0015】
出発有機ポリマーは、脂肪族炭素-炭素不飽和の少なくとも1つの部位を有し、その任意のより高い数を有し得る。
【0016】
共役ジエンモノマーのポリマー及びコポリマー、とりわけブタジエンのホモポリマー及びコポリマーは、好ましいクラスの基質である。共役ジエンのコポリマーは、少なくとも10重量%の重合した共役ジエンを含有すべきである。コポリマーは、ランダム、ブロック又はグラフトタイプであり得、別のモノマーを重合させることによって形成された繰り返し単位を含有するであろう。そのような他のモノマーには、以下でより詳細に記載されるようなビニル芳香族モノマー、エチレン及びプロピレンなどのオレフィン並びにメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸などのアクリレート又はアクリルモノマー等が含まれる。これらのモノマーは、共役ジエンとランダムに重合され得るか、ブロックを形成するために重合され得るか、又は共役ポリマー上にグラフトされ得る。
【0017】
出発ポリマーは、1,000~400,000、好ましくは5,000~300,000、より好ましくは10,000~200,000、更に一層好ましくは50,000~175,000の範囲内の重量平均分子量(M)を有し得る。本発明の目的のために、分子量は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるような見かけの分子量である。GPC分子量測定は、溶離液として1mL/分の速度で流れ、且つ35℃の温度に加熱されたテトラヒドロフラン(THF)を用いて、直列に接続された2つのPolymer Laboratories PLgel 5マイクロメートルMixed-Cカラム及びAgilent G1362A屈折率検出器又は均等なデバイスを備えたAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフを用いて行うことができる。
【0018】
特に興味のある出発ポリマーは、ブタジエンと、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとのランダム、ブロック又はグラフトコポリマーである。「ビニル芳香族」モノマーは、芳香環の炭素原子に直接結合した重合可能なエチレン性不飽和基を有する芳香族化合物である。ビニル芳香族モノマーには、スチレン及びビニルナフタレンなどの非置換物質並びにエチレン性不飽和基上に置換されている化合物(例えば、アルファ-メチルスチレンなど)及び/又は環置換されている化合物が含まれる。環置換ビニル芳香族モノマーには、芳香環の炭素原子に直接結合したハロゲン、アルコキシル、ニトロ又は非置換若しくは置換アルキル基を有するものが含まれる。そのような環置換ビニル芳香族モノマーの例としては、2-又は4-ブロモスチレン、2-又は4-クロロスチレン、2-又は4-メトキシスチレン、2-又は4-ニトロスチレン、2-又は4-メチルスチレン及び2,4-ジメチルスチレンが挙げられる。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン及びそれらの混合物である。
【0019】
「ビニル芳香族単位」は、ビニル芳香族モノマーが重合されたときに形成される出発原料中の繰り返し単位を指す。好適な出発ブタジエン/ビニル芳香コポリマーは、5~90重量%の重合したビニル芳香族モノマー単位を含有する。
【0020】
ブタジエン/ビニル芳香族コポリマーは、ランダム、ブロック(ジブロック若しくはトリブロックタイプなどのマルチブロックを含む)又はグラフトタイプのコポリマーであり得る。スチレン/ブタジエンブロックコポリマーは、商業的な量で広く入手可能である。商品名VECTORTMでDexco Polymersから入手可能なものが好適である。スチレン/ブタジエンランダムコポリマーは、例えば、Polymer,Volume 46,page 4166(2005)にA.F.Halasaによって記載されているプロセスに従って調製され得る。スチレン/ブタジエングラフトコポリマーは、Journal of Polymer Science(Polymer Chemistry Edition),Volume 14,page 497(1976)にA.F.Halasaによって記載されている方法に従って調製され得る。スチレン/ブタジエンランダム及びグラフトコポリマーは、Anionic Polymerization Principles and Practical Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,1996のchapter 9にHsieh and Quirkによって記載されている方法に従っても調製され得る。
【0021】
ブタジエン/ビニル芳香族ポリマーは、ブタジエン以外のモノマーとビニル芳香族モノマーとを重合させることによって形成された繰り返し単位も含有し得る。最も好ましいタイプのブタジエン/ビニル芳香族コポリマーは、1つ以上のポリスチレンブロックと1つ以上のポリブタジエンブロックとを含有するブロックコポリマーである。これらの中でも、ジブロックコポリマーと、中央のポリブタジエン及び末端のポリスチレンブロックを有するトリブロックコポリマーとがとりわけ好ましい。
【0022】
臭素化剤は、三臭化第四級アンモニウム、三臭化第四級ホスホニウム又はそれらの2つ以上の混合物である。三臭化第四級アンモニウムは、式R(式中、各Rは、炭化水素基である)で表すことができる第四級アンモニウム基を有する。三臭化第四級アンモニウムは、三臭化テトラアルキルアンモニウムであり得、その場合、R基のそれぞれは、アルキルである。4つのR基は、全て同じであり得る。代わりに、2つ、3つ又は更に4つの異なるR基が窒素原子に結合し得る。R基は、それぞれ好ましくは1~20個の炭素原子を有するアルキルである。R基は、より好ましくは、1~8個の炭素原子を有するアルキル基である。具体的な三臭化第四級アンモニウムの例としては、三臭化テトラメチルアンモニウム、三臭化テトラエチルアンモニウム、三臭化テトラ(n-プロピル)アンモニウム、三臭化テトラ(n-ブチル)アンモニウム、三臭化テトラヘキシルアンモニウム、三臭化テトラオクチルアンモニウム、三臭化トリ(ヘキシル)テトラデシルアンモニウム等、又はそれらの混合物が挙げられる。三臭化テトラエチルアンモニウムがとりわけ好ましい臭素化剤である。
【0023】
三臭化第四級ホスホニウムは、式R(式中、各Rは、三臭化第四級アンモニウムに関して上記で記載されている通りである)で表すことができる第四級ホスホニウム基を有する。既に述べたように、R基は、全て同じであり得るか、又は2つ、3つ若しくは更に4つの異なるR基がリン原子に結合し得る。具体的な三臭化第四級ホスホニウムの例としては、三臭化テトラメチルホスホニウム、三臭化テトラエチルホスホニウム、三臭化テトラ(n-プロピル)ホスホニウム、三臭化テトラ(n-ブチル)ホスホニウム、三臭化テトラヘキシルホスホニウム、三臭化テトラオクチルホスホニウム、三臭化トリ(ヘキシル)テトラデシルホスホニウム等、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0024】
三臭化物臭素化剤は、国際公開第2010/021906号パンフレットに記載されているように、その場で、すなわち元素状臭素及び対応する一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを有機ポリマー又は有機溶媒中の有機ポリマーの溶液/分散液に別々に添加することにより、基質の存在下で形成され得る。
【0025】
有機溶媒は、出発ポリマー及び好ましくは同様に三臭化第四級ホスホニウムのための溶媒であるべきである。臭素化生成物は、有機溶媒に可溶性であっても又はなくてもよい。溶媒は、水に実質的に非混和性であることが好ましい。溶媒の密度は、水のものと異なり、好ましくは水のものよりも高く、その結果溶媒は、幾分静止条件下で水から容易に分離して別個の相を形成するであろう。溶媒密度は、好ましくは、少なくとも1.05、より好ましくは少なくとも1.10g/ccである。加えて、溶媒は、場合により、出発ブタジエンポリマー、臭素化ブタジエンポリマー或いは一臭化及び三臭化第四級アンモニウム又は一臭化若しくは三臭化第四級ホスホニウムと反応すべきではない。反応中に生じる一臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムは、その水への溶解性と比較して有機溶媒に比較的不溶性であることが好ましい。溶媒から水への一臭化物の抽出に関する平衡分配係数Kは、溶媒相中のその濃度で割った水相中の一臭化第四級アンモニウム塩濃度の比である。係数Kは、少なくとも5又は少なくとも10であり得、任意のより大きい値であり得る。
【0026】
好ましい溶媒は、100℃未満(とりわけ80℃未満)の(大気圧での)沸騰温度を有し、水に非混和性であり、非プロトン性であり、脂肪族炭素-炭素不飽和を含有せず、第三級炭素原子に結合した水素を含有しない。好適な溶媒には、テトラヒドロフランなどのエーテル;様々なカルボン酸エステル、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン、ジブロモメタン、1,2-ジブロモエタン及び1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化アルカン;ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン及びトルエンなどの炭化水素並びにブロモベンゼン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物が含まれる。3つのとりわけ好ましい溶媒は、ジクロロエタン、ジクロロメタン及びシクロヘキサンである。
【0027】
未反応及び/又は過剰の三臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムは、臭素化の終わりに有機溶媒中に残っている。本発明において、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを含有する有機溶媒は、有機溶媒中の三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムの1モル当たり少なくとも0.25モルのヒドラジンを提供するのに十分な量のヒドラジン水溶液で洗浄される。上記で記載された臭素化プロセスにおいて、それは、必要に応じて行うことができるが、有機相をヒドラジン水溶液と接触させる前に、臭素化ステップ中に存在する任意の水相から有機相を分離することは、不必要であり、更にあまり好ましくない。
【0028】
洗浄ステップは、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを含有する有機溶媒をヒドラジン水溶液と組み合わせることによって行われる。組み合わされた材料は、好ましくは、相間の良好な接触を促進し、且つ特に三臭化物とヒドラジンとの間の接触を容易にするために撹拌される。洗浄ステップは、例えば、撹拌容器中において;組み合わされた材料を静的ミキサー又は回転エバポレーターなどの静的又は活発な混合デバイスに通すことにより、超音波混合又は他の便利な技法によって行われ得る。
【0029】
有機相中の三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムの1モル当たり少なくとも0.25モルのヒドラジンを提供するのに十分なヒドラジン水溶液が有機相と組み合わされる。好ましい量は、同じ基準で少なくとも0.4モル、少なくとも0.475モル又は少なくとも10.5モルである。過剰のヒドラジンが提供され得るが、三臭化物の1モル当たり0.75モル超などの大過剰は、一般に、不必要である。加えて、ヒドラジン水溶液は、それ自体で又は存在し得るような1つ以上の他の水相(臭素化反応からの水相など)と組み合わせて、このステップにおいて形成された一臭化第四級アンモニウム及び/又は一臭化第四級ホスホニウムを溶解させるのに十分な水を含有することが好ましい。
【0030】
水溶液中のヒドラジンの濃度は、例えば、水とヒドラジンとの総合重量を基準として少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%又は少なくとも30重量%及び飽和限界まで、好ましくは最大で50重量%であり得る。
【0031】
このステップ中の温度は、0℃~100℃などで幅広く変わり得る。下方温度は、少なくとも10℃又は少なくとも15℃であり得、上方温度は、最大で60℃、最大で50℃又は最大で40℃であり得る。このステップは、大気圧、大気圧よりも低い圧力又は超大気圧で行うことができ、圧力及び温度は、好ましくは、水及び有機溶媒が液体状態にとどまるように一緒に選択される。反応の時間は、5秒~5時間又はそれを超えて変わり得、好ましい時間は、最大で1時間又は最大で30分である。反応は、好ましくは、非酸化性条件下、例えば窒素、アルゴン又はヘリウム雰囲気などの不活性雰囲気下で行われる。反応混合物及び/又はその構成成分は、不活性ガスなどでスパージして溶解酸素を除去することができる。
【0032】
ヒドラジンと、残存する及び/又は過剰の三臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムとは、反応して、窒素と、臭化水素酸と、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムに対応する一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムとを生成する。「対応する」とは、第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウム基が一臭化物と三臭化物との間で同じあり、すなわちR基がそれぞれの場合に同であることを意味する。三臭化物消費は、オレンジ又は赤色から透明な(白色)への、有機相における着色の変化を伴う。したがって、反応の進行は、視覚的に又は比色法によって追跡することができる。水相のpHは、臭化水素酸が生成するため、典型的には1未満まで低下し、したがって反応を追跡するためにpH測定法を用いることができる。ラマン分光法などの分光法を用いることができるため、窒素ガスの発生も反応の経過を追跡するために用いることができる。
【0033】
前述の反応生成物は、水相に強く分配されるか又はガスとして(窒素の場合のように)発生する。本プロセスのステップb)において、臭化水素酸と一臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムとを含有する水相は、上記で記載された臭素化プロセスでは、溶解された臭素化ポリマーを含有し得る有機相から分離される。相は、典型的には、非混和性であるため、分離は、それらを静止条件に曝すことによるなど、相を分離させ、次いで非混和性の液相を分離するための任意の便利な技法を用いて1つの相を他の相から除去することによって達成することができる。水相は、通常、より軽く、相分離時に上層を形成する。
【0034】
臭素化ポリマーは、任意選択的に、有機相から回収される。様々な方法がこれを達成するために有用である。臭素化ポリマーは、様々な溶媒ストリッピング法、抽出法又反溶媒を使用して溶液からそれを沈澱させることによって混合物から単離することができる。そのような反溶媒の例としては、メタノール、エタノール及び1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール並びにt-ブタノールなどの低級アルコールが挙げられる。1つの好適な回収法において、溶液は、微細な小滴に形成される。溶媒は、小滴から熱的にストリップされて臭素化生成物の粒子を形成する。熱ストリッピングステップの前後に、小滴又は粒子は、水中で洗浄される。別の好適な回収法において、溶液は、小滴に形成され、加熱された、シード粒子の機械的に撹拌されるベッド上に噴霧される。小滴は、シード粒子と接触し、そこで、溶媒は、追い出され、沈澱した臭素化生成物は、個々のシード粒子の周りにシェルを形成し、それによりそれらの直径を増加させる。単離された臭素化ポリマーは、残っている臭素、臭素化剤、溶媒及び副生成物を特定の用途向けに要望又は必要に応じて除去するために精製される。
【0035】
水相中の臭化水素酸は、水酸化第四級アンモニウム又は水酸化第四級ホスホニウムで中和して、対応する一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを生成することができる。このようにして臭化水素酸を中和することにより、臭素は、一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムの形態で回収される。
【0036】
代わりに、臭化水素酸は、中和することができるか、又は他の方法で必要に応じて1種以上の異なる塩基若しくは臭化水素酸と反応するエポキド及びラクトンなどの他の物質と水相を組み合わせることによって消費することができる。
【0037】
好ましくは、中和ステップに使用される水酸化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムは、水相中の一臭化第四級アンモニウム又は第四級アンモニウムと同じアンモニウム又はホスホニウムイオン構造を有し、すなわち、各場合において、R又はRイオンのR基は、同じである。したがって、例えば、水相中の臭化第四級アンモニウムが一臭化テトラエチルアンモニウムである場合、臭化水素酸を中和するために水酸化テトラエチルアンモニウムを使用することが好ましい。これは、混合物を形成する代わりに、むしろ同じ一臭化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムを生成するという便益を有する。これは、順に一臭化物をリサイクルして臭素化プロセスに戻すことを容易にする。そのように生成した一臭化物は、追加の臭素と接触させて、対応する三臭化を再生させることができ、三臭化物は、順にその後の臭素化反応に使用することができる。
【0038】
中和反応に好適な条件は、一般に、ステップa)、すなわち洗浄ステップに関して記載された通りである。水酸化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムは、水中のその飽和限界までの任意の濃度で水酸化物化合物を含有することができる水溶液の形態で便利に提供され;そのような水溶液は、例えば、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%の水酸化物化合物を含有し得る。臭化水素酸の1モル当たり少なくとも0.5モル、少なくとも0.75モル、少なくとも0.9モル又は少なくとも1モルの水酸化第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウムを提供するのに十分な水溶液を提供することが好ましい。過剰の水酸化物が使用され得るが、その場合、10%以下又は5%以下のモル過剰を使用することが好ましい。
【0039】
更に別の好ましい実施形態において、本プロセスは、e)ステップa)及び/又はステップd)において得られた一臭化第四級アンモニウム又は一臭化第四級ホスホニウムを元素状臭素と組み合わせて、三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムを再生させるステップを更に含む。本プロセスは、脂肪族炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を有する有機ポリマーを、ステップe)において得られた再生三臭化第四級アンモニウム又は三臭化第四級ホスホニウムと有機ポリマーを接触させることによって臭素化するステップf)を更に含む。これらのステップを行うのに好適な条件は、上記並びに例えば米国特許第7,851,558号明細書、国際公開第2008/021417号パンフレット、国際公開第2008/021418号パンフレット、国際公開第2009/126531号パンフレット及び国際公開第2010/021906号パンフレットに記載されている。
【実施例
【0040】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるが、その範囲を限定するためのものではない。全ての部及び百分率は、特に明記しない限り重量による。
【0041】
実施例1
反応器温度を制御するためのサーキュレーター、オーバーヘッド攪拌機、窒素入口及びサーキュレーターによって冷やされた流体を用いたコンデンサーを備えた外套付き2L反応器に一臭化テトラエチルアンモニウム(TEAB)の476mLの50重量%水溶液(1.27モルのTEAB)を装入し、10℃で平衡させる。500mLのジクロロメタン(DCM)中の22.18g(0.139モル)臭素の溶液を15~25mL/分の速度で反応器にポンプ送液する。ポンプラインを、追加の500mlのDCMを用いて反応器中にリンスする。サーキュレーターを止め、反応混合物を室温で1時間撹拌して黄色のトップ水層及び赤/オレンジ色のボトム有機層の二相混合物を生成する。着色は、三臭化テトラエチルアンモニウム(TEATB)形成を示す。
【0042】
反応器温度を制御するためのサーキュレーター、オーバーヘッド撹拌機、窒素入口及びサーキュレーターによって冷やされた流体を用いたコンデンサーを備えた外套付き5L反応器に二相混合物を移し、20℃で平衡させる。ヒドラジン溶液(35重量%、6.35g、0.070モルのヒドラジン)を撹拌しながら5分にわたって反応器に添加した。混合物は、添加が完了した後、12分以内に赤/オレンジ色から無色に変わり、窒素ガスが発生する。放置すると、混合物は、再び上方水層とボトム有機層とに分離し、それらは、分離される。
【0043】
ボトム有機層中のTEATBは、ラマン分光法によって検出できず、ヒドラジンがTEATBを有機相から完全にクエンチしていることを示す。有機相の色(赤-オレンジ色又は無色)は、クエンチ反応の一般的な指標として用いることができる。
【0044】
水層は、反応生成物としてのTEAB及びHBrを含有する。それは、1未満のpHを有する。0.0049ミリモルの理論量のHBrを含有する10mLの水層を室温でガラスバイアル中に装入する。水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAPH)の2.1mLの35重量%水溶液(0.0051ミリモルTEAOH、pH6-6.4)をバイアルに添加する。室温で5分間撹拌した後、反応混合物のアリコートを取り去る。pHは、pH試験紙を使用して約4.5として測定され、HBrがTEAOHによって中和されてTEABプラス水を形成したことを示す。pHは、追加の0.1mLのTEAOH溶液が反応混合物に添加された後、13.5に上昇する。
【0045】
実施例2
536.6gの50重量%TEAB水溶液(1.27モルTEAB)を2L外套付き混合容器中で0℃に冷却する。300mLのDCM中の179.0g(1.12モル)の臭素の溶液を14分間にわたって撹拌反応器中にポンプ送液する。追加の100mLのDCMを使用してポンプ及びラインをリンスし、反応容器に添加する。反応器内容物を43分間撹拌してTEATBを生成し、それは、有機相に移動する。撹拌を止め、相を分離するに任せて赤色のボトム有機層と黄色の上方水層とを生成する。
【0046】
80.1gのスチレン-ブタジエン-スチレントリブロックコポリマー(80.5%ビニル)を、サーキュレーター及びコンデンサー冷却装置ユニットを備えた5L外套付き反応器、1リットルのジクロロメタンに溶解させる。温度を0℃に設定し、赤色のボトムTEATB含有有機層を撹拌しながら3分にわたって5L反応器にポンプ送液する。ポンプを別の100mLのDCMでリンスし、それも5L反応器に移す。得られた反応混合物を還流(40℃)で2.5時間加熱する。次いで、2L反応器からの水相を5L反応器にポンプ送液し、これに50mLフレッシュDCMのリンスが続く。得られた2相混合物を撹拌しながら追加の2.5時間40℃で加熱し、次いで20℃に冷却する。
【0047】
次いで、水中の35重量%ヒドラジン溶液(22.9g、0.25モルのヒドラジン)を撹拌反応混合物に添加する。赤色は、ほぼ無色に消散する。撹拌を止め、相を有機相と水性クエンチ相とに分離させる。水性クエンチ相は、50重量%TEAB(理論の90.5%)及びプロトンNMRによって0.5%残存ヒドラジンを含有する。
【0048】
416gの水性クエンチ相を水中の水酸化テトラエチルアンモニウムの187.5gの35%溶液と組み合わせる。これは、HBrを中和して、51重量%TEABを含有し、且つ7.0のpHを有する中和された水性クエンチ相を形成する。
【0049】
有機相を約450mLの脱イオン水で2回洗浄する。洗液は、有機相から分離し、分離状態に保たれる。第1の洗液は、1.0のpHを有し、4.8重量%TEAB及び無視できるヒドラジンを含有し;第2のものは、3.7のpHを有し、TEAB又はヒドラジンを含有しない。
【0050】
臭素化ポリマーを、洗浄した有機相から2-プロパノールを添加することによって沈澱させる。沈澱したポリマーを乾燥させて残存溶媒を除去する。プロトンNMRによって測定されるように、98.8%のブタジエン単位が臭素化されている。その5%減量温度は、257℃である。186℃でのその等温減量温度は、0.22重量%である。
【0051】
実施例3
実施例2からの537.6gの中和された水性クエンチ相を2L外套付き混合容器中で0℃に冷却する。300mlのDC中の179.4g(1.12モル)の臭素の溶液を14分間にわたって撹拌反応容器中にポンプ送液する。追加の100mLのDCMを使用してポンプ及びラインをリンスし、反応容器中に添加する。反応器内容物を60分間撹拌してTEATBを生成し、それは、有機相に移動する。撹拌を止め、相を分離するに任せて赤色のボトムTEATB含有機層と黄色の上方水層とを生成する。
【0052】
80.1gのスチレン-ブタジエン-スチレントリブロックコポリマー(80.5%ビニル)を、サーキュレーター及びコンデンサー冷却装置ユニットを備えた5L外套付き反応器中で1リットルのジクロロメタンに溶解させる。温度を0℃に設定し、赤色のボトムTEATB含有有機層を撹拌しながら2分にわたって5L反応器にポンプ送液する。ポンプを別の100mLのDCMでリンスし、それも5L反応器に移す。得られた反応混合物を還流(40℃)で2.5時間加熱する。次いで、2L反応器からの水相を5L反応器にポンプ送液し、これに50mLフレッシュDCMのリンスが続く。得られた2相混合物を撹拌しながら追加の2.5時間40℃で加熱し、次いで20℃に冷却する。
【0053】
次いで、水中の35重量%ヒドラジン溶液(1.7g、0.018モルのヒドラジン)を撹拌反応混合物に添加する。赤色は、ほぼ無色に消散する。撹拌を止め、相を有機相と水性クエンチ相とに分離させる。水性クエンチ相は、29.5重量%TEAB(理論の96%)及びプロトンNMRによって0.004%残存ヒドラジンを含有する。そのpHは、0.23である。
【0054】
有機相を約400mLの脱イオン水で2回洗浄する。洗液は、有機相から分離し、分離状態に保たれる。第1の洗液は、2.0のpHを有し;それは、プロトンNMRによって0.78重量%TEABを含有し、測定可能なヒドラジンを含有しない。第2の洗液は、3.5のpHを有し、プロトンNMRによってTEAB又はヒドラジンを含有しない。臭素化ポリマーを、洗浄した有機相から2-プロパノールを添加することによって沈澱させる。沈澱したポリマーを乾燥させて残存溶媒を除去する。プロトンNMRによって測定されるように、98.8%のブタジエン単位が臭素化されている。
【0055】
前述の実験を繰り返し、各実験からの回収された臭素化ポリマーを分析のために組み合わせる。組み合わせた材料の5%減量温度は、257℃であり;186℃でのその等温減量温度は、0.22重量%である。95.8%のブタジエン単位が臭素化されている。
【国際調査報告】