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▶ ストラタテック コーポレーションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】組織容器システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240514BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C12M1/00 G
C12M1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571317
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022031389
(87)【国際公開番号】W WO2022251669
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,682
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507295048
【氏名又は名称】ストラタテック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】コープセル, ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ, ケネス アール.
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC02
4B029FA15
(57)【要約】
本開示は、概して、組織の輸送に使用される組織容器システム及びキット、並びに組織容器システムを使用する方法に関する。具体的には、凍結保存されたヒト皮膚等価物の輸送、解凍、及び使用を支持するシステム及びキット、並びに医療提供者によるそれらの使用方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キットであって、
ポリカーボネート膜を含有する挿入トレイを支持するように操作可能な製品皿と、前記ポリカーボネート膜にゆるく接着された同種異系細胞化足場製品と、を含む、キット。
【請求項2】
保持溶液及び保持皿を更に備える、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記保持溶液が、ラミネートされたホイルポーチ内に収容されたボトルにパッケージングされている、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記保持皿が、同一の上部部分及び底部部分を含む、請求項2に記載のキット。
【請求項5】
前記保持皿が、透明なポーチにパッケージングされている、請求項2に記載のキット。
【請求項6】
前記製品皿が、ホイルポーチにパッケージングされている、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
前記ポリカーボネート膜が、前記挿入トレイの底面を形成する、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
前記挿入トレイが、ポリスチレンを更に含む、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
前記同種異系細胞化足場製品が、NIKS細胞を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項10】
前記同種異系細胞化足場が、真皮線維芽細胞を更に含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記保持皿が、前記保持皿の底面上の周辺棚によって形成されたリザーバを含む、請求項1に記載のキット。
【請求項12】
前記リザーバが、前記保持溶液を含むように操作可能である、請求項12に記載のキット。
【請求項13】
前記挿入トレイが、前記保持皿の前記周辺棚に置くように構成される、請求項13に記載のキット。
【請求項14】
前記製品皿が、前記保持皿の底面上の周囲棚によって形成されたリザーバを含む、請求項1に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、組織の輸送に使用される組織容器システム、及び組織容器システムを使用する方法に関する。具体的には、本発明は、凍結保存されたヒト皮膚等価物の輸送、解凍、及び使用を支持するシステム、並びに医療提供者によるそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者、医療提供者、及び第二者支払者による操作された組織の受け入れの主な障害は、操作された組織を効果的かつ効率的に保存及び保管する手段の欠如である。生細胞及び組織製品の性質は、長期的な保管の開発を困難にする。現在の操作された組織は、多くの場合、生存率及び機能を維持するために、慎重に管理された条件下で保管及び出荷される必要がある。典型的には、操作された組織製品は、製造に数週間又は数ヶ月かかるが、製造後数時間又は数日以内に使用する必要がある。その結果、組織工学企業は、生産施設を最大の能力で継続的に稼働させ、廃棄しなければならない未販売製品のコストを吸収しなければならない。具体的な一例として、APLIGRAFは、製造に約4週間を要し、わずか15日間使用可能であり、使用されるまで20~23℃で維持する必要がある。別の例として、EPICELは、Cambridge,MAのGenzyme Biosurgeryの製造施設からポータブルインキュベーターの使用地点まで看護師によって輸送され、到着時に直ちに使用される。そのような制約は、便利で費用対効果の高い製品を開発するための重大な課題を表している。
【0003】
凍結保存は、保管問題の解決策として研究されてきたが、氷の形成、冷却の損傷、及び浸透圧の不均衡を介して組織損傷を誘導することが知られている。APLIGRAFの他に、唯一他の承認された全厚生皮膚等価物であるORCELは、凍結製品として評価されているが、使用前に-100℃未満の温度で維持する必要があるという欠点を有した。これには、保管のための液体窒素の使用を含む特別な製品の配送及び保管条件が必要であり、これは高価であり、地方の診療所及び野戦病院では容易に入手できない。
【0004】
したがって、当該技術分野で必要とされるのは、使用時点で日常的に利用可能である条件下での保管のために、生存可能な操作された組織及び細胞を凍結保存する改善された方法である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、概して、組織の輸送に使用され、かつその後で医療提供者によってそれらが使用されるようにする組織容器システムに関し、具体的には、凍結保存されたヒト皮膚等価物の輸送、解凍、及び使用を支持するシステムに関する。
【0006】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、組織容器であって、皿を画定する周囲壁及び実質的に平坦な底面を備え、周囲壁が、雄端部及び雌端部を有し、周囲壁の雄端部が、そこから突出する長さ及び幅を有する隆起部を有し、周囲壁の雌端部が、同一の組織容器が組織容器の上部に配置されるときに、組織容器の雌端部が同一の組織容器の雄端部から延在する隆起部を解放可能に受けるように、隆起部の長さ及び幅に対応する空間を画定し、底面が、周囲を有し、かつ周囲棚及び底面によって画定されたリザーバを提供するための周囲の周りに延在する周囲棚を含む、組織容器を提供する。いくつかの実施形態では、周囲壁は、そこから延在するフランジを有する。いくつかの実施形態では、フランジは、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブを含む。いくつかの実施形態では、フランジは、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブを含む。いくつかの実施形態では、隆起部は、近位端部を有し、隆起部の近位端部は、その中に1つ以上のくぼみを有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、組織容器アセンブリであって、実質的に同一の上部組織容器及び下部組織容器を備え、上部組織容器及び下部組織容器の各々が、皿を画定する周囲壁及び実質的に平坦な底面を含み、底面が、周囲を有し、かつ周囲棚及び底面によって画定されたリザーバを提供するための周囲の周りに延在する周囲棚を含み、周囲壁が、雄端部及び雌端部を有し、周囲壁の雄端部が、そこから突出する長さ及び幅を有する隆起部を有し、周囲壁の雌端部が、上部組織容器が下部組織容器に配置されるときに、下部組織容器の雌端部は、上部組織容器の雄端部から延在する隆起部を解放可能に受けるように、隆起部の長さ及び幅に対応する空間を画定する、組織容器アセンブリを提供する。いくつかの実施形態では、上部組織容器の周囲壁は、そこから延在する上部フランジを有し、下部組織容器の周囲壁は、上部組織容器及び下部組織容器がアセンブルされるときに上部フランジ及び下部フランジが互いに接触するように、そこから延在する下部フランジを有する。いくつかの実施形態では、上部フランジは、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブと、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブと、を含む。いくつかの実施形態では、下部フランジは、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブと、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブと、を含む。いくつかの実施形態では、下部フランジは、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブと、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブと、を含み、上部フランジは、上部組織容器及び底部組織容器がアセンブルされるときにタブがオフセットされるように、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブと、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、組織容器システムであって、実質的に同一の上部組織容器及び下部組織容器、並びに、多孔質底面を備えるトレイを備え、上部組織容器及び下部組織容器の各々が、皿を画定する周囲壁及び実質的に平坦なリザーバ底面を備え、リザーバ底面が、周囲を有し、かつ周囲棚及びリザーバ底面によって画定されたリザーバを提供するための周囲の周りに延在する周囲棚を備え、トレイが、組織容器に挿入されたときに棚によって支持され、リザーバ底面の上にあるような大きさにされており、周囲壁が、雄端部及び雌端部を有し、周囲壁の雄端部が、そこから突出する長さ及び幅を有する隆起部を有し、周囲壁の雌端部が、上部組織容器が下部組織容器に配置されるときに、下部組織容器の雌端部は、上部組織容器の雄端部から延在する隆起部を解放可能に受けるように、隆起部の長さ及び幅に対応する空間を画定する、組織容器システムを提供する。いくつかの実施形態では、上部組織容器の周囲壁は、そこから延在する上部フランジを有し、下部組織容器の周囲壁は、上部組織容器及び下部組織容器がアセンブルされるときに上部フランジ及び下部フランジが互いに接触するように、そこから延在する下部フランジを有する。いくつかの実施形態では、上部フランジは、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブと、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブと、を含む。いくつかの実施形態では、下部フランジは、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブと、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブと、を含む。いくつかの実施形態では、下部フランジは、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブと、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブと、を含み、上部フランジは、上部組織容器及び底部組織容器がアセンブルされるときにタブがオフセットされるように、周囲壁の雄端部から延在する1つ以上のタブと、周囲壁の雌端部から延在する1つ以上のタブと、を含む。いくつかの実施形態では、トレイの多孔質底面は、多孔質膜である。いくつかの実施形態では、隆起部は、近位端部を有し、隆起部の近位端部は、その中に1つ以上のくぼみを有し、トレイは、トレイが底部組織容器に挿入されるときに1つ以上のタブが1つ以上のくぼみに挿入されるように、1つ以上のトレイタブを有する。いくつかの実施形態では、システムは、トレイの多孔質底面上に支持される組織を更に備える。いくつかの実施形態では、組織は、凍結保存される。いくつかの実施形態では、組織は、器官型皮膚代替物である。器官型皮膚代替物は、真皮線維芽細胞を含有するゲル化コラーゲン上で成長したケラチノサイトに由来する、生存可能な、生物工学処理された同種異系細胞化足場製品であり得る。いくつかの実施形態では、システムは、組織容器システムを含む滅菌パッケージを更に備える。組織容器システムは、1つ以上の吸収性媒体及び/又は組織適合性溶液などの1つ以上の液体媒体を有するキットとして提供され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、前段落の組織容器システムにおける組織をパッケージングすることと、パッケージングされた組織をそれを必要とする医療提供者に提供することと、を含む、医療提供者による使用のための組織を提供する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、凍結保存された組織を解凍する方法であって、上記の組織容器システムにおいて凍結保存された組織を提供することと、上部組織容器を除去して凍結保存された組織を曝露することと、任意選択で、凍結保存された組織を新しい容器システムに移すことと、凍結保存された組織が解凍して解凍された組織を提供する条件下で、下部組織容器内のリザーバを液体媒体で充填することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、凍結保存された組織は、器官型ヒト皮膚代替物である。いくつかの実施形態では、本方法は、器官型ヒト皮膚代替物を、それらを必要とする患者上の火傷又は創傷に適用又は移植することを更に含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、皿を画定する周囲壁105及び実質的に平坦な底面110を備える、図1に示される組織容器100を提供する。周囲壁105は、雄端部115及び雌端部120を有する。周囲壁105の雄端部115は、長さ及び幅を有する、そこから延在する隆起部125を有する。周囲壁105の雌端部120は、同一の組織容器が組織容器100の上部に配置されるときに、組織容器の当該雌端部120に提供される空間130が、以下でより詳細に説明されるように、同一の組織容器の雄端部から延在する隆起部125を解放可能に受けることができるように、隆起部125の長さ及び幅に対応する空間130を画定する。底面110は、底面110の周囲の周りに延在する周囲棚135を含む。周囲棚135は、容器の底部にリザーバ140を形成し、それは、好ましくは約0.50~1.5mmの深さであり、最も好ましくは約0.75mmの深さであり、液体媒体で充填され得る。周囲壁105は、好ましくは、そこから延在するフランジ145を有する。いくつかの実施形態では、組織容器100は、(a)周囲壁の雄端部115及び雌端部120を延ばす1つ以上のタブ150を含むフランジ145、(b)トレイ上のタブを受けるように構成された1つ以上のくぼみ155をその中に有する隆起部125、(c)好ましくは周囲壁105の雄端部115上に位置された複数のグリップ突起部160を含む周囲壁105、又は(d)それらの任意の組み合わせを更に備える。本発明はまた、実質的に同一の底部容器及び上部容器を備える組織容器アセンブリを提供し、底部容器及び上部容器は、このパラグラフに記載の組織容器である。本発明はまた、このパラグラフの組織容器アセンブリ及びトレイ410を備える、図4に示される組織容器システムを提供する。トレイは、上記の通り、底部容器の底面の周囲棚の上に置かれるような大きさになっている。トレイ410は、側壁415を含む。タブ420は、それらが係合し、底部容器405の雄端部435上の隆起部430内のくぼみ425に挿入されるように、側壁415から延在する。トレイは、任意選択で、多孔質膜である多孔質底面440を有する。同一の上部容器を、収容されたトレイからの干渉なしに、下部容器上に配置し、閉じることができる。組織容器システムは、任意選択で、滅菌バッグ内に密封され、好ましくはヒートシールされて、一次パッケージを提供することができる。一次パッケージを、任意選択で、二次バッグ内に密封することができる。組織容器システム又は組織容器システムを含むパッケージは、1つ以上の吸収性媒体及び/又は組織適合性溶液などの1つ以上の液体媒体を有するキットとして提供され得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、前段落に記載の組織容器システムにおける組織をパッケージングすることと、パッケージングされた組織をそれを必要とする医療提供者に提供することと、を含む、医療提供者による使用のための組織を提供する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、創傷又は火傷を治療するための使用のために組織を提供する方法であって、前段落に記載の組織容器システムにおける組織をパッケージングすることと、パッケージングされた組織を創傷又は火傷を治療するための使用のために医療提供者に提供することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象に適用する前に、凍結保存された皮膚等価物を解凍する方法を提供する。本方法は、前段落に記載される組織容器システムにおける凍結保存された組織、好ましくは器官型的(organotypically)に培養された皮膚等価物を提供することと、上部組織容器を除去して凍結保存された組織を曝露することと、凍結保存された組織が解凍して解凍された組織を提供する条件下で、下部組織容器内のリザーバを液体媒体で充填することであって、組織内に含有される凍結保護剤は、液体媒体内に希釈され、凍結保護剤が実質的に含まれていない組織を残す、充填することと、を含む。他の実施形態では、本方法は、凍結保存された組織を含む組織容器システムを含む一次パッケージ又は二次パッケージを冷凍庫又は出荷容器から取り出すことと、組織容器システムをパッケージから取り出すことと、上部組織容器を除去して凍結保存された組織を曝露することと、移された凍結保存された組織が解凍して解凍された組織を提供し、組織内に含まれる凍結保護剤が液体媒体中に希釈されるように、凍結保存された皮膚等価物を有するトレイを第1の組織容器から、滅菌であり、滅菌野でステージされ、容器リザーバ内に液体媒体を含有する、第2の組織容器に移すことと、を含む。上記実施形態のいくつかでは、液体媒体は、組織適合性溶液、好ましくは緩衝溶液である。更に他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物を有するトレイを組織容器から取り出し、吸収性媒体上に配置して、解凍された凍結保護剤溶液を皮膚等価物から除去する。吸収性媒体は、任意の好適な、好ましくは滅菌の器(例えば、培養器又は新鮮な組織容器アセンブリ)内にあり得る。本発明は、特定の吸収性媒体の使用に限定されない。吸収性媒体は、好ましくは、組織適合性溶液を含む。
【0012】
本明細書で更に提供されるのは、挿入トレイを支持するように操作可能な製品皿を含み得るキットである。挿入トレイは、ポリカーボネート膜と、ポリカーボネート膜にゆるく接着された同種異系細胞化足場製品と、を含有し得る。一実施形態では、挿入トレイは、ポリスチレンを更に含み得る。ホイルポーチは、外側カートンに更にパッケージングされ得る。ポリカーボネート膜は、挿入トレイの底面を形成し得る。製品皿は、製品皿の底面上の周囲棚によって形成されたリザーバを含み得る。挿入トレイは、製品皿の周辺棚に置かれ得る。製品皿(挿入トレイ及び同種異系細胞化足場製品を含む)は、ホイルポーチにパッケージングされ得る。同種異系細胞化足場製品は、NIKS細胞及び/又は真皮線維芽細胞を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、キットは、保持溶液及び保持皿を更に含む。保持溶液は、ラミネートされたホイルポーチ内に収容されたボトル内にパッケージングされ得る。保持皿は、同一の上部部分及び下部部分を含み得る。保持皿は、透明なポーチにパッケージングされ得る。保持皿は、保持皿の底面上の周辺棚によって形成されたリザーバを含む。リザーバは、保持溶液を収容するように操作可能である。挿入トレイは、保持皿の周辺棚に置くように構成され得る。
【0014】
本発明の他の態様及び反復は、以下でより完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による、組織容器の斜視図である。
図2】一実施形態による、組織容器アセンブリの分解斜視図である。
図3】一実施形態によるアセンブルされた組織容器アセンブリの斜視図である。
図4】一実施形態による、挿入されたトレイを有する組織容器の斜視図である。
図5】1日の再培養後の組織生存率のグラフである。データは、1群当たり15個の試料の平均±標準偏差(各バッチで5つの試料/組織x3つの組織/条件)である。
図6】1日の再培養中の解凍後VEGF分泌のグラフである。データは、各バッチにおける条件ごとの3つの組織の平均±標準偏差である。
図7-1】初期DPM(図7A)及びDPM変化(図7B)での1日の再培養後の解凍後組織バリア機能のグラフである。データは、1群当たり12読み取りの平均±標準偏差である(各バッチで4つの試料/組織x3つの組織/条件)。
図7-2】同上。
図8-1】一実施形態による、ホイルポーチ及び外側カートンを含む製品皿のパッケージングを示す。
図8-2】一実施形態による、ホイルポーチ内の製品皿を示す。
図8-3】一実施形態による、挿入トレイ及び製品皿を示す。
図8-4】一実施形態による、挿入トレイを示す。
図9-1】一実施形態による、ホイルポーチ内の保持溶液ボトルを示す。
図9-2】一実施形態による、透明なポーチにパッケージングされた保持皿を示す。
図9-3】一実施形態による、保持皿に注ぎ込まれる保持溶液を示す。
図9-4】一実施形態による、保持皿に配置される挿入トレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、本明細書に指定される特定の方法、組成物、又は材料に限定されるものではなく、関連技術分野の当業者によって認識されるように、その等価物に拡張されることが理解されたい。また、本明細書で採用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的として使用され、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0017】
本発明は、概して、組織の輸送に使用され、かつその後で医療提供者によってそれらが使用されるようにする組織容器システム及びキットに関し、具体的には、凍結保存されたヒト皮膚等価物の輸送、解凍、及び使用を支持するシステムに関する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所与の値が、エンドポイントを「少し上回って」又は「少し下回って」いてもよいことを提供することによって、数値範囲エンドポイントに柔軟性を提供するために使用される。例えば、エンドポイントは、リストされた値の10%、8%、5%、3%、2%、又は1%以内であり得る。更に、利便性及び簡潔性のために、「約50mg/mL~約80mg/mL」の数値範囲もまた、「50mg/mL~80mg/mL」の範囲を支持することを理解されるべきであるエンドポイントはまた、FDA、USPなどの適切な規制機関によって許容される可変性に基づき得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、及び「有する(having)」などは、米国特許法においてそれらに帰せられる意味を有し得、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味し得、概して、オープンエンド用語であると解釈される。「~からなる(consisting of)」又は「~からなる(consists of)」という用語は、クローズド用語であり、そのような用語と併せて具体的にリストされている構成要素、構造、ステップなど、及び米国特許法に準拠しているもののみを含む。「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「から本質的になる(consists essentially of)」は、米国特許法によって、概してそれらに帰属される意味を有する。具体的には、そのような用語は、それらに関連して使用されるアイテムの基本的及び新規の特性又は機能に実質的に影響を与えない追加のアイテム、材料、構成要素、ステップ、又は要素を含めることを許可することを除いて、概して、クローズド用語である。例えば、組成物中に存在するが、組成物の性質又は特徴に影響を与えない微量要素は、そのような用語に続くアイテムのリストに明示的に列挙されていなくても、「から本質的になる(consisting essentially of)」という文言の下に存在する場合、許容されるであろう。本明細書では、「含む(comprising)」又は「含む(including)」のようなオープンエンド用語を使用する場合、明示的に記載されているかのように、言語「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び言語「からなる(consisting of)」に直接的な支持が与えられるべきであり、その逆もまた同様であると理解されたい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「皮膚等価物」、「ヒト皮膚等価物」、「ヒト皮膚代替物」、「器官型ヒト皮膚等価物」、「器官型皮膚代替物」、「同種異系培養ケラチノサイト組成物」、「同種異系細胞化足場製品」、及びStrataGraft(登録商標)皮膚組織という用語は、扁平上皮に層化されたケラチノサイトのインビトロ由来培養物を指すために互換的に使用される。典型的には、皮膚等価物は、器官型培養によって製造され、ケラチノサイト層に加えて真皮層を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、「滅菌(sterile)」という用語は、検出可能な微生物又は真菌の汚染が本質的に又は完全にない皮膚等価物を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「NIKS細胞」という用語は、細胞株ATCC CRL-12191として寄託された細胞の特徴を有する細胞を指す。「NIKS」は、ほぼ二倍体の不死化ケラチノサイト(near-diploid immortalized keratinocyte)を表し、登録商標である。
【0023】
本明細書で使用される場合、「生存可能な」という用語は、皮膚等価物を参照して使用される場合、凍結保存後の皮膚等価物中の細胞の生存率を指す。好ましい実施形態では、「生存可能な」皮膚は、MTTアッセイによって測定された場合の対照の非凍結保存組織の少なくとも50%、60%、70%、80%又は90%、又は同様の生存率アッセイの読み出し値の少なくとも50%、60%、70%、80%又は90%のA550を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「培養器」という用語は、細胞又は組織を培養するために一般的に使用される種類の任意の器を指し、組織培養プラスチック、ポリスチレン、ポリマー、プラスチック、ガラスなどの好適な材料から形成される円形、長方形、及び正方形の皿を含む。「培養器」及び「増殖チャンバ」という用語は、互換的に使用される。少なくとも、本開示の組織容器が長期培養に好適な大きさではないため、本明細書で使用する場合、本開示の組織容器は、培養器ではない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「組織容器」、「組織容器アセンブリ」、「製品皿」、及び「保持皿」という用語は、組織(例えば、同種異系細胞化足場製品)を保管、輸送、及び/又は解凍するために使用される容器又は複数の容器を指すために互換的に使用される。複数の組織容器は、組織を保管及び解凍するプロセスで使用され得る。例えば、同種異系細胞化足場製品は、凍結保存され、第1の組織容器に保管され得、第2の組織容器は、組織容器アセンブリが同一の上部部分及び下部部分として機能する第1の容器及び第2の容器を含むように、第1の組織容器に接続して、第1の組織容器の蓋として機能するように構成され得る。加えて、保持皿は、その中に同種異系細胞化足場製品が保管されていない組織容器であり得る。保持皿は、同一の上部部分及び下部部分として機能する2つの組織容器を含み得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「トレイ」、「挿入トレイ」、及び「組織挿入物」という用語は、同種異系細胞化足場製品を保持し、組織容器に挿入されるか、組織容器に収まるか、又は組織容器の内側に置かれるように操作可能なトレイ又は皿を指すために互換的に使用される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「組織適合性溶液」、「培地」、及び「保持溶液」という用語は、凍結保存された組織を解凍するため、及び/又は組織から凍結保護剤を除去するために使用される溶液を指すために、互換的に使用される。
【0028】
本開示の組織容器は、以前に利用された容器よりも約60%小さいため、冷凍庫及び手術室スペースを効率的に利用する。組織容器は、組織(例えば、器官型皮膚代替物/同種異系細胞化足場製品)が支持され得る底面として多孔質膜を含むトレイと互換性がある。トレイの他の表面は、好ましくは、プラスチックシート、射出成形、又はプラスチックを操作するための当該技術分野で既知の他の方法からの熱成形プロセスによって製造された透明又は半透明のプラスチックである。好適なプラスチックとしては、医療グレードのプラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾(PETG)、ポリスチレンなどが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、トレイは、好ましくは、以下に記載される挿入トレイである。組織容器は、容器内の組織を解凍し、組織が凍結されたときに凍結保護剤を除去するために培地で充填され得るリザーバを含む。これは、組織を外科的滅菌野で容器から取り出し、次いで、Telfa(登録商標)パッド上に配置する必要があった、組織を解凍するために使用された以前のシステムに対して利点を提供する。本発明の組織容器は、好ましくは、互いの鏡像である上部及び下部を含む。容器アセンブリの上部部品及び下部部品は、実質的に同一であり、一緒にスナップしされて封入された容器を形成することができる。実質的に同一である上部及び下部の使用は、上部部品及び下部部品の両方が同じ金型から製造され得ることを意味し、これは、上部部品及び下部部品の製造中に効率を生み出す。上部部品及び下部部品は、好ましくは透明であり、プラスチックシートからの熱成形プロセスによって製造される。組織容器を形成するための好適なプラスチックとしては、医療グレードの熱成形可能なプラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾(PETG)が挙げられる。一実施形態では、組織容器は、PETG長方形トレイであり得る。組織容器及び/又は挿入トレイは、ガンマ線照射を使用して滅菌され得る。したがって、本発明は、以下でより詳細に説明される改善された組織容器、組織容器システム、及びキットを提供する。
【0029】
図1は、組織容器100を示す。いくつかの実施形態では、組織容器100は、好ましくは、皿を画定する周囲壁105及び実質的に平坦な底面110を備える。周囲壁105は、雄端部115及び雌端部120を有する。周囲壁105の雄端部115は、長さ及び幅を有する、そこから延在する隆起部125を有する。周囲壁105の雌端部120は、同一の組織容器が組織容器100の上部に配置されるときに、組織容器の当該雌端部120に提供される空間130が、以下でより詳細に説明されるように、同一の組織容器の雄端部から延在する隆起部125を解放可能に受けることができるように、隆起部125の長さ及び幅に対応する空間130を画定する。底面110は、底面110の周囲の周りに延在する周囲棚135を含む。底面110の周囲は、周囲壁105によって画定される。周囲棚135は、周囲棚135が周囲壁105に隣接するように、底面110に沿って周囲壁105に垂直な方向に延在する。周囲棚135は、約0.50~1.5mmの高さを有し得る。一例では、周囲棚135は、0.75mmの高さを有する。したがって、周囲棚135は、容器の底部にリザーバ140を形成し、それは、好ましくは、約0.50~1.5mmの深さであり、最も好ましくは、約0.75mmの深さであり、液体媒体で充填され得る。周囲壁105は、好ましくは、そこから延在するフランジ145を有する。いくつかの実施形態では、フランジ145は、周囲壁の雄端部115及び雌端部120を延ばす1つ以上のタブ150を含む。いくつかの実施形態では、隆起部125は、トレイ上のタブを受けるように構成された1つ以上のくぼみ155をその中に有し、これは以下でより詳細に説明される。いくつかの更なる実施形態では、周囲壁105は、好ましくは、複数のグリップ突起部160を含み、好ましくは、周囲壁105の雄端部115上に位置される。
【0030】
いくつかの実施形態では、トレイは、周囲棚135上に置かれるように構成され得る。以下に説明するように、トレイの底面は多孔質であり得る。容器が組織を解凍するために使用される場合、リザーバ140は、保持溶液で充填され得、保持溶液は、トレイが周囲棚135上に置かれる場合、トレイを取り囲んでもよく、及び/又はトレイ内にあってもよい。
【0031】
図2は、本発明の組織容器アセンブリ200の拡大図を示す。組織容器アセンブリ200は、好ましくは、実質的に同一の底部及び上部容器205及び210を備える。底部及び上部容器205及び210の各々は、周囲壁215及び220を備え、底部容器205の場合には底面225を有し、上部容器210の場合には上面230を有する。底面225は、底面225の周囲の周りに延在する周囲棚235を含む。底面225の周囲は、周囲壁215によって画定される。周囲棚235は、周囲棚235が周囲壁215に隣接するように、底面225に沿って周囲壁215に垂直な方向に延在する。周囲棚235は、約0.50~1.5mmの高さを有し得る。一例では、周囲棚235は、0.75mmの高さを有する。周囲棚235は、底部容器205の底部にリザーバ240を形成し、それは、好ましくは、約0.50~1.5mmの深さであり、最も好ましくは、約0.75mmの深さであり、液体媒体で充填され得る。底部及び上部容器205及び210の各々は、雄端部及び雌端部245及び250を備える。雄端部245は、長さ及び幅を有する、そこから延在する隆起部255を有する。雌端部250は、上部容器210が破線265によって示される整列に沿って底部容器205上に配置されるときに、底部及び上部組織容器205及び210の当該雌端部250に提供される空間260が、底部及び上部容器205及び210が解放可能に一緒にスナップされ得るように、隆起部255を解放可能に受け得るように、隆起部255の長さ及び幅に対応する空間260を画定する。周囲壁215及び220は、好ましくは、そこから延在するフランジ270及び275を有する。いくつかの実施形態では、フランジは、雄端部245及び雌端部250を延ばす1つ以上のタブ280を含む。いくつかの実施形態では、隆起部255は、トレイ上のタブを受けるように構成された1つ以上のくぼみ285をその中に有し、これは以下でより詳細に説明される。いくつかの更なる実施形態では、周囲壁は、好ましくは、複数のグリップ突起部290を含み、好ましくは、雄端部245上に位置される。
【0032】
いくつかの実施形態では、トレイは、周囲棚235上に置かれるように構成され得る。以下に説明するように、トレイの底面は多孔質であり得る。容器が組織を解凍するために使用される場合、リザーバ240は、保持溶液で充填され得、保持溶液は、トレイが周囲棚235上に置かれる場合、トレイを取り囲んでもよく、及び/又はトレイ内にあってもよい。
【0033】
図3は、底部容器305及び上部容器310が完全に係合して封入された容器を形成する本発明の容器アセンブリ300を示す。
【0034】
本明細書に更に提供されるのは、トレイとともに上記の底部及び上部容器を備える組織容器システムである。図4は、トレイ410が挿入された底部容器を示す。トレイ410は、上記のように、底部容器の底面上の周囲棚の上に置かれるような大きさになっている。トレイ410は、側壁415を含む。タブ420は、それらが係合し、底部容器405の雄端部435上の隆起部430内のくぼみ425に挿入されるように、側壁415から延在する。側壁415及びタブ420は、好ましくは、プラスチックシート、射出成形、又はプラスチックを操作するための当該技術分野で既知の他の方法からの熱成形プロセスによって製造された透明又は半透明のプラスチックである。好ましいプラスチックは、ポリエチレンテレフタレートグリコール修飾(PETG)及びポリスチレンを含むが、これらに限定されない医療グレードの熱成形可能なプラスチックである。いくつかの好ましい実施形態では、側壁415及びタブ420に使用されるプラスチックは、ポリスチレンである。
【0035】
トレイは、好ましくは、多孔質底面440を有する。いくつかの好ましい実施形態では、多孔質底面は、多孔質膜、好ましくは半透過性ポリマーフィルム、より好ましくは半透過性のトラックエッチングされたポリマーフィルムである。膜は、細胞の結合を改善するために組織培養処理(例えば、血漿処理)され得る。更なる実施形態では、膜は、少なくとも5ミクロン、いくつかの例では、約5ミクロン~約20ミクロン、好ましくは約10ミクロン~約20ミクロン、より好ましくは約10ミクロン~約15ミクロンの公称厚さを有する。他の実施例では、膜は、約10ミクロンの公称厚さを有する。好適な膜材料は当該技術分野で公知であり、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、又はそれを通る複数の開放孔を有する市販の組織培養処理された挿入物(例えば、Transwell(登録商標)、Snapwell(商標)など)で使用される任意の他の膜材料が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも一例では、膜は、ポリカーボネート膜である。好ましくは、孔は、約0.1ミクロン~約10ミクロン、好ましくは約0.1ミクロン~約0.8ミクロン、より好ましくは約0.2ミクロン~約0.8ミクロン、更により好ましくは約0.4ミクロン、約0.5ミクロン、又は約0.6ミクロンの公称孔径を有する。少なくとも一実施形態では、ポリカーボネート膜は、保持溶液などの媒体交換を可能にする0.4ミクロンの孔を有する。膜は、好ましくは、平方センチメートル当たり約1×10~約4×10個の孔の公称孔密度を有するが、より広い範囲も許容される。最も好ましくは、膜は、約0.4ミクロンの公称の大きさ及び平方センチメートル当たり約1×10個の孔の公称孔密度を有する孔を有するポリカーボネートから形成される。膜は、例えば、熱密封、音波溶接、溶媒結合、接着剤結合などによって、当該技術分野で既知の任意の適切な方法によって側壁415に取り付けられ得る。
【0036】
トレイは、同種異系細胞化足場製品などの組織を保持するように構成される。同種異系細胞化足場製品は、トレイの底面上の膜にゆるく接着され得る。膜内の孔は、保持溶液などの液体が膜及びトレイを通って透過し、内の膜を囲むことを可能にし得る。保持溶液が温められる場合、トレイ内の凍結保存された同種異系細胞化足場製品を解凍するために使用され得る。いくつかの実施形態では、凍結保存された同種異系細胞化足場製品を有するトレイは、組織を保管及び輸送するために使用される組織容器内にあり得る。一実施形態では、トレイは、解凍のために、組織容器から新しい組織容器(例えば、保持皿)に取り外されてもよい。温められた(例えば、35℃~39℃)保持溶液を保持皿に配置してもよく、次いで、同種異系細胞化足場製品を有するトレイを、解凍のために第1の組織容器から保持皿に移動させてもよい。
【0037】
本明細書では、同種異系細胞化足場製品を保管、輸送、及び/又は調製するためのキットを更に提供する。組織容器(例えば、製品皿及び保持皿の両方)、組織、及び保持溶液は、保管及び輸送のためにパッケージングされ得る。いくつかの例では、これらの品目のうちの1つ以上は、キットとして一緒に提供され得る。製品皿、保持皿、挿入トレイ、及び/又はホイルポーチは、ガンマ線照射を使用して滅菌され得る。いくつかの実施形態では、製品皿、保持皿、及び/又は挿入トレイは、任意の検出可能な抽出物又は浸出物を有し得ない。
【0038】
図8Aは、次いで外側カートン504に収容される、ラミネートされたホイルポーチ502に収容された同種異系細胞化足場製品(図示せず)を有する製品皿の例を示す。ラミネートされたホイルポーチは、ポリエチレン、アルミホイル、及び/又は低密度ポリエチレンから作製され得る。例えば、ラミネートされたホイルポーチは、30ゲージのアルミホイル層を含み得る。少なくとも一例では、ラミネートされたホイルポーチは、48ga PET、白色LDPE、0.35ミルアルミホイル、LDPE、及び2.0milシーラント層を含み得る。外側カートン504は、18ptの段ボールカートンであり得、外面に処方情報506を含有し得る。外側カートンは、最大約99.74%の不透明度パーセンテージを有し得る。同種異系細胞化足場製品は、凍結保存され得、したがって、製品皿、ホイルポーチ502、及び/又は外側カートン504は、凍結されることができる。
【0039】
図8Bは、ホイルポーチ502内の製品皿508を示す。足場製品を使用する準備ができたときに、ホイルポーチ502を剥がして開いて、製品皿508を現わしてもよい。製品皿508は、同一の上部部分及び下部部分を含み得る。例では、底部部分は、図8Cに見られるように、同種異系細胞化足場製品512を有する挿入トレイ510を保持するように操作可能である。挿入トレイ510は、ポリカーボネート膜(図示せず)と、ポリカーボネート膜にゆるく接着された同種異系細胞化足場製品512と、を含有し得る。ポリカーボネート膜は、挿入トレイ510の底面を形成し得る。一実施形態では、挿入トレイは、ポリスチレンを更に含み得る。挿入トレイ510は、100cmの足場製品を保持するための100cmの長方形の挿入物であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、図8C及び図8Dに見られるように、トレイ510が製品皿508の底部に挿入されるときに、1つ以上のタブ514が、製品皿508上の隆起部518内の1つ以上のくぼみ516に挿入されるように、挿入トレイ510は、1つ以上のトレイタブ514を有する。少なくとも一例では、挿入トレイ510は、製品皿508の一端部上の2つの隆起部518に形成された2つの対応するくぼみ516に適合する、トレイ510の一端部上の2つのタブ514を含む。別の例では、挿入トレイ510は、挿入トレイ510の各角付近に1つの4つのタブ514を含み、2つのタブ514は、製品皿508の一端部上の2つの隆起部518に形成された2つの対応するくぼみ516に適合するように操作可能であり、他の2つのタブ514は、製品皿508の周囲壁上に置かれるように操作可能である。
【0041】
一実施形態では、製品皿508は、製品皿508の底面上の周囲棚によって形成されたリザーバを含み得る。この実施形態では、挿入トレイ510は、製品皿508の周辺棚に置かれ得る。他の実施形態では、リザーバは、製品皿508の周囲壁によって形成され得、挿入トレイ510は、製品皿508の底面上に置かれ得る。上部製品皿508は、挿入トレイ510及び足場製品512を収容する下部製品皿508を覆うために使用されてもよく、その結果、足場製品512は、製品皿508内に、更にはホイルポーチ502及び外側カートン504内に完全に封入される。
【0042】
図9Aは、ラミネートされたホイルポーチ604内に収容されたプラスチックボトル602に提供される例示的な保持溶液(図示せず)を示す。図9Bは、透明なポーチ608に収容される例示的な保持皿606を示す。保持皿606は、同一の上部部分及び下部部分を含み得る。いくつかの実施例では、保持皿606は、図8B及び図8Cに示されるように、製品皿と同一であり得る。しかしながら、保持皿606は、挿入トレイ又は足場製品とともにパッケージングされない。保持皿60は足場製品とともにパッケージングされないため、それを低温で保管する必要はなく、ラミネートされたホイルポーチの代わりに透明なポーチ608にパッケージングされ得る。図9Cに見られるように、保持皿606は、保持皿606の底面上のリザーバ内に保持溶液610を受けるように操作可能であり得る。一実施形態では、保持皿606のリザーバは、保持皿606の底面上の周囲棚によって形成され得る。この実施形態では、挿入トレイ510は、保持皿606の周辺棚に置かれ得る。他の実施形態では、リザーバは、保持皿606の周囲壁によって形成され得、挿入トレイ510は、保持皿606の底面上に置かれ得る。図9Dに見られるように、したがって、保持皿606は、製品皿508から取り外された後に、足場製品512を有する挿入トレイ510を受けるように操作可能であり得る。保持皿606内の保持溶液610は、挿入トレイ510内の足場製品512を解凍するために使用され得、足場製品内の残存する凍結保護剤を除去するために使用され得る。保持溶液610は、保持皿606に注がれる前に、プラスチックボトル602内で温められ得る。
【0043】
本明細書で更に提供されるのは、同種異系細胞化足場を有する挿入トレイを支持するように操作可能な製品皿を含み得るキットである。挿入トレイ及び同種異系細胞化足場製品とともに製品皿は、ホイルポーチにパッケージングされ得る。ホイルポーチは、外側カートンに更にパッケージングされ得る。いくつかの実施形態では、キットは、保持溶液及び保持皿を更に含み得る。保持溶液は、ラミネートされたホイルポーチ内に収容されたボトルにパッケージングされ得る。保持皿は、透明なポーチにパッケージングされ得る。キットは、凍結保存された製品足場の保管、輸送、解凍、及び調製のための製品皿、挿入トレイ、製品足場、保持溶液、及び保持皿のうちの1つ以上が提供され得る。
【0044】
足場製品と接触するパッケージング構成要素は、臨床使用の準備が整うまで、ポーチ及び段ボールカートン内で凍結保存された状態に保たれる。同種異系細胞化足場製品は、臨床使用の準備が整うまでホイルポーチに保管される。ホイルポーチは、パッケージング、出荷、又は臨床使用中に足場製品に接触しない場合がある。ホイルポーチは、アルミホイルの30ゲージの層を含み得るため、光透過は、足場製品のリスクとはみなされない。追加的に、ポーチされたユニットは、99.74%の不透明度パーセンテージを有する18ptの段ボールカートンに保管され得る。製品の光への曝露時間は、臨床使用の準備が整うまで-70~-90℃の冷凍庫に皮膚組織を保管するため、最小限に抑えることが期待される。したがって、光透過は、足場製品のリスクとはみなされない。
【0045】
組織容器は、様々な組織を凍結保存、保管、輸送、及び/又は解凍するために使用され得る。組織は、好ましくは、トレイの多孔質底面上に支持され、底部及び上部容器を備える容器アセンブリで封入される。いくつかの好ましい実施形態では、組織は、凍結保存される。いくつかの実施形態では、組織は、皮膚組織、例えば、死体皮膚又は器官型皮膚等価物である。いくつかの例示的な実施形態では、組織は、器官型皮膚等価物又は凍結保存された器官型皮膚等価物である。
【0046】
組織は、任意の特定の器官型皮膚等価物に限定されない。実際、初代及び不死化ケラチノサイトの両方を含む、扁平上皮に分化することができる様々な細胞株及び供給源の使用が企図される。少なくとも一例では、同種異系細胞化足場製品は、真皮線維芽細胞を含有するゲル化コラーゲン上で増殖したケラチノサイトに由来し得る。同種異系細胞化足場製品は、外科的介入が臨床的に必要な無傷の真皮要素を含有する熱傷(深い部分的な厚さの火傷)を有する成人の治療のために使用され得る。細胞の供給源としては、ヒト及び死体(cavaderic)ドナーから生検されたケラチノサイト及び真皮線維芽細胞(Auger et al,In Vitro Cell.Dev.Biol.-Animal 36:96-103、米国特許第5,968,546号及び同第5,693,332号、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)、新生児包皮(Asbill et al.,Pharm.Research 17(9):1092-97(2000)、Meana et al.,Burns 24:621-30(1998)、米国特許第4,485,096号、同第6,039,760号、及び同第5,536,656号、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる)、並びにNM1細胞などの不死化ケラチノサイト細胞株(Baden,In Vitro Cell.Dev.Biol.23(3):205-213(1987))、HaCaT細胞(Boucamp et al.,J.cell.Boil.106:761-771(1988))、及びNIKS(登録商標)細胞(Cell line BC-1-Ep/SL、米国特許第5,989,837号、参照により本明細書に組み込まれる、ATCC CRL-12191)が挙げられる。言及される細胞株の各々は、所望のタンパク質を発現又は共発現することができる細胞株を産生するために、培養又は遺伝子改変され得る。特に好ましい実施形態では、NIKS(登録商標)細胞が利用される。新規NIKS(登録商標)ヒトケラチノサイト細胞株の発見は、非ウイルスベクターでヒトケラチノサイトを遺伝子操作する機会を提供する。NIKS(登録商標)細胞の独自の利点は、それらが、遺伝的に均一で病原体を含まないヒトケラチノサイトの一貫した供給源であることである。このため、それらは、現在利用可能な皮膚等価物に対して強化された特性を有するヒト皮膚等価物を提供するための遺伝子工学及びゲノム遺伝子発現アプローチの適用に有用である。University of Wisconsinで同定及び特徴付けられたNIKS(登録商標)細胞は、非腫瘍形成性で、核型的に安定しており、単層及び器官型培養の両方において正常な増殖及び分化を示す。NIKS(登録商標)細胞は、培養物中で完全に層化された皮膚等価物を形成する。これらの培養物は、これまでに試験された全ての基準によって、初代ヒトケラチノサイトから形成された器官型培養物と区別できない。しかしながら、初代細胞とは異なり、NIKS(登録商標)細胞は、単層培養において延長された寿命を示す。これは、細胞を遺伝的に操作し、新たな有用な特性を有する細胞の新たなクローンを単離する機会を提供する(Allen-Hoffmann et al.,J.Invest.Dermatol.,114(3):444-455(2000))。
【0047】
NIKS(登録商標)細胞は、見かけ上正常な男性乳児から単離されたヒト新生児包皮ケラチノサイトのBC-1-Ep株から生じた。初期の継代では、BC-1-Ep細胞は、培養された正常ヒトケラチノサイトにとって非定型的であった形態学的又は成長特性を示さなかった。培養されたBC-1-Ep細胞は、プログラム細胞死の特徴と同様に層化を示した。複製寿命を決定するために、BC-1-Ep細胞を、100mm皿当たり3×10個の細胞の密度で標準的なケラチノサイト増殖培地中で連続的に培養して老化させ、毎週の間隔で継代(約1:25の分割)した。継代15にまでに、大きな平らな細胞を示した多数の形成不全コロニーの存在によって判断すると、集団中のほとんどのケラチノサイトは、老化したように見えた。しかしながら、継代16では、小さな細胞の大きさを示すケラチノサイトが明らかであった。継代17までに、培養物中に存在したのは小型のケラチノサイトのみであり、大型の老化性ケラチノサイトは明らかではなかった。この推定される危機期を生き延びた小さなケラチノサイトの得られた集団は、形態学的に均一であり、細胞-細胞接着及び明らかな扁平産生を含む典型的なケラチノサイト特性を示すケラチノサイトのコロニーを産生した。老化を生き延びたケラチノサイトを、100mm皿当たり3×10細胞の密度で連続的に培養した。典型的には、培養物は、7日以内に約8×10個の細胞の密度に達した。この細胞増殖の安定した速度は、少なくとも59回の継代を通して維持され、細胞が不死を達成したことを実証した。元の老化集団から出現したケラチノサイトは、現在、NIKS(登録商標)と称される。NIKS(登録商標)細胞株は、PCR又はサザン分析のいずれかを使用して、HIV-1、HIV-2、EBV、CMV、HTLV-1、HTLV-2、HBV、HCV、B-19パルボウイルス、HPV-16、SV40、HHV-6、HHV-7、HPV-18、及びHPV-31のプロウイルスDNA配列の存在についてスクリーニングされている。これらのウイルスは検出されなかった。
【0048】
継代3での親BC-1-Ep細胞並びに継代31及び54でのNIKS(登録商標)細胞に対して染色体分析を実施した。親BC-1-Ep細胞は、46番の正常な染色体相補体、XYを有する。継代31では、全てのNIKS細胞は、8番染色体の長腕の余分なイソクロモソームを有する47の染色体を含有した。その他の全体的な染色体異常又はマーカー染色体は検出されなかった。NIKS(登録商標)細胞の核型は、少なくとも継代54に対して安定であることが示されている。
【0049】
NIKS(登録商標)細胞株及びBC-1-EpケラチノサイトのDNAフィンガープリントは、分析された12の遺伝子座全てで同一であり、NIKS(登録商標)細胞が親BC-1-Ep集団から生じたことを実証している。親BC-1-EpDNAフィンガープリントを偶然に有するNIKS(登録商標)細胞株の確率は、4×10-16である。ヒトケラチノサイトの3つの異なる供給源、ED-1-Ep、SCC4、及びSCC13yからのDNAフィンガープリントは、BC-1-Epパターンとは異なる。このデータはまた、他のヒト、ED-1-Ep、SCC4、及びSCC13yから単離されたケラチノサイトが、BC-1-Ep細胞と、又は互いに無関係であることを示す。NIKS(登録商標)DNAフィンガープリントデータは、NIKS(登録商標)細胞株を同定する明確な方法を提供する。
【0050】
p53機能の喪失は、培養細胞における増殖の可能性の増強及び不死の頻度の増加と関連している。NIKS(登録商標)細胞におけるp53の配列は、公開されているp53配列と同一である(GenBank受託番号:M14695)。ヒトでは、p53は、コドン72でのアミノ酸によって区別される2つの優勢な多型形態で存在する。NIKS(登録商標)細胞中のp53の両方の対立遺伝子は、野生型であり、アルギニンをコードするコドン72で配列CGCを有する。p53の他の一般的な形態は、この位置にプロリンを有する。NIKS(登録商標)細胞中のp53の配列全体は、BC-1-Ep前駆細胞と同一である。Rbはまた、NIKS(登録商標)細胞において野生型であることが見出された。
【0051】
固定物非依存的増殖は、インビボでの腫瘍形成性と高度に相関する。このため、寒天又はメチルセルロース含有培地中のNIKS(登録商標)細胞の固定物非依存的な増殖特性を調査した。NIKS(登録商標)細胞は、寒天又はメチルセルロース含有培地のいずれかいおいて4週間後に単一細胞として残った。NIKS(登録商標)細胞の増殖が遅い変異体を検出するために、アッセイを合計8週間継続した。いずれも観察されなかった。
【0052】
親BC-1-Epケラチノサイト及び不死NIKS(登録商標)ケラチノサイト細胞株の腫瘍形成性を決定するために、細胞を無胸腺ヌードマウスの脇腹に注射した。ヒト扁平上皮がん細胞株SCC4を、これらの動物における腫瘍産生の陽性対照として使用した。試料の注射は、動物が一方の側腹にSCC4細胞を受け、反対側腹に親BC-1-Epケラチノサイト又はNIKS(登録商標)細胞のいずれかを受けるように設計された。この注射戦略により、腫瘍産生における動物間のバリエーションが排除され、マウスが腫瘍形成性細胞の活発な増殖を支持することが確認された。親BC-1-Epケラチノサイト(継代6)又はNIKS(登録商標)ケラチノサイト(継代35)のいずれも、無胸腺ヌードマウスにおいて腫瘍を産生しなかった。
【0053】
NIKS(登録商標)細胞を、液内培養及び器官型培養の両方において、分化を受ける能力について分析した。器官型培養のための技術は、実施例に詳細に記載されている。特に好ましい実施形態では、本発明の器官型的に培養された皮膚等価物は、コラーゲン又は同様の材料及び線維芽細胞から形成された真皮等価物を含む。ケラチノサイト、例えば、NIKS(登録商標)細胞又はNIKS(登録商標)細胞と患者由来の細胞との組み合わせを真皮等価物上に播種し、器官型培養プロセス後に扁平上皮分化によって特徴付けられる表皮層を形成する。
【0054】
液内培養中の細胞について、角化エンベロープの形成を、扁平上皮分化のマーカーとして監視した。培養されたヒトケラチノサイトにおいて、角化エンベロープアセンブリの初期段階は、成熟角化エンベロープの最も内側の3分の1を表すインボルクリン、シスタチン-a、及び他のタンパク質で構成される未成熟構造の形成をもたらす。付着性BC-1-Ep細胞又はNIKS(登録商標)細胞株由来のケラチノサイトの2%未満が、角化エンベロープを産生する。この知見は、活発に成長するサブコンフルエントなケラチノサイトが5%未満の角化エンベロープを生成することを実証する以前の研究と一致している。NIKS(登録商標)細胞株が、分化を誘導された場合、角化エンベロープを産生することができるかどうかを決定するために、細胞を接着培養物から取り出し、メチルセルロースで半固体にした培地中に24時間懸濁した。ケラチンの差次的発現及び角化エンベロープ形成を含む末端分化の多くの態様は、ケラチノサイト細胞-細胞及び細胞-基質接着の喪失によってインビトロで誘発され得る。NIKS(登録商標)ケラチノサイトは、親ケラチノサイトと同じくらい多く、通常はそれより多くの角化エンベロープを産生した。これらの知見は、NIKS(登録商標)ケラチノサイトが、この細胞型特異的分化構造の形成を開始する能力に欠陥がないことを実証している。
【0055】
NIKS(登録商標)ケラチノサイトが扁平上皮分化を受けることができることを確認するために、細胞を器官型培養物中で培養した。プラスチック基質上で増殖し、培地中に浸したケラチノサイト培養物は、複製するが、分化は限定的である。具体的には、ヒトケラチノサイトはコンフルエントになり、3つ以上の層のケラチノサイトからなるシートを産生する限定的な層化を受ける。光学及び電子顕微鏡によれば、液内培養で形成された多層シートの構造と無傷のヒト皮膚との間に顕著な違いがある。対照的に、器官型培養技術は、インビボ様条件下でケラチノサイトの増殖及び分化を可能にする。具体的には、細胞は、線維性コラーゲンベース内に包埋された真皮線維芽細胞からなる生理学的基質に接着する。器官型培養物は、空気-培地界面で維持される。このようにして、上部シートにおける細胞は、空気曝露され、増殖する基底細胞は、コラーゲンゲルを介した拡散によって提供される栄養素の勾配に最も近いままである。これらの条件下で、正しい組織構造が形成される。正常な分化表皮のいくつかの特徴が明らかである。親細胞及びNIKS(登録商標)細胞株の両方において、立方体基底細胞の単層は、表皮及び真皮等価物の接合部に存在する。丸みを帯びた形態及び高い核質対細胞質比は、積極的に分裂しているケラチノサイトの集団を示す。正常なヒト表皮では、基底細胞が分裂するにつれて、それらは、組織の分化層に上向きに移動する娘細胞を生じさせる。娘細胞は大きさが大きくなり、平らに、扁平状になる。最終的に、これらの細胞は、除核し、角化され角質化された構造(cornified,keratinized structure)を形成する。この正常な分化プロセスは、親細胞及びNIKS(登録商標)細胞の両方の上層で明らかである。平らな扁平上皮細胞の出現は、上部表皮層において明らかであり、器官型培養において層化が生じていることを実証している。器官型培養の最上部では、除核された鱗が培養物の上部から剥離する。今日まで、器官型培養物中で増殖した親ケラチノサイトとNIKS(登録商標)ケラチノサイト細胞株との間の光学顕微鏡レベルでの分化における組織学的差は観察されていない。
【0056】
親(継代5)及びNIKS(登録商標)(継代38)器官型培養のより詳細な特徴を観察し、組織学的観察を確認するために、試料を電子顕微鏡を使用して分析した。親細胞及び不死化NIKS(登録商標)ヒトケラチノサイト細胞株を、器官型培養物中で15日後に採取し、基底層に垂直に切片化して、層化の程度を示した。親細胞及びNIKS(登録商標)細胞株の両方が、器官型培養において広範囲の層化を受け、通常のヒト表皮に特徴的な構造を形成する。豊富なデスモソームが、親細胞及びNIKS(登録商標)細胞株の器官型培養物中に形成される。親細胞及び細胞株の両方の基底ケラチノサイト層における基底層及び関連するヘミデスモソームの形成も注目された。
【0057】
ヘミデスモソームは、ケラチノサイトの基底層への接着を増加させ、組織の完全性及び強度を維持するのに役立つ特殊な構造である。これらの構造の存在は、親細胞又はNIKS(登録商標)細胞が多孔質支持体に直接結合していた領域で特に明らかであった。これらの所見は、線維芽細胞含有多孔質支持体上で培養されたヒト包皮ケラチノサイトを使用した初期の超微細構造所見と一致している。光学及び電子顕微鏡レベルの両方での分析は、器官型培養物中のNIKS(登録商標)細胞株が、正常なヒト表皮に見られる別化、分化、並びにデスモソーム、基底層、及びヘミデスモソームなどの構造を形成することができることを実証している。
【0058】
いくつかの実施形態では、多孔質膜上に支持され、容器アセンブリとともに封入される組織は、凍結保存される。この組織が皮膚等価物である場合、凍結保存された皮膚等価物は、生存率の実質的な損失なしに、約-50C、-60C、-70C、-80C、又はより低温で、1、2、3、4、5又は6ヶ月超で、最大12又は24ヶ月などの長期間、保管可能であることが好ましい。
【0059】
好ましい実施形態では、製品パッケージング前の凍結保存プロセスの全てのステップは、クラス10000クリーンルーム内のクラス100バイオセーフティキャビネット内で無菌的に実施される。いくつかの実施形態では、凍結保存プロセスは、凍結保護剤溶液中で器官型的に培養された皮膚等価物を処理することを含む。器官型的に培養された皮膚等価物は、本開示のトレイの多孔質膜上で支持され、トレイは、本開示の培養器又は組織容器アセンブリなどの好適な器に配置される。好適な量の凍結保護剤溶液を容器に添加して、多孔質膜と接触させるが、組織を浸さず、その基部を介して組織に凍結保護剤を移すことを可能にする。本発明の特定の実施形態は、任意の特定の凍結保護剤の使用に限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、凍結保護剤は、グリセロールである。凍結保護剤は、凍結保護剤溶液中に異なる濃度で提供され得る。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、温度に応じて、溶液の約20体積%若しくは21体積%~約70体積%、より好ましくは溶液の約20体積%若しくは21体積%~約45体積%、若しくは溶液の37.5%~62.5%、又は最も好ましくは溶液の約25体積%~40体積%、若しくは溶液の42.5%~57.5体積%を構成する溶液中で提供される。いくつかの実施形態では、凍結保護剤溶液は、好ましくは、約32.5%v/v又は約50%v/vの凍結保護剤(例えば、グリセロール)を含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、基礎培地溶液中で提供される。好適な基礎培地溶液としては、DMEM、Ham’s F-10、Ham’s F-12、DMEM/F-12、Medium 199、MEM、及びRPMIが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、基礎培地は、溶液体積の残りを形成する。いくつかの実施形態では、凍結保護溶液は、緩衝される。好適な緩衝剤としては、HEPES、Tris、MOPS、及びTrizma緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。緩衝剤は、pH7.0~7.4の範囲の緩衝系を提供する量で含まれ得る。いくつかの好ましい実施形態では、凍結保護剤溶液は、約5mM~15mMのHEPES、最も好ましくは約10mMのHEPESで、約7.0~7.4のpHに緩衝される。
【0060】
いくつかの特に好ましい実施形態では、凍結保護剤溶液での処理は、単一ステップで実施される。「単一ステップ」とは、当該技術分野で一般的であるように、凍結保護剤溶液が平衡化手順中に交換されないことを意味する。例えば、処理ステップは、各ステップで凍結保護剤の濃度が増加するにつれていくつかの媒体が変化する段階的平衡化手順とは対照的に、規定された濃度の凍結保護剤を有する凍結保護剤溶液で実施される。いくつかの実施形態では、処理ステップは、低温で実施される。好ましい実施形態では、処理ステップは、約2C~8Cで実施されるが、他の実施形態では、処理ステップは、室温、例えば、約15C~30Cで実施される。いくつかの実施形態では、皮膚等価物は、凍結保護剤溶液中で約10~60分間、好ましくは約20~30分間インキュベーションされる。
【0061】
いくつかの実施形態では、トレイの多孔質膜上で支持される皮膚等価物は、凍結保護剤溶液での処理後、好ましくは、例えば、溶液を吸引するか、又は処理された皮膚を新鮮な器(例えば、本開示の滅菌培養器又は滅菌組織容器アセンブリ)に移動させることによって過剰な凍結保護剤溶液が皮膚等価物から除去された後、凍結される。したがって、いくつかの実施形態では、トレイの多孔質膜上に支持される処理された皮膚等価物は、約-50C~-100C、及び最も好ましくは約-80Cの範囲の温度への曝露によって凍結される。いくつかの好ましい実施形態では、処理された皮膚等価物を有するトレイは、単にバッグ又は他の器(例えば、本開示の滅菌培養器又は滅菌組織容器アセンブリ)に配置され、低温(例えば、-80℃冷凍庫)凍結ユニットなどの凍結ユニットに配置される。対照的に、凍結ユニット内の温度を制御すること、又は温度の低下速度の制御を可能にする容器内に凍結される組織を配置することのいずれかによって、凍結速度を制御することは、当該技術分野で一般的である。
【0062】
いくつかの実施形態では、凍結保存された皮膚等価物は、長期保管のためにパッケージングされる。いくつかの好ましい実施形態では、皮膚等価物は、そのトレイにおいて、上で詳細に説明されるように、底部及び上部容器で封入される。いくつかの実施形態では、ヒト皮膚等価物を含有するアセンブリは、一次パッケージを提供するために、密封され、好ましくは、滅菌バッグ(例えば、プラスチック、ホイル、又はポリマーバッグ)内で熱密封される。いくつかの実施形態では、次いで、一次パッケージは、二次バッグ、例えば、二次プラスチック、ホイル、又はマイラーバッグ内に密封される。他の実施形態では、一次パッケージは、ラミネートされたホイルポーチであってもよい。本発明の凍結保存された組織は、好ましくは、約-50C~約-100C又はそれ以下、好ましくは約-80Cの低温で保存され得る。皮膚等価物は、好ましくは、生存率の実質的な損失なしに、約1、2、3、4、5又は6ヶ月から最大12又は24ヶ月まで保管され得る。
【0063】
好ましい実施形態では、本開示の滅菌底部容器に挿入されるそのトレイ内の器官型的に培養された皮膚等価物を、上記の凍結保護剤溶液で処理する。下部容器から凍結保護剤溶液を吸引することによって、過剰な凍結保護剤溶液を凍結前に皮膚等価物から除去する。次いで、そのトレイ内の処理された皮膚等価物を本開示の滅菌上部容器で封入し、それによって組織容器システムを形成する。代替的には、処理された皮膚等価物を有するトレイを本開示の第2の滅菌された底部容器に移動させることによって、過剰な凍結保護剤溶液を凍結前に皮膚同等物から除去し、次いで、トレイを本開示の滅菌された上部容器で封入し、それによって組織容器システムを形成する。次いで、処理されたヒト皮膚等価物を含有する組織容器システムは、一次パッケージを提供するために、密封され、好ましくは、滅菌バッグ(例えば、プラスチック、ホイル、又はポリマーバッグ)内で熱密封される。いくつかの実施形態では、一次パッケージは、二次バッグ、例えば、二次プラスチック、ホイル、又はマイラーバッグ内に密封され得る。他の実施形態では、一次パッケージは、ラミネートされたホイルポーチであってもよい。次いで、一次バッグ又は二次バッグは、約-50C~約-100C、好ましくは、約-80Cの低温で保管される。皮膚等価物は、生存率の実質的な損失なしに、約1、2、3、4、5又は6ヶ月から最大12又は24ヶ月まで保管され得る。
【0064】
別の好ましい実施形態では、培養器に配置されたそのトレイ内の器官型的に培養された皮膚等価物を、上記の凍結保護剤溶液で処理する。処理された皮膚等価物を有するトレイを本開示の滅菌された底部容器に移動させることによって、過剰な凍結保護剤溶液を凍結前に皮膚同等物から除去し、次いで、トレイを本開示の滅菌された上部容器で封入し、それによって組織容器システムを形成する。次いで、処理されたヒト皮膚等価物を含有する組織容器システムは、一次パッケージを提供するために、密封され、好ましくは、滅菌バッグ(例えば、プラスチック、ホイル、又はポリマーバッグ)内で熱密封される。いくつかの実施形態では、一次パッケージは、二次パッケージを製造するために、二次バッグ、例えば、二次プラスチック、ホイル、又はマイラーバッグ内に密封され得る。他の実施形態では、一次パッケージは、ラミネートされたホイルポーチであってもよい。次いで、一次パッケージ又は二次パッケージは、約-50C~約-100C、好ましくは、約-80Cの低温で保管される。皮膚等価物は、生存率の実質的な損失なしに、約1、2、3、4、5又は6ヶ月から最大12又は24ヶ月まで保管され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象に適用する前に凍結保存された皮膚等価物を解凍する方法であって、上述のように組織容器システムにおける凍結保存された組織を提供することと、上部組織容器を除去して凍結保存された組織を曝露することと、凍結保存された組織が解凍して解凍された組織を提供する条件下で、下部組織容器内のリザーバを液体媒体で充填することであって、組織内に含有される凍結保護剤が、液体媒体内に希釈され、凍結保護剤が実質的に含まれていない組織を残す、充填することと、を含む、方法を提供する。他の実施形態では、本方法は、凍結保存された組織を含む組織容器システムを含む一次パッケージ又は二次パッケージを冷凍庫又は出荷容器から取り出すことと、組織容器システムをパッケージから取り出すことと、上部組織容器を除去して凍結保存された組織を曝露することと、移された凍結保存された組織が解凍して解凍された組織を提供し、組織内に含まれる凍結保護剤が液体媒体中に希釈されるように、凍結保存された皮膚等価物を有するトレイを第1の組織容器から、滅菌であり、滅菌野でステージされ、容器リザーバ内に液体媒体を含有する、第2の組織容器に移すことと、を含む。上記実施形態のいくつかでは、液体媒体は、組織適合性溶液、好ましくは緩衝溶液である。好適な組織適合性溶液としては、DMEM、Ham’s F-10、Ham’s F-12、DMEM/F-12、Medium 199、MEM、及びRPMIが挙げられるが、これらに限定されない。好適な緩衝剤としては、HEPES、Tris、MOPS、及びTrizma緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。緩衝剤は、pH7.0~7.4の範囲の緩衝系を提供する量で含まれ得る。更に他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物を有するトレイを組織容器から取り出し、吸収性媒体上に配置して、解凍された凍結保護剤溶液を皮膚等価物から除去する。吸収性媒体は、任意の好適な、好ましくは滅菌の器(例えば、培養器又は新鮮な組織容器アセンブリ)内にあり得る。本発明は、特定の吸収性媒体の使用に限定されない。好適な吸収性媒体としては、Telfa(登録商標)パッド、セルロースパッド(例えば、Whatman1003-090フィルターパッド及びPall70010フィルターパッド)、ガーゼパッド、及びフォームパッド(例えば、Covidien55544親水性フォームパッド)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、吸収性媒体は、Telfa(登録商標)パッドである。いくつかの実施形態では、吸収性媒体は、組織適合性溶液を更に含む。いくつかの実施形態では、組織適合性溶液は、緩衝溶液である。好適な組織適合性溶液としては、DMEM、Ham’s F-10、Ham’s F-12、DMEM/F-12、Medium 199、MEM、及びRPMIが挙げられるが、これらに限定されない。好適な緩衝剤としては、HEPES、Tris、MOPS、及びTrizma緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。緩衝剤は、pH7.0~7.4の範囲の緩衝系を提供する量で含まれ得る。
【0066】
本発明の凍結保存された皮膚等価物は、解凍後に治療的に使用され得ることが企図される。いくつかの実施形態では、凍結保存された皮膚代替物は、創傷閉鎖及び火傷治療用途において、解凍後に使用される。火傷の治療及び創傷閉鎖のための自己移植片及び同種移植片の使用は、Myers et al.,A.J.Surg.170(1):75-83(1995)、並びに米国特許第5,693,332号、同第5,658,331号、及び同第6,039,760号に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、皮膚等価物は、DERMAGRAFT又はINTEGRAなどの皮膚置換物と併せて使用されてもよい。したがって、本発明は、潰瘍又は火傷によって引き起こされる創傷を含む創傷閉鎖のための方法であって、本開示の組織容器システムにおける凍結保存された皮膚等価物を提供することと、皮膚等価物を解凍することと、創傷が閉鎖されるような条件下で、創傷に罹患している患者を解凍された皮膚等価物で治療することと、を含む方法を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、皮膚等価物は、慢性皮膚創傷を治療するために利用される。慢性皮膚創傷(例えば、静脈潰瘍、糖尿病性潰瘍、褥瘡)は深刻な問題である。そのような創傷の治癒には、多くの場合、1年以上の治療がかかる。現在の治療選択肢には、包帯及び創面切除(壊死組織を消し去るための化学薬品又は手術の使用)、並びに/又は感染症の場合の抗生物質が含まれる。これらの治療選択肢には、長期間及び高いレベルの患者コンプライアンスがかかる。したがって、慢性創傷の治癒における開業医の成功を高め、創傷治癒の速度を加速することができる療法は、本分野で満たされていないニーズを満たすであろう。したがって、本発明は、凍結保存された皮膚等価物による皮膚創傷の治療を企図する。いくつかの実施形態では、皮膚等価物は、解凍後に、創傷に局所的に適用される。他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物は、解凍後に、部分的な厚さの創傷に適用するために使用される。他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物は、解凍後に、全厚創傷を治療するために使用される。他の実施形態では、凍結保存された皮膚等価物は、解凍後に、胃腸管に沿った粘膜の内部創傷、潰瘍性大腸炎、及びがん療法によって引き起こされ得る粘膜の炎症が含まれるが、これらに限定されない多数の種類の内部創傷を治療するために使用される。更に他の実施形態では、宿主防御ペプチド又は血管新生促進因子を発現する皮膚等価物は、解凍後に、一時的又は永久的な創傷包帯として使用される。
【0068】
なお更なる実施形態では、細胞は、対象に追加の治療剤を提供するように操作される。本発明は、任意の特定の治療剤の送達に限定されない。実際、酵素、ペプチド、ペプチドホルモン、他のタンパク質、リボソームRNA、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)マイクロRNA(miRNA)、及びアンチセンスRNAを含むが、これらに限定されない、様々な治療剤が対象に送達され得ることが企図される。好ましい実施形態では、薬剤は、ヒトベータ-ディフェンシン1、2、若しくは3などの宿主防御ペプチド、又はカテリシジン、あるいはVEGF及びHIF-1aなどの他のタンパク質であり、例えば、米国特許第7,674,291号、同第7,807,148号、同第7,915,042号、同第7,988,959号、及び同第8,092,531号を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの治療剤は、遺伝的欠陥を修正する目的を含むが、これらに限定されない、様々な目的のために送達され得る。いくつかの特定の好ましい実施形態では、治療剤は、皮膚等価物が野生型組織として機能する遺伝性先天性の代謝異常(例えば、アミノ酸合成)を有する患者を解毒する目的で送達される。治療剤の送達が欠陥を修正することが企図される。いくつかの実施形態では、細胞を、治療剤(例えば、インスリン、凝固第IX因子、エリスロポエチンなど)をコードするDNA構築物でトランスフェクションし、トランスフェクションされた細胞から調製された皮膚等価物が対象に投与される。次いで、治療剤は、移植片から患者の血流又は他の組織に送達される。好ましい実施形態では、治療剤をコードする核酸は、好適なプロモーターに操作可能に連結される。本発明は、任意の特定のプロモーターの使用に限定されない。実際、誘導性、構成的、組織特異的、及びケラチノサイト特異的プロモーターを含むが、これらに限定されない、様々なプロモーターの使用が企図される。いくつかの実施形態では、治療剤をコードする核酸は、ケラチノサイトに直接導入される(すなわち、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈殿、又はリポソームトランスフェクションによって)。他の好ましい実施形態では、治療剤をコードする核酸は、ベクターとして提供され、ベクターは、当該技術分野で既知の方法によってケラチノサイトに導入される。いくつかの実施形態では、ベクターは、複製プラスミドなどのエピソームベクターである。他の実施形態では、ベクターは、ケラチノサイトのゲノムに組み込まれる。組み込みベクターの例としては、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、非複製プラスミドベクター、及びトランスポゾンベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例
【0069】
以下の実施例は、本発明のある特定の好ましい実施形態及び態様を実証し、更に例示するために提供され、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0070】
以下の実験的開示では、以下の略語が適用される:eq(当量)、M(モル濃度)、mM(ミリモル濃度)、μM(マイクロモル濃度)、N(通常)、mol(モル)、mmol(ミリモル)、μmol(マイクロモル)、nmol(ナノモル)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、lig(マイクログラム)、ng(ナノグラム)、l又はL(リットル)、ml又はmL(ミリリットル)、μl又はμL(マイクロリットル)、cm(センチメートル)、mm(ミリメートル)、pm(マイクロメートル)、nm(ナノメートル)、C(摂氏度)、U(単位)、mU(ミリ単位)、min(分)、sec.(秒)、%(パーセント)、kb(キロ塩基)、bp(塩基対)、PCR(ポリメライゼ(polymerise)連鎖反応)、BSA(ウシ血清アルブミン)、CFU(コロニー形成単位)、kGy(キログレイ)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、BCA(ビシンコニン酸)、SDS-PAGE(デシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)。
【0071】
実施例1
StrataGraft(登録商標)皮膚組織は、通常の人間の皮膚の構造的及び生物学的特性の多くを再現する、生きている、完全な厚さの同種異系ヒト皮膚代替物である。StrataGraft(登録商標)皮膚組織は、病原体を含まないヒトケラチノサイト前駆体の一貫した十分に特徴付けられた供給源であるNIKS(登録商標)細胞に由来する生存可能で完全に層化された表皮層と、コラーゲンリッチマトリックスに包埋された正常なヒト真皮線維芽(NHDF)を含有する真皮層との両方を含有する。StrataGraft(登録商標)皮膚組織は、優れた引張強度及び取り扱い特性を有しており、ヒト皮膚移植片と同様にメッシュ化、ステープル止め、及び縫合することが可能である。また、StrataGraft(登録商標)は、無傷のヒトの皮膚に相当するバリア機能を示し、創傷床状態及び組織再生のための生体活性分子を送達することができる。StrataGraft(登録商標)皮膚組織の物理的及び生物学的特性により、様々な皮膚創傷の治療に理想的である。
【0072】
StrataGraft(登録商標)皮膚組織の製造プロセスは、3つの連続した細胞及び組織培養プロセスを包含する。製造プロセスのステージIでは、NIKS(登録商標)ケラチノサイトを単層細胞培養で増殖させる。ステージIにおけるNIKS(登録商標)ケラチノサイト培養と同時に、NHDFを単層培養で増殖させ、精製されたI型コラーゲン及び培養培地と組み合わせ、ゲル化させて細胞化真皮等価物(DE)を形成する。代替的には、NHDFをTranswell(登録商標)挿入物(Corning)に播種し、増殖させ、細胞外マトリックス分子を分泌し、単純化された真皮等価物にアセンブルすることを可能にする。ステージIIでは、NIKS(登録商標)ケラチノサイトをDEの表面上に播種し、液内条件下で2日間培養して、DE表面の完全な上皮形成を促進する。次いで、ステージIIIにおいて、組織を空気-液体界面に持ち上げ、組織の成熟を促進するために、制御された低湿度環境で18日間維持する。皮膚等価物は、概して、米国特許第7,674,291号、同第7,807,148号、同第7,915,042号、同第7,988,959号、同第8,092,531号、及び米国特許公開第2014/0271583号に記載されるように調製され、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
実施例2
この実施例は、室温で32.5%又は50%のグリセロールを含有する凍結保存溶液を用いた凍結前処理ステップを利用するヒト皮膚等価物の改善された凍結保存方法を説明、それが同時係属中の米国特許公開第2014/0271583号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一般的な製造プロセスは、前述の現在の方法から変更されていない。製造プロセスの最後に、組織を処理し、以下のように凍結保存する。
【表1】
【0074】
最終製品パッケージングステップの凍結保存プロセスの全てのステップは、クラス10000クリーンルーム内のクラス100バイオセーフティキャビネット内で無菌的に実施される。この実施例で記載される特定の体積及び皿は、本開示のより大きな長方形の形式ではなく、以前の円形、44cm形式で生成された組織に適用可能である。
【0075】
ステップ1-20mlの凍結保護剤溶液を100mm培養皿に分注する。
【0076】
ステップ2-StrataGraft(登録商標)組織を含有するTranswell(登録商標)挿入物を、凍結保護剤溶液を含む個々の皿に移す。組織を凍結保護剤溶液中で15~45分間インキュベーションする。
【0077】
ステップ3-処理されたStrataGraft(登録商標)組織を含有するTranswell(登録商標)挿入物を、組織が培養皿の底部に置かれるように、最終製品ラベルを含有する新しい滅菌100mm培養皿に移す。過剰な凍結保護剤を皮膚等価物から排出して、皮膚等価物の外面上に過剰な凍結保護剤を実質的に含まない処理された皮膚等価物を提供することができる。
【0078】
ステップ4-100mm培養皿を透明で滅菌バッグに熱密封する。一次パッケージを二次マイラーバッグに入れ、熱密封する。
【0079】
ステップ5-パッケージングされたStrataGraft(登録商標)組織をクリーンルームから取り出し、組織を超低温冷凍庫(-70℃~-90℃)に移す。冷凍庫内の予め冷却されたラックに組織を置き、それはパッケージングされた組織の上部及び下部に無制限に空気が流れるようにして、均一で迅速な冷却を確保できる。凍結プロセス中は、組織を一晩静置する。
【0080】
凍結保存された組織を室温で10分間解凍し、室温(RT)に温めた40mLのHEPES緩衝培養培地で飽和したTelfa(登録商標)パッドを含む保持チャンバに移し、RTで15~20分間保持した。組織を、90mLのSMO1培地を含む培養皿に移し、一晩培養物に戻した。組織を、一晩の再培養後の生存率について分析した。32.5%のグリセロールで室温で15~45分間処理した組織は、解凍後の生存率が許容可能であった。50%のグリセロールで15分間室温で処理した組織も、許容できる生存率を有したが、50%のグリセロールで45分間室温で処理した組織は、許容できない生存率を有した。
【0081】
実施例3
この研究は、凍結保存されたStrataGraft(登録商標)組織のためのパッケージングとしての使用のための、本開示の組織容器アセンブリである製品パッケージングプラスチックウェアの性能を評価するために実施された。この研究は、Transwell(登録商標)増殖チャンバにパッケージングされた組織、及び本明細書に記載の組織容器にパッケージングされた組織を比較して、3つの独立したロットの長方形の100cmのStrataGraft(登録商標)組織を評価した。各バッチについて、本発明の組織容器にパッケージングされた組織の解凍後特性を、異なる保持条件に従って評価し、現在のパッケージング及び解凍/保持手順を使用した対照組織のものと比較した。この研究の結果は、本発明の組織容器が凍結保存されたStrataGraft(登録商標)組織の輸送及び解凍における使用に好適であり、Telfa(登録商標)パッドを使用せずに滅菌野で許容可能な解凍が達成され得ることを実証した。
【0082】
StrataGraft(登録商標)皮膚組織は、100cmのStrataGraft(登録商標)皮膚組織のバッチで製造される。このより大きな組織形式及びバッチの大きさの増加は、皮膚組織の効率的な保管及び出荷に更に重点を置く。この問題に対処するために、共同係属中の米国特許公開第2014/0271583号に開示されているように、最終のパッケージングされた製品の体積をTranswell(登録商標)増殖チャンバ内のパッケージングと比較して60%低減させるプラスチックウェア組織容器を設計した。この実施例では、このパッケージングは、凍結保護剤処理後で、製品がホイルポーチに密封され、長期保管のために超低温冷凍庫に移される直前のプロセスに導入される。本発明の組織容器は、保持溶液で浸水することができる、組織の下に0.75mmの深さのリザーバを有するように設計された。この設計により、パッケージングを解凍後の保持容器として使用することができ、別個の保持鉢の必要性を排除することにより、臨床使用のためのStrataGraft(登録商標)組織の調製を簡素化する。
【0083】
この実験は、3つのバッチからのStrataGraft(登録商標)皮膚組織の解凍後の特性を評価し、Transwell(登録商標)増殖チャンバ又は本発明の組織容器のいずれかにおいて凍結した。加えて、本研究は、Telfa(登録商標)パッドを含む鉢で実施される対照保持条件と比較して、Telfa(登録商標)パッドを使用せずに本発明の組織容器で実施される解凍後保持手順を評価した。
【表2-1】
【表2-2】
【0084】
20個の長方形、100cmのStrataGraft(登録商標)皮膚組織のバッチを、標準プロセスを使用して製造した。簡潔に述べると、NIKS(登録商標)細胞及び正常なヒト真皮線維芽(NHDF)を単層培養で増殖させた。NHDFを解凍し、単層で増殖させた。増殖後、NHDF細胞を採取し、I型コラーゲン溶液に混合し、本開示の100cm長方形トレイ(組織培養処理されたポリカーボネート膜、約10ミクロンの公称厚さ、約0.4ミクロンの公称孔径)に分注し、ゲル化して、真皮等価物層(DE)を作製した。ゲル化後、DEを増殖チャンバ内の培地中に浸し、NIKS(登録商標)播種の前に5日間培養した。NIKS(登録商標)を解凍し、増殖し、次いで採取し、DE表面上に播種した。組織を液内培養で2日間維持して、DE表面上でNIKS(登録商標)の結合及び増殖を可能にし、次いで、空気-液体界面で18日間培養して、完全な表皮分化を可能にした。培地、NHDF/コラーゲン混合物、及びNIKS(登録商標)懸濁液のトレイ及びTranswell(登録商標)増殖チャンバへの移送を、蠕動ポンプを使用して実施した。
【0085】
製造プロセスの最後に、培養培地を吸引し、トレイの膜上に支持されたまま、室温(RT)で20分間、37.5%のグリセロールを含有する50mLの凍結保存溶液で、Transwell(登録商標)増殖チャンバ内で組織を処理した。処理の終了時に、この実験のために指定された9つの組織を含むトレイを過剰な凍結保存溶液から取り出し、2つのパッケージング構成のうちの1つにパッケージングした。1)3つの組織をTranswell(登録商標)増殖チャンバ内の高い位置に保持し、7.875インチ×12インチのホイルポーチ内に密封し(群1)、2)6つの組織を本発明の滅菌組織容器に移し、6.75インチ×10.25インチのホイルピールポーチ(群2及び群3、1群当たりn=3)内に密封した。パッケージングの最後に、全てのパッケージングされた組織を超低温冷凍庫に移し、分析まで-70~-90℃で保管した。
【0086】
次いで、群1及び群2の組織を、吸収性媒体(例えば、Telfa(登録商標)パッド)を利用する以前に確立された手順を使用して解凍した。群3の組織を、簡略化された保持手順を使用して解凍した。簡潔に述べると、群3の凍結保存された組織を、組織が凍結された組織容器内で、室温で10分間解凍し、次いで、下部組織容器を保持溶液(35~39Cに温めた15mLのHEPES緩衝培養培地)で浸水し、室温で15~20分間保持した。解凍後の保持に続いて、全ての群からの組織を、SM01を含む新しい長方形の増殖チャンバに移し、22~26時間再培養した。
【0087】
組織を、条件培地における外観、バリア機能、生存率、組織学、及びVEGF分泌について評価した。加えて、組織生存率の均一性を評価するために、全組織MTT染色を実施した。本発明の組織容器(群2及び3)で凍結された組織の結果を、対照群のものと比較した。
【0088】
この研究の結果は、本発明の組織容器の使用が凍結保存されたStrataGraft(登録商標)組織の特性に影響を及ぼさないことを実証している。2つの構成でパッケージングされ、以前に確立された手順(群1及び2)を使用して解凍/保持された組織は、同等の外観、組織学、生存率、及びバリア機能、並びにVEGF分泌を有した。本発明の組織容器はまた、簡略化された保持手順で使用するための有望な結果を示した。解凍後保持のために本発明の組織容器にパッケージングされ及び保持された組織(群3)は、他の両方の群と同様の特性を有した。組織外観、組織学、VEGF分泌、及びバリア機能は、対照組織(群1)と有意差はなかった。生存率は、依然として確立されたロット放出基準を容易に上回るが、対照と比較して、若干(-10%)であったが、統計的に有意な(p<0.05)低減を示した。全ての群からの組織のMTT染色パターンは同等であり、組織表面にわたって定性的に一貫した染色を有した。図5図6、及び図7を参照されたい。
【0089】
実施例4
同種異系細胞化足場製品を、以下のステップによって調製した。
【0090】
同種異系細胞化足場製品を、ホイルポーチ及びカートンに封入された製品皿に提供した。ホイルポーチ内では、同種異系細胞化足場製品をポリスチレントレイに収容し、ポリスチレントレイ内に含有されたポリカーボネート膜にゆるく接着させた。ポリスチレントレイを、製品皿内に収容した。保持溶液を、ラミネートされたホイルポーチに収容されたプラスチックボトルに提供した。保持する皿を、上部部分及び下部部分からなる透明なポーチに提供した。
【0091】
次いで、保持溶液を、ラミネートされたホイルポーチから取り出した。次いで、保持溶液を加温オーブンに配置して、使用前に少なくとも45分間、又は使用前に少なくとも15分間水浴で、保持溶液を35~39℃に加温した。水浴を使用した場合、ボトルのキャップ又はねじ山は浴槽に浸されていなかった。次いで、操作者は、保持皿を収容する透明なポーチのシールを剥がして開け、次いで、保持皿をポーチから無菌的に取り出し、別の操作者によって滅菌野に配置した。
【0092】
次いで、同種異系細胞化足場製品をカートンから取り出した。次いで、ホイルポーチを剥がして開け、ポリスチレントレイを取り出し、非滅菌表面に配置した。
【0093】
保持溶液を加温オーブンから取り出し、無菌技術を使用して直ちに滅菌保持皿に注いだ。次いで、非滅菌操作者は、ポリスチレン挿入トレイに接触することなく、製品皿から蓋を取り外した。滅菌操作者は、滅菌の手袋をした指又は鉗子のいずれかを使用して、ポリスチレン挿入トレイを製品皿から無菌的に取り出した。次いで、滅菌操作者は、ポリスチレントレイを、一方の端部から始まり、反対側の端部に下ろして、挿入トレイの下に気泡を閉じ込めることを最小限に抑えて、保持皿に配置した。挿入トレイの下に気泡が閉じ込められている場合、無菌操作者は、挿入トレイをゆっくりと持ち上げ、保持溶液にゆっくりと戻す。次いで、同種異系細胞化足場製品を含有する挿入トレイを、保持溶液中に少なくとも15分間、ただし4時間を超えないように維持した。
【0094】
最後に、同種異系細胞化足場製品を、滅菌の手袋をした指又は一対の滅傷の鉗子を使用してポリカーボネート膜から取り出した。次いで、同種異系細胞化足場製品を最大1:1の比率でメッシュ化した。同種異系細胞化足場製品は乾燥させなかった:メッシャー及び組織ボードは、必要に応じて、乾燥を防ぐために保持溶液、滅菌0.9%生理食塩水、又は乳酸リンゲル溶液を使用して湿らせた。
【0095】
実施例5
細胞療法及び組織製品のためのUSPにおける適用可能な試験の欠如により、ASTMガイダンスに従って、製品パッケージング上の酸素透過性及び透湿性研究を実施した。皮膚組織パッケージングの酸素透過を評価するために、ASTM D3985に従って、皮膚組織をパッケージングするために使用されるホイルポーチ材料に対して試験を行った。試験結果は、酸素透過が、<0.003cc/100in/24時間であることを実証した。ポーチの透湿性を評価するために、ASTM F1249に従って追加の試験を行った。結果は、<0.0065g/100cm/24時間の透湿性を実証した。結果は、皮膚組織ホイルポーチが、皮膚組織の酸素及び水分からの適切なバリアを提供することができることを支持する。
【0096】
微生物汚染からの主なバリアはポーチであり、したがって、この構成要素は密封の完全性について評価された。容器閉鎖の完全性も検証された。追加的に、密封の完全性は、開放時の無菌試験を通して、及び安定性プログラムの一部として実証された。
【0097】
実施例6
USP<661>Biological Tests - Plastics and Other Polymersに従い、生物学的反応性試験は、USP<87>Biological Reactivity Tests,In Vitroに従って実施した。寒天拡散又は溶出試験のいずれかを、代表的なガンマ滅菌構成要素(組織挿入トレイ及び製品皿)に対して実施した。試験品は、非細胞毒性とみなされ、USP<87>要件を満たした。USP<88>生物学的反応性試験を、製品皿構成要素に対して実施した。結果は、以下の通りであった。
【表3】
【0098】
皮膚組織は、複雑な培養培地で製造され、かつコラーゲン及び生存可能なヒト細胞を含有する生体製品であるため、最終製品を使用した化学浸出物の従来の分析は実行不可能であった。最終製品中の多量の大及び小分子量の化合物、並びに干渉物質が存在する可能性が高いことは、最終製品中の浸出物を検出及び識別する能力を著しく制限する。したがって、製造及びパッケージング構成要素の認定の一部として、製造及び長期保管中に皮膚組織と接触する媒体構成要素内の浸出性化合物の定量化を可能にする分析方法が開発された。
【0099】
皮膚組織の製造中に使用される増殖チャンバアセンブリは、以下に示すように、2つの構成要素部品、1)組織挿入物及び2)組織挿入物を支持し、封入する培養リザーバ及び蓋からなる増殖チャンバからなる。
【表4-1】
【表4-2】
【0100】
まとめると、増殖チャンバ及び組織挿入物は、増殖チャンバアセンブリを構成した。StrataGraft組織製造には、加湿された5%COインキュベーター内で37±2℃での増殖チャンバアセンブリにおける25日間の培養が含まれた。この期間中、コラーゲン及び細胞を、100cmの組織挿入トレイに維持し、組織の大きさ及び形状を制約し、定義した。多孔質組織挿入膜は、発達全体を通して組織を支持し、増殖チャンバリザーバで、SM(層化培地)基礎培地プラス培地サプリメントで構成された培養培地との栄養素及び廃棄物の交換を可能にした。製造中に定期的な培地交換を行いながら、培地を組織挿入内部(培養期間の一部)及び増殖チャンバリザーバ(全期間)に供給した。
【0101】
増殖チャンバ及び組織挿入アセンブリを製造するために使用される全ての構成要素材料を、USP<87>(インビトロ生物学的反応性)及び/又はUSP<88>(インビボ生物学的反応性)を使用して試験し、それぞれ、細胞毒性を示さず、クラスVI基準を満たすことが見出された。追加的に、これらの材料は、長い器官型培養プロセス中に組織又はその細胞構成要素に顕著な悪影響を及ぼさなかった。組織増殖チャンバ及び組織挿入物で構成される製造構成要素を、抽出物及び浸出物の両方について評価した。
【0102】
製品皿/保持皿パッケージング構成要素も評価した。使用前に、StrataGraft皮膚組織は、パッケージングの一部である製品皿と同一デザインの滅菌保持皿に保持された。これらの構成要素の各々を、水中20%のエタノールを使用した抽出物研究、並びにそれらの製造、保管、及び臨床使用中に構成要素に接触する基礎培地を使用した浸出物研究で試験した。追加的に、製品皿/保持皿パッケージング構成要素について、ヘキサンを使用した抽出物分析を行った。構成要素の各々を、足場製品の非存在下で試験して、製造中に生存可能な皮膚組織によって分泌される成長因子、サイトカイン、ペプチド、及び小分子による分析的干渉を防止した。以下の化合物を浸出物として試験した:カフェイン、ニトロベンゼン-d5、アセナフテン-d10、ジフェニルアミン、ヘキサメトキシホスファゼン、ペンタデカン酸、ヘキサキス(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)ホスファゼン、ペンタクロロフェノール、及びジ(ピペリジン-1-イル)メタンチオン。
【0103】
抽出溶媒として20%のエタノール/80%の水、及び浸出性評価のための溶媒としてSM基礎培地のいずれかを使用して、2つの並行した研究を行った。
【0104】
CramerクラスIIIガイドラインをこの研究において使用して、StrataGraft皮膚組織の単回適用中に最大90μgの未知の化合物の送達を可能にする、AETを定義した。抽出性浸出性研究の目的のために、1日当たり最大30個の組織の最大適用を計算に考慮した。したがって、AETを、組織当たり3μg、又は増殖チャンバ及び組織挿入物アセンブリ当たり3μgに設定した。
【0105】
GC-MS及びHS-GC-MSによる分析では、20%のエタノール試料又はSM基礎培地試料中にAETを超える未知の化合物は得られなかった。20%のエタノール試料及びSM基礎培地試料に対するHPLC-UV-MS分析では、AETを超える任意の未知の化合物は得られなかった。AETを超えていないが、正イオンモードでの20%のエタノール試料中に2つの未知の化合物が検出され(負イオンモードでは未知の化合物はない)、これらは1.5μg/アセンブリを超えていた。暫定的に、未知の化合物1及び2に関連する分子式は、それぞれ、C11ON及びC14Oであった。重要なことに、StrataGraft製造プロセスで使用されるSM基礎培地を使用する試料においては、全ての浸出性化合物が検出のアッセイ限界を下回った。
【0106】
ICP-MS法を使用して抽出性及び浸出性の元素不純物を評価する場合、ほとんどの元素は検出されなかった(ND)か、又は方法のLOQ(定量限界)を下回っていた。試料中の要素の応答が対照中のその要素の応答以下であった場合、したがって、報告された結果は検出されなかった(ND)。抽出物研究では、ホウ素(B)及びアルミニウム(Al)がppm未満の範囲で検出されたが、浸出性研究ではホウ素のみが検出された。スズは、浸出性研究中に1回の反復で、低レベルで検出されたが、検出されたレベルのスズは、レベルが許容される1日許容限度を下回っているため、30個のStrataGraft皮膚組織の投与量を受けている患者にリスクをもたらすことはない。
【0107】
実施例7
製造プロセスの最後に、成熟したStrataGraft組織を、その増殖チャンバ内で、凍結保護剤(CPS)で処理した。その処理の後、組織挿入物中の組織を、滅菌製品皿に移し、次いで、これらをラミネートホイル剥離ポーチ内に密封した。パッケージングされた組織を、パッケージング期間中に室温で最大30分間、短時間保持し、次いで超低温冷凍庫に移して凍結保存を完了した。組織を、保管中に-70~-90℃に維持し、ドライアイス上で輸送した。
【0108】
使用前に、凍結保存されたStrataGraft皮膚組織を解凍し、水性緩衝保持溶液中に保持して、組織中に存在するCPSを希釈した。解凍及び保持手順は、後期臨床及び商業使用のための柔軟性を提供するように最適化された。使用前に、保持溶液ボトルを35~39℃に事前に温め、次いで、内容物(15mL)を滅菌野に配置された滅菌保持皿(パッケージングの一部であった製品皿とデザインが同一である)に注いだ。StrataGraft組織を冷蔵保管から取り出し、パッケージングせず、組織を含有する挿入物を滅菌野に無菌的に移し、保持溶液を含有する保持皿に配置した。組織を溶液中に少なくとも15分間保持して、CPSを適切に希釈し、適用前に皿中で最大4時間保持することができる。
【0109】
組織挿入物中の組織を製品皿に移すことの結果として、少量のCPSを、組織内に含有されるCPS、並びに表面張力を介して培養挿入物の外部上のCPSを含む、製品皿に移した。抽出物及び浸出物研究は、CPSがパッケージング、超低温条件下での保管、及び解凍中に製品皿から抽出することができ、保持溶液及び残留CPSが使用前の保持ステップ中に保持皿から抽出することができる化合物を決定及び監視するように設計された。
【0110】
保持皿及び製品皿は、設計が同一であるため、単一の試験が、保持皿及び製品皿の抽出物試験として機能した。挿入物は、増殖チャンバアセンブリの構成要素として、抽出物及び浸出物について以前に試験された。その研究のためのAETは、製造プロセス中に出てくる全ての浸出物の100%の送達の仮定を使用して計算された。
【0111】
抽出研究は、以下の抽出溶媒及び条件で実施された:37℃、24時間で、HClでpH3の水、37℃、24時間で、NaOHでpH9の水、37℃、24時間で、ヘキサン、37℃、24時間で、20%エタノール/80%水、及び90℃、40分で、なし(頂部GC-MS)。
【0112】
GC-MS、HPLC-UV-MS、及びHS-GC-MSによって試験された試料において、AET(1.0μg/mL)の5%未満が検出されないとみなされた対照と比較して、抽出性化合物は検出されなかった(ND)。
【0113】
ICP-MS分析についての標的要素は、USP<232>及びICH Q3Dガイドラインに基づいて選択された。3つのクラスのそれらの分類及びそれらに対応する許可された1日曝露限界(PDE)は、ICH Q3Dガイドラインで推奨された。要素のほとんどは、検出されなかった(ND)か、又はLOQ未満であった。試料中の要素の応答が対照中の応答以下であった場合、報告された結果は未検出(ND)である。Snは、検出されたが、それぞれの限界をはるかに下回っていた。
【0114】
B及びAlは、低ppbレベルで検出された。アルミニウムの場合、WHOは、成人の場合、飲料水から1.8mg/日を超えないようにすることを推奨している。したがって、アルミニウムのppbレベルは無視でき付程度であり、患者にリスクをもたらすものではない。米国EPAは、飲料水のホウ素を3mg/L(小児が1L/日当たり摂取し、成人が2L/日当たりを摂取すると仮定する)に制限があるため、ホウ素摂取量の1日当たりの安全レベルは、1日当たり3mg~6mgである。したがって、浸出性研究におけるppbレベルのホウ素は無視できる程度であり、患者にリスクをもたらすものではない。
【0115】
実施例8
本研究では、製品皿及び保持皿からの浸出物の可能性を考慮した。製品皿及び保持皿は同一の構成要素であるが、皿の各々は、長期保管及び臨床使用中に異なる培地及び環境条件に曝される。製品皿を、医薬品の貯蔵寿命を通して、-70~-90℃で保管した。使用前に、保持溶液ボトルを35~39℃に事前に温め、次いで、滅菌保持皿に注いだ。保持期間中、保持溶液の一部が組織内に移動し、凍結保護剤を置き換え、組織水和を維持した。臨床使用のために組織を保持皿から取り出されると、保持溶液の記載された部分の体積を、製品の一部として、組織適用時に、患者に送達した。事前に温められた保持溶液への保持皿の曝露期間は、少なくとも15分間かつ最大4時間であった。
【0116】
製品皿の評価のために、3mLのCPSを各製品皿に添加した。3mLのCPS曝露は、StrataGraft皮膚組織の製品皿への移す間に、組織挿入物への付着を介して製品皿に移されることが予想されるCPSの最大量に近似する。CPSを添加した後、製品皿をホイルポーチに密封し、室温で30分間保持した。次いで、製品皿を収容するポーチを、-70~-90℃で長期保管するために超低温冷凍庫に移した。CPS関連構成要素を浸出性化合物から区別するために、時間ゼロ(T0)及び対照試料は、滅菌されたテフロン(登録商標)ボトルに保管されたCPSからなった。浸出物の評価は、T0、及び3、6、12、18、24、及び36ヶ月の時点で実施された。
【0117】
CramerクラスIIIガイドラインをこの研究において使用して、StrataGraft皮膚組織の適用当たり最大90μgの未知化合物を可能にする、AETを定義した。抽出性浸出性研究の目的のために、1日当たり最大30個の組織の最大適用を計算に考慮した。したがって、AETは、1組織当たり3μg又は1製品皿当たり3μgに設定した。
【0118】
臨床使用条件をシミュレーションするために、保持皿浸出物の評価のために1回限りの研究を実施した。各保持皿に添加する前に、3mLのCPS及び15mLの保持溶液を混合した。混合培地を含む保持皿を37℃で4時間:臨床保持の最大許容持続時間、条件付けした。実験は、繰り返しごとに3つの保持皿を用いて二重に実施された。条件付け後、試験溶液は、3つの保持皿からプールされた材料からなった。対照は、試験試料と同じ方法で調製した。3mLのCPS及び15mLの保持溶液をガラスボトル中で合わせ、37℃で4時間条件付けした。
【0119】
組織に移動するCPS及び保持溶液混合物の体積の保存的な推定値を使用して、患者に送達され得る保持皿当たりの浸出物の総量を計算した。StrataGraft皮膚組織の液量は2.5mLを超えないようすべきである。したがって、保持皿中の合計18mLから最大2.5mLが患者に適用された組織に含有されるであろう。したがって、保持皿からの潜在的な露出は、次のように計算される。
【数1】
【0120】
組み合わせたCPS及び保持溶液を含む保持皿の浸出物試験からの結果を、製品皿中のCPS中の足場製品の長期保管を評価する浸出物研究の結果と組み合わせた。例えば、保持皿研究及び長期保管製品皿浸出物研究の両方で浸出性化合物が検出された場合、総曝露は、1つの製品皿及び1つの保持皿からの浸出物の合計として計算された。その合計を3μg/皿AETと比較した。
【0121】
製品皿研究では、GC-MS及びLC-UV-HRMS分析によるT=0対照試料からの浸出物はなかった。製品皿T=0のCPS対照試料については、HS-GC-MS法により、2-プロパノールが0.7μg/mLで検出された。加えて、GC-MS及びLC-UV-HRMS分析による37℃での4時間の曝露後において、保持皿からの浸出物はなかった。保持皿浸出物研究試料については、HS-GC-MSによって何も検出されなかった(検出されなかった、ND)。
【0122】
ICP-MS分析に関しては、USP<232>及びICH Q3Dガイドラインに基づいて標的要素が選択された。製品皿長期保管浸出性及び保持皿サブ浸出性試料の両方について、試験された全ての要素がそれぞれの限界を下回っており、ほとんどの結果が検出されていない(ND)又はLOQ未満(<LOQ)のいずれかであった。
【0123】
上記明細書に記載されている全ての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の記載された方法及びシステムの様々な修正及び変形は、当業者には明らかであろう。本発明は特定の実施形態に関連して説明されてきたが、請求された本発明はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、組織培養、分子生物学、生化学、又は関連分野の当業者に明らかである、本発明を実施するための記載された様式の様々な修正は、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
【国際調査報告】